08/12/17 第41回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 第41回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会          日時 平成20年12月17日(水)          17:30〜          場所 中央合同庁舎第5号館(厚生労働省)                        14F  職業安定局第1会議室                                    ○清家部会長 ただいまから第41回「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会」を 開催いたします。  本日は、大沢委員、塩野委員がご欠席でございます。  今回の議題も、前回に引き続きまして「雇用保険制度」についてです。これまでの議 論を踏まえつつ報告書(案)について、具体的に議論できるようにお願いして、そのよ うに事務局のほうで資料を準備していただいておりますので、まずその資料につきまし て、事務局からご説明をいただき、その後質疑に入りたいと思います。  それでは事務局から、ご説明お願いいたします。 ○長良雇用保険課課長補佐 配付資料は、報告書(素案)のみです。前回までのご議論 ということで、12月5日の雇用保険部会におきまして、検討のたたき台という形でお示 しさせていただきまして、これまでの部会におけるご意見などを踏まえ、今回は報告書 の(素案)という形で整理させていただきました。  では、報告書素案に沿って説明いたします。1頁の最初の部分は、いわゆる現状認識 の部分について、現下の雇用失業情勢を見ると、有効求人倍率は11ヶ月連続して1倍を 下回る。企業の倒産件数も増加傾向にあるなど、雇用失業情勢は下降局面にあり、さら なる悪化も想定されるところである。このことは労働市場において派遣労働者、パート タイム労働者、契約社員等の非正規労働者が増大する中で、特にこれら非正規労働者の 雇用調整の動きの急速な拡大として顕在化し、非正規労働者に大きく影響を与えつつあ るという状況となっています。  また、雇用失業情勢については、特に厳しい地域があるほか、若年者についても、年 長フリーター等が依然として多い等、厳しい状況が続いているという状況認識でござい ます。  一方で、雇用保険制度については、昨年までの雇用失業情勢の改善傾向及びこれまで の制度改正等を受け、平成19年度決算における収支状況は改善しているが、雇用失業情 勢の更なる悪化が見込まれる中で、今後の支出が大幅に増加することも予想されるとこ ろである。  このような状況の中で今年10月30日、政府全体として生活支援策の強化のための経済 対策「生活対策」が決定され、雇用保険についてもセーフティネット機能の強化等とあ わせ、家計緊急支援対策の一環として国民、具体的には家計と企業ということでござい ますが、その負担軽減の観点から、平成21年度限りの雇用保険料率の引下げについて、 関係審議会において労使と十分協議した上で検討、結論を得ることとされているという ことでございます。  加えて、派遣労働者や契約社員の雇止め、新卒者の内定取消等、現実に深刻な問題が 生じていることに鑑み、政府は一体となって必要な施策を実施することを決めている。 いわゆる新たな雇用対策といったところでございます。  このような状況を踏まえると、雇用保険制度としても財政の健全性を維持しつつ、派 遣労働者、パートタイム労働者、契約社員等非正規労働者の拡大にも対応しうる雇用の セーフティネットとして有効に機能するようにするとともに、雇用失業情勢の悪化等の 影響を深刻に受ける者等への支援を重点的に強化し、安定した雇用に向けて、早期再就 職をより一層促進することが緊急の課題となっています。このため当面の緊急対策とし ての暫定的な措置を含め、次のとおり雇用保険制度の機能強化を中心とした見直しを行 っていくことが適当である。  次の頁から各論の部分で、柱立てはこれまでの第1回目に論点として提示させていた だいた柱立てに、概ね沿った形で整理していくものでございます。  まず(1)非正規労働者に対するセーフティネット機能の強化ですが、非正規労働者が 増加する中で、昨今、雇用失業情勢の悪化の影響が、いわゆる倒産、解雇等による離職 に限らず、雇止め(労働契約を更新しない)という形で出てきている。このような状況 を踏まえると、こうした非正規労働者についても必要な給付がなされることが必要であ るということでございます。  いわゆる倒産、解雇等による離職者、通称特定受給資格者ですが、被保険者期間が6 月あれば受給資格が得られ、また、所定給付日数についても手厚い取扱いとされている。 これを踏まえ、被保険者期間が短い(1年未満)の方が、希望したにもかかわらず、労 働契約が更新されなかったため離職した有期雇用者等についても、特定受給資格者と同 様に、被保険者期間6月で受給資格が得られるような枠組みを設けることとすべきであ るということでどうかと考えております。  ここは受給資格要件の部分ですが、次の○についてはこの新たな枠組みにより、受給 資格が得られる者の所定給付日数については、一般の受給資格者と同じとすべきではあ るが、現下の雇用失業情勢の悪化に鑑みると、特に非正規労働者に対して十分なセーフ ティネットが必要であることから、暫定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきで あろうということであります。また、これにあわせて被保険者期間1年以上であり、3年 未満で希望したにもかかわらず、労働契約が更新されなかったため離職した有期雇用者 の所定給付日数についても同様に、暫定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきで ある。なお、これら暫定的に措置を講じる期間としては3年とすべきである、としては どうかということであります。  さらに、労働契約が更新されることが明示されていたにもかかわらず、これが更新さ れなかったため離職した有期雇用者については、被保険者期間の長短にかかわらず、特 定受給資格者とすべきであると。  加えて現在、雇用保険の適用については、運用上「週所定労働時間20時間以上、1年 以上の雇用見込み」の適用基準が設けられているが、特に、労働契約の期間が1年未満 の有期雇用者の中には、「1年以上の雇用見込み」の要件のために適用が受けられない 者が存在する。  こうした者に対してもセーフティネットが必要であり、雇用保険制度において適切に カバーできるよう、給付と負担のバランスや、モラルハザードが起きないようにするこ とも考慮しつつ、現行運用上の適用基準の「1年以上の雇用見込み」の要件については、 「6ヶ月以上の雇用見込み」に改めるべきである。