09/08/26 第9回社会保障審議会医療部会議事録 第9回 社会保障審議会医療部会        日時 平成21年8月26日(水)          13:30〜        場所 金融庁共用第1特別会議室 ○医療制度調整官 ただいまから「第9回社会保障審議会医療部会」を開会 します。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中ご出席を賜りまして、 誠にありがとうございます。  まず初めに、前回ご欠席のためにご紹介できなかった委員の先生をご紹介 申し上げます。九州大学理事・副学長の水田祥代委員です。  委員のご出欠について、ご報告を申し上げます。上田清司委員、大西秀人 委員、尾形裕也委員、樋口範雄委員、山本文男委員からは、ご欠席とのご連 絡をいただいております。  続きまして、去る7月、8月と事務局において異動がありましたので、ご 紹介させていただきます。医政局長の阿曽沼、医療保険、医政、医療・介護 連携担当審議官の唐澤、医政局総務課長の岩渕、医政局政策医療課長の武田、 医政局指導課長の新村、保険局医療課保険医療企画調査室長の城です。申し 遅れましたが、私は医政局総務課医療制度調整官の野村です。以上、事務局 の新体制となりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただければと考えて おります。お手元の資料は順に議事次第、座席表、委員の先生方の名簿、資 料は右肩に四角囲いで書いてありますが、資料1から資料5まであります。 それと海辺委員、竹嶋委員からありました委員提出の資料が2点、参考資料 として、右肩上に四角で囲っております参考資料の1から7まで、それと新 型インフルエンザの流行状況に関する資料です。お手元をご確認の上、ご不 足ないしは審議ご説明の最中に脱落等お気付きの点がありましたら、事務局 にご指摘をいただければと思います。事務局からは以上ですので、以後の議 事について齋藤部会長に進行をお願いします。 ○部会長(齋藤) 議題に移りたいと思います。本日も、平成22年度の診療 報酬改定に向けた検討として、意見交換をしたいと思います。まず、前回の 医療部会においてご指摘があった点も含め、事務局から資料の説明を受けた いと思います。その前に、本日、海辺委員から、本医療部会のあり方あるい は議事の進め方に関する意見書が出されておりますので、それをまず簡単に 説明していただいて、そのあとで事務局から資料の説明をお願いします。 ○海辺委員 今日はこのような発言の機会を与えていただきまして、ありが とうございます。事務局の資料と参考資料の間に、私が提出いたしました「海 辺委員提出資料」という資料と竹嶋委員の資料がありますので、それをご覧 いただきながらお話させていただきたいと思います。  私は専門家の立場ではありませんので、今回初めて参加させていただきま して、これまでの議事録及び資料や委員提出資料すべてを深く読み込むこと はできませんでしたが、拝見させていただきまして、まずこの医療部会のあ り方について感じましたことを述べさせていただきます。  1.中央社会保険医療協議会をはじめとする関連部会との整合性について。 ここに書きましたように、前回の中医協の審議と、そこから導き出されまし たいろいろな結果等を、平成19年12月3日の社会保障審議会医療部会でま とめられたものが、平成19年12月12日に中医協に報告されたわけです。今 年もそうかと思いますが、中医協では既に8月に基本的な考え方が伝えられ、 社会保障審議会医療部会の審議と並行して審議が行われ、こちらの基本方針 をもって審議が始まるというよりは、そちらとのバランスにおいて作成され ていくようなところがありまして、こちらが方針を決めて、その方針を反映 した形で中医協の審議が行われるのであるならば、大臣への報告の前にそち らとの整合性が取れているかどうかの検証を行う必要があるのではないか。 まず診療報酬が決まって、それの結果としていろいろな医療機関が、ここは こうあるべきだとか、診療所が大変であるとか、いろいろな結果が導き出さ れてまた次の審議に入るのであるならば、そこで決まった方針が正しかった のかどうかという、いちばん責任を負わなければいけないところの意見が反 映された場合には、こちらの責任を負うべきだという判断になると思います が、こちらでは勝手にこれが決まり、こちらでも勝手に決まるという状態で は、どこに責任の所在があるかが全くわからないような状態で、普通に考え れば、いろいろなことを決める経営人の方針に沿っていろいろなことが動き、 その結果がおかしかった場合には、経営人に対してその責任が問われると思 いますが、まずそういう構造になっていないのではないかということを感じ ましたので、ここでそのことを1.にまとめてあります。  2.論点整理および議事進行のあり方について。一応、ずっと「産科・小児 科・救急」と言われていまして、それは平成17年度の資料や平成19年度の 資料を見ましても、今回の資料1にそっくりな資料を基にこちらの話合いが なされておりました。普通に考えますと、3年間が経ったらそれなりの結果 が出て、講じた対策に対する結果がきちんと目に見える形で現れてくるのが 3年という時間ではないかと考えますが、3年経ったいまも全く同じような議 論をするのであるならば、そもそもこの議論はどういうことだったのかとい うことになるのではないかと思います。例えば“聖域なき構造改革”のせい で、医療費が少なくなったせいで医療は疲弊したのだという議論は、全くそ れは関係ないとは申しませんが、日経新聞で1996年から「病める医療」とい う連載があったり、2001年から「医療再生」という連載があったりというと ころを見ましても、その当時から既に小児科の危機などは伝えられておりま して、そのときの10年後を見越した対策というようなものを、産科や小児科 はその当時から取っておくべきだったところが、遅れたことによる結果もあ ろうかなと思いました。  今回の資料を見ましても、不採算となっている部門は本当に産科・小児科・ 救急だけなのかというと、どこの科も大変なことになっていますし、患者の 目線から申し上げますと、例えばがん難民という問題がありますが、化学療 法を受けたいと思う患者が、なかなか思ったような医療を受けられないのが 現実にあります。化学療法の現場の先生が、疲弊しきって立ち去っていく状 況はいまはないかもしれませんが、代わりに、受けたいけれども受けられな い患者が多数いるところにも大きな問題があるという対策を、講じていかな ければいけないところもあろうかと思います。そういうようないろいろな事 実がある中で、果たして産科・小児科・救急だけでいいのか。確かに報道で はそれは見るけれども、目に見える形でどこがいけないのかということをも う少しきちんと考える必要があるのではないかなと。とにかく、ここの議事 進行に関しましては、今回はいろいろなお話を出す会と伺っておりますが、 次回の論点をきちんと提示して、各委員がその論点について責任を持って意 見をまとめて提出して、それを基にというような組み立て方をしていかない 限り、建設的なものにはならないのではないかなと感じましたので、そのよ うに提出させていただきました。  がんの協議会でもありましたように、委員の有志がWGを作って、さらにそ の中で議論を深めるということもありましたので、そういうことをこの中で も検討するのはいいのではないかなと思いました。とにかく出された論点に 関しては、最終的に部会長の先生の権限でもって優先順位を付けることをさ れるのがいいのではないかなと。そのほうが責任を持って、それぞれが意見 を提出するようになるかなと思います。  3.医療の提供体制に関する審議についてです。前回西澤委員から、「医療の 提供体制に関する審議」もこちらで行われるべきではないかというご意見が あったかと思いますが、私も賛成です。しかし、その際には先ほども申し上 げましたように、事実を客観的に把握するデータ、要するに、ここが大変な のだというお話だけではなくて、大変さを裏づけるようなデータをきちんと 出して、例えば、産科が大変だと言いましても、大変な地域があるとか、産 科のこういう部門がここの地域で大変であるとか、全国的に全部の産科が大 変なのかというと、それは事実ではないのではないかと思います。そういう ことがありますように、客観的に事実を把握するデータを基に議論を深め、 医療者や患者、市民、行政、立法など、広く現場の声を反映させる仕組みを 取り入れるべきである。というのは、がんでも行いましたようなタウンミー ティングや、いろいろな医療現場の声を聞くための調査をするとかの取組を して、吸い上げていく必要もあるだろうと思います。  最後に強調したいのは、「医療の提供体制に関する審議」においては、いま ある実情をなんとか回していくことももちろん大事ですが、あるべき医療の 10年後の将来像、20年後の将来像。いま30代で頑張っていらっしゃる先生 方が、40代、50代になったときに、この医療の現場がどうあって欲しいかと いうのを責任を持って考えていかなければいけないのではないかとも考えて おります。各々国民も無関心でお願いするばかりだった部分もあろうかと思 いますし、それぞれの立場で反省すべきところは反省をし、努力する姿勢を 明らかにし、去年の6月26日に日本学術会議から要望が出されましたが、「信 頼に支えられた医療の実現−医療を崩壊させないために−」。書いてあること は、普通の一国民の立場として読んで非常にいいことが書いてあると思いま したので、私よりも田中先生がご専門でいらっしゃいますが、あそこに書か れていることを真摯に受け止め、議論を深めるべきではないかと感じました ので、このようにまとめさせていただきました。以上です。 ○部会長 ありがとうございました。それでは、事務局の資料説明をお願い します。 ○保険局医療課長(佐藤) 本日は資料1から資料5、それに参考資料も付 いておりまして非常に膨大です。時間も限られておりますので、多少端折っ てお話をするところもあろうかと思いますが、どうかよろしくお願いいたし ます。  資料1です。そもそも、前回からこの医療部会でご議論いただいている最 大の目的は、先ほど海辺委員のお話にもありましたように、診療報酬改定に 向けて基本方針を策定していただくことにあります。したがいまして、今回 はそういう意味では2回目ということですので、診療報酬改定に向けて基本 方針を策定していただく場合に、どういう視点で策定していただくのかとい うたたき台風のものを準備をしたわけです。資料1と参考資料3を両睨みし ながら、お聞きいただきたいと思います。  こういうスタイルになりましてから、平成18年改定、平成20年改定、平 成22年改定と3回目になりますが、これまでの改定の基本方針においては改 定の視点を定めるとともに、この視点を踏まえた改定の方向というものを定 めております。具体的には、最初のこういうスタイルであります平成18年度 改定の基本方針において、改定の視点、ちょっと小さいフォントで書いてお りますが4つの視点を定めて、この視点に沿いまして24時間診療ができる在 宅医療にかかる評価とか、患者の状態像に応じた責任、入院医療の評価等の 方向を定めたわけです。そのときの改定の視点は、患者の生活の質を高める 医療、あるいは医療機能の分化・連携を推進する、重点的に対応していくべ きと思われる領域、効率化の予知があると思われる領域の評価といったこと です。  平成20年度の改定の基本方針において、それに加えまして、いま委員から ご発言がありましたが、「産科や小児科をはじめとする病院勤務医の負担の軽 減」が緊急課題として位置づけられまして、ハイリスク妊産婦への対応にか かる評価や、病院勤務医の事務負担の軽減にかかる評価等の方向が定められ たものです。  また、長寿医療制度の施行に合わせる形で特別部会を設置しまして、この 中で、「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子」というものが取りまとめられ まして、これも改定の基本方針に盛り込まれました。  いよいよ、平成22年度の改定の基本方針の話です。基本的にはいま申し上 げました改定の視点[1]から[4]までありましたが、構造的にはほぼ同様の構成 になるのではないかと考えられます。しかし、いま委員からもご指摘があり ましたように、前回改定でいろいろな対応を取ったわけですが、その対応が 成果を上げているのか、そうではないのか。上げているとしたら、どの程度 なのかということもきちんと見なければいけませんし、診療報酬で対応した にもかかわらず、医療現場では厳しい状況にあると聞いております。視点を 変えますと、診療報酬というのは上げれば上げるほどいい、評価すればする ほどいいという側面もあるかもしれませんが、一方でそのことは厳しい保険 財政という副次的な影響をもたらすこともあります。  そういう中で、最近の閣議決定等においては社会保障の機能強化の必要性 が指摘されていることもあります。また、長寿医療制度の見直し等が指摘さ れていること等を踏まえますと、基本方針に盛り込むべき視点や方向につい て、これまでの過去の経緯も踏まえながらご議論いただきたいと思います。  次の頁です。そうしますと、論点はどうかということです。たたき台風に 書いてみましたが、前回までの視点・緊急課題というのは先ほどの委員のお 話ではないですが、基本的にはまだまだ十分ではない部分もありましょうか ら、引き続き基本方針の中に位置づける方向なのではないかと考えておりま す。  