08/09/18 社会保障審議会第11回少子化対策特別部会議事録 第11回少子化対策特別部会議事録 日時:2008年9月18日(木) 17:00〜19:00 場所:厚生労働省 省議室(9階) 出席者:  委員   大日向部会長、岩渕部会長代理、内海委員、大石委員、小島委員、庄司委員、   杉山委員、福島委員、宮島委員、  事務局   村木雇用均等・児童家庭局長、北村審議官、高倉総務課長、堀井調査官、   朝川少子化対策企画室長、杉上虐待防止対策室長、藤原家庭福祉課長、   定塚職業家庭両立課長、田中育成環境課長、中村児童手当管理室長、   今里保育課長、宮嵜母子保健課長  参考人(オブザーバー)   三重県健康福祉部総括室長(こども分野)速水恒夫参考人(野呂委員代理)  参考人(ヒアリング出席者)   横浜市こども青少年局子育て支援部保育運営課長 本田秀俊参考人   横浜市こども青少年局青少年部放課後児童育成課長 高嶋 信参考人   保育園を考える親の会代表 普光院亜紀参考人   全国学童保育連絡協議会事務局次長 真田 祐参考人 議題:  次世代育成支援のための新たな制度体系の設計について   1.次世代育成支援のための新たな制度体系の具体的検討に向けて   2.関係者からのヒアリング    ヒアリング出席者     ○横浜市こども青少年局子育て支援部保育運営課長   本 田 秀 俊     ○横浜市こども青少年局青少年部放課後児童育成課長  高 嶋   信     ○保育園を考える親の会代表             普光院 亜 紀     ○全国学童保育連絡協議会事務局次長         真 田   祐 配付資料:  資料1  次世代育成支援のための新たな制度体系の具体的検討に向けて  資料2  横浜市提出資料  資料3  普光院参考人提出資料  資料4  真田参考人提出資料 議事: ○大日向部会長  定刻になりましたので、ただ今から「社会保障審議会第11回少子化対策特別部会」を開 催いたします。委員の皆様におかれましては、ご多用のところをお集まりくださいまして、 ありがとうございます。議事に入ります前に、事務局より資料の確認と委員の出席状況に 関して、ご報告をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、お手元に配付しています資料の確認をさせていただきます。最初に「議事次 第」がありまして、その下に資料1といたしまして「次世代育成支援のための新たな制度 体系の具体的検討に向けて」という資料がございます。その下に資料2として横浜市から 提出していただいた資料、資料3として普光院参考人からご提出いただいた資料、資料4と いたしまして真田参考人から提出いただいた資料を用意させていただいております。もし 不足等がございましたら、事務局にお声掛けをしていただければと思います。  委員の出席状況ですが、本日は駒村委員、佐藤委員、野呂委員、山縣委員、山本委員、 吉田委員、岩村委員からご都合によりご欠席との連絡をいただいております。それから清 原委員はご出席の予定ですが、到着が遅れるという連絡をいただいております。庄司委員 もまもなくご到着されると思います。なお、野呂委員の代理といたしまして、三重県健康 福祉部総括室長(子ども分野)速水恒夫参考人にご出席いただいております。  ご出席いただいております委員の皆様方は定足数を超えておりますので、会議は成立し ております。  次に、本日参考人として本部会にご出席いただいています参考人のご紹介をさせていた だきます。まず、横浜市こども青少年局子育て支援部保育運営課長の本田秀俊参考人です。 ○本田参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  同じく、横浜市こども青少年局青少年部放課後児童育成課長の高嶋信参考人です。 ○高嶋参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  次に、保育園を考える親の会代表の普光院亜紀参考人です。 ○普光院参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  次に、全国学童保育連絡協議会事務局次長の真田祐参考人です。 ○真田参考人  よろしくお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今ご報告がありましたが、本日ご欠席の野呂委員の代理 としてご出席いただいております三重県健康福祉部総括室長(こども分野)の速水恒夫参 考人のご出席について、ご異議はありませんでしょうか。よろしいですか。  (「異議なし」の声あり) ○大日向部会長  ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。本日はお手元の議事次 第にありますように、「次世代育成支援のための新たな制度体系の具体的検討に向けて」 につきまして、事務局からのご説明を伺った後、関係者の皆様からのヒアリングを行いた いと思います。  まず、資料1「次世代育成支援のための新たな制度体系の具体的検討に向けて」につき まして、事務局から資料のご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それではご説明いたします。その前に、先ほど資料のご説明を申し上げたときに、委員 の机上には真田参考人から提出いただいています大きいカラー版のものも置かせていただ いています。  では説明いたします。資料1をご覧いただきまして、1枚おめくりいただいて1ページで す。これは基本的に春の段階でも一度ご覧いただいた資料を少し改編しているものですが、 今後、次回以降に各論のご議論に入っていただく上で、もう一度制度全体を、次世代育成 支援に関する制度というのは大体このような感じですというものを振り返っていただくた めに用意させていただいております。簡単に振り返りますと、縦に「働き方」など項目ご とに分かれておりまして、横軸は年齢で区切っております。一番上の「働き方」の所は、 新しい制度体系ということでは直接の関係はありませんが、保育と育児休業の関係であり ますとか、「働き方」の関係は、密接に次世代育成支援のサービスにかかわってくる部分 です。その下に「保育・放課後児童」、あるいは「地域子育て支援」とありますが、この 辺りが秋にご議論いただく中核部分になってくるところです。その下に「母子保健」、「社 会的養護」ですが、新たな制度体系という広義にとらえますと、このようなところも視野 に入れながら考えていくということになります。中核的な議論は、どうしても「保育」や 「地域子育て支援」、「放課後児童クラブ」などそういったところになるかと思いますが、 このようなところも視野に入れながらということになります。さらに、その下に「経済的 支援」とありますが、育児休業給付について、この新しいシステムの制度体系の中で、ど う取り扱っていくか、現在雇用保険で取り扱っていますが、そういったことをどう考えて いくかという点で関係してまいります。さらに下に「児童手当」がありますが、現金給付 の体系として新しい制度体系の中でどのように取扱っていくかといったところで関係して まいります。それからこの図の見方ですが、春と少し変えているところは、枠囲みに色を 付けまして、性格がそれぞれ少し違いますということをお示しできるようにしてあります。 左下を見ていただくと、赤色の枠で囲っていますのが、いわゆる義務的経費として国が負 担金の形で補助金を出しているもの、青色で囲っていますのが、そうではなくて裁量的に 予算の範囲内で補助をするという形のもの、黒色で囲ってありますのが一般財源化されて いるもの、あるいは社会保険の仕組みで行っているものです。さらに実線と点線がありま すが、実線は一般会計から国費が支出されているもので、波線は特別会計、児童手当勘定 から交付されていたり、雇用保険の方から交付されているものです。ちなみに、認可保育 所の所を見ていただきますと、赤と黒の線が重なっておりますが、意味しているところは 民間保育所は国費が出ておりますが、公立保育所については一般財源化されておりますの で、そのような表示をしています。  もう1枚おめくりいただきますと、今1ページ目で見ていただいた中で、保育サービスだ けを取り出してみたものです。これも春の段階で一度ご覧いただいた資料そのものですが、 振り返りますと、まずサービスそのものがいろいろあるということですが、中核的なとこ ろは黄色の部分で、保育所(通常保育)で行われている月曜日から土曜日までの所です。右 側に延長保育があって、これは新しい仕組みを検討していく上で通常保育との関係で、ど のように整理をしていくかといったところがございます。さらに、左側の特定保育は週2 〜3日の特別の対応です。これはパートの取扱いを今後どうしていくか、「保育に欠ける」 要件の見直しとの関係の議論ともかかわってくるところです。下の方に夜間保育がありま すが、ここは特別に時間単位で区切って、別のサービスとして今、類型分けしているもの ですが、今後新しい仕組みの中で昼間と夜間の区別をどうしていくか、あるいは夜間ニー ズへの対応をどのように考えていくかといった論点があるかと思います。その下の家庭的 保育以下の所は、どちらかというと昼間の保育を中心に保育所の通常保育と、利用者の立 場からすると代替関係にあるようなサービスが、家庭的保育事業所内託児施設、認可外保 育施設、幼稚園の預かり保育等があるということです。さらに、ここは財源面もそれぞれ 今はばらばらになっていますので、このようなところも、もう少し整理をする必要がある ということが課題です。  もう1枚おめくりいただきまして、これは昨年秋に「『子どもと家族を応援する日本』重 点戦略」会議でご議論いただいたときに一度お出ししている資料ですが、1ページ目で見 ていただいたように、いろいろな給付サービスがある中で非常に大きく類型分けをしてみ ると、どういう類型分けが可能かを試みたものでありまして、これを大きく二つに分けま すと、上の共働き家庭の所にある箱です。いわゆる両立支援系のサービス給付と呼んでい ますが、育児休業給付あるいは保育、放課後児童クラブなどそういう共働き家庭に向けた サービス・給付があります。もう一つがそれ以外のすべての子育て家庭に対する支援と、 大きく分けるとこういう二つの類型に分かれるのではないかと思います。さらに、すべて の子育て家庭に対する支援の中では、個人に対して給付をする形のものと、そうでないも のとに分けられるということで、個人に対して給付するものについては、児童手当や出 産・育児一時金などが該当して、さらにこの重点戦略の議論をしていたときには、一時預 かりのようなものも個人給付として構成していったらどうかというような議論をしていた だいたところです。  次に、もう1枚おめくりいただくと、 こちらは春に当少子化対策 特別部会で「基本的考え方」を5月にまとめていただきましたが、その提言を受けました 内容をグループ化してみたものです。次回以降に各論の議論をしていただくわけですが、 その際どのようなところを具体的に深めていっていただきたいか、そういったところを少 しわかりやすく見ていただくために作ったものです。まず、左上を見ていただきますと、 保育サービスの提供の新しい仕組みということで、「基本的な考え方」の中では、公的性 格や特性を踏まえた新しい保育メカニズムを検討してはどうかという内容になっています。 その中で、ここでは主に五つの論点を挙げています。一つは、必要性の判断基準の所で 「保育に欠ける」要件の見直し。二つ目は、契約などの利用方式のあり方をどうしていく か。三つ目は、上の二つと関係しますが、市町村等の適切な関与の仕組みをどうしていく か。