08/10/29 第2回献血推進のあり方に関する検討会議事録            第2回献血推進のあり方に関する検討会        日時 平成20年10月29日(水)        13:30〜16:00        場所 日本教育会館(一ツ橋ホール)内9F                      イベントホール喜山倶楽部「平安の間」 ○血液対策企画官(林) ただいまから「第2回献血推進のあり方に関する検討会」を 開催します。本検討会は公開で行うこととしています。もし、カメラなどをお使いにな る方がいらっしゃいましたら議事に入る前までとしますので、マスコミ関係者の方々に おかれましてはご理解、ご協力のほどよろしくお願いします。  本日ご出席の委員の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠 にありがとうございます。今回、前回ご欠席でした全国学生献血推進協議会会長の羽田 委員がご出席ですので、ご紹介をします。 ○羽田委員 全国学生献血推進協議会委員長を務めています羽田真由香と申します。学 生の代表として、しっかりとした意見を皆さんにお伝えできるように頑張りたいと思い ますので、よろしくお願いします。 ○血液対策企画官 どうもありがとうございました。本日、飯沼委員と住友委員からご 都合により欠席されるというご連絡をいただいています。また、宇都木委員は到着が遅 れるということです。それから、本日の議題4で海外の採血基準及び献血の状況をご紹 介いただくため、参考人として財団法人血液製剤調査機構の鈴木調査課長においでいた だいていますので、ご紹介します。 ○鈴木参考人 血液製剤調査機構の鈴木といいます。本日は、海外の採血基準及び、海 外の献血の状況についてご紹介させていただくために参りました。よろしくお願いしま す。 ○血液対策企画官 以降の議事の進行を清水座長にお願いしたいと思います。よろしく お願いします。 ○清水座長 本日の議題はここに書いてありますように、若年者を対象とした献血に関 する意識調査の結果や採血基準のあり方に関わる研究事業についての資料、海外の採血 基準及び献血条件について検討していきたいと思いますので、よろしくお願いします。  まず最初に、資料の確認を事務局からお願いします。 ○血液対策課需給専門官(秋山) 資料の確認をします。お手元の資料の表紙に、本日 の座席表があります。2枚目はただいま座長からご案内がありました議事次第、3枚目は 資料一覧です。資料1は委員名簿、資料2は第1回の議事録、資料3-1は若年層献血意 識調査の結果概要をまとめたサマリー、資料3-2は同調査結果をグラフ等によりお示し した報告書の詳細版、資料4-1は我が国の現在の採血基準をお示ししたもの、資料4-2 は採血基準のこれまでの改正の経緯を簡単におまとめしたものです。これらは議題3、 議題4の採血基準に関連したご説明の際に、併せて参考としていただければと存じます。 資料5は河原委員からご報告いただく採血基準のあり方に係る研究事業について、資料 6は鈴木参考人からご紹介いただく海外の採血基準および献血の状況についてです。以 上が、本日の資料です。 ○清水座長 皆さん、資料はよろしいですか。議事に入るにあたりまして、前回の議事 録の確認をしていただきたいと思います。既に、委員の皆様方には事前に案という形で 配付しまして、ご意見等をいただいていますが、その後何かここのところはというご意 見等がありましたらおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。議事 録については問題ありませんか。特になければ、これで確定したいと思います。  議題2は、「若年者を対象とした献血に関する意識調査の結果について」です。前回は 少し慌ただしい雰囲気もありましたが、調査内容についていろいろご審議いただいた結 果を事務局のほうでまとめてもらいましたので、その説明をしていただきたいと思いま す。 ○血液対策課需給専門官 事務局より意識調査の結果について、資料3-1のサマリーを 用いましてご説明します。グラフ、図表を用いました詳細な報告書は資料3-2にまとめ ていますが、こちらは膨大な量となっていますので後ほどご覧いただければと思います。  資料3-1、表紙ですが調査の概要です。3年前の平成17年度にも同様の調査を行って いますが、今回は改めて行ったもので、全国の16歳から29歳の1万人を対象としたイ ンターネット調査です。献血未経験者、経験者それぞれ5,000人ずつで、男女ほぼ同数。 人口比率によりまして、各地域の対象者数を設定しています。各設問ごとの回答の概要 は、この資料の5頁以降に記載しています。このうち、若年層の献血に関する認識や行 動、これらに重要と思われるものあるいは興味深いものについては、太いアンダーライ ンを付しています。この太いアンダーラインを付したものについて、まとめてお示しし たものが2頁から4頁です。こちらを用いまして、具体的なご説明をしたいと思います。  2頁の左の列が献血未経験者の回答の内容、右の列が献血経験者の回答の内容のご紹 介です。●が付いているのが各々の設問で、その右にある表示は資料3-2の詳細版のグ ラフ等が見られる頁です。まず、献血に関しての認知の程度、「献血についてご存じです か」という内容の問いかけを献血未経験者にしています。こちらは、平成17年度調査に 比べて全体の認知率は上がっているということですが、平成17年度調査のときは残りの 26%余りの方は献血を知らない。すなわち、4人に1人の方は知らないというショッキ ングな内容でしたが、今回は次の献血の種類の認知、「献血の種類をご存じですか」とい うものと分けて調べました。そうしたら、献血そのものを知らない方は1割に満たない、 知っている方は92.9%ということで大幅に上昇。ただ、献血の種類200mL、400mLの全 血献血と成分献血については「知らない」方が6割以上おられました。献血への関心度 は、関心無しの層、「全く関心がない」「特に関心がない」という方が少し増えてしまい まして、無関心派がやや上回っている。平成17年度調査と比べると、逆転してしまって いる状況で若干気がかりです。  次は、献血に関する広報接触媒体です。「どのような広報媒体に接触されましたか」と いう設問を未経験者、経験者それぞれに尋ねています。未経験者で最も多いのは、「街頭 での呼びかけ」で6割です。ただ、高校生については各媒体総じて、接触率が低く、さ らに、高校生・自営業の方では「接触したことがない」という答えが1割弱まで増加し ていまして、高校生ですと前回2.5%だったものが8%まで、自営業では0.9%だったも のが8.2%まで増えてしまっている。これは、献血に触れる機会が減ってしまっている ということで、先ほどの献血への関心度が落ちてしまっているということも言えるので はないかと推測します。一方で経験者は、「街頭での呼びかけ」「献血ルーム前の看板・ 表示」という現場での広報というのが2/3を占めている。現場での接触は専業主婦で高 く、日中ということもあるかもしれませんが高校生で低いという結果が出ています。  「献血キャンペーンに効果的だと思う媒体は何ですか」という問いかけですが、いず れもテレビが圧倒的に高い。これは前回同様です。献血未経験者に献血したことがない 理由について尋ねたところ、最も多かったのが、「針を刺すのが痛くていやだから」とい う痛みに対する反応でした。同じく、「どうすれば献血するきっかけになるか」について は、痛みを和げる措置が実施されればというのがいちばん多かった結果です。  献血経験者に初めての献血の種類を尋ねたところ、200mL献血が51.6%と、未だに過 半数を占めています。ただ、平成17年度調査と比較しますと200mL献血は62.3%から 51.6%と11ポイント減少。逆に400mL献血は10ポイント増加している。これは第1回 目の資料でご案内したとおり、200mLから400mLにシフトしているものと合致している と思います。  初めての献血で、400mL献血をすることへの不安意識はどうかを尋ねました。6割弱の 方が、「特に不安は感じない」と申しています。「不安」と回答した方は3割弱です。高 校生でも状況はあまり変わりませんが、他層に比べると「わからない」という回答が若 干多かった状況です。全般として、女性のほうが不安意識が高いという結果が出ました。  いままでの合計献血回数を経験者に尋ねたところ、7割弱の方が複数回献血した。す なわち、2回以上の献血をしたことになります。全体では、2回以下の方と3回以上の方 がほぼ半数ずつ。この若年層においても、3回以上の方は相当数おられることになりま す。  3頁は今回若干工夫しまして、初めて献血した場所といままでの合計献血回数を関連 付けて集計してみました。そうしますと大学や職場に比べまして、高校を現場として初 めて献血した層ほど、通算献血回数が多い傾向が見られることがわかりました。資料3-2 の101頁の下に、「関連質問の回答別」というのがあります。初めて献血した場所と関連 付けた上のほうですが、高校、大学キャンパス又は専門学校・各種学校、職場と上から 順に並んでいますが、この3つを比べてみると献血回数が11回から20回の上にいきま すと、少し差が出て、高校で初めて献血した方は通算の献血回数が多い傾向が若干見ら れます。より若いうちに献血を経験すると、その後の献血回数が増える傾向が強いかど うか、これを見てどう評価するかということだと思います。  もう1つは、「家族が献血している姿を見たことがありますか」と、いままでの献血回 数とを関連付けてみました。これは、ご家族が献血している姿を「見たことがある」と 回答した層ほど、通算献血回数が多いことが明らかに出ています。同じ101頁の下の、 家族の献血の有無という3つの行です。家族の献血現場を見たことがある事実と複数回 献血者となることの相関がある程度高いのではないかということが窺えるかと思います。  3頁に初めての献血のきっかけという設問があります。こちらは献血経験者に尋ねて いますが、「自分の血液が役に立ってほしいから」というストレートな回答が圧倒的に多 いです。前回の検討会において、新規の回答肢として「献血は愛に根ざしたものだから」 と、愛というテーマで設問を作ろうということでやってみましたが、全体の順位として は15回答中11位と高くはなかったのですが、高校生と自営業の方で目立って高い反応 がありました。「現在献血しているきっかけ」は、最も多かったのは「自分の血液が役に 立ってほしいから」というストレートな回答が圧倒的に多く、前回と同様です。こちら でも、新規回答肢の「献血は愛に根ざしたものだから」という設問については、11回答 肢中8位でしたが、高校生と自営業の方が目立って高かった現象が出ています。  「高校での集団献血が、その後の献血への動機付けとなるか」という設問を経験者に 尋ねています。これは平成17年度にも調査しましたが、「非常に有効」という答えが前 回と比べて、かなり大幅に増えている。前回は20.4%だったものが、今回は36.4%。「ど ちらかといえば有効」と合わせますと、84%の方が有効であると答えています。これは 高校での献血というのが、その後の献血への動機付けになるという意識が高まっている、 あるいは期待値が高いのではないかと窺えます。次は、「高校での集団献血が、その後の 献血への動機付けとなるか」との今の設問と「初めて献血した場所」というものを関連 付けた集計結果です。こちらも、高校や大学などで初めて献血したという層ほど“より 有効”とする傾向が見られました。特に高校で初めて献血した層では、「非常に有効」と いう回答が多かったです。  先ほどもご案内しましたが、「家族が献血している姿を見たことがありますか」という 設問ですが、未経験者、経験者それぞれお答えをいただいています。未経験者では「見 たことがある」という回答が10.6%、経験者では約2倍の21.8%。これは5,000人ずつ ですので、単純に2倍ということが言えるかと思います。新設の回答肢で、友人に献血 をしている人がいますかという質問ですが、未経験者では「いる」「いない」「わからな い」と答えた方がほぼ同じ程度の32、33%で拮抗している状況です。一方で、献血経験 者では6割の方が「いる」と回答されていて、中でも高校生の層では未経験者で「いる」 と答えたのが12.1%、経験者では56.9%と非常に大きな差が出ています。この辺を考え ますと、家族や友人に献血している人がいるということが大きなファクターではないか。 とりわけ高校生では、お友達による影響がかなり大きいのではないかと捉えられます。  今回の調査において、献血にご協力くださいという内容の簡単な資料を2枚ほどお付 けしていますが、この資料をご覧になった上で今後実際に献血に行かれますかという設 問を未経験者にしています。ここでは「はい」という明確な答えの方が6.1%、「どちら かというとはい」という方が41.3%で、半数に若干満たないぐらいの方が前向きな意向 であった。ただ、前向きな意向が最も高い層は、高校生だったということです。同じく 資料をご覧になった上で、献血経験者に献血回数を増やしていただけるかどうかという 質問をしています。こちらでは、「はい」という明確な答えが28.5%、「どちらかという とはい」という方の54.4%と合わせまして、前向きな意向が83%に上る。資料をご覧に なったかなりの方が、回数の増加を喚起されているのではないかと思います。「はい」と いう明確な答えに限りますと、高校生が35.4%と最も高い反応を示しています。  献血についての要望・知りたいことで質問をしたところ、多岐にわたる答えが出まし た。特に目立ったのが、専業主婦の層の回答で、「学校の授業で献血の重要性等について 取り上げてほしい」というものが目立って高かった状況です。  太いアンダーラインを付したもの以外で、若干紹介したいところがありますのでご覧 いただきたいと思います。