09/07/15 第2回慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会議事録 第2回 慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会 議事次第         日 時:平成21年7月15日(水) 13:00〜15:00         場 所:航空会館 201会議室 1 開 会 2 議 事   1.慢性疾患対策の問題点及び対応策について   2.その他 3 閉 会 照会先:健康局総務課生活習慣病対策室(内線2971)     健康局疾病対策課(内線2981) ○関生活習慣病対策室長 それでは、定刻の1時よりちょっと早い時間でございますけれども、 御出席予定の先生方、お集まりでございますので、ただいまから第2回目の慢性疾患対策の更な る充実に向けた検討会を開催させていただきます。  委員の皆様方にはお暑い中、または、御多忙の折お集まりいただきまして、御礼申し上げます。  本日は岡村委員、葛原委員、柴田委員から御欠席の御連絡をいただいております。  それでは、この後の進行を久道座長によろしくお願いいたします。 ○久道座長 それでは、今日は2回目ですけれども、前回の議論はフリーディスカッションとい うことで、特にまとまりはなかったのですが、今回から少し具体的な慢性疾患対策の充実に向け て検討を進めていきたいと考えております。  まず、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。 (事務局 配付資料確認) ○関生活習慣病対策室長 本日、御欠席の御連絡をいただいております戸山委員から、中村さん を本日の検討会に代理としてお認めいただきたいという連絡が来ておりますが、いかがでござい ましょうか。 ○久道座長 皆さん、いかがでしょうか。よろしいですか。 (「異議なし」と声あり) ○久道座長 どうもありがとうございます。それでは、中村さんを委員代理として認めたいと思 います。よろしくお願いします。  では、早速議事に移りたいと思いますが、資料1については今、説明がありましたように、前 回の皆さんの御意見、論点をまとめたものです。それから、資料2については前回の議論を踏ま えて、これからこの委員会でまとめていくための大きな柱を幾つかに分けて議論しやすいように してございます。検討会のアウトプットを作成する段階でも、こうした柱立てをしてはどうかとい う考えで、参考までに出していただきました。  それでは、資料2の最初の項目、「1 国民生活と慢性疾患」ですが、この項では、この検討会 の背景について、いわば導入という柱立てになりますが、これについての御意見をいただければ ありがたいと思います。いかがでしょうか。もう少しきちんと検討会の目的とか趣旨というもの がここに入るのだろうと思いますので、もっと明確に記載せよとか、何か御意見があろうかと思 いますが、いかがでしょうか。  それでは、ここは議論していて思いついたら、また戻るということもいたしますので、ここは 一旦飛ばしまして、次の「2 施策の現況」の項目についてですが、まず、最初に、今、紹介い ただきました中村さんから、痛み(pain)についてのプレゼンテーションがあるということです ので、よろしいでしょうか。お願いいたします。 ○戸山委員(代理:中村氏) それでは、早速、痛みに関するプレゼンを行わせていただきます。 お手元資料3です。  まず、資料の2枚目ですが、これは前回の検討会でも議論された内容かと存じますが、まず慢 性疾患に対する行政からのこれまでのアプローチとしては、ここに挙げさせていただきましたよ うな、がん対策あるいは生活習慣病、アレルギー、難病、精神疾患等々、個別の疾患に対するい ろいろな施策が行われ、その時点、その時点での行政課題に沿った形で進められて、ある一定の 成果が上がっているという認識でおります。  その中にあって、ちょうどこれらの個別の行政施策が余り行き届かず、手がつけられなかった というような問題意識というものを、こちらの図はイメージとして示させていただいています。 その中でも、特に慢性疼痛性疾患というものに対する施策が少し遅れているのではないかという 問題意識です。  では、その痛みに関しては次のページに、これも前回少しお話しいただいたかと思いますけれ ども、既にアメリカでは痛みの問題に注目していて、1990年後半に実態調査を全米で行って、非 常に強い慢性痛に悩む患者さんが成人人口のなんと9%を上回るという結果が出ています。更に こういった患者さん方が無効な治療やドクターショッピングという医療費の浪費、あるいは痛み によって就労が困難になるといった社会経済に対する損失というものを推定すると約9兆円にな るといった報告を出しております。  こういった調査の結果を受けて2000年には米国議会において「痛みの10年」といった宣言を 採択して、全米全土にわたる慢性痛の実態調査や痛みの評価、治療基準の作成・実施、更には、 医師の再教育、痛みを見直す国民週間の設定といった問題意識を国民全体に知らしめ、痛みとい うものをもう一度見つめ直して、体温や血圧、心拍数、呼吸数に続く5つ目のバイタルサインと して、すべての患者に対して評価しようではないかといった提言をしております。  そもそも痛みというものに対する施策が遅れた背景には、痛みというものが如何とも捉えがた いものであるということがあります。そもそも痛みというものはどういった形で定義されている のか。こちらにお示ししているのは、国際疼痛学会の方で出されたものですが、痛みとは、組織 の実質的あるいは潜在的な障害に結びつくか、このような障害を表す言葉を使って述べられる不 快な感覚あるいは情動体験であると、極めて主観的な表現になっております。これは先ほど申し 上げましたように、痛みというものはどうもなかなか捉えがたいものという印象を与える大きな 要因かと思います。  更に、慢性疼痛となりますと、急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間 を超えて持続する痛みと、更に問題が複雑化するわけです。こういった慢性疼痛に関する発生メ カニズムというのは、なかなか解明されておりません。ただ、近年の基礎あるいは臨床研究によ って、やっとその糸口が少しずつ見えてきたかなというのが現状です。そこで、痛みといったも のがどういうものかというのを簡単にお示ししたのが6ページです。  まず、右側に簡単な模式図が書いてございます。また、左下にありますように、人は痛みを皮 膚の方に刺激が来たとしますと、そこから脊髄の方にまいりまして、脊髄視床路を介してこうい った痛覚を感じます。ただ、脊髄視床路というのは大きく分けると2種類の伝導路があります。 信号の伝わるところですね。1つは、感覚系であると外側系、これは脊髄から延髄、脳幹部を通 って大脳皮質体性感覚野というところにまいります。もう一方は、情動にかかわる部分、これは 内側系。この2つがございます。  例えば、足の裏にピンが刺さったという痛み刺激があった場合に、まず人は鋭い痛みを感じる わけですが、これは大部分が脊髄視床路の外側系の感覚系を通ります。ところが、この刺激がず っと長い時間加わってくると、だんだんジーンとする痛みになってきて、それがやがては痛みの 慢性化につながっていきます。このときには先ほど申し上げました内側系の情動系というところ にまで変化が出てくる。つまり、脊髄や脳での痛みを記憶してしまうといったことが起こります。  これをもう少しわかりやすく申し上げたのが、7ページにございます。つまり、持続的な刺激 によって神経回路の可塑的な変容が起こるということです。わかりやすく言うと、長期間持続的 に発せられた痛み信号というものは、痛みの原因があった病巣がたとえ治癒した後でも一種の記 憶として神経回路に残ってしまって、信号を発し続ける可能性がある。つまり、痛みを放置して しまうと、更なる複雑な痛み、つまり慢性疼痛をつくってしまうといった病態が考えられます。  では、こういった慢性疼痛を来す疾患というのはどういうものがあるのか。我々整形外科医で すから、慢性疼痛疾患としては骨・運動器系の疾患があるわけですけれども、そのほかにも神経 障害等があります。具体的な疾患としては、8ページの左側にございます変形性脊椎症、頸肩腕 症候群あるいは骨粗鬆症、関節リウマチ・膠原病、帯状疱疹や糖尿病性の神経障害といったもの があります。  また、機序に関してはまだ解明はされていませんが、右側に書いてございます機能性身体症候 群としては、線維筋痛症であったり、過敏性大腸症候群、慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候 群といった多岐にわたる病気がございます。  更に、こういった病態を複雑にするのは真ん中に書いてございます心因性疼痛、いわゆるうつ 状態、こういった病態がオーバーラップすることによって、より慢性疼痛の病態を複雑にすると いった現実がございます。  それでは、私たちが実際に日常の診療でかかわる筋骨格系の慢性疼痛とはどういうものかとい うのを代表的なものを次の資料9に書かせていただいております。これも大きく分けると3つの 柱があります。身体面、社会生活面、精神心理面と書いてございますけれども、まず、発症当初 というのは外傷であったり、術後、炎症、組織や神経の損傷等の身体面がまずトリガーになりま す。それがやがてはADLの低下や他臓器疾患の併発といった問題を起こして慢性疼痛につなが る。そこに、先ほど申し上げましたように、家族関係の悪化や仕事上、経済的な問題、訴訟や社 会的引きこもりといった社会生活面、あるいはストレスや不快、不安、怒り、不眠やうつ状態と いった精神心理面の影響がお互いに相互作用を及ぼして慢性疼痛の病態を複雑にしていく。こう いった病態に対しては、やはり真ん中に書いてございますように、診療科を超えた全人的観点か らのアプローチが必要であるといったものだと考えております。  10ページに、実際に我々が治療にかかわって非常に難渋したケースを次に代表例として書かせ ていただいております。こちらの患者さんは56歳の男性です。当初は交通外傷による前腕骨折と いうことで治療を受けましたが、最初にどうも見落としがございます。更に年齢あるいは喫煙歴 等もございまして、非常に骨融合が遅延したために、ギプス固定を長期間余儀なくされました。 その結果、リハビリを始めた段階で非常に強い疼痛を訴え、その後いろいろなリハビリをやって 約2年を経過した現在でも、写真を見ていただくとわかりますように、上肢は常にスリングをか けて手袋をつけて、ちょっとした刺激に対しても非常に強い疼痛を来す、いわゆる廃用手といっ た状態になっていらっしゃいます。それを客観的にとらえる方法として右側に書いてございます サーモグラフィーがあります。皮膚の温度が健側と比較して見ますと、かなり低下していること がおわかりいただけると思います。こういった所見から、複合性局所疼痛症候群と診断されてお ります。  ただ、きっかけは勿論身体面だったわけですけれども、それがやがては交通外傷による訴訟問 題ですとか、経済的な問題もございます。もう一つ興味深いのは、最近の臨床研究によってわか ってきました。11ページですが、これは仮想疼痛刺激と言いますけれども、実際の患者さんの体 には何も触れておらず、ただ目の前に人の手が何かで触られるという動画を出した上で脳の fMRI(function MRI)を撮っています。