09/07/30 第46回職業安定分科会雇用保険部会議事録 第46回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会          日時 平成21年7月30日(木)          17:30〜          場所 厚生労働省6階共用第8会議室 ○坂口雇用保険課長 定刻になりましたので、ただいまから「第46回労働政策審議会職業安 定分科会雇用保険部会」を開催させていただきます。皆様お忙しいところご参集いただきまし て、誠にありがとうございます。本日は、前回の雇用保険部会が開催されたのち、委員の改選 が行われ、改選後の第1回目ですので、冒頭は私、雇用保険課長の坂口が司会を務めさせてい ただきます。よろしくお願いします。  議事に移ります前に、いま申し上げたとおり、4月27日に委員の交代がありましたので、交 代された委員の方を私からご紹介します。公益委員として、明治大学法科大学院法務研究科教 授の野川委員、学習院大学法学部教授の橋本委員にご就任いただきました。労働者側委員とし て、国公関連労働組合連合会副中央執行委員長の豊島委員にご就任いただきました。また、使 用者側委員として、日本経済団体連合会労働政策本部主幹の遠藤委員、全国中小企業団体中央 会労働政策部長の小林委員にご就任いただきました。どうぞよろしくお願いいたします。委員 交代のご紹介は以上です。本日の出欠の状況ですが、坪田委員がご欠席です。  続きまして、当部会の部会長を選出します。部会長の選出については、労働政策審議会令第 7条第6項において、当該部会に所属する労働政策審議会の公益委員のうちから、公益委員の 方が選挙することとされております。当部会においては、岩村委員、清家委員、林委員の3名 が該当されますが、お三方からご意見はございますか。 ○林委員 清家委員が適任かと思います。お忙しいと思いますが、お願いしたいと思います。 ○坂口雇用保険課長 よろしいでしょうか。 (了承) ○坂口雇用保険課長 ありがとうございます。それでは、清家委員が当部会の部会長として選 任されました。清家部会長、以後のご進行をよろしくお願いします。 ○清家部会長 清家でございます。ご指名ですので、部会長を務めさせていただきます。皆様 のご協力を仰ぎながら議事を円滑に進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。  初めに、労働政策審議会令第7条第8項において、部会長代理を置くこととなっております。 部会長代理は、公益委員から部会長があらかじめ指名することとされておりますので、当該規 程に基づいて、岩村委員に部会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。  事務局において異動がありまして、職業安定局長に森山局長、職業安定局次長に山田次長、 雇用保険課に大隈企画官、坂井課長補佐が着任されております。森山局長から一言ご挨拶をい ただきたいと思います。 ○森山職業安定局長 ただいまご紹介にあずかりました、森山でございます。皆様におかれま しては、日頃から職業安定行政の運営にあたりましてご指導、ご鞭撻を賜っております。厚く 御礼を申し上げます。また、本日は大変お忙しいところご参集いただきまして、重ねて御礼を 申し上げます。  現下の雇用失業情勢について、5月の完全失業率は5.2%で、前月に比べて0.2ポイント上昇 しました。また、有効求人倍率もご案内のように0.44倍で、過去最低ということです。大変に 厳しさを増している状況です。こうした中で、雇用保険の受給者実人員は94万人で、今後も 増加傾向が続くと考えられており、引き続き受給者の動向に注視をする必要があると考えてお ります。当省としてはこうした状況を踏まえ、これまでの対策に加え平成21年度の本予算、 あるいは数次にわたる補正予算によって、各般の雇用対策を実施しているところです。これら の対策を着実に実施することにより、雇用失業情勢の改善に向けて対応しているところです。  また、雇用保険制度については、ご案内のとおり、当部会で議論いただいた改正雇用保険法 が3月31日に施行され、4月にご議論いただいた育児介護休業法の改正に合わせた改正につい ても、先月24日に国会で可決・成立しました。一方、雇用保険制度をめぐる現状については、 平成19年の部会報告で「今後の課題」とされている事項、あるいは先般の国会審議における 「附帯決議」での指摘もあります。こうした課題について、公労使の皆様方にご検討を改めて 始めていただきたいと考えております。  現状や主な検討課題などについては、後ほど事務局からご説明しますが、皆様方には十分ご 議論いただく必要があると考えておりますので、ご議論に際して忌憚のないご意見を賜ります よう、よろしくお願い申し上げます。 ○清家部会長 どうもありがとうございました。それでは、議事に移ります。本日は、今後の 議論の第1回目ですので、あらかじめ私と事務局とで相談し、現状やこれまでの制度の変遷、 あるいは宿題となっている検討課題等について資料を用意していただいております。事務局か らご説明をお願いします。 ○坂井雇用保険課長補佐 資料の確認をお願いします。本日の配付資料ですが、資料No.1とし て「雇用保険制度の概要」、資料No.2として「雇用保険制度の主要指標」、資料No.3として「財 政運営関係資料」、資料No.4として「最近の雇用保険制度の変遷」、資料No.5として「雇用保険 制度に係る主な検討課題」。参考資料ですが、「雇用保険制度の概要」「諸外国の失業保険制度等」 「経済危機対策における主な取組み」を1部に綴じた上で配付しておりますが、お手元にあり ますでしょうか。  それでは、資料No.1「雇用保険制度の概要」からご説明します。これは雇用保険制度のさま ざまな給付を1枚にまとめた資料になります。雇用保険制度は、ご承知のとおり大きく「失業 等給付」と「雇用保険二事業」の2つに分けられます。失業等給付は、失業者への給付である 失業給付を基盤として、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付といった各種の給付があ ります。財源は労使折半の保険料と国庫負担によっており、先般の雇用保険法の改正により、 今年度に限った保険料率として本来の総賃金の1,000分の12から1,000分の4を引き下げら れて、現在1,000分の8となっています。各給付の国庫負担について、基本手当は原則4分の 1とされておりますが、当分の間は本来の4分の1の55%、すなわち13.75%とされておりま す。  また、失業等給付に関連して、景気変動に対応するため、好況期に積立金として資金を積み 立て、不況期にこれを財源として使用することで中長期的に安定的な運営を確保しており、近 年の収支状況はのちほどご説明しますが、平成21年度補正予算における積立金は約4兆5,806 億円となっております。  