08/10/27 第6回管理濃度等検討会議事録               第6回管理濃度等検討会                 日時 平成20年10月27日(月)                    10:00〜                  場所 経済産業省別館10階1014号会議室 ○奥村副主任 ただいまから、第6回管理濃度等検討会を開催いたします。冒頭に当環 境改善室の半田室長から、最終回に向けてということでご挨拶申し上げます。 ○半田室長 おはようございます。先生方にはお忙しい中、お集まりいただきましてあ りがとうございました。管理濃度等の設定に関しては、ここのところ、いろいろな課題 がありましたが、先生方のご協力をいただき6回、いろいろ難しい議論もありながらも、 とりあえず一つの取りまとめの段階に達したということで、本当に心からお礼を申し上 げます。途中途中の議論でもいただきましたように、科学的にも技術的にもなお追求す べき必要のある課題もありますが、現実に作業現場の改善をやっていただくことを促進 する役割を担っている私どもとしては、ある程度割り切って進めざるを得なかった部分 もあります。それは議論の中でも申し上げたように、今後、さらに新たな知験を踏まえ て改善・改良していくことを前提に、とりあえずのところで進めていきたいと思ってお ります。そういったことで今回取りまとめていただく結果についても、また近い将来、 見直しをお願いする必要が出てこようかと思っております。  それから管理濃度のこの検討会の、直接のマンデイト(役割)ではありませんでした が、そもそも管理濃度あるいは抑制濃度をどうするのかといった議論も、必要になって いるところです。それに関しては衛生工学にお詳しい委員にも、さらにご参画いただく などして、もう少しご検討をお願いしなくてはいけないと考えております。その折には ここにいらっしゃる先生方にも、またご協力、ご指導をお願い申し上げることになりま す。とりあえず、このメンバーでの管理濃度等検討会は、今年度これをもって終結とい うことになります。この間の先生方のご指導に心からお礼申し上げますとともに、今後 の課題についても引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。ありが とうございました。 ○奥村副主任 それでは議事に入ります前に、事務局から配付資料の確認ご説明したい と思います。資料番号は第1回からのシリアルナンバーになっており、今回、1回目の 資料から再び配付しております。資料番号-1が、「管理濃度等検討会メンバー名簿」 です。資料番号-2が開催要項です。資料番号-3が、本検討会の基本方針である「管理 濃度等の設定・見直しの検討について」というペーパーです。  今回の資料としては、資料番号-27が報告書の最終案です。資料番号-28が参考資料 ということで、別紙「管理濃度等整理表」です。資料番号-29が、「ビル管法に基づく 厚生労働大臣指定の測定器」ということで、ホルムアルデヒドに関する資料です。その 他の参考資料として、参考資料-1が、厚生労働大臣指定の測定器に係る審査の申請の 実例です。参考資料-2が、日測協から提出いただいたホルムアルデヒドの検討結果で す。参考資料-3が、参考となるJISの分析方法の抜粋です。あとは関係法令を、2つ綴 じて配付しております。それでは櫻井座長に進行をお願いしたいと思います。よろしく お願いします。 ○櫻井座長 それでは議事に入ります。まず「管理濃度等検討会報告書(最終案)」に ついてです。資料番号-27に基づき、報告書の順序に沿って事務局から説明していただ き、順次、ご審議いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○杉山係長 まず資料番号-27に移る前に、資料番号-1、「管理濃度検討会メンバー名 簿」について、補足説明をさせていただきます。こちらの資料は、座長の櫻井委員と和 田委員の肩書きが、現在のものとは少し異なっております。現在の櫻井委員の肩書きは 調査分析センター所長ではなく、技術顧問です。和田委員については、産業医科大学学 長という肩書きに変わっております。こちらの資料番号は以前にお出しした資料で、既 にホームページ等で公表しておりますので、今回、この内容のままで出しております。  では資料番号-27の1頁からです。「管理濃度等検討会報告書(最終案)」は、本検 討会における前回までのご議論や審議内容、そして決定事項についてまとめた最終報告 書案です。各物質ごとの管理濃度や測定方法などの改訂案、検討経過については前回、 第5回までにご審議いただいておりますので、本日はそれ以外の報告の書きぶり等、そ の提言内容についてご確認ないしご審議いただければと考えております。それでは報告 書の順序に従い、進めさせていただきます。  1.「はじめに(検討趣旨)」。労働安全衛生法においては、事業者に対し、職業上の ばく露により、労働者に健康障害を生じさせるおそれのある物質のうち、有害性が高い ものについて、作業環境測定の実施を義務づけている。これらの物質の作業環境中の濃 度については、作業環境評価基準において、物質ごとの管理濃度を定めている。  別途設置されている「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討 会」においては、新たに設備の密閉化又は局所排気装置等の設置、作業環境測定の実施 を行うべきと見なされた物質について報告されている。このうち作業環境測定が必要と された物質については、新たに管理濃度及びその測定方法を設定する必要がある。また、 既に作業環境測定の対象となっている化学物質についても、その一部については疫学調 査などにより新たな知見が得られており、労働者の健康を守るため、随時管理濃度を見 直す必要がある。  厚生労働省は、平成19年8月8日から平成20年10月27日の間に計6回の管理濃度 等検討会を開催し、物質ごとの管理濃度の値、測定方法等について検討を行った。  2.「委員名簿(五十音順、敬称略)」。大前和幸、慶應義塾大学医学部教授。菅野誠 一郎、独立行政法人労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ統括研究員。小 西淑人、社団法人日本作業環境測定協会調査研究部長。座長、櫻井治彦、中央労働災害 防止協会労働衛生調査分析センター技術顧問。田中勇武、産業医科大学産業生態科学研 究所教授。中明賢二、麻布大学名誉教授。名古屋俊士、早稲田大学理工学術院教授。松 村芳美、社団法人産業安全技術協会参与。和田攻、産業医科大学学長。  3.「検討の経緯」。第1回管理濃度等検討会:平成19年8月8日。(1)当検討会での 検討の進め方について。(2)化学物質のリスク評価制度について。(3)ホルムアルデヒド の管理濃度、測定方法、局排性能要件について。(4)硫酸ジエチル、1,3-ブタジエンの 局排性能要件について。  第2回管理濃度等検討会:平成19年11月1日。(1)エチレングリコールモノメチル エーテルの管理濃度について。(2)クロロホルムの管理濃度について。(3)チクロヘキサ ノンの管理濃度について。(4)テトラヒドロフランの管理濃度について。(5)トリクロロ エチレンの管理濃度について。(6)トルエンの管理濃度について。