08/09/04 第6回社会保障審議会医療部会議事録 第6回社会保障審議会医療部会 日時 平成20年9月4日(木) 10:00〜 場所 厚生労働省議室 ○企画官 ただいまから第6回「社会保障審議会医療部会」を開会させ ていただきます。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、ご 出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  まず、始めに新しい委員をご紹介申し上げます。健康保険組合連合会 医療部長の高智英太郎委員、社団法人日本看護協会常任理事の高階恵美 子委員。本日はご欠席ですが、全国知事会より上田清司委員も新たな委 員に就任されております。  続きまして、委員のご出欠についてご報告いたします。本日は代理の 方にご出席いただいておりますが、上田清司委員、小島茂委員、村上信 乃委員から欠席のご連絡をいただいております。また樋口範雄委員、山 本文男委員もご欠席です。  事務局に異動がございましたので、紹介いたします。医政・医療保険 担当審議官の榮畑、医政局総務課長の深田、医政局指導課長の三浦、医 政局研究開発振興課長の千村です。申し遅れましたが、私は医政局企画 官の間でございます。どうぞよろしくお願いします。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきたいと存 じます。資料の束がクリップ留めしてありますが、議事次第1枚、座席 表1枚、委員の皆様方の名簿1枚です。資料が1から6まであります。 本日委員から追加の資料もご提出いただいておりまして、それも配付さ せていただいております。もし不足がございましたら、お知らせいただ きたいと存じます。事務局からは以上です。以後の議事進行は鴨下部会 長にお願い申し上げます。 ○部会長(鴨下) 部会長の鴨下でございます。新しく委員に加わられ た方もいらっしゃいますが、だいぶ間が開きまして、お久しぶりかと思 います。今日は、議題にありますように、大変多くの重要なことについ てのご報告が主だと思いますが、できるだけ要領よく時間を節約してま いりますので、よろしくご協力のほど、お願いいたします。  最初に、委員が欠席する際には、代わりに出席される方の扱いについ て、事前に事務局を通じて部会長の了解を得ること、及び当日の部会に おいて承認を得ることによって、参考人として参加し、発言をいただく ことにしております。本日の会議につきましては上田委員の代理として 埼玉県保健医療部長の宮山徳司参考人、小島委員の代理として日本労働 組合総連合会総合政策局生活福祉局部長の飯倉裕之参考人、村上委員の 代理として日本病院会副会長の大井利夫参考人のご出席をお認めいた だきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○部会長 ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思いま す。本日は、昨年9月に開催した第2回部会においても概略の説明があ りましたが、その後の検討状況も踏まえて、「産科医療補償制度」につ いて説明をお願いいたします。 ○参事官 それでは、産科医療制度についてご説明申し上げたいと思い ます。昨年5月に政府・与党でまとめられた「緊急医師確保対策につい て」、また今年7月に発表されている社会保障の機能強化のための緊急 対策、いわゆる「5つの安心プラン」ですが、これにも盛り込まれてお りました産科医療補償制度について、医療部会においては、先ほど鴨下 部会長からございましたように、昨年9月の部会において概略ご説明し ておりましたが、準備が整ってきておりますので、具体的な内容をご説 明したいと思います。  お手元の資料1-1にある産科医療における無過失の補償制度につい ては、平成18年9月から議論が始まり、11月に与党から枠組みが示さ れております。それを受けて平成19年2月から厚生労働省からの委託 によって、財団法人の日本医療機能評価機構に準備委員会が設置され、 制度の詳細な内容を1年間かけて議論をし、平成20年1月に報告書の とりまとめが行われました。  この産科医療補償制度は、分娩にかかる医療事故により、脳性麻痺と なった児およびその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、事 故原因の分析を行い、将来の同種事故の防止に資する情報を提供するこ となどにより、紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を図る ことを目的としている制度です。その制度の中身については、資料1-2 をご覧いただきたいと思います。  まず、この仕組みは通常の妊娠・分娩にもかかわらず、脳性麻痺とな った児に補償金を支払うという仕組みです。その支払いを行うことによ り被る損害を、損害保険により担保をしようとする仕組みです。制度の 開始時期は、平成21年1月1日の分娩から補償の適用を予定していま す。  補償の対象は、出生体重2,000g以上、かつ在胎週数33週以上を原則 としていますが、この基準を下回る場合でも、在胎週数28週以上の児 は個別に審査をするという仕組みです。それから身体障害者等級が1・ 2級相当の重症者を対象としています。除外要件があり、先天性の要因 などの除外基準に該当するものは対象としないことになっています。現 時点での対象者の推計としては、年間概ね500〜800人と少し幅があり ますが、これを見込んでおります。  補償金額は、一時金600万円と分割金2,400万円、合わせて3,000万 円となっています。保険料は1分娩当たり3万円です。  この制度を安定的に運営するためには加入率が非常に重要です。その 加入促進ということで、都道府県等がHP等を通じて行っている医療機 能に関する情報提供の項目に、本制度の加入状況を追加する。また病院 等において広告が可能な項目に、本制度の加入を追加することを考えて おります。この2点については、「医療情報の提供のあり方等に関する 検討会」における議論やパブリックコメントの募集を踏まえ、省令や告 示の改正を10月中に行う予定としております。また運営組織の役割を 担う医療機能評価機構のHPを通じて、加入分娩機関を10月から公表す る予定にしています。  その他として、産科医療補償制度としては、単に補償金を支払って終 わりということではなく、個々の事案の原因分析を行い、事案の公開に より再発防止を図っていく。この取組を通じて、産科医療の質の向上を 図ることも目的としております。また、遅くとも5年後を目処に制度内 容について検証し、適宜必要な見直しを行う予定になっています。  なお、準備委員会の報告書で、出産・育児一時金の引上げを国に対し て求めておりますが、この問題については、9月12日に開催予定の医 療保険部会において、保険局から説明がなされることとなっています。 3頁以降の資料は、先ほどご説明したものと重複する部分が多いので、 説明を省略させていただきますが、資料としては「産科医療補償制度運 営組織準備委員会報告書概要」が資料1-4、資料1-5、資料1-6に付い ています。それから冒頭でご説明しました医療紛争処理のあり方検討会 等でまとめられた「産科医療における無過失補償制度の枠組みについ て」を資料1-7、資料1-8に添付しております。  この制度の補償金の支払部分を支える損害保険は、損害保険会社6社 による共同保険方式を採っており、7月3日に幹事会社が金融庁の商品 認可を得ております。非幹事会社5社の認可も近々揃うと聞いておりま す。それが揃いますと、医療機能評価機構と正式に契約を交わす予定に なっております。  運営組織の役割を担う評価機構においては、現在分娩を扱う病院等と の間において加入手続を進めております。9月3日現在で分娩機関3,345 カ所に対し、加入機関2,319カ所、69.3%という加入状況です。加入の 手続を済ませた病院等においては、1月からの補償対象になる妊産婦の 登録事務を10月から始めてもらう予定と聞いております。1月から補 償の適用を開始するに当たって準備をしているわけですが、引き続き加 入率を高めて、脳性麻痺となったお子様が、きちんと補償を受けられる ようになるよう、万全な準備に努めてまいりたいと考えております。簡 単ですが、産科医療補償制度の具体的な中身が明らかになってまいりま したので、ご説明いたしました。よろしくお願いいたします。 ○部会長 それでは、ただいまの事務局からの説明について、委員の皆 様からご質問、ご意見があれば出していただきたいと思います。時間が 限られておりますので、できるだけ簡潔に、多くの方のご意見を伺いた いと思います。 ○小島委員(飯倉参考人) 小島の代理で出席させていただきました。 いまご説明をいただきまして、分娩費の保険料の関係ですが、来週の医 療保険部会で保険課から説明をするというお話がありましたが、重要な ところですので確認をさせていただきたいと思います。今回の産科医療 補償制度の保険料については、当初から出産一時金を想定しているとい うお話を伺っていまして、それについては保険料分の引上げを行うとい うことだったと認識しています。その辺りの状況について変更がないか というか、考え方としてそういう認識でよろしいのかどうかを、まず確 認させていただければと思います。 ○参事官 基本的にその認識で結構です。 ○小島委員(飯倉参考人) そうすると、結果的に一時金ということに なれば、出産・育児一時金の財源は保険料ですので、本来は保険者、ひ いては保険料を負担する患者なども入った審議会等の場で、事前に十分 な検討をする必要があったのではないかと考えております。その意味で は進め方に対して、どうだったのかという疑問を持っております。  これはもちろん医療保険部会の話だということであれば、そうかもし れないのですが、連合としては、従来から正常分娩も含めて保険の現物 給付をすべきだと考えておりまして、保険適用という形になっていれば、 いわゆる公定価格ですから、診療報酬の点数を決めるときに、こうした 補償に対するコストも見込んで設定をすることができるということで 言えば、改めて保険者から保険料を求めるという形よりも、わかりやす い仕組みにできるのではないかと思っています。  そういう意味では、本来、正常分娩についても保険適用とするという ことも含めて、この制度についても、そうしたことを前提とした法制化 に向けた議論をすべきだったのではないかと考えておりますので、一応 意見として述べさせていただきたいと思います。 ○杉町委員 このような無過失の補償というか、このような制度が日本 にもできるということは、大変素晴らしいことだと思っております。外 国ではスウェーデン、フィンランド、ニュージーランド辺りにあると聞 いています。今回はたまたま産科領域だけですが、ほかの領域でも日本 にもこういうのがだんだん根付いてくるとうれしいと思います。  3万円のことですが、もちろん3万円かかるのだろうと思います。国 が安全とか安心に非常に力を入れている時代ですから、国の財政的な援 助というか、予算化などはどのようになっているのでしょうか。もちろ ん3万円も病院側が支払うのか、患者が支払うのか、地方自治体が支払 うのか、保険者が支払うのか、いろいろな支払い方法があると思います が、その辺をもう少し説明していただきたいと思います。 ○参事官 今回の仕組みについては、資料1-3に「産科医療補償制度の 概要」ということで、分娩費、その掛金、保険料という流れの仕組みが 示されています。この制度について、民間保険を活用するという仕組み です。これについては産科医療の危機的な状況を一刻も早く改善するた めということで、無過失補償制度の創設が求められていたわけですが、 これを解決するために公費を使った制度とした場合には、既存の社会福 祉施策との整合性の解決のために時間を要するということもありまし たので、民間を活用した補償の仕組みということで、早い対応のための 仕組みとさせていただいているわけです。  この制度に対する国の関与というか、予算面のお話では、医療機能評 価機構の中に、原因分析や再発防止の検討に当たる組織を作って、それ に当たることになっていますので、その費用については、概算要求に計 上しております。この制度の設計、この制度の普及啓発、それに要する 費用については予算化をして対応してきたところです。 ○竹嶋委員 この産科無過失補償というか、産科医療補償制度について の趣旨とか目的は、杉町委員からも、これは有り難い制度というお話が ありましたが、私ども医療の現場を実際に担っている立場としても、是 非早く立ち上げてほしいということで、いろいろな関係者の皆さん方と お話をしながら進めてきたという経緯があります。  一方、私自身は運営を委ねられた(財)医療機能評価機構の役員とし て責任の一端を担っていますが、我々の理事会等々で出てきたのは、杉 町委員もそのことを言われたのだと思いますが、保険という仕組みが何 となく危なっかしい。いま70%産科医療施設が契約しているというこ とですが、私たち医療現場がもっともっと頑張って契約していける努力 はいたします。  それにしても、いま参事官が言われたように、少し急いだということ があります。患者のためにもなりますし、医療の現場の産科医師不足と か、いろいろな事故などの問題もあって、急いでやっていく中で、こう いう形をとったのです。これは杉町委員がおっしゃったように、国がで きるだけ早くきちんとした形でやる。診療報酬でやるかどうか、それま でやれればそれがいちばんいいのですが、財源を安定的なものにしてい くということを、ここでお願いをさせていただきたいと思います。 ○部会長 ほかにいかがですか。 ○村上委員(大井参考人) 村上委員の代わりでまいりました日本病院 会の副会長の大井です。産科医療の補償制度の最も根幹をなすものは保 険制度ですので、分娩機関および妊婦がこの制度に契約すること、分娩 機関が手続きをとり、妊婦が標準約款で締結することだと思います。  分娩機関のうちの約70%しか手続きを取っていません。10月から妊 婦との契約が結ばれるのですが、もし仮にこの補償制度に契約を結んで いない機関で脳性小児麻痺を出産すると、その子はこの制度では救われ ないことになってしまいます。そういう意味で、産科医療補償制度の最 も根幹をなすのは、すべての分娩機関が少なくとも契約していることが 望ましいと思います。  さらに、すべての妊婦にこのことがアナウンスされて、できるだけ多 くの方が標準約款で締結してほしい。その上で初めてこの制度が生きて くると思うのです。その辺に関して、今はすべてを医療機能評価機構の 運営組織に委ねていますが、もう少し強力にどこかで、少なくともすべ ての分娩機関が締結するように圧力をかける、運動を起こしてほしいと いう希望があるのですが、その辺についてはいかがでしょうか。 ○参事官 言われているように、この制度がきちんと加入率を高めてい くことは非常に重要なことです。従来から医療機能評価機構等々、また 関係する産科婦人科学会や産婦人科医会の先生方といろいろ話をさせ ていただき、加入促進策にも努めてきたわけです。  それから先ほどご説明したとおり、いま医療機関の情報の提供が都道 府県等のHPを通じて行われておりますが、その中にこの情報の提供が できるように、または医療機関の広告が可能な項目の中に、この制度の 加入を追加することをいま検討しています。そのようなことを通じて加 入の促進に一層努めてまいりたいと考えております。 ○堤委員 この制度は被害者救済がメインの制度だと思いますので、被 害者を中心として制度設計をすることが非常に大事だと思いますし、そ ういった方々に対する説明責任をどのように担保するかが、極めて重要 なのではないかと思います。  似たような制度で自動車の世界で自賠責保険がありますが、これは強 制保険で、あくまで被害者救済であり、ノーロス・ノープロフィットで す。ですから、今回の制度も広報はやるとして、その制度や収支の透明 性の確保、3万円に対する説明責任もあると思います。ここで保険会社 に儲けさせてもしょうがないですから、きちんとした制度運営を行うよ うな形が必要なのではないかと思います。 ○部会長 いろいろご意見が出て、事務局の報告もいただきました。ま だ何かありますか。 ○参事官 先ほど制度設計の話が少し出ましたが、今回の制度設計に対 しては、非常に限られた地域の、限られたデータから推計をしています。 ですから、この制度については、少なくとも5年を目途に中身を検証し、 必要な見直しを行うことになっておりますので、いまご指摘のあった点 も含めて、そういう形で対応してまいりたいと思っております。 ○部会長 それでは、大変大事なことですので、今後も事業の進行、実 施状況については、随時事務局から報告をいただきたいと思います。特 に加入率をもっと上げることは、当面のいちばん大事なことだと思いま す。制度運営に当たっての財源については、今後は9月12日に開催予 定の医療保険部会において議論になるだろうと思います。  続きまして「安心と希望の医療確保ビジョン」、それに関連のある「平 成21年度概算要求の概要」の2つについての説明をお願いします。 ○総務課長 それでは、お手元の資料2の「安心と希望の医療確保ビジ ョン」、資料3の「平成21年度概算要求の概要(厚生労働省医政局)」 の2つについて、順次ご説明させていただきます。  まず資料2です。資料2-1は全体像を簡単にまとめたもので、資料 2-2からが本体となっています。「安心と希望の医療確保ビジョン」で すが、まず最初の概要にあるように、平成18年度の制度改正以降の医 師不足、あるいは救急医療に対する不安などのいろいろな問題が指摘さ れたことに対して、大臣を中心として有識者によるアドバイザリーボー ドを設置し、意見交換を重ねてとりまとめを行ったものです。  具体的には、アンダーラインが引いてありますように、あるべき医療 の姿を示すと。今後の医療政策を考えていく上でも、あるべき医療の姿 を示して、それに基づいて施策を進めていこうということで、ビジョン を示したものです。1月から議論を始め、6月18日にとりまとめとなり ました。  「はじめに」ですが、特徴の1つとしては、医療施策を考えていく上 では、現場あるいは地域のイニシアチブを第一にすることであるという こと。次に無駄が仮にあるとすれば、当然のことながら、効率化するこ とで、改革努力を怠らないこと。ここは今まであまりなかったことで、 大きくは言われなかったことかもしれませんが、医療というのは医療関 係者のみならず、患者や家族など、国民みんなで支えていくことが必要 ではないかということを示したものです。  