さらには情報公表制度や第三者評価の仕組みでありますとか、そのようなところをよ り充実させていくにはどうしたらよいか。もう一つは特に地方における地域の保育機能を いかに維持、さらには向上させていくか。これらの主な点につきまして、より具体的な議 論をしていただけたらと思っております。  欄外に※で書いてありますが、就学前保育・教育施策のあり方全般に関する検討につき ましては、前回も申し上げましたが、認定こども園につきまして制度的な見直しを年度内 の結論に向け、新たな検討の場を設置して議論することになっていますので、当座はそち らの方で議論を進めていただいて、ある程度そちらの方の議論が進んでまいりましたら、 少子化対策部会の方にも議論をフィードバックしまして、こちらでも議論をしていただけ ればと思っています。  その下に点線で囲っています放課後児童対策の仕組みにつきましては、「基本的考え 方」に若干触れてはありますが、踏み込みといいますか具体化がまだ足りていないところ ですので、秋の議論では、もう少し具体的な議論をお願いできればというところです。  その下の「すべての子育て家庭に対する支援の仕組み」対策としましては、これらのサ ービスについてそれぞれ量の問題、質の問題、財源の問題、それぞれについての議論をし ていただく必要があるかと思っています。  右側に移りまして、これらのサービスの縦軸に共通にある課題としまして、まず一つは 「多様な提供主体の参入に際しての透明性・客観性」ということで、参入規制の問題につ いて議論していただくということです。もう一つは、子どもの最善の利益の保障という観 点から、質の向上に向けた取組の促進という大きいテーマがあります。この質の向上とい うのは共通した課題ですが、中でも保育サービスにつきましては「基本的考え方」の中で は、親支援や障害児への対応など保育の役割拡大が進んでいることに対して、どう対応し ていくかという検討、あるいは認可保育所を基本としながらも、認可外も含めて全体の質 の向上を図る必要があるのではないかという論点、そのようなところを具体的に深めてい ければと思います。  一番右側にあります通り、社会全体での重層的負担、費用負担につきましても、地方負 担、事業主負担、さらには利用者負担のあり方、そのようなところが論点としてあります ので、もう一度ご議論をしていただければと思っています。  資料1の説明は以上でございますが、若干補足があります。一つは前回、大日向部会長 からご指示がありました保育事業者を主体として新たに検討会を設置するということにつ いてですが、現在その設置に向け準備中ですので、設置されましたら、またご紹介させて いただこうと思っております。  あと、前回福島委員から2点ほど宿題をいただいております。一つは待機児の解消策を 具体的にどうしていく方策があるかを整理するという宿題をいただいております。これは 福島委員からのご発言も受けまして、前回少しご紹介しましたけれども、その後保育課で 今年の4月に待機児の状況を発表しましたが、そこで待機児の多い市町村につきまして、 これまでどのような対策を講じてきて、何がネックになっていて、あるいは今後どのよう な取組を進めていくかということについてのアンケート調査を今実施していますので、そ れが取りまとめられましたら、またこの少子化対策特別部会でもご報告させていただこう と思っております。  もう一つは、児童人口が減少してきておりまして、特に地方における次世代育成支援策 について、まとめて整理して報告するようにという宿題をいただいております。これもも う少し時間をいただきまして、準備ができました段階でご報告させていただこうと思って います。以上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今の事務局からのご説明に対しまして、何かご質問・ご 意見がありましたら、お出しください。それでは小島委員、お願いいたします。 ○小島委員  これからの検討・議論についてのお話が幾つかされました。今の資料の中では4ページ に、今回5月にまとめた「基本的考え方」を踏まえて、これからの検討事項ということで 説明がありまして、その中で右側に質の高いサービスの維持・向上という項目が入ってい ます。質の高いサービスを行っていくためには、質の高い人材の確保というのは当然必要 だと思っております。現実的には今、保育士の人材のところでは、非正規の保育士が相当 増えてきているという実態があります。全国保育協議会の調べでは、35%ぐらいが非正規 の保育士であると出されております。その非正規の保育士の賃金待遇が極めて厳しく、低 い賃金で退職金もないといったような形で、雇用不安といいますか、働いているけれども いつ切られるかわからないといったような中で働いて保育に従事しているということもあ ります。あるいは、さらにもっと劣悪な状況の学童保育の指導員は、4分の3が非正規の職 員という状況もありますので、この辺は財源の問題も当然絡んでいると思いますけれども、 ぜひ現場で働いている保育従事者の声を直接聞くような場、ヒアリングを、これから少し 検討いただければと思っています。どの場が良いかということはありますが、それは今後 の検討をしている中で大日向部会長と事務局でぜひ検討いただければと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にいかがですか。よろしいですか。  それでは、次に予定しておりますヒアリングに移りたいと思います。先般、当部会にお いて取りまとめました次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた「基本的考 え方」を踏まえまして、本日は自治体関係者の方々、そして保育利用者、さらに学童保育 関係者の皆様から、それぞれお考えを述べていただきたいと思います。参考人の皆様にお かれましては、本当に申し訳ないのですが、ご説明いただく時間が短いことをお許しいた だきたいと思います。皆様に意見を述べていただいた後に、質疑応答や議論の時間を十分 に確保させていただきたいと思いますので、何とぞ進行にご協力いただければと思います。  最初は、横浜市こども青少年局子育て支援部保育運営課長の本田秀俊参考人、同じく横 浜市こども青少年局青少年部放課後児童育成課長の高嶋信参考人から、お二人合わせて20 ほどでご説明をお願いします。よろしくお願いいたします。 ○本田参考人  それでは、資料2をご覧いただきたいと思います。事前に、保育の現状、課題、取組内 容についてのお話をということでしたので、横浜市の保育所の現状等についてお話しさせ ていだきます。項目として4点ございまして、保育所定員や待機児童数等の推移、それか ら保育所運営費の推移、そして保育所入所選考を行う際の基準、そして「横浜保育室」に ついてお話をさせていただきます。  まず保育所定員や待機児童等の推移ですが、表の就学前児童数をご覧いただきますと、 平成16年と平成20年を比べますと、就学前児童数は横浜市も下がってきておりますが、申 込率をご覧いただきますと13.94%から18.32%ということで、保育所入所のニーズは年々 高まっておりまして、今後も高まっていくと思われます。このために289カ所から402カ所、 5カ年間に113カ所・8,893人、これを割合でいいますと定員を133%増加させました。今あ る保育所の3分の1をこの5カ年間で急ピッチで整備してきたということでございまして、 横浜市の保育所整備についての意気込みをおわかりいただけるかと思います。  平成16年度にありました待機児童1,190人は、いったんは減少傾向になりました、平成 20年でご覧いただけますように、707人と増加しております。ちなみに平成19年度は、19 カ所・1,638人の定員増を図ったにもかかわらず、平成20年4月の段階で707人増というこ とで、本日の新聞にも記事になっておりましたが、仙台市に続いて2番目の待機児童とい う状況になっております。この待機児童について分析をいたしますと、2点ございます。 年齢別の特徴については、707名のうち1歳児で342名、2歳児で190名、3歳児で100名とい うことで、1歳児が非常に待機児童が多いということです。特に前年に比較して1歳児に待 機児童が最も多く、3歳以上は減少しております。多分これは育児休業がかなり浸透して きているものと想定されます。2点目は、理由別の特徴を見てみますと、待機児童の理由 別で言いますと、「就労していない」、「求職中」の保護者の児童が343名ということで 48.5%、半数近くとなっています。女性の就労の高まりと、それから後で入所要件のとこ ろで少し触れさせていただきますが、保育所に対するかなりの期待がこういう形になって いると思います。  続いて、保育所運営費の推移ですが、このような形で保育所整備を急ピッチで進めてま いりましたので、平成16年の235億円から5カ年で384億円で163%増加ということでござい まして、近年の厳しい財政状況の中では、年々増え続ける保育所運営費をどう対応してい くかということが非常に大きな課題になっております。特に今、平成21年度予算を検討し ておりますが、見込みでは前年度より180億円の収支不足が見込まれ、これは法人税や消 費税交付金が大幅に減少することが見込まれるということで、全体が減少する中で当然に 整備をしていけば運営費が膨らんでいく問題をどう賄っていくかということが、大きな課 題になっております。よく特別養護老人ホームと比べますと、整備をした運営費がストレ ートに財政負担として自治体にかかってくるというところでは、市としては非常に大きな 課題になっております。併せて、公立保育所については運営費、整備費が一般財源化され て以降、特に改修・修繕がなかなかままならない状況でございまして、多くの施設が築30 年以上経過しており、日常的な修繕あるいは耐震化に伴う費用について大変苦慮している ところでございます。  続きまして、保育所入所選考についてご説明いたします。児童福祉法第24条で市町村が 保育実施基準を定めることになっておりまして、横浜市では横浜市保育所入所承諾及び選 考基準に基づいて、「保育に欠ける」児童の度合いに応じて優先度の高い順に入所してい ただいております。お手元の資料の3ページに具体的に市民の方々にお配りする資料を付 けさせていただいておりますが、5ページ以下に具体的な横浜市の保育所の入所選考基準 がございます。これに基づいて優先順位を決めておりますが、なかなか待機児童が多い中 で、同一ランクに乗る方が増えておりまして、6ページに同一ランクでの調整指数という ものを設定して、さらに細分化して優先順位を決めています。かつ、さまざまな家庭環境 の方が入所を希望されておりますので、事前に面談を実施して、統合的に入所の必要性を 判断しながら、入所の選考を行っているところです。入所事務の担当者や保育所関係者の 方からお話を伺ってまいりましたが、特に低年齢児を中心に保育所に対する期待が非常に 高くなっておりまして、現在就労しているかどうかにかかわらず、保育所を利用したいと いう方が非常に増えている状況でございます。横浜市の場合には週4日、1日4時間以上の 条件を付けておりますが、そのために一部では就労実績を無理に作って保育所に入所され る方や、毎年継続入所の確認をしておりますが、そのときに就労するというような形で入 所されている方もいらっしゃるようです。もう一つは0歳児が比較的入所しやすいために、 要件の人が入ってしまいますと1歳児が入所できないという状況が続いております。  また、4月1日で要件の低い方が入ってしまうと、年度途中で育児休業明けの方が入所で きないということが出てきます。