08/09/12 第30回社会保障審議会医療保険部議事録        第30回社会保障審議会医療保険部会 議事内容 日 時:平成20年9月12日(金)15:00〜16:55                 場 所:全国都市会館 3階「第2会議室」 ○糠谷部会長 定刻になりましたので、ただいまより「第30回医療保険部会」を開催い たします。  委員の皆様には、本日は、御多忙のところ、またお暑い中、お集まりをいただきまし て大変ありがとうございます。お礼を申し上げます。  開会の前に、委員の異動について御報告を申し上げます。  山本信夫委員が御退任され岩月委員、古橋委員が御退任され坂本委員、鈴木委員が御 退任され藤原委員がそれぞれ新たに就任をされております。  また、本日の委員の出欠状況について申し上げます。  本日は、磯部委員、大内委員、神田委員、齋藤委員、坂本委員、西村委員及び山本文 男委員より御欠席の連絡をいただいております。  続きまして、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りをいたします。  神田委員の代理として牧野参考人、齋藤委員の代理として今井参考人、坂本委員の代 理として斎藤参考人の御出席につき、御承認をいただければと思いますが、いかがでご ざいましょうか。              (「異議なし」と声あり) ○糠谷部会長 ありがとうございます。では、そのように取り計らわせていただきます。  それから、前回の医療保険部会以降、厚生労働省幹部にも人事異動がございました。 人事異動の概要につきまして、総務課長の神田さんから御紹介をいただけますでしょう か。 ○神田課長 それでは、厚生省側の異動について御紹介をさせていただきます。  医政・医療保険担当審議官の榮畑でございます。保険局総務課高齢者医療企画室長の 吉岡でございます。保険課長の田河でございます。国民健康保険課長の武田でございま す。医療課長の佐藤でございます。保険医療企画調査室長の小野でございます。調査課 長の村山でございます。社会保険庁運営部医療保険課長の岩渕でございます。私、総務 課長の神田でございます。よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○糠谷部会長 それでは、議事に入らせていただきます。  本日の議題の1つ目といたしまして、「出産育児一時金制度の見直しについて」が上 がっております。これに関しましては、9月4日の医療部会でも議論されております産 科補償制度の創設を受けた出産育児一時金制度の見直しについて御報告をいただきます。  それでは、産科補償制度について担当部局より、出産育児一時金の見直しについては 事務局より、それぞれ説明をお願いいたします。多くの委員にできる限り御発言いただ くため、説明は簡潔にお願いをいたします。それでは、どうぞ。 ○深田課長 医政局の総務課長でございます。それでは、まず産科医療補償制度につき まして御説明をさせていただきたいと思います。資料の番号で言いますと、資料1でご ざいます。  おめくりいただきまして、1ぺージ目から順次御説明をさせていただきたいというふ うに思います。  産科医療補償制度につきましては、昨年の政府・与党でまとめました緊急医療確保対 策、あるいは今年7月の5つの安心プランにも盛り込まれておりまして、医療保険部会 におきましては、昨年9月20日に取組状況ということで御報告をさせていただいており ます。準備が整ってきておりますので、具体的な内容につきまして、制度の概要を御説 明させていただきたいというふうに思います。  まず最初、1ぺージ目でございますけれども、議論の出発点といいましょうか、制度 につきましては、18年の9月ごろから議論が始まってまいりまして、11月には与党から 枠組みという形で示されたものでございます。また、平成19年の2月からは、厚生労働 省の医政局の方でございますが、委託ということで財団法人日本医療機能評価機構に準 備委員会が設置されまして、具体的な検討を1年間議論し、平成20年の1月に報告書の 取りまとめが行なわれたというものでございます。  産科医療補償制度につきましては、分娩に係ります医療事故により脳性麻痺となった 方及びその家族の経済的な負担を速やかに補償するということと、それから事故原因の 分析を行なうということでございまして、将来の同種の事故防止に資する情報を提供す るということを目的とするものでございます。産科医療の崩壊というものを一刻も早く 阻止するという観点から、できるだけ早く立ち上げようということでございまして、民 間の損害保険を活用した制度ということで考えているものでございます。  それでは、1ぺージおめくりいただきまして、主な内容について御説明させていただ きます。2ぺージ目でございますが、産科医療補償制度の概要でございます。  まず、その仕組みでございますけれども、最初にございますように、通常の妊娠・分 娩にもかかわらず脳性麻痺となった方について補償金を支払うというものでございまし て、その支払いにより被る損害を損害保険によって担保するというものでございます。 制度の開始の時期でございますけれども、21年の1月1日の分娩から補償の適用を予定 をして準備を進めているところでございます。 また、補償の対象でございますが、2つ目のところにございますように、出生の体重 が2,000g以上、かつ在胎週数が33週以上、仮にこの基準を下回った場合においても、 下にありますように、在胎週数が28週以上の方については、個別に審査をして適用の 有無を決めていくというような仕組みにしております。身体障害者の等級が1、2級相 当の方、それから先天性要因などの除外基準を決めておりまして、その場合には除かれ るというような形で対象としていきたいというふうに思っております。また、全体の推 計数でございますが、年間にいたしまして概ね 500〜 800人という形で見込んでいる ものでございます。  補償の金額でございますが、一時金といたしまして 600万円。それから、20年間の 分割という形になりますが、 2,400万円ということで、合計 3,000万円を考えておりま す。保険料にいたしますと、一分娩当たりにしますと約3万円というもので考えている ものでございます。  この制度につきましては、安定的に見直していくためには、加入率を高くしていくと いうことがどうしても必要というふうに考えておりまして、加入促進を図っていきたい ということとしております。そのために、まず第1に、都道府県のホームぺージなどを 通じて行なうことになっております医療機能の情報提供という制度がございますが、こ の制度の項目として、本制度の加入状況を追加することを考えております。また、医療 機関が広告できる事項にも、これを追加することを考えておりまして、この2点につき ましては、医療情報の提供のあり方検討会というのを医政局に設けておりますが、ここ での議論や、今後行いますパブリックコメントの募集などを踏まえまして、省令・告示 の改正を行なうこととしておりまして、10月中旬には行いたいというふうに考えている ところでございます。また、運営組織であります日本医療機能評価機構につきましても、 このホームぺージを通じまして加入分娩医療機関について10月から公表していくとい う予定にしております。  その他のところでございますけれども、産科医療補償制度は確かに補償の支払いとい うのが大きな仕事ではございますけれども、これ以外にも、紛争の防止・早期解決とい う観点から、医学的観点からの事例の原因分析を行いまして、その内容を公開をし、再 発防止を図っていくということで、産科医療の質の向上を図っていきたいというふうに 思っております。また、少なくとも5年後を目途に制度内容につきまして検証し、必要 な見直しを進めていきたいというふうに考えております。  お手元の資料でございますが、3ぺージ目は図にした仕組みでございます。  4ぺージから8ぺージまででございますが、これは産科医療補償制度の運営組織準備 委員会の報告書、あるいは与党でまとめていただきました医療紛争処理のあり方検討会 での内容を添付させていただいております。この制度の補償金の支払い部分につきまし ては、損害保険で行なうということで、7月以来、幹事会社を決め準備に入っていると ころでございまして、運用していただきます損害保険会社につきましては、近々、正式 に金融商品としての認可がされる予定になっておりまして、同時に、正式に契約を交わ す予定ということで聞いておるところでございます。  なお、運営組織の役割を担う評価機構につきましては、現在、加入手続を進めている ところでございますが、9月11日現在で、分娩機関が 3,334ヶ所ございますけれども、 このうち 2,448ヶ所につきましては加入をいただいておりまして、率にしますと73.4 %の機関から加入をいただいているところでございます。  また、1月からの補償対象になる方については、妊産婦さんの登録事務を行なうとい うことになっておりまして、10月から開始を進めていきたいというふうに思っていると ころでございます。1月からの補償の適用を開始するに当たりましては、準備を進めて いるところでございますけれども、引き続きまして加入率を高めて、脳性麻痺となった 方が補償を受けられることがないということがないように万全の準備を進めていきたい というふうに考えているところでございます。  以上です。 ○田河課長 続きまして、保険局の保険課長でございます。同じ綴りの資料9ぺージ目 でございます。「産科医療補償制度創設に伴う出産一時金等の支給額の見直しについて」 というところでございます。  まず、現行の取扱いでございますが、健康保険法においては、被保険者(又は被扶養 者)が出産をしたとき、出産育児一時金としまして、子ども1人につき35万円を支給す るという形になっております。出産費用は、助産所や医療機関によって異なることから、 出産育児一時金の額は、旧国立病院におけます分娩費の全国平均を勘案して35万円とい うふうにしております。  枠囲みに根拠条文をつけておりますが、健康保険法の 101条では、「被保険者が出産 したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する。」として、政令の 中で35万円とするという形に定まっておるところでございます。  また、市町村国民健康保険にあっては、条例で定めるところにより支給するとなって おりますが、大半の市町村では35万円というふうになっております。  このように現行なっておりますが、(2)の支給額の見直しについてでございます。 先ほど御説明しましたように、平成21年1月より産科医療補償制度が創設されます。そ の保険料に相当する分が出産費用の上昇が見込まれるわけでございます。そのため、同 日より出産育児一時金等の支給額を1人につき35万円から38万円に引き上げることを 現在検討しているところでございます。  以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの報告や資料に関します 質問も含めまして、御自由に意見交換をお願いできればと思います。どなたからでもど うぞ。 ○対馬委員 ほかの場で話は伺っているのですけれども、医療保険部会としての審議は 始めてでございますので、3つほどお尋ねしたいと思います。  1つは、今説明のあった9ぺージ目のところでしょうか、出産育児一時金の性格とか 位置づけの問題ですけれども、ここに健康保険法と書かれていますけれども、健康保険 法の第1条、一番最初の目的のところには、疾病とか負傷、死亡、出産ということで、 出産も健康保険法上の対象になるとはっきり明記されているわけですね。そしてまた、 こう書かれているということですけれども、ただ、世情よく言われますのは、出産とい うのは疾病とは別なので健康保険の対象にはならないと、こうよく言われますね。