09/05/26 第15回社会保障審議会年金部会議事録 日時:平成21年5月26日(火)17:00〜18:53 場所:厚生労働省 9階 省議室 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、江口委員、大西委員、小島委員、権丈委員、 杉山委員、滝澤委員、都村委員、西沢委員、林委員、樋口委員、宮武委員、 山口委員、山崎委員、米澤委員、渡邉委員 ○伊奈川総務課長 定刻となりましたので、これより社会保障審議会年金部会を始め させていただきたいと思います。  まだ、いらっしゃっていない先生がいらっしゃいますけれども、本日は皆様、御多 忙のところをお集まりいただきましてありがとうございます。  本日、御欠席の委員は、中名生委員ということでお聞きしております。  引き続きまして、資料の関係でございますけれども、お手元に議事次第がございま す。その後、配布資料一覧というのが何枚か後についておりますので、それに沿って、 私のほうで、資料の確認をさせていただきたいと思います。  まず資料1でございます。「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚 生年金保険法等の一部を改正する法律」。  資料2といたしまして「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延 に係る加算金の支給に関する法律の概要」でございます。  資料3-1が「平成21年財政検証関連資料(1)」。  資料3-2が「平成21年財政検証関連資料(2)」でございます。  資料4の関係でございますけれども、4-1が「年金制度をめぐる最近の動向」。  資料4-2が「日本年金機構設立委員会について」。  資料4-3が「現場実務を踏まえた制度設計について」でございます。  それ以外に、参考資料がございます。  参考資料1「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等 の一部を改正する法律要綱」。  参考資料2「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払いの遅延に係る加 算金の支給に関する法律要綱」。  参考資料3「年金制度の機能強化(平成21年2月12日社会保障改革推進懇談会(第 1回)提出資料)」。  参考資料4「社会保障の機能強化に向けた取組について(平成21年5月19日経済財 政諮問会議(第12回)舛添臨時議員提出資料)」。  参考資料5「社会保障の機能の強化に向けた今後の取組〜「社会保障の機能強化の 工程表」を中心に〜(平成21年5月21日経済財政諮問会議会議(第13回)舛添臨時議 員提出資料)」でございます。  参考資料6「1.厚生労働省の内部統制について、2.現場実務を踏まえた制度設計に ついて(平成21年5月19日日本年金機構設立委員会(第8回)提出資料)」でございま す。  参考資料7-1「公的年金制度の企画立案と事業実施の関係について」。  参考資料7-2「公的年金制度の企画立案と事業実施の関係について(参考資料)」。  参考資料8「年金審議会意見等における年金業務に関する主な指摘事項」でござい ます。  お手元にない資料等ございましたら事務局にお申しつけいただければと思います。  引き続きまして、部会長お願いいたします。 ○稲上部会長 それでは議事に入りたいと思います。前回2月23日の部会以降、年 金に関する議員立法が2本成立しておりますので、まず、それらにつきまして事務局 から御説明をお願いしたいと思いますが、併せまして平成21年財政検証につきまし ても関連資料がございますので、それにつきましても御説明をお願いしたいと思いま す。 ○塚本年金課長 それでは、私から2つの法律について御説明申し上げたいと思いま す。  まず「社会保険の保険料等に係る延滞金を軽減するための厚生年金保険法等の一部 を改正する法律」と、「厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に 係る加算金の支給に関する法律」、この2つの法律が議員立法として国会で成立をい たしまして、今月、5月1日に公布されましたので御報告申し上げます。  この2つの法律につきましては、国会内におきまして、与野党で協議が行われ、4 月17日に衆議院で全会一致で厚生労働委員会提出の法律案とされ、同日、すなわち4 月17日に本会議で可決され、さらに参議院においては、4月23日に厚生労働委員会、 24日に本会議で可決・成立したもので、公布が5月1日ということでございます。  まず資料1のほうでございますけれども、社会保険料の延滞金を軽減するための厚 生年金保険法等の一部を改正する法律の概要について御説明申し上げたいと思いま す。  保険料につきまして、法定の期限までに保険料が納付されない場合には督促状が発 行されるわけでございますけれども、この督促状の指定期限までに保険料が納付され ない場合には、法定の期限からの日数に応じて14.6%の延滞金が課せられるというこ とに現在はなってございます。この14.6%という率は、さまざまな制度において用い られているいわばペナルティー的な率でございますけれども、国税の場合には、3か 月間は、今年で申しますと4.5%という率に、この延滞金の利率が軽減されていると いうことで、今回の改正はこの国税の取扱いにならって、法定の期限から3か月間を 延滞の利率を軽減するというものでございます。施行は来年の1月1日ということに なってございます。  続きまして、資料2の加算金の法律について御説明を申し上げます。  年金記録問題に関連しまして、年金記録の訂正が行われ、本来の支給日より大幅に 遅れて給付が支払われる、その場合の給付について、具体的には年金記録訂正後、裁 定請求されて5年以上前の本来支払うべきだった給付について加算金を支払うことと するというものでございます。この加算金の額については、物価上昇分を勘案して政 令で設定するということとされてございます。  施行については、公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日ということと されてございます。  簡単でございますけれども、私からは以上でございます。 ○山崎数理課長 数理課長でございます。引き続きまして、資料3-1、3-2に沿いま して、平成21年度の財政検証の関連の試算等を御説明申し上げます。  まず資料3-1のほうでございますが、(年金制度における世代間の給付と負担の関 係等)ということで、4つほどの資料に分かれてございますが、おめくりいただきまし て、2ページでございますけれども、こちらで前回の財政再計算のときと比較いたし ましたそれぞれについての概要というものがございますので、こちらのほうで、まず 概略御説明申し上げますが、まず世代間の給付と負担の関係、いわゆる給付負担倍率 ということでございますけれども、同じ生まれ年の人たちで前回の16年再計算と今 回の21年財政検証、この基本ケースと比較するということで、「厚生年金(基礎年金 を含む)」というところで見ていただきますと、1940年生まれ、2010年における年齢 (70歳)と、こういう世代の方々について見ますと、払った本人負担分の保険料の何倍 の給付となるかという倍率でございますが、平成16年の財政再計算では6.3倍とな っていたものが、今回21年の財政検証では6.5倍と若干この値が大きくなっている ということでございます。  1945年生まれは4.6倍が4.7倍というようなことでございますが、以下、下に下が ってまいりますと、1985年生まれで2.3だったものが今回も2.3倍ということでござ いまして、こちらに関しましては、最終的な所得代替率、これが前回の財政再計算で 50.2%だったものが今回50.1%ということでほとんど変わっていないという状況が あることを、最後2.3倍が変わらないというのは反映しているというところかと存じ ますが、足下のところでは、いわゆるマクロ経済スライドがまだ発動されないと。年 金給付の水準が高止まっているということがございまして、この倍率というのは若干 高くなっている。これが厚生年金の状況でございます。  国民年金に関しましても、1940年生まれで、16年再計算4.3倍が4.5倍というこ とで、同じような事情で高止まっているわけでございますが、将来の世代のところを 見ていただきますと、1985年生まれ、これは16年再計算で1.7倍という見込みでご ざいましたのが、国民年金に関しましては、今回の財政検証で2038年までマクロ経 済スライドを続ける必要があるということでございまして、給付水準の調整がより大 きくなるということを反映するということで、今回はこちらの数値は1.5倍というふ うに少し下がっている。それでありましても、払った保険料、これは払った保険料そ のものと申しますか、賃金上昇率分、いわば金利ではないのですけど、賃金上昇率で 再評価するような形で、保険料額は計算して、給付のほうは、逆に賃金上昇率で割り 引くというようなことで小さくして評価したその両者を比べて1.5倍ということでご ざいますので、損得で見るものではないのですけれども、決して払い損というような 数字ではないということになるわけですが、数値としては1.7倍が1.5倍というふう に今回変化しているという状況でございます。  次に「2.生年度別に見た年金受給後の年金額の見通し」、額そのものの見通しは後 ほど後ろのほうの資料でご紹介申し上げますが、概要で示しております数字は、「厚 生年金の標準的な年金額と同時点における現役男子の平均賃金(手取り)との比率」と いうことで、(65歳時点)受給開始時点におきますこの数値は、いわゆる所得代替率と いうことで呼びならわされている数値でございまして、平成21年財政検証(基本ケー ス)で申し上げますと、1944年生まれ、2009年度で65歳の方が62.3%。この方が一 番下のところ、1974年生まれ、2009年度における年齢(35歳)、この層で見ていただ きますと、21年財政検証(基本ケース)では50.1%と最終の所得代替率になっている ということでございますが、それぞれの方が裁定後どのような形で年金額が推移して いくかということでございますが、これは年齢の高い方で見ていただきますと、裁定 後、基本的に物価スライドでそこにさらにマクロ経済スライドがかかるということで ございまして、現役の方は賃金上昇率に沿って賃金が上がっていくということで、そ れとの対比で見るとこの比率は下がっていくということで、1944年生まれで、2009 年で(65歳)という方で見ていただきますと、(65歳)時点では62.3%だったものが、 (75歳)時点では51.7%、(85歳)の時点では43.2%というふうに下がってくる。これ は16年の財政再計算では、最初の受給開始時点で57.5%という数字であったのが、 かなりスタート時点で高くなっているわけでございますが、(85歳)時点のところでは、 16年再計算で41.8%となっていたものより若干高いぐらいの数字になっているとい うことでございます。  これが2009年で(35歳)という方で見ていただきますと、ほぼ16年再計算とパラレ ルな関係になってございまして、受給開始後20年の(85歳)時点で、今回の場合です と40.1%という比率になるという状況にあるところでございます。  次に3ページでございますが、「3.世帯類型別の所得代替率」ということでござい まして、夫のみ就労のいわゆる厚生年金の標準世帯ということで申しますと、平成16 年の財政再計算では直近時点、16年の場合は平成16年度ということでございますが、 そこで59.3%だったものが、2025年の時点では50.2%になっていると。以後、50.2% ということでございますが、今回、21年の財政検証の基本ケースで申しますと、直近 21年度の時点で、62.3%の所得代替率が2025年で55.2%、2050年度で50.1%、こ ういうふうになっているところでございますが、これが別の世帯類型でどうなってい るか、これを今回算出して示したものでございますが、40年共働きの場合、こちらに つきましては、足下直近時点21年度で48.3%のものが、2050年度で39.9%というよ うな数字になっている。  