08/12/25 第3回看護の質の向上と確保に関する検討会議事録 第3回 看護の質の向上と確保に関する検討会 日時 平成20年12月25日(木) 9:30〜 場所 厚生労働省専用第21会議室 ○野村看護課長 定刻となりましたので、ただいまから第3回「看護の質の向上と確保 に関する検討会」を開催させていただきます。委員の皆様、話題提供者の皆様方におか れましてはご多忙にもかかわらず、また朝早い時間にもかかわらず、当検討会にご出席 いただきまして誠にありがとうございます。本日は、前回欠席されました阿真委員がご 出席されております。また、石垣委員、海辺委員より欠席のご連絡をいただいておりま す。なお、本日は舛添厚生労働大臣は、公務のため遅れて出席の予定です。  会議に先立ち、本日お配りしております資料を確認させていただきます。1枚目が議 事次第、2枚目が座席表、3枚目からが資料となります。資料1はこれまでの委員の主 な意見です。資料2は事務局提出の資料で2部あります。資料3は話題提供資料で4部 あります。資料4は委員提出資料ということで、羽生田委員、森委員の2部あります。 参考資料として、大学設置基準と、看護師等養成所運営に関する指導要領についてがそ れぞれ1部あります。  以降の議事進行は田中座長にお願いいたします。 ○田中座長 本日は、4つの検討課題のうち、残った2つ「チーム医療の推進について」 と「看護教育のあり方について」をめぐって討論する予定としております。前回と同様 に、それぞれの課題について最初に事務局から資料の説明があります。その後、前半に ついては委員の方々、後半については話題提供の先生方のお話を伺った後、意見交換を 進めたいと思いますので活発な意見の準備をいまからしておいてください。最初の課題 である「チーム医療の推進について」事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○野村看護課長 資料2-1「チームの推進について」ということで主な課題があります。 これは、第1回検討会でお示しした課題と同様のものです。おさらいをしておきますと、 ここではチーム医療の推進の一環として、医師と看護職員の協働・連携の方策について 検討することとしております。この資料は3つの構成になっております。1点目は医療 関係職種の業務、2点目は行政の取組み、3点目はチーム医療の具体的な例です。  1頁は、医療関係職種の業務ということで、医師以下ずっと根拠法例に基づいて業務 の規定があります。医療関係職種の業務の規定が2枚続いています。3頁は、病院にお ける医療関係職種の従事者数です。一般病院の100床当たりの数値となっております。 これは第1回検討会でお示ししたものと同様です。4頁は新しい資料ですが、在宅チー ム医療における関係者のイメージです。前は一般病院でしたが、在宅医療になると、医 師や看護師等の医療関係従事者に加えて、介護保険サービスの関係者が加わる、という のが在宅の場合の特色ではないかと思います。5頁も第1回検討会で提出したものと同 じ資料です。昨年12月28日付の医政局長通知で、医療関係職種間の役割分担の推進に ついてです。6頁と7頁は前回お示ししたものをやや大き目に印刷したものです。平成 20年度に示されたチーム医療の充実に関する提言です。1つは「安心と希望の医療確保 ビジョン」で示されたものです。7頁は社会保障の機能強化のための緊急対策5つの安 心プランです。ここにおいても、医師と看護師等の業務分担の連携・推進といったこと が書かれております。8頁は、病院におけるチーム医療の具体例ということで、クリテ ィカルパスを示しております。これは、心臓血管外科手術後のクリティカルパスですが、 赤い点線で囲ってありますように、こういう関係職種が連携をし、協働し、治療に当た っていることが1枚の表でわかるものです。9頁は在宅のチーム医療の具体例というこ とで、ケアプランを出しております。想定している事例は、97歳の男性で、廃用症候群 などもあり、尿道留置カテーテルが設置されている方の場合、毎日どんなサービスが入 っているかを示しております。訪問看護は週3回、訪問診療は月2回、リハビリは週1 回、そしてほとんど毎日訪問介護が入っている事例です。これは、事例を想定して協働 している状況です。 ○田中座長 チーム医療の話の中で、特にドクターの側からも積極的な発言をお願いい たします。話題提供に移ります。チーム医療の推進については坂本委員と太田委員にお 願いしてあります。坂本委員は、急性期病院で長く看護管理に携わられた経験のお立場 からご発言いただきます。太田委員には、在宅医療に携わっておられるドクターの立場 から話題提供をお願いしております。坂本委員からお願いいたします。 ○坂本委員 先陣を切ってお話をさせていただきます。私に与えられた役割は、チーム 医療の推進ということです。33年間、助産師・看護師、それから管理を急性期病院で行 ってきた中での大きな変化、病院の医療の変化があったことを捉えながら、ドクターと ナースと助産師がどのように分担しながら行ってきたかを概観しながらお話させていた だきます。  これを作りながら考えたのは、ドクターと、ナースや助産師がどのようにチームとし てその役割を担っていくか。そしてそのために必要なことは何かと考えると、そのキー ワードは予測力だと思っています。そういう視点でお話をさせていただきます。  1頁で1、2、3、4、5、6という形で、救急外来における役割、がん化学療法外来に おける役割、緩和ケア病棟における役割、ICUにおける役割、糖尿病外来における役割、 助産師外来における役割、それからここにはありませんが医師と看護師の役割がうまく いかないコンフリクトが生じている場合、それからまとめとしてお話をさせていただき たいと思います。  まず急性期ケアですが、救急外来において約300床ぐらいの関西の病院です。、急性 期外来でナースがなぜこのような役割を果たすことになったのか。その背景は医師不足 です。救急患者のなかで、、軽症や重症の患者が混在して来院する中で、忙しくなってい った。直ぐ診なければいけない患者が遅くなったりしてしまう。そこにこのような状況 に対応できるための教育を受けた看護師が存在したことから、この4つがうまくマッチ ングしてシステムが作られ、行われました。  院内で教育を受けた看護師が、来院した患者に対してトリアージといいますか、重症 か軽症かを予測し、重症と判断したときは必ずドクターには受診するようにしているの ですが、まず軽症であるだろうと判断したときは看護師がまず対応することになります。、 この看護師は急性・重症患者の対応ができる専門看護師で、特別な訓練を受けた看護師 です。  そして、ドクターはすべての患者に対して薬剤処方、看護師の予測の確認、検査等を 行い、その報告はすべてナースからドクターにされます。ある程度軽症の患者において は、ドクターが包括的な指示を出しておき、ナースが判断し、行います。薬剤投与に関 しても、ガイドラインに基づいて当番ドクターが行ないます。ナースとドクターの取り 決めはガイドラインでおこなっています。。当番ドクターは、いつも救急で対応している 救急センターのドクターではありません。ドクターが包括的な指示をしながら、ナース が薬剤、ボスミン、メイロンの補整をします。検査に関しても必要性の予測を看護師が 行い、ドクターに報告して、検査をするといった方法をしています。  その他のところで、気管内挿管後の人工呼吸器の設置については、ドクターが設定し、 ナースは設定の準備をしたり、設置をしたり、ドクターの指示において若干の補整をし たりいろいろなことを行っていきます。ドクターは気管内挿管を行います。  この2職種の関係の中にどのような取決めがあるのかと申しますと、ACLSガイドラ イン、これは下に注釈があります。施設で作成したガイドラインを遵守しながらお互い に行っていきます。ここで聞き取りをした結果ではお互いに大変うまくいっているとい うことを伺っています。  2つ目は、がん化学療法です。がん化学療法は、関西の1,000床の特定機能病院です。 なぜこういうことを行うことになったかと申しますと、DPC、それから診療報酬の加算 等で、入院して治療を受けていたがん患者が外来で行うようになってきました。そうい う意味では、ドクターが患者に対して抗がん剤の穿刺等を含め、副作用チェック等も含 めて多くの患者さんを外来センターで行なうには忙しく無理になってきたという状況が あります。ここでもドクターとナースがうまく連携して、治療を行なっていくという形 になります。  来院した患者は主治医が診察します。そして、あらかじめ決められた化学療法+ドク ターがプラスアルファの抗がん剤を設定します。それを、ナースが血管穿刺をして全身 管理、それから副作用予測。副作用等においては、あらかじめ包括された指示において はナースが実施します。ある程度リスクの高い副作用等が生じたときには、ドクターに 緊急で報告し、そして緊急薬剤を準備しながらドクターの指示に基づいて行っていきま す。  ここでいちばん気になるのは、抗がん剤の血管外漏出時です。ナースがそばにいます ので、漏出を早期に発見して、ドクターに報告して局所措置をしていきます。これも同 じように抗がん剤レジメンを、登録された処方と薬剤添付文書の記載内容を遵守しなが ら、院内におけるプロトコールを基に役割分担を実施しております。ここでの聞き取り では、がん化学療法についても大変うまくいっているということです。ほとんどの患者 さんはナースが行なうことに満足を得ている。さらに、ドクターが大変うまくいってい ると言っているということです。  3番目は緩和ケアです。ここの特徴は化学療法も同じですが、ドクターがそばにずっ と付いていられないというか、緩和ケア病棟にはたくさんのドクターがいないというの が現実です。私が経験した化学療法の病棟はドクターが1人でした。終末期ですから不 定愁訴を訴えられる患者さんが多いです。そこでは患者さんのQOLのいい状態で終末 期を送っていくためには、看護師の果たす役割が大変大きいわけです。そのためには疼 痛管理などの処方などが必要になってきます。一人ひとりに24時間ドクター病棟にい るわけにはいきません。そこでこの方法が取られるようになったのです。  特徴は、WHO方式の普及、それから研修等により看護師の知識が向上したというこ とで、ドクターが看護師を信頼し始めたことが発端でした。私自身の経験もそうでした。 薬剤の処方は包括指示で、ドクターがモルヒネの処方をします。臨時追加薬も、包括で ドクターが指示します。鎮痛補助薬、鎮静剤の処方もドクターが包括で指示します。そ れに関してはナースが主に調整したり、包括された指示の範囲内で追加をしたりします。 それから、痛みのアセスメントと投与量の評価をし、その評価をした状況はドクターに 報告します。副作用緩和のための薬剤投与の予測も、包括の範囲であるならばナースが 実施します。  神経ブロック等の疼痛管理はドクターが実施するという役割分担が明確にされていま す。これも前述したように、WHO方式がん疼痛ガイドラインがきちんと浸透されてき たということ、お互いの役割をきちんと確認し合ったというところから実施されていて、 私自身が経験した病院の中では大変うまくいっている例です。  ICUについては企業立病院です。なぜドクターとナースがこういう役割分担をしたか というきっかけですが、教育を受けたナースがここに入ってきたことと、さらにいまま でいたナースに教育をしたことからです。その教育を受けたナースが、行う日々の行動 をICUのドクターが見ていて信頼したということが大変大きいと私は思っています。ド クターがICUの中で薬剤処方をします。そして看護師がそれを予測してドクターに報告 しながら、夜間に必要な薬の予測と、事前処方をドクターと話し合い、必要だと考えた ドクターが包括的に対処指示をします。  包括的に対処指示をするというのは、夜間こういう薬が欲しいのではないか予測し、 ナースがドクターに報告すると、ドクターがそれを包括的に指示を出しておき、必要な ら、ナースが判断し患者さんに使用します。夜間にいちいちドクターを呼んだり起こし たりしないで、それを包括的に処方しナースが、調整しながらやっていくということで す。ここでも今まで問題は無かったと伺っています。  人工呼吸器の準備、設置ですが、ナースは準備をして、ドクターが設定をし、設置を していくということです。除細動の実施とありますが、除細動は基本的にはドクターで す。しかし、不整脈が生じたりいろいろな変動が起こる患者さんに対しては、ドクター があらかじめこの患者さんは除細動を実施していいと指示しておき、看護師が必要であ れば実施します。パットを装着した患者ですが、それが頻回に起こるために、特定され たナースにしてもいいという事前指示をドクターがした場合は、教育されたナースが実 施しているということです。これも、しっかりしたプロトコールを見せていただきまし た。それに対して、指示の範囲内で、ドクターとナースが役割分担をしているケースで す。  次は糖尿病外来です。役割分担の背景ですが、患者さん数の増加です。さらに合併症 をもった患者さんが増加してきた。インスリンの事故はヒヤリ・ハット事例でも上がっ てきますけれども、診療科に専門医が配置されていない病院がある。多くなってきてい るということです。関東の病院ですけれども、ここでもドクターが専門ではない、そこ で看護師の予測の確認をしながら、ドクターが薬剤の包括処方をします。リスクの生じ た状況ではドクターが指示をしながら行っていきますが、教育を受けたナースが薬剤投 与の予測をしながらインスリンの単位調節、種類の予測、調整、デバイスによるインス リンの調整、具体的に患者さんへの指導等を行っています。  外来に糖尿病の専門医がいつもいるとは限りませんので、ここで話を伺うと、このド クターはナースを大変信頼しているということでした。どのようにしたらいいか、とい うことをナースに相談する場合もあるということも伺っています。院内プロトコールの 基に役割分担を実施していて、看護師は医師の指示の範囲内で薬剤投与の必要性を予測 しているということです。  次は助産外来です。助産外来がなぜ起こってきたかというと、基本的にいちばん大き い背景は医師不足です。ドクターが少ないのと妊産婦さんが多くなり、診察の待ち時間 が大変長いということで、助産師がなんとかしようということで立ち上がりました。な ぜ助産師が立ち上がれたかというと、専門の修士課程を卒業した助産師の存在が大きい と病院側は捉えております。その助産師がなんとかしようということで、私たちが持っ ているスキルを教育訓練しながら、患者にとっていい方法はないかと考えたのが助産外 来でした。  これでいちばん喜んだのは妊産婦です。なぜ妊産婦が喜んだかというと、待ち時間が ないということと、ドクターは大変忙しい状況の中で長くお話をできませんでしたので、 1人につき30分以上のケアをきちんと行うということ。いろいろな相談に乗ってもらえ るということ。これが成功した要因だと思います。家族も大変喜んでいるということで す。ドクターがよいと評価しているのは、1日2時間のゆとりが生まれたということで す。これは、自分自身が手術をしたり、外来へ行ったり、病棟の患者さんを診たりする 中では、2時間のゆとりができたということは大変大きいということです。おもしろい ことに不思議な現象が起こってきたのは、こういうことを行っている病院のことを聞き つけて助産師が就職したいと全国から集まってきているということでした。  追加しておきたいのは、すべての助産師がそれをできるかというとそうではありませ ん。助産師は大変不安がります。そのためには、専門の修士課程で卒業時までに学んで きた助産師が中心になり、まだ未熟だと不安がっている助産師に、助産外来を行うため の訓練を院内で行うということです。