09/02/25 第1回中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会議事録        第1回目安制度のあり方に関する全員協議会 1 日時   平成21年2月25日(水)10:30〜11:10 2 場所   厚生労働省省議室 3 出席者   【委員】 公益委員  今野会長、勝委員、野寺委員、藤村委員   労働者委員 石黒委員、加藤委員、木住野委員、田村委員、團野委員        使用者委員 池田委員、高橋委員、原川委員、横山委員、吉岡委員   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、              山口主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、              平岡課長補佐 4 議事次第  目安制度のあり方について 5 議事内容 ○今野会長  引き続き、第1回の目安制度のあり方に関する全員協議会を開催いたします。先ほど の第27回中央最低賃金審議会において、目安制度のあり方に関する全員協議会が設けら れました。まず、本日以降の全員協議会の公開について、御相談をしたいと思います。  中央最低賃金審議会運営規程の第7条第2項を準用する同規程第7条第3項に基づい て、議事録は原則公開としておりますが、会議については、「率直な意見の交換若しくは 意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合」等に該当することから、同規 程第6条を全員協議会においても準用をすることとして、従前から非公開としておりま す。今回もこの方針でいきたいと思っておりますが、よろしいでしょうか。                 (了解) ○今野会長  では非公開といたします。本日は第1回の全員協議会ですので、これまでの中央最低 賃金審議会における目安制度に関する検討の経過等について、お互いに理解を深めたい と思っております。そこで、事務局に関係資料を用意していただいておりますので、ま ずその説明をしていただいてから議論をしたいと思います。それではよろしくお願いい たします。 ○平岡課長補佐  それでは説明の方をさせていただきたいと思います。資料No.1から5については、こ れまでの地域別最低賃金と目安制度の検討の状況をまとめたものです。また、参考資料 につきましては、これまでの答申・報告等をまとめたものを準備しています。資料No.1 を中心に御説明したいと思います。  資料No.1の構成としては、「目安制度の創設まで」、「目安制度に基づく地域別最低賃金 審議」、「目安制度のあり方に関する検討の経過」の3部の構成になっております。12頁 の資料No.2の年表も併せて御覧いただければと思います。  まず最初に、目安制度創設までを振り返ってみたいと思います。資料No.1の1番の最 低賃金に関する答申に至るまでの道筋についてですけれども、資料では割愛しておりま すので、概略の方を説明したいと思います。昭和22年に制定された労働基準法は、最低 賃金の規定が設けられていましたが、当時インフレが急速に進行していたこともあり、 最低賃金制度の実施は困難とされ、この最低賃金の関係条文の実施は見送られてきたと いう状況にあります。その後、経済が安定してきたことなどから、昭和25年に中央賃金 審議会が設置され、昭和29年に最低賃金制に関する答申がまとめられています。ただし、 答申が特定の低賃金業種を対象としていたことなどから、関係者の賛同が得られなかっ たことから、この答申に基づく最低賃金は実現しませんでした。  その後、閣議決定に基づき設置された労働問題懇談会が、法律による最低賃金制度の 問題は、中央賃金審議会を再開して検討することといった内容の意見書を取りまとめて おります。  資料No.1の1番を御覧いただければと思います。政府は労働問題懇談会の中央賃金審 議会の再開と法制化の意見に基づきまして、昭和32年5月に中央賃金審議会を再開して おります。そして、昭和32年12月に労働大臣に対して答申が行われております。その 概要が、資料No.1の1番の四角枠で囲った部分です。最低賃金制度の法制化に関する考 え方ですとか、最低賃金の決定方式などについて取りまとめられております。  この答申を受けまして、政府では、最低賃金法案を作成し、昭和33年2月に国会に提 出しています。しかし、提出された法案につきましては、衆議院の解散ですとか、国会 審議の停滞などもございまして、すぐには成立とはいきませんでしたが、3度目に提出 した第31回通常国会において、一部修正の上、可決成立し、昭和34年に公布されまし た。  資料は2番目の最低賃金法の制定という部分を御覧ください。