09/06/08 第32回社会保障審議会児童部会議事録             厚生労働省雇用均等・児童家庭局 第32回社会保障審議会児童部会 議事録 日時:2009年6月8日(月) 10:00〜12:10 場所:厚生労働省 省議室 出席者:  委員   大日向部会長、阿藤部会長代理、石津委員、大澤委員   柏女委員、小杉委員、才村委員、榊原委員、佐藤委員   庄司委員、土堤内委員、前田委員、吉田委員、渡辺委員  事務局   北村審議官、高倉総務課長、朝川少子化対策企画室長   藤原家庭福祉課長、今里保育課長、宮嵜母子保健課長   真野育成環境課長、杉上虐待防止対策室長   中村児童手当管理室長 議事次第:  1. 開会  2. 社会的養護専門委員会における検討状況について  3. 少子化対策特別部会第1次報告について  4. 平成21年度雇用均等・児童家庭局予算及び補正予算について  5. その他  6. 閉会 配布資料:  資料1  社会的養護に関する今後の見直しについて  資料2-1 少子化対策特別部会第1次報告【概要】  資料2-2 少子化対策特別部会第1次報告  資料3  平成21年度雇用均等・児童家庭局予算の概要  資料4  平成21年度厚生労働省補正予算の概要(雇用均等・児童家庭局所管分)  資料5-1 新型インフルエンザに対する基本的対処方針  資料5-2 医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針  資料6 児童虐待防止法について 参考資料:  参考資料1 持続可能な社会保障とその安定財源確保に向けた「中期プログラム」         (平成20年12月24日閣議決定)  参考資料2 新型インフルエンザの発生に係る対応について (6月5日(金)現在) 議事: ○大日向部会長  おはようございます。定刻になりましたので、ただ今から第32回社会保障審議会児童部 会を開催させていただきます。本日はご多忙のところ、ご参集いただきましてありがとうご ざいます。  議事に入ります前に、本日の部会の趣旨につきましてご説明させていただきたいと思いま す。  本部会に置かれております「社会的養護専門委員会」が5月18日に開催され、社会的養 護における施設ケアに関する実態調査の実施状況等が報告されたことから、本部会といたし ましても、社会的養護に関する検討状況と調査の実施状況のご報告をいただくことといたし ました。  また、この機会に合わせまして、少子化対策特別部会における検討の状況や、政府におけ る子育て支援対策の予算面の拡充の状況などもご報告いただくことといたしました。  それぞれのご報告について、疑問点がございましたら適宜ご質問をいただくことはもとよ り、今後の取組につきまして、児童福祉の向上の観点から、本児童部会の委員の皆さま方の 幅広い知見に基づいたご意見・ご議論をお願いしたいと思います。  それでは最初に、事務局より、資料の確認と委員の出席に関してご報告をお願いいたしま す。 ○高倉総務課長  それでは、お手元に配付させていただいております資料の確認をさせていただきます。ま ず議事次第がございまして、座席図等は省略させていただきますが、資料1といたしまして 「社会的養護に関する今後の見直しについて」という横置きの資料、資料2-1が「少子化対 策特別部会第1次報告」の概要ポイント版、資料2-2が、その本体に当たります「少子化対 策特別部会第1次報告」でございます。その後ろに参考資料集も付けております。資料3 は「平成21年度雇用均等・児童家庭局予算の概要」、資料4は「平成21年度厚生労働省補 正予算の概要(雇用均等・児童家庭局所管分)」でございます。また、資料5-1は新型インフ ルエンザ対策本部における基本的対処方針で、資料5-2と関連するものでございますが、こ れは厚生労働省としての運用指針でございます。資料6といたしまして「児童虐待防止法に ついて」という資料がございます。また参考資料1といたしまして、「持続可能な社会保障 とその安定財源確保に向けた中期プログラム」、参考資料2としまして「新型インフルエン ザの発生に係る対応について」、これは6月5日現在のものでございます。以上をお手元に 配付させていただいております。もし不足等がございましたら、事務局へお声を掛けていた だければと思います。  次に、委員の出欠状況でございますけれども、本日は秋田委員、網野委員、山縣委員が所 用によりご欠席と伺っております。  以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。次に、事務局におかれまして4月にありました厚生労働省の人 事異動により新しく就任された方のご紹介をお願いいたします。 ○高倉総務課長  先般の人事異動で新しく就任しております育成環境課長の真野でございます。 ○真野育成環境課長  真野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、議事に移りたいと思います。  はじめに、児童部会に設置しております「社会的養護専門員会」における昨年来の検討の 経緯や施設ケアに関する調査の実施状況について、事務局より説明をお願いいたします。 ○藤原家庭福祉課長  家庭福祉課長の藤原でございます。よろしくお願いいたします。  資料1ということで、横長のパワーポイントの資料を配付させていただいております。「社 会的養護に関する今後の見直しについて」という表題の資料でございます。それぞれ右下隅 にページ番号を付けておりますので参照いただきたいのですが、2ページでございます。社 会的養護といわれる里親、施設等のサービスの現状をまとめたものでございます。里親の関 係では3,600人ほどの子どもがいるということ。また、施設の関係で一番多いのは児童養護 施設でございます。「児童現員」というところをご覧いただきますと、31,000人ほどの子ど もがいます。次いで乳児院の約3,200人、さらに児童自立支援施設の約1,900人、情緒障害 児短期治療施設の1,100人程度、それから一番右側に「自立援助ホーム」とございますのは、 義務教育を終了した子どもで児童養護施設等を退所した子どもが共同生活をするという形 態でございますが、こちらの方は全国的にはまだまだ少なくて、236人という状況でござい ます。  3ページをご覧ください。この社会的養護に関する議論の経緯でございます。平成19年 6月に児童虐待防止法の改正法案が国会で成立しました際に、附則におきまして社会的養護 の体制の拡充についての検討が謳われたところでございます。その関係で、この児童部会の 下に「社会的養護専門委員会」を8月に設置いただきまして、平成19年11月に報告書を おまとめいただいたところでございます。  報告書の内容といたしまして、大きく赤文字で書いた部分と青文字で書いた部分という二 つの流れがあるわけでございますが、早急に対応を行うことが可能となるようにしなくては いけない具体的な施策ということで、例えば里親制度の拡充、ファミリーホーム制度の創設、 先ほど申し上げました自立援助ホームの見直し・強化、また「被措置児童等虐待」という言 葉を使っておりますが、いわゆる施設内の子どもの虐待の問題への対応といったさまざまな 事項について早急な対応をということでご指摘をいただいております。  また、青文字の部分は、こうしたものに加えまして、少子化対策全体の議論の動向を踏ま えながら進めるべき見直しということで、後ほど資料をご覧いただきますが、施設機能の見 直しという課題をご指摘いただいたところでございます。  平成19年12月に「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議の取りまとめがご ざいましたが、その中で、先行して実施すべき課題ということで社会的養護体制の充実を図 ること。また、次世代育成支援対策の制度設計に当たって、この社会的養護を必要とする子 どもに対する配慮を包含することが盛り込まれたところでございます。  この赤文字の関係の早急な対応という点につきましては、その下に赤い枠で囲んでおりま すが、児童福祉法の改正ということで平成20年3月に国会に法案を提出いたしまして、一 度は廃案になりましたが平成20年11月に再提出した法案が第170回国会で成立いたしま して平成20年12月3日に公布され、今年の4月にほとんどが施行されている状況でござ います。  また、次世代育成支援の関係で、社会的養護を必要とする子どもに対する配慮という点に つきましては、平成20年5月の「少子化対策特別部会」の取りまとめの中におきましても、 そこにございますように、「新制度体系の設計に当たっては、社会的養護を必要とする子ど もなどに対する配慮を包含することが必要」というご指摘をいただいているところでござい ます。  おめくりいただきまして、4ページをご覧いただきたいと思います。今申し上げました少 子化対策や次世代育成支援対策の動向を踏まえて行うこととされました施設機能の見直し に関する議論につきまして、一昨年11月の「社会的養護専門委員会」の報告書の中で、ど のような位置付けになっているかということを一番上の枠の中に再掲させていただいてお ります。「子どもの状態や年齢に応じた適切なケア」がキーワードかと存じますが、こうし たことが実施できるように、現行の施設類型のあり方を見直すとともに、人員配置基準や措 置費の算定基準の見直し等を含めてケアの改善に向けた方策を検討していく。このような見 直しを具体的に進めるためには必要な財源の確保が不可欠であるとともに、現在施設内で行 われているケアの現状の詳細な調査・分析の必要性をご指摘いただいたところでございます。 これを踏まえましてその後、調査・分析を進めさせていただいているところです。  その一つ目が、平成20年3月に「社会的養護施設全般に関する実態調査」という施設の 概況調査を実施いたしました。これにつきましては、昨年10月に中間的に集計したものを 社会的養護専門委員会にご報告したところでございます。さらに、今年1月から3月にかけ まして、タイムスタディといわれる手法を用いまして施設をピックアップいたしまして調査 を実施しているところでございます。このタイムスタディの調査の実施状況、結果の取りま とめはまだこれからですが、どのような施設を幾つ選んで調査したかなど、実施状況につき まして、5月の社会的養護専門委員会に事務局から報告をするとともに、平成20年3月の 社会的養護施設全般の概況調査につきましても、昨年10月の専門委員会に提出した中間報 告に加えた追加のクロス集計を今年5月の専門委員会にご報告したところでございます。  今後の予定としましては、こうした調査結果についての取りまとめ、分析作業をさらに進 めてまいりまして、社会的養護専門委員会において具体的な議論を進める予定でございます。  5ページは、一昨年11月の報告書の細かいものですので、後ほどお目通しいただければ と思います。  6ページ、7ページは社会的養護専門委員会のメンバー構成、それから今、申し上げまし た調査の関係の全体のアウトラインということですので、これもお目通しいただければと思 います。  8ページをお開きいただきたいと思います。二つの調査の流れと申し上げましたが、その イメージをフローチャートといいますか図にしたものでございます。上半分が施設の概況に 関する調査ということで、平成20年3月に行ったものでございます。楕円形で囲んでおり ますけれども、施設の概況、個々の入所児童の状態、背景等について全般的な把握をすると いうことで、これは調査としては悉皆調査という形で、すべての施設を対象として調査を行 っております。回収状況といたしましては、施設の種類によって若干回収率は違っておりま すが、例えば児童養護施設であれば87.5%、乳児院で92.6%の回収率でございました。  それから、下の枠でございますが、これは今年の調査ですけれどタイムスタディという形 で行った調査でございます。これはそれぞれの施設におきまして、職員が子どもに対してど のような種類のケアを、どれぐらいの量を提供しているかを詳細に調査するものですが、そ れに併せまして子どもの状態についてもアセスメント表という形で一つ一つとりますので、 子どもの状態によるケアについて定量的な把握を図るという性格の調査でございます。この ような調査に、さらに他の研究も組み合わせまして今後、ケアのあり方について検討を深め てまいりたいということでございます。  