09/06/30 第50回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第50回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 ○ 日  時 平成21年6月30日(火)15:00〜17:00 ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出 席 者   【委  員】永井部会長         石井委員  今井委員  岩谷委員  金澤委員         川越委員  菊川委員  末松委員  竹中委員         西島委員  橋本委員  廣橋委員  松本委員         宮田委員  望月委員 ○ 議  題  1.平成20年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について  2.遺伝子治療臨床研究について  3.ヒト幹細胞臨床研究について  4.その他 ○ 配布資料  資料1−1.厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成20年度報告書)         (案)  資料1−1別紙.厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成20年度)  資料1−2.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要  資料1−2別紙.平成20年度採択課題一覧  資料2−1.遺伝子治療臨床研究実施計画について(三重大学医学部附属病院)  資料2−2.遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について(三重大学医学部        附属病院)  資料2−3.遺伝子治療臨床研究実施計画の重大事態等報告について  資料3−1.ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について  資料3−2.ヒト幹細胞臨床研究実施計画について  資料4−1.国立障害者リハビリテーションセンター研究所の評価報告書等につい        て  資料4−2.平成21年度厚生労働科学研究費補助金公募要項<先端医療開発特区採        択課題を加速する研究の公募>  資料4−3.平成21年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(三次)  資料4−4.平成22年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針〜経済危機の        克服を目指し、底力発揮による将来の成長に向けて〜  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生        物多様性影響評価に関する参考資料  参考資料3.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料  参考資料4.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月1日厚生労        働省大臣官房厚生科学課長決定) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事 項をお守りくださるようお願いいたします。本日はクールビズということで事務局は軽装 で失礼しております。上着をお召しになっている方も適宜脱いでいただくなど、よろしく お願いいたします。  ただいまから第50回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様にはご 多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。本日は桐野委員、木下委員、佐藤委員、 福井委員、南(裕)委員、宮村委員からご欠席のご連絡をいただいております。少し遅れ ていらっしゃる先生もおられるようですが、委員22名のうち、出席委員は過半数を超えて おりますので、会議が成立することをご報告いたします。  続いて、本日の会議資料の確認をお願いいたします。資料の欠落等がありましたら、ご 指摘くださいますようお願いいたします。議事次第に配付資料の一覧があります。資料1-1 が「厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(案)」で、これの別紙があります。資 料1-2が「厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要」で、これにも別紙が付いておりま す。そして委員の先生方には、「『厚生労働科学研究費補助金の成果の評価』に関する御意 見」という1枚紙を、別にお配りしております。   資料2-1が「遺伝子治療臨床研究実施計画について(三重大学医学部附属病院)」、資料 2-2が「遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程について(三重大学医学部附属病院)」、 資料2-3が「遺伝子治療臨床研究実施計画の重大事態等報告について」です。  資料3-1が「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、資料3-2が「ヒト幹細胞臨 床研究実施計画について」です。  資料4-1が「国立障害者リハビリテーションセンター研究所の評価報告書等について」、 資料4-2が「平成21年度厚生労働科学研究費補助金公募要項〈先端医療開発特区採択課題 を加速する研究の公募〉」、資料4-3が「平成21年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(三 次)」、資料4-4が「平成22年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針」です。その 他に参考資料として、4点お配りしております。  資料の方はよろしいでしょうか。それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いいたし ます。 ○永井部会長  まず、平成20年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について、ご審議をいただ きたいと思います。事務局よりご説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料1-1が、本日ご審議いただく中心的な資料です。それと資料1-1の別紙、資料1-2 及びその別紙があります。先ほど申し上げたように、御意見ご記入の1枚紙もお配りして おります。資料1-1の別紙以降について、先にご説明させていただきます。資料1-1の別 紙は、各研究課題ごとに報告された成果について、行政効果報告より抜粋して一覧にした ものです。各研究課題ごとにその成果、あるいは右の方には原著論文数等のデータも示し たものとなっております。  資料1-2は「厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要」となっており、目次の後ろの 1頁から制度の概要の説明があります。4頁以降に、平成20年度の研究課題の研究費のデ ータ等があります。6頁にグラフや説明文がありますが、平均いたしますと1課題当たり の研究費額は、約2,400万円となっております。6頁の上のグラフを見ていただきますと、 研究事業によって、厚生労働科学研究費の対象範囲が幅広いこともあり、平均研究費の額 は相当異なっております。  8頁から評価の観点などを記載しております。12頁に申請と採択の状況の記載がありま す。新規課題の採択率は30.4%、継続課題では98.3%でした。13頁には研究成果のデー タベース、厚生労働科学研究成果データベースについて記載しております。14頁以降に、 各研究課題ごとの評価を記載しております。これは基本的に各分野ごとに1頁、研究成果 の説明の多いものは2頁に跨っておりますが、研究事業の目的、予算、課題採択の状況、 研究の成果等をまとめております。研究の成果はできるだけ分かりやすく、具体的な事例 の要点を簡潔に示す方向で整理をしております。また、各分野で状況がかなり異なります ので、相互比較は困難ですが、それぞれの分野について、論文等の数量化した指標も示し ております。資料1-2の別紙は、平成20年度の採択課題の一覧となっております。  資料1-1に戻ります。目次の後ろの1頁の1.「はじめに」では、成果の評価を行う背景 などを記載しております。  2頁の2.「評価目的」では、一層優れた研究開発成果を国民や社会へ還元することを目 的として評価を実施するという趣旨を記載しております。  5頁からは3.「評価方法」についての説明の記載があります。評価の対象は、(1)厚生労 働科学研究の各研究事業と(2)平成20年度終了課題の成果です。平成20年度終了課題の評 価については、厚生労働科学研究成果データベース報告システムの「行政効果報告」に登 録された平成21年6月19日時点のデータを基礎資料として用いております。「行政効果報 告」については、継続的な評価を行うという観点で、研究終了年度から3年間は随時WEB 上でデータを更新することをお願いしています。  8頁から4.「評価結果」で、9頁からが1)「各研究課題の記述的評価」です。I.行政政 策研究分野の(1)の行政政策研究事業、9頁の下の方の(1-1)の政策科学総合研究からご説 明していきます。平成20年度に実施した多くの研究が喫緊の行政ニーズを反映しており、 それらの成果が、少子化、高齢化、人口減少、医療、介護、年金、社会福祉等、省内横断 的に社会保障全般に係る厚生労働行政に活用されている等の評価が記載されております。  10頁の(1-2)の(a)が(社会保障国際協力推進研究)です。保健医療分野の各種国際イニ シアティブ、国際機関等の活動内容や意思決定メカニズム等に関して分析し、国際保健に 関する幅広い人材確保方法について検討し、社会保障分野における今後の我が国の国際協 力の推進に貢献しているという評価が記載されております。(b)の(国際医学協力研究)に ついては「日米医学協力計画」の下で、アジアにおける感染症、栄養・代謝関連疾患等々 の幅広い分野の諸課題の改善・克服に向けて取り組んでおり、アジア地域の人々の健康維 持・増進に寄与することが期待される成果もあり、国際協力・貢献の観点からも意義ある ものという評価が記載されております。  11頁の(2)が、厚生労働科学特別研究です。国民の健康生活を脅かす突発的な問題や社 会的な要請の強い諸問題について、緊急に行政による効果的な施策が必要な場合に行う研 究で、短期間でその成果が集約され、行政施策に活用されることが求められております。 医師不足対策に対応した研究の例を示し、緊急性の高い研究が実施され、行政施策の立案 に当たり活用されているという評価が記載されております。  ii.厚生科学基盤研究分野についてです。12頁の(3)の先端的基盤開発研究事業の(3-1) 再生医療実用化研究については、間葉系幹細胞を中心とする体性幹細胞による末梢血管、 角膜、心臓、肝臓等の臓器での基礎研究の進展、角膜、心臓に関しては臨床応用も開始さ れたところといった評価が記載されております。  (3-2)の創薬基盤推進研究の(a)ヒトゲノムテーラーメード研究事業については、パーキ ンソン病に対する遺伝子治療により改善傾向が確認される等の結果が得られており、評価 できるということです。  (b)が政策創薬総合研究事業です。政策的に重要ですが、産業界の自主努力に頼るだけで は研究開発の促進が図られないような領域で技術開発を行うもので、人工酸素運搬体の開 発や、ワクチン、治療薬の開発等の進展について評価できるとされております。  (c)の創薬バイオマーカー探索研究事業では、薬剤性間質性肺炎誘導機構の明確化や、安 全性バイオマーカーの探索のための基盤技術構築などの成果があったという評価が記載さ れております。  (d)次世代ワクチン開発研究事業については、がんワクチンとしての免疫性向上などの成 果が得られているという評価があります。  (e)は生物資源・創薬モデル動物研究事業です。マーモセットを用いたデングウイルスワ クチン評価系の有用性等の成果が得られたという評価があります。  (3-3)の医療機器開発推進研究の(a)ナノメディシン研究事業では、生体内で1分子の挙 動を高精度計測する技術の開発や、抗がん剤のバイオナノカプセルの研究等に成果が得ら れており、評価できるとされております。  15頁の(b)の活動領域拡張医療機器開発研究事業では、視覚刺激により生じる脳波信号 を利用した環境制御システムの開発や、安定性と耐摩耗性に優れたナノ表面構築型人工股 関節を開発するなどの成果があったという評価です。  (c)の医工連携研究推進基盤研究事業では、循環器系シミュレータ技術を用いた外科訓練 センター等の創設のパイロットスタディの実施、先端的循環器系治療機器の開発と臨床応 用、製品化に関する横断的・統合的研究の連携体制構築などの成果があり、評価できると されております。  (4)の臨床応用基盤研究事業の(4-1)医療技術実用化総合研究の(a)は治験推進研究事業 です。治験環境の整備を行うとともに、医療上必要であるが採算性等の理由により企業等 による治験が実施されにくい医薬品・医療機器の医師主導治験を行っております。16頁に ありますように、平成20年度までに19課題の医師主導治験課題を採択し、その内の16課 題について治験届の提出、6品目の薬事法上の承認を取得したということで、十分な成果 が得られているという評価が記載されております。  (b)の臨床研究基盤整備推進研究事業では、中核病院等の治験推進のための医療機関の体 制整備や臨床研究機関において臨床研究に携わる人材の雇用、研修や研究実施支援等々を 行っており、有効性の評価は高いということです。  (c)が基礎研究成果の臨床応用推進研究事業です。国産のウイルスベクターを用いた臨床 的評価等において、今後の臨床研究に繋がる成果が得られたという評価が記載されており ます。  17頁の(d)臨床研究・予防・治療技術開発研究事業です。難治性心不全患者において、 日本人の体格に合わせた免疫吸着療法の臨床評価などの成果が得られており、評価できる ということです。  (e)の臨床疫学基盤整備研究事業では、臨床疫学研究に活用可能な診療情報プラットフォ ームの構築に向けた研究などで成果があるといった評価があります。  (f)の臨床研究支援複合体研究事業では、臨床研究に関する相談・支援体制の整備に向け て、人材の育成を実施しているということです。  18頁から、III.疾病・障害対策研究分野についてです。(5)の障害関連/長寿科学総合研 究事業の(5-1)障害保健福祉総合研究では、障害の正しい理解と社会参加の促進方策等々、 障害者の総合的な保健福祉施策の向上のための研究開発や、障害者の自立を促進する技術 開発といった研究により、施策への有用な提言や、根拠に基づいた有効な障害者支援のた めの技術的基盤づくりに成果を上げているという評価です。  (5-2)の感覚器障害研究では、再生医療技術と医療材料技術を融合した難聴の治療、人工 視覚システムの開発などで、着実な成果をあげているという評価が記載されております。  20頁の(5-3)が長寿科学総合研究です。「老年病等長寿科学技術分野」では、老化・老年 病に関係する研究を多様な側面から取り扱い、「介護予防・高齢者保健福祉分野」では、介 護予防サービス利用者における予後予測システムの開発など、実際に介護予防施策の運用 等に資する成果が得られ、「運動器疾患総合研究分野」では、要介護状態の原因として多い 「転倒骨折」対策や腰痛、膝痛の早期診断・治療法の開発等、運動器疾患を通じた介護予 防関連に資する研究が推進されたということです。「認知症総合研究分野」では、若年性認 知症の実態調査や軽度認知障害に関する研究、アルツハイマー病の早期診断や治療薬開発 に関する研究などを多角的に行い、一定の成果を得ており、事業全体として高齢者施策等 に還元できる成果があるといった評価が記載されております。  (6)の子ども家庭総合研究事業では、乳幼児死亡や妊産婦死亡の分析、生殖補助医療の医 療技術の評価・高度化、子どもの疾患の克服、重症新生児の療育・療養環境の拡充、子ど もの心の診療体制の充実など、多様な社会的課題や新たなニーズに対応する実証的かつ政 策提言型の基盤研究を行っており、母子保健行政の推進に貢献しているといった評価が記 載されております。  21頁の(7)第3次対がん総合戦略研究事業です。がんの本態解明のための研究では多く の知見が得られ、革新的な診断技術・治療技術の開発、がん医療水準の向上に資する研究 が進むなど、全体的に研究は順調に進んでいるという評価があります。  22頁の(8)循環器疾患等生活習慣病対策総合/免疫アレルギー疾患等予防治療/難治性疾 患克服研究事業です。(8-1)循環器疾患等生活習慣病対策総合研究では、循環器疾患等の生 活習慣病について、疫学研究や介入研究等を行い、体系的なデータを得ており、特に糖尿 病については、戦略研究として大規模な介入研究を行い、予防から合併症重症化抑制に関 わる体系的なデータが得られる予定である等、様々な厚生労働行政分野において成果を上 げているといった評価です。  (8-2)の免疫アレルギー疾患等予防・治療研究については、免疫アレルギー疾患を適切に 管理する方法の開発・普及を当面達成すべき目標として、喘息、アトピー性皮膚炎、花粉 症、食物アレルギー、関節リウマチ等の重症化予防のための自己管理方法や生活環境整備 に関する研究に取り組み、例えばアレルギー性疾患の診療ガイドラインの作成と普及等に 取り組んで、最近10年間で喘息の死亡者数が半減するなど、医療の質の向上と国民の健康 指標の向上にもつながっている等の評価があります。  (8-3)の難治性疾患克服研究では、123の希少難治性疾患について研究を実施しており、 各疾患について、診断基準の確立、治療指針の標準化、原因の究明、治療法の開発を行っ た他、疾患横断的な疫学・社会医学的研究等についても取り組んでいるという評価です。  24頁の(9)エイズ・肝炎・新興再興感染症研究事業の(9-1)エイズ対策研究では、エイズ 予防指針に示される青少年、男性同性愛者等への個別施策層に対する効果的な予防対策、 疾患概念の変化に沿った治療法の開発、和解を踏まえたエイズ医療体制の確立等について 着実な成果を示しており、行政施策の推進に大きく貢献していると評価されております。  25頁の(9-2)肝炎等克服緊急対策研究です。肝硬変を含めた治療のガイドラインが作成 され、培養細胞におけるC型肝炎ウイルスの増殖系の開発、疫学研究では、大規模調査に より肝炎ウイルスキャリア数の実態を把握し、インターフェロン治療導入の妨げとなって いる要因探求に取り組んでいること等が記載されております。  (9-3)新興・再興感染症研究では、多岐にわたる感染症が対象で、25頁の下の方にあり ますように、新型インフルエンザやウイルス性出血熱等の新興感染症に対する国内対応の 準備等にも成果があるといったことが記載されております。  26頁の(10)が、こころの健康科学研究事業です。精神分野では、統合失調症やうつ病を はじめとして、課題が山積しており、近年拡大しつつある行政的な課題に直接的に対応し た研究も多いということで、本研究事業は施策推進の根拠を示すための重要な役割を担っ ているという評価が記載されております。神経・筋疾患分野においては、脳の役割という 観点から、神経・筋疾患に関して病態解明から予防法や治療法の開発まで成果があり、成 果の還元、活用も着実に進んでおり、一部の研究成果においてはスーパー特区を活用した 研究につながるものがあったという評価が記載されております。  27頁の真ん中からIV.健康安全確保総合研究分野ということで、28頁からが個別の事業 になります。(11)の地域医療基盤開発推進研究事業では、良質な地域医療を合理的・効率 的に提供する観点から、既存医療システム等の評価研究、医療安全体制確保に関する研究、 根拠に基づく医療に関する研究等を実施しており、研究の成果は、着実に医療政策に反映 されているとの評価が記載されております。  (12)が労働安全衛生総合研究事業です。石綿含有製品製造等禁止が例外的に猶予されて いるガスケットに関し、高温ガスケット密封性能試験法を開発したほか、労働者の自殺対 策に関する教育啓発等のツールを作成する等、行政施策に必要とされる重要な成果をあげ ているといった評価が記載されております。  29頁の(13)が食品医薬品等リスク分析研究事業です。(13-1)食品の安心・安全確保推進 研究事業では、BSE対策、モダンバイオテクノロジー、アレルギー、薬剤耐性食中毒菌や 既存添加物など、国民生活に影響の大きい研究を推進しており、リスクコミュニケーショ ンに関する研究も行い、国民と双方向の議論を踏まえて行政を展開する素地を広げたとい う評価が記載されております。  次の頁の(13-2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業では、医薬 品、医療機器等の安全性、有効性及び品質の評価や乱用薬物への対策等々を政策的に実行 するために必要な規制に対し、科学的合理性と社会的正当性を付与するための研究であり、 再生医療技術の安全性・有効性等の確保が可能となる品質管理手法として自己及び同種由 来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性確保のための基本的な指針作り等の成果につ いてコメントされております。  その下の(13-3)の化学物質リスク研究事業では、新規素材であるナノマテリアルの体内 挙動や毒性発現メカニズムに関する知見の集積、OECDへの新規ガイドライン提案等があり、 着実な成果があがっているといった評価が記載されております。  (14)は健康安全・危機管理対策総合研究事業です。過去の事例を分析し健康危機発生時 の健康被害抑制ガイドライン作成等が行われ、水安全対策に関しては、水道水質に関する 多面的な要素に関する研究により得られた知見を水道水質基準の逐次見直し等に反映させ る等の成果があったということです。生活環境衛生に関しては、公衆浴場のレジオネラ属 菌の消毒方法や検査方法等の衛生管理手法の開発、一般医療機関向けのシックハウス症候 群に関する手引きの作成が行われ、さらに対テロ対策として、マニュアルの策定等が行わ れております。本事業は健康危機発生時の対応及び平時の体制整備に関する研究を実施し ており、国民の健康を確保する上で極めて有用であるという評価です。以上が記述的評価 です。  32頁からは2)「終了課題の成果の評価」ということで、その次の頁から定量的な指標と なるデータを整理した表などがあります。原著論文等の発表状況を集計して、今回数値が 得られている408課題については、原著論文数は9,475件、その他の論文は5,194件、口 頭発表等は16,615件です。33頁の表の右下の方にありますように、通知やガイドライン 等施策への反映は204件、普及・啓発活動は1,730件といった成果です。34頁にはそれを 平均値化したデータがあります。  35頁に5.「おわりに」ということで、この第1段落の後半のところで、「厚生労働行政 の在り方に関する懇談会最終報告」に関しての記載があります。こちらの方では、「政策が 多くの国民の理解と納得が得られるよう、企画立案の裏付けとなるような研究を推進する ことが必要。また、研究の成果を政策立案に的確に活かす仕組みと体制を確立すべき。」と 言われており、今後、その方向で取り組んでいく必要があるということを記載しておりま す。  36頁の最後のパラグラフでは、今後とも行政的な貢献及び学術的成果の二つの観点から の評価が必要である点に十分留意する必要があり、また、研究成果の行政への活用等の評 価についてもさらに検討を進める必要があるということを記載しております。平成20年度 の研究課題の成果の資料説明は以上です。ご審議、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長  大変膨大な資料ですが、ただいまのご説明についてご質問、ご意見等がありましたら、 ご発言をお願いいたします。  では一つ私からお聞きします。いろいろな研究事業で最後の行に、「評価できる」とか、 「引き続き推進すべき分野である」とか、「非常に評価できる」とか、いくつかの段階があ るようですが、これはどういう分類になっているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  特別、それらの表現についての分類はありません。