09/03/27 第2回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録 第2回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録 1 日 時  平成21年3月27日(金)10:00〜10:45 2 場 所  厚生労働省専用第18・19・20会議室 3 出席者   【委員】 公益委員   今野会長、武石委員、野寺委員、藤村委員   労働者委員  石黒委員、加藤委員、木住野委員、田村委員、              團野委員        使用者委員 池田委員、岡田委員、高橋委員、原川委員、 横山委員、吉岡委員   【事務局】厚生労働省  氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、               山口主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、               平岡課長補佐 4 議事内容   目安制度のあり方について 5 議事内容 ○今野会長   ただ今から第2回目安制度のあり方に関する全員協議会を開催いたします。  本日は勝委員、中窪委員、吉越委員が御欠席でございます。本日は前回に引き続きまして、 当面の検討事項と今後の進め方について議論していきたいと思います。この点については、 前回事務局から当面の検討事項については、「表示方法及びランク区分のあり方」と「賃金 改定状況調査等参考資料のあり方」の2点が提示されております。これら以外に検討すべき と考えられる事項はないかなどを含めまして、当面の検討事項や今後の進め方について御意 見を伺えればと思っております。まず、労使それぞれから御発言をいただいて、その上で議 論をしていきたいと思います。それでは労働者側の委員からお聞かせいただけますか。 ○團野委員   ただ今、今野会長から御発言がございましたように、今回の目安制度のあり方に関する 全員協議会において検討すべき課題について、第1回の全員協議会で既に2点について確認 がされております。労働者側としてはテーマ以外といいますか、これに付随をいたしまして、 審議の中で新たに検討が必要だと判断されたものについては、審議のテーマとして加えてい ただきたいと考えています。検討させていただくということを前提としまして、審議・検討 に当たっての論点について申し上げたいと思います。  まず1点目の「表示方法及びランク区分のあり方」に関して、8点申し上げたいと思いま す。まず1点目です。表示方法ですが、この方法については目安制度がスタートしたのが 1978年であります。これ以来、全国を4つのランクに分けまして、それぞれランクごとの 引上げ額を示す現在の方式が今日まで続いているわけです。今後もこの方式を継続するか否 かが焦点となると考えておりますが、目安制度30年の検証と評価をしっかり行った上で、 課題・問題点の洗い出しをすべきだと考えております。第3回以降の目安制度のあり方に関 する全員協議会におきまして、そのための関連する資料の提示もお願いをしておきたいと思 います。  2点目です。この目安制度の検証と評価に当たりましては、まず目安制度発足の目的でも あります全国的な整合性の確保にどのように寄与してきたのかが論点となるだろうと考え ております。したがって、全国的な賃金の実態と地域別最低賃金の水準との関係が、整合的 であるかどうかの実態分析を行いながら検討すべきだと考えます。  3点目です。目安額についてです。最低賃金法改正の趣旨、政府の成長力底上げ戦略推進 円卓会議での議論にも配慮しながら審議を行った2007年度、2008年度の2年間を除きます と、おおむね賃金改定状況調査結果における第4表、一般労働者及びパートタイム労働者の 賃金上昇率に準拠した目安となっていたと言えると思います。しかも、1980年から2005年 までの25年間は、各ランクの中間値や平均値に同率を乗じた引上げ額による目安を示して おります。こうしたことから、ランクの入替えによって現象的にランク間格差がなくなった ように表面上は見えるわけでありますが、実態としてはこれらに該当する地方を除けば、30 年間にランクとランクの間の格差が拡大する、いわゆるランク内収斂、ランク間格差の拡大 傾向がますます顕著になってきたと考えております。こうしたランク間のかい離、ランク間 の溝が拡大することが地域別最低賃金の全国的な整合性の確保という面で問題はないのか、 などの検証についても行うべきではないかと考えております。  4点目。