09/07/29 第3回ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第3回 厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直し に関する専門委員会議事録  ○日 時 平成21年7月29日(水)17:00〜  ○場 所 KKRホテル東京共済会館(11階)白鳥  ○出席者  【委 員】永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、佐藤委員、鹿野委員 中内委員、中畑委員、西川委員、本田委員、町野委員、水澤委員 武藤委員、山口委員 【参考人】岩田順一参考人、末盛博文参考人、早川堯夫参考人 【事務局】阿曽沼医政局長、千村研究開発振興課長、井本課長補佐、梅垣専門官 田邊専門官  ○議 事 1)ヒト幹細胞を用いる臨床研究の現状等について      2)「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」について      3)「ヒト幹指針におけるGMP,GTPの考え方」について      4)その他   ○事務局 第3回ヒト幹細胞臨床研究指針の見直しに関する専門委員会を始めます。委員の 先生方におかれましては、ご多忙のところご出席いただき、誠にありがとうございます。  本日は澤委員、武藤委員から欠席の連絡をいただいていますが、全委員15名のうち13 名の委員にご出席をいただく予定です。過半数を超えておりますので、本会議が成立してい ることを申し上げます。  省内で人事異動があり、阿曽沼が医政局長に着任しました。医政局長よりご挨拶をさせて いただきます。 ○阿曽沼医政局長 厚生労働省医政局長の阿曽沼です。7月24日付で医政局長を拝命しま した。一言ご挨拶を申し上げます。  日ごろ医政行政にご理解、ご協力をいただきまして、大変感謝をいたしたいと思います。 また、大変お暑い中、今日もお越しいただきまして、こういう貴重なご議論をいただくこと に対して、大変心から敬意を申し上げたいと思います。  厚生科学審議会の科学技術部会で、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに 関する専門委員会といった、大変長い名前でございますけれども、今年の5月に第1回を開 催されて、今回が3回目の開催だというふうに伺っております。  ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針ですけれども、平成18年7月に策定されたわ けでございますけれども、それ以降かなりこの臨床研究を取り巻く環境は変化を遂げており まして、その技術の進歩、普及とともに、特に最近では京都大学の山中教授の研究されてい るようなiPS細胞という形で、我が国初の新しい幹細胞の技術も登場する、あるいは各国で も大変厳しい競争が行われているという現実があります。アメリカにおいてもES細胞につ いての臨床研究の解禁というのもございますし、これから世界全体を睨んで、どういうふう に対応していくかというのは、我が国としても大変重要な問題と認識しているところでござ います。  こうした背景がございますので、一方ではヒト幹細胞の臨床研究を推進しなければならな いということがございますが、一方、この研究自体における患者さんの倫理面の確保、人権 面の確保という意味がございます。そういう面のバランスに十分配慮しながら、技術の進歩 と倫理性の確保と言いますか、その2つの両面を十分に意識して、十分にご議論をしていた だければ幸いでございます。  なかなか大変難しいテーマでございますけれども、どうか議論を尽くしていただきまして、 よりよい指針が策定されることを心から念願いたします。冒頭に当たりましてのご挨拶とし ます。 ○事務局 配付資料のご説明をします。議事次第にあるように、議事次第、座席表、委員名 簿、資料1-(1)、資料1-(2)、資料1-(3)は、前回の議事の内容になっています。資料2、資 料3、資料4、資料5は今回の課題です。そのほかに資料6があります。机上には、ドッチ ファイルにまとめている、参考資料1から参考資料8があります。以後の議事進行は永井委 員長にお願いします。 ○永井委員長 議事に入ります。前回第2回委員会では、ヒト幹細胞を用いる臨床研究の現 状について、梅澤委員、西川委員からご説明をいただき、意見交換を行いました。関連の深 い臨床研究に関する倫理指針の概要についても、佐藤委員からご説明をいただき、ヒト幹細 胞臨床研究における外部倫理審査委員会のあり方について、若干のご議論をいただきました。  今日の議論の進め方について、まず事務局からご説明をお願いします。 ○事務局 前回の委員会では、現状の確認をしながら意見交換を行いました。主な意見は資 料1-(1)にまとめています。「対象疾患について重篤な疾患などを対象とすることが指針に定 められているため、研究が制限されている」というご意見がありました。また、対象疾患そ れぞれに応じた戦略が提唱されています。細胞調製施設の基準の設定については、学会と共 同で作成していく方向で調整中ですが、「同時に細胞の安全性などについては、評価基準作 りが困難であろう」という意見がありましたが、「それでも必要であろう」という意見もあ りました。  審査体制については、現在の二重審査体制は継続しつつ、倫理審査委員会の教育や審査ガ イドラインの作成、また研究者への臨床研究に関する教育体制を整備することが指摘されて います。「臨床研究の倫理指針に整合するように、被験者に対する補償の措置は当然必須で あろう。さらに、そのインフォームド・コンセントを徹底することが必要である」という意 見がありました。そのほか、「国際協力や国内での国民に向けての情報公開の体制が求めら れている」とありました。  資料1-(2)は、前回の論点となった「自己由来幹細胞と同種由来幹細胞の違いを踏まえた 取扱い」についてまとめています。1枚目です。研究の体制として、自己由来細胞の場合は、 こういった比較的シンプルな形態に対して、同種由来の細胞はさまざまな施設が絡み、研究 者も複数要りまして、さらにバンクが追加になる可能性があることが指摘され、自己由来、 同種由来と分けることで、さまざまな論点について区別をする必要があるかないかといった 問題点が挙げられています。  資料1-(3)は、佐藤委員の倫理審査の外部委託についての資料と、委員会でのご意見をま とめています。本専門委員会では、引き続き次の資料2に示すような検討項目について、議 論を進めさせていただきます。  本日は、その検討項目の3の「ヒトES細胞の取扱い」に注目し、京都大学医科学研究所 附属幹細胞医学研究センターの末盛博文先生から、臨床研究で用いられる幹細胞、特にES 細胞について解説をいただきます。また、文部科学省研究振興局・ライフサイエンス課生命 倫理・安全対策室の岩田順一室長補佐から、「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針」 についての解説をお願いしています。それぞれ10分程度でのご発表をお願いし、その後意 見交換をいただければと思います。  その次に議題3「幹細胞臨床研究におけるGTP(治験薬)GMPの考え方」では、早川堯 夫先生から、幹細胞臨床研究におけるGTP、PMPの考え方について解説をいただき、それ を基にご議論をいただければと存じます。 ○永井委員長 まず資料1をご覧ください。前回第2回の専門委員会の意見についてです。 いま事務局よりご説明がありましたが、委員の方から追加のご意見等がありましたら、ご発 言をお願いします。 ○梅澤委員 資料1-(2)のPPTの打出しファイルのほうで一言付け加えます。こちらに「主 な意見」としてまとめています。先ほど専門官からご説明いただいたように、研究体制につ いて、自己と同種に分けられます。自己由来の細胞に関しては、研究機関並びに調製機関と して分かれるということです。  また、同種については、調製機関、また再調製機関、そして被験者に対して投与する機関 があります。またさらに細胞のバンク化が、樹立・分配機関として可能性としてあります。 そういった状況を鑑みて、3点ほど繰り返させていただきます。  次の頁です、幹細胞の種類に関しては、感染の伝播に関する自己由来の細胞、同種由来の 細胞では異なります。そして、ドナー情報の扱いにしても、同様に自己と同種で、現在異な った形になっています。  その一方、列の4番目ですが、関連する研究機関、特にいちばん右で、品質施設基準規制、 これはGMP等を含めたものと記載しましたが、GMPの基準に関しても、自己と同種で、 そのレベルを変えられると考えています。  2番目として、対象疾患として、現状は区別がないものがありますが、これについても、 自己と同種で異なる枠組みが存在してもいいと考えています。  3番目です。少し細かいことにはなりますが、試料・記録の保存といったところで、血清 等の試料に関して、自己由来の場合は自分から自分に投与することになりますので、血清等 の試料に関して、10年間も保管することは不必要かなと考えています。 ○永井委員長 追加のご発言、ご質問はございますか。 ○位田委員 あとで文部科学省から、ES細胞指針の改正についてご説明のあるときに出て くると思うのですが、いま梅澤委員がご説明になった表のところです。赤で付け加えられて いるiPS細胞、ES細胞で、例えばクローン胚由来のES細胞の場合には自己由来の中に入 るのではないかと思いますし、細胞の提供者という場合でも、同種由来に余剰胚が赤で入っ ていますが、クローン胚由来であれば、当然未受精卵を提供してもらわないといけないので、 それが付け加わるのではないかと思います。これだけを見ると、受精卵からのES細胞だけ が問題になっていると思うのです。私は前回休んでいたので、クローン胚由来を当面外すの であればわかりますが、そうでなければ修正する必要があります。今度のES指針では、第 一種ES細胞、第二種ES細胞という形で、二種類両方ともES細胞という振分けになって いるので、その辺の区別はこの表で付けておく必要があるのではないかと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○西川委員 原則としては位田委員のおっしゃるとおりです。すべてを網羅して、きちんと 書くという意味では、いま位田委員がおっしゃったようにやればいいと思います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。いまご発言のあったご意見については、事務局で取り まとめて、次回またご議論いただくということにします。  資料1-(3)の倫理審査の外部委託の件ですが、佐藤委員からこれに関してご意見はござい ますか。 ○佐藤委員 第1点は、臨床研究の倫理指針で外部委託を広く認めたのはこの4月からです ので、まだ受け皿となる外部の審査委員会が多くないことをどう考えるかです。  もう1点は、このヒト幹細胞の臨床研究指針でどう考えるかというときに、これを他の臨 床研究と同じように考えていいのか、あるいはこちらには独自性があるので、機関での審査 を必要とすると考えるべきなのか。  3点目は、もし外部委託をも認めるとすると、それはどのように考えていけばいいか。