個々の事業ごとに評価いただいてお りますので、そちらでいただいたコメントを整理しております。ご指摘のように、本来で あればもう少し言い方の整理というものがあるべきかもしれません。事務局で全体を見て、 ある程度の平仄は合わせておりますけれども、細かくはそれぞれの事業で評価していただ いたコメントがベースになっています。 ○永井部会長  素直に最後のコメントを読めば、各研究事業の位置づけというか、評価が大体わかると いうことでしょうか。いかがでしょうか。 ○末松委員  資料1-1の7頁と、同じ資料の33頁の「研究事業ごとの成果集計」というのが数字で出 ています。研究者が厚生労働科学研究費で成果を出して、それを研究成果データベース報 告システムに上げてホームページで公開ということで、タックスペイヤーに対するアカウ ンタビリティーはそれでいいかと思うのです。ただ、こういう仕組みで大体1期3年の研 究で、研究成果の報告はするけれど、内容としては公開しないでほしいという仕組みがき ちんと動いているのかどうか。逆に言うと、報告してすぐ公開という形になっているので、 それによって出願や特許で研究者が何かハンディーキャップを背負う可能性はないのかど うか、そこを伺いたいのです。いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  現状では、マスクをした方がいいような情報については、そうしているところもありま すが、基本的には公開するということでやっております。今後、先生がご指摘のような問 題が出てくるのであれば、やはり一定のルールをあらかじめ作るべきだとは思いますが、 今のところは特段、特許として書くような書き方の問題などもあるのかもしれませんが、 そういうところが問題になったという話は、厚生科学課の方までは上がってきておりませ ん。ただし、上がってきていないだけなのかもしれません。今後そういうことがあるよう であれば、ルールづくりというのが検討課題になると思っております。 ○永井部会長  その他にいかがでしょうか。 ○川越委員  先ほどの永井先生からの質問とも若干関連します。大体最後に「取り組むべきである」 とか、「求められる」「必要である」という言葉で結んである研究が多いのですが、これは 将来的に拘束的な意味を持つのでしょうか。あるいは単に感想というか。どういう具合に 受けとめたらよろしいのでしょうか。 ○坂本研究企画官  この後で次年度の予算要求に向けた事前の評価等がありますので、それに向けて、この 事業ではこういう評価になっていたということで、次の作業のベースになるところはあり ます。 ○菊川委員  ただいまご説明いただいた408件は、大変素晴らしい研究で、35頁の「おわりに」にあ りますように、厚生労働省の施策の根拠を形成をする基盤となるもので、そのために政策 が多くの国民の理解と納得が得られるようにというのは、まさにそのとおりだと思います。 具体的に皆さん、いろいろなことで努力をなさっているのですが、何かもっと現状を打破 するようなアイデアと言いますか、お考えがあるのでしょうか。 ○坂本研究企画官  本日は平成20年度に行った研究の評価ということで、その中で今後の方向性も示してい るところです。先ほども申しましたように、次年度の予算要求等に向けて、これから研究 費をどういうようにしていくかということを、在り方懇談会の報告も踏まえて、いま我々 の内部で検討しております。より政策に近い研究事業の重点化を図るといったことで、今 まさに検討しているところです。まとめまして、おそらく次回か次々回の当科学技術部会 の方に、それをお示ししてご議論いただくという段取りを考えております。今はまだその 詳細について、この場で言えるほど詰まっていないというのが正直なところですが、そう いうご提言をいただいたので、今はそれを踏まえて検討しているところです。 ○宮田委員  これを読むと、やはり素晴らしい研究成果ということになっていると思うのです。確か にそうですが、この部会でもいくつか議論がありましたように、厚生科研費が使いにくい のです。あるいは研究全体のマネージメントがどうだったか。つまり政策的な研究課題を タイムリーに政策的なニーズに応じて取り上げて、うまくいったかということです。これ は研究成果の評価はできているけれど、研究のマネージメントの評価というのも、そろそ ろやらないと。  資料1-1の2頁の評価目的の最初のパラグラフの中で、柔軟かつ競争的で開かれた研究 開発を推進しつつ、その効率化を図ることによりというのが、目的のいちばんになってお りますので、成果だけではなくて、研究開発のマネージメントの仕組みそのもの、例えば いつ厚労科研費が交付されたとか、どういう形で公募されて、きちんと告知されているか という辺りを。成果はこのフォーマットで構わないのです。研究のマネージメントの評価 というのも、今回はいいですが、次回の宿題として考えていただけると、国民はより喜ぶ のではないかと思うのです。 ○永井部会長  いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  まさに提言にあったような改革をすれば、その効果の評価にはおっしゃったような視点 が入ってくると思いますので、それは課題だと思います。ご指摘にあった早期執行にはこ の数年間かなり取り組んでおりますし、前回ご報告いたしましたように、報告書の提出時 期など、できるだけ使い勝手のいい方向で見直しは進めてきています。しかし正直、それ を具体的にどう評価するのか、その手法はこういうものとは違ったことを考えなければい けないのではないかとか、その辺の課題はあると思いますので、今後検討したいと思いま す。 ○宮田委員  確実に進歩しています。その成果は、やはりきちんと国民と共有するような形で報告な されるべきだと、私は思っています。 ○永井部会長  それと、1年間単年度の評価だけですとわからないことがありますので、3年間ぐらいの 評価の中で、今年はどうだったかという見方も必要だと思うのです。例えば、一昨年はす ごく高かったのが昨年は低かったとか、一昨年からだんだん評価が下がっているとか、そ ういう動きの中でこれからどうするかということを考える必要が、多分あるだろうと思う のです。今度はそういうこともわかるように、対応についてご説明いただければと思いま す。いかがでしょうか。 ○西島委員  先ほどのマネージメントのことですが、この研究費を使うに当たって、文科省の科研費 に比べると、使い勝手が悪いということが過去にいくつかありました。その中で海外への 出張、あるいは国内への出張については、厚労科研費から出していただけるようになった という改善があります。ただ一つ、現場でもうちょっとしてほしい点は、研究代表者は出 張が認められるのですけれども、その下で働く協力研究者、そういう人たちへの出張旅費 が認められないのです。非常に細かいことですが、その辺はこの場で是非、できれば今後 改良していただきたいということをお願いしたいと思います。その辺はいかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  一応年度ごとに規程を見直しておりますので、今年度途中の改善というのは難しゅうご ざいますから、次年度の課題ということになると思います。先生がご指摘の点は、後でも う少し詳細を確認させていただきたいと思います。規程上のどこがネックになっているか ということ等を確認しませんと、この場でできる、できないということを即答すると、か えって無責任になるかと思います。そこは後でお聞きして、問題点を整理した上で検討さ せていただきたいと存じます。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。まだ議論はあろうかと思いますが、時間の関係もありますので、 とりあえず今回の議論はここまでにしたいと思います。ただお気付きの点、追加等があり ましたら、1週間ほどお時間を取らせていただいて、7月7日の火曜日までに事務局にご連 絡いただければ、本日のご意見と合わせて取りまとめをいたします。その後は改めて会議 を開くことは無理ですので、科学技術部会としての最終的なバージョンはこちらでお作り して、ある程度私どもにご一任いただければ、まとめて最終的に提出したいと考えており ます。もしご異議がなければ、そのような形でよろしいでしょうか。                   (了承) ○永井部会長  ありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。続 いて議題2、「遺伝子治療臨床研究について」のご審議をお願いいたします。三重大学医学 部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画について、事務局よりご説明をお願いいたしま す。 ○坂本研究企画官  それでは資料2-1に基づき、ご説明いたします。1頁以降が、がん遺伝子治療臨床研究 作業委員会でご審議いただいた結果の本部会への報告となっております。研究課題名は、 「MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝子導入リンパ球輸注による治療抵抗性食道癌に対する遺伝 子治療臨床研究」です。  2頁に1.遺伝子治療臨床研究実施計画の概要というところがあります。対象疾患は食道 癌です。この研究は標準的な治療法(化学療法や放射線療法等)による効果が期待できな い治療抵抗性の食道癌の患者で、腫瘍組織にMAGE-A4という腫瘍抗原が発現している等の 条件に適合する方を対象として、腫瘍抗原MAGE-A4をヒト白血球抗原-A2402存在下で特異 的に認識するTCRα鎖及びβ鎖の遺伝子を、非増殖性のレトロウイルスベクターにより遺 伝子導入した自己リンパ球を輸注し、その後MAGE-A4の一部のベプチドを投与して、投与 したリンパ球の活性化あるいは増殖を図るものです。この遺伝子治療の安全性を主要エン ドポイントとしております。副次エンドポイントは、TCR遺伝子導入リンパ球の血中動態 及び腫瘍組織への浸潤、腫瘍特異的免疫反応、及び腫瘍縮小効果となっております。海外 での類似の研究としては米国NIHのグループが、転移性の悪性黒色腫患者を対象とした臨 床試験で、MAGE-A4とは異なる腫瘍抗原を認識するTCR遺伝子導入リンパ球を体外で増殖 させて、患者に再移入するという免疫療法を実施しており、この導入リンパ球の品質に起 因する有害事象の報告はないということです。  3頁から、2.がん遺伝子治療臨床研究作業委員会における審議概要です。第1回の委員 会は平成20年7月に開催され、対象疾患について、今後の治療困難例であることの明確化、 遺伝子導入細胞の調製に時間がかかるため、一定期間治療が行われないことについてわか りやすく同意説明文書に記載すること、あるいはMAGE-A4の発現を確認するための判断基 準を示すべきといったご意見があり、申請者に検討を求めております。  5頁からが2回目の審議で、1月に開催され、フォローアップ観察項目の追加等について 検討を求め、申請者からの回答を確認しております。その上で実施計画を了承して、本部 会に報告することになったものです。  6頁に作業委員会における審議を踏まえた、主な変更の内容を記載しております。選択 基準については、今後の治療困難例を対象とすることが明確になり、臨床検査の項目が追 加されております。遺伝子治療中の腫瘍組織のMAGE-A4発現をフォローすることが規定さ れ、また、MAGE-A4発現を陽性とする定量的な判断基準の追記等もなされています。同意 説明文書には、食道癌に対する化学療法や放射線療法に関する情報等の追記、臨床研究に 参加する場合、TCR遺伝子導入細胞の品質を確認し、投与可能となるまでの期間は無治療 で経過を見るといったことも明記されております。  8頁以降は、作業委員会での審議を踏まえて改定された実施計画の概要書等です。説明 は以上です。 ○永井部会長  ただいまのご説明に対してご意見、ご質問はありますか。 ○宮田委員  たぶん有害事象という言葉に対する認識の差だと思うのです。これは有害事象が出たと きに、さらに症例を追加するという説明になっていますが、それはどういう理由でしょう か。 ○坂本研究企画官  先生は資料のどこをご覧になっていますか。 ○宮田委員  6頁の同意説明文書です。つまり、これは患者さんに提供するものではなくて、私向け の文書なのですけれども、これを書かれて患者さんはわかるのかという素朴な疑問です。 ○坂本研究企画官  資料の130頁を見ていただくのがよろしいかと思います。