9ページは、それぞれの調査結果のポイントということで、少し詳細に紹介させていただ いております。施設概況調査に関しまして平成20年3月に行った調査でございますけれど も、結果のところでございますが、例えば平均入所期間。職員1人当たりでどれぐらいの子 どもをケアしているか、これは常勤換算をした数字でございますので、1日8時間に換算し たのですが、実際には休日・夜間もケアは行われていますので、そこを少し念頭に置いて数 字をご覧になる必要があると思います。  また、ケアの形態ということで、いわゆる児童養護施設の中に大きなユニットでケアをし ている所から小さなユニットでケアをしている所までさまざまですので、大舎、中舎、小舎、 小規模グループケアといった形態ごとに、全国にどれぐらいそういうものがあり、どれぐら いの子どもが在籍しているかを調査したものです。  10ページをご覧ください。同調査の中では、子どもに関する個票も取っておりまして、 その中で養護問題の発生理由、これは複数回答の結果でございますけれども、また身体障害 等がある割合、虐待を受けた子どもがどれぐらいの割合でいるかといったことについて、併 せて調査をしたところでございます。  続きまして、11〜12ページはタイムスタディの調査に関するもので、これは調査の結果 というよりは実施状況のご報告になりますが、施設は全国で何百とあるわけですが、その中 で調査対象施設としまして、それぞれの施設の種別によって違いますが、全体で36か所ほ ど施設を選びまして調査をしているところでございます。  施設を選ぶに当たりまして、特に先ほど概況調査のところで、特に児童養護施設に関しま しては大舎もあれば小さなユニットの所もあると申し上げましたが、ケアの形態の違いを特 に踏まえて施設を選択しているところでございます。児童養護施設21か所、乳児院4か所、 情緒障害児短期治療施設3か所と、ここにございますような施設を選びまして、それぞれの 対象施設で一番右側に「総児童数」と書いておりますが、施設全体というよりも、その施設 の中で一つの生活単位というものをそれぞれ選んで、子どもについて細かく調べたというこ とで、対象児童数は、例えば児童養護施設であれば361人という規模の調査になっており ます。  12ページをご覧ください。では、実際にタイムスタディという調査につきましてはどの ようなやり方かということですが、1)と書いているところでございますが、「1分間タイム スタディ調査」という手法で調査をしています。入所児童に対してどのようなケアをどれぐ らい、これは時間数ですが、施設職員が提供しているのかということを他計式といわれる方 式になりますが、調査員が施設職員に張りついて記録をとって、それをあらかじめ用意しま したケアのコードに分類して集計するという調査でございます。基本は2日間かけてタイム スタディ調査を行いますが、例えば施設長のように日常的に子どもに接することが必ずしも ない職員もいらっしゃいますが、そのような方々に関しましても、7日間のタイムスタディ 調査を補足的に行うということです。  特に2)のところでございますが、個々の対象となった子どもについて詳細なアセスメン トを実施しております。心身の状態等についてアセスメントを実施しておりますので、1) の業務量調査と2)の子どもの状態調査を組み合わせて分析していくというのがこの調査の 特徴になります。  スケジュールは、そこにございますように今年の1月から3月にかけて順次実施をしてい ったということでございますが、この調査に関しましては、それぞれのタイムスタディの調 査において現場で調査していただきました関係の方にお集まりいただきまして、一番下のと ころにありますけれども、児童の臨床像とケア時間の多寡について、どのような論点・視点 があるかということを整理し、足りないものは補っていくといったこととしております。  このような形で、現在施設におけるケアの現状についての詳細な分析を進めておりますの で、今後も関係の議論について深めてまいりたいと考えております。以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今のご説明に、何かご質問・ご意見がおありでしたら、ど うぞよろしくお願いいたします。  庄司委員、お願いいたします。 ○庄司委員  補足になるかと思いますが、今回、非常に詳細で包括的な施設についての調査をしていた だいて、これが施設機能の見直しの一つの重要な基礎になると思います。ただ、タイムスタ ディというのは、あくまでも現行の職員配置の枠の中でのケアのあり方についての資料とい うことになりますので、今後の課題になるかと思いますけれども、抜本的な見直しというこ とになるについては、さらなる調査が必要かと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。他に、いかがでしょうか。  では、榊原委員、お願いいたします。 ○榊原委員  私もこの社会的養護の検討に加わらせていただいて、私は素人で勉強させていただいた立 場ですけれども、今回のこうした調査というのは、社会的養護の取組なり施策が始まって約 60年間で初めてと聞いています。取材で児童養護施設に伺っても、今も大舎といわれる非 常に大きな建物は築40年ぐらいとみられるような鉄筋造の建物の中で、清潔にこざっぱり と暮らせるようにはしていただいているけれども、最近の心身にいろいろなダメージを受け た子どもたちをきちんとケアしていくのに、この体制で十分なのかと思うような60年前の システムで子どもたちがケアされているという状況を、これまで政府だけではなくて社会全 体できちんとフォローしてこなかったのではないかという反省が今迫られているのだろう と思っています。  例えば、政府でもこの1〜2年で社会的養護への取組をやっていただいているのですけれ ども、つい最近、ようやく幼稚園費が認められたのです。「幼稚園費というのは何ですか」 と聞いてみましたら、施設に入っている子どもたちが幼稚園に通う費用はこれまで認められ ていなかったと。普通の家庭でも幼稚園・保育園に通っていない子どもはいるのだからとい うことで、つまり施設にずっといるというふうに置かれていて、それが新たに幼稚園費で幼 稚園に通う費用が初めて公的に認められたと聞きました。  今、少子化ということで子どもの頭数の議論は社会全体でするようにはなっているけれど も、日本にせっかく生まれた子どもたち一人一人の育ちというものについて、もう少し質的 な担保を、全員が健やかに育つようにしていく目配りが非常に欠けていたと私自身も反省し ていますし、社会全体でそのような議論をしていく必要があったと思っています。こうした 取組を、もう少し加速度的に進めていただきたいと思っています。 ○大日向部会長  ありがとうございました。渡辺委員、お願いいたします。 ○渡辺委員  質問です。わからないので教えていただきたいのは、このタイムスタディ調査の、一つは 「配置が手厚い」というのは、どのような基準で「手厚い」「平均的」と示されているのか ということです。  もう一つは、この手厚い配置をしている所を、それぞれの種別で大体選んでおられるので すが、その目的としては「手厚く配置している所でもこれだけ業務がたくさんあって大変な のですよ」ということを示したかったのかということをお伺いしたい。  それから、もう一つは施設にいる子どもたちの意向やニーズは、どのような形で調査とし て取っていくのか。この3点を教えていただきたいのです。 ○大日向部会長  これは、藤原家庭福祉課長からお答えいただけますか。 ○藤原家庭福祉課長  11ページの関係のご質問でございます。それぞれの施設につきまして、職員の配置が比 較的手厚い所を選択して調査をしております。「手厚い」という点につきましては、もう一 つの概況調査をその前にやっていまして、そのときのデータで、それぞれの施設で直接ケア の職員が、どれくらい配置されているかということをまず把握しました。その数字に基づき まして、それぞれの施設にいる子どもの年齢に応じまして、今の基準上の職員の配置数は、 このレベルというのが出てくるのですが、それと比較して何割増ぐらいの配置になっている のかを見まして、比較的職員の配置が充実している所を選択しました。なぜ手厚いところを 選択してやっているかという点につきまして、この施設のケアの現状・実情という点につき ましては、これまで定量的なデータがありません。今回こういう形で定量的なデータをしっ かり取って、施設において非常に細かくケアコードの設定をしてタイムスタディをやってい るところですが、子どもに対してこういう内容のケアは実施できるということをまずきちん と実証していくことが、全体の議論の中で非常に重要であるということがありますので、実 際にケアがしっかりしているといわれている所を、まずきちんと調べようということで手厚 い配置の所を調査していますが、児童養護施設におきましては、若干そういう点で、平均的 な配置の所もピックアップして調べていますし、また今後全体を議論していく上で、他のい ろいろな研究の知見なども組み合わせまして、ケアのあり方というものを議論していきたい ということです。  それから児童のニーズという点につきましては、それぞれの子どもについてアセスメント を併せて行っているところです。実際にどういうアセスメントが行われているかというと、 例えば就学前の子どもであれば、養護問題の発生事由ですとか出生時の状況、身体・発育の 状態、栄養状態、発達状況、日常生活能力の発達、情緒・行動上の特徴。これにつきまして は、自閉的傾向、養育者との関係性など15くらいの項目を立てていますが、こうした関係。 また被虐待体験の有無、精神疾患・精神障害の状況。また特に今回専門委員会のご議論でご 指摘がありましたので、できるだけ客観的に養育問題が把握できるようにしなくてはいけな いということで、これまでも研究の実績があるところの養育問題に関する細かいチェックリ ストも組み合わせまして、かなり詳細なアセスメント表を作っています。こうした形で子ど ものニーズも片や把握し、それと組み合わせて、どのようなケアが実施されているかを調べ ていくというやり方をしています。 ○渡辺委員  最後の点については、質問というかこれからの希望ですが、問題のアセスメントはわかり ますが、施設生活を送っていて、子どもたちがどういうニーズを持っているか。つまり今の 施設の処遇であったり、支援に対して子どもたちがどう思っているかということを、もう少 し主観的に取っていった方が良いのではないかという意味です。 ○大日向部会長  それでは、小杉委員。 ○小杉委員  ありがとうございます。私は自立援助ホームについてお聞きしたいと思います。今のご説 明の中でもまだまだ少ないというコメントがあったと思いますが、これについて、これから どういう計画、考え方を持っているかということです。と申しますのは、私は若年労働市場 の労働の研究をしていますが、年齢が10代で低学歴の若者たちの労働市場はものすごくひ どい状態で、とても一人でアパートを借りて食べていくということは考えられないような水 準の賃金しかもらえないわけです。そういう中で自立していく、生活をして食べていくまで には、多分児童養護施設を出てから、かなりジャンプしなければならないような、とてつも ないクレバスがあるのではないかと思いますので、本当に自立を援助するための仕組みが、 まだまだ足りないと私も思っているのですが、これがそういう役割を果たすのか、今後どう 考えているのかについて教えていただきたいと思います。 ○大日向部会長  お願いいたします。 ○藤原家庭福祉課長  自立援助ホームの数が、まだまだ少ないというご指摘です。今日お配りしている資料の中 で、2ページの数字は平成19年12月現在の数字ですが、46か所という水準です。この4 月に施行されました児童福祉法の改正が、まず自立援助ホームをきちんと全国に広げていく 上で非常に重要な位置付けを持っています。都道府県の責務で、この自立援助ホームの事業 を実施しなければならないという形で、法律上まずそこできちんと位置付けをしました。そ れから費用的にも、いわゆる補助金の制度から負担金の制度に法律上の位置付けも変えまし て、財政的にも位置付けを明確化しました。その上で、さらにどのように数を伸ばしていく かという点につきましては、これも今回の法改正の関係になりますが、児童福祉法と併せま して、次世代育成支援対策推進法も今回改正をしています。