その あたりを含めて、位置づけが、出産育児一時金というのは健康保険法ないしは医療給付 の中で特殊な位置づけになっているのかどうか、そのあたりが1点です。  それから、2つ目になります。ここでは35万円を支給しているところを38万円とい うことで上げたいということですけれども、舛添大臣などは、先ほどの話とも若干絡む のかもしれませんけれども、出産育児一時金等については、制度を全体的に見直しては どうかと。例えば現物給付化してはどうかとか、地域ごとに費用も違うので、そこを勘 案してはどうかとか、ないしは健診にも適用してはどうかと、こういったこともおっし ゃられているようですけれども、今回、仮に38万円に上げたとして、またいずれそうい った検討をしなくてはいけないのかどうか。そうしますと、場合によっては手戻りとい うことが生じないのかどうか、ここが2点目であります。  それから3点目ですけれども、出産育児一時金については、国立病院等の実績をもと にして上げていくということで、前回は平成6年から平成18年、言ってみますと12年 間かけて5万円上げたわけですよね。今回、つい18年10月ですから今2年で、また更 に3万円上げるということですけれども、今お話を伺っていますと、まだ被保険者の全 員が例えば支給を受けられるのであればまだしもですけれども、7割強加盟していない ということもありますし、また実際、これはいわゆる民間の損害保険の仕掛けでやって いるわけですから、実績が当然まだ出ていない、これから出てくる、こういう話ですね。 しかも、数字的な根拠もよくわからないところがあるのですけれども、分娩というのは 100万件以上あるわけですね。そうしますと、それに3万円を掛けますと 300億円ぐら いになる。ところが、件数等を見ますと、 500〜 800件でしょうか、それに 3,000万円 を掛けますと、500件であれば 150億円で済む、こういうこともあるわけですね。そう いうことからしますと、もう少し実績を見てやってもいいのではないか。場合によって は、今、出産とか小児については政府としても最大の課題ですから、21年度の予算要求 ということも含めて考えてもいいのではないか。いずれにしろ、もう少し検討してから でいいのではないかというふうに思うのですけれども、以上3点、よろしくお願いしま す。 ○田河課長 まず、出産育児一時金の性格等でございますが、当然、出産育児一時金も 保険給付の一種でございます。ただ、出産育児一時金等につきましては、保険の中心的 な給付である傷病の治療を目的とした現物給付であります療養の給付でないことから、 保険対象でないみたいな言われ方をする場合も確かにあるわけでございますが、しっか りとした現金給付として行なわれております。これは、正常な出産については、疾病や 負傷とは異なることから、療養の給付の対象というものにはなりませんが、出産に直接 要する費用に係る経済的負担の軽減を図ることを目的として、保険給付として支給され るものでございます。  2点目でございますけれども、厚生労働大臣の提言との関係でございますが、お金の 心配なく産み育てることができるようにというふうな大臣の提言は私どもも当然承知し ております。事務局としても検討する必要があると考えておりますけれども、仕組みの 立て方など、なお検討を要する事項が多々あり、来年1月から実施される産科医療補償 制度に対応できる時期に成案を取りまとめて実施していくということはなかなか難しゅ うございます。このため、その問題とは切り離した形で、まず産科医療補償制度が実施 されることについての対応を行なう必要があるというふうに私どもは考えております。 そうでなければ、産科医療補償制度の円滑な実施が図られず、結果的に医療機関も、あ るいは出産する側も負担になってしまう、そういうことも懸念されるわけでございます。 なお、御指摘の大臣の軽減の関係につきましては、事務局として成案がまとまれば、ま た部会で御議論していただくことにもなるかというふうにも考えてはおります。  そして、3点目でございますが、従来の出産育児一時金は、実績等を見ながら確かに 引き上げていくと思います。まだはっきり実績等が定まっていないのではないか。35万 円になるまで、確かに12年間も据え置いてきたわけでございますが、これは、先ほども 御説明いたしましたが、この出産育児一時金、旧国立病院における分娩費用の平均費用 を勘案しまして定めてきております。今回の状況を考えますと、確かに実施状況はあり ますが、今回の産科医療補償制度の創設に伴いまして、分娩機関である旧国立病院がす べて制度に加入し、保険料相当額を引き上げていくような方針であるというふうに私ど もも聞いております。このような状況においては、1月からしっかり対応できるような 状況をつくっていくべきではないかというふうに考えております。先ほどもちょっと申 し上げましたが、仮に制度スタートと同時に、出産育児一時金の額を引上げられないと いうふうになりますと、各分娩医療機関においては、分娩医療を円滑に転嫁できない。 これがまた逆に、出産育児一時金の額を引上げられないまま転嫁されますと、また出産 する側の負担にもなる。そういうことも考えますと、いずれにせよ、産科医療補償制度 の円滑な実施が図られ、産科医療の確保という面でやはり問題が生じてしまうのではな いか。保険者の側の御負担というのもあるわけでございますが、必要な対応ということ ではないかというふうに考えてございます。 ○対馬委員 1つだけ。最後の質問の分娩件数は年間 100万以上あるはずですが、それ に3万円を掛けますと 300億円だと。一方では、対象者の推計は年間概ね 500〜 800 人だということになりますと相当乖離がある。また、運営費用も、たしか21年度の概算 要求の中で、この制度の運用費を数億円要求しているというふうに思うのですけれども、 そこのところはどうお考えでしょうか。 ○深田課長 まず最初に件数の関係でございますけれども、 500〜 800件ぐらいではな いかというふうに推定をしているところでございまして、実は、なかなかデータが十分 そろい切っておりません。非常に少ない基礎数でもって推計をいたしましたので、かな り幅のある数字で計算をさせていただいております。確かに、今、 500件ということで いただきましたが、 800件がきても大丈夫なようにということで計算をさせていただい ておりまして、更に、件数は非常に不明確な部分がありますので、少し余分な部分も見 ているところであります。ただ、いずれにいたしましても、この件数については、コス トをできるだけ下げるという努力は必要だというふうに我々は思っておりまして、例え ば予定損害率というのは、普通、一定の割合で民間の損害保険でしたら6割ぐらいとか、 率を決めてやるわけですけれども、今回は運営組織を一般に決めて、そこでいろいろな 事務を行なうという形にしていまして、実は制度設計については、これまで国がお金を 出して支援をしてまいりましたし、PRについても、医師会、あるいは産婦人科学会、 あるいは助産師会などの御協力を得て説明会を行なうという形で、コストをなるべくか けないように代理店経費なども削減をしてこの金額におさめてきているというものでご ざいます。  それで、最後に言われました予算の関係でございますが、これまでは実は制度設計、 あるいは普及関係の経費について計上しております。21年度は、先ほど申しましたよう に、この制度は補償金を支払うことというのが大きなテーマの1つでございますけれど も、それ以外に原因究明というものと、それについての原因究明関係の事務を行なうと いうことがメインになっておりまして、1つの大きな柱になっております。これについ ては、国から補助金を入れて維持できるよう制度を動かしていこうというふうに考えて おりまして、この補償制度について国から補助金なりを入れているということではござ いません。 ○糠谷部会長 よろしゅうございますか。それでは、ほかに御意見等は。河内山委員。 ○河内山委員 この数年間、全国の市長会で議論をいたしましても、医療崩壊、とりわ け産科の先生方が非常に大きなリスクを抱えながら医療を行なうということで、地域に あっては、なかなか出産ができないような地域が出てきた。こういう現状を見ましても、 いろいろな方策を講じて医療崩壊を止めなければいけないというのが主要な議論のテー マになっております。対馬委員さんがおっしゃったことのさまざまな点には当然留意を しなければならないと思いますが、今一番、少子化にどうやって歯止めをかけるか、あ るいは子どもを産み育てる側ももちろんですけれども、それをサポートする産科の先生 方をはじめ、負担を少しでも軽くしていくという意味では、これは国を挙げて取り組ま なければいけないテーマの第1と言っても過言じゃないと思います。保険者としては、 当然、負担が生じたり、 あるいは広く被保険者に負担を求めていかなければならなくな るわけですけれども、そういう一番理解を得ながらやらなければいけないという意味で は、理解を得やすいテーマの1つでもあろうと思っています。そういう意味では、今日、 どちらが先に用意するかは別としまして、一時金を引き上げてでも、懸案となっており ます補償制度を創設をしていく。あるいは、それが広がっていくということを保険者と しても後押しをする必要があるのではないかと思っております。これは、さまざまなお 考えがあると思いますけれども、この際、実行したらどうかというふうに考えておりま す。  以上でございます。 ○糠谷部会長 それでは、藤原委員。 ○藤原委員 この制度が円滑に運用されるためには、やはり分娩機関の全加入を目標に いくべきだと思うのですが、先ほど加入率が73.4%と報告がありましたけれども、これ をもっと上げるための方策、例えば診療報酬の要件を加えるなどといった観点からの施 策についてお考えかどうか。現在のところ、加入促進策を見てみますと、広報的な部分 が多いかと思うのですが、もう少し強い対応というのは御検討でしょうか。 ○佐藤課長 それでは、医療課からお答えします。今御指摘のような件も踏まえて、診 療報酬上、どういう対応ができるか検討している最中でございます。 ○糠谷部会長 よろしゅうございますか。 ○坂本参考人 今のことに加えまして、先ほど73.4%の加入だと。私、本日、日本医療 評価機構のホームぺージを見てまいりましたが、助産所の加入がまだ5割というところ で、いささか懸念をしております。そこで、日本助産師会等にお話を伺ったり、知り合 いの助産師さんに伺ったりしますと、やはりまだこの制度自体の周知徹底が隅々までは 行なわれていない。それから、中には、非常に経営が厳しい中で、この3万円の掛金を 出していくことに非常に不安を感じていると。それから、果たして本当に補償されるの かといったようなことも聞こえておりますので、私どもとしては、ぜひこの制度は進め ていくべきだという前提に立ちました上で、更に隅々に行き渡るような広告戦略等をも う少しお考えいただけないかということと、もちろん私どもは開業助産師さんたちの会 員もおりますので、私どもも団体としては進めていきたいというふうに考えております。  それからもう1点、これは産む側にとっても大変重要な制度だというふうに思ってお りますが、これは実際に産む側にはどういうようなお知らせの仕方をしているのかとい うことを1つお聞かせいただけないでしょうか。 ○深田課長 まず、助産施設に対する説明の点でございます。御指摘いただいた点、重 々に機関には徹底をして、ちゃんと説明会の開催なりをお願いしたいというふうに思い ますけれども、まず、これから先、これまでも説明を続けてきているところですが、実 は、まだ説明会などが終わっていないところもかなりございます。ちょっと遅れている ところもございまして、例えば東北、あるいは北海道・東北地域、あるいは関東・北陸 地域と、今ずっと今月いっぱいかけて説明会をずっと開催をする予定にしておりまして、 それは助産師会の主催のもと、開催する予定にしておりまして、そこに評価機構の人間 も参りまして細かい説明をさせていただきたいというふうに思っております。  