下の雇用保険二事業は、雇用保険の附帯事業として労働者の職業の安定に資するため、失業 の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力開発向上等を図ることを目的とする事業とな っております。財源は全額事業主負担の保険料とされており、保険料率は現在1,000分の3と なっております。  失業等給付と雇用保険二事業についてご説明しましたが、併せて今年度の雇用保険料率は 1,000分の11となっております。現状、雇用保険制度はこのような形で運営されております。  次に、資料No.2「雇用保険制度の主要指標」についてご説明します。1頁目は、現下の雇用失 業情勢について記述しております。局長も申し上げましたが、7月30日現在、5月の失業率及 び有効求人倍率は最新のデータとなっておりますが、5月の完全失業率は5.2%と前月より0.2 ポイント上昇、有効求人倍率は過去最低である0.44倍を記録しており、現下の雇用失業情勢は さらに厳しさを増している状況です。次の頁から、こうした状況を踏まえつつ、現在雇用保険 制度がどのように運用されているかについて、いくつか主な統計を用意してております。  3頁ですが、雇用保険の被保険者数の推移を整理したものです。雇用保険の被保険者数は4 つの類型があり、「一般被保険者」、65歳以上の者で継続して雇われている「高年齢継続被保険 者」、季節労働者などの「短期雇用特例被保険者」、日雇いの方の「日雇労働被保険者」があり ます。ご覧になればわかりますように、被保険者としては、一般被保険者が97%と多数を占め ております。平成15年以降で見ると、一般被保険者は年々増加を続けており、平成20年度で 約3,680万人となっております。一方で、短期雇用特例被保険者、いわゆる季節労働の方等と 日雇労働被保険者数については、一貫して減少傾向にあります。  4頁に移ります。失業等給付のうち、一般被保険者の求職者給付の受給者実人員数の推移を 記述しております。昨年末以降、対前年同月比で見て増加が続いており、最新のデータである 平成21年5月では、対前年比70.3%増の約94万人となっています。この水準は、失業率が 5.4%、有効求人倍率が0.61倍であった平成15年5月の約92万9,000人以来6年ぶりの高水 準となっております。今後も増加傾向が続くと考えており、引き続き動向を注視していく必要 があります。  5頁ですが、受給資格決定件数の推移です。こちらは、昨年9月以降対前年同月比で見て増 加が続いており、直近の平成21年5月は約24万9,000人となっております。  6頁、教育訓練給付の支給状況をご説明します。平成10年度の制度創設以降、指定講座の拡 大等によって受給者数、支給金額ともに平成15年度まで伸びていましたが、その後就職との 関連性をより厳格に見ていくという観点から見直しが行われた結果、受給者数、支給金額とも に減少し、平成20年度の受給者数は約12万4,000人、支給金額は約74億円となっておりま す。  次の7頁です。高年齢雇用継続給付の支給状況です。本制度は、そもそも60歳時点の賃金 低下といった事態に着目し、本来就職意欲がある方まで不必要に失業給付に流れてしまうこと を防ごうという趣旨で創設されたものです。これまで基本手当とのバランスを保つ観点から見 直しが行われてきたところですが、平成21年5月の支給金額は約114億円となっております。  最後の8頁です。育児休業給付の支給状況についてご説明します。こちらは制度の普及につ れて継続して伸びてきていますが、平成20年度の支給額は約1,512億円となっております。  資料No.3「財政運営関係資料」についてご説明します。9頁ですが、最初に失業等給付関係の 収支状況ということで、平成4年度以降のトレンドを中長期で整理したものを載せております。 いちばん右側が平成21年度補正後予算の数値となっていますが、特例措置として保険料率を 1,000分の4引き下げている中で、収入が1兆6,670億円、支出が約2兆4,600億円となって おります。その差引剰余が約8,000億円の赤字ということになりますが、現在の積立金残高は 4兆6,000億弱という状況になっており、当面は安定した運営が行える積立金が確保されてお ります。  10頁に移ります。こちらは受給者実人員との関係を併せて、積立金残高の推移をグラフで整 理した資料です。棒グラフが積立金残高、線で表されたほうが受給者実人員数となっておりま す。こちらによると、平成4年度以降受給者実人員数が増加を続け、平成10年度から平成14 年度の5年間にかけて100万人を超えるピークを迎えておりましたが、平成15年度以降は、 景気回復などを受けて受給者実人員数は減少してきております。積立金残高は受給者実人員数 と逆の動きとなっており、平成5年度近辺において5兆円近かった積立金残高は、平成6年度 から平成14年度にかけて収支が9年間連続で赤字となったことを受け、平成14年度の積立金 残高は4,064億円まで減少するに至っております。その後、平成15年度から平成19年度にか けて収支が好転することにより、積立金も増加していったという流れになっております。  11頁です。資料3の最後の頁ですが、旧三事業も含めて、雇用保険二事業の収支状況につい てご説明します。こちらは予算、決算の両方について整理したものとなっております。旧三事 業ということで、雇用福祉事業が平成18年度まで存在しましたが、平成19年の制度改正に伴 い雇用福祉事業を事業類型としては廃止し、現在は二事業として運営しております。平成19 年度以降でご説明すると、予算額は平成19年度の3,563億円の支出、平成20年度補正後予算 が5,962億円の支出となっております。平成21年度については参考資料37頁でご説明してお りますが、「経済危機対策」における「雇用対策」関連の取組みの一環となっており、雇用調整 助成金の拡充等で約6,000億円の補正予算を組んだことから、補正予算後で約1兆2,000億円 の支出となっており、補正予算後における平成21年度末の安定資金残高は約3,200億円とい う状況になっております。  資料No.4「最近の雇用保険制度の変遷」についてご説明します。雇用保険法は、ご存じのと おり失業保険法を廃止し、新たに昭和50年から施行され、その後改正を重ねられてきました が、本日は最近の改正として平成元年以降の改正概要について資料を用意しております。12頁 ですが、平成元年の改正では就業形態の多様化、特にパートタイム労働者についてその数の増 加や勤続年数の伸長などの変化が見られるといった状況を背景に、一般被保険者とは別に短時 間労働被保険者という被保険者区分を新設し、雇用保険を適用するとともに、給付について必 要な特例を設ける改正を行っています。