09/05/29 平成21年5月29日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所    平成21年5月29日(金) 16:00〜   厚生労働省専用第18〜20会議室 2.出席委員(15名)五十音順    飯 沼 雅 朗、○内 海 英 雄、 大 石 了 三、 加 藤 総 夫、    佐 藤 田鶴子、 清 水 秀 行、 手 島 玲 子、○永 井 良 三、    野 田 光 彦、 林   邦 彦、 檜 山 行 雄、 古 川   漸、   ◎松 井   陽、 本 橋 伸 高、 山 本 一 彦 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(4名)    千 葉   勉、 成 冨 博 章、 西 澤   理、 村 田 美 穂 3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官)、    中 垣 俊 郎(審査管理課長)、 森   和 彦(安全対策課長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    松 田   勉((独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、    成 田 昌 稔((独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)、    赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役) 他 4.備  考    本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻でございますので「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催 させていただきたいと存じます。委員の先生方におかれましては、お忙しい中御参集いた だきまして、誠にありがとうございます。現在のところ、当部会委員19名のうち13名の 委員の御出席をいただいております。飯沼委員からは若干遅れるとの御連絡をいただいて おります。永井委員からは出席との御連絡をいただいておりますが、恐らく何かの事情で 遅れられているのだろうと思います。いずれにいたしましても定足数に達しておりますの で、この会議が成立していることを御報告申し上げます。なお、本日は千葉委員、成冨委 員、西澤委員、村田委員から欠席との御連絡をいただいております。それでは、部会長の 松井先生、議事進行をよろしくお願い申し上げます。 ○松井部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と、審議事項に 関する競合品目・競合企業リストについて報告してください。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委 員の名簿を配付しております。議事次第に記載されております資料1〜11まではあらか じめお送りしております。そのほか、本日の配付資料としまして資料12「審議品目の薬 事分科会における取扱い等の案」、資料13「専門委員リスト」、資料14「競合品目・競 合企業リスト」を配付しております。また、既に配付させていただいた資料3-1のうち、 医薬品レメロン錠15rの添付文書(案)につきまして一部誤記がありましたことから、資 料3-3として本日配付しております。御確認をよろしくお願いします。  続きまして、資料14、本日の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」につい て御報告いたします。各品目の競合品目選定理由につきまして、資料14を御覧ください。 まず、審議事項議題1、カデュエットにつきましては1ページです。  本剤は高血圧症等の効能を持つアムロジピンと、高コレステロール血症等の効能を持つ アトルバスタチンの配合剤であり、まず、一剤目に関しまして、現在承認されているジヒ ドロピリジン系カルシウム拮抗薬のうち、「高血圧症」及び「狭心症」の適応を含み、1 日1回投与で売上げが高い薬剤として、上位3品目のうち、最も売上げが高いノルバスク 錠については、この申請者の品目でありますので除きまして、アムロジン、メバロチンの 2剤を競合品目として指定したとのことです。  また、もう一方の薬に関しては、現在承認されているHMG-CoA還元酵素阻害剤のうち、 「高コレステロール血症」及び「家族性高コレステロール血症治療薬」の適応を含み、1 日1回投与で最も売上げが高い医薬品ということですが、最も高いものはリピトールです が、こちらは申請者の共同販売品目ですので除外し、2番目であるメバロチンを選定した とのことです。  続きまして、2ページを御覧ください。審議議題2、ルミガン点眼液でございます。本 剤は「緑内障、高眼圧症」を効能とする医薬品です。本剤と同一適応を有し、かつ本剤と 同様にぶどう膜強膜流出経路における房水排出抵抗の低下により眼圧を下降させる薬剤 として、プロスタグランジン製剤のキサラタン、トラバタンズ、タプロス、レスキュラが 販売されております。それらのうち、レスキュラにつきましては他の3剤と化学構造が異 なり、また用法も異なることから、そちらを除いた3剤、キサラタン、トラバタンズ、タ プロスを競合品目として選定したとのことです。  続きまして3ページを御覧ください。議題3、レメロン錠及びリフレックス錠でござい ます。本剤の効能・効果は「うつ病・うつ状態」でありまして、ノルアドレナリン作動性 及び特異的セロトニン作動性抗うつ薬というカテゴリーに分類される抗うつ薬です。現 在、うつ病の標準的治療薬として、SSRI及びSNRIなどが使用されており、これら と同様に広く臨床使用されると予想しているところです。  これに基づきまして、既承認の抗うつ剤につきまして売上げ高上位の品目としてパキシ ル、ジェイゾロフト、ルボックス、デプロメール、トレドミンがあります。これらのうち、 デプロメール及びルボックスにつきましては同一有効成分を含有する抗うつ剤であり、申 請者である明治製菓株式会社が共同開発した品目であることから、それらを除きまして、 さらに、LY248686、一般名デュロキセチンについては、うつを適応症として承認申請され ているとのことです。海外でも広く用いられていることから、こちらにつきましても競合 するということで、こちらにある3品目を競合品目として挙げたということです。  続きまして、5ページを御覧ください。議題4、レミケードでございます。このレミケ ードと同様の効能を持つ生物学的製剤として挙げられているものがエンブレル、ヒュミ ラ、アクテムラであるということで、この3品目を競合品目として挙げたとのことです。  続きまして、議題5、ラジレス錠でございます。この申請品目につきましては、レニン -アンジオテンシン系サイクルの起点に位置する酵素のレニンを直接的に阻害する医薬品 です。本剤と同様のレニン-アンジオテンシン系に作用するものについて調査を行ったと いうことです。1品目のニューロタンにつきましては本申請品目の臨床試験において対照 薬として使用したことから、競合品目として選定をしたとのことです。また、競合品目の 2番目、3番目のブロプレス及びオルメテックについても、このレニン-アンジオテンシ ン系サイクルに作用する薬剤であるということから、競合品目として選定したとのことで す。  続きまして、審議議題6、ゴナールエフでございます。7ページを御覧ください。本剤 は視床下部-下垂体機能障害又は多嚢胞性卵巣症候群に伴う無排卵及び希発排卵における 排卵誘発を申請効能・効果とした遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン医薬品です。現在、この 品目と同様の効能・効果を有する品目には、尿より抽出した下垂体性性腺刺激ホルモン製 剤、また、遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン製剤があります。この中から3品目を挙げる理 由として、まず1品目については、同様の申請効能・効果を有し、遺伝子組換え卵胞刺激 ホルモンであることから、フォリスチム注を競合品目1として挙げ、残りの2品目につい ては同様の排卵誘発を適応とした下垂体性性腺刺激ホルモンの医薬品のうち、販売高が最 も大きいものとその2番目のものを挙げたとのことです。以上でございます。 ○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見がありますか。御審議をお願いしま す。よろしいですか。それでは、本部会の審議事項に関する「競合品目・競合企業リスト」 については委員の皆様の御了解を得たものといたします。事務局、委員からの申出状況に ついて報告してください。 ○事務局 各委員からの申出状況につきましては次のとおりです。議題1「カデュエット」 については退室委員は永井委員、議決には参加しない委員は大石委員、野田委員、本橋委 員、山本委員です。議題2「ルミガン」については、退室委員はいらっしゃいません。議 決には参加しない委員は永井委員、本橋委員、山本委員です。議題3「レメロン他」につ いては、退室委員はいらっしゃいません。また、議決には参加しない委員については、永 井委員、古川委員、本橋委員、山本委員です。議題4「レミケード」については、退室委 員は大石委員、山本委員。議決には参加しない委員は内海委員、清水委員、永井委員、野 田委員、林委員です。議題5「ラジレス」については、退室委員は大石委員、永井委員で す。議決には参加しない委員は加藤委員、野田委員、林委員、古川委員、山本委員です。 