09/05/19 第1回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第1回 厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直し に関する専門委員会議事録  ○日時 平成21年5月19日(火)17:00〜18:58 ○場所 帝国ホテル「桜の間」  ○出席者    【委 員】 永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、澤委員、鹿野委員、        中内委員、中畑委員、西川委員、本田委員、町野委員、武藤委員、        山口委員  【事務局】 外口医政局長、千村研究開発振興課長、井本課長補佐、        田邊専門官、梅垣専門官  ○議事 1.専門委員会の設置について      2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて      3.今後の進め方について      4.その他       ○事務局 定刻になりましたので、ただいまから第1回「厚生科学審議会科学技術部会ヒ ト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を開催いたします。 本日は、先生方におかれましてはご多忙中のところお集まりいただきまして、誠にありが とうございます。  まず、委員の先生方のご紹介をさせていただきます。式次第の3枚目に「委員名簿」が あります。本委員会は、15名の専門家の先生方に委員をお願いしております。本日ご出席 の委員の先生方につきまして、五十音順にご紹介申し上げます。京都大学大学院法学研究 科教授の位田隆一委員です。国立成育医療センター研究所生殖医療研究部部長の梅澤明弘 委員です。国立精神神経センター神経研究所所長の高坂新一委員です。大阪大学大学院医 学系研究科教授の澤芳樹委員です。独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物審査第二部 部長の鹿野真弓委員です。東京大学大学院医学系研究科教授の永井良三委員です。東京大 学医科学研究所教授の中内啓光委員です。京都大学物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研 究センター副センター長の中畑龍俊委員です。独立行政法人理化学研究所発生・再生科学 総合研究センター副センター長の西川伸一委員です。読売新聞社編集局社会保障部記者の 本田麻由美委員です。東京大学医科学研究所准教授の武藤香織委員です。国立医薬品食品 衛生研究所生物薬品部部長の山口照英委員です。なお、佐藤雄一郎委員、水澤英洋委員か らは欠席のご連絡をいただいております。町野朔委員からはご連絡をいただいておりませ んので、後ほどご出席いただけるものと存じております。  本日は委員15名のうち、現在のところ12名の委員にご出席をいただいておりますので、 本会議は成立しておりますことをご報告申し上げます。本日の会議は公開としております のでご了承いただきたいと存じます。  開会に当たりまして、厚生労働省医政局長の外口よりご挨拶をさせていただきます。 ○外口医政局長 厚生労働省医政局長の外口です。厚生科学審議会ヒト幹細胞を用いる臨 床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会の開催に際しまして、ご挨拶をさせてい ただきます。まずは、大変お忙しいところ、委員のご承諾をいただき、また本日ご出席を いただきまして改めて厚く御礼申し上げます。  このヒト幹細胞を用いる臨床研究についてですけれども、平成18年7月に「ヒト幹細胞 を用いる臨床研究に関する指針」が策定されました。その後、科学技術の進歩、ヒト幹細 胞の取扱いに関する社会的情勢も変化しております。この指針は必要に応じ、また施行後 5年を目途として検討を加えた上で見直しを行うものとすると定められております。3年前 の指針策定以降、ヒト幹細胞を用いた臨床研究を取り巻く環境は、その技術の進歩と普及 とともに変化を遂げ、特にiPS細胞のような、我が国発の新たな幹細胞技術が登場するな ど、さらなる環境整備の必要性が高まっております。  一方で、「臨床研究に関する倫理指針」が昨年7月に改正を終えております。この改正の 中では、倫理審査委員会のあり方や補償など、臨床研究のより適正な運用や、被験者保護 のための考え方も強化されたところであります。こうした背景を踏まえまして、ヒト幹細 胞臨床研究を推進するという観点と、倫理性の確保という両者のバランスにも配慮しなが ら、必要に応じてほかの国々の制度も参考にしながら見直しを進めることが必要と考えて おります。  先生方のさまざまなご指摘を踏まえ、準備を進めてまいりたいと考えております。十分 に議論を尽くしていただき、より良い指針が策定されることを期待しております。どうぞ よろしくお願い申し上げます。 ○事務局 ただいま、上智大学法学部教授の町野朔委員がお見えになりました。次に、本 専門委員会の委員長についてですが、厚生科学審議会科学技術部会運営細則に基づきまし て、永井良三委員に既にお願いしております。以後の議事進行は永井先生にお願いいたし ます。 ○永井委員長 ただいま、委員長を仰せつかりました東京大学の永井です。先ほど、外口 医政局長からお話がございましたけれども、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関するガイド ラインは、平成14年から平成18年7月まで、中畑委員長の下で非常に時間をかけてじっ くりと議論されたところであります。しかし、iPS細胞をはじめとして研究の状況、また 倫理的な問題に関する論点は大きく変わりつつあるわけです。是非、委員の皆様方のご協 力をいただきまして、実のある審議ができればと考えております。どうぞ、ご協力をお願 いいたします。  最初に、委員長代理を決めさせていただきます。委員長代理につきましては、中畑龍俊 委員にお願いいたします。  議事に入ります。最初に配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 本日の配付資料についてご説明いたします。議事次第、座席表、委員名簿があ ります。資料1から資料4まで用意させていただきました。メインテーブルの委員の皆様 の机上には、緑色のファイルがありますが、これは参考資料となっております。参考資料 についてはすべて公開資料をファイルに納めてあります。これは毎回会議の度に使用させ ていただきますので、お持ち帰りにならないようお願いいたします。 ○永井委員長 議題1は「専門委員会の設置について」です。この委員会を開始するに当 たり、この委員会の趣旨について事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料1「『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』の見直しに関する検討に ついて」、医政局研究開発振興課平成21年5月と書かれたものです。「背景」として、先ほ ど永井委員長からご紹介がありましたように、平成18年7月に現在の「ヒト幹細胞を用い る臨床研究に関する指針」が策定されております。本指針に関しましては、社会情勢の変 化等、必要に応じて見直しを行うものと規定されているところです。指針の公布後、これ までに関連法令の改定が行われるとともに、iPS細胞といった新たな幹細胞技術の出現や、 既存の幹細胞の前臨床研究の進展が見られておりますことから、厚生科学審議会科学技術 部会において、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」 を設置し、審議を行うこととさせていただいております。  2番の「専門委員会で検討すべき論点」ですが、本委員会におきましては以下の課題を 検討し、これらを踏まえて指針の必要な見直しを行うとさせていただいております。  (1)平成18年7月以降、改正等が行われた以下の関係法令との整合性ということです。1) は「臨床研究に関する倫理指針」、こちらは平成20年7月31日に全部改正されております。 2)は医薬安全局の通知になりますが、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬 品等の品質及び安全性確保について」、いわゆる1314号通知などと言われている通知も改 正されております。(2)ヒト胚性幹細胞等の臨床研究に関する取扱いとさせていただいてお ります。  「3.今後の進め方」です。専門委員会の庶務は、医政局研究開発振興課が行わせていた だきます。こちらの委員会は平成21年5月19日に第1回専門委員会を開催し、今後は1 ヶ月から2ヶ月に一度の割合で開催させていただく予定です。この機会に活発なご審議を いただければと思っております。 ○永井委員長 ただいま、本委員会の趣旨についてご説明いただきましたが、この機会に ご意見がありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○永井委員長 特にないようですが、それぞれの議題の中でも議論になろうかと思います が、非常に大きく状況が変わっているようですので、じっくりと時間をかけて議論を進め たいと思います。議題2は「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しについて」 です。この議題は、指針の見直しを議論する上でのベースとして、専門委員会の開催に当 たって、まず資料に基づいて現行の指針についての概要、最近の指針に関連した動きにつ いて事務局から説明をお願いいたします。その後、ご質問をいただきまして、今後の議論 の進め方について叩き台を提示させていただくということで、今後指針の見直しに係る全 体的な総合討論をその後に行う形で進めさせていただきます。資料2に「『ヒト幹細胞を用 いる臨床研究に関する指針』の概要」がありますので、これを事務局から説明していただ きます。 ○事務局 資料2を用いて、現行のヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の概要につ いてご説明いたします。1つ目として、こちらの指針が対象としております研究です。い ずれも指針の中から抜き出した文言です。第1章総則第3適用範囲のところに記載されて おります。  1番、この指針は、第4に規定する対象疾患等に関するものであって、ヒト幹細胞を、 疾病の治療のための研究を目的として人の体内に移植又は投与する臨床研究を対象とする。 いわゆる人の体内に投与するインビボの臨床研究のみを対象にしているということです。 細則として、こちらはどういう機関の体制で行うかという規定です。ヒト幹細胞臨床研究 においては、採取、調製及び移植又は投与は基本的に同一機関内で実施されるものである が、薬事法(昭和35年法律第145号)における治験以外で採取、調製及び移植又は投与の 過程を複数の機関で実施する場合が考えられ、これに対してはこの指針が適用される。例 を挙げておりまして、医師である研究者が自らの患者への投与を目的として調製機関に赴 いて調製する場合である。  下のほうにありますのは除外の対象です。ただし、次のいずれかに該当するものは、こ の指針の対象としない。(1)診断又は治療のみを目的とした医療行為。細則として、(1)に規 定する医療行為は、安全性及び有効性が確立されており、一般的に行われている医療行為 を指す。(2)胎児(死胎を含む)から採取されたヒト幹細胞を用いる臨床研究も指針の対象 としない。  「2.対象となる幹細胞の種類」です。