平成4年改正においては、失業給付に係る収支状況が 黒字急調で推移する中で、労、使、国庫の負担の軽減を図るとともに、賃金日額の計算の特例 の弾力化などを行っています。  次の平成6年改正は、当時の経済状況としてバブル景気は崩れていたものの、雇用保険財政 はまだ積立金の残高も非常に多いという安定した状況にある中で、高齢化対策や少子化対策の 観点から、雇用継続のための高年齢雇用継続給付や育児休業給付の創設を行うとともに、給付 に関してさまざまな改善が行われています。  13頁です。平成10年改正については、当時の背景として財政構造改革を押し進めるという 政府の大きな流れがあったため、国庫負担率の暫定的な引下げを行うとともに、新たな行政事 業に対応する観点から、新しい給付として教育訓練給付や介護休業給付を創設しております。  平成12年度改正以降については、15頁からそれぞれ少し詳しい資料を付けております。平 成12年改正と平成15年改正は、いずれも非常に厳しい雇用失業情勢を背景に行った改正とな っております。平成12年改正では、産業構造の変化、労働移動の輻輳化、雇用就業形態の多 様化といった労働市場の構造的な変化に起因する失業率の高止りに対応して、雇用保険制度の 安定的な運用を確保するために、セーフティネットとして万全な機能を果たすようにというこ とで大きなご議論をいただいて行ったものです。柱としては、第1に早期再就職を促進するた め、基本手当の給付体系の大きな整備が行われました。具体的には、特定受給資格者を創設し、 非自発的離職の中でも特に倒産・解雇により離職を余儀なくされる方、その中でも特に中高年 の方に給付を重点化するということで、受給者の状態に応じてメリハリをつける形で給付日数 の見直しを行っております。  第2に、少子・高齢化への対応として育児休業給付、介護休業給付の給付率の引上げなどが 行われております。このほか、平成12年は財政状況が非常に悪化したこともあり、国庫負担 に係る暫定措置を廃止することによって原則の25%に戻したことと、雇用保険料率についても 1,000分の8から1,000分の12へ、1,000分の4引き上げられています。  平成15年改正ですが、17頁をご覧ください。平成15年改正においても非常に厳しい雇用 失業情勢、また雇用保険財政が逼迫している状況で、大きな改正が行われています。基本手当 については、再就職の困難な層について給付日数の改善を行いつつ、基本手当日額と再就職時 賃金の逆転現象を解消するために、給付率や上限額の引下げが行われました。また、在職者へ の給付と失業者への給付との均衡を考慮して、教育訓練給付や高年齢雇用継続給付については 給付率や支給要件を見直しています。さらに、保険料率については中期的に財政が安定するよ うにという観点から、1,000分の12から1,000分の16に引き上げられています。  平成19年改正ですが、18頁をご覧ください。まず、行革推進法に沿った見直しということ で、失業等給付に係る国庫負担の在り方を見直しました。具体的には、高年齢雇用継続給付に 係る国庫負担を廃止し、当分の間55%に引き下げるという内容です。2点目は、保険料率の見 直しということで、弾力料率を1,000分の4の範囲まで拡大し、平成19年度からの料率を1.2% に引き下げるとともに、雇用安定事業等の弾力条項に係る2年連続という発動期間の制限を撤 廃しています。  3点目は雇用保険三事業の見直しで、雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業とあった 3本の事業のうち、雇用福祉事業を事業類型としては廃止しました。4点目は、船員保険制度 との統合が行われました。船員保険制度は医療、労災、雇用の総合的保険制度ですが、平成22 年1月から労災、雇用保険部分について一般制度に統合することとしたものです。このうち雇 用保険に関連するものについては、のちの雇用保険部会において資料を用意させていただく予 定としております。  そのほか、直面する課題への対応として、従来あった短時間労働被保険者の被保険者区分を なくし、受給資格要件も一般被保険者として一本化したほか、育児休業給付の給付率の暫定的 な引上げ、教育訓練給付、雇用安定事業の対象範囲の見直し、特例一時金の給付水準の適正化 などの措置を講じております。  最後になりますが、施行日を3月31日とする修正を経て、本年3月27日に成立し施行され た平成21年改正についてご説明します。19頁をご覧ください。本改正においては、現下の厳 しい雇用失業情勢を踏まえ、非正規労働者に対するセーフティネット機能及び離職者に対する 再就職支援機能の強化を図ることがポイントとなっております。近年、非正規労働者が増加す る中で、これらの方への雇用調整が急速に拡大していることも踏まえ、契約更新がされなかっ たことによる離職者について、解雇による離職者と同様に被保険者期間が6か月で基本手当の 受給資格を得られるよう受給資格要件を緩和するとともに、給付日数についても暫定的に解雇 による離職者と同様の日数とすることにしました。併せて、非正規労働者に対する運用上の適 用基準である「1年以上の雇用見込み」を「6か月以上の雇用見込み」に緩和し、適用範囲を 拡大しています。  2点目として、再就職が困難な場合の支援を強化する観点から、解雇や契約更新がされなか ったことによる離職者について、特に重点的に再就職の支援が必要な方に対して、暫定的に給 付日数を60日分延長できるようにしました。  3点目としては、安定した職業への再就職をより一層促進するため、再就職手当などの支給 要件の緩和及び給付率の引上げを行っています。  4点目は、平成19年改正で実施した育児休業給付の給付率の暫定的な引上げについて、当分 の間延長するとともに、休業中と職場復帰後に分けて支給している給付を統合し、全額を休業 期間中に支給することとしました。  5点目として、国民の負担軽減の観点から、特例的に今年度の失業等給付に係る保険料率を 現行の1.2%から0.8%へ引き下げています。なお、育児休業給付に係る部分は平成22年4月 1日から施行することとされており、今回の改正の施行状況等については次回以降ご報告した いと考えております。  資料No.5の「主な検討課題」とも関係しますが、平成18年12月と昨年12月の雇用保険部 会の報告書の抜粋、平成21年改正の国会審議の過程で衆・参両院において付された附帯決議 を次の頁に付けております。平成19年改正の際の雇用保険部会での報告では、いくつか今後 の課題として位置づけられている項目がありました。