09/07/14 第1回化学物質のリスク評価に係る企画検討会議事録 第1回 化学物質のリスク評価に係る企画検討会 日時 平成21年7月14日(火) 14:00〜 場所 中央合同庁舎第4号館1階共用123会議室       (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部            化学物質対策課化学物質評価室 井上           〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2           TEL 03-5253-1111(内線5518)          FAX 03-3502-1598 ○大淵化学物質評価室長補佐 ただいまから、平成21年度第1回「化学物質のリスク評価 に係る企画検討会」を開催いたします。本日は、お忙しい中をご出席いただきましてありが とうございます。最初に、厚生労働省労働基準局の尾澤安全衛生部長からご挨拶を申し上げ ます。 ○尾澤安全衛生部長 本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、大変ありがとう ございます。日ごろより、私ども安全衛生行政の推進につきまして、格別のご高配を賜って おりますことを厚く御礼申し上げます。  本日の会合は、厚生労働省では平成18年度より、がんなどヒトに重篤な健康障害を引き 起こすおそれのある化学物質についてリスク評価を行い、その中でリスクが高いと認められ た物質について規制措置を導入しているところです。平成18年度からですので、いま3年 ほど経っているわけです。この間、ホルムアルデヒド、ニッケル化合物、砒素の化合物など について、特化則における規制強化という措置を行ってきました。  このリスク評価については、本年で4年目ということですが、これまでリスク評価を行っ てきたことを踏まえ、本年度からこのリスク評価にかかる検討体制を見直したいと考えてお ります。1つはリスク評価の企画を担当する検討会(本検討会)と、もう1つはリスク評価 の結果を受けて、健康障害防止措置を検討する検討会を立ち上げ、より機動的に化学物質に かかるリスク評価、並びにこれに基づく管理措置等々を実施していきたいと考えております。  本日の企画検討会における検討内容ですが、1つはリスク評価の基本方針を決めるという こと、それからリスク評価の対象物質の選定方法についてご検討いただきます。もう1つは リスクコミュニケーションということで、リスク評価の計画・動向・評価結果を関係者の方々 に広く周知・徹底・ご理解いただくための方策について、検討していただくというものです。  今般は、化学物質による健康障害あるいは健康影響についての関心が大変高まっている中 です。こうした中で化学物質に関する事前のリスク評価を実施し、その結果に基づく適切な 管理措置が求められている中で、より透明性の高いリスク評価の実施と、評価結果を踏まえ た的確な管理措置の体制を整えてまいりたいと考えておりますので、本検討会におかれまし ては、先生方より率直かつ活発なご意見を賜りますようお願い申し上げまして、検討会に当 たりましてのご挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 本日は第1回検討会ということですので、出席者の皆様方の ご紹介をさせていただきます。資料1の裏側の頁の名簿の順にご紹介いたします。日本労働 組合総連合会総合労働局雇用法制対策局部長の漆原肇委員です。独立行政法人労働安全衛生 総合研究所健康障害予防研究グループ部長の小泉信滋委員です。中央労働災害防止協会労働 衛生調査分析センター所長の清水英佑委員です。中央労働災害防止協会労働衛生調査分析セ ンター技術顧問の櫻井治彦委員です。早稲田大学理工学術院教授の名古屋俊士委員です。順 天堂大学医学部公衆衛生学教室助教の堀口逸子様は、本日は所用のためご欠席です。社団法 人日本化学工業協会環境安全部部長の山口広美委員です。独立行政法人産業技術総合研究所 安全科学研究部主幹研究員の吉田喜久雄委員です。本日は、リスク評価に関する評価事業を 担当していただいております、中央労働災害防止協会の棗田さんにもご出席をいただいてお ります。  事務局の紹介をさせていただきます。先ほどご挨拶を申し上げました安全衛生部長の尾澤 です。化学物質対策課長の榎本です。環境改善室長の半田です。同じく環境改善室の徳田副 主任衛生専門官です。化学物質評価室長の島田です。化学物質情報管理官の長山です。労働 衛生専門官の井上です。私は化学物質評価室の大淵です。  今回は初回ですので座長の選出をさせていただきます。どなたか推薦していただける方が いらっしゃいましたらご発言いただければと思います。 (特に発言なし) ○大淵化学物質評価室長補佐 特段のご推薦がないようでしたら事務局より提案させてい ただきます。中央労働災害防止協会の櫻井先生にお引き受けいただければと思っております が、ほかの先生方はいかがでしょうか。 (異議なし) ○大淵化学物質評価室長補佐 ありがとうございました。それでは、櫻井先生に座長をお願 いし、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○櫻井座長 ご指名いただきましたので、僭越ではございますが座長を務めさせていただき ます。課題が、リスク評価の基本方針、リスク評価対象物質の選定基準、リスクコミュニケ ーションといずれも大切な課題だと思います。委員の先生方から見識あるご意見を賜りまし て、より良い方向性がまとめられますよう願っております。どうぞよろしくお願いいたしま す。  最初に、本日の議事予定と、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 本日の議事予定は、お配りしております議事次第のとおり、 (1)平成21年度の化学物質のリスク評価方針について、(2)今後のリスク評価候補案件の選 定について、(3)労働分野におけるリスクコミュニケーションのあり方について、をご検討 いただく予定としております。  資料は、いまの次第の裏側の頁にありますので、これに沿ってご確認をお願いいたします。 資料1は、化学物質のリスク評価検討会開催要綱及び参集者名簿、資料2は、労働分野にお ける化学物質のリスク評価を巡る国内外の動き、資料3は、平成21年度の化学物質のリス ク評価方針(案)、資料4は、有害物ばく露作業報告制度及び報告対象物の選定経緯、資料 5-1は、リスク評価候補案件の選定手順(案)、資料5-2は、リスク評価対象物質(案件) の選定基準(たたき台)、資料6-1は、リスクコミュニケーションに関する資料、資料6-2 は、化学物質による労働者の健康障害防止に関する意見交換会の開催予定、資料7は、今後 の予定です。  資料の最後に、参考資料ということで「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」 を付けております。こちらについては、委員の先生方と事務局のみの配付となっております。 傍聴者あるいはマスコミの方には入っておりませんので、ご了承いただきたいと存じます。 ○櫻井座長 それでは議題に入ります。本日は最初の会合ですので、本検討会の開催要綱の 説明をお願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料1を簡単に読み上げさせていただきます。検討会の「趣 旨・目的」は、先ほどの部長の挨拶にもありましたように、化学物質による労働者の健康障 害の防止を図るためということで、平成18年度から重篤な健康障害のおそれのある有害化 学物質について、国がリスク評価を実施している。リスク評価の結果を踏まえて特別規則に よる規制等が行われることから、対象物質の選定をはじめとするリスク評価の手続きが、規 制の影響を受ける側である使用者、労働者等事業場関係者の参加の下に行われる必要がある。 このため、学識者、使用者、労働組合等から成る検討会を開催し、リスク評価の基本方針の 検討、リスク評価対象物質の選定等を行うこととする。  「検討事項」としては、(1)リスク評価の基本方針について、(2)リスク評価対象物質の選 定について、(3)リスクコミュニケーションについて、(4)その他ということです。  3「構成等」、(1)本検討会は、別紙の参集者により構成するものとするということで、こ ちらの資料の裏側に参集者名簿を付けております。(2)本検討会には座長を置き、座長は検 討会の議事を整理する。(3)本検討会には必要に応じ、別紙参集者以外の有識者の参集を依 頼できるものとする。(4)本検討会は、必要に応じ関係者からヒアリングを行うことができ るものとする。  4「その他」の(1)本検討会は、原則として公開するものとする。ただし、個別企業等に係 る事案を取り扱うときは非公開とする。(2)本検討会の事務は、厚生労働省労働基準局安全 衛生部化学物質対策課化学物質評価室において行う。(3)本検討会は、平成21年度の検討事 項に関する報告書をとりまとめた時点で終了するものとする。以上が本検討会の開催要綱で す。 ○櫻井座長 ただいまの説明内容について、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたしま す。 (特に発言なし) ○櫻井座長 特にご質問等はないようですので次の議題に進みます。まず、「平成21年度 化学物質のリスク評価の方針について」の前に、このリスク評価を巡る内外の動きについて の説明を、資料2に基づいてお願いいたします。 ○島田化学物質評価室長 方針を決めていただくということでしたので、皆様ご案内のとお りだとは思いますけれども、資料2に基づいて、「労働分野における化学物質のリスク評価 を巡る国内外の動き」ということで若干ご説明させていただきます。  Iは、第11次労働災害防止計画ということで、昨年3月に策定され、平成24年までの5 年間ということで計画が立てられておりますので、そのご説明をさせていただきます。