こちらは指針の第1章総則第2用語の定義から抜 粋しております。ヒト幹細胞の定義として、ヒトから採取された細胞又は当該細胞の分裂 により生ずる細胞であって、多分化能を有し、かつ、自己複製能力を維持しているもの又 はそれに類する能力を有することが推定されるもの及びこれらに由来する細胞のうち、別 に厚生労働省健康局長が定める細則(以下「細則」という)に規定される細胞をいう。た だし、ヒトES細胞及びこれに由来する細胞を除くとしております。  細則として、(1)に規定する細胞は、組織幹細胞(例えば、造血系幹細胞、神経系幹細胞、 間葉系幹細胞、これは骨髄間質幹細胞・脂肪組織由来幹細胞を含む、ほかに角膜幹細胞、 皮膚幹細胞、毛胞幹細胞、腸管幹細胞、肝幹細胞及び骨格筋幹細胞、及びこれを豊富に含 む細胞集団(例えば、造血系幹細胞を含む全骨髄細胞)をいい、血管前駆細胞、臍帯血及 び骨髄間質細胞を含む。また、体外でこれらの細胞を培養して得られた細胞を含むという 定義になっております。  「3.研究機関の施設基準」。第2章研究の体制等第1の6の研究機関の基準に規定されて おります。研究機関は、次に掲げる研究段階において、それぞれ次に掲げる要件を満たす ほか、こちらでは省略しておりますが、基本原則を遂行する体制が整備されていなければ ならない。こちらの中では、幹細胞採取を行う研究機関、調製を行う機関、移植又は投与 する研究機関といった3つの工程に分け、それぞれについて研究機関の要件を定めている ところです。  細胞の採取を行う研究機関については、次に掲げる要件を満たすものとする。(1)ヒト幹 細胞の採取及び保存に必要な衛生上の管理がなされており、採取に関する十分な知識及び 技術を有する研究者を有していること。(2)提供者の人権の保護のための措置がとられてい ること。(3)採取が侵襲性を有する場合にあっては、医療機関であること。(4)は7に規定す る倫理審査委員会に準ずる委員会が設置されていること。  (2)調製機関は、次に掲げる要件を満たすものとする。(1)医薬品の臨床試験の実施の基準 に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第17条第1項に求められる水準に達している こと。こちらは、いわゆるGCP省令と言われているものです。GCP省令の第17条第1項に 求められる水準に達していること。(2)ヒト幹細胞の調製及び保存に必要な衛生上の管理が なされており、調製に関する十分な知識及び技術を有する研究者を有していること。(3)ヒ ト幹細胞の取扱いに関して、機関内に専用の作業区域を有していること。(4)7に規定する 倫理審査委員会に準ずる委員会が設置されていること。  (3)ヒト幹細胞を移植又は投与する研究機関の条件です。ヒト幹細胞を移植又は投与する 研究機関は、次に掲げる要件を満たすものとする。(1)医療機関であること。(2)十分な臨床 的観察及び検査並びにこれらの結果をヒト幹細胞の移植又は投与と関連付けて分析及び評 価を行う能力を有する研究者を置き、かつ、これらの実施に必要な機能を有する施設を備 えていること。(3)被験者の病状に応じて必要な措置を講ずる能力を有する研究者を置き、 かつ、そのために必要な機能を有する施設を備えていること。(4)7に規定する倫理審査委 員会が設置されていること。  「4.ヒト幹細胞の採取、調製、移植または投与における人権保護と安全対策等」。こうい った各段階における人権保護と安全対策についての項目です。こちらは条文をまとめたも のですが、1)人権保護のための方策として、採取における提供者の人権保護。それから移 植または投与における被験者の人権保護ということで、以下のような点が具体的に記され ております。提供者、あるいは被験者の選定の仕方、説明すべき事項、インフォームドコ ンセントの手続等です。  2)安全対策ということで、ヒト幹細胞の採取段階における安全対策等。それからヒト幹 細胞の調製段階における安全対策等。この調製段階においては、いわゆる品質管理システ ムの整備をすること。細菌、真菌、ウイルス等による汚染の危険性の排除が規定されてお ります。また、ヒト幹細胞の移植又は投与段階における安全対策等ということで、ヒト幹 細胞に関する情報管理。幹細胞が投与され被験者の血液データなどの試料及び記録等の保 存は10年間行うようにという規定。被験者に関する情報の把握です。  特筆すべきことは、採取段階、調製段階における安全対策については、この指針に規定 するほか、「ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保 について」(平成12年12月26日付け医薬発第1314号厚生省医薬安全局長通知)、先ほど 申しました1314号通知と言われているものですが、こちらの規定するところによるものと されております。  「5.その他の事項」です。1)倫理審査委員会です。こちらは、一般的な臨床研究と同じ ですけれども、ヒト幹細胞臨床研究の実施、継続又は変更の適否その他のヒト幹細胞臨床 研究に関する必要な事項について、倫理的及び科学的観点から審議するため、ヒト幹細胞 の移植又は投与を行う研究機関の長の諮問機関として置かれた合議制の機関をいう。  実施の許可ということで、2)ヒト幹細胞臨床研究の実施等の許可のところで、研究機関 の長は、ちょっと省略しておりますが、規定により研究責任者からヒト幹細胞臨床研究の 実施又は重大な変更であって細則で規定する場合(以下「実施等」という)の許可を求め る申請を受けたときは、まず倫理審査委員会又は倫理審査委員会に準ずる委員会(以下「倫 理審査委員会等」という)の意見を聴き、次いで厚生労働大臣の意見を聴いて、当該臨床 研究の実施等の許可又は不許可を決定するとともに、その他当該臨床研究に関する必要な 事項を指示しなければならない。  実際の運用としてどのような形で行われているか。この頁の右側にあるようなフローチ ャートに従って申請を上げていただく形になっております。研究機関の長は、研究責任者 からの実施計画書等の提出を受け、倫理審査委員会の意見を聴いた後、実施計画書等を厚 生労働大臣に宛てて提出いたします。新規性があると判断されたものについては、フロー チャートの左側にありますように「新規性あり」ということで、厚生科学審議会に諮問さ れます。ここで、科学技術部会に付議をされ、その後に専門家の先生方からなります、「ヒ ト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」で議論を進めていただき、認められたら厚生科学 審議会長まで報告が上がり、最終的には大臣に答申が出て、意見を述べるという形になっ ております。実際に平成19年7月に第1回審査委員会が立ち上げられ、これまでに計7回 の審査委員会を実施し、計12件の新規申請と2件の変更申請をこれまでに了承していただ いております。  「主な審査項目」としては、プロトコールの妥当性、幹細胞製品の品質・安全性、研究 機関の基準への適合性、説明・同意文書の内容、倫理審査の妥当性といったものが審査の 対象となっております。  最後に、これまでに了承されましたヒト幹細胞臨床研究に関し、今年の4月末現在で認 められたもの12件を全部一覧にしてありますので、ご参照いただければと存じます。 ○永井委員長 いま、これまでの状況についてご説明いただきましたけれども、ここまで のところでご意見等をお願いいたします。状況もいろいろ変わっておりますが、例えば、 いま話題のiPS細胞のようなものはどういう位置づけになるのでしょうか。 ○事務局 現在のところ、この指針が作られた際には、当然iPS細胞は想定されていなか ったことになります。iPS細胞の樹立後は当然幹細胞ですので、この指針での確認が必要 になるかと存じます。現在は、ほかに「遺伝子治療臨床研究に関する指針」があります。 いわゆるエクスビボで遺伝子導入された細胞をヒトの身体に投与する研究に関しては、そ ちらのほうの指針もかかわってきますので、こちらのほうの整理が今後必要なのかと思っ ております。 ○永井委員長 最初に報告された4つの遺伝子を入れるようなiPS細胞は、遺伝子治療の ガイドラインにも抵触してくるということですか。 ○事務局 いまのスコープでいいますと、そちらのほうが当てはまる形になっております。 ただ、それ以降の幹細胞を加工してといったことについてはあまりチェック項目がありま せんので、結果的には両方かかってしまう形になってしまうかと思いますので、それにつ いては整理が必要であろうと思っております。 ○西川委員 前に申し上げたのですけれども、結局この1年間遺伝子に全く改変がなくて、 それから入れたものが残っていないiPSを作る競争がずっと行われてきて、日本もしっか りやって、基本的には全く何も変わっていない。皆さんのES細胞が作れる状況に来ている わけです。それを最初に入れたからといって、ウイルス、例えば蛋白の場合は全然それに はなりません。それと同じように、例えばゲノムに入らないような仕組みがはっきりして いる場合には、あまり遺伝子治療とオーバーラップさせて考えないように、とりあえずこ こで1回議論していくことが大事かと思います。ですから、皆さんのES細胞ができたらど うしますか、という発想で考えていただいていい時期にもう来ているのではないかと思う のです。 ○中畑委員 ウイルスで遺伝子を入れる、ベクターで入れるという方法だと、確かに遺伝 子治療にかかわりますけれども、いま言われたように蛋白でもiPS細胞が作れるという発 表もあるわけです。そういう場合には、遺伝子治療のガイドラインには抵触しないのです けれども、ただその蛋白だけでiPS細胞を作ったからといって、それが本当に安全かどう かというのは全く別の問題であります。従来出されている幹細胞の指針とはまた別の観点 から、このiPS細胞を実際の医療にどう取り扱うのかという、より安全性という面では、 蛋白で作ったからといって、別の安全性にいろいろ問題がありますので、その辺はしっか りとこの委員会で議論することが必要ではないかと思います。 ○西川委員 その問題も水掛け論のところがあって、はっきり言うとES細胞がどうかとい う話になっています。日本でやることも1つなのですが、私が出席しているインターナシ ョナル・ステムセル・フォーラムでいうファンディング・エージェンシーの会があって、 日本もお金を拠出して、何十という多能性幹細胞の安全性を調べるコンソーシアムがあり ます。そういう国際的な枠組みである程度調べていただくことも、是非頭の中に入れてい ただいて、ともかく国の中だけで全部やってしまうというのではなくて、結局は世界中で 使われるという部分の問題もありますから、是非そういう発想も入れて議論していってい ただきたいという気がします。 ○高坂委員 突然本論に入ったような気がするのですが、その前に指針でどういうところ についての改正をするべきかという論点を皆さんで討論した後に、本論に入っていただき たいと思います。時期尚早ではないでしょうか。 ○永井委員長 ほかによろしければ先に進めさせていただきまして、議題3です。ただい まのご説明、ご意見を基にして、これからの議論の進め方について論点整理をお願いいた します。事務局から資料4の説明をお願いいたします。 ○事務局 その前に資料3で、指針に関する最近の動き、事実関係について、概要の続き という形でご説明させていただきます。「『ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針』に 関係する最近の動き」ということで事実関係です。  1.は「臨床研究に関する倫理指針」で、いわゆる一般的な臨床研究の倫理的な手続に関 して定めた指針です。平成20年7月30日に医政局で改正を行っております。主な改正点 として、外部倫理審査委員会への審査の依頼が可能になる。