08/12/09 第34回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録 第34回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会      日時 平成20年12月9日(火)      10:00〜      場所 中央合同庁舎4号館共用108会議室(1階) ○平野部会長  それでは、第34回労災保険部会を開催いたします。本日は金城委員、中窪委員、那須委 員、高松委員、藤田委員、佐野委員、田中委員、平山委員がご欠席でございます。また、 社団法人日本経済団体連合会輪島委員の代理として、同連合会労政第二本部安全・衛生グ ループ明石祐二副長にご出席いただいております。  早速ですが、議事に入らせていただきます。本日の議題は、「労災保険率の改定方針等に ついて」です。資料1〜4まで、一括して事務局から説明をお願いいたします。 ○労災保険財政数理室長  それでは資料1〜4まで、ご説明申し上げます。  まず、資料1は「労災保険率等に係る関係法令」で、労災保険率に加え、特別加入の料 率、あるいは建設の事業について定められている労務費率なども含め関係法令を1枚にま とめたものです。後ほどにでも、ご参考にしていただければと存じます。  資料2は現在の「労災保険率表」です。林業からその他の各種事業まで、54の業種を設 定しているところです。いちばん高い料率は上から1/5ぐらいのところにある建設事業の 中の水力発電施設、ずい道等新設事業で1000分の118、また、低い料率は、いちばん下に あるその他の各種事業をはじめ、いくつかの業種で設定されている1000分の4.5です。  この労災保険率は平成17年3月に定めた労災保険率の設定に関する基本方針に沿って定 めており、その基本方針が次の資料3です。  基本方針の冒頭に、この基本方針を制定した経緯を記載しております。簡単に説明いた します。  平成16年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」の中で、労災保 険率について、業種別リスクに応じた適正な保険料率の設定が盛り込まれ、ここに書いて ありますように「事業主の労働災害防止へのインセンティブをより高めるとの観点も踏ま え、業種別の保険料率の設定について、業種ごとに異なる災害リスクを踏まえ、専門的な 見地から検討し、早急に結論を得る。」とされました。これを受け、学識経験者による検討 会を開催し、その検討結果を踏まえて、労災保険率の設定手続の透明化を図るべく定めた のが、この「労災保険率の設定に関する基本方針」です。  内容を説明いたします。まず、労災保険率は業種別に設定するものであること。また、 改定の頻度は原則として3年ごととなっております。  次の3、算定の(1)で、労災保険率の算定の方法を示しております。まず算定の基礎に ついては、過去3年間の保険給付実績等に基づいて算定する料率設定期間における保険給 付費等に要する費用の予想額とするとしております。そして、業種別の料率に係る基本的 な算定方式は、業務災害分の料率を短期給付分と長期給付分に分けて算定することとして おり、短期給付分は3年間の収支が均衡するように「純賦課方式」によって算定し、長期 給付分は、災害発生時点の事業主集団から将来給付分も含め年金給付等に要する費用を全 額徴収する「充足賦課方式」により算定することとしております。  次の全業種一律賦課方式ですが、給付等に要する費用のうち、一部については全業種一 律の率で負担するように算定することとしております。具体的には、業務災害分の短期給 付のうち、災害発生から3年を経ている給付の費用、長期給付のうち、災害発生から7年 を超えて支給開始される年金給付の費用、また、既裁定年金受給者に係る将来給付費用の 不足額である過去債務分を、それぞれ全業種一律の率で負担するものです。なお、年金給 付の費用とは、いま申し上げたような将来給付分も含む額です。  先ほど長期給付については、充足賦課方式で負担すると申し上げましたが、この方式で は既裁定の年金の将来給付費用に見合う積立金が形成されます。ここで言う不足とは、実 際の積立金が将来給付額の総額に対し不足しているということです。充足賦課方式に変更 したのが平成元年度ですので、昭和63年度以前に裁定された年金について積立金が不足し ており、過去債務分の不足を全業種一律で負担していただき、解消を図っているところで す。  また、通勤災害に係る給付費用、二次健康診断等給付の費用、そしてここでは労働福祉 事業と当時のままの記載となっておりますが、社会復帰促進等事業及び事務の執行に要す る費用分もそれぞれ全業種一律で負担するように算定いたします。  以上のことをフローチャートにしたものが参考1です。