入所選考基準を毎年見直していますが、母子家庭を優先 するのか、きょうだい児を優先するのかなど、基準作りが大変難しく、毎年審査請求を含 む苦情が出ている状況です。  一方で、入所決定後、保育料が高い、あるいは自宅から遠いので辞めたといった形での 辞退も少し増えている状況です。保育サービスの必要性の判断を客観的・公益的な形で設 定する必要があるのではないかと考えています。  4点目が横浜保育室の関係です。お手元の資料の2ページをご覧いただければと思います。 この事業は平成9年から横浜市が独自に開始した事業で、3歳未満児の待機児童解消を目指 して、横浜市が独自に定めた設備や保育水準を満たす施設を横浜保育室として認定した認 可外の保育施設です。4月1日現在、128施設4,123人の定員という状況です。  これも市民の方々にお配りしているものがありますので、それをご覧いただければと思 います。9ページをご覧いただければと思います。先ほども言いましたように、横浜保育 室は横浜市が独自で設けた基準で助成している認可外保育施設です。  (1)のところにありますように、保育環境としては3歳未満の子どもを助成対象としてお ります。ただ、3歳になったときに、その後をどうするかという不安が皆様から寄せられ てまいりますので、認可保育所に申し込みをされた場合には、1ランクアップという形で 対応しております。職員は3歳未満の子どもをおおむね4対1と設定していまして、保育士 の資格は3分の2以上としています。それから、(3)にありますように、全施設での給食を実 施しています。  保育料につきましては3歳未満の子どもは5万8,100円を上限に、施設が独自に設定しま す。併せて一定の所得、これは平成19年度でいいますと夫婦共稼ぎ世帯で子ども1人の場 合は700万円以上ぐらいですが、そういう方々以下の方については月額1万円の軽減をして いるところです。  保育時間につきましては、朝の7時半から夕方18時半の11時間。土曜日については8時間 です。助成対象児童は保育所の入所要件と同様です。具体的には施設に入所の申し込みを していただきまして、就労要件等を施設が判断して入所することになります。そして行政 の方には助成金の請求時にそれらの書類を添付して審査することになっています。入所決 定については実態の全体は把握していませんけれども、先着順の形で入所される方が多い のではないかと思っています。  (5)にありますように、この制度は施設との直接契約ということで、従って保育料につ いても5万8,100円を上限としていますが、認可保育所のような所得階層別の体系というこ とではなく、年齢や利用時間、日数などによって施設が決定している状況です。どのよう な所得階層の方が入っているかということですが、先ほど減免の数字がありましたが、月 額1万円の減額を利用されている方は全体の中で36%です。3人に1人ということですので、 逆に64%以上の方が所得700万円以上の方と推測されるところです。  一方で、認可保育所の場合には、700万円以上の方は33%、生活保護・非課税世帯の方 は15%以上いるということで、認可保育所の方が利用されている方の所得の水準は高い方 が多いのではないかと推測されます。以上、4点についての報告です。 ○高嶋参考人  続きまして、資料の11ページをご覧ください。横浜市の放課後児童育成施策について、 この表を使いましてご説明します。それとともに、放課後児童クラブへの国の補助につい てお願いというか、お話ししたいと思います。  横浜市の放課後児童施策の特徴ですけれども、この表にあります左から二つの「放課後 キッズクラブ事業」「はまっ子ふれあいスクール事業」という事業で、346校の小学校があ りますが、全小学校で全児童対象のいわゆる子ども教室事業を実施しているということで す。このはまっ子ふれあいスクールが平成5年からスタートしまして、横浜市では平成13 年の段階で全校にはまっ子ふれあいスクールを展開しました。その後、はまっ子ふれあい スクールを少しバージョンアップしたといいますか、はまっ子ふれあいスクールを順次、 放課後キッズクラブという事業に転換しているところです。  「実施か所数」というところでまいりますと、平成20年度当初、はまっ子ふれあいスク ールが301カ所、放課後キッズクラブが48カ所で実施しております。  これらの事業はともに学校の施設を使いまして、放課後の安全な居場所を子どもたちに 提供するとともに、特に放課後キッズクラブにつきましては、異年齢児の交流、それから 地域の人々との具体的な体験を通じて、子どもたちに社会性や自主性を養ってもらおうと いう目的を持った事業を展開しているところです。  「開設時間」は、真ん中の表ですけれども、はまっ子ふれあいスクールは放課後から18 時まで実施しております。放課後キッズクラブは放課後から19時までということで、放課 後キッズクラブにつきましては、特に17時以降は留守家庭児童の対応施策であるという位 置付けも持たせています。放課後児童健全育成事業の補助金もいただいています。  そのような中で、全児童対策としての17時までの事業につきましては、無料で実施して おりますが、17時以降の放課後キッズクラブにつきましては、月5,000円の参加料をいた だいて実施しております。  説明が行ったり来たりして申し訳ありませんが、はまっ子ふれあいスクールと放課後キ ッズクラブの大きな違いは学校施設です。はまっ子ふれあいスクールは1施設を専用で使 わせてもらっていますけれども、放課後キッズクラブはそれに付加しまして、「元気に遊 べるスペース」と「静かに過ごせるスペース」という二つの活動の場所を確保しまして、 子どもたちの放課後の事業としています。  現在、横浜市では児童数が必ずしも減っていません。あと2年ぐらいは今の児童数で推 移するということがありまして、なかなか空き教室・余裕教室を使って、この放課後キッ ズクラブへ転換するということが難しくなりつつありますけれども、そういう中で事業を 進めています。そういう中で、はまっ子ふれあいスクールの中で、地元からの意向により まして、真ん中辺りの「開設時間」のところですが、19時までやる充実型というものを実 施しております。この場合には、17時以降は放課後キッズクラブと同じように、月5,000 円の参加料をいただくということで実施しています。下の方の欄の「参加児童数」は、放 課後キッズクラブは全児童に対して53%の登録率、それから、はまっ子ふれあいスクール の方は46%ほどの登録率になっております。  この二つの事業に対しまして、留守家庭児童を対象にしました放課後児童クラブにつき ましても補助事業として展開しております。横浜市では現在179カ所の学童クラブ、放課 後児童クラブがありまして、ここに6,080人の児童が登録しています。放課後児童クラブ につきましては年々増えている状況です。  そういう中で、この放課後児童クラブについての横浜市の補助、それから国の補助とい うことにつきまして次の12ページで実際の姿をお話しします。「解説日数250日以上」のと ころでお話しします。児童数が19人までの小規模のクラブ、20〜35人までの標準のクラブ、 横浜市では36人以上のものを大規模と区別していますけれども、右側は横浜市がそれぞれ のクラブに補助金として交付しています基本の補助額です。この他に長時間加算や障害児 の受け入れの加算などが付くわけです。これに対して今、国からいただいている補助金の 基準が、小規模では99万円、標準では161万円余り、それから、大規模では240万〜320万 円という形になっていまして、この基準額が大都市での学童クラブの運営の実態と少し掛 け離れているのではないかという印象を持っております。  現在、横浜市の補助の算定は、指導員の勤務時間が1日5時間45分、あるいは週34時間30 分で月20万円ということで計算して、このような補助金になっています。指導員の方々の 生活は決して楽ではないということだけではなく、アルバイトあるいは補助の指導員の 方々もきちんと手配していかなければいけないのですけれども、なかなか市の補助だけで は現場の方では難しいということも出てきています。そういう中で、国にはぜひ大都市に つきましては大都市の実情というものお考えいただいて、この基準額のアップをお願いで きないかということを最後にお願いして終わります。 ○大日向部会長  ありがとうございました。ただ今、横浜市の保育所運営等の現状と放課後児童健全育成 事業について、2人の参考人からご説明いただきました。  この後のヒアリングにつきましては、大変恐縮ですが、参考人はそれぞれお一人ですの で若干時間を横浜市さんより短めの15分ほどを目安にご説明をお願いしたいと思います。 まず保育園を考える親の会代表の普光院亜紀参考人、お願いいたします。 ○普光院参考人  それでは、時間がありませんので、早速資料に基づき述べさせていただきたいと思いま す。私の資料は資料3として綴じていただきました。  最初に、レジュメの後ろの方に保育園を考える親の会の2008年会員アンケートから「認 可保育園の直接契約化について」ということを聞いたアンケート結果を持ってまいりまし たので見ていただければと思います。これは規制改革会議の中間とりまとめについて掲載 しました「つうしん126」という機関誌の記事がありましたが、その号と同じ号に同封さ れました会員アンケートの中で設けられた質問の一つです。「認可保育園の直接契約化に ついて、あなたは賛成ですか、反対ですか」ということで、非常に大まかに賛否を聞いて いるわけですが、回収数は会員に対して回収率が25%ぐらいで少なかったのですが、この ような結果になっております。「どちらかというと賛成」が8.5%、「どちらかというと反 対」が70.2%、「わからない」が18.1%ということで、「どちらかというと反対」という方 が7割を占め、「わからない」という方が2割を占めたという結果になっております。  この一人一人が書いたことを全部入力して持ってきておりますので、生の声としてぜひ じっくりと見ていただきたいのですが、このアンケート結果をめくっていきますと、自由 記述が続いている最後に、概要として「自由記述の概要」を付けさせていただいておりま す。このアンケート結果の5枚目の後になっていると思いますが、「認可保育園の直接契約 化について」のアンケート結果の「自由記述の概要」です。「どちらかというと賛成」と いう方のご意見ということで、新しい仕組みへの期待や現行制度への不満を書いていて、 入所が不公平になるのではという不安が保護者の間でかなり強いので、役所の選考でもコ ネが横行しているのではないか、努力した人が入園できる制度がよいというご意見や、サ ービスの多様化や競争に期待している、また直接契約の方が供給を増やせるのではないか というご意見もありました。  「どちらかというと反対」という方が非常に多かったわけですが、一番多かったのは、 やはり入園にかかわる不安ということで、今、待機児があるということで皆様この点を非 常に心配しておられます。中でも自分自身の心配というよりは逆選択への不安。より必要 な子どもが入園できなくならないかということを書いている方が非常に多かったというこ とです。障害児、困窮家庭、子育て不安家庭などの福祉的ニーズを切り捨ててはならない という思いが保護者の間でも強いということです。それから、入園の選考が本当に公正に できるのか。待機児の多い地域の人が、保育園を考える親の会の会員として多いので、必 要度による選考の下に、就労家庭などの保育も補償する必要があるということが込められ ていると思います。それから、入園のための手続きや努力の負担が増大するのではないか。 自治体が一括した方が保護者の負担が少ないというご意見です。  