09/02/23 第39回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録 第39回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会          日時 平成21年2月23日(月)          15:00〜          場所 厚生労働省共用第7会議室 ○大橋部会長 定刻となりましたので、ただいまから「第39回雇用対策基本問題部会」 を開催いたします。議事に先立ちまして、当部会に所属されます委員の交代がありまし たのでご報告いたします。公益代表委員の北村委員に代わりまして、読売新聞東京本社 編集局生活情報部の月野委員になりました。次に、本日欠席の委員は、公益代表は森戸 委員及び宮本委員、労働者代表は久保委員、使用者代表は荻野委員です。  それでは議事に入ります。初めに議事次第(1)にあるとおり、本部会の下に設置されて いる港湾労働専門委員会において、昨年6月以降議論されてきた「新たな港湾雇用安定 等計画の策定について」を議題とさせていただきます。まず、事務局から資料の説明後、 ご議論をいただきます。 ○建設・港湾対策室長兼介護労働対策室長 お手元の配付資料1と2の「港湾雇用安定 等計画(案)」について説明いたします。港湾雇用安定等計画については、港湾労働法 の規定に基づき適用港湾である東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門の各港湾におけ る港湾労働者に係る労働力の需給の調整、並びに雇用の改善、能力の開発等に関して、 国等あるいは事業主団体等が講ずべき指針を厚生労働大臣告示として示すものです。そ の内容については法律において4つほどありまして、港湾労働者の雇用の動向に関する 事項、労働力の需給の調整の目標に関する事項、港湾労働者の雇用の改善並びに能力の 開発及び向上を促進するための方策に関する事項、港湾労働者派遣事業の適正な運営を 確保するための方策に関する事項ということを定めることとしております。計画期間と しては5カ年、手続等に関しては、あらかじめ労働政策審議会の意見を聞く他、必要と 認める場合には関係都道府県知事、その他関係行政機関の意見を聞くものとなっており ます。  お手元には資料1と2を用意しておりますが、基本的には資料1の本文に沿って説明 いたします。まず、資料2は5種類ほどの資料になっております。後ろのほうで恐縮で すが、その中の資料2-5はこの5カ年の港湾雇用安定等計画の策定スケジュールとして、 これまで履践してきた経過が書かれております。安定分科会基本問題部会の下に「港湾 労働専門委員会」ということで、平成20年6月9日の第11回から今月の第16回まで、 都合6回審議が行われまして、平成21年4月1日からの適用開始に向けて作業をしてい るという位置づけの資料です。  告示の形式である計画の基盤となる港湾労働専門委員会ではどのような議論がなされ たか、ということが資料2-3、2-4に出ております。特に、資料2-4は労使間で議論され た内容です。この中のいわゆる計画の周辺事項も、港湾労働専門委員会が直接的に告示 の内容に反映していないものも含めて、幅広く議論がなされております。ここは参考ま でに資料として付けております。本日説明する計画(案)、告示の形式の新旧、現行が どうなっているか、今回どのように改正する予定であるかといったことについての資料 が資料2-2で、新旧対照表の形で付いております。  まず、資料1の「港湾雇用安定等計画(案)について(諮問)」の内容を一通り説明 いたします。別紙の1頁の1は「計画の基本的考え方」です。港湾労働法に定めた適用 港湾6大港における港湾労働対策について、関係者の指針を示すという位置づけが計画 のねらいとして書かれております。  (2)は計画の背景と課題ですが、港湾運送事業に係る労働関係情報について、昨年6 月30日現在で独自に調査をしております。その調査の状況等も反映しつつ、港湾労働者 を巡る労働環境というか労働状況を規定しております。(2)のイは港湾運送事業ですが、 貨物の取扱量が日ごとに変動するのが特徴であると。これは港湾運送の「波動性」と言 っておりますが、こういった特殊な状況がありまして、個別の企業においては常用労働 者のみで荷役作業を処理することはなかなか難しいところがあり、企業外労働力に依存 せざるを得ないという状況もあります。企業外労働力として、日雇労働者に依存すると いうことは労働者自身の雇用安定にも問題となりまして、その就労に際し、第三者が不 当に介入する弊害も生じるおそれが出てくるという問題点を書いております。  (イ)の労働時間は全産業と港湾労働産業を比較しているわけですが、他の産業と比 べると基本的には長くなっているという傾向です。(ロ)の週休2日性の導入状況につ いても、基本的には7割から8割程度の導入がなされております。(ハ)は退職金制度 の有無ですが、2頁で最近の状況が記されております。(ニ)は職業訓練についての状 況です。  2頁のロは「今後の港湾労働対策の課題」です。基本的には5年前の計画が非常に大 きく変わっているわけではないのですが、規制改革の影響、コンテナ化等の近代的荷役 の進展、あるいは波動性への対応といった中で、真ん中にも書いてありますが、港湾労 働者自体が高度な技能・技術を習得すること、あるいは港湾運送事業主自体についても 高度な技能労働者を確保することが課題になっているということです。波動性への対応 についても、基本的には効率的かつ的確に対応するための施策を引き続き講ずる必要が あるとしております。  2頁の下の(ロ)については労使共通した認識ですが、港湾労働者の雇用の改善並び に能力の開発及び向上が十分に進展しているとは言いがたい状況にあり、また近年、港 湾労働を取り巻く環境が変化していることを踏まえて、港湾労働者に関しては、平成12 年に大きな法律改正がなされており、その中で港湾運送事業者の許可、ライセンスを持 った事業者が常用労働者を一定の期間、月に7日間までですが、他社に就労させること が可能な「港湾労働者派遣制度」というものが設けられております。そういったものの 適切な運営及び有効活用の促進を図っていき、港湾労働者の雇用の安定、福祉の向上を 図っていくことが重要であると規定しております。3頁の(3)の計画の期間は、平成21 年度から平成25年度までの5カ年です。  2の「港湾労働者の雇用の動向に関する事項」は、(1)で港湾運送量の動向、(2)で港 湾労働者の雇用の動向ということです。3頁の後半の(2)のイは「労働者数」ですが、6 大港の常用港湾労働者数は平成14年度は2万8,573人でしたが、平成17、18、19年度 までは業況が上向きだったことから若干の増加傾向にあります。ロの「就労状況」にお いても同様の傾向です。4頁、ハの「入職率及び離職率」ですが、港湾労働者の入職率、 離職率については全産業において比較的低い傾向ではないかということです。年齢構成 についても有意に変わっているという傾向は見られません。  4頁の3は「労働力の需給の調整の目標に関する事項」です。