結果が12ページになりますが、先ほど申し上げました仮 想痛みビデオを見たときに、通常健康なボランティアの方ではほとんど脳の血流は変化しません が、アロデニア、痛覚異常を来している患者さんでは実際の身体的な刺激は加わらなくても、視 覚刺激だけで、脳の前頭前野、前帯状回といった領域の血流が非常に増えます。つまり、こうい った仮想痛みビデオによってもアロデニアを来した患者さんの場合は非常に強い不快感を経験す るといったことが、情動面が影響しているということを示唆する所見でございます。  こういった研究により徐々に慢性疼痛の患者さんには身体面だけではなくて、精神・心理面の 影響も加わっているのだというところが解明されつつあるというのが現状です。  こういった結果を踏まえ、13ページですが、今後こういった患者さんを含めた痛み医療に必要 なことはどんなことかということをまとめさせていただきました。まず、当然ですが、正確な器 質的診断、これは言うまでもありませんし痛みに限らず医療においてはすべてそうです。現時点 での器質的治療の限界をしっかりと整理すること、あるいは適切なインフォームド・コンセント を行って適切な治療で慢性化させない、これが第1段階として最も重要であることは言うまでも ありません。  ところが、器質的疾患であってもコントロールする方法の確立については、骨関節の変形があ るからといってすべての方が痛いというわけではなく、つまり、器質的に痛みがあることと、不 快や不安による障害のコントロールは別問題であり、違ったアプローチが必要です。こういった 観点からも単科で診るというのではなくて、いろいろな科を超えたアプローチが必要です。  3つ目が、患者の心理的要因について理解し、器質的要因とのかかわりを含む正確な診断がで きること。治療できない患者などへの方向付けの確立といったことも重要かと思います。  最後に、患者の社会生活面との密接なかかわり、患者会やマスコミとの積極的な情報交換とい ったことも重要かと考えます。  こういった点を考慮して、今我々が考えている慢性疼痛に関する治療体制、診療体制とはどう いうものかというのを、最後の14ページに書かせてきました。身体的なアプローチとして、内科、 ペインクリニック、脳外科、整形外科、理学療法部といった多岐にわたる科の連携によって専門 スタッフを出し、かつ、心理的なアプローチとしては総合診療部、精神・神経科からの専門スタ ッフがお互いに情報を交換しながら集学的に患者さんを治療する。更には、下に書いてございま す患者会や社会資源といったことも重要かと考えます。こういった学際的痛み診療体制というも のができれば今、非常に慢性疼痛で苦しんでいらっしゃる患者さんを少しでも治療して、いい形 に向かっていくのではないかといった考えを持っております。  以上でございます。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  今、説明をいただきましたけれども、皆さんから何か質問はございませんか。  アメリカの「痛みの10年」の調査で9%が痛みで悩む患者ということがわかったということで すが、日本ではこういう調査はあるのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) ちょうどそういった研究が重要であることが最近認識され、慢性 疼痛で苦しんでいらっしゃる患者さんの疫学調査に関する研究課題がアクセプトされて、今年度 から始まるというのが状況です。 ○久道座長 どこでどう始めるのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 厚生科研費での研究班で行われます。先日ちょうど第1回ミーテ ィングが開催されたところでございます。 ○久道座長 国際疼痛学会というのがあるようですけれども、日本疼痛学会というのもあります か。 ○戸山委員(代理:中村氏) 日本疼痛学会や日本慢性疼痛学会がございます。また、ちょうど 去年、第1回運動器疼痛研究会が立ち上がりまして、そういった問題に向けた対応をしていこう という、ちょうど途に着いたところというのが実情でございます。 ○久道座長 日本の場合は日本運動器疼痛研究会ですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 私たち整形外科とペインクリニック、さらには精神神経科の先生 方と一緒にやっていこうという形で始まっております。 ○久道座長 「運動」が入っているのですね。帯状疱疹などは入るのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 入っていないですかね。 ○内田委員 日本慢性疼痛学会というのと、それから、日本ペインクリニック学会というのはあ ります。それは別々です。 ○久道座長 あと、アメリカの「痛みの10年」、ちょうどそろそろ10年になりますよね。何か成 果は上がったのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) まだ具体的な成果としての報告は伺ってはいないのですけれども、 問題意識を持ってこういった評価をやっていこうと、多分今、データをまとめているところかと 思います。近々出るかと思います。 ○久道座長 ほかに質問ないですか。 ○春日委員 この痛みというのは非常に重要な問題だと思うのですけれども、さっき御説明にあ りましたように、痛みというのはもともと自覚的なものなのかもしれませんが、それを客観的な 方法である程度定量化するというのは非常に難しいと思うのですが、その辺に関しての現状を教 えていただけたらと思いますが。 ○戸山委員(代理:中村氏) 今回の調査を行うに当たって、痛みというものをできるだけ客観 的なスコアリングができないかということで、実は幾つかの大学と協議して、国際的にアクセプト されているであろう『ペイン』というジャーナルに出ているスコアリングスケールを日本語に訳 して監修しております。これは多岐にわたるアンケート項目で、患者さんにお送りするようなク エスチョンネア形式ですが、0〜10点までの点数化した項目を幾つかつくり評価するという形で、 それがどのくらい現実に沿ったものであるかというのは、これから調査して決めていこうといっ た状況です。 ○久道座長 よく痛みのレベルを評価するのに、顔の形で5段階か何かやっていますよね、あれ はどうなのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) VAS(Visual analogue scale)というのがあるのですが、これ はただ具体的な痛みの質ですとか、一日の中でどういう状況であるとか、痛みの種類もいろいろ な表現がございますので、評価をするには単純にこれまでに経験した一番強い痛みを10として、 ないのを0とする、では、その10段階で幾つかという評価では余りにもあいまい過ぎるので、も う少し詳細なという形で今回はその作成に当たっております。 ○春日委員 御説明いただいた資料では、PETですかね、それである程度痛みとかを診ているの でしょうけれども、勿論ごく一部の場合には、こういう方法でかなり痛みが定量化できるという 可能性はあるのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 先ほど先生が御指摘になられたように、痛みの研究というのはジ レンマがあります。これは同じような痛み刺激に関しても個人差が非常に出るという問題があり ます。そして、更には情動面が入ってまいりますと、ある人は同じような状況であっても痛いと 感じ、ある人は感じないという問題がありますから、定量にはいろいろな問題が含まれるのです けれども、今おっしゃったように、PETであるとかfMRI、あるいはもう少し基礎的な研究段階で はありますけれども、これは我々がアメリカとの共同研究でやっておりますが、MRIとドラッ グ・デリバリー・システムを使うことによって、炎症に起因する物質を可視化できないかという こともやっておりますので、こういった基礎的な研究がもう少し進んでくれば、痛みが脊髄レベ ルなのか、脳レベルなのか、あるいはそのシグナルがどのくらいかを定量化できるかという辺り も、少しずつ煮詰まってくれば、方向性がもう少し見えるのかなという印象はあります。  ただ、こちらにお出ししているデータに関しても、再現性の問題ですとか、いろいろな問題が まだまだございますので、これはあくまで一番いい画像を出しておりますので、まだまだこれか らかと思います。 ○久道座長 ほかにございませんか。 ○内田委員 最後の表で学際的な痛み診療体制というのがありますけれども、実際にこれだけの 診療科、スタッフが連携して診療体制をとっているということは、日本では今のところないので はないかと思いますが、こういう取り組みをしようというような動きは、どの程度進んでいるの でしょうか。 ○戸山委員(代理:中村氏) ここまでのスタッフがすべてというわけではないのですが、1つ のモデルとして愛知医科大学で学際的痛みセンター、こちらの資料を幾つか転用させていただい ているのですが、そちらでは、これにかなり近い形での痛みに対する取り組みを行っていらっし ゃいます。一定の成果を上げていらっしゃるので、こういった形のモデルケースになるのかなと。 ただ、日本ではそちらだけです。 ○内田委員 難しいですが、その場合、中心になっている診療科の先生はどなたなのですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 中心というのは疾患によっていろいろあるので、どこがイニシア チブというのではなくて、先ほど申し上げましたように、疾患が非常に多岐にわたりますので、 例えば身体面・心理面といった面から考えると、どちらが重きにあるか、ウエートがすべて均等 ではないですから、例えば、筋骨格系があれば整形外科がその患者さんにとってはイニシアチブ をとるかもしれないですし、精神・心理面が大きければ、やはり心療内科、精神神経科の先生方 がイニシアチブをとられる。ですから、お互いの連携ということで動いているとお聞きしており ます。 ○辻本委員 一番最後の14ページの図を見ても、左側の身体的アプローチというのは何らか医療 行為をすることで診療報酬というか、病院の収入につながるような治療ということがやろうと思 えばできるわけですよね。ところが、右側の心理的アプローチというところは、それこそ評価が 難しく、診療点数という形になりにくいといったときに、これらが必要である私たち患者にとっ ては、点数になることはやってもらえるが、点数にならないことはやってもらえないみたいな、 そういう形が今既にあるのが現実ですよね。その辺りについては、ペインなどにお取り組みのお 立場から、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。 ○戸山委員(代理:中村氏) まさにおっしゃるとおりで、これは一般論で申し上げますと、こ ういった慢性疼痛を来された患者さんというのは非常に外来治療等も大変です。と申し上げます のも、やはり患者さんの訴えをしっかり聞き取ってあげたい、拾い上げてあげたいといった思い で、これまでの経過等々をお聞きしていると非常に時間がかかります。それは勿論点数にはなり ません。ただ、そういった患者さんの訴え、これまでの経緯をしっかりとくみ取るということは、 まさに先ほど申し上げた慢性疼痛の本体にかかわるところですから、そういったところをしっか りやらずに、ただ単に注射をするとか、お薬だけをたくさん出すという治療では、これからの慢 性疼痛に対するアプローチとしては片手落ちだと私は感じます。