なおその際、中小企業をはじめ、手 続面等の負担増になることにも留意し、適切な周知を図っていくことが必要であるとい うことでございます。  大きな柱立ての(2)再就職困難者に対する支援の強化という枠組みを設けております。 雇用失業情勢が悪化する中で、基本手当の支給が終了しても再就職が困難な場合が想定 される。特に、雇用失業情勢の影響を考慮すると、倒産、解雇等により離職した者(特 定受給資格者)や上記(1)において特定受給資格者と同じ取扱いとすべきとした者に ついては、重点的に再就職の援助を行う必要があると考えられる。このためこれらの者 について、暫定的に個別に延長して給付が受けられるようにすべきである。  具体的には、所定給付日数が短い年齢層や雇用失業情勢の悪い地域等の求職者とし、 公共職業安定所長が必要と認めた者とすることが適当である。また、延長日数について は、この趣旨が安心して就職活動を行うことができるようにすることであることに鑑み、 また基本手当支給終了後の就職者の就職時期や状況も勘案すれば、60日とすることが適 当である。  なお、この場合についても、職業紹介などを拒否する場合にあっては延長給付の対象 とせず、また、延長中である場合は、以後の支給はしないこととすべきであるとまとめ てございます。  (3)安定した再就職に向けたインセンティブの強化ということですが、雇用失業情勢が 悪化し、今後の離職者の増加が予想される中では、必要な雇用機会を創出することはも とより、安定した再就職に向けてのインセンティブを強化することが必要だと。このた め再就職手当について、暫定的に「所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上の残日数」 があることとの受給要件を緩和して、「所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上」の部 分を取り払うという意味ですが、残日数があれば受給要件を満たすこととすべきである。 あわせて給付率についても残日数に応じて、暫定的に残日数が3分の2以上の場合には50 %、3分の1以上の場合には40%に引き上げるべきであると。  また、就職困難者について再就職の際の初期費用を支援する「常用就職支度手当」に ついても暫定的に「40歳未満の者」についても、いわゆる若年層についても支給対象と し、給付率を40%に引き上げることにより、さらに安定した再就職に向けたインセンテ ィブが高められるようにすべきである。  加えて安定した再就職に向けては、必要な職業能力を身につけることが重要であるこ とから、安心して職業訓練を延長することができるよう、訓練延長給付によって支援を するとともに、さらに職業訓練に必要な諸般の負担を軽減することができるよう、職業 訓練を受講する者に対し、暫定的に受講手当の額を引き上げる。具体的には現在、日額 500円のところを700円に引き上げることとすべきである、ということでございます。  次の大きな2つ目で、育児休業給付の見直しの部分ですが、育児休業給付は2つの制度 に分かれていることは既にご説明してあるかと思いますが、育児休業基本給付金、いわ ゆる休業中の給付、それから育児休業者職場復帰給付金、これは職場復帰6月後の給付 については、平成19年改正において、平成22年3月31日までに育児休業を開始する者ま での措置として、暫定的に育児休業者職場復帰給付金の給付率を引き上げていると。こ れについては少子化対策としての要請等も踏まえると、暫定措置を当分の間延長し、雇 用保険制度として対応を図ることはやむを得ないものと考えると。  また育児休業基本給付金及び育児休業者職場復帰給付金を統合して、育児休業中に支 給することについては、育児休業中の所得保障の観点からは望ましいとする意見もある 一方で、職場復帰率は8割半ばで推移しており、雇用の継続を図り、職場復帰を支援す ることを目的とし、雇用保険制度で措置している育児休業給付の趣旨からは、両給付を 統合することには慎重であるべきとの意見や統合することによりモラルハザードが起き るので、統合するのであれば、休業後に復帰しない場合は、職場復帰給付金分を返還す ることも盛り込んだ制度にすべきという意見があると。これはこれまでのご意見などを 踏まえた記述でございます。  しかしながら、雇用の継続を図ろうとする育児休業取得者に対する支援としては、育 児休業給付以外にはないのが現実であり、育児休業取得促進に果たす育児休業給付の役 割にも強い期待があることを踏まえれば、これを統合することもやむを得ないものと考 える。なお統合に当たっては、モラルハザードが起きないよう、制度の周知に努めるこ とに加え制度の運用状況も見定めていくべきであるという形でまとめております。  次からの○が、育児休業制度の見直し関連でございます。なお、育児休業制度につい ては現在、労働政策審議会雇用均等分科会において見直しの議論が行われております。  ○の1父母ともに育児休業を取得する場合に休業取得可能期間を、現在は子が原則1 歳となっておりますが、1歳2ヶ月に達するまでに延長する。○の2産後休業中に父親が 育児休業を取得した場合に再度取得を認めること。○の3保育所等に入所申請を行った が当面入所できない場合等に再度取得を認めることを内容とする育児休業の範囲拡大が 議論されている。これは休業制度のほうも範囲拡大ということでございます。したがい まして、労働政策審議会雇用均等分科会において、議論がまとまり、育児休業の範囲が 拡大することとなれば、その新たに育児休業の対象となる上記の場合について、育児休 業を取得しやすくし、その後の円滑な職場復帰を援助、促進する観点から、育児休業給 付の対象とすることで、雇用保険制度においても措置すべきである、という形でどうか と思っております。  3点目は雇用保険料率の部分でございます。平成21年度の失業等給付に係る雇用保険 料率について、これはいわゆる「生活対策」、前提で申し上げた部分でございます。昨 年までの雇用失業情勢の改善傾向等を受け、平成19年度の決算後においては、積立金残 高は約4兆8,800億円となったところであると。しかしながら、現下の雇用失業情勢は急 速に悪化しつつあり、今後給付が大幅に増加することも予想される。一方で「生活対策」 においては、家計緊急支援対策の一環として国民の負担軽減の観点から、来年平成21年 度の失業等給付に係る雇用保険料率について、弾力条項による引下げ幅を超えて0.4%ま での幅で引き下げることを早急に検討することとされたところであります。これは10月 30日現在の状況でございます。雇用保険財政の過去の経験や、本来の保険制度の趣旨等 からすれば、現在のような失業情勢が急速に悪化しつつある時期には保険事故である失 業が増加することが容易に予想される中での雇用保険料率の引下げについては、本来こ れを行うべきではなく、慎重に対処する必要があるが、一方で、国民の負担軽減につい ての政府全体としての強い要請があること等を勘案すると、平成21年度に限っての特例 措置とするならば、失業等給付に係る雇用保険料について、弾力条項による引下げ幅を 超えて、0.4%引き下げることとすることも、やむを得ないものと考えるという形でまと めております。  