09/06/18 第2回看護教育の内容と方法に関する検討会議事録 第2回 看護教育の内容と方法に関する検討会 日時 平成21年6月18日(木)15:00〜 場所 金融庁共用第1特別会議室(13階) ○島田課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第2回「看護教育の内容と方法に 関する検討会」を開催します。委員の先生方におかれましては、ご多用の中、当検討会にご 出席いただきまして、誠にありがとうございます。また、事務局の都合によりまして日程の 変更をさせていただきましたことご協力いただきまして、誠にありがとうございました。  本日は、前回欠席された委員が出席されておりますので、まずご紹介をさせていただきま す。「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会代表の阿真京子委員です。おやま城北クリ ニック院長太田秀樹委員は遅れて出席です。後ほどご紹介いたします。日本看護学校協議会 常任理事三浦昭子委員です。また本日は草間委員、千葉委員よりご欠席という連絡をいただ いております。それから、舘委員、菱沼委員は遅れてご出席という連絡をいただいておりま す。  続きましては配布資料の確認をさせていただきます。配布資料は「議事次第」「座席表」、 資料1「主な検討課題と論点」、資料2「今後の進め方(案)」、資料3「第1回検討会におけ る委員の主な意見」、資料4「第1回検討会の主な意見と看護師教育充実のイメージ図(た たき台)」、資料5「看護師等養成所の運営に関する指導要領について(抜粋)」、資料6「看 護師教育の基本的考え方と第1回検討会における委員の主な意見」、資料7「看護師教育と 新人看護職員研修の到達目標イメージ図」、資料8「池西委員資料」。  参考資料1-1「保健師教育の望ましい単位数」、参考資料1-2「助産師教育の望ましい単位 数」、参考資料2「新人看護職員研修到達目標・新人看護職員研修指導指針」、参考資料3「新 卒看護師の『看護基本技術』に関する実態調査」、参考資料4「看護実践能力の充実に向け た大学卒業時の到達目標」。以上です。乱丁・落丁などがありましたら事務局にお申し付け ください。それでは、小山座長、議事の進行よろしくお願いいたします。 ○小山座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。本検討会は第1回目でも説明 がありましたように、昨年度開催された「看護の質の向上と確保に関する検討会」の中間取 りまとめにおいて「免許取得前の基礎教育段階で学ぶべきことは何かということを整備しな がら、現在の教育年限を必ずしも前提とせずに、すべての看護師養成機関において、教育内 容、教育方法等を見直し、充実を図るべきである」と示されたのを受けて、設置されていま す。この趣旨に沿うように議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  議事に先立ち、本検討会の「主な検討課題と論点」、「今後の進め方について」、前回、委 員の皆様方からいただいたご意見に沿って事務局に整理をしてもらいました。第1回での 「主な意見」も含めて、事務局より説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料1、2、3について説明します。資料1は、前回の会議のときに「主 な検討課題と論点(案)」を示していますが、そのときにすべて4年間に延長するという印 象を与えるような表現になっていましたので、それを改めて文言を整理しました。1の「免 許取得前に学ぶべき事項の整理と具体的な教育内容の見直し」ですが、3年課程(国家試験 受験資格要件として)の学ぶべき内容は何か、教育年限にとらわれない看護師教育で学ぶべ き内容は何かといった整理をしています。  資料2は、前回の会議のときに、今後の進め方については案を示しましたが、前回の先生 方のご議論などを踏まえて進め方について、このように改めて出したいと考えています。今 回は第2回ですが、第2回、第3回では教育年限にとらわれない看護師教育で学ぶべき内容 についてご議論いただきたいと考えています。第4回では、その第2回、3回で出された教 育内容を実施するための方法について、看護師国家試験受験資格要件として、教育に反映す べきものについてのご議論をお願いしたいと思っています。保健師教育、助産師教育で学ぶ べき内容についてのご議論をいただき、第6回で示された教育内容を実施するための方法に ついてのご議論をいただき、第8回では中間まとめを議論していただきたいと考えており、 今後の進め方の案を示しました。  資料3は、前回の第1回検討会において、先生方からいただいたご意見を、先ほどご説明 した主な検討課題に沿って整理をしました。1、2、3、4という項目で整理をしていますが、 項目によっては、前回ご意見が出ていなかったものについては、項目としては入っておりま せんが、順次このような形で整理を進めていきたいと考えています。以上です。 ○小山座長 ただいまの説明についてご意見、ご質問がありましたらお願いします。よろ しいでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。本日は議事次第にある「看護師教育 で学ぶべき内容について」の検討を行う予定です。前回、委員の皆様方からいただいたご意 見を、看護師教育のイメージ図と指導要領の別表3の「看護師教育の基本的考え方」に沿っ て事務局で整理したものが資料としてあります。さらに前回の会議で、どのようなレベルま で教育するのか、また卒後の新人看護職員の研修の内容と整理しての議論が必要だとのご意 見もありましたので、それに関連した資料も用意してもらいました。事務局より説明をお願 いします。 ○島田課長補佐 まず資料4を説明します。先生方からいただいたご意見を資料3でまと めておりますが、その中でこういった能力を身に付けるというご意見がありましたので、そ れらについて、前回同じく看護師教育充実のイメージ図を示しましたが、若干それを改変し て、ご意見として出された充実させるべき、あるいは身に付けるべき能力について、こうい う形で深さと広さという座標軸で整理をしてみました。  これはあくまでもこういった所に位置づくのではないかというまとめ方をして、位置づけ をしていますので、若干そのいろいろなご意見、あるいは見方によっては、もう少しここに この能力が位置するのではないかということもあろうかと思いますが、まずはこういう形で イメージとして整理をしたというところです。  その広さと深さという軸がありますが、真ん中に国家試験受験資格として、学ぶべき中核 をなすものというオレンジの所があるかと思いますが、ここが基礎教育でまず最低限は学ん でいただく領域と考えております。そのあとその外側に新人看護職員研修到達目標と点線で 示していますが、そこまでは新人の研修として到達してもらいたいというイメージとして示 しています。  それぞれここで書かれている、例えばコミュニケーション能力やいろいろな能力が書かれ ていますが、それぞれ将来的にはもっとベテランになってもこのような能力はどんどん身に 付けていただかなければいけないところもあろうかと思いますが、まずその芽を基礎教育で は身に付けるというところもあろうかと思いますし、能力によっては卒後ある程度ベテラン になってから身に付けていただくものもあろうかと思います。あるいはもっと基礎教育のと ころでしっかりと学ぶという、少し幅があろうかと思いますが、こういった形で必要な能力 を看護師の基礎教育の中で充実させ、それを新人研修あるいはそれ以降の研修などを通して 身に付けていただくというイメージかと考え、このように整理したものです。  資料5です。これは看護師等養成所の運営に関する指導要領という医政局長通知で示して いる看護師等養成所における教育として、こういった基本的考え方などで行ってもらいたい ものを示している通知の抜粋です。その中の別表3で看護師教育の基本的考え方、留意点等 を示しています。  その教育の基本的考え方ですが、ここに6点あって、こういうものを示しており、これに 沿って看護師養成所では教育をしているという項目です。これらそれぞれの項目について資 料6で、この6つの基本的考え方に沿って前回先生方からご意見としていただいた充実させ る、あるいは身に付けるべき能力について整理をした場合に、こういった分け方ができるの ではないかという整理をしたものです。この6つの柱に、事務局の案としては区分されない のではないかというものについては下のほうに「その他」と書いてありますが、いまのこの 6つの枠組みでは当てはまらないものも意見としては出されていました。  資料7です。前回の検討会で看護師の、あるいは看護の基礎教育で学ぶべき事項あるいは その教育内容を考えるときに、新人の研修としてどういうことを身に付けるのかということ とリンクさせて考える必要があるのではないかというご意見がありましたので、その新人看 護職員研修と看護師の基礎教育との関係性をイメージとしてまとめたものです。  参考資料2の3頁を併せてご覧いただきたいと思います。参考資料2は新人看護職員研修 の到達目標と指導指針を示したものです。3頁に新人看護職員研修到達目標の図があります。 これは平成15年度に私どもで設置した新人看護職員研修の検討会でまとめたもので、新人 看護職員研修の到達目標としては、I「看護職員として必要な基本思勢と態度」、II「技術 的側面」、III「管理的側面」という3つの大きな柱で、それぞれの能力あるいは技術を身に 付けて、到達していただきたいという整理をしたものです。  