(7)二硫化炭素の管理 濃度について。  第3回管理濃度等検討会:平成20年2月28日。(1)前回検討会の保留物質について。 (1)エチレングリコールモノメチルエーテルの管理濃度について。(2)二硫化炭素の管理濃 度について。(2)新規検討物質について。(1)アクリルアミドの管理濃度について。(2)塩 素化ビフェニルの管理濃度について。(3)臭化メチルの管理濃度について。(4)フッ化水素 の管理濃度について。(5)粉じんの管理濃度について。(3)抑制濃度の考え方について。 (4)その他。  第4回管理濃度等検討会:平成20年6月10日。(1)前回検討会の保留物質について。 エチレングリコールモノメチルエーテルの管理濃度について。(2)新規検討物質につい て。(1)ニッケル化合物の管理濃度及び測定方法について。(2)砒素及びその化合物の管理 濃度及び測定方法について。(3)抑制濃度の考え方について。(4)その他。  第5回管理濃度等検討会:平成20年8月8日。(1)前回検討会の保留物質について。 ニッケル化合物の管理濃度及び測定方法について。(2)管理濃度等検討会報告書につい て。(3)その他。  第6回管理濃度等検討会:平成20年10月27日。(1)作業環境測定基準第10条第1 項中の「これと同等以上の性能を有する採取方法ないし分析方法」の検討等。(2)その 他。まず1.2.3のところまで。以上です。 ○櫻井座長 今までのところは事実についての報告事項です。何か修正すべき点をお気 付きでしたらどうぞ。よろしゅうございますか。  それでは審議事項に入ります。管理濃度についての説明を、事務局からよろしくお願 いします。 ○杉山係長 引き続き3頁をご覧ください。4.「検討結果について」。(1)の「管理濃 度について」。  作業環境評価基準(昭和63年9月1日、労働省告示第79号)における管理濃度の設 定及び見直しについて、本検討会において、新たに管理濃度を設定する物質(3物質)の 管理濃度の設定及び既に管理濃度が設定されている物質(12物質)の管理濃度の見直し を行った。管理濃度の検討結果の概要については次のとおりである。  A.新たに管理濃度を設定する物質について。平成18年度及び平成19年度に開催され た「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価検討会」において、労働者 の健康障害発生のリスクが高く、作業環境測定を行うべきとされたホルムアルデヒド、 ニッケル化合物、砒素及びその化合物の3物質について、次のとおり管理濃度を検討し、 管理濃度を設定する。(1)ホルムアルデヒド、(2)ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを 除き、粉状の物に限る)、(3)砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガリウムを除く)。  これら3物質の管理濃度の改定案や検討内容については、前回の第5回検討会で既に 検討済みですので、省略させていただきます。  B.既に管理濃度が設定されている物質について。既に管理濃度を設定している物質の うち、日本産業衛生学会の許容濃度及びACGIHのばく露限界値(TLVs)と比較し、労働者 の健康障害防止のため改正する必要があると認められる12物質について、次のとおり 管理濃度を見直すものとする。(1)エチレングリコールモノメチルエーテル、(2)クロロホ ルム、(3)シクロヘキサノン、(4)テトラヒドロフラン、(5)トリクロルエチレン、(6)トルエ ン、(7)二硫化炭素、(8)アクリルアミド、(9)塩素化ビフェニル(別名PCB)、(10)臭化メチ ル、(11)フッ化水素、(12)粉じん。  各物質ごとの管理濃度の改定案と検討内容については、同じく前回の第5回検討会で 既に検討済みですので、内容については省略させていただきます。以上までにご意見等 がありましたらお願いいたします。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。何かご意見はございますか。前回までに十分ご議論い ただきましたし、このまとめそのものも既にご確認いただいておりますので、あえて追 加のご意見はないようですね。それでは、この件はこれでお認めいただいたということ にしたいと思います。 ○杉山係長 では引き続き6頁をご覧ください。(2)の「測定方法について」のA.測定 方法の見直しについてです。  新たに管理濃度を設定する物質及び既に設定されている物質に関し、本検討会は、同 検討対象物質の作業環境測定基準(昭和51年4月22日労働省告示第46号)における 測定方法等の検討を行った。検討結果、次のとおりとする。  〈新規設定〉。(1)ホルムアルデヒド。試料採取方法は「固体捕集方法」、分析方法は 「高速液体クロマトグラフ分析方法」、検知管の使用可。(平成20年3月1日施行済 み)。(2)ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状の物に限る)。試料採取方 法は「ろ過捕集方法」、分析方法は「原子吸光分析方法」、検知管の使用不可。なお捕 集はオープンフェースによるものとする。(3)砒素及びその化合物(アルシン及び砒化ガ リウムを除く)。試料採取方法は「ろ過捕集方法」、分析方法は「吸光光度分析方法又 は原子吸光分析方法」、検知管の使用不可。  〈見直し設定〉。(1)二硫化炭素。試料採取方法=固体捕集方法のときの分析方法に、 「ガスクロマトグラフ分析方法」を追加する。(2)アクリルアミド。試料採取方法をろ過 捕集方法から、「ろ過捕集方法及び固体捕集方法」に変更する。(3)臭化メチル。試料採 取方法に固体捕集方法を追加し、この固体捕集方法のときの分析方法として「ガスクロ マトグラフ分析方法」を追加する。  〈上記以外の物質〉。上記以外の物質の測定方法については変更なし。  Aの部分は以上です。 ○櫻井座長 資料番号-28の別紙の「管理濃度等整理表」にも整理してあるわけですね。 ○杉山係長 中身のほうは整理表の検討結果に基づいて、概要、数値に盛り込んでおり ます。 ○櫻井座長 ただいま説明していただいた部分について、何かご意見がありましたらど うぞ。 ○中明委員 〈新規設定〉の(2)(3)に、「検知管の使用不可」とわざわざ入れたのは、何 か理由があったのですか。粒状物質に検知管を使うことはほとんどないし、砒素とその 化合物についても、たぶん使用不可というのは特に必要ないと思ったのですが。 ○奥村副主任 特に議論があったわけではなく、ただ整理表に。 ○中明委員 特に入れた理由はないのですね。 ○杉山係長 整理表の記載内容に検知管の項目がありましたので、新規対象物質として 良いか悪いかも含めて、記載しておいたほうがいいのではないかということで入れてお りました。特に不必要というご意見があれば、また検討させていただきたいと思います。 ○中明委員 私はあまり必要ないと思っているので質問したのです。 ○櫻井座長 あまりにも言わずもがなですので、削除しますか。 ○中明委員 入れる理由があるのだったら入れてもいいけれども。 ○櫻井座長 削除でいいというご意見ですので、削除しましょう。ホルムアルデヒドの 「検知管の使用可」というのはそのままで、ニッケル化合物と砒素及びその化合物につ いて、「検知管の使用不可」というのを削除すると。