08/09/25 第1回高齢者医療制度に関する検討会議事録 平成20年9月25日 高齢者医療制度に関する検討会   第1回議事録 (1)日時    平成20年9月25日(木)17:00〜18:00 (2)場所    厚生労働省専用第18〜20会議室 (3)出席者   岩本委員、大熊委員、川渕委員、権丈委員、塩川座長、        樋口委員、宮武委員、山崎委員        舛添厚生労働大臣        <事務局>        水田保険局長、榮畑審議官、神田保険局総務課長、        佐藤保険局医療課長、吉岡保険局総務課高齢者医療企画室長 (5)議事内容 ○吉岡室長 委員の皆様には本日は御多忙のところお集まりいただきまして誠 にありがとうございます。  定刻になりましたので、ただいまより第1回「高齢者医療制度に関する検討会」 を開催いたします。開会に当たりまして、舛添厚生労働大臣より、ごあいさつを 申し上げます。 ○舛添大臣 急遽のお願いでございましたが、皆さんどうもお忙しいところお集 まりいただきましてありがとうございます。すべて着席のままで今日は議論をし たいと思います。 私が厚生労働大臣になって、この「長寿医療制度」を実施に移すということで、 大変いろんないい面もございますし、制度として論理的にも完結しているという ことで、例えば地方自治体、特に市町村でこれまでの国保と比べて保険料の格差 が1対5であったものが1対2に縮まる。これは都道府県単位の広域連合でやっ たからですけれども、そういう良い面もあります。 しかし、いろんな御不満がありましたので、できるだけの改善をやってきまし た。例えば3,500 円の保険料が月350 円、10分の1になるという改善もやりま したし、10月15日から470 万人の方が保険料をお支払いただかなくてよくなる という改善をやりました。けれども、国民の感情は感情で別でありまして、1つ には75歳の誕生日が来たら有無を言わさず、どこかへ連れていかれるように、 この長寿医療に連れていかれるのはいかがなものかという反発があって、それは 樋口委員からもよくお伺いしているところであります。 もう一つは、天引きのみでやるということで、これに国民の不満があるわけで すから、政治を預かる者としては、国民の声にきちんと耳を傾けて対応するとい うことが必要であろうと思います。 私は一生懸命この制度を定着させ、いいところを更に伸ばし改善するという努 力を行ってきましたけれども、福田内閣が終わるに当たりまして、私のやってき たことを振り返って、やはり反省すべきは反省し、国民の声に耳を傾けて、より よい改革をやった方がよいと思いましたので、ああいう提案を申し上げ、今のよ うな観点から見直して、必要な改革をきちっとやるべきであるということを申し 上げたわけです。麻生新総理とは何度も議論をこれまでもしてきましたけれども、 全く同じ考えであるということで、まず私の方から、麻生新総理の考えを国民の 前に示し、麻生新総理が、ある意味でエンドースするという形で、今日に至って いるわけであります。 いろんな御意見があると思います。今日はお集まりいただいた委員の方々も賛 成反対を含めてあると思いますけれども、やはりもう一度よく議論をして、いい ものは残し、さらに改善すべきは改善していく。最終的にどんなに論理的によく ても、制度として論理一貫性があろうとも、国民が嫌だというものは国民は受け 入れません。国民の願いに沿って物事を変えるということが必要であります。 私は、政権が替わるというときに大きな政策変更をやるべきであると思ってい ますから、福田政権が替わり、次の政権ができるときに一つの政策変更をやる。 これは政治の現場では当たり前のことであるわけですから、これを国民の皆さん に御提案申し上げたということであり、昨日再任で厚生労働大臣を続けろという ことでありますから、これは麻生内閣の方針であり、麻生新総理がこのことをや るとおっしゃって、その総理に任命をされたわけですから、私はこれからはこの 「長寿医療制度」を、更にいいものに変えていく。 現実に皆さんの議論を踏まえて、その方向が国民の声を聞く形になれば最適で ありますので、そういう方向で努力をしたいと思います。厚生労働省に気兼ねす る必要は全くありません。私に気兼ねをする必要も遠慮することも全くありませ ん。全く自由に忌憚のない意見をお述べいただいて、これは傍聴も自由ですから、 メディアの皆さん方も、是非国民の皆さん方にここでの議論をお伝えいただいて、 国民みんなでもう一遍考え直す。そして、よりよい制度をつくり上げていきたい と思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。 ○吉岡室長 今回は第1回目でございますので、委員の皆様につきまして、五十 音順に御紹介させていただきます。 東京大学大学院経済学研究科教授の岩本様です。 国際医療福祉大学大学院教授、元朝日新聞論説委員の大熊様です。 東京医科歯科大学大学院教授の川渕様です。 慶応義塾大学商学部教授の権丈様です。 東洋大学総長、元衆議院議員の塩川様です。 NPO法人高齢社会をよくする女性の会理事長の樋口様です。 目白大学大学院生涯福祉学研究科教授、元毎日新聞論説委員の宮武様です。 最後に、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授の山崎様です。 なお、本日は東京大学大学院法学政治学研究会教授の岩村様は御欠席でござい ます。 この検討会を進行していただく座長につきましては、あらかじめ大臣から塩川 先生にお引き受けいただくようお願いしておりますので、今後の議事進行をよろ しくお願いいたします。 ○塩川座長 突然御指名いただきまして、今大臣室で言い渡されたところでござ いまして、ダンプカーが当たってきたような感じでびっくりしておるんですけれ ども、私自身が実は後期高齢者の当事者でもございまして、自分自身のことでも あるし、国民のためでもあるしということで、皆さんの意見を聞かせていただい て、本当に国民が納得するような結論を付けた方がいいのではないかと思います ので、御協力のほどお願い申し上げたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○塩川座長 それでは、時間も逼迫しておりますので、会議を始めたいと思いま す。 本日は初回ですので、委員の皆様にできるだけ幅広く意見陳述をしていただき たいと思っておりますので、順番に御意見をいただければと思います。 なお、お手元に、長寿医療制度の仕組みなどについて、資料を配付させていた だいておりますので、参考にしていただければと思っております。 それでは、まず最初に岩本委員から御意見をお願いいたします。時間の都合が ございますので、お1人大体5分程度でお話ししていただければ結構かと思いま す。