09/03/26 第128回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第128回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成21年3月26日(木)16:00〜 2 場所  厚生労働省省議室(9階) 3 出席者    委員  公益委員 :柴田委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:市川(隆)委員、平田委員   事務局  大槻職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木主任中央需給調整事業指導官、松原需給調整事業課長補佐、        待鳥需給調整事業課長補佐、鶴谷需給調整事業課長補佐、        竹野需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について       (2)その他 ○清家部会長 ただいまから、第128回「労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会」を開催い たします。本日は、公益代表の鎌田委員、使用者代表の山崎委員がご欠席です。  本日は、最初に公開で労働力需給制度についてご審議いただきます。その後、一般労働者派遣事業の許 可の諮問、有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可の諮問に関わる審議を行いますが、許可の諮問 については、資産の状況等の個別の事業主に関する事項を取り扱いますことから、これについては「公開 することにより、特定の者に不当な利益を与え、または不利益を及ぼす恐れがある場合」に該当いたしま すので、非公開とさせていただきます。傍聴されている方には、始まる前にご退席いただくこととなりま すので、予めご了承いただきたいと思います。  それでは、議事に入ります。最初の議題は「労働力需給制度について」です。昨年末以来、主に製造業 務派遣における、いわゆる派遣切りの問題など、労働者派遣制度を巡って、さまざまな動きが出てきてお ります。  これを受けて与党では、新雇用対策に関するプロジェクトチームにおいて、労働者派遣制度のあり方も 含め、さまざまな議論が行われていると伺っております。今月の19日に与党PTにおいて「さらなる緊急 雇用対策に関する提言」がとりまとめられ、その中に労働者派遣法に基づく派遣元・派遣先指針を強化す ることが盛り込まれております。これを受けて派遣元・派遣先指針の強化案について、昨日25日の職業安 定分科会に諮問され、当部会において検討することとされたところです。  また同じく与党からの提言の中には、一般労働者派遣事業の許可基準を強化するということも盛り込ま れておりまして、これを受けて許可基準の改正案について、事務局に用意をしていただいております。こ ちらは当部会への報告事項という位置づけです。本日はこれらについて、ご議論をいただきたいと思いま す。それでは、事務局から説明をお願いします。 ○竹野補佐 それでは、ご説明いたします。本日の議題は2点で、1点目は「派遣元・派遣先指針の 改正」、もう一点は「許可基準の改正」です。いま部会長からご発言がありましたが、まず1件目の「派遣 元・派遣先指針の改正」については、大臣告示の改正になりますので、労働政策審議会の諮問事項です。 昨日付けで労働政策審議会あて諮問をして、昨日開催された職業安定分科会において、本部会で議論する こととされたということで、お手元の資料1にお配りしています。  2点目の許可基準の改正については、法律上の許可基準の解釈を業務要領、通達で示していますので、 形式としては通達の一部改正ということになります。したがって、労働政策審議会の諮問事項ではありま せんが、過去の取り扱いなども踏まえ、報告をさせていただきます。  まず改正の背景についてご説明します。労働者派遣制度の見直しについては、昨年のこの部会、それか ら職業安定分科会の議論を踏まえて、政府として労働者派遣法の改正法案を提出しましたが、現在、継続 審議になっており、具体的な審議にはまだ入っていない状況です。  一方、この間の経済情勢の悪化等があり、いわゆる派遣切りと称して、派遣契約の中途解除に伴う派遣 労働者の解雇、雇止めが非常に問題になっているという状況です。この状況については、資料1の参考1 を付けておりますので、ご覧いただければと思います。  