これまで社会的養護に関しまし ては、いわゆる次世代育成支援対策推進法の行動計画の中で、あまり明確な位置付けはなか ったのですが、平成22年度を起点にして、その後5年間の後期行動計画が各自治体で作成 されるところで、その作成において、高年齢児の自立という問題もきちんと位置付けて、計 画的に進めていただこうということも今回織り込んでいるところです。 ○大日向部会長  佐藤委員、お願いいたします。 ○佐藤委員  やや感覚的なものの言い方になろうかと思いますが、社会的養護を見直すということで、 児童福祉施設の現状をいろいろと検討し、必要な職員の数や職種について提言をしていくと いうことは、一つの方向としては必要だろうと思います。確かに児童福祉施設が社会的養護 という概念の象徴的なものとして、当然公費によって支えられているわけですから、明らか に社会的養護の一つの方法論だと思います。しかし、例えば障害福祉の世界で、過去を振り 返りますと、いろいろなニーズが複雑で多様化しているという同じような背景があって、振 り返れば20年、30年前に、いかに施設機能を高めるかという議論をずっとやってきました けれども、結局施設で自己完結型にいろいろなことをやったところで、大きな限界がある。 社会的養護を「地域福祉」という言葉で言い換える考え方に立てば、施設だけですべてのこ とができるように、あるいは今よりももっと良くなるようにという形の方向感というのは、 必ずしも十分ではないのではないか。むしろ、施設が地域社会における一つの社会資源とし て、その地域社会がもつポテンシャルとどのように連携していくのかというベクトルを意識 して、この社会的養護の体制をいかに見直すかというもう一つの重要なベクトルとして意識 しておかないと、どんどんこういう職種が必要なのではないか、ああいう職種が必要なので はないかということで、施設に対してオプションばかり増やすことになります。結果として、 施設は確かに一見非常にいろいろなものが装備された整ったものに改善されていくかもし れませんが、結局は子どもたちはそこを出て行かなければいけないわけですから、先ほど問 題提起がありましたが、例えば働くということに関しても、現実的には自立して働いていく ということが、かなり状況として悪いということであれば、これらの施設が地域の社会資源 の一つとして、他の必要なさまざま資源といかにネットワークをしていくかということで、 社会的養護体制の確立ということを、やや幅広くとらえるべきではないかという感じがしま す。いろいろ議論が行き交っていますが、障害福祉の世界で主張されている、どのような障 害があっても他の誰とも変わることもなく生活できるような地域社会をつくっていこうと いう方向性は、私は非常に正しいことだと思っています。その中で、施設が限定的な役割を 果たすことの方がむしろ大事なのだという考え方もあり、私自身もそう考えているのですが、 そういう点を意識していただいて、今後の検討方向について、もう少し多様な検討をお願い したいと思います。以上です。 ○大日向部会長  ただ今のご意見に対する答えを含めまして、この社会的養護専門委員会の委員長をお務め くださいました柏女委員、お願いいたします。 ○柏女委員  発言の機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。今までのご発言を本当に うなずきながら伺っていました。榊原委員からお話しいただいたように、この問題が専門委 員会の皆の代表的な意見ではないかと思っています。先ほど佐藤委員からもお話がありまし たように、雇用均等・児童家庭局分では社会的養護を必要としている子どもたちは4万人で すが、それ以外に障害を持った子どもたちなどが障害関係の入所施設で暮らしています。そ の中には家庭養育基盤の弱い子どもたちが何人もいるわけです。ただ、そうはいっても18 歳未満の社会で生きている子どもたちのうちで、社会的養護の下にある子どもたちは1%に も満たないということは事実だろうと思います。その1%の子どもたちが豊かに生きられる 社会、あるいはその1%の、100人のうちの1人の子どもに、99人の人がどれだけ力を貸 してくださるのか。そこが今試されているのだろうと思って、私たちはその1%の子どもた ちをどうしていったらよいのか。そこの議論を進めていきたいと思っています。  そうしますと、一つは佐藤委員がおっしゃったように、どうしてもこの1%の、100人の うちの1人の子どもたちを、社会の方々に子どもたちがこういう状況にあるのだということ をご理解していただかなければならない。そしてその100人のうちの1人の子どもたちの ために99人の人に援助をしていただくために、100人のうちの1人の子どもに対して専門 職がどのようにかかわっているのか。そこは明らかにしていかなければいけないのではない か。つまり、そういう意味では社会的養護を社会に開いていくということが、とても大事だ ろうと思っています。その開き方には二つあって、先ほどあったようなタイムスタディ、あ るいは施設内虐待を防止するための透明性の確保といった仕組みをもっていくことと、もう 一つは佐藤委員がおっしゃった施設だけで完結するのではなく、社会的養護を地域に開いて いくということが、とても大事ではないかと思っています。  ただ、今回の議論は、そこまでは実はできていません。社会的養護の中でも、いわば社会 的養護という箱の中をどうしていくかという議論であって、その箱の中にどうやって子ども たちが入ってくるのか。そこからどう出て行くのか。その箱そのものと外の世界とのかかわ りをどうしていくのかといったような議論は、実は十分には行われていないというのが現状 です。それは次なるステップとして、ぜひ考えていかなければならないことだろうと思って います。実は先々週厚生労働省の方にも送ったのですが、来週私たちは社会的養護を地域に 開くというテーマでシンポジウムやディスカッションを行うことにしています。そうしたこ とをぜひしていかなければならないと思っています。貴重なご指摘をいただいて、社会的養 護の専門委員会にも宿題をいただいたと思います。もう一つは児童部会の委員の先生方に、 ぜひご理解をいただければと思っています。ありがとうございました。 ○大日向部会長  前田委員、お願いいたします。 ○前田委員  実は横浜市では、今年50年ぶりに8か所目と9か所目になります30人規模の小舎制の 児童養護施設を二つ、1か所は5月にオープンしまして、2か所目は夏にオープンします。 今、社会的養護への社会的理解とおっしゃいましたが、ご推察の通り、児童養護施設を新し く造るということで土地を手配しましたら、付近の方々から大変な反対運動を受けました。 難しい状況の子どもたちが、特定の学校に来るということで、学校のPTAも反対したりし ます。反対運動ですが、それをきっかけとして、社会的養護、なぜ施設が今必要なのかとい うことと、なぜこういう子どもたちがここに来ているかを住民の方に理解していただくチャ ンスでもありますので、もちろん今でも反対している方はありますが、その中の過程で、一 つの児童養護施設には500坪の農地の寄付がありました。子どもたちのために農園をとい う寄付がありましたので、理解して下さる人も出てくるわけです。このように、児童養護施 設が少し増えたりもして、施設的には整備されているわけですが、私も非常に危惧しており ますのは、小杉委員がおっしゃった通り、児童養護施設を出た後の、自立へのプロセスが不 明確だということです。自立援助ホームは既に横浜市には2か所ありますが、もう満杯の状 態で、おわかりの通り自立に向けての、虐待を受けた子どもたちの精神的な自立というのは 20代半ばから30代くらいまでかかりますので、非常に長期間のケアが必要です。ですから、 自立援助ホームだけでは物理的に無理で、少し自立できるようになると、自立援助ホームの 近くにアパートを借りてケアをするようなことをしていますが、ここ数年自立援助ホームを 増やすべく、いろいろ努力していますが、実態を申し上げますと、運営を引き受けてくださ る方が見つからない状態です。補助金が委託金になったりして、財政的な措置が講じられて いるようですが、実際には国の単価が非常に低いですし、自立援助ホームは運営者の多大な 自己犠牲の上に成り立っているのが実情ですので、それだけの実力を伴い、かつ、家族の犠 牲を払ってでもホームを運営してくださる方が、何年かけても見つからない状態です。ただ 法律を変えたから、義務化したからできるというものではないと思っています。この限られ た条件の中で、いろいろ試みていますのが、若者自立塾に児童養護施設の子どもを送ったり、 インターシップ、児童家庭局を超えた若者就労支援の場に、児童養護施設の出身の子たちを つなぐようなこともしていますが、児童養護施設はおわかりの通り、18歳以下の在籍して いる子たちのケアで手一杯で、なかなかそこまで手が回りません。それからもう一つ次の段 階で、ぜひご検討いただきたいのが、高卒の就職状況が非常に悪い状況ですので、大学への 進学への授業料や専門学校、資格を取る際の学費をどうするべきかという議論。今はご存じ の通り児童養護施設が募金を集めたり、そういう意味でいろいろな形で支えているわけです が、子どもたちを社会的に自立して社会的に貢献し納税もできる労働者に育成していくため には、高等教育の進学・訓練が欠かせない時代になっていますので、次にはぜひ、その辺ま でのご検討もお願いしたいと思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。この議題はこの辺りでよろしいでしょうか。では才村委員、お願 いします。 ○才村委員  渡辺委員のご発言と重複するかもしれませんが、グループインタビューは、まだこれから されるということですね。ぜひ、ご検討いただきたいのは、子ども自身の声です。この調査 そのものは多分施設の職員が答えたり、タイムスタディは調査員がついてチェックしていく ということですが、要はこのサービスを利用している子ども自身が、施設サービスに対して どのような思いを持っているのか、どのような希望を持っているのか、どうあってほしいの か。そこを、直接子どもの声を聞く機会を、可能であればぜひつくっていただきたいと思い ます。以上です。 ○大日向部会長  他に、ありますか。よろしゅうございますか。数々の貴重なご指摘、ご意見をありがとう ございます。この社会的養護の問題は、数は少ないかもしれませんが1%の子どもたちをい かに守りぬけるか。それが社会全体の福祉にも大きくつながっていくという観点で、柏女委 員長をはじめ、専門委員の皆さま方におかれましては、本日のこの部会におけます議論・ご 意見を踏まえながら、今後とも見直しの具体的な内容を進めていただければと思います。ど うぞよろしくお願いします。  それでは、次の議題に移りたいと思います。社会保障審議会に設置しています少子化対策 特別部会におきまして、本年2月にとりまとめられました第1次報告についてです。報告書 の内容と昨年12月に閣議決定されました「持続可能な社会保障構築と、その安定財源確保 に向けた中期プログラム」等を踏まえた今後の方向性につきまして、事務局より説明をお願 いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは説明いたします。まず、資料2-1をご覧いただければと思います。一番上に2 行ほど書いていますが、もともとこの議論は一昨年末に政府全体でとりまとめています、「子 どもと家族を応援する日本重点戦略」での結論を受けて議論を開始しているものです。重点 戦略では、働き方の見直しとサービスの充実という2本柱が立っていますが、そのサービス の充実については1.5兆円から2.4兆円という試算をし、しっかりお金をかけていきながら、 新しい制度づくりをしていったらどうかという結論でした。それを受けて、昨年の3月に検 討を開始して、ちょうど1年くらい前の5月に「基本的考え方」を取りまとめていただいて います。その上で、今年の2月24日に第1次報告という形で、中間的なとりまとめを取り まとめていただきました。  2行目のところにあります通り、この2月の取りまとめは、保育を中心に取りまとめいた だいているというものです。中身ですが、左右に分かれています左側が現行制度における課 題をざっと整理したもので、右側が今回の第1次報告でのこういうことにしたらどうかとい う提案の内容が書いています。  まず一つ目の課題としては、左側の一番上の方にありますが、「スピード感あるサービス 量の抜本的拡充が困難」であること。