09/08/25 第4回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第4回 厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直し に関する専門委員会  ○日 時 平成21年8月25日(火)15:00〜  ○場 所 中央合同庁舎第7号館(11階)1114共用会議室  ○出席者 【委 員】永井委員長、位田委員、梅澤委員、佐藤委員、鹿野委員、澤委員 中内委員、中畑委員、西川委員、町野委員、武藤委員、山口委員 【参考人】古江-楠田美保参考人  【事務局】千村研究開発振興課長、田邊専門官、秦健一郎  ○議 事 1)幹細胞研究に関する海外動向について 2)細胞・組織を利用した医療機器又は医薬品の品質及び安全性の確保につ いて       3)指針の見直しに関する検討の概要について       4)その他   ○事務局(医政局研究開発振興課) 定刻となりましたので、第4回「ヒト幹細胞臨床研 究指針の見直しに関する専門委員会」を始めさせていただきます。本日の出席を確認させ ていただきます。委員の先生方におかれましては、ご多忙のところご出席いただき誠にあ りがとうございます。お手元の委員名簿をご覧ください。本日の出席を確認させていただ きます。本日は、高坂先生、本田委員、水澤委員が欠席とのご連絡をいただいておりまし て、全委員15名のうち、12名の委員にご出席をいただいております。過半数を超えてお り、本会議は成立していることをご報告申し上げます。 ○永井委員長 どうもありがとうございます。では、配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 配付資料につきまして、ご説明いたします。議事次第にありますように、議事 次第、座席表、委員名簿、資料1、資料2、資料3、資料4-(1)と(2)、資料5、それとドッ チファイルにまとめられている参考資料1〜8は机上にご用意いたしました。過不足等ござ いましたらお知らせいただきますようお願いいたします。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。前回の第3回委員会では、ヒト幹細胞を用いる臨床 研究の現状につきまして、京都大学医科学研究所の末盛先生からご講演をいただいたとこ ろです。また、文部科学省研究振興局の岩田室長補佐からも「ヒトES細胞の樹立および使 用に関する指針」の改正についてご説明をいただき、意見交換を行っていただきました。 さらに、早川先生から「幹細胞臨床研究におけるGTP/GMPの考え方」についてご説明をい ただき、ヒト幹細胞臨床研究の規制についてもご議論をいただいたところです。今回は、 ヒト幹細胞を用いる臨床研究の現状等について、十分認識を共有化して更に議論を進めて いただきたいと思います。  今日の議論の進め方につきまして、事務局から資料を含めてご説明いただけますでしょ うか。 ○事務局 前回の委員会では、ES細胞の臨床応用に関して意見交換を行っていただきまし た。主な意見につきましては、資料1-(1)にまとめさせていただきました。1番として、「ヒ ト幹細胞の定義」について、クローン胚由来の幹細胞をどのようにするかといった議論も 一部ありました。「ES細胞」については、かなり詳しい内容にまで議論が進みまして、こ れは資料1-(2)に別紙としてまとめさせていただきました。  また同様に、「指針・制度のあり方」についても、外国からの間葉系幹細胞などは、日本 でも既に治験が開始されている。実際に薬事に則ってやられているようなこともある。ま た更に、薬事の使用についても、ES細胞、iPS細胞の指針作成が順調に行われている最中 であるといったご意見がございました。  4番の「審査体制」についても、だいぶ議論がまとまってきたところですが、中央と機 関に設置される倫理審査委員会の二重審査体制は、やはり必要だろう。一部外部委託をす るという形で、ある一定の基準、ある一定の条件であれば、外部委託もよろしいのではな いかといったご意見がなされました。  先ほど申しましたように、資料1-(2)は、前回の論点となりました「ヒト幹細胞臨床研 究におけるヒトES細胞の取り扱い」について、さまざまな意見をまとめさせていただきま した。  本日は、幹細胞研究に関する海外動向について、医薬基盤研究所の古江-楠田美保先生か らご講演をいただきます。資料2となっています。資料3としまして、PMDAで実際に生物 系医薬品の審査を担当しております鹿野委員から「細胞・組織加工製品の確認申請につい て」解説をお願いしております。それぞれご発表いただいた後に意見交換をいただければ と存じます。  議事の3番目といたしましては、本委員会のこれまでの検討の概要について、事務局に てまとめた資料を基に、更に問題点をご議論していただければと考えております。  ○永井委員長 ありがとうございます。今日の議論ですが、最初に資料の1-(2)に基づい て議論をしたいと思いますので、事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局 資料1-(2)は「ヒトES細胞の取り扱い」。1枚めくりますと、先週の21日に新 たに改正されましたES指針と、現行のヒト幹細胞指針を上下に並べています。ESの指針 は、ES樹立・分配の指針とES使用指針の二部に分かれた指針として、今回は新たに改正 されています。  内容といたしましては、ES樹立・分配の指針のほうは、文部科学大臣の確認が必要です。 一方、使用するに当たっては、文部科学大臣へ届出をすることで使用できるように改正さ れています。一部問題となりますのは、ES細胞樹立のための余剰胚につきまして、実際に は採取した後で提供される直前にインフォームドコンセントがなされるといった形になっ ています。そういったものは最終的には、樹立・分配される機関において連結不可能匿名 化されます。そして最終的に樹立されたものが使用されるという形態になっています。ま た、海外からES細胞の使用に関しましては、文部科学大臣が認めたもの。実験計画書に記 載されたものを使用することが可能になるという形態です。現行のヒト幹細胞のほうは省 略させていただきます。  2頁目ですが、上段に現行のヒト幹指針が書いてあります。下のほうにはES細胞をヒト 幹指針と準拠して臨床使用するといった場合に、どのように使い得るかということを示し ています。実際にES細胞を使うとなりますと、ES指針と同様に、樹立・分配に関する部 分の指針がやはり必要になる、もしくは指針にその内容が含まれることが必要になります。 それと、実際に採取する時点も、やはり、採取をしてその後に、研究に参加する直前にイ ンフォームドコンセントが得られるようになります。インフォームドコンセントが得られ た細胞は樹立・分配の機関に回りまして、それが最終的には調製機関などで調製を受け、 ヒトに対して投与することが可能になる。若干形態は異なりますが、ほぼ現行のヒト幹指 針に従って使用することが可能であろうというふうに考えられます。  3頁、ところが、いまあるES指針を実際に流用する、もしくは、現行指針に従って樹立 したES細胞を使用するといった場合には、おそらくいくつかの問題点が出るだろうと考え られます。細かいところは省略させていただきますが、実際にあるものでも品質と安全性 について、ヒト幹指針の規定により求められるものと同等以上の妥当性がある場合には、 使用することも可能ではないかといったご意見がなされていました。  最後、4頁、海外からのES細胞を使うという可能性が大きいのではないかといったご意 見も、採取提供されたものを日本でそのまま樹立・分配するという形は、あまり馴染まな いとは思いますが、樹立・分配されたもの、もしくは調製されたものが、品質・安全性が 確認されているということであれば、使用することは実際には可能であろう、その辺の確 認をしっかりすれば、現行の形で、ほぼ使用することも可能ではないかと意見がまとめら れております。以上です。 ○永井委員長 ありがとうございます。いまのご説明に対して、確認しておきたい点はご ざいますか。これはまだ考え方を整理したということですね。 ○西川委員 1つだけ。ヒト幹の場合に、「治験薬GMPの水準」というのが書かれています が、これ自身、例えば鹿野先生がお話になるのかもしれませんが、FDAでも別にきちんと しているわけでもないと思うので、ヒト幹に関しては、これを治験薬という形で提供して しまうのは、若干問題があるのではないかなという感じはします。いまいろいろな形でヒ ト幹の審査が行われているところで、ある一定の要件を満たすというか。ですから、どこ までそのすべてのリエージェントがGMP化されたものを通ってきているのかどうかという のも、いまはっきりとある程度のところでラインを引いているというのが現状なので、そ れはいまのヒト幹の安全の水準ということかなというふうに思うのですけど。 ○鹿野委員 実際の治験薬GMPというのは、結構フレキシブルでして、開発段階に応じた 管理をするということだけが定められています。承認された医薬品ですと、きちんとした GMPがかかるのですが、開発段階には製品化されたものにかかるような規制が免除される 部分も多いですし、あとは手続的にきちんと管理されているかとか、あるいは、その時点 の科学的なレベルできちんと管理されているかとか、そういう程度のことしか通常は求め ていないと思うのです。 ○永井委員長 実際にヒト幹でも、そういう方針で行っているわけですね。 ○鹿野委員 はい、そうです。 ○山口委員 鹿野委員の言うとおりでいいと思うのです。要するに、初めてヒトに投与す るという安全性が担保されていれば、まずいいと。そこがいちばん基本的なところだと思 うのです。順番に開発が進んでいけば、より適切な対応をして、GMPをそのまま適用する という意味ではなくて、それを引用していいところは引用すればいいのだろうという精神 だと思うのです。 ○位田委員 教えていただきたいのですが、ヒト幹細胞の場合は体性幹細胞もしくは組織 幹細胞ですから、ES細胞より一段あとの状態ですよね。そうすると、ESの研究指針の考え 方からすると、それはESの使用指針のほうにカテゴリーとしては入ると思うのです。そう いう形にはならないのか。つまり、この案の中では、ES細胞の樹立・分配のあと、すぐに 調製、矢印が入っているので、そういう形で実際に調製に回されるのか、ES細胞から一旦、 例えば造血幹細胞に分化させて、そこから調製というところにいくのか。もし、一旦何ら かの組織幹細胞に分化させてからということであれば、むしろ樹立・分配から直に調製で はなくて、むしろ使用から出てくるので、もう少し縛りは緩くなるという言い方はおかし いですけれども、ちょっとまとめ方が違うかなと。 ○西川委員 現実的には事務局が書かれた、この調製というのは、たぶん分化も含めてい るのだろうと思いますが、実際の状況を考えると、そういう経験のある所で初めて行われ るはずで、全く薬事のような形で、薬として買ってきて何かやられるということは絶対に ないので、基本的にはこの調製に、いま位田先生がおっしゃった分化・誘導等々全部入っ てくるのではないか。そこ自身に対する規制に関しては、いままでもヒト幹でやってきた ような大体のガイドラインが適用されると考えたらいいのではないかなという私自身のイ メージですが。 ○位田委員 わかりました。ありがとうございました。 ○永井委員長 ESについては腫瘍形成性が問題になると思います。いままでのヒト幹指針 とは基準が違うと思います。 ○西川委員 ですから、ヒト幹の審査をするときに、例えばiPSからある治療をやりたい という話があった場合に、何をもって安全性というのか。