また、繰り返しになりますが、前回の部会では救急・産科や勤務医の負担 軽減というものについての充実を求める声が多かったのですが、平成22年度 改定に当たって具体的にどのような「方向」が考えられるのかということで す。考えられる方向の例について、そこに羅列をしております。これらは参 考資料の中にもありますし、後段のほうに出てまいりますものは医療部会の 中で出てきた意見などもありますが、いずれにしても例示としてそういうも のを書いております。  これ以外にどのような「視点」「方向」が考えられるかということで、例え ば、患者から見てわかりやすくということで、どのような視点があるのか。 質の高い医療を効率的に提供するためにという視点で、どういうことがある か。それから重点的に対応していくべきと思われる領域で、どういうものが あるか。医療費の配分の中で、効率化の余地があると思われるものはどうい うものかをご議論いただければと思います。  資料2は資料1と密接に関連をしておりますが、平成20年の改定の基本方 針に沿って、平成20年度の改定でどういう対応をしたのか、そして、現時点 においてその実績はどうなっているのかというのを一覧表にまとめたもので す。時間が大変限られておりますので、これらを全部今日説明することはい たしませんが、1枚目だけを少し丁寧にご説明をして、以下は重要な項目だ けを簡単に紹介することにしたいと思います。  1つ目の「緊急課題」は、産科・小児科をはじめとする病院勤務医の負担 の軽減です。アに書いてあるような基本方針が出たことに対しまして、真ん 中のカラムで、平成20年度改定では、ハイリスク妊娠管理加算やハイリスク 分娩管理加算の評価の充実を行いました。また、妊産婦さんが救急車で搬送 される場合の救急搬送入院加算というものを新設しました。また、NICU等で ケアをされている赤ちゃんが多いわけですが、そうした方が一定程度NICUで 治療を受けたあと、後方施設としての施設があるのか、あるいは、そこでの ケアが必ずしも、経済的に十分な評価を与えられていないのではないかとい う意見がありましたので、重症児あるいは超重症児入院診療加算についても 大幅に増点をしたところです。  その成果を何で見るかというのはなかなか難しいところですが、差し当た り定量的に実績を推し量ることができるのは、届出医療機関数や算定状況だ ろうということで、そこにまとめております。具体的には、ハイリスク妊娠 管理加算は1,722施設、ハイリスク分娩管理加算は623施設、妊産婦救急搬 送入院加算は1,273施設で届出が出ております。また、その算定の状況はお 示しをするところです。  各頁の末に書いていますが、実施状況欄に記載されている括弧内の数字は、 その前年の数値です。例えば、ハイリスク分娩管理加算ですと、平成20年7 月は623施設でしたが、その前の年は708施設だったことを表しております。 また、届出医療機関数だけがパラッと出ていましても、それが多いのか少な いのかという目安がつきませんので、各カラムごとに可能な限り「参考」と いう欄を設けております。例えば、このハイリスク妊娠管理加算や分娩管理 加算のところで申しますと、産科や産婦人科を標榜する病院数は1,616施設 ですので、1,616施設に対して623の施設でハイリスク分娩管理加算を算定 していただいている構造になっています。  以下、診療所、病院の役割分担、病院勤務医の事務負担の軽減ということ で、それぞれ平成20年に新設の点数を行った。そして、その結果届出がどう なったかというのが一覧の形でお示ししています。先ほども申し上げました ように時間の関係もありますので、すべてを説明することはいたしませんが、 ずっとご覧をいただければと思います。  また、ちょっと変わったといいますか、通常の診療報酬点数とは変わった 内容としましては、7頁です。左側に「イノベーション等の評価」とありま して、薬価制度そのものを変えていって、新薬の補正加算率の引き上げや加 算要件の緩和をしたもの。あるいは原価計算において営業利益率にメリハリ をつける算定方式の導入などというような、単純に診療報酬で点数をつけて いくこと以外の工夫もしております。  また、その下の後発医薬品も同様で、処方せん様式を見直しまして、処方 医が処方薬の後発医薬品の変更に差し支えがあると判断する場合にのみ、処 方せんにその旨を署名する仕組みに変えたりしています。以下、こういう診 療報酬点数に伴う加算や新設あるいは増点、さらにはいま申し上げましたよ うに、処方せんの記載要領の工夫等々で対応したというところをずっと書い ております。以下、こういう形で続きます。  先ほども申し上げましたように、通常の診療報酬点数と直接は関係ないけ れども、工夫をしたというところで申しますと、例示ですが14頁の中ほどに、 「居住系施設等における医療」とあります。これは、わかりやすく言います と、医療と福祉との連携、あるいは医療と福祉とが切れめなくサービスが提 供されるようにということで、これまで必ずしも整理をされていませんでし た居住系施設を含むさまざまな施設を利用している方について、外部から医 療を提供する場合の適正な評価についても真ん中のカラムにありますように、 訪問診療を評価するとか医学的管理を評価する。それ以外にも、一定の考え 方を整理をしたというものです。ここまでが、資料の中では今日ご議論いた だきたい内容のメインとなるものです。  以下、資料3からは、そのご議論のあくまで参考としてご覧いただければ という趣旨です。ご覧いただきますように、資料3も作成した所が厚生労働 省医政局指導課となっていますので、成り代わって説明することにもなりま すが、時間も限られておりますのでごくごく簡単にということになります。 資料3は、いまも申し上げましたように3頁以降一度ご覧をいただきました 資料ですし、医療部会の先生でなくても例えば検討会のような所でご覧にな ったような資料が並んでいますので、ごくごく簡単にご説明して流していき たいと思います。  救急医療のニーズが高まっているけれども、4頁にありますように、実際 には成人高齢者の軽症、中等症を中心に、ニーズが増えているということで す。8、9頁は産科、周産期の問題です。先ほども少し数字のところで申し上 げましたが、そもそも分娩施設数が減少していることになります。減少して いるということは、単純に産科をやってくださる病院がなくなったというネ ガティブな意味ばかりではないだろうとは思っています。例えば、集約化、 重点化というのを国でもお願いをしていますし、地域によってもそういうこ とでもって一人医長みたいな問題を解決していこうということですから、積 極的なポジティブな意味で分娩施設を集約化している所もあろうかと思いま すが、数字だけを見ますとこういう形だということです。これも一度ありま したが、出生数や出生時体重については、出生数はご覧のように多少の凸凹 はありますが、近年減少傾向にあること。一方で、2,500g未満の赤ちゃんの 生まれる率は増えているということです。  10頁は、母体及び新生児の搬送受入れの状況です。先ほども申しましたが、 受入れができなかった主な理由は、NICUの満床ということのようです。それ から先ほどの話の関連で言いますと、NICU満床であっても、本来であると後 方施設があれば受け入れられた施設があるのかもしれないということで、超 重症児加算のようなものが意味を持ってくるのかもしれません。小児救急医 療についても、前回丁寧に説明がありましたので詳しくご説明はしませんが、 乳児死亡率は世界でも最低、つまりレベル的には最高の水準にありますが、1 〜4歳児の年齢区分だけはやや高い水準にあるということです。  13頁にもありますように、その理由は現在厚生労働科学研究で研究中では ありますが、ある程度予想されているのは、救命救急センターは設置されて 順調に伸びておりまして、この時点で施設A、B、C、D、E、Fのデータで見て みますと201床あるけれども、小児の専門の病床というと19ということです。 これはあくまでも例示ですが、救命救急センターと名乗っている所でも、小 児のけがや病気、特に重篤なけがや病気について対応できる病床というのは 少ないということが示されております。  15頁が、資料3のある意味でポイントになると思いますが、いまのような 実態を踏まえて、救急医療等に係る課題と必要な支援を整理すると、こうい うことだということです。1つ目は先ほども申しましたが、軽症、中等症を 中心に、救急医療の需要が著しく増加をしているということが言えます。ま た、周産期の場合は単に増加しているだけではなくて、低出生体重児に代表 されるハイリスク分娩が増えているのではないかということが言えます。一 方、受入れ側の体制としては、救急医療機関が減少しているとか、あるいは 勤務医が過重労働で疲弊しているのだということがよく言われます。また、 周産期についてはNICUが満床であるということが言えると思います。  それから言葉が妥当かどうかはわかりませんが、出口の問題があります。 NICUや救命救急センターのような極めて高度な医療を短期集中的に実施をす る医療機関は、これはこれで充実していくとしても、そういう患者が危機的 な状態を脱したあと、いい時期になるのか慢性期になるのかはわかりません が、そういう状態で受け入れてくれる医療機関が重要になってまいります。 仮にこれを後方病床と言うとすると、救命救急センターでも後方病床は十分 ではないし、NICUでも必ずしも十分ではないということになります。また、 お年寄りの場合には、在宅医療との連携をどうしていくかというのも1つの ポイントになると思います。  その下は、必要な支援がいま申し上げましたことのおおよそ裏返しになる と思いますが、連携が重要であるとか後方病床の手厚い配置を支援すること が重要であるということで、これが私どもの診療報酬ないし保険局医療課に 対するお願いや要望に相当するものだろうと理解をしています。  資料4は、あくまでも参考ということですから簡単にご説明します。社会 保障国民会議が開催をされて、平成20年11月4日に報告があったことは前 回もご紹介をしましたが、今日は別な視点から社会保障国民会議の最終報告 を紹介しています。1頁の[4]に、「診療報酬体系・介護報酬体系の見直し」に ついてはっきり書かれていまして、診療報酬体系や介護報酬体系そのもの、 基本骨格のあり方に遡った検討が必要ということです。[5]についても触れて おきますが、これまでの厚生労働省や政府全体の報告と違う点は、これまで の報告というのはどちらかというと保険料であれ、税金であれ、自己負担で あれ、費用の総和というのがある程度決まっている。別な言い方をしますと、 費用の制約というものがあって、その制約の範囲内でどういう医療を提供す るのか、介護の場合はどういう介護を提供するのかという視点で書かれてお りましたが、この最終報告は、あるべきサービスの姿はどのようなものかと いうことからスタートをして、それを実現し維持していくためには、どれだ けの費用が必要なのかということを議論していく。ある意味当たり前のこと ですが、行政のこれまでのやり方からいうと、やや自画自賛的ですが、画期 的な検討のスタイルが取られたということになります。しかも、その費用と いうのも後ほど出てきますが、単にお金の話だけではなくて、ヒューマンリ ソースについても言及をされているところが1つのポイントだろうと思いま す。  2頁では、もう少し細かい話が書き込まれています。2頁で医療・介護費用 のシミュレーションをしていますが、具体的な方向が書かれていまして、そ の中では急性期・慢性期、在宅医療、地域ケアの3つに分けて、それぞれの あるべき方向という言い方がいいのかどうかはわかりませんが、そういう方 向が示されています。  具体的に書かれているところでは、急性期医療の2つ目の○で、現在の一 般病床を急性期の病床とそうではない病床、例えば亜急性期・回復期病床等 とに機能分化していって、その中でも急性期病床については人的・物的資源 の集中投入をするのだということが書かれています。しばしばマスコミ等の 報道の中でも、選択と集中という言葉で表現をされまして、医療費あるいは 財源と言い換えてもいいかもしれませんが、こういったものの配分に当たっ ては選択と集中が重要というようなことでした。専らその選択と集中という 場合には、病院対診療所という文脈で語られることが多くて、もう少しわか りやすく言うと前回の改定がそうでしたが、診療所が少し協力をして、病院 に重点的に配分するという文脈で選択と集中という言葉が語られたように思 いますが、この社会保障国民会議においては単純にそういう話ではなくて、 病院の中でも急性期の病院とそれ以外の所とでも、ある程度役割分担をして いくのだということが書かれております。  3頁は、その考え方を模式的にしたものです。ポイントを説明すると、結 局は4頁に集約されるのだと思います。4頁の左のカラムに「現状」という ものがありまして、急性期から居住系までおおよそ5つぐらいの区分に分け て、それぞれ現状で、一般病床ですと103万床があり、長期療養(医療療養) ですと23万床があり、介護であれば84万床、居住系が25万床とありますが、 それらをAシナリオからBシナリオ、Bも3つに分かれていますが、大きく 分けまして、それぞれのシナリオごとに平均在院日数がおおよそどれくらい で、そのために職員をどれくらい増やさなければいけないのかということを 書いています。  