その上で具体的な柱立てとしては3つあります。(1)は「医療従事者の 数と役割」です。これは平成9年の閣議決定による医師抑制方針を変え るということで、医師養成数の増加の方向性を明記したものです。これ については、今年の「骨太の方針」の中でも、医師養成数については、 過去最大までは増やしていくことが明記されましたし、その後のことに ついては検討するとされたところです。  また、産科・小児科の医師不足問題が強く言われている診療科の方々 については、女性医師も非常に多く、働き方の問題で短時間の正規雇用 制度なども打ち出していくということです。  もう1つの大きな柱としては、職種間での協働ということが必要で、 医療関係職種の間での役割分担なども打ち出して、医師が本来の業務に 取り組める体制を作っていくことが必要ではないか、という提案をして います。  (2)「地域で支える医療の推進」ということです。現場で実際に非常に ご苦労され、あるいは問題が出ている部分として、救急医療あるいはへ き地医療といった問題があります。救急医療については、そもそも量 的・質的な拡充が必要だということで、地域全体でのトリアージを行っ ていく必要があるのではないか。そのためには管制塔機能を担うような 医療機関を整備していく、あるいはそれが担えるような人材を育成して いくことが必要である、ということが謳われています。  救急の利用の実態ですが、国民の皆様のご協力も必要ではないかとい うことです。また個々の医療機関で全医療ニーズに対応していくのでは なく、地域で完結型の医療も普及していく必要があるのではないかとい うことを謳ったものです。  (3)は「医療従事者と患者・家族の協働の推進」です。医療の関係の方々 と患者・家族のそれぞれの相互の理解を進めていく。特に患者について もそうですが、医療の公共性に対する認識を持っていただいて、患者・ 家族の医療に対する理解をいろいろ支援していく方策を作っていくこ とが必要ではないかということです。資料2-2からの本体は簡単に説明 しましたので、あとでご覧いただければと思います。  このビジョンに取り込まれた事項については、7月以降、具体化に関 する検討会を開いて、ご議論いただいております。またビジョンに掲げ られている事項については、この議論も踏まえて概算要求にも盛り込ん で、次にご説明させていただきたいと思いますが、反映させるなどのこ とを行っています。  なお、具体化に関する検討会については、中間とりまとめまで行った わけですが、とりまとめの文書自体は、現在、各委員の皆様方にそれぞ れ文言についてご検討いただいている最中ですので、まとまりましたら 送らせていただきたいと思っております。  資料3の「平成21年度概算要求の概要」です。これは医政局の関連 の予算要求をまとめてご説明させていただきたいと思います。まず資料 3-1ですが、平成21年度の概算要求は2,473億5,400万円となってお り、平成20年度の予算額に対して505億円の増、対前年度比では125% 強の増額の要求としています。  「5つの安心プラン」が資料3-2から並んでいますが、これはあとに させていただき、資料3-5です。医師などの人材確保対策などの具体的 な施策として、どういう形になっているかをとりまとめたもので、主要 施策の1です。この中で、医師確保対策の「うち」と書いてあるところ ですが、平成20年度の予算が161億円弱でした。平成21年度の予算要 求は約2.3倍の368億円の要求をしております。これについては、ご承 知のとおり、予算要求のシーリングの中でも2,200億円の話というのは 当然にありますが、特別枠を用意するので、その実現に向けて各省は要 求しなさいということで、厚生労働省全体としても、医師確保対策関係 は1丁目1番地の施策として要求しているものです。  まず医療確保ビジョンの関係と、これについてのご説明をしたいと思 います。医療確保ビジョンで、あるいは7月末にも「5つの安心プラン」 がとりまとめられたわけですが、こういった施策を中心に新規施策など を盛り込んでいます。  まず最初に「救急・産科・へき地医療を担う勤務医等への支援」です が、これについては新規の柱が4本並んでいて、勤務医に対する支援策 という形で盛り込んだものです。診療報酬でも改定が行われたところで すが、直接的に勤務医の処遇改善が、なかなか図られていない面がある のではないかというご指摘もあって、救急・産科・へき地といった、い わゆる非常に労働環境の厳しい所について、新しく手当を設けて、それ について制度を設けていただいたところには、財政支援を行っていくと いう仕組みを入れたいと考えております。  最初は救急医療、次が産科医療、それからへき地医療です。それから へき地も含めて医師確保の困難な地域に、ある医療機関から医師が派遣 されていくといったケースについて、派遣される医師へのインセンティ ブということで、医師の手当も用意したいと考えております。  勤務医対策は今回の大きな目玉の1つですが、「勤務医等の勤務状況 の改善・業務負担の軽減」といった分野です。これについては、例えば 交代制勤務の導入あるいは医療クラークといった方々を配置するため に必要な研修への助成、研修を十分受けられるような代替職員の雇上げ の経費についての補助金を用意したいと思っています。  資料3-6の医師と看護師等の役割分担の関係です。医師がやっている ような仕事について、できる限り可能な範囲で、看護師あるいは助産師 にお願いすることができると、医師が本来の業務に非常に集中すること ができる。まず看護師や助産師の技術を向上させることが必要ではない かということで、研修を行う。あるいは院内助産所や助産師外来の開設 の促進に取り組んでいきたいと思っています。  また(5)にありますように、今回は産科医療補償制度の議論をさせ ていただきましたが、産科医療補償制度についても、補償するだけでは なく、それぞれ原因分析あるいは周知をちゃんとやっていくことが必要 で、こういった点についての経費を予算要求したいと思っています。  次の頁の「地域で支える医療の推進」ですが、地域医療関係の経費で す。これは再掲部分もかなりありますので、ご覧いただきたいと思いま す。まず救急については、先ほどの手当の関係以外に、救急医療を取り 巻く医療機関のうちで、患者の病状に応じた適切な医療を提供できるよ うに、いわゆる管制塔機能を持った医療機関を整備し、それを支援する 仕組み。休日・夜間の対応ということで、二次医療機関にはかなりいろ いろな患者が集まってくるわけですが、こういった所にも地域の診療所 の医師などが仮に応援していただけるということでしたら、その場合の 手当についても財政支援をしていきたいと思っています。  ドクターヘリについては、要望が非常に多いということで、事業の箇 所数の増をしていきたいと思っています。平成20年度は16カ所の予定 ですが、24カ所まで増加させていきたいということと、夜間での搬送 ができないかということで、その対応策も実施したいと思っています。  資料3-8の(4)の女性医師・看護師等の離職防止の関係です。女性 医師については、どうしても子育てがありますので、乳幼児の保育に対 する相談あるいは保育をしてくれる方の紹介といった事業を、各都道府 県で行えるようにしていきたいと思っています。また病院内の保育所に ついても、院内保育所の運営などについて財政面をさらに進めていくこ とにしたいと思っています。  資料3-9の医療確保ビジョン関連で申し上げますと、(8)がへき地な どの保健医療ということです。先ほど申し上げたような医師の関係の手 当、へき地保健医療計画の新たな計画策定のための検討会を置きたいと 考えています。  また(9)にありますように、医師等と患者・家族の協働ということ で、医師と患者・家族との相互理解を進めるということで、中に立つよ うな相談員を育成し、その研修事業などを行っていきたいと思っており ます。  在宅医療を進めていくという関係で申し上げますと、訪問看護なども 非常に重要な課題で、(10)にあるように、訪問看護事業所の看護の質 の向上、人材育成が重要です。まず大切なことは、管理者の方々の管理 能力を高めることができないと、事業がガタガタになってしまいますの で、そういった研修事業も行っていきたいと思っています。  資料3-10は、医薬品と医療機器の研究開発の関係です。これについ ては(1)にありますように、いわゆるスーパー特区での実用化などの 促進を進めていきたいと思っていますし、(4)にありますように、後発 医薬品の使用促進も大きな課題で、これについては各都道府県に設置し ている協議会で具体的な事業の検討、パンフレットの作成などの普及啓 発をさらに進めていくことを行っていきたいと思っています。  最後ですが、元へ戻って資料3-2です。これは「5つの安心プラン」 ですが、5つの安心プランは、5項目が提示されており、そのうちの1 つとして、まず医療の関係です。「健康に心配があれば、誰もが医療を 受けられる社会」を目指すべき対応ということで、何点か出ております。 それが救急や産科・小児科医療などの地域医療を守るということと、そ の担い手を守り、国民の医療に対する不安を解消していくということで、 先ほど申し上げたような救急医療体制についての各種事業です。  資料3-3に行きますと、医師養成数あるいは勤務医の過重労働の改善 で、医師不足問題に対応していくということで、へき地医療の医師への 支援なり、あるいは臨床研修病院への支援。