その訓練をきちんとしていかない限り、この助産 師はただ卒業してきただけでこういうことができるかといったら決してそうではありま せん。そのための基礎教育が大事だと思っております。  うまくいっていないケースと、うまくいっているケースは一体何かと思って仕分けし てみました。このように述べましたけれども、うまくいっていないケースがあります。 私も経験しましたが、放射線外来における造影剤の注射です。訓練をして、看護師が静 脈注射をやれるようになりましたけれども、造影剤もやってほしいという大変強いドク ターからの希望があります。  しかし、ナースはそう簡単ではありません。今でも受けません。なぜしたくないのか という聞き取りをしました。なぜできないかというと、不安という言葉で表せます。そ の不安とは一体何かと深く聞いていきますと、例えば漏れたとき、ショックが起こった ときにはどういう状況で患者にショックが起こるのか。そして、そのショックはどのよ うにしていけばいいのかということの、病理学的なこと、解剖学的なこと、薬理的な作 用に対してはよくわかりません。それに関して大変不安であるということです。もちろ ん仕事が増えるということもあると思いますが、ドクターが実施しているときは傍にい るわけですから、忙しくなるということよりも知らないことのなかで実施する不安とい うのは大きいと思います。  静脈注射をできるようになったのだから造影剤もいいでしょうというわけにはいかな い理由があるのです。ドクターはなぜナースにやってもらいたいかというと、放射線の ドクターは隣の部屋で読影をしています。レントゲンフィルムを読影したり、CTを読 影したりしています。そのときに、造影剤を入れるCTの患者が隣の部屋にいると、い つも席を立って造影剤だけを入れて、また読影に戻ってくるという作業をしていますの ナースがやれないのかという考えに立つのです。、是非これをやってほしいと言われます が、ナースは不安な状況のもとではできないと言っています。  次は検査予約です。ナースは、そのぐらいはやってもいいのではないかと簡単に思っ ておりますが、ドクターはだめといいます。これもドクターに聞き取りをしてきました。 検査というのは患者の病態の理解、いま患者がどのような状態であるかがわからないの に、「1カ月延ばしてください、海外旅行へ行ってきますから」、「そうですか、じゃあ延 ばしましょう」ということを、その患者の緊急度の診断ができないナースにそれができ るわけがない、というのがドクターの言い分であります。ある程度簡単なものならでき るのでしょうけれども、患者の状態を知らないナースにそれを任せることはできない、 というのがうまくいっていないケースです。  うまくいっているケースを何例か挙げた中で考えてみました。それは、患者のニーズ をキャッチして、迅速に対応してやらざるを得ない状況が来たということ。患者にとっ て、そうすることがいいのかどうかをみんなが判断しているということ。かかわってい る人たちがみんないい状況であるということ。それをやっていやだったとか、やらされ ているという話はほとんどありませんでした。その条件としては、任される看護師がい たということです。任される看護師というのは医師が信頼したということです。任せら れる看護師がいなければその病院が教育したということです。ここは大変重要なことだ と思います。マネジメントできると言えばいいのか、信頼できるといいますか、そして 看護師もやりがいがある、助産師もやりがいがある、そして医師も信頼した。  それからこの2つは大変重要だと思いますが、やる限りは責任を取らなければいけま せん。ドクターが責任を取るからやってよという話にはなりません。そういう意味では、 役割分担が明確であるということ。それから、病院全体がそれを知っているプロトコー ルがあるということ、これがうまくいっているということだと思いました。  最後に観念的な発言をさせていただきます。これをずっといろいろな聞き取りをした り、調査をしてきた中で、私自身の言葉として何が出てくるかと考えたら、チーム医療 推進のために、看護という立場の中ではしっかりした看護師、しっかりした助産師が必 要であると思います。しっかりしたというのは一体何だろうかと考えてみました。まず、 チームのメンバーから信頼されるということです。このチームのメンバーには患者も家 族も入ると思います。  しっかりしたというのは、ドクターはどのようにして信頼するのだろうかと思います と、私自身が経験した中で考えますと、ドクターはリスクを考えると思います。何かを しておいてもらってありがとうではなくて、リスクを考えるのだろうと想像します。そ のリスクに関して早く予測ができて、そしてお互いに連携できるナースがきちんとしな いといけない。いままで考えていたナースの中には、すべてをドクターに依存してしま うナースもいます。そういうナースはドクターが忙しくなるばかりで、依頼ではなくて、 予測をしてドクターに早めにきちんと報告をしていくナースが信頼されるのだと思いま す。  しっかりしたナースは予測力を付けなくてはいけないと思います。予測力とはどうい うことかというと、これは教育に関係してくると思います。患者がそれをすることで、 患者がどうなっていくのかをいつもきちんと予測していることが大事であると思います。 私も、いままで随分長い間看護師・助産師をしてきましたが予測ができなかったのかと 申しますと、実はよく考えてみると予測していたと思います。これは大変限られた看護 師と医師との関係でした。これを言葉で現すと阿吽の関係がよくできているナースがい ました。これは、経験をもとに、そのドクターが信頼してナースと大変うまくやってい る、というのは先輩にもいました。それは大変いい関係で、ドクターも大変信頼してや っていけたと思っております。  なぜ、これがいまチーム医療という形で、いままでの阿吽が崩れてきたのか、もしく はうまくいっているのかいないのかと考えてみました。これは、急性期病院の大きな変 化の中で、これからは阿吽という形ではなかなかうまくいきません。なぜかと申します と、ドクターが異動します、患者は長くはいません。ナースもローテーションしたり、 異動したり、そこに長くいるナースが多くはいないということがあります。いちばん大 きな理由は、患者の入院が短くなったということです。  私が経験した病院では、平均在院日数10日で、3分の1の患者が3日で退院してい ました。半分が6日で退院していました。その中で、どのようにしてドクターとの関係 で阿吽をつくっていけるかといったら、ドクターもローテーションしていく中ではなか なか難しいと思いました。阿吽を形にしていくことが、これからのチーム医療の中では 大変重要なのかと思いました。  これからどのように教育していくかということですが、いままでの教育を全面否定す るわけではありませんが、医療の変化に関して医師がレジデント制度を変えてきました、 研修制度を変えてきました、薬剤師は6年教育にしました。ナースをこの医療の変化に 対してどのように教育をしていくかということは、この前の基礎教育のあり方懇談会+ 今回のあり方検討委員会の発言等も含めてこれから考えていかないといけないと思いま す。その中のキーワードは予測する力、考える力だと思います。  助産師のことと保健師のことがありますが、やはり多様な勤務形態をつくっていかな いといけないと思います。9頁に基礎教育をきちんとして、予測をできる、自分で考え る。誰かに伝えるだけではなくて、その伝えるものをきちんと考えられる、早く伝えて いく、チームで協働する。それには、いまの3年の教育ではむずかしい状況があります。 私も、3年教育の看護学校の運営委員をずっとやってきましたが、それには期間と教員 の数も考えていかないといけないと思います。おそらく、それだけでも無理だろうと思 います。これには、保健師と助産師が大変絡んでおります。それにはまだ大変いろいろ な課題がありますが、看護の基礎教育をきちんとしていくことが必要である。それに対 して保健師・助産師を上に乗せていく形をとらなくてはいけないと思います。  もう1つ大事なのは新人研修です。いろいろな病院がそれぞれの形で、厚生労働省か ら出された新人教育をやっていますが、これに対してはきちんとやっていくということ。 段階を追って本当にしっかり行なっていくことが大事だと思います。産科医療を支える 役割を取らせるためには、助産師教育もきちんとしていくことが大事で、それについて は最近行った看護師免許を持っていないと助産師になれないという、看護師免許を持っ ていないと助産師になれないというやり方は、やはり看護師がベースになるのではない かと思っています。  そういう意味では、しっかりした看護師、そしてドクターに信頼される、そして患者 に信頼される、そして同じ働く仲間に信頼される看護師教育をベースに行っていただき たいと思います。チーム医療は、おそらくそれが原点にあるのだと思いました。以上で す。 ○田中座長 ありがとうございました。引き続き太田委員からお願いいたします。 ○太田委員 資料3-2です。報告者としての私の立場を簡単に申しますと、1979年(昭 和54年)医学部卒です。当時、各県一医大構想があり、専門医指向に拍車がかかった 時期です。専門医でなければ医者ではないと言われかねない時期で、私自身は、麻酔科 標榜医で、整形外科専門医です。しかし1992年に訪問看護を中心として開業しました。  社会的背景を見ますと1976年には50%が病院死、50%が在宅死でした。その後、専 門医指向が強まり、大病院指向も強まり、毎年1%ずつ病院死が増加し、在宅死が減っ ていきました。昨年は病院死が85%、在宅死が15%ということで病院死に歯止めがか かりました。  国が在宅医療を誘導しますと、マスコミが在宅は医療を奪うという批判的な論調で、 在宅医療の誘導をネガティブに見る時期がありました。しかし、最近は、終末期在宅医 療への期待が、国民から高まってきたと思います。橋田壽賀子の国民的ドラマ「渡る世 間は鬼ばかり」を観ていますかと聞くと、観ていないと答えますが、皆よく知っていま す。訪問診療を始めたことが話題になっているようです。  倉本聡の「風のガーデン」はリアリティがあります。これも在宅の終末期医療を捉え ていますが、決して在宅医療は不幸なものではないのだ、と美しく描いてくれました。 在宅医療についてはテレビでも話題に上っています。  それではナースはどうかというと、訪問看護の看護師を主人公としたものとしては「や がて来る日のために」というのがありました。ただ、残念なことに訪問看護のイメージ というと市原悦子なのです。これは偏見に満ちているかと思うのですが、藤原紀香では 駄目なのです。  私が在宅医療を目指した動機は、大学時代に術後歩行能力を獲得して退院した患者が 寝たきりとなり、褥瘡を合併して戻ってきました。こういう状況を目の当たりにして「ど うしたんだ」と言うと、「太田先生が手術をした」と言うのです。確かに私が手術をしま したが、寝たきりにした覚えはないのです。患者・家族の無知からくるネグレクトとも 言える事例を経験し、何のために手術をしているのかという、臓器別医療に非常に疑問 を感じましたし、同時に看護の重要性を再認識しました。  それから、寝たきり高齢者への過剰な医療です。四肢抑制、向精神薬の投与です。高 齢者医療のあり方に疑問を感じました。生活ケアの重要性を再認識したのですが、当時 大熊委員が、『「寝たきり老人」のいる国いない国』をお書きになりました。この本は、 私の人生を大きく変えてくれました。  1991年に身体障害者の方々と旅行に行って、医療を必要としている人に医療がないこ とに気づきました。私は開業医の倅ですが、私が子どものころ、いつも来る患者が来な くなると、身体の具合でも悪いのではないかと父親が心配していました。元気なときし か病院へ行けないのです。  1992年に、訪問看護を基軸とした往診を行う診療所を開設しました。このころ、訪問 看護がやっと市民権を得ました。病院看護に閉塞感をもつ力のある看護師たちが訪問看 護をやりたいと願っていたところ看護師だけで訪問看護事業所を開業できるようなうわ さが流れました。しかし、結局医師の協力がないとできないということで、それでは私 が協力しようということになりました。ある意味でそういう看護師たちの情熱に負けて、 開業したような形です。現在、在宅療養支援診療所は4カ所です。これは、行政と連携 のために基礎自治体に1つずつあります。さらに訪問看護ステーション3カ所、これは 平成17年から2カ所に統合しました。1カ所は有限会社立です。これは、いろいろ地域 の事情があって、医療法人が訪問看護ステーションをやることに圧力のかかる地域だっ たので会社をつくりました。  このような経緯で、18年前に始めたおやま城北クリニックが下の写真です。20坪し かありません。午前中に外来をやって、午後から訪問診療しています。当時の看護婦た ちですが、白衣はありません。この人たちは今でも一緒に働いています。当時は子育て に悩んでいましたが、今は更年期です。  1996年には、フジテレビの黒岩祐治さんが訪問看護にスポットライトを当ててテレビ 番組をつくってくれました。メディアの意識が高いわけです。下の写真は、おやま城北 クリニックの隣にある訪問看護ステーションですが、このアパートの一室でやっていま す。アーバンシティという名前で、けっして都会には存在しないアパートです。中はこ のようになっています。要するに、経営が大変苦しいものですからアパートの一室でや って、家賃分もナースの給与に振り分けたりということです。彼らは楽しく仕事をして います。  他の診療所を紹介します。蔵の街診療所は地域の産業との複合体ですが、隣に訪問看 護ステーション・オリーブと書いてあります。これは、ドアを隔ててステーションがあ りましたので、一緒に仕事ができるわけです。制度的にはつながっていてはいけないら しいのですが、なぜかドアがあります。生きいき診療所にはカンファレンスルームがあ ります。CTがある、MRIがあるのではなくて、カンファレンスルームのある診療所で す。  平成20年11月の在宅医療の実績です。3つの診療所が連携を取ってチームでやって いますので一緒に考えますが、対象者は170名です。対象者1人の一カ月の平均の訪問 件数は2.7回。夜間の訪問だけでみると13回です。在宅の看取り件数は6例です。一 緒にやっている訪問看護のほうは、医療法人立のわくわく訪問看護ステーションと、有 限会社立のオリーブ訪問看護ステーションです。対象患者はわくわくSTが121名、そ のうち33名は訪問リハと一緒にサービスを行っています。時間外の出動は19件、看取 りは6件、法人内の看取りが5件です。有限会社立の訪問看護ステーションは、対象者 は69名、延べ訪問回数は260回、時間外の出動は4件、看取りが1件です。  収支です。人件費が85%、一応粉飾して黒字になっていますが、実際は赤字です。常 勤の看護師の年俸は大体450万円から520万円、非常勤が200万円から300万円です。 まったくプロフィットはありませんで、ベネフィットだけでやっています。  実際にどのように訪問看護をやっているかというと、1枚の指示書では訪問看護と麗 しい連携は取れません。指示書はあくまでも形式的なものです。ほんもん看護師は、患 者家族にとっての弁護士役、そして医師にとっての諜報部員役です。有能な訪問看護師 とチームがあると医師の負担感は相当軽減します。ナースの勤務していない病院がない ように、地域の患者は、地域全体が病院ですから、訪問看護は在宅医療にとって不可欠 なサービスといえます。  訪問看護師は、患者宅からのファースト・コールを受けます、これは病院でのナース コールと同じです。そして、緊急往診に同行します。