09/05/25 第1回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会議事録 第1回 内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会 日時 平成21年5月25日(月) 17:00〜19:00 場所 合同庁舎第5号館2階共用第6会議室 ○医療安全推進室長(佐原) 第1回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会 を開催します。委員の皆様におかれましては、お忙しいところお集まりいただきまして誠 にありがとうございます。私は今回の検討会の事務局を務めさせていただきます、医政局 総務課医療安全推進室長の佐原と申します。よろしくお願いします。  議事に入ります前に、私から本検討会の委員の皆様を五十音順にご紹介させていただき ます。日本医師会常任理事の飯沼雅朗委員です。日本薬剤師会常務理事の岩月進委員です。 日本歯科医師会常務理事の江里口彰委員です。筑波大学附属病院医療情報部長の大原信委 員です。国立病院機構大阪医療センター院長の楠岡英雄委員です。江戸川大学メディアコ ミュニケーション学部教授の隈本邦彦委員です。社会保険中央総合病院名誉院長の齊藤壽 一委員です。電力中央研究所社会経済研究所ヒューマンファクター研究センター上席研究 員の佐相邦英委員です。慶応義塾大学看護医療学部教授の嶋森好子委員です。日本病院薬 剤師会常務理事の土屋文人委員です。日本看護協会常任理事の永池京子委員です。特定非 営利活動法人ネットワーク医療と人権理事の花井十伍委員です。名古屋大学医学部附属病 院総合診療部教授の伴信太郎委員です。東京慈恵会医科大学附属病院長の森山寛委員です。 東京理科大学薬学部薬学科教授の望月正隆委員です。  続きまして、事務局を紹介させていただきます。医政局長の外口が参る予定でしたが、 国会の都合で今日は欠席させていただきます。医政局総務課長の深田です。医薬・食品局 安全対策課安全使用室長の倉持が出席予定でしたが、本日、公務により代理で佐藤補佐が 出席予定ですけれども遅れています。医薬・食品局総務課長補佐の近藤が出席予定でした が、本日、公務により代理で高江補佐が出席しています。最後に私は医療安全推進室長の 佐原です。よろしくお願いします。事務局を代表しまして総務課長の深田から、ご挨拶を 申し上げます。 ○医政局総務課長(深田) 本日、本来なら局長のほうからご挨拶申し上げるところです が、国会がちょうど参議院の予算委員会の最中でございまして、欠席させていただきます。 お許しいただきたいと思います。代わりまして私、総務課長の深田です。一言、開催に当 たりましてご挨拶申し上げたいと思います。  委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、本検討会の委員をお引き受けいただきま して誠にありがとうございます。処方せんの件が本検討会の議題ですけれども、処方せん は皆さんよくご存じのように、医療現場では非常に重要な文書の1つですが、その記載方 法については医師あるいは医療機関の間で統一されたものがなく、そのことに起因して内 服薬を中心に処方せんの記載ミス、記載漏れ、指示受け間違いといった、ヒヤリ・ハット の事例や医療事故の事例が後を絶たないと指摘されているところです。  本検討会におきましては、内服薬の処方せんの記載方法のあり方について、どのような 対応が可能なのか、どういうふうに進めていくのかといった点を、幅広くご議論いただき たいと思っています。委員の皆様方におかれましては、こうした本検討会開催の趣旨につ きましてご理解いただきまして、よろしくご指導のほどお願いいたします。どうぞよろし くお願いします。 ○医療安全推進室長 次に、お手元の配布資料の確認をさせていただきたいと思います。 議事次第、座席表のほかに、処方せんの記載方法に関する医療安全対策の検討(資料版) という冊子とCD-ROMがあります。そのほかに本日の資料として資料1が本検討会の開催要 綱、資料2が内服薬処方せんの記載方法に関する現状の整理、資料2の別添として別添1〜5 まであります。資料3が厚生労働科学研究について、この関係の資料として参考1、参考2が ございます。以上ですが、資料の欠落等がございましたらご指摘をいただきたいと思いま す。  また資料とは別に、これまでの厚生労働科学研究報告書を閲覧用に用意しています。そ れらの報告書を収めたCD-ROMはお持ちいただいて結構ですので、よろしくお願いします。 今日、これらの資料につきましては傍聴席の皆様にはありませんが、厚生労働省のホーム ページに本日の会議資料とともに掲載予定ですので、それをご参照いただきたいと思いま す。  次に、本検討会の座長についてお諮りしたいと存じます。座長の候補者を事務局より提 案させていただきたく存じますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○医療安全推進室長 それでは本検討会の座長には、国立病院機構大阪医療センター院長 の楠岡委員にお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○医療安全推進室長 それでは委員の皆様方のご賛同を得ましたので、楠岡委員に座長をお 願いしたいと存じます。座長に一言ご挨拶いただいた後、以降の議事進行をお願いいたしま す。 ○楠岡座長 ただいま、ご指名いただきました楠岡でございます。微力ながら座長を務め させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。ただいま深田総務課長のご 挨拶にありましたように、処方せんというのは医療の現場の非常に基本的な文書でありな がら、その記載の方法について定められたものが全くないというのが現状でございます。 本日は初回でございますけれども、現状がどういうふうになっているのか。どこに問題が あるのかという点を少し議論させていただいて、今後、どういうふうにするのがいいのか、 いろいろ考えていきたいと、この検討会をそういうものに受け止めていますので、よろし くお願いしたいと思います。  議事に入らせていただきますが、その前に本検討会の進め方について少し確認をさせて いただきたいと存じます。本検討会につきましては公開で行い、議事録につきましても厚 生労働省のホームページで公表することに致したいと思いますので、この点につきまして ご了解のほどよろしくお願い申し上げます。それでは議事に入りたいと思いますが、まず 本検討会の資料に基づきまして、事務局からご説明いただきたいと思います。よろしくお 願い申し上げます。 ○医療安全推進室長 事務局から資料1、資料2につきまして、10分程度でご説明をさせて いただきたいと思います。資料1は本日のこの検討会の開催要綱です。趣旨は、本検討会に おいては、医療安全の観点から、内服薬処方せんの記載方法に係る課題やその標準化など、 今後の処方せんの記載方法の在り方について、幅広く検討を行うこととする。検討課題と しては、内服薬処方せんの記載方法に関する医療安全上の問題、記載方法に関する今後の 在り方ということです。この検討会の位置づけは医政局長による検討会ということです。 検討会のメンバーは、いまご紹介させていただいたとおりです。  資料2をお開けください。これは内服薬処方せんの記載方法に関する現状の整理という ことで、十分整理されていない部分もあるかもしれませんが、事務局でまとめさせていた だきました。この問題について、1.医療安全対策検討会議からの意見(平成17年6月)と いうのがあります。これは、医療安全に関する対策の企画、あるいは立案及び関連事項に ついて検討が行われた医療安全対策検討会議、医政局に設置されたものですが、ここにお いて、「処方せんの記載方法等に関する意見」といったものが医政局長宛に提出されてい ます。その意見というのは別添1として付いています。ここでは処方せんの記載方法等に ついて、医師、医療機関の間で統一されておらず、そのことに起因した処方せんの記載ミ ス、記載漏れ、指示受け間違い等のヒヤリ・ハット事例や医療事故が後を絶たない状況に あり、医療安全の観点からも、検討を早急に行うべきであるというご提言をいただいてい ます。  資料2の2.厚生労働科学研究における調査・検討ですが、平成14年より、処方せんの記 載方法等について調査・検討をしていただいています。その経緯につきましては別添2を ご覧いただきたいと思います。別添2は、処方せんの記載方法に関する検討の経緯と題し ているものです。平成17年の提言の前の平成14年ですが、主任研究者を今日いらっしゃる 齊藤委員がされ、病院、診療所、薬局に対しアンケート調査を実施し、処方せんの記載方 法に統一した規格がなく、医学教育や臨床研修でも系統的な教育に乏しいことが示されま した。この研究班が平成17年のご意見の基になっているものです。  その後、平成17年のこの研究班では、情報伝達エラーを防止するため、処方せんの記載 方法の「標準案」を作成していただき、さらに平成18年に医育機関に対し、処方せん記載 の現状と、「標準案」に対する調査が実施されています。また平成19年は医育機関ではな く診療所、歯科診療所、薬局に対し、平成18年度と同様の調査を実施し、平成20年度には 「標準案」導入時の課題と方策について、基礎的な研究をしていただいているところです。 この研究の内容につきましては、後ほど齊藤委員からご報告いただく予定にもなっていま す。  資料2の3.医療安全情報における注意喚起ですが、これは、財団法人日本医療機能評価 機構が行っている医療事故情報収集等事業において、収集した医療事故情報等を分析し、 特に注意喚起が必要な事例について、概ね1月に1回の頻度で、医療機関等へ医療安全情報 として情報提供しているものです。この中で、処方せんの記載方法に関連する事例につい ても注意喚起を行っています。  これについては別添3をご覧ください。「医療安全情報」と大きく真ん中に書いてあるも のです。今回は2つ載せていますが、No.9が[製剤の総量と有効成分の量の間違い]で、四 角の中ですけれども、内服薬処方において、製剤の総量と有効成分の量との誤認に起因す る過量投与が報告されていますということで、セレニカR顆粒40%、1日1250mgといった 場合に、これが有効成分の量としての1250mgなのか、製剤全体の量としての1250mgなのか が分かりにくいということです。左側の医師が意図した指示内容として、製剤の総量とし ては1250mgだったわけですが、薬剤師の解釈としては、製剤の総量として3120mgを調剤し たという事故が報告されています。  