横置きで「派遣労働者の雇用調整の状況について」ということでまとめておりますが、平成19年度の事 業報告で物の製造業務に従事する派遣労働者が46.6万人です。また、これはハローワーク等を通じて把握 した数字ですが、3月末までに派遣先で契約がなくなる派遣労働者(派遣期間の満了、中途解除を含む) が10.7万人、そのうち中途解除により契約がなくなる派遣労働者が5万人という状況です。このうち派遣 先で就業機会の確保がなされなかった者が44.6%と42%を合わせて大体9割弱。派遣元で離職に至った方 が8割強で、中途解除の場合には派遣労働者のほとんどが職を失っておられる状況です。  こうした状況を踏まえて、与党でも、法改正によらず早急に対応すべき事項を含めて議論がなされ、こ の結果、去る3月19日に指針の改正、許可基準の改正について提言がなされました。これについては本 日の資料の最後に参考資料を付けていますが、こちらに「さらなる緊急雇用対策に関する提言」というこ とで、与党新雇用対策に関するプロジェクトチームがとりまとめた提言を付けています。本日の議題に関 わる部分は2の1の1が派遣契約の中途解除に関しての指針の改正の内容、2の1の4の部分が適正な雇 用管理を行えない派遣会社の規制ですが、ここに許可基準の強化が提言されています。こうした状況に鑑 みて、政府としても早急に対応すべきと考え、これらの改正を行うということで、本日提案しております。  内容についてです。まず1点目は「派遣元・派遣先指針の改正について」です。参考資料のほうが大体 同じ内容ですので、資料1の参考2に基づいて説明します。  資料1の参考2で、派遣契約の中途解除に係る指針改正のイメージということで、現行と改正後が書い てあります。現行の規定は左側で、派遣契約の中途解除の場合については、まず派遣先指針において、1 の2で、中途解除の場合には相当の猶予期間をもって派遣元に解除の申入れを行う。中途解除を行う場合 には、新たな就業機会の確保を行う。これができないときには解除日の少なくとも30日前に予告をする。 予告を行わない派遣先は30日分以上の賃金相当額について損害の賠償を行うということが定められてお ります。  派遣元指針においては2の2ですが、派遣先から関連会社のあっせんを受ける等により、新たな就業機 会を確保する。それから中途解除に伴い、解雇しようとする場合には、労働基準法等に基づく責任を果た す、といったことが規定されています。しかしながら、基本的に休業等により雇用の維持を図るというこ とをあまり念頭に置いていないような書き方になっているということもあって、解雇を前提にしているの ではないかという意見もあります。  派遣先のほうでは、予告さえしてしまえば、何ら責任を負わないかのような規定にも見えるということ で、このため、派遣先の責めに帰すべき事由によって中途解除が行われる場合には、まず派遣元のほうで 休業等により雇用の維持を図るということ、休業手当の支払等の義務を確実に履行するということを定め るとともに、派遣先においても、派遣元が支払った休業手当の額、これは派遣元に生じた損害になります が、こういった損害について賠償しなければならないということを、もう少し明確化しようということで 改正を考えています。それから、これは中途解除のときだけではなく、派遣契約の締結時にもそのような ことを併せて定めようということで考えています。  具体的な改正の記述は参考2の右側の部分です。派遣先指針ですが、1の派遣契約の締結時においては、 派遣先の責めに帰すべき事由により中途解除を行う場合には、派遣先は新たな就業機会を確保する。それ ができないときには、少なくとも派遣元事業主に生じる損害である休業手当、解雇予告手当等の額以上の 損害の賠償を行うということを、派遣契約に定めるということです。  2の中途解除時ですが、相当の猶予期間をもって解除申入れを行う。就業機会の確保を行うということ は、現行と同様です。その下ですが、これができないときには、少なくとも派遣元事業主に生じた損害の 賠償を行うということで、損害の賠償を行うことを明確化するということです。  その例示として、休業させるときは休業手当相当額以上、やむを得ず解雇するときは相当の猶予期間な く中途解除の申入れを行ったことにより、派遣元が解雇予告を行わない場合は30日分以上、解雇予告日か ら解雇日まで30日に至らない場合には、解雇日の30日前から解雇予告日までの日数の賃金相当額以上の 額について、損害の賠償を行うということで定めたいということです。  派遣元指針ですが、派遣契約に1の1ア・イの事項を定めるように派遣先に求める。