09/03/05 第78回労働政策審議会労働条件分科会議事録 第78回労働政策審議会労働条件分科会                       日時 平成21年3月5日(木)                          17:00〜19:00                       場所 中央労働委員会講堂(7階) ○分科会長 定刻となりましたので、第78回労働政策審議会労働条件分科会を始めます。 今日は大沢委員、鬼丸委員、村中委員、平山委員、渡邊委員がご欠席です。また高尾委員の 代理として新沼さん、原川委員の代理として小林さんがご出席です。  早速、今日の議題に入ります。今日の議題は「労働基準法施行規則の一部を改正する省令 案要綱」等の諮問についてです。本件は、本日、厚生労働大臣から諮問を受けたところです。 そこで最初に今回の諮問案件の内容について事務局からご説明をいただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ○監督課長 本日、諮問しました案件につきまして読み上げた上で、ご説明をさせていただ きたいと思います。 ○調査官 それでは私のほうから読み上げさせていただきます。資料No.1をご覧ください。 資料No.1の頭紙は、本日、厚生労働大臣から菅野労働政策審議会会長宛に諮問しまして、貴 会の意見を求めようとした文章です。次の頁で別紙1となっていますが、ここから読み上げ させていただきます。  労働基準法施行規則の一部を改正する省令案要綱 第一 代替休暇  一 使用者は、従来の二割五分以上の率に代えて五割以上の率で計算することによる割   増賃金の引上げ分の支払に代わる通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(以下「代替休暇」 という。)に係る労使協定をする場合には、次に掲げる事項について、協定しなければなら ないものとすること。   (一)代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法   (二)代替休暇の単位(一日又は半日(代替休暇以外の通常の労働時間の賃金が支払      われる休暇と合わせて与えることができる旨を定めた場合においては、当該休暇と合わせ た一日又は半日を含む。)とする。)   (三)代替休暇を与えることができる期間(時間外労働が一箇月について六十時間を      超えた当該一箇月の末日の翌日から二箇月以内とする。)  二 一の(一)の算定方法は、一箇月について六十時間を超えて時間外労働をさせた時間 数に、労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率    と、労働者が代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率との差に    相当する率(三において「換算率」という。)を乗じるものとすること。  三 一の割増賃金の引上げ分の支払が不要となる時間は、労働者が取得した代替休暇    の時間数を換算率で除して得た時間数の時間とするものとすること。 第二 時間単位年休  一 時間を単位として与える年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)に係る労    使協定で定める事項は、次に掲げるものとすること。   (一)時間を単位として与えることができることとされる有給休暇一日の時間数(一      日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、一年間における一日平 均所定労働時間数。(二)において同じ。)を下回らないものとする。)   (二)一時間以外の時間を単位として時間単位年休を与えることとする場合には、そ      の時間数(一日の所定労働時間数に満たないものとする。)  二 使用者は、時間単位年休として与えた時間については、平均賃金若しくは所定労働    時間労働した場合に支払われる通常の賃金の額をその日の所定労働時間数で除して    得た額の賃金又は標準報酬日額をその日の所定労働時間数で除して得た金額を、当該時間 に応じ支払うものとすること。 第三 施行期日等  一 この省令は、平成二十二年四月一日から施行するものとすること。  二 その他所要の整備を行うものとすること。  次に別紙2です。    労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準    の一部を改正する告示案要綱 第一 特別条項付き時間外労働協定  一 特別条項付き時間外労働協定では、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率    を定めなければならないものとすること。  二 労使当事者は、特別条項付き時間外労働協定を締結する場合には、限度時間を超え    る時間外労働をできる限り短くするように努めなければならないものとすること。  三 労使当事者は、一により限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めるに    当たっては、時間外労働について法第三十七条第一項の政令で定める率(二割五分)を超え る率とするように努めなければならないものとすること。 第二 その他   この告示は、平成二十二年四月一日から適用するものとすること。  次に別紙3です。労働時間等設定改善指針の一部を改正する告示案です。これは新旧対照 の形になっていますので、若干説明を加えて申し上げたいと思います。2の(1)の事業主が 講ずべき一般的な措置ですが、このうち、ハ「年次有給休暇を取得しやすい環境の整備」の 部分ですけれども、これは改正箇所が2カ所あります。1カ所目は2頁の5行目に第39条 第5項とあります。これは今般の労働基準法の改正に伴い項ずれが生じますので、第39条 第6項に改めるというものです。2カ所目は、労働基準法の改正により新たに時間単位での 年次有給休暇の取得が可能になることを踏まえ、11行目の「なお」以下の部分について、 右側のほうですが、「これらに加え、年次有給休暇取得促進の観点から、労働基準法第39 条第4項に基づく年次有給休暇の時間単位付与制度(以下「時間単位付与制度」という。) の活用や」という記述を加えることとしています。  次にニ「所定外労働の削減」の部分です。これは限度基準告示に係る記述部分について、 今般の限度基準告示の改正を踏まえ、「限度時間を超える時間外労働をできる限り短くし、 その時間の労働に係る割増賃金率について、法定割増賃金率を超える率とするよう努めるこ と」という記述を追加しています。  3頁で、(2)の特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置関係です。こ れについては、ロ「子の養育又は家族の介護を行う労働者」ニ「単身赴任者」4頁のヘ「地 域活動等を行う労働者」の部分について、先ほどご説明したハ「年次有給休暇を取得しやす い環境の整備」の部分と同様、今般の労働基準法の改正により、時間単位での年次有給休暇 の取得が可能となることを踏まえ、時間単位付与制度の活用という文言について、それぞれ の箇所に記述を加えたというものです。適用期日ですが、この改正告示についても労働基準 法の一部を改正する法律の施行期日に合わせて、平成二十二年四月一日から適用することと しています。以上です。 ○監督課長 ただいま読み上げさせていただきました諮問内容のうち、省令案要綱及び告示 案要綱についてご説明させていただきます。まず省令案要綱についてご説明させていただき ます。別紙1をご覧いただきたいと思います。項目としては大きく分けて2つあります。要 綱の第一は代替休暇についてです。労働基準法第37条第3項では、事業場で労使協定を締 結すれば月60時間を超えて時間外労働を行った労働者に対して、労働基準法の一部を改正 する法律による引上げ分の割増賃金率の支払いに代え、有給の休暇を付与することができる 旨定めています。これを省令案要綱では代替休暇と称しています。  お手元に資料3のリーフレットがありますが、この表面のいちばん下の図を見ていただく と、この図の赤い部分で示された割増賃金の部分が、代替休暇に代えることのできる部分と なります。例えば時間外労働の割増賃金率を25%としている会社において、月60時間を超 えた時間外労働から、割増賃金率を50%に引き上げるとしている場合、図の右側の例のよ うに76時間の時間外労働を行うと、16時間×(50%−25%)=4時間分の代替休暇を取得 することができることとなります。  要綱の第一の一は、代替休暇に関する労使協定で定めなければならない事項について定め るものです。(一)として代替休暇として与えることができる時間の時間数の算定方法を労 使協定で定めることとします。具体的な算定方法については第一の二で定めています。(二) として代替休暇を付与する際の付与単位を労使協定で定めることとしています。これは代替 休暇が、長時間の時間外労働を行った労働者の健康を確保するためのものであり、ある程度 まとまった単位で付与されることが望ましいと考えられることから、一日単位または半日単 位で付与することとして、そのいずれにするか、または両方にするかは労使協定で定めてい ただくということです。  