08/12/17 第5回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会議事録 第5回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会議事録 1.日時:平成20年12月17日(水) 10:00〜12:10 2.場所:厚生労働省共用第9会議室 3.出席者: <五十音順> 大川弥生委員、大橋謙策委員、大日方邦子委員、河原和夫委員、木村隆次委員、齊藤秀樹委 員、佐藤修一委員、佐藤久夫委員、藤田伸輔委員 事務局  人口動態・保健統計課長、疾病傷害死因分類調査室長、国際統計基準分類専門官 4.議 題  (1)委員長の選出について  (2)WHO−FICインド会議の報告について  (3)国際生活機能分類−小児青少年版(仮称)の日本語訳検討状況について  (4)国際生活機能分類の変更が必要な用語について  (5)事例報告  (6)その他 5.議事内容 ○事務局  それでは、予定の時間になりましたので、第5回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門 委員会を始めたいと思います。  それでは、開催に当たりまして、事務局、人口動態・保健統計課長からごあいさつをさせてい ただきます。 ○人口動態・保健統計課長  本日はご多忙の中、本委員会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  ICFは生活機能という人間を総合的にとらえた観点からの分類として平成13年、WHOの 総会で採択されたものでございますが、本委員会は平成18年にWHOのWHO−FICネット ワークの中に生活機能分類について検討するグループが設置されたことを受けまして、そういっ た国際状況に対応いたしますとともに、また、国内におけるICFの正しい普及啓発を図るため に、社会保障審議会統計分科会の中の専門委員会として設置されたものでございます。  委員の皆様はお忙しい方々で誠に恐縮でございますけれども、本委員会の審議にご協力を賜り ますよう、何とぞお願いを申し上げます。よろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、お手元の資料のご確認をいただきたいと思います。議事次第、資料1−1「WHO −FICインド会議について」、資料1−2「WHO−FICインド会議におけるFDRG(生 活機能分類グループ)の報告」、資料2「「生活機能分類−小児青少年版(仮称)(ICF−CY) の日本語版作成のための検討会」での検討状況について」、資料3「国際生活機能分類の変更す べき用語について」、資料4−1「事例報告(大川弥生専門委員)」、資料4−2「事例報告(藤 田伸輔専門委員)」でございます。  それでは、本日は本委員会、本年度第1回目の会合ですので、委員のご紹介をさせていただき たいと思います。  大川委員。  大日方委員。  河原委員。  大橋委員。  木村委員は少々遅れるという連絡が入ってございます。  齊藤委員。  佐藤修一委員。  佐藤久夫委員。  藤田委員。  本日は、安西委員と中川委員が欠席とご連絡をいただいております。  議事に先立ちまして、運営について説明をさせていただきたいと思います。本委員会ですが、 社会保障審議会のもとにある委員会として、社会保障審議会運営規則に準ずるということで運営 されます。会議は原則公開となります。議事録も原則公開されることをご了解いただきたいと思 います。  事務局は、統計情報部人口動態・保健統計課疾病傷害死因分類調査室が務めることになります。  それでは、議事に入らせていただきます。委員長が選任されるまでの間は、事務局が議事を進 めさせていただきます。  議事の1番目、本委員会の委員長の選任を行いたいと思います。委員長は委員会の委員の互選 により選任することになってございますが、いかがでしょうか。 ○河原委員  この分野も含めまして、社会保障制度全般にご造詣が深い大橋委員をご推挙したいと思います。 ○事務局  皆さんよろしいでしょうか。  ご異議がないようですので、本委員会の委員長は大橋委員にお願いしたいと存じます。それで は、よろしくお願いいたします。   ○大橋座長  改めまして、おはようございます。ただいま皆さんからご推挙いただきましたので、この専門 委員会の委員長を仰せつかりますが、どうぞよろしくお願いいたします。  私自身は、社会事業大学の学長でございますけれども、ここでの立場は社会事業大学の学長と いうよりも、そこに書いてございますが、日本社会福祉教育学校連盟の会長という立場と、ソー シャルケアサービス従事者研究協議会の会長という立場で今日は出席させていただいています。  学校連盟というのは、今178の4年制大学と65のマスター、35のドクターが加盟している組 織でございまして、国際学校連盟の日本連盟ということでございます。この学校連盟には社会福 祉士、介護福祉士、精神保健福祉士などを養成している大学が基本的に入っているということで ございますので、私個人としましては、この学校連盟の教育研究を通じてICFの普及が図れれ ばと考えているということでございます。  一方、ソーシャルケアサービス従事者研究協議会の会長ということになっておりますが、これ は2000年につくられた組織でございまして、私が日本学術会議の幹事をしている際にこの組織 をつくらせていただきました。日本学術会議として登録している学会は今27学会ございますが、 その27学会にプラスして社会福祉の職能団体というのがあります。日本社会福祉士会、精神保 健士協会、医療社会事業協会、介護福祉士協会等の職能団体とそれを養成している学校連盟や社 会福祉士養成施設協会だとか、介護士養成施設協会だとか、そういうところの養成施設が加盟し ておりまして組織がつくられています。そこの代表ということで職能団体あるいは学会を通じて、 このICFの考え方を普及できればという立場で今日は参加させていただいているということ でございます。  ついこの間、日本でも保健医療福祉連携教育学会がつくられたわけでございますが、今後多分、 保健・医療・福祉の連携がますます進むという中で、ICFが共通言語になれば大変いいし、ま た、そのことを通して日本の社会福祉のとらえ方というものが大きく変わることを望んでいるわ けでございます。そんな立場で今日は参加しておりますし、また、運営をさせていただければあ りがたいと思っております。どうぞご協力をお願いいたします。  それでは、議事に従いまして進めさせていただきたいと思いますが、最初に、先ごろ行われま したインドでのWHO−FICの会議の報告について、事務局並びに関係の委員からご報告をい ただければと思います。  では、事務局よろしくお願いします。 ○事務局  資料1−1「WHO−FICインド会議について」でございます。  WHO−FICというのはWHOの分類を管理している団体といいますか、WHOの事務局プ ラス各国の協力者で構成される会議になるわけでございますが、これは1年に1回年次総会とい うものを開いておりまして、そのときに分類を今後どう運営していくかということをみんなで話 し合うわけでございます。その会議の報告をさせていただきます。  今年は、10月25日から11月5日にインドのデリー郊外のマネッサーで行われておりまして、 WHOや各国の協力センターなど約100名が参加する会議になりました。  主な議題についてですが、(2)各種委員会報告で諮問委員会(Council)というところがござ います。ここが今後その分類をどうしていくかということを決める本体でございます。各分野を 話し合うためのレファレンスグループという分科会のようなものがあるのですけれども、その議 長が選出されたということが報告されました。生活機能分類グループ(FDRG)という生活機能 分類を話し合う会議におきましては、ブラジルとオーストラリアが今、議長を務めております。 また、次回の会議の予定として、2009年4月20日から27日に春の諮問会議が韓国で、更に次 回の年次会議が10月に韓国で行われるということが決定されてございます。  続きまして、各レファレンスグループの内容についてご報告させていただきたいと思います。 まずは普及委員会(IC)でございます。本委員会の中では、ICFの普及ということが今回一つ の議題になりまして、ICFの地域のネットワークというものについて報告がなされました。本 会議では、フランス語圏あるいは南米、ヨーロッパから今後地域ネットワークの活動をこうして いこう、あるいは地域ネットワークにおいて会議が開かれましたという活動の報告がございまし た。  続いて、分類改正改訂委員会(URC)でございます。今まで主にICDの分類の改正・改訂 を行っていたわけですが、次回からICFの改正も議題となるということが決まってございます。 そのために、ICF専門の委員長がイタリアから選出されてございます。  教育委員会(EC)でございます。ここではICFの教育に関するカリキュラムがこれまで作 業中だったのですが、その第1版ができた報告がございました。  ターミノロジーグループ(TRG)は、分類に使われる用語について話し合っている委員会なの ですが、ここでICFとICDで使われる用語の整合性について議論を始めようということで話 し合いが始まってございます。  生活機能分類グループ(FDRG)でございます。ここがICFを話し合っている本体でござい ます。ここにつきましては先ほど申し上げましたとおり、オーストラリアとブラジルの方が委員 長に新しく選ばれております。  これにつきまして、資料1−2を見ていただければと思います。FDRGの活動のみをここで特 出しさせていただいてございます。  FDRGにおいては、8つのICFに関する課題について検討グループが別々に組織されている ような構成になってございます。その8つについてここで並べてございます。  (1)ICFのコーディングに考えするルールについて議論を重ねているグループでございます。 今までガイドラインを作成するに当たってその考え方を整理したいということで、ICFの活用 について、例えば、個々の症例を追っていく、あるいは集団に利用するというような考え方を整 理した一覧表がこのたび発表されまして、今後それを基にガイドラインをつくり、最終案の完成 を目指すことを決めております。  (2)ICFの改正ということで、先ほどURCの議題になるというお話をいたしましたが、その ICFの改正を行うためのインターネットのプラットフォームが今回発表されておりまして、今 後どのようなプロセスを踏んで改正していくかという管理プロセスを確立していくという話し 合いが行われてございます。  また今後、ICFを改正していくという上で、ICFから派生した分類としてICF−CYで ICF本体が変更されたものについての改正の提案を手始めに行うということが話し合われて ございます。  (3)ICDとの関係ということで、ICFとICDの両方との整合性をICFの観点から話し合 うということで、こちらで話し合いが始まってございます。  (4)ICFに関する評価や統計的活用。こちらは、ICFをいかにツールとして使っていくかと いうことを主に実例を基に議論しているところなのですが、ここではいわゆるコアセットの開発、 あるいは評価点と既存の臨床的あるいは検査的な測定との関係性や評価点から算出できる何ら かの指標はないかというような研究発表や、その開発に関する経過について報告がなされてござ いました。  (5)教育ですが、これは先ほど言いました教育カリキュラムが発表されてございます。これを基 にインターネットにICFの基礎研修コースをつくっていこうことで、これが現在作成中でござ います。  (6)倫理と人権、ここではICFにまつわる倫理的な課題ということで話し合いが行われてござ いまして、イタリアでこのような問題に関する会議が4月に行われるということが発表されてご ざいます。  (7)環境因子、これはICFに関して環境因子の面で評価の仕方あるいはICFに関して環境に ついて不足している部分はないかということで、それを検討して文書にまとめたいということで、 その作成に取りかかるということが行われました。また、ICDやISO9999との調和を議論す る枠組みを今後決めていこうということで、その検討が開始されてございます。  (8)ICFのターミノロジーとオントロジーというグループがございます。これはICFのオン トロジーを作成するということで分類項目の定義がございますが、それに基づいた情報モデルを 今後つくっていこうということで、話し合いが行われてございます。  次回のFDRGはまだ検討中ですが、ブラジルで7月に行われるという案が今有力でございま す。  資料の説明につきましては、以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。  インドのデリー会議には、佐藤久夫委員も出席いただいているということなので、何か感想も 含めて追加の説明があればお願いします。 ○佐藤(久)委員  久しぶりにWHOのICF関係の会議に参加したということもあるのか、右も左もよくわから ないというか、非常に複雑になっているので、どういう動きになるのかということを理解するの が非常に大変だなという感じを持ちました。  1つは、私は90年代、ICFの成立までずっと参加してきたわけですけれども、それまでは ICFについてだけの会議をずっとやってきたのが、ICFができて以降は、WHOのFIC会 議ということで一緒にやるということになってきたので、この資料1−1にあるように、ICD とICFを合わせた教育の委員会だとかいろいろなものが出てきていて、ある程度そっちにも目 配りをしながらでないと理解できないような感じになってきているということと、資料1−2に あるように、ICF自体についても8つに分かれて、これ以外に主観的次元をどうするかとか、 個人因子をどうするかとか、活動と参加の関係をどう考えるかというのはサブグループができた りとか、非常に複雑になってきていると。ICFをつくるまでの過程というのはゴールがはっき りしていて、みんながこの部分をやっているのだということがよくわかって、大体全体会で全部 をやってきたのが、こういう形で非常に細かく分かれて、これは必然的なことだと思うのですけ れども、できたらそれをどう活用するか、それにまつわるいろいろな課題が出てくるわけで、こ ういうサブグループに分かれると、この課題は俺のところでもやっているので我々と協議してほ しいとか、そういう話がいっぱいサブグループ間でも出てきていたりして、非常にわかりにくく なってきている。  特に、今の資料1−2のFDRGの一番下の(8)ICFにおけるターミノロジーとオントロジー というようなタスクグループについてですが、FDRGの議事録などでは情報科学の専門的な知識 のない人にもわかるように活動を報告しろというのが決定事項にされていたりするくらいで、わ からないのは僕だけじゃないのだなということでちょっと安心したりもするところもあったり しました。  全体的な印象なのですけれども、ICFが2001年にできた段階で課題になっていたようなこ とが、まだまだ解決しないまま7〜8年経っているなと。例えば、活動と参加の区分けをどうす るのかということについてもはっきりしなくて、とりあえずインドの会議でオーストラリアを中 心として検討してきたのですけれども、まだはっきりしないので、4つのオプションの中でどれ をどんな場面でどの国で使っているかの情報を集めようと。こういう場合にはこういうオプショ ンがいいよというような実用例を収集しようと。どれがいいかを決めることを目標にしないで、 とりあえず情報の整理をしましょうということになっています。  評価点についても、問題なしの0から軽度の問題1、中等度の問題2というような評価点があ るわけですけれども、それを一体どういうふうにきちんと信頼度の高い評価点として活用するの かということについてもまだはっきりしないで、そういうものを検討していると。教育・研修に 使うに当たってのモジュールづくりなどもまだ完成はしていない。しかし、素案ができたりして 着実に毎年毎年、相当熱を入れて専門家が情熱的に国際チームでやっていますので、そういう成 果は上がっているなと。間もなくインターネットなどを通じて各国にFDRGで来年辺り承認し て、それを普及するという段階に近づいてきているなというような感じで、日本では上田先生な どが毎年データに基づく提起をしているのですけれども、そういうような活動を日本からも活発 にやれればよかったなと反省しているところです。 ○大橋座長  ありがとうございました。  聞いておりますと、インド会議で新たな段階に入ったかなという実感をしますし、この専門委 員会も従来のICFの考え方の普及というレベルから、それをどう実施していくのか、活用の方 法ということになってくると、ここに指摘された少なくとも8つのこと、プラスαのことを論議 しておかないと、うまくいかない時代に入ってきたかなと今、話を聞いておりました。  どうぞご自由にご質問・ご意見があればいただきたいと思います。これはやり始めるとなかな か細かくて、全体を理解するというのは難しいかもしれませんが。 ○事務局  資料も持ち帰ってございますので、教育カリキュラムも今は第1版が出て、これを基にとりあ えず教材をつくるということになっているようですので、もし、後でご覧になりたいとか送って ほしいということであれば、事務局から提供させていただきますので、ご連絡いただければと思 います。 ○大橋座長  先ほどちょっと述べましたが、保健医療福祉連携教育学会というのが11月に日本でも正式に 発足いたしました。国際会議等は従来行われていたわけですが、日本でも正式に発足しまして、 理事長は新潟医療福祉大学の高橋学長でございますので、私もかかわっておりますが、そういう ところとICFの教育のプログラム等と少し検討してみるということは、あるいは必要になって くるかもしれないですね。  あるいは実施ということになると、隣に木村委員がいらっしゃいますが、介護支援専門員協会 でもそうですが、もう少し広く社会福祉だとか精神保健福祉の分野のアセスメントシートの中に ICFの考え方が入ってくるという意味では、そういう関係者にも少しかかわっていただくとい うようなことを早めにやらないと。電子媒体の話が出ていましたが、幾つかの自治体でも電子媒 体がかなり進み始めてしまっているので、それが福祉の方にも波及しようという流れの中では、 よほどそのところをしっかり知っておかないとまずいのかなということを感じますが、何かあり ますか。 ○木村委員  遅れてきましてすみません。今、お話がありましたけれども、介護支援専門員の養成過程にお いて、2年前に法律改正があり、介護支援専門員は資格の更新制が義務づけられています。です から、5年間にある一定のカリキュラムを受講しなければいけなくなっています。それで今般、 来年春から介護報酬が変わりますが、平成22年から新たなる要綱をつくって、研修の中身を更 に変えていかなければいけないだろうということで、視点がICFから離れるかもしれませんが、 医学的なところが弱いという指摘があります。それは、逆に言うと、共通言語がないというか、 医学という世界でもすごく幅があると思うのですが。そこをどう整理するかということと、先 だって出ました安心な介護ビジョンで、医療職種と介護職種の連携をするということに対する実 習をやりなさいということが報告書にまとめられています。ですから、そういうところでこのよ うなICFの視点で、アセスメントの見る角度をきちんと押さえていかないと、医学的なことが 弱過ぎるとか、地域福祉的なところ、特にソーシャルワーク的なところが弱過ぎるとか、そうい う弱さを出さないように。これからそういうカリキュラムづくりに入りますので、こちらの項目 とかをしっかり入れていかなければいけないかなと感じていたところです。 ○大橋座長  ありがとうございます。是非、カリキュラム改革の中にICFを入れる検討グループでもつ くっていただいて、多分専門家がいっぱいいますから、お手伝いできるかと思いますので、どう ぞよろしくお願いいたします。  それでは、この議題についてはよろしゅうございますか。インド会議以降、かなり急速に動き 始めるという状況でございますので、どうぞウオッチングをよろしくお願いいたします。  それでは、次の議題に移りたいと思いますが、次は、生活機能分類の小児青少年版の日本語版 作成のための検討会での検討状況についてご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいた します。 ○事務局  資料2でございます。  生活機能分類−小児青少年版(仮称)(ICF−CY)の日本語版作成のための検討会をこれ まで2回開催してございまして、ICF−CYというICFを基に派生した分類というものがで きましたのを受けて、翻訳作業を検討会で実施してまいりました。これまでの実績ということで、 第1回は本年6月26日、第2回12月10日、この間に合計4回の原案からのやりとりをしつつ、 項目につきまして日本語訳の作成ということを行ってきました。  先週に最終案ということで、各検討会構成員からの案を取り入れつつ、検討会の構成員長のも と最終案を作成しました。これについては今後、本委員会に報告させていただきました後に、関 係省庁、各関係団体等の意見照会を経まして、最終的な訳を確定し、年度内の刊行を目指すとい うように動いてまいりたいと思ってございます。  本検討会の構成員につきましては、本専門委員会の委員でもいらっしゃいます大川委員と佐藤 久夫委員もメンバーでございます。もしよろしければ、追加的にご説明いただければと思います が、大川委員いかがでしょうか。 ○大川委員  検討は十分に細かいところまでさせていただいたのではないかと思っております。  その前段階と位置付けてもよいかと思いますが、厚生労働科学研究で仲村英一先生、元健康政 策局長の研究班がございましたが、その中でICF−CY検討委員会をつくりました。そこには ICF飜訳時の議論をした方々にも入っていただき、また大橋先生や木村委員、大日方委員、安 西委員などにも入っていただいて検討しました。そこではICFへの改訂の検討のときの基本原 則でした3分の1の研究者・学者、3分の1の専門職、3分の1の当事者の構成で、全員で37 名で行いました。特に、この当事者というのが大事だと思うのですが、十分に議論いただきまし て、そのご意見も検討会に十二分に反映させていただいたと思っております。ですから、内容的 にもかなりきちんとしたものができたのではないかと構成員の一人として思っております。  その際に検討した内容も含め、今後のICF−CYの活用に関しても述べさせていただきます と、ICF−CYと言いましても、ICF本体に、追加の項目があるというような位置付けでし て、それも本当に子どもに特有なものはごくごく一部の項目で、本来はICF本体自体あった方 がいいのではないかというような項目が多くあります。これは後で、プレゼンの機会を頂戴して おりますので、そのときにまた少し追加させていただければと思っておりますが、ICF−CY という特別なものができたというよりは、子どもというのは発達があるから、その分野に関して は深まっただけです。あえて「だけだ」と申し上げますけれども、むしろICF自体がもっと使 いやすく深まった項目が増えたという位置付けで考えていただければと思います。何か新しいも のができた、また子どもではこれだけを使うのだというような誤解が生じないようにするべきで はないかと思っております。