ですから、こちらの身体面だけ ではなくて、精神・心理面の方のアプローチも、例えば、それを保険点数に持っていくというの はなかなか難しいかと思うのですけれども、この慢性疼痛に関する施策としては、むしろ私は身 体的なこれまでの医療とは違ったアプローチ、こういった精神・心理面からのアプローチが非常 に重要になってくるのではないか。そこが正しく評価されないと、こういった形だけで幾らつく っても、実際の医療の現場に根付かないのではないかという印象を持っております。 ○福井委員 先ほどの先生の運動器関係の痛みの学会と、内田先生がおっしゃったペイン関係の 学会を全部一緒にするという話はないのですか。診療面だけではなくて、やはり学会自体もその ようなアプローチをしないと、なかなか現場での統合というのは進みにくいのではないですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) まさしく最後に書かせていただいていますように、こういった痛 みというものはペインクリニックの先生たちだけではない、筋骨格系の我々、整形外科だけの問 題ではないですから、全科的なアプローチが重要ですから、それが研究会・学会が全部バラバラ というのは、やはりおかしな話で、理想を申し上げれば、やはりそういった学会がお互いに情報 交換をする、統括する、これは現実的には私レベルではなかなかわからないのですけれども、そ ういったアプローチがこれからの疼痛に対するアプローチとしては重要かと、御指摘のとおりか と思います。 ○内田委員 今の話に関連して、やはり疾患別の体系ではなくて、症候群としての体系ですから、 非常にその辺のところは難しいですよね。これまでの日本の医学の体系が疾患別になっています から。 ○上田健康局長 1点だけ。痛みの概念のときに、しびれとかあるいは違和感、あるいは感覚異 常、そこまで範疇を広げるのか、その辺をもし解説をしていただきたい。 ○戸山委員(代理:中村氏) そこは実際に我々が患者さんにアンケートをとったときに、どこ までの患者さんを入れるのか、こういった疼痛、痛みがある患者さんをとるのか、これは患者さ んの主観で大きく変わってきます。例えば、これはちょっとしびれているだけだよと表現される 方もいるし、そのしびれが例えば、これは言葉で皆さんよくおっしゃるのですけれども、ピリピ リ、ジリジリとか。ジリジリなってくると痛しびれているというような表現をされるので、これ は我々がどこで線引きをするというよりは、患者さんがどういった表現をされたものを疼痛とと るかという、先ほど申し上げたペインの中で痛みの質が細かく分かれております。先ほど言いま したジリジリですとかピリピリ。そういった辺りで評価しないと、しびれと一言で言っても程度 が違いますし、痛みとの境界領域というのは不明な部分がありますので、やはりそういった細か い詳細な検討をスコアリングすることで定量化しないと、これは痛みだよ、これはしびれだよと いうオール・オア・ナンではなかなか難しいという印象を持っております。 ○久道座長 ほかにございませんか。  この検討会は施策の現況のところを一応共通認識しておく必要があろうかと思うのです。3ペ ージ目の図ですが、先生のところで書かれたものでしょうか、それとも事務局の案ですか。 ○戸山委員(代理:中村氏) お互いにつくったものです。 ○久道座長 例えば、余り行われていない領域というのは真ん中ですか。 ○岩崎疾病対策課長 これは前回出た資料に先生に少しいじっていただいたというものです。 ○久道座長 ここに書いてあるのは、かなり対策が行われている領域という認識ですか。皆さん それでよろしいのですかね。そういうことがあって、この慢性疾患の特に疼痛性疾患についての 対策をどうするかというのが、この検討会の課題ですよね。そういうことでいいのですね。  ほかに質問あるいは御意見でもいいです、この施策の現況のところで何か御意見はないですか。  それでは、前に進みますが、今日は池田委員に、これは「デイリ」ですか「ダリ」ですか。 ○池田委員 「ダリ」です。 ○久道座長 昔は「デイリ」と言いませんでしたか。私は「デイリ」と覚えていたのですが、間 違いですか。 ○池田委員 日本人は「ダリ」と言う人が多いですね。 ○久道座長 外国は「デイリ」ですか。 ○池田委員 そうですね。 ○久道座長 では、DALYについてのプレゼンテーションをお願いしているということですので、 よろしくお願いいたします。 ○池田委員 池田でございます。それでは、前回少し話題に出たのですけれども、患者のQOL あるいは障害といったものを加味した健康指標として世界的に使われている指標、DALYについ て簡単に紹介させていただきたいと思います。  今まで死亡率とか死亡者数だけで見ますと、慢性疾患といったものの疾病負担の重要性が必ず しも数字できちんと評価されなかったわけですが、こうしたQOLなどを加味した指標というこ とで、1940年代から質調整生存年(Quality Adjusted Life Year)という単位が使われ出して きました。これは主に経済評価の領域でして、実は私も大変興味を持って学生のときに福井先生 に教えていただきながら勉強してきたわけですけれども、これはQOLを加味した生存年という ことでして、主に治療をすればそれにどれだけお金がかかると、そして、治療によってどれだけ のQOLが上がって、どれだけの生存が延びるというようなところを評価して、かけたお金に見 合った効果が出ているのかどうか、かけたお金はむだ遣いになっていないのかどうか、よりよい お金の使い方があるのか、ないのかということを評価するための指標として、質調整生存年とい う単位が使われてきました。しかし、これですと本来理想的な健康状態に比べて、どれだけある 疾患で患者さんが障害を持って苦しんでいらっしゃるかという評価にはなかなか使いにくいとい うことで、実はこの質調整生存年というのは値が増えれば増えるほど健康状態がよくなる、命が 延びるという尺度ですが、これはちょっとひっくり返したような障害の程度とそれを抱えた年数 あるいは本来の寿命よりもどれだけ早く亡くなってしまったかということを評価していく障害調 整生存年という単位が新たに開発されました。1992年から世界銀行の要請によってWHOと共同 でMurrayという方がこうした尺度の開発及び実際に算出を開始しています。  この単位は、最初のうちは主に開発途上国で算出を行う、つまり寿命まで生きない、若年で死 亡される方がどのくらい、どんな病気で発生しているのだというようなところを評価していくと いうことで使われてきておりましたが、近年は先進国でも特に死亡には直接関係しないけれども、 障害を持って長く生きていかなければいけないというような障害の重さ、そして、長さを評価す るための指標ということで、かなり使われてきております。  実際の算出方法は非常に専門的になるので簡単に申し上げますが、84ページの右側真ん中辺り に簡単に書いてございます。DALYという単位は次の前提に基づいて算出されるということです が、そのちょっと前に、早死損失年数(Years of life lost)、つまり寿命よりも早く亡くなった ということを評価するYLLという数字、そして、障害共存年数(Years of life lived with  disability)、痛みとか障害を持って何年間生きていくという算出、YLDの2つの数値をそれぞれ の疾患について算出して、それを足し合わせたものが障害調整生存年(DALY)になるということ です。  では、理想的な平均寿命は何歳にしたかというと、男性が80歳、女性が82.5歳、これよりも早 く亡くなったとしたら、それによる早死損失年数(YLL)という数字で評価されるということ です。  2つ目に、非常に専門的な話になって恐縮なのですが、85ページの図1にありますように、実 は20歳の方の1年の命の価値、若い人の1年の命の価値あるいは高齢者の1年の命の価値を一定 としないで重みをつけるのですね。これは主に途上国では恐らく生産性などを考えると、こうい うような形になるのだと思いますが、一応、WHOでの計算ではこういうエイジウエイトを置い ています。ただ、先進国ではこれは余りなじまないということで、一律にした計算を行っている 場合もあるようです。  3つ目に、障害の程度をどのように評価していくかということですが、86ページの表1に障害 度の重み付けがございます。それぞれの病態・健康状態に対しまして、7段階の障害度に対応付 けまして、例えば、重度の咽疼痛があるような状態ですと、1を最も障害が重い状態、0を障害 がない状態としたときの0.02〜0.12ぐらいのレベルにあると、障害度としては低い方から2番目 にあると、このようにすべての健康状態を障害度に当てはめて計算していくというやり方です。  まとめますと、DALYというのはYLLという早死にの部分の評価、それは理想的な寿命を考 えて、そこから何年早く亡くなってしまうかということを評価するもの。それから、もう一つは、 YLD(障害共存年数)、これは今見たような障害度の重み付けに基づいて、こういう障害を抱え て何年生きていくというような、患者さんにとっての病気の負担を考えたもの、その両方を合算 したものがDALYという指標になります。  ですので、DALYというのは多ければ多いほど疾病の負担が多いと。例えば、これを国ごとに 出したとしたら、ある国ではある病気でこれだけの疾病負担があり、それをいかに減らしていく かというようなことが重要な課題になるということです。  その質調整生存年(QALY)と障害調整生存年(DALY)ですが、86ページの表2に比較が書い てございます。QALYの方はQOLの1が満点で、0が死亡と同等と置きまして、0.5というOQ Lで10年生きていくということになれば、0.5掛ける10で5QALYと計算するわけですが、DALY の方は逆に障害が増えれば増えるほど数字が大きくなっていくというような形で、ちょっと数字 の解釈が変わってくるということになります。  具体的な分析ですけれども、これはWHOの方から全世界における、いわゆる疾病負担に関す る報告書がたびたび出ておりまして、例えば90ページを見ていただきますと、全世界でどのよう な疾病で、どれだけの障害調整生存年が生じているかということの順位です。1990年の段階では 下気道感染あるいは感染症による下痢、周産期疾患といったものが上位でしたけれども、2020年 になりますと全世界における疾病構造が変わってくるということでして、1位が虚血性心疾患、 2位がうつ病性障害、3位が交通事故、4位が脳血管疾患というふうに疾病の障害調整生存年で 見たときの順位というのが様変わりするということが試算で出ております。  それ以降は、若いころにやった研究の結果でお恥ずかしいので、余り詳しくは見ないでいただ きたいのですが、試しに全世界、先進国で集計されたWHOのデータを日本に当てはめてみたら どうなるだろうかというような推計をしたものです。93ページに、1990年日本でDALYの多い順 に10疾患並べたらこうなりますと。図6には2020年にはこのようになるでしょうというような 推計を行ったのですが、このときに行った方法というのが実は先進国において、これらの病気で 何人の方が亡くなっているかという統計と、では、日本ではそういうような病気で何人の方が亡 くなっているかという統計を使って試算したものです。したがいまして、直接死亡に結びつかな いような病気、特に今回主に対象とするような筋骨格系の疾患あるいはいわゆる痛みといったも のは、実はここでは推計ができないということです。もともとその疾患は外してあるのですね。 ということで、ここに表れていないということで、そこは御了承いただきたいと思います。  