最終的には、たぶん分化したも のが安全かどうかということが問われると思いますから、指針に応じた研究をしたいとい う人は、指針に申請される前に、その患者さんとか、それぞれの個人について、安全性の テストを、例えばマウスとか何かでやるとか、そういうことがモデルとしては必要になっ てくるのかなと。ですから、すべてが指針に申請という形でスタートするのではなくて、 それより前に、いろいろな形で可能ですから、そこに関してはきちんとやっていただかな いと、たぶん通らない。いま永井先生がおっしゃった理由で通っていかないことになるの ではないかと思うのです。 ○位田委員 その続きで、そうすると、この樹立・分配からすぐに調製にいくという話は、 ES細胞そのものを、つまり、樹立したらES細胞をその調製機関にお渡しをして、そこで 分化させてもらうということですよね。可能性としては、一旦ES指針のほうの使用機関が、 例えば造血幹細胞に分化させて、それを調製機関に渡すということは、可能性はあるので しょうか。 ○西川委員 血液などだと。 ○位田委員 血液に限りません。例えばの話なのですが。 ○西川委員 現実的には、あまりないのではないかなと思いますけれども。例えば皮膚に してから皆さんにお分けするということですよね。もちろん、ないという根拠はと言われ ると辛いですが、やはり、あまり最初のほうはないのではないかと、私自身は思いますが。 ○永井委員長 これは、別の機関を表わしているブロック図では必ずしもないですね。同 じ機関の中でも、法律的な仕切りということですね。 ○中畑委員 いまの問題ですが、例えば神経幹細胞を、ES細胞から作り出して、別の医療 機関にその細胞を運んでそこで投与するという、それは十分考えられると思います。いま までの指針では、そういうことはできなかったわけですが、今回改正しようという指針で は、むしろ細胞を取り扱って、そこで安全にいろいろな細胞を作り出すという機関は、む しろ専門的な機関のほうが、よりいいのではないかという考え方もありますので、おそら くその辺もしっかり議論して踏み込んだ指針にすべきではないかと思います。それが1つ です。  あと、この最後のES細胞を海外から輸入してというところで、文科省から、海外からこ のES細胞を輸入して、それを実際の研究に利用する場合の説明があったのですが、それは そのまま厚生労働省のここにも当てはめて問題があるかどうか、そこのところをしっかり 議論をする必要があると思います。やはり、研究に使うのとは別の観点から、海外から輸 入したES細胞を日本で本当に使っていいのかどうかという問題を、しっかり検討する必要 があると思います。 ○永井委員長 この資料は、これから更に議論を進めるという理解でよろしいですね。 ○千村課長(医政局研究開発振興課) はい。今日お示ししておりますのは、前回の先生 方のご議論を踏まえて、それを具体的に可視化するとどうなるかということを、1つの例 としてお示ししているものです。ここにお示ししているものは案となっていますが、この 線で議論をしていくかどうかということも含めて、まだいろいろご議論があるのだろうと。 あるいは我々としてもお話を申し上げることもあるかもしれないという意味で、これまで の議論の整理ということで、とりあえずお示ししているというふうにご理解いただければ と思います。  ○永井委員長 そうですね。ただし「案」と書いてあると誤解を招きかねないので、注意 して扱っていただきたいと思います。 ○千村課長 はい、ちょっと踏み込みすぎの表現で、申し訳ございません。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。特にヒト幹指針の改正の中にESを加えるかどうかと いうことは、今後も議論を続ける必要があると思います。  次の議題に移りたいと思います。「幹細胞研究に関する海外動向について」というテーマ で、古江-楠田参考人からご講演をお願いすることになっています。よろしくお願いいたし ます。 ○古江参考人 独立行政法人医薬基盤研究所生物資源研究部・細胞資源研究室の古江と申 します。本日、本委員会で説明させていただく機会を与えていただきましてありがとうご ざいます。  資料2についてご説明させていただきます。1頁です。ご存じのとおり1998年に初めて ヒトES細胞株が樹立されまして、現在、報告にあるものが260以上、約300と言われてい ますが、実際には発表になっていないものもありまして、700株ぐらい、それ以上あるの ではないかと言われています。現在におきまして、国内で使用できるヒトES細胞というの は11種類です。  その具体的な例をお示ししております。実際には海外でよく使いますのはワイセルのH1 H9、それからモナッシュのHES、それからセラーティスの細胞株もよく使われていますが、 さまざまな細胞株が多くの海外で使用されております。  ヒトES細胞の場合には、株による差が大変大きくて、研究結果は1株によるものではヒ トES細胞の共通した結果としては言えないというのが常識です。何か結果が出た場合、そ れはその株において、例えば、H1ではこうでした、H9ではこうだったというような認識を 研究者は持っています。ですから、共通した、それまでやったことのないヒトES細胞の場 合には、それをまた新たに試してみて、それでどうだったという、複数株を必ず研究する 必要があるので、やはり、使用できる細胞株は多いほうがよいと考えられております。今 回、指針が改正になりまして、大変喜ばしいことだと思っております。  次頁、主なヒト幹細胞バンクと言いますのは、今回お示ししたのは主にアメリカとヨー ロッパについて書いています。National Stem Cell Bankですが、これはNIHと、初めて ヒトES細胞を樹立しましたウィスコンシン大学が連携をして作られたものです。登録細胞 は、当初は相当数あったのですが、ブッシュ大統領の下、どんどん審査が厳しくなりまし て、最終的には約20ラインの登録となっております。今回2009年5月9日に大統領が代 わりまして、新ガイドラインが発表され、National Stem Cell Bankで、新規ガイドライ ンに従来の細胞が合うかどうか、再審査を行っておりますので、現在、分譲が中止されて おります(9月より分譲再開しています)。  米国のもう1つ主なバンクとしては、ハーバード大学のメルトンらが主に樹立をしたも ので、ハワードヒューズ医学研究所らと共に、一緒に分譲を行っています。「17cell lines」 と書いてありますが、たしか新しい結果では28セルラインを分配中と聞いております。  これに関しまして、今月号の『Nature Biotechnology』に、ここで主に使われている細 胞株が非常に偏っていて、本来のバリデーションの研究にはそぐわない、もう少し広く使 えるような指針を作るべきであるというコメントが書いてありました。  一方、ヨーロッパでは、英国を主体に研究を進めておりますが、国立生物学的製剤研究 所、英語ですとNIBSCという所ですが、そこの中のUK Stem Cell Bank が分譲を行ってい ます。ここを担当しているのはGlyn N.StaceyさんとLyn Healyという方です。財源は国 からで、 UK Steering Committeeが分譲審査を行って、細胞の分譲を行うというシステム になっています。昨年まではそれほど細胞数は多くなかったのですが、現在ずいぶん細胞 数が増えてきていて、順次分譲できる細胞数が増えていっているようです。  3頁、NIBSCのGlyn N.Staceyらが中心となりまして、International Stem Cell Banking Initiativeというプロジェクトが2007年から始まっております。できるだけ国際的な多 くの細胞バンク、Stem Cell Bankが参加をして、国際的なバンキングガイドラインを作成 して、各バンクで情報交換を行うとともに、細胞の交換も進めて情報公開を行い、より多 くの研究者に情報提供を行って、研究を進めてほしいという目的で進められております。 現在、研究用のヒトES細胞バンキングガイドを作成中です。このバンキングガイドは国際 ヒトES細胞研究標準化と非常に深く連携をしています。  4頁、これは「国際ヒトES細胞研究標準化の動き」ですが、もともとは2003年に International Stem Cell Forumが設置され、日本からは確か西川先生がパリの会議にご 参加されたと伺っております。こちらが2003年設置されて、その中で、International Stem Cell Initiativeというプロジェクトが2005年より始まりました。こちらは11カ国が参 加をして、17研究室が参加しております。英国シェフィールド大学のPeter W.Andrewsと、 オーストラリアから異動してカリフォルニアにおりますMartin F.Peraの2人の教授が主 にリーダーとしてプロジェクトを進めております。主なヒトES細胞の研究者を集めて、標 準化のためには何が必要であるかを企画し、解析を行って標準化を推進しております。  なぜ標準化が必要かと申しますと、ヒトES細胞は非常に不安定で、培養するたびに結果 が違うためです。フィーダー細胞のロットも違いますし、培養の条件もロットが違います。 それから、技術によっても非常に結果が違います。また、株によってももちろん違うとい うこともあり、一体、ヒトESとは何んぞやということから始まり、他の研究室で行ったも のが追試できないということもありまして、標準化が必要であるということで、この動き が始まりました。いまInitiativeの1が終わり、現在、2がもう少しでまとまると伺って いますが、iPS細胞も含める必要があるだろうということで、それを含めた形で解析を行 っているというふうに聞いています。ヒトES細胞を樹立している多くの研究室が独自に iPS細胞を樹立し、それらと比較してESの研究が進められております。このプロジェクト によるワークショップには、京都大学の中辻先生や私、あと理研の中村先生なども参加を して、意見などを述べております。こういったヒトES細胞の標準化の研究のデータに基づ き、Cell Banking Initiativeでは、どのような解析が必要であるかということを設定し て、例えば10代、あるいは5代に1回きちんと解析をしなくてはならないといったことも 策定を行っています。  5頁が実際の「バンクにおけるヒトES細胞バンキングガイドライン」になります。こち らは私が抜き出したものですが、大きく分けて4項目になります。まずは書類上の問題で す。樹立・使用・管理に関する事項で、インフォームドコンセントが適正であるかどうか、 倫理的に問題がないかどうか、各国の法律に従っているかどうか、あるいは各国の指針に 従っているかどうかを、きちんとバンクは認識をして確認をする必要がある。さらに、細 胞の登録を行って、こういう細胞があるということを情報公開する必要があるだろう。  更に、細胞標準検査としましては、一般細胞にも言われていることですが、細菌検査、 マイコプラズマ検査、ウイルス検査、細胞同定検査、染色体検査といった5つの項目が挙 げられるだろうと言われています。現状では最も適したウイルス検査がまだ策定されてい ませんので、今後どのようなことが標準的な方法であるかを話し合っていく必要があると いう議題になっています。その中で、医薬基盤研究所ではすべての細胞のウイルス検査を していますので、提言したいと考えております。  ヒト幹細胞細胞標準化検査という、ヒトES細胞に特徴的な必要な項目がありますが、こ ちらはご存じのとおり、細胞の形態、表面マーカー、遺伝子発現、分化能の同定といった ものが、やはり基本的なものになってくるだろうと言われております。  6頁、「英国における審査機関」なのですが、まず、英国におきましては、英国独自の不 妊治療などや研究における胚使用を監督する機関HFEAがございます。