09/08/24 第23回独立行政法人評価委員会年金部会議事録 独立行政法人評価委員会年金部会(第23回) 開催日時:平成21年8月24日(月)13:01〜16:39 開催場所:経済産業省別館1014号会議室 出席者 :山口部会長、川北部会長代理、竹原委員、樋口委員      安達委員、大野委員、光多委員 ○山口部会長  定刻になりましたので、ただ今から第23回「厚生労働省独立行政法人評価委員会年金部会」を開催 いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりをいただき、誠にありがとうござ いました。  始めに事務局から本日の議事につきまして簡単にご説明をお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  説明させていただきます。議事次第にありますように、まず、(1)年金積立金管理運用独立行政法人 に関しまして、財務諸表に関する意見、年金積立金運用報告書、総合評価、中期目標期間の暫定評価、 組織・業務全般の見直し当初案、役員給与規程の改正について審議を進めていただきたいと思います。 その後休憩を挟みまして、(2)年金・健康保険福祉施設整理機構に関しまして、財務諸表に関する意見、 総合評価、役員給与規程の改正について、審議を進めていただきたいと思います。  1つずつ説明させていただきます。(1)「財務諸表に関する意見について」は、担当委員である樋口委 員からヒアリングの結果を報告いただき、それを踏まえご審議いただきます。(2)「年金積立金運用報 告書について」は、後ほど所管課より説明がございます。(3)「総合評価について」は、前回の個別評 価の結果に基づき、起草委員において起草いただいた総合評価書の案について、ご審議いただきます。 また、皆様にご記入いただきました評定記入用紙及び評価シートにつきましては、ご参照いただける ようにお手元に置かせていただいております。後ほど、本日の審議等を踏まえまして、評定記入用紙 を確認いただく時間を設けさせていただきますので、よろしくお願いします。  (4)中期目標期間の業務実績の暫定評価の結果については、お手元の「独立行政法人評価関係資料 集」の17頁をご覧ください。「厚生労働省所管独立行政法人の業務実績に関する評価の基準」でござ いまして、当省の評価委員会が評価を実施するに当たって、この基準に基づいて行っているものです。  18頁の中段に、「3.中期目標に係る業務の実績に関する評価」がございます。19頁に(3)で「評価委 員会における評価の具体的な実施方法」。そして(1)に「評価結果を次期中期目標策定等へ反映させる 観点から、次の手順により中期目標期間最終年度において暫定評価を行うこととする。」とされてい ます。2つ目の「○」ですが、「暫定評価に当たっては、各部会において法人からヒアリングを実施し、 本基準に基づき中期目標期間に係る一次評価を行った上で、総会において暫定評価を決定する。」と されています。つきまして、これまで各年度の業務実績の評価等を基に、起草委員の先生に暫定評価 結果(案)を作成していただきましたので、これについてご審議いただきます。  先ほど資料集に沿ってご説明申し上げましたとおり、暫定評価につきましては、年度実績評価と違 いまして、部会において暫定評価結果(案)を審議していただいたあとに、総会において最終的に暫 定評価結果を決定することとなっていますので、よろしくお願いします。  (5)「組織・業務全般の見直し当初案について」ですが、資料集の131頁です。独立行政法人の組織・ 業務全般の見直しについて整理しています。頁のいちばん上の「○」の所に、「独立行政法人の組織 ・業務全般の見直しについては、独立行政法人通則法第35条の規定を根拠とし」とありますが、第35 条については323頁になります。323頁の真ん中の所に35条があります。この35条の第1項において 「主務大臣は、独立行政法人の中期目標期間の終了時において、当該独立行政法人の業務を継続させ る必要性、組織の在り方を、その組織及び業務の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、所要 の措置を構ずるものとする」とされておりまして、第2項においては「主務大臣は、前項の規定による 検討を行うに当たっては、評価委員会の意見を聴かなければならない」とされております。  本日の部会では、年金積立金管理運用独立行政法人の「組織・業務全般の見直し当初案」に対する 年金部会としての意見をご審議いただき、その後8月27日の総会において決定していただくという流 れになります。  総会後の流れですが、131頁です。まず8月に「見直し当初案」を行政改革推進本部及び総務省の政 策評価・独立行政法人評価委員会、いわゆる、政・独委に提出いたします。その後、9月から11月に、 行政改革推進本部に意見を述べる有識者の会議である「行政減量・効率化有識者会議」の指摘事項を 踏まえまして、政・独委から各主務大臣に対して「各法人の主要な事務・事業の改廃に関する勧告の 方向性」というものが通知されます。  12月に各主務大臣は、この「勧告の方向性」を踏まえまして、「見直し当初案」を精査し「見直し 案」として再度、行政改革推進本部に提出することとなります。なお「勧告の方向性」を踏まえた 「見直し案」につきましては、今回の「見直し当初案」と同様に、本部会において委員の皆様にご審 議いただき、「見直し案」への意見を総会において決定していただきます。その後行政改革推進本部 の議を経て、政・独委の意見も聴いた上で、最終的に閣議決定されることとなります。  本日の見直し当初案については、現在、検討中のものであり、見直し当初案に係る資料につきまし ては、机上配付資料とさせていただいています。委員の皆様におかれましては、本見直し当初案の内 容について、対外的に公表されないよう、十分ご注意いただければと思います。  (6)「役員給与規程の改正について」です。両法人より、役員給与規程の改正に係る届出が厚生労働 大臣宛にされていますので、委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。  次に、先般、総務省行政管理局から、各府省の独立行政法人評価委員会の委員長宛に出された事務 連絡を参考資料1としてお手元にお配りしていますが、これの取扱いです。総務省が全法人の状況をま とめたものとして、ご参考までに送ってきたものと認識しています。これにつきまして、当部会にお いても前回までにご審議いただいた中で、法人や所管課から特にラスパイレス指数についてご説明を させていただいています。特にご覧いただきたいのは、7頁の「資料1職位の給与水準」がありますが、 これにつきましては、対国家公務員指数(年齢勘案)として、平成19年度と平成20年度を比較した数 値、それから、対国家公務員指数(年齢・地域・学歴勘案)として、平成19年度と平成20年度を比較 した数値を整理したものとなっています。総務省において、全独立行政法人について一斉に整理をし たものです。議事については以上でございます。 ○山口部会長  それでは議事に入りたいと思います。まずは、総合評価書、財務諸表に関する意見につきましては、 起草委員の先生方、お忙しい中、ご尽力をいただきましてありがとうございました。はじめに(1)「年 金積立金管理運用独立行政法人について」審議いたしたいと思います。まず最初に(1)「財務諸表に関 する意見について」審議に入ります。財務諸表につきましては、独立行政法人通則法第38条に基づき まして、独立行政法人評価委員会の意見を聴いた上で、厚生労働大臣が承認することとされておりま す。財務諸表につきまして、担当の委員である樋口委員からご説明をお願いいたします。よろしくお 願いいたします。 ○樋口委員  財務諸表についての検討は、今月の3日に当独立行政法人の分は1時間ほどご説明を伺いまして、そ れから、事前に送っていただきました監査法人及び監事の意見書の付いた財務諸表がありました。1時 間の説明内容と、財務諸表を前期と比較・分析などを行った結果、私といたしましては、監査法人の 意見に異論を唱える余地はないと判断いたしました。  意見に直接関係はないのですが、前回、宿舎の処分は速やかにというようなお話がありました。今 回、この件について伺ったところによると、中期計画に盛り込まないと資産の処分はできないという ことでした。前回の話であまり有効活用されていないということでしたので、積極的に対応していた だければなと思いました。  あと1点ですが、これはあくまでも私の提案です。これが受け入れられるかどうかは分かりませんが、 当法人の財務諸表というのは、独立行政法人の会計基準にしたがって作成されているものですから、 何ら問題云々する余地はないのかもしれないなと思いまして、検討をした結果「余地がある」のでは と思いますので、お話させていただきます。当法人は通常の事業会社が使っている企業会計基準の財 務諸表の表示を使っても、何らおかしくないのではないか、むしろそのほうが情報公開という観点か ら見ると、一般の人々にとって違和感のない表示になるのではないか。特に損益計算書の表示につい てです。  独立行政法人の会計基準を読み直してみましたところ、独立行政法人の会計基準の設定についての4 のところに、その取扱いについてこの会計基準は、業務運営などの財源を運営費交付金に依存する独 立行政法人を念頭に置いて作成したものであるから、それがそぐわないところは、検討をする余地が あるというような内容になっているのです。当法人は運営交付金の交付ないこと、そして当法人の財 務諸表を見るものにとって一番興味のある箇所は、どのぐらいの収益が上がっているかということだ と思うのです。  そうしますと、業務費用の下に収益が出てくるよりも、一般の企業会計を用いている各ファンドな どと同じように、収益が上にあって、そのコストが下に出てくる表示のほうが読者にとって望ましい 形ではないかなと思います。検討する余地がありますので、ご検討いただければ幸いです。以上です。 ○山口部会長   今の件で、所管課か法人から何かありますでしょうか。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  いま明確にご回答できなくて申し訳ございません。可能かどうか、少しここを検討したいと思いま す。 ○樋口委員  会計基準の設定のところを読む限りにおいては、たぶん可能だと思います。ただ、何であえてその ようなことを申し上げるかというと、当独立行政法人の目的なり、情報公開に積極的な体制からして も、ちょっとそれにそぐわない会計の表示ではないかなと思うのです。それはたぶん、会計に関わっ ているというか、通常の事業会社の同じような業種の人たちは、やはり、ちょっと違和感があるので はないかと思いますので、一度、議論していただければ、よろしいのではないかなという話なのです。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  分かりました。私もこれを見たときに、ちょっと異和感がある部分がないともいえないと思ってお りますので、可能かどうか私どもの中でも、よく考えさせていただきたいと思います。  ○樋口委員  お願いいたします。 ○山口部会長   施設の件はどうですか。 ○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長   法人といたしましては、かねてから樋口委員より損益計算書に関するご意見は拝聴しておりまして、 私どもとしましても、監査法人であります新日本監査法人と昨年も相談をしまして、一般的に独法に おきましては、この並び方でよいのではないかといったようなことを聞いておりますが、今回の審議 した内容を踏まえまして、再度検討したいと思っております。宿舎の件につきましては、次期中期計 画において速やかに対処していきたいと考えております。 ○樋口委員  監査法人がいいとかどうかの問題ではなくて、当法人にとっての資産の有効活用の問題ですから、 ちょっとそれは相談をする相手が違うのではないかと思います。 ○山口部会長  ただいま樋口委員から、現状のルールの枠組みの中において、妥当な処理がなされているという報 告がございましたが、年金積立金管理運用独立行政法人の財務諸表につきまして、委員の皆様ご意見 等がございましたら、よろしくお願いいたします。 ○大野委員  先ほどの樋口委員の独法法人の財務諸表以外ではなくというお話でしたが、全く通常の企業財務諸 表のみの作成というのは難しいかもしれませんが、独法法人の財務諸表プラス参考資料というような 形で、ハードルが高くてまだ難しいということでありましたら、そのプラスアルファーというような 形で、参考資料ということで、通常の財務諸表のルールに則った資料を添付していただくということ も、ご検討いただければと思います。 ○樋口委員  誤解があるといけないので。私は企業会計の基準にしたがって財務諸表を表示すべきだと申し上げ ているのではなくて、それに慣らって表示の仕方は検討できるというような独立行政法人会計基準に 書かれているのですね。ですから、そこのところを省令だか何かで検討をするらしいのですが、それ を検討したら、損益計算書の表示が業務費用を業務収益という並び方ではなくて、収益から通常の計 算書と同じように収益コストを引いて利益がいくら出たよと、そういう表示が本来この行政法人の運 営結果を適切に表わすのではないか。コストが頭にくるのはなぜか。  私もこういう公会計とか、独立行政法人会計について、今回関わるまで知りませんでしたので、い くつかいろいろ考えてみた範囲で言えば、先ほど申し上げた、本来、国などから交付金を受けている 法人においては、交付の根拠となる活動に幾ら幾らかかったということを適正に表示することが大切 なこととなるでしょうから先ず業務コストを表示することとしていると思います。付属で企業会計の を出すという二重の手間をとらなくても、現行の基準の枠の中で可能なようですので、ご検討をいた だければと思って申し上げたのです。別の基準をということですと、なかなか受け入れ難いことかも しれないと思っています。 ○大野委員  二重の手間にはなってしまうかと思うのですが、まあ、暫定的な措置というような形でお考えいた だくか、もしも、全く暫定的措置も要らずに変えられることが可能であれば、二度手間をかける必要 もありませんので、それはおっしゃるとおりだと思います。 ○光多委員  地方自治体の公企業会計を入れるときに、結局、税金は収入ではないということで損益計算書がで きなくて、行政コスト計算書になってしまいましたね。ですから、独立行政法人のときの収入という のが売上げ収入になるかどうかと、たぶんその辺が議論があるのかもしれませんね。だから、そうい う点でいくと、おっしゃるように、私たちも、まず売上げ収入があってなのだけれども、その収入と いうのが売上げの場合にはいちばん上にくるのですが、例えば企業会計にしても、営業外収入の場合 は下にいきますよね。だから、ここの収入が例えば営業外収益という位置づけであれば下にくるかも しれないし、おそらくその辺の議論なのでしょう。 ○樋口委員  ただ、当独立行政法人に関して、営業外収入っていうのは出るのでしょうか。営業というのはすべ て年金で運用ですから、それの外れたものというのは、一般的に言う雑収入があるかもしれませんが、 それを除いては、微々たるものですし、何も企業会計と全く同じでと私申し上げているのでなくて、 本来の主目的が上にあって、それを高めるためにすべての運営がなされているのだから、それが頭に きて、それはあくまでもプラスであれマイナスであれ、業務費用のところのマイナスではないよとい うふうに。 ○光多委員  分かります。だから、ここの収入というのがメインの収入、これが本当の売上げというか、メイン かどうかというところが、たぶん今やっておられるところの議論の分け目ではないかということを、 ちょっと感じただけです。 ○山口部会長  将来の話はまたご検討いただくということで、とりあえず平成20年度の財務諸表につきましてご意 見よろしいでしょうか。それでは意見書といたしまして、資料1-1のような形で、厚生労働大臣に提出 したいと思います。そのような取扱いでよろしいでしょうか。                (各委員了承)   ○山口部会長  ありがとうございました。では、そのようにさせていただきます。次に年金積立金管理運用独立行 政法人の「年金積立金運用報告書」につきまして、法人所管課よりご説明いただき、これに対する質 疑を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。   ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  運用担当をしております参事官の八神と申します、よろしくお願いいたします。お手元の資料1-2 「平成20年度年金積立金運用報告書」です。これの中身をご説明しますと、法人の運用のみならず、 財政融資資金の預託金も含めた全体の報告書となっています。ただ、独立行政法人の評価をしていた だくに当たりまして、毎年度、運用の結果が年金財政にどのように影響を与えているかということを、 その報告書をもってご考慮いただいた上で、毎年度の総合評価をしていただくという仕組みになって おりますので、私どものほうからこの運用報告書の説明をさせていただきます。  