要するに量の拡充を図っていく必要があるのではない かという課題です。  右側を見ていただきますと、そもそも、このような新しい保育の仕組みを考えていくに際 しては、財源確保がなければその実現はできないという大前提があります。その上で(1)のと ころでございますが、「市町村が、保育の必要性・量、優先的利用確保の要否を認定」する。 これは現行制度が必要性や優先度などを決めているのと同時に、どこの保育所に入るかとい うことも併せて決定しているところですが、この最後の受入保育所の決定とは独立させて、 市町村が必要性と優先度を認定するという仕組みにしたらどうかという提案です。※印の三 つ目を見ていただきますと、その際パートタイム就労の方であるとか、あるいは早朝・夜間 の就労の方々もしっかり通常保育の保障の対象にしていったらどうかという点と、専業主婦 家庭につきましては、通常保育というよりも一時保育の保障をしっかりやっていく方向で考 えたらどうかということになっています。(2)のところは、そのような仕組みを講じることに よって必要性があると認められた子どもについては、例外なく保育の保障をしていきましょ う。保育を受けられる地位を付与していきましょうということです。(4)を見ていただきます と、市町村が(1)で保育の必要性を認定しますが、その後実際にどこの保育所に入るかにつき ましては、利用者と保育所の間で公的保育契約を締結していただくという提案になっていま す。ただ、この当事者同士で契約を結んでいただくに際して、(3)ですが市町村がしっかりと これまで果たしてきている実施責務、これが後退することがないように、新しい仕組みに応 じた実施責務を明示していきましょうということで、括弧書きのところで、例外ない公的保 育の保障をするということ。さらに質の確保された提供体制の確保責務。さらに利用支援責 務、最後に費用の支払義務というような実績も市町村にしっかりと果たしていただく中で、 新しい仕組みにしていったらどうかということです。(1)〜(4)はどちらかというと、需要を明 確化してオープンにしていきましょうということですが、それに応じて供給が追いついてこ ないといけませんので、(5)のところで、参入について「最低基準により客観的に判断。指定 制を基本としつつ、検討」とあります。こちらは現行制度が都道府県の認可という仕組みに なっていますが、その認可に裁量性が幅広く認められていることとの関係で、最低基準を仮 に満たしていてもなかなか認可されないという現状があることを踏まえて、質を落とさずに 量の拡充を図る手法として、最低基準を満たしたら、それは制度の対象にしていきましょう という提案です。(6)は、基本的には現行制度と同様に公定価格を維持し、さらに必要量に応 じるという単価設定の考え方を入れながらも、月額の単価設定を基本に運営の安定性にも配 慮していきましょうということです。以上が大きい一つ目の課題に対応するものですが、右 側の一番下のところは、このように量の拡充を図る仕組みを入れていくに際して、質の向上 も併せて図っていく必要があるであろうということで、職員の処遇や配置といったことを財 源確保とともに検討していくということです。  1枚おめくりいただきまして、保育の続きで右側の上の方ですが、実は保育を利用してい る人の子どもの約1割くらいが認可外保育施設を現状利用していますが、その子どもたちの 保育の環境の向上も非常に重要ですので、認可外保育施設の質の引き上げということも考え ていきましょうということで、その手法として、最低基準の到達に向けた一定期間の経過的 財政支援や小規模サービス類型の創設といったことを考えていきましょうということです。 保育の最後のところに書いているのは、都市部では待機児童の問題が深刻ですが、一方で日 本全体を見渡しますと、児童人口減少がすでに始まっている地域もありまして、今後のこと も含めて考えますと、地域でいかに保育機能を維持、あるいは向上を図っていくかというこ とも大きい課題です。その1手法として、小規模サービス類型の創設や保育機能と併せてい ろいろな子育て支援の機能を担っていただく多機能型の支援、そういったことで地域の保育 機能の維持を考えていく必要があるのではないかというまとめをいただいています。以上が 保育についてでございます。  保育以外にも次世代育成支援策として、いろいろな施策がありますが、大きい2番では小 学校に入った後の共働き家庭の子どもの預かりについて、放課後児童クラブの充実を図って いく必要があるであろうということ。その際、質の確保とともに量の拡充を図るということ ですが、そもそも保育制度と異なって、この放課後児童クラブについては、現行制度がかな り制度的な位置付けも含めて、少し弱いところがありますので、実施責任や給付方式、ある いは財源面の強化といったことをさらに検討していく必要があるとしていただいておりま す。大きい3番は、専業主婦家庭も含めたすべての子育て家庭に対する支援の強化というこ とで、一時預かりへの保障強化でありますとか、地域の子育て支援の拠点、各種事業の制度 的位置づけ、財源のあり方をさらに検討すべきであるとしていただいています。大きい4 番はサービス共通で情報公表でありますとか第三者評価といった仕組みの充実を考えてい く必要があるということ。大きい5番としましては財源面・費用負担について、国・地方公 共団体・事業主それぞれが役割に応じて負担をし合っていくという中で、地方負担について は不適切な地域差が生じないようにということや、事業主負担については働き方と関連の深 いサービスなど、受益と負担の連動で働き方の見直しを促進する仕組みといったことを今後 考えていくべきであるというまとめをいただいています。  最後に、今後の進め方につきまして、参考資料1の最後のページをご覧いただければと思 います。これは昨年12月に政府全体の閣議決定という最高の意思決定でまとめられている ものです。この文書の性格自体は社会保障あるいは少子化対策について、税制改革で財源を 確保しながらその機能を強化していきましょうという内容になっているものですが、その中 で今後のスケジュールということで工程表というものが取りまとめられています。その下の 方にありますのが少子化対策にかかわる部分でございまして、左側が足元の取組で右側が将 来の取組になります。左側の足元の取組に関しては、例えば安心こども基金をこの補正予算 で設置する、あるいは児童福祉法の改正等をする、今国会でかかっております育児休業法の 改正をするというものがございますが、その一番下に「新たな制度体系の制度設計の検討」 という点線の矢印がございます。ここから伸びまして右上に「法制化」とあって、さらに右 上に伸びて2013年の下のところに「新制度体系スタート」という丸がございます。第1次 報告ということでご紹介しました議論は、まさにここのラインに即して検討を進めると位置 づけられているということでして、2010年代前半を目途に制度をスタートさせるべく検討 を進め、1、2年かけて法制化を図っていく。そのようなスケジュールで今後検討を進めて いくことになっています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明にご質問・ご意見がありましたら、 どうぞお願いいたします。 ○土堤内委員  質問が一つと意見が一つございます。質問は、今のご説明にはお使いになりませんでした が資料2-2の18ページに「認可外保育施設の選択の状況」というところがあります。ここ に、これは先ほどご説明がありましたが「約6割の利用者は、認可保育所と比較した上で、 認可保育所の供給量不足や、認可保育所がニーズに合わないこと等により、認可外保育施設 の利用に至っている」という説明が書かれているのですが、ここの二つの説明が意味するこ とを考えたときに、前段の「認可保育所の供給量不足」というのは認可保育所に入れないか らオーバーフローした分の受け皿として認可外が設けられていると読めると思いますし、後 者の方は、認可保育所に入れたとしてもそこではニーズが満たされないので認可外を選択し ているという積極的な選択という二つの意味があると思うのです。今後の保育のあり方を考 えたときに、この認可保育所と認可外の位置づけをどう考えていくのか。今のようにオーバ ーフローした受け皿なのか、あるいは保育の一つの選択肢として認可外というものを多様な ニーズの保育に応える形で整備していこうとしているのか、そこの考え方についてお聞きし たいと思います。  それから意見の方は、やはり今の資料の30ページに病児保育についての記述があるので すが、そこでわざわざ※印が付されていまして「病児・病後児保育の検討に際しては、子ど もの視点で検討を進めることが必要であり、働き方の見直しを同時に進めていく必要があ る」とコメントされていて、私も全くその通りだと思います。つい先日も、保育所を運営し ている方とお話をする機会があって、その方が言われていたのは、やはり今の保育があまり に仕事と子育ての両立という親目線のところで語られることに非常に違和感を持つと。自分 たちが提供している保育が本当に子どものためになっているのだろうかという疑問を素朴 に持つと言われていました。私も長い間の個人的な子育ての体験の中から、やはり子どもが 熱を出したときには、子どもは身体の不調を訴えるだけでなくさまざまなシグナルを出して いる。それは子育てをした方の多くが体験されていることだと思います。そういうことで、 子どもが病気になったときには仕事を休む、あるいは保護者が仕事を休むのは当然だという 雇用者の認識、そういう社会的な意識を併せて醸成していくことが極めて重要ではないかと 思っています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは最初のご質問に対してお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  まず、認可外の記述について、認可外保育所がニーズに合わないということと関連して、 認可保育所と認可外保育所をどう位置づけていくかということですが、まず認可外保育施設 は幾つか類型分けができます。一つは事業所内保育所という類型がございます。もう一つは ベビーホテルといわれているもの、あとはそれ以外という分け方があるのですが、まず事業 所内保育所については一つの選択肢として、今後も職場での預かりというニーズがあります ので、それはそれとしてやはり尊重して充実していく必要があると思います。この18ペー ジ目で書いてある「ニーズに合わない」というのは、どちらかというと積極的に選択をして いるというよりも、近くに認可保育所がない、あるいは働き方との関係で時間帯が合わない ということでのデータがありましたので、このような表現になっております。ですから、ど ちらかというとあまり積極的に認可外保育施設を選んでいるというものでもありませんの で、基本的な方向としては、やはり最低基準というか一定の質が担保された認可保育所にで きる限り多くの認可外保育施設が引き上がっていくような政策的な誘導を図ることによっ て、基本的には質の確保された認可保育所の方に持っていく、そういうものが基本的方向と 考えています。 ○大日向部会長  よろしいですか。他に、いかがですか。お願いいたします。 ○阿藤部会長代理  実は先週、日本とドイツの少子高齢化に関するセミナーがあったのですが、ご承知のよう にドイツも今までは、特に西ドイツの側で保育に関して非常に軽視している状況で、そのこ とが長い間の低出生率に深い関係があるのではないかと思っていたわけですけれども、その ドイツも2年くらい前に方針を大転換して、保育サービス、保育所を大増設するというプラ ンを打ち上げたという話があったようです。そういう意味で今、先進国の中で特に少子化問 題との絡みでいうと、まさに仕事と家庭の両立を可能にするような環境づくり、その中でも とりわけ保育サービスの拡充ということが極めて重要です。そのことだけではありませんけ れども、先ほどの病児保育の問題も全部含めて、そういうことが非常にこの少子化問題の一 つの決め手になるという感じを私は持っております。  今回の少子化対策特別部会の報告の中で、そういう意味で保育需要の潜在需要を掘り起こ すというか、明確にするというのか、そういうことを一つの大前提とすることには大賛成で す。これまでも新待機児童ゼロ作戦と言いながら全国で2、3万人しかいないとか、そうい う数字は一体何を意味するのかよくわからなかったのですけれども、非常に保育のニーズも 多様化しているわけで、そういうものも含めて総合的に潜在需要をとらえる。