09/05/28 平成20年度第9回化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会 第9回 化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会          日時 平成21年5月28日(木)          10:00〜          場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○大淵化学物質評価室長補佐 先生方お集まりになりましたので、ただいまから「第9回化学物質によ る労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」を開催いたします。本日は足元の悪い中お集まり いただきましてありがとうございます。また、事務局の不手際で会場のフロアのご案内を間違ってご 連絡しておりまして、大変ご迷惑をおかけいたしました。傍聴の方にも大変ご迷惑をおかけしました ことをお詫び申し上げます。  今日の会議ですが、本日は10名の先生方のうち5名の先生については、あらかじめご欠席というこ とでご連絡をいただいております。ご欠席の先生は、池田委員、江馬委員、名古屋委員、本間委員、 和田委員です。以上5名の先生方は、所用により欠席ということです。  それでは、以下の進行については座長の櫻井先生にお願いいたします。 ○櫻井座長 初めに、議事に先立ち、事務局から資料の確認をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料の確認をさせていただきます。資料の一覧ですが、本日は1枚目の 紙に、議事次第のあとに続いて書いております。それに沿ってご確認をお願いします。  まず、資料9-1として「平成20年度第8回リスク評価検討会の議事概要」です。資料9-2として、 「平成20年度リスク評価対象物質の評価値等」です。資料9-3として「1,2-ジブロモエタンの参考資 料」ですが、こちらは印刷物ですので、机上のみの配付としております。続きまして、資料9-4「平成 20年度リスク評価対象物質の今後の対応について」です。最後に、資料9-5「平成20年度化学物質に よる労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会報告書(案)」です。なお、資料9-5の報告書につ きましては、別冊としている個別の物質の評価書等は傍聴者の方の資料には入れておりませんが、の ちほどホームページに掲載するということでご了承いただきたいと思います。資料は以上です。 ○櫻井座長 資料は揃っているようですので、先へ進みます。今日の議題に入る前に、事務局から第8 回の議事概要の説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 資料9-1、前回の議事概要についてご説明します。日時・出席者は省略 して、3の議事概要からご説明します。  (1)第7回議事概要確認。事務局より第7回検討会の議事概要について説明した。(2)平成20年度リ スク評価対象物質の評価値について。第7回検討会において二次評価値について結論が出なかった 1,2-ジブロモエタン、及び事務局より二次評価値について再確認を求めた4,4'-ジアミノジフェニルエ ーテルについて検討を行った。20番の1,2-ジブロモエタンについてですが、第7回検討会において二 次評価値の暫定値0.5ppm(3.85mg/m3)(英国のWEL、提案理由書は入手不可)は、有害性総合評価表に 記載されている反復投与毒性の評価レベル及び生殖毒性の評価レベルよりも高いため、二次評価値に ついてさらに検討が必要であるとされていたが、二次評価値について議論するためには、これらの評 価値の根拠になったオリジナル論文や1,2-ジブロモエタンと構造類似の物質の提案理由書を参照する 必要があるとされ、これらの資料を入手した段階で再度検討することとされた。  続いてNo.14、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル。No.14の二次評価値については、第4回検討会にお いて次のような結論が得られていた。4,4'-ジフェニルメタンジアミンは、No.41と比べると中央がメチ レン基ではなく酸素なので、肝毒性は弱いが、アミンとしての毒性はほぼ同じ。アミノ基があるので、 ジフェニルエーテルより毒性は強いと予想される。ジフェニルエーテルのTLVは1ppm、4,4'-ジフェニ ルメタンジアミンのTLVは0.1ppmであり、発がん性を考慮し、4,4'-ジフェニルメタンジアミンのTLV と同じ0.1ppmを二次評価値とする。これが第4回の結論でした。  しかしながら、第7回検討会で4,4'-ジフェニルメタンジアミン(No.41)の二次評価値として、ACGIH のTLVではなく、日本産業衛生学会の許容濃度0.4mg/m3=0.05ppmを採用したが、No.14の二次評価値を No.41の二次評価値と合わせるとすると厳しくなりすぎるおそれがあるため、事務局より再確認を依頼 した。検討の結果、数値は第4回検討会の結論である0.1ppmをそのまま採用し、その理由を「発がん 性を考慮し、ジフェニルエーテルのTLVの1/10とする」に変更することとされた。  (3)平成20年度検討会報告書について。[1]平成20年度の評価対象物質の今後の対応。事務局より平 成20年度の評価対象物質対象44物質の検討概要及び今後の対応を3つのグループに分けて説明した。 1)有害物ばく露作業報告の提出があり、ばく露実態調査が実施できたもの計20物質、2)有害物ばく露 作業報告の提出があったが、事情によりばく露実態調査が実施できなかったもの計4物質、3)有害物ば く露作業報告の提出がなかったもの計20物質。  [2]平成20年度検討会報告書の総論。事務局より平成20年度検討会報告書の総論部分を説明し、おお むね了承された。  [3]平成20年度検討会報告書の初期リスク評価書。事務局より、平成20年度検討会報告書の初期リス ク評価書(1番〜9番、15番)を説明し、委員より以下の指摘を受けたことから、今後事務局で該当箇 所を修正することとなった。1番、イソプレンについて。本文及び参考1において、発がん性の根拠と してIARCの評価のみ記載されているが、EUの評価についても記載すること。物理化学的性状のうち、 換算係数の欄において温度を@付きで示しているが、@は使用せず括弧内に記載すること。単位はmg/m3 で、3が指数になっていないということで、そこを指数に修正すること。参考4において、測定方法は 何を根拠にしたのかを明記すること。例えば、NIOSHマニュアルであればその旨を示すこと。  2番、2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテルについて。測定結果のグラフ中「TLV」となってい る箇所は、「TLV-TWA」に修正すること。個人ばく露測定結果のグラフ中、二次評価値を示す線が抜け ているので、追加すること。参考4の標準測定分析法では脱着率が30.8%となっているが、実際の測 定ではどうだったのか確認すること。  3番、オルト-アニシジン。遺伝毒性の欄において、「サルモネラ菌」となっているものと「ネズミ チフス菌」となっているものがあるので、どちらかに統一すること。  4番、オルト-ニトロトルエン。参考4の保存性の欄において「活性炭管に捕集した場合」となって いるが、サンプラーの欄では「シリカゲル」となっているので、「シリカゲル管に捕集した場合」に 修正すること。  5番、2-クロロ-1,3-ブタジエン。特段の指摘なし。  6番、コバルト化合物。評価値の欄において、単位として「mg/m3」と「ppm」が併記してあるが、コ バルト化合物は蒸気圧が低いのでppmは不要であること。  7番、酸化プロピレン。特段の指摘なし。  8番、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル。測定結果の桁数が揃っていないので、有効数字を確認す ること。  9番、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタン。高速液体クロマトグラフの検出器が本文で は「DAD」と記載され、参考4では「UV」と記載されているので、どちらが正しいか確認すること。  15番、1,3-プロパンスルトン。労働ばく露は低いが、がん原性が非常に強い物質であるため、通常 の評価手順とは異なる評価を行うことについて事務局より説明し、了解が得られた。なお、報告書の 総論部分にその旨を記載することとなった。測定の定量下限を10σとしている場合と検出下限の3倍 としている場合とがあるので、統一すべきであるという指摘をいただきました。これについては、事 務局から測定方法を検討した時期の違いによってその辺りが異なっているという旨を説明しておりま す。  今後の日程ということで、第9回は本日5月28日、引き続き検討会報告書について議論するという ことです。前回の議事概要については以上です。 ○櫻井座長 ただいまの説明についてご意見、ご質問はありますか。 ○清水委員 3頁の最初の○の3番で、ネズミチフス菌かサルモネラ菌どちらかにと私は述べましたが、 厚労省からのガイドラインではネズミチフス菌が正式名称ですので、こちらに統一したほうがいいと 思います。 ○櫻井座長 ネズミチフス菌に統一することと修正していただきますか。ほかには何かありますか。  ないようですので、今日の議題に入ります。前回まで平成20年度評価対象物質の評価値を検討して きた中で、暫定値または保留になっていた1,2-ジブロモエタンについて検討を継続します。事務局か ら説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 1,2-ジブロモエタンについてですが、前回までの検討状況はただいま 議事概要でご説明したとおりで、暫定値としていたイギリスの値が場合によっては高すぎる可能性が あるということで、他の文献なども再度確認した上で、本日議論していただくことになっております。 関係する資料としては、本日は資料9-3「1,2-ジブロモエタンの参考資料」と、資料9-5の報告書関係 の中で薄いほうのクリアファイルに「有害性評価書」というのが4種類、[1]〜[4]まで入っておりますが、 その中の[3]に1,2-ジブロモエタンが入っておりますので、この2つを使ってご議論をいただきたいと 思っております。  本日新しい資料としてご用意した資料9-3ですが、どういう資料をご用意したかを簡単にご紹介しま す。  5種類のうちの最初の2つは、1,2-ジブロモエタンと構造類似の物質についてACGIHでTLVが示され ておりますので、それに関する提案理由書ということで、(1)としてブロモエタン、(2)として1-ブロ モプロパン、それぞれブロモ系の物質の資料を示しております。(1)のブロモエタンについては、数値 としては1頁にありますように、TLV-TWAとして5ppmが勧告されております。(2)1-ブロモプロパンで すが、こちらは8頁で、10ppmという値が勧告されております。  (3)〜(5)の資料については、有害性評価書の[3]という資料との関係でご用意したものです。[3]の資 料の4頁をご覧ください。エの反復投与毒性、オの生殖・発生毒性という所で、反復投与毒性について は動物実験の2種類から導いた評価値が2つ、生殖・発生毒性についてはヒトへの調査から導いた評価 レベルで1つ示されておりますが、それぞれこれらの動物実験とヒトへの調査についてオリジナルの論 文を入手して、本日(3)(4)(5)ということで付けております。(3)は13週間の吸入の試験の結果、(4)は 2週間の経口の試験結果、(5)は森林作業者の生殖能の影響調査結果です。これらの資料は、事前に先 生方に送付しておけばよかったのですが、時間の余裕がありませんで、本日初めてお配りする形にな って申し訳ございません。 ○櫻井座長 仮の評価値として候補に挙がっているのは0.5ppmで、これはイギリスのWEL(Workplace Exposure Limit)ということで、一応政府が出している数値ですね。ただし、これの提案理由書は出て いないのですか。 ○棗田(中災防) 調べた限りでは、発行されているデータが全く得られなくて、いまのところはた ぶん発行されていないのではないかと思うのです。 ○櫻井座長 一応、これは現在生きているものですね。 ○棗田(中災防) はい。向こうの、日本で言う管理濃度みたいなものに値すると思うのですが、そ れの2006年度の改正のときにもそのまま載っていますので、そのまま生きていると判断するのが妥当 だと思います。 ○櫻井座長 それに絡んで私が気になっているのは、今日配られた資料の最後のシュレーダーからの 林業作業者の生殖毒性に関する論文です。お手元の資料で30頁の左のいちばん下に、OSHAが出してい るばく露限界値は0.1ppm(100ppb)を勧告していると。NIOSHは、それよりもさらに低い0.045ppmを勧 告しているというのが引用されているのを見つけました。これは時期としてはやや古いわけですが、 いま生きているかどうか、いまの段階で確認できないのです。それが私の持っている懸念の1つです。  今日の資料は、私の手元に数日前にお届けいただいたので、一応目を通しました。第1に、エチルブ ロマイドと1-ブロモプロパンの2つの物質についてのACGIHの勧告理由が出ておりますが、これらは いずれも5ppmとか10ppmというオーダーで、近縁の化学物質ではありますが、それらの現行の許容濃 度よりは、このばく露限界値よりは、いま置いている仮の0.5ppmは十分低い数字ではあります。  ついでに、その他の臭化物の現行のACGIH、産衛等の数値を調べたところ、いま臭化エチルが5、1- ブロモプロパンが10、それ以外にメチルブロマイド、臭化メチルがACGIHが1ppm、産業衛生学会も 1ppmです。ブロモホルムは、ACGIHが0.5ppm、産業衛生学会が1ppmです。2-ブロモプロパンは産業衛 生学会で1ppmという、近縁の物質の数値です。こういった物質よりも低い数値、ブロモホルムと同じ ですが、仮の数値0.5というのはそのようなところに位置しておりますので、単純な比較から特段の問 題があるということにはならない。  ただ、1,2-ジブロモエタンについては、林業作業者での生殖毒性の論文があるというのが注目すべ き点です。ただし、経皮吸収が顕著であるとなっているのが事実かどうか、原著で確かめたところ、 それは原著で明確に書いています。一方、この論文では空気中の濃度も丁寧に調べていて、33頁のテ ーブル1にTime-weighted Averageで60ppb、0.06ppmですね。ピークが2165ppb、2.165ppm。Skin exposureがExtensiveとなっています。ですから、どうしてもこの60ppbそのものを使うわけにはい かない。でも、これよりも大きい数字なのか小さい数字なのかを判断する材料は全くない。この論文 では、Cross-sectional studyのChronic exposureが報告されていますが、これはパパイアの栽培作 業者で、ごく軽度かもしれませんが、精液のpHの低下が観察されているという報告になっています。  残りの2つの論文、14頁から始まるものと22頁から始まるものは、それぞれ有害性総合評価表に詳 録されていたものの原著ですが、その内容を見ると、14頁からの論文はReznikによるもので、有害性 評価表の4頁に書いてあるものです。これはNOELが23.1mg/m3(3ppm)吸入となっております。これは そのとおりのようで、そのデータは19頁の表2にありますが、3ppmではすべて所見が0になっていて、 15ppm、75ppmではCytomegalyとかFocal hyperplasia、Squamous metaplasia、Loss of ciliaという 影響が見られると。ですから、この実験ではNOELが3ppmとなっているというのはそのとおりです。  ここで評価レベル1が試算されているのは、種差10だけを使って6時間ばく露を8時間ばく露に修 正することによって3ppmから0.3ppm、さらにそれの8分の6で0.225ppm。ここには1.73mg/m3と書い てありますが、これはppmで0.225ppmという数字です。ラットやマウスの鼻腔の上皮に対する影響を そのまま10分の1に種差を取るという行き方は、必ずしも通常行われてはいないのではないかと。そ の点はいかがでしょうか。齧歯類は、鼻腔の粘膜に対する影響が出やすいということがあって、その 種差をさらにその10分の1と考えるという方向は、必ずしも通常行われる考え方ではないように思わ れます。これが3ppmの10分の1、さらに8分の6の0.225にするというのは必ずしも妥当かどうかが 疑問なのです。このデータを使うとしても、2.25ppmよりは低い数字が望ましいということかなとも思 われるわけです。ですから、この論文は0.5ではまずいという根拠にはならないかもしれない。  その次の論文、GHANAYEMのものですが、これもここに書いてある抄録は必ずしも正確ではありませ ん。いまはそれは省略しますが、一応40mg/kg/bwをNOAELとするのはいいだろうと。種差10、試験の 期間が短いから10で、100分の1にするということで計算された数値が2.4mg/m3。60kgの人が1日10 m3、労働環境で吸うという前提で計算された2.4mg/m3、これが0.3ppmに相当します。この0.3は0.5 より低い。  ただ、この場合も非常に特殊な実験です。要するに、胃に強制投与したとき、胃の粘膜に対する影 響が非常にはっきり出ているのですが、いろいろな物質、特に塩化物あるいは臭化物の液体を胃に投 与したとき、胃の粘膜に対して非常に強く毒性を示すことがわかっていて、吸入の毒性へ外挿するの に本当にそれで正しいのかどうかという点も疑問があります。これをそのまま使わなければならない ということにもならない気もします。どうしますか。0.5をそのまま採用しておくか、OSHAの0.1を採 用するか。 ○大前委員 OSHAの0.1は、1983年のものですね。25年ぐらい前の報告で、これがまだ残っているの かどうかを確認したほうがいいのではないでしょうか。 ○櫻井座長 そうですね。当時林業で大量に使われていたものですから、こういう数値を出したのだ と了解しております。その後、林業等でも使われなくなっているようなのです、非常に影響が大きい ということで。