18歳未満でもICFでよく、深めてみるときにICF−CYを使 うのです。  それから、25年くらい前、ICIDHがICFの前身になるわけで、そのフィールドトライアル にも参加させていただいたのですが、そのときに、やはり子どもに関して非常に使いづらいとい うのが大きな問題になりました。そのときの記録を持っていまして、それを見直しましたら、そ のときにはICIDH自体が活動レベル、参加レベル、昔のdidability、handicapが非常に項目も 少なくて浅かったので子どもに関しても使いづらいところがあったのではないかという感じが します。ですから、ICIDHのときに問題になりました子どもに関することも、大部分を解決で きるのではないかと思います。  それから、評価点をどうするのかということが課題としてありますが、その検討も様々な子ど もの専門領域の先生方も含めて開始しておりますが、極力ICFとの一貫性を持つべきだろうと いう方針のもとに行っております。これらについても、委員の先生方のご意見を頂戴しながら研 究は進めたいと思っております。  いずれにしましても、ICFの翻訳という観点で言えば十分なものができたのではないかと 思っております。  以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。  佐藤委員、お願いします。 ○佐藤(久)委員  活発な翻訳の議論があって非常に勉強になりました。特に「Children and Youth」という のを仮訳では「小児青少年版」となっていますけれども、いろいろ議論して「児童」としようと いうような提案をすることになったりとか、「Youth」というのが「児童」の中になじまない部 分があるかもしれませんけれども、そういう理解で18歳前後を含めるのだというような理解で やればいいのかなと思います。  子どもの領域でも結構日本でICFが使われているので、学校教育の領域などで使われている ので、そういうものの実践の交流みたいなものを日本語訳の出版に合わせてセミナーでもやって いただくといいのかなと。このICF−CYをつくる中心になってきたアメリカのルネ・シネン ソンさんという人が、しょっちゅう日本に来ている日本のファンという人でもあるので、経過だ とか本質について述べていただいて、あと、障害児教育の領域だとか、医療という領域での活用 例などを交流するようなセミナーなどが開かれると、すごく役に立つのかなと思いました。翻訳 とはちょっと違った話で申し訳ないのですけれども。 ○大橋座長  ありがとうございました。  私の記憶に間違いがなければ、昨年の委員会で一度、途中経過で報告があって論議をいただい たかと思いますが、今回は最終的な翻訳になるということかと思いますけれども、何かこれにご 質問・ご意見ございますか。  訳の方はいいですけれども、活用の仕方はもっと大変ですね。特に、子どもに関して活動と参 加を考えていくと、教育全部であり、もっと広く言えば子どもの権利条約全体との絡みだとか、 相当論議をしなくてはいけない問題も出てくるかなという気がいたしますね。 ○藤田委員  ちょっと教えていただきたいのですけれども、ICFの中では日本語特有の問題というのが余 り書きやすくないといいますか、平仮名、片仮名、漢字というものを区別して記載することがで きないというのが、大人ならいいかなとも思うのですけれども、子どもの場合は随分問題がある ように思うのですが、その辺りは解消されるのでしょうか。 ○大川委員  すみません、もう少しご質問の趣旨をお願いします。 ○藤田委員  外国だと、アルファベットが読めれば読めるよということになってしまうのですけれども、日 本語の場合は片仮名が読める、平仮名が読めるというレベルと、漢字が読めるというレベルで、 かなり生活に機能上問題が生じてくると思うのですが、それが特に知的障害の方ですと、どこの レベルに達しているのかということが生活の質を大きく規定すると思うのですが、そういうこと を記載するような項目が立っているのかどうか知りたかったのですけれども。 ○大川委員  まず、生活機能の3つのレベルの中で言えば、心身機能と活動と両方の面でその内容は記載で きると思います。漢字、片仮名、平仮名については、お子さんだけではなくて大人の場合でも例 えば失語症の場合には、日本人は漢字の方が表意文字で、平仮名、片仮名は表音文字になるわけ ですから、むしろ漢字の方が表意文字で使いやすいというようなことがあります。ですから、こ れはICF−CYだけではなくてICF本体のときにも大きな問題になってきます。  そのように要素として見る場合に関しましては、心身機能の該当事項がありますのでそれで評 価することになります。ですが、実際の生活上、例えば、先生もMDでいらっしゃるけれども、 MDだったらば意外と失語症のときも自分が日ごろ使いなれているカルテに書くような用語は 結構残るのです。けれども、ほかの用途の言葉であれば、なかなか残らない。活動レベルでどう いうものであればどのように使えるのかを記載することになると思います。  ですから、これはICF−CYだけの問題ではなく、ICF自体で表記はどこに分類するとい うことであり、それは可能です。ただ、それが細かな片仮名、平仮名であるとか、そういうこと が項目立てをされているのかということで言えば、項目立てはされていません。ですが、それは この問題だけではなく、ほかのことに関しましても、どこまで細かい分類をするのかということ は議論しなければならないことでしょうけれども、該当する項目は少なくとも「その他の特定の」 というカテゴリーとしてある、とお考えいただければと思います。 ○佐藤(久)委員  どの項目でしたか、例えば、言語的なコミュニケーションの能力とか、あるいは非言語的なコ ミュニケーションの能力というようなラフなくくりにとりあえずはなっていて、それを日本で平 仮名までは使えるとか、そういうふうに細分化してやるのは日本でやるしかない話だと思うので すよね。大川委員が今言われたように、言語体系が国によってうんと違うので、やはりラフなも のしかとりあえずICFでもICF−CYでも設定できないという事情は同じだと思います。 ○事務局  ICFは勿論、国際的な分類なので文化の問題が一つあるのかなと思うのですが、これがその まま日本の生活習慣に当てはまるかというと、必ずしもそうではない部分があるのかなと。例え ば、座るときに正座をするとか、布団を床に敷いて寝るとか、そういう視点はこの分類にはなか なか含まれていない場合もある。それは勿論、日本だけの事情ではなくて、これを使用する西洋 圏以外の国においても、例えば、ベッドでは寝ないのだけれどもというような意見も勿論あるわ けで、先日のインド会議でもそのような話をWHOの担当者としたところ、それはいい視点だと いうこともあるので、それが日本だけの問題ではないのだとすれば、そういう世界中の人がもっ と違う生活をしているのだというような意見は今後、ICFを改正していく上で、勿論あるべき 視点だと思いますので、改正のプロセスの中ではそういう意見も言っていくようなことも今後考 えていいのかなと思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。  いろいろあろうかと思いますが、とりあえずICF−CYの日本語版ができ上がるということ になるかと思います。この後は、先ほど述べたようないろいろな活用の仕方を少し考えていかな ければいけない段階に入りますので、またいろいろご意見をいただければと思います。  それでは、次の議題に移らせていただきます。議事4でございますが、資料3に基づきまして、 国際生活機能分類の変更すべき用語について、事務局からお願いします。 ○事務局  前回の委員会でICFにつきまして、一部現状に即していない用語が使われているというご指 摘を、河原委員からいただいたと記憶しております。もう一つは、ICF−CYの翻訳作業の過 程で、これは直した方がいいのではないか、誤りではないかというような部分も出てまいりまし た。本専門委員会で、それを報告させていただきご意見を伺いたいということです。  資料3でございます。変更すべき用語についてということで、4つ整理をさせていただいてご ざいます。1番目として、いわゆる行政的に改正したということで、法令の改正等に基づく名称 の変更。この中で該当したのは、「痴呆」でございまして、1か所、b117に出てまいりますので、 これを「認知症」と改めた方がいいのではないかということでございます。  もう一つ医学の進歩に対応した名称の変更というものがありますが、これについて該当はあり ませんでした。  ISOとの整合性を図るための変更ということで、これは大川委員からご意見をいただいたの ですが、ICFの中では「Products」という英語を「生産品」と訳してございます。ただ、IS Oの国際標準の翻訳の中では、「Products」は「製品」と翻訳されていることがほとんどでござ いまして、これは改めた方がいいのではないかという意見をいただいてございます。資料3別紙 の資料がございます。ここで「生産品」がどれくらい登場しているかということを並べてござい ます。「Products」という用語はこれだけ出てくるわけでございますが、これを「製品」にする ということで、かなりの「生産品」が「製品」に変わるということをイメージしていただくため に、この資料をつけてございますが、変更してはどうかという提案でございます。  もう一つ、誤訳と思われる箇所というものがございまして、b147の項目の中で「論理的思考 の機能」という用語が説明書きに入ってございますが、これは日本語にはありますが英語にはな いということで、間違いであろうということで削除してはどうかということ。  もう一つは、静脈の機能というb4152の項目の中で「機能障害の例としては、静脈弁閉鎖不 全(静脈拡張、静脈狭窄、静脈瘤)」という翻訳にしていたのですが、そうではなくて静脈狭窄 は静脈弁閉鎖不全につながるのかという意見もございまして、元の英語を直訳したような形で 「機能障害の例としては、静脈拡張、静脈狭窄、静脈瘤でみられるような弁の閉鎖不全」という 翻訳にしてはどうかという提案でございます。これを見ただけではわかりづらい部分もあるかと 思います。一応、ご参考までに本は手元に置かせていただいてございます。今すぐ決めるという 話でもなくて、また後でご意見を伺えればと思いますが、とりあえず説明は以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございます。  それでは、大川委員、何か補足がありましょうか。 ○大川委員  「Products」を「製品」に訳すという件ですが、これはICFの翻訳のときにも生産品の他に 適切な用語がないかということで検討事項になっていた項目です。これは私個人の意見と言いま すよりも、先ほど申し上げました委員会の中で、工業系の研究者と、ISOやまたISOは各国 一機関が参加するということになっておりまして、日本では日本工業標準調査会というのがその 機関になっておりますが、それなどにも関与していらっしゃる方々にも入っていただいておりま して、そのときに「Products」は「製品」というのが適切であろうというご意見を頂戴しました。 調べましてもそれが適切ではないかということで、意見を提出させていただきました。 ○大橋座長  ありがとうございました。  ここで承認するというか、そういう報告があって、意見があれば後ほど出していただくという 取扱いでよろしいのですか。 ○事務局  一応これについては、年内までにご意見をちょうだいできればと思います。それで特に意見が なければ、このまま訂正をさせていただくということにしたいと思います。 ○河原委員  ちょっと今思い出したので申し訳ないのですが、2番目の医学の進歩等のところで、例えば「色 盲」というのが「色覚異常」と眼科学会とか日本医学会の用語で言っているので、もし該当して いたら、その辺り訂正された方がいいのではないかと思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。  先ほどの資料1−2「WHO−FICインド会議におけるICFの動向」の(7)環境因子のとこ ろで、ICDやISOとの調和を議論する枠組みを検討とありますが、ISOはこれ以外にもい ろいろ出てくる可能性は現にあるのでしょうか。 ○事務局  このような用語の標準化を行っている機関ですので、勿論出てくる可能性はございますが、今 そちらに上っているのはISO9999でございまして、身体障害者用技術補助器具の分類用語とい うことでございます。 ○大橋座長  わかりました。  それでは、先ほど事務局からございましたように、年内にご意見があればいただくと、なけれ ばこれで確定すると。その上で今、河原委員からご指摘のあったことについては、どう見ても時 代的には間違っているかと思いますので、それも付け加えさせていただいて、該当部分は変える というように取り扱わせていただきますが、よろしゅうございますか。  ありがとうございました。  それでは、この後は少し時間をいただきまして、事例報告をいただきたいと思っております。 大川委員と藤田委員にお願いしてございますが、大川委員にはリハビリテーション、老人医療の 分野からお願いしたいと考えております。  それでは、資料4−1でございます。よろしくお願いいたします。 ○大川委員  資料4−1「ICFの活用」という1つにとじていただいたものと、(資料4−1)資料1〜 (資料4−1)資料15までを使わせていただきます。  私は先ほども関係することを申し上げましたが、ICFとの関係は前身のICIDHが日本で フィールドトライアルを始めたときに手伝いをさせていただいたところから始まります。内科の 大学院を出まして、リハビリテーション医学の研修を始めました。リハビリテーションと言いま すと機能訓練という誤解も一部であるようですが、そうではありませんで、私が指導を受けまし たところは、リハビリテーションは全人間的復権であるというのが基本的な考えでやっておりま した。  これ(スライド)が、そのとき使っていた処方箋の形式がたまたま残っていたものですから持っ てきたのですが、医師が理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなどに処方箋として出す ときに、何をするかというだけではなく、まず課題・問題を一緒に共通認識としてもたなければ いけないという考えで、そういうリストも含めて処方箋という位置付けでやっておりました。  A4サイズでの見開きA3という形になるのですが、まず疾患、これは合併症まで含むもの、 次に二次的合併症、リハビリテーション関係でしたら廃用症候群などございます。  次にこれはICIDHのときですから障害の3つのレベル、まずICFの心身機能に該当します 機能障害、能力障害(現在の活動)、社会的不利(参加レベル)です。それから、主観というこ とで心理的な面の欄も挙げております。  各項目毎に右側にも枠がありますが、それは過去の状態を記載するものです。  ついで、全てのレベルについて、予後も診断としては大事ですので、その記載欄があります。  私がリハビリテーション医学を始めましたときに、最初にこの処方箋に書くときに困ったのは、 この項目は機能障害なのか、能力障害なのか、社会的不利なのか、とどのレベルに該当するのか が非常に迷ったところです。ただ、そこを十分に迷ったのが非常に効果的であったなと今では 思っております。  この処方箋が一例ですが、一人一人の患者さんの診察・診療のときからこのような観点でやっ てきたというのが、まず前提でございます。  このようにしてやっていきますと、ある時点から、これはマイナスしか見ていないのではない かと思うようになりました。ところが、目標の具体的なものは、むしろプラス面なので、非常に 乖離があるなと思ったのです。そこでその後は、例えば機能障害レベルとか、能力障害レベルと いう「レベル」という言葉を使って、プラス面まで含んで、すなわちICFで言うところの心身 機能・活動・参加と同じになるのですが、これを基本として考えていくように、基本的考えが変 わっていったという経緯がございます。  もう一つ、示しました処方箋や日々の診療記録では機能障害を最初に書いて、次に能力障害、 社会的不利と記載していましたけれども、むしろ参加の方が大事であり、これを最初に記載する ように順番もひっくり返すというようなこともカルテ記載の仕方の変更としてはやってまいり ました。では、お手元の資料に戻りまして、私がお話ししたいことを資料4−1にまとめており ます。今回は臨床的なものに重点を置いて、「生きることの全体像についての共通言語」という ICFの特徴でまとめました。まず、第1点ですが、ICFの活用の原則を考えますと、大きく は次の2つの側面があると考えます。  1つは、生活機能モデルの活用であり、これは統合的相互作用的モデルとして生かすというこ とです。2点目は、分類そのものの活用として項目の活用と評価点の活用があります。大きくこ の2つの側面をきちんと整理しながら考える必要があると思います。  両側面を含んだ総合的な活用であるべきで、例えば、生活機能モデルの考え方を離れた項目だ けの使用であってはならないと考えます。そのような項目の羅列の評価法というのは様々な分野 であるわけですから、ICFらしさということを考えると、この両側面を含んで考えることが大 事だと思います。  次に生きることの全体像を見るための活用です。まず落ちがない、全レベル・要素にわたる状 態把握が必要です。その場合に、例えば、ICFの項目はとてもたくさんありますし、またこれ を最初から順を追って見ていこうとしましたらギブアップということになってしまいます。後で お示ししますけれども、いろいろな調査や臨床の経験からしましても、まず抜けなく全体を把握 するということが大事と考え、幾つかのチェックリストをつくるということに至りました。  その一つが、まず(資料4−1)資料1に示します活動と参加の大分類チェックリストです。 中央の欄に項目を挙げておりまして、左に活動、右に参加の状態を記載します。1〜9章まで順 には並んでおりませんが、これは時間がないので今日はお話し申し上げませんが、実は活動や参 加の中にも階層性があると私は考えております。5章:セルフケア〜9章:コミュニティライフ・ 社会生活・市民生活までのところと、その後の点線の下の3章:コミュニケーションと4章:運 動・移動、それから、1章:学習と知識の応用と2章:一般的な課題と要求という階層性を持っ ていて、3章より下は必ずしも5〜9章と別個に評価をしなくてもいいと考えております。  次に(資料4−1)資料2は、中分類に関しましてもっと細かく見る場合のチェックリストで す。この中に既にICF−CYの項目も入れており、イタリックで示したものです。例えば、左 縦枠がありその一番上に「5章 セルフケア」があり、中央に中項目欄があります。5章の最後 の「a571:安全に注意すること」がICF−CYで新たに追加された項目です。当然ながら、 これは大人においても大事ですし、高齢者においては非常に大事なことです。  この中項目の表でも左に活動、右に参加です。この表に示した、d(domain)を参加と活動 に項目としてどのように振り分けるのかに関しましては、我々のこれまでの研究の成果に基づい てつくっております。  表頭に示しているように、活動でしたら能力で「支援あり」・「支援なし」、それから、「実行状 況」、それに関係する「環境因子」はどうなのかを書いていくことになります。勿論評価点とし て書くということもありますが、先ほど藤田委員からご質問がありましたような、評価の項目と しては挙がっていないけれども、非常に大事な内容は当然ながら備考として書いていくべきだと 考えております。なお形式としていうと、見開き1ページで全体像がすぐに見られることも効果 的ではないかと思っております。  次に(資料4−1)資料3ですが、全体像を見るということで、「(生活機能)ICFの整理チャー ト」を使っております。ある意味サマリー的にこれを書けばよいと思っています。ただし、これ は現状評価だけではなく、現状と目標の最低2枚つくる方が臨床的には必要かと思っております。  資料4−1に戻っていただきまして、3の「共通言語」として活用するという観点ですが、1) 専門職の間の共通言語として、(1)まず専門職といっても同一のチームの中、それから(2)各種 サービス間の「連携のツール」としての活用があります。先ほど来、大橋座長からもご指摘をい ただいていますように、いろいろな職種の人たちが関与するわけですから、その教育という観点 からもICFが大事だというのはこういうところの活用法かと思っております。連携のツールと しての活用です。  2)当事者自身の活用ということで、(資料4−1)資料4に例を示しますが、矢印の左の図に 示しているように「杖をついては歩きたくない」とか「将来私はどうなるのでしょう」など、患 者さんや利用者さんはいろいろな心配や希望がおありです。しかし、ある意味逆に、専門家に対 して例えば私がリハビリテーション医として診察をしましたら、「この手を動かして」というご 意見しかまずは出ません。しかし、実は聞いていくといろいろな訴え・希望があります。では、 その中でどれをリハビリテーションサービスとして優先するのかが問題になってまいりますが、 それを生活機能モデルできちんと整理をしていきますと、矢印の右側のようになります。このよ うに整理をしてみると、手を動かしたいとおっしゃっていても、実は一番大事なのは主婦業が元 どおりにできないという参加が真のニーズとして明らかとなってきます。そこで、では、何をや るべきかというと、主婦業ができるような家事訓練と明らかになってきます。手の訓練をやらな いわけではありませんが、それを行うにしても何のためにやるのかが明確になるのです。このよ うに本当の希望は何なのか、目標は何なのかを整理するためにICFの活用の原則で述べたよう なICFの生活機能モデルとしての活用が効果的と思います。  また、何が希望なのかを聞き出すときに、チェックリストとしていろいろな項目があげられた リストがありますと、こんなことまで相談してもいいのかと当事者にわかっていただけます。医 者にそんなことまで相談していいのですかと、それは参加レベルについてが多いのですが、私は しょっちゅう患者さんから言われていたものです。リストがあってそれを当事者で整理する、そ して専門家に相談するというのは効果的です。このような議論はこういう委員会とは少しなじま ないのかもしませんが、実は当事者ご自身が希望を出す、自分の問題点を整理してうまく専門家 を活用していただくためにICFは非常に効果的なものではないかと私は思っております。  次に、3)当事者と専門家間の共通言語です。これは先ほど申し上げました当事者自身の活用 でも既に一部お話しましたインフォームド・コンセント、大事だと言われていますが、形式的な ものになっているのではないかと思います。本当の「説明と意見の統一」のときの共通認識が必 要であり、その時にICFの基本的考え方を使用すると効果的ではないかという考え方で、リハ ビリテーション総合実施計画書が2000年に回復期リハ病棟ができるときにつくられました。  (資料4−1)資料5は具体的に記入して説明をする手順で、使い方の資料をつくるようにと 指示を受けまして、私がつくらせていただいたものです。まず、当事者の方へリハビリテーショ ンとは何なのか、介護であれば、介護とは何なのかとか、社会福祉とは何なのかという説明をし て、誤解があればそれを解くようにします。