胚や卵子を貯臓する と、選択した患者が不妊治療終了後に、廃棄するか、あるいは研究用に寄付するかを選択 して、患者から研究への利用の承認を得て、その使用が開始されることとなります。ヒト ES細胞の樹立はHFEAから承認を得て、研究が進められております。現在、英国では21研 究機関が承認されています。その中でシェフィールド大学は、GMPに準拠したES細胞の樹 立、主に再生治療に関した研究を進めております。  MHRAという臨床試験の指針を作成している所があります。こちらは英国におけるFDAの ようなものと認識をされているということです。ヨーロッパの特徴としまして、英国のみ ならず、欧州の医薬品審査庁もあり、こちらとも連携をとる必要があると認識をしている と聞いております。更に、実際に臨床を行う場合には、ヒト幹細胞治療の承認はGTACから も実際の承認を得る必要があると聞いています。  7頁、現在、英国内におきましては、GMPレベルのヒトES細胞樹立の動きが活発化して います。5施設となっていますが、6施設ですので、資料の訂正をお願いいたします。6施 設がGMPに準拠したヒトES細胞培養施設を持っています。そのうち、3施設が国による研 究費で行われております。これに関しては現在、UK Stem Cell Bank が協力をして、技術 のこと、あるいはGMPレベルをどのように策定するかを協議していると聞いています。  GMPレベルで樹立をしたヒトES細胞、いわゆる臨床用に使えるヒトES細胞は、2010年 まではUK Stem Cell Bankに来ないだろうと言われています。UK Stem Cell Bankは、GMP グレードのESを受け入れられるような施設を現在建設中です。各施設では、現在作られて いるヒトES細胞はどれほどの品質を持っているものかを、それぞれ確認するために1年以 上かかるだろうと認識をしているそうです。  臨床用の幹細胞バンクのための必要なレベルの指針を、現在UK Stem Cell Bankは策定 中で、今年の最後までにはドラフトを発表できるのではないかと聞いております。  従来の細胞を洗浄してGMPレベルにして培養を行うということも、各施設で行われてい ますが、それの基準になるものというのは、まだ具体的には見えてこないようです。皆さ ん試行錯誤をしながらやっていらっしゃるというのが現実だと思います。  次頁、「インフォームドコンセントとドナー情報」に関し、管理、審査というものは、英 国におきましてはHFEAがその審査を一括して行っているということです。研究用に使用さ れる目的の場合には、採取の前にインフォームドコンセントがとられるのですが、不妊治 療用の卵子の場合には、不妊治療が終了後に、卵子を廃棄するか、研究用に使用するかを 選択して、後にインフォームドコンセントをとるということになっているようです。  ヒトES細胞の臨床応用のためのドナー情報の公開について、連結可能にするか、しない かについては、現在議論中で、どのようにするのかは今年度中に決着をつけたいと聞いて おります。私の説明は以上です。ありがとうございました。 ○永井委員長 ありがとうございました。ただいまのご説明に、ご質問、ご意見がおあり の方はお願いいたします。 ○中畑委員 米国のジェロン社が実際、数年前からFDAに申請を出して、一応今年仮に認 められたような形になっているES細胞から誘導した神経幹細胞を用いた臨床治験ですが、 そこで用いられているES細胞は、ウィスコンシン大学から出たと思うのですが、アメリカ では、その辺の国としての扱いは、どのような状況になっているのですか。それはバンク としての扱いではなくて、要するにジェロンという会社が作っているヒューマンのES細胞 ということで、国の関与はないという具合に考えてよろしいのでしょうか。 ○古江参考人 知財に関しまして私の知る限りにおいては、ジェロン社が独占的使用権を 持っている分化細胞と、そうでない分化細胞というものがあると思いますが、ちょっと記 憶が定かではありませんが、たしか心筋・神経に関してはジェロン社が独占的使用権を持 っていて、肝臓は非独占的と聞いておりますが、定かではありません。  ○西川委員 私の知っている限りでは、古江さんが書かれたのは、基本的には無償で研究 用に出るもので、例えばハーバード大学のものも、基本的にはADRFのお金でやったもので すから、ADRFは、基本的にそのお金で作られたものは無償で、知財を主張してはいけない と書いてあるから、ここに挙げられたのは基本的にどこの国の方も自由に使ってもいい。 米国の場合は、まず2002年以前のもので、自由に使っていいというもののピックアップで、 いろいろなガイドラインの問題で言うと、これは韓国のものも入っていて、韓国の場合は インフォームドコンセントがとられたかどうかというのが、もう一度疑惑が出てきている とかいうので、やはりいろいろな見直しが今あるという状況です。  一方、ビーセルは今は臨床用の場合は完全に知財がある。ただし、アメリカでは成立し て、残念ながらでもないのですが、ヨーロッパ・イギリスでは成立していない。もちろん 日本では成立していない。 ○梅澤委員 海外でのESを作る倫理指針は、研究用と臨床用で分かれていますか。例えば 研究用だったら文科省の倫理指針があり、臨床用であれば厚労省の倫理指針があるという イメージです。 ○古江参考人 英国に関してしか私は詳しくは知りませんが、どういったレベルで行うか ということに関しては、もちろん違います。やはり臨床用は臨床用の特別のガイドライン というものがあります。現状では、既に策定されたものではなくて、各自である程度策定 をしているという状況です。臨床用では基本的なガイドラインというものがあります。 ○梅澤委員 ありますか。 ○古江参考人 あります。ある程度のものはあります。 ○山口委員 7頁のことをお伺いしたいのです。いちばん最後の所に「従来の細胞を洗浄 して、GMPレベルにして、デモ中」と書いてあるのですが、GMPのことはともかくとして、 いま樹立されている細胞に関して、こういうふうな何かの処理をしないといけないという ような状況を感じておられると、みんな研究者はそういうふうに理解していいのでしょう か。要するに何らかの問題点があると。  ○古江参考人 はい、そうですね。 ○山口委員 その問題点というのは、わりと明らかにされているのでしょうか。 ○古江参考人 もちろんある程度は明らかにされていますが、100%ではないと認識はして います。やはり、マウスのフィーダー細胞を用いている点、それから、培養条件としては ノックアウト・シーラム・レプレースメント、あるいは血清そのものを使われている。こ れが動物成分を含んでいるということがあります。それから、マウスのES細胞自体は牛の 血清を使っておりますので、少なくともそういった3つは大問題であると考えられており ます。 ○山口委員 ちょっと気になるのは、普通の細胞治療に用いられている細胞でも、ストロ ーマセルの上で培養したりはしているわけですね。 ○古江参考人 はい。 ○山口委員 だから共培養、いわば異種細胞との共培養もやっている事例はすでにある。 なぜESのみそのことをコンサーンがあるのか。その辺が知りたいところなのです。 ○古江参考人 ストローマ細胞の場合は、たしか樹立細胞を使われているのではないでし ょうか。 ○山口委員 そうです。 ○古江参考人 ヒトのES細胞の場合は、毎回違うマウスから随時作成されており(フィー ダーを準備しており)、セルラインのフィーダーを使うというのは、ほとんどありません。 もちろんそういったものを使われている先生方、研究室もあるのですが、通常は毎回違う ロットのマウスから採ってこられたフレッシュなフィーダー細胞を使いますので、その都 度いろいろなウイルスの感染だとかそういったもので、かなり危険性は高いと考えます。 ○山口委員 では、やはりプライマリーのマウスのセルを使うというのがスタンダードな のですか。 ○古江参考人 そういうのが現状です。ですから無血清培養、無フィーダーというものが、 現在求められておりまして、いろいろな方法、あるいはヒトの細胞をフィーダーとして使 う方法といったような、いろいろな方法が現在開発されていまして、Initiativeプロジェ クトでも、そういった方法で細胞がきちんと培養できるかどうかということも検討はして いますが、やはり、まだ100%十分であるという培養条件は現在ありませんので、この細 胞なら大丈夫、この細胞なら大丈夫というような限定的な株であれば、ある程度GMPレベ ルで培養することは可能であろうというような状況ではあります。 ○位田委員 いくつか組織というか、機関をご紹介いただいたのですが、いくつかご質問 をしたいのです。4頁です。国際的なヒトES細胞、Stem Cell ForumとInitiativeとBanking Initiativeというのは、関係はどうなっているのかということです。それに国家がどこま で関わっているか。 ○西川委員 実際にはInitiativeまでがInternational Stem Cell Forumの基本的支配下 にあるというか。実際には日本からも1,000万円ぐらいのお金が出ております。年間2億 円ぐらいを使った標準化が行われている。必ずその内容をInternational Stem Cell Forum で報告をいただく。その上に、もともとこのミーティング、このInitiativeのほうがいろ いろなミーティングをされていた中で、バンキングの重要性ということを主張したいとい うことで、Banking Initiativeが発足しているのですが、そこに関して、ではお金を出す かどうかということに関しては、まだ全くアグリーメントが得られていない。たぶん、い まInitiativeのほうで結構お金がかかりますから、なかなか難しいのではないかという状 況なのです。 ○位田委員 ある意味ではその続きなのですが、今ご紹介いただいたのはアメリカ、イギ リスのケースですが、アメリカでも2つバンクがあり、イギリスはイギリスでUKSCBがあ り、それからいまのBanking Initiativeというのがありで、それぞれガイドラインの中身 はある程度違いがあるものなのでしょうか。 ○古江参考人 なるべく違いがないように共通した認識で細胞を扱えるようにということ で、Initiative、Stem Cell Banking Initiativeが発足しまして、ここにはワイセルの方 もNIHの方も、理研の中村先生も私も参加をして、韓国も中国のシステムセルバンクの方 も参加をして、できるだけ皆さん共通した認識をもってバンクを設立・運営をしていきま しょうという認識で、先日バルセロナで開催された学会の後に皆さん集まって、同意を皆 さん得ております。 ○永井委員長 私から1つ、染色体検査もかなり標準的検査として行われていますが、ゲ ノムについてはどうですか。現在いろいろなゲノムのチップが使われていますが、遺伝子 が増幅や欠失はチェックされていないのですか。  ○古江参考人 バンクのレベルではCGHあるいはSNP等の解析を進めておりますし、そう いったことも必要だろうと言われております。また、Initiativeのほうでもそういったこ とが必要だろうという認識を皆さん持っております。また、Peter W.Andrews教授の推定 によりますと、何かアブノーマルなクローンが出た場合に、大体3代でほとんどが入れ替 わってしまうという算出がありますので、理想的な解析の方法は、5代に1回、5回継代す るたびにそういった解析をすべてするべきだろうと言われているのですが、そこまできち んとやるのは難しいので、10代に1回ぐらいの割合で染色体の検査、CGH、SNPなども必要 だろうと言われています。 ○永井委員長 10代も継代すると、かなり異常が出てくるということですか。 ○古江参考人 安定な場合もあるのですが、そうでない場合もあります。