08/11/26 第7回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関する研究会議事録 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第7回)議事次第  1日時  平成20年11月26日(水)10:00〜12:00  2場所  経済産業省別館1014会議室(10階)  3議題   (1)障害者関係団体からのヒアリング       社団法人全国脊髄損傷者連合会副理事長 大濱眞氏       日本難病・疾病団体協議会事務局長 坂本秀夫氏       特定非営利活動法人日本脳外傷友の会理事長 東川悦子氏       全国心臓病者友の会 米田幸司氏  4資料    資料1大濱氏提出資料    資料2坂本氏提出資料    資料3東川氏提出資料    資料4米田氏提出資料 ○座長  今日は第7回の労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研 究会となります。本日は、花井委員と森委員がご欠席です。田中委員が後から遅れてい らっしゃると思います。  それでは、前回に続いて、障害者関係団体からのヒアリングを行いたいと思います。 今回は4人の方にご出席いただいております。ご紹介をいたします。まず、全国脊髄損 傷者連合会副理事長の大濱眞さんです。今、廊下の方で休まれておるということですの で、後から部屋にお入りいただきます。それから、日本脳外傷友の会理事長の東川悦子 さんです。その次が、日本難病・疾病団体協議会事務局長の坂本秀夫さんです。それか ら、最後は全国心臓病者友の会会員の米田幸司さんです。  それでは、ヒアリングを開始しますが、順番はこんなふうにしたいと思います。まず 坂本さんからお話ししていただいて、次が東川さん、米田さん、一番最後に大濱さんと いう順番で、それぞれ10分から20分程度お話しをいただきたいと思います。その後、一 括して質疑あるいは意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いします。それで は、最初に、日本難病・疾病団体協議会の坂本さんからご説明をお願いいたします。 ○坂本氏  では、最初に私の方からご説明を申し上げたいと思います。皆様のお手元の資料の2 というところを開いていただけるでしょうか。一応、私が今日お話しをしたいというこ とは、こちらの文章になっております。  はじめにですが、皆様もご存知のとおり、1993年に障害者基本法が成立した時に、附 帯決議がありまして、難病に起因する身体・精神障害を有し、長期にわたる生活上の支 障がある者を障害者の範囲に含めるということで確認をされまして、難病患者も障害者 の範囲に一応入るという形になったわけであります。  難病といっても、どんな病気なんだろうということで、難しいということをいつも言 われますけれども、昭和47年に定められました難病対策要綱というものがありまして、 その中に難病の範囲という問題が規定されております。大きく2つの塊がありまして、 狭い意味でいいますと、ここに書いてありますとおり、特定疾患治療研究事業45疾患54 万人というのが、対象であります。同時に、もうちょっと広げますと、難治性疾患克服 研究事業ということで130疾患ほど指定をしてありますけれども、これにつきましては、 患者数が何人になるかについては、厚生労働省の方でもまだ把握はされていないという 状況になっております。同時に、難病対策要綱には、もう1つ塊がありまして、経過が 慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に著しく人手を要するため、家庭 の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病ということで、例として、小児ガン、 小児慢性腎炎、ネフローゼ、小児喘息、進行性筋ジストロフィー、腎不全という、長期 に病気を抱えて生きていかなければいけない患者さんも対策の対象ということで、難病 対策要綱には定めてあるという形になっております。  最近の状況でありますけれども、かなり医学が進歩しておりまして、医療技術も進歩 しております。原因も治療法も分からない、同時に重大な後遺症を残す恐れのある疾患 が難病でありますけれども、その難病を治すこと自体はできませんけれども、対症療法 等の改善が劇的に改善をされてきているという病気もあります。そういう中で、就労の 可能性が大きくなってきているというのが現在の状況になっております。同時に、2004 年から2007年頃に難病相談支援センターというのが、厚生労働省が全国の都道府県に呼 びかけまして、都道府県事業として全県に設置されるということで、この中で、医療だ けではなくて、就労相談の問題についても取り扱われるという形になってきております。 少しずつではありますけれども、実績が出てきております。  私が見たところ、今後、この就労センターの事業を通じて、支援が必要だと思われる ことは、雇用主が難病患者を雇った場合のメリットは何なのかということです。現在は、 就労相談にのるということで、ハローワークなどでも対応する形にはなっていますが、 実際上、相談にのったとしても、そういうハンディを背負った方たちに関わるメリット、 企業主のメリットがはっきりしていないという問題もあります。それから、いろいろ問 題を抱えていますので、就労後のフォローアップの問題が課題になってくるのではない かと思っています。しかし、圧倒的な現状の問題は、ここに書いてありますとおり、難 病患者は病人でありますので、イコール働けない。善意に解釈すれば、働かせてはいけ ない人というのが、現状の社会的な認識になっています。  そういうこともありまして、病気を隠して働いている。働かざるを得ないという状況 が、現在の社会の中にあります。病気を隠して働いているということが、結果的には患 者の病状を悪化させる。そういう危険性を常にはらんでいるというのが、現在の状況に なっております。そういう点で、私たちはトータル的に見た場合、私たち患者、それか ら国の施策、地方自治体の施策、そして社会全体の難病患者に関わる課題として、就労 問題についてどうしていくのか。とりわけ私たちは病気が治らないわけですが、病気を 抱えて一生生きていかなければいけない。そういう方たちに、就労の機会をどのような 形で与えていくのか。就労支援策をどうしていくのかということについて、社会的にそ の答えが求められている。そういう形で考えております。  この問題に対して、ここに書いてありますが、平成19年3月、難病の雇用管理のための 調査・研究会というのが開催をされておりまして、難病患者の実態の調査がされており ます。当然、患者の調査、専門医の調査、それから患者のヒアリング、事業所の訪問、 そして、関係者のヒアリングという形で、総合的な研究がなされまして、それで平成19 年3月、ここに書いてありますように、報告書が出されています。アンケートでは、4,0 00名を超える方のアンケートが実施されております。その特徴点がここに書いてありま す。  特徴点は、就業している人が4,000名のうち45%、非就業で就労希望ありというのが26%、 この26%のうち、医師の就労禁止なしが18%、原則禁止が8%、就労希望なしが26%、不明 が3%という結果になっています。このアンケートを通じて、就労継続の課題として、働 き盛りでの発病、病状の悪化というのが課題になっているということが明らかになって きております。同時に、未就業者での就労希望者の関係でありますが、仕事に就きたい と考え、医師に禁止されていない人の就業率は70%程度という形になっています。裏返 していえば、30%程度が、雇用の機会が与えられていない。失業の状況にあるという形 であります。しかし、これはトータル的な問題でありまして、パーキンソン病、脊髄小 脳変性症、多発性硬化症という神経難病といわれる患者さんたちについては、病状が進 行するという問題も抱えて、かなり低くくなっており、50から60%という、半数の方し か就労ができていないという形になっております。現在仕事に就いていない潰瘍性大腸 炎やクローン病などでは、70%以上が仕事に就きたい。また、適切な配慮や環境整備が あれば仕事ができるという人たちがいるという状況になっております。  続きまして、難病と障害の状況であります。難病と障害の関係につきましては、どの ような関係になっているかという問題であります。難病の診断はご存知のように医療の 診断でありますし、障害の認定は障害の程度による認定という形になっております。当 然、重複もありますし、不一致の点もあるという形になっています。難病というのは、 難病を原因として、身体または精神的な障害が生じております。特に難病の障害といわ れるものは、重複障害が多くありまして、疲労、疲れやすいということ、それから皮膚 障害、痛み・しびれなどの感覚障害ということで、このようなものについては、身体障 害者の認定基準には含まれないという状況ですになっております。このことによる、機 能障害や活動制限が伴う場合も少なくないという状況。  続きまして、この委員会で検討されております職場における合理的配慮の提供につい てということで、難病患者の就業を保障するために何が具体的に必要になっているかと いう問題について、いくつかの点について述べさせていただきたいと思います。大きく 3点にわたります。  1点目は、やはり就労に当たっては、環境整備が必要であるということであります。 