09/08/26 第52回厚生科学審議会科学技術部会議事録 ○ 日時 平成21年8月26日(水)11:00〜12:00 ○ 場所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者   【委員】 永井部会長         石井委員   井部委員   今井委員   木下委員         桐野委員   西島委員   廣橋委員   福井委員         松本委員   南(砂)委員 宮村委員   望月委員         森嶌委員 ○ 議題   1.厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の     評価)について   2.ヒト幹細胞臨床研究について   3.その他 ○ 配布資料   資料1−1.平成22年度科学技術関係施策及び重点事項について(案)   資料1−2.厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(案)(概算         要求前の評価)   資 料 2.ヒト幹細胞臨床研究実施計画について   参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資         料 ○眞鍋主任科学技術調整官  定刻になりましたので、ただいまから、第52回厚生科学審議会科学技術部 会を開催いたします。委員の先生方におかれましては、ご多忙の折、お集まり いただきまして、お礼を申し上げます。  本日は岩谷委員、金澤委員、川越委員、佐藤委員、末松委員、竹中委員、橋 本委員、南(裕)委員、宮田委員からご欠席のご連絡をいただいています。委 員23名のうち出席委員が過半数を満たしていますので、会議が成立していま すことをご報告いたします。  次に、新しく部会にご所属いただく委員をご紹介申し上げます。聖路加看護 大学学長でいらっしゃいます井部俊子先生です。  次に事務局ですが、異動がありましたので紹介をさせていただきます。厚生 科学課長に三浦公嗣が着任をしております。 ○三浦厚生科学課長  よろしくお願いいたします。 ○眞鍋主任科学技術調整官  先ほどよりご説明申し上げています、私、主任科学技術調整官として眞鍋が 着任をしています。今後ともよろしくお願いいたします。  続きまして、本日の会議資料の確認です。まず、議事次第と座席表をおめく りいただき、資料1-1が「平成22年度科学技術関係施策及び重点事項(案)」 についてです。資料1-2、「厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(案) (概算要求前の評価)」です。次に、資料2として「ヒト幹細胞臨床研究実施 計画について」です。資料は以上ですが、その後ろに参考資料をお付けしてい ます。参考資料1が「厚生科学審議会科学技術部会委員名簿」、それをおめく りいただくと参考資料2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関す る参考資料」です。もし、資料の不備等ありましたら、事務局までお申しつけ いただければと思います。それでは部会長、議事の進行をよろしくお願い申し 上げます。 ○永井部会長  では議事に入りたいと思います。最初に、「厚生労働省の平成22年度研究事 業に関する評価(案)(概算要求前の評価)」という資料がございます。前回ご 審議いただいたときに定足数の問題がありましたので、もう一度事務局より簡 単にご説明お願いいたします。 ○眞鍋主任科学技術調整官  事務局よりご説明申し上げます。資料1-1、そして資料1-2の順番でご説明 いたします。  毎年度、研究費関係の予算の概算要求を行う前に、基本的な考え方について 当部会でご審議いただいています。前回、7月の科学技術部会においてご審議 いただき、貴重なご意見を賜っているわけですが、先ほど部会長のご発言にあ りましたように、審議の時間帯によっては定足数に問題がありましたので、本 日改めて簡単にご説明をさせていただきます。  まず資料1-1です。1枚おめくりいただくと、「厚生労働科学研究について」 というパワーポイントの絵が出てきます。現在の厚生労働科学研究において、 取り組むべき課題にはさまざまなものがあると認識しています。疾病対策や障 害等の克服、それから健康や安全に関する懸念の解消とか、あるいは国民の多 様なニーズへのきめ細かな対応というものが必要とされています。こういった ことから、安心・安全で質の高い健康生活の実現に向けて、厚生労働科学研究 によって科学的根拠が提供されることが求められていると、私どもは思ってい ます。なお、この頁については、前回ご指摘のあった障害者の数に関しては修 正をしております。  