09/08/06 平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録            平成21年度第2回薬事・食品衛生審議会            医薬品等安全対策部会 安全対策調査会          日時 平成21年8月6日(木)          17:00〜19:00          場所 航空会館501+502会議室 ○事務局 それでは定刻になりましたので「平成21年度第2回安全対策調査会」を開催い たします。本日の調査会は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでといたします。 マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。  本日御出席の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがと うございます。本日の安全対策調査会は委員の変更後、最初の会合ですので、まず五十音 順で委員の先生方を御紹介させていただきます。  東京大学医学部小児科講座教授の五十嵐委員です。獨協医科大学特任教授で、当調査会 の座長であります松本委員です。  続いて本日の議題であるケトチフェン及び酸化マグネシウムのリスク区分について、御 出席いただいている参考人の先生方を御紹介させていただきます。  日本医科大学耳鼻咽喉科准教授の大久保先生です。千葉大学大学院薬学研究院医薬品情 報学教授の上田先生です。日本医科大学名誉教授の岸田先生です。国家公務員共済組合連 合会虎ノ門病院薬剤部長の林先生です。大阪市立大学大学院教授の西沢先生です。東京慈 恵会医科大学病院准教授の横田先生です。旭川医科大学名誉教授の菊池先生です。  なお、土屋委員は欠席です。また、大野委員からは若干遅れるとの御連絡をいただいて おります。  続いて事務局側を紹介させていただきます。安全対策課長の森です。安全使用推進室長 の佐藤です。安全対策課長補佐の野村です。独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全第 二部長の池田です。  それでは議事に入らせていただきますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきま す。よろしくお願いいたします。  まず平成20年12月19日の「薬事分科会審議参加規定」についてです。本日、御出席を いただいている委員の方々の過去3年度における関係企業からの寄附金・契約金等の受取 状況を報告いたします。本日の議題1はフマル酸ケトチフェン点鼻剤に係るものですので、 製造販売業者のノバルティスファーマ株式会社及びその競合3社の計4社、また議題2の 酸化マグネシウムについては、一般用医薬品の売上げ上位3社及び酸化マグネシウムの区 分変更に係るパブリックコメントについて御意見をいただいた4社からの過去3年度にお ける寄附金の受取りについて申告いただきました。  各委員からの申し出の状況から、今回の審議または議決への不参加の委員はおられませ んでした。なお、五十嵐委員が、ノバルティスファーマ株式会社及び第一三共ヘルスケア 株式会社から50万円以下の受取との申告がありましたのでお知らせいたします。  また、参考人におきましては、大久保参考人が佐藤製薬株式会社から50万円以下の受取、 菊池参考人がノバルティスファーマ株式会社、第一三共ヘルスケア株式会社及び武田薬品 工業株式会社から50万円以下の受取、西沢参考人がノバルティスファーマ株式会社から 50万円以下及び第一三共ヘルスケア株式会社から50万円超500万円以下の受取、林参考 人がノバルティスファーマ株式会社及び武田薬品工業株式会社から50万円以下の受取と の申告がありましたので、お知らせいたします。以後の進行は松本座長にお願いいたしま す。 ○松本座長 ただいま事務局から説明がありました審議参加規定についてはよろしいでし ょうか。  特段ないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて了解いただいたものとさ せていただきます。ありがとうございました。  それでは事務局から、本日の配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 お手元の資料を御覧ください。まず、日本マグネシウム学会から提出された当 日配付資料について確認いたします。一番上に安全対策調査会配付資料書類一式リストと いう1枚紙、その下に日本マグネシウム学会の見解・要望書の1枚紙、その下に酸化マグ ネシウムリスク区分に関する日本マグネシウム学会の見解書の1枚紙、その下に医薬品等 使用上の注意の改訂についてという1枚紙、計4枚。その後ろに黄色いファイルになりま すけど、添付資料として見解・要望書一式が提出されております。  続きまして、事前に配付させていただいている資料について確認していきます。議事次 第、委員等名簿、その後ろに配付資料一覧がございます。これに沿って確認していきます。  資料No.1-1といたしまして「フマル酸ケトチフェン点鼻剤のリスク区分について」とい う1枚紙、資料No.1-2として「新一般用医薬品の製造販売後調査報告書」、参考資料No.1-1 として「サジテンALスプレーの添付文書」。  資料No.2-1といたしまして「酸化マグネシウムのリスク区分について」という1枚紙、 資料No.2-2といたしまして、平成20年9月19日付けの安全対策課長通知でございます。 資料No.2-3「医薬品・医療機器等安全性情報No252」です。資料No.2-4、平成21年1月9 日付け、安全対策課長通知でございます。資料No.2-5は「日本マグネシウム学会からの要 望書」になっております。資料No.2-6「パブリックコメントに寄せられたもののうち酸化 マグネシウムについての意見」をまとめた1枚紙になります。資料No.2-7「パブリックコ メントの結果」でございます。資料No.2-8「平成20年度『医薬品安全性情報活用実践事 例等の収集事業』報告書」の抜粋でございます。資料No.2-9は「平成17年4月から平成 20年8月までに報告された酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない症例」、そ の下に症例票を付けております。  その下、参考資料No.2-1として「スラーリア便秘薬の添付文書」でございます。それか ら参考資料No.1といたしまして「一般用医薬品のリスク区分の変更手順について」でござ います。最後に資料ナンバーは振っていませんが、参考資料No.2として「平成21年6月1 日から一般用医薬品の販売方法が変わります」というリーフレットを付けさせていただい ております。資料は以上でございます。 ○松本座長 資料はよろしいでしょうか。それでは議事を進めてまいります。議題1の「フ マル酸ケトチフェン点鼻剤のリスク区分について」、まず事務局から説明をお願いします。 ○事務局 それでは議題1「フマル酸ケトチフェン点鼻剤のリスク区分について」御説明 をいたします。資料No.1-1、資料No.1-2、参考資料No.1-1、それから配付資料の最後に あります参考資料No.1と資料番号は付しておりませんが、参考資料No.2としてカラー刷 りの資料をお手元に御用意ください。  資料No.1-1は「フマル酸ケトチフェン点鼻薬のリスク区分について」でございます。資 料No.1-2は「新一般用医薬品の製造販売後調査報告書」でございます。参考資料No.1-1 はフマル酸ケトチフェンを含む一般用医薬品である「ザジテンAL鼻炎スプレー」の添付 文書でございます。参考資料No.1は「一般用医薬品のリスク区分の変更手順について」で ございます。参考資料No.2は「平成21年6月1日から一般用医薬品の販売方法が変わり ます」という題名のリーフレットでございます。  まずは議題に入る前に、一般用医薬品のリスク区分、その分類方法及びその変更手順に ついて御説明をいたします。参考資料No.2の裏面、1「リスクの程度に応じた情報提供と 相談体制の整備」と青字で書いてある面を御覧ください。一般用医薬品の各区分について 簡単に御紹介をいたします。  第1類医薬品は一般用医薬品としての使用経験が少ない等、安全性上特に注意を要する 成分を含むものであり、薬剤師によって販売されます。この区分にはH2ブロッカー含有 薬、一部の毛髪用薬等が分類されております。第2類医薬品は、希に入院相当以上の健康 被害が生じる可能性がある成分を含むものであり、薬剤師、登録販売者により販売されま す。主なかぜ薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛鎮けい薬等がここに分類されております。