難病患者の実態、その疾患によって多種多様な状況があります。そういう状況に合わせ た形で就労の支援が必要になってくるわけですけれども、この就労支援に当たって、こ の研究会の報告の中で、いくつかのタイプに分けて把握すると、かなり分かりやすく把 握できるとなっております。1つは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの患者さんを中心 とする腸疾患、それから、2つ目には、膠原病関係の疾患、そして、進行性の疾患とい う形で、分類をする中で、28疾患については、環境整備や雇用管理をするために、どの ような形で対応していったらいいかという問題について、効果的な方法について、この 研究会で示すことができると状況になってきております。  それから、2つ目として、最大の問題はコミュニケーションの問題であります。患者 さんが病気を抱えて働いていく場合、どういう支援が必要なのかという問題について、 雇う側の企業と働く側の患者さんの協力関係がどうしても必要になるということです。 企業にとってみれば、当然、病気を抱えて働いていく人でありますので、安全配慮義務 が存在するという形になります。先ほどちょっとお話ししましたとおり、過半数以上の 人たちは病気を抱えているにも拘わらず、隠して働かざるを得ないという状況が一方で あるわけなので、そういう状況を何とかして、改善をしなければいけないという問題が 裏側にあります。このような状況で、コミュニケーションをどうするかという問題であ ります。企業にとってみれば、難病というのはどういう病気なのか。また、どのような 支援が必要なのかという問題について、必ずしも明らかにされていないということがあ ります。このような点では、この研究会の報告の中でも、どういう形で支援をしたらい いかという問題について、かなり突っ込んだ討議がなされて、その方向性が示された形 になっております。  まず、情報が不足しているという問題が、大きな問題になっています。企業としては、 当然最悪の事態を想定して、新規採用や就業継続を躊躇するという傾向がありますし、 適切な雇用管理を実施するためには、効果的なコミュニケーションを行うための方法や ツールが必要になるということであります。結論としては、職場の理解と配慮をつくり 出すためには、本人側と企業側両方からのコミュニケーションの方法、啓発の適切な方 法について、新たにつくり出していく必要があるのではないかと考えております。意識 的な啓発、社会教育などを通じて、企業において差別のない企業風土をつくるというの が最終目標ではないかと思っております。  最後に、代表的な雇用管理上の配慮ということで、いくつか分析した中で、共通して いえることということで、難病患者、難病がある人、病気を抱え生きている人が、会社 から排除されることなく、職業生活と疾患の管理を両立させて、職場と地域、ここは地 域と書いてありますが、保健・医療・福祉などの専門分野の方たち、それから社会的な 支援という、そういう人たちが支えていくことが重要な形になっているということであ ります。それで、ここに4点、具体的な提起をしております。  1点目は、企業において雇用管理上の配慮として必要なものは、通院の配慮というこ とであります。多くの難病がある人は、月1回から2回の定期的な通院が必要です。多い のは半日程度でありますが、そういうことが必要になります。上司等に理解がなかった り、周囲に気兼ねして休暇が取れなかったり、そういう状況がありますと、病状の悪化 に繋がります。計画的な通院及び突発的な通院への配慮が必要になってきております。  それから、2点では、病気により差別のない人事方針です。当然、働く上では評価と いう問題が必要になってきます。雇用主が選考時あるいは就職後に、病気をもっている ことを知った場合、診断名による偏見で判断するという明らかな差別が、現在見られる 状況になっております。疾患ではなくて、応募者の適性、仕事に必要な能力に焦点を当 てて検討することが、企業としては大変重要になっていると考えております。採用選考 時の健康診断等による病気の一般的な把握は、応募者の適性と能力を判断する上での必 要のない事項を把握することで、結果として就職差別に繋がる恐れがあるということで す。また、病気であることだけで、人事面で差別することは、もちろん不当であると、 私たちは考えております。よく、本人との話し合いを行って、適切な配置、病気の悪化 の危険性を押さえて、体力面での不安がなく、仕事が可能になるよう、また、公正な継 続的研修、キャリアサポート、人事評価を行う必要があると考えております。  3点目の配慮でありますが、休暇や疾患管理への配慮であります。疾患によっては、 体力や仕事の効率維持のための休憩というのが必要になります。多くの難病患者は疲労 の問題について抱えています。このような点では、体力、仕事の効率維持のための休憩、 トイレ、水分補給、栄養剤が必要であったり、皮膚疾患の方については、制服が着られ ないという問題も起きてきます。このような特別の必要性については、特に同僚等には 不審がられ、誤解が生じる恐れがありますので、必ずしも同僚に病名や病気の内容を詳 しく開示する必要はありませんが、病気のための配慮が必要との、会社からの何らかの 説明があった方がよいということがあります。また、横になって、休憩や疾患管理がで きるような場所が必要になる。また、配慮が必要になるということであります。  最後に、柔軟な勤務体制の問題であります。フルタイムが体力的に無理な方もおりま す。そういう点では、パートなどの短時間勤務や週3日から4日の勤務など、そういう条 件にすれば、無理なく働けることが多くあります。フレックス勤務は、体調管理、障害 の状況に合わせて、自己管理が行いやすい場合があります。病気によって、通勤ラッシ ュを避けたり、夜間の視力障害の影響を少なくしたり、定期的通院など勤務時間帯の変 更で対応できるような場合もありますので、柔軟な勤務態勢について配慮をしていただ きたいということで、4点、代表的な雇用管理上の配慮が必要だということで報告させて いだだきました。どうもありがとうございました。 ○座長  ありがとうございました。それでは、続きまして日本脳外傷友の会の東川さんからご 説明いただきます。よろしくお願いいたします。 ○東川氏  NPO法人脳外傷友の会の東川と申します。資料の方が、ちょっと大それた「高次脳 機能障害を知っていますか?」というような題が付いていまして、誠に申し訳有りませ ん。主に、交通事故による脳損傷者が多い会でございます。その他にも、低酸素脳症あ るいは脳血管障害、あるいは脳腫瘍の後遺症の方などが入っておりますが、大体8割ぐ らいは交通事故の後遺症者で占められた会でございます。  やられた脳の場所によって、その症状は非常に異なってまいりますが、一番有名な後 遺症としては失語症でございます。失語症は既に身体障害として認められておりますの で、私たちがターゲットにして運動をしてきた部分は、失語症以外の記憶障害、注意障 害、それから、遂行機能障害、それに伴う社会的行動障害をもつ者ということで、厚生 労働省がモデル事業をやっていただいた結果、診断基準が平成17年にできましたけれど も、その辺りが、中心になった障害者が多いということで、運動を展開してまいりまし た。  運動のきっかけは、私の息子が今から15年前ですが、交通事故に遭って、九死に一生 を得たということで、50日間の意識不明の後に蘇ったということから始まっております。 以前でしたら、全く想定外のことで、そういう人は全く助からなかったわけで、私の息 子も、助かっても植物状態ですよと言われたんですが、50日後に意識を吹き返して、15 年経った今では、見かけはほとんど障害があるとは、しゃべらない限り分かりません。 歩いても、普通に歩いていますし、本当にどこに障害があるんだろうというような若者 たちが、うちの会には多く入っています。ですから、当然、就労による社会復帰という のは、大きな最重要な課題でございまして、働きたい、何とか働きたいと考えている人 たちがたくさんいるわけです。もちろん、最近では、脳梗塞による方々もかなり入って こられるようになっていますが、脳梗塞等による方々の会は、私たちよりもずっと歴史 のある脳卒中友の会あるいは脳卒中協会というような形で運動しておられますので、ま たそういった方々のヒアリングもおそらくおありになることと思います。  私たちが今ここで申し上げることは、若年の脳損傷者に限ったといいますか、支援体 制についてお願いをしたいと思っております。  私の息子の場合は、幸いに、7年後ですが、特例子会社に就職して就労しておりまし て、今でも就労を継続しております。全国的にも非常に希な例だといわれていますが、 全国にうちの会の会員数は3,000人ぐらいしかおりません。厚生労働省がモデル事業の 中間報告でご発表になった数は、全国に30万人の高次脳機能障害者がいるだろうという ことです。そのうち、在宅で必要な支援を受ける者は5万人は存在するだろうというご 発表をなさいましたけれども、私との会ではそれの1割もまだカバーしていないわけで す。弱小の会ですから、現段階で全国調査等をまだ行っておりませんが、2005年でした か、東京医科歯科大学がうちの会に振ってくださって、全国調査をやっていただきまし た。  その時の就労率は確か16.5%だったと思います。その他、ほとんどが福祉的就労とい うことで、作業所等に辛うじて行っているという方が大部分でございました。