港湾労働法においては、 日雇労働者の就労に際して第三者が不当に介入することの弊害が強く懸念されているの で、基本的には常用労働者で対応することが引き続き確認されており、規定されている ところです。5頁の上の港湾における荷役作業については、今後とも各事業主に雇用さ れる常用労働者による対応が原則で、企業外労働力については、港湾労働者派遣制度に よる他の事業主に雇用される常用労働者による対応を原則としております。  (2)労働力の需給調整に関して講ずべき措置ですが、「国及び都府県が講ずる措置」、 港湾労働法で規定されている「港湾労働者雇用安定センター」という指定法人の講ずる 措置、あるいは「事業主及び事業主団体が講ずる措置」について、5〜8頁にかけて整理 し、規定しております。  「国及び都府県が講ずる措置」としては、(イ)にあるように、港湾労働法の趣旨及 び目的の徹底を図るため、事業主に対する指導を実施するということです。先ほどから 繰り返し説明しておりますが、事業主の企業外労働力への安易な依存を排除していくた めに、港湾労働法の趣旨及び目的のさらなる徹底を図るということです。(ロ)は常用 労働者の雇用の安定の確保、(ハ)は直接雇用の日雇労働者問題への対応です。この計 画について前回は平成15年に議論したのですが、それから平成20年までの間に、基本 的には業況が若干上向いてきたこともありまして、日雇労働者の雇用の実数と同時に、 港湾労働派遣労働者も増えてきております。ただ、日雇労働者の形態はあくまでも例外 的な措置として認められているものですので、関係者は基本的には常用雇用を中心に取 り組んでいく必要があるということです。  6頁の(ニ)は、人付きリース問題の対応ということを特出しで論点の提示をしてお ります。人付きリースは基本的には港湾運送事業のフォークリフト等で見られますが、 見られると言っても、6大港の中ではどちらかと言うと関東近辺の港に多く見られます。 人付きリース問題については(ニ)のパラグラフの2番目にあるように、基本的には解 消すべきものということです。直前のところにもあるように、人付きリースは労働者派 遣法上も違法な形態である疑いが非常に高いことから、労使間で抜本的な解消を図るべ きということで計画に盛り込んでおります。  (ホ)の雇用秩序の維持に関しても、基本的には常用労働者中心で、企業外労働力へ の安易な依存というものを抑制していくということです。6頁の下は行政が設けている 月間ですが、「港湾労働法遵守強化旬間」等を通じて、関係者の遵法意識を高揚してい くこととしております。  7頁の(ヘ)は公共職業安定所における適格な紹介等の実施ということです。港湾労 働については常用労働力が97、8%ぐらいで労務供給がなされているという実態ですの で、公共職業安定所における実際の紹介ケースというのは、それほど多いわけではあり ません。しかし、数は少ないものの、もし日雇労働者が求人といった形で求められた場 合は適格に対応していく必要があることを引き続き計画に盛り込んでおります。また、 (ト)港湾労働者雇用安定センターについてですが、需給調整に関しては港湾労働者派 遣事業の契約のあっせん等も行っておりますので、引き続き行っていくということです。  ロは「港湾労働者雇用安定センターが講ずる措置」ということで、(イ)(ロ)と事 業主支援業務の適正な実施ということが出ております。港湾労働者雇用安定センターは 6大港ごとに支部がありますが、労働者派遣契約の締結のあっせんも行っておりますし、 まさに港湾労働者の雇用の改善に関する業務も行っております。7頁から8頁にかけて は、講ずる措置について述べております。  ハについては、実際の港湾運送事業の「事業主及び事業主団体が講ずる措置」として 規定していることが書かれてあります。(イ)は直接雇用の日雇労働者問題の対応とい うことで、これについても常用労働者による荷役処理を基本とするということです。 (ロ)の人付きリース問題にはしっかり対応していくということです。この計画の中で 港湾労働者の雇用の実態などについては5年ごとに調査を行っているわけですが、8頁 の(ロ)の2つ目のパラグラフに「また、人付きリース問題の具体的解決策の検討、実 施等を行うため」とありますが、これは今回の計画で新たに人付きリースの利用状況調 査をするということです。一口に解消と言っても、どのようにして解消の筋道を立てて いったらいいかということについて調査をしていこうということで、そういった国の調 査に対して協力していただくといったことも計画に位置づけられております。(ニ)で すが、港湾労働者雇用安定センターも事業主として協力していただきたいということで す。  9頁の4は、具体的な港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上を促進するため に、どのようなことに留意して取り組んでいったら良いかが規定されております。(1) は雇用の改善を促進するための方策です。イ「国が講ずる措置」としては福利厚生、安 全衛生、法解釈という3つに分けて書いてあります。福利厚生について、特に6大港の 関係ですが、国際競争力を高めていくための港湾というのも、国土交通省を中心として 政策として掲げられておりますので、そういった中で新たに労働者に対する福利厚生を どのように考えていくべきかといったことについても、しっかり検討していくというこ とです。  また、労働条件の基準の遵守、あるいは労働災害防止計画等にも位置づけられている 労働安全衛生をしっかりやっていくこと。港湾における違法就労を排除していく観点か ら、特に港湾倉庫などの法適用、従来も解釈は出してきたわけですが、業務形態等もい ろいろと変化しているところもあって、しっかりとした新たな解釈を出すとともに、6 大港ごとの運用が斉一化、等しく適用されるために、関係者に対する周知徹底を図る必 要があると述べております。また、港湾労働者雇用安定センターも改善について取り組 むということ、事業主及び事業主団体が関連して取り組む措置から規定されております。  9頁の下から10頁にかけてですが、(2)の能力開発の関係としてはイの「国が講ずる 措置」ということで、荷役作業に使うガントリークレーンやクレーンなどといった特殊 な機械の訓練の場の確保、あるいは訓練施設等がなかなか難しい状況にあることが委員 会の議論の中で指摘されました。愛知県の豊橋市にはガントリークレーンを専門に訓練 するセンター等もあるのですが、新たな仕組み、実施機会の拡大に努めるということで す。センターの措置については同様です。あとは事業主が講ずる措置ということです。  5は「港湾労働者派遣事業の適正な運営を確保するための方策に関する事項」という ことです。(1)の国が講ずる措置としては、港湾労働者派遣事業自体は港湾運送事業者の 許可を持つ事業主が実施している事業ですので、事業主に対する指導等を徹底していく ということです。これについては一般の労働者派遣事業で指摘されている問題点とも相 通ずる点がありますので、そういった部局とも連携等を図りながら適切に実施していき たいということです。  11頁ですが、港湾労働者派遣事業の事業主からの労働者を出したいとか、あるいは港 湾労働者派遣に基づく労働者を受け入れたいといったニーズの調整は(2)の港湾労働者 雇用安定センターが行っております。