08/09/24 第5回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会議事録 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会(第5回) 1.日時   平成20年9月24日(水)15:00〜17:00 2.場所   厚生労働省共用第6会議室(合同庁舎5号館2階) 3.議題 (1)障害者関係団体からのヒアリング  ・社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会理事 大久保常明氏  ・特定非営利活動法人全国精神障害者団体連合会副理事長 小金澤正治氏  ・特定非営利活動法人東京都自閉症協会 理事 今井忠氏  ・日本発達障害ネットワーク     副代表 山岡 修氏 (2)その他 ○座長  時間になりましたので、ただ今から第5回の労働・雇用分野における障害者権利条約 への対応の在り方に関する研究会を開催いたします。本日は、岩村委員と川崎委員が欠 席でございます。  今日は前回に続いて障害者関係団体からヒアリングを行います。今回、お二人の方に ご出席をいただいておりますのでご紹介をいたします。先ず、全国精神障害者団体連合 会副理事長の小金澤正治さんです。もうお一人は、日本発達障害ネットワーク副代表の 山岡修さんですが、現在、社会保障審議会の方に出席されておりますので、途中からお 越しになるという予定でございます。  それでは、本日の議題に入ります。先ほど言いましたように、山岡さんが途中からお いでになりますので、議題1と議題2をひっくり返しまして、ヒアリングの前に、議題2 の方から進めたいと考えております。議題2は、その他として、「平成21年度障害者雇 用施策概算要求のポイント」について、事務局から説明をいただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ○事務局  事務局でございます。資料の方は、資料5でございます。障害者に対する就労支援の 推進ということで、来年度の障害者雇用施策の関係予算概算要求のポイントについてご 説明させていただきます。  ページをおめくりいただきまして、1ページですが、前文として施策の概要と書いて ございますが、障害者雇用状況について、平成19年度におけるハローワークの新規求職、 それから就職件数が過去最高になるなど、就労意欲の一層の高まりが見られるという状 況でございます。更に、障害者自立支援法あるいは学校教育法の関係等々、福祉から雇 用、あるいは教育の分野から雇用へというような動向があり、それらを踏まえて、障害 者の方の希望あるいは能力に応じて雇用の場を提供していく必要性というようなことが 高まっているという状況でございます。こうした中、政府としましても、福祉から雇用 へ、推進5カ年計画などを定めまして、障害者の方の就労による自立を図っていくとい うこと、更には中小企業での障害者雇用の促進等を内容としました障害者雇用促進法の 改正法案を先の通常国会に提出するということなどによりまして、障害者雇用に係る取 り組みの充実を図っているというところでございます。  ここで、ちょっと脇道に逸れまして、この障害者雇用促進法の改正法案でございます が、ご案内のとおり、前国会では審議未了で継続審議となっておりまして、この臨時国 会で再びご審議をいただくという状況でございます。  戻りまして、来年度、平成21年度におきましては、このような状況を踏まえつつとい うことで、4つ主要な柱を掲げてこの概算要求というものを行っております。1つは、こ の法改正と絡む話でございますが、中小企業における障害者雇用促進のための重点的な 支援というもの、それから2つ目としましては、雇用、福祉、教育等の連携による地域 の就労支援力の強化、3番目の柱としまして、障害特性に応じた支援策の充実・強化、 最後の4点目としまして、障害者に対する職業能力開発支援の充実ということでござい ます。これらの4つの主要な柱に基づきまして概算要求を行っております。来年度概算 要求額をトータルでいろいろ積み上げますと、約200億ということでございますが、順 次大きな柱から見ていきます。  先ず、1つ目の大きな柱としましては、I 中小企業における障害者雇用促進のため の重点的な支援ということで、4つあります。ここでは新規のもの、あるいは拡充もの を中心にピックアップして、全てを網羅しているわけではございませんが、何点かご紹 介をいたします。  1つ目が、障害者雇用ファーストステップ奨励金というものを創設するということで、 約2億5千万ということでございます。これは中小企業の中では、これまで障害者を雇用 したことがない、ノウハウがない、あるいは雇うに当たっていろいろ不安があるという ことで、障害者雇用の経験がないというところが少なからずあります。こういった障害 者雇用の経験のない中小企業で初めて障害者を雇用した場合に、奨励金を支給するとい うものを、ファーストステップ奨励金として来年度創設するというものでございます。  2点目でございますが、事業協同組合等障害者雇用促進助成金というものを創設する ということでございます。これは法改正関連でございますが、中小企業の中では単独1 社では障害者を雇用するだけの十分な仕事量を確保できないという場合があるわけでご ざいますが、このような場合に、複数の中小企業が事業協同組合のような組合を活用し て、協同で障害者雇用を図るという場合に、そのための準備でありますとか、そういう 取り組みに要した経費に関して助成を行うというものでございます。  3つ目が、中小企業における障害者雇用推進事業の実施ということで、これも新規で ございますけれども、中小企業における障害者雇用の促進を図るための相談事業でござ います。中小企業の事業主団体を通じまして、中小企業の事業主に対する相談あるいは 具体的なノウハウの提供、こういったものを全国的に推進していくというものでござい まして、約2億7千万というものでございます。  4点目でございますが、特定求職者雇用開発助成金の中小企業事業主に対する助成の 拡充というものでございます。これは、いわゆる雇い入れ助成ということですが、ただ、 中小企業に対しては、その助成額あるいは助成期間というものの拡充を図るというもの で、以下、マル1、マル2、マル3の3つの例を載せておりますが、例えばマル1であり ましたら、身体障害者、知的障害者を雇用した場合に、中小企業であれば半年毎に30万 円、30万円と、合計60万円を支給するところを、3回に分けまして、合計90万円を支給 するということに今回拡充ということを図っております。  続きまして、大きな2番でございますが、「II 雇用、福祉、教育等の連携による地 域の就労支援力の強化」というものでございます。  1点目は、ハローワークを中心とした地域の関係機関との連携によるチーム支援の推 進ということで、これは今年度の20年度とほぼ同額の6億7千万ということでございます。 ハローワークが中心となって、地域の福祉施設あるいは特別支援学校、これらの関係機 関と連携して障害者就労支援チームを編成しまして、就職から職場定着までの一貫した 支援を行うというもので、このようなチーム支援を推進していくというもので、就職ガ イダンスあるいは合同の面接会などを実施することによって、ハローワークのマッチン グ機能の向上を図るというものでございます。  2点目は、雇用と福祉の連携による地域に密着した就労支援の実施と書いております が、これはいわゆる次の3ページ目でございますけれども、障害者就業・生活支援セン ターの箇所数の拡充というものであります。最終的には全障害保健福祉圏域への設置に 向けて、20年度では205センター、今この時点では204箇所ですが、これを21年度におい ては285箇所に、80箇所の増ということで要求をしております。  3点目が、障害者試行雇用事業、障害者のトライアル雇用事業の推進ということで、 事業主の方に障害者雇用のきっかけを提供し、その上で、障害者に実践的な能力を取得 させて常用雇用へ移行していくための短期間のトライアル雇用を実施するというもので、 そのための奨励金ということで、今年度と同額の約10億7千万ということで要求してお ります。  4点目が、地域における就労支援に係る助言・援助ということでございます。これも 今回の法改正と関係するものでございますが、地域障害者職業センターにおきまして、 地域における就労支援期間、福祉機関であったり教育機関であったりするわけですが、 このような就労支援機関に対する助言援助あるいはそういった機関での就労支援を担う 人材の育成を図るために、地域障害者職業センターにおける体制整備を図るというもの でございます。  大きな3点目としましては、「III 障害特性に応じた支援策の充実・強化」というこ とでございまして、何点かございます。  1点目が、精神障害者関係でございますが、精神障害者の特性に応じた支援策の充実 強化ということで、今年度創設しました精神障害者ステップアップ雇用奨励金の活用を 図っていくとともに、精神障害者就職サポーターの配置ということによりまして、ハロ ーワークにおける精神障害者のカウンセリング機能の充実・強化を図っていくというも のでございます。予算額にして約4億8千万程度の予算ということでございます。  続きましては、2番目、精神障害者の雇用促進のためのモデル事業の実施ということ で、これは新規でございますが、精神障害者雇用の意欲はあるもののノウハウが十分で はないという企業におきまして、精神障害者の雇用促進をするために実際に新たに雇っ ていただきまして、精神障害者の障害特性に応じた職域の開拓あるいは支援体制の整備 ということを取り組んでいただくというモデル事業でございます。何社かピックアップ しまして、様々なノウハウを構築していただくという事業を、21年度に新規に行うとい うものでございます。  3点目は、これは今年度と同様でございますが、医療機関等との連携による精神障害 者の就労支援の推進ということで、医療機関を利用している精神障害者の方へのジョブ ガイダンス等を実施するという事業でございます。  4点目につきましては、うつ病と精神障害者の職場復帰のための総合支援事業という ことで、これは地域障害者職業センターで、現行でも就職されてから中途でうつ病等を 発症されてしまう精神障害者の方の職場復帰、リワーク支援というものを行っておりま すが、そのための職場復帰支援の抜本的拡充ということで、支援対象者を大幅に増やし て事業を実施していこうというものでございます。  5番目は、発達障害者の特性に応じた支援策の充実・強化でございますが、細かく3点 ほどございます。1つ目が若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラムの推進 ということで、特に若い方で発達障害等の要因でコミュニケーション能力が十分でない、 困難であるというような方について、発達障害の方のための専門機関に誘導する。ある いは、ハローワークにおいてきめ細かな就労支援を実施していく。