09/04/23 平成21年4月23日医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録          医道審議会 医師分科会 医師臨床研修部会 日時 平成21年4月23日(木) 16:00〜 場所 厚生労働省省議室(9階) ○臨床研修専門官(石川補佐) 定刻になりましたので、「医道審議会医師分科会医師臨床 研修部会」を開催します。本日は、先生方にはご多忙のところご出席いただきまして、誠に ありがとうございます。3月をもって斎藤部会長がご退任となりましたので、部会長選出ま での議事進行役を事務局で務めさせていただきます。よろしくお願いします。  まず、今回より新たに小川秀興先生が委員に加わりましたので、ご紹介させていただきま す。小川先生から、一言ご挨拶をお願いします。 ○小川(秀)委員 順天堂大学の小川秀興でございます。よろしくお願いします。 ○臨床研修専門官 ありがとうございました。なお、吉岡委員は本日ご欠席のご連絡をいた だいております。  続きまして、部会長の選出をさせていただきます。部会長の選出の方法は、医道審議会令 により、委員の互選により選任することとなっておりますので、お諮りします。どなたかご 推薦いただきますよう、よろしくお願いします。 ○山口委員 長くこの部会の委員を務められていますし、今回問題になっている大学病院の ことにも深くかかわられておりますし、ご専門の救急外科も今回の研修制度の問題になって おりますので、相川委員にお務めいただくのがよろしいかと思います。いかがでしょうか。 ○臨床研修専門官 ただいま山口委員から、相川委員に部会長をお願いしたらどうかという ご発言がありましたが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○臨床研修専門官 ご異議がないということですので、相川委員に本部会の部会長をお願い します。以降の議事運営については、部会長にお願いします。よろしくお願いします。 ○相川部会長 ただいま部会長という大役を仰せ付かりましたが、委員の皆様のご協力をい ただきまして、円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいた します。まず資料の確認を事務局よりお願いします。 ○臨床研修専門官 資料の確認をします。ここでカメラのご退室をお願いします。  机の上に2つの資料があります。上のほうにありますのが、医道審議会医師分科会医師臨 床研修部会の議事次第で、これが一通りの資料となっています。もう1つのホチキス留めの 資料として、参考資料「主な団体からのパブリックコメント」となっています。落丁等がご ざいましたらお申し付けください。 ○相川部会長 議事に入ります。前回は臨床研修制度の見直しについて事務局から説明して いただき、それに対する委員の皆様のご意見をいただきました。その後、臨床研修に関する 省令等の一部改正(案)について、パブリックコメントを行ったところです。まず事務局か ら、パブリックコメントの結果と、それを踏まえた今後の方針(案)について説明を受け、 その後、皆様からご意見をお願いしたいと思います。それではお願いします。 ○医師臨床研修推進室長(田原) 「議事次第」と書いてある資料です。資料1「パブリッ クコメント手続きによる意見について」をご覧ください。前回までの本部会の議論を踏まえ、 臨床研修に関する省令の一部を改正する省令等の改正(案)について、パブリックコメント の手続きを実施しました。募集期間である3月19日から4月17日までに寄せられた意見 は、1,241件になります。寄せられた意見のうち、主なものについては「別添1」として整 理しています。意見の概要、件数、意見に対する考え方及び対応方針についてまとめたもの です。  特に主な団体からのパブリックコメントについては、その原文を参考資料として添付して いて、参考資料「主な団体からのパブリックコメント」というものにありますので、こちら は適宜ご参照ください。  また、寄せられたご意見を踏まえ、パブリックコメントの内容について修正をしています が、その修正(案)を別添2に用意しています。修正の部分は赤字で示しています。これを 一括してご説明します。  まず別添1です。「臨床研修制度の見直しに関するパブリックコメントの概要(主な意見 等)」です。まず、制度の全般について、いくつか意見がございました。「制度の理念」の項 目では、臨床研修の目的は優れた臨床能力をもつ医師を育成することであり、医師不足を解 消することではないなどのご意見がありました。それに対する考え方としては、今回の見直 しはより良い医師の育成のために本制度の基本理念、医師が医師としての人格をかん養し、 プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身に付けるという基本理念、及びそれを具体化した 到達目標を前提としているという考えを示しています。  「病院・研修医の評価」の項目では、研修病院と研修施設における研修の内容と質を客観 的に評価する仕組みを構築すること等の意見がありました。これについては、今後、指導体 制、研修内容等について、受入れ病院を第三者的に評価し、その結果をフィードバックする 体制を構築する。また、到達目標について研修医の達成度を客観的に評価する仕組みを構築 するとしています。  続いて研修プログラムについてです。そのうちの「研修期間」については、2年間の研修 期間に変更がなかったことは評価できる。一方で、現行2年間の研修期間を1年間に短縮し ていただきたいというご意見がありました。「必修科目」についてです。外科等については、 選択必修でなく必修科目にすべきというご意見がありました。こういったご意見に対しては、 研修医の将来のキャリア等に円滑につながるよう、2年間の期間で、国の定める必修の診療 科は、内科、救急及び地域医療にとどめ、従来必修とされた外科等については、選択必修と 位置づけ、各研修医が選択できるように弾力化をしたというところです。  「地域医療研修」に関しては、へき地や離島を優先して行うと明記すべきというご意見が ありました。これについては、各病院が地域の実情に応じて選定されるよう配慮することと しています。  「医師不足の診療科への対応」については、小児科、産科の研修プログラムを設けさせる のであれば、募集定員は各病院の募集定員枠外に設けるべきというご意見がありました。こ れに対しては、研修医の募集定員が一定数以上の大規模な臨床研修病院に、このような研修 プログラムを限定するということから、各病院の募集定員の枠内での設定と考えております。  「到達目標」については、必修科目が減ったにもかかわらず、目標などが変わらないとい うのは無理があるというご意見がありました。これについては、今回の見直しに当たっては、 現在の到達目標を前提にしていますが、今後の卒前教育や臨床研修の改善状況等に対応しつ つ、適切に見直すシステムを構築する予定であるといった考え方を示しています。  2頁です。臨床研修病院の指定基準についてです。意見の概要としては、2つ目のポツに あるように、大学病院などの地域の中核病院を中心とした臨床研修病院群の形成を推進する ように、基本的な考え方を改めるべきである。臨床研修病院の指定基準を強化したことに伴 って、中小病院での研修を希望する医師の道を閉ざし医療崩壊につながる。大病院よりも、 中小病院での研修のほうが適している。離島やへき地における現状等を考慮して、指定基準 を満たさない病院でも指定の取消はすべきでない。これらのご意見がありました。  それに対する考え方ですが、研修医の受入れ病院の数が飛躍的に増加した一方、受入れ病 院の指導体制に格差が生じたために、臨床研修の質の向上が求められる。これを踏まえて、 臨床研修病院の基準を強化することとしました。現行の単独型臨床研修病院と管理型臨床研 修病院を合わせて、基幹型臨床研修病院として位置づけて、臨床研修病院群を形成すること を要件に加えています。これにより、大学病院などの地域の中核病院を中心とした、複数の 医療機関により構成される臨床研修病院群の形成を促進するとしています。また、新しい基 準によりまして、基幹型臨床研修病院の基準に適合しなくなる場合には、一定期間の経過措 置を設け、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮したきめ細かな対応に配慮することとし ています。  続いて、募集定員についてです。そのうちの「都道府県別の上限設定」の部分についてで す。これに対して、研修医の研修先の選択権を奪う、地域を越えて優秀な人材の交流が阻害 され、質の高い医療の低下につながる可能性があるというご意見がありました。激変緩和措 置については、非マッチ率、国家試験の合格率を勘案すべき。大都市に研修医が集中するの を防ぐのに一定の効果がある。地域医療や救急医療体制に深刻な影響を及ぼす可能性がある。 このようなご意見がありました。  「各病院の募集定員設定」については、募集定員の設定は、平成16年度前後の状況や地 方の医師不足の状況等を加味して算定してほしい。研修医の受入実績を過去3年ではなく、 「5年」あるいは「過去最高の受入実績」とすべき。平成22年度の実績をみて、再度制度 設計を考えるべき。このようなご意見がありました。  これに対して、都道府県別の上限設定と、各病院の募集定員の設定に関しての考え方です。 研修希望者については、現行と同様に各病院が公表する研修プログラムについて、全国規模 で自由に選択することができるようになっています。