09/04/20 第11回新型インフルエンザ専門家会議議事録 新型インフルエンザ専門家会議第11回議事録 厚生労働省健康局結核感染症課 第11回新型インフルエンザ専門家会議 議事次第                  日時:平成21年4月20日(月)13:59 〜15:42                  場所:KKRホテル東京 孔雀の間(11階)        1.開会 2.議題  (1)「新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉     免疫性に関する研究」について  (2)その他 3.今後の予定について 4.閉会 ○岩渕補佐 定刻となりましたので、これより第11回「新型インフルエンザ専門家会議」を開催 いたします。  本日の委員の出席の状況でございますが、内田委員、多屋委員、飯沼委員、山本委員、大久保 委員及び吉川委員からは御欠席との御連絡をいただいております。  また、相楽委員及び谷口委員につきましては所用により、後ほど到着するとの御連絡をいただ いております。  なお、上田健康局長は国会対応のため到着が遅れております。到着次第、ごあいさつをさせて いただきます。  以降の進行につきまして、岡部議長にお願いいたします。 ○岡部議長 国立感染症研究所感染症情報センターの岡部です。今日の進行をやりますので、ど うぞよろしくお願いいたします。  この新型インフルエンザ、あるいはパンデミックに対するワクチンをどうするかということが 今までも検討事項として続いているんですけれども、本日はそれの研究グループが研究調査をし たということをとりまとめるのが主な目的となっております。活発な意見をいただければと思う んです。  それでは最初に、事務局の方から資料の確認をよろしくお願いいたします。 ○岩渕補佐 カメラ撮りはここで終了させていただきますので、取材の方は御協力のほどをよろ しくお願いいたします。 (報道関係者退室) ○岩渕補佐 それでは、お手元の資料を確認させていただきます。  議事次第、配付資料一覧、資料1〜4及び参考資料を御確認ください。  これに併せまして、座席表、委員名簿も配付させていただいております。  資料の不足、乱丁がございましたら、事務局までお申し出いただけますよう、お願いいたしま す。 ○岡部議長 よろしいでしょうか。それでは、もし途中で不足や何かがあったら、事務局の方に 御連絡をください。  お手元には、第11回「新型インフルエンザ専門家会議」の議事次第というものがありますので、 これに沿って議事を進めていきたいと思います。  「(1)『新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉免疫性 に関する研究』について」ということでありまして、これは昨年4月に専門家会議で情報提供さ れていましたけれども、それについて臨床研究が行われているというのは御存じのところだと思 いますが、このたび、その研究結果がまとめられています。研究としては、たしか公表になって いると思うんですけれども、それについて、この専門家会議で今後の方針を踏まえて議論をして いくということになると思います。  ただ、今回の大きな目的ですけれども、これだけの人が集まって、今日の調査グループの研究 内容を聞き、どの点が明らかになってきたのか。あるいはまだ十分、明らかになっていないのか。 それから、場合によってはといいますか、今後の宿題といったようなものも出てくるだろうと思 います。  また、この研究結果には、国内は勿論、国際的にも非常に注目をされているところではないか と思いますので、いろいろな方面から、ウイルス学者、疫学者、あるいはワクチン専門家という ところ以外からも広い御意見をいただきたいと思います。  それでは、まずお一人は主任研究者であります国立三重病院の庵原先生、もう一人はその中の 分担研究者の伊藤先生のお二人から御説明をいただきたいと思います。  最初は、庵原先生、よろしくお願いします。 ○庵原委員 国立病院機構三重病院の庵原と申します。それでは、資料に基づきまして説明させ ていただきます。  ただ、先日、ワクチン及び抗インフルエンザ薬部門のウイルスの専門家の先生にお集まりいた だきまして、専門用語の使い方が少し不適切な部分があるとか、ニュアンス的におかしいところ があるということで、ここにお示しします資料と、それから、お配りしました資料とが、一部、 字句が異なっているところがありますので、その点はこちらの資料の方を御参考にしていただけ ればと思います。  それで、私が最初にトータルのデータと、それから、インドネシア株及び安徽株を用いた免疫 原性及び安全性の結果と、あとはベトナム株を摂取された人にインドネシア株ないしは安徽株を 接種したという、いわゆるB試験というデータをお示ししまして、最後に国立病院機構本部の伊 藤先生に3,000人プラス3,000人、約6,000人規模の安全性の試験のデータを発表していただく。 この順番で進めさせていただきます。 (PP)  目的は、そこにお配りした資料のとおりなんですけれども、最初に要約だけをお示しします。  安全性に関する研究といたしましては、ベトナム株の治験といいますものは300人規模でやっ ておりまして、一般的にこういう薬の開発の段階のときにはフェーズ4というものをやって、そ れから更に広く広げていくという段階に、一般的には薬の治験というものは行われております。  それで、フェーズ4と言われていますものが大体3,000人規模で行うということですので、今 回はいわゆる開発段階におけるフェーズ4という位置づけで、安徽株を3,000人規模、インドネ シア株を3,000人規模で行った。その結果といたしましては、0.1%以上の確率で新たに出現する 副反応は認められなかったという結果です。 (PP)  その次に、いわゆるS試験と言われているものに関しましては、ホモの株に対して中和抗体は 検出できた。ただし、ヘテロの株に対する中和抗体という点では、交叉免疫性が低かったといい ますか、弱かったといいますか、後の追加接種等の語句とのニュアンスの違いもあるんですけれ ども、交叉免疫性は認められるんですけれども、その免疫性が低かったということです。  その次に、B試験の結果です。ベトナム株初回接種時に15μgを2回打った群と、5μgを2回 打った群の人たちに対して、インドネシア株を接種した人はもともと皮下接種で免疫誘導された 方で、安徽株を接種した人は筋肉接種で誘導された人ですけれども、それに追加接種を行います と、中和抗体が非常に高く誘導されたということと、出てきた交叉免疫性も、広いといいますか、 高い交叉免疫性が得られたという結果です。  それで、追加接種することによって安全性に関しまして、特に初回接種時とほぼ同じ種類の、 同じ頻度の副反応が認められたということで、特別、追加接種することによって安全性が劣ると いうことはないという結果でした。 (PP)  この字句の定義に関しましても、これも一部、お配りした資料と、例えばインフルエンザワク チンは全粒子ワクチンとスプリットワクチンだけにしていまして、サブユニットとかその辺りは 日本では使われておりませんので、そこは省いたところです。抗体、抗体価というところ。 (PP)  あと、中和抗体と、一部、ここにお示しする数字で説明が異なっておりますので、訂正したも のを後ほど事務局から送らせていただきます。 (PP)  この辺りの言葉のところも少し訂正しております。 (PP)  次に、S試験のデータ。これはすなわち、インドネシア株を100人規模、安徽株を100人規模 で接種したという試験です。 (PP)  目的は、全粒子のアジュバントを加えた、こういう新しいタイプのインフルエンザワクチンで す。現在使用されています季節性インフルエンザワクチンはスプリットワクチンと言われている ワクチンですけれども、全粒子にアジュバントを加えたワクチンが株を変えても免疫原性が得ら れるかどうかということと、安全性は変わりないかどうかということで行った。  それから、インドネシア株というものはクレード2.1と言われているところと、安徽株はクレ ード2.3のところに位置しております。ベトナム株はクレード1.0というところに位置しており まして、それぞれクレードが違うという位置づけになっています。 (PP)  これが試験のデザインですけれども、1回目接種、3週後、すなわち2回目接種のときと、そ れから、2回目接種して21日目と180日目に採血した。  それで、180日目の採血まで終わっているんですけれども、この抗体結果に関しましては現在測 定中ですので、今日は21日目の測定のいわゆるVisit(3)というところまでのデータをお示ししま す。 (PP)  それで、被験者が100人と100人で、特に全例、2回とも接種をしたということです。 (PP)  年齢構成ですけれども、成人で、主として病院の勤務者ということですので、20〜60歳の方が 参加していただいている。60歳以上の方も参加していただいているという形です。 (PP)  ここが中和抗体の陽転率というところなんですけれども、これはベトナム株とインドネシア株 と安徽株という、この20倍以上かつ変化率4倍以上というものと、40倍以上かつ変化率4倍以上 というところで定義をした。  それから、ここのところで見ていただきたいのは、安徽株を接種して、ベトナム株をターゲッ トとして抗体を測定した。それで、安徽株を接種して、安徽株をターゲットとして抗体を測定し た。安徽株を接種して、インドネシア株をターゲットとして抗体を測定したという意味合いです。  そういたしますと、安徽株−安徽株の組み合わせは抗体陽転例の例数が高いですけれども、ベ トナム株及びインドネシア株は少し上がっておりますけれども、そんなに高い率では上がってい ないという結果です。 (PP)  これはHI抗体です。ただ、中和抗体に関しましても、HI抗体に関しましても、世界的に標 準化された方法がないということと、それから、新型インフルエンザウイルスと言われています H5N1に関しましては、季節性インフルエンザというものほど、このHI抗体の信頼性という ものが世界的には認められておりませんので、今回は主として中和を優先的に見ていただいて、 HIは付随的に見ていただきたいということです。  