小さな健康問題、些細な疑問は、 訪問看護場で解消できます。これは、在宅医療への信頼を築き継続のコツです。バルン、 胃瘻、点滴、ポート、ストマなどは訪看が対応管理できます。意外に多いのが薬の疑問 です。薬剤師も在宅に出向いているわけですから、どのように業務を整理していくのか 重要な課題です。麻薬のレスキュー、下剤のコントロール、飲み忘れ、その他隣の人に 薬をあげてしまったとか、爺さんに湿布を取られたとかいろいろあります。医師に聞け ないことを気楽に聞けるということも、看護師がかかわる大きな意義です。  いちばん重要なことは、長期に安定した療養を可能とすることです。急変を回避させ ることができるからです。12月10日の読売新聞に、救急搬送の10%は高齢者施設から と報道されていました。搬送高齢者の1カ月生存はわずか4%。高齢者施設に限らず、 在宅からの高齢者の急患が非常に多く、3分の1を高齢者が占めていると聞いています。 高齢者急変の引き金は脱水です。脱水の早期発見には、生活情報が重要です。なんとな く元気がなくなり、徐々におしっこが濃くなり、微熱がでて、そして突然急変します。 看護師が脱水の兆しに気がつき、早めの補液で急変を回避させることができます。日勤 帯で対応すれば、夜間の呼びあげがありません。特に、金曜日の点滴は幸せの一本と言 われています。  死後の処置、グリーフケアです。虚弱高齢者には、補液、浣腸、導尿ぐらいをしっか りやってくれれば、本当に長期安定して療養ができます。さらにいえば、例えば急性期、 肺炎の治療も在宅で対応できます。酸素は業者が運びますし、抗生物質は看護師が点滴 できます。  在宅医療における訪問看護師の役割をざっくり話しましたが、チームでは、世間話で きるような関係性が非常に重要です。情報共有ツールも、ITを活用すると非常に機能的 ですが、意外に有益なのがベッドサイドにある情報交換連絡帳です。これはアナログで すがとても有効です。  最後の頁ですが、21世紀の医療はさまざまなパラダイムシフトがあります。キュアか らケアへ、長寿から天寿へ、EBMからNBMへ、専門医から総合医へといろいろあり ます。こんな中で施設看護から在宅看護へと大きくパラダイムがシフトします。訪問看 護に光をということで報告させていただきました。 ○田中座長 ありがとうございました。お名前の出た大熊委員をはじめ、患者代表の方々 もこの話題には比較的加わりやすいと思いますので積極的にお願いいたします。お2人 の発表に対する質問、あるいはそれに触発された意見などがありましたらお願いいたし ます。 ○草間委員 坂本委員から、大変看護師が活躍しているというご発表をいただきました。 しっかりした看護師、あるいは任せられる看護師、信頼される看護師ということで予測 が重要だというのはそのとおりだと思います。坂本委員のお話ですと、教育を受けたと いうときに院内で教育を受けた、あるいは特別の教育を受けたというお話でした。  特に本日お話をいただきましたような検査とか決められた包括指示の中で処方ができ る看護師を育てるためには3つのPが大事ではないかと思います。1つはパソロジーで、 先ほどお話がありましたように、病態がはっきりわかるということ。もう1つは薬理、 ファームコロジー等についてわかるということ。そして、フィジカルアセスメントがき っちりできる。要するに3つのPがきっちり備わった教育をすることが大変重要だと思 います。  それに関しては、第1回のときに福井委員からもお話がありましたナースプラクティ ショナーです。既に看護系大学の大学院でこういう3つのPをきっちりシステマティッ クに教育しましょうということでスタートしている、あるいは教育をスタートさせよう という大学院が出てきております。ナースプラクティショナーという新しい職種を目指 していこうという動きがありますので、是非ナースプラクティショナーについても皆さ んに関心を持っていただくような形にしていただければと思います。 ○福井委員 坂本委員の発表は素晴らしい内容だと思います。次に求められるのは、こ れをいかに体系化するかだと思います。ある病院ではこうだというのは、これはこれで 素晴らしいと思うのですが、これをいかにして体系化して、このような能力を短期間で どうしたら多くの人に持ってもらうか、ということを是非看護界で考えて、早急に実行 に移す必要があると思います。その1つのタイプがナースプラクティショナーだと思い ます。  最近のアメリカの状況は知らないのですけれども、坂本委員のお話では、アメリカで 言われているナースプラクティショナーよりも、もっと幅広い分野で、いま医師が行っ ていることを任せられるようなシステム作りが可能ではないかということをプレゼンテ ーションを伺っていて思いました。是非システムづくりに取りかかっていただきたいと 思います。 ○森委員 ナースプラクティショナーの話が出ましたが、既に看護系大学院では専門看 護師の教育を10年以上前から始めています。がん看護専門看護師については非常に評 価が高く、社会的認知も進んでおります。坂本委員からご紹介いただきました助産外来 は、母性看護専門看護師が、助産師に教育・研修をして助産外来を推進していると思い ます。大学院修了者が増えてきたことで、そのような活躍の場が、広がっているのです から、そこを推進していただけたらと思います ○坂本委員 森委員のおっしゃるとおりで、ここはキャリアというところに私は研修と いう形で書きましたけれども、いま福井委員がおっしゃいましたように対応です。とに かくいま起こってきていることは対応で、この部分だけをという話ではないように私も これを調べていて思いました。そこに行くためのベースと、それを助産外来のように専 門助産師が頑張っていけるような、もう1つのキャリアみたいなところを付けながら、 その周りにはベースできちんと基礎教育を受けた人たちがいて、それを必ず継いでいく。 いままでのように、1人の阿吽の呼吸でやれたナースがいなくなったら、そこで終わっ てしまうような組織ではなくて、ちゃんと継いでいくような形をこれから患者のために はしていくのではないかと思います。 ○吉田委員 坂本委員のお話は大変参考になりました。ただ、このすべての事例が院内 研修です。我々の養成施設校では、資格の面でまだ取っていないわけです。免許のない、 看護師の資格を持っていない人たちの研修には限界があります。もちろん基礎教育でき ちんとやらなくてはいけないことはわかりますが、問題は実際に就職をして、そこの病 院に勤めてからどういう教育を、どういう先輩が、どういう具合に教えてくれるかによ って相当専門性からすべて変わってくると思います。そういうことでは、坂本委員の今 回の事例というのは、これからのナース教育に対して示唆を与えていただいたのではな いかと思います。 ○坂本委員 院内研修が大変重要であるということは先ほどお話をさせていただきまし た。本当に新人研修が大事だと思うのです。本当に不安がっています。私も新人研修を やったときに、初期のナースからアンケートを取ったのですが、不安という言葉がレポ ートの中にいっぱい出てきました。異常なぐらいです。それに対してドクターはどうな のかというと、ドクターはそんなに不安という言葉は出さないで、何をやりたいとおっ しゃるのです。レジデントの委員にもなっていましたけれども、その違いは一体何かと いうのが大変不思議に思っていました。  いまお話がありましたように、新人研修をきちんとやることで、おそらく現場へソフ トに下りていけるのだと思うのです。新人研修をちゃんとやるためには、森委員がおっ しゃいましたように、認定とか、専門という人たちの数が、専門が304人、認定が4,458 人ということで、認定は大変急激に増えてきています。まだ、数的にはいろいろな病院 全部に入れるかどうかということについてはまだまだです。福井委員がおっしゃいまし たように、短期に何をしなくてはいけないか、それから時間をじっくりかけて考えなが らやらなくてはいけないかという、そういう段階が要るのだと思います。 ○大熊委員 本日初めて太田委員から人生が変わった原因を伺ってびっくり仰天してい ます。この本は、つい数日前に29刷になりました。ということは、日本が「寝たきり 老人」という概念や役所用語がない国にまだ追い付いていない、それで読まなければい けない状況にあるのだと思います。この本の中でいちばんたくさん出てくるのが訪問ナ ースで、その次にホームヘルパー、作業療法士、家庭医という専門医、そして福祉用具 が出てきます。  デンマークでは、訪問ナースが看護師の中でも尊敬されている仕事です。その基盤と しての看護師教育が、本を書いた1990年当時で、デンマークは3年半でした。その中 に在宅看護の実習が含まれていました。  昨今のように、さらに医学が進んだ状況では助産師・保健師を大学教育に一緒に混ぜ 込んで、3つの資格を一緒に大急ぎで取るというようなことは無理だとおもいます。先 ほどのお言葉でいうと予測し、考えて、しかも付け加えれば先生方から看護の素晴らし さを体験から語ってもらいながら育ったナースが必要なのではないかと思っています。  いま私がいる国際医療福祉大学では、大学院と併存する形で、既に看護師になった方 を助産師にするコースがあります。私が受け持っている倫理の授業では、その助産師コ ースの方たちのレポートは非常に優れています。いつもお産を待機していて実習しなけ ればいけない中で、とてもよく勉強しておられます。お2人の話からはちょっと外れる かもしれませんけれども、助産師・保健師は、看護師をしっかり身に付けた上で学んだ ほうがいいのではないかと思っています。  事務局からの資料の説明の中に、医療関係職種という表がありますけれど、これは「医 政局関係職種」です。本当にいい医療をやるためにはMSWとか、PSWが欠かせない ので、それは是非視野に入れていただきたいと思います。それから、これはたぶん医政 局ではないかと思うのですが、歯科衛生士が入っていないのですが、どうしてなのでし ょうか。「口も見らんにゃ介護はできん」という連載をある月刊誌でやっていますけれど も、歯科衛生士というのは非常に重要な職種ですのでお忘れなきようお願いいたします。 ○太田委員 STも入っていないようです。 ○酒井委員 太田委員の報告を受けて、私はどちらかというと看護を受ける立場から是 非一言と思っています。私が1996年ぐらいにデンマークにおいて訪問看護の実態であ るとか、ドイツでもいろいろ見てまいりました。そのときに感じたのは、非常に年配の 方たちがお年寄りをみてくれていることに大変感動しました。ある程度終末医療になっ たときには、人生の経験豊かな方のほうが私たちも安心できることもあるのではないか と思いました。  彼女たちはかなり経験を積んでいるということでした。前回もありましたし、先ほど 来教育をしっかりしていくことは大前提だというのはよくわかっています。基礎教育が いかに大事かということも大変よくわかっているのですが、それプラスその教育を受け た人たちが辞めないような体制づくりというのを両輪で進めなければ、決してこれは実 現できないことだと思っています。これは、是非両輪で進めていただきたいと、看護を 受ける立場から私はすごく思います。  そのために何が必要かというのは具体的に考えていかなければいけないことだとは思 いますけれども、これが実現するかどうかはわかりませんが、例えば訪問看護の場合は、 地域に密着した人たちが役立ってくれたらどんなに心強いかと思います。したがって、 こちらからのアプローチは無理かもしれませんが、潜在する、既に離職してしまった看 護師たちが、さらに再教育を受けられるような、例えば訪問看護の教育を受けられるよ うなシステムづくりが可能なのかどうか全く私にはわかりませんけれども、そういう経 験を積んだ方たちが専門教育を積み重ねることによって、また職場復帰ができるような、 そんなシステムができたら、訪問看護を受ける側の立場としては非常に望ましいなと思 いました。 ○坂本委員 いまの委員の発言で、ちょっと経験していることをお話させていただきま す。実はいま厚生労働省に来ていただいて、新人研修のモデル事業をやっているのです。 私の近くの病院が受けていて、全部の調査はまだ聞いていませんが、離職に関しては大 変良い結果が出ているといいますか、研修という形で、国から言われてやっているのだ ということで、いままではやるほうも大変くたびれている状況だったのですが、やるほ うも元気が出ているし、受けるほうも大変良い結果が出ていると聞いております。もう 1つは、委員がおっしゃったように、やはり子育て、それから何年かしたあとに、これ からどうやって続けていくか、キャリアの問題などが出てくるのだと思います。それか ら、ワークライフバランスの問題も出てくると思いますが、出始めて約10%辞めていく ということに対しての手は、うたないといけないと思います。新人研修は、今のところ 私が聞いた限りでは一部ですが、効果が出ていると伺っております。 ○井部委員 私は太田委員の21世紀の医療のパラダイムシフトというのに大変感銘を 受けております。医療界はこのようにパラダイムが変わってくると、大半は看護の価値 観と一致するのではないかと思うわけです。これは決して訪問看護だけではなくて、日 本の医療の今後のあり方を、例えばキュアからケアへ、薬から食事へ、命の量から質へ、 医師は医学の反復ではない。医師から看護師、飛ばしますが、EBMからNBMへと、 このような考え方が医療界を席巻するようになると、世の中は非常に良くなるのではな いかと思ったのが1つの感想です。  質問は1点あって、資料2-1にチーム医療の推進について、今日、最初に主な検討課 題ということで説明がありました。それを見るとこの3行目、チーム医療の一環として の「医師と看護職員との協働・連携の方策」と書いてあって、この検討会は、チーム医 療は医師と看護職員との共同連携に限定してやろうとしているのかということを、まず 確認したいと思うのです。特に患者あるいは一般の人々、つまり医療の受け手もチーム 医療の一員という考え方はかなり浸透してきている中で、いつも看護師は医師ばかり見 ているような、そういう誤解を招かないようにするためには、検討課題をもう少し拡大 することが考えられないのでしょうか、というのが質問です。 ○野村看護課長 この検討課題は、前半では医療関係職種のそれぞれの専門性を高める というところがありますので、この検討課題の全体のイメージとしては、医師・看護師 のことだけを言っているわけではないと考えております。ここは看護の関係の課題につ いて検討する検討会になっておりますので、特記した形でここで書かせていただいたと ころです。そういう意味で、ここだけに限定をしているという意味ではないと思ってお ります。 ○井部委員 そうすると、チーム医療というのは医師と看護職員、そのほか医療関係職 種、大熊委員からの指摘もありました、そういった職種の協働・連携と、プラス先ほど の意見の中にもありました、患者も、医療チームの一員として考えていくということで、 よろしいのでしょうか。 ○野村看護課長 はい、そのように考えているところです。 ○田中座長 まだ意見もあるかと思いますが、もう1つの課題にも触れなくてはならな いので、ご発言できなかった意見についてはペーパーにまとめ、事務局に出していただ くことになります。チーム医療のあり方全体の中では、もちろんもっといろいろ考えら れるけれども、ここでは看護との関係を議論しました。私なりに簡単にいままでの話を まとめさせていただくと、あとでドクターの先生方に伺いたいのですが、チーム医療に 当たって医師側の課題が何かに触れる意見が、今までの議論の中では足りなかったと思 います。看護側の課題については、太田先生の言われた患者の側に立って、それを医師 に伝えていく役割をきちんと看護師が持ってほしいとか、坂本先生が言われたリスクを 予測する能力などがあげられます。