08/09/04 第119回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第119回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成20年9月4日(金)14:00〜 2 場所  厚生労働省共用第8会議室 3 出席者    委員  公益委員 :鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員        使用者代表:市川(隆)委員、平田委員、山崎委員   事務局  太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木主任中央需給調整事業指導官、田中派遣・請負労働企画官、        松原需給調整事業課長補佐、待鳥需給調整事業課長補佐、        鶴谷需給調整事業課長補佐、竹野需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について ○清家部会長 ただいまから、第119回労働力需給制度部会を開催いたします。なお、 本日は労働者代表の古市委員がご欠席です。本日は、労働力需給制度についてご審議い ただきます。  それでは早速、議事に入ります。前回の部会では、「今後の労働者派遣制度の在り方 の論点(たたき台)」について、事務局からご報告をいただき、それについて委員の皆 様方からご質問やご意見をいただいたところです。本日の部会においても前回に引き続 き、皆様方からご意見をいただきたいと思います。ご意見のある方はどうぞご自由にご 発言ください。 ○山崎委員 商工会議所の意見として述べさせていただきます。1の「日雇派遣」です が、派遣労働者の中には本当は正社員を希望している方と、今のままの働き方がよいと する方が、それぞれ存在しております。日雇派遣についても半数近くは、今のままの働 き方がよいという厚生労働省の調査結果が出ているようです。仮に日雇派遣を原則禁止 した場合、学生や主婦などにとって不便になり、それまで従事してきた仕事を失うおそ れが出てきます。そうなった場合、経済活動に与える影響も大きいのではないかと考え ます。  日雇派遣が禁止されますと、影響が出る業務にはさまざまなものがあります。すべて をもれなく列挙することは難しいのですが、今後新しいビジネスモデルも生まれてくる であろうところで、東京をはじめ、全国の商工会議所を通じて聞いたところ、まず26業 務のうち、特に通訳、翻訳、速記、コンピューターソフトの開発・作成・保守、文書の ファイリング、事務器機の操作、インテリアコーディネーター、アナウンサー、観光ガ イド、ビル清掃などが挙がっております。また、26業務以外では理容師、美容師、福祉 ・医療関連業務などといった国家資格を必要とする業務、さらにはイベント関連業務、 引っ越し・運送業、倉庫業、製造業、小売業、サービス業の店員、データ入力処理、一 般情報・災害時等の緊急電話対応、それに関連する事務処理、水産加工業、農業などが 挙がっております。なお、製造業など危険を伴う業務については、派遣元だけでなく、 派遣先の安全教育を徹底すべきであると思います。  日雇派遣を原則禁止しても、ハローワークや民間の職業紹介事業を充実させれば問題 はないという見方があるようです。しかしながら、労働者と企業のマッチングができる という担保がなければ、労働者はこれまで得られた仕事を失い、企業は労働力の確保が できず、仕事ができなくなってしまいます。そういう事態が予想されますが、商工会議 所としては、たたき台の内容や前回の厚生労働省の説明では、こうした懸念がどうして も払拭されない部分があります。  では、派遣制度はどうあるべきか。今回の派遣制度の見直しの背景には、一部の派遣 元による違法行為が大きな問題としてあったと思われます。派遣元、派遣先の悪質な行 為や違法行為の繰返しは厳格に取り締まることを基本に、さらに議論すべきと考えてお ります。正社員や常用型派遣への移行を希望する労働者に対しては、ジョブカード制度 による職業訓練などを活用して、支援を強化すべきと思います。また学生や主婦など、 健康保険の被扶養者、年金受給者については、最低限のセーフティーネットが保障され ており、こうした者については、日雇派遣制度を認めるべきではないでしょうか。また、 日雇雇用保険の加入者についても最低限のセーフティーネットが保障されているので、 日雇雇用保険の加入を促進・徹底する仕組みを構築した上で、日雇派遣を認めてもいい のではないかと思います。  ハローワークや民間の職業紹介事業が、日雇派遣の代わりになるというのであれば、 日雇いを希望する労働者と企業のマッチングを担保すべきです。仮にマッチングが担保 できないようであれば、労使双方に支障が出ると思います。また、全国どの地域でも職 業紹介事業によりマッチングが担保できるならば、日雇派遣の規制を検討するのは吝か ではありませんが、マッチングが担保できる地域とできない地域があるのでは、困った 問題となります。労働者は仕事を確保できず、企業は労働力が確保できず、仕事ができ なくなってしまう懸念もあります。地域経済にも影響が出るのではないかと思われます。 この点についてはどのようなお考えがあるのかお聞きしたいところです。  3の「派遣労働者の待遇の確保」の(3)に、「派遣先に対し、当該措置に必要な情報 の提供等、必要な協力の努力義務を課す」とありますが、過度の協力を求めるべきでは ないと思います。  4の「雇用契約申込義務について」における、期間の定めのない雇用契約の派遣労働 者については、派遣期間制限がある業務でも、義務の対象から外すべきと考えます。  5の「労働力需給制度機能の強化について」ですが、意欲と能力のある労働者に働い ていただくという趣旨から、定年退職者や出産、育児、介護などにより離職した労働者 は、グループ派遣とは別枠とすべきではないかと考えております。以上が商工会議所の 意見です。よろしくお願いいたします。 ○市川(佳)委員 日雇派遣について、少し意見を申し上げたいと思います。