2頁目は平成21年度の科学技術関係施策の動向を示しています。この説明は 割愛いたします。  3頁は総合科学技術会議が6月に示した「平成22年度の科学技術に関する予 算等の資源配分の方針」のポイントをまとめたものです。左側に「最重要政策 課題」がありまして、低炭素社会の実現、健康長寿社会の実現、革新的技術の 推進、科学技術外交の推進、社会還元加速プロジェクトの推進、地域科学技術 施策の推進というものが、柱として示されています。特に、厚労省においては、 二つ目の健康長寿社会の実現のところに深く関与していると思っています。  4枚目です。「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」が、内閣官房に設置さ れました。その懇談会の最終報告における研究費の部分について抜粋したもの です。読み上げますが、「政策が多くの国民の理解と納得を得られるよう、企画 立案の裏付けとなるような研究を推進することが必要。また、研究の成果を政 策立案に的確に活かす仕組みと体制を確立すべき。」というご指摘をいただいて いるところです。  こうした指摘を踏まえて、政策の企画立案を見据えた研究課題の設定ですが、 これまでも、こちらの科学技術部会にお諮りするなどして取り組んできたとこ ろですが、今後、研究者を指定して研究を行っていただく指定型の研究という 枠組みが厚生労働科学研究にはありますので、この指摘に応えるツールとして、 これを活用したいと思います。来年度は各分野、これも後でご説明いたします が、各分野において指定型の研究の拡充を図るべきと考えていますことは、前 回ご説明しましたとおりです。  また、下にある緑の枠で「第3期科学技術基本計画フォローアップ」の中で も、人材育成等について述べられていますが、厚生科学研究に参加する若手の 研究者、こうした方々を増やす観点から、来年度は各分野において若手育成型 の拡充を図りたいということも考えています。以上簡単ですが、資料1-1の説 明でした。  続いて資料1-2のご説明をいたします。資料1-2は報告書の案です。前回の ものから、いわゆる単純な誤りなどは修正を行っています。厚めの資料ですが、 前回比較的丁寧に説明させていただいているところから、個別の逐次評価では なく、全体のポイントのご説明をいたします。  下の頁番号、1頁をご覧ください。1頁には目的と評価方法が書いてありま す。本年度は厚生労働科学研究費補助金の各研究事業、それから、独立行政法 人の医薬基盤研究所運営費交付金のうち、基礎研究推進事業というものを評価 対象にしています。これは前回ご説明したとおりです。  4頁に、この厚生労働科学研究費補助金がどんな構造をしているかをおわか りいただける表があります。4頁の「3.厚生労働科学研究費補助金」の表があ ります。そこに、研究事業がIからIVまであります。大きな研究分野として、 I.行政政策、II.厚生科学基盤<先端医療の実現>、III.疾病・障害対策、これ は<健康安心の推進>というテーマに合致しています。IV.健康安全確保総合研 究ということで、<健康安全の確保>の観点から該当します。このように四つ 大きな分野を設け、その下にそれぞれの分野に該当する研究事業を設けていま す。  このうち、今日ご説明するのは、まずは「(5)成育疾患克服等次世代育成基盤 研究事業」です。こちらは、従前、子ども家庭総合研究という研究事業があり ましたが、これを来年度に向けて組替えを行うものです。この事業の内容や主 たる変更点は、資料の53頁以降にあります。53頁の「(8)平成22年度におけ る主たる変更点」では、「従来の子ども家庭総合研究事業においては」、そのあ と文章が続いています。これは、元々ありました子ども家庭総合研究を発展的 に組替えたもので、生殖補助医療とか周産期疾患、小児難治性疾患等の6領域 について次世代を担う子どもの健全育成等を支援するという観点で、社会基盤 整備に関する科学研究を加速度的に推進しようということで組替えを行ったも のです。  そのほかにも、いくつか整理統合を行っています。  4頁に戻りまして、「(8)長寿・障害総合研究事業」があります。従前、こころ の健康科学という研究事業がありましたが、この下に、それも含めて事業を統 合し、障害者自立支援総合研究を設けています。  いまのことは74頁の下の(11)の四角の中に、いちばん下の方に「障害者自立 支援総合研究事業(仮称)」があります。ここで変更点を説明しています。この ため、全体の事業数は昨年度から一つ減っている形になっています。  また4頁に戻りまして、表にありますように、新規の事業についてはさまざ まな観点からの検討が必要であり、今後また変更などが加えられる可能性があ ります。  