医薬品または医療機器を用い る介入研究に関して補償を整備することが義務づけられたこと。こちらは倫理指針のほう では未整備だったのですが、いわゆる公開をする。そのために公開データベースに登録す るといった点が主な改正点になっております。  2.は、先ほどから何度か出ております1314号通知という医薬安全局の通知です。生物由 来製品の治験を始める前の、厚生労働大臣の確認があるのですが、そちらの確認申請を行 う際の技術的な要件をまとめたものです。平成20年2月と9月に医薬食品局で改正が行わ れております。リスクの違い等を考慮し、自己由来細胞の製品と同種由来製品に関しては 分けて、ベースとなるものは1314号通知なのですが、別々に分けて、より具体的な内容を 記載したということです。こちらは、参考資料のほうにも掲載させていただいております ので、適宜ご参照ください。旧指針の1314号通知も参考資料の中に入れさせていただいて おります。具体的な名前は「ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器 の品質及び安全性の確保について」。それから「ヒト(同種)」の全く同じものです。  3.は「治験薬GMP改正」です。平成20年7月9日に医薬食品局より改正されております。 調製機関でGCPの症例、その第17号第1項を具体的に明記したものです。いわゆる治験薬 の製造管理や設備構造に関する基準です。平成20年の改正により、開発段階に合わせた柔 軟な対応ということをより明文化したという改正です。具体的には「治験薬の製造管理、 品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について」という通知です。こちらも参考資料の ほうに併せて載せさせていただいております。  4.は最近の動きで、「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」が、今年の4月か ら医政局と医薬食品局で開催されております。平成21年度は、医療機関が患者から採取し た細胞について、別の医療機関において培養・加工を行う。その上で患者の診療に用いる 場合の可能な枠組みについて、現在検討させていただいているところです。以上のような 動きが最近行われております。 ○永井委員長 続いて、論点整理も一緒にご説明いただけますか。 ○事務局 資料4を用いて、改正に当たっての論点としてこのようなものが挙げられるの ではないかというものを提示しております。  1.は先ほどご紹介いたしました、「臨床研究に関する倫理指針」の改正です。先ほどご紹 介いたしましたように、外部倫理審査委員会での審査の可能性、補償のあり方、公開デー タベースの登録があります。ヒト幹細胞指針のほうが遅れて後に残されてしまった状態に なっておりますので、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」のほうでもカバーをす るべきか否かといったことについてご議論いただければと思います。  薬事関係通知(注)とありますが、先ほどの1314号通知の改正に伴い、自己由来細胞、 同種由来細胞の通知が新たに出ておりますので、こちらに関しての整合性もとる必要があ るかと考えております。  2.は大きな観点から書かせていただいています。「指針の適用範囲の確認と整理」です。 先ほど、対象とする研究の範囲とか、取り扱う幹細胞について記載内容をご紹介させてい ただいたところですが、研究も非常に多様化してきておりますので、こういう状況に合わ せてヒト幹細胞指針の適用範囲の現状の確認と分類、範囲の変更の必要性などについて、 その枠組みを議論していただく、検討していただく必要があるかと考えております。  具体的には幹細胞の種類として、現在体性幹細胞のみですが、いわゆるES細胞、iPS細 胞までの適用範囲の拡大。いわゆる幹細胞の由来によって事例分けをするべきではないか。 あるいは同一組織内で行われる研究がいちばん念頭に置かれていたわけですけれども、細 胞の調製施設として自施設だけではなく、他施設のCPCを利用した形態といったものに関 する可能性もご議論いただけるのかと思っております。  3.は「ヒトES細胞の取扱い」です。先ほどの幹細胞の種類のところに関連してまいりま すけれども、ヒトES細胞をこの指針の中で取り扱うべきか否か、どう取り扱うべきか。4. は「ヒトiPS細胞を用いる臨床研究の取扱い」も同様ですが、2番のところの整理をした 後で、ES細胞ですとか、iPS細胞独自の問題点、課題についてご議論していただいてはい かがかと考えております。 ○永井委員長 最近の動きと、この委員会が議論すべき論点が出てまいりましたけれども、 ここまでのところでいかがでしょうか。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する最近の動向 というところでは、大体これらの問題でよろしいでしょうか。何かもう少し新しい見方も あるのではないかというご意見がありましたらお願いいたします。  例えば、「臨床研究に関する倫理指針」の補償の整備と言っておりますけれども、実際は どうなのでしょうか。こういう幹細胞研究で、補償の体制は整備されつつあるのでしょう か。保険会社等の動きについて教えていただければと思います。 ○事務局 ご指摘のように、一般的な医薬品や医療機器を評価対象とした介入研究に関し ては、指針の改正に併せて4月1日より保険会社のほうから、いわゆる補償に関する保険 商品が提供されてきております。これまで、特に幹細胞を用いた臨床研究に絞った形での 議論は十分には行われておりません。ですから、保険会社等でもそれを範囲に含めるのか、 含めないのかというものは、これまであまり明確にされておりません。  いろいろ話を伺っておりますと、リスクに関して不明な点が多いというところで、商品 の設計がしにくいという声も聞かれますので、こちらに関してもこの委員会の中である程 度議論していただき、それをフィードバックしていくというような形が必要なのかとは感 じております。 ○澤委員 最近の動きの「4.再生医療における制度的枠組みに関する検討会の開始」とい うことで、そちらのほうはかなりドラスティックというか、制度的枠組みについても議論 されていると思います。そちらの議論が順次うまくフィードバックされていく、同時に進 んでいますが、その辺りはどのような関係で進めていけるのか。そちらの議論がまとまっ た時点でこちらに持ってくるのか、議論をどのようにやるか。それをうまく盛り込めるか どうかというところがポイントになってくるかと思います。 ○事務局 ご指摘のとおりです。あちらの制度的枠組みの検討会は、臨床研究に限らず医 療という中での捉え方で、どういう形であれば現行法上可能な枠組みを作れるのか、考え られるのかといった議論を中心にしていただいております。  一方、こちらの「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の範囲としては、臨床研 究に限定されております。指針ですので、あくまで法的な改正を何かするといったことは あまり目的としておりません。現行法の中で臨床研究として守られるというか、行われる べき形態を提示しているにすぎません。例えば、向こうの検討会の議論がある程度まとま って、こういう形態であれば問題ないとか、そういう形態が提示されてくれば、こちらも それを受けて可能な範囲を設置していくような形になるのではないかと思っております。 ○高坂委員 いまのに関連した質問ですが、論点として1.、2.、3.、4.に挙げていただい たのですが、1.は非常に整合性があると思います。2.の幹細胞の種類、その中のES細胞、 それから3.のヒトES細胞の取扱いといったところがたぶんいちばん問題になってきて、 あとはここで議論できると思うのです。これは、西川先生が主査をやっておられるES指針 の委員会があって、こういうES細胞の臨床研究への応用というものはまだ全然議論されて いません。いま見直しが随分行われていますけれども、その中でもまだ全く議論がされて いないということで、その辺はESのほうで同時並行的にやっていかないと、こちらで認め ますという話には全然ならないので、その辺の見通しはいかがでしょうか。 ○西川委員 おっしゃるとおりです。位田先生や皆さんおられますけれども、あそこに関 して臨床応用を実際の実地臨床について、指針改正も含めて議論するという形にはなって いません。たぶんそうだったと思うのですけれども、最初の段階から十分煮詰まってくれ ば、厚生労働省でそれに関しては考えていただこうという話でした。ある意味全く影響は ないとは言いませんが、しかし十分安全性があるというものであれば、独立してしっかり 考えていっていただいたら、両方をまたがって委員をしている者としては適切な議論がき ちんとやれるのではないかと思います。 ○永井委員長 それは、ある程度こちらの意見がまとまったところで、ESの委員会に少し 投げかけることも可能ですね。 ○西川委員 もちろんそうです。ESに関して言うと、並行していまFDAがプルーブしたプ ロジェクトが2つあります。それが日本ではないのですが、始まると思います。そういう 情報が入ってきたら、早くお伝えして議論していっていただければいいかと思います。 ○位田委員 私も、文部科学省のほうのヒトES専門委員会の委員です。あちらのES細胞 については基礎研究に限るという枠組みがはっきりしています。ヒトに使うということは、 目標にはなっていますけれども、実際にその基礎研究で出てきたものをヒトに使うという ことは前提にはしていません。もしそういう可能性が出てくれば、それはヒトに使う部分 からは厚生労働省が本来担当する分野だという縦割りというか、そういう所掌範囲になり ます。  文部科学省の委員会で、ES細胞が臨床に使えるかどうかという議論はおそらくやらない と思います。出てきたものがどういうふうに、例えば安全であるかとか有効であるかとい う議論をこちらでやれば、おそらくそれで済むのだろうと思うのです。そういう形ですし、 何人かの先生は共通なので、お互いに情報は共有するのがいいと思います。ただ、両方で 議論する話ではないだろうと思います。 ○永井委員長 ただ、ヒトに使うときの細胞生物学的な根拠が間違っているといけないの で、そこはきちんと情報を交換して踏まえないといけないですね。 ○千村課長 本日ここにお示ししておりますのは、今後この場で議論をしていただく可能 性のある項目のリストです。当然、いまご指摘のようにES細胞のような、文部科学省の委 員会でも議論が進んでいるものもあります。外部のいろいろな状況も見ながら、この場で どういう中身について、どういう検討をしていただくのかということは、具体的には議論 が進んでいく過程で、いろいろ一つひとつご相談をさせていただくことになるのだろうと 思っております。 ○永井委員長 そうすると、もう少しいろいろな論点を挙げていただいてよろしいという ことですね。 ○千村課長 はい。 ○永井委員長 別にここで整理されたものだけではないということですので、いかがでし ょうか。 ○位田委員 先ほど西川委員が、こういうところまで進んでいるということを少しおっし ゃったのですが、私は法律屋ですので具体的に、例えば先ほどの最近の動きのところにあ るこの「検討会」でどういうことが検討されているのかというのは、ほとんどわかってお りません。外国でES細胞の臨床研究をやるということについても、アメリカで一応認めら れたというのはわかっていますけれども、具体的にどういう内容の臨床研究をやろうとし ているのかというのはよくわかっていません。