一方で、時間外労働時間が一日単位や半日単位の代替休暇に必要な時間数に足りない場合 が生じることがあります。例えば先ほどのリーフレットの例ですと、1カ月に75時間の時 間外労働をした労働者については、4時間分の代替休暇に15分足りないということになり ます。こうした場合に取得できなくなるのではなくて、他の代替休暇以外の通常の労働時間 の賃金が支払われる休暇を、労使協定に基づいて上乗せすることにより、その差を埋めて一 日または半日の休暇を付与することも可能としています。  (三)として代替休暇を与えることができる期間を、労使協定で定めることとしています。 代替休暇は、長時間の時間外労働を行った労働者の健康を確保するためのものですから、長 時間の時間外労働を行った時点から、一定の近接した期間内に付与されることが望ましいと 考え、この期間については2カ月以内の範囲で、労使協定で定めることとしているところで す。  要綱の第一の二ですが、第一の一の(一)の改正の具体的な算定方法を定めています。代 替休暇の時間数は、月60時間を超えて時間外労働をさせた時間数に、代替休暇を取得しな かった場合に支払うこととされている割増賃金率と、代替休暇を取得した場合に支払うこと とされている割増賃金率の差、これを換算率と称していますが、これを乗じて得た時間数と なります。先ほどのリーフレットの例で言うと、月60時間を超えて時間外労働させた時間 数は、76時間から60時間を引いて16時間となります。また代替休暇を取得しなかった場 合に支払うこととされている割増賃金率は50%、代替休暇を取得した場合に支払うことと されている割増賃金率は25%ですので、換算率は50%から25%を引いた25%が換算率と なります。すなわち代替休暇の時間数は16時間×25%で4時間となるわけです。この計算 式を文章にすると第一の二に規定するような形になると思います。  要綱の第一の三ですが、実際に代替休暇を取得した場合に、割増賃金の支払いを要しなく なる時間外労働の時間数の算定方法について定めたものです。これは取得した代替休暇の時 間数を換算率で割るということで計算しています。先ほどの例で申しますと、4時間分の代 替休暇を取得した場合、4時間÷25%=16時間分の時間外労働について割増賃金の支払い を要しなくなるということです。  要綱の第二の時間単位年休についてです。労働基準法第39条第4項は、事業場で労使協 定を締結すれば、年次有給休暇を1年に5日分を限度として、時間単位で付与することがで きるとしています。要綱の第二の一は、時間単位年休の労使協定で定めなければならない事 項を定めるものです。(一)として年次有給休暇1日分が時間単位で付与する場合には何時 間分になるのか、その時間数を労使協定で定めなければならないとしています。この時間単 位年休を付与することになっても、労働者個人が有する年次有給休暇の日数が減少しないよ うにする必要があることから、年次有給休暇1日分に相当する時間単位年休の時間数は、1 日の所定労働時間数を下回らないものとしています。例えば所定労働時間が8時間の労働者 であれば1日分は8時間、所定労働時間が1日7時間45分など分単位の端数がある場合は、 45分のところを繰り上げて8時間となります。1日の所定労働時間数が日によって異なる 場合には、年次有給休暇は1年を単位として付与されるものでありますから、1年間におけ る1日平均の所定労働時間数を算出していただくことになります。  (二)として、時間単位年休を1時間単位ではなく、2時間単位や3時間単位といったま とまりで付与する場合には、その付与単位の時間数を労使協定で定めなければならないとし ています。なお、例えば所定労働時間が4時間の労働者に5時間単位で付与するといった定 めをすると、その労働者の方は時間単位年休を取得できなくなるため、時間数は1日の所定 労働時間数に満たないものとしているところです。  要綱の第二の二は、時間単位年休を取得した場合に支払わなければならない賃金及び金額 を定めています。労働基準法第39条第7項において平均賃金、所定労働時間労働した場合 の通常の賃金、標準報酬日額のいずれかを基準として、厚生労働省令で定めるところにより 算定した賃金又は金額を支払わなければならない旨が定められており、時間単位年休1時間 について支払わなければならない賃金・金額は、これらいずれかの賃金・金額をその日の所 定労働時間数で除した賃金・金額となります。  この省令の施行期日については、改正法の施行期日と同日の平成22年4月1日としてい ます。また改正法の施行に伴い、条の移動など形式的な整備が必要となる部分について、そ の他所要の整備を行うこととしています。  別紙2の告示案要綱について説明します。法定労働時間を超える時間外労働をさせる場合 には、労働基準法第36条第1項に基づき時間外労働協定を締結することが必要となります。 告示に定める限度時間を超えて時間外労働をさせる場合には、特別条項付き時間外労働協定 が必要となります。改正は、特別条項付き時間外労働協定を締結する場合に、労使で定める 事項及び努力すべき事項について定めるものです。具体的には、平成19年2月2日に労働 政策審議会により答申された、労働基準法の一部を改正する法律案要綱において、「限度基 準において、特別条項付き協定を締結する場合には延長時間をできる限り短くするように努 めること、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金 率は法定を超える率とするように努めることを定めることとする。」とされたことを踏まえ、 その内容のとおり改正を行うものとしています。なお、この告示の適用日は、改正法の施行 期日と同日の平成22年4月1日としているところです。以上で省令、告示の説明を終わり ます。 ○分科会長 ありがとうございました。それでは、ただいま事務局から説明いただいた諮問 案件について意見の交換を行いたいと思います。質問等も含めて自由にご発言いただきたい と思います。よろしくお願いします。 ○島田委員 2点ほどあります。まず別紙1の代替休暇の件で(二)ですが、時間が足りな いときに合わせる休暇ということは、結局、時間単位年休を充てるという意味ですかね。 ○監督課長 この代替休暇の部分は、時間単位年休を充てる場合もあるかもしれませんが、 通常の賃金を支払う休暇というものを設定していただければ、それが充てられるということ になります。 ○島田委員 具体的にあまり想像がつかないのですが、何となく時間単位の年休を1時間分、 ここに充てるということかなと思ったのですが、それが1つの質問です。もう1つは、換算 率という部分で計算は25%でやられていますけれども、労使協定で、もともと時間外割増 率は4割と決めていたとします。そうすると60時間超えは5割ですよね。その場合は換算 率は5割マイナス4割なのか、5割マイナス2割5分で計算して2割5分なのか。要するに 労使協定で決まった分でやるのか、法律だから2割5分で計算し換算率を出すのか、そこが 読み取れなかったのです。 ○調査官 私のほうから2点、まとめて説明申し上げて、補足がありましたら課長から申し 上げたいと思います。1点目の代替休暇の第一の(二)で括弧の中の他の休暇を合わせてと いうことですが、ここの趣旨としては、先ほど課長の説明にもありましたが、半日あるいは 1日に至らない場合についても労使で話し合っていただき、半日とするということも認めよ うということです。ただ、ここの括弧書きで書いている趣旨は、それは無給になってはいけ ないということです。無給になるとせっかくの代替休暇が取得しにくくなる。休むと給与が カットされるということは取得しにくくなるということで、このような括弧を設けたという ことです。私どもが想定しているのは、時間単位年休以外の休暇を新たに創設していただく というのが通常ではないかと思っていますが、仮に時間単位年休というのも入れるとなると、 これは当該労働者の方が取得できなくなる恐れもありますので、そこは当該個人が、自発的 にそういうふうにしてくださいと言えば別ですが、そうでなければそれは難しいのではない かと思っています。  2点目の換算率の部分ですが、これは先ほどのリーフレットの図では2割5分という部分 からなっていますけれども、島田委員が言われたようにこれを上回る率を労使協定で結んで いて、今回努力義務の部分が2割5分を上回る率となっていますから、そういうふうに定め ている場合においては、例えば30%で定めるとなれば50%−30%の20%が換算率になる ということです。 ○分科会長 よろしいですか。 ○島田委員 そうするともう1つあるのが、段階の協定を結んだとします。最初の割増率は 25%で45時間から60時間が30%として、60時間超が50%ですよね。そのときは換算率 というのは30%でやるのですか、25%でやるのですか。連続性から見たら、60超えだから 60時間までの30%を取るというのか、0から45までのは25%を取るのですか。 ○調査官 そこは60時間超に適用される率が何かというのを、明示的に労使協定に定めて いただくのが適当ではないかと思っています。 ○分科会長 ほかにいかがですか。 ○八野委員 そもそものところですが、時間外のところで例えば、この例で言えば60時間 を超えた部分のところに代替休暇を与えるという、そのもの自体の発想の根源というのはど こに意味があるものなのか。