09/07/30 第2回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会議事録       第2回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会          日時 平成21年7月30日(木)          10:00〜          場所 専用第18〜20会議室 ○治験推進室長 定刻となりましたので、ただいまより「第2回新たな治験活性化5カ年計画の 中間見直しに関する検討会」を始めます。本日はご多忙中のところ、また早朝大変お暑い中 をお集まりいただきましてありがとうございます。最初に、事務局の異動がありましたのでご紹 介いたします。医政局長は外口から阿曽沼に交代となりました。それでは阿曽沼新局長より ご挨拶申し上げます。 ○医政局長(阿曽沼) 阿曽沼でございます。久しぶりに医政局に帰ってまいりました。今回が5 回目の勤務になるのですが、従来は医政局の中の薬務局にあった研究開発の部分が医政 局にきて、医政局としても薬や医療機器の研究開発の促進をするという仕事を担当すること になりました。その中でも、治験の問題というのは我が国が抱えている大変大きな問題でありま す。国際的に見てかなり遅れているではないか、時間がかかり過ぎるではないか、あるいはお 金がかかり過ぎるではないかなどいろいろな批判があるわけですが、何としても前に進めたいと 思って新たな治験活性化5カ年計画を作ったわけでして、これが本当に実効性があるかどう かというのが問われているところだと思います。中間見直しをお願いしておりますので、忌憚の ないご意見をいただきまして、我々としてもさらに新たにすべきことがあれば努力をしたいと思 っております。  薬の開発あるいは医療機器の開発を促進するというのは大事なことですが、その一方で 治験に参加される方々の人権等を尊重していかなければならないということもあるわけでして、 全体的に非常にバランスの取れた判断をしながら、世界に遅れないように、人類の進歩に貢 献できるように、薬や医療機器の開発を進めていくことが大変重要だろうと思います。なかな か困難な課題ではありますが、私ども行政側としても、できることはすべてやりたいと思ってお りますので、どうか忌憚のないご意見をいただければと思います。 ○治験推進室長 それでは議事に入ります。なお、頭撮りのほうはここまでとさせていただきます。 また、所用により局長が中座させていただきますことを、あらかじめご了承ください。以降の進 行は座長よりお願いいたします。 ○楠岡座長 おはようございます。本日はお暑い中をお集まりいただきまして、ありがとうございま す。時間に限りもありますので、早速スタートしたいと思います。まず、事務局より本日の出席 の確認をお願いいたします。 ○治験推進室長 お手元のファイルの参考資料1「新たな治験活性化5カ年計画の中間見直 しに関する検討会開催要項」の3頁をご覧ください。申し訳ありませんが、傍聴の方について は配付しておりません。3頁の構成員名簿のうち、本日は荒川構成員よりご欠席の連絡をい ただいております。また、厚生労働省及び文部科学省の関係各課からも関係者が出席してお ります。 ○楠岡座長 引き続き、配付資料の確認をお願いいたします。 ○治験推進室長 まず、番号の書いていないものとして「議事次第」「座席表」と2種類あります。 資料1は第1回検討会に出された意見、資料2は臨床研究啓発のための認識に関する質 的研究(抜粋)です。資料3は「病院の言葉」を分かりやすくする提案、国立国語研究所の資 料です。資料4は製薬協からの治験啓発キャンペーンの写真が掲載されているもの1枚です。 資料5は新たな治験活性化5カ年計画国の取り組み以外の事項に関する活動(報告)という ことで、日本医師会治験促進センターの資料です。資料6は研究成果の発信の果たす役割 で、国立がんセンターがん対策情報センターの山本構成員の資料です。資料7は臨床研究 登録情報検索ポータルサイト等についての説明です。  なお、参考資料として、本日ご参加の構成員の方々には紙ファイルの資料をお配りしてお ります。これについては各回共通資料ですので、お持ち帰りにならないようお願いいたします。 参考資料集については傍聴の皆様方にはお配りしておりませんが、参考資料1の「新たな治 験活性化5カ年計画」のみ、縮小版にて配付しております。その他の参考資料については、 後日当省の当会のWebサイト上でご覧いただけます。以上、過不足等がありましたらお知ら せいただければと思います。 ○楠岡座長 早速議事に入ります。前回は5カ年計画の概要及びこれまでの進捗状況につい て議論を行いましたが、その中で構成員の方々から出たアクションプランに関する意見につい て確認を行いたいと思います。事務局より、第1回検討会に出された意見を資料1としてまと めていただいておりますので説明をお願いいたします。 ○治験推進室長 資料1は、第1回の中間見直しに関する検討会当日、及びそれ以降メール 等によって各構成員の方々から出された意見を事務局側でまとめたものです。当日及びその 後のメールではさまざまな意見がありましたが、5カ年計画の5つのアクションプランに基づき、 それぞれ分類したものです。簡単に説明しますと、1点目の中核・拠点医療機関の体制整備 はインフラ関係ですが、被験者の集積あるいは効率的な治験等の実施に向けた具体的方策 として、例えばネットワークの提案がありましたが、ネットワークの役割あるいはネットワークをど う活かしていくかといった問題を共通認識として持っていくということ。また、ネットワークによっ て症例を集積する上で実際の障壁になるようなものは何か、あるいはそれの解決策といったも のについてコメントをいただいております。さらに、症例集積等のためにどのような有効な機能 があるかといったことについて、論点としてご提起いただいているのが1点目のインフラ整備関 係です。  2点目の人材の育成と確保については、CRCの安定雇用とキャリアパスをより明確化する という点についての問題提起、あるいは臨床研究におけるCRCの役割、必要性というものの 認識の共通化。また、CRCだけではなく、臨床研究を推進するためにはデータマネージャ ー、特にセントラルデータマネージャーを養成する必要性があるのではないか。さらに、研究 者、医師への教育のあり方、それぞれの分野ではなく、産学官の人材交流のあり方などとい ったことを問題提起として頂戴しております。  3点目の国民への普及啓発と治験・臨床研究への参加の促進という観点では、治験・臨 床研究の情報提供システムの強化、効果的な普及啓発の方法についての問題提起をいた だいております。  4点目のアクションプランである治験の効率的実施及び企業負担の軽減については、治 験に係る期間(実施期間)、あるいは治験のスピードの評価と、モニタリングの効率面に関し ての評価の2点について問題提起をいただいております。  その他、いわゆるガイドラインあるいは法制上の整備といった点については、例えば中央 治験審査委員会、中央倫理審査委員会(セントラルIRB)等のあり方について、また、被験 者保護のあり方についてという2点の問題提起をいただいているところです。  これらについては、今後数回の中間見直しに当たって、それぞれ関係する資料をまとめ た上でご議論をいただく予定にしておりますが、さらに追加等があれば、本日以降は事務局 までお寄せいただければと思います。これらのポイントについて、さらに充足させていきたいと 思っております。 ○楠岡座長 この資料は第1回目に出た意見を見やすくするために、取りあえずまとめていただ いたものですが、これに限って議論するというものでは決してありません。今後の議論の進め 方でこの中に追加していくもの、あるいは落としていくものも出てくると思いますが、議論をする ときの共通の認識のベースになるものとして事務局にまとめていただいたものですので、そのよ うに理解していただきたいと思います。今後もこのアクションプランのそれぞれのテーマについ て議論を進めていきたいと思いますが、本日は治験活性化5カ年計画のアクションプラン3の 「国民への普及啓発と治験・臨床研究への参加の促進」に焦点を当てて議論していただきた いと思います。  本日の議論の進め方として、最初に少し情報提供をしたいと思います。初めに、私が平 成19年に行った臨床研究あるいは治験のイメージに関する調査の結果をご紹介いたします。 その後、辻本構成員から国民が治験・臨床研究に対してどのような思いを持っているかとい うことを、いま行っているCOMLの活動を通して得られた情報について紹介していただく予定 です。また、5カ年計画に基づいて取り組んでいる啓発活動については、日本製薬工業協 会あるいは日本医師会治験促進センターの取組みについてそれぞれご報告いただきます。 山本精一郎構成員から、普及啓発の方法の中での研究成果の発信の役割について提案 していただきたいと思っております。  僭越ですが、最初に私の資料から説明させていただきます。アクションプランの中でも国 民への啓発ということが非常に大きな柱の1つになっております。実際、いろいろな基盤整備 やさまざまなシステムが整理されても、最終的に被験者である国民の理解が得られず、被験 者として参加していただけなければ何も進んだことになりませんから、いかに国民に理解して いただけるかが1つのポイントになると思います。これまで臨床研究あるいは治験に関してい ろいろアンケート調査、これは製薬協はじめ、さまざまな所でアンケート調査をしているのです が、どちらかと言うと、知っていますか、知りませんかという○×的な調査であり、それに対して どの程度理解があるのか、あるいはどのようなイメージを持っているかがはっきりわかっていな かったという現状がありました。  平成19年度の特別研究として、私が主任研究者、本日の構成員でもある山本晴子構成 員、小林構成員にも加わっていただき、Web及び紙ベースの留置きアンケート調査を行って おります。対象は、いわゆる健康人と言われる一般の方々が、20代から60代までの男女を 層別に分けて約500名。また、疾患者、これは病院に現にかかっている患者を対象にしての アンケート。医療関係者は、治験事務局にお願いして、治験に直接関係していない周辺の 医師、看護師をはじめ、コメディカルの方々にアンケートをいただくという形で行っておりま す。  2頁ですが、分析の手法としては、「治験」とか「臨床研究」という言葉を提示し、そこから 連想される言葉を書いていただく、いわゆる連想をベースにしたものです。得られた連想に 関して、いいイメージを持っているのか、悪いイメージなのか、あるいは連想の基になった情 報はどこから得ているかを記載してもらい、それをまとめて分析を加えるという形です。研究 全体の報告書は部厚いものですので提供できませんが、本日はその抜粋だけをお話したい と思います。研究内容全般は近々どこかで見られるような状況にしたいと思っておりますが、 準備の遅れでまだ見られる状況にはなっておりません。ただ、厚生労働科研ですので、厚生 労働省の図書室に行きますと報告書がありますから、ご覧いただけると思います。  3頁は結果ですが、「臨床試験(臨床研究)」という言葉を一般生活者に提示し、そこから 得られた言葉を分類したものです。表現の仕方としては大きな○、例えば右側ですと「人体 実験」が少し大きな○になっていますが、○の大きさが頻度の高いもので、○が小さくなるに つれて頻度の低いものとなります。それを見やすくする意味で、比較的○の大きいものを真 ん中に、小さいものを端に並べてあります。キーワードの内容を少し取りまとめて、どのような 傾向があるかを見て、それを書いたのが外側に赤字であるようなものです。例えば「臨床試 験(研究)」という言葉に対しては、右上にあるように、「治療」というものに関する連想ワード があるわけですが、連想ワードの数としてはそれほど多くはない。  次の「実験」という言葉は非常に多くの方から連想として出てくるもので、特に「人体実験」 という言葉が大変多く出てきていました。少し緑がかった色が付いていますが、どちらかと言う と、ネガティブなイメージで使われている感じということです。それ以外には「実施機関」が大 学病院であるとか、被験者がどのようなことを望んでいるか。左のほうにいって、「実施内容」。 臨床試験からはアルバイト、モニターなどという言葉を連想した方もおりました。ネガティブな ものとして、副作用がある、不安がある、怖いといった言葉が出てきております。  