こちらが実際に患者さんへの 説明文書の該当のところです。各ステップで患者さん何人に投与するかというところで、 第ii段階のところにありますように、「3人のうち1人に発現した場合には、増量せずに同 じ細胞数でさらに3人の患者さまに対して投与を続け」ということで、要は増量基準との 絡みで、増量しない場合にはそのステージの患者さんへの投与症例数を増やすということ がわかりにくかったので、わかりやすい表現にせよという指示をしたということです。 ○宮田委員  内容の確認をさせていただいてありがとうございました。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。この研究は外国ではまだ全く行われていない、日本で最初の研 究という位置づけでしょうか。 ○坂本研究企画官  米国NIHが類似の研究をしているというのは、先ほどご説明しましたが、それ以外の情 報は特に提出されておりません。 ○永井部会長  NIHの研究はまだパブリッシュ、学会発表等はされていないわけですか。 ○坂本研究企画官  学会発表等はされており、ある程度こちらの方から情報を収集するようにということで、 追加で情報収集も行われております。 ○永井部会長  ご質問等はありませんか。もしありませんでしたら、ただいまのご説明に対して、作業 委員会からのご報告については、本部会として妥当ということにしたいと思います。                   (了承) ○永井部会長  ありがとうございます。では、そのように扱わせていただきます。続いて、ただいまの 事項に関係しておりますが、三重大学医学部附属病院の「遺伝子治療臨床研究に係る第一 種使用規程について」のご審議をお願いしたいと思います。それではご説明をお願いいた します。 ○坂本研究企画官  資料2-2をご覧ください。遺伝子組換え生物等による生物多様性影響防止については、 国際的な議定書であるカルタヘナ議定書を受けて、遺伝子組換え生物等の使用等の規制に よる生物の多様性の確保に関する法律、いわゆるカルタヘナ法というのがあります。開放 系で遺伝子組換え生物を使用する場合を第一種使用等としており、事前にその使用規程、 具体的には保管、運搬、廃棄、実際の使用の方法等の規程について、主務大臣の承認を得 ることになっております。  遺伝子治療臨床研究に係る第一種使用規程の審査については、厚生労働大臣がこの審議 会の意見を聴取することになっております。1頁以降が、遺伝子治療臨床研究に係る生物 多様性影響評価に関する作業委員会の報告書となっております。昨年の9月に開催された 作業委員会で、本件に関する審議が行われ、その結果、申請のあった第一種使用規程及び 生物多様性影響評価書に関しては、一部の記載の整備についての指示はありましたが、お おむね妥当ということで、記載整備等をして本日、こちらの方に資料を出しているもので す。  2頁に作業委員会の評価結果がまとめられております。生物多様性影響評価として、(1) の「生物多様性影響評価の結果について」の大きい枠の中の項目にありますように、[1]他 の微生物を減少させる性質、[2]病原性、[3]有害物質の産生性、[4]核酸を水平伝達する性質 等についてご検討いただいております。  この遺伝子組換えウイルスについては、申請されている第一種使用規程に従った使用を 行う限り、環境中への拡散は極力抑えられていること、このウイルスは増殖能を失ってお り、特定のウイルス感染等により特定の遺伝子が発現している細胞に感染した場合等を除 いて増殖することはないこと、このウイルス及びこのウイルスに由来して増殖能を獲得し たウイルス(RCR)は、広範囲の動物に感染し得るが、微生物への感染性は知られていないこ と、挿入変異によってはがん化を引き起こす可能性はあるが、第一種使用規程に従った使 用を行うかぎり、環境中への拡散は極力抑えられており、拡散しても極微量と考えられ、 またヒト血清(補体)により速やかに不活化されること、増殖能を欠損している上、製造 はRCR出現の可能性が極めて低いやり方であること、有害物質の産生性も知られていない こと、感染可能な野生生物等の生殖系細胞のゲノムに組み込まれて、核酸を垂直伝達する 可能性は完全には否定できないが、RCRが出現する可能性は極めて低い上、第一種使用規 程に従った使用を行うかぎり、増殖能を失ったこのウイルスが生殖系細胞に感染する可能 性は非常に低いこと、等々から、いちばん下の(2)の結論にありますように、この遺伝子組 換えウイルスについて申請された第一種使用規程に従って使用した場合に、生物多様性影 響が生じるおそれはないとした生物多様性影響評価書の結論は妥当と判断したということ です。  4頁以降に「第一種使用規程承認申請書」、5頁以降に作業委員会での審議を踏まえて改 正された内容があります。7頁以降が「生物多様性影響評価書」となっております。説明 は以上です。 ○永井部会長  ただいまのご説明に対してご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。よろしい でしょうか。ご質問がないようですので、この件についてはご了解いただいたということ にさせていただきたいと思います。続いて、「遺伝子治療臨床研究実施計画の重大事態等報 告について」です。この件について事務局からご報告をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料2-3、「重大事態等報告書」についてご説明いたします。すでに先生方には電子メー ルでご連絡させていただいておりますが、3頁の半ばぐらい、「重大事態等の発生時期」に 書いてありますように、九州大学で実施中の慢性重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療 臨床研究において遺伝子治療を行った患者さんが、骨髄異形成症候群(MDS)になられたとい う報告です。3頁の下の方、「重大事態等の内容及びその原因」の欄にありますように、こ の患者さんは過去に別件で重大事態等報告をいただいた68歳の男性です。6カ月の臨床研 究の期間が終了して、月に一度外来でフォローされていたところ、本年1月に他の病院で 白血球の低下を確認し、その後、末梢血白血球分画から少量の芽球が検出され、骨髄穿刺 が施行され、3系統に異型を認めることにより骨髄異形成症候群と診断されたものです。 専門医の見解は、根治的治療法はなく、現時点では経過観察、将来的には輸血又は緩和的 な化学療法が必要になるかもしれないということでした。  4頁に、「その後の対応状況」という欄があります。この患者さんはその後、原疾患と有 害事象ともに変化が見られていないということです。九州大学の先進医療適応評価委員会 の検討結果も記載されております。本症例の経過は、臨床研究薬との因果関係は必ずしも 否定できないものの、医学的・科学的見地から本症例に偶発的に発生した疾患であると考 えることが妥当という結論です。本症例の経過を定期的に注意深く観察し、症状悪化等の 際には速やかに九大の委員会に報告するように求めております。また、有害事象の発生に ついては、同意取得の際には遺漏なく周知するといったことも求められております。  九大の遺伝子治療臨床研究審査専門委員会でも、この判断は妥当と判断されたというこ とです。九大の医学研究院等倫理委員会からは、既に投与された全症例に対しても、この 有害事象について説明するように求められて対応されております。  申請者側はこの症例を偶発的に発生したと考える根拠として、芽球は遺伝子治療実施後 20カ月で観察されていますが、前臨床試験で、宿主の免疫応答により、臨床研究薬は投与 後2週間で100分の1以下、4週間で完全に宿主から排除されたといったデータがあるこ とや、骨髄細胞における芽球からこの遺伝子治療の特異的RNA、DNAは検出されなかったこ と、骨髄細胞芽球にMDSにおいて一定頻度で認められる染色体異常が確認されたこと、68 歳は臨床的にMDSの好発年齢として矛盾しないことなどを挙げておりました。  本件は初めての事例でもあることから、6月10日に永井先生が委員長をされている末梢 性血管疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会を開催して、九州大学から臨床経過のデータ等 も提出していただき、委員の先生方に細かく見ていただきました。血液検査のデータから、 その時点でMDSを疑うほどではないけれど、後から見直してみると、以前から多少血液系 に何かあった可能性もあるのではないかといったご意見もありました。そして遺伝子治療 が何らかの悪影響を与えた可能性は、完全には否定し切れないが、FGFの濃度やウイルス ベクターの残留時間、発症までの期間が長いこと等々を考えると、遺伝子治療による影響 は考え難いということになりました。  なお、FGFやHGF等の血管形成促進因子遺伝子導入をした国内の他の臨床研究は、既に 終了報告が提出されている大阪大学の1件のみで、センダイウイルスベクターを用いた国 内の臨床研究はこの研究のみで、類似の研究は国内では実施されていません。以上を踏ま えて、臨床研究実施施設における対応等について、今の段階では特段の対応の追加等を行 う必要はないというご議論でした。本件に関する説明は以上です。永井先生から追加があ りましたら、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長  慎重に議論した方がいいだろうということで、WGを開きました。まず、治療後20カ月 経ってからの発症であるということ。また、血液細胞に導入遺伝子が組み込まれた根拠、 所見はないということ。それから振り返ってみればなのですが、治療開始前からやや血小 板の数が少なく、赤血球の大きさも少し大きめで、しばしば高齢者に見られるような骨髄 異形成症候群の前ぶれのような状態がもともとあったと解釈することもできるということ で、この遺伝子治療が骨髄異形成症候群を引き起こしたというところまでは断定できない と。むしろ、もともと存在していた骨髄異形成症候群が20カ月の経過の中で表面化してき たと考える方が妥当であろうという結論になりました。それから、ウイルス学的にもセン ダイウイルスで導入した遺伝子が染色体に組み込まれる可能性はまず考えられないという ことでした。  もしよろしければ、そういう形でご了承いただきたいと思います。  それでは、議事3の「ヒト幹細胞臨床研究について」ご審議をお願いいたします。東邦 大学医療センター大森病院、国立病院機構千葉東病院、市立函館病院及び青森県立中央病 院から、平成21年5月19日に厚生労働大臣から諮問され、5月20日付で当部会に付議さ れております。また、大阪大学医学部附属病院の審査委員会の結果についてもご審議をお 願いいたします。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究については冊子となっております資料3-1、資料3-2を用いて説明 させていただきます。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づいて申請されまし た臨床研究について、今回は新たに諮問、付議が行われました申請4件、そして、専門委 員会であります審査委員会で審議された結果、指針への適合性が了承されました申請1件 についてご報告申し上げます。  資料3-1です。今回新たに申請され、新規性が認められ、諮問、付議されたのは先ほど 委員長がおっしゃった4施設です。資料の1頁、2頁が本申請に対する諮問書と付議書で す。平成21年5月19日付で諮問され、5月20日付で付議されております。これら4件は、 すべて同じプロトコールによる、多施設の共同研究に参加する研究機関ですので、その実 施計画の概要について、東邦大学医療センター大森病院の申請書類を用いてご報告申し上 げます。  3頁は大森病院からの申請です。末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核 球細胞移植治療のランダム化比較試験に関しまして、ヒト幹細胞臨床研究に関する申請書 です。  4頁は計画の概要です。この研究の対象は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患です。 G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取し、アフェレシスにより単核球を採取、末 梢動脈疾患患肢に筋肉内注射をいたしまして、末梢血管の再生効果を見るというスタディ です。