議題6「ゴナールエフ」については、退室委員、議決には参加しない委員ともにいらっし ゃいません。以上でございます。 ○松井部会長 それでは、議題1に入ります。ただ今の時点で永井委員は御出席いただい ておりませんが、仮に審議中に御来場なさった場合にも別室で御待機いただくことといた します。議題1につきまして、事務局から概要を御説明ください。 ○事務局 それでは、議題1、医薬品カデュエット配合錠1番、同配合錠2番、同配合錠 3番、同配合錠4番につきまして資料1に基づき説明いたします。4月の医薬品第一部会 で本品目が審議された際、医療用配合剤の取扱いや販売名に関する通知の資料を次回用意 して説明することとしていましたので、これらの資料を資料1として作成しております。  まず、「医療用配合剤の取扱い」ですが、平成17年に医療用配合剤として認められる 事由について改正されております。1ページの平成17年3月30日付けの課長通知がこの 通知です。どのように改正されたかは次のページを御覧ください。次の2ページでは改正 部分を下線で示しております。当時の欧米における配合剤の承認開発状況等を踏まえて取 扱いを改正し、「B患者の利便性の向上に明らかに資するもの」、「Cその他配合意義に 科学的合理性が認められるもの」の部分を明確にしたところです。  次に3ページです。今回、通知に示した医療用配合剤として認められる事由について、 カデュエットの審査ではどのように評価されたか、審査報告書の関係部分を項目ごとにま とめております。構成としましては、「申請者の主張」、「審査報告(1)における機構の 見解」、「審査報告(2)における専門委員の意見」、というものをそれぞれ審査報告書か らそのまま引用しております。審査報告書の引用文は該当ページ、行を記載しております。  まず、「『B患者の利便性の向上に明らかに資するもの』に対する該当性について」で す。3ページの1の(1)「申請者の主張」では、配合剤にすることで服用薬剤数が1剤少 なくなることは患者負担軽減という意味で有益としております。機構の見解としては、4 ページの上の方にあるように、高血圧症と高コレステロール血症を合併する患者の使用薬 剤数が半数以上は6剤以上となっておりますので、1錠少なくなることで利便性が明らか に向上するとまでは評価できないとしております。  専門委員の意見としてはその下の(3)にあります。服用錠数が多い患者であっても、1 錠でも少なくしたいという患者心理が存在するという意見。あるいは、服薬コンプライア ンスから、少しでも服薬が容易となる環境を提供することは重要であること等から、配合 剤としての選択肢を排除しなくてもよいという意見がありました。一方、本剤を含む配合 剤や本剤のような複数規格が存在する配合剤が、臨床現場に出た場合の医療事故の発生原 因になりかねない。あるいは、患者によってはアムロジピンとアトルバスタチンを、それ ぞれ異なる時間帯に服用して安定している患者も想定されることから、必ずしもすべての 患者の利便性に資するとは限らないというような意見もありました。  次に、4ページの下の方の2「『Cその他配合意義に科学的合理性が認められるもの』 に対する該当性」の(1)です。申請者から、海外のASCOT試験ではアムロジピン及びアト ルバスタチン併用群では、プラセボ群と比較して心血管疾患の発現割合に有意な減少が認 められたことが説明されております。また、5ページの一番上の(2)ですが、機構の見解 としては、ASCOT試験は海外の試験ではあるものの、アムロジピンとアトルバスタチンの 併用が高血圧治療及び高コレステロール血症治療のエンドポイントである脳・心血管疾患 の発症抑制に対して、各単剤を上回る有効性を示した意義というのは認められ、安全性も 適正使用下では特段の問題はないと考えることから、アムロジピンとアトルバスタチンを 配合することは一定の科学的合理性があると判断しております。  専門委員の意見としてはその下の(3)にありますが、ASCOT試験を踏まえ、本配合は一 定の科学的合理性が認められるとした機構の見解は多くの専門委員から支持されており ます。また、それ以降、4ページの専門委員の意見と同じ引用箇所なので省略しておりま すが、ASCOT試験では併用の有効性を示唆するものであるが、配合剤とする根拠とは言い 難いという意見も出されておりました。  このような意見を踏まえて、機構の結論としては、5ページの3にありますが、両有効 成分の併用は一定の科学的合理性が認められ、本剤のリスクを極力抑える方策を講じ、医 療現場に適切な情報提供が行われるのであれば、本配合は妥当であるということを最終的 な判断としております。 ○事務局 続きまして「医療用配合剤の販売名について」説明いたします。資料の6ペー ジを御覧ください。前回の部会におきまして、本剤の販売名について御指摘いただいたの で、それについてまとめたものが6ページです。第1項にありますように、医療用配合剤 の販売名の付け方につきましては、配合剤であることに気が付かない、あるいは誤って重 複あるいは過量に投与されることを防止するという目的で、平成20年の9月に通知が出 ております。7ページ以降にその通知が示されているのですが、今回の件についてまとめ たものがこの6ページになりますので、6ページに基づいて説明いたします。  第2項の2)ですが、販売名の命名につきまして、原則として医療用配合剤であること が分かるように、錠剤であれば「配合錠」というような販売名にするとされております。 本剤はそういう理由で「配合錠」という名前が付けられております。3)ですが、配合剤 であって、配合成分の種類の異なる品目又は配合成分の配合量が異なる品目について、 「同一の販売名を使用する場合には、適宜接尾字等を付し、それぞれが明確に判別でき、 誤用のおそれのないものとすること」と定められております。具体的には例として、「販 売名」+「剤型」+「接尾字等」というような販売名にするとされております。4)ですが、 配合比又は配合量が異なる製品につきまして、本剤がこれに相当するわけですが、「効能 ・効果も同一であれば、販売名又は販売名の主要部分が一致していても良い」とされてお ります。その場合、「配合比率等の組み合わせを表す記号等で表記すること」とされてお ります。  その接尾字の考え方なのですが、このように、本剤のように同一ブランドで複数の規格 が存在する配合剤の識別のためには、「甲」「乙」「丙」といった記号等による記載をこ の通知では求めておりまして、「接尾字等に意味を持たせることや配合比率の記載を求め ていない」ということになっております。ですから、具体的には「配合錠A5/B12.5」 というように、配合されている成分の含量等を示唆するような販売名だと販売名自体が長 くなって、オーダリングシステム上不都合な場合がある。あるいは、長い名称の中で、わ ずかな数字の違いで名称を区別するのは非常に識別性が悪くなり、かえって取り間違いの リスクが高まるということで、「接尾字等は最小限の識別性を与えるよう単純化すべきで ある」とされております。  そのような観点から、第4項にあるように、本剤につきましては接尾字に、「1番」「2 番」「3番」「4番」というような接尾字を付して、その配合成分の名称や含量について はその販売名の中で表現するのではなく、容器や包装などを工夫して、医師・薬剤師への 情報伝達の徹底を図るということを考えています。今現在、製造販売業者であるファイザ ーの方で、そういった識別が十分につくような容器・包装にするとともに、具体的に情報 提供をすることを検討しているとの報告を受けております。説明は以上でございます。 ○松井部会長 前回からの持ち越しの議題ですが、三つに分けて議論したいと思います。 最初に、この間、私も含めてはっきりしなかった平成17年3月の医療用配合剤として認 められる事由についてという点について、何か御質疑があればお願いいたします。 ○野田委員 前回の委員会のときから、配合剤に関するこれまでの経緯が明示的に提示さ れた上で審議されることが重要であると考えておりましたが、審査管理課長の御高配によ りそれが実現したことに深謝いたします。拝見した配合剤の条件が、少なくとも、必要条 件であることは確認させていただきました。ただし、これは単剤に対する要件と考えるべ きではないかと思います。これが配合剤全般についての見通しを与えるものかどうかとい うことについて考えさせていただくと、幾つか問題点があると思うのです。  最初に、糖尿病患者などでは複数の疾患、例えば糖尿病に加えて高血圧・脂質異常症を 合併する患者が非常に多いのです。これを、私は以前から、糖尿病は三種競技であると申 しておりますが、この委員会に参加して以来、これまで審議されてきた配合剤は一つの疾 患、すなわち、これまでは血圧のみをターゲットにした配合剤でしたが、そのような状況 下で、今回の異なる疾患領域、すなわち高血圧と脂質異常症にまたがる配合剤が現在審議 に供されているわけであります。  医療安全のためには何事もシンプルであることこそが重要であると私は考えますが、今 後、このような複数疾患領域にまたがる配合剤が市場に多数供給されるようになるとすれ ば、今述べたような複数疾患を持つ患者を診察する際に、それらの組合せが多岐にわたる ようになることによって、我々処方する側の処方時の思考過程が複雑化して、これは、長 い目で見て処方時の安全性の担保に疑義が生じるのではないかと考えます。この点にかん がみて、将来に禍根を残さないようにするべきであると私は考えます。これは、配合剤が どういう場合に認められるかというその事由についてというものを拝見した上での意見 であります。 ○松井部会長 この点についてはいかがですか。 ○審査管理課長 先生御指摘の点、すなわち、将来的にこういったものが、処方する医師 あるいは調剤をする薬剤師の中で、どのような形で間違いなく取り扱われるかどうかとい うのは、なかなか一概に見渡せるものではないのだろうと思います。