それから、次のジャンルとして、「保育の質にかかわる不安」ということで、子どもの 平等が損なわれる、格差が拡大するのではないか、家庭が負担できる保育料により質の差 が生まれるということを書いている方が非常に多かったと思います。その他に、下に競争 によるコストの圧縮で保育士の定着が悪くなり質が低下する、保育内容で選べるほど供給 過剰にはならない、保護者を意識した競争によって早期教育等の偏った保育が増えるので はないか、行政責任が小さくなり何が起こっても保護者の自己責任になるのではないかと いった不安が書かれておりました。  それから、最後のジャンルとしては「保護者と園の関係が変質することへの不安・園の 事務が増大することへの懸念」ということで、消費者意識の助長により「ともに育てる」 関係から遠ざかるのではないか、園の事務が増えることの悪影響があるのではないかとい った意見が書かれていたかと思います。  以上が会員アンケートなのですが、それに続いて「保育園を考える親の会」メーリング リストで今年の5月に交わされた議論です。メーリングリストの中で日々皆様は情報交換 や議論をしているわけですが、私が振った話題で、育児雑誌から入園のノウハウについて、 どのようにしたら保育園に入りやすいですかといった取材をよく受けるのですが、その取 材を受けたときに、これはひょっとして直接契約になって、保護者が直接役所に申請がで きなくなったら、どうなってしまうのだろうかと感じたということで、例えば、保護者が 自分で施設を巡って、認可保育所も認証保育所も一緒くたの中から、質や量や利便性など をてんびんにかけながら園を選び、自分で園ごとに申請することになるのでしょうかとい うようなことを書いて皆様のご意見を聞いたものです。これはざっと、どのようなことを 言われているかだけを申し上げます。公平性が失われるのではないか、本当に必要な方が 入れるのか、入園のために駆け回らないといけなくなる保護者、膨大な申請を受け付ける 園も大変なのではないか、次のページに行きまして、中学受験並みの大変さになるという 予測など。しかし、次の方はそんなに大変ではないのではないかと。ただし、手続き上の 混乱を避けるために、次のような配慮が必要だということで、申請時期の統一、申請書類 の統一、申請書を福祉事務所などで一括して扱う、倍率を公表してほしいなどの条件を挙 げています。これに対して、次の方は、そのような条件を満たすのは、現行制度ではない か、現行制度の方が良いのではないかということで、この方は介護保険を利用しているの ですが、あなたの言ったようなことは介護保険では一切実現されていませんという危惧を おっしゃっています。その他、後に続くのは主に幼稚園の実態を挙げまして、幼稚園の園 児が多い所の入園がいかに大変かと。2日間も行列に並ぶなどの例が挙げられて、保護者 は大変になるのではないかということや、選ぶのが大変だ、乳児を抱えて大混乱になるの ではないかということがこのメーリングリストで話し合われました。これも生の声ですの で、ぜひご覧いただければと思います。  続きまして冒頭に戻りまして、レジュメにいきたいと思います。保護者のこのような意 見を踏まえて、このレジュメをまとめましたけれども、私や保育園を考える親の会の保護 者の多数意見は、やはり現行制度での待機児解消をしてほしいという思いが非常に強いわ けですけれども、このレジュメでは、どのような仕組みの下にあっても、これは必要では ないかということを挙げております。  まず、1点目は「財源確保が絶対的な前提」ということで、保育の量の拡大と質の向上 を目指すことには財源確保は絶対に必要であり、それを不可欠の前提としていただきたい ということ。また、地方財源への配慮、一般財源化の影響等の検証もぜひお願いしたいと 書いております。  2点目は「どのような制度のもとでも保育の質確保のしくみは堅固に」ということで、 子どもは自分で自分を守れないということ。それから、駒村先生の論文にもありましたけ れども、情報の非対称性の大きさ、育ちへのデリケートな影響に配慮して、質確保の仕組 みをまず整えるべきで、そのためには次の三つのことが不可欠です。Aの最低基準、Bの適 切な公費の投入、Cの行政の関与・評価・情報開示ということで、この辺りは以前の基本 的考え方の中でも一応は押さえられていたかと思いますが、強く押さえておきたい点とい うことで挙げております。  次にまいりまして、3に「どのような制度のもとでも、国の最低基準は子どものための 防護壁」と書いています。これは国の最低基準をなくして、地方がそれぞれ最低基準を定 めればよいのではないかという議論がニュースで聞こえていたところで、特に押さえさせ ていただいております。苦しい台所事情のもとでは、実態は最低基準にはり付く傾向にあ ります。基準の切り上げが望まれます。一般財源化の影響もあり、自治体は「下げ圧力」 の中にあり、国は最低ラインを引き、歯止めをかける必要があると思います。この下に図 を書いておりますけれども、これは自治体の予算確保が、コスト削減・効率化の圧力によ って困難になっていることや、また民間では事業者の経営努力が必要になっている。そし て直接契約化では価格競争によるコスト圧縮努力も強まるだろうということから、実際に は下のような保育の環境の悪化が起こるのではないかということが書かれています。  「事例」として、小さい字で書かれているところを特にご報告したいのですが、地方の ある小規模自治体の事例ですが、自治体の財政難から統廃合になった公立保育所。定員は 130人に増やされ、超過受け入れで160人が在籍。統廃合後に、待機児が発生し、今後は遊 戯室も保育室にされる予定。すでに過密のため、ケンカやケガが増え、子どもは安定して 過ごすことができない。保育士の3分の2は非常勤。この上、国の最低基準がなくなったら、 保育はさらに崩壊すると現場は訴えているということです。  4で「保育料への配慮は、重要で影響力の大きい子育て支援」ということを挙げており ます。「応能負担」ということで、子どもの平等を考えると、家庭の所得にかかわらず、 一定水準の保育を受けられる現行制度の恩恵は大きいと思います。これを応益負担の自由 設定の価格にした場合、家庭の経済状況によって、子どもの受けられる保育の質に格差が 生まれることは確実であり、これは低所得者への補助だけでは、修正することはできない ということです。そしてまた、大きな層を成す中間層に、現在の認証保育所並みの負担を 求めるような制度にした場合、負担ができなかったり、仕事を辞めざるを得なかったりし て、少子化に拍車がかかる可能性がある。国がこのような制度を設けた場合、自治体では 住民の要望により、差額の部分を独自に補てんせざるを得なくなり、その結果、保育にか ける予算がさらに厳しくなる恐れもあります。ちなみに、2005年に渋谷区では、23区の標 準よりも最高階層の保育料を値上げして、中間層というのは私どもが調査しています基準 では、年間世帯所得税額が約20万円なのですが、中間層の保育料を低く、約半額にしたと。 これは住民の実態をとらえた設定ではないかと思われます。保護者の意見交換の中で、待 機児の解消の財源として、保育料の値上げをやってもよいのではないかというご意見もあ るわけですが、その保育料の値上げも、やはり所得階層によって配慮が必要であり、そう いう意味でも、応能負担という仕組みは重要ではないかということを書いております。  それから価格競争です。これは待機児が解消してくると今度は事業者の間で価格競争が 起こってくるということを非常に心配しまして、それによって事業者の過大な経営努力が 迫られ、保育の質にしわ寄せがいくのではないかと。これは最低基準、指導監査・評価・ 情報開示の徹底によって、ある程度防ぐことができると思いますけれども、現行制度より も精密にする必要があると思います。  それから5点目に「『すべての子ども』と『それぞれの必要性』(公費投入の範囲)」とい うことを書きました、すべての子どもへの包括的支援は重要なキーワードだと思います。 ただし、家庭により、子どもにより、必要とする支援は異なります。就労家庭には、安心 できる長時間保育が提供されることがどうしても必要です。「保育に欠ける要件と入園手 続き」について、認可保育所入園の「保育に欠ける」要件を見直すという提案があります が、就労家庭(パートタイマーや休職中も含む)の待機児でさえ吸収されていない今、就労 家庭の当事者たちは不安を感じています。今年は保育園を考える親の会の中にも比較的優 先順位の高い育児休業明け社員も認可に入園できない状況も見られ、早急な待機児対策が 望まれています。これは非常に切実な声が会員の中にあります。それから、先ほども少し ご説明しましたように、役所で認可保育園に入園申請をできることが負担の軽減や安心感 につながっている実態がある。待機児がある状況の中では、個々に入園の権利を獲得する ために奔走することは耐えがたいという意見があることも注目していただきたいと書いて います。  それから、「本当に必要な子どもが入園できない逆選択の防止」です。これは基本的考 え方の中でも指摘されていたと思います。規制改革会議では、ここを公立保育所が受け皿 になればよいと書いておられましたが、公立保育所が民営化されている現状、一般財源化 により公立保育所の方が保育士の非常勤化が激しく進んでいる現状などはどうするのか、 また、さまざまな子どもを地域で統合的に、育んでいくという視点からも矛盾があるとい うことで、逆選択が起こらない直接契約が可能なのか。施設に受諾義務を課したり、入園 事務に行政が介入するなどの提案も聞かれていますが、慎重な検討が必要と考えます。  それから「就労家庭以外の子育て支援」。今、公・民の認可保育所では地域の子育て支 援に乗り出してきていますが、その他の子育て支援も含め、このような地域に根付いた子 育て支援を大切に育てる制度であってほしいと願います。子育て支援の内容は一時保育の ように市場サービス化できるものもありますが、体験保育、相談・助言、保護者同士の交 流など、気軽にふらりと利用できることが必要なものもあります。さらに、自発的には来 ない保護者を支援に取り込んでいこうとする模索があることも念頭に置く必要があると思 います。  それから、「6公費の適切な流れ」。利用施設やサービスについての基準、利用者補助の 制度を万一する場合にも、利用範囲を妥当な最低基準を満たした施設やサービスを対象に するという規定は必要であり、それを欠けば、2で述べたような保育の質確保のしくみは 崩れ、また国民の血税が投入される先が、無制限に広がってしまう恐れもあります。また、 単に子育て家庭に流れるお金を平等にするという考え方では、それぞれの状況に合わせた 支援にならず、これもバラマキに終わる恐れがあります。公費を投入する範囲については、 財源確保を前提にしつつ、事業者の声によるのではなく、子どもや家庭の状況をとらえ、 優先順位の高いものから対象にしていくべきと考えると書いております。  それから「公費を子どもに届かせるためのしくみ」と書いておりますが、これは営利と の関係です。営利は許されるのか、慎重に考える必要があります。2001年に「ちびっこ園 事件」がありましたけれども、認可外でチェーン展開する株式会社のベビーホテルで起こ った死亡事故で、ベビーベッドに0歳児を2人寝かせていたところ、折り重なって1人が窒 息死しました。同社は、各店舗に、満員でも「お客様」は断わってはならない、人件費率 を総収入の31%未満に抑えるなどの指導をし、店舗ごとに売上を競わせていました。その 営利追求姿勢が事故の遠因になったといわれております。この同チェーンでは20件もの死 亡事故が発生していたという事件があったわけですが、このような野蛮な営利はもちろん のこと、株式会社等が、子どものニーズよりも株主のニーズを優先させてしまわないよう に、何らかの枠組みが必要ではないでしょうか。