本プロトコール自体は既に了承されているもので、用いる幹細胞、対象疾患として の新規性はありませんが、計19施設が参加予定の多施設の臨床研究として、推奨療法群あ るいは推奨療法及びG-CSF動員自家末梢血単核球の移植併用治療群のいずれかを無作為に 割り付けるという臨床研究を行うというプロトコールの新規性が認められ、諮問されてお ります。  中心となります施設は、札幌の北楡病院でそこの外科の堀江先生が主任研究者となる多 施設の共同研究です。共通のプロトコールを用いております。実際にはプロトコールは了 承されておりますので、研究実施施設の基準と、所属機関の審査委員会の審議の内容につ いての審査を今回行うことになります。  16頁には、千葉東病院からの申請書があります。概要と計画書はほぼ同じ内容のもので 申請がなされております。29頁には、市立函館病院からの申請書があります。42頁に青森 県立中央病院からの申請書があります。これらの申請は、部会長より了承をいただきまし て、6月3日に既に開催されております第8回審査委員会にて先行審議をされております。 疑義となりました指摘事項については、申請者に既にお返ししております。回答の状況を 見ながら、継続審議を行っていく予定となっております。  資料3-2です。これまでにヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で、指針の適合性が 認められました申請についてご報告いたします。表紙にありますように、大阪大学医学部 附属病院からの申請です。1頁です。重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による 新たな治療法の開発に関し、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(永井委員長)から の報告です。  2頁は研究実施計画の概要です。研究責任者は、大阪大学医学部附属病院の澤芳樹先生 です。この研究の対象は、重症心筋症です。本研究は、骨格筋筋芽細胞を培養してシート 化したものを重層し、重症心不全患者の心臓外壁に移植するというプロトコールの新規性 が認められて諮問されております。  43頁にあります臨床計画の概要をできる限り平易な用語を用いて記載した要旨を用いて 説明させていただきます。概要は、重症心筋症患者に対し、患者自身の太股の骨格筋から 単離いたしました自己筋芽細胞を用いて作製した筋芽細胞シートを不全心に移植する治療 法を評価するプロトコールです。研究の意義は、人工心臓や心移植を回避するための再生 技術を確立し、患者の生活の質の向上、早期の社会復帰を実現するということになります。 背景として、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の施行以前に、既に大阪大学では、 本技術を用いた臨床研究を開始しております。対象は、人工心臓を装着する患者に対し、 筋芽細胞シート移植を行い、安全性を確認中です。  今回の臨床研究では、人工心臓装着が必要となる前段階の患者を対象として、本治療法 を行い、その安全性・有効性を評価することを目的としております。対象は、拡張型の心 筋症と、虚血性の心筋症です。主評価事項としては安全性を重んじられる。副次的な評価 項目として、心機能の改善を検討する。  3頁に戻りまして、実際の審査委員会での審議の概要です。主に審議のポイントとなり ましたのは、確認事項として、提出されたプロトコールについて、治療計画の詳細を書い ていただきたいということ。背景と根拠に、当該研究の現状についての記載を書いていた だきたい。試験物概要書についての詳細な内容について、委員会で疑義がなされ、申請者 に確認されております。  その結果の返答として、実施計画書の8頁の下線部で追加変更を示してあります。前臨 床試験として、大阪大学で試行されたラット、ハムスター、イヌの不全心モデルを用い、 細胞シートの有用性を検証しております。筋芽細胞シートからサイトカインが産生され、 心筋のリモデリングを抑制することがメカニズムであるということが示されております。 さらに、既に行った2例のヒトでの臨床研究の詳細を記載しております。特に1例目につ いては、移植した人工心臓からの離脱が可能となっております。  治療計画の概要についての変更は、17頁の下線の引いてある部分です。筋芽細胞移植術 の詳細については記載していただいております。他に、試験物概要書など、他の資料につ いても申請者により適切に修正されており、最終的に委員会にて了承されております。以 上、ヒト幹細胞臨床研究に関する、審査委員会で指針への適合性が確認されました申請に ついてのご報告を終わらせていただきます。 ○永井部会長  ちょっと追加させていただきますが、これは心筋を再生する治療法ではありません。骨 格筋の筋芽細胞を増やして、それを細胞シートにして、そして心筋の動きの悪いところに 張り付けるという治療法であります。それが心筋に化けるわけではなく、骨格筋のままで いるわけです。ただ、骨格筋の細胞というのはサイトカインであるとか、増殖因子を分泌 すると考えられていますので、そういう物質が分泌されることが心筋を保護する、物理的 にあるいは化学的に保護するのではないかという考えの下に研究が行われてきて、動物実 験で一定の成果が出たということで、ヒトへの臨床研究に移っている段階です。  ただ、同時にバイパス術、あるいはPENの形成術等を行う患者に、そのときに付随的に 心筋シートを張り付けてくるということで、これだけではなかなか評価は難しいと思いま すが、まずは安全性、実施可能性を検討して、問題がなければ次の段階で効果が評価でき るような研究計画を組むということであります。何かご質問はございますか。 ○宮田委員  これは、動物実験でこういう筋の細胞シートを移植したときに、生着するのですか、そ れともこれはサイトカインの袋としての効果を期待しているのですか。 ○永井部会長  生着をして、サイトカインが分泌されているということのようです。 ○宮田委員  ある程度のセルマスを移植するということですか。 ○永井部会長  はい、これは何層かのセルシートを移植すると、そのまま張り付いて生着するようです。 ○宮田委員  そうでないのは、生着していないのかしているのかよくわからない臨床成績だと。ここ は思いきってセルマスを増やして。 ○永井部会長  外国でもこういう研究はされています。分離した細胞を心筋内に注入するという研究が 行われています。その場合には不整脈が起こったり、本当に細胞がどれだけ生着している かというのは不明な点がありました。この大阪大学の研究ではセルシート、東京女子医科 大学の岡野先生が開発されたディッシュを使って、かなりの数の細胞が移殖されるもので すから、既に動物実験では何層かにわたって生着していることが確認されております。 ○末松委員  資料3-2で小さなことなのですけれども、20頁に血液検査、尿検査ということで、心臓 に対するインターベンションで、生化学的検査でCPKとかCPKアイソザイムとか、基本的 なものが入っていないのですけれども、こういうのはありでしょうか。 ○永井部会長  CPK、CPKアイソザイムは入っていないですね。 ○研究開発振興課  20頁のその部分ですけれども、事務局で対応させていただいて、申請者に検討させてい ただきます。間違いなく採血をするはずですので、そういう部分は追加していただくこと を検討していただきます。 ○永井部会長  最近は、心不全のマーカーとしてBNPがよく使われているので、おそらくそちらを中心 に考えていたのだと思います。心筋の障害という意味では、CPK、CPKアイソザイムは欠か せないだろうと思います。他にご質問、ご異議がございませんでしたら、ただいまのご意 見につきましては事務局を通じて審査委員会にお伝えし、そこでさらに論点整理を行って、 その結果を当部会に報告させていただくということで、その時点で再度総合的に判断した いと思います。また、審査委員会からの報告については、科学技術部会として了承すると いうことで、厚生科学審議会へ報告ということにさせていただきます。  議事4「その他の報告事項」ということで、研究開発機関の評価結果等について、国立 障害者リハビリテーションセンター研究所の研究開発機関の評価結果等について事務局よ り説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料4-1についてご説明しますが、その前に参考資料4の15頁に関係の記載があります。 参考資料4は「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」です。研究開発機関の評価 の実施方法ということで、研究開発機関は、各研究開発機関の評価を定期的に実施するこ とになっております。その評価報告書については、厚生科学審議会科学技術部会に報告さ れてきております。今回、資料4-1ですが、国立障害者リハビリテーションセンター研究 所の評価結果及び対処方針についてのご報告をいただきます。  本日は、国立障害者リハビリテーションセンター研究所の諏訪所長にご出席いただいて おりますので、評価結果等については諏訪先生からご報告をいただきます。 ○諏訪研究所長  国立障害者リハビリテーションセンター研究所の諏訪です。こういう説明の機会を与え ていただきましてありがとうございました。資料4-1に基づいてご説明申し上げます。1 枚目に目次があります。資料は、評価実施概要、委員会からの評価報告書、機関評価にか かる対処方針という構成になっております。  1頁、実施概要についてご説明いたします。「1.評価委員」についてです。委員会メンバ ーは9名です。規程により委員長は、委員会メンバーの互選により選出され、大阪大学名 誉教授、現在は大阪警察病院長をしておられます越智隆弘先生にご就任いただきました。 整形外科、リウマチ学が専門です。メンバーの専門分野は、医学、医療福祉、医療工学、 福祉工学、障害者福祉の政策・教育等です。中には、障害当事者という立場も兼ね備えて いる方もいます。  「2.評価委員会」にありますように、昨年12月に第1回評価委員会を開催しております。 2カ月後の平成21年2月に第2回委員会を開催し、評価結果の最終的な取りまとめをお願 いいたしました。  「3.評価委員会資料」に掲げた資料等を配付しております。ちなみに「(6)国立障害者リ ハビリテーションセンターの今後のあり方に関する検討会中間報告書」とともに、このと きに並行して進められておりました厚生労働省国立厚生援護機関の今後のあり方に関する 検討会の検討状況などの情報も提供しながら評価をしていただきました。  評価の経緯と結果を、評価報告書(3頁)に基づいてご説明申し上げます。なお、評価 項目の中で、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」の平成20年度にあります「疫 学生物統計学の専門家が関与する組織の支援体制についての評価」につきましては、今回 はまだ含まれておりませんので、あらかじめお断り申し上げておきます。  報告書の構成は、各評価項目ごとに、前半が評価委員会の認識と評価、後半が指摘事項 となっております。因みに「1.研究・開発・試験・調査・人材養成等の状況と成果」では、 5頁の中ごろまでが、評価委員会が我々の研究所をどう認識したかが書いてあります。そ の後の黒ポツの箇条書きが委員会からの指摘事項です。その辺をご注意いただきながらお 聞きいただければ幸いです。  「1.研究・開発・試験・調査・人材養成等の状況と成果」(3頁)についてご説明します。 研究所全体に関する評価と各研究部の評価です。研究所の構成は、運動機能系障害研究部、 感覚機能系障害研究部、福祉機器開発部、障害工学研究部、障害福祉研究部、補装具製作 部、および平成20年10月に設置されました発達障害情報センターです。最初に、国リハ 研究所の全体的なミッションが書かれています。第1が、障害者の社会参加とQOLの向上 を促進するためのリハビリテーション技術、支援システム、支援技術に関する調査及び研 究。第2が、それらを効果的に推進する上でリハセンターの病院や厚生訓練所、学院とい う他の部門との連携を円滑に行えるようなマネジメントをすること。第3は、厚生労働省 の政策研究機関としての機能を発揮すること。これらの命題が首尾よく取り組まれている かを評価していただきました。  