こういった事業を引 き続き行っていくということです。それから、2番目として、発達障害者の就労支援者 育成事業の推進ということでございます。3番目が、これが今年度の新規でございますが、 発達障害者の雇用促進のためのモデル事業を創設するということで要求をしておりまし て、これは発達障害者の方を新たに雇用した場合、雇用した上で適切な雇用管理を行っ ていただいた場合に、その事業主の方に雇い入れ助成といいますか、助成を行うという ものでございます。これは、モデル的に行うということで、実際に通常の特開金とは少 し異なりまして、雇っていただいた上で、雇用に伴う様々な課題でありますとか、雇用 管理上の問題点、あるいは、うまくいった場合、そういったものを把握をしていただい て、報告をしていただくというものとセットで実施したいということでございます。  5ページでございますが、今度は、6番で、難病のある人の雇用促進のためのモデル事 業ということでございます。これは今申し上げました発達障害者のモデル事業と同様の 趣旨でございまして、難病のある方を雇用した場合ということです。難病といっても実 に様々な疾患がございますが、今回はモデル事業ということで、あまり厳密な区分けは 行わずに、難病であればということで、全てを対象として、難病の方を雇用した場合、 その上で適切な雇用管理等を行った場合に事業主に対する助成を行うというモデル事業 で、このような要求をしております。  最後、4番目としまして、「IV 障害者に対する職業能力開発支援の充実」ということ で、4点ほど記載しております。  1番が、いわゆる委託訓練で、民間を活用した機動的かつ実践的な職業訓練の推進とい うことでございまして、約21億でございますが、企業あるいは社会福祉法人等、民間の 多様な委託先を活用して実践的な職業訓練を行うということで、来年度は対象者数を少 し増やして要求しております。  2番目が、政令指定都市における職業能力開発推進基盤の強化ということで、これは 今年度とほぼ同額の約2億2千万ということで要求をしております。  3番目一般校を含めた公共職業能力開発施設における障害者職業訓練の推進というこ とで、これも今年度とほぼ同額の約40億円ということで要求をしております。  4番目でございますが、発達障害者に対する職業訓練の推進ということでございまし て、一般の職業能力開発校における発達障害者対象の職業訓練コースを6箇所から10箇 所に増加させた上で、約1.8億円という形で要求を行っております。  非常に駆け足でございましたが、来年度予算要求の主だったポイントといいますか、 新規拡充ネタを中心に簡単にご紹介をさせていただきました。以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明について、ご意見、ご質問がご ざいましたらお願いをいたします。いかがですか。よろしいですか。それでは、もしご 質問等なければ、次の議題に入りたいと思います。  それでは、次の議題に入ります。先ほど言いましたように、山岡さんがまだいらして ないんですが、次の議題はお手元の資料では議題1になっていますが、障害者関係 団 体からのヒアリングということです。本日は4つの団体からご意見を伺います。  1つは、全日本手をつなぐ育成会から大久保委員にお願いをいたします。2番目は、全 国精神障害者団体連合会からは小金澤さんに、3番目は、日本発達障害ネットワークか ら山岡さん、4番目が、日本自閉症協会から今井委員にお願いをする。こういう順番で やっていきたいと考えております。もし、山岡さんがいらっしゃらなければ、今井さん と順番の交替ということもあり得るということでいいですか。  それでは、それぞれ10分か15分程度でご説明いただきまして、皆さんのご説明いただ いた後で、一括して質疑を行いたいと考えておりますので、よろしくお願いをします。 それでは、先ず大久保委員からお願いをいたします。 ○大久保委員  全日本手をつなぐ育成会の大久保です。それでは、資料の1に沿ってご説明申し上げ たいと思います。私どもの団体ですけれども、知的障害のある人たちとその家族の団体 として、意見を申し上げる次第です。  先ず、知的障害のその重さに拘わらず、その人がその能力に応じて、地域社会で働き ながら豊かな暮らしが実現できることを願っているということです。「障害のある人の 権利に関する条約」の締結に向けて、各省毎の検証と見直しが求められていますが、労 働・雇用分野においても、労働についての権利を背景に現行の障害者雇用推進施策や関 係法令について検証するとともに、とりわけ障害者に対する合理的配慮への積極的な対 応が求められていると考えます。これを背景に、以下のことについて意見を申し上げま す。  先ず、現行の障害者推進施策について一応私どもの見解を示したいと思います。  雇用率制度、いわゆる割当雇用制度と、これと関連する雇用納付金制度について、ど ういうふうに位置づけるかということです。これらの制度によって障害者雇用の推進を 図っておりますが、実際に全体として雇用率が漸増し、一定の成果を上げてきたと考え ています。それと、今般の雇用促進法の改正と関連してきますが、雇用率が低迷してい る中小企業への雇用納付金制度の適用や短時間労働も雇用義務の対象とするなどの方向 は、有効な施策と考えております。これらの障害者雇用を現実的に確保していく施策は、 いわゆる積極的差別是正措置として考えられるものであります。  次に、割当雇用制度の課題として、いくつかの点がございます。1つは、法定雇用率 の1.8%の妥当性であります。同様の制度を有するフランスは6%、これは戦争犠牲者遺族 も含むというふうになっているようですけれども、ドイツは5%です。このように、大き な開きがあります。そして、この開きの背景は一体何かといった時に、一応想定できる のは、我が国における障害者数です。700万とかいわれている障害者数です。とりわけ 知的障害者は0.5%というふうな形になっておりますけれども、全体として約5%、ドイツ では約10%といわれています。アメリカでは18%というふうな数字もあったりしますけれ ども、こういうところから、ベースになるこの5%という数字が元々少ない。 ちょっとおかしいのではないかという指摘ができると思います。  このように考えた場合、略して言いますが、障害者権利条約の障害者の定義などにも 関連して、障害者の定義や範囲を見直した場合には、おそらく数字が上がっていきます。 この約5%という数字ではおさまらないだろうと考えます。ということは、当然労働人口 というか、障害者における労働人口も増えていくわけですから、1.8%よりも高い数字に していくことを検討する必要があるのではないかということであります。  それと、もう1つ、除外率というのが平成14年の障害者雇用促進法の改正において、 いわゆる廃止する方向が出たわけです。現在、経過措置ということでありますけれども、 現在もまだあるということです。業種によっては、いわゆる障害者の法定雇用率がその 分だけ除外できるということですけれども、この辺のところについても、当然法律では いわゆる廃止するという方向が出ているわけですから、これを明確に廃止する方向にも っていくべきではないかということであります。  あと、(3)ですけれども、特例子会社制度について一言意見を申し上げたいと思います。 実際に企業が特例子会社制度を活用して障害者雇用を確保していくことは、1つの方向 あるいは施策としては現実的に成果を上げていることはいえるかと思います。しかし、 一方では、障害者を一所に集め、他の労働者と異なる労働条件、労働環境を容認すると いう性格ももっているということです。これは、極端な比喩かも知れないですけれども、 賃金の高い保護雇用という味方もできるということです。特に、特例子会社の中でずう っとそこで働き続けるということによって、その性格が強まっていくのではないかと考 えます。ですから、特例子会社そのものをすぐに否定するということは当然ありません けれども、固定的な職場という形ではなく、そこから親会社等に移動していく仕組みと か、そういうことを考えることも大切ではないかということです。そして、今般の概算 要求の説明の中にありましたように、中小企業における事業協同組合についても同様の 性格になる可能性があります。この辺は、やはり配慮する必要があろうかと思います。  続きまして、次の2ページ目ですけれども、今般、最低賃金法の改正で、適用除外制 度から減額措置制度という形になりました。これによって、適用除外ということになる と、この法律の外側にいってしまうということですが、減額措置制度ということによっ て、最賃法の中で厳格に企業に対して対応が図れるということは理解できますし、望ま しいと考えます。ただし、障害者雇用を確保しようというところの1つの仕組みとして、 適用除外なり減額措置制度というのがあろうかと思いますけれども、これも障害者の賃 金体系が他の労働者と異なるということを許可する形になることです。やはりこれが厳 格な許可基準というものをしっかりとして欲しいということと、これが少なくとも固定 的な状態にならないという形の指導なり、そういったことをしっかりやっていかなけれ ばいけないということになろうかと思います。  2番目です。福祉的就労についてです。福祉的就労と保護雇用という概念が、まるっ きり一緒かどうかは分かりませんけれども、いわゆる性格的には同じだと思いますので、 我が国でよく使う福祉的就労について、括弧で保護雇用とつけてあります。そして、こ の福祉的就労についても、どのように考えるかということです。先ほども出てきました けれども、障害者が集まり、他の労働者と異なる労働条件、労働環境の中で働くことを 意味していることは間違いないです。そういう背景の中で、実際には自立支援法の中の 就労継続支援A型・B型、就労移行支援、その他法的な事業所ではないですけれども、小 規模作業所、あるいは生産活動による賃金支給を含めればというふうに書いています。 生産活動による賃金支給ということは、これ以外の事業においても生産活動に対して賃 金を支払うということに自立支援法でもなっているはずです。こういうことになれば、 実際には、福祉的就労は広く行われていると考えてよいと思います。ただし、現状の就 労継続支援事業のA型というのは比較的賃金は高いですけれども、その他の福祉的就労 の場はかなり一般企業に比べ差があるという現実があります。ですから、賃金の面から いっても、一般企業が望ましいということは間違いございません。しかし、現状の福祉 的就労に対する障害者のニーズ、就労継続B型のいわゆる事業所の評価、こういったこ とを踏まえたり、あるいは賃金の多寡に拘わらず働くという意義を考えた場合、この福 祉的就労について、単純にこれがなくなるべきものだというふうに言い切る現状ではな いというふうに考えております。当然、そこでは企業就労の積極的な推進や福祉的就労 における賃金の確保、こういったことを図っていくということは前提です。  次に、就労継続支援事業A型の課題です。これはもう既に指摘されておりますけれど も、自立支援法の中で実際は位置づけられているわけです。