次の頁、勤務環境の改善と いうことで、短時間正規雇用や交代制勤務などの経費の予算額をまとめ て載せております。下に医療リスクへの対応ということで、産科医療補 償制度における原因究明、再発防止の仕組みの検討などを掲げており、 これが安心プランへの医療関係についての対応策ということでまとめ ています。以上です。 ○部会長 いまご説明いただきました資料2と3の2つの問題について、 ご意見、ご質問があれば出していただきたいと思います。 ○熊坂委員 全国市長会を代表して来ております宮古市長の熊坂です。 私の意見については、別添でお配りしていますので、あとで参考にして いただきたいと思います。また全国市長会の6月4日の全国市長会総会 の決議もお配りさせていただきましたので、お目通しいただければと思 います。  今回説明いただきました「安心と希望の医療確保ビジョン」は、非常 にわかりやすくて、素晴らしい内容だと常々思っておりました。こうい ったことが着実に推進されるのであれば、国民の皆さんは安心されるの ではないかと思っております。その中で前々から市長会でも医師の絶対 数の不足について主張してきたわけですが、今回、やっと方針が変わり ました。そして、新たな医学部の定員増に向けて決断がなされ、具体的 な予算も措置されたわけです。医師の絶対数の不足について、高久先生 の委員会等では1.5倍にという話もされておりますが、このことに対し ての認識について、厚労省のご意見をもう一度確認の意味でお聞きした いと思います。 ○部会長 総務課長、よろしいですか。 ○総務課長 医療ビジョンの具体化検討会で、中間とりまとめの中では、 委員の方々の共通認識としては、平成21年の定員は過去最大で、これ は骨太の方針にも掲げられていることですが、実際にはもう少し上回る 数になったようです。それを目指すということは当然ではないかという ことでした。  それ以降のことですが、具体的なデータ的なものが、まだ十分ではな いということで、ちゃんと検証しなければならないのですが、欧米と比 較すると1.5倍の差がありますので、1.5倍を目指すのではないかとい うことです。ただ、増やしてそのままでいいということにはならなくて、 現実はそのあとは少し減らしていくことが必要になってくることも、同 時に指摘されております。  問題はおっしゃるとおりだと思いますが、検証をちゃんとしなさいと いうことで、考えるべき点は、女性医師がかなり増えてくることもあり ますし、あるいは高齢化が進むという問題、それぞれにおける医療需要 の問題がありますので、いろいろな要素を考慮して、しっかり検証をし てもらいたいということをいただいております。我々のほうとしては、 それも当然踏まえながら、ちゃんと検証していきたいと思っています。 ○熊坂委員 私は120人の学年で医師になったのですが、そうしますと いま80大学ですから、最大頑張っても9,600人です。そうすると、医 科大学の数とか、そういうところまで踏み込んでいくのかなということ も考えられるのですが、そういったことは全くこれからということです か。 ○総務課長 新設大学をつくるかどうかという議論は何も決まってお りませんし、何もありませんが、検討会の中では、新設大学というのは 非常に難しいのではないかというご議論は多かったように思います。 ○竹嶋委員 いま全国市長会の代表の方からご意見が出て、具体的なこ とが1点ありましたので、ちょうどいいなと思いました。まず厚生労働 大臣の私的諮問のこの検討会ですが、本当にご努力なさって、ここまで よくおまとめになっていますが、その構成を私は一応考えます。メンバ ーが3人おられ、患者、国民代表の方、診療所をやっておられる方、そ れから病院です。あとはヒアリングで8回か9回進めておられます。そ のヒアリングでお見えになっている方々も、後ろにメンバーがあります から、ご覧になるとわかりますが、病院、大学などの方が多いのです。  ご存じのように、日本の医療というのは、クリニック、有床診療所、 病院の3つで地域を支えています。この3つをしっかり把握しながら、 大臣の諮問機関といえども、きちんとした答申を出さなければいけませ ん。診療所は入っていません。薬剤治療に関しては病院の代表が入って います。つまり、こういう検討委員会で決まったことを、今後、厚生労 働省がどのように持っていくかということを懸念するわけです。  その1つが、いま出たように1.5倍という数字ですが、私どももどう してこんな数字がいきなり出たのだろうかと。確かに私どもも現場から 医師が少ないと資料を出しながら言い続けていました。いまご質問があ って、聞いてわかったのですが、OECDの平均が3人だと、日本は2人 ということで、日本の1.5倍です。私はそのぐらいの議論からしかない だろうと思うのです。検証という前に推定の作業をまずやらなければい けません。その前にこういう数字が独り歩きをして回るのは大変危険だ と思います。  もう1つ申し上げておきたいのは、医師だけが増えるということでは 済みません。看護職あるいはそのほかのコメディカル・スタッフも増え なければいけないかもしれません。そうすると、何度も言うのですが、 財源を常に考えながらいかなければ、数字をポッポッ出していっても、 再度財源論からまた見直しということになることは明らかです。  そういうことから、私はここで決められたビジョンそのもの、すべて を受け入れるわけにはいきません。社会保障審議会の医療保険部会があ るわけですから、こういう所でたたき台を出していかなければいけない のではないか。今までとは手法が違っていますが、この手法で本当にい いのかと疑問に思います。また後ほど、ほかの所でもご質問と意見を申 し上げたいと思います。 ○杉町委員 資料2-1のビジョンのところですが、大変いいのができて いると思います。少し気になるのは、IIIの「医療のこれからの方向性」 です。この中で「治す医療」から「治し支える医療」へとありますが、 最近では医療と福祉がボーダレスになるというか、医療費の関係もあっ て、医療から福祉にということがありますから、これを「治し支える医 療と福祉」へとして、「福祉」という言葉がここに入ったほうがいいの かと感じました。  ただ、これは医療部会ですし、医療確保のビジョンですから、こうい うところに「福祉」という言葉が入ってきたらまずいのでしたら別です が、これから先は特にお年寄りなどが多いわけですから、医療だけでは なく、福祉でも支えなければいけないだろうと感じました。 ○部会長 ほかにいかがですか。 ○山本(信)委員 竹嶋委員からお話がありましたが、ここでまとめら れているビジョン全体の目的は、医師が足りない、あるいは負担が大き いということで、他の職種とうまく役割分担をして、安心な体制を作ろ うということですので、その考え方には私も賛成です。  折角まとめられたビジョンの中で、薬剤師がどこかへ行ってしまって いるというお話もありましたが、医薬品に関することは安心の中ではと ても重要な部分ですし、ビジョンの7頁では、医療機関の中で薬剤師が 役割をどう担っていくか、そして医師の負担をどう軽減していくか。医 師が足りないとすれば、当然補充しなければいけませんが、現場で薬剤 師もそれなりの負担をして、あるいは役割を分担をして仕事をせよとい うことと理解しております。  10頁では、地域の問題として、地域医療を支えるための地域の薬局 の役割が明確に記載されており、私どもとしてはここに書かれたことに ついて役割を果たせと期待をされていることについて、とても思いを持 って受けておりますし、具体的に準備も進めております。  現在進められている具体化検討の中で、ここに書かれたことが明記さ れないといくらやりたくても仕事ができません。地域に必要な医療を確 保するために必要な役割を果たせるように、これから作られる具体化の 中で、まさに具体的に検討をして、薬剤師に何が期待されていて、何が できるのか、あるいは何が私どもはやれるのかということを明確に書い ていただかないと、ただビジョンだけが出て、ビジョンで終わってしま わないよう、今後の具体化へ向けた検討会の中で十分かつ明確に議論し ていただきたいと思います。 ○豊田委員 資料3-7ですが、今回の厚生労働省の予算の中で、これは 非常に注目しています。救急医療の中の(1)の(3)「管制塔機能を担う 救急医療機関に対する支援」が、新しい施策として挙げられているわけ ですが、救急体制は全国でそれなりに充実してきています。形として充 実しているという中には、問題は輪番制の救急体制というのがあります。 実はこの輪番制の救急体制というのは、受ける側、要するに医療機関か らすると順番にいくので、それなりにいきますが、地域の住民からする と今日はどこ、明日はどこと、何かあったときの対象が絶えず移動する ことは、救急としては1つ不安が残るわけです。  そういう意味で今回の管制塔機能を担う救急医療機関に対する支援 というのは、非常に良かったのではないか。輪番制の不安を払拭するた めに、是非この後もこれを強力に進めていただきたいと思います。  資料3-9の(9)の「医師等と患者・家族の協働の推進」ということ で、医療機関あるいは医師と患者の間に立つ人、相談員等を育成すると いうのも、後ほど議論される医療事故の問題とか、現在、医療機関と患 者との間の不信感など、本来あってはいけない状況を改善するためにも、 これも新しい施策のようですが、大変評価したいと思います。