今日、こ れだけさまざまな問題が指摘されて、「社会問題である」とまで言われている日雇派遣 という形態は、やはり何とかしなくてはいけないということで、この議論もその要請の 1つとして、ひしひしと感じるわけです。そういう中で、このような働かせ方をズルズル と認めていくのではなく、きちんとした規制が必要であるということを、改めて申し上 げておきたいと思います。  ここの論点を読ませていただくと、「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働 者について、原則労働者派遣を行ってはならない」とあります。例えば派遣労働者と派 遣会社が31日という雇用契約を結んだら、その方がどういうように、どういう所に派遣 されるかというのは、その雇用契約の中でどう決まるかですよね。労働契約だけが31日 あれば、今日はA社に行ってください、明日はB社に行ってくださいというように、スポ ットで働くことができるわけです。つまり、この書きぶりだと日雇派遣は禁止だけれど も、日々派遣は禁止ではないのです。  こうやって日雇で、間接雇用というダブルの不安定さを持っており、しかも二重派遣 のようなことも起こったものが、表面的には日雇禁止というように新聞などでも報道さ れていますが、聞くところによると、そういうようにやれば今までの日々契約もできる ので、構わないという声も聞こえてくるわけです。こういう脱法的な行為が行われない ように、きちんとした規制の方法というのをもっと具体的に考えてみる必要があるので はないかというのが、第1点目の意見です。  もう1つは、2番目の登録型の常用化という所です。再三申し上げている所で、常用型 を期間の定めのないものとして整理すべきという研究会報告の記載があります。しかし 論点を見ると、そういうことがきちんと明確に出てこないわけです。例えば雇用契約申 込義務の所に、「期間の定めのない雇用契約の場合はこれから除外する」と書いてあり ますが、登録型というのはどういうものなのかはっきりと、常用型というのはこの研究 会報告にもあるように、期間の定めのないものというように、そこの整理をまずきちん として、それがはっきりした上でないと、そのほかの雇用契約申込義務にしても、特定 を目的とする行為にしても、そこまで議論が進まないわけです。  まずは登録型、常用型の定義をきちんとすべきです。そうしないと先ほど申し上げた 日雇にしても31日を越える契約の場合、これが登録型なのか常用型なのかというところ がはっきりしてきません。たとえ2カ月の雇用契約でも、常用型は常用型だなどという 屁理屈を言う人もいます。いまの定義ですと、有期契約を繰り返している、期間の定め がないか、それに類するものというのが、業務取扱要領にありますが、抜け道として使 われる可能性があるので、やはりこの在り方の定義をきちんとすべきではないかと思い ます。 ○平田委員 まず、日雇派遣について申し上げます。前回主張させていただいたことと も重なるのですが、改めてというところも含めて申し上げます。昨年の夏にアンケート 調査が実施されているかと思います。「今後、どのような形態で働きたいか」という設 問があって、「現在のままでよい」と答えている者も相当程度いるわけです。日々又は 30日以内というように定義をして、禁止対象とするということについては、現在のまま でよいと考えている者にとっては、就業機会の減少にもつながりかねず、不要な不利益 を被るおそれがあるということは、改めて強調しておきたいと思います。  その上で、研究会報告を改めて読み返しました。日雇派遣について、制度そのものは 否定しないという書きぶりだったと思いますが、今回こういう議論をして、法違反や実 態上問題があって、それを踏まえて政策的観点からの規制強化ということであれば、特 段問題が発生していないと客観的に判断できる派遣労働者も対象に含めてしまうような 規制というのは、過剰な規制なのではないかと思います。特段問題が発生しないと判断 できる客観的な基準の検討とか、危険・有害であると判断される業務への制限というの は、また検討していく必要があるということは、意見として申し上げておきたいと思い ます。  それから、ポジリストについてです。まず26業務のうち、専門的な知識、技術、経験 を必要とする業務については、一定程度日雇派遣という形態で就業者が存在して、表面 上、これらが大きな問題とはなっていないこと、また、今回の日雇派遣規制ですが、緊 急性を要する対策ということを踏まえれば、日雇派遣規制のポジティブリストにおける 専門的業務については、26業務をそのまま適用することが適当ではないかと思っており ます。  その上で、26業務以外について、業務に必要な資格やスキルに着目する考え方がある のでしょうけれど、例えばということで身近なところでいきますと、薬剤師の資格が必 要なドラッグストアや、薬局での業務というのもあるのではないかと思っております。 派遣先の要請によって特定の資格保有者を条件とするケースについては、特定の有資格 者のみに就業の機会が開かれているということですので、労働市場で見てみると、他の 求職者に比べると、優位な位置づけにあると考えることもできると思います。特定の資 格保有者という高度な条件が付されるわけですから、需給調整の難易度が上がるという ことも鑑みれば、これまでどおり職業紹介や労働者派遣といった複数の需給調整システ ムの利用が、労働者の立場に立っても安定した仕事の確保には重要だと思っております。  最後に日雇派遣の所で、たたき台の(3)「職業紹介の充実等必要な措置」について です。職業紹介では就労機会が確保できないケースの発生に備える必要があると考えて おります。日雇雇用保険制度など、セーフティーネットの活用を促進することも、併せ て図る必要があると思います。例えば、労働者に短期派遣での就労の意思があって、派 遣元事業主において日雇雇用保険の適用に関し、適切な措置を取った場合など、客観的 に派遣元事業主が雇用管理責任に代わる代替措置を取ったと認められるケースについて は、特例として短期派遣を認めるという形で、セーフティーネットの活用の促進に向け て、インセンティブを付与することも有用ではないかと思います。 ○長谷川委員 日雇派遣についてです。