これを見比べていただきますと、16年の再計算のときと最終の姿はほとんど変化し ていないという状況でございます。厳密に申し上げますと、夫のみ就労の場合が50.2 から50.1と少しだけ低くなっているのに対しまして、共働きの場合は逆に少しだけ 高くなっているところでございますが、これは今回の財政検証におきましては、基礎 年金の給付調整に比べまして、いわゆる2階部分、厚生年金の給付調整は比較的小さ いということでございますので、共働きのケースでございますと、年金額の中で2階 部分の比重が大きいということがございますので、結果的にむしろ若干所得代替率は 前回の財政再計算よりも上がっていると、こういう状況にあるわけでございます。  男子単身、女子単身に関しましても傾向は同じでございまして、押しなべてみます と、世帯類型別の状況は16年の財政再計算のときとほとんど変わらない状況でござ います。  「4.厚生年金・国民年金の財源と給付の内訳」、いわゆるバランスシートというも のを見たものでございまして、向こう概ね100年間の財政均衡期間における給付の総 額、あと財源の保険料、国庫負担、積立金の内訳別の額を運用利回りによる割引を行 いまして一時金に換算するという計算をしたものでございまして、左側が平成16年 の再計算、右側が21年の財政検証でございますが、これを見比べていただきますと、 若干今回のほうが額が小さくなっておりますが、これは金利による割引を行っていま すので、用いられる金利、実質金利が少し前より高くなっていることも反映して若干 小さい数字になっている。その中で、保険料、国庫負担、積立金の占める割合は前と 比べてそれほど大きく違わないという状況でございまして、下の「※」のところにご ざいますが、仮に公的年金を積立方式に切り替えたと仮定した場合のいわゆる二重の 負担の額というものを機械的に計算したといたしますと、16年再計算では、厚生年金 420兆円、国民年金50兆円という数字になっていたわけですが、これが今回の財政検 証の基本ケースでは、厚生年金500兆円、国民年金50兆円ということで、厚生年金 におきまして、この額が拡大しておりますのは、いわゆる5年間積立方式ではなくて 賦課方式に近い財政状況で推移してきているということによりまして、仮に積立方式 にしたらどうかという額については膨らんでいると、こういう状況にあるところでご ざいます。  お時間の関係もございますので、5ページ以下はごくかいつまんで、飛ばしながら 御説明申し上げたいと思いますが、5ページ、この枠囲いの中ですが、世代間の給付 と負担の関係を論ずるに当たっての基本的な考え方といたしまして、年金制度は損得 で論ずるものではないということでございまして、現在の受給者の世代の倍率が高く なっているということは、そもそも負担能力に見合った低い保険料からスタートして 段階的に保険料を引き上げてきたというようなこと。その後の経済発展の中で、物価 や賃金の上昇に応じた給付改善を後代の負担で行ってきたと、こういうことが要因と してあるわけでございまして、その下にございますような、私的な扶養から社会的な 扶養への移行でございますとか、生活水準の向上と実質的な保険料負担能力の上昇 等々の背景にある事情を合せて考慮する必要があるということで、年金制度だけの負 担と給付の関係のみで世代間の公平、不公平を論ずることはできないのではないか。 これが大きな基本的な議論というところでございます。  以下は、それぞれの計算の考え方を書いてございますが、これは基本的に前回の財 政再計算のときと同じ考え方を踏襲しているということでございますので、7ページ、 8ページの御説明は省略させていただきまして、9ページでございますが、これが「生 年度別に見た年金受給後の厚生年金の標準的な年金額(夫婦2人の基礎年金含む)の見 通し」でございまして、先ほど概要で御紹介申し上げましたのは、例えば(65歳)とい うところで見ていただきますと、枠囲いの62.3%という受給開始直後の所得代替率、 こちらがそのときの現役男子の賃金との対比でかぎ括弧のついたパーセントの数値 でございますが、これがどのように推移していくかというところを御紹介申し上げた わけですが、年金の額で申しますと、受給開始後の22.3万円という額が22.6万円、 23.2万円ということで徐々に持ち上がっていくと。ただ、これは名目額でございます ので、括弧書きで書いてあります物価で割り戻した実質的な額、こういうことで見て まいりますと、裁定後は物価スライドでございますが、それに対してマクロ経済スラ イドがかかるということですので、物価で割り戻してみると、これは徐々に小さくな ると、こういう値になっているところでございます。  一番下の欄、(35歳)のところを見ていただきますと、最初の所得代替率50.1%か らパーセンテージはだんだん下がっていって、最後40.1%(85歳)となっているわけ でございますが、物価で割り戻した年金額は基本的に、この時点ではマクロ経済スラ イドは終わっておりますので、物価で割り戻すと物価スライドが行われているという ことでございますので、26.7万円という数字が並んでいくような感じになっていると、 こういうところでございます。  10ページは、基礎年金の額でございますので、御説明は省略させていただきます。  11ページ以降でございますが、こちらに関しましては、基本的に厚生年金の所得代 替率と年金額の関係を示すグラフ、こちらの中に世帯類型ごとの年金の水準をそれぞ れ位置づけたということでございまして、(1)夫のみ就労の場合、こちらは[世帯1人 当たり所得17.9万円]という世界でございますが、こちらに対しては1人当たり11.1 万円の年金額、そのときの所得代替率が62.3%ということでございますが、世帯1 人当たり所得水準によって所得代替率が変わるということでございまして、世帯類型 が異なっても世帯1人当たり所得が同じであれば所得代替率は同じということでござ います。ですから夫のみ就労の場合ですと、代替率が62.3%で1人当たりの年金額は 11.1万円でございますが、例えば右から2番目のところ40年間共働きの場合、[世帯 1人当たり所得28.9万円]、これは共働きということで1人当たり所得が高いという ことでございますので、年金額で見ますと、1人当たりで14万円ということで高くな っている。  厚生年金の場合は、1階が基礎年金で定額、2階が所得比例でございますので、賃 金が高いほど年金額としては高い。一方で所得代替率は低くなるということですござ いますので、所得代替率については48.3%となる。  ただ、片働きのあらゆる世帯の方が62.3%で、共働きのあらゆる世帯の方が48.3% ということではなくて、あくまで男子の平均賃金と女子の平均賃金で、40年で働いた ような共働きのモデルに当てはめるとこうなるということでございまして、たまたま 比較的賃金の低い共稼ぎの方で2人の合せた平均給与が、例えば(1)の夫のみ就労と同 じでありますと、これは同じ62.3%の代替率ということになりますし、逆に片働きで ありましても、1人当たりが28.9万円となるような所得の高いということであります と、所得代替率は40年共働きと同じになるということで、世帯類型の違いによって 年金の水準や額の違いが生ずるのではなくて、1人当たり所得に応じてこれは変わっ てくると、こういう状況にあるということでございます。  これは平成21年度の水準でございますが、次の12ページが2025年度における状 況ということで、年金額は物価で割り引いた実質値で表示してございますが、上の11 ページと見比べますと、それぞれ年金額は多少上がっている。一方で所得代替率はマ クロ経済スライドの適用によりまして、それぞれについて率としては下がっていると、 そういう状況にあるところでございます。  次の13ページ、これはさらに2050年度を見ていただくということで、(1)夫のみ就 労の場合50.1%ということでございますが、例えば40年間共働きの場合、39.9%と いう数字になりますが、逆に年金額ということで申しますと、1人当たりで夫のみ就 労ですと、15.7万円、40年共働きの場合ですと、20.2万円ということで年金額が高 いと、結果として所得代替率は低くなると、こういう関係にあるということでござい ますし、これは世帯類型そのもので決まるというよりも世帯1人当たりの所得の多寡 によって所得再分配の構造が働いてこうなっているのだという構造は2050年度でも 同じ構造だということでございます。  14ページはそれぞれの世帯類型がどういう前提になっているかというあたりのバ ックデータでございますので、省略いたしまして、15ページ以下、いわゆるバランス シートの考え方というところでございますが、これも基本的に16年の再計算と同じ でございますので、御説明は省略させていただきまして、18ページのところを見てい ただきますと、「厚生年金の財源と給付の内訳(運用利回りによる換算)」ということ ですが、いわゆる先ほど二重の負担の額500兆円と算出されるということで申し上げ ましたものをどういう考え方かと申しますと給付のところの左側、過去期間に係る分、 こちらの給付原価、一時金換算値が830兆円ということでございますが、積立方式で もしやったといたしますと、この左側で申しますと、過去期間分の国庫負担と積立金 から得られる財源、これで全部カバーするのが積立方式ということでございますが、 過去期間分の国庫負担が190兆円、積立金から得られる財源140兆円でございますの で、合計330兆円。そうすると、830兆円と今合計しました330兆円の差の500兆円 分、これが積立方式だとすれば積立不足の分だということで、いわゆる積立方式にす るとすれば二重の負担に当たるものは、この差額の500兆円。  ただ、これは厚生年金として不足金があるということではなくて、将来、保険料が 引き上げられていくことによって、向こうおおよそ100年の財政均衡期間で見れば、 財源はちゃんと給付とバランスしていると、こういう見込みになっているところでご ざいます。  以下は前回の再計算のときと同様に、運用利回りではなくて、賃金上昇率で換算し たらどうなるか。国民年金についてどうか、基礎年金はどうかというものがございま して、24ページ以下は参考として、16年再計算の資料を掲げてございますので、こ ちらの御説明は省略させていただきます。  続きまして、資料3-2「平成21年財政検証関連資料(2)」ということでございまし て、こちらにつきましては、財政検証2月に発表しまして、以降いろいろお求めがあ りまして、私どもで試算した資料等を参考までに御紹介するということでございまし て、おめくりいただきまして2ページでございますが、こちらに関しましては、財政 検証当初発表いたしましたときには、このグラフで見ていただきますと、次の財政検 証の予定時期となっております平成26年度、こちらのところの60.1%という代替率 の見込みが下に注記というような形で当初発表させていただいたのですが、その後、 財政検証というのは基本的には5年後にどういう代替率になっているかというところ はかなり大事な数値なので、ここをもう少し明示的に表記するほうがいいのではない かという御意見いただきまして作成した資料ということで、参考までに御紹介させて いただきます。  次の3ページでございますが、こちらにつきましては、いわゆるマクロ経済スライ ドに用いられる率の見込みということで、当初は公的年金被保険者数の減少率を数表 としてお出ししまして、これに0.3を加えたものがマクロスライド率になるというと で御紹介していたのでございますが、これももう少し明示的に数表にしたほうがいい という御意見をちょうだいいたしまして、そのようにつくったものを参考までに御紹 介させていただくところでございます。  