日本でも、おそらく農薬としての使用はないだろうと、農薬登録はされていないだろ うと思いますので、現在の用途は全く別の用途になっています。ガソリンのアンチノック剤と土壌及 び農作物の殺菌剤と、用途には書いてありますね、1,2-ジブロモエタン。  ただ、その場合における問題ではなくて、我々がいま考えているのは製造業等における使用で、そ の使用の報告は数箇所のみあったという中間的な報告を受けております。いずれにしても、いま大前 委員がおっしゃったとおり、アメリカで現在規制の値が生きているかどうか確認する必要があると思 われます。今日これだけであまり時間を使うこともできませんし、いかがでしょうか。これは今年度 評価値を決定できませんでしたが、今年度の委員会としては今日で終わりと聞いておりますので、次 年度の課題として残させていただいてよろしいでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 いま大前委員からお話を伺いました1983年のデータが生きているかの確認 ですが、その後にほかの文献が出ているかどうかという趣旨で確認すればよろしいですか。 ○大前委員 そうですね。でも、これは二次資料からやっているから、別にないですか。 ○櫻井座長 これは一応有害性評価書の二次資料から行われておりますので、問題が難しいから、最 近までのデータの収集も含めて、もう少し慎重に検討したいと思います。 ○島田化学物質評価室長 では、事務局で作業させていただきます。 ○櫻井座長 よろしいですか。それでは、そのようにさせていただきます。ありがとうございます。  次に、前回に引き続き検討会報告書について検討します。事務局から説明をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは、検討会の報告書について前回に引き続きご説明します。最 初に総論部分に当たる資料をご覧ください。厚いほうのクリアファイルに挟んでいる資料9-5という資 料が全体の総論部分になる資料ですが、前回以降先生方のご意見を踏まえての修正、事務局で気がつ いて修正した点がいくつかありますので、それをご説明します。  10頁をご覧ください。10頁は、位置づけとすると2頁から始まっているリスク評価の手法の最後の 所になります。この中で前回の議論を踏まえて修正をしたのが、10頁のいちばん最後、最終的な評価 とそれに基づく行政措置の最後になりますが、ばく露レベルが二次評価値以下の場合の取扱いをiiに 書いておりますが、その最後にただし書として加えたいと思います。読み上げますと、「ただし、ば く露レベルが二次評価値以下であっても、評価対象物質の有害性が著しく高い場合又はそのおそれの ある場合の措置については、この方針に拘わらず、個別に判断することとする」ということの記載で す。  これを加える趣旨は、原則としてはiiに書いてあるとおり、ばく露レベルが二次評価値よりも低い 場合の対応については、基本的には個々の事業者でのリスク評価による管理を促進するということで すが、平成20年度に議論していただいた中で、1,3-プロパンスルトンという非常に発がん性が強い、 動物ですと1回投与しただけでもがんができるような物質もありましたので、そのような物質について ほかのものとは少し異なる取扱いをする必要があるのではないかという議論を前回しました。今後も こういったものが出てくる場合がありますので、それを想定した形を考え、特に著しく有害性が高い ものについては、一般ルールとは違うルールで個々に判断する必要があるという記載を加えておりま す。  次に14頁、「リスク評価結果の概要及びまとめ」です。今回大きく追加をしたのが、14〜16頁の真 ん中までアンダーラインを引きましたが、リスク評価の進捗状況を加えました。前回は、16頁の真ん 中から下の初期リスク評価の関係のことだけを書いていたのですが、今年度は当初44物質ということ でスタートし、最終的には初期リスク評価まで行ったのが20物質だけでしたが、全体の動きがもう少 しわかるように記載したほうがいいのではないかということで、事務局のほうで追加しました。簡単 にご説明すると、リスク評価の進捗状況ということで、上記3により選定された44物質について、平 成20年1月から3月に製造・取扱い事業者に有害物ばく露作業報告書の提出を求めたところ、24物質 については提出があり、20物質については提出がなかった。また、報告書の提出のあった24物質のう ち、平成20年度にばく露実態調査を実施したものが20物質、事情によりばく露実態調査を実施できな かったものが4物質であった。以上を整理すると、平成20年度の評価対象44物質は次の3つのグルー プに分けられ、下記の表ではどの物質がどのグループに該当するのかを示す。[1]有害物ばく露作業報 告の提出があって、ばく露実態調査を実施したものが計20物質、[2]作業報告の提出はあったが、事情 によりばく露実態調査を実施できなかったもの計4物質、[3]有害物ばく露作業報告の提出がなかったも の計20物質ということで、44物質について[1][2][3]のどれに該当するかをそれ以降の表で示しておりま す。  表の説明は個々にはしませんが、表のあと、15頁の下に「また、3グループそれぞれのリスク評価の 進捗状況は次のとおりである。グループ[1]の物質については、平成20年度に初期リスク評価(有害性 評価+ばく露評価)を終了した。20物質のうち7物質については、今後、詳細リスク評価を行うことと しており、このうち『10 コバルト及びその化合物(塩化コバルト及び硫酸コバルトに限る。)』につ いては、今後は対象範囲を広げて『コバルト及びその化合物』として評価を行うこととする。グルー プ[2]の物質については、平成20年度に有害性評価のみ終了したことから、平成21年度以降、ばく露評 価を行うこととしている。グループ[3]の物質については、有害物ばく露作業報告による事業場把握が できなかったことから、平成21年度以降、業界団体を通じて、製造・取扱い事業場の有無を確認した 上で、必要な評価を行うこととしている。なお、グループ[3]の物質のうち『43 リン化インジウム』に ついては、今後は対象範囲を広げて『インジウム及びその化合物』として評価を行うこととする。な お、本報告書では、グループ[1]の20物質及びグループ[2]の4物質の評価書を別冊として添付しており、 このうちグループ[1]の20物質の評価結果の概要を下記(2)に示している」。  (2)(3)は、基本的には前回と同様ですが、1カ所だけ修正している所があります。17頁のエでアンダ ーラインを引いた所ですが、こちらは測定結果が一次評価値以下であった物質についての記載です。 もともとの記載については、「リスクは低いため、各事業場において引き続き適切な管理を行うべき である」という書きぶりだったものを、「リスクは低いと考えられるが」と、少し表現を改めており ます。これは先生方から前回の検討会以降ご意見をいただいたところです。総論部分の前回からの変 更点については以上です。説明はここで一区切りしたいと思います。 ○櫻井座長 総論部分については、何かお気づきの点はありますか。 ○大前委員 非常にマイナーなところですが、17頁のウの物質のところで、4,4‘-ジアミノジフェニ ルエーテルなどと、「'」が逆転していますが、これは何らかの形で。 ○櫻井座長 これはよくこうなっているのですが、できれば逆転を直していただきたいと思います。  次に、前回未検討分の初期リスク評価書の検討に入ります。順次行いたいと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 前回ご議論いただいたものを申し上げますと、初期リスク評価書が[1] から[20]までありますが、このうちの[1]〜[9]と[15]の1,3-プロパンスルトンの計10物質について前回ご議 論をいただいております。評価書については、前回ご議論いただいてその中で意見の出たものについ ては、先ほど議事概要のところで説明しましたように適宜修正をしておりますが、まだ若干修正が終 わっていない所があります。例えば、評価書の最後の頁にあります測定方法の関係の所ですが、表を まとめるにあたってどの測定方法を参考にしたかという、根拠となる測定方法についてはまだ確認中 で、この資料には反映されておりません。最終報告書を出すまでに、その点については固めて修正し たいと思っております。  それ以外のところでは、先ほど清水委員からお話が出た「サルモネラ菌」と「ネズミチフス菌」と いう表現ですが、今回は事務局ではネズミチフス菌と書いて、一般的にもわかりやすいようにという ことで、(サルモネラ菌)という表現も入れております。そのような形で修正しております。  前回ご議論いただいたものについては、改めて個々に修正点はご説明せず、今回新しく見ていただ くもののご説明から入ります。[10]2,4-ジアミノトルエンですが、前回と同じように全部の頁ではなく、 ポイントとなる所を中心にご説明します。  1頁です。こちらの物質については、「物理的性状等」の中では物理化学的性状が無色の結晶という もので、(3)の生産・輸入量、使用量、用途はこちらに書いているような形で、用途としてTDI原料・ 染料の中間体というものです。  