第3類 医薬品は第1類、第2類に分類されない、日常生活に支障を来たす程度ではないが、身体 の変調・不調が起こるおそれのある成分を含むものであり、薬剤師、登録販売者により販 売されます。この区分にはビタミンB・C含有保健薬、主な整腸薬、消化薬等が分類され ております。  それでは参考資料No.1を御覧ください。この変更手順は、平成21年5月8日に行われ ました安全対策部会において御審議いただき、御了承いただいたものです。一般用医薬品 のリスクの区分の分類には、2.にありますとおり、従前より厚生科学審議会医薬品販売制 度改正検討部会報告書に従って実施されております。  具体的な手順としては同じ成分を含有する医療用医薬品の添付文書を基に「相互作用」 「副作用」「患者背景」「効能効果」「使用方法」「スイッチ化等に伴う使用環境の変化」の 6項目について、個別の成分のリスクを評価し、それを基に「スイッチOTCの市販後調 査期間中又は市販直後調査終了後引き続き副作用等の発現に注意を要するもの」に相当す る成分を第1類に、「相互作用」「副作用」及び「患者背景」のいずれかの項目でリスクの 高い成分を第2類に、それ以外を第3類に振り分け、そしてその結果の妥当性について、 専門的な知識・経験を基に個々の成分ごとにさらに検討を加え評価する、そういった手順 を行っております。  リスク区分の変更については3.に記載があります。医療用医薬品の使用上の注意の変更 に伴うリスク区分の変更、スイッチOTC等の市販後調査の終了に伴うリスク区分の変更 等については、その事前整理等を「安全対策調査会」に行わせることとするとされていま す。その手順としては(1)として、安全対策調査会の調査審議に当たり、必要に応じ関係学 会等の有識者等の出席を求め、意見を聴取し、事前整理を行い、その結果、リスク区分等 の変更を行う必要があるとされた場合、変更案についてパブリックコメントを行う。(2) として、厚生労働省は医薬品等安全対策部会を開催し、安全対策調査会における事前整理 の結果、パブリックコメントの結果等について調査審議を行い、指定の変更の要否につい て答申を得ることになっております。  それでは資料No.1-1を御覧ください。議題1、フマル酸ケトチフェン点鼻薬についてで す。医療用医薬品では、代表的なものとして「ザジテン点鼻液」が製造販売されています が、今回御審議いただくのは同様のものが一般用医薬品としてスイッチされたものになり ます。薬効群が鼻炎用点鼻薬、投与経路は外用、告示上の成分名はケトチフェンになりま す。現在のリスク区分は第1類医薬品ですが、フマル酸ケトチフェン点鼻剤の製造販売後 調査が終了し報告書が提出されましたので、その結果を基に本成分のリスク区分について 御審議をいただきたいと思います。  なお、同様な成分として抗ヒスタミン薬であるクロルフェニラミンを含有した点鼻薬は 第2類医薬品として流通しておりますので、御参考にしていただければと思います。  資料No.1-2、製造販売後調査報告書を御覧ください。対象品目は販売名としては「パブ ロン点鼻Z」「ザジテンAL鼻炎スプレー」「アレスト点鼻Z」です。調査期間は販売を開 始した平成17年11月1日から平成20年10月31日の3年間実施されております。  2ページ、別紙(1)を御覧ください。1特別調査は、薬局等と契約し、モニター店舗でア ンケート等の調査を特別に行ったものです。モニター店舗数は551例、調査例数は1,213 例であり、そのうち副作用報告があったものは37例48件、いずれも非重篤と判断されて おりますが、そのうち使用上の注意から予測できない副作用は口渇、倦怠感、適用部位腫 脹であり、8件報告されております。  2の一般調査は使用者または薬剤師からの自発報告です。この調査では42例64件の副 作用が報告されております。そのうち使用上の注意から予測できない副作用は、浮動性め まい、悪心、鼻部不快感、異常感、湿疹、鼻出血、感覚鈍麻、発熱、鼻炎、鼻閉、眼瞼浮 腫、倦怠感、口唇腫脹、蕁麻疹、紅斑性皮疹、回転性めまい、意識レベル低下及びメニエ ール病の37件でございます。重篤と判断された症例は蕁麻疹、意識レベルの低下、紅斑性 皮疹、浮動性めまい、メニエール病の4例5件でございますが、すべて使用上の注意から 予測できない副作用です。企業報告によるといずれの症例も詳細調査の実施が困難である、 もしくは情報不足のために因果関係を評価することが困難であるとされております。  その次の3ページ、別紙(2)には「副作用の種類別発現状況」。またその次の4ページか らは別紙(3)として、特別調査及び一般調査における副作用の発現症例一覧表が添付されて おります。  企業見解は16ページ目、いちばん最後のページになりますけれども別紙4になります。 使用上の注意から予測できる副作用は重篤と判断されるものはなく、使用上の注意から予 測できない副作用は、いずれの副作用も本剤と関連が疑われる症例の集積が少ないことか ら、現時点で特別な対応は必要ないと考えると報告されております。  参考としまして、参考資料No.1-1として「ザジテンAL鼻炎スプレー」の添付文書を付 けております。以上でございます。御審議をお願いいたします。 ○松本座長 ありがとうございました。ただ今事務局から「フマル酸ケトチフェン点鼻剤 のリスク部分について」説明をいただきましたが、委員の先生方何か御意見、御質問ござ いますでしょうか。耳鼻咽喉科が御専門の大久保先生、何かコメントをいただけませんで しょうか。 ○大久保参考人 浮動性めまい、回転性めまい、メニエール病がすべて「めまい」という 標記になっておりますが、実際には点鼻の抗ヒスタミン薬が血中に移行したためです。経 口薬だとPETの結果でも血中のフマル酸ケトチフェンは脳内移行が70から80%の高い数 値を示します。脳内のヒスタミン状態をブロックした場合に、めまいなどは当然生じてし かるべきだと思います。「メニエール病」という病名がそこで下されたのは、たぶんめまい ということで下されたからと判断しますと、めまいが、一連として脳脊髄管をフマル酸ケ トチフェンが通過したことにより生じているものとして、一括できるのかなという気がし ます。  口渇感も同じように、点鼻をした場合に鼻腔から咽頭腔へフマル酸ケトチフェンが流れ 込んだ場合に生じます。これは抗ヒスタミン薬は抗ヒスタミン作用だけではなく、抗コリ ン作用を持っています。副交感神経を抑えることによりまして、口渇感はもちろん出てき ますし、鼻の乾燥感も出てきます。そういったことが、やはり薬剤として持つ特性によっ て起こってくるスタイルだと考えております。  倦怠感もこのめまいにたぶん入ってきます。そう考えていきますと、まったく予測でき ないものは、ここの中のものではそんなにないと判断されます。蕁麻疹、先ほど出ました 紅斑性皮疹、口唇腫脹、こういったものは逆に希に起きた偶発症として考えた方がいいの ではないかという気はしております。そのメカニズム的にはまったく分かりません。フマ ル酸ケトチフェンに対して何らかのアレルギー反応を示している。抗ヒスタミン薬はどち らかといいますとそれを治療する薬剤の方ですから、副作用としては適切ではないという 気はしております。以上です。 ○松本座長 予測できる副作用の範囲以内、許容範囲内のものであると考えてよろしいわ けですか。 ○大久保参考人 「めまい」という言葉が適切にその副作用を反映しなかった。例えば倦 怠感にしても、めまいにしても、どちらかといいますと脳内のヒスタミンH1受容体への ブロックによって生じていると考えております。 ○松本座長 ありがとうございました。林先生何かコメントをいただけませんか。 ○林参考人 資料の中で、予測できる、予測できないと整理していただいておりますが、 サジテンAL鼻炎スプレーの添付文書を読ませていただきました印象と含めて考えて、そ のめまいに関します、今御説明もありました中枢移行によりますH1との兼合いがつくと いう表現が少し伝わりにくいのかなと。これは実際には現時点では記載がないということ になりますか。そこの部分は御専門の先生の見解でも薬物との関連を薬理学的にも説明が できることでありましたら、もう少し明確に伝えていただけた方が患者さんとの薬のコミ ュニケーションの中では、現場の薬剤師といたしましてはやりやすいなという印象を受け ました。 ○松本座長 その点は事務局は、これから考慮されているわけですか。 ○安全使用推進室長 今日は、参考資料No.1-1で添付させていただいております添付文書 は現行の添付文書ですので、今回御審議をいただきまして、リスク区分を変更するに当た りまして御指摘がありました注意点、そのめまいの適切な表現ですとか、H1受容体、ま た中枢移行できちんと伝えるべきメッセージの部分につきましては、この現在の情報の中 に適切な部分に付加するように、製造企業につきましてこちらからも指導させていただく ことは可能と思っております。