この 「計画のねらい」については、2つ目の段落の「このため」というところに「国は、労働災 害防止についての総合的な計画を長期的な展望に立って策定し、自ら今後とるべき施策を明 らかにするとともに、労働災害防止の実施主体である事業者等において取り組むべきことが 求められる事項を示し、その自主的な活動を促進する」という目的で策定されているもので す。  その下に「労働災害を巡る動向」ということで、産業あるいは就業構造、産業現場等の変 化ということが書かれておりますのでご説明させていただきます。産業構造ですが、1990 年代後半からの景気の低迷に伴い、製造業の生産活動の減退あるいは建設事業の縮小等の一 方で、国民生活の多様化等により、サービス業等の第三次産業が拡大しているということで す。就業構造においては、産業構造の変化に伴い、業種ごとの労働者の増減が生じていて、 特に非正規雇用の拡大が進んでいるということ。労働時間については、長短二極分化が見ら れるということ。併せて女性雇用者の増加ということ、少子化への対応の観点からも、母性 の健康管理が重要な状況になっているということ。産業現場においては、生産工程の多様化、 複雑化ということで、非常に取扱いが難しい状況になっているということ。新たな機械設 備・化学物質が導入される等、事業場内の危険・有害性が多様化しているということです。  次の頁で、特に化学物質についての記述があります。化学物質については、国内外での有 害性に係る知見を踏まえ、有害性の評価等を行い、遅滞なく必要な規制を進めていくことが 必要であるとともに、規制等の国際的な動向への対応も必要となっている。さらに、人体に 有害なおそれのある化学物質については、近年、有害性が完全に証明されていない時点でも、 予防的に必要な措置をとるという考え方が国際的にも重視されてきている。予防的アプロー チということも進んでいるということが書かれています。  その下の「現状分析及び課題」ですが、労働者の健康を巡る状況等の中に、化学物質等に よる健康障害の発生状況があります。化学物質による職業性疾病は、年間約300件と横ば いが続いております。一酸化炭素などによる急性中毒で死亡する事案も、依然として発生し ているような状況です。石綿による肺がん及び中皮腫の労災認定件数は、平成18年度には 約1,800件と増加しています。また、今後とも石綿を使用した建築物の解体作業等の増加が 予想されていることから、今後ともこういう石綿の健康障害の発生の懸念があるということ です。  それを踏まえ、「計画における安全衛生対策に係る基本的な考え方」の(1)労働災害全体を 減少させるためのリスク低減対策の推進が必要であるということです。具体的には死傷災害 等の労働災害全体を一層減少させるために、事業場における危険性又は有害性の特定、リス クの見積り、リスク低減措置の検討等を行い、それに基づく措置の実施を行う「危険性又は 有害性等の調査等」が広く定着することが必要であると謳われております。  次の頁で、平成24年度までの目標がいちばん上のほうに書かれております。ア、死亡者 数については平成24年において、平成19年比20%減少。死傷者数についても、同じく平 成19年比15%減少。労働者の健康確保対策を推進し、定期健康診断における有所見率の増 加傾向に歯止めをかけ、あるいは減少に転じさせることが謳われております。  (2)は、その重点対策及び目標ということで、特に化学物質についてはイとカという2つ の項目で特別な項目が設けられております。イ、化学物質における「危険性又は有害性等の 調査等」について、化学物質等安全データシート(MSDS)等を活用することにより、その実 施率を着実に向上させることが謳われております。  カ、化学物質による健康障害の防止について、化学物質に係る有害業務における作業主任 者の選任及び職務遂行の徹底、作業環境管理の徹底、安全衛生教育の促進が挙がっていて、 特に特化物、それから有機溶剤による中毒、一酸化炭素中毒等の化学物質による職業疾病の 減少を図ることと謳われております。  「計画における労働災害防止対策」ですが、自主的な安全衛生活動の促進ということが挙 がっていて、「危険性又は有害性等の調査等」の実施の促進の中で、化学物質については同 じように、MSDSの交付による化学物質の危険有害性情報等の提供や、化学設備等の改造 等の作業を外注する際の注文者による請負業者への情報の提供を図るということで、本来の 工場事業主の方々ではなく、外部から入ってくるような注文者等へも情報をきちんと提供す るということが挙げられております。  次の頁は、化学物質対策ということです。化学物質対策については、労働災害の防止対策 ということで3項目あります。(ア)は、MSDS等を活用した化学物質に係る「危険性又は 有害性等の調査等」の普及促進を図る。その下に、MSDSについては海外の動向も踏まえ、 海外の世界調和システム(GHS)に基づく分類に行い、モデルMSDSの作成を行うとともに、 表示対象物質及び文書交付対象物質の拡大を検討すべきということです。  (イ)は先ほどと同じように、特化物、有機溶剤、一酸化炭素等の化学物質の健康障害の 防止のために、作業主任者の選任、職務遂行の徹底等、法令による措置の徹底を図るととも に、安全衛生教育の促進が挙がっております。  (ウ)は、作業環境管理の一層の推進ということで、作業環境測定を行い、これに基づい て管理の一層の推進を図るということが謳われております。  化学物質管理対策については(ア)として、リスク評価に基づく化学物質管理の一層の推 進ということで、この場で国が行っております国におけるリスク評価というものと、事業者 が行うリスク評価、これらのベストミックスというのか、適切な組合せによって化学物質管 理を一層推進することが謳われております。そして、新規化学物質の有害性調査や、国によ る有害性調査の結果、がんが見つかったようなものについては、健康障害を防止するための 対策について指導を行うことが掲げられております。  それから、国際的動向を踏まえた化学物質管理の在り方の検討及び推進については、2002 年の世界サミット(WSSD)ということで後ろにも資料を付けておりますが、これにおける長 期的な化学物質管理に関する国際合意、その目的実現のためにSAICM、それからヨーロッ パでは「化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則(REACH)」が立ち上がってい ますが、こういうものの国際動向を踏まえ、官民の役割分担を含め検討を行って、対応を進 めることが挙がっております。以上が「第11次労働災害防止計画」の概要です。  IIとして7頁です。現在、「労基則別表第1の2第4号8」ということで、労働災害の補 償の状況を参考までに載せております。ここには、新規に支給決定を行った者の発症原因及 び疾病別の人数が挙げられております。最近における化学物質の災害を鳥瞰できるような資 料です。  11頁にあるのは関係法令です。いまご説明申し上げようとしている表については、労働 基準法施行規則の四ということで、「化学物質等による次に掲げる疾病」に該当するもので す。もう1頁めくりますと七があります。これは「がん原性物質若しくはがん原性因子又は がん原性工程における業務による次に掲げる疾病」ということです。先ほど表で示させてい ただいているものにはありませんけれども、がんの問題があるということで指定されている 物質が合計17あります。こういうものについて、労働災害に関する補償がなされている状 況です。  先ほどの表に戻りまして、最近において問題となっているようなものとして、例えば8 番とか9番といった次亜塩素酸ナトリウム、これはハイターなどに使われるような成分物質 だと思いますけれども、こういう生活密着型の化学物質によって、皮膚炎なり急性中毒その 他の疾病があります。  1頁めくりますと、特にエタノール、イソプロピルアルコールといった、生活に密着して いるようなものです。37番の酢酸による角膜炎などというものも近年見られています。多 いのは、46番のフロンガスによる肝障害が、平成18年度では10件ほど出ています。9頁 の76番はサリンによる中毒ということで、地下鉄サリン事件などで問題となったもので、 事件ものということで32件ありますが、一般的労働災害とは異質なものです。90番、91 番については、石綿による災害、健康障害が多く出ていて、最近において特に増えているも のです。  最近出てきている物質については10頁にあります。平成16年度以降散見されるものと して、イソシアネートガスとか、最近の電子産業で使われている100番のインジウムとい ったものの間質性肺炎。クロロシラン、硫酸亜鉛、消毒剤として使われているエチレンオキ サイドガスによる中毒も最近は出ております。以上が労災関連の情報です。  13頁は、厚生労働省、経済産業省、環境省の3省庁共管ということで化審法の改正が今 年5月にされておりますので、その資料を付けております。そこの「改正の趣旨」に書かれ ているように、世界的な動きを踏まえた改正です。環境サミットにおいて合意されている化 学物質の管理を、国内においてもきちんとするという趣旨で改正が行われていて、これにつ いては化審法自体が昭和48年に制定され、その後新たに流通した物質については、これま でも厳しい事前審査を行ってきておりますし、それから既存化学物質については、国自らが 安全性評価を行い、必要に応じて規制措置を講じてきておりますけれども、特に既存物質に ついては化学物質が多くて対応ができないということもあるようです。  そのために、iiiですが、特に既存化学物質の評価を進める観点から、製造・輸入を行う事 業者に対し、毎年度数量の届出を義務づけるということと、有害性情報の提出を求めること を趣旨とした改正を行ったものです。  iVで「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」、一般的にはPOPs条約と申し ておりますけれども、これについてはダイオキシンとかPCBといった、世の中で問題とな っている難分解性の物質についての規制ですが、これに対応するために化審法においても、 法令の見直しを行いました。具体的には、禁止している物質ということだけではなくて、制 限などを柔軟に対応できるような見直しを行ったと書かれております。  