各病院の募集定員の合計が都道府県の 募集定員の上限を超えないような場合については、その病院の研修医の受入実績や地域の実 情等、一定の条件の下に募集定員の増員が認められる。都道府県内の病院の募集定員の合計 が都道府県の上限を超えるような場合については、前年度の研修希望者数を考慮する。これ は研修医マッチングによるマッチした方の数を考慮するといったことをして、十分な激変緩 和措置を行うと考えています。  「医師派遣加算」の部分については、臨床研修病院で研修した者が、大学医局に戻るよう な異動についても、臨床研修病院の医師派遣実績としての加算の対象とすべき。医師確保困 難地域への医師派遣の場合に、派遣人数に1以上の調整係数を加え、定員加算することとな るよう制度的に保証すべきではないか。このようなご意見がありました。  これに対しては、「医師派遣等」の定義については、地域医療を直接支えるという観点か ら、専門医など十分な臨床経験を有する医師が、一定の期間常勤として勤務する場合を評価 することとしています。また、募集定員の加算は10名を上限としていますので、できるだ け簡素な定義としています。今回の見直しの結果、地域医療の確保にどのような効果、影響 があったか継続的に検証して、5年以内に改めて制度の見直しについて検討することとして います。主なご意見と、それに対する考えを整理したものです。  これをパブリックコメントを行ったときの案に反映させたものが、別添2です。2頁のい ろいろと例示をしているところについては、例示ではなくて、例えば「医師不足の診療科へ の対応」というところについて言えば、研修医の募集定員が一定数以上というのを、「20人 以上」と明確にしています。  2番目については、「基幹型」臨床研修病院の指定基準について見直しをするということ を明確にしています。名称もこのように変更するという考えです。また、臨床研修病院群の 形成を推進する部分については、「大学病院など」地域の中核病院を中心とした臨床研修病 院群の形成を推進すると改めています。  3頁の3「研修医の募集定員について」です。(1)の(1)で、研修医の受入実績については「過 去3年間の研修医の受入実績の最大の数値」としています。また、(3)の経過措置については、 「特に平成22年度から研修を受ける研修医の募集にあたっては21年度から研修を受ける 研修希望者の数(20年度研修医マッチングによるマッチング者数)を考慮する」としてい まして、これは、(1)(2)で計算した数、それから平成20年度の研修医マッチングによるマッ チングの数の最大値を超えないという取扱いになります。  4頁です。(2)の募集定員の加算に関しての医師派遣等の定義です。(2)の対象となる医師 についての臨床経験の例示を取っています。「7年以上15年以下」としています。また、(3) の上のところですが、募集定員に加算する数値については「一定の上限(10名)を設ける こと」としています。5頁で、調整係数について例示を設けていますが、これを確定させる という案です。  以下、参考資料としてパブリックコメントとしてお示ししていましたが、「研修プログラ ム弾力化により考えられる研修プログラムの例」など、図表がありますが、いま申し上げた ようなことを含めて修正をしています。以上、パブリックコメントのご意見の概要と、それ に対する考え方の修正(案)についてご説明しました。 ○相川部会長 ご意見、ご質問をいただきます。 ○山下委員 私個人としても意見は出させていただいたのですが、未だに納得できないのは、 都道府県上限枠という部分です。これは本当に説明責任を果たしているのでしょうか。ご説 明を聞いても、なぜこのような数字になっているのかがわからないのです。もう1回説明し てください。  もう1つは、いまの時点でここに資料としてありますが、後ろから2番目に「試算」とい うのがあります。これを見ていただくとわかるように、非常に大きな変化があるわけで、こ のように大きな変化、特に大きく減っているところに関しては一生懸命やっておられる病院 も入っているわけで、それに対して、どういう理由で切ったのかというのは結局数字だけの 問題で、要因とか教育の質ではないわけです。質の検証をこれからどこでやろうということ でしょうか。私の意見としては、現時点ではこれは時期尚早であって、議論が尽くされたと は到底思えないので、現時点では今回の改正から外すべきだと思います。 ○医師臨床研修推進室長 なぜこのような数字になっているか分からないということです ので、この点についてご説明します。まず、都道府県別の上限を設けるに至った理由として は、研修医の都市への集中の傾向が依然として変わらない、というご指摘があったためです。 そのため、都道府県別の上限を設けるという考え方が、「臨床研修制度のあり方等に関する 検討会」でも出され、この研修部会でもご議論いただいて、設定すべきであるということが ありました。それを踏まえて、もし設定するということであれば、大きくは人口と医学部の 入学定員を軸に、募集定員、研修医の上限を設定してはどうかと考えたわけです。  いま山下委員のご指摘にありましたように、資料2の後ろから2枚目に、「研修医の募集 定員に関する都道府県別の上限についての試算」というのがありますが、ここの(3)は総人口、 (4)は21年度医学部の入学定員数ですが、それについて平成20年度の研修医の数7,735人 を、その割合で均等に配分したものが(5)(6)です。(5)は患者側、ニーズ側の要件、(6)は医療提 供、サプライ側の視点です。医師をこれだけ養成しているということであれば、これだけの 医師がその地域に定着してほしいという期待があるという観点から、その数字を設けたわけ です。  その両方のうち、いずれの視点も重要ですので、多いほうを採用し、面積当たりの医師数 が少ない所、また離島、人口が多い所に、それぞれの加算を設けて、都道府県の上限を設定 をしたというのが(12)です。この都道府県の上限が、(12)が採用実積よりも著しく減るような場 合については、その削減率を10%にとどめることで、(16)の上限を試算したというもので、 我々としてはある程度合理的な設定ではないかと思っています。  先ほどのご意見の中で、「この試算では大きく減る所がある」というご意見がありました が、このような視点で見たときに、都会と考えられている所では、実際の研修医の実数より も多い数字が実績として挙がっていることから、減らさざるを得ないということが、この試 算の結果に表れています。  また、教育の質についてのご意見がありましたが、我々としては、臨床研修指定病院の基 準を満たしているところについては、一定の質が確保されていると思っていまして、それ以 上のところについては、それぞれの研修医に合っているかどうかという観点で選択されてい るのだと思っています。 ○山下委員 そういう議論をする場合には、まずデータがあってディスカッションがあるべ きではないでしょうか。東京や大阪で集中しているということであれば、その情報があって、 しかもそれはどのような推移をしているというデータを出して、研修制度のあとにどのよう な影響があって、だからこうするというような、それがサイエンスだと思います。それが全 然出ていなくて、これがポンと出てくると評価のしようがないです。  それからもう1つは、いま田原先生のおっしゃった、研修の質は担保されているからとい うことに関してのデータもありませんよね。これでいいというのがあって、その上でまた考 えるというのだったら論理は成り立ちますが、現在の管理型の病院なり何なりが、本当にい いのかどうかという質の検証はやったのですか。やっていないですよね。だから、それでい いという保証はどこにもないわけですよね。これは国民の医療に直結する問題ですので、私 とすれば、その検証をした上で、プランニングが必ず出てくるべきです。全国医学部長病院 長会議では、いまの管理型の病院の質では不十分であるということを言っているわけです。 それに対する反応がどこにもないわけです。  これは、どういう医師をどのように教育していくか、それによって国民がどれだけ良い医 療を享受できるかというディスカッションにつながっていかないと思います。いかがでしょ うか。 ○相川部会長 事務局、委員の方々いかがですか。この点については、前の委員会でも検討 してきたところですが、山下委員からそのような意見が出ました。 ○医師臨床研修推進室長 データにつきましては、これまでもお示ししていますように、都 道府県別で見たら、臨床研修制度が始まる前に比べて、現在の研修医の数がどうなったのか という数はお示ししています。これによりますと、東京都では360人以上減っていると思 います。京都や大阪についても、100名ぐらいの規模で減っていたことは事実だと思います。  ただ、一方で客観的な指標です。推移がどうだということは別に、現在の人口や入学定員 の規模から見たときに、いまいる研修医の数が多いのかどうかということを、今回比較した ということですので、必要なデータはお示ししていると考えています。 ○河野委員 いまの山下委員のご指摘は非常に重要だと思います。しかし、そのほかにも評 価システム等の課題が結構あるわけです。今回こういったフレキシビリティというものの導 入と、前提としての地域に対する問題の点を考えると、継続審議にしていただかないといけ ません。それは私は前提だと思います。これはすぐに結論の出る話ではないと思うのです。 それですから、いま山下委員のおっしゃられた点については、是非とも継続ということを前 提としていただきたいと思います。  今回は、いままでの経緯を考えると、これは1つのステップかなと理解しているのです。 