09/01/06 平成20年度化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会の第8回少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会議事録 平成20年度第8回少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会          日時 平成21年1月6日(火)            14:00〜            場所 厚生労働省共用第9会議室(18階) ○大淵化学物質評価室長補佐 少し早いのですが皆様方お集まりになりましたので、只 今から「第8回少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会」を開催いたします。本日は 年明け早々お集まりいただきましてどうもありがとうございます。議事進行につきまし ては、座長の名古屋先生にお願いをいたします。 ○名古屋座長 本日は少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会の第8回でございます。 本日は「海外の化学物質リスク評価の動向にかかるヒアリング」を持ちたいと思ってお ります。事務局のほうから、本日の次第予定及び資料についての確認をお願いいたしま す。 ○大淵化学物質評価室長補佐 それでは事務局のほうから説明させていただきます。本 日の議事ですが、「海外の化学物質リスク評価の動向にかかるヒアリング」ということで、 お二人の先生からお話をしていただく予定です。1つ目、「英国・ドイツにおけるばく露 防止にかかる法規制の動向」ということで毛利哲夫先生、2つ目といたしまして、「欧米 の作業者ばく露評価の動き及び今後のあり方」ということで花井荘輔先生にお話をいた だく予定です。そのあと、前回からの引続きということで、ばく露実態調査・評価のあ り方についてご検討をいただく予定としております。  本日の資料ですが、ちょっと多めになっていまして、次第の次の頁に配付資料一覧が ありますが、資料の1〜4まで、参考につきましては1〜9までということになっており ます。参考資料につきましては、これまでの回とだいぶ重複がありますが、確認のため ということで入れさせていただいております。資料の数が多いので表題のほうは省略を させていただきますが、資料1、2、3-1、3-2、4、参考の1〜9までお手元のほうに揃っ ていますでしょうか。念のためご確認いただければと存じます。  続きまして、本日の出席者ですが、上から3枚目になりますが、出席者名簿を入れて います。本日は委員の先生方は5名ともご出席いただいています。そのほか有識者とい たしまして、先ほどご紹介しましたヒアリングでお話いただく花井先生、毛利先生、前 回に引き続きまして中央労働災害防止協会から棗田さん、細田さん、日本化学工業協会 のほうから山口環境安全部長にもご出席をいただいております。 ○名古屋座長 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。本日は 海外の化学物質リスク評価の動向についてということでお二人からヒアリングをさせて いただくことなっております。まず、労働安全衛生コンサルタントの毛利哲夫様より「英 国・ドイツなどの化学物質ばく露抑制対策の進展」ということでご説明をよろしくお願 いいたします。 ○毛利 毛利でございます。先生方、すっかりご無沙汰しております。  化学物質のことは、ここのところちょっと遠ざかってしまっていまして、お役に立つ 話ができるかどうか、少し心配ですが、一応用意させていただいております。時間は20 分と伺っておりますが、パワーポイントのほうは28枚もあって、欲張った感じです。 前半は昔からのおさらいを念のために入れていますが、そこは端折って進めたいと思い ます。全体的なことを考えるについては、国際間の大きな動きというのは忘れてはいけ ないというつもりで、取り上げた5つの項目だけをご覧に入れます。  1989年のEUの枠組み指令が大きな転機になって、ILOの枠組み条約につながって きたと考えています。基本的な取決めの進め方を一応整理すると、 goal-setting/approachだと。目標を示して細かいことはあまり国が口を出さないと、そ ういうことでいっていると思います。それからリスクアセスメント、リスクマネジメン トはALARPである。そのためには適切で十分なるリスクアセスメントが必要だと。対 策についてはhierarchyでいくということが出発点になっているというか、それがベー スになっていると考えております。これは非常に良い方式なのですが、小さな企業にと っては具体的に何をどうしたらいいのかはなはだ分かりにくいということがあるので、 規則よりもadvice and informationをしっかり提供していく。もっと具体的に言うと、 good practice。下のほうにあるような資料を豊富に提供して、自分の必要なものを使っ てもらうと。そういう方法で進んでいます。  いままでは全般の話ですが、化学物質について言いますと、大昔のものですが、米国 科学アカデミーのフローチャートです。そういった概念をIPCSがEHTCとして出した のが右のほうです。この辺が健康リスクのアセスメントの概念の基本になっています。  90年代までのばく露評価に関する概念は、いろいろな書き方がありますが、Hazard Exposureとそのような組み合わせに対して、Generic Risk Assessmentをして、Control Strategiesを立てるという進め方が基本だと思います。いまはこれはTraditional model と言われています。これは1977年にNIOSHが出したもので、今日のお手元の資料に も付いているようで、これは非常にインパクトが強かったから、皆さんもよくご覧にな っていると思います。それ以外に1995年になると欧州規格とEN689というのが出て、 非常に長い題名ですが、ばく露限界値とその測定の結果を比較するためのストラテジィ 基準というもの、それから482には、測定についての一般事項です。それから、イギリ スHSEは有害物質のモニタリングストラテジィという出版物を出しております。これ はその表紙とフローチャートです。  一方アメリカですけれども、AIHAがいちばん初めはExposure Assessmentのための ストラテジィという本を1991年に出しております。それを充実させたものが1998年に 出て、その次の改版が2006年に出ております。最初の版から第2版になったときに、 測定だけではなくてマネジメントも含めたストラテジィになっております。AIHAのス トラテジィが一様によく整理されていると思います。これが出た頃は、ほかのものは影 が薄くなってこれが中心ということで、皆さん受け取ったように思います。  ここまでが90年代のストラテジィで、平成12年、化学物質管理指針、唐沢先生とご 一緒させていただいて、書かせていただいています。そのときに出た教科書に出ている フローチャートがこれでございまして、この次はこれしかないということで、教科書に このフローチャートを取り入れております。考え方としては、いままで見ていただいた ものと基本的には一緒です。そういった経過をたどってきているのですけれども、先ほ ど来見ていただいている、traditional modelが非常に問題があるという意見がポツポツ と出てきまして、よく整理されているのが2件ほどあります。  イギリスは健康有害物質規則、略してCOSHHと言っておりますが、これを1988年 に制定して、ばく露評価については先ほど見ていただいたような資料に沿ってやってき たわけです。どうもそれははなはだ問題があるということになっているのですが、その 辺をまとめた資料が白抜きの題名の資料です。コントロールバンディング全般について 整理しているわけですが、なぜコントロールバンディングというものが出てきたのかと いうことが書いてありまして、その内容は、結局COSHHというものがうまく受け入れ られなかったと。まず言葉すらわからないとか、特にばく露等の評価と言っても、中小 企業ではとてもできないということがだんだん深刻にわかってきたということが、この 本の一部に書いてあります。  ちょっと古いのですが、2003年にHSEがEUの各国でばく露濃度がどういう役割を 果たしているかということを詳しく調べた分厚い資料があります。その内容は、結局イ ギリスでHSEが頑張ってもさっぱり進まなかったというようなことは、ほかの国でも 変わらないということになっておりまして、先ほどのtraditional modelは、理屈の上 ではいいけれども、実務の面では困ったものだというようになっていると思います。  なぜ先ほどから出ておりますtraditional modelがよろしくないかということを、私 なりに5項目に整理をしたわけですけれども、結局濃度を測ってばく露濃度と比べてリ スクがどうかというような話ができる人が非常に少ない。結局は大きな企業にしかいな い。ドイツは別なのですが、ヨーロッパの国々というのは、労働衛生サービス機関の役 割が大きいわけで、そこに企業がいろいろ頼むということが多いようなのですが、そう いったサービス機関ですら、ちゃんとやれる能力を持っているところは非常に限られて いるということ。それから判断の結果がそれでいいのかということにも問題がある。  それとばく露限界が、安全を示すということか、または改善の必要がない限界とか、 そのように間違って受け取られてしまっていることがある。濃度を測るだけで濃度の測 定結果だけに頼ってしまって、濃度の測定以前にやるべきことがやられていないことが ある。ばく露を測るということは、直接抑制することには関係がありませんねと。それ から時間と労力をたくさん要して費用もかかると。そういう問題があるということにな ります。  そういったことを解決するために、2005年にCOSHHが改正されたわけですが、優 良ばく露抑制手段と私は訳しておりますが、その原理の8項目が出てきて、まずはそれ をやってくださいと。それから、さらにWorkplace Exposure Limits以下に保つという ことをやると。感作性、発がん性、遺伝毒性のものはALARPでやってくれということ。 中小企業とか、専門家ではない人たちは、COSHH Essentialssに拠る。COSHH Essentialsというのは、HSE版のコントロールバンディングです。結局は該当する作業 ごとの管理手段シートを使ってくれということです。中小企業、非専門家以外の専門家、 そういうことをする能力のある人たちは、WELsの濃度測定を使ったtraditional model に拠ってもよろしいと。