「改正の概要」については、(1)既存化学物質等も含めた包括的な管理制度の導入という ことで、基本的には一定数量(ここでは1トン)、1トンの物質については、毎年度その数 量を届け出る義務を課すということ。それから、有害性及び既知見等を踏まえ、優先的に安 全性評価を行う必要がある化学物質を「優先評価化学物質」として指定するという作業にな っております。  次の頁では、必要に応じて優先評価化学物質の製造・輸入業者に対しては、有害性情報を 求めるということで、併せてどういう用途で使われているのかということで、使用用途の情 報の報告を求めることも盛り込まれている状況です。  特に問題があるような、人又は動植物への悪影響が懸念される物質については、現行法と 同様に「特定化学物質」として製造・使用規制等の対象とするということ。これまでは規制 の対象として、「環境中で分解しにくい化学物質」ということで限定していたものを、環境 中で分解しやすいものであっても問題があるようなものについては、それを対象とするとい うことになっております。  それから、(2)流通過程における適切な化学物質の管理ということで、表示というものの 義務づけ。(3)国際的動向を踏まえた審査・規制体系の合理化ということで、ストックホル ム条約の関連で、例外的な使用を厳格な管理の下で認めるような条項も入れています。これ は、特に消防関係で使われるようなピーホスという物質について、一定程度日本国内でも使 えるような位置づけをしなければいけないということもあったようですので、そういう状況 を踏まえて、こういう法律を作っていただいたということです。以上が化審法の改正の概要 です。  次に「REACHの概要」です。このREACHというのは、平成19年6月から新しくスタ ートしたということで、その概要を17頁にお示ししております。これについては、特に既 存化学物質と新規化学物質の扱いを同等とするというような基本方針を立てて、それに基づ いて今後制度を進めるということが書かれております。いま申し上げたのは「特徴」の中に 書かれているものです。  それから、これまで政府が実施していたリスク評価を、事業者の義務に変更するというこ とで、化学物質が増えていくような状況の中で、すべて国がやるのはヨーロッパにおいても 難しいということで、事業者に義務を課すことになったようです。  その下はサプライチェーンということで、化学物質の流通経路において、化学物質の安全 性や、取扱いに関する情報の共有を双方向で強化するということで、化学物質についてはそ の安全性のデータシートを付けて川下のほうに流すのが基本になったということです。化学 物質成分のみならず、成形品に含まれる化学物質の濃度や用途についても、情報の把握を必 要とするということです。  実際にはREACHにおいても「登録」という行為があるということで、年間の製造・輸 入量が、事業者当たり1トンを超えている化学物質が対象となるということです。こういう 物質については登録制度ということで、登録のスケジュールと書いてありますが、2008年 12月1日までに、その時点で流通しているようなものについては、あまねく既存化学物質 として登録しないと、新たな規制がかかってくるということです。日本からも輸出している ような企業にとっては、それを登録したという状況です。10トン以上の化学物質について は、化学物質の安全性報告書が求められるようになっております。そういうものを基に、今 後EUのほうで評価を行うということが書かれております。  その評価については18頁に書かれております。「評価」は化学物質安全性報告書(CSR) の内容を、行政庁が評価するということです。特に行政庁は、高懸念物質ということで、 SVHCについてはばく露があり、事業者当たり年間100トンを超える量が使用される物質 から優先的に評価をするということです。物質の選定に関しても、優先度を付けて評価をし ていくということで、この会議でも後ほどその辺りのご議論をいただけるかと思います。  その使用については「認可」をする必要があるということで、高懸念物質の使用には、事 業者は行政庁に申請をして認可を得る必要が出てきました。それから、認可を有する事業者、 及び川下使用者は、上市前にラベル上に認可番号を記載する必要があるということ。  4番で、行政庁が実施したリスク評価の結果、リスク軽減措置が必要な場合には、規制と いうような形で製造・上市、使用の制限をかけるということです。それから「サプライチェ ーンにおける情報の伝達」ということで、SDSということで安全性データシートを化学物 質の流通に合わせて添付する必要があるということです。それから、成形品についても、そ の登録あるいは届出の対応が進んでいるという状況です。雑駁なご説明でしたが、以上が巡 るような動きです。 ○櫻井座長 動向等について説明がありましたが、ご質問がありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○櫻井座長 特にないようですので先へ進みます。議題(1)の「平成21年度の化学物質のリ スク評価の方針について」の提案をお願いいたします。 ○島田化学物質評価室長 資料3で「労働者の健康障害防止にかかる化学物質のリスク評価 方針」を事務局で提案させていただいておりますので、これについてご説明いたします。こ れはあくまでも案ですので、この場でご議論いただきまして、必要な事項を加筆・修正させ ていただきます。  1は「リスク評価の目的」です。職場における化学物質の取扱いによる健康障害の防止を 図るためには、事業者が自らの責務として個々の事業場でのばく露状況等を把握してリスク を評価し、その結果に基づきばく露防止対策を講ずる等の自律的な化学物質管理を適切に実 施することが基本である。しかし、中小企業等においては自律的な化学物質管理が必ずしも 十分ではないことから、平成18年度から、国は、重篤な健康障害のおそれのある有害化学 物質について、労働者のばく露状況等の関係情報に基づきリスク評価を行い、健康障害発生 のリスクが高い作業等については、リスクの程度に応じて、特別規則による規制を行う等の リスク管理を講じてきている。  2は「リスク評価の現状」です。(1)平成18年9月よりリスク評価検討会を開催し、ヒト に重篤な健康障害(現在まではがん等を中心にやってまいりました)を発生させるおそれの ある物質について、学識者によるリスク評価を実施しております。(1)平成18年度には、5 物質についてリスク評価を行い、このうちホルムアルデヒド、1,3-ブタジエン、硫酸ジエチ ルの3物質について、平成19年度において特定化学物質障害予防規則等の改正を行い規制 の強化を図った。(2)平成19年度には、10物質についてリスク評価を行い、このうちニッケ ル化合物、砒素及びその化合物の2物質について、平成20年度において特化則等の改正を 行い、規制の強化を行った。(3)平成20年度には、44物質についてリスク評価を行い、この うちリスクの高いおそれのある7物質について、平成21年度に詳細リスク評価を実施する こととした。規制強化については、詳細リスク評価を受けて、平成22年度以降に行われる 予定です。  (2)このほか、平成18年度のリスク評価を受けて規制の強化を行ったホルムアルデヒドに ついては、医療現場等における取扱いについては、特別な考慮が必要となったことから、平 成20年7月に「少量製造・取扱いの規則等に係る小検討会」を開催し、大学医学部におけ る解剖、これは学生の研修に用いる解剖で正常解剖と言われているものです。それから、実 際に病理組織を取って、ホルムアルデヒドに浸けて保存するような行為が行われている病理 解剖、それから歯科医療においても多少そういうものがありましたので、これらにおけるホ ルムアルデヒドの規制のあり方の検討を行い、リスク管理措置の適正化を図りました。  ホルムアルデヒド、臭化メチル、シアン化水素を用い、農畜産物の防疫のために実施され る燻蒸作業にかかる規制の強化を行いました。さらに、労働現場におけるリスク評価におい て、重要となるばく露評価について、その適切な運用を図るため、同小検討会において検討 を進め、「労働者の有害物質によるばく露評価ガイドライン」が作成されたところです。こ れは、席上にお持ちしたものです。  3は「平成21年度のリスク評価の方針」です。(1)検討体制の強化。平成18年度からの 個別物質のリスク評価は、「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」 において実施してきたが、3ヶ年のリスク評価の実績を踏まえ、以下の5つの観点から体制 の見直しを行う。1)リスク評価対象物質選定手順、基準の明確化、透明性の確保。2)化学的 判断が求められるリスク評価検討会と政策的判断が求められるリスク管理の検討会の分離。 3)リスク評価の2つの要素である有害性評価検討とばく露評価検討の分離によるリスク評 価検討の効率的推進。4)リスク評価結果を受けた健康障害防止措置の検討における最新の健 康障害防止技術開発動向及び健康障害防止措置の導入が必要な事業場等の動向の検討の推 進。5)リスク評価の動向や評価結果の情報提供の推進が挙げられております。  (2)各検討会におけるリスク評価検討の加速等。1)本検討会ですけれども、化学物質のリ スク評価に係る企画検討会。本検討会においては、平成21年度のリスク評価にかかる基本 方針の策定を行うとともに、平成22年度の有害物ばく露作業報告を求める物質の選定作業 を9月までに実施し、12月には本ガイドラインに沿って報告を求めることとする。また、 前年度のリスク評価結果及び今後のリスク評価の方針等の情報を関係者に提供するととも に、リスク評価に関する関係者間の相互理解を促進するため、労働分野におけるリスクコミ ュニケーションのあり方を検討する。  2)化学物質のリスク評価検討会。リスク評価検討会については、平成21年度から有害性 評価とばく露評価を並行して審議することとし、同検討会の下に以下の2つの小検討会を設 け、効率的な検討を行う。1つ目の小検討会は、有害性評価小検討会です。