それがなぜそう なのかというのは、まだ現在わかっていないところですが、私が経験した中でも普通にヒ トES細胞を培養していて、3株ほどサブクローンとしてアブノーマルな染色体を検出でき た経験がありますので、やはりかなり頻度は高いと考えます。 ○西川委員 実際にはISCFとしては、今後どうするのかというのがいちばん重要な問題で、 お金を必要としますから。それで、こういう形でInitiativeの中にいろいろな国に入って いただいて、新しい方法について、いつでもさまざまなプラットフォームでテストをして いただけるという状況が作れたということに関しては、ISCFもかなり高く評価。これは Peter W.Andrewsさんのリーダーシップのおかげだと思っているのですが、いま、若干1 年ぐらい置いてみようかという話になっているのは、いま古江さんがおっしゃったように、 これから1年というのは、いろいろな方法が出てくると思うのです。私が聞いているだけ でも、例えばもういくらでも増えて、一切染色体が影響を受けないというようなテクノロ ジー開発をして、まだ全部サブミットの段階みたいですが、そういうものがドッと出てく るということです。これ、いわゆるISOみたいなものですね。即ち、ある方法を使えばみ んな同じようなところにいくのではないかという期待があるので、若干多くなる。  ただ、残念ながら、ヒトのES細胞というのは、マウスのES細胞と違って、基本的には ちょっと進んだものですから、染色体の構造がいわゆる堅いと。ですから染色体というか、 きちんとしたエピジェネティックメモリーというものが、もう成立しているために、対応 性が生まれてしまうわけですね。実際にヒトのES細胞ではノックアウトはしにくいです。 それは完全に染色体が軟らかくてオープンなマウスのES細胞とは違う。  ですから、いま2つのポイントがあって、1つは、新たな培養方法を開発しようという のが急速に進んでいますし、フィーダーはもちろんフリーでやろうとしているところがた くさんあるということ。もう1つは、マウスのES細胞に近付けられるかどうかが進むだろ うということで、今年はあったのですが、来年のInternational Stem Cell Forumはお休 みにして、再来年まで様子を見ておこうという話になっています。Initiativeはずっとプ ロポーズされているので。  ○永井委員長 ありがとうございます。ただいま、ES細胞の標準化の動きや、バンキング のシステム、外国の状況について、お話を伺いましたが、日本では今後どういう対応にな るのですか。この流れの中で国際協調していくということですか。 ○古江参考人 私どもも現在ヒトiPSの分譲を行っておりますが、一応このガイドライン を聞く前から同じことをやっていましたので、協力をしながら国際ガイドライン、あるい は、私もInitiativeのほうには毎回参加しておりますので、そういった情報を踏まえて品 質管理を行って、標準化を行っていきたいと考えております。 ○永井委員長 そこで検討されたことは、公表されているわけですね。Internationalの Forumで検討された事項についても公表されていますか。 ○古江参考人 Initiativeでまとめましたことは、これまでも『Nature Biotechnology』 にサマリーが掲載されていますし、フォーラムのホームページがありまして、そちらに生 データが掲載されています。 ○西川委員 ISCFのほうも、一応ウェブサイトがあって、しかも、それぞれの国がその中 にリンクを張っていて、そこで行われた報告はアクセスできるように、それから、全体の サマリーもアクセスできるようになっています。 ○永井委員長 どうもありがとうございます。海外での幹細胞研究については、今後の検 討の中で研究推進を目的とした指針の改正を進める必要があるということです。また新た な情報がありましたらお寄せいただきたいと思います。  議題の2に移ります。鹿野委員から「細胞・組織を利用した医療機器又は医薬品の品質 及び安全性の確保について」、ご講演をお願いいたします。 ○鹿野委員 資料3に基づいてご説明をさせていただきます。タイトルは「細胞・組織加 工製品の確認申請について」となっていますが、確認申請は、お手元に配付されておりま す資料集の中の参考資料5及び参考資料6にあります「細胞・組織を利用した医療機器、 医薬品の品質及び安全性の確保について」という指針がありますが、それに対する適合性 を確認するということです。それの評価について今日はご説明させていただきます。  2頁、簡単に私が所属しています医薬品機器総合機構、長いのでPMDAと呼びますが、こ れについてご紹介させていただきます。私どもの組織は独立行政法人でして、厚生労働大 臣の委託によって下記の業務を通じて、国民保健の向上に貢献しています。  1つが承認審査業務で、これは私が担当している部分です。もう1つが安全対策業務で、 いわゆる医薬品や医療機器の販売をした後の安全性情報に対応するところです。それから もう1つ健康被害救済業務がありまして、これは医薬品だけなのですが、副作用とか医薬 品による感染の健康被害に対して、医療費の支給等の救済を行っています。審査・安全・ 救済のトライアングルということで、国民の保健に貢献するというものです。  職員数はありがたいことに独立行政法人の中で唯一増員が認められていまして、2004年 の設立時256名から今年4月で521名と、倍以上増員させていただいています。さらにま た医療機器のほうの増員等も予定されています。欧米の審査機関等に比べると、やはり人 手が足りないということで、外部の専門家の先生方を登録させていただいて、審査等ご協 力をいただいております。  我々は薬事法という法律の下で仕事をしています。薬事制度の変遷ですが、世界的に、 医薬品の開発・使用に関する膨大な経験から学んで、薬事制度というものが整備されて、 現在も改善が継続されているところです。日本の場合はいくつか薬害の例を挙げておきま したが、皆さまご存じだと思います。何かあるたびに、薬事制度が改善されてきて、現在 の制度が出来ております。直近では感染リスクが非常に重視されているところです。  右に「誓いの碑」を載せておきましたが、副作用被害について忘れないということと、 これからも健康被害が発生しないために努力をしていくという碑が厚生労働省の敷地にご ざいます。これが造られたのが薬剤根絶の日8月24日で、昨日、PMDAでも理事長訓辞 がございました。こういうところで仕事をしております。  4頁です。規制というのは世界的に副作用被害を契機に作られてきたもので、世界的に も同じです。医薬品等の品質・有効性・安全性を適切に評価しないと、副作用被害が拡大 するということで作られた制度ですが、一方で、規制強化は開発期間の長期化、コスト増 大につながって、必要とする患者へ届くのが遅くなるということですが、良い薬を早く使 えるようにというのは共通の願いかと思います。  5頁です。薬事法の目的のところに、なぜこの法律があるかといいますと、そういう製 品の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、研究開発の促進 のために必要な措置を講ずるという二本立てになっております。セーフティーガードを維 持しながら開発も効率的に進めるというのが、この法律の基本的な考え方です。  6頁、細胞・組織加工製品の確認申請です。なぜこういう制度があるかといいますと、 まずこういう製品は、新規性が高いために、使用経験・情報の蓄積が少なくて、リスクの 予測が難しいこと。生きたヒトや動物由来の細胞・組織を用いていますので、例えば加熱 であるとか溶媒処理、精製でウイルス除去ができない、感染リスクが懸念される。したが いまして、原材料の管理であるとか製造工程の管理というのが非常に厳しくなるというこ とです。培養工程で細胞が変化したり、形質転換の可能性というリスクが特徴的にありま す。もう1点は、普通の医薬品の副作用や医療機器の不具合でしたら、医薬品であれば投 与を中止する、医療機器であれば取り外すことができますが、再生医療のこういう製品に ついては、それができない場合がほとんどだということです。こういう理由がありまして、 治験計画届、つまり臨床試験、人の治験を行う前に、被験者保護の観点から必要な製品の 品質・安全性を確認するという制度が確認申請であります。  7頁です。開発の流れでどこになるかといいますと、真ん中の「開発」という大きい青 い矢印の上が、通常の医薬品・医療機器の開発の流れです。品質試験をやり、非臨床試験 をやり、臨床試験に入るまでに治験届というものを最初に出します。そのうち、最初だけ 30日の調査をしまして、そのあとII相試験、III相試験と進むと、あと、n回届、簡単なチ ェックをさせていただく。そのデータが揃ったところで承認申請に至ります。  下段のほうですが、こういう細胞・組織加工製品の場合には、上乗せとしてその治験届 の前に[1][2]の確認申請をして、ヒトへの投与の妥当性を品質・安全性の面から確認すると いう制度です。なお、確認申請については、医師主導治験の場合は、その医師の方が確認 申請をすることになります。  8頁は、関連する通知などを羅列しただけです。主なものはお手元の資料集にも入って いるかと思います。  9頁、確認申請の評価ポイントです。品質、安全性、有効性、法令・通知への対応とい うことで、有効性だけ字が小さいのですが、あとでまたご説明しますが、有効性の比重が 少し劣るのだろうなと思います。それらの情報を踏まえて、リスクとベネフィットを評価 する。期待されるベネフィットから見て、リスクが受入れ可能かという視点で物を見ます。 評価する際には、こういう製品は非常にバラエティに富むために、それぞれの特性に応じ た評価が必要になります。したがいまして、この試験をやっていればオーケーというチェ ックリスト的な対応というのは非常に難しいと思っています。実測データに基づく評価が 基本です。これは、たまに、全くデータを取らないで、大丈夫ですという申請をされるの がよくあったりしますが、原則データを出していただくことになっています。  10頁です。製造管理と品質管理の目的と確認申請ですが、上は普通の承認審査のときの 視点です。承認審査では、品質、安全性、有効性を確認するとともに、一定の有効性・安 全性を担保する品質管理の方策を確認する。図のほうに書いておきましたが、品質という のは有効性と安全性を担保するための品質管理という考え方です。したがいまして、承認 事項というか、承認で薬事法の規定の縛りがかかる部分というのは、製造と品質管理の部 分が非常に大きいです。承認後の製造では、ロットごとにあるいは製品ごとにその有効性・ 安全性のチェックをする試験というのはなかなかやりづらいので、一定の品質でそれを担 保するという考え方です。いわゆるGMPとかQMSと呼ばれるのは、一定の品質を確保する ための手順や体制をGMPと言います。どういう品質を管理すれば有効性・安全性を担保で きるかというところはGMPではなくて、審査の中で見ることです。  下の確認申請は臨床試験に入る前の段階ですので、品質・安全性がメインになります。 原材料管理、製造工程管理、製品の品質試験を含めた品質管理の方策が、被験者の安全性 確保の観点から十分かということを評価します。主な視点としては、感染性因子への対処 が非常に大きいです。それから不純物、培地成分の残っているものとか、そういうものの 管理です。下は、可能な範囲で、一定の有効性・安全性を担保する品質一定性の確保とい うことになっています。図では、有効性のほうが少し小さい感じの視点です。  11頁です。品質の評価が非常に重いのですが、具体的に何を見ているかといいますと、 各製造段階の原材料について主な視点としては、ドナースクリーニング、動物飼育管理、 ウイルス試験等の原材料の受け入れ規格、セルバンクの解析・管理試験、それから重要な 試験については試験法のバリデーション、定量性とか再現性のデータも出していただきま す。