ポジティブなものとしては、医学医療の発展に貢献できるといったことが出ております。いち ばん上にあるように、やはり「薬」に関するものというイメージが非常に強く出ておりました。「治 験」という言葉を提示して得られる結果も非常に似たものでしたが、左側の「報酬・モニター」 の言葉が少ないというのは、治験という言葉から高額の報酬といった連想がかなりあって、ど うもこれはI相に関する連想があると思われます。  4頁は、そのような情報がどこから得られているかということを整理したものです。やはり、ほ とんどが新聞、テレビニュース、一部は募集広告等、またテレビドラマから理解を得ている方 も結構おりました。この辺りが現在、治験や臨床研究に関して一般の方々が持っているイメ ージであり、ポジティブ、ネガティブ、どのようなイメージを持っているかということです。  その辺を言葉でまとめたのが5頁で、「臨床試験・臨床研究」というのは言葉としては92% の方が知っている。ただし、意味・内容を理解できて説明ができますかと聞くと、7%の方しか わからない。年代がだんだん上がると、理解率は高まるが、何となくわかるという程度の率が 上がるだけで、正しい理解はあまり進んでいないという状況です。「治験」も同様で、治験や 臨床試験から連想される言葉は、一般の方の場合は大体1.6ワード。要するに1つか2つぐ らいしか言葉が出てこない、すなわちイメージがなかなか湧かないということです。また、連想し た言葉は「人体実験」「新薬開発」というのが非常に多い。  もう1つ、「臨床試験」が臨床の試験のための前臨床と捉えられていて、「動物実験」という 連想を持つ方も結構多いということです。全体としては「治療」という連想はあまりなく、「薬」と か「実験」という連想が多い。「治験」の場合、内容に関しての連想があまり出てこなかったの に対して、「臨床試験」の場合は、内容に関する連想がかなりあったということです。また、 「新薬開発」とか「新薬の試験」というのは非常にポジティブな意識での連想であって、その 源泉はテレビのニュース、新聞、テレビドラマ、インターネット、製薬会社の広告やホームペ ージだと言う人が多い。ネガティブな意識が高い連想ワードは「人体実験」「実験台」「副作 用」で、「人体実験」はネガティブなわけですが、「患者に行う実験・研究」というのは、逆にポ ジティブに変わるということがあります。漠然としたイメージではネガティブであるが、少し理解 が深まるとポジティブなイメージになるという傾向が出ているのは、治験を進める側にとっては 非常に心強い結果だと思います。また、「癒着・賄賂」といったネガティブワードが出てきます が、これはどちらかと言うとドラマ、ワイドショー、週刊誌などから情報を得ているという感じで す。  年代別では、20代で「高額バイト」や「怖い」といった連想があったり、「精神病」「人間の 心理」といった言葉が出てくる。30代では「人体実験」の連想が多く、比較的ネガティブワー ドが多い。40代になると、「治療」や「効果の確認」「患者に行う実験・研究」などの言葉が出 てくる一方で、「癒着・賄賂」といった言葉もこの世代に多く出てきます。50代では「医療(医 学)への貢献」といった言葉が出て、ネガティブな言葉はだんだん少なくなってくる。60代以 上では「新薬開発」や「動物実験」という言葉が多くなったり、あるいは「最後の希望」といっ た言葉も出てきて、全体的にポジティブなイメージが他の世代よりも多くなるということです。  次に、同じことを患者で行った場合ですが、細かいところは省略させていただき、「人体実 験」というネガティブなイメージが非常に強く出ていることが1つの特徴になっております。8頁 にまとめがありますが、やはり認知率は高いが、理解はあまり進んでいないというところです。 また、「臨床試験・臨床研究」から連想するのも平均1.6ワードぐらいで、やはりこれもイメージ がなかなか湧きにくい言葉になっています。多くの連想は「モルモット」「人体実験」「実験」 「動物実験」「大学病院」といった言葉です。一般の方々に比べると、患者の場合は「薬」の 連想が少なく、むしろ「新しい治療法の研究」など、「治療」との連想が増えてくるという傾向 があります。ポジティブ、ネガティブに関しても同じような傾向が見られます。  9頁はどこから情報を得たかということと、どこから情報を得たいかということを一般の方々 に聞いたものです。左にあるように、デレビのニュース、新聞、インターネット、テレビのニュー ス以外の番組といったところが情報源として非常に多い。正確に情報を得たいという希望に 対してはどこがいいかと言うと、テレビのニュースや新聞記事です。テレビのニュース以外の 番組というのは、情報はよく得られるが、情報源として得たいかと言うと、少し下がるようで、 信頼度は少し低くなっているのではないかと思います。それ以外には病院内のポスター、医 師、看護師から直接というのがあります。  10頁はどのようなことを知りたいかということですが、知りたいことの上位は、やはり基礎 的・一般的な知識とか、どのような病気に対して行われているか、自分自身が負うリスクには どのようなものがあるかということを求めている。年代別では、どちらかと言うと20代、30代は 基礎的・一般的知識を求めており、年代が進むにつれて、具体的な内容、どんな病気に対 して行われているか、どこで行われているかなどの具体的な情報を求める人が多くなります。  最後の頁ですが、本日は治験に関しての結果をお示ししておりませんが、治験も臨床試 験もほぼ同じような形です。左が治験、右が臨床試験ですが、連想ワードのランキングを見 ていただくと、やはり「人体実験」が最初に出てきて、あとは「新薬の開発」や「動物実験」「治 療」といったものが出てきております。以上が特別研究の結果ですが、全体として、多くの国 民は治験・臨床研究という言葉は聞いたことがあるが、よく理解ができていない。ただ、理解 している人はポジティブな面とネガティブな面を比較的バランスよく受け止めていて、どちらか 一方に偏っているということはない。また、最初はネガティブなイメージだが、話を聞くとポジテ ィブに変わっていくというところがあるので、この点に関しては、これからよく理解していただけ れば、治験とか臨床研究への参加も進んでいくのではないかということを印象づける結果で した。  資料3は、今年3月に国立国語研究所から出された「『病院の言葉』を分かりやすくする 提案」です。病院の中で使われる言葉で、医療者が患者に伝えたつもりでも、実は患者が 理解できてなくて、そこに情報のギャップが生じたり、誤解が出たりすることがあるので、比較 的よく使われる言葉がどのように理解されているかを調べ、それに対してどう対応するかを提 案したものです。患者に言葉が伝わらない原因として、言葉が知られていないというのが一つ です。医師は気軽に「病理に出します」と言っているが、患者は何のことか全然わからない。 あるいは「炎症」という言葉は患者も聞いたことがあってよくわかっているが、実はイメージが 微妙に食い違っている。3番目に、「腫瘍」と聞くと、もうそれで悪性腫瘍と思ってしまい、その あとは聞きたくないといった心理的負担が出てきて、言葉がうまく伝わっていないということが ある。腫瘍には良性腫瘍もあって、必ずしも癌ではないのですが、患者は腫瘍と聞くと、イコ ール癌と思ってしまうことがある。  この中ではわかりにくい言葉の例を100近く調べてあるのですが、その中に「治験」も入っ ております。それが下にありまして、治験と言うだけではわからないので、もう一歩踏み込んで 明確に説明をしてくださいという言葉の中に、「治験」が入っております。誤解としては、「治 験」という言葉は聞いても漢字が思い浮かばないとか、古い意味である「治療のききめ」という 誤解です。治験という言葉が最初に日本で使われたのは華岡青洲が書いた本の題名であ る『乳癌治験』ですが、この「治験」はたぶん治療経験という意味だと思われますので、今の 治験とは意味が違っているわけです。今の治験と古い治験とでは少し意味が違うということで す。また、薬を無料でもらえると誤解している人とか、効果や毒性もわからない薬物を投与す る人体実験のようなものといった誤解もあります。  次に、治験というものをわかっても、まずこれだけはということで新薬の開発のための人で の実験、試験であると説明しなさいということです。もう「少し詳しく」、あるいは「時間をかけて じっくりと」というのは、このような説明をすれば伝わるのではないかという提案です。その下に ある「言葉遣いのポイント」は認知率68.6%、理解率63%で、ともにあまり高くありません。ま た、「治験」と漢字で書くともう少しわかりやすいので、単に言葉だけではなく、文章で示した ほうがいいでしょうと。「ここに注意」という所では「治験に参加するかどうかを決めるのはあくま で患者であり、十分に説明を尽くした上で協力してもらうことが必要である」としており、国語 研究所もこの点を重視するという状況になっております。  実は治験よりも臨床試験のほうがわかりやすいという結果が出ており、認知率92%、理解 率85.4%で、治験よりもわかりやすいとしています。確かに「臨床」と「試験」という2つの言葉 をつなぎ合わせて、何となく理解できる。これは先ほどの特別研究でも同じような傾向が出て おりました。したがって、まず臨床試験を説明してから、その中で新薬の開発を目的にして行 われるのが治験であるという説明をするほうが、かえってわかりやすいのではないかというのが 国立国語研究所の提案内容です。  以上の点に関して何かご質問があればお願いいたします。これまでは治験・臨床研究に ご協力いただいている国民の方々、特に患者さんのお考えの一端をお示ししたわけですが、 引き続き辻本構成員から、日ごろからの活動を通してお持ちのご意見等についてご紹介を お願いいたします。 ○ 辻本構成員 19年前から電話相談を活動の柱に置いて取り組んでおりますが、現在はNPO です。いま時代の変化の中で、去年の安心と希望の医療確保ビジョン検討会のときに舛添 大臣に申し上げたのですが、患者と医療者の協働ということを推進していくために、今年6月 から私たちの活動に新たに加えたものがあります。それが「医療で活躍するボランティア養成 講座」です。初年度ですのでそれほど大きな反響は期待していなかったのですが、現在、前 期だけで120名の方にご参加いただいております。地域の医療を地域の人々が支えるという ことのコアになるような人を養成したいという思いからスタートさせたわけですが、7回連続講座 の中の5回目に「治験について」を組み込んでおります。まず最初にそのことをご報告いたしま す。次に、電話相談に届く患者の声を紹介した後、どうあってほしいかというところでお時間を 頂戴したいと思います。  私がCOMLの活動を始めて10年目ぐらいのときに、ある大学病院のIRBの委員の要請 がありました。そのときには何の役割を求められているのか、それこそ私自身も患者であり、 素人ですから何もわからなかった。それが基礎の体験としてありまして、ボランティアでコアに なってくれる人たちには、例えば、もしも病院の、あるいは医師会のIRBの委員の要請があ ったら、これぐらいのことは知っておいてほしいという治験の基礎知識ということで、第5回目 の講座の中で触れております。もちろん、治験に入る前にはジェネリック、薬事法の改定、医 薬分業、副作用の被害救済機構などといった周りの話もした上で、治験についてこんなこと を取り上げております。  まず、治験とは何であるかということを、そもそもということで話をするのですが、薬が承認さ れて薬価収載されるまでの流れはほとんどの国民、患者は知りません。それをわかるように 図式し、まずそれを説明します。次に、治験の種類や流れに加えて費用負担、例えば交通 費などの支払いなど、かかる経費といったことについても話をすると、いま予定稿を作ってい るのですが、その準備に関わってくれている人も「へえー」と言って、かなりへえー度の高い情 報になります。また、「二重盲検」ということがそもそも日常の私たちの周りにはないことですか ら、私は耳慣れてしまってはいますが、二重盲検ということを説明することの難しさ、それを是 として進めていかなければならないことを理解してもらうことの難しさに直面しております。もち ろん、IRBのあり方といったことについても、基礎知識として学んでもらうという構成になってい ます。  