有害性評価小検 討会においては、国内外の疫学、毒性等にかかる情報を基に、平成21年度に新たにリスク 評価を行う20物質の有害性評価を行うこととする。また、国によるがん原性試験の実施が 必要な物質(2物質)の選定を行うこととする。2つ目の小委員会である、ばく露評価小検 討会では、ばく露評価については今回定められたガイドラインに沿って、前年度のリスク評 価において高いばく露レベルが確認された7物質について、詳細リスク評価を行うとともに、 平成21年度の有害物ばく露作業報告を求めた20物質について、優先度の高い物質からば く露評価を実施することとする。  3)化学物質の健康障害防止措置に係る検討会。同検討会では、リスク評価結果がとりまと められた物質について政策ベースの検討が可能となるよう、関係事業者、保護具メーカー等 からもヒアリングを行うなどして、最新の技術開発動向や規制の導入に当たって考慮すべき 事項を積極的に聴取し、円滑かつ適切な健康障害防止措置の導入を目指すこととする。ただ し、平成21年度においては、詳細リスク評価が実施されている状況であり、実質的な検討 は平成22年度以降となる見込みである。  また、国による試験において発がん性が確認された物質については、その取扱い等にかか る行政指導等の検討を行い、その方針をとりまとめることとする。このほか、近年健康障害 の発生が増加している一酸化炭素中毒の防止措置の検討を実施することとする。  (3)リスク評価にかかる情報提供等の推進。リスク評価にかかる情報提供等についても、 規制措置の導入に際して、パブリックコメントを通じて、国民の意見を積極的に募集すると ともに、リスク評価の節目にリスクコミュニケーションを実施し、国民にわかりやすい情報 提供に努めることとする。このほか、リスク評価を通じてとりまとめられた情報については、 MSDSを作成し、提供するとともに、ばく露実態調査における個人ばく露測定等のために 策定された測定・分析方法についても、積極的に情報を提供し、事業者自らのリスク管理の 導入を支援していくこととする。以上が提案です。 ○櫻井座長 ただいまの説明の内容について、ご質問、ご意見をお願いいたします。どの部 分でも結構ですのでご発言をお願いいたします。 ○小泉委員 これまでに行われていたリスク評価対象物質の選定が、どういう基準で行われ たのか、いまの提案とどこが違うのかを説明してください。 ○島田化学物質評価室長 資料4に、平成22年度に評価を進めていただくための資料とし て作っていただいたものがあります。もしよろしければ、そちらを先に説明させていただい てもよろしいでしょうか。 ○櫻井座長 お願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料4の説明をさせていただきます。「有害物ばく露作業報 告制度及び報告対象物の選定経緯について」です。平成18年度からリスク評価を行ってい るわけですが、そのときにどんな事業場で、どんな物質を、どのように取り扱っているかと いうことを情報収集するために、「有害物ばく露作業報告」という制度を平成18年から設 けております。  この根拠といたしましては、労働安全衛生法第100条に、国が事業場に必要な報告を提 出させることができるという根拠があり、それを基に労働安全衛生規則第95条の6という 条文を新たに作りまして、労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で厚生労働大臣が定め るものを製造し、又は取り扱う作業場において、労働者を当該物のガス、蒸気又は粉じんに ばく露するおそれのある作業に従事させたときは、厚生労働大臣の定めるところにより、当 該物のばく露の防止に関し必要な事項について、所定の様式で監督署長に提出しなければな らないという条文があります。これに基づいて、ばく露作業報告を求め、それを使ってリス ク評価をしてきているところです。  ばく露作業報告については、これまでのところ毎年対象物質を入れ換えるような形で選ん できております。具体的にどんな物質を選んできているかが2頁からです。(1)は平成18年 度、(2)は平成19年度、(3)は平成20年度、(4)は平成21年度にそれぞれどういう物を選ん だかということです。ここまでの4年間については、主として発がん性に主眼を置いて物質 を選んできております。  (1)平成18年度については5物質を選定しております。そのときの選定基準を○で書いて おりますのでご紹介いたします。施行令別表第9に掲載されていることということですが、 施行令別表というのは、労働安全衛生法の施行令ということで、それの別表第9というのは、 MSDSを交付しなければいけない物質を別表第9に列挙していて、現在640物質が掲載さ れておりますので、その物質から選ぶということです。それから、現状ではまだ特定化学物 質障害予防規則等で規制されていないこと。国際がん研究機関(IARC)での評価が1又は2A であること。4番目の要素として、生産量等が1,000トン以上であることといったことで、 平成18年度は物質を選び、それがここに書いてある5物質です。  (2)平成19年度についてもほぼ同じような考え方で物質を選んでおります。物質の数は少 し増えて10物質となっておりますが、基準はほとんど同じです。IARCの基準についても、 グループの1、あるいは2Aというところから選んできております。  (3)平成20年度については物質数が多くなって44物質です。ここでも平成18年度、平成 19年度と大部分は同じような基準なのですけれども、少し変わっているところとしては、 発がん性の知見について、それまではIARCの情報だけでしたが、平成20年度のものから はEUの分類も参考にし、欧州連合のほうで1あるいは2と評価されているものも対象にす ることになりました。また、生産量等の基準に関しては、平成18年度、平成19年度はあ らかじめある程度生産量が多いことがわかっている物質から選んでおりましたが、平成20 年度の報告の分からは、製造量が少ないものについても、国内でそういう物の製造・取扱い があるのかを把握すること自体も重要と考え、量についての制限はなくした形で物質をリス トアップしております。  (4)平成21年度の報告対象物は、発がん性の基準のところが少し変わっております。従来 はIARCでいくと1、2Aレベルのところまででしたけれども、それよりもう少し発がん性 のランクとしては低くなりますけれども、2Bを中心に選びました。インジウム及びその化 合物というところだけ、従来の基準であるIARCの2Aも入っております。製造・取扱量の 基準とも関係があるのですけれども、労働現場でそれなりに使用なり製造なりがされている ようなものを考えて、米国の産業衛生専門家会議(ACGIH)、あるいは日本産業衛生学会に おいて、労働現場での許容濃度が勧告されているような物質という条件を付け加えておりま す。  「ただし」ということで最後のところにありますように、POPs条約対象物質等、既に国 内での製造・輸入・使用が禁止になっているような物については、上のほかの条件を満たし たものであっても除外するようにしております。このようなことで、平成21年度は20物 質を選んで報告を求めているということです。いままでの物質の選定基準については以上で す。  この資料には書いてありませんけれども、実際に事業場から報告を求めるときには、年間 の製造量、あるいは使用量が500kg以上という条件を付けて報告を提出していただいてお ります。以上です。 ○櫻井座長 それではお願いいたします。 ○漆原委員 今年、単年度当たりで評価できる物質の上限というか、体制によって変わると 思うのですが、大体何物質ぐらいを想定しているのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 この有害物ばく露作業報告というのは、有害物作業ばく露報告の 後に中央労働災害防止協会に現在はやっていただいておりますけれども、ばく露実態調査を させていただいております。これは、実際にその現場の作業はどういうことがやられている かということと、個人ばく露ということで、労働者に呼吸域にブローチのようなサンプラー を付けていただいて、それで測定をしていただく作業です。これをやっていただける所が 70〜80ぐらいの事業場です。そういう状況からしますと、我々は過去に5物質、10物質、 44物質ということでやってきましたが、やはり10物質前後が適正な物質数ではないかと思 っております。 ○山口委員 平成21年度の報告対象物の選定基準として、ACGIHと日本産業学会の許容 濃度が勧告されているものということが加わっていますが、これは重篤な健康障害のおそれ がある有機化学物質という意味で、重篤なものかどうかという根拠みたいなものがあるので しょうか。いままでも、発がん性というのは重篤であるし、企業の側として評価するにして も、目に見えて効果がわからない。対策を打ってもすぐに目に見えるものではないのですが、 許容濃度ですと、急性的なものですと、企業側が取り組んでもいいのではないか、という判 断があってもいいのではないかと考えるのです。その辺はどのように考えているのですか。 ○島田化学物質評価室長 おっしゃる点はそのとおりだと思います。事業者のほうでやれる ものについては、国があえてその評価を対象にしなくてもいいのではないかと思っておりま す。逆に、日本の産業衛生学会、あるいはアメリカのACGIHなどで取り上げられているも のについては、やはり健康障害が起きたことにより、そういう基準濃度、管理濃度が設定さ れていますので、やはり重篤な問題が起きるようなものがその設定の根拠になっております ので、重要なものということで位置づけています。 ○山口委員 それは、障害として重篤なものを選んでいるということなのでしょうか。単に 許容濃度が出ているという意味だけではなくて、許容濃度プラスその化学物質による健康障 害というものを考えているということなのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 それは両面ありまして、管理濃度というよりは、許容濃度がない 場合には、その比較をするべき対象がないという点もありますので、許容濃度が設定されて いる物というのは、比較的データが多いということもあり、そういう面も含めて選んでいる ような状況です。 ○大淵化学物質評価室長補佐 私からの説明がちょっと抜けていたかもしれないのですが、 ここに書いてある選定基準は、これのどれかに該当するということではなくて、これのすべ てに該当するものを選ぶということにしております。産衛学会なりACGIHで濃度基準があ って、かつ発がん性のランクで、今回の場合でいえば2B以上のものに該当することになっ ております。 ○櫻井座長 いままで説明がありましたように、主として発がん物質を最優先課題として評 価してきたのだけれども、これからどうするかというのが課題になります。 ○山口委員 選定基準の中に、「施行令別表第9に掲載されていること」とありますが、別 表第9に掲載されているというのは、どういう意味で掲載される仕組みになっているのでし ょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 掲載されるというのは、MSDSの交付を事業者に義務づけ ている物質になります。MSDSがある物質なので、購入した側でも、自分が買った中に一 定の成分が入っていることがわかることをある程度前提としていないと、ばく露作業報告の 義務をかけても、ユーザーの側で自分が買った物の中に何が入っているかわからないのに、 報告義務がかけられても、それはとても報告はできません。そういう観点でこの基準を入れ ています。政令の別表第9というのは、MSDSの交付が譲渡提供者に義務づけけられてい る物質ということはあります。 ○山口委員 それは、単純にMSDSのデータがあるという意味だけではなくて、実質的に 化管法にもMSDSがありますので、それプラス労働安全衛生上、有害性の高いものとして あるということでよろしいのでしょうか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、法律上のMSDS交付を義務づけている物質で現在 640物質、安衛法上ということで。 ○山口委員 安衛法上ということですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○榎本化学物質対策課長 いまは手元に法令集を持っていないのですが、定義としては労働 者に対する危険有害性が明らかなもので、政令で定めるものというのがこの対象になります ので、そういう範囲で選定されているとご理解いただければと思います。 ○櫻井座長 危険有害物質のリストを選んだときの選定基準をお知りになりたい点もあろ うかと思いますけれども、640物質という数に絞っていますので、当時危険有害性が高くて、 しかもある程度使用量が多いとか、いくつかの基準で選定されていたはずだろうと思います。 優先順位として、その中から選ぶというのは1つの選択の方法として、少なくともそれをい ままで採用してきたと考えられます。 ○島田化学物質評価室長 補足いたします。有害物ばく露作業報告は義務の報告ですので、 報告しないと罰則がかかるものです。MSDSによって、自分がその物質を扱っているとい うことが明確になっていないと、わかりませんでしたという状況になります。わからない物 質を報告しろというのは非常に問題があるということで、わかるということが前提となると いうことです。 ○山口委員 職場における化学物質の取扱いによる健康障害という部分に関しては、一次的 に取り扱う人だけではなくて、基本的には同じ事業場で、近辺で作業をされた方に、もしも 何らかの形でばく露が及んだというようなことも含められるのでしょうか。直接扱う場合だ けではなくて、例えば排気を集めたものの、その処理が悪くて、それがどこかに流れて作業 者がばく露される場合や、近辺にいていつの間にか知らずにばく露される場合というような ことまでも、ある程度配慮しないといけないということでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 それは、根っこにある法律自体の法目的が、労働者の保護になり ますので、基本的にはそこで作業をされている方がいちばん保護すべき立場になりますので、 それに対するリスク評価ということになります。もちろん、その周辺で別の作業をしている というような者については、労働安全衛生法の中でも、その配慮規定が入っておりますので、 それは当然リスク評価の範疇に入ると思います。  昨年度、燻蒸の関係の規定を見直させていただいたときに、燻蒸業務を行っている人では なくて、その周辺の事務室に漏れる可能性があるものですから、その事務室に漏れる可能性 を配慮したような規定も今回見直しをさせていただきました。 ○櫻井座長 私も気になる点があるのですが、3頁の(2)のばく露評価小委員会のところの3 行目で「詳細リスク評価を行う」と書いてあります。このリスク評価は合同でやるのか、そ このところがはっきりしないのです。たぶん、両方一緒でないとできないだろうという気が するのです。 ○島田化学物質評価室長 座長のおっしゃるとおりでして、実際には詳細リスク評価の部分 のうちのばく露評価を行うということですので、ここは表現が不適切だと思いますので直さ せていただきます。 ○櫻井座長 若干の修正は残りましたが、この方針についてご承認いただいたと考えてよろ しいでしょうか。 (承認) ○櫻井座長 ありがとうございました。詳細の修正は座長預かりとさせていただきます。本 日とりまとめましたリスク評価の方針については、事務局がリスク評価にかかるほかの検討 会に説明し、この方針に従ってリスク評価作業等を進めるようにしていただきたいと思いま す。  議題(2)は「今後のリスク評価候補案件の選定について」です。先ほど、既に有害物ばく 露作業報告制度と、報告対象物の選定経緯については説明をしていただきましたが、その点 について追加のご質問はありますか。 ○山口委員 ただいまの資料3の評価方針というのは、資料4のこれも含まれると考えてよ ろしいのですか。 ○島田化学物質評価室長 資料3は独立のものですので、資料3としてご承認いただいたと 理解しております。 ○山口委員 具体的な選定に当たっては、こちらのほうに選定の条件が書かれていると思う のです。 ○島田化学物質評価室長 資料4はあくまでこれまでの。 ○山口委員 条件がなくて、大別が書けているということで。 ○島田化学物質評価室長 実際に今後選定の方針については、この後の議題でご議論いただ こうと思っております。 ○櫻井座長 資料4のほうは、平成21年度までこの方針でもう選びましたということです。 ○山口委員 基本的な概念に沿って、具体的な考え方としてこういうふうに実行したという ことですか。 ○櫻井座長 少なくともいままではこうやったということです。今後は変わるところもある だろうと。 ○山口委員 基本な概念に沿ってということでよろしいわけですね。 ○櫻井座長 そうです。次に、ばく露評価ガイドラインの説明を先にやるのですか。 ○島田化学物質評価室長 資料5とばく露評価ガイドラインを合わせてご説明いたします。 山口委員から手順についてご質問がありましたので、この議題のところで私どもが提案させ ていただくものの1つとして、資料5-1に基づく、「平成21年度リスク評価対象物質(案件) の選定手順」ということで、これについては本日ご議論いただいて、ご承認をいただければ と思っております。  資料5-2は「リスク評価対象物質(案件)の選定基準」ということで、これについては事 務局からたたき台として、こういうものについて今後選んでいく必要があるのではないかと。 いま山口委員から、その部分についてのご質問をいただいたのだろうと思います。この部分 については、本日私どもの説明を聞いていただいて、改めてこの場でもんでいただいて、次 回、いまのところ9月を予定しておりますけれども、その検討のところで選定をいただくよ うな段取りにさせていただいております。  資料5-1に従ってご説明いたしますが、このリスク評価対象物質について、実質は有害物 ばく露作業報告を行う対象物質になります。それについては手順として、そこにあるスケジ ュールに従って進めたいと考えております。平成21年7月というのは本日ですけれども、 いまは第2回となっておりますけれども、「第1回化学物質のリスク評価に係る企画検討会」 ということで、この場で平成22年度の有害物ばく露作業報告の対象物質の選定についての ご議論をしていただくということです。それを踏まえ、7月に「リスク評価対象物質(案件) の募集」を行うということで、これについては、いままで特に国際的ながんの発生に関する 基準を優先させていただいて選定していました、ということを先ほど大淵のほうから申し上 げましたが、併せてリスク評価検討会のメンバーの方々、それから関係行政部局、特に労災 部局とか、実際に労働災害が起きているような状況をつぶさに見ておられる行政部局、併せ て国民一般の方々からパブリックコメントを募集し、今後どういう案件について評価をして ほしいかという希望を取ることとさせていただきます。  パブリックコメントについては、7月から8月ということで、約1カ月間募集させていた だき、その後私ども事務局の中で候補物質の整理をさせていただきます。その後9月の「第 2回化学物質リスク評価に係る企画検討会」の場において、平成22年度の有害物ばく露作 業報告の対象物質の選定をしていただきます。その選定の基準については資料5-2を基にご 議論いただきます。  今後の有害物ばく露作業報告についてですが、いままでは1年間作業報告を求め、次の年 に評価をするという形でしたが、下の小検討会でご議論いただいた結果、1年だけでは把握 できないものが結構あるということでした。特に中小の事業者の方においては、受注生産と いう形になると、3年に1回作業があるといった例もあるようでして、やはり3年から5年 の一定程度の期間において報告を求めていく必要があるのではないか、というご意見をいた だきましたので、その旨の修正を行っております。  これについて、本日は参考として配付させていただきました「労働者の有害物によるばく 露評価ガイドライン」に詳しく書いてあります。