それで、HI抗体はこういうような結果で、これもやはり安徽株−安徽株のホモのものは高く 上がるけれども、ヘテロだと上がりが少し悪いという、低目の結果であったということです。 (PP)  これはインドネシア株を接種したときの結果で、これもインドネシア株を接種した後、ベトナ ム株に対しての抗体反応、安徽株に対しての抗体反応、インドネシア株に対しての抗体反応を見 た場合に、インドネシア株−インドネシア株のホモに対しては抗体反応がかなりいい値ですけれ ども、ヘテロに関しては少し弱いという結果です。 (PP)  これがHI抗体ですけれども、これもやはり同じような結果であったということです。 (PP)  この辺りから抗体の表示方法が、先ほどは陽転率で表していますし、これはGMTと言われて います幾何平均値で表しています。抗体表示方法には、インフルエンザの場合にしても、いろい ろな検査にしてもそうなんですけれども、いろんな表示方法がありますので、これはそれぞれの 表示方法で見ていただきたいということです。  これは、安徽株に関しては中和で、安徽株の2回目接種後21日目で60.6という、これが幾何 平均値で、これがstandard deviationと言われている値です。それで、ホモに対してはいい値で す。  下がHIです。HIに関しましても、ホモに対してはいい値を出しているということです。 (PP)  これがインドネシア株を接種した後の中和抗体価とHI抗体価の変化ですけれども、これも、 ここにもありますように、ホモに対してはいい変化を示している。ヘテロに対しては、上がって いますけれども、少し弱目であるという値です。GMTが51.0に対して、33.6、14.8ということ です。  HIは中和に比べて全体に低目に出ていますので、やはり、これは測定的に技術的な問題とい いますか、限界があるのではないかと思っています。 (PP)  この辺りが、時間経過とともに中和抗体価の上がりが視覚的にわかるようにしたものですけれ ども、安徽株を打つと、安徽株に対しての上がりはいいけれども、ベトナム株とインドネシア株 の上がりが少し弱目であるということです。 (PP)  これがHIです。 (PP)  インドネシア株を接種した後の上がりに関しましても、インドネシア株に対する抗体の上がり はいいけれども、安徽株とベトナム株は上がっていますけれども、少し低目に上がっているとい う結果です。 (PP)  これがHIで、これも同じような動きです。 (PP)  抗体価の逆累積度数分布図というものがあるんですけれども、これは一般的に、例えば安徽株 を打って、2回目接種した後の40倍の方が80%ほどあるとか、80倍の方が60%ある、160倍の 方が30%あるという、この辺の割合を視覚的に見ることができるという意味で、この使いやすい といいますか、視覚的に訴えることができるという方法で、これは比較的使われている、示して いる方法です。すなわち、2回目の接種前よりも2回目接種後21日後の方が全体に右の方にシフ トして、高いカーブが得られているということを表しているのと、ヘテロの株に対しての上がり が少し低目であることを表しているということです。 (PP)  これはインドネシア株を接種した後の同じような上がりですけれども、やはり2回目の接種を して21日目の方だと、この段階でも右へシフトしていますけれども、ヘテロの株に対する上がり が少し弱いということを表しています。 (PP)  この抗体価の変化率といいますものは、接種前からそれぞれのときの接種後21日目のGMTを 割って出してきた平均値です。こういう変化率がこのぐらいである。要するに16倍、抗体価が動 いたということです。 (PP)  これも安徽株を接種しまして、全体の、今までのところの数値のまとめですけれども、この安 徽株と安徽株のホモのところを見ていただきたいわけですが、安徽株を2回目接種して21日目の ときの抗体価20倍以上の比率が97.0%、40倍以上が77.0%、変化率4倍以上上がったものが 94.0%である。この辺りが中心的なところで、2回目接種前のところですと、やはり少し上がり が悪いということになります。 (PP)  これを見ていただいて、インドネシア株も同じ形で表しています。これの変化率は、この15.57 というところを見ていただきたいということです。 (PP)  ここにもありますように、インドネシア株を打って、インドネシア株ですと、抗体価の20倍以 上の変化率が90.0%、40倍以上が74.0%、変化率4倍以上が87.0%で、ヘテロに対しても少し 弱目であるということと、2回目接種前ですと上がりがまた不十分である。要するに2回打って 21日目でないと上がりが不十分といいますか、こちらの方が高い抗体価が得られるということで す。 (PP)  一般的にEMEAの評価基準というものは、シーズナルなインフルエンザに対して使われる基 準でして、これがいわゆるH5N1に当てはめていいのかどうかというところも、これらに関し ましては意見が分かれています。ただ、一部のH5N1のインフルエンザワクチンの論文で、E MEAの基準を適用してディスカッションしている論文がありましたので、これを参考にという ことです。  それで、一応、下線が入っている部分がEMEAの評価基準を満たしているということで、安 徽株はホモに対して評価基準を満たしているということになります。 (PP)  HIは、少し低目に出るということです。 (PP)  インドネシア株はインドネシア株に対して認めていますのと、インドネシア株は安徽株に対し ても一部は認めている、評価基準をクリアーしているという結果です。 (PP)  これはHIです。 (PP)  これが副反応です。後で副反応の高いところといいますか、大きいところは伊藤先生から報告 があると思いますけれども、接種部位の反応は、1回目が75.0%で、2回目が61.0%。一般的に 1回目よりも2回目の方が頻度は減ってくるということが1つあります。  それで、こちらの方はベトナム株を筋注したときの頻度が72.0%、皮下注射したときが91.3% で、ですから、今回、筋肉注射をしていますので、これとこれとは大きな差はないということに なります。 (PP)  インドネシア株に関しましても同じ結果で、1回目よりも2回目の方が副作用の出現頻度が低 くなっているということと、筋注の場合と一緒ぐらいの頻度で、皮下注射に比べては副反応の頻 度が少ない。これは全身症状に関しましても、局所部位に関しても一緒であるということです。 (PP)  重症度別で見ますと、ほとんどがGrade1という、よく行ってGrade2ぐらいのところで収まっ ている。ほとんどが軽症の臨床反応であるということです。 (PP)  出現する時期も、接種してからDay0〜3、いわゆる48時間以内に出る。ワクチンに関連したと 思われる時期がこの時期ですので、この時期に出現しているということになります。 (PP)  これが、インドネシア株の場合のGradeです。 (PP)  それから、インドネシア株の場合の出現時期です。 (PP)  それで、今までのところは主に局所ですけれども、全身症状に関しましては頭痛が、有害事象 が18.0%、副反応が16.0%ですけれども、発熱率が9.0%、2回目接種すると2.0%というのが 安徽株接種のときの経過です。 (PP)  これが、局所反応で72.0%と60.0%ということです。 (PP)  インドネシア株の場合の、これが全身反応で、ここにもありますように、主なところが熱感、 倦怠感、発熱というものがこういう頻度で、2回目になると減ってくる。  全身反応も2回目になると少なくなるというのは、安徽株であろうが、インドネシア株であろ うが、同じ結果になっています。 (PP)  これが局所反応の結果です。  今までのところが、いわゆるS試験と言われているところです。今からB試験と言われている、 いわゆるブースターの方のところの結果をお示しします。 (PP)  時間の関係で少し飛ばし気味に行っていますので、済みません、御了承ください。  これは先ほども言いましたように、2年前にベトナム株を接種された方で、ただ、2年前のベ トナム株の治験というものはH群とL群といいまして、15μgを2回打った群と、5μgを2回打 った群と、2つの群があります。それぞれの方にアトランダムに、いわゆるリクルートするとき に、特にあなたが15μgだから何人参加してください、5μgで何人参加してくださいということ は言わずに、接種した方に協力をいただいて登録をお願いしたという形になっています。 (PP)  ただ、結果といたしましては、15μgを接種された方が約半数、5μgを接種された方が約半数。 100人ずつのグループですけれども、結果としては210名という形で参加いただきました。それで 1回接種して、接種前後の抗体価を見ています。 (PP)  今回の試験の大きな目的は、1つは早い時期に抗体反応が認められるか、すなわち免疫記録が あるところの反応がスムーズに上がってくるかという、専門的にはanamnestic responseという 言葉を使うんですけれども、こういうところで見てみて、7日目でチェックしたものと、21日目 でチェックしたという形になっています。 (PP)  参加いただいた方の人数が、このようにうまい具合にH群とL群がきれいに2つに、大体同じ 人数で分かれています。すべて2回接種が無事完了しています。  それで抗体反応を、H群もL群も同じように認められましたので、分けて示さずに1群として お示ししています。 (PP)  これが安徽株とインドネシア株の背景ですけれども、インドネシア株の場合は少し若い人が多 いですけれども、統計的な有意差はないです。 (PP)  まず安徽株を接種して、7日目と21日目の抗体陽転率を見ていただきたいんですけれども、7 日目から既に、安徽株−安徽株がホモですけれども、70%が陽性になっている。しかも、ヘテロ のベトナム株やインドネシア株に対しても40%以上の陽性率になっている。