ほかに何かありますか。  ありませんね。それでは次に進んでください。B.の「これと同等以上の性能」ですね。 ○杉山係長 7頁のB.についてご説明いたします。  B.これと同等以上の性能を有する分析方法について。(1)ホルムアルデヒド。作業環境 測定基準の第10条第1項に掲げる別表第一の上欄に掲げる物質等については、「別表 第一の下欄に掲げる分析方法又はこれと同等以上の性能を有する分析方法によらなけれ ばならない。」とされている。他方、一般の建築物内の空気環境のホルムアルデヒドの 測定については、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則第3条の2に 基づき、空気中の濃度0.1mg/m3(0.08ppm)を測定できるものとして、2・4-ジニトロフ ェニルヒドラジン捕集-高速液体クロマトグラフ法により測定する機器、4-アミノ-3-ヒ ドラジノ-5-メルカプト-1・2・4-トリアゾール法による測定の他、現在までに12型式 の測定器を指定している。  これらの測定器は、作業環境中に相当程度以上の妨害物質が存在しない限り、原則と して、別表第一の下欄に掲げる分析方法と同等以上の性能を有する分析方法と認めるこ とができると考えられる。  建築物における衛生的環境の確保に関する法律は、通常「ビル管法」と呼ばれている 法律ですが、このビル管法の第4条の建築物環境衛生管理基準、ビル管令第2条の空気 環境の調整基準で、ホルムアルデヒドの濃度を「0.1mg/m3(0.08ppm)」と定めており、 またビル管則第3条の2の表の第7号の下欄において、ホルムアルデヒドの測定に用い る測定器として、高速液体クロマトグラフ法及びトリアゾール法により測定する機器の ほかに、「厚生労働大臣が別に指定する測定器」を規定しております。こちらについて は資料番号-29にまとめたものがありますので、こちらの資料について少し補足説明を させていただきます。  ビル管法に基づくものですが、厚生労働大臣が別途指定するという形になっておりま す。2の別途指定する測定器については、平成15年5月7日の厚生労働省告示第204 号で、その旨定めております。こちらの最終告示については平成19年7月13日付けで、 現在は下の表のとおり、12型式の測定器を指定しております。製造者等の名称、型式 について下の表のとおりです。この定め方についてご説明させていただきたいと思いま す。  要綱等では大臣の指定の方法について、特別な方法を設けておりません。ただ、概ね 次のとおり運用されております。まず「ホルムアルデヒド測定器に係る申請者からの問 合せ」があった場合、申請者による測定器の申請を受け付けます。検討会をその都度立 ち上げ、委員の指定を行います。検討委員に申請書等の書類を提示します。事前打合せ、 追加資料が必要な場合又は事前の数値の確認が必要な場合は、その段階で打合せをしま す。検討会を開催します。この検討会には申請者も同席され、指定機器の合否をその検 討会当日に発表いたします。合格の場合には告示等の改正を行い、官報に掲載するとい う流れになっております。  この検討会では申請書は任意で、特に定まった様式はありません。添付資料も特に任 意で、何が必要というのも決まっていません。委員の判断で、この資料が足りない、も う少し資料を追加していただきたいという部分があれば、追加でそれを申し付けるとい う形になっております。また、審査のための審査基準というのも特にありません。委員 の裁量に基づいて検討するという流れになっております。  なお、資料番号-29の2頁4にありますように、第1回検討会を平成14年に開催し ておりますが、こちらの検討会の委員は下のような構成になっております。平成19年 度まで、基本的に委員は代わっておりませんが、平成19年度に高柳委員から斉藤敬子 委員に1人変更されました。  引き続き参考資料-1をご覧ください。こちらが「大臣指定測定器の申請に係る申請 例」です。この申請例は、バイオメディア社のホルムアルデヒドセンサーの測定器に関 する申請書、ないし添付書類です。  3頁をご覧ください。「測定方法」と「測定原理」が書いてあります。こちらの測定 器はセンサー方式で、まずセンサーの測定方法は次のとおり開始するとなっております。 電源スイッジをオンにし、薬液シリンジから薬液を測定チップに滴下する。このチップ を測定器の本体に設置します。その後3分間、自動測定が開始されて、ディスプレイ上 に表示されるという流れになっております。機械の概要等については、添付書類23頁、 24頁、25頁に載っております。  測定原理については3頁に戻ります。4-アミノ-3-ヒドラジノ-5-メルカプト-1,2,4- トリアゾール(AHMT)溶液、(試液A)です。これとアルカリ溶液(試液B)を含浸させ た測定チップの上のフィルターにガスを吹き付けると、ガス中のホルムアルデヒドと AHMTが反応することによって、6-メルカプト-S-トリアゾロ〔4,3-B〕-S-テトラジンが 生成し、チップが赤紫色に発色します。この発色強度の変化率を、発光素子(LED)、そ の他ホトダイオードによる電圧変化から測定し、ガス中のホルムアルデヒドガス濃度の 定量を行うという形になっております。  こちらの試験結果ですが、申請を出すに当たり、メーカーのほうであらかじめ測定試 験を実施しております。その測定試験の内容は、チャンバー試験と現地の試験による2 つの試験結果が書いてあります。チャンバー試験については、12頁以下に試験結果の 表が載っております。まず13頁の第1回目の試験です。DNPH/HPLC法のほうが、オー ソドックスな固体捕集、高速液体クロマトグラフ法で30分測定をした平均値です。こ ちらの値は0.04ppmです。それについて同センサーのほうは0.046ppmという形で、ほ とんど遜色のないデータになっております。同じように表8、表9、表10という形で、 それぞれの試験結果があります。それぞれ高速液体クロマトグラフ法と比べて、遜色の ないデータが出ています。  現場試験については17頁以降に載っております。現場でサンプリングをして、測定 結果の測定値を試験するという方法です。こちらも17頁の表16にありますように、高 速液体クロマトグラフの測定で0.046ppmに対して、センサーの測定値も0.046ppmとい う形で、ほとんど遜色のないデータになっております。  続いて、参考資料-2をご覧ください。こちらは日本作業環境測定協会から作成して いただいた、ホルムアルデヒドの簡易測定器の測定試験の結果表です。試験に使った使 用機器については、1頁の下のほうにある、光明理化学社製のDNPH管、2頁のガステッ ク社製の91PL及び91P、光明理化学社製の710及び710A、ハンドポンプによる試料空 気吸引式の検知管として、ガステック社製の91LL、光明理化学社製の171SC、最後にセ ンサー機器として、新コスモス電機社製のホルムテクターXP-308B、理研計器社製のホ ルムアルデヒド検知器としてFP-30があります。こちらで挙げたうち、ガステック社製 の91PL、光明理化学社製の710、ガステック社製の91LL、センサーの2つについては、 それぞれビル管法で厚生労働大臣が指定した機器の中の1つに入っております。以上5 つが、既に厚生労働大臣が別に指定する測定器に含まれております。  