看護師の中心機能は、特定された訓練を受けた人が 信頼を受けていくことがコアになり、そこから広まっていくのでしょう。そのために看 護側にどういう課題があるかは、いくつか明らかになりました。課題としては仕組みの 問題がいちばん大きい。そもそも福井先生が言ってくださったように、事例を体系化し、 一般化しなければならない。個別の事例は確かに素晴らしい場合が多いにしても、素晴 らしいケースに拍手しているだけでは進歩しないので、それを一般化し、体系化してい くことである。具体的な仕組みとしては、役割分担を明示する、プロトコールも明示す る、他方、阿吽の呼吸にまかせていてはいけない。役割分担もプロトコールも明示して、 それを共有することであるとわかってきました。研修は、不安を消すためにもナースに なってからの研修、それから酒井委員が言っておられた再就職の訓練ですね。そういう ものを含めたさまざまな研修が仕組みとしては欠かせない。あとは情報共有のツールが なくては困る、急性期医療においても在宅医療は進まない等々、仕組みにかかわる課題 がわかりました。繰り返しますが、医師側の課題をめぐる議論がもう1つ足りなかった ような気がするので、是非ご協力をお願いいたします。 ○羽生田委員 坂本委員の発表された、これは非常に素晴らしい。各病院に行かれて実 際を見て、それを坂本委員がまとめたという形ですよね。それぞれの病院でこういった システムがプロトコール化されて動いているということではなく、まだそれぞれの病院 で、それぞれの形で動いているところだろうと思うのです。その中で、これは各病院、 ここは結構大きな病院が入っていますが、小さな所でも、あるいは診療所でも、こうい ったいま言われた阿吽の呼吸という状況は、かなりの場所である。いろいろなレベルが ありますからあれですが、いまの医師側という話は看護師側も同じで、お互いの信頼感 なのです。ですから、医師側もこの看護師だったら、もうこれだけのことを頼めばやっ てもらえるし、看護師のほうも、この医師だったらこういうこともわかっているといっ た状況があって、初めてできてくると思っています。いま坂本さんにこれだけきれいに まとめていただいているので、きちんとした形でこれからの教育にもこういったものが 取り入れられる、あるいは病院のシステムの中で取り入れられるような形が拡大してい くと、これは大きく動いていくと思うのです。医師側から言って、医師側からだから言 うべきなのか、こういうことに関しての医師側の理解は非常に低いですね。これは非常 に感じますので、いま言われたような中で、こういったことが看護師からのいろいろな 状況説明、あるいはこういったことが必要なのではないかということに、きちんと耳を 貸す医師がどれだけ増えてくるかというところが、医師側から見てポイントだと思いま す。 ○田中座長 的確なまとめをありがとうございました。 ○西澤委員 坂本委員の発表に関しては、本当に素晴らしいと思います。ただ、これが 各病院の事情によって、阿吽の呼吸でされているということでは駄目で、やはりこれは 福井先生が言ったようなシステム化をきちんとするのが必要だと思います。この中で問 題なのは、本来は医師がやらなければならないことが、医師不足のために看護師がやっ ているようなところもあるので、その辺りはきちんと整理していただきたい。本来の看 護師業務なのかどうかを判断する必要はあると思います。この辺は私たちのほうも考え なければならない。特に糖尿病の外来で、本来であれば、専門医が診るべきなのをいな いからということで、看護師が代わりをやっているというのは、若干、違和感を感じま した。今後は、看護師の役割として、こういうことは私たちもしていただきたい。ただ、 これはすべての看護師の業務なのか、そうではなくてこの方々は看護師という資格の上 に、ある程度の教育、あるいは研修を受けた人たちがするのかという辺りも、整理は必 要かなと。場合によっては、法的整備も片方では考えていただきたい。  それから、教育の中で私はよく言っているのですが、医師は看護学のことを知らない。 又、看護師は医学のことを知らない。いまの話の中でも出てきました。即ち、教育は縦 割の教育になっているのではないかと思います。お互いの理解・尊重を深めるために、 教育体制をお互いにどこかで一緒にできるようなものもあっていいのではないかという 気がしております。  最後ですが、看護師たちに望みたいのは、いま発表のではそういうことがされていま すが、判断力と決断能力ということですね。いままで看護の中では重要視されていなか ったと思うのですが、それが非常に重要なので、是非教育の中にも入れていただきたい と思います。以上です。 ○坂本委員 教育する立場で教育のことで、ちょっとお話させていただきます。全く同 感です。ありがとうございました。レジデントと新人研修を一緒にしている病院でうか がったのですが、研修後のレジデントの発言です。例えば点滴をすると。そして、その あと看護師が何をしていたのかがやっとわかったと言いました。看護師は抜けないよう に固定したり、血圧を測ったり、点滴数を合わせたり、患者の回りを整えたり、患者が 気分が悪くないかどうか、様子を残って見てみたり、またあとで見に来たりということ をするわけですね。ドクターは、それを本当に知らなかったと言っていました。だから、 お互いに全体を見ることによって、誰が何を担っているかということは、大変効率が良 くなることと、リスクは減ると思うのです。いままでは部分だけで終わっていくような やり方だったのだと思うのですね。だから、西澤委員がおっしゃったことは全くそのと おりです。  それから、判断力・決断力ということは、私の経験でもそうですが、すごくそう感じ ております。ドクターが何でもやってくれるような状況のそばにドクターがいると、す べてが報告ですね。そして聞くと。そういう状況になってしまうのですね。だけど、そ こで判断する力をどのように養うかというと、私はいま大学に籍を置いていますが、大 学でやっている方法を見ると、判断力・決断力は思考の深さですね。それを鍛えていく のです。私は看護学校にもいましたが、その深さを深めていく時間がないのです。そし て、おそらく教員の数も関係してくるのだと思うのです。だから、あえて言わせていた だいたのは、教育時間を学生に与えていくかということがこれからの教育に必要だと思 います。ただ、いまの状況ですぐというようわけにはいきませんが、先ほど福井委員が おっしゃったように、どのように描いて、そしてアクションを一つひとつやっていくか ということだろうと思います。 ○羽生田委員 坂本委員のこういった看護師をナースプラクティショナーというのか、 草間先生の言っているナースプラクティショナーがそうなのか、名前だけが独り歩きし て、どういうものを指して言っているのか。いくつかの大学で、修士課程なり、大学院 なりで、そういうことを始めたと言いますが、どういうことができる、あるいはどうい うことを目指してということが、もう1つまとまっていない、言う人によって全部違う。 もう本当にミニドクター的なことまでやらせるのがナースプラクティショナーという形 で、大分では特区にして、いまの法律以外のことまでできるようにしようという話もあ れば、福井先生なども最初のときにも言われたけれども、坂本さんが今日言われたよう なことをきちんとやるという意味合いが強いですよね。  その辺が草間先生は新たな職種と言いますが、私は新たな職種だとは思っていない。 看護師の中でそういったことができる看護師であって、いまいろいろな専門看護師をつ くっていますが、その中の1つと。今日この中に出てくるもので、法律を改正しなけれ ばいけない部分はそう多くはないのです。その辺をきちんと整理して、いまの法律の中 でもできることがほとんどだと思いますね。そういったことはきちんと整理をされて、 できる体制をつくっていけば、いまの保助看法であっても、十分かなりのことができる と。ただ、やっていない、やらせていないというところだと私は思っているのですけれ どもね。 ○太田委員 医師の立場で、ナースへの期待も含めて申し上げます。ナースは医師の指 示に基づいて業務をこなしますから、医師の指示は、絶対的なものだと医師は錯覚して いるかもしれませんが、時代は変わってきています。というのは、在宅の現場では、介 護保険制度に基づいて、ナースが訪問看護をしています。訪問看護師が「脱水だから何 とかしてくれ」と医師に駆け込んだときに、「脱水かどうかは医者が判断するんだ。君た ちはそんなところまで見なくていい」というような医者がいるのは事実なのですね。指 示がもらえなければ点滴できない。そうすると、看護師はどうするかというと、いまケ アマネと結託すれば、ショートステイという手があるのですね。ですから、医師が許可 しなくても、ショートステイに入れられるのですね。ショートステイでたっぷり点滴し て元気になって帰る。知らないのは医師だけという状況も起こっているということです ね。  ですから、その医師の意識を変えるために、ナースには非常に大きな力があると思い ます。一方で、医師にまともな報告もできないナースもいます。例えば熱が出ています ということを、患者を介して言わせるような訪問看護師もいるのも事実なのですね。で すから、医師と対等にコミュニケーションをとる訓練がなされていないということのほ うが、基本的な技術以上に問題があると思います。 ○田中座長 技術だけではなくて、コミュニケーション能力ですね。また、医師の側に は、チーム医療を理解し、ナースを信頼し、包括的指示が与えられる能力が求められる。 そうすれば、大きな法律問題にもぶつからないというまとめがありました。活発なご議 論をありがとうございました。 ○草間委員 ナースプラクティショナーのお話がありましたので、お答えさせていただ こうと思います。ナースプラクティショナーは、ミニ医師をつくろうとしているわけで はありませんで、やはり看護に軸足を置いた職種、人材だと思っております。今日、坂 本委員がお話いただいたようなことを、本当に体系的にきちんとできるためには、私は、 教育の中できちんとしていかなければいけないと考えております。だから、先ほどの3P、 少なくとも3Pに関するきちんとした知識を持ったような看護師をつくっていかなけれ ばいけないと思っています。すべての看護師に、今日、坂本委員にお話いただいたよう なことができるというのではなくて、こういったことをできるスペシャリストをつくっ ていかないといけないと思っております。ナースプラクティショナーについてお話させ ていただこうと思ったら、1時間でも2時間でも、時間をいただかなければいけないの です。というのは、私たちは養成を始めるまでにものすごく検討を進めて、一朝一夕で つくったものではありませんので、その辺はまたお話させていただこうと思います。決 してミニドクターをつくろうとしているのではないということは、是非ご理解いただき たいと思います。 ○田中座長 いまの最後のほうの話題は、看護教育のあり方についてもつながりますの で、そちらに移らせていただきます。繰り返し申し上げますが、意見を言い足りない方 がいっぱいおられると思いますので、その方は後ほどペーパーでご提出いただけます。  2つ目の課題の「看護教育のあり方」に移ります。先ほどと同じように、事務局から 資料2-2の説明をお願いします。 ○野村看護課長 資料2-2です。ここについては、主な検討課題が2つあります。1つ は看護基礎教育の体制、教育内容、期間についての見直し。2つ目は、定着を目指した 魅力ある職場環境が整備できるような、看護職員は専門性を持ってキャリアアップでき るようなインセンティブの付与の支援策といったことがあります。資料は厚いのですが、 大きく分けると以下の4つになっております。  1頁は教育制度図です。看護師になるには4つのルートがあるといったものを示して おります。  2頁ですが、学校・養成所の施設数です。3年課程が増えてきており、准看護師課程 が減ってきているところです。下の表は、3年課程だけを大学と短大と養成所で見たも のです。養成所は横這いですが、大学が増えているのが見てとれると思います。  3頁は、これを同じように1学年定員で見たものです。当然のことながら、傾向はほ とんど同じだというところです。  4頁ですが、3年課程だけのものを設置主体で見ております。青が大学ですが、大学 は学校法人、国、都道府県がほとんどというところです。養成所については、公的なも の、公益法人や日赤などが入っています。それから、学校法人、市町村ということで、 設置主体はだいぶ異なっているところです。  5頁は、定員充足率です。ブルーの線ですが、最近は100%を超えているのは大学だ けとなってきているところです。  6頁は、定員充足率をもう少し設置主体別に詳細に見ております。この資料では、前 回、大熊委員から質問があったかと思うのですが、非常に充足率が低い所があるという ところで、分析してみたところ、青い所ですが、都道府県の准看護師課程が60%を切っ ているところです。実は学校数は非常に少なくて、7校だけのデータです。あとは充足 率8割を切っていないことになっているわけです。  7頁は、3年課程を規模別で見ております。規模別というのは、1学年定員で見ていま すが、1学年が40人以下の小さい規模の養成所は67.5%というところです。1学年定員 が小さい所の設置主体が右側の上の円グラフ、そして大きい所が設置主体の下の円グラ フになっているところです。  8頁は、基礎教育の教育環境を大学と養成所で比較しています。これは3年課程の養 成所で比較しておりますが、教員数は最低の基準で、大学12人以上、養成所は8人以 上となっております。教員の資格は、大学は教授の場合には博士と学位、准教授は修士 となっておりますが、養成所は実務経験5年以上に加えて、必要な研修が1年近くにな っており、こういった研修を受けた者が教員の要件となっております。施設についても、 養成所と大学ではかなり違うところです。  9頁は、数字がたくさん並んでおりますが、ポイントは右側の表で、1校当たりの定 員がどうなっているか、教員数がどうなっているかを黄色で示しておりますが、3年課 程では1校当たりは45.2人の学生定員で、教員は9.9です。大学になると、1学年定員 は大きくなって78.5人、教員は30.2人ということで、教育環境がだいぶ違うことが読 み取れるかと思います。  10頁は、教育内容の変遷です。これは何度か出しているものかと思いますが、このよ うにカリキュラムの改定と同時に、専門分野が毎回のように増えてきているという状況 です。それに比べて時間数が減ってきていて、平成21年、来年の改定で時間数が3,000 時間に戻るという傾向になっているということです。  11頁は、今年の10月に全国の6ブロックで、主に養成所の教員から、意見交換会で 意見をもらったものをまとめたものです。そのときに出されたものが、この発言要旨で すが、教育内容について、また教員の質の確保について、効果的な実習方法の確立につ いてなどなど、かなり詳細ないろいろな課題が出されたところです。細かいので、後ほ どお読みいただければと思います。  12頁は、諸外国における看護教育制度の概要です。比較してみますと、専門学校と大 学と同じような形態で行っている所は、韓国、ドイツ、イギリス、アメリカが日本と同 様の教育の制度になっております。タイやオーストラリアは、大学のみの教育体制にな っているところです。国家試験や資格の更新数についてはそれぞれです。  13頁は、生涯教育といいますか、全体の教育を見たものです。新人のとき、中堅のと き、そして専門分野の研修に分けて整理してみると、補助金を付けてこのような研修を 実施しているという状況です。  