それから、次に産む方、妊産婦さんへの説明をどうするのかということでございます けれども、現実には、保険料を払うのは医療機関、分娩する機関で払うということです ので、保険加入するのは分娩機関という形になってまいります。しかしながら、出産費 用が上がるということですので、その点については、個別に入るときには、こういう制 度になりますということを分娩機関の方からその方に御説明をいただくという形になっ てまいります。現在、すでに妊娠されていて、1月以降、出産予定という方については、 個別にこうなりますということをお願いをしていかざるを得ないものですから、併せて 説明会などでも徹底をしていきたいと思っています。 ○岩本委員 対馬委員の最後の質問に対してのお答えのところで更にお伺いしたいので すけれども、大分リスクを高めに見積もっているような気がしまして、ノーマルにいき ますと余剰が出るんじゃないかということがちょっと気になるんですけれども、1年間 の経理をして余剰が出た場合に、どういう処理をされるのか教えていただけますでしょ うか。これは、掛金のところが配当という形で医療機関に戻るとか、そういう仕組みに なるんでしょうか。 ○深田課長 一応、制度ができてから5年後に見直しをするという仕組みにしておりま して、初年度、2年度はまだ十分に年間のそういった発生件数などの見込みは立たない のではないかと思いますので、そのまま維持していくことになるのではないかというふ うに思っておりますけれども、ある程度数字が固まってきて動かないというか、大体平 均値が出てきているところでは、計算をもう一度し直すことは当然必要だというふうに 思っております。 ○岩本委員 毎年の経緯で、余剰なり欠損なりが出た場合にどういう処理をされるのか とういうことのスキームをお伺いしたいのですけれども。 ○深田課長 実際の支払いは1年後になります。というのは、その間、診断をちゃんと つけて、そこからになりますので、データはその時点ですぐに出てこないかと思います。 ○岩本委員 全然質問に答えていただいていないと思うのですけれども、保険として見 た場合に、1年たてば、その保険の支払いが終われば、そういうものに関して保険料が 高過ぎた、低過ぎたとわかるわけですよね。余剰が生じるなり、欠損が生じるので。具 体的にそれが終わったときに、そこの余剰なり欠損がどう処理されるのかということを まず質問していて、その後には、2年たてばそれは見直しますということはわかりまし たが、私が今聞いているのは、そこの余剰の処理の問題です。 ○深田課長 余剰については、お返しをするということにはたぶんならないのではない かと思っております。ただ、実際には、これについては、ここだけでずっと運営してい くということではなくて、いろいろな御要望が実はあります。脳性麻痺だけが今回対象 ですので、そういったものも踏まえて、どういう対応をしていくかということになって いくのではないかというふうに思っています。 ○岩本委員 リスクは保険会社かもつということですか。余剰が出れば取る、欠損が出 れば保険会社がかぶるという、そういうスキームなんですか。 ○深田課長 そういう形になっています。 ○糠谷部会長 それでは、多田委員、どうぞ。 ○多田委員 1つだけ確認しておきたいのですが、保険者としては、3万円上げた、出 産育児一時金を出すということになるわけですけれども、この制度に加入していない分 娩施設で分娩をした方にも同じように出すという考え方で今のところ設計されていると いうふうに理解してよろしいですか。 ○深田課長 加入していないところには当然出ません。 ○神田課長 加入していない分娩機関で分娩されたときにも、加算をして3万円上積み して払うのかということかと思いますけれども、そのような仕組みにしてはどうかとい う御意見が、先ほど加入促進という観点から、そのようにしてはどうかという御意見が あることも確かでありますけれども、一方で、現在の仕組みとしては全員一律の支給と しているということと、35万円という金額が、先ほど申し上げた旧国立病院の平均的な 分娩料を踏まえて、実費弁償という形には必ずしもなっていないということから、そこ に差を設けることについては、法制的にも問題があるということで、現時点ではそうい う法制的な問題があるということでございますので、その部分については、できるだけ 早急に結論を得るようにいたしたいというふうに思っております。 ○糠谷部会長 逢見委員、どうぞ。 ○逢見委員 産科医療補償制度の創設というのは、妊産婦の立場からいっても、安心し て子どもを産み育てるという意味では必要だと思いますが、ただ、これは新たな制度の 創設ということでございますので、幾つか質問させていただきたいと思いますが、先ほ どの説明ですと、損害保険としての民間の仕組みを使うということで、既に幹事会社が 決まっていて、参加する損保会社に対する金融商品としての認可も下りるということで あるとか、あるいは、すでに医療機関等に加入促進のための働きかけをやっているとい うことでございまして、そういう意味では、すでに事実が先行して走っているというこ とだと思いますが、この制度創設に当たって、医療保険部会がどのような役割を果たし ているのか。事実が先行し、その追認のためにやっているのかという疑問がございます ので、その点についてお答え願いたいということが1点。  それから、そういう制度の創設ということでいきますと、なぜこういう制度になった のかのということについての十分な説明がなされていないように思います。ほかで説明 されているのかもしれませんが、 医療保険部会としてはまだ初めてのことだと思います ので、例えば今回、補償対象が脳性麻痺になった場合に限定されているわけですが、無 過失の医療保障として対象になるのがなぜ脳性麻痺だけなのかということがありますね。 それから、3万円の出産育児一時金の引上げということになって、これが事実上、妊産 婦が保険料を代理して支払うような形になっているわけですけれども、 なぜ3万円なの かということと、事実上、代理で妊産婦が支払うというような保険の仕組みがどのよう にして理論的に構築されるのかということ。  それから、早期の紛争予防に資するというようなことが趣旨としてございますが、こ れが一体どのような早期の紛争予防に資することになるのかという点であるとか、そう いった点について御説明を願いたいと思います。 ○神田課長 1点目の、医療保険部会として事実が先行して後追い的になっているので はないかということでございますけれども、昨年の9月のこの部会で、先ほど紹介がご ざいましたけれども、準備委員会における検討状況などについて、この場で御報告をさ せていただいたところでございます。それから、最終的に報告書は今年の1月に取りま とまったわけでございますけれども、その中に出産育児一時金の引上げによる対応とい うことがございますので、その段階で、私どもといたしましても、直接の保険者になり ます市長会・町村会、健保連の関係者の方々のところには、こういう状況になっている ということを追加的に御報告をさせていただいたところでございます。  それから、先ほど御紹介がございましたけれども、これは、ただ単に紛争の防止、早 期解決ということと合わせまして、事故の再発防止ですとか、原因分析ということも機 能に織り込んでいるということから、日本医療評価機構が自主組織になるということが 正式に寄附行為として固まって、その具体的な補償額ですとか額につきましては、7月 にそういうことで実施機関になります評価機構において、その額が7月に決まったとい うことになりますので、これは具体的な引上額も固まりましたので、この場に正式にお 諮りさせていただくということで、日程調整させていただいてこの時期になりましたけ れども、経緯としては今申し上げたような経緯でございます。 ○糠谷部会長 まだお答えをいただきますけれども。 ○深田課長 それでは、それ以外に、まず脳性麻痺に限られる理由は何かということで あります。補償の対象をどうするかというのは、いろいろな観点をどういうふうにこの 制度を仕組んでいくかということによる部分がかなりございます。1点、脳性麻痺の方 については、一定の確率で不可避的に起きるというような状況でございますので、まず 保険の仕組みになじむのではないかということでございます。  それからもう1つ、思いがけず重傷の障害児をもってしまうというケースになるわけ でございますけれども、こういった方々の御家族の方にとっては、障害に対する補償を 求めて訴える、訴訟になるというケースが多いといったようなことが言われておりまし て、こういったものを踏まえて、まず早期に制度を入れるということを図るということ で、まずは脳性麻痺だけを対象とするということで今回考えたものでございます。出産 事故による障害について、何らかの補償制度を用意するという観点で考えますと、障害 施策全般のいろいろな対策とのバランスとか、あるいは、いろいろな手当のたぐいもご ざいますので、そういったものとのバランスなど、いろいろ検討していかなければなら ない点が非常に多いので、早期に実現を図るということをまず最初にもってくるという ことで今回考えたものでございます。  それから、早期の紛争解決とどうつながるのかということでございますが、少なくと も、1つは、まずこの制度が入りますと補償されるということになりますし、それから、 原因の分析などもちゃんと行なって当事者には通知がされるという仕組みになりますの で、それは最後まで争う方がいなくなるというわけではないと思いますけれども、少な くとも御理解を得られる方が増えてくるのではないかというふうに思っているところで ございます。 ○逢見委員 医療現場で起こっている医療事故と出産に伴う事故ということと、今回の 脳性麻痺を対象とした無過失補償制度ということに、私はまだ、これで起こっている問 題の一体どこまでがカバーされるのかということについて十分理解できていません。こ こはやはりまず実際に正常分娩、異常分娩の線引きをどうするのか。それから、正常分 娩であるけれども医療事故が発生した時に、その過失・無過失とか、そのときにどこま で補償すべきかという、民間の損害保険として補償すべきものと、まさに医療保険とし てカバーすべきものとか、そういう全体の構図の中で今回はこういうものとしてスター トすると。そういう全体構図の中で、何が今スタートできるのかということをきちんと した位置づけをする必要があるのではないかというふうに思います。そうしないと、本 来起こっている問題の全体像を把握し切れないままということになりかねないと思いま すので、今回、そうした医療事故の事例分析なども行なうということでございますので、 そうしたものを使って、医療事故の実態と、それを補償する仕組みのあり方ということ について継続して検討されるということを望みたいと思います。また、そもそも妊娠検 査や分娩の費用というものが、本来の意味のきちんとした保険適用の現物給付になって いないということもあって、医療機関が分娩費については自由に価格設定している。そ の中で、先ほどの説明だと国立病院で平均的に出ている価格がこうだからということで の金額の設定ということになっておりまして、これで果たして実際の分娩の費用との乖 離ということがカバーされるのかどうかということもあります。そういった医療機関が 自由に価格設定する分娩費の請求ということについても、私どもはかねてから、これは 保険の現物給付の適用対象にすべきということを言っておりますけれども、こうした問 題についても今後更に検討する必要があるというふうに思っております。 ○糠谷部会長 いろいろ御議論がございました。私も、伺っていて、制度としてこうい うものをつくらなければいけないというのはそのとおりではないかということではある と思うのですけれども、例えば岩本委員がおっしゃられたこともどういうことになるの かなとか、逢見委員の御意見とか、まだ十分お答えになり切れていないのかなという感 じがするところもあるんですね。