Aシナリオというのは、基本的に現在の状況を延ばしたものですが、B1か らB3までは、かなり大胆に機能分化を図ることとしています。B3シナリオ ですと、高度急性期病院は26万床で足りるとしていまして、逆に一般急性、 亜急性期・回復期等については40万床ということですから、むしろこういっ たところを増やしていく考え方になっています。もちろん、これはいくつか の大胆な仮説を置いています。ここで想像される疾患がそもそも脳卒中とい うことでスタートしているでしょうから、急性期、亜急性期・回復期となっ ていますが、疾患の中には急性期からいきなり在宅とか、いきなり診療所と か、いきなり介護系の施設という場合もたくさんありますので、患者が5つ のパターンを順に踏んで、双六ではないですが、第1段階に来たら第2段階、 第3段階から第4段階というわけではないですが、例えば典型的な疾患であ る脳卒中や加齢に伴う病気などを取ってみますと、概ねこんなような感じに なるだろうという仮説を置いています。  5頁です。先ほどで申しますと、亜急性期・回復期は、少なくとも40万床、 多くても50万床ぐらいということでしたが、現時点ではそこにお示しします ように、例えば亜急性期入院医療管理料でも大体1万2,000床程度しかあり ませんので、亜急性期・回復期というところを相当程度増やさなければいけ ないことになってまいります。資料4は以上です。  資料5は、前回ご質問がありましたから、そのご質問についてお答えをす るという性質のものです。どういう質問だったかと申しますと、現在診療報 酬が医療機関にとっての収入の最たるものになっているわけですが、実際に は各種の補助金が出ています。シンプルに言いますと、医療を良くしていく ときに「診療報酬だけじゃないだろう。補助金というものの活用もあるじゃ ないか」ということでしたので、診療報酬と補助金がどういう関係にあって、 どういう目的で、どういうふうに支出をされているかの現状について、簡単 にご報告をするものです。  診療報酬については、[1]〜[3]で書きましたような3つの特徴を持っていま す。1つ目は、個々の患者の診療行為に着目して支払われることです。2つ目 は、個々の診療報酬点数というのは必ずしも厳密な原価計算ではありません が、近似的な原価計算によって設定をしているもので、費用を負担する側と 診療を担当する側との中医協における協議を踏まえて、設定がされています。 3つ目は、保険料にもはね返ってくることがある。それから窓口負担、つま り患者個々人の自己負担にも跳ね返ってくるということで、被保険者間、つ まり患者間あるいは国民の皆さんの間の公平を図る観点から、地域加算とか 離島加算のような、地域差を見る診療報酬上の加算とか点数はあるものの、 基本的には全国一律の点数設定ということになっています。  診療報酬は保険医療機関に対して支払われるもので、別な言い方をすると 個々の医師やコメディカルに支払われる構造にはなっていませんし、その使 い道はもらった保険医療機関が裁量で再配分をすることになっています。  補助金は、いまの診療報酬と対応関係を持って記述をしていますが、ここ に書いてありますように、補助金とは「特定の事業の促進を期するため、国 又は地方公共団体が公共団体・私的団体・個人に交付する金銭給付」で、先 ほどの診療報酬とは違いまして、個々の患者に対する診療行為に着目して支 払われるものではないということです。では、どういうことかというと、地 域の医療提供体制の構築を促すことから、奨励的な予算補助、例えば施設・ 設備整備費、運営費、人材確保という形になっています。補助金には、これ 以外にも国の負担分のほか、必要に応じて都道府県のような自治体の負担、 さらには設置者や事業主の負担というものが存在をしています。  具体的には、ここに示しますような費用を対象として、予算補助事業を実 施しています。先ほども申し上げましたように、診療報酬のところで説明を しました[1]と補助金の[1]とが対応していますので、相互にご覧いただきなが らお聞きください。例えば[1]小児救急に関する電話相談。これは直接診療に は関連しないわけですが、こういったものについて小児救急電話相談の体制 を組むことに対しては、補助金が出ています。[2]救急医療等の医療提供体制 確保にかかる費用で、個々の医療機関の特性、例えば輪番を組んで対応して いるとか、特別に高度の救急患者を受け入れるという特性に応じて、診療報 酬では必ずしも十分に見ることができなかった費用を見るということになり ます。同様に[3]へき地医療など、地域特性から特に必要となる費用というこ とでやっています。  なお、補助金については診療報酬とは異なりまして、対象経費を特定して、 別な言葉で言いますと紐付きですが、何に使うかというものを特定して支給 をしているということです。  (3)その他に○が2つ並んでいますが、下の○からご説明します。先ほどの 補助金の話ですが、厚生労働省の補助金の場合は、近年の三位一体改革とい うものの中で、例えば病院群輪番制病院に関する補助金や、公立の救命救急 センターに関するものなどは、国から地方への税源移譲が行われていますし、 またこの三位一体改革の前から一般財源化という形で、補助金から交付税に 変わる取組がなされていましたので、見掛け上の厚生労働省からの補助金は 減る傾向にありました。  またその1つ上の○は何のことを書いているかというと、これは厚生労働 省からの補助金ではありませんで、公立病院については、診療報酬や補助金 のほか、救急医療、精神科病院、不採算地区の病院等の不採算部門に要する 経費のうち、その経営に伴う収入によって充てることができないと認められ るものについては、地方公共団体の一般会計からの繰り入れが認められてい ます。これは、しばしば「一般会計繰り入れ」と呼んでいますが、広い意味 ではこれも補助金ということになると思います。  以下、2.にいま申し上げました診療報酬と予算補助事業の場合の例を書い ていますが、時間の関係もありますので割愛をさせていただきますが、こう いう形で診療報酬の場合も予算の場合も、それぞれ役割が違っていますので、 相互に重複しないようにということで支給されています。  いま申し上げました内容を表の形にしたものが、4頁からの資料になりま す。これは、いま申し上げましたことを表の形にしただけですので説明はし ませんが、重要なところがありますので5頁のいちばん下をご覧ください。5 頁のいちばん下に、「事業規模」という欄があります。ご存じのように、メデ ィア等においても平成20年度の概算の医療費は34兆1,000億円となってい まして、うち以下の医療費だけを取り出してみますと26兆円、病院18兆円、 診療8兆円という規模になっています。一方、先ほどから申し上げています 厚生労働省の補助金というのは、国費ベースで847億円になります。もちろ ん平成21年度の補正予算で3,100億円が出ましたが、毎年一定程度の額が出 ているということで847億円ということになります。ただし、ご注意いただ きたいのは、いまも申し上げましたようにこれは国費ベースですので、補助 率にも差がありますが、先ほど申しましたように自治体負担分あるいは事業 主設置者負担分がありますので、実額はこの2倍から3倍になります。大雑 把に申しますと、約2,000億円ぐらいが厚生労働省由来の補助金という形で 出ているのではないかと理解します。  以下、参考資料については先ほども申し上げましたように、平成20年度の 診療報酬改定の基本方針を付けたものですので、説明はいたしません。以上 です。 ○部会長 ありがとうございました。以上の説明、そして資料を踏まえつつ、 平成22年度の診療報酬改定に向けて委員の皆様からご意見を伺いたいと思 います。いまから約1時間40分ぐらいあります。委員の間で活発な意見交換 をお願いできればと思いますので、お1人あたりのご発言は、できるだけ簡 潔にお願いいたします。加藤委員。 ○加藤委員 先ほど、海辺委員から厳しいお言葉がありました。平成17年当 時より出ているにもかかわらず、同じことが出ているということですが、再 び同じようなことを申し上げて恐縮ですが、結果が出ていませんので、繰り 返し発言をさせていただきます。  まず、救急医療機関に対する評価です。救急患者を受け入れる医療機関は、 24時間体制で患者をいつも受け入れられる体制を整えておく必要があること から、その体制に対しまして十分な評価をすることが重要であることは言う までもありません。特に小児救急の場合は、患者の年齢が低いほど、各治療 行為に習熟度が要求されまして、時間も要することからNICU、PICUについて は、大人を対象とする以上に医師、看護師、各種技師等のマンパワーを確保 する必要があります。したがって、医療体制を整えている医療機関に対して はそれ相応の評価をしていただきたいと存じます。体制整備を支援すること が重要です。  また、産科救急においては、妊婦に問題がある状態ですと、それがあれば あるほど生まれてくる子についても危険が伴いますのが一般的ですから、新 生児にも即応できる体制を整える医療機関に対しましては、それに見合う十 分な評価をすることが必要であろうと考えます。すなわち、救急医療という ものをすべからく平らに小児救急医療の評価をするのではなく、その内容に 応じた対応ができる医療機関に対して、特段の評価が必要であろうかと考え ます。  次に、救急搬送に対する評価ですが、新生児の救急患者に対しまして、患 者の救急の観点から、高度の小児救急を扱う医療機関から専門医等が患者を 受け取りに別の医療機関に出向いています。搬送途上から必要な治療を開始 する場合があります。このような場合、医師、看護師等の活動に関しまして、 出先からの評価はなされていますが、出向先への評価がなされるべきである と考えます。  次に、急性期が過ぎた小児救急患者の受皿の確保です。小児救急医療機関 が真にその機能と役割を果たすためには、急性期を出した患者を移し、新た な救急患者を受け入れる病床を確保することが重要であることは先ほどから 述べられているとおりです。その意味では、小児の救急治療後の後方病床の 確保、また、後方病床から在宅へ小児患者を戻すことが効率的に行われてい く体制を整備することが当然であることは言うまでもありません。小児にお ける在宅医療を定着させるためには、IVHや呼吸器を付けた患者に対する看 護が適切にできるように、看護師等の研修を充実させる必要があるほか、そ の研修を行う側への評価も必要です。また、在宅での医療消耗品を訪問看護 費用費等の対象にすること、急変した場合の医療機関への受入体制の確保の 評価など、総合的な視野からの対応が必要であろうかと考えています。  もう1つは、これは質問になりますが、周産期母子医療センターについて 事務局にお尋ねします。ご準備されるまでに、少し別の角度からお話します。 資料2の2頁の左側のウ「生活を重視した医療」で、前回もお話しましたが 「がん医療」と書かれていますが、小児にもがんがかなりありますので、こ こは「小児のがん」ということを是非入れていただきたいということです。 また3頁の真ん中で、これも前回お話しましたが、小児特有のDPCを考慮す べきであると考えます。その下の先ほども出ました、脳卒中を中心とした医 療の何かを付けられたということですが、これらの寝たきりの状態は大人だ けではありません。小児、乳児においてもこのような状態の方がたくさんお られます。したがいまして、小児、乳児に対しても、十分に評価をしていた だきたいということです。  4頁です。7対1の基本料に対しては手厚くしていただいていますが、果た して5対1にした場合、それ以上の看護ができる場合にはどのようにお考え かということも考慮をしていただきたい。その下に在宅患者連携指導料の新 設とありましたが、在宅患者と申しますとほとんどが高齢者に対するもので す。これは高齢者だけではなく、いま少子化の時代におきまして、小児も当 然対象とすべきであるというように考えています。  5頁の真ん中のがん医療の推進。これは、がん対策推進基本計画にありま すが、果たして小児がんに対してはどのように評価されるのかが疑問です。  6頁は、児童の心の問題です。入院診療を行った場合の評価が低いことは 当然わかっていますが、入院のみではなく、外来診療に関しては長時間を要 し、夜中まで勤務している診療所、病院が多数あります。この評価があまり にも低すぎると考えていますので、強く要望させていただきたいと存じます。  長くなって恐縮ですが、最後に14頁の看取りです。終末期の医療。この看 取りについても、小児に対しては軽視されている傾向が非常に強いです。臓 器移植等が絡んでまいりますから語りにくいところはありますが、この終末 期医療というのは皆さん老人のことばかりを考えておられますが、小児につ いても非常に大切な問題ですので、十分評価をしていただきたい。  15頁、疼痛緩和ケアは先ほどお話しましたが、がんは大人だけではありま せん。小児でも疼痛緩和が必要な場合がありますので、それを正しく評価し ていただきたいということです。  事務局にお尋ねしますが、周産期母子医療センター指定基準の見直しにつ いて、現在考えられている主な変更点、又は進行状況について先日ご質問を させていただきましたが、この総合母子医療センター、地域の母子医療セン ター等の進行状況についてお尋ねしてもよろしいでしょうか。 ○部会長 今日答えられる資料はありますか。なければ次回でもいいです。 ○医政局指導課長 いま配付できる資料はありませんが、ポイントだけ申し 上げますと、総合周産期医療センターについては産科特有の合併症ではなく て、母体の身体合併症のような場合も対応できるような体制を取っていただ くことが1つ。