ILO条約なり勧告、具体的には131号条約、135号勧告を踏まえれば、最低賃金 が生計費や一般的な賃金水準との関係で適切なレベルかどうかの評価が重要視されるべき だと考えます。こうした観点から、論議の中で必要があると判断される場合には、現行の方 式にこだわらない新たな表示方法のあり方についての検討も必要だと考えます。具体的な考 え方につきまして、次回以降、適宜労働者側としての見解も申し上げていきたいと思います。  5点目です。ランクの入替えです。先ほど指摘をさせていただきましたように、ランク間 のかい離が大きい現状から、仮に上位ランクに移動したとしても、水準面での抜本的な是正 措置が担保されなければ、ランク移動の効果が希薄になるということです。また、移動前の 水準を新ランクに持ち込むことになりますので、ランク内やランク間の整合性の面でも課題 が生じると認識しています。こうした点についての検証、改善策の検討が必要だと考えてお ります。  これにかかわって6点目です。したがいまして、ランクの振分けについての論議について は、表示方法についての基本論議をしっかり行った後に、現行方式の継続を前提とした場合 に限定して検討されることになるのだろうと考えております。その場合、これまでランクの 振分けの根拠としてきた20指標については、その段階で改めてそれぞれの指標について見 直し・検討をしたらどうかと考えております。  7点目です。前回の2004年12月の目安制度のあり方に関する全員協議会報告では、時間 額単独方式への移行、厳しい経済情勢の中で改定率が低くなっていることによって、ランク ごとの目安額に差が生じにくい。ランクを設定する意義は相対的に低下している。この認識 に立って、次回見直しの際には、ランク設定の必要性を改めて検討することが必要であると 課題を指摘しております。この宿題についてもしっかり議論をすべきであろうと認識してい ることを申し上げておきたいと思います。  8点目です。この2年から3年の目安審議の中で論点となっておりますランクごとの目安 額に格差をつけたらどうかとの考え方であります。労働者側としては問題意識を持っている ということを申し上げます。したがって、目安制度の目的に照らして真摯な議論をする中で、 考え方の整理をしていく必要があると考えております。  次に、2つ目の「賃金改定状況調査等参考資料のあり方」に関しまして、2点申し上げた いと思います。  1点目。目安審議において、賃金改定状況調査に偏重しない審議が望まれると思います。 適正な最低賃金額について議論することが何よりも大切である。したがって、審議に当たっ ては絶対額を重視することが肝要だと考えます。一般労働者の賃金水準、高卒の初任給水準 などに照らして、あるべき水準が議論できるように一層の資料整備を求めておきたいと思い ます。なお、賃金改定状況調査については、これら関連資料の一つとして位置づけられるの だろうと思います。その際、調査対象規模の拡大とともに水準論議ができるような活用面で の見直しも必要だと考えています。  2点目。最低賃金法における最低賃金決定に当たっての3要素の1つである生計費につい てです。この生計費に関しても、資料の整備がより必要だと思っております。生活保護基準 との整合性の確保はもとより、例えば連合が作成をしておりますリビングウェイジなど、最 低生計費と最低賃金との関連についてもしっかりした議論ができるようにすることが重要 であると考えていることを最後に申し上げたいと思います。  以上、今回の目安制度のあり方に関する全員協議会における検討すべき事項、内容、そし てその論点について現段階での労働者側の見解を申し上げました。具体的な考え方、そして これに付随する論議すべき事項については、次回以降関連するテーマ審議の中で、論議に参 加してまいりたいと考えています。以上です。 ○今野会長   ありがとうございました。では、使用者側の御意見をいただけますか。   ○高橋委員   私の方から、まず使用者側としての基本的な考え方について述べさせていただきます。 その他、私が述べた後に、各委員の方から補足の御意見をいただければと思います。  まず今回の検討テーマですが、事務局から示された2つの検討テーマにつきまして、現時 点におきましてそのとおりで結構であろうと思います。その上で、それぞれ2つの検討テー マにつきまして、少し考え方をブレイクダウンしたものを述べさせていただきたいと思いま す。  先ほど労働者側の方から指摘がありましたが、ランク方式を採用してから既に30年以上 が経過しておりますので、一度これまでの過去の状況等を踏まえながら、検証・評価を行っ て、ランク方式について委員間で共通認識を持っていくことが大変重要であろうと考えてお ります。