次の4ページでございますが、これは国民年金保険料につきまして、私どもの財政 検証の基本ケースにおきまして、社会保険庁の事業計画を基礎として、将来にわたり 80%の納付率を前提で財政検証を行っているわけですが、これが将来にわたって1% 増加なり減少したときにどのぐらい最終的な所得代替率に影響が生ずるのかという ことの試算を求められて提出したものでございまして、1%当たり0.05ないし0.06% 程度増加ないし減少するという見込みになっているところでございます。  次の5ページですが、こちらは財政検証におきます経済前提で名目賃金上昇率を機 械的に変更したらどうなるか、機械的な計算のお求めがあって試算したもので、平成 21年財政検証では物価1%、名目賃金上昇率2.5%、名目運用利回り4.1%というの が長期の経済前提で、そのときに所得代替率50.1%ということでございますが、この うちの名目賃金上昇率だけを下げていくということで、2%にいたしますと、50.1% というのはほんのちょっと下がりまして、基本的には50%を下回らないということに なったわけですが、仮に機械的に財政を均衡させるとするといくらで均衡するかとい うのが49.98%というような数字になると。  これをさらに名目賃金上昇率1%と下げてまいりますと、これは物価が1で賃金が 1でございますので、1人当たりの実質賃金上昇率は0というような前提になるわけ でございまして、左側の「実質経済成長率」と書いておりますが、将来に向けて労働 力人口が減少していくという状況のもとでは1人当たり賃金上昇0%というのは、人 が減っていく分、大体2015〜2039で年率0.7%ぐらいで減っていくという見込みです ので、ずっとマイナス成長が続くというような見込みになると。こういう前提で計算 いたしますと、機械的な計算では最終の所得代替率が43.2%というような数値になる と。  さらにもっと下げまして、物価が1で名目賃金上昇率0ということで見ますと、こ の場合には実質経済成長が▲1.7%、かなりのマイナス成長、この場合にはマクロ経 済スライドが機能しないということで、財政の均衡は保てないということで、下の (注)にございますように、2042年度に厚生年金の積立金が枯渇する見込みと、機械的 試算ではこうなるということでございます。  次の6ページはそれの延長線上で、過去10年平均、過去20年平均という物価、名 目賃金上昇率、名目運用利回り。これは年金そのものの運用利回りということではな くて、前提として御提示いただいた10年国債の応募者利回りの平均を用いているわ けですが、その数値で機械的に将来ずっと延ばしたらどうなるかということを計算し たものということでございまして、こちらを見ていただきますと、機械的試算(4)とい うことで、物価上昇率が▲0.2%、名目賃金上昇率が▲0.7%。これは要するに毎年実 質でも▲0.5%ずつ1人当たり賃金が減少していくと、こういう見方で計算したらど うなるかということで、これは実質経済成長率で申しますと、労働力人口が0.7%ず つ減っていくというものを加味いたしますと、1.2%のマイナス成長がずっと続くと いう前提になるわけですが、この場合、名目でもマイナスの成長率でございますので、 マクロ経済スライドが全く機能しないということで、(注2)にございますように、賃 金が下がってまいりますので、むしろ所得代替率が上がっていくということで所得代 替率が72%まで達するのでございますが、2031年度に積立金は枯渇の見通しという ような計算になる。  機械的試算(5)のほうでございますと、物価が0.7、名目賃金上昇率0.6%、▲0.1% の実質賃金上昇。これは実質経済成長で申しますと、▲0.8%相当と。これはマクロ 経済スライドは部分的に機能するわけですが、基本ケースに比べるとその効きは弱い ということで、2050年度に50.6%の所得代替率になるわけですが、この時点で国民 年金の積立金が枯渇するというようなことで、あくまですべて機械的な試算というこ とですが、お求めに応じまして、こういう試算を出したので御紹介するところでござ います。  次に7ページでございますが、こちらに関しては、労働力を機械的に「労働市場へ の参加が進まないケース」と、これから生産年齢人口が減っていく中で、労働力率は 2006年のままずっと固定して、生産年齢人口が減るなら減るなりに労働力人口も減っ ていくということで機械的に計算したらどうなるかということで算出したものでし て、端的に結果だけ申し上げますと、このとき、最終的な所得代替率に与える影響は 0.8ポイントないし1.0ポイント所得代替率が低下するということで、基本ケースで 申しますと、50.1%という最終所得代替率が49.2%になる程度、こういう影響がある と試算されるところでございます。  御説明は以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまのお2人からの御説明につきまして、御質問等いただきたいと 思います。 ○渡邉委員 それでは感想的なことで申し上げさせていただきたいと思います。 今回、御説明いただきました財政検証の関連につきましては、前提条件を国民にど うわかりやすく説明するかということが大変必要だという感想を持っております。一 部報道等にありましたけれども、この検証中の数字を一部取り上げて、そこを強調し た形になりますと、世代間の対立ですとか、国民の不安をあおるというような結果を 招きかねないわけでございます。例えば、マクロ経済スライドの仕組み自体が制度の 持続可能性において大変重要であり、前提条件をこう置いたときにこうなるのだとい った説明が、国民にとって大変重要な情報だろうと思います。  特に今回説明いただいた資料3-2のような内容につきましては、ストレステストと か、感応度分析のような位置づけだという説明を加えた上で、前提条件というものに ついての認識を広めていただく必要があるのではないかと思います。  その中で、マクロ経済スライドの持続可能性という視点から、制度全般を検討する 必要性がなくなったわけではないと思いますから、健全な危機感の共有化をベースに した制度全般の検討はこれからも引き続きお願いできればと思います。特に国民年金 保険料の納付率の変化が所得代替率に及ぼす影響について、これ自体は確かに御説明 のあったとおり、影響自体は軽微なわけですけれども、一方で未納自体の問題を裏に はらんでおり、未納ということになれば、無年金、低年金者が生活保護制度の対象に なりかねないということで、制度全般のコストで見れば無視できない問題になる。こ のように、今回の御説明の中にも前提となっている1つひとつの要素について、その 問題の解決を検討するということが大変重要な問題として残っているわけですから、 次の検証を待たずして、こういった周辺の検討は引き続き行っていくべきだと感じて おります。  以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございます。宮武委員どうぞ。 ○宮武委員 マクロ経済スライド新規が裁定から適用される。いわば年金の世界にお ける初任給のところから適用され、さらに既裁定の人にもずっと適用されるというこ とがなかなかまだ社会一般で理解をされていないのではないかと思うんですね。もと もと「マクロ経済スライド」という呼び方自体が極めて一般にはわかりにくい命名の 仕方で、私は当時の厚生大臣に、こういう名前をつけるのはおやめになったらどうで すかと申し上げました。要するに少子化に伴って保険収入が減っていき、同時に長命 化によって給付が増えていく。それに合せて年金の給付水準の伸びを抑える仕組みな わけですから、つづめて言えば、少子化と長命化に伴う年金の減額率と、そういう言 い方をすれば、もう少し社会一般にわかりやすいのではないかと、こういうふうに申 し上げたのですが、採用されなかった。マクロ経済スライドという名称をお使いにな るときは、必ずマル括弧して(少子化と長命化に伴う年金の減額率)というふうに紹介 をしていただけないかと思うんですね。  長命化のほうは、長生きされる方が増えていくのは大変喜ばしいことでありますの で、これは阻止するわけにいきませんが、少子化のほうは、あまりにも子どもが減っ ていけば、それは年金制度どころから社会全体が立ち行かなくなるというおそれもあ るわけで、それのところが、一番今、国全体の問題であるという、そういうメッセー ジ性がなければ、何かどんどん年金額が減っていきますよと、それをあおるだけにす ぎないのではないかと思うんですね。  今回も財政検証関連資料(2)の3ページ目に、「公的年金被保険者数の将来見通し」 というのがございますね。これは社会保障・人口問題研究所の中位推計見れば当たり 前のことかもしれませんけれども、公的年金の被保険者、今、7,000万人ぐらいいる のが、先行きは2,000万人台を割るわけですよね。こんな凄まじい状況が先行き待ち 受けていると。共済組合などにいたっては、今、440万人いるのが、最終的には110 万人で4分の1になるわけですから、もう厚生労働省なんかなくなっちゃいますね。 そういう破局のシナリオを見ていくと、少子化に対してどういう手を打っていくのか というメッセージを社会保障審議会として出すべきだと思うんですね。そうしなけれ ば、年金の所得代替率が下がって、マスメディアは、大変だ、大変だとおっしゃって いますけど、大変なところは実は少子化なんですよと。これを解決しなければ、どう にもなりませんよということをもっと強調してほしいと思うんですね。  どこかの議員さんが試算をしろとおっしゃってやられたようですけれども、これな んかを見ると、賃金が全然上がらないままずっと50年、100年行くとか、賃金がマイ ナスのままならどうなるか、そんな試算が果たして何の役に立つのか。年金制度どこ ろか経済も社会も破綻していく。「国破れて山河はあり」はありうるけれども「国破 れて年金制度あり」はありえない。そんなごく当たり前のことを考えていかなければ いけない。  どうも昔は、年金局というのは社会保障全体の整合性を考えないで、年金局モンロ ー主義と言われた時代があったようですけれども、今は年金局以外の政治家やマスメ ディアの中で、年金モンロー主義がはびこって、どうも全体像を見ておられるのでは ないかと、そういう危機感を感じます。  以上でございます。 ○権丈委員 私も宮武先生と全く同じ考えで、財政検証というのは何のためにやるの かをよく考えた方が良いと思います。少子化の影響ってすごい。今、宮武先生が、公 的年金の被保険者が今の7,000万人ぐらいから先行きは2,000人台を割るとおっしゃ いました話に付け加えれば、合計特殊出生率1.26で推計するしか我々は許されてな いんですけれども、1.26で推計していくと、100年後には今の1億2800万人の35% ほどの4,500万弱の人口になるわけですね。2060年ぐらいには毎年100万人を超える 勢いで人口が減っていくので、香川県とか和歌山県の人口がぼんぼんと減っていくこ とになります。  そういう社会状況が年金制度というひとつの社会制度にどのような影響を与える のかを、財政検証を通じてわれわれは具体的に知ることができるわけです。財政検証 の結果をみて、我々は少子化問題の深刻さ、経済の安定成長の重要性を再確認する、 特に少子化対策にはしっかりと取り組まないと大変なことになるということを伝え る社会的な道具、社会装置として財政検証をわたくしは捉えています。そういうこと は2004年年金改革の評価の一つとして、当時からずっと書いています。  少子化がどうしようもなかったら、年金というのはどう制度をいじくってもどうし ようもないんですよ。だから、将来の年金給付水準が低くなるという話をはじめ、そ れが年金制度の問題なのか、それとも年金を取り囲む環境の問題なのかをちゃんと見 極めて議論しないと本当に厄介な話になってしまいます。  そうした見極めができていないから、社会のアジェンダというか、政策としてやら なければいけないアジェンダ間違えてしまって、かつての未納3兄弟というような全 く無意味なところでエネルギーを使うことになり、医療はぼろぼろ、少子化は進行と いうバカなことを今までもずっとやってきているんですね。