中途解除時には、 派遣先から関連会社のあっせんを受ける。派遣元が自ら派遣先を確保することも当然必要ですので、派遣 元事業主において、他の派遣先を確保するということで、新たな就業機会の確保を図っていただく。これ ができない場合には、中途解除に当たって、まず休業等を行い、雇用を維持する。休業手当の支払等の責 任を果たす。さらにやむを得ず解雇しようとするときも、労働契約法の規定を遵守することはもとより、 解雇予告手当の支払等の法令に基づく責任を果たすということで、指針を改正したいということです。こ の指針の改正については、早急に対応すべきということを踏まえて、年度内の3月31日に公布・適用し たいと考えております。以上が指針の説明です。  2点目の許可基準です。許可基準については、資料2でご説明します。「一般労働者派遣事業の許可基準 の見直し」という資料を出しています。現行では一般労働者派遣事業を行う場合には許可が必要ですが、 その際に雇用管理を適正に行えるか、その前提として、事業を的確かつ安定的に遂行できるかどうかとい う観点から、資産要件や派遣元責任者の要件を定めています。これについて、より一層強化するというこ とで、今回の案となりました。  内容ですが、(1)資産要件です。現行では、資産から負債を引いた基準資産額が、1事業所当たり1,000 万円、現預金額が800万円となっています。改正後は基準資産額は1事業所当たり2,000万円、現預金額 1,500万円に改めたいということです。  (2)派遣元責任者です。法律に基づき専任しなければならないことになっていますが、その責任者の要件 として、1つ目は雇用管理経験を求めることとしており、現行では1つは雇用管理経験3年以上、2つ目 は雇用管理経験+職業経験で5年以上で、そのうち雇用管理経験が1年以上、3つ目が雇用管理経験+派 遣労働者としての業務経験が合わせて3年以上で、そのうち雇用管理経験が1年以上という3パターンが あります。雇用管理経験1年以上でほかの業務経験も認めていますが、雇用管理経験を3年以上だけにし ようという改正をしたいということです。  2点目は、派遣元責任者講習を受講していただいた上で派遣元責任者として選任することになっていま すが、あまり昔に受講したものを認めてしまうのもどうかということで、過去5年以内に受講ということ で定めています。5年ですと、ひと昔ということになりますので、過去3年内に受講という形で改正をす るということです。  この改正については、事業主の準備の期間もありますので、まず1カ月程度のパブリックコメントを実 施した上で、通達を改正するということで考えており、実際に適用されるのは、新規の許可については平 成21年10月1日、既に許可を受けている事業主が更新を受ける場合に、新基準になるのが平成22年4 月1日以降ということで考えています。以上です。 ○清家部会長 それでは、ただいまの事務局からのご説明について、何かご質問、ご意見等はありますか。 ○市川(佳)委員 最初の指針ですが、これはもっぱら中途解除に着目して書かれているのですが、実際 に私どもの組合で起きているのは、中途解除はしないが、休業日が増えているケースです。中途解除はし たくない、でも生産調整として、月に2日とか、3日とか休日が増える場合です。派遣先の従業員につい ては雇調金をもらって、教育訓練などをやるわけです。派遣労働者は同じ派遣先の休業で、工場が全部動 かないわけですから、来ていただいても仕事がないわけで、休業していただく。その場合、その方の休業 手当は派遣元が払うのでしょうが、派遣先と派遣元が契約を交わしていて、例えば、全額払うのだとか、 休業手当分だけは払いますよとか、いろいろ決めているのではないかと思います。派遣会社が、雇調金を 申請して、それを活用し、休業手当を支払うことはできると伺っています。でも、そのときの派遣先が派 遣元にいくら払っているかによって、派遣会社が申請できるのかどうかがちょっと不明な感じがします。 常識的に考えると、実際にはこうしたケースは少ないでしょうが、派遣先がとりあえずこちらの責任だか ら、全額を払うと言ったときには、例えば雇調金は出ないだろうとか、休業相当分は派遣先が負担すると いった場合も出ないのかとか、その辺の見解みたいなものがあればお聞きしたいと思います。  もう1つは許可基準の派遣元責任者講習ですが、どうやら出席して聞いてさえいればいいみたいですね。 講演を聞いていれば講習を受けたということは、聞いていればいいどころか、いればいいということでは ないでしょうか。その講習会へ行った方の話を伺ったのですが、その間、ずっと小説を読んでいた。