[1]はマルチジョブホルダー等就業形態の 多様化に対応した雇用保険の適用範囲の在り方、[2]は65歳以降への対処について、[3]は基本 手当の所定給付日数及び日額水準について、[4]は失業認定等制度の運用や育児休業給付等の運 用について、[5]は高年齢雇用継続給付について、改正高年齢者雇用安定法等を踏まえた形での 措置についてといった内容です。  また、昨年12月の部会報告では、急激な雇用失業情勢の悪化に対応し、時間のない中で緊 急対応として取りまとめたものであったことから、平成19年改正の部会報告において今後の 課題とされた事項について、引き続き検討すべきであることが盛り込まれています。  次に、雇用保険法改正を行った際の衆議院及び参議院の附帯決議を付けておりますが、22頁 の参議院厚生労働委員会における附帯決議をご覧ください。いくつかご説明しますが、一は、 雇用保険の適用のない者や受給終了者に関係するものとして、国会に提出されていた「求職者 支援法案」の趣旨を踏まえた対策の必要性について盛り込まれています。これについては、現 在一般会計で緊急人材育成・就職支援基金を創設し、訓練期間中の生活保障を行うことによっ て対応しております。二は、非正規労働者の適用基準の緩和についての検討が盛り込まれてい ます。また、五は国庫負担の暫定措置について、六は日雇いの給付金の活用について、七はマ ルチジョブホルダーについて、八は基本手当の水準について盛り込まれています。  資料No.5「雇用保険制度に係る主な検討課題」についてご説明します。この1枚紙は、事務 局で部会長と相談の上、先ほどの雇用保険部会報告で今後の課題とされている事項や先般の附 帯決議を踏まえ、大きな項目で整理したものです。本日これからいただくご議論を踏まえ、事 務局において部会長とご相談しながら、必要な資料を次回以降へ向けて準備したいと考えてお ります。  1.は「雇用保険の適用・給付について」です。(1)適用範囲の議論の焦点は、先般の国会審議 でも大きな焦点となった、カバーする非正規労働者の範囲についてとなりますが、これは本年 4月より20時間以上の短時間労働者についての適用基準である1年以上雇用見込みを6か月 以上雇用見込みに緩和したところであり、まずはこの適用拡大を定着・徹底させていくことが 重要であると考えております。同時に、先ほど資料としてご紹介した参議院での附帯決議にお いて、さらなる緩和を検討することともされており、部会でのご議論が必要と考えております。  このほか、先ほどの部会報告や附帯決議においても盛り込まれているマルチジョブホルダー への対応について、給付面も含めた考え方、問題点の整理、65歳以降への対処などが課題とし てあると考えております。また、ここには記載していませんが、被保険者となったことの確認 があってから2年間を遡及して適用することとしている雇用保険の遡及適用の在り方について も、課題に含まれるのではないかと考えております。  (2)は失業等給付の内容ですが、基本手当については平成19年改正の部会報告に加え、附帯 決議において最低保証の在り方や給付日額、給付日数等について検討することとされておりま す。  高年齢雇用継続給付については、平成19年改正の際に廃止の方向性が結論づけられており ますが、適用の問題と併せて、改めて課題を整理する必要があるのではないかと考えておりま す。  そのほか、教育訓練給付や、ここには記載しておりませんが、短期雇用特例求職者給付、日 雇労働求職者給付の在り方といった課題も、引き続きの課題としてあると思っております。な お、育児休業給付については、先般の改正の施行が平成22年4月とまだ未施行であり、まず はこの改正の影響を見る必要があると考えています。  2.「財政運営について」です。雇用保険の財政運営については、先ほど失業等給付、雇用保 険二事業の収支の状況をご説明しましたが、それぞれ安定的な財政運営の観点から、弾力条項 も含めた保険料率の在り方などについてご議論いただきたいと思います。適用や給付の問題と 今後の財政運営は一体として議論することが必要ですので、その観点からもご議論をいただき たいと考えております。また、二事業の財政運用についても、今後の雇用調整助成金等の支給 状況を踏まえつつご議論いただくことが必要と考えております。  なお、来年度の弾力条項に基づく保険料率については、平成20年度決算の確定後、遅くて も年末までにはご議論いただくことになっています。  3.「その他」です。先ほどの附帯決議も踏まえて、参考資料38頁で、先ほどもご説明しまし たが、緊急人材育成就職支援基金により、雇用保険を受給できない方などを対象に訓練中の生 活保障を行うとしましたが、雇用保険の適用範囲、給付水準の議論の両面に係る問題として、 今後の在り方などについて当部会で議論を行っていただくことも必要ではないかと考えており ます。説明は以上です。よろしくお願いします。 ○清家部会長 それでは、ただいま事務局のほうからご説明のあった資料も参考にしながら、 今後、主な検討課題の各項目について議論を進めたいと考えておりますが、本日のところは、 必ずしも項目にとらわれることなく、ただいまの説明全般にわたる忌憚のないご意見を、1回 目ですので、できれば委員の皆様方全員から一言ずつでもいただければと思っておりますので、 よろしくお願いいたします。それでは、皆様、どうぞご自由にお願いします。 ○長谷川委員 何点かについてです。まず、適用範囲ですが、前回、今般の改正で特に非正規、 40時間を切っている人たちのところで、1年の雇用見込みから6か月の雇用見込みにしたので すが、国会審議のときも言われておりましたが、これらは法律事項ではなかったわけです。雇 用保険はあまりにも複雑で法律に書いてない事項が結構あって、どういう労働者が雇用保険に 適用になるのかということは、法律記載事項なのではないか。  労働相談をやっていて、私は雇用保険に適用になるのか、どうなのかというところから始ま ることが少なくありませんが、これは大きな問題だと思います。多くの労働者は、みんな雇用 保険に入っていると思っています。給料明細を見て引かれていなければ、雇用保険に入ってい ないというのはわかると思います。でも、普通は働いていれば、誰でも雇用保険に入っている と思っていたのが入っていなかったということは、大きな問題ではないか。今回の、昨年秋以 降から起きたさまざまな問題で、雇用保険の適用問題は、もう少しきっちり議論していく必要 があるのではないかと思います。  私ども連合では、すべての働く者に雇用保険の適用をすべきだと思っていまして、1年の雇 用見込みだとか、6か月の雇用見込みだとか、そういうことでいいのかという問題意識を持っ ています。30日以内であれば日雇保険に入れるわけですから、30日を超えた者から適用させ るということが検討課題に上ってもいいのではないかと思っています。それといま言ったよう に、適用範囲については、法律事項にすべきだということです。  次にマルチジョブホルダーについてです。