いちばん左が「業務災害」に係 る短期給付の給付費用です。3年間で平均し、年間に発生する額が給付費用で、このうち 災害発生後3年を超えて発生している分については、各業種の賃金総額に応じて、全業種 一律の率となるようにして配分し直します。そうした上で、各業種の賃金総額で除するこ とで、短期給付分の料率が算定されます。その右側が業務災害の長期給付の費用です。こ ちらは、年間に発生する新規の年金受給者について将来給付分も含む給付費用で、1人当 たりの充足賦課額に新規年金受給者数を乗じて算定します。  1人当たりの充足賦課額については、参考2の「長期給付費用の算出方法」をご覧くだ さい。長期給付費用は年金の種類ごとに、1人当たり充足賦課額に新規年金受給者数を乗 じて得た額の合計です。年金の種類は、なお書きの7種類です。  1人当たりの充足賦課額は、年金受給者1人に対して、将来にわたって、発生する給付 に要する費用の総額で、平成21年度に発生した1件の障害補償年金1〜3級の場合を例に 計算方法を示しております。  平成21年度以降の各年度における給付費用が表のいちばん右側の欄で、その合計が 4,954万円となります。約0.5億円が1人当たりの充足賦課額、つまり障害補償年金1〜3 級の年金給付費用の総額です。  各年度の給付費用は、当該1件の年金の各年度の残存率を残存表にしたがって求めます。 平成22年度は0.95、23年度は0.91などのように年を経るにしたがって徐々にゼロに向か って下がっていきます。裁定年度の平成21年度は0.49ですが、最初の年は年金の発生が 年頭とは限りませんので、年間丸ごとの額ではなく半分としております。ただ、0.5を若 干下回るのはその年度内に失権する場合があることを反映したものです。  そして年金スライドを反映させた各年度の給付額として、障害補償年金1〜3級の年金単 価が実績に基づき約286万円ですので、これを賃金上昇率1.0%でスライドさせています。 その次に運用利回りを2.0%として、各年度の給付額を平成21年度時点の現価に割戻しま す。  以上の残存率、スライド済みの年金単価、現価率を乗じて得た額が各年度の給付費用で、 その合計が4,954万円となります。  このように年金の種類ごとに、1人当たりの充足賦課額を算出し、新規年金受給者数の 予想数を乗じ、年金給付費用としております。  参考1に戻ります。このようにして算出した年金給付費用のうち、災害発生後7年を超 えて発生する分については、各業種一律の率の負担となるように業種間で配分し直します。 その上で、その業種の賃金総額で除することで、当該業種の長期給付分の率といたします。  その右が過去債務分です。これは改定時に必要な積立金と改定時の実際の積立金の差額 から、差額解消期間で均等に負担するよう計算し、これを各業種一律の率で負担するよう に全業種の賃金総額で除して、過去債務分の料率といたします。改定時に必要な積立金と は、改定時の年金受給者に対して将来支給する額の総額です。その右の非業務災害は、通 勤災害に係る給付や二次健康診断等給付に充てる分です。こちらは全業種の短期給付と長 期給付の費用を業務災害分と同様に算出し、それを全業種計の賃金総額で除して非業務災 害分の率とします。  いちばん右の「その他」は、社会復帰促進等事業と事務の執行に要する費用に充てる分 で、費用の予想額を、全業種計の賃金総額で除して求めます。  以上が労災保険率の算定の方法です。  次に、基本方針の(2)激変緩和措置等について説明いたします。今ご説明した形で算定 された労災保険率が、現行の設定料率に比べて大きく引き上がる場合は、必要に応じて一 定の激変緩和措置を講ずることとしています。また、産業構造の変化に伴って、事業場数 や労働者数が激減したため、保険の収支状況が著しく悪化している業種については、必要 に応じて一定の上限を設けることとしています。このように、激変緩和措置には2つの類 型があります。  また、激変緩和措置は料率改定時に数理計算の結果に基づいて行うこと。激変緩和措置 に伴う財政的な影響、つまり激変緩和に伴ってその業種の負担が減った分については、全 業種一律の率で負担することとしております。  この激変緩和措置は、前回平成18年の改定においては、林業や採石業など7つの業種に ついて、算定した料率が設定料率を大きく上回ることから、激変緩和として引上げ幅を1 厘に止めたところです。また、金属鉱業、非金属鉱業、石炭鉱業については、適用労働者 数が2,000人を切る一方で、毎年数百人の新規の年金受給者の発生が続いていたため、も はや料率を上げることが難しく、1,000分の87という料率が据え置かれたところです。  次に基本方針の項目の4「労災保険率改定の手続等」です。改定に係る基礎資料の公開 と、これに基づく審議会での検討を経て決定することとしております。  