先ほど健康の確保ということで話が出てきましたが、もともと 労働時間の時間外の話をしているときに、または今日も出ている労働時間等設定改善指針の 中でも有給休暇が取りづらい状況になっている。だからこの有給休暇の取得を促進していか なければいけないというのが、労働現場の実態なのだろうと思っています。その中で60時 間を超えるところは、かなり労働が過密になっていて、仕事の量も多い時にこういう状況が 発生してくる。確かに取得するまでの期限を2カ月以内とされていますが、本当に取れるの だろうかという疑問も浮かびます。もともとの目的がどういうものなのかを確認させていた だきたいと思います。 ○監督課長 これは当然、いま委員がおっしゃったとおり、過重な労働になっているときの 健康の確保のために休んでいただくことが、そもそもの考え方です。 ○八野委員 こういう休みを入れると、健康の確保というのが必ず言葉で出てきますが、休 みが取れるから健康の確保であって、年次有給休暇の取得も、例えば我々の流通・サービス 業界は非常に取得率が低い状況で、ここが問題になっていますから、労使できちんとやって いこうという話になっている。その元自体がなかなかできない状況の中で、この時間外が発 生したという環境の中で更にこれを休みとしたとき、これは労使協定ですけれども、そうい うものが取れる環境にあるという認識で、このような法改正がされたと捉えたほうがよろし いのですか。 ○監督課長 もちろん労使協定で決めていただくので、労使で取れる環境にあるということ でそういう協定を結んでいただくのだと思っています。 ○八野委員 なかなか理解できないところでもあるのですが、もう1つ換算率について伺い ます。これは私の認識が違うのかもしれないのですが、60時間を超える時間外の時間数に、 この例で言えば0.25をかけた時間を休みに振り替えられる計算式が成り立つものなのかど うかです。 ○調査官 私のほうから補足的に申し上げてから、いまの質問にもお答えしたいと思います。 そもそもの代替休暇の趣旨的なものですが、こういった月60時間超という時間外労働を行 っている方というのは、非常に長時間働いているわけですから、先ほどの課長の説明とダブ りますが、健康確保の観点からも非常に考えるべき人たちであると思います。そこを労使で 話し合っていただき、そういった方に休息の機会を与えようということです。特にこういう ことを放置しておくと、使用者にとっても、例えば安全配慮義務違反という問題も発生しか ねないということがありますから、こういった枠組みは労使協定で作るということですが、 使用者が付与するということを考えています。ですから、そういった健康確保ということを 使用者にも考えていただきたいということが、ここの趣旨にも合うのではないかと思ってい ます。  換算率の考え方ですが、これは実際に5割という法定割増賃金率を、協定を結ばなければ 支払うことになるわけですけれども、これを代替休暇を付与することにした場合については、 その5割の率に相当するものになるように計算することが適当ではないかということで、こ のようにしているものです。したがって補足しますと、代替休暇を付与した場合においても 最低限、25%の割増賃金率は支払っていただいた上で、さらにそれを上回る協定を結んで いるのであれば、その協定に定める率を支払っていただいた上で、それを上回る率に該当す る部分については、休暇という形で付与しても構わないとしたというものです。 ○分科会長 よろしいですか。 ○浦野委員 少し戻るのですが、先ほど島田委員が質問した第一の一の(二)の合わせて云々 というところの説明が、いまひとつよくわからなかったのです。例えば4時間分ありました というときに、あと4時間与えれば1日休暇になるということをおっしゃっているのか、そ れとも例えば分単位で満たいない場合には、分単位については端数を切上げで休暇を認めま しょうということなのか、よくわからなかったのです。具体的にもう少し説明してください。 ○調査官 わかりました。参考3のカラー刷りのリーフレットをご覧ください。ここの表の 頁の下に図を書いています。これは76時間労働した方について書いています。繰り返しに なりますが、この76時間ですと16時間という数が60時間オーバーになりますから、16 ×0.25ですね、1.25との差の0.25を乗じた4時間分というものが代替休暇の付与のベース になるということです。ただ、ここについては例えば75時間労働した方については、0.25 を掛けると3.75ということで、0.25時間分足りないことになるわけです。そうすると、こ れは所定労働時間が8時間の方の事業場においては、4時間に足りないわけですから付与さ れないということです。もちろん労使協定でそうして構わないわけですが、それでは少し可 哀想ではないか、この人も取れるようにしたほうがいいのではないかと労使で考えた場合に おいては、この0.25%も有給で与えるということで、4時間とすることも可能にするという のが、この括孤書きの趣旨です。 ○浦野委員 わかりました。 ○分科会長 よろしいですか。輪島委員、どうぞ。 ○輪島委員 労働側の関心が非常に高いと思いました。私ども使用者側もここはどういうふ うになっているのかということで、詳細についていろいろお伺いしたいと思っていますけれ ども、その前に私ども全体として思っていることがありますので、まず申し上げたいと思い ます。  省令案要綱を拝見すると、非常に簡単に書かれているというふうには思いますけれども、 実際にいまの代替休暇、それから時間単位の年休についても、企業の中で導入しようと思う と、非常に難しい中身なのではないかと思っています。特に寄せられている声というと、い わゆるオーバータイムですね、時間外の賃金を払うのに、システムをどういうふうに組むの かという関係からすると、システムの変更について多大な時間とコストがかかるのではない かと言われているところです。  前回、労側の委員からもご発言がありましたが、今回の省令案要綱について審議を尽くす ことは十分するべきだと思いますが、できる限り早く省令を上げていただいて、世の中に示 していただくことが必要なのではないかと思っています。その点、是非お願いをしたい。ま た、おそらくこれに伴って通達等々が発出されることになると思いますが、それについても できるだけ早くお示しをいただいて、公開していただくことが必要なのではないかと思って いるところです。これは労働側委員とも共有できる認識なのではないかと思っていますので、 公益の先生も含めて是非、実質的な議論をしつつ、なるべく早目に上げることを是非、ご理 解いただきたいと思っているところです。とりあえず以上です。 ○分科会長 ありがとうございました。ご意見として承るということにしたいと思います。 そのほかいかがですか。 ○神津委員 いまのお話とも関連するのですが、私、今回のこういった一連の内容というの は、労働時間短縮というテーマにおいて、明らかにベクトルとしては、みんなで頑張って前 へ向けていきましょうということだと思います。ただ、わかりにくさということも含めて、 実際にどう推進していけるかという推進力の点で、まだまだ相当全体で努力をしていく余地 があるのではないかと思っています。  技術論もさることながら、これも非常に大きいと思いますが、主に私は2つあると思って います。1つは45時間から60時間までのところで、この45時間の意味をどう捉えるかと いうことです。1つには健康管理との関係で45時間という時間はあるのだろうと思います。 ただ、今回のこの法律でいくと、これは時間外労働ということにおいて焦点を当てているの で、実際にはこういう言い方をするとあれですけど、下手すると休日労働のほうに流れてい ってしまうのではないかという懸念もなしとはしない。45時間超えはどういう設定をする かにもよりますが、そういったことが1つあろうと思っています。これは、月間の中で時間 外であっても休日であっても、本来の労働時間を超えての関わりでどうなのかという視点が 必要だろうということが1つです。  もう1つは、努力義務ということです。私もよくわからないのですが、例えば労働関係に おいて努力義務を謳っている例はいろいろとあると思います。努力義務というのは、一律に やるのはその時点で馴染まなくても、やれるところはやりましょうということだと思います。 そのことがこれまでの実績として、どの程度あるものなのかお聞きしたいと思います。話を 戻すと、わかりにくさということの、1つのポイントになってしまっているのかなと思って います。  申し上げたいことは、いまの技術論との関係も含めて、パターンを示していかないと、実 際にやれるところはやっていきましょうという労使の話合いに、なかなか結び付いていかな い懸念が私はあると思っています。労使で話し合ったはいいけれども、実績に下手をすると 実績にほとんど結び付かないみたいなことになっては、せっかくのこの法律の改正の趣旨が 生かされないと思いますので、例えばこの例にしても、この1つの例だけだと、これは45 時間から60時間とか25になっていますが、そういうことだけでなく、いろいろなパター ンを示す必要があるのではないかという2点です。 ○分科会長 ご意見ということですか。