それ でもそこの講習会にいるだけでいいのだということでした。私は許可基準を厳しくするということに反対 しているわけではないのですが、やはり中身というか、実効性をもう少し考えていただきたいと思います。 ○清家部会長 事務局からお答えをお願いします。 ○鈴木課長 まず1点目ですが、いわゆる契約の部分変更みたいな形かと思います。このケ ースは確かに現行指針でも想定しておりませんので、今回の改正案の中にも入れていません。今回の改正 案も全体としてそうですが、いわゆる契約の解除や変更に伴って、これが派遣先の責めに帰すべき事由に よって行われ、かつそれがその解除なり一部変更によって、派遣元に何らかの損害が出た場合は、当然民 事のルールとして、その契約の解除なり変更に基づいて賠償するというのが通常の姿であろうと考えてお ります。  特に派遣切り、と言われていて、派遣契約の中途解除に伴って何が起きているかというと、そのときに 現行の指針では、大企業などは30日前に予告した上で、その間30日間だけ働かせた上で何も保障せずに、 例えば、そのあと契約が6カ月残っていようが、1年残っていようが解除しているようなものもありうる と承知しています。  こういう事態について、何らかの手当をすべきということで、今回、中途解除に対応するという形で改 正案をお願いしているわけですが、言われているように、一部休業みたいな形で、たぶん考え方は同じだ と思われますので、日数の変更等で契約の変更が行われた場合には、その分損害が生じていれば、そこに 補填なり賠償をする。ただ、それが派遣元で雇調金を使っている場合については、雇調金でカバーされて いれば、例えば、今だと中小企業だったら8割出ますので、8割出れば、残りの2割が持ち出しだとなれ ば、その2割分の賠償という形になります。雇調金というのは、こういう賠償の調整基準を設けていませ んので、そういうことになるのかと思います。  また今回の中途解除の話は、いろいろなケースがあるので、例示という形で書いており、全部のケース を記載しているものではありませんので、基本的な考え方としては、そういう形になるのかと思っていま す。  2点目の派遣元責任者講習ですが、確かに講習を聞いていればというか、終わりのテストみたいなもの は行っていませんので、それで実際に能力が上がったかどうか、聞いたことが身に付いたかどうかを測る システムにはなっておりません。これについては、確かに私どもも問題だと思っていて、その内容、カリ キュラムなどは、ちゃんと効果が上がって、雇用管理に適するようになったかどうか。実際にどうやるか 検討したいと考えております。確かに5年から3年に変えたところで、行って、寝ていればいいというの では全く意味がありませんし、企業もかなりの講習費用を出しているので、講習の成果が上がらないと意 味がないわけですが、その辺りの実効性が上がるような仕組みについても検討してまいりたいと思ってい ます。 ○長谷川委員 参考資料2の、派遣先指針で、中途解除の○で、「これができないときは少なくとも派遣元 事業主に生じた損害の賠償を行うと」いう記載になっていて、「例えば」と言っているのですが、派遣元が、 その派遣労働者を解雇するときに、基準法上でいえば、解雇予告30日前の解雇予告手当と、解雇で派遣労 働者が派遣元と正当解雇かどうかを争い、労働者が、例えば地位確認訴訟を行った場合の損害賠償という のは、必ずしも30日分の予告手当だけではありません。そうすると、派遣元はもっと高い損害賠償や解決 金を払うのだと思います。例えば最近だと12カ月とか、どんなに低くても6カ月とかというような場合 があるわけで、本来は派遣元はそのぐらいを労働者に払うわけです。今回の案では30日分の予告手当につ いて損害の賠償を行うとなっているのですが、この辺はどのように考えればいいのかなと思います。 ○鈴木課長 御指摘のようないろいろな例がありますので、「例えば」ということで、あくま でも例示にとどめて、30日払えばそれでいいというわけではないということを示したつもりです。あくま でも派遣元が、派遣先の中途解約に伴って被った損害の実損額を賠償するということです。  ただ、そのときに帰責事由として、派遣元が変なことをやってしまったので、本来は払わなくてもいい ものまで払わされたという元・先の相当因果関係がどこまであるかというのはありますが、基本的には派 遣元が被った損害を派遣先が賠償するという構図ですので、もしそれが派遣先の中途解約に伴って、派遣 元が解雇せざるを得なかった。