以上が労災保険率の設定に関する基本方針です。  続きまして、資料4は労災保険率算定の基礎となる統計、もしくは関連ないしは参考と なる統計です。今度の改定案は主に平成17年度から平成19年度の3か年の実績を基に計 算いたしますので、この統計資料も平成17年度から平成19年度にかけての3年間の数字 を掲げています。なお資料4の後半にその前の3年間、平成14年度から平成16年度の3 年間の統計についても同じ様式で掲げています。  資料4の最初は業種別の適用事業場数です。全業種で約264万事業場となっており、概 ね横這いです。2頁は適用労働者数の統計です。全業種で平成19年度は5,131万人で、こ ちらはこの3年間徐々に増えてきています。ご参考までに平成17年度から平成19年度の 3か年平均では、その前の3か年に比べて4.5%の増となっています。  3頁は保険料収納額です。毎年、全業種で約1兆円となっており、料率の算定に使う賃 金総額の計算に使われております。  4頁は業務災害に係る短期給付の額です。平成19年度で3,935億円、3か年の平均では、 その前の3か年に比べると、2.7%の減となっています。適用労働者数が増えている一方で、 業務災害分の短期給付の額は減少しているわけです。ただ、業種によっては短期給付の額 が増えている業種もあれば、減っている業種もあるという状況です。  5頁は通勤災害に係る短期給付の額です。平成19年度は約503億円でした。3年間の平 均では、前の3年間に比べると1.3%の増となっています。ただ、その間適用労働者が4.5% 増えていますので、適用労働者数の伸びに比べれば増加率は小さくなっています。  6頁は非業務災害の1つである二次健康診断等給付の額です。全業種では年々増えてき ていますが、平成19年度でも6億円弱の金額です。  7、8頁は長期給付分の額です。業務災害分と通勤災害分とを分けており、平成19年度 は業務災害分が4,066億円、通勤災害分が427億円となっています。  9頁から3頁にわたり、毎年発生する新規年金受給者数の統計を掲げました。業務災害 と通勤災害の合計、業務災害分、通勤災害分の3頁です。10頁にあります業務災害分です が、平成19年度で6,028人です。なお平成18年度は6,946人と多くなっていますが、こ の一因としては平成18年度から支給している特別遺族年金の新規分が入っているためで す。  12頁からの3頁が各年度末における年金受給者数です。業務災害と通勤災害の合計、業 務災害分、通勤災害分の3頁です。平成19年度末の年金受給者数は約22万4,000人で、 このうち業務災害によるものが約20万人、通勤災害によるものが約2万4,000人となって います。年金受給者数は全業種では概ね横這いとなっています。  以上、資料4までご説明申し上げました。 ○平野部会長  どうもありがとうございました。ただいまの事務局の説明について、皆さまからご意見、 ご質問等ございましたら、よろしくお願いします。  ないようでしたら、引き続いて、資料5の説明をしていただきますが、よろしいでしょ うか。 ○労災保険財政数理室長  資料5は「報告書(船員保険制度の見直しについて)」の抜粋です。これは船員保険の関 係者、有識者からなる社会保険庁主催の船員保険事業運営懇談会が平成18年12月に行っ た報告の抜粋です。平成22年1月に船員保険のうちの労災保険に相当する部分が労災保険 に統合されます。平成21年度ですので、船員に係る業種の労災保険率の案をほかの54業 種の改定案と併せてご審議いただくべく、現在作業中です。本日はその懇談会報告から船 員業種の料率計算と関係のある費用負担の部分のうち、過去債務分についてご説明いたし ます。  報告書の2頁の上のアンダーラインの部分をご覧ください。職務上年金部門の移換金に ついてですが、統合前に生じた受給者に係る将来の年金給付費用に要する資金を移換金と 呼んでおり、言い変えれば、移換金の額というのは統合時の既裁定の年金の統合後の支給 に要する費用の総額です。しかしながら船員保険では職務上年金部門にそれだけの積立金 がありません。というのも、この報告書にあるとおり、船員保険の財政方式は労災保険と 違い、ある程度の積立金を保有し、積立金が枯渇しない保険料率を設定し、保険料と積立 金の利子収入等で受給者の給付を賄う賦課方式的な要素を併せ持った財政方式ですので、 労災保険のように既裁定の年金の将来給付分に相当する積立金を持っているわけではない からです。  この移換金として求められる負担は2頁の下にあるように、労災保険と統合しなかった 場合であっても、いずれは既に受給権の発生した受給者に係る将来の年金給付に要する資 金として船舶所有者が負うものですので、統合に伴って発生する移換金についても、船舶 所有者が負担するとされております。  