学生の現在のマッチングの時期ということもありますが、そういった意味で、今回がスター トというのもあり得るかとは思うのですが、かなり課題がありますから、その辺の今後の対 応です。先ほどのパブリックコメントについてのご意見でも、そういったことに触れていま したが、その評価システム。それから今後実際に動くと新しい課題が出てくると思います。 それに対する体制が明確に出されませんと、以前も体制が変わったときに、あとでいろいろ と動いていましたから、新体制になった段階で皆さんが不安になるのは当然だろうと思いま す。 ○相川部会長 そのほかのご意見でも結構ですが、いかがでしょうか。 ○冨永委員 都道府県枠あるいは病院別の上限枠に関しては、いままで臨床研修検討部会あ るいは厚生労働省、文部科学省の検討会等でも、1万1,563に関しては、130%で非常に多 いということで、少し絞ることに関しては合意ができていたと思っています。したがって、 いかにして、何パーセントくらい減少させるのかに関して、厚生労働省からこのような案が 出て、私自身は妥当かなと思っています。  それは都会に集中して、大都会でない所は研修医が行かないということで、何とか地域で の研修もすべきだということで、このような枠を作られたということです。福井先生に新医 師臨床研修制度についての検証をしていただいていますが、旧制度に比べて到達度も高いと いうことで、私は今回の臨床研修制度に関しては評価をしています。  したがって、各病院の臨床研修の質がどうかと言われると、千差万別という言い方もでき ると思いますが、指定基準、到達目標、理念を踏まえて、到達目標に従って研修をして、そ れなりの評価を得て、福井先生の検証もありますし、臨床研修を修了した若手の医師の自己 評価等もあります。指導医養成講習会を終了した人が指導しているわけですから、それは「あ の病院は臨床研修病院なのにとんでもない」というところはないと思います。そのようなと ころは、学生が応募しないと思っています。 ○相川部会長 ほかにございますか。いままでいくつかのご意見が出ましたが、主に3つの テーマがあるかと思います。研修のプログラムについて、臨床研修病院の指定基準について、 研修医の募集定員についてとありました。この主なテーマごとに、意見の概要に対する対応 の方針のところでご意見をいただいて、整理していくように議事を進めてもよろしいでしょ うか。 (異議なし) ○相川部会長 すでに意見の出たところもありますが、まずは指定基準の基本的な考え方に ついてです。プログラムについて、このような対応でよろしいでしょうか。 ○山口委員 先ほど山下委員からも話がありましたが、基本的な考え方として、研修の質を 向上させるために基幹型の臨床研修病院の基準を強化して、研修病院の枠をもう少しきっち りと狭めるという話になっています。これまでの評価の上では、福井先生のスタディーなど を拝見すると、病院の大きさなどには関係なく、良い質の研修はできているということであ れば、それをどうしてもここに絞り込んでやるというところで、ちょっと合わないのではな いか。  もう1つは、研修の質がどうかということは、今度新しいプログラムをどう評価するかと いうところでも非常に大きな話なので、その質の評価がきちんとされて、その上で、それが 不十分だから新しい基準で絞り込むという話は納得感があると思うのですが、そうでないと 中小の病院で頑張っているところは、いままで頑張ってきたことが評価されていないという ことになると思います。  今度は、特に研修期間が必須のところが短縮されることをどう評価するかは、5年後とい う話では遅いので、かなり早い段階で。来年度になると、従来の型のプログラムと、新しい プログラムに対する評価が出ると思いますから、その成果を評価する必要があると思います。 そうすると出発点がどうだったかをはっきりしておかないと、新しいプログラムがよかった のかどうかも難しくなるのではないか、そのことを懸念します。その点で、先ほどの基本的 な考え方にわざわざこう書いてありますので、このことで頑張っている比較的小さな病院に も、納得のいく説明になっているかどうかは問題があると思います。 ○相川部会長 というご意見でしたが、いかがでしょうか。主に研修のプログラムについて。 ○山下委員 山口委員のおっしゃっていることが根本だと思います。研修制度に関していう と、内容を問うというスタンスで押していかないと、医師の配置とか何とかというのとは全 く別の話です。  河野委員がおっしゃっていましたが、いま検証の仕方が決まっていないのです。「教えた ことがわかっていますか」というのが福井先生の調査です。私はあれでは不十分だと思いま す。教えたことがわかっていますというのは当たり前のことであって、その次のステップと して、それがきちんとした医師になっていますかというのが検証であって、それも出ていな いのです。後期研修または専門医研修をしている先生方に、「あのときに勉強していたら、 どのような知識がほしかったですか」というのを聞くとか。制度が始まってから、終わった 人は4年目ぐらいになっていますから、そのような調査をして、いますぐにでも検証できる はずですから、そのような調査をすぐにでもやってほしいです。  その上で、どのような研修内容が必要であるか。本当に内科、救急でいいのですかと。要 するに、プライマリ・ケアなり、そこに来ている患者、急性期の病気で放っておくと死んで しまう患者を、いかにきちんと診断して対応するかというのが眼目ですから、このプログラ ムでそういうことはいいのですかということを検証しないと。プログラムの達成度を理解し ていますかというのは、1つの項目ではあるかと思いますけれども、そういうものがないと まずいです。  要するに高度な病気というのではなくて、難しい病気と、そう重くない病気と、全部を診 なければ鑑別診断はできませんから、それが全部できるようなネットワークを作りましょう というのが、今回のコンセプトなわけです。このコンセプトは私は非常にいいと思うのです が、それができているからいい、できていないから別の方法を考えなさいというような説得 ができるようなデータを作っていただきたい。すぐにそういう検証の方法を考えて、きちん と検証できるようなシステムを早急に立ち上げて、プログラムの内容に関してイノベートし ていくような方法論を一緒にやっていかないと、「これでいいですか」ということを聞かれ ても、「不十分です」としか答えようがないのです。そのような検証のシステムを早急に立 ち上げていただきたいと思います。 ○矢崎委員 いままでの臨床研修制度は、プログラムを提示して、そこに応募する形になっ ていたのです。今回の研修プログラムの弾力化というのは、施設のファクターがある程度視 野にあった研修のプログラムで、選択になっているのです。それですから、大学病院はある 程度の方向性が決まっているのですが、その辺りを研修病院がどのような対応をするかとい うのが今後大きな課題になるのです。これは従来のプログラムで募集をかけても、それは自 由だという保障で、だから、研修病院は従来のとおりにやってもいいということを、しっか りメッセージとして伝えないと現場が混乱すると思います。  一般の臨床研修病院も弾力化したプログラムで作らなくてはいけないのか、どうしたらい いかという具体的なことを自分の病院でブレイクダウンするのは、もう期限が迫っています ので、それは従来どおりの募集で構わないと。どちらを選択しても施設の裁量に任されてい るわけですから、検証をしていかないと、こう決まったからこういきますということは大き な変革になりますので、難しいと思います。  そうしますと、プログラムと到達目標というのは、切っても切れない関係がありますので、 研修プログラムについてと、到達目標について、変更するしないは別にして、検証する。河 野委員が先ほど言われましたが、検証しながら良い制度をみんなで設計することが基本では ないかと思います。検証は重要なので、是非よろしくお願いします。 ○相川部会長 多くの委員から検証の重要性、検証に裏打ちされたプログラムのディベロッ プメントについてお話がありました。この件についてでも、ほかの件についてでも結構です が、プログラムについて、研修期間、必修の科目、地域医療研修について、医師不足の診療 科への対応、到達目標等、いかがでしょうか。パブリックコメントも数の上では、必修の科 目に関するご意見が81件と多くありました。 ○山口委員 この項目に書かれているので触れさせていただきますが、定員の数の話です。 医師不足の診療科への対応として、20名以上の臨床研修病院では、小児科及び産婦人科に なる研修プログラムを設けて、それも数に入れるとなっています。そうすると、20名です と大きな病院では1割に相当します。そのほかに、さらに全体の流れの中で、場合によって は1割減らされることになると、もともと小児科、産科のプログラムを持っていなかったと すると、場合によっては2割の減少になる可能性があると思うのですが、ここはどうなので しょうか。どうしても小児科、産科のプログラムを設けろということであれば、それは定員 外という勘定は難しいのでしょうか。そうしていただいたほうがいいのではないかと思いま す。 ○相川部会長 2頁の(4)のところで、例えば20名で募集定員2名という例について、2割 になってしまうというご意見ですが、いかがですか。 ○医師臨床研修推進室長 確かに、可能性としてそのようなことは起こり得るわけです。し たがいまして、そのような部分も含めて、激変緩和措置として、研修希望者、前年度のマッ チングの数を考慮した形、それを募集定員として設定することも差し支えない形にしたいと 思っています。  