そのときに例えば裁判所で、その際、本来解雇できるかどうかというのは ありますが、できるとして、その賠償額が認定されれば、それが派遣先の解除と相当因果関係があるとい うことであれば、その分を派遣先が賠償する、という構造になるのかと思います。そういう意味でいろい ろなケースがあるので、ここは「例えば」としているとご理解いただきたいと思います。 ○長谷川委員 そうとすると、2の派遣元指針の中途解除で、これができない場合は休業等を行うとか、 休業手当の支払いの責任を果たすということと、これが新しく入ったところですよね。かつ「やむを得ず 解雇しようとするときも、労働契約法を遵守することはもとより、解雇予告の支払等の労働基準法等に基 づく責任を果たす」というのは、結局ここは労働契約法を遵守するということは、労働契約法においては、 解雇については判例法理が盛り込まれているのですが、そういうことを全部加味するという意味と読んで いいのですか。 ○清家部会長 事務局からお答えをお願いします。 ○鈴木課長 当然労働契約法を守っていただくということと、その際に労働基準法等に基づ き果たす責任ということで、最後の「基準法等」の「等」の中に、当然民法も入っていますので、例えば 不当な解約、債務不履行や、不法行為で責任を負った場合の責任は当然果たすべしということです。 ○長谷川委員 こういう書き方しかないのかなと思いつつも、訴訟になれば雇用主は解雇したときは、1 年分ぐらいは払っていますし、短くても6カ月ぐらい払うのです。ここはあえて書けないということなの かと思いますが、労働契約法を遵守するということと、労働基準法に基づく責任を果たすというところで、 あとどのぐらい払うかというのは訴訟結果次第ということですよね。 ○清家部会長 事務局からお答えをお願いします。 ○鈴木課長 最終的にはそうなります。かつ、それが元・先でどのぐらい払うかというのも、 費用分担みたいなものがあるかと思いますので、そこも最終的に争いになれば訴訟になるということです。 ○長谷川委員 今回、指針だからこのぐらいしか書けないのかなと思いつつも、派遣元と派遣先は一般契 約ですよね。だから、双務契約、双務履行だから、契約を途中で解除すれば損害賠償請求は生じる。派遣 元と派遣労働者は労働契約であり、中途解約は労働契約法において規定され、解雇よりも認められる要件 はきついはずですし、解雇であれば解雇権濫用法理が労働契約法にあり、そういう法律の中で決着がつけ られ、そこは重要ですという意味が伝わればいいなと思うのです。この指針を見るのは派遣会社と派遣先 と、今の部分は派遣労働者と派遣元の関係なので、ここが同じではないということがわからないと難しい のかなと思います。短い指針で書くのだからしょうがないのかなと思いつつも、そこは読み手に勝手に解 釈されないようにしなければいけないという心配事です。 ○鈴木課長 確かにそれはおっしゃるとおりで、それが滲み出るように書いたつもりです。 これ以外にも労働基準法等については労働基準局が所管・施行しています。いま言われたように有期契約 はやむを得ない事由がある場合でなければ解雇できませんし、通常の解雇でも、当然解雇権濫用法理が働 き、駄目なときは損害賠償でいく。あとは解雇の労働基準法の規定もかぶってきますという周知・啓発を 行っていて、安定局と基準局が連携して、この部分については、かなり重点的に監督指導をやる予定にし ておりますので、そういうものを含めて、ここは徹底していきたいと思います。 ○長谷川委員 許可基準の見直しは何とも言えないのですが、うまくいくかと思って見ているのですが、 日本の派遣事業者数は飛躍的に伸びている中で、派遣事業者は、すごく立派な会社から、疑いを持ちたく なるような事業者まであり、すごく数が多いと思います。  今回は資産要件と派遣元責任者の見直しということですが、派遣事業者をどのように事業展開させたら いいのか、どのようにして許可をしたらいいのかというのは、もう少し考えることが必要なのではないか。 今回はこれでやむを得ないと思いますが、次の改正に向かって事業者の許可の仕方とか、事業者をどうや って育てるのかを考えるべきです。ビジネスモデルをきちんと作らないと、自分の所には内部留保金も全 然なくて、派遣労働者を解雇したときに、解雇予告手当も何ら払えないということが、事業モデルとして 本当にいいのかどうか。派遣の許可権限を持っているのは厚生労働省なので、その辺も今後の課題ではな いかと思います。 ○清家部会長 事務局から何かありますか。 ○鈴木課長 今回はある意味で緊急措置として、法律ではなくできる許可基準の見直し等と いうことで、これをお諮りしているところです。  