その際に、ランク方式につきましては長年労使が真摯な話合いを基に積み上げてき たという経緯も十分に踏まえた上で、ランクを設定しているメリット・デメリットを十分に 洗い出しをしながら、慎重に検討していく必要があろうと思います。  2点目としまして、ランクの振分けにつきまして少しコメントしたいと思います。現在は 20指標を用いましてランクの振分けを行っているわけです。これにつきまして、果たして この20指標でよろしいのかどうか。指標を増やす必要もあるかと思いますし、特に企業経 営に関する5指標につきましては、果たして支払能力を示す指標として妥当かどうかという 問題意識を持っておりまして、再検討が必要なのではないかと考えております。  過去2年間の審議におきましては、成長力底上げ戦略推進円卓会議の合意が大きな影響を 与えたということは、異論がないところだろうと思います。その際に、成長力底上げ戦略推 進円卓会議の合意でも、何よりもまず中小企業の生産性の向上ということが前提であったと 思っております。生産性の向上があったかなかったかということを踏まえるという観点から も、指標についてのあり方を検討していく必要があろうと思います。  ランクの見直しの頻度ですが、現在は5年に一度ということで、今年たまたま見直しの年 に当たっていますが、果たして5年に一度でよろしいのか。経済状況がいろいろ動いている 中で、もう少し見直しの頻度を短期化していくということも含めて検討をしていく必要があ るのではないかと思います。  次に「賃金改定状況調査等参考資料のあり方」につきまして、コメントをさせていただき ます。まず、この調査の対象についてです。過去の対象業種について申し上げたいと思いま すが、もともとは製造業、卸売・小売業、飲食店,サービス業ということで、6対4対3か らスタートして現行に至っています。果たして労働者の実際の就業状況から見て、この6 対4対3という基本が労働者の実状と合っているのかどうかということも含めて、業種の配 分を考えていかなければならないのではないかと思いますし、果たしてこれだけの業種でい いのか、新たな業種の追加も検討のテーマになるのではないかと考えています。地域的な話 を申し上げますと、県庁所在地と地方の小都市の比率につきましても、現行のままでよろし いのかどうかという問題意識を持っております。  それから、4表が重要な指標としてこれまで審議をされてまいりましたが、4表の数字の 作られる過程におきまして、現在の調査項目から作られている4表の数字の出し方について も、問題意識を持っております。これは次回以降、私どもの方から御意見を申し上げたいと 思います。  私どもといたしましても、基本的には賃金と最低賃金は整合性を高めていく必要があろう と思っておりますが、その観点からは、果たして賃金改定状況調査がもちろん基本ではあり ますが、それ以外にも追加的な資料が必要なのではないかと思います。毎回、中央最低賃金 審議会におきまして、各都道府県の賃金分布の状況が示されてくると思います。そうします と、最低賃金近辺に張りついていらっしゃる労働者の特定が既に済んでいるわけでありまし て、そういう方々を対象として、実態がどうなのか追加的に調査・検討をして、参考資料と して加えていくことも考えられるのではないかと思っております。私からは以上です。 ○今野会長   ありがとうございました。他にございますか。   ○池田委員   高橋委員の発言に加えまして、商工会議所としての意見を2点補足したいと思います。1 点目は、高橋委員の御発言の補足ですが、賃金改定状況調査等参考資料のあり方につきまし て、調査の対象などを見直すためには、最低賃金で働いている方たちの属性、世帯主か否か、 正規労働者か非正規労働者かなどの問題や、最低賃金で雇用をしている企業の属性、業種、 従業員数、労働分配率、所在地などについて調査を行うべきではないかと思います。最低賃 金で働いている人や、最低賃金で雇用している企業の実態が分かれば、誰を対象にどのよう に調査をすればよいかが明らかになると思っております。  2点目は、最低賃金法により生活保護との整合性に配慮することが求められている点につ いてです。この点については、今すぐに議論を始めるということではなく、中長期的な課題 として整合性をどのように考えるかにつきまして研究し続けることが必要ではないかと考 えております。以上です。 ○今野会長   ありがとうございました。それでは原川委員どうぞ。   ○原川委員   今、高橋委員と池田委員が仰ったことと重複するかもしれませんが、3点申し上げたいと 思います。