08/10/29 第54回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第54回労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成20年10月29日(水)17:00〜18:00 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)            大橋分科会長、岩村委員、清家委員、征矢委員、宮本委員 (労働者代表)            成瀬委員、野田委員、長谷川委員、堀委員 (使用者代表)            荒委員、石原委員、市川委員、上野委員、高橋委員       事務局 太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、及川審議官、            岡崎高齢・障害者雇用対策部長、宮川職業安定局総務課長、            鈴木需給調整事業課長、山田公共職業安定所運営企画室長、            田中需給調整事業課派遣・請負労働企画官 4 議 題   (1)労働者派遣制度等の見直しについて (2)その他 5 議事内容 ○大橋分科会長 ただいまから第54回労働政策審議会職業安定分科会を開催します。 (出欠状況報告)  議事に入ります。最初の議題は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者 の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱について」です。これ については、前回10月24日に、当分科会においてご議論いただいた際、詳細な検討は労 働力需給制度部会に委ねることにしていますが、本日、当分科会の前に開催された労働 力需給制度部会において、報告が取りまとめられたということですので、労働力需給制 度部会長の清家委員からご報告をお願いします。 ○清家委員 労働力需給制度部会において、10月24日に当分科会から審議の依頼を受け たことを踏まえ、法律案要綱についての検討を行いました結果、平成20年9月24日付け の労働政策審議会の建議に鑑みまして、法律案要綱については、これをおおむね妥当と 認めるという結論に至ったことをご報告します。  なお、労働者代表委員からは、「記」のなお書きにありますように、派遣先労働者と の均等対遇原則、違法派遣の場合における派遣先との「直接雇用みなし規定」の導入が 必要であるということとともに、登録型派遣の在り方について労働者保護の視点から引 き続き検討を行うべきであるという意見が付されています。私からは以上です。 ○大橋分科会長 本件について、ご質問、ご意見等がありましたら、ご発言をお願いし ます。 ○成瀬委員 前段の労働力需給制度部会のご議論を傍聴していませんので、発言内容が 部会と重複してしまうかもしれませんがご容赦ください。何点か意見と質問を申し上げ させていただきます。  1つは、施行期日についてです。法律案要綱の後ろのほうになりますが、施行期日は2 つに分かれるということで、グループ企業派遣等の規制及び日雇派遣の原則禁止等につ いては、平成22年4月から、ほかの主要部分については平成21年10月からの施行で、2段 構えの施行と理解しています。今回の改正の重要ポイントのうちの2つであるグループ 企業派遣の規制、日雇派遣の原則禁止の施行期日が遅いのではないかと認識しています。 この2つについては、マスコミの積極的な報道によって、社会的にはすでに十分に周知 されているのではないかと思っていまして、他の主要部分も含めて、多くの派遣事業者 においては、そのための対応を開始していることも耳に入ってきています。  確かに、グループ企業派遣の80%規制については、対応が難しいという声も聞こえて いますが、一方、日雇派遣の原則禁止については、そもそも格差社会の進行を深刻化さ せた元凶の1つであり、極めて問題があるからこそ、今回対応することになったわけで して、日雇派遣の原則禁止の部分については、私も何人かの派遣会社の方々にお聞きし てみたのですが、仮に対応するとしたら、グループ企業派遣等の規制とは違って、そん なに期間は必要ないのではないかという声も聞いています。  したがって、成立後、公布して直ちに施行しても、失業者が発生して、雇用の安定が 損なわれるなどの支障は生じないわけで、派遣法としては初の規制強化であって、十分 にも十分な周知期間を置きたいという理由はわかるにしても、善は急げという観点から、 施行日については早めるべきだと思います。  2つ目は欠格事由についてです。1〜2頁で、第1の1の(1)から(6)にいろいろと記載が あります。このうち(1)ないし(4)までについては、「5年を経過しない者」とされてい ます。他の欠格事由とのバランスを考慮されたのだろうと予想していますが、派遣法違 反の影響の大きさから考えれば、例えば永久追放でもいいぐらいのものではないかとも 思っているわけで、欠格事由の「5年を経過しない者」という部分については、本来的 には再考したほうがいいのではないかと思っています。