この国は、これからもそ ういうことを繰り返していって、それで滅びてしまうのかなというような、そういう 読み方をしてもらいたいと思っております。  資料のほうに入らせていただきますが、資料(2)についてです。今は国会中継の録 画をパソコンで見ることができるので見てみたのですけど、民主党の山井和則さんが 一生懸命、身振り、手振りで、漫才みたいなことをやりながら、この資料(2)にある 財政検証の追加試算について話していました。資料(2)には、65%、60%という納付 率で推計しましょうというのがあります。これについては、去年社会保障の国民会議 で、65%になったらどのくらいの所得代替率になるのかというのを試算したんですね。 そうすると、どんな反応が社会から出るかというと、その試算をやったその翌々日の 某新聞には、「さらに理解に苦しむのは、国民年金の保険料徴収率が65%で推移し続 けた場合の試算を出したことだ。年金の財政収支への影響が軽微だと強調したかった のだろうが、政府自らが肝心の皆年金を見捨てるかのような前提を置いたのは驚きで ある」という評価をするわけですね。政府が試算をするというのはそれなりの意味が ある、そして重みがあるわけです。だから、国会議員の要請があったとしても、そう いう素人さんの言いなりに試算をしないでほしいと言いたいわけです。  去年の社会保障国民会議の時も65%の納付率で試算をしましょうというのを我々 専門家は言っていない。80%だろうが65%だろうが、所得代替率にほとんど差がでな いことは制度を知っていれば当たり前ですからね。しかし、制度を分かっていない外 の人が年金破綻を印象づけようとして65%の納付率でもやれと言われてやったわけ です。結果は、彼らの意図に反して、未納が増えても年金が破綻しないということが 公衆の面前に示されただけだった。そうすると、先ほどのように、政府は皆年金を捨 てるのかという評価で攻撃をする。ことほど左様に年金試算というものは、政治の介 入を受けるわけです。  だから我々は、経済前提専門委員会、そしてこの年金部会というところで、ある程 度の専門的な考えに基づきながら納付率や経済前提について話し合い、財政検証の試 算の事前に、前提を決めているわけです。まさか▲0.7%の経済成長率が100年間続 くとかという、年金以前に国が破綻してしまうような値を我々が出すはずがない。  つまりここで言いたいのは、我々は年金を政治から守るために、ある程度専門家の 知識というものを使っているわけなんです。我々専門家が、この国の年金で最も心配 していることは、政治リスクなんですね。それをどういう政治状況があるか知らない けれども、年金が政局作りに使われ、年金が政争の具にされ、おもちゃにされるよう な状況をブロックする機能を、経済前提専門委員会や年金部会が持つ必要があるので す。  社人研がやっている人口推計に関しては、政治家が人口推計の前提を変えてくれと 注文したら、その場合は専門家に問い合わせるのではないかと思うんですけど、なぜ 経済前提専門に関しては、あるいはこういう納付率の問題に関しては、経済前提専門 委員会や年金部会に無断で追加試算を出すのか。  経済前提専門委員会で議論させれば、民主党の山井さんが試算要求を出した▲ 0.7%の成長率が100年間続いたらどうなりますかとか、▲1.7%はどうなりますか、 というような話は荒唐無稽な話だと一蹴されることになるでしょうし、こうした年金 以前に国が崩壊するような経済前提で年金の財政検証を行うことは百害あって一理 なしだという議論が行われるでしょう。追加試算の要求を出すのが政治家ですから、 我々に試算の拒否権はないでしょうけど、そうした要求に含まれている経済前提の愚 かしさ、愚かな前提を出す政治家の愚かしさを議論することは意味があると思います し、経済前提専門委員会を、そういう形で機能させないと、政治から年金を守ること はできないと思います。  今後、経済前提専門委員会にどういう人が参加されるようになるか、そして年金部 会にどういう人が参加されるかわからないのですけれども、専門性というものを持っ て議論しているわけですから、そして我々は同時に、これは皆さんがどう意識されて いるか知らないのですが、経済前提専門委員会や年金部会は社会システムとして、年 金が政争の具とされるのを守るための組織として存在していると考えることもでき るわけですから、年金の財政検証についてはその前提のひとつひとつについて、公開 で議論できるような、そういう方向というか、道もあるということも視野に入れてい ただいて、次の財政検証では考慮してもらえればと思います。  もう一つ、資料(1)のほうは、これはお疲れさまですというか、御苦労さまですと か言えないところなんですけれども、先ほど説明のところで、「そもそも損得で論じ るべきではない」という説明がありましたけど、「そもそも損得で論じるべきではな い」という言葉をこの国の人たちは信じること、あるいはそれをちゃんと理解するこ とができない状況に、もうなっているんですね。  去年あるところで、スウェーデン、ドイツ、イギリスとカナダと韓国の年金専門家 と年金について議論したとき、彼らは、日本は世代間格差とかを議論していて、それ では年金の論議がまともにできないだろうと笑い話にしていました。そこに韓国の人 が、いや、日本に留学していたやつがそれを輸入してきて、韓国で大変なことになっ ているんだとも言って笑っていました。日本と韓国ぐらいが非常にばかな議論を一生 懸命今やっているわけなんですね。そこで例えば5ページの図を見てほしいのですが、 左側の扶養負担、私的扶養が公的扶養に置き換わっていった図です。この図は、私の ほうが先に書いたのではないかというぐらいの気がするんですけれども、こういう図 で制度というのは歴史的には動いていますよという話をする必要があります。ここで 重要なことは、世代間の再分配は年金のみならずフロー、ストック様々なチャネルを 通じて、前世代から後世代へ、後世代から前世代へと双方向で行われているというこ とです。そこで年金のみを取り上げてことさらに問題視する理由はないんです。もし 年金の世代間格差を推計するのであれば、前世代から後世代へ、後世代から前世代へ と様々なチャネルを通じた双方向の世代間再分配制度のすべてについても推計して、 総合的に判断しなければ、素人には誤解を招く。そうした総合的な判断材料を提示す ることが無理なのであれば、年金の世代間格差の推計を行うことは望ましくない。そ うした配慮を欠いた結果が、今の日本の状況なんですね。  年金で観察される世代間格差は、必ずしも世代間の不公平を意味しているわけでは ない。大切な問題設定は、ミクロ・マクロにかかわる複数の社会経済政策目標を視野 に入れながら、世代間に所得をいかに分配するか、その手段としての年金や税はいか にあるべきかということです。年金しか視野にない年金モンロー主義者や年金を政争 の具としようと狙う者の論は百害あって一理なしです。  そして資料(1)には、数年前に盛り上がったバランスシートの話があります。バラ ンスシートの話を私がどういうふうに読むかというと、ああよかったな、もしも積立 方式でやっていれば、550兆円の積立金を今持っていなければいけないんだなと。そ れに今ある150兆円の積立金が加えられて、700兆円の積立金を年金で持っていなけ ればいけないんだなと。GDPの1.5倍ぐらいの年金積立金、これ、どうやって運用す るのだろうか。  私は、資本主義が高度化するとどうしても消費が不足してしまうようになるから、 政策的に消費性向を上げる必要が高まるとか、世界的にどう考えても需要が足りない とか、ずっと言い続けている人間なわけで、GDPを超える巨額の積立金を公的年金の 積立金として持っていたら大変なことになっているよなと。失業がどこまで上がって いるかわからないと。しかも、年金の積立方式を日本だけでなくて先進国みんながま ねしてしまっていたら、はっきり言ってどうなっていたのだろうというような問題意 識で私はこのバランスシートを見ます。  だから、そういうマクロ経済に対してあまり影響を与えないようにしつつ、高齢者 の生活を守っていく。高齢期の所得を保障していく、そういうシステムをどうつくっ ていけばいいかというところで、段階保険料方式とかというのは、ある面合理性を持 っていたわけなんです。公的年金を積立方式でやっていれば、この積立金を一体どう すればいいのだと。そして今回の金融不況の中で、どれだけ損害を被っていたかもわ からないというような、世の中の失業率がどうなっていたのだろうかというようなこ とを当然考えるわけなんですけれども、段階保険料方式というのは、こうした問題を 緩和できるという合理性を持っていた。  ここで世代間格差の話に戻りますけれども、世代間格差というのをゼロにする制度 を設計するためには当初から積立方式にするしか方法はなかったわけです。だから、 高齢期の所得を保障する制度を、マクロ経済にあまり悪影響を与えないようにしなが ら設計するとすれば、どうしても世代間格差というのが発生してくるんですね。積立 方式を捨てた段階で世代間格差が発生してしまう。年金を賦課方式で運営している国 では、どこでも世代間格差があるわけです。完全なる積立方式でやれば世代間格差と いうのはなくなるんですが、そういう形で制度設計するにはリスクが大きすぎる。制 度設計というのは、いくつも目的関数というか、目的をにらみつつ、かなり微妙にバ ランスを取りながらいろいろとやっていかなければいけないわけです。世代間格差を 言うしかセールスポイントのない経済学者たちが考えるように、制度設計というのは そう単純な作業ではないんですよ。  だから、公的年金に世代間格差があるよといったって、それだけをとりあげて議論 する意味にはかなり疑問符がつくわけですし、むしろ弊害でもあるわけです。高齢者 の年金給付水準が高いというのであれば、所得軸で見て、高所得者から低所得者のほ うに所得を回すという税の改革のところでほとんど解決するではないかというよう なことが大体我々の世界ではでき上がっているモノの考え方です。高齢者の年金が随 分高くなりました。そこで税で徴収して、若い人たちの職業訓練、就業支援のほうに お金を使えばいいではないかというような形で解決すれば済む話なんですね。  そしてそうした高所得高齢者から若年層への所得の再分配は、所得代替率という指 標などには出てこない。所得代替率の分子というのはネットで見ている。だけど分母 の年金というのはグロスで見ているから、2004年以降の高齢者の年金が課税強化され たというようなことも反映されない。そういう不十分な指標で我々は議論しているん ですよね。  だから、そういうところをしっかりと考えていかないと、私が言いたいのは、政策 のアジェンダを間違えてしまって、再び、いや再々度、医療、財源調達という重要な 問題を年金が締め出してしまい、次の衆院選もまた、何の意味もないような議論、2004 年に盛り上がったバランスシートというのも本当に意味のない議論だったと思いま すが、そういうことを繰り返して、我々生活者は政治の犠牲になって疲弊していくと いうことで良いのかということを、少しは考えていきましょうと言っておきたいと思 います。 ○西沢委員 2月に財政検証の本丸の数値が発表されまして、今回、財政再計算で言 いますと、付属資料に出ていたようなバランスシートや世代間格差の数値を公表され たということだと思いますし、2004年の財政再計算のときもそうでしたけど、あのと きからですよね、世帯類型別に年金額を出したり、所得別に代替率を出したりされた ということで、権丈先生もおっしゃったように、今の所得代替率の指標というのは不 十分なところもありますし、世帯によって数字が違いますから、そういうところで情 報開示を拡充されてきた中で今回あったということだと思います。 どのようなコンテンツ、内容を開示していくかということについて少し意見を述べ させていただきますと、まず全体の整合性です。