治験に必要なインフォームドコンセント、法律、さらには治験に関わる職種ということで CRCの役割をここで大きく取り上げております。私たちは限りなく患者の立場でしかありませ んから、治験を受けるときにはどのようなことを気を付けるか。もし、あなたが被験者になった らということで、治験にまつわる相談内容などを紹介するわけです。いまも電話相談に届く治 験に関する相談の数というのは決して多いわけではないのですが、ちっとも理解が進んでい ない。5年前も3年前も、今もほとんど理解は深まっていないことを実感いたします。  ある高齢の女性患者は、話の中で骨粗鬆症の治験であることがわかって行くのですが、 主治医と親近感を持つために、距離を近付けるために、お断りすると申し訳ないからといっ た主治医との関係を考えて断りにくいという話。逆に、治験に参加すると言ったら、急に親切 になって、えこ贔屓と言うのでしょうか、贔屓されているのだ、私は特別扱いされているといっ た誤った認識に身を置いているという話がよく伝わってきます。もちろん、説明不足ということ もあります。そもそも二重盲検などということはわからないわけですし、ランダムといった言葉を 使われては、さらにわからないわけで、そうした情報の非対象性に加え、言葉そのものを理解 することの困難性ということも相談に上がってくるポイントの1つです。  私どもに相談があるのはネガティブな状況、つまり中断したくなってといったことで、本来で あればCRCに相談することだと思うのでそのような提案をすると、「だって、あの方は先生の 下請でしょ」という言葉、大変失礼かもしれませんが、患者の言葉に置き換えるとそのような 表現になってしまうのです。なぜかと言えば、そもそもスタートのときに主治医から説明を受け て同意書にサインをすると、この人の所へ行ってねと回されたときには、CRCの人には「あな たは参加する人です」と決めつけられた物の言い方をされて、まだ迷いがあって判断してもい いのだという了解の場であることが全く理解できていないからなのです。ですから、先生が説 明をしてくれて、やむなく了解をした。そして下請の所へ行って、さらに細かなことの説明を受 けるといった流れにしか受け止められていない、そのような組織の実態、チームの実態、そん なことも電話相談の中から浮き上がってくる問題の1つです。  つい先日の相談は北海動からでしたが、まず、中断したいことの不安を長々述べられて、 その後課題に入っていきました。ちなみに、私どもの電話相談は平均40分、長い場合は1 時間、1時間半かかりますが、この方も1時間以上のご相談でした。結局、彼女は不安にな って中断したい、脱落を希望しているのですが、二重盲検の説明を受けて参加はしたものの、 そもそも二重盲検の意味が理解できていなかったのです。点滴を受けているリウマチの患者 ですが、中断した後にプラセボだったのか、あるいは新薬だったのかということを先生に聞い ても教えてくれない、だまされた気分だと。私が「それはドクターもわかっていないのです」と言 っても、そのことが既に理解不能なのです。どれだけ言葉を尽くしても理解せず、今度は COMLを「病院の回し者か」と。最後は「何の役にも立たない」と怒鳴りつけられて電話は切 れてしまい、非常に悲しい結果となった相談でした。実はこれが現場、患者の置かれている 状況なのだということを改めて感じました。つい先日おこなった私どもの110番の中で、3日間 で220件ぐらいの相談が届いた中の1つですが、近々の相談の報告としてお話いたしまし た。  被験者という立場に立つ私たち、実は、私も7年前に乳がんの手術後の抗癌剤治療で 治験参加の経験をしているのですが、先ほどの座長のアンケートの中では、50代になると医 学の発展に貢献ということが出てくるということで、まさに私もそのような気持で参加したのでピ タリと言い当ててくださったという思いがいたしました。ただ、そのように思う人は50代でも一 部の人だということもご承知おきいただきたいことだと思いますが、ポイントは3つです。これか らの治験にどうしてもお願いしたいのは、まず、最初に説明をするドクターのインフォームドコ ンセントのさらなる充実というところに力を注いでいただきたいというお願いです。私はずっと 名大の倫理委員会を務めておりまして、申請の審査をするのですが、年々歳々、患者への 説明書が専門的に、また部厚くなっていくのです。サマリーを作ってくださいとお願いするぐら いで、専門用語が多用されており、まず読む気にならない、読んでも理解ができない。私が 「これを目の前に置いてどうやって説明するのですか」と迫るものですから、いつも申請の准 教授などに嫌われるのですが、説明書は書けばいいということではないことを重々ご理解い ただきたいということが1つ。  2つ目は、先ほども話が出ましたが、やはりCRCの役割の明確化と業務の自立性というこ とを、誇りを持って高めていただきたいと思います。concordanceの確立という中にはCRCの 役割を抜いては語れないという現実がありますので、先ほどのお話ではありませんが、ドクタ ーの下請では決してないということ、そして、患者も医師と仲良くなるために参加しているので はないというパートナーシップなどといったことが十分に認識できるような自立の支援という役 割、特に患者の不安や不信感に寄り添うといった役割をしっかりと務めていただきたい。私 は「つなぎ役」としてのCRCへの期待を大きく持っております。  そして、前回の会議のときにも申し上げた1点ですが、結果の公表についてということは今 も患者の知りたい情報のうち、治験においては上位に上げられていることだと理解しておりま す。ただ、公表というところにたどり着けないという問題が浮上してきました。これも相談だった のですが、50代の膵がんの患者で、最新の治療をいろいろ調べていったら、アメリカの情報 にたどり着いたわけです。英語も読める方だったのでしょう、アメリカの情報では最新の治療 は治験に参加することだと書いてあったと言うのです。そこで、日本の場合はどのようにして 治験に参加する方法があるのか、自分で調べることはできないのかという相談でした。  私は本検討会の関係もあって国立医療科学院のポータルサイトを紹介することができた のですが、「へえー、そんなものがあるのですか」と、やはりへえー度の高い情報の1つでした。 私どもも試しに入ってみようと思ったのですが、なかなかたどり着けないという現実があります。 さらには、入ったとしても、そもそもトップページは専門的で非常にわかりにくいのです。ここか らは一般の患者向けというサービス精神はとても窺い知れませんでしたので、専門家向け・ 一般患者向けのような入り方の工夫をしていただきたいと思います。しかし、少なくともここで 公表されたものを見たとしても、参加した者のさらなる治験への参加意欲につながる情報に は残念ながらなってはいないと感じました。本日は資料をお出しする時間がなかったもので すから口頭で説明させていただきました。足りない部分はご質問をいただき、補いたいと思い ます。 ○楠岡座長 ただいまのご発言に対して、質問等があればお願いいたします。 ○榎本構成員 私も今CRCとして活動しておりますので、非常に率直なご意見というか、本当 に現実的なご意見をいただきまして、ありがとうございました。反省すべき点と、これからこのよ うにやっていきたいということが感じられるご意見でした。CRCとしては、もちろん製薬企業から 受けている仕事の1つではありますが、ドクターだけではなく、患者側に寄り添うという、ちょうど 真ん中に立っているわけで、非常に揺れ動く立場です。特に医療機関のCRCは、田代構成 員もいらっしゃいますが、SMOのCRCの立場と少し違うところもあり、今後は辻本構成員のご 意見を活かしながら、もっと考えて情報交換していきたいと感じました。 ○楠岡座長 他になければ、よろしいですか。結果の公表については、本日山本精一郎構成 員から少しご意見をいただきます。ポータルサイトに関しては、私もあれはとても普通の人は使 えないと思っておりまして、このことは行政側にもいつも言っていることなのですが、後ほど少し ご発表がありますので、そのときまたご議論いただきたいと思います。  次に、本日提供されている資料4ですが、これは日本製薬工業協会が治験啓発キャン ペーン、グッドコミュニケーションということで2年間ほど続けています。5カ年計画が始まった 2007年から、毎年秋にいろいろな形でポスター等を作成し、Webサイトあるいは公共交通機 関等に広告を出されているのですが、それを本日提供していただいております。これに関し て作広構成員から追加等があればお願いいたします。 ○作広構成員 このキャンペーンに関しては特に追加コメントはありませんが、一度は皆様方の お目にも触れたかと思います。今日は資料の提示はしておりませんが、我々製薬協も治験に 関する一般生活者へのアンケート調査を2008年度に実施しておりますので、座長の調査とダ ブる点が多々ありますが、結果だけ口頭で報告させていただいてよろしいでしょうか。 ○楠岡座長 それでは手短にお願いいたします。 ○作広構成員 この調査は2008年5月に実施したものです。調査の地域は首都圏と京阪神 圏、サンプルは2,000名です。結果については、まず新薬開発に関してということでは、「長い 年月や膨大な費用をかけても新薬の開発は必要」に同意した人は90%でした。一方、「欧米 等で進んでいるので日本でやることはない」に同意した人は6.3%、否定した人は85.3%となり、 やはり日本でも開発すべきという意見でした。治験に関してですが、まず認知度は「ある程度 知っている」「治験という言葉は知っている」の両方で54.1%でした。認知の経路で最も多か ったのは「新聞や雑誌の記事」で45.2%、「テレビ・ラジオの番組」が39.2%、「広告」が36.9% でした。治験に対する考え方ですが、「開発中の薬を投与するので不安」が55.1%、一方、 「治験は新薬開発にとって必要不可欠」が52.3%でした。  また、「治験に伴う副作用を説明してもらっているか不安」というコメントが40%ありました。 治験に参加してもいいかどうかについては、「参加してもよい」と回答した人は19.1%でした。 以上、楠岡座長の研究報告とほぼ同じような結果が得られております。 ○楠岡座長 いまの結果は一般の方向けですか。 ○作広構成員 そうです。一般の方向けで患者は入っておりません。 ○楠岡座長 副作用の説明がなされているのかというのに対して、40%が疑問を持っているとい うのは、やはり治験がどのように進められているかという実態がよくわからないので、ひょっとし たらそんなことがあるのではないかという懸念を持っているということですか。 ○作広構成員 そうでしょうね。 ○楠岡座長 ほかにご質問がなければ、次に小林構成員から、日本医師会治験促進センター の取組みのご紹介をお願いいたします。 ○小林構成員 資料5について説明いたします。新たな治験活性化5カ年計画には、国以外 が取り組む事項というのが計画書の中に入っています。(3)国民への普及啓発といった所です が、(3)(4)とそれぞれ書いてあり、実施主体としてはこのようなメンバーですが、「等」があるので みんながやろうという趣旨だと思います。  (3)のイメージアップキャンペーンについて、昨年10月に金沢でCRCと臨床試験のあり方 会議があった際、金沢駅地下の自由広場的な所を借りて、一般の方向けの治験啓発イベ ント「ちけんフェスタ」を開催いたしました。イベントの中身ですが、パネルに治験に関するい ろいろな説明とクイズを掲載し、解答書を配り、答えてくださった方に賞品を差し上げるという 治験クイズをやったり、同意説明の部分を寸劇の形でやりまして、夫婦役と医師役の3人で ミニ劇場というものを、半日のイベントの中で時間帯を変えて5、6回行いました。その他、治 験の啓発用のパンフレットとか、いま閲覧用として構成員の方々にはお配りしておりますが、 治験啓発漫画を作って一般の方々に配付したりしました。  この際のアンケートの結果を紹介しますと、一般の方252名の集計で、治験という言葉を 知っているか、知らないかというのはご覧のような数字でした。この数字は先ほど座長が紹介 されたものの「ある」という部分と比べ、少ない結果でした。「ある」と答えた方で、どれぐらいの ことを知っているかという点については、「何となく意味がわかる」以上の方が約65%、「わか らない」という方が35%でした。今日細かい数字は座長の報告書にはなかったのですが、こ この数字は知っている人の中での理解度という意味では同じ結果でした。  