あとは、 地方によって非常に格差がありまして、まだこの障害について知られていないために、 何の支援も受けずに、在宅で引きこもっておられるという方が相当数いるものと思われ ます。  現在、平成18年から障害者自立支援法に書かれましたので、特別な都道府県が取り組 むべき特別な支援を要する事業ということで、高次脳機能障害支援促進を図る事業とい うのが行われておりまして、支援拠点が各都道府県に設置されつつありますが、まだ全 都道府県をカバーしておりません。今やっと37か8の都道府県に支援拠点となる病院な どが決まりつつあるところでして、相談支援体制がこれからできるという現状でござい ます。  その中で、モデル事業に参加した支援拠点は12都道府県にまたがっております。そ こでは、割合に早くから就労支援に取り組んでいただきました。例えば、神奈川のリハ ビリテーションセンター、名古屋のリハビリテーションセンターなどでは就労支援に取 り組んでいただきましたので、実績もおありです。あとは、民間団体である私たちの家 族会が頑張って就労支援に取り組んでいるという現状でございます。北海道の、今日お いでの松井先生が今後も務めてくださっております、脳外傷友の会・コロポックルとか、 あるいは広島のシェーキングハンズとか、それから、神奈川の私どもの会・ナナの会、 静岡の会など、熱心な家族会が一生懸命就労支援に取り組んでいるという現状でござい ます。  なかなかはかばかしく就労が進まないという1つのネックとしては、障害が知られて いないということがあります。それから障害者職業センターさんでは手帳がなくても就 労の訓練はしていただけるようにはなりました。ですけれども、いざ就労となりますと、 やはり手帳がないということが雇用率に換算されないということで、企業側に何のメリ ットもございませんので、就労に結びつきません。あるいは、トライアル雇用をしてい ただいても、トライアルが終わったところで離職をする、退職をするというような事態 にならざるを得ないという状況になっているかと思います。そして、仮にまた支援を受 けて就労したとしても、フォローがなかなかきちんと行われていないところでは、その 後離職してしまっていても、誰も気がつきません。そして、転職を繰り返してしまうと いうような例が出ております。  そして、脳をやられたことによる一番の大きな問題点は、非常に疲れやすいというこ とです。難病の方と同じように、神経疲労、脳疲労ということで、疲れやすい。にも拘 わらず、元々働いていた人が多いものですから、自分の力の程度がどの程度なのか自己 認識できていません、障害受容ができていないために、頑張り過ぎてしまう。過度に集 中し過ぎてしまう。そして、悪循環になってしまう。それで、人間関係、コミュニケー ション能力も落ちているにも拘わらず、そこがうまく理解できていないために、人間関 係に失敗をして、職場内でトラブルを起こしたり、あるいは、暴力行為を働いてしまっ たりというようなことで、解雇されてしまったりする方がおります。  ですから、難病の方と同じように、障害をよくご理解いただいて、そして適切な職場 環境を与えていただければ、元々かなりの能力をもっている若者たちが多くおりますの で、就労に結びついている場合も多くございます。ですから、その辺が、合理的に配慮 していただけると有り難いと思っております。  それから、あとはちょっと具体的な例でお話しをさせていただきたいと思います。先 般も、度々転職を繰り返して頑張っている若者の話を聞きました。彼は自転車で自動車 にぶつかって事故に遭った人ですが、非常に体力もありまして、頑張って介護福祉士の 資格も取りました。そして、介護の仕事に就いたのですが、なかなか気配りとかがうま くできないために、次々と転職をしておりました。事故からもう11年経っているんです が、やっと障害者手帳を昨年取りました。本当は取りたくなかったんだけれども、お守 りみたいに持っていると言っていたのですが、ところが、介護の仕事に意義を見いだし て、何とかご老人たちのお役に立ちたいと床屋さんの学校で理容士の資格を取って再チ ャレンジをしたんですね。床屋さんの雇用の場に入って、一応床屋の技術もきちんと身 につけたいと思ったのですが、雇ってくれた床屋さんですごいいじめを受けました。眉 毛を剃られたり、頭を虎刈りにされたりというようないじめを受けたと言っていました。 そして、そこでは解雇になりまして、たまたま障害者の集団面接に出かけたら、初めて その手帳のありがたみが分かったということでした。その手帳のお陰で、ある老人施設 に正規に雇用されるようになったと喜んでおりました。周りに理解がなく、ひどいいじ めがあって、熱意を逆に取られたような形でいじめを受けた事例です。  それから、私の息子の場合は、非常にラッキーに、大手の特例子会社に就労しました けれども、彼が言うには、給料がほとんど上がらないと言います。さっき難病の方のお 話しにもありましたけれども、それはやはり能力の問題もあるかも知れませんが、雇用 の体制としてはおかしいのではないか。もう7年も経っていますが、毎年給料はどんな ふうになったと私が4月に聞きますが、牛丼一杯分は上がらなかった、牛丼半分食べる ぐらいしか4月に給料が上がらなかったと言います。やはり、そういう人事方針という のは、おかしいのではないかと私は思います。  それから、あともうお一人ですが、やっぱり非常に熱心に働いて、雇用を継続されて いる人がいます。その人はずっと臨時雇用なんですね。毎年1年ずつ更新させられて、 正社員になっていないのです。臨時雇用のままなんですね。いつもお母さんに何とかな らないんでしょうかと言われておりますが、今年もまた駄目だったよ、また今年も駄目 だったよと、言われています。これも企業側の勝手な論理ではなかろうかなと私は思い ます。雇っていただくのは有り難いですけれども、そこを逆手に取られて、臨時雇用の ままというのは、誠におかしいことではないか、まさに障害者差別ではないかと思って おります。  それから、もう1つ、この方は非常に熱心に働いて、実は障害者職業センターさんが 出している「働く広場」にも写真入りで掲載された方なんですが、所沢の国立リハビリ テーションセンターで訓練を受けて、そこのご指導で信用金庫に就労できた方です。地 方におられるお母さんが、やはり家族と一緒に過ごさせたいということで、地方の公務 員試験を受けさせたいと考えました。ところが、仕事の上では、いったん覚え込んでし まえば、かなりの仕事をこなせると思うけれども、現状の公務員試験では、まず入試の 突破口である筆記試験に通らないであろうということで、そこら辺りの配慮が何とかな らないものか。現状の公務員試験は、知的障害者あるいはこういった記憶障害になどに 陥った人たちにとっては、誠に過酷な突破口だと思うのです。そこに、それこそ合理的 な配慮をしていただいて、例えば、別室でパソコンを使ってよろしいとか、あるいは辞 書機能の何か補助的な手段を使って、例えば視覚障害者の点字とか読み上げソフトによ る試験体制と同じように、これは大学入試にもいえることかも知れませんが、補助的な 手段を使えば、かなりの能力を発揮できる人たちがおります。そういったものを使える ご配慮をいただけると、まず公務員試験でも突破できて、それなりの職場環境を与えら れれば、十分な仕事をこなせる人たちがいると思いますので、そういったご配慮をこれ からいただけると有り難いかなと思います。行政機関である地方自治体あるいは国の機 関で知的障害者やこういった高次脳機能障害者の雇用を進めていただけるということが、 一般企業にも広く影響を及ぼすことだと思いますので、まずその辺りから改善をしてい ただけたらと思っております。  雑駁な話で申し訳有りませんが、環境整備と、それから障害への理解という、これは どの障害にとっても共通のことだと思いますので、ご配慮をお願いしたいと思います。 以上です。 ○座長  ありがとうございました。それでは、続きまして、全国心臓病友の会の米田さんから ご説明をお願いします。よろしくお願いします。 ○米田氏  全国心臓病友の会の米田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。このような 障害者・当事者の意見を聴く場をいただきまして、本当に有り難うございました。実際 の政策に活かして頂きたいと思っております。まずお手元の資料の4をご覧ください。 A4の横になりますが、こちらの方でご説明をさせていただきます。  私どもの会は、心臓病の子ども、それから私のような本人、そして、その親が会員に なっております。全国で約5,000人の会員数でございます。  今日の権利条約の合理的配慮というところで、私がまず率直に思いますのは、この合 理的配慮というのが障害者を甘やかせることではないことだと思います。やはり、障害 者でも一般の方でも、同じ立場に立てる、そういう下駄をはかせることではないかと考 えております。そして、その合理的配慮を進める中で一番大切なことは、QOLを向上 させることだろうということで、今回まとめさせていただきました。内部障害者のQO Lを向上するためにはどうしたらいいのかということについて、ご説明させていただき たいと思います。  まず、このQOLの大きな部分を占めるのは、やはり雇用の部分が一番大きいものが あると私は思っております。例えば、よく言われますが、雇用には3つの甲斐があるの かなと思います。やり甲斐があって、生き甲斐になって、そして、ちょっと言葉が悪い ですけれども、甲斐性があるということです。やはり甲斐性というのが私は大切だと思 います。