ただ、小児科、産科のプログラムについて、募集定員の枠の中で設けていただきたいとい うことについては、全体の募集定員の数を管理する上では、別枠にすると非常に管理が難し いと考えていますので、個別の病院の募集定員の枠の中で見ていただければと思っています。 ○山口委員 枠ですから、実際にそこに応募があるかないかとは別の話ですので、例えば東 京都が多いとして、それは枠の中にフルにマッチしても、なおかつ少なくするという形にな るところへ、これを別枠としても、この小児科と産婦人科の枠にフルに枠が埋まるかという と、おそらくそんなことはないと思うのです。そこから言うと、全体への影響はそう大きい ということではないのではないかと思います。 ○医師臨床研修推進室長 実際に小児科や産科のプログラムを設けているところが現在で もあります。臨床研修病院でも埋まっているところはありますし、今回の特別コースで大学 病院で設けましたが、ここでも埋まっているところと埋まっていないところが、それぞれ病 院の事情によってあるわけです。  ただ、募集定員の設定については、全体の枠の中でやっていただかないと、それだけ別枠 にするという取扱いにすると、例えば募集定員が20名以上の病院というのは100以上あり まして、そういったところが産科、小児科の定員を設けると、それだけで400以上になる のです。それをまた別枠として設けることは、全体の募集定員を管理する上ではどうなのか なということで、枠の中に入れた取扱いにしようというものです。 ○相川部会長 そういうご説明ですがよろしいですか。枠の外にしますと定員が膨らんでし まうと。 ○山口委員 大きなところには義務づけるわけですよね。選択することができるという話な ら、いまのようなご説明でも病院の判断でということでしょうけれども、この表記は「必ず 設ける」となっていますので。義務づけるということは、この枠の例えば20人の1割はこ れに割けということを言っているわけですから、従来の定員は、それだけでも1割減らせと いう話になると思うので、大きな病院にとっては大きい問題かなと思います。 ○相川部会長 ということですね。また一方では、小児科医、産科医になるプログラムを設 けてほしいという意見もあって、このようになってきているわけですが、いかがでしょうか。 パブリックコメントの前に(4)について、ある程度この委員会としてのご了解を得て、パブ リックコメントのときに「例えば」というのを切って、この方向でいくということですが、 今回新たにそのようなご意見を山口委員からいただきました。 ○小川(秀)委員 山口委員のご意見にはかなりの理はあります。例えば小児科、産婦人科、 救急というのは、国民社会の要請として、何とかこれを減らさないで、できれば増やしてほ しいということです。それにチャレンジする、エンカレッジするという意味では、総枠の中 で必ず「ねばならない」、10%を設定しなければならないとするより、総枠は早晩このシス テムでいきますと3年ぐらい経つとどんどん減っていくので、チャレンジするところを少な くする可能性があると思います。  これはこれからみんなで考えなければいけないことですが、チャレンジしてもらうところ は別枠定員とする。ただし総枠の1割までを別枠とするとか、そのようにしても大きな数字 のおかしさは出てこない。日本の医療制度上どうしても足りない救急、小児科、産婦人科を 何とかしてほしいというときには、これは社会・国民の要請ですので、できればチャレンジ してほしいです。  それから、どこの病院にしても、ある程度の数を集めているところは、小児科、産婦人科、 救急の人たちを効率よく教育できるという観点もあると思います。そうしたら、あまり無理 して、「ねばならない」とするよりは、余裕のあるところは、できれば総枠の1割位は是非 チャレンジしてほしい。そして、それがたとえゼロであっても、次年度の総枠数からその分 は減らさないという方法の設定はあると思います。そうでないとどんどん減っていくような 気がしますが、どうでしょうか。 ○相川部会長 確認ですが、いまの2頁の(4)に関しては、「小児科医あるいは産科医になる ことを希望する研修医を対象としたプログラム」となっていて、救急の場合には必修プログ ラムが3カ月あるのですが、そちらは必ずしも救急医になることを希望したプログラムでは ないということです。いま先生は、小児科、産科、救急と3つおっしゃいましたが。 ○小川(秀)委員 足りない科という例えばの話です。現時点では救急は一応、救ったスケ ジュールにしてあります。 ○相川部会長 そうですね。 ○小川(秀)委員 従って、いまのディスカッションのポイントは、小児科と産婦人科です ね。でも、将来的に麻酔科とか、放射線科とか、臨床検査、病理とか、外科そういうものが 足りなくなってきたときに、総枠の中で1割を設定しなければいけないとして、どんどんじ り貧になるよりは、むしろ別枠(特別増枠)としてチャレンジしてほしいということで考え たほうがいいのではないかということです。 ○冨永委員 ここに来ていらっしゃる大病院の委員の先生方に、現状がどういうことかを伺 いたいと思います。もうすでに平成16年から始まって、3年経っていますので、20人以上 を募集している臨床研修病院において、現状は小児科、産婦人科に進む人はどのくらいの割 合いるのでしょうか。1割いらっしゃるというのであれば、それはそれで最初からそのよう なコースを設けていれば、集中的に研修できることがありますので、メリットかなと思いま す。20人の中に1割はいるということであれば、私はこの枠でもいいのではないかと思い ます。現状はどうなのでしょうか。 ○相川部会長 現状について、20人以上採っている委員の方、あるいは事務局には何か情 報はございますか。もう1つ、産婦人科ではなくて産科でよろしいですか。小児科と産科に ついて、現状でどうなっているかということですね。定員の多い施設で研修を受けた場合に、 後期研修医として、小児科及び産科を選択した医師がどの程度あるかということですね。す ぐに資料が出るかわかりませんが、議論の間に調べられそうですか。 ○医師臨床研修推進室長 例えば特別コースで、どの程度小児科あるいは産科のコースを選 んだかということはわかりますが、臨床研修病院全体でどのような傾向があるのかについて は、直ちには把握は難しいです。 ○相川部会長 それでは小川委員どうぞ。 ○小川(彰)委員 いまの議論とも関係するのですが、全国医学部長病院長会議で、毎年3 年目の既学者の動向調査をやっております。小児科、産科医は漸増ではありますが増えてい ます。ただ、一方では、小児科医、産科医につきましては、マスコミの大きなキャンペーン がありまして、うちの大学でも、今年小児科医、産科医になる人たちは結構多いです。  その中で、全国医学部長病院長会議で毎年調べている中で、非常に問題なのは、内科医、 外科医の不足のほうが深刻で、地方では内科医が不足していることによって、病院そのもの が成り立っていかないような病院が出てきつつあることからすると、先ほどあまりリギッド に小児科医、産科医ということだけではなくて、医師不足の診療科への対応ですので、そう いうものが小児科、産科医だけではなくて内科、外科等々についてもそうだということをご 認識いただいて、あまりリギッドに決めないほうがいいのではないかと考えます。 ○医師臨床研修推進室長 不足する診療科のことにつきましては、もちろん内科もそうです し、外科、あるいは麻酔科も不足をしていると言われていることは十分認識しておりますが、 それについては今回の研修プログラムの基準の弾力化によって、2年目からそういったコー スを作ることができるということで、ある程度対応ができるのではないかと思います。その 中でも、さらにより少ないと言われている産科、小児科の部分については、希望者は多いの だけれど、途中でやめてしまう方が多いということも指摘をされておりましたので、小児科 や産科を目指している方々については、しっかり明示的にそういうプログラムを用意して育 成をしていこうということで、募集定員の多い病院についてはそういう定員を設けていただ くということで、これまでご議論をいただいております。 ○小川(秀)委員 たしか事務局のほうにデータがあると思うのですが、先年度、大学病院 では若干のカリキュラムを固定型にしないで、自由選択の部分を設けてくださいと。むしろ 足りないところを増やすような仕組みのカリキュラムを組んでいただいて結構ですと言わ れて、皆喜んだ訳です。ところが、それが全国的に全部普及しないで中途半端に終わったと 思うのです。そのときに、私の心覚えでは、何とか小児科、産婦人科等々を、あるいは麻酔 科、外科を増やそうという仕組みでチャレンジされて、提示したところのマッチング率が結 構悪かったのではないかと思うのですが、どうでしょうか。私のディスカッションはそこに コネクトすると思うのです。 ○医師臨床研修推進室長 昨年の8月に大学病院の研修プログラムの弾力化をしまして、い わゆる特別コースを作っていただきました。それについては、全体で募集定員が398名で、 それに対して212名の方がマッチをされております。そのうち小児科については、募集定 員が69に対して37、また産婦人科については、周産期を含めると78の募集に対して38 名のマッチということになっております。 ○小川(秀)委員 大体50%プラスというところで少ないですね。これを問題にしている のです。 ○医師臨床研修推進室長 そのぐらいです。 ○小川(秀)委員 いまの話は、一生懸命そういう仕組みを枠の多い大学病院で考えてくだ さいということが厚労省から出まして、そういう情報を回したのですが間に合わなくて、あ るいくつかの有力病院は応じていただいて、頑張ってそういうコースを作ったのです。