製造工程については、もし感染性因子が入ってきてしまったときに、それをどの程度 不活化・除去できるかということ。それから、工程の処理条件とか中間体の管理の工程内 管理試験というところをチェックします。製造工程のバリデーション、これもあとでご説 明します。物レベルの中間体とか最終製品では、必要に応じて感染性因子の検出、ウイル ス試検などをします。規格及び試験方法としてよくあるのは、目的外の細胞が入っている か、目的の細胞がどれぐらい得られているか、不純物の管理等の視点で見ます。品質恒常 性も、こういう製品ですので、画一的な管理というのは難しいということはありますので、 可能な範囲で品質恒常性が担保できるか。それから先ほど申しました試験法バリデーショ ンということになります。  12頁に参ります。感染性因子についてのチェックがおそらくいちばん重い点のひとつに なりますが、規定の中で、いちばん重いものを出しました。生物由来原料基準というのが ありまして、左側は項目を並べたものです。通則、血液製剤総則、人由来製品原料総則、 動物由来原料基準というのがありまして、おそらく再生医療用とかですと人由来製品原料 総則。それから、フィーダーにマウスを使っていますと、動物由来原料基準。あるいは牛 血清の話ですと、その中の反芻動物由来原料基準に規定があります。下に書いてあります が、最終製品の細胞・組織だけでなく、製造工程において使用される血清、添加物、フィ ーダー細胞等についてもこの基準が適用されます。  具体的には、右側ですが、ドナースクリーニングの項目、何をすべきか。それから、ウ イルス否定試験としてどういうものをすべきか。感染性因子の不活化・除去としてどうい う方法があるか。説明と同意取得。無対価による提供。遡及体制を取ることが定められて おります。  右下に書いておきましたが、先ほども申しましたが、製造販売されるも、承認されたも のに適用される基準ですが、被験者保護の観点、実際に治験に使ったものと売られるもの が同じものでないと困るので、同等/同質性の観点から、治験品でも可能な限りは対応して いただくというスタンスです。できないものは、承認申請するまでに対応してくださいと いうことでお願いするケースもありますが、こういう基準に適合しないものを使う場合に は、同意説明文書にそれを書いていただくことをお願いしております。  次に、具体的な内容を挙げておきました。人細胞・組織製品原料基準ですと、採取時の 汚染防止、ドナー適格性、同意取得と無対価原則などです。反芻動物、牛ですが、TSE感 染リスクの高い部位の使用禁止、非発生国原産で、BSE発生国のものは使ってはいけない ということになっています。それから原産国や原材料にかかる記録保存など。これは、適 合しない原材料は絶対駄目ということではなくて、どうしても使わざるを得ないケースも あるので、そういう場合はその妥当性を承認書という法律の縛りがかかる基本的な文書が ありますが、そこの中にきちんと書くことになっています。動物細胞・組織製品原料基準 ですが、これも採取時のいろいろな手続とかが全部決められていますし、飼育管理の標準 手順書を作りなさいということも含めて書いています。  下に書いていますが、生物由来原料基準で求められるものと同等以上と確認されれば、 この規定を満たさない場合でも可能な場合があります。それはご相談いただければと思い ます。反芻動物由来原料基準、いわゆる牛由来のものですが、これはリスクに応じて適用 されるもので、実は非常に複雑です。例えば、セルバンクという製造の非常に上流の部分 などは、製品のほうに混入するリスクが低いので、そういうところでは、例えばアメリカ 産の牛血清を使っても大丈夫とか、いろいろな除外があります。それから苛酷処理をした もので、アルカリ処理とか、こういう条件で処理していれば、こういう規制は除外できま すよという規定があります。これは非常に複雑で、我々の中でも完璧に理解している人は いないので、1個1個これぐらいの束の通知を見てチェックしながらやっているぐらいで すので、不安な場合はご相談いただければと思います。  14頁は、品質管理でよくお尋ねいただくことをまとめました。個体間のばらつきがある ような製品の品質管理はどう考えればいいか。製品の特性解析結果、実際のばらつきの範 囲を踏まえて、有効性・安全性に与える影響を考慮して、可能な範囲でやってくださいと いうことです。できないことはお願いしません。こういうばらつきや分からないこととい うのは技術的にどうしても限界があるので、分からないことやできないことはリスクの1 つと我々は考えます。ですから、それに見合うベネフィットがあれば、それはオーケーに しています。  2番目に、確立された細胞表面マーカーや純化方法がない場合は、どうやって目的細胞 を管理すればいいでしょうかというのをよく聞かれます。これも、細胞や製品の特性解析 に基づいて、複数の指標を組み合わせることでなんとか一定性を保てないかを検討してい ただくということです。開発段階で適切な指標を設定できない場合は、候補となる指標に ついて情報を蓄積して、臨床試験の結果や承認後に有効性・安全性情報との関連性を照ら し合わせて、さらに改善していくことが重要となっています。  もう1つは、製造工程のバリデーションです。これもよくご質問をいただきますが、通 常の医薬品・医療機器のようなバリデーションを必ずしも実施できないということで、試 験検体を使った試験製造を繰り返して工程の妥当性を示し、製品の特徴、性質などを考慮 した製造管理・品質管理の方法を確立してください。これはQ&Aが出ていますので、もし ご興味があればご確認いただければと思います。  次に参ります。品質だけではなくて、非臨床の安全性試験についても評価をしておりま す。いわゆるGLPの遵守が基本は望ましいのですが、こういうものですので普通のGLPに 適合しない場合も結構あります。そういう場合には、承認申請時に不適合な部分、それが 試験全体に及ぼす影響の評価を書いていただければオーケーです。基本的には、GLPに則 れる部分は倣っていただくけれども、無理なところまではお願いしないというのがスタン スです。  それから、技術的に可能で科学的に合理性のある動物試験、in vitro試験を実施してく ださいということです。これも、本当にものによって全く違います。非細胞・組織成分、 工程由来不純物については、可能な限り理化学的分析を検討してくださいということです。 スキャホールドとかのケースです。それから適切可能であれば、動物モデルを使用。動物 モデルも、必ずしも使える動物モデルがあるとは限らないので、可能であればで結構です。  製品の特性に応じ、必要かつ適切な事項を評価ということで、例としては培養期間を超 えて培養した細胞で、形質転換が起こっていないか。サイトカインとか増殖因子の産生は どうか。それを入れることで、周りの正常な細胞・組織に悪影響を及ぼさないか。あとは、 今回もそうだと思いますが、細胞に外来遺伝子等が導入される場合には、例えばウイルス ベクターを使用したときには、ウイルス増殖はどうか、細胞の増殖性、腫瘍形成・がん化 ということも評価ポイントになります。  安全性については、非臨床のデータと品質を合わせて評価しますが、これで実際に想定 されるリスクを洗い出すという感じです。品質のほうからは、原材料の品質、製造工程の バリデーション、品質管理試験のところから不安、リスク因子を拾い出す。感染性物質の 混入についても見ていく。それから、不純物の混入。それと副作用・不具合の可能性は、 治験に入る前に臨床研究をやられている場合はその情報を出していただいたり、非臨床の 動物試験のデータ、in vitro試験、類似品の使用実績等を踏まえて、総合的に評価します。  18頁です。有効性はあまり重くないということを申し上げましたが、例えば、対象疾患 の妥当性、そのものを適用するのに目的に合う対象疾患かとか、期待される効果の程度、 期待される効果の持続期間、移植細胞の局在性ということを見ますが、それは動物のデー タであったりin vitroのデータであったり、臨床研究の実績あるいは類似品の使用実績と いうところで情報を提出いただいています。  19頁は、具体的に何を出せばいいのですかという質問。有効性は、通常臨床試験で確認 するので、その前の段階ではどこまでのデータが必要かというご質問ですが、そういう場 合は、実験動物で細胞などを用い、技術的に可能かつ科学的に合理性のある範囲で、機能 発現、作用持続性及び医薬品・医療機器として期待される効果を検討してくださいと。適 切な動物由来製品モデルや疾患モデル動物があれば、治療効果の検討に用いてくださいと いうことです。ただ、確認申請では、他の治療法と比較して、はるかに有用性が期待され るということが、国内外の文献や蓄積された知見等により明らかである場合は、必ずしも 詳細な実験的検討は必要ないということになっております。  20頁です。リスク・ベネフィット評価というのは、よくあるリスク管理の考え方です。 ベネフィットがどれぐらいあるか。リスクについても洗い出す。情報が不足していれば、 追加でどういう情報がいつ必要か。リスクとベネフィットと両方ですが、評価項目とか評 価方法が客観的で妥当か。その内容を評価して、リスクについては特に軽減措置やそうい う適切な対応が取れているかをチェックしていって、リスク・ベネフィットバランスから 見て、リスク受け入れ可能なら確認/承認というステップにいきます。  最後に、確認申請のときに治験プロトコールは見ないのかとよく言われるので、少し書 かせていただきました。治験計画と確認申請・治験届調査ですが、確認申請のときにはま だ治験計画が固まっていない場合も結構多いので、その時点での概略を出していただいて、 リスク・ベネフィットの観点から、対象疾患や使用目的が適切かを評価しています。明ら かな倫理上の問題や重大なリスクが懸念される場合は、そこはなんとかしてくださいとお 願いすることはありますが、選択・除外基準、評価項目等の具体的な内容については、一 切評価はしておりません。  確認申請が終わりますと治験届を出していただいて治験届調査が入りますが、そこでは 被験者保護の観点から、患者の選択・除外基準、安全性評価項目、安全性上の問題発生時 の対処、同意説明文書は確認します。ただ、有用性が実証可能かとか、客観的に評価でき るプロトコール等は一切見ません。あまりに気になるときはお伝えすることはありますが、 原則見ません。そういうデータパッケージや治験実施計画書の妥当性の確認が必要な場合 は、対面助言というか、こちらの相談事業をご利用いただいております。  最後は、少し宣伝をさせていただきます。うちでは相談制度というのがありまして、先 ほど言いました試験計画の中身は対面助言でご相談いただくことになります。あるいは確 認申請も含めて申請資料とか、品質試験は何をしたらいいですか、安全性試験は何をした らいいですかという相談を受けております。この細胞・組織製品については、資料整備相 談という有料ですが、非常にお安い枠の相談もありますので、是非ご利用いただきたいと 思います。事前面談というのは、そのための準備の面談ですので、無料のところだけで終 わらせる方も多いですが、ここではあまりきちんとした結論は出ませんので、是非きちん とした相談をご利用いただきたい。ほかにもいろいろな相談の枠組がありますので、何を どう相談したいかというのは予めまずはPMDAにコンタクトをいただくと、こういうふうに やったらいいですよというサゼスチョンができると思います。  確認申請は非常に時間がかかるとか、ハードルが高いという噂が結構出ていますが、人 も増えましたのでなんとかもっと短くなると思います。ただ、データを取らずに申請され たりすると、データを取ってくださいということで何年もかかってしまいますので、その 辺は予めご相談いただけると結構早いのではないかと思います。