今回の計画を策定するための調査においては、派 遣の契約、あっせんの需給調整機能は十分であるかということになると、派遣先からの 要請に対して十分に応えられていないという状況があるので、特に計画案では港湾労働 者に従事させようとしている業務の具体的な内容、業務に従事するに際して必要な技能 等に関するものについて、事業主双方の申込内容をしっかり確認した上で情報提供を行 うことにより、機能強化を図っていくことを新たに付け加えております。あとは「雇用 安定事業関係業務の適正な実施」ということです。  (3)は事業主及び事業主団体が講ずる措置ということで、センターの活用、派遣事業制 度自体は許可する際の許可基準等を遵守していくということで、料金あるいは派遣就業 の日数の上限といった特殊なルールをしっかり守っていただき、事業主団体もそれにつ いて措置していくといった内容を計画に盛り込んでおります。 ○大橋部会長 本件については当部会における審議に先立ち、港湾労働専門委員会にお いて事前に審議を行っているとのことですので、港湾労働専門委員会の征矢座長から、 同専門委員会における審議結果についてご報告をお願いいたします。 ○征矢委員 お手元の資料2-1をご覧ください。港湾労働専門委員会においては、平成 20年6月9日以降6回にわたり、港湾労働法に基づく新たな港湾雇用安定等計画の策定 について精力的な検討を行ってきたところですが、2月13日に開催された第16回港湾 労働専門委員会において、本日議題とされている「港湾労働安定等計画(案)」につい て、「妥当と認める」との結論が全会一致で得られましたことをご報告いたします。 ○大橋部会長 それではご質問、ご意見等があればお願いいたします。 ○長谷川委員 新旧対照表の6頁の(2)の(ハ)の4段落目のところで、「直接雇用の日 雇労働者の利用状況の的確な把握」のあとに下線が引いてある「引き続き努め」とか、 「更に努めること」とありますが、要するに、いままでよりもさらに行うことが必要だ という認識でいいかどうかお聞きしたいと思います。また、8頁のロの(ロ)ですが、 従来は「雇用福祉事業関係業務の適正な実施」だったのが、今般は「雇用安定事業関係 業務の適正な実施」となっていますが、福祉事業から安定事業に変えた趣旨と内容は何 かということもお伺いしたいと思います。  10頁の4の(1)のイ、従来あった文章ですが、「労働時間や労働災害の増加、労働保 険への未加入、その他労働環境の悪化が生ずることのないよう」労働基準法等の遵守に 努めるといったことが書いてあります。内容はこれでいいし、あとで質問に答えていた だければいいのですが、今回の派遣問題の中で、どことは言いませんが某有名な派遣会 社が派遣法で禁止されている港湾労働に違法派遣をしていたと、そのことは労災から発 覚したわけです。やはり港湾というのは非常にいろいろな問題を抱えているわけでして、 日常的にきちっとした指導などといったことが必要ではないかと。たまたま労災から発 覚して違法派遣だったということではなくて、港湾や建設など、警備もそうですが、派 遣法で禁止されている業務に対してきちっとした指導が必要ではないかと思います。さ らにもう1つ、13頁のロも雇用福祉事業から雇用安定事業に変わっていますが、先ほど と同様、それについての説明をお願いいたします。 ○建設・港湾対策室長兼介護労働対策室長 まず「更に取り組んでいく」ということに ついては、専門委員会の中でもこういった問題については、結局業況が少し上向いてき たこともあって、結果的に数が増えてきているなどいろいろな説明があったわけです。 専門委員会の中では日雇いが増えている原因、どういった業種で増えているかといった ことも少し掘り下げて審議しました。専門委員会の報告概要にも書いてありますが、一 定期間、専門委員会を定期に開催しながら継続的にその経過を見ていくということもあ りますので、もう少し方法を打ち立ててしっかりやっていくという意味で、告示に「更 に努める」と規定したということです。  8頁の安定事業、福祉事業の関係ですが、雇用保険三事業の中の福祉事業がなくなっ たことから、港湾労働の関係では、福祉事業として措置していた海員の宿泊所などの経 営主体を移譲していく作業を行っているということです。そのようなものが福祉事業と しては位置づけられないということですが、その他の安定事業については文言が変わる 前と後では予算の額的にもそうですが、特に実質的な変更はなく、港湾労働者の雇用の 安定につながるものとして引き続き実施することになっております。  新旧対照表の10頁の4の(1)で委員が指摘されていることについてですが、これも港 湾労使が違就業務を議論していく中で、いわゆる違法事業の発覚が労災のいろいろな事 案とか他の事情などもあることから、実際にはあらゆる機会を捉えて違法事業の端緒を つかんでいくと。港湾労働法上、違法事業隠しの端緒としては労働者からの申告がある わけですが、この間の議論としては、労働組合からの申告等についても、発見していく 端緒として柔軟にということは、直接計画には書いてありませんが、議論されているこ とをご報告いたします。いずれにしても、港湾労働を適切に、法的規制をやっていく安 定行政の専門のセクションもありますが、いわゆる企業外労働力というか、労働者派遣 を取り締っていくセクションも最近設けられておりますので、そこに寄せられる情報等 も総合し、結果として港湾労働者の労働者保護にもとるような措置がないよう、行政と しても努力していきたいと考えております。 ○大橋部会長 その他何かあればお願いいたします。ないようですので「港湾雇用安定 等計画(案)」については、当部会として原案のとおり了承することにしたいと思いま すが、よろしいでしょうか。                   (了承) ○大橋部会長 それではそのように取り扱わせていただきます。次に、議事次第の(2) にあるとおり、「介護労働の現状及び介護雇用管理改善等計画について」を議題とさせ ていただきます。事務局からの資料説明後にご議論いただきますので、まず事務局から の説明をお願いいたします。 ○雇用政策課長補佐 本日配付いたしましたのは、資料3の「介護労働の現状及び介護 雇用管理改善等計画について」、資料3の参考資料として計画の概要・計画の本文等で す。まず、資料3の参考資料からご覧ください。現在の計画の概要としては、介護労働 法第6条に基づき、雇用の動向等、雇用管理改善施策等に定めたものですが、計画期間 は平成17年度から平成21年度までの5年間です。この計画については平成17年3月 31日に一度改正しておりまして、その際には、中程の2の「計画の目標」について新た に規定し、平成18年からはこの計画の目標を盛り込んで行っているところです。2の「計 画の目標」には離職率のこと、研修のこと、介護という仕事の満足度についてしっかり 対応することが計画の目標として定められております。  資料3で介護労働の現状について説明いたします。1枚めくると「介護人材の見通し」 が書かれております。平成18年度の実績値は、「介護サービス施設・事業所調査」に基 づくと、実際に介護に携わる介護職員は117万人ほどで、そのうち訪問介護員等は38.6 万人です。