よろしくお願いいたします。 ○岩本委員 東京大学の岩本でございます。よろしくお願いいたします。 突然、こういうお話をいただきまして、びっくりしたところもありまして、ま だ私の考えも十分整理されていないところがございまして、まず大きく戸惑った というところでございます。 私は今、社会保障審議会の医療保険部会の方に入っておりまして、今月もその 審議会はあったんですけれども、現在の長寿医療制度をこのまま維持していくと いうことで協力を求められたわけなのですけれども、見直しというのがいきなり 出てきまして、こういう検討会に入っていまして、どうなっているのかというこ とで若干戸惑いがありまして、国民の方もそう思っておられるのだろうと思いま す。 当事者もこちら側にそのままおられるわけですから、それで見直してどうなる のと言うのがまずあります。これまで決めてきて、それで実行されている方がそ のままおられて、見直しますとなると、わずかな修正をするのかなという感じに 見えますが、国民はもしかしたらこれは非常に抜本的な改革、制度そのものを取 り替える改革を望んでいるかもしれないわけです。 なぜ考え方が変わったのかなというのがよくわからない。先ほど大臣がおっし ゃられたように、政権が替わったというお話なのですが、政権が替わられて新し い総理大臣がずっと前からこういうことを考えられていたかどうかもわからな いわけですから、本当にどこまでやる気があるのかということがよく伝わらない と思います。 ですから、舛添大臣が、どうしてこういう形の転換があったのかということを 御説明していただきたいと思います。  その後は役所の側が、これまで意思決定にも関わってきておられて、現在実施 している方がそのまま残られておりますが、今後どうするのでしょうか。どのよ うにお考えなのかわかりませんが、そういう質問をする場ではないと思いますけ れども、本当にどうなっているのかがよくわからないと思います。 それでは、私の方の考え方というか、意見を少し申し上げさせていただきたい と思います。 医療保険部会の方に関わっておりましたので、この後期高齢者医療制度の議論 をずっと長い間見てまいりました。ただ、審議会の方はそれに参加する前に、20 03年の閣議決定で骨格が決まっておりまして、それをどうこうするという話では なくて、どのような形で具体化するかという議論だったわけであります。 今から思い起こしますと、最初の方で、どうして75歳で区切るのかという議 論が大分交わされました。私もそれに関しては若干疑問を持っておりました。要 するに積極的、具体的な理由というのが余り見つからなかったように思います。 事務局の方から出された説明の方で一番強く出されていたのは後期高齢者に適 した医療を提供するという理由が述べられていたと思います。 結果はどうなったかといいますと、この4月から新しく始まった制度の中で、 75歳以上の高齢者に対して、こういうサービスがあります。こんないいサービス がありますというものが出てきたかというと出てこなかったように見えます。制 度が変わって切り離されて新しい方に移って、医療サービスはどうですかという と、あとの説明ですと以前と変わりませんということになってしまっているわけ ですから、75歳で独立させた理由というもの、国民が納得する理由はどこにある のかというところを考えますと、私としては本当に説得的な理由があるのかなと いうのを素朴に疑問に思います。 当時の説明でされていた目論見というのは、実現されていないのかなというふ うに思います。 独立した制度を設けるということで、そこで保険者機能を発揮しましょうとい う話もあったわけです。医療費がどんどんかかるわけなので、そこのところを効 率的にしていかなければいけないというのは当然なのですけれども、だれがやる かというところで、保険者がそこのところで汗をかくというのを、これから重視 してはどうかという考え方で保険者機能の強化ということが語られてきたわけ ですけれども、広域連合ができました。広域連合が、今、張り切って何かやって いるでしょうかといいますと、これもよくわからない。広域連合も顔が見えない という状態です。 制度としてはいろいろつくりましたけれども、笛吹けど踊らずという感じで、 保険者機能を強化するという手だてを打つということはいいと思うんですけれ ども、残念ながらそれに伴って保険者が積極的に活動するという姿が見られない という状況だと思います。 そういった点でいろいろな問題がありますので、これだけの批判を浴びた以上 は抜本的に見直していくということは、当然必要だろうと思います。 その際に大事なことは、今までの意思決定を振り返って、何を間違えたという か、どこを軽視したことによってこれだけ批判を浴びるものを最終的に作ってし まったかということをきっちり検証する作業が必要だと思います。反省をしない で、そのまま次の意思決定をしてしまいますと、また同じように失敗するという ことが起こりかねないと思います。この医療保険改革というのは10年以上の長 い期間をかけて議論されてきたので、さまざまな改革案がその都度出されて議論 されて、選択をして来たわけであります。今から新しい別のプランが出てくると いうことは多分ないと思います。 これまで考えられたプランをまた並べて、今回の経験を踏まえて考え直すとい う形になるかと思いますが、その際は、これまでの考え方をきっちりと検証して、 結局、何をやりたいのか、我々は後期高齢者の医療をどのようにすればいいのか ということを考えていくことが大事だろうと思います。 どのように変えるにしても、財源調達の問題が一番大きな問題になりますが、 どのような制度に変えるにしても、現役世代の負担、支援というものがなければ 成り立たないということは言えると思います。どこをどう変えてもそれが必要だ ということです。 いかにして現役世代が納得のいく形で、そういうことが行えるのかということ を、国民の理解を求めないとどんな制度もうまくいかないということが言えると 思います。 あと大事なのは、高齢化することによって医療費がどんどん増えていくという 状態です。制度改革をすると、何かいいことが起こるかなということで、例えば 保険料が安くなるかなと国民は思うかもしれませんが、時間が経てば保険料を上 げなければいけないわけですから、制度改革をしたら保険料が上がってしまうと いうことが起こります。そのときに保険料が上がること自体が制度改革のせいに されてしまうという可能性もあります。 高齢化が進むことによって保険料が上がっていくということは理解していた だいた上で、どのように国民が納得する形で、負担するのかということを考えて いくことが大事だろうと思います。 