この法律に規定された 最低賃金の決定方式としては、業者間協定に基づく最低賃金、業者間協定に基づく地域 的最低賃金、労働協約に基づく最低賃金、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金 の4つが規定されております。これにより、業者間協定を実施していた業者団体の方か ら、最低賃金法に基づく決定申請の動きが見られるようになっており、昭和34年8月に は静岡県において、缶詰製造業や水産加工業の最低賃金が設定されるなど、最低賃金法 に基づく最低賃金が誕生いたしました。  次に、3番の最低賃金の普及促進についてです。昭和36年を初年度とする最低賃金制 普及計画により、計画的に普及が図られることになりました。また、中央最低賃金審議 会の昭和38年と39年の答申に沿い、都道府県における最低賃金推進計画を策定し、普 及促進が進められております。その結果、計画の目標時点である昭和41年度末までには、 適用労働者数が約510万人、当時中小企業の労働者数が大体1,300万人でしたので、約 4割ほどが適用されるものとなっております。  次に、4番の最低賃金法の改正に至るまでの道筋につきまして、資料では割愛してお りますので、概略を御説明いたします。先ほど御説明しましたように、最低賃金の普及 促進が進められていたわけですが、昭和38年の答申の中で、最低賃金の普及状況等を勘 案の上、改めて総合的に検討する必要がある旨の指摘がなされています。中央最低賃金 審議会において最低賃金制度の基本的な検討が開始され、昭和42年5月に答申が出てい ます。その内容としましては、業者間協定方式については廃止することが適当である、 また、将来の最低賃金制度のあり方については、引き続き検討することが適当であると いったものです。  続いて4番の最低賃金法の改正でございますが、この答申を受けた政府は、業者間協 定に基づく最低賃金を廃止するとともに、これまではその他の方式により決定すること が困難又は不適当と認める場合に限り審議会に調査審議を求めることができるとされて いた審議会方式に基づく最低賃金について、都道府県労働基準局長等が必要と認めると きは審議会に調査審議を求めることができるとする旨の改正法案を国会に提出していま す。国会では、最低賃金の新設・廃止の決定について関係労使からも申出ができるとの 修正がなされた上で、昭和43年6月に可決成立しています。  中央最低賃金審議会においては、昭和42年の答申後も引き続き、最低賃金のあり方に ついて、特別小委員会を設けて検討が続けられていました。その検討の結果、昭和45 年9月に、「今後における最低賃金制度のあり方について」という答申がまとめられてい ます。5番の四角枠で囲った部分です。答申の基本的な概略としましては、(3)の全国全 産業の労働者があまねく最低賃金が適用されるよう労働市場に応じ産業別、職業別又は 地域別に最低賃金を設定すべき等というものでございます。  資料は次の頁の6番を御覧ください。昭和46年4月には、以前から懸案だったILO条 約の批准が行われております。  7番です。先ほどの昭和45年の答申に基づきまして、昭和46年5月に、労働省では、 最低賃金の年次推進計画を策定しています。この計画においては、昭和46年度を初年と する5年間に、すべての労働者に最低賃金を適用することを目標とすること、このため、 地域別最低賃金による方式を活用すること等を内容としています。この計画により普及 促進が進められた結果、地域別最低賃金の設定が急速に進み、昭和47年の岐阜県から 51年の宮城県まで、全都道府県において地域別最低賃金が設定されることになりました。  次に、8番の労働団体等の動きです。全国一律最低賃金制度の実施を求める労働組合 の運動は、最低賃金法の制定前からあったわけですが、昭和50年には春闘の中心的な要 求として、全国一律最低賃金制度の実現が掲げられています。その結果、労働4団体か ら統一要求書が取りまとめられ、同年2月に内閣総理大臣あてに提出されております。 このような動きを背景としまして、統一要求書と内容をほぼ同じくする野党4党の最低 賃金法案が国会に提出されております。この法案については昭和51年11月に審議未了 により廃案になっております。政府は、現状が全労働者への最低賃金の適用という初期 の目標を達成しつつある中で、中央最低賃金審議会に対して、全国一律最低賃金制度の 問題を含め、今後の最低賃金制のあり方について諮問する旨の政府見解を表明しており ます。この政府見解が表明されたことにより、労働組合が予定していました統一ストラ イキは回避されました。  そして、この年の5月、労働大臣から最低賃金のあり方について諮問が行われており ます。これが9番の部分です。  諮問を受けた中央最低賃金審議会では、小委員会を設け、検討が重ねられています。 検討の中では、最低賃金が各都道府県ごとに決定されてきたという経緯から、全国的な 整合性に欠けるのではないかといったことや、各都道府県相互間の比較を重視するとい った事情により改定作業が遅れるなどの問題がある等の指摘が出ていたようです。  