資料7に戻り、その3つの区分で新人看護職員研修と、看護師の基礎教育との関係性を整 理しますと、それぞれ国家試験受験資格要件として、すなわち基礎教育で学ぶべき事項とし て基本姿勢と態度もあり、技術的側面もあり、そして管理的側面もそれぞれ基礎教育で勉強 することになっていますが、それらをそれぞれ勉強した後に、さらに新人が看護職員研修を 受けて、あるいはそれを通して到達目標に達するというつながりがあろうかということで、 イメージとして関係性を示したものです。以上です。 ○小山座長 ただいまの事務局の説明について、ご質問等がありましたらお願いします。 いま説明がありましたように、資料7として「具体的な内容」というのがありますが、それ は新人看護職員到達目標に書いてあります。その下に書いてある表1に、新人看護師の看護 職員として必要な基本的姿勢と態度について、到達目標という表現で具体的に書いてありま す。これが到達目標を書いていくときの1つの表現として理解していただき、これが基礎教 育だと、どのぐらいのレベルまでというイメージ図として、資料7を使ってくださいという 意味です。よろしいでしょうか。 ○羽生田委員 資料6のいちばん下の「その他」に臨床実践の「楽しさ、面白さ」とあり ますが、普段は「面白さ」という使い方をするのですか。 ○小山座長 これは前回の委員からいただいたご意見を大切に、この表の中に入れてあり ますので、この表現等については、本日もっと議論を深めていければいいかと思っています。 ほかにいかがでしょうか。 ○山内委員 最後に示された資料7と参考資料の表1とがありますが、どういう観点でつ ながるかという点は見えていますが、どの辺りまでを接合部にするかという深さというか、 程度の中身が見えてないのです。こういうことをつなぎ目にしましょうということは分かる のですが、この会議で大事なことは、どの辺りを橋渡しにするかというところも議論しなけ ればいけないと思いますので、具体的なものをどう掘り下げるかは、ちょっとわからないと いうか、これから考えるべきことかと思います。 ○小山座長 まさにそこが本日ご議論いただく最も大きな山場です。これはあくまでも新 人看護職員として、卒業した後のことも書いてあります。私どもの役割は、卒業するまでの 到達目標ですので、そのことについてご議論いただければと思っています。非常に重要なこ とを私どもが作業しなければいけないことになります。ほかにいかがでしょうか。  それでは、本日の議論のゴールといいますか、大体この辺を目指しているのだというイメ ージ化をしていただきましたが、ここで実際の看護教育現場での現状について、ご報告をい ただきたいと思います。統合カリキュラムで教育されている池西委員より、統合カリキュラ ム教育と3年課程を比較した調査についてお話をいただきます。  看護職以外の方々に、少し統合カリキュラムのことを説明しますと、看護師課程の3年間 と保健師の免許も取れる1年間を、併せて統合課程という4年間のプログラムのことです。 ○池西委員 お時間をいただきましてありがとうございます。それでは、この3月に実施 した「看護師教育の卒業時技術到達度調査」の結果と、その結果を基に看護師教育で大切に したいもの、強化したいものについて、私なりに考えたことを報告したいと思います。資料 やパワーポイントを見ながら説明をしたいと思います。  まず調査の概要(その1)ですが、調査の目的は、実は本校は平成19年に統合カリキュ ラム教育を実施しましたが、まだ卒業生を出していない学校です。この3月に看護学科(看 護師3年課程)の教育を終えるに当たって、専門学校における看護師3年課程と4年の統合 カリキュラムでは、卒業時の成果にどのような差が見られるのかを知りたいと思いました。 そういう中で、改めて統合カリキュラム教育について考えていきたいということが目的でし た。  統合カリキュラム教育を「統合課程」、看護師3年課程を「3年課程」と呼ばせていただ こうと思っています。調査の対象は統合カリキュラムを実施している統合課程は、3月の時 点で全国で15校の学校がありますが、そのうち10校が卒業生を出している学校です。あ との5校はまだ卒業生を出していないという状況です。その10校の中で、調査協力が得ら れた8校、283名を対象としたのと、3年課程のほうは数がとても多いので、本校が所属し ている日本看護学校協議会の近畿ブロックでブロック活動をしていますので、そこの会員校 に調査を依頼して、調査協力が得られた6校、301名を対象としました。  調査概要(その2)です。中身については、看護基礎教育の充実に関する検討会で示され た看護師教育の技術項目と卒業時の到達度は13領域に分かれ、141項目になっています。 まず回答の求め方としては、知識として「わかる」ものについては141項目すべてについ て自分で「わかる」と思う項目に○印を付けてもらいました。そのうち、自分で「できる」、 1人で「できる」ですが、「できる」と思うものについては、先ほど言った141項目の中で、 「できる」ことを期待する項目が109項目あります。この中には、単独で実施「できる」 ということと、指示のもとに実施「できる」、指導のもとに実施「できる」、学内でモデル人 形等で実施「できる」という実施「できる」レベルにはいくつかありますが、いずれにして も、実施「できる」ことを期待する項目が109項目ありますので、その109項目について、 自分で単独で実施「できる」ものについて○印を付けていただきました。それを回収数で割 って「到達度」という形で表現しました。ですから、すべての方が「できる」に○印を付け ていれば、到達度は100という形で考えてみました。 調査の結果は、統合カリキュラム 校の回収率は91.9%、3年課程は88%の回収率でした。  図1ですが、これはいまご説明した「わかる」とか「できる」という課程別の到達度です。 統合課程も3年課程も、知識として「わかる」というのは、いずれも80%を超え、90%に 近い数字ですし、課程の差もありませんでした。しかし、単独で実施「できる」は、統合課 程は54.9%、3年課程は44.9%で、10%の明らかな差が認められました。  次に「できる」に着目して、領域ごとにそれを課程で比較してみました。矢印が付いてい るところが大きく違いましたが、基本的にすべての領域に渡って、統合課程のほうが高い到 達を示しました。矢印が付いているところでいちばん大きな差があったのは、右のほうの安 楽確保です。その次は生体管理、そのあと救命救急、褥瘡管理、そして食事援助の辺りが 10%を超える大きな差があったものです。  次に単独で実施「できる」到達度が8割を超える技術項目をまとめたのが表1、表2です。 表1は3年課程、表2は統合課程です。表1の3年課程は80%以上の学生が「できる」と 答えた項目は6項目でした。統合課程は14項目でした。以前、看護協会が70%の到達度を 示していましたので、70%で見てみますと、3年課程は13項目、統合課程は25項目でし た。技術の項目数で見ると、約2倍統合課程のほうが高い到達でした。  表2に☆印が付いています。これは充実に関する検討会の水準があって、その水準は指導 のもとで「できる」を水準IIということで表現しており、その項目です。その項目の答えと しては単独で実施「できる」と80%以上の者が答えているという項目を含んでいます。  先ほど出た充実に関する検討会が水準Iということで、卒業時には単独で実施「できる」 ことを期待している項目が、全部で34項目ありますが、その項目に絞って見ていこうとす るのがこの表です。結果が下に書いてあり、34項目中、33項目は統合課程のほうが到達度 が高く、中でも上に書いてある表3は10%以上、到達が統合課程に高いという数字のもの を表しています。  ここで内容を少し見てみますと、左のほうに☆印が書いてありますが、この☆印は、例え ば自然な排便を促すための援助、排尿を促すための援助、入眠をリズムを整えていくという 辺りですので、健康な生活に近づけていくような生活支援、保健に近い内容ではないかと思 います。  太陽のマーク風のものですが、緊急事態の対応や一般状態の変化に気づくという辺りは、 アセスメントにつながるような中身ではないかと思いました。この辺りの統合課程の高い到 達を見るときに、私の感想では、統合課程というのが看護師教育における必要性があるのか と思いました。  同時に次に示すのは、水準I以外で単独で実施「できる」課程差が、とても大きい技術項 目ですが、表4に示しており、水準Iではありませんので、指導のもとでできるということ も含んでいる中身です。それも例えば沐浴とか、指導のもとで、バイタルサイン・身体測定 のデータ・症状などから患者の状態をアセスメントできる。これも大きな差がありました。 この辺りの到達は、基礎教育できちんと押さえるべき中身ではないかという思いがしていま す。  ということで「『できる』技術項目の課程差について」は、いまお話しましたので、繰り 返すことは避けますが、「できる」ことを期待する109項目ありますが、2項目だけ3年課 程がわずかに高いものでした。酸素吸入に関するところで「酸素吸入療法を受けている患者 の観察」と「学内演習で酸素ボンベの操作ができる」の2項目については、わずかですが、 3年課程が高い結果でした。あとの考察については、先ほど申し上げましたので、次に行き たいと思います。  「調査のまとめ」です。看護師教育の卒業時の技術到達度ですが、「わかる」という到達 はとても満足のいくものでした。単独で実施「できる」到達は、両課程にもまだ課題が残っ ているように思います。