そのような観点で御指摘をいただけましたら、お伝えしよ うと思っております。 ○松本座長 よろしくお願いいたします。ほかに委員の先生方から御意見はありませんか。 よろしいですか。それでは、フマル酸ケトチフェン点鼻剤のリスク区分につきましては、 第2類が適当であるということでよろしいでしょうか。ということで、事務局何かござい ますか。 ○事務局 ありがとうございました。それでは第1類として指定しているケトチフェンの うち点鼻剤につきましては第2類とすることで、告示の改正に向けましてパブリックコメ ントと、併せて指定医薬品の解除に係るパブリックコメントを開始したいと思います。 ○松本座長 次に議題2の「酸化マグネシウムのリスク区分について」、事務局から説明し てください。また、日本マグネシウム学会から要望書が提出されておりますので、要望書 につきましても、西沢参考人から事務局の説明のあとで御説明をお願いしたいと思います。 よろしくお願いいたします。まず事務局から説明をよろしくお願いします。 ○事務局 事務局でございます。議題の2「酸化マグネシウムのリスク区分について」で す。経緯と本日の論点につきまして、事務局の方から簡単に御説明をさせていただきます。 お手元の資料No.2-1です。「酸化マグネシウムのリスク区分について」です。現在の酸化 マグネシウムのリスク区分は、第3類医薬品で分類をしております。薬効群としましては、 制酸・緩下剤ということです。この酸化マグネシウムにつきましては、お手元の資料No.2-3 「医薬品・医療機器等安全性情報」というものがありまして、これは昨年11月27日にリ リースしたものです。ここにこれまでの酸化マグネシウムによります高マグネシウム血症 につきましての評価が記載されております。  この資料の今の2-3という部分、次の3ページに酸化マグネシウムの成分名、販売会社 名等、概略が書いてあります。次の4ページに「高マグネシウム血症の発現状況等につい て」です。この酸化マグネシウムにつきましては、昭和25年から便秘薬、制酸剤として広 く利用されております。これは医療用医薬品だけではなく、一般用医薬品としても使われ ていまして、企業が推計する年間の使用患者数は大体4,500万人程度という数字です。  こちらにつきまして副作用の発現状況につきまして、これまで総合機構等で評価をさせ ていただいているところでは、平成17年4月から平成20年8月までに報告されました酸 化マグネシウムの服用と因果関係が否定はできない高マグネシウム血症は15例が報告さ れております。専門家の検討を行った結果ということで、現状では高マグネシウム血症に 対して、やはり注意喚起をしたほうがいいだろうということで、「重要な基本的注意」で、 「高マグネシウム血症があらわれることもあるので、長期投与する場合には定期的に血清 マグネシウム濃度を測定をするなど特に注意すること」と。また「副作用」の欄の高マグ ネシウム血症の部分で、この4ページの中段に記載されているような形での注意喚起を行 ってきております。  4ページの下の「症例の概要で、これは代表的な15例の中の症例を記載させていただい ておりますが、ここに2例の高マグネシウム血症、女性の方80代の方の症例と90代の方 の女性の症例が記載されております。  こちらでの記事の元になりました症例につきましては、本日資料No.2-9という形で少し 厚めの資料になっておりますが、先生方のお手元に配付をさせていただいております。こ れが17年4月からの因果関係は否定はできないとのことで報告をいただいている症例で、 15例ございます。この症例の番号が1から15まで付いていますが、この冊子の方で紹介 をさせていただいています死亡症例が4番と10番の症例で、それ以外の部分の残りの13 例はこの一覧に示しておりますとおりです。いろいろ合併症等につきましても簡単に整理 をしておりますが、こういった状況の症例がありまして、この後ろに詳細な症例報告の症 例票を付けております。  この安全対策という観点で、因果関係が否定できないというレベルで、こういった形で の使用上の注意をより注意喚起をすることで、資料の先ほどの2番のところに立ち返りま すが、厚生労働省医薬食品局安全対策課から使用上の注意の改訂ということで文書を出し ております。また、資料No.2-4におきまして一般用医薬品につきましても、使用上の注意 の改訂ということで、裏側に一般用医薬品に関しましても、「次の場合には」ということで、 服用後の立ちくらみ、強いねむけ、そういった部分につきまして自覚症状が現れた場合の 対処ということで、追記をさせていただいたという経緯です。  その形での医療用医薬品の添付文書の改訂を行い、一般用の医薬品での添付文書の改訂 を行ってきたというところですが、この現在のリスク区分3類の部分につきまして、注意 喚起という部分から、リスク区分を2類に引き上げるといった案につきまして、昨年12月 にパブリックコメントで案を提示したところです。資料No.2-6にパプリックコメントに寄 せられた意見ということで、多数の方々から3類であることが適当であるという御意見を いただいてきております。また、このあとに御紹介いただきますが、資料No.2-5にありま すように、日本マグネシウム学会からも意見を頂戴している状況になっております。  今般酸化マグネシウムについては、このようにリスク区分につきまして御意見を多数い ただいている状況です。また、この販売制度におけるリスク区分変更につきましては、い ろいろな社会的な影響等もある部分ですので、慎重に御審議をいただく。専門家の方々等々 の御意見も踏まえて、慎重に御審議をいただくということで、本日こちらの安全対策調査 会で御審議をいただくことになっております。  また、本日の御審議の参考として、資料No.2-8で「医薬品安全性情報活用実践事例等の 収集事業」の報告書の4「酸化マグネシウムの経口剤の長期投与事例に生じる高マグネシ ウム血症」で、この実践事業の中で医療機関、診療所等におきまして、実際に酸化マグネ シウムを投与されている患者さんの血中マグネシウム値を測っていただいたというような 情報提供等をそのまま実践するといった事業の報告書を参考に付けさせていただいていま す。あと参考資料No.2-1というところで、現在の一般用医薬品、第3類医薬品のこれは一 つの事例ですが、添付文書を紹介させていただいております。では、御審議のほどをよろ しくお願いいたします。 ○松本座長 ありがとうございました。西沢先生、よろしくお願いいたします。 ○西沢参考人 ただ今御紹介いただきました、私、日本マグネシウム学会の理事長を仰せ つかっております西沢でございます。この度、酸化マグネシウムのリスク区分分類の調査 会で、日本マグネシウム学会の見解、その要望につきまして述べさせていただく機会をい ただきましたことを、厚くお礼申し上げます。なお、この見解と要望は日本内科学会、日 本腎臓学会、日本透析医学会の賛同を得て、4学会の共同のものであるということを御承 知いただければありがたいと思います。  本日は学会としての意見を私ども3名で述べさせていただきます。私がまず簡潔に問題 の経緯につきまして述べさせていただきまして、次にマグネシウム学会で酸化マグネシウ ムの副作用問題検討ワーキンググループの実務担当をしていただきました学会評議委員の 横田が、検証結果につきまして述べさせていただきます。最後に菊池理事から、検証結果 の考察と結論及び学会の見解と要望につきまして述べさせていただく形にさせていただき たいと思います。本日机の上に資料を置かしていただいておりますが、当学会から5種類 の配付資料があります。御確認いただければと思います。  酸化マグネシウムのリスク分類問題の経緯の説明をさせていただきたいのですが、その 前に、我が国におけますマグネシウムの摂取の現状につきまして、少しだけ触れたいと思 います。実はマグネシウムといいますのは、必須・主要ミネラルの一つであることはもう 皆様よく御存じなのですが、実はこれまでカルシウムは非常に重要視されに取り上げられ てきましたが、マグネシウムはその影に隠れましてあまりマグネシウムは注目されてこな かった経緯がございます。日本人におきましては、マグネシウム摂取量は疫学的にも明ら かに疫学的にも摂取が不足していることが示されておりますし、その慢性的な摂取不足が というのが2型糖尿病、メタボリックシンドローム等の生活習慣病の発症に密接にかかわ っているといったことが、近年明らかにされてきております。  酸化マグネシウムは、少量では制酸剤、中等量では下剤として、現在では先ほどもあり ましたが年間で約4,500万人に広くかつ安全に使用されている薬剤であります。平成15年 には当時の坂口厚生労働大臣が酸化マグネシウムの安全性について諮問されておられまし て、食品安全委員会が他のマグネシウム塩と同等の安全性を答申しております。