資料3-1の7頁のQ9の献血キャラクター「けんけつちゃん」 の認知の程度ですが、平成17年度の調査と比較しますと4ポイントほどアップしている。 まだまだ低いですが、着実に認知度が増えています。これは、未経験者のデータです。 Q10の献血キャンペーンの認知を平成17年度調査と比較しますと、認知率が25.9%から 14.7%と相当低下している。原因は今ここではわかりませんが、キャンペーンそのもの が減っているのか、記憶に残るキャンペーンが少なくなっているのか、まだ定かではあ りませんが若干気がかりなデータではあります。Q11ですが、私どもは「HOP STEP JUMP」 という冊子を高校3年生を対象に配布しています。この認知率は前回も低かったのです が、今回もあまり伸びていない状況。授業で使用した記憶がある人は2.2%にとどまっ ている。高校生では若干高いのですが、少し年齢が上の層にいきますと相当低い率にな っています。  11頁は、同じ設問を経験者に尋ねたものです。まず、献血キャラクターの「けんけつ ちゃん」の認知度ですが、全体では認知率が23.8%と4人に1人ぐらいの方が認知して いる。高校生が最も高くて、性別では女性が男性を上回る。平成17年度と比較すると、 7%から23.8%へ大幅に上昇しています。Q6の献血キャンペーンの認知ですが、経験者 のデータでも平成17年度調査と比較しますと、認知率が46.4%から36.5%へと相当低 下しています。「HOP STEP JUMP」を配布した記憶も若干の上昇は見られるものの、まだ 低い状況ですので、配布の方法や授業で取り上げていただけるような取組みが今後も必 要になると考えています。  最後に自由記載欄がいくつかありまして、その記載内容について多岐にわたる回答が ありました。こちらについては、資料3-1の20、21頁に代表的なものを挙げていますの で、後ほどご参照いただければと思います。以上が資料の概要です。 ○清水座長 どうもありがとうございました。かなり膨大な資料ですが、ある程度簡略 にまとめていただきました。何かいまのご報告についてご意見等はありませんか。ある いはご質問等でも結構です。 ○山本委員 前回の委員会で「愛」という言葉を必ず入れて欲しいというか、私は個人 的に教育にも携わっている立場として、「愛」というキーワードをどんどん使っていかな いといけない気持で、質問の内容に「愛」という項目を入れてもらいました。順位とし ては低いですが、これも当然だと思っています。なぜならば、お父さんとお母さんが「愛 してるよ、お前」「私もよ」という会話のある家がどれだけあったかを考えても、これは しょうがないなと。だから私はそれを訴えていますが、それが悪いということではなく て、前回もお話したようにこれは時代の流れなので、先輩方を責めるつもりは一切ない し、もう1回繰り返して言いますが200%リスペクトしています。ただ、これからの未 来は愛についてきちんと考えていくことがいろいろな場面で必要だと思って、ここに入 れました。すると、その結果、高校生が非常に反応した。私は、この反応はたぶんそう なるだろうと読んでいましたが、やはりそうなった。けれども、その愛の項目がなかっ たとしたら、彼女たち、彼らたちは、もちろん人の役に立つためだというのはわかって いると思いますが、そういう意味でも入れておいてよかったなと、意見した者としてそ ういう感想を持っているということをお伝えしたいと思います。  もう1つ、いちばん最後の説明にありました4頁の献血についての要望・知りたいこ とで、専業主婦の方が「学校の授業で献血の重要性等について取り上げてほしい」が他 層に比べて目立って高い。これは非常にいまを表わしていまして、これも教育に関係し ていると思います。モンスターペアレントという私の大嫌いな言葉が使われたりしてい ますが、何でもかんでも学校が教えることになっています。昔は地域や、隣近所のおっ ちゃん、おばちゃんがいろいろなことを教育し、子育てをしてくれた。そんな中で、も ともと専業主婦をされている方が子供のころに、献血についての確かな教育を受けてい ない裏返しだと思います。受けていれば、家の中でお母さんが献血についての重要性を とっくに教えているはずだと思います。それを教えられない。これは性教育も同じだと 思います。私はエイズの啓発をやっていると言いましたが、いまの性教育も家の中でお 父さん、お母さんたちは、「こんなもん、わしらが子供のころはなんとなくわかっていた んや。子供のつくり方も、なんとなくわかっていた。そんなもん家で教える必要あらへ ん」というような空気がありますが、そういうところが非常にいろいろな場面で問題に なっているという意味でも、献血も結局いまの親たちが、子供のころから献血について の重要性、意義を学んでいないというのが非常に出ているなという気がします。ですか ら、私は学校でやるとかではなくて、広い層で、大人も子供も含めて献血の重要性を訴 える必要があるなと思いました。以上です。 ○清水座長 ほかに何かご意見はありますか。 ○大平委員 今回、大変興味深い回答が得られたと思います。献血への関心度というの が、未経験者を中心にまだかなり低いことがQ4に出ていますが、平成17年度調査に比 べても関心層が低下しているところはかなり深刻に受け止めなければいけないかなと思 いました。ただ、家族の中での話で出てくる問題や友達の行動を見て、関心行動という か献血への行動に移っていくというのが大変よく出ている結果だと思いますので、広報 の仕方としても献血キャンペーンに効果的だと思う媒体としてテレビが圧倒的に高い割 合を占めていますが、テレビももう少しポジティブな広報の仕方をして、献血への関心 度というのを高めていくことも必要なのではないかと思います。  私も学校での教育が大変重要だなと思いまして、ただこの設問に出ている高校生の集 団献血という言葉が出ていますが、高校生集団献血という言葉が割と(強いられるとい う感覚で)ネガティブに捉えられているところもあるかもしれません。言葉の使い方と いう点で高校生献血とか、もっと使い方の良い言葉もあるかもしれません。集団という イメージ、義務的なイメージということよりも、もう少し積極的にボランティアをして いく感じのイメージで、高校の中で献血という問題が広がっていくような言葉というの も大事なのではないかなと思いました。  専業主婦の方たちは、たぶん学校教育の中ではなかなか献血に触れる機会がなかった かもしれませんし、もっと子供たちの教育の中で献血の問題を取り上げてほしいという 希望かもしれませんし、そういうところもきちんと分析していただいて、学校教育に反 映していくことを重点に置いていただきたいと思います。 ○清水座長 今回の調査では、高校での集団献血云々については賛否を取っていません ので、このデータからは言いにくいかと思います。ほかに何かありませんか。 ○田辺委員 いま話にありましたが、献血キャンペーンに効果的だと思う媒体は圧倒的 にテレビという順番があります。これは当たり前な回答で、企業が宣伝、広告を行うと きに、テレビを使ったりインターネットを使ったりで、どういうターゲットにどういう ことをさせるのかをきちんと考えないと。ステレオタイプに、「ああ、そうなんだな」と。 質問のあり方もそうだと思います。  例えばここにはありませんが、大きな音楽イベントをやったら、1万人とか10万人が 集まるのがありますよね。音楽イベント1つを取っても、感動の渦がそこに生まれるわ けです。ものすごく本当に人が動いたりするわけです。これは1つの媒体のイメージと いうか、ステレオタイプに当たり前な順番になっています。だから、インターネットで 献血のキャンペーンをしようとして、いったい誰が何を見るのですかということになる と思います。それは、いま広告をするときにも、ものすごいマーケットを考えてマーケ ティングをやっていますので、あまりこういうのにとらわれないほうがいいのではない かと思います。 ○清水座長 こういうようにというのは、要するに今回出てきたアンケート調査結果の 高い、低いとか。 ○田辺委員 とらわれないほうがいいと思います。 ○清水座長 とらわれないというのは、こういう調査をやってもあまり意味がないとい うことですか。 ○田辺委員 当たり前の結果です。 ○清水座長 もっと別なアプローチがあったほうがいいだろうと。 ○田辺委員 アプローチがあると思います。 ○清水座長 羽田委員いかがですか。 ○羽田委員 何回か学生同士の会議をしても、学校の授業で取り上げるというのは結構 出ていて、ボランティアの方々はとてもやる気があるので、自分たちが小学校や保育園 の世代からだんだん献血者を育てていくこともやったらいいのではないかという意見も 出ています。テレビなどの媒体を使って献血のことを伝えていると思いますが、そうい うものより自分たちが動いて、その人の心に響くようなことを言わないと、たぶん献血 に興味を持ったりとかそういうことがないと思います。 ○清水座長 いま、小学校、中学校にどういうようなアプローチをしようという具体的 な検討を行っているのですか。 ○羽田委員 まず保育園の子供たちには「アンパンマンのエキス」というのを見せたり、 劇でもいいと思います。その年代に合わせた広め方というか、やり方を考えていったら いいのではないかなと思います。 ○清水座長 心に響くアプローチというお話もありましたが、具体的にはどんな手段を 講ずるわけですか。 ○羽田委員 先ほども言いましたが、「アンパンマンのエキス」というのがあります。ち ょっとわかりませんが、そういうのを見て感動した人もいて、献血をやろうという気が 起きる人もいます。具体的にどういうふうになって、献血した採血がどういうふうに使 われるのかというのもわからないと思うので、もう少し献血したあととかのことをもっ と協力していただける人に伝えていったらいいのではないかなと思います。 ○山本委員 すごく伝わってきます。私が言っていることと3人とも一緒です。という のは、私たちは伝える側でパフォーマンスをやっている側ですからよくわかりますが、 人というのは心というものがあって、心を揺さぶられないと、感動とかをしないと行動 を起こさない。それは皆さん、いまの仕事を選ぶときに、たぶん人生のどこかのタイミ ングで何か感動があってこの仕事をしようと決めた人が多いと思います。そういう意味 で私が前回から愛だと言っているのは、例えばドキュメントがあります。難病を抱えた 子、あるいは事故があったドキュメントのテレビを観て、そのときに献血された血が人 を救ってその人が感謝の意を述べて、そのテレビを観て泣いた人がいた。「私も、こんな 献血が必要や」というので行動が起こるというのは非常にわかりやすい。そこにあるの は、例えば「アンパンマンのエキス」は愛を訴えているわけです。人を助けていこう。 お互いが支え合っていこう。そうしないと駄目だということ。それを子供にはアンパン マンというものでわかりやすくやっているだけで、要は子供の気持を揺さぶるのに山本 シュウがワーッと言っても仕方がないので、私はレモンさんをかぶってやっています。 そういう意味で心を揺さぶるような啓発の仕方が必要だとおっしゃっていると思います。 それはテレビであろうがラジオであろうが、先ほど田辺委員がおっしゃったイベント。 イベントというのは、なぜ音楽を使うかというと、音楽を奏でている間にそのコンサー トの途中で心が揺さぶられて感動して、彼らが訴えたいことが音楽から聞こえてきて、 「よし、俺はもうちょっと何かを考えよう」と。だから、いまものすごい音楽イベント、 啓発イベント、社会貢献イベントが流行っていると思います。うちのRED RIBBONもそう です。 ○清水座長 掛川委員はいかがですか。いまの話を聞きまして、いままでの日赤の献血 キャンペーンの反省とか。 ○掛川委員 反省と言われると意味合いが違うと思いますが、いろいろな経緯を踏んで 献血の広報というのをやってきましたが、そういう中にあって少しでも心を揺すぶる献 血の動機付けになる方策を広げてきたつもりです。血液法に基づき日赤がやれることと 国がやれること、行政がやれること、それぞれの役割は違っても目指すところは一緒で すが、できる範囲というのは自ずと違ってくると思います。日赤は献血者の受入と保護 を役割として担っていますが、その中にあって例えば先ほど出ました「アンパンマンの エキス」もホームページをご覧いただければ見られるように作りましたし、小学生、中 学生等30万人、最近では35万人規模の全国俳句コンテストを今年度も開催し、献血と いう言葉を、実際に献血できない年齢の若年層を含めて知っていただく努力はしてきた つもりです。また、これからも続けていきたいと思っています。心を揺すぶる感動する ようなキャンペーンやイベント等の広報を、日赤は日赤としてこれからもやっていきた いと思っています。 ○清水座長 中島委員いかがですか。現場として心を揺すぶるキャンペーンをやってき たというけれども、現実的に献血者確保のために役に立った、成果が上がってきている かの実体験としてはいかがですか。 ○中島委員 いま山本委員がおっしゃいましたように、心を揺さぶるような働きかけが 必要というのはよくわかります。皆様ご記憶があると思いますが、阪神・淡路大震災の ときに、あの直後から非常に多くの献血、協力の申し出があって、大阪などでは夜の6 時、7時ごろまで街頭での献血者が途切れない状況がありました。これは、輸血医療に 必要以上に過剰な血液をいただいたものですから、必ずしもすべて有効に使えたわけで はありませんが、そのように本当にこれは必要だと思われたときに、非常に多くの方々 が献血に協力しようという意思、それを行動で示してくださった実例です。ですから、 そういうふうに心を揺さぶられる方はたくさんいらっしゃるわけで、働きかけの仕方だ ろうと思います。  中部学院大学の田久先生は、若い方々が献血にどのような意識を持っていらっしゃる か、どういう状態、どういうシチュエーションがあれば献血行動を起こしてくださるか をいま研究されているようです。その中で、輸血医療の現場のいろいろな緊迫した状況 に関する情報を提供することで若い方々が献血に対する関心を高め、行動を起こしてく ださるかどうかという調査をされています。