結果 は、いまデータに示されるように、産科、小児科は少なかったのです。だんだんじり貧に、 チャレンジするところはなくなっていくという困ったことが起こります。一生懸命チャレン ジするところは、山口委員がおっしゃるように1割はそれを余裕な枠として欲しいというこ とです。もしそうしないと頑張った病院ほど減っていきます。昨年の如くそれが50%しか マッチしないということだと、ジリジリ後退していくと思います。そこをウォーリングする わけです。  ただ、もう1つの考えは、そのようなディスカッションとトライングが1つのノックスと なって研修プログラムを弾力化しようと。矢崎委員がおっしゃるように、現在と同様の研修 プログラムを決して変えなくてもいいのだということをよくよく広報しながら、いくつかの 地域、置かれた病院のティーチングスタッフの陣容とか、そういうことを考えてここのバリ エーションの2とか3とか4があると。それで選んでくださいということなのですが、清く 正しく選んでいくと、どんどん減っていくような雰囲気になるかなということを、ディスカ ッシングポイントとして残しておきたいと思うのです。 ○相川部会長 というご意見ですね。確かに、そのようなことも危惧されるということです。 矢崎委員、いかがですか。 ○矢崎委員 先ほど、この制度設計変更に説得力を持たせるエビデンスがないというお話が ありました。初期臨床研修が2年間終わったあと、その人たちがどういうキャリアパスを踏 んで専門医になる、あるいはジェネラリストになっているかというデータがつかみにくい。 大学は帰学した人たちの調査はできるのです。だから、大学に帰った人たちのデータはある のですが、そうでない人のデータはほとんどないのです。そこがこの制度の極めて大きな欠 陥ではないかと。  先ほどの指定基準のところに移りますが、中小の病院で極めて一生懸命教育されて、研修 医も腕が上がって、満足度が高い。だけど、その人たちがその病院を終わったあとどうなっ ているかという状況が把握できない。それが極めて深刻な問題なのです。だから、研修2 年間だけではなくて、医師はそのあともずっと研修を積んでいかないといけない。そこで、 基幹型病院の基準が3,000人と厳しくなりましたが、中小病院はその基準から外れるのでは ないかという危惧が、検討会でも非常に強かったのです。  私が従来から申し上げているのは、地域で医師を育てて地域医療を守る「コミュニティソ リューション」の方式を取らないと、これは国のレベルでいろいろ規制してもなかなか難し い。だから、地域でしっかり病院群のコンソーシアム、要するに共同運営体を組織して、そ こで医師を育成することを十分考えていかないといけないと思うのです。それを中小規模の 病院の先生方は危惧されているのです。そうすると、大病院の帰属の下で、いまの研修シス テムが非常に制限されるのではないかというおそれがあると思うのです。例えば、大病院と たすきがけの研修をしなければならないかと。  それをいままでの協力型の病院を少し考えて、自主性を持ったシステムにして、十分臨床 経験を積んだ上で、改めて先端医療に携わるのもいい経験だと思うのです。いわゆる機械的 なたすきがけ人事でどうのこうのということではなくて、中小病院で主に自主的に研修をや らせて、腕を上げて、大学に限らず基幹病院としっかり連携を持って育てれば、研修を終わ った人たちがどのように進んだという情報がそこで集約できますし、地域の中でどういう医 師が育っていくかが把握できます。  是非大学の先生方にお願いしたいのは、基幹型病院で、それは大学病院が中心となると思 いますが、そのときに地域の中で従来のパターナリズムでなくて、中小病院の研修にも評価 をしっかり認めてあげて、それと連携しながら地域で医師を育成するということで、そうい う考え方が根本にいただければ、中小規模の病院も安心して従来どおりの活動ができます。  プログラム、募集定員にもかかってきますが、私は元来定員が膨れすぎてしまっていると 思うのです。それは生き残ったプログラムを選択できるようにして、なるべく勉強しなくて もいいし、国家試験を通れば自分の思うとおりの所に最終的に行けるというのは、研修のイ ンセンティブが失われるので、定員数は非常にプログラムを厳選して作りつつ、ある程度の 数の目標に削減していくということには賛成です。一方では、自由競争でやるブラッシュア ップするインセンティブも失われるというご意見もあると思うのです。そういうご意見も尊 重しながら、プログラム定員はよく考えていく必要があると思うのです。  ですから、いままでやっていた良い病院が生き残りますよというメッセージを、施設基準 でボンと3,000人以上と出すと、そういう病院はどうするのだと、路頭に迷ってしまうわけ です。そうではなくて、基幹型病院と連携を取って、地域の中で医師を育成しましょうとい うメッセージがないと、また大学病院の傘下に入って研修を押し付けられるのだという被害 妄想に近いものが出てくると思いますので、その辺のメッセージを伝えていただければいい。  ですから、ポイントは2年研修が終わったあとの医師がどうなるかを、きちんと地域で把 握して計画を立てないと、いまのような地域偏在を研修制度だけでコントロールできないの で、是非、地域で医師を育てるという、地域のエリア、コミュニティでソリューションをす るというメッセージを明確に伝えていただければ、少しは臨床研修病院も安心するのではな いかと思います。 ○相川部会長 ありがとうございます。矢崎委員のご意見の中に、2年間の研修制度のあと の、「後期研修」という言葉もありますが、誤解を呼びますので「後期研修」という用語は ここでは使わないこととして、研修制度のあと引き続いてどのように医師が育っていくか、 どのような専門家になっていくかも含めてというご意見もありました。たしか数年前に、矢 崎委員と山口委員もいらっしゃいましたが、研修が終わったあとについて委員会で検討した こともありましたね。そのときは、まずは2年間の研修についてしっかりやりましょうとい うことでしたが、確かに連続性の上でプログラムを考慮していくことは、極めて大事なこと だと思います。  いま、矢崎委員が臨床研修病院の指定基準のことも少しお話になったので、2つ目のテー マというか、研修プログラムについてのほかに、指定基準についてもご意見をいただきたい と思います。 ○山下委員 いまの矢崎委員のご指摘は非常に重要なことで、今後どうやってこのシステム をイノベートしていくかという1つの基準がないと、検証のしようがないのです。結局、い い医者というのは少なくとも鑑別診断が大事で、これは難しい病気で、自分の手に追えるか 手に追えないかまで含めて、判断できるということが非常に大きいわけです。そうすると、 いわゆる難しい病気からコモンディジーズというか軽い病気もありますから、それをいかに たくさん、いろいろなシテュエーションで見せることができるかということで集約されてい くと思います。  それに関して言うと、それに合わせた、例えば基幹型病院というのはこのぐらいの規模が あって、こんなことまで見せなければいけないと、地域医療はこういうことをやるのだとい う検証が、はっきりとわかってくると思うのです。矢崎委員がおっしゃったように、各地域、 地域で医療のネットワークをもう作っていると思うのですので、それをいきなり壊してしま うのは、医療そのものを壊してしまう可能性もなきにしもあらずなので、それに合わせた形 でやっていくのは非常に重要なことだと思います。  もう1つは、ただそれで完璧ということではないわけですから、それをいかにイノベート していくかとなると、基幹型病院はもう少し施設の整った大きな病院で、いろいろなことが できる。手術も高度な医療までできることを、1年生や2年生に見せてあげるのは非常に重 要なことですので、私の意見としては、この指定基準はまだ不十分だと思うのです。要する に、もう少し大きくて、きちんとした高度な医療。高度というのは難しいということではな くて、難しい病気をきちんと治せるということを見せてあげなければいけない。  かつ、それにいま矢崎委員がおっしゃったような、地域の頑張っている良質の病院を中に 取り込むことによって、研修医に聞くといろいろなことを経験したいと、いわゆる高度な疾 患のチーム医療も見てみたいし、地域の病院に行って頑張っている医者に付いていろいろな ことを見てみたい、多様な研修を受けてみたいということがありますから、それに対して対 応できるようなシステムが出来上がっていく。そのイメージがないところでいま動いている ので、非常にまずいような気がするのです。  そのイメージがなぜできないかというと、検証がないからです。これはまさに矢崎委員も おっしゃったとおりです。専門医研修をやっている人たちが、本当にあの研修はよかったか ということに関しての検証がない限りは、イノベートしません。それも含めて、特に基幹型 の病院はいろいろな意味で、かなりフレキシビリティが示せるような、病院との関連を全部 サポートできる、要するに研修のためのシステムだけではなくて、医療のためのシステムを 整備するということとタイアップしてくるわけです。完璧なことはできないわけですが、高 度な地域の医療のネットワークがきちんとできていれば、その中に研修医が入っていけば、 いろいろな勉強ができる。そういうみんなが持っているモデルをどんどんイノベートしてい く方向が絶対必要だと思います。 ○相川部会長 ありがとうございました。そういうご意見ですが、山口委員、いかがでしょ うか。 ○山口委員 もう一度お伺いしたいのですが、矢崎委員が挙げられたような初期研修が終わ ったあとの研修として、地域でネットワークを組んでという、それはよく理解しているので すが、ここに書かれている初期研修の臨床研修病院群を形成するということの意味は、従来 の大学病院と関連病院を含めてたたすきがけと同じ意味なのでしょうか、それとも何か違う 形のあり様を指しているのでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 ここの考え方は、大学病院というのは例示として出しております が、臨床研修病院を中心とした臨床研修病院群の形成を推進することも、もちろんあり得る と考えております。必ずしもいわゆるたすきがけを前提にしているものではなくて、多様な 医療機関がこの病院群の中に入ってくると考えております。 ○山口委員 従来単独でやられた病院については、どういう対応をすればよろしいというこ とでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 従来単独型で指定を受けているところについては、研修協力施設 として医療機関と共同して研修しているところがあります。そういうところと一緒になって いる場合は、病院群と考えてまいります。すなわち、地域医療を必修にしましたので、地域 医療を行う医療機関、診療所もしくは病院といったところと、必ず群を形成していただくと いう趣旨です。 ○小川(彰)委員 研修をする場所としては、大病院とか中小病院との対決の姿勢は非常に 好ましくない。大学病院との違いという形も好ましくないわけで、地域において大学病院も 大病院も中病院も小病院も連携して、良い医者をつくり出すのだという意識で、臨床研修病 院群というものが概念として盛り込まれたわけです。  これは「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で出たことで、2つ申し上げたいので す。このときに、臨床研修基幹病院の厳格化ということが盛り込まれたわけですが、それが 厳格化されているとは言えない、非常に甘い状態になっているのが、私としては不満ですし、 将来的には是非もう一度見直しをしていただければと思っております。  また、先ほど山口委員からお話がありましたが、確かに中小病院で非常に良いプログラム を組んでやっている真摯な病院も中にはありますが、そうではない病院もあるわけで、そう いう病院を排除するということではなくて、コンソーシアムの中で、その連携の中でそうい う病院にもご協力いただきましょうというのが、今回の2の「基本的な考え方」に盛られて いる内容と私は認識しております。  もう1つ、これは時間的に大変難しかったのだろうと思いますが、折角臨床研修病院群と いう概念を持ち出したのに、研修医の定員が病院ごとになっている。そういう意味からする と、2の「臨床研修病院群の形成を推進する」という基本的な考え方に基づくのであれば、 コンソーシアムとしての臨床研修病院群として定員を定めるような方向に持っていかない と、これ自体が形骸化するのではないかと危惧するところです。是非、その辺の検討もお願 いしたいと思います。 ○相川部会長 定員のほうにお話が入ったので、あえてテーマを分けて話すとういことでは ないのですが、小川委員に質問です。病院ごとの定員と病院をいくつか合わせたコンソーシ アムの定員と、両方から見るべきだということですか。あるいは、コンソーシアムとしての 定員を決めればいいではないかというお考えなのですか。つまり、病院ごとの定員の積上げ の上で、コンソーシアムの定員を適正な定員にするという考え方もあるかもしれませんし、 コンソーシアムとしての定員が決まっていれば、コンソーシアムに入る病院の定員はあえて 決めなくてもいいと。どちらのお考えなのでしょうか。 ○小川(彰)委員 私は、どちらかというと後者のほうの考え方です。というのは、病院ご とに決めてしまえば、その病院で研修を完結するのだという意識がどうしても残るわけです。 そうしますと、折角コンソーシアムを作って臨床研修病院群を形成して、大病院と中病院と 小病院が連携をしてやっているのに、その連携がうまくいかないだろうと。だとすれば、コ ンソーシアムとしてのプログラムがあって、その中で定員が決められていくのが理想だと思 います。今回この中にそれを入れなさいということは、時間的な状況からしてとても無理な 話だということは重々承知しておりますので、是非今後の検討課題に加えていただきたいと 思います。 ○相川部会長 検討課題、あるいはそういう考え方があるということですね。そういう考え 方をご提示いただきましたが、事務局はよろしいですか。 ○医師臨床研修推進室長 いままで出されているご意見の中にも、今後の検証の過程でいろ いろとご議論すべき課題も出ておりますので、その中で検証を踏まえて、よりよい制度にす るよう見直しをしてまいりたいと思います。 ○河野委員 定員の扱いについて、私は勘違いしているかもしれませんが、先ほどの小児科 と産科の枠のことも同じなのですが、定員というのはソリッドのもので、この間の特別コー スの場合には、そこに2枠を作って応募がなかった場合には、そこは空欄になって、マイナ スになってしまうわけです。それが今回も、先ほどのお話につながるマイナスの問題だと思 うのです。もしそこに応募者がしっかりいるならば、それはその病院の成果であり、ちゃん と定員枠のトータルとして埋まっていくわけで、マイナスのイメージはないと思うのです。  ただ、埋まらなかったときのマイナス、本当はほかの人がいるのにということですが、そ のような各病院の定員枠の扱いもそうですが、現状そこの枠があったとしても、この扱いで できるのではないかと思うのですが、そこの融通性はつけられないのでしょうか。定員とい う言葉からはずれてしまうかもしれませんが。 ○医師臨床研修推進室長 いま我々が考えておりますのは、プログラムごとに定員を設定し、 そこで研修医にプログラムを選んでいただくというように考えております。募集定員の融通 性について言えば、それだけのキャパシティがそれぞれのプログラムにあるということであ れば、可能性としてはあるのかもしれませんが、これは非常に技術的にもいろいろな検証を 加えなければいけないと思いますので、今年度の見直しでは難しいかなと思っております。 そういうご意見がいままでもありましたので、先ほどからありましたご意見と同様に、今後 の課題ということで私どもは捉えております。 ○西澤委員 確認なのですが、1プログラム2名だとしたら、産科、小児科それぞれ2名に なれば、例えば20名募集のところは4名の枠をそこで取られるという解釈でしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 そのとおりです。 ○西澤委員 そうであれば、山口委員がおっしゃったことの繰返しになりますが、例えば産 科・小児科以外のすばらしいプログラムがあって、研修医が20名いる病院が産科、小児科 で4名取られたら、枠が20名から16名になって、産科・小児科で4名の枠ができると。 そこがゼロだったら、次の年は定員16名で始まって、さらに産科・小児科で4名減るとい う計算になると思うのです。いま変えるか、今年はこれでやるのであれば、次年度そういう ことになるとおかしいので、検討は至急すべきではないかという気がしています。 ○相川部会長 先ほどの中に入れるか外に入れるかも含めて、そういうご意見もありました。 ○長尾委員 先ほどからあとの検証ということが出ていますが、大学病院へ帰られた人はあ る程度フォローできていると思いますが、他の管理型病院で研修したあとの人たちのフォロ ーを、何らかの形でやっておられるのか。もしやっておられないなら、5年経っているわけ ですから、あとのフォローをできるような形を何か作るべきではないかと思うのです。  それから、確かに産科、小児科は、非常にクローズアップされていて問題になっているわ けですが、足らない科は流動性がこれからも出てくると思うので、それなりの見直しをきち んとかけていかなければいけないのではないかと思います。  少し戻って、研修プログラムについては、これまでどおりのものもできるというメッセー ジをと矢崎委員も言われました。確かにできるのですが、管理型、大学病院は別として一般 の管理型、いままでの管理型病院はいままでどおり従来型でいくのか、今回の見直しによっ てコロッと変わるわけですから、それによって大きなプログラムの変更を余儀なくされると 思うのです。そこでどういう選択をするか、それぞれ戸惑いが出てくると思いますので、そ の辺と到達目標をきちんと達成するためのプログラム、その辺りも含めてきちんとしたメッ セージを出していくことが必要ではないかと思います。 ○相川部会長 事務局に質問なのですが、長尾委員の言われたいちばん最初のポイントで、 2年に1度の医師の届出のときの情報で、医籍の登録番号と、どこのプログラムにその医籍 登録の人が行ったかということで、多少の情報の収集は可能なのでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 現在の医師届けのときに、臨床研修のことを絡めて情報を取るの は難しいのですが、逆に臨床研修を修了した方に対してアンケートを取るようにしておりま す。先ほど議論があった、3年目以降にどういう場所で研修をするのか、あるいは大学病院 に行くのか専門医を取るために行くのか、どういう診療科に進むのか、臨床研修は具体的に どういう診療科をラウンドしたのかといったことを把握する予定にしております。そこで実 際に医籍のほうともリンクができるようになっておりますので、ある程度の情報は把握でき ると考えております。 ○相川部会長 3年目のときの情報はかなり把握できるのですね。5年先にどういう医師に なったかということは、医師の届けで、今どういう専門をやっているかということは、わか るわけですね。 ○医師臨床研修推進室長 それは医籍でリンクをすることができますので、その医籍の方が 5年後にどういう施設で、どういう診療科で働いているかはわかりますので、そういう形で 追いかけていくことは可能だと考えます。 ○相川部会長 ほかにいかがでしょうか。いろいろなご意見をいただきました。主なテーマ は3つですが、テーマ全体は関連しておりますので、テーマ全体のことでも結構です。 ○山下委員 プログラムの内容に戻ってしまうのですが、よくわからないのは、なぜ内科、 救急になったのか。内科or外科と救急というのは非常にわかりやすいのですが、同じ全身、 プライマリ・ケアを勉強するという意味では、内科or外科でもよかったのではないかと思 うのですが、なぜ内科、救急となっているのかがよくわからないのです。検討会のほうで検 討されているので、議事録のことはわかるのですが、なぜ内科でなければいけないのかを教 えていただきたいのです。 ○相川部会長 どうして外科が入っていないかということですか。 ○山下委員 そういうことです。 ○相川部会長 内科、救急、地域医療が必修と今回の見直しでなるところに、どうして外科 は入っていないのかという質問ですね。これも随分前から委員会で積み上げてきたことです が、どうでしょうか。 ○医師臨床研修推進室長 これは臨床研修部会の前の「臨床研修制度のあり方等に関する検 討会」の際にもご議論いただきましたが、外科については現在の到達目標のことを考えます と小外科が中心になると。そうすると、救急の中で研修ができるのではないかというお話が ありました。すべての方に外科を3カ月必修にしてやることが必要なのかということがあっ て、それは救急のほうで外科の技術を身に付けるということで差し支えないというご議論も ありましたので、必修の部分は内科と救急と地域医療の形にしました。ただ、到達目標の中 に、外科の症例について1例以上受け持ってレポートを書くということがありますので、外 科を3カ月必修で回ることまでは求めないにしても、ある程度の外科の技術あるいは研修は、 各病院の状況に応じて設定をしていただくことになろうかと思います。 ○山下委員 これは基本の姿勢とコンセプトとか目標ということになりますので、今後検討 していただきたいことのいちばん大きなことなのですが、プログラムの内容、到達目標に関 連することです。外科を選ぶ意味が、小手術をできるとかそういう類のものではなくて、私 の理解からすると全身管理をできて、倒れている人を見たときにどのようにしてこの人の全 身状態を把握するかという意味では、もちろん救急はいちばん大事ですが、外科の場合には 1回手術をすると、脳外科の手術をしてもお腹も肺も全部診なければいけないと。内科が優 れていないという意味ではなくて、外科が優れていないとか要らないという議論は、私は到 底理解できないのです。  プログラムの内容を今後検討しなければいけないというご意見もありましたし、到達目標 はこれからだんだんに考えていかなければいけないと思うのですが、全身管理とかプライマ リ・ケア、もっと言うとファーストエイドというか、何がこの人にとって必要かを判断する 訓練は、内科と外科はどうしても必要になるのではないかと思うのです。外科を必修から外 すというのが、私は非常に理解しづらいのです。 ○山口委員 いまの話にも多少関わりますが、今回の見直しで、将来目指すべき専門の領域 を非常に長い期間やることができるようなプログラムが、正面切ってデビューすることにな ると思うのですが、従来のローテーション型のものをやられる施設もたくさんあると思いま すので、それがどちらになるか、どちらを皆さん選ばれるか、研修医がどちらを選ぶかはこ れから決まる話だと思うのです。それから考えると、先ほどの小児科、産科の話も、小児科、 産科のプログラムを設けるということは、おそらく小児科をかなり長く研修するプログラム の中に組み込んだプログラム、あるいは産科の期間が長いプログラムということになるかと 思うのですが、実際にうちの病院で産科の初期プログラムを終わった人が産科に行かなくて、 内科のプログラムを終わった人が産科に行くということが起こっています。  実際にどちらのプログラムが選ばれるか、まだ何もやっていないときに小児科、産科のプ ログラムをこれだけ設けなければいけないということが、小児科・産科の希望者を増やすこ とにつながるかどうかは全くわかっていない話だと思うのです。それをプラスアルファで設 ける話は結構だと思うのですが、義務づけて先ほどのような話になるのは、必ずしも目的に 沿わない可能性があります。産科あるいは小児科になる人がその前のトレーニングとして、 1年間その専門科から始めることを全員が希望しているかもこれから検証される話なので す。  もう1年か2年やって実績を積み、小児科、産科に行く人も実は内科を研修した人が多く 行くのか、先ほど3年の進路をある程度調査できるというお話を伺いましたので、そういう ところである程度つかんでいただき、あるいはそういう専門科のトレーニングを早く始める プログラムと、従来の広くやるプログラムと、それに対する評価がある程度出た段階で、こ ういうことをされても遅くはないのではないかと思うのです。プログラムも、1年に短縮し たプログラムの評価が全く決まっていない段階でこういう話になるのは、少し先走りすぎて いるのではないかと思います。 ○飯沼委員 先ほど外科のお話が出ましたが、文部科学省との協同の話のときには、学部教 育を充実させると、モデルカリキュラムもコアカリキュラムも全部これから改訂するという 中で、なるべく先生のおっしゃったようなことを学生の段階に入れて、国試もそれに変えよ うという意見が1つあります。  全体をお聞きして感じたのは、この制度の理念、要するにプライマリ・ケアができる医師 をつくることが大切なので、非常に難しい症例という話を前面に出して議論する必要がある かどうかは、私にはよくわからないのです。いままでの制度の検証をして、これから並行し て進んでいただきたいと思いますが、理念に常に戻って考えないとまずいのではないかと思 いますので、一言申し上げます。 ○相川部会長 ありがとうございました。今回の見直しでも理念については見直さないと、 元のままでいくというのは合意ができていることですが、その元に立ってのディスカッショ ン、あるいはプログラムを検討することになるかと思います。 ○矢崎委員 山口先生の危惧は非常に大きな問題で、先ほど西澤委員が言われたように、ゼ ロだったらどんどん定員が減っていくというシステムは非常に大きな転換ですので、先ほど お話があったように、ともかくそういうプログラムを作って取り組むと。しかし、応募者が なかった場合は激変緩和、経過措置として20名、25名採っていたら、そこで定員が減った 場合、応募者にマッチングがいなかった場合には、第1希望で待っている研修医がいた場合 には、それを繰上げ当選してとりあえずは補充すると。だけど、将来どうするかはこれから 議論するということであって、当初はそこだけ厳しくするのは何とか考えていただければあ りがたいと思います。 ○相川部会長 激変緩和措置として、中に定員を入れた場合どうするか、あるいは定員を外 にするべきだということですね。 ○矢崎委員 最初から外にするのは難しいと思うので、是非マッチングでなかった場合をど うするか。いい病院、単に定員数が多いということだけではなく、実質相当先進的な研修を やっている大型の病院に、希望する人が排除されてしまう。全体の定員削減とは少し違う次 元の話なので、その辺は事務局で工夫してやっていただければ大変ありがたい。 ○相川部会長 テクニカルな質問なのですが、もし矢崎委員のようなご意見を採用するとし て、定員を小児科、産科の中に置いて、マッチングがゼロだった場合には、20名のうち16 名のほうを、20名までマッチングで採れるというテクニカルなことは次年度ではできるの でしょうか。マッチングが二重構造になりますね。 ○医師臨床研修推進室長 現在のマッチングのアルゴリズムから考えると、現在のアルゴリ ズムでやることはできないと思います。マニュアルでやればできるかもしれませんが、コン ピュータでいまのアルゴリズムでいまのシステムでやることは、今年度は難しいのではない かなと思っています。そういう意味で、来年度の課題かなと申し上げたわけです。 ○相川部会長 1つの病院ならできるのですが、その人がいろいろな病院に関係していると なると、なかなかすぐには難しい。考え方としては、非常に重要な考え方のような気がしま す。 ○矢崎委員 よくわかります。ただ、田原室長がアルゴリズムをソフトで立ち上げた中心人 物だから。確かに1ついじると全体にかかってくることはよくわかるので、それをなくすた めにマッチング制度をコンピュータでアルゴリズムで、混乱を避けるためにやったのですが、 そこを何とかできないですかね。 ○相川部会長 というご意見もありますので、また可能性を検討していただくと。コンピュ ータですから、アルゴリズムを作ればできないことはないのですが、すぐには難しいかもし れません。 ○冨永委員  いまの話ですが、前年度の実績で産科、小児科がなければだんだん減っていくという話が出 ていましたが、コンピュータのアルゴリズムで不可能としても、例えば20名募集して産科、 小児科のコースがゼロであったとしても、それは次年度にも20名枠とすればよいと思いま す。 ○相川部会長 おっしゃるとおりです。 ○冨永委員 そのようにしたらいかがでしょうか。