その課程差がとても大きいことと、統合課程の「できる」到達の高 さは、まずは修業年限と教育内容、例えば看護師・保健師の統合の相乗効果が期待できるの かもしれないという手応えはありますが、それを明確にするにはもう少し調査が必要かと思 います。  この調査を基に私が考えていることですが、まず修業年限と教育方法では、3年という修 業年限は学生が単額で実施「できる」という実感を持つには、少し短いのではないかという 気がしました。そして「できる」という実感を少しでも多く持てるようにしていくには、や はり教育の方法にもつながってきますし、年限にもつながってくるのだと思いますが、学内 実習、臨地実習などで体験を増やすこと、それをしっかりと効果的にアセスメント、技術、 知識につなげていく教育方法の検討が必要ではないかと思います。  その次ですが、教育内容について少し強化したいものということで、先ほど来、出ていま すが、健康的に正常な日常生活ができるように援助することが、看護としてとても大事にし たいものだとすれば、看護本来の視点である生活をきちんと理解する。そして保健指導の内 容について、もう少し教育内容を充実する必要があるのではないかと思います。  そしてアセスメントの能力を高めるためには、特に身体的なアセスメントをきちんとしよ うと思ったら、看護のための(解剖生理+病態生理)を強化する。それだけではなく、主体 的な学習活動を引き出す教育方法の検討、同時に単位数の見直しも必要ではないかという印 象を持っています。  今回の調査ではないのですが、普段学生たちを見ていて思うことは、在宅医療・看護をこ れから推進しようとしたときに、いまの学生たちの力として、社会的な視点の学習強化がと ても求められるとし思うのと、併せて看護者としての人間教育の視点ももっと充実させなけ ればいけないと思っています。そして、これからは心のケアもできる能力も、是非大事に育 てたいと思っています。  まだ完成度は低いのですが、それを私なりに「大切にしたいこと」というように図示した のが図3です。看護師基礎教育で大切にしたいものということで、真ん中から少し左に3 つの項目を挙げています。そこに矢印が来るものとして、能力であったり、強化したい中身 が書かれています。太い黒枠になっているのが教育方法につながる検討事項になるのかと思 っています。以上です。 ○小山座長 池西委員からは統合カリキュラムと3年課程を比較しての教育効果について、 特に技術教育を中心にお話いただきました。ただいまの発表について、ご質問等がありまし たらお願いします。 ○羽生田委員 4年課程の統合カリキュラムと3年課程の比較で、調査によって4年と3 年の違いがあるという結論を付けられていますが、回収した学校からすると生徒の数が2 割違うのです。そうするとクラスで回収されただけで単純に見ますと、6校の3年課程は 44、5人、8校の課程は36、7人という数です。ですから、その辺の1クラスの数も教育の 行き届きという意味では、かなり大きな意味があるのではないかと思います。ですから、そ の辺の実習場所での何人のチームで実習を受けているかといったところも、随分影響がある のではないかと思ったものです。もちろん年数的な考察も必要なことだろうと思いますが、 もとの教育の状況自体が少し違うところも考慮に入れないといけないのかと思いました。 ○小山座長 ご意見としてよろしいでしょうか。ほかにありますか。 ○和田委員 貴重な資料ありがとうございました。とてもわかりやすくて、なるほどと理 解しました。いまの羽生田委員の意見と少し似ているかもしれませんが、調査の前提として 教えていただきたいことがあります。1つは統合課程の学生と3年課程の学生の入学時の能 力の差はあるのかどうかです。たぶん同じという前提で調査をされていると思うのですが、 例えば年齢とか、理解能力など、入学時の能力の違いが何か影響を与えてはいないでしょう か。  もう1つは、先ほど実習の人数という話がありましたが、修業年数3年、4年という以外 に、何か他に影響を与えるような要因がありましたら教えていただきたいと思います。 ○池西委員 まず入学時の学生の能力差については、実は私どもが平成19年までは看護師 3年課程で、その後4年制ということで、本校の学生の様子を見る限りでは差はないという 印象を持っています。ただ、全体の調査をしたわけではありませんのでわかりませんが、私 の手応えとしては3年課程、4年課程に入ってくる学生にあまり大きな差はないという印象 を持っているというお答えしかいまはできません。  あと実習のこととか、先ほど羽生田委員も言われたように、確かに到達度に差を与える影 響はたくさんあると思います。私が思ったのは、例えば医療法人を含めて病院付属という言 い方はいまはしないと思います。病院としても密接な関係がある看護学校と、そうではない、 例えば学校法人などに差があるのかと思ったのですが、統合課程のほうは学校法人が多かっ たということがありました。  学生の定員については、統合課程は、いまできている学校は定員80名の学校が多いので すが、この時点ではご指摘のように40名以内の定員です。3年課程は80名のクラスが多か ったものですから、そういう意味ではそこも確かに影響があるかもしれません。今回の調査 はその辺りをしっかり、詳しく調べたものではありませんので、ご指摘についてはそのとお りだろうと思います。 ○山内委員 ただ単に同じ内容を3年間の修業課程と4年間の修業課程でやっているわけ ではなくて、カリキュラムが違うわけですから、いわゆるそれまでの従来的な3年課程と統 合カリキュラム課程ということで、何がいちばん端的にカリキュラムとして違うかも大きな ファクターだと思います。それが同じという前提で3年でやっているか4年でやっているか というと、年限が影響することになるかもしれませんが、カリキュラム自体の根本が違うと 思うので、一言でその違いを表すとしたら、何が統合カリキュラムと普通のカリキュラムの 違いなのでしょうか。 ○池西委員 これも印象で申し訳ないのですが、私の印象としては、看護師3年課程、保 健師6カ月以上ということで、例えば本校の場合でしたら、統合カリキュラムにすることに よって、どこを充実させたかというと、保健師はいま23単位で組んでいますから、増えた のは基礎看護学の3単位と、専門基礎分野の解剖生理・病理の部分です。その辺りを少し厚 くしています。これはまだ統合カリキュラムの15校ですが、そのすべてのカリキュラムの 調査をこれからもう一度確認をしたいと思っていますが、看護師3年プラス6カ月です。プ ラスその6カ月にどういう教育を盛り込むのかが、その学校の特徴として現れていると思い ます。そういう要素も到達を高くしているかと思います。  先ほど申し上げましたように、保健師の教育の中で、例えば沐浴とか、身体計測の能力の 辺りは当然高くなるだろうと思いますので、保健師教育によって高くなったものと、6カ月 の中で各学校が看護技術を含めた到達度を高くしている要素があるのかと思っています。手 応えですみません。 ○山路委員 基本的な話で申し訳ないのですが、4年制大学との違いは、統合課程は助産 師の受験資格の有り無しの違いということになるのですか。基本的にはどう違うのかという ことがよくわかりません。それから、この調査の本質的な目的とは離れて申し訳ないのです が、これだけ4年制大学ができているのだったら、統合課程も学生にとっては実質的には4 年ですから、わかりやすく4年制大学に移行することを考えたほうがという感じもするので すが、統合課程の4年と4年制大学という形にするのとではハードルが高いのですか。その 点を教えてください。 ○池西委員 私たちの中では、まずいちばん大きな違いは、臨地実習時間が大きく違うだ ろうと思っています。取れる資格は助産師の部分が加わる大学教育と、専門学校の統合カリ キュラムはどちらかですので、看護師・保健師の2つですから、そこはもちろん違うのだと 思います。専門学校は資格を取って実践力を付けるという看護師を育てるというところが、 いちばん大きなゴールだと思っていますので、臨地実習には力を入れ、時間数も充実してい るだろうと思っています。  そういう中で看護師を育成する、実践できる人を育てるといった意味からは、専門学校教 育も私は必要ではないかと思っているところはあります。そういう意味では、同じ資格が取 れて、専門学校で頑張って看護師になって続けていただけることが期待できるとすれば、専 門学校の4年制の統合カリキュラムは意味があると考えています。 ○山路委員 わかりました。あえて4年制でなくても良いのかと思ったものですから。 ○池西委員 こういう課程もあっていいと思っているということです。 ○小山座長 いまの山路委員のご質問に対して補足しますと、大学の場合は大学設置基準 に則った施設・設備、図書の数、教員の数を準備しなければなりません。養成所の場合はそ の基準が少なくなりますので、養成所は教員の数などは少ないことになります。 ○山内委員 設置母体が違うので比べることは難しいかもしれませんが、山路委員から出 たところにつながりますが、統合カリキュラムではありませんが、4年で教育しているよう な大学教育などに同じような比較対象するような調査はなさっていないのでしょうか。とい うのは、4年という枠の中で、今度は設置母体の違いが反映するかしないかという話は整理 したほうがいいかとは思いますが、それはどうでしょうか。 ○池西委員 それはしていません。 ○小山座長 ほかにありますか。 ○三浦委員 日本看護学校協議会に池西委員の学校も参加されて、その中の統合学科で調 査してくださったのですが、先生が最後で、今後の基礎教育のあり方ということで図示され ている中に、看護職者としての人間教育が大事だとまとめておられます。3年課程と統合学 科のように4年かけるという中には、私は3年課程にいますが、入学までの経緯の違いはあ ったとしても、高校卒業者が多かった場合、高校を卒業直後の3年間、一方は4年間と年数 の違いによって放っておいても、この1年間の成長の差はすごいかと思います。  3年課程を見ていて、自主的にというか、留年とかいろいろな形で4年間を経ると、大変 吸収力もよくなったり、大人になっているなという印象を受けています。統合カリキュラム のカリキュラムそのものの違いもあるかもしれませんが、人としての成長における4年間の 重要性の辺りはいかがなのでしょうか。 ○池西委員 それは私も思います、手応えとして。ですから、4年という年限というのも1 つ大きいのかと思いますし、その中に教育内容が当然入ってくるのかと思っています。 ○小山座長 池西委員、ありがとうございました。それでは、次の方に移らせていただき ます。3年課程の養成所で教育をされている岸本委員に、3年課程の教育の現状についてご 発言いただきます。 ○岸本委員 お手元に資料を出しておりませんで、大変申し訳ありません。報告させてい ただく内容は、本校の教員20名と、本校を今年卒業して3カ月目を迎えた卒業生、その卒 業生を受け入れている病院の教育師長等に意見を聞いたものです。  現状と課題を3点挙げました。1点目は看護技術に関すること、2点目は対人関係の構築 に関すること、3点目は自己教育力についてです。まず1点目の看護技術の修得については、 卒業生から「臨床現場での基礎技術をもう少し学習しておきたかった。現場に適応するうえ で苦労している。」との声が聞かれます。次に学内で技術を練習していても、臨床現場へ実 習に出ていくと緊張してしまい、その現場の状況に適応しにくく、患者さんへのケアーがス ムースにできない。このような状態が卒業まで続く学生がおります。  このことに関する教育的な関わりの実際としては、看護基礎技術の修得には時間がかかる ため、技術を精選して教育を行っております。臨床の現場では、その患者さんに応わせた援 助ができるように指導していますが、学生の思考が付いてまいりません。またベットサイド での生活の援助や診療に関する患者の支援などについて、臨床現場は制約が多すぎて、体験 をしたり見学をしたりすることがなかなか難しい現状があります。その結果、教員もいろい ろな技術を促せなくなっております。しかし、卒業生から見ると、もっと学習したかったと いう希望もあり、教育する立場では葛藤があります。  2点目の対人関係に関しては、自己表現、自己コントロールに課題があります。このこと は将来、チーム医療のメンバーとして問題が生じる可能性が考えられます。日常生活のなか で挨拶が苦手、臨床の場で疑問や不明なことを指導者に聞いたり、相談することができにく い。またテストの成績が良くても、臨地実習で対人関係が苦しくなり実習に出られなくなる 学生もいます。また自己コントロールができにくく、教員や友人、また指導者に対して、自 分の感情をぶつけしまう学生も時折みられます。反面、現実への対処をしないまま、皆に迷 惑をかけていると自分で悩み、体調を崩す学生もいます。  このことに関し、教育的関わりの実際としては、状況に応じた対処ができるよう、その都 度指導をおこない、教員から学生に挨拶をするなど、学生と教員との関係づくりを日常的に 強化しております。   また、学生が疑問を表現できない場合は個別に対応してフォロー をしております。疑問が表現できにくいのは学生のそれまでのプロセスと現場の受入れの硬 直性にも原因があるのではないかと考えています。  3点目は自分で課題を見つけて学んでゆくという自己教育力を身に付けていくことが挙 げられます。これは専門職として継続して学び続け、専門性を高めていくことができるかと 不安になるところです。  具体的には、忍耐力が不足しており、思考や学習が持続しにくい。すぐに諦めてしまい、 諦めたことをつらいとか、くやしいと感じないように見えます。また疑問に感じたことを自 ら調べるという行動に移せない学生も見られます。社会での経験を積んで入学してくる学生 に比べて、ストレートで入学してくる学生にこの傾向が強いように思います。  教育的関わりの実際としては、学生に対して自己評価を促し、自分自身にフィードバック できるようサポートし、学習課題を具体的に示すなど方向付けをしている現状です。以上で す。 ○小山座長 それでは、ただいまの発表に対して、ご質問、ご意見等がありましたらお願 いします。 ○羽生田委員 以前から看護教育の資質向上検討委員会等々で、いまのような話が出まし たが、いまの問題点は看護教育という問題ではないですよね。ですから、文部科学省で義務 教育から考えていただかないと、いわゆる専門教育という中に入ってから考えなければいけ ないという問題ではないように思っているのです。 ○小山座長 そうではありますが、義務教育が変わってからの学生を受け入れるまでには 10年近くかかりますので、私どもが到達目標を決める時には、このような若者を受け入れ るところから始めざるを得ないということをよく考えて、到達目標をどこにするか、そして 生涯教育にどうつなげていくかを考えなければいけないと思います。今の段階では3年課程 が最も看護基礎教育機関で多いのですが、大変ご苦労されているようです。大学でも似たよ うな部分もありますので、全国的な若者の傾向ということで、そこから教育をどのようにす るかということは、非常に大きな課題であることを踏まえた上で、今後の検討に臨めたらい いと思います。 ○宮崎委員 先ほど対人関係がうまくとれない、あるいは自己表現がうまくいかないとい う話がありました。確かに私どもの学校の学生の中に、教室での授業にはちゃんとついてい くというか、立派な成績を上げるのですが、いざ臨地実習が始まると、何か違和感を感じる というか、こんなはずではなかったということから、学校をやめたいという学生がままあり ます。そのときに折角入学したのだから、何とかなだめたり、すかしたりして卒業まで持っ ていったほうがいいのか、あるいはそういう人間というか、看護学は人間学ですから、対人 関係がうまくとれないというのは、本来そうなのか、あるいは一時的なものなのかわかりま せんが、いずれにしても対人関係がうまくとれない学生たちをどのように指導していくか、 教育していくか悩んでいるところです。私の個人的な考えですが、そういう人は別の職業も あるのではないかとは思っていますが、いかがでしょうか。 ○阿真委員 私が活動で携わっている助産院の先生方とお話をして、明らかに変わってき たことの中に、ちょっと前の世代の30代とか、40代だったら「頑張れ、頑張れ」と言われ るのは結構喜びというか、「頑張れ」と応援されると「頑張ります」という感じだったので すが、この下の世代は頑張れと言われることが、いちばん駄目なのです。  助産院のいちばん上の先生は、助産師さんたちに「あなたの味方だよ」ということだけを 伝えて、頑張れということは一切言わないとおっしゃっていました。とにかく癒して、「あ なたの味方だよ」と言って育てているという話を聞いて、そういうものか、なるほどな、と 思いました。ですから、人間関係が上手ではないから、もう諦めてしまえということも1 つにはあるのですが、移り変わってきていることを認めながら、何とか育てていくことが大 事なのではないかと思います。 ○太田委員 私は介護保険の施設を運営したりしている中で、いわゆる介護系の仕事に就 いている人たちが一念発起というか、ナースになろうということで学校に行く例が結構あり ます。ソーシャルワーカーになる人もいます。先ほどのお話の中で、一旦社会に出てから入 った人と差があるというのは非常に興味がありました。一旦社会に出てからナースを目指す 人たちは、モチベーションが相当違うと思います。ご経験で結構ですが、どのぐらい一旦社 会に出てから戻ってきた人たちがいるのかということと、そういう人たちとストレートで来 た学生たちといろいろな違いがあるだろうと思いますが、どんなところが大きく違うとお感 じなのかをお聞きしたいのです。 ○岸本委員 3年課程のレギュラーに関しては、大体40名のクラスの2割程度入っている と思います。 ○太田委員 2割も入っているのですか。 ○岸本委員 はい、1割のクラスもありますが、2割のクラスもあります。いま言われまし たように、大学を卒業した社会人、ケアワーカーをやっていて看護の仕事に動機づけられて やってくる学生、短大の卒業生といった入学生ですので、非常にモチベーションが高く、目 的が明確であることが大きな要因ではないかと思います。  ですから、積極的にわからないことを問いかけたり、相談をもちかけるという対人関係能 力が高いように思います。また一部の基礎科目履修認定を受けている関係で、専門領域に入 りやすいのかもしれません。 ○太田委員 私が申し上げたいことは、彼らはすでに学卒であることが多くて、もう一度 大学を出るというよりは、とにかく技術や知識が欲しいということで、そういう学校を選ぶ わけですから、そういう学校の存在意義というのはそういうところにも見出せるのではない かと思います。 ○山田委員 先ほどの対人関係の話ですが、私どものほうには医学部の実習生も来るので すが、その中で医学部の臨床実習に出る前の3年生が来ているのです。それはまだ全く技術 的な側面、医療的な臨床の経験がなく、なぜ来ているかという大学の意向があるわけです。 