イベントが終わった後で理解度を確認したところ、「よく理解できた」「何となく理解できた」 「理解できなかった」、一部無回答の方もいましたが、ご覧のような数字が出ております。先ほ ど辻本構成員のお話にもありましたが、世の中の人100%が絶えず治験を詳しく知る状況は あり得ないことですので、繰り返し繰り返し、場所を替え品を替えという形での取組みをしなけ ればいけないという意味では、特に一般の方向けの啓発活動の重要性と難しさというものは 日ごろから痛感しております。  その他、表の下の(2)ですが、医療機関主催でいくつか治験啓発イベントも行われており ます。そこへの我々の協力としては、先ほど紹介した治験クイズ用のパネル、「ちけんくん」と いう治験用のキャラクターを作り、小さい絵が描いてありますが、これのきぐるみも作って、特 に子ども向けとして医療機関に貸出をしております。これまでの実績ですが、国立循環器病 センター、三重大学、国病の東京医療センターに貸出し、11月には日大板橋病院でも開 催される予定と聞いております。(3)は、先ほど作広構成員から紹介があった製薬協のキャン ペーンに、日本医師会とともに私ども治験促進センターも後援名義で協力したということで す。  (4)は学校教材の作成といったところで、従来治験の啓発用のパンフレットというものは大 人用とか、わかりやすい言葉を使った子ども用もありますが、どうしても文字が多くなってしまう ということがありました。フローチャートや絵、表といったものは今までもやっておりますが、漫 画で作れないかと考えました。先ほど座長のアンケート調査の後半で、情報源としてマスメデ ィアからの情報を得たいということがありましたが、テレビで一ついいドラマを作ることができれ ば、すごい啓発ができると思うのです。ただ、お金のこともありましてなかなか難しい。それで は漫画はどうかなということが取っかかりでした。  頁数があまり長くても読み切れないし、短くては伝え切れないので、漫画家の方と相談し たら、週刊誌などで毎週連載されるものと1回読切りでは、実は頁数が違うということを聞き、 1回読切りは32頁ぐらいとのことだったので、すんなり読めるボリュームということでその頁数 で作成しました。昨年度は1万部印刷して、もともとは学校教材用で、その点はあまり実現で きていないのですが、これまでに我々が主催したいくつかのイベントや会議等で配付してきて おります。また、私どものホームページから、希望者には送付しており、100を超える医療機 関、製薬企業、SMOなどから申込みがあり、それに応えているという状況です。今日の時点 では学校教材としての実現化はしておりませんが、この秋にも都内の某私立大学の薬学部 で教材として使ってくれるというところまで話がついております。もともとは子ども向けに作りた かったので、登場人物も小学4年生を主人公にしておりますから、今後は小中学校での学 校教材として何とか使ってもらいたいという思いがあります。具体的な協力範囲は調整させて いただきたいのですが、是非とも文部科学省の協力も得ながら広く進めていきたいと思って おります。 ○楠岡座長 何かご質問等があればお願いいたします。 ○山本(晴)構成員 私ども国立循環器病センターは、日本医師会の治験啓発パネルを見せ ていただき、初めて貸していただいて、外来のちょっとしたイベントブースというか壁を使ってパ ネルを張り、院内で1週間キャンペーンをしました。CRCもかり出して、見ている人には説明を したり、アンケートに答えていただいたりしました。それが割と手応えがよかったので何回もやろ うと。毎回借りるのは大変なので、パネルを作ってもらった代理店を紹介していただき、国循 用のものを作ってもらい、2回目をこの春に行いました。日本医師会からは、一般の方のイベ ントとして治験のことに興味を持ってもらうのは非常に難しいと聞いていたので、それならば、ま ず病院内でやってはどうかと思ってやり出したのです。それでもやはり何度も何度もやらないと、 ある人は見たがある人は見ないということになりますから、できるだけ繰り返しやろうと思ってお ります。ちょっと考えるのは、新聞などといった他力を頼むことも1つですが、地域や自分の病 院といった所でも地道にやっていかないといけないのではないかと思っております。 ○楠岡座長 小中学校もということで、実はこの5カ年計画よりも前に、大阪府の薬務課の方と 話をしたとき、いま小学校、中学校には学校薬剤師がいて、地域によっては各学校で、例え ば薬の飲み方とか、どのようなことに注意すればいいかというのを、年1、2回話す機会を持っ ている所もあるそうです。少し難しいが、その中で治験のことも話してみてはどうかという話があ りました。ただ、そのときは適当な教材がなく、たぶん難しいだろうということで終わってしまった ことがあります。このような教材があれば、小中学校での薬に関連する話の中に、どのように薬 ができてくるかといったところを話の中に入れてもらえるのではと思います。治験だけを取り上 げるのはなかなか難しいと思いますが、そのような中身を入れていただくと、若い世代に、もう 少し親しみが出来てくるのではないか。この辺は文部科学省でもいろいろご検討をいただきた いと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○作広構成員 小中学生の皆様方に対しては、製薬協におきましてもホームページで、「小中 学生のためのくすり情報広場」というところがございます。そこで新しい薬が出来るまでの解説 も含めた薬の正しい知識の啓発もございますので、またご提供等をさせていただきたいと思い ます。 ○小林構成員 今の学校教育で、誰が教えるというところはすごく難しいのです。これは昨年9 月の新聞記事の紹介なので、最新がどうなっているかはわからないのですが、平成24年度か らの新学習指導要領で、中学校の保健体育に「薬教育」が加わるというのが当時の記事にあ るのです。ただ、先生は「そんなのは教えられない」という感じで困惑しているということで、また、 学校薬剤師がどの程度薬の開発だとか治験というところまでご存じなのか。それで、教える人 も同じように人材育成をしていかなければいけないのかなと思っております。 ○佐藤(敏)構成員 配っていただいた漫画の中身を早速見させていただきまして、よく出来て いると思うのです。辻本構成員からダブルブラインドの件が出まして、それをどうやって説明す るのがいちばん分かりやすいのだろうと思っているのですが、なかなか難しい。漫画の中で何 か触れられているかなと思ったら、ダブルブラインドは入っていないのです。この構成を考える 上で、どれを入れて、どれを外そうかという議論があったと思うのですが、この辺は何かござい ましたか。 ○小林構成員 治験というものが大枠どういうものかということとして、今使われている薬も、実は 治験という過程を経て世の中に出てきているのだという現実の話をまずお伝えしたいと考えま した。これは本当にイントロの部分であり、続編をどう作るかどうかというのは難しいのです。治 験を何もご存じない人に、いきなりダブルブラインドとはと言うのも、逆に最初から退かれてしま いますので、まず導入として、すごくやわらかい入り方というところで今回の作成をいたしました。 ダブルブラインドをどう伝えていくかというところを、漫画でどう表現できるかという部分は、少し 考えたいと思います。 ○佐藤(敏)構成員 治験に参加していただく際に、ダブルブラインドというのは避けて通れない ところだと思いますので、皆さんの意見を結集して、いちばん分かりやすい説明の仕方というの は考えていくべきだと思います。  もう1点。いまお話を伺っていますと、医師会だったり、製薬協だったり、各医療機関、い ろいろな主体がこういった取組みをしているわけですが、各々がそれぞれやるのがいいのかと、 お話を聞いて思っています。非常に穿った見方かもしれませんが、製薬協から治験促進とい うのが出てくると、それに対して多少アレルギーを感じる方はいらっしゃるのではないかと思う のです。もしかしたら、この辺も、みんなが一緒にやるようにしたほうがよいのかなと考えまし た。 ○山本(晴)構成員 今この場では治験活性化ということで話をしていますが、この漫画に出て いるような治験の基本的な枠組み、治験だけではなくて、薬の開発をされる枠組みというのは、 消費者として国民が知るべき、自衛のために知っておくべき段階の知識だろうと思うのです。 これを知っていて、治験に参加したくない人は参加しないと言う。辻本構成員が今おっしゃっ ていたような、本来だったら参加しないほうがよかったような人が結局入ってしまっている実態 があるので、薬の開発というのはこういうもので、参加したくない人はしなくていいのだと。あるい は、薬と言っても、認証されている薬と健康食品とはこういうふうに認可のされ方が違うのだと かということを。自分の身を守るために知っておくべき知識すら、今の一般の市民の方は知ら されていないところがあるのです。参加するときに知っておくべき知識というのがありますから。  私たちの病院の中では、私たちの対象は特に高齢者が多いので、高齢者の方が分かり やすい形で届けたいということでやっています。製薬協の方々はもう少しマスの人たちを相手 に話をされると思いますが、子どもを対象にするキャンペーンもあっていいと思うのです。内 容はそれほど変わらないと思いますが、届けたい主体が何であるかによって変わっていくので はないかという気はします。 ○楠岡座長 届けたい対象と手段ですね。アンケート調査でも、信頼度の高いところから得たい と。だから先ほど佐藤(敏)構成員がおっしゃったように、製薬会社からだと、製薬会社の都合 のいいところだけが出ているのではないかという疑いがあるので、そういう意味では第三者的な マスコミ、それもバラエティーではなくて、ニュースとか解説記事で得たい。あるいは行政から 提供されるもの。そういうことで、信頼度の高いところから情報を得たいというのがあります。  今回の調査ではないのですが、「治験」という言葉をどこで聞いたかということをほかのとこ ろで見ると、あるテレビドラマで治験を取り上げていたと言うのです。それは当然テレビドラマ ですから、治験は悪者にされているわけで、少しネガティブなイメージでした。  それから、ある看護学校で学生に、「治験」を知っているかどうかアンケート調査をしたら、 結構たくさんの方が知っていて、それをどこから聞いたかというと、そのテレビドラマの原作に なっている漫画を読んでいたということでした。バイアスがかかった形での情報提供が容易に 流れるシステムがあるところで、どれだけバイアスのない情報を提供していくか、そこがいちば ん難しいところだと感じています。  それでは次に、研究成果の発信に関して、山本精一郎構成員から発表をお願いいたし ます。 ○山本(精)構成員 研究成果の発信について何か話すようにということでお話をいただきまし たので、私見も含めてお話をさせていただきたいと思います。  まず、いちばん初めの楠岡座長の研究のご紹介で、情報を得ている媒体も希望も、テレ ビや新聞のニュースがいちばんというのがありました。それに加えて、情報を得ていることは少 ないけれども希望は多いというのが、病院のポスターとかパンフレットとか医療関係者であっ た。この結果は非常に参考になると思うので、それをもとに考えてみたらいいと思います。  1枚目と2枚目のスライドで「国民はなぜ医学研究について知る必要があるのか」ということ を考えてみました。知る必要があるという観点ではなくて、国民と臨床試験や治験の関連とい う観点でもいいと思うのですが、まず、研究の対象者として知る必要があると思います。先ほ ど山本晴子構成員も言われたように、消費者として、あるいはその情報を使う者として、治療 を受ける者として研究結果のことを正しく知る必要がある。誤った情報と正しい情報を分ける ためにも知る必要がある。それから、公的研究であれば税金を使って研究されるわけですか ら、納税者として関係もあるし、知る権利もある。  それだけではなくて、医学研究に対して寄付をするということもできるわけです。例えば UKでは、医学研究の半分はドネーションだそうです。我が国ではそこまでいっていないと思 いますが、そういうことも今後考えていく必要があると思います。いろいろなところで国民と臨 床研究や治験は関係していると言えると思います。