別添3の3頁で、処方表記の解釈の違いによる薬剤量間違いですが、四角の中で「3×」 や「分3」の表記を3倍と解釈したことによる薬剤量の間違いが報告されています。これは リン酸コテイン10% 60mg 3×と書いてある場合に、1日量としては60mgで、これを3回 に分けて1回量は20mgと解釈する場合と、1回の量が60mgで、1日投与量としては180mg と解釈する場合があり事故があったということです。  資料2の4.医療事故情報収集等事業報告書における記載ですが、いま、いくつか特徴的 な事例を申し上げましたけれども、改めて4では医療事故情報収集等事業報告書において、 どういう報告がされているのかについてまとめています。財団法人日本医療機能評価機構 が行っているこの事業に報告された、薬剤に関する医療事故及び与薬準備、処方・与薬に 関するヒヤリ・ハット事例は、以下のとおりです。医療事故の事例として、平成17年から 50〜70件程度、ヒヤリ・ハットとしては数千件、数万件の事例が報告されています。  別添4をご覧いただくと、医療事故情報収集等事業の概要を書いています。1.医療安全 を目的にするものです。2.実施機関は日本医療機能評価機構がやっています。3.対象医療 機関は、1)報告義務医療機関が272あります。これは国立高度専門医療センター、いわゆ るナショナルセンターである、がんセンター、循環器医療センターのようなものです。国 立病院機構の開設する病院、大学の附属病院である病院、特定機能病院に加え、任意参加 で283の医療機関から報告をいただいています。いずれも比較的体制が整っていて、医療 安全がしっかり行われていると思われる病院からの報告です。こういう病院からも、たく さんの内服薬処方せんに関連した事故の事例が報告されています。  別添5に医療事故の事例ということで、評価機構のほうへ報告され、別添の下の四角の 中をご覧いただきたいと思いますが、報告書において公表されている事例のうち、処方せ んの記載に関連していると思われるものを今回抽出しています。ただ、この内容につきま しては報告書の記載のとおりに抜粋したものです。この事業の性格上、記載されている情 報以上の詳細な情報を厚労省では把握していません。またいろいろな事例がありましたの で、便宜上、この別添5では1〜4の類型に分けてまとめています。1.は処方せんの薬名、 分量、用法、用量記載に関連していると思われる誤り、2.は処方せんの1日量・1回量記載 に関連していると思われる誤り、3.は成分量・製剤量記載に関連していると思われる誤り、 4.はその他です。次の頁に実際にどんな事故が報告されているかを簡単にまとめています。 事務局から以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。これまでの点に関して何か委員のほうから、ご質 問はございますか。よろしいですか。医療関係の方は、どういう問題が起こっているかと いうのはよくご存じだと思いますが、実際、どういうことが起こっているかということの ひとつの事例として、別添5の3頁に2.処方せんの1日量・1回量記載に関連していると思わ れる誤りとあり、事例4)にリン酸コデインという薬の例が出ています。これは医療機能評 価機構からの医療安全情報にも出ていた例ですけれども、入院中の患者が他科を受診した。 他科の医師はカルテに「リン酸コデイン60mg、3×の処方をお願いします」と記載した。 他科の医師はリン酸コデイン60mgを3回に分けて処方することを意図したが、主科の担当 医はカルテを見て「3×」を1日3回と解釈したため、処方せんにリン酸コデイン180mg分 3と記入した。このため1回の投与量60mg、1日3回ということで、実際よりも3倍の量が 投与された。これは、同じ病院の中でも「3×」の解釈が全く異なって解釈された事例です。  総量の問題ですが、同じ資料で、5頁の3.成分量・製剤量記載に関連していると思われ る誤りの事例です。これも非常に典型的な例で、前医での処方せんの写しが「フェノバー ル剤10%(催眠・鎮静・抗痙攣剤)1.5g/日」とあり、医師は病院のコンピューターでフェ ノバール剤10% 1500mg/日」と処方した。前医では「フェノバール150mg/日」であったが、 当該病院では「1500mg/日」の過剰投与となった。患者に、呂律が回らなく過剰投与による と考えられる症状が出たため気付いたということです。使われた薬剤はフェノバール剤 10%というもので、フェノバールという薬そのものとして150mgですと、作った後の総量 としては1500mgということになります。  これも典型的な例ですが、当該病院の薬局ではg表示の場合には全量(薬と混合物)の 重さを示し、mg表示の場合は薬の量を示すという取決めだったのですが、その下にありま すように「ことが多いため」となっていて、これもはっきり病院の中で決まっていない。 その処方せんを見て判断するという状況です。そうすると、1500mgも出すこともあり得る とすると、判断としては1500mgも可になる。もしこれが1500mgがあり得ない量であれば、 薬剤師さんがチェックできたのでしょうが、現場では1500mgを投与することもあり得るの で、総量として本来1.5gと書いておけば150mgだったのでしょうけれども、実際は1500 mgが投与されて量が多すぎたために、患者さんに症状が出たということです。  この事例では、前の医師と次の医師との間の情報の齟齬もありますが、同じ病院の中で 単位にgを使うかmgを使うかということだけで、総量かあるいは有効量かを区別するとい う慣習のようなものが出来上がっていて、今までは何とかいけていたわけですけれども、 お医者さんが代わるとか、あるいは今のように非常に微妙なところになってくると、それ が原因でこういう問題が起こってくるということです。  この2つの例というのは、本来、きっちりした決まりが決まっていれば、まず起こり得 ない非常に明快な誤りと考えられるのですが、実際の今の医療現場あるいは病院の中では、 そこが非常に曖昧なために、こういうことが起こり得るような状況にある。そういうふう にご理解いただければと思います。このような点に関し、齊藤先生が委員長をされた研究 班でずっと検討してくださいまして、かなりまとまったものがあります。それが資料3に なっていますが、これを齊藤委員からご説明をお願いします。よろしくお願いします。 ○齊藤委員 ご紹介いただきました齊藤です。資料1の別添2でご覧いただきましたように、 平成14年度から平成20年度まで、途中の15年、16年が抜けましたけれども、都合、5年 度にわたって厚生科学研究のご支援をいただき、医療安全のための処方せんの在り方につ いての検討をしましたが、私がその班長をやらせていただきました。またその間の実務に つきましては、本日、ご出席の土屋委員にさまざまな調査、取りまとめに関して主体的に 活動していただきましたので、土屋先生のほうから詳細を追ってご報告いただきたいと思 いますが、この5つの年度にわたる研究班としての調査の視点というか、取りまとめの重 要なところを、私からかいつまんで申し上げたいと思います。  まず平成14年に調査してみますと、内服薬の処方せんの書式というのは、まさしく施設 の数だけある。つまり100施設について、この事をどのように書きますかと聞くと、書き 方は全く施設ごとにさまざまです。例えば「14日分」と言うときも、ただ14日分と日本語 で書く方もあるし、14Tと書く人もいます。これはドイツ語のターゲドーシスを略してTと しています。ターゲドーゼとしてTDと書く方もありますし、ゲーベ(与えなさい)という ドイツ語の略でG14TDと書くこともあり、全部まちまちです。  それに端を発して、看護師さんたちの意見などを聞くと、すべて処方せん絡みのこと、 あるいは薬剤師もそうですが、想像と推測の世界で物事を決めている。それから慣習と勝 手な取決めで、それぞれの医療機関はどうにか機能しているというのが実態だということ が分かります。  これは私が医科大学で教鞭を執っていたときに痛感していたのですが、学生たちに処方 せんの書き方を教えようとすると、教えるべき標準型というものがないのです。年齢を書 けとか姓名を書けとか、そういう全く基本的なことだけはあるのですが、それ以上に実際 の薬剤についての書き方を、どういうふうに処方せんとして文書にするかという取決めが ないので、教えることができないというのが今でも医学部の実態です。薬学部はご承知の ように6年制になって、卒業生は病棟で活動しますけれども、薬剤師もまた教わる内容が 定まっていない。想像と推測の世界で処方せんを判読したり、勝手読みをしているという のが実態だというわけです。  昔はそれでもよかったのです。私どもが卒業した昭和30年代には、先輩の背中越しに処 方せんを覗き見ながら覚えなさいというふうに言われて、例えば3gのときはgを省いてい いけど、30mgのときはmgと書きなさいというふうに、別に決まりはないけどそういうもの だよと私の大学では教えられたのですが、よそへ行くとそんな話は聞いたことがないとい うことになる。いま臨床研修が普及して、卒業した医学部の学生が全国の病院を1年とか2 年の単位で動きますけれども、そうすると移った先では全然別のルールが支配していると いう恐るべき現状があって、ここでも推測と推定、そして不安の中で活動するというのが、 処方せんに絡む活動の実態です。  そういうことで、処方せんの書式というものを、国の共通の言語として一定の書式にし ないと、これは二様にも三様にもとれるような書き方の中で暮らしていれば、先ほどご説 明もあったような事故の発生が現実に観察されていますし、ヒヤリ・ハット、危なく事故 になるところだというのは、そのさらに何倍もある。そういうことに使うエネルギーや神 経は、もっと医療安全の別のことに振り向けられて然るべきで、こう書いてあるのはどう 推測したらいいのかという、およそ医療現場で求められることとは違った意識を求められ るというのが現実であるということも、明らかになってまいりました。  そういうことを踏まえて、ではどういう形が、今、いちばん問題になっているかという ことを、土屋先生を中心に検討していただきましたけれども、例えば我が国の内服薬の処 方せんは基本が1日量で書きます。例えば「アリナミン1日3錠、分3毎食後」と書く。こ れは診療担当規則とか処方せんなんかも全部そういうことになっています。  ところが、国際的に見ると、薬剤を1日量で書いているのは先進諸国では日本だけなの です。