もう大分時間を使っていますので、最後の意見と言いますが、私は常々、この 医療保険制度自体はリスク構造調整でこういう独立した制度を設けないでやっ ていくのがいいのではないかと思っておりました。 リスク構造調整は、この秋から政管健保が協会健保に変わることによりまして 導入されます。そこで一つ試されるといいますか。今まで全国一律だった保険料 を、都道府県で違った保険料にするという形で、それで保険者の規律を出すとい うことを制度としてこれから入れていくということなのですけれども、その後に 政管健保の財政が厳しくなってきていますから、保険料を上げるということをし なければいけないわけで、これが先ほど申し上げたように、制度改革と高齢化が 進むことによって、支援金が増えるということでの保険料負担の増加が一緒にな ってしまうので、リスク構造調整が、また悪者扱いされかねないという問題があ りますので、その辺り、冷静に制度改革の効果と高齢化の効果を分けて考えてい くことが大事かなと思います。 持ち時間をちょっと超過したかと思いますけれども、以上で終わらせていただ きます。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それでは、大熊委員、お願いいたします。 ○大熊委員 この制度は、今、悪いところばかりを言われておりますけれども、 いいところもいろいろあると私は思っております。例えば家庭医というか、総合 医というものを新たに考えるとか、人生の最期の迎え方をそれぞれ自分で考える とか、いちいち面倒なことなく天引きをするとか、です。保険料の個人単位化も、 公平性の観点からの女性たちの長い願いでありました。大会社に勤めて裕福な息 子を持ったお母さんは保険料を払わなくていい、子供を失った一人ぼっちのお母 さんは冷遇されるという今までの制度が変わっていくという意味では非常にい い面をたくさん持っていたと思います。 ただ、家庭医についても人生の最期をどうするかということについても、75歳 で切るという理由は余り見当たらない。介護保険をつくるときに、保険料の徴収 を40歳で切ったというのも何の根拠もなかったわけですけれども、えいやっと。 これならば国民が納得するであろう。介護のつらさがわかってくるのは40歳位 であろうということで決めたのですけれども、今度の75歳はたまたまオールド ・オールドという75歳以上をあらわす用語が国際的に使われてはいるものの、 説得力に問題があったのではないか。 「物語介護保険」を連載して、http://www.yuki-enishi.com/kaiho/kaiho-00. htmlにアップしております。今53話を書いているところなのですけれども、政 治家の皆さんは介護保険を導入したならば、票が逃げていくのではないかと非常 に心配していたということがありました。 ここには朝日新聞と毎日新聞のOBがいるわけですけれども、そのときに読売 新聞の若い政治部記者が、「政治家の人たちが心配するほどみんなお金を出した がっていないのだろうか」という着想の下に世論調査をかなり苦労をした末にお やりになりまして、やってみたところ、10人中7人は新しい介護保険に賛成であ る。10人中8人以上の人が負担しても構わない。どのくらいの負担かというと3, 000 円が3割くらいですけれども、10,000円以上でもいいという人が1割もいた という結果が出ました。政治家の皆さんは大世帯で、家族主義でいらっしゃるけ れども、そうではない多くの庶民は、実は介護保険を望んでいたということがわ かって、そこから空気が変わっていったということがございました。 そういうふうに支持されたというのも、あのときは、厚生事務次官を本部長に して、対策本部というのを立ち上げて、かなりしっかりと、物事を組み立ててい って、一般に少しずつ知らせていったということ。 それから、私どもメディアが介護地獄のキャンペーンをしていたということが 相まって、そのような高い支持率があったのではないかと思います。 残念ながらの後期高齢者医療制度については、私は現役の記者ではありません ので、細かいところまではわからないんですけれども、非常に短時間に少ない人 数でバタバタというふうにおつくりになりました。介護保険のときは、高齢者の 意見、女性の意見いろんな人の意見を聞きながらやりましたが、後期高齢者医療 制度については、決める人の中には、後期高齢者の人がおられなかったという調 査が東大医療人材養成講座のレポートに載っていました。 短期間にやらなければならなかったという切羽詰まった状況の中で、このよう なことが起きてしまったのかなと思っています。 元はと言えばオールド・オールドの人たちの医療費が非常にかさんでいること を何とかしなければいけないということが改正の出発点なのだと思いますけれ ども、その背景に、介護の部分の人材がどんどん逃げていくという状況がありま す。病院から出たくても出られないという現実があります。よその国では医療で やっていないことを、医療という名の下で行っているのが日本のおかしなところ です。介護の手かあれば自宅で暮らしたり、自宅の雰囲気のケアホームで暮らせ る人たちが、病院というところで過ごさなければいけない。認知症の患者さんに ついても精神病院で過ごさなければいけないというような事態を改革しなけれ ばなりません。本来医療でなくてもよいようなところを切り離していくという抜 本的なことも併せて考えないと、制度自身をあれこれいじり回しても、医療費が 無意味に増えていく部分について対策が取られないのではないかと心配をして おります。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それでは、川渕委員お願いいたします。大体5分ぐらいでお願いいたします。 ○川渕委員 私は4点申し上げます。 1つは、2006年4月26日の衆議院厚生労働委員会に私も参考人で呼ばれまし て、こういうことを言っているんです。 医療保険を75歳で線を引く意味というのが果たしてあるのかどうかというこ と。 それから、年金が60歳から65歳へ上げていきますが、年金天引きになってい るスキームはどうなのか。 介護保険は65歳になっているが、そことの整合性はどうか。 自分も変なことを言っていたと思いますが、やはり失敗に学ぶということが必 要かと思います。 2点目でありますが、実は2001年に厚生労働省高齢者医療制度等改革推進本 部事務局が「医療制度改革等の課題と視点」という立派な報告書をまとめられて います。これを見ますと、4つの案があるのですが、その中の今回取られた独立 型(若年世代からの支援を行う場合)では、例えばお年寄りは一人当たり保険料 が64,000円から68,000円になると試算しています。つまり、4,000 円くらい上 がることを想定しているわけです。 退職者も、105,000 円から135,000 円へと上がると試算しています。 