先ほど市川委員も触れましたが、前回の部会の ときに、日雇派遣の期間や対象業務については話したのに、スポット派遣については議 論していなかったことに気付いたのです。昨日、私どもの所で委員会をやったのですが、 最近、派遣業者がどういう営業をしているかというと、「いやいや、日雇派遣は禁止さ れるけど、大丈夫ですよ。今度は派遣元で1カ月の有期雇用をやって、あとは毎日、あっ ちへ行け、こっちへ行けとやれば、実際にできるから大丈夫ですよ」と言って、非常に 積極的に営業活動をなさっているという話が問題になりました。  それで、そういえばこの部会で、スポット派遣をどうするかという議論をしていなか ったなという気がしたのです。何らかの形で、スポット派遣を規制することも考えなけ ればならないのではないかと思います。今回の日雇派遣で何が問題だったのかといえば、 日々ということが問題だったわけです。スポット派遣も、1ヶ月派遣元に雇用して、「 あなたは今日はA工場ね。あなたは明日はB倉庫ね。あなたはCの何々ね」と動かすような 働かせ方がいいかどうかということについては、やはり問題なので、何らかの規制が必 要ではないかと思います。そういう意味では、規制の仕方についても考えなければなら ないのではないかと思っています。やはりこれは脱法的な行為だと思います。そういう 意見を持っておりますので、何らかの規制は必要ではないかと思います。  それと、前回もこだわりましたが、30日がいいのか、港湾労働法のように2カ月がいい のかというところでは、私は長いほうがいいと思っております。したがって、2カ月がい いのではないかということについては、申し述べておきたいと思います。  それと、前回も使用者側の市川委員から日雇派遣の禁止の例外について、26業務プラ ス11ぐらいの項目が挙がって、今日も山崎委員から新たに提起されましたが、どこまで 広がるのだろうという思いが非常にしているわけです。日雇派遣の問題は先ほど市川委 員が言われたように、さまざまな社会的な問題になっています。しかし日雇派遣がなく なったからといって、日雇がなくなるわけではないのです。事業場というか、企業の仕 事が忙しいときに対する労働者の確保については、職業紹介などでできるわけですし、 実際に派遣ができる前は、みんなそれでやってきたわけです。そういう意味で、日雇派 遣がなくなるからといって事業主が困るというのは、私は納得できないですね。私も職 場にいたときに、派遣制度として日雇派遣を使ったことなどありませんでした。しかし 年末時の忙しいときは、ちゃんと労働力を確保しましたから、そういう方法はきっちり できるのではないかと思います。  もう1つは、先ほど山崎委員が言った話だと思います。被扶養者の場合という話が出 てきましたが、どうやって把握するのでしょうか。これは把握の方法が、なかなか難し いのではないかと思いました。非常に複雑な、煩雑な制度を作れば作るほど、事業者は 脱法行為をやるのです。現にもうそういう営業をしているわけですから。私は、日雇派 遣は社会的にも非常に問題になったのだから、原則禁止というのがいちばんすっきりし て、みんながよく分かるのではないかと思います。法律が非常に不明瞭で、いろいろな 解釈があればあるほど、脱法行為が起きるのではないかと思います。 ○山崎委員 職業紹介の場合に望んで行った人が、紹介だけされて断わられるという不 安はないのですか。 ○長谷川委員 派遣も断っていますよ。事前面接はしないと言っているけれど、現実は しています。 ○山崎委員 紹介も同じですか。 ○長谷川委員 それはマッチングしないということはあるわけで、派遣だってマッチン グしないで駄目になる場合もあります。制度としてはマッチングと言っていますが、す べての派遣がマッチングしているわけではない。日雇の場合、合うとか合わないとか、 現場に行ってトラブルになるということは、まずないのではないかと思います。もうち ょっと期間が長いときは、マッチングしていないとかあると思いますが、日々の場合は 派遣であろうが直接の日雇であろうが、そこはそんなに問題にはならないと思います。 ○市川(佳)委員 前回も私がしつこく申し上げた、特定を目的とする行為についてで す。前回のお話ですと、期間の定めのない労働契約の場合、特定を目的とする行為を派 遣先ができるということでした。つまり、特定もできるという解釈だというように伺っ たのですが、具体的に特定を目的とする行為というのは、何と何をいうか、どういうこ とを指して「できる」と言っているのですか。  例えば、いわゆる事前面接だけではなくて、履歴書を送るといったこともあるわけで す。そういうときに未婚者がいいとか、子供がいない人がいいとか、女性がいいとか、 30歳以下がいいとか、業務能力とは関係のないことについても注文をして、「今度この 職に派遣を入れてください。そのときはこういう人がいいです」ということも、ここに 含まれるのではないでしょうか。それは当然、差別を禁止するにはちゃんとすべきだと いうことはありますが、そうすると年齢や性別を理由とした差別的取扱いの禁止を整備 するということになります。ただし、どういうように差別禁止を明らかにするのか。派 遣先に対して差別をしないように禁止するということで、派遣法の中にきちんと法律で 措置するという論点の提起なのかどうか、こういう理解でいいかどうかを、まずお聞き したいと思います。  それと、差別禁止の履行が確実にされるということを、どういう手段で確保しようと しているのかをお聞きしたいと思います。例えば禁止としたとしても、訓辞的な場合、 実質的にどういう意味があるのかというのは、ちょっと不安な感じがします。どういう 書きぶりになるかわかりませんが、差別禁止という規定を付けるとすれば、それは一体 どの程度、どういう実際的な効果のある書きぶりができるのかということについてのお 考えをお聞きしたいと思います。  もう1つは、派遣先が特定を目的とする行為をいつ行うのかということです。派遣元 と派遣先の派遣契約が成立する前なのか後なのか。