08/11/12 第12回社会保障審議会年金部会議事録 日  時:平成20年11月12日(水)10:00〜12:11 場  所:ホテルはあといん乃木坂B1階「フルール」 出席委員:稲上部会長、渡辺部会長代理、稲垣委員、今井委員、江口委員、小島委員、      権丈委員、都村委員、中名生委員、西沢委員、林委員、樋口委員、宮武委      員、山口委員、山崎委員、米澤委員、渡邉委員 ○伊奈川総務課長 おはようございます。定刻となりましたので、これから「社会保障審議会年 金部会」を開催したいと思います。  本日は皆様、お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。  最初に、委員の出欠の関係でございますけれども、本日は杉山委員が御欠席ということで伺っ ております。あと、米澤委員が遅れておるようでございます。  次に、お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。  最初に、議事次第の後に座席図、名簿、あと、資料一覧を付けております。  この配付資料一覧を読み上げますので、資料を御確認いただけますでしょうか。  資料1−1「平成21年財政検証における経済前提の範囲について(検討結果の報告)」。  資料1−2「平成21年財政検証における経済前提の範囲について(経済前提設定にあたって の基礎資料)」。  資料2「社会保障審議会年金部会における議論の中間的な整理 年金制度の将来的な見直しに 向けて(議論のための骨格的なたたき台)(案)」。  その参考資料が別とじになっているところでございます。  資料3−1「社会保障国民会議 最終報告(抜粋)」。  本体につきましては資料3−2ということで付けておりますけれども、こちらでは年金に関係 するところだけ抜いております。ごらんになっていただきますとわかりますように、この基礎年 金の財政方式、未納問題、そして、無年金・低年金の問題の対応ということで最低保障機能的な 話が書いてあるところでございます。  以上が資料の関係の御紹介でございますけれども、もし抜けているものがございましたら事務 方までお申し付けいただければと思います。  早速でございますけれども、部会長、議事の方をお願いいたします。 ○稲上部会長 それでは、議事に入りたいと思います。  平成21年の財政検証における経済前提の範囲につきましては、昨日も経済前提専門委員会を 開いていただきまして、精力的に検討を重ねてきていただいております。  本日は、その議論の結論につきまして、前回に引き続き、委員長の米澤委員から御報告をお願 いしたいと思います。 ○米澤委員 米澤です。遅れてきまして申し訳ありませんでした。  それでは、早速、昨日まとめさせていただきました経済前提専門委員会の報告書に関しまして 簡単に説明していきたいと思います。資料1−1をごらんになりながら説明させていただきたい と思います。  まず「1 報告の趣旨」ですが、これは何度も説明したかと思いますが、財政検証における経 済前提に関します数値を推計することを目的としております。これまで6回の委員会を開催しま して、検討してまいりました。昨日6回目の専門委員会が行われまして、本委員会としての検討 結果をとりまとめたところです。  私の方からは報告の概略を説明させていただきまして、あと、詳しい数値等に関しましては事 務局の方から説明をいただくことになっております。  まず「2 財政検証及びそれに用いる経済前提の位置づけ」です。  特に(1)(2)辺りに関して説明させていただきます。財政検証とは、御存じのように、お おむね100年という非常に長期にわたる年金財政の均衡を確認するために、人口や経済について 長期的な観点から一定の前提を置いて分析していくことを行っております。非常に長いというこ とですので、短期的・一時的な変動に過度に影響されることなく、中長期的な視点から検討する ことを我々は大事にしてまいりました。  とはいいながら、最近の金融危機、まさに100年に1度とかと言われておりますが、そういう ものが起きているわけですが、この点につきましては後ほども説明しますが、足元に関しまして は来年公表される予定になっております内閣府の「日本経済の進路と戦略」の参考試算を用いる ことになっております。こちらの方に、恐らく金融危機に関します下方の修正が反映されている はずですので、スタート時点での足元の経済前提はそちらの方のデータを織り込む予定になって おります。残念ながら、まだこの数値に関しましては出ておりません。ですので、今日お示しし ますものは、この点はまだ考慮していない数字を御紹介したいと思います。  (3)をごらんになってください。長期的な経済前提は、過去の実績を基礎とするものの、将 来の潜在的な成長力の見通しや労働市場への人口がどのぐらい見込めるのかということで、主に 2030年までの労働人口の見通し等を踏まえてマクロ経済的な視点から、それと整合的な推計を 行っております。現在の金融危機とか、いろいろ混乱がございますが、2030年となりますと、 それらが一応、落ち着いた後ではないかと考えまして、再び安定的な成長軌道に帰することを想 定しまして、その段階での平均的な日本の経済の見通しを想定しております。  次に(4)で、先ほどから100年を見通して検討すると言いましたが、100年を見通すような 長期の予想は極めて難しいわけです。勿論、その時点でもって最善のデータを使って予測はしま すが、それにとっても、100年というのは極めて困難だと思います。少なくても、我々の立場と しましては、5年に1度、財政検証が行われるわけですので、そこまでのデータでもって5年ご とに更新していく。ですから、現在ですと、一番働いた最新のデータに基づいて出発点として財 政検証を行うというようなスタンスに立っております。  ですので、言い換えますと、将来予測と言いましたけれども、いわゆるforecastという意味で はなくて、毎5年度、与えられた新しいデータの下で将来を見ていく。5年ごとのデータでもっ て、投影といいますか、projectionしていく。そういうようなものとして認識しております。  実際の経済前提の推計方法に入らせていただきたいと思います。「(1) 長期の経済成長率等 の前提について」です。  (ア)にありますように、平成16年の再計算のときと同じように、コブ・ダグラス型のマク ロの生産関数を仮定して、ここからスタートしております。計算上は2015〜2039年度の25年 間の平均の労働投入量当たりの実質GDP成長率とか、マクロの利潤率とか、そういうものの数 字を算出しております。それ以降はどうなるかといいますと、2040年度以降の数字に関しまし ては、それまでの平均値を延長する方法を取っております。  (イ)にありますが、その際の労働投入量に関しましては、前回の場合と異なりまして、やは り最近の労働の非正規化が進むことを考慮しまして、労働力としましては頭数ではなくて、延べ 労働時間でとらえた方が適当だろうということで、今回はいわゆるマンアワーベース(総労働時 間)をインプットデータとして使っております。この点が前回と一番大きく異なるところかと思 います。  その際に使います労働力需給推計のパターンとしましては「新雇用戦略」にありますようなワ ーク・ライフ・バランスの実現に向けた政策的な取り込みが行われるという前提でそれを組み込 みまして「労働市場への参加が進むケース」を前提として推計しております。  以上が、一番重要になります労働力に関する考え方です。  次に、4ページ目の(ウ)にございますが、全要素生産性(TFP)の上昇率がかなり重要な ファクターとなります。前回の再計算のときと比べまして、随分、日本経済も回復しましたので、 足元1%の水準ぐらいまで、この全要素生産性の伸び率が高まってきております。実際、内閣府 の試算においても、成長シナリオで1.4〜1.5%程度、リスクシナリオで0.9%となっております ので、我々の方も1%を軸に、高い方としまして1.3%、低い方として0.7%と、3パターンを 想定しまして推計しております。  その他、総投資率や資本分配率、資本減耗率、この辺のデータも必要なんですが、この辺に関 しましては、勿論、データはアップデートしておりますが、前回の16年再計算と同様な考え方 に基づいております。  (カ)になりますが、将来の利潤率に関しましては、過去と比べた将来の利潤率がどうなるか を推計しまして、その倍率を過去の実質長期金利にかけて実質の長期金利の見通しを計算してお ります。すなわち過去の長期の実質金利がございますので、それに今後、過去に比べて利潤率が どうなるかというような数値をかけまして、将来の実質長期金利を出しております。  以上が大きく、実質的なマクロ経済の姿を予想した際の方法です。  それに基づきまして「(2) 長期の運用利回りの前提について」ということで計算を進めて おります。  ここは、昨今、金融危機になりましてから非常に皆さん方といいますか、経済全体が弱気にな っておりますが、一時期はソブリン・ウェルス・ファンドとか、いろいろ議論が出ていたところ と関わってきます。今回、我々はやはり、この年金の性質を考えまして、長期的な平均としての 国内債券の運用利回りに分散投資による効果を若干上積みするというようなところを想定して 計算いたしました。  その際の根拠としましては「安全かつ効率的」という積立金運用の基本的な考え方に照らし合 わせまして算出しましたし、将来にわたる年金財政の検証においても、このような考え方で、保 守的と言っていいんでしょうか、非常に「安全」ということを重要視しながら、この数字を計算 したわけです。  ただ、その場合には、全額を国内債券で運用するという選択肢も考えられます。基本的には我々 も、リスクに関してはそれと同じような方法を取っております。それと同じリスクで、それ以上 のリスクは取りません。ただ、国内債券だけですと、そのリターンも国内債券のリターンしか取 れないわけですが、そこのところに外国の債券とか、国内外の株式を多少入れることによりまし て、いわゆる分散投資することによって、リスクは同じに抑えながら、リターンの方を少し上げ ることができます。ですので、この考え方を使いまして、最初に述べましたように、リスクとし ては国内債券と同じレベルで、それに対して、リターンは分散投資の効果を期待して、少し国内 債券だけよりも高いところのリターンを想定するという考えに基づいて計算しております。  それから、ここまでは実質でもって金利とかリターンとかを計算されるわけですが、最後は名 目で持っていくために物価上昇率をどう考えるかということですので「(3) 長期の物価上昇 率の前提について」に関してお話しさせていただきます。  これはいろいろ予測する中でも一番確固たる根拠が余りないといいますか、頼りになるような 理論が少ないところで非常に困る点なんですが、そういう中にありまして、日本銀行の金融政策 決定会合において議決されました「中長期的な物価安定の理解」という報告によりますと「中長 期的な物価安定の理解」というものは、消費者物価指数で見まして前年比0〜2%程度の範囲内 にある。そこに参加されています委員の大体平均値、中央値というものは1%程度になっている という情報を参考にしまして1%という数字を使わせていただいております。  以上が、非常に中長期的なところの考え方ですが、冒頭に述べました足元のところに関しまし ては、来年、内閣府から公表されることが想定されております「日本経済の進路と戦略」で出て きますので、そこの参考試算をベースとして設定することを考えております。ですから、もし金 融危機というものがそこに反映されていれば、そこのデータを用いることによって足元のところ を少し改定することに、足元はその数字をいただくことになろうかと思います。  