14頁は例で、北里大学病院のクリニカルラダーです。いくつかの病院では、既にもう 病院ごとにこういったクリニニカルラダーを持って、それぞれ生涯教育、ステップアッ プをしているという実態です。右側の図にありますように、アップしていく中でも、大 きくは管理領域にいく者と、専門看護の領域に行く者と分かれて、レベルがアップして いるという現状です。  15頁は大学院の推移ですが、修士課程、博士課程ともに非常に伸びてきている、開所 数が増えてきているという現状です。  16頁は、日本看護協会が認定している専門看護師と認定看護師です。これも先ほどち ょっと出てまいりましたが、真ん中より下に分野がありますが、このように非常に細か い分野に分かれております。それぞれ教育期間は、専門看護師は修士課程で2年間、認 定看護師は6カ月間の教育を行っているものです。数については、合計の欄に示してい るとおりです。  17頁は、これも日本看護協会が認定している管理者のものです。現在、こちらは登録 者は519名になっていると聞いております。これらの専門看護師、認定看護師を都道府 県別に登録されている数を見たものですが、18頁が専門看護師です。赤の多い県は東 京・神奈川で、あとはまだゼロの県もあるというのが専門看護師の都道府県分布です。  19頁は、認定看護師の分布です。ここになるとかなり多くなってきて、ゼロの県はな い状況ですが、かなり差があるところが読み取れます。  20頁は管理者の登録数ですが、これはまだあまり多くなくて、なぜか大阪・兵庫に非 常に多いという傾向になっております。  21頁は、認定看護師、専門看護師については広告ができますということを周知した内 容です。  22頁は、6カ月の研修の認定看護師ですが、この方々が資格を取得したあとの勤務状 況の変化です。変化なしが60%として非常に多いのですが、認定分野で活動しやすい分 野に異動が14%、認定看護師として手当が付いたのが11%となっているという現状で す。以上がこの関連の資料です。  23頁からが草間委員から要求のあった資料ですが、保健師の就業場所の全体像を示し てあります。24頁はヒヤリハットで出された事例で、これは職種別従事者100人当た りの件数に直してあります。前回はヒヤリハットの件数だけで示したものでしたが、従 事者の量が違うということで、それをそういったことも含めたデータに直したものです。 説明は以上です。 ○田中座長 このあと話題提供者からのお話になるのですが、そうすると時間がなくな ってしまうため、福井先生は途中で退席されるそうなので、もし先に看護教育について 何かご発言がおありでしたらどうぞ。 ○福井委員 先ほど坂本委員がおっしゃったことで、看護師が新人のころの話だと思う のですが、非常に不安が強くてという話をされました。ドクターのほうは、最初から不 安がないわけではないのですが、おそらく卒前の臨床実習の時間が全然違うと思います。 その分、比較的スムーズに臨床に入っていけるのではないかなと。ドクターのほうは、 どちらかというと向こう見ずにいろいろなことをやろうとするのを押さえるのが大変で、 それはそれでまた違った問題があります。 ○田中座長 話題提供をしていただく先生方の紹介をお願いいたします。 ○野村看護課長 本日、話題提供をしていただく先生方をご紹介いたします。お一人目 は、齊藤茂子先生です。先生は、東京都立板橋看護専門学校の校長です。先生は、看護 師養成所で長年、看護基礎教育に携わられ、現在は学校長として勤めておられます。最 近は、東京都全体での平成21年度カリキュラム改正の取組みのリーダーをされており、 養成所の教育に専心的に取り組まれておられる方でございます。  お二人目は、小山眞理子先生です。神奈川県立保健福祉大学教授です。先生は、長年 にわたり、ご専門である看護教育に関する研究活動をされておられて、数多くの業績を 積んでおられます。また、平成18年度に行った「看護基礎教育の充実に関する検討会」 のメンバーで、その中で行われた「看護師教育のワーキンググループ」のリーダーも務 めていただきました。そこでまとめられた平成21年度のカリキュラム改正、また看護 師教育の技術項目と卒業時の到達度の作成などにもご尽力をいただいている先生です。 ○田中座長 お待たせいたしました。まずは齊藤先生からお願いいたします。 ○齊藤校長 齊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私の今日の役割は、 大学教育が進んでいく中で、養成所教育の役割は何かということと、その問題と工夫と 実践報告をさせていただければと思ってまいりました。資料に沿って説明させていただ きます。  まず、スライド1枚目です。ここに当校の戴帽式の写真を載せました。これについて は、キャップレスの今、この式典の意義が問われているところですが、本校の方針とし て厳粛に取り行っております。また、その下は本校の概要です。昭和46年以来、3,000 名の卒業生を出しております。また、3年課程で1学年80名、240名を配置しておりま す。組織としては24名で編成しております。設置者は東京都で、7校あります。年間 560名の養成をしております。  次は、本校の教育理念・目的を書いておりますが、コンセプトとしては、先ほど坂本 先生のお話にもありましたが、辞めないで、しっかり働く看護師を育てたいということ をこの裏に秘めております。今日は大きく5点ということで、取組みを説明いたします。 1点目は基礎学力の向上、2点目は教員の資質向上、3点目は専門学校の特徴を生かした 教育実践、4点目は共につくる学校・授業の評価です。5点目は実習施設との確保と連 携について説明いたします。  国家試験合格率は、専門学校にとって非常に大きなものですが、下の線が全国養成所 の合格平均です。上が都立の平均です。特に常に全国養成所および4年制大学の平均を 上回る合格率を保っております。ですが、その下に示しましたが、学力が最初から高い かと申しますと、基礎学力の低下には大変手を焼いているというのが現状です。国家試 験の合格ラインについては、3年生の最終年度のところで合格ラインに達しているのは 1割というところから、全員合格というところまでもってきております。そのための努 力が緑の枠の中に書いてありますが、詳細は省かせていただきます。  入学試験応募者については、年々減ってきているというのが現実です。これは18歳 人口の減少と高学歴志向ということで、大学のほうに流れていることがあります。その 中で増えてきているのが社会人、そして図の右側の男子入学生ということです。その下 のスライドは、求められる学習者の変化に対応した教育ということで、本校の今年度の 入学生の背景としては、とうとう今年からなのですが、年齢は現役の高校生をそれ以上 の人たちが上回るという状況が起きております。また右側の性別についても男子学生が 増えてきており、人数は15名入学しているのですが、2割近いということが現実です。 過去は4大特徴といいますか、高卒、18歳、女性、未婚といった特徴がありましたが、 これが高学歴、社会人、男性、既婚といった特徴に変わってきております。ですので、 これまでの教育内容と、かなり変える内容にしていかないと、卒業時の到達度が厳しく なってくると感じております。ただ、学生の背景はこのように変わっておりますが、共 通してあるのは、みんな看護師になりたいという強い気持を持ってきているのが大きな 特徴かと思います。  教育の原動力は教員の資質向上ということで、スライドを作らせていただきましたが、 時間の関係でここは省きます。都立は資質向上に向けて、かなり時間を注いでやってお ります。これはいずれかのところで是非ご検討いただきたいと思っております。  次に、「専門学校の特徴を生かした教育内容の充実」というところで説明いたします。 まず、専門学校の特徴というと、当校は18名の教員がおりますが、この18名の全教員 でさまざまな検討を一堂に会して行っていくところが大きな特徴かと思います。そして、 教育計画の検討をした結果が、別表1の後ろにお示ししております教育計画と進度です。 3年の養成所については、表のいちばん下に数字があって、93単位、2,925時間、これ は都立は1単位多くやっておりますが、これを1年次から3年次まで、教育的に体系的 に教育課程を編成しております。この表の下のほうの専門分野の所の基礎看護学から臨 地実習までの所が専任教員がかかわっているところですので、今日はこの辺について説 明いたします。  スライドの10番目に戻って、特徴の2つ目は新カリキュラムの円滑な移行という形 で、都立では2年間かけて検討を行ってまいりました。下にいくつか書いてありますが、 これは詳細は省かせていただきます。ただ、どうしても申し上げたいのは、2の3)の「卒 業時の看護技術到達」、これが報告書によって示されたということで、大変意義のあるこ とだったと考えております。専門学校では、これを受けて技術到達を臨地、学内で設定 して、目標を明確にして取り組んでいこうとしております。  特徴の3点目ですが、先ほどの事務局の説明にありましたように、専門学校の教員に は臨床経験5年以上と看護教員養成講座の修了が義務付けられております。これは教育 する上で非常に大きなことで、豊富な臨床経験は看護を語ることができます。そして、 教員研修によって培われた教育技法は、看護の素晴らしさを学生の心揺さ振る授業とい うところで展開していくことができます。  「特徴を生かした教育実践」では、実践力を養う講義の工夫ということで、7点ほど 挙げさせていただきました。まず、PBL、ディベートなどを取り入れた、主体的学習へ の支援を行っております。次に、リスク感性を養う安全教育ということで、技術をきち んと身に付けさせなければリスク感性も養えないというところで、両方やっているとこ ろがこの計画に盛り込まれております。  別表2の後ろのほうに示してありますが、「安全教育計画」ということで、1年次から 3年次まで、学年の学習レディネスに合わせた計画をしております。特に3年次の看護 学実習の所、四角枠で括っておりますが、ここの学内実習では、診療の補助技術に関す る技術を徹底的にやるということと、タイムプレッシャー下での点滴作成、複数受持ち といったことを学内実習でやるという試みをしております。  もう一度スライドに戻って、当事者授業も取り入れております。それから、学生の反 復練習を支える教材の整備ということで、お手元に写真を配らせていただきました。こ れはすべての方にお配りしているのではないと伺っております。顔写真がかなり写って おり、是非この表情をお伝えしたいと思い、資料を作成しました。全員の了解が取れる ところまで行っておりませんので、この場で回収させていただきたいと思います。学生 の反復練習を支える教材の所では、左側に哺乳、あるいは男子学生が本当にリアルな赤 ちゃんを抱っこして哺乳をしているというところです。最初は怖々やっておりましたが、 このようににこやかな表情で哺乳をできるようになっております。  また、老人体験では、膝が曲がらない、目が見えない眼鏡を使って学生が老人体験を することをやっております。この時期は学校中に本当にかわいい老人がいっぱいいるこ とになります。右のほうでは、日本茶で作った尿とかウーロン茶で作った胆汁、これは 本当に教材の予算がない中で、教員が手作りの教材をこのように作っております。その 横のほうでは、成人看護学授業研究ということで、研修の一環から出てきた内容ですが、 急性期の一連の看護技術の効果的な学ばせ方ということで、手術を終えた患者が病室に 戻られたときに、学生は手も足も出ないというのが現実です。そこのところをきちんと 観察をして、バルーンチューブの管理なども行っていけるような学ばせ方をしておりま す。そのために、写真2の左側は教員が綿密な打合せをしております。そして、教員に よるSP(模擬患者)をさせていただきました。それが右側の所で、これは手術経験の ある看護教員ですが、離床するときに思いきり痛いということを表現して、学生の目が 泳いでいるということです。ただ、このときにどこに手をやれば患者は安心するのかな どということを経験しております。写真3については、実技テストの風景です。技術が 定着したかどうかを見るためには欠かせないものなのですが、これも事前の綿密な打合 せに基づいて行っております。  またスライドに戻って、専門学校の特徴を活かした教育実習の2では、実践力を育む 実習指導ということで整理しました。実習については、知識と実践の統合の授業という ことで、これは看護観、実践知が養われ、非常に大切な授業です。都立の看護教員はこ の授業を大切にして、1年中、実習指導を担当していることになります。臨床と学生の 変化を踏まえた実習指導、専任教員と指導者の連携ですが、まず別表3です。これは実 習期間1クールの中で、学生に教員と臨床指導者がどのようにかかわっていくかという ことを示したものです。黄色い吹き出しで主に実習指導、事故の予防と対処、実習評価 といったことが実習期間の中で行われます。右側のほうでは、タイムスケジュールに乗 って、教員と指導者が、学生が6人いた場合にはどのような動きをするかを示しました。 学生は清拭をしたり食事介助をしますが、1人でやることはできませんので、必ず教員 と指導者が付いていきます。これが授業になります。ですので、教員については、この 授業を年間ずっとやりながら、ほかの学年の講義をしに学校に戻っているということが あって、非常に過酷な状況になっていることがあります。  写真4では2枚載せてあります。1枚目は、実際に患者の体内に入る点滴をここで作 らせていただいております。このためには、薬の主作用、副作用をきちんと指導者に報 告の上、右側に隠れておりますが、そばに指導者が付いて点滴を詰めるところまでやる ということです。その下は、左側にいるのが学生で、右側にいるのが指導者の方ですが、 学生が報告したときに、「今日のバイタルサインの患者さんは正常でしたか。そのことに よって、どういうことがわかりましたか」ということを聞き、学生の思考力を深める実 習指導体制をとっております。  もう一度スライドに戻って、実習指導の2番目は、実践力を育む実習指導は、教育を 受けた指導者が必要と考えます。先ほどの専任教員についての要件はもちろん必要です が、臨床指導者については、実習指導者研修を受けた方によって指導をお願いしたいと 思っております。ただ、実質的には、残念ですが病院の実習指導者の中では、指導者講 習会を受けた方が指導に当たっているのは、全体の1割から2割程度という現状です。  3の(2)ですが、先ほど資格のない者が身体侵襲を伴う技術をすることに対して、非常 な問題があるというお話がありましたが、これは本当に基礎教育でも大きな問題で、患 者への義務的配慮もあり、これを病院と一体化して、経験させたい技術項目を決めたこ とを、都立では都立病院と合同でやっております。そして、危機管理もこれは必ず必要 で、事故発生時の体制フローシート、事故が起きないような十分な体制をいたしますが、 その上での体制づくりもしております。  次は、評価についてです。共に作り上げる学校・授業ということで、学校の評価につ いては、教職員が自己評価の形でこのようにやっております。そして、授業評価につい ては、講義臨地実習で、学生にこのようにアンケートを取っております。それぞれ良い 意見、手厳しい意見、多々ありますが、これを内容に反映させております。  「未来の看護につながる実習施設の確保と連携」ですが、「実習施設確保困難の常態化」 は、本当に厳しいものがあります。特に産科医の不足による産科病棟の閉鎖などといっ たことになると、学校は急遽、実習施設を探すのに奔走するということで、非常に厳し い状況があります。多忙な臨床現場、非常に厳しいところですが、実習病院では欠員を 踏まえてでも実習指導者を専任化していただけています。