2点目が平成21年度の雇用保険二事業に係る雇用保険料率でございます。積立金と同 様の状況のもと、平成19年度の決算後においては、雇用安定資金の残高は約1兆700億円 となったところである。その一方で、急速に悪化しつつある雇用失業情勢の下で、雇用 保険二事業による雇用対策を重点的に実施していくことが必要となっているという状況 認識でございます。  こうした状況も勘案し、平成21年度の雇用保険二事業に係る雇用保険料率については、 現行の弾力条項に則った取扱いとすべきであると。これは第1回の雇用保険部会でも提 示させていただきましたが、現在も弾力条項の枠組みでは来年度の、いわゆる弾力条項 に則って対処することとすると、法律上の1,000分の3.5から、1,000分の3に引き下げる という状況になっているということでございます。  最後の今後の課題の部分で、65歳以降への対処等、平成19年改正のときの雇用保険部 会報告におきまして、「今後の課題」とされた事項については、今後の雇用失業情勢の 状況を見極めつつ、引き続き検討すべきである。また平成22年度以降の雇用保険料率の あり方についても、今後の雇用失業情勢や、積立金、雇用安定資金の状況を見極めつつ、 引き続き検討すべきであるということでございます。以上がこの雇用保険部会の報告書 としての取りまとめ(素案)としてご提示させていただいているものでございます。  なお、前回雇用保険の関係でご議論があった中で、いわゆる今回の制度の見直しにつ いての、特に給付の部分で、改善の影響がどの程度あるのかというようなご議論があっ たかと承知しております。現在、政府の予算の関係で言えば、大詰めの時期を迎えてお りまして、まだ固まった形にはなっておりません。ただ、こうした中身を、法律なりで 措置を行って、来年度以降の給付改善に具体的に繋げるとするならば、その部分の影響 額としては、だいたい1,000億台の後半から2,000億ぐらいの規模ではないかという形で 見積もっているところでございます。これは例えば来年度、再来年度、それから暫定措 置期間でございますので、3年分の、この間に雇用失業情勢がどのように変動するかと いう部分までは当然のことながら現時点で想定している数字ではございません。1月最 初のこの部会におきまして、収支の試算なども提示させていただきましたが、過去最悪 の支出の状況でいうと約3兆円近い、2兆8,000億円台の支出を想定したシミュレーション をご提示させていただきました。  一方で現下の、平成19年度の決算におきます支出の結果は、1兆5,000億弱ということ で、雇用情勢の変動により、給付は非常に大きく変動するというのがこの雇用保険制度 の特徴であることは皆さまご認識かと思われます。そういう意味でこの全体の給付改善 の部分の効果は、だいたい1,000億台後半から2,000億ぐらいの規模になるのではないか という見積りを現時点では立てておりますが、全体とのこの収支の状況から言いますと、 雇用情勢に応じた給付の伸びに、いわば吸収されるような形で額が見積られるのではな いかというように認識をしているところでございます。  事務局からの説明は以上でございます。 ○清家部会長 ただいま事務局から説明のあった資料を基に議論を進めます。本日は報 告書案を作っていく作業に入るので、項目ごとに議論を進めます。まず、2頁の個別の 問題の大きな1の「セーフティネット機能の強化」について、ご意見をいただきます。 さらに(1)の非正規労働者に対するセーフティネット機能の強化が大きな括りですので、 この辺りについてご意見はいかがでしょうか。 ○平田委員 質問です。まず2頁の2つ目の○で、いちばん最後に「6ケ月で受給資格が 得られるような枠組みを設けることとすべきである」とあって、3つ目の○の3行目の後 半で、「暫定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきである」ということ、同じ○ の下から3行目で、「暫定的に、特定受給資格者と同じ取扱いとすべきである」という ことと、4つ目の○の「さらに」というところですが、「長短にかかわらず、特定受給 資格者とすべきである」ということで、4つのことが入っていて、これをこの前の資料 でいうと、「受給資格区分の見直しについて」というマトリックス資料2の11頁のどこ に当たるのでしょうか。 ○坂口雇用保険課長 いまご指摘のあった事項ですが、2つ目の○は受給資格の見直し ということで、前回の資料でいうと10頁に当たります。前回の資料の10頁の「受給資格 取得要件の見直し」で、6ケ月から12ケ月未満の方で、×になっているところを○にす る枠組みを作ろうというところです。  11頁との関係ですが、今回の2頁の3つ目の○の1、2行目にかかわる部分は、「暫定的 にこのような枠組みにより得られる方について」について、特に非正規労働者に対して 十分なセーフティネットとして、暫定的に特定受給資格者と同じ扱いにしましょうとい う部分が、11頁の下の部分が今回の○の部分なので、「検討の方向性の具体的なイメー ジ」の「被保険者期間6ケ月以上から12ケ月未満の期間雇用者雇止め」の「更新不明示」 の「一般(暫定特定)」と書いてある部分です。  3つ目の○の「また、これにあわせ」というところで、「被保険者期間1年以上であっ て、3年未満で、希望したにもかかわらず」という者について、同様に「暫定的に、特 定受給資格者と同じ取扱いとすべきである」というところが、11頁の下の表の「被保険 者期間12ケ月以上雇用期間3年未満」の「期間雇用者の雇止め」「更新不明示」の「一 般(暫定特定)」というところです。  4つ目の○の「さらに」の部分が、下の「検討の方向性の具体的なイメージ」の「被 保険者期間12ケ月以上雇用期間3年未満」の「期間雇用者の雇止め」「更新明示」の「特 定」となる部分です。 ○平田委員 よくわかったのですが、これはすべて法律で、法改正をしないとできない という理解でよろしいですか。 ○坂口雇用保険課長 受給資格の点と受給資格者を特定扱いにするので所定給付日数と 同じように扱うという部分については、法律の改正で受給資格要件のところの改正であ ったり、あるいはそういうことに伴って、所定給付日数についても、特定受給資格者と 同じ扱いに暫定的にするという法律改正が必要かと思います。  ただ、いちばん最後の3つ目の○については、現在も特定受給資格者を厚生労働省令 で定めていまして、11頁の資料にもあるように、更新明示の上の現行で「特定」となっ ている部分が、厚生労働省令で定めているので、そういったところについては、下の12 ケ月以上3年未満についての特定扱いについては、省令改正で可能だと思います。 ○長谷川委員 2頁の○の3つ目で、「これら暫定的に措置を講ずるなら3年とすべきで ある」というのですが、当分の間という選択肢はないのかどうなのか、それが1点です。  次にこの頁のいちばん下の○で、いま「1年以上の雇用見込み」を「6ケ月以上の雇用 見込み」とするとありますが、この「6ヶ月」というのは、どういう根拠なのでしょうか。 ○坂口雇用保険課長 まず暫定的な措置の3年というのは、昨今も政府としていろいろ な雇用対策を雇用情勢に合わせて講じようとしています。そういった背景の中で、今後 の景気動向のスパンも含めて、この景気の悪化がどの程度続くかも考えて政府全体とし ても対策を講じようとしていまして、現在そういった対策も含めて概ね3年を大きなス パンとして、そういった対策について考えていきたいということです。私どもとしても、 この雇用対策、雇用保険制度としての暫定的な措置を講ずる期間としても、3年が適当 ではないかということで前回も申し上げたところです。  適用の関係で6ケ月以上の雇用見込みに改めることについては、前回もお示ししたよ うな形での非正規の方の適用状況の全体の割合がある中で、先ほど来出ている受給資格 の要件についても、倒産、解雇の方、いわゆる特定受給資格者に当たる場合については、 被保険者期間6月で受給資格が得られるとなっていて、そういう給付とのバランスとも 合わせて、適用基準についても1年以上の雇用見込みについて6月以上と見直すのが適当 ではないかということです。 ○清家部会長 ほかにありますか。 ○三木委員 長谷川委員も「当分の間」と言われましたが、いまの景気後退というのは、 誰も予測が付かないような情勢になっている、日銀短観でも急速に悪化しているのはは っきりしているわけですし、3年と言わずに状況を見ながら判断していくのが適切では ないかと思います。  それと、同じ関連で長谷川委員も言われましたが、そのあとに「中小企業に手続面の 負担増になることを考慮し、適切な周知を図っていくことが必要である」となっていま す。これは保険料の関係だと思うのですが、この点をどう周知させていくのかは非常に 重要だと思うので、具体的にどのような取組みをするのかありましたら、資料をいただ ければと思います。 ○坂口雇用保険課長 暫定期間については、今後来週以降、雇用保険部会の取りまとめ をしていただいた上で、また法案の形にして審議会にお諮りする中で、3年と書いた上 には、いまもあったように、今後の情勢如何によっては時期等についても、3年経った 段階でどういう状況かも見極めながらということも必要になってくると思います。  2頁の最後の部分については、負担増という面では、保険料の負担は労使双方増加す る点があります。また、企業を通じて具体的な雇用保険の資格取得の届出をしていただ く意味でも、中小企業をはじめとして手続面で負担がかかることが想定されます。  現在、先般来この適用基準の観点については、現行も運用基準の形で定めているとご 説明してきましたように、我々としても今後この雇用見込みの要件について、この運用 基準、適用基準を改正していく中で、できるだけ早期に施行していきたいと考えていま す。そのためには、実際上そういう手続、あるいは労働者、使用者を含めて、保険料の 負担をしていただくことが必要になってきますので、一定の周知に当たっては、いろい ろな紙媒体、リーフレット等の関係もありますが、企業にダイレクトメールというか、 葉書で適用の拡大があることを年明け以降、実施の前には必要な周知を行っていくこと を検討中です。 ○清家部会長 どうぞ。 ○栗田委員 セーフティネット機能の強化ということで、いろいろな施策が提案されて いるわけですが、先ほどのご説明によると、その予算のシミュレーションで、影響額は 1,000億円後半から2,000億円ということでした。前回は失業率が最悪に悪化した場合の シミュレーションで出されたと思うのですが、今回のこの提案に対してのシミュレーシ ョンは提出可能なのでしょうか。 ○坂口雇用保険課長 先ほど長良から申しましたように、全体として今回の給付等の見 直しに係る分としての影響額は1,000億円後半から、平年ベースとして2,000億円程度と 思っています。先ほど来申し上げているように、いろいろな形で変動要素もあることも ありまして、そこは厳密なシミュレーションでお示しすることは、1回目のときにA、B、 Cに分けさせていただいた中で、2兆8,000万円、2兆7,000万円というケースを想定する 中で、1,000億円から2,000億円程度の中であればと。一方で適用拡大というのは収入増 ということも含めて考えると、そこで呑み込んで考えていただいても、さほどの大きな 影響の違いはないのかなと考えています。 ○栗田委員 暫定の措置の3年間が、2,000億円が続くと。 ○長良雇用保険課課長補佐 もちろん制度改正はできるだけ早く、来年度当初から立ち 上げたことを前提としますと、そういう形で3年、横置きしたら3年程度給付額の増分は、 現行の支出を前提としたらプラスされるイメージです。 ○清家部会長 次の(2)の再就職困難者に対する支援の強化あるいは(3)の安定した再就 職に向けたインセンティブの強化についても、ご意見がございましたらお願いします。 ○案田委員 3つ目の○で、「所定給付日数が短い年齢層」とか、「雇用失業情勢の悪い 地域等」という記載がありますが、ここをどのようなステップで検討していくのかをお 伺いします。 ○坂口雇用保険課長 この全体の対象ですが、具体的には雇用保険部会報告をおまとめ いただいたあと、法律、省令等で、どういう形で規定するかは、部会報告を受けて早急 に技術的にも詰めたいと考えています。  ここで言っているように、所定給付日数の短い年齢層ですが、特定受給資格者の所定 給付日数を見ていただいても、特に45歳未満の層等については90日になっていることも ありますので、そういった層を念頭に置いています。また、雇用失業情勢の悪い地域に なると、具体的な有効求人倍率であったり、受給者数等の動向を参考に、先ほど申しま したような、省令、告示を含めての地域の確定を考えていきたいと思います。そこの点 については、また改めてお諮りしたいと思います。 ○清家部会長 ほかにございますか。 ○平田委員 3頁の(3)の安定した再就職に向けたインセンティブ機能の強化のところで す。細かいことなのですが、文書の1行目に「離職者の増加が予想される中では、必要 な雇用機会を創出するとともに、安定した再就職に向けてのインセンティブを強化する ことが必要である」と書かれていて、雇用機会の創出とインセンティブの強化という2 つのことで、このこと自体に異論があるわけではないのですが、ここで言っているのは、 インセンティブ強化ということで整理しているのであれば、必要な雇用機会の創出とい うのが、これを受けて何か制度改正があるのかどうかが読み取れないので、雇用の機会 の創出が不必要だとは思っていなくて、文書はこのとおりだと思うのですが、これを受 けての、こうすべきだというのがないのですが、それはどう理解したらいいのでしょう か。 ○坂口雇用保険課長 その点は平田委員のご指摘のとおりで、今回もこの雇用保険部会 において、雇用保険制度の見直しをご議論いただいている関係で、「このため」以下は 雇用保険制度の内容のみになっていて、具体的な雇用保険制度そのもので必要な雇用機 会の創出を図ることは難しいので、その意味ではそこの部分を受けての記述はありませ ん。  ただ、今回の雇用保険部会の議論の中でも、各委員から、今後の雇用情勢の悪化の中 で安定した再就職に向けてということになると、この再就職手当等の改善だけでは効果 が現れないのではないかというご議論もありましたので、その中では事務局とのやり取 りの中でも、全体として雇用の受け皿たる需要側である必要な雇用機会の創出も、政府 としてもいろいろと取組みをしている中で、そういったものと合わせて取組みをしてい かなければいけないというご議論をしましたので、部会報告としては、そういう認識が ある中で、雇用保険制度としてのインセンティブ強化として係る改正の内容という形で 記述したほうがいいのかということで、このような記述にしたところです。 ○長谷川委員 いまの平田さんの意見と関係するのですが、(3)の○の1番目と、○の3 番目は重要なのです。雇用保険の改正の中で、「必要な雇用機会を創出するために」と いうのは文章がつながらないのではないかというのは、まさにそうだと思います。本当 はもう少し終わりの辺りに書き込んでほしいのですが、今回ある意味では給付を延長さ せながら能力開発をするというのが、セットで出てくるわけです。それを雇用保険を活 用しながら行うわけですが、全国を統一した能力開発はあり得るはずがないので、それ ぞれの地方に相応しい雇用創出というのが必要なわけです。  その雇用創出をするときに、イギリスなどは社会的企業というのができていて、そう いう中で雇用創出をしているという話もしたと思いますが、雇用機会を創ることは厚生 労働省だけではできない話で、厚生労働省と経済産業省とか、農水省とか国土交通省な どと、地方の経営者協会とか、地方の労働局、県などが何かをつくって、雇用機会の創 出のところはもう少し書き込むことが必要なのではないかと思います。  いくら能力開発をしても、受け皿がなければそれは全然活用されないわけですので、 1年ぐらい能力開発をしている間に雇用機会もつくるという取組みを、ここは重要な課 題なので、どこかにきっちりとそういうことを書き込んでほしいと思います。  昨日、私のところで全国の雇用担当者会議を行ったのですが、そこで厚生労働省の地 方労働局と、県の労政の連携が悪く、バラバラだという指摘がされています。そんなこ とはない、厚生労働省は最近は積極的にやっていると聞いていると思ったのですが、そ ういうことが指摘されましたので、文書ですので、こういう事例を見える形で書いてい ただければと思います。  能力開発についてですが、これは是非能開局と安定局に連携してほしいと思います。 これまでの短い職業訓練ではなく、6ケ月、1年、2年という長いものが必要だと思いま す。能開局と連携して、そういう訓練メニューを早急に作る。雇用創出と能力開発のメ ニューを作って、きっちり示すことが必要だと思います。地方の中でそういうものを作 って、地方のニーズを聞きながら産業育成をしないといけないので、雇用能開機構と能 力開発局が連携しながら、そういうメニューを早急に作るような体制もつくっていただ きたいと思います。 ○清家部会長 ほかにございますか。特にないようでしたら、大きな2番目の項目の「育 児休業給付の見直し」にいきます。 ○古川委員 育児休業給付ですが、労働側の立場として雇用保険で給付することについ ては課題認識は持っているのですが、現実問題として、この給付を維持していくことは やむを得ないのではないかと考えています。  それから、育児休業基本給付金と、職場復帰給付金の統合ですが、その統合の是非と いうのは、社会的なニーズを踏まえて対応することが必要ではないかと思います。現在 初産の年齢が上がっているといっていても、この給付を受ける世代というのは金銭的に もまだまだ大変な世代だと思います。そういう年代である給付であることを考えなけれ ばいけません。この中にも「モラルハザード」という言葉がよく出てきますが、私は必 ずしも意図的に職場復帰を見送った方ばかりではないと思うので、そういうことも踏ま えて、もう少し冷静な議論が必要ではないかと思います。  3つ目の○に、「制度の運用状況も見定めるべきである」とあります。見定めていくこ とは当然だと思うのですが、この給付の目的は少子化対策もあると思うので、こういう 少子化対策の動きに水を差すようなことにならないように注意しなければならないと思 います。 ○清家部会長 わかりました。 ○平田委員 質問です。前回のこの場で明確に申し上げなかったのかもしれませんが、 1つは統合に関してです。休業後の職場復帰に当たって種々の費用が必要となる場合が ある、こういう側面があるということなので、前回も申し上げたかもしれませんが、本 人の選択制が入れられるのかどうか。一緒にもらいたい人もいれば、別々にもらいたい 人もいるとすれば、そういうことを仕組みとして受けられないのかというのが1つです。  いまご指摘もありましたが、制度の運用状況も見定めるべきとあって、見定めて、す べてがモラルハザードだと言うつもりは全然ありませんが、仮に復帰率がすごく下がっ たということがあれば、見定めて、必要な見直しはしていくという理解をしていいので しょうか。 ○坂口雇用保険課長 まず1点目の選択制という問題ですが、今回、全体として休業中 に統合してはどうかということですが、例えば復帰した場合に復帰分は払う形で、復帰 した場合だけに払うという形であれば、現実的にそれを希望によって休業中にもらえる というのは両立し得ないと思いますし、全体として保険という事故に準じて、失業給付 もそうですし、それと準じて育児休業をそういう事故と準じて、必要な額を必要な給付 にとなりますと、それを受給者側の意思によらしめるというのは、保険制度から考える と、私どもとしては適切ではないのではないかと考えます。  もう1点のなお書きの部分等に関してですが、諸々の制度を含めて、運用上のチェッ クをして問題が出てくることになれば、制度の見直しをしていくことはそのとおりです。 ○清家部会長 ほかにございますか。 ○長谷川委員 この2の2つ目の○にある「モラルハザードが起きるので、統合するので あれば休業後に復帰しない場合は職場復帰給付金分を返還することを盛り込んで」とい うのは、書かなければいけないのでしょうか。すごく不思議で、少子化であるから子ど もを生んでほしいというのが一方でありながら、こういう制度を作るときは、モラルハ ザードがあるのではないかとある。