この試算は、1998年に論文を書いたのですけれども、平成9年、1997年でしょうか、厚生労働 科学研究費補助金で行わせていただきました。その翌年に当時の国立医療・病院管理研究所、今 の国立保健医療科学院の福田先生が今度は精神疾患であるとか、あるいは今回、私自身が推計で きなかった変形性関節症といったもののDALYも推計しておりまして、そちらのデータを見ます と、疾患のくくり方にもよるのですね。例えば、悪性腫瘍を悪性腫瘍として1つにするのか、部 位ごとに分けるのかによって順番は勿論変わってくるのですが、この福田先生の試算では変形性 関節症というのは日本におけるDALYの順位、6位になるというような数字を出されております。 あるいは慢性関節リウマチは19位というようなことで、非常に順位としては高い位置に来るとい う試算をされています。  これ以外にも、個別の疾患とか病態について障害調整生存年の推計を主に積上げ式、これだけ の患者数の方がこれだけの障害を負っていて、これだけの疾病負担があるという形での積上げ法 によりまして推計しているというような論文もございます。私自身も少し悪性腫瘍でやっており ますし、あるいは聖マリアンナ医科大学の須賀先生が2005年に筋骨格痛の障害調整生存年の推計 の論文を出されています。その論文の数値を見ますと、筋骨格痛で日本ではおよそ130万DALY という疾病負担が生じているということでございまして、私の出した脳血管障害とか虚血性心疾 患といった病気の数字を上回る非常に大きな、もしこれが直接比較できるものだとしますと第1 位になるという、非常に大きな値を推計されています。  委員の先生方だけに配付されていると思うのですが、英文の論文を簡単に紹介させていただき ますと、これは実はアメリカで障害調整生存年がどういう疾患にどれだけあるかというものを推 計したものです。418ページをごらんいただきますと、1996年の時点で米国の上が男性、下が女 性に関して、さまざまな疾患でどれだけのDALYが生じているかというランキングになっていま す。上の表3、Table3が男性についてでして、虚血性心疾患とか交通事故といったものが上位に 位置しておりますが、12位にOsteoarthritis、変形性関節症と言えばいいのでしょうか。それが 12位に入ってございますが、実は死亡率のランキングで見ますと、一番Osteoarthritisの右の数 字を見ていただくと0と書いてありまして、ほとんど死亡数ということで評価すると、ランキン グは限りなく下の方になるという病気なのです。ところが、障害の程度を評価いたしますと12位 に上がってくるということですし、また、YLD(障害共存年数)、障害を抱えて何年生きるかと いう数字で評価したものですが、これを見ますと全体の5.9%を占めるということで、この中のリ ストからいくと2位に上がってくるというような、非常に重要な疾患だということが初めてわか ってくるということになります。  女性の場合は変形性関節症(Osteoarthritis)は7位にございますが、やはり死亡数で見ると0.0% ですが、DALYで見ると3.3%ですし、YLD(障害共存年数)で見ますと6.6%ということでし て、やはりこのリストの中では2位に上がってくるということです。  というわけで、慢性疾患に関して何らかの健康指標を使って評価していくと。これは現状把握 もそうですし、何か対策を立てた場合の改善の程度を評価するという意味でも、こうした障害調 整生存年という単位は一つの有効な指標ではないかということで、今回時間をいただいて御紹介 させていただきました。  ただ、1つ課題を申し上げますと、私も個別の疾患について幾つかやってみた経験があるので すが、個別に積み上げると一つ一つの疾患についてどうしても過大評価になっているのですね。 例えば、1人の方が複数の疾患を持っていると、その一つ一つについて障害の程度を足し合わせ ていくと100%を超えてしまったりということも起きてくるのですね。ということで、できれば個 別の疾患についてやっていくアプローチと、全体像について把握していくアプローチと両方整合 性を持った形でやっていくことが望まれるのではないかと、今までのつたない経験からは考えて いるところです。  以上でございます。 ○久道座長 どうもありがとうございました。何か質問はございませんでしょうか。 ○福井委員 今、418ページを見ていてちょっと気がついたのですけれども、これはアメリカの論 文ですからわかりませんが、10番のUnipolar major depressionのところで、YLL(Years of  lost life)がゼロになっていますが、これはうつ病での自殺とかそういうのは考えないというこ となのですか。うつ病で生存年は変わらないと。クオリティだけが変わってくるということで、 非常に罹病率が高いので、それで上に上がっていく。日本での計算も自殺はカウントしないので すか。 ○池田委員 実はこの計算上は、例えば、うつ病の方が自殺したときに、うつ病でカウントする のか、自殺でカウントするのか、その辺の取り決めがあるようでして、私が配りました資料4の 87ページに少なくともWHOではどういう疾患分類で計算したかというリストがございます。実 はこのリストの最後、89ページの最後の方に自殺・自傷というのがございまして、もし、うつ病 の方が自殺された場合は自殺の方に入れるようなのですね。そこは決めの問題のようなのですけ れども、そういった形で死亡には反映されてこないということのようです。 ○久道座長 ほかに質問ないでしょうか。よろしいですか。  それでは、質問とは別に「3 慢性疾患の全体像の俯瞰」というところで、何か御意見があり ましたら、どうぞお願いいたします。 ○内田委員 慢性疼痛をもしテーマに取り上げるということになると、本当に端緒についたばか りというところから、かなり体系的な取り組みということで全体を見据えた形での展開というこ とになるかと思います。原因究明から治療、診療提供体制といったところ、それから、診療提供 体制で言えば、さっきのさまざまなスタッフも協力体制をとるような形での体系を整理していく ということになると思いますので、そういう点では手が着いていなかったというところからは興 味深いということはありますが、ただ、1つは慢性疼痛というのは原疾患がさまざまであるとい うことと、背景にかなり心因的な、精神的なものが入ってくるというところからすると結構難し いテーマだなという感じはしますね。 ○久道座長 何か整理され尽くしていないところがありますね。 ○内田委員 疾患別・臓器別ではないので。そういうものに絞った形でというならあれですけれ ども、慢性疼痛という形になってくると。 ○久道座長 慢性疼痛だけではなくて、慢性の障害もありますよね。痛くなくてもね。そういう ものなどは、どういうふうに区分けするのですかね。 ○井伊委員 前回欠席しまして失礼いたしました。ですので、何を議論すればいいのかよくわか っていないのですが、先ほどのこの図で今日は幾つかもう既に取りかかられている行政施策があ って、そうではないところは何なのかということをいろいろ取り出して、その中のどこに焦点を 当てて検討会として取り上げていくかという目星をつけていこうという議論だと理解していいん でしょうか。 ○久道座長 はい。前回もそういう議論はして、あと局長さんからも会議の初めに、こういう考 え方でこの委員会を設置したのだという話がありました。そういう意味では、慢性疾患対策をも っと我が国で充実させようという狙いなのですが、慢性疾患そのものが共通認識として対策とし て余り行われていないのがどれなのかというのが、まだ不十分だという気はします。では、もう 一度お願いしましょうか。 ○上田健康局長 私ども疾病対策といいますか、まず病気にならないということで健康づくりの 仕事をしているわけです。それから、残念ながら例えば糖尿病になってしまったという方につい ては、それが進行しないということで、いわゆる二次予防とか三次予防ということをやっている と。それが私どもの健康局の健康づくりと疾病対策の仕事だと思っています。勿論、厚労省の中 にはほかにも組織があって、例えば、医政局などは医療体制を整備するとか、あるいは保険局は 診療行為に対して診療報酬を的確につけていくと、さまざまな役割をしているのですが、私ども 健康局の一番の願いというのは、国民の多くの方に健康で長生きをしてもらいたいというところ にあるのだろうと思っています。そういう中で、さまざまな施策をこれまで展開してきたのです が、どちらかというと、やはり感染症対策とか難病対策という社会的に非常に関心のある病気を 中心にやってきたなという思いはあるのですが、ちょうど3年前、がん対策基本法が通りまして、 当時は一般的な病気については余り行政は対応しないというような流れがあったのですが、がん 対策という極めて一般的な病気に対して、国も施策を今後はしっかり打っていかなければいけな いと。また、全体の流れとしては生活習慣病もしかりですし、がんもそうですけれども、国民に は病気を既に持っておられる方が結構おられると。その方に今更健康づくりをしっかりやりまし ょうと言うよりは、むしろ病気を持っておられる方の病気をできるだけ進行しないように、そう いうものを医療なり社会全体で支えていく必要があるだろうという全体像の中で、私どもとして は今何をすべきかということを整理したいというのが、実はこの検討会です。  その一番のポイントになりますのが、我々はがん対策や糖尿病対策等をやってきたのですが、 何か落ちているものがないかと。落ちているものについては、たまたま我々の耳に届いていない だけであって、本当は国民の中に大変な問題が起こっているのだけれども、そういうものを我々 としてはもう一回しっかり聞いてみたいと。そういう点では、前回のときに資料を出しまして、 国民の中で数の多い病気をずっと列挙して、その中に私どもとして今まで対策を打ってきたもの と打っていないものを整理したところ、今回、疾病概念という点では少しあいまいな部分があり ますけれども、疼痛の問題と慢性呼吸器疾患の問題が少し対応が抜けているのではないかという ことが出てきたと。ですから、そういう問題に対して今後、慢性疾患対策として何かをしなけれ ばいけないという一つの問題があります。  もう一つは、今までやってきた糖尿病を初めとする慢性疾患対策に対しても、しっかり整理を して対応していく必要があるだろうと。そういう点では2つのことを追いかけている点があって、 少し野心的な部分があって、それで少し混乱をさせている部分もあるのですが、がん対策はここ 3年ばかりで随分進んだと思っています。これは法律があり、ある種医療だけでなくては社会全 体でがん対策を考えていこうという動きが進んだわけなのですが、例えば、がん対策基本法と同 じように、糖尿病対策基本法だ何だ、それぞれの病気ごとにつくっていくのは大変ですから、当 面がん以外の慢性病についても体系化をした取り組みを、もう少し言うと、社会化された取り組 みをきちんと打ち出していく必要があるのではないかということで、2つのことを追いかけて、1 つは足りない部分は何か、もう一つは、今やっている慢性疾患対策の中を再整理をして、それぞ れ500万人とか1,000万人とか多くの病気を抱えた方がおられますけれども、そういう方の健康を いかに維持していく施策をとるべきかと。