そうしますと情報提供をして、そういうパ ンフレット等を読んでいただいたあとでは献血に対する意識が高まり、協力しようとい う方が増えるというお話も聞いています。献血のモチベーションを高める、あるいは献 血されたときに、自分の献血した血液がきちんと有効に使われていることが理解されれ ば、かなり献血意識は高まるのではないかと思っています。いままでの赤十字のキャン ペーンの仕方は、献血してくださいということは非常に熱心に呼びかけましたが、その 血液がどのように使われ、どのようにそれが生かされているのかの情報のフィードバッ クが十分になかったのではないかというところは認識していまして、そこは何か対応を していかなければならないと考えています。  これは、まだトライアルですので効果のほどはわかりませんが、東京都内の血液セン ターでは献血してくださった方々にお礼状とともに、いただいた血液がどのように使わ れたかという情報を葉書でお知らせするようにしています。ただ、都内は年間約56万人 の方の献血をいただいていますので、すべての方々にお知らせするわけにもいきません で、現在は初めて献血をなさった方々にそのようなお礼状を出して、いただいた血液を きちんと使いましたというお知らせをしています。今後どのような成果が出てくるかは 少し長く見ていきたいと思っています。 ○清水座長 後半のこれからの試みについては、羽田委員が言われたようなことと通ず るところがありますので、場合によっては羽田委員のご意見等も大いに参考にさせても らって、どの程度の成果が上がったか。前回も申し上げましたが、定量的に評価ができ るようなキャンペーンをやってみていただければと思います。そのほかに何か、いまの アンケート調査に関するご意見はありませんか。 ○川内委員 私どもも行政として、日赤と協力をしながら献血の啓発キャンペーンを実 施してきていますが、未経験者のQ10の調査結果にありますように、3年前と比べると、 献血キャンペーンの認知度が非常に下がっていることは少し驚きました。そのキャンペ ーン自体はこれまで以上にやっているつもりですが、周知の仕方、どれだけ心に残って いるかがポイントではなかろうかと思います。  これは献血ではありませんが、私の課では骨髄移植も所管していまして、皆さんご存 じかどうかはわかりませんが、「スーパーバンド」という女性2人のバンドがありまして、 寂れた中心商店街を盛り上げようと全国行脚をしているバンドですが、彼女たちが骨髄 移植について非常に共感を持たれて、それぞれ全国行脚をしているライブの際に骨髄ド ナー登録への協力を呼びかけていただいています。先般、高知市内でもこのスーパーバ ンドのイベントと協力をして骨髄ドナー登録会をやりましたところ、従来よりも非常に 多くの登録のご協力をいただいたということで、キャンペーンのやり方については参加 された方々、見ていただいた方々の心にどれだけ残るかということを考えてやらなけれ ばいけないということを痛感しました。  若干外れますが、教育の場での献血の普及ですが、私の課は薬務課ですので、薬物乱 用防止という仕事をやっています。県内津々浦々に、市町村ごとに薬物乱用防止推進員 の方々がおられて、中学校、高等学校での薬物乱用防止の教育をしていただいています。 その中で、こういった献血とか臓器移植についても、彼らの協力を得て普及ができない かということを検討しています。献血の推進員を地域の民政委員でやったりしています し、この薬物乱用防止推進員の方々も同じ推進員ということで、結構重複している方々 も多いので、幅広い協力層に啓発普及の輪を広げていくことも、発想を広げていかなけ ればならないのかなと考えています。 ○清水座長 堀田委員、何かご意見はありませんか。 ○堀田委員 この調査のアンケート結果に、痛いからいやだと高校生の献血をしない理 由が出ていましたが、うちの学校でも生徒に聞くと痛いというのと、何か不安、怖いと いう意見がかなりありました。ですから、それに向けて早めに保健だよりとか、春に厚 労省からこの資料が届いたのですが、うちの学校は献血の1カ月ぐらい前に配ろうとい うことで、配布の時期を考えて啓発しくようにしております。このアンケート結果をま た参考に学校現場で生かしていきたいなと思ったところです。 ○清水座長 特に若い人については、痛いなという単純な発想で献血を忌避することも あると思いますが、そういうことに対する教育効果というのが出そうな問題は何かあり そうですか。痛いのは当たり前といえば当たり前ですが、だからといってその痛みの程 度は、そんなに持続的に長く痛むわけではないので、そういうことに対する教育効果的 なものというのは何かあり得るのかどうか。なかなか難しい問題なのかというところは 何かご意見はありませんか。 ○堀田委員 教育効果ですか。 ○清水座長 献血はもちろん、針を刺すのは痛いに決まっていますが、その痛みは普通 のお腹が痛いとか胸が痛いとかと違いますよね。予防接種よりは多少痛みは強いかもし れませんが、最近は非常に針の切れ味が良くなってきたりしているなどという意味で、 以前ほどゴリゴリという感じはない。それでも痛いというのは事実ですが、何かそうい うことに対する。 ○堀田委員 それが先ほどから言われているように、ボランティアの1つとして人のた めに役立つのだということかなと思います。埼玉県で薬務課と教育局と連携して、血液 に関する出前講座というのを小・中・高の希望校に行っています。そうした上で、高校 での集団献血というのではなくて学校献血と言っていますが、学校を増やしていこうと いうことで、いつごろの時期ならできるかという調査を取って実施しています。 ○清水座長 そのほか、いろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係もありま すので、いまの議論等を踏まえまして、今後の献血推進の方策を立案してこの中に生か していきたいと思います。特にほかにご意見がなければこの問題は一応ここで終わりに しまして、次の議題に入りたいと思います。  次は、採血基準のあり方に関することです。これは7、8年前からというか、もっと前 からですが、厚生科学研究という形で、ずっとここ10年前後にわたって検討が続けられ てきました。そのごく最近の成果を中心にして、河原委員からご説明をいただきたいと 思います。そのあと、同じく海外の実情というのも我々は大いに参考にしたほうがよろ しいかと思いますので、先ほどご紹介にありました鈴木参考人からご意見をお聞きした いと思います。よろしくお願いします。 ○河原委員 資料5に基づきまして、私からご説明申し上げます。採血基準のあり方に 関わる研究事業の中で、資料5の初めに書いていますが、これは約3年ほど前に行った 研究です。大きなテーマが、「献血により生じる健康被害の発生予防に関する研究」です。  1頁は、日本赤十字社の基幹血液センター、主として大都市部にある血液センターに いろいろご協力いただきまして、研究を行ったものです。この研究自体は大きく3本の 柱がありました。1は、VVRを中心にした献血者の安全性向上ということでやりましたが、 今日お話するのは2の16、17歳の採血基準の見直し(安全性の検証)とあります。16 歳と書いていますが、実際は17歳の男性しかできませんでした。今日は17歳の男性の データを中心に、いま200mL献血しかできない年齢で400mLをやった場合の安全性の問 題について、ご説明申し上げたいと思います。3は、無過失救済制度の創設に関する資 料集めということで、海外の情報を集めたデータですので、これは実施されているので 割愛します。  3頁です。実際献血した場合、どういう症状が副作用、副反応として出てくるかとい うことです。この研究班の中で、いちばん大きな問題となっているのはVVRと書いてい ますが、これは血管迷走神経反応というものです。例えば、血管に採血の針を刺すとき に物理的な刺激があるわけですが、それが迷走神経を刺激しまして、迷走神経が支配す るというか、迷走神経が強く出たような症状を呈するということです。これについて今 日はご説明したいと思います。それからVVR転倒とかがありますが、これは目まいを起 こしますので、それがもとに転倒したという有害事象です。それから血管の近くの神経 を損傷したとか、あざができたような皮下出血を起こす。こういうふうな献血に伴う副 反応がある。  その中の1つの大きなテーマであるVVRが、4頁の表7です。一応軽症と重症が分類 されていて、軽症は気分が少し悪い、吐き気がする、血圧が低下する、脈が遅くなると いう症状で、比較的安静にしていると何なく治って帰ったりするような程度の症状です が、もう一方で重症にまで発展するケースがあって、医療を必要とするような形で血圧 がさらに低下したり、脈がさらに遅くなる症状です。  5頁は、200mL献血者のVVRの発生状況と、男性と女性の年齢別の発生状況を示してい ます。若い世代、10代は16歳、17歳と書いていますが、あとは18歳から20代、30代、 40代、50代と分類しています。これは、比較的若い世代に多く発症することがこれでも 示されていますが、いろいろ分析をしますと18歳から29歳で、男性ではこのグラフの 1つのピークを示しています。女性は18歳から29歳で特にピークを示していませんが、 同じように若い世代を中心に副反応が生じています。  6頁です。さらに若い世代を見ていきますと、男性は20代をまとめていますが、19 歳に1つのピークが見られます。女性は一応満遍なく、この発生が起こっています。こ ういう状況で1つ理解していただきたいのは、若い世代を中心にこのVVR、血管迷走神 経反応という先ほどの表にある症状を呈する副作用が生じやすい。今回研究の対象にな りましたのは、いま200mLしかできない献血量を17歳の男性の400mL採血まで拡大した 問題を検討していますので、このVVRが非常に密接に関係してくるわけです。7頁です。 400mL採血の場合のVVRの発生についても、このように若い世代を中心に多くなってい ます。  研究の本論に入っていきたいと思います。まず、現行の基準では17歳の400mLは採血 できませんので、お願いしないといけない。もちろん倫理審査会の承認を得て、供血者、 研究に協力していただく方の条件を示しています。まずは17歳であること。体重や採血 間隔や貧血の指標が18歳以上を対象にしていますが、現行の400mL全血採血の基準を満 たしていること。本人と親権者の同意が得られていることという条件の下に、各血液セ ンター、基幹センターを中心に、大体各センターで50名ずつ集めるということで進めま した。採血中あるいは採取後の副作用、先ほどのVVRのような副作用の有無、1週間以 内の自覚症状をアンケート調査で聞いています。そして、実際に血を採るわけですから、 血液関係の赤血球とか貧血関係の指標が3カ月後にどの程度回復しているかを、貧血の 指標を中心に血清鉄やTIBCはあとでご説明しますが、フェリチンというものを中心に検 査しています。  17歳が安全に採血できる。400mL採血が可能であることを検証するためには、もう1 つのグループを設定しないといけません。コントロール群と言いますが、このコントロ ール群のデータと比較して全然差がないということになりますと、17歳でも献血が可能 である。400mL採血が可能であるという論法になるわけですが、このコントロール群の 設定は現在400mL採血を行っている18、19歳の献血者を対象にして、同じようにこれは 現行の採血基準にありますので、献血に来られたときにいろいろお願いして実施してい ます。各血液センターでコントロールの人を集めていただきました。  10頁が、各血液センターが実施した17歳から19歳の割合です。11頁は供血者の背景 です。検証の対象となった17歳が322人集まりました。一方、比較の対象である18、 19歳が363人と、ほぼ1対1で同じような割合になっています。この研究に協力してい ただきました方の背景は、17歳の方は17歳プラスマイナスですが、18、19歳の平均年 齢は大体19歳ぐらいで、プラスマイナス0.5となっています。身長は端にNSと書いて いますが、この2つの群で差がないということです。体重も、ほぼ同じような集団を対 象にしています。差がない。計算上で出てくる循環血液量も差がない。採血量も差がな い。採血量/循環血液量のパーセントも差がない。つまり、同じ体格を持ったり同じ血液 量を持ったグループから、年齢だけが違いますが採血していることをこの表で示してい ます。  その結果、12頁は今日話題のVVRですが、あるケースは赤で示しています。今回対象 とした17歳は5人発生しています。いままで400mL採血が可能である18、19歳からは 8人。この割合は全体に対して、統計的にどちらが多いか少ないかを計算しますと、NS と書いているように差がない。つまり、17歳のVVRの発生状況と18、19歳のVVRの発 生状況には差がなかった。17歳が特に多いということは、この研究の中ではありません でした。  次の頁が、1週間以内のアンケートです。これは実際に、血液とか、レントゲンやCT を撮って検査をしたものではなくて、自分の異常などを訴えていただくアンケート形式 の調査です。それで、17歳と、18、19歳の2群間で差が出たというのは、だるい・疲れ やすいという自覚症状です。これはどこまで科学的に定量化できるかわかりませんが、 こういう自覚症状は、18、19歳に比べて、17歳のほうが多かったという訴えがありまし た。  これをもう1週間延ばして、2週間で見ると差はありませんでした。1週間以内では、 だるい・疲れやすいという自覚症状の訴えの差は、17歳に多く認められました。  14頁が、採血から3カ月後にどの程度赤血球関係の指標が回復したかです。いちばん 上の赤血球数というグラフを見ていただきますと、灰色の左のほうが採血をした直後で、 右のほうが3カ月後です。