また生活機能のすべての側面に働きかけること等の 理解促進をします。その上で初めてこの計画書の内容に入っていきます。そのときのステップを 書いていますが、「している活動」として、実生活でどういう生活行為をどういうやり方でやっ ているのかを聞く。書いていただくのも効果的です。そして、ご本人の希望を確認して、でも、 もっとこういうふうにできる、活動をして伸ばせるのですよと説明をして、意見交換しその上で 一緒に目標を立てる。さまざまな説明書が病院でも施設でも使われておりますが、かなり形式的 になっているのではないかと危惧しております。いうまでもなく本来の説明と意見統一のために 使われるべきで、その中でICFの基本的考え方を生かしていくことは非常に効果的ではないか と思っております。特にリハビリテーションのように新しい人生をつくっていくという観点であ れば不可欠なものですから、極めて早い時期にICFの考え方が使われるようになったのではな いかと思っております。  資料4−1の2ページ目に戻っていただきますと、具体的活用の例を示します。まず、個別的 な事例におきます効果的なプログラムをつくるためのものです。これが(資料4−1)資料6の 目標指向的アプローチです。  では具体例も含めこれまで述べたことのいくつかをスライドでご説明申し上げます。  (スライド)これが最初のリハビリテーション総合実施計画書で、まず、縦軸に心身機能、活 動、参加があり、左が現状、右の方に目標、その達成時期まで書くものでした。  右下に本人への説明があった旨のサインをしていただく欄があります。説明を受けて本当に納 得してから本来はサインをしていただかなければならないところです。こういう書面があると、 実際にその内容を口頭だけでなく目にしていただいて説明ができるし、当事者はもらっておけば 後でじっくり考え質問が出ればまた質問していただける、というのが本来の趣旨でございます。  「できる活動」、「している活動」も区別して評価することになっています。実はこれはまだI CFの検討途中のときから導入をしていただいています。  次に介護保険法の改正のときに介護予防を重視することになりまして、要介護認定を受けるた めに必須の主治医意見書(スライド)も検討され、以前は「障害」だったものが、「生活機能低 下」という文言に変わりました。それから、「介護に関する意見」ではなくてご本人中心に「生 活機能とサービスに関する意見」になりました。  それから、これが実は非常に画期的なことではないかと思っているのですが、「症状(という 病気)としての安定性」と「生活機能の維持・改善の見通し」というのが全く違う次元だという ことで、両方を別々にみるようになりました。この意見書を記載する主治医とは特別な資格をも つ医者ではありませんで、普通のかかりつけの先生方が、それも内科や外科ではない先生方でも お書きになる診断書です。医師会の先生も積極的にこういう考えの方がいいだろうということで、 このように変わったのです。  つまり、長い歴史がある医師の世界においても、このようになったのです。ただし、自立支援 法の方の主治医意見書はまだ古いままです。  それから、これはむしろ木村委員がお話しになった方がいいのかもしれませんが、(スライド) 介護予防サービス・支援計画表におきましても、一番左にアセスメントする項目が並んでいます が、これは実は土・日の合宿で、ICFのすべての項目を全部チェックしていき、どの項目を見 るべきかの検討などをした上で項目のグループ化を決めたものでございます。大きくは運動・移 動、日常生活(家庭生活)について、社会参加、これはコミュニケーション等も含み、それから、 健康管理、という大きな4つの枠に分かれておりますが、最初からただその4項目を決めたので はなく、全部のICF活動・参加のリストの項目を確認しながらこのグループに入れたのです。  お手元の資料に戻っていただきまして、(資料4−1)資料6目標指向的アプローチは後でス ライドで示します。9ページに移行に目標設定のプロセスとして分解図がございます。  そして(資料4−1)資料7、目標指向的活動向上プログラムです。これは一個一個の活動の 項目についての目標(「する活動」)を立て、それに向けて「している活動」と「できる活動」の 両方に働きかけて向上させていくことです。  また資料4−1に戻っていただきまして、個別事例においてどのようなプログラムが効果的な のかを更に挙げております。  次に、2.自治体における活用です。これは例として2003年から東京の近くで、生活機能向 上事業として推進本部長は市長で行っております。  具体的な内容として、まず高齢者への対応としましては、介護の対象は活動という生活行為だ と位置付けて対応することになっております。まずは生活機能の実態把握を高齢者におきまして は悉皆調査としてこれまで3回行っております。それを行うことによりまして、活動・参加の重 要性や、病気と生活機能は違うのだということを行政やその地域の医療、介護、サービス提供者 が自分たちの地域で実際に把握することによって共通認識を持つことができ、その地域に合わせ たシステムの構築をする基礎になっております。  それから、2番目ですが、生活機能低下に関しましては、生活機能相談窓口を開設しまして生 活機能低下の早期発見、早期対応を行っております。ここに書いていますように1回の訪問で活 動自立度、参加向上が6割弱など非常に効果的な内容になっております。  それから、要介護認定の調査のときに同時に、生活機能をICFに基づいて評価をすることも 独自事業でやっております。それから、ケアプラン作りや自治体によるその指導にも役立ててい ます。  2)災害対応もこの観点からやるようになりました。これまで防災の担当、高齢担当、障害担 当はバラバラに動いていたのですが、やはり生活機能という観点でいきましたら、統一的な方針 を立てるべきであるということで、この取り組みもやっております。このように自治体単位でも ICFは生かせるということです。  次のページに進みまして、統計のツールとしてどう活用するのかも含めましての視点です。ま ず、1.の生活機能の実態把握です。これは活動と参加の評価点(暫定案)決定の基礎資料等に 生かしていただいたものですが、いろいろな自治体の調査を合計しますと2万人以上で行ってお ります。また、医療機関の調査、災害時の調査などもICFに基づいて行っております。ただ、 その場合の心身機能はかなり専門的な知識も必要ですし、ICFのICFらしいところは活動・ 参加ですので、そこに重点をおいて行っております。  既存の統計とICFと対応を検討するのも興味深い観点かと思い資料を用意いたしました。中 高年の生活に関する継続調査との対応をしたものが(資料4−1)資料8です。このように整理 をすればわかりやすいのではないかということです。時間の関係がありますので、ここは何かあ りましたら後でご質問を受けたいと思っております。  (資料4−1)資料9は、同じ中高年の生活に関する継続調査に関しまして、先ほど提示いた しました(資料4−1)資料2の中項目のチェック表を使い、継続調査票の項目がどこに該当す るのかを整理したものです。各項目の頭の数字は調査票の番号です。これはICFと比べてどこ かに偏っているなどとかを申し上げたいわけではありませんで、勿論調査とは何かの目的がある わけですから、当然ながら重点はあると思います。ですが、どういう観点をどのように見ている のかで調査の設計に役立ててみることも一つのICFの活用法かと思っております。  それから、資料4−1に戻り参考として、これはかなり大事なことかと思いましたので挙げさ せていただきました障害者の権利に関する条約ですが、この31条に統計の重要性がうたわれて おります。この権利条約に関心のある方々の中ではICFのことはよく議論されておりますので、 これは念頭に置くべきではないかと思っております。  それから、3.に示していますが、厚生行政上の指標としまして障害の等級がございますが、 それとの関係につきましても解析を進めました。  では、4ページに進みICFの活用の成果を幾つか挙げました。  1つは、生活機能低下に2つのモデルを発見し、脳卒中モデルと廃用症候群モデルを提示しま して、介護保険法改正時の介護予防の方針を立てるときにかなり役立てていただいたかなと思い ます。  この廃用症候群モデルに関連深いものとして(資料4−1)資料11に示します生活機能低下 の悪循環を発見しました。その悪循環及び生活不活発病の原因として下に示します3つの契機が 明らかになりました。  4.評価点について、「評価点0:普遍的自立」と「1:限定的自立」、それから、実は「3: 全面的制限」と「4:実行していない」も混在して評価されていることが多く、その区別が非常 に重要だということも判明しました。  これは(スライド)先ほど申し上げました自治体単位でやっている生活機能調査の高齢者の データの食事に関するものです。一番左がいわゆる健常と言われる、要介護認定も受けていない、 障害者手帳も持っていない高齢者で、真ん中が高齢の身体障害者、右側が要介護認定者で、評価 点による分布をみています。一番申し上げたいのは同じ自立でも外出先なども含めて自立という 「普遍的自立」と、「自宅内でのみ自立」という「限定的自立」、この委員会で決定されました活 動の評価点の0と1ですが、そこを明確に分けることによって、かなり大きな2種類の自立者の 分布の差があるとわかります。一番左の健常の高齢者でも、自立としてまとめると全体の99.5% なのですが、自宅内でしか自立していない「評価点1:限定的自立」はなんとその半分いらっしゃ ることになります。一番右の要介護認定者で見ると、自立といっても実は自宅内でだけ自立して いる方がほとんどです。ですから、このように同じ自立でも区別をすることが大事ということで す。  また自立していても「評価点1:限定的自立」であれば実は低下しており、例えば、介護予防 の対象者として考えるべきです。具体的なプログラムを組むときには、限定的自立でとどまって いればいいのではなく、もっと普遍的自立にまでアップさせようとプログラムを組むべきです。 そういう臨床的観点からも、これは非常に大事ではないかと思います。これは恐らく齊藤委員の 老人クラブの効果などを判定なさるときにも有益な観点ではないかと思います。  普遍的自立と限定的自立の区別が必要であることは実際にデータを取り始めましてこれほど 差があるのかということは、やってみましてびっくりしたところです。  (スライド)自宅内の歩行に関しても同様に自立を区別する必要があるという結果です。  では、この歩行にも関連して、先ほどの既存統計調査との関係することとして、歩くことが難 しい理由は何かという質問について、中高年の生活に関する継続調査では病気との関係でごらん になっているようですが、実は(スライド)歩くのが難しいといいましても、運動機能には関係 のない耳が聞こえにくいとか、目が見えにくいという方たちが5〜6%は必ずどこの自治体でも いらっしゃいます。後期高齢者になりますと、1割以上の方もいらっしゃることがありました。 表側に示します多数の項目が心身機能で、歩くのが難しいというのは活動レベルですけれども、 両方の生活機能のレベルの関係でみることは大事かと思います。  ではスライドを続けまして(資料4−1)資料6で示しました目標指向的アプローチを説明い たします。評価としましてまず、すべてのレベルを評価します。それから、すべてのレベルにつ いて予後を診断して、そしてそれをご本人、家族に説明して、目標の選択肢の中から選択しても らう。これは質問や意見交換を繰り返して目標を立てていきます。そのときに目標としては生活 機能の3レベルのうち参加レベルを主目標として立て、それが実現するための活動はどうなのか、 この参加・活動は表裏一体なのですからそういう観点でみて目標を立てることが大事だと思いま す。  