なぜ1日量で書くようになったかという淵源を探ると、一説には明治時代にドイツ から来た帝国大学の医師が、薬は1日量で書いておけと言ったのがそのまま尾を引きずっ ていて、ドイツでは当の昔に1回量で記していたのに、日本だけは島にあるせいか置いて けぼりになって1日量で書き続けてきた。一説には、江戸時代に漢方薬を土瓶1杯、1日量 で煎じて飲んでいて、1日量で土瓶1杯と決めたのがそのまま伝わっているという説もあっ て、1日量で書かなければならないという科学的根拠は一切ないというのが、私たちの調査 の結論です。  もう1つは、製剤量で書くか原薬量で書くか。先ほどリン酸コデインの問題がありました けれども、私たちは基本的には製剤量で書くようにすべきであると考えています。1日量か 1回量かというのは、あくまで服薬という行為の原点は何と言っても1回に始まるし、それ の集積であるわけですから、その1回に何錠飲むかということをきちんと明示し、1日何回 行われるか、何日間に何回、どういうふうに行われるかが続いて起こるわけです。1回どれ だけ飲むかを明示しない処方せんの書き方は、基本的には曖昧さをそこに蒔いていると考 えなければならないというのが、ひとつの結論です。  こういう過程で、いろいろな研究会等で発表したりご意見を承ると、1回量で書くのは賛 成できないというご意見も少なくありませんでした。それは1つは、途中で急に変えると 混乱するから、思い違いが起こって大混乱が発生するからという、いわゆるプロセスです ね、過程に対する不安からの反対というのがあって、これはまさしくそのとおりだと思い ます。例えば今まで右側通行だった自動車が、ある日突然、左側通行になったらもう、即 心配になるわけで、だから、そういうプロセスの問題はプロセスの問題として、ひとつ別 に考えましょうと。もう1つは最終的なゴールです。これは10年後になるか20年後になる か分かりませんが、我が国の処方せんの在り方というのは、長期の視点に立てばどのよう に書くのが正しいか。例えば私たちは1回量で書くのが正しいと考え、製剤量で書くのが 正しいと考えたわけです。だからプロセスの問題と、長期のゴールの問題とを分けて考え ましょうということです。途中でプロセスが混乱するから全体に反対なのだと言っている と、いつまで経っても物事は改善してこない。そういう議論がかなり出されました。  そういうことで最終的なまとめは、今回、20年度にはいくつかのヴェンダーの方に、こ ういう処方せんのソフトでやれば、1回量で書いても間違いがないでしょうという、大変素 晴らしい例示を作っていただくところまで到達したわけですが、それらを含めて本日、委 員の先生方に日本の医療安全について、それは最終的には患者の方々の利益を安全という 面で担保するわけですけれども、内服薬の点でどのようにしていくのがいいか、私たちの 研究班での結果を1つのたたき台にして、この検討会でご検討いただければと考えている わけです。土屋先生に少し細かい点などをお願いします。 ○土屋委員 資料3に従いましてお話をしたいと思います。これまでの経緯ということで すが、最初の2枚はある質問を医育機関に対して行った結果です。同じものは診療所等にも やっていて、この結果は18年度の研究報告ですが、例えば錠剤のこういうものを2錠出そう したときに、どのような記載をされますかということで自由記載にしました。そうすると 薬名のところでも、ここにありますようにいろいろな種類があり、分量もいろいろで、日 数もこういう書き方で非常に多岐にわたっている。これが散剤になると次の3頁ですが、同 じようにいろいろな書き方があるということで、それぞれの施設においては基本的なルー ルがあるのでしょうが、現実としては手書きをするとこのようになる。ただ、保険のほう では、処方せんの記載ということで先ほどありましたが、1日量を記載する。あるいは散剤 においては製剤量を書くことになっているのですが、現実はそれと合っていない部分がか なりあるということです。  5頁を見ていただくと、記載事項というのは使用施行規則の21条によれば、氏名、年齢、 その他がありますが、薬名、分量、用法・用量がキーになっているわけです。「薬名」と 書いてあるだけで、例えばブランド名というか商標と剤形、規格といったものを総称して 医薬品の名称と言いますが、法的には薬名を書けということが書いてあります。この場合、 分量というのは1日の錠数を言い、用法というところに服用回数、服用時期を書く。ここ で「用量」という言葉がありますが、内服薬の場合、用量は投与日数を示すことになって います。ここが添付文書等の用法・用量という言葉とは意味が少し違うということになり ます。平成14年のいちばん最初に調査したときには、実際に薬名のところを見ると、商標 のみを書く場合、商標+規格、あるいは剤形も含めて一般名で書く場合というように分か れているわけです。6頁で、錠剤ですので錠数でお書きになる方が多いわけですが、錠剤で もいわゆる原薬の成分量でお書きになる場合も5%ぐらいあったという実態です。  6頁の下ですが、これが先ほど別添にあった事故事例の件で、セレニカR顆粒40%を1250 mgという処方をしました。処方した医師は、もともとは主薬量として500mg、重さとして 1250mgということで書いたのですが、それが製剤量ではなくて主薬量が1250mgということ で、原薬量としてその1250mgが測られたために多くいってしまった。ただ、いちばん下の ところに「セレニカR顆粒40%は、有効成分を500mg」とあります。これは1g中400mgで すので訂正いただきたいと思います。500mgではなく400mgです。  7頁で、先ほどからお話がありましたように、散剤については有効成分量で書く、あるい は製剤量で書き、医薬品によって使い分けるということです。量の記載についてもそうで すし、そこに付ける単位ですが、mgだったら主薬量、gだったら製剤量というルールでお書 きになる先生もいらっしゃれば、mg、gのどちらも製剤量だ、いや、どちらも主薬量という ように意見が分かれているということです。  これは処方せんとは申していますが、実際、院内等においてはこれが看護師への指示に なりますので、そういう指示を見ると7頁の下のところにありますように、こういう読み にくい指示記載や、誤りやすい量表示が「よくある」「時々ある」というのは、大体6割ぐ らい残っている。情報伝達エラーという起きやすい構造になっているということです。  以上のことを踏まえて平成17年からは、研究班として標準案を作るべきであろうという ことで検討を重ねました。その結果が先ほどありました10頁で、平成18年度、平成19年 度に、医育機関・研修指定病院・診療所・歯科診療所・薬局に対して調査を行ったのです が、そのときの案としては、分量は1回服用量を記載し、用法・用量として1日の服用回数、 服用時期、服用日数を記載する。また散剤・液剤の分量は製剤量で記載することを標準案 として調査を行いました。  その結果が12頁ですが、例えば錠剤・カプセル剤については「妥当」「ほぼ妥当」が5 割ちょっとを超えています。散剤になると、特に医育機関や研修指定病院の小児科の医師 から「製剤量で書くことは妥当ではない」との指摘がありました。これに対して診療所を 見ると、診療所は保険の通知が製剤量となっている関係が大きいのだと思いますが、診療 所では特に製剤量について6割が賛成です。実は調査をしていて病院と診療所でいちばん 書き方の差が激しかったのは、散剤の製剤量なのか原薬量なのかというところです。病院 は病院情報システムで出すときに、レセプトに出す維持システムで処方せんを発行してい るのではなく、病院情報システムそのもので出していますので、原薬量のままであっても レセプトではそれを変換して製剤量に直しているのです。その変換する前の段階で処方せ んをプリントアウトしているということで、この差が大きく出たのだろうと思います。  先ほどもございましたが、「標準案に統一するときにどういう問題がありますか」という 問いに対し、これは実数ですけれども、「過渡期が問題だ」「コンピュータシステムの対応 が必要だ」「システムに伴う費用を負担するのは嫌だ」という意見が非常に多くあります。 先ほどいろいろ反対等もありましたが、「導入すべきではない」という意見は実数としては それほど多くなかった。ただし、過渡期の問題とかいろいろありますので、そういったと ころが引き続き問題として残っていることになるかと思います。  そのようなことを検討して、先ほどありましたが、一応、ヴェンダーに対して、20年度 は過渡期でどのように入れていったらいいかの提言をお願いしたところ、各社、いろいろ と現在のシステムに合わせて、うちの場合、過渡期はこうなるという画面を出してきまし た。しかし、逆にそこで明らかになったのは、各社で入れ方がまた違うということです。 せっかく標準のルールを1つにしても、現行のシステムが過渡期で移行を考えるときに、 それを前提にしたこともあると思いますが、4社に頼んで4社とも異なる種類であった。し たがって検討班としては、標準化のルールを決めると同時に、こういう標準化をするため の入力の仕方は統一すべきではないかというのが、1つの結論です。  15頁から後は、現行こうなっているものを標準案ではこうする。ただし、今度は1回量 かどうかが分からないといけないので、当分の間は1回量で記載する場合には1回量という ことを付記する。あるいは1日量という言葉を付記することがいいのではないかというこ と。同時に18頁に20年度研究の標準案が載っていますが、最後のところに、過渡期におい て1回量で記載しているのか、1日量で記載しているのかを明示することが必要である。ま た、現状で1日量を記載している場合の用法として、なぜか「1日3回」という表現が使わ れています。これは不適切です。本来、1日量を書くのだったら「分3」あるいは「1日3 回に分けて」という用語を使うべきであって、「1日3回」とするから掛け算をする人が出 てくることになり兼ねない。これは書き方がどう決まるにせよ、現状においてもすぐすべ き対応ではないかということで提言を行っています。  まとめると参考1にポンチ絵がありますが、いま大学あるいは研修病院によっていろい ろな書き方があったとして、それを薬剤師が、あの先生の場合はこうだし、この先生の場 合はこうだと、いろいろ考えながら事故がないように努力しているわけです。こういった 記載方法、入力の仕方等が統一された場合には、先ほど示されたような事故事例がなくな るのではないか。この×が付いているのはそういう意味です。参考2に報道事例を載せて いますが、これは後でお読みいただければと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございました。いまの土屋委員、齊藤委員の説明も含め、また資 料も含めまして、何か質問等がございましたらお願いしたいと思います。