これは長く続くといろいろな 問題が出てくるのではないかと考えておりますが、是非、指導者の専任化、指導者研修 受講の促進をお願いしたいと思います。そして、学生が病院に就職することは、臨床学 校の共通の願いがあります。病院はマンパワーの確保、学校は看護が学べる授業の場と して、共通の願いを持っているところです。  4番目は「学校と臨床の良好なコミュニケーションによる連携」です。4)ですが、「新 卒看護師を支援するホームカミングデー」ということで、病院のほうから研修など、卒 業生に公休を与える形で、卒業後、何カ月かの卒業生を学校に戻していただいて、心を 癒してからまた臨床に戻ることをさせていただいております。下にあるのは、福祉保健 局のミニ通信に掲載されたホームカミングデーの記事です。最後になりますが、ホーム カミングデーの写真を掲載しました。3カ月しか離れていないのに、懐かしさで笑顔が はじけております。卒業生は、こんなに自分の話を聞いていただけたのは、本当に久し ぶりだということを言っておりました。  次は、「看護専門学校における学校運営」です。これは時間がないので省かせていただ きますが、先ほどの教育実践は適切な学校運営があって成り立つということで、専門学 校の特徴はスライドのいちばん下です。「全教員で全学生を育て、学生に学ぶ養成所の共 育」です。  最後になりましたが、「養成所の今後の課題」ということで、7点、整理しました。こ の中で説明してこなかったものについて、さらに加えます。3番目ですが、専任教員の ワークライフバランスは非常に劣悪で厳しいものがあります。先ほど事務局から、専門 学校は1学生当たり9.9人、大学は30人ということです。これで国家試験合格率を同 じ100%を出すためには、どれだけの努力をしているかということを、是非ご理解いた だきたいと思います。教員は良い授業をしたい、文献検索もしたいと、切実に思ってお ります。  5番目の養成に対する経済的支援も、是非お願いしたいと思います。非常に貧弱な学 習環境の中で、教材、図書を揃えながらやっているのが現状です。4年化に向けてです が、3年養成での努力による成果は当校も出しておりますが、それはもう限界に来てい るのかという感触があります。  6の3)ですが、大学教育におかれても、養成所教育の良いところはありますので、是 非これを適正に評価して、活用していただければと思います。  7番目に、養成期間を延長しても、臨床研修は絶対に必要と思っております。この件 も、是非お願いしたいと思っております。以上です。 ○田中座長 途中ですが、舛添大臣にお忙しい中、駆け付けていただきましたので、一 言お願いいたします。 ○厚生労働大臣 皆さん、クリスマスの日にお集まりいただきまして、どうもありがと うございます。今日で3回目ですが、看護教育のあり方は、いまも齊藤先生からお話が ありました、大学と専門学校、3年・4年の問題をどうするのか、大きな問題を控えて おります。医療について全般的に言えるわけですが、こういうことで努力をしっかりす ることが、日本社会全体の付加価値を高めることになるし、人間の質を高めることにな るのだということを、基本的な原則として仕事をしたいなと思っています。何とか予算 の原案は通りましたが、とにかく医療とか看護とか介護というのが財政にとって重荷で あって、それが足を引っ張っているという観点からずっと来ていることが、いまの大き な問題の源にあると思います。  看護を含めて質の高い良い医療サービスを提供する。もちろんそれにはコストがかか りますけど、ただ、ベネフィットというのはそれを超えるものがあると思いますので、 一人ひとりの人間の質を高めるとともに、日本社会の価値をぐっと上げることになるの だという観点から、それを原則として議論をしていくと間違いない答えが出ると思いま すので、今日も時間の許す限り私も一緒にここで議論したいと思います。そういうこと でよろしくお願いします。中断してすみませんでした。 ○田中座長 ありがとうございました。お待たせいたしました。引き続き小山先生、ご 発表をお願いします。 ○小山教授 大学教育と言いますと、大学院修士課程、博士課程もございますが、私に 与えられた時間は10分ですので、看護基礎教育に限らせていただきます。その看護基 礎教育の中でも、いま発表された養成所と学内演習、実習、技術教育については大学で も全く同じように行っています。以前、大学の数が非常に少ないときには、大学での看 護教育が、いかにも理論中心にやっているかのように受け取られる懸念もありました。 今では全看護師課程の入学生の4分の1を占めるようになり、実践の場で役に立つ人材 の育成をということで、日本看護系大学協議会が中心になって、大学卒業時の看護実践 能力の到達目標を明確化したり、臨地実習における到達目標を明確化したり、さまざま な活動を行い、それを全国の看護系大学の教員に広めることもしてきました。それを受 けて、それぞれの大学で、ユニークなカリキュラムを組んだり、教育方法を工夫したり しています。その1例として本日は、私の所属大学での看護教育の取組みをご紹介させ ていただきます。  ほとんどの大学では、助産師課程は選択ですが、保健師課程と看護師課程の統合カリ キュラムで行っています。大学における看護学教育が目指すことは、保健、医療、福祉 のどの場においても、看護職として社会に貢献できる人材としての基本的な能力を育成 することです。  また大学ですので、大学卒の社会人としての教育と、職業人としての教育の両方を行 わなければなりません。法的には大学設置基準と、保健師・助産師・看護師学校養成所 指定規則の、両方の法的要件を満たすようなカリキュラムを作る必要があります。それ だけではなく、いま社会は急速に変化しています。10年前に習った知識が今日、役立つ とは限りません。そのために社会の変化に対応していける能力、保健、医療の現場で対 応していける能力の育成ということが求められるようになり、ただ知識や技術を詰め込 めばいいという時代ではなくなってきました。そのために大学では考える力、それが正 しいのかどうか状況を判断する力、あるいは新しい事象に直面した時に自ら学ぶという ことを、学生時代にできるだけ身に付けてほしいと思っています。看護実践能力の基本 を身につけることは当然のことです。  神奈川県立保健福祉大学の例をご紹介します。本学は平成15年4月に設立され、今 度の3月で3回生を卒業させるところです。1学部4学科であり、看護学科、社会福祉 学科、栄養学科、リハビリテーション学科があります。入学の倍率は年度によって差が ありますが、昨年は3倍ぐらいでした。社会人の入学生も少なくありません。大学の基 本理念としては、そこに書いてある3つのことを理念としていて、学部の教育理念、看 護学科の教育理念については時間の都合上、省略させていただきます。  保健福祉学部の教育目標、大学学部の教育理念や教育目標を踏まえて、看護学生が卒 業時に習得していることを期待する能力は、ここに書いてあるとおりです。  カリキュラムについて説明させていただきます。最後の資料をご覧ください。上の表 が全学生が履修する表です。左側の縦軸がカリキュラムの枠組みを書いてあり、横軸に 学年の進行を書いています。太字の科目が必修科目であり、薄い字が選択科目になって います。象徴科目は大学の理念を反映させるものです。人間総合教育科目と連携実践教 育科目は全学科の学生と一緒に取ります。選択科目は選択で他学科の学生たちと一緒に なりますので、ここで他学科の学生たちと交わっていくうちに自然と連携ということを 覚えていきますし、卒業した後のネットワークもできてまいります。  専門の科目を「専門創造教育科目」とした由縁は、学生たちが教員の教えることを受 け身に学ぶだけではなく、新しいものを創ってほしいということで専門創造教育科目と いう科目群を作ってあります。お気づきのように専門創造科目は、いわゆる看護師の国 家試験受験資格に関連する指定規則の内容ですが、ほとんどが必修科目です。大学教育 として学生たちが自ら選んで学ぶようにするには、必須科目が多すぎ、とても厳しいと ころがあるのが現実であり、これが課題だと思っています。  上の表の科目を履修すると、全学生が保健師と看護師の国家試験受験資格が得られま す。卒業単位は129単位です。他に専門創造科目で3課程あり、助産課程は10名以内 の学生が選択履修することができますし、教職は20名、そのほかに本学の特徴として 社会福祉士も看護の20名の学生が履修することができます。社会福祉士と看護の両方 を合わせると約160単位になるのですが、学生たちは学びたいという意欲があれば学ぶ ものだと感心する程一生懸命頑張っています。  スライドに戻ります。先ほどの他職種と連携していく能力の育成と申し上げましたが、 これが本学の特徴かと思います。特に連携科目のいちばん下に書いてあるヒューマンサ ービス論IIは4年生の2学期ですが、全ての学科の学生が混ざって十数名ごとのグルー プになり、グループで事例を用いて、実践の場での連携活動の演習を学生たちが主体的 に行い、最後に発表し合って教員からコメントをもらうという授業を組んでいます。  次のスライド、9頁をお願いします。知識の充実、内容の工夫ですが、いろいろな科 目で工夫をしています。その中でもアセスメント能力の育成は非常に重要な能力かと思 いますが、ただ、身体を診るフィジカルアセスメントではなく、例えば血圧を測ったと きには、それが高い、低いという数字を言うのではなく、その値は患者にとってはどの ような意味があるのかを考えさせる、つまり、その人の健康状態と合わせてヘルスアセ スメントする能力の育成を目指しています。  下の10番に移ります。知識が「のこる」あるいは少しでも「わかる」ために、講義 は次のような努力をしています。つまり理論と実践をできるだけ関連づけるということ です。ほとんどの学生は病院にお見舞いぐらいしか行ったことがありませんので、講義 で聞くことが机上の空論になる可能性があります。それで早いうちから実習に出ること で、できるだけ臨床実習で学生たちが見てきた事例をイメージしながら講義を聞けるよ うにと意図してのカリキュラムです。1年生の夏に1日と、1年生の10月から1週間に 1回ずつ10週間、実習に出ています。ただ、毎週、実習と講義が同時進行で進むのは教 員にとっては負担が大きいということで、新しいカリキュラムでは1年後期に2日と3 日に分けて行くように変わります。  学び方を学ぶという点では、1年生の時に文献の探し方と批判的な読み方を全学生が 学びますが、次の頁にある問題に基づく学習法を系統的に入れています。これは問題解 決能力や判断力、そのほかの発表する能力等のいろいろな能力を、この科目で学ぶこと ができるのですが、臨床の場面を学内に切り取ってきて、その場面設定から学生が主体 的に問題を発見して解決するプロセスを、少人数のグループで学習する方法です。1年 生の時に30時間履修し、その後、2、3年次で複数の科目で行うようになっています。  根拠に基づく看護実践への入門として、エビデンスベーストナーシングを科目として 30時間、2年次に開講しています。これは日々の看護実践をただルーチンとして行うの ではなく、その根拠は何なのかということを常に考える人材を育成するためです。ただ 「おかしいな」と思うだけでなく、思ったらそれをどのようにして解決していくかを EBNのステップに沿って学んでいます。ただ人に言われたことを信じるのではなく、研 究成果としてのエビデンスを探し、そして活字をそのまま信じるのではなく、エビデン スとして使えるかどうかを吟味するところまでを演習として行っています。エビデンス として使えそうだとわかっても、そのときには相手の患者様やご家族、専門職の方々と の話合いの中で使っていくことの重要性についても学習します。EBNは、その後につな がる実習に行った時に、そのような姿勢で実習すると、卒業までには大分できるように なるのではないかと思っていますが、なかなか理想と現実は厳しいものがあります。  13頁の臨地実習ですが、臨地実習は1年生の時から4年生までかけて、さまざまな場 で実習をしています。1年後期、2年次のところは時間の都合上、省かせていただきま すが、このような形で行っています。スライドの18番ですが、4年次の前期には、学生 が主体的に選んだ実習テーマに沿った実習を総合的に週3日間実施しています。  実習は当然のことながら授業として行うのですが、それぞれの実習の目標を明確にし て、教員だけでなく臨床の指導者、管理者も共有できるようにしています。また、実習 は与えられる学習ではなく、学生が主体的に情報収集してアセスメントするとか、疑問 に思ったことはその日のうちに解決するように、どの実習でも毎日、少なくとも30分 から1時間はカンファレンスをするようにしています。評価は臨床の指導者、教員、学 生を交えて行っています。  実習では、実習の場との連携というのが非常に重要ですが、年に1回、すべての実習 先の方々を大学にお呼びして、そこで合同実習連絡会というのを開催していますし、そ れぞれの実習では、実習の前に教員が現地に行って目標を臨床指導者に説明し、事後も 連絡会を行っています。学内でも実習委員会を作り、実習に関する倫理的な問題や災害 のときにどうするか等、いろいろな決め事もしています。ちなみに、大学の場合はすべ ての臨地実習に教員が同伴しますが、臨地での患者ケアに関しては臨床指導者の方に指 導を仰いでいます。  次のところに、「指定規則にはないが4年次に開講している看護専門科目」を挙げて います。これは選択科目ですが多くの学生たちが履修しています。  大学における看護基礎教育の課題はたくさんありますが、先ほどの表でお見せしまし たように、大学は創造性やその他の能力をも育成します。それには時間的なゆとりが必 要ですが、なかなか指定規則の必修科目が多いのが実情です。教員の担当時間数の多さ について、先ほど養成所のほうでも出ていましたが、大学の場合は大学院の指導も同じ 教員が行うことや、実習にも教員は当然出て行きますので、他学科の教員と比べると、 圧倒的に何倍もの時間数を教育に割いているのが看護教育の実情です。以上です。 ○田中座長 ありがとうございました。では齊藤先生、小山先生への質問、それに触発 された意見をお願いします。 ○厚生労働大臣 中座しないといけないので先にコメントしたいと思います。いま、お 二方から教育の問題についてお話がありました。いちばん大変なのは齊藤先生もおっし ゃったと思いますし、小山先生もそうだと思いますが、医療水準が上がってきて教える 先生の負担も大変だということで、3年か4年かという話とともに極めて水準が高くな っている。それで現場に出たときに、即戦力として水準が上がっているからこそ適応で きない。そうすると自分が養成課程で勉強したことでは足りないのかなと思って、がっ かりして辞めていくというケースがあると聞いています。そういう点についてどうすれ ばいいのか。  例えば私は法学部で教師をやっていましたが、あれをロースクールに変えるとか、修 士を2年間余分にやらせて能力を高めるとか、いろいろな手をやっています。だから普 通の大学で言うとマスターコースみたいなところまで延ばせばいいのか。齊藤先生がお っしゃったように3年の中で何をやるかということなので、何かそこのところがいちば ん大きな問題なので、一言ずつコメントをいただき、あと皆さんでご議論していただけ ればと思います。 ○齊藤校長 ありがとうございます。先ほど最後のところで述べましたが、看護は実践 があって看護だと思います。この実践の中身というのは本当に患者様の命に関わるよう なケアもしますので、基礎教育の中でしっかり教えるのはもちろんですが、資格を持っ た後の臨床研修制度をきっちりすることが、いちばん大事なのではないか。