最低基準等のみで足りるのか、それとも、 会計監査を励行し、余剰金の処理について、何らかの規制・指導を行っていく必要がある のではないでしょうか。特に人件費。保育士を育成するための雇用の継続性、雇用形態な どに大きな影響を与える人件費は、妥当な水準で確保される必要があると考えます。  続いて、「自治体への規制」という言い方は少し激し過ぎるかもしれませんが、財政の ひっ迫する自治体では、先ほどご説明したようなダイナミックなコスト削減が行われる場 合があります。それが子どもの人格や発達ニーズを無視するような保育施策になってしま わないように、国が最低ラインの基準を設けるとともに、その費用を使途制限のある補助 によって担保していく現行制度の仕組みには、合理性があるというか、今十分に機能して ない部分がありますが、そういう仕組みにしておく必要があるのではないかということも 述べさせていただいております。  それから「7行政の関与・評価・情報開示」ということです。行政の関与が必要だとい うことで、認可への指導監査、認可外の指導監督については、調査項目を適切な内容にし た上で、結果を公表することも必要と考えます。この辺は、逆選択の防止や不適切な事業 への指導などの行政の介入なども挙げております。  「評価」については、以前のヒアリングのときも述べさせていただきましたので、省略 させていただきますが、ここに文書にしてありますのでご覧ください。  「情報開示」について、情報開示は施設のPRとは別物であることを明確にする必要があ ります。施設内容や経営を客観的にチェックできる項目を義務化し、例えば、子ども1人 当たりの園庭・保育室面積、配置人材の詳細(人数、資格、正規・非正規などの雇用形態)、 保育課程、指導監査結果、かかるお金に関することなど、定型の書式で開示することによ り、情報の非対称性を軽減することができると思います。  それから、「8ワーク・ライフ・バランス」についてですが、これは要点だけ申し述べま すと、医療関係・サービス業などの夜勤や休日勤務など本来変則的な働き方をする方は、 日中勤務者と同様なサポートが受けられる必要があると思いますが、一方で残業等の長時 間労働については、ワーク・ライフ・バランス、社会全体の長時間労働の風土を修正して、 抑制していくことが必要だと。一方また保育の仕組みを考えるときにも、支援の度合いに おいて、この両者、つまり変則勤務と残業等による長時間保育については、区別される必 要があるかもしれません。またその上で、子どもの生活として見た場合に、日中の活動を 保障するという視点も必要になり、非常にデリケートな問題で、「働き方の多様化への対 応」という言葉は、少しデリケートに使われるべき局面に入っているではないかと思われ ます。  最後に、「放課後児童クラブ」について、現在、会員からご相談が来ておりまして、あ る政令指定都市では、独自に行う全児童放課後対策事業があることを理由に、国の放課後 児童クラブの事業を実施しない方向になり、このため社会福祉法人が運営する放課後児童 クラブが廃止に追い込まれようとしているということで、会員の方から、いったいどうし てこういうことになったのでしょうかというご相談が私の方に来ております。地域から求 められている事業をむざむざ廃止にするというような自治体の施策も、地方分権でまかり 通るということなのかということを書いております。  最後に私の個人的見解が書いてありますが、要するに認可保育所というのは、今、多様 な価値観、豊かな価値観を育む、つまり「共生」の価値観を育む場になっているのではな いかということを書いておりますので、後でまたゆっくりご覧いただければと思います。 以上でございます。すみません、超過しました。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは最後になりましたが、全国学童保育連絡協議会事務 局次長の真田祐参考人、お願いいたします。 ○真田参考人  よろしくお願いいたします。レジュメが2枚と資料を付けておりますので、それに沿っ てお話をさせていただきたいと思います。最初に「学童保育とはどんな施設か」というこ とを確認させていただきたいと思います。というのは、全児童対策事業あるいは文部科学 省が行っている放課後子ども教室との違いというのは、なかなか世間の方々にも理解しづ らい面がありまして、先ほど普光院参考人が言われたように、学童保育を廃止してしまう ような自治体が出てくるということがありますので、改めて学童保育とはどういう施設か をお伝えしたいと思います。基本的には保育所と同じように、親が働いている子どもたち が、親のいない時間に子どもたちの生活を保障し、子どもを預かり、健全に育成する施設 です。  レジュメの後に付けております資料1には、一日の生活の流れと夏休みの生活の流れが 書いてあるのですが 、次のページの資料2は、学童保育で結局子どもたちはどれぐらいの 時間を生活しているのだろうと計算しますと、長い子どもであれば1,600時間以上も学童 保育で暮らしているといえるのではないかと思います。小学校にいる時間が1,100時間ぐ らいですから、子どもたちは相当長い時間を学童保育で生活しているということだと思い ます。なかなかわかりづらいのは、例えば学童保育というのは、学校が終わってから子ど もは自分の足で学童保育に帰って来ます。ところが必ずしも子どもたちは、いつも喜んで 学童保育に「ただいま」と帰って来るわけではないのです。その学童保育が例えば非常に 子ども一人一人に居づらい場所であったり、あるいは上級生にいじめられるとか、あるい は指導員に度々怒られるといった施設であると、子どもは学童保育に行きたくないとか、 もうやめたいということを言うわけです。ですから、私どもの団体は保護者と指導員でつ くっている団体ですけれども、やはり子どもたちが毎日元気に「ただいま!」と帰って来 られるような学童保育をつくっていかなければいけないということをいつも考えて運営し ています。  それはこのレジュメの太い字の三つ目に書いてありますように、「子どもたち一人ひと りを大切にしなければ成り立たない施設」だというような言い方をするわけですけれど、 保護者は働いている時間に子どもをしっかり預かってもらいたいという切実な願いはある わけですけれども、子ども自身の立場に立って見ると、必ずしも毎日学童保育に行きたい と思えるかどうかという部分があって、そこをどう統一していくのかということが、大変 私たちにとっては大きな課題ではないかと思っているわけです。そのときに私たちがいつ も考えているのは、ちょうど小学校低学年で大人や周りの友達に依存しつつ自立していく 子どもたちの発達段階のことを考えますと、やはり一つの学童保育の規模が40人以下であ って、自分が受け止めてもらえる、あるいは他の子どもと一緒に仲良く遊べるような規模 というものがあると思うのです。しかも、それは固定した子どもたちが1年間一緒に暮ら すという、そしてそれに対して親代わりとしての指導員が、一人一人の子どもたちの心や 気持ちをよくわかって、そして温かくかかわってくれる。やはりこの二つの条件がないと、 子どもたちは自分が帰れる家として学童保育を実感できないのではないかと思っています。  それと同時に、この四つ目に書きましたが、保護者とのつながりが非常に強い施設だと 思います。やはり「家庭に代わる生活の場」として、毎日子どもたちを見ていると、日々 子どもたちの気持ちが変わったり、あるいは昨日から今日にかけて随分大きな変化があっ た、では家庭ではどういうことがあったのだろうか、あるいは学校でどういうことがあっ たのだろうか、そういうことが一つ一つ学童保育の場では、子どもたちの姿として見えて きます。そのときに、やはり指導員と保護者が一緒になって、どういう学童保育をつくっ たら子どものために良いのかということを絶えず考えていかなければ成り立たない施設な のではないかと思っています。このことをまず基本に押さえた制度設計をするのであれば、 そこが必要なのではないかということを強く思っています。  二つ目の柱は「学童保育の現状と課題」ということになります。資料3に書いてあるの は、入所児童が激増しているということで、私どもも毎年のように学童保育の数やあるい は入所児童の数を調査していますけれども、1998年に法制化が施行されてから10年間で学 童保育施設が1.8倍に増えている。そして入所する子どもたちは2.4倍に増えているという 事実があります。しかし、その次に書いているようにまだまだ足りないということが、学 童保育をめぐる大きな課題の一つだと思っています。三つの点で足りないことがわかる指 標を書いてあるのですが、一つは小学校区と比べるとまだ3割の小学校に学童保育がない。 ご存じのように学童保育というのは、子どもが自分の足で帰って来る施設なので、基本的 には、その学校区に設置されないと遠くて通えないということがあります。ですから、私 たちは常に小学校と比べて学童保育はどれぐらい普及しているのだろうかということを考 えますと、まだ3割の小学校区には学童保育ないということが一つです。それと、保育園 を卒園した子どものまだ6割しか学童保育に入れていない。今年の新一年生は28万人が学 童保育に入所しています。これは同じ学年の子どもたちの25%ぐらい、約4分の1の一年生 は学童保育に入るという時代になってきたのです。ただ、保育園を経て来た子どもの6割 しかまだ入れていない。4割の子どもは学童保育に入れていないということがあります。3 番目は、母親が働いている小学校低学年の子どもたちの3分の1しか入れていない。多分こ れは今度の「新待機児童ゼロ作戦」で10年間で3倍に増やすといったときの10年後の姿が 220万人ぐらいだと思いますが、この数字を目標とされたのだろうと思っています。その 結果、定員のある学童保育では大変待機児童が増えていますし、次のページの資料4にあ りますように、子どもの入所の割合に比べて、学童保育が増えていないのです。その結果、 大規模化が深刻に進んできている。これは後ほど要望の中で強くお願いしたいと思います けれども、例えば最低基準や設置基準といった基準が国ではまだありません。ですから定 員をつくる市町村もあれば、定員をつくらない市町村もある。あるいは保護者が運営して いるところは、断れないのでどんどん入れざるを得ないという現実があります。この中ほ どに書いてありますように、大規模学童保育では子どもが騒々しくなるとか、あるいは子 ども同士のトラブルが多くなるとか、子ども同士の関係が希薄になるとか、わけのわから ないケガが増えるなど、子どもが本当に毎日安心して生活できるような場所ではなくなっ ていくという大きな問題があります。先ほど冒頭で言いましたように、やはり40人未満の 子ども集団の中で、子どもたちは安心感のある人間環境を築きながら、ここが自分が帰っ ていく第二の家庭なのだという実感があって戻っていくわけですけれど、それがなかなか 実感できないということがありますので、学童保育の根本的な役割の面から言っても、こ の大規模化というのは大変大きな問題があるのではないかと思っています。  次のページは、「生活の場」としての施設設備が遅れているということです。先ほどは 量的な拡大、量的な問題から学童保育の課題ということを言っていたのですが、ここから はもう一つ、質の面から何が課題かということで付けた資料です。当然質を確保するため には、「生活の場」である施設・設備がどうなっているのかということが、やはり大きな 影響はありますけれども、先ほど言いましたように、施設に対する基準もありませんので 多様な施設を使っているわけですけれども、非常に狭かったりあるいは余裕教室が利用し ている数では一番多いのですけれど、ここが大半が間借りなのです。