ただ、動き出しているところもありますので、ここは 皆さん方にお諮りをするところですけれども、再度部会を開催してもう一度やるという 選択もあろうかと思います。ただ、そうしますと、それは間をそんなに長くおかないで やらなければいけないということになるかと思いますけれども、そういう選択と、一応 制度としてはこれでといいますか、今のお話も踏まえて、まだ十分答えられていないと ころは、政令案がまとまりました段階で何らかの形で委員の皆さんに御連絡をする中で もお答えをするということで、一応方向としては、本議題はやっていく方向で本日の部 会は取りまとめるということがあろうかと思います。 私としては、時間のせいにするのも何でございますけれども、方向としては、方向とし ては本日まとめさせていただいて、いずれにしろ政令案がまとまったら御連絡をいただ くわけでございますから、今日の委員の皆さん方の御質問、御意見等で十分でないとこ ろ、岩本委員の御質問にはまだ十分お答えになっているという感じでもないようなとこ ろもありますし、もしそういったことでよろしければそうさせていただきたいと思いま すが。 ○岩村委員 今の部会長のお話自体はそれでいいと思うのですが、2〜3、コメントだ けさせていただければと思います。  1点は、先ほど岩本先生がおっしゃったことと関係するのですが、このスキームとい うのは、結局、医療機関、分娩機関が契約の当事者となって保険料を払うという形にな っているのですが、実際には、それを今度は出産育児一時金でその分を手当てするとい うことになり、 それは結局のところ、公的医療保険の財政で産科医療補償保険の面倒を みるという話であるので、そういう意味では、産科医療補償保険そのものは民間ベース ですが、公的医療保険財政のお金を注ぎ込むということ自体は大きなラインでは動かな いので、そうすると、産科医療補償保険は民間でやっている保険ではあるけれども、そ の財務については透明性を要求するということがあってもいいのではないかという気が するというのが1つのコメントです。  それから2番目は、こういったスキームそのものは、今回はあくまでも出産で、かつ 脳性麻痺の場合ということに限られていますが、実は、患者に重度の後遺症が残るとい うことは医療事故一般に日頃あり得る話です。そうすると、今回こういうスキームをつ くったということは、更にその先には、ひょっとすると医療事故全般についてこういう スキームを考えるという話にも広がる可能性がある。その点は医療保険部会としてはテ ークノートしておく必要があるという気がします。  3番目は、これは言うまでもないことですが、このスキームがうまくいくためには、 出産育児一時金の代理受領がもっと広がる必要があります。一回出産した方の手に渡っ てしまって、更にそれをもう一回医療機関等に払ってもらうということになると、たま たま私は別の会議でその種の問題をやっていたものですから、結構面倒な問題になると いう気がしますので、出産育児一時金についての代理受領の促進もぜひ事務方の方で御 尽力いただく必要があると思います。  以上でございます。 ○渡辺委員 原則的に、部会長のまとめた方向でよろしいと思います。  1点だけ。運営組織が契約者であると同時に、審査も運営組織がするというスタイル のようにどうも見えるのですが、契約者即審査するという形が一般保険の調査になじむ のかどうか。その点、この体制はどういうふうになっているのでしょうか。 ○深田課長 確かに評価機構の方で審査をすることになりますので、そういう意味では 1つですけれども、実際に制度を運営する場合と審査をする場合は、当然、審査委員会 を別に設けて行なうことにしております。 ○糠谷部会長 ほかに御意見等はございますでしょうか。 ○神田課長 今、岩本委員からございました意見ですが、若干お答えさせていただきま すと、先ほど逢見委員からございました現物給付にして、そもそも自由価格でないよう にしてはどうかという御意見、これは前からあることは我々も認識をいたしております けれども、療養の給付という形の現物給付というのは、まさに傷病について、医療機関 にかかった場合という形になっておりますので、これは今は純粋な現金給付という形に なっていて、病気やけがという位置づけには今なっていないということで現金給付構成 になっているということかというふうに思っております。  それから、代理受領のお話がございましたけれども、これは、今実施予定も含めまし て、健康保険組合で7割程度、国民健康保険では9割程度ということになっております が、あくまでもこれは取扱い保険者という位置づけでございまして、その時々で加入者 の方が手続をしていただく必要がありますので、広報ですとか、そういうことは今後詰 めていく必要があるというふうに認識をいたしております。 ○糠谷部会長 ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。 ○対馬委員 1点。会長のおっしゃられたことでいいのですが、今日、我々としても、 必ずしも十分お答えでストンと胸に落ちたということになっていない部分がずいぶん多 いというふうに思いますので、議事録とは別に、質問に対する見解といいますか、お答 えといいますか、 それも然るべきタイミングでもってお出しいただければというふうに 思います。 ○糠谷部会長 私が申し上げたのもそういう趣旨で先ほど申し上げましたので、もし大 方の方の御賛同をいただけますれば、先ほど申し上げたような形で、方向としてはこう いう仕組みをつくるということで御了解をいただきまして、ただ、いろいろ御質問の中 で、事務局は十分答えたつもりになっているかもしれませんけれども、私も、あるいは 委員の皆さん方の御意見を頭に置いて事務局とも相談をしてよろしいかと思いますが、 政令案として、こういうふうになりましたというのをいずれ御連絡をするときまでに、 今日の点でまだ十分でないと思われるところは、御理解いただけるようなものを何らか の形で御連絡をするということでまとめさせていただければと思いますけれども、よろ しゅうございますでしょうか。              (「異議なし」と声あり) ○糠谷部会長 それでは、そういうことで最初の議題は終わらせていただきたいと思い ます。  それでは、次の議題でございますが、「長寿医療制度の運営状況について」、制度の 定着に向けた改善策など、現時点での制度の運営状況について事務局から報告をお願い いたします。 ○吉岡室長 高齢者医療企画室長でございます。長寿医療制度は、この4月にスタート いたしまして半年余りが経過をしたわけでございますので、本日までの到達状況につき まして御報告をさせていただきます。お手元の資料2に沿って御説明をさせていただき ます。  まず、1ぺージ目でございますけれども、改めて申すまでもございませんが、大きく 制度の特徴は3点でございます。都道府県ごとの広域連合が財政運営の責任主体という ことで、保険料をお預かりし、使い道にも責任を持つということでございます。  また2点目に、保険料を高齢者の方々全員に公平に御負担をしていただくということ で、市町村ごとに約5倍の保険料格差があったのが約2倍ということになっているわけ でございます。  また3点目は、若い人と高齢者の分担ルールを明確にしたということでございます。 公費約5割、それから若年者の保険料からの支援金が約4割、そして高齢者の保険料が 1割ということで、皆さん方に納得して御負担していただく、そういう仕組みとしてス タートしたところでございます。  2ぺージ目、3ぺージ目は省略をさせていただきまして、4ぺージ目でございます。 4月にスタートしてからの施行状況を踏まえながら、6月12日の日に政府・与党として の改善策というものを取りまとめております。  まず、1点目が保険料の軽減対策でございます。1の(1)にございますのが、所得 の低い方への配慮として、7割軽減世帯のうち、長寿医療制度に被保険者全員が年金収 入80万円以下の世帯については9割軽減とするということでの均等割りの更なる軽減。  それから、(2)が所得割を負担する方のうち、所得の低い方につきまして所得割額 を50%程度軽減するということでございます。これらの措置につきましては、(4)に ございますように、21年度から実施いたしますけれども、今年度におきましても経過的 な対策を講ずるということでございます。  具体的には、7ぺージ目を御覧をいただきたいと思います。7ぺージが21年度の対 応でございます。下の図にありますように、新たに9割軽減というものを設ける。そし て、所得割額につきましても、所得に応じて軽減率を変えながら、全体として50%程度 の軽減を図るということでございます。  8ぺージ目が経過的な措置としての20年度の対応でございます。21年度の対応を行 なうためには、システム的な対応も必要になりますので、当面、20年度につきましては、 7割軽減世帯で8月まで年金から支払われている方につきましては、10月からは保険料 を徴収しないということでございます。納付書等で納められている方につきましても同 等の軽減措置を行なうということで、年度を通してみますと、これは 8.5割の軽減とい うことになります。それから、所得割につきましても、20年度は原則一律50%軽減とい うことでございます。  その結果でございますけれども、9ぺージでございます。75歳以上がいる市町村国保 世帯のうち、長寿医療制度の創設に伴って保険料額が減少する世帯割合は、当初69%と いうことでございましたけれども、これらの軽減策を導入いたしますと、軽減世帯の割 合は75%になるということで、4分の3の世帯が保険料が安くなっているということで ございます。  また4ぺージ目にお戻りをいただきまして、まとめの2番目の点でございます。この 長寿医療の保険料の徴収でございますけれども、原則として年金からの保険料の徴収と いうことでございます。高齢者の皆様に金融機関でお支払いいただく手間をかけない。 それから、行政の余分な徴収コストを省くということでそうしているわけでございます けれども、さまざな声を受けとめまして、申出によって普通徴収ができる道を開いたと ころでございます。  具体的には、そこの(1)、(2)でございます。(1)は、国保の保険料をこれまで確実に納め ていただいた方が口座振替で納付する場合。それから、もう1点目は、年金収入が 180 万円未満の方につきましては、これまで世帯主、あるいは配偶者の方が代わりに保険料 を払っていた方などでございますので、引き続き口座振替で納めることができるように するというふうなことでございます。  次の5ぺージでございます。3点目は、診療報酬の取扱いでございまして、終末期の 相談支援料につきましては、当面凍結することを含めて、中医協で議論して必要な措置 をとる。そして検証する。  それから、4点目でございます。制度についての広域連合、市区町村が果たすべき役 割と責任分担を明確に規定をする。そして、一層の広報活動を行い、また、特に保険料 に関する相談対応については、市区町村の役割を明確にするということなどが掲げられ たところでございます。  それから、その下でございます。今後、与党において更に検討すべき課題ということ で、4点掲げられております。保険料軽減判定を個人単位で行なうといったようなこと。 それから、2番目が年金からの徴収の対象要件の問題など。それから、3点目が70歳か ら74歳の医療費自己負担増。それから、被用者保険の被扶養者の保険料についての21 年4月以降の取扱いについて引き続き検討するということ。それから、4点目が都道府 県の関与のあり方についての検討というふうなことでございます。  次の6ぺージでございますが、この6月12日の取りまとめにつきましての今日まで の取組状況を全体として整理したものでございます。  まず、保険料の軽減につきましては、各広域連合で条例改正を行い、また、保険料額 の決定通知書の発送というものも終えているところでございます。  