また、個別の研究についてもいくつかポイントを説明いたします。新設など を行ったものについては23頁です。分野で申しますと、II.厚生科学基盤研究 の「(3)先端的基盤開発研究事業」に該当するものです。23頁の上側の(8)に説 明があります。創薬総合推進研究ということで、これまでの研究事業を見直し ています。「次世代ワクチン開発研究」「生物資源・創薬モデル動物研究」など を統合するとともに、これら既存研究を主とした創薬基盤研究を推進するため の研究事業を新設することとしています。  35頁は、同じく先端的基盤開発研究の医療機器開発推進研究です。真ん中辺 りの「平成22年度における主たる変更点」で解説しています。研究事業を見 直し、これまでの「ナノメディシン研究」、それから「活動領域拡張医療機器開 発研究」を統合することで、「医療機器総合研究」を設けたところです。  これが最後ですが、44頁の(8)に「平成22年度における主たる変更点」とし て、臨床応用基盤研究の医療技術実用化総合研究についての解説があります。 このとおり研究事業を見直し、「基礎研究成果の臨床応用推進研究」、従来トラ ンスレーショナル・リサーチといわれていた研究分野です。それから「臨床研 究・予防・治療技術開発」を統合し、今後、治療法、適応外使用、重大疾病、 統合医療等の研究を推進するための研究事業として組替えています。このよう な再編成を行っているところです。  前回のご議論でいただいたご意見の中には、公募要領策定において留意させ ていただくものや、今後行う評価指針の見直しにおいて留意すべきもの、ある いは今後の事業評価において留意すべき事項がありました。いただいたご意見 を踏まえ、それぞれに対応したいと思います。  最後に概観いたしますと、全体としては指定型研究、そして若手育成型とい ったところを充実させる方針です。また、厚生科学研究の範囲は非常に幅広く、 国民の健康、国民の安全確保のために必要不可欠な課題も多く、いわゆるミッ ションオリエンテッドというか、こういうことが必要だから行う研究というも のも多いわけです。重点化によるメリハリはつけつつも、厚生労働科学研究全 般をできるだけ着実に進めていきたいと考えています。説明は以上です。 ○永井部会長  膨大な資料でしたが、委員の方々から何かご質問、ご意見ございますか。前 回も議論になりましたが、科学的な、非常に先端性がないような、と言っては 語弊がありますが、科学性、自然科学としての先端性がない場合でも、やはり こういう中には重要な研究事業があることは十分評価されるべきではないかと いう意見がございました。そういうことも含め、全体的な評価について、委員 の方々からご意見を伺えればと思います。 ○望月委員  内容ではないのですが、ミスプリかもしれませんが、4頁の表で、研究事業 の「(7)生活習慣病・慢性疾患」と書いてあるのですが、これは難治性疾患では ないのでしょうか。本文のほうは「難治性疾患」になっていると思いますが。 ○坂本研究企画官  申し訳ございません、確認して修正いたします。 ○望月委員  はい、お願いします。 ○宮村委員  この間、言いそびれたのですが、最初の資料1-1のほうで、数値が羅列され ていますが、その中には非常に具体的な数が書いてあるわけです。感染症関係 では、HIVの感染者9,643人という具体的な数が書いてあるのですが、これは HIVの患者数がぐんぐん増えてきて、1万人に達せんばかりの勢いだという意 味で、非常に深い意味があるわけですが、全体から見ると、この数はその他の 数十万人、数万人というものとは違うわけです。それで感染症研究の意味づけ を考える場合には、例えば、慢性のB型、C型肝炎患者というのは200万人か ら300万人もあるというようなことを考えますと、ここでの数値のピックアッ プのやり方ですが、この右の方に頭を抱えている人がいますが、そういうこと を考えると、もう少しアデクエートな数が出るのではないかと思いました。 ○永井部会長  具体的には、どんな表現がよろしいですか。 ○宮村委員  例えば、このHIV感染者の隣りに、「B型・C型肝炎ウイルスのキャリアが 300万人もいる」というようなことは、いかがでしょうか。  もう一つついでに、これからの平成22年度の研究事業に対して適切な指定 研究をオーガナイズしていくのだということと、若手育成型を重視するという 基本方針を伺いましたが、それぞれの研究事業について、例えば他との同じ厚 労省内での関連事業とか、各省庁との関連事業の役割分担のところで、重複の 申請がないかどうかをきっちり調べますということが書いてあります。若手研 究者の育成のときに、厳密にこの研究事業といいますか、研究対象がそのグル ープ全体で大まかに枠組を取ったときには、その母数といいますか、研究室の 研究方針と重複、ある意味どうしても重複する目的が出てくると思います。