2頁、3頁が結果の概要となっています。2頁が年金積立金の運用実績で、囲みの中ですが、平成20 年度の年金積立金の運用実績は、まず、管理運用法人の運用実績がマイナス7.6%、マイナス約9.4兆 円、これに年金特別会計で管理する預託分等の運用実績プラス0.6%(839億)を加えた、マイナス6.9 %(約マイナス9.3兆円)、平成20年度の運用実績はこういうことでした。また、年金積立金の自主 運用をスタートした平成13年度からの平均では、プラス1.1%(累積約13.8兆円)となっています。  ここの説明が9頁以降に、「年金積立金の運用実績」ということで、出てまいります。見開きで8頁、 9頁をご覧いただきますと、仕組みが複雑なので、年金積立金の中身を8頁の絵で、最初にご説明した いと思います。  年金積立金全体で、運用方法のこの絵の中で123.8兆円とありますが、これは大きく4つに分かれて います。いちばん大きなのが下の絵の(1)「市場運用部分」というもの、それから、法人が引き受けて いる「財投債引受分」これが(2)です。絵のいちばん左側に「旧年金福祉事業団から承継した資金」が (3)です。ここまでが法人が管理をしている積立金です。  それ以外に、いちばん右に「預託金」とあります。これが平成20年度までございました。この預託 金を併せて全体で、年金積立金となっていまして、この運用実績、9頁の最初が4つの資金全体、年金 積立金全体での運用実績です。これが平成20年度におきまして、合計でマイナス9兆3,176億円、収 益率ではマイナス6.86%となりました。  同じ9頁の下のほうに累積で表記をしていますが、毎年度の年金積立金の運用収益が13年度から表 の中に記載されています。平成20年度末では、合計で13兆7,508億円ということになっています。  10頁から12頁がその内訳、先ほど申しました年金積立金がいくつかに分かれますその内訳を、それ ぞれに説明をしたものとご理解ください。そういう意味でここは省略をさせていただきます。  13頁からが平成13年度から20年度までの運用実績になります。同様に年金積立金全体の運用実績 が(表2-7)にあります。13兆7,508億円の収益額で、8年間の収益率は1.07%。13頁の(1)以降は、 また内訳を書かせていただいているものです。運用実績は以上ですが、これが年金財政に与える影響 をどう見るかが、23頁以降に出てまいります。  23頁から24頁が、どのように評価をするかといったことです。23頁の(3)に「実質的な運用利回り による評価」とあります。年金の給付というのは、名目賃金上昇率に応じて改定をされるということ です。こういう仕組みの下では、長期的に見れば年金給付費は名目賃金上昇率に連動して増加する仕 組みです。  24頁に、したがいまして、運用収入のうち賃金上昇率を上回る分が、年金財政上の実質的な収益と いうことになります。したがいまして、賃金上昇率との比較をしていくことで、年金財政への影響を 見ていこうということです。  24頁の下段の(4)「平成16年財政再計算における運用利回り等の前提」とあります。ここで6行目 から「基準ケースでは」とありますが、平成16年の財政再計算では、平成21年度以降は物価上昇率 1.0%、名目賃金上昇率2.1%、名目長期金利3.0%の下に、名目運用利回り3.2%となるであろうとい うことで、年金財政としては、実質的な運用利回り1.1%を長期的に確保できれば財政は安定すると、 こういう考え方でございました。  ただ、足元につきましては、(表2-14)にありますが、平成15年から20年度まで、この実質的な 運用利回りの欄をご覧いただきますと、例えば平成20年度で言えば、足元は0.29%、1.1%といわず に0.29%ということで、前提には書かれていました。  その上で、25頁からが実際に「運用実績が年金財政に与える影響の評価」です。まずは20年度の運 用実績が年金財政に与える影響です。(表2-15)で説明いたします。運用実績自身は、表の名目運用 利回りで、年金積立金全体で、マイナス6.86%でした。平成20年度は名目賃金上昇率がマイナス0.26 %でしたので、この分を勘案すると、実質的な運用利回り、賃金上昇率を上回る運用利回りというの は、実はマイナス6.62%、賃金乗昇率をこれだけ下回ったということです。  一方で財政再計算では、平成20年度に0.29%の実績の運用利回りを期待をしていた。そういうこと であればこの差となるのは、マイナス6.91%、平成20年度単年度をとれば、年金の財政再計算の差異 の期待をしていたものに比べて、6.91%下回ったということになっています。  26頁から27頁が、過去数年にわたってという累計ですが、26頁の(2)は、平成16年の財政再計算に 基づいて、その財政再計算の期間、6年間について見たものです。(表2-16)を見ますと、この平成 15年度から20年度までで、1.08%の運用利回りがありましたが、この間、賃金は0.16%下がっていま す。そういう意味では実質的な運用利回りは1.24%、これに対して、財政再計算上の前提は0.71%で したので、これを0.53%上回る結果となっています。したがいまして、年金財政にはプラスの影響で あったという結論です。  更にもう少し期間を延ばしまして、平成13年度から見たものが(表2-17)です。同様に見て結論だ け申しますが、いちばん下の欄で0.59%のプラスでした。まとめのところに書いてありますが、平成 16年財政再計算と比べましても、また、平成13年度からの8年間に比べましても、年金財政にプラス の影響を与えていたということです。  3頁に結論を書いています。20年度は年金財政再計算の前提と比較して、6.91%下回りました。ただ、 過去6年間ないし過去8年間で見たときには、それぞれ財政再計算の前提を上回っており、その期間を 見て、年金積立金の運用は、年金財政にはプラスの影響を与えているという結論です。私から報告書 の説明は以上でございます。    ○山口部会長  ただいまご報告いただきました「年金積立金運用報告書」につきまして、ご質問等ございましたら、 よろしくお願いいたします。 ○安達委員  これは年金を掛けて将来、年金を受給できる我々現場の、非常に単純な発想といいますか、運用に 関しての思いなわけでありますが、いまのような年金を運用して、その運用益で単年度決算で年金を 支給していくということになりますと、30年後、40年後に年金をもらえるという方々が、それで自分 たちの年金はどうなるのだろうと、非常に大きな不安を持つのだと思います。これでペイ・オフにな ったのが農業者年金なわけです。実績が前にそういう歴史があるわけなので、そういう不安が非常に 大きいのだろうと。この前もちょっと、未入日なんかあったのですが、株での運用ではなくて、何か もっとしっかりした運用というのがあってもいいのではないかなと。昔の財政投融資のような形の運 用というもので、きちんとやっていったほうがもっともっといいのではないのかなと、そういうふう に私は思います。  それと、年金を単年度で決算するのではなくて、やはり掛けたものは財投のような形で積立をして、 将来きちんと償還をして資金運用ができるという安心感を持たせることが非常に大事なのではないの かなと思います。株が右肩上がりで、いい時には大変いいわけで、この13年間の実績を見ますと、大 変な実績があるわけです。儲かる時はいいのですが、今回のようなことになりますと、巷では10兆円 の赤字だそうだというようなことが、かなり出回りまして、もう、年金がどうなるかは分からない、 自分のことは自分でやる以外にないのではないのかというような話が先行しますので、この辺の運用 の仕方は法律や国の方針の問題でしょうけれども、この辺は一考したほうがいいのかなと、私は感じ がします。これは運用機関のことではなくて、国で方針を決めて運用をしてもらうわけですから。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  貴重なご意見をいただきました。確かに1つは私ども資産の実績も相当にいろいろな普及啓蒙活動を して、私どもの説明がまだまだ不足している部分があろうかなという点がございます。それは引き続 き私ども頑張っていきたいと思っています。  先ほどの運用報告書でお見せいたしましたけれども、確かに20年度あるいは19年度は市場が非常に 悪い状況でしたので、損失が出ています。ただ、13年度からの累積でまいりますと、当然プラスが出 ておりますし、年金財政で予定をしていたものよりは、先ほど申しましたようにプラスが出ています。  また、現実に運用していただいている資産の配分の中でも、例えばほかの国の同じような公的年金 を運用しているところに比べれば、かなり安全資産の割合が高い運用をしております。もう1つは、経 済がよくなれば当然、収益も上がってまいります。今年度について言えば、いまのところ、おそらく いい数字が出てきていると思いますし、そういう意味では経済がよくなってくれば運用収益は上がり ますし、少なくとも、いままでの累績収益でも、決して年金が給付できなくなってしまうような結果 が出ているわけではないので、そこをご理解いただければと思います。 ○山口部会長  ほかに何かご質問等ございますか。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  株式が下がるといつも「どうして株を運用するのか」というのが出るのですが、私どもの立場は、 厚生労働省がこのぐらいのレートで運用をすれば、年金財政が持つと。それを長期間のもので達成す るためには、国債だけの利回りでは足りないのだと、株を少し運用しないと長い目で見ていけないの だと。だから、そこはものの考えようで、全部国債で運用をすると利回りが、今でいえば1.15とかに なるわけですが、そうすると、年金財政で計算上は、ちょっとお金が足りないねと、だから、先行き 保険料を上げるか、年金を下げるというのが、ほぼ確実になるわけです。  それは一種の政府の選択なのですが、株式の損というものは、ときに出るということをとにかく避 けるという意味で、全部国債で運用をすると。しかし、その代りに少し長い目で見ると、保険料を上 げますというか、少し運用してということなのですね。それと、確かに株は運用があるのですが、お そらく、今どうして株で運用をするのだという人は、例えば国債なら国債で運用をすればいいかとい うことになると思うのですが、これでもし、景気がよくなってきて金利が上がってくると、全部国債 で持っていると、それはまた、すごい評価損が生じるわけです。たぶんそういう時には、景気がよく なっているから株式が上がってくる。そこで、両方相殺をされるので、全部国債で運用するよりはリ スクが小さいのではないかと思います。  評価損も嫌だというのだったら、結局、前と同じように財政の預託にして、それは評価変えをしな いがそれでいいのかというと、それはまた、年金の金をどこに持っていくかという政治の世界の話で す。だから、私どもとしては、いま厚生労働省さんが年金財政はこれで持つなという目標、リターン をなるべく小さなリスクで達成するためには、やはり株式をある程度入れざるを得ない。ただ、入れ る比率は内外で20%で、ほかの企業年金とか、海外の年金に比べれば非常に少なくて、安定を重視し た運用になっているというふうに思っています。 ○安達委員  これは我々巷でもそういうふうな感覚なので、これは実際に運用されて、うまく回転できるわけで すから、そう問題はないと思いますが、その感覚で国民が見ているところが多いのではないかなと思 うということです。 ○山口部会長  ご質問等よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは次に(3)年金積立金管理運用独立 行政法人の「総合評価について」、審議いたします。まず、事務局から「平成20年度業務実績全般の 評価」という結論部分を中心にご紹介をいただきまして、その上で、起草委員であります竹原委員か らご講評をいただく形で進めてまいりたいと思います。それではよろしくお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  資料1-3になりますが、「年金積立金管理運用独立行政法人の平成20年度の業務実績の評価結果 (案)」をご覧ください。1頁目から読み上げさせていただきます。  1.「平成20年度業務実績について」。(1)評価の視点。年金積立金管理運用独立行政法人(以下「管 理運用法人」という。)は、厚生年金保険法及び国民年金法の規定に基づき厚生労働大臣から寄託さ れた積立金の管理及び運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事 業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的として、平成18年4月1日に発足した独立行政 法人である。今年度の管理運用法人の業務実績の評価は、平成18年4月に厚生労働臣が定めた中期目 標(平成18年度〜平成21年度)の3年目(平成20年4月〜平成21年3月)の達成度についての評価 である。  当委員会では、「厚生労働省所管独立行政法人の業務実績に関する評価の基準」等に基づき、平成 19年度までの業務実績の評価において示した課題等、さらには、独立行政法人整理合理化計画、総務 省政策評価・独立行政法人評価委員会から寄せられた独立行政法人の業務実績に関する2次評価結果等 や取組方針、当委員会が実施した国民からの意見募集に寄せられた意見も踏まえ、評価を実施した。  管理運用法人は、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に年金積立金の 運用を行うことにより、年金事業の運営の安定、ひいては国民生活の安定に貢献するという使命を負 っている。したがって、管理運用法人の評価に当たっては、その使命を果たすために行われた具体的 な取組、又はその取組における創意工夫を評価の基本とし、その上で、中期目標等に定める事項が適 切に行われたかについて総合的な評価を実施することとしている。  平成20年度においては、昨年度までに評価委員会において指摘した事項を踏まえ、これまで改善が 図られてきた業務運営体制が適切に機能し、適切な業務運営がされているか、また、リーマン・ショ ック等に伴う金融危機という状況の下で、適切な対応がとられたかといった点に重点を置き、評価を 実施することとした。なお、年金積立金の運用は、前述のとおり、長期的な観点から安全かつ効率的 に行うこととされていることから、管理運用法人における年金積立金の管理及び運用の評価について も、長期的な視点で評価することが重要である。  (2)平成20年度業務実績全般の評価。ア.管理運営体制に関する事項。管理運用法人の使命は、前述 のとおり、長期的な観点から安全かつ効率的な運用を行うことにより、年金事業の運営の安定に資す ることである。管理運用法人は、平成18年度に前身である年金資金運用基金から引き継いだ業務運営 体制を改善するため、平成20年度においても、全独立行政法人に係る一律の人件費の制約がある中で、 運用経験者の中途採用など積極的に外部の専門的知見を有する人材の確保に努めるとともに、専門実 務研修の実施や大学院入学の補助制度の活用、人事評価制度の本格実施により、職員の勤労意欲や、 業務遂行能力の向上を図るなど、積極的な対応を行っているものと認める。また、理事長直轄の経営 管理会議等を十分活用し、事業運営の改善を図るなど、業務改善に積極的に取り組んでいる。今後も 引き続き、職員の勤労意欲の向上を促し、組織の業務運営能力や専門性の更なる向上に向けた取組を 行っていることを求めたい。  イ.年金積立金の管理及び運用全般に関する事項。業務運営の効率化と、それに伴う経費の節減効果 に関しては、平成20年度においては、特に、資産管理機関の集約化の効果により、約12億円の節減が 図られ、また、運用受託機関との交渉により、手数料の更なる引き下げを図り、併せて15.7億円の節 減効果を得るなど、大幅なコスト節減及び事務の効率化等の効果があったことは高く評価できる。  平成20年度は、リーマン・ショック等により拡大した金融危機及びその実体経済への波及による急 激な景気減速から内外株式市場が大幅に下落したことに加え、対ユーロを中心に為替市場で急速に円 高が進んだ影響もあり、市場環境は平成19年度よりさらに、厳しい年であった。  このような状況の下、平成20年度における運用結果としては、運用成果を測定する尺度の一つであ る修正総合収益率では、2年連続のマイナスとなった。また、市場平均を示す指標であるベンチマーク と比較した場合、外国株式及び短期資産についてはプラスの超過収益率、国内債券についてはマイナ ス0.01%と、概ねベンチマーク並みの収益率、国内株式及び外国債券についてはマイナスの超過収益 率となった。  市場が不安定な状況の下で、管理運用法人においては、通常の運用受託機関と定期ミーティング、 リスク管理ミーティングに加え、金融危機の発生を踏まえ、緊急に随時ミーティングを行い、リスク 管理を適切かつ機動的に行っており、また、運用受託機関に対する定性評価及び定量評価を踏まえた 総合評価を行い、運用受託機関への資金配分の停止等の適切な対応を行っている。