仮に派遣契約がまだ結ばれていない ときに、特定を目的とする行為ができるとすると、例えばある職に1人派遣をお願いし たいときに、A派遣会社のAさん、B派遣会社のBさん、C派遣会社のCさんをズラーッと並 べて、合同面接のようにしてその派遣先が、今回はBさんがいいですというように特定 する、そういうことも可能にするという想定なのかどうか。あるいは逆に、ちゃんと派 遣契約が済んだ後に同じ派遣会社の中で、この業務だったらAさんがいいと思って派遣 元と面接をしたけれど、どうも持っている能力が合わないから、Bさんのほうにしまし ょうかという範囲なのか。それともそれら全てがいいのか、どれを想定されているのか をお聞きしたいと思います。 ○清家部会長 それでは事務局からお願いいたします。 ○鈴木課長 詳しい内容は今後のご議論かと思いますが、事務局がこのたたき台の中で ご用意しておりますのは、まず前提としては前回もお答えしましたように、特定行為と 特定目的行為というのがあります。特定行為とは、例えばこの人がいいとか、この人は 駄目だとか、女性は駄目というようにセレクトする行為です。特定目的行為というのは それにつながるような、例えば事前面接をするとか、履歴書を送付させるというもので す。特定行為は特定目的行為に含まれるというように解しておりますので、もともと現 行の派遣法で、特定目的行為の禁止といったときには、それらが全部禁止されておりま す。  今回は特定目的行為を全面的に外そうということですから、特定行為も含めて、無期 派遣の場合は認めようということです。その際に今おっしゃったように、差別的取扱い があってはなりませんから、そこは担保したいと思います。これについて、派遣元のほ うがこの人を送り込むという場合は配置になります。例えば、性差別であれば均等法の 対象になりますので、その対象は基本的には派遣先が特定目的行為を行うときに際して、 差別的取扱いをしてはならないという法律の条文を立てることを予定しております。  このイメージとしては均等法や雇対法に、募集・採用に当たっての年齢差別や性差別 の禁止という条項がありますので、この特定目的行為に当たっての差別の禁止というの を、法律上定めるというイメージです。その対象範囲が派遣契約の前か後かということ ですが、募集・採用などでも考えていただければわかりますように、募集をかけてから 実際に雇用契約を結ぶ前から、その一連の行為が全般的に対象になります。これについ ては派遣契約が結ばれる前も後も含めて、実際の派遣就労に至るまでの間の派遣先の行 為が特定目的行為に当たる場合は、すべて対象になります。その場合の性差別なり年齢 差別なりを禁止するようなものをイメージして、このたたき台を書いております。 ○市川(佳)委員 そうすると今のようにA社、B社、C社でそれぞれ出してというのも ありということですか。 ○鈴木課長 いわゆる競合面接ですね。例えば差別的取扱いをやれば、それは禁止にな ります。 ○市川(佳)委員 しかし、そのこと自体は想定しているのですね。やってもいいとい うことですね。 ○鈴木課長 特定目的行為を解禁すれば、そこはよいことになります。 ○長谷川委員 そうすると、労働者の選択権を派遣先も持つということになるわけです か。それと、職業紹介と派遣というのは、理論的にはどのように切り分けるのですか。 ○鈴木課長 研究会報告の中でも、派遣先が派遣元の採用行為に介入する、雇用者の地 位に関与するような行為を禁止しているのが、この特定目的行為の禁止であるという解 釈です。そういったものに該当すると、これは労働者供給事業に該当するおそれがある ので禁止されているわけです。では、そういうものに該当しない場合、具体的に言うと 派遣元で期間の定めのない雇用をすでにしている場合、採用はされていますから、その 採用行為に派遣先が関与するということにはならないだろうと。従って、大本に戻って その場合には、特定目的行為を解除してもいいのではないかということで、職業紹介と いうよりも労供との関係で、労供のおそれがないような場合には開きましょうという考 え方です。 ○長谷川委員 例えば、均等法なり雇対法の書きぶりによる差別禁止というのは、募集・ 採用時ですよね。しかし派遣先が特定することは、募集でも採用でもないですね。そう すると、均等法や雇対法もいじるということですか。 ○鈴木課長 いえ、違います。均等法や雇対法ではカバーできないので、カバーできな い特定目的行為に当たっての差別というのを、派遣法上禁止するという1個の条文を立 てるという意味です。 ○長谷川委員 では均等法の募集・採用のところは、もともと派遣元にあって、特定行 為を行うときに派遣先に対して新たに性差別などをかけるという意味ですか。 ○鈴木課長 はい、そういう意味です。 ○長谷川委員 その新たな条文は、派遣法で作るのですか。それとも男女雇用機会均等 法で作るのですか。 ○鈴木課長 現行では派遣法の改正で考えています。 ○清家部会長 それではほかに何かありませんか。 ○平田委員 たたき台の中にいくつかちりばめられている、派遣の常用化という観点に ついて申し上げておきたいと思います。たたき台の中には入っていないのですが、定義 を変えるというご指摘もありましたので、私どもの意見を申し上げておきます。常用型 を、期間の定めのないものということで定義をしてしまいますと、転換を促進すべきで ある常用型派遣の間口が狭いものになってしまうと思っております。労働者の雇用の安 定・促進ということを考えると、それは適切ではないと思っております。  私どもも実際にヒアリングをしてみました。特定労働者派遣事業主に雇われている派 遣労働者の中にも、有期雇用のほうがよいという人も一定割合でいるということですの で、間口を狭めてしまうと、どういうことが起こるかというと、登録型に転換するとい うのもあるでしょうけれど、無期で雇用されることを希望しない人は雇用しないという 選択肢もあります。そういうことを迫られると思っておりますので、定義を変えてしま うと、必ずしも労働者の保護や雇用の安定にはつながらないのではないかと思っており ます。  それからたたき台の4、雇用契約申込義務ですが、前回も申し上げたように、雇用の 安定した派遣労働者に転換ということを実現するためには、派遣先の確保が重要な条件 となっております。