文部科学省に余裕教 室の転用手続をすれば専用室として使えるわけですけれども、転用手続をしないまま余裕 教室を使っているので生徒数が増えたら追い出されてしまうとか、あるいは「生活の場」 としての施設の改造ができないというようなことがあります。  次のページが資料6です。質の確保の上では、私は最大の問題というか一番大切なこと なのではないかと思いますけれど、そこで働く指導員がしっかりと子どもたち一人一人に 丁寧にかかわりながら、子どもの生活や命を守れる、そういう仕事ができるかどうかとい うことです。資料6は、指導員がこういう仕事をしていますよということで書いたものな のですが、昨年ガイドラインがやっとできました。下の方に書いてあるのがガイドライン に示された学童保育指導員の役割や仕事の内容です。私たちはこれを大変評価しています。 実際に私たちがやってきたことが、きちんと書かれてきたという思いがあります。  ところが、その次のページの資料7ですけれども、そういう大事な役割を持っている学 童保育指導員の働く条件というのは大変劣悪です。現在6万人以上の指導員が働いている わけですけれども、7割ぐらいは保育士や教員の資格を持っていらっしゃる方が働いてい ますし、子ども自身が1,650時間をそこで過ごしているわけで、それに加えた時間を勤務 していらっしゃるわけです。ところが年収150万円未満が半分以上いらっしゃる、あるい は勤続年数が増えても賃金が上がらないという方が半分いらっしゃるし、非正規職員がか なり多いということで、結果的には3年未満で大体半数の指導員が入れ替わってしまうと いうような、子どもの安定的な生活をつくる、あるいは子どもを安定的にみる指導員が、 非常に不安定で入れ替わりが激しいという問題があります。どうしてこういう年収150万 円以下とか非正規職員が多いのかといいますと、そのすべての原因ということではないの ですけれども、一つは国の補助単価がこの下に書いてありますように、国家公務員の非常 勤職員の賃金ともう一つは諸謝金という謝礼金のようなもので計算されている。しかも1 日6時間という計算でされているものですから、ここに書いてあるような金額がベースに なって国の補助単価が決まっているわけです。私たちは、ぜひ常勤配置ができるような単 価にしてほしいと要望しています。先ほど横浜市からもそのような要望が出されていた通 りです。  資料8になりますけれども、やはりその質を確保する上で、指導員に対して何が必要か ということでいいますと、例えば配置基準をきちんと決めてもらいたい。あるいは労働条 件の向上を図ってもらいたい。あるいは研修をきちんと受けさせてもらいたい。併せて公 的な資格制度や養成機関が必要ではないかと思います。「新待機児童ゼロ作戦」で10年間 で利用児童を3倍に増やすということは、現在6万人以上いる指導員を18万人以上にしなけ ればいけないわけです。その18万人の指導員を安定的に確保、雇用するときに、何も資格 がなくてよいのか。あるいはそういう現場に立つ前に、いろいろ勉強してきた方を現場に 立たせなくてよいのかということが、私たちからすると非常に大きな問題として見えます。 ぜひ公的な資格制度あるいは養成機関をつくっていただくということが、大きな課題でな いかと思っています。  資料9は、障害児入所が増加しているけれども、なかなか指導員が抱えきれなくて困っ ているとか、あるいは開設時間なども親のニーズに合わせて延びてはいますけれど、まだ そうでない所もあります。  資料10は、高学年の入所希望は依然として多いです。実際に79万人のうち9万人は、4年 生、5年生、6年生です。保護者のアンケートを取ると、やはり必要があれば6年生まで受 け入れてほしいというニーズは強いです。それと保育料は運営形態によって随分違ってい るというデータです。このような質の点から言っても、特に指導員の問題を中心に対応が 遅れているというのが現状ですので、ここをぜひ改善を図っていただきたいということが あります。  三つ目は、先ほど少し出ていました全児童対策事業、あるいは放課後子ども教室は、そ れはそれとして必要な施策だと私たちも思いますが、それは学童保育の代わりにはならな いのだと、やはりすべての子どもたちを対象にした安全な遊び場や居場所づくりは必要だ と思います。そのときに余裕教室を活用した全児童対策、あるいは放課後子ども教室も必 要ですし、あるいはもっと言うと児童館なども、もっともっと整備してもらいたいという ことはあります。けれども、安全な遊び場を提供したならば学童保育が要らなくなるかと いうと、そうではなくて、やはり先ほどから言っているように、1,600時間の長い時間、 本当に子どもたちの「生活の場」を保障する学童保育は絶対に必要ではないか。その二つ をきちんと充実してほしいということが私たちの願いです。それが資料12、資料13にあり ます。  資料14は、私どもが横浜市の関係者からいただいた資料を基に作ったものです。先ほど 横浜市が出していただいた資料とほとんど同じだと思っています。ここで少し先ほどの資 料と違うと思うのは、学童保育の場合は入所児童や利用児童という言い方をしていて、登 録児童とは言わないのです。登録しても利用しない子どもが圧倒的に多いのが、全児童対 策事業などです。しかし学童保育の場合は、申し込んで毎月保育料を払ってほぼ毎日来て いるわけです。そのことを私たちは入所児童と呼んでいるのですけれど、横浜市の場合は、 それが毎年のように非常に増えているということです。横浜市の資料と違ったのは、横浜 市の学童保育は6年生まで受け入れているのですが、施策上は3年生までしか補助金が出な いので、6,000人と8,500人という違いになって出てきます。  最後になりますが、「実態とかけ離れている低い補助単価」ということで、先ほどお話 ししましたように、一つの学童保育では、民間の父母会が運営している所でも1,000万円 はかかるのに、国は500万円ぐらいにできるのではないかと。それは先ほどの非常勤や諸 謝金の単価で計算をした形になっています。ところが実際には、やはり1,000万円だとか、 東京都内では2,000万円、3,000万円をかけて1カ所の運営をしています。そこの大きなギ ャップをぜひ埋めていただきたいと思っています。  レジュメの2枚目に戻りますけれども、10年間で3倍に増やすという目標を立てていただ いたことは、私どもは大変歓迎しています。ただ、それが実際にできるようになるために は、施設と職員を確保すること、あるいは設置運営基準なり最低基準を定めていただいて、 どこでも一定の水準を確保するということが必要だと思います。ここに「安全対策・補償 制度の整備」について少し書いてあるのは、例えば小学校や幼稚園・保育所では、日本ス ポーツ振興センターの保険が適用されます。しかし学童保育については、その体制になっ ていないので、個々の施設が個別の民間の保険会社と契約をした保険に入っているので、 非常に保障が少なかったり、結構大変なことが多いので、その辺も含めて制度設計をされ るときには、子どもの安全を確保するためのこういう保険の問題も含めて、ぜひご検討い ただきたいと思っています。大変長くなりまして、申し訳ありませんでした。 ○大日向部会長  ありがとうございました。以上、各参考人からご説明いただきました。ここからは、先 ほどの事務局のご説明も含めまして、委員の皆様からのご質問、意見交換の時間に入りた いと思います。限られた時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。最初に幾つかご 質問やご意見をまとめていただいて、お答えいただくという形で、いつも通り進めさせて いただければと思います。杉山委員、お願いいたします。 ○杉山委員  貴重なご意見をありがとうございました。まず、横浜市に質問ですが、横浜市の横浜保 育室は直接契約になっているようですが、なぜ直接契約を選択したのかということを確認 をしたいということと、こちらの横浜保育室は多分企業も経営者とか運営者としていらっ しゃるかと思うのですが、質の問題等、普光院参考人からご指摘がありましたが、そのよ うな問題はあるのか。もしあると予測されるならば、それをどのようにして行政側として 介入といいますか、基準を設けるとかをされているのか、その辺りを確認したいと思いま す。  それと横浜市の資料11ページの三つの一覧表ですけれど、「放課後キッズクラブ」、「は まっ子ふれあいスクール」があって、それから「放課後児童クラブ」とありますが、これ は一つの小学校にこの三つの事業が併設されてあるときもあるのか、いずれかがその小学 校に配置されていて、その学校に入った子は選びようがないのか。子どもが通っている学 校は「はまっ子ふれあいスクール」だから、「はまっ子ふれあいスクール」になってしま うのか。その辺りがどのようになっているかというところを教えていただければと思いま す。  あと普光院参考人に質問ですが、直接契約に関して、70%ぐらいの方が反対というご意 見だったということですが、規制改革会議等の意見等を見ていますと、親のニーズに応え て直接契約にしましょうというような書きぶりがあったりするものですから、では、親は 本当はどちらなのか。親の会は意識の高い人たちが多くて、実は一般的にはそうでもない のか、その辺りの内情のようなものを、印象で構いませんので教えていただければと思い ます。  最後にもう1点、学童保育の件で真田参考人に質問ですが、待機児が145万人増で「新待 機児ゼロ作戦」をやらなければならないという現状があって、私たちも本当は学童保育の ような手厚い、もちろん今全然手厚くないという現状のご報告を聞いて何とかしなければ と思うのですけれども、とにかく数を増やさなければいけないというときに、先ほど出て きた文部科学省の全児童対策で対応していこうという動きもないとも限らないわけですよ ね。その中でご意見として、それはそれとして、それは別にして両方必要です。正論は確 かにその通りなのですけれども、現状はそれが許されるのか、どうなのかというところが 非常に心配で、その辺りをどのようにお考えなのか、学童保育は学童保育なのだというの は少し難しいのではないかと私は思っているので、その辺りのお考えをお聞かせいただけ ればと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。他にありますか。では大石委員、お願いいたします。 ○大石委員  参考人の方々、ありがとうございました。3点ありまして、まず横浜市の方にお伺いし たいのですけれども、認可保育所と横浜保育室の利用者の所得階層が違うようだというこ とが、お話からうかがえるのですが、施設による保育料の差に対して利用者はどのような 意識をもっておられるのでしょうか。それから、横浜市としては、認可保育所の保育料を どのような考えのもとに設定されていますか。保育料の引き上げをすることが可能な状況 なのか、どういう要素を勘案して保育料の水準を決めているのかといったことについてお 話を伺えればと思います。  2点目は学童保育のことです。これは私の個人としての考えなのですが、末子の年齢別 の女性の就労率を見れば、子どもが幼稚園に入るタイミングや小学校に上がるタイミング で年々早く復職する傾向が出てきていました。ですので、今のような学童保育ニーズの高 まりは、本当は当然予想されていたのではないかと思うのです。政府は学童保育を増やす といいますが、今のような待遇と人員配置の下ですと、地域によっては、本当は確保しな ければならない指導員数が確保できないという話も聞きます。そういった状況はどのよう に把握されているのかということをお伺いしたいと思います。  