iPS細胞についても、確かに由来の点では 問題はないのだけれども、その後はどうなっているのかということについての情報も、必 ずしもオープンにはなっていないと思います。これはお願いなのですけれども、この委員 会で、関連するいろいろな動きを少しプレゼンしていただければ、全体の認識が共有でき るかと思います。 ○永井委員長 それはこの委員の中からでも、あるいは外部からお招きしてレビューをし ていただくことは可能ですね。 ○事務局 はい、必要に応じてということで。 ○永井委員長 実際にESとiPSの研究者はある程度分かれて研究を進めているのですか、 それとも両方やっている方もいるのですか。 ○西川委員 基本的には同じようにやっております。これはちょっと語弊があるので、そ のまま取っていただくと困るのですが、たぶんジェームズ・トムソンというのはヒトのES を作った方です。ヒトのES10周年というのがジャクソンで行われました。そのときに彼は 「もうESはやめる」と言ってiPSをやっています。そういうことはしょっちゅうあります。 科学というものはすべてやるというのは、永井先生もご存じのことで、それぞれについて の重要性をやるという方はおられます、それぞれの目的で両方やられる方もおられるとい う話になっていくのではないでしょうか。 ○永井委員長 かなり変化の激しい領域ですから、できるだけ広い範囲で現在の状況をお 話をお聞きできればと思います。これは、事務局でご検討いただけますでしょうか。 ○西川委員 iPS、ESだけではなくて、同じような枠の中で、こういうことが可能になる ということに気づかれると、全然違う幹細胞がこれからも生まれてくると思いますので、 それぞれは、いま位田先生がおっしゃったように、早い情報をちゃんと持ってきてやると いうことが大事かという感じがします。 ○武藤委員 いまのことに関連してお願いなのですけれども、すごく変化と競争の激しい 領域だということは素人ながらに理解しております。その中でも、いま最新のロードマッ プというか、いまどういう可能性があって、どういうことが何年以内を目標に科学者とし ては認識していてそれに向かっているのか。特にその中でも日本の科学者の方々が置かれ た状況として、これをプライオリティ高くやりたいというような地図を、暫定的なもので も結構ですのでお示しいただけると、こういうことなのだということが立体的に理解でき るような気がしますので、併せてお願いできればと思っております。 ○澤委員 これは、この委員会での議論かどうかちょっとあれなのですが、ほかの委員会 ではやられているかもしれません。要するにヒト幹指針を経て、臨床研究のレベルを上げ た分、やはり治験との連続性というか、ヒト幹を経て効果があったものは、最終的に製品 化されて一般医療に普及してほしいというのが、臨床研究者側のインセンティブだと思い ます。そうしたときに、治験でもう一度確認申請をするというのは、ヒト幹でやったデー タが何の信用にもならなければ意味がないわけです。どちらかというと、ヒト幹のデータ をうまく治験に活用していただけるようなレベルでないといけないと思います。そこの連 続性については、大きな視野で考えると、どこかで議論しないといけないと思うのです。 ヒト幹指針の細かい見直しもそうなのですけれども、大きな枠組みの中で、そのような流 れをどこかで議論してほしいと思うのですが、その点はいかがでしょうか。 ○永井委員長 だんだん話が大きくなってくるのですけれども、その点はいかがでしょう か。 ○山口委員 私は、制度的枠組みについて答える立場にはないのですけれども、ヒト幹で の臨床研究の承認は大臣がやるわけですし、確認申請も大臣なので、同じ大臣が1つの研 究、あるいは治験というものを、片一方ではOKで、片一方では駄目というのは制度的には おかしな一面があるかと思うのです。  医薬品の承認、あるいは確認申請にかかわっている立場から発言させていただきますと、 ヒト幹で作られている、あるいはいままでの臨床研究でやられたものと、治験に持ってこ られるものが一緒でないと、そのデータが必ず使えるわけではないというところがいちば ん大きな問題点かという気がします。そのように使えるようにするためには、臨床研究で 実施されたデータを確認申請でも使えるような内容で作ってきていただかないといけない のかと思います。 ○永井委員長 それは、データのフォーマットを決めて、しっかりと。 ○山口委員 製造方法が、ヒト幹で作っている方法と、治験のやっている方法が同じ方法 であり、品質管理の点で同じであればいいのですけれども、ヒト幹でやっているときには 自己由来血清を使っていたのが、治験になったらFCSを使って作られることも見受けられ ます。そうすると、品質的にこれは同等とは言いにくいわけです。その辺も含めて、且つ 多くの工程が必ずしも同一ではないということが良く見受けられます。 ○永井委員長 我が国では、まず高度医療なり先進医療を目指すことになるのでしょうね。 治験の場合には、医師主導臨床治験をおっしゃっているわけですね。 ○山口委員 医薬品あるいは医療機器という、細胞性医療機器、医薬品というふうにする 場合には広く使われるというか、どこでも同じ品質のものを日本中で使えるようにすると いうのが、治験あるいは承認を受けた製品のものだと思うのです。しかし、治験と同様の ことを臨床研究に求めてしまうと、臨床研究のときには非常にハードルが高くなる可能性 もあります。1つの院内で高度な技術を持った医師がやっているときのケースの場合には、 その院内での完結系を持っていただければいいのかもしれませんし、もう一方で治験へつ なげていく方策があってもいいとは思うのです。 ○澤委員 そのとおりだと思っています。ハードルを上げてしまって、臨床研究の入口を ものすごく難しくするのも間違いだし、でもその連続性も重要だと。おそらくヒト幹の中 にグレードというか、段階があってもいいのか。今後その辺りは研究者のレベルが低すぎ てもいけませんよね。その辺りは議論があってもいいのかと思います。 ○千村課長 いま澤先生がご議論されている部分なのですが、1つは今後臨床研究をどう 推進していくかというような、研究を推進する枠組みをどう考えていくか。その中で臨床 研究と、いわゆる医薬品の研究開発、その中でも特に薬事法の承認を目指すための治験の 部分との関係性をどう整理するかという議論が、まさにいま澤先生がおっしゃったところ だと思います。  当然その議論は重要な議論だと思っておりますが、特にこの委員会の中での議論のスコ ープは、そういったところとは若干違っておりまして、ここは臨床研究を実施していただ く場合に、例えば倫理性に対する配慮であるとか、安全性に対する配慮であるとか、こう いったものをどう担保していただくかというところに、議論を特に注力していただきたい と思っております。問題意識としては非常に重要なポイントだと思っておりますので、私 たちとしても認識したいと思っております。 ○永井委員長 例えばいま特許庁で、新しい治療法が知財になるかどうかという議論がさ れていると思いますが、そういうことはちょっとこの委員会ではスコープの外に置いてお くと、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○位田委員 いまのご議論は、基本的には論点の1.のいろいろな指針、もしくは法令等と の整合性という話になるので、いまのところはすぐにその議論に入る必要はないと思うの ですが、どういうものと整合性をとらないといけないかという、その相手方ですね。こち ら側はヒト幹の指針があって、それに対して相手方はどのような、例えば薬事法もしくは 臨床研究指針をはじめとして、どういうものがあるのかというのと、大体のそれぞれの適 用範囲というのを少し図式的にでも示していただくとわかりやすいかなと思います。  それから、整合性をとるというときに、同じことを違った形で定めているケースと、こ ちらは定めているけれども、こちらは定めていないというケースと両方ありますので、そ の場合の整合性のとり方が、特に臨床研究に関する指針を上に見てこちらに合わせるのか、 そうではなくて、同じことを決めているけれども別々でもいいのだということになるのか。 それから、臨床研究指針には書いてあって、こっちに書いていないことは臨床研究指針に 合わせるのか、その辺の整合性のとり方というのは、いろいろあり得ると思うのですね。 その辺も少し議論の素材にしていかないと、現場の方がどっちを適用するのか迷われると 思います。  基本的には、臨床研究指針は、同じ臨床研究であっても、そのほかの指針がある場合に はそちらを適用するという、一応、場合分けはしているのです。そう言いながら整合性は とりましょうという話ですから、それは臨床研究指針に合わせろという意味なのか、別々 に定めていてもいいのだという形でこちらで議論をするのか。これから議論することなの で、いま決めておく必要はないと思いますが、その辺は少し念頭に置きながら議論しない といけないかなという気はしますけれども。 ○事務局 それでは、事務局から簡単に説明したいと思います。いまご指摘がありました ように「臨床研究に関する倫理指針」と、今回検討いただく「ヒト幹細胞を用いる臨床研 究に関する指針」の関係を申し上げますと、今回検討いただく指針のほうが特殊というか、 よりスペシフィックな幹細胞に特化した指針ということで、適用はこの指針が最優先にか かります。そして、「臨床研究に関する倫理指針」については、他の指針が該当しないとき に限り、ちょうどバスケット・クローズに救い取るような形で担当する指針になっており ますので、基本的にはこちらの指針が適用される場合には、臨床研究に関する指針は適用 されないというような位置関係になっております。  次に改正経緯ですが、「臨床研究に関する倫理指針」は平成15年に初めて策定されて、 昨年、最初の提示見直しということで、平成20年7月に見直しをかけられております。し たがって、内容はかなり現代的にフォローアップされていることになりますので、内容的 には最も近いところでの皆さんのご意見を踏まえた内容になっているということになりま すが、いま紹介したように、こちらのヒト幹細胞を用いる指針は適用除外。こっちのほう が優先ですから、昨年度議論された結果は、こちらには反映されていないことになります。 ですから、昨年度、「臨床研究に関する倫理指針」で採用された考え方を、この委員会にお いて採用するのか、しないのかを、まさに先生方にご議論いただくというポジションでお ります。  もちろん、性格が異にされておりますので、全く同じようにしろと言っているのではな くて、向こうの指針が少なくとも5年間の間に、社会の変化、ニーズの変化を捉えて内容 を変えたという事実を基に、この委員会ではどうすべきかというのはご議論いただきたい と、こういう観点で考えております。 ○永井委員長 例えば「臨床研究に関する倫理指針」では、少し新しい点として、教育を 受ける、講習を受けるということが書かれていますね。そうすると、幹細胞を用いる臨床 研究の場合には、今度それにふさわしい教育を受けないといけないだろうと思うのですが、 そういう点についての配慮などは論点になる可能性がありますね。幹細胞について、しっ かり学習しておかないといけないですね。いろいろな危険性とか、そういうヒト幹細胞に 特有の問題に関する教育を受ける義務というものは、何か議論してもいいように思うので すが、西川先生、何かそういう点でいかがでしょうか。 ○西川委員 いろいろなほかの幹細胞のレビューなどもさせていただくと、1つは実際に たくさんの臨床経験があるにもかかわらず、例えばレジストレーションが行われていない とか、結局データが溜まっていないというのがありますね。ですから、本当に何と何と何 を。こういうものに関しては議論の最も重要な点は、安全性を本当にここで議論するかど うか、それに関して本当に教育し得るのかどうかという、この2点になっていくわけです。 