このように、早い時 期から抗体反応が認められていることと、ヘテロの株に対する抗体反応も認めているということ になります。 (PP)  これがHIですけれども、中和と同じ傾向です。 (PP)  それで、インドネシア株を接種した場合でも、インドネシア株のホモに対して、7日目から 75.5%に上がっていますし、ヘテロの安徽株が76.5%、ベトナム株が59.8%、約60%という形で、 これも非常に早い時期から上がっているのと、先ほどの単回接種といいますか、S試験のときの 陽転率よりも全体が広く、陽性者の頻度が高くなっているというのが追加試験のときのデータの 特徴です。 (PP)  これがHIです。 (PP)  もう一つは、これは安徽株を接種した後の中和抗体価の動きをお示ししていますけれども、こ れはGMT、幾何平均値です。  それで、ベトナム株に関しましては、前回の接種者、参加者ですので、前回接種する前から、 1回目接種して21日目、2回目接種して21日目、それで90日後、180日後と多くかけています。 ですから、大体、90日目ぐらいまでは大きな下がりはないというのがベトナム株のときのデータ です。  ここが初回接種したときの上がるピークぐらいの値がGMTなんですけれども、この値に、追 加接種して、しかも安徽株を、ヘテロの株を追加接種しても、その数字に7日目で上がってきて いる。21日目では、更にその倍になっているということですし、これはインドネシア株に対して も上がりが出てきているということです。 (PP)  これがHIですけれども、同じような傾向であるということです。 (PP)  インドネシア株に関しましては、インドネシア株はそれぞれ、これは前回の人でも、接種して 21日目ぐらい、この辺りから90日の間がはかっていませんので、ひょっとしたら、もっと高い値 が出ているかもしれませんけれども、大体、この辺でプラトーになっているということで、接種 して90〜180日ぐらいまで大丈夫ですけれども、2年ぐらい経てば下がってしまっている。です から、180日ぐらいまでは抗体がもちそうで、2年ぐらい経つと抗体価は下がっている。ただ、免 疫記録は残っている。といいますのは、接種するとちゃんとanamnestic responseが認められる ということです。  これはホモに関してよりもヘテロの方が高いですけれども、これは抗体測定的な、手技的な問 題があるということと、それから、前もって言っておきますけれども、インドネシア株を測定し たのはインドネシア株のワクチンをつくったメーカーです。安徽株は安徽株をつくったメーカー ですので、測定のテクニカル的な違いがありますので、余り抗体価の数値を比較しないでいただ きたいというのがお願いです。 (PP)  HIも、同じような動きになっているということです。 (PP)  これが先ほどのところの箱ひげ図を視覚的に表したもので、接種して7日目のところから上が り切って出しているということがおわかりいただけると思います。ここも上がっていますし、こ こも上がっている。ですから、安徽株だと、安徽株だけではなくて、ベトナム株もインドネシア 株も上がっている。 (PP)  これがHIです。 (PP)  インドネシア株の場合ですと、7日目から既にインドネシア株、安徽株、ベトナム株、すべて で上がっているということ。  もう一つは、同じベトナム株を比べていただきましても、ここのところの数字と、それから、 21日後の数字の方が高くなっているという、この辺が一つです。 (PP)  これはHIです。 (PP)  それで逆累積というものは、S試験のときと見比べていただきますと、全体に右側へシフトし ているということと、それから、すべての株に対して右側の方にシフトしているというのが特徴 的な所見です。 (PP)  これがインドネシア株に対するところです。 (PP)  抗体価の変化率というものは、これも先ほどと一緒でGMTの平均で変化を出していますので、 ベースに対して7日後が6.5倍、21日後が18.56倍という形で上がったという形で数字を読んで いただければと思います。  安徽株の場合にしても、安徽株の21日後が32.74倍ですけれども、ベトナム株が18.56倍、イ ンドネシア株が22.19倍という形で、1つの株だけではなくて、すべての株に関して上がってい るということになります。 (PP)  これは先ほどと同じように、指標ごとに数字を出したということです。これが安徽株です。 (PP)  これはインドネシア株のGMTの変化ですけれども、これもホモの株が98.92倍に上がってい まして、ヘテロの株に対して57.13倍、79.79倍に上がっているという読みをしていただければと 思います。 (PP)  これもそれぞれの指標ごとに数字を出して、右側のところを見ていただければ、すべての指標 で90%を超えているということで、非常にいい抗体反応が認められた。 (PP)  これも先ほどから言っていますEMEAの評価基準に当てはめて出しておりまして、シーズナ ルとH5N1を同じにしていいかという議論はあるかもしれませんけれども、こういった形で見 ていっても、EMEA、ヨーロッパの基準は満たしている。EMEAとアメリカの基準は数字が 大体同じですので、アメリカの基準も満たしているということになります。 (PP)  これがHIに関してです。 (PP)  それでインドネシア株を接種した後のところですけれども、要するにS試験の場合、ホモは基 準を満たしますけれども、ヘテロは満たしにくいという結果だったものが、追加接種するとヘテ ロの株に対しても基準を満たすようになっているということが特異的なところになります。 (PP)  これがHIです。 (PP)  副反応はといいますと、少し飛ばし気味にして済みませんけれども、これが安徽株で、これが インドネシア株のところの自覚所見と他覚所見で、接種部位のところが、これもH群とL群で、 前回接種のH群に追加接種しても、L群に追加接種しても、副反応には大きな差はないというこ とです。 (PP)  これは、インドネシア株を接種しても一緒の結果です。 (PP)  Gradeは、これは安徽株ですけれども、Grade1からGrade2ぐらいという、ほとんどがGrade1 であるということ。 (PP)  それから、副反応の出現時期も、接種して0〜3日と、ほとんどがワクチンと関連性があると 思われるような局所反応及び全身反応であった。 (PP)  これは、インドネシア株でも同じ傾向です。 (PP)  これは安徽株の全身的な主な症状ですけれども、これは発熱を2例以上出していますので、1 例の場合は数値が上がっていません。ということで、安徽株の追加接種の発熱は1%でした。 (PP)  これが局所の反応で、65.7%ぐらい。痛みが56.5%という結果です。 (PP)  それでインドネシア株の結果ですけれども、これは2例ですので、1例、0例は出していませ ん。 (PP)  局所反応も65.7%ということで、初回接種の副反応の2回目と同じような数字であるというこ とです。  以上で、あとは伊藤先生に代わりまして、安全性の方のデータをお示ししたいと思います。 ○岡部議長 ありがとうございます。  議論は後でまとめてやるようにして、伊藤先生のお話を聞きたいと思うんですけれども、その 前に健康局長がおいでになりましたので、ごあいさつをいただきたいと思います。お願いします。 ○上田健康局長 健康局長の上田でございます。議論を遮って申し訳ございません。国会用務の ために失礼をいたしました。  本年になりましても、鳥インフルエンザ、H5N1のヒトへの感染は続いております。依然と して、新型インフルエンザがいつ発生をしてもおかしくない状況であるわけでございます。  政府といたしましては、こうした発生動向を国際的な連携の下で、専門家のネットワークや、 あるいは在外公館などを通じて収集をし、また、国内体制といたしましては、抗インフルエンザ ウイルス薬の追加備蓄、ウイルス変異に対応したプレパンデミックワクチン原液の備蓄、入院医 療を担当する医療機関に対する人工呼吸器などの整備、専門家会議での御議論を踏まえ、新型イ ンフルエンザ対策行動計画の改定と、新型インフルエンザ対策ガイドラインを策定し、自治体等 への普及啓発を行っているところでございます。このように新型インフルエンザ対策を強化して いるところでございます。  また、4月2日には与党プロジェクトチームより新型インフルエンザ対策について提言をいた だきました。更に、4月10日に政府におきましてとりまとめられました緊急経済対策においても、 新型インフルエンザワクチンなどの開発を推進することが盛り込まれており、一層の取組みの推 進を図っているところでございます。  こういう現状の中で、本日は昨年度の厚生科学研究費において実施していただきました「新型 インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性・免疫原性および交叉免疫性に関する研究」 の結果がとりまとめられたことを受けまして、この結果について、今、国立病院機構三重病院院 長の庵原先生、それから、これから国立病院機構本部医療部研究課課長の伊藤先生より御報告を いただいた、あるいはちょうだいすることになっているところでございます。  この研究成果につきましては、今後、国際雑誌に投稿いただきまして、国際的な評価も受ける 予定と伺っております。国際的にも非常に関心が持たれているというふうにも聞いております。 本専門家会議におきましても、今回の研究成果につきまして御評価をいただきまして、何ができ るのか、また、今後の課題は何か。このようなことについて、専門的な観点から御議論をいただ ければと考えております。  皆様方の専門的かつ大局的見地から御意見をいただきますよう、お願い申し上げまして、簡単 でございますけれども、日ごろの御礼とごあいさつに代えさせていただきます。  よろしくお願いを申し上げます。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。  それでは、伊藤先生、よろしくお願いいたします。 ○伊藤分担研究者 国立病院機構本部医療部の研究課の伊藤でございます。それでは座って、ス ライドを見ていただきながらお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 (PP)  本臨床研究の目的でございますが、新型インフルエンザワクチンのインドネシア株と安徽株を 各株、健康成人3,000人を対象にし、0.1%の確率で出現が予測される副反応の出現頻度を確認す る。それと同時に、プレパンデミックワクチンの安全性を検証するということがございます。  この3,000人につきましては、平成13年まで行われておりました製造販売後調査が3,000人と いうところになっておりまして、それは0.1%の確率で出現する副作用の95%を同定するのに必 要な数というふうに申されているところでございます。  もう一点は、今回、接種をしていただいた方には、新型インフルエンザがパンデミックになっ た後に新型インフルエンザの症状が起きたかどうか。それと同時に、大変失礼な言い方をさせて いただくと、生存確認も含めてさせていただくということを事前に同意いただいているところで ございます。 (PP)  2回接種に伴う安全性情報収集を目的といたしました、非盲検施設無作為割付ワクチン株別比 較試験でございます。  研究対象といたしましたのは、検疫所、地方入国管理局、空港警察署、国立感染症研究所、そ れから、感染症指定医療機関を主といたしております。それと同時に、幾つかの国立病院機構の 病院も参加しております。  研究期間は、昨年の8月から11月までということでございます。11月にさせていただきました のは、安全性の調査をする際に、ほかのワクチン接種による紛れ込みを防ぐために、季節型のイ ンフルエンザワクチンの接種をする前の段階に終了させたいということもありまして、こんな形 になっています。  調査につきましては、ほぼ治験と同じようなクオリティーで行ったというふうに考えておりま す。 (PP)  選択基準は、先ほど御説明させていただいた方々で、20歳以上の日本人の健康成人で、文書に よる同意が得られる方でございます。 (PP)  除外基準などは、通常のワクチン接種と同様でございます。 (PP)  有害事象というものは、医薬品と因果関係がないものについても集めるということでございま すので、これから御説明させていただく多くの症状については、たまたま起きたものも含めて入 っているところでございます。 (PP)  来院のスケジュールといたしまして、最初の100名についてはベトナム株で治験を行いまして、 安徽株とインドネシア株の治験が、接種経験がなかったものですから、最初の100名の方につい ては接種後1週間で医療機関に帰ってきていただいて、特に大きな問題がないことの確認をさせ ていただいた上で3,000人規模へと拡大したところでございます。 (PP)  被験者の背景は、インドネシア株、安徽株、それぞれ32施設ずつで、当初目的をいたしました 3,000人に少しずつ欠けてはおりますが、インドネシア株で2,726名、安徽株が2,835名の方々で ございます。  女性の方が、医療機関に従事させる方が多かったものですから、約6割弱が女性でございます。  平均年齢は、40歳ちょっとのところでございます。  実施医療機関以外の参加者の方は、トータルで158名ということでございました。  背景因子をごらんいただくとわかりますが、インドネシア株、安徽株もほぼ差がございません。 高血圧の治療をされた方がインドネシア株で少し多かったということでございますが、オーバー オールで見ますと、こういった健康状態の方で、高血圧で治療中の方が少し多いかなというとこ ろでございます。 (PP)  方法といたしまして、健康観察日誌をこのような形で付けていただきまして、1日に最低1回 は体温の測定をしていただくということで、この結果をEDCという電子的にデータの収集・集 計を行ったものでございます。 (PP)  まとめといたしまして、37度5分以上の発熱をされた方が、全試験期間中合計で、両株平均で 2.8%の方が起きております。  局所反応が、全試験期間中で71.0%。全身反応、後で御説明いたしますが、頭痛、倦怠感が34.1% と、かなり高率に局所反応、全身反応を持つワクチンだということがわかります。これにつきま しては、先ほどのS試験、B試験とほぼ変わらない結果と思っております。  特記すべき副反応については、後ほど図の中で御説明をさせていただきます。  今回、重篤な有害事象として見られましたものが、医薬品の開発におきまして入院をした段階 で、その理由のいかんを問わず、重篤な有害事象ということになります。それについては、トー タルで8名の方が入院をされたことになってございます。 (PP)  1回目の接種のとき、それから、2回目の接種のときのデータについては図をごらんいただく とわかるとおりでございますが、この発熱頻度をごらんいただいてわかるとおり、明らかに若い 人の方が発熱の頻度が高いということがわかっております。 (PP)  それから、局所反応につきましても、多少、女性の方が高そうかなというところは出ておりま すが、後で回帰分析をかけてみますと、年齢とか多少の変化はありますが、発熱ほどはっきりし たものではありませんが、一応、こういった年齢別の解析ができるデータが出ております。 (PP)  全身反応においても、オーバーオールで見ますと、やはり若い方が強い。局所反応、全身反応 が出るということはわかってきているところだと思います。 (PP)  先ほど庵原先生の方からお話がございましたとおり、1回目に比べて2回目の方がすべて、有 害事象の発現率は低そうだということがわかっております。 (PP)  ただ、1回目に有害事象が起きなければ2回目も起きないかというと、決してそんなことはな く、1回目に起きなくても2回目に起きている方もいらっしゃいます。それから、その逆も真で ございまして、1回の反応だけが予測できるものではどうもなさそうだということがわかってい るところでございます。 (PP)  ただ、1回目に大変、局所反応ではなくて全身反応が強かったと思われる方。 (PP)  もしくは、こちらに出るような特記すべき副反応、さまざまな、目まいがされたとか、全身の 関節痛が出たとかという方につきましては、実は2回目に接種を手控えられた方が5%ほどいた ということでございます。 (PP)  とりたてて強くこれがということではございませんが、重篤な有害事象として起きたものが8 例の方で、12月ごろの新聞報道などでも研究班の中の話が外で皆さんのところにお伝えされてい るかと思います。 (PP)  その詳細につきましては、この重篤な有害事象で、1番から8番までございます。  1番目の方については、発熱を契機にし、発熱のための解熱剤をお使いになられたところ、ぜ んそくのバックグラウンドがあった方がNSAIDをお使いになられてぜんそくの発作を起こし、入 院をされたというケース。  2番目の方に関しては、Brugada症候群としてもともと診断が付いていらっしゃった方が無症状 であられた方ですが、ワクチン接種から9日目に心室細動による意識消失、けいれんを起こされ て入院をされた。  3番目の腸炎については、おなかの方の痛みが出て、腸炎として1回入院をされたということ だと思っております。  4番目の方は、四肢末梢のしびれ感・薬剤アレルギー疑いとなってございますが、この方につ きましてはワクチン接種から数時間して発熱をされ、大変不安だったんだろうと思いますが、 PaCO2が20以下になるような状況下で入院をされたというところでございます。  尿路結石、腹痛、それから、7番の静脈洞血栓症というものは28歳の女性の方で、たまたま、 これはピルを飲まれていた方ということもわかっておりますが、静脈洞血栓症という病気が発現 したということでございます。これもワクチン接種2回目から12日後にされたということでござ います。  8番目の方が、意識消失をされて、これがどうも、心室細動による意識消失だったのではない かということで、それによって頭部を打撲されたという方でございます。  この中で、1番の発熱、4番の発熱については明らかに因果関係があるということを認識して おりますが、それ以降のシークエンスで続いて起きた事象については、その発熱に伴って出てき たことというふうに認識をしております。  勿論、ワクチン接種後の話でございますので、すべての因果関係について否定ができるもので はないと思っておりますが、比較的、そのほかのものについてはリモートではないかと思うとこ ろでございます。  しかしながら、ワクチン接種、健康に働いている医療従事者の方が8名も入院したことについ ては大変重く考えておりまして、それについてバックグラウンドデータを探しましたが、余りな いものですから調査を行ったところでございます。 (PP)  それにつきましては、医療従事者の入院率調査という形にさせていただいたところでございま す。新型インフルエンザウイルスに対するプレパンデミックワクチンの安全性の研究付随研究と してさせていただいたものでございます。  目的といたしましては、ワクチン接種後30日以内に認められた入院発現率が0.144%で、95% の信頼区間が0.044〜0.243%という状況でございますが、これを医療関係者の入院率を比較検討 するために、ワクチン接種が行われた施設、同じ施設の8月1日から11月30日までの4か月間 に安全性の研究の選択基準を満たし、かつ除外基準のいずれにも該当しない。  それで、通常の健康な方の入院の最大の理由は妊娠、分娩だということがわかっておりますの で、その妊娠されている方の数については可能であれば教えていただいて、職員数から除外をし ております。  それから、その詳細について入院した理由がわかるかどうかについてもお伝えをいただくこと にしておりますが、ただ、疫学研究の倫理指針に準拠し、倫理審査委員会に諮ったところ、職員 の方の入院について強制的に調査をすることが難しいという御指摘を受けまして、ここの施設内 職員に説明文書、本研究について詳細に説明し、結果の概略について記載したものを配布させて いただいて、上記の期間に入院された方には調査用紙を無記名で書いていただいて回収するとい う手法を取りました。 (PP)  次が、その結果でございます。64施設のうちの、実は医療機関の職員が接種をされた施設が62 施設でしたので、そのうちの49施設で倫理委員会の同意が得られまして、そのうちの48施設分 をとりまとめたところでございます。  「回収した調査票の例」というところに書いてあるとおりでございまして、こういった形で施 設の方からは票をいただきました。  下の方に書きましたのは、入院率の分布をドットで、散布図のような形にしております。勿論、 4か月間に医療機関の職員の方が入院されたことはないという施設も、下の0%のところをごら んいただくとおりでございましたし、平均としましては4か月間で0.55%という形になりました。  それを、安全性の研究をやりましたときには21日プラス30日の51日間というような調査期間 でございましたので、その4か月間の122日と51日ということで調整をいたしました結果、通常 の医療機関に勤務されている職員の方の入院率は、そこに書きましたとおり、51日間で0.175〜 0.286%で、平均すると0.230%という形になります。大体、概略、1か月当たり、医療機関従事 者1,000人の方に1人の方が何らかの理由で入院をされていたということになろうかと思います。  これを統計検定いたしますと、この安全性の研究と付随研究に参加していただいた職員総数2 万8,755人の方から妊娠数270を除いた数で、施設全体で入院された方が157名ございましたの で、こういった数になっておりますが、これとは統計学的な有意差を認めないということでござ います。  本付随研究の今のところの結論としては、今回の安全性の研究において、超過入院はなかった ものと思われるという結論を出させていただけるかなと思っているところでございますが、それ については御議論いただければと思うところでございます。 (PP)  ちなみに、こちらのワクチン全体を見ますと、発熱率が2.8%。それから、局所反応が起きたも のが71.0%。それから、頭痛、倦怠感、鼻水が見られたものが34.1%でございました。  局所反応、発熱、それから、全身反応とも若年者で頻度が高かったというのは、これだけの人 数の治験に準じた試験を行いますと明らかになってきたというところだと思います。  局所反応は1回目、2回目とも安徽株の発生頻度が高く、全身反応はインドネシア株の発生頻 度が高かったという、多少、株の違いが、数が多いものですから統計的な差が出ておりますが、 大きな違いではないんだろうと思います。  ちなみに、全く副反応が出なかった方は、先ほどのS試験にもありましたとおり、約15%しか なかったということでございます。85%の方は何らかの形の副反応があったというのが今回の結 論でございました。  以上でございます。 ○岡部議長 伊藤先生、そして、庵原先生、どうもありがとうございました。それでは、これか ら議論に入りたいと思います。  その前に確認したいんですけれども、多くの方はおわかりだと思うんですが、この表題はいず れも有効性という言葉は明確には打ち出されていないわけです。しばしば、いろいろなところで 見ていると、これの有効性はどうだ。効くか、効かないかということになっていくと思うんです けれども、有効性は私も治験や何かでやったり、自分でも対応することがありますけれども、そ の病気にかかるのを防ぐのが明らかで、病気の真っ最中ならわかるんですけれども、それはこの 場合は少し無理である。当然、病気がない。  それから、その次にわかりやすいのは、その病気の病原体を動物なり、この場合はヒトにかぶ せてみれば防げたか、防げないかがわかるわけですけれども、これも倫理的にできない。  そうなると、一番わかりやすいのは、それを防ぐだろう抗体があるか、ないか。免疫の反応が あるか、ないかで見るという、少し間接的な見方なので、恐らく、この中には有効性という言葉 ははっきり打ち出されてはいなかったのではないかと思います。  もう一つ、今、有害事象と副作用ということで御説明をいただいた中で、有害事象の定義はス ライドあるいは御説明の中でも聞いたんですけれども、副作用あるいは副反応の定義はどういう ふうにしたか、少し教えていただければと思います。  それで、伊藤先生、最後のところに、対象者の15%は何も症状がなかったけれども、副作用が 発生したのは85%というふうにおっしゃったんですが、これは副作用と考えてよろしいんでしょ うか。 ○伊藤分担研究者 それは局所反応と、それから全身反応は、大まかは副反応だろうと思います。 ただ、勿論、この中には因果関係を否定し切れないまでも、報告をいただいたものも一部まじり ますが、少なくとも局所反応の71%、それから、頭痛とかこういう項目を絞って聞いた34%の全 身反応については副反応というとらえ方ができるものだと思っております。 ○岡部議長 済みません、副反応の定義、それから、副作用と副反応も、これはここら辺の方は よくわかっていると思うんですけれども、後ろの方がときどき、副作用と副反応で混乱すること があるので、今、使っているものは副反応という言葉の方が多く使われているんですけれども、 その点も済みません。 ○伊藤分担研究者 ワクチンに関しては、副反応という定義をするんだろうと思っております。 特に、かなりはっきりした全身反応とか局所反応に関しては副反応というとらえ方だろうと思っ ております。 ○岡部議長 ありがとうございました。  先に伺ってしまいましたけれども、それでは、今の臨床反応あるいは抗体の変化といったよう なものを見て、初めて目にされる方もあれば、どこかで携わったか、あるいは目に触れた方がお られると思うんですけれども、初めての方もおられると思います。どうぞ、忌憚のない御意見を いただければと思います。  それから、こういうワクチン、あるいは新しい薬品が出たときには、治験とか臨床研究という ものが必須で、こういう客観的なことをやっているときには、あれをやらなくてはいけない、こ れをやらなくてはいけない、これもやろう、これもやろうということでどんどん出てくるんです けれども、実際にはボランティアの方に参加していただいているということ。それから、それの 接種に当たって、接種医は非常に慎重な思いでやっているということを一言付け加えさせていた だいて、その方々に深く感謝をしておきたいと思います。  それでは、議論をお願いします。  田代先生、どうぞ。 ○田代委員 庵原先生に確認をお願いしたいんですけれども、B試験の場合に、1回目は3年く らい前にベトナム株のワクチンを接種された方ですね。そのときに先生は、15μgのHA抗原量を 打った人と、5μgの抗原量を打った人、2つの、別々の方について、3年後にインドネシア株も しくは安徽株の15μgを接種した。そういうスタディなわけですね。  それで、この結果はその両方を一緒にまとめた結果というふうに話されたんですけれども、1 回目のベトナム株を打ったときに、5μgを打った人と、15μgを打った人で、セカンダリー・リ スポンスのときというのは差があったんでしょうか。 ○庵原委員 先生、最初の2回接種したときのデータですか。 ○田代委員 いえ、そうではなくて、今回の方です。 ○庵原委員 最初の2回接種したときの結果から言いますと、GMTにしましても、それから、 4倍以上の上昇率にしましても、H群の方が明らかにL群よりも高かったわけです。ですから、 そのデータを見て、審査の結果、15μgでないといけないだろうということで、15μgが承認され た。  それで、その人たちに今度は2年後に参加していただいたときのリスポンスを見ていますと、 大体一緒の結果です。指標によったら5μgの方が少しいいというような指標もあるんですけれど も、押しなべて、5μgであろうが、15μgであろうが、打った人の抗体反応の上がり具合とか、 それから、GMTなどを比べましても大きな差はなかったという結果でした。ですから、今回、 ひっくるめて1つにまとめて報告したということです。 ○岡部議長 どうぞ。 ○田代委員 そうしますと、プライミングということを考えますと、5μgの接種、Lグループの 人もプライムされていたということでしょうか。 ○庵原委員 今回の結果ですと、5μgの方は、ただ、こういうヒトの研究で行いますと、50人 のうちの1人か2人、ローレスポンダーといいまして、全然、抗体がわからない方が必ずおられ るんですけれども、それ以外の方は、L群であろうが、H群であろうが、抗体が上がったという ことで、結果から言いますと、免疫記録は誘導されていた。先ほどの田代先生のお言葉から言い ますと、プライミングされていたということになるかと思います。 ○岡部議長 ほかはいかがでしょうか。  押谷先生、どうぞ。 ○押谷委員 私の記憶違いかもしれないんですが、去年、この計画が提示されたときには、たし か数百人規模の小児の臨床試験も同時に行うというような話だったと思うんですが、今日は全然、 小児のデータは提示されなかったんですが、それがどうなったのかということ。  もう一点、最後に伊藤先生が付随研究の結果を提示されましたけれども、これは全く年齢とか そういうものがマッチングされていないと理解してよろしいんでしょうか。もともと、このワク チンを受けているグループというものは、多分、健康不安のない人たちが多い、バイアスがかか っているグループだと思いますので、この結果だけで本当に有害事象が少ないという結果を出し てしまっていいのかどうかということをお聞きしたいんです。 ○岡部議長 1番目の方は私も答えられるんですけれども、研究班が全く違うので、今回の対象 にはなっていないと思います。  それは庵原先生も関わっておられますね。どうぞ。 ○庵原委員 小児に関しましては、それは開発治験のレベルであって、臨床研究のレベルではな い。それで、そこに明らかにステージが違うといいますか、成人に関してH5N1は一応認めら れているワクチンですけれども、小児に関してはまだ認められていないので、ですから、全臨床 といいますか、今、臨床試験をやっている途中ということで、ここでは発表する対象にはなって いないということです。  