それに加えて、あとは今後制度的にどうしていくかは、この部会でもご議論いただきたいと思いますが、 悪い事業者をどうやって排除するかを含めて、いい事業主をどうやって育てていき、それの利用を勧奨し ていくかということも重要かと思っています。  これについては、平成21年度の予算の中で、例えば、いい事業者、いわゆるマル適マークのようなもの を付して、これの利用促進をしていく。それを例えばポータルサイトを作って、派遣の許可事業所一覧+ マル適マークが付けるとか、そういうことで派遣労働者と派遣先に対して、優良な事業主の利用を勧奨し ていくという制度なども予算の中で検討していくことを盛り込んでありますので、そういうのを併せて、 今後派遣元事業主をどう育てていくかも含めて検討していきたいと思っています。 ○平田委員 指針の改正について確認を2つと、許可基準の見直しについて意見を1つ申し上げたいと思 います。まず指針の改正についてです。既に鈴木課長の答弁の中で答えていただいたところもありますが、 念のため確認です。そもそも実際の損害賠償を考えたときに、休業手当、解雇予告手当以外にも、いわゆ る得べかりし利益、もしくは雇用を継続する場合には福利厚生費用などがあるかと思いますが、派遣元事 業主には派遣先からの一方的な契約解除に起因する相当因果関係の範囲の損害賠償を請求する権利がある と考えております。それを踏まえて本改正案は、具体的な事例として休業手当や解雇予告手当を挙げてい ます。そうすることによって民法上の派遣元事業主の損害賠償請求権を明確にすると理解しますが、それ でよいかどうかが1つです。  2点目は少し意見にもなりますが、損害賠償など、中途解約時の取扱いを派遣契約に記載する規定です。 指針の改正後に新たに締結する派遣契約から適用するという理解でよいかどうかです。契約への記載を遡 及して行わなければいけないということだと、事務的な負担も大きくなる恐れがあることと、そもそも本 改正案には契約に記載がなくても同様の措置をとらなければならないという規定があるので、効果として は十分担保されていると考えていますが、その点はいかがかということです。  3点目は、許可基準の見直しについて意見を申し上げておきたいと思います。皆さんご存じのとおり、 2009年度は厳しい経済環境が続くというのが一般的な見通しです。特に資産要件の増額が入っており、現 在、許可を取得している事業主にとっては、基準見直しの適用が平成21年10月1日と平成22年4月1 日とありましたが、1年後だとしても、基準引上げの影響が大きいのではないかと推測しております。通 常の時期と違って、いま厳しい中で金融機関からの借入れなどもままならない中小企業も多く存在する現 状を十分考慮すべきだと考えています。許可基準の見直しそのものについて反対するつもりはありません が、適用のあり方、基準を引き上げたことによって廃業を余儀なくされる事業主があれば、そこに雇われ ている労働者の雇用確保も必要になってくるだろうと思います。そういう意味で、現在の経済動向を踏ま えた上で、厚生労働省としてどう考えているのか伺いたいと思います。以上、3点です。 ○清家部会長 では、事務局からお答えいただきます。 ○鈴木課長 1点目は、先ほども若干お答えしましたが、今回の指針の改正の中身の賠償額 については、基本的には派遣先が中途解除したことに伴い、それに相当因果関係を持つ損害額についての 賠償ということで、ある意味では民法の原則に則ったものです。たしか学術用語では逸失利益の賠償だと 思いますが、それに対して、得べかりし利益や履行利益は含んでいないということです。したがって、派 遣先の一方的解除に伴う効果の相当因果関係の範囲内にある損害についての賠償ということを明確化した という趣旨です。  2点目は、派遣契約が施行時期との関係でどうかということですが、指針は告示ですので遡及しません ので、派遣契約については、この指針の施行後に契約を締結される派遣契約から、派遣契約締結時にこう いうものを定めなさいという規定が適用になるということです。実効性の問題としては、もしそういう契 約がなくても、中途解約時に実際に賠償しなさいという規定がありますから、これによって労働者が不利 益になることはないだろうということで、そこは遡及せずに適用していくという考えです。  3点目は許可基準の関係です。確かにおっしゃられる点はあろうかと思いますが、今回の許可基準の強 化については、そもそも実態を見ますと、派遣元で適切に雇用管理が行われていないのではないかと疑わ れるような事例が多数見られています。