特 に、若手育成というときには、研究をエンカレッジするような基本方針を貫い ていただきたいと思います。 ○永井部会長  ありがとうございます。どうぞ。 ○坂本研究企画官  ご指摘の点について、肝炎等につきましては、この下に書いてありますよう に、「国民衛生の動向」とか、引用するものを確認いたしまして、どういう書き 方が適切か検討させていただきたいと存じます。  もう一つご指摘がありました重複チェックですが、いまは厚生労働科学研究 費補助金すべて、例のe-Radを使っております。先生がおっしゃるように、同 じようなものを駄目出しすると大変だということは我々もわかるのですが、政 府全体としても、やはり同じ課題で二つ研究費を取るのは駄目ということにな っていますから、その辺はやはり研究を申請していただくときに、いま所属さ れているグループが大きくこういうことをやっていて、そこのここら辺をやっ て、向こうがやっているところとは異なる、要は同じ課題に研究費が二つ入っ ていないという説明をうまくしていただくことを、研究者側でも少し工夫はい ただかないといけないのかもしれないのですが、徒らに似ているから駄目だと いうような運用をするつもりは当然ございません。e-Radの運用でもそういう 話にはなっているのですが、どうしても全く同じ課題名で、全く同じことをや りますというような研究計画書を出されてしまいますと、たぶん引っ掛かりま すので、公募要綱等でも、そういうものは駄目ですと書いてありますので、そ の辺は適切に対応していただければと考えています。 ○永井部会長  よろしいですか。どうぞ。 ○木下委員  以前、研究費の総額について一覧表が確か付いていたように思うのですが、 この新しい22年度に関しては大項目ごとで、およその予算額が付いています。 多くのところは減らされているわけですが、ある所では、例えば、地球の環境 問題に関する研究でしょうか、3倍か4倍増えている。どういう傾向があるか 考えていらっしゃるというのは、予算額によってある程度読めるような気がす るのですが。また、どういう基準で予算を多く、何倍も付けるような所がある のか、あるいは減らしていくのか。その辺が一覧で見えるようなものがあれば ありがたいのですが。また大いに集中して研究費を投ずる所はどういう背景で、 それだけのことを付けたのか。予算額は付けても、それだけの研究内容を持っ た所があるのかも含めて、ご説明いただきたいと思います。 ○坂本研究企画官  今回の資料は表題にありますように、概算要求前の評価ということで、今回、 これについていくらいくらという金額はまだお出しできる段階でない資料にな っています。先生ご指摘のものは、この前の前年度の評価等のときに、実際の 予算額等についてお示しし、あるいは今後予算編成をしまして、年末年始ぐら いの科学技術部会では、厚生労働科学の関係予算案はこうなりましたというご 報告をこちらの部会にしていますので、金額面についてはその際に出てまいり ます。 ○木下委員  失礼しました。確かにそのとおり、22年度はなかったのですが、その前のと ころで、傾向としては、このようにどんどん徐々に減っていくのか、もちろん お話のように今後のことだと思いますが、何かそういうことを予算を付けるに 当たっての基本的な方針があるのかどうか。もしあるとすれば、予め教えてい ただければと思います。 ○坂本研究企画官  政府全体の方としましては、資料1-1にありますように、総合科学技術会議 等から政府全体の重点施策というものの打出しがありますので、そういったも のを配慮する必要があります。例年、厚生労働科学として、厚生労働行政とし て、喫緊に取り組まなければならない課題がいくつか出てまいります。そうい ったものがある場合については、そちらについては当然重点化してまいります。 前回も、総額をできるだけ増やすようにというコメントをいただいて、我々も その方向で努力はしているのですが、財政的にもいろいろな調整がありまして、 その中で、総合科学技術会議のいわゆるSABC評価等も受けた上で、予算が仕 上がってきているということです。それぞれ行政的課題についてはメリハリを 付けながら、先ほど説明しましたように進めるという方向で、バランスをとり ながら、いまやってきているということが全体的なお答えになります。 ○永井部会長  ほかにいかがですか、よろしいですか。そうしますと、前回の部会で修正に ついては、部会長ご一任ということでいただいていますので、本日のご意見に ついても事務局と相談しまして、必要な修正を行った上、最終的に私の方で確 認させていただいて、取りまとめをするということにしたいと思いますが、改 めてお任せいただけますか。                  (了承) ○永井部会長  それでは議事の2にまいります。「ヒト幹細胞臨床研究について」のご審議 をいただきたいと思います。これも、前回のご審議のときに定足数の問題があ りましたので、もう一度事務局よりご説明をお願いします。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究については、冊子となっています資料2を用いてご説明 いたします。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針で申請された実施計画、 専門委員会でありますヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で審議された結 果、指針への適合性が了承された申請、計7件についてご報告申し上げます。 表紙をご覧いただくと、上の6件は前回の部会にて説明をさせていただいてお ります。最後の松本歯科大学は、今回初めて了承された計画をご報告いたしま す。  まず、京都府立医科大学から説明させていただきます。1頁目の意見書に続 き、2頁目に本実施計画の概要があります。研究課題名は「重症慢性虚血性心 不全に対するヒト心臓幹細胞と幹細胞増幅因子bFGFのハイブリッド自家移植 療法の検討」です。研究責任者は、京都府立医科大学松原弘明先生です。対象 疾患としては、重症慢性虚血性心不全です。治療計画の概要ですが、36頁にポ ンチ絵がありますので、そちらもご参照ください。心筋幹細胞の培養のため、 事前に2回に分けて200mlずつの血液を採取し、自己血清を分離いたします。 また、心臓カテーテルを用いて心臓内壁から心筋生検鉗子にて5個の生検を行 い、組織を採取いたします。その組織を培養し、心臓幹細胞を分離いたします。 3週間培養された幹細胞を、冠動脈バイパス手術の際に障害心筋組織に注入い たします。また、同時にbFGFを含むブタ皮膚由来のゼラチンシートで注入箇 所を被覆する徐放シートを用いる方法を併用するという研究内容です。今回の 研究の目的は、その安全性を確認することとしています。心筋の幹細胞を用い た前臨床研究として、ブタの虚血モデルを用いて、既に有効性と安全性を示し ておりまして、申請となっておりました。  実際の審議の概要については、3頁から5頁目にあります。特に、実施計画 に関して、カテーテルで採取し、培養する詳細な手順などを記載することが求 められました。また、生検で得られる組織の量や培養細胞数、その根拠につい て疑義がなされていて、回答がなされました。また、さらにbFGF含有のゼラ チンハイドロゲルシートの基礎的研究の結果と安全性について説明がなされて います。計3回の審議を経て、了承となっています。  次に、先端医療振興財団先端医療センター病院からの申請です。38頁目に、 意見書があります。39頁目は、臨床研究実施計画の概要です。研究課題名とし ては、「難治性骨折(偽関節)患者を対象とした自家末梢血CD34陽性細胞移 植による骨・血管再生療法に関する第I・II相試験」です。研究責任者は、先 端医療センター病院黒田良祐先生です。対象疾患は、難治性骨折です。49頁に 要旨、50頁目にポンチ絵があります。こちらもご参照ください。G-CSFを5 日間投与し、動員した末梢血中のCD34陽性細胞を分離いたします。分離した CD34陽性細胞と、アテロコラーゲン及びPBSを細胞培養施設にて混和した ものを、手術室にて下肢の骨折部の手術の際に患者さんに移植するという内容 になっています。CliniMACSという装置は、先端医療センターでは既に下肢 の虚血患者を対象とした臨床研究が行われています。本研究は、CD34細胞を 骨折への治療に応用するという臨床研究である点で、新規性を有しています。 前臨床の研究としては、難治性の骨折ラットモデルに対するCD34陽性細胞移 植を試行し、骨折部の骨新生が有意に亢進する。そうした効果は用量依存性で あることが確認されています。  40頁から42頁には、審議の概要を記載しています。3回の審議を経てなさ れた内容として、疾患の病型ごとの対象患者の設定や、CD34陽性細胞の作用 機序について疑義がなされています。回答としては、非感染性偽関節及び静止 型の感染性偽関節の患者を対象とする、と変更されています。実際に、そうし た病型別の評価を加えるという形で、プロトコールの改善がなされています。 CD34陽性細胞が骨芽細胞や血管内皮細胞に分化するということで、血管新生 や、さらに骨新生が生じることを前臨床研究から示し、最終的に委員会で了承 されています。43頁に申請書、44頁からは実施計画書及び研究の要旨、53頁 目から患者に対する説明同意文書を添えています。  