3カ月後のほうがやや多くなっていますが、これは回復して いるということです。同じように、赤も右のほうが3カ月後のデータです。これを見る と、上のほうに、「P<0.01」とありますが、これは3カ月後のほうが採血直後に比べると 増えていることを示している統計的な指標です。同じように、赤の部分も3カ月後に回 復しているというデータです。17歳の3カ月後と、18、19歳の3カ月後の回復の割合に も、差がありませんでした。  同じように、右のほうがヘモグロビンですが、結論から申しますと、17歳に関しては、 直後と3カ月後を比べると、統計的には有意差が出ましたが、18、19歳と同じような回 復を示しています。  MCVとありますが、これは平均赤血球容積と言いますが、貧血の指標と考えていただ いて結構です。こちらはあまり変化がありませんでした。字で書いているところがあり ますが、3カ月後のHb値ですが、これも血色素として貧血の指標の1つになりますが、 これが日赤の献血基準の12.5g/dLにまで回復しなかった例が、17歳では1例、18、19 歳では1例ということで、こちらも有意差がありませんでした。17歳の1例の方は、採 血前のHb値が12.6、18、19歳の1例の方が12.9で、これが採血したために下がって、 3カ月後に12.5以上にならなかったという例です。  次の頁も、赤血球関係で、貧血関係の指標が続きます。血清鉄、TIBCも、但し書きの ピンクに近い赤のところに意味を書いています。こちらも回復とか、17歳、18、19歳の 2群に関しては、血清鉄は差がない。TIBCに関しては、傾向としては同じなのですが、 統計的には18、19歳の回復力のほうが少し高かったです。もうつフェリチンというのが 下にありますが、これは体の中の鉄の貯蔵状態を表すと考えていただいたらいいです。 これは体の成長に密接に関係していて、若い人は体がどんどん大きくなっているわけで、 これを消費すると考えていただいたらいいです。もともと17歳のほうが低くなっていま す。採って3カ月後の回復率が79%です。18、19歳は、もともと58.6あったのですが、 3カ月後には36.7になっているということで、回復率は58.6のところを100にすると、 69.0です。もともと若い人がこれを消費するので、全体的に若い17歳のほうが低くな っていますが、回復率から見ると、17歳の回復率は79%、18、19歳は69%ですので、 17歳のほうが勝っていました。  フェリチンをもう少し見ていきますと、鉄欠乏状態も反映しているのですが、12ng/mL 未満と赤で書いていますが、これが鉄欠乏などが疑われます。この割合に関しては、17 歳と18、19歳の献血直後と、3カ月後の割合に関しては、12ng/mL未満あるいは12ng/mL 以上、赤と灰色の部分の比率というのは、統計的には差がありませんでした。  個々のグループにおける、直後と3カ月後の回復に関しては差が出ていますが、2群 の直後と3カ月後をそれぞれ比べると、差がないことが表されています。  いま言ったことを要約しますと、今回の400mLの献血基準の拡大の候補である17歳群 でのVVRの発生頻度は、1.6%であり、18、19歳のコントロール群と差はありませんで した。血球系で、赤血球数、Ht値、Hb量、いずれも貧血関係の指標と考えていただいて いいですが、これに関しても、両群とも3カ月後にはおおむね採血前値に回復していま した。しかし、Hb値が12.5g/dLまで回復しなかった例が、両群とも1例ずつありまし た。フェリチンに関しては、これは体の成長に関係しますが、17歳群は18、19歳のコ ントロール群に比べて低かったわけですが、これは若いから消費しているわけです。し かし、回復率に関しては、18、19歳のコントロール群よりも高いことが言えます。鉄欠 乏状態と考えられるフェリチン値は、12ng/mL未満の比率に関しては、両群に差はあり ませんでした。  結論を申しますと、17歳男性における400mL全血採血は、いま行われている18、19 歳と比べて、VVRの発生率には差はありません。自己申告で聞いているだるさに関して は、17歳では、1週間以内では高率でしたが、その後の1週間を見ると差がありません。 ヘモグロビンの回復には、両群に差はありません。フェリチン値だけが17歳は低かった のですが、回復は18、19歳より迅速でした。したがって、この研究班では、17歳男性 の400mL採血の可能性に関して安全性を検証した結果、安全にできるのではないかとい う結論に至っています。  次の頁は昨年度の研究です。日本赤十字社の全国統一コンピューターシステムに献血 者のデータが入っています。それを抽出して分析した結果、何歳の方が、どれだけ男女 別に献血されているかとか、どういう献血を選んでいるかということがすべてわかるわ けです。  先ほど17歳男性の400mL採血については、私どもの研究班では、まず安全に実施でき るのではないかという結論に至りましたが、女性はやっていませんが、これを女性にま で拡大して、17歳の男女に400mL全血採血を導入した場合、いまの献血率からいくと、 17歳の世代の献血率は200mLからすべて400mLに移行したとしても、全献血量の0.73% しか増えません。それから、いまは69歳まで献血ができますが、5歳引き上げて74歳 にした場合、お年寄りからも血液を採った場合に、0.11%の増加が見込まれます。血小 板採血は54歳までできますが、これを55歳から59歳に拡大した場合は、血小板全体の 5.49%増えます。こういうことで、日赤のコンピューターシステムのデータを分析しま すと、献血のどこを拡大したらいいかのターゲットがいろいろ出てくるわけです。  次の頁が、17歳の400mL全血献血の導入効果です。これは先ほどの日赤のコンピュー ターシステムのデータを基に、いまの採血基準で、400mL献血に移行した場合に、17歳 のどの程度の人数がこの基準をクリアできるかです。男性の場合は97.2%満たせます。 女性の場合は、もともと鉄が体から抜けていきやすいという問題がありますので、54.3% です。  次の頁が、それを基にいまの17歳の献血率から計算しますと、0.7%の増加です。今 回の17歳男性の200mLを400mLにした場合の安全性を検証しましたが、これを男性だけ に適用した場合は、0.45%しか増えません。  次の頁に年齢別の献血率を載せています。この前の会議で少しお示ししましたが、17 歳が4.7しかありません。これが18、19歳並みの9%台になると、先ほどの見込みも単 純に2を掛けていただければ大体出てきます。  まとめますと、17歳の男性に関しては、私どもの研究班の結論は200mLから400mLの 移行は安全にできると考えています。今後17歳以上のターゲットをどこに絞るかという ことで、最後の2〜3枚は参考資料としてお示ししておきました。以上です。 ○清水座長 献血者の絶対数を確保するという問題と、いまある採血基準を見直す必要 があるのではないかと、2つの論点があろうかと思います。  最初にお話をしたほうがよかったかと思うのですが、採血基準のあり方についての私 の見解をお話しておきます。まず、採血といっても、医学的には出血です。どのくらい 出血しても大丈夫かという医学的な問題があります。動脈、静脈の中を流れている血液 がありますが、これを「循環血液量」と呼んでいます。循環血液量の何パーセントが失 われると危険か。これはスピードが関係しますが、通常の献血の採血されるスピードは、 400mLだと10〜15分ぐらい、200mLだと5〜6分ぐらいで終わると思います。そのぐらい のスピードあるいはもっと早く失われることもあろうと思うのですが、一般にスピード は関係しますが、循環血液量の何パーセントが失われれば問題が起こってくるかを単純 に言うと、大体15%失われると脈が速くなるとか、血圧が少し低下する傾向があると言 われています。20%以上になってきますと、血圧がはっきりと下がって、明らかに頻脈 が出てくると言われています。40%失われれば命にかかわると言われています。40%は 循環血液の半分近くになるという値です。そのようなことが一般に医学的に言われてい ます。  このデータは、朝鮮戦争のときにもあったのですが、ベトナム戦争のときに、アメリ カ軍の傷病兵を対象にして、かなり詳細な検討が行われました。現在の日赤が行ってい る採血については、1986年に、400mLと成分採血の基準が出されました。採血基準には あまり明確に書いていませんが、実際に日赤で行っているのは、例えば成分採血をやっ た場合に、実際に採るのは400mLとか600mLぐらいしか採りませんが、最終の段階で、 循環血液量が体の外に出ているマキシマムは、600mLとか、人によっては700mLとなり 得る場合があります。ですから、少なくともそれが20%以上を超えてはいけない。でき れば15%以内に収めましょうというのが、1つの内規的な基準になっているはずなので す。  体重が50kgですと、循環血液量は4,000mLぐらいで、60kgで5,000mLと概算してい ただいて結構ですが、400mLの全血を採るとなると、50kgの人ですと約10%になります。 50kgの人で、成分採血で血漿だけを採るなら600mLがマキシマムになっているのですが、 そうすると15%弱になります。そのようなことが、医学的に我々の間でもコンセンサス のある安全な出血量となっています。したがいまして、献血については、医学的に安全 でなければ絶対に成り立たないです。これは皆さん合意のことだと思います。  もう1つは、患者と献血者は違うのですが、患者の場合は少し多めに出血しても、ベ ッドの上でおとなしくしていてもらえれば、別にどうということはないです。しかし、 献血者の場合には、採血した後、暫くの休養はあっても構わないと思うのですが、原則 的には激しい運動はともかくとして、日常の生活は維持できるような状態で採血を終わ っていただかなければ困るという条件があります。ですから、社会的な日常活動が阻害 されない程度の採血量が、1つの医学的な根拠になろうかと思います。  しかし、採血基準というのはもう1つありまして、これは社会的なコンセンサスがど うしても必要です。医学的には12歳のお子さんから、400mLとか300mLの血液、あるい は200mLを採っても問題はありません。しかし、12歳のお子さんから血液をちょうだい して、それを献血と称してほかの患者に使うのは、常識的には考えがたいと。そういう 意味で、例えば18歳でいくべきなのか、16歳でいいのか、15歳でもいいのではないか。 そういう社会的なコンセンサスが大きな理由として必要ではないかと思います。  それで、いま河原先生からもご説明があったのは、17歳の男子から全血を採血するこ との問題の検討が行われまして、これは前回も少しお話しましたが、最近は400mLの採 血を医療機関が求めることが多くなりまして、200mLの少なくとも赤血球成分というの は、使い道が狭まってきていると。したがって、採っても使い道がないという問題が起 こってきています。どうしても高校生献血は16、17歳が多いものですから、そういう人 たちが対象になるということで、200mL採血というのは、血液センターとしても採って も使い道がないとなりますと、だんだん採らない方向でいきたいと思うのは当たり前の ことですが、しかし今回の問題は、それだと高校生が献血の実体験をする場が減ってし まうのではないか。それが今後の献血者層を減らしていく大きな要因になっているので はないかということがありますので、そういう意味での社会的なコンセンサスが必要だ ということです。  もう1つ申し上げておきたいのは、いまの河原先生からの話にもありましたが、献血 によって伴う医学的な評価の問題点が2つあります。1つは、採った直後の問題として、 いまVVRとありましたが、血管迷走性反射と言いまして、これは採血をする前に血圧を 測っているだけでも起こしてしまう人がいるのです。もちろん採血が契機になって起こ ることもあるのですが、そういうことがあって、ある意味ではヒステリー的な問題も加 味している部分があるのではないかと考えられています。  そのような問題がありますので、医学的によく検討されているのは、1986年の基準を 作るときに文献調査を随分やりました。ほとんどが1940年、第2次世界大戦の初っ端頃 の論文が非常に多いのです。そういう論文をいくつか集めてみますと、500〜550mL未満 の場合には、VVRがあまり増えてはこないで、ほとんど横ばいに近いです。ところが、 550〜600mLを超えてきますと、採血量が多くなればなるほど、VVRが多くなります。極 端な例は、1,200mLの採血をすると、正確には覚えていませんが、70〜80%の人がVVR を起こします。逆に言いますと、15〜20%の人は起こさないという問題もあります。そ れはともかくとしまして、ある程度採血量が多くなると、VVRを起こしやすくなるとい うことは言えます。それには500mLぐらいに1つの区切りがあるというのがあります。  もう1つは長期的な問題で、いまフェリチンという話がありました。フェリチンとい うのは、体の中に鉄がどれくらい貯まっているかを、代表的に表す指標と考えられてい ます。このフェリチンに代表されるのですが、長期にわたって赤血球を採るのですから、 どうしてもある期間経たないと、赤血球を造る鉄をどんどん使いますので、貧血が回復 しなくなってしまいます。長期的には鉄欠乏という状態がこないような、採血間隔が重 要な意味を持ってきます。繰り返し採血をしても、貧血を起こさない条件を設定しなけ ればいけません。これは医学的にも言えることなのですが、そのようなことがあります。 そのようなことを前提にして、議論していただければと思います。  河原委員の話があって、私が採血基準のあり方についての基本的な話をしましたので、 それを踏まえて海外の実情について、鈴木さんからお話を伺いまして、そのあとで議論 をしていただければと思います。よろしくお願いします。 ○鈴木参考人 資料の1頁をご覧ください、今回、海外と言いましても、EUと米国につ いて調査したものを示しています。EUについてはEUの採血基準が存在しており、EU加 盟国はそれに従うことになっているのですが、その中で個々の国として、英国とフラン スの例も紹介しました。また、アジアの国として、台湾の採血基準も載せました。いち ばん下には日本の採血基準も入れています。  まず、全血採血基準です。年齢については、下限と上限、それぞれコメントが付いて います。EUは、大体18歳から65歳で、米国は17歳から上限なしとなっています。下 限については、EUでは18歳までなのですが、国の法律によっては17歳も考慮できると なっています。英国は17歳は未成年なので同意書が必要です。フランスは18歳からで す。米国では16歳の受け入れをしている州が27州あるのですが、米国では献血年齢は 州法で決められているので、州によって違います。その27州については現在受け入れを していますが、供血には保護者の同意書が必要となっています。我が国では、200mL献 血は16歳から69歳までで、諸外国に比べると年齢の幅が広く設定されています。  1回の採血量については、おおむね450mLから500mL献血が多くなっています。体重 については、50kg以上というのが、各国の基準ですが、我が国の200mLについては、男 性45kg、女性40kgで、体重の軽い人も献血できるようになっています。  ヘモグロビンの量ですが、ヨーロッパでは男性と女性のヘモグロビンの基準が違って いて、男性は高めに設定されています。一方、米国と我が国については、男性も女性も 12.5g/dLで、ヨーロッパと比較すると男性は低めに設定されています。採血間隔は、お おむね8週間あるいは2カ月となっています。年間の採血回数も、おおむね3回から4 回となっていますが、年間総採血量を比べると、我が国は、採血の間隔、回数、年間総 採血量も低めに設定されています。例えばEUでは、年間に3Lの全血供血ができますが、 我が国は男性で1.2L、女性で0.8Lとなっています。  2頁は成分採血基準です。血小板と血漿とそれぞれ分けています。最初に血漿の採取 量については、各国とも、大体600から650mL血漿を採血できるようになっていますが、 我が国では血小板成分採血については、血漿の採取量を400mL以下としており、少なめ に設定されています。成分採血可能年齢については、ほとんどの国が全血と同様と設定 されています。また、英国と米国では、インフォームドコンセントが必要となっていま す。一方日本では、血小板献血については54歳となっています。ほとんどの国が全血と 同様の65歳までとなっているにもかかわらず、日本は非常に若い年齢となっています。 体重については、諸外国が50kg以上となっていますが、我が国では男性45kg、女性40 kgと、体重の軽い人でも成分献血には協力できるようになっています。また、年間の採 血間隔についてですが、採血間隔は基本的には2週間で、これは我が国と同様なのです が、例外が設定されていて、少なくとも2日間の間隔を開ければ、1週間に2回を超え ない範囲でできるというのが、EUも米国も設定されており、成分採血についての間隔は 柔軟に対応できるようになっています。  年間の総採血量については、米国では全採血種類を合算しての体重80kg以下では12L ということで、非常に多い量が設定されています。成分献血の検査の基準ですが、成分 献血については血漿蛋白量、血小板成分献血に対しては、血小板の基準が設定されてい ます。ところが我が国では、血漿の成分献血について、血漿蛋白の量の基準が設定され ておらず、ここについては諸外国に比べてわからない状況です。  3頁です。諸外国の献血下限年齢について整理したものです。米国では州によって献 血の年齢が決められていますので、18歳から献血ができる州が1州、17歳から献血がで きるのが21州、16歳から献血ができるのは27州ですが、16歳については保護者の同意 書が必要となっています。EUでは基本的には18歳から献血が可能ですが、*で下に説 明してあるように、17歳の献血については、その国の成人年齢が17歳からであれば、 献血できます。また、法律的には未成年でも、同意書があれば献血ができるとしている 国もあります。一方、日本では16歳から献血が可能ですが、特に同意書あるいは保護者 の同意書といったものは設定されておりません。  次の頁です。米国で16歳の献血者に対して取っている同意書の見本で、アメリカ赤十 字の共通の同意書の見本です。1枚目が保護者に対しての説明です。2枚目が実際に記入 する書式です。実際にはこの下に説明書類がたくさん付いているのですが、参考のため にこれだけを付けています。こういったもので親の同意書を取ります。  6頁です。英国のアフェレーシス供血者の同意書です。先ほど供血については同意書 が必要と説明しましたが、これが見本の書式です。  7頁です。ここに示したのは、年齢別の献血者の実献血者の割合と、献血件数の割合 を円グラフにしたものです。真ん中のグラフは、フランスの2006年の状況ですが、実献 血者の分布を、若年、中年、高年齢層に分けて円グラフにしますと、3つがほぼ同じよ うな割合で存在しています。一方、右側の円グラフは2005年のアメリカの円グラフです が、アメリカ赤十字で献血をした献血者の、実献血者ではなくて献血件数です。献血件 数の割合では、若年が少なくて、中年、高年にいくに従って割合が多くなっています。  下のオーストラリアの年齢別回数別実献血者の棒グラフですが、オーストラリアの16 歳から80歳までの実献血者の年齢別の献血頻度です。これを見ると、17歳の献血者の 数がいちばん多いのですが、ほとんどが1回だということがわかります。40代から50 代の献血者の数は、17歳の献血者よりも少ないのですが献血回数が多いので、実際には 延べ献血者という形だと、非常に大きくなっていくのがわかります。これが米国の2005 年の、若年層が少なくて、中年、高年にいくに従って多いという、延べ献血者の円グラ フの説明もされていると思います。このように、年齢別に実際に献血頻度を出してみる と、先ほど話のあったステレオタイプの献血推進ではなくて、各年代ごとの効果的な献 血推進を行うことが必要なのかなとも思います。  8頁です。ヨーロッパは献血ボランティア組織が充実しています。また、ヨーロッパ では日本のような移動採血バスではなくて、機材をトラックに積んで現場に行くという もので、先ほど河原先生の表紙に載っていたのはドイツの採血車ですが、こういったト ラックで献血機材を運んで、その場所で献血をするようになっています。右側にある献 血支援組織というのが、全国組織から地方組織まであり、特にいちばん下の献血ボラン ティア協会というのは、地域に根ざしたもので、献血者が入っていたり、献血グループ が入っていたり、会社が所属していたりして、この人たちが献血の場所の設定、献血者 を集めること、献血の受付をし、さらに献血後の軽食の提供などに協力しています。血 液センターは実際にその場所に機材を運んでいって献血をするだけで、あとのことは全 部地元のボランティア協会に属している方々がしてくださるようになっています。  最後に書いてある「献血後の軽食の提供」ですが、ヨーロッパでは伝統的に、飲み物 と軽食を提供するようになっています。さらに、その軽食の提供も、地方の献血場所で あっても、きちんと食事のできる場所が設定されていて、献血が終わった後はそこで軽 食を食べるようになっています。その間に献血者が気分が悪くならないかを観察する上 で、非常に大切な時間だと血液センターが認識していまして、それがヨーロッパでは軽 食という意味合いで、処遇品ということではなくて、献血者の健康管理をするのだとい う位置づけになっています。そういったものもボランティア組織がほとんど設定してお りますので、日本の血液センターの移動採血とは、また少しお互いの役割分担が違うよ うになっています。以上です。 ○清水座長 基準の見直しということですは、いろいろな問題点があるので、皆様方か らご意見、ご質問が出たら、そのことについて議論をしていく形にします。何かご意見 はございますか。焦点は献血者層を拡大することで、具体的に言えば16、17歳にまで 200mLを400mLに拡大するか、あるいは成分採血も可能にしていくのかどうかだと思い ます。もう1つは、10年前に、上限の年齢が69歳まで上がったのですが、これをさら に、アメリカのように上限を撤廃してしまうかどうかということもあろうかと思います。 献血者層を拡大することについて、何かご意見があればお願いします。 ○大平委員 いま座長から、16、17歳の採血基準、若年者・献血者層の拡大の問題につ いてという話で、採血基準が中心になっていくのではないかという指摘がありました。 しかし、日本の献血推進をはかる大きな考え方の中で16、17歳の高校生献血がどういう 役割を果たしていくのかという進め方で慎重に運ぶことが大切と思います。最初から量 の確保とか、採血基準の問題に焦点を当てて周辺啓発より先行した議論をしてしまうと、 反動を懸念します。日本の献血推進でどういう層をターゲットにしていくか、どういう 啓発をしていくか、せっかくアンケートを取ってわけですからその結果を反映して高校 生の献血のあり方はどうしたらいいのかという方向で良いのではないかと思います。あ まりにも血液事業的な雰囲気で問題を進めていくと、理解を深めてもらう層や周辺のタ ーゲットが狭まったしまうのではないかと思います。議論の進め方に異論を述べて申し 訳ないのですが、せっかく若い方とか、いろいろなマスメディアに関心を持っておられ る方とか、いろいろな方が参加している中では、もうちょっと心に訴える、心が動くよ うな献血の推進のあり方に焦点を当てていって、その中で高校生の問題として、採血基 準の問題とか、科学的に重要な問題なので、そこは避けて通れないところだと思います が、今回のアンケート結果を拝見して、その辺を議論していただいたほうがいいのでは ないかと感じました。  あと、今回の採血基準の見直しでは、200mL採血か400mL採血かというところですが、 アメリカの未成年者の献血の副作用問題としても文献としては出ているので、そういう 点もここと対比して進めて、そういう資料も出していただいたらいいのかと思いました。 逆行する形で意見を申し上げて申し訳ないのですが、私自身も血液の問題を若い人に広 めていくにはどうしたらいいかのところの土台を、まずしっかり議論したほうがいいの ではないかと感じまして意見を申し上げました。 ○清水座長 確かにおっしゃる意味もわかるのですが、いまの我が国の抱えている血液 事業上の問題で、どういうことがいま問題になっているのかをきちんと把握して、それ をクリアしていくためにはどういう問題点があるのかを理解していただいて、また、い ま言われたような献血者の意識調査を踏まえてどうするのかの議論のプロセスのほうが、 焦点がわかりやすいのではないかと思うのです。  したがいまして、献血のあり方意識調査の結果をさらに突き詰めていくといったとき に、いちばん問題になるのは、いま献血者が減っている、特に若年者の献血率が急速に 低下しています。この原因は何なのかが、今回の意識調査の中である程度把握できたか と思うのですが、それだけが問題なのかとなると、血液事業上の大きな問題点として、 16、17歳では200mLしか採血できない。それをもしやめるなら、16、17歳からの200mL 採血もやめてしまうことになりますと、18歳以上からのみ採血するとなります。そのた めにはどういう対策が要るのか。そのためには献血者の方にどういうアプローチをして いったらいいのかということが出てきます。16、17歳で、400mLとか成分採血をやるの だとなりますと、いままでの血液センターあるいは行政が担ってきた献血者確保対策に 対して、どのようにアプローチしていったらいいのか。  両者はある意味においては、非常にリンクしている問題ではないかと思います。した がいまして、採血基準のあり方の問題を血液事業上の問題を克服するための1つの手段 として、懸案になっている事項ですから、両方から攻めるような形で、いまいる献血者 の方たちを、いかに献血志向性へ持っていくかは、1つの大きなアプローチの仕方だと 思います。  もう1つは、いまの血液事業推進上で大きな問題となっているものを、どのように乗 り越えていくべきなのか。その乗り越え方と、献血者の献血志向性をどのように高めて いくか。これは両方とも切っても切れない縁があるのではないかと私は思います。ほか の委員の方々は、いまの大平委員のご意見について何かお考えがありましたら、どうぞ おっしゃっていただきたいと思います。 ○花井委員 献血者の意識の変化と、アプローチの仕方という問題で、大平委員がおっ しゃることもよくわかるのですが、両方歩み寄りながら議論を進めるという、座長のお っしゃるような進め方でも、大平委員のおっしゃる趣旨は外れないとは思います。  質問もあるのですが、よろしいですか。 ○清水座長 どうぞ。 ○花井委員 河原先生と、お2人の方にご説明いただいたことに関する質問なのですが、 基本的な話として、コントロール群が18歳になることで、そもそも18歳でVVRのピー クがあったのであれば、そこの補正はされて有意差がないということなのでしょうか。  それから、海外のドナーリクルーティングに関して、ボランティア組織が充実してい るということでした。今後新たな献血の進め方をやっていく上で、ドナーリクルーティ ングの組織体制というのは、いまのままでは駄目ではないかという問題意識からすると、 ボランティア=無料ではないですよね、コストはかかるわけですから。そういう組織が どのように運営されているのかがわかれば教えていただきたいのです。かつ、羽田委員 もおられるので、食事を提供したり、そういう環境を整えようとするとお金がかかりま す。それが役割分担で、コスト面の役割分担がわかれば、日本の実情でもこういう問題 があるというのがあれば、教えていただきたいと思います。  