そういうことに対しての一つの結節点となるようなレ ポートを今回まとめて、これは一応、我々予算要求も念頭に置いて作業をしておりますので、7 月中とか8月にかかったぐらいで何とかおまとめいただいて、その後はまた秋以降この議論を踏 まえて、例えば、先ほどの疼痛の問題で言えば、更にそれに特化した方に深めていく、あるいは 糖尿病の話であれば糖尿病を更に体系化するにはどうしたらいいかというようなことを考える、 そういう手順としてわずか3回か4回ぐらいの検討会になるのですが、とりあえず今の結節点と して慢性疾患対策の全貌というものを取りまとめていただいたらということでお願いしたと。こ のように理解をしております。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  今、局長さんがおっしゃったとおりで、この検討会でまとめる必要があろうかと思いますが、 井伊さん、そういうことなのですが。 ○井伊委員 わかりました。ということは、疾病対策としてどれをという観点でということにな るのでしょうか。私は慢性疾患にしても、生活習慣病予防にしても、健康づくりとか、そのこと にまだ予防的な立場にいる皆様方へのポピュレーションアプローチとか、そういう対策の在り方 というのは疾病に焦点を当てた対策と、ここにもマスコミとか御本人が疼痛の問題にしてもかか わっている社会生活ということが出てくるのですが、ポピュレーションアプローチ的な在り方と 対策は2つあるような気がして、ここでは疾病対策をということですか。 ○上田健康局長 疾病対策のところをもっと強化していきたいということで、健康づくりから疾 病対策まで一貫した対策をつくっていくということを強調したいと思っています。切り離すので はなくて、それは相互に連携するものだということで、特に疾病対策のところを強化するけれど も、それは決して今までの健康づくりの一次予防とかそういうことをやめてしまうという意味で はなくて、その延長として二次予防、三次予防もやっていくのだと。それをどういうふうにやれ ばいいかということをある程度整理したいという思いでやっていると思っています。 ○辻本委員 私たちの電話相談などで届く声から、いろいろなものがかいま見えてくる、そんな ことを御報告させていただこうと思うんですけれども、まず1つは今のお話で、例えば、いつで もどこでも何でも食べられるような社会の有り様ということ、コンビニ弁当とかジャンクフード とかそういったものが野放しになっているような問題ということが、小さな子どもたちをも、そ れから、若いお母さんたちをもむしばんでしまっているということも、相談の向こうから見えて くることの1つでもあるのですね。  それから、当然ながら患者さんは一くくりでは語れない、情報へのアクセス能力もリテラシー も本当に個別ということと、世代によって納得の基準、求めているものが違うという、一人一人 みんな違うのだという、そういったことの中でこの問題をどういうふうにしていくのかというの はすごく雲をつかむような気がして、どこから何を考えたらいいのかと、ここのところ悩んでい たのですけれども、最近の相談の中でこんなお話がありました。糖尿病の患者さんの実態なので すけれども、これはきっとお医者さんにも言わないだろうと思うのですが、病院には行けないの だというようなことをおっしゃったのですね。なぜと聞いたら、クリニックなら入院させられな くて済むから、何かあればクリニックに行く、ある程度先生が融通をきかせてくれると。禁煙に しても、アルコールにしても。こういうお話を聞いていると、もうちょっとクリニックの方へイ ンセンティブをつけて、本気で向き合ってもらうような診療報酬の体系ということだってこの中 には必要だなというのを感じながら、患者さんの御相談に長い時間付き合った例なのです。  それから、透析のシャントを既につくっている患者さんから、やはり長い御相談があったとき に彼がポロリと言った言葉は、透析になっても月に1万円ぐらいの負担で済むのだったら、まあ いいかという投げやりな気持ちになってしまうというような、そういう声が白衣の人には直接に は届けにくいのだろうけれども、本音の部分としてポロッと出てくる、それが電話相談に届く声 なのですね。  やはりこれも50歳代の男性なのですけれども、日ごろ何の努力もしないで、何か起きたら慌て て受診するんだけれども、先生に怒られたら「はい、はい、済みません」と言って謝っておいて、 すぐに薬も飲まなくなって、だんだん行ける病院がなくなる。それがさっき言った病院には行け ないというような人と重なるところなのですが、そういう人の話を聞いてると、絶対この人は人 の言うことは聞かないだろうなとか、周りが心配するのもだんだんばかばかしくなってくるなと いうような、こういう人の声が私たちの電話相談は1本平均40分、長い場合は1時間、1時間半 以上、本当に毎日のように聞いているのですね。これを国がどうして放っておくのだろう、もっ と教育というところで啓発という形で根本的なところから何かやっていただけることはないだろ うかということが一つ。  それから、こういう人たちの声を聞いていると、さっきの診療報酬のことでちょっと御質問さ せていただいたのですけれども、患者さんの被害者意識の、思い込みの激しい一方的な訴えでは ありますが、向き合ってくれる医療者の意識の下の方に、やはりコミュニケーションを阻害する 要因というのでしょうか、コントロールのできない、扱いにくい困った患者さんというふうな、 いつも上から目線でしかられてばかりで面白くないというような、話を聞いてくれる医療体制に ない現実、それはどうすれば変わっていくのだろうというようなことも相談を通して感じること の一つなのですね。  そして、御家族からお電話があると、努力しない患者には医療費は高くすべきじゃないかとか、 その逆から言えば、努力や改善した患者さんの医療費を軽減するというような格差をつけること で、うちのお父さんも少しは本気になるのではないでしょうかという奥さんの声であったりとか、 それから、透析という問題においても、開始とか中断という問題も既に学会などでは話し合われ ている実態があるようですけれども、やはり制限とか負担増ということを国民の問題意識の中に きちんとPRしていただくということが、遠いようですけれども、一番大切なポイントのような 気もします。  そして、先ほど来申し上げているように、私たちへのお電話では何の解決にもならないのです けれども、心のよりどころのように何か不安になるとかかってきて、頑張るしかないですよね、 かかりつけの先生の信頼を裏切っちゃいけないですよねと、ポロッとそういう声が出てくるまで には本当に長い時間がかかるのですね。ですから、その辺を先ほどの資料の中にも患者会とかさ まざまなサービスということで、NPO等の支援という形も国の施策の中で是非考えていただき たいなと思います。  以前、私は長野の須坂市に伺ったときに、地域活動の中で非常に面白い活動をかいま見てまい りました。保健補導員というのですけれども、今年で50周年、2年任期ということで地域の人た ちが手挙げだったり、地区の中で推薦されたりということで、140人ずつ、2年ですから280人が 常に動いているということなのですけれども、予算は市からは500万円ぐらいで、あとはただで は行けないから1人年間500円の会費を払ってということで、その保健補導員に任じられた2年 間は、月に1度ずつ地域10ブロックに分けて勉強会をやっている。そこで非常に啓発的な、そし て、根本的なあるいは社会における医療という俯瞰したそういった大きな問題をということで、 毎年そういう人を育て上げている、生み出しているという活動が須坂市にもあったのですね。遠 回りのようですけれども、そういう地道な活動を強化したり、組織をつくっていただいたり、そ ういったことをやっていただかないと、病気になってしまった人をどうこうしようというような ことは、勿論それも大切な対策だと思いますが、お電話を聞いていると、もっともっと以前の問 題だよなという、そこのところをいつも強く感じさせられております。どういうふうにしてくれ とか、こうあればもっといいのにという具体的なことより以前の根源的な問題ということで、あ えて相談の中から感じていることということでお話しさせていただきました。  ちょっと長くなって申し訳ありません。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  今、辻本委員から重要な発言があったのですが、何か関連して御意見ないでしょうか。内田委 員、ないですか。診療報酬のこともありましたし、患者教育、住民教育のこともありました。 ○内田委員 私は、久道先生が座長の特定健診・保健指導の立ち上げのときに、なぜ40歳以上な のだということを申し上げました。40歳以上で保健指導ということをやるのであれば、もっと母 子保健のところから生活習慣病対策をきちんと教育すべきであろうと。その方がはるかに安上が りだし、効率もいいし、効果も高いだろうということはずっと申し上げてきました。今回も一次 予防、二次予防をどういう形で展開するかという話も慢性疾患対策の場合には当然出てくると思 いますが、やはり病気ができ上がった人を対象にするだけではなくて、その前からやるというこ とも非常に大事な視点ですし、私は特に学校保健を担当しておりますから、その辺のところを常々 文科省にもいろいろ申し上げているのですけれども、なかなか教育委員会が強かったりとか、縦 割り行政の壁がありまして予算もつかないという状況で、非常にあくせくしているというところ があります。  それから、須坂市の話は非常に面白い話なのですが、私は昨日、国保の保健指導の取り組みの 会に出ましたけれども、保健指導員という形で住民を巻き込んだ展開というのが国保直診の診療 所があるところでは結構幾つかやられていまして、国保のヘルスアップ事業の中でそういう取り 組みが展開されて、小さな市町村ではとってもうまくいっているところが幾つかある。ただ、こ れが大きなマスになると全然そこが動かない、住民参加もなかなかうまくいかないというところ があると聞いておりますので、これからの国民運動ということを考えると非常に興味深い取り組 みではあるし、参考にするところがあるのかなと思いました。 ○久道座長 あと、何か保険診療に差をつけてとかありましたね。 ○内田委員 私は逆で、むしろ啓発されていなくて受診しない人は重症化であるとか、疾病の長 期化であるとか、そういうペナルティは受けるのですよね、別の意味で。ですから、更に二重に 診療報酬で自己負担まで上げるというのはどうでしょうねという感じもしました。 ○久道座長 ほかに何かございませんか。  先ほど、局長さんから慢性呼吸器系疾患の話が出ましたね。それは余りこの場で出ませんけれ ども。 ○内田委員 私は、これは取り上げるのにいいテーマじゃないかと思っています。なおかつ、こ れは禁煙と是非セットで取り上げていただきたいという気がしています。COPDは本当突き詰め ていけばタバコがほとんどの原因ですから、タバコ対策とCOPD対策をセットでやっていただく と。タバコ対策についても、是非もっと小さい、未成年のところからの取り組みというのを展開 してもらいたいと思います。 ○久道座長 今は「3 慢性疾患の全体像の俯瞰」というところで議論をやっているのですが、 一部その前の方にも進んでおりますけれども、「4 体系的な施策展開の必要性」という項目です。 これについては、事務局から説明をしていただきます。 ○関生活習慣病対策室長 それでは、資料5で糖尿病対策でございます。先ほど来の議論にもご ざいますように、これまで行政施策としてある意味空隙といいますか、系統手的な取り組みがほ とんどなされていない分野があるという議論があった一方で、既に取り組みが着手されて歴史も あるにも関わらず、疾病の全体像を見た場合に、ある一部への取り組みでは国の施策として今後 調べ、取り組んでいく必要があると。