加えまして、現に多額の資金が運用されているわけですので、もしポートフォリオをそこから 大きく変えることは非常に現実的ではございませんので、既に運用している資産の状況も運用す る際には考えていく必要があるでしょうということも意見として述べております。  以上のような考え方、方法に基づきまして、経済前提の推計の計算を行いました。ですので、 大きくは途中で述べましたTFPの伸び率がどのぐらいになるかということの3つのケースを ベースとして範囲としての数字をまとめた次第です。  以下、実際の細かな計算の仕方及び、それに基づきます計算結果につきましては事務局の方か ら説明をお願いしたいと思います。  私の方からは以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、引き続きまして、事務局から追加の御説明をお願いしたいと思います。 ○山崎数理課長 数理課長でございます。  お手元の資料1−2で「平成21年財政検証における経済前提の範囲について(経済前提設定 にあたっての基礎資料)」でございまして、まず、この資料の1〜8ページ目は、ただいま米澤 委員から御説明いただきましたような計算方式に関しての具体的な式やフローチャート、あるい はインプットデータをグラフ化したもの等々が記載してございますので、お時間の関係もありま すので、個別の御説明は省略させていただきます。  9ページが、TFPの上昇率に応じましてケースを3つ計算いたしました結果でございます。  数値といたしましては、2015〜2039年の25年間の単純平均の数値ということで出してござ いますが、ケース2で具体的な数字を申し上げますと、実質経済成長率が0.77%でございまし て、労働投入量は減少してまいる見込みとなっておりますので、単位労働時間当たりにしますと、 これよりも約0.8%高い1.58%という見込みになる。そこで1人当たりの労働時間が若干減少す るという見込みになっておりますので、その分、1人当たりにすると少し低くなりまして、被用 者年金被保険者1人当たりの実質賃金上昇率が1.51%という見込みになる。このとき、同時に 算出されます利潤率が9.7%という数字になって出てまいるということでございます。  次の10ページで、この利潤率の推計値に基づきまして、過去の実質長期金利の平均に利潤率 の変化割合を乗じることで実質長期金利を推計するということでございます。  真ん中のケース2で見ていただきますと、過去25年平均の実質長期金利が3.0%という実績 でございまして、それに対しまして、利潤率の変化割合、過去25年の実績で9.8%のものに対 しまして、将来の推計値が9.7%と、ほぼ長期平均で見ますと、将来の利潤率は過去と同じぐら いということで、この割合0.99をかけて、将来の実質長期金利の推計値が3.01%。これは期間 を20年、15年と参照する期間を変えたものがそれぞれの数値でございまして、これで見ていた だきますと、一番右の欄、過去15年平均で2.41%でございます。これに基づきまして、ケース 2でございますと、実質長期金利が2.4〜3.0%という幅を持った見込みになる。  これを踏まえまして、13ページを見ていただきますと、上の枠囲いの中でございますが、た だいま申し上げました、これはケース2で、代表例として掲げてございますが、将来の実質長期 金利2.4〜3.0%。これに分散投資の効果でどれぐらい上積みするかということでございますが、 下の絵を見ていただきますと、国内債券だけで運用する場合に比べまして、ポートフォリオ運用 をやりました場合に有効フロンティアというものを引きますと、同じリスク、標準偏差でポート フォリオ運用の下で得られます運用利回りの期待値、リスクプレミアムと呼んでいますが、これ が0.4ないし0.5%程度と見込まれるところでございます。  これに基づきまして、分散投資効果によって期待する上積み分といいますものを、下限につき ましては少し堅目に、この0.4〜0.5%を下方修正いたしました、0.3〜0.5%という数値で置きま して、あとは物価上昇率の1.0%を加えまして、長期の運用利回りで3.7〜4.5%という見込みに なるところでございます。  もとの横長の資料1−1「平成21年財政検証における経済前提の範囲について(検討結果の 報告)」に戻っていただきまして、これの8ページに各ケースの計算結果をまとめているところ でございまして、下の欄を見ていただきますと、今、申し上げましたケース2の場合ですと、一 番右の3.7〜4.5%。こちらに数値が記載してございますが、そのとき、名目の賃金上昇率、平均 で申しますと2.5%程度でございますが、年々、ばらつきがございますので、そのばらつきを見 て、2.4ないし2.6%程度ということでございます。  その他、TFPを変えました場合の数値の計算結果は、こちらの表にあるとおりでございます。  簡単ですが、御説明は以上でございます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまのお二人からの御説明につきまして御質問あるいは御意見がございました ら、お願いいたします。  西沢委員、どうぞ。 ○西沢委員 ありがとうございました。  質問と意見、感想を申し上げさせていただきますと、1つ質問は「日本経済の進路と戦略」が 来年1月に出るということで、これで2011年までの数値が出るということですけれども、足元 の経済状況と、中長期的な経済状況との連続性があるものだと思いますので「日本経済の進路と 戦略」が出ましたら、2012年度以降の中長期的な数値もそれを反映させたものに変えるのか。 あるいは今回の経済前提専門委員会の結論のまま、足元の「日本経済の進路と戦略」の数値と中 長期的なものは分離して考えるのかが質問の1つ目です。  もう一つ質問させていただきますと、今回の重要な数値の一つは長期金利だと思いますけれど も、素人考えかもしれませんが、財務省の理財局が多分、一番情報を持っていると思います。彼 らの意見がどんなところにあるのか、私は気になるところですけれども、そういったところと意 見交換などの場があったのかといったことをお聞きしたいと思います。  あとは意見ですので聞き流していただいてもいいですが、手短に申し上げますと、この経済前 提の設定に関しまして、仮にチャレンジングな経済前提を設定しますと、それが外れたときに財 政的なダメージを受けるのは、マクロ経済スライドの長期化を通じて将来の世代にかなりかかっ てくると思うんです。その将来の世代というものは、今回、仮にチャレンジングだとすると、チ ャレンジングな経済前提の設定の意思決定に参加していない人が含まれているわけです。その人 たちが責任を取らなければいけない中で、そう考えますと、将来の世代が意思決定に参加できな いとすれば、保守的な考え方で経済前提を設定しておくというポリシー、考え方が私はあっても いいと思います。  2つ目の意見としまして、今回の経済前提専門委員会でされたのは平均的なベンチマークの想 定だと思います。だれが運用してもこうなるであろうということだと思いますが、他方でGPI Fという運用主体がおられるわけで、GPIFという資金の大きさの規模、陣容、性格などもろ もろから、果たして、こういったベンチマークを確実に実行できるのかという、もうワンステッ プの議論が私はあってもいいような気がいたします。  最後に感想ですけれども、3.7%から数%とか、前回の3.2%から上方修正されたということの ようですけれども、この上方修正に際しては、2番目に申し上げた、将来世代が今回の意思決定 に参加できていないということを考えて、もう一度、数字を見るといいのかなという気もいたし ます。  以上です。 ○稲上部会長 それでは、米澤委員、どうぞ。 ○米澤委員 一部、私の方からコメントして、それ以外に関しましては事務局の方からになろう かと思います。  来年に出る予定になっています「日本経済の進路と戦略」との間の接続に関しまして、これは 全くそちらの方の数字がまだ内部から聞いていただいてもわからないようですので、出てみない とわからないのが我々のところでございます。  その際に、まさにどういう数字が出てくるかによるわけなんですが、昨日の検討委員会でも、 最後の閉め方としましては、今日お示ししたデータとそこの接続が非常に奇異のような場合には、 もう一度、そこの会を開いて皆様方にお集まりいただくことになるかと思いますという格好で閉 めさせておりましたので、少し締まりがないんですけれども、そういう状況で我々は考えており ます。  それから、非常に強目の数字を出したという御意見なんですが、1つは労働に関しまして、割 と積極的に、特に女性等を含めまして労働市場に参画されるという点に関しましては、そういう ことを政府のいろいろな施策がうまく功を奏することを期待しまして、そこのケースを取らせて いただきましたが、それを取っても、実質経済成長率を見させていただきますと、標準的なケー ス2で年率0.77%という数字になっております。  それでは、どうして、それにもかかわらず金利等は高いのかといいますと、それはいろいろ幾 らでも可能性はあるわけですので、そういう数字が出てきているということですので、非常に高 い経済成長率を想定してとかではないことが、この数字からは御理解いただけるのではないかと 思っております。  私の方からは以上でございます。 ○山崎数理課長 それでは、長期金利につきまして理財局と意見交換をしたかということでござ いますが、今回の経済前提の範囲に関します御検討は非常に超長期の、かつ日本経済の非常に長 期的なファンダメンタルズに基づく推計ということで先生方にお願いしたものでございまして、 算出の手法も、前回、16年財政再計算のときにかなり確立されたものを若干、労働力等をモデ ィファイして使ったということで、特にほかの省の政策当局と意見交換をして何か修正を加えて いるようなことは、実際のところはいたしておりません。  実際のところ、数十年というかなり長期にわたるものに関しましては、具体的に推計している ようなところは政府部内でもないように承知しておりますので、短期のものに関しましては、恐 らく内閣府の方でいろいろ短期のものを算出されるときに政府部内での意見交換はされるので はないかと思います。  以上でございます。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○中名生委員 今の御説明に特に異論があるということで申し上げるわけではないんですけれ ども、専門委員会での御議論をもう少しお伺いしたいという点がありまして質問させていただき ます。  1つは、大変長期の推計をする考え方として、まず足元のところは来年1月に出る「日本経済 の進路と戦略」で、たしか今までの方式でいくと、来年1月に出るのは2012年までの数値が出 てくる。前提として、そういうものを採用しようというお考えですね。  それから、2015年から2039年までの25年間については、今日御説明があったような形で想 定をします。その先については、それまでの平均で延長して考えますというフレームでまずよろ しいわけですね。 ○稲上部会長 お願いいたします。 ○山崎数理課長 来年、その「日本経済の進路と戦略」の試算が年次何年まで出るかというとこ ろはまだはっきり決まっておりませんで、今年のものを1年更新しただけといいますか、実のと ころ、もう少し長いものになるのではないかということもございまして、それは出たところで考 えるということでございますが、いずれにせよ、そちらを見た上で、それとの接続も考慮しつつ、 また考えるということでございます。 ○中名生委員 わかりました。2013年、2014年と、細かいようですけれども、従来の資料と少 し空きが出るという感じがあって、さっきのお話のように、足元の状況がむしろ下へ行くんでし ょうし、それから、先の時期の想定は、その前の情勢を踏まえて16年検証より上に行くという ので、間の2年間がはてどうなるかと思いましたが、今の御説明で「日本経済の進路と戦略」が カバーする範囲が従来より長くなる可能性を含めて考えられているということですね。 ○山崎数理課長 はい。 ○中名生委員 もう一つは、2015年からの、今、御説明があった推計の仕方ですけれども、成 長率についてはコブ・ダグラス型の生産関数を使って、それから、全要素生産性を想定して計算 されているということですけれども、いろいろお話がありましたように、これは非常に、その先 の延長まで含めて考えると大変、なかなか想定のしにくい、長期のものを想定するわけですから、 一部分だけ経済学的に精緻にやっても、必ずしも全体の精度が保たれる保証はないわけですね。  そうしますと、コブ・ダグラス型の生産関数でやるより、もう少し簡単にやってしまうと、人 口から始まって、労働力人口、就業・雇用、労働時間というものは幸いにしてほかで長期の推計 がありますから、それを使った上で、あとは労働生産性といいますか、ここで今回工夫されたよ うな、1人当たりではなくて、時間当たりの生産性を想定して、それで先を推計する方が推計の 手法としては簡単になって、一般の人にわかりやすくなる。  これだけ長期のものですと、そういう推計もあり得るのかなという気がしますけれども、その 点、ほかの国では一体どういう推計方法、どういう仮定の置き方をしているのか。これは専門委 員会でも初めの方で検討されたようですけれども、案外、簡単に置いてはしないか。私はわから ないので、その辺も含めて少し、どういう議論があったかを教えていただければと思います。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○山崎数理課長 この経済前提の置き方につきまして、諸外国のやり方も参考にしようというこ とでいろいろ調べまして、諸外国は比較的、過去の長期の平均をそのまま伸ばすような形でやら れているところが多いということでございまして、それはある意味、必ずしも日本ほど急激な労 働力人口の減少のようなことが見込まれていないというようなところでございますと、比較的長 期の未来を見通すのに長期の過去に準拠するという考え方はかなり合理的ということでござい まして、そこにある程度、定性的な判断を加味するというようなものが多いわけでございます。  我が国の場合は、平成16年の再計算のときにも既に労働力人口が上昇から減少に向かってい るということで、単に過去の平均値を伸ばすだけでは推計の根拠としては不十分であろうという ことで、今回、引き続き採用させていただいたようなやり方を当時の年金資金運用分科会の先生 方のお知恵を集めていただきまして、工夫された。今回はそれを基礎といたしまして、労働力人 口の変化等を組み込んだということでございまして、このような形のコブ・ダグラス型でやる方 法は、EU委員会の方ではかなり先駆的な試みとしてやられている例がございまして、その辺も 参照しつつ、私どもはこういう方法を継続させていただくということでまとめたところでござい ます。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○中名生委員 今の御説明でわかりましたが、人口のところは非常に大きな変化がある。しかし、 ほかのところは、ある意味ではもう少し簡便な置き方もあり得るのかなという気はいたします。  もう一つ、参考までにお伺いしますと、この生産関数の中からはじき出された資本の成長率は 25年の平均で年率どのくらいになっていますか。 ○山崎数理課長 資料を確認いたしまして、後ほどお答えいたします。 ○稲上部会長 米澤委員、どうぞ。 ○米澤委員 その間、時間を借りまして、先ほども私の報告からも強調させていただいたわけな んですが、これは財政検証をするためにはやはり100年という数字は出さなければいけないので、 これはそういう意味では数字を出させていただいて掲載しておりますが、むしろ、この位置づけ としましては、これは5年ごとにやっておりますので、今までの、例えば今回ですと、過去に出 た数字に関して大丈夫なのかどうか。大きくずれがあるのかどうか。あれば、それを調整してい くということで、そういう意味では予測ではなくて、英語で言うとprojectionという言葉をあえ て使わせていただきましたし、もう少しわかりやすい言葉で言いますと、それによってリスク管 理をしていくというような格好で位置づけております。  ですから、繰り返しますと、やはり100年という数字は出さなくてはいけないんですけれども、 それでは、その数字にいわゆる経済学的な意味やどのぐらい信頼性があるかといいますと、それ はかなり無理な点があるのが正直なところでございます。それは幾つかの前提を立てております けれども、たかだかできるのはその辺だろうということで、あとはそれが、先ほども後世の世代 に負担がかからないように5年ずつ見直していきましょう。それを繰り返していきましょうとい うのが、我々のたかだかな仕事かなと位置づけております。 ○稲上部会長 数理課長、お願いいたします。 ○山崎数理課長 失礼しました。  TFP上昇率が1.0%の場合で、資本成長率がこの25年間の平均でおよそ0.7%程度というよ うな計算結果となっております。 ○中名生委員 ということは、大ざっぱに言ってこの計算では、資本成長率0.7%に4割のウェ ートをかけ、それから、労働時間が減っていく方に6割のウェートをかけて考えているというこ とですね。 ○山崎数理課長 大ざっぱに言いますと、そういうことかと存じます。 ○稲上部会長 ほかにございますでしょうか。  稲垣委員、どうぞ。 ○稲垣委員 感想なんですけれども、この経済前提というところで「労働市場への参加が進むこ とを見込んだ」ということで2ページに書かれております。  資料の3ページにも労働力人口の見通しということで、真ん中辺りに仕事と家庭の両立支援で、 女性への就業支援をすることによって160万人増、女性では120万人増という試算が載ってい るわけですけれども、政策の統一性といいますか、国が何を目指しているかというときに、両立 支援の中で何があるか。例えば保育所をつくるとか、そういうことも重要だと思いますけれども、 社会保障制度の中で、働く女性に対して積極的に女性が働こうという気持ちになれるような制度 が重要だと思いますので、こういう観点からも、是非、働き方に中立的な制度ということで、最 近は高齢者に対しての働き方に中立的なとか、非正規の方に対してのということで使われており ますけれども、女性の働き方、生き方に関しても中立的な制度を、是非、今後も御検討をお願い したいと思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。  それでは、ただいま御報告をいただきました長期の経済前提を基礎にいたしまして、来年2月 を目途にして、厚生労働省に、財政検証の作業を進めていただきたいと考えております。その上 で、改めてその結果を本部会に御報告いただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次の議題に進みたいと思いますが、前回の部会の最後に御相談申し上げましたけれども、平成 16年改正後の残された課題につきまして、本部会としての中間的な整理を行うためのたたき台 をつくりたいという御相談をさせていただきまして、御了解いただきました。本日は、その御相 談申し上げましたお一人である江口委員から資料2に基づきまして御説明をお願いしたいと存 じます。  よろしくお願いいたします。 ○江口委員 それでは、部会長の御指示を受けまして、私の方から資料2について御説明させて いただきたいと思います。  まず「はじめに」と書いてございますが、これは当部会としてどのような見地から議論を行っ ていくのかということを記述しております。  平成16年改正におきまして、公的年金制度を持続可能なものとする見直しが実施されている わけでございます。その中で、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げることが、言わば 前回改正におきます年金財政フレームを確立するための最後の課題として残っているというこ とで、政府の責任として平成21年度当初から必ず実現するということを述べております。また、 今、御議論いただきましたような財政検証を着実に実施していくことが必要であるということで ございます。  一方、年金記録問題が起きまして、年金に対する国民の信頼が危機に瀕している。そのために、 信頼回復に向け、不断の見直しが重要であるということでございます。  また、40年加入の満額年金を受給する高齢者が多数現れるようになっておるわけでございま して、そういう中で、高齢者間の所得格差の拡大、また、無年金者や低年金者の問題に焦点が当 たっております。最低保障機能等の在り方をどうするかが大きな論点となっているわけでござい ます。  その際の留意点ということで、括弧に書いてございますが「無年金・低年金となった要因への 着目」ということを1番目に挙げております。1つには、年金制度の加入及び保険料納付は国民 の義務である。したがって、義務を果たせなかった者について最低所得保障を行う必要があるの かという議論があるわけです。他方、現役時代に低所得だったために低年金になっているという 者に対して年金制度として対応可能性があるのではないか。こういう両方の観点があるというこ とです。  それから、税方式と社会保険方式でございますけれども、これはそれぞれ、メリット、デメリ ットがあるわけでして、どちらか一方ではなくて、それぞれ税方式と社会保険方式の利点を活用 していくという視点が重要ではないかということです。これについては、前回改正でも国庫負担 率の2分の1の引き上げということで、ある意味で社会保険方式から一歩、税の方にウェートを 置いたということにも表れているわけです。  次の「納めた保険料をできる限り給付に反映させたいとする国民意識の高まり」についてであ ります。これは年金制度が成熟を迎える中で、特に、先ほど申しました年金記録問題が発生して いる中で、納めた保険料をできる限り年金給付に結び付けられるようにすべきという要請にどう 答えていくかという課題であります。  また「これまでの制度の積み重ね」ということで、年金制度は非常に長期にわたる制度でござ います。そういった長期間にわたる移行措置の必要性等も検討の視点としては欠かせないという ことを述べております。  その上で、2ページをごらんいただきたいわけですが、まず各論として、最初に「1.低年金・ 低所得者に対する年金給付のあり方」ということで整理をしております。  これは先ほど申しましたように、低年金・低所得者への対応というものは、やはり公的年金制 度の維持・発展、更には国民の信頼確保という観点から重要である。ただ、同時に、モラルハザ ードを招くおそれがあることにも留意する必要があるということです。  具体的な対応策を考えるに当たって、2つの考え方を提示しております。1つは(1)に書いてあ りますが、できる限り満額年金の受給につなげるようにするという考え方です。もう一つは、著 しく低所得である者には、満額を超える所得保障を行ってもいいのではないかという考え方であ ります。  以下、その具体的な案とその論点を記述しております。  (1)、つまり、満額年金につなげるという考え方としては、まずは最低保障年金として、基礎年 金において低年金者に対して一定額を保障するという考え方があるわけです。ただ、一定の要件 を満たせば最低保障が受給できることになるわけで、これについては、やはり保険料の納付意欲 に悪影響を及ぼすなどのモラルハザードを招くのではないかという問題点が指摘できるわけで す。  次に、保険料軽減支援制度という案を提示しております。これにつきましては、保険料につい て満額の納付を義務付けた上で、現行の保険料免除制度を原則的に廃止する。