委員の皆様それ ぞれのお立場、あるいはその立場を離れて広くご発言いただければと思います。具体的な 事例に関しては、今、いろいろ出ていましたけれども、処方せんの発行者である医師ある いは歯科医師が、同じ記載様式では発行していないというのが第1の問題です。かつては 病院の中だけで閉鎖的に処方せんは取り扱われていた時代が長かったので、あまり問題に はならなかったわけですが、現在は院外処方せんという形になっていますので、調剤薬局 の立場からすると、どこの病院から来た処方せんかによって解釈を考えなければいけない。 しかも同じ病院であっても先生によって書き方が違うかもしれない。  それから、これは医療者だけの問題でなく、実際に薬を飲まれる患者さんの立場からす ると、いまは各薬局等で薬の飲み方等について詳しい説明文書を出したりしてはいますが、 飲み方がちょっと分からなかったときに、たまたま手元に処方せんがあってそれを参考に した場合、出している病院によって書き方に違いがあり、飲み方を考えないといけないと いった非常に複雑な状況も発生しています。そうであれば全国的に統一した書式、決まり があれば、それに基づいて、それぞれの立場の方も患者さんも明確に飲み方がわかるであ ろうというのが、いちばん基本的なところかと思います。  それと、薬というのは毎日飲むというのが今まで普通だったわけですが、1週間に一度 とか3週間に一度という形の薬があります。特にそういう薬は抗がん剤とかであり、逆に 飲みすぎると非常に大きな副作用を出すものも多いので、不規則な飲み方が必要な薬に関 しては、余計にいつ飲むかということを明示しないといけないわけですが、その辺もかな り暗黙の了解の中で伝えられていて、そのために、その薬をあまり使わない先生がその薬 を使う段になると、本来は1週間に1回だったのを、毎日投与してしまうといった実態が出 てきたりすることもあります。  したがって、いつ投与するかというのは普通の薬の場合はあまり問題にならないですが、 薬によってはそこを明示しなければならない。さらに薬によっては飲む時間まで指定しな いといけない薬も、いま出てきていますので、かなり細かく決めておく必要があります。 解釈の余地があって自由度が高ければ、またそれが次の問題になってくることが1つあり ます。  もう1つは、今、提言が1つあるわけですが、それに対するご意見として過渡期をどうす るかということがある。過渡期を考えると最終ゴールがあるとしても、現行の書き方にお いても何らかの決まりを作っておかないと、新しい型なのか古い型なのか判断が付かなく なってしまうので、その過渡期を含めてどうするかを考える必要があるというのも1つの 問題です。  いま、ほとんどの病院等には病院情報システムが入っています。過渡期の問題も従来で したら1年か2年の過渡期で済んだわけですが、コンピュータシステムを入れたばかりの所 は、システムを入れ替えるのに5年といった期間が必要になってきますので、過渡期とい うのも従来より少し長いスパンで考えないと、医療機関側に非常に大きな負担を強いるこ とになり、結果的に徹底しないということも起こってきます。こういう点を今までの研究 班の中でいろいろ検討いただいたと思います。  本日、出ていませんけれども、それに伴って教育の問題があります。現にいま現場で起 こっている問題だけでなく、今後、医師、薬剤師等の医療職に携わる方たちに教育してい く問題が1つあります。  薬の基本的な文書として添付文書という、薬の使用法を書いた文書の中にも使用法が書 かれているわけですが、これも実は1回量で書いたり1日量で書いたり、まちまちの書き方 がされているので、処方の書き方が決まれば、それに合わせて添付文書等も検討いただく 必要が出てくるかと思います。  あとは、それに伴って先ほどの教育に関わりますが、教科書やいろいろな書籍等につい て、昔の書籍だと1日量で書かれていて、最近出た書籍だと1回量で書かれている。それが 混乱するとまた元の木阿弥になってしまいますので、そういうところに関する注意喚起も していかなければならない。単に処方せんの書き方だけでなく、その周辺に非常にたくさ んの問題がありますので、それを含めて今後、ご検討いただかなければならないと思って います。  いま、すぐにすべてに関して検討できるわけではありませんが、今までの説明等をお聞 きになりまして、ご意見がございましたら是非、ご発言をよろしくお願いしたいと思いま す。 ○伴委員 感想というかコメントですけれども、一般の方もおられるので齊藤先生のお話 をそのまま聞くと、ばらばらで、むちゃくちゃで統一がなく、非常に不安になるように聞 こえたかもしれないと危惧しますが、基本的には施設ごとにローカルルールがあると理解 したらいいということです。確かに先ほどのバルプロ酸の例などは非常に間違われやすい ところかなと思いますので、その辺のことだけ感想として述べさせていただきます。 ○楠岡座長 今まで処方せんが出されている数からすると、事故の割合あるいはヒヤリ・ ハットの割合というのは非常に少ないというか、何をもって少ないと言うかですけれども、 全部が全部問題があるわけではないわけです。いま、ご指摘のようにローカルルールがあ って、従来、ローカルルールである程度整理が付いていたところが、人や情報の交差が非 常に激しくなってきたために、そのローカルルールが間違いのもとになるケースも出てき ているのが、非常に大きな問題だと思います。ほかにございますか。 ○森山委員 いまの過渡期の話ですが、その前の1日量と1回量ということからすると、注 射や点滴のオーダーは1回で出していますので、1回のほうがリーズナブルだと思います。 ただ、薬剤師さんなんかのアンケートを取ると58%は反対です。今まで頭で計算して1回 で何錠というのが、慣れないから逆に危ないということで58%の反対が出ていると思いま す。最終的には1回量のほうが、いろいろなものを書くときにリーズナブルだと思うので、 それに移すのは私は賛成ですが、いまはコンピュータが入ってきてシステムの変更、オン ライン会計との問題などで、先生が言われたように昔の手書きだったら1年間の間にみんな 変えようねでいいのですが、4〜5年かかって変えるとなっても、例えばシステム変更でも 莫大なお金がかかるのと、いろいろなヴェンダーが勝手に自分たちでやって、それを「こ うやると非常に安全です」と病院に売り込むわけです。そこのところも押さえておかない と、我々だけ努力して、あるいは厚労省だけ努力してもなかなかうまくいかない。大きな 病院は大体オーダリングになっていますから、いくつかのヴェンダーがドッと入っていま すから、ヴェンダーに統一性を持たせるというのも、ある意味でいいのかなと思います。 ○楠岡座長 ヴェンダーも、ある意味困っているところもあるのです。病院ごとにまちま ちの要求が出るので、どれがヴェンダーとして正しいのか。逆にその辺は標準案があると ヴェンダーとしても対応しやすいし、これが標準案ですということで統一化できる。そう するとヴェンダー側もある意味、開発の手間も少し減ってくるところもありますから、ヴ ェンダーは標準案にすることに関して、必ずしも大きな抵抗があるということではないと 感じています。ただ、おっしゃるようにヴェンダーに関してもいろいろな問題は出ていま すので、それも今後の中で検討していく必要はあろうかと思います。ほかにいかがですか。 ○岩月委員 受ける側の薬剤師のほうで、今、いろいろな解釈が発生しているということ ですが、いまお話の中にありましたように現状では保険のルールで、いわゆる薬価収載品 を書いて1日量で記載するというルールがあるのですが、いろいろな先生方がおっしゃっ たような理由で、特に入力する際のシステムの違いによって、表記の結果として出てくる ものが違うというお話がありました。過渡期の問題などこれから検討することは多いと思 いますが、今日の資料の18頁のいちばん下に書いてあるように、まず現状でやれることを きちっと確認しておかないと、例えばいまの話にあった「3×」というのは、普通の日本語 が読める人は3倍に読んでしまうだろうと思います。我々はたぶん特殊な人間なので、 「3×」というのを3で割るというふうに読むのですが、たぶん処方せんを患者さんが見たと きは、違う調剤をしているのではないかと思われると思います。したがって、いまあるシス テムの中で取りかかれるところから進めていくという考えも、是非、この中で検討してい ただきたいと思います。 ○望月委員 薬学教育の立場から言いますと、今年の3月で4年制の薬剤師国家試験は終わ り、来年がなくて再来年がなくて次は24年3月なのです。ということは、いまのタイミン グは教育する側、あるいはされる学生にとっては非常にいいタイミングだと思います。現 場の薬剤師さんは大変だというのは誰もわかるのですが、新しい薬剤師はそれを習ってく れば、それしかないということになりますので、現状、この1年ぐらいで方向を決めていた だくのは、学生にとってはいちばん幸せだし教員にとっても幸せだと思います。 ○嶋森委員 処方された薬を投与する看護師としては、先ほどの「3×」「×3」というの は謎掛けのようで全くわからない。それと病院のローカルルールと言っても、新人の人た ちは医師も看護師も含めて、そういう独特の表現というのはなかなか分かりにくいので、 この際、日本語で「3回に分けて」とか「1日3回」ときちっと書く。そういう書き方を標準 的にしていくことが、事故防止、安全の意味では重要ではないかと思います。  特に先ほど座長がおっしゃったように、服用方法の間違いで、私が京大にいたときの事 故ですが、リウマトレックスのように1週間に1日しか飲まないという薬剤に関しては、こ の事例に出ている1クールという表現も謎掛けのようで、「3×」や×3と同じような表現 になっていると思います。改善案についてもわかりにくいので、普通の人が見てわかるよ うな書き方が必要ではないかと思います。  また、処方せんの書き方と同時に、患者への説明の仕方やそれぞれの病院での処方の仕 方がばらばらですので、できればそれの標準化も必要ではないかと思います。検討できれ ば、そういうこともやっていったらいいと思います。特に、いま在宅ケアの場で看護師た ちは、在宅の患者に対して、処方された薬剤を状態によって量を変えて服用させたりする ようなことを医師の指示のもとに行っています。そういうときに、1回量をきちんと書いて おいていただくと、調整は間違いなくできると思うので、薬の使い方が変わってきて、ケ アの場も広がっていることを前提にした処方の仕方や薬剤の使い方を検討できたらいいの ではないかと思います。 ○永池委員 同じく看護の視点からですが、移行期にどのような情報を提供するのかとい った点では、ある程度のモデル的な移行期の対応の仕方を検討していただけると、大変助 かると思います。その際に特に注意したいのは、大学病院のような大きな施設において、 なおかつ医療安全対策がかなりしっかりしていて、役割機能を明確に持って組織が動いて いるような病院と、そうではない病院、病院長が医療安全管理者になっている、あるいは クリニック等にもそれぞれ適切に対応できる提示がされると、大変助かると思います。 ○花井委員 患者の立場からですが、1つはこの研究班が非常に詳細な検討をしていて、 論点についてはかなり検討されているという印象があります。最終的には、患者の立場か ら内服薬に関して言えば、行為者は、患者が飲むから、実態性を見て1回このものを飲む ということがわかる形で標準化されるのが望ましいだろうと。最終到達点としては、1日 何回その行為をするのかを、多少手間が増えても間違わない記述で書かれている標準系が できれば、それがいいのではないかというのが1点です。  もう1つは、これはそもそも論になってしまうのかもしれませんが、日本の医療システ ムではご存じのように、いまローカルルールと言いましたが、ある種講座制が生きていれ ばみんなその影響下で仕事をしていたのが、いま非常に良好になってきたということでこ のような結果が出てきて、逆に言えば、そこそここのシステムはうまくいっているのかも しれないと。つまり、海外において標準化されていれば、このヒヤリ・ハットは有意に日 本より少ないのかどうかと。そこそこうまくいっているのであれば、あまりドラスティッ クなことをやってかえってえらいことになるよりは、何となくなだらかな軌道修正のほう がいいのかもしれないという論点が、そもそも論としてあると思います。数字を見て、結 構あるのだなというのが正直な印象だったのですが、果たして国際的に標準化されている 国はないのかというところの検討はされたのかを教えていただきたいと思います。  また、いまジェネリックを推奨していることがあって、物自体になると同じものが複数 のメーカーから出ている場合に、そういう検討もされたのかどうかということを教えてい ただけたらと思います。 ○土屋委員 まず1つは、散剤という剤形が海外には基本的にないのです。日本独特な剤 形で、そういう意味では海外において量が10倍になるとか、要するに散剤というのは同じ 状態で10倍入っていたり100倍入っていたりするということなのですが、こういう形態は基 本的にはないのです。その代わり、外国はシロップというか液剤で飲むことはありますが 、散剤という剤形がないので、散剤の書き方についての話は日本独特の問題であろうと思 います。  必ずしも事故が起きているわけではないというか、一生懸命防いでいるのが現状です。 ただ、その中で研究班として考えていたのは、先ほども少しお話があったように、注射は1 回で書くということから言ったときに、この忙しい医療においてルールを単純化すること がエラーを防止するための方法だと。そうすると、何でも1回だとすると、ルールはいち いちあの場合はこう、この場合はこうと、まさにローカルルールというのはそうなってい て、うちでこう書いたらこうだよというルールなのです。ルールを増やして安全を保つの ではなく、ルールを減らすことが医療安全上は大切ではないかという観点で、この報告は できているということです。 ○隈本委員 私も長い間医療の報道に関わってきた立場で、患者の代表として発言すれば 、これほど問題点が明確になっていて、解決策まで提示されている医療の問題は少ないの ではないかと思うぐらいです。齊藤委員がおっしゃるように、1回量にしようと。1回量し か書けないような処方せんにしてしまおうということを一度決めて、移行期間はそれぞれ の中で具体的にどれぐらいの期間というのを内部で決めていただければいいと思うのです が。まずゴールを示して、それに向かってみんなで努力するという方向はいかがかなと思 います。1回量ということにして、単純なルールですよと決めて、それに向かってみんなで 行きましょうということで、国民の多くにも理解してもらえるだろうと思います。そのた めに費用をどうするとか、その間の移行期間をどうしていこうということは、それぞれの 医療機関で考えていただいて。国民目線から言えばこんなにわかりやすい解決策が示され た非常にわかりやすい問題だと感じます。1つだけお伺いしたいのは、処方せんは私も過去 に何度かもらったことがありますが、薬を書く欄は白い平面ですね。例えば「1回量」と書 いてあって、そこに数字しか書けないようにするとか、剤名も一般名とするのか、商品名 でもよいとするのか、薬名を書くための欄がそこにあると。gもmgとか、mgでないとしたら、 そこを消してわざわざgにしなければいけないようにするというように、白い平面ではな くて、そこに必ず書かなければいけないような処方せんにはできないものなのでしょうか。 ○土屋委員 現在は、処方せんの様式は保険医療用担当規則で様式2号と決まっております。 ただ、これは保険の部分についてはきめ細かくあるのですが、処方は大きく「処方」とい う欄があって、そこに医師法施行規則で書かれたことを書きなさいということで、フリー スタイルになっているのが現状です。それを病院などでは縦に線を引っ張って、ここの位 置にはこれを書くといったことを決めていると。現場ではそのようなやり方をしておりま すが、基本的には様式2号はそうではなく、そこはまさに白紙の状態で、縦の欄が決まっ ているわけではないというのが現状です。 ○隈本委員 最近取材をした経験では、ジェネリックの推進にあたって「変更不可」とい う欄が新たに作られ、そうしたければ印鑑を押さなければいけない。本当はサインなので すが、印鑑を押している人が多いらしいですが、印鑑を押したりサインをしなければ変更 不可とできない形にしたという話を聞いています。ジェネリック推進という、どちらかと いうと医療費削減というレベルの話ではなく、患者さんの命に関わる話です。それなのに、 処方せんの書式をこれはこうであると変更できないものなのかなというのが、素朴な疑問 です。 それはいかがでしょうか。 ○楠岡座長 ご意見は。 ○隈本委員 それは厚生労働省の仕事だと思うのです。 ○医療安全推進室長 そういうことができるかどうかをここでご議論いただきたいと思い ます。むしろ、本当に実務的に対応できるのかどうかといったことも含めてご議論いただ きたいと思っております。 ○齊藤委員 隈本委員から大変理解あるご意見をいただいて、そういう方向が探れればと 思います。私は卒業してから外来で毎日50年間ぐらい診てきて、そういう中で1日量でず っと書き続けてきて、判子の押し忘れとかチェックのし忘れとか多くある、そのような環 境の中で1回量で書いてあるのだということを明示するには、ヒューマンエラー論として どのような手順やプロセスがあれば納得できる形で防いでいけるのかと。その辺りが今後 の課題であって、最終的なゴールについて、いままで伺ったご意見は大筋において当たり 前ではないかというご意見が非常に多いように思いますので、そこを原点にしてさらに一 歩、広く地域においても明治以来染みついた医師や薬剤師の体質が誤りなく切り替えてい くには、どのような手順が必要なのかということにもなるのかなと思っております。医師 会の先生方も、基本的にはそういうことを考えておられるけれど、いろいろな地域の場で 長い間、それこそお祖父さんや曾祖父さんの代からやっていた診療所での薬の出し方がそ れぞれの医療担当者に染み付いておりますから、そこは慎重かつ合理的に進めていけると いいのかなと思っております。 ○隈本委員 1つだけ追加ですが、先ほど花井委員から、いわゆる処方せんに絡む誤読が 意外に多いというご指摘がありました。この数はあくまでヒヤリ・ハットの自発的報告で す。しかも、この報告自体が、数で言えば全病院の中の3%、任意参加のものも含めて6% とか7%ぐらいの数です。全国の病院の7%の病院の、しかも自発的に気がついた人が好意 で報告しているもので、実際にはその数しか把握していないわけです。しかも、土屋委員 がおっしゃったように、薬剤師の眼力でなんとか疑義照会をして実際には処方に至らなか ったものがかなりの数あります。  そういう意味では、1匹いたら30匹ではないですが、全病院の数からみればわずかな数 の自発的報告でこれだけ挙がっているということは、その背景には相当な数の間違いがあ って、単に我々が知らないだけということがあり得ると思うのです。ですから、もちろん 現場に混乱をもたらさない、軟着陸をということがこの委員会の重要な使命だと思います が、最終的ゴールは、間違ったことを書こうとしても書き込めないような処方せん作りを 目指すべきだと思います。それは、例えば1回量何mgとまで書いてあったら、それをわざ わざ消さないと違うことが書けないようにするだけで、どれだけ間違いの数が減るだろう と素人感覚では思います。もし、処方せんの基準を決めることがこの委員会でできて、そ れを全国に普及させる、1年後でもいいですから、何月何日にこうしますよと、皆さん練習 してくださいという形にしてはいかがかと思います。 ○岩月委員 それこそ誤解があるといけないので、確認をしたいと思います。先ほど申し 上げたように、いまでも保険で、いわゆる薬価収載された名称で、1回量か1日量かはとも かくとして、薬の名称はそのように書きなさいと。名称の中に、含量なのか製剤になるの かということで言えば、いまの規則では、薬価収載品ということになっているので製剤量 を書きなさいということになっています。いつ飲むのかも書きなさいと書いてあります。 どれだけの日数を投薬しなさいということも書いてありますので、間違った印象があると いけないのですが、現状でもそれは十分できているのです。  ただ、先ほど少し申し上げたように、患者さんの見る読み方と医療従事者の見る読み方 の常識の乖離があって、そこを統一しないと、全部一遍にやるのはもちろん大事なことだ と思いますが、現状でもやれることは、医療安全であれば手をつけていかないわけにはい かないだろうと思うのです。いちばんわかりやすいのは、分3という言葉を入れることは、 調剤をする側から言えば大事だと思うわけです。ですから、いちばん大きなところをどう するのかはまた別の議論ではないですが、やれるところから手をつけていくことはここで 十分提言していかないと、全部揃わないと変えられないという結論にはならないと思いま す。私はしたくないと思うわけです。 ○楠岡座長 ほかにはいかがですか。隈本委員のご意見で、病院情報システム、ITを使っ ている所は、システムの入替えという問題はありますが、比較的対応しやすいというか、 ルールに外れるのは入力できないような枠をはめることは比較的可能ですので、そこはで きると思うのですが、手書きの部分で残っている部分もあります。