こ れは議論の整理にもならない整理なのですが、短期的には何を審査するのか、あるいは何を 守るために審査するのかというところから出発して、機関内でやるほうがうまくいくのか、 あるいはほかに任せたほうがうまくいくのかということで、短期的には考えるべきだろうと。 しかし、長期的なことも併せて考えると、いろいろな幹細胞の臨床研究のうちには、おそら くやがては普通の臨床研究になっていくものもあると思うので、そうすると外部委託をする ことによって情報が集まるというメリットと、もう1つは全部外部委託するのではなくて、 各機関で持っていたい、そのほうが機動性があるというメリットを考えると、短期的なデメ リットを少し甘受しつつも、長期的なメリットを活かすために、各機関の倫理審査委員会の レベルアップを図るべきだという結論が出るだろうというのが3点目です。  4点目です。もし外部委託が広く行われていく、それが現在の厚生労働大臣の確認と同程 度のことができるようになってくるとすると、現行の二重審査という体制そのものの見直し が必要になってくると思います。そのときに、アメリカのINDの申請のように、一応FDA に上げるけれども、一定期間FDAから文句が出なければやっていいというシステムも、1 つ考えられるのではないか。  5点目です。どのような制度を組むにしても、各機関に倫理審査のポイントとか、必要な こととか、これは研究者向けも同じなのかもしれませんが、それをわかりやすく伝えて、審 査の結果が標準化されることが必要だと感じました。 ○永井委員長 前回の議論でも、倫理審査委員会の議論はもう少し成熟を要するのかなとい うところで、いずれそのように簡略化されることはあると思うのですが、最初だから二重審 査は当面必要かなといった議論だったと思います。何かございますか。 ○位田委員 この種の幹細胞研究は特殊性があるので、外部委託もあり得るということで、 佐藤委員のまとめられたものは、それぞれそのとおりだと思います。  問題は、外部委託をするとしたら、外部委託された倫理委員会がどの程度の権限を持つか ということは、実際に倫理審査を行うときには考えておかなければいけません。  つまり、内部の審査委員会であれば、その研究機関もしくは医療機関が、どういった施設、 設備、研究者の能力を持っているかは、ある程度事前にわかっているわけですが、外部の委 員会の場合は必ずしもそうではないので、場合によっては現地調査などの権限を与えなけれ ば、現実には紙の上だけの審査になってしまいます。そうだとあまり意味がないかもしれま せん。その辺はこれから議論されるのでしょうけれども、念頭に置いておくべきだと思いま す。 ○中畑委員 幹細胞を用いた実際の医療もいろいろなレベルがあると思うので、各施設の倫 理委員会をクリアすることを原則にしていくべきだと思います。ただ、かなり一般的に近い ようなレベル、例えば造血幹細胞について、幹細胞の委員会に上がってきます。ああいった ほかでもやられているような疾患については、ある程度はこの外部委託も可能になるのでは ないかと思います。  ただ、これから問題になるような、ES細胞やiPS細胞を用いた新しい医療。そのような 新しい医療をできる施設というのは、その施設の中にしっかりと倫理委員会を持っているよ うな施設で始めるべきであると考えるので、そういうところまで外部委託でやることは非常 にリスキーな話です。日本はどこでもそういった新しい医療をやってもいいという形できて いますので、幹細胞を用いた医療、特に新しい部分は施設を限定して、倫理委員会がきっち りと備わっている施設で行うような、ある程度の原則は決めておいたほうがいいと思います。 ○永井委員長 研究者に対する教育、研修と同時に、先ほど位田委員からご意見があったよ うに、委託された以上はどのくらいまで権限を持つかということが非常に重要になってきま すし、ケースによっても随分違うということです。かなり普及して一般化してきたら、外部 委託も可能と思います。教育、研修、権限、普及度など、いろいろな条件を見ながら、外部 委託もいずれできるようになる。そのような方向性だというまとめでしょうか。 ○位田委員 おそらく難しいのは科学的側面です。倫理委員会でも、科学的合理性と倫理的 妥当性を審査します。科学的な合理性の部分が、幹細胞の特殊性という印象があります。  そうすると、科学的なところは外部委託をしても、狭い意味での倫理的な妥当性は機関内 の倫理委員会でやる手もあり得るかと思います。現実に各機関の倫理委員会でも、親委員会 は主に倫理的なところを見て、科学的な部分は小委員会が事前にチェックするというやり方 もあるので、その辺の使い分けをする可能性もあると思います。 ○中内委員 いろいろな状況があり得ると思います。例えば大きな病院の傘下のいくつかの 小さなクリニックが研究に参加する場合に、すべてのクリニックにも同レベルの倫理委員会 をつくるというのは大変だと思います。そのときには親病院のきちんとした倫理審査委員会 でまとめてできるというような状況もあり得るのではないかと思いますが、どうでしょうか。 ○中畑委員 先進的な新しい医療というのは、親病院に付属する小さなクリニックでやるこ とは、開発の段階では避けるべきではないかと思います。保険適用になる前の段階は、きっ ちりとした施設で先進的な再生医療をやって、そこである程度確かめられたら、小さな病院 でもやるという形にしたほうがいいと思います。例えば造血幹細胞移植でも、日本にある移 植の施設の数が、ヨーロッパ中にある移植の施設の数と同じだということも批難もされたり、 問題にされているわけですので、ある程度施設を絞って、新しい医療を開発していく体制を 作り上げていく必要はあると思います。  委員が言われるように、いろいろなレベルがあると思うので、かなり一般的に近いところ は、いま委員のおっしゃったような形でもいいと思います。 ○永井委員長 普及度あるいは確立度にもよるだろうと。少し緩和の方向ではあるけれども、 しっかり見守っていかなければならないということだと思います。 ○町野委員 倫理委員会は、基本的にはそれぞれの研究機関に作るものだということからす ると、この表にあるように、採取機関、調製機関、投与機関、これから新たに樹立・分配機 関、それらについて倫理委員会が必要だということになると思いますが、それぞれについて、 外部委託が妥当か、どの点を審査すべきかは違ってくると思います。だから、研究機関の大 小の問題だけではなく、どのような研究をするか、どのようなものを倫理審査するかで違う と同時に、1つのプロジェクトが出来上がったときにいくつか連携するわけですが、そのと きには別々でなければいけないのかという話など、いろいろあると思います。そこの辺りを もう少し詰めた上での議論が必要ではないかと思います。 ○永井委員長 各委員が考えているイメージは似ているように思います。細かい状況は実際 にプロジェクトが上がってこないと、イメージがしにくいのではないかと思いますが、ご指 摘のような点に気をつけながら、今後外部委託の道も開ける方向にしていくのが、適切では ないかと思います。ただ、初めのうちは、1例1例慎重に検討が必要だと思います。そのよ うな方向性でよろしいですか。 ○高坂委員 いままでの幹細胞指針でやっている研究というのは、主に自己由来の造血幹細 胞であるとか、そういったものを調整して、その方に戻していくということだったと思いま すがES細胞やiPS細胞を使って最も異なるのが、そういった幹細胞に分化させる技術だと 思います。それが各施設で、いまのところスタンダードなものが確立されていません。  そうなってくると、前回も議論がありましたが、安全性の問題に非常に深くかかわってき ます。場合によっては、特に調製機関で、一定の分化に達することができる画一的技術がで きるまでは、きちんとした外部機関の倫理審査委員会に検討してもらうことも必要かもしれ ません。  そうとは言え、全般的なお考えは永井委員長のおっしゃったところで結構だと思うのです が、調製機関に関しては、また別の観点から見ていく必要もあるかもしれないと考えていま す。 ○中内委員 先ほどの中畑委員のご意見はよくわかるのですが、一般的に治療をする段階に おいては、レベルの高い大きな病院でやったほうがいいと思いますが、ヒトES細胞を樹立 する場合には、材料を採るところ、つくるところ、使うところといろいろあるわけですが、 そういった場合は中心となる機関でちゃんとした倫理委員会を立ち上げておけばいいと思 います。材料を採るだけのところまで、独立した倫理審査委員会をやるのはどうかなと思い ます。町野委員のおっしゃるように、ケース・バイ・ケースで、「外部委託」というと全く 関係のないところに頼むような感じがしますが、そうではなくて、中心となる病院なり研究 機関で、しっかりとした倫理審査委員会を設けて、そこで傘下に入っている材料提供機関な どの審査をやるのも1つの方法かと思います。 ○永井委員長 当面の「外部」というのは、そういう意味だろうと思います。よろしいでし ょうか。また改めて議論もあるかもしれませんが、方向としては外部を排除するものではな いということですね。かなり慎重に、条件なり状況に応じた対応が求められると思いますが、 とりあえずの取りまとめとしては、少し前向きに、外部も可という方向で考えるということ だと思います。ケース・バイ・ケースで議論が必要であるという付帯条件は付けておきたい と思います。  先に進みます。本日の議論として、ES細胞臨床研究の現状について事務局からご説明い ただきましたが、末盛参考人から、「ES細胞の医療応用における問題点」ということでお 話をお伺いします。よろしくお願いします。 ○末盛参考人 京大再生研の末盛です。再生研は、日本で初めてヒトのES細胞をつくった 機関で、昔からヒトES細胞の樹立、その利用に係る研究をずっと進めています。そのよう な経験を踏まえて、実際に今後医療応用していく場合に、幹細胞を用いる臨床研究という枠 組みから見た場合に、どのようなことが問題になるかについて、簡単に考えるところをご説 明します。  資料3の1枚目に、主要な問題点を箇条書きにしています。まず胚提供の問題です。ES 細胞は受精卵から作るということで、現状は不妊治療のクリニックで、不妊治療のために作 られて、凍結保存されていたもので、もう治療には使わない段階のものについて提供いただ くということで、提供のプロセスが始まっています。  この点がほかの幹細胞採取のプロセスと少し違う点で、インフォームド・コンセントを含 めて、いろいろな手続が採取のあとにスタートします。通常は採取の前に行われているイン フォームド・コンセント等の手続が、受精卵の提供の場合は、採取後に行われているのが大 きな違いになります。  この違いがどのようなことに影響するかというと、例えばドナーセレクションの条件設定 が、提供の候補者が出た時点では追加的にやるのは非常に難しいということで、生殖補助医 療のプロセスで得られたウイルスの感染等の情報等は得られないわけではないのですが、追 加的に条件をクリアしているかの検査などは、事実上不可能になります。つまり、ドナーセ レクションについては、非常に制約が大きいことが1点です。  もう1点は、不妊治療ですから、未受精卵を採取して、体外受精等のプロセスを経て、培 養、凍結という操作が行われます。このプロセスに関しても、提供を受ける時点では、そこ はコントロールできないので、管理下には置けないことになります。