こちらの試験結果のデータは、3頁以降にあります。こちらも同じように固体捕集、 高速液体クロマトグラフの基準値と、その他簡易測定器の測定結果の比較表という形に なっております。試験内容については、まず管理濃度付近の0.1ppm、定量下限10分の 1の0.01ppm、逆に管理濃度3倍の0.3ppm程度という3段階の濃度で試験結果を出して おります。  3頁が0.1ppm試験です。(2)のほうに測定値一覧があります。標準となる平均値が 0.0693です。これに対して検知管は0.072等、新コスモス社製のセンサー方式が0.07、 理研が0.0683という値で、特に遜色のないデータ結果になっております。なお、新コ スモス社製、理研以外の4つの機械については、いずれも検知管方式で、新コスモス社 製と理研のFP30の2つが、センサー方式という形になっております。  4頁が0.01、定量下限10分の1試験です。こちらの検知管の4つについては、それ ぞれ定量下限試験では変色なし又は限度外の数値ということで、測定不可能値になって おり、検知管ではかなり難しいという結果になっております。それに対してセンサー方 式では標準値0.014に比べ、新コスモス社製が0.0125、理研が0.0112とほとんど変わ らない値になっております。  最後に、5頁の0.3ppm試験です。こちらは(2)の基準となる測定値が0.45ppmとなっ ておりますが、これに対してガステック91Pは0.44、新コスモス社製が0.3725、理研 が0.49という値になっております。  以上のように、日本作業環境測定協会の資料においても、ホルムアルデヒド用簡易測 定器は作業環境測定基準で指定する固体捕集、高速液体クロマトグラフ分析方法と比べ、 特に遜色のないデータという形で出ております。なお、検知管方式については、ホルム アルデヒド用簡易測定器では、一部0.01ppm測定では困難な結果が出ております。しか し検知管については作業環境測定基準第10条1項の規定の範疇ではなく、第2項で別 途、検知管としての項目を設けており、検知管については基本的に限定列挙という形で 例示されておりますので、今回問題としている第10条第1項の「これと同等以上」の 検討においては、検知管は切り離して考えていただければと考えております。  再度戻って、資料番号-27の8頁を読み上げていきます。8頁の(2)の「他の物質」に ついてです。  作業環境測定基準の第10条第1項に掲げる別表第一の下欄に掲げる分析方法及び第 13条第1項に掲げる別表第二の下欄に掲げる分析方法として、物質ごとに、吸光光度 分析方法、ガスクロマトグラフ分析方法、高速液体クロマトグラフ分析方法、原子吸光 分析方法、けい光光度分析方法のいずれかが掲げられている。他方、例えば、日本工業 規格(JIS)の『排ガス中の金属分析方法(JISK0083)』を見ると、分析対象物質と分析方 法の組合せとして、カドミニウム、鉛、ベリリウムについては原子吸光分析法、ICP分 析法が、ニッケルについては吸光光度分析法、原子吸光分析法、ICP分析法が、マンガ ンについては吸光光度分析法、原子吸光分析法、ICP分析法が、クロムについては吸光 光度分析法、原子吸光分析法、ICP分析法が、砒素については吸光光度分析法、原子吸 光分析法、ICP分析法が定められているところである。  このように上記JIS規格その他各規格で認められた分析対象物質と分析方法について は、原則として、別表第一及び第二の下欄に掲げる分析方法と同等以上の性能を有する 分析方法と見なすことができるものと考えられる。  参考資料として、参考資料-3をご覧ください。参考となる日本工業規格(JIS)の分析 方法です。先ほどの排ガス中の金属分析方法の分析対象物質、分析方法については以下 のとおり定まっております。その他の参考となるJIS規格としては2の排ガス中の臭素 分析方法以下、いろいろな形で定めがあります。以上、作業環境測定基準の告示第10 条第1項等で定める、これと同等以上の性能を有する分析方法の例示内容について、報 告書のほうで提示させていただいておりますが、この提示内容についてご審議いただけ ればと考えております。よろしくお願いします。 ○櫻井座長 ただいま、「これと同等以上の性能を有する分析方法について」の(1)と(2) について、まとめて説明がありましたが、いかがでしょうか。 ○松村委員 資料番号-29に出ている、ビル管法で言われているホルムアルデヒド用の 測定器は、どうも原理的に言うと、テープ式の化学反応で呈色するようなもの、電気化 学的なガスセンサーなど、いろいろなものが入って、原理としては一様ではないと思う のです。ビル管理の場合はホルムアルデヒドの測定をインターフェアするような成分は、 あまりないかと思うのですが、例えば病理試験室のような所で使うホルムアルデヒドの 場合には、アルコールなども入っているわけで、その辺の妨害がセンサーの種類によっ て違うのではないかと思うのです。これは日測協のほうでだいぶ調べられたようなので、 それぞれの計測器の測定原理において、妨害があるとかあまりないというようなことは、 やはり注意するべきではないかと思うのです。ものによっては検知管と同じように、妨 害のある所では使ってはいけないということを明記する必要があるのではないかという 気がします。 ○小西委員 私どもの所でやったのは、予定の管理濃度の10分の1まで測れるかどう かという試験をしただけで、いま松村委員がおっしゃったような妨害の問題を特段、実 験室的には検討しておりません。ただ私どもとしては、この前例としてビル管のほうの 制度があります。これはあくまでもそういうセンサーを制度的に使うときに申請してい ただいて、それを審査して使える、使えないということをおやりになる制度です。いま までの作業環境測定ではなかった制度ですよね。そういう意味で、例えば我々の所でも 一つひとつすべてのことに対して検討をしてデータを出すといったら、大変な費用と時 間がかかりますから、これは大変いい制度ではないかという気がしております。  いま松村委員がご指摘のことについては、おっしゃるとおりで、濃度のレベルが 0.08と0.01とでは違ってきますから、作業環境測定に採用される場合には、例えば病 院の病理検査室などのフィールドデータを指定し、現場データとして提出していただき、 再確認をする方法をとったほうがいいと思います。そういう指定の方法を考え、データ 等を再確認するという方法でやっていくと、時間的にもそうかからなくていいのではな いかという気がします。ただセンサー自体、我々としても全部のセンサーを試験しては いないものですから何とも言えませんが、原理的な違いがどの程度あるのかというのは、 それぞれデータを出していただいたところで、審議をしたほうがいいのではないかとい う気がいたします。 ○松村委員 検知管についてもほとんどメーカーのカタログと言いますか、実際には説 明を信用しているわけです。ですから、それでもいいのですが、作業環境としての必要 条件というものがあると思うので、それを明確にした上で使用した方がいいのでは。 ○小西委員 ガイドブックなどでも、検知管に関しては妨害のことが書いていますから、 取扱いとしては同じことが必要になると思います。 ○菅野委員 同等以上の分析法が検討されるべきは、通常の機器分析法についてではな いでしょうか。