このため、この小委員会では検討すべき課題とその方向性について、中間報告として まとめています。10番の四角枠で囲った部分です。地域別最低賃金の決定方式について は、何らかの改善を図る必要があるのではないか、最低賃金の決定において、中央最低 賃金審議会の積極的機能を発揮する方向について検討することが適当なのではないかと いった内容となっています。  その後、小委員会ではこの報告の内容に沿って検討が進められています。昭和52年の 3月と9月に小委員会報告を取りまとめるとともに、その内容を踏まえ、中央最低賃金 審議会は昭和52年12月に、今後の最低賃金制のあり方について答申を出しています。 11番の四角枠で囲った部分です。  答申の概略といたしましては、次の頁の真ん中のロの部分です。地域別最低賃金につ いて、中央最低賃金審議会は毎年47都道府県をいくつかのランクに分け、最低賃金額の 改定について目安を提示するものとする、目安は一定時期までに示すものとする、目安 の提示は昭和53年度より行うものとする、などを内容としています。ここで整理された 考え方が現在の目安制度につながっているところです。  昭和52年の答申を受けまして、昭和53年度の目安について、昭和53年5月に、労働 大臣から中央最低賃金審議会に対して諮問がなされています。諮問を受けた審議会は小 委員会を設置することとしまして、目安そのものを検討する第1小委員会と、表示単位 期間等の問題を検討する第2小委員会に分かれ、検討が進められています。その結果と して、第1小委員会では目安の基本的考え方と、昭和53年度の目安額について報告がま とめられています。具体的には次の頁12番の(1)の(1)、(2)の部分です。従来の地域別最 低賃金額の改定が中小企業の春季賃上げ状況と密接に関連していることに注目し、本年 度の目安についてもこの関係を考慮し、引上率は消費者物価上昇率を下回らないように する必要があるとの判断がなされています。また、昭和53年の春季賃上げ状況及び労働 省が実施していた特別賃金調査の結果を検討して目安を作成する、という内容になって います。以上が目安制度の創設まででございます。  続いて、次の頁の「II 目安制度に基づく地域別最低賃金審議」について御説明いた します。2番の目安の決定状況についてを御覧ください。この部分の御説明につきまし ては、15頁の資料No.4−(1)も併せて御覧いただければと思います。昭和53年度から55 年度までの3年間については目安が決定されており、昭和56年度以降については、労使 の主張に隔たりがあったことから、全会一致での目安額の決定には至っておりません。 このため、昭和56年度以降については、公益委員の考え方を「公益委員見解」として地 方最低賃金審議会に示すかたちが採られています。  また、目安制度発足以来、47都道府県を4つのランクに分け、各ランクごとに地域別 最低賃金の引上額を提示しています。その状況は、15頁の資料No.4−(1)のようになって います。また、平成14年度からは時間額で示しております。率で見た場合の数字が表の 額の下の括弧に書いてございますが、昭和53、54年度については下位のランクほど引上 率が高い状況が見られます。ただ、昭和55年度以降については引上率については同率と なっています。引上率の最高は昭和55年度の7.0%、最低は平成15年度の0.0%です。 平成14年度と16年度については、「現行水準の維持を基本として引上げ額の目安は示さ ないことが適当」とされました。なお、平成20年度は、生活保護との乖離解消を図る観 点から、目安の提示方法が異なっているため、下に別に示しております。  次に、地域別最低賃金の決定状況です。16頁の資料No.4−(2)を御覧ください。目安制 度発足以来の地域別最低賃金の加重平均額と引上率の推移を見たものです。平成20年度 については、全国加重平均は時間額で703円、引上率では2.33%となっています。日額 と時間額ということで、正確な比較はできないのですが、引上率については昭和55年度 の7.04%が最高となっています。  各都道府県の状況については、次の頁の資料No.4−(3)からになっています。これは各 ランクで示しておりまして、平成7年と12年と16年にランクの入れ替えが行われてい ます。ランクが移動した県については、それまでに属していたランクでも載せておりま す。例えば、18頁を御覧いただければと思います。滋賀は平成6年までCランクだった のが、平成7年以降はBランクということで、B、Cランクの両方に載せてあります。B ランクでは下から7つ目、Cランクでは上から4つ目に記載がございます。  次に、23頁は地域別最低賃金額の最高額と最低額の格差の推移を見たものです。