それから、小児の地域周産期センターについては少し要件を 緩和して、より受入れを増やすようにということがあります。その他諸々あ りますが、いま検討中で、今後いろいろな意見を聞いて確定していきたいと 考えています。 ○加藤委員 各都道府県の対応は、まだお済みでないのですか。 ○医政局指導課長 とりあえず、周産期整備指針の改定案ということで都道 府県に示しておりますが、各方面のいろいろな意見を聞いた上で最終的なも のにして、確定して通知したいと考えています。 ○中川委員 冒頭の海辺委員のご発言は大変参考になり、勉強になりました。 特に、我々医療全体のほころびが地域医療の崩壊をもたらしていることに関 して、産科・小児科・救急だけでいいのかというご指摘は本当に心強く思い ました。その上でお聞きしたいのですが、今日の東京新聞の朝刊ですが、「厚 生労働省は、管制塔役の医療機関が症状に応じて救急患者を近隣の病院や開 業医に割り振るなど、地域内で連携していく救急患者を受け入れた場合に、 報酬を加算する方針を固めた。26日に開く社会保障審議会の医療部会で、改 定の基本方針案として示す」という報道があるのです。質問しても、「そんな こと全く知りません」とおっしゃるのでしょうが、私があえて発言したのは、 現場はこういうものしか見ませんので大変動揺します。毎回の改定において も、必ずこのようなことが頻発します。事務局はもちろんこういうことは言 っていないでしょうけれども、改定の議論に非常に影響を与えるし、現場が いちいち一喜一憂するということも起きます。事務局は、こういうことが極 力減るように、方策をお考えかどうかを教えていただけますか。 ○保険局医療課長 基本は診療報酬に絡む情報の管理と、それに伴う報道の ことをご質問になったのだと思います。私どもはここ1、2年このような努力 をしています。1つは、必ずしも中医協の議論をご理解いただかないまま記 事にしてしまうケースが多いのではないかと考えまして、今年から中医協の 総会はもとより部会に至るまで、会議が終了したあとは基本的にブリーフィ ングの形でご質問をお受けし、解説を加えて、中医協や中医協に関連する部 会や委員会の議論を正しくご理解いただけるようにと。もちろんマスコミか ら素朴なご質問が出て、私どもの議事の進め方、資料の準備の仕方でわかり にくいところがあるかもしれませんので、相互で理解が深まるように、我々 の情報ないしは中医協の議論が相互に伝わり、意見交換ができるようにして います。  2つ目は、これまでにもいくつか事例があるのですが、あまりにも重大な 事例、誤解を招くような例については、広報室を経由してお話をし、申入れ をしたり、場合によっては内容証明郵便等の形で、記事の内容について質問 をし、場合によっては訂正も視野に入れてお願いをしていることもあります。 しかしながら、後者の方法はあまりエレガントな方法ではないので、私たち はできる限り、相互に理解の深まるような、前者の方向でやっていきたいと 思います。  なお、中医協の議論というのはことごとく公開されていまして、傍聴はも とより議事録もすべて公開されていますので、その範囲を超えて憶測で記事 を書かれることは、普通はないものと承知していますので申し添えます。 ○審議官 補足します。診療報酬改定を巡る国民的関心は非常に高いものが ありますので、それに関するさまざまな意見、取材は、もともと自由に行わ れるべきものですが、その上に非常に関心が高いので頻度が高い傾向があり ます。  その一方で、先生からご指摘がありましたように、報道されたことが現場 に大変大きな影響を与えるというのは、そのとおりです。日本中のすべての 方が中医協に出席して、あるいはこの医療部会に出席して聴いておられるわ けではありませんので、その辺は私どももミスリードにならないように気を つけて対応させていただきます。  また、いま佐藤医療課長からありましたように、報道機関がどのように問 題を考えて処理するかは、それはそれぞれの報道機関の自由な判断ですが、 技術的な事柄については、私どもからも情報を提供する努力をしているとい うことです。 ○中川委員 もう1つ質問です。資料4の説明で、あくまでも参考と言いな がら、随分と力が入っていたような気がするのです。この社会保障国民会議 の最終報告の位置づけを、今度の改定に向けてどのように位置づけているの かご認識を伺いたいと思います。 ○保険局医療課長 医療課長の認識というのもなかなか難しいものですが、 これは内閣官房で有識者のご意見を受けて取りまとめられたものですので、 現時点においてはこういう考え方も尊重すべきだと考えています。これがす べてであるということではないという理解です。それは先ほどから何度も申 しましたように、いくつかのところで大胆な仮説や仮定を置いているという ことで、ご理解をいただければと思います。 ○中川委員 あまりこれに重きを置かれると、この医療部会の存在価値が低 下しますので、そういう意味でご質問いたしました。 ○部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○近藤委員 歯科医療の立場からお話をします。前回の医療部会で、私から 「高齢者にとって歯を残すことは健康寿命の延伸につながる」という発言を させていただきました。これは必ずしも高齢者に限ったことではありません が、歯の1本1本を残していくことの重要性については、すべからくすべて の方にご理解いただいていると思います。  現在の少子高齢化の中で、児童の虫歯は大変減少しています。若年者の口 腔内の状況は改善されてきているわけです。その一方で、長寿になったこと で、高齢者の口腔内の疾患は増加しているのが現状です。骨太2009にも明記 されましたが、「8020運動」の推進が非常に重要です。  本格的な高齢化社会に対する歯科医療、特に在宅歯科医療を提供していく ことが重要です。歯科保健目標としての8020運動が、現在80歳で20本以上 の歯が残っている方が25%、4人に1人まできたという状況は、素晴らしい ことだと我々は感じています。これをできれば3人に1人、2人に1人の高 齢者の方が、80歳になっても20本以上の歯を持てるような日本にしていき たいと考えているわけです。  逆に、一方では、現時点では4人に3人は20本以下の歯しか残っていませ ん。しかし、歯が20本以下であっても十分に咀嚼し、栄養を摂って、長寿に なれるという社会を我々としては目指していきたい。歯を積極的に残すため の治療技術の評価と同時に、欠損等に対する治療技術に対する評価が、高齢 者のQOLを高めるという意味で重要です。  本日の資料2の5頁に、「歯科医療の充実」という平成20年度診療報酬改 定にかかわる部分が記載されていますが、引き続きこの歯科医療の充実に努 めていきたいと考えています。  また、本日の資料の13頁に、平成20年度改定で、在宅歯科医療を推進す るための評価が行われました。しかし、依然として地域における医療介護福 祉関係者との連携が十分でない、医療関係者及び家族等の歯科訪問診療への 認知度が低い、在宅歯科医療のニーズが十分に把握できていない、という課 題が残っています。これらの課題の解決には、在宅歯科医療の推進を図るた めの総合的な取組みが必要であり、診療報酬上においてもより適切な在宅歯 科医療を提供するという観点から、在宅歯科医療の実情を踏まえて必要な見 直しを行っていくことが重要です。  そして、在宅患者に対する入院歯科医療の提供体制を十分に確保すること。 さらに、地域における在宅診療からの受け皿となる病院歯科の役割と、その 機能に応じた評価を検討することも必要だと考えていまして、平成20年度の 基本方針に盛り込まれた在宅医療の推進の部分、同じ観点から、この平成22 年度診療報酬改定における基本方針の中に十分に盛り込んでいただくように お願いいたします。  いま私どもは、歯科医療は命には直接関係ないかもしれないけれども、人々 が生きていくための生活を支える医療、生きる力を支える医療という位置づ けで考えています。歯科医療の現場では、安全で安心できる医療提供を欠か すことができません。そのための医療政策あるいは診療報酬による手当てが 必要ですので、是非今回の医療部会の議論の中でこのようなところもご理解 をいただいて、平成22年度診療報酬改定の基本方針の中に盛り込んでいただ くようお願いを申し上げます。 ○加藤委員 ただいま近藤委員から口腔ケアの話が出ましたが、中心が老人 介護に偏っているように感じました。それは賛成ですが、歯のない乳幼児の 病気を持っている方々がたくさんおられます。これから歯が生えてくる方の 口腔ケア、乳幼児で入院されている方や在宅の方々への口腔ケアも、是非歯 科の先生方に頑張っていただいて、ご協力をいただきたいと考えています。 よろしくお願いします。 ○近藤委員 ありがとうございます。いま加藤委員からお話をいただきまし たが、歯科分野では、小児であれ高齢者であれ、そうした対応が十分にでき るような研修をする機会が数多く持たれるようになってきています。そうい う形のときには、歯科医療の場合に連携を取っていただいて、お声をかけて いただくことで十分に連携が取れ、実際にそのようなケースも出ています。 歯科医師あるいは歯科衛生士が口腔ケアに参加することにより、実際に歯科 の治療をするわけではありませんが、母親と子どもの関係に、歯科医療の立 場で参加することができたというケースもありますので、よろしくお願いを 申し上げます。 ○小島委員 今回の基本方針の策定に当たっては、過去2回の基本方針で指 摘されている4つの視点、前回は緊急課題として救急医療も加わっているが、 これらは重要な視点として示したところなので、それについてこの部会とし ても一定の評価、検証をする必要があります。基本方針に基づいて具体的に 診療報酬をどう改定したかということで、資料2が出されているのでこれを どう評価するかがまず1つだと思います。それを踏まえて、今回の新たな平 成21年度の診療報酬改定に向けての基本方針をとりまとめることになって くると思います。  私は中医協のメンバーですので、そこでの議論あるいは中医協の検証部会 での議論を踏まえると、いままで2回の診療報酬改定で掲げてきた基本的な 視点は引き続き必要ではないかと思っています。1、2回程度の診療報酬改定 だけでは、いままで指摘されているような視点は簡単には改善できないとい うことです。それは前回も言いましたように、医師不足、救急の問題などは、 診療報酬だけでは解決できません。そうは言っても、診療報酬でできる範囲 での対応の視点として、前回、前々回も示した4つの視点が基本ではないか と思っています。  その中でも、今日の資料2でも示している個別の診療報酬改定の内容を見 ても、自殺対策、子どもの心の対策についても、それなりの診療報酬改定は 行ってきました。しかし、年間3万人を超える自殺者がいるという実態を見 ると、まだまだ不十分だと思いますし、そのような点も含めてこの部会とし て過去2回の診療報酬改定の結果をどう評価するかということで、新たな視 点が必要かどうかを議論していきたいと思っています。  それと、前回は後期高齢者医療制度がスタートすることがありましたので、 後期高齢者に相応しい新たな診療報酬体系を作るという視点も方針の中に含 まれています。その中で、実際に中医協でそれに基づいて診療報酬改定をし た結果、一部凍結しているものもありますので、その辺をどう評価するかも、 もう一度この部会でも議論をしておく必要があるのではないかと思っていま す。  それと、前回の中医協でも発言したのですが、その点をこの部会でも発言 します。国民、患者の立場からいって、いま日本で承認されていない未承認 薬あるいは保険適用になっていない未適用薬、そのようなものを早急に適用 あるいは承認することが、国民、患者にとっても利益になると思います。そ ういうものに資するような薬価制度体系のあり方についても、検討すべきで はないかと思います。前回の基本方針の中にも、イノベーション等への評価 という形で一部含まれているので、そういうものも併せて、今回是非示せれ ば、それが結果的に国民、患者の利益になるのだと思っています。  中医協の中では、製薬業界から出されている、研究開発費を早めに回収で きるような薬価改定のあり方、制度のあり方について議論されていますが、 それはそれとして、国民、患者の立場からすれば、未承認薬、未適用薬の早 期解消が必要だと思うので、そのようなことも課題に入れていただきたいと 思います。 ○部会長 いま資料1の4つの基本方針を引き続き踏襲すべきだというご意 見でした。これを読むと、ほとんど重要なことはどこかに入るような気がし ます。ここで、これは4つの基本方針に入らないものがあるので、これも5 つ目の基本方針として加えたらどうかというご意見があれば、またあとで伺 います。 ○辻本委員 加えていただきたい基本方針が2つあります。1つは、これま でにも十分すぎるほど議論されているのかもしれませんが、決して成果が上 がっていないという点で、慢性期医療の予防と対策です。  もう1つは、昨年私もかかわらせていただいた「安心と希望の医療確保ビ ジョン」の中で、地域医療における住民参加という「協働」についてです。 それがインセンティブに働くかどうかは難しいと思うのですが、その辺りを 何か加えて、前に進む支援策を是非とも考えていただきたいという提案です。  