2「有害性評価」ですが、発がん性の評価ではIARCで2B、EUでは2という分類がされております。 検討会としての評価値ですが、2頁の(4)評価値にありますが、一次評価値として0.46μg/m3、二次評 価値としては米国の産業衛生協会の0.005ppm、0.025mg/m3を採用しております。  3「ばく露実態評価」です。有害物ばく露作業報告の提出状況ですが、この物質については合計6事 業場から7作業について報告が出されております。従事労働者数は延べで137人、取扱量の合計は約 16万トンです。報告のあった7作業のうち、月の作業時間が20時間以下のものが100%、局排の設置 がなされている作業が57%、防毒マスク着用がなされている作業も57%ということです。  (2)ばく露実態調査結果ですが、測定方法については個人ばく露、作業環境測定、いずれも捕集剤に ポンプを使用して捕集ということで、分析法としてはガスクロマトグラフ質量分析法を用いておりま す。測定結果ですが、4事業場に対しての測定をしており、個人ばく露は6人の労働者に、作業環境測 定のA測定のほうは2単位作業場について、スポット測定は7地点について行っております。測定値で すが、個人ばく露測定はすべて定量下限値である0.0005ppm未満、A測定も定量下限値未満、スポット 測定もほとんどの値が定量下限値未満でした。  4「リスクの判定及び今後の対応」です。「2,4-ジアミノトルエンの個人ばく露測定、A測定、スポ ット測定のいずれも定量下限値未満であり、その定量下限値が一次評価値よりも高く二次評価値より も低い。このため、これらの測定値が一次評価値を超えているか否かは不明であるが、二次評価値以 下であることは明らかである。以上のことから、2,4-ジアミノトルエンの製造・取扱い事業場におけ るリスクは高くないと考えられるが、当該物質は有害性の高い物質であることから、事業者において リスク評価を実施し、引き続き適切な管理を行う必要がある」ということで、測定結果のデータを3頁 の下に表として付けております。その後ろは参考資料で、有害性評価書関係、あるいは有害物ばく露 作業報告の内容、最終頁には測定方法をお示ししています。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何か指摘事項がありましたらどうぞ。 ○大前委員 測定方法で「捕集剤にポンプを使用して」とあるのですが、いちばん後ろの分析を見る と、サンプラーは「ミゼットインピンジャー」になっているのです。これは矛盾ですね。 ○棗田(中災防) ミゼットインピンジャーは、実際の調査では使っていません。18〜19頁を見てい ただくとわかると思いますが、硫酸含浸フィルターでとっていて、トリレンジイソシアネートが共存 している場合だけミゼットインピンジャーでとっているので、今回の場合はそういう所がなかったの で、全部硫酸含浸フィルターになっています。 ○大前委員 わかりました。 ○櫻井座長 特段の指摘事項はないようですので、この物質についてはよろしいですか。それでは、 次に進みます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 次は、[11]1,4-ジクロロ-2-ブテンになります。物理化学的性状等ですが、 無色ないし褐色の液体ということで、用途はヘキサメチレンジアミン、クロロプレン製造の中間体と いうことです。2「有害性評価」については、発がん性としてACGIHでA2、EUでは2という形で評価が されております。  2頁です。本検討会における評価値が(4)ですが、一次評価値として6.3×10-5ppm、二次評価値とし て0.005ppmで、これはACGIHのTLV-TWAを採用しております。  3「ばく露実態評価」です。有害物ばく露作業報告の状況ですが、報告があったのは1事業場で、そ こから2つの作業について報告されています。従事労働者数は66人、取扱い量の合計は約3,200トン です。作業時間ですが、2作業とも月20時間以下で、局所排気装置は設置されておりません。また、 防毒マスクはどちらの作業でも使用されているということです。  ばく露実態の調査結果ですが、測定分析法についてはいずれの測定も捕集剤にポンプを使用して補 集ということで、分析法としてはガスクロマトグラフ質量分析法を用いております。測定結果ですが、 報告のあった1事業場について実際に測定をしたということで、2人の労働者に対する個人ばく露測定、 1単位作業場においてA測定、4地点についてスポット測定を実施しております。個人ばく露測定結果 の幾何平均値、これは8時間の幾何平均値になりますが0.0035ppm、最大値は0.0177ppm、A測定の幾 何平均値が0.0020ppm、最大値は0.0035ppm、スポット測定の幾何平均値は0.0037ppm、最大値は 0.0184ppmです。  4「リスクの判定及び今後の対応」ですが、この物質については、「A測定は一次評価値を超えてい たもののすべて二次評価値以下であったが、個人ばく露測定では2人中1人が二次評価値を超えていた。 また、スポット測定でも二次評価値を超えていた。個人ばく露測定が二次評価値を超えたのは、1,4- ジクロロ-2-ブテンを製造しこれを合成ゴムの原料として使用する工程でのサンプリング作業であった。 以上のことから、1,4-ジクロロ-2-ブテンの製造・取扱い事業場におけるリスクは高いおそれがあるた め、今後、さらに詳細なリスク評価が必要である」ということで、測定結果について4頁にグラフと表 をお示ししております。データとしては少ないのですが、個人ばく露測定で2人のうち1人が二次評価 値を超えているという状況です。5頁以下については、参考資料ということで添付しております。 ○櫻井座長 何か指摘事項はありますか。 ○大前委員 同じ1頁の下から5行目ぐらいに、「4×10-2(上界7×10-2)」とありますが、「上界」 というのは何でしょうか。95%上限値みたいな意味でしょうね。 ○櫻井座長 95%信頼区間の上限ということなのかなと思いますが。 ○大前委員 評価表の6頁も確かに「上界」と書いてあるので、たぶんペーストされたと思うのです。 ○櫻井座長 「上限」に直しますか。「上界」は使わないですね。 ○大前委員 14頁には「上限」と書いてありますので、どこかで字が変わってしまったのかもしれな いので。 ○櫻井座長 では、「限」に直して。ほかには特段、ご指摘事項はないようです。先へ進んでよろし いでしょうか。では先へ進みたいと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そうしましたら、次が[12]2,4-ジニトロトルエンになります。それでは 説明いたします。  2,4-ジニトロトルエン、こちらは特徴的な臭気のある黄色の結晶です。用途としましては、有機合 成及び染料ということです。有害性の評価としまして、発がん性につきましては、IARCでは2B、EUで は2と分類がされております。本検討会としての評価値が、2頁にまいりまして、一次評価値、0.0055 mg/m3、二次評価値、0.2mg/m3で、こちらは、ACGIHのTLVを採用しております。  ばく露実態評価ですが、まずばく露作業報告です。この物質については、合計、8事業場から10作 業について報告がなされており、従事労働者数が104人、取扱量としては、約7.1万トンということで す。報告のあった作業のうち作業時間としては、月20時間以下が90%、局排の設置が90%、防毒マス クの着用が40%という状況です。  続いてばく露実態調査結果です。測定分析法としては、いずれの測定でも捕集剤にポンプを使用し て捕集をしております。分析法は、ガスクロマトグラフを採用しております。測定結果ですが、2つの 事業場に対して6人の労働者に対する個人ばく露測定、5単位作業場においてA測定、7地点について スポット測定を実施しております。  まず個人ばく露測定です。8時間TWAの幾何平均値は0.0055mg/m3、最大値は2.650mg/m3、A測定で は、定量下限値を超えた単位作業場につきまして幾何平均値をとりますと0.3860、最大値は1.1100と いうことです。また、スポット測定につきましては、幾何平均値が4.5832、最大値が21.1200という ことです。  4番のリスクの判定及び今後の対応ということです。2,4-ジニトロトルエンについては、個人ばく露 測定、A測定、スポット測定のいずれにおいても、二次評価値を大きく超えるばく露が認められた。個 人ばく露測定では、6人中1人が二次評価値を超えており、A測定では、5単位作業場中1単位作業場 において幾何平均値が二次評価値を超えていた。個人ばく露測定が二次評価値を超えたのは、2,4-ジ ニトロトルエンを原料として他の製剤を製造する工程での2,4-ジニトロトルエンの粉砕作業等であっ た。以上のことから、2,4-ジニトロトルエンの製造・取扱い事業場におけるリスクは高いおそれがあ るため、今後、さらに詳細なリスク評価が必要である。ということで、測定結果のグラフと表が次の4 頁ということです。  二次評価値のラインを超えているのが個人ばく露で1人ということで、測定のほうでも、1単位作業 場で超えております。5頁以下については参考資料ということです。