私どもは訪問看護ステーションですが、地域で生活する人や、地域で幅祉・医療の専門職の 人たちがどのような活動をしているかとか、人との関係性をどのようにしているかとか、地 域のネットワークをどのように構築しているかという部分を、まずは自分が体験してみると。 そこから自分が学ぶべきことは何かを考える機会とするということで、あくまでも目標は臨 床能力を高めるとか、地域医療をやるためではなく来るのです。担当教員の先生がおっしゃ るには、「とにかく何でもいいから体験させてください。丁稚奉公でいいですから。患者様 のお宅でご家族が困ると言われたら、玄関で待たせてください。」というぐらい徹底されて いるのです。それによって、やはり人としてどう生活者を見ていくかとか、生活されている かを体験されるという効果があるようなのですが、看護教育の3年課程を見ると、とてもそ のような状況はない。今回の改正カリキュラムもそうですが、以前からのものが来ても、知 識、技術、今回統合という部分も入りましたが、実習に来る学生たちを見ると、1回体験し ただけで緊張の中で体験して、ギューギューの中で来ているという部分での、学びの部分で は深めることが非常に難しいと思うのです。  先ほど、臨床実習での限界があるということで、最近は臨床でも、施設の中でもそうかも しれませんが、在宅でも実習をお受けするのに必ずご家族、ご本人の同意という倫理的な部 分をよく押さえないとできないという部分では、臨床実習の限界が来ているというところも 踏まえた上では、かなりの時間をきちんとかけないと難しいのではないかと感じております。 ○島田課長補佐 先ほど、3年課程でどのぐらい社会人経験のある方がいるかといったご 質問がありましたので、データを紹介します。大学は含みませんが、3年課程の入学者のう ち、大学卒が7%です。短大卒が約4%ですので、これらの方々は大学を卒業して、直接か もわかりませんが、1回別な所を経た方になろうかと思います。高卒が89%という割合に なっております。 ○小山座長 ありがとうございました。議論をこのまま続けていきたいところですが、本 日の主題もありますので、いままでの議論を継続しながら、本日の主題を深めていく方向に 流れを変えたいと思います。  本日は「看護教育で学ぶべき内容」となっておりますが、このことについては資料4の外 側の部分、「高齢化・在宅医療の推進」の部分に看護や医療を取り巻く社会の変化」のとこ ろが要素として入っています。そのように、特に医療現場は急激に変化していますし、安全 対策もいままで以上に重要視されるようになりました。少子化・高齢化が進み、時代の変化 に伴い求められる技術や能力もますます変化するとともに、高度なものを期待されておりま す。いままでの意見や説明等を踏まえて、今後どのような役割が看護師に求められているの か、そのために必要な能力は何かについて検討していきたいと思います。  前回、看護師に求められる能力について資料4に示すようなご意見をいただいております が、前回は第1回で、1人のご発言も時間制限上少なかったと思います。これをさらにどの ように充実していくか、この矢印は生涯に深めていかなければいけない能力ともとれますの で、基礎教育卒業の時点ではどれぐらい身に付いていればいいかなどについてのご意見をい ただければ幸いです。卒業時に求められる能力、つまりそれは看護師教育課程の到達目標で もあります。そのような能力を習得するには、どのような教育内容が必要であるかという議 論につながっていければいいかと思っております。  それでは、どなたからでも結構ですが、ご意見等お願いします。 ○山内委員 この資料4を見たときに、周りの環境変化が広さと深さを進めていく圧力に かかっていると思うのですが、先ほど羽生田委員からもあって、座長もおっしゃったのです が、エントリーレベルが下がっているという要素もある気がするのです。そうすると、一方 的にこのベクトルは深いほうへ、広いほうへと進んでいるだけではなくて、浅さも広がって いるし、狭さも広がっていると思うのです。そのようには書けないと思うのですが、そうい う悩みを抱えているというところへ行かないと、素材は変わっていないのだけれど、求めて いるものだけは一方的に変わっているということになると、それは現実を反映しきれていな いような気がするのです。それをどう書くかは難しいと思いますが。 ○小山座長 そうですね。先ほど、今日の若者は10年前とは違う傾向ということでしたが、 このベースラインまでのことも教育の中に含めざるを得なくなったということは、表には落 としにくいかもしれませんが、私どもは一応全員がそれを心に留めておくことはご了解いた だきたいと思います。 ○山田委員 今後の論点と少しずれるかもしれませんが、私が疑問に思っていることが1 つあります。看護師と地域においては、協働する介護福祉師、介護ヘルパーの方々の教育と 看護教育においてのカリキュラムの違いという部分で、かなりの医学的知識や看護と関わる 知識が、介護福祉の中にもどんどん増えてきていると思うのです。現場では、地域において はそこで非常に協働していっています。  そこで、看護師と介護福祉士たちがうまく協働し、重なり合うことでより良いものと、き ちんと差別化というか、役割分担を持たなくてはいけないものがあるのですが、それは個々 の担当する従事者たちによって非常に考え方が違って、混乱していることがよくあります。 今回の看護師としての教育というところでは、どこまで基礎を身に付けるかというところの さまざまな医学的知識やフィジカルアセスメントといった部分も、他職種の専門職がどのよ うに基礎技術も含めて知識をカリキュラムとして作られているかとか、身に付けることをゴ ールにしているかというところも、もう少し知っておく必要があるのかなと思っているので す。  いちばん現場で看護と介護福祉師の方たちと協働していく中での違いは、一般の方にはご 理解いただけないのですが、その方の状態が非常に危機的なものなのか、どう病状的な生活 の変化がくるかという部分を、心身とも両面アセスメントして、予測して対応していく部分 の能力が非常に求められていますし、介護職の方はある程度一定の病状が安定した方、生活 が安定した方に専門的なケアをするという部分で違いがありますが、一般の方には利用して みないとわからないということもよく言われます。そのようにどこまでという深まったとき に、現在どんどん高学歴化されている介護福祉師の方や、ケアマネージャーの方もさまざま な知識、医療的なものを持ってケアマネジメントをしたり、ターミナルケアから予防的なと ころから、すべてに関してある程度一定の知識を持って看護師と協働するようになってきて いますので、その辺との区別というか、差の部分も少し考えておく必要があるのかなと思っ ています。 ○小山座長 それは提案という形で受け取っていいですか。他職種の教育がどのようなも のであるかという資料を次回揃えるとか、どうしましょうか。事務局からご意見をいただき たいと思います。 ○山田委員 私が揃えてというよりは、どのように考えていったらいいのかなという提案 というか、質問なのですが。 ○小山座長 あと、看護と介護ですね。 ○山田委員 はい。 ○島田委員 導入で介護のほうが出たのだと思うのですが、今日の資料1の「課題と論点」 の1番目について、1行目では国家試験受験資格要件としてということが明言されておりま す。資料4に提示していただいた前回の意見交換の内容を、よくこれだけの軸に整理して表 現していただけたなと思って、感心しながら先ほどから見ているのですが、[1]の学ぶべき内 容は何なのかというところは、いかにもいまの日本の医療水準の中で看護職として動くとき に求められる力、つまりそれがイコール基本として何を求めるのかということだと私は解釈 しました。  その中で、資料4に整理していただいたベクトル図は非常に意見の内容が反映されていま すので、いままで出てきた問題で言うと、ベクトルの真ん中に出ているコミュニケーション 能力自体が、入ってくる学生たちの世代的な問題であるということも明確だと思うのです。 そこだけは少し時間がかかるかもしれないけれど、コアになる部分の受験資格能力として、 何を出すのかが基本だと思います。その基本を何にするのかと考えたときは、前回の会議の ときの参考資料4-3に看護師の技術項目と卒業時の到達を求める項目がリストアップされ ているわけですから、少なくともそれは技術項目と書いてあっても、その技術ができるため の知識と技術を施すための実践力、態度、行動、判断力を含めての能力が受験資格を要する ときの看護師の基本、つまり学ぶべき内容ということに振り返ってくるのではないかと考え るのですが、違っていたらご訂正ください。 ○小山座長 ありがとうございました。山田委員のご発言に戻りますが、介護福祉士と看 護職と重なる部分は非常に多いと思いますが、そこの区別をどうするかという議論をしてい ますと、時間が少し足りないような気がします。今日では、協働しながら働くという時代で すので、いまの島田委員のご発言を伺いながら思ったのは、まず看護師としての国家試験受 験資格にはどのような内容かということを十分踏まえて、それが出来上がったら介護福祉士 と似ているだろうかと、余裕があったら比較してはどうかなと思います。あるいは、各自が ご自分で比較していただければありがたいと思っておりますが、山田委員、よろしいでしょ うか。ご発言の内容は、特に訪問看護ステーションにいらっしゃると、日々そのように感じ ていらっしゃるということはよくわかります。しかし、私どものこの会の目的を達成するの が大事かと思いますので、できるだけ看護師としての国家試験受験資格ということで、議論 をさせていただければと思います。