慢性疾患の予防対策ということで、病診連携、診診連携が、逆紹介や紹介 率で取り組まれてはいるのですが、患者側には安心してかかりつけ医のとこ ろに戻ることの、理解と納得がまだまだ不十分だと思うのです。その辺りを 支援することを、さらなる充実ということで加えられないものかどうかを提 案させていただきます。  先般議論は終わったばかりですが、「慢性疾患対策のさらなる充実に向けた 検討会」の中でも、「健康日本21」の成果が一向に上がっていないことの指 摘がありました。もちろんその背景には、厳しい経済状況、社会状況もあり ますが、個人の努力だけでは問題は解決できないことを、私たち国民に晒ら されている状況があると思います。そうすると、個人の努力だけではできな いなら、もちろん医療機関との協働ということも含めてですが、社会全体の 中で、より有効な支援システムが必要ではないでしょうか。  例えば、私どもの電話相談にも、COPDの患者が、いくつも医療機関を回っ て、心まで病んでしまって、ものすごく医療費をかけているというご相談が 届いたりします。そうした治りにくい、治らない病気を、患者自身がいかに 引き受けて、さらに前向きに病と共に生きる支援システムを地域に確立する ために、是非評価の対象ということで考えていただきたいと思います。  もう1点は、地域住民の参加と協働です。医療は与えられるものではなく て、地域で守り育てるものという患者の意識改革が必要だという気運が、少 しずつ高まりを見せています。例えば今年7月に、地域医療振興財団が主催 したシンポジウムで、地域の医療を支えたいとグループ活動をしている人、 自治体主導でそのようなグループを地域に作りたいと願う行政担当課の職員、 そういう活動を支えようという経済界から送り込まれた人たちが全国から一 堂に会して、非常に熱い議論をしました。私もそこにかかわって、こんなに 地域が変わってきたのだ、世の中が動こうとしているのだ、そういったこと を非常に喜ばしい気持で受け止めました。  私どもNPO法人も、今年医療現場で活躍できるボランティア養成の7回連 続講座を開きましたら、前期だけで120人が参加してくれました。しかし、 そういう人たちの想いを受け入れる側の病院の意識がまだまだ十分ではない です。単にエプロンをかけて、病院玄関の入口で患者さんの案内のお手伝い をしていただくとか、陰に回ってのボランティア程度のことしか、病院は考 えていないのです。  地域の人たちを、病院の中にボランティアとして入れることで風通しを良 くするために活用していただきたいのです。例えば先ほどの生活習慣病の支 援システムということで、患者同士の語り合いの場を作るなど、地域の人た ちの力を借りるという発想。そうしたことを実現させるために誰が考えを変 えてほしいかといえば、病院のトップです。残念ながら、一部の方を除いて ほとんどの病院のトップの方には、そのような認識を持っていただけてはお りません。地域住民と協働しようなど、考えも及んでいただけていないよう に思います。  ですから、その辺について、インセンティブを働かせてでも、これからの 日本の医療の中に不可欠なのだという方向性を企画いただけないかなと思い ます。 ○部会長 住民参加と共同というのは、診療報酬改定の基本方針には盛り込 めないとは思うのですが、医療の提供体制のあり方としては重要なポイント だと思います。  慢性期医療については、基本方針の2番目が、「質の高い医療を効率的に提 供するために医療機能の分化・連携を推進する視点」の中に、入っているこ とは入っていると思うのです。 ○邉見委員 冒頭の海辺委員の産科・小児科、救急だけでないというのは、 外科のことをいちばんに考えていただいたのではないかと思います。前回も 申し上げましたが、平成6年を例にしますと、外科が0.87、産科が0.88、小 児科は診療所は増えているのですが、勤務医が減っています。両方減ってい るというのはあまりないのですが、産科と外科です。外科があまり目立たな いのは、40代の人がたくさんいて、その方たちが頑張っているので、30代が 滅茶苦茶に減っているのがわからないのです。  外科は一人前になるのに10年かかります。それですから、30代の人が40 代になったときに、手術ができない施設がたくさん出てきて、目立ってきま す。逆に、長くかかるということで希望者が少ないこともあるわけです。そ して目が悪くなったり、機械がたくさん出てくるから、早くやめる。内科系 では90代の有名な医師もいますが、そのようなことは外科ではあり得ないわ けです。私もこの3月に外科を卒業しましたので、ポジショントークではな く、日本の医療を憂う意味で言わせていただきますが、やっとほかのポジシ ョンの人も「外科は大変だ」ということをあちこちで言ってくれるようにな りました。  この青本を外国人のサージョンに見せると、クレイジーと一発です。この 安さ。例えば整形外科を例にとりますと、今日の朝に中医協であった保険医 療材料のもので言うと、大腿骨の関節置換は10万円、1万2,000点ぐらいだ と思います。機械は全部入れると100万ぐらいになります。だから、1カ月 の診療報酬の請求が200万円ぐらいしますが、患者はみんな病院に払ってい ると思っているのですが、病院にいただいているのは、看護、手術を入れて も、少しです。半分は機械屋です。機械が高すぎるというより、技術が安す ぎるのです。  先ほどの加藤先生の小児医療もそうですし、救急もそうですが、物より技、 技術よりシステム、どのような体制で救急を待っているか、どのようなチー ムで小児医療をやるか、そのようなものに付けていかないと、この国の医療 はよくならないと私は思っています。中医協へ出たときの第一声が、「物から 技、技からシステムへ」です。これが今後の診療報酬のいちばんの考えでは ないかと私は思っています。是非そのような観点からもお考えいただきたい と思います。 ○山本信夫委員 先ほど小島委員からお話のあった薬価の問題です。薬に関 して言えば、確かに中医協でも議論が進んでいます。その反面、未承認薬あ るいは効能追加の承認が必要な薬は、薬としては効くのでしょうけれども、 我が国では薬事法上中途半端な存在で、患者の安全を考えてみても、きちん とした薬事法上も保険適用の位置づけをした上で使うことには私も賛成です ので、是非こうした点も薬価の議論の中に入れていただきたいと思います。 そうしませんと、医療は医薬品がないと成り立たない部分があるので、それ がしっかりとされていないというのは大きな問題だと思います。  併せて言えば、冒頭の海辺委員の話の中で、自分の話はするなと言われた のですが、佐藤課長の話の中に、34兆円の中で25兆円が医療費だとありま した。薬価の担当は15%ほどあるのですが、全く論点がなく、どこかにいっ てしまっているので、たぶん無意識に忘れられたのだと思うのですが、そう は言いながら資料2を見ますと、平成20年度は、薬局のあり方、薬剤師のあ り方をそれなりにきちんと受け取っていただきました。薬局で言えば、夜間 もきちんと対応するようにということで出ているわけです。しかし、対応を 見ると、薬剤師も薬局も出てこない。  これは権利意識ではなく、先ほど加藤委員から「子どものことはどうする のだ」という話がありました。医薬品について言えば、大人から子どもまで、 全部に対応します。特にお年寄りとか小児を分けずに、薬については地域で 提供していきたいと思っています。そういった意味では、勤務医の負担軽減 も含めて、チーム医療をどう組むかという中で、薬剤師がどう絡んでいくか は大変大きな問題だと思います。平成18年も平成20年もそうでしたが、そ うした観点からの論点がありました。  いまの医療提供体制は機能分化、連携をして、地域完結型のものを作ろう という中で、どのように入っていくかの仕組みがないと、入りたくても入れ ません。その結果、評価される、あるいは報酬が付くということであればい いのですが、まず報酬ではなく、その仕組みを作るような基本的な方針を出 していただけないだろうかと思います。また、地域に向けて、我々はこんな ことができるのだと、こちらも情報発信することも含めた仕組みを考えてい かなくてはいけないのかと思います。このまま基本方針に仮に書き込まれた としても、直ちに費用にはね返るということまでには容易ではないかもしれ ませんが、何年間か先の医療を考える中では、そうした医薬品の供給体制を どう組むか。これは基本的な問題ですので、そのようなこともこの中に組み 込んでいただければと考えます。 ○村上委員 いま座長が「4つの視点以外の」ということをおっしゃられま した。平成20年度は緊急課題がありましたが、これは解決が付いていないの で付け加えることだと思います。ここでは産科、小児科と書いてあります。 先ほど邉見委員が外科と言いましたが、さらに内科もだと思います。  毎月、インターネットで全国紙の地方版、並びに各地方紙を調べています と、内科医の不足のために病院が閉鎖され、地域医療が崩壊している現状が あります。これは何かというと、医師不足が根底にあります。これは医療供 給体制のところで扱わなければいけない問題かもしれませんかが、このよう に内科がどんどん落ちていく1つには、診療報酬の問題もあると思います。  特に入院医療が崩壊しています。入院基本料を上げるのが第1点です。そ れと外科の崩壊については、外科の手術料の増填です。これは今回のものに 是非加えていただきたいと思います。 ○齋藤訓子委員 私は辻本委員のおっしゃった慢性期医療に限らず、患者の 状態を悪化させないとか、よけいなことをしないという視点は非常に大事で はないかと考えています。それは基本方針の中では、「質の高い医療を効率的 に提供する」の中に含まれていくのではないかと考えています。その対策の ために、医療機能の分化・連携が書かれて基本方針の中に入っています。  箱同士の機能分化も大事ですが、箱の中でもやれることがたくさんあるか と思います。いまいろいろな感染対策等が問題になっている中で、急性期も 非常に患者が重篤化していく、あるいは高齢化でさまざまな合併症が起きや すいという環境の中で、その中でも悪化をさせない、2次感染を起こさない、 合併症を起こさないといった医療のあり方がすごく重要なのではないかと考 えています。  そういった重症化予防、防止といった対策には、非常に優秀なナースが24 時間ベッドサイドにいて、患者の状態を十分に診ながらその状態を評価し、 何がこれから起きやすいのか、何が起きてくるのかをきちんと予測し、患者 のケアを実践していくので、その予測の部分、患者の状況をきちんとわかる かという中では、非常に高度な判断が必要になっています。  実際にそのような力のあるナース、あるいは私どもが認定している専門看 護師、認定看護師の数が増えていまして、実際に医療機関で働いていると、 例えばMRSAの罹患率、相互の感染発生率、人工呼吸器を付けていても、早期 に動かして歩けるような状況でお帰りになる、そういったように回復を非常 に促進させているという面があります。  チーム医療ですから、ときどき医師にも「回復のためにはこのようなこと が大事だ」ということを提案しているので、効率化の中に、もっと重症化さ せないということが明示されるような形で、専門性の高いナースあるいはコ メディカルの配置を明確に方針の中に盛り込むべきだと思います。  在宅医療についても、効率的にというところに含まれていきます。在宅医 療は歯科医療でも重要だということで、それは非常に賛成です。社会保障国 民会議あるいは医療確保ビジョンの中に、これからは暮らしを支える医療に 変わっていくのだということが明確に書かれているので、暮らしを支えると ころの医療というのは、やはり訪問看護がかなり鍵になると考えています。 訪問看護の充実という辺りも、この中では書かれていくべきであろうと考え ています。  先ほど村上委員から、勤務医の負担についてはなかなか改善されていない 状況ということがありました。私ども看護職から見ても、病院の勤務医の先 生たちの働き方というのは、本当に気の毒だと思っています。私ども看護の 立場からすれば、勤務医対策については私どもにできることはやっていこう と、前向きに真剣に取り組んでいこうと思っています。  現在、医療確保ビジョンあるいは骨太等で、医療従事者の役割分担の見直 しが盛んに提言されていますし、昨今これからチーム医療の推進に関する検 討会も検討されると聞いていますので、どのような部分をどのように任せて いくかについては、その検討会で議論をされるように思いますが、医師不足 についてはもっとナースを活用することで、負担の軽減はかなり図れるので はないかと思っています。それですので、役割分担の視点も、中には必要で はないかと考えています。  ただ、ナースも離職率がかなり高い状況ですので、医療クラークの配置の 促進と一緒に、特に夜勤負担等の負担もあるので、夜間になると、事務、薬 剤師、検査技師がいなくなる状況の中で、その業務が全部ナースに任されて いくわけです。近年はかなり高齢化も進んでいまして、非常に夜間は不穏な 状況になる患者も多くなります。医療クラークの配置のほかに、ナースの仕 事を手伝ってくださるような方も、少し配置していただけないかと思ってい る次第です。 ○竹嶋委員 まず資料を取り上げていただいた座長、座長代理の両先生に厚 く御礼申し上げます。  いままでご発言がいろいろありましたが、日本の医療を振り返ってみたい と思います。重症化しないで水際で進行を止めている。したがって、世界の どこよりも健康上寿命もいちばん長いし、医療の公平度も世界で3番目ぐら いです。