そういう中で、我々 も、例えば高血圧と糖尿病を合併されている患者で、その二つの薬を併用するというよう な単なる組合せを認めていくような考えはないわけでございます。認める組合せには科学 的な合理性を求めているというところが、今現在における判断であろうと考えておりま す。したがって、将来にわたってこれが医療の現場でどのような使われ方をするのか、医 療安全の面からも、ここは我々も留意していかなければならない。また、当然のことなが ら、大きな問題が起きるようであれば必要な手当を前に前に打っていかなければならない と、そういうふうに考えているところでございます。 ○松井部会長 いかがですか。 ○野田委員 追加として申し述べさせていただくと、今、そういう2×2のデザインで進 んでいる臨床試験は私どもの領域でも幾つかあるわけですが、そういうものを根拠にし て、科学的有効性が認められた場合には、一応、現状ではこれを通すという方向になって いるけれども、将来的に問題があれば見直すという方向性と考えさせていただいてよろし いでしょうか。 ○審査管理課長 将来的に見直すことがあるかどうかにつきましては、こういったものの 使われ方を見ながら不断の見直しを行っていくというのは、当然だろうと考えておりま す。一方、どのような科学的なレベルで認めていくかということですが、本日の資料の5 ページの一番最初の(2)の審査報告における機構見解。正しく、ここで言うところの ASCOT-2×2試験という呼ばれ方をしているようですが、最終エンドポイントである脳・ 心血管疾患の発症抑制というのが、この両薬剤によって認められたということをもって、 この場合には科学的合理性があるのではないかというふうに判断しているところであり まして、これが一つの基準になるのかなというふうに考えているところでございます。 ○野田委員 ただ、この専門委員の意見というところにも私と同感の意見があるのです。 4ページの(3)の下から3行目、「ASCOT-2×2試験の成績は、アムロジピン及びアトル バスタチンの併用の有効性を示唆するものではあるが、両薬剤を配合剤とする根拠とは言 い難い」というのは私も非常に同感するわけです。両方を同時に処方すれば済むことであ って、これを配合剤とする根拠として果たして科学的合理性があるかどうか。この上の方 にも書いてありますが、服用する時間帯が異なる場合もあるわけで、それを同時にしか内 服できないような形にすることがいいのかどうか。それから、別のポイントになるかもし れませんが、服用錠剤が1剤少なくなるということにどの程度の利便性があるのか。二つ のポイントのもう一つは利便性ですが、上の(2)にあるように、6剤とか7剤を内服して いる方は非常に多いわけです。  2番目のポイントとしては、今回の配合剤はもともと単剤として非常に広い使用経験の ある薬剤同士の配合剤でありまして、各々の成分についての安全性や有効性は既に確立さ れているわけで、今回配合剤にすることによる付加的な有効性利便性が、明らかにされる べきと考えます。これが果たしてASCOT-2×2及び内服する錠数が1剤減るということで、 新しく承認するに至る、そういう有効性及び利便性がどの程度あるかということにも疑問 を感じざるを得ないということです。 ○松井部会長 では、その点は一応ここで止めまして、もう一つ、6ページの医療用配合 剤の販売名につきまして、この命名についてはいかがでしょうか。 ○野田委員 これが承認された暁の話になりますが、私は薬剤の命名についても、当然、 安全性に配慮した命名や、情報提供というものが求められると考えます。確かに、内容を 示す接尾辞などを付けるのと、意味のないものを付けるのと、どちらが安全性に優れてい るかという点については、場合によるとこういう「1番」「2番」というものでも複雑に なっていない、という良い面があるかもしれませんが、その場合、情報提供の重要さとい うものはより際立ってくると思います。 ○松井部会長 数値を付けるべきであるというお考えですか。 ○野田委員 いいえ、数値、2.5とか5とかの場合も、それなりのその複雑さによる問題 があると考えます。したがって、意味のない、ここに例のある「甲」とか「乙」といった ようなものの方が優れている場合もあるとは思うのですが、問題は2×2それぞれが動き ますので、一つの配合剤の種類で一つの成分は同じで他方だけが上下するという場合とま た違った難しさがあると思います。 ○松井部会長 安全対策課長、御発言いただけますか。 ○安全対策課長 今のような、2×2、要するにマトリクス型で製剤の種類が多い場合の 販売名による識別をどうつけるかというのは、非常に難しい、新しい課題となっていると 思います。ただ、こうした形での製品ラインアップは欧米においても既に存在しておりま して、このマトリクス全体に対して同じブランド名を与えるという形で世界的にも普及し てきているという状況からしますと、その中で製剤間の区別を余り長い名前ではなくて、 簡単な最小限の字数で区別するというやり方を採用しようということです。その上で、そ れらの製剤間の区別については、処方の都度どうしてもきちんと確認せざるを得ないよう な格好に仕組んでおくということも併せてやるべきではないかという考え方に立ってお ります。  これはそういう一つの考え方に基づいて、現場における医療安全を確保しようという取 組みですので、その趣旨を現場によくお伝えし、正しく野田先生がおっしゃられたように 情報提供が大事、現場においてその点を十分理解してお使いいただくということを、最初 の段階から徹底的にやることが大事だと考えております。 ○松井部会長 1か月間先に延ばしたという最大の理由は、この配合剤についての理解を 委員の間で共有するということでしたので、私、司会者といたしましては、そのような理 解を共通にした上で、事務局の提案につきましてこれを実行して、そして後日何か不都合 が生じた場合にはまたさらに討議するということにしたいのですが、いかがでしょうか。 よろしいでしょうか。  ありがとうございました。それでは議決に入りたいと思います。大石委員、野田委員、 本橋委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への 参加は御遠慮ください。本議題について承認を「可」としてよろしいでしょうか。  それでは、承認を「可」とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。永井委員がお いででしたら入室していただいてください。 ── 永井委員入室 ── ○松井部会長 議題2につきまして、医薬品機構から概要を御説明ください。 ○機構 それでは、議題2、資料2、医薬品ルミガン点眼液0.03%の製造販売承認の可 否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。まず、事前に送付させて いただいた添付文書(案)につきまして、資料2-1の1.8の添付文書(案)に誤りがあり、資 料2-3として改めて提出されておりますので、大変申し訳ございませんが、資料2-3にお いて御確認をお願いいたします。それでは本剤の説明をさせていただきます。  本剤の有効成分であるビマトプロストは内因性の生理活性物質であるプロスタマイド F2αアナログであり、本剤は2008年2月現在、米国、英国等73か国で開放隅角緑内障 及び高眼圧症を適応症として承認されております。本申請の専門委員といたしましては、 資料13に記載されている10名の委員を指名いたしました。  審査内容について、御説明いたします。まず、本剤の作用機序につきまして、審査報告 書10ページの図を御覧ください。本剤及び既承認のプロスタグランジン製剤は、いずれ も細胞外マトリクスのリモデリングによる房水排出抵抗の低下により眼圧下降作用を示 しますが、プロスタグランジン製剤は活性代謝物がFP受容体に作用するのに対し、本剤 は未変化体がプロスタマイド受容体に作用し、毛様体平滑筋細胞における受容体からの細 胞内伝達経路に違いがあると考えられております。  次に臨床成績について御説明いたします。審査報告書36ページの上の表を御覧くださ い。原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象とした第V相試験において、有効性の主 要評価項目であるPPSにおける治療期終了時の点眼開始日からの眼圧変化値は、本剤 0.03%群で-8.0±2.7oHg、ラタノプロスト群で-7.4±2.8oHgであり、両群の群間差 の95%信頼区間の上限値0.3は事前に定められた非劣性限界値1.5oHgを下回ったこと から、申請製剤である本剤0.03%のラタノプロストに対する非劣性が検証されておりま す。  本剤の至適濃度につきましては、第V相試験において本剤0.01%を含めた検討が再度 なされましたが、審査報告書36ページの下の表にお示ししましたとおり、安全性に関し て有害事象の発現率は本剤0.01%で65.7%、0.03%で66.2%と、大きな違いは認められ ず、有効性に関しては審査報告書40ページの図表にお示ししましたとおり、眼圧変化率 -30%の達成率は本剤0.03%が0.01%に比べて高かったことから、本剤0.03%が申請製 剤として選択されております。  本剤の安全性につきまして、審査報告書42ページの表を御覧ください。本剤点眼時の 有害事象の種類及び発現時期は既承認のプロスタグランジン製剤と大きく異なっており ませんが、プロスタグランジン製剤に特徴的な有害事象である結膜充血、睫毛の成長、眼 瞼色素沈着及び虹彩色素沈着の国内第V相試験における発現率は、ラタノプロストに比べ て本剤で高い傾向が認められております。