シングルマザーの働き方については、就労先が1 か所という人は少なく、シングルマザーでも正規できちんと賃金が出ている人は問題がないわ けですが、シングルマザーの会合での聞いた話によると、年収が300万円ぐらいだと言うので す。それは1か所ではなく、2か所で働いています。朝早く弁当の仕出し屋で働いて、昼はど こかのスーパーでパートで働くとか、あとは朝早い掃除で働いて、午後はどこかでパートでと いう働き方の人がいることは事実なので、そういう人が失業したときに雇用のセーフティネッ トが効かないことについて、どう考えるかということです。  私たちはこの雇用保険制度というのは、期間の定めのない雇用、要するに長期安定、正規の 労働者を中心にした制度設計だったと思います。しかし、雇用・就労形態の多様化によって、 さまざまな労働者が登場してきたわけですから、それらの人に対する雇用保険がセーフティネ ットとなっているのかどうかという精査を、今回はする必要があるのではないかと思います。  この間、この部会でも努力して、緊急的な対応はいっぱいやりましたが、緊急的な対応は緊 急的な対応として、雇用・就業形態の多様化という中での雇用のセーフティネットとしての雇 用保険はどうあるべきかというのは、きっちり議論することが必要ではないかと思います。  雇用保険の議論をするときに、必ず出てくるのがモラールハザードの話です。モラールハザ ードの問題を否定するつもりはありませんが、モラールハザードがありきとの議論ではなく、 どうしたらモラルハザードを抑止できるかということを議論することが必要ではないかと思い ます。  失業給付の水準の話ですが、過去の雇用保険の改正のことも述べられ、雇用保険というのは、 ある意味では失業が少なければ雇用保険の支出はないわけで、これは国にとっても、私たちに とってもいいことです。経済が非常に悪くなってくれば雇用保険の給付は増えてくるし、財源 もなくなるというのは雇用保険の特徴だと思います。この間の何回かの雇用保険の改正の中で 保険料率をなるべく上げないようにということで、給付日数の制限とか、いろいろな制度設計 をしてきたわけですが、これが本当に良かったかどうかについても、あらためて見直していく 必要があるのではないかと思います。  私もよくわからないのですが、例えば給付について年齢区分があります。そういう年齢区分 は本当に必要なのかどうかとか、年齢と給付日数はどういう関係を持つのか。生活が困窮して いるところでは、年齢などは関係がないはずで、年齢と給付日数の関係について、本当にいま の制度設計が適当なのかどうかということについても検証する必要があるのではないかと思い ます。  雇用保険の給付日額ですが、本来、雇用保険というのは雇用のセーフティネットであるので、 そういう意味では賃金の何割で、かつ、上限が7,730円になっているわけですが、本当にそれ でいいのかについて検討する必要があるのではないでしょうか。私どもの労働者の生活実態か ら言えば7,730円は低いので、もっと上げろという声もあります。最低保障金額というか、そ ういうものも作って生活できるようにすることなども考えなければならないのではないかと思 います。そういう意味では、失業給付等の内容で上限・下限額だとか、給付日数がテーマに上 がっていますので、この辺はもう一回議論していただければと思います。  それと現在は法律事項ではないのですが、能力開発をしながら、生活保障するということが 運用で行われています。以前、この部会でも言いましたが、ヨーロッパにある扶助制度のよう なものを参考に、連合は就労・生活支援給付と言っていますが、そういう制度を作ることが必 要ではないか。  結局、今回は雇用のセーフティネットの雇用保険が、非正規労働者のところでは効かなかっ た。働いていたが、雇用保険に加入していなかった人がいたわけで、そういう人たちをどのよ うに救済するかということで、私たちは第2のセーフティネットと言っていますが、能力開発 をしながら、生活給付するという制度を3年の暫定ではなく、こういう制度を日本でも、きっ ちりと恒久的な制度として創設することが必要ではないか。第2の雇用セーフティネットを作 ったときの雇用保険はどうあるべきかということは、これが3年の暫定でなくなる場合の雇用 保険の制度と、これも並存させる場合とでは、雇用保険の制度設計もおのずと違うわけで、そ の辺も一緒に議論することが必要ではないかと思います。  財政問題では、いろいろなことを言われてきましたけれども、雇用保険を積んできてよかっ たと思います。雇用保険を積んでこなかったら、この今の状況に耐えられなかったと思います。 財政審の中で、雇用保険は積み過ぎだとか、国庫負担も削減すべきだとか、保険料率を下げる べきだとか、いろいろなことを言われましたが、結局雇用保険というのは景気がいいときに積 んでおいて、景気が悪くなったときは失業者が大量に出てくるから、そのときに使うのだとい うことで、積めるときは積んでおくことが必要ではないかと思います。  いま二事業は、当初は1兆2,000億円ぐらいあったはずですが、例えば雇調金はこのままで 推移していたら、これで足りるのかなという心配もあるわけですが、ちゃんと積むときは積ん でおく。そして使うときは使うことが重要なのではないかと考えています。意見とか、これか ら検討してほしい事項を混ぜてお話しましたが、よろしくお願いします。 ○清家部会長 委員の皆様から少しお話を伺って、あとでもし必要であれば事務局からお答え いただくことにしたいと思います、ほかに何かありますか。 ○古川委員 方向性を教えていただきたいと思います。適用範囲で65歳以降への対応とあり ますが、これは高年齢継続被保険者をなくして、65歳以上も一般被保険者とするということで しょうか。そのようになった場合は、いまの免除対象高年齢労働者がいると思いますが、それ もなくなるということですか。  もう1つは、失業等給付の内容で、高年齢雇用継続給付の在り方ですが、高年齢雇用安定法 が施行されて、通常は60歳以降の雇用が労使協定で結ばれているのですが、中小企業はまだ 労使協定を結べないで就業規則に書いている所が私どもの組合でもあります。廃止の方向とい うことですが、実態についてもう少し調査をしていただいて、これから在り方について、慎重 にご検討いただきたいと思います。 ○清家部会長 では、65歳以上への適用について事務局からお願いします。 ○坂口雇用保険課長 ご質問かと思いますので、事務局からお答えさせていただきます。いま の65歳以降の部分は、まさしく古川委員が言われたような問題点というか観点も含めて、皆 様方で方向づけをこれからどうするかというご議論をいただきたいということです。  