世代間の給付と負担、資料3-1の7 ページ以降と厚生年金の財源と内訳、18ページ以降にありますけれども、ミクロとマ クロというふうに考えますと、本来的にはミクロを2009年〜2105年まで人数を掛け て足し上げていきますと、給付と負担が一致するはずだと思うんですよね。ところが ミクロを人数で足し上げていくと、政府から見て給付が過大になってしまうわけで、 本来的にはここの整合性を、私の理解不足からかもしれませんけど、とったほうがい いと思うんですね。あるいは、先ほど少子化対策の話が出てまいりましたが、あるい は納付率の話が出てきましたけれども、2.3倍もらえる年金を政府が約束するのであ れば、加入を促進したり、納付率を上げたり、少子化対策をして加入者を増やすとい うことは矛盾すると思うんですね。将来世代の保険料の財源をもって、今、生きてい る我々が年金の給付を受けるからこそ将来の保険者に増えてほしいというふうに願 うわけであって、2.3倍もらえる年金、1.5倍ももらえる年金であれば納付率を上げ たり加入者を促進したり、少子化対策する必然性はないわけです。ですので、ここの ところの整合性をもって数値を理解できるような形にしていくことが必要です。 多分ここの鍵になるのは、今回示されていませんけれども、給付と負担の関係で、 65歳時点の換算率を、今回賃金上昇率されていますけれども、04年の財政再計算で 同時に出されていたように、運用利回りすることによって整合性がかなり保たれてく るのではないかと思います。ですので、できれば、財政検証の厚い冊子の中には入る のかもしれませんが、そのパターンも出していただけたらいいのかと思います。 先ほど年金モンロー主義の話がありましたけれども、財源と給付の内訳という、こ の1,700兆円規模の大きな数値がありますけれども、これと国の財務諸表との関連性 も今後議論していくべきだと思います。これから少子高齢化はさらに進んで、国の財 政も苦しくなっていく中で、年金、医療、介護というのは我が国にとってコストにな っていくわけです。国の政府債務残高も膨らんでいく。一体年金や医療というのはど れくらいかかるのだろうといったことも整合的に解釈するためには国の連結財務諸 表のようなものの中に年金もうまいぐあいに組み込んでいく必要があると思います。 今の国の財務諸表を見ますと、連結財務貸借対照表の中に年金債務として計上されて いるのは積立金相当分しかないわけですよね。これは見方によっては積立金相当分し か国は年金を払うつもりがないと言っているようにも見てとることができます。これ は解はないのかもしれませんけれども、連結するとどうなるのかといったことを見て いくべきだと思います。 個別に少し見ますと、私はこの世代間の給付と負担の指標というのは、今回出して いただきましたし、継続的に出していくべきだと思います。世代間格差はもちろんな くすことはできませんけれども、仮に2.3倍というのであっても、これを2.29倍に できないのか、2.28倍にできないのかという努力を続けることによって、将来保険料 を払ってくれる若い世代も納得して保険料払ってくれると思うんですね。定量的に評 価しない限り、我々はこの現状を認識することができないわけです。ただ、2.3倍と いうベースはやめてほしいと思います。大本営発表だと思いますので、1億保険料払 って、2億3,000万年金もらえるのかと。これは真顔で信じる若者がいたら私はその ほうが将来は心配です。もう少し虚心坦懐に、例えば5,000万払って4,000万ですと いうのでもいいと思うんです。その中でも、例えば4,900万払って、少しでももらえ る額が増えるようにという努力する姿を見せればいいはずであって、1億払って2億 3,000万というベースはやめたほうがいいと思いますし、これと関連して、資料3-1 の17ページで、「全て保険収入等により財源確保されており」というのも私は甘い見 通しだと思います。  というのも、保険料を払ってくれるのは、将来の世代であって、その将来の世代が 今の制度に対して、オーケイ、わかりました、と言って喜んで保険料払ってくれる保 証というのは、我々今のところ得てないわけです。今、中学生以下か、これから生ま れる人たちが、わかったと。今の制度に保険料払おうというような形の改善努力をし て、それを記録に残していかないと、保険料収入により財源が確保されているという のは言い切れないと思いますし、例えばマクロ経済スライドが機能していないという 状況を我々は見たわけですから、それを動かすようにするにはどうしたらいいかとか、 足下の所得代替率は上がってしまっているという状況を見たわけですので、所得代替 率の指標、可処分所得と可処分年金ベースに変えるということもあるでしょうけれど も、この状況をどうしたらいいのかということもありますし、積立金残高が足下で20 〜30兆円減ってしまったことまでも含めてマクロ経済スライドの長期化を通じて将 来に負担を負わせるというのはやるべきではないと思いますし、こうした手当ては政 治的に、今の高齢者に対して厳しいことを迫ることになりますので難しいかもしれま せんけれども、やっていかないと、賦課方式の年金がもたないと思います。  もう一つ、最後に財源と給付のこの表に関しましても、もともとつくられたのは積 立方式をどちらかというと否定する意味でつくられたと思うんですね。表全体として はオープングループでつくられていますけれども、そこにプランターミネーション基 準のようなものが入り込んでしまっているような形になっていますが、賦課方式をこ れからも継続していくというのであれば、アメリカでしているように、ここにクロー ズドグループの内訳を示してやることによって世代間の移転の話もよくわかってく るようになると思います。ですので、もともとこういった表を出されたことがどうい った意味合いがあったのかということも含めて、どういった財政書類というのを整え ていくのかといったことも今後議論していくといいと思います。  最後に資料3-2を出されてナンセンスという話がありまして、多分年金局の皆さん も非常にお仕事に深くかかわっていると思うんですけれども、それも今まで申し上げ たことと関連しますが、どんな書類をみんなが納得できる形で出していくかといった 議論は、今まであまりしてこなかったような気がするんですね。年金局の皆さんがこ れがよかろうというふうに国民の声に応える形でその都度出されてきたわけだと思 いますけれども、そうでなくて、与党も野党も、国民1人ひとりも政治家も現状を認 識できるようなコンテンツといいますか、内容が何かといったところも同時に詰めて いったらいいような気がします。  以上です。 ○稲上部会長 米澤委員どうぞ。 ○米澤委員 皆さん方の意見、私も基本的に賛成です。今回、財政検証出して、必ず しも広く皆さんの意見が寄せられたというわけではないのでしょうけど、いくつかい ろんな、国会を中心に意見寄せられたので、それは非常に参考になるのではないかと 思います。 その際、先ほどの特に資料3-2にかかることなんですけど、渡邉委員はストレステ ストということで、まさにそれに相当するものなんですが、非常に知りたいことが出 ているのですが、残念ながら数理課のほうは、単に聞かれたことに関して正直に機械 計算してエクスクロースしているので、かえって誤解を与えるような数字も出ている のではないかと思います。 先ほどからいくつか出ている、ずっと100年間マイナス成長していくとか、そうい うようなところのストレスを出してもあまり意味がないというのは権丈委員がおっ しゃられたとおりで、どうでしょうか、これから次回以降は当初我々が出していた資 料よりか、もう少し意味のあるストレスをもう少し増やして、例えば労働市場への参 加が進まないケースなんていう、ケース3つぐらいあったわけですけど、この辺に関 しても丁寧に、その場合にどうなったかというのは非常に意義のある議論だと思いま すので、この辺のところを丁寧に出していってやっていくのが一番いいのかなという ふうに思っております。 もう一回言いますと、いくつかのケースは意味のあるケースを出して、その都度、 それに対しても答えていく。ただ、メインはこれですよという格好で出していくと。 ですからアドホックに答えていくと、今回も非常に誤解を与えるような試算も出てい ますので、こういうのはなるべく今後は避けていったほうがいいのかなと思っており ます。当初もとになっている経済前提などでも、ある人なんかは確率的にちょっと計 算してよと言ったのですけれども、それは難しいし、必ずしも確率的に出して国民が 理解できるわけではないので、中間的な方法としては、意味のあるケースを出して、 まさにそれがどのぐらい少子化というのが影響あるのかということを納得していた だくためにも、その辺が1つの暫定的な解決策かなと感じました。 以上です。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○杉山委員 ありがとうございます。3点ばかり質問をしたいと思うのですけれども、 1つが、資料3-1の11〜13ページにかけてなのですが、夫のみ就労の場合とか、離職 の場合等と出ているのですが、これの例えば全体で何%ぐらいになるのか。平成21 年のときは夫のみの就労が全体何%と前提しているのかとか、2050年になるとどうな るのかとか、そういうような数字というのは出るのか、出ないのか、それが1点確認 です。  もう一点が、これは多分前提が国民年金の国庫負担2分の1に引き上げてというこ とでやっていらっしゃると思うのですが、個人的には財源大丈夫なのかしらと心配を しておりまして、当面はどうなっているのかということと、あと将来的にどうなって いくのだろうかというところをちょっと説明していただけたらと思います。  もう一点が、これは希望というかお願いなのですけれども、この部会の中で少子化 の問題が一番深刻であるし、みんなで考えていかなければならないことなのだという お話が出まして、別の部会でそういう議論をしている者としては大変心強く思ってお ります。なので、できましたら、こういった資料のところに、少子化対策国として何 をやっているのかといった資料に関しても併せてご報告をいただけたらありがたい なと思っております。よろしくお願いいたします。  以上です。 ○稲上部会長 今の御質問のことで、事務局からお答えいただけることがありますか。 ○山崎数理課長 まずそれぞれの世帯類型でどのぐらいの割合が該当するのかとい うことでございますが、それぞれの世帯類型は、例えば40年まるまる夫が就労して いて、妻は完全専業主婦と、それにぴったり当てはまる世帯ということになりますと、 それはある意味ポイントということになりますので、そういう意味では40年共働き とか、そういう世帯の方も、それぴったり当てはまる方はレアケースということにな るわけでございますが、例えば、今、雇用労働者の男性で有配偶の方について、奥様 が雇用労働者として働いておられる人の比率ということで見ますと半分強ぐらいと いうことでございますので、逆に残りの方は働いておられないということで、現役の 方で見ると、夫が就労している夫婦で見て、奥様が働いておられるケースというのは 半々ぐらい、若干奥様が働いているケースのほうが多いというような状況がございま して、そういう意味ではいろいろな世帯類型というものはそれぞれそれなりの割合が あるというとでございますが、何が何%というのが具体的にこの数字であって、何年 移り変わってという詳細のものを持ち合わせているという状況ではないところでご ざいます。  あと、2点目のお尋ねは、国庫負担2分の1についての財源が当面何で、将来どう なっているかというお尋ねということでよろしゅうございましょうか。 ○杉山委員 はい。 ○塚本年金課長 多分後での御説明にも出てくるかと思いますけど、今現在「国民年 金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案」、国庫負担2分の1の法律 というのを国会に提出してございまして、4月17日に衆議院で可決されて、衆議院は 通過して参議院審議を待っている状態ということでございますけれども、その2分の 1のための、今、国会に御審議いただいている法案の中で、平成21年度と22年度に ついては、財投特会の金利変動準備金を活用して2分の1等の差額を負担するという ことになってございます。