COSHH Essentialsでいくか、これでいくか、それについては 事業者は好きなほうを選ぶということになります。  先ほど申し上げました、優良ばく露抑制手段の原理8項目というのが ACOP(Approved Code of Practice)に載っているわけですけれども、8つあります。まず 作業工程と操作方法を放出、流出、拡散が最小となるような計画とする。抑制の手段に ついては、ばく露経路の全部を考えてくれと。ばく露の抑制についてはリスクに対応し た手段を使うということ。抑制手段については、ばく露が最小となる有効で信頼できる 手段を使えと。1つの手段で、うまくいかないときは、他の抑制手段と、個人用保護具 を組み合わせることでもよろしい。抑制手段については、有効性を持続するために、定 期的な点検と見直しをやる。それから作業者の教育です。ハザードとリスクと抑制手段 についての教育訓練を作業者の全部に実施する。最後に使う抑制の手段によって安全衛 生上の全体的なリスクが増えることがないようにすると。非常に当たり前と言えば当た り前のことばかりです。この8項目だけではなくて、非常に詳しい説明が10頁にわた って大変くどくどと書いてあります。項目としてしまうと簡単ですけれども、説明を付 け始めたらきりがないという感じになります。  一方、COSHH Essentialsですが、いちばん初めに出てきたのが1998年です。EASE というモデルがいまでもあるようですが、かなり難しいモデルだったのですけれども、 それを非常に簡単なものにして、わかりやすくしました。それは、印刷物で出てきたの が98年。これがウェブサイトに載ったのが何年だかあまりはっきり記憶がないのです けれども、こういった画面で、対話型で必要なものを入れていくと、物質名とかR-フレ ーズとか、取扱数量などのデータを入れていくと、私は管理段階区分という言葉を使っ ていますけれども、4つの管理段階のどれに該当するかということと、管理手段シート のどれを使いなさいという答えが出てくるようになっております。インターネットで無 料で誰でも使うことができます。管理手段シートというのは、沢山つくられていて数を 数えるのが難しいのですが、NIOSHの資料によると、2007年までに約300種類が用意 されているということです。  管理手段シートのイメージですけれども、これは2枚だけのいちばん簡単なものをご 覧いただいていますが、どういう項目が載っているかというと非常に多岐にわたってい ます。こういったことを皆きちんとやってくださいということになっています。  ここに作業者のためのチェックリストも付いています。300種類と申し上げましたけ れども、どういうものがあるかというと、その中をご覧いただくと、このサイトに目次 が付いていまして、ゾロゾロと先ほど見ていただいたようなシートがいくらでも出てき ます。主なタイトルを並べますと、このようになります。一般作業のものについてとか、 皮膚・眼接触の防止、呼吸用保護具など分かれていますから、いくつかを併用するとい うことが多いのかなという感じです。  業種別にもたくさんあって、アスベストも除去等の40種類ほどの作業についてのシ ートがあります。業種によってもいろいろなものがあります。サービス、小売業という のは、美容院とか、爪のネイリングとか、そういったようなものもあります。農業につ いてもあります。結局はそういったような管理手段シートを必要なところに必要なもの が行き渡るようにするということが究極の目的である。それをしっかりやることがいち ばん大事であるとされているようです。  一方ドイツですけれども、ドイツも2005年に有害物質規則が改正されています。こ の有害物質規則は87頁もある、大変な量です。先生方はよくご存じたと思いますが、 TRGSという技術指針が用意されています。その中の500番というのが管理区分がいち ばん低い場合、そのときのminimum requirementが書いてありますが、これも7頁に またがって、非常に膨大な情報が載っております。  この辺はとても見るのが大変ですけれども、2006年になってから、こういうタイトル、 簡易な手引書をBAuAが作っております。BAuAというのは、ドイツの連邦安全衛生研 究所ですけれども、中身としては、情報収集からそれぞれの物質のランクを決めて、そ れから管理区分を決める。前後しますが、ドイツ語を英語にした資料ではProtection levelという言葉を使っていますけれども、COSHH Essentialsでいけば、コントロー ルバンディングでしょうか。1から4までの区分ですけれども、その区分を決める。そ れから、それぞれの管理区分のばく露防止措置をこういうようにしなさいというような ことが書いてあります。  いちばん上の管理区分4、発がん物質などを使うところに入るわけですけれども、そ れについては、専門家に頼むことにして、この手引きは適用しないとなっております。 いちばん下のlevelのときに、何と何が必要かということについては、70項目ほどチェ ックリストが載っております。こういった項目になります。先ほどのCOSHH Essentials の項目と似たり寄ったりということになるかと思いますけれども、随分幅が広い情報が 必要だと考えているのだなと受け止められます。  それから欧州のEUの理事会指令で、一般的な化学物質についての指令があるわけで すけれども、その指令を実施するためのガイドラインというのが2006年になってよう やく出てきました。それはnon bindingになっていて、非拘束と訳すか、ある意味では 単なる情報だと受け取ってもいいかと思います。280頁もある恐ろしい資料です。これ が原文のタイトルです。  そのフローチャートだけご覧に入れますが、これは似たり寄ったりの話で、化学物質 のIdentificationをする。Hazardと作業条件からも総合して、リスクの区分をします。 その区分はまさにHSEのCOSHH Essentialsと同じコントロールバンディングという ことになります。コントロールバンディングの範囲を越えるもの、リスクの大きいもの については、詳しいアセスメントをすると。その内容はいちばん初めに出てきたEN689 というtraditional modelということになります。それをもって評価しなさいというよ うになっています。あとはそれについての対策について優先順位とか計画をしてReview を繰り返すというようになっています。  EN689というのは、1995年に出て、もう新版が彼らがやっていることだからもう新 版が出なければいけないはずなのですが、未だに出ていない。HSEのストラテジィも 1997年ですが、それも改版が出ていないのです。出したときはそれでいいつもりだった が、いじるにいじれなくて、そのままになっているのかなと私は考えております。コン トロールバンディングという概念でリスクを区分するということは、ここでもそのよう になっています。イギリス、ドイツ、その他では、かなりしっかりと根を下ろしている と考えてもいいかと思います。  「まとめ」で書いていますが、goal-secting approachとALARPとhierarchyが、彼 らの前提になっているということは忘れてはいけないと思います。limit valueを指標と したばく露抑制というのは専門家が必要で、誰でもできないということになります。 advice and informationを言い替えればgood practiceの提供が非常に大事になってき ます。コントロールバンディングで低い区分については、管理手段シートで対処しまし ょうということです。ただし、そのときには非常に広い範囲にわたり、先ほど見ていた だいた8項目が該当するもの、そういったものに沿ったminimum requirementをしっ かりと守っていかなければならないということです。発がん物質の対応については、昔 のとおり専門家が必要だと。そういうようになっています。以上です。 ○名古屋座長 ご説明ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に関して質 疑を持ちたいと思います。ご質問等がありましたらどうぞ。 ○圓藤委員 高い区分に発がん物質とか書いてあるとおっしゃったのですが、発がん物 質の定義というのもあるのですか。 ○毛利 各物質に区分して、EUのR-フレーズですね。 ○圓藤委員 そうすると、発がん物質だとIARCのいくつからが4に入るのですか。 ○毛利 いまここではあれですが、R-フレーズの番号はいくつか指定されております。 ○圓藤委員 わかりました。 ○棗田 大体IARCだと2Aと2Bの一部が入っていますね。それぐらいです。 ○圓藤委員 ありがとうございます。 ○名古屋座長 あと、他に。 ○毛利 工業的に使われているほぼ全部の物質について、彼らはR-フレーズやS-フレ ーズが指定されている仕組みを持っているわけですね。だから、それを使えばいいと。 ○唐沢委員 COUNCIL DIRECTIVE 67/548/EEC of 27 June 1967のAnnex1ですね。 3300物質ぐらいについて。 ○毛利 そうですね。それは今度、GHSに沿って見直されます。 ○圓藤委員 GHSと大体合うわけですか。 ○唐沢委員 GHSよりも先行したものなのですが、将来はGHSに調和する方向で。 ○毛利 いつ頃できるかわかりませんが、いまGHSに調和しようという作業にかかっ ているようです。 ○圓藤委員 その判定区分は昔のGHSですか。 ○棗田 現段階のいちばん新しいバージョンで見直しをかけているのですが、日本と若 干違いがあります。日本もそれに合わせるかもしれませんが、急性毒性などは区分の4 までしか使わないことが決まっていて、大体それと合わせて、リーチの中の部分の所に それの報告書の形で、どうずらして合わせるかというのが出ています。 ○名古屋座長 他に。よろしいでしょうか。  パワーポイント13の所に、ばく露評価に関するtraditional modelのときに、普及に 多くの問題点が指摘されたとありますが、この多くの問題点には何がありますか。結果 はあったのですが。 ○毛利 これは骨子そのものです。結局、そんな法律ができたことは知らないよと、化 学物質は何だとか、ばく露限界とは何かと言われても、そんな言葉は聞いたこともない、 わからないと。 ○名古屋座長 年代的にはそのぐらいのレベルだということですね。 ○毛利 88年ですから。  だけど、彼らは非常に範囲が広いのですね。美容院、ペンキ屋、自動車修理工場、そ ういったものも対象だから、その辺が感覚的に違うと思います。