また、当委員会の 指摘も踏まえ、外国株式アクティブ運用については、運用受託機関の構成(マネージャーストラクチ ャー)の見直しを行う等、ベンチマーク収益率の確保のために必要な対応を行っている。  また、平成20年度は、基本ポートフォリオ達成に向けた移行期間の最終年度であったが、金融危機 等の中においても、管理運用法人においては資金配分を通じて適切に管理を行い、基本ポートフォリ オを達成するとともに、次期中期計画を見据え、次期基本ポートフォリオの策定に向けた、精力的な 検討を行っていると評価できる。  ウ.年金積立金の運用実績が年金財政に与える影響の評価。名目運営利回りから名目賃金上昇率を差 し引いた「実質的な運用利回り」について、年金積立金の運用実績と平成16年財政再計算上の前提を 比較すると、平成15年度からの6年間、平成13年度からの8年間のいずれについても、運用実績が財 政再計算上の前提を上回っており、平成20年度単年度の運用結果では、リーマン・ショック等により 拡大した金融危機の影響を受けマイナスになったものの、長期的に見ると年金積立金の運用が、年金 財政にプラスの影響を与えていると評価することができる。なお、年金積立金の運用については、長 期的な観点から安全かつ効率的に行うこととされており、運用実績の年金財政に与える影響について も、長期的な観点から評価することが重要である。  エ.平成20年度業務実績全般の評価。以上を踏まえると、管理運用法人の管理運営体制については、 業務運営体制の見直し及び改善の効果が発揮され、業務運営が適切に行われていると評価することが できる。また、年金積立金の管理及び運用に関する事項については、市場が不安定な状況の下で適切 かつ機動的なリスク管理を行い、全体としては管理運用法人の設立目的に沿って適切に業務を実施し たと評価できる。年金積立金の運用については、長期的には年金財政の目標とされている実質的な運 用利回りは確保できており、単年度においてもベンチマークとの対比で見て、概ねベンチマーク並み の収益率を確保できているものの、今後の課題として、新規資金の寄託がなくなることが予想される 中で、キャッシュ・アウトやリバランスへの対応といった新たな課題が出てきており、適切な対応が 求められている。今後も長期的に年金積立金の安全かつ効率的な運用が実施されていくことを大いに 期待したい。なお、中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2のとおりである。  個別目標に関する評価資料については、別紙として添付した。以下の具体的な評価については詳細 となりますので、省略させていただきます。以上でございます。  ○山口部会長  それでは、竹原先生お願いします。 ○竹原委員  年金積立金管理運用独立行政法人の平成20年度総合評価書につきましては、大野委員と私とで検討 を行い起草いたしました。起草委員を代表して、私から評価書(案)について概要をご報告いたしま す。  評価書(案)は昨年と同様に、評価の視点、平成20年度業務全般の評価、具体的な評価内容の三部 構成としております。本年度の評価の視点としましては、昨年度までの評価委員会において指摘され た事項を踏まえて、これまで改善が図られてきた業務運営体制が適切に機能し、適切な業務運営がさ れているか。リーマン・ショック等に伴う金融危機という状況下で、適切な対応がとられたかといっ た点に重点を置き、評価を実施することとしております。なお、年金積立金の運用は、長期的な観点 から運用が求められていることから、管理運用法人の評価に当たっても、長期的な視点で評価するこ とが重要である旨付記しております。  全般の評価としましては、管理運用法人に与えられた使命を果たすための役割に、これまで行われ てきた業務運営体制の見直し及び改善の効果が発揮され、適切に業務運営が行われていると評価いた しました。  管理運営体制全般に関する事項については、全独立行政法人に関わる一律の人件費の制約がある中、 運用経験者の中途採用や、専門実務研修の実施、人事評価制度の本格的な実施等により、職員の勤労 意欲や業務遂行能力の向上を図るなど、積極的な対応を行っているものと認められます。また、業務 運営の効率化とそれに伴う経費節減の効果に関しては、平成20年度においては、特に資産管理機関の 集約化の効果により、約12億円の節減が図られ、運用手数料の引き下げ効果も含めると、約15.7億円 の節減効果を得るなどの効果があったことが高く評価できます。  平成20年度は、リーマン・ショック等により拡大した金融危機の影響もあり、修正総合収益率では、 平成19年度に続いて2年連続のマイナスとなりました。また、市場平均を示す指標であるベンチマー クと比較した場合、外国株式及び短期債についてはプラスの超過収益率、国内債券については概ねベ ンチマーク並み、国内株式及び外国債券については、マイナスの超過収益率となったものの、管理運 用法人においては、市場が不安定な状況の下で、通常の運用受託機関との定期ミーティング、リスク 管理ミーティングに加えて、緊急に随時ミーティングを行い、リスク管理を適切かつ機動的に行うな ど、適切な対応を行ったものと認められます。  年金積立金の運用実績が年金財政に与える影響については、実質的な運用利回りについて、年金積 立金の運用実績と平成16年財政再計算上の前提を比較すると、平成16年財政再計算の推計初年度であ る平成15年度からの6年間、年金積立金の自主運用の開始年度である平成13年度からの8年間のいず れについても、運用実績が財政再計算上の前提を上回っており、長期的に見ると、年金積立金の運用 が年金財政にプラスの影響を与えていると評価することができます。  具体的な評価内容の部分におきましては、評価シートのコメントや前回の部会における議論を基に 概ね評価を行っておりますが、今後、更に積極的な取組を期待する事項についてはその旨を指摘して おります。私からの報告は以上です。 ○山口部会長  ありがとうございました。ただ今ご報告いただいた「総合評価書(案)」について、ご意見等あり ましたらよろしくお願いします。 ○光多委員  昨年も申し上げて、私の意見は昨年あまり取り入れていただかなかったのですが、同じことを今年 また申し上げたいと思います。何を評価しているのかがちょっとはっきりしなくて、1頁の下から3つ 目の段落で、適切に行われたかどうかを基準に評価しておられると書いてあるわけです。そうすると、 インプット、アウトプット、アウトカムでいくと、アウトプットレベルで評価されたのかなと、アウ トカムレベルでは評価しておられないのかなという印象を受けたのが第1点です。  1頁の上のほうにありますが、何を評価しているかというと、平成20年度の運用の結果について評 価しているわけです。平成20年度についてはどういう位置づけかというと、平成18年度から平成21 年度の3年目の達成度の評価という形になっているわけです。だから、期間を区切るとしても平成18 年度から平成21年度の3年目の、その中の平成20年度の評価という形になっているわけですが、あと のほうを見ると、いろいろ大変な時期だったのは事実ですが、市場の全体の利回りよりも低い。先ほ どのように、全体として達成率がマイナスという中で、何をもってこれを評価しているのか、全体と して何を言おうとしているのかがよくわからない。  例えば、3頁ですが、いま申し上げたように平成18年度から3年目の評価、その中の平成20年度の 評価をしているときに、平成13年度からの8年間でプラスだというのは、前との整合性が欠けるので はないかと思うのです。また、何回も書いてありますが、「長期的な観点から安全かつ効率的に行 う」とされていて、長期的観点から評価することが重要だと。これは昨年も再三申し上げたのですが、 長期的に運用するというのは重要ですが、我々は長期的な観点に立ちながら平成20年度の評価をして いるので、平成20年度はどうなのかというのをもう少しきちんと評価すべきだと思います。要するに、 2〜3頁にありますように、国内株式及び外国債券についてはマイナスの超過収益率になった、全体と して10兆円近くの赤字が出たと。ご苦労されたのはわかります。いろいろな形で事務的なことや人材 の問題など努力されたのですが、結果的には達成度は目標までいかなかったというのが事実だと思い ますので、事実は事実として評価すべきではないかと私は思います。全体として何をおっしゃってい るのか、あくまで平成20年度の評価についてなのですが、何か長期的な形でまだプラスがあるのだと いう論理のすり替えが行われているような感じがします。  もし長期的という話になりますと、平成13年度からは何とかおつりが来ているわけですが、長期的 な観点でいくと平成13年、平成14年、平成16年ぐらいで少し貯金ができて、その貯金を含めると何 とか食いつぶさなくて済んだというレベルだと。確かに平成20年度は成果が出なかったのは事実です が、それでも貯金を食いつぶすまでにはいかないところまでで下げ止まったと。結論としてはそうい う評価かなという感じがするのですが、私は全体についてよく理解できなくて、去年申し上げたので すが、もう一遍繰り返します。なぜ、平成20年度の評価でそのままストレートに評価されないのか。 私は、この評価書は全般的に見直していただきたいと思います。 ○竹原委員  私の回答も昨年と似た回答になるかもしれませんが、まず法人が求められている最終目標は何かと いうことから議論を開始したいと思います。法人に求められているのは、今日の最初の説明でもあっ たように実質的な賃金所得プラス1.1%、平成21年度の財政再計算では条件が変わりますが、実質的 な賃金所得の成長率に対して1.1%を確保できるかどうかが目標なわけです。そのためには、どうして も債券だけでは達成できないことはわかっているわけです。ですから、我々は基本ポートフォリオに おいてリスクを取って、リスクを取らざるを得ないのです。そのために株式、海外資産を組み入れて いるわけです。当然そこでリスクを取っているわけですから、リスクを取ることの意味は良い年もあ れば、成果が我々の期待を上回る年もあれば、昨年のように大幅に下回る年も起こり得ます。前提と してリスクを取った時点で、単年度で評価することは適切ではないと思います。確かに、昨年度1年間 を見てみれば10兆円近いマイナスということで、マイナスであったことは事実ですが、あくまでも長 期間、最低でも5年以上の期間でどうであったのか、それが当初の運用目標であったプラス1.1%との 関係でどうであったのかということで評価すべきだと思っています。  もう1点、ベンチマークが固定された段階で法人は運用しているので、あくまでも単年度の評価につ いては対ベンチマークで評価するのが適当だと思っております。その意味で言うと、一部の資産、特 に国内株式について昨年は0.23%マイナスだったわけですが、非常に特殊な、昨年のリーマン・ショ ック以降の市場の動向等を踏まえれば、これは十分許容できる範囲の損失であったものと考えており ます。 ○光多委員  どう言っても論理が分かれてしまっていて、しょうがないのですが、1つは単年度の評価もなじまな いのだったら、この評価自体を最初に書いて、本当は単年度の評価はなじまないのだけれどもと書か ないと、表紙を見ると、これはあくまでも「平成20年度の業務実績の評価結果」です。おっしゃって いることの論理が矛盾しているのではないでしょうか。それが1つです。  また、いまおっしゃったベンチマークとの関係で、確かに債券についてはそれなりの形かと思いま すが、全体としてマーケットの利回りよりも下がっていると。それでそこは許容範囲だとおっしゃる のはどうでしょうか。私は、人材体制とか経費の関係でいろいろ努力されたことは評価します。ただ、 実際の利回りはマーケット利回りよりも下がっている。逆にいくと、この間申し上げたように外部の 受託機関に運用を委託しないで、委託手数料を払わないで全部市場連動債の形にしておけば、結果論 ですが、市場と同じ形の利回りは達成できたわけです。これは結果論ですが、そこは許容範囲だとお っしゃるのは、どの辺りまでが許容範囲なのか、どこから先は評価としてはマイナスとされるのか。  もう一遍繰り返すと、私は1頁の「事項が適切に行われたか」というのが伏線であって、事務処理が ちゃんと行われたかどうか、そこに重点を置かれるのであれば非常に評価していいと思います。ただ、 実際にそれが達成されたのか、評価をどういう視点でやるのか。  2つ目をもう一度言うと、あくまで平成20年度の評価ですよと、そこは申し上げたい。もう1つは、 事務とか人材、社内の体制はちゃんとやっているのだけれど、結果として利回りがマーケットよりも 下がったことについて許容範囲だと言うのは、例えばマーケットがこれだけ下がった、株式はそれよ りは下がらなかった、厳しい中でも頑張られたという話は多少理解できますが、マーケットよりも株 式とか外国債券が下がったことについて、許容範囲だと言うのはいかがなものでしょうか。 ○竹原委員  最初に申し上げておくと、ベンチマークをパッシブ運用であってもコストをかけないで完全に実施 することはできません。ですから、市場全体を、全銘柄を完全に買ってしまえばできるとお考えにな るかもしれませんが、当然買えない銘柄もありますし、リバランスのコストとか上場廃止になった銘 柄の処理とか、コストの部分はどうしてもかかってきます。ですから、ベンチマークの収益率を必ず 達成できたということはありません。  では、株式のアクティブ運用の部分がどうであったかという話になりますが、このときに前提とし て、これも長期的な観点から見れば、20%程度のアクティブ運用を組み入れるという前提があって、 法人では運用体制を取られているわけです。そこを考えると、アクティブ運用の場合で、特に昨年の ように数10%の下落、リスクの指標であるボラティリティが200%ぐらいにまで達するような極めて異 常な収益率が顕在化した状態において、運用評価の立場で言うと法人の運用体制、リスク管理に特段 の問題はなかったと考えております。  ここは意見が折り合わないところなのですが、仮に平成20年度の評価(案)であっても、そこで評 価と言ったときに、先ほど申し上げたように、リスクを取った運用をしている以上は単年度では評価 すべきではないと思うのです。それは別に矛盾していることでも何でもなくて、平成20年度の評価に ついては具体的な数字は残しているわけですが、その上でかつ5年なり10年といった長期間で最終目 標、与えられた目標が達成できているかどうかという点を書くのは、私は矛盾ではないと思います。 ○光多委員  揚げ足を取るわけではないのですが、最初のところで外部委託で運用しなければならないというの は私もわかります。この利回りが、手数料込みの利回りなのであれば異論がありますが、手数料は別 ですね。ですから、制度運用のあり方というのはわかります。ただ、実際にあくまで手数料を抜いた 形でベンチマークを下回っているのは事実だと思うのです。それが1つです。  ここはどうしても意見が分かれると、初めからおっしゃっているのでしょうがないのですが、長期 的な話で単年度は向かないのだと。それは運用自体が長期的だとわかります。でも、結果は結果なの です。ですから、1頁で中期目標の3年目という形でいくと、多少長期的と言っても、平成18年度か らの3年目ということからお考えになるかというと、あとのほうでいくと平成13年度から、貯金が出 るところからの形でやっているので、長期的な視点の中で平成20年度はどうかという形で評価しない と、もしそうであれば、率直にそのままお書きになったほうがいいのではないでしょうか。これは単 年度になじまないのだとか、長期的な話の中での平成20年なのだと。例えば内部体制をきちんとやっ たと、これを評価すると。ただ、結果としてベンチマークを下回ったので、これについては年度のア ウトカムとしては多少評価が十分でなかったということで率直に書かないと、先ほど安達委員がおっ しゃったのは別の意味かもしれませんが、国民の関心も高いので、これを読んでこの評価委員会が何 を評価したのかについて私自身がわからないので、これはわからないのではないでしょうか。あくま で意見が分かれるということなので、いくら議論しても平行線なのですが、私は去年もだいぶ申し上 げて、私の意見は採用されなかったのですが、少し空しい気持ちであくまで申し上げておきたいと思 います。 ○山口部会長  2頁の下から3頁にかけて、平成20年度の市場平均と比べてどうだったかという記述は出ています ね。外国株式と短期資金はプラス、国内債券はマイナス0.01%、国内株と外国債券はマイナスの成果 だということが出ているのですが、こういうところは数字を、もっと数字を書いたほうがいいという ことですか。 ○光多委員  トータルでは下回っているわけですね。先ほどの評価結果にあったように、トータルではマーケッ ト利回りを、これでいくと2勝、2敗、1引き分けという感じですが、合計すると金額的には下回って いるので、そこは客観冷静にここは下回っているのだと。運がなかったのだということかもしれませ んが、そこは率直に書かないと、いちばんメインのところがなお書きみたいになって、ただ事実だけ 書いてあるというのは、去年もそうだったのですが、これはいかがなものかと思います。 ○山口部会長  理事長から何かご意見はありますか。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  委員が一言で済まされたのですが、運用規定のマーケットを対象にしていると、金融市場は不確実 性を伴ったものなので、数値的に確実に何かできることはないという運用の特殊性を理解していただ かないと難しいのです。光多委員は目標に達しなかったではないかと言って、どこの目標にプラスの 収益率を出せと。出さなければマイナスだと書いてあると見ると、ここではなるべくそれがなるよう に努めることと書いてあるのです。努めてもそこに達しないことがあるし、逆にあまり頑張らないで もプラスになることもあると。そういう不確実性を対象にしているから、完全な数値目標になってい なくて、努めるようにということなのです。ですから、株式のアクティブの超過収益率を見ても、3年 ぐらい前は6.いくらのプラスだと、平成20年度はマイナス2.7だと。この4〜6月になるとマーケッ トが落ち着いてくれたので、いま計算していますが、おそらくプラス2%弱になっています。  それでは、我々が頑張ったから4〜6月はプラスになるのかと、我々が頑張らなかったから平成20年 度はなったのかというと、そういうことはなくて、マーケットの不確実性の下でそれが出るかどうか を議論しているのです。おっしゃっているプラスでないのは目標に達しなかったではないかと、目標 にそんなことも書いていないというのは、運用がそういうことだから書いていないのです。だから、 竹原委員がおっしゃるように、それは一種の不確実性なのです。だから、数値について単年度に非常 にリジットにやるというのは、運用の不確実性を相手にしている運用としては違うのではないかと。 この目標で、例えば新型ワクチンを2,000万個在庫するのだと。それが1,700万しかいかないという話 と、超過収益率がプラスでなくて真っ赤なマイナスになるという話は、全く性質の違うものだと思い ますので、単年度で目標に達していないではないかと、達しているかと、そこが評価としてクルーシ ャルなのだということは、そもそも中期目標にも書いていないと思います。 ○光多委員  よくわかりませんが、不確実性があるからこういう評価をやっているのではないでしょうか。不確 実性がなければ、こういう評価をやること自体も必要ないわけですし。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  不確実性の中で数字だけを絶対的な判断基準にしないで、何をやったかとか、そういうことを評価 しようというのが評価委員会で、もし単純に数値目標だけでやるのならば、こんな評価委員会も要ら ないということですね。これはマイナス、これはプラスと。 ○光多委員  だから、先ほどから申し上げているように、1頁にある適切に行われたか、いわゆるアウトプット基 準でこの評価をするというのが大前提なのか、アウトカムレベルでやるのか。例えば、企業でいくと どれだけ努力したかは必要かもしれないけれど、要するに、どれだけ売れたのか、どれだけ利益が上 がったのかが1つの基準ですね。そこはなくていいですよと、何をやったか、アウトプットだけでやる ということであればそれは評価の基準です。だから、明確に評価の基準を書くべきだと思うのです。  私は再三申し上げているのですが、皆さんは平成20年度単年度という短期間でやってはいけないと いう大合唱なので、多勢に無勢なのですが、表紙を見るとあくまで平成20年度の実績なのです。全体 として何をやったのか、その中で結果がどうだったのか、マーケット利回りが下がったからどうこう という話ではないと思いますが、事実は事実として、評価委員会はそれを評価するための仕事なので、 きちんと書かなければいけないと思うのです。そうであれば、最初からそもそもなじまないのだと、 竹原委員と理事長は同じことをおっしゃっているのだと思いますが、そもそもなじまないのだと。長 期的に考えるのだという話であれば、最初に明確に書いて、本当はなじまないのだし、長期的にやる ので、本当はこんなことをやる必要はないのだけれど、こういう形で一生懸命おやりになったので評 価しますと。なお、アウトカムはあまりうまくいかなかったけれど、私はこれについて納得している わけではありませんが、許される範囲ではないかと。そういう形でお書きになったらいかがでしょう か。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長) 先ほどの年金財政に与える影響のところで、平成13年なり平成15年の話から書いていましたが、まさ にいま光多委員がおっしゃった平成20年度の話です。評価結果の報告書を見ると、10頁の(6)に、 「平成20年度単年度については、運用実績は財政再計算上の前提を6.9%下回っている」と下から4 行目ぐらいに書かれていて、事実として平成20年度はこういう結果が出ていたと書かれています。こ れをどう評価するかは委員の先生方のご評価だと思いますが、そのように書かれていると。併せて、 平成20年度にどうだったということは、運用成績のみならず他の所でもずっと記載されておりますの で、そういう意味では平成20年度の評価結果に則してご評価をいただいているのかなと。私のちょっ と見た感じでの感想という意味ではそうです。 ○光多委員  ですから、ある面では下回っているという形で事実はきちんと書いておられるのです。下回ってい るという表現でそこをある程度評価しているということであれば、それはそうかもしれませんが、前 のほうで評価できるとかいろいろ書いてあって、もしそうであれば、この辺は「評価できる」の反対 の表現を使ってもいいのではないかという感じがします。 ○川北部会長代理  去年も発言したような気がするのですが、私自身も、結論としては竹原委員がおっしゃるように長 期的に評価すべきだと思います。ただし、光多委員がおっしゃることもわかります。先ほど安達委員 もおっしゃったように国民的な感情として、去年は1年間だけのマイナスだったが、それは仕方がない ということだったのでしょうけれど、今年も昨年に続いて大幅なマイナスになったことは、先ほど安 達委員がおっしゃったように国民的感情として大きな問題になりうるでしょう。リーマン・ショック 等いろいろ背景が書いてあるわけですが、2年連続マイナスになった点に関して、もう少し配慮したほ うがいいのではないかという気がします。  光多委員と竹原委員のお話を聞いて思ったのですが、1頁の真ん中より下に、「管理運用法人は専ら 被保険者の利益のために」ということで、「長期的な観点から」という3行を書いているわけですが、 ここにもう少し当法人自身のミッションを含めて丁寧に書いたほうがいい。丁寧に書くことによって この評価委員会がどういう視点で当法人の平成20年度を評価したのか、そこが明確になるような気が しました。たぶん、この3行は去年も同じような文言だったと思うのですが、さすがに2年連続で、か つ今年度のマイナス額は非常に大きいわけですから、率的には大したことはないと言えば大したこと はないのでしょうけれど、もう少し丁寧に説明していただいたほうが、納得感が出るのではないかと 思いました。 ○樋口委員  私も全く賛成です。 ○山口部会長  ほかの委員の方はいかがですか。 ○竹原委員  いま川北委員からご指摘をいただいたように、この原案について説明が足りなかった部分があるの は理解しております。ただ、もう1点私が述べたいのは、先ほどからリターンの話に集中していて、リ ターンが何%マイナスであったかということに、どうしても我々は視点が行きすぎているのではない かと思うのです。先ほど理事長からもお話があったように、当然あくまでも不確実性の世界での話で すので、リターンと同時にリスクをどれだけ適切に管理しているかという視点が必要なわけです。  その意味で言うと、平成20年度に関して、確かにリターンではマイナス6.9%だったという実績は 否定するものではありません。ただ、その過程で法人はGPIFに限らずほかの法人でも、基本ポートフ ォリオをどうするのかとか為替のヘッジ比率をどうするのかとか、ものすごくいろいろな議論があっ てどこも非常に苦しんでいたときに、頻繁にミーティングを開いてリスク管理体制を徹底した点は我 々も評価すべきだと思います。そういう意味で、先ほどのミッションが何かということをもう少し明 確に書くのと同時に、決して法人に求められているのはリターンだけではないのだと。絶対的なリタ ーンだけではなくて、リスク管理を平成20年度にこの異常な経済下でどれだけ行ったかという点につ いて強調していくということで、それを改定の基本方針とさせていただければと思います。 ○光多委員  去年もそうだったのです。私は納得しないと申し上げたつもりです。ただ、あのときにそれに対し てどんな努力をされたのかということを少し考えてくださいと。それが多少あったので、そうかなと 思ったのです。だから、それは当然リスクに対してどれだけ準備をしたり、いろいろなことをやった のかというのはいいですね。これはいいのですが、金勘定がすべてではないですが、平成20年度の利 回りがこれだけ下がっていると、マーケットよりも下だという話は厳正に評価せずに、なぜそこだけ 事実だけお書きになって評価から外されるのか。  そうすると、1頁の「したがって」のところで適切に行われたかと。我々はリターンは気にしないで、 独法のビヘイビアだけ、そこだけアウトプット中心で評価しますと。アウトカムは評価対象外としま すという形を前提として書くのであれば、それは全体として、そうお書きになれば論理が続くのです が、この評価委員会としてはアウトプット基準でやるのだと合意が達していればいいのですが、私は そこについては結果も含めて評価すべきだといまだに思っているのです。竹原委員と私と何回やって もしょうがないので、去年も申し上げましたが、このままやるのであればまた別途考させていただく しかないと思います。 ○大野委員  川北委員から2年間マイナスであったとのご指摘がありました。リターンの話になりますが、確かに 昨年に引き続き今年度もマイナスで、昨年の経験を踏まえて今年度何ができたのかということが、1つ 問われる点だというお話であったかと思います。マーケットが平成20年度のほうが平成19年度よりも 混乱が深まったような状況になっていて、実際に株価も平成20年度のほうが下がっていますし、そう いった中で平成19年度の経験を何も踏まえずに平成20年度来てしまったということではなく、いろい ろな対応をされていたと、そこを1つ評価しているということです。記述が少ないということでわかり にくいというご指摘がありましたので、そこについてはもう少し書きぶりを修正する必要があるかと 思います。 ○安達委員  長期的な観点で評価するということも理解できるのですが、国民が見ているのは、去年も今年も運 用で大きな赤字が出たそうだということが、マスコミを通してかなり浸透しているわけです。それに 対する説明が必要なのだろうと思います。それは経済情勢だけで、その赤字で単純な評価をすべきで はないということはしっかり言うべきだと思います。平成13年度、平成18年度と遡って評価をする形 ではなくて、今年度は今年度でそのような状況でこのような態度を、努力をしたと。でも、結果的に はこうだったということは、評価の中できちんと表現したほうが、かえってわかりやすいのではない かなと思います。  平成13年度から累積でこうだから、運用に問題はなかったと言うのは、国民にとってはあまり理解 できない状況だと思います。単純な、こういう経済危機の中で被害を最小限で食い止める努力をこれ だけやったと。そういう中で、結果的にはこうでしたという評価をして、長期的には平成13年度から の累積があるので、運用には問題ありませんと言うのはいいですが、平成20年度はこうで、平成13年 度からするとこうだと言われると、言い訳に聞こえてしまうのではないかと。単純な表現ですが、そ ういう意味では評価の視点をもう少し改善して、運用するにあたってはこんな努力をしてきましたと、 最小限の努力をした結果こうなったということでどうでしょうか。決してそれがマイナスだったから 運用の責任とか何とかではないと思います。そのような意味では、きちんと説明をして、みんなが納 得できる方法のほうがいいのかなと思います。それを平成13年度に遡って運用に問題ありませんと言 うよりは、運用全体としてはそういうことがあるので心配はありませんという言い方はいいですが、 評価の視点の中では平成20年度の評価ですので、そのような評価の仕方をされたらいかがでしょうか。 私はそんな感じがします。 ○山口部会長  いろいろご意見をいただきました。私ども評価委員会としても、非常に悩ましい問題だとは思いま す。国民全体として、いま非常に大きな話題になっていることも事実だと思います。ただ、年金の財 政上、毎年これだけの収益を上げてくださいと要請しているわけではないということも事実で、そう いう意味では評価をわかりやすくするということと、無用な誤解を生じないようにすることというの が整合的にできないところがあって、収益率がマイナスで大変だった、だからリスクのある資産の運 用をやめようという話になるのであれば、それは違うと思うのです。それではミスリードしてしまう ことになる。ですから、ミスリードしないで、かつ正確にということが求められるところではあるの ですが、それについてはまだ工夫が要るのかなと思っております。  つきましては、今日いただいたご意見、必ずしも皆さんのご希望に100%沿えるかどうかよくわかり ませんが、できるだけご意向に対して調整したいということで、私と事務局で調整をして、修正して いきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。 ○光多委員  しつこいようですが、去年は最後は座長一任でという話で私も納得したのですが、今年は事柄が事 柄だし、私もかなり突っ張って申し上げたので、お任せタイプではなく、もう一遍、何某かの意見を 言う時間をいただけるとありがたいと思います。 ○山口部会長  それはタイミング的に可能ですか。 ○政策評価官室長補佐  一応、これは総会にかけるものではないので。 ○山口部会長  総会は27日ですね。 ○政策評価官室長補佐  はい。総会は暫定の方なのですが、この20年度の評価書が暫定評価書に影響するのかどうかという ところもあるかと思いますが、27日ぐらいまでにやっていただければと思います。 ○山口部会長  いろいろなスケジュールが決まってしまっている中での話なので、いまおっしゃったような形でも う一度やるのは難しいのではないかと思います。 ○光多委員  やる話ではないのですが、一生懸命頑張って申し上げたので、その辺をちゃんと反映していただい ているという形だけは、また拝見させていただきたいと思います。 ○山口部会長  少なくともいまのご意向が反映できるような、それが委員のお気持ちを100%達成できるかどうかは わかりませんが、それは考慮して事務局と相談してまとめる努力はしますので、そういうことでご了 解いただければと思います。 ○川北部会長代理  細かな点で気になっている所があります。2頁目のイの最初の段落で、業務運用の効率化に関して、 最終的に「高く評価できる」ということで「高く」という形容詞が付いているのですが、評価の集計 表を見ると確かに5を付けられた方は多いのですが、平均が4.42でAです。だから、ここに「高く」 という形容詞を付けられた理由が、いまひとつ定かではないなと思っています。後ろのほうで、個別 評価のところでも「高く」となっていたと思いますが、そこを再度考えていただければという気がし ました。 ○山口部会長  数字は出ませんから、数字の差では相対的に良かったということだと思うのですが、報告にはA、B、 Cしか出ないので、そうすると、出来上がりの姿を見ると「高く」という使い方がどうかということに なると。そういうことですね。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  事務方としても、間に入って調整したいと思います。むしろ、ここで先生方のご意見を聞かせてい ただければと思います。ここは「高く」というのはどうかという感じであれば、それを反映した調整 をします。 ○川北部会長代理  そう思った理由はもう1つあって、業務運用の効率化の効果は15.7億円であり、確かに費用として 大きいことは大きいのですが、損失の実額から比べると、すごく小さい。もちろん、このような比較 は、比較するものの性質が異なるので正しくはないのですが。また、ここの評価がいちばん最初に出 てきていることもあって、言い訳的な感じも読む人によっては出てくるような気がしましたので。 ○山口部会長  ありがとうございました。それでは、これはこのような形で進めたいと思います。  続きまして、「評定記入用紙の修正」ということで、これまで出てきたご意見・報告を踏まえて個 別評定を修正したいという方は、ここで評定記入用紙の修正・確定の時間を設けますので、お手元に 前回の評価シートがありますが、それに修正をしていただきたいと思います。事務局から留意事項が あるということですので、よろしくお願いします。 ○政策評価官室長補佐  評定理由の修正・加筆も可能ですので、行っていただいて結構です。