したがって、このよう な部分に関してはGMP的な扱いができないことになります。  もう1つ胚提供に係る問題で言うと、匿名化の問題です。現状のヒトES指針については、 連結不可能匿名化を明示して求めているわけではないのですが、現実的にいろいろなことを 考えると、連結不可能化をした上で、ES細胞の樹立や使用研究に使いましょうという体制 になっているので、少なくとも現状のスタイルで進める限り、ES細胞の医療行為をすると きに、ドナーとの連結性は断たざるを得ないような状況になっています。胚提供に関する主 な問題は、このようなことが挙げられます。  別の問題としては、ES細胞の樹立培養に係る技術的な問題です。問題になるのは、大き く分けて2つあります。樹立培養あるいは提供を受けた受精胚も含めてそうですが、治療を したときに、何か問題になるような感染性因子が、樹立培養のプロセスを含めて、実際に医 療に使われる段階のES細胞にどのくらい含まれているのか。その危険性をどうやって排除 するのかという問題です。  もう1つは、ES細胞、iPS細胞は相当長期間in vitroで培養します。そして分化誘導を して、移植に使う細胞組織を取り出します。比較的複雑なプロセスを経た上で医療に利用す ることが想定されていますから、そのプロセスで細胞自身が何らかの変化をする、あるいは 元から持っているものかもしれませんが、特に言われるのは造腫瘍性、がんを造るのではな いかというリスクをどのようにコントロールするかです。この2つの問題が大きく挙げられ ます。  受精胚の提供の段階で、ウイルス等に感染しているかは、もちろん調べることは困難です が、受精卵そのものはウイルス感染等の観点から見れば、非常にクリーンなものなので、そ の危険性は非常に少ないと考えた場合、主な問題点は樹立培養のプロセスに係る、培養液、 細胞が接着して増える基質です。これは現在主に動物由来のタンパクであったり、マウスの 細胞を使ったフィーダーなどが使われていますが、こういったものに由来する感染性因子の 混入等が問題になります。  培養に関して、どのような資材が利用されているかについては、2枚目にリストアップし ているとおりです。ほとんどの培養液成分等に関しては、すでにいろいろな企業から、GMP 基準に適合した形での試薬提供が行われていますから、この点に関しては問題はなく、技術 的にはそれほど難しいことではないと考えています。  そのほかES細胞、iPS細胞の培養用の成分が明確になっていて、それぞれの成分はGMP に適合したような材料でつくられている、出来合いの培地も販売されているので、培養液等 に関しては、比較的コントロールはしやすいと考えています。  いま我々がいちばん問題にしているのは、細胞が培養皿に付いて増えていく、そこの足場 にする成分は何がいいか。GMPに適合した形でつくれるかどうかが1つ問題になっていま す。現状で使われているのは、マウス由来のマトリックスであったり、マウスの線維芽細胞 のフィーダーが使われている状況です。  ただ、こういったものも研究、開発は進められていて、例えばリコンビナントタンパクを 利用したり、ヒト由来のタンパクを利用する形で、動物由来成分を含まないようなものは開 発、利用が進んできています。  現状を言えば、すべての成分に関してGMPに適合したような培用材料を使って培養する こと自体は、可能になっています。ただし、これをやっている過程で、動物由来成分を含ん で、あとはマウスのフィーダーの上で培養する環境に比べると、どうしても成分のわかった、 あるいは品質管理の可能な培養環境で培養したときに、細胞の状態は、増殖が遅かったり、 よく細胞死が起こる等の問題があります。おそらく細胞にとってベストな状態ではないだろ う。つまり、培養環境をディファインすること自体が、細胞の質を落とす危険が持たれてい ます。つまり、細胞が増えにくい環境で培養し続けると、そのような環境に適合して、例え ばより増殖性が高い細胞がセレクトされてくる危険があると考えられますが、そういった細 胞については、もしかしたら造腫瘍性が高いのではないかというリスクも考えられます。こ の辺の細胞自体の安全性をどのように評価するかについての考え方は、明確にしていく必要 があると思っています。最終的には、実際に患者へ移植する細胞の段階で、そういった細胞 はどのような造腫瘍性その他のリスクを持っているか、アッセイする方法論であったり、考 え方がある程度提示されていることが望ましいと思います。  もう1つは、培養環境をディファインすることによって、どうしても受精卵からES細胞 を作るプロセスの効率が悪くなりますから、新たに細胞株を作るにしても、より多くの受精 卵が必要になることは予想されています。ということを考えると、すでに樹立されている細 胞株をどのように扱うか。つまり、GMP的に、記録が完全でないような履歴を持つ細胞株 をどう扱うかということについても、考える必要があると思います。  そのほかマイナーな問題としては、品質管理基準をどう考えるか。無菌試験のようなもの は比較的簡単ですし、ウイルスが混入しているかについても、細胞を調べればおおよそにつ いては、現状の細胞は解析が可能だと思います。  遺伝子構成、例えば染色体異常をどう考えるか、あってはならないと考えるのか、あるい はそのような異常自体についてのリスク評価を別途行うのか、それはどのような基準でやる のかについても、一定の考え方は提示されることは望ましいと思います。ES細胞、iPS細 胞のいずれもそうですが、複数の細胞株があるときに、医療応用するときに複数の細胞株を スクリーニングした上で用いるべきか、あるいはある細胞株について調べていって、基準を クリアすればいいと考えるのかが挙げられます。  3頁目に、ES細胞を作る立場から、実際にどのような流れで利用されているかを流れ図 にしています。上から、胚提供を受けて、ES細胞を樹立して、樹立機関は我々がマスター ストックのような形で作って、そこから分化誘導して、移植する組織を作るワーキングスト ックを作って、それを患者に移植する組織を作る研究機関等へ渡して、そこで分化誘導をし て、移植等を動物実験で行って、安全性や有効性等の評価を行った上で、実際の臨床応用へ いくという流れになります。このワーキングストックを樹立分配機関が作るのか、医療機関 が作るのかについてはあると思いますが、大体このような流れになります。いずれにしても、 分化誘導のプロセス、移植してからの安全性、有効性の評価方法等に関しては、前臨床研究 を開始する段階で、プロトコールが一定のアプルーブされた上で行うような体制を整えてい ないと、相当な長期間の時間と、人手、コストのかかる研究になりますから、最後までいっ てから評価するということでは、うまく回っていかないと考えています。以上です。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○中内委員 ES細胞を樹立する段階からGMPに準じた基準を作るのはいいのですが、例 えばジェロン社が使っているのはウィスコンシン大学がだいぶ以前に作ったものを使って、 それをきれいにして使っている可能性も残されているのですか。 ○末盛参考人 実態として、リスクがどのくらいあるかということの考え方次第という面は あります。ただし、例えばFBSを使っていますよ、あるいはマウスのフィーダーの上で培 養された履歴があるということが、非常に大きなリスクになると考えている人は、それほど 多くはないと思います。  ですから、そういったものを原材料に、よりクリーンアップされた環境、厳密にコントロ ールされた環境で培養した細胞について、このような無菌試験、あるいはウイルスの混入試 験をこのような方法でやりました。それなら最初の段階からコントロールしたものと同等の 安全性が確保されるでしょうとみなせれば、利用することに関しては現実的な問題は少ない と考えられています。アメリカのジェロン社はそのような方法で臨床応用に入っていってい るということです。 ○永井委員長 解離液というのは、細胞を分離するときの薬剤ということですか。 ○末盛参考人 そうですね。トリプシンとか、あのようなタイプのものです。 ○位田委員 ちょっと科学的に詳しい現場のことはわからないので教えていただきたいと 思います。1つは、最初の胚提供に係る問題のところで、「採取のあとにさまざまな手続が 始まる」という趣旨のことをおっしゃったと思うのですが、それはどのようなことを指して おっしゃっているのでしょうか。 ○末盛参考人 現状のES細胞の樹立のプロセスで言うと、提供医療機関で保存されている 凍結胚、もともとは最初の不妊治療がうまくいかなかったときに、凍結胚を解凍して、移植 してもう一度子どもを作るために利用すると。そのために保存されていたのだけれども、治 療がうまくいって、もうその凍結胚は使わないという段階で、初めてES細胞研究のために その胚の提供の説明のアプローチが始まるということになっています。  ES細胞の樹立の基本的な考え方としては、余剰胚、つまりヒトになる可能性のある胚を 使ってはいけないということがあって、廃棄される段階で、初めて提供者について説明が始 まるということなので、採取その他のプロセスが終わったあとに、ドナーの候補者が決まる という体制になっているので、どうしてもそのようなことになります。 ○位田委員 考え方の整理の違いだと思うのですが、余剰胚を提供する前に、インフォーム ド・コンセントは必要なわけですよね。 ○末盛参考人 もちろんです。 ○位田委員 胚そのものは生殖補助医療の中で採られているから、手続が後から始まるとい うことですね。 ○末盛参考人 通常はドナーから採取する前にインフォームド・コンセント等の手続は進め られていると思いますが、ES細胞の場合はその順序が逆になっているので、通常の幹細胞 の利用という枠組みでいろいろなことが決められていると、どうしても整合性が取れない部 分が出てくる恐れがあるということです。 ○位田委員 わかりました。  2つ目の質問は、おそらくそれにかかわると思うのですが、先ほどの資料1-(2)で、現状 のヒト幹細胞臨床研究指針は、採取機関、調製機関、投与機関となっているのですが、ES 細胞の場合には、ES細胞指針は樹立、分配、使用になっているので、採取、調製、投与と、 樹立、分配、使用、おそらく使用のあとに投与というのが出てくるのだろうと思うのですが、 いまのヒト幹細胞臨床研究指針とどうパラレルになるのかが、よくわからないのです。  というのは、先ほどのご説明でもそうですが、胚の提供をヒト幹細胞臨床研究指針の中に 入れて考えるのか、樹立してからあとのことを臨床研究指針の中に入れて考えるのか、それ によって少しずつ基準が違ってくるかなと思うのです。  ジェロン社のお話しもあったのですが、樹立したES細胞そのものに問題があるのは、実 は胚に遡って問題があるのだということになるとすると、胚をセレクションしなければいけ ないということになる、先ほどドナーセレクションの話もあったのですが、それをやり始め ると、受精卵を選んでいかないと仕方なくなるので、そうするとかなりたくさんの受精卵が 必要になるかもしれません。それをヒト幹細胞臨床研究指針の中に入れて考えるのか、それ とも出来上がったES細胞から先を考えればいいのか、その辺が私は科学的にはよくわから ない部分があるので、もしおわかりであればご説明いただければと思います。 ○末盛参考人 いわゆるGMPの考え方からすれば、採取の段階からすべてコントロールす るというのが、本道ではあるかと思います。ただ、被験者の安全を担保するための指針と考 えれば、すでにあるES細胞、iPS細胞それぞれについて、一定の安全性水準をクリアして いることについて、限定する必要はないと思いますが、何らかの方法で、一定のレベルの安 全性が担保されると考えられるのであれば、この指針としては、ES細胞、iPS細胞からス タートすることも十分可能ではないかと思います。  履歴を完全に文書化して、証明できるような状態にしていなければいけないかと言われる と、それをされると特にES細胞の場合は利用が難しいことが出てきます。安全性というこ とに関して言えば、細胞自身について調べれば、初期段階においては、十分な安全性が担保 されると考えています。 ○山口委員 なかなか履歴を追うのは難しいということですが、医療応用されたときに、ド ナーのさまざまな情報の中で、医療応用のときに有用な情報というのは、アクセス可能なの でしょうか。 ○末盛参考人 現状では連結不可能化されていますから、追跡はできません。ただ、やり方 によっては、何種類かのウイルスについては感染していない患者からだけ提供いただきまし たとか、そういうことでの粗いセレクションは掛けられるかもしれませんが、現状のシステ ムだと基本的に追跡可能性がないと扱わざるを得ないということです。 ○永井委員長 まだご議論はあると思いますが、このあと文科省ライフサイエンス課生命倫 理・安全対策室の岩田室長補佐にもお話を伺うことになっているので、ご報告をお聞きした あとで、さらにまとめてご議論したいと思います。 ○岩田室長補佐 資料4に基づいて、ES指針の改正についてご紹介します。前回のこの委 員会で、本指針の適用範囲についてご質問があったことを承っていまして、本日は資料とし て簡単なものを準備しています。  1頁です。これまでの経緯について簡単にご紹介します。本指針については、平成12年 3月の基本的考え方を受けて、平成13年9月に「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指 針」を告示したところです。  このときの指針のポイントは、基本的には余剰胚を滅失し、ヒトES細胞を樹立すること、 さらにそのES細胞を用いた研究を容認したということです。この樹立に当たっては、機関 内倫理審査委員会の審査に加え、大臣確認が必要だということで、いわゆる二重審査を行っ てきています。また、同様に使用に当たっても、樹立に準じ、二重審査を行っています。  また、平成19年5月には分配機関の設置ということで、樹立したES細胞を分配する機 関の要件を規定するということで、一部改正をしています。  2頁です。平成21年5月に、平成16年7月のCSTPのヒト胚の取扱いに関する基本的考 え方を受けて、人クローン胚の研究を容認するため、ヒトに関するクローン技術等の規制に 関する法律施行規則及び特定胚指針、これとともにES細胞指針を改正しました。これが現 行のES指針です。  この内容ですが、ES細胞樹立のためのヒト受精胚、いわゆる余剰胚に加えて人クローン 胚を用いることを容認したということで、一種樹立、二種樹立という2つの樹立のシステム があります。さらに、これに伴い人クローン胚の作成に用いられる未受精卵や体細胞等の入 手に関するインフォームド・コンセント等の手続といったものを規定したということです。  さらに、現在ES指針の手続等の緩和、これは特に使用に関するものですが、これに関す る改正ということで、実は先般7月24日にCSTPからは答申を受けており、今後、事務手 続、さらには今後の規制緩和に伴う手続の中身について検討し、近々に施行する予定です。  3頁です。この部分については前回、若干ご議論があったと聞いておりますが、現在の ES指針の適用範囲についてという部分です。現行の規定には、このようにヒトES細胞の 樹立・分配および使用(基礎的研究に限る)としておりますが、これはこの指針に定めると ころにより適切に実施されるものとすると規定しております。この部分は、今回のクローン 胚の改正の際に一部改正されており、もともと1項、2項ということで(基礎的研究に限る) という部分は2項に書いてあった部分なのですが、これに加えて文部科学省が所管する以外 の、例えば臨床研究についての文言が入っていたということもあって、この部分を削除して (基礎的研究に限る)を1項に規定するというように改正しております。したがって、改正 はしておりますが、(基礎的研究に限る)というその趣旨自体は変わっておりません。  5頁以降は、今後のES指針の手続の緩和、主に使用ですが、その改正案について簡単に 紹介しております。5頁は簡単な経緯なので省略して、主な中身としては6頁以降です。使 用については、1「ヒトES細胞の使用計画の二重審査について」ということで、使用につ いては二重審査を廃止します。したがって、使用については今後、倫理審査委員会の審査の みということで、国には届出をいただくということにしております。2「他の機関に設置さ れた倫理審査委員会における審査について」ということで、これまで機関内倫理審査委員会 で審査をすることが原則だったわけですが、使用については他の機関に設置された倫理審査 委員会における審査を認めたということです。ただし、ES指針に基づく使用計画を実施し ている機関の倫理審査委員会、つまり実績のある機関に限定するということ。加えて、倫理 審査委員会の要件としては同じことを求めていくということです。また、実際の審査に当た っては、審査の実効性の担保という観点から、例えば現地調査を行うことを求めていくこと を考えているところです。3「研究者の変更に関する手続」ですが、ここはちょっとわかり にくかったのですが、3つ目の○に使用分担者、研究者という2つの定義があったのですが、 これについては統一して、手続についても簡潔にしたという変更です。  8頁の4「加工ES細胞の分配について」ということで、加工ESについては、これまで 使用機関での分配については「再現性の確認」に限定して認めていたわけですが、これ以外 の目的でも可能にするという変更をしております。先ほどの適用範囲との関連もあります分 化細胞の取扱いに関する手続ということですが、これはいままで使用機関の長の了承と倫理 審査委員会プラス文部科学省への報告ということで、分化細胞の譲渡を認めていたわけです が、今後については特にそれらを不要とするということです。ただ、分化細胞の譲渡に当た っては、ヒトES細胞由来であることをきちんと譲渡先に伝達するということを、これまで は運用で求めていたのですが、指針上、明確に書いたということです。  3つ目の○で人クローン胚を用いて樹立された、いわゆる二種樹立の使用の手続と一種樹 立は、これは例えば輸出入では差があったものです。二種樹立のほうは輸出入禁止というこ とであったのですが、これは特段の差を設けないようなこととしております。分配機関に関 しては、手続上の書類を要らないということとしたこと。さらに、最後の頁の樹立関係です が、樹立に関しての手続は、いままで変更の手続はありませんでした。したがって、変更の 際もほぼ新規と同じような書類を出していただいたのですが、これは変更の手続を設けるこ とによってよりわかりやすくしたということをしております。  また、その他として、いままでヒトES細胞の樹立と使用に関する指針は1つだったので すが、どちらかというとユーザーが多い使用と樹立・分配を2つの指針に分けて制定したと いう改正をしております。簡単ですが、概要については以上です。 ○永井委員長 先ほどの末盛委員のお話も含めて、ご質問・ご意見をお伺いしたいと思いま す。 ○町野委員 要するにES細胞についての臨床をどうするかというのが基本で、どこまでそ の指針を作るかという話になるだろうと思いますが、いま文部科学省の作っておりますES 指針と別のものを作らなければいけないのか、樹立から最後の使用に至るまで、臨床用とし よう、そういう問題だろうと思うのです。その点をちょっとお伺いしたいのですが、今度2 つに分かれましたよね。そして、(基礎研究に限る)というのは、使用のほうには入ってお りますが、樹立のほうもそうでしょうか。 ○岩田室長補佐 基本的に樹立のほうも同じです。 ○町野委員 1つの可能性として、樹立についても、これを仮にもう1つ範囲を広げて、他 の指針において定める臨床研究について用いると。そのようなものを作って、あとの使用に 当たる部分をこちらの臨床研究のほうのES細胞のそれについて、やることが可能なのかと いうことが1つなのです。その点で、先ほどの末盛参考人のご意見などをちょっと伺います と、やはりそれは不可能なのでしょうか。最初から、つまり安全性を確認するために、やは り樹立のところから別の考慮が必要だということなのでしょうか。もしそうだとすると、ど のような点を特に考慮しなければいけないかという話を、すみませんがお教えいただきたい と思います。 ○末盛参考人 純粋に技術的には分けて考える必要は、おそらくないだろう。文科省指針に 関して言えば、安全性を担保するために、先ほど言いましたが、臨床指針のほうで別の要件 を要求するのでなければ、文科省指針で作られたもの、ES細胞を臨床応用するということ は、テクニカルには問題になる点はそれほどないだろうなと考えています。ですから、臨床 応用のための指針のために、細胞を提供できると文科省指針は考えていいのかどうなのかと か、そういうことはちょっとあると思うのですが、テクニカルには問題はないか、あるいは 非常に少ない。 ○町野委員 先ほど若干、問題にされましたように、連結不可の匿名化にされているわけで すね。それで、もし安全性の確認ということですと、トレーサビリティもなくなっていると いうことは、何か問題は起こらないのでしょうか。 ○末盛参考人 現実問題としては、ものすごく大きな問題が起こるとは考えにくい。トレー サビリティが確保されていたほうがベターであるということはもちろんですが、必要不可欠 な要件かと言われれば、おそらくそうではないだろうと考えてはいます。ただ、これは実際 に臨床研究を実施していく中で検証していく範疇の問題ではないかなとは思います。 ○町野委員 もう1つ、これは文部科学省の方にお尋ねしたいのですが、樹立のところでは インフォームド・コンセントの内容として、これは研究だけに使って、こういう研究に使い ますということしかインフォームド・コンセントの内容にないですよね。だから、いまのよ うなことで、それを臨床のほうに使いますということを言っていないときについては、これ を既存のものとしては転用することは難しい話になるかもしれないと。もう1つ、さらにこ れからやるときについても、このようなところまで広げていく必要がある。そうだとすると、 もしかすると文部科学省の指針で賄うとするならば、この前改正したばかりですが、そっち の改正がさらに必要になるし、あるいはもしかしたら臨床研究のためのESの樹立について の指針を作らなければいけないということになるかもしれないのですが、その辺は文部科学 省としてはどのようにお考えでしょうか。 ○岩田室長補佐 この問題は、たぶん文部科学省のいま作っている指針ということで、基礎 研究に限定されているということですので、この場で本来のあり方というか、どのようにや っていかなければいけないかというご議論を今後されるのだと思います。