その後、税制改正法の規定に従って行われる税制抜本改革 でこの2分の1のための所要財源を確保するのだということが税制改正法にも書いて ございますし、ということでございます。  あと、その税制抜本改革というのが、平成23年度の財源手当に間に合わない場合 には、21年度、22年度と、財源がどうなるかわかりませんけれども、何らかの臨時 財源を探して、それによって対応するという道筋はできているということでございま して、最終的には税制抜本改革の議論の中で所要の安定財源確保をしていくという流 れになっているということでございます。 ○稲上部会長 樋口委員どうぞ。 ○樋口委員 この後のこの扱いをどうするかということについて御議論いただきた いと思うのですが、財政検証のこういうテクニカルな、あるいは非常に詳細な分析の 結果がこれで一通り出てきたのかなと思います。その後、ここからどういうようなイ ンプリケーションを導くのか。先ほどから出ていますような少子化というものがこう いった問題にとって非常に重要なのですというメッセージが今、出てきているわけで すが、これは何らかの形で、これをこの部会のインプリケーションを導くようなこと という作業はあるのでしょうか。それともこれはやりましたということで、あとはそ れぞれ見てくださいというところで話は終わるのか、その点について、今後の見通し といいますか、やり方について御説明いただけたらと思います。 ○伊奈川総務課長 実は、後ほど私から、年金をめぐる動向についての中で触れよう かと思っておりましたけれども、今、御指摘いただきましたような少子化対策が非常 に重要であるという点につきましては、昨年の年金部会で取りまとめていただいた中 間的整理の中でも触れていただいているということでございます。また、政府全体に おいては、樋口先生、よく御存じのように、社会保障の改革の中でも医療、年金、介 護と並ぶ問題として少子化というものが位置づけられております。そういったいろい ろな、状況、動きがございます。  そういった中で、私ども年金のサイドで言いますと、今、年金課長が少し触れまし た今回の2分の1の国庫負担の法律の中では、実はそういった財源問題ということだ けではなくて、その附則の中に検討という規定がございまして、その中では政府はと いうことで、「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施 策について、それが重要だということにかんがみ、その一環として年金制度について も、最低保障機能の強化について検討する」といったようなことで、法律上も少子化 というのが明記をされているということでございますので、また、こういった2分の 1の国庫負担法案、まだ国会にかかっている状況でございますので、そういったもの の動向を見きわめた上で対応していきたいと、今の時点では考えております。 ○樋口委員 趣旨はよくわかったのですが、財政検証ということを今回やったわけで すね。やった結果から何を導くかというようなことについて、改めてまとめるという ようなことがあるのか。それともいろんな施策の中で、こういった知見を活かしてい きますよというような扱いになるのか、そこが見えないもので、どうしましょうかと いうところなんですが。 ○稲上部会長 山崎委員どうぞ。 ○山崎委員 ほとんど同じ意見ですけれども、財政検証の説明をお聞きしていると、 今回の財政検証の結果、マクロ経済スライドなどの措置を講じていけば、わが国の年 金制度は所得代替率の点でも、給付倍率の点でもそう大きな問題ないから、持続可能 であると、こういうメッセージが出てくると考えられます。しかし、こういう予測に は、前提条件というものがあるわけで、その前提条件の中に、問うべき問題があるよ うな気が致します。そういうところをえぐり出しながら、持続可能ではあるけれども、 ありうるケースをいくつか想定し、こういうケースではこのような結果が導かれると いうような形のメッセージを出していくことが国民に広く今後の年金制度を理解し てもらうためには必要なのではないかと思います。例えば給付と負担倍率、確かにこ れは自分が払った保険料だけで見ていけばいい、これはそういう割り切りで前もやっ ていた。それでは事業主負担分を入れたら、これはどのぐらいの数字になってくるの か。自分で支払った保険料の2.3倍で将来もいくので、これは前回とほとんど同じと なりますから、過去との比較では問題ないかもしれない。しかし、世代別にみたら、 自分の支払った保険料の6.5倍とか、3.9倍とか給付される人もおり、世代間格差の 問題というものを多分感じるでしょう。そうした格差について、どう説明を行い、国 民にどのように理解を求めていくのかというようなことは大事な問題ではないかと 思います。 ○権丈委員 今のお話というか、樋口先生のところの話にも関連するのですが、財政 検証を今やりました。財政検証から出てくるメッセージ、日本という国への警告は、 これは年金局で対応できることと年金局では全く対応できないことがあるんですね。 財政検証から出てくる経済前提、社会前提への警告は、残念ながら、ほとんどが年金 局で対応できない。財政検証の持つ意味としては、私は年金局では対応できない問題 を明示的に示すことの方が大切なのだというのを5年前に書いています。  年金の中だったら、高齢者の最低所得機能の強化とか、それとも関連して第1号に いる被用者に厚生年金を何としてでも適用しなければならないということなど、以前 よりも強く求めるインフォメーションを、今回の財政検証は持っています。  そういうことで、年金で対応できること、そして年金で対応できない、年金局の外 の問題を、樋口先生とか、我々もやりますけど、みんなでまとめていただきたいと思 います。財政検証というのはそういうものなんです。  年金という制度に、出生率、成長率、就業率という極めて重要な社会経済情勢をイ ンプットして日本の将来像を描き、その将来像からフィードバックして、今現在、こ の国の政策として、こういう社会政策、経済政策が大切なのだというメッセージを出 すためのものなんです。財政検証は、昔の財政再計算と違うのですから、私は財政検 証のその辺のフィードバックは非常に重視したほうがいいと思っております。  それともう一つ、先ほど積立金のどうのこうのとありましたけど、よく世代間格差 の議論の中で、保険料をあまり取らなかったから世代間格差が生まれたとかいろんな ことを言う人がいるのですけど、日本の積立金というのはほかの国よりもはるかに多 いんですね。積立度合いでみれば4.5年から5年分ぐらいある。積立金の度合いその ものから見ると、日本の公的年金はほかの国よりも過去に保険料を取りすぎていると いうこともできるわけです。バブル崩壊後の90年代などは、所得税の減税を一方で やっておいて、他方では年金の積立金をせっせと増やしていたわけです。  この巨額に積み上げてきた積立金が日本のマクロ経済、マクロの経済循環に迷惑を かけている側面もある。しかしミクロの視点から年金制度の中だけを見ると世代間格 差を発生させないためには、過去に、より多くの保険料を取り、積立金を今よりもは るかに大きくしておかざるを得なかった。公的年金の世代間格差をことさらに問題視 する人たちは、日本の年金が、他の国よりも多くの積立金を持っていることも視野に 入れた方が良いと思う。自分たちの言っていることが、マクロ、ミクロ、その他いろ いろな側面からみて矛盾のないようにするためには、もう少し高いところからモノを 見たほうがいい。世代間格差で大騒ぎするひとたちは、とんちんかんな話がいっぱい で、自己矛盾していることが多過ぎる。  そして積立方式にするという年金改革の話を、凝りもせずに昨年末に与野党の何人 かで仲良くやっていましたけれども、巨額の年金積立金を持っている国になるなんて 考えただけでも想像できないところがあって、そんなものはあり得ないし、そういう ようなところで、負担給付比率が何倍だ、どうのこうのとかいうような議論に焦点を 当てた議論をやっているなど、我々から見ると、まぁ、好きにやってくださいという 世界の話なんですね。しかもそうした積立方式への改革案が、リーマン・ショック以 降、アルゼンチンなどの国で私的年金、すなわち積立方式の年金の破綻を受けて国有 化されている段階で出されているんですね。  負担給付比率の話などは、高所得高齢者から税金をぽんと取って、担税力の垂直的 な公平を視野に置きながらやっていけばいいではないかというような議論にいくほ うが、エネルギーを社会保障と税の一体改革の方に注ぐ方がはるかに建設的だという こと。先ほども言った1号に所属する被用者を何としてでも厚生年金の世界に入れる ことが、以前よりも重要になってきているというようなことはしっかりと読み取って いきたいと思っております。 ○稲上部会長 御議論はまだおありになろうかと思いますが、次の議題と事実上、関 係がございますので、そちらに進ませていただきまして、皆様、御承知のように、当 部会では、昨年の11月の末に基礎年金の最低保障機能の強化などにつきまして議論 をいろいろしていただきまして、中間的な整理をしておりました。その後、政府部内 での議論もいろいろ出てきております。それから、これも御承知のように、来年の1 月から、日本年金機構が立ち上がります。それに伴いまして、新たな公的年金の運用 体制に向けた議論も進んできていると理解しております。  そこで、まずこうした年金制度をめぐる最近の動向などにつきまして、事務局から 御説明をお願いできますでしょうか。 ○伊奈川総務課長 私、総務課長から説明をさせていただきます。お手元の資料4-1、 4-2、4-3を中心に御説明をいたします。 年金制度をめぐる動向がどうなっているの かということでございます。  年金制度、ここに「法案」と書いてございますのは、先ほど年金課長が申し上げま した2分の1の国庫負担に関する法律でございます。1月30日に国会に提出いたしま して、ここにございますように4月17日に衆議院を通過しておりますが、現時点に おいては参議院においては審議中という状況でございます。  また、今回の2分の1の国庫負担の法案というものに関しては、今後の税制の抜本 改革ということと大きくかかわると。つまり今後の財源をどうしていくかということ でございます。その点に関しましては、既に3月27日に成立しております「所得税 法等の一部を改正する法律」、その中で抜本改革ということが触れられているところ でございます。  また、法案に関して申し上げますと、「※」のところですが、「被用者年金の一元化 等を図るための厚生年金保険等の一部を改正する法律案」ということで、これは既に 平成19年4月に国会に提出しておりますけれども、継続審議中ということでござい ます。  なお、一元化の法案の中においては、当部会でもいろいろと御議論いただきました パートの適用に関しても盛り込まれているということでございます。  引き続きまして、横の「政府部内の諸会議における議論」ということでございます。  当部会において、昨年まとめていただきました最低保障機能の強化等に関します中 間的整理、そういったものを政府全体においては中期プログラムということで反映を されてきております。その中期プログラムの大きな柱が先ほど申しましたように、年 金とともに少子化でありますとか、医療、介護、そういったものがいろいろと絡みな がら現在社会保障に関するいろいろな議論が行われているという状況でございます。 特にここで取り上げておりますのは、2月12日、社会保障改革推進懇談会、こちらは 昨年11月に社会保障国民会議の報告書が取りまとめられたわけでありますけれども、 その提言のフォローアップということで設けられているものでございます。この推進 懇談会に対しましては、財政検証に関する資料も提出をしたという経緯がございます。 また、現在いろいろと議論されております格差の問題、あるいは貧困、雇用の問題と いったような国民を取り巻くいろいろな不安、こういうことに今後対処していくとい うことで、経済財政諮問会議、そしてまた、安心社会実現会議において、新しい日本 型の社会をどう構築していくかといった議論が行われているところでございます。  