また、修正は赤鉛筆でお願い します。修正のあった頁にお手元の付箋を貼っていただきたいと思います。机上に配付している「個 別項目に関する評価結果(未定稿)」は、現時点でいただいている評点をSが5点、Aが4点、Bが3 点、Cが2点で点数化したものです。委員名は空欄となっており、各委員ご自身のお名前のみわかるよ うになっております。評定記入用紙の修正・確定終了後、評定記入用紙を回収したいと思いますので、 よろしくお願いします。 ○山口部会長  それでは、5分ほど時間を取らせていただきますので、評定記入用紙の確認、あるいは修正について よろしくお願いします。 (各委員評定記入用紙へ記入) ○山口部会長  手順を前後させてしまって失礼いたしました。法人の理事長よりコメントをいただくのを失念して おりました。よろしくお願いします。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  平成20年度は非常に市場も激動するし、私どももニューマネーがなくなって、次はキャッシュ・ア ウトとかいろいろな課題を抱えて、非常に多忙であったということを挨拶で申し上げました。この評 価がどのようになるのかはちょっと見えないところがありますが、起草委員の方には組織運営や運用 について適切に管理していると、平成20年度の対応に関して高い評価をいただいたものと受け止めて 喜んでおります。今後の課題として、組織運用面の努力やキャッシュ・アウト、リバランスの適切な 対応等を指摘いただいておりますので、それを心に留めて、役職員一同心を合わせて積立金の運用に 当たっていきたいと考えております。  先ほどからのお話で、2つほど感想を申し上げます。1つは、先般アメリカの運用会社の人が私の所 にやってきて、開口一番「Congratulation」と言うのです。私どもはマイナスの窮状だと公表したば かりなのに、何がCongratulationなのですかと言ったら、マイナス7.6%というのはすばらしいと。 アメリカでは大体マイナス20%ぐらいのパフォーマンスで、CEOなどがどんどん首になっていると。君 の所は非常に評価が高かろうと言うから、日本は大体プラスかマイナスで評価する国だから、そうい うことではないのだと答えたのですが、全くそういう感じの議論だなと思います。  また、先ほど川北委員がおっしゃったことについて、私は強い異議があるのです。私どもは12億と か10億やったと。これは我々の1年間の運営経費が12億ぐらいで、それを工夫でやったというのは大 変なことだと思っています。それをやるについては取引先との関係を変えるとか、実際の事務が非常 にかかるとか、オペレーションのリスク管理もやらなければいけないし、大変な手間を取っているわ けです。これが全体の120兆円の収益から比べると小さいと評価されるのはいかがかなと思います。 ○川北部会長代理  そういう意味で申し上げたわけではなくて、比べるのは変だとは言っているのですが、いきなり10 兆円の損の中で10何億円と出ているというのは、一般的な感覚からするとすごく奇異な感じがすると、 それだけです。理事長のおっしゃっていることはよくわかります。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  私は、独立行政法人という仕組みは職員の、あるいは組織の創意とか工夫とか努力へのインセンテ ィブはなかなかない仕組みだと思っているのです。その中で、例えば我々が1年間の経費に相当するよ うなことをやったことを高く評価してもらいたいという、独立行政法人の仕組みがない上にそういう ことをやるなら、やってもしょうがないのだなと。中期目標でわずかに経費を削減すること以上に、 努力するインセンティブがなくなるのです。ですから、厳しく査定されるのはいいのですが、そのよ うな大きな成果のときには高く評価をして、インセンティブをいただくということで評価をしていた だきたいと思いますので、そのことだけ感想として言わせていただきます。 ○山口部会長  ありがとうございました。修正等はよろしいでしょうか。  それでは、これをもちまして、年金積立金管理運用独立行政法人の平成20年度業務実績評価及び財 務諸表に関する意見を取りまとめます。評価シートの集約版が添付されておりますが、本日評定記入 用紙の確認・修正を行っていただいたことによって、当部会全体としてのS〜Dの評定及び評定理由が 変更になることもあろうかと思います。また、各委員のコメントが修正、追加等された場合には、こ れらを反映して評価シートの集約版を変更し、添付することとします。評価シートの集約版についてS 〜Dの評定が変更になるなどの際には、委員会全体としての評定理由も併せて変更する必要が生じてく ることも考えられます。それについては、その文章の変更についても私にご一任いただきたくお願い します。場合によっては、個別に各委員にご意見を承ることもあるかもしれませんので、その際には よろしくお願いします。  それでは、ここで事務局において評定記入用紙を集めますので、しばらくお待ちください。 (事務局評定記入用紙回収) ○山口部会長  次に、年金積立金管理運用独立行政法人の暫定評価について審議します。「暫定評価結果(案)」 の作成については、起草委員の先生方にお忙しい中、ご尽力いただきましてありがとうございました。 まず、法人から中期目標期間の業務実績についてご説明いただきます。そのあと、事務局から「中期 目標期間の業務実績全般の評価」という総論部分を中心にご紹介をいただき、その上で、起草委員で ある竹原委員からご講評をいただく形で進めていきたいと思います。それでは、法人から暫定評価 (案)の別紙「暫定評価シート」に沿って、業務実績のポイントについて15分程度でご説明をお願い します。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事  理事の岡部でございます。いま部会長からお話がありましたように、資料1-4のあとに付いている別 紙「年金積立金管理運用独立行政法人暫定評価シート(平成18事業年度〜平成20事業年度)」に基づ いて、簡単にポイントのみご説明します。  最初に、「業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置」の中で、5頁をご参照く ださい。この点についても、これまで平成20年度の事業実績等についても併せてご説明しております が、当法人のいちばんの資産は人で、この人材の能力をいかに高くしていくかが最も重要な課題だと 受け止めております。  そのようなこともあって、5頁の2の(1)の表ですが、平成18年度、平成19年度、平成20年度でそ れぞれ平成18年度が8名、平成19年度が7名、平成20年度が5名という格好で、実際専門的な分野 で民間の運用機関等で経験を積んで来られた方々を採用することができました。上のほうに応募者の 総数の表が付いております。平成18年度には8名の方を採用するために、20倍以上の200名近い方々 からご応募いただいたと。翌平成19年度は7名ですが、それでも10倍以上のご応募をいただいている ということで、当法人の果たす大きな社会的意義等々にもご関心をいただきながら、多くの方々にご 応募いただき、その中から優秀な方々に新しいマンパワーとして加わっていただいているということ です。  次に、職員の資質の向上です。先ほどもご説明しましたが、8頁の(6)にありますように、証券アナリ ストの資格の支援を行っております。資格の取得者数も、平成18年度は13名であったものが、平成 20年度には16名まで増えてきたということもあります。  7頁の上のほうに、先ほどもご説明しましたが、大学院で更に高度の専門性を培っていただくという ことで、MBAの学位を取得するための助成もあって、現在もそのための人員を大学院に行っていただい ているということです。  9頁は、業務管理の充実です。内部統制については、コンプライアンス委員会、あるいは運営リスク 管理委員会を設置するなど法令遵守等、当法人の幅広い受託者責任等の徹底を図ってきました。  監事監査については、9頁、10頁に記載してありますけれども、従来の積立金の管理・運用体制の状 況等の重点監査項目に加え、契約に関する監査、内部統制、情報開示に関する監査なども行い、しっ かりした組織運営が適正に行われるように努力してまいりました。  13頁では、業務運営の効率化に関する経費の削減状況です。平成17年度を基準年度として、平成20 年度、平成21年度までの中期目標、中期計画に基づく一般管理費、人件費、業務経費のいずれも平成 20年度末の暫定評価時点では目標数値を達成しております。  14頁の下のほうで、随意契約等の見直しです。国における取組などを踏まえながら、一般競争入札、 企画競争・公募の拡大に努めてまいりました。平成18年度と比べて、一般競争入札は2回から15回、 企画競争は7回から22回、公募は0回から9回と、それぞれ透明性のより高い方法での契約形態に切 り替えてきています。  16頁は資産管理機関の集約ということで、従来それぞれの運用機関と資産管理機関というのは、個 々の運用形態、個別の社の選択によってさまざまでしたが、アセットクラスごとに資産管理機関を集 約させていただき、それにより業務の効率化、経費の効率化を図ってまいりました。全体として管理 委託手数料約12億円の節減、集約等の効果が出ていると私どもとしては考えております。  19頁は、受託者責任の徹底ということです。私どもがいちばん大事な受託者責任の明確化を図ると いうことで、関係法令、管理運用方針の遵守等をさまざまな会合等を通じて徹底しています。運用機 関、資産管理機関に対しては、個別の社との契約に当たり、ガイドラインを提示する等の法令遵守の 徹底を図るための措置を行っております。また、外部の委員の方々から構成されている運用委員会も 随時開催していただき、私どもの日常の管理運用業務についての状況をご報告させていただくととも に、またご意見等がありましたら、そういう点も拝聴しながら改善に努めております。  24頁は情報公開の関係です。先ほども議論になりましたけれども、私どもがお預かりしている資金 は大変大きなものである、それから将来の年金給付に充当していくということで、国民の皆様方に大 変関心の高い業務をさせていただいております。そういうことからいっても、私どもがやっておりま す制度の仕組みとか考え方について、幅広いご理解がいただけるような努力をしていかなくてはいけ ないと考えております。業務概況書については、例年7月ごろに公表させていただいておりますけれど も、そのレイアウト、構成等については前年度までのディスクロージャーに対してさまざま寄せられ たご意見等を踏まえながら、よりわかりやすく、より明解なものにしていくということで、毎年度工 夫させていただいております。  四半期ごとにもディスクロージャーさせていただいておりますが、平成20年度からは運用、実績と、 単なる四半期だけではなくて、もう少し長いスパンからも見ていただけるような内容の改善を行いま した。海外の方々に対しては、年度のディスクロージャーについては、そのアウトラインをホームペ ージにアップしておりますけれども、四半期ごとのものについても、昨年度からは情報提供をさせて いただいております。  私どもがさまざまな会合等にお招きいただく、あるいはお話をさせていただく機会があれば、積極 的に参加をさせていただいて、市場運用でどうして株式を年金で運用していくのか、その評価はどう あるべきなのかといった点についてはなかなかわかりづらい点、ご理解いただきにくい点もあります ので、そういう機会を通じながら年金運用の基本的なフレームワーク、私どもがやらせていただいて いる業務の内容等についてご説明し、ご理解をいただけるような場があれば、積極的に対応させてい ただいております。更に、一般の方々から寄せられております基本的なお尋ね等に対してはQ&Aを作成 し、それをホームページにアクセスして見ていただければ、ある程度私どもこの制度の枠組みについ てのご理解が得られるような工夫をさせていただいております。  29頁でその他の事項です。ここは運用の目標です。これまで平成18年度以降、各年度ごとの資産構 成割合については、中期計画に基づく基本ポートフォリオ、単年度ごとの移行ポートフォリオに基づ いて、それとの乖離をなるべく小さくしていくという形でやっておりました。これまでは、基本的に 毎年度相当多額の新規の寄託金を特会からいただいておりましたので、基本的にはニューマネーを活 用することにより、それぞれの資産からの乖離幅の大きい資産を購入していくという格好で、リバラ ンスを進めさせていただいております。  運用受託機関の選定、管理、評価等については、基本的に平成18年度に外国債券のアクティブな運 用機関、平成19年度に国内債券のパッシブな運用機関、併せて国内株式のアクティブな運用機関、平 成20年度には外国株式のアクティブな運用機関の公募を行い、厳正な手続を踏まえ、その中で優れた 能力を有していると思われるものについて選定を行いました。  個別の運用機関に対しても、毎月1回運用実績やリスク管理の状況等を把握するなど、適切に管理を 実施し、大きなマーケットの変動があるような場合には、この定例のヒアリングとは別に、その時期 に応じたヒアリング等を行うことにより、各運用機関のほうできちんとした管理運用が行われている かどうかを把握しています。  ベンチマークの収益率については、先ほどもいろいろ議論が出ましたが、どれぐらいの期間で評価 すべきなのかという議論、これもさまざまな見方がありますけれども、基本的に私どもは中期的な観 点でアクティブな運用機関を評価しています。それぞれの運用機関の得意とする運用手法というもの が、市場環境によっていろいろ変わってくることもありますので、そういう点で中期的な観点での評 価をさせていただきました。  外部株式については、いま用いているベンチマークは配当課税がなされる前のベンチマークを使っ て運用機関、全体のアセットクラスの評価をさせていただいておりますが、現実には国によっては課 税をされているということです。外国株式については、こういう配当課税要因を考慮いたしますと、 概ねベンチマークとほぼ類似の収益率、若干上回ったアセットクラスもあるのかと思っております。  平成18年度から平成20年度までの暫定評価期間で見た場合には、国内株式では残念ながら若干下回 っておりますけれども、それ以外のアセットクラスについては、先ほどの配当課税要因等を考慮いた しますと、ほぼベンチマーク並みの収益率を確保したのかと考えております。  42頁からは、基本ポートフォリオの取扱いについての考え方です。42頁の(3)は、現在できておりま す基本ポートフォリオの考え方です。年金財政上の諸前提における実質的な運用利回りを確保すると いう中期目標に基づいて基本ポートフォリオを策定し、その乖離許容幅を設定しております。  このベースから移行ポートフォリオということで43頁に書いております。平成20年度末に基本ポー トフォリオに円滑に移行できるよう、マーケットの状況にも考慮しながら、平成18年度、平成19年度 については移行ポートフォリオを策定し、それによってよりスムーズな移行ができるような取組をし てまいりました。次の中期計画、来年度からは新しい基本ポートフォリオも検討するということが、 私どものほうにも課題として与えられておりますので、それぞれ現在運用委員会の専門家の委員の方 ともいろいろ意見交換等をさせていただきながら検討を進めているところです。  46頁は、移行ポートフォリオに向けた資産全体のアロケーションのリスク管理について記載してお ります。46頁の(2)乖離状況等の把握と書いております。平成19年度からは、従来四半期ごとにポート フォリオの目標値との乖離の状況を管理してやっておりましたけれども、平成19年度からは、それを 月次単位に参照値と乖離状況を把握した上で、その精緻化をさせていただいております。  個別の資産のリスクの状況を47頁の(4)に書いております。株式については、トラッキングエラーや、 β値によってそのリスクの状況といったものを中心に把握しております。国内債券とか外国債券、こ れもベンチマークとの乖離を示すトラッキングエラー、あるいはデュレーションといったものをベー スに毎月リスク状況を管理し、必要がある場合には個別の運用機関等に対して注意喚起をする、改善 を求めております。さらにはニューマネーの配分に当たって問題があるような所については、その資 金配分を停止するということで取組を行ってまいりました。  以上簡単なご説明で恐縮ですが、平成18年度から平成20年度までの3事業年度における暫定的な事 業概況についてご報告させていただきました。 ○山口部会長  事務局から、暫定評価結果(案)の紹介をお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  資料1-4「年金積立金管理運用独立行政法人の中期目標期間の業務実績の暫定評価結果(案)」の1 頁の1.中期目標期間(平成18年度〜平成21年度)の業務実績について。(1)評価の視点の発足のとこ ろは飛ばさせていただき、7行目から読み上げさせていただきます。  