その上で、島田委員のご発言に対していかがでしょうか。 ○岸本委員 技術をどのように考えていくのかという、技術のとらえ方に関して、共通認 識がどこまでいっているのだろうかという思いが少しあります。知識に裏づけられた技術の 精神運動領域と、情意領域というか、人間性と、それらを合わせて技術と考えたとき、その ような視点で技術をどこまで身に付けていくのかが1つ。また、看護実践能力と考えたとき には、プロセスとしての技術を使うその人の観察力、判断力、(フィジカルアセスメントを 含む)、あるいは論理的な思考力、その人の感性などの倫理的な配慮といった少し高次のも のがそこに加わって、看護行為として成り立っていくのだろうと思いますと、そこを順序立 てて組み立てていけばいいのかなと思うのですが。  それから先ほどご発言がありましたが、現在の教育はどちらかというと演繹的な形で進め られており、独立している看護学校は学内の座学は座学で済ませ、実習は臨地実習という形 でないと、実習に入られないということがあり、演繹的なプロセスを踏んでいくように思う のですが、帰納的に現場をいろいろと観て、意味を理解し、そこから問題解決的な学習をし ていくというのも、考える力、あるいは感性を養う方法かなと思います。非常に私見ですが。 ○小山座長 ただいまのご発言、教育方法につながっていくかなと思います。力が付くに は帰納的な部分も無視できなくて、ということですね。 ○和田委員 先ほどの島田委員のご発言を伺って、非常に具体的な方法論としていいなと 思いました。1つご質問なのですが、前回の資料の「看護教育の技術項目と卒業時の到達度」 という資料をいただいているのですが、技術以外のほかの項目の到達度はあるのでしょうか。 例えば、技術項目以外にコミュニケーション項目とか研究項目とか、何かそういったものも あって、いま技術項目だけのものをいただいているのか、これがすべてなのかを教えていた だきたいと思います。 ○小山座長 コミュニケーション能力、あるいはコミュニケーション技術は看護職にとっ て非常に重要ではあるのですが、そこの項目にはそれが脱けております。というのも、新人 看護師の中の技術教育、先ほどのブルーの資料にある技術的側面に含まれている14の側面 は、文部科学省や厚生労働省で看護技術の枠組みとして使われ、全国的によく知られていた 技術の枠組みでしたので、その枠組みを使った到達目標になります。ですので、外側のほう にコミュニケーションとは書いてありますが、ここにはコミュニケーション技術というのは 入っていないのです。だから、今後はコミュニケーションも技術としてその到達目標に付け 加える必要があるかと思っております。 ○和田委員 そうすると、この紙だけを見ていれば卒業時の到達度は理解できる、という 理解でよろしいのでしょうか。 ○小山座長 看護師として求められるのは技術的側面だけではありません。技術を提供す る上で、その人にやっていいのかどうかを判断する能力、あるいは、保健医療福祉のチーム の中のメンバーとして働いていますので、パートナーシップとか人間関係の調整能力、その 他いろいろな能力があります。そこに出しているのは技術的側面でして、14項目の群に分 けた技術的側面の卒業時の能力を出しておりますが、それだけではなく、もっと多くの能力 がありますので、是非ここではそれらの能力の卒業時点をどのぐらいということをご議論い ただければと思っております。 ○菱沼委員 いまの論議は、この参考資料の2の中にいただいたこの1枚のことをおっし ゃっているのですか。それとも、項目のほうですか。 ○小山座長 項目のことです。前回配られたものです。 ○菱沼委員 そうしますと、参考資料に出ています「新人看護職研修到達目標の臨床実践 能力の構造」というのがありますが、この中の2の「技術的側面」を具体化したのがこれで すか。ここから持ってきたということですか。 ○小山座長 そうです。そこからだけではありませんが、それと文部科学省の実践能力の 資料とか、ほかの先行研究等を参考にしてできたものです。 ○菱沼委員 そうしますと、前回の資料の参考資料4-3は、これだけを見て看護師の到達 目標と言ってはいけないということですね。 ○小山座長 そうです。 ○菱沼委員 今日いただいている資料5の「看護師教育の基本的考え方」の中に、看護師 とは何をするものかということで6項目挙げられていますが、これが看護師の基本だと考え てよろしいのでしょうか。 ○小山座長 これは平成21年4月から始まったカリキュラムで、「看護師教育の基本的考 え方」として、特に養成所を中心に全国的にこれが流れているものです。厚生労働省からの 通知として出ているものです。この「基本的考え方」の述語を見ますと、「基礎的な能力を 培う」と、「能力」という表現になっていると思います。 ○菱沼委員 そうしますと、この資料5でいくと、「人間を身体的・精神的・社会的に統合 された存在として幅広く理解する。」というのが看護師だという理解になるわけですね。 ○小山座長 その1項目だけでは看護師ではなく。 ○菱沼委員 この6項目を、これは教育の考え方で「基礎的能力を養う」という表現になっ ておりますが、こういう能力を持った人を看護師と言う、と言っていると理解してよろしい のでしょうか。 ○小山座長 これは平成18年度の検討会のときに目標を見直して、今日的な表現にしたも のですが、その回答でいいでしょうか。看護課長、いまのご質問に対してお答えいただけれ ばと思います。 ○島田課長補佐 いま座長からご説明がありましたように、もしかすると大学での教育で も参考にされているかもしれませんが、この通知を出している趣旨としては、厚生労働省で 指定する養成所でこういった考え方で看護師の教育を行っていただきたいという、基本的な 教育の方向性としてお示ししているものです。菱沼委員がおっしゃったこれらの6項目が、 看護師とは何たるかということの、基礎教育ではこの範囲ということだと思います。もしか すると、先ほどの太陽のような図がありますが、もっとベテランになっていくと当然これ以 上のことが求められることもあろうかと思いますが、基礎教育の範囲としてはこの範囲だと いうことで、先ほど座長がおっしゃいましたように、平成18年度の検討会でこの6項目を 示しています。これは従前より使われているものですが、いまお示ししているものは平成 21年から使っていただいている文言を示しております。ですので、いま養成所ではこれに 則って教育をしているというものを示しております。 ○小山座長 菱沼委員、よろしいですか。何かご意見はありますか。 ○菱沼委員 結構です。 ○太田委員 この表の外側に、高齢化在宅医療の推進とか少子化とか、社会的なバックグ ラウンドが書かれていると思います。医療保険は医師と患者の診療契約に基づいて提供され ますから、医者は患者のほうだけ向いていれば済むわけです。ナースと医者は歴史的にはパ ートナーで、一緒に患者のほうを向いてやってきたわけですが、在宅医療に関しては、介護 保険の領域になってくると、患者を真ん中に置いてみんなでチームで支えるという理念にな って、従来の医師との診療契約という話は時代遅れになってきているわけです。  そうしますと、多職種協働というのが基本になって、特に介護保険ではナースが主役にな るわけです。第1回の意見の中にもそういった表現があるのですが、そうしますと、多職種 協働という「コミュニケーション能力」という言葉はありますが、チームの1人であるとい うことをしっかり教え込まなければいけない。それが比較的ナースな場合は医者のほうを向 いて仕事をして、患者のほうを向いて仕事をするのですが、なかなかほかのコメディカルな ほうを向いて仕事ができないわけです。例えば、薬剤師とコミュニケーションが取れるかと いうと、あまり取れないのです。ですから、多職種協働、チームの一員であるということで、 あまり医者のほうばかり見なくていいのだということを教えなければならない。  また、介護保険というのは人の死と命が、亡くなるところにも触れるチャンスがあるわけ ですから、命に触れるということをどこかでやらなければいけない。それは子どもの誕生と 年寄りの死が大体そうなのですが、生き死に関わる仕事に就こうという人たちが生きるとこ ろも死ぬところも直接知らないままで育っていくことは問題なので、死を教えなければいけ ないと思うのです。助けること、つまりキュアの世界、「キュア(Cure)」というのは命を救 うことですが、それを超えて「ヒール(Heal)」の世界まで伝えることを、上手にここに盛り 込まないといけないのではないかと思います。 ○小山座長 ありがとうございました。ほかに追加、修正等はいかがでしょうか。 ○岡本委員 いまの太田委員のご意見にとても共感を持ちました。最初に池西委員がご発 言された調査結果を聞いて、修業年限が4年間になることが看護の基礎的能力を育むために 非常に効果的なものなのだということを、データとして実感しました。前回の参考資料4-3 の「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度」の項目で調査をされたわけですが、それらの 技術項目について4年間というのは看護師の技術を深める、いま画面に出ている図で言うと 「深さ」を深めるという点で、非常に重要なのではないかと感じました。教育内容のところ で、生活のことや保健的要素を盛り込む必要性をご発言されていましたが、私が教育してい る地域看護学のような領域は、教育内容の中で看護師の能力を「広く」するということに非 常に貢献する学問かなと思っております。  資料5と資料6に看護師教育の「基本的な考え方」ということで、1)から6)までの項目 が出ていますが、5)と6)に当たるところが看護師教育に必要な地域看護に当たる部分だと 思います。