つまり、検知管のような簡易分析法についても、同等以上であるかどう かのチェックは成り立つのですか。 ○奥村副主任 おっしゃるとおり、検知管は該当しないと思います。 ○菅野委員 通常の機器分析ですと定量下限、つまり管理濃度の10分の1の濃度で測 定の標準偏差、バラつきは10%を超えてはいけないとなっていますが、参考資料-1に 示されたものは、明らかに10%を超えていると思います。定量下限の定議というのは、 たぶん法令には書いていないと思うので、その取扱いがどうなのかは分かりません。し かし実際にやられているところですと、ここに出されたものはセンサーですので、機器 分析法というよりか、簡易測定法に入るのではないかと思います。 ○中明委員 センサー自体は確かに菅野委員がおっしゃるとおり、簡易測定器で対応す ればいいと思っています。 ○菅野委員 簡易測定器を同等以上ということで考えているのでしたら、既存の方法が あるわけですから、それと比較することは必ず可能です。そうしたら現場で並行測定を して、そのデータをいただいて検討することができると思いますが、新規の物質につい ては必ずしも可能ではありません。新規の物質について簡易測定法を初めに認めるとい うのは、ちょっとまずいのではないかと思います。 ○櫻井座長 要するに、同等以上と認めるかと言いますと、そのように認める根拠が十 分ではないという段階ですか。 ○菅野委員 はい。これを機器分析と同等というように認めるのは、たぶんできないの ではないかと思います。ただ検知管のほうは、測定下限の定義がはっきりとはしてない と思いますので、ある程度環境のよい所で確認のために行う測定でしたら、検知管と同 等のものとして使うことができるというのが妥当ではないのではないかと思います。 ○櫻井座長 検知管と同等のグレードであるならば、問題はないということですよね。 ○小西委員 いまの同等ということに関しては、具体的にどういう手続をしたら同等と して認めてもらえるのかというのがあるわけです。通常の場合ですと、もし測定機関が この方法は同等かどうかということを示したければ、労働基準監督署に申請をして、そ れが局なりにずっと上がって行って、同等かどうかという話になると思うのです。しか し同等と認める内容の要件というのは、今お話のとおり、きちんとした細かいことは決 まっていないのです。ですから、それもいずれはきちんとしなければいけないだろうと 思います。  我々の協会でも以前に、松村委員や中明委員などに委員をやっていただいたとき、同 等と認めてもらうためには何のデータが必要なのかと、いろいろ議論をしたことがあり ます。最終的にあまり結論は出なかったのですが、やり方としては委員がおっしゃった とおり、同等ということになりますと、私は検知管や従来の機器分析なり何なりの分析 と同等でもいいのではないかという気がするのです。その代わり必要な試験要件をきち んと決めて、そのデータを満たしているかどうかということは、将来的にやらなければ いけないことだと思うのです。そうでないと、いつまで経っても検知管は曖昧な計測器 みたいに思われてしまう部分があるし、同等の分析機器も同じだと思うのです。  ただ、やり方が違うのは、ここで「同等」と言っている意味が、管理濃度の10分の 1を測れることが同等なのかということです。検知管など、これらの分析装置というの は、測定基準の中にもいろいろな方法の組合わせがあります。例えば、TDIでは吸光光 度はできない等。ただ管理濃度の10分の1はできないけれども、濃度の高い所は現実 にはできるわけです。ですから相手に応じて使う道具なり分析の方法を選ぶということ を、これからはきちんと考えていかなければいけないだろうと思います。  そういうことから同等というところについても、管理濃度の10分の1は同等だけれ ども、例えば高濃度は駄目なのか、そういうところの選り分けというのは、やはり必要 になってくるだろうと思うのです。ある意味ではそういう形で内容や要件を提示するこ とによって、今度のビル管のこういう方法みたいにして、それぞれがそれに合わせたフ ィールドデータ、要件を満たしたデータを持ってきて審議をするというシステムは、是 非採用していただきたいという気がします。今おっしゃったとおり、ホルムアルデヒド については最初からそうだということについては抵抗があるかもしれませんが、それを また改めてやるということであれば、その要件も決めた上でもう1回、ビル管のデータ 等をそのまま使うことにするのか、あるいは再度その必要データをきちんと提出しても らって審議するのかということによって、やはり違ってくるのではないかという気がす るのです。 ○名古屋委員 先ほど松村委員が言われたように、例えばビル管の場合とホルムアルデ ヒドを使っている医療現場とでは、全然違います。ここで見ると、例えばメチルアルコ ールは100ppmですが、医療現場はパーセントで出ていますよね。そうすると当然、誤 作動を起こす可能性があるわけです。やはり条件が違うので要件をきちんと決めないと、 使う場所によって違ってきますから、ビル管のデータではOKにはならないということ になると思うのです。 ○菅野委員 ビル管理はホルムアルデヒド以外、ほとんどないと思うのです。 ○小西委員 ビル管ではほとんどないでしょうね。 ○菅野委員 二酸化炭素とか一酸化炭素とか。 ○櫻井座長 あることはあるけれども、量としては少ないですね。ですから、そういう 妨害因子になるリスクは小さい。 ○菅野委員 ファクターが違いますよね。 ○櫻井座長 それに比べると労働現場のほうは大きい。 ○小西委員 ただ、いろいろな流れからいって、アメリカでの測定や、そもそも測定は 何のためにするのかという意味を考えますと、分析結果が早く得られて、改善に結び付 けられるということが大切だと思います。そう考えていくと、作業環境測定についても センサーの導入というのは、やはり不可欠なことだろうと思います。そういう意味では 大変いい機会だと思うので、その導入の要件をきちんと決め、要件を満たしたものにつ いてはきちんと認めていくという方向がいいのではないかという気がします。 ○櫻井座長 とにかく測定しやすくする、こういう機会にいいものはちゃんと採用する というのが大事だと思うのです。 ○松村委員 簡易測定器というのは、あまり正確に分離分析ができなくても、その範囲 の用途でという断り書きをして使えると思うのです。そういう測定器ごとの特性をはっ きりして、ビル管理法のようにメーカーから申請が出てきた場合、それをどうやって審 査して同等以上と認めるのか、それも簡易測定器の同等以上なのか、普通の分析法の同 等以上なのかというのを、まだ1例もやったことがないということのほうが不思議なの かもしれません。ですから、その辺をはっきりして、そういう手続を決めていくという のであれば、とてもいいことではないかと思います。 ○櫻井座長 法に基づいて年に2回分析する場合には採用できなくても、例えばその中 間でモニターするには、もうどんどん使ってほしいわけです。 ○中明委員 座長がおっしゃるように、本来日常的にこういうものを使って簡単に数値 が求められるのだったら、何も半年に1回ということではなくて、それは実施すべきな のです。 ○小西委員 ただ、この簡易測定器の件については、改善室のほうも何回かに分けて、 いろいろな調査研究をやってきておりますが、いい結果がでない。