まず、先ほど高橋委員からも出ましたが、生産性の向上について、成長力底上げ 戦略推進円卓会議では最低賃金の引上げとともに、もう1つの柱として生産性の向上がポイ ントになっていたと思います。しかし、最低賃金の引上げのほうが先行しているような感が あります。それというのも、生産性の向上には時間がかかるということもあり、また昨年あ たりからの急激な景気の悪化もありまして、どうも生産性の向上ということが忘れられつつ あるのではないかと危惧しております。やはり成長力底上げ戦略推進円卓会議の方針で、昨 年、一昨年度、大幅な引上げとなったわけですから、その約束は守っていただかないといけ ない。  そういう意味で、最低賃金の審議に先立って、目安の審議に当たっては、特に中小企業の 生産性の向上の成果も見極めるという視点が必要ではないかと考えております。これは是非 お願いをしたいと思います。目安審議の中で、生産性の向上をどのように反映していくか、 成果をどのように見ていくかということが問題になると思いますが、先ほど出ましたが、20 指標の中でそういったデータを追加するとか、いろいろあると思いますが、生産性の向上を 重視していただきたいというのが1点です。  2点目は、ランクについてです。地方の意見を聞きますと、かなり自分のところのランク 付けに対して不満を持っている都道府県が多い。なぜうちはAランクなのか、なぜうちはC ランクなのか、DランクであるはずなのにCランクなのかと。そういうような疑問を持って いるところが結構あります。その原因は、ランクについての理解が少ないということもあり ますし、また、ランクをこちらで検討してその結果を出したその過程、あるいは理由などを 理解していない、伝わっていないということも多々あるのではないかと思います。もう1 つは、ランクが高いところでも同一の都道府県内においては東西南北、例えば工場地帯と農 業地帯、例えば東京でいいますと東京23区とその他の市町村、あるいは離島では格差が大 きいということがあります。そういった諸々の経済情勢の中で不満が出てきている。こうい う不満を何らかの形で解消しないといけないと考えます。こういった問題点についても検討 していく必要があるのではないかと思います。  3点目は、池田委員からも出ましたが、最低賃金で働いている労働者、あるいはその影響 を最も受けやすい中小企業についてもう少し実態をよく把握する必要があると私も思いま す。最低賃金の影響は全国民的に影響があるわけですが、いちばん影響を被るところはやは り中小企業あるいは零細企業ですので、そういったところも留意しながら目安制度を運用し ていくことが必要ではないかと思います。以上です。 ○今野会長   ありがとうございました。他にございますでしょうか。労働者側はよろしいですか。そ れでは事務局から1枚の資料がせっかく付いていますので、事務局からお願いします。   ○吉本勤労者生活課長   恐れ入ります。御参考ということで、前回あらかじめ私どもで考え得るスケジュールと いうことでお示したものと同じものをお出ししていますが、今後の進め方について御議論い ただく際のたたき台として御覧いただければと思います。   ○今野会長   今、労使の方から御意見をいただきましたので、それについての御質問、御意見がござ いましたらお願いします。よろしいでしょうか。今日は労働者側、使用者側から当面検討す る課題の基本的な考え方についてお話をいただきましたので、それを踏まえて当面検討すべ き課題については、事務局から提案された「表示方法及びランク区分のあり方」、「賃金改定 状況調査等参考資料のあり方」、この2点を検討課題として議論をしていきます。その際に、 労使とも多様な観点から、あるいは広い観点から御議論をしていただければと思います。  進め方については、今事務局から説明していただきましたが、このような感じの進め方で 進めていくということにしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○今野会長   それでは次回以降から本格的な論戦に入るということになります。一応次回以降を楽し みにしていますが、本日の議題はこれで終わります。今、お話した内容にしたがいまして、 次回は「表示方法及びランク区分のあり方」について、フリーディスカッションをさせてい ただければと思います。日程については、委員の改選等がありますので、改めて調整をさせ ていただきたいと思います。これで今日の目安制度のあり方に関する全員協議会は終わりま すが、議事録の署名は石黒委員、吉岡委員にお願いをいたします。それでは今日はこれで終 わりたいと思います。ありがとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)