直近について申し上げますと、5月19、21日に、経済財政諮問会議において「安心 実現集中審議」ということで、厚生労働大臣も出席いたしまして社会保障の機能強化 ということについて議論がされておるところでございます。今後、安心社会実現会議 の提言の取りまとめ、そして、また骨太の基本方針という中で、こういったものが反 映されていくのではないかと思っておるところでございます。  また、一番右側の欄に書いてございますのは、「新たな公的年金の運営体制に関す る議論」ということでございます。  これは社会保険庁が、ここの欄の一番下のところにありますように、来年の1月を もって廃止をされ、そして日本年金機構が発足をするといったような中で、現在新し い日本年金機構の設立に向けての準備が進められているところでございます。もう少 し具体的に見ていただきますと、資料4-2でございます。「日本年金機構設立委員会 について」ということでございます。  委員のメンバーは、次のページにございますけれども、トヨタ自動車の取締役相談 役である奥田委員長の下で議論が進められておりますけれども、これまで8回開かれ てございます。そして第7回、第8回においては、「内部統制等」と書いてございま すが、その中で新しい年金局にかかわることについても議論がされておるところでご ざいます。その関係の資料を4-3という形でエッセンスを取りまとめております。い ろいろと詳細な資料については参考資料6、そして7-1、7-2、8とございますけれど も、説明時間の関係でエッセンスをこちらのほうに反映させております。  資料4-3「現場実務を踏まえた制度設計について」というタイトルになっておりま す。これは何を言っているかといいますと、日本年金機構が発足いたしますと、これ まで社会保険庁が担っていた業務・任務、これが日本年金機構に行くものでございま すけれども、一部新しい年金局に来るといったことで、これまで以上に現場実務を踏 まえた制度設計でありますとか、あるいは予算も含めての対応が必要になってくると いうことでございます。  具体的に見ていただきますと、次のページ「年金制度の企画立案における現場要請 の反映−現状と課題−」とまとめております。  まず【現状】でございます。これまで年金局においては、概ね5年ごとの財政再計 算の際にいろいろな制度改革を行ってきているわけでありますが、その際には社会保 険庁からの事務処理上の要請を受け、そして事業実施面からも反映できるものは反映 をしてきたという経緯がございます。例えば次の「○」に書いてございますが、平成 16年に行いました国民年金保険料の多段階免除制度(4段階)の導入、あるいは市町 村からの所得情報の提供を受けやすくする。つまり具体的には税情報を受けやすくす るための根拠規定を設けるといったような改正を行っております。  また、もう少しさかのぼりますと、平成11年の地方分権一括法の際には、第3号 被保険者の届出につきまして、それまで市町村経由であったものを事業主経由に変更 するといったようなことを行っているわけでございます。  しかしながら、要請を受けながらもなかなか実現が難しかった課題がございます。 ここには書いてございませんけれども、例えば昨年御議論いただきましたような、25 年の受給資格期間を短縮するかどうか。あるいは保険料の徴収の消滅時効2年を長く するかどうかといったような点でございます。  また、昨年11月には標準報酬の遡及訂正事案、つまり改ざん問題に関しまして調 査委員会が設置をされまして、その報告書の中においては、現場実務との関係でいろ いろな御指摘をいただいているところでございます。例えば昭和60年に行いました5 人未満の法人事業所への厚生年金の適用拡大、これがなかなか現場において対応が困 難であったのではないかといったような点でございます。  そういった点につきましては、次のページでまた御説明いたしますけれども、いろ いろな形で新しい日本年金機構との関係が出てまいりますので、今後社会保障審議会 年金部会等においても総合的な検討を行っていく必要が出てくるのではないかと考 えております。  次は省略いたしまして【課題】といたしましてはいろいろと書いてございます。  ここに書いてございますのは、社会保険庁改革において、これまで例えば年金業務 組織再生会議といったものが設置をされ、その中で厚生労働省として述べてきた点で ございます。省全体としてはいろいろな課題について、一体的に取り組むという体制 が十分とれていなかったという点を我々としては認識をしているということで、今後 について言いますと、その下の「・」に書いていますが、制度改正に当たっては、い ろいろと現場の要請も踏まえて対応していく必要があるといったような点が書いて ございます。  次のページ「社会保険庁改革と公的年金に係る国の責任について」ということで、 来年1月に新しい日本年金機構が発足した後の厚生労働省の役割という点でございま す。  この「改革後」というところに書いてございますけれども、今後は制度設計のみな らず事業実施に関する総合的な企画立案、あるいは年金に関する特別会計、そしてま た保険料徴収、年金給付額等の最終決定につきまして、厚生労働大臣が権限と責任を 持つということになっております。  そういった中でどのように日本年金機構との間で業務をやっていくのかというの が次の「新体制におけ『現場実務を踏まえた制度設計・予算編成等』の仕組み」でご ざいます。この絵に基づいて御説明いたしますと、日本年金機構理事長の下に事業の 企画部門が設けられ、そしていろいろな形での業務の検討、そしてまた実施がされて いくと、そういった中で制度の改善に関する提案であるとか、要望、さらには予算に かかわるものも出てくるであろうということでございます。  そういった場合に、今後においては、厚生労働省と日本年金機構との間で定期的な 協議の場を設け、そしてそのやりとりを可視化する、透明化するという観点から文書 によってやりとりをしていこうといったようなことを考えているところでございま す。そういった中で、社会保障審議会年金部会等にいろいろとお諮りをし、御相談を していく事項というのも出てくるのではないかと考えているところでございます。  また、ここで「社会保障審議会年金部会等」と書いてございますが、日本年金機構 の業務に関しまして、中期目標等の設定に当たっては、厚生労働大臣がそれを定める に当たり、社会保障審議会に諮るとなっておりますので、この年金部会とはまた別か もしれませんけれども、社会保障審議会にそういった観点からお諮りするということ も必要になってくると考えているところでございます。  また、少し実務的な話でございますけれども、次のページを見ていただきますと、 「現場職員からの提案や疑義照会の流れ」ということでございます。  これまででございますと、年金局において基本的な法解釈というものは示してある わけですが、全体として言いますと、社会保険庁において法の解釈運用をしてきたと いうことであります。今後においては、厚生労働大臣の下で年金局長以下で、法解釈 について権限を持つとともに、責任も果たしていかなければいけないといったことに なろうかと思います。  次の〈「新たな仕組み」を補完する仕組み〉、これはエッセンスだけ申し上げますと、 今後、現場からのいろいろな提案とか照会というものが出されると。そして先ほど言 いましたように、定期的な協議の場を通じてそれに対応していくということでありま すけれども、さらに個々の職員からいろいろな提案とか要望が出てくると。そういう ことに関しては広く窓口を設けていこうということで、例えば年金局においては、「国 民の声係」といったものを設けようということを考えているところでございます。  以上、簡単でございますけれども、今後の年金局のあり方にかかわる御説明をさせ ていただきました。まとめて申しますと、従来以上に現場を踏まえた制度設計が必要 になってくるということでございまして、そういった点でこの年金部会にもいろいろ とお願いをしていく必要があろうと考えているところでございます。  以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見をいただきたいと思い ます。都村委員どうぞ。 ○都村委員 年金の運営体制をサポートするという、そういう視点から一言述べさせ ていただきたいと思います。  年金の運営におきましては、被保険者の適用、保険料の徴収、保険給付の支給とい うのが柱になると思います。年金に限らず社会保障全般に言えることなのですが、リ スク発生後の保障だけにとどまらず、予防とか将来の社会保障への投資ということに 政策の重点を置くことも重要ではないかと思います。社会保障の規模はどんどん大き くなって、国民所得の5分の1を超えて4分の1に近づいています。大きくなってい ますけれども、その規模の大きさに比例した適切な情報と教育が国民に与えられてい るとは現在言い難い状況にあるのではないでしょうか。  年金制度についても、例えば地方の社会保険事務局が中高校生の年金教室実施前後 にアンケート調査をしています。これはかなり精緻な調査できちんと調査しています。 大変興味深い結果が出ているのですけれども、例えば年金をもらえるのは「年を取っ たときだけ」と答える者が多くて、中学生、高校生の3分の2は、障害年金、遺族年 金の制度を知らないのです。また年金の費用について聞いているのですけれども、年 金の費用については「すべて税金である」か、あるいは「わからない」と答える者が 非常に多くて、生徒の7割は年金保険料について周知していないのです。ところが社 会保険事務局のほうで、1時間の授業を受けさせますと、受けた事後アンケートでは、 9割の者が「仕組みを理解できた」と答えております。それから、中学生の8割が、 「将来自分はきちんと保険料を納めたい」と答えているのです。  情報と教育の提供というのは、現在も社会保険庁を中心に非常に努力されています けれども、将来の年金制度への投資をさらに充実するということが年金運営をサポー トすることにもなるのではないかと思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。どうぞ、杉 山委員。 ○杉山委員 ありがとうございます。5ページのところに、「年金局に設置予定の『国 民の声係』」というのがあるということなんですが、国民の声を年金局で全部一手に 引き受けるという声係になるのか、ちょっと懸念しているのは、年金局ですと、それ こそさっきの世代間の不公平だ、みたいな声であったりとか、それから、私の年金は どうなっているんですかという、いろんな声が全部一本化しちゃうのか、そのあたり、 多分御議論されたと思うのですけれども、どういうふうな整理になっているのかを教 えていただければと思います。 ○伊奈川総務課長 こちらでは、あくまでも年金局としての国民の声を聞くパイプ、 窓口をつくろうということで書いておりますけれども、当然ながら日本年金機構がい ろいろな実務を行っていくということで、例えば一番現場に近いところでいえば、年 金事務所というものが置かれて、今後も社会保険事務所ではなくて年金事務所という 形で置かれるわけでございますので、日本年金機構サイドで取り組まれるものもある のだろうと。そして、私ども年金局サイドでも対応する部分もあるということで、そ の間の連携を図っていくといったことも必要になるというふうに認識しております。 ○権丈委員 何度も済みません。都村先生の発言に触発されて、年金の制度をどう知 るかというところについて発言させていただきます。  財政検証のところとも関係する話ですけど、納付率100%の場合の推計もしてもら いたい。例えば出生率がどのくらいだったらどうなるかということをはじめ、将来な んて何も決まってないわけで、将来というのはこれから先我々が意識的にどうつくる かなんだから、いろんなものが目標値なわけです。