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何かご指摘事項がありましたらどうぞ。 ○大前委員 いちばん最後、20頁の図ですが、これはジニトロトルエンですから、まず構造式が間違 っているのではないですか。ニトロ基が2個あるはずなのですが。 ○櫻井座長 そうですね。 ○大前委員 ええ。それからACGIH、混合物質としてとありますが、これはたぶんの全異性体としてだ と思います、混合物質ではなくて。異性体がたくさんあるので。 ○櫻井座長 全異性体。 ○大前委員 はい。その下に「混合物質名」と書いてありますが、これはたぶん異性体名だと思うの です。 ○櫻井座長 なるほど、そうですね、全異性体の混合物質という。 ○大前委員 ええ。 ○櫻井座長 ありがとうございました。このCH3は1つでいいのですね。 ○大前委員 ええ。 ○櫻井座長 それでニトロ基のほうが2つ。 ○大前委員 2つです。 ○櫻井座長 大したことではないのですが、1頁の用途の書き方が何かちょっと。これ、8頁にも同じ 文がありますが、有機合成及び染料。括弧閉じの位置が違うのですか。何かちょっとわかりにくかっ たですが。 ○大前委員 いまの用途のところは、これ、メチル基が付いているものからニトロアニリンはできる のかな。これ、もう一度用途を確認されたほうがいいのではないかという気がします。 ○櫻井座長 何となく。確認できればしていただきたい。ほかに何かございますか。よければ先へ進 めます。では、次をお願いします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、[13]のジメチルヒドラジンです。まず1頁からです。刺激臭 のある無色の発煙性で、吸湿性の液体。空気にばく露すると黄色になるということです。用途としま しては、合成繊維・樹脂安定剤、医薬・農薬原料、ミサイル推進剤。すみません、界面活性剤の 「界」という字が「海」になっておりますが、境界線の「界」という字です。それ以外にも、ジェッ ト燃料、ロケット燃料の成分等々の用途があります。  有害性評価です。発がん性につきましては、ジメチルヒドラジンのうち、メチルの位置が1,1-の位 置に付いているものについては、IARCで2Bの評価、1,2-の位置に付いているジメチルヒドラジンにつ いては、IARCで2Aの評価です。EUにおきましては、どちらの場合につきましても、2というふうに評 価がされております。  続きまして、2頁の評価値です。一次評価値につきましては、こちらの物質は発がん性としては閾値 がない物質ですが、ユニットリスクに関係するような情報がないということで、一次評価値について は設定せずということです。それから、二次評価値につきましては0.01ppmということで、こちらは ACGIHのTLVを採用しております。  続いてばく露実態評価です。まずばく露作業報告ですが、こちらは3事業場から4つの作業について 報告がなされており、労働者数が52人、取扱量が約34トンということです。4作業のうち、月20時 間以下の作業が75%、局排の設置が75%、防毒マスクの着用も75%です。  続いてばく露実態調査結果です。まず測定分析法ですが、いずれも捕集剤にポンプを使用して捕集 ということで、分析法としましては、高速液体クロマトグラフ法での分析です。  この測定結果ですが、測定は2つの事業場について行っており、この中で8人の労働者について個人 ばく露測定、2単位作業場においてA測定、3地点についてスポット測定を実施しております。個人ば く露測定結果の8時間TWAの幾何平均値につきましては0.0616ppm、最大値が0.6410、A測定の幾何平 均値が0.0337、最大値が1.5435、スポット測定については、幾何平均値が0.9938、最大値が3.9000 ということです。  リスクの判定及び今後の対応です。個人ばく露測定、A測定、スポット測定のいずれにおいても、二 次評価値を大きく超えるばく露が認められた。個人ばく露測定では、8人中6人で二次評価値を超えて おり、A測定では、2単位作業場中1単位作業場において幾何平均値が二次評価値を超えていた。個人 ばく露測定が二次評価値を超えたのは、ジメチルヒドラジンの製造工程における仕込み作業や、ジメ チルヒドラジンを原料として他製剤を製造する工程における仕込み作業等であった。以上のことから、 ジメチルヒドラジンの製造・取扱い事業場におけるリスクは高いおそれがあるため、今後、さらに詳 細なリスク評価が必要であるということです。  測定結果のグラフと表が次の4頁です。これを見ますと、特に個人ばく露測定では、非常に多くの作 業者で二次評価値を超えております。5頁以下は参考資料ということで、この物質については以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。特段のご指摘はないと。はい。 ○内山委員 先ほどの総合評価のところ、資料9-5の12頁には「ジメチルヒドラジン2A」と書いてあ るのですが、IARC分類で。こちらは、IARCで1,1-ジメチルヒドラジンは2Bと書いてあるのですが、 これはそれでよろしいですか。 ○大淵化学物質評価室長補佐 ジメチルヒドラジン。 ○内山委員 1,2-のほうがですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。法令の上では、ジメチルヒドラジンという言葉で法令上書いて おります。その法令の意味としては、1,1-も1,2-も両方を含むという意味で法令上はなっております。 実際、今回いろいろ資料を集めたところでは、1,1-のほうが情報が多くあり、1,2-のほうはあまりな いというような状況で、実際、現場の測定のほうも、扱っていたのはすべて1,1-だったかと思います。  資料5の総論のところで2Aとなっておりますのは、1,2-と1,1-で、評価のほうが高い2Aのほうを 書かせていただいたということで、本当でしたら、それぞれ分けて、1,1-は2Bで、1,2-が2Aと書いた ほうが適切だったかと思います。 ○櫻井座長 そうですね。1,2-ジメチルヒドラジンについては、では、評価はまだできないというこ とになるのですか。1,1-と1,2-と分けて報告を求めたのでしたっけ。 ○大淵化学物質評価室長補佐 報告上は特に分けずに、項目としてジメチルヒドラジンということで 事業場から報告を求めておりました。少なくとも測定の対象となった事業場については、1,1-のほう の取扱いだったかと思います。 ○櫻井座長 そこをどう取り扱うか。1,2-は報告がなかったということになるのかどうかですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そちらについても、作業報告をいただいた所が全部で3事業場で、測定 のほうは2事業場でしたので、残り1事業場についてどちらを取り扱っているかということは、確認す ることは可能かと思います。 ○櫻井座長 そうですね、そういう課題が1つ、いまご指摘を受けて感じました。その結果に応じて整 理していただければと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 わかりました。では、事業場に確認をした上で、整理をさせていただ きます。 ○櫻井座長 はい。ほかには何かございますか。ないようですので先へ進めます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、[14]、ヒドラジンです。まず性状等ですが、刺激臭のある 無色で、発煙性かつ吸湿性の液体ということです。こちらの資料ではヒドラジンの中でも、特に注意 書を付けていなければ無水のヒドラジンのデータということで記載しております。  用途ですが、無水ヒドラジンは、ロケット燃料、エアーバッグ用起爆剤、一水和物・一水加物につ きましては、プラスチック発泡剤製造、清缶剤、水処理剤、還元剤、重合触媒、各種誘導体、試薬、 農薬というような用途があります。  有害性評価です。発がん性につきましては、IARCでは2B、EUでは2と評価がされております。2頁 にまいりまして、本検討会としての評価値です。一次評価値につきましては、7.6×10-5ppm、二次評価 値につきましては、こちらについては候補としてはACGIHの0.01と日本産衛学会の0.1ppmと2つあり ましたが、最終的には、日本産衛学会のほうの許容濃度を採用いたしまして0.1ppmとしております。  続いてばく露実態評価です。まずばく露作業報告の状況ですが、合計179事業場から報告をいただい ており、この中には無水のヒドラジンと一水和物と両方が含まれている形になっております。ちょっ と法令の話になりますが、法令上は、先ほどのジメチルヒドラジンの場合とは違いまして、ヒドラジ ンという無水を表すものとヒドラジンの一水和物というのは、項目上分かれております。私どもは、 ばく露作業報告を求めるとき、当初、ヒドラジンというふうに無水のほうを表して告示をしたわけで すが、その後、関係者への連絡としては、水和物も含んだ形で報告をしてほしいということでお願い をしており、結果的には、報告としては無水のものと一水和物と両方とも上がってきているというよ うな状況です。それが、合計が179事業場ということで、452作業について報告がされております。