そのような状況を作っているということで、これは国民、医療関係 者、行政の皆さんで一緒に作り上げてきたという事実は、はっきり確認して おかなければいけないと思います。  ただ、その上にどこよりも急速な高齢社会、それからニーズが当然高まっ てきますので、そこがより医療資源を必要とするようになります。  その中で先ほど来出ていますように、診療科、看護職をはじめとする医療 従事者の問題もあります。私は論点の中で、「誰もが安心、納得して、質の高 い医療を受けられるようにしていこう」という主張は大変いいと思います。 この中にもう1つ、「どこの地域にいても」、どこでもというのを入れたいと 思うのです。なぜかというと、大都会、中小都市、過疎に近い都市、そうい う中に住んでいる方が、時代のレベルにできるだけ合った良質な医療を平等 に受けられる体制を作っていきたい。地域医療を提供する側の立場としては、 常にそう思っています。そういう中で、私はここで、地域医療再生、特に有 床診療所の評価についてということで、敢えて個別にある施設を挙げて、そ の機能ついてご理解を求めたいと思います。  先ほど来出ていますように、ここ数年で特に国民の皆さんに理解してほし い。これはメディアの影響がとても大きいです。勤務医師の疲弊、過重労働 の問題が浮かび上がってきました。何とかしなければいけない。そういう中 で、救命救急、産科・小児科にまず手当てをしようということで、2年前に やっていました。これは間違いがないと思います。  しかし、2年経ってよく見たときに、そこだけでは大した問題の解決には ならなかったのです。それを受けるところが、例えば一般病院、有床診療所、 クリニック、全体で地域医療を面として支えているのですが、こちらだけ手 当てを行って、あとのところに手当てができなかったのです。これは財源の 問題でしょう。この会は財源を論じるのが主ではなく、地域医療の提供体制 です。そういう中で、いま必要なことは、面として受け皿となるものを何と かここで作っていこう、財源は横に置いて作っていこう。その中から、議論 の中でいろいろなところに配分して、収斂していっていいと思うのです。  資料を使って説明させていただきますが、6つの説明と参考資料を3つ付 けています。有床診療所についてよく間違われるのですが、20床以上は病院 なので、19床以下です。有床診療所の付帯的、付加したものとよく間違えら れるのですが、病院と有床診療所は別個なのです。ここを何とか活かしたい と考えます。  私ども日本医師会で、国民の意識調査を、2002年、2006年、2008年とや っています。参考資料に意識調査の一部を入れています。これは2008年の資 料ですが、2002年、2006年と2008年はどこが違うかというと、2002年、2006 年は、夜間、休日、救急医療体制充実の要望がいちばん多かったのです。2008 年ももちろんそれは多いのですが、それに代わって多くなってきたのが、高 齢者の方々が長期入院している施設や老人保健施設です。ここに皆さん不安 があったかと思います。もう1つ下のほうに、「医療従事者の確保」というの があります。これは2002年、2006年と比べて10ポイント以上も上がってい ます。こういうところは国民もしっかりと見ています。このことを1つ述べ ておきます。  有床診療所についてですが、有床診療所は、いま北海道、東北、四国、中 国地方の一部、九州、そのほか特に病院の少ないところにあって、地域医療 を支えています。ところがこの有床診療所は、だんだん少なくなってきたの です。2万施設ぐらいあったのが、現在は1万1,000まで減少しています。 このままでは崩壊するということです。これは大変なことで、地域によって は大変貴重な医療資源であり、これを何とか維持しなければいけないという のが、私たちの考えです。  その有床診療所が何をしているかというと、地域に密着して、受診者も通 院時間が15分以内の方が60%以上です。非常に身近な所にあります。1人の 医師が、原則24時間診ていることもあります。そういう中で、病院と違った 意味での緊急の対応が即できること、入院と在宅のつなぎもです。参考資料 の5頁にあります。  この図を見ていただきたいのですが、有床診療所は病院、無床診療所、介 護施設、在宅、こういう間をつないでいるのです。例えばどういうことをし ているかというと、手術・急性期、緊急入院は3万床ぐらいやっています。 分娩は1万床で、日本のいまの出生分娩の48%に対応しています。病院が52% です。このような有床診療所の働きがあります。  私どもは、今後、それぞれの地域で今述べてきた有床診療所の機能をより 生かしていきたい。そのために、地域医療計画を含む医療提供体制を論じる この場で、その位置づけをはっきりさせることを申し入れます。  今日は財源のことまでは申しませんが、明日、社会保障審議会の医療保険 部会があります。そこでは財源を含めた議論になってくると思います。前回 渡辺俊介委員が有床診療所の問題を取り上げて、ご発言いただきました。そ れで私も、当然私たちも地域医療提供体制を責任を持ってやっている立場と して、きちんとやっていかなければいけないということで、資料を出しまし た。  その中で、参考資料の4です。有床診療所は1万1,000施設あるのですが、 その入院医療費は全体の1.4%になっています。財源全体を見ても、そうい う意味では効率のいいあり方です。いいということは大変きついのです。よ く有床診療所の関係の所に行くと、そのとおりなのです。いちばん安い入院 基本料は、31日以上入院で1日2,800円です。これは看護職の方も泊まりま すし、医師もそこに泊まるか、近くに住むか、いつでも出務できる体制にし ています。  お盆前にあちこち回りましたが、そのときの鳥取県のあるところに行きま すと、駅前に「1泊2,550円」と書いてあるのです。それに「1泊2食付き」 と書いてあるので、びっくりして確認しました。これは国民の医療をしっか り支えていくという厚生行政の中で、こういう状況はゆるがせにしてはいけ ないと思います。地域医療提供体制を論じるこのようなところで、もう一度 しっかり考えていただきたいと思います。  先ほど少し出ましたが、40代、50代の手術をやるような医師がやめていか れるということです。昔は有床診療所を開業していましたが、行ってもいろ いろな意味でやりにくいということで、無床診療所、クリニックに流れてい るという事実もあります。何度も言いますが、有効な資源として、日本の医 療の中でほかにはないのですから、これを何とか守っていくことを是非お願 いします。 ○部会長 1つ関連して伺いますが、確かに医療提供体制の中で重要だと思 うのですが、例えば4頁に5つの機能のいちばん上で、地域医療の中で「病 院の負荷を軽減する(夜間・休日の緊急時の含む)」と書いてありますが、一 方10頁の「運営上の課題」というところで、人の確保の問題だとか、いろい ろな経済的なことが書いてあります。そうすると、たとえいま有床診療所を 病院並の入院基本料とかにしても、本当に24時間病院でもできないようなこ とをできるのかということで、どのような役割を果たすかをよほど考えない 限り、これを少し診療点数を増やしてもできないと思うのです。その辺はい かがでしょうか。 ○竹嶋委員 病院病床と有床診療所は同じような考えではいかないと思いま す。これは別の概念として、ここで1回捉え直さないといけないと思うので す。それはどのように捉えるかということは・・・。 ○部会長 国民の意識というか、理解を変えないと、あまり活用されない面 もありますよね。 ○竹嶋委員 診療報酬体系は病院と別個にしなければいけないでしょうね。 その2つは私も考えています。  同じようなことで考えますと、医師の配置基準などいろいろありますから。 いままでそれを考えてきたから、なかなか進まなかったのです。これは別個 に考えていくということです。 ○渡辺委員 前回もこの問題を私は取り上げたのですが、私が言ったのは6 月の中旬に自民党の有床に関する議員連盟が、明確にこの5つの機能を打ち 出して政府に申し入れたという部分を評価しているわけです。  つまり、医療機関が具体的な機能を明確にして、私自身も有床診を随分取 材しました。特に西日本に多いです。一括りに論じられないと思います。急 性期の担い手でもあるし、まさに5つの機能をいろいろなところで果たして います。果たしたことを評価する以上に、こういった機能を明確にしたこと を私は評価しています。  まさに診療報酬改定の基本方針の4つの視点、例えば[2]に「医療機能の分 化、連携」とあります。私はこれは20年前から聞いている話です。まず医療 機能の明確化をしなければ、連携にもつながりません。そういった意味では、 有床がこういったことで機能を明確化したことを評価します。今後とも。さ らに無床診療所もそうであるし、病院も例えば一般病床も、一部亜急性期と か、回復期といったような機能分化あるいは機能の明確化とあったので、是 非医療機関側からの機能の明確化をさらに求めていきたいと思っています。 ○中川委員 資料1の最後の○の1行目に、「平成22年度改定の基本方針に おいても同様の構成とすることが考えられるが」と書いてあります。これは どのような意味でしょうか。これは平成18年度改定のときの4つの改定の視 点のことを指すのでしょうか。 ○部会長 そうだと思います。 ○保険局医療課長 そのとおりです。先ほどから何度も申しましたように、 何もないとご議論にならないだろうと思いまして、叩き台の形でこのように 書いています。  もう1つは、今日は参考資料に付けていますが、中医協の検証部会でも、 勤務医問題、産科の病棟勤務医の問題等、必ずしも診療報酬だけでは解決で きるものでもないが、さりとて現状は改善していないということだったので、 そういうことも踏まえて、仮に事務局として作るならばという形で書いてお りますので、よろしくお願いします。 ○中川委員 それであれば、申し上げなければなりません。いまの地域医療 の崩壊は、長期の医療費抑制というのは、誰も異論はないと思います。そこ で平成18年度の改定は、2002年から2006年までの社会保障1.1兆円削減の 中の最大の功労者というように、皮肉を込めて申し上げますが、これは3.16% 診療報酬引下げのときの改定の視点なのです。いま与野党とも医療費引上げ で一致している状況の中で、これを残すという感覚が、ちょっと信じられま せん。  特に平成18年度の4つの改定の視点のときの[2]の所の「質の高い医療を効 率的に提供するために」と。このときの効率的は、削減です。[4]の「医療費 の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価のあり方について検討 する視点」というのは、これは財政中立ではないですか。  5月の財政審の議論のところでも、一部委員から、医療費を引き上げなく ても配分だけ見直せば、いまの医療の問題はほとんど解決するのだ、という 強い意見もありました。そういう状況の中で、平成18年度改定の4つの改定 の視点をそのまま踏襲するなんていう傾向がもしあるとすれば、大反対です。 根本的に見直してやらないと。これはもう怠慢です、前回と2つ前のものを 基本的にこれと同じ構成にすることが考えられるということについて、明確 に議論していただきたいと思います。 ○西澤委員 まず、いま他の委員の意見を聞いていまして、私も何か発言し ようと思ったときに、私の立場から言うと、民間病院がいままで日本の医療 を支えてきたとか、いま中小病院が大変な目に遭っているとか、あるいは北 海道ですから北海道の地域医療ということを言いたいのですが、どうもなか なか言いづらいなと。  そういうことを言い合っていても、それぞれの分野の方々が、自分の所は 大変だというのを言い合っているだけだなと思います。もっと基本的な議論 が必要だと思います。そういうことでは今回たたき台として出していただい た、これを基にした議論はいいと思います。  いま中川委員が言ったように、私も先ほどからちょっと引っかかっていた のですが、この4つの視点だけ見ると、これは当然だと思うのですが、実は これが最初にできたのは、参考資料3の8頁にありますとおり、平成17年 11月の医療部会、医療保険部会です。今後の基本的な医療政策の方向性とい うことで、要するに「経済・財政とも均衡がとれ、国民云々」と書いてあり まして、このときは医療費抑制をするという基本的な考え方の中でできたと 思っております。  そういうことでは、この4つの視点だけを見るといいのですが、できれば この医療部会で、もう一度次年度の診療報酬改定に向ける基本的考え方を議 論していただきたい。今の医療状況は当時と変わっているのです。本当に崩 壊しかけているのです。このときと社会情勢は違います。その基本的認識を、 是非委員の方々でそういう議論を1回して、一定の共通した認識のもと、そ の中でそれぞれ専門の方が、そうなのだと、いま崩壊しているのだと。私た ち小児科でもこうなのだとか、歯科でもこうだとか、そういう話をお互いに 理解しながらしていったほうがいいのではないかなと。是非そういう議論を していただければ、私もすごく発言しやすくなると思っています。 ○部会長 貴重なご意見、ありがとうございました。 ○日野委員 診療報酬の問題と医療制度の崩壊という問題とはちょっと離れ ますが、資料4と5を先ほど佐藤課長がお示しくださいまして、なるほどな と思ったのですが、直近で10月に、資料4の[4]の介護報酬と今回の診療報酬 とは違いますが、介護報酬が見直されて、介護士1人につき1万5千円上げ てくださるというありがたいお話があるのです。