その上で保険料拠 出時に所得に応じて保険料の一部を軽減し、軽減された後の保険料納付を求める一方で、軽減さ れた分を公的に支援するという仕組みであります。これについては、社会保険方式の基本は踏ま えていると言えるのではないか。また、最低保障年金方式に比べれば、保険料納付に関するモラ ルハザードは発生しないのではないか。ただ、その際に、例えば世帯単位で考えるべきではない かとか、それから、いわゆるクロヨンと言われます所得捕捉の問題などについてどう考えるかと いう課題が残るわけです。  (2)は満額を超える所得保障でございますが、単身低所得高齢者等加算ということで、所得の低 い単身高齢者等の基礎年金に加給金を支給する制度が考えられるのではないか。これは以前、厚 生年金に配偶者の加給というような制度があったことが背景にあるわけです。これはモラルハザ ードの問題は生じない上に即効性があるという案ではないかということです。単身世帯が夫婦世 帯に比べて、厳しい経済状況に置かれていることをどう考えるかというのが発想の基本にござい ます。  3ページでございますが、ただ、給付水準や所得基準をどう考えるかとか、特に生活保護との 関係を考えなければならないという問題があります。  「税方式の導入による対応」ですが、これは、基礎年金に必要な財源を全額税方式で賄うとい う意見でございます。これによって、過去の保険料納付実績にかかわらず、すべての高齢者に満 額年金が支給されるというのが原則的な形態になるわけですが、これはいわゆる自助の考え方と の調整という問題、また、移行措置、いわゆる経過措置の問題、それ以上に、巨額の財源の確保 という問題が指摘できるわけです。  「2.基礎年金の受給資格期間(25年)のあり方」であります。  これは2つの側面、つまり、保険料納付意欲を向上させることと、最低保障的な年金額を支給 するという両方の役割を担っているわけです。現在、その25年を満たさない方と言うのは、15 年以上未納している場合であることに留意しなければなりません。  この受給資格期間につきまして、納付した保険料はできるだけ年金給付に結び付けたいという 考え方を踏まえれば、これを例えば10年程度にまで短縮すべきであるという要請がありこれを どう考えるかということです。ただ、その場合の問題として、保険料納付意欲とか年金財政への 影響は考えなければならない。また、受給資格期間が一定の年金額を保障するということで、先 ほど述べました最低保障機能の強化との関係等にも注意をしなければならないということが書 かれてございます。  それから、3ページの一番下で「3.2年の時効を超えて保険料を納めることのできる仕組み の導入」であります。  これにつきましては4ページの頭にございますが、時効期間といいますものは、権利義務関係 の早期の安定を目的としていることから、その時効期間そのものの延長は難しいのではないか。 むしろ、時効期間を超えて事後納付をできる仕組みが考えられないかということで書かれており ます。ただ、その場合の問題点としては、その下の矢印4つに書いてございますような、賦課方 式の関係、納付意欲への影響等々が指摘されているわけです。  「4.国民年金の適用年齢の見直し」であります。  これは大学進学率の上昇等に伴って、現在、20〜60歳となっている国民年金の適用年齢を変 更することをどう考えるかということであります。ただ、その場合に、いわゆる障害年金、今、 20歳前の場合に障害年金が出るわけですし、そういった障害年金への影響をどう考えるかとい う問題がございます。  「5.パート労働者に対する厚生年金適用の拡大等」です。  これにつきましては、被用者でありながら第1号被保険者となっているという、いわゆるパー ト労働者について雇用の改善を図って、老後の所得保障を図ることが本来の課題ではないかとい う考え方がまずございます。  しかしながら、被用者年金一元化法案の中にパート労働の適用拡大が入っているわけでござい まして、その早期成立をまず図る。また、基礎年金の最低保障機能の強化という中で制度環境が 大きく変化した際に、さらなる適用拡大を検討すべきではないかという考え方もあるわけです。  また、これは事務処理の問題でございますが、国民年金の保険料を事業主がパート労働者の給 与から天引きして代行徴収することについてどう考えるかという問題もございます。  それから、先ほど御意見が出ましたけれども、「6.育児期間中の者の保険料免除等」であり ます。  現在、厚生年金の場合には、育児休業期間中について保険料免除の措置が講じられております。 ただ、国民年金についてはこれがないという中で、少子化対策の観点から、こういった次世代育 成支援の仕組みをより普遍的に1号にも導入すべきではないかという議論であります。ただ、こ れに対するコストとか政策効果についての御議論も必要であります。  5ページの「7.在職老齢年金の見直し」でございます。  これは、働くことによって年金額が支給停止されるのは納得できないという御意見であります。 ただ、これに対しては、その後の制度改正によりまして、高齢者の雇用促進効果に関しては限定 的なのではないかという意見もございます。  それから、制度に対する信頼性の確保の観点から、支給停止の基準の緩和についてどう考える かということであります。これについても、下の矢印で3つの問題点が書かれていますが、特に 財源対策をどうするかということが課題になろうかと思います。  「8.標準報酬月額の上限の見直し」です。  これは、標準報酬の上限を超える高所得者に、実際の報酬に見合った保険料負担を求める必要 はないかという問題であります。ただ、これをそのまま給付額に反映させますとかなり高い年金 額になり得るということで、過剰給付の防止の観点からの工夫が必要ではないかということでご ざいます。  以上の論点の最後に「おわりに」ということで、まず追加的財源がやはり必要になるわけです。 これを税負担で対応するのか、それとも、保険料で対応するのかというのは重要な課題になるわ けです。  保険料財源で対応する場合には、先ほど財政検証の話の際にも出ましたけれども、保険料負担 の上昇、ないしは所得代替率の低下を引き起こし、16年改正の財政フレームの見直しが必要と なってしまうおそれがある。そのためにも別途の財源対策を考えなければいけないだろうという ことでございます。  それから、税財源で対応する場合には、御承知のように、消費税を含めた税制の抜本改革を通 じた安定財源の確保が必要になるだろうということです。  「今後の進め方」でございますが、以上の8項目の見直しは、大変に重要な課題であります。 さまざまな場で、今後、議論される必要があるだろうという認識に立っております。  なお「参考」として、障害基礎年金の取扱いと、第3号被保険者制度の取扱いを掲げてござい ます。  障害基礎年金の取扱いにつきましては、障害者の所得保障をどうするかという、むしろ障害者 の施策全体の見直しの議論の動向を踏まえる必要があるのではないかと考えております。また、 第3号被保険者制度の取扱いにつきましては、ライフサイクルにおける第3号被保険者の位置づ けの実態とか、社会保障制度におきます世帯と個人の考え方といったものを踏まえた制度の在り 方などを検討する必要があることから、引き続き中長期的な議論が必要なものとして、今回「参 考」という位置づけに整理をしておりますが、こうした点についても御議論いただければ幸いか と思います。  以上で私からの説明を終わらせていただきます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  事務局の方から参考資料の御説明をいただけますでしょうか。 ○塚本年金課長 年金課長の塚本でございます。参考資料を、大部でございますが、中身につい て説明する時間もございませんので、ざっと、どこに何があるかということをごらんいただきた いと思います。  まず、1〜10ページ目が「はじめに」に対応するものとして用意してございます。  5ページ目以降に国民会議の最終報告を付けてございますし、また、4ページ目に国民会議の 吉川座長が経済財政諮問会議に提出された資料を付けてございます。  11ページ目から、第1項目でございます低年金・低所得の関係の資料を、総論的なもの、生 活保護の関係等々を19ページまで付けてございます。  20ページと21ページに、この項目の中の、先ほど御紹介いただきました最低保障年金関係の 資料を付けてございます。20ページをごらんいただきますと読売新聞社の御提案でございます けれども、保険料納付期間が10年でも5万円を保障するというもので、先ほど、10年さえ満た せば、滞納が30年あっても5万円が保障されるという形になっている絵でございます。  それから、22〜28ページが保険料の軽減支援制度関係でございます。  22ページは国民健康保険で、いわゆる定額の保険料部分に関する軽減の仕組みがあるという ことでございますが、23ページをごらんいただきますと、現在の第1号被保険者の方の実際に 免除を受けている割合と、すなわち免除は申請があって初めて免除ということでございますので、 所得だけで見て、このゾーンに入っている方がどの程度いらっしゃるかを推計した資料を付けて ございます。  例えばでございますけれども、現実に全額免除を受けておられる方は約202万人でございます けれども、そのゾーンにある方は521万人いらっしゃる。ただ、この差の300万人が未納につ ながるのではないかと受け取れる見出しの記事もございましたけれども、当然、この差の中には、 低所得であっても保険料を納めておられる方がいらっしゃいます。全体で見ますと、これまでの 資料にもお出ししてございますけれども、4割の方が所得がなくても保険料を納めている実態が ございますので、これが滞納により年金をもらえないということを意味するわけではないことは 一言申し上げておきたいと思います。  それから、24ページをごらんいただきますと、国民年金の免除基準と、先ほどごらんいただ きました国民健康保険の軽減基準を比較したものでございます。結論を申しますと、まず国民年 金の方の免除基準、単身の場合の全額免除は122万円でございまして、4分の1免除ですと、そ この欄の下で、収入ベースで約300万円となってございます。それに対して、右側の国民健康保 険で見ますと、7割軽減ですと100万円弱、2割軽減でも133万円でございまして、おおよそ 軽減措置、2割軽減が始まるラインがおおむね住民税の非課税ラインでございますけれども、そ れと、国民年金でいう全額免除のラインが大体見合った形になっていて、国民年金の場合には、 そこから上に段階的な免除がある形になっている資料でございます。  25ページが、そうしたものを受けて軽減支援制度のイメージ図として書いたものでございま すが、25ページは仮にということで、国民年金の免除基準をそのまま当てはめた場合でござい まして、言わば現行の免除をなくして、そのままの基準で新たな支援制度に切り替えるとどうい う絵柄になるのかということでございます。  26ページは、先ほど申し上げましたように、国民健康保険の場合には、今の全額免除のライ ンより下のところに公費の軽減制度がございますので、仮にそれにならったらどんな絵柄になる かを絵に書いたものでございます。  27ページは、仮に国民年金の被保険者に対してそういったものを導入した場合にどういう影 響が出るかでございますが、まず軽減支援制度そのもので公費投入したものの中にも、国民年金 にとって収入増につながらない、すなわち、今まで保険料を納付していただいていたものが税に 置き換わるという部分がございますので、全額が収入増あるいは積立金増になるわけではないと いうことと、基礎年金拠出金のメカニズムを通じて、収入増になった部分が基礎年金の拠出金の 支出増になって、結果的に被用者年金を含めて、その被保険者の数に応じて積立金がその分だけ それぞれに積み上がる形になるという影響を示したものでございます。  