何せみんながなかなか 思うように、そういう法律があることを理解して守ってくれなかったと縷々書いてあり ます。彼らのことだから、いろいろな調査をやっているのですね。調査をやって、どう もさっぱり、進まないね、ということがわかったようです。 ○名古屋座長 ありがとうございます。他によろしいですか。では、また何かあればお 聞きしたいと思います。  次に、産業技術総合研究所客員研究員で、日本化学工業協会にも籍を置かれている花 井荘輔様より、「欧米の作業者ばく露評価の動き及び今後のあり方」について、ご説明を よろしくお願いします。資料2で説明をお願いします。 ○花井 花井です。よろしくお願いします。産業技術総合研究所の客員研究員という身 分になっています。それと、いま日本化学工業協会、日化協の非常勤の嘱託の仕事をし ています。フルタイムの勤務は特にないです。今日お話するのは産総研や日化協の考え 方ではなくて、私個人の考えをお話すると、そういうことでお聞きいただきたいと思い ます。時間は30分ぐらいと聞いていますが、それでよろしいでしょうか。  最初に、表題が「欧米の作業者ばく露評価の動き及び今後のあり方」となっています。 ばく露評価というだけだと実測云々も含めた議論をしなければいけないと思いますが、 最初のお話のときからモデリング、特に数理モデルを中心にとあったので、今日はそこ を中心にお話します。それで、動向に入る前に、いま毛利さんのお話にもありましたが、 リスク評価について若干おさらいしておきたいと思います。  化学物質のリスク評価は、有害影響の程度とばく露の程度の2つを重ね合わせて評価 しています。その場合、いわゆるトキシコロジー、有害影響はいろいろ研究されている ことが多いのですが、ばく露の程度の評価というのがなかなか簡単ではないと。ただ、 リスクを評価するためにはばく露評価が重要であるということで、ずうっとばく露評価 の重要性を強調しております。それを考える際に、ばく露は化学物質の発生源とレセプ ター、影響を受ける人の関係から決まってくるわけで、直接ばく露と間接ばく露と、一 応そういうカテゴリーに分けて考えております。  直接ばく露とは、ここにあるような、作業者の場合、あるいは消費者の場合のように、 化学物質の発生源と影響を受ける人の関係が直接的、あるいは明示的といってもいいか と思いますが、そういう状況です。それに対して間接ばく露とは、下の絵はヨーロッパ の、EUSESのガイダンスから採ったものですが、事業所から化学物質が出てきて、そ れがいくつかの環境媒体を経由して人に影響を与えると、そういう間接的なばく露であ るという捉え方をしております。今日の主題はこの中の作業者ばく露となります。  これも、言わずもがなのことなのですが、化学物質のリスク評価は、まず評価するシ ナリオを確定する、何を評価するかを決めなければいけないわけです。そこで、問題に なりそうなリスクを特定するのは定性的に、例えば、長期に、生涯に渡って化学物質と 接触するので、発がん性の問題なのか、あるいは、その物質は発がん性なのかどうかは 定性的な議論をして、それによってばく露を評価し、影響も評価して、その2つの結果 を組み合わせてリスクを判定するのです。先ほどあった、1983年のリスク評価のパラダ イムはこの4つのプロセス、ステップが書かれていることが多いのですが、その前に化 学物質のリスクのシナリオをはっきりさせることが必要だろうということで、この辺を 1つ付け加えております。  作業場の管理の場合でしたらこういった状況を決めて、定常的作業であれば吸入、経 皮のばく露量がどうなのか、それから、長期・反復毒性であるならば、無影響量、動物 実験データ云々を解析して、例えば基準値を決めると、あるいは、食品だったらADI とか、そういったものを決めることになると思います。毒性評価だけだったら、それは 有害影響評価ということになると思いますが、リスク評価のためには評価するシナリオ のばく露量を評価する必要がある。その辺を強調しておきたいと思います。  それで、その評価にもいろいろな考え方、あるいは手法があるという、1つの絵なの ですが、ばく露と影響を評価するのにも、定性的なやり方と定量的なやり方と分けてあ ります。この分け方にはいろいろと議論があると思いますが、1つの区切りとして見て いただけると思います。定性的は、影響にしろばく露にしろ、大中小とか、1、2、3と か、高中低というふうに分けて、このマトリックスの中で、高いものがあれば低くして いく、いろいろな努力をすると。それがランキングによるマトリックス法だと思います。  先ほどお話にあったコントロールバンディングも、それに少し定量性を加味したよう な、量や蒸気圧などからばく露を評価し、有害性からリスクの程度に分けていくと。そ ういった定性的な方法に対して、もう少し定量的にしようという意味では、ばく露量も 標準的、平均的な1点データから取込量を計算して、それから、影響のほうは、例えば、 動物実験のNOAELから不確実性係数を適用して、ADIとかTDI、いわゆる基準値など を決めています。それで、そのばく露量と基準値等を比較して、大きければ問題、小さ ければ、とりあえずいいだろう、そういった評価をするというのが、ここでは初期評価 と位置づけしております。  さらに、このばく露にも、あるいは、影響の感度にも分布があることを考えると、詳 細評価ということで、重なった部分の、例えば、人口がどのくらいになるかとかいった ことで、管理手法、コストベネフィットを考えていくという、そういったやり方があり ます。先ほどの毛利さんのお話とつき合わせて考えますと、ばく露を評価して、影響も 評価してつき合わせる、この辺がトラディショナルな手法となるのでしょうか。それに 対して、こちらのコントロールバンディング的な業務が盛んになってきている、そうい う位置づけになるかもしれません。次に、作業者ばく露評価という観点で見てみますと、 このやり方には3つあると。これは先ほどもお話がありましたが、2000年に出た『指 針と解説』に書かれている中で、シミュレーション、既存データからの類推、それから、 気中濃度の測定と、その3つの手法が使えるという解説があります。その中で、作業現 場で濃度の実測が可能な場合には、それに基づいて検討していくのが基本だと思います。  それから、先ほどの毛利さんのお話にも若干ありましたが、化学物質のリスク評価は、 現在と将来、これからどうなるか。極端なことを言えば、これから合成して検討するよ うな化学物質に関してもリスク評価をしていかなければいけない、という状況もあり得 ることを考えると実測が難しい面があります。それから、実測、測定の問題としては、 さっきもあった、コストの問題とか、実測できても、それの空間的・時間的代表性とい うか、どういった所をサンプリングして、それもどのくらいの頻度でデータを取ればそ の場を評価することができるのか、そういったいくつかの問題があるということで、シ ミュレーションの重要性があります。その辺がここの3つの方法の中の1つに、モデル に基づくシミュレーションが出てきている原因ではないかと思います。  それで、数理モデルによるシミュレーションもいろいろあるわけで、あまりちゃんと した分類ではないのですが、一般的な分類としては、経験的なモデル、数理モデル、そ れを組み合わせたもの。それから、決定論的に1つの値として決まるものと、データの 分布があるとか、不確実性などに着目すると、確率論的に分布のあるもの。そういった 分け方というか考え方ができると思います。  さらに、新しい展開として書いたのですが、最近ヨーロッパで、REACH絡みでいろ いろなモデルが検討されていまして、その議論の中で、Bayes解析をばく露予測に使お うという提案があります。これはまだ提案の段階だと思います。もう1つ、定量性を高 めるという意味で、Computational Fluid Dynamics、計算機による流体力学を使った 室内の物質分布、風速分布とか鼻腔内の沈着挙動、そういったのがヨーロッパやアメリ カでいろいろ議論されていますし、日本でも先生方のいろいろな研究があります。こう いった、いろいろな進め方があるということだと思います。  シミュレーションモデルでどんなことをイメージしているのか、簡単に見ていただき ます。経験式とは、例えばここに出ている式は、作業現場で容器に液体を充填するとき のモデルということで、こんな式が使えると、EPAの人が20何年前に論文に発表して おります。大気濃度を推定するのに、飽和蒸気圧とか容積といったのはデータとしてあ るのですが、それ以外に、混合係数、ミクシングファクターKとか、それから、充填方 式、ピチャピチャピチャと入れるか、水面まで突っ込んで静かに入れるかによって違う とかといった、かなり任意性のあるパラメーターのようなものも導入されています。  それからもう少し、数理モデルということで、液体の蒸発云々から式を作って考える ものとしては、部屋の容積といくつかのパラメーターで、それで、出た後にエクスポー ネンシャルに減衰していくと。そんな式がいろいろあるわけです。これはオランダの RIVMが開発したConsExpoというConsumer Exposure、消費者のばく露モデルに出 ている1つの式ですが、こんなのがあります。  それから、先ほどお話したBayes解析とは、専門家の知見と実測データを組み合わせ て新しい分布、Bayes的な言い方をすると、事前分布にデータをつけ加えて事後分布を 出す。事前分布が何かこうあるとしたら、これは専門家が、例えばこういう分布だろう と仮定して、それに実測値があると、それを組み合わせた新しい分布を作り出して、さ らにデータが加われば、そこを出発点にしてさらに進める、そういったやり方もあるわ けです。シミュレーションモデル、あるいは数理モデルのイメージはつかんでいただけ ると思います。  実際にどんなモデルがあるかとなりますと、室内、あるいは作業現場における化学物 質の濃度を見るという意味では、発生モデルと分散モデルに分けて考えるのが一般的だ と思いますが、一定発生とかバックプレッシャーで、既に室内の濃度が高いときはその 影響を受けて発生量が減るとか、あるいは小液滴、こぼした液が蒸発するとか、飽和蒸 気圧であるといった発生モデルと、それから、瞬間的に完全混合する、近接場、遠隔場、 ニアフィールド、ファーフィールドです。それから、乱流拡散という若干の風があるよ うなこと、こういった組み合わせでこれを解析すると、時間に対して濃度がこのように 変化する。  これはNicasというカリフォルニア大学のバークレーの先生が、AIHceの行うワーク ショップのときに2日間かけて、エクセルのスプレッドシートのファイルをみんなに渡 して、使いながら、こういう計算をするとこうなると、そういうワークショップに参加 したときに得た情報です。