それに対して サービスを提供していくという姿勢は、大変時宜に適った適切な政策プランだと思います。 それをぜひ今後スピード感を持って拡充していっていただきたいと思います。  ただ、問題はこういうことを拡充していくためには当然大変な財源、お金が必要になると いうことで、この工程表中では、あくまでも工程表ですから、これがうまくそのままつなが っていって財源が膨らんでいくのか、あるいは大幅な拡充があるのかというと、これは非常 に不透明な部分がある。その場合に、いわばこの潜在需要を掘り起こして、それが国民の目 に明らかになって、しかしお金はありません、サービスは十分提供できませんと。せっかく こういう素晴らしい案ができたとしても、そこにものすごくギャップがあると、国民の不満 が大変高まるということなのですね。ですから、そこはあらゆる方面からの努力でこの問題 についての財源確保を協力してやっていくことが何としても必要だという感じがします。も ちろん、そこまで不満が高まると、それがまた圧力になってそういう方向へ行けばよいかと いう気持ちもないわけではありませんが。これは意見です。  それから、最後に一つだけ質問で、この報告書の中では「家庭的保育」や「保育ママ」と いう問題についてはどれくらい議論されたのかということを伺いたいと思います。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、ただ今の最後のご質問についてお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  家庭的保育につきましては、去年行った法律改正で初めて法律上の事業になりまして、来 年4月の施行に努めるということですが、数年かけて議論するこの新しい制度体系づくりの 中では、どちらかというとまず施設としての保育所の仕組みについて重点的に議論していた だいていました。これから第1次報告を受けてさらなる詳細な議論に移っていきますが、そ の中で家庭的保育というものも保育の提供のサービス類型の一つとして議論していただく という予定になっていて、まだ第1次報告の段階ではあまり議論していただいていません。 ○大日向部会長  他に、いかがですか。大澤委員、お願いいたします。 ○大澤委員  ありがとうございます。今回、女性が就労を断念せずに結婚・出産・子育てができる社会 の実現という方向で動いていただけるということに感謝申し上げます。私は小児科医ですけ れども、医療崩壊・医師不足という観点からいたしますと、女性医師の離職防止、それから 復職支援ということは非常に重大な問題です。そういう中で、保育所への入所関係の措置を ぜひきめ細やかにお願いしたいということが前からの切実な願いです。具体的にどのような ことがあるかと申しますと、例えば産休や育児休暇で女性医師がいったん仕事を休むという ことになりますと、既に保育所に入っている子どもが出されてしまうという現実がございま す。育児休暇の期間中なので、上の子どもはこの保育園を出てくださいと言われて出されて しまって、その育児休暇が終わって復職しようと思っても、その子どもが戻れる保育所がな く、結局2人の子どもの保育所への入所が難しいということがあって、そのまま復職できな いということがございますし、保育所に入るためには常勤として働いているという職場の証 明がないと受け入れてもらえないという現状もございます。そういう点からいきますと、や はり現実としては問題があります。一つはある一つの保育所に通い始めてそこの環境に慣れ、 そこでの心の安定が図られたところで保育所を出て、またいったん家に戻って、そしてまた 次の段階では別の保育所に行かなければならないという心理的な影響を考えましても好ま しいことではないので、そういう点をぜひ、今後はご配慮いただきたいと思っています。そ れにしても保育所が足りなければうまくいかないので、保育所を増やすことが重要であろう と思います。  それから、放課後児童クラブの件でございますが、実際には保育所では女性医師の場合大 体朝7時半から夜22時ぐらいまで保育所に子どもを預けていることが多いのですけれども、 児童クラブに入りますと大体16時で終わりです。そうしますとそこから二重保育が始まっ て、誰かに迎えに行ってもらって別の私的に行っている児童クラブのようなところへ子ども を連れて行って、そこでまた預かってもらう、二重三重保育ということが実際にはございま す。時には毎日お迎えに来る人が違ったりということもあって、子どもにとっては決して好 ましいことではない。そういう点で、例えばオーストリアのウィーンでは学校からバスで公 的な子どもを預ってくれる機関に連れていって、そこで勉強したりごはんを食べたりしなが ら母親が来るのを待つというようなことが行われているということを聞いて、大変うらやま しく思ったことがあります。  それからもう1点、病児保育の件ですけれども、確かに小児科医の立場からいたしまして も、病児保育、せめて病気のときぐらい母親のそばにいさせてあげたいと思うのはやまやま ですけれども、実際に保育所に預けますと最初の1年間は1週間に1回は熱を出すというの が大体みんなが経験していることです。そういう段階で1週間に1回、医師としての自分の 仕事を放棄して患者さんとの約束を守れずに休んでしまうというということを繰り返すこ とは、やはり仕事の責任という観点からいっても非常に苦慮するところで、その辺で「どう せできないからやめてしまう」ということに追い込まれていくというのが実際です。近くに 親族がいる場合にはその人たちに頼るということは当然あるのですけれども、時には東京に いながらも北海道や九州にいる祖父母に出てきてもらって子どもを預けて仕事をするとい うようなことも実際には行われているのが女性医師の現状です。ですから、確かにそういう ことは好ましいことではないのですけれども、病児保育は実際にはある程度必要なことでも あって、完全に否定するものではなく、温かい雰囲気の病児保育の環境がつくられることが 最重要課題だと考えます。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。女性医師の就労環境を踏まえての貴重なご指摘ありがとうござ いました。今の保育に関して何か事務局からお答えになることはありますか。今里保育課長 いかがですか。 ○今里保育課長  ありがとうございます。今ご指摘のありましたことは、まったくその通りでして、産休・ 育休などで保育所に通っている子どもが保育に欠ける状態でなくなって一度戻るというこ とが現実にはあるわけです。ただ、子どもの生活の連続性などを考えた場合、例えば就学の 直前ということなりますと、保育に欠ける状態でなくなっても、そのまま保育所でその保育 を続けてほしいというような方針は出しているところですが、今、委員のご指摘がありまし たように、全体の量が足りない中で現実には難しいという状況ですので、全体の量の拡大を 今回の報告に基づいて進めていきたいと考えています。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。小杉委員、お待たせしました。それから石津委員お願いいたしま す。 ○小杉委員  ありがとうございます。不勉強でよくわからないので教えていただきたいのです。しばら く前に幼保一元化とか認定こども園という話がかなり耳に残っているのですが、今回この特 別部会の議論の中ではそのような幼稚園との関係は議論されているのでしょうか。そのこと は今どうなっているのでしょうか。いろいろあったのに、どうして認定こども園は増えてい ないのだろうと、とても不思議なのですが。その辺を教えていただければと思います。 ○朝川少子化対策企画室長  まず認定こども園につきましては、昨年度、別途検討会が設けられています。内閣府・文 科省・厚生労働省が事務局になって内閣府中心の検討会「認定こども園のあり方を検討する 検討会」があって、昨年度末に報告書がまとまっています。この少子化部会で検討している こととの関係につきましては、この少子化部会は保育の仕組みをまず検討して、検討が進ん でいき詳細設計に入ってくると、いずれ認定こども園あるいは幼稚園の預かり保育との関係 をいかに整理するかという問題も出てきますので、現時点の第1次報告の段階では幼稚園と の関係について深く議論はされていませんが、今後はそういう論点ごとに検討していくこと になっていると思います。 ○小杉委員  そうすると、ここに「新たな制度がスタートする」と書いてありますが、それにはその議 論は入っていないということですか。 ○朝川少子化対策企画室長  いわゆる幼保一元化そのものを議論するということではありませんし、この新制度のスタ ートがそれをねらっているというものでもありませんが、新しい保育の仕組みを動かしてい く中で幼稚園との関係を何らか整理した上で制度を動かしていく。それが2010年代の前半 であると。そういうことであればそういうことです。 ○大日向部会長  石津委員、お待たせしました。 ○石津委員  意見と質問といろいろですが、意見にもぜひご見解を聞かせていただきたいと思います。 第1次報告の中に、早朝や夜間・休日に一時保育や一時預かりなどいろいろなニーズに応え てという話があったわけですけれども、これを進めていくと結局24時間365日ということ になるわけで、どこまで保育サービスを提供するかということについては、やはり社会的な 合意、特に公共でどこまでやる必要があるのか、社会的な合意を得て決める必要があると思 います。私どもも時間をどんどん延長していく方向にあるのですが、果たしてそれで16時 まで、22時までやってよいかというと、非常に抵抗があります。では、どこまで公でやる べきかということについては、政治の判断かもしれませんけれども、ぜひ皆の合意を得てや っていただきたい。先ほど、どなたかがおっしゃった企業の役割、責任というものが私はと ても重要だと思います。特に夜間、あるいは休日に雇用をしているのであれば、その保育を きちんと企業が用意するということも含めて対応する必要があるのではないかということ です。  それともう一つ、全体を通じて少し心配になりましたのが、行政が保育の認定をして、保 護者が保育所を自由に選べるようにするというような書かれ方です。これは介護保険を導入 するときと同じような考えなのかなと感じたのですけれども、果たして保育についてそのよ うな市場原理的なやり方を入れてよいのかどうかということです。この辺については極めて 慎重に行うべきだろう。特に意見を言えない子どもが施設に預けられるということになると、 果たしてそれでよいのかどうか。なおかつ、介護保険の場合にはケアマネジャーがいて、曲 がりなりにもその人が振り分けをしているわけです。今は行政がその役割を担っているわけ ですけれど、自由に保護者がやるとなると、そのケアマネジャー的な仲介役をする人もいな い状況で市場原理が進んでいくということになりますと、非常に危険ではないかという危惧 の念を持ちました。その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それと財政的な話として、特に首都圏のベッドタウンとして発展したまちは、公立保育所 の老朽化が進んで建替需要が非常に今、多いわけです。けれども、公立保育所の建替えの場 合には補助金が全然なくて、いつも関係筋に聞くと「交付税算定されています」と言うので すけれど、交付税算定されていると言われても年々交付税が減らされていく中で、それがみ られているとはとても思えない。特に、公立を全くなくすというのは無理だと私は考えてい ますので、やはり公立保育所の建替えに関しても一定程度の財政的な支援をする必要がある のではないかということです。  それと、放課後児童クラブに関してですが、これもせっかく今学校が耐震補強工事を含め て大規模改修工事を行っていまして、それに合わせて空き教室に放課後学童クラブを入れる というようなことを進めています。しかし、昔は10分の10の補助があったのですがそれ が今なくなってしまいました。逆に今こそ耐震補強工事とか大規模改修をやっている状況で すので、そこに一体的に入れることによって、老朽化した学童施設の改修が進むのではない かと思います。その辺のお考えがないのかどうかということです。