最高 額を100としたときの最低額の割合を示したものが格差B/A×100となっております。こ の数字が高い方が最高と最低の格差が縮小したことを意味しています。昭和53年度の 84.4から縮小傾向で推移しており、日額で見た場合、平成13年度は86.2となっていま す。これも時間額に変更しているので比較はできませんけれども、平成20年度について は東京・神奈川と最低額県で見た場合81.9という格差になっています。  資料No.4−(5)は、目安と地域別最低賃金改定額との関係の推移を示しています。目安 と同額の改定額だった都道府県の数は、最高は昭和62年度の45、最低は平成16年度の 3となっています。なお、直近の平成20年度については9で目安どおりとなっています。  続いて目安制度のあり方に関するこれまでの検討経緯について御説明します。25頁の 資料No.5も併せて御覧いただければと思います。この資料No.5につきましては、これまで の検討事項と、労働者側、使用者側の主張や結論について整理しています。6頁の「III  目安制度のあり方に関する検討の経過」からになります。1の(1)で、目安制度を導入し てから2年目の、昭和54年度の目安に関する小委員会において、目安の地方最低賃金審 議会に対する拘束性の問題が議論されています。このため、昭和52年9月の小委員会の 報告の「了解事項」を改めて答申の前文に記載し、目安は地方最低賃金審議会を拘束す るものではないことを再確認することで合意されています。  昭和55年度の目安に関する小委員会では、目安の形態について議論がなされました。 25頁の資料No.5の上から2つ目ですが、使用者側から下位のランクのアップ率を低くす べきということ、ランク区分を見直して、Dランクを2分し、5ランクとすることが主張 されています。これに対して労働者側からは、目安は各ランクごとに最低賃金の絶対額 を示すべきであって、そうでなければ各ランク同額の引上額とすべきとの主張がなされ ています。最終的には前年同様の形態で目安が示されることになっています。  昭和56、57年についても労使各側から同様の主張がなされました。 6頁の方にお戻りいただき、1の(5)のイの部分です。公益委員から、労使双方の主張が 目安の基本に関わるものであり、十分に時間をかけて慎重な検討を要するといった考え 方が示され、労使各側委員の了解を得たことにより全員協議会が設置され、今後の目安 制度のあり方について議論をすることが決定されています。  全員協議会での検討は昭和57年7月に開始され、当初予定されていた検討項目のほか に、各都道府県の地域別最低賃金の水準の問題や地域別最低賃金の改正審議の長期化防 止の問題も合わせて議論することとされています。  昭和58年度の目安の提示、地方最低賃金審議会における改正審議までに、中間報告を 取りまとめるべく審議が重ねられたわけですが、結局労使の主張に隔たりが大きく、中 間報告を取りまとめることはできませんでした。これらの事項については、当面審議を 棚上げにして、その後の情勢の変化を待つことになりました。  目安制度のあり方に関する検討は、昭和59年から62年についてはなされていません でしたが、昭和63年7月に昭和63年度の目安について答申を行うに際し、再び目安制 度のあり方に関する全員協議会を設けることが決定され、平成元年2月から検討が始ま りました。  26頁の資料No.5になります。この全員協議会では、参考資料の改善、表示方法、表示 単位期間、ランク区分の4点が主として議論されています。労使各側からの意見は資料 に整理してありますが、平成元年11月に取りまとめられ、中央最低賃金審議会で了承さ れた全員協議会報告では、参考資料については、適正な水準と全国的整合性の確保を重 視する観点から改善に努めるとされています。  また2つ目の表示方法では、先ほどの報告において、今後検討するということになり、 平成2年から具体化が図れるように努めるとされています。  資料No.1に戻っていただきまして、7頁の4番です。目安制度のあり方に関する全員協 議会は、平成元年の報告後も審議が継続されていましたが、データ処理の問題など専門 的な内容だったこともあり、専門委員会を設けて議論が進められています。このときは 目安の表示方法、金額審議の参考資料の整備・充実などを中心に議論が進められていま す。こうした経緯を踏まえて、平成2年4月に小委員会報告が取りまとめられ、この報 告書を全員協議会報告とするとともに、この年の5月の中央最低賃金審議会で了承され ています。小委員会報告については4番の(3)の四角枠で囲った部分です。  平成2年の全員協議会報告以降、目安制度のあり方についての検討は一時休止されて いたわけですが、平成4年6月、平成4年度の目安を審議する際に、労働者側から全員 協議会を設けて検討すべきとの問題意識の表明がなされています。