また、いちばん後ろに付いている参考資料4、文部科学省の「看護実践能力育成 の充実に向けた大学卒業時の到達目標」の1、3、4といったところが、非常に地域看護に 絡むところだと思います。これらの枠組みに入る具体的な内容として、全国保健師教育機関 協議会で調査した結果等を基に考えて、私が必要だと思う看護師教育における地域看護学の 内容は、主要な概念を理解すること、関連する社会資源の種類や仕組み、主要な活動方法の 概要を幅広く理解する、知識を獲得することだと思います。ヒューマンケアの基本となる対 象の理解という点では、地域社会で生活を営む人々、つまり行政区や職場・学校などさまざ まな場で、さまざまなライフサイクル、さまざまな健康レベルにある人々について、個人だ けでなくその家族を単位として理解を深める、理解を広くする必要があると思います。  特定の健康課題を持つ人への看護実践、看護計画や看護の展開能力という点では、地域看 護では特に予防の視点ということで、先ほどの資料4にも「保健の分野・予防的視点」とい うことで出ておりましたが、特定された医療ニーズを持つ人が向こうからやってくる施設看 護とは違い、健康な個人・家族のヘルスケアに関する問題に着目して、相談や健診によるス クリーニングを通して特定された個人・家族の健康の保持・増進、疾病や健康障害の予防に 向けたさまざまな保健事業や活動、地域看護職の役割といったものについて、概要を知って おくことが非常に重要だと思います。  太田委員もおっしゃいましたが、看護職チーム、保健医療福祉チームの中での協働・連携 という点では、ヘルスケア提供の組織の種類や職種の種類、ヘルスケア提供組織との連携、 特に医療との連携・協働を幅広く知っておく、ヘルスケアチームの一員としての役割を理解 しておくことが非常に重要だと考えます。 ○中山委員 違う視点になるのですが、今日の皆さんの意見と検討課題と論点をずっと考 えてきて、1つ大きな問題としては、私も国家試験のいろいろなことに関わってきたのです が、いま看護学校は、大学もそうですが、社会的なこともあって国家試験に受かることをも のすごく重要視し、そのために先生たちは必死になって努力している状況があると思います。 国家試験の合格率は、大体90%ぐらいですが、その国家試験に受かった学生、卒業生を現 場に出すと、現場では使いものにならないと言われる。この現象は何なのだろうかというこ とを考えなければいけないと思うのです。  国家試験に受かるということは、現場に出していいということです。でも、卒業生を受け 取る側がそれでは不十分だと言うということは、一体基礎教育とは何なのだろうかという疑 問が湧いてきます。ですから、基礎教育はいろいろなことが必要だと言われていますが、も っと小さくていいのではないかと思うわけです。今日の検討課題の中にありますように、教 育年限にとらわれないということを考えれば、基礎教育を小さくして、現場に出す前の中間 みたいな教育をもう少し考える必要があるのではないかと思います。基礎教育の小さい部分 は何かというと、知識のレベルではないと思うのです。いまコミュニケーション能力とかい ろいろなものが足りないと言われていますが、必ずしも看護の現場だけでやらなくても習得 できる能力が相当あると思うのです。基本的に1人の医療職として育つために必要な能力を どういう形で育成するのかの検討が、看護教育の中では足りないのかなと思います。あまり にも社会的に要請される知識をどんどん増やしていったがために、本当に付けなければいけ ない能力の教育が失われてきている感じがあるように思います。  そういう意味で、知識面では、私などいま国家試験を受けたら絶対に受からないというぐ らい幅広くなっているわけですが、学生たちはそれに受かるわけです。でも、現場に出たら 私のコミュニケーション能力のほうが高くて、新人・卒業生のほうが使えないと思うのです。 それは何なのかという問題をもう一度見直素必要があります。このままでこういうものが要 る、ああいうものが要ると考えて組み立てていたら、4年でも5年でも6年でもどこまで行 っても、国家試験に受かって現場に出しても、またそれは使えない、使えないという、この 悪循環になるのではないかと考えながら皆さんの意見を聞いていました。もう一度看護の基 礎教育の中で学ばなければならないことは何なのか、現場に出るまでの、あまり中間地点み たいな形にすると医学教育みたいな感じもあるので嬉しくはないのですが、何かもう少しつ なぐ教育みたいなものを、これを研修制度でやるのか、3年の年限をさらに延ばしてやるの か、国家試験の資格を持ってからやるのか、資格を持つ前にやるのかという議論になると思 うのですが、現場に出るためのつなぎ教育と、コアとなる、看護職になる前に医療職として 身に付けなければならない能力の問題を整理していったほうがいいかなという感じがしま した。うまく言えないのですが、聞いていてそんな感じがしましたので、発言させていただ きました。 ○小山座長 ありがとうございました。私の意見を少し言ってよろしいでしょうか。  私は、いま中山委員がおっしゃったことは非常に大事なことを提示されていると思います。 私は座長として、国家試験受験資格としての内容、また能力ということを言ってはいるので すが、実際の国家試験受験は紙上で行われています。いわゆる教育内容を重視して、知識の 国家試験を受けます。学生たちは、最終学年の4月ぐらいから国家試験対策として国家試験 問題集を一生懸命解くという現状があります。中山委員が言われたことは、まさにここでの 議論を能力だの到達目標だの教育方法だの一生懸命考えて提言を出したとしても何かを抜 本的に変えないと、変わらないかもしれないというメッセージかと思いました。  中山委員は、中間の段階での評価という意見もおっしゃっていますが、私の個人的な意見 としては、評価の方法は重要ではないかと思います。安全な看護師として出すには、看護師 の資格には、知識だけではないいろいろな能力があるとすると、何をどう変えればいいか、 教育方法や内容だけではなく、1つは評価の方法、社会に安全な看護師を出すための評価の 方法も重要です。基礎教育ではどのようなことに責任をもつのか、国家試験で技術の評価は 大変難しいと聞きましたので、そこの担保をどのようにしていくのかということも検討しな ければならないと思います。  つい個人の意見を言ってしまいましたが、それは私が申し上げていた「卒業時の到達目標 は?」とか「能力は?」ということに関して、机上の空論ではなく、実質的に少し卒業生が 変わるようにするにはどうすれば良いか、ということを付け加えるために発言させていただ きました。中山委員のご意見もふまえて皆様方のご意見をいただければと思います。 ○羽生田委員 卒業してすぐに臨床の現場では役に立たないというか、いわゆる臨床現場 と教育との乖離というのはずっと言われていますが、いまの実習では侵襲が少しでもある実 習は全くできない。これは医師、看護師に限らず、医療職種も全部そうです。それは国の法 律がどうにかなる以外に、実習はいま以上は学生のうちにできないわけですから、学生のう ちにどれだけ侵襲のない実習を行うか、侵襲が加わる実習をどこまで別なモデル人形等を使 ってできるかというところだろうと思うのです。  もう1つ、この到達目標はかなり細かく、よくできているなと思っているのですが、実際 の現場でこれがどの程度活用されているか、要するに教える側の評価、自己評価、臨床現場 での評価が十分活かされていないような気がするのです。ですから、これをどうやったら活 かせるかという方法を考えるだけでも、教育効果は随分上がるのではないかと。一つひとつ の目標では、どういう方法だったらこの到達度に近づけられるのか、具体的な方法・内容等 を考えて、それをどう実践に結びつけていくか、どう評価していくかを検討することが、い まの学校教育の中でのレベルアップにつながるのではないかと思うのです。これができたの は去年でしたか、一昨年でしたか、かなり細かくよくできていると思うのですが、実際活か されていないのだろうと感じております。 ○小山座長 もう一度資料5を見ますと、3)、4)、5)は「基礎的能力を養う」という述語 になっております。「看護基礎教育での基礎的能力」とは何か?です。先ほど中山委員がお っしゃいました。私たちは欲張りすぎているのではないかと。もう少し小さくして、医療職 として育ち続けるための「基礎的能力」を、もう少ししっかりと育ててはどうかというメッ セージを私は受け取りました。この目標も「基礎的能力を」と言ってはいるのですが、これ を具体化するためには、今日たくさんの内容を必要としているわけです。それを、私どもが どう整理できるかということだと思うのです。基礎とはどこまでを基礎というのかというこ とですね。 ○島田委員 本当に大事な所の論点に入っていると思うのですが、いまの話をつなげれば、 基礎的能力で求められていることは、前回の参考資料4-3に出た技術項目の「卒業時の到達 度」ではレベルを4段階に分けているわけです。例えば技術の要素ですが、そのレベルの2 が「指導者の下でできる」ということですね。大学の基準協会が平成16年度辺りに出して きた指針にも、卒業時には半分自立したレベルでの能力を習得して出るということが謳って あったかと思うのです。ですから、私は基本的能力をそこにすると解釈しているのが1点で す。  もう1つ、先ほど中山委員から言われたところが、非常に分岐点になる所だろうと思いな がら聞いていました。