しかしながら、視機能に影響を及ぼす重大な有 害事象は認められていないことから、臨床的に大きな問題となる可能性は低いと考えられ ております。なお、これらの事象の発現状況等につきましては、製造販売後に観察期間を 最長2年間とした調査を実施し、さらに検討する予定です。  以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審 議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬又は 劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品に該当しないと判断して おります。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議の ほどお願いいたします。 ○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。 ○清水委員 審査報告書(2)の48ページになりますが、下から5行目に「本剤とプロス タグランジン製剤を併用したときの有効性及び安全性は確認されていないため、安易な併 用は避けるべきであると考えており、医療現場に対して適切に情報提供することが重要と 考える」と書かれていますが、その辺りの記載が添付文書にはなされていないようなので すが、これについてはどういった形での情報提供を御指示、御指導なさっているところで しょうか。 ○機構 添付文書に関しましては、事実に基づいた従来の記載に倣った形での記載とさせ ていただいておりますが、この御指摘の点につきましては、製品の情報提供がされる際に、 効能・効果等の適正使用情報とともに、薬理作用について最終的には既存のプロスタグラ ンジン製剤と作用点が同じであるという点と、併用に関するエビデンスはないという点 を、文書にして先生方に配布される予定です。添付文書とは別のツールを使ってというこ とになりますけれども、プラスアルファの資料をもって、現場に適切に情報提供するよう に指導していく予定でございます。 ○松井部会長 ほかに御質疑をお願いします。 ○加藤委員 資料の46ページにありますが、「プロスタグランジン製剤であるラタノプ ロストで十分な眼圧下降作用が得られない患者が10〜40%存在する」ということで、い わゆるノンレスポンダーに対しての選択の幅が広がるような感じの記述が何か所かあっ て、しかも、それをサポートするがごとく、先ほど御紹介がありました10ページの作用 機序に関してはラタノプロストなどとは違う受容体を介した作用というのもあるのでは ないかということはあります。それで、ラタノプロストに対する非劣性は証明されている ようなのですが、例えばフェーズVとかで既にラタノプロストの治療を受けていて、それ でレスポンスしていた群と、ノンレスポンスでそのラタノプロストが有効ではなかった群 とで、この新しいルミガンが有効性を提供するというような、そのノンレスポンダーに対 して効果があるのだというようなことを積極的に、臨床の場ではそういうことがあると非 常に選択しやすいと思うのですが、そのような根拠はどこかで提出されているのでしょう か。 ○機構 御指摘の点につきましては、実際にそのノンレスポンダーに対する有効性、安全 性を検討するような臨床試験は実施されておらず、エビデンスとしては現時点では確立し ておりません。  ただ、海外の製造販売後のフェーズWとして、具体的な試験成績等は我々もまだ大枠し か入手していないのですが、ラタノプロストを投与して、ある一定の有効性が得られなか った患者に、本剤とトラボプロストとのランダマイズをすることによってその有効性を検 討したという試験成績は得られているようではありますけれども、先生がおっしゃったよ うに、ノンレスポンダーとレスポンダーを比較するような試験デザインではなく、我々と しましては、海外におきましては重症の患者に使われるような傾向は出ているようではあ りますけれども、ノンレスポンダーに対しての本剤の有効性及び安全性が確立していると いうふうには考えておりません。 ○松井部会長 ほかにはありますか。よろしいでしょうか。特にほかに御意見がないよう でしたら、議決に入りたいと思います。なお、永井委員、本橋委員、山本委員におかれま しては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。 本議題について承認を「可」としてよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、承認を「可」とし薬事分科会に報告させていただきます。 続いて議題3に入ります。 ○機構 それでは、議題3、資料3-1及び資料3-2、医薬品レメロン錠15r及びリフレ ックス錠15rの製造販売承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より御説明い たします。なお、資料3-1において提出されている資料のうち、レメロン錠の添付文書に 一部誤記が認められておりますので、資料3-3として本日机上に配付させていただいてお ります。  本剤の有効成分であるミルタザピンは、オランダ・オルガノン社で合成され、シナプス 前α2受容体、セロトニン5-HT2及び5-HT3受容体に対する阻害作用により、シナプス間隙 におけるノルアドレナリンの増加及びセロトニン5-HT1受容体への刺激を増強することが 作用機序として考えられております。海外では19□年□月より本剤の臨床試験が開始さ れ、1994年3月にオーストリア及びオランダで承認されて以来、2009年3月現在、欧州、 米国等93か国で承認されております。  本邦では□□年□月より日本オルガノン株式会社(現シェリング・プラウ株式会社)にお いて臨床試験が開始されましたが、肝酵素の上昇が認められ、一時開発が中断されており ます。しかしながら、認められた事象の精査を行った結果、安全性上特段の問題はないと 判断されたことから、この開発が再開され、今般、うつ病・うつ状態を効能・効果として 承認申請が行われております。本申請の専門委員としましては、資料13に記載されてい る10名の委員を指名させていただいております。  審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。  まず、有効性についてですが、審査報告書の37ページの表を御覧ください。うつ病患 者を対象としたプラセボ対照比較試験において、ベースラインからの投与6週後のHAM-D 合計スコアの変化量は、プラセボ群に対して本剤30r群で統計学的に有意な減少が認め られております。また、審査報告書36ページの図にありますように、本剤はフルボキサ ミンと同等の有効性が示されていることから、本剤のうつ病・うつ状態に対する有効性は 示されていると判断しております。  次に、安全性について御説明いたします。審査報告書48ページの上の表を御覧くださ い。本剤の投与により、傾眠等の鎮静関連の有害事象が多く認められていますが、多くの 事象は軽度であり、投与継続中に回復していることから、特に大きな問題はないと考えて おります。また、同ページの下の表を御覧ください。本剤投与により、体重増加及び食欲 亢進関連の有害事象がプラセボ群よりも多く認められており、これらの事象は男性よりも 女性で多く認められております。しかしながら、現時点では体重増加に伴う糖代謝異常や 脂質代謝異常等は特に認められておらず、安全性上特に大きな問題はないと考えておりま す。なお、女性で体重増加が多くなった理由については、種々の検討を行っておりますが 明確にはなっておりません。これらの事項については製造販売後調査において検討するこ ととしております。  続きまして、審査報告書52ページの下の表を御覧ください。国内臨床試験において、 検査値異常を中心とする肝機能関連の有害事象がプラセボ又はフルボキサミンよりも多 く認められております。また、審査報告書53ページの上の表にありますように、体重増 加の有害事象が認められた症例で肝機能障害関連の有害事象が多く認められたという結 果が出ております。そのため、添付文書では、肝機能障害等に関する注意喚起を行ってお り、これらの関連性についても製造販売後調査で調査することとしております。  最後に、本日配付させていただいた資料3-3、レメロン錠の添付文書(案)を御覧くださ い。本年5月8日付けで抗うつ薬のうちSSRI及びSNRIの添付文書が改訂され、 「重要な基本的注意」の項に興奮、攻撃性、易刺激性等に関する注意喚起が追記されてお りますが、本剤においても同様の事象が認められていることから、SSRI及びSNRI と同様の注意喚起を行うこととしております。  なお、大石委員より事前に御質問いただいておりますので、その件について御説明いた します。大石委員からは本剤の添付文書におきまして、「ノルアドレナリン作動性・特異 的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)」、これは「ナッサ」と読みますが、というものの 記載がされておりますが、このような分類の妥当性について御質問をいただいておりま す。この用語につきましては、最近の国内外の専門書、ガイドライン等で用いられており、 本剤の特徴を示す用語としては特に問題はないと考えております。なお、添付文書上でど のような記載にするかについては、こちらで再度検討させていただきたいと考えておりま す。  