文部科学省として は必ずしも100%扉を閉じているわけではありませんので、これは例えばですが、共管にさ せていただくとか、そういったことも考えられないこともないということだと考えておりま す。 ○西川委員 いろいろなテクニカルな解決はあると思うのですが、可能ではないかと思いま す。高坂先生などと一緒に議論してきたところですが、臍帯血のように臨床応用が認められ ていて、それを基礎でも利用できるようにしたという逆のケースがあります。アディショナ ルなインフォームド・コンセントをとれば、臨床のものを基礎にも使っていいという形にな ります。文部科学省のいまの指針の上に、厚生労働省がアディショナルなものを要求される という形で、両方とも共通のものを持つということは可能ではないかと、私自身、個人的な 見解としてはあります。  それから、たぶんいちばん問題になるのは、これは岩田さんともこの前いろいろ議論した のですが、日本で現実にいま末盛先生たちの努力でどんどん新しいES細胞がGMPで作ら れ広がることよりは、外国でGMP基準のたくさんのES細胞が作られて、それが入ってく るというほうがかなり重要な問題。ES細胞に関しては、先にそういうことのほうがまず起 こってくるのではないかなと。そのように予測して、いろいろな議論をしたりしています。 もちろんどうするかというのは決めているわけではないです。 ○末盛参考人 インフォームドコンセントのお話が出たので、ちょっと補足しておきますと、 一応、提供者への説明の中では、あくまで可能性として、将来的に医療であったり、あるい は創薬等での利用も可能性はありますということで、そういう医療利用を排除するような説 明にはなっていないので、インフォームドコンセントとしては可能な説明はしているという ことです。 ○町野委員 おそらく実際にそのようでしょうけれども、少なくとも現在のES指針に則っ た格好で行われるものについては要件となっていないので、やはり変えなければいけないか という話だろうと思いますね。 ○永井委員長 どういう点が要件になっていないということですか。ちょっとご確認を。 ○町野委員 樹立をするときに、余剰胚の提供を受けるときに、これはどういうことに使え ますかということを説明しなければいけないのですが、その中では研究のために、ES細胞 を樹立するために使いますよということのインフォームド・コンセントはあるのです。そし て、そのES細胞は研究のために使いますという話なのですが、これがこれから投与だとか そういうことで、臨床のほうに使うことについては、そのことの説明までは要件になってい ないという話です。 ○末盛参考人 指針内で要件としては挙げられていませんが、現実に行っている説明として は、そういう内容を含むような文書を交付した上で同意は得ているので、必ずしも現状の文 科省指針で作られたES細胞を臨床利用できないという解釈は、あえてしなくてもいいので はないかなとは思うのですけれども。 ○西川委員 とはいえ、基本的にはガイドラインなどの迅速な書替えとか、議論はやるとい うことは大事で、それは逆に厚生労働省のほうもある一定の要求をされて、そこはコーディ ネーションして最も矛盾のないもの、しかもはっきりと文部科学省のほうでも、もちろん研 究だけでもいいし、明確に細胞治療に用いるということも書かれたガイドラインを、厚生労 働省のガイドラインを認められる形に書き替えるということは、絶対必要だと思います。 ○中内委員 先ほど末盛参考人がES細胞の医療における問題点を指摘されましたが、ちょ っと違った角度で最近の研究で非常にたくさんのES細胞株を作って調べてみると、個々の 細胞によってある目的の細胞を分化誘導する能力が全然違うということがわかってきて、例 えば糖尿病を治療するβ細胞を誘導しようと思うと、ほとんど駄目なES細胞もあれば、非 常に効率良く誘導できるのもあるということで、非常にたくさんのバラエティを持っている ところが有利だということもありますし、GMP基準で細胞を培養するシステムなども整っ ている。そういうこともあって、おそらくは先ほど西川委員がおっしゃったように、当面は 外国から来た、外国で樹立されたES細胞を使って臨床をするというのが、たぶんほとんど になるのではないかというように、残念ながら思うのです。そのときに、ある1つの研究室 で作った70ぐらいのES細胞のうちのいくつかが凍結されていない胚であるために、日本 に輸入できないと聞いているのです。もしそういうことがあると、折角、治療に使える有用 なES細胞株とその誘導法が見つかったとしても、日本ですぐに利用できないということに なる可能性があるので、その辺も対応は必要かなと思っておりますけれども。 ○岩田室長補佐 いまの非凍結の話については、この場で私が申し上げるのは若干問題があ るのかもしれませんが、いまの指針上、たぶん読み方もいろいろあって、ここは少し統一的 な見解をこの場ではなくて、むしろ西川委員にやっていただいているES委員会の中でやら なければいけないと思っています。ただ、いまこのES指針に書いてある凍結というのは、 日本のシステムではICの撤回が30日ということで、私は原則的に当然、凍結胚だろうと いうことで書かれているという理解なのですけれども。したがって、今後の取扱いについて は、きちんとしたルール化をしていくということで、それらの取扱いについては今後どうや っていくのかというのを、この場ではなくて、文部科学省のほうの委員会でちょっと議論し ていく必要があると考えております。 ○位田委員 いまの点は、輸入ES細胞の可能性が最初に出たときに既に議論をしています。 日本の指針で要求しているのは、もちろん日本でやる場合には30日間、クーリングオフの 期間が必要だと。したがって、必然的に凍結胚だということになっています。しかし、これ まで、たしかモナッシュ大学からのES細胞の輸入の場合は新鮮胚からのES細胞だったと 思いますが、凍結されていないといけないという条件はなかったと思いますね。2つだけ条 件があって、余剰胚であるということと、インフォームド・コンセントがきちんと行われて いるということが確認されれば、それはES細胞は輸入できるということになっていたので、 もともと凍結は条件になっていないはずですね。 ○岩田室長補佐 少なくとも私もそういう認識なのですが、若干違う運用の話がどうも世の 中にあるらしいので、そこは先ほど申し上げたとおり、文部科学省の委員会のほうで、きち んとした運用のやり方というのを、今後ちゃんとお示しをしていきたいと考えております。 ○位田委員 そのように運用してきていませんか。 ○位田委員 もともとモナッシュの問題が出てきたときに、何を条件にするかということで、 いま申し上げた2つを条件にするということで、ずっと運用してきているので、もし凍結し ていないといけないというのであれば、それは誤解だと私は思いますけれども。 ○岩田室長補佐 たぶん先生がおっしゃるとおりだと思います。なので、若干違う見解がど うも世の中にあるらしいということを聞いておりますので、運用については改めてちゃんと 確認させていただくということを考えています。 ○西川委員 実際には、最初にモナッシュのものを認めたときにはかなり前の話であって、 その後、委員の交代や指針の書替えとかいろいろなことがあって、この条文そのものをどの ように読むかということが、いままでの議論の経緯を全く抜きにして考えられてしまったの でしょう。  もう1つは、やはり実際の運用上、まだオーソライズされていませんが、今回の指針の改 正のいちばん大きな点は、ここにおられる多くの文部科学省の委員の方も議論されたように、 使用に関してはかなり出自の影響というものを軽減したことだと思っています。逆に中内委 員がおっしゃっている問題も、たぶん外国でつくられたものも、使用については結局普通の 細胞であるという形での理解になっていくのではないかな、というように私自身は思ってい ます。もちろん、これは厚生労働省の場合どのようにされるのかはまた次の問題ですから。 ○町野委員 先ほどの凍結保存のことで、これはあくまでもあとで確認していただければ足 りる問題だと思いますが、現在のES指針は凍結保存されている余剰胚からしか樹立を認め ておりません。これは確定しているところです。海外からのES細胞の輸入について、それ は新鮮胚から樹立されたものであるといったときでも、これはこの指針の要件に適合しない のではないかということで、その輸入が問題になって、それが1件だけあったのがモナシュ のことだけです。そのときについて、要するに凍結保存というのは、わざわざそのために受 精胚をつくったのではないということが明らかだという趣旨のためにこうしているわけで すから、そのようなことを踏まえていれば、余剰胚であれば十分であるということで、これ はOKとしたということです。このような運用だと思いますから、私はそれほど混乱してい るわけではないと思いますが、これはあとで確認していただければ足りる話だと思います。 ○中畑委員 海外でつくったES細胞をジェロン社のように世界戦略でおそらくやってく るでしょうから、日本でも遠からずそういうのが問題になるだろうということはそのとおり だと思うのです。アメリカでGMP基準といっても、日本で我々の考えというのはちょっと 違うわけですよね。だから、アメリカではFCS、ウシ胎児血清もアメリカ国内は安全だか ら、アメリカ国内のウシから採取したFCSは一応認める、という形で対応していると思う のです。逆に、日本では、アメリカはBSEの発症している国だということで、アメリカは 非常に問題だという形で、もしどうしても使わなければいけなかったら、オーストラリアと かBSEのない国のFCSを使ってつくったものをという考えになってきてしまうのです。そ の辺の考え方を統一、日本でいうGMP基準というのはどうしたらいいのかということは、 ある程度実際に医療に応用するときにはそこを統一する必要があると思いますけれども。 ○中畑委員 末盛先生、1998年にトムソンらのつくった時点のつくり方と、いま実際にジ ェロン社で臨床応用するときの培養条件というのは、GMP基準ということではかなり改善 されているのでしょうかね。 ○末盛参考人 具体的にどういう形で培養しているかということに関しては、詳細な情報を 持っていないですが、もう随分違う。培養液の組成から、あとはフィーダーを使いませんよ ということで、当初とは違う培養法をやっていて、GMPにおおよそ的な考え方に合うよう な形でやられているということのようです。 ○中畑委員 たしかFCSがそのまま使っているわけですね。 ○末盛参考人 正確なところは持っていないですが、FBS自体は当初は使っていますけれ ども、ウシ由来の蛋白に置き換えるような形で別のものにしていって、ウシ胎児血清そのも のは現状では使われていないはずです。 ○西川委員 ただ、これに関しては、少なくとも厚生労働省はしっかりとした経験があって、 いろいろ時間がかかったりしたのですが、J-TECのジェイスをよんでいただくと、こうい うことまではきちんと認められるのであるということをはっきり書いているから、ガイドラ インの大枠というか、実際作るときに患者の安全性を考えて何かをやるときに、こういうも のですよということに関しては大体あると思うのです。