これをある意味阻害する自由化業務における期間制度、法律でいう と40条の2ですが、派遣労働者であっても無期雇用の常用労働者であるということを踏 まえれば、労働市場全体における常用労働者保護という観点から、そこは適用除外とす ることも有用であり、それが労働市場全体の雇用の安定につながっていくのではないか と思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。 ○長谷川委員 いまの常用型派遣についてです。前回も話したのですが、私は常用型派 遣を期間の定めのないものという形で、きっちりと定義をすることが必要だと思ってい ます。ある意味で、本当は派遣法の中に常用型派遣、登録型派遣、日雇派遣という定義 規定をきっちり置いたほうが、私は使用者も労働者も幸せだと思っているのです。無用 な混乱がなくなりますから。いま使用者のほうから、常用型派遣、期間の定めのないも のの定義についてのご意見がありましたが、ここのところは、むしろそうやって規定し たほうがいいのではないかと思っています。このことと、事業の開始にかかる届出許可 の時点で、有期労働契約が更新されて、事実上、期間の定めがなく雇用されている労働 者であるかどうかというのは、どうやって把握するのかということをお聞きしたいと思 います。  それと、前回も申し上げましたが、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業は、届 出制と許可制という違いも受けているわけです。特定労働者派遣事業が、期間の定めの ない雇用だと言われているわけですが、今回、いろいろな法律を考えるときに、期間の 定めのない雇用であるというのは、雇用の安定がされていて云々というのがあります。 聞くところによると、比較的いろいろな所で行政の指導などがされているのは、特定労 働者派遣事業者が多いというようにも聞いているのです。したがって、特定労働者派遣 についても一般労働者派遣と同じように、許可制にしたほうがいろいろな意味で把握も できるし、指導も強化できるし、事業主ももう少し意識が変わるのではないかと思うの です。私は是非、今回の派遣法の改正の中で、これも一緒にやってはどうかと前回から 言っていますので、これについても事務局の見解をもう一度聞きたいと思います。  特定労働者派遣事業も一般労働者派遣事業も、どちらにも期間の定めのある労働者が 混在しています。特定のほうに違反などが多いとも聞くのですが、やはり派遣事業とい う労働者を扱う事業に対して、もう少しチェック機能が必要なのではないかと思ってい ます。今回、登録型派遣についてさほどの改正は出ていないのですが、本来はこの登録 型派遣の所が問題なわけです。そういう事業者に対しては、許可届出の段階で把握し切 れない事項などもたくさんあるので、派遣業者を訪問して、どういうようになっている かということを確認することが、私は必要なのではないかと思います。  現在、介護保険ができてから、福祉サービス第三者評価事業が行われていて、これは 結構うまくいっていると言われています。介護施設がきちんと運営されているかどうか、 第三者評価機関が行っていて、私の友人などもよくやっています。この場合は第三者評 価機関に申し込むことになっています。NPOを立ち上げてもいいわけですが、派遣のと きに派遣事業主の所に協力員などが一緒に回って、本当に事業が適切に運営されている かどうかを調べる。前回、10項目ぐらいと言っていましたが、そうやって評価されたも のについて、例えば事業報告書に必ず評価機関の評価を付けて出すようなことをやると か。  厚生労働省だけではとてもやり切れるとは思えないし、これだけ毎年毎年、行政がス リム化されて人員がないわけですから、そういう福祉サービスの第三者評価事業のよう なものを、今回の派遣事業者のチェックに使ってはどうかと思います。そのときには労 使の適正運営協力員もいるわけですから、そういうものを活用してやるということも、 一つ検討してみてはどうかと思います。 ○清家部会長 それでは事務局からお答えいただきます。 ○鈴木課長 3つのご質問があったかと思います。まず有期の反復更新については、特 定派遣の届出の際にやっても、これは許可と同様に、実地調査を行っております。その 中で雇用契約が実際に無期なのか、有期でも反復更新をして、ちゃんと長期間にわたっ て継続されているのかということを確認した上で、おかしければ特定ではなく、一般で はないかというような形で、出し直しも含めて指導を行います。これは実際に見てチェ ックをしているところです。  それから、特定労働者派遣も許可制にというご指摘がありました。確かに特定も、最 初に始める際には許可と届出と分かれておりますが、その後の定期報告を求めることと か、監督指導に入るとか、特に差を設けてやっているつもりはありません。ですから例 えば監督指導が緩いとか、その後のチェックが甘いから、何か違反が起こっているとい うことではないかと思います。あくまでも特定と一般については、事業開始の際に許可 か届出かというところだけが違うので、もし、そこに問題があるというのでしたら、ご 議論いただきたいと思いますが、許可・届出後、何か違いを設けているわけではありま せん。  それから、介護の話も出まして、事業が適切に運営されているかどうかについてのチ ェックというご指摘もありました。この研究会報告の中でも、派遣の適正運営協力員制 度については今後とも有用な仕組みであるので、実効が上がっていくようにというご提 言もあります。そういったものの中でも、例えば労使でやる協力員に適切に巡回いただ いて、例えば派遣会社のリストなどをインターネットのホームページ等で公開して、こ こはとても良かったとか、ここは悪かったということも含めて、周知していくという制 度を作ることもあり得るかと思います。私どもは優良の派遣事業者を育てて、逆に違法 な所は厳しく監督指導をしていくという方針を立てております。これは法律だけではな くて予算事業も含めて、いいところを育てて、そういったところを使っていただくとい う趣旨からも、そういったところの育成やチェックをやっていこうと思っております。 そうした中でも、今の協力員制度も含めて活用していきたいと思います。 ○清家部会長 長谷川委員、よろしいですか。 ○長谷川委員 もう1つあります。特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業という区 分けをして、特定が届出で、一般が許可制というようにしているのですが、これを分け る理由はなぜなのかということと、一般労働者派遣を許可要件にしているのはなぜなの かというのを、もうちょっと教えてほしいのです。要するに特定と一般の違いと、特定 が届出で、一般が許可だというのはなぜかというのを、もう1回教えてほしいのです。  それから、いまの法の第2条の書きぶりで言うと、特定労働者派遣事業というのは、 期間の定めのない労働契約の労働者と、有期労働契約で1年以上の雇用見込みがあるか、 1年以上雇用された労働者を派遣する事業なのかどうかを聞きたいのです。 ○鈴木課長 ご存じのように今、派遣事業者の中には特定と一般とがあり、特定はいわ ゆる現行で言うところの常用型の派遣のみを使う事業場です。一般は常用と、いわゆる 登録型の両方を使う、もしくは登録型のみということで、前者については届出制、後者 については許可制となっております。常用型派遣だけであれば、比較的長期の安定した 雇用を行う派遣なので、事業的にも安定しています。ですから、これについては雇用の 安定や雇用管理の面からして、一般の派遣よりも労働者に対する弊害は少ないだろうと いうことで、届出制にして許可制よりも一段軽い要件で事業を開始することを認めてい るものです。  一方、一般派遣については登録型も混ざって派遣されています。いわゆる一時的で有 期の労働者ですから、若干雇用が不安定な労働者を扱いますので、事業としてもしっか りしなければいけません。その辺りのことで、具体的には資産要件とか事務所の面積と か、こういったものをチェックさせていただいた上で、ちゃんと事業ができるところを 確認した上で、事業を開始させるという趣旨で届出制と許可制を分けています。後段の ご質問の趣旨がわからなかったのですが。 ○長谷川委員 特定労働者派遣事業というのは、期間の定めのない労働契約の労働者だ けなのか、期間の定めのない労働契約者と有期労働契約で、例えば1年以上の雇用見込 みがあるとか、1年以上雇用されてきた労働者を派遣する事業という、そういう解釈で いいのかということです。 ○鈴木課長 そういう解釈です。これは業務取扱要領で、そのように明記しております。 ○長谷川委員 そうすると、特定労働者派遣というのは、無期と有期が混在しているわ けですよね。 ○鈴木課長 そういうことです。 ○長谷川委員 それを今回は変えるのですか、変えないのですか。 ○鈴木課長 今回のたたき台の中には、変えるようには入れておりません。 ○長谷川委員 そうですよね。すると特定労働者派遣事業には有期と無期が混在してい て、一般労働者派遣は登録で有期なわけですよね。そうしたら、特定派遣だって有期と 無期が両方あるのではないですか。有期のものはどうするわけですか。 ○鈴木課長 有期のものも含めて、現行法では有期の反復更新で1年以上の者も安定雇 用ということで、常用型というジャンルに繰り入れておりますので、それについて特定 と一般の区別があるということです。これについては新しく作る望ましい形として、例 えば申込義務を解除するとか、特定目的雇用を認めるという、いわゆる無期型の派遣と も言うべきものとはずれるわけです。現行の届出と許可についての問題点は、いま提起 しておられますが、これまでの研究会なり、それ以前の審議会ではご提起されていなか ったのです。そこについての問題は、今のところ指摘されていなかったこともあって、 今の案には入れていません。 ○長谷川委員 そうすると、雇用契約申込業務がないとか、特定を目的とする行為を行 ってもいいという場合、この人が期間の定めのない雇用契約の派遣労働者だというのは、 派遣先にはどういうように知らせるのですか。派遣先の人はどうしたら分かるのですか。 例えば紹介で、今うちに来ている派遣労働者は期間の定めのない雇用契約だから、特定 目的行為をしてもいいよとか、雇用申込義務が適用されないというのは、どこかで知ら せるようなことを考えているわけですか。 ○鈴木課長 基本的には派遣元から通知させるという格好になるかと思います。 ○長谷川委員 派遣先が知らなかったという場合はどうするのでしょうか。後の違法派 遣に対する対処というところから出てくるのですが、あまり緩いと、あるいは混在して いると、通知を受けていたとか受けていないとか、派遣先の責はないです、私は知りま せんでしたということにもつながっていくのではないですか。特定は常用型で、常用型 には期間の定めがないというように、きっちりと整備すれば、特定の事業場から紹介さ れてきた方は期間の定めがないからということで、すごく分かりやすいと思うのです。 ○鈴木課長 そういう考え方もあろうかと思いますが、例えば一般でも、常用型と登録 型とが混在していますから、そこから来た人は結局同じ問題が生じます。そこは派遣元 が雇用計画を推し進めていますから、派遣元がしっかりと派遣先に通知して、この労働 者は無期です、この労働者は有期ですと言って、派遣先はそれを信じるということにな ります。当然、法律上の義務がかかって通知されていれば、それを信じるでしょう。そ の手続がちゃんとなされて、派遣先もそれで認識をして、例えばこの労働者は無期だと いうことになったら、さすがにそこまで雇用の申込義務を課すような、派遣先でのペナ ルティーを課すような重過失があったとは言えないのではないかと思います。その辺り でどういう要件を課けるかというのは、今は設計段階ですから、その中でご議論いただ ければと思います。 ○清家部会長 確認しますが、定義をどうするかということ自体も、部会の中でこれか ら議論してくださいということですか。 ○鈴木課長 特定と一般の定義変更は、たたき台の中には入れておりませんから、私ど もからご議論いただきたいということではありませんが、委員の皆様からご提起があっ て議論いただくのは構わないと思います。 ○長谷川委員 私は前から言っているのですが、法律には定義があったほうがいいと思 っているのです。