以上の審査を踏まえ、本剤のうつ病・うつ状態に対する効能・効果を承認して差し支え ないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申 請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生 物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬 事分科会へ報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○松井部会長 それでは、委員の先生方から御質疑をお願いいたします。 ○大石委員 ただ今説明をいただきましたが、この分類名について事前に質問を届けさせ ていただきました。この添付文書に書かれることというのは、非常に大きな影響がありま して、例えば教科書等でもこの添付文書に書かれる名称はまず使われます。学生もそれで 国家試験の勉強をすることになります。それで、この「ノルアドレナリン作動性・特異的 セロトニン作動性抗うつ剤」というのが、意味が分かる日本語かというのが非常に疑問に 思うところです。特異的セロトニン作動性というのは分かるのですが、それに加えてノル アドレナリン作動性というのは、それは別に特異的ということにならないので、これをこ のまま書いたら後の影響というのが非常に大きいわけですね。ですから、これは日本語的 に非常におかしいのではないかという気がして、質問をさせていただきました。 ○松井部会長 いかがでしょうか。 ○機構 ありがとうございます。御質問いただいた趣旨は我々としては非常に理解できま す。この元の英語がNoradrenergic and specific serotonergic antidepressantという 言葉になっていまして、その略語でNaSSAになっているのですが、その英語自体は比較的 広くいろいろな所で使われていて受け入れられているかと思います。問題は、多分、その specific serotonergicという、そのspecificをどう日本語に訳すかという話になって います。  先生がおっしゃるように、なぜこのspecificと付いているかという話ですが、結局、 この薬の作用機序を考えると、α2に拮抗することでノルアドレナリンが間隙で増える。 そのことによって、serotonergicな神経も活性化される。そして、セロトニンの遊離量 が増えるわけですが、実際にこの薬はセロトニンの5-HT2と5-HT3はブロックしますので、 最終的に残るのがHT1と。だから、そのHT1だけが活性化されるというようなことで、 そこから来ているのです。それをspecificと呼ぶのかという、そもそも英語の表記とし てそれが正しいかというのは、学術的に確かに御議論があるところかと思います。  現実問題としては、いろいろな専門書等でこの言葉が既に流通しているということは確 認しておりますし、我々も一つの考え方としてはあり得るのかなと。ただ、先生が御指摘 いただいているように、添付文書上でわざわざ「特異的」と書く必要があるかということ については我々も理解しているところですので、その書き方について単純に「ノルアドレ ナリン作動性・セロトニン作動性抗うつ剤」だけでもいいのかもしれません。その辺のこ とは先生方の御意見も踏まえながら、考えさせていただきたいと思っております。 ○松井部会長 部会長の私の方からお聞きしますが、この「ノルアドレナリン作動性・特 異的セロトニン作動性抗うつ剤」という既成区分がはっきり存在するわけですか。 ○機構 今のところ、こういう抗うつ剤としてはSSRIというような分類であったり、 普通の抗うつ剤というような分類はあります。「ノルアドレナリン作動性・セロトニン作 動性」というような言葉を使っている添付文書は今のところはないと思いますが、適切な この薬を特徴付ける、間違ってなくて適切な用語ということに関してここに書く分には、 特段の問題はないというふうに思っております。 ○大石委員 これはアメリカにも販売されているものですから、薬理学の標準的なグッド マン・ギルマンというテキストを調べましたら、atypical antidepressantというふうに たくさん分類されていて、このNaSSAという言葉はありませんでした。ですから、そこの ところがどういうふうになっているか、どういうふうな流れでこういう名称ができてきた かということは、もう少し調べていただかないと分かりませんけれども、少なくとも、作 用メカニズムを非常に混乱させるような名前を添付文書に書くことは、教育上好ましくな いと私は思います。 ○本橋委員 抗うつ薬の分類のことなのですが、最初は構造で三環系とか四環系とかに分 けられていました。この薬自体はミアンセリンという薬の改良型ですから四環系なので す。ところが、例えばSSRIではいろいろな構造で同じような作用機序になっていると いうことで、作用機序も加味した分類と構造による分類とが混ざって、非常に混乱してい るのではないかと思うのです。ですから、先生がおっしゃったように、三環系、四環系と いった以外のものはatypicalとか、あるいは第二世代といったような名前で呼ばれてい ますこの薬の特徴を表すのは、機構の示された作用機序ではないかということで、NaSSA という言葉が一般的には使われつつあるというのが現状ではないかと思うのです。ですか ら、抗うつ薬の分類については、今後変えていく必要があるという気はしております。 ○松井部会長 これは、お伺いしていると、いまだに学問上のことであって、添付文書に どう書くかということとまた違う性質のように考えますが、この点につきましては事務局 で調査の上、その結果を大石委員はじめほかの委員に御報告いただくということにしたい のですが、お願いできますか。 ○審査管理課長 はい。 ○松井部会長 ほかに御質疑はありませんか。 ○清水委員 審査報告書の59ページになりますが、この薬剤で、女性で薬物動態上高値 を示す傾向が認められて、副作用も女性で多く発現している旨がそこに書かれているかと 思うのですが、この情報提供の必要性というのはどのようにお考えでしょうか。添付文書 にはそのことについて触れられていないようなのですが。 ○松井部会長 いかがですか。 ○機構 本剤なのですが、この薬物動態が高いということに関しまして、添付文書の5ペ ージですが、この中で薬物動態の血漿中濃度に関して男女差のことについては書かせてい ただいております。ここで同一用量で男性と比べて女性で高いということ、また、半減期 も長いということに関しましては説明させていただいているところです。安全性上の問題 なのですが、体重増加及び食欲亢進等に関しましては、確かに男性よりも女性の方で高い ということはデータとしては出ておりますが、これが安全性上の本当に大きな問題になっ ているわけではないと考えており、この添付文書全体の中では副作用全体の書き振りとし てさせていただいているところです。 ○松井部会長 ほかに御意見、御質問はありませんか。それでは、ないようですので議決 に入りたいと思います。なお、永井委員、古川委員、本橋委員、山本委員におかれまして は、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本 議題につきまして、承認を「可」としてよろしいでしょうか。  御異議なしと認めます。承認を「可」とし薬事分科会に報告させていただきます。  続いて、議題4に入ります。大石委員、山本委員におかれましては議題4の審議の間、 別室で御待機いただきたいと思います。 ── 大石委員・山本委員退出 ── ○松井部会長 議題4につきまして、医薬品機構から概要を説明してください。 ○機構 それでは、議題4、資料4、レミケード点滴静注用100の製造販売承認事項一部 変更承認の可否等について、機構より説明いたします。  本剤の有効成分であるインフリキシマブ(遺伝子組換え)はTNFαに特異的なマウス 型モノクローナル抗体由来の可変領域と、ヒトIgG1の定常領域を有するキメラ型の抗 ヒトTNFαモノクローナル抗体でございます。  本邦において、本剤の「関節リウマチ」に係る効能・効果は、本剤3r/sを0、2、 6週、以後8週間隔で静脈内投与するとの用法・用量で2003年7月に承認されておりま すが、今般の申請は3r/sで効果不十分、あるいは効果が減弱した場合に維持投与期の 増量が可能となるよう用法・用量を変更し、また、効能・効果に「関節破壊の進展防止」 に係る効果を追加するというものです。  本申請については、関係学会等の要望等に鑑みて、迅速に審査を行うよう平成20年10 月14日付で審査管理課より通知されております。  また、関節リウマチに係る本剤の承認時には、承認条件の一つとして、「本剤を増量し て投与した場合あるいは投与間隔を短縮した場合の有効性(関節破壊の進展防止に関する 評価を含む)及び安全性等を確認するため、適切な対照群を置いた長期にわたる二重盲検 比較臨床試験を実施し、その結果を速やかに報告するとともに、用法・用量の変更につい て検討すること」が付されていますが、今般の申請データに基づき、当該承認条件の解除 の可否についても併せて検討しております。  本申請の専門委員としては資料13に記載されている5名の委員を指名いたしました。  主な審査内容について簡単に説明いたします。  審査報告書9ページの下から10行目、(1)国内第V相増量試験の項を御覧ください。 第V相試験として、メトトレキサート治療抵抗性の日本人関節リウマチ患者327例を対象 に、本剤3mg/kgを0、2、6週に非盲検下で投与後、10週時点の症状改善等を因子とし た割付を行い、14週以降は二重盲検下で本剤3、6、又は10mg/kgのいずれかの用量を 8週間隔で46週まで投与した試験が実施されております。  結果については10ページの1行目以降に示しています。主要評価項目である投与54週 後のACR-N改善は、3mg/kg群で51.3、6mg/kg群で53.8、10mg/kg群で58.3であり、 10mg/kgでは3mg/kg群に比較して有意な改善が認められています。