普光院参考人に少し補足していただければと思いますが、直接契約については、結局は 今のシステムの下で直接契約だけ可能とするということはあり得なくて、規制改革会議で の直接契約というのは、今とは違う保育システムをトータルに考えていて、その中の一つ が直接契約なのだと思います。そして、規制改革会議の考える新しい保育システムという のは、こちらの少子化対策特別部会で考えているものとは、また少し姿が違っていると思 います。その差について普光院参考人が代表されている保育園を考える親の会では、どう いう意見が多いのかということについて、もう少し補足していただければと思います。  あと1点、学童保育について追加です。親が家にいるかいないかというのは非常に大き な違いであって、学童保育に来る子どもは家に帰れるというオプションは本来ないわけで すよね。全児童対策事業に行く子どもは家に帰れば親がいるということがあり得るわけで すけれども、学童の子は原則としては親が家にいないから学童保育に来ているわけです。 したがって、まさに「保育に欠ける」という条件があるわけですから、両者を同じように 扱うというのは、難しいのではないでしょうか。また、学童保育が良い場所でないと子ど もが行きたがらなくなります。学童保育の環境が悪い場合、学童保育に行きたがらなくて、 時々消えてしまう子どもや学童登校拒否になってしまう子どももいるそうです。でも、小 学生は意思表明できるからまだよいのかもしれません。保育園の場合ですと、赤ちゃんは 登園拒否したくても言えないわけですから。というと、やはり保育の質についてもう少し 注意していくべきではないかと思います。以上です。 ○大日向部会長  ありがとうございます。それではお2人の委員から出されたご質問に対して、横浜市、 普光院参考人、全国学童保育連絡協議会の真田参考人の順にお願いいたします。 ○本田参考人  それでは、まず杉山委員からご質問のありました3点についてお答えいたします。  なぜ直接契約なのかということですが、これは既に認可外保育施設として運営していた 施設に対して、横浜市の一定の基準を満たせば補助をしていくということでしたので、既 に利用者と施設の直接契約をしていたところに横浜市の基準を付けたということで、そこ から始まった所では既に直接契約が始まっていたということです。  続きまして運営主体についてですが、多様な保育サービスの提供主体となり得るもので あれば参入は必要だということで、企業やNPO法人を含めて運営をしているところです。 128施設の内訳は、株式会社が29施設、有限会社が33施設、社会福祉法人が2施設、学校法 人が3施設、宗教法人が1施設、NPO法人が24施設とその他です。  続きまして、横浜保育室の質の確保をどうしているのかということですが、まず、一定 の基準を満たした施設ということで、横浜市で枠を付けた上で、基本助成費を補助したり、 あるいは障害児加算、乳児加算等を補助することによって、運営体制をしっかりしていた だくという助成が一つです。  二つ目は、認可保育所も含めて、横浜市が研修を実施しておりますが、横浜保育室も研 修に参加していただいているところです。  三つ目は、全施設の立ち入り調査を毎年実施しておりまして、市立保育園の園長経験者 と事務職員で立ち入り調査をしております。文書指摘等はありますが、主に衛生管理、安 全確保、会計、経理、施設運営、給食といった内容のものが出ておりますけれども、重大 なものは現在出ていません。このような形で一定の質の確保を図っているところです。  続きまして、大石委員からご質問のありました横浜保育室の保育料についてですが、5 万8,100円を上限にしているのは、平成16年度の認可保育所の保育料の最高額を設定した ということです。認可保育所の保育料については、運営費総額の約2割を負担していただ くという考えで設定しています。  認可保育所の保育料の今後というご質問でしたが、先ほど言いましたように、保育所整 備をかなり急ピッチで進めていまして、その運営費がかなり負担になっているところで、 今後これをどのような形でしていくのか。やはり保育所に入所できる方とできない方の公 費負担の差がかなり多いということがありますので、横浜市としてはなるべく保育所をた くさん作っていきたい。しかし、その財源をどうしていくのかということが悩みどころで、 今後どうしていくかは課題ということです。以上です。 ○大日向部会長  それでは普光院参考人、お願いいたします。 ○普光院参考人  杉山委員から、規制改革会議の方で親のニーズに応えて直接契約を導入しようと言って いるのと、私どもの会の中の意見とが、どのような関係にあるのかというご指摘があった かと思いますが、ほとんどの方は、この制度の問題というのはよくわからないと私は思い ます。保護者にわかるのは、認可保育所への入園を希望しても難しい、待機児がある所で は非常にその競争率が高いということ、それから保育料が中間層の方ですと、認可外保育 施設よりも認可保育所の方がはるかに安くなるということ。表面に出てくることはそうい うことで、そういうところから判断してしまうところはあると思います。規制改革会議が おっしゃっているのは、、非常に単純化されていて、規制があって認可保育所が増えない から規制緩和をすることが待機児に不満を持っている保護者の希望であるというように、 論理が置き換えられていると思います。  それからもう一つ。認可外保育所にどうしても入らざるを得なくなった方々、今、横浜 市の方からも説明がありましたけれども、認可保育所の最高額に保育料が合わせてあるよ うな認証保育所等に通わざるを得なくなった方々は、非常に保育料負担が大変です。です から、認証保育所に入った方が一生懸命に認可保育所に転園しようと申請を出されるわけ です。恐らくほとんどの方がいずれは認可保育所に入ろうという動きをされているのでは ないかと思いますが、その大きな理由は、保育料と園庭がないという二つだと思いますが、 そういった不満があります。規制改革会議では、そういう認可外の方の不満がありますと 言いつつ、恐らく直接契約にしましょうとおっしゃっている制度のモデルは認証保育所と 思われますので、全員が認証保育所のような保育料を負担すればよいとお考えになってい ると思われ、そこのところが私も理解しかねるところです。例えば、一部の生活保護世帯 や所得税非課税世帯だけに低所得者への補助をすればよいとお考えになっているのだろう と思いますが、それを保護者のニーズだと言ってしまうところが、私には論理の道筋がよ くわからない部分です。保護者の不満を待機児があること、それから認可外と認可の保育 料が随分違うことととらえて、保護者は今の認可保育園制度に不満であって、直接契約に すべきであるという論理になっていると思われますが、その点は本当に正確に保護者のニ ーズをとらえているのかという疑問があります。私どもの会では、やはり保育園経験の長 い会員が多いので、ある程度制度に関する知識があり、さまざまな認可保育園の恩恵を感 じている者がたくさんおりますので、そういった方々のご意見が多いのだろうと解釈して おります。  それから直接契約について、例えば規制改革会議と、ここの基本的な考え方については 随分と差があるけれども、そこについては会員の意見はどうなのかというご質問をいただ いたかと思いますが、残念ながら私どもの会の会員の方であっても、そこまで詳しく差異 を認識できているかどうかは非常に疑問です。皆さん子育てと仕事で大変忙しいので。私 は機関誌の「つうしん」に「基本的考え方」も掲載しましたし、また規制改革会議の「中 間とりまとめ」も全部ではありませんが抜粋して掲載しましたけれども、その両方を読み 通して、どこに差があるのかということは、まだご理解でないと思います。むしろ規制改 革会議に関しての方が、具体的にいろいろな保育料のことや最低基準の緩和のことなど、 具体的な内容がありましたので、今回ご紹介しました会員アンケートの意見というのは、 主にこの規制改革会議のご提案に対するご意見、感想だととらえていただいてよいかと思 います。 ○大日向部会長  ありがとうございました。 ○真田参考人  それでは私から。最初に杉山委員の質問ですが、冒頭にお話ししましたように、学童保 育が子どもたちにとって家庭に代わる生活の場になるのには、やはり固定した人間関係、 別の言葉では安定した人間関係が必要なのです。ところが、全児童対策事業といわれるも のは、要するに利用したい子どもが日替わりで利用したりする、あるいは現存する全児童 対策事業というのは、スタッフ自身もたくさんのスタッフが入れ替わり勤めることがあっ て、つまり行きたいときに行く場であればよいけれども、先ほど大石委員も言われたよう に、行きたくないといったときに、家庭に帰れない子どもたちが行く場が学童保育なので す。ですから、やはり行きたくないと言ったときに、どうして子どもが行きたくないのか ということをきちんと指導員と保護者が話し合える関係も含めて、安定した人間関係がな いと子どもは行かなくなります。実際に、川崎市は学童保育を廃止してしまって、全児童 対策事業のわくわくプラザに変えたのですけれども、開始する前は公立公営で定員40名の 所で満杯で待機児童もたくさんいましたが、わくわくプラザになってから、親が働いてい る子どもの利用率は半減しているのです。1カ所当たり20人もいないという状況になって きているので、やはり私は数を増やすために全児童対策事業も利用できるかといわれると、 それは違うのではないかと。  資料11に学童保育の歴史を書いたのですが、1997年に児童福祉法によって学童保育は初 めて法制化されたのですけれども、実は長い間、厚生労働省は児童館や校庭開放があれば 学童保育は要らないということで制度化しなかったのです。その当時の、例えば父母会が 運営していた学童保育の近所に児童館ができた。児童館ができたから、もう学童保育はや らなくてもよいのではないかと学童保育を閉めて、児童館利用に切り替えたけれども、1 年も持たなかった。結局、子どもたちは行かなくなってしまった。そして、また学童保育 を復活したという歴史が結構あるのです。本当に毎日毎日子どもが喜んで楽しいことばか りではないわけで、つらいときや行きたくないときも含めて、やはり確実に学童保育で子 どもたちの生活を守る、つくるということのためには、安定した、あるいは固定した人間 関係です。そこにその子どものことを熟知している指導員がいるという体制は絶対に欠か せないのではないかと私は思います。  もう一つは大石委員のご質問ですけれども、実は指導員の欠員という問題が結構大きな 問題になってきていまして、つまり募集しても、なり手がいない。今年、私どもは初めて 全部の市町村に対して指導員の欠員状況の調査をしたのです。実は、まだまとまっていな かったので資料には付けていないのですが、できれば今月中に記者発表したいと思ってい ます。回答した6割の市町村、約800市町村の中で、115市町村で欠員があります。施設で いうと450カ所ぐらいが欠員だというのです。ですから、多分数からいったら、そんなに 多くはないのではないかと思いますが、実はその115市町村の中では、一つの学童保育だ けではなくて、かなりの学童保育で欠員になっている。例えば、船橋市は3割の学童保育 で欠員が生まれている、あるいは大阪府吹田市も3割の学童保育で欠員になっているなど、 欠員になっている所は結構割合が高いのです。そういった所の共通点を見ると、公立公営 ですけれども職員が非正規職員の方々。多分それは年収にすると、150万円クラスの人た ちが多いのです。ところが学童保育の指導員の仕事は年々厳しくなってきている。例えば、 ひとり親家庭もとても多くなってきているし、困難を抱えた家庭もとても多くなっている。 