従いまし て、酸化マグネシウムは食品添加物としても既に安全性が再確認されていると、私どもは 考えております。酸化マグネシウムは日本薬局方に収載されまして、もう50年以上にわた りまして幅広く処方されてきております医薬品であります。  昨年9月、先ほど経緯の御説明があったと思いますが、厚生労働省が酸化マグネシウム の副作用報告、3年間に15例の高マグネシウム血症、2例の死亡例を根拠に使用上の注意 の改訂指示を発令されました。また同じく11月には先ほども示されたと思いますが、安全 性情報252号が発出されました。これを受けて報道各社が、「厚労省が酸化マグネシウム、 便秘薬で2名死亡。一般医薬品リスク区分を3類から2類に引き上げて規制を強化」とい ったような報道がなされています。  この発表に対しまして、酸化マグネシウムを処方しておりました多くの医療従事者には、 かなりの疑義を与えた、あるいはこれを服用している多くの患者さんには大きな不安を与 えたのではないかと考えます。こういった医療現場の混乱を来たしたことによりまして、 私ども日本マグネシウム学会では、基礎及び各臨床系のマグネシウム研究者の専門家から なる事実検証のワーキンググループを設置いたしまして、酸化マグネシウム投与における 副作用発現、特に死亡例との因果関係の真偽につきまして検証をいたしました。  その結果は今回の添付文書の改訂の根拠になっています、酸化マグネシウム投与と死亡 との直接的な因果関係は否定できないとされています点につきましては、直接的な関与の 可能性というのは低いことが示されました。そこで以上の検証に基づいて日本マグネシウ ム学会で見解・要望書を本年の3月25日に厚生労働大臣宛に提出をさせていただいたわけ です。以上が本日に至るまでの学会からの今回厚生労働省に働きかけた経緯です。  それでは引き続きまして検証結果につきまして、実務担当であります横田から御説明さ せていただきたいと思います。 ○横田参考人 ただ今御紹介をいただきました横田です。よろしくお願いいたします。今 回の焦点であります高マグネシウム血症につきましては、腎不全例におけますマグネシウ ム製剤の多量長期投与により生じるということは、以前から指摘はされています。さらに、 従前から添付文書にも、高マグネシウム血症の注意喚起はすでになされています。しかし 高齢化や慢性腎臓病の増加を考慮しましても、ここ数年で実質的な発現頻度が増加したわ けではないと考えられます。  この問題になりました2例ですが、この2例につきましての検証結果は、日本マグネシ ウム学会の見解・要望書に詳しく記載されたとおりです。この調査対象とされました高マ グネシウム血症の15症例、配付資料No.2-5、3ページの図1です。こちらを御参照いただ きたいと思います。その内訳は、腎機能障害を有するものが10例。腎機能障害を有さない ものが5例です。前者では全例が軽快、回復しています。2死亡症例のほうは、腎機能障 害がない5例中の2例です。ちなみに、これまでは腎不全例での高マグネシウム血症の報 告は少なからず見られますが、高マグネシウム血症が直接的死因であるとの症例報告はご ざいません。  ここで、この腎機能障害がない2例の死亡例の臨床経過につきまして述べたいと思いま す。1例目では、これは学会見解・要望書の中の表の1の症例9です。配付資料のほうで 見ますと、資料No.2-9では症例4に相当いたします。この症例は甲状腺機能亢進症、認知 症等を有する86歳の女性の症例です。突然の大量の下痢、意識消失、ショック、呼吸停止、 敗血症で搬送され、カルシウム製剤の静脈内投与にて一時的に血圧が上昇し、また、血液 透析で血中マグネシウム濃度が17mg/dLから低下いたしましたが、カテコラミン不応性の ショック状態が遅延した症例です。ショックの原因及びそれが遅延した理由としましては、 腸管の壊死が疑われ膿性腹水から細菌が検出されたことから、細菌性の敗血症性ショック と考えられ、そのための死の転帰をとったものでありまして、酸化マグネシウムの服用に よります、高マグネシウム血症が直接的な死因とは臨床的には考えられない症例であると 考えられます。  次に2例目です。これは症例13、配付資料ですとNo.2-9、症例10に相当いたします。 本症例の場合は、統合失調症、認知症、慢性便秘の78歳の男性の症例です。腎機能は正常 であったと記載がありますが、推算糸球体濾過値、いわゆるeGFRが不明であり、腎機 能が確実に正常であったか否かは定かではなく、また厚労省の症例提示からも省かれた学 会発表のみの症例です。  本症例では、意識障害、昏睡の状態で搬送されまして、ショック状態を呈していました。 血清のマグネシウム濃度が20mg/dLと高マグネシウム血症を呈しておりましたが、大量の 輸液及び血液透析、カルシウム製剤の投与によりまして、血中マグネシウム濃度が20から 12まで低下。意識レベルも改善したにもかかわらず、血圧が保てないとのことで翌日死亡 された症例です。さらにこの症例では非常に著明な腸管の拡張による腹部膨満も認めてお ります。  次に以上の検証結果を踏まえまして、菊池理事から考察と結論を御説明させていただき、 また学会としての見解と要望を述べさせていただきたいと思います。それでは菊池先生、 よろしくお願いいたします。 ○菊池参考人 御紹介いただきました菊池です。よろしくお願いいたします。この2症例 の考察に先立ちまして、マグネシウムの代謝はどのようになっているのかを簡単に述べさ せていただきたいと思います。経口投与、経口摂取されましたマグネシウムの約40%が腸 管から吸収され、マグネシウムプールに入りますが、このマグネシウムプールとマグネシ ウムの貯蔵臓器であります、骨・軟部組織の間が平衡状態にある場合には、吸収されたマ グネシウムのほとんどが腎から排泄される仕組みになっております。従いまして通常、高 マグネシウム血症を呈する場合には、腎不全の存在が必須でございます。通常、マグネシ ウム血症は腎不全の存在下でマグネシウム製剤が大量長期に投与されたときに生じますが、 これに加えて、極めて特殊な病態と致しましては、腸管のバリアが高度に障害され腸管吸 収が異常に亢進した場合にも生じ得るとされております。  それでは症例の考察を述べさせていただきますが、死亡症例の1例目は、先程、横田先 生からお話がありましたように、腸管壊死からの細菌性敗血症ショックが直接的な死因と 判断される症例です。また、2例目は、学会抄録のみの症例で、血液透析の適切な治療に より血清マグネシウム濃度が低下し、意識レベルも改善致しましたが、カテコラミンに対 する反応が悪く、ショック状態が持続して亡くなられたという患者さんです。  この症例の死亡原因につきましては、高マグネシウム血症は治療により改善しておりま して、高マグネシウム血症以外の何らかの要因、あるいは病態が関与した可能性が高いと 推察されます。この症例での高マグネシウム血症の成因、この症例で成因、増悪の機序と いたしましては、本例では詳細はわかりませんが著明な腸管拡張による腹部膨満という記 載がございます。慢性便秘、多量の便貯留、この背景には腸閉塞等の存在の可能性も除外 できないような病態であったように推察されます。これらによりまして腸管バリア機能が 損傷を受けて、投与された酸化マグネシウムの腸管からの吸収の異常な亢進が生じ、それ に本症ではショックを呈しておりますので、それによります腎糸球体濾過値の低下、腎か らのマグネシウムの排泄の著明な減少、これらの関与の可能性が強く推察される状況です。  しかし、酸化マグネシウムの投与量を含めまして、高マグネシウム血症によると考えら れる自・他覚所見等の経緯の詳細についての記載がありませんので、本例も酸化マグネシ ウム投与と死亡との直接的な因果関係を証明するのは、極めて困難であろうと判断をされ ました。  以上のように2死亡例とも酸化マグネシウム服用例で高マグネシウム血症を呈しており ますけれども、医学的にそれが死因に直接的に関与した可能性はきわめて低いと考えられ ます。死因には腸管壊死、感染性腹膜炎、敗血症ショック。2例目では腸管の異常拡張、 腸管のバリア機能の障害等、重篤な基礎疾患や病態の関与がより強いと推察されました。 また、直接的な死因に加えて、通常では考えがたい著明な高マグネシウム血症の成因にも これらの特殊な基礎病態が重複して関与していたと考えるのが妥当と思われます。  一方、高マグネシウム血症は、先程申し上げましたように、マグネシウム製剤の多量長 期投与時に通常は、先ほど申し上げましたように、腎不全あるいは/加えて高度の腸管バリ ア機能の低下の存在下で生じ得ますが、血清マグネシウム濃度が通常ですと短時間で急速 に上昇することはありません。通常は緩徐に血清マグネシウム濃度が上昇しまして、その 濃度があるレベル以上に上昇しまして初めて症状を呈することになります。