かねてより、これはかつて の福祉工場といわれるものに近いんですけれども、企業であり施設でありという性格を もっているということです。これがそのまま自立支援法の中に入ってきた時に、労働者 としての雇用契約と福祉サービス利用者としての利用契約を結ぶという二重構造になっ ています。そして、その中で利用契約ということになると、利用者負担が発生します。 つまり、定率負担の10%ということであります。これは、働くということと利用料を払 うという労働者という立場になった時に、ここにやはり大きな課題、問題があるという ことは否めないと思います。そこで、実際には利用者であり従業員なんですけれども、 やはり明確に労働者として位置づけて、雇用施策の中で同事業を取り扱う方がすっきり するのではないかと考えております。  この前段はいわゆる積極的差別是正措置といった考え方として申し上げました。次に 職場における合理的配慮ということで、私ども知的障害のある人たちの団体として申し 上げるところです。  先ず、知的障害のある方が働くといった場合に、雇用支援、いわゆる就労支援という 形だけではなく、生活全般にわたる支援体制が必要だということを前提として申し上げ たいと思います。就労訓練あるいは就労支援といったところの場面だけでは、知的障害 のある人たちの生活を支えていく、職業生活を支えていくことは非常に難しいというこ とであります。ですから、ここで具体的に障害者就業・生活支援センターといったとこ ろが大きな機能、役割を担っているということであります。そして、何よりも職場定着 していく上で、その方々の生活全般を支援していく仕組み、そのためには企業、家族な どと、こういった支援センターが連携を図っていくことが重要だということです。そし て、更に、(2)でも申し上げているとおり、相談支援の重要性ということを申し上げたい と思います。特に、知的障害のある人が自らの思いや考えを表現したり、訴えたりする ことが難しい傾向にあるわけです。職場においても、いじめ、からかい、いやがらせと いったものを受けることが多々あります。そして、大体、離職理由の1つとして、大き くあるのが人間関係です。人間関係の中でのつまづきから離職する。あるいは、最近は 健康状態とかいうのもありますけれども、こういった例が多く見られるということです。 そこで、職場において気楽に相談できたら、苦情を訴えられる窓口が必要だということ です。そして、その窓口が専門支援機関に繋がっていくという仕組みが大変重要ではな いかということです。現在、障害者職業生活相談員制度がありますけれども、知的障害 のある人たちが地域で働く場合に、中小零細企業に就職している場合もかなりあります。 こういったところですと、当然障害者が5人未満ということになるわけですから、こう いったところにおいても相談・苦情受け付けの窓口といったものを先ず実際に整備し、 そういったところを機能させるということが大切かと思っております。  なお、現在の障害者職業生活相談員の役割機能が一応列挙されておりますけれども、 もう少し障害者の権利を基本とした見直しが必要ではないかと考えます。  あと、もう1つ、(3)です。スキルアップやキャリアアップの機会です。実際に知的障 害のある人たちの働いての感想の中で聞くことができるのは、やはり同じ仕事をずうっ とやっているということです。中には、自分がスキルアップしたい、あるいはキャリア アップしたいとしても、なかなかそういう機会、あるいはトレーニングの機会が少ない ということも聞きます。そういうことになりますと、やはり本人の就労意欲なども低下 していくということも考えられます。そういうことで、長期にわたり固定した業務に従 事している場合は、本人の希望を踏まえ、スキルアップやキャリアアップの機会を提供 する必要があると思います。  なお、最後に、触れませんでしたけれども、全体としてのいわゆる差別禁止措置です が、募集、採用、雇用の条件、昇進などに関わる部分で、いわゆる障害に基づく差別に ついて禁止するということも、今回の権利条約で明記されているところです。この辺の ところをどういうふうな形で法制度の中で反映させていくかということが、やはり大き な課題になってくるとは思います。これを労働関係の法令の中でやっていくのか。ある いは横断的に差別禁止法といったものをしっかりと設けて、社会の規範的な法律として 設けていくのかというところがあろうかと思います。私どもは、後半の、やはり社会の 規範としての法律、いわゆる差別禁止法という形でもってしっかりとした基準をつくっ ていくべきではないかと考えている次第です。以上です。 ○座長  ありがとうございました。それでは続いて、全国精神障害者団体連合会の小金澤さん からお願いいたします。 ○小金澤氏  小金澤です。よろしくお願いいたします。今回の条約に関しまして、3点ほどありま して、4点目は追加でお話しいたします。  先ず、先ほど来お話しがありました法定雇用率の増加ということで、現行は一般企業 1.8%を何%にするかは別として、法定雇用率を増加して、精神障害者の雇用も増やすよ うに努力していただきたいということです。実際、私の知っている範囲でも、精神障害 者の雇用というのが、多少ですけれども現実に増えております。そういったような環境 がありますので、法定雇用率自体が差別だといってしまうと話になりませんので、現行 としては、是非この法定雇用率を増加する方向でご審議願いたいと考えております。  あと、実際に精神障害者で雇用された場合、私自身も経験がありますけれども、やは り偏見や差別があるんですね。それは、給料とかそういった面ではなくて、精神的な面 です。日常の業務において、あの人には任せられないとか、そういったような差別が未 だにあります。ですから、そういったものも含めまして、職場においてきちんとフォロ ーアップするようなことが必要です。先ほど、厚労省さんの方からお話しがありました けれども、そのようなフォローアップが望まれると思います。  2番目です。これは文章がちょっと間違っておりますが、絶対欠格条項及び相対欠格 条項の廃止です。皆様がご案内のように、精神障害者になった場合には、医師とか看護 師等になれないという絶対欠格条項があります。薬を飲んで治った場合でも、診断名が つくと、それだけで医者などになれないというような現状を改めていただきたい。また、 精神障害者になった場合には、治療を受ければいいわけですから、その辺の考え方もき ちっとしていただきたいです。  相対的欠格条項ですが、ガードマンも警備員も相対欠格条項に入っておりますが、こ ういうものですと、現在は医師の意見書で就労は維持できます。しかし、相対欠格条項 がなければ何も言わずに、カミングアウトせずに、病気を隠したまま就労するというこ とも可能になるわけです。とても大きな問題ですけれども、絶対欠格条項と相対欠格条 項を、一般の国民と同様の権利を保障するという趣旨の条約だと聞いておりますので、 是非とも考えていただきたいと思います。  次に、3番目です。偏見・差別の撤廃です。先ほども触れましたけれども、就労に関 してもまだまだ精神障害者に対する偏見・差別があります。偏見・差別は法律的に禁止 する 必要があるというふうに考えております。  あとは、就労に関してなんですけれども、身体障害者、知的障害者の場合には、障害 が固定しているが故に障害基礎年金が就労をしていてももらえます。ただし、精神の場 合には、厳密にいえば、就労できるということは3級以下ですから、障害基礎年金は取 り上げられます。そうしますと、身体、知的の障害の方と精神の人たちは絶対的に違い ます。その点を、今回いい機会ですので、考え直していただきたいと思います。例えば、 身体、知的の場合ですと、国民年金で障害基礎年金をもらいますと、6万5千円です。 あと10万円稼げば何とか一人暮らしができます。ところが、精神は10万円稼いでしまう と、6万5千円を取られてしまいます。これでは生活もできません。実態としては、社会 保険庁も厳密な調査を行っておりません。私の場合は、たまたま同じ保険事務所で年金 を受け取り、同じ保険事務所に年金保険料を払うということがもとで、私が就労してい ることが分かり、法律に照らしてあなたは3級ですということになりました。そういう 形で、全国に調査に入ったならば、働いているほとんどの人間が年金を奪われます。国 民年金の基礎年金を当てにして低賃金でも頑張っているというのが現状です。こういっ た面で、何とかこの現行の精神障害者の基礎年金の考え方を柔軟にしていただきたいと 考えております。  最後に、レジュメにはありませんけれども、今回の条約の履行監視委員会というふう に聞いておりますけれども、どのように進んでいるかということをチェックする機関、 委員会に是非精神障害者の代表も参加させてもらいたいと思っております。  先ほどの厚労省さんの資料5の2ページの、真ん中辺の4番目ですが、マル1、マル2、 マル3とありまして、精神が入っていないんですよ。精神がどこに入るのか、ちょっと 後で教えてください。ここに精神が入らないのはおかしいと思います。知的と一緒であ れば、マル1に入ると思います。これは、障害者基本法の前の段階の話だと思いますよ。 以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。 ○座長  最後の件は、後から事務局から回答をお願いします。ありがとうございました。それ では、次に日本発達障害ネットワークの山岡副代表から説明をお願いいたします。 ○山岡氏  ちょっと遅れて参りまして失礼いたしました。日本発達障害ネットワークの副代表で 山岡と申します。よろしくお願いいたします。本日は、私の方から発達障害に係る就労 の現状とか課題をちょっと申し上げまして、その後、自閉症協会の今井委員さんの方か ら今回の権利条約に関わるいろいろな検討課題ということでお話しをしたいと思ってお ります。それでは、レジュメに従って申し上げます。  発達障害は、発達障害者支援法という法律が2005年4月に施行されまして、新たに認 識された障害ということでございます。今回の検討でも、三障害につきましては既に雇 用対策あるいは就労のいろんな支援施策がございますけれども、そこからは今のところ 漏れているような障害ということでございます。日本発達障害ネットワークというのは、 発達障害者支援法の施行をきっかけとしまして、発達障害に関わる当事者の団体、学会、 職能団体が手を結んでできた団体でございまして、日本において発達障害を代表する全 国団体としまして中央省庁等の窓口として認知されつつあります。ここのところは、資 料を見ていただければと思います。  3枚目辺りのところからお話しをさせていただきます。発達障害者支援法は先ほどち ょっと申し上げましたが、2005年4月1日に施行になりまして、議員立法で成立した法律 でございます。下の方の表を見ていただくと分かるんですけれども、対象となっていま すのは、主にではございますが、知的障害を伴う自閉症、それから上の方に、知的障害 を伴わない発達障害として主に3種類挙げております。