逆に言うと、メーカ ーとしては、法律で使えるということが出ない限り、それに対応したものをなかなか作 ってくださらないということがあります。要するに、使ってくれるかどうか分からない ものに、なかなか設備投資はできないと言われるのです。ですから、どこかで採用の仕 方をきちんと決めてあげると、やはりメーカーもいいものをきちんと出してきてくれる のではないかという気がしています。調査研究をやっても、結局そこで行き詰まってし まうのです。ただ、アメリカなどはどんどん簡易計測器に移ってきていますし、キャリ ブレーションの方法などもきちんと出してきています。そういう部分では日本でも導入 していくべきだろうと思います。 ○奥村副主任 それでは検討会の流れとしては、認める方向で考えるべきであるが、そ の手続については行政側で十分考えて、通達にするのか、別途委員会等を設けるのか、 こちらでよく考えたいと思います。  報告書の書きぶりとしては、報告書の7頁の下から2行目に、「作業環境中に相当程 度の妨害物質が存在しない限り」ということで、妨害物質があったらこれを使ってはい けないということを担保したいと思っております。作業環境測定は、国家試験を受けた 測定士が行うこととなっておりますので、そこはビル管法とは多少違って、ある程度判 断を委ねることができるのかというように考えております。  法令の書きぶりですが、「同等以上と認められる」という所に他の法令の箇所では、 「局長が認める」ということを書いている条文もあります。この基準では、「局長が認 める」とは書いてありませんので、行政のほうで考えるときはその点を踏まえて、いろ いろな対応ぶりを考えていきたいと思っております。報告書の文面としては、これでよ ろしいでしょうか。 ○櫻井座長 文面としては、このままでもいいのではないでしょうか。 ○中明委員 私は、いま説明のあった部分がすごく気になっているのです。相当程度以 上の妨害物質とは何かというのがあるのです。いろいろなものがあるわけですから、妨 害があるかないかを「作業環境測定士が、判断しろ」と言っても、それがすんなりいく とは思えないです。とはいえ、この判断基準を行政で決めるというのは難しい。しかし、 このようにするのが本当にいいのかというと、ちょっと気になるのです。 ○奥村副主任 むしろ用途を限定したほうがいいということですか。 ○中明委員 例えば、ホルムアルデヒドの場合、例えばセンサーならセンサー、検知管 なら検知管というように、比較的根っこがわかっているので対応できると思います。そ ういうものについては「妨害はこんなものがあります。それを理解して使用するよう に」というやり方になると思うのです。 ○奥村副主任 種々の化学物質を取扱う作業場を除きとか、一般的な事務所等ではとか、 あるいは。 ○中明委員 何か、少し縛りをかけたほうがいいと思います。 ○奥村副主任 はい、わかりました。 ○櫻井座長 この報告書がもう結論ということではありません。「認めることができる と考えられる」と書いてある。それで実際に認めるかどうか、次に、また検討会等を開 くとか。 ○半田室長 検討会を開くことはありませんが、ここまで専門家としてご意見をまとめ ていただけるのであれば、あとは私どもの責任でとりまとめたいと思います。場合によ っては行政の責任でやっていくといっても、どうしても専門家の先生のご意見を承りた いというときがあるかもしれませんが、いまのところは今日いただいたものを参考に私 どもで、通達なりに反映させていけるのかなと考えております。 ○名古屋委員 相当以上と書いてある中で、本来的には、活性炭にしろ固体捕集の場合 って、1つの物質に対してどのような捕集ができるとはどこにも書いてないですね。で も、本来的に濃度が高くなって3物質、4物質入ったときには当然、その吸着特性が違 ってくるから吸着したものを追い出す物質も出てくるわけです。そういう議論は何もさ れていないと思います。通常の作業環境の濃度を考えた場合、活性炭のキャパシティの 大きさからすれば、そこまでは考えなくても大丈夫なのではと思います。しかし、例え ばもっと、ものすごく高い濃度だったら、当然その吸着特性によって、吸着される成分 が排除されます。折角吸着したのだけれど、あとから吸着されずに追い出してしまうと いうのはいくらでもあるわけです。作業環境測定基準に則って、活性炭とか固体捕集を 使用するのであれば、まず大丈夫であろうし、また相当部分は障害物にはなり得ない。 しかし、センサーや検知管になってくるとそれはあり得ます。そこはちょっと違ってく るだろうと思います。 ○小西委員 相当程度以上の妨害物質というのは、書き方としてはちょっとわかりにく いですね。ですからこれを書くとすると、先に、「原則としてその分析法と同等の性能 を有する分析によって考えられるけれども、妨害物質が存在するときには、何らかの対 応が必要である」とかという書き方にしたほうがいいのではないでしょうか。相当程度 というと、その相当程度のテンションがわからないですから。 ○櫻井座長 そうですね。 ○小西委員 基本的には使えるけれども、妨害物質のときには駄目なんだという書き方 に換えられたらどうでしょう。 ○櫻井座長 いかがでしょう。それでよろしいですか。 ○中明委員 「特に注意が必要になる」という形にしておく。 ○櫻井座長 そういうことですね。 ○半田室長 関連で1つお尋ねします。いまのお話大変興味深く、ありがたく拝聴して おりましたが、中明委員が、作業環境測定士の判断に委ねるところがちょっととおっし ゃいました。実は私、これはどちらかというと個人的な考えになるかもしれませんが、 私は最近、専門家というのは何だろうかと考えることがよくあります。やはり衛生管理 者にしても、この作業環境測定士にしても、あるいは安全管理者にしても。安全管理者 はそのラインから選任するもので、資格ではないのでちょっと別かもしれません。衛生 管理者、測定士などなどのいわゆる資格ですね。国家資格になっているようなものであ って、そこで定められた専門家というのは、専門性を有し、状況に応じた判断ができる 人がなっているはずだと思うのですが、現実にはやはりちょっと、資格者まかせでは厳 しいかなというのが委員の方々の感じ方でしょうか。 ○菅野委員 仕事が忙しいので、ちょっと不審な点があったとしても、それをいちいち 再チェックするとかいう時間がないという場合も結講多いのではないかと思います。 ○中明委員 再チェックするのは難しいですね。測定士は忙しいですから。 ○小西委員 ただ、測定法ができてもう30年ぐらいたちますよね。初期にやっていた ときは、いろいろな方法が細かくなくて、みんないろいろ検討しながらやってきたとい う時代でした。その後ガイドブックができて、1つのデータがきちんと示されるように なってきました。本来その妨害物質があるのかどうかや、濃度レベルがどうなんだとか いうことについては、基本的には測定士がやるデザインの中に入っていることなので、 事前調査を行いデザインをして、その中でどういう測定方法、検知管ならどのレベルの 検知管を使うのかということは、自ら調べてデザインをするべきなのです。それがもう、 あまりそういうことを測定士自身がいま、現実にはやられていないケースが多くなって いると思う。