初期では、程 度の軽いときには食欲不振、吐き気、更に血清マグネシウム濃度が上昇いたしますと、意 識レベルの低下等が出現するとされています。  従いまして、本年1月に厚生労働省から発出されました、使用上の注意改訂の追記に記 載されている症状は、先ほど述べました腎不全に敗血症ショック、腸管バリア機能の高度 の障害等が重複した、きわめて特殊な病態の高マグネシウム血症患者さんにおきまして見 られ得る症状です。一般にはこのような特殊な病態とは全く異なる大多数の酸化マグネシ ウム服用患者さんにも、この追記症状があたかも該当するかのような誤解を与える可能性 があると考えます。このような誤解は、是非、回避して頂いたほうが良いと考えられます。  一方、今回医薬品等の使用上注意改訂におきまして、腎不全で、これに腸管バリア機能 の異常低下を伴うような症例等、特殊病態例への酸化マグネシウムを含めたマグネシウム 製剤の長期多量投与による高度の高マグネシウム血症発症のリスクにつきまして、これま でにも増した周知啓発を行いまして、重篤な副作用の発現を防止するための注意喚起を行 うことは、必要かつ大変重要なことと思われます。また、腎不全の存在下では、マグネシ ウムはカリウムの動態と関連することがよく知られております。従いまして、このような 特殊病態下のハイリスク症例への酸化マグネシウムを含めたマグネシウム製剤投与時には、 臨床症状の定期的かつ注意深い観察と、それに加えまして血清マグネシウム濃度と血清カ リウム濃度の同時測定と心電図検査の実施を推奨することは、さらに臨床的に意義がある ことだと考えられます。  結論といたしまして、以上の検証結果から、酸化マグネシウムの一般用医薬品のリスク 分類を、現在の第3類から2類に上げるという案は撤回していただいたほうがよろしいの ではないかと。第3類のままに据え置いていただきまして、また、早期に使用上の注意の 改訂通知の修正ならびに添付文書の適切な再改訂がなされることを、学会として強く要望、 お願いするところでございます。以上でございます。 ○松本座長 ありがとうございました。それでは事務局ならびに3人の先生方からただ今 説明をしていただきましたが、これに対しまして御意見、御質問等ございますか。上田先 生お願いいたします。 ○上田参考人 上田と申します。薬学部の教授になっておりますが、一応医者もやってお りまして、腎不全の患者さんを大体2,000人ぐらいをフォローアップさせていただいてい ます。この症例を、私は見させていただきましたが、やはり腎不全があるからマグネシウ ムが高くなる。実際に私も透析の患者さん何百例かに、血中と赤血球中のマグネシウム値 を見させていただきまして、やはり腎不全がありますと、1g以上使っていますとどうして も安全の4.5それ以上になってくることは感じています。ですから腎不全の患者さんには なるべく使わない、長期間漫然と使用しないことは大切なことだと考えています。  もう一つ、この2例の死亡例は確かに腸管のバリアが壊れたりとかはありますが、例え ば症例3とか症例5で、わりと若い方で特にそれほど腎不全がない方でも、かなり高い濃 度に上がってきている患者がいないわけではありません。ここで発見された患者さんたち は、すべてある意味でICUレベルでの発見なのです。要するに意識がなくなったから即 病院へ行き、測定してマグネシウムが高いと気がつかれる。そういうわりと医療としては 恵まれた所にいた方といってよいかと思います。  要するに今はいちばん私が危惧するのは、現在1人住まいの方が非常に多いのです、高 齢の方でも、若い人でも。そういうところにおきまして、マグネシウムで呼吸停止、意識 障害になった場合に、発見する人がいなかった場合には、結局事故あるいは自殺等で処理 されている場合が結構あるのではないかと。そういうことを危惧して、やはり確かにこれ はこのようなことがあるということを、それは学会の先生もそのようにおっしゃっていま したが。もう一つは、3類ではなく2類という形である程度社会的にそれを表現をしたほ うが、私は適切なのではないかと考えました。感じたのではなく考えましたとのことです。 以上です。 ○松本座長 ありがとうございました。ほかに御意見はございませんか。 ○五十嵐委員 日本腎臓学会では、今CKDのキャンペーンを数年間おこなっています。 いわゆるeGFR等を測りまして腎機能が低下している人がどのくらい日本にいるかを調 査ました。定義にもよりますが、1億3,000万人のうち2,000万人ぐらいがいわゆるCK Dの中に入るわけです。つまり我々の1億3,000万人の人口の中の2,000万人が腎機能が 低下している人ということになります。  これははっきりしていますのは、腎機能が低下している人たちがこの薬を飲むと高マグ ネシウム血症が起きる可能性が高くなるわけです。しかもこれから高齢化がはじまり、さ らにCKDの患者さんの割合が増える可能性があります。潜在的に腎機能が低下している 人たちが日本には2,000万人から、これから2,500万人になったり3,000万人になったり 増えていくことが予想されます。潜在的にこのような薬を漫然と使う場合には今以上に、 亡くなるかどうかは別としても、高マグネシウム血症の患者さんが発症するリスクが高く なるのではないでしょうか。  そのように考えますと、日本腎臓学会はむしろこのような薬に対して注意をしましょう という喚起をむしろすべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。 ○西沢参考人 私は透析医学会の前理事長を務めさせて頂きまして、透析患者さんの病態 はよく存じておりますし、腎臓学会におきましても理事を仰せつかっておりますので、腎 臓病患者さんのことも承知しているつもりです。今先生がおっしゃいました慢性腎臓病患 者数2,000万人というのはeGFRで60 ml/min未満の数字ですが、日本腎臓学会では、 日本人では実際にはeGFRは50 ml/min未満を暫定的に慢性腎臓病としましょうと言う ことで、多分、国民の4%に相当する420万人位になると思います。これが日本における 慢性腎臓病の実情と考えられますが、酸化マグネシウムを服用して高マグネシウム血症が 生じますのは、腎不全の状態が高度な状態に陥った人でありまして、慢性腎臓病の初期の 段階ではほとんど高マグネシウム血症は起きないと考えられます。先程述べました特殊な 病態下に大量に服用すれば別ですが、そうでない場合の通常投与量下では著名な高マグネ シウム血症は起こらないことが既に報告されています。  今回の検証内容は腎臓学会に提示させていただき、腎臓学会からもマグネシウム学会の 見解に賛同を頂きましたことは申し上げましたとおりでございます。ただ、末期腎不全患 者さんには慎重に投与と言うことは、既に、酸化マグネシウムの添付文書には記載済みで はありますが、改めて注意を喚起することは必要ということになったということでござい ます。末期腎不全の場合は全て医師が診察の上、処方をしておりますので、その場合は血 清マグネシウム濃度をチェックして頂くことができます。  もちろん今まで以上に注意喚起は必要というのも、先ほど菊池理事が述べたとおりです。 今、私たちが問題にしているのは、ごく一般の末期腎不全のない、あるいは腎機能の正常 な人たちにも、同様のことを求める必要があるのかということです。これだけの長く、安 全性が確認された歴史のある薬剤で、しかも年間4,500万人にも服用されていることを考 えますと、それほど大きな問題にはならないというのが私たちの意見です。もちろん、医 薬品として使う場合には、それなりの注意は条件によって異なってくると思います。先生 方がおっしゃるとおりだと思います。 ○林参考人 虎ノ門病院の林です。一つディスカッションの根拠データの提示とともに、 少し現状報告をします。お手元の資料に資料No.2-8と書いたものがあります。平成20年 度の「医薬品安全性情報活用実践事例等の収集事業」、日本病院薬剤師会、21年3月と書 いてある資料です。実は私はこの調査事業に関係しており、調査データ、実地調査に行っ たり、まとめたグループの取りまとめをしていたもので、今日、先生方に紹介する機会を 頂戴したのだと思いますので、少し紹介します。  この事業は、実は厚生労働省から発出されたり、製薬企業から発出される医薬品の安全 性情報が、医療機関でどの程度のインパクトを持って安全性に役立っているか、あるいは 役立てることができているかというところを、確認調査に入った事業です。全国で大学病 院を中心に調査をしたり、平成20年度は比較的規模の小さい全国の200床、100床、50床 ぐらいの一般的な医療機関の調査に行きました。  例えば4ページを見ていただくと、2)として「小規模な病院における事例(その1)」を 紹介しています。