従 事労働者数の合計が5,646、取扱量の合計が約6,700トンということです。452作業のうち、作業時間 が月20時間以下が94%、局排の設置が42%、防毒マスクの着用が42%ということです。  続いてばく露実態調査結果です。まず測定分析法としましては、いずれも、捕集剤にポンプを使用 して捕集、分析法は高速液体クロマトグラフを用いております。測定結果ですが、実は最終的に測定 の対象となりましたのは、すべてヒドラジンの一水和物の取扱い事業場ということで、12事業場に対 して測定をしており、33人の個人ばく露測定、16の単位作業場でのA測定、31地点でのスポット測定 を実施しております。個人ばく露測定の幾何平均値は0.006ppm、最大値は0.2264ppm、A測定での幾何 平均値が0.0046、最大値が0.3638、スポット測定の幾何平均値が0.0847、最大値が2.0329というこ とです。  ヒドラジンについてのリスクの判定及び今後の対応です。ヒドラジンについては、個人ばく露測定 の最大値は二次評価値を超えているが、当該値を8時間TWAに換算した場合には二次評価値以下である。 また、A測定の最大値も二次評価値を超えているが、これは1つの測定点での結果ということですので、 当該値は観測された単位作業場の幾何平均値をとりますと、こちらは二次評価値以下である。スポッ ト測定でも最大値は二次評価値を大幅に上回っているが、当該値は非常に短時間の作業において観測 されたものである。以上のことから、ヒドラジンの製造・取扱い事業場におけるリスクは高くないと 考えられるが、当該物質は有害性の高い物質であることから、事業者においてリスク評価を実施し、 引き続き、適切な管理を行う必要があるということです。  グラフとデータが次の4頁です。まずグラフのほうです。上が個人ばく露測定ですが、いちばん右側 のデータ番号の31番を見ていただきますと、高いものが二次評価値である0.1ppmを大きく超えており ますが、これは実測した時間での平均の濃度ということで、それを8時間の平均濃度ということに直し ますと、31番のグラフの右側、黒い棒のほうがその8時間平均に直した値ということで、こちらは二 次評価値は超えていないということです。  下のA測定の結果ですが、これは、個々の測定点のデータではなくて、単位作業場ごとに幾何平均値 をとった値ということです。単位作業場ごとの幾何平均値をとりますと、このように、いずれも二次 評価値以下となっております。5頁以下につきましては参考の資料ということです。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか、何かございますか。 ○清水委員 先ほどの1,1-ジメチルヒドラジンの回収率が32〜36%に対して、今回のこのヒドラジン が83〜87%というふうに、測定方法がほとんど同じなのですが、この違いは何なのですか。 ○棗田(中災防) メチル基が邪魔をしている、妨害するようなのです。ここについては、ただ32〜 36%で何枚やっても安定的で、どうやらこのメチルの部分でうまくいかないというのが、一応そうい うデータなのですが。NIOSHかOSHAか私もはっきり覚えていないのですが、これの回収率はもう少し いいのです。ここが何でこうなるのかがちょっと、うちのほうでもいろいろ、pH等も変えてやってみ てはいるのですが、仮に測定法として今後やっていくにしては回収率がちょっと低すぎるので、こち らについては、再度検討が必要だと思われます。 ○小西委員 NIOSHのものはおそらくバブラーを使っているので、フィルターではないと思います。こ れは、こっちの1,1-と普通のヒドラジンは、両方とも、たぶん同じようなやり方でやはりやっている のです。だからそこの方法、この含浸フィルターを使われたというのは、なぜそれを使われたのかな というのはよくわからないので、いま私も気になっていたのです。前回もやりましたよね、回収率が すごく低いところで計測されたデータでいまの評価値のところを超えた・超えないという議論をして いくとちょっと厳しいかなという気はしているのですが。  もう1つは、この計測のところで必ずNIOSHとかの方法の場合はマックスボリュームというのが決ま っているのです、化学反応とかをやる場合に。例えばこの定量下限で採気量480Lと、これ、計算上は 出てくると思うのです。しかし、NIOSH法でいくと、これは両方ともマックスが100Lなのです。100 Lマックスボリュームになっていますから計算上ではこういう定量下限の数字は出てきますが、実際 の計測としては、それ以上を超えると何らかの反応源になるなどというようなことがあるのでそのよ うに決められているのだと思うので。これ、保存性とか要検討と書いてあるので、もう少し検討した ほうがいいのかなという気がします。 ○棗田(中災防) そうですね。実は、昨年度からはマックスボリュームを書く場合にマックスボリ ュームで引いた部分できちんと回収率を検討するという形に切り替わっていますので、この辺の年度 がちょっと古い、検討が年度が古くてそういった取決めがまだ不十分だった点があるのは確かにそう だと思います。ですから今後のものについては、こういった回収率のものは基本的には出てこないと は思います。大変申し訳ございません。 ○小西委員 いや、おそらくこういう形で出てくると、実際、我々のところには計測法の問合せがす ごく来るのです。ですからここのところは、逆に言うと、これをやっていくためにはすごく重要なポ イントになってくるので、そういうことが使えるような形でいろいろ検討してもらうとありがたいと 思います。 ○棗田(中災防) そうですね。 ○櫻井座長 したがって、ジメチルヒドラジンのほうの問題ですよね。 ○清水委員 はい。 ○櫻井座長 そうですね。ヒドラジンにつきましてはよろしいでしょうか。では、先へ進みます。次 は1,3-プロパンスルトン。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それは前回終了しておりますので。 ○櫻井座長 終了しておりますので、次ですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、[16]にまいります。ベンゾ[a]アントラセンです。ここから似た ような物質が3物質続いております。  まず[16]のベンゾ[a]アントラセンです。物性からですが、無色から黄茶色の蛍光性薄片または粉末 ということです。  用途としましては、単品としての工業的生産はなく、コールタール系重質油の成分として存在する のみと考えられるということです。  有害性評価ですが、発がん性については、IARCで2A、EUでは2と評価されております。  次の頁にまいりまして、この検討会としての評価値です。一次評価値が0.0045mg/m3、二次評価値に ついてはなしということで、具体的には、職場における定量下限値を超える濃度が測定された場合に は詳細な検討を行うとしており、結果的に、これから説明しますが、定量下限値を超えるような濃度 は測定されなかったというような状況です。  続いてばく露実態評価ですが、まずばく露作業報告です。こちらについては、4事業場から13作業 について報告がなされており、労働者数が432人、取扱量が約4,300トンです。13作業のうち、月20 時間以下という作業が92%、局排の設置が38%というようなことです。  ばく露実態調査結果です。まず測定分析法としましては、こちらも捕集剤にポンプを使用して捕集 ということで、分析法はガスクロマトグラフ質量分析法を用いております。  測定結果ですが、2つの事業場に対して測定をしております。6人について個人ばく露測定、3単位 作業場においてA測定、14地点についてスポット測定を実施しております。個人ばく露測定、A測定、 スポット測定のいずれにおいても定量下限値未満ということで、正確な濃度は不明です。それぞれの 定量下限値がそちらに書いてあるようなことで、0.0006、0.005、0.0167がそれぞれの定量下限値とい うことで、これよりも低い濃度ということです。  リスクの判定及び今後の対応ということです。ベンゾ[a]アントラセンについては、このように、 個人ばく露、A測定、スポット測定、いずれにおいても定量下限値未満であった。このうち個人ばく露 測定については、定量下限値は一次評価値よりも低いことから、個人ばく露測定値は一次評価値以下 である。以下のことからベンゾ[a]アントラセンの製造・取扱い事業場におけるリスクは低いと考え られるということです。4頁以降につきましては参考資料です。以上です。 ○櫻井座長 何か問題はございますか。ないようですので次へ進みます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして[17]、ベンゾ[a]ピレンです。まず1頁からですが、こちら には、淡黄色から黄色の結晶または粉末ということです。こちらも、用途としましては、コールター ル処理、石油精製、頁岩油精製、石炭及びコークス処理、灯油処理、熱発生及び火力発電等より発生 するということで、これを目的として生産しているということではなくて、ほかの作業をするときに 副次的に発生するというようなものです。  有害性評価ですが、発がん性はIARCで1、EUで2と評価がされております。  2頁に行きまして、評価値です。