ですから、お年寄りに対して保険料が上がるということは想定していたが説明 が足りなかったのかなと思います。 もう一方で、健康保険組合等が以前の老人保健制度よりも、3,900 億円増えた とおっしゃっていますが、この試算を見ますと、健康保険組合は一人当たり1.3 万円減ると書いてあるわけです。 厚生労働省の方も人の子でありますから、間違えることもあるかと思いますけ れども、なぜ推計が間違ってしまったのかお年寄りの負担増は避けられないこと を、なぜおっしゃらなかったのか、2つのことが失敗事由ではないかと思います。 3つ目は、なぜ年金天引きという同じスキームをとる介護保険制度はソフトラ ンディングができたのに、長寿医療制度はうまくいかなかったのか。これは私の 仮説ですけれども、介護保険は新しい給付がありましたが、長寿医療制度は新し い給付がなかったからではないか。そればかりか、6,000 円ぽっきりの定額払い があったり、これは凍結になりましたけれども、2,000 円で、いわゆる終末期の 医療の遺言書を書いてくれと。私はレット・ミー・ディサイドは広く国民に普及 すればいいと思っていますが唐突に出てきた2,000 円という金額があまりに安 すぎたのかなと思います。 4点目は、今からどこまで見直すのか。昨日いただいたファックスには「高齢 者医療制度の見直しに関する検討会」と書いてありますが、今日の表記には「高 齢者医療制度に関する検討会」と「見直し」がもう消えている。果たして、内科 的な治療をやるのか、外科的な手術をするのか。つまりゼロベースに考えていい のかどうか。今日は初回なのであえて提案したい。 というのは、10月1日から健保協会がスタートして政管健保が47都道府県そ れぞれに分かれてくるわけです。これに関しても平成18年4月26日の参考人質 疑の中で申しましたが、「確かに都道府県でやることは賛成だが技術的に可能な のかどうか」、また、「国民すべからく平等な医療が受けられるという中で、47 都道府県それぞれが違う医療があっていいのかどうか」。この辺は、これからス タートするリスク調整のあり方とも関係します。 最後は、いずれにしても、白いキャンバスになかなか絵は描きにくいのではな いか。しかし、理想は保険者の一元化でありますが、これはなかなかできないと 言われる。2000年にどうして韓国で実現できたのか。日本の国民皆保険制度にな らった国がなぜ途中からできたのか。あるいは2009年からドイツも一元化をや りますが、その取組みは日本でできないか。少し研究する余地はあるのではない かと思います。 以上4点であります。 ○舛添大臣 川渕先生、今の「見直し」というのは余りくどくどしくなるから取 っただけで、ゼロベースからでも何ベースからでも、議論は全く自由です。 ○塩川座長 権丈委員お願いいたします。 ○権丈委員 まず、配付いたしました尾辻先生と日本福祉大学の二木先生との座 談会の後半部分、こちらの方に高齢者医療のことが書いてありますので、見てい ただきたいと思います。それのページ数として、108 ページをごらんになってい ただきたいと思います。 今からこの箇所の自分の言ったことを読み上げようと思うのですが、読み上げ る前に、私の医療政策に対する前提、福澤諭吉が言う本位に相当する私の中での 価値前提というものを明示しておきます。樋口先生が今日配付されております 「後期高齢者医療制度7つの大罪」とあります。その中の「世界一の高齢国で医 療費が低い現状がおかしいのです」、まず私もそういうふうに考えております。 第2点目としては、高齢者の医療費は若年層との比率の大きさで問題視される という話があります。世間では65歳以上の人の医療費は65歳未満の人たちに対 しては5倍、二木先生によれば4.3 倍とか言われておりますけれども、65歳未 満の人たちの一人当たり医療費がほかの国の比べて低い段階でその比率を比較 して5倍は大きいから小さくしようというような議論をしても何の意味があるの かというのが根っこの部分にあり、この比率を下げるためには若い人たちの医療 費を上げるというのが、まず、この国ではやらなければいけないことだろうとい うのがあります。 そして、昔から書いていることとして、医療費が増加したときに医療保険が赤 字になったと報道されるわけですが、保険料を上げなかったら赤字になるという のは当たり前でありまして、本日配付した1つ目の資料では、ほかの先進国と比 べて日本の社会保険料の水準が低いというのを私は延々と指摘しています。これ らの前提に基づいて、この後期高齢者医療制度について、私がどういうことを言 うのかというのが108 ページの下のところの尾辻先生の写真の下にあるところ です。読み上げさせていただきます。 「05年当時、75歳で線を引くことに医療上、明確な理由かあるのかと疑問を 抱く人が多かった。75歳から自己負担が減るとか、75歳で切ったから、若い人 1人当たり老人医療費の負担が、高齢化が進んでも過重にならないように、若い 人と高齢者の老人医療費負担割合を自動調整化できたのは、75歳で切ったことの 長所と考えることもできます」。だから、私はいいところもあると思っています。 「ただ、75歳で医療制度の独立させることは、いただけないと私は申し上げて きました。なぜ年齢による医療制度の線引きに問題があるかというと、財政当局 がカネを出す代わりに口も出しやすくなるからです。従来の老健制度という財政 調整制度ではなく独立した後期高齢者医療制度に公費5割が投入されるように なりました。しかし公費という税金は結構怖いものだと思っています。 多くの経済学者には、社会保険料と税金が同じものに見えるようなのですが、 保険料と税金を比べると明らかに無視できない違いがある。財務省は保険料につ いてはなかなか口出しできないが、税金には物すごく口出しできる。どうしても 給付抑制がかかり、『後期高齢者に対する診療報酬を下げたり、終末期患者扱い して医療を手薄にする手法を採るよう圧力をかけてくるおそれがある』と私は本 誌」、つまり、東洋経済なのですけれども、東洋経済の昨年の9月8日号で言っ ております。 ですから、後期高齢者医療制度に対する批判、あるいは75歳で区切ることに 対する批判というのは、私は別に4月になって言い始めたわけではなく筋金入り でして、2005年の夏8月、郵政選挙の丁度1月前に出た『週刊社会保障』の特本 の中でも、私は75歳以上の独立制度を設けるのはいただけない、と同時に、本 当にそうなるのかという疑念を述べています。 「ただ、今回の改革は悪いところばかりではない」。こういうことは先日も、 後期高齢者医療制度を廃止せよと言っている政党に呼ばれて、入口のところに大 きな垂れ幕に廃止せよと書いてあるのですけれども、廃止なんてあり得ない、冗 談ですよねという話はしてきたのですが、廃止して元の老健制度に戻すだけとい うのはない。