少し時間経過になって時間を頂戴して恐縮ですが、どのような内容のも のかを御理解いただくのに、「事例の経過」を御覧ください。医薬品医療機器機構からのメ ールによる安全性情報配信サービスが9月24日にあり、この段階で高マグネシウム血症の 注意が要るのだということを再認識したこの病院では、院内のお知らせを作成し、「病院D Iニュース」として周知を図るとともに、院内での検討を開始されています。薬剤部長と 院長先生が実際に通知の内容をお二人で評価され、これは念のために測っておいた方がい いだろうという判断になり、院長先生自ら診療部で検査の実施の指示を行われたりした施 設の内容になります。  16日のところの上から6行目ぐらいを見ていただきますと、この施設では、診療中の全 部の入院患者が約200名、外来患者が約300名いらっしゃったところ、酸化マグネシウム 製剤を使用されていた患者が102名。特に透析などそういう方たちではなかったと認識し ていますが、比較的高齢で便通のコントロールも何らかの形で必要な患者だったろうと認 識しています。500名のうち酸化マグネシウムを使われている方が102名いらっしゃって、 外来患者76名、入院患者26名いらっしゃいました。薬剤部長と院長先生の相談では、長 期に飲んでいる人が多かったという薬の処方歴の調査などもあり、測ってみようというこ とになったと伺っています。  実際に投与量が一日330mg程度のごく少量の方は抜かして、なるべく測りましょうと言 って、10月18日の段階で検査の結果が出てきたところ、67名中54名がここの病院の基準 値2.4mg/dLを超えていたということで、これはある程度実在する高マグネシウム血症はあ るのだと、この病院では認識されていらっしゃいました。主治医の先生方は投与を中止さ れ、別の緩下剤に変更される、あるいは量を減らしてみるなどの取組みをされていらっし ゃったようです。ということで、事無きを得ようというこの施設での取組みが行われてい た確認を一つさせていただきました。  実はその後、施設で12月17日になって、ちょうど測定から漏れていた方だと思うので すが、外来にかかられて徐脈で来院された方がいらっしゃいました。その方の処方を確認 してみると、酸化マグネシウムが1日2,000mgで投与されていたのだけれども、せっかく 病院がこぞって測定をしようという良いプロジェクトをされていたのですが、なかなか全 例というところまでは難しく、この患者は、5.6mg/dLという形になっていて、この段階で 中止して、オルシプレナリン、少しレートを上げる薬を投与されて、経過をフォローアッ プされ、徐々に低下してきて、心電図上も問題なくなって一段落したという事例を経験さ れたということもあります。  この報告書を読んでいただくと、確かに企業診療所みたいな所ですごく若い方たちで、 長期には飲んでないことを確認して事無きを得たという診療所もありました。この施設の 場合には、外来、入院患者で、極めて希にというよりは、時としてこういう状況が起こる のかという状況を、一部実地調査に行ってまいりましたもので、先生方の御判断材料にも なるかということも含め紹介しました。これが事実ということで報告しているので、その 前提で考えると、参考人の立場ですので全部が全部意見することがいいかどうか分かりま せんが、区分のカテゴリーが、希に入院相当程度以上の健康被害が生じることがあるとい う区分がカテゴライズだとすると、ある程度希にはそういうことが起こっているのかとい う実態が見えたようにも感じたので、報告しました。いかがですか。 ○松本座長 どうぞ、菊池先生。 ○菊池参考人 この資料、情報をお集めになられた事業の内容を拝見して、このような情 報収集は是非、定期的におやりになって頂けたら思います。私も医者になって40年以上経 ちますが、腎不全及び、透析患者さんの診療にも長年携わって参りました。先ほど上田先 生と西沢理事長からもお話がございましたが、マグネシウム製剤を投与されている患者さ んは非常に多いのが実情です。今お話がありましたその際の血清マグネシウム濃度のこと ですが、基準値の上限値は2.4mg/dL、あるいは2.6mg/dL位とされていますが、それを少 し超える患者さんは、腎機能が低下している場合には結構いらっしゃると思います。  私たちはそれを希だと申し上げているわけではありません。私たちも臨床研究として腎 不全患者・透析患者・循環器疾患患者さんのマグネシウム動態の研究を数多く行ってまい りまして、腎不全や透析患者さんに酸化マグネシウムを通常量投与した場合には、その血 清濃度は基準値の上限値の大体2〜2.5倍位になることはございますが、心電図を含めまし た臨床所見に大きな異常を認めることはないことを確認しております。これは参考人の循 環器がご専門の岸田先生はよく御存じですが、急性心筋梗塞の時の、多形心室性頻拍とい った危険な不整脈が出た時にはマグネシウム製剤を静脈内投与が有効とされています。そ の際のマグネシウムの血中濃度が8-10mg/dLになりますが、それにより心電図上の致死的 な有害所見や自他各症状は出現しないこと、つまり、安全性が確認されております。そし てこの治療は日本循環器学会はもとよりインターナショナルな学会から急性心筋梗塞時の の多形心室性頻拍の治療として推奨され、それが普通に行われる治療になっている状況で す。  慢性に経口投与したときに、血清マグネシウム濃度が8mg/dLないしは10mg/dL以上にな どになる、そういう著明な高マグネシウム血症は、私どもが先ほど申し上げました特殊な 病態の症例でのみ生じるということです。ですから、血清マグネシウム濃度が2.4mg/dL ないしは2.6mg/dLを超え5mg/dL位までの値を示す患者さんは腎不全があれば、いらっし ゃいます。しかし、それ以上の高マグネシウム血症を呈する患者さんは、今回、症例報告 されているような特殊な病態を呈する方であり、極めて希であるということを申し上げた わけです。そして血清マグネシウム濃度が2.4mg/dLや2.6mg/dLを少し超えると、直ちに 有害な事象が起こるということではないことを御理解いただきたいと思います。  もちろん、末期腎不全で高用量の酸化マグネシウムを投与されている方は高マグネシウ ム血症発現のハイリスクになりますので、自他覚症状と共に血清マグネシウム濃度に加え まして血清カリウム濃度の測定と心電図検査を定期的に行って頂くことの注意喚起は必要 と思います。上田先生もよく御承知と思いますが、腎不全がありますと血清マグネシウム 濃度のみならずカリウム濃度も一緒に高くなります。血清カリウム濃度はマグネシウムと は異なり正常上限値の1.5倍を超えますと、これは致死的な不整脈を起こすリスクが極め て高くになります。マグネシウムの場合には、先ほど申し上げましたように、血清濃度が 基準値の上限値の2〜2.5倍位になっても、重篤な有害事象をもたらさない、そういう安全 性の面ではカリウムなどに比べて安全域がはるかに広いということもお考え頂きたいと存 じます。  もう一つは、先ほど西沢理事長からもお話がありましたように、現在我が国では、メタ ボリックシンドロームから糖尿病へ進展する患者さんが急増し大きな問題になっておりま す。こういう病態ではマグネシウム摂取量が少なく、かつ、腎からマグネシウムが過剰に 排泄され、体内マグネシウムが欠乏し、骨のマグネシウム保持能力も低下してまいります。 糖尿病性腎症で末期腎不全・透析導入をされた患者さんでは、血清マグネシウム濃度はあ まり高くならず、むしろ正常者の平均値より低い患者すら認められます。このような患者 では血管の石灰化や冠動脈疾患の頻度が高いことを、私が旭川医科大学時代の臨床研究で すでに明らかにし、論文発表を行っております。最近は、透析患者さんは、糖尿病が原因 で透析導入される方が非常に増えておりますので、このような患者さんにはマグネシウム 投与を規制するのではなく、むしろ投与が必要になると考えられます。  繰り返し申し上げますが、末期腎不全の高マグネシウム血症発現のハイリスク患者さん に対する酸化マグネシウム投与に際しては、時他覚所見の注意深い観察と必要に応じた血 中マグネシウム濃度の測定や心電図検査を行うよう、改めて注意喚起をして頂くことは、 私どもも賛同でございます。一方、これに該当しない多くの患者さんにも同様に記載を強 めるリスク区分の第3類から2類への格上げは必要ないのではと思われます。リスク区分 の第2類への格上げは、実地臨床の現場では相当な負担になるとのご意見を多くの先生方 から伺っております。マグネシウム学会の見解に賛同頂きました内科学会をはじめ他の学 会にも同様のご意見が寄せられているものと思われます。 ○松本座長 先生、そうすると、資料No.2-9の症例5みたいな、32歳で若くて、これは 投与量もはっきり書いてあるみたいですが、0.5gを1日に2回使って、かなり高いマグネ シウム血症になっているみたいですが、こういう例は極めて希だという判断でよろしいわ けですか。 ○菊池参考人 症例5ですよね。この方もショックを起こしておられます。ショック状態 になりますと、当然マグネシウム濃度は高くなります。ショックでは腎血流量が著減し、 急性腎不全になりますとマグネシウムの腎からの排泄が途絶えますし、ショックを起こし た原因によっては、損傷された組織からのマグネシウムが血中に放出されることも考えら れます。ですから、普通、私たちも循環器をやっていて、心筋梗塞より少し血圧が下がっ てあれしたというだけでは、高マグネシウム血症になることは普通はありません。 ○松本座長 結構若い人でショックになる原因もありそうにもないのになっているという ことになると、意外と。もう少し情報があればいいのですがね。確かにおっしゃるように 情報不足は結構多いみたいです。お話を伺っていると、腎機能障害がなければ絶対安全で あるという考えで、データはよろしいとは思うのですが、こういう例も中にはあるという ことになると、それなりの注意も必要であろうかと思うのですが、いかがですかね。 ○上田参考人 健康な人にマグネシウムは確かに、どのようなものでもバランスがあって、 マグネシウムは絶対体に必要だということはよく存じていますが、もう一つは、本当に慢 性の腎不全がある方、例えばクレアチニンが2や3などという方が、常に医療の保護下に あるかというと、これはかなり怪しいです。相当昔の筑波の発表でも、クレアチニン5に なって、男性がやっと5割医者にかかっている。現在、もう少し違ってくると思いますが、 そういう患者も自分は健康だということで、OTCを利用することがあるわけですね。で すから、そういうことも考えると、常にいろいろな特殊な方もいらっしゃるだろうけれど も、そういう特殊な方も救い上げるという施策が私は是非必要だと思います。  あと現場でお困りになったと言いますが、ここで3類から2類になったからといっても、 医療の現場で患者にカマやマグミットなど、そういう薬を出すことが制限されることはあ り得ないわけです。これはあくまでもOTC上の問題であって、そこにおいてなぜ私たち 医療者がそれに対して、3類を2類に上げることに対してこれだけの抵抗を示すかは、全 く理解できないところです。 ○菊池参考人 先生、血清クレアチニン2mg/ dLの方が酸化マグネシウムの通常容量を投 与されていて、このような高度の高マグネシウム血症を呈することは普通はありません。 ○上田参考人 ですが、5という人もいらっしゃるということです。5とかいう方が医療の 現場の中に入ってないということは。 ○菊池参考人 これは先ほども申し上げましたが、血清クレアチニン濃度が5mg/ dL以上 をしまします透析患者さんでは便秘をされる方が多く、通常用量の酸化マグネシウムが投 与されている患者さんが少なくないこともあり、私たちは透析患者さんの血清マグネシウ ム濃度を調査し、論文に発表しています。その中には、今回の特殊な症例として報告され た高度の高マグネシウム血症を示した患者さんは一人もございませんでした。透析医学会 でもそのような発表は今までないと思います。腎不全患者さんへの注意喚起はこれまでな されてきましたし、改めて注意を促すことは勿論、宜しいのです。一方では、リスク区分 が第2類に強化されますと腎機能が正常な、特殊な病態を示さない酸化マグネシウムを投 与されている患者さん全員に、まれな特殊な病態にある患者さんと同様の血中マグネシウ ム濃度の測定などの規制がかけられることになるのではと危惧いたします。 ○松本座長 菊池先生と全く逆に、私らもカマは絶対安全なものだと思っていたのですが、 先ほどの室長の紹介もありましたが、推進事業の収集を見てみると、意外とマグネシウム が上がっている例が多いので、びっくりしたのです。むしろ現場の方が知らないであるの ではないかと思ったものですから。現実の認識と少し異なる、そういうことです。中には 逆に考える人もいるのです。 ○横田参考人 今いろいろお話、御意見がありましたが、実際、現場で腎機能障害がある 程度あって、5mg/dLまではほとんど無症状です。いちばん最初に理事長も言われたのです が、マグネシウムに対する認識は、今、日本はまだほとんどないというところで、血中濃 度を測ろうという方もほとんどないのが現実です。結局、カルシウムの陰に隠れたような ミネラルですが、またメタボや糖尿病の成因にもなっていることも、最近分かってきてい ます。  先ほど平成15年に坂口厚生労働大臣に酸化マグネシウムの安全性が諮問されたときも、 他の塩類と同等に安全だというお墨付もついているわけですから、しかも量は多い少ない があるにしても、4,500万人の方が飲んでいるという薬であり、なおかつ添加物でもあり ます。ですから、薬品としての注意喚起は必要だと思うのですが、一般医薬品のレベルで、 これを大量に医療機関で出る2g、3gのレベルで飲む方はまずいないですし、今まで高マグ ネシウム血症が直接的な死因になった報告もありません。  別の添加物ですが、それを多量に飲んで、心肺停止で入院されたケースが、2004年に内 科学会でも報告されています。血中濃度は、マグネシウムは26mg/dL、カルシウムが23mg/dL でして、カルシウムも入ったものですが、それを飲んだ症例もショックで心肺停止だった のですが、腎不全、クレアチニンが3.6mg/dLでして、その方も透析もして、最後は後遺症 もなく元気に帰られたという症例で、高マグネシウム血症が直接死因につながることはま ずあり得ないと考えられます。  一般用医薬品のレベルでのリスク区分としては3類で、しかも50年以上、欧米でももっ と長いこと使われている医薬品です。症例は確かにいくつかいろいろあって、今回の2つ の死亡例をもってリスク分類を変えるという根拠だと私たちは理解していまが、そうなり ますとその2例が今ご説明した理由で、1例は敗血症性ショックですし、これも機構で調 べられたときに、これが情報等の不足により対象外とするといった症例であったにかかわ らず、これが重篤な一例ということで症例提示されてしまったことが問題です。  もう1例については、先ほど菊池理事から御説明があった極めて特殊な病態で、高マグ ネシウム血症を起こした症例ですが、何かの原因でショック状態になると急性腎不全にな り、血中濃度は今まで飲んでいた酸化マグネシウムによって高マグネシウム血症になって くるという極めて特殊な病態です。従って、安全性も確認されたものですし、実際に一症 例が提示されたわけではありますが、それをもって、第3類から第2類とすることは学会 としてはいかがなものかと考えています。  糖尿病の場合には、多少クレアチニンが上がっても、これは尿中の排泄が増えるので、 先ほど菊池先生がおっしゃられた腎不全の透析患者でも、酸化マグネシウムを飲んでいな がら糖尿病であると血中濃度も上がらないし。むしろ低いという方も多数おられるのも事 実です。 ○松本座長 岸田先生、何かコメントはありますか。 ○岸田参考人 私も菊池先生と同じで循環器の方をやっており、先ほどから先生方のお話 を聞いていて、内容をよく理解できました。私は循環器の立場として、通常、マグネシウ ムは低い方にいつも目が行っていたのです。というのは、マグネシウムを使っていれば、 これは不整脈は起こさないし、安全だという考えです。先ほど菊池先生もおっしゃられま したが、確かにマグネシウムを使った群と使わない群でやってみると、心筋梗塞の場合に マグネシウムを使った方が死亡率が少なかったとか、そういう医学的データは出ています。  実際にマグネシウムが抗不整脈作用としてどう効いているかがよく分からないのです。 カリウムが結局その裏で働いているということもあるし、たぶん実際のところはまだ分か ってないと思います。以前、マグネシウムは自然のカルシウム拮抗薬であるという話を聞 いたのですが、そちらの学会の資料の文献の5番目のところで、マグネシウムの程度と症 状が記載されています。これはカルシウム拮抗薬の強さと似ているという印象を持ったの です。例えば、確かに9.7mg/dLぐらいになると、房室ブロックを起こしてきたり、18mg/dL になると心停止を起こすということです。  そうすると、今回の症例に当てはめてみると、今回の症例は極端な例が出ていて、科学 的にこれを分析しようとしても、限界があって無理なのです。どのように優れた臨床の先 生方がこれを見ても、限界があるのです。6割、7割の判断で副作用と取らざるを得ないと いうこともあるのです。結局、何がいちばん大切かというと、一般の人たちが安心して服 用するためにはどうしたらいいかと、そこなのです。それだけの話なのです。それをどう したらいいかということです。  結局、そういうことになると、こういう数字を見ると、今申し上げたように、マグネシ ウムは今まで少ないということの方が非常に重要だと思ったのが、意外とこういう高い例 もあって、それで自然のカルシウム拮抗薬ということになると、極端なことを言うと、突 然死を起こすこともあるかもしれない。