続きます4施設は、多施設の共同研究による申請です。東邦大学医療センタ ー大森病院、国立病院機構千葉東病院、市立函館病院、青森県立中央病院から の4課題は、すべて同じプロトコールによる共同研究です。最も申請の早かっ た東邦大学医療センター大森病院の資料を用いてご報告いたします。こちらは 76頁にあります。  大森病院からの申請で、「末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血 単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」に関して、意見書があります。77 頁は実施計画の概要です。研究責任者は、東邦大学医療センター大森病院の水 入苑生先生です。この研究の対象は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患(慢 性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)となっています。  臨床計画の概要を説明いたします。90頁にポンチ絵がありますので、ご参照 ください。G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取し、アフェレシスに より単核球を採取します。末梢動脈疾患の患肢の70〜150カ所の筋肉内に注射 をして、末梢血管の再生効果を見るという研究です。本研究は既に本会議にて プロトコルが了承された共同研究ですので、用いる幹細胞や対象疾患としての 新規性はありませんが、ランダム化された多施設共同研究をいたします。目標 としては140症例、これは推奨療法、または現在の治療と比較して行っていく 形で、安全性、有効性を比較し評価するという研究となっています。このプロ トコールは、既に札幌北楡病院を中心としたプロトコールで、申請が了承され ています。  78頁からは審査委員会の審議の概要です。プロトコールが最新版に更新され るべき所がされていなかったという不備があり、そこを改訂しています。持ち 回り審議にて了承されています。80頁以降には、申請書と実施計画書、被験者 への説明文書、同意書類です。ほかの3施設についても、ほぼ同じ内容のもの ですので、省略いたします。   最後の臨床研究実施計画の報告は、松本歯科大学からの申請です。246頁に、 審査委員長からの意見書があります。松本歯科大学からの申請で、ヒト培養自 己骨髄間葉系細胞移植による顎骨増生法の確立です。研究責任者は上松隆司先 生で、「顎堤の高度骨吸収症例」として上顎洞底挙上術または歯槽堤形成術が行 われる症例を対象として、3年間で16症例を予定しています。インプラントの 治療がなされる際に、歯槽骨の造成が必要となり、こうした外科手術が行われ ています。しかし、その効果には長時間を要し、現在では有効率が不十分であ るといった問題点があるため、自己の骨髄間葉系細胞を用いて、さらに上乗せ 効果を図るという研究になっています。  研究の概要ですが、273頁にポンチ絵がありますので、そちらで説明いたし ます。松本歯科大学で被験者をリクルートし、骨髄液と末梢血を採取します。 信州大学医学部附属病院のセル・プロセシング・センターに運ばれ、自己血清 を加えた培地で、骨髄の間葉系細胞を培養いたします。培養された細胞と多血 小板血漿、それとβ-リン酸三カルシウムという基材を混和し、手術の際に投与 するという形になっています。本研究の手技の安全性の構成は、前臨床の研究 としてビーグル犬を用いた下顎骨の欠損モデルで確認されています。現実に国 内外では、こうした間葉系幹細胞を単独のキャリアとともに移植するというタ イプの臨床研究の報告がありますが、本研究では幹細胞を分化誘導をさせるこ となく、多血小板血漿とキャリアを混合して使用するというところに、新規性 があります。  248頁から審議の内容があります。主な疑義としては、研究の評価の方法、 あとは細胞の品質などの改良や安全性の確認に関して審議がなされています。 それらに的確な修正がなされ、審査委員会では了承されています。251頁から 申請書と研究計画書、あとは研究の要旨と同意の説明文書があります。  以上で、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で指針への適合性が確認さ れました七つの申請についてのご報告を終了いたします。 ○永井部会長  いまご説明いただいた中で、松本歯科大学の案件については前回の部会では 説明がなかった、新しい事案ということです。