先ほど補佐からご説明いたしました資料の20頁に、平成19年の法改正のときに当部会でお まとめいただいた報告書ということで、だいぶ委員も代わられたようですのでということで、 今回もご説明いたしましたが、ここのところもまさしく第3の[2]にあるように、労働政策の対 象年齢との関連も念頭に置きつつ、65歳以降への対処について、今後とも検討すべきであると いうことで、いまも高年齢継続給付との兼ね合いでもあった高齢法の改正等々があったり、我々 としても70歳までいろいろ活躍していただけるような施策も打ち出している中で、実際にい ま労使の方々が置かれている現状等も踏まえて、この問題についてこの部会でもご議論をいた だきたいということです。  それから、高年齢雇用継続給付についても、第3の「今後の課題」の平成19年の部会報告 の[5]に、先ほどもご紹介しましたし、古川委員からも引用されたことが書いてあるわけですが、 そこの部分についても、当部会での今後の課題として書かれている部分ですので、いまご指摘 があったような現状等々を踏まえて、65歳以降の対処の問題とも絡んで、高年齢雇用継続給付 についても、いかにしていくべきかについても、改めてご検討をいただければということで、 事務局としては先ほどの大括りの課題としては掲げております。いまもあった点も含めて、課 題についてご議論いただきやすい資料や、観点も整理してご議論に資していただきたいと思い ます。 ○清家部会長 古川委員、よろしいですか。 ○古川委員 はい。 ○清家部会長 ほかに何かありますか。 ○西馬委員 高年齢雇用継続給付についてですが、改正高年齢者雇用安定法を踏まえて、60歳 以降の就労は結構進んでいると思っています。ベースとしてあるのは、年金との関係も大きい ですし、いま厚生年金ですと、厚生年金の中の報酬比例部分については60歳以降も受給でき ているわけです。それは後ろに繰り下がっていて、平成25年からは60歳になっても何ももら えない状況が出てきます。  我々は企業実務をやっていますと、60歳以上の高齢者については、年金で本人がもらえるの か、もう1つは高年齢雇用継続給付なども活用して、割合労務費的にも本人の手取りは下がら ずに、企業の負担がミニマイズというか、そういうところも利用し、雇用拡大を図ってきたの は、非常に大きな要素であり、実態面としてはあろうかと思っています。  年金も後ろに下がって、高年齢雇用継続給付も暫定的というか、平成24年で終わるとなっ てきますと、景気がいいときだったら足りるのですが、今後のことを考えていきますと、高年 齢者の雇用の拡大を図りながら、どのように移行していくかは、年金面も含めた検討が非常に 大きなポイントとしてあろうかと思いますので、その辺りの資料も含めて、今後の検討材料を 提供していただければと思っています。 ○清家部会長 それはまた次回以降、その辺りの資料を少し整理していただくことにいたしま す。ほかに何かございますか。いままで委員から出た意見で、事務局からお答えいただいたほ うがいいものがありましたらお願いします。 ○坂口雇用保険課長 今日は先ほど部会長が言われたとおり、今後の課題のご議論に向けて、 各委員からいろいろなご意見をいただき、また検討の課題を精査させていただきたいと思って おりますので、事務局から特段コメントすることはございませんが、先ほども長谷川委員から、 適用あるいは給付、財政、いろいろセーフティネットの在り方について、広範なご指摘をいた だいております。  例えば、適用範囲についても法律事項とすべきということについても、たしか前々回の省令 のご議論のときにもいただいていたかと思います。今日の主な課題としては、キック・オフと いうこともありましたので大括りの形で書いておりますが、先ほどの長谷川委員の課題等、こ れからも頂戴する意見も含めて、課題を整理したいと思います。 ○清家部会長 ほかに何かございますか。 ○長谷川委員 先ほど日額の7,730円というのは、雇用保険の日額の上限が7,730円で、雇調 金もそうなってしまうのですね。雇調金はいまいろいろな所から2つ言われていて、7,730円 をもっと上げろという話と、いまは300日だが、もっと長くできないかという話もあります。  結局7,730円というのは、雇用保険の上限が7,730円で、雇調金の7,730円もそこで引っ張 られてきているわけです。だから、雇用保険の上限7,730円というのは、ただ生活するだけで はなく、失業しているときに、失業手当給付を受けながら、ある意味では能力開発をしたり、 再就職先を探すとか、いろいろな活動があるわけで、そのように総合的に見たときに、7,730 円というのが本当に妥当なのかどうかというところは、もう少し考えなければいけないのでは ないかと思っていますし、それと連動する雇調金も7,730円というのはどうなのか。少し検討 することが必要なのではないかと思っています。 ○坂口雇用保険課長 いまの長谷川委員の雇用保険そのものの最高限度額の問題、あるいは最 低保障額の問題は、当部会でもまたご議論いただければと思っております。雇調金との関係も 最終的には雇用保険二事業の在り方という意味では、当部会として、いろいろご検討いただく こともあろうかと思います。  現在置かれている状況から申しますと、雇用調整助成金というのは、失業の予防という性格 での本体事業に付帯する事業として行っているものであり、全体として、先ほどの説明の中等々、 あるいはご指摘の中でもありましたように、雇用保険二事業全体の財政の中で、いかに企業の 中で失業を予防するかという行動をとっていただくかを仕組むためのものということで、基本 手当、本体給付の最高限度を超えるのは、なかなか難しいのではないかということで、いま雇 調金の設計としてはやっています。これまでもいろいろご要望等、私どもの局にも頂戴してい るのは事実ですが、現状ではそういう状況です。 ○西馬委員 2つありまして、1つは今回の主な検討課題に挙がっていないので、あえて質問 をしたいと思います。育児休業給付は、前のこの部会でも、本当にベースのところで育児休業 給付を雇用保険の中での対象とすべきなのか、それとも子育て支援とか、そういった中で、も っと大括りにして別の財源でとらまえるべきではないかという議論があったのですが、それは ここではやらないという理解でしょうか。  もう1つは全然別の観点ですが、先ほどのご説明で、二事業のほうは財源の残りが3,000億 円ということになってきて、今回のこういう雇用対策のかなりの大きな目玉商品としている事 業を国としてもやってこられたというところがあろうかと思います。  一方、私の言い方に問題があるかもしれませんが、我々の企業サイドからすると、国庫負担 は全然入っていないわけで、保険としてずっと積んできたものを苦しいときに使って、雇用を 維持するという純粋な構造でやっているのですが、我々企業の実務サイドからいきますと、雇 用保険で、例えば教育訓練や休業をしたときに雇用保険を使うということは、何となく国家の 助成を受けているというか、そんな雰囲気もあります。