実際にやってみて、本当にモラルハザードが起きる のだとすれば見直しをやればいいわけです。何でこのようにギチギチした制度にしなけ ればいけないのかが理解できないです。それなら、もっと少子化対策をやれと言わない ほうがいいのではないかと思ってしまうのです。  ここにいる私たちは年齢が高いのですが、子どもを産む年代の人たちの賃金はやはり 低いのです。共働きでやっと本人たちが暮らしているわけで、私ぐらいの年の人の賃金 と全く違うわけです。こうした人たちの生活などを考えると、そもそも雇用保険で対処 するからこういう課題が出てくるのであって、早く基金制度に移行すればいいと思うの です。ここまで書かなければいけないのかなというのが、不思議でしょうがないです。 制度設計に問題があるから、どうしてもこうなるわけなので、ここまで書かなければい けないのかなという気がするのです。  更に「モラルハザード」という言葉が2回も出てきます。こういう制度設計をするとき に、言うことは言うということですが、育児休業というのは、本当に女の人に働いても らって、子どもを産んでもらって、子どもを育てながら働いてもらいたいから、育児休 業制度を作っているわけです。それは働く側の要請もあるだろうし、企業からも要請が あるのですが、何でそういう環境をもう少し整えようということにならないのか。私は 不思議でしょうがないのです。ここまでしつこく何回も書かなければいけないのか。 ○清家部会長 そうしますと、その辺りの文案を少し変えたほうがいいというご意見で すね。 ○長谷川委員 はい。 ○清家部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。次の大きな3「雇用保険料率 について」ご議論をお願いします。 ○長谷川委員 質問です。国庫負担はどうなるのですか。 ○坂口雇用保険課長 国庫負担の問題については、現在も政府として予算編成の大詰め の時期を迎えているところです。スケジュールとしては、今週末から来週にかけて、政 府の最終的な予算案を作っていきます。  私たちとしては、雇用保険の国庫負担については、政府の雇用対策に対する責任です ので、現在の国庫負担から、廃止、削減はあってはならないと考えていますので、従前 より申し上げているとおり、私どもとしては最終的な政府予算の取りまとめに向けても、 そういうことがないようにということで、いまも全力を挙げて対応しているところです。 ○長谷川委員 労側の意見ですが、これまで何回も申し上げてきましたが、こういう雇 用情勢で、雇用保険が必要な時期なのに、あえて保険料率を下げなければいけないとい う合理的な理由は、何回審議会をやっても見い出すことができません。この保険料率を 下げることの裏に、どう考えても国庫負担の廃止もしくは削減が見え隠れしており、必 ずそれがセットで出てくることに対する警戒心を持っていますので、国庫負担の問題が 見えない限りは、私どもはこの案について賛成できかねます。以上です。 ○清家部会長 国庫負担の問題は、そのうちもう少し明確に見えてくるということです ね。 ○太田局長 20日が予算の原案内示だと言われているので、今週がギリギリの最終調整 ですので、今週中には方向性が出てくると思っています。  課長から申し上げたとおり、我々としても国庫負担の廃止はとんでもない話ですし、 削減も、国の責任ですから、すべきではないと最終段階で粘り強く主張しているところ です。そういう方向で対処したいと考えています。 ○清家部会長 そういう前提で議論を進めさせていただいて。 ○長谷川委員 20日の様子を見てからですね。 ○清家部会長 どうぞ。 ○案田委員 国庫負担の問題とは別にしても、この中でいままで議論された内容という のは、政府からの強い要請ということになっています。その内容が生活に対する緊急支 援の1つだということですが、そこについて本当に効果があるのかが疑問です。  そのことについて、審議会の中の確認が、「やむを得ない」という結論を出すものな のでしょうか。審議会の中ではそうではなく、「一方で」以前のところまでの議論では ないかと思うのですが、審議会の結論と、政府がそれをどのように法案にするのかとい う関係がわかりません。審議会で出した結論は、あくまでも意見として出して、政府が それをどう法案化するかの関係をお伺いします。 ○坂口雇用保険課長 この5頁でも、「一方で」の以下に、先ほど来の生活対策の引用 のような形での、政府全体としての強い要請も書いています。そこで「等」とも書いて いるように、これまでの議論の中でも、委員からは保険料率引下げについて肯定的なご 意見があったのも事実かと思いますので、部会全体としてのご意見という形で、このよ うな部会報告の案で取りまとめいただければというのが、事務局としての考え方です。 ○長谷川委員 そういう意味で言えば、この間ずっと労側が言ってきたのは、保険料率 を上げるときとはどういうときなのか、保険料率を下げるときはどういうときなのかと いうことに対して、合理的な理由がない限りは安易にやるべきではないと思っています。  そういう意味では、今回の保険料率を下げなければいけない理由が、失業率は瞬間的 に下がっていますが、有効求人倍率も悪い、このような雇用情勢の中で、確かに積立金 はあったとしても、本当に保険料率を下げなければいけないのかについて、合理的な理 由を見い出すことができないと思うのです。そこはきっちりしておかないと、これ以降 またいろいろなことが起きてきたときに、保険料率を上げるとき、下げるときの議論が 混乱するようなことがあってはいけないと思います。 ○清家部会長 ほかにございますか。 ○三木委員 前回の改正のときには、急速に雇用保険制度が悪化していく中で、結局は 保険料率は上げる給付は下げるといった、最悪の事態を迎えたわけです。今回でも、一 貫して雇用状勢は悪化しますということを言っていながら、あくまでも生活対策だとい う、政府の見解がどうしても先に立ってしまう。これでは合理的な理由にはならないと 思っています。これまでの意見でも、やはりいま保険料率を下げることに合理的な理由 を見い出せないという意見も多く出されたと思います。それをこういう書き方で示され るというのは、我々としても納得できないということを言わざるを得ません。 ○清家部会長 ほかに何か、ご意見はありますか。 ○佐藤委員 坪田の代理、日本商工会議所の佐藤と申します。雇用保険料率については たびたび坪田からも申し上げたかと思いますが、料率引下げということでお願いしたい と思っています。  いろいろご議論ありましたが、今回の話の前に、私どもの場合ですと今年の9月だっ たのですが、雇用保険料率に限らずですが、社会保険料の負担も非常に厳しいという中 小企業も多数ありますので、経済環境も非常に厳しき折、料率の引下げについては従来 から申し上げているとおりですが、改めて意見を申し上げたいと思います。 ○平田委員 5頁の「今後の課題」のところですが。 ○清家部会長 それはもう少しあとでお願いします。いまは料率の議論だけ伺います。 ○平田委員 わかりました。 ○清家部会長 料率の問題について何かご意見はありますか。 ○中窪委員 料率について対立している意見があるのはわかります。文章の書き方につ いて、最初、引下げについて本来行うべきではないという理由が、いまのように急速に 悪化しつつある時期だからというのは、ちょっとそれだけではないだろうという気がし ます。つまり、雇用保険の料率というのは、長期的な制度の維持可能性を前提に一定の 標準を決めて、それに上下何パーセントという形で弾力条項を作っているわけです。そ れがもし、長期的なトレンドの中で高過ぎるのであれば、また決め直すということは当 然あり得ると思います。保険本来の制度趣旨とは違う理屈で景気対策、経済環境の中で の一時的な対応のために措置を行うということ自体、ちょっと筋が違う話であることを 是非書いていただきたいという気がします。 ○清家部会長 ほかに、この保険料率の問題についてご意見はありますか。 ○岩村委員 やはり、一言だけ申し上げておいたほうがいいと思います。保険料につい ては、今回の平成21年度に限ってということでありますけれども、保険料を下げるとい うのは、やはり本来の雇用保険の制度のあり方ということから言うと説明がつかないこ とだと思っています。とりわけ、いちばん問題だと思うのは、もちろん今後雇用情勢が 回復すればいいのですが、回復しなかったときには雇用保険財政が一気に悪化していく。 結局、1年間の特例措置が終わったあと、また保険料を引き上げてもっと上げなければ いけないということにもなりかねないわけです。それはおそらく、最悪の状態になるだ ろうという気がします。  もう1つ問題だと思うのは、1年間に限っての特例措置で下げるという話なのですが、 そうすると平成22年度にはまた上がるという話になる。本当にそれでいいのかというの も、やはり私は非常に疑問を持っています。ですので、今日のこの素案の中にあります ように、本来これを行うべきではないというのが適切な考え方であろうと思っています。 ○清家部会長 この部分については、先ほど案田委員、あるいは岩村委員も言われたよ うに、例えばこの部会で合理的な理由が見つけられないために引き上げるべきではない というような報告書を書くこともできるかとは思います。ただ、これはそういう部分と、 もう一方で保険料率等について労使と公益委員からなる三者構成の審議会でこれを決め ているという仕組みがもう一方にある。もし、例えば政府全体として、保険料率を下げ るという意思決定をしている中で、この部会で「それは合理性がない」という結論を出 した場合、その部会とは関係なく保険料率を決めるという形になるのかどうかわかりま せん。そういうような形に持っていくのも望ましくないということもあるかと思います。 私は部会長として、個人的な意見は申しませんが、皆さんいろいろな意見はあるかと思 います。やはり、保険料率の問題はできれば、合理的な理由を付すかどうかは別として、 この部会において政府全体の審議と整合的な形で何とかまとめることができたほうがい いのではないかと思います。取って付けたような理屈を付けたくないということは、私 もとても理解できるところです。だからといってこの部会で、政府のほうでご自由にお まとめくださいというわけにもちょっといかないと思っています。 ○岩村委員 いまの部会長のお考え、私自身も最終的にはそれでやむを得ないと思って います。ただ、若干気になるのは、「本来これを行うべきではなく」のあとに「慎重に 対処する必要があるが」ということが書いてあります。希望としては、もうちょっとネ ガティブに書いてもらえないかというのが1つです。  もう1つは、「平成21年度に限っての特例措置とするならば」ということで書いてあ るのでいいとは思うのですが、平成21年度に限っての特例措置だというところのニュア ンスがもう少し強く出るといいかなという気もします。これは意見ですが、ご検討いた だければと思います。 ○清家部会長 ほかによろしいですか。それでは、ここの文言につきましては、私も皆 様方それぞれのご意見を理解できるところもあります。先ほど、私が申し上げた、どの ぐらいまでどういう説明ができるかということと、ここの場で雇用保険料率について決 めるという原則を維持したいという点が両立できる範囲で、どの辺まで調整できるか事 務局にも知恵を絞っていただきたいと思っています。一応、ご意見として承るというこ とでよろしゅうございましょうか。ほかによろしいでしょうか。  ここからは「今後の課題」の部分、それから先ほどいきなり各論に入ってしまいまし たけれども、第1の現状及び課題の案の1頁目の部分ももちろんあります。ここも含めて 今後の課題、それからいままでの全体について、また戻っていただいてかまいませんの で、何かございましたらご意見をいただきたいと思います。では平田委員、お待たせい たしました。 ○平田委員 先ほどは失礼しました。5頁の「今後の課題」のところ、最初の○に「前 回の報告で検討された事項については引続き検討」とあります。特に、文言修正までは 必要ないのかもしれませんが、「引続き検討」の中には、今回の報告書では「やむを得 ない」が3回出てきます。そういうまとめをしたということもあって、今回の改正そのも のもちゃんと状況を確認するとか、それを踏まえて必要に応じて見直していくという理 解でいいかどうか。  最後にもう1つ、いちばん最初の総論の第1のところ、下から3つ目の○、こだわりま せんが「派遣労働者」や「契約社員」という言葉が出てきます。中の各論のところには、 「有期雇用者」というワードを使っています。その辺の統一感がどうなのかという、素 朴な疑問も含めて、もしご回答がいただければと思います。以上2点でございます。 ○清家部会長 事務局からご回答いただければ、お願いします。 ○坂口雇用保険課長 いまの第1のところを含めてですが、全体の現状の状況の中で、 特に昨今の社会問題等にもなっているような雇用情勢の中で派遣労働者、契約社員の方 の雇止めという形が強く現れています。わかりやすさということも含めて、かような形 で記載をしています。  後段の部分は、量的にも対象をコンパクトにということも含めて、「有期契約」とい う言葉を使っています。ただ、若干、いま一度精査をする部分がないかということにつ いては見直したいと思います。 ○清家部会長 平田委員、よろしいですか。 ○平田委員 1つ目のほうの「今後の課題」で先ほど申し上げた「引続き検討」の中に は当然、今回の見直しも含めてという理解でよろしいですか。 ○坂口雇用保険課長 そこは先ほどの提案、あるいは諸々の部分も含めてですが、今後 部会報告を取りまとめていただいたあと、いろいろな形での制度の見直しをまた、審議 会にも法案要綱等をお図りしながら行っていくわけです。