これらの方々が今後どのように伸びていくかということですが、平成20年度、 21年度、23年度については第4期の介護保険事業計画の伸び率に基づき、人材の伸びを 見ているところです。現在の平成18年度117万人は平成20年度には130万人、平成23 年度については約18万人増の149.7万人という状況となります。また、長期的に「社会 保障国民会議の将来推計」を基に介護人材の見通しをしてみると、平成37年度には211 〜255万人としておりまして、これは要介護者数の伸び等さまざまですので、だいぶ幅 を付けた見通しになっております。  2頁は「介護労働者の現状」ですが、(1)で一般労働者の男女比、平均年齢、勤続年数 等について説明いたします。まず、全産業に比較して福祉施設の介護職員は男性の割合 は29.5、女性70.5ですから、3対7ぐらいで女性の労働者が多いということです。ヘル パーについては女性が8割以上ということで、女性の割合がだいぶ高い職業となってお ります。また、賃金については、「きまって支給する現金給与額」の欄を見ると、男性 は全産業が37万2,000円、施設で働く介護職員は22万6,000円ほど、ヘルパーについ ては24万円ほどとなっております。女性は全産業が24万1,000円、施設の女性介護職 員は20万4,000円、ヘルパーは20万7,000円となっております。これは年齢も勤続年 数も違いますので一概に比較はできないところですが、傾向としてはこのようになって いるということです。  (2)は就業形態ですが、施設で働く介護職員と訪問介護員の働き方を図表で示しており ます。施設で働く介護職員については正社員は56.5%、非正社員が42.8%、そのうち常 勤が41.1%ですから、どちらかと言うと常勤で働くという就業形態が施設で働く姿とい うことになります。それに対して訪問介護員は正社員が17.9%、非正社員は81.4%、そ のうち非常勤が80.3%です。これは訪問介護特有の登録ホームヘルパーという非定型的 な働き方で、実際にサービスが発生したときに訪問介護を行うという業の特徴により、 このような働き方の違いが出ているということです。(3)は年齢構成ですが、上の施設で 働く介護職員の場合は20代から50〜59歳と各年代がバランス良く配置されていますが、 訪問介護員については40〜49歳、50〜59歳の割合が高く、どちらかとぃうと高齢化が 進んでおります。  3頁は介護分野における人の動向がどうなっているかということを、人の流れを実際 の統計数字等に基づいて図解したものです。平成17年から平成18年にかけて、この業 界で働く介護職員は112.5万人から117.2万人と約4.7万人増加しております。その増加 の度合を各ルートから見たものですが、絵の上のほうの「学卒就職者」、これは「学校 基本調査」から引いたものですが、5.3万人が学卒者ルートで入ってくるということで す。左の下の「ハローワーク等による就職」はハローワークの統計調査から取ったもの ですが、ハローワーク及び福祉人材センターのルートで就職した人は9.3万人です。ど ちらかと言うと常勤6.4万人というのは、常勤の就職の入口がハローワークルートから であるとご理解ください。民間、クチコミルートと言いますか、「他の入職ルート」で すが、離職者の数を差し引いた数字で大体13万人ぐらいが民間ルートから入っている、 これは推計値です。この中で常勤は7.9万人、非常勤が5万人で、介護業界特有のクチ コミで他の事業所に入っていくというのがここで表れております。  いちばん大きな問題は現在の介護職員の離職率が20.3%、これを掛けると離職者は 22.8万人出るだろうという数字で、箱に書いております。そのうち転職者の割合は調査 でわかりますが、7.4万人が介護業界の中に戻ってくる。介護業界の外に出る人はその3 分の2の15.4万人ですので、この15.4万人の定着を良くすることが行政に課せられた 課題であり、この表からの問題点と解決策と考えております。  4頁は今の表に基づいて、「介護人材確保における問題点及び対策等について」をま とめたものです。現在この業界の抱える問題点としては、慢性的な人手不足感、あるい は賃金が安い、離職率が高い、労働環境が厳しい等です。「学卒就職者ルート」を見る と、養成校や一般校における就職率が低下していること、あるいは一般校の進路指導の 際に介護業界をなかなか勧めてくれないこと、養成校、専門校における定員割れという ところで、若い従事者の入職がだいぶ狭まっていることが問題点として挙げられており ます。国の対策としては、1つ目は修学資金の貸付の拡充による参入促進、資格取得の ための職業訓練の拡大、教育機関等との連携強化といったことを考えております。  「ハローワーク等ルート」ですが、業界の抱える大きな問題である慢性的な人手不足 感、潜在的な有資格者が存在している、つまり、せっかく資格を取っても労働市場に出 てこない方々がたくさんいるということです。また、求人を出してもなかなか充足しな いという、需給のミスマッチが問題点として挙げられます。対策として国が考えている のは、介護業務の経験が全くない方の雇入れ助成、職業訓練枠の拡充、福祉人材コーナ ーを設置するなど、ハローワークにおける需給調整機能の拡充、資格を持っている方々 を掘り起こすという潜在的な有資格者に対する養成支援といった対策を考えておりま す。  もう1つ、先ほど介護業界の外に出る方々が15万人ほどいると述べましたが、離職率 を改善すると、現在この業界で一生懸命働いている方々の定着を促進させることができ ます。問題点としては高離職、高採用、つまり、せっかく採用してもすぐ辞めてしまう という悪循環があること、処遇や将来展望に対して相当大きな不安、不満があるという こと、身体的、精神的な負担が大きいことから、離職を余儀なくされてしまうというこ とがあります。対策としては雇用管理の改善等を通じた働きやすい職場環境づくり、将 来の見通しがあるようなキャリアアップ対策、介護という仕事が本当に魅力ある職業と なるための社会に対するイメージアップ対策を考えているところです。  5頁、6頁ですが、介護と言っても、施設系のサービスと訪問系のサービスでは職員の 働き方等がだいぶ違いますので、その特徴を表にまとめたものです。現在、施設等で働 く方は78.7万人ですが、次の箱には「従事者の属性」を書いております。施設系で働く 方々は正社員や常勤の非正社員を中心とした就業形態で、離職率を見ると、正社員が20.4 %、非正社員が32.7%で、非正社員の離職率が高いが故に、正社員に対する業務負担が 生じて離職率を高めてしまうことが問題点としてあります。「離職理由」としては待遇 に不満である、職場の人間関係、そして、これは福祉業界特有なことですが、相当なや りがいを持って入職しても、実際に働く事業所の経営理念と自分の理念が合わないとい ったことが離職理由として挙げられております。「資格保有状況」としては、介護福祉 士を持っている方が34.4%、ヘルパー2級を持っている方が35.1%です。  ハローワーク等が職業紹介をする際に、雇用対策上特に考えているのは、正社員の44.5 万人と非正社員の33.7万人のうち、常勤の14万人ぐらいのところに対して職業紹介を していくことが重要ではないかということで、これは下の絵で表されております。  