そのときに、おっしゃ るようにあまり型にはめてしまうと、面倒くさくて省いたりしたところが、かえって別の 解釈を生むということもあります。したがって、どのような標準案になるかは別として、 現行のものの過渡期のようなものも、書くべきことと、もしそれが書かれていないときは どう解釈するか、要するに書かれていない場合はこういう解釈になるから、それ以外だっ たら書かなければいけないという形のルール化をしていけば、仮に手書きの場合も十分対 応ができてくると思うのです。あまりに全部を書かなければいけないことにすると、それ が抜けてしまうとか、つい面倒くさくて等閑になるということも出てくる可能性もあると 思いますので、そこはこの検討会で考えなければいけないところかと思います。  ヒヤリ・ハットに関しても確かにかなり件数があるのですが、これが全部いまの処方せ んの書き方の問題ばかりではなくて、例えば患者さんが朝・昼・晩の薬を2種類飲んでい て、昼に配薬するものをこの人は朝・晩だと思っていたから昼の配薬を忘れてしまったと か、逆に朝・昼・晩という固定観念にとらえられて、昼には配薬がなかったものを配薬し てしまったというのも、ヒヤリ・ハットの中に与薬という範疇で挙がってくる部分です。 ヒヤリ・ハットもかなりいろいろな状況を含んだ上でこれが出てきていて、すべてが処方 せんのいまの問題だけで起こっているものではないというところは、少し考えておかなけ ればいけないと思います。ただ、確かに処方せんの曖昧さが元になっている部分もかなり あるのは間違いないと思います。  先ほど嶋森委員からもご指摘がありましたように、いまの考えからすると、我々はどう しても病院でとかクリニックでというところに頭が行ってしまって、在宅医療の問題のよ うなところ、いま本当に医療の現場が広がっておりますし、老健施設など在宅と医療機関 の中間的な所でも薬を飲んでいる方はたくさんいらっしゃるので、それをアシストするヘ ルパーのような方にもわかりやすい形でないと、医療関係者はわかるけれど、そのような 中間的な所になると曖昧になるということでもいけないと思うのです。最終的にはどんな 方でも正しく解釈ができる形のものを目指していかなければならないというのが、ゴール になってくると思います。 ○森山委員 先ほど申し上げたように、最終ゴールは1回処方量でいいと思うのです。過 渡期をどうするかというのが非常に大きな議論なのですが、平成19年の齊藤委員の班の中 で、1回処方量については診療所は30%が妥当ではないかと、70%はまあまあ良いと。こ れがいちばん大きな問題ですが、薬局で58%が妥当でないと答えてあるのは、かなり大き な意味があるのです。というのは、大学病院はトリプルチェックもしているし、いろいろ なことでかなりセーフティネットがかかっていますが、我々でも88〜89%は院外処方で出 しているわけです。そうすると、薬局のほうでこれはまずいという状況は、確かにヒヤリ ・ハットのパーセントからするといかにも危なそうな、いまのインフルエンザのような感 じになっていますが、これは我々医療従事者と医療を受ける側との温度差があるかもわか りません。しかし、それほど急にものを変えることによってリスクを取るところまでには 至っていないと思いますので、私としては最終的により安全にするには1回処方量のほう がいいと思いますが、薬局側が妥当でないと、58%というのはかなり重いので、ここは十 分に検討しないと、よりリスクを背負ってしまうと思うのです。 ○齊藤委員 おそらく、薬局の方々の不安感は、1つは療養担当規則とか薬の能書の書き 方とか、法令によって決められた部分を、薬局の方は非常に重く受け止めていらっしゃる のです。だから、それを遵守していけば、そこで必ず齟齬が発生するではないかという思 いを薬局の方々はお持ちだと思うので、その部分をどのようにクリアしていくかが大きな 課題であって、最終的なゴールについてわかりやすい、わざわざ問い合わせたりする必要 のない処方せんが来ることは、薬局だって当然大歓迎だろうと思うのです。そうでなけれ ば、これの意味はどうですかと、私の所にもしょっちゅう電話がかかってきますが、薬局 の方にも大変なお手間をかけているわけなので、それだけ見れば看護師が見ても患者が見 ても薬剤師が見ても一目瞭然で、1つの事象を指定する処方せんがあるはずだと思うのです 。    そこでいちばん問題なのは、法律との齟齬です。岩月委員が言っておられるのも、療養 担当規則とか薬剤師法とかいろいろな法律に抵触するから、そんなことを急に言われても できないという思いがあって、50何%という反対ないし慎重論が出てくるのだと思うので す。そこをどうクリアするかが1つの問題だろうという気がします。 ○隈本委員 法律との齟齬というのはどのような部分なのでしょうか。 ○齊藤委員 これは療養担当規則で、例えば薬の請求とか、そういうものは1日量ですべ て動いているのです。いままでは入院の食事は1日量だったのですが、前回の診療報酬の 改定から1回量で、朝飯だけ食べれば昼飯、夕飯は取らなくていい形になったのですが、 薬の場合は何回飲むとかということよりは、何日分かがすべての発想の原点になっている から、その辺は文言を見直すといった作業が必要だと思います。  もう1つは、薬の能書のあり方が1日量で1日何錠飲みなさいと書いてあるわけですから、 それを見ながら薬剤師の方が調剤するとすれば、当然1回量でいきなりやれと言われたっ て、どういうことになるのか想像もつかないというところから慎重論が出てくるのも、無 理からぬところだと思います。 ○隈本委員 能書というのは、添付文書ですか。 ○齊藤委員 添付文書です。 ○医療安全推進室長 現在、医師法の施行規則やいまご指摘があった療養担当規則、それ に基づくその下の通知にどのように書いてあるかをお示ししたいと思います。簡単に説明 すると、医師法施行規則では、医師は患者に交付する処方せんに次のことを書かなければ いけないと書いてあるのですが、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法・用量、発行年月 日、使用期間、及び病院もしくは診療所の名称とあります。療養担当規則のほうでは、製 剤量なのか成分量なのかについては、医薬品名は原則として薬価基準に掲載されている名 称を記載するということですので、製剤量で書いてくださいと。分量は、内服薬について は1日分量で記載してくださいと書いておりますが、これは医政局の通知ではなく、保険 局で診療報酬請求上のルールとして決めているものです。 ○楠岡座長 たぶん、薬局の方があまり適切でないとおっしゃったことの1つは、私は保険 請求における調剤料の計算の仕方は直接関わらないのでよくわからないのですが、1回処方 で来たのを調剤料の請求にしようと思うと、結構な手間が発生する可能性があると。それ を考えると大変だという意見も伺ったのですが、その辺りはいかがですか。 ○岩月委員 全体の仕組みが変わって、今回のはそれで全部変わるのですよという前提で はなくて、その記載法式だけ変えたらどうですかというアンケートですので、おっしゃる ように保険の仕組みも違いますし、添付文書も違いますし、我々の教育もそうなっていな いので、それは少し不安があるということだろうと思うのです。当然、保険請求の場合の 調剤の技術量もいわゆる日数倍数制になっているので、1回量で何回調剤したかを予想して いただけると、私どもは大変助かるのですが、いま言ったように現状がすべて1日単位にな っていますので、そこだけを取り出して変えろと言われると不安が大きいということだろ うと思います。 ○楠岡座長 この検討会は医政局の検討会ですが、関係する所にも働きかけていただいて、 その方式が定着するような方向へ進めていただかないと、あちらはあちら、こちらはこち らで余計な手間だけ増えたという批判になってしまいます。この辺りは検討会の中で追っ て調べていかなければいけないところだと思います。ほかにご意見はありますか。 ○嶋森委員 薬剤師さんにお聞きしたいのですが、先ほど土屋委員が散薬は外国にはなく て水薬だけとおっしゃったのですが、水薬や散薬の賦形といって、量が少ないときにシロ ップや乳糖を足していますね。それを何回かに分けて服用させるとなっていると思います が、先ほどおっしゃったように、見た目では、医師に指示された量と患者に出された量が 違っていて、それが間違いの元になることがあります。そのようなことについて、看護師 も実はあまりよく理解していないところがあります。こういう問題は、どういう形で間違 いを防ぐことができるのでしょうか。 ○土屋委員 いまご指摘の賦形をすると、賦形というのは、薬剤師が患者さんが飲みやす くするために、少しの量しかないと、それをいくつかに分けるとすごく量の誤差が増える ので、薄めることによってなるべく均等に分けていけるようにという形で足すのです。こ れは薬剤師の間では100%常識なのです。ただ、我々も病棟に行くようになってわかったこ とは、外来患者さんは私どもが1回1包飲んでくださいとか、1回2cc飲んでくださいと言う とそのとおりお飲みになるので、そこにエラーはないのです。  ところが、院内において先生のほうから2ccという指示が出ていながら、我々が1回に 3cc飲めるように、1目盛りずついくようにしようとか、飲みやすくするために量を増して いるのです。結果として、入院患者の場合は指示が2系統あるためにそれが全国で起きて、 薬剤師の常識であっても、これはチームとしての常識には必ずしもなっていないわけです。 しかも、指示が1系統だと思っていたら2系統であったということも、ヒヤリ・ハットを取 るようになってからわかった話で、この問題がわかったのは、「この間もらった分が余っ てしまったのだけど」という報告があって、患者さんはそのまま飲んでいますから、患者 さんからそういう話はないのです。まさに入院患者においておきた事例ということで、こ れも解決としてどうするかと。そうすると、調剤したときに調剤した情報が変わっている という情報をいままで看護師に伝えていなかったと、薬帯や薬札には書いてあるのですが、 どうしても先生からの指示を見ながら投与すると、そこで齟齬が生じるのが現状ですので、 書き方のほかに、なおかつ飲みやすくするための努力をしたために起きたエラーがあるこ とは事実です。 ○大原委員 システムのほうから見ると、資料3の5頁の上のほうですが、ニバジールの処 方例があります。(1)の医薬品の名称は、現有のシステムでもマスターをきちんと統一する ことで、大きな改変なく吸収できると思っています。  