医学研究、臨床研究について深く理解 していただけると研究はより進み、結果として医療も進むということは当然というか、前提とし て置いていいことだと思います。そこで、今回の話はそれを証明するようなものではなく、そこ は前提として、では研究について理解してもらうにはどうすればいいかという観点から報告さ せていただきたいと思います。  次頁にいきます。我々も、目的は少し違うものがあったのですが、同じようにインターネット ユーザーに対して、日本の人口を反映するような形でサンプリングして、2009年の3月に調 査を行いました。調査内容としては、「医学研究」と聞いて思いつくイメージや考え。医学研 究として行うべき研究は何か、その大切さの程度はどうか。がんの研究に寄付することについ て。「臨床試験」のイメージ。世界と比べた日本の医学研究のイメージや意見を伺いました。 臨床試験のイメージに関しては楠岡座長のものとほとんど同じような結果であったので、今回 は割愛させていただきます。  4枚目のスライドは、医学研究の大切さの程度について聞いた結果です。基礎研究、疫 学予防研究、臨床研究、政策研究とこちらで分けて簡単な説明を加えて、どの研究が国の 政策として重点度が高いかと聞いたところ、何と1番は、私の想像と全く違って基礎研究。2、 3番目が疫学予防研究と臨床研究で同じぐらい。次が政策研究でした。もう少し臨床研究 が上がると思ったのですが、基礎研究が1番であったという結果でした。もちろん聞き方にも よると思うのですが、これが事実であったと思います。  スライドの5枚目は、世界と比べた日本の医学研究のイメージです。これはフリーアンサー だったので、「アジアに比べて進んでいる」「欧米に比べて遅れている」という意見がフリーで 出てきました。また、数は少ないのですが、「医学研究の情報が不足している」「オープンでな い、もっと知りたい」という意見も一定数見られました。  これらを基にして、また、あまり知られていない、それから基礎研究のイメージが高いという こともあって、医学研究がどのぐらい新聞のニュースになっているか、テレビのニュースになっ ているかということを考えてみると、例えば昨年度におきましては、基礎研究などはiPS細胞 の記事が毎日のように出ていました。我々からすれば、治療に使えるまでに何年かかるのだ ろうと思うのに、「夢の研究」みたいな感じで出ていたのです。しかし、それは健康な人が話題 にしているわけですから、必ずしも病気の人が期待しているということではなくて、健康な人で も、そういう新しいものに対して非常に期待を持つ、興味を持っているという実例だと思いま す。  次の頁で疫学研究の例を少しご紹介したいと思います。疫学研究は臨床研究と必ずしも 同じではないので、違う面もあると思うのですが、参考にできるところもあると思いましたので 紹介させていただきたいと思います。国立がんセンターの予防研究部が中心となって、がん 研究助成金という研究費によって行っている観察疫学研究、コホート研究というのが1990年 に始まりました。臨床試験と同じように前向きの研究ですが、時間がかかる。10年ぐらい経っ て漸く結果が出始めたということで、まさに1999年というのは初めての論文が出たころだと言 えます。そして、ホームページに結果の概要を載せるようになりました。  下のスライドがホームページなのですが、まず対象者に対してです。これは14万人ぐらい の方が対象の疫学研究なのですが、その対象の方々に結果のニュースレターを送るようにし ました。このように、まず実際の対象者にお知らせをしたのです。次に、実際の対象者だけで はなくて、より広い方に結果を広めようということでホームページに載せました。そうすると、そ のホームページを見たり、学会で発表したことにより、あるいは掲載雑誌のプレスリリースをも とに、取材が増えるようになりました。  そういうこともあって、「リサーチニュース」をホームページから配信するようにいたしました。 ホームページに結果を載せるのと同時に、配信もするようにしたのですが、その中に報道関 係の方がたくさん登録されて、「リサーチニュース」を出すと必ずニュースになる。50件目ぐら いまでは100%ニュースになったそうです。これは興味の大きさ、それから、ほかにソースがな かったこともあったのかもしれません。もちろんリサーチニュースは論文が出た後に出ているの で、論文を見ていただければより速くて詳しいのですが、おそらく、論文は難しくて、このよう に使いやすい、あるいは、結果について書き下して送っていましたので分かりやすいということ もあったと思うのですが、それを基に新聞報道され、テレビ報道もありました。  そのうち、一般と同じでは遅いというので先に教えてくれというリクエストが多くて、プレリリー スというのを報道関係者向けに開始ました。しかし、論文もだんだん複雑になってきたこともあ って、少し報道割合が低下してきました。何でプレリリースするようになったかというと、あまり に取材が多いので一つひとつに対応できなくなったので、一律対応するということで事前に 流すことを始めたという経緯だそうです。  その後、すべて配信すると全て載るという状況だと、こちらとしては報道するほどの結果で はないのに、というものまで載ることがあったり、それはちょっと書きすぎだろうというようなことが あったり、Single Reportの危険性もあったので少し取捨選択しようということで、ホームページ には載せてはいるのですが、配信するのは重要度の高いもの、システマティックレビュー等、 エビデンスレベルの高いものを中心に載せるようになってきました。それで現在は5〜6割に 落ちついているそうです。  下のほうにホームページがあります。繰り返しになりますが、新聞報道とか、プレリリース、プ レスリリースをするという話だけではなくて、もともとは対象者向けにやっており、その後一般 向けにした、それからプレス向けに出すようになったという経緯があります。  次の頁に、これまでに出たものの写真を載せたのですが、左下は私の書いた論文がニュ ースになったものです。これは大豆と乳がんの研究なのですが、この話をあちらこちらですると、 「あっ、知ってます」と言われて、その途端皆さんが突然好意的になるという結果があります。  次の「私見」というところですが、これは非常に重要なことだと私は思っています。データが あるわけではないのですが、これらの報道などによって、臨床も含めて、疫学研究の成果が 世の中の人に対して慣れ親しんだものとなってきたと思います。それから、対象者が、自分が 参加する研究に親しみを持ち、参加の意義を感じられるようになった。それで研究がやりや すくなったという実感があります。さらに、医学研究に対して、テレビの健康情報番組と異なる、 科学的なエビデンスのある情報を与えることができた。つまり、結果だけではなくて、こういう ふうに調査したのだという話も含めて伝えることができる。それから、メディアとの適切な(良好 な)関係が保てるようになってきた。メディアに発信したいと思いすぎることもなく、とり上げられ ないでもなくということで、メディアのスタンスも分かるし、良いところも悪いところも分かってきた ということがあります。それから、ニュースを発信すると、どういうインパクトがあるかというのも実 感として分かるようになってきました。どういうものに対して問合せが多いのかも分かるようにな ってきました。それから、Single Report(検証的でない結果)を出すことの危険性も認識でき たということで、研究結果を公開していくことによって非常にたくさん得るものがあったし、研 究もやりやすくなってきた。皆さんにも受け入れられるようになったという実感があります。  次頁です。臨床研究についてどのくらい記事があるかということに関してのデータは持ち 合わせていないのですが、相対的に見て低いという印象があるのは、皆さんもそのとおりでは ないかと思います。最近『ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー』というがんの雑誌に東 大医科研の上先生たちのグループが出された興味深いレターがあります。「日本における臨 床試験に関する新聞報道に関する研究」。私の訳があまり良くないのですが、要は結果では なくて、臨床試験自体に関する報道がどのくらいなされているかという報告です。これは1992 〜2007年に日本の5大新聞に掲載された臨床試験に関係する記事をカウントしたものです。 臨床試験に関するキーワードを抽出して、そのキーワードが載っている記事をカウントしたも のです。全期間、全新聞を平均すると、全記事のうち0.07%に臨床試験に関する報道があ った。これは1日に2〜3記事に相当しますが、日経は製薬会社関連の記事が多いというこ とで、他よりも多いという結果があります。  下のほうにグラフが出ております。左のほうがどのくらい出ているかというグラフ、右のほうは キーワードについて、どの時期にピークがあったかということを表しています。まず左のほうで すが、1994年と1996年にピークがあるのが見て取れると思います。1994年はソリブジン関係 の薬害に関する記事が多かった。1996年はHIVやヤコブ病に関した記事、それから、それ に関する臨床試験の方法論関係のキーワードがかなりありました。「CRC」というキーワードが 2002年にピーク、「医師主導治験」というのが2005年にピークとなっています。これは良いニ ュースだったと思うのですが、それは1996年の薬害関係の記事の10%程度しかなかったの です。彼らは「否定的な印象を与える記事が多いために、新聞以外の情報提供手段を利用 するのが重要かもしれない」と結論づけているのですが、私は少し違う感想を持っています。 臨床試験自体の報道は少なくて、ネガティブに偏る傾向があるのは仕方がないところがある。 ですので、結果を出す、具体的な成果を見せるのであれば、先ほどの疫学研究の例にもあ ったように、より好意的に取り上げられるのではないかと思いました。  これも私見なのですが「5カ年計画達成に対するIMPLICATION」というスライドに、これら を基にまとめさせていただきますと、国民は、医学研究結果が十分に知らされているとは思っ ていない部分がある。ただし、基礎研究など結果がよく報道されている分野には良いイメージ を持っている。臨床研究分野に関しては研究成果の提供があまり行われておらず、必ずしも イメージがよくない。報道されている内容は否定的な印象を与えるものが多い。ただ、基礎研 究や疫学研究の経験から、成果の発信によってイメージを変えることは可能ではないか。さ まざまな手段を通しての研究成果の発信は可能であろうと考えます。楠岡座長の報告にもあ りましたように、新聞やテレビなどはリーチも多いし、希望も多いということで、それを通して発 信していくということが第一だと思います。  次に病院というのもあります。病院というのは希望も高いということですから、そこから発信 していく。それは対象者自体への還元でもありますし、今後対象者となるであろう人への還元 にもなるということで、病院レベルで結果を発信していく。当然、結果を発信するためには研 究成果がないといけないわけですが、研究成果を作っていくことにもつながるということで、研 究者レベルでどういう発信ができるのか、施設レベルでどういう発信ができるのか。国レベル、 研究費を出しているレベルという観点もあると思うのですが、それぞれでできることがあるので はないかと思います。  最後のサークルのスライドなのですが、優れた研究を実施するとして、その成果を発信す ると、国民の理解にもつながるし、医学研究の参加・支援にもなる。これは逆向きも言えると 思いますし、それがひいては医療の向上や普及につながっていくと思います。  今私は国立がんセンターの、がん対策情報センターという所にいるのです。メディア向け のセミナー、あるいは患者さん向け、一般の人向けで情報発信をしているのですが、結果に 対するニーズが非常に高いのです。メディアも、国民も知りたいのは結果なので、まず結果を 知るところを入り口、きっかけにして、それの基になったのはこういう臨床試験なのだとか治験 なのだとかという形であれば、皆さんも理解してくれるのではないかということもあると思います。 5ヵ年計画を作るときに思いつけばよかったのですが、私としては、治験や臨床試験自体の 紹介も大事ですが、成果をもっと出していくということが活性化の1つの方法ではないかと現 在は考えています。 ○楠岡座長 どうもありがとうございました。ご質問やコメント等はございますか。  