また、普通徴収の対象者の拡大につきましては、改正政令の公布を行い、そして8月 25日までに市町村におきまして10月分の特別聴取についての中止依頼という作業も 完了しているところでございます。  それから、3点目の終末期相談支援料等につきましては、中医協に諮問・答申を行な って、7月1日から算定を凍結する。そして、高齢者診療料とともに、中医協で検証作 業に着手をしたところでございます。  また、4点目の広域連合と市区町村の役割と責任分担につきましては、7月25日に 市区町村の事務として、広報・相談に関する事務というものを明記した政令を公布をさ せていただいております。施行通知におきましては、改めて地域ごとに住民に対する説 明会というものをきめ細かく行なっていただくようにというふうな依頼もさせていただ いているところでございます。  次に、13ぺージをお開きいただきたいと思います。ただいまの与党の取りまとめの中 の今後の検討課題とされているものにつきましての検討状況でございます。  まず1番目の点でございますけれども、右側に検討状況というものを書いております。 2つ目の丸といたしまして、75歳到達月の患者負担の限度額が2倍となることへの対応 という点。それから、3つ目の丸におきまして、窓口負担が1割から3割負担となる方 への対応という、これらの2点につきましては、いずれも21年の1月から対応を行い、 施行したいということで考えております。  具体的には、21ぺージをお開きいただきたいと思います。まず、75歳到達時期の関 係でございますけれども、これまでの老人保健制度ですと、75歳を迎えた翌月から老人 保健制度に加入するということであったわけでございますけれども、この長寿医療制度 につきましては、その誕生日を迎えたときから被保険者になるということでございます ので、結果として、それまで加入していた医療保険で自己負担限度額まで負担する。そ して、長寿医療制度でも自己負担限度額まで負担するということで、その月には負担が 2倍となるということが生じ得るわけでございます。  そこで、次の22ぺージでございますけれども、政令改正を行いまして、今度は75歳 到達時期の特例というものを創設をしたいということでございます。誕生前と誕生後の 自己負担限度額をそれぞれ本来額の2分の1に設定をいたします。システム改修に要す る期間等も考慮しまして、21年の1月から各保険者、そして医療機関それぞれの御協力 をいただきながらスタートしたいということで考えているところでございます。  なお、与党の御指摘もありまして、20年の4月以降につきましても、同様の取扱いを することについて更に具体的に詰めていきたいということで考えております。  それから、23ぺージがもう1点の窓口負担の問題でございます。長寿医療制度の被保 険者の一部負担割合は1割でございますが、現役世代と同様の負担能力を有する方につ きましては3割ということでございます。この基準でございますけれども、(1)にござい ますように、世帯内の課税所得の額が 145万円以上の被保険者が1人でもいる。そして、 (2)にありますように、世帯に属する被保険者全員の収入の額が、複数世帯であれば 520 万円以上、単身世帯であれば 383万円以上、こういった要件の場合に3割負担というこ とになるわけでございます。したがって、例えばこれまでおじいさんとおばあさん2人 世帯で国保に加入していたというときには 520万円以上かどうかで見ていたわけであ りますけれども、それが長寿医療ができたことによりまして、それぞれで判定する。そ うすると、おじいさん1人で単身世帯の 383万円以上に当てはまるかどうかというとこ ろで3割負担になってしまうというふうなケースが一部に出てきているということでご ざいます。  25ぺージを御覧いただければと思います。横軸が夫婦の収入合算が 520万円以上か 未満か、縦軸が夫の収入が 383万円以上か未満かということで4つに整理できるわけで ございますが、左上のケースがただいま申し上げたようなケースでございまして、夫の 負担が1割から3割になるということでございます。一方で、右下にありますように、 3割から1割に負担が軽くなるというケースも当然ながらあるわけでございますけれど も、やはり世帯の状況、収入が変わらない、制度が変わったというだけで3割に上がる ということについては、やはり元に戻すべきではないかということで、この3割の負担 につきましては1割負担のままということにしたいということで考えております。  また、25ぺージは、一番上にございますように、夫が75歳以上で妻が70〜74歳のケ ース。次の26ぺージにつきましては、夫が70〜74歳で年下のケースでございます。こ ちらの場合には、3割になる夫は国保あるいは健保の被保険者ということになるわけで ございますけれども、これも同様に1割の負担とするというふうなことで政令改正を行 ないたいということで考えております。  また13ぺージにお戻りをいただきますして、(3)でございます。70歳から74歳の 自己負担増、1割から2割に引き上げるところを1割のまま凍結にしていること。 それ から、被用者保険の被扶養者の保険料負担が、今年度の残り半年、9割軽減になるわけ でございますけれども、これらの措置につきましては、21年度も継続して実施をすると いうことで考えているところでございます。  これにつきましては、まず14ぺージに、7月17日、与党のプロジェクトチームにお きまして、第2段落の後半でございますけれども、21年度も実施が必要であるとの認識 ということでまとめられたところでございます。  これを受けまして、15ぺージにありますように、8月29日の経済対策で、下の2つ でございます。凍結の継続、負担軽減の継続というものを盛り込んだところでございま す。  また、16ぺージ、改めて9月9日の与党のPTでございますけれども、1の(1)に ございますように、22年3月までの1年間継続する。なお、22年度以降の取扱いについ ては引き続き検討するということにされたわけでございます。  17ぺージ、18ぺージ目には、その関連の資料を添付をさせていただいております。  最後に、19ぺージでございます。長寿医療制度に関する今後の動きでございますが、 中ほどにございますように、10月15日の年金からの支払いということで、政治的にも 難しい時期と重なってくるわけでございますけれども、新たに4点のことが始まります。 1点は、被扶養者の方、9割軽減をされている方でございます。平均しますと、1月当 たり約 350円の保険料でございますけれども、約 200万人の方からの徴収が開始される。 それから、一部未実施の自治体がございました。そこでの年金からの支払いが開始をさ れる。それから3点目は、被用者保険の被保険者本人の年金からの支払いが開始される ということでございます。この被保険者本人につきましては、既に7月ごろから普通徴 収が開始をされているわけでございますけれども、年金からの支払いというものが10 月から始まるということでございます。また、国保での年金からの支払いというものが 約 300万人でございますけれども、開始されるということでございます。  現在、私どもはこれに向けまして政府広報を集中的に行なう。それから、各広域連合、 市町村でも広報誌などで周知をしていただく。あるいは、被保険者の方に個別に御連絡 をするというふうな取組みも行なっていただいているところでございますけれども、そ うした中で、とりわけ私どもが各市町村に今お願いをしておりますのは、改めてもう一 度、各小学校区単位など、きめ細かな単位で住民の方への制度の趣旨なり改善策の中身、 それから10月の問題につきまして丁寧に御説明いただけないかということを今、各市町 村の方にお願いをさせていただいているということでございます。そのためのさまざま な説明の資材というものも各市町村にお渡しをして、これから市町村ともども改めて10 月に向けて丁寧な対応というものを進めていきたいということで考えているところでご ざいます。  以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。ただいまの説明で御質問、御意見を伺うとこ ろでございますが、その前に、今年の5月末に各保険者を代表して、河内山委員、対馬 委員、それから山本委員の代理として近藤全国町村会副会長のお3方で、官房長官、厚 生労働大臣に対しまして、長寿医療制度の根幹は維持すべきであること等について直接 申入れをされたということでございます。河内山委員から、現在の制度の運営状況等に ついて御発言があれば承りたいと存じます。 ○河内山委員 それでは、ちょっとお時間をいただきまして、若干お話を申し上げたい と思います。  平成15年からずっと高齢者医療制度について議論を進めておりましたので、そうい う立場の方々は今回の制度改革というものの意味合いなり、あるいは、これ以外の道は なかなかないだろうということは大方理解をいただいた、あるいは理解をした上で制度 がスタートしたというのが我々の認識でございましたけれども、やはりそういう本当の ステイクホルダーというか、利害関係者は実は75歳以上の被保険者であったり、あるい は、その同居される御家族であったりということでございましたので、4月の制度スタ ート時点では、かなりのメディアの報道も相まって、市町村の窓口、あるいは広域連合 には、問い合わせというよりも、どちらかといえば御批判が相次ぎまして、大変な状況 であったことは間違いございません。加えまして、今、室長からお話がありましたよう に、これから先の特例措置、あるいは例外措置、あるいは激変緩和措置等々、更には税 法の控除の制度が該当するか否かという、こういうことによりまして非常に難しいとい いますか、一言ではなかなか説明し切れない制度にもなっておりますので、トータルで 言いますと、今なお、その細かな点までについては、最後にお話がありましたように、 きめ細かに今後も説明を尽くしていくことは引き続き重要だというふうに思っておりま す。  しかしながら、制度のスタート時に発生をいたしましたような、保険証の未達、ある いは届いているけれども廃棄をされたというような問題、それから保険料の賦課決定に ついてのシステム上の不具合によってミスが生じたというような問題、更には、特別徴 収時点で年金からの金額が不正確であったというような問題、そういう事務上、あるい はシステム上の問題は、その当時でもほとんど生じなかったわけですけれども、一部報 道されたぐらいで済んだわけですが、現時点ではほとんどなくなったという意味では、 制度の運営の根幹に当たるようなシステムの問題、あるいは保険料を実際負担をしてお られる方々からの問い合わせ、あるいは疑問というのは、ほとんど今、市町村の窓口、 あるいは広域連合にはなくなりました。もちろん、今なお制度そのものに対して反対と か、あるいは、さまざまな政治的な意味合いもあって、物事の根幹に関わることについ ての御批判はございますが、制度そのものの運営については非常に混乱もなくなってい るというふうに思っているところでございます。  これは、介護保険制度のスタートのときにも感じましたけれども、最終的には、国全 体で新たな制度をつくりましたときには、 基礎自治体は、システムの問題も含めまして、 本当に可能な限り努力をしているということのあらわれだと思いますが、それにしまし ても、システムを動かすというのは本当に大変なことだということがわかりましたので、 私も直接担当している者とか、あるいは全国の自治体のシステムを実際につくっていく ようなシステムのベンダーの方々ともよくお話することもありますが、今後の例外措置 とか特例措置については、準備が間に合うように、早め早めに決定をして、早め早めに 準備ができるようにしなければ、結果的には被保険者に迷惑をかけることになるという ふうに考えております。  