それから、フランスはレッドクロスが全くかかわっていないように見えますが、そう なのでしょうか。 ○河原委員 グラフでは18歳、19歳はVVRは高くなっていますが、研究の実施に当た っては補正はしていません。18、19群と17歳の補正はしていません。 ○花井委員 そもそも高いのですか。 ○河原委員 10頁で、17歳の検討群を322人とりましたが、18、19歳は363人です。 この研究では、1人ぐらいしか有意差がなかったという結果になりました。このグラフ にある年齢別のVVRの発生数は、もっと集団が広いので、私の研究を全例ですると、18、 19のほうが高くなる可能性があります。 ○花井委員 対象を広げると差は広がって、18、19歳のほうが高くなる可能性があると。 ○河原委員 グラフのように近づいてくる可能性があります。 ○花井委員 そのように読めばいいのですね、わかりました。 ○清水座長 鈴木さん、どうですか。 ○鈴木参考人 ボランティア組織のお金の問題ですが、基本的に献血ボランティア推進 組織というのは、血液センターは献血のバスを持って行くだけでよくて、ボランティア 組織がその地域でいろいろな活動をするのです。そのお金に関しては、軽食などの経費 は血液センターが出しているそうです。また、ボランティア協会といった公的な組織に ついては、国からの補助がきちんとあり、また、ボランティアでも保険制度のようなも のがあり、きちんとした組織として国に認められています。  フランスはレッドクロスではないのかという質問ですが、それはそのとおりで、フラ ンス血液機構という公的、半公的な組織がやっています。 ○花井委員 そうなのですが、フランスはレッドクロスは全くリクルーティングにもか かわっていないという理解でいいですか。 ○鈴木参考人 かかわっていないです。ヨーロッパは、献血ボランティア組織について はレッドクロスというよりも、キリスト教などの教会組織でのものがすごく多いと聞い ています。 ○清水座長 イギリスとフランスはレッドクロスは全く関係していないのです。特にフ ランスは献血者協会というものがありまして、それがかつては血液センターを運営する ような形態であったと聞いています。ところが、フランスも日本と同じように、エイズ に関するスキャンダラスな問題が起こりまして、そのために献血者協会というものから 全く独立して、日本でいったら公社のようになるのでしょうか、そのような全国組織が できまして、それが運営主体になって、逆に今度はいままでの献血者協会的なものが、 それぞれの公社の設立した血液センターに協力して、献血者を確保するというボランテ ィア組織として関与している形に、実態が変わってきています。  イギリスは、準国家公務員のような形で、厚生省が直接運営している形態です。他に 何かありますか。 ○山本委員 基本的な話をさせてもらいたいのですが、ここは献血推進のあり方に関す る検討会ですよね。いまいろいろな説明を受けまして、いまのフランスの話もそうです が、それは末端の話だと思うのです。いま大平委員のおっしゃった議論の進め方からず れないでほしいのは、私の認識をはっきりさせたいので、この国はいま献血する人が減 っているわけで、これは大問題なのです。大人の血も高校生の血も、血には関係ないの で、それは年齢に関係ないということですね。  いまの基準の中の層たちに対してのプロモーションの問題もありますよね。全員が献 血したということでもないわけですね。それも広げていかなければならないけれども、 世界的に見ても、間口を広げてもいいのではないかということでもあるのですね。間口 を広げるときに、いまの研究された結果で16歳から血を400mLいただいても大丈夫そう だということですね。  それ以前に、例えばこれも細かい話になりますが、私は悩みの相談をずっとやってい ると言いました。思春期におけるホルモンバランスが崩れる時期に、血液を抜いたこと によって精神面への影響などを研究されているのか、それは絶対ないということがある のか確認したい。また、外国人と日本人という人種による身長差は影響がないのかとい った質問があったりします。これは先ほどから出ている、若年層の意識を上げたい、若 年層から上げていったほうがいいのではないかという意識の問題とは、また別の話のよ うな気がするのです。もちろん全部リンクしているのですが、私の中ではいろいろなこ とがバラバラにあるのです。  時間も限られていますから、上の年齢も上げることに対してどう思いますかとか、16 歳から入れるのをどう思いますかということを言われていると思うのです。しかし大平 さんがおっしゃるように、その前にちゃんとやっておかなければいけないことが、もう ちょっとあるのではないかという気がします。それについてはどうですか。 ○清水座長 先ほど言ったことの繰り返しになりますが、とにかく現実の問題として今、 若年者を中心にして、献血者が減っているのです。ですから今のやり方では、たぶん将 来的にますます献血者が減っていくでしょう。今は10代、20代ですから、ひょっとす ると5年か10年経つと、30代も減るかもしれない。その元凶というか、元は高校生献 血の年齢層が、献血ということを実体験的に経験していない可能性が非常に高いと思わ れます。それが5年なり10年なり経ったために、実際献血量も減ったのではないかと。 今度は5年、10年経つと、この人たちが30歳代になりますから減ってくるのではない かと。さらに10年、20年経ったら40代が減るかもしれない。そうすると日本で血液を 提供する人たちというのは、今のPR、プロモーションの実態を踏まえて考えますと、将 来的には非常に悲観的に考えざるを得ないのではないかということです。  そういう意味で、高校生献血で非常に問題が大きいと考えるならば、何が問題なのか ということになると、繰り返しお話していますように、医療機関が400mLしか求めなく なってきてしまった、200mLはもういいよというところにあります。ところが16、17歳 の人たちに対して、いまの採血基準では200mLしかできないわけです。そうすると血液 センター、あるいは行政と言ってもいいのですが、できれば200mLの採血はやめたいと 思っているわけです。しかし本当にやめてしまっていいのかどうか。では、やめないで 200mLを採った場合、その血液はどうするか、採った後の血液はどう使われているかと いう問題も考えておかなくてはいけない。200mLで採った赤血球は捨てていますという ことで理解が得られるなら、それでも結構だと思うのですが、得られないことも起こり 得るのではないでしょうか。それだったら利用できるような400mLの採血をしてもらっ たほうが、破棄してなどというあまり言いたくない、余計な説明を言わなくても済むの ではないかということがあり得ると思います。それが1つの選択肢だと思います。  もう1つは、18歳以上の年齢層で十分献血者を確保してやっていくから、もう16、17 歳の200mLはやめましょうというのも、1つの選択肢だと思うのです。そうすると18歳 以上の献血の推進のプロモーションをどうやっていくのか、それには本当に実効性があ るのかどうか、血液センターも行政もいろいろ試みてきているのですが、今までのやり 方では10代、20代の若者にアプローチして、献血をプロモーションするような事態に は残念ながらなっていないのです。逆に、むしろ減っているのではないかとすら思わせ るデータが出てきていますから、そこをどうするかです。  ですから採血基準のあり方と献血者のプロモーションというのは、かなり深くリンク した問題ではないかと思われます。そうでないという意見があれば、お聞かせいただけ ればと思います。私の考えとしては、やはり高校生献血を体験している人たちのかなり の数が、その後の献血志向性に、いい意味で引きずってきているということになると、 16、17歳の献血をやめてしまうことは、いかがなものかと思います。もちろん医学的に も社会的にも受け入れられることが前提になりますが、できるならば400mLもできるよ うにして、その上で400mLを高校生も含めてやるという意味で、全献血対象年齢層に対 してプロモーションをやっていくそのやり方は、どうあったらいいかということを考え ていくことが必要ではないかと思っております。 ○山本委員 わかります。要は私たちが、なぜ16歳から400mLになったのかと聞かれた ときに、どういうシンプルな答えがあるかということです。それなら、なぜ今まで入れ なかったのかと。外国がやっているから16歳にしてしまったということではなくて、い ま話を聞いていると、高校生のときからそういう意識を高めるという意味合いで、それ が大きいという話も1つあって、それで200mLでもいいけれども、いま実際は400mLが ほしい、だから400mLだと。それで先生に研究してもらったら、16歳からやっても大丈 夫、なぜ日本はやらないのかというぐらいのデータが挙がって、やりましょうというこ とになったのですよね。 ○清水座長 そういうことです。 ○山本委員 そういうことでしたら分かりやすい。それで今度、70代、80代にそんなに 抜いてしまって大丈夫ですか。そちらのほうを考えたほうがいいのではないですか。 ○清水座長 それは10代と60歳以上と言ってもいいかと思うのですが、非常に個人差 が大きいのです。そういう意味合いで、1986年の議論のときにも提案して、なかなか受 け入れられなかったという事実があるのですが、個人差が大きいものですから、基準は 基準としも、これは多くの人、80%から90%の人はそのまま機械的に当てはめてもいい けれど、残りの10%から15%に対しては、これは基準に当てはまっているけれども、ち ょっとまずいのではないかということも起こり得ると思うのです。そういうときに検診 には、一応医師がチェックすることになっていますから、そういう医師の裁量権をその 中に加味することによって、予防できていく部分もあるのではないかと思われます。そ れも1つのアプローチの仕方です。ですから「70歳以上で大丈夫ですか」と言うと、大 丈夫な人もいるでしょうし、ひょっとすると採ることによっておかしくなる人もいるか もしれない。 ○山本委員 私は44歳で、ああ、そうか、生命というのは自分だけのものではなくて、 死んでしまった曾祖父ちゃん、曾祖母ちゃんの思いが詰まっていて、生命はみんなのも のだなということに気付いたのは、35歳辺りの大人になってからですね。団塊の世代の 先輩も含めて、これ以上、あまり負担をかけてはいけないのではないか、本当にゆっく り休んでもらう方向にいくように、その下の人間、若い人がやれることをやらなければ いけないのではないかと思っている大人の1人として、まだ78歳から血を採るのかと。 そんな先輩はもうちょっと安心させてあげようよという精神的な気分もあるのです。 ○清水座長 そのことについては、献血年齢を65歳から69歳に上げたときの発想が2 つあります。将来、高齢化社会がくるのだから、元気なお年寄りには献血に参加しても らおうというのが1つです。もう1つは「65歳になったから、俺はもう献血ができない のか。生きがいがないじゃないか」と言うお年寄りもいるわけです。ですから大きく分 けて、その2つを取り入れるということです。 ○山本委員 なるほど。では私の言っていることは大きなお世話ですね。 ○清水座長 いや、そういうわけでもないのです。危惧していただくのは大変結構です が、そういうことで個人差が非常に大きいものを、どうやってクリアしていくのかとい う問題が残っています。 ○山本委員 ということはカードにバーッと、通算何百回とある先輩方には、表彰など があるといいですね。 ○清水座長 そうです。ですから65歳以上で初回献血は受け入れていないのです。60 歳未満で献血をした人が繰り返すことはOKという基準を設けたのです。過去に献血をし ていれば何かというのがわかっているから、ある程度精神的な問題とか、いろいろなこ とは自動的にクリアできているのではないかということが加味されているわけです。 ○山本委員 絶対に表彰したほうがいいですよね。 ○清水座長 それは赤十字のほうで、それなりにやっていると思うのです。 ○掛川委員 やっております。 ○山本委員 そうですか。ハワイ旅行などが付いているのですね。 ○掛川委員 そこまでは。 ○清水座長 それと同じで、今度は下げるほうで、16、17歳の献血という問題がありま す。医学的に問題がなければ、採血することはいいのではないかという考えが1つあり ます。そうすると先ほどもお話したように、医学的にOKだから社会的にもOKかという と、必ずしもそうはいかない。社会的にOKであるならばやってみるかと。それも、例え ば17歳の男性だけやってみるとか、17歳の女性にして、さらに16歳の男性、女性とい うように段階的に広げていくという方法もあるし、一度一気にここでやってしまって、 16、17歳でやるというやり方もあるでしょう。貧血の問題があるならば成分採血を取り 入れると。成分採血では赤血球を返しますから、貧血の問題はほとんどない。ですから、 むしろ16歳とか17歳の女性は成分採血を主体にやるようにするなど、いろいろな選択 肢があると思うのです。 ○山本委員 そうですね。要するに、それこそ社会的なコンセンサスが取れるかどうか ということであればあるほど、聞かれてバチッと答えたときに、それこそ心を動かされ て、それは意識を高めていかないといけないというようなものを、私はここで持って帰 らないとラジオで放送できないのです。 ○清水座長 そうしますと話が、ちょっと歴史的な話になりますが、大いに参考にして もらえると思いますので。200mL採血がなぜ日本で定着したのか、輸血学を確立してき た私よりも10年、20年先輩にいろいろ聞いたことがあります。しかし本当のところは 分からないのです。なぜ200mLになってしまったのか、しかも年齢も、なぜ16歳になっ たのかが分からないのです。それで先輩といろいろ議論をした結果、昭和20年代、1950 年代の前半ぐらいまでは売血全盛だったのです。