どれだけ養 成期間を延長しても実務経験がなければ、それは厳しいです。 ○小山教授 私も全く同じように思います。診療の補助に関する技術は、実習の現場で はほとんどできません。そのような状況で新卒に即戦力を求められるので、「できない不 安がある」という実態調査が出ています。実際に学生たちは福利厚生が良い所に勤務し たいと思うよりも、何カ所も現場を見て、継続教育が充実している所に就職する傾向が あります。 ○厚生労働大臣 前のチーム医療の推進のほうは、ご意見をお伺いすることができなか ったので、もう既に議論があったかと思います。ちょっと私の問題意識を申し上げてお くと、医療についての安心と希望のビジョンのときもそうですが、どうしても医療提供 者の立場だけの議論になる。そうするとスキルミックスなんていうことをやっても、お 医者さんが忙しいから、それを楽にさせるためにコメディカルを持って来るとか、メデ ィカルクラークをどうするかということになっていると思います。だけど患者の視点か ら見たときに、チーム医療とかスキルミックスはどう見えるのだろうか。  例えば私もしょっちゅう歯医者に行くのですが、歯科衛生士さんが私の歯の掃除をし てくれる。これは歯医者さんよりもっと手の器用な衛生士さんがいて、本当にピカピカ に磨いてくれる。だけど本当に難しいところは歯医者さんがやる。それは患者の立場か ら見ても非常に合理的だなと思うのです。おそらく医療の分野についても、例えば注射 を打ってもらう。別に先生に打ってもらわなくてもいい。私の先生なんてわざと痛いよ うな打ち方をして、俺のは痛いんだと言うのでインフルエンザのワクチンを打ちに行く のが嫌なのですが、例えばそういう注射を打つとかの分担はいいのでしょうけれども、 さて、さらに水準が上がった看護師さんが、どこまでお医者さんの分野に入っていける のかというときに、患者の視点から見てどうだろう。だから患者の皆さんが納得してく ださらないとチーム医療というのは成り立たない。どうしてもこういう場で議論してい るとサプライヤーというか、サービス提供者の側からだけになってしまうのです。医療 のときにそうでした。そこにおられる大熊さんが1人で、私は国民の代表だと言って噛 み付いておられたので既に噛み付かれたかもしれませんが、ちょっとそういう問題意識 もあります。私は中座しなければいけないので問題提起だけをさせていただいて、あと またご議論を賜ればと思います。本当にクリスマスにもかかわらず一生懸命やっていた だいて、必ず成果が出ると思いますので、忌憚のない意見をよろしくお願いします。失 礼いたします。 ○田中座長 考えるべき点についてご示唆いただきました。ありがとうございました。 時間が限られていますが、お二人の発言に対して質問やご意見をお願いします。 ○草間委員 いま、齊藤先生と小山先生に、それぞれ養成所、大学の教育のお話をいた だいたわけですが、本日は、大学は統合カリキュラムということで、保健師の教育も入 ってくるかと思いますが、看護師の教育が中心だったと思います。それで、私、保健師 の教育についても発言させていただきたいと思います。  先ほどから助産師の教育については、場合によっては大学院でやるというお話が出て きたわけですが、保健師について専門性を強化するという点では、いまの指定規則の6 カ月を改正して期間を延長することを、ご検討いただきたいと思います。先ほど齊藤先 生も言われたように、看護師の教育でさえも3年では限界にきているということになる と、いま大学の統合カリキュラムで保健師の教育までしていることについて、大変問題 だと思います。  今日、事務局からお配りいただいた資料の2枚目にありますように、保健師は現在、 大学ですと文科省の指導で看護師と保健師の両方の資格を取らなければいけません。し たがって、保健師は毎年、1万2,000人出るわけです。それに対して保健師として実際 に業務に就いている人は、毎年、1,000人くらいですから、免許取得者と実際に職に就 く人の間にこれだけの格差があることを、まず認識いただきたいと思います。  保健師に関しては、今は医療の中で疾病予防をどうするか、健康増進をどうしていく かが大変重視されます。新型インフルエンザ等の健康危機が起こったときには、まさに 保健師が専門性を発揮すべきだと思いますし、地震や洪水等の災害が起こったときの災 害看護にどう対応するか。いま問題になっている児童の虐待、高齢者の虐待に対しても、 保健師がかなりその専門性を発揮して活躍しているわけです。保健師と言うとそれだけ の専門性を身に付けなければいけないわけで、いまのように大学の統合カリキュラムの 中でやって、本当にできるかどうか大変大きな問題だと思います。  いま、1万2,000人に保健師を取らせなければいけないために、170近くある大学は 実習施設の確保に大変苦労している。これが例えば大学院の教育とか、看護師の上乗せ 教育にすることにより、実習も効果的に行うことが出来る。今回、お示しいただきまし たが、大学院教育はもう既に106校で行われているわけですから、保健師の教育を是非、 看護師の基礎教育の上に上乗せした教育で、先ほど言ったような保健師の専門性を高く していく。こういった教育が大変重要ではないかと思いますので発言させていただきま した。 ○田中座長 ありがとうございました。森委員、どうぞ。 ○森委員 資料を用意させていただいていますので、資料4-2をご覧ください。先ほど 小山先生から、大学における看護学教育ということでお話しいただきましたが、私は、 助産師の教育についても入れてまとめています。国立大学法人看護学部長の立場からお 話を申し上げたいと思います。  私は、看護教育についての論点は、1.学校種別に関係なく看護師教育の修業年限の延 長なのか、2.看護職を志す者が学士課程教育を受けられることなのかということでない かと思っており、私は2番の立場をとりたいと思います。その理由は看護師・保健師・ 助産師は専門職であるからです。専門職を育てるには、学士課程の教育が前提だと思い ます。学士課程の教育とはどのような教育なのかということについてはここにお示しし た、「学士課程における看護学教育の特質」、「大学設置基準」、「学校教育法」の3つの資 料からおわかりいただけると思います。  資料の7枚目のスライドをご覧ください。仮に資格取得のための年限延長が必要とな った場合に考えなければいけないのは、年限延長に伴うコストの検証と財源確保だと思 います。国立大学法人の場合は特別な財源確保がなければ、助産師教育、保健師教育を やめざるを得ない所が増えると考えます。先ほど来、助産師教育を看護師教育の上に積 み上げて、大学院で助産師教育をということが出ていますが、いまの仕組みでは国立大 学法人内で合意を得ることが困難であり、そのような理由で助産師、保健師の数の充足 が課題となってくると考えています。それから少子化の影響で看護系大学の志願者も減 っていくことが考えられます。  助産師学校指定看護系大学数の推移を、スライド8に示しています。スライド9に助 産師国家試験合格者数(新卒)の推移を示しています。毎年、これだけの助産師を4年 制看護系大学で養成しているという現状を示していますが、特にスライド10の国立大 学法人における助産学実習の実施状況を見ると、助産師を志望している学生すべてを受 け入れられない状況があります。助産学実習の質を維持するには、学生数を制限せざる を得ない状況を見ていただけたらと思います。  そういう中でも、スライド11、12にお示しましたように、看護系大学において助産師 教育を行う、非常に多くの利点があります。ここでは、利点として特に2点を強調した いと思います。スライドの12をご覧下さい。看護系大学において助産師教育を行うこ との利点は、一つには学士課程で助産師免許を取得し、助産師実務経験後に大学院で高 度専門職業人、母性看護専門看護師の教育を受けるという助産師のキャリアパスを維持 強化することができることであります。そして、それにより、チーム医療体制の中で非 常に評価されている助産師外来や院内助産の普及・促進、母体・胎児集中治療室の看護 など、周産期看護の向上につながるという、もう一つの利点があります。  こういう理由から私が提案したいのは、少子化の中で質の向上と確保に向けた、助産 師養成数を増やすための方策です。1つは助産師不足に対応した質の確保のために正常 産10例の縛りを緩和し、同時に卒後臨床研修を制度化していただくこと、及び多数の 実習施設に分散し少人数で実習することを前提とした、実習にかかわる教員数の増加・ 確保です。もう1つは、看護の質の向上と確保に向けた長期的な方策です。学士課程に おける看護教育に対して、指定規則の縛りを緩和あるいは適用外、学士課程で3つの看 護職資格を取得できる制度維持をお願いしたいと思います。学士をもった助産臨床経験 が豊富な助産師に対する母性看護専門看護師の教育の推進と、その方々の積極的雇用と 活用の拡大の促進です。また、このような高度な専門職業人教育を受けた助産師の裁量 権を、是非とも拡大する方向でご検討いただきたいと思います。以上です。 ○田中座長 ありがとうございます。 ○阿真委員 限られた予算と教員の先生の中で、どれだけ尽力されているかという齊藤 校長先生のお話をお聞きして、大変感銘を受けました。私たちの会の中にいる看護師さ んたちの声が私のもとにはたくさん届くのですが、その声の中で学校で習ったことと現 場が全然違うということをよく聞きます。卒業する時点では患者さんにああしてあげよ う、こうしてあげようとすごく夢がたくさんあって、でも実際に行ったら何も自分はで きない。そのギャップが本当に辛くて自己嫌悪に陥ってしまう。先ほど大臣のお話にあ りましたが、そのことをみんなが書いてくるのです。  いま、齊藤先生の学校は複数の患者を受け持つという取組みをされているとお聞きし て、先生の学校が特別、そういうことに対して力を入れているのか。私が言いたいのは、 学校側にまだまだ問題はあるのか、または臨床研修のほうに問題が多くあるのか。学校 側もまだまだ平均的に実習が全然足りない学校が多くあるのか。先生の学校は特別いい 学校なのか、その辺のところをお聞きしたいと思いました。 ○齊藤校長 ご質問、ありがとうございます。私の学校が特別とは思っておりません。 ただ、総合実習というものを3年次の最後に計画していて、これは、いま都立が7校あ る中で当校だけがやっている状況です。これはかなり臨床とのご相談の上、進めていく ことを早いうちからやっておかないと、なかなか難しいというのがあります。今まで1 対1の看護で学生は実習をすることが伝統的な実習のスタイルでしたが、それでは実務 で対応できないということがあり、当校は3年目になりました。新カリキュラムの中で もこの統合実習の位置づけというのは重要性が言われていますので、先がけてよかった のかなと改めて思っているところです。  また先日、都立病院の部課長会でも新カリキュラムのご説明をさせていただいたとこ ろ、当校の卒業生が卒業の病院での院内研修でいろいろな学びをするときに、4年目の 人と同じような学びの内容が出てきているというお言葉もいただき、やはり経験させる ことの重要性というのを再認識しています。 ○阿真委員 ありがとうございます。 ○坂本委員 いま、ご質問いただいて齊藤先生がお答えになりましたが、私は早く行っ て何かをしなければいけないと思わせるところが問題だと思います。できるわけがない のです。2年、3年経ってもできなくていろいろ考えているわけですから、少しの経験 できちっとそれを内省させる。そういうことをして、行なうときはまず何からやってい けばいいのか。できなくても別に今はいいのだということを考えさせる教育をしなけれ ば、現場も焦せる、教育側も焦せるのでは、何をいくつ教えればできるのかといったよ うなこういう意見ばかりが出てくるのは当然です。だから早く行って何か役に立ちたい と思っても、現場に行ったらでできなかったと悩むのは当然です。現場ではそう簡単に 実施されたら困るのです。そうはいっても、臨床側の一部も早くなってほしい、1カ月、 2カ月で夜勤に入ってほしいと思ってしまうのも事実です。しかし無理です。ここをも う少し私たちは看護学という教育について、きちっと本当にわかるというのはどういう ことか、置かれたときにどういう立場をとればいいのか、それを学ばせる教育をしない といけないと思っています。臨床側でも思っていましたし、いま大学に籍を置いた中で、 思っています。とにかくそこが大事だと思います。  そのためには教員に余裕がないといけないと思います。教員は現場が求めるものを教 えるのだという感覚では、学生たちを苦しめるばかりす。私たちは学生に対してもう少 し余裕を持たなければいけない。余裕のためには草間委員がおっしゃったことがそうだ と思いますが、3年では限界です。基礎教育をそのように整備しなければいけない。基 礎教育とは何かというと、教えすぎていると私は思います。経験をいっぱいさせても、 受ける側がそれだけのキャパがなければ経験はいくらやっても駄目です。臨床側は学生 に多くのことを「来たら経験させてあげたい」と言うのですが、たくさん経験させても 受けられない。だから1つを経験させてそれを内省させるという方法を取り入れ、考え る力をつけなければいけないと思います。  それから基礎教育の期間は大事で、保健師、助産師のことが出ていますけれども、保 健師の実習は限界です。4年制の大学で保健師になった学生に対して現場の声を聞くと、 あんなことしか学んでこないのならもう要らないとも言う声も聞きました。これは看護 師教育と保健師教育をやっているけれども、期間的に限界があるのと、保健所や医師会 の人たちにもお世話になって1日だけ行って見てくるとか、1日だけ在宅に行かせると か、あんな保健師教育で本当にいいのだろうかと私は思います。それが草間委員がおっ しゃった保健師教育の受け側の限界があるということです。そこらをちゃんと整理しな いといけない。ただ学生が、患者さんに何かしてあげようと思っていて、すぐできない。 私はできないとすぐ考え、向いてないと考えてしまう。仕事ができなかったから辞める と、そんな単純な話で物を片付けるような教育をしてはいけないのではないかと思いま す。 ○中山委員 いま、委員の方から年限の問題も含めて出ていますが、私も今日に臨むに 当たり、これまで出された検討会、懇談会の記録を全部見てきました。いま、看護師に 期待されていることから考えれば大学4年制課程が望ましい。どう実行するかは別にし ても、いま看護師たちに求められている基礎能力は何かと言ったら、大学を出るレベル であるということはどこでも書かれている。それが将来的な展望であるし希望であると いうことの合意は、看護界においてもそんなに齟齬はないと思います。  いま坂本委員から、かなり整理されて話が出ましたけれども、どこまでを基礎教育と 考えるかということの問題なのだと思います。私は今回のこの委員を引き受けるにあた り、もう一遍、パラダイムシフトではないけれども、看護学の基礎教育が免許に縛られ るのをやめてみたいと、これはいちばん最初に私が発言したことでもあります。看護教 育の基礎教育の中身は何なのか。それに伴って、草間委員が言われるように本当に保健 師がいまあるような形でなく、もっと高い専門性を持った例えばパブリックヘルスナー スとして、きちっとしたものを持つとすれば、それは専門性が高くなることだと思いま す。それを今の4年の基礎教育の中に入れるのは無理です。  しかし、いま求められている看護職は、ここに書かれているように高度医療もそうで すし、予防から在宅まで看護師に求められているのだとすれば、今まで私たちが保健師 の教育として保健師課程でやってきたことの部分も入ってくるわけです。ここで整理し ていただきたいのは、どこまでを看護の基礎教育とするのか。