以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見をいただけますか。 ○梅澤委員 わかりやすい説明をありがとうございます。このQ&Aというのは、自己指針 又は同種指針と付いているものでしょうか。それとも、全く公開されていないものでしょ うか。 ○鹿野委員 公開はされております。別の日付になりますが、事務連絡という形で出てお ります。 ○梅澤委員 それは、ガイドラインに比較的近い形で、これをオフィシャルなものとして。 ○鹿野委員 そうです。 ○梅澤委員 そういったときに、前回早川参考人から、医療法でも薬事法でも解決すべき 課題は同じであって、本来同じレベルの規制がかかるべきであるという非常にわかりやす いご意見をおっしゃっていました。こういうもの自体(Q&A)は、非常にありがたく、わか りやすい。また、細胞調整においてオーバースペックになりがちなところがあります。申 請者側にとって優しいガイドラインにするために、今回のヒト幹指針にこのQ&Aを付けら れる可能性はあると思っています。鹿野委員はどのようにお考えでしょうか。 ○鹿野委員 たぶん皆さん、非常にお役に立つのではないかと思います。私はそのQ&Aを 作るというのは賛成です。 ○梅澤委員 もし可能であれば、その方向で事務局ないしは委員長のほうでご検討いただ けたらと存じます。また、データを出すために1年程度かかるといったようなことで、も しこれもヒト幹指針の委員会からコメントが文字面で来たときに、どこまでのデータを出 せばいいか難しいところがあります。それも薬事法上でこのような形でできているのであ れば、是非ヒト幹指針のほうでもそのような事前相談、有料でも無料でも結構ですが、コ メントをした委員に来ていただいて、お話をお伺いしたいところもあるのかなと考えてお ります。  また、最後にリスク・ベネフィットの評価があります。リスク・ベネフィットについて、 指針にはなかなか書き込みにくいところがあると思いますが、それについてもヒト幹指針 のほうにQ&Aないしは細則等に、リスク・ベネフィットに基づいてバランスを見て、リス クを受け入れる可能性があるということも、見直して書き込める可能性があると思ってお ります。 ○永井委員長 いかがでしょうか。これは、外国と比較して審査体制はどうなのでしょう か。 ○鹿野委員 人手は全然足りないです。FDAのほうは10年前ぐらいに私行っていたことが ありますが、その際は遺伝子治療と再生医療と同じ部署でやっていましたが、その当時で も100人以上いました。いま我々は10人ちょっとでやっております。先日話を聞いたので すが、こういうアドバンストセラピーはEMEAの中央審査ですが、実際に審査を担当するの は各国の規制当局から担当者をノミネートしてやっていますので、トータルで関与できる 人間の数はたぶん数百人にのぼるのだと思います。 ○西川委員 いまでも、例えばPMDAには企業からの人員は受け入れられないのですか。た だFDAはできますよね。 ○鹿野委員 企業に籍を置いたままは無理だと思いますが、企業出身の方でも可能です。 ○西川委員 出向でもいいけれども、それはできるわけですか。 ○鹿野委員 はい。いま現在も、PMDAも企業をやめていらっしゃる方については、就業制 限が一部かかるところはありますが、それは可能です。 ○中畑委員 いま走っている幹細胞の指針で審査をされて、実際臨床研究という形でやら れていますが、そこで得られたデータを治験という形のところに持っていくときに、是非 役に立つような仕組みにしていただけないか。要するに、治験での申請と、いまの臨床研 究の指針に基づく臨床研究との間に全く整合性がないので、もともとこの指針を作ったと きも一応ベースの薬事法に則る形で、できるだけ安全に細胞処理して作って患者に投与す る形で出発しているのです。そうであれば、臨床研究で得られたデータというのを、是非 臨床治験のときに役に立つような形にできないかという要望がかなりありますが、その辺 については機構としてはどんな感じですか。 ○鹿野委員 一応、承認申請に必要なデータにはいろいろ決まり事があるので、治験でな いものについては申請資料の評価資料としては利用できないですが、参考資料としてお出 しいただくことはもちろん可能です。ただ、その臨床研究のデータのみで評価するという のは難しいと思います。 ○永井委員長 それは、まだデータが足りないということでしょうか。 ○鹿野委員 といいますか、治験に求められるいろいろな決まり事のうち、審査の影響が 多いのは、客観性の担保と遡って確認できるかということが非常に大きいです。そうしま すと、モニタリングの体制、監査とか、そういうところまで遡って申請後に実地調査で病 院等施設に入らせていただいていますので、そういうところで実際に手続をきちんと取っ て、データが収集されたことを確認した上でないと、評価資料には使えないことになって おります。 ○永井委員長 確かに、都合のいいデータだけが実験ノートに残っていたら問題ですね。 ○澤委員 いまの議論は非常に重要ですが、そういうところをしっかりしておけば、かな り治験に有用なデータというか、参考のデータとして使っていただける可能性はあるわけ ですね。 ○鹿野委員 ただ、どこまでそれが担保されているかというのが確認できないので、そう いう場合は最初から治験にチャレンジしたほうがいいかなという気はします。 ○澤委員 よく言われます。 ○永井委員長 もっとデータセンターが普及して管理もしっかりしてくると、信用性が高 まるのではないかと思います。 ○澤委員 そのあたりは重要ですよね。せっかく国で審査して、ヒト幹細胞の臨床研究が 始まって、それが客観性が低いとかを言われると、非常につらいところがあると思います。 ○永井委員長 データが研究者のパソコンの中だけで管理されているというケースは多い のではないかと思います。 ○鹿野委員 ただ、確認申請を見ているときに、例えば臨床研究である程度の方にもヒト に投与した実績があるというのは1つの強みですね。ヒトに実際に使われて、この程度の 副作用でしたというのは非常に重要な方法ではあります。それから、こういう新しいもの ですと、一発でうまくいくという臨床データパッケージは非常に難しいので、そうすると 探索的にいろいろな試験をまずやって、条件をある程度絞り込んでいくという過程が必要 になりますが、その際本来であれば治験でやっていただく一部を、臨床研究のデータを用 いて、その治験の計画を作っていくことには役立つかと思います。 ○山口委員 そこで、澤先生のご意見にいまの話がすごく関わってきているところがあっ て、鹿野委員が言われたところはまさしくそのとおりですが、例えば臨床データが今度は 治験のときの製法とか確認申請が同じでないと、結局使えないのです。その辺は合わせて いただかないといけないので、臨床研究をやるときに将来治験のほうに持っていくのだっ たら、そこを視野に入れてやっていただければと考えております。実際そこがスムーズに いけば、確認申請と臨床研究が1つのシームレスにいける可能性もあるだろうと思います。 ただ、その製法が変わってしまったりすると、評価ができなくなってしまうだろう。  1点だけ、たぶん答えがわかっているような話を聞きます。前から非常に気になってい るところで鹿野委員に聞きます。ヒト幹指針の4番目に「品質等の確認」ということで、 「ヒト幹細胞臨床研究に用いるヒト幹細胞は、少なくとも動物実験において、その品質、 有効性及び安全性が確認されているものに限る」という確認申請のスタンス、逆に言うと ここのほうが非常に厳しくなっている。その辺は治験をやる、審査をする立場として、ど う思われるかを教えてください。 ○鹿野委員 具体的に、ヒト幹のほうで動物実験で何をやっているかというのはあまり詳 しくは知らないですが、有効性の確認がされているにこしたことはなくて、我々もそのデ ータがあれば出して欲しい。けれども、実際にヒトの細胞を動物に投与するというのはご 存じのように無理がありますので、ヒトのモデルを動物で作って見ていただくというのが 多いですが、それでも適切なモデルがある場合のほうがむしろ少ないので、そういう場合 にはできる範囲で結構ですということです。努力して作っていただくのは非常にいいです が、そのモデルの妥当性を突き詰めていくと、結局モデルを作る大変さと得られる情報、 判断に必要な情報とのバランスを見たときに、見合うものかどうかということも検討する 必要があるのだと思います。 ○山口委員 この件については、前からヒト幹指針で臨床審査のときに、動物実験を必ず 求めるとすると、例えばMSCですが、いまアメリカでオサイリスがやっているようなもの は、動物実験をやっていないです。それでも、一定の評価ができている状況の中で、必ず 動物実験を求めないといけないかというところについて疑問を感じております。 ○西川委員 ただ、たぶんそれはケース・バイ・ケースで、かなりチャレンジングなこと をされようとする場合は、その方が細かい点まで考えて難しいということも含めてやって いただかないと、そこで1回引っくり返ってしまうと二度とできなくなる厳しさはそれぞ れが認識していただくという原則の上で。ですから、どうもないですよという話を先にし てしまうと難しいところがあるかなと思います。たぶん他のES細胞でやろうとしている人 たちは、そこは十分理解されていると思います。それこそ動物実験から何からサロンも含 めて、やる意味があるないは別としてやる。しかし、将来はどうかという話になると、そ こは別ですね。  もう1つは、本当の治験になっていくときに、日本型のものを考えていかないと駄目か なと思うのは、いまヨーロッパでハンチントンの脳細胞移植の臨床治験が始まっています。 ダブルブラインドでやっていますよね。だから、本当にそういうことをやるのかどうかと か、これからきちんと決めていかないと、外国でやっているから日本でそれでできるのか というと、たぶんできなくなる可能性は多いかなと。 ○永井委員長 ここのところは、不可能でなければ少なくとも動物実験においてと読んで いただければよろしいと思います。後になって動物で実験せよという話になって有用な臨 床研究がストップしてしまうのはどうかという気がします。 ○梅澤委員 もし可能でしたら、ただ今のご議論もQ&Aに書き込んでいただければ嬉しく 思います。 ○永井委員長 まだ議論があろうかと思いますが、さらに機会を捉えて議論を深めたいと 思います。今後のことですが、ここまでのまとめを幹細胞臨床研究における審査のあり方 ということで、事務局で整理していただき、次回以降に改めて論点提示をお願いしたいと 思います。なお、次回以降の会議で引き続きES細胞とiPS細胞の安全性・倫理性について ご議論いただく予定です。  時間が遅れてしまいまして申し訳ありません。議題3「指針の見直しに関する概要につ いて」、事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局 資料4-(1)(2)を用いてご説明します。これは、現行の指針に書いてある基本原 則第1章の第5に書いてあります。原則として、1〜7が現在記載されています。ヘルシン キ宣言が昨年改正されまして、そういった内容を踏まえまして順番などを少し整理しまし た。ヘルシンキ宣言のAに「序文」というのがありますが、そこに書いてある部分を先に 持っていきまして、Cに書いてある「治療と結びついた」という部分、追加の原則ですが、 それを次に記載しております。また、その他の臨床研究に関する一般的な事項として、B の項目を4、5、6、7の順番で整理しました。また、一部内容について皆様のご意見なども 伺った上、これはこちらの案の形で提出させていただいております。  1番目は、倫理性の確保という当然生命倫理を尊重しなければいけないということを第1 原則として、上に1と書いています。