今回は無理だとしても、今後の 検討の中で、是非とも前向きなご検討をお願いします。  3点目に、登録型派遣の派遣先での直接雇用促進についての意見です。4〜5頁にかけ てです。4頁の5の(2)で、「当該派遣元事業主が職業紹介を行うことができる場合にあ っては」という部分です。これについては、建議の2の「登録型派遣の常用化について」 のマル3に該当するはずと認識していますが、建議の文章では、「派遣先での直接雇用 を促進する」と明記されています。法律案要綱の書き方としては、こうなることは理解 できなくはないのですが、表現だけから見ると後退している観は否めないわけで、是非 とも派遣先での直接雇用促進を明記していただきたいと思います。  例えば5頁の1行目になりますが、「雇い入れること」で終わるのではなくて、「雇い 入れることにより、派遣先に対して直接雇用を促すこと」にしてはいかがかと思ってい ますが、今後ご検討いただければと思います。  次に質問も含めてということなのですが、期間の定めのない雇用契約の派遣労働者に ついての雇用契約申込義務の適用除外に関係する部分です。6頁です。9の最後の行で、 「期間を定めないで雇用する労働者である旨の通知を受けている場合は」となっていま す。期間を定めて雇用する派遣労働者であるにもかかわらず、派遣元が期間を定めない で雇用する労働者であると仮にそういう虚偽の通知をして、結果として派遣先が当該派 遣労働者に対して労働契約の申込みをしなかった場合には、どうなるのかをお聞きしま す。当然ながら虚偽の通知をすれば派遣法違反ということで、派遣元が罰せられるので、 したがって履行担保になるのだということは理解していますが、結果として申込みをさ れなかった労働者は、派遣先との労働契約は引き続きないままでありまして、結果とし て救済されないことになるのではないか。もしそうだとしたら、建議の趣旨に反するの ではないかという気がします。この点についてはどうなのかお聞きします。 ○需給調整事業課長 3点のご意見と1点のご質問をいただきました。1点目の施行期日の 件でございます。これは既に周知されているので施行日を早めるべきだというご意見で すが、グループ企業派遣等の規制及び日雇派遣の原則禁止等につきましては、労働法の 中でも、事業をやってはならないというかなり強い規制です。法律が通ったあかつきに は、政令、省令、指針を整備して、その上で、こういう強い規制の場合には、十分な周 知期間を取った上で施行するのが、これまでのルールかと存じています。  さらに言いますと、これについては事業規制ですから、そこで急に事業ができなくな りますと、派遣先に対しても、労働者の補充ができないことにもなりまして、いろいろ 影響が出ますので、これについて十分な周知期間を設けた上で、特に日雇派遣について は、日雇職業紹介の整備を行った上でやるのが、労働者のためになるということで、平 成22年4月としていますので、是非ともご理解をいただきたいと思います。  2点目の欠格事由の5年についてです。こういった規定は他法との並び等が重要になる のですが、現在も派遣法上は5年となっていますが、これが通例ですので、今回の追加 については5年でやりたいというものです。  5の(2)の登録の常用化です。紹介予定派遣の部分が後退しているように見えるという ことですが、これについては派遣元の義務ですので、法律上、義務の主体に何をしても らうかを書くというのが、法律上の表現振りになります。こうなりますと、派遣元は労 働者を紹介予定派遣の対象にして、紹介予定派遣者として雇用することが、実際にやる ことになりますので、これを端的に表現するということで、そのような書き方をしてい ます。  ただ、これは対象にするだけではなくて、建議にあるように、派遣先に直接雇用して いただくことが趣旨ですが、法律上の表現としてはこのような形ですので、その趣旨等 については、この法律が成立した際の通達等においても明記することになると思います が、法律上の表現はこうなることはご理解いただきたいと思います。  質問のありました6頁の9の通知が虚偽だった場合はどうなるかですが、虚偽の通知を 行った派遣元は違反になりますが、派遣先について、この虚偽である通知を受けて、そ れが真正なものだと信じるに十分な理由がある場合については、違法とまでは言えませ んので、申込みをしなかったことについて、違法であるとペナルティーを科すわけには いかないと思っています。  ただ、それで永遠にその労働者を雇わないでいいかということですが、第40条の5の 規定で、派遣先で3年を超えて派遣労働者を受け入れており、同じ業務に労働者を雇う ときには、この派遣労働者にまず声を掛けてくれとなっておりますので、その虚偽の通 知で、ある一時点で、それについての申込みをしなかったとしても、次の機会で同種の 労働者を採用する場合には、そのときにこの規定が効いてきて、その時点で申し込む形 になるかと思いますので、その時点で派遣先での雇用の機会が与えられることになりま す。