それでは、2つ目の方に関しましては、伊藤先生お願いします。 ○伊藤分担研究者 おっしゃるとおりでございまして、今回、職員の年齢構成について聞いてお りません。なので、年齢、性別についてマッチはさせておりません。  ただ、スライドで出しましたとおり、もう少しで、逆に言いますと、付随研究の方が安全性の 研究として有意差を持って、通常の入院の方たちが高い状態だったんだろうと思っております。  ただ、この研究そのもののバイアスとして、spontaneousに入院しましたという御報告がなけれ ば率が下がる状態ですので、それをもってしても今回の安全性の研究で得られたものよりは通常 の入院の率が高かったのかなと思うところであります。  バイアスに関してはおっしゃるとおりでございまして、今回、参加をされた職員の方々がより 若くて健康だった可能性については否定するものではございません。 ○岡部議長 今回のスタディのリミテーションとして、誤解がないようにという意味を含めて、 そこの部分ははっきり出しておいた方がいいんだろうと思うんです。  そのほかにはいかがでしょうか。  今の入院のことがあったので、併せて伺いたいんですけれども、世の中といいますか、私も学 会とかそういうところで質問を受けて、私自身はお答えできなかったんですが、この入院された 方の、4番目になるんですけれども、先ほど発熱というような方でおっしゃっていましたが、四 肢末梢のしびれ感ということで、ギランバレーシンドロームが出たのではないかというような理 解をされているところもあるようですけれども、それはいかがでしょうか。 ○伊藤分担研究者 この症状が出ましたのが接種当日でございまして、しかも血液がデータで PaCO2が20あるような状態で、臨床医の方も含めて過換気症候群だったのではないかということ のコメントは受けているところでございます。 ○岡部議長 ありがとうございました。  川名先生、どうぞ。 ○川名委員 先ほどの副反応の件ですけれども、例えばこれは年齢とか、1回目、2回目といっ たようなことで非常に細かく解析されていますけれども、例えば比較の対象として、シーズナル インフルエンザに関して、このぐらいの詳細な副作用のデータというものはあるんでしょうか。 ○庵原委員 先生、そのシーズナルのデータは開発時点のデータしかないと思います。一般的に は、市販後調査の段階では、入院した症例以外は報告が各メーカーとも持っていないということ が1点。  それと、先生、シーズナルはあくまでもブースターなんです。プライミングではないんです。 ということは、臨床反応等は明らかに低いわけです。  そうしましたら、もしプライミングに関しましてこういった年齢のデータといいますと、今、 日本がパピローマウイルスのワクチンを開発中ですので、パピローマウイルスに関しましては初 感染なんです。それでプライミングなわけです。その辺りのデータを見比べていけば、これが高 いか、低いかということは検討できると思います。  少なくとも、外国が出してきているHPVのワクチンのデータを見てみますと、局所反応率が 九十何%ということと、それから、10歳代、20歳代、30歳代、40歳代、50歳代と年齢が上がっ ていきますと、やはり10歳代の方が全身反応の出現率、局所反応の出現率が明らかに高いです。 有意を持って下がってくる。ですから、今回と同じような傾向を、年齢の低い人ほど全身反応、 局所反応の出現頻度が高いというのは、HPVでは出されています。  そうしたら、H5N1でと言われたときには、そういうようなデータは余り、少なくともGS Kのデータでは、1回目の方が2回目よりも高いというデータは出ています。それで局所反応の 出現頻度は、GSKのデータはこれよりも数字が多いです。  ただ、ワクチンが違いますので、比べることが可能かどうかと言われたときは少し慎重にやら なければいけないんですけれども、少なくとも大体似たような、年齢が若い人ほど副反応の出現 率が高くて、2回目の方が低いという、これは一般的にこういうアジュバントの入った、こうい うプライミングするときのデータは大体こういう傾向だということで御理解いただければと思い ます。 ○川名委員 ありがとうございました。 ○岡部議長 ほかにいかがでしょうか。  林先生、どうぞ。 ○林委員 先ほどの神経系の症状というんでしょうか、庵原先生がお示しなさった副反応の方で、 多くは頭痛だと思うんですけれども、それ以外の何か神経系の副反応はどんなものがあったんで しょうか。 ○庵原委員 ほとんど頭痛と全身倦怠感で、神経系といいましても、それだけです。 ○林委員 たしか、数は少ないんですけれども、神経系で例えば11例あって、10例が頭痛。そう なりますと、1例は何かなというのがありましてね。 ○庵原委員 データを整理した日本医師会治験促進センターの山下さんに確認したら、目まいが あったということです。 ○岡部議長 御質問はなかなかないですか。  押谷先生、どうぞ。 ○押谷委員 済みません、細かい言葉の問題かもしれないんですが、この研究のタイトルが「新 型インフルエンザウイルスに対するプレパンデミックワクチンの安全性の研究」ということで、 これは非常にマスコミ等々を通じて一般国民に説明されているときも、この新型インフルエンザ に対するワクチンの研究という形で伝えられているんですが、これは正確に言いますと、新型イ ンフルエンザになる可能性があるH5N1に対するワクチンの研究ですね。そこら辺の整理はき ちっとしていく必要があると思うんです。 ○岡部議長 それは、この検討会でも何遍か指摘しているところでもあると思うんですけれども、 事務局の方から説明をいただけますでしょうか。 ○庵原委員 さっきのことで一言だけ言わせてください。  これは、要するに沈降新型インフルエンザワクチンH5N1というものが、もう名前が登録さ れているわけです。商品名といいますか、治験審査で通って、ですから、先生、それこそ薬の名 前と一緒で、ちゃんとした正式名なわけです。ですから、正式名をもって、それがおかしい、直 せと言って直ったならば、それを用いることはやぶさかではないんですけれども、ちゃんとした 名前として登録されているものを、こちらが勝手に違う名前で使うというのは、それこそおかし いという話になります。  ですから、この時点は、それの名前で登録されている、きちっとした名前を用いて研究課題名 としたということで御理解いただければと思います。 ○岡部議長 治験代表者としては、この名称を使ったのはやむを得ないというのは、今、庵原先 生の御説明どおりだと思います。それで委員会も、しかし、その名称そのものがおかしいのでは ないかということは提起していたので、それについて事務局の方から御返事をお願いします。 ○難波新型インフルエンザ対策推進室長 今のH5N1の株から生産しているプレパンデミック ワクチンにつきましては、庵原先生からもお話がございましたように、現在、薬事法上の承認さ れた商品名として沈降新型インフルエンザワクチンH5N1「北研」あるいは「ビケン」という 名称になっているのが現状でございますけれども、御指摘のとおり、新型インフルエンザウイル スから生産されるパンデミックワクチンと混同してしまうのではないかという御意見がございま す。したがいまして、医薬食品局審査管理課におきまして名称を変更することが検討されている のが現状でございます。  この件につきましては、医薬食品局において結論が出ましたら、改めて先生方に御報告をさせ ていただきたいと考えております。 ○岡部議長 この検討委員会では、以前にもこの問題も出ましたし、今日も押谷先生の方からそ ういう意見もありましたし、委員会としては是非、名称を変更していただきたいと思うところで すけれども、これは皆さんうなずいていらっしゃるようですので、参考にしていただければと思 います。  多分、外国も、これはnobel influenza virus vaccineとは言っていないと思うのと、WHO は最近、プレパンデミックとかそういうものではなくて、H5N1ワクチンというような言い方 をしていると思うんですけれども、田代先生、何かこの辺のことを、名称について教えてくださ い。 ○田代委員 押谷先生の御指摘のとおりで、今も難波室長から説明があったとおりだと思うんで す。  ただ、これは製造承認を取るときのプロセスとして、今から4〜5年前ですけれども、国際的 なコンセンサスとしては、プロトタイプのワクチンで承認を取っておいて、株がもし変わった場 合に、例えばほかのH5以外の株の新型ワクチンをつくらなければならなくなったときには、同 じフォーミュレーションで、株の変更は一部変更で、事務処理だけでやる。新たに臨床試験をや り直して、何か月、何年もかかってやるという、それはしなくていいようにするという、それは きちっと読み込まれていなければいけないかと思います。 ○岡部議長 ありがとうございました。そのほかはいかがでしょうか。  内田先生、どうぞ。 ○内田委員 本当だったら、私みたいなワクチンの専門家でもない人間が言うのは少しおかしい かもしれませんけれども、局所反応を副反応という中に入れて、今回でも75%の局所反応がある わけですけれども、欧米諸国とかWHOのいろんな、そういうワクチン副反応調査に関して見て いますと、局所反応というものは副反応と呼ばないというようなイメージが書かれているように 感じているんですけれども、結局、世間にこの話が流れるときは、何も反応がなかった人はたか だか15%で、副反応とか局所反応の起こっている、要するに異物を体に注入すれば反応が起こる のは、ある意味では当然のことだと思うんですけれども、そういうものを全部副反応という格好 で一括するのがどうなのかということをひとつお聞きしたい。  もう一点は、2回目の接種をしなかった人が5.3%、いわゆる295名おられるんですけれども、 その方たちは、なぜ2回目を受けなかったかという、何か調査・解析データがあればお知らせ願 いたいと思います。 ○岡部議長 庵原先生、よろしいですか。 ○庵原委員 最初のことに関しましてお答えして、あとは伊藤先生の方でお答えをすることにな るかと思うんです。  確かに内田先生がおっしゃるとおりで、現在、こういうワクチンの場合の言葉に、solicited local reactionと、solicited general reactionと、unsolicitedという形で3つに分かれてい ます。solicitedというものは、大体、ワクチンならば当然、局所反応が起こっても当たり前だと いう概念の下で、ないしはワクチンを打ったら発熱するのは当たり前とか、頭痛を起こすのは当 たり前という概念で示しています。  ただ、岡部先生にもお聞きしたいんですけれども、適切な日本語というものが、日本で使われ ているかどうかと言われたときに、逆に言いますと、それを直接、日本語に直しますと、予測さ れる局所反応、予測される全身反応、予測されない全身反応・局所反応で、そうしたら、それは 副作用とどう違うんだと言われたら、今の内田先生の説明どおりかと思います。  そこが一般市民にどこまで受け入れられているかと言われますと、余り受け入れていなくて、 また逆にいちいち説明したら、先生、それは副作用とどう違うんですかという話になるかと思い ますので、その辺は内田先生がおっしゃることがもっともだと思いますし、表現するときにはそ ういう予測されるという言葉の方が確かに誤解を招かないかなとは思っています。  ですから、この辺りはまた、これこそ岡部先生を始めとして、そういう言葉の使い方の何か別 の委員会を設けて検討していく必要があるのではないかとは思っていますので、岡部先生、何か コメントがありましたら、済みません。 ○岡部議長 この中で用語のことをやれるかどうかはわかりませんけれども、やはり副作用、副 反応、あるいは許容できる範囲のものかどうかというのは、例えば日本ワクチン学界とか、予防 接種に関する副反応を検討するグループとか、そういうところで言葉についてももう少ししっか りやっていきたいとは思います。  ただ、今のところは能書を見ても、あるいはいろいろなもののフォーマットの基準を見ても、 発熱、発疹、腫脹、疼痛というものが出てくるので、それは今の段階では記載としてはやむを得 ないのではないかとも思いますけれども、これはできるだけ改善していきたい、あるいはもっと 説明をしていきたいとも思います。  伊藤先生、残りの部分をお願いいたします。 ○伊藤分担研究者 2回目の接種をされなかった方が295名いらっしゃいまして、されなかった 人のロジスティック回帰分析をかけてみました。  それでひっかかりましたのが発熱で、発熱をされた方の中には、打たれなかった方、1回目に 発熱をされた方で、それから、特記すべき副反応として後ろに挙げてきたような、2回目の接種 といいますか、健康観察日誌をお持ちになられたときに、こんなものがあったから打ちたくない とおっしゃった方が要素として出てきております。もう一点は全身反応が、頭痛とか倦怠感だろ うと思いますが、それがあった方の中が要素としてひっかかりました。  局所反応に関しては、全く差がございませんでした。そういうローカルの反応でワクチン接種 を見合わせたという方はいらっしゃらなかったということが結論でございます。 ○岡部議長 ありがとうございました。  特別に何か原因があって、忌避したという形ではないんですか。そこまではわからないけれど もということですか。 ○伊藤分担研究者 正確に臨床研究をやりましたので、詳細について、なぜ打たないのかという ことは聞いてはいけないと考えますので、そういったことは伺っておりません。これはあくまで、 1回目の副反応の結果から打たれなかったということを類推させていただいているところでござ います。 ○岡部議長 ありがとうございました。そのほか、御自由にどうぞ。  今、いろいろな国、メーカーでもH5N1ワクチンというような形でつくって、いろいろ方法 も違うわけで、先ほど方法論からいっても比較ができない、同じテーブルでも話がやりにくいん だというようなところもありますけれども、現状でなかなかそういう比較ができないというよう なことについても、庵原先生か、田代先生か、御説明いただけたらありがたいんです。 ○田代委員 これは今まで、WHOで5回、H5N1のワクチンに対する世界の各メーカー、も しくはいろんな研究所、その他で行われた臨床試験の検討会というものが行われましたけれども、 この成績についてはすべてWHOのホームページに公表されていますが、ここで一番大きな問題 は、血清抗体の測定法が国際的に統一されていないということで、それぞれのメーカーが出して いる抗体価、数字が横並びで比べることができない。ですから、例えば先ほど庵原先生からお話 がありましたけれども、ヨーロッパのEMEAの、抗体価が4倍以上上がった割合が何%とか、 そういう3つのクライテリアがありますけれども、その数字そのものを横並びで比べることがで きないという大きな問題があります。  極端なことを言いますと、ある幾つかのメーカーでは通常用いられないような高い数字が出る ような計算の仕方をあえてしているようなところもあります。そこでWHOは、方法を統一化す るというのは技術的にもなかなか難しい問題がありますので、H5N1のワクチンを接種された 被験者の方の血清を世界各国から集めて、それをプールして、標準血清としてこれを用いて、そ れぞれの数値を相対的に構成する。そういうような作業が、今、進められています。そうしまし ても、まだかなりのばらつきがあるということは否定できない状況です。  以上です。 ○岡部議長 どうもありがとうございました。そういう事情が含まれているということになろう かと思います。  ただ、中和反応ということでやっていたり、HI抗体というものが出てきたり、あるいはその 血球がウマとか、ここには書いてありませんけれども、鶏とか、いろんなものが出てくるんです けれども、その辺の違いは、庵原先生、参考のために、ここの半分ぐらいの人は多分わかってお られると思うんですけれども、後ろの方の人はわからなくなってしまうのではないかと思います。 ○庵原委員 その辺は、私よりも田代先生とか河岡先生の方が詳しいかと思うんです。  一般的にウイルスの抗体というものは、体の中にウイルスが感染して、その増殖を抑えるとい うことが一番基本的になりますので、やはりウイルスに対する感染防御に主たる働きをする抗体 は中和抗体だ。これは一応、基本として押さえていただく必要があるかなと思います。ただ、中 和抗体というものは手間と時間と技術を要しますので、たくさんの検体を楽に短時間で処理しよ うと思うと、それなりの検査方法が、今、開発されている。  ただ、インフルエンザに関しましては、インフルエンザウイルスが簡単に培養細胞で分離され るよりも先に赤血球を凝集させる力があるという、これはHI抗体の方が先に見つかっています ので、HI抗体の方が信用されて、中和抗体が後になってきているという経緯があるかと思いま す。  その後は、田代先生とか河岡先生の方がお詳しいですので、追加でお願いいたします。 ○岡部議長 河岡先生、追加がありましたら御説明をお願いします。 ○河岡委員 特に追加ではないんですけれども、従来、インフルエンザの世界ではHI抗体とい う、アッセイ方法の問題だけなんですけれども、そういうアッセイ方法が使われていたんですが、 それはヒトのインフルエンザに感染したときにできる抗体のアッセイ方法なんですけれども、こ のH5N1に関しては、そのアッセイ方法では抗体の量をうまくアッセイできないので、中和抗 体という別のアッセイ方法を使っている。  それにしても、田代先生から御指摘のありましたように、中和抗体のアッセイ方法にしても、 必ずしもいろんなところでアッセイの方法が統一されていないので、得られた結果を必ずしも比 較することができないというのが現状です。 ○岡部議長 ありがとうございます。  開発中のものであるということでもありますし、それから、従来の季節性インフルエンザと同 じ尺度ではかれないというようなところで、なかなか、これは比較して調べることができないわ けですけれども、今回の検査の中でも恐らく、先ほど有効性というような言葉について少し注意 を促すような発言を私はしたんですけれども、この抗体も、うんと高いからすごく効きがよくて、 低いと全然だめとか、あるいは同じ抗体で比較して、高い方が症状が軽いとか、低いとか、なか なかそういう言い方も難しいのではないかと思うんですけれども、小田切先生、そこの抗体価と 臨床反応、あるいは効果といったような形で、何か御意見がありましたらお願いします。 ○小田切委員 まさに、今、岡部議長が言われたとおり、これは効果というものを判定するもの ではないと思うんです。まさにワクチネーションをして抗体が上がりましたというところが、今、 出ている成績そのものだと思います。  やはり効果というものは、ウイルスをチャレンジとかそういうものでやることでもって見られ るわけですけれども、ヒトにはそれはできないということで、効果は判定できないだろうと思い ます。 ○岡部議長 ありがとうございます。  何かすぱっと言えないところがあれなんですけれども、抗体が上昇している、あるいは抗体が 見られたということでは、例えば相楽先生、どういうふうに抗体価というものをとらえたらいい でしょうか。 ○相楽委員 それは、臨床の医師としてですか。 ○岡部議長 そうです。 ○相楽委員 一般的に言えば、先生は指標にはならないとおっしゃいましたけれども、高さとい うもので判断することになっていると思いますが、それは間違いということになるんでしょうか。 ○岡部議長 ありがとうございます。  つまり、これは期待ができる部分はあるけれども、エビデンスとして証明するところはないし、 そこら辺が、これであれば確実に防げるとか、そこは非常に言いにくい部分ではないかと思いま す。しかし、現象としては抗体の、しかも上昇が見られたところには意味があるだろうと思うん ですけれども、その辺で、もし何か異論、あるいは追加の御意見がありましたら、いただければ と思うんですけれども、どうでしょうか。  