何か事務局のほうからございますか。 ○監督課長 確かに、まだいまの段階でわかりにくい部分も多いと思いますが、今後、この 場でご審議いただきましたら、それを踏まえて改正内容については分かりやすい図表を使っ た資料とか、説明会も全国の労働局、労働基準監督署で開催させていただきたいと思ってい ます。そういう取組みを通じて、できるだけわかりやすいものにしていきたいと思っていま す。 ○分科会長 たぶん、いまの点と関係して先ほどの輪島委員のご指摘もあったように思いま す。そういう取組みを早くやっていただくというご要望もあったところですので、それを踏 まえて事務局のほうでご検討いただければと思います。安永委員、どうぞ。 ○安永委員 1つ目が、いまの資料の話ですけれども、ここにカラーで付けていただいてい る資料なども見ていちばん思うことは法の精神というか、先ほどから出ている「時間外労働 を抑制し、労働者の健康確保や仕事と生活の調和を図る」ということが、1行目だけで終わ ってしまっていることがあって、資料全体として時間外労働を抑制するというところが、も う少し色濃く出るような作りに是非していただきたいと思っています。本来の趣旨のところ でなく、つい例外措置とかそういうところに目がいきがちになるところもありますので、そ ういった意味では、大きく法の趣旨みたいなところを前面に出していただくような資料にし ていただきくようお願いをしたいと思います。  この要綱の中でいくと、一の(三)の代替休暇を与えることができる期間のところを、2 カ月以内としたことの理由みたいなものをまずお伺いしたいと思います。というのが、先ほ どから出ている健康確保の観点とか、システムを作ることの課題とか、2カ月の間に次の事 象が発生するということなどがあって、二重に管理をしなければいけない。マイレージみた いに、今月切れるのはここまでです、みたいなことになってしまうということがあっては、 非常に管理もしにくいのではないかということがあると思います。  私どもの単組の中に、週休勤務の代替休暇の制度を作っている所もあるのですが、結局、 代替休暇を取るために前の日が長時間勤務、時間外になってしまう。それが時間外が多くな る理由の1つにもなってしまうところがあるので、できる限り健康面でこの制度を使うので あれば、早く取らせるというところが必要なのではないかと思っています。 ○監督課長 1点目のリーフレットの件ですが、これは1枚に収めようと思って趣旨のとこ ろを簡略化しています。きちんと省令ができましたら、もう少し充実した内容のものにして いきたいと考えています。  代替休暇の付与期間の話ですが、代替休暇はできる限り、近接した時期に取得されること が望ましいということはもちろんです。ただ、一方、業務繁忙のために長時間の時間外労働 になっていることを考えると、翌月中とした場合に取得が困難な場合も結構出てくると思い、 かえって事業場における代替休暇の活用に、抑制的な結果になってしまうこともあると思い ます。そういうことで企業における業務の繁閑の波というのは通常、1四半期以内に収まる と考えられますので、両者のバランスを考慮して当月末から2カ月、当月を含めれば3カ月 以内という期間を設定したらどうかということで提案しています。 ○分科会長 安永委員、よろしいですか。 ○安永委員 意見として、そのまま持ち続けたいと思います。 ○小山委員 いくつかお聞きしたいのですが、先ほど神津委員が質問された中で、努力義務 の実績というのは一体どういうことだったのかということがありました。今回の法改正の中 の最大の問題点は、ダブルスタンダードを作ってしまったことだと私は思っています。中小 企業を適用除外にしていることも、そもそもそのダブルスタンダードです。それも当分の間 ということで期限を定めずに、適用猶予というより適用除外をしていると言ってもいいので はないかという状況があるわけです。  そこで、この努力義務のところについては、中小企業も当然対象になって努力義務が課さ れるわけですから、その努力義務を実際に義務に近い形で現実に割増率を上げ、長時間労働 を抑制していく方向に、行政としてどのような手法を取ろうとしているのか。また取らなけ ればいけないと思います。これだけのダブルスタンダードを作ってしまったのですから、そ のための措置というのを、厚生労働省としてどのように考えているのかということを、先ほ どの努力義務とは何かということの意味合いも含めて、お聞かせいただきたいと思います。  合わせて、ではここで適用が除外される中小企業労働者というのは、全体の労働者の中の 何割を占めるのか。これは国会審議の中でも議論があったところだろうと思いますので、そ のことを前提にして、どういう措置を進めていくのかというのは是非、お考えをお聞かせい ただきたいと思います。もう1つありますが、いまの話が終わってからにします。 ○分科会長 承知しました、それでは事務局のほうでお答えをお願いします。 ○監督課長 中小企業につきましては、確かに努力義務ということで提案させていただいて いるわけですが、この努力義務をきちんとした形で運用していくために、我々としては割増 賃金率引上げを、これからいろいろな形で、いろいろな事業場で行われるのではないかと思 っていますので、そういう参考事例や好事例を収集して、幅広く情報提供することにより、 そういう環境を整備していく気運を盛り上げていくこともやりつつ、それぞれの中小企業の 事業場において、自主的な努力を促進してまいりたいと考えているところです。中小企業の 労働者の範囲は71%です。 ○小山委員 ここの中小企業の範囲の定義ですが、中小企業基本法の定義を使うということ なのかもしれませんけれども、少し、労働の実態や企業の実態に合わせた指導も必要なので はないか。最近は資本金が少なければ従業員数が少ないとは限らない時代になってきている のです。ホールディングがドンとあって、資本を持たなくても、人を雇ってそこで回してい くような企業も増えてきています。昔とだいぶ企業の構造も変わってきている実態の中で、 先ほど言われている昔で言う中小企業は弱者だみたいな、そういう単純な見方ではなく、現 実の労働の実態に合った労働行政が必要なのだろうと思います。  その意味で今回、こういうダブルスタンダードを作ったことによって、いろいろな問題が 起こってくるのではないかと危惧しますので、是非、そうした実態に合わせた対応をしてい ただきたい。現場サイドで具体的な監督まではできないし、情報提供しかできないわけです から、もう少し何か工夫してやるべきではないかと思います。そのことは強く要望しておき たいと思います。  もう1点、代替休暇が取れなかった場合はどうするのかということでいくと、実際の運用 は時間外労働に応じた賃金が当月支払われて、後日、代替休暇を取ったらばその分を差し引 いて相殺するというやり方が、いちばん間違いなく取りっぱぐれがないやり方ですけれども、 実際に取れなかったときの賃金の扱いをどういうふうにするのか、法令上、どういうふうに 考えたらいいのか、現実の運用をどういうふうにすべきなのか。私は当月に割増賃金を払っ ておいて、後日、代替休暇が取れたときにその分を相殺するのが、いちばん確実な方法だと 思いますが、そうしたことを法令上強制する、あるいは確実に支払われる方法として何か担 保する方法等が考えられないのか、その点をお聞きしたいと思います。 ○分科会長 そうしますと前半はご意見、ご要望ということですね。 ○小山委員 前半は、それ以上言っても。 ○分科会長 後半のほうは具体的なご質問だったと思いますので、事務局のほうでお答えい ただきたいと思います。 ○調査官 私のほうから申し上げます。代替休暇の付与の点ですが、私どもが考えているの は代替休暇を付与するということは、使用者が時期を定めて付与することを考えていますの で、通常は代替休暇を付与するのだから当月支払わない。翌月において付与するのであれば 翌月の分は、付与した分については労働者が取得すれば取得する。もし取得しなかった場合 については、もちろんその分は清算する形になると思います。ただ、いろいろな方から聞い てみると、企業の実務からすると、先に払ってしまって清算したほうが賃金計算も簡便であ るというご意見も聞いていますので、それはそういう取扱いをしても私どもは結構だと解釈 しようと考えています。 ○分科会長 よろしいですか。 ○小山委員 働いた分、当月賃金として払わなければならないのが、労働基準法なのではな いかと思っていたのですが、それは除外されるという規定はどこにあるのでしょうか。 ○調査官 ここの規定は、法律を付けていますので法律をご覧いただきたいと思います。参 考2に労働基準法の一部を改正する法律新旧対照条文を付けていますが、2頁に第37条と いうので、これが割増賃金を支払う根拠規定になっているわけです。この第3項が代替休暇 の規定です。少し説明しますと、使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働 組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の 過半数代表との労使協定により、省令で定めるところにより休暇を与えることを定めた場合 において、労働者が休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超 えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間 の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しないということ で、同項ただし書の規定による割増賃金というのが、第1項ただし書の線を引いているとこ ろです。