また、2、3などは、有効性及び安全性の確保や品質 等の確認といった部分について記載されていまして、ただいまご議論がされた部分になり ますが、2については治療により得られるリスクが不利益を上回るといった内容なども書 き込んだほうがいいのだろうかというところを検討していただきたいと考えております。4、 5、6、7は、それぞれヘルシンキ宣言に基づきまして、多少内容を変更しているところが あります。つい先ほどご議論いただきました左側の4に書いてありますが、「品質等の確認」 のところで、少なくとも動物実験においてという項目、こういったところをどのようにし たほうがよいかというところをご議論いただきたいと考えております。以上です。 ○永井委員長 少し順番を変えて、なおかつ文言も修正されておりますが、いかがでしょ うか。 ○武藤委員 案の4の「被験者等のインフォームド・コンセントの確保」ですが、インフ ォームドコンセントを受ける人は、元の案のほうも医師又は歯科医師でなければならない というのが原則になっていますが、なぜ医師、歯科医師なのでしょうか。当時、もともと のヒト幹指針を作ったときの経緯を存じないのでよくわからないのですが、臨床研究の指 針のほうは「研究者等が」ということになっていて、特に縛りがないことと、ヘルシンキ 宣言も「医師又はほかの適切な有資格者は」ということになっていますので、これはどう してなのか。もし委員の方か事務局でご存じでしたら。特に明確な理由が見当たらないの であれば、医師、歯科医師に限定する必要は本当にあるのかというところが疑問に思いま す。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○事務局 そういった経緯はわからないですが、基本的には医師としてと書かれていまし て、細則として細かく、治療によっては歯科医師が行う治療もありますので、そういった 場合にはという限定付きで、歯科医師のほうも付け足している形にはなっています。 ○武藤委員 研究のときのインフォームド・コンセントをどなたが取るべきかということ を考えたときに、主治医がいい場合とデメリットがある場合とありますよね。この場合は 主治医が研究されることが結構あると思いますが、その当事者が説明して同意を受けるこ とが本当に望ましいかどうかという点に疑問を感じますし、実際にインフォームド・コン セントをされていらっしゃる研究者の方々のお話を聞くと、どうしても熱が入った説明を ついついしてしまう。それは熱意が伝わるといういい面と、断りにくくさせているという マイナスもありますので、コーディネーターの活用とか看護師、ほかにも守秘義務がかか る方がいらっしゃいますので、そういった職種を活用していただくこともありなのではと 思いますが、いかがでしょうか。 ○永井委員長 現在はインフォームド・コンセントの宛先は医師あるいは病院長であるこ とが多いですね。ただ、実際に説明したりその書類を受け取るのはコーディネーターであ ったりすることも結構あります。その辺のあり方をどうするかということでしょうか。 ○位田委員 現行の指針の18頁の第3章第1の2は、ゲノムの指針のときも話がありまし たが、その説明を誰がするかという話と、インフォームド・コンセント、同意を受ける人 は誰かという話と二段構えの形になっていて、この指針のほうでも第3章第1の2の上か ら4行目ぐらいのなお書きで、「なお、説明者は原則として医師であるが、最初にかかる医 療行為の程度の云々で、研究責任者が誰か適切な人を指名して、その人に説明してもらう」。 説明は医師以外でもいいけれども、同意を受け取るのは医師であるという形なので、基本 原則で書いたときはたぶん医師だという形になったのだろうと思います。私も議論はして いましたが、あまり深く記憶はしていません。しかし、たしかそういう話はあったと。 ○永井委員長 この「受ける」という言葉の意味を、もう少し明確にする必要があります。 ○町野委員 私は若干記憶にありますが、これを議論したときに、医師法のことが皆さん の頭の中にあったのは間違いないですが、それはおそらく無関係の話だということを私は 申し上げました。つまり、医行為的に介入することについては医師がやらなければいけな いですが、そしてそれについては説明と同意がなければいけないというだけの話ですから、 それを誰が説明して誰がやってということについては、必ずしも医師である必要はない。 そしてヘルシンキ宣言のほうでは、多くは医師がやるだろうという意思があって、要する にインディペンデントにかなり重点があって、きちんと説明できる人間でなければいけな いというので有資格者(qualified)ということになっているだけの話ですから、これが医師、 歯科医師に限ったというのは誤解ではないかといちばん最初からそう思っていました。そ れはいま武藤委員が言われましたとおり、再考の余地があるように思います。看護師でも おそらくいいだろうと思いますし、いろいろと議論はあるだろうと思います。 ○位田委員 この指針ではありませんが、ゲノムの指針を議論したときも同意を受けるの は医師だったと思います。説明は必ずしも医師ではなくてもいいという形でしょう。それ と同じような形だと思います。守秘義務がある人という書き方だったと思います。もとも とそういう議論があって、それが引いてきているのかなという気がします。 ○町野委員 それは、あまり意味がないと思います。守秘義務が書けるのが医師だと。 ○位田委員 そうではなくて、そのときはそういうふうにして決めたのだろうということ です。 ○澤委員 我々手術なり心臓移植なりも含めて、こういうICは非常に重要ですが、受ける 立場の患者サイドから見たら、責任者として誰がやってくれるかということですよね。そ うした場合に、ここに書いてある文章がインフォームドコンセントを受ける者はというか、 インフォームドコンセントを受ける側としたら、医師を対象として、説明する人はもちろ ん看護師でもコーディネーターでもいいし、段階を追っていると思います。大体1回でこ れをやらないです。最終的にはインフォームドコンセントの相手というか受ける側の立場 の人は、医師という感じではないかと思います。逆に言うと、ここに「等」でもいいです が、そうなるとインフォームドコンセント先の人は看護師、コーディネーターでもいいと いうことになるわけですか。そういう感覚ですか。これは説明する人がという感覚ではな いですよね。そこはよくわからないですが、基本的には重要なというか、いろいろな臨床 試験のときに説明するのは医師がするのですが、そのときに要旨の宛先は確かに永井委員 長がおっしゃったように医師宛ですよね。その人のことを言っているのではないですか。 わかりにくいです。現場でそういう印象が。 ○町野委員 どういう具合に書面を扱うかは、おそらくインフォームドコンセントの宛先 は医師ではなくて、研究の実施者だと思います、研究の責任者ですから。要するに同意を 取ってやらなければいけない。インフォメーションのところに意味があるわけではなくて、 コンセントに意味がある。 ○澤委員 いずれにしろ研究者も含めて医師は、私は同じなので。 ○町野委員 その研究の責任者が医師ではないこともあり得るだろうと思います。大体そ うですか。 ○澤委員 医師でしょう。 ○町野委員 医行為をやる人間は、具体的には医師でなければいけない。しかし、研究全 体を束ねている人間というのは、そうでないこともあり得るわけでしょう、理屈としては。 ○永井委員長 臨床研究ですからね。 ○澤委員 医療の研究ですのでね。 ○町野委員 研究責任者に対して同意を与えるというので、基本的に受けるほうは研究の 責任者のほうですね。それを説明するのは、おそらく誰がやってもいい。もちろん、能力 のある人間がやらなければいけないだろうと思いますが。 ○澤委員 これは、説明する人のことを言っているわけですか。インフォームドコンセン トを受けるものは。 ○位田委員 おそらく説明はどなたかがやられて、医師がやる場合もあれば看護師でもあ り、コーディネーターでもいいと思いますが、「いいですね」という最後の同意を受ける方 は、医師でないといけないという話です。 ○永井委員長 これは医療に関する研究なので、かなり必然的に臨床研究に対しては医師 が責任者になっているはずです。アイデアは全然違うところから出てきても、それを病院 として受けるわけですね。そのときには、必ず臨床研究の責任者はアイデアを出した人と はまた別に、医師または歯科医師が主体になって実施することになると思います。ただ、 実際には患者さんに対面して説明をしたり書類を受け取ったりするのは、むしろ医師でな いほうがよい場合もあるかもしれません。しかし、臨床研究であるということから、どう しても主体は医師もしくは歯科医師ということだと思います。もう1つは、病院長宛とい う可能性もあります。病院長が病院内で行われる臨床研究の責任を取るという形です。 ○町野委員 ご説明は大体理解しますが、コンセントを与える相手は研究の責任者ですよ ね。その研究の責任者が、おおむね現在のところ医師が中心になっているというだけの話 で、理屈は、医師に対して同意を与えるという話ではないと思います。 ○永井委員長 書き方の問題ではないのですか。 ○町野委員 書き方といいますか、基本的に、人に対して影響力を持つような行為をする のは医師でなければいけない。それは医師法の規定ですよね。その問題と、いまのときの コンセントを与える相手の問題とは別で、それからインフォメーションの問題とコンセン トの問題はまた別であって、大体おっしゃることはわかります。だから、医師に対してと いうのはどう書くかということは別ですが、必ずしも医師という資格を持っている人に対 して直接与えなければいけない、その人が受けなければいけないという話ではないわけで す。医師ではない人間が研究をやるのは不適当だという話と、インフォームドコンセント を受けるのは医師でなければいけないという問題とは別の話だと思います。 ○西川委員 しかし、ここを見ていると、いま永井先生がおっしゃるように、現実はほと んど医師が受ける形になると思います。幸いここは「原則として」と書いてあるから、現 実的ではないかなという感じはしますが、そういうケースがあれば必ずヒト幹にかかるわ けですから、そこで議論していく。排除しないということは4でもいいのではないか。い まおっしゃったいろんなアーギュメントに関しては。もし、絶対に医師に限るということ であれば、「原則として」というのを外すべきです。 ○永井委員長 それ以外の状況があり得るかということですね。実際には、ほとんどない と思います。 ○位田委員 いまの指針の中では、研究責任者の責務というのがあって、7頁ですが、「研 究責任者は1件のヒト幹細胞臨床研究について、1名とし、次に掲げる要件を満たす者で なければならない」というところで、[1]「ヒト幹細胞臨床研究の対象となる疾患及び関連 する分野について、十分な科学的知見並びに医療上の経験及び知識を有していること」と、 医師でないといけないということは書いていないので、基本的には医師だという理解で議 論はしていたような気はしますが、必ず医師でないといけないということで決めたかとい うと、そこは定かではありません。場合によって研究責任者の、医療上の経験というのは 医師と同じ意味になるかどうか。医学研究はやっているけれどもMDではないというケース は想定し得るかもしれないので、それで「原則として」というふうにしたのかもしれませ ん。 ○永井委員長 おそらく、これは医療行為を誰が担うかという問題になってくるのだと思 います。いまは、医師が医療行為を行うことになっています。例えば法律が変わって、医 師でなくても医療行為ができるようになると違うかもしれません。その場合はここの書き 方が変わってくると思います。 ○位田委員 付け足しですが、細則のところで、研究責任者が十分な医療上の経験や知識 を有していない場合はということで、十分な臨床経験を有する医師が当該ヒト幹細胞臨床 研究に参加していなければならないということですので、研究責任者は絶対に医師でない といけないとはしなかったと思います。