卒業したときに使えないナースが多いので、先ほどのベクトルの要素 的なものが広がりすぎていいのだろうかという問いかけでもありました。できない卒業生が 多いからレベルや範囲を縮めていいのかということに、若干疑問を感じてしまうわけです。 つまり、私たちは高齢化の社会で医療提供が多様化されていて、主体である患者様やクライ アントの人たちの権限を尊重するという視点に立った看護師が求められると思うのです。こ の社会が求める看護師への期待像をどれだけ満たすような能力を持たせるかが、まず前提に あるべきではないかと思うのです。30〜40年前に求められる看護像とは非常に違ってきて おりますので、いまの時代に必要な看護師の能力を前提にした上で、習得すべき基本的能力 を詰めないと、できない学生が多いからこれだけ多様化した要素を盛り込むと広がりすぎる というというご意見は、非常に危いと懸念するわけです。でも、大事なことをおっしゃって いるので、確認の意味で非常に大事だと思います。  それを解決する方法論として、例えばつなぎ教育のようなことも代替案としては出てくる のでしょうけれど、つなぎ案の基盤整備を先に考えるのか、基本的に卒業時の能力を検討す るのか、私の中ではすぐに断言できませんが、小山座長がおっしゃったそれをきちんと整理 するときの方法論としては、どういう評価方法をどの時期にどの段階で入れていって卒業さ せられるのかということも、教育機関の責任だと思います。私はあえて卒業していく学生た ちが能力が低い、だからこれだけの内容は入れなくても、あるいは広がりすぎなくてもいい のではないかではなくて、人間を対象とした看護師の仕事ができるためには、これだけ多面 的な能力の基本は必要ではないでしょうかと申し上げたいです。 ○中山委員 そのことの補足になるかと思うのですが、いま新卒はいちばん苦しいときで す。卒業生は大学にもときどき顔を出しに来るのですが、やはり大学で学んでおけばよかっ たと、知識が足りないと言います。ですから、プリセプターに言われて、勤務が終わってか ら何時間も何時間も学ぶわけです。それを考えると、就職をしてからのほうが何の知識がほ しくてどうだったかということが現実的にあるわけですから、いちばん学べるときです。そ れが勤務も非常に厳しい、また学ばなければいけないということで疲弊していくのを見ると、 この時期に本当に学びたいものを十分学べるだけの時間をあげれば、どんなにいいだろうと 素朴に思うのです。そのような形のシステムを考えれば、いま言った基礎教育でやるのは、 知識がほしかったときにどうやって学べばいいのかを十分に教育しておけば、現場に出たと きに時間さえあれば自分で学んでいけるのかなと思います。ですから、私は基礎教育はそん なに広がらなくても、学び方がきちんと押さえられていればいいのではないかという感想を 持っているのです。 ○阿真委員 中山委員のご意見に激しく賛同しているのですが、一般の社会で学生さんが 普通に入ってきて、すぐに即戦力になるかというと、全くならないのです。こんなたくさん の能力を求めるかというと、もちろん求めなくて、最初は手紙の書き方から何から一から指 導して、ゆっくりやって、3カ月とか4カ月とか経ってくると大体できるようになるのです。 当たり前に、どの子が入ってきても最初から全部ができるなどということは全くなくて、そ の期間は見習い期間の形で、みんなでサポートしながら育てていくのが当たり前なのに、看 護職でいきなり能力が低いみたいな言われ方で、入ってきて、できないのが当たり前ではな くて、できて当たり前みたいな感じで、それは一般の私にとっては違和感があります。しか も、その研修の期間がなくていきなりハードな仕事をしているというのは、とてもかわいそ うだなと思うのです。  基礎教育で全部やってしまえというのも絶対に無理で、そこに就いてからある程度しっか り学べる。いろいろな疑問が出てきて、疑問が出てきて答えてくれる人がいて、そこでコミ ュニケーションも取れてくるし、そこですごく育つ。大学生で洋服から注意したい、靴下か ら注意したいような子が、3、4カ月してちゃんと社会人として育っていくのを見ても、別 にその子ができないとかできるとかの話ではなくて、それは本当に必要な期間なので、看護 の人だけ入ってすぐにいきなり全部求められるというのは、えらい高いハードルだと思うの ですが、そこをもう少し優しく見守ってあげる期間がつなぎ教育なり何なりであれば、決し てバンバンやめていくことはないのではないかと、私は一素人の意見として思うのですが、 いかがでしょうか。 ○山内委員 いまの意見と似ているのですが、前回も発言したことで、それをどこがやる かということが、両面がお互い見合っているところが多少あるような気がします。  私は普通運転免許を持っているのですが、免許とは何だろうと考えてみたいと思います。 私が免許を取ったときに隣に乗った家族はおそるおそる乗ってくれたのですが、少なくとも 免許をもらったからには、赤いランプがついていたら止まることは知っていたのです。だか ら、免許と技能・コンピテンシー(Competency)というレベルをイコールにしてしまうと、 そこの溝をどこが埋めるかという話となってしまいます。免許というのは、少なくともとん でもないことをしない人だということについての社会に対する最低保証書みたいな感じか なと思います。車の免許で言うと、免許を取るためにまず教習所があって、仮免があって、 路上に出て、場合によってはオプションで高速実習をするわけです。それだけやってきても、 大型免許を取ったからといって、社会に出てからどこにも練習する所がないと、この前の事 故みたいに高速道路で転倒したりするわけです。  そういうものは必ず見合ったコンピテンシーの教育の順番があると思うのですが、医師の 教育だと、例えば臨床実習に出る前に共用試験というハードルを1つ作ったということで、 ある意味では教習所と仮免の間みたいなものがあるような気がします。路上に出る辺りが免 許だとしても、研修制度を作ったということで、免許だけでは完全無欠ではないという仕組 みを置いたということです。それに比べて私たちはハードルをどこに置くのか、本当に路上 が終わったところをハードルとするつもりなのか、それとも路上に出るところをハードルに するのか、仮免辺りをハードルにするのかで議論が変わってくるのです。スタンダライズ、 標準化するにしても、例えば到達目標でS字カーブを曲がることができるという到達目標 があっても、どういうS字カーブかという具体的なものがなければ実効性が危ういかと思 われます。私たちでいうなれば、こういうケアができることという到達目標があっても、そ のケアをどう想定するかによって話が変わってくるのと同じと思うのです。スタンダライズ、 すなわち標準化できるところは、自動車学校だったら教習所ぐらいまでで、たぶん北海道で 路上に出る人と東京都で路上に出る人とは同じ路上練習はできないと思うのです。ですから、 この辺りは評価との絡みもありますが、どこが標準化して評価できるかというところを議論 していかないと、線引きをいろいろなところに仮定し、あるいは1つの線引きをいろいろな ところに使っているといつまでも議論がまとまらないような気がします。 ○小山座長 時間制限がありますので、手短にお願いします。 ○岡本委員 先ほど中山委員が、基礎教育では小さい実践力を身につけることが必要と言 われたことについて重要と考えます。私どもの調査でも、看護師教育に必須の内容は何だろ うということを聞いたものがあります。これは十分な教育の期間をもって実践力を身に付け て出たほうがいいだろうという項目と考えられるのですが、ここでは、いくつか項目がある 中で、必須という回答が100%であった項目群を3つほど挙げますと、それは「看護の基本 技術の的確な実施」と、「終末期にある人への援助」、「治療過程・回復過程にある人への援 助」であり、非常に多くの人がこれはきちんと身に付けて出たほうがいいと思っていること がわかりました。細かい項目で言うと、「生命の危機状態の判断と救命処置」という項目の パーセンテージが高かったので、そういった内容が十分時間をかけて実践力まで育んで出な ければいけない部分だと考えます。 ○小山座長 ありがとうございました。ちょうど大詰めになってきて、これであと30分あ るとまとまるかと思うのですが、残念ながら時間になってしまいました。本日は大変活発な ご意見をいただきましてありがとうございました。  免許をどの時点で出すかというのは、現場に行った後の継続教育・新人教育がどのように なるか、それが一部のできる病院だけではなく、すべての病院での教育にならないといけな いと思います。継続教育・新人教育がどうなるかと非常に密接な関係があると思います。山 内委員から出た運転免許の例えは、とてもわかりやすかったと思います。どの時点で免許を 出すかについては、次回もう少しご意見をいただいて、ではそこだったらどうあれば良いか ということで話し合っていければと思います。  それでは、次回以降の進め方について事務局から説明をお願いします。 ○島田課長補佐 次回は7月23日(木)17時からの開催を予定しております。場所は厚 生労働省6回の第8会議室ですが、正式なご案内は別途送らせていただきますので、よろし くお願いします。  事務的なご案内ですが、8月、9月の先生方の日程調整をお願いしておりますので、事務 局のほうにご回答くださいますよう、よろしくお願いいたします。以上です。 ○小山座長 それでは、これで「第2回看護教育の内容と方法に関する検討会」を閉会い たします。お忙しいところご出席いただきまして、また活発なご議論をありがとうございま した。 照会先 厚生労働省看護課 島田(4167) 平賀(2595)