これが5割以上の率で計算した割増賃金ということですから、ここの部分によって 5割以上の率で計算した割増賃金は支払う必要がありませんと。ただ、労働者が休暇を取得 したときと限定が付いていますので、もちろん労働者が休暇を取得しなければ5割以上の率 で計算した割増賃金を支払わなければならないとなっています。 ○小山委員 取得するかしないかは、わからないわけではないですか。取得した場合はとい うことでしょう。これは公益の先生方に聞いたほうがいいのかもしれません。先生、どう解 釈するのですか。 ○分科会長 もともと24条は、法令に別段の定めがある場合については、全額払いの適用 というのを除外していることになりますので、そうすると、この37条の3項の規定という のが、24条の定めで言うところの別段の定めというのに当たるかどうかというのが、まず 第1の問題としてあります。  第2の問題としては、これは協定で定めた場合に、当該労働者が当該休暇を取得したとき は、割増賃金を支払うことを要しないということになっています。かつ微妙で読み方が難し いのですが、今日の省令要綱案ですと、協定で定めた取得の可能な期間というのがあるので、 そうすると結局、取得したかどうかというのは、その期間が渡過しないとわからないことに なりますから、この37条3項の条文の書き方からすると、協定で定めた取得可能期間を渡 過して、結局、代替休暇を取らなかったというと、元に戻って割増賃金を支払わなければい けないということになるというのが、何となく素直な読み方のような気はします。ではその 反対の読み方はできないのかと言われると、「うん」と断言するのもなかなか難しいところ があるという気がします。 ○小山委員 当月、ちゃんと支払って、後で清算するというように読むほうが普通ではない かと私は思ったのです。 ○分科会長 あとで清算するとなると、これはこれでまたややこしくて、24協定を結んで おかないとできなくなってしまう可能性もあるのです。最高裁判例で賃金の過払いの部分の 調整というのは、限られた範囲であれば可能だとなっているので、その範囲に収まるのであ れば24協定がなくてもできることになりますが、いまの小山委員の解釈の立場に立つと、 おそらく代替休暇に係る協定を結ぶと同時に、併せて24協定でも後日清算するということ を、用心のためには結んでおかなければいけないことになります。  そうなると、そこまで法が想定して書かれているかというと、ちょっとそういうふうには 言えない。むしろ最終的に、休暇を取得できる期間が渡過してしまって取得しないことが確 定してしまったら、割増賃金の支払義務が遡って発生するのか、その時点から発生するのか、 細かく考えていくと、利息の問題とかいろいろあるので厄介ではあるのです。何となくその ほうが素直な読み方のような気もしますが、いま小山委員がおっしゃったようなやり方もあ ると思います。  ただ、そうすると、何となく先ほどの輪島委員のおっしゃった問題と関係してきて、シス テムをどう組むかというので、どちらが実務的にいったときにシステムが組みやすいかとい うことが、かなり影響してくるのではないかという気がします。逆に言えば、そこのところ は事前に事務局でもご検討いただいてお願いするということです。 ○審議官 これまで、特にこの代替休暇は、時間単位年休のほうもそうですけれども、労使 からいろいろご意見をいただいたところです。今回の制度はいずれも冒頭の説明で申し上げ たとおり、労使協定を前提にして労使の選択肢を増やすという制度として作られたものです。 また代替休暇のところについては、審議会から最終的にいただいた建議の中では、その趣旨 は必ずしも明確に健康確保のためとは書いていませんが、議論の過程では、実際に長時間働 いた方に休む機会を確実に与えられるようにということが、審議の経過であったと議事録等 から承知しています。  また努力義務が実際にどれだけ機能するのかという提起もありました。そこについては、 おそらく均等法あるいはパート法の例を説き起すまでもなく、どういう過程で物事の法治性 なりルールづくりが進んできたかということを、ご紹介しだすときりがなくなるものですか ら止めさせていただきます。ただ、今回、審議会の建議の段階でも一定のところで割増賃金 率について、建議だとこういう表現ですけれども、特別条項付き協定では割増賃金率も定め なければならないこと、および当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることと すること、ということが法案提出前の建議の段階からはっきり謳い込まれています。限度時 間超えのところについては、まず努力義務からスタートしようということは、この審議会の 建議段階で出ていたところかと思います。  いずれにしても、この仕組みについて労使協定を締結するに当たっての最低限、守らなけ ればならないルールを決めた上で、あとは職場の個別具体の事情に応じて、やっていただけ るような仕組みを作ろうということ。選択肢追加ですから極力選択肢が増えるような形で作 っていく。その際に当たって労働基準法に基づくものですから、労働者の保護という観点で 欠けるところがないようにしようというのが基本で作ったつもりです。いま何点か、ご指摘 があったうちの小山委員からご提起があった点については、実は24条との関係は法制局で 特段議論になったかどうか、戻って調べて次回にご報告したいと思いますが少なくともそれ については明文の措置をしていませんので、いま分科会長がおっしゃったような解釈のうち、 どれかということで整理が付いているかと思いますが、これはまたご報告をさせていただき たいと思います。  もともとこれまでの基準法の中でも、ある月の超勤を含めた賃金を、いつまでに清算する かというのは一定の積み重ね、ルールがあるわけです。それとの整合性も考えて今回、ご提 起があった点については、次回ご報告できるようにさせていただきたいと思います。 ○小山委員 一言だけ、労使協定でということで、それはそのとおりなのですが、非常に善 意な労使協定ばかりでなく、先ほどシステムの話がありましたけれども、コンピュータのシ ステムをきちっと作って賃金支払いをやっている企業の問題としては、そのとおりでいいの だと思います。現実に規模が小さくなっていくと、今回、たまたま適用除外になっているわ けですけれども、中小企業を含めて今後ともこの制度が入れられていくとすると、きちっと システムが作られて、きちっとした労使関係があるとは限らないわけです。そうすると賃金 の未払いが生じるのではないかという危惧もするわけです。是非、そうした観点からも賃金 の支払いの原則に立って、きちっとした整理をしていただくことをお願いしておきたいと思 います。 ○分科会長 ご意見ということで承りたいと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○田中委員 いまの話はよくわかったのですが、労使協定でやる以上は労使の協定の内容を 尊重するという趣旨ですね。いま労側の委員からもありましたが、こういう形でいろいろパ ターン化されたり、いろいろなものが出てくると、これに引っ張られるところが非常に強く 出てきます。先ほど来、賃金の払い方のお話がありましたけれども、確かに払う側の仕組み からいったら、一旦、全部お払いしておいて後で戻してもらうのがいいかもしれませんけれ ども、働いている人から言ったらお金をもらったのをまた取り上げられるわけですから、こ れは通常、従業員の方から遡及して徴収するというのは、たとえそちら側に価値があっても、 気持のいいものでもないし楽しい話でも全然ないのです。そういう視点で考えて、各業界ご とにあるいは業種ごとに、それぞれの組合ごとに何がいちばんいいのかというのを、これか ら急いで議論しなければいけない。こういうことだと私は理解しています。  ですからあまり細かく、逆に言うといろいろなものが出れば出るほど、どんなにきれいに 作っていただいても、私は人事ですが、これは見ても何かよくわからないところがいっぱい ある。労側もあると思います。実務に落とそうと思ったら本当にわからないところがある。 普通の従業員の方がこれを見てわかるかと言ったら、たぶんほとんどわからない。かつ私が 誤解していたのかもしれませんが、これは60時間を超えないための法律だと思っています けれども、超えてしまった方が、私の超えた分はどうするのかをそのときに選択しなければ いけない。あるいは先ほどのご説明だと使用者側が、あなたのこの分は休みになりますよと 言われる。毎月、毎月、そういうことが常々行われて、そのベースになる法律がなかなかわ からないということだと、せっかく健康管理であり、きちんとした賃金支払いであり、ひい ては労働時間短縮ということを目的としているにもかかわらず、何か形ばかりのところで実 効が伴わなくなってしまうと、虻蜂取らずになってしまうのではないかというのが正直な印 象です。  