これは是 非強力に進めてもらいたいと考えます。 ○尾形委員 コメントですが、資料2と資料3を一括してご説明いただ いたのも、両方が関連しているということだと思います。しかし、資料 2のビジョンのほうの具体的な政策の3本柱と施策のほうの柱というの は、必ずしも平仄が合っていないと思います。  というのは、2-1のII(1)の「医療従事者の数と役割」あるいは「地域 で支える医療の推進」については、そのように主要施策の方も並んでい るのですが、ビジョンの3番目の柱、いま豊田委員からも話があった(3) 「医療従事者と患者・家族の協働の推進」というのは、大きな柱として 立っているわりには、施策のほうは柱にも何もなっていなくて、いまお っしゃったところに少し載っているだけという形で、平仄が合っていな いと思います。  医療供給サイドだけではなく、医療需要側にどのように働きかけてい くかというのは、非常に重要な視点だと思うので、予算に実際に具体的 に反映していくというのは難しい面があるかとは思いますが、折角こう いう3本柱を立てられたのですから、もう少しこの辺は強調されたほう がいいのではないかと思います。 ○佐伯委員 先ほど産科の無過失補償で、参事官がおっしゃったことと 関連するのですが、患者と医療機関という構図で見るのではなく、そこ の都道府県に住んでいる住民とそこに置かれている医療機関というよ うに、大きな視点で見る必要があるのではないかという気がします。  それぞれの医療計画に基づく医療連携体制の推進という中で、どのよ うにきちんと配置されるかということであれば、もう少し制度からのバ ックアップも必要だろうと思いますし、このような国の決め事をする所 では、国が制度としてどこまでを作っていき、それを担保する形でそれ ぞれの地域でどうやっていくのかということが必要だと思います。その ときにそれぞれの医療機関がどうやるか、それぞれの医療機関の中で、 どこかにイニシアチブを持たせてとか、インセンティブを付けてという ことではなくて、まずもっと公共性を認識すべきは医療提供側というか、 医療機関ではないかなという気がしています。  国がどこまでやる、地域がどこまでやる、地域完結ということを謳っ て、その中で国民の皆保険制度があるのだという認識に立てば、皆保険 制度をきちんと理解し、その上でどのように医療を使うのか、利用する のかという意識が出てくると思いますので、その大きな枠組みに立ち戻 っていただきたいと思います。  例えば、それぞれの都道府県で医療審議会のようなものがあって、医 療機関を開設するときには審議をされます。しかし、閉鎖をするときに は審議はされなくて、事後報告です。例えばどこそこの病院がなくなっ たというその事態を受けて、住民が右往左往するわけですが、なくして しまう前に、どうして地域の人たちが納得をするような場がないのか。 それは地域というか自治体がそこまで権限を持っていないからで、医療 機関に対する権限をきちんと自治体が持てるような制度に、これからは していく必要があるのではないか。そうしないと本当に国民の信頼は得 られないのではないかという気がします。 ○中川委員 事務局に再度確認したいと思います。先ほど竹嶋委員から も出ましたが、このビジョンを検討したものの位置づけ、それからこれ を基に先ほどの1.5倍にするとか、懇談会をしていますね。そういう組 織と中医協とか、社保審の医療部会、医療保険部会との関係をどのよう に考えるのか。懇談会の中の議論を見ると、医療提供体制全般から診療 報酬にまで幅広く及んでいますよね。この辺のところはどうなのかなと 非常に心配といいますか、問題点があると思うのですが、その点を明確 にしておいていただきたいなと思うのです。 ○部会長 これは総務課長、いまお答えになりますか。 ○総務課長 この審議会とビジョン、あるいは具体化のための検討会と の関係ということだと思いますが、まずビジョンの関係、あるいはそれ の具体化の検討会は、大臣のイニシアチブの下で、大臣として考えをま とめるためのアドバイザリーボードも入れて議論していったものです。 医療部会は、そもそも医療制度改革をする、制度を見直していくと。具 体的に見直していくところはここの場でご議論いただいて、ご了解を得 られないものは法律上の制度としてはなっていかないというものです。  我々としてはそのように考えており、当然ビジョンなり、あるいはそ れ以外のいろいろな検討会、このあとも検討会のご報告をさせていただ きますが、それらは当然それの関係の有識者の方々に集まっていただい たご議論で、これを踏まえて具体的な施策として何かを打ち出すという ことになれば、あるいはこの部会、あるいはこれに関連する審議会の部 会でのご議論をいただくことになっていこうかと思っております。 ○中川委員 お答えにくいこともあって、その辺が限度かなと思ってお りますが、わかりました。それで、いま医師数1.5倍というのは、OECD の平均から見て1.5倍にしなければいけないという議論なのだと思い ますが、まず日本の現在の状況を見て、本当にこれが単に平均まで増や すことがいいのかどうかというのは、非常に難しいところだと思うので すよ。その辺のことも然るべきところで議論をしてやらなければいけな い。  医師数1.5倍にするということは、医師の人件費だけで医療費を7.7 から8%ぐらい上げなければいけないのです。医師を増やすということ は、その周りにいるコメディカルも増やさなければいけませんし、いろ いろな経費もかかりますから、約10%医療費を増やさなければいけな い。その議論とセットで医師数を1.5倍という話が出てくるならまだし も、ただ1.5倍というのは非常に大雑把だなという気がして、心配して いるわけです。その辺のところはしっかりと整理をしていただきたいな と思います。 ○田中委員 尾形委員や佐伯委員がおっしゃったところに話を戻して、 ビジョンの中の3本柱の1つ、「医療従事者と患者・家族の協働の推進」 という点について述べます。これは大変素晴らしい項目だと感じます。 これは昔の医師が主導したパターナリズムとも、一般市場経済と同じよ うな消費者主権論とも違う、両者が協働していく方向が医療の姿である ことを3本柱の1つに書かれたことを高く評価します。  希望としては、ここはまだ従事者と患者・家族という、いわば人と人 との関係でとどまっていますが、佐伯委員や尾形委員が言われたように、 本当は人と人とを超えて、地域の医療機関、つまり組織ですね。運営、 経営体である医療機関とか地域の医療提供体制と地域社会、住民との連 携というところまでいくと、より良くなるはずです。いま現場で出会う 医師、看護師と患者・家族だけではなくて、地域全体での医療に対する、 住民が医療機関を支える、そういうもう1つ広いところに次の段階では 進むことを期待します。現段階でこれが入ったことは、高く評価いたし ます。 ○杉町委員 いま田中委員がおっしゃった点ですが、現在もう既に厚生 労働省がお作りになって、地域医療支援病院というのがあります。ドク ターとか看護師が個人的にどうこうではなくて、病院全体として、地域 の住民とのいろいろな接点を持って、コミュニケーションを持って、地 域完結型の医療を推進しようというのはもう既にあります。機能的にも 二次医療圏の中にいくつかの医療施設がそれに入っていて、そういうこ とをやっておりますから、それをもうちょっと進めていくと、田中委員 がおっしゃったようなことにさらに進むのかもしれません。 ○田中委員 一昨年、医療施設体系のあり方に関する検討会の座長をさ せていただいたのですが、地域医療支援病院は素晴らしいけれども、数 が全然足りないという話が結構出ました。 ○杉町委員 それは二次医療圏の中に1つか2つということになってい るものですから、非常に数が絞られています。ですから、病院としては 手を挙げている施設はたくさんあるのですが、なかなか審査が難しいと いいますか、地域医療支援病院になれない病院が多いようです。 ○高階委員 これから具体策をまた考えていくことになるのだと思う のですが、これから在宅医療を充実していくことになりますと、お出で になる方へのサービスをどうしていくかということと同時に、お届けす るサービスのこともしっかり視野に入れて考えていかなければいけな いと思っております。人材確保は非常に大事なのですが、特にお届けす るサービスでいいますと、在宅療養支援診療所、あるいは訪問看護事業 所の拡充というか、機能強化といったところが非常に大事だと思うので す。  特にこれからへき地対策を考えていくときに、例えばいま訪問看護事 業所が全国の自治体の2分の1にしか設置されていない。制度としては 半分の自治体の方は使えない状況にあることを、どうやって改善してい くのか。診療と訪問看護をセットで、在宅で受けられるようにするため にどうしていったらいいのか。それから、へき地ではそもそも資格を有 する方がいないと。そういった所に少し厚くおられる所からスタッフを 回せるような形に、どうやって提供体制を整えていくのか、こういった ところがこれから大事になってくるかと思いますので、来年度予定され ております「へき地の保健医療対策の充実のための検討会」などといっ たところでは、こういった項目を入れて検討を進めていく必要があると 思います。 ○高智委員 健康保険といいますか、患者の立場から見た形で申し上げ たいと思います。2の「地域で支える医療の推進」、このフレーム全体 は大いに賛成したいところですが、3-8のいちばん下、(7)医療分野の 情報化の推進、これは医療の現場のことを中心に書いております。電子 カルテ、あるいは遠隔医療の政策、と同時に患者から見て必要な情報が たやすく入手できるように、医療機関並びに行政からも有益な情報を発 信できるような方法、情報の非対称性といった問題を潰しきれるような 方向で対処していただければありがたいと思います。 ○堤委員 ちょっと話が変わってしまうのですが、概算要求についての 考え方をお聞かせいただけないでしょうか。釈迦に説法ですが、医療行 為というのは、保険料と窓口負担と税金で成り立っているわけです。今 回の医政局の概算要求で、なかなかあるべき姿に向けて制度ができてい ないとか、システムができていないとか、あるいはインフラ面で足りな い部分がある、だから、それを作るためにインセンティブを付与しなが ら政策を打ち出していくというところは理解できます。ただ、救急医療 の医者に直接補助を出すなどといった一般財源から医者の報酬に直接 支援することは、むしろ診療報酬のあり方の中で考えるべき話で、それ をごちゃ混ぜにしていくと、お金の使い方がどうもよくわからなくなっ てくるのではないでしょうか。今回のこういったお話は、あくまで緊急 避難的なお話なのか、それともナショナルミニマムを確保するために国 としてやっていくのか。この辺のお考えはちょっとお聞かせいただけな いでしょうか。 ○総務課長 今回の予算要求の中での手当の関係についてのご質問で あったかと思います。ご存じのとおり、ご指摘のとおりで、費用は診療 報酬で、一応、勤務医対策ということで、平成20年の診療報酬改定も 行われたものです。ただ、診療報酬では、給料を上げなければならない という診療報酬改定は行われておりません。したがって、医師会やいろ いろな関係の団体からも我々のほうにご要望はいただいておりますが、 実際には医療機関のサイドで給料として何かのメリットが与えられて いることは少ないのだ、ということに現在なっているというのが現状で はないかと思います。  我々としては、基本的には財源としては診療報酬は付いているではな いかと言えば言えるのですが、それで果たして苦労されていて過重労働 と言われるような勤務医の方が、本当に待遇が改善できるのだろうかと いうことです。ご要望でも何回かお聞きもしましたが、直接的にお金を 入れるというのは、お手当を国が出すということではないのです。これ は制度を作ってください。つまり、給料を払うことは、就業規則なり、 あるいは給与規定といったような規定を用意して、そこで当然お金が払 われていきます。それは労使合意は当然必要になります。処遇改善をし たければ、そういう手続をちゃんと踏んだ上でやっていただかないと、 それは当然できないわけですので、そういうことをやっていただきます。 でないと、具体的にお金が出ているかどうかはさっぱりわからないこと になりますので、そういった仕組みを入れて、給与制度を見直して、手 当を作ってください。  これは事業主の方にですが、作ってください、それについては、国の ほうでその費用について補助をしましょうという仕組みにしていきた いと思っています。まず制度を作っていただいて、ちゃんと手当を出し ていただくという仕組みを普及したいと思っているところです。 ○部会長 よろしいでしょうか。次にまたもう1つ大事な問題もありま すので、これはこの辺で打ち切らせていただきます。最後になりますが、 「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」「『救急医療の今後のあ り方に関する検討会』中間とりまとめ」「『遠隔医療の推進方策に関する 懇談会』中間とりまとめ」、この3つについて事務局からご説明をお願 いします。 ○参事官 資料に基づき、ご説明申し上げます。まず最初に、「医療安 全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」について説明申し上げます。資 料は4-1から4-4まで準備しておりますが、時間の関係で基本的には資 料4-1に基づいて概略ご説明申し上げたいと思います。  この大綱案については、資料4-2にありますように、今年6月に発表 されたもので、その基になったものは資料4-3に「第三次試案」とあり ますが、これが今年4月に出されております。資料4-2の表紙ですが、 第三次試案の内容を踏まえ、法律案の大綱化をした場合の現段階におけ るイメージということで、具体的な規定の方法については、さらに検討 を要するわけですが、現段階で、三次試案に基づいて、大体、法律にす るとこんなものになるであろうということをお示ししたものです。  資料4-3の第三次試案ですが、これは4月に提出したものです。例え ば2頁の左の端に四角で囲ってありますが、それぞれの項目について 「法」であるとか、「実施要領」であるとか、次の頁で「医療法に基づ く告示」であるなどという記載がしてあります。これは第三次試案のそ れぞれの項目を、現段階においてそれを具体化するに当たって必要とな る、どういう項目で手当をするかということについて記載をさせていた だいたものです。その中で「法」と書いてあるもの、また「医療法」と 書いてある所について、資料4-2で大綱案という形にしているものです。  この大綱案を出すに当たり、4月にこの第三次試案を公表して、意見 募集を行ってきて、引き続きまだ行っているわけです。6月に出した大 綱案に至るまでにいただいたいろいろな意見を、大綱案に反映していま す。その反映をさせたポイント等についてとりまとめたのが資料4-4で、 「第三次試案に寄せられた主な意見と大綱案のポイント」ということで、 第三次試案に寄せられたもので、その中で反映できるものについて大綱 案に盛り込む、または現時点での厚生労働省の考え方を示したものです。  この仕組みについては、資料4-1で説明申し上げます。大綱案が医療 安全調査委員会の設置法案となっているとおり、資料4-1の下のほうに 大きく四角で囲ってありますが、「医療安全調査委員会(仮称)」を設置 するということです。この設置の場所としては、「国に設置」という形 で記載があって、大綱案でもそうですが、厚生労働省に設置するか否か についてはさらに検討ということで、大綱案の中では明示がされており ません。それから、この委員会の目的は、原因の究明・再発防止による 医療安全の確保ということで、関係者の責任追及を目的としたものでは ないというものです。  調査委員会の構成として、中央に設置する委員会、地方のブロック単 位に設置をする地方委員会、それぞれの事例ごとに設置をする調査チー ムという3層構造を想定しております。それぞれの3つの層の構成とし ては、調査チーム、地方委員会、中央の委員会のそれぞれですが、医療 者を中心として法律関係者、医療を受ける立場を代表する者等も参画を した構成になっております。  資料4-1の上ですが、具体的な調査の手順は、医療機関からの届出、 または遺族からの調査依頼に基づいて調査が開始をされるということ です。この「医療機関からの届出」というものについては、「届出範囲」 ということで点線の四角で囲ってある所ですが、「医療過誤の疑いのあ る死亡」または「行った医療に起因した(疑いも含む。)死亡で、死亡 を予期しなかったもの」、大きく分けてこの2つの届出範囲の基準に基 づいて届け出ていただくことになっております。この届出に当たっては、 医師法21条を改正して、医師から医療機関の管理者に届出をするとい うことで、現行の警察への届出は不要とすることになっております。そ れから、※の2ですが、遺族からの調査依頼については、届出の範囲に 限定されない、又、遺族に代わって医療機関が行うことも可能というこ とになっております。  その際、調査依頼に関する相談を受け付ける機能が重要です。具体的 に調査に当たるときには、原則としてご遺体の解剖をする、カルテ等の 調査を行うということです。この具体的な調査のために、医療機関の立 入検査等のために、新たな権限が必要になりますので、その権限を付与 するということですが、当事者に関して質問に答えることは強制をされ ないことになっております。そのご遺体の解剖の結果、カルテ等の調査、 それぞれの聴取りの調査等に基づいて、先ほど言いました事例ごとに置 かれる調査チームが評価・検討を行い、調査報告書を作成し公表をする ことになっております。調査報告書については、それぞれの当事者、医 療機関、ご遺族のほうに当然お渡しをするとともに、個人情報等に配慮 して公表するということです。ここまでが地方委員会の役割ということ になります。  それから、中央に設置する委員会は、各地方の委員会が作成した報告 書等に基づいて、必要に応じて再発防止策の提言、または関係省庁への 勧告・建議を行うという仕組みです。調査報告書を作るのが医療安全調 査委員会の業務で、その報告書については公表される、または当事者に お渡しすることになりますから、それ以後のいろいろなことは、基本的 には当事者間で行われることになります。ですから、遺族と医療機関で は、その報告書に基づいて対話をしていただく、または紛争の解決に役 立てていただく、民事手続での活用もあり得るということです。  