以上です。 ○成瀬委員 私の質問についての答弁について再質問します。虚偽の通知を受けて、結 果的に申込みされなかった場合でも、次に派遣先で同種の労働者を雇い入れることが、 そういうタイミングがあればそこで申し込まれるということですが、確かにその場合に は救済されるのですが、次に同種の労働者を雇い入れるタイミングがこなければ、永久 に救済されるタイミングはないのではないかというのは指摘させていただきます。  それと欠格事由のところで、「なお従前の例による」という形の経過措置を付けられ るのだろうと思うのですが、そうなると、ここの部分については平成21年10月施行で考 えているということは、平成21年9月までに、許可取消しとか、廃止を命じられたもの 等については、欠格事由にならないということですよね。本当にそれでいいのかという 疑問があるものですから確認したいと思います。 ○需給調整事業課長 最後の欠格事由についてですが、要綱の最後で、経過措置等を設 ける中で、この欠格事由についても経過措置を設けたいと考えていまして、その場合に、 いわゆる不利益による遡及適用禁止という大原則がありますので、法律が施行される前 の行為については、例えばこのような、欠格のような不利益な取扱いについては遡及し ないというルールがありますので、ご指摘のとおりそれについては遡及せずに、法律の 施行後の違法行為についてが欠格の対象になると考えています。 ○大橋分科会長 ほかにどうでしょうか。ほかにご意見がないようですので、これまで の議論を踏まえて、当分科会としては厚生労働省案はおおむね妥当と認め、労働力需給 制度部会の報告の内容で、労働政策審議会長にご報告申し上げたいと思いますが、よろ しいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 ありがとうございます。報告文(案)の配布をお願いします。                (報告文(案)配布) ○大橋分科会長 お手元に配布した報告文(案)により、労働政策審議会長あてに報告 することとしてよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 そのようにさせていただきます。 ○職業安定局長 職業安定局長です。ただいま労働者派遣法等の一部改正法案の要綱に ついて、職業安定分科会として報告をおまとめいただきました。本当にありがとうござ いました。  私どもとしましては、この内容に基づいて改正法案という形でできるだけ早期に国会 に提出すべく必要な手続を行っていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお 願い申し上げます。どうもありがとうございました。 ○大橋分科会長 次に報告事項が1つありますので、事務局からご説明願います。 ○公共職業安定所運営企画室長 資料No.2をご覧ください。「ハローワーク関係業務の平 成20年度目標設定について」というものです。ハローワーク関係業務の目標管理につい ては、平成16年度から全国目標を定めて、平成18年度からは地方計画策定項目という形 で、労働局・安定所ごとに目標を設定して、それをPDCAサイクルによって管理する項目 を設定して、業務運営に取り組んでいます。  平成20年度については、昨年度に引き続き地方計画策定項目として、労働局・安定所 ごとの目標を設定し、PDCAサイクルで管理する項目と、それ以外に全国目標を掲げて、 労働局ごとの目安を設けて、その達成状況に応じ、地方の労働局・安定所を指導する項 目の2つに分けて作っています。  まず、1頁の「地方計画策定項目について」、4項目掲げています。昨年度については、 1.と2.の2つだけでしたが、平成20年度から3.と4.の項目を新たに設定しています。  1点目の「ハローワークの就職率」についてですが、平成19年度目標は、平成18年度 の実績の32.4%を踏まえて、33%程度と設定しましたが、平成19年度の実績は31.8%で、 目標に1.2%到達しませんでした。これは主に、昨年度夏以降の経済の低迷に伴う新規 求人の急激な減少の影響が大きいところです。ハローワークとしては、引き続き事業所 訪問を通じた求人の確保、求職者の就職困難度に応じたきめ細かな職業紹介体制の確立 を進めて、引き続き就職率の向上に努めていきたいと思っています。今年度、平成20年 度の目標については、正社員、パートにかかわらず安定した雇用が求められていること を踏まえて、公共職業安定所としても安定した雇用形態の求人を確保し、労働者の雇用 の安定に努める必要があることから、平成19年までは臨時、季節を含む全数で目標を立 てていたのですが、これを常用雇用を対象として、31%以上という目標を設定していま す。  2つ目の項目の「雇用保険受給資格者のうち早期再就職者の割合」についての目標で す。ハローワークにおいては、雇用保険、職業紹介を一体的に実施し、なおかつ雇用の セーフティネットとしての雇用保険財政の健全な運営を確保するということから、前年 に引き続いて、この目標を掲げています。  