申し上げたいのは、ある意味でここは議論があるかと思いますが、最低限のラインのとこ ろで、この趣旨なり本旨をきちんと書き込んでいただくようなところをベースとしたものを、 事務方のほうからお出しいただいて、それをベースに労使協議が早くできるようなスケジュ ーリングなり、あるいはこういうツールをご準備いただければと思います。私からの意見で すが、以上です。 ○分科会長 ありがとうございます。大変貴重なご指摘だと思います。 ○神津委員 私も先ほどわかりやすさということで申し上げました。パターンということも 申し上げたのですが、あまり混乱を来さないようにいっぱい出す必要はないと思います。そ れは私もそう思います。ただ、この目的、趣旨に鑑みて、こういう形はあるなということは、 いくつか出していく必要はあるのではないか。たまたま今の段階で整理されているこの絵柄 というのが、これはこれで非常にわかりやすいものですから、仮にこの1つだけですと、こ れに引っ張られることもあると思いますので、こういう労使協定を結んだらこういうことに なるということを含めて、是非、ご検討いただきたいと思います。 ○小山委員 先ほどの代替休暇については、使用者が時期を定めて付与すると言われたので、 私はそう理解していなかったから本人の希望が入るのかなと思ったのですが、それは本人の 希望ではなくて使用者が時期を定めて付与するということは、予め使用者が何月何日、この 日を休みとするということで理解していいのか。仮にそうだとしたら、その日は休日という 扱いになるのか、どういう扱いになるのか。そのとき仮に「やはりこの日は忙しいから、こ の日を休みとして指定したけれども出てください」と言ったときは、割増賃金を払うのです か。それはどういうふうに考えたらいいのですか。 ○調査官 先ほど私が使用者が付与すると申し上げたのは、もちろん、これは代替休暇の趣 旨からすると健康確保が目的になっていますので、使用者が、その労働者の方の健康を考え て付与すべきものだということで、原則的なものを申し上げたところです。もちろん労使協 定で個々の労働者の希望を聞いた上で、付与するというやり方でも結構だということです。 ですからこれは本当に労使協定事項ですので、そこは労使協定で定めることは可能ではない かと考えています。そこで2点目の部分ですが、付与した日については休日に当たるのかと いうことですけれども、これは労働基準法上の休日には該当しないということです。 ○八野委員 いま説明を聞いていても、実際にこれを運用するときに非常に複雑だなという 感じを受けます。というのは、例えば1月が60時間を超えました、それが数値として出て きました、では休みの日を決めましょう、休みの日を労使の中で話し合って決めました、そ ういうことを何度も繰り返していく。これは毎月、時間外が起きていったり、それは上下が あると思いますが、本当に健康を確保する、仕事と生活の調和をするということをやってい ったときに、これを管理する方が複雑化してきたらそこに時間外が集中してくる。何を目的 にするのかということで言ったら、長い労働時間を短くしていくのだということです。時間 管理というのはシンプル・イズ・ベストなのだと思います。そういう中で、いま長い労働時 間を短くしていく。これは働いている人と管理をする人がわかりやすくなくてはいけない。 そこのところに常に労使の中でさまざまな話合いがありながら、労働時間というものを見て きたところがあると思いますので、いまここにいる人たちでも、なかなか想像としても浮か んでこない。割増賃金の支払い方もそうです。  労使協定でと決まっていて、どこも労使協定しませんでしたという結果になってはいけな いわけです。そういうものであるということで考えると、なかなかこれは今のままでは難し いのではないか。システムを組むと言いましたが、本当にこれはシステムを組むことが可能 なのだろうかということも懸念します。これは意見として言わせていただきたいと思います。 ○輪島委員 少し話が戻るのかもしれませんが、田中委員がおっしゃったとおりだと思いま す。事業所における労使協定の中で先ほど労側の委員がおっしゃったように、パターン化は 重要だとは思いますけれども、ここの要綱に書いてある代替休暇のところだけで見れば、休 暇の単位や取得までの期間が書いてありますけれども、実際には労使協定の中にどうやって 取得をしてもらうか。先ほどおっしゃったように、取得をしてもらう方法について決めるの だろうと思います。そのところについてパターンは必要だとは思いますが、あまり入り込み すぎると結局は労使でそこに引っ張られて、それぞれの企業労使の実務のところでは「ほと んど使いにくいね、じゃ、やめようか」という話になるのではないか。いまのご指摘のとお りだと思います。  しかし、いまの要綱に定められていないような状況についても、実際には事業場の労使が、 時間外労働の削減、健康管理の確保ということの趣旨に合っていれば、殊更そこについて行 政のほうで細かく指導するのは、あまりよくないのではないかという話にならないような導 入の促進のあり方が、重要なのではないかというふうに思っています。これは意見です。  もう1つは質問です。先ほどの代替休暇の件ですが、例えば3月に76時間の時間外があ り、16時間で換算率で4時間分代替休暇が必要です。これが2カ月ですから4月と5月の うちに取らなければならない。そのときに賃金の締切りのパターンとしては20日に締めて 払うということで、そのときにずれが出ますけれども、それは賃金締切りに合わせるという ことはそれでいいのかどうか。  また、4時間分の代替休暇になりますけれども、それの部分については翌月に賃金として 払わない。賃金として16時間分は払わないことが、基準法24条の賃金の全額払いには反 しないことは確認がとれるのかどうか、その2点です。 ○分科会長 前半はご意見ということですが、後半のほうをお願いします。 ○調査官 私のほうから答えさせていただきます。ご質問の1点目の賃金締切日でも構わな いのかということについては、そのようにしていただいて構わないということです。2点目 は、リーフレットの例で4時間分の5割の割増賃金の部分を支払わないことが労働基準法 24条に違反しないのかについては、先ほど分科会長から説明がありましたとおり法律によ って定められた例外ですから、それは24条違反にはならないということです。 ○分科会長 代替休暇のほうもだいぶん議論いただいていますが、長谷川委員、どうぞ。 ○長谷川委員 これは法37条の1項で月60時間を超えたらば5割以上の割増率を支払わ なければならないとしておいて、ただし書きで月60時間を超えた部分については今までの 2割5分以上の率に替えて代替休暇でもよいとされています。それは労使協定で決めなさい ということです。具体的な事項は省令ですよね。その他に、告示があるのですが、拘束力は あるのですか。 ○調査官 告示は告示ですので。 ○長谷川委員 告示の改正の中の一で、特別条項付き時間外労働協定では、45時間を超え る時間外の割賃率を定めなければならないものとするということは、これは「する」だから、 告示を受けて45時間以上については割賃率を定める。そういうことでいいわけですか。次 に3項の2割5分を超える率とするよう努めなければならないと、これは努力義務だからし てもしなくてもいいという解釈でいいのですか。 ○調査官 ただいまのご質問の点ですが、限度基準告示を今回改正する予定ですけれども、 これは法第36条第2項を根拠にしたものです。告示は告示ですけれども第3項が実はあっ て、委員の皆さんは労働総覧を机の上に置いていますので186頁をご覧いただきたいと思 います。第36条の第3項で告示は厚生労働大臣が定める限度基準ですけれども、これは労 使当事者の遵守義務が第3項で定められていますので、告示ではあるのですが、労使当事者 におかれましては、それに適合したものにするようにしていただきたいということで、これ は義務のように書かれています。第4項において、行政官庁は、この基準に適合するように 労使当事者に対し必要な助言及び指導を行うことができるとなっています。したがって私ど もとしては、この限度基準告示に従った特別条項付き時間外労働協定を労使で定めていただ くよう、助言、指導を行っていくということになろうと思います。 ○長谷川委員 これは、だから必要な助言及び指導だけでしょう。 ○調査官 ええ。 ○長谷川委員 そうすると、これはよくわからないのですが、今回、告示の一で書いてある 特別条項付き時間外協定では、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めなけれ ばならない、というのは新しく入ってきた条項ですよね。これを守らなければならない、こ れを守らなければ要するに助言、指導を行うということですね?それから罰則規定もあるの ですか。 ○調査官 罰則規定はありません。行政指導の対象になると。 ○長谷川委員 だから行政指導ですよね。もう1つは、例えばいま時間外割賃を最初から 40%で結んでいて、この告示の1項の特別条項だけ結んで、そのまま割賃率は最初のとこ ろから40%でずっと結んでいき、60をすぎたら法律の37条1項で50%になる。そうすれ ば、ここで言う代替休暇の協定さえ結ばなければ、月60時間を超えたら50%の割賃を支 払うことなのですね。 ○調査官 0時間から40%に定めておいて、60時間以上は定めがないと。 ○長谷川委員 普通の36協定で40%でずっと結んでいて、60時間をすぎたらば37条1項 を使って5割だけ払うと、そういうのは可能ですか。 ○調査官 40%ということですね。それは労使協定でどのような率を定めるのかというの は労使協定事項ですから、例えば60時間を超えたところを50%と決めていただくことは可 能です。 ○長谷川委員 決めなくても、37条1項の今回のただし書を使えば、自動的に60を超えた らば50%になると、それでいいですよね。 ○調査官 もし定めていない場合には、法律の規定がもちろん効いていますので、使用者は 60時間超の時間外労働については、5割の割増賃金を支払わなければならないことになり ます。 ○長谷川委員 それから代替休暇も、よく計算してみると76時間働いて4時間だから、ど れぐらい効果があるかというのはあるのですが、それはそれとして、私はあの時こういう細 かい議論をした記憶が全然ないけれども、例えば2カ月後に代替休暇を取るというのは、私 は法の趣旨からしたらおかしいのではないかと思います。月に76時間も残業したのだから 来月は休ませると、そうすればさっき言った賃金の関係でも、割賃が次の月に払われるのだ から休暇も次の月で取るのが、私は原則だと思います。だから2カ月後というのは筋が悪い なと思います。 ○分科会長 ご意見ということでよろしいですか。ただ、そこは、この省令案ですと2カ月 以内にしろということではないので、労使で相談して2カ月より短くするほうがいいという ことであれば、それは別にできるということです。 ○長谷川委員 しかし、それがモデルになりかねません。もう1つ言うと、このチラシでは、 1の時間外労働の割増賃金率が引き上がりましたと言う部分の絵のところでは、大臣告示の 努力義務の45時間から60時間のところに対しては何も書いていないわけです。ところが 裏の頁を開いて2のところにいくと、45時間から60時間のところについては25%を超え る率と書いてあって、なかなかこれって意味深のチラシだと私は思います。こういうチラシ ってすごく影響力を与えるわけです。今回のはすごく複雑だから、こういうチラシが独り歩 きして人事担当の人はこれを見本にするのだと思います。チラシの作り方や説明の仕方とい うのは、よほど注意しないといけないのではないかと思います。 ○分科会長 事務局のほうからお答えがあれば。 ○調査官 一言、2カ月が筋が悪いというご意見がありましたけれども、今日配付の省令案 要綱の(三)の括弧書きの中は、当該1カ月の末日の翌日から2カ月以内としています。2カ 月後ですと遅いぐらいで、2カ月以内ですから労使当事者で話し合っていただいて、例えば 1カ月と定めていただくことは可能であるということだけ、申し上げておきたいと思います。 ○長谷川委員 あと検討してほしいのですが、この代替休暇の取得というのは先ほども意見 が出ていましたけれども、労働者が決めるということで制度設計すべきだと思います。それ と、通常の有給休暇と代替休暇の区分経理をしっかりしないと、これはごちゃごちゃになる と思うので、この辺についても次回までどういう方法がいいのか、お示しいただければと思 います。 ○浦野委員 私は告示案について少し意見を申し上げたいと思います。これについては限度 時間を超えるということが書いてありますが、そもそも限度時間が適用にならない労働者と いうのがいて、例えば建設や研究みたいなもの、業種によっては過渡的に非常に忙しい場合 には限度時間が適用されない。そういうものになっていると私は理解しています。今回、労 働基準法が改正になったそもそもの目的というのは、ここにも書いていますように長時間労 働の抑制や労働者の健康、ワークライフバランスということだと思いますので、働く業種に よって限度時間が有るとか無いとかというのは、少しおかしいのではないかと思います。そ もそも、なぜ限度時間が適用されない労働者がいるのかという質問も含めて意見とさせてい ただきます。 ○分科会長 ご意見ということでよろしいですか。 ○監督課長 限度基準については、事業または業務の性格から、なかなか限度時間の適用に 馴染まないものについては、従来から限度時間の適用を外しているということです。今回の 努力義務についても、事業場の実情に応じた現実的な長時間労働抑制策を講じていただくと いう趣旨のものであることから、事業、業務ごとの特性を考慮した限度基準の考え方を踏襲 させていただいているということです。 ○浦野委員 例えば1つの企業でも、職種によって限度時間が適用されるものと、されない ものが存在する場合があります。そこでまた先ほどから論議になっていますように、システ ムの複雑さというのがありますから、こちらの労働者は45時間以上は割増率が高い。こち らは高くないということも現実に起こりかねないと思いますので、この辺も私は意見として 述べておきたいと思います。 ○分科会長 だいぶ告示案についてのご意見が出ましたが、もう1つ指針についても告示案 ということでかかっています。これについて何かご意見がありますか。 ○小山委員 細かいことで恐縮ですが、時間単位の年休について誰も言っていないから何か 聞いておかなければと思ってお聞きします。時間単位の年休を取れる人については予め法律 で定めることになっているわけですが、この範囲というのは、どういう決め方が許されると 言ったらおかしいですけれども、勝手に何でも範囲を決めていいのか。例えば業務ごとに同 一事業場の中でも、業務によって時間単位の年休を取れる人の範囲を決めるという業務で決 める方法もありますし、あるいは、そういうことがあるかないかわかりませんが、賃金等級 の高い人については取ってはいけないとか、賃金等級の低い人だけ取っていいとか、あるい は女性は取ってもいいけれども男性は駄目だとか、わかりやすい意味で例示しています。そ ういう範囲というのはどのように決めてよろしいものなのか。全く自由なのかどうなのかを お聞きしたいと思います。 ○調査官 法第39条第4項第1号に労働者の範囲を定めるとなっています。この労働者の 範囲の定め方ですが、これは年次有給休暇の趣旨を阻害しないように定めていただく必要が あると考えています。したがって、例えば取得目的で労働者の範囲を限定する、例えば育児 の必要がある女性労働者に限定するとか、それは取得目的で縛ることになりますからできな い。ではどういうふうに定めることが可能なのかというと、年次有給休暇は取得目的は自由 ですが、一方で事業の正常な運営との調整ということがありますから、事業の正常な運営と の絡みで範囲を定めていただくことになります。先ほど小山委員が言われたとおり事業単位 とか、例えば経理部門の労働者を対象にするとか、製造ラインの労働者はラインに付いてい ますので、時間で休みを取られると、なかなか事業の運営が難しくなるということで、除外 することは可能だろうと考えています。 ○小山委員 賃金等級で決めたらどうするのですか。 ○調査官 賃金等級で定めることが事業の正常な運営に必要だということが、もしあるので あればと思いますが、あまりそういう理屈が見当たらないのではないかと思っています。 ○小山委員 あまりいい例ではなかったですね。 ○長谷川委員 時間単位の年休については、結構組合の中でも意見が割れるので、すごく難 しいのです。年次有給休暇は暦日という考えが基本的にあるので、時間単位に対してはいろ いろな意見があるということは言っておきます。また確認ですが、あくまでも時間単位であ り、0.5時間などはないということでいいですか。それから、どう取るかは本人の話であっ て、例えば4時間、5時間という時間単位で取得できる制度ではないというか、1時間単位 にしてどう取るかは労働者の判断ということでよいですか。あと、これは年次有給休暇なの で、これは基本的に労働者の年休権という考え方でいいですか。最後に、裁量労働制の労働 者の時間取得というのは、どういうふうに考えるのか教えていただきたい。 ○分科会長 4つほどだったと思いますが、お願いします。 ○調査官 4点あって、1点目は時間というのが0.5時間とかを指さないということですが、 これは省令案要綱でも時間を単位として与えることができることとされる有給休暇1日の 時間数となっていて、これは整数ということを想定していますから7.5時間ということでは なく、この場合には8時間となることが必要だと考えています。  4時間、5時間も構わないのかということですが、仮に1時間が最小の単位と定めていた だいたら、もちろんそれを積み上げれば4時間あるいは5時間となるわけですから、それは 可能であるということだと思っています。  3点目の労働者が取得するものですかという質問ですが、これはもちろん年次有給休暇の 性格を変えるものではありませんので、労働者が時季も含めて取得を決めるものです。もし 事業の正常な運営に影響があれば、時季変更権で対応することがあるかもしれませんが、基 本としては年次有給休暇の考え方を踏襲しているというか、そのままであるということです。  4点目の裁量労働制の部分ですが、これは確かに裁量ですから、取得することがあるのか という実際問題はあるのですけれども、もし取得するということがありましたら、要するに その時間は時間単位の年休を取得したということになると思います。少しわかりにくい答弁 で恐縮ですが、そうなります。 ○輪島委員 休日労働の関係ですが、35条のところで休日労働については35%という規定 があるわけです。事務局に伺いたいのは、いわゆる法定休日ではなくて、会社休日について も35%の支払いをしている事業所、ないし企業が全体でどれぐらいあるのか。そういう統 計があるのかどうかということを伺いたいというのが1点です。  そのところで言うと、システムの関係でどういうふうに整理をしたらいいのかというとこ ろですが、いわゆる法超えのところで土曜日、日曜日、または国民の祝日に労働した場合に 35%を払っている。つまり法定休日には35%ですが、それ以外についても法超えの部分で 払っているものについて、今度は35条の法定休日ではないので、いわゆる60時間超えの 時間外労働の積算のところに入ってくるということになると、そこのところで時間外労働に 入るものと休日労働に入るものをシステム上、これもシステムの話で恐縮ですけれども、仕 分けをしなければならないとなると、ここが非常に煩雑なのではないか。法定を超えてなる べくインセンティブを付けてという意味合いで、法超えの処理をしているところが、かえっ て今回の改正に伴って非常に煩雑な管理をしなければならないという点については、非常に 残念だなという気がしています。その点はどのようにクリアするべきなのかという点につい てお伺いしたいと思います。  もう1点、お伺いをしたいのは、35条には「毎週、少なくとも1回の休日」と書いてあ りますけれども、いわゆる法定休日は1日なのか、1日以上なのか。毎週少なくとも1回で すから、2回法定休日という計算をすることができるのか、できないのかというところを伺 いたいと思います。  コンメンタールによると、それはそうではなくて、週1回の休日に労働させる場合であり、 週1回の休日のほかに、使用者が休日を定めた日に労働させられない場合は含まないという ことで、これは昭和23年の通達にそういうふうに書いてあるわけですが、今、かなり時間 が経っていて、いわゆる完全週休2日ないし週休2日制の導入が進んでいるにあたって、こ の昭和23年の通達によって、いわゆる法定休日と会社休日を分けていることが本当に現実 的なのかどうかというところも含めて、是非、ご検討いただきたいと思っています。 ○分科会長 ご質問の部分と、ご要望のところがあったと思いますので、ご質問のところを お願いします。 ○調査官 35%の割増率を設定している事業場が、どのくらいあるのかということですが、 厚生労働省の「平成17年度労働時間等総合実態調査」というのがあって、こちらのほうで 何パーセントというもので調査しています。いまのご質問で言うと、平成17年調査による と全事業場の計で0.9%です。参考までに申し上げると301人以上の規模の事業場において は3.6%になるということです。  法定休日と所定の休日との関係ですが、週休2日制が導入されていて土曜、日曜がそれぞ れ休日で、35%という割増賃金率を定めている事業場もあろうかと思いますが、労働基準 法第35条第1項の規定は最低労働基準を定めたもので、毎週少なくとも1回の休日という のは、毎週1日の休日を与えるということが最低基準であるということです。法定休日とし ては法定休日の1日ということで、それ以外のところは所定休日ということですから、現在、 35%という割増賃金率を定めている事業場についても、これはもちろん25%でも法律上は 問題ないということになっています。 ○分科会長 あと1点、時間外労働と所定外の休日について、35%でやっているときの複 雑さの話というのがありました。 ○調査官 所定外労働でやることについて、もちろん所定外で例えば60時間超やるとなる と、これは法定を上回る措置になるということですので、それは法律違反にはならないと考 えています。 ○分科会長 所定外の休日の場合でも。 ○調査官 所定外の休日。 ○分科会長 ですから通常の労働日で残業をやっていて、そこで例えばもう62時間になっ てしまっていて、それでさらに所定休日のところで出て働いたという場合はどうなるかとい う話です。 ○調査官 わかりました。所定休日も35%になっていて、時間外のときの特に代替休暇を 算定する場合については、50%と例えば25%、50%と35%ということで、確かに計算とし ては複雑になる部分もあるかと思います。それについては簡便な設定方法もあろうかと思い ますけれども、そこについては私どもも、どのようにすれば簡便にできるかについて説明会 等の場で説明させていただきたいと申し上げています。 ○輪島委員 一般的に企業の就業規則は、たぶん土曜日、日曜日、国民の祝日、創立記念日、 年末年始というふうな決め方で、どの日が法定休日なのかという特定をしている就業規則は あまりないのではないかと思います。そうすると土曜日、日曜日、国民の祝日の3日とも働 いたときに、どの日かが法定休日で、あとの2日が会社休日で働いているときに、どこが法 定休日で、どこが時間外労働なのかというのをシステムで後で認識しなければならない。逆 に土曜日に出て日曜日に休んだら、どちらかが法定休日で、どちらかが休みということにな る。その翌週は土曜日に出て日曜日に休んだら。少なくとも週1日ですから、たぶん法定休 日で寄せておけばいいだろうと。そのときに35で払うのか、25で払って60の積算のとこ ろに入ってくるのかというのを、システム上、クリアするというのは非常に難しい話で、そ のシステムの変更のコストのほうがよほどかかるのではないかと思うわけです。その点につ いて簡便な方式というのがないと、とてもではないけれども対応できないのではないか。あ る意味で悲鳴に近い声が寄せられていますので、是非、ご検討いただきたいと思っています。 ○分科会長 いま具体的なお話が出ましたので、またそれは事務局のほうでご検討いただけ ればと思います。 ○浦野委員 時間休暇の話で時季変更権が出ましたので、少し教えていただきたいのですが、 時季変更権については使用者側にあると思いますけれども、例えば労働者が半日休暇を取ら せてほしいということを申し出た場合に、企業側のほうが、それは時間単位の休暇にしなさ いということは、使用者側として時期変更権の中でできるのかという質問が1つです。  設定改善指針には、有給休暇の取得促進の観点から、時間単位の休暇を活用しなさいとい うことが何度も出てきます。例えば9時から18時が所定勤務で、12時から13時が昼休み の場合、従来の半日休暇という括りでいけば3時間休んでも、休暇上はたぶん0.5というカ ウントになったと思います。ところが、この時間単位の休日ができてしまったことにより、 午前中休む場合には3時間の時間単位の休暇にしなさいと言われた場合に、これが休暇取得 のカウント上、0.5日よりも少ない数字になってしまうと思います。こういったことに対し て休暇取得の促進ということが言えるのかどうかを伺いたいのです。 ○分科会長 では2点ということで、お願いします。 ○調査官 1点目の時季変更権に関わる話ですが、半日休暇は法律上書いているものではあ りませんので、3時間の休暇取得ということで申し上げると、時間単位年休を例えば日単位 に変えるということは、時季変更権には当たらない。あくまでもその時間を別の時季にずら すということであれば時季変更権に該当しますが、年休の取得単位を変えるということは時 季変更権に当たらないと考えています。  先ほどの設定改善指針との関係で、半日であれば3.5時間だったのを3時間にしてくださ いということについても、労働者が3時間ということを主張して、それを3.5時間に変える ということは時季変更権に該当しませんので、そういうことは起こらないと考えています。 ○分科会長 いろいろご議論いただきまして時間も経っています。まだご発言もあろうかと 思いますが、今日のところはこの辺で終わりにさせていただきたいと思います。そこで次回 の分科会においては今日の議論も踏まえて、さらにご議論を深めていただきたいと思います。 そしてできましたら次回、答申を取りまとめたいと分科会長としては考えていますので、よ ろしくお願いをしたいと思います。最後に今後のスケジュールについて事務局からご説明い ただきたいと思います。 ○監督課長 次回の労働条件分科会につきましては、改めて委員の皆様の日程調整をさせて いただいた上で、お知らせしたいと考えていますのでよろしくお願いします。 ○小山委員 いま、次回は取りまとめたいと言われましたが、先ほどからの議論をやってい たら本当に大丈夫かなという気がします。できるだけ早い機会に次回を設定していただいて、 十分時間をとった審議をしていただきたい。早く上げるべきだというのはおっしゃるとおり だと思うので、とすれば早いスピードでいろいろな資料等を出していただくなり、整理して いただかなければいけないと思いますので、回数をあと1回で終わりというように今日区切 ったということで確認をされると、ちょっと私としては承服できないと思いますので、審議 の実態に沿って運営していただくことをお願いしたいと思います。 ○分科会長 承知しました。それでは今日の分科会はこれで終了させていただきます。なお 議事録の署名ですが、労働者代表は安永委員、使用者代表は輪島委員にお願いしたいと存じ ます。よろしくお願いします。それでは忙しいところ、今日はありがとうございました。こ れで終了いたします。 照会先:労働基準局監督課企画係      03−5253−1111(内線5423)