先ほどないとおっしゃいましたが、いろいろな論 文を読んできたのですが、特殊な事例もあることはあるようです。  そういうことからいくと、今後のこういう安全対策を見た場合に、少ない症例であって も、安心した薬の飲み方を患者にいかに提供するかと、そういう情報法提供に尽きると思 うのです。この区分はどうするかは厚生労働省がお決めになると思いますが、最終的には そういう目で捉えた方が、私はいちばんみんな国民に受けるのではないかと思います。こ ういう情報提供があることは真摯に受け止めるべきだと思っています。  私自身もこういう意味で反省している点があります。一例一例を見ましたが、例えば高 齢者であったり、先ほどからもいろいろなCKDの話もありましたが、確かにリスクのあ る患者が多いのですが、薬剤の相互作用も問題になっているのです。ですから、我々はそ ういう厳しい目で見て、いちばんいい安全な情報を国民に提供すると、そのように考えた 方がいいかと思っています。 ○西沢参考人 今、先生のお話を伺って、私は骨粗鬆症のこともやっているつもりですが、 マグネシウムでマイナスに働くというのは私は知らないのですが、むしろマグネシウムを 普及すべきだという考え方の方が強いと思います。  なぜ反対しているのかというと、反対という言葉は当たらないと思うのですが、マグネ シウム学会としては、日本人でマグネシウム摂取量が非常に少ないということは明らかで、 かつ、先ほども出てきましたが、生活習慣病にかなり影響のあるものであるということが 明確にされてきた。こういったベースがあって、マグネシウムに対する、特に医薬品に対 してはいいのですが、医薬品は注意してもらうべきだと十分に考えていますが、一般につ いてはそれほどの制限は、今、岸田先生はおっしゃいましたが、もう少しうまく取ってい ただけることがあれば、そうしていただきたいと思っています。  ちなみに、私は透析患者でのマグネシウムについてのデータがいくつかあるのです。2006 年の国際マグネシウム学会で発表しています。透析患者でマグネシウムの血中レベルは、 私どもの管理下ではそれほど高いものはなく、むしろ高い人と低い人、健常のアッパーレ ベルとロウアーレベルで比べたら、低い人の方が生命予後は明らかに悪いのです。こうい ったことが最近知られるようになり、マグネシウムというのをもう一度考え直していただ きたいというのが、私ども学会が発言したいちばん大きな理由だと思います。どうぞよろ しくお願い申し上げます。 ○安全使用推進室長 本日、御議論を拝聴して、全体の本日の評価というか、御議論は私 どもも今少し整理した形で申し上げたいと思います。高マグネシウム血症の副作用報告に ついては、いろいろな因果関係等についての情報が非常に不足しているという部分はあり ます。また、いろいろな専門的な評価として因果関係のレベルというか、濃い薄いという 観点ではいろいろな御議論があるというところではありますが、一応はミニマムな意味で、 その関連が否定できないという死亡例が報告されているのも事実としてあるところです。  そういう前提の下で考えていった場合に、身体機能低下等により長期使用する状態や、 腎機能が低下している状態の患者は、高マグネシウム血症のリスクは高く、マグネシウム の血中濃度の管理や、高マグネシウム血症を防ぐための症状等を注意喚起していくことに ついては重要であり、そういう意味で、添付文書において注意喚起を行っていることにつ いては、おそらく先生方、皆さんにおいて、そこへ異論を挟むところはないのだというと ころかと思っています。  ただ、一方で、長年の酸化マグネシウムの使用状況を考慮したり、一般用医薬品の服用 者として想定される状況において、実際にリスク分類を積極的に変更するような理由があ るかといった部分についての御議論と私どもは聞いていました。さまざまな高マグネシウ ム血症なり、マグネシウム血中濃度等々のこれまでの実績や、実際の腎機能に関するこれ までの知見といった部分から見て、マグネシウムの使用により重篤な状態に至るリスクは 必ずしも高くないという学会の方からの御意見もあること。また医療者として見たときに、 こういった製剤を一方で安心して服用していただくと、そういう観点で情報提供というこ とで注意喚起はするにしても、2類、3類という部分で服用者の方々に与える安心感といっ た部分の観点だと思いますが、そういう部分も考慮しなければならないと思っています。  というところで、いろいろな御心配な部分は当然あるわけですが、一方で高マグネシウ ム血症の副作用報告や頻度については、引き続きいろいろな情報を収集して、必要なリス ク分類についての検討を行うことは、今後も対応としてやっていかなければならないとい うことであります。私どもはこの議論を聞いており、当面のリスク分類、これは当面の対 応ということではありますが、そういう点では現行の3類の状況で対応しつつ、今後の情 報収集に努めた上で、また必要に応じてリスク分類の検討を行っていく、という対応でい かがかと考えるところです。 ○松本座長 ただ今事務局から酸化マグネシウムのリスク区分については、当面の間引き 続き3類のままとして、今後も新しい情報を基に本調査会で検討する、調査会としても荷 は重いのですが、調査を継続するということですが、いかがですか。西村参考人、いかが ですか。上田先生、よろしいですか。 ○上田参考人 一応これで終わりというのではなくて、これからも調査を綿密にしていく ということでよろしいかと思います。 ○安全対策課長 今のお話を要約すると、一般用の方の酸化マグネシウムについて、すで に添付文書に改訂が加えられて、注意喚起のレベルが少し上げているという状況です。で すから、リスク区分の変更はしないとしても、すでに注意喚起のレベルを上げたという対 応に関しては、今日の御議論を伺っていると、その必要性はあるから改訂をしているとい うところは、調査会としては必要だというお考えをかなり言われていると思うのです。  医療用に関しては異論がなく、そういう特殊な病態も含めて注意喚起はしなくてはいけ ないということに関しては、先生方の御意見は全部一致していると思います。その部分に ついて、今後もどういう病態か、どういう状況で特に注意をしなくてはいけないのかとい うことについて、マグネシウム学会の先生方からも具体的な御提案はいただいていますの で、今後の情報提供の注意点としてこういった御議論も反映していくように、企業に対し ても指導していきたいと思います。  一般用については、今日のお話としては、3類、2類の話だけではなくて、すでにやって いる添付文書での一定の注意喚起の部分が加わっていることについて、これは学会からは そこまでしなくてもいいのではないかという御意見はありましたが、一方ではOTCを服 用になっている方の中にも気になる方がいらっしゃる。そういう方々について自覚症状に ついての注意喚起を添付文書の中に入れて、少し注意喚起をしているということの必要性 が述べられていると思います。  そういうことからすると、注意喚起によってお気づきになる方も出てくるかもしれませ んし、しばらくこういう状態で様子を見守りながら、医療用での実際の高マグネシウム血 症、あるいはそれに伴う臨床症状で有意なものがどれぐらい出ているかも、今後もまた注 視してまいりますので、そうしたことを継続的に追いながら、一般用のリスク区分につい ては据え置いて、現在やっている注意喚起がどれぐらい浸透していくかをしっかり見守る ということでやっていくところが、今日のお話の整理だと私どもでは理解をしています。 そういったところが今日の御議論で集約できるところではないかと私も思いますので、そ のようなことで対応したいと考えています。 ○松本座長 一般用医薬品だからこそ安全に使用してもらいたいというのが、私たち調査 会の意向でもありますので、よろしくお願いします。それでは、フマル酸ケトチフェン点 鼻薬のリスク区分については第2類、酸化マグネシウムのリスク区分については第3類と して引き続き検討するということで、本調査会の意見とします。今後の予定について事務 局から何かありますか。 ○事務局 ただ今まとめられた御意見については、今後開催される安全対策部会に報告を し、部会においての御審議、答申ということで、リスク分類については進めたいと考えて います。 ○松本座長 最後の議題3「その他」について、事務局から何かありますか。 ○事務局 特にありません。 ○松本座長 全対を通じて御発言はありませんか。よろしいですか。それでは、本日の第 2回安全対策調査会はこれで終了とします。長い時間、活発な御議論をありがとうござい ました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111