17ページの上の図を 御覧ください。増量試験のうち、10週時点で効果不十分であった症例における経時的な ACR基準20%改善率を検討したところ、図のように●で示した3mg/kg維持群に比べ て、6mg/kg及び10mg/kg群では増量後は速やかに効果が得られることが示唆されている ことなども踏まえ、機構は本剤3mg/kgで効果不十分な症例に対する増量時の有効性は示 されたものと判断しています。  次に「関節破壊の進展防止」に係る有効性については、10ページの一番下の表を御覧 ください。増量試験の副次項目としてmodified Sharpスコアが評価され、本剤全体群の 変化量の中央値は0であることが示されています。関節破壊の進展防止効果については、 プラセボ又は実薬を対照とした比較検討は実施されておりませんが、増量試験における本 剤投与期間中のSharpスコア変化量の中央値は0であり、被験者集団の関節破壊は投与期 間中ほとんど進行しなかったものと判断できること、また、当該効果について海外で複数 のエビデンスが得られていることなども勘案し、機構は、増量試験成績に基づき、本剤の 関節破壊の進展防止効果についても確認されたものと判断いたしました。  安全性については、増量試験で認められた主な副作用は11ページの表のとおりであり ます。発現率等に用量依存性は認められず、増量群においてもこれまでに知られている安 全性プロファイルと特段の相違は認められないものと考えられます。しかし、増量試験に おける症例数は限られていること、また、21ページの下から2行目、(3)安全性につい ての項に記載していますように、海外START試験では3mg/kgによる導入期を設定せず実 施された際の結果ではありますが、投与22週までの重篤な感染症発現率が3mg/kg群1.7 %、10mg/kg群5.3%と、10mg/kg群で有意に高い結果が示されていることも踏まえ、添 付文書には増量時には重篤な感染症等の発現に十分に留意する旨を記載し注意喚起する とともに、製造販売後調査において、増量時の安全性をさらに確認する必要があると考え ております。  以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御 審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請にかかる再審査期間は4年とするこ とが適当と判断しています。また、今般提出された増量試験成績から、関節リウマチに係 る前述の承認条件についても確認できたものと判断しております。薬事分科会には報告を 予定しております。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。 いかがでしょうか。特段の御意見はないでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、特 段の御意見、御質疑がないようですので議決に入ろうと思います。なお内海委員、清水委 員、永井委員、野田委員、林委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議 決への参加を御遠慮ください。本議題について、承認「可」としてよろしいでしょうか。  御異議なしと認めます。承認「可」とし、薬事分科会に報告いたします。山本委員、お 入りください。 ── 山本委員入室 ── ○松井部会長 大石委員は引き続き、別室で待機していただきます。ありがとうございま す。それでは、議題5に入ります。大石委員、永井委員におかれましては、議題5の審議 の間、別室で御待機いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ── 永井委員退室 ── ○松井部会長 それでは、議題5について機構から概要を説明してください。 ○機構 議題5、資料5、アリスキレンフマル酸塩、ラジレス錠150mgについて、医薬品 医療機器総合機構から説明させていただきます。  アリスキレンは、レニン-アンジオテンシン系、以下RASと省略させていただきます が、RAS系の起点となる酵素であるレニンを選択的に阻害し、アンジオテンシノーゲン からアンジオテンシンTへの変換を抑制する新規作用機序の経口降圧薬です。本剤は、降 圧薬として、2007年以降、米国、EU諸国を含む76の国及び地域で承認されています。 本邦では、ノバルティスファーマ株式会社により開発され、国内臨床試験成績等を基に、 150mgを通常用量とし、症状等により適宜増減する用法・用量にて、75及び150mg錠が承 認申請されましたが、審査の過程で、申請者は、75mg錠の申請を取り下げています。  本品目の審査に関して、専門委員として資料13に記載されている委員が指名されまし た。  審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず審査報告書の49ペ ージです。国内第V相試験成績が表2と3に載っています。表2については主要評価項目 の成績で、表3が比較の結果であります。軽〜中等度の本態性高血圧症患者を対象として、 本薬150mgの降圧効果をプラセボ及びロサルタン50mgと比較した国内第V相試験におい て、主要評価項目とされた投与8週間後のトラフ時平均坐位拡張期血圧のベースライン値 の変化量の絶対値は、プラセボ群と比べ本薬群で有意に大きく、また、本薬150mgのロサ ルタン50mgに対する非劣性も検証されました。さらに46ページ、国内第U相試験は表で はなく、一番下の段落の3行目辺りから具体的な数字が出ています。150mgと300mgの血 圧の降下に対する作用及び、今度は54ページ、国内長期投与試験です。表のすぐ上に数 値が出ています。この辺り、300mgと150mgの降圧作用等から、300mg投与で150mg投与 時より高い降圧効果が得られる可能性が示唆されましたので、150mgから300mgが臨床用 量ではないかと考えられました。一方、本薬はバイオアベイラビリティが3%前後と低く、 個体間変動及び個体内の変動が大きい、あるいは食後投与に比べ空腹時投与でCmax及び AUCが倍増する、あるいはP糖蛋白阻害剤との併用で曝露量が増加するといったような 薬物動態学的特徴を有しています。これらのうち、食事の影響のみに着目しても、個々の 患者における食事の有無による曝露量の変動が、本薬の申請用法・用量の範囲で用量を変 更した場合より大きくなることもあり得るというような可能性に考慮し、臨床試験の組み 入れ患者より多様な背景を有する患者一般での有効性、安全性の確保には特段の注意が必 要であると考えられました。なお、この点に関し、63ページの一番下の段落のAの辺り から2ページにわたって記述しています。申請時の用法・用量には75mgの投与の選択肢 が含まれており、75mg錠は腎機能低下患者やその他、本薬の曝露が増大するような背景 を有している患者では有用である可能性もありました。しかしながら、本薬開発における 大きな問題点として、本薬の薬物動態は食事により大きな影響を受けるにも関わらず、用 量設定試験を食前投与で実施し、検証試験を食前・食後の規定を設けない試験としたこと があります。75mg食後投与時の有効性を示した臨床試験成績はありませんでした。以上 を踏まえ、機構が75mg食後投与の有効性を申請者に照会したところ、申請者は臨床試験 成績を再度解析したとして、75mg投与の選択肢を臨床現場に提供する意義はないと主張 するに至りました。申請者は75mg投与の選択肢を取り下げる旨申し出ました。このため、 本薬を150mgから減量できない降圧薬として審査することといたしました。本薬の安全性 については、高カリウム血症や本薬に特徴的な副作用と考えられる下痢等の副作用の発現 が懸念されました。この辺りは65ページの一番下の段落に書いてあります。「安全性に ついて」と書いてありますが、本薬については申請者として解析をしたところ、下痢、高 カリウム血症等の副作用がこの薬に特徴的な副作用として考えられております。このよう な副作用の発現が懸念され、様々な要因による曝露量増大が安全性に及ぼす影響に不明確 な点もありますが、50ページの表4、この国内臨床試験で150mg投与時の有害事象の発 現状況を見ますと、この結果が既承認のRAS阻害薬と比較して大きな問題となるような ものはほとんどなく、本薬150から300mgで治療可能な患者を適切に選択するための情報 提供をした上であれば、承認は可能であると判断いたしました。専門協議を経て、添付文 書中の食事の影響、腎機能、薬物間相互作用等に関する注意喚起について整備し、適正使 用のための注意喚起を行っております。  製造販売後の調査計画等については、71ページ後半を御覧ください。本薬の有効性及 び安全性は、患者の様々な背景により影響を受けることを踏まえ、患者背景の違いによる 安全性及び有効性を検討する、集計対象予定症例が3,000例の特定使用成績調査を実施 し、問題点・疑問点が見い出された場合等には、それらの要因を検出又は確認するための 新たな特定使用成績調査や、製造販売後臨床試験の実施を検討するといったような提案が 申請者からなされています。  本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とすることが適当で あると判断しております。また、原体及び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来及び 特定生物由来医薬品には該当しないと判断しております。薬事分科会では審議を予定して おります。  なお、本品目について、檜山委員より事前に原薬の結晶形に関する御質問を二点いただ いております。一点目は結晶形Bではなく、Aを選択した理由でした。