次に、当センターが平成20年10月に所名変更を行ったこと、並びに、それに伴って対 象とする障害の範囲が、身体障害から知的障害、精神障害まで広がったことに関して、研 究所としてそういう変化に対しての取組みが的確にスタートしているかを確認していただ き、ポジティブな返事をいただいております。  研究戦略に関しましては、国リハ研究所が設立以来、医学、理工学、社会科学、行動科 学、心理学などの専門家による学際的な研究を進めてきており、脊髄損傷者の歩行機能再 獲得、高次脳障害の評価技術、聴覚・言語障害をもつ障害者に対するリハビリテーション、 重度障害者向け新型電動車いす、認知障害や精神障害をもつ障害者の情報・コミュニケー ション支援技術ならびに就労支援技術、遺伝性視覚障害者の遺伝因子の解明、障害者なら びにその家族を支援するコミュニティー力強化手法など、中核になりうる研究とともに、 最近はニューロリハビリテーションやブレインマシンインターフェースなど、脳科学の研 究との連携によって脳活動に基づく新しい研究の芽が育ちつつあり、研究所の組織を超え た横断的な研究スタイルも定着してきているとの評価をいただきました。  各研究部個別の状況について説明をし、評価をいただいておりますのでご説明させてい ただきます。運動機能系障害研究部では、臨床応用的な研究課題として、骨関節障害に係 るリハビリテーション、脊髄損傷者の歩行能力とその回復可能性に関する研究。基礎的な 研究課題として、障害者・高齢者の運動制御機能に関する研究、損傷脊髄の再生誘導の研 究などの中身をプレゼンいたしましてレビューを受けました。このグループは、ロコマッ トと呼ばれる免荷機能を持った歩行用ロボットの導入により、新しい実験手法の開発に成 功し、脊髄損傷の新しいニューロリハビリテーションの理論的な基盤構築につながる新た な知見などが得られ始めていることが評価されております。  その中で、後の指摘事項にも出てくるのですが、臨床現場としての病院との連携強化の 必要性を指摘されております。もちろん進めておりますけれども、例えば先ほどのロコマ ットに関して言いますと、こういう装置は医療機器でないために、制度上入院患者に被験 者として協力をしていただけないという事情があり、必ずしも評価委員会の方々の要望に は応えられないのですけれども、こういう点については、この先いろいろ工夫の余地があ るのかと私どもは考えております。  感覚機能系障害研究部は、聴覚・言語障害をもつ障害者に対するリハビリテーション研 究という感覚系のみならず、高次脳機能障害者支援、最近では発達障害者支援など、厚生 労働省が進めている施策とタイアップし、研究活動を多角的に展開しているグループです。 このグループの強みは、脳機能解析のスキルを持っている、あるいは最近は脳科学研究者 の補強を進めることにより、新しく脳科学研究との兼ね合いで研究を進めていこうとして います。特に、社会還元プログラムの一連としてのブレインマシンインターフェースの技 術を、障害者支援へ応用する取組み、あるいは聴覚・言語の方でいいますと、ろう者の社 会参加支援のための、日本手話の電子辞書の開発、これは地域や世代によって手話の差が 生じることを超えて、共通言語化に取り組むことにつながるということがあり、高い評価 が行われております。  福祉機器開発部の特色は、特定の障害者ニーズに基づいた福祉機器開発の技術力にあり ます、これはオーファンプロダクツという言い方がこの分野ではなされますが、それの開 発評価を進めているということで、障害者の自立と社会参加の促進、並びにQOLの向上へ の寄与、さらには行政ニーズの貢献を使命として研究を進めているグループです。厚生労 働省の補装具費支給制度における、装置の安全基準策定や、工学的な技術支援に大きく貢 献している点、あるいは先端科学技術の成果を障害者支援技術として還元する取組みの推 進。後ほど共同研究のところで触れますけれども、重度障害者の自立移動支援機器として の、新型自動電動車椅子を、実用レベルで開発を行うといった実績をレビューしていただ き、高い評価を受けたところです。  評価委員会からのコメントとしては、福祉機器の研究開発における、国内的にもリーダ ーシップを発揮してほしいということですし、それから国際的展開に向けての積極的な取 組みが要望されています。リーダーシップに関しては、補装具給付制度における適合技術、 福祉機器開発の新しいパラダイムの提案における役割にいま取り組もうと考えております。 国際的にはISOの活動がかなり長い実績を積んできているところです。  障害工学研究部に関しましては、網膜色素変性症の遺伝子診断技術の開発、それから、 応用の面では高次脳機能障害者用で、記憶・認知機能が低下した方へのメモリアシストと いう支援機器を開発し、実際に商品化をし、就労の面でも使われているといった取組みな どが評価を受けております。  障害福祉研究部は、共生社会の実現を基調とする障害者基本計画の理念に基づき、社会 科学、構造科学、情報科学の学際的な取組みを進めている非常にユニークなグループです。 特に、最近は国際的に高い評価を受けている成果があります。それは、アクセシブルなマ ルチメディア技術、具体的に言いますとDAISYというシステムですが、これの国際規格を 開発して採択されているというような成果を上げております。その成果の応用例として、 災害の準備、あるいは災害のための教育といったものへの介入を行い、地域の共生社会化 に貢献したという点で、これも先ほど申しました科学技術振興調整費による共同研究で進 めたものです。さらに、当事者参加型の戦略的な国際共同研究体制を構築するなど、独創 的な足跡を残している取組みがレビューを受けて評価されております。  補装具製作部は、義肢装具士で構成されています。義肢装具の製作を通じ、義肢装具に 関わる臨床的な問題の解決のための研究活動、義肢装具の普及活動、あるいは義肢装具の 製作の技術移転といったもので成果を上げております。独創的な取り組みの一つとして即 時適合可能な義足用採型装置の開発をおこない義足の製作時間を短縮する成果も上げてい ます。優れた補装具の製作には、製作技術の向上とともに、そういうものを作る上でのエ ビデンス、データが必要ですが、今後のそういう目的のために、補装具製作を利用した患 者のデータベースを整備しております。新しい症例についての補装具製作のいろいろな方 法について、これから提案できる素地ができているのではないかと思います。もう一つ特 記すべきことは、いままで途絶えていたというと言いすぎですけれども、筋電義手の普及 等にこれから取り組むということで報告をしております。  発達障害情報センターは、平成20年10月に厚生労働省より移管され、発達障害のある 人が乳幼児期から成人期まで保健・医療・療育・教育・福祉・就労の分野での支援を円滑 に受けるための情報を提供することを使命として開設しております。今後、これに沿って 情報の収集・分析・発信及び調査研究等を行い、発達障害者本人のみならず、家族、援助 者に対する支援を図り、広く国民の理解を得るための活動が期待されているところです。  指摘事項が11項目ありますが、いままでのご説明の中で大体触れておりますので、簡単 に補足いたします。最初の「他の大学・研究所にはない優位性を活かしつつ、国立研究所 としてのミッションの達成に向けての一層の努力と、リーダーシップの発揮を期待したい」 との指摘に関しては、医療・福祉の臨床現場とともにある組織としての優位性を一層活用 することということです。センター全体としてのこの分野での研究機能、情報発信機能を 実現するように、もっと企画立案を行う機能の強化を図るようにというご指摘です。この 点は、過去の研究評価委員会でも再三指摘されている項目であります。ところが、幸いに といいましょうか、最初に申しましたように、リハセンターのあり方検討会でも、この点 は非常に強く要望というか指摘がありまして、これから私どもとしても一層取組みを強化 していこうと考えております。  評価項目2の研究開発分野・課題の選定に移ります。最初のところにあります「障害の とらえ方が医学モデルと社会モデルの共生の上に立って研究を推進している」との記述で すが、この研究開発分野について一言ご説明申し上げますと、障害の定義に関しては、世 界保健機関が提唱するICF、即ち国際生活機能分類の中で生活機能、即ち心身機能・活動・ 参加の三要素の低下、並びに環境要因や個人要因を加味して障害を捉えるようになってき ています。私どもの研究所は医学・工学・行動科学・社会科学・心理学など学際的な取組 みをすることにより、ICFの定義域といいますか全体をカバーしているという特色があり ます。厚生労働省傘下のこの分野の研究所として、問題領域の設定及び課題設定といった ものが適切であるという評価をいただいております。  あと指摘事項では、基礎的研究課題と応用的研究課題のバランスということがあります。 障害者のニーズに応えるのは当然でして、国リハのミッションというのは、研究のための 研究ではなく、社会のための研究、これはICSU(International Council for Science)と いう国際科学会議などもそういう形で、20世紀末からそういうことを提唱しておりますけ れども、最終目的達成に向けた最適化を図っていこうと考えております。  2番目の指摘事項はセンター内の部門間の連携を促進するための具体的な方策に関する ものです。再三のご指摘もあり非常に重要なことだと考えております。センター内のプロ ジェクト研究体制の試行もいま進めているところですが、今後の組織設計や、センター内 の制度設計に反映させてまいりたいと考えております。  評価項目3の研究資金等の研究開発資源の配分ですが、この障害保健福祉分野の研究費 についてはなかなか伸びが見込めない状況です。一般会計予算に関しても、基盤整備と、 重点化のバランスを図りつつ運営しております。特に、厚労科学研究費、文部科学研究費 といった外部資金の獲得を推進している状況を評価していただきました。これらの外部資 金には、特に文部科学省の方には間接経費というのがあります。これは、研究機関が次の 種を仕込むために使おうではないかという趣旨で設計されているものと私は理解しており ますけれども、萌芽的研究の育成加速に重点的に充当するようなマネジメント戦略を進め ているとの説明をして了解をいただいております。  さらなる研究予算の確保の努力の必要性が指摘されておりますけれども、障害福祉関連 の研究費の総枠は全体に非常に厳しい状況にありますので、福祉機器の新しい技術開発パ ラダイムを提案するなど、研究開発の重点化の対象として取り上げられるようにするため に研究所としての努力が必要だとの認識を持っております。即ち、技術開発の社会還元効 果を高める観点からも、福祉機器技術は、利活用の場面での臨床評価・適合といったもの にかかる技術の開発というものが、全体の技術開発から切り離すことができないという観 点で、国の科学技術施策に対する提言、新しいこういう分野での技術開発パラダイムを提 言していかなければいけないと考えております。  評価項目4の組織・施設設備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の支援体制について は、先ほど申しましたように、発達障害情報センターを立ち上げるなど、政策的要請にも 応え、社会的な要請にも応えるべく、これから柔軟に対応していこうと考えております。 この辺につきましても、先ほどのセンターの今後のあり方の検討の動向と見合いながら、 研究所のマネージメントをしたいと思います。他部門との連携に関しては、現在、総長の リーダーシップの下にかなり強力に進めているところです。  共同研究に関しては、平成16年から平成18年までの3年間、科学技術振興調整費によ り、重度障害者の自立支援技術、あるいは認知障害、精神障害を有する人々の情報コミュ ニケーション支援ということで、経済産業省の産業技術総合研究所、東京大学、静岡県立 大学など横断的な共同研究なども積極的に進めてきております。国際協力に関しては、JICA の補装具製作技術の研修の受け入れ、あるいはISOの活動を説明して評価を得ております。  評価項目6の研究者の養成及び確保並びに流動性の確保についてです。流動性について 統計を取ってみますと、我が研究所の研究者の回転の年限の平均は20年ぐらいですので普 通かなと。特に早いわけでも遅いわけでもないと考えております。  評価項目7の専門分野を生かした社会貢献に対する取組に関しては、アウトリーチ活動 にかなり力を入れて進めております。