繰り返しになるようでございますが、もとの老健制度、それから老健制度を前提とし た国保の運営というのは破綻に瀕しているような状況でありましたので、何らかの改革 というか、今行なっている改革以外にはないだろうというふうには思いますけれども、 なお一層きめ細かな対策、対応が必要な部分については、これからも、政府・与党で合 意をされた内容もございますが、また、現場からもいろいろな意見を申し上げたいと思 います。  それから1点だけ、今なお課題となっておりますのは、やはり運営主体として新たに 広域連合で運営をしておりまして、これはやはり広域連合が受け持つべきなのか、ある いは市町村が受け持つべきなのかという事務手続上もちょっと空白域が生じる可能性が ありますし、広域連合というのは普通の自治体ではありませんので、どうしても最終的 な責任の所在みたいなところで言うと不明確な点がございます。これは、政府・与党で 6月12日に出されましたように、今後の課題として、都道府県単位で実行しております ので、都道府県の関与のあり様については知事会の方々とも十分議論した上で、国民の ためになるような制度はいかにあるべきかということについて、引き続き議論すべきだ ということを最後に申し上げて、概ね順調になったというか、安定期に入ったというこ とを結論的には申し上げたいと思います。  以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、先ほどの事務局からの報告等に関 する質問、意見等を御自由におっしゃっていただければと思います。どなたからでも結 構でございます。どうぞ。 ○対馬委員 メディア等々では、今お話もありましたとおり、後期高齢者を中心に、高 齢者だけが本当に大変だという話がずいぶん出てきたのですけれども、後ほどまた議題 の中にありますけれども、若年世代の負担も非常に増えているんですね。 私どもで言い ますと6兆円の財政規模ですけれども、 6,300億円の赤字。これは20年度ですけれど も。そういうような状況ですから、やはり負担の押しつけでありますとか、元に戻せと いうことではなくて、いかにして公明性を確保して、透明でわかりやすい制度というこ とが重要だろうというふうに思いますので、若年、高年、一緒に制度を支えていくとい うことが非常に大事だろうというふうに思います。 ○岩本委員 1点、まず細かい点ですけれども、月の途中で長寿医療制度に移った方の 自己負担限度額が高くなるという話で、こちらの方の制度改革案では4万 4,000円を超 えないような形になっているんですけれども、ただ、これは誕生日によってずいぶん違 いが生じるというか、例えば月初めに生まれた方、あるいは月の終わりの方に生まれた 方というのは、どちらかの制度にいる期間の方が長くなりますので、この方の自己負担 限度額というのは2万 2,000円にかなり近くなるだろうと。月の半ばで生まれた方は半 々いるわけなので、月に満遍なく医療費を使っている場合は、4万 4,000円が自己負担 限度額になる、そういう可能性があるわけですね。4万 4,000円は超えないんですけれ ども、誕生日によって不公平が生じるという制度設計になっているので、長寿医療制度 がこうやって当初からいろいろと叩かれているというか、メディアでも言われているん ですけれども、もともとの問題点を直したけれども、こういうところが出たときにどう いう反応がくるのかというところはちゃんと考えておいた方がいいように思います。ス ッキリするのであれば、何日が誕生日であっても、自己負担限度額が4万 4,000円にな るように本当は制度設計すべきだろうと思います。  そのためには、この2つにまたがる制度の間で自己負担の調整ということを本当はし なければいけないということで、それは大変ですとか、できませんとか言うかもしれま せんけれども、それは被保険者から見れば関係ない話です。公平な制度で、スッキリす る制度であるのが望ましいわけなので、その裏の事情というのは君たちが考えなさいと、 そういう話になると思いますので、本当にこのままでいいのでしょうかというのがちょ っと疑問なので御指摘しておきたいと思います。  それから、4月に入ってこの制度についてずいぶん批判がありまして、私も部会の方 でずっと制度設計の議論に関わってきた者として非常に後味の悪いものがありましたの で少し申し上げたい。苦言のようなことになると思うのですけれども、非常に意識のギ ャップが生じているなという気がいたします。これは厚生労働省の考えることと、それ から高齢者の思っていることにずいぶんギャップがあるというふうに思います。高齢者 から見た場合、医療保険というのは、保険料を払って、それに伴うサービスを受け取る という公共サービスの一種であるわけなので、その裏の事情というのは高齢者の皆さん には関係がない部分であって、ここの医療保険部会の場で我々は真剣に制度を維持可能 にするためにいろいろと議論するといいますか、裏の事情を理解した上で議論するとい うのは必要ですけれども、それをそのまま高齢者にぶつけてしまってはいけないのでは ないかという気がいたします。  4月に発足した高齢者医療制度の説明に関しましても、そういう財政の面が非常に表 に出てきてしまったような気がいたします。ですから、そういうところに非常に意識の ギャップがある。特に75歳から切り離されたということで、例えば夫婦でもそこで切り 離されたと。では、なぜ切り離されたんだ。それによって何のメリットがあるんだとい うふうに見ると、結局、メリットが見えていなかったように思います。75歳以上の方に 関して、非常にきめ細かいサービスをやりますとか、そういうことが表に出れば、そう いった独立のものをつくるというのがあったと思うのですけれども、どうもそれでもな いようで、ただ財政の話だけが先行に立っていたという気がしますので、そもそも今日 の話でも、個人単位にしたことによって最後の現役並み負担のところがちょっと齟齬が 生じたというところなんですけれども、75歳で区切るという意味、どうして区切らなけ ればいけないのかということをちゃんとお答えできているのかどうか。高齢者の皆さん に対してお答えできているのかということが相変わらず懸案として残っているのではな いかと思います。私個人的には、独立した制度に設計しなくても、財政面ではいろいろ 工夫できるのではないかと思っている立場ですので、やはりどうしても気になります。  あと、これから住民向けの説明をするということですけれども、保険料の軽減、これ はどうやってそもそも財源を賄っているかというと、補正予算でやっているわけですね。 当初予算はシーリングがかかっているわけですから、どこからもお金が出ない。それで、 補正の方で財源をつけてきているわけなので、21年度も基本的にそういう形で、これか ら編成されるのでしょうけれども、そちらの方で財源をつけざるを得ないのではないか と思いますが、それも財政の法律上は非常に問題がありまして、来年度の経費というの は来年度の予算で基本的に計上しなければいけないのであって、今年度の予算で計上す るべきものではないわけですね。そういう形でやっているわけですから、こういう軽減 というのは、ある意味で一時的な策である。やがて消えるかもしれないということも本 当はしっかり説明をして、高齢者の皆さんと財政に関しての考え方を普及していかなけ ればいけないんじゃないかというふうに思います。ただ、ここに説明されているような 形で、こんな階段みたいになって、いろいろな形で軽減がありまして、数字で見ると軽 減になる世帯の割合が増えましたということだけでは、問題の本質というのは伝わって いないまま、高齢者と政策当局の間で認識のギャップがあるまま続いていくのではない か、そういう懸念を抱いております。2点目は意見ということです。 ○吉岡室長 1点目の75歳到達時期の自己負担限度額の問題でございますけれども、こ の自己負担限度額が2倍になるということをどうやって回避するかという方法につきま しては、岩本委員がおっしゃいましたように、これはいろいろな方策があろうかという ふうに思っております。 ただ、保険者同士の金のやりとりが生じるような調整方式を用 いますと、それは法律改正が必要になってくるということにもなるわけでございます。 また、保険者の事務の負担も増えてくるという問題もございまして、いずれにしても、 これは制度に起因しての問題であり、与党からも一刻も早くこれについては対応するよ うにというふうな御指示もございました。そして、わかりやすい形での事務を各保険者 にやっていただく必要があるだろうということで、一番シンプルなスタイルといたしま しては、半分にするというふうなスタイルをとったわけでございます。各保険者の事務 の負担も生じない、そして調整も生じないということでございます。  その結果としまして、委員がおっしゃいますように、不公平と申しますか、例えば月 の前半だけで入院されたような方とか、そういう方は今までよりも給付額が増えるとい う意味での不公平が生じてくるわけでございますけれども、これは、そもそもが自己負 担限度額が増えるという問題につきましては、これで回避することができるのではない かというふうに考えているわけでございます。  それから、いろいろな軽減措置についての財源の御指摘がございました。70〜74歳の 自己負担増の凍結の問題、それから被扶養者の9割軽減の延長の問題、これにつきまし ては、私ども、間もなく行なわれます補正予算で対応したいということで考えていると ころでございます。補正予算につきましては、私どもも予算措置をしてということでご ざいますけれども、要は、最終的に各広域連合での条例改正でありますとか、そういう 準備もしていただく必要がありますので、本予算成立を待ってということではなかなか そういう準備に着手できないということがございます。被保険者の方にできるだけ早く 周知をするということも含めまして、まず補正予算での対応というものも考えていると ころでございます。全体として、委員おっしゃいますように、まだまだ十分国民の皆さ ん方に理解していただけていない部分があろうかと思いますので、そこはまた引き続き 各市町村にもお願いをしながら、私どももできることを精いっぱいやらせていただきた いというふうに考えているところでございます。 ○糠谷部会長 ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。 ○岩月委員 今、保険徴収の窓口の方の御負担ですとか、いろいろな負担の問題が出て まいりましたけれども、実は、医療機関や私ども薬局も、一部負担が変わるということ は、要するに、我々は今、全部電子的な媒体を使ってやっていますので、こういったも のの改修に費用がかかる。これは実は誰にもみていただけないわけでありまして、制度 の不具合を変更するのは、これ自体はもちろん悪いことではないわけですし、こういっ たところで議論すべきことでありますけれども、その結果、例えば年に3回も4回もこ ういったことが起きてしまうと、そのたびに改修のための費用の負担が生じるというこ とはぜひここの場でも御認識をいただきたいと思いまして、あえて発言をさせていただ きました。 ○糠谷部会長 逢見委員、どうぞ。 ○逢見委員 この制度そのものは、これまでの老健制度のいろいろな問題点が出て、そ れを見直すということから始まったわけですが、その基本には、 わかりやすい負担の仕 組み、給付の仕組み、それが国民にとっても納得して支払える保険制度ということでス タートしたと思うのですが、実際には老健制度当時のものよりももっと複雑になってし まったんじゃないかという印象は否めません。特に負担の軽減策としてるる説明された 中で、経過的措置であるとか、あるいは一時的な凍結であるとかというものあって、結 局、これは今後まだ変わる可能性もあるというところで、非常に複雑なところに加えて、 まだ制度の経過的部分が続いているということであって、それで果たしてみんなが納得 できるかどうかということがあると思います。  結局、この制度がなぜいろいろな批判を浴びたかというのは、私はやはり75歳とい うところで一律に線を引いてしまって、世帯の中でおじいさんとおばあさんがいるとき に、片方は後期高齢者で、片方は前期だとか、そういうことによって負担の仕組みや何 かも違ってしまう。