そこについてのかなり具体的なものに関して、いままでの経験も含めてまず議論していた だいて、きちんと教育できるもの。何となくという方が多いですね。  培養すると確かにいろいろなことが起こるのは、もうみんな知っている事実です。しか し、例えばメセンカイマル・ステムセルと言われているあるものであれば、50例、60例と やっておられる方があって、そこでレコードさえあればいろいろなことがわかるというこ とすらやられていないと。ですから、そういう問題はしっかりとここで1回煮詰めていけ ば、新しいものもあるわけですから、きちんと教育をしなければならない内容がわかって くると。ですから、ジェネラルにヒト幹細胞は危険だから教育しなければならないという 話をしたところで、書いておくのはいいのですが、何を教えたらいいかわからないという 話になるので、具体的なものをきちんとやるということが大事です。 ○中畑委員 教育については、前回の指針を作るときにもだいぶ議論があって、一応この 指針の中に盛り込むという形で、文章的には前回の指針をご覧いただくと9頁にあります が、「研究責任者はヒト幹細胞臨床研究を総括し、他の研究者に必要な指示を与えるととも に、恒常的に教育および研修を行わなければならない」ということで明記しています。教 育の細かい内容というのは、もちろんこういう指針の中に書き込むことは難しいだろうと いうことになったのですが、教育も非常に大事だということで、一応、指針の中には書い てありますので、それもさらに膨らますかどうかということは、またこの場で議論してい ただければと思います。 ○西川委員 1ついいですか。私もあまり入れていないので申し訳ないのですが、具体的 に審査の過程では、いわゆる教育に近いことがきちんと行われていると。例えば最初のこ ろは無菌室さえあれば、セル・プロセッシング・センターさえあれば、それで済むのでは ないかという形で思われていたのが、基本的にはSOPがどうだとかいうことを、こと細か に要求されることによって、まずいま全体的な施設の安全性であるとか、それを扱う人間 の安全性、これに関しては基本的な合意ができたと思いますね。  それに関して、いろいろな方が申請されてくる段階になると、文科省のES指針と一緒で、 それをきちんと理解されて出してこられるという教育効果があったと。しかし、今回はや はり新しい問題を含むわけですから、本当の安全性云々というのは患者さんも参加してい ただいて、いろいろなことを議論しなければならないと思うし、そういう意味で言うと、 もう少しこちら側で議論を尽くして、安全性に関してはどういうことが大事か。  もう1点、あの時点で重要だったのは、倫理の問題がやはり重要な問題になりましたね。 例えば患者さんとお医者さんとの意思疎通であるとか、インフォームドコンセントという ような倫理の問題だけではなくて、やはりエンブリオを使っていいのかどうかというのが、 ものすごい時間をかけて議論されたわけですから、結局そこの部分でのリザベーションと いうか、そういうものがどうしてもこういうものに現れざるを得なかったと。しかし、今 回はもう少し違った形で、安全性にまず集中して科学的に議論していくということをやれ るとすると、実質的なことがいけるのではないかなとは思いますけれどもね。中畑先生、 結構苦労されましたから。 ○永井委員長 今回の委員会では、この安全性をどう担保するか、あるいはどこまで議論 するかというところがかなり大きな問題というか、論点になるだろうということですね。 それを踏まえた上で、結果としてガイドラインをどう書くかということだろうと思います が。データマネジメントなどというのはどうなのですか。データの管理ですね。研究者任 せでいいのか、もっと第三者が管理すべきなのかとか、少しずつそういうことがいま全体 に言われていると思いますが。 ○西川委員 登録制、特に培養細胞に関しての発癌性が議論されるわりには、個々の先生 はデータを持っておられるのですが、それ全体を集めるということが一切されていないと いうのは、やはり是非やっていただきたいと。 ○永井委員長 そういうことはないと信じたいですが、良い所取りのデータみたいなもの が出てくる可能性もあって、それはできるだけ客観的に評価できるような体制ですね。個々 の研究者が持っていてもいいでしょうけれども、同時に第三者がきちんと見ているという 体制づくりですね。 ○中内委員 幹細胞の特徴としては、非常に長く体内に残っている可能性があるというこ とと、例えばiPS細胞の場合は、ただ遺伝子が入っているとか入っていないだけではなく て、かなり無理矢理エビジェネティックな変化を起こしているわけですので、そういった 変化はやはり長期間にわたって診ないと、どうしても評価できないということがあります ので、少なくとも最初の10年なり20年なりはきちんと患者さんをフォローするというシ ステムは、非常に必要ではないかと思います。 ○永井委員長 これは、いままでの臨床研究のガイドラインでは、そこまであまり明確に 書いていないように思うのですね。個々の研究者の研究ノートの中、あるいはパソコンの 中での管理というところがあったのではないかと思います。ただ、これを体制として作る のは、各施設が相当努力しないといけないところですね。 ○澤委員 もう全くそのとおりでして、これは私たちの施設でやっていることなのですが、 やはり最終的には評価ですね。その辺りはどのように、先ほどのデータマネジメントも安 全性も含めてですけれども。これはいまの指針には言及はされていないですよね。最終的 な臨床研究についての外部評価などはどうすべきなどということまでは、言及する必要が あるか、ないかですね。いまのデータマネジメントとか安全性も含めてですね。 ○永井委員長 いままでのガイドラインが、どちらかというと患者さんの人権をどう守る か、患者さんの安全をどう守るかという立場での倫理的な議論だったと思うのですが、研 究者の倫理という視点からは、まだあまり議論が成熟していなかったように思うのですが。 ○西川委員 ただ、現在の指針でも、やはりきちんとプロトコールも含めて、これは科学 ですから、それが効くかどうかという科学をきちんとやっていただくということに関して は、かなり厳しめに審査をされていると思うのですね。ですから、いま例えばプロトコー ルをいろいろサポートしていただけるオーガナイゼーションとかいっぱいありますから、 最初に申請していただくときに、それが効くかどうかを問うのではなくて、科学的に効く かどうかが本当に患者さんの合意の下にテストされるかどうかということは、最低限のレ ベルの話だと思います。その上でさらに、例えばもっと大きなスケールでやるときにはど うしたらいいかというのは、また次の問題で。  私はやはり、各先生が一定の数の患者さんに関して、しかも科学的な方法に基づいてそ れをエバリュエーションしていただくまでの話をここで議論して、そこの安全性をまず議 論したほうがいいかなという話はあると思っています。 ○高坂委員 いまのご議論というのは、データマネジメントも含めて、臨床研究の指針と いうのは、やはりそこできちんと論じられて然るべきだと思うのですね。やり方にしても、 どう統計的なデータを取っていくかにしても、これは幹細胞であれ、臨床研究であれ、す べて同じだと思うのですね。だから、当然これは臨床研究指針のほうで、たぶんいちばん 最新版ができていくと思うので、ここではまずそれ以上のものを要求してどんどんここへ 出していって、どんどんハードルが高くなってしまうと思うのですね。この幹細胞指針の 見直しというのは、大事なことは臨床研究に安全ならば使えるという体制をまずとってあ げることであって、いまの議論というのは、むしろ臨床研究指針のほうに任せたほうがい いのではないかなと、そういう印象を持ちました。 ○永井委員長 いかがでしょうか。これはいろいろ議論があるところだと思うのですが。 私の印象では、広く臨床研究何もかもというと、実際には体制を作るのはなかなか難しい かなと。むしろ幹細胞研究のほうは、症例数はそんなにたくさんはないのではないかと。 そうすると、むしろこういうところからきちんとデータマネジメントをしていって、そし て一般の臨床研究でもデータ管理ができるようになるほうがいいかなと、そういう見方も あるのではないかという気がするのですが。中内委員どうぞ。 ○中内委員 私の先ほどの発言はちょっと誤解を招くかもしれませんが、私が先ほど言っ たのは、iPSとかESとか、まだヒトに対して一度も投与されたことがない、そういった細 胞の場合には、きちんとした長期間にわたるフォローが必要だということで、それ以外の 体性幹細胞に関しては、そんなに厳しいハードルを設ける必要もないのではないか。むし ろあまり高いハードルを設けると、幹細胞の臨床研究自体があまり進まなくなってしまい ますので、その辺はどの程度細胞に危険性があるかということを判断した上で、それに合 ったデータマネジメントをすることがいいのではないかと思います。 ○永井委員長 あり方については、これから議論をしていけばよろしいのではないかと思 いますが。 ○町野委員 事務局にお伺いしたいのですが、いまの臨床研究の倫理指針との整合性とい うことで、いまの安全性についてとか、権利の保護について、その点について幹細胞の臨 床研究は特別に考慮すべき事項があるというお考えなのでしょうか。あるいは一般的な考 え方、つまり臨床研究の倫理指針によっている考え方、それの適用で足りるというお考え なのでしょうか。 ○事務局 そもそも対象としている試験が違いますので。というのは、「臨床研究に関する 倫理指針」は、ありとあらゆるバスケット・クローズで多種多様なものを対象としていて、 かつ倫理指針という形で捉えています。まず、そういう特徴がありますということです。 だから、安全性についてここまでやればいいとか、やらなくていいという話については、 むしろ今回の特殊性に鑑みて、必要なのか必要でないのかも、現在の科学水準に合わせて、 ここでご議論いただく形になるのかなというように認識しておりますけれども。 ○西川委員 そこはもう既に審査もかなりの数やっているわけですから、施設面であった り、何をもって科学的に良いとするかということに関しては、議論の記録がたくさんある わけですから、そこをかなり重視されたらいい。たぶん難しい問題は、本当に科学的に意 味があるかどうかなどという問題を言い出すと、どうしようもないのですね。細胞投与に 関して言うと、例えば一見したところあまり関係ないかもしれないけれども、どこかで大 変効果があるということはいっぱい出てくるわけです。それを例えばプロトコールとか委 員会で、これはもうまず考えられないから意味がないとやってしまうと、新しいものの芽 を摘む可能性があるので、逆に科学性をどのように担保するのかという部分と安全性とい う問題を、いくつかの具体例を挙げて議論していけばいいのかなとは思っていますけれど も。 ○中畑委員 この幹細胞を用いた指針によって行われる臨床研究ですね。治験には入らな いような研究で、科学的にしっかりそういう構成を証明するというのは、なかなか難しい と思うのですね。そこまで行くとすれば、きちんと治験という形でランナマイズスタディ をやることによって、しかもかなり大規模な形で行わない限り、科学的に有効性がきちん と証明されるということはなかなか言っていられないので、そこまで要求するような指針 というのは作るべきではないと思うのです。  ただ、将来的に投与した細胞が本当に安全かどうかということは、やはり我が国でずっ とこれからそういう治療をやっていく上では非常に大事なことだということで、常に遡及 調査ができるような体制でやりましょうということで、前回の指針は作ったわけですね。 だから、必ずそこは遡及調査ができると。