申請者による原薬 の製法では、結晶形Bが認められないこと、及び□□□を含む結晶形Aの方が熱力学的に 安定であることがその理由と推察されています。もう一点は、結晶形の確認を粉末X線回 折で行う理由でした。これはそもそも、海外では設定されている結晶多形の□□試験を本 邦では設定しないことの妥当性を照会したところ、申請者は特に理由について説明するこ となく、海外と同様の結晶多形に係る□□試験を設定する旨回答してきましたので、試験 自体に問題はないということを確認した上でこれを受け入れたものです。以上です。御審 議のほど、よろしくお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございました。委員の皆様にお聞きする前に、まず檜山委員、 二つの御質問につきまして、かなり専門的な御質問のように伺いましたが、いかがでしょ うか。 ○檜山委員 質問をしたスタートになったところは、X線回折というのは高度な技術であ るのですが、品質管理で使うときになかなか使いにくいので、提案をしてこないのが普通 なのです。ですから、何かあるのかと思ってお聞きしました。特別な理由はないようです が、実績に基づいてより安全というか、厳しい設定をされているようですので、その設定 自体には問題はないと考えています。 ○松井部会長 この点については問題ないと。 ○檜山委員 はい、問題はないと考えています。 ○松井部会長 ありがとうございました。ほかに御質疑はございませんか。食事の影響が 大きいと伺いましたが、併用薬剤についてはいかがですか。 ○機構 説明の中では御紹介しませんでしたが、併用薬剤についても本薬の吸収にはP糖 蛋白が関与するということが知られています。今まで実験された薬剤の中では、シクロス ポリンにより、曝露量が5倍程度まで増えるということが分かっています。これについて は非常に問題だと感じ、申請者といろいろやり取りをしたところです。  専門協議も経て最終的には降圧薬というものの選択肢の幅が広いということで、シクロ スポリンを併用禁忌としてもいいのではないかという結論に至りました。海外も同様に、 ヨーロッパなどではシクロスポリン併用は禁忌ですが、国内でも禁忌とすることにいたし ました。あとはP糖蛋白阻害剤による曝露量の増大について、添付文書で注意喚起する。 併用が予想されるアトルバスタチンについては「注意」のところに明記するといった対応 をしています。 ○松井部会長 ほかに御質疑はありませんか。 ○清水委員 私も相互作用のところですが、御説明もあったように、この薬剤はP糖蛋白 の基質であるということと、代謝にはCYP3A4が関与するということで、対象となる薬剤 の数も非常に多くなるかと思います。そういった状況で、審査報告書の44ページ、上段 部の真ん中辺に記載されていますが、「米国の添付文書では『患者は、アリスキレンと併 用した薬剤を全て報告する必要がある』旨の注意喚起がなされている」という記載がされ ています。その辺のことを勘案して添付文書(案)を見ると、少し記載が不足かなとも思え ます。その辺のところはどのようにお考えでしょうか。 ○機構 ありがとうございます。まず、いかにして曝露量の増大に係る懸念をなくすかと いうことについて、添付文書でどこまで書くのかということについて我々は検討いたしま した。今話題になっている薬物の相互作用に関するところに絞らせていただきますが、ま ずこの薬のP糖蛋白とCYP3A4だけで代謝がすべて説明できるかというところになります と、そうでもないかも知れないという部分もあり、まず、P糖蛋白とCYP3A4に注意すれ ばいいというように受け取られることを明確に書くのもどうかという話がありました。  あとは今、先生がおっしゃったように全部報告するという話については、医師なり薬剤 師なりと患者のかかわりの中でやっていただくのだと思います。薬物動態的な特徴、バイ オアベイラビリティが低いということとか、個体内変動、個体間変動が大きいということ を添付文書に注意喚起し、その点については現場の方のかかわり合いの中で注意していた だく。そして、先ほど少し申しましたように、この薬でなくてもいいような患者について、 若しくはこの薬ではいけないような患者については、ほかの選択肢も含めて考えていただ くということでいいのではないかと考えました。 ○清水委員 「おくすり手帳」という考え方があるかと思います。「おくすり手帳」を上 手に活用することによって、ここのところはかなりサポートできるのではないかと思いま す。製造メーカーが情報提供する際に、「おくすり手帳」を積極的に活用していただくよ うな御指導をされてもいいのかと思いました。以上です。 ○機構 ありがとうございます。 ○松井部会長 ほかに御質疑ありますか。ないようですので議決に入ろうと思います。加 藤委員、野田委員、林委員、古川委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申 出に基づき、議決への参加を御遠慮ください。本議題について承認「可」としてよろしい でしょうか。  御異議なしと認めます。なお、本剤は新有効成分であり、かつ既存の類薬がありません ので、薬事分科会に上呈し、審議することとさせていただきます。大石委員、永井委員に 入室してもらってください。 ── 大石委員、永井委員入室 ── ○松井部会長 続いて議題6に入ります。議題6について、医薬品機構から概況を説明し てください。 ○機構 議題6、資料6、医薬品ゴナールエフ皮下注用75、ゴナールエフ皮下注ペン300、 同皮下注ペン450、同皮下注ペン900について、医薬品医療機器総合機構より説明させて いただきます。  本薬は、遺伝子組換えヒト卵胞刺激ホルモン(以下、r-hFSH)であるホリトロピンアルフ ァを有効成分としており、本邦においては低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症におけ る精子形成の誘導の効能・効果で2006年1月23日に承認されています。  排卵障害における不妊症の治療には、閉経期婦人尿より抽出されたヒト閉経期ゴナドト ロピン製剤(以下、hCG)や尿由来ヒト卵胞刺激ホルモン(以下、u-hFSH)製剤が使用され ておりましたが、諸外国において、ヒト尿に混入する可能性のある病原性ウイルスなどに よる感染症のリスクやヒト尿の安定供給に対する懸念からr-hFSH製剤への置き換えが進 んでおります。本邦においても、r-hFSH製剤として、ホリトロピンベータを有効成分と する類薬のフォリスチム注が2007年1月に女性不妊について承認されています。本薬は、 2009年5月現在、欧州及び米国を含む世界100か国以上で承認され、女性不妊に対する 効能を取得しています。  本邦では、19□年□月より第T相試験が実施され、20□年□月より第U相試験、20□年 □月より第V相試験が実施され、今般、国内臨床試験成績を主要な臨床データパッケージ として、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。本品目の審査に関して、 専門委員として資料13に記載されております委員が指名されました。  本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書10 ページを御覧ください。1行目から記載されておりますように、国内第V相試験はu-hFSH 製剤であるフェルティノームP注を対照薬として設定し、第1度無月経及び無排卵周期症 の不妊患者を対象として、本薬と対照薬の排卵誘発及び卵胞成熟における有効性及び安全 性を比較検討することを目的に実施されました。用法・用量については、治験薬投与1日 目(月経又は消退出血開始から2〜5日)から、本薬又は対照薬を75IU/日、7日間皮下連 続投与し、8日目、15日目、22日目の超音波検査で観察された主席卵胞の平均径がhC G投与により排卵する可能性が高い18mmに到達した場合は投与を中止し後観察期間へ移 行する。それぞれの観察日において、主席卵胞の平均径が11mm以上18mm未満の場合は同 一用量をさらに7日間連続投与、11mm未満の場合は1日投与量をさらに37.5IU増量して 7日間連続投与し、最長で28日間、卵胞の発育が悪い場合の最大用量として187.5IU/日 を投与することといたしました。  審査報告書10ページの表4に示されていますように、主要評価項目とされた排卵率(排 卵した症例の割合)について、本薬群79.1%、u-hFSH群82.6%であり、本薬群のu-hFSH 群に対する非劣性が検証されたことから本薬の有効性は示されたと判断いたしました。  安全性について、審査報告書11ページ表6に主な有害事象が記載されています。  有害事象発現率は、本薬群で53.5%、u-hFSH群で50%と同程度であり、有害事象発現 プロファイルも同様であると判断いたしました。ただ、審査報告書23ページに記載され ております卵巣過剰刺激症候群(以下、OHSS)、審査報告書27ページに記載されてお ります多胎妊娠等の発現について、類薬と同様の注意は必要ですが、不妊治療に十分な知 識と経験のある医師のもと適正に使用されれば承認の可否に影響するような大きな問題 はないと判断いたしました。  なお、製造販売後調査について、審査報告書33ページ1行目から記載されております ように、再審査期間中に、1,000症例を対象とした使用成績調査を実施し、腎機能及び肝 機能障害患者に関する調査、OHSS、多胎妊娠に対する調査、子宮外妊娠、流産及びア ナフィラキシー反応などの安全性、並びに複数サイクルでの排卵率及び妊娠率の検討によ り有効性を確認する予定です。また、妊娠転帰に関する調査及び出生児調査を各々特定使 用成績調査として実施する計画となっています。  