それと、放課後児童クラ ブに関しては国がガイドラインを示していると言っていますけれども、結局それが最高水準 になってしまって、市町村としてはお金の問題もあり、ハードルが高く対応できないという ことになってしまいます。このため、やはり国が制度的に一定の基準を設けてこの程度の学 童をやりなさいと言わないと、今市町村で、なかなかそこにお金をかけてやっていくという のは非常に難しい状況であるということです。 ○朝川少子化対策企画室長  4点ほどございましたが、まず1点目の24時間365日どこまでもということではない、 合意を得ながらということについてですが、これはまさにその通りだと思っています。そも そもこの保育については、例えば夜間、どの程度保育をしたらよいのかということについて は少子化対策特別部会でもいろいろ多様な意見がございまして、夜間あまり長時間の保育は よくないという意見も含めて、いろいろな意見がございました。したがいまして、多様な意 見を踏まえながら、しかも国民の皆さま方のご意見を踏まえながらやっていく必要があると いうことだと思っています。ただ、その一方で夜に特化して働いていらっしゃる、そういう 仕事の仕方の人もいることは事実ですので、現行制度はどちらかというとそういう働き方の 人については認可外保育所に行ってくださいという仕組みになってしまっていますので、そ このところはそれぞれまた強化していく必要があると思います。  2点目の、市場原理を入れていくのに保育はふさわしくないであろうという点についても、 まさにその通りでございまして、少子化対策特別部会でもそのようなまとめをいただいてお ります。したがいまして、今回提案しておりますのは単なる当事者間同士の契約に任せてし まうということではなくて、あくまでも実施主体である市町村に実施責任を果たしていただ く中で、そういう枠組みの中での契約を結んでいただく。もう少し具体的に申し上げれば、 どこの保育所を選ぼうとするときにも、待機児童が多い地域では実際には自由に選べないで しょうから、そこについては市町村に斡旋調整とか利用支援の関係で関与していただく。あ るいは比較的難しい、困難なケースについても市町村が積極的に利用調整・斡旋をするとか、 そういう市町村の実施責任を果たしていただく中で、新しい仕組みにしていったらどうかと いう議論をしていただいています。  三つ目の公立保育所の建替えについての件です。これは今、答えがあるわけではないので すが、ご案内の通り、三位一体改革で公立保育所については施設整備費も運営費も合わせて 一般財源化するという大きな整理がある中での今の補助金の仕組みになっていますので、今 すぐどうこうすることはなかなか難しいのが現状だと思います。  最後の放課後児童クラブにつきましては、まず大規模の解消ということを我々も言ってお りますので、そういう意味ではそのような改修をしっかり支援していかなければいけないと いう考え方の下で、最近はこれも国と地方の役割分担の中で、なかなか10分の10という 形ではできていないのですが、予算としては財源もしっかり確保しながら、予算の枠組みを 用意しておりますので、それを活用していただきながらということになります。ガイドライ ンにつきましては、この新しい制度づくりの検討の中で、今後より具体的にしていただきま すが、今は放課後児童クラブについて法令上の基準がなく、単なるガイドラインにとどまっ ていますので、それをしっかりとした法令に基づく基準にしていくのかどうか、そういった ところをしっかり議論していただこうと思っております。 ○石津委員  1点、すみません。認定こども園のことです。認定こども園の場合は、確か保護者と園と の契約でできるということだと思いますが、私どもではそれは心配なので委託してもらって、 市で斡旋というか、措置的な行為をする予定にしているのですけれども、やはりそういう傾 向にあるのかなと少し心配なところがあるので、その辺はどうなのか確認ができればと思い ます。 ○朝川少子化対策企画室長  確かに、既に認定こども園をやっていらっしゃる他の市町村でも、自由に契約をしていた だくというよりも、他の保育所などとの兼ね合いを見ながら、市町村がしっかりと関与しな がら利用決定をしていくという所もありますので、この保育の仕組みが完全に自由な当事者 同士の契約になじみにくいということは確かだと思っています。したがいまして、やはり新 しい仕組みづくりでも、そういう市町村の公的責任の果たし方を具体化していく中で考えて いく必要があるだろうと感じております。 ○大日向部会長  吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  恐らくこのやりとりは議事録に残ると思いますので、私も少子化対策特別部会の委員です ので、今の市場原理うんぬんということについて少し申し上げておきたいと思います。まず、 少なくとも少子化対策特別部会で考えたことの一つは、地方分権・規制改革の方がおっしゃ ったような完全な市場原理に基づいた、あるいは競争原理に基づいた保育の改革は決して好 ましくないだろうという大きな前提があります。しかし、一方で現行制度は先ほどご説明が あったように、市町村が結果的に保育ニーズに対して抑制的に機能する部分を持っている。 乱暴な言い方ですが、そういう意味ではいわゆる規制改革等が言うような市場原理ではなく、 かつ今の制度のように市町村が保育ニーズを逆に潜在化させてしまうようなことでもなく、 むしろ阿藤部会長代理がおっしゃったように、いわゆる保育ニーズをしっかりと顕在化させ つつ、しかし公的な保育を保障しようということで制度設計の議論をしたわけです。その大 前提はもちろん相当の財源を確保して、いわゆる需給バランスを取らなければ、いくら保育 を利用したい人がたくさん出てきても保育所が足りませんということで話にならないわけ ですから、当然量的拡大を前提としながらも、もちろん質も担保する。その際に、今お話に 出た部分ですけれども、直接契約という言葉でまだ一部の誤解を招いているようですが、私 は当事者として直接契約とは全く思っておりません。つまり、保護者が保育所に入れたいと 言って直接保育所に行って申込みができるかというと、できません。今検討しているのは、 その前にまず市町村に行って、例えばどの程度就労しているか、母子家庭であるかないか、 保育の必要性や量、あるいは福祉的要因などを市町村が判断し、それに基づいて保育の必要 度合いを市町村が認定する。市町村からその認定を受けて初めて保育所に行けるわけですの で、いきなり保育所には行けない。まず、市町村で公的なフィルターを通さなければいけな い。その上で希望する保育所を選ぶことになっています。その際にも当然、第1希望に全部 入れるとは限りませんので、その場合には先ほどのケアマネジャーではありませんけれども、 市町村が中心となってさまざまな調整やコーディネート、あるいはいろいろなサポートをし なければならない。そういうセーフティネットの構築もやらなければいけないというところ まで議論しておりまして、大事なのは具体的にどこまで詳細な制度設計をして、今ご意見が あったような心配がないような形をつくれるかというところではないかと私は思っていま す。  それからもう1点は、認定こども園です。これも私は認定こども園制度の委員でしたので 申し上げておきたいと思いますが、むしろ認定こども園の方が、ある意味で確かにより直接 契約に近い。ただし、保育に欠ける要件の判断は、市町村でしてもらわなければいけないと いう少しややこしい関係ですが、今回の保育制度改革によって、ある種の要保育認定的な要 素が入り、公的な契約ということになると、その大きい制度改革を踏まえて、認定こども園 の今の契約のあり方も見直さなければいけないのではないかということがあります。認定こ ども園の制度改革の議論が具体的に踏み込んでいないというのは、肝心の保育所を中心とし た保育制度改革がまだ決着していないので、そこを踏まえてその上で認定こども園の制度改 革をしようという今の流れだろうと理解しております。 ○大日向部会長  ありがとうございました。どうぞ。 ○柏女委員  時間が押してしまって申し訳ございません。1点だけ要望させていただきたいと思います。 少子化対策特別部会で新制度体系の議論が行われているということに私は期待を持ってい ます。「基本的考え方」では、新制度体系は障害のシステムや社会的養護システムを包含す るようなものにする、あるいはそのシステムと連結するように配慮するということが基本的 な考え方の中に書かれています。したがって、この議論をしていただくときに新制度体系の 中に社会的養護、あるいは障害のシステムを組み込んだものにぜひしていただければ、ある いはご配慮をお願いしたいと思います。そうしないと、また社会的養護や障害と保育や子育 て支援サービスの間に切れ目が生じてしまって、間に落ちてしまう子どもたちが後を絶たな い、あるいは間に落ちてしまう、さまざまな子育て家庭が後を絶たないということになりま すので、ぜひそこはご配慮をお願いしたいと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。私もこの少子化対策特別部会にはかかわらせていただいておりま す。部会の議論の中身が必ずしも正確に伝わらないこともこれまであったようで、その点に つきましては吉田委員から補てんしていただきましてありがとうございます。  この部会では次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について議論を進めており ますが、この議論は昨年の5月にまとめました「基本的考え方」に基づいて行っております。 すべての子どもの健やかな育ちの支援を基本としております。同時に重点戦略が指摘してい るように、すべての人々が願う理想の生き方と現実の間にある今のギャップをいかに埋めて いくかということをポイントとしております。昨年の秋以来の不況もあるかと思いますが、 保育の潜在ニーズが非常に顕在化されています。やはり保育の制度体系の新たな見直しとい うのは喫緊課題であろうという点に関しましては、阿藤部会長代理からも適切なおまとめと エールをいただいたと思いますが、質の確保された量の拡大を図っていくということを部会 ではいつも念頭において議論をしております。子どもの健やかな育成は未来への投資です。 そうしますと、国が責任を持って取り組むべきことで、国・地方の公的責任を決して後退さ せることではない。むしろ強化をすることが大切だということでは、すべての委員が合意し て議論を進めております。これも阿藤部会長代理がご指摘されましたが、そのためにも財源 確保が大前提とした議論でございまして、そのためにも本日皆さまからいただきました貴重 なご指摘・ご意見を踏まえまして、今後とも具体的な制度設計の議論を進めてまいりたいと 思います。ありがとうございました。  それでは時間も多少押しておりますので、次の議題に入らせていただきます。次は、厚生 労働省における子育て支援対策の予算面の拡充の状況についてでございます。事務局よりご 説明をお願いいたします。 ○高倉総務課長  それでは、資料3と資料4で予算の拡充の取組状況について要点のみで恐縮ですが、ご報 告させていただきたいと存じます。  まず資料の3です。これが平成21年度のいわゆる当初予算です。おめくりただいて2ペ ージは雇用均等・児童家庭局の予算の額です。9,815億円、伸び率2.0%という規模の予算 で拡充を図っております。  全体像として、10ページをご覧いただけますでしょうか。資料3の10ページは、平成 20年度の厚生労働省第2次補正予算です。この第2次補正予算は、平成20年度の終わりの ころに可決されたわけですけれども、ここにありますように、複数年度の分が入っており、 合計で2,400億円以上の予算がプラスアルファで計上されています。これが全体の規模観で す。  3ページからは順次、内容です。まず資料の作りとしまして、文章で書いてありますのが 当初予算で、ところどころ枠囲みの中で、参考として第2次補正予算の関係部分もはめ込ん で書いてあります。3ページの当初予算は、「すべての家庭を対象とした地域子育て支援対 策の充実」ということに関しては、市町村でさまざまな事業を行っていただくものに対して 交付金を出しております。ソフト交付金と呼んでおりますけれども、その交付金の規模を 388億円に引き上げるとともに、対象事業として人材養成事業の新規追加や、ファミリー・ サポート・センター事業の拡充といった内容を盛り込んで充実を図ろうとしているものです。  次に4ページです。