高機能自閉症、アスペルガー症 候群、あるいはLD、学習障害ともいいますが、ADHDですね、注意・欠陥多動性障害、こ のような従来支援の対象になっていなかった狭間の障害を支援の対象にしようというこ とでできた法律であります。ですから、発達障害は非常に幅が広くて、知的障害を伴う 自閉症の方から、高機能の自閉症の方ですと、非常に高学歴の方まで含まれております。  この範囲でございますが、ICD-10という診断基準でいきますと、F80・90のところと いうふうになっております。発達という言葉は、医学用語でいきますと、脳性マヒだと か、今でいう知的障害も入るのですけれども、ここのところは現在の法律でいきますと、 身体障害者福祉法でありますとか、知的障害者福祉法の中で支援の対象になっておりま すので、そこから漏れているところを対象にしようというふうになっています。基本的 に、先ほど挙げました自閉症、学習障害、注意・欠陥多動性障害が本則の法律上では規 定されていますが、この発達障害支援法には発達障害者支援法の施行令と施行規則があ りまして、そこのところで発達性の言語障害や協調運動障害、あるいはその他の障害と いうのが入っておりまして、極力その狭間にある障害を救おうというようなことの法律、 政令、規則になっております。基本的に8枚目を見ていただくと分かるんですが、現在 は障害者基本法の基本があって、その上に知的障害と身体障害と精神障害の3つが乗っ ているような、三障害を限定列挙したような法律の制度になっておりますが、そこに障 害者自立支援法はその三障害を包括したような法律というふうに考えています。発達障 害者支援法は、その枠外にあるような形になっておりますけれども、基本的に、将来像 としては全ての障害を包むような障害者総合福祉法のような形になって、その上に障害 者自立支援法が乗って、全ての障害を支援の対象にできるような法体系になって欲しい と思っているところであります。私は今、2時から別の社会保障審議会に出ていまして、 途中から中座してこちらに来たんですが、まさにその障害者自立支援法の見直しのとこ ろが検討されており、この12月を目途に案としてまとまるという予定になっております。 そこでの議論はここまではいきませんが、何れ将来像として障害者総合福祉法のような 形を目指せばいいなと思っております。  その中でいきますと、現在の限定列挙的な法律でいきますと、発達障害の他に難病と か高次脳機能障害とか、やはり漏れている障害がたくさんあるわけでございます。そう いったものを今回の権利条約の第1条を見ても、対象にしていくべきというところであ ります。  次に、レジュメですと9枚目のところからになるんですけれども、発達障害のある人 の雇用実態とか、どんなところで困っているかというところをちょっとお話しさせてい ただきます。ここは、実は全国LD親の会という団体で調べた実態調査の内容を元にして おります。主として、このLDを中心にADHDや高機能自閉症等の方も入っていますが、ど ちらかというと、重たい知的障害を伴うような自閉症の方はあまり入っていないという ことで、一般にいう知的障害を伴わない発達障害が中心のお話しになります。この方々 約250名ぐらいを対象にした調査でございます。  中学卒業後の経路を見てみますと、ほとんどの方が全体でいきますと、95.7%が高等 学校等に進学をしておりまして、基本的に全国的な一般的な平均値が97%ぐらいでありま すので、そう変わらないというところであります。その内訳でありますが、そのうちの 11%が、その当時でいう養護学校高等部、今でいう特別支援学校の高等部に進んでいるの は11%に過ぎないということで、知的障害を伴わない発達障害、いわゆるLDとかADHDと、 高機能自閉症のお子さんの大半は、通常の高校に進学をしているということがこの表に 出ております。  次に、11枚目、12枚目のところです。この表は、点線のところが卒業直後にどういう ところに就職あるいは身を置かれたかというところを表しています。そして、現在の状 況ということなので、何年か経っていると、状況が動いているということを表していま す。一番左側に、就業一般といっているのは、障害者の手帳を伴わない就業です。2列 目が就業障害といっているのは、手帳を持って就職をした場合であります。これでいき ますと、卒業直後は、就業一般、手帳を持たずに就職した方の中に、その後手帳を取得 して就職したケースが多いというようなことが見えてくるかと思います。それから、下 の表でいきますと、就業一般の就業状況でありますが、これは要するに高校とか大学と かを卒業して、手帳を持たないで就職をした発達障害の方ですが、1年以内の離職率が、 足しますと37.5%であります。3人に1人ぐらいは1年以内に離職をしているということで、 学校の成績は良かったり、いろんなことで就職まではいくんですけれども、その後定着 ができないということを表しております。  次の13枚目、14枚目のところにいきます。ここで、何故そういうふうになってしまっ たかということですけれども、手帳を持たないケースが13枚目のところにあるんですが、 会社の業況が悪くなり、真っ先にリストラされたとか、もう少し後にも出てきますけれ ども、発達障害がある方は非常に高学歴の方があるんですけれども、コミュニケーショ ンとかあるいは手が不器用でありますとか、一度に2つ以上のことができないと か、いろんな難しい面をもっていて、少し配慮いただいてそれらを補ったり、カバーし ていただければ何とか就業も続くんですけれども、そうした困難に対する理解がないと いうことになりますと、なかなか難しいところがございます。対人関係やいろんなこと でストレスがたまって辞めた、あるいはリストラなどの際に真っ先に指名されてしまう というケースなどがあります。  14枚目のところで何を表しているかといいますと、就業障害、つまり手帳を持って就 職した場合の離職率や定着率を見た表でございます。これでいきますと、1年未満の離 職率は5%であります。分母が小さいので、こういう形になりますけれども、これは大 半は今でいう特別支援学校の卒業者でありまして、定着率は就業・一般よりも非常に高 いということがいえるというところであります。  15枚目のところへいきますと、離職の理由の中の手帳を持って就業したケースですけ れども、この中でも、手帳がやはり知的障害の手帳でありますが、発達障害の方はいわ ゆる知的障害だけという方に比べますと、コミュニケーションや人間関係のところで難 しいところもあって、それらの配慮がないと難しい面が出てくるというようなことが現 れていると思います。  ちょっと飛びまして、18枚目です。発達障害の中で、知的障害を伴わないといってい ますが、基本的には知的障害は伴わないはずなんですけれども、ボーダー域にあるお子 さんとかは割と知的に落ちてくるようなケースもあって、就業に際して、高校卒業時に 手帳取得にトライするケースが結構あります。もちろん国立大学を卒業している方が知 的障害の手帳を取りにいっても絶対取れないわけでありますけれども、そうでない方に 取れるケースが結構あって、これでいきますと、LD親の会の会員の中でいくと、5割近 くは療育手帳を取得しているということであります。これは、分類でいきますと、知的 障害を伴わない発達障害に入らなくなってしまっているというケースかも知れませんが、 そういうケースがあります。ただし、何回トライをしても、知的にちょっと高過ぎると いうことで、療育手帳を取れないケースがありまして、現状でいきますと、精神障害福 祉手帳を取るケースも結構あります。知的障害の手帳にトライして、認定・判定を取れ ないケースというのが結構あって、就業や社会生活に困難があっても、なかなか支援が 受けられないという状況があるということであります。  19枚目のところにいきます。さっきちょっと申し上げたんですけれども、発達障害の ある人たちはどんなところで仕事で難しいかというところであります。例えば、個人的 に見ますと、運転免許は取れたりはするんですけれども、親からすると絶対運転はさせ たくないというようなところがあって、ある一瞬きちっとした力を発揮するんですけれ ども、持続性がないとか、注意が散漫であるとかということがあります。それから、作 業上でも、仕事のミスとか仕事が遅いとか、段取りが悪いとか、一つのことができたの で、これもできるだろうと二つの事を与えると、とたんに両方ともできなくなってしま うというようなことがあります。あるいは、場が読めなかったりするというようなこと があって、なかなか職場の中でうまくいかないケースもあります。例えば、あるお子さ んが就職をして、ロッカーのカギを忘れたんですね。本人はロッカーを開けないと着替 えられない、仕事もできないところで、ちょっと相談をすれば予備キーは会社にあるは ずなんですが、思い当たらないので、家に取りに帰ってしまったんですね。その間、1 時間半は行方不明になって、会社中も家も大騒ぎになっていたということがあって、そ ういう場が読めないということは、そういうようなことに繋がってくるということであ ります。  それから、もう1つ、さっき知的障害の方のお話しをされていたと思うのですけれど も、知的障害の方とちょっと違う面が発達障害の場合はあるということです。就労に関 する本人のアンケート調査をした内容なんですけれども、20枚目のところを見ていただ きますと、特徴が出ています。右側の方が厚労省の方でおとりになった障害者の雇用実 態調査の内容で、左側に同じ質問を会員にぶっつけています。そうすると、大きく違う ところは、発達障害のお子さんというのは、2つ目のところにいきますと、他の仕事を してみたいというのが32.2%、知的障害のある方は15.2%に出ています。それから、もっ と仕事ができるように教えて欲しいというところも、発達障害のある方は27.8%、知的 障害の方は8.4%と大きな差が出ています。ある意味、発達障害の方というのは、意欲と いうか、前向きな姿勢を見せたり、もっとできるはずだと思っているケースがあります。 ただし、現実を見ますと、自分が思っているほど世間の評価はなく、あるいは実力が出 せない。あるいは、自分のことがよく分かっていないケースが結構あるというようなこ ともいえるかと思います。  21枚目のところにいきます。この発達障害のある人たちの相談相手とか就職に対して の相談のところであります。基本的にさっき一番最初に申し上げたとおり、一般の教育 過程を辿ることが多いということで、雇用に関しても、福祉のレールに乗ってこないと いうことになります。そのため、就職に際しても、自力で見つけるとか、あるいは親が 見つけるとか、広告に載ったので見つけたとか、いわゆる学校の先生から紹介をいただ いたり、あるいはハローワークの専門窓口で支援を受けてというようなことではなく、 割と自力で就職先を見つけるケースが多い、それしかないというようなことがあります。 それから、定着した後の相談相手みたいなところも、実は上司とかということよりも、 家族というのが一番多いというふうに出ております。これらの発達障害のある人たちに ついては今、いわゆる障害福祉のレールに乗っていないということで、家族や周りの人 が支えているというのが現状かと思っています。  