もちろん運用費を払っているのもわか るのですが、プレスで発表されるのも、国の施策としてドンと国から金を注ぎ込む。これを使 って雇用を維持するということになるのですが、雇用保険の意義そのものも、もう少し明快に 理解した上でやるべきだし、国の施策でやるのであれば、この二事業にも国庫負担があって然 るべきだし、二事業もそれでやるのだったら、要らない事業を切ってというガラガラポンがあ ってもいいのではないかと思っています。ちょっと言いすぎるところがあるかもしれませんが、 今日はフランクにということですので、お話をさせていただきました。 ○坂口雇用保険課長 ご質問の点もありましたのでお答えさせていただきます。資料No.5の1 の(2)に、育児休業給付は入っていないのですが、明示的に書いてないということですので、い ま言われたような観点で検討すべしということであれば、いろいろご議論もいただくこともあ ろうかと思います。  先ほど説明しましたように、いまの育児休業給付の制度がどうなのだろうという点について は、先般、当部会でいろいろご議論いただいた上で、雇用保険法の改正をした形の給付が、来 年4月以降、施行されるので、その状況を見たほうがよろしいのではないでしょうかという趣 旨でした。  西馬委員が言われた育児休業給付をそもそも雇用保険として見るべきかどうかは、昨年の当 部会の中でも、育児休業給付の見直しの中でのご議論があったところです。その点については、 当部会としてはいろいろ歴史のあることで、きっちり資料になっていないのですが、平成19 年部会報告の20頁を見ますと、第3の「今後の課題」の平成19年の部会報告の上の段の[6]に 「育児休業給付については、雇用保険部会審議経緯に留意すること」と書いてあります。実は ここのところで当部会としては、省令改正をしたときに、当部会で議論された経緯について、 安定分科会に報告された資料ですが、ここで育児休業給付のような育児休業中の所得保障の有 り様については、別途関係ある所でしっかり議論すべきではないかということで、当部会とし てはある程度コンセンサスを持ってまとめられているという経過もあります。  全体として今回、昨年まとめていただくに当たっての育児休業給付の議論についても、全体 の制度については、そういった場でやられるべきでしょうが、いまの法定育児休業の給付の有 り様の中で、当部会としてどうかということでご議論いただいたかと記憶しております。  実は現実には当省の審議会で、労働政策審議会とは別に、社会保障審議会の少子化対策特別 部会があって、そちらで育児休業なり子育て中の支援の有り様を、ハード面で金銭的な給付も 含めて、トータルに議論すべきではないかということで、ご議論をされ始めていますので、そ ういった所でのご議論も踏まえて、皆様方のほうにもご報告させていただきたいと思います。  二事業については、いろいろな角度からご意見もありました。また二事業の安定的な財政運 営の有り様でも、いまいただいたご意見も含めて、ご議論いただければと思います。私どもの 立場から言わせていただきますと、今回も緊急的な雇用対策ということで、雇用調整助成金を はじめとして、いままで事業主の方々に保険料を積み立てていただいたものを、効果的に活用 することで、事業を打っています。  ただ、それ以外にも先ほどご紹介した訓練期間中の生活保障等も、あれも7,000億円ぐらい の基金を積んでいますが、ああいったものについては、いわゆる二事業とは別の一般財源の経 費からということで、いろいろな施策の内容、あるいはその時々の緊急性等に応じて、その財 源を組み合わせて、いろいろ効果的な対応を打っていこうということでやっております。  二事業そのものについては、先ほど労側の長谷川委員からもご指摘がありましたが、どうう まく効率的に積み立てて、どう必要な事業をやり、西馬委員からもお話のあった不必要な事業 は見直しをすることで、しっかりやっていくことが必要だと我々も感じておりますので、二事 業の在り方の問題については、当部会あるいは事業の在り方についても、いろいろ皆様方のご 意見も伺いながら対策を進めたいと思います。 ○清家部会長 西馬委員、よろしいですか。ほかに何かありますか。 ○栗田委員 今回の改正は非常事態と言いますか、緊急的な改正が行われたのですが、そのあ とすぐ、こうやって今後の課題について、ここの部会で議論することはすごくいいことです。 過去、改正のあと、すぐにこういった議論をする場がなかったのではないかと思います。そう いう意味では、この検討のイメージというか、検討したあと、法案化につなげるような議論を 提示するのか、どんなスケジュール化をして、どんなことで進めていくのかが少し分からない 部分があります。  ここの課題である非正規の部分の適用の範囲、失業給付などの内容について、全国一律的な 雇用保険制度をしているわけですが、地域によって非常に差があります。地域性の差に応じた 適用といったことを、地域の特性に合わせて議論をしていいただければありがたいと思います。 ○清家部会長 折角、労使の方に集まっていただいて議論するわけですから、単に議論のため だけの議論ということはないと考えています。それが法改正という形になるかどうかは別とし て、必要なことについて検討した結果、何らかの実効性のある施策にできるだけ結び付ける形 で議論していきたいということは、一般論として言えるかと思います。事務局から何かありま すか。 ○坂口雇用保険課長 その点は、いま部会長が言われたとおりかと事務局としても考えており ます。先ほどご紹介した資料No.5を見てもわかるように、正直言って、平成19年改正のときの 課題からということで適用、給付、財政、いまの高齢者の問題あるいは非正規の問題も含めて、 非常に広範な課題を提示しておりますので、一つひとつのテーマ、あるいは全体として、いつ いつまでにということを、いま我々としても申し上げるような形では持ち合わせておりません。 当部会としてのご議論をしていただく過程で、先ほど言われた部会長のような観点の中で、ど ういう形でまとめていただくかということも、部会長はじめ、皆様方にご議論を深めていただ く中でご相談いただき、我々としてもお願いしたいと思っています。 ○清家部会長 栗田委員、よろしいですか。ほかに何かございますか。 ○野川委員 私は今回初めて参加させていただきましたので、まだ不明な点があって、適切な 発言なのかどうかわかりません。先ほど長谷川委員から、若干指摘がありましたが、いま雇用 保険の対象にならないような、特に若者を中心に、どのように労働市場に効率的に組み込んで いくかという政策がいろいろ検討されています。諸外国ではいままで公的扶助の面で対応して きたさまざまな領域と、労働市場政策として考えられてきたものをリンクさせて再構成してい く試みが盛んに行われています。  