研究所のオープンハウス等も進めております。それ から、別な意味での社会貢献に関しては、福祉機器の安全・耐久性の認証機関という機能 がこれから期待されているところで、今後検討する予定です。  評価項目8の倫理規程、倫理審査会等の整備状況についてはかなり充実していて、年4 回の倫理審査委員会、その他の委員会は1回取り組んでおります。以上ですけれども、補 足いたしますと、国リハ研究所では、平成11年度より外部評価を実施しております。当初 は、大綱的指針に基づいて進めてきておりますが、平成14年度からは厚生労働省の指針に 基づいて、3年に1度は全体評価を、その中間年に当たる部分では、テーマを決めて評価 を受けてきております。平成19年度はコアコンピタンスといいましょうか、我々のような 研究所の中核技術はどうあるべきか。その前では連携研究のあり方とか、プロジェクト研 究のあり方といったものの評価を受けております。全体を通しまして、昨年来国立厚生援 護機関の今後のあり方に関する検討報告書等も出ておりまして、新たなミッションという ものに向けてこの評価を併せ、それを念頭にこの先研究所のマネージメントを進めていき たいと思っております。以上です。 ○永井部会長  ただいまの説明に関し、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○廣橋部会長代理  この報告書をまとめること自体も大変なご努力だったと思います。また、時間の関係で 省略されたと思うのですが、この後に対処方針も書いておられます。そういうものをどの ように活用されるのか、これからはフォローアップが大事だろうと思います。3年間の区 切りの評価だけではなくて、それ以外の取組みもなさるということだったので、こういう 指摘事項に対してどういう対応をするかをまとめられたわけですから、それをどのように フォローアップしていくか。それから、研究所の職員と意識を共有するためにもこういう 作業は非常に意味があったのではないかと思うのですけれども、その辺の取組みがあれば 教えてください。 ○諏訪研究所長  指摘事項に対するこれからの取組みに関しては、既にいろいろと取り組んでおりますけ れども、特にいままで指摘されても実行に移しにくい話があります。先ほど申しましたよ うに、いまリハセンターの見直しをしているということがありますので、そういうところ に効果的に反映していきたいということ。それから、すぐに取り組めるものについては、 できるところから進めていきます。テーマの方向性、それから一つ一つ他部門との連携の あり方など日常できるところは進めてまいります。  それから、研究所の中での意識の共有というのは幸いにしてといいましょうか、我々の 研究所は、いわゆる研究職は20数名しかいない小さな研究所ですから、問題意識の共有と いうのは大きな組織と違ってスムーズにいっていると私は思っております。 ○金澤委員  大変ご苦労さまでした、よくわかりました。発達障害情報センターについて伺います。 これは厚生労働省の方に伺った方がいいかもしれないのですけれども、これがなぜリハセ ンターの方に行ったのかをまず説明してください。その次に、内容について伺います。 ○障害保健福祉部  発達障害支援情報センターを置くに当たりましては、国立成育医療センター、国立精神・ 神経センター、当時の国立身体障害者リハビリテーションセンターの三つの機関と協議を いたしました。  当時の身体障害者リハビリテーションセンターは平成20年度から身体障害者のリハビ リテーションセンターから「身体」を取り、各種の障害に対して取り組むという方向性を 示されました。  また、高次脳機能障害に関しても、平成13年からかなり中心的な取組みをしていただい ているというところも勘案し、障害保健福祉部として、発達障害の情報センターについて は、このセンターにお願いするように決まったと聞いております。 ○金澤委員  了解は難しいかもしれませんけれども、理解はしました。もう一つ国府台が抜けている のですがいいことにしましょう。成育医療センター、その他精神・神経センターもいまこ れに協力をしているのですか。 ○諏訪研究所長  発達障害情報センターを運営するに当たっては、精神・神経センターと連携して推進さ せていただいております。もう一つ付け加えると、文部科学省の方でも国立特別支援教育 総合研究所に発達障害教育情報センターがあり、当センターの現場でも本省担当課と協力 して特にそういう所と連携するように、常に情報交換をしながら、国民の皆様が縦割りで どっちだという話にならないような配慮を十二分に払いながら運営しているところです。 できるだけご期待に添いたいと思っております。 ○金澤委員  行く行くは外に出した方がいいのではないですか。いずれ成長していった場合、これを 中でやると大変だと思います。例えば、難病情報センターその他も外で結構うまくいって いる所もありますから、そういう方向も考えられたらいかがでしょうか。 ○竹中委員  福祉機器の開発は非常に重要なテーマだと思います。産業界と連携した研究、あるいは 連携した形で産業界に技術移転した研究、あるいはその中で製品化されたもの、こういう ものを外部評価が始まってから年次別に、数とか質をフォローして、それを評価の中の基 準とされているのでしょうか、されていないのでしょうか。 ○諏訪研究所長  研究所の評価委員会の評価基準という形にはいまのところ上げておりませんが、そうい う調査がまいりますので、そういう所のデータは整理しております。いまは手元に持ち合 わせはございません。例えば、先ほどの話のメモリアシストというのは企業と一緒になっ て、企業がそれを製品化してという形の技術移転が非常にスムーズに進んだケースがあり ます。でも、すべてがそういう形でいくというのはなかなか難しいのが現状ですが、技術 移転を通して実用化を図るという取組みを進めております。 ○竹中委員  外部評価の基準に入れていないというのは、より学問的な方向に研究所を持っていこう という考え方が評価される方に多くて、実利的なことよりもそちらが大事だと思ってそう なっているのでしょうか。 ○諏訪研究所長  すみません、評価基準というのは明示的に基準を上げているのではないという意味でし た。評価委員会の中では、我々の研究所に関しての期待は基礎研究ではなくて、障害者に いかに貢献できるかということですので、臨床等の現場との接点をものすごく大事にして おります。それが、我々の研究所のアドバンテージでもありまして、そこで成果を出して いきたいと取り組んでいるところです。 ○西島委員  関係する点ですが、ISOの取組みについて伺います。ISOは特許と並んで、非常に産業上 は重要なことだと言われています。これについては経産省がISOについて、我が国からも っともっと発信するようにと言われています。10頁にも三つほどの取組みについて書かれ ていますけれども、ここには国際協力をしていると書いてありますが、このような中で幹 事国になったり、あるいはWGのリーダーになったりするのがすごく大事なようです。その 辺についてはどのようなレベルにあるかをお聞きします。 ○諏訪研究所長  私の前任の山内所長の時以来、福祉機器の分野でISOへの協力を進めてきています。幹 事国のレベルまではまだ我々の所では手が及んでおりません。ただし、経済産業省のそう いう取組みとのいろいろな連携において、我が国の戦略の中でいろいろと取組みを進めて いるのが現状です。 ○西島委員  研究員が少ない中で、こういう取組みまでするというのは非常に大変だと思うのです。 その辺は研究者個人の考え方によってやっているのでしょうか、あるいは研究所として何 か大きな方針を持ってやっているのでしょうか。 ○諏訪研究所長  そこはなかなか難しいのですけれども、研究所としてセンターとしての意識的な一つの 方向性としては、そういうものが大事であるということであります。現時点では研究者の 個人レベルの取り組みと言わざるをえません。すなわち、予算的な措置というのは非常に 難しい情勢に置かれていることは事実です。 ○松本委員  私は日本工業標準調査会の委員をやっておりまして、またISO/COPOLCO(消費者政策委 員会)という、この高齢者障害者を含む問題について議論する委員会の日本代表をやって おります。いまのことについて、若干補足させていただきます。ISOの世界において高齢 者、障害者配慮(アクセシブルデザイン)の分野では日本は非常に貢献をしておりまして、 数年前に高齢者、障害者のことを配慮して規格を作るべきというガイドを作るに当たって、 日本が中心的な役割を果たしておりました。先ほどの実際の作業部会、TCだとかWGだと かの委員長、座長レベルについてもこの分野では相当貢献をしています。特に、産総研の 中の研究室が積極的にいろいろな情報発信とか人材提供をしているという現状がございま す。 ○永井部会長  ありがとうございました。他にございますか。 ○石井委員  質問ではないのですが、どちらかというと厚労省の方にということになるのかもしれま せん。14頁のロコマットの訓練についての対処方針として、現行制度の中でできることを やっていきたいということですが、折角この厚労省で報告をしているのですから、これだ けではなくて、これから福祉機器を開発させて、それを臨床に用いられるようにしていく 中で重要なことなのではないかと思うので、制度的にそういうことがうまくできるような、 そういう改善を厚労省の方が積極的にしていただくようにした方がいいのではないかと思 います。 ○諏訪研究所長  私の範囲で申し上げられる話に関しては、いわゆる福祉機器というのは、我が国は他の 外国と違いまして、医療機器ではありません。したがって、医療機器としての審査の対象 外になっているということが、まず一つございます。それは善し悪しはいろいろございま す。従って、ここに書いてありますロコマットに関しまして、それを診療に使って、診療 報酬を得ようとする場合には、これは医療機器として登録されておりませんので、扱えま せんということが、ここに書いてあるわけです。  その他、いわゆる研究所で臨床評価をする場合には、倫理審査委員会というのをきちん と立てて、それで被験者の方々に協力をしていただくということで、進めることは行って いるところです。  このように、入院患者の方に協力をしていただくということに関しましてはいろいろな 意味で注意をしなければならない部分などもありますから、一概には答えがすぐ出る問題 ではない。ただし、問題意識としてはそういうところをできるだけ解決しながら進めてい きたいということが現場からの意見だと、それが書かれているとご理解いただければあり がたいです。 ○岩谷委員  いまの部分、また補足をさせていただきたいのです。こういう脊髄損傷の方を、歩かせ るなんてそういう発想というのはいままでにはなかったわけなのですが、それによってい ろいろなこういう実験的なことをすることによって、いままでわからなかった、その脊髄 の神経機能なんていうのは次々に明らかになってきているわけです。それで、こういうも のを実際にある意味で実験的にでもやろうと思いますと、まず患者さんを集めなくてはい けないのですが、患者さんを集めると、その方々のセレクションが非常に難しいのです。 ある期間を限ってこれにやっていただくというようなことのセレクションが非常に難しく て、要するに、たくさんの方が来られますから、どの方をと選ぶことが非常に難しいです ので、その辺りのところは非常に我々としては考えながらやっているところです。それが いちばんの、なかなか前に進めないというのはそこが非常に大きなネックになっていると。 これは、そんなことでございます。 ○永井部会長  まだご意見あろうかと思いますが、ちょっと時間が遅れていますので、また意見あれば お寄せいただくこととして、ただいまのご意見を踏まえて、国立障害者リハビリテーショ ンセンター研究所におかれましては今後の運営の改善にお努めいただきたいと思います。 また、本日ご出席いただきました諏訪研究所長につきましては、お忙しい中大変ご苦労さ までございました。  残った議事に進ませていただきます。その他ですが、平成21年度厚生労働科学研究費補 助金公募要項について、事務局よりお願いいたします。 ○坂本研究企画官  それでは資料4-2及び資料4-3についてご説明いたします。厚生労働科学研究費補助金 の公募についてはこれまでの部会でもご報告しておりますが、今般、公募を2件、新たに 行っています。