この改革は悪いところばかりではないのですから。 「財界人の強い意向を受けてシステムを変えた割には、健保組合の負担が上が っている。前期高齢者医療制度という形で財政調整、具体的には年齢によるリス ク調整が65歳までボンと下ろされてしまったので、健保組合の負担率が上がっ ているんですね。 そこまでいったのだったら、前期高齢者の仕組みを後期高齢者にまで拡大して 65歳以上でリスク調整を行う。そうすれば、国保の救済にまでつながる。そして、 今回改革された政管健保の都道府県運営を今後も生かし、国保も都道府県体の広 域連合の受け皿を利用した運営に発展させれば、かなりよい制度になると思うん です。制度なんて直線的に進化するものじゃないですしね」ということを言って おります。 私がこういうことを考えているというのを御存知の上で、この場に呼ばれたと 思っております。 と同時に私はなかなか考えを変えない人間ですので、よほど論理的に説得して いただかないと考え方を変えない人間ですので、この会議が高齢者医療制度の見 直しというのがタイトルであろうが、高齢者医療制度に関する検討会であろうが、 私は恐らく75歳での区切りはなくし、できれば財界に若干協力してもらいなが ら少し負担を、昔の老健制度の仕組みを65歳まで下ろしてきているところを、 そのまま上の方にまで持っていく。そして、国保に関しては、国保というのは年 齢と低所得という2つのリスクを抱えておりますので、所得の部分に関しては、 国保の被保険者の中にそのまま私はダイレクトに、インアドバンスに国庫負担を して、その人たちに被保険者、一人前の被保険者として国保に加入してもらい、 なるべく生活保護での医療扶助の方に行かないような形で、つまり介護保険で採 っている形になるように国保の中でインアドバンスに財務省の方からお金をい ただきまして、国庫負担してもらう。その制度の中で年齢に関するリスク調整と いうのは、次に前期の仕組み、あるいは老健制度の仕組みを使いながら、年齢に 関してはフェアにやっていきましょう。個々の被用者保険をみれば50%以上の保 険料が拠出金に使われているのはあり得ないという批判がよくあるのですけれ ども、それは基本的に年齢が若いからなのです。 それを、公平なのか不公平なのかというのはもっと根っこの部分から、財政調 整に被保険者の負担能力を加味した応能負担も導入するかどうかも検討しなが ら、制度をみんなで勉強し、理解した後に判断すべきことだと思っております。 ○塩川座長 どうもありがとうございます。ぎりぎり時間を守っていただきまし た。 それでは、樋口先生、お願いいたします。 ○樋口委員 私は幸か不幸か、75歳の時期に、この後期高齢者医療制度とぶつか りました。ですから、当事者としていささか今日は感情的になっているところも あると思います。勿論こういう制度が必要であるとされた経緯については、ある 程度納得いたしておりますし、公的年金を、ささやかでも、もらっている以上、 日本社会に共に生きる連帯の思いとして、高齢者も一定の負担をするということ に関して、決してやぶさかではございせん。 にもかかわらずやはり感情的にならざるを得ない。政策というのは妥協してつ くるものだと思いますから、私もこれから納得できれば幾らでも妥協いたします けれども、本日はリングに上がったところでございますから、不満を全部申させ ていただきます。 お手元に配付いたしました「後期高齢者医療制度7つの大罪」というのは、私 はこのところ、このタイトルで話をしてまいりましたけれども、話すたびに、大 罪が次々と加わって、今日のペーパーでは11でございますけれども、さきほど1 2番目が見つかりまして、14の大罪ということになると思っております。 時間がないから早口で申し上げますし、時間がなくなりましたら、あとは項目 だけで終わります。 第1が「線引きの罪」でございます。 75歳以上の国民から職業上の属性も、たとえば塩川先生は私の認識では学校法 人東洋大学職員ですね、こういう方も含めて職業上の雇用者としての属性も、家 族関係上も、角度変えますと大熊委員が言われましたが、年金をもらっている以 上、サラリーマンの被扶養者の方も少し負担したらいいと思います。しかし、家 族関係の中から追い出して厄介払いして、保険料をとるとは。そういう形でなく たって高齢者に負担してもらうことは幾らでもできたのではないかと思います。 夫婦別れ、親子別れの被扶養者が200 万人おります。この制度に私が名前を付け るならば、75歳以上及び障害者「厄介払医療制度」ということになります。 第2が「天引きの罪」であります。 線引きと天引きがこの制度の二大罪です。天引きという、納入方法の便利さに ついては、これまた考えないではありませんけれども、この天引きにはおまけが 付いておりまして、私のところへ、天引きでいくか、振替納税でいくか選びなさ いという紙が来ました。専門家に教えてもらったのですけれども、天引きにする と保険料の減税が効かないのだそうです。そうならそうと書いておいてもらいた い。 消費者がどちらを選ぶかというときに不利な条件を書かないのは消費者契約 法の違反であります。社会保険庁がそういう不利な条件を記さないで選ばせると いう違反をしてよろしいのでしょうか。 3番が「説明責任不履行の罪」。 幾ら郵政選挙大勝利の中とは言え、国民に対する説明が余りにも少なかったと 思います。裁判員制度がどれだけエネルギーをかけて国民にPRしているかと思 うと、これはやはり私といたしましては、75歳以上を馬鹿にしたとしか言いよう がございません。 4番が「当事者不在の罪」。 ここは、もしかしたら高齢者団体のヒアリングぐらいはなさったかもしれませ ん。私が読んで怒りを禁じ得なかった特別部会の報告書があります。このメンバ ー、10人余りいらっしゃるメンバーのうち、75歳以上はたった1人です。その 先生も医療提供側のお医者さんでありました。75歳以上は国民の1割、有権者で 言えば十数%を占めておりますけれども、その75歳以上の当事者の気持ちを聞 こう、反映させようという態度がほとんどなかったと思います。 次は「名称の罪」。 「後期高齢者」とはもう後がないと言っているようだと言って、私などはむし ろびっくりするくらいの当事者の怒りでございました。私は社会学とか、そうい う側面から後期高齢者という言葉は割合と平気で使っておりましたから。学問的 に専門用語として使っていた人は抵抗ないですけれども、一般の方々は後がない と言う感じでとてもイヤだと言われました。たまたま、75歳以上の人が付けなけ ればいけない紅葉マーク、我々は落ち葉マークと言っている運転のマーク義務化 と重なって、75歳以上は疎外感を強くしています。 