中身としては、雇用保険の所定給付日数を2/3以上残して就職する者の割合を高める ということですが、平成19年度の目標は、平成18年度の実績の28.1%を踏まえて30%以 上としています。平成19年度の結果は29.6%で、平成18年度の実績を上回っていて、目 標にわずかに届かないものの、ほぼ目標を達成できたものと認識しています。平成20年 度においては、求職者の緊要度に応じためりはりのある職業相談や担当者制による就職 支援を通じて、この早期再就職割合を高めていこうということで、目標は31%以上と設 定しています。  以上が求職者を意識した目標で、昨年度はこの2つの目標を地域計画策定項目として 設定していましたが、一方で、ハローワークは求人者に対するサービスが不足している というご指摘もありますので、新たに3.の「求人充足率」という目標を設定しています。  これは平成19年度の実績が21.1%ということで、平成20年度については、それを上回 る22%以上を目標としました。  4.は「都道府県労働局設定項目」ということで、これは各都道府県労働局が地方の特 性に応じて、あるいは最近は国と地方との連携を強く意識していますので、そういった 地方自治体の意向等も踏まえて、各都道府県労働局が選択する形で、この設定項目を掲 げています。多くの都道府県労働局が設定している項目の具体例として、1つには障害 者の就職率、あるいは若年者対策の目標として、新規高卒者内定率等を掲げている局が 多くありますが、これも今年度の平成20年度から新設した項目です。  2頁をご覧ください。「その他の目標設定項目について」です。最初に掲げているの が、「障害者の雇用対策の目標」です。平成19年度の目標については、就職件数につい て、前年度比3,500件以上という目標を掲げました。平成19年度の結果は、対前年度比 1,578件増で、前年度実績は上回っていますが、伸びの目標は達成することはできませ んでした。これについても、就職率同様、求人の減少が1つの理由としてありますが、 加えて、手厚い支援を必要とする障害をもつ求職者が増加していることもあります。  そうした点も踏まえて、平成20年度については、重度の障害をもっている障害者に対 応するために、紹介の質を向上させる観点から、特に重度障害者は求職登録をしてから、 就職に至るまで時間がかかることもありますので、求職者数に対する就職件数という、 就職率を目標として設定する形にして、具体的な数値としては、平成19年度の実績等を 踏まえ、それを上回る18%以上としています。この目標に向けて、特にそこに書いてあ るように、チーム支援の対応等さらに対策を強化して障害者雇用の促進に取り組んでい く所存です。  次に「若年者対策の目標」についてです。平成19年度の目標は、就職の難しい年長フ リーターに重点を置いて事業を実施するため、13.5万人という目標を掲げていましたが、 実績については17.4万人で、目標を達成しています。平成20年度において、フリーター 35万人以上の常用化目標の最終年度になっていますので、そのうちハローワークの窓口 を通じて就職を実現するフリーターの就職件数について、22.7万人以上という常用雇用 化目標を設定しています。  4頁の「高齢者対策の目標」についてです。3つボックスを作っていますが、冒頭に掲 げてある「高齢者の就職件数」については、今年度から新設したもので、団塊の世代が 60歳に到達すること、あるいは昨年から導入している募集採用時の年齢制限禁止の原則 義務化等も踏まえて、高齢者の応募機会が拡大されたことを踏まえて、高齢者の就職件 数を新たに就職件数目標として設定しています。  5頁です。6.「正社員求人割合」で、これについても正社員求人に対する求職者のニ ーズが高いことを踏まえて、新たに目標として設定しています。  7.の「マザーズハローワーク事業の目標」についても新設ですが、働く希望をもつ子 育て中の女性に対する支援の強化の観点から、マザーズハローワーク事業についても目 標として新たに設定しています。  8.「生活保護受給者等就労支援事業の就職率」についても、新たに設定した項目で、 生活保護受給者等に対する就労支援を強化する観点から、生活保護受給者等就労支援事 業の就職率について新たに目標を設定し、平成19年度の54.3%の実績を踏まえて、57% 以上と設定しています。  以上が概略ですが、現状のハローワークの置かれている環境を考えると、昨年度以上 に求人の減少が深刻化している中ではありますが、職員の努力によって、目標達成に向 けて引き続き取り組んでいきたいと考えています。以上です。 ○大橋分科会長 この件については報告です。以上で予定されていた議論は終了しまし た。特になければ本日の分科会はこれで終了します。 (署名委員指名) どうもありがとうございました。                      (照会窓口)                        厚生労働省職業安定局総務課総務係                        TEL:03-5253-1111(内線 5711)