これはフロアのほうには配っておりません。 今後ばく露評価検討会のほうで、もう一度もんでいただいた上で成案となるということです ので、今回はお出ししておりませんが、既に少量製造検討の小検討会のほうでその原案が出 ておりますので、もし必要があればそちらをご参照いただければと思います。  本日は個別のものについてのご説明はいたしませんが、大体3年から5年の間の作業報告 を求めるということと、報告を2段階で求めていくべきであるというご指摘をいただいてお ります。これは、有害物ばく露作業報告については、報告者の負担が大きなものになってい るということですので、第1次報告で、最低限必要な情報を集めさせていただいて、それを 基にばく露の高いレベルのある作業について特定をさせていただいて、さらに詳しい情報を 取らせていただくという仕組みに変わっています。その仕組みに基づいて、この物質の選定 をしていただきます。  その後11月に平成22年度の報告に関する告示をさせていただきたいと思っております が、場合によっては12月にずれ込む可能性もあります。報告対象期間については、平成22 年1年間ということで、1月から12月まで取らせていただきます。その報告が上がってく るのは、平成23年の春ということです。これまでは遡及して過去の取扱い作業を報告して いただいていたわけですが、それだと十分事業場のほうで記録に基づく報告ができない可能 性があるということで、あらかじめこういう物質についての報告を出してほしいということ を申し上げた上で、事業場のほうでその物質の報告をするための記録を取っていただくとい う仕組みに変わっています。平成22年のばく露作業報告については、平成23年4月以降 評価がされる段取りになります。それまでの間については、これまでばく露作業報告を受け 付けている物から順次優先度を踏まえて作業をしていただく仕組みになっております。以上 が選定の手順です。 ○櫻井座長 いままでのところで、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○櫻井座長 この手順に従って進めていこうということで、9月に第2回の予定になってい ます。選定手順についてはご承認いただけますでしょうか。 (承認) ○櫻井座長 では、そのようにさせていただきます。次は、資料5-2のリスク評価対象物質 の選定基準のたたき台が提案されておりますので、事務局から説明をお願いいたします。 ○島田化学物質評価室長 資料5-2はあくまで事務局のたたき台ということで提案させて いただいておりますが、ご説明させていただきます。次のいずれかに該当するものの中から、 労働者の化学物質によるリスク評価の優先度が高いと考えられるものを対象物質、又は案件 として選定するものとする。なお、既に法令等により適切な対策が講じられているものにつ いては、対象物質から除外することとするということです。  選定基準ですが、これはすべて「及び」にするのか、あるいは「又は」とするのか、それ も含めてご議論いただければと思います。4項目挙げさせていただきました。1.一定程度以 上の有害性が認められる化学物質。2.一定以上の製造・輸入量がある化学物質。3.社会的関 心の高い化学物質又は案件。4.健康障害防止にかかる措置等について問題が示唆される化学 物質又は案件。文脈から、特に化学物質に特定できない、化学物質のグループみたいなもの もありますし、例えばある物質を禁止した場合の代替物質という形で、物質特定的でないよ うなものになると、それは案件という表現をさせていただいております。一応「物質(案件)」 ということで整理させていただいております。これについてはご議論いただければと思いま す。 ○櫻井座長 4つの条件を案として提示していただいておりますが、いかがでしょうか。 ○山口委員 「一定程度」「一定以上」という、数値で挙がっていない部分があるのですが、 ここはどういう数値なり基準になるのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 我々の中では、多様な選択があるのではないかと思っています。 いまの有害物ばく露作業報告では、500kg以上の製造についてそれを対象とするとなってい ます。先ほどご説明をさせていただきましたREACHなり化審法の場合は1トンとか10ト ンとか100トン、それから過去に私どもが基準とさせていただいたものの中には1,000ト ン以上の取扱いがあるようなものも入れさせていただいておりましたので、そういうところ からの選択になるのかと思っております。 ○山口委員 有害性に関しては、これまでは発がん性ということでしたが、場合によっては 発がん性プラスアルファということでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 あまり事務局が出しゃばってもあれかと思いますが、確かに重篤 なものの中の1番目は職業がんということで、がんが中心になってきたということです。先 ほどご説明申し上げました第11次防の中には女性保護とか、その他の視点が入っておりま したので、女性に対するものについては、内分泌撹乱といったものが場合によっては入って くる可能性があると、我々も漠然とは認識はしております。 ○名古屋委員 平成21年度の対象の仕方と、これとは整合性は取れているのでしょうか。 平成21年度の対象物質の考え方を基準にして、これを加えるという形なのでしょうか。そ れとも、当然ここは踏まえるけれども、新しくもう一度選定方法を考えるということなので しょうか。 ○島田化学物質評価室長 先ほどご説明させていただきました、EUなりIARCというがん センターのほうの、非常に高いレベルのものについては一応手を付けさせていただいている ということです。いま2B、2CというIARCのものについて、もちろんがんの可能性はあり ますけれども、レベルとしては低くなってきているということです。ほかのものとのバラン スを考えて、この辺りでやるべきだというご検討をいただければと思っています。 ○漆原委員 3.の「社会的関心の高い」というところの表記なのですが、今回はパブリック コメントもやるので、パブリックコメントで意見が多かったことをもって社会的関心の高い とするのか、あるいはテレビやマスコミで取り上げられているとか、そういうレベルの話な のでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 マスコミ、あるいは新聞等で当然取り上げられているようなもの は重要な案件だと思っています。マスメディアでは流れない、個別の労働者の方々が困って いるようなものが、場合によっては国のレベルで把握できないようなものもあるでしょうと いうことです。社会的関心を、一般的に言えばマスメディアで取り上げられているというの が社会的関心なのだろうと思いますが、場合によってはパブリックコメントで件数が多いよ うなものについては、この場でご議論いただくべきかと思っております。 ○山口委員 社会的関心というのに対しては、この開催要綱にありますように、職場におけ る化学物質の取扱いによる労働者の健康障害といったことが関係したものに限定してもら わないと、例えば製品を通しての化学物質による障害とかいろいろなことまで広がってきま すので、そういう限定だけはしていただきたいと思います。 ○島田化学物質評価室長 事務局というよりは、むしろこの場でお決めいただくことになり ます。 ○山口委員 私としてはそのように提案したいと思います。 ○櫻井座長 あくまで労働者の健康を守るということなのですが、これは1、2、3、4を見 ても明確ではないですので、そこをはっきりするといいと思います。そういうご意見ですよ ね。 ○山口委員 はい、そうです。この曖昧とした部分もある程度明確にしないと、その後のリ スクコミュニケーションにするにしても何にしても、曖昧な部分が残りすぎるというのはあ まりよろしくないのではないでしょうか。 ○名古屋委員 いままでずっとやってきた中で、国際がん学会のところで1とか2Aになっ ているところは一応もう全部終わっていて、だからいまは2Bになってきているというふう に考えてよろしいのですか。全部終わってきているので、昨年は2Bがずっと来ていますけ れども、2B、2Aが来ているよということならば、そこのところはあまり触れられないで、 ほかの有害性の要因ということなのか。例えば、MSDSの中で濃度が出ている中で、低い ほうから選定していくという基準になるという考え方でよろしいのですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 いまおっしゃられたように、発がん性ということで、発がん 性評価レベルの高いものから順にやってきたところで、グループ1、2Aグループはほぼや るべきものは終わり、2Bについてもこの春ばく露作業報告を求め、2Bグループの中でも、 産衛学会なりACGIHで濃度基準が定まっているものは、今回の20物質でほぼ網羅されて いるような状況です。がんという観点では、国際的な評価で危ないと言われているものは、 概ね終わってきているという面からすると、今後はがん以外のものにも目を向けていく必要 があるのではないかというところです。 ○島田化学物質評価室長 そういった場合に、例えば生殖発生とか神経抑制など重篤なもの と、とりあえずNOAELが低くてもバイオマーカー的なもので決まっているNOAELとい うような、エンドポイントの重篤度の違いというのはかなりあると思いますので、そういう ところもこの中できちんと議論し、有害性というのはどういうものかということを決めない といけないかと思います。 ○櫻井座長 いま、おっしゃいましたのは、有害性の種類の問題と、もう1つは比較的低い ばく露でも起こる可能性があるかという程度の問題と両方考えるということですね。 ○島田化学物質評価室長 はい、そうです。 ○榎本化学物質対策課長 補足させていただきます。発がん性についてはこれまでリスク評 価の中で、特に着目して取り組んできているわけです。現在そのベースとなる対象物質とし て640物質、MSDS交付対象物質640物質を一応ターゲットに置いて、その中から拾って いくということをしております。