いま現在、成果を発表していくサイトというのは、癌の疫学研究に関してはありますが、特 に整ったものというのは、ないわけですね。いま登録するサイトはあるけれども、結果を閲覧す るというのはあまりないと。 ○山本(精)構成員 保健医療科学院の頁にも結果を書く所はあると思うのですが、それだと皆 さんはたぶん見ないと思うのです。先ほどの疫学研究の例も、一研究者である研究部が自分 たちでやっているというところなので、やり方は考える必要があるのですが、何らかの形で結果 を出して、キーワードを強調したいと思います。 ○佐藤(裕)構成員 ちょっと下世話な話ですが、なぜ基礎研究の発表に報道が変更している かというと、研究者が自ら研究の情報を報道機関にリークをしている場合があります。それで、 来週『ネイチャー』に発表するという報道がNHKに朝出たりしているわけですが、臨床研究に 携わる人は、そういうことは全然していないのです。成功確率が20万分の1ぐらいの研究が新 聞の1面を飾る一方で、救急医療の現場を大きく左右するぐらいに非常に重要な、日大の長 尾教授の「SOS Kanto Study」は、『ランセット』の巻頭論文であるにもかかわらず一切報道さ れなかったのです。しっかりした研究成果が出たならば、リークということはよくありませんけれ ども、コンタクトをして出していくべきではないか。この新しい癌の治療方法は従来のものよりも はるかに優れている、という臨床研究が一流雑誌に出るのなら、それは個々の研究者がもっと 声を上げるべきであろうと思うのです。 ○佐藤(敏)構成員 いまの結果をどんどん出していくということに対して、全くもって賛成です。 私も疫学分野に身を置いているわけですが、何年か前に比べると「疫学をやっています」と言 ったときの相手のキョトンとした顔がだいぶ減ったなというのが印象でして、それは千々で疫学 研究という言葉が出てくるからだと思います。  結果を出していくという部分では、私は日本医療機能評価機構というところでMindsとい う診療ガイドラインを周知していくという事業に加わっていたわけです。その診療ガイドライン の中で当然いろいろな臨床研究の結果を出していくわけですが、従来の薬に比べて、これが オッズ比でいくつとかという結果を出すというのが、先ほどの「納豆を食べると」とかというもの に比べると、ややインパクトが少ない。治療が今までに比べて20%程度改善されたとか、新し い薬が出来たとかとかというのがマスコミ受けするかどうかというのは、やや疑念を持っている ところがあります。ですが、結果を印象強く出していく方法というのは考えていかなければいけ ないのだろうと思いました。 ○山本(晴)構成員 これは私がたまたまアメリカに出張していたときだったと思いますが、新聞 の1面に『ニュー・イングランド・ジャーナル』の臨床試験の結果がでかでかと載っていたことが ありました。内容は、前立腺がんの治療として手術がいいか、放射線治療がいいかというもの でした。結局、それぞれにいろいろな副作用があって、どちらがいいとは限らないというような話 が書いてあったのですが、それはどう見ても、論文を直で読んで記者が書いているという記事 だったのです。思うに、英語圏の人は、新聞記者の人も、『ニュー・イングランド・ジャーナル』 とか『ランセット』は英語だから、たぶん読めるのです。読んだ上で、ある程度科学的知識のあ る人だったら、その内容を抄録して、読者に受けると思ったら書くわけです。特に前立腺がん の話でしたから、年齢がある程度以上の男性なら、みんなが必ず心配していることだから、1面 にでかでかと載ったのだと思うのです。残念ながら、日本では英語の医学雑誌を読み下して 記事を書けるというところまで新聞記者に求められないので、研究者側が発信せざるを得ない のですが、それを個々の研究者に求めることは、今の状況では難しいと思うのです。ですから、 そこについては何らかのやり方を考えていかないといけないのではないかと思いました。 ○榎本構成員 これは患者さんのインセンティブの問題なのですが、CRCとして患者さんにお話 をしていると、とても良い薬だったら治験が終わった後でも使いたいという思いが1つ。それか ら、自分が参加した治験の結果がプラセボだったのか、実薬だったのか、そして、全体として 良い結果だったのか、最終的には、世に出て承認になったのか、という情報を知りたいという 患者さんの思いがあります。できれば、そういったことを患者さんにフィードバックしていきたい という希望があります。  患者さんとお話をしていると、患者さんの「知りたい」という思いが非常にこちらに伝わって きて、私たちは5年後でも6年後でも、出来れば患者さんにお伝えするということで、もし患者 さんが希望されれば、結果が出たときにはお知らせするために住所を書き留めています。で すが、なかなか製薬企業のほうから、開発ということもあって、そういった情報をいただけない ことが多いです。プラセボだったか、実薬だったかぐらいの結果はいただけるのですが、全体 の結果をいただけなかったり、患者さんにフィードバックできなかったりする現状があるのです が、その辺は、作広さん、いかがですか。 ○作広構成員 これは各社に聞いたわけではございませんが、そのトライアルの結果、先生の 施設・日大ですと、日大の何組の何番の成績はこうでした。キーコードはこうでしたと。終わっ た時点でそういうことは報告していると思います。しかし、それを患者さんに対してフィードバッ クする、しないは患者さんの希望等もあるでしょうから、それはお任せの状況かと思います。榎 本構成員が言われるのは、試験全体の結果ですよね。私自身は、それはおそらく報告はして いると思うのですが、それがされていないのが多いのですか。 ○榎本構成員 日大の結果は表でいただけるのですが、全体の結果は、私たち医療機関に対 しても口頭での説明で、資料は全部回収していかれます。私たちが患者さんにきちんとそれを お伝えしようと思っても、いまの現状として、数字などはいただけない状況にあります。 ○楠岡座長 治験なり臨床試験への参加者に対してその結果をどうフィードバックするかという のは、いつも問題になるところなのです。山本構成員がされている場合は、参加者が何万人と いう単位なのですが、一人ひとり個人にお返ししているのですか。どのような形でお返しするの ですか。 ○山本(精)構成員 ニュースレターというのを作って、一人ひとりにお返ししています。もう1つ は、新聞報道やテレビとかであれば、自分たちが入ったものがこんなに大きく報道されている のだということになると、よかったねというようなことにもなるので、両方があったらいいのではな いかと思います。 ○楠岡座長 エントリーしたときから結果が出るまで10年とかという単位のときに、ニューズレタ ーというのは、たぶん途中経過でも、ずっと出されているのだと思うのですが、補足率は。フォ ローアップされているので、ある意味そこは補足されているのだと思うのですが、そこは疫学研 究はきっちりできるということになるのですか。 ○山本(精)構成員 補足は圧倒的に臨床研究のほうがしやすいです。なぜならば、病院に来 ていただけるので。疫学研究は誰も来てくれないのです。ただ、研究を始めるときに住所など も全部いただいて、そこに送る。引っ越したら引っ越し先に送って、しつこく追いかけるというこ とが研究精度を高めるためには必要なのです。随分前に始まった研究なので、すべての人に 個々にそういうことまで含めて説明もできているかというと不十分なところもあるので、逆にこの ような形でいろいろ還元することによって、いわばオープンにして知っていただくという側面も当 然あります。 ○楠岡座長 前にこのことが議論になったときに、臨床研究などで研究期間が終わって、データ をまとめて公表する。その間は、長くても1年とか2年ぐらいのところなので、その時点では、参 加者は補足できているだろうけれども、治験の場合は、例えばII相辺りに加わってその後関 係されていなかった場合は、10年後に結果が新薬として出るということになる。その場合に、 10年前の患者さんというのは病院におられない。場合によっては亡くなっておられたりするの で、個別に知らせるというのは非常に難しいところがあって、その辺をどうするかというのがあり ました。  1つの試験に関して、終了しました、結果が良かったので次の段階に進みましたぐらいなら、 まだフィードバックはできるけれども、それが最終結果として、新薬として登場したかとかという ところまでは難しいかなというのが前からあるところです。その辺はどうなのですか。 ○榎本構成員 私も平成10年からCRCをやっているのですが、CRCを始めてから承認になる 薬がだいぶ増えてきました。そうすると、患者さんに伝えられることも前より増えてきました。たっ た1人であっても、知りたいという方に関しては連絡先を保管しておいて、患者さんが参加して くださった薬が世に承認になって、商品名は○○になりましたということは、それがたった数人 であってもフィードバックできたらいいのです。実際、最近そういうことができるようになってきま した。患者さんが治験に参加してくださった気持に応えるということでは、細々ながらでも、そう いうことを実施していきたいと思っています。 ○山本(精)構成員 いまの件ですが、フェーズIIとかフェーズIに参加された方に関しては、そ の場で結果を返すことはできると思うのですが、フェーズIIIの結果で薬剤が承認されたかどう かというのは難しいと思います。新聞報道に関してもフェーズIの結果ではなく、もう薬になっ たとか、最終的に良かった、悪かったという結果が報道されるべきなので、マチュアした結果と いう意味ではフェーズIIIの結果が報道されるべきということになると思います。  その結果が世の中に出れば、フェーズIとかフェーズIIをやっていたときに、あなたの薬 はこういう薬であるということがいつか出るかもしれないから期待して待っていてね、みたいな 話だと思うのです。だから、その試験に入ってもらっていることを分かってもらって。いつかそ れが世の中に出ることによって。一人ひとりというのは絶対に無理なので、その結果を報道し ていくということが、ひいては一人ひとりに返していくということになるのではないかと思うのです。 その試験のフェーズによって返し方は違うのではないかと思います。 ○辻本構成員 この間、ある大学の倫理構成員会に面白い申請が出ました。それは全く別の 研究だったのですが、いまケータイを使う人がほとんどということで、希望者には登録してもらっ て、ケータイで日常の生活情報を送信してもらって管理・支援するというしくみ。患者個別のほ しい情報が届くかどうかは別としても、そういうITを新しい形で使うというようなことの研究も是 非していただけるといいと思います。 ○伊藤構成員 疫学研究はきちんとした結果が出て報道ができる、という山本構成員のマスコミ のハンドリングの仕方が分かって羨ましいと思いました。臨床試験に関しては、通常1つの試 験結果だけですべての結論が出るわけではない。また多くの人たちが関わっていますので、そ れをまとめて正確な結果を報道に伝えるのは難しいのかなと思いました。  私どもも臨床研究をやっていて、いくつか結果を出していますが、なかなか報道にまでつ ながっていませんが、疫学研究と同じレベルで話をされると、臨床試験屋としては少しつらい と思うので、ここで言わせていただきました。逆に、臨床試験については結果をまとめて報道 や報告ができるような形を考えていく必要があると個人的には感じました。 ○山本(精)構成員 疫学研究のようにやったらいいと私が思っているわけではないのです。私 も臨床試験にたくさん携わっていますが、そちらのほうでは、できていないのです。ですので、 逆に疫学研究のほうの何かを持ってこられないかと思ったときに、先ほど山本(晴)構成員か らもありましたが、一人ひとりの研究者がプレスにというのは、例えば、記者クラブに投げてとか、 知り合いの記者というのはいないでしょうから、それは難しいでしょう。また、そんな研究を何個 も出すスーパーな研究者もいないと思うので、毎回毎回が新しいということになるとすると、誰 かが間を取り持ってあげる必要がある。そういうことで、現実問題としては、国的に、あるいは 公共的にそういうのがないとすれば、施設単位ということになっていくと思うので、中核とか拠 点のような施設で、たくさん研究者がいらっしゃるような所であれば、その全ての研究者を集め ると、ときどきは良い研究というのが出てくると思うので、何らかの取りまとめを施設側でしてあ げるというのが1つのやり方かなと思います。  