一次評価値は、5.5×10-6mg/m3、二次評価値については、これも先 ほどのベンゾ[a]ピレンと同様の設定で、こちらも測定結果は、これから説明しますように、定量下 限値を超えるようなものはなかったということです。  続いてばく露実態評価ですが、ベンゾ[a]ピレンのばく露作業報告が合計7事業場から17作業につ いてなされております。従事労働者数が540人、取扱量の合計が約3.96万トンです。17作業のうち、 月20時間以下の作業が88%、局排の設置が41%、防毒マスクの着用が86%です。  次のばく露実態調査結果ですが、測定方法は先ほどのベンゾ[a]ピレンと同じような測定方法で、 後ろに付けております詳細な測定方法につきましても、ベンゾ[a]ピレンも、アントラセンのほうと 同じ形です。  測定結果ですが、こちらは3つの事業場について測定をしております。10人の個人ばく露測定、3単 位作業場でのA測定、19地点についてスポット測定を実施しております。いずれの測定においても定 量下限値未満ということで、正確な濃度は不明ですが、それぞれの定量下限値が0.0006mg/m3、0.01、 0.05となっております。  リスクの判定及び今後の対応ということです。ベンゾ[a]ピレンについては、個人ばく露測定、A 測定、スポット測定のいずれにおいても定量下限値未満であった。以上のことから、ベンゾ[a]ピレ ンの製造・取扱い事業場におけるリスクは低いと考えられるということでした。4頁以降につきまして も、また参考資料です。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。特にご指摘がないようですので先へ進みます。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして[18]、ベンゾ[e]フルオラセンです。1頁からですが、こち らは無色の結晶です。用途という所では、これまでの2物質同様で、工業製品として作られるものでは ないというようなものです。  有害性評価としましては、発がん性について、IARCで2B、EUで2と評価がされております。  2頁にまいりまして評価値ですが、一次評価値が0.0045mg/m3、二次評価値については、こちらも設 定なしということです。  3のばく露実態評価です。まずばく露作業報告につきましては、合計4事業場から13作業について 報告がなされております。作業従事労働者数が432人、取扱量の合計が約1.25万トンということです。 13作業のうちの作業時間、月20時間以下というのが92%、局排の設置が36%ということです。  次のばく露実態調査結果ですが、測定方法につきましては、これまでの2物質と同じです。  結果ですが、この物質を取り扱っている2事業場に対して測定をしております。6人の個人ばく露測 定、3単位作業場でのA測定、14地点についてスポット測定を実施しております。  測定結果です。いずれにつきましても、定量下限値未満ということで、正確な濃度は不明ですが、 それぞれの定量下限値が、0.0006mg/m3、0.005mg/?、0.0167mg/m3ということです。  リスクの判定及び今後の対応ということです。ベンゾ[e]フルオラセンについては、個人ばく露測 定、A測定、スポット測定のいずれにおいても定量下限値未満であった。このうち個人ばく露測定につ いては、定量下限値は一次評価値よりも低いことから、個人ばく露測定は一次評価値以下である。以 上のことから、ベンゾ[e]フルオラセンの製造・取扱い事業場におけるリスクは低いと考えられると いうことです。4頁以下が参考資料です。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○内山委員 この3物質なのですが、測定結果の所に、いずれも「製造し、又は取り扱っている」と書 いてあるわけです。この3物質は製造するということはないのではないかと思うのでちょっと。ここだ け、決まりきった文句で書いている場所だと思うのですが、「取り扱っている」とか、それだけにし ておいたほうがいいかなと思います。 ○櫻井座長 そうですね。 ○内山委員 3物質ともそうですね、……。 ○櫻井座長 製造はしないわけですから。「用途。工業製品として作られる物ではない」と書いてあ りますし。 ○内山委員 最後の……。 ○櫻井座長 この3つの物質、いずれもそうです。そこの表現、「製造し」というのを省くという。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それは表現を検討いたします。 ○櫻井座長 ありがとうございました。ご指摘、ありがとうございました。ほかに何かありますか。 ないようですので、では次、[19]。 ○大淵化学物質評価室長補佐 [19]の4,4'-メチレンジアニリンです。まず1頁からですが、特徴的な臭 気のある無色から淡黄色の薄片ということで、用途は、エポキシ樹脂の硬化剤、染料中間体です。  有害性評価ですが、発がん性につきましては、IARCで2B、EUでは2という評価がされております。  2頁にまいりまして、この検討会での評価値です。一次評価値が0.0011mg/m3、二次評価値としまし ては0.4mg/m3で、これは日本産業衛生学会の許容濃度を採用しております。もともとの候補値として はACGIHの値もありましたが、この場合、低いほうの産衛学会の値を採用しております。  続いてばく露実態評価ですが、こちらは29事業場から59の作業について報告がなされております。 労働者数が700人、取扱量の合計が16.1万トンです。59作業のうち、作業時間が月20時間以下とい うのが75%、局排の設置が86%、防じんマスクの着用が58%ということです。  続いて、ばく露実態調査結果です。まず測定分析法ですが、いずれにつきましても、捕集剤にポン プを使用して捕集しております。分析法としては、高速液体クロマトグラフを採用しております。  測定結果です。今回は、6事業場について測定をしており、17人が個人ばく露測定、11単位作業場 でA測定、19地点についてスポット測定を実施しております。個人ばく露測定の幾何平均値につきま しては、0.0004mg/m3、最大値が0.0108mg/m3、A測定の幾何平均値が0.0036、最大値が0.0090、スポ ット測定の幾何平均値が0.0207、最大値が0.2800ということです。  リスクの判定及び今後の対応です。4,4'-メチレンジアニリンについては、個人ばく露測定、A測定 について一次評価値を超えていたが、すべて二次評価値以下であった。また、スポット測定において も同様であった。以上のことから4,4'-メチレンジアニリンの製造・取扱い事業場におけるリスクは高 くないと考えられるが、当該物質は有害性の高い物質であることから、事業者においてリスク評価を 実施し、引き続き、適切な管理を行う必要があるということです。測定結果のグラフと表が次の4頁と いうことです。一次評価値と二次評価値の間に入っているものがこのように見られるというようなこ とです。5頁以下が参考資料です。説明は以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか、何かございますか。 ○大前委員 用途ですが、これはMDIの製造原料というのがいちばん多いのではないですか。 ○櫻井座長 それが書いていないわけですね。 ○大前委員 ええ。 ○櫻井座長 MDI。 ○大前委員 イソシアネートですね。 ○櫻井座長 メチレンジイソシアネートです。 ○大前委員 さっきの2,4-TDAがTDIの原料であるのと同じように、これはMDIの原料ですよね。 ○櫻井座長 そうですね。用途の所にそれを追加記入しておいたほうが正確です。ほかに何かありま すか。ないようですので先へ進みたいと思います。 ○大淵化学物質評価室長補佐 そうしましたら[20]、初期リスク評価書の最後になりますが、2-メトキ シ-5-メチルアニリンです。1頁をご覧いただきまして、こちらは白色の結晶です。用途としましては、 染料・顔料中間体ということです。  有害性評価です。まず発がん性につきましては、IARCで2B、EUで2と評価がされております。  2頁にまいりまして、評価値です。一次評価値が0.012mg/m3、二次評価値につきましては0.056mg/ m3ということです。こちらの二次評価値の設定方法ですが、ACGIHや日本産衛学会のほうでは参考とな る濃度が設定されておりませんので、構造類似の物質から推定していくというようなことをやってお ります。この物質につきましては、オルト-アニシジンのACGIHのTLV、こちらが0.1ppmですが、それ の10分の1に当たるような濃度を設定するということでこの値を設定しております。  続いてばく露実態評価ですが、まずばく露作業報告の提出状況です。こちらは1つの事業場からの報 告で、作業も1作業です。従事労働者が6人、取扱量の合計が約1トンということです。この作業につ きましては、作業時間は月20時間以下、局排の設置、あるいは防じんマスクの着用がなされていると ころです。  続いて、ばく露実態調査結果です。測定分析法としては、捕集剤にポンプを使用して捕集というこ とで、分析法は、高速液体クロマトグラフ法を採用しております。  