その治療法が何か問題があった場合はすぐに報 告すると。それが本当に有効だったかどうかの評価というのは、この指針の中では行わな いという形で、前回まとまったと思うのです。  有効性があるかどうかをさらに評価するというところまでいくのは、ちょっと私は難し いのではないかと思いますね。それをしっかり評価するとすれば、最初のプロトコールを 作る段階から、科学的にしっかり証明できるような形で臨床のその体制を突っ込まない限 り、それは印象的に効いたという印象だけだったらすぐ出ますけれども、科学的に本当に 有効性が証明できるとするというのはなかなか大変なことですね。澤先生、そうですよね。 ○西川委員 ただ思いつきでやるのではなくて、やはりスタートのやり方に関してはきち っと科学性を持つということは、もうはっきり言うというので、そこを。 ○中畑委員 科学性の意味が有効性を示すかどうかの科学性の証明と、それが科学的に見 て、論理的に許されるような治療であるかどうかという、それは全然違う話になりますの で。後者の意味だったらそれは非常に大事なことで、いまのプロトコールの審査の委員会 でも永井先生がきちんとやられているのではないかと思いますけれども。 ○永井委員長 鹿野委員、いかがですか。審査にいままで携わってこられた方から、何か ご意見をいただければと思います。 ○鹿野委員 私は薬事法の範囲で仕事をしている関係で、ちょっと確認をさせていただき たいのですが。今回、薬事関係通知との整合性を図ることになっておりますが、具体的に 現行の指針の中には品質管理、あるいは採取、調製の段階はすべて1314号通知を全く引用 されています。現状では、これがどの程度の範囲で運用されているのか、私は具体的には 存じ上げないのですが、今回のこの検討の目的としては、改定された指針の内容を、必要 があれば、より具体的に盛り込んでいくことも視野に入れるという理解でよろしいでしょ うか。 ○事務局 はい。 ○鹿野委員 私の仕事をしている感覚で申し上げますと、1314改定通知もそうなのですが、 より品質に特化した内容になっております。品質面で安全性を担保しようというのが1つ 目的であるということと、先ほど中内先生がおっしゃった、もののリスクに応じて臨床試 験で何を見ていくかということを考える上でも、やはり特性解析、品質、あるいはインビ トロ、インビボの特性解析を含めてなのですが、そういうことで得られた情報を基に臨床 試験、プロトコールをデザインしていくということも必要だと思いますので、そういうと ころからもご検討いただければと思います。 ○武藤委員 ちょっと別の観点の話になるのですが、研究機関のほうのガバナンスという 観点で、倫理審査委員会のことは是非ご議論をいただきたいと思っています。というのは、 臨床研究倫理指針が改正されたところに、倫理審査委員会の役割、それから倫理審査委員 への教育、倫理審査の結果とか議事概要の公表の部分など、かなり具体的に決まりまして、 各研究機関はこの半年ぐらいものすごく大変だったと思うのですが、実際は良い方向に進 んで、社会の信頼をより得られるという方向に進んでいると思います。  現在の今回見直しの対象になっている指針のところでは、倫理審査委員会に関してはま だそこまでのことが書かれておりませんので、今回扱われる臨床研究が非常に小人数で、 多施設で、安全性を重視するという特性を持った研究であるということを考えても、倫理 審査委員会の役割については、是非スペシフィックに見直しをしていただきたいと思いま す。  それと同時に、先ほど事務局からご説明をいただいた資料2の後ろから2枚目の「ヒト 幹細胞指針の実際の運用」というところで、研究機関から厚生科学審議会までの流れ図が あって、改めて確認すると、本当にすごいステップを踏んでいるということが認識される ところなのですが、私自身は所属している部署で倫理審査委員会の事務局をやっておりま すので、こういったスキームの中で各機関の倫理審査委員会がやるべきことと、いまなか なか実際には機能しきれていないモニタリングの部分ですね。長期間の臨床研究をどうや って、倫理審査委員会として、医療安全の部署とは別に、どういう役割を果たすべきかと いうことも改めて議論させていただきたいと思います。以上です。 ○永井委員長 ただいまのモニタリングの話というのは、先ほどのデータマネジメントの 話にもつながるのですね。実際、倫理審査委員会も、こういう新しい進歩にどこまで付い ていっているかは、多少懸念されるところもあろうかと思うので、確かに各施設の倫理審 査委員会のあり方については議論が必要だろうとは思います。そういう意味でよろしいの でしょうか。 ○武藤委員 例えばこういうことがあり得るかどうか、ちょっとわからないで発言します。 先ほどいろいろな種類の幹細胞が現在ある、それからその可能性があるというお話があり ましたが、例えば幹細胞の種類によって取扱いを変えた審査というものが施設の中であり 得るかどうか。より丁寧に倫理審査委員会がかかわらなければならないものと、比較的そ うでもないもの。あるいは研究の件数の増え方にもよりますが、どのように研究機関の責 任で、それを機関長に助言をしていくかということを考えますと、そういったことも誤解 を恐れずに議論をしたいと思います。 ○西川委員 これはもう中畑委員会のときに議論したわけですが、ES細胞および胎児の細 胞に関しては、全然違う別の倫理的な問題があるということで、延々議論を続けたわけで す。ただ、それ以外の細胞に関しては、やはりトランスパレンシーであるとか、患者さん へのインフォームドコンセントであるとか、いわゆる安全性と、本当に説明責任が果たさ れているかということで、それぞれの倫理委員会で議論できる事柄であって、特殊なもの はあまりないのではないかなと。ただし、正確な情報をどのように出すかということがい ちばん重要で、そこを公的にどういう形で担保できるかとか、そういうことはこういう委 員会で考えていくことかなと思います。 ○町野委員 先ほど私がお伺いした趣旨というのは、整備という整合性ですよね。みんな 同じにすれば整合性が保たれるかというと、そういう問題でもないだろうと。基本的にこ の臨床研究の倫理指針とは別に、体性幹細胞について作られているのはなぜなのかという ところが、おそらく出発点だろうと思うのですね。だから、例えばここに3つぐらい挙げ られていますが、簡単に言うと、いちばん最初の倫理審査委員会の要件を緩和したわけで すね。では、こっちも緩和すべきかと、例えばそういう議論なのですね、なぜ緩和するの かという話なので。必ずしも整合性という言葉が、その言葉だけでみんな同じにしろと、 ローラーをかけろという趣旨ではないと、それがいまのご議論だろうと思うのですね。  それで、いま体性幹細胞については倫理指針を待つと。特異性といいますか、それが唯 一あるのが再生医療に使われるということだけであって、安全性だとか有効性だとか、そ の辺については一言も触れられていないわけですね。だから、その辺がかなり重要な論点 になるのではないかと思います。 ○永井委員長 本田委員、何かご意見ありますか。 ○本田委員 すみません。私は本当にこの中でいちばん素人で、「臨床研究に関する倫理指 針」の検討会で参加させていただいて、その中で私は癌患者でもあるので、患者の立場か らこういう臨床研究を一般の人にどうやって理解してもらうのかという立場で入っていた もので、この専門委員会はとても特殊な部分であるので、私自身はどのようにかかわれる のか、まだちょっとわからないのです。  ただ、いままでのご議論を伺っている中で、この前の倫理指針の中で議論されたような こととの整合性という意味で、単に整合性を図るというよりも、そこで議論されたものを、 こっちでもっと高度に入れていくことは可能なことがあるのではないかと。特に先ほどお っしゃっていたような倫理審査委員会の教育の問題とか、その辺のことを是非ご議論の中 で意見が言えたらなと思っています。  もう1つは、公開データベースへの登録というときに、一般の臨床研究の倫理指針のと きには、そこに登録しないでいい加減なことをされたら困るというような観点で、患者、 一般市民側の意見としていろいろ言っていたのですが、特にこういう研究の場合、先ほど からおっしゃっているようなデータ管理というのは、私たちもとても気になるところです。 そのデータを一般の人間が全部読めるかどうかは別としても、本当に何か良い所取りをさ れているのではないか、研究をしたいためにこのように出しているのではないかというよ うに、どうしても勘繰ってしまう部分も当然ありますので、そういうのが一般の人にもわ かるような形は何かないのだろうかというものを、ちょっと興味を持っています。 ○高坂委員 本田委員、武藤委員のおっしゃっていることはよくわかるのですが、少なく ともこの幹細胞指針、ヒト幹を用いた指針ですね。ここでの倫理審査委員会というのは、 先ほどお話に出ましたように、一般の臨床研究指針よりも一段厳しくした指針になってい るのですね。それは先ほど町野委員にまとめていただきましたが、それ以上にもっともっ と高度の次元のものを要求していくということになると、このヒト幹の研究がものすごく ハードルが高くなってしまうということも、一方では考えておかなければいけないことな のですね。  特にこの論点整理の中で、外部倫理審査会での審査の可能性といったことも関連するの ですが、そういったことも我々が考慮しなければいけないことになるでしょうけれども、 各実際にやっている機関に、よりハードルの高い審査を求めていくことは、それはできる 所もあるし、できない所もある。できない所は新たにそういった研究をやってはいけない という話になりますし。少しその辺を考慮してやっていかなければいけないというように 私は思っています。  もう1点は、これは私の個人的な印象なのですが、倫理審査委員会のメンバーに対して、 研修、教育ということは確かに必要かもしれないのですが、どこまでそれをやるべきかと いうことは、考えておかなければいけないのですね。それは裁判員制度がこれから始まり ますし、よりナイーブな方だからこそ分かるということもありますので、臨床研究という のはこんなものですよということを一から十まで教えて、これに則ってあなたが審査しな さいというのは、倫理指針に関しては私は本来の姿でないと思うのです。そういった観点 からも、あまり厳しいことを要求するのは、私はいかがなものかというように個人的には 思います。 ○本田委員 より厳しいなど、いろいろ検討しなければいけないことはたくさんあると思 います。特に特殊な分野ですので、必ずしもどうかとは思うのですけれども、一般社会か ら見たところの視点とか、そういうものも入っていないと、ただただそれだけ研究が進ん でいってしまう中で、研究者のエゴというのもあるでしょうし、社会から全く受け入れら れなくなってしまうということもあるでしょう。そういう視点も、倫理審査のところに入 れるのかどうかちょっとわからないのですが、そういうことも是非考えていただきたいと いう意味も含めてです。  あと外部委員への委託というのは、規制緩和という意味では規制緩和かもしれないけれ ども、たしか私が議論の中で感じていたのは、いまのさまざまな臨床研究をやっていると ころのそれぞれのIRBは、基本的にレベルが低いと。だから、それなりの所にやらせたら いいではないか。もう少しレベルアップするためには、全員をレベルアップするのはとて も大変なので、そういう所にしてもらうというのもいいのではないかという視点もあった というように私は理解しています。 ○武藤委員 教育のレベルの話は、おっしゃるとおりだと思います。私も何でも教育を受 けさせればいいと思っているわけではなくて、例えば内部の研究者の方々はとてもそんな ことをやっている暇はないというご意見もあったりするのですが、外部委員の方とか一般 の立場の方に関して言うと、どんな視点で審査していいのかわからないと。