実際、疫学研究のほうでメディアの人と話すと、臨床試験の結果も是非知りたいと言いま す。ただ、先ほどの話にもあったように、『ニュー・イングランド・ジャーナル』が読めるわけでは ない。彼らとしても、どうしたらニュースが手に入るのかということを非常に待っているようなとこ ろもあるので、そこの間のギャップをうまく埋めれば結果は出てくると思います。 ○掛江構成員 登録の入口だけではなくて、結果がとりあえず見られるようなものを作る。例えば、 今回入口のポータルサイトを作っていただいた訳ですけど、そのような形で検討していただく のは、可能性としてはどうなのでしょうか。 ○楠岡座長 考えられるのですけれども、どうしていくかというのは、これからいろいろ考えていか ないといけません。専門家であれば、メドラインなりで自分で検索して見つけていくことが可能 です。それから、その中でも国内のものに絞ったものをどこかで見られるような仕掛けというの は可能になってくると思いますが、難しい点は、玉石混淆なので、それを誰かが評価して、エ ビデンス度として高いものなのかどうかを示す点です。先ほど山本(精)構成員が言った Single Reportも、研究者としては大したことはないと思っていても、マスコミ的には大々的に扱 われる。そして、それがすごく浸透してしまうと、後から違う結果が出たときにそれが妨げになる という問題もあるのです。ある意味臨床研究をやっている人たちは、いつもその危険を感じて いるので、積極的にはリークしていかないような傾向が多少はあると思うのです。ですから、そ のようなエビデンス度みたいなものも、ある程度評価できるようなものを一般の方が見ることが できて、かつ、どの程度信頼度が高いのか。その信頼性は100%なのか、50%なのか的なこと が分かるようなものも付けないと非常に難しいところがあるかもしれません。  専門家の中では、例えばコクラン共同計画は、ある程度評価をしながらリストアップしてい ますから、信頼できるところがあるのです。だから、それの国内版を。国内でも一部それはや っておられますが、そういうものを、もっと一般的にも見られるようにしていけばいいのかもしれ ないのです。山本構成員、お願いします。 ○山本(精)構成員 先ほどの疫学研究の例では、研究者自身が担保するためにピアレビュー の雑誌に載った結果だけを発表する、学会発表はその後にするという、普通とは違う形態を 採っているのです。だから、雑誌でほかの人の目が通ったというところが1つです。  もう1つは、『ネイチャー』の話が先ほどありましたが、世の中的に評価の高いものであると いうことを新聞の方にも知っていただくということもあると思うのです。ただ、そのときに関係す るのが、リストにという話が先ほどありましたが、メディアの人に先ほどのような形でリリースする 場合には、エンバーゴというのを皆さんはご存じだと思います。これは、この日までは報道し ないでくれという約束をして、その前に内容をお知らせするというものです。というのは、メディ アには、早くに報道したい、どちらが早いかという点が重要というところがある。そういう意味で 言うと、リストに出してみたいなことだと、その考え方と合わない可能性があって、メディアの人 たちは「それ、いつのやつ」「いつ出るか分からない」みたいに思うと思うので、個々にタイムリ ネスをもって出していくような方法を採る必要もあると思います。リストでやることは必要だと思 うのですが、それとは別にメディアとの対応は考えていく必要があるのではないかと思います。 ○楠岡座長 リストというのは速報性の問題ではなくて、どんな結果が出ているかを一般に知る ことができるための手段。 ○掛江構成員 私も最近ポータルサイトを見せていただいたのですが、自分がこの病気の患者 さんの立場でというような、なりきりで見ていくと、今どういう治験の募集があるのかということを 調べるのはもちろんなのですが、過去にどういう臨床研究がされていて、どういう結果が出てい るのかというのは、やはり知りたいという気持ちになるわけです。ですので、プレス向けだけでは なくて、一般の方もそういうことを容易に知ることができる術を持っていていいはずだと思います。 もちろん、座長がおっしゃったように、素人が誤解をしないようにという配慮も必要なのですが、 そこはそこで、患者も被験者も、一般の人も勉強していく必要はあると思うのです。  山本(精)構成員がおっしゃったように、ちゃんとジャーナルに載ったものはご紹介すると かという、ある程度フェアな形でジャッジを受けているものについては、きっちりとリンクを張る なりして誰でもアクセスできるようなものを作るという程度であれば、それほど難しくないのかな という気がしています。あまり情報を専門家のほうで取捨選択するというのも、長い目で見ると、 あまり望ましい姿ではないのかなと、一般の立場としては思います。 ○山本(晴)構成員 伊藤構成員もおっしゃっていたように、臨床研究についてはリスト化して出 しても、1本の臨床試験ですべてのことが言えるわけではないので、確かに難しいですね。例 えば、こういう疾患に対して、今までこれだけのエビデンスがあるというのは、実は、どういう方 法論で行われた臨床試験が何本あって、その結果、みんながこちらに向いていますとか、ばら ばらですとかというところで初めて全体の効果が分かってくる。その一本一本をリストにしてしま うと分からなくなってしまうというところがあるので、どうやって出していくかというのは非常に難し いと思うのです。  ただ何らかの形で、実験的治療について、こういうところにはこれぐらいのエビデンスかが あるけれども、こういうものにはあまりエビデンスがないということについて、リファレンスになるよ うなものが世の中にあるべきではあるだろうと思います。というのは、特に新聞報道で、個々の 記者はたぶん研究者にインタビューをして、その周辺にインタビューをして記事を作っておら れると思うのですが、そうすると、比較的バランスのとれた研究者であれば、それがどのぐらい のエビデンスであるとおっしゃると思いますが、例えば、1症例にすごく実験的な治療をして、 たまたま結果が良かったことをもって非常に強くそれを打ち出す方も中にはあるわけです。た だ、そういうときのほうが報道が大きく出てしまうという問題が今あるわけです。もちろん、メディ アの方たちにはそういうことを分かっていただきたいのですが、現実としてリファレンスが何もな い状況で報道がなされているので、今後そういうことは考えていかないと。報道の公正さという ところをサポートしていく必要はあるのではないかと思います。 ○辻本構成員 新聞もそうですし、みのもんたの番組などで「これがいい」とかと言うと、うちの電 話相談でも翌日「昨日テレビで」とかかってくる、そういうことは相変わらずなのです。それぐら いの受け止め方しかできないということも現実だと思います。情報というのは、ありさえすればい いものではなくて、その情報が私にとって利用価値があるのか、あるいはもう少し踏み込んでい って、良い内容のものであるのかということの理解には誰か専門家のサポートが必要になるの です。ですから、情報提供のことを考える一方では、そこをどう支援するか。言ってみれば、電 話でもいい、ネットでもいい。そのことの問合せに答えてもらえるようなサポートシステムも同時 に考えていかないと、全く別の方向に理解を進めていってしまう危険性も素人にはあります。 ですので、提供さえすればいいということではない、というところも含めてお考えいただきたいと 思います。 ○楠岡座長 山本(晴)構成員や辻本構成員がおっしゃるのは、プロフェッショナリズムのいち ばん基本というところに関わってくる問題ですけれども、あまりここにとらわれていると時間がなく なってしまいます。先ほどからポータルサイトの話が出てきておりますので、ここでそのことにつ いて説明をしていただきます。 ○治験推進室長 その前に、もし構成員の先生方からコメントがあればいただきたいのですが、 情報発信という観点で、どうしてもメディアを通じた発信というところに議論が偏ったかなと思う のですが、一般国民の受け手として、その成果という面、それから全ての情報、いわゆる透明 性の確保。ポジティブなデータだけではなくて、ネガティブなデータも包み隠さず、全体を見て いただく。その中には程度もいろいろあると思うのですが、それを言ってしまうと、結局それに セレクションがかかってしまって、十分な情報量が出てこないというところもあるのです。全体的 に公表する、いわゆる透明性の確保、それから先ほど言われたようないろいろなグレーディン グ(程度)、これをどう図っていくのかということで先生方のお考えを一言二言いただければあり がたいのですが。 ○楠岡座長 難しいご質問ですが。 ○山本(精)構成員 私の今日の意図は、メディアにということでもなくて、先ほど楠岡座長の話 にもあったように、メディアがいちばん期待も高いし、ニーズもある。そして、それ以外に病院と いうのもあるので、いろいろな形の発表が大事だと思うのですが、要は、出してどうかというのは 次の段階です。先ほどの疫学研究の例でも、やっているとそういうことが分かってくる。メディア の人も分かってきて、だんだん何でも報道しなくなってきたということもあるので、それこそ、何 でも出すという意味もありました。まず、こういうものを出していく。例えばフェーズIIIのRCTの 結果だけにしようとかというのはあると思うのですが、ある程度出していく中でお互いが、あるい は社会自体が成長していく。それで取捨選択が起こっていくということもあると思うのです。初 めからルールを決めて出すというのもなかなか難しいことだと思うので、グレードも、出していくう ちにだんだん決まっていく。1つのメディアだけではなくて、国民みんなにとか、それぞれの施 設でとか、ポータルサイトでとか、いろいろなことが必要なのではないかということだと思います。 ○掛江構成員 私自身、メディアのという件に関しては先生方のご意見に全く異論はないので すが、透明性という意味では、いろいろなものが出ていることが重要かと。もちろん、素人の方 がすべてを公正・公平に理解し判断するということは無理だと思いますが、例えば、とても信頼 性の低い研究の結果なり何なりを一般の方が見たとして、幸い医療は医師を介さず勝手にそ の情報を利用できるわけではなくて、必ず間に医師が入る。とにかく、勝手に使える情報では ないのです。ですので、一般の方の誤解はそこの段階で必ず正していただけるかと思うのです。 そういった意味では透明性は高い方が良いのです。患者さんが情報のどこの断片を拾ってき たかはともかくとして、それを入口として、その後にきっちりと主治医の先生、もしくは先ほど辻 本構成員がおっしゃったような相談する所があって、こういうのを見たのだけれど、どうだろうと いうことを相談して、どこで使えるか、どう理解すればいいかということを相談できるということが あれば、全く問題はないと思うのです。確かに相談システムの段階で質をちゃんと担保してい ただくことが必要になってくるとは思うのですが、最初の段階では、できれば全ての情報に国 民がアクセスできるように努めるというのがあるべき姿かなとは感じているのですが。 ○山本(晴)構成員 透明性ということについて、考え方がいくつかあると思うのです。透明性と いうのは、情報の質によらず、全部出すことも透明性ですし、こういう情報を選んで出している というルールを示した上で、そのルールに則って選ばれた情報を出すというのも透明性だと思 いますので、これは一部で考えるべきではなくて、もしそういうことをするのであれば、一定の研 究班でも設けて、ある程度考えていかないと、「では、こういう方法でやろう」と簡単には決めら れない問題ではないかと思います。 ○楠岡座長 いまの臨床試験の登録制度は、ある意味透明性担保の1つの入口のところで、 今後その結果を必ず発表する。要するに、ネガティブであっても、あるいは途中で中止しても、 それも必ずどこかに出していくのか。それとも、始まったが、いつ終わったか分からない。たぶ ん終わっているのだろうという形にするのか、それはこれから考えていかなければいけない点で す。  透明性の1つの問題、デメリットとして、今まではネガティブデータだと発表されない。それ でサブミッションバイアスとか、パブリケーションバイアスとかという話があるわけですが、中には 当初意図していない別の結果が出てきた。