29ページからは、税方式に関連する資料でございます。  31ページ以降は、国民会議がなされたシミュレーションを付けてございます。  37ページからが単身高齢者等加算の関係の資料で、37ページはイメージ図として、上は横軸 を所得で取った形で書いたものでございますけれども、下が横軸を納付期間に応じて書いたもの でございます。  38〜39ページは、単独世帯が増えていることと、特に39ページで、高齢の女性の方に単独世 帯が多いという資料を付けてございます。  45ページ以降が資格期間関係の資料で、これらは既にごらんいただいた資料でございますの で省略させていただきます。  48ページが、事後納付の関係の資料でございます。仮に事後、まとめて払ったら幾らになる かを仮定計算したもので、5年分まとめて払うということだと90万円、10年まとめて払うと 190万円で、相当多額になるという関係の資料でございます。  49〜51ページは適用年齢関係の資料でございまして、51ページは、現在、20歳を境に、20 歳前は福祉的な手当てで対応し、20歳以降は年金制度で障害者の所得保障を行っているという 資料でございます。  52〜58ページがパート関係の資料で、これらはこれまでもお出ししてございますので、55ペ ージにパートの適用拡大をした場合の財政影響の資料を付けてございます。  59ページからが育児期間中の保険料免除関係の資料で、これまでもお出ししている資料でご ざいますので省略させていただきますが、66ページに現状を、先ほど江口委員から御説明がご ざいましたように、厚生年金においては、今、育児休業期間中の保険料免除という仕組みはある ことと、ただ、この分に関しては保険料財源で、言わば被保険者あるいは事業主の持ち合いの中 で財源の手当てをしているような資料を付けてございますし、67ページに、その育児休業期間 中の保険料免除の数とか、そういった資料を付けてございます。  70〜92ページが、在職老齢年金関係の資料を付けてございます。  71ページが、先ほど御説明があった中にも出てまいりましたけれども、支給停止の基準額を 引き上げた場合と、賃金2に対して年金1を停止するという、この仕組みを変えた場合について の影響を絵で書いてございます。端的に言いますと、左側に書いてあるような形にすると、高賃 金・高年金の方ほど改善効果が大きくなるという資料を付けてございます。  最後にということで、93ページから最後までが標準報酬の上限の引き上げの関係の資料でご ざいます。  94ページをごらんいただきますと、今の62万円という標報上限でどれだけ上限に張り付いて いるかということでございますけれども、現在で6.8%。昭和50年代ですと4%程度だったも のが、60年以降、こういった形になっているということでございます。  それの背景としてということで、97ページをごらんいただきたいと思いますが、少し見にく くて恐縮でございますが、健康保険と年金の標準報酬の上下限の変遷の資料を付けてございます が、端的に言いますと、おおむね昭和59年の健康保険法の改正、昭和60年の年金法の改正ま では、健康保険と年金は大体同じということで来たものを、60年改正以降、年金は過剰給付に ならないようにということで、健康保険とは別の道を歩んできたということでございまして、健 康保険の方は現在121万円まで上限が行っているのに対しまして、年金は62万円になっている という資料でございます。  更に98ページに、この上限該当者の割合をどの程度に抑えたら、どのぐらいの標準報酬の上 限になり、それを感覚的にとらえていただくために年収に直すとどのぐらいになるという資料を お付けしてございますし、99ページには、そういったものについての財政影響という資料を付 けてございます。  私からは以上とさせていただきます。 ○稲上部会長 どうもありがとうございました。  それでは、江口委員と塚本年金課長から御説明がありました事柄につきまして、御意見・御質 問をいただきたいと思います。  都村委員、どうぞ。 ○都村委員 先ほどの稲垣委員の御意見にも関連して、意見を述べさせていただきたいと思いま す。  年金制度を見直す際には、予想されるこれからの経済社会を見据えて、それに適合する制度改 革を目指すことが重要だと思います。日本の総人口は2005年に初めて前年比約2万人を切って、 人口減少社会に入っております。  少子高齢社会では、積極的に経済・社会活動に参加する機会を持つ人々の数をできるだけ増や し、そのような活動を維持できる人生の期間をできるだけ長くするように諸制度を見直すことが 重要です。高齢化は避けられないとすると、従属人口比率の上昇を緩和するには、まだ十分活用 されていない潜在労働力の労働市場への参加を促進するよう、環境の整備を図る必要があります。  年金改正の重要な視点の一つは、男女共同参画社会に対応できる制度にすることだと思います。 男女共同参画社会にしていくことは、社会保障の支え手を増やして給付と負担のバランスを取っ ていくことに寄与することにもなります。経済活動や社会活動に女性が一層参加することなしに は、これからの社会は乗り切っていけないと思いますし、それから、社会保障を安心と信頼を持 てる持続可能なものにしていくことも難しいのではないかと思います。  しかし、いろいろ資料もいただきましたけれども、実態を見ますと、男女の間で受給する年金 額に大きな差が見られます。まず、国年について、2006年度の老齢基礎年金の受給額を男女別 に見ますと、男性は月額6万円台が最も多いのですけれども、女性は月額3万円台が最も多くな っております。同じく2006年度の厚生年金の平均年金月額を見ますと、女性は月10.7万円、男 性は18.8万円であって、女性は男性の57%と、ほぼ6割弱の水準となっております。  この女性の年金額が低いのは幾つか要因があるわけですけれども、家族的責任のために有給の 労働に十分従事できなかったこと、パート労働等の適用除外の問題もありますし、低賃金のため、 低い給付となるといったような要因もあります。女性雇用者の中でパート労働者が4割強を占め ております。勿論、男女間の年金の差については、男女の賃金格差など、社会の実態が年金の給 付水準に反映されているということで、年金制度以外の理由から出てきていることもあるわけで す。  このような視点から見たときに、今日の検討項目として出されております、年金制度内におけ る低年金・低所得者への対応、育児期間中の保険料免除、パート労働者に対する厚年適用の拡大、 それから、在職老齢年金の見直しなどは大変重要な課題として挙がっていると思います。  ただし、見直しの方向につきましては考え方及びその具体的な案と論点がまとめられています けれども、両論併記のような形のところもあって、かなり控え目なまとめ方になっていると思う のです。将来的な見直しに当たっては、特に、今、申し上げました4項目についてはもっと積極 的に前進させるような対応をすべきではないかと考えます。  今、年金課長のお話を伺って少し安心したのですけれども、この文章を見ている限りではやや 慎重なといいますか、控え目で、方向性という点で、もっと議論をしてからということかもしれ ませんけれども、もう少しはっきり出してほしいという気もいたしました。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  樋口委員、どうぞ。 ○樋口委員 今の意見と同じような、応援団的な発言になるかと思います。  1つは第3号被保険者制度の扱いについてということで、今回は、今の御説明ですと中長期的 視点から検討するということで、項目に入っていないというようなことがあります。前回、宮武 委員の下で、このパート問題について検討したときも、第3号被保険者との関連が非常に強いと いうような、この部会でも合意があったかと思います。  そういうことでありまして、今回、パートを見直すんだというようなことになれば、当然、そ こで第3号被保険者との関連についてどう考えていくのか。あるいは第3号についての議論があ ってしかるべきではないかと思いますので、是非、そこは入れていただきたいと思います。とい いますのも、例えば今日いただきました参考資料を見ましても、項目が立っていないと資料から 落ちてしまうんです。それで、第3号の話は8番までに全く入ってこないというようなこともあ りまして、どう議論が展開されるかは別にして、やはり議論しておくべきことではないかと思い ますので、その点はお願いしたいと思います。  もう一つは在職老齢年金のところでありまして、これも労働供給をいかに中立的に年金制度を つくっていくかといったときに必ず議論になってくるところであります。この中身については、 多分、これから議論するので触れないようにしますが、今日は割愛しますが、この制度自身が企 業における賃金設定にも影響を及ぼしている。単に労働供給の影響だけではなく、企業がこうい ったものが存在するんだということを前提に高齢者の賃金を設定しているというところもあり ます。これが高齢者の低賃金になっているのか、それとも、企業あるいは労働者の方に補てんさ れているとみなすのかというところについてはいろいろ議論があると思いますが、その点も併せ て御検討いただきたいと思います。  特に、これまで厚労省の方で研究会をやってきた、例えば働き方と年金制度の検討会において も、受給開始年齢を選択できるという、個々人が選択した場合に期待生涯年金が一定になるよう な中立的な制度を検討したことがあったかと思いますので、そこら辺についても御議論をしてい ただきたいと思います。要は、働くことが損にならない制度をどうつくっていくかという視点が 少子高齢化、人口減少社会の下で必要になっていくのではないかと思いますので、そのプリンシ プルは是非御議論いただきたいと思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  渡邉委員、どうぞ。 ○渡邉委員 大変わかりやすい論点整理をしていただいたと思います。本当にありがとうござい ました。  何人かの先生から、今、御意見をいただいておりますけれども、少子化等の対応については制 度横断的な視点が非常に重要になってきているという印象を持ちます。いろいろな視点が根っこ にあると思います。  そうしたことから考えますと、世界にもはや比較対象がなくなってしまった、この人口減少問 題という構造変化の中で、この論点整理にもありますように、子や孫の世代のときに本当に維持 可能なのかどうか。サステイナビリティーがあるのかという、この視点で見ていく必要がまた非 常に高まってきたのではないかと思います。  今般、冒頭にあります基礎年金の国庫負担の2分の1負担から始まりまして、これは確固たる ものにしていただきたいと思いますけれども、この先も含めて、この維持可能性という、サステ イナビリティーの視点からどう考えていくのかが重要だと思いますけれども、今回の幾つかの問 題の根底も見ていきますと、課題解決にはやはり公費投入が前提とならざるを得ないという項目 も挙がっているかと思います。  そういったことを含めますと、この論点整理の税方式と社会保険方式のポリシーミックスとい うような考え方も出ているわけですけれども、ハイブリッド的な制度を意味しているのかもしれ ませんが、こういった視点の検討、あるいはこの延長に本当に保険制度だけでいいのか。税方式 というものを本当に位置づけなければできないのではないかということも含めて、この表現ぶり も含めて、そこをもう少し詰めていただいた方がいいのではないかと思います。  3ページの記述もそうなんですけれども、ここに財源の要素の記述もございますけれども、ま さしく、この移行措置をどう取るか。