やはり新車をつくるときでも化粧品を販売するときでも、どれだけネーミング に企業がエネルギーを注ぐかを思ったら、このように大きな制度を国民に、特に 当事者に納得してもらうためには、名称について3晩ぐらい政府も考えるくらい のエネルギーを注いでいただきたかった。 6番目が「勤労意欲削減の罪」。 企業に働く75歳以上は35万人と言われています。その方々の保険料を御承知 のとおり企業が半分拠出しております。その人たちを追い出すことによって企業 は保険料が要らなくなるから、負担が軽くなるのです。そして追い出された人は 現役並みの所得がある人は高い保険料を払うことになります。 年収600 万円以上は、現役並みとして上限の50万円が課せられます600 万円 そこそこの高齢者に50万円、1割近い保険料負担をさせるのはかなり酷だと思 います。 私の知り合いで今は75歳少し前で600 万円以上稼いでいる人がおりますが、7 5歳になったら絶対に稼がないと言っております。これは、高齢者も元気よく働 くという厚生労働省の方針に反するのではないでしょうか。 7番目が「運営責任不明な罪」でございます。 広域連合というのが、果たしてどうやって明確に責任を取り得るのか、わけが わかりません。 8番目が「主治医制度曖昧の罪」。 これはイギリスの家庭医を、モデルにしているのでしょうし、こういう制度も 私は最終的に悪くはないと思っておりますけれども、そのためには家庭医をしっ かりと養成し、きちんと対応できる家庭医を育ててからではあるまいかと思って おります。 9番目が「障害者差別の罪」であります。 重度の障害者は前期高齢者であっても、この後期高齢者の中に、条件はあるよ うですが、基本的に入れられます。障害者と75歳以上まとめて厄介払いの制度 であります。 10番目が「ターミナルに関する国民的論議粉砕の罪」。 これは大きいと思います。私自身は、チューブづけで死ぬのはごめんだと思っ ているところでございます。せっかくそう思っている人も増えてきて、国民の意 識も成熟してきていたんです。スパゲティー症候群で死ぬのはいやだと。それが 今回の終末期診断書の相談料によりまして、せっかく成熟したターミナルに対す る国民の論議を一挙に20年引き戻したと思っております。制度の中で私の枕元 に来られて、どうですかと聞かれたら、全部にノーと答えます。 11番目が「共感と敬意不在の罪」でございます。 今までの老人福祉法にも、特に改正された介護保険法には、高齢者は長年この 社会に貢献したものとして遇するという意味のこととか、高齢者の尊厳を保持す る介護を提供することを目的とするとか、また、老人保健法にも、やはり高齢者 の健康を支えるというような文言が記され、自分もやがて年を取るという、言っ てみれば国全体からの共感と愛情があったと思います。 今回のこの制度の条文を見ますと、医療費の適正化ということが一番前に出て います。やがて自分も年を取るという同情、共感、あえて言えば一片の想像力も ない。これが国民・高齢者を最も怒らせたものだと思っております。だれもみん な年を取りたくて取ったものではないのです。今は「厄介者」と思われるかもし れないけれども、若いときから税金を払い保険料も払い、若い人たちの人生も支 えて来ているのです。こういう高齢者に対する若干の敬意も配慮もないというこ とに怒っております。 12番目、今日一つ付け加えたのが「事務ミスだらけの罪」であります。 これは優秀である官僚としては、大変まずかったのではありますまいか。 最後に一つ。 今回の見直し論議が総選挙のための装いではなく、仮に選挙に勝ったらいつの 間にかなくなってしまったということがないように、先ほど雑談の中で樋口さん の7つの大罪の大半は論破できるとおっしゃた厚労省の方がいらっしゃいまし たから、どうぞ論破していただきたい。公衆の面前できちんと論議していただき たい。これが選挙対策でなく、本当に国民全体の幸せのために論議がきちんとな されることを願っております。 ありがとうございました。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それでは、宮武委員、お願いいたします。 ○宮武委員 樋口さんが一番最初に挙げられた「線引きの罪」というのが最も大 罪なんだと思います。塩川座長も孫娘に、おじいちゃんはもう家族じゃなくなっ たんだと言われたと、この前、ある席でお聞きして、その通りだなと思いました けれども、一律に75歳以上で別居させるという、別居させられて優遇させると はだれも思わないわけでございまして、冷遇されるのだろうと本能的に思われる のが当たり前だろうと思います。 10年前にこの案が発表されました。高齢者独立方式と財政調整方式のいずれか を選択する案で、その当時はまだ社説を書いておりましたけれども、この独立方 式で75歳以上というのは、言ってみれば75歳以上の方を巨大な病院船みたいな ところへ収容するような発想ではないかと書いたのを今でも覚えておりまして、 一貫して私は疑問を感じ、批判をしてきたわけでございます。 それがこれほどすさまじい批判を浴びるとまでは予測ができなかったんです が、やはりそこが一番問題である。 では、どうするのかということになりますが、少し結論めいたことを申し上げ て恐縮ですが、いい点も確かにあるわけでございまして、75歳以上の財政を、き ちっと分担方法を決めた。それから、これから考えていかなければいけない看取 りまで含めた医療の在り方をここで考えていく。こういうことはやはり大事なこ とであります。 しかも、都道府県単位で、すべての市町村が運営するという広域連合が運用し ていく。これはいろいろ課題があるかもしれませんけれども、医療というのは、 私は将来的には県単位で運営していくものだと思っております。介護の方は市町 村だろうし、医療は県単位である。その筋道が見えてきた。 そうであれば問題の75歳で線引きをするところをどうやって修正をしていく か。改正をしていくかということになれば、74歳以下が入る制度になった市町村 の国民健康保険も、75歳の後期高齢者と同じように市町村の国民健康保険ではな くて、都道府県の広域連合に運用させれば、言わば上半身と下半身が同じ形にす る。別棟の家を建てたのではなくて、同じ構造にして2階建てにすれば済むとい うことです。そういう仕組みでやれば随分様相は変わってくるだろう。 この後期高齢者医療が発足する前に、既に市町村の国民健康保険には保険財政 共同化安定事業というのが導入されまして、月額30万円以上の医療費について は、各市町村の責任ではなくて、各市町村が出した拠出金を基にして都道府県単 位で賄うという仕組みが既に導入されているわけです。 月額30万円以上の医療費は、その県内の市町村国保が使うほぼ4割に当たる というふうに概算されていますので、実は4割分は県単位で運用なさっている。 これをもっと下げて月額20万円までは県単位で賄うということにすれば、6割 くらいの医療費は実は県単位で賄うことになる。 