ただ、この640物質については未来永劫640物質のまま かというと、その辺はちょっと違います。将来の話なのですが、私どもは同時並行的にこれ についても幅広く既存化学物質の危険有害性情報を集めております。一定の基準に該当する ものについては追加していくことを考えておりますので、将来的にはこの辺も幅が広がって、 また新たに発がん性という観点から取り上げなければいけないものも出てくるだろうと思 っておりますが、当面は640物質ということですので、これまでの取組みで大体その辺の スクリーニングは済みつつあるのかと考えております。 ○山口委員 いまの説明の中で、基本的には先ほど言いました640物質で、MSDSがある ものに対して、こういったリスク評価というのは、この選定基準の前提条件としては、そこ の法律の中にMSDSの情報が整っているという前提条件はあると考えてよろしいのですよ ね。 ○榎本化学物質対策課長 いまの仕組みでは、私どもはハザード情報とばく露情報の両方を 踏まえてリスク評価をしているわけです。ハザードのほうはいいのですが、ばく露情報のほ うはどうしても事業場の協力を得ないとなかなかできません。その辺の把握というのは、い まは唯一安衛則の第95条の6を使って、一定量以上の製造・取扱いをしている事業場から 情報をいただくということで、それを使って現場に入ったりということをしております。  MSDS対象物質ですとそのようなことができるのですが、それがないということになる と、どこから情報を取っていいのかというところが非常にネックになっております。いまの ところ仕組みとしては、MSDS対象物質の範囲の中で検討しようということにしておりま す。 ○山口委員 それは、あくまでも国のリスク評価対象で、企業が自主的にMSDSなり、そ れに類した情報を持って、自ら物質に関して自主的にやるということを妨げるということは なく、それはそれでやっても構わないということですね。 ○名古屋委員 そういう物質があるのですか。 ○山口委員 物質によってはまだオープンになっていない有害性情報というのは、企業の中 にある部分もあると思います。あとは、その段階がどの段階で評価するかということです。 完全に製造に移る前の、試験的な段階もありますので、そういうときにも企業の中ではある 程度の毒性の評価を取って、簡易な場合が多いのですがリスク評価をすると思いますので、 それと国のリスク評価の制度とは別の所で自主的に動いていると思いますが、そこのところ は法律的なものではなくて、あくまで自主的なものです。 ○名古屋委員 逆に言うと、それはMSDSの予備軍という可能性はありますね。 ○山口委員 あります。 ○櫻井座長 実際には640物質に限らず、MSDSはもっと多くの物質について作られてい ます。 ○山口委員 MSDSまでいかなくても、部分的な内生情報を持っているケースがあると思 います。 ○櫻井座長 先ほど課長が言ったように、640物質というのはいつまでもそのままというこ とを考えているわけではないだろうと思います。今後必要に応じて変化もあるかと思います。 有害性の種類については、先ほど生殖発生毒性も特定されましたが、あるいは神経毒性です か、その辺りを。 ○山口委員 そういう意味では、この選定基準のところを、リスク評価というのはあくまで もハザードとばく露情報ということなので、選定条件をそういう意味で何か説明していただ いたほうがよろしいのではないか。ハザードのデータとして、こういうあるハザードよりも 大きいものとして物質を選定する。ばく露に関しては、例えば一定以上の製造量が、仮に何 か代表するものであればそういうものと。  社会的な関心という意味では、ハザードは明確ではないけれども、将来的におそれがある、 あるいはそういう関心は世の中でどうなのだという関心があるということで、ハザードの面 でやるということですよね。そういう中のある程度の理論づけというのでしょうか、説明づ けがあったほうが、単純に選定基準はこうですというよりは、世の中に対しても納得性が得 られるのではないかと思います。 ○櫻井座長 そういうことを頭に入れて、事務局のほうで次回までに書き直していただくと。 4もあまりはっきりしなくて。その他何か問題があるようなというのは、何を考えておられ るのか私は想像がついていますけれども。例を挙げるとこの間のプロパンスルトンという特 殊なもので、あれは1回ばく露しただけでも発がんのおそれがあるというようなものについ ては、経常的な低濃度ばく露云々というよりも、それはばく露がなくてもリスクとして管理 する必要があるのかということでした。そういうやや特殊な状況のことを念頭に置いている のかと思います。 ○島田化学物質評価室長 そういうものも、当然我々の意識の中にはあります。 ○櫻井座長 その他何かの問題が示唆されたらということで、一般条項ですね。 ○島田化学物質評価室長 はい。 ○山口委員 具体的に健康障害の発生の可能性が高いものというのでしょうか。 ○漆原委員 確認なのですけれども、この4つの項目というのは、andではなくてorと考 えてよろしいのでしょうか。 ○櫻井座長 必ずしもそうではないです。 ○島田化学物質評価室長 いまのご意見を伺っていますと、例えば社会的関心があっても、 当然労働者の被害に関する点も考慮しなければいけないことになりますので、必ずしもそれ ぞれが独立しているわけではないという意識で、我々はご審議を見守らせていただいていま した。 ○吉田委員 一定以上の製造・輸入量があるというのは、ばく露にかかるものだと思います。 社会的関心の高い物質というのは、どちらかというとそのハザード、有害性にかかる部分だ と思います。いまおっしゃられたように、4つが独立したという感じではなくて、2とその 他ぐらいかもしれないですね。 ○山口委員 そうかもしれないです。3の社会的関心事というのは、ハザードがあって、し かもある程度の被害があるのではないかという、ばく露もある程度考えられて関心があると いうことなので、ハザードだけあって、関心があるというケースはほとんどないのではない かという気がします。3は具体的に実際のハザードとばく露の掛け合わせで、既にリスクが 存在するのではないかというようなものという場合ですよね。 ○島田化学物質評価室長 必ずしも毒性情報とか、そういうものが得られていない中でも、 やはり社会的な関心が高くて、不安が生じているという状況の中では、国が対応すべきもの ではないかと思っております。そういう意味で3は上がってきています。  当然一定の毒性というものが、いま吉田委員がお話になったように、当然関心の高いとい うこと自体は、有害性に起因するものだと思いますので、確かにおっしゃるとおり2プラス その他みたいな形の考え方のほうが正しいのかもしれません。 ○山口委員 この選定基準の基本的な考え方をある程度整理しておかないと、後々のリスク コミュニケーションのときに曖昧とした選定基準というわけにはいかないと思います。やは り世の中に説明のつく考え方をまとめておく必要があるのではないかと思います。 ○漆原委員 感覚的に思ったところは、社会的に関心が高いというところと、例えば有害性 が認められるとは限らないと。認められているか、認められていないかといえば、認められ ていないかもしれないが関心が高い物質。ただ、一部学会等ではそういう報告もあるけれど も、それが定まってはいないというところではないかと思うのです。いまは製造量・輸入量 はそんなになくても、将来的に増える可能性も今後は当然あり得るので、最初はorでもそ れぞれ成り立つのかと考えていたところであります。 ○榎本化学物質対策課長 4について補足説明をさせていただきます。これは櫻井座長から ご示唆がありましたことももちろんあるのですが、そのほか私ども後追い的になるかもしれ ませんけれども、労働災害が発生しているとか、そういう災害事例とか、労災補償の状況と いうようなデータに基づいて、少しその辺のフィードバックを考えています。そういうこと で何か問題として把握できるのであれば、そういうことを俎上に乗せて、リスク評価のほう に移っていただくのもいいのではないかという趣旨です。 ○櫻井座長 1と2はたぶんandなのだろうと思います。1と2の両方が成り立つもので、 しかも640物質の中に含まれているものが基本である。3と4は付帯的にそれがあった場合 に検討するという感じかと思います。 ○山口委員 ということは情報があって、整備されていて、一定のハザードがあって、一定 のばく露があるという掛け合わせのものがまず1つと。それが全部揃っていない場合でも、 社会的に労働現場での健康障害があるのではないかというおそれがある、社会的にも関心が 高まっているものに関してはやるべきということ。4は具体的に先ほどの説明の場合という ことでよろしいのですか。 ○櫻井座長 そういう感じでよさそうです。いろいろと議論があり、方向性がはっきりした ように思います。次回9月にご決定いただくわけですが。 ○島田化学物質評価室長 事務局からの提案なのですが、私どもが出させていただいたもの は少し漠としているようなものもありますので、改めて書面によるご意見をいただきまして、 それを事務局でもう一度修正させていただいた上でご意見を伺い、ある程度方向性が見えた 段階で、次の9月の段階のときに改めて報告をし、ご承認をいただけるかどうか諮りたいと 思いますがいかがでしょうか。 ○櫻井座長 そのようにお願いいたします。それでは、残りの時間で議題3の「労働分野に おけるリスクコミュニケーションのあり方について」、資料6-1と資料6-2について事務局 から説明をお願いいたします。 ○島田化学物質評価室長 非常に簡単な資料ですが、リスクコミュニケーションに関して資 料6-1と、実際に今度は資料6-2ということでリスクコミュニケーションにトライしようと いうことで、そのスケジュールについてご説明申し上げます。  資料6-1は、リスクコミュニケーションというものの位置づけが、いままで我々は情報を 提供する、あるいは行政のほうが制度を見直したときのご質問に対して、それを説明すると いうことがリスクコミュニケーションだと理解していた部分もあります。