それはもちろん実際に審査が始まっ たときに、それぞれの審査委員の方が、本当に安全性が保たれているかどうか、GMPある いはSOPがしっかりしたものかどうかというところのテクニカルな問題で、いまのところ はあまり中のイングレディエントにこだわることはないのではないかなと、私自身は思って います。 ○永井委員長 腫瘍原性については、いまどんな状況にあるのですか。これはまだまだ課題 は多いと考えてよろしいのでしょうか。 ○西川委員 2点お話したいのですが、1つはES細胞の面白い点というのはちょっと語弊 があるのかもしれませんが、全く遺伝子が変わらなくても一種の腫瘍原性を持つということ なのですね。いままでどうしても腫瘍というと、遺伝子も変わった結果腫瘍になると考えて いました。なぜ遺伝子が全く変わらないのに腫瘍になるかという部分に関しては、例えば胎 児と正常の細胞と何が違うのかという、結構深遠な問題があるので、簡単には説明できませ ん。いずれにせよ、完全に分化させたES細胞に関しては、たぶん安全性は確保されるだろ うと言える。その中に、分化していなかったものがどれだけ混じっているかどうかがいちば ん重要になるだろうということで、もともとES細胞やiPSが持っている腫瘍原性について、 あまり議論することは私は意味がないのではないかと。  もう1つ、先ほど中内委員がおっしゃった多様性の問題なのですが、例えばヒトのES細 胞はマウスのES細胞と違って、ちょっと進んだ細胞なのですね。例えば染色体構造も固い ですし、遺伝子の導入などもしにくい。そのために、染色体構造というのはエピジェネティ クスというのですが、そういうエピジェネティクスが影響を受けやすいことは間違いない。 ただ、いま技術革新として、こういうエピジェネティックの状態をマウスのES細胞に似た レベルまで持ってこれないかという研究が猛烈に行われていますから、それほど時間がかか らずに、ヒトと例えば動物とでのよほど大きなバリアがない限りは解決されて、バリエーシ ョンがわりと低いES、iPS細胞が得られるようになっていくのではないかなとは思います。 ○水澤委員 先ほどの話に戻るのですが、外国から輸入するものも一緒に議論していくのか どうかということを確認したいと思います。一緒に議論するとなると、だいぶイメージが変 わってくるのではないかなと思います。輸入品については、書いてあるものはあったにして も、トレーサビリティ等も、全然我々はタッチできないと思います。私はまず日本のもので 基準を作って、外国からのものに関してはそれをまたモディファイ、あるいは応用するよう なイメージがあったのですが、その辺は一緒にやるのでしょうか。 ○永井委員長 そういう状況がすぐ起こり得ると思うのですね。むしろ外国のほうで検討が 先に進んで、ある程度の担保があるのであれば、考えざるを得ないと思います。 ○水澤委員 一般的に日本で、これは薬というか、臨床応用ですから、治療用のものを審査 する場合、通常は2段階ぐらいの感じで、相当厳しいことをチェックして輸入しているとい う、イメージがあります。 ○永井委員長 時間がかかるということですか。 ○西川委員 それも私が言うのはおかしいですが、厚生労働省自体は薬であるとかディバイ スなどで、いろいろな国から出てくるから難しいところがありますが、例えばアメリカであ れば共通のプラットホームで承認をできないかとかいう議論はされているわけですから、そ のベースの上でやればいいと。例えば日本で未承認の場合は承認し直すわけですから、逆に 同じような手続をどのように入れるかなどというテクニカルな問題かなと私は思っていま す。 ○水澤委員 私はどちらでもいいと思います。ただ、そのようにやるのであれば、先ほど樹 立と使用と別々に考えるか一緒に考えるかという議論があったと思うのですが、それも分け て考えてやったほうが、ずっとはるかに効率的と思いますね。そういう覚悟でやるべきだと 思います。 ○町野委員 私が先ほど質問したのはまさにそのことで、現在の体性幹細胞の指針というの は、要するに体性幹細胞の獲得とプロキュアメントと臨床研究と、一本のものでマニュアル 化してやっているわけですね。やはりこれと同じようなやり方では、これからちょっと持た ないのではないかという具合に思うわけですね。例えばiPS細胞について、同じようにiPS 細胞をつくるところからみんな規定するのかというと、おそらくそんなことはしないし、さ らにES細胞についても、もう一本別のものを作りますかというと、そんなことをしたらえ らいことになるので大変なので、むしろそちらのほうを合わせるということなのだと。他方、 外国から来るものについては、全然プロキュアメントの手続というのはないわけですから、 分配を受けるだけですから、そういったときについてどうするかというのは、これは何も規 定しないかというと、それはやはり本末転倒であって、基本的にはこれを臨床研究に使われ てくる、人についての権利の保護のことが問題なのですから、これを放っておくわけにいか ない。これについても規制を掛けなければいけない、やはり規定をしなければいけないとい う話です。  そう考えますと、現在の指針を手直しだけで済むのかなと少し思います。いまのようにし て2つに分けるということまで必要ないかもしれませんが、使用のほうの部分については、 かなりいろいろなことを考えた上でやらなければいけないだろう。それはプロキュアメント と別の体制で考えなければいけないだろう。どこかのところで、例えばES細胞については ES指針のほうの、若干向こうをいじってもらうことが必要になるということはあるかもし れませんが、このようにして考えていかないと、これからこの指針も全然できなくなってし まうのではないか、えらい大変なことになるのではないかと思います。 ○西川委員 私はわりと逆で、やはりこれは基本は患者がおられて、医者と患者が細胞治療 が1つの解決であるということをアグリーされて、それを実現するというときにどの細胞を 使うかというのが、それに付与されてくるわけですね。それはどの薬、あるいはどのメディ ウムを使うかということが要求されるのと同じです。その一つひとつの使われるグロースフ ァクターなどということに関しては、あるいは薬事で、あるいはいろいろな形での規制が掛 かってくるわけです。  では、細胞のソースといったときに、これは例えば外側から持ってくるのか、中で調達す るのか。そうすると、中で調達するものに関してはいまのまま、ほとんど大きな変化はなし に、かなりいろいろなことをやる。外側からの場合は、やはり薬事との整合性がキーになっ てきて、もちろん薬事だけではないのですが、指針のところで作るためだけに新たな指針を 作っていくというのは、今回のスコープではないのではないかなと私自身は思っていますけ れども。 ○中畑委員 今回は臨床に使うということですので、臨床に使ってもいいようなES細胞の 要件はどういうものかということは、一応定める必要があると思うのですね。それは外国か ら輸入したものであれ、日本で作るものであれ、こういう条件を満たすものであれば、材料 としてのES細胞の最低の基準は満たしているというある程度の線を、この委員会で引く必 要があると思います。  あと、いま実際に外国からも細胞が輸入されて、幹細胞を用いた臨床試験というのは実際 やられているのですが、それは間葉系幹細胞、メゼンカイマルステムセルをアメリカでつく った会社が日本に輸出をして、日本のある会社がそれを実際に移植の場に使おうということ で、それは薬事法に則って、一応治験として今やっているのです。だから、幹細胞の指針の 審査を受けていないのですが、実際にそれはアメリカで作った細胞が日本に輸入されて、言 ってみるとこの幹細胞の指針と同じようなレベルですが、もっと厳しい薬事法に則って実際 に治験が行われていますので、それとある程度このES細胞を輸入して、臨床に使うという ことでは、ただ細胞の種類は違いますが、条件的にはかなり似てくると思います。 ○永井委員長 当然、外国から来るのも非倫理的につくられたものであれば問題になるわけ ですので、その辺も含めてこれからもう少し議論をしたいと思います。これは特に安全性の 面も一緒に議論していく必要がありますので、事務局で取りまとめていただいて、次回以降、 継続して議論したいと思います。時間が遅れてしまいましたが、議題3で「幹細胞臨床研究 におけるGTP、GMPの考え方について」、早川先生に参考人としてお出でいただいており ますので、ご説明いただけますか。 ○早川参考人 早川でございます。資料に沿って説明させていただきます。2枚目のスライ ドですが、ご承知のように、現在の再生医療研究には2つあるいは3つの出口があるわけで す。1つは薬事法としての出口と、それから高度あるいは先進医療と。今日ご議論されてい るところは右側のヒト幹細胞臨床研究指針の部分であるということです。  私の話題提供の前提を書いてありますが、ここに書いたとおりで実用化推進を図るという のは、保健衛生の維持・向上のため、国益のために自明の理であると。それから、革新的医 薬品、医療技術の開発は国益にも叶うし、国際益にもなるということです。国としてはそう いったものをアシストしていくべきだろうと思いますし、規制というのはそういう共通のゴ ールに向かって、科学的・合理的・効率的・効果的に進むための方策であると。そういう意 味で、すべての関係者が同じピッチに立って、共にゴールに向かうプレーヤー。これが今日 の私の話題提供の前提です。  まず、先ほど出口が2つあると。臨床研究という方向と治験という方向があるわけですね。 薬事法的には治験ということですが。2つの方向のシームレス化ということで共通点を考え てみると、新しい治療というのは1つはやってみなければわからない、ということと、科学 的妥当性、倫理的妥当性、社会的理解・認知との折合いをどう付けていくかということかな と思っております。科学的妥当性ということで言えば、まず、新たな治療法への可能性が期 待できるということが挙げられます。  ところで、品質との関係でGMPの話が出ておりますが、実はGMPの話というのは薬事 の話であって、臨床研究の話ではないのです。科学的妥当性という観点での共通点として言 えば、ヒトに初めて適用しても差し支えのない程度に、既存の知見の中で想定できる製品の 品質・安全性、製造管理上の問題がクリアされていること、これが必要なのだろうと思いま す。具体的には、微生物の安全性ということがありますし、先ほど来出ておりますように、 ES細胞あるいはiPS細胞のようなものであると、未分化細胞の残存ということで、造腫瘍 性あるいは異所性の組織形成、あるいは抗原性というものが問題になるだろうと思います。 ただ一方で、常にES細胞やiPS細胞のレベルでそういうものを試験しないといけないとい うと必ずしもそうではなく、下流に近付くほど実際にヒトに投与するわけですから、むしろ 下流のほうに重きを置いて、そういう評価をするほうが合理的ではないかと私は思っており ます。あとは取違い防止策、適切な加工を行うという共通の留意点があります。  あと1つ、製品の品質や(製造管理で)GTP的に考えなければいけないことは、臨床試 験を実際やるわけですから、その結果出てきた有効性・安全性上の所見と、連結・照合・考 察できる程度に製品の品質特性管理がなされている、このことが大事だろうと思います。