6頁に入り、それに対して訪問サービスですが、現在の従事者は38.6万人です。その 特徴としては非正社員を中心とした就業形態で、離職率は施設系に比べそれほど高くな いという状況です。「賃金」を見ると、非正社員、主に登録ホームヘルパーとして働く 方々の年収は103万円未満、ご主人の扶養の範囲内で働くという就業形態を取っている 方が大変多く、その割合は45.1%です。「離職率」は正社員が18.2%、非正社員が16.6 %で、全産業に比べて高いことは事実ですが、施設系に比べると低いという状況があり ます。「離職理由」としては家庭の事情、待遇に不満、職場の人間関係です。「資格保 有状況」としてはヘルパー2級を持っている人が64.9%ですから、ヘルパー2級を主体 として働いているということになります。  ハローワーク等が職業紹介をする上で考えなくてはいけないことは、正社員が17.9%、 非正社員の常勤3万人ぐらいのところで、下の箱書きにあるように、登録ホームヘルパ ーは主婦・パート層が中心で、入職についてもほとんどがクチコミ・民間ルートだとい うことです。  7頁に入ります。ヘルパー2級等の説明をしてきましたが、世の中では介護関係の資格 取得はどのような養成キャパになっているかというのが7頁の資料です。養成状況とい うことで、「介護福祉士」の平成20年度新規登録者数は8万9,747人ですから、約9万 人ぐらいの方が介護福祉士として登録されているという状況です。また「ホームヘルパ ー1級及び2級」の平成19年度研修課程修了者は17万1,000人ですから、17、8万人ぐ らいがホームヘルパー1・2級講習を受けたということです。  下にはホームヘルパーの養成ルートを書いておりますが、ホームヘルパー講座受講者 としては離職者の方々、実際に今働いている介護職員の方々、主婦等です。それに対応 するルートとしては、離職者に対しては公共職業訓練の受講、あっせん、それに最近は 自治体からの助成が幅広く出てきましたので、このような助成ルートを使って研修を受 ける。介護職員に対しては、事業内職業訓練などといった勤め先からの助成ということ です。主婦等に関しては、自己負担で各講習を受けているという状況です。  最後になりますが8頁、冒頭に申し上げました計画の目標について、現在どのような 状況になっているかを表にまとめたものです。(1)は介護労働者の離職率で、本文では「離 職率について、20%を下回るものとするとともに、全産業の平均的な離職率との乖離を できる限り縮小する」と明記しております。改訂された平成17年以降を見ると、20%を 下回ったことは一度もありません。また、全産業との乖離も2.7、4.1、6.2で、計画の目 標として書きましたが、残念ながら達成されていない状況です。  (2)は介護労働者の教育・研修の実施率についてです。これについては「全体の実施率 を高めるとともに、正社員と非正社員の実施率の乖離をできる限り縮小する」と明記し ております。平成17年は介護労働の実態調査がありませんでしたので、平成18年、19 年の状況ですが、全体の実施率は平成18年92.8%から平成19年94%と上がっています が、正社員、非正社員の乖離は8.7ポイントから3.6ポイントと縮小しているという状 況です。  最後に、(3)の介護労働者の仕事の満足度ですが、計画上は「現在の仕事の満足度につ いてはその向上を図る」と明記しております。しかし、平成18年は28.2%、平成19年 は21.6%と、残念ながら6.6ポイント下がっておりまして、この辺の向上を図る対策も 必要だろうと考えております。 ○大橋部会長 ただいまの説明に対してご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○原委員 この問題はこれまでの当部会でも議論されてきたことでもありますし、介護 労働者の人手不足の問題については内閣府の、外国人労働者の登用問題も含めて高度人 材といったところでも議論されていることです。実態はわかりましたし、今回は賃金に ついてもデータが出ておりますが、全産業の数字と福祉施設介護員の数字、この数字を 見て厚生労働省はどのように受け止めて、何をすべきかと考えているかを伺いたいので す。  特に、離職率というキーワードが出てきていますが、そもそも離職率が高いというこ との根本問題は一体どこにあるかということについて、はっきりしてもらいたい。離職 率の目標数字を挙げるのはいいのですが、どうすれば目標数字が上がるのか。逆に言う ならば、なぜ離職していくのかということを、この際はっきりしてもらわないと。いく らこのようなデータをもらっても、厚生労働省からここに問題があること、どうするか ということを言っていただかないと、話を聞いても空しい、従来からそのような思いを 持っているわけです。  やりがいとか働きがいなどといろいろ言われても、はっきり言いまして人間は正義感 とかやりがいとか働きがいだけでは生活できないのです。確かに、若い人はこの種の仕 事に関してやりがい、働きがい、正義感を持って入職していると思うのです。しかし、 なぜ辞めるのか、生活できないからです。若く、単身者の間はいいのですが、年齢が積 み重なっていくと結婚し、子どもを生み、育てる、しかし賃金は上がらないことは全産 業と比べても端的に出ています。  決まって支給する現金給与額は37万2,400円、福祉施設の介護員は22万5,900円で す。大体年齢構造維持分というか、1歳差が5,000円、6,000円、7,000円としても、7、 8万円の差がありますから、これは明確な賃金の格差です。いま流行の言葉で言うなら ば、ワーキングプア、失礼ながらワーキングプアなのです。それでは生活できないわけ で、私はそこに原因があると思うのですが、この賃金数字を見て厚生労働省はどう思わ れるか、そして離職率の根本問題はどこにあるのか、これをはっきりしていただきたい というのが私の意見です。 ○雇用政策課長 まず賃金ですが、これは平均だけで見ていますから、もちろん勤続と か年齢などもあるものですから、単純には比較はできないところがあります。ただ、も ちろん賃金構造基本統計調査ベースで、例えば勤続をコントロールした場合とか、そう いったものをいろいろとやってみて、賃金カーブを引いてみたのですが、他産業に比べ ると福祉施設の方の賃金が低いことが、事実として検証できるということだと思います。 したがって、先ほど委員がおっしゃったように、やりがい等ありますが、対応が低いと、 処遇が低いということを原因として実際に辞められる方もあるわけです。この介護労働 センターの平成19年度の調査でも、主な離職理由の中で「待遇に不満」が25.5%とト ップになっているところがあります。  ただ、賃金自身は個別事業所において労使が決めることですので、国として上げろ、 下げろと直接言えることではありませんが、もちろん介護労働者については原資が結果 的に介護報酬ですので、老健局の介護報酬分科会等の議論を経て、来年度から3%上げ ることになっています。そういった収入面というか、介護賃金の原資となるような介護 報酬については一定の措置がとられているところがあります。  離職理由の他の理由を見ますと、もちろん「待遇に不満」が25.5でいちばん多いわけ ですが、他の理由では「経営理念に不満」が23.4、「人間関係に不満」が23と、処遇 以外の面で辞める方も結構おられると。