測定結果ですが、この1事業場についての測定ということで、個人ばく露測定のほうが1人について 測定、1単位作業場においてA測定、2地点についてスポット測定としております。すみません、ここ の所で、作業環境測定、A測定は実施しなかったという記載がありますが、こちらは削除していただき たいと存じます。その結果の数字ですが、個人ばく露測定について1人測定しているわけですが、それ の8時間TWAが0.0188mg/m3、A測定については、こちらは1単位作業場について測定していますが、1 単位作業場中で1点だけ0.0190mg/m3を示しておりますが、その単位作業場中のほかの地点では定量下 限値未満です。スポット測定については2地点でやっていますが、こちらが、幾何平均値が0.0730、 最大値が0.1820ということです。  リスクの判定及び今後の対応ということです。2-メトキシ-5-メチルアニリンについては、個人ばく 露測定が一次評価値を超えているが、すべて二次評価値以下であり、A測定は、1点以外は定量下限値 未満であった。また、スポット測定は二次評価値を超えていたが、測定対象となったのは、いずれも 短時間の作業である。以上のことから、2-メトキシ-5-メチルアニリンの製造・取扱い事業場における リスクは高くないと考えられるが、当該物質は有害性の高い物質であることから、事業者においてリ スク評価を実施し、引き続き、適切な管理を行う必要があるということで、次の4頁に測定結果のグラ フと表をお示ししております。こちらが個人ばく露測定のほうだけがグラフになっております。5頁以 下は参考資料です。説明は以上です。 ○櫻井座長 何かございますか。よろしいでしょうか。特にご指摘がないようですので、以上で初期 リスク評価書についての検討は一応終了いたしました。残りの作業は有害性評価書ですね。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい。 ○櫻井座長 4物質。 ○大淵化学物質評価室長補佐 4物質、はい。それでは、引き続いて説明をさせていただきます。有害 性評価書が薄いほうのクリアファイルに入れているもので、4物質あります。まず、[1]のオルト-ニト ロアニソールからです。こちらも先ほどまでの初期リスク評価書と似たようなつくりになっておりま すが、大きな違いは、こちらはばく露に関係する情報がありませんので、情報量としては、先ほどの ものよりは資料は薄くなっております。  まず1頁の所です。こちらの物質につきましては、無色から黄色、あるいは赤色の液体です。用途は、 有機合成、染料、医薬品の中間体、ジアニシジン原料です。有害性評価としましては、発がん性が、 IARCで2B、EUで2と評価がされております。  2頁にまいりまして、この検討会での評価値です。一次評価値については設定せずということで、こ れは前の1頁に書いておりますが、ユニットリスクに関係するような情報がないということで、こちら は、一次評価値は設定せずということです。二次評価値につきましては、こちらは0.01ppm、0.062mg/ m3ということですが、この設定の方式としましては、ACGIH、日本産衛学会の許容濃度等は設定されて いないということで、構造類似の物質から考えていくということで行いました。オルト-アニシジンの ACGIHのTLVが0.1ppmというのがありますが、それの10分の1の値をとるということです。  本文についてはここまでです。以下は、3頁からが参考資料です。参考資料には、有害性総合評価表 を参考1として、参考2としまして、6頁からが有害性総合評価表の基になる有害性評価書というもの をお付けしております。説明については以上です。 ○櫻井座長 何かご指摘の点はありますでしょうか。よろしいですか。特にないようですので次へ進 んでください。 ○大淵化学物質評価室長補佐 続きまして、[2]4-クロロ-2-メチルアニリン及びその塩酸塩です。  まず1頁です。こちらの物質は、無色から茶色のさまざまな形状の固体あるいは液体というようなこ とです。用途としましては、アゾ染料の原料、ピグメントレッド7、ピグメントイェロー49製造の中間 体ということです。  続いて、有害性評価ですが、発がん性については、IARCで2A、EUで2と評価がされております。  続きまして、2頁で本検討会での評価値です。一次評価値として、0.0065mg/m3、二次評価値として、 1.2mg/m3というのを採用しております。こちらの二次評価値の値ですが、ACGIH、日本産衛学会等で参 考となるような値がありませんでしたので、こちらの物質も構造類似物質からの検討ということで、 2-メチルアニリンのACGIHのTLV2ppmというのがありまして、これの10分の1に相当する値というこ とでこの二次評価値を定めております。  本文は以上です。3頁以降は参考資料ということです。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、これは特に問題なしということで、[3]、 お願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 [3]が、先ほども検討をいただきました1,2-ジブロモエタンということ です。こちらも同じように説明させていただきますと、まず1頁で、特徴的な臭気のある無色の液体で す。用途は、先ほども出ましたが、ガソリンのアンチノック剤と土壌および農作物の殺菌剤というこ とです。有害性評価としましては、IARCで2A、EUで2というような評価がされております。  2頁目の評価値の関係ですが、一次評価値につきましては、1.3×10-5ppmということです。二次評価 値については本日の議論もしていただきましたが、もう少し情報を集めてということで、今年度は、 二次評価値については結論にまでは至らないという形でまとめをさせていただきたいと存じます。3頁 以降は参考資料です。以上です。 ○櫻井座長 では、これは次年度へ回すということで、現在のところ、これでよろしいでしょうか。 では最後、フェニルヒドラジンですね。お願いいたします。 ○大淵化学物質評価室長補佐 はい、フェニルヒドラジンです。こちらにつきましては、無色から黄 色の油状液体または結晶ということです。用途としましては、医薬、農薬の出発原料ということです。 有害性評価ですが、発がん性につきましては、ACGIHではA3、EUでは2というような評価がなされて おります。  2頁にまいりまして、本検討会での評価値です。まず一次評価値につきましては、前の1頁のほうに 書いてありますが、ユニットリスクに関係するような情報がないということで、一次評価値について は設定しないということです。二次評価値については0.1ppmで、これはACGIHのTLVを採用したとい うことです。3頁以降は参考資料となっております。以上です。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何かご指摘事項はありますか。よろしいですか。それでは、大体時 間の範囲内で今日の議題は終了いたします。今後の予定について、事務局から説明をお願いいたしま す。 ○大淵化学物質評価室長補佐 今後の予定です。検討会のほうは、平成20年度の対象物質の評価につ きましては、今回が最終回ということです。報告書につきましては、本日いただいたご意見を踏まえ まして修正をさせていただいた上で、6月中旬を目処にプレス発表というようなことでさせていただき たいと存じます。修正作業につきましては、座長の櫻井先生とご相談しながら作業を進めさせていた だきたいと考えております。以上です。 ○櫻井座長 今日、ご指摘事項等の細目についての修正等、私と事務局で最終的に確認いたしまして、 この調整をさせていただくということでよろしいですか。                  (異議なし) ○櫻井座長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。最後に榎本課長からお 言葉をいただけるそうで、よろしくお願いします。 ○榎本化学物質対策課長 最後に、昨年6月から9回にわたりまして検討会を開いていただきまして、 先生方には大変お忙しい中熱心にご討議いただきまして、大変ありがとうございました。おかげさま をもちまして一応、最終版ということではないのですが、検討結果取りまとめが出来ました。今後、 先ほど申し上げましたように、字句等の修正を若干させていただいて公表に結びつけてまいりたいと 思っております。  それから、今後のリスク評価ですが、一応、このリスク評価の検討会の下に少量製造の小委員会も 設置いたしまして、これまで先生方からも、いろいろご意見、ご審議いただきました。そのようなこ とを踏まえて平成21年度のリスク評価については、評価の仕方を少し見直して、引き続き開催してい きたいと思っております。先生方におかれましては大変お忙しいと思いますが、今後とも、引き続き、 よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。 ○櫻井座長 それでは、以上でリスク評価検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                化学物質評価室  電話03-5253-1111(内線5511)