分量ですが、これが最大の問題で、1日分で書くのか1回分で書くのか、ここがいちばん 大きなシステム改造を要する部分です。システムベンダーは、1日分だというのは、先ほど から議論にあったようにレセプトがそうなっているので、医事会計システムから発展して きたオーダリングがそうなっていると主張しております。だから、これは1回分にすると 言えば変えることはやぶさかではないし、それは全く技術的問題ではないと思います。  その次の用法ですが、これも3回と書くのか分3と書くのか×3と書くのかは、システム 化されている所では現有のシステムで吸収できる範囲だと考えます。  問題なのは、私が昨年度調査した限りは、この部分には標準マスターはありません。そ れぞれのベンダーがそれぞれの施設のこれまで紙時代で使われていた用語を踏襲して、コ ードにもなって記号化して使っているのが現状です。それとともに、システム上どうして も字数制限がありますので、言葉を短くして、先ほどあったように1回量としてとか、そ ういう記入ができないシステムがいまは存在すると思います。ですから、現状のシステム で最大の問題は、1回量でいくのか1日量にするのかが大きな分かれです。現状の中で少し ずつでも直せるところから直すということであれば、先ほどの医薬品名称をきちんと統一 して規格を入れること、用法の標準マスターを整備してそれをコード化する、この2点を 行えば、かなり改善することは間違いないと思います。それは現有のシステムでも、いま のシステムを使いながら直せるのではないかと個人的には思います。  ただ、1日量なのか1回量なのかは、薬剤部門システムとの関連や院外に出す院外処方せ んの問題、医事レセプトへの連動の問題がありますので、おそらく大改造になると。そう なってくると、どの病院もシステム更新の5年間のスパンで見ないと、実現は厳しいとい うのが現状だと思います。どうしてもお金がかかりますので、そこの部分はぶれないで、 いつまでにやるのだということを決めていただいて、粛々と進めるしかないのではないか と思います。 ○楠岡座長 ありがとうございます。標準化するとしたら、いちばん難しいのは用法の標 準化だと思います。 ○大原委員 これは個人的な意見ですが、処方オーダリングシステムが導入されている場 合は、むしろ現在標準マスターがないので、難しくありません。これですと言って作って しまえばいいわけなので、複数の標準と称するデフォルトのようなものが存在すると、そ れを合わせる作業が非常に困難ですが、現在全くないので、これが標準だと言って作れば よろしいのではないかと思います。しかも、作ったものは、医者は選択して出すわけです ので、医者の施行方法にあまり大きな齟齬がなければ、それほど現場では混乱はないので はないかと思います。 ○楠岡座長 私自身も病院の中の用法について調べたことがあるのですが、実際使われて いる用法は、ベスト10で全体の95%ぐらいをカバーするようなものです。ところが、マス ターの中には600とか700とか、使われていない用法がすごくたくさん眠っています。その 理由は、システムを作るときに、かつて1回でも出てきた用法が抜けると用法が選べない というクレームが来るので、とにかく全部入れておこうということです。ただ、その中で 食後2時間と2時間半でどういう差があるのかということもありますので、薬理的なものも 含めた上で整理しながら標準的なものを考える必要がある。でないと、項目だけがすごく て、実際その中で使われるのは1%以下といういびつなマスターになってしまうというこ ともありますので、この辺りは別の議論が必要になるかもしれません。それはどちらかと いうと技術的な問題ですので、その部分で検討できるかと思います。  いま、薬剤などは1包化というのがあって、1日量で書いているのを1回に分けて編集し 直すといった作業がシステムの上では行われているので、システムのほうから見るといつ どう変えて、そのときの費用をどう吸収するかが中心で、いろいろなものが現場ではある 程度走ってしまっているところはあるかと思います。 ○大原委員 ほとんどの大きな病院では、処方量を1日分でまとめているのは医者の処方 だけで、薬剤の部門システムではそれを1回分にばらしています。というのは、注射は1 回分で出しているわけですから、そこだけが特殊だと思います。 ○隈本委員 素朴な質問なのですが、1回量とルールを決めて、仮にこの療養担当規則が 1日量ということであれば、1回量×2とか3と、1日3回という数字を入れたら自動的に掛け 算して、点数の請求はそちらに行くと。1回量が入っていて、それに掛け算をするという 命令をしておけば、コンピュータにとっていちばん簡単な作業だと思うのです。そういう 意味では、請求のときには必ず1回量で何回と入れると1日量になるという仕組みにはでき ないものなのでしょうか。 ○飯沼委員 そういう掛け算みたいな話もありますが、1日2錠を4回で、1回は1錠飲んで、 あとは0.5錠を昼に飲んで、夕方やめて夜寝る前に飲むという飲み方もあるわけです。週 一遍の薬もあるし、月に一遍の薬もあるわけです。だから、算術の計算のことを考えるよ りも、新卒の医師や薬剤師、歯科医師たちは新しいシステムに変えてしまうと。我々のよ うな年寄りは、やりたい人はやると。そうすれば自然に淘汰されますので、あまりきちん としたゴールなど決めなくても、新しい卒業生は全員これで来るのだと、彼らがやり良い システムに年寄りが変えれば、だんだんそうなると。そのときに、いま私が申し上げたよ うに、朝と昼と、晩だけやめることはあまりないけれど、昼やめて晩と寝る前に飲むとい うことが血圧の薬でもあるわけです。そういうことがうまくできるシステムをどう構築す ればいいかというように、二刀流でものを考えたほうがいいと思います。算術でやるのが 彼らはいちばん上手にやりますが、それではたぶんやりにくいと、それはいやだというシ ステムがあるかもしれないから、そこは二刀流でものを考えていただけるとありがたいと 思います。 ○楠岡座長 ありがとうございます。まさにそれが移行期の問題になってくるかと思いま す。確かに、システムで吸収できるところはかなりたくさんあると思うのですが、あまり それに任せてしまうと、根本のところがあやふやになってしまう可能性もあるので、とに かく基本をどこに置くかということです。過渡的なところは、どうしてもシステムを全面 改造するのは大変だから、ある程度システムで吸収できるところはやってというのが1つ の落ち着くところではないかと思います。その辺も含めて、今後検討していくことが必要 だと思います。ほかにご意見はありますか。 ○齊藤委員 どうしても法律の言葉が引っかかるわけです。薬剤師の方々も、基本は教育 にせよ現場の調剤行為にせよ、法律でも例えば「1日量で」という言葉が出てきていると。 「1回量で」という言葉はどこにも出てきていないわけです。だから、そういう根本に関わ る部分をどのようにいじっていくのかということが、1つ問題だと思うのです。いま飯沼 委員がおっしゃったように、ある時点から全部ではなくて、新卒者から徐々にリーズナブ ルな道を歩んでいくような並立法式が、最も現実的で知恵のある方法かなという気はする のですが、それにしても法律上ここにこう書いてあるのだからというガードがかかると、 薬剤師にしても医師にしても皆動きがつかなくなってくるわけです。その辺は医政局で、 あるいは医薬食品局の方も来ていらっしゃるし、そういう問題を厚労省で理解していただ けるか、この問題が厚労省の建物の中で議論されていることは大変意味深いことかなと思 っています。 ○楠岡座長 ありがとうございます。いちばん最後に引っかかってくるのは保険の問題で す。療養担当規則ができたときは、すでに明治時代から処方せんの書き方があって、その あとを追いかけて法律を作ったわけですから、その形にならざるを得なかったわけですが 、そこが変わるとなると、法律なり規則なりを変えていかないといけないというか、変わ っていかないといけない部分だと思います。その辺は厚生労働省に是非ご検討いただきた いと思います。 ○医政局総務課長 法律がということなので、一言だけ申し上げたいと思います。先ほど 座長がおっしゃったように、法律はある程度実態があるところで、それを踏まえて、法律 というか規則ですから厚生労働省の中で決めればできることですが、そのようにできてい ます。それを変えるのは別に難しくはないのですが、何も土壌がないところにいきなり変 えても混乱を呼ぶだけになります。ある程度実態が出てきて、実態を踏まえて法律ができ ていて、それを変えるときは実態がある程度変わらないと変えられないので、いろいろご 意見をいただいていますが、何らかのアクションがあって世の中が変わってきていて、そ ちらのほうがいいから変えていこうとなってくると、あとで法律がそれに合うように、必 要なら何年か置いてもやっていくことになるのではないかと思います。 ○齊藤委員 まさにこれは鶏が先か卵が先かという話で、法律が合うか実態が合うのかは 、実態が動かないから法律が変えられないということになり得るので、知恵者揃いの検討 会であり厚労省なので、どんな手順で実態ができ、どんな手順で実態を確定する格好で法 律の言葉ができていくのか、その辺が大人の知恵ではないでしょうか。 ○土屋委員 検討班でも実際どこかで実行してみようと思ったのですが、それを実行して しまうと、保険の違反になるとお金が払ってもらえないとかいうことになってはいけない ということで、トライアルを断念したことがあります。また、入院だけはそういうことを やって、外来だけいまの保険に合わせればいいではないかという話がありますが、そうす るとこの患者さんは入院のときにはこれで、外来のときにはこれでとやり出すと、それは また混乱を増すということで、実施することについては断念をしたということがあります。  ただ、ルールをどうするのかというときに、いま1回量を書くことはある意味では禁止 されているのです。そこを提案として出しているように1回量ということを明記すれば、 確実に情報としては伝わると思います。例は各行に1回量とありますが、この処方せんは1 回量と書いてありますと備考欄にでも書けばいいのだと思いますので、そういうことが現 行において許されるのであれば、そこはいろいろ議論ができると思うのですが、いまの中 では実行できない状況にあるということもありましたので、それはご報告しておきます。 ○花井委員 素人っぽくて申し訳ないのですが、いまの法律で保険上の請求が1日量にな っているのはわかるのですが、1回量で書くことが法的に禁止されていることになるので すか。実際上それに倣うので、1日量を書かざるを得ないということなのでしょうか。