懇談会報告では移換金が2,100億円、統合に当たって労災保険に船員保険から実際に移 ってくる積立金が700億円とされていますが、その差額1,400億円については、労災保険 料率の上乗せにより償却することが適当であるとされております。  さらに3頁の上ですが、償却のための船舶所有者の保険料率を軽減するため、年金部門 以外の積立金を労災保険に回し、できるだけ積立金差額を圧縮することが求められており ます。そしてこの積立金差額の償却の仕方については、3頁の下ですが、「積立金差額の圧 縮を図った上で、労災保険における財政方式の切替えの際の例にならい償却期間を長期間 に設定する等により、統合の際は船舶所有者の全体の保険料率が現在よりも増加しないよ う措置を講じることが適当である。」とされています。  なお、この懇談会報告で2,100億円とされている移換金や、統合時に実際に移ってくる 積立金700億円については、懇談会報告作成時点の見込みであり、3頁の中ほどにもあり ますが、「施行に向けた準備を行う時点で改めて推計を行い、見直しを行う必要がある。」 とされています。  また、4頁ですが、船員保険の被保険者数が平成27年度まで減少し続け、平成27年度 に3万人、3.5万人、4万人となるそれぞれの場合で、償却期間を30年間又は35年間とし た場合の過去債務分の料率を試算しています。この報告書では平準保険料率と呼んでいま す。  積立金差額は、例えば、1,300億円、償却期間35年、被保険者数は平成27年度まで3.5 万人に減少し、以後一定とした場合は、償却するための料率は24.5厘と試算されます。  お手元の資料の最後に、参考として、船員保険の平成17年度から19年度の統計を示し ております。平成19年度は、船舶所有者数が6,194人、被保険者数が6万253人、また、 賃金総額が3,152億円、短期給付の額が39億円、長期給付の額、あるいは年金受給者数は それぞれ186億円、1万375人、新規年金受給者は75人です。また、現在の船員保険の料 率ですが、労災保険に相当する部分は、1,000分の70となっています。  以上でございます。 ○平野部会長  ありがとうございました。ただ今の事務局の説明について、ご意見、ご質問などありま したら、よろしくお願いします。  よろしいでしょうか。ただ今の船員保険の説明は、まだ船員保険事業運営懇談会で検討 中ですよね。 ○労災管理課長  船員保険部分については、船員保険事業運営懇談会の報告書を受けて、改めて平成19 年度までの実績を基に、移換金や移換金の差額を推計して、具体的な料率について、船員 保険事業運営懇談会で審議を行っているところです。そちらでまとまれば、船員の部分の 料率も含めて、労災保険部会にお諮りしたいと思います。 ○平野部会長  そうすると、この懇談会の結果について、もう一度ここで審議をするチャンスがあると いうことですか。 ○労災管理課長  懇談会で料率を審議した上で、具体的には省令を改正して、船員に係る料率を徴収法の 省令に盛り込む必要がありますので、その部分について改めて、労災保険部会にもお諮り したいと思います。 ○平野部会長  その時点では最初に説明されたような算定の手法に、大体合っているということになる のでしょうか。 ○労災管理課長  業務災害の新規の部分については、基本的にはこの基本方針と同様ですが、過去債務の 部分については、この船員保険事業運営懇談会にありますように、その差額については船 舶所有者が一定期間において負担することにしていますので、そこの部分はほかの業種と は違ってくるということです。 ○平野部会長  何かご質問がございますか。  ご質問がないようでしたら、事務局においては本日の議論を踏まえて、労災保険率等の 改定作業を進めていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは今後の予定について、事務局から説明をお願いします。 ○労災管理課長  それでは、本日ご説明いたしました基本方針に則って、労災保険率改定の作業を進めさ せていただきまして、次回は12月22日の4時から、この同じ会場で予定しておりますが、 その際に具体的な各業種ごとの労災保険率等について、ご審議をいただければと考えます。  よろしくお願いします。 ○平野部会長  よろしいですか。  以上をもちまして、本日の部会は終了といたします。本日の議事録の署名委員は労働者 代表の内藤委員、使用者代表の筧委員にお願いいたします。皆さん、本日はどうもお忙し い中、ありがとうございました。これで終了いたします。 照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係                          03−5253−1111(内線5436,5437)