非常に面白いと思ったのは乱流拡散で、風がある場合ですね。 例えばドラフトを使っていて、ドラフトの中で作業をして、ドラフトが引いた場合には 後ろから風が来るので、LEVのような使い方なのですが、風上というか、自分の身体の 前の部分に若干の乱れで渦が発生して、濃度が少し出るという面白い結果などもありま した。こういった、発生モデルと分散モデルの組み合わせがあるわけです。  次に、これはパワーポイントにはないのですが、お手元の資料の別紙1「主な作業ば く露評価手法その他」に、いま話したことについてもう少し具体的なモデルをまとめて ありますので、それを見てください。最初の別紙1は、定性的なモデル、半定量的なモ デル、それと定量的なモデルが縦の軸で、それから、横の軸は、欧州と米国と日本でど うかということが書いてあります。定性的なものでは、先ほど話したマトリックス法で すが、特に日本では企業の現場で小集団活動、KYTとかいろいろな活動の中で、実際に かなり活用されているのではないかと思います。これはどこまでやればいいのか、全部 いちばん低い所に行ったとしても本当にそれでいいのかどうか、そういった具体的な問 題に答えることは難しいかと思います。それから、一昨年でしたか、厚生労働省から出 た「事業者が行うリスク評価の指針」に書いてあった、3つのマトリックス法が書いて あったと思いますが、それなどもこれに当たると思います。  コントロールバンディングは先ほど毛利さんのお話にあったので、その辺は省略しま すが、1つアメリカの話です。先ほどNIOSHの話もありましたが、1980年代からアメ リカで、薬の原体というか、影響の情報がまだよくわからないものをどう管理していく かということで、Merckなど製薬会社でこういうバンドに分けて、まず第一にこういう 作用がある、化学物質はこういうように使っていこうと、どうもばく露という概念があ まりないような使い方があったようです。それで、最近NIOSHがコントロールバンデ ィングということをいろいろ議論しているウェブを見ても、どうもその範疇の議論がな されているような感じがします。どうもそこがヨーロッパでいうコントロールバンディ ングとの関係がもう1つはっきりしないものもあるのですが、そういう動きがあります。  次に、半定量的の欧州の所に少し書いてあります。先ほどからあるコントロールバン ディングの考え方を少し変形して、オランダのTNO等が作っているStoffenmanager とドイツのBAuAの、これは先ほど毛利さんのお話にもありましたが、簡易的なコント ロールバンディングというもので、量とか蒸気圧とか、いろいろな条件と有害性とを組 み合わせて、管理手法を出すというよりは、例えば1〜10ppmだとか、むしろそういう 濃度範囲を出して、それと基準値とを比べて、1より大きいとか、1より小さいとか、 どうもそういったシステムとして使おうとしている。これは後でもお話しますが、いま ヨーロッパで実施に入っていますが、REACHのばく露評価の手法として、ドイツの BAuAの簡易手法がガイダンスに書かれております。それはそうやって出てきたばく露 濃度範囲と、基準値のようなものでDNEL(Derived No Effect Level)、それと比べて1 より小さくなるように管理する、ばく露条件と管理手法を組み合わせて、事業者はリス クがしっかり管理されているような使い方をしなさいと、そういうときにこの手法が紹 介されております。  次に、数理モデルの所ですが、発生と分散ということです。欧州の所で、オランダの RIVMのConsExpoが書いてあります。最初はコンシューマー用のばく露評価というこ とでつけられたモデルなので、ここに書くのは適当でないかもしれませんが、状況が同 じであれば使ってもよいだろうということで、REACHのガイダンスにも書いてありま すので、一応ここに書いてあります。それから、アメリカでは先ほど少し見ていただい たEPAの式とか、E-FastとかWPEM(Wall Paint Exposure Model)といったいろいろ なモデルが作られています。  ここに書き忘れましたが、ChemSTEERというのが後で出てきますが、EPAでは ChemSTEERというかなり詳しくいろいろ評価するようなシステムも作っています。そ れからアメリカの場合には、そこに書いてあるRohm & HaasのJayjockとか、先ほど 出てきましたカリフォルニア大学のNicasといった、個人で論文を発表する人がかなり 目立ちました。  その右に書いてありますが、日本ではこの分野のいくつかの総説が出ている。それか ら、そういったモデルのデータによる検証等も若干行われています。それから、評価シ ステムとしてRisk Managerというのは、日本化学工業協会が1999年からNEDOを介 して経済産業省からの委託で、事業者が使えるようなリスク評価システムを作ろうとい ったことで開発してきたシステムの名前で、その中にはいくつかのばく露モデルが入っ ています。最後のCFD、Fluid Dynamicsはこういった例があるということで、特にLEV、 局所排気装置の効果という意味では、安衛研の小嶋さんがいろいろトレーサーガスを使 った検証などをされていますので、そういったのもある意味ではこれから役に立つので はないかなという気がします。  別紙2は、いまお話したようないろいろなシステムを作業者ばく露と消費者ばく露と、 その他関連ということで1980年ぐらいからの時代変化ということで、思いついたまま に書いてあります。網羅的ではありません。ですから、抜けているのが多々あるかと思 いますが、そういう目で見ていただければ良いかと思います。時間もありませんので、 この表はこの辺にしておきます。  パワーポイントの資料に戻ります。いまの別紙1、別紙2の話をまとめますと、アメ リカはEPAを中心に非常に多数のモデルがあります。これは問題ごとに、EPAの環境 濃度評価のモデルも含めると、たぶん200から300ぐらいのモデルがあるのではないか と思います。それをTSCAで新規物質の評価のときにまとめたのがE-Fast。それから、 ChemSTEERというのは作業者のばく露を評価するようなシステム。日本に比べて、非 常にたくさんの専門家がコンサルタント業として活動している。大学人も産業界の人も かなりいる。その辺が特徴だと思います。  ヨーロッパは、TGD(Technical Guidance Document)からEUSESというシステムに 結実して、それからREACHの一連の流れ。これを1つに書いてしまうのは問題かもし れませんが、一応あとでもお話しますが、REACHのばく露評価というのはEUSESあ るいはTGDの記述を基本とするというガイダンスがありますので、こういった流れが ある。それから、HSEが非常にたくさんの実測データをまとめて、EASEあるいは COSHH Essentialsといったものにまとめたもの。あとはオランダにTNOとかRIVM がありまして、TNOはいまは民間機関かもしれませんが、いろいろなシステムが開発さ れています。  それから、ヨーロッパで特にここ10年ぐらい目立つのが、欧州全体の共同事業とい うことで、EUSESはオランダのUSESというシステムをヨーロッパ用に作り直したも の。RiskOfDermというのは、経皮ばく露を評価するためのシステムをヨーロッパの10 カ国ぐらいから専門家が集まって作ったとか、コントロールバンディング的な発想です。 もう1つBayes解析の利用とか、MCMC(Markov Chain Monte Carlo)というシミュレ ーションもありますが、そういう新規技術の試行も、ある意味ではアメリカよりは先行 している部分があるかもしれません。  それの関連で、若干REACHのばく露評価ツールを紹介しておきます。これが実施に 入っていますが、きちんとしたテクニカルガイダンスというのがなかなか出なくて、昨 年の5月末に一応出ました。こういう評価をする。こういう情報が必要で、そのために はこういう評価指標があるというガイダンスですが、全体を合わせると2,000頁を越え るような膨大な資料で、そこで職業ばく露は実測することが原則だと書いてあります。 その評価の中にはTier1、Tier2ということで、最初に例えばECETOCのTRA(Targeted Risk Assessment)というシステムが公表されていますが、中身はEASE2.0に近いとい うことが書いてあります。ただ、現在このTRAというのが改訂中で、最新の10月末の 情報ですと、いま改訂しているのが今年の3月末には出来上がるから、それを使ってや ってくれという状況のようです。  同じ中に、先ほどのドイツのBAuAのシステムが例として挙げてある。それから、オ ランダのStoffenmanagerも使えますよとか、そういった書き方がしてあります。Tier1 で駄目な場合にはTier2でさらに詳しく評価するということですが、検証されたものは なくConExpoも使えれば使っていいと。先ほどの経皮ばく露のシステムとか、こんな ことが書いてあって、Advanced toolとしてBayes解析をどうも期待しているようです が、昨年の6月ごろに聞いた話では最初にできたパイロットシステムというのがどうも 使いものにならなくて、現在さらに改良中だという話がありました。消費者、環境のほ うは省略します。  大体そんなところですが、コントローバンディングで先ほどお話したようなことを少 し補足しておきますと、1980年代にアメリカを中心に製薬業界である動きがあって、そ れが現在のNIOSHにつながっているのではないかなと思います。それから、イギリス のいろいろなシステムがありましたが、特にオランダで経皮ばく露評価への利用、 Stoffenmanagerという一般的なもの、ドイツのBAuAのシステムは、REACHのテク ニカルガイダンスで例示されている。もう1つ面白いのは、最近ナノ材料のリスク評価 ということがあちこちで議論されていますが、ローレンスリバモアの人とヨーロッパの 人が共同で、ナノ材料への応用のパイロットシステム、コントロールバンディングです が、つまり、まだ基準値がないような場合あるいはばく露評価が難しい場合に使えるよ うな提案ということで、論文が出ています。それから、中災防の簡易手法というのは、 実測値があれば活用するという位置づけとして、特異的な位置を占めていると思います。 このコントロールバンディングがどのくらい使えるかに関しては、大学の人と産業界か らのやり取りがありましたが、その辺は省略します。  雑駁なお話で広く浅くということになってしまいましたが、そういう状況で私がいま 考えている思いを簡単に書いています。