自分で働いて、自分で稼いで、自分で税金を納める。これが社会参画に繋がっ ていく上で、一番大切ではないかと思っております。しかし、このQOLの向上には2 つの阻害要因があります。その2つの理解不足がお手元のペーパーの一番上の真ん中辺 りにございますが、(1)内部障害に対する理解不足、(2)内部障害者自身の理解不足です。  1点目の、内部障害に対する理解不足ですが、実際、私は心臓病で心臓機能障害3級で ございます。いつもこのような場で申し上げておりますけれども、どこをどう見ても、 心臓病には見えないとよく言われます。でも、心臓病なんです。治らないんです。治ら ないんですけれども、私も企業に勤めていて、実際に企業の方とお話しをすると、すぐ 倒れるので、会社として雇うのは、内部障害、特に心臓病の人は恐いとよく言われます。 見た目は何ともないですが、体調が悪いと思った時に、体調不良を訴えますと、君はさ ぼっているのではないかとよく言われることがあると、会の中でもよく聞く話でござい ます。  あと、実際、内部障害者に対してどのように接していいか、よく分からないというこ とも聞きます。倒れるのではないか。何をしていいのか分からない。どれぐらい休みを 与えたらいいのか。そういうことをよく聞きます。  一方、内部障害者自身の理解不足というものもあるのかなと思います。先程来、お二 人の方からお話しがありましたように、体調悪化を隠して、突然倒れるということが多 々あります。また、体力的に過酷な仕事を希望するということもございます。いつもお 話ししているのは、とある高校生の方から前に相談を受けたことがあるんですけれども、 パティシエになりたいという相談です。お菓子職人ですね。ところが、パティシエとい うのは非常に体力を使うんですね。こねたり、焼いたり、いろんな作業で体力を使いま す。でも、綺麗な部分といいましょうか。華やかな部分だけを見て、その子は多分お話 しをしているんだと思います。それは違うんだよというお話しをして、理解をしてもら ったことがあります。また、夢としてはいいんですけれども、スポーツ選手になりたい というのもあります。それはいいんですけれども、私たち心臓病者にとっては、やはり 過酷な運動は絶対に避けなければいけないことです。ですから、スポーツに携わるなら 別の方向でどうぞという話をよくいたします。こういう、肉体的に過酷な仕事を希望す るということがあります。  もう1つは、治療が不可能にも拘わらず、家族が受容しないという問題があります。 治らないということを家族が理解しないんです。はっきり言って、これが一番問題なの かなと思っております。  このような阻害要因、理解不足を克服していくためには、それぞれ本人であったり、 家族であったり、行政、政治であったり、企業、同僚が何をしていくべきなのかという お話しを少しさせていただきたいと思います。お手元のペーパーの一番左側にございま すが、やはり障害者本人が、自分の状態を正しく理解するということです。できること、 できないことを理解するということが、一番大切かなと思っております。体調悪化を勇 気を持って伝えて欲しい。訴えて欲しいと思っております。  私ども心臓病者友の会でも、この就労に関するアンケートを以前とったことがありま す。その中で出てきた内容としては、雇用されてもなかなか継続して働くことができな い。先ほど言いましたように、さぼりと体調悪化を混同されてしまう。また、通院のた めに年次有給休暇を使いますけれども、それを使い切ってしまって、結果として、では 辞めていただきましょうという話になってしまう。あと、心臓病というのは、どうして も血流が悪くなることがありますので、ネクタイができない場合もあります。そこで、 ネクタイをしなくてもいい職場に配置転換をしてくださいとお願いすると、それはでき ないと言われて、ネクタイができないなら、あなたはもう働かなくて結構ですと解雇さ れた。そのようなことがアンケートに書かれていました。  ですから、やはり、できることと、できないことをきちんと言っていく。これができ るという能力を磨き上げていくことが大切になるのかなと思います。先ほど言いました ように、パテシエであったり、スポーツ選手にはなれなくても、ネット関連の仕事であ ったり、コンサルタントであったり、会計の仕事であったり、そういうことができるの ではないか。実際、私の心臓病の友人にもおりますけれども、とある電気メーカーで取 り扱い説明書の作成をしている人がいます。これは非常に向いています。まず、製品の ことを理解する。そして、ビジュアル的な能力が要る。非常に専門的な仕事なんですね。 自分のペースに合わせて、机について仕事ができると、非常に向いた仕事だと本人も言 っておりました。  家族につきましては、本人の状態を正しく理解するとともに、先ほどのお話しにも出 ましたけれども、手帳の取得を勧めるということです。やはり手帳を持つということが、 親にとっては非常に負担であるということをよく聞くんですけれども、親御さんは子ど もさんより先に死にます。大抵の場合は。ですから、やはり障害者手帳を持つことによ り、少しでも本人が、一般の人たちと同じ立場に立てる下駄をはかせてあげるというこ とが大切なのかなと思っております。  それから、行政、政治につきましては、医療助成制度の拡充等々と書いておりますが、 やはり、各人の状況に応じた手厚い教育環境の整備をお願いしたいなと思っております。 特に、小学校とか、もちろん本人に対する配慮というのも大切なんですけれども、障害 がどういうものなのかということをきちんと教育をしていただきたいということが、よ く話としては出てまいります。  それから、法定雇用率の向上ということです。これは、従前からいわれておりますが、 特に1つの提案なんですが、ハローワークにおける離職手続きについてです。はからず も退職してしまったとします。その時に、なぜ退職に至ったのかということの原因をき ちっと把握していただきたい。これは、決して、企業に対して懲罰的な意味ではなくて、 よくPDCAサイクルと申しますけれども、なぜ障害者であるこの人が会社を辞めなけ ればいけない状況になってしまったのかということをチェックしていく。そして、次の アクションに繋げていく。そういうPDCAサイクルを回すためにも、なぜ離職に至っ たのかということをチェックしていただく。こういうことをしていただくとよろしいの ではないかと思っております。  それから、継続雇用を続ける環境といたしましては、やはり先程来出ていますフレッ クスタイムと在宅勤務をお願いしたいと思っております。特に、先ほど鉄道が遅れてい るというような話がありましたけれども、満員電車の中でぎゅうぎゅう詰めで通勤して 来るというのは、一般の方でも大変なことなんですけれども、私たち障害者にとっては、 もっと大変なことなんです。ですから、本人の時間や体調に合わせて、そういうフレッ クス勤務を導入していくということをお願いしたいと思っております。  それから、企業に関してですけれども、最近の日経ビジネスに載っておりましたので、 企業名は出していいと思うのですが、ユニクロ、ファーストリテーリングですね。ユニ クロで障害者雇用を進めているという記事が出ていました。1店舗で必ず障害者を1人雇 いなさい。これによって、結果的に障害者雇用率8%を達成しているという記事が出てい ました。その中で、コメントとしてあったのは、障害者を通じて一般の社員と障害者が 助け合って仕事ができるとともに、一般の社員が社会を知り、弱者を知ることができる というコメントが載っておりました。非常にこれは大切なことではないかと思っており ます。やはり、その障害に対する正しい理解を深めるには、確かに本を読んだり、テレ ビで見たり聞いたりすることも大切なんですけれども、やはり一緒に仕事をする中で知 ることが大きいのではないかと思っております。また、会社にとりましても、障害者を 雇用することによって、障害者がどういうニーズをもっているのか、例えば、車椅子の 方に対しても、どのような施設があればいいのか。私たち内部障害に対しては、どのよ うなサービスがいいのか。そういった商売のためのニーズを知ることにも繋がっていく のではないかと思っています。  あとは、本人の適性と体調に応じた職場の配置であったり、体調不良の時などには柔 軟な勤務の配慮をお願いしたりということもよく聞いております。やはり、今まで我々 は労働者として労働時間を売ってきた。しかし、これからというのは、付加価値を売る 仕事ということが中心になってくるのではないか。ですから、1日8時間、週40時間働か なければいけない、ちゃんと朝9時に会社に来ておかなければいけないということでは ないのではないか。本人の能力に応じたいろんな制度があるのではないかということを 模索していきたいと思っております。  あと、継続雇用を続けられる環境、制度として、またフレックスを挙げておりますが、 特に特例子会社制度ができておりますが、なかなか分かりづらい、使いづらいという意 見があり、障害者本人からも聞いております。やはりまだ十分に知られていないのでは ないか。もっと使えるためには、どうしていかなければいけないかなどの調査もしてい ただければと思っています。  今回、せっかく障害者権利条約の対応ということで、合理的配慮について、意見を述 べる機会を与えていただきました。従前から出ていますけれども、やはり障害者が働き やすいこと。そして、それが、同じ立場に立てる下駄をはかせてあげること。そこが一 番のポイントではないかと思いまして、本日のQOLの向上ということでご説明をさせ ていただきました。