この就労に関する問題点をまとめますと、通常の教育の終了者が多いということであ ります。かつ、統計的に調べていきますと、高学歴なほど扱いづらいということもある かも知れませんが、高学歴なほど、あるいは高機能なほど、IQが高いほど実は就労に困 難を伴って、在宅をしているようなケースが多いというのが目につきます。それから、 本人が障害を自覚していない自己認知不足、あるいは家族も障害受容ができていないと いうケースも結構あります。それから、支援を受けることに対して抵抗感を示すケース もあって、当初苦労するケースがあるというようなことです。それから、よくあるのは、 30代になって、一流企業に就職して、挫折をして、転職を繰り返して、30代になってよ うやく実は発達障害が背景にあって、自分は苦労しているということに気づいてという ケースもあります。  最後の方になりますけれども、一番最後にちょっと一点だけ私の方から要望を申し上 げておきたいと思います。24枚目のところです。今回、この障害者自立支援法の検討の 中でも同じようなことを申し上げておりますが、発達障害を労働・雇用の分野で障害者 と位置づけをして、今回の権利条約の関係でいきますと、合理的配慮や適切な支援の対 象に加えることが必要であるということを申し上げておきたいと思います。障害者の権 利条約の第1条のところで、定義されているところを見ますと、発達障害のある人はそ の対象であることは明白と考えます。それから、発達障害者支援法という法律は国で作 った法律でありますが、この中で、ちゃんと発達障害を「障害」というふうに明記をさ れています。それから、発達障害に関する支援については、発達障害者支援法の中で国 の責務、地方公共団体の責務ということが明文化されておりまして、これに基づいて今 回のご検討の中でも、発達障害についてもこの権利条約に則った支援が行われるべきだ と思っております。それでは、権利条約の関係については、今井さんの方から個別にお 話しをさせていただきます。 ○座長  ありがとうございました。それでは、今井さんお願いします。 ○今井委員  このような機会を与えていただきまして、最初にお礼を申し上げたいと思います。こ の場は本来翻訳問題ではないとは思いますが、ちょっと意見として述べさせていただき たいと思います。  1点目は、この法整備をするプロセスに対する要望です。まず翻訳問題です。公定訳 では少なくとも次のところを修正していただけないだろうかということです。  Aです。全体としては、「障害者」という言い方ではなく、「障害のある人」というふ うにいっていただけないかということです。理由は、現実には障害者という言葉が、全 人格を表すようなイメージを与えてしまっています。障害はその人の特性の一部である という意味を含めて、差別感が出にくい用語にしていただきたい。そのことは次のb、 条約の名前でも同一であります。  次にcです。第27条の労働及び雇用の1のa。障害を理由とする差別という言い方があ りますが、この理由とするという言い方が曖昧で、理由にしなければいいというふうに もなりかねないので、実態的な差別を禁止するということで、例えば、障害があること が要因となる差別というように明確にしていただけないだろうか。  次にd。それは、第27条、労働及び雇用の1のd。ここでは次の文章の「general云々」 に点を打っていますが、これは仮訳では「一般的な」と訳しておられます。ですから、 一般的な職業紹介サービス並びに職業訓練云々を利用することを可能とする。何か学校 教育の一般教養みたいな一般という意味なんですが、ここでいおうとしているのは、一 般の人向けのという、つまり一般の人向けのマルマルのようなプログラムを効果的にア クセスすることができるという意味だと思いますから、そのようにしていただければ有 り難いと思います。  次のページです。第27条の労働及び雇用の1のhです。ここの仮訳では、括弧内に但し 書きの部分を入れておられます。これを原文どおりの順にしていただけないか。つまり、 仮訳では、適当な政策及び措置、そして、括弧して、積極的な差別是正措置を含めるこ とができると、こういうふうになって、これを通じて雇用促進することという形です。 私は、原文と同じように、適当な政策云々を通じて、障害のある人の雇用を促進するこ と、と一旦終わって、この政策には積極的な差別是正措置を含めることができるという ことの方が、主たる意味が通じ易いと思います。  以上が翻訳のことですが、翻訳に当たって、マル2に書いているのは、是非協同作業、 つまり公定訳を作るに当たっては、各種団体と密接な協議を行って欲しい。それは、障 害のある人と障害のない人では、同じ言葉を使っても、異なった意味になることが多い からです。あるいは、障害のない人が、頭で描く差別と、実際に障害のある人が実生活 の中で感じる不便さとの間には、大きなギャップがあります。いわば強者が作る施策に やっぱりなりがちなんです。ですから、第4条でいわれているように、協同作業という ことを重視していただければ有り難いと思います。  それでは、法整備の要望をマル1からマル7まで説明させてください。  先ず、本来この場では無理なのかも知れませんが、障害者基本法の改正です。障害者 基本法には差別はいけないというか、一種の哲学として、理念として入っていると認識 しております。合理的配慮を行わないことが差別であるということを明文化できないだ ろうか。差別には一定の物差しが要ると思うのです。ですから、差別をしてはならない というだけでは実効性に欠けると私は考えます。  マル2は、差別監視是正委員会のようなもの、これは私の勝手な名前ですけれども、 そういうものを国レベルで設置できないだろうか。発達障害のある人の雇用を成功させ るポイントがカスタマイズ、つまり個別対応にあること。即ち、その環境でその人に合 った合理的な調整が重要だ。こうなります。これは文章も出ておりますが、差別があっ たかということを個別に訴訟を起こさないと解決しないというような仕組みというのは、 どう考えても、やはり適切ではないだろうと思います。そこで、フランスで実施されて いるような、外部の機関に救済や是正を求められる仕組みが必要ではないか。そこは単 なる相談窓口ではなく、認定された機関が是正の勧告を行ったり、職場に直接介入でき る仕組みです。これが雇用側にとっても、雇用されている障害のある人にとっても必要 ではないかと思います。そして、この機関での事例の積み重ねが、合理的配慮というも のがどういうものかという内容を、歴史的にだんだん豊かにしていくということに繋が ると考えます。  マル3は雇用率制度と雇用義務との関係です。就職段階での実質的な排除と雇用関係 が結ばれた後、従業員となった後の差別では、やはり施策が異なると思うのです。雇用 段階で実質的に選択排除が行われていても、それは適性判断だと言われると、なかなか 区別は難しいと思うのです。明らかに採用時は雇用側に選択権がある。従って、企業側 に一定の障害者雇用の義務を課す割当制というのは、やはり私も実際に有効だと思って います。ただし、この制度があるが故に、一般社員への門戸が狭まったり、一般社員と の職場の分離が定着するなら、これは条約の趣旨に反すると思います。雇用率制度が積 極的な差別是正措置であるためには、条約の趣旨に沿った運用というものが極めて重要 になるんだろうと考えます。簡単な問題ではないと思います。  マル4は合理的配慮を受ける人とは一体誰なのか。この対象者を明確にする必要があ ると思います。3点述べています。  a、雇用率制度がそもそも量的な義務に対して、条約でいう合理的配慮というのは、 雇用の際の個々の人に対する雇用の質を義務づけていると考えます。そこで、この両者 の対象者は同一なのかどうかが問題になります。この条約の合理的配慮の対象者を現行 の法定雇用率の対象者に限定することは正しくないと私は考えます。即ち、雇用率の対 象者も含む障害が理由で差別される人全てを対象とするという規定が必要だと思います。 もしくは、法定雇用率が先ほど大久保さんの方から話があったように、障害者が現実に 発生している割合でも決めてしまう。人口的な割合で決めてしまうということであれば、 それを同一にすることも可能だと思います。どっちがより易しくて、実効的な方法かと いうことで考えたらよいと思います。  bは、今、障害者手帳を一つのベースとして援用されていると理解していいんでしょ うか。そうされていると思います。ところが、障害者手帳の判定に使われる内容を見る と、生活場面のハンディを主に物差しにされています。それは社会保障制度と結びつい ているからだと思います。これでは、雇用上の差別可能性は判定できないと思うのです。 ですから、ここは別の体系が要るんだろうと思います。生活上は困難ではなくても、社 会のところで排除されるということが特に発達障害の方には多いわけですから。  Cです。結局、合理的配慮の対象者問題というのは、権利の対象者問題であるので、 重要だと思います。先日、見させていただきましたこの本ですが、この中で、米国ADA 法の2007年の改正案の内容が触れられています。是非、この委員会でも取り上げていた だけないだろうか。それは、法がつくられた後、いろんな裁判の結果などを踏まえて、 やはり一定の改正をする必要があるという動きが読みとれます。そこでは、本当の意味 で、医学モデルから社会モデルへの転換をしたいという意図が読みとれるように思いま す。ですから、この委員会でも取り上げていただきたいと思います。93ページから100 ページぐらいのところに書いてあります。  マル5は、いわゆる保護雇用との関係です。先ほどもお話しがありました。雇用促進 法と福祉的就労の関係です。先ず、今後の法整備によって、従来の福祉的就労の場が狭 まることは絶対に避けねばならないと私は考えています。むしろ、従来の福祉的な雇用 をこの条約によって再評価すべきなんだろうと思うんです。やっぱり当事者からすれば、 そのような福祉的就労の場が提供されてはじめて平等になり、障害のある人がそのもて る労働能力に応じて社会参加することが可能となっています。ですから、彼らはサービ スの利用者ではなく、当然の権利として配慮を受けていると私は考えます。従って、個 人的見解なんですけれども、利用料金を本人から取るという考えは、私は間違っている と思います。一方、障害者イコール一般職場で働けない人と捉える方々が世間には未だ に多いんです。ですから、多くの障害者が福祉的な就労で働くしか選択肢がないという のもまた現実です。結局、答えは福祉的就労でなくても働けるようにする、一般雇用を いかに拡大するかが、解決の道だと思います。  マル6、障害を拒否の理由にさせないための法整備、即ち一般者と同じものが使える ようにということです。現実には、ここでは受け入れられません、責任が持てませんと いうのが多いんです。分かりやすい例として、これを槍玉に上げようとかそういう意味 ではないんです。一般の職業能力開発校で説明します。本人が自分を知ってもらうため に、私はアスペルガーですと言ったとします。