そういった制度見直しの結果、 あるいはその後の状況ということについても当然フォローアップしていただくことにな っています。 ○長谷川委員 確認なのですが、「今後の課題」のところ、「65歳以降への対処等」と なっています。この中には前回確認したマルチジョブホルダーなど、就業形態の多様化 への対応ということも入っているし、今後の雇用失業情勢の状況を見極めつつ、引続き 検討というときには必ずしもそれだけではなくて、雇用保険の給付日数、水準など諸々 のことも含まれるというように読み取っていいのかどうなのかをお聞きしたいと思いま す。 ○坂口雇用保険課長 いまの長谷川委員の点については読み取っていただいて結構かと 思います。文言の書き方があまりに、「平成19年の部会報告において」が強過ぎるとす ると若干表現ぶりをというのもあります。趣旨としては先ほど平田委員にもお答えした とおりですし、いま長谷川委員もおっしゃったように、平成19年部会報告でも今後の課 題とされていることも含め、所定給付日数の問題も「今後の課題」の中にあります。そ ういった点も含め、今後フォローアップをしていただきながら引続き当部会でもお願い をしたいということで考えています。 ○長谷川委員 やはり、私は雇用保険は常に検討とアフターフォローが必要だと思って います。財政審の中でも雇用保険が非常に話題にされて、雇用保険でカバーされている べき労働者がカバーされていないというのは、雇用保険制度を理解した上で議論してい るのかと思うような議論が展開されたわけです。マルチジョブホルダーもそうなのです が、労働基準法の労働者、その辺が非常にグレーの労働者もいらっしゃるわけで、そう いう人たちの雇用、セーフティネットをどう張るのかもいろいろなところでされている ようです。私どものところでも、そういう要請がありますので、これから雇用保険の制 度を議論するとき、そういうものも合わせて議論していただければと思います。後出し じゃんけんのようで申し訳ありません。 ○清家部会長 それはご要望ということで。 ○原川委員 4番の2つ目の○なのですが、「平成22年度以降の雇用保険料率のあり方に ついても、今後の雇用失業情勢や積立金、雇用安定資金の状況を見極めつつ検討するべ き」とあります。この意味は、要は弾力条項だけという意味なのか、あるいは雇用情勢 を見てさらに料率を検討するというニュアンスが含まれているのかどうか。その辺を確 認したいと思います。 ○坂口雇用保険課長 いま、原川委員がおっしゃったとおり、少なくとも毎年度と申し ますか、前々年度の決算を踏まえて平成22年度、あるいはその次のという形で毎年度の 雇用保険料率についてのご審議を当部会でもいただくことは当然のことでございます。 さらに加えて、今後の雇用情勢とか積立金、雇用安定資金の状況を見極めながら、いろ いろ料率の作り方あり方等についても、必要に応じて当部会でもご議論いただくという のは部会の検討事項としては当然の範疇であろうかと思います。その点については併せ て、今後の課題ということかと思います。 ○平田委員 質問なのですが、とても細かいことで恐縮です。戻って恐縮なのですが、 まず2頁目のセーフティネット機能の強化のところの2つ目の○、4行目のところに「有 期雇用者等」とあります。この「等」に何が含まれるのか。同様に、3頁目の上から3 つ目の○1行目に「失業情勢の悪い地域等」とあります。具体的にはどういうことなの かを教えていただければと思います。 ○坂口雇用保険課長 いまの1つ目のご質問、2頁の2つ目の○「有期雇用者等」の「等」 は、先ほど私の説明が漏れていたかと思います。前回の資料の11頁、現行のところでも、 実は正当理由離職という形で、雇止めでない方について6ヶ月以上12ヶ月未満で暫定特 定という形にさせていただいています。この区分については、実は現行も前回の平成19 年改正の施行時、この区分については一定の省令改正をした上で、現在も受給資格要件 はあるということであります。この方の受給資格要件、あるいは「検討の方向の具体的 イメージ」の下のところの正当理由離職のところで、一般暫定特定という形にしていま す。そこの部分の扱い、所定給付日数の扱いを含めて、この方についても特定受給資格 者と同じ扱いにするという趣旨で「等」については書いています。もう少し簡単に言う と、正当理由離職の方の部分を表すということであります。  3頁の3つ目の○、「具体的には」というところの「悪い地域等」の「等」については、 今後、こういう形で再就職困難者に対してどういう形で支援をしていくかという中では、 現在でも私ども安定所、ハローワークでいろいろ現場で再就職の支援ナビゲーター、再 就職支援という形で対応している方がおられます。そういった方については、やはり再 就職の対応を支援していく中で、雇用保険の制度の中でも安心して支援を受けられるよ うにという対象として考えていけるのではないかということで、ここの「等」の中では 考えているということです。 ○清家部会長 平田委員、よろしいですか。ほかに何かありますか。 ○中窪委員 先ほどの4「今後の課題」の2つ目の○なのですが、前回のところには出て いなかったと思うのですが、今回加わったということです。特に、「平成22年度以降の 雇用保険料率のあり方についても」というのが若干気になります。弾力条項について、 それを毎年見直すというのはある意味で当然なのですが、今回、平成21年度に限っての 特例措置についても、平成20年度以降も考慮するようなニュアンスに読めないこともな いものですから。すべて検討するのであれば1の○だけで済むのではないかという気が しますし、もし残すのであれば、そこが誤解の余地のないような書き方にしていただけ ればと思っています。 ○清家部会長 それはご要望として承っておきます。ほかに何かございますか。よろし ゅうございますか。  それでは、以上をもちまして、今回の雇用保険部会は終了させていただきたいと思い ます。皆様、積極的にご議論いただき、各項目についてそれぞれご意見をいただきまし た。ご意見には、今後の検討の進め方にかかわるようなものもあったかと思います。前 回も申し上げましたが、年内には一定の取りまとめをすることで検討を進めている課題 ですので、まずは報告書を取りまとめることができるようにしたいと思っています。つ きましては、事務局と私とで相談しながら取りまとめの報告案を作成し、次回にお諮り したいと思います。もし本日言い足りなかったこと、あるいはあとで気づかれたという ことがありましたら、できるだけ速やかに事務局に何らかの方法でお知らせいただけれ ば幸いでございます。次回の日程については事務局で調整の上、各委員にご連絡をお願 いしたいと思っています。  本日の署名委員は雇用主代表原川委員、労働者代表案田委員にお願いいたします。委 員の皆様にはお忙しい中、ありがとうございました。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)