事前に電子メール等でご連絡させていただいていますが、まず、資料4-2 〈先端医療開発特区採択課題を加速する研究の公募〉というもの、いわゆるスーパー特区 に関係する公募です。こちらの10頁にありますように6月19日から7月21日まで公募と いうことで、できるだけ研究期間を確保する観点から、それからスーパー特区については 厚生労働省、内閣府、文部科学省、経済産業省の4府省で取り組んでいるものでして、こ の公募期間についても経済産業省、文部科学省の公募と足並みを合わせた形で公募をして おります。  また、応募の資格についても通常の公募とこちらは条件が異なりまして、2頁の上から6 行目のウ.にありますように、スーパー特区に採択された課題の研究代表者、あるいは研 究分担者又は研究協力者であってスーパー特区採択課題の研究代表者の承諾を得た者とい う条件がございます。このため、公募における条件での混乱とかを避けるため、通常の公 募とは別に、これだけで公募を行っております。  公募する分野については、16頁からございます厚生科学基盤研究分野の1.先端的基盤 開発研究事業の(1)再生医療実用化研究事業、18頁の(2)創薬基盤推進研究事業、19頁の 2.臨床応用基盤研究事業の(1)医療技術実用化総合研究事業、これらに関しては21頁の下 のところに、公募研究課題数をまとめて記載しております。合計で20〜30課題程度の公募 を行っています。また、22頁にありますように、疾病・障害対策研究分野の(1)難治性疾 患克服研究事業で4課題程度の公募を行っています。  資料4-3は、通常の公募条件での公募です。先ほどのものは1次公募や2次公募と言う 言い方とは区別しておりまして、こちらを3次公募としています。  公募期間は10頁にありますように、6月26日から7月28日です。公募条件も先ほどの ものと異なり、準備の状況等もあったこともあり、スーパー特区関係とは別に公募してお ります。公募している内容については16頁からですが、難病関係について2次公募までで 十分な課題採択できていないところについて、(1)の横断的基盤研究分野、[1]生体試料等の 効率的提供の方法に関する研究については1課題、(2)研究奨励分野で[1]疾病の診断基準等 作成のための奨励研究、及び[2]疾病の実態把握のための奨励研究、こちらは30〜40課題の 公募ということになっております。資料4-2、4-3の説明は以上です。 ○永井部会長  何かご質問、ご意見はございますか。 ○宮田委員  質問ですが、これ、スーパー特区に指定されて、何もいいことがないじゃないかと、研 究者に。随分私も審査官をやっていたのでいじめられていたのですが、やっとここで、あ る意味では研究費が提供されるということになったのですが、予算額はどれくらいですか、 課題数は大体わかったのですが。 ○坂本研究企画官  厚労省関係は全体で33億円程度です。スーパー特区の説明会では、多分、内閣府の方か らまとめてその情報提供はしていると思います。文科省、経産省関係は、ここでは言及し づらいですが。 ○宮田委員  ですから確認、厚労省分で33億は出すということですね、わかりました。 ○永井部会長  これは1特区当たり何件ぐらい研究が、課題が動かせるのですか。 ○坂本研究企画官  今回は、テーマごとに公募しております。1特区の制限とかいうのは今回の公募では特 段設けておりませんが、研究代表者が、それから研究代表者が承諾した方が、応募されま すと、重複のチェックはせざるを得ませんので、あまり同じような研究をばらばら出され ますと、e-Radで全部引っ掛かってしまうという可能性はございますので整理していただ く必要はあると思います。公募要件に合った形で出していただければということになると 思います。 ○永井部会長  よろしいですか。ご意見、ご質問なければ、ご了解いただけたということにさせていた だきたいと思います。  続いて、その他、報告事項は平成22年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針に ついて、お願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料4-4についてご説明いたします。総合科学技術会議では、科学技術に関する予算等 の資源配分の方針を毎年とりまとめられておりまして、「平成22年度の科学技術に関する 予算等の資源配分の方針」が6月19日にとりまとめられましたので、ご報告いたします。 副題として〜経済危機の克服を目指し、底力発揮による将来の成長に向けて〜というもの がございます。最初のところでは、世界的な金融・経済危機の中にあって中長期的な経済 成長を確かなものとする上で、科学技術への賢明な投資が重要であるということ等が記載 され、その下のI.「基本的考え方」につなげられています。  平成22年度は、目指すべき国家像の実現にどのような科学技術が必要かという視点に着 目して、次の最重要政策課題に予算等の資源を重点化するといった記載があります。  1.最重要政策課題では「経済財政の中長期方針と10年展望」において将来展望として描 かれた低炭素社会・健康長寿社会を実現することは国家的課題と記載されています。  2頁に(1)低炭素社会の実現、(2)健康長寿社会の実現、(3)革新的技術の推進、(4)科学 技術外交の推進、(5)社会還元加速プロジェクトの推進、(6)地域科学技術施策の推進とい う6項目が示されております。  2.最重要政策課題のための基盤的課題では、若手研究者の育成システムの拡充・改善、 あるいは長期的・安定的な研究のため、基盤的経費の確保を図りつつ競争的資金を拡充、 大学院教育の強化、知的財産戦略(2009年)の施策の推進といった課題が、3頁の上にか けて記載されています。  3頁のii.「政府研究開発投資が最大の成果を得るため、各府省が実施すべき事項」では、 (1)最重要政策課題、そのための基盤的課題及び第3期科学技術基本計画のフォローアッブ 結果を踏まえ、関連する効果的な施策を具体化すること。(2)革新的技術推進費で加速対象 となった技術課題について、加速の効果が維持されるよう、努力すること。(3)スーパー特 区採択課題が所期の目的どおりに促進されるよう、努力すること。(4)研究成果の国民への 還元を加速するための取組を行うこと。(5)予算額の確保のみならず、弾力的活用や研究支 援環境の改善に努めること。(6)関係府省との連携、e-Radの活用等により研究予算の不合 理な重複等を排除するとともに、研究費の不正使用等の防止に向けた取組の徹底を図るこ と。そういったことが記載されています。独法関係については、ここの(1)から(3)の措置 が、「業務運営の効率化」対象から除外されるよう努めることという記載もあります。  III.「総合科学技術会議における取組の強化」では、1.効果的な優先度判定等の実施とし て、府省単位の全体ヒアリングを実施し、最重要政策課題及び分野別推進戦略の中間フォ ローアップを踏まえた戦略重点科学技術への重点化の状況、府省間連携の取組状況を把握 するということになっています。優先度判定では、最重要政策課題等優先して取り組むべ き効果的な施策に資源が適切に配分されるよう、施策の相対的比較により、施策間の優先 度等を一層明確化といった方針が記載されています。また、研究開発目標の達成に有効な 内容かについても確認するということも記載されています。  2.府省の枠を越えた一体的な取組の推進については、その妥当性を確認した場合には、 個別に優先度判定等を行わず、施策パッケージとして最重要政策課題とみなす、との記載 もあります。  IV.「終わりに」では、不合理な重複を排除し、科学技術の相乗的な振興が図られるよう 予算の執行に努めることが重要といった記載もあります。  総合科学技術会議からこの方針が示され、詳細は今後我々の方にも伝わってくると思い ますが、これが基本的方針ということですので、ご報告させていただきました。説明は以 上です。 ○永井部会長  何かご質問、ご意見はございますか。よろしいですか。では次に進めさせていただきま す。戦略研究について、ご報告をお願いいたします。 ○矢島厚生科学課長  戦略研究関係についてご報告いたします。前回のこの部会で、戦略研究の内一つ、都市 在住者を対象としたHIV新規感染者及びAIDS発症者を減少させるための効果的な広報戦略 の開発、この課題については、戦略研究企画調査検討会の中間評価を受けて、中止になっ たことをご報告をさせていただきました。その後、この戦略研究企画調査検討会の中で、 その検証委員会を立ち上げるということで、この検討会のメンバー3名とこの科学技術部 会からは宮田先生に入っていただき、検証委員会を立ち上げたところで、いま検証作業を 行っているところです。この課題について、研究リーダーをはじめとする関係者からヒア リングを実施し、いままでの経緯を整理し、今後この事例から得られる、学ぶべき課題と か、今後の戦略研究のあり方、生かすべきものについて、いまいろいろと整理をしている ところです。今後の戦略研究のよりよい運営に資するものを報告書としてとりまとめるこ ととしております。以上、簡単ですが、報告をさせていただきました。 ○廣橋部会長代理  厚生労働科学研究費に関することで短い質問をさせてください。厚生労働科学研究費の 中には一部だと思うのですが、厚生労働省から外へファンディングエイジェンシー(配分 機関)を出しているものがあります。その中に、第3次対がん戦略研究事業、それからこ ころの健康科学研究など、国立高度専門医療センター、いわゆるナショナルセンターにフ ァンディングエイジェンシーを委託している研究事業がいくつかあります。ナショナルセ ンターは来年の4月から独法化するということで、そのファンディングエイジェンシーの 役割を果たすことができなくなるというふうにも聞いているので、厚生労働省としてはそ の辺をどういうふうに対応しようと考えておられるのか、教えていただきたいと思います。 ○矢島厚生科学課長  FA化についてご質問がございましたので、お答えさせていただきます。いまご指摘ござ いましたように、FAについては総合科学技術会議から、その研究資金を、一つの制度は一 つの配分機関に集約することが望ましいという意見があり、いま作業をしております。FA を実施する場合に、総人件費改革等いろいろな制約がありまして、どういうふうにやれば うまくいくのかということ、あるいはその法令改正の必要性等も含めて、いま慎重に検討 させていただいているところですが、次年度以降の研究費の執行等に影響がないように、 FA化できるところについては試行的な実施も含めて、22年度に向けて秋までに検討を進め ていきたいと考えております。たぶん先生のご懸念というのですか、いろいろな影響が出 てくるのではないかということがあるのだと思います。我々厚生労働省本省の担当部局は、 いろいろな意味で汗をかかなければいけないと思っています。先生方、本省以外の関係の 方々には、できる限りご迷惑をかけないよう、平成22年度に向けて努力をしていきたいと 考えております。何とぞよろしくご理解をいただければと思っております。 ○廣橋部会長代理  私たちがFAを引き受けてから、先ほどマネジメントという話も出ましたけれども、非常 に早く配分できるようになったこととか、あるいは関連する研究事業全体を見通して、専 門家の意見を聞いて、穴のないように課題を設定するとか、そういったいろいろな意味で の努力をしてまいりました。成果も上がってきたところですので、是非ともそういったも の、今後とも推進していただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○矢島厚生科学課長  ご指摘ありがとうございました。 ○永井部会長  本日予定した議事は以上ですが、事務局から何かございますか。 ○坂本研究企画官  次回について別途日程調整をさせていただいて、既にご連絡差し上げていると思います が、7月23日、15時から17時で開催を予定しています。正式なご案内については、詳細 が決まり次第送付させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局か らは以上です。 ○永井部会長  本日、時間がオーバーして申し訳ございませんでした。今日の部会は、これで終了させ ていただきます。どうもありがとうございました。                                −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171