た だし、そうは言っても通常の医薬品とは違いますので、細胞という漠とした、相当バリエー ションのある、範囲のある品質の話ですので、そういう意味でのある程度の把握という意味 であります。このコンセプトについては、また後に述べたいと思います。それと、もちろん 議論になっている倫理的妥当性ということが必要なわけですが、採取時の話と臨床適用時、 これはいずれにしても未知・未経験のゾーンに踏み込むわけですから、ここで徹底的な説明 と同意、患者の自己決定などが不可欠だろうと。逆に言えば、こういう分野では、そういう 自己決定に後押しされて、未知・未経験のゾーンに踏み込んでいくしかないのではないかと 思っております。  最後に書いてあることは、治療しないことのリスク、重篤で余命が限られている患者にと っては、治療されないことが大変なリスクであるわけですね。そういうのと、例えばGMP 上の云々ということは大事なのですが、どちらのリスクが大きいのかと。患者に投与されな いことのリスクが大きいのか、適用することのリスクとして細かい品質や製造過程に関して 議論をずっと続けていく話のほうが大きいのか。そういうことを勘案して、前に進めるとい う考えがあっていいのではないかと思っております。  次のスライドは、薬事法における細胞の取扱い、使用に関する基本的考え方ということで、 通知が出ていることを示しております。スライドは今日の参考資料4の別添1のタイトルだ けを載せたもので、内容的にはどういう細胞を扱うにしても、こういう考え方で取り扱って ほしいということですので、私はこういうものが臨床研究でも1つのベースになればいいの ではないかと思っております。  次のスライドですが、これは薬事のほうの自己由来、あるいは同種由来の細胞・組織加工 医薬品等の品質・安全性の確保に関する指針の目次です。その次に書いてあるように、内容 的には細胞を加工した医薬品・医療機器のそれぞれについて、品質および安全性の確保のた めの基本的な技術要件について書いているものです。これも今日、参考資料として付けられ ていると思います。  ただ、その場合にもう一度最初から2枚目のスライドを見ていただきたいのですが、薬事 のほうで「確認申請」というのがあります。確認申請というのは、製品の品質・安全性的に ヒトに投与しても差し支えないかどうか、ということを見る段階のレベルのものです。その 際、参考にする留意事項が自己指針・同種指針、あるいは先ほどの基本的考え方に述べられ ているということです。それと実際に治験をやって、最終的に「承認」を下ろすときに必要 な技術的要件というものがあります。この掲げた自己・同種の指針というのは、それも含ん でいるわけです。「確認時」と「承認時」に必要な技術的要件、両方含んでいるのですが、 確認申請はヒトで初めて治験を開始する段階で、承認と同じような厳しさでやっていたので はなかなかクリアできないということで、ヒトで治験を開始するに当たって支障となる品 質・安全性上の問題があるか否かを確認するためという趣旨を明確にして、この指針の中に もそのことを書き分けてあります。どの程度の試験・評価をすべきかということを明確にし ているということです。  これはたぶん幹細胞指針でも同じことであって、ヒトに初めて投与するときに、初めてヒ トに投与するのだから、どうしてもここのところの品質・安全性だけは確保したいという部 分に、いわば的を絞ってやると。そういう意味では、共通の項のところではないかと思いま す。  次のスライドですが、個々の医薬品等についての試験の実施・評価というのは、指針の目 的を踏まえるわけですが、とにかく細胞・組織加工医薬品等の治験、あるいは幹細胞臨床研 究を行う場合にその種類、特性、あるいは臨床上の適用法などが非常にさまざまですので、 それは個々にケース・バイ・ケースで、その時点での学問の進歩を反映した合理的な根拠で やるしかないであろうと思っております。  そういう意味でも、薬事的な確認申請というものと幹細胞臨床研究というのは、考えよう によっては同じ土俵で考えられるのではないかと思っております。あとGMP及び治験薬 GMPの目的と対象ということを書いてありますが、これはここに書いてあるとおりで、い わば科学的な評価を受け、有効性・安全性が非常にはっきりした医薬品に対するというのが ベースになっております。GMPというのは、承認された医薬品、それから原薬の品質規格 の製品を恒常的に製造する体系を確立すると。そのことによって、有効性・安全性を確保す るというのが本来のGMPの考え方です。  よくGMP、GMPという言葉が出てまいりますが、そういう意味ではGMPというのはこ こで議論している、言ってみればヒトに初めて投与していきますよという時点での話とは、 かなり趣が違っております。それに相当するのは治験薬GMPということですが、これは治 験薬としての品質をある程度知っておいて、少なくとも先ほど申しましたように、ヒトに投 与するのに明らかに支障があるとか、想定される危険性は排除したようなものを使いましょ うね、そういうものをつくりましょうねというのが治験薬GMPだと思っております。どち らかと言えば、確認申請も幹細胞臨床研究も、治験薬GMP的なレベルの話なのだろうと思 っておりますが、薬事でいう治験薬は確認申請よりもっとあとの話ですので、その辺の必要 要件のレベルは延長線上にあることはご理解いただけると思います。  ついでにGMPというのはいったい何かということを少し説明してあるのですが、やがて GMPに繋がる確保すべき品質の範囲は、実際の製造方法の関連要素があったり、製品候補 の品質の問題があったりして、非臨床試験、あるいは臨床試験をやりつつ、徐々にそういう ものを改善・改良しながら、最終的に、薬事的に言えば臨床的に有効性・安全性が評価され たものが認められると、そこで初めて有効性・安全性を守るための品質としての確保すべき 品質の範囲というものができるわけです。ですから、いまのような臨床研究段階で、あまり びっちりとした品質特性であるとか、製造方法関連要素というものは、有効性・安全性と絡 めては考えられません。むしろ有効性・安全性をわかっていない状態です。だから、そうい う意味ではGMPという話とはちょっと違うだろうと。  特に次のスライドですが、どのような品質が必要なのかというと、これは薬事的に言うと、 有効性・安全性を満たさないといけないのですが、限度ぎりぎりいっぱいの品質を持ってく るということはあまりありません。それより狭い状態のところに承認事項がある。もうちょ っと的を絞った、有効性・安全性にさらに安全域をかけたようなところで、1つの品質とし ての承認事項があるわけです。内容としては製造関連要素、あるいは品質関連要素としてあ るわけです。この承認事項をベースにして、GMPというのは、業者が、言ってみれば承認 された承認事項を是が非でも守らないと、自分たちの製品が逸脱してしまう、不良品になっ てしまうということですから、さらにその的を絞って、もっと狭い的に品質が入るように作 るのが薬事的な意味でのGMPということなのです。あとは業者としてのGMPの美学があ って、もっと小さな的に絞り込むという話はあるのですが、いわば確認申請の段階、あるい は先ほどの幹細胞、臨床研究をこれからやりましょうというような段階で、本来はこれと同 じレベルの話をするのはあまり合理的ではないし、たぶん有効性・安全性がわかっていませ んから、逆に言えばできないだろうと思います。  あとはGMPの要件など書いてありますが、結局いまお話したことと同じです。次に、実 際にGMPに従って治験薬、医薬品を製造しようとするとこうすべしという、なかなかにぎ やかな流れ図がありますが、実際これだけのことをやらないといけませんので、これはたぶ ん幹細胞臨床研究指針などとは縁が遠いもので、これに足を取られているとなかなか前には 進めないだろうと思います。  次のスライドですが、薬事法の中での細胞・組織製品の特徴を踏まえた適切な薬事規制の 策定。これは有効で安全な医薬品をなるべく早く患者に提供してほしいという検討会を厚生 労働省がやっていて、その中で細胞・組織製品の特徴を踏まえて、適切な薬事規制を策定し てほしいということで作られた考え方です。ここでも例えば先ほどと同じコンセプトですが、 必要最小限度の検体で品質管理を行うとか、あるいは現状の製造管理・品質管理に関する基 準項目の中で、実行が困難な部分については実施しなくてもよい。柔軟な対応でやっていい と。あるいは製品の特性を踏まえた製造管理・品質管理の実施にかかわる留意点をまとめて います。  この中で、よく見てみると、結局は微生物汚染を規制しましょうという話、それから取違 いをなくしましょうという話、それから一応どのようにして加工したのかということは、構 造、設備を含めて粗々は明らかにしましょうと。そういう程度のことが書かれております。 幹細胞臨床研究を始めようというときの品質・安全性確保ほ話と基本的には同じレベルの話 だと思います。  最後に、「課題/留意点の整理と私的方策」と書いてありますが、現行推進が目指されて いる先端的再生医療は、他に治療法がない患者の病状進行という大きなリスクを回避するこ とを目的としているというように私は理解しておりますので、製品における想定内で対応可 能なリスクは排除するのは当然ですが、理論的リスクであるとか、より小さいリスク等につ いては、すべての情報を透明にした上で、患者の自己決定権を基に治療の可能性を提供する ことが1つの考え方としてはあるのではないかと思います。  そういうことをやりながら、再生医療実用化推進を図るという命題の解決に向かうべきで はないかと思っております。それから、多くはテーラーメード医療で、製品は小規模な個別 生産が多くて、試料は少量で極めて貴重である。特にそれはヒト自己を考えればよくわかる のですが、自己から採った試料を試験にいっぱい使って、結局は投与するものがなくなって しまうということもあり得るわけで、それは十分考えないといけないだろうと思います。  それから、採取とか移植というのは専門医が行う医療行為です。これは従来の医薬品とは ちょっと違ったものです。従来の医薬品で、なぜ品質規格が必要か、なぜGMPが必要かと いうのは、例えば錠剤とか注射薬は、投与される専門医の方にとっては、錠剤であっても注 射液であっても結局見えない状態なわけですね。表示しか頼りにならないので、その表示を 担保するために品質規格があったり、GMPがあったりする、極端に言えばそういうことで す。  ところが、採取もそうですが、実際の移植は専門医が行う。これはとりあえずそのように しなければいけないのだろうと思うのですが、先ほど議論に出ていた医療機関の問題も含め て、いわゆるクオリファイされた医療機関、クオリファイされた専門医が行う医療行為であ るというように、もし決めることができるのであれば、例えば角膜なら角膜のようなものは、 毎日、角膜の患者を診ていて移植している専門医は、手に取っただけで、できたものの品質 が松、竹、梅かということがわかるのです。ただ、その方にも微生物汚染をしているかどう かはわからないので、そういうことに関してはそれなりのちゃんとしたチェックはしておか ないといけない。そういう特殊な製品であるだろうと思います。  ということで、従来とは異なる柔軟な、私はGMPとは言いたくないのですが、GTP的 な運用をする。GTPというのはGood Tissue Practiceという意味ですが、これをベースに 製品に必須なGMP的要素は使いますが、あまりGMPの美学には拘泥しないほうがいいの ではないかと思います。  