例えば、糖尿病の例で申しますと、ある意味、啓発の部分 は市町村の事業あるいは保険者の事業で行っている。それから、特定健診が始まって、これは糖 尿病も視野に置いているということもございますし、また、医療計画の方で4疾患5事業の4疾 患の中に糖尿病が入っているというような形ですとか、それから、今日は春日先生もおっしゃっ ていますが、国立国際医療センターの方で糖尿病情報センターを立ち上げて、そこにいろいろな 情報を集約していって、エビデンスベースを構築するとか、核となる医療機関の医療従事者の方 を教育するとか、そういったポイント、ポイントで糖尿病について取り組んでいるわけでござい ますが、現実に地域での、特に罹患後のあるいは糖尿病の疑いという形になった後のフォローと いうものは個別の地域でのお取り組みに委ねているというところがありまして、前回の資料でも そういった中で日本医師会を初めとする関係団体のつくっておられる日本糖尿病対策推進会議、 あるいは都道府県レベルで全都道府県に都道府県版の対策推進会議があって、それぞれの取り組 みをしているというお話を申し上げましたが、そういったものに対する具体的なイメージを抜き にして議論しても、なかなかイメージが沸きにくいということで、そういった趣旨から本日は幾 つかの事例を持ってまいったということでございます。  時間の関係もあって、それぞれの取り組みをしておられる方々から直接お話を伺えば一番よか ったのですが、事務局の方で資料をいただきまして、役不足ではございますけれども、それを咀 嚼するような形で提示するという御説明になってしまうことについて、お詫びとともに御了解い ただければと思っております。  傍聴の方々含めまして資料5で、3つの地域の取り組みを説明してまいりますが、より詳しい 資料は委員の皆様方には別刷りの資料で、それぞれの地域ごとに冊子になって、パワーポイント のプレゼンテーションの形でお配りしてございます。  今日お話し申し上げるものというのは3つの地域での取り組みでございまして、1つが現在の 鳥取県立中央病院の院長をされておられます武田先生ですが、具体的な中身はお隣の島根県で武 田先生を初め、関係する方々がお取り組みになった事例の束が1つ。それから、これはどちらか といいますと、地方都市あるいは中には隠岐島の島前の海士町の取り組みなどというものも入っ てございますので、ある意味小さなコミュニティの中での濃密な歴史のある取り組みといったも のも含まれております。  2番目が、国立病院機構横浜医療センターの統括診療部長の宇治原先生の資料ということで、 これは横浜の戸塚で糖尿病のネットワークをつくって連携を推進する、あるいは地域連携クリテ ィカルパスを使っての取り組みというようなもの。  3つ目が先般、辻本さんからも話題提供が若干ありましたが、それを少し詳しく掘り下げた資 料ですが、千葉県の東金病院の取り組みということで、東金病院院長の平井愛山先生の少し分厚 い系統的なプレゼンテーションをそのままいただいてきたもので、こちらはやはり地域連携パス を使っているわけですけれども、それを電子化して共有するというところまで進んできていると いう、ある意味先進的な事例でございます。  ちょっと前置きが長くなりましたが、資料5の冒頭は、ある意味事務局でいろいろな要素を1 つのフローチャートにしたものでございまして、まとめ的なイメージのものでございますけれど も、2ページ目以下をめくっていただきますと、2ページ目からが島根県立中央病院の武田先生 による島根県の取り組みでございます。実際に先生からいただいたプレゼンテーションの中には、 先ほどもちょっと申しましたように、島根県の中の幾つかの地域、具体的には鳥取県境に近い安 来ですとか、あるいは松江市の取り組み例、それから、隠岐の島の海士町の例とか入ってござい ますが、そういうものも踏まえて県下全域のまとめをされているのですが、資料5でピックアッ プしてまいりましたものは、浜田と江津の地域であります浜田地域というところの取り組み例で ございます。  3ページをごらんいただきますと、浜田保健所管内なのですけれども、ここでは機関的な医療 提供の場としては、病院として国立病院機構浜田医療センター350床、江津に済生会病院がありま して300床ということで、このうち県域には個人病院として50床前後の病院が7施設、有床診療 所が21施設、無床診療所が82施設というような数の医療資源がある中で、糖尿病の専門医が3 名おられるというようなことでございます。  3ページの絵に描いてございますように、患者さんは二重線で囲った、例えば医院で日ごろの 管理を受けるということなのですけれども、例えばC医院は、がん科の医院であったり、ほかの 地域の有床診療所を含めた資源。B医院というのが、例えば先ほど申したような基幹的な医療機 関ということで、例えば教育入院ですとか、合併症の管理といったことをこういった基幹病院で 行う。あるいはその周辺に幾つか書いてございますけれども、これは健康相談、栄養指導といっ た市の取り組みも書いてございますし、また、全体として見たときに地区の医師会の取り組み、 医師会の先生方が参画する形で学校医あるいは産業医としての取り組みといったものが面的に展 開しているという模式図でございます。  浜田圏域の健康課題としましては、島根県で県の中での平均寿命などのデータをとりますと、 この辺が圏域の中で一番低くて、中間的なところに松江とか安来などがあって、むしろ隠岐の島 などがよいというようなデータになっているわけです。浜田圏域での平均寿命などが低い一番大 きな理由は脳卒中だということでございますが、健診をかなり手厚く展開している県ではござい まして、そういった中でいわゆるメタボリックシンドロームの問題ですとか、肥満、高血圧、糖 尿病といったものが他の地域に比べて浜田で多いというような実情もございまして、そういう中 で4ページのフローチャートにございますような、まさに地域での連携を深めていくことで糖尿 病の方々の管理を適切に行っていこうということで、かかりつけ医と専門医との連携あるいは病 院と診療所の連携ということを目指して、糖尿病関連サービスの地域のネットワーク化を目指し たマニュアルづくりを一緒にしてきたという取り組みの歴史がございます。  平成15年に最初に研修会を開くということから始まって、平成17年に糖尿病推進会議がこの 地区で発足したということなので、比較的歴史の新しい取り組みではございますが、こういった 取り組みがされているということです。  それから、5ページまで行きますと県全体のまとめになってしまうのですが、4ページと5ペ ージの間に先ほど申し上げました安来地区での糖尿病管理協議会の取り組みの歴史とか、これは 10年ぐらいの歴史がありまして、春日先生なども大変お詳しいと思うのですが、まさに小地域の 単位、糖尿病友の会あるいは公民会単位で糖尿病予防友の会を構成して、地区の健康づくり活動 を非常に活発に行っているという例でございます。資料の中からは抜けておりますけれども。  そういうことで、地域の市町村の保健師さん、管理栄養士さんなどを含めまして、地域の行政 の方々がかなりかかわっている、あるいは医療費の分析などを結構しておりまして、国保の糖尿 病医療費の伸びが抑えられてきたというような、10年ぐらい取り組みをするとそういうような結 果が出てくるということを島根県では系統的にデータ化されておるような状況です。  それから、お手元の委員だけの資料には、海士町でのいろいろな取り組みが写真入りで入って ございますが、住民の方々の顔写真なども入っているので、そういった意味も含めて広く一般に 広告を公表する資料ではないということで承っておりますけれども、具体的な活動の生き生きと した様子が写真なども入って展開されています。こちらは昭和61年以来、地域での医療資源とい うものが公的な診療所に依存しているということもございまして、むしろ糖尿病の方々に対する 糖尿病健診というものを行いまして、基本健診あるいは今で言えば特定健診の項目とともに、糖 尿病の合併症チェックをそういう健診という形で行っておりまして、20年間取り組みを続けてき ました。その結果、糖尿病の重症合併症、腎不全ですと失明がほとんどないですとか、あるいは 医療費のほかの地域と比べても糖尿病に関する医療費が随分節減されているということですとか、 あるいは糖尿病の境界型の数が20年前は年々増えていたという状況だったのが、10年ぐらい活動 を続けたときから横ばいになって、その後は漸減しているとか、そういった経験が御披露されて おります。そういったことを踏まえまして、5〜6ページ目がまとめになるのですが、島根県で はそういった地域展開をされることによりまして、非常に横に長い県でございますけれども、地 域特性を踏まえまして、医療従事者の側でもあるいは行政の中でもあるいは患者の地域ごととい う中でも人を育てていく、あるいは主体的な取り組みをしていただけるような、小地域での世論 をつくっていくというようなこと、それを通じてコミュニティを形成していくということで、代 表的な疾患の一つである、問題の大きな一つである糖尿病に対して、コミュニティとして立ち向 かっていくというようなことが書かれてございます。  6ページがまとめでございますけれども、医療と行政の連携、それから、CDEと書いてあり ますのは糖尿病療養指導士という、医師の方もいますが、コメディカルの方々が中心で、特別糖 尿病に対するトレーニングを受けられた方々ですが、こういった方々が日ごろの患者さん方の日 常生活をきめ細かく支えている、あるいはいろいろな関係者が連携する、そして、住民の主体的 活動、住民の健康教育、それから、中心になる人の育成というようなことで取りまとめてござい ます。この6ページが県全体を俯瞰したまとめということになります。  次の7〜11ページまでが、横浜の戸塚の例でございまして、こちらは2001年以来ですから約8 〜9年の歴史でございますが、戸塚糖尿病ネットワークというものを運用している中で、主とし て核となるツールが地域連携クリティカルパスで糖尿病連携パスポートとこの地区では呼んでい るものを使ってございます。  横浜医療センターが中心になりまして、44ぐらいの診療所がそこにつながっています。正式に 参加していて、更には幅広いすそ野があるということですが、そういった方々の間で患者さんが 日ごろはかかりつけ医で、毎月の診療、薬物療法の調整あるいは食事指導といったことを受けま す。  それから、横浜医療センターでは、まずこの地域連の特徴の一つですが、連携開始のときに治 療方針の決定をする。あるいは定期的に手厚いコメディカルのスタッフによって療養指導を行う というようなことがございます。  この9ページに具体的に基幹病院となる横浜医療センターの役割、それから、診療所の役割が 書いてございますが、また節目、節目で横浜医療センターの方を受けますが、日ごろの管理は診 療所の方で行っていただいているということ。  それから、10ページですが、1つの鍵となるツールとして連携パスがあるわけですが、連携パ スを使わない非連携パス、連携パスでない紹介状等の連携も勿論併存しているということですと か、あるいは合併症対策ではがん科のクリニック、腎臓専門医等との間でも患者自身が手帳のよ うな形で持ち歩くもの、これも一種のパスと位置付けまして、模式化して紹介してございます。  11ページがある意味まとめになっているわけでございますが、連携パスを使うことによるメリ ットといったことが幾つか書かれてございます。