特に、ここでは保険料の未納期間についての措置を移行期 間としてどう取るかによって、この財源の要素はまるっきり違ったものになるかと思います。そ ういったことも含めて、もう少し税方式とのバランスを含めた記述もしていただきたいと思いま すし、検討も深めていただきたいと思います。  また、冒頭にありました制度横断的な視点ということで、この税方式を考えれば、なおさら制 度横断的な視点が重要になってくるかと思います。社会保障全般のいろんな要素。特に生活保護 との関係。これは参考資料の30ページにも税方式と社会保険方式の比較がございますけれども、 税方式であればなおさら他の制度との横断的な検討が必要になってくるということだと思いま す。また、そのためにもインフラ整備として、こういった効率性・利便性の観点からのICT活 用などの視点も重要になってくると思います。  以上でございます。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  小島委員、どうぞ。 ○小島委員 今日お示しされましたたたき台、論点について、各項目、意見がありますので、よ ろしいですか。 ○稲上部会長 できるだけ多くの方に御発言いただきたいと思っておりますので。 ○小島委員 それでは、簡潔にします。  今回の年金制度は、前回改正からの状況の中でどこをポイントにするかということで論議され ておりますけれども、やはり1つ「はじめに」のところでも指摘されていますけれども、これは 年金記録問題から始まっていますけれども、年金に対する国民の不信をどう払拭するか。これは 制度自体というより運営の問題が大きいところがありますけれども、運営の問題が制度自体に対 する国民の不信というものが高まっている。ここを払拭することが必要だと思いますので、そう いう意味では、これからの年金制度を信頼あるものにする、そういうインパクトのある出し方が 必要ではないかと思っております。  そういう意味で、今回、特に問題にされております低年金・無年金対策をどうするかというこ とで言えば、この2ページの「1.低年金・低所得者に対する年金給付のあり方」で、従来、私 は基礎年金については税方式という主張をしてきたところであります。それについては税方式に ついても論点に挙がっておりまして、その際に高所得者に対する給付の在り方。これは3ページ のところにクローバックといった形で、所得に応じて税等で取り持つといいますか、納付という 形で還元する方法も必要だろうと思っております。  それと、今回、2ページに示されております新しい考え方で保険料軽減支援措置ということで、 これは説明の方には社会保険方式を基礎に置いているということで、保険料納付時に対する税で の支援措置という考え方であります。ここでは年金給付時における高所得者に対する課題になり ますので、もし仮にこういうことを導入するといった場合にも、先ほど言った全額税方式の場合 と同じような、クローバックといったような対応は考えられるのではないかと思っております。  もし仮に、この制度を導入したとしても、これは現在の無年金・低年金者については救済にな らない。将来的にはこういう形になりますけれども、そこの問題をどうするかということで言え ば、2ページの(2)に書いてありますような、単身低所得高齢者等に対する加算という当面の措置 は必要になってくるだろうと思っていて、これは私が主張しました税方式のときでも経過的な措 置として、やはり当面の最低保障といいますか、そういうような加算方式といいますか、そうい う制度も必要になってくるんだと思いますので、そういうものをどう組み合わせる形で考えてい くかが課題だろうというふうに、ここは税方式か、保険方式かという、なかなか、そこは結論が 出ないという流れに、議論が一つまとまらないということがあるとしても、低年金あるいは無年 金者に対する対応は、当面、やはり緊急的には対応が必要ではないかと思っております。  3ページの、基礎年金の受給資格期間25年の問題も、現行の基礎年金の制度をそのまま維持 することになる場合には、やはり、ここは受給資格期間25年の短縮は必要ではないかと思って おります。そこに最低保障あるいは税方式となれば、これはまた受給資格期間というものは違っ た議論になるんだと思います。  4ページの、パート労働者に対する厚生年金適用の拡大の問題。これも従来から私は、やはり 原則、雇用労働者については厚生年金の適用をすべきだということでありますので、現在継続審 議になっております被用者年金一元化法を早く通すか、あるいは修正をかけて原則適用の方に拡 大を図ることが必要だろう。やはり、ここはもっと急ぐ必要があるだろうと思っております。  これは論点に挙がっていないんですけれども、今、国民年金の第1号被保険者が2,000万人ぐ らいおります。その半分が言わば雇用労働者が占めておるということです。その中には、今、失 業者と言われる人たちが300万人弱ぐらい入っております。その失業者はたまたま失業している ところでありまして、言わば雇用労働者のグループでありますので、そういう意味では失業者に 対して、失業して企業責任がなくなっても、引き続き、厚生年金に加入できる。そういう制度、 言わば医療保険にあります任意の継続加入制度というものをつくるべきではないかと思ってお ります。その際の保険料については、現在の学生の猶予制度といった形で、再就職してから保険 料を後から追納するといった猶予制度を組み合わせる形での失業者に対する継続加入制度も必 要ではないかと強く感じているところであります。  次の、育児期間中の国民年金の保険料免除の問題でありますけれども、これもやはり、これか ら少子化対策というような、ここがどこまでやるかという論点は入っていますけれども、そうい う形で言えば、厚生年金加入者だけでなく、1号の加入者についても検討すべきではないかと思 っています。特にその中でも、先ほど言いましたように、国民年金第1号被保険者の半分は雇用 労働者でありますので、せめてといいますか、加入者については育児期間中の保険料免除をつく るべきではないかと思っております。その際の保険料はどうするかということになりますので、 そこは本来であれば厚生年金グループでありますので、その1号の雇用労働者の保険料免除分に ついてぐらいは事業主が負担することも考えられるのではないかと思います。  5ページの在老の問題も樋口委員から指摘されましたのでありますけれども、ここもそういう 高齢者の雇用継続の関係で整理すべきだと思っておりますけれども、現在の問題点として1つ発 言しておきます。これまでも発言したことがありますけれども、現在、この在老制度はあくまで も厚生年金に引き続き加入していることが前提でありますので、厚生年金に入っていなければ年 金は受給年齢であれば満額出て、それから、賃金も両方出るということなので、そこの制度の言 わば公平性の問題があるのではないかと思っております。  今の厚生年金適用要件、通常労働時間の3分の2以上から外れてしまうと厚生年金に加入には ならないことになりますので、そうすると年金は満額出ることになってしまいますので、そこの 制度の公平性の担保が必要ではないか。そういう意味では、今は賃金だけをベースにして在老の 減額適用になるかどうかというものがありますので、そこは収入という形で、ほかの収入も含め た総収入という考え方での年金の減額性といいますか、そういうものも検討する必要があるので はないかと思います。  最後に、標準報酬月額の上限の問題。これも年金財政上から言えば、上限をもっと引き上げる ことが必要だろうと思っております。その際に、給付の方にどう反映するかになりますけれども、 そのまま給付に反映しますと高額の年金になってしまいますので、ここは一定の年金額を超える 場合には今の厚生年金の報酬比例分の乗率を少し下げるという形で、アメリカのような、寝かせ ていくというような乗率も考えられるのではないかと思いますので、そういうことも是非、課題 という形で載せていただければと思います。  以上でございます。長くなりまして、済みません。 ○稲上部会長 権丈委員、どうぞ。 ○権丈委員 それでは、幾つか話をさせていただきます。  先ほども税方式の話とか、今、2つ続けて出てきたんですが、私はお立場のある方を説得する のは不可能だと昔から考えておりまして、ただ、社会保障国民会議で立場のない人が結構参加し ていました。その人たちは初め、かなり記録問題とかいろんなものがありましたので、租税方式 にせざるを得ないだろうというふうに傾いていました。そこで彼らも、毎回、社会保障国民会議 の雇用年金分科会に出席する。そして、5月19日に発表された報告、シミュレーションの結果 を彼らもしっかりと最初から最後まで聞いていく。そこで彼らは、その中のお一人の、非常に賢 い、勘のいい学者の人もいるんですけれども、両論併記というものはかえって国民にわからなく してしまう。だから、中間報告のときに、両論併記は考えないで、やはり租税方式はあり得ない ということを書くべきではないかと発言されていました。  多くの人が、お立場のない人たちはずっと議論を聞いていく、そして、試算結果を最初からし っかり読んでいけば、普通の読解力があれば数値が語ってくれます。それで私は両論併記に進む といったときに、あるいは書かざるを得ないというような状況のときに私が何も言わなかったの は、両論併記にしないと、これは試算結果そのものを公にできないかもしれないと同時に、中間 報告そのものが否定されてしまう。そのままの形のところで、この件に関して話を出させてくれ ないかもしれないというところで、私は何も言わないで、妥協して両論併記という形にしている だけであって、あれは多くの人が普通どおりに読めば、普通の読解力をもって読めば、租税方式 はあの時点で終わっているでしょうというのがあるので、私はここから先、それの中でも3番目 ぐらいに書いているだけでも立派なものだと思っておりますので、わざわざ、また初めに戻るこ とはないのではないですかというのがあります。  ですから、議事録とかいろんなものを、私が先ほど言いました両論併記というものはかえって 紛らわしいといいますか、国民が間違った方向に進むからやめた方がいいのではないかというよ うな言葉も私ではないところから出てきておりまして、その人の1回目、2回目の議論を聞いて いただければ、かなり租税方式の方に行かざるを得ないのではないかということを彼は言ってい る。それが次第に変わってきて、結果、試算結果を見れば、非常にそのとおりに理解されている という状況になっておりますので、皆さん、お勉強していただければと思います。  次が、アジェンダ・セッターというものが非常に権力を握るというのは昔から我々のパブリッ ク・チョイスとかいろんなところであるんですけれども、ずっと項目を立てられていくと、本当 にこれが重要な項目なのかということがいろいろあると同時に、これこそ重要だろうとかという ものが先ほどの都村委員とか樋口先生のところからも出てくる3号の問題とかが、えっと言うぐ らいに全く載っていない。この権力の行使はすごいと思うんですけれども、そういうところを、 私はこの3号のところはやはり表にぼんと出してこなければいけないと思っております。  それと、2ページで、私はこの書類を見てかちんとひっかかるといいますか、それが上の方か ら「1.低年金・低所得者に対する年金給付のあり方」というものがあります。ここで「具体的 な対応策を考えるに当たっては、以下の2つの考え方がある」というところで「(1) できる限り 満額年金の受給につなげるようにする考え方」。ここがひっかかるんです。  6万6,000円という満額年金は生活保護よりも低いです。それはそれでいいだろうというのは、 1号ができ上がるときの自営業者とか農業者である人たちは、こういう基礎年金の6万6,000円 ぐらいがあれば、あとはいろんなもので生活できるでしょうというようなものが大前提にあって 6万6,000円ぐらいの設定水準があり、そして、その上に生活保護の受給年齢とか、最低生きて いくために必要な最低保障といいますか、所得は上の方に設定されている。