それから、行政処分についてですが、医療の事故に関しては個人の責 任ということではなく、システムエラーの観点からの問題点が重要です ので、システムエラーの改善に関して、医療機関に対する再発防止に向 けた改善措置という新しい行政処分を医療法に創設することを盛り込 んでおります。それから、個人に対しては、再教育を重視するという形 の行政処分を、いま大綱案の中でお示ししているわけです。  捜査機関との関係ですが、医療安全調査委員会で調査を行った中で、 どうしても捜査機関へ通知が必要となるような事例、いちばん下の右の 四角の中に記載がありますが、診療録等の改ざん、隠蔽、または過失に よる医療事故を繰り返している、または故意や標準的な医療から著しく 逸脱した医療が行われているという悪質な事例に限定して捜査機関に 通知をするという仕組みをご提案申し上げています。  この捜査機関への通知ということは、捜査機関のほうがそれを尊重す るという仕組みで、それについては資料4-3の第三次試案、15頁から 「捜査機関との関係について」ということで、Q・Aの形になっており ます。今回の仕組みについて、例えば15頁の2ですが、「刑事手続につ いては、委員会の専門的な判断を尊重し、委員会からの通知の有無や行 政処分の実施状況等を踏まえつつ、対応することになる」ということで、 専門家の判断・評価が尊重される仕組みということです。  これについて、資料4-3の表紙の所ですが、「本試案の内容は厚生労 働省、法務省及び警察庁の間で合意したものである」ことを明記してお ります。現在、引き続き第三次試案、大綱案について、意見募集を継続 して行っておりますことを申し添えたいと思います。6月に発表した大 綱案の概略については以上です。 ○指導課長 引き続きまして、資料5です。「『救急医療の今後のあり方 に関する検討会』中間取りまとめの概要」が表紙に付いております。ご 案内のとおり、救急医療を取り巻く環境は非常に大きく変化してきてお ります。例えば救急搬送件数の増大に代表されるような、救急医療需要 そのものが大幅に増加している。これらに対応する救急医療提供体制の 確保というのが喫緊の課題として求められている。こういう状況の中で、 平成19年12月にこの検討会が設置されて、以来検討を行っていただい てきたもので、先般7月30日付でこの中間とりまとめがまとめられた という状況です。  中身は大部ですので、1頁の資料5-1で説明申し上げます。先ほど説 明した「安心と希望の医療確保ビジョン」の中に、救急医療に関する記 述があります。具体的には左の上ですが、救急医療の充実として、量的 充実、また質的充実と、併せて夜間・救急利用の適正化という事項が2 項あります。これらとの関係で今回の提言の内容を説明いたします。  まず、右の上ですが、第三次救急医療機関として、最も高次の救急医 療を担う医療機関をさらに充実させる必要があるということです。  いちばん上の枠ですが、救命救急センターに対しては、毎年その活動 状況などについて評価を行ってきているところです。その評価項目の中 に、例えば2つ目のポツにあるように、交代勤務制を含む病院勤務医の 労働環境改善にかかる評価項目を追加することで、大変厳しい環境にあ る救急医の環境の改善につなげていきたいということです。  2つ目の四角の枠は、「救命救急センターの整備のあり方」というこ とで、いままで概ね人口100万人に対して救命救急センターを設置する という方向性があったわけですが、それと同等の活動実績がある施設が あって、救命救急センターとして位置づけをしてほしいという要望もあ り、この検討会で議論いただいた結果、そのような施設であれば、新た に救命救急センターとして位置づけをしていくことが妥当なのではな いかという意見をいただいています。  その下に「第二次救急医療機関の充実」という事項がありますが、先 ほど豊田委員からもご指摘がありましたとおり、この第二次救急医療に ついては各地域で支えていただいているわけですが、その取組の状況は 各地域によってさまざまです。国としては、それぞれの実情に応じた取 組を支援していくべきではないか、という意見をいただいたところです。  さらに、その下に「救急搬送における課題と円滑な受入れ推進につい て」という囲みがあります。その中で、特に搬送に関しては、医療機関 と消防機関の連携について、先ほど来出てまいりましたような管制塔機 能ということも含めて対応をしていくべき、という意見がありました。  さらに右側ですが「円滑な受入れ推進に向けた対応」として、診療所 の先生方に休日あるいは夜間に外来の診療、あるいは救急医療への参画、 という形で支援していただくという提案がなされると同時に、併せて3 つ目のポツとして救急医療体制の現状や転床・転院等に関する国民の理 解を求める、ということも記載をいただいたということです。私どもと しては、これらの中間とりまとめの内容を踏まえて、予算要求、またさ らには救急医療の充実に努めてまいりたいと考えております。以上です。 ○研究開発振興課長 引き続きまして、「遠隔医療の推進方策に関する 懇談会中間とりまとめ」について説明申し上げます。資料6ですが、1 枚目に懇談会の概要について整理しております。2枚目以降、懇談会の 中間とりまとめ本体を付けておりますが、本日はこの1枚目を用いて簡 単に説明申し上げます。  まず、この「遠隔医療の推進方策に関する懇談会について」です。「背 景・目的」として、地方における医師不足等が指摘されている状況を踏 まえ、地域医療の充実に資する遠隔医療の活用方法と、その推進方策に ついて検討するということです。総務大臣・厚生労働大臣の共同開催と いう形で、懇談会を開催させていただいております。事務局には経済産 業省も参加しておりますので、事実上、3省の共同ということです。慶 應義塾大学の政策メディア研究科の金子郁容教授が座長、構成員18名、 地方公共団体、医療関係者、医療経営、政策、公立病院関係、あるいは IT関係者、医療消費者等々の方々の参画を得て検討が行われたところ です。  「主な検討事項」についてですが、4点あります。1点目として、地 域医療が抱える課題と地域医療のニーズ、2点目として課題解決に資す る遠隔医療モデルの内容、3点目として遠隔医療モデルの推進に向けた 課題、4点目として20年度実証プロジェクトの実施内容等という4点 の検討事項がありました。本年3月21日に第1回を開催して、その後 合わせて5回にわたり会議を開催したところです。7月31日に第5回 目を開催して、中間とりまとめを発表しております。なお、この中間と りまとめに関しては、9月現在、パブリックコメントを実施することと している状況です。  次に「中間とりまとめ(提言)」の概要についてです。1点目は、遠 隔医療のニーズ・有効性・適用範囲についてということです。まず、遠 隔医療のニーズは明らかに存在をするということで、例えば慢性期の再 診、あるいは健康管理、予防医療、生活習慣にかかわる治療・健診・相 談・教育等への活用ということが議論をされたところです。また、遠隔 医療の有効性については、実証、検証がさらに必要であるというご議論 がありました。  次に、遠隔医療の位置づけについてですが、「対面診療が基本、遠隔 医療は補完的」という議論だけでは問題解決は困難であるというご議論。 遠隔医療の位置づけの明確化が必要であるというご議論がありました。  次に、診療報酬の適切な活用についてという点ですが、診療報酬の適 切な活用に資する安全性・有効性等のエビデンスの検証が必要である、 というご議論がありました。  次に、補助金、地方交付税など財政支援措置の活用等ということで、 費用負担の仕組み等々の検討が必要であるというご議論がありました。  最後に、モデル事業の実施ということで、これまで申し上げたような 点の検討も含めて、今年度、平成20年度に総務省予算として2億円程 度のモデル事業を実施する予定にしており、公募をしたところです。8 月末に公募締切りをしており、現在15件程度の応募があったと確認を しております。概ね1件程度、4,000万から5,000万程度の規模での実 施を現時点では想定しているところです。  今後の予定について、もう一度申し上げますが、先ほど申し上げまし たように、現在この中間とりまとめについてはパブリックコメントを実 施することとしているところです。それから、懇談会の下にワーキング グループを設置して、懇談会でなされた提言等について議論を実施する 予定です。また、調査研究を実施する予定にしており、過去の遠隔医療 の研究等々について、再整理をすることを考えているところです。来年 度以降ですが、各提言における重要事項、あるいはモデル事業の状況 等々、この懇談会において引き続き議論をする予定にしております。以 上です。 ○部会長 予定の終了時刻まで30分弱ありますが、まず最初の医療安 全調査委員会のことについて、20分ぐらいを目処にご議論いただきた いと思います。いろいろご意見があると思います。 ○西澤委員 まず、最初にお聞きしたいのですが、いま委員会で検討さ れて法案、案までできたのですが、この医療部会との関係、その辺りを ちょっと明確にしていただければと思います。今日ここに提案されたの は、ここでの決定を要してから法案にいくのか、あるいは別な形なのか、 教えていただければと思います。 ○参事官 先ほどちょっと説明を省略してしまいましたが、この大綱案 に至るまでの過程を少し説明申し上げたいと思います。