即ち、産科・小児科を特別枠とすればよ いと思います。 ○相川部会長 前年度の実績に含めないということですね。少なくなった分は、前年度の実 績に含めないという方策もあるのではないかというご意見ですね。 ○冨永委員 これは特別枠とすればよいということですので、病院の責任ではないというこ とです。 ○相川部会長 16人にはなってしまうけれど、次年度にその16人が反映しないようにして ほしいということですね。 ○冨永委員 次年度も20人募集できることにするということです。 ○山口委員 そうすると、20名と19名のところがあって、19名のところは19名募集がで きて、20名のところは16名になると。そういうばかな話が起こるわけですね。 ○相川部会長 テクニカルでもそういうこともありますね。その辺は慎重に。 ○冨永委員 それはおかしいのではないですか。 ○相川部会長 確かにそうですね。採れたところは1人採れたところ、3人減ったところは 19人になるけれど。 ○冨永委員 1人採れても、20名を確保するということにしたらいかがですか。 ○相川部会長 細かいことに関しては、それぞれの方々の意見を事務局は把握しております ので、それについても今後検討していくということでよろしいですか。 ○西澤委員 先ほどから、検証がされないまま議論はしづらいという話がありますが、まさ しくそのとおりだと思います。私は過去5年間臨床研修をやって、それなりに実績があった と思うのですが、それが本当によかったということが証拠がなくて言えないということがあ ります。  先ほど事務局の説明で、研修を終わった方はアンケート調査で追いかけられるということ ですので、過去5年間の全部を追いかけていまどこにいるかを、予算の面もあると思います が、いま国で質を高めるためにいろいろ付けてくださっているので、すべて追いかけていた だきたい。本当に5年間の研修医がいまどこにいて、どういう状態であるかを出していただ ければ、ここの議論も非常にスムーズにいくと。これは大変ですが、非常に大事ではないか と思います。今日の議論を見ていても、どうしても何か空転しているような気がしますので、 空転しない議論をするためには、早急にやっていただければありがたいと思います。 ○医師臨床研修推進室長 アンケート調査を実際にやるのは、今回平成20年度に研修が終 わった方を対象にしています。それ以前の方については、なるべくデータは整備をしたいと 思いますが、全部追いかけるのは難しいかなと思いますので、できるだけデータを把握して、 検証の際にお示しできるように努力したいと思います。 ○小川(彰)委員 「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」は、去年の9月から始まっ て、今年の2月まで5カ月間で6回の委員会をやって、いろいろ意見を取りまとめたわけで す。そのあと、3月2日に医道審議会があって、それを受けて現在まで来たということです。 そういう意味では、かなり時間がタイトで、ない中でよくここまで来たと思います。ただ、 先ほど来皆様のご意見を伺いますと、今回の見直しが完璧なものではないことは皆様よくお わかりになっていることだと思います。  別添の2の5頁のいちばん最後で、是非これは確認したいのですが、「施行から5年以内 に必要な検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」となっていますし、別添1 のパブリックコメントに対するお答えの中にもこういう文言があります。これを素直に読む と、5年で見直すのではなくて、1年でも2年でも今後必要な検討を行って、随時見直して いくのだという理解をしているわけですが、その理解でよろしいのかということと、これを 是非議事録に留め置きいただきたいと思います。 ○医師臨床研修推進室長 制度の内容につきましては、継続的に検証するということは考え ておりますので、毎年毎年その都度、直近のデータをお示ししてご議論いただこうと思いま す。それを踏まえて、見直し制度全体の見直しは5年後を目途にということでお示ししてお りますが、そのときの状況をよく見た上で必要な手直し、小規模のものであればすぐにもで きますし、大規模のものでは5年後を目途にやることも考えられるのではないかと思います。 いずれにしても、毎年データをお示ししながら検証していく手続きは、しっかりやっていき たいと思います。 ○相川部会長 そのように議事録にも書かせていただくということでよろしいでしょうか。 時間がだんだん迫ってきましたが、いかがでしょうか。 ○山下委員 時間がないので、最後の疑問というか、意見になると思います。しつこくて申 し訳ないのですが、いちばん最後の都道府県枠はどうしても理解もできないし、理解できな いことは納得できません。それは最後に言わせていただきます。結局、この委員会の議論は すべて教育の質の議論です。その質の議論とこの枠は、どうしても結びつかない。非常に大 きな問題点もあると思います。算定方法として本当に正しいか、まずコンセプトはこうなの か。だから、導入するのは時期尚早と思います。  実際問題として、先ほど田原先生がおっしゃった東京とか大阪では減っていますと、減っ ているのだったらいいではないですか、という議論にどう答えるのかということなのです。 地方で、私は山形ですが、山形で一生懸命地域に研修医を残すような努力をしています。そ ういうことがあって、それの積重ねとして、どうしても駄目だったら考えればいい。  もう1つは、基本的な理念として、研修医の配置と医師の偏在は全く別の議論ですので、 それがどこかでごちゃごちゃになっている気がします。要するに、地域に研修医がいれば、 そこに居付いて、専門医研修をやって、さらに将来そこの地域医療に貢献するというエビデ ンスがあればまだ説得力がありますが、いまいろいろな先生方がおっしゃったように、それ についてのエビデンスはありません。言葉は悪いですが、研修医でそこに行ったとしても、 初期研修が終わって医籍登録をした時点で、流動してどこかに行ってしまう可能性は十分に あるわけです。そうではなくて、ほかのシステムで専門医研修を魅力的なものにして、地域 に定着するような医療をどうやって提供するかは、この委員会の議論とは別の議論ですので、 それを是非最後に言っておきたいと思います。 ○相川部会長 ありがとうございます。かなりご意見をいただいたところです。予定の時間 がまいりましたので、今回、臨床研修制度見直しの方向性についてはいろいろな意見をいた だきました。また、一部は今回の案に関して赤で修正したところに関しても意見をいただき ましたが、おおむねこの案についてもご了承いただけたかとも思います。さらに、いただい た意見に関しては、関係の委員の方々ともこれからも相談しながら、省令等の見直しに反映 できるようにしたいと思います。しかし、期日も迫っておりますので、もし可能ならば、い ままでいただいたご意見を相談すること、どのように反映するかに関して部会長に一任いた だければと思いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○相川部会長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。事務局から何かご ざいますか。 ○医師臨床研修推進室長 今後のスケジュールについてご説明します。「議事次第」と書い てある資料のいちばん最後の頁をご覧ください。資料2ですが、本日研修部会がありまして、 本日のご意見をいただいて部会長ともご相談しながら、関係省令や通知の改正の作業を進め ていきたいと思っております。それがもしできたらというスケジュールですが、5月の連休 明けには関係機関への説明を行い、6月末ぐらいに病院からプログラムを出していただき、 7月から9月にプログラムの審査、内容確認、病院においては研修医の面接があり、9月24 日にはマッチングの希望順位登録受付が始まるというスケジュールを考えております。 ○相川部会長 スケジュールの案ですが、そういうことでよろしいでしょうか。事務局から はそれでよろしいですか。 ○医師臨床研修推進室長 以上です。 ○相川部会長 最後に、医政局長から一言ご挨拶いただけますでしょうか。 ○医政局長 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会の委員の皆様方におかれましては、本 日も大変お忙しいところお集まりいただきまして、この臨床研修制度のあり方についてご議 論をしていただきまして、誠にありがとうございました。  委員の皆様からいただいたご意見を踏まえ、必要な経過措置も含めて、臨床研修に関する 省令等の改正の準備をこれから進めていきたいと思います。医療は日々進歩しておりますし、 医療ニーズも日々変化をしております。臨床研修制度についても、本来の理念を踏まえつつ 必要な改善を重ねていく必要があると考えております。今後とも医療現場のご意見を踏まえ ながら、必要な改善を重ねていくことができますよう、委員の先生方におかれましては引き 続きご指導を賜りますよう、何とぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○相川部会長 それでは、これで本日の「医道審議会医師分科会医師臨床研修部会」を終了 いたします。委員の先生方にはいろいろご意見をいただきまして、ご協力ありがとうござい ました。 (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                    (代表)03−5253−1111                   (内線4123)