本評価は、平成18年4月に厚生労働大臣が定めた中期目標期間(平成18年度〜平成21年度)全体 の業務実績についての評価を行うものであり、評価結果を次期中期目標等へ反映させる観点から、中 期目標期間の最終年度に暫定的に実施するものである。当委員会では、「厚生労働省所管独立行政法 人の業務実績に関する評価の基準」等に基づき、平成20年度までの業務実績の評価において示した課 題等、さらには、独立行政法人整理合理化計画、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会から寄せ られた意見や取組方針も踏まえ、暫定評価を実施した。  管理運用法人は、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に年金積立金の 運用を行うことにより、年金事業の運営の安定、ひいては国民生活の安定に貢献するという使命を負 っている。したがって、管理運用法人の評価に当たっては、その使命を果たすために行われた具体的 な取組、又はその取組における創意工夫を評価の基本とし、その上で、中期目標等に定める事項が適 切に行われたかについて総合的な評価を実施することとしている。  なお、年金積立金の運用は、長期的な観点から安全かつ効率的に行うこととされていることから、 管理運用法人における年金積立金の管理及び運用の評価についても、長期的な視点で評価することが 重要である。  (2)中期目標期間の業務実績全般の評価。管理運用法人の使命は、前述のとおり、長期的な観点から 安全かつ効率的な運用を行うことにより、年金事業の運営の安定に資することである。平成18年度か ら平成20年度における管理運用法人の管理運営体制については、業務運営体制の見直し及び改善が行 われ、業務が適切に運営されていると評価することができる。また、業務運営能力の向上のため、積 極的に外部の専門的知見を有する運用経験者の確保に努めてきており、人件費の制約がある中、最大 限の努力を行っていると評価できる。  業務運営の効率化とそれに伴う経費節減についても、資産管理機関の集約化等により着実に取り組 んでおり、また、受託者責任や法令遵守の徹底、情報公開の充実といった事項についても積極的な取 組が行われている。年金積立金の運用実績としては、長期的には年金財政の目標とされている実質的 な運用利回りは確保できており、またベンチマークとの対比で見ても概ねベンチマーク並みの収益率 を確保できている。  平成19年度、平成20年度といった不安定な市場の状況の下においては、管理運用法人は、適切かつ 機動的なリスク管理を行い、また、運用受託機関の選定、管理及び評価についても適切に実施し、全 体としては管理運用法人の設立目的に沿って適切に業務を実施したと評価できる。  年金積立金の運用については、今後も、長期的な観点から安全かつ効率的に実施されていくことを 大いに期待したい。中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2のとおりである。個別項 目に関する評価資料については、別紙として添付した。以下詳細になりますので省略させていただき ます。以上です。 ○山口部会長  竹原委員から講評をお願いいたします。 ○竹原委員  年金積立管理運用独立行政法人の暫定評価書の起草委員として、大野委員と私とで検討を行い、平 成18年度から平成20年度までの評価をまとめた暫定評価書を起草いたしました。起草委員を代表して 私から評価書(案)について概要をご報告いたします。  暫定評価においては、管理運用法人に課せられた、専ら被保険者の利益のために長期的な観点から、 安全かつ効率的に年金積立金の運用を行うことにより、年金事業の運営の安定、ひいては国民生活の 安定に貢献するという使命を果たすために行われた、具体的な取組に対する評価を基本とし、その上 で中期目標に定めた事項が適切に行われたかについて総合的に評価を行っております。  暫定評価期間の業務実績全般の評価といたしましては、業務運営体制の見直しや改善が行われ、業 務が適切に運営されていること。人件費の制約がある中で、外部の専門的知見を有する運用経験者の 確保に努め、業務運営能力の向上に向けた取組が積極的に行われていることなどについて評価してお ります。  また、業務運営の効率化と、それに伴う経費節減についても、資産管理機関の集約化等により、着 実に取り組んでおり、受託者責任や法令遵守の徹底、情報公開の充実といった事項についても積極的 な取組が行われております。  年金積立金の運用実績としては、長期的には年金財政の目標とされている実質的な運用利回りは確 保できており、またベンチマークとの対比で見ても概ねベンチマーク並みの収益率を確保できていま す。  さらに平成19年度、平成20年度といった不安定な市場の状況の下においては、適切かつ機動的なリ スク管理を行い、また運用受託機関の選定、管理及び評価についても適切に実施し、全体として管理 運用法人の設立目的に沿って、適切に業務を実施したと評価しております。  これらの点を踏まえ、今後さらに積極的な取組を期待する部分について、評価書(案)の中で指摘 させていただいております。具体的には以下のとおりです。業務運営能力の向上を図る観点から、質 の高い人材の確保及び育成の推進。業務運営の基盤となるシステムの整備、強化及びその活用による 業務の一層の改善。法令遵守の徹底など内部統制の一層の強化。年金積立金の管理運用の更なる高度 化のための調査・研究の充実。年金積立金の運用に対する国民の理解を得るための広報活動の充実・ 強化。運用収益確保のための運用手法の見直しも含めた、運用受託機関の選定・管理についての取組 の強化。新規資金の寄託がなくなることに対応した、寄託金の償還等、キャッシュ・アウトや、ポー トフォリオの管理、リバランスへの適切な対応などについて指摘をしております。  なお、年金積立金の管理運用に当たっては、専門性の高い人材の確保・育成、業務の効率的な運用 のためのシステム整備等が今後も必要であることから、独立行政法人の一律の経費節減目標の設定に よる制約については慎重に検討する必要があることも併せて指摘しております。  暫定評価書の概要は以上のとおりですが、この暫定評価期間における年金積立金の運用実績が、年 金財政に与える影響については厚生労働省より補足説明をしていただきます。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  暫定評価書の後ろに一枚紙で補足説明という紙が入っております。この補足説明の性格をご説明い たします。中期目標期間、あるいは暫定期間の評価については、制度上は年金財政に与える影響を考 慮して評価するという仕組みにはなっておりません。毎年度の評価については、先ほどご説明いたし ました運用報告書を基に、毎年度の法人の評価に当たって、年金財政の影響を考慮して評価をすると なっていますが、制度上中期目標期間についてはこういう仕組みになっておりません。  社会保障審議会年金数理部会のほうで、年金財政について、年金財政再計算がその後適正に、例え ば運用の結果が年金財政に与える影響はどうなっているかというのは別途検証してもらっております。 そういう意味で、本日これからご説明するものは、法人の評価書に入れるものではありませんが、部 会長、あるいは起草委員の先生方とご相談させていただきまして、別途この3年間について数字をお示 しするようにということをいただきましたのでご説明いたします。  管理運用法人の平成18年度から平成20年度の3年間の運用実績と、財政再計算の前提を比較すると いうことです。年金財政再計算の前提は賃金上昇率に加えて1.1%と比較したものです。厳密に足下の 数字はもっと低い数字と比較すればよいのですが、一応ここでは1.1%と比較するという形で以下ポイ ントごとに書いてあります。  平成18年度は、外国資産が堅調だったということに加え、ユーロ高の影響もあり、3.7%のプラスと なっており、財政再計算の長期の目標であります1.1%と比べれば2.6%のプラスでした。平成18年度 はそういう結果でした。  平成19年度の管理運用法人の運用については、ご承知のとおりサブプライムローン等の問題を契機 とした、内外金融市場の動向などの影響を受け、賃金上昇率を1.1%上回ることを期待していたところ、 賃金上昇率も4.5%のマイナスですので、平成16年度の財政再計算と比べると5.6%のマイナスとなっ ております。  平成20年度は、リーマン・ショックに端を発する金融危機の影響で、株式市場の大幅な下落等の影 響を受け、賃金上昇率を7.3%下回り、財政再計算の1.1%と比べると8.4%のマイナスとなりました。  平成18年度から平成20年度の3年間の平均では2.8%のマイナスです。財政再計算の1.1%と比べ れば3.9%マイナスということです。そういう意味では、年金財政の前提を満たせていないというのが この3年間です。「しかしながら」以降は既にご説明していることですので繰り返しません。長期的な 観点から見ておりますので、短期的な変動のマイナスというものを捉えて評価するべきではないとい うようなことを書かせていただきました。3年間について、数字を申し上げると以上のような結果です。 ○山口部会長  ただいまご説明いただきました業務実績の報告についてご質問、あるいは中期目標期間の業務実績 の暫定評価結果(案)についてのご意見等がありましたらお願いいたします。 ○川北部会長代理  質問させていただきます。この補足説明というのも外部に出るのですか。この暫定評価結果に添付 されると考えてよろしいのでしょうか。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  これは、暫定評価結果とは別です。独立行政法人の評価という観点から求められていないものです ので別と考えております。 ○光多委員  2つあります。補足説明で、例えば事実だけを書いてあるとすれば、それは事実を記述しましたとい うことで結構ですが、主観的なことが書いてありますので、中期的こちらは評価委員会という名前に なっていて、主観的な評価がされているのですけれども、補足説明は評価委員会として出したという ことになるのでしょうか。厚労省で出すとすればこの事実だけを書けばいいわけです。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  大変失礼いたしました。そういう意味では性格が曖昧だったかもしれません。これは厚生労働省の 事務方からお出ししており、評価をするというような性格でお出ししたものではないです。そこの部 分の評価的なことはある意味でちょっと行きすぎているかもしれないのでお許しください。 ○光多委員  大丈夫であれば結構ですが、厚労省が年金運用について、こういう形で評価して問題ないのだとい う形でお出ししても後で大丈夫ですか。厚労省の意見ということになってきてしまいます。評価委員 会だというのなら、ここで部会長をはじめみんなで責任を取るわけです。こちらは評価委員会の名前 ではなくて、厚労省の所管ですね。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  先ほどご説明すればよかったのですが、これは公表するという前提では作っておりません。暫定評 価の報告書に付くものではないですが、評価委員会でのご議論に資するようにというご指示もいただ いたので付けさせていただきました。 ○光多委員  もしそうであれば、何とかから「評価すべきものであり」という表現よりは、「もし長期的な観点 から計算するとすれば」という事実でお書きになったほうが、たぶん後で問題にならないのではない かと思います。  それから、中期的なところは、先ほどと同じことを竹原委員とやり取りするのは時間の無駄ですの で、先ほど私が申し上げた延長線上のことは勘案していただきたい。少なくとも5頁に、先ほどは平成 20年度と言いながら、平成13年度からではまだゲターが少し残っていますよと書いてあります。こち らは「長期的」と言って、長期的がどこからどこかというのは書いていないのです。それでプラスと いう形になっているので、たぶん初めて読む人はよくわからないということになるのではないかとい うのが1点です。  もう1点は、5頁の上のほうで「長期的に見れば財政再建の前提を上回っていると評価することがで きる」という、この「評価することができる」というのが、主観的な意味でアプリシエイトするとい う意味であるとすれば、さすがにこれはいかがなものか。「上回っている」とか、例えば「みなすこ とができる」とか、「考えることができる」であるのならまだいいのですけれども、「これを評価す る」というのは少なくともご再考いただきたいと思います。もう一遍やり取りするとまた1時間かかり ますのであとはもう結構ですので、以上2点申し上げておきます。 ○川北部会長代理  光多委員と同じところが気になっています。光多委員は、5頁の3行目の「長期的に」のところを言 われたのだと思います。同じ表現が2頁の8行目辺りに「年金運用の運用実績としては、長期的には」 と書いてあります。3年を長期と思う人もたぶんいると思いますので、ここは明確に期間を特定してい ただいたほうがいいと思います。 ○山口部会長  ほかにはよろしいでしょうか。中期目標期間の業務実績の暫定評価結果についてのご意見をいただ きました。いただきましたご意見を反映する形で修正を加え、中期目標期間の業務実績の暫定評価結 果(案)として、8月27日に開催される総会にご報告をしたいと思います。具体的な修正については、 先ほどの議論も勘案し、事務局と調整して決めさせていただくということで私にご一任いただけます でしょうか。 (各委員了承) ○山口部会長  それでは、そのようにさせていただきます。最後に、法人理事長よりコメントをいただきます。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  内容は、先ほどの単年度評価のところと同じようなことであると思いますので、特にその点でコメ ントすることはないです。若干個人的な感想として申し上げさせていただきますと、当法人は平成18 年4月に設立され、最初の中期目標期間の途中ということです。私は初代の理事長に任名され、運用専 門の独立行政法人というものをどのように立ち上げて、どのように運営していくべきかについて内部 でも議論を重ね、また私自身も自問自答を重ねながらやってきたのが正直なところです。今回の評価 で、組織運営面について、大筋において間違いでなかったことが確認されたと受け止めておりまして、 安心したところです。それ以上特に申し上げることはありません。 ○山口部会長  次に、年金積立金管理運用独立行政法人の組織・業務全般の見直し当初案について審議を行います。 所管課より説明をお願いいたします。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  机上配付資料1-1「年金積立金管理運用独立行政法人の組織・業務全般の見直し当初案について」で す。1頁は現状を書いてあります。現行の中期目標・中期計画に基づく業務ということで、いま管理運 用法人は国から与えられた中期目標を踏まえて、国内債券を中心とし、国内外の株式・債券に分散し て投資を行う基本ポートフォリオを策定し、管理・運用をしています。実際に運用は一部を除き、信 託銀行、投資顧問会社に委託しています。  その下に、【現行の中期目標の主な内容】とあります。平成16年財政再計算の前提である、賃金上 昇率に対する実質的な運用利回り、平成21年度以降1.1%を確保するよう長期的に維持すべき資産構 成割合を定め、これに基づき管理を行うこと。以下、株式のリターン・リスクについては、慎重に推 計を行い、リスクを最小限に抑制する。インデックス運用を基本とする。資産ごとにベンチマークを 設定し、管理・運用すること。こういうことが定められております。  2頁に、【基本ポートフォリオ】と、それから【平成20年度末のポートフォリオ(実績)】を並べ てあります。これを踏まえ、本日の暫定評価等でもご指摘をいただいたことを踏まえ、3頁に管理運用 法人の組織・業務全般の見直し当初案についてということでまとめております。  第2パラグラフの次期中期目標期間においては大きく3点ほど視点があります。(1)長期的に安定した 収益の確保。(2)運用高度化のための基盤の整備及び強化に取り組む。(3)国民の運用に対する理解を促 進すること。こういうことに努めることとする。 (1)の長期的に安定した収益の確保に向けた更なる取組ということでは、基本ポートフォリオの見直し ということで、(1)平成21年財政検証を踏まえた運用目標に基づき、基本ポートフォリオの見直しを行 う。既に作業を始めていただいております。平成21年財政検証(注)とあり、その下に平成21年財政 検証の経済前提とあります。賃金上昇率に対する実質的な運用利回りは、長期で1.6%が経済前提とな っております。平成16年のときには、これが1.1%でした。  (2)市場動向を踏まえた適切なリスク管理等を行い、長期的な観点からみて、策定時に想定した運用 環境が現実から乖離している場合には、中期目標期間中であっても、必要に応じて基本ポートフォリ オの見直しの検討を行うといったことをやっていこうということ。  その下に○が2つあります。1つはリバランスの適切な実施に必要な機能の強化です。