そうでなければ、研究責任者は医師でなければな らないというのは、どこかに1項入っているはずですが、そういうふうには書いていなく て、確かに、私もおぼろげながら記憶していますが、責任者は医師でないといけないかと いう議論はやったと思います。医師でないケースもあり得るので、そのときは必ず医師が 入っていないといけないという議論はしたように記憶しております。 ○千村課長 今日は基本原則の案としてお示ししておりますのは、あくまでも考え方とい いますか、整理の1つの例としてお示しをしております。現行の指針における考え方も含 めて、もう一度いまの医師であるとかその研究者、この中では被験者と提供者が異なるよ うな場合に、主治医と研究者との関係であるとか、いろいろ考え方を整理する必要がある と思いますので、もう少し考え方を整理しまして、もう一度お示しをさせていただいて議 論をすることにさせていただくといいのではないかと思います。 ○永井委員長 今日は始まりというところで、かなり時間をかけて議論をしないといけな いと思いますので、今後にお願いしたいと思います。  それでは、これまでの議論の概要を事務局からご説明いただけますか。 ○事務局 資料5の2.からについて、現在のこれまでの検討概要について簡単にまとめて います。簡単に説明しますと、2.は検討すべきポイントについて、1〜9まで記載されてお ります。また、その番号の下の(1)(2)に、現行の指針及びいままでの検討で、大体コンセ ンサスが得られたところをまとめて書いております。また、十分議論がなされていないと ころについては○で書いております。例えば2頁にも、こういった○で内容が書かれてお りまして、いつの委員会で議論がなされたかといったことが書かれております。これにつ いては、まだまだ議論が必要かと考えていまして、整理する方法として(案)をこちらか ら提示しております。例えば2頁の、案)ヒト幹細胞等の概念で考えるときに、いままで ヒト幹細胞のごく一部のみを対象としていましたが、原則としてはすべての細胞が入るよ うな形に変えて、その中で細胞をヒトに投与するのが適切でないといったものを、すべて 禁止していくような形にまとめていくような整理をしていきたいと考えております。  時間がありますので、簡単に説明します。1枚目です。「指針の適用範囲」としては、か なり広範囲なものを、もちろんヒトに投与するものを対象とすることは変わっておりませ ん。対象としないものとして、いくつかこういうふうに記載をしていく。ほかに必要なも のがあれば、追加していくような形で議論をしていただきたいと考えております。  2は、今回「ヒト幹細胞等」と付けましたが、現行の指針ですとヒト幹細胞の中に幹細 胞及び幹細胞を多く含むもの、もしくはそれから分化したものなどがすべて入っている形 になって、曖昧なところがありましたので、幹細胞の定義をしっかりして、ヒトから採取 された細胞で多分化能と自己複数能を維持しているもの又はそれに類する能力を有するも のというふうに、しっかりと定義をする。さらに、そういったものを多く含むもの、もし くは培養して得られたような細胞を、「ヒト幹細胞等」というふうに定義しておいたほうが いいのではないかと思っております。  いくつかの意見が出ていますが、先ほどお示ししましたように2の案として、そういっ たヒト幹細胞を指針としては体細胞だけに絞っていくわけではなく、さまざまな幹細胞を 含めていく。これは例ですが、クローン技術などによるクローン法に規定される特定胚と いったものは、まだまだ人に投与する段階でなく、投与をしてはならないと記載をしてい く。今後の議論によってはES、iPSなども、そういった形で記載をしていく必要があるだ ろうと考えております。  3は「対象疾患等」と書いています。対象疾患も現行の内容を書いていますが、現行の 内容ですと、どうしてもハードルが高く、なかなか臨床検査に進むことができないといっ たような問題もあります。また、逆に今度は、かなり進んだ幹細胞治療であるがために、 安全性をさらに担保しなければいけない。または、細胞を少量だけ投与する。かなり安全 が保たれていなければならないものを対象にしなければいけないといった両面の方向が、 まだまだ臨床研究にはあるのだろうと考えまして、案としては指針の適用範囲は、かなり 広範囲なヒト幹細胞治療の対象となり得る疾患が入ります。そして、実際に新たにそうい った細胞を用いる場合に関しましては、対象疾患や推奨される治療、安全を確認する方法 等は、細則やQ&Aに記載していく方法があるのではないかと考えております。そういった 形で4〜8にそれぞれ記載をさせていただいて、皆様のご意見又はこちらの案という形。そ れに対する対処方法などについてこちらの考えとしてまとめています。  5頁の3は「今後、検討すべき論点について」、現在は検討段階ですが、ES細胞やiPS細 胞などについても、さらに今後いろいろご議論をした上で、指針の適用とするべきかどう か結論を得ていきたいと考えている次第です。 ○永井委員長 ありがとうございます。これは新旧対照表がないとなかなかわかりにくい かもしれませんが、お手元の資料をご覧になりながらどこからでも結構ですので、ご意見 をいただけますか。 ○町野委員 お教えいただきたいのですが、「指針の適用範囲」の書き方で、薬事法と[2]の 一般的に行われている医療行為が除かれているというのは、幹細胞を使う行為で薬事法に 既に入っているものとかがあるということが1つですよね。例えば、どういうものがそう でしょうか。 ○事務局 私よりも鹿野委員のほうがおそらく詳しくご存じだと思いますが、海外の体性 幹細胞では、骨髄間葉系細胞を用いて、既に治験が開始されているということを聞いてお ります。 ○町野委員 [2]のものとしては、どのようなものが。 ○事務局 これは、骨髄幹細胞がこちらにありますように、既に臨床がされている。 ○町野委員 主に骨髄幹細胞みたいなものを頭の中に置いておくという話ですか。 ○事務局 そうです。 ○町野委員 わかりました。どうもありがとうございました。 ○永井委員長 造血幹細胞は、一般医療になっているわけですよね。そういうのはこれに 適用にならないということですね。 ○山口委員 前から少し気になっているのは、例えばがん免疫細胞治療のような行為はこ のような幹に入ってきませんよね。例えば、それを医薬品とする場合には当然審査をしま すが、それがこのヒト幹でも医薬品でも外れてしまっている。確立された療法とも言えな い状況ではないかなという気がしていて、そういうのを本当に今後審議の中に含めていく べきではないかなという気がしています。例えば、ヨーロッパではいま細胞治療でいちば ん多いのは、がんの細胞免疫療法です。それがマーケットとしてはいちばん大きな状況に なっている。日本の場合には、ヒト幹細胞の臨床研究の中では審査から外れてしまってい る。その辺もちょっと。 ○永井委員長 いまは全く審査されていないということですね。 ○千村課長 整理としては、原則としていちばん大きな枠組としては、臨床研究の倫理指 針があって、その枠組の中で対応できるものは臨床研究の倫理指針で対応する。それから、 例えば今回のように、その中で特に幹細胞を利用するような研究については、臨床研究の 倫理指針ではカバーしきれない特別に配慮する部分があるので、別途指針を作って対応す るということが基本的な考え方になるのではないかと思います。 ○永井委員長 何もかもだと、ちょっと広すぎてしまうでしょうね。 ○中畑委員 山口委員が言われた件は、日本では非常に大きな問題で、免疫療法と称して、 民間療法まがいのものが横行している。かなり高い費用を払って、本当に臨床効果がある かないかがわからないようなものが横行しているという問題、いろいろな所から指摘があ りますので、この指針にそこまでを含めるかどうかを含めて、1回は議論したほうがいい と思います。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○梅澤委員 「ヒトクローン胚由来のヒト幹細胞等を含めるか。含めない場合には、対象 外とするに禁止する。」という点に関しては、そのとおりだと思います。これは、皆さん異 論がないのではないかなと思っています。この案どおり、また例示についてもそのままで 行けるのではないかなと感じております。 ○永井委員長 ほかにご意見はありますか。今日は時間もあまり残されていませんので、 先ほど山口先生からご指摘があった免疫細胞、がんの療法についても少し議論をすること と、クローン胚のクローン技術の規制のところで、この投与が妥当でないと考えられるも のは禁止するという1項については、原則的によろしいだろうということですね。あとは、 何か確認しておきたいところはありますか。 ○山口委員 たぶん整理はできているのだろうと思いますが、先ほど鹿野委員が紹介され た中で遺伝子治療を行った細胞というのは、ex vivoの場合には細胞治療と遺伝子治療と 両方がかかっているわけですよね。遺伝子治療がかかった場合には、遺伝子治療の厚生科 学審議会でやられるのでしょうけれども、両方を別々に審査するのか。その辺は臨床研究 の中で、遺伝子改変された細胞治療というのは、もうそちらのほうに任せてしまうのか。 ○永井委員長 それは遺伝子治療でやっているのではないでしょうか。 ○事務局 厚生科学課とその辺の議論をしているところですが、特にiPSのような遺伝子 改変とか遺伝子を導入したような細胞で、実際に遺伝子が治療などに作用するという意味 合いでない場合には、それは遺伝子治療という概念ではなかろう。要するに、入れた遺伝 子が何かの作用をして病気を治すとか、そういった効果を発揮するものでなければ、それ は遺伝子治療の概念ではなかろう。ですから、iPSのような細胞を脱分化するという特殊 な治療は含まれないと考えている。 ○永井委員長 でも、遺伝子を入れるということは、その機能を期待しているわけですか ら、やはり遺伝子治療に近いのではないでしょうか。 ○事務局 そういう概念にもしなるとすると、それは危険というか違う概念になりすぎる ので、遺伝子治療のほうからは外していくかもしれないということを考えている。まだ検 討中ということです。 ○永井委員長 いまはまだ幅広に取っています。この間、東大病院でも遺伝子改変された ヘルペスウイルス療法というのがありましたが、それは遺伝子治療のほうで審査されまし たので、あれが本当に遺伝子治療なのかどうかというのは議論があると思いますが、慎重 を期して遺伝子治療部会のほうで検討されたということです。 ○千村課長 いずれにしましても、また厚生科学課のほうとも議論はしていただきたいと 思います。 ○永井委員長 論点がいろいろ残されていますが、今日は検討課題の概要のご紹介という ところで、とりあえずもう少しこれをたたき台にして、次回以降に議論をしたいと思いま す。今日のご意見を事務局で整理していただくことと、次回の検討課題にしていただくと いうことですが、大体時間になりましたので、事務局から今後の予定等についてご説明を お願いします。 ○事務局 本日は誠にお忙しい中、また遠方よりご参加いただきありがとうございました。 本日の意見は事務局で整理をしまして、改めて呈示をさせていただきたいと考えておりま す。次回の委員会は、9月24日(木)の開催予定とさせていただいております。詳細につい ては追ってご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○永井委員長 以上をもちまして、今日の委員会は終了します。どうもありがとうござい ました。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 田邊 03(5253)1111(内線 2545)