民主党マニフェストですと、 4万円ということになっています。報酬を上げていただくこと自体は、資料5 のように補助金制度のような考え方が、取り入れられていまして、介護士1 人につき月1万5千円と明示されています。いままで我々民間で経営してい る者は、こういう補助金制度のような仕組みで報酬を得た経験をもっており ません。介護士だけ1万5千円上げると公表されていまして、介護士は、額 面どおりの受けとめ方をしています。ところが、組織全体としては、介護士 だけを特定して昇給させることなんてできないのです。職員の間の和が保て なくなってしまいます。しかも、12月から収入が入ってきて、介護士の昇給 分を細かく報告することが義務付けられています。介護士は、福利厚生や税 の制度については無知です。1万5千円昇給させることは出来ませんが、わ れわれが説明しても、どうしても疑いを持たれてしまいます。病院経営をし ているところは介護施設も運営しているところが非常に多いのですが、施設 の介護士に相当する、病院の看護補助者は、同じ給与体系で処遇しているの が普通です。そしてローテートも行っています。病院の看護補助者が差別さ れると齟齬が生じてしまいます。資料4の[4]で書いてあるように、診療報酬 と介護報酬は、次回同時改定が行われますが、そのときに報酬体系に整合性 が図られると思います。その機会に経営がしやすい実用的な体系としていた だきたいと思います。具体的に言えば、補助金のような形ではなく、介護報 酬を上げる、というわれわれの馴染んでいる方法を採用して欲しいのです。 以上です。 ○水田委員 私は初めてなのでよくわからないのですが、今日は今回の保険 点数を、診療報酬というのをどれぐらい上げる話をするのかなと思っていた ら、どうもそうではないようで、何かちょっとびっくりしたのです。  と言いますのは、もう皆さんはみんなご存じだと思うのですね。これだけ の改悪が行われて下げられて、何が起こったかというと、医療崩壊が起こっ ているだけのことですね。  私も病院長をしていましたが、3.16に始まりまして、どんどん下がってい って、赤字になっていくのを見ていなければいけないというつらい思いをし たのですが、いろいろな科がいろいろなことで大変なのです。ただしこのデ ータで、確かに上がった、点数が付いた所もあるのですが、小児の加算をし たとか書いてあるのですが、それによってどれだけ効果があったのかという ようなことが見えないです。では、小児NICのお医者さんは増えたかという と、ベットは増えたかもしれないけれども、お医者さんは足りなくなって奪 い合いが起きているというような状況になってくるわけですから、何かイン とアウトと言いますか、アウトカムのことが全然見えないような状況の中で、 話し合いをするのかなという気がします。  先ほどから歯科のことが出てきました。私が病院長をしていましたときに、 歯科の診療報酬の低さに、ちょっとびっくりしたのです。それで歯科の先生 方に、あなたたちはそれを上げろと言わないのですかと言ったら、言い続け ても駄目なのだとおっしゃったのです。1つの歯科全体の1年分の収入が、 ある1つの外科の1カ月分にも足りないぐらいのことしか上がってこないと。 なぜこんなかと思うと、点数がものすごく低いわけです。仕事してないのか というと、そうではない、一生懸命やっていらっしゃると。だからいろいろ 何とかしてやっていらっしゃるのに低いのだということ。やはりそういうこ とを少し見直さなければいけない。  小児のこともそうですが、特に障害児の子どもたちの歯についても、そう いうところまでこの頃は歯科の先生たちも一生懸命やってくれているので、 そういうことを考えると、少し報酬も上げていかなくてはいけない。まさか 今回下げることにはならないだろうなとは思うのですが、先ほど中川委員と 西澤委員がおっしゃったように、少しいままでのデータをきちんと見直して、 どうするかということを話していったほうがいいのではないかなと思います。 以上です。 ○部会長 その他、まだご発言のない方。堤委員どうぞ。 ○堤委員 基本的方針の視点、あるいは方向性について、先ほどゼロからの 議論をということもございましたが、これはやはり医療改革のある意味哲学 みたいなもので、そこはあまり大幅に変えるべきものではないのかなと。当 然中身でいろいろ白黒つけるところはあるかもしれませんが、基本的方針と いうものは、先ほど中川委員からあったような、そのときの情勢によって変 えるものではなく、医療サービスの提供側がぶれずに常に意識しておくべき ものだと私は思います。特に、質の高い医療を効率的に供給するという点に ついて、これから高齢化に伴って需要が伸びていく中で、生産性を向上させ る、あるいはサービス水準を上げていくというのは、提供側として非常に重 要なことではないかと思われます。  問題は、中身と評価だと思うのです。今回の資料2を見ると、平成20年度 改正によって取り入れられた各評価の実施状況が記載されていますが、むし ろ、診療報酬改定がサービス水準にどう結び付いたのか、治療の結果はどう だったのかといったアウトカム評価が重要なのではないでしょうか。  例えば、先ほど内科を評価してくれ、歯科を評価してくれと、いろいろな 意見が出ていましたが、本来は、各地域の中で、それぞれの状況に合った評 価軸というものを、例えば北海道だったら北海道、九州だったら九州という ように、地域ごとにきちんと見えるようにしていくべきでしょう。  そう考えると、これはなかなか難しいのでしょうけれども、各地域におけ るアウトカムに対する診療報酬評価みたいなものができれば、これは非常に よろしいのかなと思うのですが、これはたぶんとてつもない法改正になって しまうのかなと。ただ、やはり各地域の情勢に合った評価をどのようにして いくかといった議論がこの場でないと、たぶん言いっ放しで終わってしまう のではないかと思われます。  また、補助金についてですが、今回の補助金による措置は、政策的なイン センティブであったり、あるいは緊急対策であったりということだったかと 思いますが、補正予算でやっているお金というのはずっと付くわけではない ので、出口戦略みたいなものを、医療の中でも、これはたぶん診療報酬で最 後は消化することになるかと思いますが、そういったことも考えていかなけ ればならないのではないでしょうか。少なくともそれは、高く評価されてい る分野なのだろうと思います。以上です。 ○中川委員 名前を出していただいたので、一言言います。資料1の[2]の「質 の高い医療を効率的に提供するための」と書いてある所の、効率的だけが問 題だと言っているのです。「質の高い医療を提供するための」という文脈でい いのです。それを指摘したわけです。  平成18年度の4つの改定の視点は、2,200億円の根拠になった骨太の方針、 基本方針2006の医療版です。だから私は象徴的に、抜本的に見直すべきだと 申し上げているのです。 ○海辺委員 先ほどは、ちょっと発言がダラダラと長く拙くて申し訳なかっ たと、お詫び申し上げます。それでいろいろと諸委員の方々のご意見を伺っ て、もう一度発言させていただきたいと思ったのです。  まず、いままでもたくさんお話に出ていますが、やはり改定の目的という のは不採算の解消とかいろいろそういうこともあると思うので、産科・小児 科と付けていったことの目的は、そこが不採算だったがために非常に大変な ことになったということの解消のために、たぶん厚くしていったのだと思う のです。ただ、いまは非常に過重労働のほうがクローズアップされてしまっ て、そこのところの不足感というのが、あまり解消されていないということ が論じられますが、ポイントとしては、とりあえず採算はとれるようになっ たのかどうかというのは、私はすごく知りたいなと思いました。もう改定し た段階でペイするようになったはずだというのだったら、今度そこの現場が よくならないのは、また違う問題があるというように考えるべきではないの かなと思いました。  それで先ほど、ここの資料1のようなやり方でいいのかということを最初 に申し上げたのですが、やはり報酬を増やしたら経営が安定して、一人二人 また雇えるようになって、ということを目的としているのだろうなというこ とで、今回出てきたこの資料だと、資料2とか参考資料6なんかを見ても、 わかるようなわからないような、要するに過重労働が解消されたいのだった ら、負担感ももちろん聞くのは大切だと思うのですが、いままで何時間勤務 だったものが何時間に減ったとか、そういう尺度が必要ではないかなと思う のですが、これで見ると、変わったとか変わらないとか、効果があったとか という、そういう測り方で、果たしてこれで検証と言えるのかなという気が しました。  私が産科と小児科と救急だけでよいのかと申し上げたのは、参考資料6の 2頁を見れば、どこも「改善した」と答えている方が少なくて、「変わらない」、 「どちらかというと悪化した」、「悪化した」というのが非常に多いので、も はやいろいろな科が大変なことになっている。勤務医そのものが大変になっ ているのはこれで明らかなのに、本当に産科・小児科だけでいいのかという ことを感じました。  それとあと、私の住んでいる都会の辺りはものすごく医療が充実しており まして、半径1km以内にたくさん医院もありますし、病院もありますという 非常に恵まれた環境におります。そうすると、私は文学部国文学科出身で数 学は弱いのですが、その私でも、日本では1,000人当たりに医師が2人しか いないということがある中で、これだけ充実している地域があったら当然、 足りない地域も出てくるというのは普通に考えて当たり前なことです。  テレビを見ていても、ある町のことをやっていたのですが、9,000人の町 に対して公立病院が1つあって、そこに3人の医師がひいひいしながら勤務 しているという。それで9,000人の医療を3人で支えていて、それでも立ち 去ったらここの医療が崩壊すると思って頑張っているのを見ていると、要す るに診療報酬を付けるだけではなくて、何がしかのインセンティブとかいう 悠長なことを言うのではなく、そこに人を送るシステムを考えていかなくて はいけない時期にきているのに、何かそういう話に全然ならないのは、どう なのかなと思いました。  私は資料1に挙げているような視点とか方向というよりかは、今回の診療 報酬の目標はこれですというような、もうちょっと目標という形で提示して、 次の報酬までにここを解消するというような個別目標を立てないと、いつま で経っても結局同じことをするようになるのではないかなと思いました。  出させていただいた資料の2枚目については先ほどは述べなかったのです が、皆様がおっしゃっていたことについて、個別のアイデアをこちらには載 せてあります。医療の質や安全を評価・検証できるシステムや資源に付けて いくべきではないかとか、“見える化”のための情報提供に対しても点数を 付けていくべきではないかとか、均てん化の観点からいったら、医師が不足 している地域にはなるべく係数を掛けるとか、いろいろな考え方をしていか なければいけないのではないかということで、ちょっと具体的に書いてみま した。  基本方針で取り上げられる話というのが、他の検討会がいろいろと予算も 付けて走っているのに、そこの中でも、結局これは診療報酬で解消すべき問 題だというような議論が出てきたときに、結局検討会での有識者や専門家が 集まって出てきたお話が、こちらの実際点数を付けるときに反映されない、 上がってこないのであったら、そこでの検討はやはり意味がなくなると思い ます。各種の評議会や審議会などで検討された内容や提案が、ちゃんと入っ ているかどうかの整合性というのを、もっと見なくてはいけないのではない かと考えております。やはりこの場では、委員は出身団体の利害にとらわれ ることのないように配慮することが大事だと、強く感じております。  最後にもう1つ、どうしても強調したかったのが、資料4の3頁の「医療・ 介護提供体制の現状と将来像(イメージ図)」を見ていただきたいのですが、 これは社会保障国民会議の最終報告での将来のイメージ図で、方向性として、 入院は病院機能に、外来は診療所でということになっていますが、いまどう して大病院志向になっているかとか、いろいろそういうことを考えると、先 ほど私が参考にさせていただいた「信頼に支えられた医療の実現」、日本学術 会議の中に思いきり書かれているのですが、医療の質とその透明性の確実な 保障を医師自らが行うことがいま求められているのに、それができていない ということ。  要するに何かもうここの病院だと信用できないとかいうことがあったりす るから、人気のある病院に集中したりするような行動もあるので、やはり専 門医はすべて信頼のできる医師であり、専門医のいる病院は、その分野にお いて信頼できる病院であるとの保障は、医療を遂行する側が厳格な管理の下 に妥協なく行うべきである。それが実現して初めて社会は、医療に本当の意 味での信頼感を持つことができる。まさにそのとおりだと思っていますので、 そこの部分のことをなしに、診療報酬を付ければ何とか解消するのだという ように思われているのだったら、それは全く違うであろうと、私は感じてお ります。  発言が下手くそで申し訳ないのですが、とにかくちょっと考えていただき たいなと思ったのは、救える命を救うということと、元気な日を1日も長く ということがなかなかいまは難しい状況になってしまっているので、そうい うことがちゃんとできることを求められているのだということで、ご議論い ただきたいなと思いました。