日ごろ診療所で血糖管理を初めとする疾病管理 の維持がありまして、あるいは通院脱落を防止する、あるいは患者自身の療養生活の指針という ものを踏まえた病状のサポートをいろいろしていくということ、それから、役割分担を明確にし ながらやっていくということと。  この地域の特徴として「他地域と異なる点」と書いてございますが、教育入院からスタートす ることが多いということですとか、この地域では基幹病院で初期の診療方針を決定して行ってい くという形での連携が中心であります。それから、エビデンスが出始めていて、短期的・中期的 な血糖コントロールといったものについて学会に報告できるようなデータも出てきているという ようなことでございます。現在、この地域の連携パスの適用患者はまだ余り多くなくて90名ほど だそうでございますけれども、通院開始時でインスリンを導入した方々が6か月以上フォローで きた方57名のうちの24名がインスリンの新規導入。非インスリン療法が30名ということで、残 り3名は1年ずっと継続している方というような、ある意味まだ少人数の取り組みでございます けれども、都市型のこういう取り組みがされている例でございます。  最後に、東金病院の例でございまして、12〜18ページまでございますけれども、この地域も千 葉の中で特に糖尿病患者の数が多かった地域で、医療資源の面でも非常に充実しているというこ とではない中で、千葉の東金病院190床ほどの病院ですが、こちらが中心となりまして、平成13 年以来さまざまな勉強会の取り組みなどをしてきていると。それから、糖尿病の一つの系統的ア プローチのSDM(Staged Diabetes Management)という概念に基づきまして勉強会をしてき て、特に糖尿病の専門ではない地域の開業の先生方に、ここでは技術移転という言葉を使ってい ますが、インスリン療法を含めて糖尿病の対応を息の長い勉強会の取り組みの中で自信を持って 取り組んでいただけるような環境をつくってきたということで、そういった勉強会などを中心と した取り組みを平成13〜17年ぐらいまで行って、その後はそういった蓄積を踏まえて、まさに連 携強化ということを強調した形での地域展開をしてきているということで、平成10年には診療所 でインスリン療法をしていた方が一診療所8名の患者さんだけだったところが、それから約10年 後の平成19年には診療所が36に増えて、450名の方がインスリン療法を診療所で日ごろかかりつ け医のもとで受けているという状況でございます。  13ページに全体の目的が書いてございますが、地域ぐるみで医師を育てていくということも含 めて、地域医療システムの再構築の一つの核として今のような地域連携の取り組みを位置付けて 行っております。  先ほどのSDMを勉強会の核として、15ページが先ほど申した歴史の展開でございます。  16ページ、これもほかの地域とある意味共通する部分がありますが、東金病院とかかりつけの 診療所の連携、役割分担ということでございます。  それから、これはある意味モデル的な取り組みでございますけれども、地域連携パスというも のを電子化して共有するということによりまして、個々の患者さんのデータが蓄積されていく、 それが電子的に共有されているということに加えまして、17ページにございますように、バリア ンスということで、要は、通常の安定したフォローアップではなくて、これは専門医療機関に紹 介した方がいいというような病態が生じた場合に、それを一覧表にして、こういった方々につい ては東金病院で中核的な医療機関としてこういう患者さん方のケアをしていくというようなこと で、個々の患者さんの受診歴がデータとともに蓄積されていって、特別注意を要するバリアンス 患者さんというような方々の、例えば、該当する方々を一覧表で直ちに表示できるような形にな っているということでございます。  千葉県の保健医療計画の中では、こういった基盤ですとか、あるいは道具立てもできてきた中 で、糖尿病による人工透析新規導入率を減らしていくとか、糖尿病による年齢調整死亡率を減ら していくというような具体的な目標を定めまして、保健医療局計画の中でも先駆的な取り組みだ とは思いますけれども、具体的にモニタリングをしながら進めていこうということでございます。  18ページでございますが、各医療機関のパスの対象者が東金病院では924名、診療所では700 名ということで、この浮き数ということになると思いますが、電子連携パスに登録されているの は400名でございまして、この登録を進めていって全例登録を目指していくというような勢いの 動きの中で、地域ぐるみの糖尿病疾病管理を更に推進していこうという意欲に燃えた取り組みを されているということでございます。こういう系統的な取り組みで一人一人に対する手厚いサポ ートをされているということについて、患者さんの側からも評価する声が出ているという話も先 般、辻本さんの方からいただいたところでございますが、若干資料の厚みを増した形で提示させ ていただきました。  ちょっと長くなってしまいまして恐縮ですが、一応事例としての御紹介でございます。 ○久道座長 どうもありがとうございます。  ただいま説明いただきましたけれども、何か御質問・御意見ございませんか。 ○春日委員 今、御説明いただいた3つの活動は、やはり患者さんの血糖コントロールをよくし ようとか、そういう自発的な活動であって、一方で、これらの活動がどういう効果を生み出して いるかという評価をきちんとやらないといけなくて、なかなか実際にこういう場合に評価まで意 識されて活動を始めることは少ないと思うんですね。ですから、新しい連携パスを始めるとかそ ういうときに、それを始める前のデータが少ないので、どのくらいこれらの活動が効果があった かという成績が得にくいと思います。ですから、その点を意識して最初のデータをよくとってお いて、確かにこういう活動がどの程度効果があるのかということを調べるのが非常に重要ではな いかと思います。 ○久道座長 そうですね、やはり評価が大事だと思うのですけれども、評価の仕方ですよね。 ○押野委員 今の関室長から糖尿病に関しての地域連携パスのお話があったのですが、実際に私 たちが地域連携パスにかかわった場合に、医師としての治療のプロトコルは先ほど先生がおっし ゃったように専門医を中心にした学習会が細かく繰り返されていく。そういう中で診療所にはな かなか栄養士がいない。実際このシステムというのは非常にいいものだと思いますが、その中で どういうふうにやっていくか、そのシステムをつくっていくことがこれから大事なのではないか と思います。ですから、クリティカルパスの中で病診連携をもっともっと進めていくことが必要 なのかなと思っています。  そして、全体的に今お話しいただいたところは、私は日本の最先端を走っているところだと思 います。多くは、今やっと国が進めている保健医療計画の中で疾患別の地域連携パスを1つ、2 つとつくりつつある段階だと思っています。時間をかけて是非これを着実に進めていくような形 でいっていただきたいなと。もうできているから、それでいいよと次のステップに行くのではな くて、1つ1つ積み上げていくことが必要だろうと思います。 ○久道座長 4疾患5事業についての地域連携パスはまだまだ不十分ですよね。これからなので すね。ですから、糖尿病も4疾患の1つですけれども、ほかの疾患も当然まだありますし、いわ ゆる5事業、僻地とか防災も含めての連携をどうするかというのはこれからだと思うのです。た だ、この地域連携クリニカルパスをやったときに、診療報酬上の加算というのは今どうなってい るのですか。 ○関生活習慣病対策室長 糖尿病は、まだ診療報酬の中では入っていません。 ○久道座長 でも、いずれ入れる計画と私は何となく聞いているのですが、そうではないのです か。 ○内田委員 それは中医協マターです。 ○久道座長 その大腿骨骨頭のいわゆる加算はどういうところにされているのですか。何かいい ところがあるのですか。診療所の先生方とか。 ○内田委員 それはあると思いますけれども、具体的な中身は知りません。私は自分で使ったこ とがありません。 ○久道座長 御意見ございませんか。 ○内田委員 事業の評価という話が出たので、ちょっとお話をさせていただきますけれども、こ の前、慢性疾患に関して患者の数とか表が出ましたよね。取り組まれている事業、取り組みが遅 れている事業という整理がされていたと思うのですけれども、今までに事業化されて予算がつい てというところと、まだ評価が出ていないところと評価が既に出たところと、いろいろあると思 うのですが、その辺の整理が疾患別にわかるようなものがあればいいかなと思って。例えば糖尿 病ですと、先ほどから話が出ていますけれども、連携パスの話もありますが、特定健診・特定保 健指導の話もございますし、それから、戦略研究の話もありますし、幾つか何本立てかで進んで いる。それから、日本医師会と糖尿病学会と組んでやっている糖尿病対策推進会議の取り組みと いうものも2年ぐらい前から展開していて、あれはほとんど予算はないですよね。そういうもの もありますので、進捗状況は事務局方で多分把握していると思いますので、どういう評価がなさ れて、成果がどのくらい出ているというのが、もし具体的にある程度疾患別にわかるようでした ら参考になるかなと思ったのですが。 ○関生活習慣病対策室長 次回である程度一定の整理ということになろうかと思うのですが、そ こで付随する資料みたいな形で、余り精緻なものはできないかと思いますが、前回お出しした資 料に若干追加情報ということで、何ができるか電話なりメールで先生方と話しながら検討したい と思います。 ○内田委員 事前にいただけると。 ○辻本委員 このたびの議論の中には住民参加、地域での学び語り合う、築き合う、そういう場 づくりみたいなことも当初から組み込んでいただけているので、ちょっと御報告をさせていただ きたいのですけれども、実は昨年の1〜6月に舛添大臣を囲んでということで、安心と希望の医 療確保ビジョンに私もメンバーの1人ということで参加しました。そのときに、地域医療は地域 の人々が守り育てるというようなことが大きな柱の1つということで、3つの柱の中の1つに扱 われるぐらい、地域ということに今焦点が当たり始めているのですね。そのことをやはり自治体 が他人事じゃないぞとようやく早いところは気づき出して動き始めているのです。  先般7月4日、5日に秋葉原コンベンションホールで自治医大の卒業生の財団があって、地域 社会振興財団ですか、あそこが主催でシンポジウムが行われました。住民活動全国シンポジウム と銘打って、地域の中で地域の住民が地域の医療を守り育てる、そのうねりをつくり出そうとい うことで、人数的には100名程度だったのですけれども、面白いのは自治体の健康づくり課みた いな人と、地域の一生懸命そういうことに取り組む女性3人ぐらいという感じでグループで参加 していらっしゃった中には、経済同友会のおじさまたちも、私たちがバックアップできることは ないだろうかということで、地域の中で何かやらなければいけない、でも、何ができるのだろう、 どうやったらできるのだろうという話し合いが2日間行われたのですね。そこで私もいろいろな 人に出会ってきたのですけれども、やはり地域のそういううねりを慢性疾患、第一次予防、それ から、患者さんになってしまった人たちを支え合う、そういうシステムづくりというようなこと へ発展させるには、今まさに私は時宜を得た一つの取り組みになるのではないかと。もう少し具 体的にそういう人たちに、例えばこういうやり方で、こういうとがあってというモデル事業のよ うなものを示していただくと、そこから入ればいいのねということになりますので、是非そうい うことも考えていただきたいなと思います。  