それは問題ないかも しれないかと思います。ところが、1号の中に、今は4割以上、被用者が、要するにプロレタリ アートがいるんです。このプロレタリアートに満額年金を受給させたからといって生きていける のかというのがあります。この人たちに満額年金を保障しても恐らく生きていけないだろうから、 最低所得を得るためにミーンズテストというものを受けなくてはならなくなるだろうと思いま す。  だから、ここで書いてあるような保険料軽減支援制度とかというようなことを一生懸命やった としても、本当に必要である、この1号の中にいるプロレタリアートといいますか、被用者の人 たちは、もらったとしても、この制度の恩恵を受けたとしても、最終的にはミーンズテストを受 けなければいけない。その上の生活保護の受給水準までたどり着くためには、ミーンズテストを 受けなければいけない。本当に彼らに最低生活保障を確保したいというのであれば、生活保護給 付水準以上の所得を、この基礎年金で保障しなければいけなくなってくると思うんです。だから、 大きな問題がそこにある。要するに、1号の中に被用者がいるという根本的な問題を私は後ろの 方に置いていいのかというのがあります。  その状況があるがために、今、基礎年金に対していろんな操作をしなければいけないというの は、私は話は逆だろうと思っておりまして、昔と違って、被用者がこれだけ増えてきているんで すから、基礎年金1号の中身を、あるいは給付要件を変えなければいけないのではなくて、1号 の中から被用者を外に出していくことが大きな目標になってくると思いますので、やはり、その 辺りのところがぼんと表の方に出てきていいのではないのか。  そして、それをパート労働に対する厚生年金適用というふうな表現をするから話がややこしく なって、30時間だ、24時間だとか、いろんなところでもめたり、3号が反対をするとかという ような動きが出てくるので、私が言っているのは、この1号の中にいる被用者の事業主負担分は 払いましょうというふうにするだけでいい。そうすると、企業側から見れば、これは1号であろ うが、2号であろうが、ニュートラルになる。そうすると、時間が経っていくと、いずれは1号 の中の被用者の人たちの数が少なくなっていきますし、そして、将来的にはその制度に変えよう とするときには3号も敵にはならない。増えるだけですからね。  まず、そこら辺からやっていって、この被用者が1号の中に相当数いるという根本的な矛盾を 考えますと、できる限り満額年金の受給につなげるようにする考え方は私にはよく理解できない。 プロレタリアート上がりの人たちが65歳になって、その人たちが6万6,000円をもらって生き ていけないことがあるがために生活保護の水準の方が上にあるわけですね。だから、その辺りの 御検討を、要するにもっと表に出していただきたいと思っております。  そして、そういうところで、この前からも江口先生もおっしゃっていたような、ほかのチャネ ルなんですけれども、生活保護を受給するときに年金権というものがすべてちゃらにされてしま う、なくなってしまうところはある程度考慮する必要があるのではないかとかというようなこと も全く入っておりませんし、あと、2ページで単身低所得者という、いつの間に単身がくっつい たんだろうかという状況で、この前のところでしたら、要するに著しく所得の低いというのは所 得調査をするという意味ですね。そして、その次に、これは夫婦だったらもらえないんですね。 だから、偽装離婚とかいろんな方向に行く可能性はないのかというのが、非常に私が憂えるとこ ろであります。  そういう状況で、最低所得を満たすときに、先ほどの中で、この下の方にある「具体的な対応 策を考えるに当たっては」というところで「(2) 著しく低所得である者には、満額を超える所得 保障を行う考え方」。私はこちらの方がベターではあるでしょうし、そのために、ある程度の所 得調査みたいなことをやれば満額以上の額をもらうことができる。やはり何らかのクリアーする ための条件が必要になって、そこで年金の中で満額を超える所得保障を行うために所得調査をや っていくような、単身を外した(2)みたいなところが、ある程度、妥当ではないか。そして、その ときの財源は、後ろの方に出てきております医療保険と同じような形で、標準報酬月額を上げな がら、なおかつ、給付を少し曲げて、そこら辺からの財源をこういうところに使うことはかなり 合理性といいますか、支持を得られるのではないかと思っております。  どうもありがとうございました。 ○稲上部会長 江口委員、どうぞ。 ○江口委員 済みません、先ほど一応、骨格のたたき台の説明ということで発言させていただき ましたが、実は、この中間的な整理に載っていないんですけれども、3ページ目の受給資格期間 の在り方に関し、是非、皆さんには御認識いただきたいことがあります。ここでは25年の短縮 ということで考え方を説明いたしましたが、日本国民の場合には、原則、20歳から60歳まで 40年間加入するのが原則なわけです。そうすると、この問題は、先ほど申しましたが、日本人 の場合には滞納の人をどうするかという問題になる訳です。  ところが、多分、これを実際に制度化したときに影響があるのは外国人労働者なのです。つま り、今の外国人の方は25年加入できないと年金受給資格に結び付かないわけです。これを仮に 10年とかに短縮をしますと、厚年は外国人にも適用されますし、国年の場合には住所要件とか が必要になるのですが、外国人の方で10年、年金に加入すれば、実は日本の年金が受給できる ことになるわけです。これをどう考えるかが非常に大きな問題でして、日本で働く外国人の在り 方として、移民のような形で永久的に日本に住んでいただくだけでなく、現役時代に頑張って働 いて、日本の年金を外国で受給する、老後は母国に帰るという選択が可能になるということです。  この意見が25年要件の部分になぜ載らなかったかといいますと、これは私の意見であって、 皆さんのコンセンサスが得られなかったということなのですけれども、私の意見としては、ここ のところは、実態的に大きな影響があり得るので、是非、部会の委員の皆様方にもその点を御認 識いただきたいということで、追加で発言をさせていただきました。 ○稲上部会長 林委員、どうぞ。 ○林委員 まず1つ、低年金・低所得者に対する在り方ですけれども、これのかなり大きな対策 として厚生年金の適用拡大があることは全くおっしゃるとおりだと思います。  その上で、ここでモラルハザードということが指摘されておりますけれども、この問題を考え るときに、今後、無年金・低年金を生まないようにするということと、今、現にいる低年金・無 年金者、あるいはその予備軍をどうするかということと分けて考えた方がいいのではないかと思 います。現にいる無年金・低年金、また、そうなりそうな人という中には免除期間が長い、カラ 期間が長いというような正当な事情のある人で、カラ期間の長い人は今後どんどん減っていきま すから、免除期間が中心になるかと思います。  もう一つ、未納・滞納という正当な理由のない方になると思いますが、正当な理由のない方は 今後、制度の周知徹底とか、免除制度の適用促進とか、パートといいますか、厚生年金の適用拡 大もそうですけれども、いろいろな対策でなくしていくのが大前提だと思います。  ですから、最低保障機能とここで言っているときに対象として考えているのは、免除期間があ るなどの事情のある方のことを考えているのであって、正当な理由なく未納を続けましたという 方が今後もたくさんいて、そういう方に対してもどんどんあげますという話をしているのではな いと思っております。  そうすると、このモラルハザードということもどれぐらい強調すべきなのかがあると思います。 現に未納などで無年金・低年金である人をどうするかというのは、例えば保険料の追納期間を2 年を超えて認めるとか、そういった対策が幾つかあると思いますけれども、少し時限的にとか、 最低保障機能を何かの条件つきでというような、何か特例的な、時限的な形が考えられるのでは ないかという気がしています。一緒くたに救おうとすると、どうしてもモラルハザードの問題が 出てくると思いますので、そういった考え方はできないのかと考えております。  それから、子育て期間中の保険料免除についてで、これも是非、実現してほしいと考えている んですけれども、今は育児休業取得者だけが対象になっているわけで、ですから、厚生年金加入 者でも育児休業を取らずに子育てをしている人は対象になっていなくて、そういう人の中には職 場環境が許さないとか、休んでいたら家計が許さないとか、割と厳しい状況がゆえに取っていな い方が多いと思うんです。つまり、今、恩恵を受けているのは比較的恵まれている。実際、本当 に支援を必要としているところに届いていない気がしています。  個々人への効果とか、限定的ではないかというようなこともありますけれども、これ1つを取 って子どもを生みましょうという話にはならないでしょうけれども、こういった子育て世代への 支援は各施策・制度の中で、いろんなところで積み上げていくことが重要なのではないかと思い ます。  以上です。 ○稲上部会長 宮武委員、どうぞ。 ○宮武委員 焦点は恐らく保険料軽減支援制度ということで、余りお触れになる方が少ないので、 私は次回が出席できませんので、今日申し上げます。  保険料軽減支援制度を考えるときに、参考資料の23ページで1号の被保険者の内訳が書いて あって、現実に何とかお払いになってはいるんですけれども、所得状況で見ればまともに保険料 を払うべき人は2割しかいないわけです。それでも、あえて、この制度を導入して、被保険者が、 この所得段階で支払い能力を判断されれば、全体の2割程度しか正規の保険料を払わないことに なる。クロヨン問題というものはやはり大変な問題で、実際に制度設計をするときには極めて難 しい問題が出てくるだろうということが素人でもわかります。  基本的には、今の国民年金の多段階の免除制度というものを、言わば多段階の保険料にするわ けです。多段階保険料方式にするのは、いみじくも説明文には、所得に応じた保険料という形を 取るんですから、社会保険方式の基本は踏まえたと書いてあるわけです。私もそこは全く同意見 でありまして、いつまでも一律定額の保険料をすべての人に課しているのは、どこの先進国の年 金制度にもないこんな仕組みはやはりやめてしまうべきだと思います。  そういう意味で、この保険料軽減支援制度が一つの入り口になって、将来的には所得に応じて 保険料を払い、緩やかでも報酬比例の国民年金を受け取るという、厚生年金の形に近づいていく ことを将来の姿として描いて、その入り口としてこれを導入したいのであれば私は賛成でありま して、今の経済情勢や政治情勢の中で考えるだけではなくて、将来の国民年金の在り方を考えた 上での導入であれば、それは評価に価する気がしております。  現にこれを導入すれば、すべての1号の被保険者の所得調査がやれるわけで、それは高い人も 低い人もみんな含めてやる。その作業の中で所得把握がどこまでできるのかという、初めて支払 い能力に踏み込んだ調査になると思います。その作業を通じて将来的なあるべき姿を描いて、こ の保険料軽減支援制度を導入された方がよいと思っております。  それに関連して言いますと、基礎年金の受給資格期間25年というものを10年に短縮すると いうのは非常に正反対の方向性でありまして、年金保険料の軽減支援制度でもって低年金者をな るべく少なくしようというアクセルを思い切って踏み込んでおきながら、片方で、25年ではな くて10年でよいという仕組みを設ける。10年では、補助を受けたとしても、極めて低い年金し か受け取れない人をどんどん増やしていくことになる。アクセルとブレーキを一緒に踏み込むよ うな対応ではないかと思います。