法の目的を入れて、趣旨を入れて、定義規定を入れるという法律の作 り方が好きなのです。そうすると、「特定派遣とは」「常用派遣とは」「登録派遣とは」 「日雇派遣とは」というように入れたほうが、とてもすっきりすると思っているのです。 定義規定を作ることに何か支障というか、問題はあるのですか。 ○鈴木課長 若干法律的な、技術的な話になりますが、通常、定義規定を法律の冒頭の 目的の次ぐらいに置くことはあります。技術的には法律の中で複数回登場して、例えば 章を跨いでいろいろな所で使われているものとか、法律における中心、例えば職業安定 法などにおいては、何々職業紹介事業という、ある意味根本的なところにわたる規定に は定義を置くことはありますが、今回の無期の派遣などのように、単発の条文が2つ3つ 出てくるだけの場合には、頭のほうに定義規定を置かないのが通常です。これはあくま でも法技術的な話です。紹介しましたように、登録型派遣という定義自体、現行法には ありませんが、それも同じような意味で置かれていないということです。 ○北村委員 5の「労働力需給制度機能の強化について」の、いわゆる特定する作業で すね。この場で出てきたプロセスでは、派遣先についてもどのような労働者を受け入れ るかということで、そういう特定があったほうが利便性があるというのと同時に、労働 者側も今後の労働環境を知るというのは利益があるだろうということで、この話になっ たように思うのです。今のですと、何となく首実験的な、派遣先のほうが労働者を見聞 するようなイメージがあります。これはどうでしょうか。やや片務的な印象があります。 むしろ労働者のほうが希望すれば、派遣先の環境、職場を見ることができるというよう な言及はあり得ないのでしょうか。  それから先ほどの課長のお話では、差別的取扱いの禁止規定は、派遣法の中で言及す るということだったのですが、そうなってくると、ここにある「年齢又は性別を理由と した」という、この2つの項目に限られるのでしょうか。 ○清家部会長 では、その2点をお願いいたします。 ○鈴木課長 労働者側からのイニシアチブによる事業場訪問や面接については、現行で も特定目的行為ではないというように整理されております。現行法でも可能ですから、 それについては今回は触れていないということです。今でもできますので、そこは特に 解禁する必要もないものです。  それから、年齢と性別の2つを考えているのですが、なぜこの2つかと申しますと、 この2つが募集・採用に当たっての、雇対法と均等法の差別禁止を法律上規定している 2つだからです。ですから法律上規定するのでしたら、この2つがふさわしいと思いま して、これでご提案しているところです。 ○清家部会長 ということは、特定行為についての規制を緩和することは、労働者には 何らメリットはないということですか。 ○鈴木課長 いえ、労働者がその事業場を知ることができるかどうかという意味では、 今でもできますし、これについては制度を変えませんから、その部分についてのメリッ トはないかもしれません。ただし、この研究会の報告は、こういう行為をすることによ って派遣先が期間の定めのない派遣を選考するとなると、それが派遣元に対して、期間 の定めのない派遣を送り込んでくださいということになって、ひいては常用化の方向に 動いていくと。それをインセンティブにしようという意味で、労働者のためにもなると いうことで、そういったことを期待できるのではないかということでご提案申し上げた ものです。 ○清家部会長 よろしいですか。 ○北村委員 はい。 ○清家部会長 ほかに何かございますか。 ○長谷川委員 6の法令違反の話です。今回のたたき台では、派遣先の法違反に対する 是正措置の強化である勧告・公表に係る指導前置を廃止して、派遣先に対して行政が従 前以上の条件で雇用契約を申し込むことを勧告できることとするというのが、6の(1) に書かれているわけです。私は前回も、行政の勧告ではなくてみなし規定のほうがいい と言っておりますが、今でもその考えは変わっていません。私から少し質問しますので、 それについて教えてほしいのです。私の所に、「違法派遣の場合に派遣先による雇用契 約申込みを行政が勧告することはできるけれど、例えば労働者が裁判所において派遣先 との間の黙示の雇用契約の成立を主張することはできない、また損害賠償を請求するこ ともできないと言っている人がいるけれど、そういうようになるのか」という質問があ りました。どうでしょうか。 ○鈴木課長 どういう前提で、その方が言われているのかはわかりませんが、今回、勧 告制度としている趣旨は、違法の解消手段として行政が指導する際のやり方を規定して いるものなのです。これを入れる入れないによって、違法自体、例えば禁止業務派遣、 期間制限違反、無許可・無届け派遣、偽装請負といった事案について、これは違法で不 法行為なのだから、その損害賠償請求とか、違法だからその実態として、実態上は派遣 先に雇用されている者であったので、派遣先での直接雇用の地位管理を求めるという請 求を、全く否定しているものではありません。ですから、それについてはそういうロジ ックで裁判所に訴えると実際に認められるケースも、当然あろうかと思います。そうい う意味での争いはできますし、今回勧告制度を作ることによっての影響は、ないと思い ます。 ○長谷川委員 全くないということですか。 ○鈴木課長 ないと考えております。 ○長谷川委員 もう1つ。労働者から訴えがきて、厚生労働省というか、行政が勧告す るのでしょうけれど、その勧告の発動は行政が判断するわけですよね。そのときに、勧 告する場合としない場合はどういうように分かれるのですか。どういうときに勧告しな いのですか。ヨーロッパなどでは女性差別などの勧告がバンバン出ていて、勧告に従わ なかった場合は随分行政命令などでやられているのです。結構その勧告が活きていると 聞いています。今回、行政勧告に対して私がすごく慎重なのは、行政がどの時点で勧告 を発動するのかがよく見えないし、本当に勧告するのかが見えないところです。どうい う時点で勧告発動するのですか。 ○鈴木課長 勧告ですから、当然客観要件ということで、この4つの条項に違反してい ることが必須です。