以上です。 ○邉見委員 先ほどの住民参加という辻本委員の話に、大賛成です。私は田 舎の公立病院ですので、コンビニ診療を少しでも減らしてほしいとか、医療 は100点の科学ではない、いろいろなことが起こり得るとか、コムルの活動 とかでいつも言っていただいていますが、そういうのを各市町村、医師会と も協力して兵庫県ではいろいろやっているわけです。  例えばサッカーのサポーターとか、野球のファンクラブ、相撲の谷町のよ うな組織が、なぜ医療界にはないのだろうかと。これは命に関わるいちばん 大事なことですから、サッカーや野球よりも大事だと思うのですが、やはり 見えない。手術なんかは麻酔をかけてしまっているから、こちらが8時間手 術しても、起きたときは終わりましたかと言うぐらいですから、家族にはち ゃんと苦労がわかるのですが。“見える化”とか、我々も忙しいから、そう いう説明をあまりしてこなかった。だから健康教育とか疾病教育を含めて、 行政あるいは教育、一般の学校教育や市民教育も含めて、医療をもう少し生 活の真ん中に出してこなくてはいけないだろうと、私は思っています。委員 の意見に、大賛成です。 ○部会長 まだご発言のない方どうぞ。 ○高智委員 健保連の高智です。今日お配りいただいた資料、それから資料 に基づかない私見を述べさせていただきます。  資料3です。「救急医療、周産期医療等の現状について」、非常に新鮮さを 持って、受けとめることができる資料だと思います。この資料の15頁には、 課題や問題点が周産期と小児に分けて分析され、ハイリスク分娩の増加等が 書いてありました。その下に、「1〜4歳児死亡率が高い」、このことにつきま しては、保険者団体である私もここまでは詳細に存じ上げなかったのですが、 ある意味非常にショックを受けました。  12頁の「1〜4歳児の死亡率の国際比較」です。いちばん優秀な国がフィン ランドで、あと27カ国列挙されておりまして、いちばん下がメキシコになっ ています。ここでフィンランドは、教育システムその他イノベーションの関 係が非常に優秀な国だということで、いま脚光を浴びております。私がちょ っと調べたところで言いますと、医療費につきましては非常に節約、効率化 を求める政策がとられていることがわかりました。また在院日数を見まして も、非常に有意に低いと。有意というのは、フィンランド国内での評価です。  一方で、世界一医療費の高いアメリカは24位と、惨憺たる状況。我が国は 17位だということで、ここに非常にショックを受けたわけです。さらに詳細 に眺めていきますと、同じ北欧でもノルウェーが4位、アイルランドが2位 ですが、日本の下、18位にデンマークが出てきます。こういった因果関係と 言いますか、問題点の所在、課題をある程度解くという視点で、日本の状況 を、フィンランドの位置に置くことができるような形で研究・調査を進めて いく意味があるのではないか。具体的には特区の扱いをして、診療報酬と補 助金のコンビネーションで考えることはできないかとか、選択肢の幅を広げ た形で取り上げていただければ有意ではないかと思いました。  1〜4歳児の前の新生児、生まれ落ちたばかりの赤ちゃんにかかる死亡率と いうのは日本は非常に低くて、優秀な国だと言われていますが、1〜4歳児が こんな惨憺たる状況と拝見しまして、ショックを受けました。今後取るべき 政策に何らかの手を打たないと、将来の高齢者になる方の人生の始まりがズ タズタになってしまう、こんな感じがしました。  今度は健康保険組合の状況をちょっとお話しますと、一時は医療保険者の 雄なんてことを言われまして、だいぶいい時代もありました。往時と言いま すか、いちばん多くの組合があったのは1,800組合超でした。しかし、現在 は1,400台まで落ちております。外国の疾病金庫のように優位に吸収合併が 進んでという結果であればいいのですが、西濃運輸でありますとか、京樽の 健康保険組合のように解散を余儀なくされてしまう、こういう組合が続々と 出ているわけでして、その後も波状的に解散が進んでおります。そこで今回 の平成22年度の診療報酬改定をめぐりまして、バランスある選択と集中の議 論をより深めていただく視点が不可欠ではないかと。全体的な底上げ論もあ りますが、到底受け入れられない。ない袖は振れないと言いますか、そこま できております。  話は戻りますが、解散した組合というのは、セーフティーネットに移るわ けです。協会けんぽさんのほうに移るわけですが、受け取る協会けんぽさん 側も大変だと思います。血流が淀んでしまうことにもなりまして、医療保険 制度の屋台骨そのものにも大きな爪痕を残していく。こういうことが予めわ かるわけですので、いまのうちに鎮火をさせておく必要がある、そのように 考えております。  それでは、私どもの加入者に対して、説明をしなければならないという観 点から申し上げますと、“医療の見える化”あるいは透明度の高い説明という ものが、いまこの時代ですから求められているわけですが、再診料の問題を 挙げますと、同一医療サービスの提供で同一価格でないということは、公平 性からもどうしても説明ができません。私どもは「ぽすぴたる!」というサ イトで病院情報を発信しておりますが、そういったところでも、なかなか説 明しにくい状況にある。やはりそれは真っ当な考え方の下に整理されるべき であると考えております。  できることは何でもやって、工夫して節約をしなければいけないところに きているわけですが、そういう意味ではジェネリックの問題があります。  私どもは、先発品とジェネリックとの差額通知システムの開発、活用を厚 生労働省のご指導、ご支援もいただきまして、現在進めております。できま すならば全組合に導入したいと考えております。そこでジェネリックの関係 ですが、やはりもう1歩も2歩も国のイニシアチブを高めていただきたい。 それは一保険者、1つの健保組合では限界があります。また、いくら旗を振 っても、実際の行動に移す被保険者のジェネリックに対する意識の変化、不 安の解消ができませんと、なかなかパーセンテージも上がらないということ になろうかと思います。  ちょっと付随的なことになりまして、この場で言うべきことかどうかはわ かりませんが、医学部の教育関係について、意見を述べさせていただきます。 私ども健保連には、毎年医科・歯科大学の学生さんが来られまして、医療経 済というか、保険の勉強をしたいので説明してくれということがあります。 課外授業ですね。終わった後に聞きますと、やはり大学のカリキュラムの中 に医療保険経済の仕組みや役割、私たち医療従事者との関係、そういったこ とについて勉強する機会が欲しいですねということを、学生さんが言われま す。国の医学部のカリキュラムというものをもう一度見直していただきまし て、保険の勉強も医学部の6年間の間に必修科目として取り入れていただき、 医療保険制度を支える1つの有力な戦力として、勉強を深めていただきたい。 制度の安定運営のためにも、是非お願いしたいと考えています。以上です。 ○部会長 まだまだご発言はあると思いますが、最後に田中委員で終わりた いと思います。 ○部会長代理(田中) 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうご ざいます。本日は資料1の方針を基本的にどうするかだと伺いました。それ に対し、委員から平成18年度の基本方針のままでいいかどうかという問題提 起がありました。確かに平成18年度以降、医療崩壊が進み、いちばん下のマ ルに書いてありますように、医療現場の実態等々変化があります。また国民 の側の意識も医療を守ろうという意識に変わってきていますが、それを踏ま えてどう変えるかを、事務局から問われているのだと思います。この下のほ うの[2]は、どういうように変えるかという質問です。  今日皆さんの意見を伺っていて、いちばん中心は、医療崩壊を防ぎ、住民 に安心感を与える提供体制の構築を図る、発展を図るという表現をどこかに 入れないと、話は進まないと考えます。それを海辺委員の言われるように、 別途目標として高く掲げる案もあるでしょうし、あるいは改定の視点の[1][2] [3][4]のどこかに入れる案もあります。1番は患者のことで、これはいちばん 重要だと思うのですが、例えばその次に、地域の医療崩壊を防いで住民に安 心感を与える提供体制の発展を図る視点と入れる。これは私はマストだと考 えます。今回の改定に当たって、提供体制のことを入れる、維持・発展を図 る視点は入れるべきだと考えます。  もう1つ、私はずっと介護分野にも関わってきたので、介護との連携のこ とも視点として重要だと考えます。特に最大の課題である急性期医療を支援 するためにも、例えば在宅医療をきちんとすることが、急性期医療の支援に 十分なります。後方の在宅療養だけではなくて、前方でも、急性期化を防ぐ ためにも、あるいは急性期医療機関の過剰な利用を防ぐためにも、在宅医療 は大変役に立つはずです。最近、ずいぶん世の中は進化してきております。  在宅医療は訪問看護と併せて、介護側で検討されている地域包括ケア体制 の一員です。つまり介護との連携、この視点に1つも入っていないのは、現 代の時代からするとちょっと足りないなと思いました。具体的には例えば[2] の「質の高い医療を効率的に提供するために医療機能」と書いてありますが、 私の頭の中では、これは医療及び介護などの隣接分野との機能分化・連携を 推進する視点と、より広い視点で捉えておいたほうが、報酬も考えやすい。 診療報酬と介護報酬で、実は谷間があったりします。それも含めて多く視点 にする方向が、今回の基本方針の方向ではないかと考えました。以上です。 ○部会長 ありがとうございました。前回と今回、いろいろそれぞれのお立 場からのご意見とともに、基本方針をどうするかという議論も始まりました。 あとは事務局のほうで少し論点整理をしていただいて、次につなげたいと思 います。  それでは、最後にインフルエンザの流行状況について、説明をお願いしま す。 ○医政局指導課長 指導課です。医療部会では医療従事者、あるいは医療機 関の関係者の方々も多く出席されておられますので、新型インフルエンザの 流行状況と今後の医療確保対策などにつきまして、手短にご説明させていた だきます。  資料はいちばん下に置いてありました、右上に「Press Release」と書いた 薄い資料です。この1頁目をご覧いただきますとわかりますように、国立感 染症研究所が先週金曜日に発表したサーベイランスの結果によりますと、8 月10日から16日の週における定点医療機関当たりのインフルエンザ患者報 告数が、全国で1.69人となっております。例年季節性インフルエンザにつき ましても、この値が1を超えると流行期に入るものとされています。ちなみ にこれは定点におけるサーベイランスですが、この1.69を全国値の推計患者 数としますと、約11万人の発生患者数と推計されております。  2頁目は都道府県別ですが、多くの県は、まだ0.いくつから2.いくつとい うところですが、沖縄県だけは29.6ということで非常に多く、もうすでに季 節性インフルでも流行状況と言えるような状況です。  3頁目ですが、今回ウイルスサーベイランスも行っていますが、そのほと んどが新型に置き換わっているということです。季節性インフルエンザの場 合、定点当たりの報告数が1を超えてから6週間ないし8週間で、ピークを 迎えております。今回はどうなるかはわかりませんが、今後患者数が急速に 増加することが心配されます。  4頁の入院患者の動向を見ますと、7月28日から8月18日まで、累計入院 患者数が230名となっています。現在は、入院率はかなり低いという状況で すが、今後基礎疾患のある方や高齢者まで感染が広がりますと、高くなると 思われます。また急性脳症・人工呼吸器の使用が必要な重症な患者さんが、 15名となっております。今後こういった重症な患者さんも、増加することが 懸念されます。  今回の新型インフルエンザは、若年者の患者さんが多いというのが特徴で して、特に小児の患者さんに対する対策の強化、配慮も必要ですし、また妊 婦の方、あるいは透析患者の方々への対応も必要です。  5頁目は、「厚生労働省の取り組み」ということで、重症化防止を優先とす る医療体制の整備といった事柄が書いてあります。医療体制の整備につきま しては、今週中にも都道府県に事務連絡を出す予定にしておりまして、新型 インフルエンザの入院、あるいは外来における体制の確保、あるいは病床数 や人工呼吸器の配置状況の把握、また地域における受入調整金のほうの確保 をお願いすると。また地域住民に対しては、電話相談窓口の活用、あるいは 自宅療養についての情報提供などを依頼することとしております。今後とも 正確な情報を、できるだけ迅速に関係者の方々に提供してまいりたいと思い ますので、引き続き協力をお願いしたいと思っております。以上です。 ○部会長 ありがとうございました。それでは、本日はこれまでとさせてい ただきます。次回の日程について、事務局のほうからお願いします。 ○医療制度調整官 次回の部会の開催ですが、現時点では未定です。今後改 めまして先生方の日程をお伺いして、調整をさせていただきました上で、改 めてご連絡を差し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○部会長 長時間にわたり、ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局総務課企画法令係 吉田、荒木(2519)