これは最初に頭の中で考えたのではなく、逆に臨床で実践しながら効果等を分析して考えてい きましたら結果的にこのように体系化できました。こういうプログラムとそうでないプログラム を比較していきますと、効果がすごく上がったために、これがいいのではないかと至った次第で す。  では、この参加レベルの目標である主目標とその具体像である活動レベルの副目標ですが、(ス ライド、(資料4−1)資料7)この活動レベルの目標を達成するために、活動レベルの2種類 である「できる活動」と「している活動」の両者を向上させていきます。「できる活動」と「し ている活動」を向上させて結果的に到達させるのではなく、予後予測のもとに当事者に説明・意 見交換をして目標(「する活動」)を立て、それを実現するために進めていくのです。このプログ ラムの効果を立証しています。具体的な臨床におきましては、このようにICFは生活機能をよ くするツールとして効果的ということです。  次に(スライド)、ご本人の希望について、リハビリテーションへの希望をまず診察の最初に 聞いてみました。そうしますと、生活機能のどのレベルの希望がそれぞれのレベルでプラス面の 希望か、マイナス面かを分析しますと、最初に何がご希望ですかと聞きますと、184名中138名 の方が心身機能のマイナスの改善で、例えば手や足を動くようにしてくれなどが出てきます。で すが、具体的に生活機能やリハビリテーションについての説明などをいたしますと、活動と参加 レベル、そしてプラス面についての希望が増えたのです。  つまり、ご本人自身の希望の表出のためにも非常に効果的であるということです。  それから、今、力を入れていますことは、資料4−1の5.に示しますように、一般医療機関 でも生活機能という観点にもっと介入する必要があるのではないかと生活機能調査のデータか ら思っております。(資料4−1)資料12に医療の介護の連携として示していますが、現在入院 期間がどんどん短くなり、早い時期に退院になっておりますけれども、右の図に示しているよう にそのためにもむしろ入院中や疾患の発症・憎悪時からきちんとした生活機能の観点からも対応 するべきです。「よくする介護」も含めて対応することが必要と考えます。その後も疾患は憎悪 しても生活機能は改善させうるという観点でこれについて今取り組んでいるところです。  このほか子どもや、もっと基礎的な心身機能レベルと活動の関係などの研究も行っております が、本日は臨床的なことを主としてお話しさせていただきました。  以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。  もっと丁寧にゆっくりとお聞きしたいところですが、時間の関係で申し訳ございません。何か ご質問ございますか。とりあえずよろしゅうございますか。かなり見えてきたなと、私などは聞 いていてだんだんうれしくなってきたという感じがしています。ありがとうございました。  それでは、藤田委員よろしくお願いいたします。 ○藤田委員  コンピュータの用意ができる前に、先にお話をさせていただきたいと思います。  私自身は、もともと消化器外科医をやっておりました。消化器外科の中で大腸がんの予防調査 をやりなさいということで、コンピュータとか統計を教わるようになって、その予後調査がうま くいったものですから、当時兵庫医大にいたのですけれども、兵庫医大のコンピュータ化を全部 やりなさいという指令が来て、順番にやっていったというようなことがあります。  ただ、皆さんご存じの阪神・淡路大震災というのを経験しまして、外科医として救援活動をし てみようと思うと、ほとんど役に立たない。当日と2日目は仕事ができたのですけれども、その 後は外科医なんかほとんど要らないという現実に直面しまして、これはいけないということで、 いわゆるGPという一般のかかりつけ医に相当する勉強を始めました。その中で、プライマリー ケアに対する国際疾病分類(ICPC)というのを知りまして、その日本の代表としてWONCA という世界のプライマリーケア医の学会に所属するようになり、国際疾病分類の委員ということ で活動してきたというのがこれまでの経過で、その結果、だんだん外科医として働く場がなく なってくるというか、働いている暇がないということでポジションを変えるようになって、今の 千葉大学に移りました。  「地域医療連携部とは」というのを最初のスライドにしていますけれども、これは私が勝手に 英語をつけていいと大学が言ってくれたので、Department welfare and medical  intelligenceというちょっと変わった単語をつけております。情報を収集し、分析し、欠落した 情報を補完して戦略を提供するということで、今、大川委員からいろいろ説明されたことは、ま さしくICFを使ったこういうインテリジェンス部門をやられていると強く感銘を受けました けれども、私どももそれを目指しているということです。  どうしてこういうターミノロジーの世界に入ってきたかというと、医療に基づくデータとか生 活のデータとか、これは皆さんご存じだと思いますけれども、WHO−FICの中のWHO関連 分類と呼ばれているものです。ここの部分にICPCがありまして、主にかかりつけ医がやってお ります。ICDが約1万5,000の単語があるわけですが、ICPCの方はたかだか800ほどという ことで非常に扱いやすいといいますか、覚えやすいものです。しかも、診療の最初から最後まで、 要するに、患者さんの訴えの部分から医師のやった行為、その後、診断までを一連のコードとし て記載できるということが特徴になっています。ICFはちょうど真ん中にあります。  ICPCはなじみがないと思いますけれども、ICDは1900年から始まっておりますが、順次 改訂を受けて来て、ICD−6のときにWHOの分類ということになっております。  もう一つ英国でClassification of diseaseというのがずっとそのままICDと独立して あったのですけれども、その中で家庭医用のものとしてReason For Encounterという分類 ができました。ここからWHOと共同で作成に入ったのがICPCという用語集になってきます。 このReason For Encounterがここに入っているというのと、ICD−9と共同でICDの骨格 部分を共通にしているというところが特徴です。  このときに、ICPCをつくるグループと、イギリス本体のグループが対立しまして、リードコー ドというのがイギリスで使われるようになって、リードコードの方がSNOMED−CTと呼ばれ ている世界で一番大きな医療用語集、こちらは37万語ぐらいあるのですけれども、そういうも のをつくっております。  ICD−10AMというのが豪州で開発されて、これに処置分類などが入ってきましたので、ICHI がこの後発生してきたというような経過があります。現在ICD−11、ICPC−3の改訂が始まっ ております。  日本はICDと共同歩調を取りながら標準化シリーズというものつくってきました。病名では 標準病名集というものをつくっておりますが、これは言い換えればICD−10の同義語集、類義 語集という位置付けになります。私もこの標準病名集の編集にかかわっております。  やっていることというのは退院支援、ベッドコントロール、対外窓口というようなことで、外 に向かっての情報部というような位置付けになっております。  私どもが行っております退院支援というのは、新規で受ける方が年間526例、延べで5,286、 要するに9回ぐらいは面接を行わないと実際の退院に結びつけられないというような状態で、一 部は退院した後も追いかけたりしていますけれども、なかなか大変です。  どうしてそういうことが起こってきたかというと、診療科の都合と病態から転院先を探すとい う時代が来たわけですが、現在はご自宅に帰っていただくと。そのためには、生活状況、環境を 分析して、社会資源を投入するということが必要になってくると、まさにICFが必要な部署に なってきたということがあります。  面接記録というのは今もですが、紙に書いております。これは一番初めのシートですが、裏側 には細かなことが、先ほど大川委員のスライドで、いろいろな患者さんの訴えが斜めに書いたも のがありましたけれども、まさにああいう整理し切れないような状態で書かれております。  こういうふうにあいうえお順にファイリングしているわけですが、これまでケースを追いかけ れば十分だということでやってきました。ソーシャルワーカー1名、看護師1名でスタートした 部署なのですけれども、現在はソーシャルワーカー6名、看護師2名、ここに医師が2名います。 こういうふうに人数が多くなってきたこと。それから、ソーシャルワーカーが入れ替わるという ことが今後予想されるということで、支援技術の向上とか他施設との比較ということが必要に なってきました。国立大学病院の入退院支援部門が集まる会議があるのですけれども、その中で もこういう退院支援業務を行うセクションというのが、ほぼ全部の大学にできたというのが現状 で、病院のソーシャルワーカーというものの比重がますます増えてきているというのが現状です。  ただ、教育の場で行われている病院向けのソーシャルワーカーというのは。まだ特化したとこ ろは少ないような印象を持っております。  ICFは理念としては使えるのだけれども、本当に使えるのかというようなところをとりあえ ずやってみようということで、やった例を少しご紹介させていただきたいと思います。  これは糖尿病を持っている方が脳梗塞で来られたのですけれども、記録用紙に書いてあること を順番にICFに置き換えてみると、何とかコーディングはできそうだと。この辺りのことは、 先ほど大川委員のご発表を聞いて、先生のやり方を教わればもっとここはすっきり書けるのだろ うと思って、後でゆっくり教えてほしいなと思ったのですけれども。あと、家庭環境はこういう ものがありますということ。このコードが適当なのかどうか、私自身はよくわからないのですが、 独身で、この人は家では全く何もしない、食事の世話とか洗濯とか全部してあげなくてはいけな い。これをすることがこの女性の生きがいでもありますので、これは回復させてあげたいという 希望があるということです。ご自宅の状況はこういうことだというようなことを書いていて、介 護保険とか身体障害を申請予定だと。それで何が改善できる見込みなのかということを私自身は 書きたいのですけれども、直接的には書けない。要するにダブルコーディングを使えば書けるだ ろうとは思うのですが、そこのところを今後改善したいと思っています。  同じようなもので今度は男性です。上顎がんだったので左眼球を摘出して、こういうことが順 番に挙げられるかなと思って書いております。機能訓練とかをやっていただいて、軽快退院され ましたけれども、その後、腰椎転移が起こって入院してきたときのものです。そのときの状況と いうのをここに書いて、家庭の状況、何が支援として入るのかということを書いています。  そういうようなことをケースで幾つかやってみたわけですけれども、書き方を統一しないとい けないということと、特に、今私たちが困難に直面しているのは、例えば身体障害を申請したと きに、どのサービスがどの場面で使えるのか、それによって先ほど大川委員が説明されていた生 活の質として、どこがどれだけ上がるのかというようなことを実際のケースの中で記載していき たいわけなのですけれども、それをどうやったら表せるのかが、まだいいアイデアがないのです。 例えば、身体障害を申請して、移動の補助を得たことで外出できるようになったというようなこ とを実際に書けるといいなと思っていて、書き方の工夫を考えている最中です。  