これを受け、この年 の12月に中央最低賃金審議会において、現行の目安制度の枠組みの中で改善を図るとい う観点から、その検討事項を目安の決め方と参考資料、表示単位期間、表示方法、ラン ク区分などとして、全員協議会で2年程度を目途に検討していくことが了承されていま す。  全員協議会における検討は平成5年3月から開始され、過去の議論の整理、労使から の意見表明など、10回にわたり検討が行われています。平成6年5月に中間報告の取り まとめが行われており、中央最低賃金審議会において了承がなされています。この報告 については、次の頁の(3)の四角枠で囲った部分になります。  その内容は、今後の目安の決定方式として、パート労働者の賃金水準とそのウエイト の変化、男女構成の変化、就労日数の増減を反映した方式とすることが望ましいこと、 ランク区分、表示方法、表示単位についてはさらに検討を行うこととされています。ま た、これらの検討事項については平成7年度の目安審議を目途に取りまとめを行ってい くことが適当とされています。  平成6年度の目安審議の終了後、再び検討が再開されています。 こうして取りまとめられた全員協議会報告は、次の同じ頁の(4)の四角枠で囲った部分に なります。まず、(1)の最低賃金と一般賃金との関係ですが、目安審議の重要な参考資料 とされている賃金改定状況調査の賃金上昇率の算出方法について、一般労働者及びパー ト労働者の全労働者について賃金上昇率を求めること、また、男女構成の変化の影響が 反映された賃金上昇率を算出すること、就労日数の増減が反映されるように賃金上昇率 を算出することが適当とされています。  次に、(2)のランク区分方法、表示方法ですが、各都道府県の経済実態に基づき、各ラ ンクへの振分けの見直しを行うとともに、見直し後のランクで目安を示すことになりま した。なお、各都道府県の経済実態をどのように把握するかについては、20の指標が示 されており、そのうち、所得・消費に関する指標を5、給与に関する指標を10、企業経 営に関する指標を5ということで、それぞれの指標については原則として直近5年間の 数値の平均値を使用することが合意されています。また、ランク数については従来どお り4区分、表示方法についても各ランクごとの引上額による表示を用いることとされて いますが、目安額の算定については、従来は各ランク中間値方式を採っていたところを、 単純平均値方式とすることが合意されています。また、ランク区分については5年ごと に20の指標を総合的に指数化した総合指数に基づいて見直しを行うことも合意されて います。さらに、ランク区分以外の事項も含め、今後概ね5年ごとに見直しを行ことが 適当とされています。これについて、全員協議会は平成7年4月に報告を取りまとめ、 中央最低賃金審議会において了承されています。  平成7年の全員協議会の後、平成11年4月に再び全員協議会が設置され、検討がなさ れています。28頁の資料No.5に記載されております。ランク区分の見直し、表示単位期 間、表示方法、参考資料のあり方などが議題となっております。平成12年3月に中間報 告というかたちでランク区分等の見直しを行い、表示単位期間など議論が難しい問題に ついては、12月の報告までにまとめるという形がとられています。  この28頁でランク区分に関する労働者側、使用者側の主張を整理しております。この とき、使用者側からは4ランクを前提とする中で、必要最小限の入れ替えが行われるべ きと主張があったわけですが、結局、中間報告においては、ランク数は従来どおり4ラ ンクで必要最小限の入れ替えが行われています。また、経済情勢等を踏まえた目安の決 定のあり方として、同じく中間報告においては、賃金改定状況調査結果を重要な参考資 料とした上で、状況を総合的に決定していくことが必要という結論になっております。  平成12年度の目安審議を挟み、再び全員協議会が開かれています。ここでは残された 課題の表示単位期間や表示方法、また、参考資料のあり方について議論がなされていま す。この表示単位期間については、報告において、時間額単独方式への一本化がまとめ られています。また、表示方法については、報告において、現行どおり各ランクごとの 引上額表示とすることでまとめられ、参考資料については、一層の整備・充実を図るこ とが適当であるとされています。  表示単位期間については、時間額単独方式へ一本化することとされましたが、日額と 時間額との関係をどうするかといった課題があったので、平成13年4月に時間額表示問 題全員協議会が設置されております。これが10頁の7番の部分です。  この時間額表示問題全員協議会において、地域別最低賃金額の時間額単独方式への移 行に当たっての条件整備について検討がなされ、目安については、平成14年度から時間 額で表示することが適当という結論をいただいております。地域別最低賃金においても、 時間額単独方式への移行という流れになっております。  