本日はどうもありがとうございました。 ○座長  ありがとうございました。それでは、最後になりますが、全国脊髄損傷者連合会の大 濱さんからよろしくお願いします。 ○大濱氏 脊損連合会の大濱です。本日はこのような機会を与えていただきまして、有り難うござ います。今日はペーパーを出させていただいていますが、若干追加もありますが、まず はペーパーに沿ってお話しさせていただきます。  提出資料の1番ですが、全身性重度障害者の就労では人的支援が不可欠というタイト ルになっております。たとえば、この研究会の第1回目で事務局が用意された資料4の5 ページによると、ドイツの場合は、労働能力損失程度50%以上の障害のある者が、重度 障害者として差別禁止の対象となる障害者の範囲となると規定されています。そういう ことも踏まえて、全身性重度障害者の就労について1つの事例を説明させていただきた いと思います。  これは、私ども脊損の仲間で、有名な国立大学の柔道部のキャプテンをやっていまし て、一部の新聞等にも報道されたのですが、柔道で怪我をしたために頚髄損傷になりま した。私の場合には全く両手が動きませんが、彼は少し手が動きますし、若干パソコン のキーボードもたたけます。彼は元々法学部にいたのですが、その後、ロースクールに 進みまして、今年司法試験に合格しました。今、司法修習中で、和光で最終試験を受け ています。  現在はほとんど24時間に近い介護が必要、通勤介護と職場介護が不可欠という状態で、 司法修習の勉強をしているわけです。司法修習は最高裁が管轄していますので、通勤や、 和光の研修所での研修、東京地裁などの各地の裁判所での研修について、最高裁に費用 を出してもらって、介護者をヘルパー事業所から派遣してもらっています。  このように、常時介護がひつような全身性の重度障害者の場合は、通勤介護や職場介 護も必要になるということが第1点です。  これに関連する現在の制度としては、障害者雇用納付金制度に基づく職場介助者の配 置または委嘱の継続措置に係る助成金が挙げられます。これは、障害者の法定雇用率に 達しない事業主からの納付金によって制度が維持され、年間135万円の助成金が出てい ます。ですが、この助成金は5年で打ち切られます。それでもやはり職場介護は必要で すが、その場合、事業主が賄うのは過度な負担となるのかどうかというのが、1つの問 題点になります。これについて、やはり第1回の資料4で、我が国の納付金制度に基づく 助成金は障害者雇用のための設備整備等に対して奨励的に行うものであり、仮にフラン スのように過度の負担と助成支援を関連づけると、現行の納付金制度の在り方について 見直すことが必要だ、と事務方が指摘されていますが、まさしくそのとおりであります。 やはり、フランスのように、国がある程度の負担した方がよろしいのではないか。私と しては、国が負担をすることによって、障害者がタックスペイヤーになるような仕組み づくりを積極的に推進するべきだと考えています。  私の事例を簡単に説明しますと、新日本石油に勤めておりまして、ラクビーで怪我を して全身性障害者になりました。このように、脊髄損傷の特徴としては中途障害である ことが挙げられます。そして、私たちの仲間には、職場復帰しているものは相当数いま す。怪我をしたのがかなり前だということもあって、私は職場復帰しませんでしたが、 現在では私に近い損傷レベルでもおおくの場合が職場復帰しているのが現状です。この ように重度障害者でもかなり職場復帰ができるということを考えると、職場復帰した場 合にどうやって介護者を配置するかということが問題になってきます。ですので、1ペ ージ目の最後にありますように、通勤介護、ジョブコーチ、職場内の身体介護、それか ら、職場内で同僚が仕事の合間に行う介護、手話や指文字などの通訳、朗読者、ノート テーカー、これらの人的支援をどうやって整備するかというのが今後の1つの課題では ないかと考えています。  第1回に事務方で出されたペーパーにありましたように、アメリカでは合理的配慮の 判断基準として判例の積み重ねが重視されているようでして、日本でもいくつか判例が 出ています。おそらくさまざまな判例が出ていて、これが全部ではないのでしょうが、 次のページに事例をいくつか挙げさせていただきました。  エールフランスの事件では、治癒に時間がかかりそうだということで、職員が長期の 休職期間を経た後、自然退職になりました。ですが、エールフランスという会社の事業 規模からみれば、人員をやりくりできるのではないかということで、この自然退職は無 効ということになりました。一方、大阪築港運輸の件は、治癒の見込みが立たず、事業 規模も非常に小さいのでやりくりが難しいということで、解雇が適法だと認められたも のです。両者の違いの1つは事業規模です。従って、中途障害者の解雇を考えるうえで は事業規模をある程度考慮せざるを得ないという、日本に現在ある合理的配慮の判断基 準の1つとしてここに掲げました。  また、片山組事件では、バセドウ氏病で現場監督ができなくなったということで休職 になったわけですが、実際には他の代替業務が可能ということで、休職扱いにするのは 無効だという判例が出ています。  アメリカのように、日本の場合も既にこういう形で若干の判例も出ておるということ も考えまして、今後この研究会での合理的配慮の検討に当たっては、今までの我が国の 裁判規範についても、どういうものがあるか、もう一度きちんと整理し直して、たたき 台にしていただければということを提案させていただきたいと思います。  ここからは、事前の資料提出に間に合わなかったので、追加で資料を書かせていただ いた部分です。先ほどの1番の司法修習生の事例の関連です。司法修習の場合、11月の 末にもう一度試験をして、最終的に今の研修者の中から約1割が振り落とされます。彼 の場合、脊髄損傷ですから、排尿や排便などの排泄管理は、いくら自分が健康管理をし ても分からないところで、失禁や失便が常にあり得ます。彼の今回の試験時間を調べた ところ、月曜日から木曜日まで4日間、朝9時45分から20時まで拘束されるという内容で す。この司法修習生の最終試験というのは、彼にとっては非常に過酷なものでして、そ のため、彼は昨日失便をしてしまいまして、試験を受けることができませんでした。今、 非常に厳しい状態にあるということで、相談を受けています。これについて、彼のお父 さんが元々弁護士をされている弁護士一家なものですから、合理的配慮が不十分ではな いかということで、場合によっては改めて高裁などに申し入れる予定だそうです。先ほ どのドイツの適用範囲に該当するような重度障害者の場合、どこまでが合理的配慮とし て認められるのか。普通に考えても、10時から20時までの11時間ぐらい拘束されての試 験というのは、健常者でも相当きつい試験だと思うのです。それを重度の障害者に同じ ように課すことは、本当にそれは合理的配慮がなされているのかということを、やはり この研究会でも考えて欲しいと思います。このような就職における試験の状況について、 例えば、人によっては1時間試験をしたら30分ぐらい休ませた方がいいよとか、その人 の能力がきちんと見極められるような試験にしなければ意味がありません。何も、能力 がない人に下駄を履かせる必要はないわけですが、能力をちゃんと判定できるような試 験制度にして欲しい、それが合理的配慮ではないかと考えまして、彼にも了解をとって、 この場で申し上げています。特に司法修習の中で最高裁がこのような試験を実施されて いるということから、やはり合理的配慮や権利条約がまだ浸透していないのが日本の現 状なのかなというのが、私がつい最近考えさせられていることです。  また、先ほど東川さんも皆さんも話されたと思いますが、障害の種別や程度によって さまざまな特性があります。車椅子を利用する脊損の場合は、長時間同じ姿勢をとって いると褥瘡になったりします。ですので、ある程度の頻度で、本人の休息時間を与えた りする必要があります。  それから、特に障害者の場合メディカルチェックが非常に重要で、定期的に通院しな いと健康管理ができないということがあります。このような障害者について、ある程度 有給休暇の日数を少し与えることができるのかどうか、それが合理的配慮の範囲なのか 過度な負担なのかということも、この委員会で検討していただければと思います。  そのような状況が整っていかないと、やはり重度の障害者は就労できませんし、タッ クスペイヤーにもなれません。私自身も何年か前は4、50人従業員を雇っていくつかの 仕事をし、現にタックスペイヤーでした。私みたいに両手が動かなくても、実際に管理 業務はできます。重度の障害があってもそういう仕事ができるという芽を摘まないよう な制度をいかに構築するかということが、この研究会で検討し、結論を出していただく べき事項だと思っていますので、よろしくお願いします。以上です。 ○座長  ありがとうございました。4団体からご説明をいただきました。それでは、今から議 論に入りたいと思いますので、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。いか がでしょうか。 ○笹川委員  4団体それぞれにお尋ねいたします。ただ今の報告を伺いますと、皆さん非常に雇用 に拘っておられるようですけれども、重度障害者の場合には、雇用以外に自営業という 1つの働く場というのがあると思うのですが、そのことについてどのようにお考えでし ょうか。特に通勤の問題その他ですね。雇用となると、かなり条件整備が難しい。