だから、いま室長が言われたとおり、本当はそれをわかるのが専門家なの ですが、いまのところ、そういう形では、どうもやられなくなったケースが多くなって きていると思います。本来の専門家の姿に戻っていただければ、ある程度その妨害物質 があっても、事前にちゃんと調べられるわけですから、運用はやっていけるのではない かなという気はしています。 ○松村委員 そういうことで言えば、日本の法律というのは限りなく個別事例を列挙し て、その基本のところの定義が抜けているような気がするのです。だからこの測定も、 精度は管理濃度の0.1まで測らなければいけないというのですが、その0.1をプラスマ イナス何パーセントで測ればいいのかとか、そういう基準ではないのです。妨害物質の 影響がその範囲以下ならば、本当はいいわけです。そういう部分を定義してしまえば、 あとはどういう分析法を使っても本当はいいはずですね。私はそういうことをいろいろ なところで感じています。 ○櫻井座長 今後はやはりそういう方向に進みたいですね。 ○半田室長 測定に関して、今日の冒頭でもちょっと申し上げましたが、抑制濃度など の考え方にしましても、少し専門家の専門性が頼りないからこうなっているのか、ある いは逆に、あまりガチガチに定めるから専門家がスポイルされて育たなくなってしまっ たのか。どちらが後か先かわかりませんが、いずれにしろこの状況をもう少し柔軟化し ていく必要があるのだろうなと考えております。そのあたりの検討をこのあとも、引き 続き委員の方々にご指導いただきたいと思っているところです。よろしくお願いします。 ○中明委員 (2)のほうですが、これ、カドミウムです。カドミニウムではないですから ね。それとここでは、物質ごとに吸光光度分析法がいまのところまだ入っているでしょ う。抜いてもいいようなものが結構あるようだけど。 ○櫻井座長 しかし、吸光光度はまだJISに入っている。 ○中明委員 だけどあまり、いまさら吸収管を使ったりなんかしてやるということはな いです。金属なんかほとんど原子吸光になってしまっていて、昔ながらの実存法なんて いうのはまずないわけだから、少しずつ変えていって、この吸光光度分析法は除いてい ってもいいような気がします。今回すぐにというのは難しいかもしれませんが、これか らはその分析法自体も、いろいろ新しい方法も出てきているし、もっと簡易型のものが どんどん入ってきていますので、分析方法について取捨選択ということを考えてもいい ような気がします。意見です。 ○名古屋委員 新しい装置がなかなか入れない。古い装置は残るのですが、新しい装置 がいまのところ入れない感じです。ICPだってハンディタイプのものがあって、現場に 持っていけば、トランクぐらいのもので、すぐその場で分析してできるのだけれど、そ れが入ってこない。逆に、旧態依然とした吸光光度法があって、1社ぐらいやっている となかなか法律が外せないというような。そこはやはり改善していかないとまずいので はないか。特にICPなんかほかでは全部OKなのに、作業環境だけ入っていないという おかしな制度になっている気がする。それは同等以上に認めているからいいのだけれど、 分析方法の機器はどんどん進んでいるのだから、法律もそれに対応できるような形にし ておかないと遅れてしまうと思います。 ○小西委員 測定機関として備え付けるべき機器のところとも関連してきますね。その 場合に吸光光度法が残っていると、吸光光度計を持たなければいけないことになってし まっている。いま言われたとおり、自分の所にICPがあっても吸光光度計を持たないと 測定機関の届出ができないという、逆の現象もあるわけです。使わない機械を届出上は 持たなければいけないというようなものもある。新規にこれから測定機関をやろうとし ている方に、あまり使わない吸光光度計を持たせるというのも変な話なので、そこはや はり1回見直しが必要だろうと思います。  あと、例えば金属の4号の登録を取るときに、すべての機械を本当に持たなければい けないのかどうかです。うちはICPでやりますよということで対処できるのであれば、 ほかに原子吸光を持たなくてもICPでいい。その備え付けるべき機器も、ある程度選択 ができるようにされたほうがいいのではないかという気がします。 ○櫻井座長 ありがとうございました。いずれも大変もっともなご指摘だと思います。 ○半田室長 駄目押しの確認ですが、いま中明委員、名古屋委員がおっしゃった分析法 と言いますか測定機器の問題は、これは作業環境だけでなくすべて共通する話という理 解でよろしいですか。そのことを少し勘案しながら、仕組みを考えてみたいと思います。 ○中明委員 ホルムアルデヒドについては、ビル管の方法を入れようというのであれば、 ほかの対象物質についてもいいものがあればどんどん入れていくという形にしておかな いと、名古屋委員がおっしゃったように、古いのばかり残っていて、新しいのが入らな いというのは、これはちょっとおかしいと思います。 ○松村委員 いま、ICPは実際には使っているわけでしょう。それは同等以上だからと いうことで、正式な手続ではないけれど使っているわけですか。 ○小西委員 これは特に環境計量と、両方やっておられる所はほとんどICPに変わって いますね。環境計量はICPを認めていますから。 ○松村委員 そうですね。排水は金属がたくさん出てくるし。 ○小西委員 はい。これはちょっと一時期、同等以上という形で私どものガイドブック の中にICPを入れた時期があるのです。これは通達も何も出ていなかったのですが、そ ういう形の時期がありまして。ですから、いまのところ我々としてもICPでやることに ついては特段否定はしてないです。やっておられる所はあると思います。 ○松村委員 そういうのは一度ちゃんと整理をしていただきたいですね。 ○奥村副主任 いろいろ行政の課題が多いということは意識しておりまして。対応した いと思います。 ○櫻井座長 このB.の「これと同等以上の性能を有する分析方法」についてという所 については(1)と(2)があって、(1)の所については先ほどご指摘のとおり、文をちょっと修 正することにしました。(2)の所は、当面この書き方でよろしいですか。はい。  それでは次に(3)性能(稼働)要件(抑制濃度等)についてという所に入りたいと思 います。事務局からお願いします。 ○杉山係長 では8頁(3)性能(稼働)要件(抑制濃度等)について。A抑制濃度の見 直しについて。(1)抑制濃度は、昭和46年4月28日労働省告示第27号「旧特化則第6 条第2項に基づく局排の性能要件」(以下性能要件告示という。)において示されてい るものであるが、その後、昭和50年告示(新特化則に係る告示)制定以後、特に数値 の改訂は行われておらず、現在、抑制濃度と管理濃度の数値が乖離している物質が20 物質存在している状態である。  20物質の抑制濃度値は、昭和45(1970年)当時の日本産業衛生学会の許容濃度又は ACGIHのばく露限界値の値に基づいて設定されたものであるが、その後見直しが行われ ておらず、現在の許容濃度ないしばく露限界値とも大きく異なっている。改正する抑制 濃度の数値としては、管理濃度について既に本検討会において詳細な検討を行ってきた ので、同管理濃度の数値と合わせることが適切である。次のとおり、管理濃度を抑制濃 度の値とする。具体的な各物質の抑制濃度ないし改訂案、それの検討内容については、 同じく前回第5回検討会で検討しておりますので、内容については省略いたします。  