私が多少なりとも関与しているドイツなどでは、社会保険としてではなく、国庫の中から、 税金の中から、一定額を仕事のない若者に、ただで給付して、労働市場に参入していくことを 促し、それが失敗した場合にはどんどん額を切り下げていくという形で対応しておりますが、 ああいった労働市場政策について、雇用保険部会で、どの程度議論することができるのかとい うのが私の質問です。  つまり、日本では雇用保険は社会保険の一環として、それなりに自己完結しておりますので、 雇用保険が対応できるものと、対応できないものというのは制度の上でも理念の上でも、ある 程度はっきりしていると思います。そこからはみ出すけれども、密接に関連する労働市場政策 という観点からすれば、非常に重要だという問題を、どこまでここで議論できるのかです。  これが例えばドイツですと、日本でいう生活保護、公的扶助も失業保険のような問題も年金 のような問題も、社会法典という1つの大きな統一的な法典の中にセットされていますので、 制度的にも日本よりは議論がかなりしやすい。しかし、日本は公的扶助に係る部分と、社会保 険の一環である雇用保険とを一緒にして議論するのは、そのための特別な何らかの検討機関を 設けなければできないのか。あるいはこうした恒常的な審議会の1つの部会で、それをある程 度できるのか。この部会の機能というか、役割範囲の問題にもなるのですが、その辺はどのよ うに考えたらよろしいのでしょうか。ちょっと抽象的になりますが、教えていただければと思 います。 ○坂口雇用保険課長 私もなかなか完全なお答えができない難しいご質問です。いま言われた 例えば、労働市場政策に絡むような公的な扶助も含めたような在り方ということになると、生 活保護とか、我々として実施しだすような近々での訓練期間中の生活補助が絡んできます。先 ほど西馬委員が言われたような高齢者の問題ということになったら、年金の問題で、在職老齢 年金の在り方みたいなところにも絡んでくることが出てくるわけです。  ただ、当初の段階からすべての所を寄っていただいてということになると、なかなか議論も 進みにくいということもあろうかと思います。当部会においては、例えば先ほどの高齢者の辺 りの雇用保険としての有り様の問題については、年金との併給調整などの問題を念頭に置いて、 雇用保険のサイドから見た議論をしていただく、あるいは公的な扶助みたいな関連でいくと、 今回やりだした基金事業の状況についても情報提供をする中で、例えば雇用保険のカバーする 被保険者の範囲であったり、給付日数の問題などを雇用保険ではどうしましょうと。では、そ のあと流れの中では、そこから漏れてきた部分をそのまま放置しておくのか、どうするのかと いう流れで議論していただくことは、当部会としても十分ご議論していただける部分があるの かと思いますし、いろいろな形で皆様方の提言が頂戴できるのではないかということも、事務 局としては考えています。 ○清家部会長 いろいろな議論を幅広く皆さんでしていただくことはよろしいかと思います。 また例えば、労働政策あるいは雇用政策全般については、場合によってはむしろ各部会の議論 を踏まえて、労働政策審議会本体の議論をそういう所で活性化していくこともあるかと思いま す。  この部会も含めて、こういう形で我々公益委員と労使の三者構成の審議会になっていますの で、より具体的にはこういった、特に労働政策審議会の重要な機能は、そういう枠組みの中で、 例えば雇用保険制度なり、あるいは雇用保険制度にかかわる政策について、労使でしっかり議 論をしていただいて、実効性のある政策なり、制度改革を行っていくところが、非常に大きな 役割かと思っております。その役割を果たす上で、幅の広い議論をする必要がある場合にはし ていくということが重要と思います。ほかに何かありますか。 ○長谷川委員 野川委員の意見はとても重要で、去年の秋から今日起きていることは、雇用保 険というか、雇用政策だけではなかなか解決できない課題が突き付けられたと思います。今回 の雇用保険の1年の雇用見込みを6か月の雇用見込みにするとか、6か月の雇用期間だったこ とで給付するというので、雇用保険のできる範囲では、今回は精一杯いろいろな施策を行った と思います。  しかし、それでも足りないのは何かというと、結局雇用保険が適用にならなかった非正規の 労働者、これから労働者として働こうとする人たちの問題をどうするかといったときに、今回 の緊急人材育成・就職支援基金7,000億円は分解すれば、一般財源と能力開発費です。能力開 発はどこの金を使ったかといったら、雇用保険を使っているわけです。ある意味では厚労省の 中で能開局と安定局との話と一般財源との話。  もう1つ言うと、では、10万プラス5万円で足りるかというと、それは不足しています。で は、10万プラス5万円足りない分は、どこが補強しなければいけないかというと、本当は生活 保護がトータルでやっている医療扶助とか、住宅扶助などについても、今回は少しずつばらそ うという話があるわけですが、パッケージではなく、例えば住宅の困窮者に対しては住宅扶助 を使うとか、そういう施策が必要です。ある意味では厚生労働省、旧厚生省と旧労働省が、そ ういうものをどういう施策パッケージをしたらいいのかという、大きな議論は必要ではないか。 だから、ここでそういう議論をしながら、では、雇用保険のところでは、どこまでカバーする のかとか、生活保護のところではどういうカバーをするのかという議論をしながら、次の方向 性を見出していけばいいのかなと。  本当はこういう議論のときに、生活保護を扱っている部局なども来て、一緒に議論してもら えるといいのかと思います。それは労働政策審議会でもいいのですが、労働政策審議会でやっ たとしても、生活保護の話は他の局のものなので、1回そういう議論は必要ではないかと思い ます。 ○清家部会長 それはまたいろいろ工夫をしていただきます。ほかに何かありますか。それで は、今日は第1回目ということで、多くの忌憚のないご意見をいただくことができまして、大 変よかったと思っております。本日の議論は以上で終了させていただきます。  次回以降においては、本日いただきましたご議論も踏まえつつ、まず私と事務局とで相談を して、本日新たにご注文があったところもありますので、検討に必要な資料を用意した上で、 具体的な議論を進めるようにしていきたいと思っております。次回の日程については、事務局 において改めて委員の皆様にご連絡をお願いして日程の調整をしていただくことにいたします。  本日の署名委員は、使用者代表は遠藤委員、労働者代表は栗田委員にお願いします。  それでは、委員の皆様、お暑いところをどうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)