その次に、特に偽装請負の場合がいちばん顕著ですが、派遣先が偽 装請負ではないと確信していて、ある程度信じたことについてもっともな理由がある、 つまり派遣先が故意又は重過失で違反を犯しているわけではないということであれば発 動しません。しかし嘘の行為や故意も含めて、重過失で違反が成立していた場合は、そ ういう主観要件をチェックいたします。  その次に、これはまだ全部は詰めておりませんが、労働者が望まない場合に発動する 必要はありませんから、労働者の何らかの意思確認というのが、その次の段階としてく るかと思います。そういうことを経ますと、基本的に勧告を発動するということになり ます。あと、本当に極めて軽微なものはどうするかというのはありますが、基本的には 条件が合って、労働者も派遣先での雇用を望んでいる場合には、発動するという格好に なろうかと思います。 ○長谷川委員 行政が違法を把握するわけですが、行政は違法派遣の存在をどういう形 で把握するのですか。 ○鈴木課長 まず労働者など関係者からの申告があります。それから定期的に監督指導 を行っておりますから、その定期監督の際に把握いたします。それと第三者からの情報 も含めて、さまざまな情報源から違反があるとわかった場合は調査に行って、違反があ れば指導いたします。概ねこのルートかと思います。 ○清家部会長 よろしいですか。 ○長谷川委員 はい。 ○清家部会長 今回、山崎委員から冒頭にお話がありましたが、日雇派遣についてのポ ジティブリストの業務について、何かご意見はございますか。特にないようでしたら、 他には何かございませんか。 ○市川(佳)委員 情報公開のことについて、3の「派遣労働者の待遇の確保」につい ては、派遣料金、派遣労働者の賃金というのは、今の平均的な数値を公開するという指 針の法制化ですが、前回も申し上げたように、少なくとも個別の派遣労働者に対しては、 自分自身に対する賃金はもちろん、派遣料金などを個別に開示すべきですし、いわゆる マージンといったものが分かるようにすることで、良い派遣元が選択できることに資す るのではないかということを、重ねて申し上げたいと思います。  もう1つ付け加えるべき事項として大事なのは、自分の社会保険料や労働保険料がい くらになるかということです。自分が負担をして賃金から引かれるときに、このぐらい だよということを分かっておくというのが、非常に大切です。私は、一般的に派遣労働 者が雇用契約のときに、労働条件の明示をどういうスタイルでされているのかはよく分 かりません。賃金などが書いてあるのでしょう。携帯でやっているような例もあるかも しれません。その時にきちんとした形で、自分はどういう条件で働いているのかが分か るようにすることと、社会労働保険料を知っておくということはいま年金がこれだけ問 題になっていて、標準報酬をごまかされて、年金がえらく安くなってしまったなどとい う問題も出ているわけですから、自分もしっかりと社会保険を納めているのだという意 味からも、きちんと就業条件で明示すべき事項の中に、派遣料金や社会保険料の額も加 えるべきだということを、意見として申し上げておきたいわけです。私としても、これ は非常に大事なことではないかと思っています。 ○平田委員 6番目の勧告の所です。研究会報告では偽装請負の所だけに、その主観要 因の指摘がありましたが、前回も申し上げたように、それ以外のものについても、故意 や重過失によってそれが起きたのかどうかということも含めて、個別ケースごとに検討 することが必要と思っております。  それから、たたき台には「従前以上の条件」というように書かれておりますが、派遣 労働の内容や派遣労働者の実績ないし賃金体系、もしくは派遣先における人事処遇制度 など、それぞれあると思いますので、総合的に判断して定めていくべきだと考えており ます。  マージンの関係については、今ご指摘がありましたので、私どもの考えも申し上げて おきます。個別で開示せよということかと思いますが、私どもも派遣元事業主からいろ いろ聞いているなかで、出来るものと出来ないものがそれぞれあるようですので、私ど もとしてはたたき台の整理で適当なのではないかと思っております。3の(4)と(5) の両方で、派遣制度の仕組みや料金がどうなっているのか、賃金がどうなっているのか ということを合わせて措置されることで、派遣制度に対する理解が進んでいくのではな いかと思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。 ○長谷川委員 いま平田委員から、6の勧告の主観的要件について述べられましたが、 私は主観的要件を入れてしまったら、全部対象にならないのではないかと思いますので、 主観的要件を付すことはいかがなものかという意見を持っているということは、お伝え したいと思います。 ○清家部会長 わかりました。ほかによろしいですか。特にご意見がないようでしたら、 本日の議論はここまでとさせていただきます。そこで次回の部会の進め方ですが、前回 と今回、事務局から提出していただいたたたき台について、それぞれご意見、ご質問を 賜ったわけです。本日までの委員の皆様方からのご意見を踏まえて、次回は公益委員か らの部会報告案を提出させていただき、それに基づいてご議論いただきたいと思います。 そのような取計らいでよろしいでしょうか。                   (了承) ○清家部会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。ほかに 事務局より何かございますか。 ○松原補佐 次回の部会は現在、日程を調整中です。委員各位には別途、またご連絡を させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○清家部会長 では、事務局にはそのようにお願いいたします。以上をもちまして、第 119回労働力需給制度部会を終了いたします。なお、本日の署名委員は使用者代表が平 田委員、労働者代表が長谷川委員にお願いいたします。委員の皆様、お忙しい中ありが とうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)