1つは、やはりコーディングが今の赤い本を見てやるのは、かなりつらいということで、ここ にありますように、身体構造と活動の間には一定の関連があるはずだということで、この辺りを 私たちは手をつけようかと考えておりますが、なかなかハードルは高いと思っております。ここ に手をつけようとしたのは、この後説明します。  それから、同義語とか類義語が欲しいというのがどうしてもありまして、今の分類項目だけで すと、ソーシャルワーカー一人一人が違うコーディングをしてしまう分野が随分あるので、ここ はこれにしようねというのを整備する必要があると思っております。具体的な内容を記載したい ということで、コードと内容を併記するときに括弧の中に入れるのか入れないのかというような ことが電子化の際にはどうしても要ると。紙に書く間は、ただ並べて書けばいいのですけれども、 そこがちょっと問題だなと思っております。  ちょっと趣旨が変わりますが、ここからはWONCAという組織の中でやっております、どう やってプライマリーケア医がICPCを使うのかという検討です。A long wayと書かれています が、なかなか道は遠いというのが今年の結論でした。  その歴史というのは2002年にシドニーの会議を行ったときに、このチームが立ち上がりまし た。そこからWHO−FICにも認めていただいて、私たちがやっていることを毎年報告するこ とになっております。今年もインドで報告する予定だったのですけれども、ビザをとるのを忘れ て行けなかったという大チョンボをやりました。  先ほどの資料にもありましたけれども、フランスのチームが随分熱心にやっておりますので、 このフランソワという人がフランスのチームをやっておりますけれども、あるいはロレントとい うのもフランス人で、この辺りと一緒に仕事をしております。  これは昨年の会議でやった後の、1年に1回集まっているのですけれども、それ以外にICF で集まるときにどういうことをやったかという活動報告を今年やった分のスライドです。  ICPCとICFをどうやってリンクするのかというのが、なかなか難しいということになって おります。患者さんの訴えとのリンクを張ろうということで、一個ずつマッピングしたのですけ れども、複数対複数ということになって手に負えなくなりました。このときにラインが大体1万 を超えまして、もうわけがわからないのでギブアップ状態になったというのが、このハイデルベ ルクの2年前のレポートのときの状況です。  その後、難しいからちょっと考え方を変えましょうというようなことを昨年やりまして、ICPC はどんなものかをざっとお見せしておいた方がいいですね。こちらがICPCのコーディングです が、例えば、全身の評価というところでは、全身にかかわる項目として患者さんが訴える項目が このようにございます。それに対して診断に使う項目が第7章に上がってくるわけです。必ずし もA−1のセクションからA−7のセクションに直接つながるわけではないのですけれども、セ クションが変わったとしてもコードを順番に記載していくことで、どういう主訴に対して何を やって、結果がどうだったかを全部書けるようにしようという形でやっております。  この構造の中で28番というのが、機能制限、能力低下という項目があるのですけれども、こ このところにICFとのリンクを張ろうとしております。ボディーファンクションとかアクティ ビティとか、こういう項目に対してリンクを張ろうということでやっております。  この辺りはICPCをやっている人たち向けの説明ですので、割愛させていただきます。  私たちが重視しているのはReason For Encounterということで、それに対してボディーファ ンクションを当てはめて、クリニカルファインディングスを記載して、この後私たちのやり方自 体を変えていきましょうということと、もう一つは、コミュニケーションツールとして使いたい という要望が非常に強くあります。ヨーロッパの国々ではガバメントが使うことをすごく意識し ております。特に北欧の国々は、これを分析するツールとして使えると政府に訴えて金を引き出 そうというプロジェクトが進んでいます。  このように分析が進んでいった状況です。長くなりますので割愛させていただきます。  結局、先ほど言いましたすべての項目に28という機能低下の部分がありますので、そこをク リックすると、ICFが飛び出す仕組みにして、ICFをある程度制限をかけたものを表示する というプロジェクトをやっております。そのときに、ICFの必要な項目について「♯」で全部 表して、コンピュータ処理できるようにしようということが決まったということですね。この辺 りは、同じようなことを次に向かって何をやるというようなことを書いております。  あとは、精神のところで非常に問題が生じているというのが現状で、私たち自身の考え方を変 えようという動きが強くなっています。これは、ヨーロッパの人たちに多いのですけれども、客 観的データを重視する余り、患者さんの言ったことを無視したり、患者さんの気分の部分を無視 したりしやすいドクターが増えているということを非常に問題視していまして、この辺りとIC Fとの関連をうまく生かせれば、もっと人間性豊かなドクターを養成できるだろうというような ことを議論しています。  こういうふうなことを現在やっているというところです。  現在はオントロジーということを対応してやっております。ICDもそうですけれども、ICPC の方もリビジョンに向かってオントロジーベースドのクラシフィケーションにしようことを 言っています。クラシフィケーションというのは箱に分けていくということなのですけれども、 クラシフィケーションはボックスのモデルで話をするとわかりやすいかなということで、このク ラシフィケーション自体にはボックス1つずつに名前を本来はつける必要がなくて、ここで何を 元に分類していくのかというようなことをやればいいはずなのですね。ここで振り分けるルール に非常に注目して関係性を記述していくということにすると、これがオントロジーと呼ばれるも のです。  クラシフィケーションというときは、この分類し終わった後の箱の中身をすごく問題にするの が、これまでの分類学です。中途の分類というのが統計処理する際にはかなり有用になるのです けれども、ここが余り整備されていないというのがICDの現状です。ICFについては、幾つ か分類が中間のところで項目立てがされていますけれども、決して使いやすくはないというのが 現状かと思います。大川委員がやられていた中途分類の分け直しというのが多分、皆さんが使い やすくなるキーワードだろうと思っております。  この辺りのことを一緒に説明させていただきましたけれども、オントロジーとクラシフィケー ション、何かわけがわからないとよく言われるのですけれども、こういう枝分かれの部分に注目 しているのか、最後の箱に注目しているのかということで考えていただければよろしいですし、 中身の名前自体を扱うときは私たちターミノロジーと呼んでおりますので、そういうものだと理 解していただければ割と簡単に理解していただけるかなと思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。皆さんいかがだったでしょうか。私は今日来てよかったなと、大変 得した気分でございまして、この専門委員会というのは統計分科会の専門委員会なので審議をし なくてはいけないのですが、もっと実践的にあるいは研究したいなという気持ちに今日はなりま した。  何かございますか。 ○佐藤(久)委員  スライドが消されない前になんですけれども、今の絵でクラシフィケーションとオントロジー の関係というのはわかったような感じがしたのですが、その先に出ていたターミノロジーという のは、ほかの2つと比べると何なのでしょうか。抽象的な質問で申し訳ないのですが。 ○藤田委員  ターミノロジーというのは一個一個の単語に注目していったときに使っている言葉です。要す るに、分類の骨格が先ほど言いましたオントロジーです。この箱をどの大きさにするのか、その 箱の切れ目はどうなっているのかというのを気にしているのがクラシフィケーションです。ター ミノロジーになってきますと、このボックスの中身が非常に重要になってきます。  例えば、胃がんというものをICD−10の中では、どこの部位に発生した胃がんということで 一番下のレベルを細かく分けていっています。ただ、ここに入ってくるどこの部分の胃がんとい うのは、言葉がはっきり定義されているわけではなくて、「どこどこに発生した胃がん」という 書き方をしているのですけれども、ターミノロジーをやっている者にはこれはちょっと気持ち悪 いです。どういう病気なのかというところをしっかり扱っていきたい、言葉をしっかり扱ってい きたいという人たちがターミノロジーの専門家と言われる人たちです。ターミノロジーの人たち は、オントロジーの中で考える言葉の意味の範囲を記載しようとして、一個の言葉の中にはこう いう範囲のことを含む、除外するのはどういうことというのを一つ一つの単語に対して定義して いくことを主な目的にしています。 ○大橋座長  よろしゅうございますか。 ○大川委員  ICPCとは、むしろ症状だとか症候を重視しており、また今まではICDとの関係が強かった と思うのです。ICD−9の時に現在の18章の症候や兆候というのが追加されましたが、それと ほとんど同じ時期にICPCが議論されはじめました。ICDよりも症候や兆候という患者さんの 訴えをかなり重視したものがICPCだと思うのですが、その骨格自体は変わっていないわけです よね。それにICFを持っていくとどうなのでしょうか。 ○藤田委員  それで破たんしました。破たんして、別立てでICFを用意して、どういうふうにリンクした らいいのかという、リンクのやり方だけに今は注目しています。 ○大川委員  リンクのやり方だけですね、わかりました。それだと整理ができます。 ○藤田委員  最初はマーキングで一個一個対応付けようとしたのですけれども、これはちょっと無理がある ということで、方針転換をしたのが現状です。 ○大川委員  ということは、やはり委員もちょっとおっしゃったけれども、症状などでまずコーディングを して、何らかの診断だとか処置をして診断名をつけますよね。その基本的な流れ自体はICPCは 変わっていないということですね。わかりました。ありがとうございました。 ○藤田委員  この後の予定としては、各国でICFを一緒にコーディングしたものを寄せ集めて、関連性の 高い項目と関連性の低い項目との色分けをやろうと計画しています。 ○大川委員  28のところを細分化しようということではないわけですね。 ○藤田委員  それはやめました。 ○大川委員  ありがとうございました。 ○佐藤(久)委員  今日たまたま大川委員と藤田委員の報告を聞いて、ちょっとアプローチが違うなという感じを 持ったのですけれども、大川委員の報告された主目標、副目標というか、活動の目標とかその辺 のものは、やはり医学的リハビリテーションを中心とした医師やリハ専門職などが、本人の参加 の希望を基にしながら、それを実現するためにまだまだプラスを伸ばせるような活動のレベルを 高めて、願いを実現しようというところにポイントがあるような感じがしたのですけれども、藤 田委員の退院支援のところは、どちらかというとソーシャルワーカーが中心の取り組みで、退院 するに当たっての家族関係の調整だとか、住宅の改造だとか、いろいろなサービスの活用だとか、 環境面を整えて目標を実現しようというところにポイントがあって、どちらも担っている中心に なる専門職は医療と福祉になっているというような感じで、恐らくその2つを総合的に合わせる のがICFなのかなと。 ○大川委員  時間の制約があったので、説明が十分でなかったから誤解を生じたのではないかとも思います が、委員がご指摘いただいたのは、目標指向的活動向上の内容であって、私が一番申し上げたい のは、むしろ目標指向的アプローチです。