先ほ ど×3という話があったのですが、読み替える作業がコンピュータ上できなければ、それは 1日になるというのはよく理解できるのですが、1回で書くことは法令上困難というのを、 もう少し詳しく説明していただきたいと思います。 ○医療安全推進室長 私から先ほど申し上げたのは、医師法施行規則には、1日量である べきなのか1回量であるべきなのかについては特段書いておりません。ただ、保険請求の ルールとして療養担当規則というのがあって、そこで処方せんの様式が定まっていて、こ こでは通知の中で内服薬については1日量で記載することという通知が出ていて、それが 事実上保険請求する際のルールになっていますが、非常に重きを置いています。 ○花井委員 レセプトには1日量で書けということになっていると。 ○医療安全推進室長 レセプトもそうです。 ○楠岡座長 レセプトにいく前の処方せんもそう書けと書かれているので、強制になって います。そこは変えていただかないと、あるいは両方認めていただかないとという話です 。院内だけですと、これは正式な処方せんではなくて伝票扱いでできるのですが、院外処 方せんとして外へ出ると、その瞬間に、ある意味病院の発行した文書ですから規則に従わ ないといけないということで、書く所が1日量を提示しないといけないことになっている ということです。 ○花井委員 よくわかりました。 ○楠岡座長 これは細かい問題なのですが、最後そこに突き当たるので。 ○花井委員 ということは、鶏か卵かの話ではなくて、まずそれを変えていただかないと 、どこでも実装は不可能ではないですか。 ○楠岡座長 これは検討会で最終的な案ができてきて、医療安全上はこれでないと困ると いうことになれば、単に医療安全だけの問題ではなくて考えていただけるものと、検討会 としては期待しているところです。ただ、先ほど総務課長もおっしゃいましたが、案も何 もないところで交渉もできないということがあるわけですので、ここの検討会はまずそこ をきちんと作ることになると思います。 ○齊藤委員 それについてある程度実態を作ってみようということで、平成20年度の厚生 科学研究の中で、社会保険病院グループは医療の実践的な試みをするという使命を担って いるので、私が社会保険病院の全社員の中で研究班を立ち上げて、6病院ぐらいを集めてや り出そうというところまで来たのです。しかし、いま言った療養担当規則やそれに連動し た処方せんの問題、地域での薬局の受入れの問題などの中で、たとえ試行的なトライアル としてもやはり自分の病院はできないという所が続出して、最後に私のいる社会保険中央 総合病院も管理者会議を開いて、趣旨は大変よいのだけれど、いま1人でやるわけにもい かないという話になったということだけご報告しておきます。 ○隈本委員 細かい質問なのですが、1回量と1日何回というのが書いてあっても、それも 違法なのですか。つまり、それを掛け算すると自動的に1日量が出るわけですが、それで も違法なのですか。 ○楠岡座長 たぶん、これは厚生労働省からお答えいただかないとわからないのですが、 現段階ではそういうことすらまだ検討されていなかったと思うのです。こういうことがい ままでなかったので、それをこれから検討していただくことになっていくのではないかと 思うのですが、いかがでしょうか。 ○医療安全推進室長 通知ですので、厳密に言えば言葉として「違法」ということではな いのですが、実態的にそういうルールになっているという状況です。 ○隈本委員 それで、どうなのですか。1回×3と書いてあっても、掛け算のできる人が見 れば1日量がすぐにわかるものでも違反ですか。 ○医療安全推進室長 そこについては、だから違反だと指導している実態もないと思いま す。ただ、そういうルールが漠然とあるので、皆さん日本人なので守ると。 ○永池委員 先ほど飯沼委員から二刀流でいいではないかと、徐々に淘汰的に新しく卒業 生から実施していけば、自然にフェイドアウトしていくのではないかという意見がありま したが、それも1つあるのかなと思ったのでお尋ねしたいと思います。もし、その場合には 、土屋委員のおっしゃるようにこれは1日の量で処方せんを書いていますということを記載 するといった1例もありましたが、そもそもこの検討会では、医療安全のためにシンプル イズベストの原則に基づいて標準化しようということがスタートにあったかと思うのです。 これまでの研究の中で、いまのようなフェイドアウト的な移行の仕方に関して何らかの調 査研究がある、あるいは実態がある、何か意見が出てきている、集約されているものがあ るのであれば、お話をお伺いしたいと思います。 ○齊藤委員 そのための移し方については、あまり細かい調査研究はしていないのです。 ただ、先ほど言いましたように、やれるところからやってみようということで社会保険病 院グループで研究班を立ち上げたのですが、いまの環境の中では動かしにくいと。それは、 誰かがどこかで1回量で書いて良いのだよとはっきり明言すれば、そして1日量で書いても いいのだと、そこで並立法式が出てくると思うのです。飯沼委員がおっしゃったのもそう いう意味なのだろうと思うのですが、1回量で書くことも是とすると。新しく卒業した医学 生が開業するときにコンピュータを入れるとしたら、1回量で出てくる処方せんを入れるの がいいでしょうと、それを是認しましょうと。そういう環境なのだろうと思います。その ときにどういうステップ、法的な解釈、政令や命令といったものにどういうものが必要な のかというところまでは議論していなくて、その辺をこの検討会に委ねたという感じもあ ります。 ○岩月委員 過渡期であるのか二者並列であるのかはともかくとして、蒸し返しになりま すが、検討の過程の中では薬の名前の書き方やいつ飲むのだという情報は、先ほど大原委 員からもありましたようにできるところから手を付けていかないと、仮に1回量にしたとし ても服薬指示の時点がまちまちであれば、複数の解釈を生むことになると思うのです。い ちばん大事な、いちばん手間のかかる1回量なのか1日量なのかはともかくとして、手を付 けられるのはまず医薬品の名前を正確に書くこと、いつ飲むのかを正確に、患者さんも含 めて理解ができるようにすること。それは最終的な結論がどこにあるかはともかくとして やれることだと思いますので、それほど難しくないというお話でしたので、そういったこ とも是非この中で検討していただきたいと思います。 ○嶋森委員 それを二本立てでいったり、過渡期の混乱を考えて徐々に変えるとすると、 新たな混乱を生じるおそれが高いと思います。もし、すぐに1回量を書くというようにで きないとしても、1日量であるか、1回量であるかを、推測して理解できるようにするので はなくきちんと書くようにすべきではないかと思います。できるだけ間違わないようなこ とをすぐに始めるということは私も賛成です。 ○大原委員 先ほどそれほど難しくないと言ってしまったのですが、1回量のときに文言 を統一したり、1日量のときに文言を統一することはできると思うのですが、それが混在し たときに迷わないようにすることは非常に困難だと思います。ですから、システム的な立 場で言うと、1回量なのか1日量なのかをできれば決めていただいて、その下での付属のマ スターという感覚にならざるを得ないのではないかと思います。  そのときにもう1つあるのは、食前、食後という用法を通常使っているのは日本だけな のです。ですから、間違わないということを考えるのであれば、この際国際標準を視野に 入れてやるべきではないかと、個人的には思います。 ○隈本委員 私が以前いたNHKでは、震度とマグニチュードが大体同じような数字なので 、皆さん間違えるのです。震度7の地震はマグニチュード7の真上で起きやすいと。だから 、わざわざマグニチュードは「7.0」と、必ず小数点1位までと決めたのです。職員は原稿 を書くときにはこのルールを守るというシステムを作りました。そうすると、「7.0」と言 っているときには必ずマグニチュードとわかると。「7.2」であれば、もちろんマグニチュ ードとわかるわけです。「7」であれば震度と区別をつけるのだと。そういうルールを徹底 したのですが、そういう耳新しいということが大事だったのです。  私はこの検討会のお話を受けたときに、何か新しいマークを作ればいいと感じました。@ が付いていると必ず1回量であるとか、@でなくてもいいのですが、よく伝票等で見るのは @です。@が付いていれば必ず1回量のことを言うのだという、ある種の新しい提言をする、 つまりいままではそうではなかったけれど、このマークが出ていると新しいルールだとわ かる仕組みを考えたらいかがかと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございます。いま隈本委員がご指摘のように、並行時期が必ず存 在するので、そのときに混乱を起こさないようにしなければなりません。それが元で新た な医療事故が起こるということであれば本末転倒になってしまうので、そこはこの中でい ちばん検討が必要なところかと思います。初めのころに隈本委員がおっしゃったように、 これだけ解決方法がはっきり見えている問題も少ないということですが、その後の議論を 聞くと、方向は見えているのだけれど、そこに至るプロセスがかなり重要で、かついろい ろな問題も含んでいることがおわかりいただけると思います。このようなところを、今日 出た意見を元に、各専門の先生方からもご意見をいただきながら議論を進めていって、い ちばんいい形での移行、あるいはゴールを目指して結論を出していきたいと思いますので 、よろしくお願いします。  次回からは、少し幅広い視点からのご意見と現状を踏まえた意見交換をしていきたいと 思いますます。まずさまざまな視点からご意見をいただくために、患者の立場から隈本委 員に、薬剤師の立場から岩月委員、看護師の立場から嶋森委員に、お1人20分程度で現状 の課題、論点を踏まえた上でご意見をいただきたいと思います。それらを踏まえて議論を 深めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 以上で、本日予定の議題は終わりましたが、ほかに何かございますか。よろしいで すか。よろしければ、次回の日程について事務局からお願いします。 ○医療安全推進室長 次回の日程は、6月22日(月)17時から19時を予定しております。 よろしくお願いします。 ○楠岡座長 それでは、本日はこれで閉会にしたいと思います。お忙しいところご出席い ただきましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。 以 上   (照会先)  厚生労働省医政局総務課  医療安全推進室   03−5253−1111(2579)