そう いった点からすれば、自営業も立派な働く場ということになるのではないかと思うので すが、お願いいたします。 ○座長  どなたでも結構ですけど、どうぞ。 ○東川氏  自営業に親御さんがたまたま就いていられたような方、例えば電気屋さんとかという 形で、息子さんが高次脳機能障害者になっても、お手伝いをしながら一緒にやっていら っしゃる方もおります。それから、あるいは、お父さん自身が息子さんのために転職な さって、農業にチャレンジなさって、茨城県に引っ越しをして、一生懸命頑張っておら れる方もおります。それから、例えば、養鶏業なんかで一生懸命頑張っておられる方は ありますが、それらはほんの極限られた数です。そして、うまくいっておられる方は非 常にラッキーですけれども、うまくいっていない方、親子でトラブルになってしまった 場合は、非常に家庭内暴力とかになってしまって、むしろもっと不幸な状況に陥ってし まうという場合があります。ですから、必ずしも自営業に適しているとはいえないと思 います。 ○米田氏  心臓病友の会の米田でございます。決して自営業を考えていないということではなく て、実際自営業でやっている方もたくさんいます。例えばホームページの作成であった りとか、在宅勤務でできるという意味では、やっぱりネット関連が多いですね。ただ、 心臓病の子どもをもつ親の立場からすると、やはり会社勤めをさせたい、自営業はリス クが高いという気持ちもあって、やはり何とか雇用させたいということがあります。特 に人気があるのは公務員で、公務員にさせたいというのは、よく聞く話であります。で すから、決して自営業を否定するわけではないのですが、リスクをあえてとるのはいか がなものかという親御さんの気持ちがあるというのもご理解いただきたいなと思ってい ます。 ○大濱氏  脊損連合会の大濱です。私ども脊損の連合会の範囲内でいいますと、やはり自営業、 それから在宅就労はかなり多いです。自営業の中には保険の勧誘員や代理店をしている 人間が結構います。また、自営ではありませんが、車椅子等の会社等を経営している人 もかなりいます。福祉関係の事業所を開いて、自分の知っている範囲内でいろんな仲間 に供給している人もいます。それから、在宅就労ということになりますと、やはりコン ピュータを使った関係が多く、データ入力や、データの修正をしている人はかなりいま す。このような自営ないし在宅就労という形で、かなりの人数が就労しているというこ とは間違いないと思います。 ○坂本氏  やはり難病患者の場合については、ALS患者、筋萎縮側索硬化症の患者さんがこれ に該当する代表的な例かなという感じがします。やはり、そういう患者さんと社会との 関係がどうあるべきなのかということ、そこでの支援がどうあるべきかという視点から、 いろいろ検討されるべきかなという感じはします。例えば、コンピュータを使った形で 文章を作成するということも当然ありますし、人によっては講演会や、そういうことを 仕事として結びつけることができないかとか、出版の事業としてそれを結びつけること ができないだろうかということです。しかし、当然、その場合でも、24時間の介護や秘 書的な役割について、どういう形で社会的なサポートがあるのかということで考えてお ります。 ○座長  他にいかがでしょうか。大濱さんどうぞ。 ○大濱氏  今やっていない仕事なので具体的に申し上げたいと思います。私の場合は、コンビニ エンスストアを約5店舗と、それから焼肉店と弁当店をというように、5つぐらい事業を やっていました。その時には約4、50人の従業員がいたわけですが、私はこれらをほとん ど自宅でコンピュータで管理していました。従業員と電話でやりとりをしながら、現場 から上がってくるさまざまなデータを管理していました。今は携帯電話もありますし、 コンピュータもありますから、管理業務であれば在宅でもできます。問題やトラブルが あれば、そこの責任者を呼ぶ、あるいは必要に応じて現場に行くこともありましたけれ ども、ほとんど現場に行くことなく管理もできます。これを自営といえるかどうかはわ かりませんが、本人がちゃんとやる気があれば、在宅でもその程度の仕事はできるとい う1つの事例だと思っています。 ○座長  それでは、川崎さんどうぞ。 ○川崎委員  私は精神障害者の家族の者です。1つは今、大濱さんがおっしゃったことにかなり同 感するところがありますが、精神障害者の就労を考えます時に、全く人的支援そのもの なんですね。これを過度な負担とするのかということになりますと、おそらく過度な負 担になるケースもかなり多いのではないかと考えます。これによって、なかなか企業側 が合理的配慮ができないというようなことで就労ができないということは、これも問題 ではないかと思っております。その場合に、やはりこれはお金の問題だと思いますので、 過度な負担に対しての、公的な支援はとても必要ではないかというのが感想です。  それと、家族の立場でお伺いしますと、難病の方が隠していらっしゃるということで したが、実は、やはり精神の場合にも精神障害を隠して就労するということがあるんで すが、精神に対しては偏見がありました。難病の方が隠されているということは、やは りこういう偏見によるものかなということをちょっとお聞きしたいんです。それと、も う1つは心臓病の方も家族が正しく病気を理解していないということは、理解するのが 家族にとって難しいということですか。それとも、家族が最初から病気を受け付けない ということですか。何かそんなことかなと思いましたので、その辺をお聞きしたいと思 いました。よろしくお願いします。 ○座長  2つご質問がございましたので、前者の方から、坂本さんにお願いします。 ○坂本氏  難病の状況ですけれども、企業と本人のコミュニケーションの状況が、やはりアンケ ートの結果から出ておりまして、約半数以上の方が全く会社とコミュニケーションを行 っていないということで、かなり病気のことを職場に知らせる意向がある者は少ないと いう結果になっています。何故かということがいろいろ分析をされておりまして、いわ ゆる病気や障害を開示することはやはり本人にとって不利益になるということが、圧倒 的な理由なんです。難病ということで、誤解や差別、偏見があるからだと思いますが、 先ほどお話ししたとおり、情報がきちんと企業に伝わっていないという問題もありまし て、結果的には仕事ができないという、そういう決めつけがされるという問題が圧倒的 に多いということです。それで、難病患者の場合、実は身体障害者手帳を持っているわ けではないという状況もあって、会社にとってはメリットもあまりないという状況があ ります。そういう点で、そういうことをどういう形で解決をしていくかという問題につ いて、やはりそれなりの手だては必要になってくるのではないかと思っております。 ○米田氏  心臓病友の会の米田でございます。今の家族の理解のお話なんですけれども、よくあ るのは、うちの子どもの心臓病は治ると信じ込んでいるんですね。治らないんですよ。 治らないんだけれども、治ると信じ込んでいるんです。もしくは、信じたくない。それ は、やはり受容の第一段階なのかなと思っています。実際、それらはあります。ただ、 それが何年か経ってきますと、やはり治らないことを理解してきます。そして、理解し ていく時に一番大事なのは、やはり家族同士の情報交換です。同じような病気をもった 子どもが、こういうふうに過ごしているんだなということを理解することが、一番大切 なことです。だから、よく言うんですけれども、私も心臓病で、ある意味で、心臓病の 伝道者になって欲しいと親御さんから言われます。心臓病でもここまで働けるんだとい うこと、ここまでやれるということを示して欲しいというようなことを、よく家族の方 から言われます。ですから、やはり家族というのは、信じないこと、そして、信じても、 どこまでやれるかという疑心暗鬼というか、不安感、その辺りが一番大きいのかなと思 っております。 ○座長  よろしいですか。では、大久保委員どうぞ。 ○大久保委員  育成会の大久保です。ちょっとお聞きしたいのは、合理的配慮というより入り口の部 分についてです。採用の時なのですけれども、今、採用に当たって、例えば面接なんか でプライバシーという形で、かなり厳しくて、家族の職業も聞いてはいけないとか、本 籍を聞いてはいけないとか、いろいろありますね。そういう一方で、今も健康診断書と かそういうものを出していただくということは行われている思うのです。特に難病の方 々は先ほどのお話にもありましたように、病気を隠すということがありました。そうす ると、採用の段階で、例えば、身体の方はお元気ですかみたいな聞かれ方をする場合は 実際にあるのだろうと思います。そこで、隠すというところでは、この入り口の部分が まず第一段階かなという感じがするのですが、その辺はいかがでしょうか。難病も心臓 病の方も同じかも知れませんが。 ○座長  どちらからでもよろしいでしょうか。いかがですか。 ○米田氏  心臓病でございますけれども、はっきり言って、心電図を取ったら一発で分かるんで すね。ただ、私は心臓病ですと言っても、程度がいろいろ差があります。私みたいに普 通に仕事ができる人から、全く在宅でなかなか出られないという人から、たくさんあり ます。その隠すというところが、心臓病を隠すというところもありますけれども、心臓 病の程度を隠すというところが大きいのかなと思います。100のところを80か70しかで きないのに、僕は100ができますというところを言ってしまう。これがやはり隠すという ことの1つなのかなと思います。