日本の場合、シミュレーションというのをいま 大きく取り上げてお話しましたが、どうも数理モデルでシミュレーションをするという のは苦手な国民性があるのではないかということ。それから、法律で決まればリスク評 価もやりましょうという姿勢が依然として強い。それから縦割り行政、いろいろなこと というのはあえて繰り返しません。特にヨーロッパと比べて、データベースが有効なの は少ない。それから専門家の絶対的な不足ということで、毒性学者も少ないみたいです が、リスクアセッサーとなると1桁半から2桁ぐらい少ないのではないかなという感じ がします。  そういう中でどうするのかということで、化学物質の総合的な管理というのがリスク に基づく意思決定であるのならば、リスク評価ができる体制を作る、人材を育成してい かなければいけないと思います。その前に、こういったシミュレーションモデルもモデ ルがあるから、それを使えば、パラメーターを入れれば正解が出てくるという話ではな くて、実際モデルがいろいろあっても、どのくらい使えるのかという検証が絶対的に必 要ですが、ある意味ではそれが最大の問題とも言えます。作業現場のいろいろな状況と いうのは、個々の現場によっていろいろ違うと思います。ですから、その検証というの は非常に難しい問題だと思いますが、それは個々に実績を積み上げて、その知見をまと めて知恵として使えるものにしていかなければいけないだろうと思います。  そのためには、戦略的な長期的ビジョンがどうしても必要です。いま知的基盤技術、 データベース開発あるいはモデル開発というのはよく言われますが、このデータベース というのは長期的に維持発展させていかないと使いものにならないことはご存じのとお りだと思います。データベースというのは、考え方自体は非常に簡単なので、提案する 人もそれを認めてお金を出す人も、ある程度簡単にやってしまうみたいですが、作って 2、3年で終わってしまうケースが非常に多いのではないか。ある人が死屍累々たるデー タベースと表現されたことがあって、なるほどなと思いましたが、はっきりした長期的 ビジョンに基づいた継続が、特にこのデータベースに関しては重要だと思います。  人材育成は若手に任せると書いてありましたが、特に長期にわたって継続していくと いう意味では、若いうちからある程度責任を持った仕事をきちんとやっていく体制がで きなければいけないのではないか。ここにCAS(Chemical Abstracts Service)の例と書 きましたが、これはCASが1950年代に化学の情報の処理、化学の構造式の処理にコン ピュータを使わなければもう手が出せないという時代になったときに、あのときはベー カーさんがたぶん30代だったと思いますが、その人が30年ぐらいCASの所長として 引っ張った例がありました。そういう長期継続、そのための人材育成、公的な拠点が組 織としての取組みというのが重要だと。  それから、さらに最後に情報とデータに基づき、リスクで議論する文化をということ は社会のあり方そのものかなという感じがしますが、どうも上の人が言うことはみんな 「ははあ」と聞いてしまうような文化があって、きちんとした対話をするとか質問をす るとか反論するとかが、なかなか日本の社会ではできていないのではないかなという気 がします。そういう正反合という弁証法というのを最近よく言いますが、議論しながら 情報とデータに基づいて進めていく文化がないと、なかなかこういったことも難しいの かなという気がします。特に長期継続というか、今日のお話のために昨日に少し古い資 料を見ていましたら、毛利さんが5、6年前に何かで書かれた中で、今日お話したよう なこんな問題意識が書いてありましたので、同じようなお考えをされていたのだなとい うことがわかりました。  非常に雑駁なお話で申し訳ありませんでしたが、以上で私の用意したお話を終わりま す。どうも、ご清聴ありがとうございました。 ○名古屋座長 説明をありがとうございました。ただいまの説明について、質疑を持ち たいと思います。ご質問等がありましたらどうでしょうか。 ○圓藤委員 よくわからなかったのですが、ヨーロッパのほうではシミュレーションを してやろうとなっているから、それが良いというのがいまのお話ですか。 ○花井 それが良いというか、日本でそれをそのままやるべきだとまでは言っていませ ん。 ○圓藤委員 ヨーロッパはシミュレーションを作ってやろうとしているということです か。 ○花井 実測が原則だと書いてありますが、そうでない場合はシミュレーションも必要 だし、そのためにはこういう手法があるということで、いろいろな手法が開発されてい るという事例をご紹介しました。その辺は何がベストかというのは、目的が何かという ことを決めて、そのためにはどうすればいいのか。それで、実測ですべていこうという 結論が出れば実測でやればいいし、足りないところがあれば何か補うことを考えて、そ れがシミュレーションならシミュレーションでやればいいということだと思います。 ○名古屋座長 いまのモデルというのは、かなり実測値があったときに、それはシミュ レーションと実測と合うのですか。その辺の整合性というのはどのぐらいですか。 ○花井 それはいろいろです。そのための論文もいろいろ出ていますが、そんなに数多 くはありません。たぶん難しいし、こういう仕事は地味だから、大学の先生はあまり一 生懸命にやってくださらない分野だと思いますが、ただある意味では社会的に見れば、 非常に重要ですよね。10何年前からそういう論文がありますが、数はそんなに多くはあ りません。 ○名古屋座長 最近、モンテカルロの形が、だんだん労働衛生のところで出てくるよう になってきているから、そういう形のものはたぶんあれは現場のデータとリンクしてい るわけではなくて、やり方だけは出ていて、これから結果が出たら合わせていくのかな と思っていますが、まだまだそういうのは。 ○花井 今日来るときも電車の中で読んでいた論文は、先ほどのNicasという先生が 2008年に出した論文です。それは、何かの錆を取るためにベンゼンを机の上にかけて取 る。そのときのベンゼンが室内にどう出るか。そこに近接場、遠隔場モデルをやると、 大体プラスマイナスに倍になるか半分になるか。そのぐらいの予測ができるという論文 を読んできましたが、そういう積み重ねをやっていかないと。計算すれば、それで正解 が出るという世界ではないと思います。 ○名古屋座長 せっかく説明をいただきましたが、ほかにどなたかありますか。 ○大前委員 今回は、少量製造・取扱い作業上のという前提でいまやっていますが、こ ういう条件の場合はむしろシミュレーションのほうが結構役に立つのではないかという 考えでいらっしゃいますか。 ○花井 私は、あまり実測とかそういうことをやったことがないのでわかりませんが、 シミュレーションのモデルであればいろいろな条件を振ったときに、どんなのかという いろいろな検討ができるのではないかと思います。 ○大前委員 たぶん、それを製造・取扱いと言っても、おそらく範囲が非常に狭いと思 うのです。狭いスペースの中で、おそらくやっているのだろうという気がしますので、 やたらあちこち拡散するとか、やたらあちこちから風が吹いてくるということがあまり ないか、もしくはその条件がある程度一定になるのではないかという気がします。 ○花井 そういう意味では、それに使えるふさわしいモデルというのがいくつかあるの ではないかと思いますが、そういうので試しながら実測と突き合わせて考えていくのが いいのではないかなという気がします。 ○毛利 実測とシミュレーションと組み合わせて、突き合わせながらやっていくという のが非常に意味があるわけです。 ○花井 シミュレーションだけで解決するとは思いません。 ○毛利 測定というのは、場合によっては大きな間違いが出てくる話がある。だから、 シミュレーションという裏づけも一緒に使っていくほうが、間違いがないのではないか と思います。 ○名古屋座長 大前先生が言われているように、たぶん小さな所の全体換気のシミュレ ーションは意外とリンクしている部分がある。だから、比較的実測値が合ってくるけれ ども、大きな部分になってくると不確定要素がたくさん入ってくるから、なかなか難し いのかなという気がします。でも、いずれにしてもわからないものに対して、どういう 形で拡散し、かつ、ばく露するかというのはシミュレーションを使ったほうがいい部分 があります。ただ、問題は一長一短があって、何に目的か、どこを選ぶかというところ の選び方が、その人がどれだけ知識を持っているかによって、違った選び方をしてしま うとまた違った評価になってきてしまうかなと、あまりにもあり過ぎてしまうとなかな か難しいかなと思っているのも無きにしも非ずです。 ○大前委員 このシミュレーションのモデルの中には、粒子に関するモデルもあるので すか。 ○花井 粒子はないです。 ○圓藤委員 当センターにもよく相談が来て、有機溶剤で病気になったというときに、 ばく露濃度は絶対に測定されていないので、どのくらいの量を使っていて、どのくらい の広さの部屋であるかを聞いて、その全部揮発した場合、どのくらいの濃度になるとい って推定しますが、全部きれいに揮発することはたぶんあり得ません。だから、そのと きの最も基本的なデータとして、沸点などによる濃度分布というデータはありますか。 せめて、沸点が100℃と200℃でこぼしたときに、こういうふうなというくらいのデー タはありますか。 ○花井 その温度が決まって物質が決まれば、その蒸気圧というのが決まりますよね。 そうすると、最大でそのときの蒸気圧になるわけですから、あとはその人の出入りが確 定すると、その1/3とか1/5ぐらいだろうという見積りをしていくことになると思いま す。 ○圓藤委員 データはありますか。 ○花井 それは蒸気圧があれば。 ○圓藤委員 わかりました。 ○名古屋座長 ただ、混合溶剤とかになってきてしまうと、しんどい部分はありますよ ね。 ○花井 小液滴もでるで、こぼしたものが少しずつ蒸発してなくなってしまうとか、飽 和していた蒸気圧がバーッと出るとか、いくつかのモデルは既にありますから、そうい うのを使って考えて、実測値があればそれと突き合わせて。 ○圓藤委員 実測値はまずないので。中小企業で実測値があることはあり得ないですよ ね。 ○花井 それはそうですね。 ○櫻井委員 要するに、モデルの計算をスクリーニングに使うという方向も現実にはあ ると思います。やや安全サイドに取って、少し怪しいなと思ったら実測する。あるいは 実験的な条件で再現するとか、そういう見方で考えた場合に使えるモデル、使えないモ デル。 ○花井 例えば最悪モデルでしたら、瓶の中にあるものが全量こぼれてしまって、狭い 部屋に充満したらどうなるかとか、量が少なければ大した濃度にならないケースという のが結構あるのではないかと思います。