いままで財投 から入託をしていたお金が返ってくるニューマネーをリバランスするといいますか、資産の配分に使 うことができましたが、これがなくなるということで、市場の動向に応じた資産の売却等を伴うリバ ランスを適切かつ円滑に行うことが、長期的に安定した収益の確保に不可欠である。このために必要 な機能の強化が必要である。キャッシュ・アウトですが、次期中期目標期間では、積立金を取り崩し て年金の給付に充てることが予定されています。市場の価格形成等に配慮しつつ、円滑に資産の売却 を行っていく。過不足なく確実に資金を確保することに必要な機能の強化を図る必要があります。  4頁に調査・分析の充実とあります。基本ポートフォリオに基づく管理・運用の更なる高度化を進め るための調査研究。それからリバランス、キャッシュ・アウトを適切に行うために、市場の情報収集 ・分析を強化する必要がある。運用手法の見直し、受託機関の選定・管理の強化ということでは、収 益確保のための運用手法の見直し、受託機関の選定・管理の強化の取組を進めていく必要がある。  (2)運用高度化のための基盤の整備及び強化ということで、人件費の問題はありますが、引き続き金 融分野に精通した人材の中途採用等により、資質の高い人材の確保・育成が必要である。情報システ ムの整備等、運用高度化のための基盤整備及び強化が必要だということです。  (3)内部統制の一層の強化では、運用リスクの管理、コンプライアンスの確保等をしっかり行うため の所要の体制整備を図る必要がある。(4)国民に対する広報活動の充実・強化ということで、説明責任 を十分果たす、わかりやすい情報提供を推進するための広報活動の充実・強化を図る必要がある。こ の辺りを次期中期目標期間に強化・充実をしていく必要があろうということです。  5頁は総務省なりから聞かれていることですが、事務事業の民営化ができないか、同種の事業をやっ ている法人に移管をしたり、一体的な実施ができないかということです。詳しくは申しませんが、民 営化に関しては、既に運用自体は民間の金融機関で運用しており、その管理・選定を行っているとい うことです。こういう管理・選定を行う役割を更に民間に、というのは馴染まないのではないか。  他法人への移管・一体的実施に関して一言で申しますと、こういう年金の巨額な運用を行っている 事業をほかにやれる所がないと思っておりますので、こういうものを移管するのはどうだろうかとい うことです。  IV.は業務効率化についてです。人件費を含む一般管理費、業務経費について、今後も運用の専門知 識を有する人材の確保、適切な業務遂行という観点から考えると、こういうものについての一般管理 費、業務経費等の削減に関しては、少し慎重に検討していく必要があるのではないかということです。 見直し当初案については以上です。 ○山口部会長  ただいまの説明につきまして、ご意見、ご質問等がありましたらお願いいたします。 ○川北部会長代理  全体としてはこのとおりだと思います。5頁のIV.のところで、業務の効率化に関して、方向として はこうだと思います。そのときに、前のほうで書かれているリバランスを行う必要性が出てくるとか、 キャッシュ・アウトに対する機能を強化する必要性があるとか、従来は特にそういうものを重視して 機能として持つ必要性はなかったものが、新たに加わるということを何か書いておいたほうが説得力 が出てくると思いました。これは私の意見です。 ○大野委員  川北委員のご意見と関係するのですが、新たに当法人が手がけることが増えるような状況にありま す。リバランスの問題もそうです。4頁の(4)の広報活動の充実・強化とあり、広報担当者を配置する など運用の状況に関する説明責任を十分に果たす、というのは非常に大事なことではあるかと思いま す。人件費の抑制という制約があって、なおかつ中途採用もこの1、2年の間ですと、人材市場が全然 違うような状況でしたので、今後は中途採用の採用環境もまた変わってくると思います。新たに付加 する業務に対して、人件費の制約がある中で、どのようにこういう目標を達成することを考えている のか。人件費の制約を外せばいろいろなことができるのかもしれませんが、その辺についてご意見、 あるいは感想でも構わないのですがお聞かせいただければと思います。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  いろいろ強化すべきことばかり書いてあるのですが、人がいないということになると、どのぐらい リストラというか、業務の組み換えができるかをもっとよく考えていかなければいけないと思います。 組み換えることにより、どこかで少し余力を出して、そこに広報の強化とか、キャッシュ・アウトの ことについて検討するというのが基本になると思っています。  そのほかには、こういう観点から、それぞれ研修を積んだり、それぞれの人の専門性を、こういう 場所で高めるという研修なり、ジョブ・ローテーションをやっていくということかと思います。 ○光多委員  5頁の業務効率化のところで、私も表現についてはよくわかりませんが、「業務経費のあり方につい ては慎重に検討を進める」という表現は、おそらく霞ケ関の表現でいくと、「やらない」という表現 というふうに私は理解しています。そもそも日本語としてもわかりませんし、「やり方についてはこ ういう観点から、引き続き効率化を図っていく」という表現のほうがいいのではないですか。通常で いくと、「慎重に検討を進める」というのは、たぶんかんぬきするような感じがするのですが、これ はやらないというと言っているのですよね。いままでに、ここまでやっているのでもうやる余地がな いのだということなのか。そこはお任せします。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  あまり明確にお答えできない部分が若干あります。最終的には、いろいろな所で協議をして調整を してというプロセスがあります。こうするのだということをはっきり書いても、実現できるかどうか わかりません。少なくとも私どもはいままでの評価委員会での議論を伺ってきて、ここはしっかりと 議論をして、必要な人材を確保するための、例えば人件費はどうあるべきかという議論をきちんとや っていきたいと思っています。そういう意味で、「慎重に検討を進める」と書いたからやらないのだ ということではないのです。 ○光多委員  一般国民からすると、「慎重に検討を進める」というのは、かなりコンサバティブな表現だと思い ます。どうせ書くのであれば、いまもかなりやっているわけですから、引き続きこの法人の目的を達 するためにあらゆる努力を行っていくとお書きになればいいと思いますが、それはお任せします。  もう1つは、事務事業の民営化、他法人への移管とありますが、市場化テストについては毎年聞かれ ていて、やらないという表現になっていますが、ここのところではそれを書く必要はないということ ですね。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  市場化テストの話については、(1)事務事業の民営化のところに含まれていると思います。 ○光多委員  これは違いますよ。民営化と市場化テストは全く違います。民営化というのは、全く民営化してし まうわけですけれども、市場化テストというのは、行政があって、民間がいいのかどちらがいいのか という話の中で、民間に委託をするわけです。(1)の3つ目のポツで「移管することはできない」という のはわかりますが、これで市場化テストを答えているということではないのです。この段階で市場化 テストについて答える必要がないということであれば結構だけれども、少なくともこれでは答えてい ることにはならないと思います。以上です。 ○大臣官房参事官(資金運用担当・年金管理組織再編準備室長)  お答えになるかどうかは分かりませんが、市場化テストについての書き方については、省全体でど ういう書き方をするかということがあるので、そこは書き方を委ねさせていただきたいと思います。 ご意見はよくわかりました。市場化テストについて触れていると読むのかどうかという、書き方はお 任せいただければと思います。 ○光多委員  触れていないので、触れる必要があるとすれば別の表現が必要です。少なくとも(1)の3つ目は市場化 テストはこれでは読めないと思います。逆にいくと、(2)のほうにむしろ近いのではないでしょうか。 一体的実施とか、いま独法がやっている運用の部分については、ある所に一体的に運用してもらうと いうのが市場化テストです。民営化では明らかに違いますから。結構です、答える必要があるとすれ ばですけれども、これは答えていないということだと思います。以上です。 ○山口部会長  ほかにご意見、ご質問はないでしょうか。組織・業務全般の大きな見直しということで、当法人を 他の法人に移管する、一体的に運営する、民営化するといった大きな話なのですが、それに関しては ここに出ておりますように、方向としては当初案を了承するということでよろしいかと思うのです。 なお、当部会の議論において、次のような意見が出されたということで、いくつかいただきましたご 意見を付記するということ。1つは資産のリバランスの必要性が高まる中でそういうことが予想される ので、これを円滑に行い得るような体制整備ということが重要ですということ。それから、当法人に 係る市場化テストについても、それがはっきりわかるような形で、何らかの形で言及するということ も含めて若干ご意見が出たということを含め、大きな方向としては、年金積立金管理運用独立行政法 人の組織・業務見直し当初案について、これを了承するということで当部会として取り扱うというこ とでよろしいでしょうか。 ○安達委員  年金に関しては、国がきちんと管理をしていくべきものだと思います。独立行政法人の廃止とかい ろいろなことがあります。郵政民営化でも、実際に田舎では大変困っています。そんなこともありま すので、政治や行政の流れに棹さすわけではありませんけれども、やはり年金というのは国がしっか り管理をして、国民が安心して老後を任せられるという体制は堅持すべきだと思います。安易に行政 の経費削減とか効率だけを考えて、簡単に改正したり、廃止したりするものではないと思います。少 なくとも年金に関して国民は、それなりの信頼を持っていて、これは国家に対する信頼だと思います。 そういうものでないと、日本民族の将来を約束するような制度にはならないと思いますので、この辺 はしっかりと考えていただきたいと思います。 ○山口部会長  いまの、堅持すべきというご意見もあったということも含め、全体としては了承ということでよろ しいでしょうか。 ○安達委員  そうですね。 ○山口部会長  それでは、ただいま申し上げました意見を、年金積立金管理運用独立行政法人の組織・業務全般の 見直し当初案に対する年金部会の意見として、8月27日に開催されます総会に報告し、総会において 結論を出していただきたいと考えております。 (各委員了承) ○山口部会長  ありがとうございました。そのようにさせていただきます。最後に、法人理事長よりコメントをい ただきます。 ○年金積立金管理運用独立行政法人理事長  1つだけ希望というか、いまこういうことでいきますということで結論が出たようですからあまり意 味はないのかもしれませんが、最後の業務効率化について慎重に検討を進めるというのは、いろいろ な方から出ましたように、意味がはっきりしないのではないかと思います。暫定評価のほうには、こ このところが「全独法一律の経費節減目標の制約について考える」となっているので少し意味がわか ります。ついでに希望とすれば、「全独法一律の経費節減目標の制約について課すことは適当ではな いのではないか」という意見をいただければありがたいと思います。  もう1つは、川北委員が言われた「こういうことを言うのだったら、何か強化の必要があるからこう いうことだ」という論理になると思うのです。私どもが感じておりますのは、もしも全独法一律の制 約がかかった場合には、いまの体制を維持することができなくて、かなり人間を減らさなければいけ ないということなので、仕事がどんどん増えるからというよりも、そこのところもうまく考えていた だければと思います。 ○山口部会長  先ほど大野委員からのご意見もありましたので、当部会で以下のような意見が出された、というと ころにそれを追記し、いま理事長がおっしゃったことにも関連してまいりますので、今後の人材の育 成のために、その一律の対応はどうかといったことのご意見が出ておりましたので、それも含めて書 かせていただくということでいきたいと思います。  次に、年金積立金管理運用独立行政法人の役員給与規程の改正についてご審議いただきます。年金 積立金管理運用独立行政法人より、役員給与規程の改正に係る届出が、厚生労働大臣宛にされたとこ ろです。まず、法人に説明をお願いし、その上で委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。 ○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長  資料1-5「年金積立金管理運用独立行政法人の役員給与規程の改正について」です。平成21年5月 に人事院勧告が出て、一般職の職員の給与に関する法律における、指定職俸給表の適用を受ける職員 (国家公務員でいうと局長、審議官クラス)に対する特別給、即ち夏のボーナスの支給について引下 げが行われました。私ども独法通則法において、役員に対する報酬等の支給基準は、国家公務員の給 与、民間企業の役員の報酬等を考慮して定められなければならないと規定しているところから、今般 この人事院勧告を踏まえ、私どもも引下げを行ったものです。  役員給与規程の改正点そのものは次頁に、新旧対照表を付けております。そのポイントをかい摘ま んで申し上げますと、1点目は、法人の役員の特別手当の支給割合を、国の指定職俸給表の適用を受け る職員の期末手当及び勤勉手当の支給割合の合計といたしました。この時点では、国に並びますと1.6 か月という数字になります。  2点目は、平成21年6月の法人役員の特別手当の支給に際し、国の指定職俸給表の適用を受ける職 員と同等に、支給割合を0.15か月分引き下げました。この結果、6月の役員賞与は、前年6月の1.6 か月から1.45か月となっております。この改正実施はこの6月にしているわけですが、役員給与規程 の改正については、先ほど山口部会長から述べられましたように、独法通則法により、報酬等の基準 を変更した際は、私どもは主務大臣である厚生労働大臣に届出を行いました。主務大臣が、評価委員 会に答申するということで、本日のご審議をいただいているものです。  補足いたしますと、役員のみならず、職員に対しても夏の賞与は引き下げたところです。以上です。 ○山口部会長  本件についてご意見等がありましたらお願いいたします。特にないようでしたら、役員給与規程の 改正について、当部会としても了承ということでよろしいでしょうか。 (各委員了承) ○山口部会長それでは、そのようにさせていただきます。ここで、法人所管課の入替えを行います。 その間暫時休憩させていただきます。 (法人所管課入替え) ○山口部会長  それでは、年金・健康保険福祉施設整理機構の財務諸表に関する意見について審議に入ります。ま ず、財務諸表について、担当の委員である樋口委員からご説明をお願いします。 ○樋口委員  今月の3日に1時間ほどお時間を取っていただいてご説明いただきました。事前にいただいている資 料とご説明いただいた内容とを検討した結果、監査法人の意見に対して異論を唱えるようなことはな かったということで、これは先ほどの結果と同じです。  意見とは別ですが、簡単にお話させてください。来期で当法人の業務は終わるということで、締め 括りの1つの情報開示の資料として、こういうものをお作りになっていただくと、非常にわかりやすい のではないかと思って1つだけ提案いたします。何という名前で呼べばいいのかわかりませんが、財務 諸表と別に説明する資料というか、ホームページにいろいろなものが出ています。その説明資料に 「国庫納付金の明細」という言葉が正しいかどうかわかりませんが、そういうものが1つ添付されたら 非常にいいのではないかと思います。  それは何かといいますと、5期間の損益計算書を集計したものと売上原価を除いてイコールなのです。 売上げ原価が違うだけなのですが、その売上原価は何かというと、当初、当法人に出資された出資金 の合計を書いていただきたいなと思うのです。どういう事かといいますと、どうしても年金とか社会 保険とかがいろいろな施設を作って、それがうまくいっているものやいっていないものがあるという 話は世の中に出回っています。もう何年か前にマスコミなどでいろいろ報じられていましたように、 国民が納付した基金の多大な金額が消費されてしまったということは、十分承知していることだと思 います。  このことと、当独立行政法人が資金回収したという数字が、独立行政法人の決算書からは、把握し きれないのではないかと思います。正確に把握するには、最初のつまり社会保険庁の数字のところが わかればいいのですが、それは当法人が望むべくもないことでしょうから、少なくとも当法人に譲渡 されたときの簿価つまり当法人が最初に取得した時出資金に計上した取得価格を取得直後に再評価し、 更に販売交渉前にも評価を行ってその評価損を資本剰余金に計上しています。