先ほども言いましたように、そこが80だといっても、働 けるんだというアピールが大事なんだろうと思います。隠すという言葉はそういう意味 だと思っています。 ○坂本氏  先ほどもちょっとお話をしましたとおり、やはり採用選考に当たって、何が基準なの かというところが、企業のところではっきりしていない。一般的に病気ですか、病気で ないかという、そういう、ある面では、本来やってはいけない形の選考基準といわれる ものがあります。 その仕事にとって本当に適切なのかどうかという問題、それから、能力があるかどうか というところを中心にして、そういうものについてやられるのであれば、別に問題はな いんですけれども、やはり一般的に、病気であるか、ないかと言われる。その裏側には、 病気の人はなるべく排除をしたいという基準が常に働いているという問題があるという ことで、やはり隠すという現状も出てくるという状況です。 ○座長  よろしいですか。他にございますでしょうか。今井委員どうぞ。 ○今井委員  自閉症協会の今井です。米田さんにお聞きします。先ほどのお話の中で、特例子会社 の使い勝手ということのお話がありましたけれども、もう少し理解をしたいので、どん な意見があるのか、ご説明を願いませんでしょうか。 ○米田氏  難病の団体というよりは、私も一民間企業の人事担当ながら、あくまで個人の立場と して発言しています。例えば、グループ会社で、こうした作業もしくは業務であれば、 まとめてもいいよということ、大雑把にいうと特例子会社ということなんだろうと思う のですけれども、内部障害というのがどうしても業種として制限されるというか、一般 的な業種ではなくて、こういう業種でしたらできますよというような、制限がかけやす いというか。 ○今井委員  業種ですか、職種ですか。 ○米田氏  どちらかというと、職種ではないかなと思います。そういうふうな配慮というのが、 もう少しあったらいいのかなということを、企業の立場からも、障害者の立場からも思 うということです。勉強不足で恐縮なんですが、よくそんな話を聞くものですから、事 例として挙げさせていただいた次第です。 ○座長  よろしいですか。では、岩村委員どうぞ。 ○岩村委員  たまたま今、米田さんが企業の人事担当をしているということなので、それに関連す ることが1つと、あとは、もう1つ、各団体の方全てでなくて結構なのですが、ちょっと お伺いしたいことがあります。両方関連することですが、私自身の考えというか、理解 では、権利条約への対応ということで、障害者差別の禁止ということと、それから、合 理的配慮というのをどうするかということをここで議論しているのですが、それを日本 で今後導入していくということになると、1つの大きな転換が起きるのではないかと私 自身はちょっと思っているところがあります。それは、従来の障害者雇用の政策という のは、どちらかというと、行政が中心になって、特に、財源の問題もあって、企業に対 して、行政が働きかけるという形で、しかも労働省系なので、やはり雇用が中心になる んですが、雇用の促進を図るというスタンスだったと思うのです。障害者の差別禁止と いうことになった時には、おそらくそういうものが消えるということではないんですが、 ただ、1つ転換が起こるのは、差別禁止と合理的配慮ということになると、行政が何か 誘導してという色彩というのは弱まって、むしろ障害者の方自身あるいはその家族の方 が、むしろ、いわば権利主張をしていく。例えば、雇われている相手方の企業なりとの 間で、その権利主張をしていって、そして、合理的配慮を要求していくとか、そういう 形への転換というのが、多分必然的に起こるだろうと思っています。  それとの関係で、ちょっとお尋ねなんですが、先ほどお話の中でいくつかの例をご紹 介いただいたんですが、例えば、障害者の方が働いていて、そして、職場でいろいろト ラブルになってとか、あるいは、そんな病気があるんだったら、仕事はできないので、 辞めて欲しいというようなことで、最終的には解雇なり、自主退職ということになった り、いろいろなことが起きると思います。その時に、現行制度上の、例えば、そういう 紛争が起きた時に、個別労働紛争の処理のメカニズムというのが、例えば各都道府県の 労働局にあったり、さらには、今は地方裁判所の労働審判というのがあったりというの がありますので、そういうメカニズムを使おうというふうなお考えなりというようなも のを、各団体などで検討されたり、実際にそういうことをやったりされたりしているか どうかということを、ちょっと教えていただきたいと思います。  それから、もう1つの可能性としては、例えば、障害者で働いている人たちで労働組 合をつくって、そして、そういう問題が起きた時に、使用者と団体交渉をして問題を解 決するとか、あるいは、その労働組合を通して、障害者で働いている方々の処遇の改善、 労働条件の改善を図る。あるいは、合理的配慮を要求していくというようなことが考え られるんですが、そういう発想なり実践といったことをお持ちであるかどうかというの を、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。あるいは、労働組合の側から、そうい う何かアプローチ、働きかけというのが、今日来ていただいている各団体さんの方に何 かあったのかどうか。ということも、もしあれば、教えていただきたいというのが、ま とめて1点になります。  それから、先ほど、米田さんが人事担当をされているということをおっしゃっていた ので、組合のことはお答えにくいかも知れませんが、もう1つは、よく私なんか聞くの は、人事担当の方々というのは、結構各社である程度、時々何か集まりをもったりして、 情報交換とかをされているということをよく伺うんです。そういう中で、例えば、障害 者の雇用に関して、例えば、障害特性との関係で、こういう事例なり配慮をした例があ るとか、あるいは、変な言い方ですけれども、なるべくカミングアウトしてもらって、 そして、それに適切な処遇を与えていくようなことを考えてはどうかとか、そういうよ うな形での、障害者の雇用の問題についての、人事担当者の中での何か集まりの中で、 そういうことを話されるということがあるのかどうか。もしあれば、ないならそれでも 結構ですので、ちょっとお聞かせいただければと思います。これが2点目でございます。 ○座長 前半の方は難しい問題なので、簡単な方からお答えいただきましょうか。後半の問題に ついて、米田さんいかがですか。 ○米田氏 お答えしずらい問題ですけれども、あるかないかというと、少ないのではないでしょう か。ただ、企業間の情報交換はハローワークを通じていろんな研究会とかもありますの で、そういった場でやっていくというところが大きいと思います。では、企業が独自に やっているかというと、なかなかそこまではというのが正直なところかなと思っていま す。  せっかくですので、前者のお話もお話ししますと、行政主導ではなくという話ですが、 正直それがあるべき姿だろうと私個人は思っています。やはり、自分で動く障害者、自 分たちで考える障害者対策をやっていこうと、私どのも会でも言っているんですが、な かなかそこまでは行き着きません。何故かというと、やはり日々の生活を守っていくの が、はっきりいってみんな、それがいっぱいというのが事実です。ただ、おっしゃった ような形というのは、あるべき姿だろうなというのは、お聞きしていて、大変私も思っ た次第です。 ○座長  第1点の方について、他の方からどうぞ。 ○東川氏  先ほどの床屋さんに就労して、眉毛を剃られてしまったという方は、実は職安さんか らのご紹介を受けて就労したんです。ですから、その話を聞いた時に非常に驚きました。 労働基準監督署に訴えるべき事例ではないかと思ったんです。ですけど、親御さんはな かなかそういう力をもっていませんし、私どももまた事務局職員もいない小さな団体で すので、そういう応援ができない体制でした。それは辞めてしまってから聞いたことで したので、大変残念だったんですけれども、どこか公的機関に当然訴えて、そして、裁 判闘争にでもしていけば、おっしゃるように、権利主張として大事な要素だと思ってい ます。しかし、それに対して、やはり行政側からの明確な支援が雇用主側になければ、 私たちも非常に動きづらいですし、やっぱり行政の明確なご指導、指針というものがま ずは必要なんではないかなと思っています。 ○座長  坂本さん、何かいかがですか。 ○坂本氏  現状からいいますと、結果的に合理的な配慮がない場合については、難病患者の場合、 多くは結局は自主退職に陥っていくという問題です。病気という困難を抱えていますの で、それが再発したり、進行したりするという状況ですから、結局本人が辞めざるを得 ないという形です。しかし、問題は合理的な配慮、ここに書いた4点がなされれば、辞 めなくてもいい人がかなりいるんだということはあると思います。そのために、結局、 企業とのコミュニケーションをどうするかという問題が一方にあります。同時に、それ に併せて、言われている仲間との問題、働いている人たちとの問題も、もう一方である ということです。そういう点で、さっきも言った、休憩や疾患管理の配慮の問題ですね。 疲労がたまる人たちがかなりいるので、そういった人たちに対する配慮が、何らかの形 でされれば、辞めなくてもいいということで、そのことについて、是非企業の側からも 何らかのアプローチを仲間のところにもしてもらった方がいいのではないかという形で す。 ○座長  先ほどのご質問の中で、坂本さんの団体として、そこを集団的に支援するとか、集団 的に代わって交渉するとか、そんなような実践があるのか、ないのか。