こぼしたら、そのときは少し匂ったりしますが、 場を外せばそんなにならない。最悪このくらい。それで基準値と比べられるのだったら 判断できますよね。あとは、このばく露というのは短時間あるところを越えても、1日 とか一生涯をわたって考えれば無視できるということもあり得るので、その辺もどうい う濃度で管理していくのかをはっきりさせていけば、最悪状況で評価しても問題になら ないケースが結構あるのではないかという気がします。 ○櫻井委員 それは要するに、考慮から省くことができますよね。 ○花井 はい。 ○唐沢委員 今日の問題は、おそらく十数年前から毛利先生と花井先生はずっと継続し てフォローしていただいておられた方だと理解していますので、大変興味深く伺いまし た。今日の花井先生、毛利先生の最後のご説明の中で、専門家の絶対的不足、人材の養 成というのがかなりのネックであるということがありましたが、どうしたらよろしいで しょうか。それのお考えがあれば、お聞かせいただければと。 ○花井 いま、リスクに限らずどの分野でも人材育成です。それで、みんなは逆に職が ないといって騒いでいる。変な社会だと思いますが、人を育てるためには何か長期的な ビジョンに基づいて継続していかないといけない。それで、特にリスク評価という場合、 まだ社会的な要請というのがそれほど高くないので、どこか公的な所で最初からたくさ んということは絶対に必要ないと思いますが、数人のグループできちんと拠点を作って、 そこから少しずつ増やしていく。だから、まず個人として自分の権限でできる中で変わ らなければいけないし、その上を変えようといっても無理だと思いますので、その周り を変えて、どこかにそういう拠点を作るような形にしないといけないのかなと思います。 ○毛利 私は、昔からしょっちゅう簡単に言っています。つまり、自分の頭で考える場 面が日本は非常に少ないのではないか。上から2番目です。だから、法律で決まったと おりにはやるけれども、自分の頭は使わないということでずっと来ていますから、そう いう場面が増えるようにならないと専門家も大事にされないということではないかと思 います。随分昔から、私が会社にいたときから同じような仕事をしている仲間たちが少 しも大事にされないから、もっと大事にされるためにはどうしたらいいかというのが私 の長年のテーマでしたけれども、考えてみると大事にされる余地がないということなの だろうと思います。 ○唐沢委員 ありがとうございました。 ○大前委員 先ほど、たしかRisk Managerの中にはいくつかのシミュレーションのプ ログラムが入っているということをおっしゃったと思いますが、もちろんシナリオを決 めてこのソフトを使うと、ある程度の予測というのはできるのですか。 ○花井 必要なデータを入れればできます。 ○大前委員 その必要なデータというのは、そんなにたくさんはないですか。例えば気 積とか蒸気圧とか、既存のどこかから持ってきたデータさえ入れてやれば、あるいは気 積とかも入れていれば、大体の濃度なり何なりを予測できる。その精度が先ほどおっし ゃった2倍から半分ぐらいまでと。それはまた別ですか。 ○花井 2倍から半分というのは、今日私が読んでいた論文の世界であって、Risk Managerでやればケース・バイ・ケースで、それこそ3桁も4桁も違うかもしれません。 それは、もう少しいろいろ検討していかないとわかりません。適切なモデルを選んで適 切なデータを入れれば、そんなに変わらないと思いますが、1/2、2倍に収めるというの は無理だと思います。 ○大前委員 例えば、いまの気積とか気流とか、あるいはばく露の作業状況を入れてい れば、モデルそのものも勝手に選んでくれるわけではなくて、モデルも自分で選択して やるということになっていますか。 ○花井 一応、いまの構成は簡単なモデルは8つぐらい用意してあって、それでいいの ならそれを選べばいいです。それでない場合は、発生モデルと分散モデルがいくつか用 意されていますので、それを組み合わせてやるという非常に簡単にでも、フレキシブル にでもできるような形にはなっています。 ○大前委員 でも、そこの判断をしなければいけないという非常に高度な判断を求めら れるわけですね。 ○花井 そうですね。化学物質のリスク評価は概念は簡単ですが、実際にやるというの は非常に難しい問題だと思います。それはどうしようもない。それを簡単にしろといっ ても、バカチョンのシステムにして簡単にすればいいのかというと、そういう問題では ないと思います。下手に簡単にして、誰でもが何かやって数字が出てきたら、それが独 り歩きしてしまうというのは良くないことだと思いますので。 ○大前委員 でも、シナリオさえ入れてあれば、ある程度のモデルを自動的に選択する ことはできるのではないですか。いちばん最初にシナリオは重要ですよね。これがなけ ればもともとの意味がないので。 ○花井 ただ、シナリオを普通に考えると、日常言語です。誰々さんがこうして、ああ して、こうしてという日常の普通の言葉。それをコンピュータに理解できるように翻訳 するプロセスというのはどうしても必要で、実はいまEUのREACHの中で、ばく露シ ナリオというのをきちんと決めるためのいろいろなディスクリプターとかがありますが、 そういう日常生活の言語と実際の状況がうまくつながるのかなというのを非常に懸念し ています。入れて手順に従えば何か出てくるのでしょうけれども、それが現実をどのく らい反映しているのかというと、もっといろいろやっていかないとはっきりわからない のではないかなという気がしています。ただ、ヨーロッパでそういうのがいまどんどん 進んでいますから、結果がこれからいろいろ出てくれば、そういうのを我々も使えるよ うにはなると思いますが、それを待っていていいというか、待っているしかしょうがな いのでしょうけれども、そういう状況です。 ○唐沢委員 REACHの膨大なガイダンスがありますよね。私も時間があるときに眺め ていたりしていますが、あれを理解して、しかも言い方が悪いかもしれませんが、あの ガイダンスを鵜呑みにするのはあるいはリスクがあるのではないかという気がします。 日本として、日本のいろいろな従来のやり方とか工業開発の水準とか、ばく露の実態と かいろいろあると思います。共通部分もあると思いますが、これらを踏まえてREACH のガイダンスについて批判する必要がある部分があるとすれば、そういう批判をもでき るようにしなければいけないだろうと思います。 ただ、それにしても非常にエネルギーが要るなという感じですよね。日本のどこかで、 きちんとシステマチックにフォローしているところはあるのでしょうか。 ○花井 一応日化協ですね。 ○山口 はじめは安全側で考えてあると思います。企業が化学物質を使いたい場合には、 厳密にやってもっと良いはずだという方向に行くので、とりあえずはすべて安全側に大 体作ってあり、スタート地点としてはそんなに問題はないのではないかと思います。そ れが、実際のデータと照合されるなどにより修正され、より精度の高いほうへ持ってく る形になると思います。 ○名古屋座長 よろしいですか。いまの2つの事例を踏まえまして、資料3-1に進めて いって、先ほどお話いただいたところのばく露評価の手法の中に検討事項として入れて いきたいと思います。  次に、少量製造・取扱い作業の把握が可能なばく露評価手法の検討を進めたいと思い ます。本日は、ただいまの発表をいただきましたお二人の専門家のほかに、中災防から 化学物質支援センターの棗田さんと細田さん、それから先ほどお話にありました日本化 学工業協会から山口さんがいらしていますので、お三方にも積極的に議論に参加してい ただいて進めていきたいと思います。  まず事務局から、前回の検討事項で出ましたご意見等の説明をよろしくお願いします。 ○島田化学物質評価室長 事務局からご説明を申し上げます。前回のご意見として提出 をいただいたものについては、資料3-1にまとめています。ただ、これについては前回 の議論が結構活発でしたので、事務局で多少それを要約している点がありますので、も し違う点がありましたらこの場でまたご発言を賜ればありがたいと思っています。ご説 明申し上げます。  2つに分けています。1点目は、有害物ばく露作業報告関係です。1つは、目的の周知 徹底というところで説明の改善の点でご指摘をいただきました。私どもが出している有 害物ばく露作業報告の書き方、パンフレットの中で、記入上の注意において含有率につ いては、例えばMSDSで含有率の表示に幅があるような場合は、平均値を記入する等の 説明がなされているわけですが、こういった注釈については見逃されてしまう可能性が ありますという状況で、どの程度の詳細な報告をこの報告で求めているのかということ について、きちんと目的の中に明示して報告者への周知徹底を図っていくべきではない かというご意見でした。  2点目は、報告率の向上の工夫です。1つは、同じパンフレットの中でこういう場合 に報告をしてくださいという、いくつかの条件が設定されています。例えば500kg以上 の製造については報告が必要である。逆に、それ以下であれば必要がないという解釈が されるわけです。2つ目は、従事した労働者がいる場合のみ報告が必要である。逆に言 えば、いなければ報告をしなくてもいいという形に解釈できるわけですが、こういった 細かな条件が付されて、かえって事業者が判断を難しくしている。むしろ、報告対象物 質を使用していれば機械的に報告をしてもらうような仕組みとしたほうが、効率的にた くさんの情報が得られると考えるというご指摘でした。それから、少し報告精度が落ち ても、簡単な記載様式を採用して、できるだけたくさんの事業場から報告を得られるよ うにすべきではないか。その上で、国が追加調査の要否を判断していくほうが妥当と考 えるというご意見でした。  3点目は、事業者の報告の利便性の確保です。1つは、報告対象期間を今後1年間と して報告を求めるほうが、事業者はしっかりした気構えを持って報告できると考える。 現在、遡及した形で過去1年間についての報告を求める形になっていますので、それに ついてはもう記録がない状況もあるということで、そうではなくて今後1年間のほうが 適当ではないかというご意見でした。  特に事業場での製造・取扱いにおいては、ロットが小さいけれども製品の種類が多く、 また、化学物質の含有率が少しずつ違うような場合があります。このため、それら製品 をすべて区別して報告される場合には、報告が数十頁にもなってしまうことがある。こ ういった状況では、報告書に大きな負担を強いることとなって、例えば平均含有率によ り報告できるようにしたほうが負担の軽減になるということで、こういう配慮が必要で はないかというご意見でした。