そのときは400mL採っていて、なぜか 400mLを200mLずつに分割して供給していたのです。そういう時代がありました。もち ろん200mL採っていたこともありますが、400mL採って分割したこともあったのです。  本当のところは分かりませんが、あのころはまだアメリカ軍が占領していましたので、 「進駐軍」と言っていました。そこの保健関係のお偉いさんがいて、ある説によるとあ る先輩が立川の飛行場で、採血をするのに保健関係の米軍の人にかけ合ったらしいので す。そうしたら「日本人は小さいから200mLでどうですか」「いいよ」と言ったという話 があります。16歳というのも、たぶん昔は中学を卒業すると、みんな社会に出ていまし たから。 ○山本委員 大人ですよね。 ○清水座長 ですから、そういうことが大きな理由の1つではないかと思うのです。で は1986年に年齢を18歳にして、体重を50kgにしたのはなぜか。これは私がプロトコル を作ったのですが、私はちょっとずるい考えを持っていて、まず赤十字以外の医療機関 の先生方を集めて、200mLの採血基準で400mL採ってくださいということをやりました。 どうしてかというと、実は彼らがいまの常識で400mLを採るのは、何歳で何キログラム 以上の人だったらいいかということを知りたかったからです。50kg以下の人からも採血 したケースが何例かありました。年齢も16、17歳から採ったケースもありました。しか し大部分が18歳以上で、体重も50kg以上だったのです。体重は先ほどお話した循環血 液の代替として利用されているわけですが、そのようなことで1984年、1985年ぐらい のコンセンサスは、400mL は18歳以上で、体重50kg以上というのがその当時、輸血を 専門にしていた人たちの1つのコンセンサスではないかと受けとめて、18歳と50kg以 上という線を出した経緯があります。  では16歳ではなぜ駄目なのか、17歳ではどうなのかということがありますね。先ほ ど鈴木さんが言いましたように、ヘモグロビンは12.0、400mLは12.5で、なぜ12.0な のかという議論もあって、12.0というのもなぜ決まったのかが分からないのです。しか し12.5で決めたというのは、1つあるのです。それは採血を年間3回か4回、3カ月、4 カ月ごとに繰り返し採血をしてもらって、4カ月に400mLずつ3回採りますと、3回採っ た後の3カ月後にもヘモグロビンは元へ戻るのです。ところが3カ月ごとに4回採って みますと、3カ月後にヘモグロビンは元に戻らなくなります。そういうことで上限を 1,200mLに決めたという経緯があります。  これにはもう1つ、売血時代のデータがあります。そのころ、200mLは1カ月に1回 ずつ採血してもいいことになっていました。ところが6カ月目になりますと、貧血が起 きて回復しなくなるのです。これは売血ですので、条件はもっと悪いのですが、あのこ ろまでの日本人の食生活等を考えますと、総量としては1,200mLが妥当ではないかとい うことです。女性の場合は生理などもありますので、1回分として400mL減らそうとい うことで、800mLにしたわけです。そのときに12.5では、欧米に比べて低いのではない かという議論が随分ありました。しかし、そういうデータの積み重ねで、12.0でも12.5 でもそんなに変わらず、200mL採っても400mL採っても、1カ月経つと回復してしまいま す。回復すれば、少なくとも医学的に問題はない。  しかも鉄欠乏といっても、鉄が減ったからといって、すぐに貧血がくるわけではない のです。先ほどフェリチンが12ng/mLというお話がありましたが、鉄欠乏性貧血という 診断された人は、フェリチンが12ng/mL以下です。これは必ずそうです。では12ng/mL 以下の人は全部貧血かというと、そうでもないのです。違います。逆は真ではない。フ ェリチンというのは、どうも採血を繰り返すことによって下がってくる傾向があって、 本当に貯蔵血を代表しているのかというと、今はまだ議論がありまして、ほとんどの国 はまだフェリチンを採血基準に入れておりません。  こういうスタディーをやると、フェリチンが下がるものですから、ときどき外国の人 たちと国際会議などで会ったときに、「フェリチンをどうして入れないんだ」と言うと、 「それは問題にならないんだ」ということで、ほとんど取り合ってもらえなくて、議論 にならないのです。将来はわかりませんが、そういうことで今の段階でフェリチンが下 がってくることは事実です。しかし、それが下がったからといってすぐに貧血に結び付 くかというと必ずしもそうではないという意味で、採血基準に入れることについてはま だコンセンサスが得られていないというのが、いまの実情ではないかと思います。 ○山本委員 清水理事の個人的な見解は、もうそろそろ日本も16歳ぐらいから400mL を採っても大丈夫だろう、これだけの研究も出ているしということですか。 ○清水座長 私自身の個人的見解は、医学的には12歳でも13歳でも条件さえ整えばい いと思っております。 ○山本委員 12歳ぐらいでも大丈夫という研究が、もう出ているのですものね。 ○清水座長 医学的には、もう問題ないと思っています。 ○山本委員 ということは、ちょっと遅れているのではないかと。 ○清水座長 あとはコンセンサスの問題です。例えばエホバの証人で「輸血はやらない」 と言ったときに、18歳以上だったら文句なく、本人の言うことを聞きましょうというこ とになります。この間、一応の報告が出ましたよね。12歳以上はほかの条件で輸血をや る場合もあると。細かいところは忘れましたが、13歳から17歳辺りで親権者との、あ るいは個人の自己責任の問題というのを、どう考えていくのかということと関係してく るのですが、我が国ではなぜか16歳から200mLの献血が、すでに行われていました。で すから医学的に400mL採っても問題がないということであるならば、16歳から採っても 問題はないのではないかと思うのです。 ○山本委員 いま私も全く問題がないという気持になってきているのですが、大丈夫で すか。 ○清水座長 それは分からないけれども。 ○山本委員 ある程度誰かにはっきり言ってもらったほうが、議論しやすいと思うので す。「これはもう早うやらなあきませんよ」と言う熱い人がいて、「なんでや」と聞かせ てもらって「こうやねん」と言って、「そうか」とか、そちらのほうが早く決まるような 気がします。 ○大平委員 私の発言から、いろいろな方向に進んでしまったのですが、ここで採血基 準を決めるという話ではないと思うのです。採血基準をちゃんと公式的に決めて16歳か ら始める話というのは、また別の所で議論が始まるのだろうと思います。ここでは参考 としてそういう話が研究テーマとして出ていて、研究の成果として今、そういう方向に なっているという河原先生のお話だったというように思います。私も紛糾させてしまっ た責任を取りたいと思いますので、もうここで収めますが、そういった背景も含めて、 せっかく高校の先生も来られているわけですから、現場のいろいろなお話を伺って、そ れを採血基準の問題やいろいろな問題も背景として考えながら、議論を進めていただけ たらうれしいと思います。  あと、特にインフォームドコンセントの問題があります。今日の鈴木参考人からのい ろいろな資料は、本当はもっと検討しなくてはいけない時間だったと思います。特にア メリカのインフォームドコンセントの文章の書き方は、大変人間味あふれた文章の書込 みがあるのです。ああいった問題というのが、やはり献血の精神が活きていくのではな いかと思います。とりあえず、そこまでで収めたいと思います。 ○清水座長 採血基準をここで決めるかという今の問題ですが、細かいことはさて置き、 方向性だけは明確にしてもらわないと、一歩も進まなくなってしまいます。したがって 16、17歳で400mLを採る、あるいは成分採血をするという方向性をちゃんと踏まえて、 どういう基準を作るか。具体的な基準というのは、また事務局のほうなり血液対策課な りで考えていただくことになるかと思いますが、方向性だけは明確に打ち出していただ きませんと、具体的な一歩が踏み出せなくなってしまうという問題があります。その辺 は是非、議論していただきたいと思います。献血推進についても、ある程度具体的な方 策を考えてやるべきではないかということを提言していただけませんと、一歩踏み出す というのがなかなか難しいという現実がありますから、そういうようにご理解いただけ れば幸いかと思います。 ○衞藤委員 今日お話いただいたのは、17歳の男性のだけですから、献血基準に関して は、仮に16歳にするならば、17歳の女性、16歳の男女のデータもきちんと取って、安 全性という観点で大丈夫というデータがまた必要でしょう。おそらくそういう方向でい ったとしても、先ほどの河原委員のデータによりますと、仮にそうだとしても現在の献 血率ですと、0.73%程度の増加しか見込めないわけです。意味はあるのですが、それほ ど画期的に血液の確保に貢献するわけではない。そのこともちょっと踏まえておく必要 があると思います。一方で若年の10代、20代の献血率を何パーセントに上げるのかと いったら、9%を目標にするのか、何年かかって9%にするのか、そういった対策も必要 になってくるのではないでしょうか。 ○清水座長 確かにそういう考え方は重要だと思います。ただ、いま議論していただき たいと思っているのは5年後、10年後の我が国の血液事業のあり方ということを、是非 見据えていただきたいと思っているのです。例えば、1986年に400mL採血の導入を推進 したときには、「200mL採血の赤血球が30%以上も捨てられているのに、先生、なぜ400mL の採血などをやるんですか」と随分詰問されました。あの当時はまだ今と違って、肝炎 が10数パーセントも起こっている、したがって輸血本数が減れば安全性が高くなるとい うのが1つありました。  もう1つは、成分採血をやるためにヘモネティクスという自動化の機械を今、血液セ ンターが主体的に使っています。あの機械は420から430mLの全血を一遍採血して、赤 血球を返しているのです。ですから400mL採血の安全性が担保されませんと、あの機械 を使いこなすのに若干の不安があったのです。大きく分けてその2つのことがありまし た。それと幸か不幸か、1986年から献血者が減り出したのです。ところが、それから10 数年間は400mLと成分採血のために微増はしましたが、血液の確保量はほとんど落ちな かったのです。400mLを入れて良いか悪いかはともかく、そういう問題がありました。  それから1999年に、献血の上限年齢を65歳から69歳に上げました。これも慌てるこ とはないからといって、研究に着手したのは1991年ぐらいです。それから64歳で献血 が終わったような人たちを1年ずつ追いかけていって、4、5年から5、6年かけて、69 歳まで問題なくできそうだということでやったことがあります。しかしその当時も「60 歳以上の献血率など、0.5%しかいないんだ。だから、そんなに年齢を上げたって献血者 確保にはあまり役に立たないだろう。なんでそんな馬鹿なことをやるんですか」と言わ れた記憶があります。それが今は1.5%というように上がってきています。まだ少ない と言えば少ないわけですが、将来的に高齢でも元気なお年寄りが出てくれば、そういう 人たちがもっと増えてきてくれるのではないかという期待が持てるわけです。ところが、 そういう人たちがたとえ今は1.5%であっても、65歳で打ち切ってしまっていたら、そ ういう人たちを受け入れる場がなくなってしまいます。やはりそういうことも考えて、 元気なお年寄りには協力していただこうということは、当然あってもいいのではないか と思います。  ですから今の時点でどれだけ献血者確保に役に立つかということも、もちろん大事な ポイントの1つではあるのですが、季節によっていろいろな問題は起こるものの、曲が りなりにも今は血液は何とか充足されているわけです。将来的なことを考えたときにど うあるべきかということのほうが、今はもっと大事ではないかということでご理解いた だきたいと思うのです。ほかに何かございますか。 ○山本委員 そういう意味では私の言っていることとは逆行しますが、先輩たちがギリ ギリまで頑張っている姿を下の者に見せるというのも教育だと思います。私がPTAをや っていていちばん思うのは、教育というのは結局、大人がちゃんとした背中を見せてい たら、全部真似してくるということを痛感するのです。いままでPTAというのは陰の存 在でいました。いまは子供たちが死んでいる状態なので表に出てこなければいけない。 それを説明するのにものすごく苦労しているのです。全国行脚しているのですが、本当 に意識が低くて、誰も責められないのです。それはなぜかといったら、いままでPTAと いうのが陰だったから、あるいは何をしている場所かわからなかったからというところ が大きいのです。  そういうことを考えても、その年齢まで一生懸命、俺に献血させろみたいな先輩たち がいたら、当然44歳の私もいけるまで、何歳まで採りますよという年齢まで頑張るぞと 思います。そんな気がします。ちょっと前後しますが、今日は別に決めるわけではない ですよね。いろいろなデータを聞いて、どう思いますかという話ですよね。 ○清水座長 いろいろな意見をお出しいただいて、それをまた事務局のほうで整理をし て、次回にまた議論していただきたいと思っております。 ○山本委員 衞藤委員のおっしゃるとおりで、高校生から採ったからといって、0.何パ ーセント増えるだけだというところも踏まえながら、私は結局、そこには大きく2つあ ると思うのです。量が足りているのか、量が要るぞ、将来的にもなくならないように、 量を確保しようというような問題と、献血を推進していくプロモーションの仕方や、な ぜ16歳まで入れる必要があるのかということをちゃんと。量が足りないから16歳も要 るということではなくて、教育の一環としても要る、あるいは12歳まで大丈夫だから、 16歳は全然大丈夫という説明がはっきりと分かれば、社会に対してもみんな理解すると 思います。 ○宇都木委員 話がずれてしまいますが、鈴木さんのご説明の中で、成分輸血にはイン フォームドコンセントをということになっていますよね。これはちょっと誤解を招くと 思うのです。献血は、全部にインフォームドコンセントがなければいけないのは大前提 です。献血そのものですと、説明がそんなに丁寧でなくてもよいのかもしれませんが、 成分輸血の場合はよほど丁寧に説明しないと中身がわからないということで、特別にそ れでわかるような説明の書式が作られると思うのです。  いま山本さんがおっしゃったように、ここでなされているような議論を、本当はみん ながやってくれるといいのです。そういうことだと思うのです。ですからインフォーム ドコンセントの問題というのは、ただあなたの血液をいま採るということだけではなく て、もう少し広げる必要があるのかもしれません。そういうことをしながら、みんなで コンセンサスをつくっていくというキャンペーンを、上手にやっていけないかと思いま した。 ○清水座長 そのことについて鈴木さん、何かご意見はありませんか。 ○鈴木参考人 成分輸血ではなくて成分採血です。この場合のインフォームドコンセン トというのは、きちんと書式があって署名をするようになっております。それは多分、 例えば何かがあったとき、訴訟が起きたときなどのためのものではないかと思います。 日本で言っている、献血をしているときにインフォームドコンセントを取ることになっ ている手順だと、ただ読んで理解しましたというだけで、我が国では何の記録も残って いないのです。この場合はきちんと本人が署名をするというのが、実際に病院の現場で 輸血のインフォームドコンセントを取るというのと、同じ意味でのインフォームドコン セントだと思っています。 ○宇都木委員 「インフォームドコンセント」という言葉を、「書式」というように捉え れば、確かにそうでしょうが、そういう使い方は誤解を招くと思うんです。ついでです が、アメリカの場合、ここの文章は親御さんに対する説明ですよね。 ○鈴木参考人 添付しているのは成人でない人の説明ですが、実際の成分採血には、や はり同じようなインフォームドコンセントの書式があります。 ○宇都木委員 イギリスの場合もアフェレーシスについての書式ですね。 ○鈴木参考人 イギリスの場合、インフォームドコンセントはアフェレーシスについて、 本人のあれなのです。またイギリスの場合、17歳の献血者に対しては同意書というのが あります。この同意書は親ではなくて、本人が理解しましたという署名をするようにな っています。 ○宇都木委員 イギリスの場合は成人が18歳で、日本の場合は20歳ですから、未成年 者について少なくとも法律行為をするときには、親の同意が必要ですが、医療上の同意 というのは、通常の法律行為とは違うというのが通説だろうと思います。その辺につい ては個別に判断していい事柄だろうと思います。ただ、いずれにせよ書面を残すかどう かは別にして、承認が必要、本人が承諾しているということが必要で、そういう意味で のインフォームドコンセントは必ずなければならないことだろうと思います。 ○清水座長 この問題を補足させていただきますと、全血採血というのが従来型の採血 方法だったのです。そこに成分採血というのが新たに加わってきたものですから、従来 の全血採血とは違うのだよ、こういう採血をやるのだから、特に了解してくださいとい う形で始まった話ではないかと思うのです。具体的にきちんと調査したわけではありま せんが、たぶんそういう歴史的な経緯ではないかと思います。  ついでに、我が国における200mL全血については、インフォームドコンセントも何も なくて採ってしまっているわけです。もちろん400mLについては、インフォームドコン セントを取るか取らないかという議論があってもいいかと思うのです。また、取るとし た場合も1回だけは取って後はいいとか、いろいろなやり方があろうかと思います。し たがって、そのようなことも検討課題としてお考えいただければありがたいと思います。 ○衞藤委員 インフォームドコンセントを取る側ではなくて、取られる側のことを考え てみる必要があるかと思いました。実は、私は前回のこの検討会の後、9月の初めに、 この3月まで校長をしていた附属の中等教育学校で、高校2年生に相当する5年生3ク ラスの120人に、日本で若い年代の献血率が落ちていることをテーマに授業をしました。 そのときに4人1組のグループで、コメントをいろいろ書いてもらったのです。その中 にかなりあったのが、献血ルームに入って出てくるまでの間、その中で何が起こってい るかがわからない、怖いということでした。先ほどの調査結果では、痛いということが 最大の理由になっていて、そこに象徴されてはいるのです。要するに何をするかがわか らないという不安があるのです。それはやはりインフォームドコンセントという説明を きちんと受けて、これならば大丈夫という確信がちゃんと持てるようにしてあげること が大事なことだろうと思いますので、私がその授業を踏まえて感じたことを申し上げま した。 ○清水座長 そのことについては数年前に、厚労省の研究班でアンケート調査をやって おります。学校献血を受け入れている所と受け入れていない学校の生徒、父母、教諭、 教官という人たちに対して、「16、17歳の採血についてどう思いますか」と聞いたので す。そうすると大体60%の人たちが、「年齢を除いて採血基準に該当していればいい」 という答えだったのです。それで「わからない」という人が30%前後いて、5、6%近く が「反対」という意見があったのです。  この30%近い反対をどうするかということになりまして、翌年度、400mL採血はこう いうことですよ、成分採血はこういうことですよ、いままで日赤でこれだけの人がやっ てきて、この程度の副作用が出ましたというような情報を提供しました。そうしたら「わ からない」と言った人の半数ないしこれ以上の人が、それならやってもいいというよう に変わってきて、70数パーセントの人たちが16、17歳から400mL、あるいは成人採血を やってもいいですという返答をしてくれたのです。したがって、そういう調査結果も場 合によっては参考にしていただいて、議論を進められればと思っております。ほかに何 かございませんか。 ○田辺委員 このテーマは、若年層の献血率の低下と献血者数の低下にあると思うので す。やはり間口を広げることをしなければいけないと思うし、16歳でも17歳でも体は 若いし、元気だし、エネルギーもある。献血をしたいというのは強制的なものでもない し、自ら思うことであるはずです。そういう人たちに献血できる間口をつくってあげる 必要はあると思うし、今度はそこにどうやって広報していくかということが重要だと思 うのです。若い人のエネルギーが、全体的な献血の数を増やしていくと思うのです。  その辺のところで、今はこういう規制があるということと情報開示が。いま初めて聞 いて、200mLはそんなに必要ないのだなということがわかったら、冗談じゃない、400mL 採ってちょうだいと。必要のないことをさせられるほうの身になってみたら、せっかく 人のためにやろうとしていることが、少なくとも無駄になってしまうのではないかと思 うので、最初からハードルというか、ちゃんとした情報開示をしてあげることによって、 その人の社会にかかわる意義を見出せるのではないかと思います。したい人にはどんど んさせてあげればいいですし、医学的にも大丈夫であれば、そういうようにしたほうが いいのではないかと思います。 ○清水座長 羽田さん、何かご意見はございませんか。 ○羽田委員 私もたぶん、皆さんの意見と一緒です。16歳に下げるということは、その 分採血する数も増えるからいいと思うのですが、その基準を下げてからどうするかとい うのが、やはり問題だと思います。いまの状況のまま基準を下げただけだと、結局あま り変わらないのではないかと思いますし、山本さんがおっしゃるように、これからどう していくのかというのが問題だと思います。 ○清水座長 そういういろいろな意見を踏まえて、基準については、まだいろいろ議論 したいことがあります。1つには年齢のことがあります。また、貧血については簡便だ ということで、一応比重でスクリーニングしているのですが、本来的にはヘモグロビン で測定すべきではないかという議論は昔から出ておりまして、外国でもそちらのほうに 切り替えてしまっている所があります。私も昔からヘモグロビンで測定して、ドナーの 人の適否を決めたほうがいいと思ってはいたのですが、移動採血車などですと、なかな か簡便にはできにくいという問題がありました。しかし最近ではそうでもなくなってき たとか、コンピューター化されて、全国どこででも情報をキャッチできるようなシステ ムが日赤の中にもありますから、そういうものを活用したりすることによって、ヘモグ ロビンなども利用できるであろうと。  それから、これは私の個人的な見解ですが、年間総採血量が女性800mL、男性1,200mL というのは、変えないほうがいいと思います。ただ採血間隔が3カ月とか4カ月という ようになっているのを、2カ月とか3カ月にして、その代わり年間総採血量を変えない とか、少し増やしてもいいかということもあろうかと思うのです。例えば、血小板が54 歳などというのは馬鹿げているという意見もありますので、その年齢をもっと上げたら どうだとか、いろいろな細かいことについては議論があるところだと思います。特に男 性でヘモグロビンが12.0とか12.5だったら、貧血だという意見もあります。  今日は時間がありませんのでお話しませんが、次回、できればいろいろな調査を提示 したいと思います。「標準値」と称する正常値の幅が、男女別に提案されております。そ ういう値をどういうように扱うのか、比重をヘモグロビンに変えることによって、ヘモ グロビンの最低値を少し上げるとか、血液事業、献血者の確保に与える影響等も若干考 える必要があるかもしれません。できれば、そのようなことも踏まえて議論をしていた だいて、採血基準は総合的にこういう方向性であるべきではないかということを提案し ていただければ、大変具体的で一歩前進になるのではないかと期待しております。 ○堀田委員 高校生献血のことですが、今日いろいろなお話を伺って、高校生の時期と いうのは献血の導入の時期というように捉えています。子供たちは学校給食で200mLの 牛乳を飲んでいるので、あのくらいの量というのがすぐに頭に浮かびますので、それで 200mLという形で現在、うちの学校ではやっているのです。高校生で、時期にもよりま すが、15歳で献血できない生徒もおりますし、3年生ともなると、3学期にやると大学 受験で家庭学習というようになりますので、全くできない状況になるのです。そういう ようにしていくと、できない子、200mL、400mLというように、とても混乱するのではな いかと思うのです。いまのお話を聞いていると、200mLはいずれなくなるのかなという 気もするのです。その辺が今日伺って迷ったところです。 ○清水座長 そういう議論も当然すべきだろうと思っています。次回は今日の議論を踏 まえて、事務局で整理してもらおうと思っております。 ○川内委員 次回は出席できませんので、最後に一言発言させていただきたいと思いま す。仮に16、17歳まで400mLを拡大した場合、献血量の増は1%程度ということですが、 今回の調査の結果にも出ていますように、早期の段階での献血の経験、いわゆるアーリ ーエクスポージャの有用性が示唆されています。ですから今回の検討会の開催の主たる 目的である、将来的な献血人口の確保をどうするか、そして若年層の献血離れをどうし ていくかということの解決の1つの手段として、この400mL献血の年齢の拡大を検討す ることは、私は非常に意義があると思います。  医学的なエビデンスとしては、もう少し踏み込む必要が一部にはあろうかと思います が、そういった方向で検討することは非常に意義があると思います。この検討会では検 討の内容として若年層に対する献血推進方策のあり方ということで、1つには採血方法 の検討がありますし、仮に拡大した場合、堀田委員のおっしゃるように、現場での混乱 といった課題もありますので、プロモーションをどうしていくかということと併せて検 討していけばよいのではないかと思います。 ○清水座長 わかりました。ほかにはよろしいですね。 ○掛川委員 直接メインのタイトルとは違いますが、1点だけ申し上げます。200mL献血 がすぐに要らなくなるということではありませんので、訂正させていただきます。現状 では小児輸血とか、季節変動によってはどうしても200mL献血は必要ですので、そこは 即なしということではないというように、ご理解いただければと思います。 ○清水座長 時間もだいぶ過ぎてしまいましたので、今日の検討会は一応これで終わり にしたいと思います。次回はいま出ました議論を事務局のほうで整理していただいて、 もうちょっと焦点を絞った議論をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 今日はどうもご苦労様でした。事務局から何かありますか。 ○血液対策企画官 本日は長時間、多岐にわたるご議論をいただきまして、どうもあり がとうございました。次回は11月20日木曜日、午前10時からです。会場は、「はあと いん乃木坂」の6階「ソレイユ」を予定しております。いま清水座長からもお話があり ましたように、若年層に対する献血推進方策と、採血基準のあり方の大きく2つのテー マがあったかと思います。事務局のほうで本日までの議論を踏まえて、両者のリンクに も留意しながら、論点を整理させていただきたいと思います。次回はそれを基に、引き 続きご議論をお願いしたいと思っております。 ○清水座長 今日はどうもご苦労様でした。これで終わりにいたします。                        照会先:医薬食品局血液対策課                      TEL 03-5253-1111(内線 2917、2904)