最後に、一番直近である平成15年10月に設置された全員協議会について御説明いた します。29頁の資料No.5になります。  まず、表示方法、ランク区分のあり方についてです。ランク設定の必要性については、 当時、最低賃金の表示単位期間が時間額に移行したことや、厳しい経済情勢下にあった ことから、ランクごとの目安額に差が生じにくくなっており、その意義が議論されまし た。結局報告においては、ランク制度は当面維持することが適当とされ、ランク設定の 必要性については、目安制度を取り巻く状況などを踏まえて、次回改めて検討すること とされました。また、ランク数は従来と同様4つとすることが適当とされ、各ランクへ の都道府県への振分けは、従来と同様の考え方に基づいて行うことが適当とされました。 さらに、表示方法については、当面は現行の各ランクごとの引上額による表示を引き続 き用いることが適当とされました。  次に賃金改定状況調査等参考資料のあり方につきまして、労働者側、使用者側からそ れぞれ主張がなされましたが、結局報告においては、賃金改定状況調査結果第4表の賃 金上昇率の計算方法につきましては、パートタイム労働者の構成比の変化を除去した計 算方法とするとともに、調査対象事業所の選定については、当面変更しないことが適当 とされました。  次の改定審議のあり方については、使用者側から何年かに一度にするというようなル ールを作るべきという主張がなされましたが、結局、報告においては、社会経済情勢を 踏まえ時宜にかなった改定を行う必要性や労使の意思疎通の観点から、毎年目安を示す ことが適当とされました。  最後に、金額水準につきましては、労働者側、使用者側からそれぞれ主張がなされま したが、報告においては、引き続き各種資料を総合的に勘案し、最低賃金の機能が適切 に発揮されるよう審議することが必要とされました。以上です。 ○今野会長  ありがとうございました。御質問ございますか。 ○高橋委員  2点ほど質問させていただきます。まずは目安のランクを当初4つに分けた経緯につ いてもう少し教えていただきたいと思うのです。今いただいた資料の5頁で、最初に目 安を都道府県ごとに4つのランクに分けたときの、どのような考え方で4つに分けたの かというところについて教えていただきたいと思います。  その後、20指標に基づいて現在のようなランク分けをしているということですけれど も、その20の指標について、当然、生計費と賃金と支払能力という観点から、おそらく、 5指標、10指標、5指標ということだと思います。企業経営に関する5指標というとこ ろで、今机においていただいている最低賃金決定要覧の191頁から20指標が各都道府県 ごとに示されておりますけれども、おそらくは企業経営に関する5指標に関連しまして は、見るところ、どうも売上系の数字を取っているようですけれども、支払能力という 観点からは、付加価値的な指標というものが採られて然るべきではないかと思うのです。 どうしてこのような指標が採用されて現在に至っているのか、そのあたりについても教 えていただければと思います。以上でございます。 ○吉本勤労者生活課長  わかる範囲でお答え申し上げたいと思います。1つ目のなぜこうした4ランクになっ ているのかにつきまして、これは昭和53年に目安制度を発足した当初から4つだったわ けでございます。4つというのが先にありきではもちろんなくて、その前の答申か報告 にもあったかと思いますが、いくつかのランクに分けるということで、当時の地域別最 低賃金の額を上から順に並べてみましたところ、格差があるところがいくつかあり、そ こを区切りとすると4つにまとまるということです。AとBのところには明らかに他と 違う差がある、というところを区切りにしたということだと思います。  2点目の20指標については、平成7年のときにこれを用いて総合指数化したというこ とが始まったわけでございます。おっしゃるように、法律上3要素を総合勘案するとい うことになっていますので、その3つに対応した形で指標を選んだのではないかと。主 に、労働者側の状況として生計費、これに関しては消費とか所得に関する5指標が対応 していて、一方で通常の事業の支払能力、主に使用者側の状況については、企業経営に 関する5指標が選ばれたと。労働者の賃金に関しては10指標あるわけですが、賃金とい うのは結局労働者側の状況、使用者側の状況を踏まえ、労使の交渉が結果としてそうな っていると考えれば、言ってみればある意味中立的な指標であるということで、いちば んウエイトとしては大きい。あと労働者側、使用者側のそれぞれの事情としては、5つ ずつと。大きな考え方としてはそういうようなものがあったのではないかと思います。  その中で、今御指摘のあった企業経営に関する指標がなぜ売上についての指標なのか というところは、今はよくわかりません。調べまして、わかりましたら御紹介いたした いと思います。 ○今野会長  付加価値についての統計で、県別がちゃんと出ていて、安定した統計はあるのですか。 ○高橋委員  ちょっと私も調べてみないとわからないです。 ○今野会長  全国ベースはありますね。 ○高橋委員  全国はございますね。 ○今野会長  企業規模ベースはあるけど、県別はあまり見たことないのですが、あるのですか。サ ンプルが小さいと非常に不安定だから、もしかしたらそんな事情があったのかもしれま せん。 ○高橋委員  そうですね。 ○今野会長  他にございますでしょうか。授業を受けたという感じですね。これを踏まえて、先ほ ど審議会でもありましたが、事務局としては論点を出してきたということですね。よろ しいですか。 ○高橋委員  もう1つよろしいでしょうか。この最低賃金決定要覧のところで、198頁を見させて いただきますと、20指標に基づいて各都道府県別に総合指数が並んでいまして、ランク の区切りごとに一行ぐらい空行があります。例えば下の方で、和歌山と徳島が78.7と 78.4で、どうしてこういうところで線が引かれているのかは、何か恣意的な感じもしな いでもないのです。先ほどの私の元々のなぜ4ランクなのかという素朴な疑問とも絡む のですが、どういうメルクマールといいましょうか、多少の分散度合も考えているので しょうけれども、どういう形で合理的な区分けをしているのかということがわかれば教 えてください。 ○吉本勤労者生活課長  今申し上げられるとすれば、今回お配りしています参考資料の中に、過去からの報告・ 答申類を付けてあります。前回の報告が一番最後の59頁から付いておりますけれども、 それの60、61頁辺りがランクの振分けに関する御議論をまとめたものでございます。61 頁のところに(イ)で4つとするのが適当として、(ロ)として一応考え方が示されてご ざいます。ランク間の移動や各ランクごとの都道府県の数の変動を極力抑えるといった あたりのことが、かなり重要視された結果ではないかと思います。 ○今野会長  いかがですか。あまり合理的な説明ではないですが。総合点数を見て合理的に考えつ つ、総合的に判断するということだと思うのですね。他にどうでしょうか。それではお 暇な時間にでもゆっくり読んでいただいて、宿題ということにいたします。また、お読 みになってわからないことがありましたら、事務局の方に質問していただければと思い ます。  次は今後の進め方についてです。まず事務局に案を作ってもらっておりますので、そ れを説明していただいてから議論をしたいと思います。説明をお願いします。 ○吉本勤労者生活課長  資料No.6が一番最後の頁に付いていると思います。それを御覧ください。事務局の案 として整理させていただいたものでございますが、検討事項及び今後の進め方につきま しては、引き続き3月に御議論をいただきたいと考えております。その内容如何による わけでございますが、新年度に入りましてからは委員の改選が行われました後に、1カ 月に1回ぐらいのペースで開催させていただければと思っておりまして、順次、各検討 事項とされたものにつき、フリーディスカッションを中心に、まずは御議論をいただい てはどうかと思っております。  その後、来年度の目安審議が入ってまいりますので、その期間には一旦中断をさせて いただき、また再開した後にはそれまでのフリーディスカッションを踏まえまして、検 討事項についても必要があれば再整理を行った上で、議論を深めていくというようなこ とで考えております。従前の全員協議会の場では、労使の見解をいただくといった場面 も設けているようでございまして、今回もそれは必要に応じて考えさせていただければ と思っております。そうした御検討を経て、平成21年度中を目途に取りまとめをできれ ばと考えているところでございます。 ○今野会長  ありがとうございました。以上の進め方について御意見がございますでしょうか。よ ろしいでしょうか。それでは、1カ月に1回ぐらいのペースということだそうですので。 一応この事務局案に沿って議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いをい たします。  他に何かございますか。次回から本番という感じですけれども、よろしいでしょうか。 では最後に、次回の全員協議会の日程ですが、3月27日午前10時からとなっておりま す。場所については事務局から追って連絡をさせていただければと思います。議題につ いては、最初ですので、全員協議会の検討事項等について議論をしていきたいと考えて おります。  これで本日の全員協議会を終了いたします。本日の議事録の署名は團野委員と横山委 員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。それでは終了いたします。あり がとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)