田代先生、御意見がありましたらお願いします。 ○田代委員 先ほど抗体のはかり方、測定の方法が統一されていないので横並びで比べられない ということをお話ししましたが、ここで誤解を避けるために、もう少し詳しく説明します。  ある同じ血清をほかのところでインディペンデントな方法ではかったときに、やり方が皆、違 うわけですから、その数値を横並びで比べることは必ずしもできないということなわけですけれ ども、一つの研究施設で、ワクチンを接種する前と、接種した後のペア血清といいますが、それ について、同時に抗体価をはかったときにどれだけ上がったかという比較はできるわけです。で すから、ワクチンを接種したことで抗体がどれだけ誘導されたかということの評価は現在の方法 でも評価できるということです。  それから、もう一つ、横並びで評価できないというのは、方法論が違うということが一つ大き な問題ですけれども、もう一つは、この数値そのものが、季節性のインフルエンザの場合は国際 的にほぼ測定方法が統一されていますけれども、その場合に血清抗体価が40倍以上あった場合に は有効である。何をもって有効とするかというのはなかなか難しい問題ですけれども、一応、そ ういうことが国際的なコンセンサスとして通用しているわけです。  これは先ほど河岡先生からもお話がありましたけれども、ウマの血球を使うか、鳥の血球を使 うかによって、同じ方法で違った血球を使ったときに、同じ数値を持った、同じHI抗体価を示 したからといって、同じ意味があるという意味で比べられることはできないということなんです。 ウマの血球を使ったアッセイ方法と、鳥の血球を使ったアッセイ方法は全く別の方法ですから、 たまたま、その数値が一致したか、一致しなかったからということで、それを比べることもでき ません。  以上です。 ○岡部議長 なかなか、読み方や何かは難しいわけですけれども、今回の臨床研究プラス抗体の 動きから見ますと、少なくともプライミング効果があって、ブースター効果も見られたというこ と。それから、副反応、あるいは有害事象は一定のもので見られているけれども、殊更に重症と 言われるものについては、少なくとも、この人数の範囲では見られなかった。  それから、この抗体の測定法はいろいろあるので、一律にほかのものと単純な比較はできない けれども、少なくとも、これについての免疫反応はヒトに起こすことができた。そういうふうに 結論付けられるような気がするんですけれども、今のまとめ方で何か御異論がありましたら、あ るいは追加した方がいいというのがありましたらお願いします。  河岡先生、どうぞ。 ○河岡委員 済みません、少し細かいことで恐縮なんですけれども、庵原先生かだれかにお願い したいんですが、最初のブースター試験のときのH群とL群に分かれていて、L群でブーストを かける前に抗体価が非常に低い人がいたと思うんですけれども、その人にブーストをかけた場合 に、非常に低いか、ほとんど検出できないような人にブーストをかけた場合の7日目の抗体価の 上がり方というのはいかがでしたか。 ○庵原委員 先生、あそこの数字は、そこに配付しました数字のGMTを見ていただけるとわか ると思うんですけれども、L群もH群も、ほとんどの人が追加接種する時点で10倍未満です。そ れで、1週目のGMTがそこに示した数字ですので、L群の方がリスポンスが早いとかというよ うな傾向はなかったと思います。  ですから、2年経てば、H群であろうが、L群であろうが、ほとんど検出されないレベルに下 がってしまっているという状況にブーストをかけたという形で理解してください。 ○河岡委員 ですから、やはり量は少なくても、1回プライムすると、結構、プライムされてい るということになりますか。 ○岡部議長 今の株を使う限りはです。違う株になってきたときはわからないけれども、可能性 としてはプライミングの効果と、ブースターをかける、期待ができたというようなことがあると 思うんです。  そのほかに、何でも結構ですので、いかがでしょうか。  山口先生、どうぞ。 ○山口委員 中和抗体の180日後というところを見ますと、ある程度上がっているので、半年ぐ らいでは抗体が高い状態が続くということで、今、先生は2年ぐらい経つとかなり下がってしま うと言うんですけれども、この間の、大体半年間ぐらいは抗体が高いというのはわかるんですけ れども、その後の下がり具合などは、例えばH群とL群の違いとか、そういうことも何かあるよ うなことはあり得るんでしょうか。通常、半年ぐらいすると下がるのはそうかなとは思うんです。 ○庵原委員 先生、はかっていないからわかりません。逆に言いますと、180日までよくもってい ると思いました。もう少し早い時期に消えているのかなと思っていたのが、180日までもっている という結果で、ただ2年はもたないということです。  それは抗体レベルの話であって、先生、免疫記録は2年はもっていますので、プライミングさ れた記録はひょっとしたらもっと、論文的には5年はもっているというデータもありますし、ほ かのワクチンですと十数年大丈夫だというデータがありますので、プライミングされておれば 少々長い間は大丈夫だろうとは思います。 ○岡部議長 ほかにはいかがでしょうか。  それでは、今日の目的は、今まで出された臨床治験について、この専門家委員会としてはどう いうふうに考えるかということなので、少し時間は早いんですけれども、先ほど私がまとめたよ うな形で、この委員会としては、今回の結論は出たのではないかというふうにも思います。  ただ、先ほどの話にもありましたけれども、外国のデータに比してどうだということが必ず問 われるわけですが、先日のWHOの会議に私が出席したときも、こういういろいろなところでい ろいろな規模の、小規模の治験であったり、あるいはテストをやられているけれども、共通の方 法がないというのもある。それから、いずれも規模が小さいので、エビデンスが極めて少ない。 したがって、大きく広げるというようなことにまではまだ至らないけれども、今、2,000人の規模 の臨床研究がスイスで行われ、その後は6,000人規模の日本の調査であるということで、むしろ 私たちはいつも、外国のデータはどうなっているんだということでやりますけれども、そういう 意味では日本のデータを期待している部分も大きいと思います。  それで、冒頭に事務局の方からもおっしゃったと思うんですけれども、是非、この調査成績を、 英文のジャーナルにも勿論だと思うんですけれども、WHOというところは世界のそういうデー タを、わかったらできるだけ早く教えてほしいというようなことも求めていますので、是非とも 報告をして国際的な評価も得た方がいいのではないか。それを基にして、国際社会あるいは日本 において、このワクチンを今後どうしていくかということの話に進んでいくのではないかと思い ます。  今後の予定としては、多分、今日の結果を踏まえた上で、ワーキンググループがやるか、ある いは親会議に持っていくか。今後のワクチンのストック、あるいは使い方。それから、現場の方 では、ストックはされているけれども、実際にそのストックが解除になった、つまり、使用しな くてはいけない状況になったときに、どういうロジで、一体、だれが、どういうメカニズムでや るかということがまだ決められていないわけで、そこのところがないので、第一線にいる方たち は、その辺について非常に知りたいといいますか、不安といいますか、計画上、それが必要であ るということも言われていますので、これはワーキンググループその他のところでの検討で、委 員会としても結論を出していかなくてはいけない部分だろうと思います。  以上のようなことで、少々早目ではあるんですけれども、一応、今日はほかに御意見がなけれ ば終了にしたいと思うんですけれども、よろしいでしょうか。  事務局の方から、今後のことと、今日のまとめも含めて一言お願いします。 ○難波新型インフルエンザ対策推進室長 お手元に参考資料を付してございますので、若干、補 足の説明をさせていただきたいと思います。  先ほど局長からのあいさつにもございましたように、与党のプロジェクトチームから「鳥由来 新型インフルエンザ対策の一層の推進について」というものの提言をいただいておりますので、 それにつきましては参考1ということでお手元に付けさせていただいております。  また、予算の事項でございますけれども、先生方からのさまざまな御提言等をいただきまして、 参考2に関しましては「平成20年度補正予算の概要 〜新型インフルエンザ対策〜」について1 枚お付けしております。  平成20年度に関しましては、大きく分けて第1次補正と第2次補正というものがございました けれども、第1次補正では、抗インフルエンザウイルス薬の追加備蓄を含め、491億円が計上され ております。また、第2次補正でも医療対策の推進といったことで、パンデミックワクチンの製 造能力強化ということで15億円が計上されてございます。  あと、参考3に関しましては「平成21年度予算の概要」ということでお示しをさせていただい ております。  新型インフルエンザ対策経費といたしまして、144億円が計上されております。主な事業として は、ここに記載されているとおりの内容でございます。  事務局からは以上でございます。 ○岡部議長 ありがとうございました。  今の参考として出された資料に、何か御質問・コメントはよろしいでしょうか。  それでは、これはわかりましたということで委員会の方で拝見をして、今後の予定について何 かお考えがあるようでしたら、これは事務局の方からお願いします。 ○岩渕補佐 次回の開催につきましては、後日、改めて日程調整をさせていただきます。 ○岡部議長 そういうことですね。今後、ワクチンのストックの問題、あるいは期限の問題、そ れから、事前接種をどうするというようなことについても引き続き、このワーキンググループ、 あるいはこの親会議の方で検討を続けていくということでやりたいと思います。  今日はどうもありがとうございました。   (紹介先) 厚生労働省健康局結核感染症課 TEL:03-5253-1111(内線2386) 担当 渡邉、伊藤