また、各事業所別に離職率を見ますと、確かに 3割以上辞める事業所は30%以上あると。同様に、10%しか辞めない事業所が3割以上 あるということで、ある意味では雇用管理の状況によって離職率が違ってくるのではな かろうかと思われます。  したがって、我々としても、とりあえず職業安定行政としてできることとしては、雇 用管理の改善だろうと思っております。来年度予算においても、各事業所で雇用管理改 善、賃金制度を導入するとか、そういったものを取り上げる事業主についても助成金を 支給するとか。また離職理由の1つとして「腰痛」というのがあると。腰痛対策をして 介護機器を導入する事業所に対して助成金を提供する等、基本的に職業安定局的なアプ ローチからすれば、雇用管理改善というルートを通じることによって、離職率を低めて いきたいと考えております。 ○原委員 高齢化社会で、介護労働者の確保は待ったなしの課題だと思うのです。「雇 用管理の改善」というのは確かに言葉はきれいなのですが、何年か前の審議会でも申し 上げましたが、究極の雇用管理の改善策は賃金問題なのです。37万2,400円という全産 業平均と、福祉施設介護員の22万5,900円、このような実態で誰がこういう業界に行き ますか。この数字をどうするかを本当に考えないと、問題は解決しません。政府の仕事 は、この賃金格差が埋まるように、賃金が上がっていくような環境づくりです。やりが いを持つようにするとか、そういう問題ではないのです。37万と22万、この賃金格差 をどうするかという環境づくりをすることが政府の仕事です。そうすれば、自ずと人は 集まります。離職率云々ということもなくなります。本当に、そういったことについて 考えるようにしていただきたいと思います。  賃金はどうされるのですか。どうあるべきだと思いますか。労使で決めることだと、 そんなのは労使では決められません。労使で賃金を上げられるような環境をどう作るか、 例えばこの審議会で議論するならするで、そういうことだと思います。 ○雇用政策課長 基本的には、賃金水準はどれぐらいが相応しいかということは、役所 はあまり相応しいことは言えません。 ○原委員 これは高いのですか、低いのですか。 ○雇用政策課長 ですから、平均に比べれば低いし、他産業に比べれば低いと。 ○原委員 生活できるのですか。250万で、結婚して子どもを育てるという意味で。デ ィーセント・ワークという言葉がいま流行っていますが、これはディーセント・ワーク になっていますか。 ○雇用政策課長 水準云々については、いかなるものが適切かとは言えませんが、結局 のところ賃金制度をしっかりして、丼勘定の賃金制度ではなくて、ちゃんと賃金テーブ ルや俸給表などを整備することによって、それがなければ年々上がっていくような右肩 上がりの賃金カーブにならないということでしょうから、そういったことができるよう に導入すると。賃金制度の導入などについても助成をやっていくと。  問題は、原資については残念ながらこの審議会では、原資がいかなるべきかという議 論はできないと思います。ただ、我々としては雇用管理を改善すると、基本的には介護 という職場を魅力ある職場にしていくことを通じて、離職率の低下を図っていくと、ま た新しい人を引き付けるということをやっていくしかないのかなと考えております。 ○長谷川委員 話していると空しいだけなのですが、介護労働者の問題は、介護保険と 介護報酬の関係の中で賃金や処遇が自ずと決まってくるところにすごく難しさがあるわ けです。介護保険制度を作ったときに、この場合は医療と違って民間ベースでできると いう制度設計をしたわけです。本当に介護事業が、施設介護でもヘルパーでも通所でも そうですが、民間企業として介護保険と介護報酬という中で事業展開ができるというモ デルがあれば、そこで労働者が生き生きと働いているモデルがあれば、みんな何となく そうだなと思うのかもしれないけれど、そういうものが意外とない。ジェット機を買っ て飛ばした人はいます。ジェット機を買って飛ばした事業者はいましたが、全体的には どこも大変です。  何を言うかというと、施設型介護の事業者は、日本人労働者は来ないから外国人労働 者を入れようという短絡的な発想になっているわけです。だから、いま外国人労働者の 所でも何が議論になっているかというと、日本人はなかなか定着しないし、処遇も悪い から、タイから入れようかとか、フィリピンから入れようという話になっていて、2国 間協定の中で介護労働者を入れようということになっていて、それで本当にいいのかと。 厚生労働省の議論では、実態はこうですよと、だから雇用管理と言うけれど、雇用管理 だけで乗り切れる話ではないわけです。雇用管理という話は何回も聞いているので、も っと別の所に問題があるのではないかと思うのです。  専門学校や大学で、介護福祉士の資格を取れる学校はいっぱいあります。若い人たち はみんなそこに行くのですが、入ってきて大体3年から5年でほとんど辞めます。この 辞めた人たちを調査で追うといいのですが、その人たちは辞めたあと働かないことが多 いのではないか。海外に行って遊んできたりして、1年ぐらい経つとさすがに働こうか なと思って働くけれど、絶対に施設介護の所に行かないのです。ヘルパーにもならない。 これは何なのかということは、いま原委員が言ったように処遇だと思うのです。もっと ここをきっちりと本気でみんなで考えないと、このままでいくと3Kになって、誰もや る人がいないということになって、外国人労働者だけと。ベッドで寝ている人は、日本 語もうまくいかない人がしゃべっていて、介護する人は日本語が不自由な人と、全然お 互いに理解ができないような現実が起きてくるのだと思うのです。本当にそれでいいの かと。  私も夫の母の在宅介護をしたわけですが、あの人はよかったなと。私のような嫁のお かげでいい在宅介護ができたと。私がお祖母さんのような介護をしてもらえるかという と、どうも先行きが不安でしかないわけです。全く言葉が通じないような形での在宅介 護になってしまうのではないかと思うわけです。これ以上私たちも何も言えないのです が、この処遇では3Kでしかないよと、誰も成り手がないということははっきりしてい ると。  今日の雇用管理のところで気になるのは、意思疎通ができないとか人間関係とか書い てあるのですが、施設介護のときに、夜勤のときに1人なのです。介護の人は、男性も 女性もいて、体力がある人とない人がいるのです。ここの表現に表れてこないのですが、 結構セクシャルハラスメントが多くて、女の人はいやだと言うのです。例えば24時間の 介護だと、夜に行った場合は本当に密室だと言われていて、本当にいやだという話を私 は随分聞きました。もう少し介護労働者の施設介護と在宅介護のところで何が起きてい るのかを、もっときっちりと調査をしてほしい。調査はいっぱいあるのですが、そうい う分析が必要なのではないかと思います。介護労働者の雇用管理が出されるたびに空し くて、言いっ放しになるのですが、本当にこれは大変な問題なのではないかと思います。 ○雇用政策課長 ご指摘のとおりなかなか難しい問題で、回答はないわけですが、おそ らく施設介護についてはご指摘の夜勤の問題が非常に大きいと。