以上のような検討を行った結果、本薬を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品 第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。  本薬の再審査期間は、既承認の効能がオーファン効能のみであり、その再審査期間中で あることから5年10か月とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では 報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○松井部会長 ありがとうございました。御質疑をお願いします。いかがでしょうか。私 からよろしいでしょうか。OHSSに関してもそうなのですが、取り扱う医師はおのずと 限定されてくると考えてよろしいのでしょうか。 ○機構 資料1.8の添付文書(案)を御覧いただけますでしょうか。使用上の注意として、 まず第1として「本剤は、不妊治療に十分な知識と経験のある医師が使用すること。本剤 投与により予想されたリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行う こと」というようにしております。それとともに、「重要な基本的注意」の3)に卵巣過 剰刺激についての記載をしています。さらに、重大な副作用として卵巣刺激症候群につい ても記載しておりまして、特徴とする発現の症状等についても添付文書上において記載を 行い、注意喚起をしております。本薬は、基本的には専門医の先生により、卵胞の発育の 程度を慎重に観察しながら用量を調節していき、投与されるべき薬剤であると考えており ます。 ○松井部会長 それについては、u-hFSHと同じであると解釈してよろしいのですか。 ○機構 はい。有効性、安全性とも同様とは考えているのですが、冒頭に申し上げました とおり、尿由来のものでは未知の感染症のリスク等が懸念され、安定供給の面でも懸念が ありますので、本薬が遺伝子組換えによる製剤であることは一定の利点を有するものであ ると判断しております。 ○松井部会長 ありがとうございました。ほかに御質疑はありませんでしょうか。よろし いでしょうか。それでは議決に入ろうと思います。本議題について承認「可」としてよろ しいでしょうか、御異議ありませんか。  御異議がないようですので承認「可」とし、薬事分科会に報告いたします。以上が審議 事項です。以下は5つの報告事項ということになります。事務局から御説明をお願いしま す。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品セレコックス錠100mg及び同錠200mgの製造販売承認 事項一部変更承認について」御報告いたします。資料は7になります。本剤はCOX-2の選 択的阻害薬であるセレコキシブを有効成分とする消炎・鎮痛薬であり、既に「関節リウマ チ、変形性関節症」の効能・効果で承認されております。  今般、アステラス製薬株式会社から「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、腱・腱鞘 炎」に関する効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたもの です。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、これらの追加効能・効果について有 効性及び安全性が確認されたことから、承認して差し支えないと判断いたしました。  議題2「医薬品ノルディトロピンS注5mg、同注10mg、ノルディトロピンノルディフ レックス注5mg、同注10mg及び同注15mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報 告いたします。資料は8になります。  本剤は、ソマトロピン(遺伝子組換え)を有効成分として含有するヒト成長ホルモン製剤 であり、現在は、「骨端線閉鎖を伴わない下垂体性小人症」「骨端線閉鎖を伴わないター ナー症候群」、「骨端線閉鎖を伴わない軟骨異栄養症」及び「成人成長ホルモン分泌不全 症」に対して承認されています。  今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、「骨端線閉鎖を伴わないSGA性低身 長症」について効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたも のです。  医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤の骨端線閉鎖を伴わないSGA性低 身長に対する有効性及び安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判 断いたしました。  議題3「医薬品ソマトロピンBS皮下注5mg『サンド』、及び同皮下注10mg『サンド』 の製造販売承認について」報告いたします。資料9になります。  本剤はソマトロピン(遺伝子組換え)を有効成分として含有する注射剤で、2007年にサ ンド株式会社より新有効成分含有医薬品として製造販売承認申請がなされました。医薬品 医療機器総合機構における審査の結果、本剤とジェノトロピンの品質特性に高い類似性が 認められ、両製剤の薬物動態パラメータ、薬力学パラメータ、有効性及び忍容性に大きな 違いは認められず、本剤とジェノトロピンは同等/同質であることが確認されておりま す。  したがって、本年2月の本部会にて御報告差し上げ、3月4日付けで発出いたしました 厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「バイオ後続品の品質・安全性・有効性の確保に ついて」に基づいて、本剤はバイオ後続品に該当すると判断し、ジェノトロピンの再審査 期間が満了している「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全低身長症」、「骨端線 閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長」及び「骨端線閉鎖を伴わない慢性腎不全 における低身長」の効能・効果で、承認して差し支えないと判断いたしました。  なお、事前に檜山委員より、「新有効成分含有医薬品として申請されたものの、バイオ 後続品として審査されているが、審査項目や審査過程における主な違いは何か」といった 御質問をいただいております。本品目については、申請区分は新有効成分含有医薬品でし たが、先行バイオ医薬品との同等性/同質性を説明するといった観点から、ジェノトロピ ンとの品質特性を比較した資料や臨床でのPK/PDを比較した資料などが添付されて おり、その内容について審査を進めておりました。今般、通知が発出され判断基準が明確 化されたため、それに従い、審査を行ったものでございます。なお、審査の過程としては チーム審査を行い、専門協議を経て、部会報告に至っています。  なお、資料9の2ページ目にあります備考欄の「本剤は溶解型のヒト成長ホルモン(遺 伝子組換え)製剤である」の「溶解型」を「溶液型」に訂正させていただきたいと思いま す。  続いて議題4です。「医療用医薬品の再審査結果について」まとめて報告いたします。 資料は10-1から10-5、これらはいずれも「医薬品再審査確認等結果通知書」です。資料 10-1は、一般的名称は「ツロブテロール」、販売名は「ホクナリンテープ0.5mg他」の もの。資料10-2は、一般的名称は「アセチルシステイン」、販売名は「アセチルシステ イン内用液17.6%『センジュ』」のもの。資料10-3は、一般的名称は「A型ボツリヌス 毒素」、販売名は「ボトックス注用100単位」のもの。資料10-4は、一般的名称は「コ ルチコレリン(ヒト)」、販売名は「ヒトCRH注『ミツビシ』」のもの。資料10-5は、 一般的名称は「イオヘキソール」、販売名は「オムニパーク300他」のものになります。  これらの品目について、市販後の使用成績調査、市販後臨床試験、特別調査の成績等に 基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられてい る承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認 事項について変更の必要がない「カテゴリー1」と判定したものです。  続いて、報告事項の議題5、医薬品優先対面助言品目の指定の結果について報告いたし ます。資料は11になります。  本品目は、ヤンセンファーマ株式会社から申請されたTMC435で、優先対面助言の対象 効能は「ペグインターフェロンアルファ及びリバビリンとの併用によるC型慢性肝炎及び C型代償性肝硬変(Genotype-1)のウイルス血症の改善」です。  本薬併用療法は既存療法と同程度又はそれ以上の有効性が期待できるものと判断し、安 全確保に十分な配慮をしつつ慎重に開発を進めていくことを前提として、優先対面助言品 目に指定したものです。以上です。 ○松井部会長 ありがとうございました。ただ今の報告事項について御質疑ありますでし ょうか。よろしいですか。それでは、報告事項については御確認をいただいたものとしま す。  本日の議題は以上です。事務局から何か報告があればお願いいたします。 ○事務局 ありがとうございました。次回の部会ですが、既に御案内のように7月24日 (金)、午後4時から開催させていただく予定ですのでよろしくお願いいたします。以上で す。 ○松井部会長 本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 中山(内線2746) - 1 -