そうすると、実質的に拒否される例が多 いと聞きます。本人は障害者用のメニューを求めているわけではないんです。自分を説 明するためにやっている行為なんですね。しかし、受け入れ側としては過剰反応してし まうわけです。以上のようなことはどこにでもあります。特に、一般用と障害者用とい う2つの窓口があるような場合に、障害者というと、すぐ向こうですというようにやっ てしまう。これ自体私は差別だと思います。条約の趣旨に則り、一般者向けのインフラ において、障害のあることを理由とする拒否を禁止するための法整備が必要だと考えま す。  最後、マル7です。雇用や職場での差別禁止の問題です。特に、先ほど山岡さんの方 からも説明がありましたとおり、発達障害者の場合、この規定を有効に現場に適用する ということが特に重要です。その理由は、この障害特性がやはり分かりにくいところか ら来ていると思います。そのために、人格を攻撃されて、精神的な病に陥るケースが非 常に頻発しております。置かれた人間関係を適宜認識することに困難さをもち、それ故、 職場で必要とされるチームワークにハンディをもつのが発達障害なので、これを対象に するということが重要です。英国の報告書がございます。下に注で付いていますけれど も、そこの実践の結果は、気づきさえすれば、雇用側ができる調整は数多くあるんだ、 そのような調整がなされれば、時には健常者以上の戦力にもなるというふうに報告され ています。従って、発達障害者についても、差別的取り扱いが禁じられ、配慮の対象に することは特別な意味があると私は考えます。なお、そうは言っても、現実は、当事者 本人だけがストレスを感じているわけではありません。周囲もまたこの障害を理解する 意欲があってもストレスを感じる場合があるのです。それは、どのような手だてがその 人にとって有効なのかということが、なかなか分かりにくいということがあります。即 ち、優しさや平等感だけではなかなかうまくいかない。そのためには、適切な変更や調 節ということを身近で行える、そういうスキルをもった身近なサポーターを今後育成す る施策が要るんではなかろうか。そのように考えております。ありがとうございます。 ○座長  ありがとうございました。4つの団体からご説明いただきました。一括してご質問あ るいは議論したいと思いますが、最初に小金澤さんからご質問があった点について、事 務局からお願いします。 ○事務局  事務局でございます。先ほどのご質問についてですが、資料5の2ページ目で申し上げ れば、この特開金は精神障害者の方も対象になります。マル1と同様で、改正後という か、本年度予算からは90万円ということで、マル1の対象になるということでございま す。 ○座長  いいですか。それでは、ご質問、ご意見がございましたらお願いします。 ○小金澤氏  私は特例子会社の知的障害の方を見学に行ったことがあるんですけれども、そこの担 当の社員の方から聞いたのですが、就職させるよりも就職してからの仕事を含めた人間 関係とかが大事です。どのような職場であったとしても、やはり就職した後にその人の 障害に適したフォローアップをすることによって定着します。かつ本人の趣味であった り、楽しみであったり、そういうところにお金をということであります。もちろん入り 口も大事ですけれども、就職した後が大事です。大企業であれ中小企業であれ、多少の 負担は覚悟の上で障害者を雇うというような雰囲気といいますか、そのような気分とい いますか、そういうものがとても大事です。私も精神障害者ですけれども、オープンに した場合もありますし、クローズにした場合もありますが、やはり職場の中で自分を分 かってくれるかどうかです。その中に先ほど誰かおっしゃいましたけれども、自分の中 に障害者があるんですね。障害だけを分かってくださいではなくて、自分を分かってく ださいというような点が、非常に、毎日朝の9時から夕方5時まで気分良く働けるかどう か。厳しい環境の中でビクビクしながら働いているのと全然違ってくるので、私は特に 就職した後のフォローアップを皆さんにお願いしたいと思います。以上です。 ○座長  他にいかがですか。 ○松井委員  大久保委員と今井委員の方から福祉的就労について意見が出ておりますけれども、ニ ュアンスが少し違うのではないかと思うんですね。今井委員の方は、基本的には福祉的 就労は一般雇用を増やすことによって極めて小さくなっていく。あるいはゼロになるか も知れない。というような考え方のように聞きましたけれども、大久保委員の方は、基 本的にはそれはなくなるものではなくて、やはりある程度それはきちんと位置づけて、 然るべき賃金も確保できるような仕組みにしなければならない。そういうご意見でしょ うか。 ○大久保委員  理想的には福祉的就労という形ではなく、一般就労、一般企業というのがあるでしょ う。ただ、それこそ所得保障の関係とか、賃金保障という仕組みの問題もあるとは思う のですけれども、働くということを考えた時に、いわゆる企業就労をもって働くという 言い方ができるのかどうか。つまり、働くという行為というか行動というか、そういう ことによって社会経済活動に参加していく、社会に参加していく。あるいは、自分を客 体化していく。それも1つの自己実現になるかも知れません。そういうことを含めた時 に、企業就労というふうなところだけに価値を置いていくというのはどうかなと思いま す。つまり、障害のどんなに重い人たちも、自分のいわゆる働いた成果というか、それ が1つは生産的活動ということになれば、工賃ということになるのでしょうけれども、 もうちょっと広く考えた場合に、自分が働く、活動する、そういう中で、結果として工 賃には直接的には高く結びつかないにしても、そういった場面が用意されてもいいので はないかと思うんですね。先ほど言いましたけれども、福祉的就労というのは実際どこ までを概念として考えたらいいのかといった時に、今までは授産施設とか、そういった 場面においてだけ賃金ということが考えられてきた。更生施設に入ると賃金という概念 はなかったんですね。しかし、今回の自立支援法では、生活介護であっても、生産活動 に参加すれば、賃金を支払うという形になっているわけですね。そういうことも全体と して考えた時に、いわゆる単純には保護雇用というか、それをスウェーデン、イギリス は既にそういうのをなくす方向のようですけれども、実態としてはどうなのかなという ことはあります。理想はそうかも知れないけれども、やはりその辺のところも注目して いいのではないかという感じもしたわけです。 ○座長  今井さん、どうぞ。 ○今井委員  先ず、時間軸をどう考えるかだと私は思います。それは50年先、60年先のことを言え ば、福祉的就労という矛盾した言葉はもしかしたら消えるかも知れないと思っています。 当面大事なことは、福祉的就労があるから一般雇用が進まないという考えは、私は採り ません。それはむしろ逆だと思います。一般雇用がしっかりすれば、福祉的就労は、う まくいけば、ある大きさに縮まってくるだろうと私は思っています。そういう意味では、 現在行われている福祉的就労を雇用促進法というか、雇用という方から再評価すべきだ と思います。やっぱり福祉的就労は重要な役割は担っているんだと私は思っています。 ○座長  松井委員、よろしいですか。 ○松井委員  もう1つよろしいですか。大久保委員がいわゆる就労継続支援事業のA型のことを言及 されていますね。A型はいわゆる二重性があるというか、雇用契約がありながら利用者 契約もしなければならない。だから、そこはポイントとしては、その部分は少なくとも 雇用の中にきちんと含めて、分離して統合すべきという考え方でいらっしゃるわけです か。 ○大久保委員  はい。それの方が望ましいと思っています。今の中では雇用施策の方でやった方がす っきりするのではないかという感じをもっています。 ○座長  他にいかがですか。どうぞ。 ○今井委員  先ほど小金澤さんからもお話しがありました。実は、今みたいに福祉的就労であると か雇用率制度ができる前の昭和40年代から障害者雇用をやっていた会社はそう多くはな いんですけど、あります。実は、この会社の方たちが一般社員と一緒に働かせようとい うことを、もう昭和40年代からずうっとやっているんです。私の知っているある会社で も220名中60数名が障害者です。それで、今のままいくと、そういうところの経営者は何 か日が当たらない。せっかく長くこのことをやって、権利条約から考えると、本当によ くやっていると思うんだけど、そういうところこそ何か経営者のモチベーションが上が るような後押しも要るのではないかと思っています。 ○座長  それは何か表彰するとか、そういうことですか。 ○今井委員  いいえ。どうですかね。経営者はだんだんくたびれてきて、要は最低を守った方が結 局いいのかなと、そうなってしまうんですね。だから、長く続けたことが、金銭的にも 何か、単なる表彰では難しいでしょうけど、どういう形がいいかもうちょっと研究が要 ると思います。 ○座長  何かありますか。どうぞ。 ○障害者雇用対策課長  重度障害者を特に多く雇っている企業は、雇用率制度ができる前、あるいはできた以 降でも、かなり数がございます。そういう企業はある意味、保護雇用的な色彩としてそ ういうものができないかということで、長年厚生労働省としても支援してきたという経 緯がございます。最近ですと、特例子会社で、例えば、トヨタが特例子会社をつくりま した。大企業が特例子会社をつくったという点が注目されておりますけれども、私ども としても、特に重度障害者を多数雇用している企業に対しては、ある企業を1つつくる ぐらいの、最高で4億円ぐらい出しているような助成金制度があります。それは設備の 更新についても使えますし、そういう様々な支援機器を導入するに当たっての助成金的 なものはかなりやっています。もう1つは、障害者の雇用納付金制度の中で300人以上の 企業についてはもちろんですけれども、中小企業であっても、300人に達しない企業で あっても報奨金という形で、その企業規模ですと納付金の対象にはなりませんけれども、 1人当たり月21,000円をお支払いするというような形で、多く雇えば、そういうような メリットも出るような形のものもやっております。もちろん、全体に表彰という意味で は、そういう障害者を熱心に雇っていただいている企業は、おそらく大体は私どもの大 臣の表彰等々させていただいているだろうと思っておりますし、そこに働く障害者につ いても、そういう表彰をするという制度もあります。そういうものを組み合わせながら、 私どもとしては大企業における特例子会社のような形での雇用、あるいは企業本体での 多くの障害者を雇用していただくということも奨励しているところでございますけれど も、そういう中堅規模の企業で長く働いている、実際に私が伺った会社でも、金属40年 というような方にもお目にかかったことがございます。そういう中にいて、同じ仕事と いうわけではなく、少しずつ仕事を変えながらということもありますけれども、その企 業の中で定着しているという点、そういった面にも十分配慮しながらいろんな施策を考 えていく必要があると思っております。 ○座長  今井さんが考えておられるのは、多分、今これだけのコストがかかっているから、そ のコストの一部を補填してあげて、サポートしようという、そういうことではないんで すよね。 ○今井委員  はい。今妙案があって言っているわけではないので、ただ、今の施策はほとんど新し く採る人たちに対する施策が多い。それは裾野を拡大するという意味で本当に大事だと 思っています。ただ、先ほどあったように継続させていく。例えばA君ならA君を長く勤 めさせたということを評価することは必要だなということです。そうしないと、非常に 悪く言って申し訳ないんですけれども、特例子会社をつくって、法定雇用率だけを満足 させようと思ったら、早く辞めようが、人数だけ確保すればいい。そして、結構きつい 仕事を与えて、そして、できない人を辞めさせていく。「障害者はたくさんいるので、 あなたが働けなくても、いくらでもいますから」ということをはっきり言う人もいるん ですよ。特例子会社で。それは、やっぱり本来の条約の趣旨でいっていることとは違う と思うんですね。つまり、マスをどう雇うかだけではなくて、一人ひとりに対して配慮 するということをいっているわけですから、そこのところを、そして具体的に継続とい う形で評価されてくるというふうに思うので、そこがうまくできないのかなというのが、 悩みでもあるのですが。 ○座長  はい、どうぞ。 ○大久保委員  今のお話しと関連するのですけれども、知的障害の分野において最も重要なのは職場 定着です。ですから、雇い入れる部分については様々な仕組みで一生懸命支援してやっ ていく。ですから、委託訓練とトライアル雇用だとか、いろんな仕組みがあると思うの です。だけども、その後そのままずうっといった時に、どういうサポート体制があるだ ろうかというと、北海道の「三丁目食堂」事件ではないですけれども、言葉として悪い ですけれども、就職すると一丁上がりみたいな感じがあるんですね。そうすると、問題 は就職後なんですね。知的障害のある方などについては、おそらく生活全般、いわゆる 家と職場の行き帰りの問題とか、そういうことも含めた支援体制をしっかりしていかな いと、本当に誰も知らないうちに、「三丁目食堂」事件みたいなことになってくると思 うのですね。就業・生活支援センターも実際に増やしていただいていますけれども、勤 めた人たちをずうっとフォローしていく仕組みかというと、一応の期限がありますね。 そうでないと、どんどん対象者が増えていってしまうわけですから。ですから、そうい った相談支援体制も含めて、そういった仕組みがしっかりないと、やはり離職していく。 つまり、就職はしたけれど、就職率の数字だけは上がっていくと思うんですけれども、 ある意味で数字だけを追うみたいな世界になっていく。実態としてどうなのかというこ とになって、これは非常に心配な部分です。 ○座長  どうぞ。 ○今井委員  今おっしゃったことと繋げると、就職させる時は就職させるプロがやるんだけれども、 定着の主な仕事は雇用側だと思うんです。その職場で何か困ったことが起きた時に、1 年前に就職の世話をした人が来て、どうしたのこうしたのと聞いても、それはもうかな り手遅れの時です。ですから、うまく長く継続して障害者雇用をやっていっているよう なところは、よくノウハウを知っていて、A君、B君、C君に対してきちっと日々の中で やっていける、合理的調整ができる能力をもっておられる。つまり、ナチュラルサポー ターと呼んでいいんでしょうか。それを育成することが大事だと思います。「遠い専門 家よりも身近な理解者」というのが定着のキーワードだと思います。それを施策の中に どう入れ込むかというのは、ちょっと工夫が要るかと思うんですけど。 ○座長  どうぞ。 ○小金澤氏  私の知っている会社なんですけれども、中小企業ですから多分人数は少ないと思いま すけれども、精神障害者当事者1人を先ず雇ったんですね。その彼がリーダーとなって、 できる仕事を探して、次の精神障害者を雇用する。そして、1年間経ったら何と本人を 入れて8名雇いました。要するに、リーダーというか、そういう立場で仕事をしている ようなことをさせてくれる会社ですね。今のお話しのように、今度は精神障害者が精神 障害者を雇用するんですよ。雇用することが仕事になっていくんですよ。そういうケー スもある。それは社長さんがその障害に理解があったというところが発端です。賃金的 にはどうかと聞いたら、まあまあということでした。具体的な金額は言いませんでした けれども、本人は今30代ちょっとですが、まあまあだと言うっているぐらいですから、 きっと一人前に生活できる給料はもらっているんだと思います。ですから、健常者でな ければそういったアドバイスができないというのではなくて、当事者の中でもそういう 採用があればできるんだということを、私の立場から強調させていただきたいと思いま す。以上です。 ○座長  今、今井さんのおっしゃられた、あるいは小金澤さんが言われたような、何というか、 調整上手というか、そういうような仕掛けが社内の中で、文化でもいいし、ノウハウで も何でもいいですけれど、そういった形ができていないと、合理的配慮がされていない ということですか。そこはどうなりますか。 ○今井委員  定着・継続の議論ですよね。定着と継続を主に担うのは、職場の外の専門支援者とい うよりも、職場のすぐそこに、その場にいる人だと私は思うということを申し上げたの です。 ○座長  その時に、合理的な配慮というのは、例えば、こういう働きやすい椅子を用意しまし たとか、機械を用意しましたとかということがあるでしょうけれども、今おっしゃられ たのは、もう少しソフトな職場のノウハウとか文化とか、そういうことですよね。それ も合理的配慮の中に入れるべきだというふうにお考えなのかなと思ってちょっと聞いて いたんですけど。 ○今井委員  その通りです。それは、発達障害とか精神障害系の人を念頭に置いているので、当事 者が悩むこと、ぶつかることは、まさに人間関係のところでぶつかります。なので、日 常的に間に入れる人が翻訳し直すというようなことがどうしても要るわけです。その人 の役割には大きく2つあって、一つは、仕事の指示の仕方とか、複数の仕事が同時にで きないでパニック状態になったような時に、合理的調整することです。もう1つの重要 な役割は、職場で差別から当事者を守る役目です。その人たちは現にそれを担っている んです。この2つが身近なサポーターの重要な役割として存在していると思います。 ○座長  はい、どうぞ。 ○花井委員  私は前回欠席いたしましたが、資料は読ませていただきました。そこで、手をつなぐ 育成会の大久保さんにお伺いしたいのですが、雇用割当制度は、積極的差別是正措置と して考えられると書かれておりますが、前回の障害者のヒアリングで、障害種別に雇用 率の目標値を設定してはどうかという意見がいくつか出ていましたが、それについては どのように考えますか。 ○大久保委員  障害の種類別に雇用率を設定してはどうかという意見については、それがいいとは言 い切れないと思いますね。ということは、それは障害者の数ということをベースにして、 おそらくその割合とかいうところで議論されていくのか、その辺の数字からこの障害は 何%としなさいということになるのかどうか分かりませんが、非常に難しい部分がある と思います。というのは、特に知的障害においてはいわゆる0.5%ということに、かなり 疑問をもっています。そういうことでいけば、知的障害は一番少ないことになるかも知 れませんし、ですから、その辺は実際にそれぞれでパーセントという形は結構難しいの ではないかという感じがします。 ○座長  どうぞ。 ○松井委員  さっきのことにも関連するんですけれども、新しい施策を見ると、いわゆる障害別種 別というか、例えば発達障害であるとか、特定の障害グループに対する支援策という形 でできております。この権利条約でいっているのは全ての障害者というか、そういう意 味では、さっきも今井さんがおっしゃったように、企業においても発達障害だけでなく て、あらゆる障害に対応できるようなナチュラルサポートができる、そういう従業員が 養成される必要があるという。ですから、そういう意味では、非常に矛盾するんですけ れども、片や特定のサポートが必要であるというのと、さっき山岡さんがおっしゃった ように、総合的な対応というか、あらゆる障害に対応したものというように、だから、 団体としてはそういう個別に、特にこれまで対応が遅れてきたから、発達障害を専門に 何とかやってくれということを要求されるのか。あるいは、もうそれは必ずしも問わな い。あらゆる障害をもった人たちがきちんと職場の中に統合されるような形のサポート があればいいというようなことではあると思います。ただ、そうすると、見えない。具 体的に何をやってくれていますかということになりかねない要素があって、そこはなか なか難しいと思います。そこをどう調整していくのかということと、それから、さっき 今井さんがおっしゃったことで、できるだけ特別の場をつくるのではなくて、一般の施 策の中で、例えば一般の訓練の場の中で、あるいは一般の教育の中で、できるだけ対応 していくということに、より重点を置くということが望ましいとは思いますけれども、 それはさっきのこととある意味では矛盾することがあるわけですね。だから、そこも含 めてどう今後施策の中で重点をどちらに置いてやっていくのかということも、権利条約 の議論ではテーマになると思います。 ○座長  はい、どうぞ。 ○山岡氏  今、例えばICFの考え方とか、障害者自立支援法の考え方とか、教育分野でいくと、 特別支援教育とか、基本的にはノンカテゴリーで対象をつくっていくという考え方にだ んだんなっていると思います。世界的にもそういう流れになっていると思います。もち ろん障害種別の専門性につきましては、きちんと担保されなければいけないと思ってお ります。ただ、基本的には個に対する支援ということになるので、個々の一人ひとりの ニーズとか特性に基づいて支援をするんだというふうな考え方になっていくべきだと思 うんです。ですから、ケアマネジメントの世界になるのかも知れません。その中で、例 えば、知的障害と盲とか聾の世界でケアすべきことというのはもちろん違うわけですか ら、ここはもちろん専門性はきちっと確保しながらなんですが、ただ、同じ盲の方の中 にも例えば発達障害をおもちの方もいらっしゃいます。そうすると、教え方も違えば、 ケアの仕方も違うわけなので、基本的にはお一人ひとりに個別の支援計画なりできちん とケアをして、マネジメントをしてやっていくというのが大事だと思いますので、そこ のところはあまり矛盾はしていないと私は思っています。 ○座長  他にいかがでしょうか。どうぞ。 ○今井委員  他の方のご意見を伺いたいんですが、ある企業で障害者として、雇用率カウントをさ れている障害者と、雇用率カウントされていない障害者が雇用されていた時に、当然な がら合理的配慮は両方ともその権利をもつ、配慮の対象の権利をもつべきと思うのです けれども、それは自然のままで、今のままでそうなるのかどうかというのが、ちょっと 私には疑問で、分かりません。 ○座長  自然のままというのが、私にはよく分かりません。 ○今井委員  今の法体系の中で自然にということです。(どの現行法で差別から守られるか) ○障害者雇用対策課長  現在の法体系では、障害者雇用促進法の中で雇用率制度が1つ中核の部分を占めるわ けですけれども、先ほどの予算の中でご説明したような助成金の制度というものがあり ます。ただ、一番根幹となる職業リハビリテーションの部分がどういう形で支援を申し 上げるかというような形での対応というのは、ある意味、ノンカテゴリーで今はいろん な方に、雇用率の対象となっている方以外についても、発達障害の方についてもそうで すし、あるいは、場合によっては、難病の方についても入ってきます。雇用率の率のよ うな形で企業に義務づける部分については、なかなかそこまでいっていない部分はござ いますけれども、その発想としての職業リハビリテーションという考え方に立てば、そ こは種別に応じた形で何かあるという形の法体系には現状ではなっていません。だから といって、直ちに今井さんのご質問がどちらかという結論になるわけではないわけです けれども、現行法の考え方というものは、雇用率を中心とした義務づけにしている部分 と、それ以外の障害者に対するサービスという形で、考え方がかなり違う部分もありま すが、できる部分をかなり広くカバーしているという枠組みになっているということで ございます。 ○座長  どうでしょうか。はい、どうぞ。 ○今井委員  付け加えますと、心臓が悪くて障害者手帳を持っている人でも、就職の時にはそれを 言わないというのは、その方が得だからそうやっているわけで、合理的配慮が行われれ ば、むしろ言ってもらった方が、雇用側は助かるわけですね。でも、そこは簡単に言う わけにはいかないので、そこは是非何か考えないといけない。もっと障害をオープンに できる環境をつくっていくというのが必要だなと思っています。 ○座長  そこは今井さんの言葉で言うと、合理的調整力がないと、そんなことは言えない。 ○小金澤氏  精神に関しては、要するに隠すということが、就職の時には多かったですね。いわゆ るカミングアウト、「自分がこういう病気なんです。でもこういう仕事ができるんです。」 と言って採ってもらえるのが、今のお話しの中の精神に限ってはそういう現状がありま す。もう1点は、要するに、就職したいなと思えるような教育を、どこで誰が何時行う かです。実は私、目黒の支援センターで月に1度ピア講座という講座をもっているんで すけれども、ここでテーマを変えて、明るいいろんな話をしていきまして、さっきお話 しした就職したという8人のリーダーも私の生徒たちなんですが、やはり作業所は作業 所、センターはセンターで、そういう場を設定すると、モチベーションが上がってきて、 ではどうやっていったらいいのか、ではどうやって仕事をしたらいいのか、というふう になってくるんですね。そういった面でも、これから就労に向けての教育という観点で もやはり予算も必要でしょうし、人材も必要になってくるのではないかと私は考えてお ります。 ○座長  ありがとうございました。それでは、もう少し時間がありますので、どうぞ。 ○森委員  日身連の森でございますが、1つだけお聞きしたいと思っているんですが、合理的配 慮という新しい制度が入ってくるわけですから、その中の1つとしては、人的配置とい うことがあって、今出たことはそういうことだと思います。そこで、今ジョブコーチ制 度があるわけですけれども、この合理的配慮の問題が相当強くクローズアップされてく ると、現在のジョブコーチ制度は維持できるかなということ、どういう形になるのかな ということがあります。もしお聞かせいただければお願いしたいと思っています。 ○座長  どうですか。難しい質問ですね。 ○事務局  事務局でございますが、それは直ちに両立し得ないということではなくて、やはり企 業の方で、例えば合理的配慮として一定求められるレベルがあると思います。ただ、も ちろんその企業だけで全部できればいいんでしょうけれども、ジョブコーチのようにあ る程度専門的なサポートというか、技術が必要な場合に、それを行政的なサービスで使 えると、結果として、企業にとっての合理的配慮が、企業としての手間がものすごく負 担が高くならなくても、行政のサポートを加えると、足して配慮ができるというような ことも別にあっていいわけで、それは直ちに排除されるということではないと思います。 ○森委員  いいですか。僕がお話ししてもらいたかったなと思っているのは、やはり、おそらく 合理的配慮の基準というものをつくらなければ、これは問題は解決しないだろうという ことです。もう1つは、実は先ほど言われたことにもありますように、障害にもいろい ろありますね。身体障害者の中身もいろいろあります。精神障害者の人も来る。知的障 害者の人も来るという形で、1人の人がそういう専門的な配慮ができるというのは、ち ょっと私自身も考えられないなということがあって、先ほどそういう人的配置の問題は 相当難しいのではないかという気持ちでご説明させていただいたわけです。以上です。 ○座長  どうぞ。 ○今井委員  結局成功しているのを見ると、そのジョブコーチがナチュラルサポーターをつくった かどうかです。つまり、手を離れれば、直接支援はなかなかできにくくなるわけですね。 ですから、ナチュラルさぽーたーをがいれば今のジョブコーチで私は可能だと思ってい ます。それから、今おっしゃった意見に関係するんですが、ジョブコーチはあらゆる障 害について知らなければいけないのではないかということですが、実は、そんなことは なくて、Aさんのことを知ればいいんです。Aさんがあらゆる障害をもっているわけでは ないのです。発達障害であっても、何が不得手なのかというのは、ある程度つきあえば すぐ分かりますので、そのことだけをナチュラルサポーターに伝達すればいいわけです。 ですから、現実に成功している例を見ると、そんなにものすごく高度な専門性というこ とではないんだろうと私は思います。ただ、ナチュラルサポーターについていえば、成 功している例は、発達障害でいえば、生活面で1人、彼女の場合もあれば、奥さんであ る場合もある。職場に1人。合計2人です。すると、1,000人の発達障害の人がいれば、 2,000人のナチュラルサポーターがいる。でも、実際にそういう方はものすごく専門的に 知っているわけではない。そのA君とかBさんのその特徴をしっかり押さえて、そして理 解者になって、時には守り、時にはサポートしてやっている。ということが成り立てば、 私はうまくいくと思います。 ○座長  どうぞ。 ○山岡氏  今、厚生労働省の方で障害者自立支援法の見直しが今年の5月から12月まで行われて いる中で、その前に作業部会みたいなところで障害児支援に関する検討会というのがあ って、そこで出たことが1つと、それから、8月に発達障害者支援に関する検討会という のが行われて、そこでの報告書が8月29日に出ています。そこで共通している考え方な のですが、雇用の世界に置き換えてみますと、個々の例えば事業所だとか企業とかに専 門家を配置することはちょっと無理でありますので、地域毎の拠点に、例えば就業・生 活支援センター等ですが、心理士とか、作業療法士とかジョブコーチ等の、いろんな専 門家を配置しておく。個々の事業所には、例えばサービス管理責任者なのか、あるいは コーディネータなのか、名前はちょっと分かりませんけれども、ある一定規模のところ には置いていただいて、初期の対応はしていただくんです。地域毎に専門家を配置して おいて、何かあれば出向いて事業所なりを支援をするような仕組みをつくらないと、お そらくその個々の対応はできても、専門的に対応しなければいけない時にはちょっと無 理になるだろうというようなことであります。そういうような仕組みを障害児支援や発 達障害者支援法の分野ではつくろうと提言されております。雇用の分野においても、そ ういう仕組みがあれば、何か各事業所なり企業なりで、個々に専門性を担保しなくても 対応できるのではないかと思います。以上です。 ○森委員  合理的配慮をやらないと差別になるということになりますよね。そうすると、相当プ レッシャーがかかるということと、今のお話しでも分かるとおり、ジョブコーチという ものが、会社そのものがやるものもあるだろうけれども、そうではなくて、やはり役所 の方からいろんなサポートをしていくというシステムだと思います。そうすると、合理 的配慮なのか、そうでないのかという、その基準がまた出てくると同時に、合理的配慮 をしているかしていないかという争いが出てくるわけですね。そうすると、その挙証責 任を誰がやるのかということがあって、おそらく会社の方にもっていかれるのだと思い ます。そうすると、「いや、行政がちっともやってくれないからこうなってしまうんだ」 という議論が出てくると、非常にこんがらかってくるなという形で、最初の場面のこと を一応考えていかなければ、ちょっといけないのではないのかなと、そういう思いです。 以上です。 ○座長  そろそろ時間がまいったんですが、他にございますか。どうぞ。 ○山岡氏  今井さんからのご提案の中で、差別監視是正委員会というのがあります。私の本業は 金融分野なんですが、紛争解決機関をつくれという流れがありまして、ADR(Alternative Dispute Resolution)というのがあって、金融の分野は今業界毎に銀行は全銀協がつく る、保険分野は損害保険協会、生保協会が各々ADRを作るという流れになっております。 これは、ちょっと違うかも知れませんが、今井さんがおっしゃったとおりで、裁判にい く前に、そういう第三者機関がその紛争を解決するという、ある一定の規模の権限をも つというような、介入権をもつようなものがあって、労働分野ではそういうものは何も ないんでしたっけ。そういうのはありましたよね。ですから、おそらくそういうところ と、例えば障害分野に特化したものなのかも知れませんが、そういう紛争解決機関があ ればよいということではないかと思います。 ○座長  それでは、まだご意見があると思いますが、時間ですので、今日はこの辺にさせてい ただければと思います。それで、次回の議事日程について、先ず事務局からご説明いた だけますか。 ○事務局  事務局でございます。次回、第6回は本日に続いて障害者関係団体からのヒアリング を予定しております。次回は、日本障害者協議会(JD)、あるいは障害者インターナショ ナル日本会議(DPI日本会議)等からのヒアリングを行うべく調整中でございます。次回 の日程及び場所については未定でございますが、11月上旬で調整をしようかなと考えて おります。速やかに確定の上、後日改めてご連絡をいたします。 ○座長  よろしいですね。では、最後に毎回のことですが、議事録ですが、公開ということで よろしいですね。では、公開ということにさせていただきます。それでは、これをもち まして今日の研究会を終了いたします。ありがとうございました。 【照会先】   厚生労働省 職業安定局   障害者雇用対策課   電話 03-5253-1111(内線5855)   FAX 03-3502-5394