窓口の対応も違ってしまうということがあって、同じ世帯で、同じ 生計で暮していながら、どうして仕組みが違うのかという、ここにたぶん問題があって、 こういうところが見直しされないと、今後も経過措置や一時的凍結でつないでいる問題 についても、きちんとした納得が得られないのではないかという感じがいたします。今 回は今回として、いろいろな内外の批判等もあって、内容の一部修正ということになっ たと思いますが、しかし、これだけで問題が解決するということではないということは 申し上げておきたいと思います。 ○糠谷部会長 ほかに。それでは、多田委員、どうぞ。 ○多田委員 1つだけお願いでありますけれども、高齢者担当医が実際にどんなふうに 動いているだろうか、反響はどうだろうかと。少し実態をぜひフォローしていただいて、 そして然るべきときに一回整理して御報告いただければありがたいと思いますので、よ ろしくお願いいたします。 ○佐藤課長 担当医の問題につきましては、現在、中医協の中に検証部会を設けること としておりまして、この中で実績も含めて検証し、検討していくこととしておりまして、 今日この時点で御報告するような内容は現時点ではございません。 ○糠谷部会長 大体よろしゅうございますでしょうか。  それでは、もしよろしければ、保険局長から長寿医療制度の定着といいますか、特に 広報の問題について発言を求められておりますので、どうぞ。 ○水田局長 長寿医療制度につきまして、いろいろ御意見を賜ったわけでございますけ れども、私どもとしては、これはやはり国民皆保険制度を維持していく上で必要なもの として導入されたものでございますので、ぜひその定着に向けましてお願いをさせてい ただきたいと思います。  先ほど室長からありましたように、この10月にいろいろ大変大きな動きがあるわけ であります。被用者保険の被扶養者の方から初めて保険料をいただくことでありますと か、それから、65〜74歳の国民健康保険の世帯主の方から年金からお支払いいただくと いうこともございます。これも説明がありましたとおり、市町村で地域に密着した説明 会を開催していただくというようなことなどを含めまして、地方自治体と連携して、私 どももきめ細かな広報のお願いをしているわけでありますけれども、合わせまして、先 ほど言いました長寿医療制度、これは長い経緯を踏まえて、完全なものとは、不具合も いろいろあるわけでありますけれども、これはこれとして発足させようという議論を経 てきたわけでございます。こうした経緯を御存じの委員の皆様方におかれましては、ぜ ひ制度の趣旨、あるいはメリットも含めまして、よろしければ関係の方々に御説明の御 協力をお願いしたいと思っております。私どもも、いろいろリーフレット、あるいはD VD、こういったものを用意しておりますので、御入用でございましたら対応させてい ただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、本部会の委員の皆様方におかれま しては、改めてこの制度の定着に向けて御協力を賜りますようにお願いを申し上げます。  それでは、次に「その他」の事項として、事務局から御報告をお願いいたします。 ○田河課長 保険課長でございます。資料3の「健康保険組合及び政管健保の状況につ いて」と題した資料を御覧ください。  1枚おめくりください。まず、健康保険組合の動向でございます。枠囲みに書いてあ りますように、医療制度改正がなければ年率3%程度伸びる中で、保険料収入の基礎と なる報酬については横ばい状況でございます。そういう意味では、健康保険組合だけで なく、医療保険制度全体を巡る状況は非常に厳しいわけでございますが、健康保険組合 につきましても、保険料率が政管健保よりも高いところ、平成19年度末で全健康保険組 合の約6分の1、 253組合存在します。また、医療費の自然増や制度改正等に伴い、平 成20年度は健康保険組合全体で19年度と比較して拠出金等が伸びておりまして、健康 保険組合を取り巻く状況は厳しくなってきております。  しかしながら、健康保険組合は、保険料率が政管健保と同程度となったからといいま しても、それだけではございません。例えば、窓口負担に対する上乗せの給付、あるい は人間ドック等の実施、あるいは労使といいますか、組合会で福利厚生が決められる、 そういう自主性。あるいは、保険料を労使折半でなく、事業主負担を多くすることが可 能などというふうな特色もございます。そういう意味では、直ちに解散につながるとい うものでもないというふうに考えております。  まず、客観的な状況でございますが、平成20年度の動向、解散している組合の報道 もございますが、9月1日での解散数13組合。これは西濃、京樽を含んだ数でございま すが、過去5年間見てみますと、平成15年、これは9月1日現在、大体春先に解散する ところが多いので、9月1日までの解散数だけを見てみますと28組合、16年が21、17 年が17、 18年が6、19年が11。そういう意味では、むしろ15年、16年の方が多いよ うな状況でございました。  あと、今後の解散予定の状況でございますが、上記のほか、21年4月までに解散した いと相談があったと私どもが把握している組合が4組合ほどございますが、これらにつ いては、非常に小規模であったり、あるいは平成19年度以前から財政的に窮迫していた ようなものでございます。  そして、既に報道等もされておりますが、西濃運輸、あるいは京樽の解散の状況でご ざいます。1枚おめくりください。最初の丸ですが、両組合とも、そもそも保険料率が 政管健保と同じ、あるいは非常に近かったために、健保組合を維持するメリットが薄れ てきたというものがございます。それに加えまして、前期高齢者についての従来のサラ リーマンOBのみの財政調整というものから、対象全体の拡大という制度改正により、 特に前期高齢者の加入率が低いために負担が増えるようになったという状況もございま す。※の2番にもちょっと出ておりますが、前期高齢者の加入率、西濃は1.11%、京樽 1.00%。健保組合全体が2.44%、こういう状況でもございました。  あと、西濃健保にあっては、同グループ内で健康保険組合に加入している会社と政管 健保に加入している会社があるが、もともと福利厚生上、不公平の問題もあったという ふうに聞いております。また、京樽健保にございましては、会社更生手続、これは14 年度までで終わったわけでございますが、その事業再構築に伴い、被保険者数が減少し ていた、そういう面もございます。  1枚おめくりいただきまして、これは医療保険制度における拠出額の状況、平成19 年度と20年度の増減額をお示ししたものでございますが、それを特にグラフ化したもの が、もう1枚おめくりくださいませ。高齢者医療に係る健保組合の拠出金等の増加とそ の要因でございます。19年度、2兆3,300億円であったものが、2兆 7,400億円。そう いう面では 4,100億円増加いたしております。その増えた要因は右側に示しております。 医療給付費等の自然増加的なものが 2,100億円、制度改正分が 1,800億円、そして精算 額の増が 200億円、このような状況でございます。  そして、今までは健康保険組合の状況でございましたが、続きまして政管健保の状況、 5ぺージ目をおあけください。最初の丸にお示ししているように、これは健康保険組合 と同様でございますが、医療保険制度をめぐる状況というのは全体として非常に厳しく なっております。これに対応するため、我々は被用者自己負担割合の3割化、あるいは 診療報酬のマイナス改定など、制度改革を実施してきたところでございますが、3つ目 の丸でございますが、平成19年度以降、政管健保は単年度収支が赤字となり、積立金が 底を尽きつつある状況でございます。本年10月に、社会保険庁から、従来、政管健保と 言っていたものが全国健保協会に移管され、移管後1年以内に財政的に均衡のとれた都 道府県別料率に以降する予定でございますが、その際、保険料率というのは現行820/00で ございますが、引上げは避け難いような状況になるわけでございます。  下にその状況をお示ししておりますが、1人当たりの標準報酬というのはなかなか伸 びておりませんが、給付費は最近伸びている、そういうような状況でございます。  そして、右側の図を見ていただくと、積立金がどんどん減っている状況が見られます。  6ぺージ目、もう1枚おめくりくださいませ。協会健保の積立金残高等の図でござい ます。例えば、昔は積立金もございましたが、14年度あたりはほとんど底を尽きつつご ざいます。そのときに、総報酬制の導入という形を行いました。その後、積立金はまた 増える傾向にございましたが、18年度をピークにまた減少してきている、こういうよう な状況が見受けられるわけでございます。  そして、7ぺージ目をおあけくださいませ。これは政府管掌健康保険及び全国健康保 険協会管掌健康保険の単年度収支のイメージをお示ししたものでございます。一番左側 の19年度決算ベースを見ますと、収入・支出、そしてその下に単年度収支差の欄がござ います。そして、事業運営安定資金残高、19年度の決算ベースでは 3,690億円残高がご ざいましたが、20年度の状況を見てみますと、大体、単年度収支差が▲ 1,900億円。年 度末の資金残高が 1,800億円程度というふうに見込まれます。  そして、21年度の姿を推計してみますと、支出は当然見込まれるわけでございますが、 この支出を賄うのに必要な保険料収入、一番上でございますが、大体6兆 3,900億円か ら6兆 5,700億円程度。これは何かといいますと、20年度末の事業運営安定資金残高1, 800億円をどのように使うのかによって必要な保険料収入が変わってくるため、このよ うに幅でお示ししているわけでございます。これは、正式な保険料収入は全国健康保険 協会が成立後に確定していくわけでございます。また、推計の前提としましたこういう 支出等に関しましても、最新データが明らかになってくると、また変動も予想されるわ けでございますが、この保険料収入6兆 3,900億円。これは仮に機械的に試算しますと、 総報酬が伸びないとするならば、保険料率に換算しますと、10/00程度、6兆5,700億円、 資金残高 1,800億円をそのまま維持する場合の保険料収入でございますが、この場合の 6兆 5,700億円。これは総報酬が伸びないとするならば、やはり30/00程度の引上げが必 要になるようなものでございます。このように、政管健保を巡る財政状況もなかなか厳 しい状況にございます。  8ぺージは、先ほど御説明したような全体的な状況でございますけれども、健康保険 組合の標準報酬と法定給付費がどのようになってきているのか。  そして、9ぺージ目は政管健保でございます。いずれにしましても、給付は伸びるの に対して、それを支える報酬の面というのはなかなか伸びない。そういう面で厳しい全 体的な状況にあるということがわかるわけでございます。  以上でございます。 ○糠谷部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの報告、資料に関しまし て、御質問等ございますれば、御自由に御発言をいただければと思います。どうぞ。 ○藤原委員 ただいまの説明では、健保組合の解散というのは一応想定内の範囲という ふうに聞こえたのですけれども、ただ、この数字の比較だけで見ると、確かに平成19 年は特別増えたわけではないというふうな受取り方もあるのですが、現時点と平成15 年と比べて、これは解散の重みというのはかなり違うと思うんでけれども、数だけの評 価ではないというようにも思えるのですが、その辺は全部織り込み済みと厚労省は考え られているのでしょうか。 ○田河課長 ここは客観的な状況をお示ししたところでございます。非常に新聞等でも 報道されておりますけれども、確かに解散は大きなことではございますが、実は平成15 年、あるいは16年当時も、むしろ今よりも多い解散があったわけでございます。