それに対して、少なくとも解雇手当、休業手当などを基準法等に 基づいて適正に払えるという資産的背景が必要なのだろうということから、資産や現金・預金、さらに雇 用管理の経験などを要件として加えていくというものです。したがって、すべての事業者がこれで軽々と クリアされてしまうと逆に意味がないわけです。ただ普通に事業をやって、頑張っている所がどんどん切 られるということでは困るということです。今回は1,000から2,000万円へということですが、ここ数年 の派遣先の事業所の年間平均売上高を見ますと、3億円程度ですので、この厳しい状況の中で、かなり大 変かとは思いますが、クリアできない範囲ではないのではないかと考えています。  さらに1年間継続の場合の更新のケースについては、平成22年4月からということで、1年間の猶予措 置があります。その間にいろいろと努力いただくということで、こちらとしてもいろいろな周知をしてい くわけですが、1年後から始まった初回の更新時ということですので、更新の時期によってはもう少し遅 くなることもあります。  そういうことを踏まえて、一気に廃業する事業者が出るという状況ではないのではないかと思っていま すが、その辺についても実態を見ながらやっていきたいと思います。 ○清家部会長 ほかにいかがですか。それでは、ただいまご説明いただきました指針と許可基準について は、まず指針についてですが、当部会としては労働者派遣法に基づく派遣元・派遣先指針の強化案につい てご説明のとおり、概ね妥当と認めることとして、その旨の報告を職業安定分科会長宛に行うこととした いと思いますが、よろしいですか。                    (了承) ○清家部会長 ありがとうございました。それでは、事務局は報告文案の配布をお願いします。  お読みいただきましたでしょうか。それでは、お配りした報告案文で職業安定分科会に報告させていた だきたいと思いますが、ご了承いただけますでしょうか。                    (了承) ○清家部会長 ありがとうございます。それでは、そのように職業安定分科会に報告させていただきます。 また併せてご説明いただきました一般労働者派遣事業の許可基準の強化については、当部会としてこの報 告を了承することにさせていただきたいと思います。  そのほか何かご意見はありますか。それでは、労働力需給制度についての議論はここまでにしたいと思 います。引き続きまして、一般労働者派遣事業の許可の諮問に移りたいと思いますが、冒頭申し上げまし たように、傍聴されている方については、ここでご退席いただきますようお願いします。また大槻職業安 定局次長におかれましても所用により退席されます。             (傍聴者、大槻職業安定局次長退席) ○清家部会長 事務局より何かありますか。 ○松原補佐 次回の部会の日程ですが、別途ご連絡させていただきたいと思います。 ○清家部会長 それでは、事務局にはそのようにご連絡をお願いします。 ○市川(隆)委員 日雇派遣原則禁止の法律改正案が国会に提出されていると思いますが、審議状況、見 通しを分かる範囲で教えていただければ幸いです。 ○鈴木課長 派遣法については、昨年の臨時国会に提出して、12月末に衆議院の厚生労働委 員会で提案理由説明を行っています。その後、臨時国会は閉幕し、通常国会になって継続審議となったわ けですが、通常国会の冒頭、いま審議中の2次補正予算と平成21年度の当初予算の審議をやって、日切 れ法案関係で我が省としては、雇用保険法がいま参議院で審議を行っていただいているという状況です。  派遣法については、予算非関連法案という位置づけで、通常は日切れ法案、予算関連法案のあと、審議 ということです。したがって、まだ日程的には実質審議に入っておりませんので、今後ということになろ うかと思います。ただご存じのように厚生労働委員会はいろいろな案件があって、審議状況がどうなるか、 今後の国会の展開次第ということで、いつ審議が始まって、いつ成立するかという見込みは立っていない のが現状です。 ○清家部会長 この件について、何かありますか。法案については、この部会でも委員の皆様にいろいろ 議論していただいて、建議をして法案を作っていただいておりますので、私のほうとしても成り行きを非 常に注目しておりますので、また必要に応じて適宜ご報告いただければと思います。  今回の議事録署名委員は、使用者代表側市川委員、労働者代表長谷川委員にお願いいたします。本日は どうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)