それから、臨床試験の中で携帯をツールにした支援システム、たまたま名古屋大学の倫理委員 をしている中で申請に上がってきた中に、日常的に携帯でドクターが日々の生活コントロールを 報告してもらいながら指導していくというようなことで、ITのしかも、今のこの時代の携帯を ツールにそういうことをやるというようなことも今言ったモデルの1つみたいな、いろいろな形 の、こんなことをやってみませんかという提案を是非出していただくと、地域の人が元気になっ て、そういうことからやってみたいわという人たちのうねりが全体を押し上げるのではないかと も思っていますので、是非考えていただきたいと思います。 ○内田委員 ちょっと追加で。実は今回の補正予算で、地域医療再生基金というものがつきまし た。医療圏単位で100億円つくところが10医療圏、30億円が80医療圏という話ですが、実際に は25億円84医療圏で47都道府県に2か所ずつという話になってきているようです。私たちの考 え方は、10年間の診療報酬体系の医療費抑制があって、地域医療が崩壊していると、ほかのスタ ッフも含めて医者も足りなくなってきていると。そういうところにカンフル剤といいますか、こ れが地域医療をどう再構築するかというところでつけられた金だという認識でいます。  これは今、ともするとトップダウンで行政筋から話がいって、疲弊した自治体病院をどう再編 するかということに話がいきやすいのですけれども、これを地域全体を巻き込んだ形で、今、辻 本さんからお話があった形で活用するとか、さまざまな活用の仕方があると言っています。それ をコーディネートするために医師会が頑張ってくれよということで私が話をさせてもらっている のですが、是非またいろいろな関係の方が知恵を出し合いながら、さまざまな取り組み、今まで 30億円とか100億円という単位のお金を扱ったことがないものですから、事業展開はどうしよう という話で、どうしても箱づくりとかそういう話にいくのですよ。箱物の話にいくのではなくて、 中身の話を何とか盛り上げるような形で活用できればと思っています。 ○久道座長 あれは総額1兆円を超えるのでしょう。 ○内田委員 とりあえず今年は3,100億円で、1兆円というのはこれを継続して3年間やりますよ と政党レベルで言っている話であって、財務省とか厚労省が言っている話ではないということで す。 ○久道座長 今、地域医療再生基金のお金の問題が出ましたけれども、辻本さんがおっしゃった 地域医療の崩壊を防いで、地域医療を地域に定着させるために最も大事な3本のうちの1つに住 民参加というのがありますよね。これは大事なことだと思うのですね。この慢性疾患の対策も恐 らくそれが結構大事な部分になると思うのです。よく小児医療が崩壊して診療科を閉鎖するのを 防いだという事例として、兵庫県立柏原病院の地域のお母さん方が、とにかく3つの動きをした のですよね。1つはコンビニ受診をやめようと。それから、かかりつけ医を持とうと。それから、 お医者さんに感謝の意を表しようと、この3つの運動をやったら辞めるはずだった小児科のドク ターが辞めないで、更に1人だか2人増えたという事例がありますよね。やはり地域住民もこう いう動きをすれば、医療あるいは先生方は定着するのだよということを、今回と直接関係はない けれども、慢性疾患も含めてほかの疾患も含めてなんですが、地域に根付かせて、こういった疾 病対策を充実させるための方策の大きな柱であるということを言った方がいいと思うのです。あ の例は非常にいい例ですね。  ほかにございませんか。最後の「5 対策の充実を検討すべき疾患・領域の具体例」という項 目なのですが、今まで出たのは糖尿病、それから、慢性疾患に伴う痛みと関連する筋骨格系疾患、 それから、今日また出たCOPD(慢性閉塞性肺疾患)というものがありましたけれども、ほかに こういう疾患あるいは領域を是非この委員会の話に入れた方がいいだろうというのがありました ら、どうぞ。 ○押野委員 糖尿からの腎疾患、CKDを入れていくということは大事だと思います。 ○久道座長 糖尿からのですね。糖尿は勿論入りますね。 ○井伊委員 先ほどから辻本委員がおっしゃっていることに本当に同意しているのですけれども、 例えば、糖尿病の医療体制のイメージですから、これは医療でこういう構図になるのだと理解が できるんですが、その次の鳥取県立中央病院の組織フロー図といったときに、糖尿病対策検討会 の中でH市、G市となると、健康相談、栄養指導、友の会、こうしたことについては、医療では なくてむしろ保健の領域で相当部分を担っているのだろうと思います。先ほど局長から疾患に対 して健康づくりを切り離すわけではなくて、健康づくりからその対策の一貫した取り組みでとい うお話がございましたが、こういう疾病を中心に検討を進めていただく場合には、どうしても保 健の部分とか予防の部分とか、あるいは先ほど来出ておりますような患者さんの取り組みとか、 地域のお母さん方の自発的な活動とか、そういうものが例えば資料5の1枚目の図からいきます と抜け落ちがちだなと思います。  特に、地域の人々ということからいたしますと、健康づくりから予防対策までというのは、疾 病を中心にしたらつながっているようですけれども、地域の人たちは疾病対策のために生活して いるわけではありませんので、疾病対策として個々の疾患に伴った地域づくりというとらえ方と、 もう一方では、そこをも含んだ幅広い住民活動とか住民参加というような対策をどう打つかとい うのも是非取り上げていただきたいと思います。  須坂市の保健補導員の活動は、私ども保健師にとっては本当になじんだ活動でして、あそこも 合併やら何やらいろいろな問題がある中で、それでもああいう活動を継続してきた経緯がありま すので、そして、そういうことがある程度いい影響をするというのがわかっていることですので、 それを対策の1つとしてまな板にのせていただきたいと思いました。 ○久道座長 今のは予防のことも含めて大事なことです。私もちょっと気になっていたのは、事 務局からの説明で「糖尿病医療の連携の実際〜三次予防から一次予防へ〜」と書いてありますよ ね。普通一次予防から三次予防ですよね。これは何か意味があるのですか、何か言いたいことが あるのですか。 ○事務局 これは、いただいた資料のいただいたタイトルなので、思いを察することしかできな いのですけれども、恐らく鳥取の場合というのは最初に脳卒中が多いというところからスタート して、それを何とかしなければいけない、何とかしなければいけないというふうに進んでいって、 一次の方に進んでいったという流れを表しているのだと思います。 ○久道座長 その割には、フロー図に余りないなというのが委員の指摘なのですよね。検討事項 の中に予防のことも含めて考えてくださいという意見でしょう。  何かほかにございませんか。具体例の検討というところで疾患が主に出てきたのですが、今の ように予防のこととか、地域連携の在り方とか疾患とは別の取り組み方のあるいは領域のキーワ ードみたいなものがもしございましたら。 ○福井委員 もし、痛みということで言えば、なんと言っても腰痛が一番大きな問題ではないか と思います。なかなか雲をつかむようなところもありますし、でも、痛みとの関連ということで あれば、最大の問題ではないかと思います。 ○上田健康局長 たしかアメリカの診療ガイドラインは腰痛が非常に早くできましたよね。それ は、患者さん用と医療者側用と2つあったと思うので、その辺が今どうなっているか御存じだっ たら教えていただければ。 ○福井委員 アメリカでの腰痛のガイドラインは、ポリティカルに物すごく大きな問題でして、 整形外科の先生方にとっては非常に耳の痛いガイドラインの結果になったということで、ガイド ラインをつくるお金を出さないようにというプレッシャーがものすごくかかって、しばらくガイ ドラインの作成が止まったぐらいです。といいますのは、腰痛の患者さんのほとんどは整形外科 的な治療は必要でないという内容になったものですから、そのようなプレッシャーがかかったと。 ただ、現在でもエビデンス的にはほとんどの場合、非常に限られた場合だけ整形外科的なアプロ ーチが必要で、大部分は内科的にコンサバティブなアプローチでいいという内容になっていると 思います。約10年くらい前に最初のものが出て、その後、たしかリバイスもされていると思うの ですが、余り内容的には変わっていないと思いますが、いかがでしょうか。 ○戸山委員(代理:中村氏) 変わっていないですね。私の認識でも腰痛のガイドラインという のは日本ではないですね。やはり疾患ごとの頸髄症ですとか、腰部脊柱管狭窄症ですとか、ヘル ニアといったガイドラインづくりは整形外科を中心に取り組んでおりますけれども、腰痛に対す るガイドラインというものはまだ取り組んでいないという認識でおります。 ○久道座長 腰痛の有病者数というのは把握しているのですか。程度があると思うのですけれど も。 ○戸山委員(代理:中村氏) 戸山が前回の検討会でも少し述べたかと思いますが、概数ではあ るのですけれども1,000万くらいの数かと把握しております。ですから、有症率というのは非常に 大きい数かと思います。 ○久道座長 ほかにございませんか。予定の時間がもうそろそろです。今日は事務局がある程度 予定した進行メモといいますか、項目ごとに議論していただきました。新しい資料に基づいての 説明もございましたけれども、あともう一回で終わりですか。何かまだ盛り上がっていませんね。 そんな感じがしませんか。それはそれで、お帰りになってからまた盛り上げるようなやりとりが あるかもしれませんが、今日の検討内容を踏まえまして、また事務局には整理していただきます。 その上で、また事務局から事前の連絡が行くかと思いますが、何か事務局からございますか。 ○関生活習慣病対策室長 次回の日程につきまして、事前に調整させていただきました結果、8 月10日月曜日の10時から、厚労省の中の会議室がとれましたので、そちらでの開催となってお ります。この間、また各委員とはメール等でやりとりをさせていただきまして、大きな問題でご ざいますので、報告書というような大上段からのものというよりは、むしろここで検討していた だいたことをしっかりと書き留めて、一回一回の検討会で議事概要をつくり、それを3回までや ると大体検討概要という形の、いずれにしても今後、折に触れていろいろやるときに立ち返って 参照できるようなベースをつくれたらというような意味合いもございますので、一応3回目を着 地点と考えながら、またその間メール等での連絡をさせていただきながら進めてまいりたいと思 っております。  よろしくお願いいたします。 ○久道座長 あと何かありませんか。  参考資料は説明がなかったのですけれども、これだけでも。 ○事務局 第1回の検討会で透析患者さんが透析施設に通うのにどれくらい時間がかかっている のかという宿題がございましたので、参考資料2として今回添付しております。  結果から申し上げますと、青で書いてある場所が15分未満ということですので、ほぼ日本全 国・全地域におきまして15分未満で透析施設に通える方がほとんどで、30分以内の方で8割ぐら い。1時間で線を引きましても95%ぐらいの方が御自身で透析施設に通うことができる。ただ、 全国腎臓協議会に確認しましたところ、やはり北海道とか特殊な地域になりますと、泊まりがけ で行く方もいらっしゃるという個別の情報も得ておりますが、全体的なデータとしてはこのよう になっております。 ○久道座長 どうもありがとうございました。  それでは、今日の検討会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。