自分は患者の 代表といっても、すべて世界を背負っているわけではないし、この審査に対するかかわり 方がわからないというのは、本当に素朴な審査委員としてのかかわりの部分もありますし、 知識の部分でもっと勉強したいという方もいらっしゃるので、その審査会ごとにオンデマ ンドで考えていかないといけないだろうと思っています。それだけ申し添えます。 ○高坂委員 いずれにしても二重審査体制というのは、このまま持続されるのではないで すかね。最低限、そこで担保されるということですよね。 ○町野委員 簡単に倫理委員会のことなのですが、実は今日、午前中にも「生命倫理専門 調査会」というところがありまして、そこで機関内の倫理委員会について、これから調査 を始めるという話だったわけですね。それはそれで私は結構だとは思うのですが、問題は 結局、例えば倫理委員の質が低いとか、あるいは人が足りないとか、そういうだけの問題 以前に、何を審査しなければいけないか、わかっていないというところなのですね。そう いうところで教育をしても、おそらくこれは道徳の時間をやるのとあまり変わらない話で す。  それから、先ほどの裁判委員についても、最初にもちろんいろいろ話をしなければいけ ないということはあるだろうと思いますが、そのときにどういう証拠を根拠としていいと。 例えばそういう場合、個別的に言うわけですよね。それがないところで倫理教育をしても、 ほとんど意味がないと思います。 ○永井委員長 外部倫理審査委員会の目的について確認させてください。というのは、多 施設で研究するときに、すべての施設に倫理委員会が立ち上げられるわけではありません。 そういう状況では、外部に倫理審査を頼んだほうが研究しやすくなるのではないかという 意図だったように思うのですが、そういうことでよろしいのでしょうか。 ○事務局 そういう議論もありました。 ○永井委員長 これは必ずしも規制が厳しくなっているわけではないように思うのですが。 ○事務局 ご指摘のように、バランスをとっているという形で、外部審査委員会を使える ようになったということを簡単に説明させていただきます。当時の改正前の倫理指針では、 原則として臨床研究を実施する機関に倫理審査委員会を設けなさい、という条項になって おりました。そうなっていますと、いま本田委員からご指摘があったように、すべての倫 理審査委員会が整備できるか、用意できるかという問題もあるでしょうし、あるいは多施 設共同臨床研究をやったときに、10個の医療機関でやったら10回通すという話の問題も 出てきました。  そのような議論の中で、しっかりした所を通してもらうのであれば、流動性の議論も同 時に考えるべきだという議論が盛んになされた結果、一つひとつの倫理審査委員会をしっ かり教育して育てるとともに、合理化して1カ所に集中して議論をいただくということも ありだろうという議論を重ねられた結果として、外部倫理審査委員会での審査が可能にな ったと、こういう一言でまとめられている経緯があります。 ○町野委員 規制緩和かどうかというのは見方の問題なのですが、1つの考え方というの は、ほかの分野ではかなり有力だと思うのです。自前の倫理審査委員会を持てないような 機関はやる資格がないという考え方が、かなりあるのですね。だから、そういう考え方と いうのは実質がないということだとするならば、要するにこれは規制緩和ではなくて実質 を取って、むしろ充実させるものだという見方にもなり得るという話だと思います。しか し、いま考え方は2つぐらい対立しておりますから、自前で持てないような所はそういう ことをやる資格がないのだという考え方ももちろんありますので、そう簡単にはいかない 話だろうとは思います。 ○位田委員 ここで議論することは、ES、iPSも含めて、ヒト幹細胞の臨床研究に必要な 制度を作るという話なので、倫理審査委員会一般の議論をここでやってしまうと、延々と 議論が続く形になってしまいます。一応、臨床研究指針は改正されて現在の形になってい て、それを横に見ながら、ヒト幹細胞のこの指針については何を取り入れて、何はここ特 有の制度にするのかということで、ある程度枠をはめて議論をしないと、いまみたいな議 論が始まると、なかなか結論に行き着かないかなという気がします。 ○永井委員長 ただ、いまはまだ導入の時期で、本当に数例やるにはどうしたらいいかと いうような段階かもしれないのですが、すぐにこれは開発した施設だけではなくて、多施 設で数百例を対象にやってみないとわからないという議論に進化していくのですね。その 辺までスコープに入れて、体制づくりは考えておく必要はあるかと思うのですね。 ○中畑委員 いま中央審査と実質的な医療機関の二重審査という形をとって進んできてい るわけですが、それが今後も継続して、同じような体制でいくかどうかということが、各 施設の倫理委員会のあり方にもかなり関係することですので。いまの体制でやっていくと すれば、各施設の倫理委員会にプラスして、中央での有識者、いろいろな専門の先生が揃 ったところでの審査がありますので、それをパスしないと幹細胞を用いた臨床研究が始ま らないという形をとっています。これでいま何例か審査がされて、日本全体のレベルが上 がってきていると思うのですね。最初出てきたプロトコールは非常に稚拙なものも多かっ たと思うのですが、それがだんだん洗練されてきているということで、私の感じではその 議論になると思うのですが、もうしばらく中央審査を続けるという形にするのがいいので はないかと思います。おそらく、それはまた議論になると思います。 ○西川委員 倫理委員会に関しては、ちょっと後回しでもいいのではないかと。例えばES 細胞が出てきて、そうなるともう倫理委員会自体もそれぞれ、例えばノルウェーはルター 派だから国として禁止しているわけですから、そういうことはここではやらないと。あと トランスパレンシーであるとか、ちょうど本田さんがおられるのですが、患者さんの立場 を聴くことは結構重要な要件になってくるので、その辺をどう合意形成していったらいい のかということに関しては、倫理審査委員会という杓子定規なものでない形でしっかり議 論する、というような形に是非していただきたいと。それはそれ以外の安全性であるとか、 科学的な問題に関しては、もっとしっかりやるというように是非やっていただきたいと思 いますが、前のようにそういう倫理の問題は是非、今回は避けたいなというのが正直なと ころです。  もう1つ、例を挙げて、私がいろいろ知っているのはいくらでも言いますが、例えばい ま永井先生がおっしゃった、すぐに次の段階になっていくということはもう当然の話で、 いちばんわかりやすい例が、ヨーロッパで行われている120例を目指したハンチントン病 の胎児の細胞移植。これに関しては1985年から行われた個人の研究の結果、ダブルブライ ンドでシャムオペレーションまでやってという次の段階なのです。しかし、そこは今回の 問題ではないけれども、それは科学性を持った研究であるというそれぞれのお医者さんの 強い意思があれば、当然、永井先生がおっしゃるように、そういう形で発展するし、その ためにいろいろな形での障害を乗り越えて議論されていくのだろうと思います。ですから、 ここは個人研究というか、その辺を視野に置いて、議論していただければという感じがし ます。 ○永井委員長 その辺についても、また少し議論が必要かと思うのです。と申しますのは、 遺伝子治療の最初のころでもそうだったのですが、奇跡的な治療と銘打つと効いてしまう のですね。なぜか効いてしまう。しかし必ずすぐに反論が出てきます。そうするとダブル ブラインドでもう少し数を増やしてという段階に、2年、3年のうちに移行してきますね。 その辺までは、スコープに入れてもいいようには思います。これはこの委員会の中で議論 したいと思います。  だいぶ議論が出てきて、この委員会は結構充実した討議ができるのではないかと思うの ですが、事務局から何かありますか。もし時間があれば、臨床研究の改正点などについて、 ご説明いただければありがたいのですが。 ○事務局 承知いたしました。お手元のこのファイルの参考資料3に、お話の中で先ほど から何回か出ておりますが、昨年改正されて4月1日より施行されております「臨床研究 に関する倫理指針」の改正についての概要ペーパーといいますか、資料がありますので、 そちらについて若干説明をさせていただきたいと存じます。  委員の先生方だけ、今回ご出席いただいていない方にはありませんが、参考資料3につ いて、簡単にご紹介させていただきたいと思います。表紙をめくって、「臨床研究に関する 倫理指針」と表題のある所です。当初、この臨床研究に関する倫理指針を策定される背景 として、「被験者の人間の尊厳および人権を尊重しつつ、臨床研究の適正な水準を図る」と いうことを目的にして、規範、遵守すべき模範の規定を作ろうということになっておりま す。指針において定めた内容としては、2に書いてありますが、ヘルシンキ宣言や個人情 報保護法といった議論を踏まえて、臨床研究全般を対象とする基本的な指針を策定しよう ということで、平成15年に策定された経緯があります。  次の下ですが、これについて5年経った平成20年を目途に改正ということで、準備がそ の1年前の平成19年8月より、厚生科学審議会の科学技術部会の専門部会において、見直 しの検討が始められました。専門委員会の要望もありまして、パブリックコメントを先に させていただいて、どのような要望があるかというのを事前に調査した結果、臨床研究の 形態と倫理指針の範囲を明確にしようという議論、倫理審査委員会の機能の充実を図るべ きではないかという議論、被験者の健康被害の防止および救済についての議論、公的研究 費や他制度との関連についての議論と、大きく分けて4つの論点中心に議論が重ねられて きております。その結果、平成20年7月31日に改正告示という経緯がありました。  頁をめくって、主な改正の論点について、簡単に紹介していきたいと思います。1とい うことで、倫理審査委員会について、5個ほどご紹介したいと思います。1と2を紹介させ ていただきますが、当初は臨床研究を実施している機関自らが倫理委員会を設置するとい う規定になっており、特殊な事例がない限りは他の委員会への依頼規定はできなかったと いうことになっています。それを2のように、他の審査委員会にも依頼できるというよう に改正しました。また、設置主体自身も、いろいろな法人の形態を含めて追加させていた だいたというのが1と2に関係する主な改正点になります。また、一概に倫理審査委員会 で同じような審査をするのではなくて、内容に応じた審査の軽重をつけるという議論を踏 まえて、軽微な事項の審査については迅速審査ができるような規定が盛り込まれました。  一方で、倫理審査委員会の権能が非常に強くなったことも含めて、設置者の義務なので すが、倫理審査委員会の手順書を作成すること。また、当該手順書、委員名簿、会議の記 録の概要といったものを公開するという義務づけがなされております。また、倫理審査委 員会の設置者は、委員会の名簿、開催状況、その他の事項を年に1度、大臣等に報告する という義務づけもなされているところです。  頁をめくって、こちらは健康被害に対する補償、教育、事前登録といったことになりま す。大きな話は、医薬品・医療機器を用いた介入研究について、健康被害に対する補償の ための保険、その他の必要な措置を講じなければならないという規定が盛り込まれており ます。従前は補償に関するインフォームドコンセントという形で書かれていましたが、GCP とほぼ準拠した形で、医薬品・医療機器を用いた介入研究について、補償保険、その他の 措置を講ずるということが盛り込まれております。  