それは特定の職種によるということでは全くありませ ん。私はリハビリテーション科の医者の経験をもちますけれども、リハビリテーションの専門職 だけでやろうとは思っていません。  一番大事なのは本人の積極的関与で、その上で、その時点時点で課題・目標に必要な専門職が、 今はいろいろな専門職が増えていますから、その方たちとどういうふうにチームを組んでいくの かということです。総合的にどう活用するのか、むしろ自助・共助まで含めてプログラムを組む ことが大事だと思っております。さまざまな専門職、そして、ご本人たちの力を効果的に発揮し て、能力、潜在的生活機能をいかに引き出すのかというところに、ICFを活用するのかが大事 です。藤田委員のお話を聞いていても、基本的には同じことを考えているのかなと思っていたの ですが、どうでしょうか。 ○藤田委員  まさしくそのとおりで、私たちが困って手を出せなかったところに、まさに大川委員が既に取 り組まれているということを知りまして、非常に勇気付けられました。  まさにおっしゃるとおりだと思うのですね。ICFが今、共通言語のないところに橋渡しをし ていく核になる可能性を持っていると思うのですけれども、つくるときに非常に欲張っていろい ろなことを盛り込んだがために、大き過ぎて実際にはちょっと使いにくいというようなところが あるので、この場面ではこんな使い方、この場面ではこんな使い方という例示を私たちが出せば、 皆さんそのよさはわかっていただけるだろうと思います。 ○大橋座長  大川委員の資料4−1の3の共通言語としての活用、ここですよね。これをいつも我々は念頭 に置いていかないとぶれてしまうわけで、これが抜けてターミノロジーかクラシフィケーション かオントロジーかなどとやっていってしまうと、何が何だかわからなくなってしまう。それはと ても大事なことであるけれども、ここが大事だという共通理解はしておくと。  それで時間が来てしまったのですが、ここは審議会だから勉強会というわけにはいかないのだ けれども、もう少しいろいろな共通理解を深めるためにはあってもいいかなと思うのですが、審 議会兼勉強会というのはやっぱり難しいですか。審議会だから何か審議しなければいけないとい うことなのかもしれませんけれども。 ○事務局  まさに今年度のこの専門委員会のコンセプトは、日本の研究の現状を明らかにしつつ皆さんの 理解を深めていただき、これを今後どう活用していくか、その際に何が問題になるのかというこ とを明らかにして、今後これをどう進めていくかを考えていくということでございます。その中 で、先ほど藤田委員がおっしゃられたように、さまざまな分野において活用の仕方があると。そ れぞれの分野において必ずしもお互いどう活用しているかというのがわかっているわけではな いと。今も藤田委員が大川委員から勇気付けられたという話もありましたけれども、そういう意 味で、もうちょっと分野間なり専門職間なり、あるいは患者・医者間なりいろいろな連携、連絡 の仕方、そのためにICFを活用するわけで、そういった方向性にこの専門委員会を持っていけ ればなと、そういうことを考えております。 ○大橋座長  だとすると、例えば、次回でも介護支援専門員の協会だとか、あるいは先ほど藤田委員が言わ れた退院支援計画の中の主に病院のソーシャルワーカーの立場から、それをどう見ているかとい うこともあってもいいだろうし、あるいは新潟医療福祉大学の高橋先生に、保健医療福祉連携教 育学会をなぜつくろうとしたのかとか関係者のヒアリングをしながら、この活用の仕方を考えて もいいかなと今感じていたのですね。 ○木村委員  先ほど研修の話はさせていただきましたけれども、来年4月から介護保険の報酬の体系が若干 変わって、ケアマネージャーが入院時に情報提供するという項目が新たに増えます。そうします と、入院するということは、先ほどの藤田委員のお話の中で多分、入院時に入院する前の生活状 態、もっと広く言うと生活機能全般の情報があれば、急性疾患の治療はそうですけれども、その 後の退院支援ということが非常にスムーズにいくのだろうと。  それから、もともと後期高齢者医療制度で退院時共同指導というのがあって、そこにケアマ ネージャーが呼ばれれば、在宅側と医療機関側のお医者さんの評価がされる、そういう体系が今 あるのです。ですけれども、ケアマネージャーの評価はなかったのです。今度4月からは退院時 にケアマネージャーが、入院中の治療内容は置いておいても、退院した後どういう生活をしてい くかという、生活の上での医学的な留意点等を確実に情報をもらえるような形に制度になるので す。しかし、今私たちが調整していて、多分次回には間に合わないと思うのですが、本当に入院 時に医師が必要とする情報は何なのか、それから、退院時、介護支援専門員が必要な情報は何な のか、ここを急ピッチで今調査をかけようと思っているところなのです。そこがICFのまさに 真骨頂にならなければいけないと思っていまして、そこをここ3か月ぐらいのところできちんと やっていこうということを考えております。 ○大橋座長  とても大事なことですね。 ○藤田委員  まさに、そこが非常に重要で、私ども2年前に看護学生を使って退院サマリー診療情報提供が 役に立つかどうかというアンケートをしたのですね。90%要らないと言われました。要するに、 医学的に何をやったかというようなことを書いても意味がないのです。患者さんが何を望んでい るのか、何を改善したいと思っているのかということを書いてほしい。あるいはリハで何を思っ てその訓練をしたのかを書いてほしいと言われることが多くて、要するに、情報の受け手が欲し い情報をいかに出すかということを出す方が勉強しなければいけないのです。そのためのツール として、ここが欠けているよというのがわかりにくいのですね。テキストで全部書いてしまいま すと、いっぱい書いてあるのだけれども、必要な情報が本当に書けているかどうかわからないと いうところがあるので、そういう意味では、こういうICFで全般的な項目のどこを書いたら確 認できるというのが非常に有効だと思っています。 ○大橋座長  それは多分、先ほどの大川委員の何のためのリハビリテーションかということにもつながって いる、生きる意欲の問題だとか、そういうことに全部つながるので。 ○齊藤委員  もう時間になっていますが、初めて参加させていただきましたので、少し感じたことをお話し させていただきたいと思います。  ICFは大変勇気と希望の持てるものだということを改めて確信いたしました。今、専門家同 士のコミュニケーションツールといいますか、大事な共通言語だということですが、結果的には、 利用者を巻き込んだ共通言語に発展していくべきものだと思います。利用者は専門家同士の共通 言語の枝分かれした細部のところまでは難しいですけれども、非常に大きな茎のところがあって、 例えば、大川委員のお話で言うと、チェックリストとしてそれを相互に活用できるという道は大 変期待できるなと思いました。  今、元気な高齢者の中で特にうちの女性会員さんなどの話題に出てきますのは、「転倒しない ようにしようね」と「転倒すると終わりよ」と。転倒して骨折は治してくれるけれども、あとは 立てなくなるよという話が普遍化するぐらいの状況になっています。つまり、医学的には治って 自宅に戻される、しかし、自宅で自立ができなくなってしまうというような事例がたくさん出て いるわけです。こういったところに目標を立てて回復のプロセスを踏んでいくのか。専門家と例 えば医療、介護、福祉との連携も含めて、明るい展望が持てるのだなということが利用者側にも よくわかる、そういう意味が非常に深いものを持っていると思います。是非これから皆さんの専 門家同士のくくりはくくりとして、今度は利用者の方にこれをどう理解してもらうのか、その辺 のことも是非ご検討いただきながら、わかりやすいものをつくっていただくようにお願いしたい と思います。 ○大橋座長  ありがとうございました。  今、国の方でも精神障害者を初めとした就労支援というのが随分大きな課題になっていて、佐 藤修一委員にも今回お入りいただいたわけでございますが、多分、精神障害者や知的障害者の就 労支援の場合にも、ICFの視点でのアセスメントが重要になってくるのかなと思っていますが、 何か一言せっかくですから。よろしいですか。  では、大日方さん。 ○大日方委員  今日は、かなり具体的な事例を見せていただいたので、それなりにわかったかなと思います。 医師側というか専門家側からのアプローチというのは、こういうふうにやっていくのだというの は、より理解できたかなという気がしています。これを今度、患者の立場からという形でいろい ろ考えていったときに、では、より積極的にかかわっていくにはどうしたらいいのか。先ほど大 橋委員長がおっしゃられた、まさに就労の場面ですよね。何があればここにいて仕事ができるの か、何がないからできないのかとか、その辺もICFの分類を使っていくことで、お互いのこと を共通言語として理解できるようになると思うのですね。勿論、医学部門というのは第一なので すけれども、より一般の人たちも使えるように、特に患者サイドが自発的にこれができて、これ ができないみたいな分類として、ある種自分はこういう人間ですと言えるような状態に是非して いただきたいと思います。  今、大川委員から資料4−1資料2という形で出していただいたものを自分に当てはめて考え ようと一生懸命やったのですけれども、ちょっと難しかったです。それは、まだそういうもので はないですよね。なので、これを次回か次々回により具体的に、ケーススタディみたいにしてで きたらいいのかなと。もしかしたら、私自身もお役に立てるかもしれない。というのは、私自身 が障害を持って生活しているのですが、今年2月に下半身に障害があるのみならず、肩をスポー ツ障害でけがをしまして、入院・手術という形になったときに、いわゆる健常者の入院・手術・ リハビリというプログラムと、私自身が足に障害がある上に上肢に障害があった場合どうなるか というのが大きく違ったのですね、そのプロセスというものが。これはすごく違う物だなという ことを実感いたしましたので、例えば、一つの参考としてこうだった、こうだったという過去の 自分自身を使って具体例みたいなものが使えるような資料が、何らかの形でつくれたらいいなと は考えております。 ○大橋座長  ありがとうございました。  私も大学で学生に教えるときには、よく求めと必要と合意に基づくアセスメントと援助・方針 の立案と言っているわけで、やはり利用者の立場をきちんと確認していくことがすごく大事で、 そのためにはシートがあるとすごくいい。大川委員が言われたことはとても大事で、シートを見 せることによって自己覚知していく部分があるわけなので、できるだけ簡便な使いやすいものを これから工夫していくということになるのだと思います。  時間が来てしまったので残念ですが、今日はこれで終わりにしたいと思います。この続きはま た次回にでも、いよいよICFを活用して本当にみんなが幸せになるような社会システムをつく れればと思っているわけです。  では、事務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  次回ですが、3月13日金曜日、午後2時から4時ということで予定させていただいておりま す。場所は未定ですが、決定次第、ご連絡をさせていただきます。 ○大橋座長  それでは、これで閉じたいと思いますが、よろしゅうございますか。  それでは、終わりにさせていただきます。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。 照会先 厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課     疾病傷害死因分類調査室     電話 (代表)03-5253-1111(内線)7493