また、将来どう ですかというのが質問の意味だと思いますので。 ○坂本氏  そうですか。それは、難病団体の場合、まだそこまではいっていなくて、現在の原因 も治療法も分からない病気に対してどう対応するかというところが、結局、今の中心な んですね。ですから、やっと就労の問題について、入り口に入り始めたということで、 今後そういう問題も出てくるだろうということで、そういう方向性が少し出てきている ということです。 ○東川氏  確か知的障害のお子さんたちは、ユニオンをつくりつつあるというお話を聞いたこと がありますけれども。 ○座長  大濱さんから、今のことについてはいかがですか。 ○大濱氏  組合については、これからの問題です。具体的に障害者団体が組合をつくって、組合 からアプローチしたという事例はあまり聞いていないのが現実です。また、個別事例に ついて裁判をしようかなど、そういう相談は何件かは受けています。実際なかなか裁判 まで踏み切るというのは現状では少なくて、逆に私どもの方では、このペーパーのエー ルフランスの事例などを含めて、今まで障害者の解雇の事例でどのような問題が起こっ たかというものがあれば、教えていただきたいと思っています。 ○座長  よろしいですか。どうぞ。 ○ 今井委員  今のとちょっと関係して、実は権利条約の話を障害者団体の中で議論をした時に、権 利という言葉に馴染みがないというか、自分たちの権利が増えるからいいとは必ずしも 単純に思えないという人がおられました。その背景には、企業側の恐れみたいなのがあ りまして、権利と言われると、もめ事が増えるから、障害者に対する恐さが増えるので はないか、むしろ善意に頼るべきだと、これははっきり言葉では言わないんだけれども、 そういう気持ちが、障害者側にもやはりありまして、権利なんてことを振りかざすとい うことが、本当に前進になるんだろうかという意見があります。私はそうは思っていな いのですけれども、皆さんこの問題について、何かご意見があればお聞かせ願えればと 思います。 ○座長  いかがでしょうか。どなたからでも。 ○東川氏  権利であると私は思いますけれども。働くこと、生きていくことは権利だと思います。 だけども。 ○今井委員  要するに、溝を深めるのではないかという心配に対してどのようなお考えをお持ちで しょうか。 ○東川氏  それに対してですか。やはり、そこにこそ、この権利条約が生きていかないとおかし いのかなと思いますけど。 ○座長  大濱さん、もしご意見があればということで。 ○大濱氏  実際にある職場に何年もいますと、多分その中での友人とか友達とか先輩とか、さま ざまな関係ができて、おそらく裁判を恐がるのが現実だと思います。例えば、体育の授 業や部活動で障害をもった仲間が結構いますけれども、裁判を起こそうかどうかという 話になると、学校側に先生も含めて仲間も多く、それを敵に回してしまうのではないか と心配して裁判を止めたという事例も多いです。実際に裁判を起こした事例もあります けれども、やはり学校との軋轢もものすごくきつくて、友達も付き合ってくれないとか、 田舎では村八分になるような事例も聞いています。ですから、やっぱり企業内でも同じ ようなことが起きるのではないかと懸念しています。ですから、やっぱり企業内でも同 じようなことが起きるのではないかと懸念します。 ○岩村委員  補足ですが、実は裁判に訴えてどうのこうのという今のお話ですが、これは別に障害 者の方に限らず、健常者の場合でも全く同じです。在職中にトラブルが起きて、それを 裁判に訴えるというのは、健常者の方もあまりやらないですね。大体、裁判なりそうい う形で出てくるのは、もうこんな会社は辞めてやるか、あるいは、もう退職に追い込ま れてということで、会社との縁が切れてしまった後でというのが多いと思います。です から、特にそれは障害者の方に限ってそういう減少があるということではありません。 日本社会の有り様と行動パターンなんだとは思います。 ○大濱氏  障害者の場合、介護など、さまざまな支援が必要になります。健常者だと自分一人で やっていけますが、障害者の場合、そういう意味で、もっと臆病だと思います。 ○岩村委員  それと、もう1つ、今井さんのお話との関係でいえば、常に権利、権利といって、頑 張る必要はないので、ただ、やはり状況によっては、これ以上譲れないとか、あるいは 許せないという状況があるわけで、その時に、やはり差別だというような形で、最後は 闘うということもあり得るだろうということです。ただ、個人が争うというのは、今申 し上げたように、健常者でも非常に難しくて、そこは何らかの団体なり、何かの支えと サポートがないと、やはり実際には難しいというふうには思います。 ○松井委員  今の岩村先生からのご指摘にも関係するかも知れませんけれども、以前も言いました が、実際、企業の中にそういう代弁者というか、先ほども出ているようないろいろな合 理的配慮をしてくれということを、本人が言い出すということはなかなか難しい。です から、何らか、企業の中にきちんと代弁するようなメカニズムをつくっていくというこ とが必要ではないか。実際には、(障害者を5人以上雇用している企業は)障害者職業 相談員を配置するという制度がありますけれども、これは基本的には企業の立場でしょ うから、いわゆる代弁の役割にはなっていないわけです。そういうことも併せて選択肢 として検討されて然るべきではないかと思います。 ○座長  米田さん、今のことについて、人事担当者としてはいかがですか。 ○米田氏  私はおっしゃるとおりだと思うんですね。だから、1つは、やはりその会社と、先ほ ど岩村先生がおっしゃったような労働組合というところも大きいのではないかと思いま す。私自身は企業の障害者職業生活相談員という資格をもっていますし、やっておりま すけれども、なかなか一人ひとりと話をするというのは、正直いって難しいんですね。 そして、なかなか言ってきてもくれないというところもありますので、その場づくり、 雰囲気づくりというところなのかなと思います。先ほどおっしゃったように、権利とい う言葉になると、やはりお互いに堅苦しく考えてしまうと思うんですね。ですから、権 利、権利というか、条約ということではなくて、何か一緒に考える風土づくりというか、 私も今回こんな立場になって初めてこの権利条約ということを知ったという不勉強さも ありますが、知ってもらうことからスタートする雰囲気づくりという意味で、お互いに 歩み寄る部分は必要なのかなと、今お聞きしていて思いました。 ○座長  今の点に関連して、ご意見はどうですか。 ○東川氏  ずっと前から、共に生きる社会とかいわれているわけですから、こんな権利条約だと か権利だとか、難しいことをいわないでも、本当に共に生きるという姿勢があれば、解 決できることなんでしょうけれども、それが解決できていない現状があるから、この権 利条約は有効に働くんではないかという期待をもっているわけなんです。 ○座長  どうぞ。 ○大久保委員  今、権利、権利というとぎくしゃくしたりとか、それは何となく感覚的におっしゃる ことは分かります。ただ、動機づけというか、そういう意味も含めて、やはり権利条約 というのは、今までの長い歴史の中で生まれてきたものだというようにも理解しており ます。むしろ、権利条約云々というより、広い意味の障害者、それこそICFの考え方で いいと思いますけれども、そういうことでいけば、障害者はどんどん増えているわけで すね。障害者は特別なものでというよりも、実際にこれから高齢化が進めばどんどん増 えるのは決まっているわけです。その人たちと当然一緒に暮らしていく社会になるわけ です。そうすると、そこでどうやって折り合いをつけて、当然、そこには配慮していく という、社会的な要請が出てきます。そういうものをいち早くちゃんと考えていく必要 があるんではないかという、そういう考え方でいいのではないかと思いますけど。 ○座長  他にございますか。よろしいでしょうか。今日お話しをいただいた方たちも、言い忘 れたというようなことはございませんか。もうそろそろ時間ですので、よろしいでしょ うか。それでは、時間がまいりましたので、今日はこの辺りで終了したいと思います。  次回の日程等について、事務局から説明していただきたいと思います。 ○事務局  事務局でございます。次回第8回ですが、議事としては、これまでヒアリングを4回に わたって行ってまいりましたが、そのヒアリングでいただいた様々なご意見、ご提言を もとに、事務局の方でいろんな項目毎といいますか、検討事項毎に論点の整理を試みま して、それに基づいて委員の方々にご議論をいただこうと考えております。  日程と場所についてはまだ未定でございます。日程的には、年明けか、場合によって は年内ということも少しは考えないといけないのですが、その辺りでこれから調整をは かりたいと思っておりますが、速やかに確定いたしまして、後日改めてご連絡いたした いと思っております。以上でございます。 ○座長  それでは、いつものことなんですが、議事録の公開ですが、どうでしょうか。もう、 毎回確認しなくていいですよね。公開しない場合があれば言うということで、では、今 日限りにして、議事録公開はよろしゅうございますか。ありがとうございます。それで は、公開ということにいたします。それでは、これをもちまして今日の研究会は終わり ます。ありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課 電話 03−5253−1111(内線5855)