やはり指導員の仕事はとても求められるものは多いけれども、身分が非常に不安定だし、 年収も毎年変わらないという中で、どんどん辞めていく。けれども、新しい人を募集して も補充できない状況が広がりつつあるのではないかと思っています。そういう点からも3 倍に増やそうと思ったら、やはり非正規ではなく、常勤職員を安定的に確保できるような 仕組みをつくらなくてはいけないのではないかと強く思っています。 ○大日向部会長 他にいかがでしょうか。小島委員、お願いいたします。 ○小島委員  あまり時間がないので一つだけ。学童保育の件について全国学童保育連絡協議会の真田 参考人に。先ほどの説明の中で、確か資料7のところで、今、指導員の極めて不安定な雇 用、労働条件というところで、年収も150万円未満が半数だというような実態がありまし たけれども、その人たちの社会保険や雇用保険はどうなっているのかという実態が一つ。 多分それもなかなかないのだろうと思いますけれども、その辺と、今の国の補助単価が、 賃金と謝礼金を含めて年間150万円ぐらいといったようなところで、資料では15ページの 資料15で、ある学童保育が運営費としては、ここで示されているのは年間1,000万円ぐら いかかるということで、しかし実際は補助金等の関係は500万円ぐらいの見積でやってい るので実態と合わないということが結果的に指導員の賃金に跳ね返ってくると思いますの で、その辺の状況と、確か最後のページに、ではどれぐらいの賃金改善で、そのための補 助単価は引き上げて、その結果どのぐらい財源的に必要かということが確か16ページに財 政措置ということでありましたが、その辺について簡単にご説明いただきたいと思います。 ○真田参考人  資料の15ページの名古屋市のある学童保育の運営費をご覧いただきたいのですが、トー タルで1,000万円ぐらいの経費がかかっている。そのうち600万円が指導員の人件費なので す。それは2人分の人件費なのですが、額面月20万円ぐらいなのです。手取りにすると、 やはり16万円ぐらいになるのです。そのうち、収入のところで国の補助金というのが151 万円しか入っていない。それだけでは足りないので、先ほどの横浜市と同じだと思います けれども、名古屋市が独自に上乗せしている。そして保育料を1万3,000円取って、やっと 1,000万円の経費を生み出していることになっていますので、やはりこれを見ても国の補 助単価というのはかなり低いのではないかと思います。この16ページの試算は、国家公務 員の保育士を月20万円と低めに見積もった計算でこれなのです。しかも、かつての国の補 助単価というのは、上がらない計算をされていたと思います。初任給の計算でしかない。 ですから、これだけで全然十分ではないのですけれども、それから見ても、今の学童保育 の補助金は一けた違うのではないかということが、これでおわかりになるのではないかと 思います。  それから、最初にご質問のあった社会保険に入っていないというのが、7ページの資料 では約4割ありますけれども、公立公営の非正規職員の方々は150万円前後が多いのですが、 やはりかなりの方が入っていないと思います。 ○大日向部会長  では宮島委員、お願いいたします。 ○宮島委員  貴重なお話をありがとうございました。先ほどの杉山委員からのご質問のお答えに関連 して、普光院参考人に少し確認したいのですけれども、このアンケートをされた保育園を 考える親の会というのは、基本的には認可保育園に入っている保護者の方々と考えてよろ しいでしょうか。 ○普光院参考人  数的には、今はもう認可保育園に入られている方が多数で、新しい会員の方には認可保 育園に入れなくて認証保育所に現在在籍中という方もいらっしゃいます。 ○宮島委員  認可保育園に入れて、その認可保育園のシステムや時間やそういうものに合って、認可 園で生活を子どもがしている人と、結果的に自治体の選別で必要性が高くないということ で入れなかった親の方の間には、もしかしたらご意見が違う部分もあるのかと先ほど伺っ ていて思ったのですけれども、その辺りは横浜市の方に…。 ○普光院参考人  少しよろしいですか。ここに回答している方々は、最初は認可外に入っていて、それか ら認可に入ったという方が多いので、認可外を全く未経験という方ではありません。 ○宮島委員  なるほど。  そのあたりは横浜市の方にお伺いしたいのですけれども、先ほど入所の決定に関して不 満のようなことを親から寄せられることもあるとおっしゃいました。それは具体的にどう いうことがあるのかということと、一方で、横浜保育室の直接契約のやり方で、何か親御 さんからこのやり方ではよくないということが寄せられるのかどうかということをご質問 したいと思います。  二つ目に学童保育ですけれども、学童に関しまして、横浜市は三つのタイプが並立して いて、確か地域によっては選ぶことができたのではなかったかと思っているのですけれど も、こうして三つのタイプが並立していることが財政的に効果的かどうか、その辺をどの ように考えていらっしゃるか伺いたいです。  小学生というのは難しくて、子どものタイプによってどのタイプの施設がよいかという のは非常に難しいと思いますけれども、もしおわかりになれば、三つの選択肢がある留守 宅家庭の子どもがどちらかを選ぶ傾向にあるかなど、わかれば教えていただきたいのです が。 ○大日向部会長  委員の方からのご質問はこれぐらいでよろしいですか。まだご発言のない方もおられま すが、時間が残り少なくなりましたので、今まとめてお尋ねいただければと思いますが。 よろしいですか。庄司委員はいかがですか。 ○庄司委員  非常に細かいことで、もう1回確認させていただきたいのは、横浜市の放課後児童健全 育成事業の杉山委員からのご質問の中に、学校ごとに自動的に決まっていくのか、どのよ うな関係なのかが少しわかりませんでしたので、お願いします。 ○大日向部会長  他の委員はいかがですか。内海委員はよろしいですか。それでは順番にお答えいただい て。よろしくお願いいたします。 ○本田参考人  宮島委員からご質問のあった申し込みの苦情の点と、それから直接契約での利用者の意 見というご質問でした。まず、申し込みの際では、保育に欠けているかどうかの確認がな かなか取れない方も。場合によると、本当に就労しているのだろうかというような方もい るということで、これは行政の担当者側の部分ですが、保育所をめぐる保護者の関係では、 例えば、子育て相談の所でいろいろと相談を受けておりますが、その中で例えば「腹が立 つことがあって、子育て広場でも殴ってしまった。こんな状態で夫が帰宅するまで子ども に大変なことをしない自信がない」「座って食事をしない子どもを座りなさいと叱ってよ いか」というような苦情というか、相談が出ているわけですけれども、我々も保育所を利 用できないのだろうかと。これは公費投入の公平性の部分で出てくるかと思いますが、一 時保育を我々にも、もっと拡大して利用させてほしいということは子育て家庭の方から出 てきておりまして、この「保育に欠ける」という枠組みのところが、かなり揺れ動いてき ているというのが個人的な感想です。我々としては一時保育も認可保育所で拡大しつつ、 しかも認可保育所を増やしていくという両面でやっておりますが、公費投入についての不 満も聞かれるところです。  横浜保育室の直接契約の関係は、特に苦情等はありません。利用されている方のアンケ ートの中では、保護者への子どもの対応で満足しているというようなお声もあります。た だ、一方で先ほどありましたように、3歳以降の子どもの問題がありますので、やはり母 親はできれば認可保育所の方が安心できるということで、認可保育所が空きますと、そち らの方に申し込みをされるというのが全体的な実態です。 ○大日向部会長  よろしいですか。 ○高嶋参考人  先ほどは杉山委員からのご質問にお答えできなくて申し訳ありませんでした。説明が十 分ではなくてご理解いただけなかったかと思いますが、この3事業の中で、学校施設を使 って全児童対策として行っている事業は、「放課後キッズクラブ」と「はまっ子ふれあい スクール」で、学校はこのどちらかを実施していることになります。今、横浜市では、は まっ子ふれあいスクールから、順次、放課後キッズクラブへの転換移行を進めているとこ ろです。どういう学校を対象に転換しているかということになりますと、余裕教室の有無、 あるいは留守家庭児童の状況、はまっ子ふれあいスクールの17時以降の利用状況、あるい はその学校区に学童クラブがあるかどうかということを含めて総合的に展開しています。 そういう中で、この両事業のどちらかと、この放課後児童クラブが同じ小学校区に並立す るという例もあります。今、手元に具体的な数は持っていないのですが、10カ所以上あり ます。  それから、今、横浜市では、放課後キッズクラブを中心的事業として展開しようとして おりますが、この放課後児童クラブとこの全児童対策は並行して進めております。財政的 にどうなるかというご質問がありましたけれども、今は、この両方の施策が必要であると いうことで進めております。放課後キッズクラブは留守家庭児童にも対応できる施策と考 えておりますけれども、今どちらかに統合するなどということは考えておりません。国の プランの中で一体的に、あるいは連携してという放課後プランの言葉がありますけれども、 横浜市は当面並行してと考えております。そういう中で、ある一つの学校区の中に、両事 業が並存するということになれば、保護者の選択の幅が広がるということも含めて、この ような施策を取っていますけれども、要するに学童の方のいわゆる家庭的雰囲気を選ぶ、 あるいは放課後キッズクラブでいろいろなプログラムなどを子どもたちに体験させようと、 そういうことを選ぶという保護者の選択の幅があると考えております。 ○宮島委員  どちらもあると。 ○高嶋参考人  はい。 ○大日向部会長  それでは最後に一つだけ真田参考人に伺ってよろしいですか。先ほど川崎市の事例をお っしゃった中で、2割の働いている親の子どもたちの利用率が半減したということをおっ しゃいましたが、来なくなった子どもたちはどこに行っているのでしょうか。 ○真田参考人  一つは、民間の学童保育が少しずつ増えています。ただ、市からの助成金が1円もない ので、保育料が2万5,000円ぐらいなのです。先ほど普光院参考人が言われた事例もあって、 廃止の危機に陥っているわけですけれども、子どもの数は増えています。後は民間企業が 月4万5,000円ぐらいの保育料で、安全対策に特化した形での学童保育が川崎市内に2〜3カ 所進出してきています。後は結局、塾のはしごなど、結局何らかの自衛手段を取っている のではないかと思います。 ○大日向部会長  わかりました。ありがとうございました。  それでは、定刻も過ぎましたので。本日は本当に貴重なご意見を参考人から伺いました。 ありがとうございました。それでは、本日はこの辺りとしたいと思いますが、最後に事務 局から、次回の日程についてご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  本日は誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、9月30日火曜日の17 時から、本日と同じく厚生労働省9階の省議室を予定しております。引き続き、次世代育 成支援のための新たな制度体系の設計についてのご議論をお願いしたいと考えております。 お忙しいところ恐縮でございますが、ご出席いただきますよう、よろしくお願いいたしま す。 ○大日向部会長  それでは、本日はこれをもちまして閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省  雇用均等・児童家庭局総務課  少子化対策企画室  (内線7944)