これはやはり再考された方がいいと思います。  江口委員の外国人労働者についての意見は、単純な外国人労働者の方か、技術を持っている外 国人労働者の方かは知りませんけれども、10年で年金の資格を得られた人はもっと長いこと多 くの年金を得るためにずっと定住するのが普通です。欧米の例としてはそれが常識だと思います ので、母国に帰ってもらうという期待は余り持たない方がいいと私は思います。  20歳からの保険料の納付の問題が書いてありますね。国民年金の適用年齢の見直しでござい ますけれども、これは私は是非やった方がいいと思うんです。大学生で定型的な所得のない人に 保険料を払えと言えば、それは納付猶予をしてもらうか、あるいは親が払うかしかないわけで、 それはもう少し幅を持たせて、23歳とか24歳までの間、それぞれの人が卒業した段階でもって 払い込むような形にできないかと私はずっと思っておりました。  障害年金との影響があるということが書いてございますけれども、例えば児童福祉法などでも 児童は18歳未満と書いてありますけれども、児童扶養手当法では高校卒業までとか、あるいは 母子・寡婦福祉法では施設に入所している子は20歳までが対象という形で、立法上、年齢はそ れぞれの趣旨に合わせて結構変えているように思いますので、こういう意味では成人の二十以上 というものではなくて、年金制度上においては22歳とか23歳に延ばすことはできないのかと、 素人考えで思っております。  済みません、長くなりました。失礼しました。 ○稲上部会長 山口委員、どうぞ。 ○山口委員 私の方は、皆様方が今までお話しになった話と少し違うんですが、これまでもこの 部会で、多分、議論されていなかったと思いますので、今回で議論の整理をするということです ので申し上げておきます。  支給開始年齢の問題です。これについては、これまで引き上げをずっとやってきているわけで す。さらに、今後はマクロ経済スライドの中に寿命の伸びに相当する部分を0.3%入れて調整し ていく形になっているわけですけれども、毎年の簡易生命表を見ていましても、まだ引き続き長 寿化といいますか、死亡率の低下による寿命の伸びは続いているわけです。我が国は、今、支給 開始年齢を65歳に向かって延長していっているわけですけれども、アメリカなどでは67歳に もなっていますし、それから、ヨーロッパでも65歳より高い国があるわけです。  また、日本は長寿世界1位、2位を争う国でありますから、支給期間を65歳に固定しており ますと支給期間が非常に長いということになっていきます。これは、年金財政の非常に重要な要 素でありまして、もらう年金の大きさ、それから、もらう期間というものの掛け算をした面積が 年金の原資なんですけれども、これまではもらう大きさの議論が随分先行していますが、もらう 期間の議論も必要だと思います。具体的には、ある一定の支給期間を想定して、例えば15年ぐ らいの支給期間を固定して、平均的に亡くなる年齢の15年前から支給を開始するとかといった ようなことを機械的・自動的に定めていくことによって、国民全体がもらう期間が平均的に同じ になるといったようなことで不公平がなくなっていくという視点もあると思うんです。  極端にそういう形でやると、支給開始年齢が動くことになりますので生活設計が立てにくいと かという問題はあるんですけれども、要は非常に寿命が延びている中で、現在まだ年齢引上げの 途中段階にあるため今日的なテーマではないということなんですけれども、当部会としては、や はり支給開始年齢の問題も一度議論しておくことが必要だと思います。そして、長い視点に立っ て、今後、このぐらいになります、あるいはこういう方式になりますということをあらかじめ国 民の皆さんにも知っておいていただいて、早い時点でそれを予告して、老後の準備をしていただ くといったような観点からも、5年に1度の検討のときに、そういった支給開始年齢を今後どう していくのかといったような観点からの議論も是非、1度でいいですから、やっていただければ ありがたいと私は思っております。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  山崎委員、どうぞ。 ○山崎委員 在職老齢年金については、企業は今の制度を前提にいろいろな取組みをしています ので、変更する場合は、先ほど樋口委員からもございましたけれども、実態を調べて対応してい ただきたいと思います。ただ、この制度が高齢者の雇用促進にどのぐらい効果があって、変える ことによってどうなるのかということはなかなか見極めが難しいとは思いますけれども、そうい う見直しをする場合は、是非、よく実態を見ていただきたいと思います。  私は、いろいろな制度を変えていく場合に基本的な視点をどう持つかということが大切だと思 いますが、現在の社会保険方式による年金制度というものを基本的には維持するという考え方の 下で、その枠から外れるものは違う制度で対応するという考え方はやはり持っておく必要がある だろうと考えます。  それから、前回の平成16年の改正のフレームの基本を大きく逸脱しないこと。これが大変重 要なことではないかと思いますので、そういう基本的な視点に立って判断をしていくことが大事 だと思います。そうなると、具体的ないろいろな見直しをすることによる財源の問題が出てくる わけであります。財源の議論が出てくると、それは年金だけで考えられるのか。あるいは他の社 会保障、例えば医療、介護を含めてどう考えていくのか。当然、そういう議論にならざるを得な い。そこで判断せざるを得ないのではないかと思います。したがって、個々の政策に、こういう 施策を取っていくときにどのぐらいの財政的負担が必要かということを、判断の一つの要素とし て持ちながら優先度の高い施策を最終的には考えて決めていくという道筋を取らざるを得ない のではないかと思います。  こういうことの背景には、いろいろとお話が出ていましたけれども、少子高齢化という問題が やはりあるんだろうと思いますし、人口問題、要するに合計特殊出生率の低さの問題に行き着く と思います。財源問題を考えていくと、それではやはり、日本の人口を増やすような施策、出生 率を上げるための施策がよくよく考えてみれば中長期的に極めて大きな方策なので、そこに大き な財源を投ずるべきであるという考え方があると思うのです。  私は、少子化対策を進めないと、今、考えている社会保障政策、あるいは社会保障のさまざま な政策がうまく進まないのではないかと考えますので、是非、財源と、どこに一番焦点を当てる かという議論を詰めていただきたい。少子化対策との関連の中で、3号被保険者の問題、パート の問題、あるいは育児休業中の保険料の問題が整合的に考えられて進められるべきではないかと 思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。  どうぞ。 ○今井委員 資料2の一番最後の「参考」に3号被保険者制度と、書いてありますがこれは今ま での部会で何人かの方が意見を言ってくれたので、やっとここに載ったのかと思うととても残念 でした。先ほどの説明の中に、財政検証が100年先を見通した数字ということでしたが、これは 本当に難しいことだと思います。  一方、我々の目の前にあるすごく大きな課題は労働力の低下だと思います。世界的にもない少 子高齢化が進む日本にとって、まずやるべきことは意欲的に労働市場に参入することだと思いま すので、まずその環境をつくることが急務ではないでしょうか。どんな生き方をしても、1人で も安心して生きられるにはどうしても、この3号問題は関係してくると思いますので、是非、こ の検討を積極的に進めていただきたいと思います。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。時間が過ぎておりますが、御発言がございましたらど うぞ。  西沢委員、どうぞ。 ○西沢委員 手短に申し上げます。  不断の制度の見直しと書いてありますけれども、これは少し違うと私は思います。制度の見直 しはいつかピリオドを打ちませんと制度が安定しませんので、いつも問題を抱えているという印 象を国民は受けることになると思いますし、また、社会保険庁の皆様の諸問題を拝見しても、制 度の見直しがオペレーションを難しくしていると思いますので、どこかでピリオドを打つことを 目標に掲げるのがまさに信頼の回復だと思います。決まったことには従う。  もう一つだけ、制度の簡素さという視点がシステムとも関連して必要だと思います。だんだん 複雑になってきてしまって、私もよくわからない制度になっていますので、国民一人ひとりが簡 単にわかるような制度にしておきませんと、そういった視点から見ますと、保険料減免措置とい うものはやや複雑に過ぎるかなという気もしております。  以上です。 ○稲上部会長 ありがとうございました。ほかに、どうしてもという方はいらっしゃいますか。  ごく短くお願いします。小島さん、どうぞ。 ○小島委員 初めのところで是非触れていただきたいのは、やはり、この年金制度の問題につい ては、その支え手である被保険者の問題になれば、雇用形態の大きな変化を踏まえた形が必要だ ろうと思います。そういう意味では、今、雇用労働者のうち3分の1、直近の数字では37%、 4割近くが非正規になっているということなので、ここを従来の社会保険制度は正社員を対象に したということなので、やはり、ここを抜本的に変える必要があるだろうということを、是非、 今回の制度見直しのときには基本に据えていただきたいと思います。 ○稲上部会長 どうぞ。 ○権丈委員 済みません、最後に、社会保障国民会議の最終報告というものが資料3−2にあり ますので、ごらんになっていただきたいと思います。  その2ページに「3 社会保障の機能強化のための改革」があり、(1)に「(2) 持続可能性 の確保・国民の多様な生き方の尊重」があります。「団塊世代が75歳になる2025年以降を見通 し、長期にわたって持続可能な制度の構築を追求する必要がある。同時に、社会保障制度は、人々 の暮らしや価値観の変化に対応した制度であるべきであり、個人の職業選択、就労形態や生き方 の選択によって制度の適用、給付や負担に不合理な格差が生じるようなことがあってはならな い」とあります。  この「個人の職業選択、生き方の選択によって制度の適用、給付や負担」というところに、私 が「就労形態や」という言葉を入れてくれと言って、入れていただいたところでして、この就労 形態、働き方によって制度の適用や給付や負担に不合理な格差が生じることだけは本当にやめて もらいたい。その意味で3号のところとか、あるいは先ほどのパート労働の厚生年金適用という 言葉が面倒なので、1号の中に被用者がいて、その人たちが非常に不利な目に遭っているという ところで、事業主から見れば1号、2号を全く無差別に保険料の事業主負担をしなければいけな いとかというようなことを視野に入れた形で、もう少し前の方に今後の検討課題の中で入れてい ただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○稲上部会長 よろしゅうございますでしょうか。  いろいろと抜本的なといいますか、基本的な問題もお出しいただいておりますので、どういう ふうにまとめられるか、少し部会長代理あるいは事務局とも御相談をしながら、今日の議論を踏 まえて、できるだけ文章化に努めてみたいとは思います。それをごらんいただきながらさらに議 論を進めていただければありがたいと思っております。  本日の部会はこれで閉じさせていただきまして、来週19日水曜日の午後1時から3時まで、 同じこの場所で開かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。 (連絡先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)