この処理方法がわかる 人にとっては、それをプラスマイナスすれば当法人の当初の取得価格がわかります。しかし通常はな かなかわかりにくいところですので、当法人の5期間の売上げ、それに対応する当法人の当初の取得価 格つまり売上原価がいくらになりました。当法人の業務コスト差引いてた結果いくら納付されました というものが表示されると分かりやすいのではないでしょうか。可能なら、そういうものを作ってい ただけると有益な情報提供になると思いました。 ○年金・健康保険福祉施設整理機構理事長  私ども、基本的に行動の基準としていますのは収支価格です。決算上、原価ということになります ので、民間会計とすればやはりおかしいわけです。原資分が単に添加されてしまうという意味では、 やや決算上問題はあるというように認識をしていますが、公会計上こうなっているということですの でそうしています。おっしゃるとおりだと思います。  樋口委員から別途、ご指摘をいただいていると思いますが、私どもがこのような仕事をやった結果 として、公益法人が整理をされています。それによる国庫への剰余金の納付も約100億円程度にのぼる と思っています。したがって、そのような点も含めて、私どもがやってきたことがどういうことだっ たのかということに関しては、もちろん最終的に開示というか、ご説明申し上げるつもりです。実は 毎年、プレスリリースはしています。プレスに関しては、すべて出資価格を開示しています。原価対 比いくら、出資価格対比いくらということを公表していますので、最終的に同じような開示はしなけ ればならないと思っています。 ○樋口委員  ありがとうございます。おっしゃるように、今まで出ている資料をずっと集計していけばわかるわ けですが、集約したものを5期間の活動報告として、出していただければ非常にわかりやすいのではな いかと思ったものですから。 ○年金・健康保険福祉施設整理機構理事長  最終的な報告としてはそのような形にするつもりでございます。 ○樋口委員  よろしくお願いいたします。以上です。 ○山口部会長  ほかに財務諸表についてご意見ございますでしょうか。修正意見というのはありますでしょうか、 よろしいでしょうか。修正意見がないようですので、平成20年度の財務諸表についての意見書として 資料2-1を取りまとめ厚生労働大臣に提出したいと思います。以上について、そのような取扱いでよろ しいでしょうか。               (各委員了承) ○山口部会長  それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。  次に、年金・健康保険福祉施設整理機構の総合評価について審議をいたします。まず、事務局から 「平成20年度業務実績全般の評価」という結論部分を中心にご紹介いただき、その上で、起草委員で ある川北委員からご講評をいただくという形で、進めてまいりたいと思います。それでは事務局、よ ろしくお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  資料2-2をご覧ください。「独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の平成20年度の業務実 績の評価結果」(案)であります。  1頁目から読み上げます。1.「平成20年度業務実績について」(1)評価の視点。独立行政法人年金・ 健康保険福祉施設整理機構(以下「施設整理機構」という。)は、国民年金事業等の運営の改善のた めの国民年金法等の一部を改正する法律第7条の規定による改正前の厚生年金保険法第79条又は同法 第3条の規定による改正前の国民年金法第74条の施設及び健康保険法第150条第1項又は第2項の事 業の用に供する施設であって厚生労働大臣が定めるもの(以下「年金福祉施設等」という。)の譲渡 又は廃止等の業務を行うことにより、年金福祉施設等の整理を図り、もって厚生年金保険事業、国民 年金事業及び全国健康保険協会が管掌する健康保険事業の適切な財政運営に資することを目的として、 平成17年10月1日に新たに発足した独立行政法人である。  今年度の施設整理機構の業務実績の評価は、平成17年10月に厚生労働大臣が定めた中期目標(平成 17年度〜22年度)の第4年度(平成20年4月〜21年3月)の達成度についての評価である。当委員会 では、「厚生労働省所管独立行政法人の業務実績に関する評価の基準」等に基づき、平成19年度まで の業務実績の評価において示した課題等、さらには、独立行政法人整理合理化計画、総務省政策評価 ・独立行政法人評価委員会から寄せられた意見や取組方針も踏まえ、評価を実施した。  年金福祉施設等は、年金資金等の損失を最小化するという考え方に立って、平成22年9月までの5 年間に、全て譲渡又は廃止することとされており、施設整理機構は、極力譲渡価格は高く、かつ全て の施設を譲渡するという、両立が困難な2つの大きな使命を与えられている。  したがって、施設整理機構の評価に当たっては、中期目標期間の最終の事業年度(平成22年度)ま でに全ての出資対象施設の譲渡又は廃止をする。各年度にあっては、年度計画に定める譲渡予定対象 施設の譲渡又は廃止をする。年金資金等の損失を最小化する観点から、適正な譲渡価格を設定すると いった事項についての達成状況、具体的な取組方法、又はその取組における創意工夫を評価の基本と し、その上で、委託先公益法人等の従業員の雇用への配慮及び地方公共団体との相談など、中期目標 等に定める事項が適切に行われたかについて考慮した総合的な評価を実施することとした。  また、施設整理機構の設置目的を達成するに当たって、トップマネジメント機能が有効に発揮され たかについても評価した。  (2)平成20年度業務実績全般の評価。平成20年度における譲渡業務の実績は、落札ベースで73施設 87物件約521億円の売却額であり、件数は平成20年度計画を下回っているが、売却額では91億円上 回り、出資価格対比では123%の実績となり、発足以来の実績でも売却額1,330億円で、出資価格対比 122%となっている。これは、昨年末より不動産市況が急速に悪化する状況の中で、事業価値、不動産 調査の詳細等を提示したマーケティング活動や施設が立地する地域の情報収集及び地方公共団体から 支援策を取り付けるなど資産価値向上のための取組の成果と認められ大いに評価できる。  また、施設の事業継続については、前述のように事業価値、不動産調査の詳細及び買受希望者のマ ーケティング活動等の結果、施設譲渡時に事業を行っていた204施設のうち75%に当たる153施設に ついて事業が継続されており、公共性に配慮した事業継続の取組は大きく評価できる。  施設従業員の雇用についても、施設の事業継続を図ることにより、施設譲渡時に従業員がいた施設 で雇用交渉が終了した194施設のうち74%に当たる143施設において雇用の継続が図られており、相 当の実績を上げている。  一方、譲渡業務を行うための経費については、必要最小限の経費の執行に努めたことや事業譲渡を 原則とする等の最適な販売形態に向けた工夫・努力の結果、予算に対して70億2,700万円の節減がさ れたことは評価できる。経費予算については、今後も大幅な節減が期待される。  これらを踏まえると、施設整理機構の設立期間が残り1年半である平成20年度の業務実績について は、昨年後半のリーマン・ショック以降、不動産市況が急速に悪化した厳しい状況の中で、施設整理 機構の設立目的に沿って、適切に業務を実施しており、独立行政法人設立の意義を十分に果たしてい ると大いに評価できる。  また、施設譲渡の過程で発生するさまざまなリスクに対する対応を始めとして、施設整理機構の業 務運営において、トップマネジメント機能が有効に発揮されており、引き続き指導力を発揮した積極 的な取組を大いに期待したい。  中期目標に沿った具体的な評価結果の概要については、2.のとおりである。個別項目に関する評価 資料については、別添として添付した。  以降、具体的な評価になりますので省略させていただきます。 ○山口部会長  それでは川北委員、よろしくお願いします。 ○川北部会長代理  当機構に関しては、平成20年の業務実績の評価結果(案)については光多委員とともに作成しまし た。当機構は平成22年9月末までを期限として設立され、期限を区切られているわけです。私自身、 その中で極めて高い業務実績を上げてきているというように評価してきましたし、年金部会としても この実績を高く評価してきたところです。  平成20年度の業務実績に関しても、新たに不動産売却業務委託に関してインセンティブ方式の機動 的な見直しを行って、より高い実績を上げるよう努力をされています。それと同時に、これは継続し た工夫ではあるのですが、1つは事業継続を原則とした譲渡に基づく費用の大幅な削減を図ってきてい る。また、雇用の確保が図られている。それから、各施設の売却に関するマーケティング活動、ニー ズの発掘ということも引続き積極的にやられている。理事長を中心にして各職員はもとより、理事長 自らも地方公共団体のトップと面談をされて支援策を取りつける。そういう努力をされてきた結果と して、今年度も年金福祉施設等の譲渡・廃止に関して大きな実績を上げられた。この点は高く評価で きると思っています。  以降は今後に関する私のコメントになります。当機構は平成22年9月までに、年金福祉施設等の処 分を完了させるというミッションを与えられています。かつ、その処分に関する条件は非常に厳しい ものがありまして、処分価格を極力高くし、年金資金の損失を最小化する。それから、施設従業員の 雇用に配慮する。そういう条件を付けられてきたということです。  その一方、これは昨年9月以降のことですけれども、リーマン・ショックが発生して、不動産市場の 市況が非常に厳しいものになっています。その中にあって、地方自治体の協力が得られそうな物件を 見はからうというか、見つけてきて、また努力してそういうものをこしらえた結果、処分を今年度、 すなわち平成21年度に先送りされたものもかなりあると聞いています。先送りされた物件を始めとし てまだ処分されていない物件を、今後、いまから計算すると1年ぐらいしか残っていない僅かな期間を うまく活用することで、着実な処分を進めていただければと期待しているところです。  それと、昨年10月には「社会保険病院等の運営及び管理に関する業務」が付け加わっている。この 新たな業務は、当機構が存続する期間内での結着は付かないと思いますけれども、最後までしっかり と業務運営を行っていっていただければと、こちらも期待する次第です。以上です。 ○山口部会長  ありがとうございました。ただ今、ご報告いただいた総合評価書(案)について、ご意見等があり ましたらよろしくお願いいたします。 よろしゅうございますでしょうか。               (各委員了承) ○山口部会長  修正意見がないようですので、平成20年度業務実績の評価結果として、各法人及び総務省政策評価 ・独立行政法人評価委員会にお伝えするとともに、これを公表したいと思います。なおこの後、誤字 脱字、事実誤認などによる修正が必要となった場合の対応については、私にご一任いただくという取 扱いでよろしゅうございましょうか。               (各委員了承) ○山口部会長  ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。最後に、法人理事長よりコメ ントをいただけましたらお願いいたします。 ○年金・健康保険福祉施設整理機構理事長  大変暑い中、かつお忙しい中、私どもの評価をいただいたことに対して、まず心からお礼申し上げ る次第です。大変高い評価をいただいたことに関しましては、機構全員を代表して心からお礼を申し 上げる次第です。  昨年度に関しましては、既にご説明申し上げたとおりです。問題は環境が極めて厳しくなる中で、 どのように与えられた使命を果たすかということだったと思っています。昨年度については、まだそ の結果というのは数字に現れておりません。その数字は今年度現れてくることになります。と申しま すのは、先ほど樋口委員からもご指摘がありましたが、多分、今年度は出資価格対比で100億を上回る マイナス譲渡実績になると思います。いままで200数十億のプラスでした。したがって、全体としての プラスは100億を上回るものが維持できると思っています。  その中で、あと1年という期間の中で、いかに数字を維持していくかということがポイントだと思っ ています。経済環境を見てみますに、不動産価格が急速に上昇していくという状況にはないと思って います。その中で、いかに付加価値を付けた販売ができるかということがポイントだということです。 それに向けて最大限の努力を引続き行ってまいる所存でございます。是非、引続き、ご指導をお願い 申し上げる指第でございます。どうもありがとうございました。 ○山口部会長  ありがとうございました。ここで個別評定を修正をするという方がいらっしゃいましたら、修正の 時間を設けます。若干、お時間を取らせていただきますので評定記入用紙の確認、ならびに修正をお 願いします。 (各委員評定記入用紙記入) ○山口部会長  よろしいですか。それでは、これをもって年金・健康保険福祉施設整理機構の平成20年度業務実績 評価に関する意見を取りまとめさせていただきます。なお、先ほどと同様に、評価シートの集約版に ついて、修正が必要となった場合の対応については、私にご一任いただきたいと存じます。ここで事 務局において評定記入用紙を集めさせていただきますので、皆様しばらくお待ちください。変更され た場合は付箋を付けていただきたいと思います。 (事務局評定記入用紙回収) ○山口部会長  次に、年金・健康保険福祉施設整理機構の役員給与規程の改正についてご審議いただきます。年金 健康保険福祉施設整理機構より、役員給与規程の改正にかかる届け出が厚生労働大臣宛てにされたと ころであります。まず、法人に説明をお願いし、その上で委員の皆様のご意見を伺いたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○年金・健康保険福祉施設整理機構審議役  それでは、役員給与規程の改正について説明をしたいと思います。今回、私ども機構の役員給与規 程の改正でありますけれども、委員の皆様方は既にご説明を聞かれているかと思います。基本的な考 え方は今年の5月に人事院勧告で出されていますけれども、これを踏まえて国家公務員の期末・勤勉手 当について特例措置が行われたということです。これに準じた改正をするものでございます。  まず、改正点の1点目です。国家公務員について、今年の6月に支給する特別手当について、支給月 数についての凍結の措置が行われています。特別手当について100分の160、いわゆる1.6月分であり ますけれども、これについて0.15月を凍結するということで、6月分については100分の145、1.45 月分支給するという手当がなされています。したがって、当機構の役員の特別手当についても同じ割 合で改正をしたところです。  2点目です。資料の「なお」書きの部分に書いてありますけれども、国家公務員の指定職の職員につ いて、特別手当について勤務実績の反映ということで改正がなされています。この点についてですが、 当機構の給与規程については既に第8条第2項において「特別手当の額は、厚生労働省独立行政法人評 価委員会が行う業績評価の結果等を考慮し、これを増額し、又は減額することができる。」といった 規定にしておりました。したがって、既に勤務実績への反映ということは措置済みということでして、 今回、国家公務員については、今年5月の人事院勧告を踏まえて改正がなされていますが、これについ て特段の改正はしておりません。既に実施をしているということでございます。  ご参考までに、2枚目に規程の新旧対照表を付けていますのでご覧いただければと思います。以上が 当機構、役員給与規程の改正の内容でございます。以上です。 ○山口部会長  ありがとうございました。本件についてご意見等ありますでしょうか。よろしゅうございますでし ょうか。それでは、役員給与規程改正について、当部会として了承したということでよろしゅうござ いますでしょうか。               (各委員了承) ○山口部会長  そのようにさせていただきます。本日の議事は以上でございます。事務局から何か連絡事項があれ ばよろしくお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  本日ご審議いただきました年金積立金管理運用独立行政法人の組織・業務全般の見直し当初案の内 容につきましては、現段階ではまだ対外的に公表されないよう、十分ご留意いただきたいと思います。 それから、次回の年金部会の開催については追って連絡させていただきます。総会メンバーの皆様に おかれましては、8月27日(木)の午後1時から、厚生労働省17階専用21会議室において評価委員会 の総会を予定していますのでよろしくお願いします。以上です。 ○山口部会長  本日の部会はこれで終了とさせていただきます。長時間にわたり熱心なご審議をいただき、ありが とうございました。 (了) 照会先:政策統括官付政策評価官室 独立行政法人評価係 連絡先:03−5253−1111(内線7790)