また、在宅系について は逆に、これも密室なのですが、密室で介護者の家に入り込んで介護サービスを提供す る、要するに1人で向こうに行くということのストレスの問題があるというのは、我々 がヒアリングをする中でもよく出てきた話です。そこが介護に携わる上でのハードルに なっているということだろうと思います。  問題は、長谷川委員から空しいというご指摘もありましたが、そういう現状は我々も 認識はしているわけですが、そこからもう一歩どうかと言われると、雇用管理と言って、 他の方式がないというのが辛いところです。いずれにしても、安定局だけではなく、厚 生労働省全体として考えていく問題ではないかと思います。 ○長谷川委員 事業として、私企業としてうまくいっていると。労働者の労働条件も比 較的まあまあで、労働者も満足していて、事業としても非常に展開しているというもの があれば、これからもこのような形で進めていっていいのかもしれませんが、そうでは なくて毎回毎回こういう状況であれば、本当に制度設計そのものがいいのかどうなのか という議論をしないと、お互いに不幸だと、介護労働者も不幸だし、介護されるほうも 不幸だし、その家族も不幸だと思うのです。そういう意味では、ここは雇用管理ですが、 働く側とか労働者管理、雇用管理から見た介護保険制度なり介護問題をもう少し提起し ないと、同じことの堂々巡りだと。今回見直しでどのぐらい上がるかはよくわかりませ んが、やってみてからという話だと思いますが、もっとスピードを上げることが必要だ と思います。  もう1つは非正規のところで、ヘルパーは非正規で括られているわけですが、あの人 たちは小刻みで働いているのです。短時間正社員制度のようなものを考えて、一時金も 出ますよとか、何かそういうものを作らない限りは、1時間1,000円前後で低賃金とい うところももう少し改めて、短時間パート制、短時間正社員制度みたいなものももう少 し見るような形にして、夢と希望を出してやらないと、いまの若い人はみんな働きたく ないとおっしゃっているので、そこは改善しなければいけないのではないかと思います。 ○高齢・障害者雇用対策部長 介護労働の問題については、ご指摘のように、1つは介 護保険制度との関係。そこについては、今般さまざまな議論がありまして、3%引上げと いうのが十分かどうか、いろいろなご意見があると思いますが、そのような中で一定の 方向は、従来とは違った方向になったということだと思います。ただ、十分かどうかの 議論はあるだろうと思います。そういう中で、いまおっしゃった問題で、将来に向けて 介護あるいは福祉をどうしていくか、あるいはそこで働く人たち、介護を受ける人たち、 これはこの場だけではなくて介護保険制度として議論していかないと、なかなか解決し ない部分があるだろうと認識しております。  今回お願いしたいのは、もちろん労働面から見てそういう問題を少し指摘していただ いて、今後のいろいろな制度改正、改革の議論に活かしていくことは重要だろうと思い ますが、一方では、介護保険制度の前提の下で介護雇用労働についてどういう施策を打 っていくかを、その時点その時点の制度に基づいたものとしてやっていかなければいけ ない。ですから、介護保険制度がこうだから、あとはもう、どう仕様もありませんとい うわけにはいかないだろうと思っています。  去年から今年にかけていろいろな議論があった中で、介護報酬の引上げ等々もありま した。あるいは、来年度に向けて新たな雇用管理、雇入れ部分についてのさまざまな施 策も打つことにしています。従来の介護雇用管理改善計画については、来年度いっぱい 期間はあるのですが、いろいろな議論がありましたので、年度内になるか年度を超える かはありますが、新たな状況の下で見直しをお願いしたいということです。将来に向け た今後の介護保険制度その他の議論を活かすようなご意見もいただきながらですが、現 行の介護保険制度の下で、どういう雇用管理改善の施策をしていくかは是非おまとめい ただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 ○大橋部会長 この問題を考えるときに、施設と訪問介護で随分話が違う。離職率1つ 見ても、訪問介護のほうはパートの世界で、103万円の壁の中で働いている方がほとん どです。しかも地域密着型で、それほど離職率は高くない。  問題は施設のほうなのです。施設のほうは、先ほど長谷川委員が私企業とおっしゃい ましたが、これは公益法人が主で、特に医療法人とかあまり経営が得意でないと言うと 変ですが、そういう体質の所が運営されていると。そういう意味で、経営者の経営のあ り方なども問題ですが、雇用管理改善等計画については、現行のシステムは立ち上がっ て日が浅いので、そういう点では、まだまだ施設の中のサービスの提供の仕組みなども 改善の余地があるのではないかと。  例えば日本の工場で、製造業では、すごい改善をやって、どんどん生産性を上げてき たと。そういった仕組みが一体施設の中にあるのだろうか、というのが1つです。そう いう意味では、介護労働者の働き方なども見ながら、生産性向上のようなことも考えて いく方向もあってもいいのではないかと。生産性の向上には、もちろんやりがいとかイ ンセンティブの問題も絡んできますから、その辺もまだまだやることがあるのではない かというのが、これの意味ではないかと思います。そういう点でまだ日が浅いというこ とで、これからその辺の観点から頑張ってやってもらいたいと。  もう1つは賃金の問題です。報酬が低いからという話になると、非常に空しいとおっ しゃるのは、賃金を上げればいいと。しかし、賃金を上げるにも報酬を上げなければ駄 目だと。それで何となく話が空しくなってしまうのですが、そこで単純にそう考えなく て、むしろ特に施設については、何とか立派な経営と立派な現場の改善を、そういった 方向で動く力をどこかに見つけ出せないかという意味だと、私は解釈しています。 ○長谷川委員 そう思っているのです。おそらく、事業としての展開がどこかにあるの ではないかと。そうすると、日本の企業の中で、経営とかそういう人たちが介護施設の 人事交流というか、そういう所で事業経営をやることによって、もしかしたらうまくい くのではないかと。それを思って、何でこれはうまくいかないのかなと、そこは非常に 私も不思議に思っています。 ○古市委員 これは現在の介護保険が始まった、現在の福祉施設経営の賃金が低いとい うことはわかっているのですが、それ以前の措置制のときの福祉施設の皆さんの賃金と、 介護保険が始まって今日までの賃金の動きはわかるものなのでしょうか。要するに、介 護制度が始まったから、昔は、措置制度の下ではそれなりの社会的水準にあったにもか かわらず、介護保険が始まってから利用者が多くなったにもかかわらず、事業者がたく さん参入してきた、そんな競争があったりして賃金が下がってきたのか、もともと福祉 系の人たちの所は待遇がほかの産業と比べて低いのかどうなのか。もし、昔はそう低く なかったということであれば、新しい制度になったことによる問題で、どこかに解決の 糸口があり得るのではないかと。 ○大橋部会長 それはどうでしょうか。つまり、昔は子どもが面倒を見ていたのだけれ ど、最近子どもが面倒を見なくなってしまったわけでしょう。 ○古市委員 それはそうなのですが、福祉施設そのものは措置制度の中でちゃんと世の 中に合って。 ○大橋部会長 家政婦ですか。 ○古市委員 例えば、特別養護老人ホームとかありますね。 ○高齢・障害者雇用対策部長 それについては過去の賃構の数字を拾えば、介護保険に なってサービスの中身が変わったというところは反映できないかもしれませんが、単純 に当該業種の賃金ということであれば拾えると思いますので、次回にでもそれをお示し したいと思います。 ○大橋部会長 制度と言っても質と量があるのですが、これは医療と同じで、質につい て間違いがあってはいけないという制度がかなり先行しているのです。そういう意味で は、量をこなすとか生産性を上げるという発想は、あまりこの業界にはないような気が するのです。そういう点では、まだ業界として熟していない感じがします。 ○長谷川委員 そういう意味で、在宅でも、ヘルパーの仕事がありますね。その業務と いうのが、ある意味では1人で全部、何でもやるというような感じなのです。本来は、 もっと効率的にというか、サービスの内容なども検討すれば、もっと違う事業展開がで きるのではないかと思うのです。ただ、介護サービスは制度ができて新しいこともあっ て、施設のほうもそうですし、在宅のほうもまだ混沌としているのだと思うのです。だ から、そこは雇用管理だけではなかなか議論できないので、雇用管理の面からと介護保 険制度の中での介護サービスのありようとトータルで議論しないと。雇用管理のところ は言われればそうだなと思うけれど、何で離職率が高いのかとか、何で賃金が低いのか という話で、どうしても私はそちらのほうが重要視されるので、トータルな議論が必要 なのではないかと。あとは事業者の育成だとか、そういうことだと思います。 ○大橋部会長 これは公益法人と私企業と、割合はどんなものですか。特に施設ですね。 ○雇用政策課長補佐 施設は社会福祉法人、医療法人が主体になっておりまして、民間 企業は少ない。 ○大橋部会長 民間企業は少ないでしょうね。 ○雇用政策課長補佐 訪問系は、4割以上が民間系です。 ○大橋部会長 そういう点では、経営形態も違うのでしょうか。 ○雇用政策課長補佐 長谷川委員も、3年前の議論で事業のあり方としてモデル的なも のをということで、計画の中にモデルの作成等を入れたのですが、訪問系の雇用管理モ デルは作成して、情報提供しております。現在、施設系の雇用管理モデルについても、 いま委員がおっしゃったようないろいろな成功している事例を全国各地から収集して、 今年度中に発表する予定で議論を進めております。老健局のほうは来年度、経営モデル 等について考える予定と聞いておりますので、委員のおっしゃる意図が十分反映される ように報告書を作成してみたいと思っております。 ○原委員 しつこいようですが、折角資料として介護労働者の現状、特に賃金の資料を 前面に押し出していただいたので、それなりに厚生労働省の問題意識はわかるのですが、 大雑把に言って10万円低い。10万円すぐ上げろとは言いませんが、上げれば人は集ま ります。これは絶対です。  何回も言いますように、雇用管理の改善という曖昧なことではなしに、根本的な問題 は賃金であるということをはっきりしないと、何をなすべきかが出てきません。曖昧な 雇用管理の改善というきれい事ではなしに、根本は賃金と。私は別に労働組合だから賃 金のことを言うのではなく、考えてください。自分の子どもに、賃金の上がらない200 数十万の仕事を一生の仕事としてやれと言えますか。別に労働組合だから賃金と言って いるわけではなしに、社会的な問題として、根本的に労働者を確保するために何が必要 かということです。だから、賃金と教育をきちんとやれば、人は絶対集まります。よろ しくお願いしたいと思います。 ○大橋部会長 そのほかにはよろしいでしょうか。それでは、この「介護雇用管理改善 等計画」の改正について、今後ご議論いただくことにしたいと思います。  「その他」の議題として、1件報告事項があります。高年齢者雇用安定法に基づき、 毎年6月に行われている高年者雇用状況報告の様式の改正についてです。事務局よりご 説明をお願いします。 ○高齢者雇用対策課長補佐 資料4をご覧ください。いま部会長のほうからもありまし たが、毎年6月1日の高齢法に基づく確保措置の実施状況について、雇用状況報告とい うことで事業主の方から報告をいただいております。その様式の変更についてです。  1「趣旨」ですが、少子高齢化が進行する中、高年齢者が年齢にかかわりなく、その意 欲と能力に応じて働くことができる社会を実現することが重要と。このため、雇用状況 報告に基づき、高齢法により義務づけられた確保措置の実施状況を中心に把握してきた ということですが、今後は雇用確保措置の実施状況に加え、「年齢にかかわりなく働け る企業」の状況についても、より詳細に把握することができるようにするため、報告の 様式の一部を改正するといったものです。  2は具体的な「改正内容」ですが、「年齢にかかわりなく働ける企業」については、 これまで法に基づく雇用確保措置を講じている企業、つまり義務履行の状況と併せて、 法に基づく確保措置に準ずる形で70歳以上までの雇用を実現している企業、具体的には 定年が70歳以上の企業、あるいは希望者全員又は労使協定で定めた基準に該当する者に 係る70歳以上の継続雇用制度を導入している企業、定年を廃止している企業等あります が、これらについても把握してきたところです。  今回の改正ですが、「年齢にかかわりなく働ける企業」の実態を、より詳細に把握で きるようにするため、法に基づく雇用確保措置に準ずる形に限らず、企業の実情に応じ て、何らかの仕組みにより70歳以上まで働ける雇用を実現している企業等についても把 握できるよう、「70歳以上まで働ける制度等の状況」の欄を新しく設けるといった改正 を行うものです。具体的には、希望者全員、あるいは労使協定により対象者の基準を定 めていなくても70歳以上まで雇用する仕組みがある場合、あるいは就業規則等により自 社・子会社以外の他の会社で70歳以上まで働けるような仕組みがある場合、そういった 場合についても把握できるようにしていきたいというものです。  交付日・施行日が書いてありますが、今年の高齢者の雇用状況報告から新しい様式で と考えております。また、参考で雇用状況報告の未定稿ということでお付けしておりま す。 ○大橋部会長 ありがとうございました。ただいまの報告について、ご意見はございま すか。よろしいでしょうか。その他、何かご意見がありましたらお願いします。  予定されていた時間より早いですが、ほかにないようでしたら、本日の部会はこれで 終了します。本日の会議の議事録の署名委員については、山川委員及び橋本委員にお願 いします。それでは、本日の会議は以上で終了いたします。どうもありがとうございま した。 【照会先】   厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部企画課   〒100-8916   東京都千代田区霞が関1−2−2   TEL:(代表)03-5253-1111(内線5815)      (直通)03-3502-6778   FAX:03-3502-5394