これもまとめですが、製品の種類、特徴、対象疾病/患者が多種多様であることを考慮す ると、すべてを網羅するルールを作成することは不可能であるし、不合理であると思います。 幹細胞臨床研究、それから治験というのは、確認申請と言い換えてもいいのですが、製品を ヒトに初めて適用することには変わりないということで、現行規制はそれぞれの立場である わけですが、その立場を崩さず、それを乗り越えて、しかも切れ目のない移行。いま切れ目 のない移行というのが叫ばれているわけで、それを可能にするには共通のプラットホーム作 り、つまりミニマム・コンセンサス・パッケージの作成が大切で効果的ではないかと思いま す。そのミニマム・コンセンサス・パッケージというのは、科学的に言えば汚染とか混同の 防止など、先ほど言ったような想定されることで必ずやっておかなければならない基本的で すべてのケースに共通する対応策ということです。  それに加えて、実際に出てきたものについては、それぞれの製品、治療ごとに適切な要素 を上乗せする形で試験をしていただく、あるいは評価する。そういう方策で幹細胞指針を作 っていただければ、薬事との相互乗入れも可能になるし、逆に言えば幹細胞研究から実用化 のほうにも流れやすくなるのではないかと思います。  全体図を書いたのが最後のスライドです。以上です。 ○永井委員長 GTPのTというのは、何を表すのですか。 ○早川参考人 Tissue Practice。GMPというのはManufacturingですから、医薬品の製 造という意味なのですね。ところが、GMPをそのまま当てはめますと、極めて厳密になっ てしまうので、逆にTissueなのだから、Tissue Practiceでやればどうでしょうかという意 味です。これはたぶんアメリカでもGTPというのは用語としてありますので、そういう思 想でやったほうが、GMPといろいろな意味では重なるわけだし、試薬等についてはそれな りに厳密にできるわけだから、それはそれでいいのですが、TissueをGMP的に扱おうと するとこれはとても大変だし、そんな試験とかバリデーションができませんのでという意味 です。 ○永井委員長 何かご質問・ご意見はありますか。 ○梅澤委員 早川先生、わかりやすいご説明を本当にどうもありがとうございました。臨床 研究と治験に関し、共通点がこんなにあるということを理解していませんでした。またGMP の定義を間違って理解してしました。1つ質問させてください。現在の0208003号と 0912006号の範囲の中に、ES細胞及びiPS細胞はもう既に入っているというように理解し てよろしいでしょうか。 ○早川参考人 いいえ、ES細胞とiPS細胞と多機能性の幹細胞、間葉系幹細胞を含めて、 それはこれから相当する指針を、現在の0208003号と0912006号の両指針がベースになる と思いますが、さらにそれぞれ特徴付けを考えなければいけないことを上乗せして、実は先 生にも研究班にお入りいただいているのですが、その中でやっていこうと。 ○梅澤委員 いつごろになりますでしょうか。 ○早川参考人 できれば今年中に、ある程度粗々の指針を打ち出して、来年度中には通知で きるか、まとめるかすることができるのがいちばんいいなと思っております。 ○鹿野委員 早川先生のご説明は非常にわかりやすくてご理解いただけると思うのですが、 先ほどGMPグレードで血清をどうするかとか、原材料、添加物についてのご議論があった ので、ちょっと説明をさせていただきます。おそらくGMPグレードとおっしゃるのは、医 薬品に求められている規制を満たすかどうかとかという意味で、我々が使っている通常の GMPとちょっと違うのです。そういう議論だったと理解しているのです。  例えば血清の件ですと、先ほど早川先生のお話にもあった下流のほうで管理するという意 味では、実地製造で使うときには、いまオーストラリア産とかリスクの低い血清が使えるの に、アメリカ産等のリスクが高いものを使わないで低いほうを使ってくださいということな のですね。ワーキングセルバンクなど、製造の上流のほうについては、医薬品の規制でも除 外になっております。といいますのは、そこが規制を満たさないからといって、そのために 細胞、ESをまたつくり換えるのか、そんな馬鹿な話はないだろうと。科学的なリスクから 考えても、そこのレベルでそういう規制を掛けることの意味はあまりないという考え方でや っています。  血清のみではないのですが、全体的に一般的に先生方がGMPグレードとおっしゃってい る内容についても、製造の各段階で違うということをご理解いただいて、指針を作成される 場合にも、そういう考え方を反映させていただけたほうが、たぶん混乱は少ないだろうと思 います。 ○早川参考人 1点付け加えさせていただきますと、患者に投与するとき、一般には原材料 を投与するわけではありません。製品を投与するわけですね。ですから、どこにポイントを 置いて、つまりES細胞からスタートしようが、iPS細胞からスタートしようが、どこから スタートしようが、どこかで主にあるいは全体としてコントロールする、最終製品のレベル で全部やれればいいのですが、それが不可能であるとすると、例えばある中間段階ですね。 分化したある中間段階で、そこで主にコントロールしますということであれば、例えば微生 物汚染も含めて、あるいは腫瘍原性の問題も含めて、そこからスタートして管理すれば、ち ゃんと最終製品がうまく安全性が保証できますということであれば、それで全然構わないわ けです。ES細胞自体を徹底的に評価することによって、それ以降はその分評価しなくても いいという作戦でも構いませんが、どんな作戦でもいいのです。要するに最終製品から見て、 最終製品が患者に投与するのに差し支えがないかというストーリーが描ければ、どこでチェ ックしようが、どのようにしようが構わないと。実際には、製造工程全体及び製品をみて、 最も合理的にコントロールできるポイントで、必要な試験・評価を行い、それら個々の要素 の組合わせで全体として目的を達する、という戦略がよいと思います。  その中で、セルバンクの思想というのは、セルバンクというのをいろいろな起源・由来か らつくってきて、セルバンクで徹底的に解析することによって、それ以前も、もうそれ以降 の解析もその分必要ないということをやるためにセルバンクでやるというケースも非常に 多いものですから合理的で一般的とされている。しかし、どこで徹底的にやっても構わない。 いずれにしても、最後の製品でOKだということが説明できればいいのではないかと思いま す。  繰り返しになりますが、特に幹細胞臨床研究であるとか、ほかのものについても、非常に 先駆的な医療なので、想定できないあるいはテクニカルに評価困難なすべての安全性をクリ アすることはできないですね。ですから、そこは患者とインフォームド・コンセントの中で、 どれだけきちんとすべてを明らかにして、それでもそれを選ぶのか、選ばないのかというよ うな話なのではないかと思っています。 ○位田委員 この辺はあまり詳しくないので、ちょっとよくわからないところがあるのです が、いまご説明のあったGMP基準というのは、これからやろうとしているES細胞からの 製品と申し上げますが、それにはうまく当てはまらないかもしれないと理解してよろしいの でしょうか。それを当てはめるために、これから指針を作るのですけれども。 ○早川参考人 先ほど申し上げたように、ES細胞のGMPとはいったい何なのかというこ とです。ES細胞のGMPというのはなくて、最後に患者に投与するときの製品に辿り着く ために、途中でどうすればいいかという話なので、場合によってはES細胞。ES細胞が最 初の出発点できちんとできていれば、それ以降あまりする必要がないから合理的であるとい う場合もあるし、むしろある程度分化させてしまって、造腫瘍性とか、そういう懸念をなく した状態を出発点にして、我々はそこから医薬品の原材料としますということもあっていい。 ただ、ヒストリカルに言えば、元をただせばES細胞から出発したかもしれませんねという 話、どちらでもいいのだと思うのですが。 ○位田委員 そうしますと、現行の指針は体性幹細胞ですよね。体性幹細胞の指針でGMP 基準を達成するというか、それをクリアできるような体制になっていると思われますか。 ○早川参考人 ですから、GMP基準というのは有効性・安全性が認められて、最終的に承 認された医薬品の品質の恒常性、細胞の恒常性をいかに保っていくかというのがGMPなの で。 ○位田委員 そうですよね。 ○早川参考人 はい。あらかじめのGMP基準というのはないのです。あらかじめの話とし てあるとすれば、これは微生物がいてはいけませんねとか、最終製品で造腫瘍性があっては いけませんねとか、そういう当たり前のことがあるだけであって、GMPというのはそのあ との、承認されたあとの、広く普及して使えるようになったあとの話ですね。 ○位田委員 今回の指針の見直しで議論しているのは、有効性・安全性がまだ確認されてい ないので、確認をするための臨床研究をやるわけですよね。したがって、GMPはもともと そのもう1つあとの段階なので、その前の段階とすれば906とか1314の別添1の基準でい くと、そういうことで理解してよろしいですか。 ○早川参考人 基本的にはそうですが、ヒトに投与する際、想定される範囲ではリスクが排 除できていますという程度の話を基準にすべきと思います。 ○永井委員長 歴史的には相当いろいろな改定を経て、いまのGMP基準ができてきたわけ ですか。 ○早川参考人 そうです。それは承認されたあとに不良品をつくってしまうということがあ って、そこは承認したあとも承認したときの状態と同じ品質を保ってほしいという意味で GMPができて、非常に広く行き渡っているレベルの話。 ○永井委員長 今日、全部議論を尽くすのは難しいと思いますので、とりあえず事務局のほ うで今日のご提案・ご意見を踏まえて、次回の議事を調整させていただきたいと思います。 また、もしご意見等ありましたら、後ほど事務局までお寄せいただけますでしょうか。  最後なのですが、資料6を簡単にお目通しいただけますか。この委員会の概要は既にお示 ししてあったのですが、設置要綱がこれまでできておりませんでした。第3回になって、少 し遅くなりましたが、事務局で準備いただきましたので、お目通しをいただいて、ご確認い ただければと思います。かなり基本的なことが書かれているかと思いますが、もしご異論が なければ、一応ご了承いただいたということにさせていただきたいと思います。もちろん、 後ほどお気付きの点があれば、事務局のほうにお申し出ください。  少し時間がオーバーしてしまって申し訳ございませんでしたが、とりあえず本日の議題は 以上です。事務局から何か連絡事項等ありますか。 ○事務局 本日はお忙しい中ご参加いただきまして、大変ありがとうございました。次回は 8月27日(木)の開催予定としております。詳細については、追ってご連絡いたします。 《後日8月25日(火)に変更させていただきました》 ○永井委員長 それでは、本日の委員会はこれで終了させていただきます。どうもありがと うございました。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 田邊 03(5253)1111(内線 2545)