ただ、 我々として、ここにもお示ししているように、19年度等と比較して、特に20年度、健 康保険組合を取り巻く状況というのは厳しくなってきている、そういう認識も当然持っ ております。 ○藤原委員 それで、今回の制度で健保の負担金額は加入者の収入に関係なく、人数で 算出されるような方向になったと思うのですけれども、そういう形にしたときに、所得 水準が高い一握りの大企業がかなりメリットがあって、小売業や所得水準の低い地方企 業が結果的に狙いうちになって雪崩をうって健保解散ということにならないか、そうい うことの配慮というか、今、格差というのはずいぶん拡大してきておりますけれども、 その辺について御見解を伺いたい。  それから、こういうふうに解散していくということは、将来的に制度の一元化の布石 につながるということも考えられるのですが、制度の一元化についても想定されている のかどうか。 ○神田課長 まず第1点目でございますけれども、財政の影響等について、どのような 影響があるのかということでございますけれども、全般的に言いますと、これは被用者 保険も国民健康保険も含めてでございますけれども、従来の老人保健制度というのは拠 出金でかかった給付費の半分を見ておりましたけれども、新しい高齢者医療制度では5 対4対1ということで、若い方が加入している医療保険からの支援金は4割というふう になりますが、一般的には、その部分の拠出金は下がる傾向にございます。ただ、一方 で、前期高齢者について財政調整が入りました。従来の財政調整と申しますのは、被用 者年金に20年加入しておられた方々について、個々に加入している方々の医療費を被用 者保険で負担していただくという仕組みであったわけですが、これが前期高齢者 1,400 万人全体に拡大されましたので、一般的には前期高齢者の部分では被用者保険は負担が 増えているという状況でございます。  特に前期高齢者のところで、今回、解散の事例にございますように、前期高齢者の加 入率が、特に西濃運輸も京樽も健保組合の平均の半分以下というような非常に低い加入 率のところになりますと、前期高齢者の支援の部分がより持ち出しが大きくなるという 傾向がございます。全般的な影響としては、今申し上げたような影響になろうかと思っ ております。  それから、一元化についてのお話でございますけれども、これはまさに先ほどの長寿 医療制度の議論がございますけれども、平成9年以降、まさに医療保険制度全体を一元 化、一本化するという案から、サラリーマンのOBの方だけ、退職者医療制度のような 形で、サラリーマンのOBの方については被用者保険側で費用負担をするという、俗に 突き抜け方式と言っておりますけれども、そういうもの。それから、リスク構造調整と いって、各医療保険者がそのまま存在しながら、年齢構成、あるいは所得などの調整を するというリスク構造調整ということと、今回皆さんで実施することに落ち着いた長寿 医療制度のように、独立型の高齢者医療制度を設けるという4つの案でいろいろ御議論 いただいた結果として、今日、この制度ができたというふうに理解しております。  一元化ということについても、一本化というふうに受けとめるのか、あるいは一元化 というのを給付の平等・負担の公平というような形で受け取るのかということによって、 その実施方法にもいろいろなやり方があるのではないかというふうに考えております。 ただ、単純な一本化ということについては、ここに至るまでの議論といたしますと、例 えば単純に地域保険に一元化するということになりますと、これまで例えば被用者保険 サイドで健康保険組合を構成して保険料の収納であるとか、健康づくりですとか、医療 費適正化などに御努力いただいてきた、そういうものをどのように考えるかということ ですとか、あるいは地域保険に一元化するというふうになった場合、被用者の方々の事 業主負担をどのように見るのかということですとか、一元化して保険者機能が発揮され るのだろうかといういろいろな議論がございまして、なかなかすぐにはそこに行き着く のは難しいのではないかという議論の経過があったものというふうに認識をいたしてお ります。 ○糠谷部会長 よろしゅうございますか。それでは、対馬委員、どうぞ。 ○対馬委員 田河課長の方からは、14年、15年の方が数が多いと言われましたけれども、 組合を解散するかどうかというのはいろいろな要素があるので一概に言えませんけれど も、当時の解散というのは、老健の拠出金がどんどん増えていって、14年度の決算が約 4,000億円の赤字だったんです。そういう中においてのやむを得ざる決断ということだ ったというふうに思うんです。今現在どういう状況かといいますと、制度が変わって、 その結果、特に後期のことをよく言われますけれども、前期がすさまじく増えているん ですね。それで、今日の数字にもありましたけれども、健保組合全体では 4,100億円増 えている。そういう中において、さてという状況なので、今足元の数字を見てそれほど でもないということではなくて、私どもも受けとめは極めて深刻であると、こういうふ うに受けとめています。  それで、要望はごく簡単にしますけれども、要望としては、やはり激変緩和等はきっ ちりやっていただきたいということもありますし、それから、前期のところがこういう 状況ですので、何らかの形で前期への財源等に公費投入ということも御検討いただけれ ばありがたいというふうに思いますし、あともう1つ、負担そのものの重さ、大きさだ けじゃなくて、何故にそれだけ負担が増えて、それはどういった根拠のもとに、どうい ったケースでもってなのかと、そこをぜひ早期にはっきりさせていただきたい。今回、 なかなかそこがはっきりしなかったので、非常に保険者、常務理事、事務長がいわゆる 説明責任を果たせないという状況だったんですね。そこはぜひよろしくお願いしたいと いうこと。  あともう1点だけ。政管健保もまさに10月からですけれども、今現在、なかなかは っきりしていないところがあるというふうに思うのですけれども、できるだけ早くに、 どういった形でもってやっていくのか。事業運営、例えば料率などをどう考えていくの か、保険負担をどう考えていくのかといったあたりも開示をしていただければありがた いと思っています。 ○吉岡室長 何点か対馬委員からございました。まず激変緩和の関係でございますけれ ども、 今回の制度改正によりまして、負担が一定以上増加する健康保険組合に対しまし ては、増加に応じた形で一定の助成金を支給するということで、そういう措置を講じる ことにしているところでございます。具体的な内容につきましては、健保連とも十分御 相談しながらやってきたところでございまして、私どもとしましても、引き続き来年度 もこうした措置をしっかりとやっていきたいというふうに考えているところでございま す。またいろいろと御相談させていただきながら、そこは進めていきたいというふうに 思っております。  それから、いろいろな数字の問題がございました。私どもも制度改正が行なわれる中 で、その都度、さまざまな数字のお求めがあり、つくってきたわけでございますけれど も、これから、先ほどもお話がございますように、いかに透明性あるものにしていくか ということが大事だろうと思っておりますので、また各保険者の皆さん方からの求めに 応じて、私どももしっかりと出せる範囲でいろいろな数字なり、状況なりを御説明した いというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。 ○田河課長 あと、政管健保を引き継ぎます全国健康保険協会の運営でございます。9 月3日に設立委員会がございました。そこで予算等、主要な事項も決まったわけでござ いますが、そうした資料は公表もされております。また、その協会の広報、そうしたも のも非常に重要であるというふうに思っておりまして、これまでも政府広報等に努めて まいりましたが、どういう協会なのか、そういうことを広くわかるような形で取り組ん でいきたいというふうに思っております。 ○糠谷部会長 今井参考人、どうぞ。 ○今井参考人 1点、御質問です。新しい全国健康保険協会の収支ということで、今回、 来年度の収支のイメージということでお示しいただいておりますけれども、もう少し長 い目と申しますか、中期的というか、そう先々までということではございませんけれど も、どのような収支状況になるのでしょうか。正確な数字ということではございません けれども、まさにイメージでも結構ですので、その辺をもう少しお話をいただければと 思います。 ○田河課長 私どもは、これは来年度の概算要求の関係で、どのような収支のイメージ になるか。前提となりますので、つくったものでございます。今後、どういうふうな運 営になっていくのか。これは協会自身、これは10月に発足いたします。もともと料率、 あるいは今後の事業運営自身は、協会発足後にまた協会の中で御議論していただく必要 もあるかというふうに思っております。 ○今井参考人 確かに協会でのお話になろうかと思うのですが、先ほど厳しい状況だと いうことをおっしゃっていたので、もう少し何かあるかなと思ったのですけれども。 ○田河課長 最初に御説明しましたように、医療保険制度を取り巻く状況、これは医療 費等は伸びていくわけでございます。そして、それを支える収入の状況、これはなかな か現状としては伸びていない。そうした状況というのは今後どうなっていくのか。そこ は将来の見通しにも関わるわけでございますけれども、基本的に厳しい状況ということ は確かな面があろうかというふうにも思っております。 ○神田課長 これは政府管掌健康保険とか、協会健保、健保組合、国保も共通だと思い ますけれども、医療費は特段の改正がなければ3%で伸びていく構造にございます。今 の状況と申しますのは、被用者保険サイドも収入がほとんど伸びない状況ということで ございます。医療費が3%伸びれば、通常は患者負担と公費と保険料しかないわけでご ざいますので、医療費が3%伸びれば、それぞれ3%増えるように分担をしていくとい うのが基本構造になろうかと思いますけれども、仮に報酬が3%で伸びていれば、保険 料率を上げなくても、それなりに収入が確保できていくというのが基本構造かと思って おりますが、今のように収入が伸びないという状況でございますと、どうしても3%伸 びる分の収入を確保しようとすると、保険料率を上げないと必要な収入額は確保できな い。そういう構造的な問題というのを、被用者保険サイドもそうでございますけれども、 国民健康保険の方も一般的には所得は余り上がっておりませんので、そういう構造的な 問題をどの医療保険制度も抱えながら、運営に御苦労いただいているのだろうというふ うに私どもは認識していたしておりますけれども。 ○糠谷部会長 ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。  よろしゅうございますか。それでは、大体予定の時間も近づいてまいりましたので、 特に御意見等ございませんでしたら、これまでとさせていただきたいと思います。  今後の予定でございますが、出産育児一時金制度の問題につきましては、先ほど申し 上げましたようなことでやらせていただくということにいたしまして、部会の今後の開 催については、現時点ではまだ特に予定はございません。未定でございます。必要が生 じました段階で、事務局から御連絡を差し上げるということにさせていただきたいと思 います。  それでは、本日は、長時間大変ありがとうございました。これで散会といたします。                                     (了)                            【照会先】                            保険局総務課企画調査係                                TEL:03(5253)1111                                  (内線3218)