事業場の製造・取扱いにかかる情報は電子媒体として作 成されているので、パソコン入力みたいなものができるようにというご意見もありまし た。  報告のスキームの見直しについて、特に報告者の負担を軽減するためにも、スクリー ニング的な手法を取り入れるべきではないか。具体的には対象事業者に対して、まず当 該物質の使用の有無等のごく簡単な報告を求めて、これにより事業者を絞り込んだ上、 1次スクリーニングと言っていただいたかと思います。それから、追加調査が必要な事 業者に対し、より詳細な報告を求め、ばく露実態調査の候補事業所を選定するという2 次スクリーニングを採用することを検討すべきではないかということでした。報告の対 象期間は上とダブリますが、事業者の報告における利便性の確保というのはもちろん重 要ではあるけれども、事業者の生産は月によってばらつく場合が大きくて、1年程度の 長いスパンで報告を求めることが適当である。ある時期に限定してしまうと、報告が上 がらない可能性があるということだったと思います。汎用性が低い物質については、特 に小さな事業場で短期間取り扱われている場合が多く、このような取扱いを把握するた めには、ある程度長い期間を対象に報告を求める必要があるというご意見でした。以上 が、報告に関するご意見です。  ばく露実態調査、測定関連についてのご意見は、まずはばく露実態調査の目的の明確 化ということで、過去2回ほどご議論いただきまして、平均的な事業場を把握するのか、 あるいは、ばく露の高い事業場を把握するのかということでした。ばく露実態調査の基 本的な目的は、NIOSH等と同じようにばく露の高いグループを的確に把握することと 考えるべきではないかというご意見です。  2つ目は、作業環境測定の手順の整理、明確化です。ばく露実態調査における測定手 順の明確化を整理しておかないといけないということで、NIOSHのマニュアル的なも のを作成すべきであるということです。実態調査の中で、事前調査の拡充といったもの が重要であるという意見が多数出ました。企業がばく露調査をする場合には、予め作業 工程をわかっているので、例えばばく露が大きいと思われる作業グループを特定したり、 同じようなばく露が見込まれるグループ、ここではホモジナイズドグループと言ってい ただいていたかと思いますが、それを特定したりするジョブアナリシスを行った上で、 これらグループから作業者をランダムにサンプリングするような手法を採っているとい うご紹介をいただきました。そのほかばく露実態調査では、時間的、予算的な制約の中、 1回のみの事前調査をもとに測定を行っているので、ジョブアナリシス等の手法を採る ことはなかなか難しい状況であるということでした。  調査候補事業場が多数あって、その中から1事業場を選定する場合、選定された事業 場が調査対象全体を代表しているか否かというのが問題となりました。どのような事業 場を選定するかについての検討が必要であるということでした。これは、あくまで事前 調査という枠ではなかったのですが、関連だということでここに位置づけました。  サンプリング方法の検討ですが、NIOSHのランダムサンプリングの手法を採用する ためには、統計処理ができるサンプル数を確保していく必要がある。ただし、実際のば く露実態調査では2、3の事業場において10人未満の作業者の個人ばく露測定を行って いる状況であり、すべての用途や作業をカバーできないということです。それから、 NIOSHは個人ばく露測定に関し、全期間分割サンプリングを推奨しているが、これを 実施するためには予め調査対象事業場における作業工程を十分把握しておく必要がある のではないかということでした。  ばく露調査手法の検討ですが、個人ばく露測定において高いばく露が確認された場合、 どの作業が要因となっているかを把握するためには、スポット測定の実施は有効である というご意見でした。粉じんの測定等において使用されているリアルモニターは、作業 実態に則したガス濃度の連続モニタリングに有効ではあるが、リアルモニターが開発さ れている化学物質は限られているとともに、混合溶剤等が使用されている場所で測定す る場合には他の物質の干渉を受け、誤作動を起こす可能性があり、ばく露実態調査での 使用は難しいかもしれないということでした。  そこに書いたのは平成17年3月に出されましたガイドラインですが、屋外における 作業の測定についてガイドラインが示されているが、これに基づき短時間の個人ばく露 測定がなされている。ただし、粉じんに比べ軽いガスについては風等に影響されやすく、 野外で精密な測定をすることは難しいというご意見もありました。一方、屋内での測定 については、比較的再現性の高い測定ができる可能性があるということで、先ほどのガ イドラインに基づく測定を屋内でやることは考えられるのではないかということでした。 ただし、規制の導入の要否を判断する場合には、当該測定法は少し粗い部分があり、さ らに検討をすべきではないかということでした。  ばく露評価における考慮ですが、日本産衛学会が、15分間の平均ばく露許容濃度が許 容濃度の数値の1.5倍を越えないことが望ましいとしているが、ばく露実態調査におけ るスポット測定の値が高かった場合に、同学会の方針を援用するかについて検討する必 要があるということです。これは、今日お見えになっている大前先生の委員会がお作り になっていると思いますが、いちばん最後の参考9にはその抜粋だけを付けています。 以上が、前回の議論の要約です。 ○名古屋座長 どうもありがとうございました。それについて質問等はありますか。 ○唐沢委員 3頁の下に、「○ばく露評価における考慮」があります。その上の2行目に 「ただし、規制の導入の要否を判断する場合には」と書いてありますが、「規制や行政指 導等の導入の要否」ぐらいにしておいていただいたほうがいいと思います。 ○名古屋座長 屋内測定のところですね。 ○唐沢委員 はい。 ○半田環境改善室長 漏らしたところがありました。2頁の「ばく露実態調査関係」の 上から2つ目の○は「作業環境測定の手順の整理・明確化」となっています。これをよ く拝見しますと、いわゆる「作業環境測定」ではなくて、「ばく露測定」ですよね。です から、ここも申し訳ありませんが、ばく露測定、ばく露実態の把握、あるいはばく露調 査のいずれでも結構ですが、作業環境測定という言葉でないほうがよろしいかと存じま す。よろしくお願いします。 ○大前委員 別の委員会でニッケルの粉体の話が出たときに、トータルダストとインハ ラブルダストとレスピラブルダストを測定してみて、トータルダストのほうがインハラ ブルダストよりも値が小さく出るというお話がありました。これは、粉じんをサンプリ ングするときに、サンプリング面の面速で決めていないからそういうことが起こるわけ ですよね。そうすると、ここで個人ばく露測定をやっても通常のパーソナルサンプラー を使ってやっていると思いますが、その測定の数値が正しいのかどうか。何と比べれば 正しいのかどうかということですが、そこが解決しないと判断ができなくなってしまう わけですよね。そのことに関する検討はこの委員会の仕事ではないかもしれませんが、 粉じんばく露に関する基本的なルールをどこかで決めていただく、あるいは検討してい ただかないといけないのではないですか。 ○名古屋座長 いま、ちょうど厚生科研の中でそれをやっていまして、特に粉体のニッ ケルに関してはチャンバー実験の結果ですが、IOMと、金属類について10リッター、 20リッター、30リッターと、それぞれ物質によってトータルの吸引量を決めています。 それでやってみると、IOMに近い値の吸引量というのは55mmの濾紙を使ったときが大 体20リッターで引くと、IOMとほとんどイコールになってくる。ただ、粉体のニッケ ルだけですが、IOMと同じ形の面速にすると、とりあえずインハラブルにはなるのでは ないかなと。ただ、いま改善室に説明したのですが、それは確かに粉状のニッケルの話 であって、今度溶解されたときの金属ヒュームは粒径が小さいですから、そのときに鉛 とかクロムとか、ほかのものがそれと一緒になるかどうかは次年度以降に検討させてく ださいとお願いして、たまたま今回の場合は粉体のニッケルについては、IOMと同じ面 速で測定すれば、同じ結果が出てくるのではないかなという感触は持ちました。 ○大前委員 それと、個人ばく露のサンプラーとのギャップがあるわけですよね。 ○名古屋座長 そうです。 ○大前委員 そこを全部統一しないと、結局は個人ばく露濃度を測って何なのだと。環 境測定濃度とどこが違うのだと。もともと比較できないものを比べているみたいなこと になってしまいますよね。 ○名古屋座長 たぶん、特に金属類の粒径の粉体の大きいものというのは、例えば環境 ばく露濃度は意外と粒径の飛散性がそれほどないですから比較的に高い濃度が出るけれ ども、その環境測定をしたときに、それだけ飛散してくるか。飛散性がないですよね。 そうすると、かなり低い濃度になるから、たぶん比重の重たい粒径的なものは作業環境 管理でやるとイレギュラーする可能性がある部分があるので、計測とその辺のところは、 特に金属類についてはこれから詰めていかないと、難しい部分があるかもしれないと個 人的には思っています。  ほかによろしいですか。特に報告書の中で随分改善されてきて、事業者が書きやすく、 かつ報告が出てきて、国としてはそれをうまく使っていろいろな調査ができる形にはな ってきていますが、この中で付け加えておくとか、ここはどうなのだろうかというとこ ろはよろしいでしょうか。例えば、報告の効率の向上を工夫と書いています。500kg以 上の形の中で細かく条件を付けないと、かえって事業者の判断を難しくしていると書い ています。この辺は、従来どおりのままでよろしいですか。それとも、もう少し細かな 条件を付けるほうがよろしいですか。機械的に報告してもらう形の仕組みがいいのか。 あるいは、そういう効率を上げるために1次スクリーニングをやるともっと効率が上が ってくるし、ここはたぶんダブッてくるのかなと思いますが、皆さんはどうお考えでし ょうか。 ○櫻井委員 そういった条件を付けないでスクリーニングをやって、その結果から2次 的な詳細調査をするのがいいのではないかと思います。 ○名古屋座長 そのほうが、確実に欲しいデータは集まる可能性がありますよね。 ○山口 そういうことになりますと、報告する側が増えるのはいいですが、どうやって 周知するかです。ある程度の規模だと、工業会等を通すなりいろいろなことができます が。要するにこれを事業者として扱っていればということですか。従業員がいる事業者 であればとにかく出すということですと、どこまで周知できるかというところが難しい のではないかなと。 ○名古屋座長 ものではなくて作業者の数とか、その辺の取扱いとか。 ○山口 作業者の数はないと、まずいです。 ○圓藤委員 いまは日化協で1次スクリーニングしていますよね。 ○山口 というか、日化協からはメールで会員にはお知らせしています。日化協の直接 の会員は大企業ですし、下の団体会員というのがありまして、その下には中小もありま すので、そこを通じてまた流れていきますが、全く人数もなしだと流しようがないとい うか、少なくとも従業員が何人以上という所はあっても、そこだけでもあれば、出す側 が多少なりとも目安がないと難しいのではないかなと。 ○名古屋座長 例えば、山口さんが報告上の向上の工夫をされたときの思われているス キームは、どんな感じですか。ある程度の。物質は決まってくると思います。そのとき に、どういう形の。 ○山口 例えば、その物質を扱っている人数が何人以上かぐらいはないと、その物質を 取り扱っている従業員が10人以上とか20人以上と。物質の量というよりも、それを取 り扱っている人がいれば、とりあえずその作業を出してもらおうというのであればあれ ですが。量的なことは、いまの内容ですと、過去に遡ってということなので、そこは非 常に大変なわけです。扱っている従業員の数は、あそこは工場等の現場は何人いるとか、 実際にばく露を受けている人間の数はつかみやすいと思うのですが、そこだけでも何か 残しておかないと、 ○名古屋座長 あともう1点、事業者の、いま言われた過去のところを書くのと、もう 1つは、今後の1年間書くのと、それはどちらがいいのでしょうか。 ○山口 もちろん今後のほうがいいと思います。過去に遡ってというのは非常に難しい のです。 ○名古屋座長 そういうことになると、「報告の利便性の確保」ということになってくる と。そのロットについてはちょっとありますが、それはいま言われたところの、何か小 さなロットでも、作業員の数が揃えばある程度把握できるし、今後の1年間という形に なれば、できやすいよと、少し改善されますよね。 ○山口 もう少しばく露の具体的な作業をしぼってもらったほうが、ただ漫然となると、 なかなか意識が、向かっていかないことがあります。  どうしたらいいか、いまはちょっと分かりませんが、具体的に過去の調査の中で、ば く露の作業の内容、どういったものがあったのかを整理して、具体的な作業を列挙して もらって、こういった作業で従事している従業員は何人以上という、やっぱりある程度 のイメージがないと、出す側も意識づけができないと思います。 ○名古屋座長 分かりました。あともう1点お聞きします。例えば、いまのは、その1 次スクリーニング、2次スクリーニングとある程度詰めていかれるのですが、いまのと、 例えば1次スクリーニング、2次スクリーニングの考え方を入れた時に、どちらのほう を山口さんは推選しますか。 ○山口 2段階でやったほうが、出すほうにはとにかく出してもらって、そこからやっ ぱりばく露の多いものを整理していくほうがよいです。出すほうとしては、そこのばく 露の判断が難しいのです。日化協のほうにも会員企業から来る場合があります。いまの 法律を見ると、とにかく何らかのばく露があれば出しなさいよということになっている ので、そういうことで何でという説明をするのですが、もう少し何とか具体的なイメー ジがつくような形にしていただいたほうが、出すほうとしては、はっきりと意識づけが できると思います。 ○名古屋座長 そうすると、当該物質の使用の有無が、簡単な報告書を求めるときに、 その物質についてどのぐらいの従業員がついてくるかを把握しておいて、それをもらっ た時点で、何人以上いるから、第2次的なスクリーニングをかけた時に、そういう1年 間のあと報告してもらうと。ちょっといいとこどりになってしまいましたが。 ○山口 いいのではないかなと思います。 ○名古屋座長 そうすると、逆に、ある程度大きな目がかかった中で、集めたものは精 度のいいものが出て来て、使いやすくなるということですね。 ○山口 やみくもに集めて、そこからスクリーニングにかけると、膨大に何でもかんで も出て来るというのは、また大変な作業になるような気がします。 ○圓藤委員 参考人数はどのぐらいですか。 ○山口 10人ぐらい。定常的に扱っている、化学作業は10人、20人なのでしょうが、 使用しているレベルだとなかなか、化学物質を使う側で何人かは、ちょっと難しいとこ ろがあります。でも、とりあえず10人で集めてみて、そこでスクリーニングにかける ということであれば、そんなに低い人数でなくても10人単位、20人単位でかまわない のではないかという気がするのです。 ○名古屋座長 中災防の棗田さんたちが現場に出たときに、やっぱり10人とかそのぐ らいいらっしゃる作業場が多いのですか。もっと少ないか。 ○細田 化学物質一般でそういう話をすると非常に危険だと思います。物質によって、 まず一つはトルエンと、今年の例のニトロアニソールとかアニシジンとかいうものを比 べたときに、トルエンですと、その威力を調べようと思ったら1年間で18L使った人も いれば、20L使った人、1年間で何万キロも使った人もいるという分布になると思いま す。おそらく大きな所は定常的に毎日使っています。小さい所は少量ずつちょこちょこ と使うケースと、何回かにまとめてドラム缶1本今月は使いました、1回か2回のロッ トでみたいな使い方とに分かれるのではないかと思いますが。  一方、例えばニトロアニソールとかアニシジンとか、今回、500L以上で5件ぐらい しか報告のないようなものも2つに分けて考えなければいけないと思います。ロット数、 今年はこれを使った商品は2ロットしか使ってませんというお客さんと、安定剤みたい な形でちびちびとずうーっと使ってますというケースとあります。今度、それにかかわ る人で言いますと、小さい企業は、例えばシフトを組んで作るほど作らないものであれ ば、昼勤の方1人が担当で、月に3回おれが投入するのだよみたいな使い方をしていま すから、それまで拾う必要があるのであれば、10人というとちょっと厳しいのではない かなと思います。それを混ぜるだけでしたら、最後の製品まで残っていますが、大体、 投入の時は反応させてしまって、投入したらもうその商品がなくなるというものの場合 ですと、まさに人が少なくなってしまうのです。  ですから、いくつかに分けないと、一概に一挙に何人とか、量がどうだとかというの はなかなか難しいと思います。 ○名古屋座長 多分、だから、そのときにかかってくるのは、いま言った2次スクリー ニングのところはそういうことは判断します。1次スクリーニングはとにかく物質を与 えていて、それに係わる人はいまのような条件を全部書いてもらって、2次スクリーニ ングで調査するときには、この物質自体何人ぐらいいるのだろう、この作業はどうなの だろうという形でやるということは、1次スクリーニング、2次スクリーニングはやる ことの意味はあるということですね。 ○細田 そうです。 ○名古屋座長 だから、いままではなかったのだけれども、その物質だけだったのが、 それだけではなくて、作業者のばく露の重要性を考えると、やはりある程度大きな目を かけて、1次スクリーニングで拾っていって、その中で2次スクリーニングでちゃんと したという流れは、基本的な流れはそんな形でよろしいでしょうか。 ○圓藤委員 そこの1次スクリーニングはいまのお話を聞いていると、日本における生 産量か何かではないですか。 ○細田 特に最近はそういう物質が多くなっていますので、当初は非常に汎用性の高い ものを使っていましたからいいのですが。 ○名古屋座長 例えば、ばく露の高い人を選ぶということになってくると、生産量ばっ かりでなくて、作業性とかいろいろかかってきますね。生産量が多いから必ずそこに従 事している人たちが多いかというものでもないような気もします。なかなか難しいです ね。  時間がきてしまって、なかなか取りまとめもできませんで、申し訳ありませんでした。 次回以降は、「ばく露の調査」のところで意見をお聞きしたいと思いますが、とりあえず、 いまのところは、要するに、「有害物ばく露の報告書」の中では、ちょっと意見がまとめ られたのは、過去の期間よりは、今後1年間の報告がいいのだよということと、どうい う形にするかは別にしても、1次スクリーニング、2次スクリーニングという形をうま く運用したほうが、いいデータが集まるのではないか。特に2次スクリーニングのとこ ろは、その取り扱う人数とか用途のところをうまく改訂していって、きちっと把握、判 断して、2次スクリーニングを行うという形のところは、今日の流れかなと感想で思っ ています。  事務局としては、またこのあと続くと思いますので、ちょっとここのところはここで 止めたいと思います。次回以降、またばく露実態調査の関係のところ、手順が悪くて、 3-2の資料までありましたが、今日は本当に、そこまでいきませんで申し訳ありません でした。  それでは、資料4をお願いします。 ○大淵化学物質調査室長補佐 資料4をご覧ください。「今後の検討予定」ですが、次 回、第9回は2月12日(木)に予定しています。会場のほうはまだ調整中ですので、 追ってご案内を差し上げたいと思います。  そのあと第10回までいきたいといまのところは思っていますが、そのような形でま とめていきたいと思いますので、ご協力をよろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 どうもありがとうございました。手順が悪くて申し訳ありませんでした。 今日は、いろいろ欧米のばく露等の動き等、貴重な意見を聞かせてもらってありがとう ございました。 ○半田環境改善室長 今日、毛利先生、花井先生にお出でいただいていますので、一つ だけお尋ねさせていただきます。  先ほどご説明されていましたリスク評価表は誰が実施して、どのように活用するので すか。 ○毛利 当然事業者が自分でやるのが基本です。あとは、インスペクションあたりはあ るでしょうが、基本的には事業者の責任です。 ○半田環境改善室長 花井先生も、ご説明いただいたシミュレーションも同じようなこ とでよろしいのですか。 ○花井 これは手法としては、誰が使っても同じことだと思いますが、誰がリスク評価 するかは、ここ10何年の議論は、事業者が自主管理のためにリスク評価をする、リス クに基づいて意思決定をするという位置づけだと思います。 ○半田環境改善室長 ありがとうございました。 ○名古屋座長 よろしいでしょうか。それでは閉会させていただきます。本日は大変あ りがとうございました。次回以降もよろしくお願いします。 照会先: 労働基準局安全衛生部化学物質対策課                            化学物質評価室                電話03-5253-1111(内線5511)