後期高齢者医療制度が発足するとき、市長会も町村会もかなり懐疑的で批判的 でありましたけれども、広域連合案を飲んだ理由の一つは、保険財政共同化安定 事業が導入されて、これだと大分楽になるという思いで、後期高齢者医療制度の 運営責任を、広域連合として引き受けられたという経緯がございます。 そういう意味では、最近まで3,200 もあった市町村の国民健康保険は合併で1, 800 まで集約されてかなり保険集団としては規模が大きくなって、一息はついて いるんですが、これもそんなに長くはもたない。やはり保険集団としてもう少し 大きな単位でまとめていかなければ、1,800 の保険者乱立ではとても持たない。 私がそう思っているだけではなくて、実は今年の夏場ごろでしたか。高知県の 市町村の国保の人たちが研究会をつくって、とても市町村単独ではやっていけな い。県単位の広域連合でもって運営をしたいという提案をしておられます。 従来、国保中央会は一元化を頑強に主張されてきたのですが、下部からそうい う声が起こってきて、これでは持たないから県単位にしてほしいという声が上が っている。現場でもそういう声が上がっているのであれば、75歳未満、75歳以 下も同じ方式でもって建て直しをして、ドッキングをさせるというのが一番リア リティーのある改革案ではないか。白紙に絵を描くのではなく、今ある制度をう まく改造して乗り切ることができるのではないかというのが私の考え方です。 お手元にあります雑文ですけれども、2枚ございまして、1つは「後期高齢者 医療制度」今申し上げたようなことを説明しております。 もう一枚は、その前の保険財政共同安定化事業の内容を書いてございます。こ れは厚生労働省のプロの人は十分御存じのことでございますけれども、私はこの 方式はなかなか知恵のある方式だと思っておりまして、今回も十分活用が可能か なと思っております。 以上であります。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 それは山崎委員、お願いいたします。 ○山崎委員 昭和48年に老人医療を無料化しました。そのころから急激に高齢 化が進むようになりまして、医療保険の世界で言うと、国保をどうするか。その 国保の問題というのは、結局、高齢者を多く抱えていることの問題でございます。 その結果、老人保健法を昭和57年につくりまして、制度間の調整をしてきた わけですが、その老人保健法についていろいろ御不満の声が上がってきたわけで ございます。特に健康保険組合から拠出金の負担増に対する非常な批判がありま した。 歴史を見ておりますと、高齢者の医療費をだれがどのように負担するかという ことに尽きるわけでございまして、これはだれがどう考えてもそんなに新しい抜 本的な解決策はないのではないかと思っております。 平成16年4月でございましたが、年金改正の公聴会で、民主党が盛んに一元 化ということを言っておられまして、今は年金の一元化ということを言われてい るけれども、当然医療保険の一元化という話にもそのうちなるんでしょう。医療 保険の一元化と言ったときに、できると思いますか。事業者とサラリーマンを一 つにすることが。恐らくそういう話になったときに、老人保健制度というのは意 外によくできているということになりませんかということを私は言ったことが あるのでございまして、今振り返ってみますと、やはり老人保健制度は結構うま くできていたんだなという気がいたしますが、その老人保健制度により皆で支え るということについて、特に労使の側から非常に批判が上がっていったことも事 実でございます。 現在の高齢者医療制度というのは、従来の老人保健を中心にした制度間調整の 仕組みを発展させたものだと思っております。 従来の制度には2つ考え方がありまして、世代間で支え合うという世代間扶養 の考え方でございます。 もう一つは、制度間で財政調整をするという考え方でございまして、2つの考 え方が混在していたわけでございますが、前者の考え方、世代間扶養の考え方を 後期高齢者医療制度に純化していく。制度間の財政調整という考え方を前期高齢 者医療制度に純化し継承したんだろうというふうに思っております。 ここ10年くらい議論をしてきたわけですが、私は審議会にも一切、この問題 については関わっておりませんが、はたでずっと見ておりまして、今日の事務局 が用意しましたこのペーパーの6ページにありますが、経緯はこの説明のとおり であります。 このように医療保険をめぐる大きな勢力がありまして、やはり独立型というの は現実には非常に強い勢力でありました。75歳で切って、そこに公費を重点化す るというのは、日本医師会の強い要望でありまして、公費を日本医師会は9割と 言っていたわけですが、9割入れるかどうか別にして、相当な公費をつぎ込んで ほしいということを、健保連も経団連も同じように言っていたわけであります。 一方で突き抜け、サラリーマンと自営業者の世界は永遠に縁を切ろうという非 常にわがままな、連合のような提案もありました。 リスク構造調整というのは、学者はだれもこれが一番いいと言います。私も机 の上で考えればそうだと思います。そしてこのリスク構造調整を推進する勢力と いうのは、実は財務省であったと私は思っております。権丈委員がおっしゃるよ うに、厚生労働省も税財源に余り過度に依存したくない。自由度を確保したいと いう点からすると、恐らく事務当局の本音もリスク構造調整であったと思います。 こういったいろんな主張がありまして、そういった各方面の医療保険をめぐる プレーヤーの御主張を受け止めつつ、何とか折り合いを付けたというのが今回の この高齢者医療制度だろうというふうに思います。 関係者の意見がどこかにみんな入っております。しかし、すべては入っており ません。したがって、みんな一部は支持するけれども皆さん御不満を持った状態 でございまして、不幸なのはだれも本気になってこの制度を支えよう、支持しよ う、推進していこうという勢力がないことでございます。  しかし、元に戻せと言われると、関係団体みんな、それはまた困るということ になるんだと思うわけでございます。  今回のこの問題は、私はそういう経緯からしますと、意外によくできていると 思いますが、やはり説明不足というのが一番だろうと思います。 それから、事務的なトラブルがいろいろございました。 更にネーミングをめぐる、かなり増幅された感情論もございました。 そして、マスメディアが喜んでこれを報道し、批判的な政治勢力はかっこうの 政局の材料にしてきたということだろうと思います。 しかし、議論を見ておりますと、制度の枠組みそのものに対する議論は非常に 低調でございまして、本音のところは市長会も町村会も、国保中央会も、健康保 険組合も医師会も、当面、これでいってほしいというのが本音ではないかなと思 っております。 