それに伴って年限は何年 にするのかです。今日、太田委員が言われたパラダイムシフトはみんなの印象に残って いると思いますが、そのパラダイムを変えた中で、看護師の基礎教育としてどこまでを 求めるのかということで、決めていただけるといいなと思っています。私は大学をベー スにすることの合意はほぼできていると思います。ただし、これもどのぐらいの時期に、 どのぐらいの人たちを大卒にするのか。5万人くらいの看護学生が国家試験を受けます が、このうちの全部を一気にすることはできないとすれば、どのくらいの人をどうやっ ていくのか、もう少し具体的な議論をする必要があるのかなと思っています。 ○田中座長 時間の都合で、たぶん最後かと思います。 ○吉田委員 いま、中山委員のご提言、それから森委員のご示唆、そして齊藤先生の養 成校としての考え方、小山先生の大学等の考え方、それぞれあったと思います。私は経 営者ですから、経営者としての視点から物事を考えさせていただきたいと思います。い ま高校卒業で4つの養成コースがあるのですね。専門学校の3年、定時制の4年、4年 制の統合カリキュラムを卒業する、大学・短期大学、その他の指定養成校は3年ですね。 そのほかに高等学校の5年間の一貫教育もある。これも同じ正看が取れることになって います。それから当然、進学コースの准看を養成してから3年の経験を持ってやる。最 低限、6つの養成指定校がある。  3年を4年にするのはそんなに異論はないと思うのですが、経営者的発想から言わせ ていただくと、4年にした場合にどんなリスクがあるのだろうということがあると思い ます。第1点は、大学に象徴されるように大学神話、大学コンプレックスがあり、大学 を出ていない者が大学を進めたがる要素がある。4年制にした場合に土地の確保、教室 の確保、学内の実習施設の拡充、加えて最大の問題は先ほどから出ている臨地実習が、 齊藤先生もご経験なさっていますからおわかりだと思いますが、大学、専門学校、養成 校が全部取り合いなのです。うちの学園で言えば札幌にいながら倶知安まで行くのです。 齊藤先生の所は都立病院があるわけですが、我々はないですから倶知安まで行くのです。 そこには私どもの教員が付いて行って、そこで生活しなければならない。これだけの弊 害がありますから単純に4年制の大学がいいということにはならない。制度を改正して、 こういった経営資源の補助をちゃんと国がやってくれるのか、くれないのか、それによ って物事を判断しなければならないと思います。いまのままでは、4年制に移行という のはほとんど不可能だと思います。是非、お考え願いたいと思います。 ○田中座長 ありがとうございました。両方の側から意見が出たところで、12時10分 まで時間を頂戴して、もしお時間のない方は退席いただいても結構ですが、もう1つ事 務局から必ず触れてほしいと言われている議題があります。それは検討課題として、看 護教育の中に看護職員が専門性を持ってキャリアアップできる仕組み、インセンティブ の付与等の支援策というテーマがあって、先ほどの資料2-2でも後半はそれになってい ます。認定看護師の資格を取得した後の勤務条件とかいろいろなグラフが載っていまし た。これについて何かご意見がおありでしょうか。専門看護師の資格を持ちたくなるよ うなインセンティブの付与を何か支援できないかについても、意見をいただきたいとい うわけです。これも第1回にいただいた検討課題で、ここは1項目入っていますから意 見なしに答えを書くわけにいきません。お願いします。 ○森委員 専門看護師について述べさせていただきます。専門看護師の場合は修士課程 を修了した後、1年の専門看護師としての実務経験を求められています。そのような場 合に専門看護師として就職できる病院がなく、専門看護師の成り手がいない現状があり ます。ある看護部長さんに「専門看護師になってからいらっしゃい」と言われ、そう言 われたら認定試験を受けるための実務経験が積めませんから、なかなか専門看護師にな れないのが現状です。そういった意味で専門看護師の雇用を推進していただけたらと思 います。よろしくお願いしたいと思います。 ○井部委員 専門看護師や認定看護師につきましては、広告に盛り込んでいただいたこ とには大きなメリットがあると思います。病院を選ぶときに医師のみならず、どういう 領域の専門看護師や認定看護師がいるのかということで、病院を選ぶということもあり ますので、ある意味で病院の経営や患者が適切な医療サービスを受けるという点では、 1つ大きなインセンティブになっていると思います。それと、それぞれが独立した実践 ができるような権限を付与することにより、給与の面でも、それを反映した賃金の配分 を経営者がすることが可能になるのではないかと思います。 ○坂本委員 私もずいぶん専門と認定を雇って、いろいろ活躍していただいた経験を持 っているのですが、今までの病院の仕組みというのは主任になる、師長になる、副看護 部長、看護部長になるということだけで役職手当が上がっていくのです。彼女たちは素 晴らしい仕事をしているのですが、それを何とかしてプラスにしてあげる方法というの がなかなかないのです。それで病院長に任せるかと言ったら、病院長も雇われている方 が多いわけですから、それをプラスアルファにするのはなかなか難しいと思いますので、 できればモデル的な支援をしていただいて、活躍に対しては、こういうふうにしてプラ スしているのだというところを国もある程度支援していただき、その役割を認めていく やり方もしていただきたいと思っています。人事考課等で認めていく方法もあるのです が、もう少し形として見える形が、国のサポートでできないかなと思います。 ○深田総務課長 国立病院機構は、ちゃんと手当が出るような仕組みになっていたと思 います。 ○田中座長 資格を取るとですね。 ○坂本委員 それはいくらですか。5,000円とかではないでしょう。 ○吉田委員 質問ですが、今まで4つの大変重い内容のものを3回やってきて、1月に 最終的にある程度まとめに入るということですけれども、本当にこの程度でまとめにな るのでしょうか。それが不思議で仕方ないです。チーム医療にしても先ほど井部委員か ら質問がありましたとおり、チームとは一体何ぞやと言ったときに医師と看護師だけで はなく、先ほどいろいろ書かれていた医療従事者が全部入るとなっていたとしても、そ の方たちは全くこの場にいないわけですから、本当の意味のチーム医療なんて語れっこ ないわけです。ですから本当にこの3回程度で、ものすごく重いこの4つの項目をちゃ んと担保できるだけの結論が出るのか、とても私は不思議だと思います。 ○田中座長 大臣の検討会は医療についても介護についても、みんな期間がとても短い のです。そこで絶対的にこれしかないと書くように求められているわけではなくて、こ ういう問題を私たちが共有することに価値があるのだと思いますが、事務局側からも一 言お願いします。 ○野村看護課長 座長のおっしゃるように、大臣からは11月の半ばに検討会設置の指 示があって、最初は12月中にまとめるということでした。それを1月半ばに延ばして いるという状況です。それで開催要綱にも書かれていますが、具体的な課題を把握し、 基本的な方向性について検討を進めていくということが、この検討会の趣旨になってい ます。ですから、現下の看護に関わる4つの課題について、基本的な方向性についてま とめていく、そして中間取りまとめという位置づけになるかなと思っていますが、そう いった押え方をしていただければと思っています。 ○田中座長 たった1つの正解を書くことを求められているのではないのだと思います。 患者、国民の代表の方々、看護師の方々、医師の方々、私たち社会科学系の人間が集ま って、何が問題かの理解を共有する。しかし、一人ひとりの哲学なり方法論によって答 えの方向は1個ではないと思いますけれども、問題点を共有する。その中でどこが大き い問題かが分かってくる中間報告だと思います。12月にまとめろと言われたのが1月に 延びたようですが、発言のなかった秋山委員、最後に言っていただきましょうか。 ○秋山委員 私は前回の看護基礎教育のあり方に関する懇談会のときも、在宅の立場か ら発言させていただきましたが、在宅ではチーム医療に関わる調整の能力というのが非 常に問われています。坂本委員が予測力ということを言われましたが、チーム医療とも 絡めて基礎教育の中に、調整能力が育つというか、それが備わるというよりも育つ芽を 持った人をつくっていただきたいというのが、いま在宅をやっている者の意見として、 ひとつ述べさせていただきます。 ○田中座長 ありがとうございます。意見書はフォーマルに提出していただくと、いず れ付属資料として公開されるわけですね。報告書の中にどこまで書くかは別として、配 付資料の形では残ります。そういう意味でご自分の意見を述べていただきたいと思いま す。次回の中間取りまとめのたたき台に備えて、意見があればペーパーでご提出いただ きましょう。 ○大熊委員 2つ資料がほしいのです。これはとても誤弊があるのですが、私、ビジョ ン懇のときに大学医学部の学納金と偏差値の関係を調べてみたのです。そうすると、学 納金が多い大学の卒業生ほど偏差値が低いというきれいな相関が出て、これは医師を養 成していく上でとても重要なデータでした。本当に偏差値だけで人間は計れないとは思 うのですが、予測力とかそういうようなことを考えると、あまり学習能力のない方が入 られるのは困ったことなので、それぞれの養成校ごとに偏差値がどんなふうに分布して いるか調べることができれば、拝見させていただきたい。先ほどの学納金と偏差値は、 医学部受験.comというホームページから取ってきたらできたのですが、いまの私の疑問 については、どうやっても入手が不可能だったものですから、もしご専門の皆さんでそ ういうことができたら、次回の資料にしていただきたい。 ○田中座長 それは事務局というよりも委員側で。 ○大熊委員 事務局にまずお願いし、事務局が難しかったら。 ○田中座長 微妙な問題なので、どこまでできるかちょっとわからないですけど、こう いう問題は本当はできるだけ我々の間でデータを持っている形がいいかもしれませんね。 ○井部委員 私、以前にデータを教えてほしいとお願いしましたけれども、今日の看護 教育のあり方について資料2-2の9頁に、基礎教育の課程別学校数と専任教員数と1学 年定員数とあります。この下の大学はたぶん看護系の大学だと思いますので、医学部が どうなっているかについて数字を教えていただくと、ありがたいです。 ○田中座長 それは文科省に頼めば、手に入ると思います。 ○坂本委員 先ほど森委員がお話されたことが、何となく言われただけで終わっていた ような気がしました。森委員が言われた学士課程での教育は必要だと思うことについて は、学士という名前であるということと、プラス、吉田委員がいろいろな課題が多いと 言われた中でも教育期間は重要だということで、ここは賛成させていただきます。  次に助産師教育の話ですが、森委員は千葉大学の学部長のお名前で、助産師は4年制 の中でということを言われ、効率的には682人出ているので効率がいいとおっしゃって いますが、もしかして効率は悪いのではないかと私は思います。先ほど保健師の話ばか りしましたけれども、大学院が118課程ある中で、例えば1つの大学院が15人増やし たら900人の養成が可能になっていくわけです。そういう意味では、果たして看護学部 の4年間の中で、保健師と助産師を育成していくことが本当に効率がいいのか、資源活 用ができているのかということについては疑問があると思います。基礎教育については 森委員と同じ意見です。  例えば、志願者を断っているとおっしゃったことと、国立大学の中での合意を得るこ とが難しいのでとおっしゃったので、こういうところは課題として、何とかして志願者 を増やしていくことをしていかなければと思います。産科医療の問題は喫緊の問題で、 助産師のレベルと数を多くしないといけない課題を抱えています。何となく看護のほう がたくさん語られていて、実は私は助産師ですが、助産師は病院で取り合いなのです。 助産師が少なくなって本当にドクターの疲労が重なっていることもありますし、産婦さ んにとっても24時間付いてくれる助産師がいないことは大変問題ですので、ここにつ いては私は森委員とちょっと違いがあるということと、実は井部委員は日本看護系大学 協議会の会長ですので、会長としてご意見を伺いたいと思います。 ○森委員 大学院で助産師教育ができないかを補足説明したいと思います。例えば、定 員20名の助産師養成のための大学院をつくり、保健師助産師看護師学校養成所指定規 則に則って助産師学校の指定を受けるためには、20名の学生に対して3名の専任教員を 配置しなければなりません。その専任教員は学部とは別に確保しなければなりませんの で、3名の教員の増員が必要になります。入学定員が20名増える分、入学料・授業料収 入は増えますが、国から大学へ支給される運営費交付金は、それらと同額分減らされま すので、大学としての収入が増えることはあり得ません。しかも、国立大学法人になっ て運営費交付金は毎年1%減っています。定員が増になっても収入は増えないという仕 組みですから、現行の制度の中では教員を増やしたくても増やすことができません。私 たち助産師教育を担当している立場からすれば、学生の志願者は多いのに、それに応じ ることができないのが歯がゆいことです。ですから、現行の4年制看護系大学の中でも 専任教員をもう少し増やすしくみを考えて実施していただければ、学士課程でもう少し 多くの助産師養成ができるのではないかと思い、提案させていただきました。 ○田中座長 一応、終わりにします。 ○井部委員 もう一言、言いたいのですが、国立大学法人の問題で、ひょっとしたら100 年ぐらいの計をいまやっているかもしれないのに、そのことで志を低くすることはでき ないと思います。現に聖路加看護大学では助産師教育は修士課程でやっているわけで、 希望者が多いわけです。したがって国がそのことの価値を認めて、きちんと交付金を出 すといったことをやればいいのであって、だからといって学部の中でしなければならな いという限定はしないほうがいいのではないかと思います。 ○田中座長 いずれにしろ、この検討会は明日とりあえず応急的に何とかすると求めら れているのではありません。 ○吉田委員 座長、次の第4回の時までで結構ですので、厚労省と文科省にお願いです が、実際に補助金が出ている所と、出ていない所がはっきりして、専門学校はゼロです し、私立の大学については全体で3,200億円ですが、実際に補助金はどの程度出ている のか、個々に調べてきていただきたいのです。 ○田中座長 可能であればお願いします。何と3時間にわたって議論しました。休憩も なしでありがとうございます。話題提供者の先生方、ありがとうございました。次回の 会議ではいくつかの資料提供要求のうち、可能なものについてはお願いします。今まで の3回の会議での議論を踏まえた中間取りまとめ案について検討します。本日、発言で きなかったご意見はペーパーにまとめてご提出ください。次回の日程についてご説明を お願いします。 ○間企画官 長時間のご議論、ありがとうございました。次回、第4回会議は年明けの 1月21日(水)、夜6時から8時までを予定しています。場所は厚生労働省9階省議室 を予定しています。また本日、齊藤先生の話題提供でお話があったこの1枚紙ですが、 肖像権の問題もあるようですので事務局で回収させていただきます。大変ご熱心にご議 論いただいた関係で、次の会議が控えています。誠に恐縮ですが会議終了後、速やかに ご退席いただければと思います。以上です。 ○田中座長 ありがとうございました。 医政局看護課 照会先:看護課課長補佐 島田(4167)     看護課課長補佐 中谷(4166) 電話:03−3595−2206