(2)としまして、保育サービスの充実です。「新待機児童ゼロ作戦の推 進」ということで、保育所の受入れ児童数の拡大。これは前の年に定員枠が増えた分、義務 的に予算を拡充しなければならないとなっておりまして、その分を計上しているわけです。 また内容面での改善としましては、この4ページの下から3分の1辺りに書いてありますが、 第3子目以降の保育料の無料化という事項も盛り込んであります。  また最後の丸の「多様な保育サービスの提供」で、家庭的保育事業あるいは一時預かり事 業といった拡充。また事業所内保育施設などについても地域に使っていただくための措置と いったものを盛り込んであります。  同じ4ページの一番下の参考欄では、第2次補正予算の内訳になりますが、都道府県に国 全体として文部科学省分も含めて総額1,000億円の規模で「安心こども基金」という通称の 基金を創設したところで、目標としまして平成20年度から平成21年、平成22年までの3 年間は集中重点期間と設定していますけれども、その間に当初、新待機児童ゼロ作戦で打ち 出したときよりもさらに前倒しをしまして、15万人分の保育所等の整備をするために必要 な資金を設けたところです。内容面でも、例えば待機児童が多いけれども、財政力に乏しい 自治体に関しまして補助率のかさ上げを行う、あるいはまた小規模な分園などの整備を進め る。賃借物件等でも対応できるようにするなど、さまざまな工夫を入れて、今、都道府県で 鋭意執行に着手していただいているところです。  5ページの一番上は「放課後子どもプラン」です。これは放課後児童対策ですけれども、 ここは放課後児童クラブ、あるいは文部科学省と連携して行っている「放課後子どもプラン」 を進めていくための予算を計上しています。内容面は細かく書いておりませんが、例えば放 課後児童クラブの整備費につきまして、単価を大幅に引き上げるといった内容を盛り込んで おります。  2は、児童虐待などの要保護児童対策です。「地域における体制整備」は、先ほど申しま したソフト交付金の中のさまざまな事業で対応しております。また「児童相談所の機能強化」 ということで、保護者指導の事業あるいは一時保護所における教員等の配置の促進といった 内容を盛り込んでおります。「社会的養護体制の拡充」につきましては、本日の第1議題の 中でいろいろと触れられました小規模住居型児童養育事業や里親支援体制の充実、小規模ケ アの推進、幼稚園費の創設などの充実を図っているところです。また、施設退所児童への支 援。就業・生活支援の充実というところでも一定の事業を提唱しております。  端折って恐縮ですが、6ページは大きなところで3の「母子家庭等自立支援対策の推進」 です。ここでは看護師などの資格取得を支援するための高等技能訓練促進費等の事業、ある いは自立支援プログラムの策定事業の推進などの充実を図っておりますが、第2次補正予算 の中で、特にこの高等技能訓練促進費の支給期間について、もっと長い期間出せるようにと いう改正を行っております。  4の「母子保健医療の充実」です。7ページの一番上に書いてあります新規の事業としま して妊産婦ケアセンターへの支援です。産前産後における妊産婦のサポートを行うための場 所を整備していくという事業を新規に盛り込んだところです。  5番目の「出産等に係る経済的負担の軽減」です。これは平成20年度第2次補正予算の 内容ですけれども、妊婦健診について必要な回数を受けられるようにということで、合計 14回程度が標準的に必要とされているうち、まだ地方財政措置がされていなかった9回分 につきまして、半分を国費、半分を地方財政措置ということで、財源を確保して公費負担の 拡充を図るといった内容を盛り込んでいるところです。また、もう一つの参考欄に書いてあ りますのは、子育て応援特別手当の支給です。平成20年度の事業としまして、小学校就学 前3年間の第2子以降についての現金給付を行ったところです。  同じページの一番下に、今度は働き方等で「育児・介護休業制度の拡充」です。これは法 律の見直しを国会に提出しておりまして、まさに今週審議される見通しになっておりますけ れども、その関係での事業の予算関係です。8ページ上の枠囲みの中で、補正予算の中でそ のような育児休業・短時間勤務制度の取得者を奨励する意味で中小企業の事業主に対する助 成金の拡充等を盛り込んでいるところです。  また、(2)の事業所内保育施設ですけれども、これも助成期間の延長等の措置を予算計上 しております。以上で資料3の説明は終わらせていただきます。  資料4です。今回、5月の終わりに成立いたしました平成21年度の補正予算です。これ もさらに上乗せで、合計2,719億円強ということですが、この全体像は4ページの横長の資 料でご説明させていただきます。  1点目としては、まずは子育て応援特別手当です。平成20年度の第2次補正予算で行い ました現金給付の事業に関しまして、現下の不況下で、全体の個人所得が減少しつつあるこ とに鑑みて、平成21年度に限り、3歳から5歳まで、今度は第1子から対象とするという 拡大をした上で行うという予算を計上しております。  2番目の大きな箱は、安心こども基金です。平成20年度の第2次補正予算では1,000億 円規模で、中ほどの黄色の枠内にあります創設した基金に関しまして、さらに1,500億円の 上積みをいたしまして、下から二つ目のオレンジ色の箱にあります(1)〜(4)までの四つの柱を さらに拡充しようというものです。(1)の「保育サービス等の充実」は、第2次補正予算に加 えましてさらにきめ細かな予算を使えるようにするというものです。(2)の「すべての家庭を 対象とした地域子育支援の充実」以下、(2)、(3)、(4)は第2次補正予算では保育所中心でした けれども、今度はすべての家庭に対する支援、あるいは社会的養護などということで幅を広 げたところです。これにつきましての内容は各ページでご覧いただきたいと存じます。  7ページをご覧ください。1,500億円追加したうちの相当大きな比重を地域子育て創生プ ロジェクトという予算を基金にしております。この「ソフト事業取組例」あるいは「改修等 事業」ということで、合計10個ほどの事業の柱を掲げておりますけれども、こういった事 業の柱立てに合致すると市町村が考え、また都道府県が認めるものは、いちいち国にこれが 当たっているか、当たっていないかということはご相談いただかずに、どんどん創意工夫を 凝らして推進していただけるようにしたいということで、全国各地でさまざまな子育て支援 の活動が立ち上がっていくことを支援したいという事業として計上しております。  次の8ページは「ひとり親家庭等対策の強化」ということです。内容の細かいところは省 略させていただきますけれども、先ほどの平成21年度の当初予算、あるいは平成20年度 の第2次補正予算などで、一番上の箱にあります高等技能訓練の受講時の給付の充実に着手 したところでありますけれども、さらに支給額を引き上げるという内容、あるいはまた就学 期間の全期間、1か月目から資金を援助できるようにするといった内容を盛り込むといった、 かなり幅広い内容拡充をしております。  9ページは「社会的養護の充実」の関係です。「入所児童等に対する支援」として、本日 の第1議案でも話題となっておりました就業の支援です。非常に厳しい雇用情勢の下で、ぜ ひこういった児童養護施設の退所者の人たちの就業支援を強化したいと考えまして、職業紹 介等を行う企業などで、この箱に書いてありますように職場開拓あるいは就職後の職場訪問 などの相談支援を行っていただくための予算を盛り込んでおります。また、施設の環境改善、 さらには職員の資質向上のための研修費等を盛り込んでおります。  10ページは安心こども基金の事業としてではなく、その外枠の毎年度の事業ですけれど も、特定不妊治療につきまして1回当たりの助成金の額を10万円から15万円に引き上げ るということ。また、併せて不妊治療に関しまして理解をしていただけるようにするための 普及啓発事業もセットで進めていくための予算計上をしております。  最後の11ページは、先ほど途中で触れました働き方の関係で、短時間正社員といったよ うな仕組みを導入する場合の助成金の拡充ということも盛り込んでいるということです。以 上です。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今のご説明につきまして、あまり時間がなくて恐縮ですが、 ご質問・ご意見を。吉田委員、それから庄司委員、お願いいたします。 ○吉田委員  時間が押しておりますので、要望だけにさせていただきます。一時預かり事業のことです。 最近、全国あちらこちらに行っていますと、かなり切実な声が聞こえます。一時預かりは、 第二種社会福祉事業として、きちんと制度化されて、量的にもあるいは質的にもということ を趣旨として充実を目指されているわけですが、その延長線上の課題として、事業としては 年間300人以上の利用者が必要であったり、あるいは基本的には保育士2人の配置が必要 であったり、あるいは保育所であれば本体の経理と別に経理区分しないといけない、あるい は社会福祉法人に理事会以外に評議員会を置かなくてはいけない。筋としては私も全くそう だろうと思っていたのですが、実は保育所の現場からすると、これは実施できないというお 話がかなりありまして、例えば比較的最近に群馬県が保育所に対してこの調査をしました。 回収率は6割ぐらいですが、回答状況を見ると、群馬県の認可保育所においては6割ぐらい が従来でいう一時保育を実施していた。しかし、そのうち7割が年間300人未満の利用児 童数であった。それから、300人以上の所も大部分が実は単独では赤字であるということで、 平成21年度以降も一時預かりになって、これを今後継続するかという質問をしたところ、 約半数が継続できない、もしくは検討中であるということで、せっかく制度化した事業がそ の趣旨と反対に保育現場ではとても実施できないということで、かなり困難な状況が予想さ れます。都市部はともかくとして、地域に密着して、少ない人数であっても必要な家庭の子 どもを預かることが逆にできなくなるということは、全国2万2,000か所を超える認可保育 所があるわけですから、地域密着型で認可保育所以外の利用も今回は可能にしたとは言いな がら、現実にはやはりそれだけの保育所を活用すると環境的にも当然保育所という安全・安 心な環境ですし、逆に一時預かりの子どもだけでなく、通常の園児と一緒になったりといろ いろなメリットがあるかと私は思いますが、そういう意味で要望ですけれども、制度の趣旨 はよく理解できますが、保育現場で本当にきちんと良い一時預かりができるような運用上の 改善なり、工夫なりということをぜひしていただきたいと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。庄司委員、お願いいたします。 ○庄司委員  あまり大きなことではないのですけれども、いただいた資料でほとんどのところに「家庭 的保育(保育ママ)」と付いています。「保育ママ」というと、女性に限定されるようなイメ ージがありますし、ママならできると思われがちです。そうではなく家庭的な環境で保育を するということですので、あえて付ける必要はないのではないかと思います。ご検討いただ ければと思います。 ○大日向部会長  それでは、石津委員と柏女委員のところで一度終わらせていただいてよろしいですか。 ○石津委員  ファミリー・サポート・センターですが、病児保育や病後児保育も展開するということだ とすると、今、次世代育成支援対策交付金にポイント制で計算しているようなのですけれど も、やはり単独補助にして、それを誘導するようにしていった方が使い勝手がよいのではな いかということで、とても良い制度だと思うのでご検討いただきたいと思います。  それから、妊産婦健診の14回への拡大です。これは平成22年度以降もぜひ継続してい ただきたいということと、「無料化」というような誤った誤解が役所と診療所でだいぶ混乱 を招いているようですので、あくまで14回の拡大だということを周知していただければと いうこと。  最後に、医療費の無料化です。市町村ごと、都道府県ごとに今バラバラになっていまして、 ここまできますと住んでいる所によって無料であったり、無料でなかったりということがよ いのかどうかということをぜひ検討していただいて、無料化の方向で予算を付けていただけ ればありがたいと思います。以上です。 ○柏女委員  先ほど吉田委員がおっしゃったことですけれども、私は石川県の職員をしていて、石川県 でも大きな問題になっています。実は、石川県はマイ保育園という登録制度で保育園に登録 していただいて、そして子育て支援プランを作りながら一時保育を運用していく仕組みを作 っているわけですけれども、それができなくなってしまって、今あります同じような問題を 抱えている地域の独創的な取組を支援するという意味でのご配慮をお願いしたいと思って おります。  もう1点は、先ほどから予算の関係のお話がありましたけれども、昼間の一時預かりの話 が出ました。それからファミリー・サポート・センターの話が出ました。ファミリー・サポ ート・センターや一時預かりは次世代育成支援の交付金事業ですので、市町村はお金を出し ますけれども、県はお金を出さないという仕組みになっています。しかし、昼夜預かる里親 になった途端、今度は市町村は負担しないで県が負担をする仕組みになっています。ここも 昼夜預かると市町村が負担しない、昼間だけ預かると県は負担しないというトレードオフ関 係が生じています。この辺もぜひ少子化対策特別部会でこうした切れ目をなくしていただく ような議論をしていただけるとありがたいと思っております。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。 ○渡辺委員  一つだけ。ひとり親家庭対策というのは、先ほどから議論している社会的養護などの背景 としても、どうしても絡んでくる問題としてあると思いますが、生活保護もかなり厳しくな ってきていますし、児童扶養手当もカットということになってきたりもしております。当然 今回のこの予算の背景を見ると、やはり職業訓練や自立支援に重点が置かれているようです が、実際にはなかなかそれを受け入れてもらえない企業環境や労働環境というものがありま すので、子どもという児童福祉の視点でいうと、やはり子どもが平均的な生活の中できちん と生活ができるようにという意味でも、経済的な支援についてはしっかりともう一度考えて いただきたいと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。雇用均等・児童家庭局におかれましては、この予算取りは大変幅 広くご苦心くださったのではないかと思います。なお、ただ今大変貴重なご意見も幾つか出 されましたので、留意していただきながら、補正予算が早期に執行されるよう作業に取り組 んでいただければと思います。  今日はもう一つ議題がありまして、新型インフルエンザに対する対応状況、そして児童虐 待防止法につきまして、12時終了予定を若干超してしまうかもしれませんが、まず事務局 からご説明をお願いいたします。 ○杉上虐待防止対策室長  それでは私からご説明申し上げます。時間の関係もありますので、資料5-1を見ていただ きたいと思います。これは5月22日に新型インフルエンザ対策本部で決定したものですけ れども、5月22日に先だって、5月16日に実は兵庫県神戸市において最初の新型インフル エンザ患者が発生いたしました。その6日後に本部決定をした文書です。どのようなご説明 をしたいかと言いますと、感染予防等は私どもの部局ではなかなか説明しづらいものがあり ます。当初5月16日に神戸において最初の新型インフルエンザが発生した後、実は「新型 インフルエンザ対策行動計画」という政府の決定に基づきまして、学校、保育所、老人の通 園型の施設、あるいは障害児の通園型の施設といったかなり広範囲の所への休業要請という ことで、私どもの分野としても影響があったということです。そういったことで5月16日 に最初の患者が発生しまして、これは5月22日に政府として決めたわけですが、この中段 以降で、今回の新型インフルエンザは感染力が強いけれども、多くの感染者は軽症のまま回 復するということ、それから、2番として抗インフルエンザウイルス薬の治療がかなり有効、 これはタミフル等ですが、こういったことで季節性インフルエンザとかなり似通ったものが 多いということがわかったわけです。片や、新型インフルエンザ行動計画というのはどうい うものに基づいてということですが、今回、資料としてご用意していませんけれども、強毒 性の鳥インフルエンザ等も念頭に置いた、かなりきついという言い方は正しくないのかもし れませんけれども、感染予防という観点から、幅広く学校等に休業を要請するということで、 当初やらせていただいたものについて、平成21年5月22日に、こういった認識に基づい て弾力的な運用を決めたということです。  具体的に言いますと、資料5-1の3ページですけれども、一番下の「(五)学校・保育施設 等の臨時休業の要請についての運用指針は、厚生労働大臣が別途定める」ということで、定 めたものが資料5-2「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運 用指針」です。  1枚めくっていただいて2ページですけれども、「地域における対応について」で、二つ に分けています。(1)「感染の初期、患者発生が少数であり、感染拡大防止に努めるべき地 域」と、もう一つは3ページの(2)「急速な患者数の増加が見られ、重症化の防止に重点を 置くべき地域」という二つの地域に分けた上で、学校・保育施設等の取扱いについて、まず 患者発生が少数の場合は、3ページの(3)になるわけですけれども、「感染の初期においては、 学校(大学を除く。以下同じ)・保育施設等の臨時休業は感染拡大防止に効果がある」という ことで、「市区町村の一部又は全部、場合によっては都道府県の全部での臨時休業を要請す る」という形になっています。  ただ、これが拡大した場合ですけれど、4ページの(3)「学校・保育施設等」で、「地域に おいて急速に患者数が増加している場合には、広範囲の地域で学校・保育施設等の臨時休業 を行うことは、感染拡大防止には効果が薄い」ということで、個別の判断、最後のところで すけれども、季節性インフルエンザと同様の対応にするという形で、弾力化とさせていただ いています。今、新型インフルエンザの患者数は、日曜日現在で416人、16都府県で、患 者数はまだ増えている状況ですけれども、こういった弾力的な取扱いで、感染防止対策とし て、通所型の施設についても一部対応させていただいているというご報告が、1点です。  引き続き、全然違う内容ですけれども、虐待防止法の関係です。資料6の「児童虐待防止 法について」で、1枚めくっていただきまして、この部会でもこれまでご説明等したところ ですけれども、上の箱書きにある通り、平成16年の改正法の附則に基づき、超党派で改正 案がまとめられ、法律が成立し、昨年の4月から施行されています。今回、その施行状況等 について詳しくご報告できれば良かったのですが、作業的に間に合っていません。また、直 近の数字あるいは施行状況等については、取りまとめた上でご報告したいと思っています。  1枚めくっていただき2ページですけれども、今回の法案の中で一番大きな論点として議 員立法の中で組み込まれたものとして、解錠等を伴う立入調査を可能とする制度の導入とい うことで、臨検捜索制度と言っているものです。これについて中間的な報告をしたいと思っ ています。一番下の小さい字で恐縮ですが、平成20年4月1日〜8月31日までの間に、新 しい制度を実施したものについてのみのご報告です。実は先週の日曜日だったと思いますけ れども、一部の報道が各都道府県に個別に照会をかけて、後ほどご説明する臨検制度につい て、新たな適用が2件でとどまっている、あるいは出頭要求が24件程度で、強権的な発動 について手探りの状況という新聞報道がありました。先ほど申した通り私どもにもう少し時 間をいただき、適用状況等については中身ももう少し整理した上でご報告したいと考えてい ます。これはあくまでも平成20年8月末までの状況ということで、ご了解いただきたいと 思います。  今回の仕組みですが、赤書きの所が新しい制度で、児童相談所が家庭訪問に行きますと、 なかなか対応していただけない家庭が現状としてあります。そうした場合に、知事の出頭要 求をかけるということです。それでも対応していただけない、出頭に応じないという場合に 立入調査をします。さらに、その立入調査も妨害等あるいは反応がないということで、再出 頭要求をかけた上で、これに対しても反応がない場合について、児童相談所が裁判所に許可 状の請求をして許可状をいただいた上で、解錠等を含む臨検制度ということで、実力行使が できるような仕組みが、前回の改正虐待防止法の中で取り入れられたところです。平成20 年8月までのところで言いますと、臨検までに行ったケースは0件で、ただ最初の前段階の 出頭要求については9件の報告があったということです。  1、2例を説明しますと、3ページの実施例の1ですが、これは不登校あるいは養育放棄 の疑いで、児童相談所の家庭訪問あるいは関係機関が接触を度々やったわけですけれども、 応じないということで、知事名の出頭要求をかけたということです。この件についていえば 出頭要求後、家族全員で児童相談所に面接に来たということで、この段階で終わったという 例です。それから、4ページの実施例3です。少し似たような例かもしれませんけれども、 養育放棄の虐待通告があったということです。ガスは止められ、部屋はゴミだらけの状況で、 家庭訪問に応じないため出頭要求するが、なかなか応じてもらえない状況ということで、出 頭要求をかけたのですけれども、これに対しても応じなかったということで、立入調査を実 施したと。この立入調査はうまくやって、その際職権による一時保護をやったということで す。またその後、強制措置28条のため、家庭裁判所に申し立てして施設入所が決まったと いう形になっているということです。  続いて5ページですけれども、平成19年に虐待防止法の改正がありました。平成20年4 月から施行されているわけですけれども、この改正法の施行の附則において、二つの検討条 項が入っています。第二条の順番が逆になりますが、2番ですけれども社会的養護の関係、 これはまさしく本部会の冒頭でご説明した通り、検討中の部分もあります。また前回、児童 福祉法の改正ということで、一部実現したものもありますので、検討中ということです。第 二条の第1項です。「政府は、この法律の施行後三年以内に、児童虐待の防止等を図り、児 童の権利利益を擁護する観点から親権に係る制度の見直しについて検討を行い、その結果に 基づいて必要な措置を講ずる」ということで、前回の超党派の議員の勉強会あるいは虐待防 止法の改正の際の国会の審議においても議論があったわけですけれども、今、児童相談所長 については親権喪失の申立てができる仕組みになっています。ただ、今の仕組みでは親権が 0か100かということで、一つは一部を制限するような仕組みあるいは期間を一部にという 議論があります。もちろん親権に係る議論はそれだけではないわけですけれども、そういっ たもの全般について検討を行って必要な措置を講ずることになっています。  これは、次のページの6ページです。基本的には民法との関連があるので、法務省サイド の話になるわけですけれども、1は「必要性」ということで、今申し上げました附則の話で、 2の「検討」については、民法改正の要否の検討ということで、ここに書いてある通りです。 それから、2の「検討の進め方」として、まず研究会を立ち上げて検討を開始して、成果を 取りまとめた上で、場合によっては法制審議会へ諮問するという流れになっています。  メンバー等については、7ページに付けています。私どもも関係省庁として参加しますし、 民法学者の方が多いわけですけれども、児童相談所の代表や弁護士の方にもご参画いただい て、先週第1回目の研究会が開催されたという状況になっています。以上です。少し早足で、 申し訳ありません。 ○大日向部会長  ありがとうございました。終了予定時刻を過ぎていますが、せっかくの機会ですので、も しご意見・ご質問がありましたら、どうぞご発言ください。よろしいですか。  ありがとうございました。最後に次回以降の日程について、事務局からご説明をお願いし ます。 ○高倉総務課長  次回以降の日程については、追ってご連絡させていただきたいと思いますので、よろしく お願いします。 ○大日向部会長  それでは、これをもって本日の部会を閉会いたします。どうもありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課企画法令係  TEL:03−5253−1111(内線7826)