説明の問題でございますが、私は実は今の年金、医療、介護等福祉、みんな見 ておりまして、介護保険というのがやはり社会保障の構造改革を進める一番の推 進力になっている。今でもそういう力を持っていると思います。 介護保険の一番の価値は、政治的に言いますと、民主党の菅さんが厚生労働大 臣のときに、事務局で法案を準備し、小泉厚生大臣のときに国会に出して通した ということでございます。 政治的にはむしろ民主党の方がこれを推進した力だった。一時自民党の一部の 勢力から、凍結という話もありましたが、2000年4 月から毅然とスタートすべ きだと。高齢者一人ひとりに保険料負担を求めるべきだという主張したのはむし ろ民主党でございます。 もう一つの価値は市民参加でありました。樋口先生はその代表選手であったと 思うんです。そういう介護保険の価値は今なおあると思います。 さて、その介護保険と、評判の悪い後期高齢者医療制度は何が違うのですか。 介護保険は65歳で基本的に切っているではありませんか。現役世代も40歳で切 っているではありませんか。何が違うのですかということでございます。 今は75歳という問題がありますが、65歳で切るのであれば問題ないのかどう か。恐らく問題ないのだろうと私は思います。 つまり、線引きするというのは75歳に問題がある。65歳で整理すると意外に うまくいくのではないかという感じがしております。 それから、負担区分でございますが、高齢者のお一人おひとりに被保険者にな っていただいて、保険料負担していただくということを介護保険でやっているわ けでございます。これも同じです。そして、年金から天引きするというのも介護 保険と同じでございます。地域保険というスタイルも介護保険と同じでございま す。 問題は75歳という年齢。65歳まで下げるべきではないかというのが1つ。 それから、地域保険であるという点でも介護保険と同じなんですが、問題は広 域連合でございます。やはり広域連合というのは住民に見えないんです。ただ、 後期高齢者医療制度ができたのは、市長会が市町村で引き受けるのは非常に困難 だけれども、共同で引き受けたいという形で提案をしていただいて、それででき たわけでございまして、市長会が完全に逃げたわけではないということに価値を 置きたいんですが、しかし、広域連合というのは住民と向き合う機関ではない。 地域で広域連合というのはどういう存在かというと、広域でやっているのはご みと墓と斎場でありました。そして、今回後期高齢者医療制度でございます。そ ういうのが広域連合でございます。 宮武委員がおっしゃったように、今後、医療は県単位で。私もそう思いますが、 そうであれば、やはりここでは県に出ていただくべきではないかというふうに思 います。県知事は選挙で我々が選ぶんでございます。しかし、広域連合の議員だ とか会長というのはどうして選んでいるんでしょうか。つまり、住民と向き合う 機関ではないということが一番の問題であろうと思っております。 元に戻りまして、仮に65歳で切ることについて合意が得られるのであれば、 2つの制度体系があります。 1つは、権丈さんがおっしゃったように、岩本委員もそうでしょうか。リスク 構造調整ということでまとめてしまう。 もう一つは、介護保険と同じスタイルでまとめてしまうというどちらかだろう と思います。 もう一つ、後期高齢者医療制度についていろいろ御批判がございましたが、労 使の側、健康保険組合側の方からすると、むしろ前期の調整の方が厳しいという ことも私にはわかっておりました。 つまり、前期というのは年齢によって保険証を分けていないんです。保険証を 分けていなくても、お金がかかるものに対しては労使は厳しいんです。そういう ことでございます。 それから、S健保が解散したというわけでございますが、これはリスク構造調 整が徹底していないということでございまして、頭割りで負担しているというこ とは、健康保険組合は扶養家族が非常に多いのでございますが、扶養家族も一人 一人が負担者になっているんです。 それから、給与が低いのでございます。つまり、扶養家族が多く、給料が低い 保険者と、給料が高く、扶養家族が少ない保険者と同じ負担を強いられている。 つまり、逆進的な負担になっているというのが一番の問題で、被用者の世界はや はり応能負担で、拠出金を決めるべきだというふうに思っております。  少々長くなりましたけれども、以上でございます。 ○塩川座長 どうもありがとうございました。 これは、医療の問題だけの問題ではないと思うんです。財政との問題との関連 で解決しないとできない問題ですから、皆さん方の意見を聞いて財政負担の方も この程度のことを考えろとか、あるいは保険料の問題も含めて、そういうことが 具体的なものが出てまいりましたが、それは関連省庁との関係において決定すべ きものだろうと思います。 これはまさに厚生労働省の責任だけではなくて、政府全体がこれをどう解決す るかということに向かっていくべき問題だと思っております。 したがって、次回の開催までに今日御発言いただいたものは全部それをプリン トにして、御検討していただいて、次の回のときにそれを中心にしてディスカッ ションをしていただきたいと思っております。 今日は余り時間がございませんが、なお追加で、このことを言い忘れたので、 ちょっと言っておきたいということがありましたら、どうぞ追加していただいて 結構でございます。いかがでしょうか。ないですか。 ○舛添大臣 本当に皆様ありがとうございました。今、いろんな御意見を賜りま して、私自身、今朝の記者会見で申し上げたのですけれども、先ほど宮武委員が おっしゃったように、これは広域連合ではなくて、県の方がはっきりした形では あるんですけれども、むしろ広域化したところに74歳以下も入れるという形が あり得るだろう。 それから、長期的には介護保険と医療保険のドッキングも考えないといけない と思っておりますので、そういうことを含めて全く白紙で、まさに川渕委員おっ しゃったように議論をしていって、つまり、国民が支持しない制度というのは絶 対だめなんで、そういう意味で、私はこれは福田政権が終わり次の新しい政権が できるときに、こういう大きな政策変更をやるべきだと考えました。そうでなけ れば、何のために政治家がいるのかわからないので、政治のダイナミズムでやる 話ですから、私の政治的責任においてやっておりますし、その政治的責任は、麻 生新総理の政治的責任ではあるので、それは塩川座長がおっしゃったように、財 務省も含め、政府全体できちんと取り組んでいきたいと思っております。 ○塩川座長 それでは、本日はこれにて散会いたします。 御苦労様でございました。 照会先 保険局高齢者医療課 企画法令係     (代)03−5253−1111(内線)3199