9頁(2)に移ります。また新規対象の3物質についても、管理濃度と同じ値に抑制濃度 を設定することが適切である。次のとおり、管理濃度を抑制濃度の値とする。こちらに つきましても同じく第5回検討会で既に検討済みですので省略いたします。  9頁の(3)、ここは誤植で(2)ではなく(3)です。平成18年度リスク評価検討会において 報告された物質のうち、「硫酸ジエチル及び1,3-ブタジエン」については、新たに特 定化学物質とするべきとされ、作業環境測定の実施は要しないが、設備の密閉化又は局 所排気装置等の設置が必要な物質とされた。硫酸ジエチル及び1,3-ブタジエンに対す る局所排気装置の性能(稼働)要件を検討した結果、性能要件は制御風速として0.5m/ 秒とする(平成20年3月1日施行済み)。以上の内容につきまして、特に訂正する部 分がないかどうか確認をよろしくお願いいたします ○櫻井座長 いかがでしょうか。 ○小西委員 内容ではないのですが、例えば石綿の立方センチメートルの3乗の所の字 が、1つ、後ろの頁のシアンの所の立方メートルの3が、ほかの活字と合わせたほうが いいと思います。 ○櫻井座長 シアンもそうですね。これはご検討いただいたことが記載されているわけ で、よろしいですか。 ○名古屋委員 確かに濃度はこういうふうに変わって、濃度についての計り方が当然付 帯要件でついているはずなのですが、そこについては何も触れないで。例えばあとは検 討するよとかいうことは何もなくて、いままでどおり測定しなさいということになるの かどうか、そこを教えてください。 ○杉山係長 次のB.の部分で触れておりますので、そちらでご検討いただければと思 います。 ○櫻井座長 ではB.のほうに。 ○杉山係長 B.に移ります。局所排気装置の性能(稼働)要件のあり方について。  現在、特化物、有機溶剤、鉛、粉じん及び石綿について、局所排気装置の性能(稼 働)要件として抑制濃度方式又は制御風速方式を定めている。性能(稼働)要件のあり 方について検討したところ、(1)制御風速が最も簡便な確認方法であり、性能要件を制御 風速に一本化するべきとする意見、(2)制御風速が基準より小さくても第1管理区分が達 成できている場合、制御風速は非効率的ではないかという意見、(3)局所排気装置設置後、 B測定の方法で最もばく露濃度が高いと考えられる測定を行い、これを管理濃度より低 くする方法があるのではないかとする意見などが出され、結論には至らなかった。また、 現行の抑制濃度の測定方法(昭和58年7月18日基発第383号通達による測定方法)に 対して、作業環境測定基準に統一してB測定的な方法を導入できないか測定方法を見直 すべきであるとの意見が出された。今回の検討では、現行制度における性能要件につい て、抑制濃度の値は管理濃度の値と合わせることとした。今後、実証的な研究調査を踏 まえ、性能要件のあり方について、さらに検討されるべきである。  こちらの内容につきまして、検討会での提言内容をコンパクトにまとめましたが、こ の提言内容につきご審議をいただければと考えております。 ○櫻井座長 いかがでしょうか。これから検討するという。 ○中明委員 比較的いいと思います。 ○櫻井座長 でもわりあい早く検討しないと。管理濃度をこういうふうに変えるわけで す。ということであれば、この文でよろしいですかね。 ○中明委員 制御風速のことは書いてない。早くなくしてほしい。 ○名古屋委員 もともと制御風速というのは、濃度測定がないときに1つの要件として 決められたものなのだから、管理濃度とか測定基準ができたら制御風速というのは外さ なくてはいけないのを、外さないでいままでずっと引きずってきているという部分があ る。制御風速を外して管理濃度一本でやってほしいというのが、私の前からの主張です。 ○小西委員 問題というのは管理濃度がどんどん下がっていったとしても、排気設備が ある限り制御風速は満足しなければいけないというのがいまのやり方で、二重規制みた いになってしまっているのです。ですから、改善の意欲がだんだんうすれ、結局、その 製造設備をやめない限りは。その設備を使っていると必ず、両方の要件を満たしていか なければいけない条件になっている。生産する側では二重規制というような感覚になっ てしまうということです。 ○名古屋委員 制御風速を設置したときのもとの考え方に戻れば、当然外さなければい けないものがまだ生きている。だから二重規制になっているということで、やはり早く 外した方がいい。逆に外してしまえば前から言っているように測定士のレベルも上がっ てくるし、リスクの評価もついてくる。いろいろなことがうまくいくのではないかなと 思います。特にCO2の削減には直結するのではないかと思います。 ○櫻井座長 作業環境測定の頻度が、年に1、2回というようなオーダーである点に問 題があるのですね。 ○小西委員 逆に言うと、いま法定頻度でできる測定というのは第1管理区分だけなの です。ですから法定頻度で測定をしているということは、第1管理区分だということが ある程度、ずっと確認されている所に関しては法定頻度で6カ月に1回とかいうことで すから、第2、第3になったときは、法定頻度の測定というのはないわけです、すぐに 改善して確認しなければいけないわけですから。そういうことで考えていくと、何年間 ずっと第1管理区分を続けてきたら軽減するという方法もありますから、そういうもの を噛み合わせていくといい。安定した現場で、第1管理区分が保たれているかどうかを チェックするというのが本来の基本的な考え方ですよね。ですから、それは担保できて いるという形で考えていってもいいのかなという気がします。 ○名古屋委員 制御風速が悪いのではなくて、それは設計要件としては残さなくてはい けないのだけど、測定と連続させるのはまずいのではないかなということです。 ○奥村副主任 例示しました(1)、(2)、(3)に、名古屋委員がおっしゃった制御風速は外す べきという言葉を、もう少し明確に加えて書き直したいと思います。あと、下から6行 目の「また」以降の文章は、これは(3)の文章と同じことを繰り返している、文章の整理 が悪くて分かれておりますが、(3)と本来一緒ですので、一緒に溶け込ませるように書き 直したいと思います。文案はまだ出ませんが、あとで整理してご案内したいと思います。 ○櫻井座長 このいくつか挙げてある意見を考えた場合、皆さんが言っている意見を最 も適切に表現しているとは言えないのですが、この文としてはこれでよろしいですかね。 ○奥村副主任 書き直した文章は委員の方々にメール等でお送りしてご確認いただきた いと思います。 ○櫻井座長 いまのような意見に近いものを。これは、いままでもときどき議論はした けれど、真っ向から議論したわけではないので、今日のご意見も含めてちょっと書き直 してください。最後、「今後、実証的な研究調査を踏まえ、性能要件のあり方について、 さらに検討されるべきである」。これはこれでよろしいですね。ほかに何かご意見あり ませんか。それではこれで今日の審議事項は一通り終わりましたね、 ○半田室長 どうもありがとうございました。これで今日の会議は終わりといたします。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課 環境改善室      電話03-5253-1111(内線5501)