だから、当初意図した臨床試験としては失敗だっ たけれども、それ以外のところで、実は新たなものがあるというときに、そういうものをすくい上 げることを今後どうしていくかというのが別の問題として出てくると思います。山本(晴)構成員 がおっしゃるように、それはそれで1つの大きなテーマになってくるかと思います。  時間に限りがありますので、先ほどから出ている、臨床研究登録情報検索ポータルサイト について、事務局から説明していただきます。 ○事務局 資料7「臨床研究登録情報検索ポータルサイト」をご覧ください。国内で実施されて いる治験・臨床研究に関しては3つの臨床研究登録機関、国立大学附属病院長会議 (UMIN)、日本医師会治験促進センター、日本医薬情報センター(JAPIC)の運営しているサ イトに登録することになっております。それぞれで所持している治験・臨床研究に関する情報 を横串に検索するためのシステムとして、国立保健医療科学院で「臨床研究登録情報検索 ポータルサイト」の運用を平成19年10月から開始しております。治験・臨床研究への参加を 希望する人や、それらに関する情報を必要としている人が安心して接することができる情報を 確保し、その情報を入手できる手段を提供し、治験の実施状況を知りたい、もしくは医療関 係者から適切な説明を受けたいという一般の国民や患者の要請に応えることを目的としてお ります。  治験・臨床研究情報をとり巻く国際的な情勢を、下のスライドで簡単にご説明いたします。 2004年9月の医学雑誌編集者国際構成員会(ICMJE)により、治験・臨床研究の雑誌掲載 に当たっては、臨床研究の登録が必要な旨が表明されました。同年11月にMinistorial Summit on Health Researchにおいて、WHOに対して治験・臨床研究登録に係る国際的な ネットワークを作成するよう要望がなされました。その要望を受けて、2005年5月に開催され た世界保健総会においてその要望の解決に向けて対応することが決定し、8月から活動が 開始されております。この活動はWHOの国際的臨床研究登録プラットホーム(ICTRP)を中 心に実施されております。また、ヘルシンキ宣言においても、昨年10月のソウル総会におい て、すべての臨床研究は、最初の被験者を募集する前に、一般的にアクセス可能なデータ ベースに登録されなければならない、と定めたところです。  我が国でも、この国際的な動きに対応するべくWHOの要件に適合させ、昨年10月16 日にJapan Primary Registories Networkとして登録されております。  次の頁をご参照ください。話を国内の臨床研究登録情報検索ポータルサイトに戻します。 国立保健医療科学院のトップページからどのように入っていくか。先ほどからご指摘を受け ているとおり、なかなか分かりにくいというのはご指摘のとおりかと思いますが、トップページか ら緑色の「情報提供」というところをクリックしていただいて、そこの一覧に並んでいる青字のと ころのうちの「臨床研究登録情報検索ポータルサイト」を探してクリックしていただくと、下段 左側にある、このサイトにつながります。そして、そこの赤い四角で囲ってあるところをクリック すると、実際の検索画面に行って、用語や病名等、あるいは条件をつけることができる検索 サイトにつながることになっております。また、この3つの臨床研究登録機関での検索画面に もリンクを張っておりまして、UMIN、JAPIC、医師会治験促進センターに接続が可能になっ ており、個々の臨床研究登録機関での情報の検索もできるようになっております。 ○楠岡座長 先ほど来、使い勝手という話がございましたが、具体的に使われたりして、感想や 問題点はございますか。 ○掛江構成員 私も何度か試させていただきました。また、私の周りにいるスタッフにも、自分や 自分の家族がこういう病気になったら…という立場で、特に従来の治療法が効かないという状 態だったらということで何か探してみたい情報はあるかしら、みたいな形でインターネットを検索 してもらったのです。1日目は、それ以外の情報を渡さないで引いてもらったら、このポータル サイト3つのいずれにもアクセスできなかったのです。それで2日目に、こういうポータルサイト があるようだと3つのポータルサイトの名前を伝えて、その上で頑張ってもらったら保健医療科 学院のトップページ、それから、この資料の上の、いちばん真ん中のところまでは行けたのだけ れども、どこをクリックすればこのポータルサイトに入れるのかが分からなかったということで、か なり悪戦苦闘したようです。ですので、できれば一般向けに検索サイトに入りやすいボタンなり 何なりを作っていただけるといいと、強く思いました。  また、私自身も、乳がんを例に、Googleから検索しましたら、幸い癌の場合には、がんセ ンターの情報がすぐにヒットするのです。そしてがんセンターから、こういった紹介のリンクがあ るのです。でも、それぞれのポータルサイトのトップページには行けるのですが、やはり各サイ トのトップページからポータルサイトの検索のところにはなかなか入れなくて、難しいなと思いま した。私自身はポータルサイトという名前を知っていたので、とりあえず入れましたが。  入ってしまえば、非常に素晴らしい検索システムになっているなと思いました。ただ、具体 的に、いくつか見ていくと、薬の治験に比べて臨床研究は情報量が不十なように感じました。 「募集中」としているにもかかわらず、問合せ先なども無意味に英語になっていたり、患者さん がご覧になった場合どうしたらいいのかがよく分からないような状況もまだ見られるのかなと思 いました。ですので、そこになぜ登録するのかということを、登録されている研究者がご存じな いのかなと。これを一般の方にも見られるように、社会に情報を発信する意味があるのだとい うことをもしご存じであれば、それなりに配慮した情報を登録されると思うのですが、とにかく指 針で決まったので、しなければいけないという形で登録されている方がまだおられるのかなと いう印象を受けたというのが個人的な感想です。 ○楠岡座長 いまの英語の問題は、WHOとのリンクの関係で、どうしても、そこのところは英語 になってしまうのではないのでしょうか。 ○小林構成員 日本の機関は日本語と英語、両方併設していますので、本来日本語が書かれ ているべきですし、問合せ先も書かれているはずです。  先ほどの事務局の説明で、我が国の治験と臨床研究はこれらに登録することになってい るという言い方でしたが、そこはおそらく正確ではなくて、臨床研究は倫理指針で義務化の ような書き方になっていますが、登録について、アメリカは法制化されていますが、日本はさ れていないのです。なので、特に治験について、何で登録しなければいけないのかと思って いる依頼者はまだ存在すると思います。  いま掛江構成員がおっしゃった、なぜ登録するのかという部分についても、主語が誰かに よって考え方が変わり、もともとこれがパブリケーションバイアスで、著名雑誌は論文を受け付 けないという動きがあるので、「研究者」を主語として考えると「やった成果を著名雑誌に出せ なくなるからやるんです」というところが取っかかりです。もちろんヘルシンキ宣言の精神論は ずっとベースには流れているはずなのですが、この5カ年計画でも、逆に一般の方向けの情 報発信というところでこれを利用することに、後から追いかけて乗っかったような形になってい るので、現時点で研究者が何で登録するかと言ったら、倫理指針があるから。あとは、論文 を書きたいから登録しているのだと。ただ、それが一般の方向けのサービスがということになる と、研究者だけではなくて企業にも同じような考え方で、何でやらなければいけないのかとお っしゃる人もいます。  先ほど辻本構成員もおっしゃったように、どこにあるのか探しにくいという、サイトの作り方 の問題と、仮にアクセスできても、書いてある項目が、今WHOが必須の20項目と定めている 所も、もちろん研究者によって書き方は違うのですが、決して今日の国立国語研究所の話 ではありませんが、書かれている情報が一般の方向けの易しい用語かというと全くそんなこと はないので、そこをどうしていくのか。今回のこの検討会の役目として3年前に立てた計画の 見直しということも含まれているはずなので、ポータルサイトで提供するという入口には立った のだけれども、中身をどうするのか、誰のために何をするのかというところは少し議論をしてい かなければいけないだろうと思います。 ○楠岡座長 ポータルサイトにあまりにもいろいろなことを期待しすぎて、本来、何のために作っ たのかが曖昧になってしまっています。いま小林構成員がおっしゃったようなところで作られた のだから、とりあえず今はこれを利用しよう的なところがあるので、これを今後どう発展させてい くかというのが1つの方向になってくるのではないかと思います。ほかにご意見はよろしいでしょ うか。ポータルサイトに関しては今後見ていただいて、ご意見がありましたらお出しいただきた いと思います。意見交換を活発にいただきましたので少し時間が過ぎましたが、本日の意見 交換は以上とさせていただきます。本日のご意見は議事録にいたしまして、事務局でも取りま とめをお願いいたします。  次回以降は、アクションプランの1「ネットワーク」、及び4「業務分担、業務改善」の問題に 関して、スピード・コスト・質等も含めた形で議論を進めていきたいと思います。最後に事務局 から何か連絡事項がありましたら、お願いいたします。 ○治験推進室長 長時間ありがとうございました。ただいま楠岡座長からご紹介がありましたよう に、次回以降はアクションプランの1、それから4ということで、ネットワークの問題、それからコ スト・スピード・質の問題という、かなり大きな問題について議論をさせていただく予定です。な お、その議論に先立ってワーキンググループを設置することができるというお話をしたと思いま すが、この2点は非常に大きい問題ですので、場合によっては、まずワーキンググループを組 織して、その中でいくつか議論をした上で、次回以降の会議で議論ができればと思っておりま す。ワーキンググループの構成等につきましては、事務局と座長とのご相談のうえに決めさせ ていただきたいと存じます。  次回の日程ですが、先生方からいただいた日程調整の結果を踏まえて、9月3日(木)15 〜17時に開催させていただく予定です。場所については、現在探しておりますので、追って ご連絡を申し上げます。  本日の議事録につきましては、作成次第先生方にご確認をお願いし、その後公開させて いただきますので、併せてよろしくお願いいたします。 ○楠岡座長 ほかにご意見はございますか。 ○渡邉構成員 今日のお話を聞いて、治験活性化の為の情報提供や啓発活動と言うならば、 対象が国民なのか、患者さんなのか、あるいはどういう場での情報提供がより有効なのかとい う事を、もう少し整理して議論すべきだと思いました。もし治験活性化5カ年計画において短 期的な成果を期待するならば、治験の対象は患者さんなので、先ずは患者さんを情報提供 の対象とする。情報提供の場としては病院を想定し、そこでどのような情報を提供するかとい うような議論をしていただきたかった。  また治験に関しての啓発の内容ですが、「治験は新しい医療を作るため」、それは確かに そうなのですが、そう言うと、どうしても遠い将来のことなので、あまり現実的にとらえられない のではないかと思います。いま現時点で多くの薬によって私たちも恩恵に浴しているのだとい うことを、もう少し丁寧に患者さんに説明していく、それが非常に重要だと思っています。その 辺を今後議論していただければありがたいと思いました。 ○治験推進室長 ご指摘ありがとうございました。事務局の不手際で資料が直前までご提供で きずに申し訳ありませんでした。「新たな治験活性化5カ年計画」につきましては、治験と臨床 研究、両面について5年間でいかに活性化していくかという観点でご議論いただく予定です。 ただ、今後の会議におきましても議論がぼやけないように資料をまとめながら、十分余裕を持 って提供させていただきたいと思います。 ○楠岡座長 以上をもちまして、第2回新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検 討会を終了させていただきます。長時間にわたり、どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省医政局研究開発振興課 後澤    03(5253)1111(内線2543)