また、教育の項については3段階、研究者等について、臨床研究機関の長について、ま た倫理審査委員会の設置者について、それぞれ教育を受けなければならない規定、あるい は必要な措置を講じて教育を受けるようにさせる環境を作るような規定、あるいは教育研 修に努めるような規定というのがそれぞれ盛り込まれており、実施者、あるいは関係者へ の教育について、積極的に行うような規定が盛り込まれております。  研究の事前登録ですが、侵襲性を有するような介入研究については、公開データベース に事前に研究計画を登録するという規定が盛り込まれたところです。  3番目については、実施体制の適切な確保という観点です。1ですが、重篤な有害事象等 について実施すべき事項を、あらかじめ手順書に書いておいてくださいといった規定。そ れについて、また責任者や臨床機関の長がとるべき対応についての明記ということも盛り 込まれております。また、侵襲性を有する介入研究について、特に予期していない重篤な 有害事象が発生した場合には、臨床研究機関の長が対応したあと、厚生労働大臣に報告す るような義務規定が設けられたり、あるいは指針に対する重大な不適正があったときに措 置をしなさいといったことで。あるいはちょっと飛びますが、6のような自己点検を必要 に応じてやってくださいということ、あるいは5のような進捗状況について、やりっぱな しではなくて、初めと終わりだけではなくて、途中も定期的に報告してくださいといった ような規定。7ですが、臨床研究機関の長、あるいは倫理審査委員会の設置者に対して大 臣が調査をするときには協力してくださいといった、調査についての協力義務規定みたい なものも盛り込まれたところです。  頁をめくって、次の所はオムニバスですが、定義の充実化という観点で、当時は観察研 究と介入研究といったものを特に区別化されておりませんでしたが、そういった各研究に ついて細分化して、それぞれについて定義を充実させたようなところがこの1、2に関する ところです。  また、下のほうの(1)から(3)についても同様ですが、匿名化の議論、連結不可の匿名化、 連結可能匿名化といった個人情報保護法に関する規定についても樹立しているところです。 また、他の機関から資料を受けて実施する研究、あるいは資料だけを提供する研究機関の 満たすべき遵守事項といったことも、併せて定義、あるいは条項を設けて整備していると ころです。  最後の5については、実際に適用時期を定めて、今年の4月1日から施行になっており ますが、そのような規定。あるいは実際に治験コーディネーターなどの積極的な活用であ ったり、公的資金については、この臨床研究の指針が遵守することが交付要件になってい るというような、他の指針と公的研究費との関係付けられたものであるとか。あるいはe ラーニングみたいな情報を明示して、教育に使ってくださいといったことも併せて定めら れていたところです。  最後の頁ですが、補償保険についての簡単な位置づけについて、紹介した図です。臨床 研究指針については、大きく分けて介入研究と観察研究というように分けられております。 特に積極的な医療介入を行うものを主に介入研究と位置づけられておりますが、その中で も医薬品・医療機器を使う介入研究と、あるいはそういったものの機能評価をするもので ない手技とか術式の評価を行うような介入研究もあります。特に今回の補償の対象にした ところは、医薬品・医療機器の機能評価をするような介入研究について、保険商品が民間 から用意されますが、それについての加入等の措置を講じてくださいといったところが主 な改正点になろうかと思います。足早ですが大体大きな改正の要点はこのようなところに なっております。以上です。 ○永井委員長 何かご質問はありますか。高坂委員どうぞ。 ○高坂委員 ありがとうございました。以前この臨床研究に関する指針の改正点を、私ど もの機関でも講演をしていただいて、わかりやすく説明していただいたことがあるのです。 1つ教えていただきたいのですが、今後この幹細胞指針は知財の問題がかなり出てくる可 能性があります。そうすると、先ほどおっしゃいました侵襲性を伴う介入研究、このとき に、あらかじめ公開データベースに臨床研究計画を登録しなければならないといったとこ ろが、この幹細胞指針では別途いろいろな条件を考えなければいけなくなってくると思う のです。この臨床研究指針の考え方というのは、やはり広くほかの指針にもかぶさってく るものなのでしょうか。 ○事務局 2点に関して紹介したいと思います。事実関係ですが、お手元の参考資料2の9 頁の下段、臨床研究に関する倫理指針の、いまご指摘をいただいた当該事項の記載につい て紹介したいと思います。9頁の(5)の下のほうになります。但し書以降を読ませていただ きます。「知的財産等の問題により、臨床研究の実施に著しく支障が生ずるものとして、倫 理審査委員会が承認し、臨床研究機関の長が許可した登録内容についてはこの限りではな い」ということが、実は先生のご指摘の議論については、臨床研究の倫理指針も同じ議論 があって、原則としては登録です。ただし、知財の確保等、特殊な事情があった場合につ いては、ちゃんと倫理審査委員会の議論を踏まえた上で、特殊なこともあり得るという議 論になっています。これがまず事実関係の紹介です。  もう1点、実は海外のトップジャーナルにおいては、基本的に事前に登録しないと、実 際には論文投稿を受け付けてもらえないといった動きも既に出ておりますので、逆に言う とそこを満たさないと、結果的に大切な研究内容がペーパーにならないということもまた 事実ですので、そのような議論も踏まえた上で、原則として全部載せるのでしょうと。た だ、実際には特殊事情があった場合に、すべて全部最初から包み隠さず載せられるという ことは必ずしも限らないので、特殊事情のことも想定した但し書が残り、その適切性につ いてはちゃんと審査いただくというような議論がなされたということです。 ○永井委員長 確かにどこかで知財を取るか、論文を取るかという判断を、研究者がしな いといけないのでしょうね。梅澤委員どうぞ。 ○梅澤委員 非常に多岐にわたる改正に当たっての論点があるということは、非常によく 理解いたしました。具体的に審議された内容が、改正に向けては決まったものについて施 行するには、最終的に上の審議会に上げて決まるという形になりますでしょうか。 ○事務局 冒頭ご紹介しましたが、会議の位置づけとしては科学技術部会の専門委員会と いう位置づけになりますので、ご議論いただいて取りまとめた案を、最終的には科学技術 部会に報告し了承いただくようなことを検討しております。 ○梅澤委員 その際に、資料4については改正に当たっての論点案ということで、1.、2.、 3.、4.と、非常に多岐にわたるご議論があり、また、先ほど永井委員長のほうからもこの 分野の進歩が著しいということで、議論を繰り返しても、新しい情報とともに、それに関 して改正を加えなくてはいけないということになる可能性があると予想されます。さらに 本委員会は1、2ヶ月に1度開催ということから考えますと、すべての改正が終了するのは 時間がかかるように感じております。  これは質問なのですが、どこかの時点でこの委員会の中で合意が得られる部分について は、科学技術部会に上げさせていただいき、全部改正というところまでいかなくても、大 事なところ、委員の先生方にご議論いただいて重要だと、そしてなおかついま直近で必要 な部分については、部分的な改正として、施行することが可能でございましょうか。その 辺について、委員長にお考えをお聞きしたいと思っております。 ○永井委員長 これはおそらく状況によって変わっていくことでしょうし、絶対的な何か 真理があるわけでもないのだと思います。一応、議論はするにしても、ある部分について まとめられなければ、そこは置いておくということもあるのではないかと思います。中畑 委員長のときに、ESについてそういう形をとられたのではないかと思いますが。 ○中畑委員 死亡胎児です。 ○永井委員長 死亡胎児の問題ですね。対応はかなりフレキシブルにすべきだと思います が。 ○梅澤委員 それは時期としては大体いつごろでございますでしょうか。 ○永井委員長 事務局として取りまとめの時期、中間でも結構だと思うのですが、いつご ろと考えておられるでしょうか。 ○千村課長 これはまた外部のさまざまな環境ですとか、いろいろな条件、研究の進展等々 もありますので、実を言うと、なかなかどの辺のタイミングまでにどこまでというのも申 し上げづらいところはあるのです。とりあえず、まず今年度いっぱいぐらいのところでど んな整理ができるのかというところは、1つの目処として持っていただくというのは、可 能性としてはあり得るかなと。またこれからご議論いただく中で、少し集中的に議論を進 めるという必要が出てくれば、そこはタイムスケジュールは若干延びる可能性もあります。 その辺は、まずは年度内ということは視野として持っていただくとしても、逆に言うと、 少しフレキシブルにお考えをいただく必要もあるかもしれないとは思っております。また、 具体的に節目節目で先生方ともご相談をしたいと思っております。 ○永井委員長 ということでよろしいでしょうか。 ○梅澤委員 大体そのようなことでもよろしいでしょうか。 ○永井委員 そうだと思います。これはかなり研究の進捗状況にもよるのだと思いますね。 例えばiPSがかなり実現可能になってきたときに、とりあえずどうするかということは決 めないといけないだろうと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。まだ議論が あろうかと思いますが、とりあえず今日はこの辺りまでにして、資料4で既に事務局にま とめていただいた論点に加えて、今日のご議論を踏まえて、さらにこれからの議事の進め 方について、事務局と一緒に次回までに叩き台をお示ししたいと思います。また、必要に 応じて専門家をお呼びする、お話を伺うということも考えたいと思います。もし先生方か ら何かご意見がありましたら、是非お寄せいただきたいと思います。事務局から、今後の 進め方についてお願いいたします。 ○事務局 本日はお忙しい中、また遠方よりご参加いただきまして、ありがとうございま した。次回の日程については、また委員の先生方の日程調整をさせていただいた上で決定 いたしますので、その際にはご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。事務的な話に なりますが、お手元に科学技術部会からの指名書というのがあります。また、委員の先生 方によっては、新しく厚生科学審議会の専門委員にご就任、あるいは再任された方には人 事の発令書があります。その債主登録表がありますので、もし今日ご記入いただけるよう でしたら、そのままお手元においていただいても結構ですし、お持ち帰りいただいて後日、 郵送またはファックス等でお送りいただいても結構ですので、よろしくお願いいたします。 連絡させていただきたい点は以上です。 ○永井委員長 高坂委員どうぞ ○高坂委員 最後に武藤委員のご質問で情報提供だけなのですが、ロードマップの件です。 ちょうど基礎研究の再生医療実現化プロジェクトと、西川先生がやっているクレストとか、 さきがけでこれからiPSあるいはES細胞等を使った研究のロードマップを作るという話 があります。そういう会がありまして、たぶん近々そういったものができてきますので、 基礎研究としてのロードマップというのは、ここでまたお示しできるのだろうと思います。 情報提供だけです。 ○永井委員長 それでは、本日の第1回の専門委員会を終わらせていただきます。どうも ありがとうございました。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 梅垣・田邊(内:2545・2586)