そういう意味では、納付率100% という試算をやってもらいたい。  細野真宏さんの『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』という本 の中で、納付というのは義務じゃなく、これは権利だというふうに、彼は解釈してい るわけなんですが、それはもっともなことで、20%の人たちが公的年金を利用する権 利を放棄することを放置するというのはよろしくないので、遠い目標といいますか、 とにかく納付率100%運動を積極的に展開してもいいと思いますし、100%という目標 を掲げた試算を同時に入れておいていただければと思います。この秋から、免除対象 者にハガキを送って簡単な記入をして送り返してもらうだけで免除手続が済むとい うターンアラウンドもはじまるようなので、まったく無理という話ではないと思う。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。 ○都村委員 今の権丈委員の御発言に関連しまして、先ほど納付率、国年の納付率の 変化が所得代替率に及ぼす影響について試算がなされていたわけですけれども、それ にも関連して教えていただきたいのです。近年、国民年金の保険料の納付率が低水準 で推移している大きな要因の1つは、経済、就業状況の低迷があると思うのです。そ の点に注意する必要があると思います。雇用動向統計によりますと、過去10年間入 職率よりも離職率のほうが高くなっています。1年間に新たに第1号被保険者の資格 を取得をした者の約60%が第2号からの移行者です。離職等によって2号から1号と なる者が毎年増えているということがあるわけです。第2号から1号への移行者の納 付率というのは、平均の納付率よりも低いのです。  先ほどの資料3-2、4ページのところでは、第1号の納付率が約100年間にわたっ て、すべての期間で増加もしくは減少した場合の試算がなされていますけれども、現 実のデータからすると、経済、就業状況の変化が国民年金の保険料水準を変化させる 可能性というのはかなり高いと思います。これらの影響を考慮に入れた所得代替率に ついてはどういうふうにお考えなのか、それを教えていただきたい。資料3-2の4ペ ージに関連してお尋ねいたします。 ○稲上部会長 お願いいたします。 ○山崎数理課長 試算といたしましては、ある意味、納付率につきまして、長期的に どれぐらいということで、それがある程度影響を決めますので、こういう試算をした わけでございますが、例えば3年とか5年とか、限定で納付率が変わっていて、それ 以後の値は、例えば80%なり100%なり、設定値になるということでございますと、 その場合は短期的に、例えば納付率が低かったといたしましても、それに対応する給 付が将来が小さくなることがございますので、100年間にわたって、ずっと1%違う ものに比べますとずっと小さい影響になる。そういう意味で、年金財政上の影響はこ れよりも、さらに桁が小さくなるということになるわけでございますが、ただ、未納 の問題は、年金財政だけもてばいいという話ではなくて、その間、未納だった方々が 将来の年金が少なくなる。無年金・低年金を生むということで、年金制度にとっては そちらのほうが非常に大きな問題ということでございますので、年金財政上の影響が 軽微だからといって、未納というものが、一時的な、何年間かでも放置していいよう な問題ではないということは重要な視点だというふうに考えております。 ○稲上部会長 ほかに御発言がございますでしょうか。 ○渡辺部会長代理 ちょっといいですか。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○渡辺部会長代理 新機構と現場の実務云々の話で、新しい年金局と年金機構が協力 してやるということは大変結構なのですか、1つ伺いたいのは、立法府とのかかわり ですね。つまり以前、社会保険庁のころ、いわゆる国会の法案が修正されると、社会 保険庁業務センターあるいは業務課では、コンピュータソフトを変えなければいけな かった、当然なのですが、財政再計算の時代にはそういったことが随分あったわけで すが、財政検証の時代になって、マクロ経済スライドということになったときに、国 会では当然立法府は修正権を持っているのは当然なのだけれども、それによる年金機 構に対する影響というのは、今までよりも比べて考えにくいんですか。極端に言うと、 今のマクロ経済スライドの、今、0.6、例えば0.6という数字だって動かそうと思え ば動かせるわけでしょう、国会で、例えばの話。 そういったときに年金機構はどのように対応できるのか。以前、そういうときに保 険庁業務センター、社会保険庁の評判の悪さの1つもそこにあったのだけれども、今、 ここで修正されたらコンピュータは回せませんということははっきり国会でしたこ とが以前あったけれども、行政府が一致しているのはいいのですが、立法府との関係 について、もしわかれば教えてください。 ○稲上部会長 お答えがございますでしょうか。 ○伊奈川総務課長 そういった課題に対してどういう対応していくかということが まさに課題な状態だろうと思います。従来と違いますのは、今後、日本年金機構は独 立した法人格を持った組織でございますから、また、非公務員型であるといったよう なことで、何事につけても、私どものほうでよく日本年金機構と相談しながら、そう いう声をまた立法府に対してもお伝えしながら対応していくといったようなことが 基本だろうと思っています。  それ以上、今の時点でどうこうというのは私もまだ持ち合わせておりません。 ○稲上部会長 ほかに御発言がございますでしょうか。  私どもで、きょう用意しておりました議題は以上でございますが、これからの部会 の進め方などにつきまして、最後に年金局長からお話をいただきたいと思います。 ○渡邉年金局長 簡単に3点ほど申し上げます。冒頭たくさん御議論いただきました 財政検証につきまして、そのインプリケーションというのが年金行政だけではなくて、 社会保障全般あるいは国の財政、経済運営全般にかかわる問題であるという、そうい う貴重な材料でございますので、私どももさまざまな場で活用させていただくという 責務があるというふうに思っております。  それから、財政検証の手法そのものにつきましても、国会方面での御指摘もありま すが、厚生労働省のあり方懇談会が官邸でまとめられましたけれども、そういう中で も指摘事項などもあり、今後さらに工夫の余地がないかどうかという点も検討課題で あると思っております。  それから、大きな2番目ですが、先ほど総務課長から申しましたけれども、昨年11 月下旬にまとめていただいた中間的整理、これが社会保障国民会議あるいは中期プロ グラム、所得税法等の改正、それから、現在審議中の2分の1法案すべてに反映し、 なおかつ、これから新しい骨太方針にも強くかかわる、こういうような状況にござい ますので、途中まで中間まとめでまとめていただいた「基礎年金の最低保障給付の強 化、その他の措置」と法律上書いてございますが、これまでの御議論の蓄積というも のを踏まえて、当面する2分の1法案の国会審議の結果、それから、来月に策定され る政府の骨太方針の動向などを踏まえながら、もとより政治状況も現下の状況でござ いますので、そういうものも視野に入れつつですけれども、秋以降は各論点について、 さらに具体的な御議論をしていただきたいというふうに考えております。  それから、最後に御紹介して、まだ私ども自身も生煮えのままで大変恐縮だったわ けでございますが、過小評価できない大きな課題であると思っております。来年1月 に社会保険庁が廃止され、いわゆる国の機構ではない日本年金機構というものが設立 されるわけでございますが、これは従来社会保険庁長官が持っていた保険者の代表、 あるいは行政機関の長としての立場を、厚生労働大臣、そしてそれを補佐する年金局 が担うという改革でもございます。これは全く新たな環境でございます。  こうした状況を踏まえまして、年金制度の企画立案と事業実施に関する論点という ことで、やや抽象的な御説明、御紹介にとどめさせていただいたのは、道筋、出口に ついて、私どもなお悩んでいる状態なわけでございますが、今後、形式的に言えば、 この年末には、日本年金機構の中期目標というものを厚生労働大臣として定めていか なければいけません。そのために社会保障審議会に新たな場所ができるとしても、当 年金部会において、これまでもさまざまな御議論いただいていることとの関係もこれ あり、いろいろお気づきになる点が出てこようかと思っています。また、設立委員会 は非常に精力的に進められておりまして、こういう中では近い将来の中期目標に盛り 込むべき事項にも影響し得る日本年金機構法の立場から見たさまざまな論点という ものがさらに絞られてくるというふうに思います。  そうした三つどもえの環境の中で進んでいくわけでございますが、さまざまな論点 が出得るわけでございますが、従来の年金部会における御議論に接点がありながら、 真正面に来なかった論点も出てくるのではないかと思っています。一例ではございま すけれども、例えば適用事業所の制度的なあり方とか、それからパート・非正規労働 者の適用の問題ということが、よくこの年金部会で御議論になりますけれども、それ 以前に正規社員の適用の問題はどうなっているのだという問題につきましても、従来 は社会保険庁という行政機関兼保険者がございましたので、そこにお任せという部分 があったわけでございますが、もう任すべき相手がございませんので、明確なルール 化ということがこれから求められてくると。  こういう中で、先ほど来、出ております国民年金の収納率につきましても、1号被 保険者と2号被保険者との仕切り線は今後どうなっていくのかということが、先ほど 来、御指摘になっていたところがあるのだと思いますが、そういう点、何でもかんで も議論できるわけではございませんけれども、恐らく議論をどうしても深めていただ く必要のある論点というものが、あるいは古くて新しい論点というものが出てくる可 能性がございますので、やや早いかもしれませんが、今の時点で御紹介申し上げて、 そうした可能性も視野に入れて御議論を賜り、そして新年金機構が無事出発し、新し い責任体制になる新年金局というものも機能していくように、また御指導いただきた いと思っております。  私の言葉からだとちょっと変なのですが、参考資料6というのをごらんいただきた いのですが、6の新年金局と口でばかり言っておりますが、13ページをごらんいただ きたいと思います。  そもそも年金局の体制ががらっと変わります。ここに書いてございますような、大 きな局に来年1月1日から大きく転換するということが予定されておりますので、そ うした年金局全体の企画立案、あるいは事業実施に対する指導のあり方、こういった 点も含めながら、今後の給付と負担、持続可能性の確保、あるいは適用その他のさま ざまな公平性・公正性の確保、こういった点について御議論をさらに賜りたいと思っ ております。ちょっとここら辺はまだ未整理でございますが、日程的にはこの半年の 間でさまざまなことが発生し得るということでございますので、きょう御紹介をさせ ていただいた次第でございます。  大きく申し上げますと、財政検証におけるさらなる工夫を今後どうするかというこ と。それから、基礎年金の最低保障機能強化等の政策的課題をどう詰めていくか。そ れから、こういう執行体制とのかかわりから出てくる制度的な諸問題をどう考えてい くかと、こういう大きな3つの点が出てこようかと思いますので、よろしくお願い申 し上げます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  それでは、本日の部会はこれで閉じさせていただきたいと思います。  次回につきましては、事務局から御連絡をさせていただきますが、なお、何かどう してもという御発言がございましたら、お伺いいたしますが、よろしゅうございます でしょうか。  どうもありがとうございました。 (連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)