事務局としても改 めて勉強させていただいた結果、端的に現すようなものがこのようなものではないかという ことです。  もともとこれは食品安全委員会のほうでまとめているリスク分析なり、リスクコミュニケ ーションの考え方を引用させていただいたものです。リスク分析については、ハザードを摂 取することにより、健康に悪影響を及ぼす可能性のある場合において、その発生を防止又は 抑制する全過程をいいますということです。リスク評価のみにとどまらず、それに基づいた リスク低減のための管理に至るすべての過程をいい、リスク分析はリスク評価、リスク管理 及びリスクコミュニケーションの3つの要素で構成されている。これら3要素が相互に作用 し合うことにより、リスク分析がより良い成果が得られる。  リスクコミュニケーションについては、リスク分析の全過程において、リスク評価者、リ スク管理者、そして消費者、私どもの場合は労働者になるのかもしれませんが、労働者、事 業者、研究者その他の関係者の間で、情報及び意見を相互に交換すること。リスク評価の結 果及びリスク管理の決定事項の説明を含むということになっております。それぞれ相手の立 場を理解し、それぞれリスク低減に関する考え方を、それぞれ意見交換をし合おうというこ とになると思いますが、こういうことだと理解しております。  資料6-2は「化学物質による労働者の健康障害防止に関する意見交換会」ということで、 第1回の例ですが、7月29日に中央労働災害防止協会の会議室で開かせていただこうと思 っております。この議事次第については、化学物質のリスク評価に関する情報提供というこ とで、1つは平成20年度のリスク評価の結果を、事業者の方、労働者もいらっしゃると思 いますが、わかりやすく説明していただくということで、本日座長になっていただきました 櫻井先生に、平成20年度のリスク評価の結果についてご説明をいただくことになっており ます。  2番目は「健康障害防止措置の導入状況及び今後の評価対象物質」ということです。今後 の評価対象物質については、この3月に有害物ばく露作業報告が出ておりますので、それを 踏まえ、今後リスク評価が行われるという説明を私どもの榎本課長からしていただく予定に しております。  後ろの頁ですが、本日お越しになっております山口部長には、事業者側の立場から、化学 物質の管理、あるいは労働者の保護という観点でどういう取組みをされているかをご説明い ただくことになっております。労働者側というか、医務産業衛生部ということで、エクソン モービル社の橋本様は、Industrial Hygienistということで、労働者側に立った考え方でご 報告をいただけるということです。  その意見交換のコーディネーターは、食品あるいは一般的な化学物質のコーディネーショ ンをしていただいております堀口先生にコーディネーターになっていただき、その後パネル ディスカッションをさせていただき、会場に来ておられる方々との間で意見交換をするとい うことで、一般的な行政的な説明と、それに対するご質問ということではなくて、意見交換 ができるような仕組みで進めたいと思っております。以上です。 ○櫻井座長 資料6-1と資料6-2についての説明がありましたが、ご質問、ご意見がありま したらお願いいたします。リスクコミュニケーションは大事だというのはそのとおりだとい うことで、それをやろうという話なわけです。 ○山口委員 特にこのリスクコミュニケーションとはという定義を、ここの場で決めるとい うわけではないのですよね。 ○櫻井座長 それはありません。 ○山口委員 リスクコミュニケーションとはこういうものだということで、とりあえず資料 6-2のような形で始めると。それでやった中で不具合があれば改良していくということで理 解してよろしいですね。 ○島田化学物質評価室長 そのとおりです。ただ、今後あり方の検討をしていただくという ことが先ほどの方針の中で謳われていて、ご承認をいただきました。私ども労働分野をもう 一度リスクコミュニケーションで見回した結果、労使の間で既に労働安全委員会というもの が立ち上がっていて、1つの事業場の中でリスクコミュニケーションというのは利害関係者 という間の中の意見交換は既にやられていることもわかってまいりました。  そうすると、一般的な食品とか、一般的な環境へ放出される化学物質のリスクコミュニケ ーションとはちょっと違うのではないかという理解をしております。その辺りはむしろ労働 分野ではどういうやり方をしたらよいかということを、改めてご議論いただくとすごくあり がたいと思います。 ○山口委員 そういう意味では、リスクコミュニケーションのメインとしてどういう関係者 のリスクコミュニケーションで、そのコミュニケーションすべき情報はどういうことか。い まだと、あくまでも労働現場における化学物質の取扱いに関するリスクコミュニケーション ということです。そこの範囲をある程度絞ったほうがよいのではないでしょうか、いわゆる 世の中でいうリスクコミュニケーションというのはさまざまなリスクコミュニケーション がありますので、ある程度絞ったほうが。リスクコミュニケーションにかかわりの深い、特 に労働者にターゲットをある程度絞り、その人が理解しやすい、しかも必要な情報をきちん と流す、あるいは意見を入れるというようなリスクコミュニケーションが望ましいのではな いかという気がいたしますが、具体的にどうすべきかはまた別といたします。  広くリスクコミュニケーションというと、製品を通しての化学物質のリスクコミュニケー ションも、世の中でいう化学物質を使った石鹸・洗剤とかいろいろな化学物質がありますけ れども、そういうことに関してもリスクコミュニケーションがありますが、それとは性質が 違ってもいいのかという気がします。 ○櫻井座長 労働環境でのリスクコミュニケーションについて、いまもいろいろご指摘があ りましたし、先ほど島田室長もおっしゃいましたけれども、安全衛生委員会を中心とする場 が非常に大事なのだろうと思います。あるいは、マネジメントシステムを動かしていく過程 は極めて良質のリスクコミュニケーションの場になるであろうということもあると思いま す。7月29日にあるリスクコミュニケーションは国がやるリスクアセスメント事業につい てのリスクコミュニケーションの試みであって、それと事業場の中で実施していくリスクコ ミュニケーションとはやや性質が違うだろうと思います。 ○島田化学物質評価室長 そういういくつかの場合場合で違ったリスクコミュニケーショ ンがあるのではないかと思っています。本日は堀口先生はお休みなのですが、堀口先生から 多少違った意味でそういうご提案というのか、ご意向も伺っております。堀口先生にお話を 伺ったほうがよろしいのかと思いますが、例えば食品産業の企業というのは、非常に安全な 企業というイメージが世の中にはあります。石油化学工業とか、化学工業周辺の人たちは、 危ない工場という位置づけになっていることもあります。その辺りで、ちゃんとした認識を 持っていただく必要がある場合もあるかなと。それは、周辺住民の人たちの声のリスクコミ ュニケーションということになるのかもしれません。 ○山口委員 いまのお話は、社会、工場の辺りのリスクコミュニケーションということです よね。まあほとんどの化学事業所は日化協もあるしということで、地域対話ということでや っていますが、そういったリスクコミュニケーションの話ですよね。 ○島田化学物質評価室長 たぶん、今度のリスクコミュニケーションの中では日化協でやっ ているようなものを、労働者との関係のみならず、周辺の住民の方、その他化学物質の消費 者の方々も含めた包括的なレスポンシブルケアみたいなものをやっていると思うので、場合 によってはそういうものもリスクコミュニケーションの1つなのかと思っています。 ○山口委員 その範囲をもう少し広げると。 ○島田化学物質評価室長 これは、あくまでも堀口先生の口から言っていただいたほうがよ ろしいかと思います。 ○櫻井座長 これは、今後ずっとやっていく問題だろうと思います。資料6-1全体をRisk Analysisと名前を付けてしまうのは、ちょっと違和感があります。 ○島田化学物質評価室長 そうですね。 ○櫻井座長 Risk Analysisはどちらかといえば、リスク評価の中の一部であって、これ全 体、管理も含めてそれをリスク分析というと言われると、ちょっと違和感があります。 ○山口委員 リスク分析というのは、リスク管理、リスクマネジメントのような。 ○櫻井座長 リスクコミュニケーションも含めたリスク管理全体像をいうので、それを Risk Analysisと言ってしまったら違和感があると皆さんも感じていると思います。それは 大したことではないですが、これは、単なる参考資料ということで。ちょうどよろしい時間 になってまいりましたが、最後に一言ということがありましたらご発言ください。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料7で今後の予定を説明させていただきます。次回第2 回は9月に開催したいと考えております。まだ日程調整しておりませんので、できるだけ早 い時期にメール等で先生方にご連絡をさせていただき、9月に第2回を開催したいと思って おります。  9月のときには、「平成22年度有害物ばく露作業報告の対象物質について」ということで、 先ほどご議論いただいたような選定基準を確定していき、それに基づいて具体的な物質のほ うも議論していただくようなことになろうかと思います。それに関連するような形で、特に 緊急にリスク評価を進めるべき物質等があれば、それについてもご議論いただきたいと考え ております。  その後は11月ごろに第3回、年が明けて3月ごろに第4回ということで考えております。 第3回については、がん原性試験の対象物質、これは国が行うがん原性試験がありますので その対象物質についてご議論いただきます。第4回については、平成21年度のリスク評価 の実績及び次年度のリスク評価の方針について、年度末ということでまとめ的なものと、次 年度に向けてのお話をしていただくという方向でいまのところは考えております。以上です。 ○櫻井座長 予定の時間になりましたので閉会とさせていただきます。どうもありがとうご ざいました。