以上ですが、大量の資料で、全 体像を把握するのは容易ではないかもしれませんが、最初の京都府立医科大学、 これは先ほどのポンチ絵36頁で説明がありましたが、心筋バイオプシーで、 非常に少量の細胞から試料細胞を取りまして、それを培養条件によって幹細胞 だけ選び出す。それを、機能の落ちた慢性虚血性心不全の患者さんに注射で移 植するという方法です。そこに、さらにbFGFのシートを上に乗せて、細胞の 増殖を促すということです。  これは私も委員会で審査してきたことなのですが、いま気がついたことで、 22頁をご覧ください。22頁に、患者さんへの説明用の絵があります。説明の 方法等については非常によく書かれていると思うのですが、22頁の図でちょっ と適切でない言葉があるように思います。例えば、「駄目になった臓器」という 言い方ですね。これも、「機能の落ちた心臓」というのが適当かと思います。心 筋幹細胞を採取しますと言っても、心筋の細胞を採取して、培養する中で幹細 胞を選び出すということですから、これは心筋細胞を採取します。右下に、「新 しい臓器を再生します」とありますが、臓器が丸ごと再生できるわけではない ので、「新しい心筋細胞を再生します」ぐらいが妥当だと思います。最後の「再 生された新しい臓器」ではなくて、「修復された心臓」ぐらいが妥当だろうと思 います。ちょっと気がつかなかったのですが、わかりやすく書こうとして、こ ういう表現になったと思いますが、「駄目になった臓器」と言われると、患者さ んには随分プレッシャーがかかってしまいます。機能は落ちていても、決して 駄目なわけではありませんので、この辺の表現については、もう一度京都府立 医科大学のほうに指導する必要があるかと思います。  あとは2番目の先端医療センターでの偽関節、偽関節というのは、骨折の後 に治りにくくなってしまった状態です。きちっとした骨化した骨ができないよ うな状態に自家末梢血CD34陽性細胞を移植しようという研究です。これは、 特にこの計画書で問題ないように思います。  3番目から6番目までの四つのG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療の ランダム化比較試験ですが、これは既に何回か部会で出てきたのと同じ案件で す。札幌北楡病院が中心になって、全国でこの自家末梢血単核球細胞移植が非 常に有効かどうかのランダム化比較試験を行うという、非常に大規模なスタデ ィで、統一したプロトコールに則って計画されています。  最後の松本歯科大学の案件は新しい事案です。これは、先ほどご説明にあり ましたように、インプラントを植え込むときに、骨髄系の間葉細胞と一緒に混 ぜて、植え込む骨の基盤を改善させて、インプラントを植えようという計画で す。信州大学のCPCを使うところが、一つのポイントになっているかと思い ます。  何かこの再生幹細胞臨床研究についてご意見ありますか。もし、ご異議あり ませんでしたら、この形で審査委員会からの報告を科学技術部会としては了承 ということで、厚生科学審議会へ報告させていただきます。よろしいでしょう か。 ○石井委員  個別のことでは、271頁、松本歯科大学の14に「倫理的な配慮を行い、ヘ ルシンキ宣言に従っている。」とあります。それは大事なことなのですが、この 臨床指針に従っているということも書いていただくとよいと思うというのが1 点です。  2点目は、今回の審議に直接関わるわけではないのですが、このヒト幹細胞 臨床研究の計画について、お手数をおかけしますが、一覧で、いままでこのよ うな研究がいつ承認されている、できたら備考欄に、重大事故が発生したもの についてはそれを付記する形の一覧を、何回かに1回でも結構ですので、出し ていただくと、全体がどうなっているのかというようなことがわかりますし、 また大規模なものは同じようなものが何回か出てくるということもありますの で、少し審議がしやすくなり、よいのではないかと思います。よろしくお願い いたします。 ○永井部会長  そうですね。それはまた事務局、よろしくお願いいたします。ほかにござい ませんか。  それでは、ただいま出ましたご意見は各施設に戻しつつ、資料を一部訂正さ せていただいて、厚生科学審議会へ報告させていただくということにいたしま す。                   (承認) ○永井部会長  本日用意いたしました議題は以上でございます。事務局から何かありますか。 ○坂本研究企画官  次回の開催については、別途日程調整をさせていただきますので、その際に はどうぞよろしくお願いいたします。 ○永井部会長  本日はこれで閉会とさせていただきます。お忙しい中、ありがとうございま した。                                −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171