昨年3月に第一 次試案と申しますか、厚生労働省の案をお示しして、4月に有識者にお ける検討会を設置し、今年の3月まで13回、検討会を開催しました。 それで、いろいろいただいた意見を踏まえて、この4月に三次試案、そ れに基づいて法律案ではなくて、その前の大綱案という、法律にしたと きのイメージというような形でお示ししたもので、実際に法律案とする までにはまだいろいろ作業をしなければいけないわけですが、その大綱 案をお示しし、引き続きご意見を幅広く募集をしているということです。  まだそのまま法案という形になるということではありませんで、今後 の手続に当たりましては、先ほどもありましたが、この設置法案、医療 法等の改正も対応しなければいけないことになりますので、それは必要 に応じて、この医療部会も含めていろいろご検討いただくこともあろう かと思います。 ○西澤委員 いまひとつわからなかったのですが、私の解釈ではこれが 法案として出る前には、医療部会でもう一度、検討するということに解 釈させていただきました。それで、今まだ意見の募集ということですが、 これを見て、もともと医療過誤の疑いある死亡例について調査するとい うことだったのですが、今回の目的は原因究明・再発防止による安全で あり、関係者の責任追及はないということになっております。第三次試 案、あるいは大綱案を見ても、この目的と中身がどうも違うのではない かという気がしております。簡単に言うと、中身は原因究明・再発防止 ということと、片方では医療過誤の有無を判断する組織、その目的が違 った組織がどうも1つになっているのではないかという気がしていま す。是非、その2つを分けて、もう一度議論していただければというの が意見です。  また、いまパブリックコメントも出ておりますが、今回の大綱案はま だそれを反映していないと考えております。特にいま救急だとか急性期 の現場の勤務医の先生方が、この第三次試案、あるいは大綱案に関して、 かなり意見を申し上げております。是非そういう声をもう一度聞いてい ただいて、できれば第四次試案まで持っていって、本当に目的に合う、 その目的は、やはり国民の方々がこういう事故をもう起こしてほしくな い。そして、さらに何とかそういうのを防いでいただきたい。そういう 目的に合うような、もっと良いものにしていただきたいと思っておりま す。以上です。 ○渡辺委員 いまの西澤委員に関連して、例えば先の通常国会で、厚生 労働省はできれば法案を出そうとしたわけでしょう。つまり、医療部会 の意見はその間ずっと開かれず、全く聞かずに、たまたま国会情勢で法 案を出さなかったと。できれば、次の臨時国会に出したいという方針な のです。ことこれに関して医療部会を開かなかった理由を、もうちょっ と詳しくお聞かせください。 ○参事官 先ほど説明しましたとおり、検討会という別の組織で、ずっ と検討させていただきました。それから、幅広くご意見を募集するとい う手続をとって、こういう形に近付けてきたわけです。やっと法律案と いう形に近付いてきたわけですので、今後の手続等については先ほどご 説明をしたとおりで、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えて おります。 ○豊田委員 3点について、内容を確認したいことと、意見を述べさせ ていただきます。1つは資料4-1の医療安全調査委員会の構成です。左 側の四角に囲まれているところですが、この委員会は要するに死因をは っきりさせることと、それを踏まえてどのようにそれを扱うかと。例え ば警察などに通知することを含めて、あるいはシステムエラーで勧告す るなどという役割を持っているわけです。  ここにあります遺体の解剖、つまり生物学・医学的に、この人はなぜ 亡くなったのか。医学的にその原因を究明するのは、これは純粋に医学 的・専門的な仕事だと思うのですね。これまでの厚生労働省のいろいろ な機会での説明では、透明性を確保するために、そういった中にも法曹 界の代表であるとか、医療を受ける側の代表も入れるのだというような 説明がありました。ですけれども、今日この表を見ますと、「遺体の解 剖、カルテ等の調査」、これにはどうもその位置関係が問題ですが、調 査チームにはそういうことは書かれていない。  それから、この大綱の中には、この調査は死因によっていろいろある わけですから、それに臨時の専門家を指名して、委嘱して、そこで調査 を行わせるという形になっておりますが、その場合にどうなのですか。 質問ですが、この調査チーム、純粋に医学的に調査するチームを編成す るときに、やはり法曹界、あるいは医療を受ける立場にある代表等も想 定されているのでしょうか。まず、それが1点です。  次に、大綱案の6頁、雑則の第25「警察への通知」には、委員会で 調査した結果、警察への通知については(1)から(3)まであります。(3)は隠 ぺいとか偽造などということで、そういった問題は議論の余地はないと 思います。問題はその中にある(2)「標準的な医療から著しく逸脱した医 療に起因する」と。これに関連しては、同じ資料の9頁の32の(4)と の関係ですが、この「著しく逸脱した医療」というその線引きが非常に 難しいし、今後、場合によっては新たな問題を生ずることにもなりかね ないですね。それで、その基準を32の(4)で定めるとありますが、そ の定める際に、これはいままでの説明等から私どもが各学会のガイドラ インなどの意見を最大限に尊重するというようなニュアンスで聞いて おりますが、そういう医療に関することは医療専門家の意見に従って、 ガイドラインを決めていくということでよろしいのかどうか、それが2 点目です。  もう1つは、今回のこの整理で、医師法21条による届出の範囲が決 まりました。ただ、1つはっきりしていないのは、医療機関が「これは 届出の必要はなし」ということで、委員会に届けない。しかしながら、 家族の側は「いやいや、そうはいかない」ということで、警察にこれを 訴えた場合、いままでのケースと同じです。現在と同じ。その場合、こ の法案を作る趣旨からすれば、当然、警察は「いや、それは委員会に持 っていってください」という主管大臣に届ける形を勧告するのだろうと 思うのですが、その辺が文章としてはっきりしておりません。その辺に ついて、警察あるいは法務省とのすり合わせがどうなっているのかにつ いて、教えていただきたいと思います。以上です。 ○参事官 まず、第1点目のご質問、調査チームの構成ということです が、資料4-3の第三次試案の14頁です。別紙2「医療安全調査委員会 の構成」ということで、中央に設置する委員会、地方ブロック単位に設 置する委員会、調査チームと、先ほどご説明したとおり3つの層がある わけです。ここに記載してありますとおり、その3つそれぞれが学会、 病院団体、医師会等の医療の専門家と法曹界、有識者、医療を受ける立 場を代表する者等で構成をされるということで、この調査チーム、地方 委員会、中央に設置する委員会、それぞれが同じような医療界、法曹界、 有識者によって構成をされるということです。  2つ目のご質問ですが、標準的な医療についての線引きと申しますか、 その問題については資料4-2の第25の(2)の注)に記載してあります。 「標準的な医療から著しく逸脱したものに当たるかどうか」ということ については、この医療の専門家を中心とした地方委員会、調査チームが 個別具体的に判断をするということです。そのときには、病院、診療所 等の規模や設備、地理的環境、医師等の専門性の程度、こういうものを 勘案して地方委員会で個別具体的に判断をするということです。  それから、ご指摘のあった32については、届出の範囲を定めるとい うところですので、警察への通知ではなくて、最初の入口のところの医 療機関側が何を届けるかということの基準です。この基準については、 9頁の(4)の2に記載してありますが、「基準を定め、又はこれを改定 しようとするときは、医学医術に関する学術団体及び医療安全調査中央 委員会の意見を聴かなければならない」ということですので、ここで医 療界に主体的に関与していただくことの記載があります。  それから、21条との関係ですが、これは同じく資料4-3の16頁の問 2の1の2行目にありますように、「遺族から警察に対して直接相談等 があった場合にも、遺族は委員会による調査を依頼することができるこ とから、警察は、委員会による調査を勧めることとなる」ということで、 警察による委員会の調査を勧めることがここに明記をされているとこ ろです。以上です。 ○村上委員(大井参考人) 病院団体としては、死因究明についてのこ ういう取組は非常に大切だと認識しており、ここまで何回もまとめられ たご努力には敬意を表しますし、いろいろな問題がそれぞれの立場でた くさんあることは事実ですね。ポイントなのですが、先ほども西澤委員 の質問にあったのですが、今後の予定が何かちょっと見えにくい。いま 非常に答えにくいような状態にあるのかもしれませんが、今後この大綱 案を基に、法案化を組み立てていくプロセスをわかっている範囲でお教 え願えれば大変参考になります。よろしくお願いします。 ○参事官 先ほども説明いたしましたとおり、大綱案、それから第三次 試案も含めて、広く国民の皆様のご意見をいただいているところです。 十分に議論した上で、概ねの理解が得られれば法案化をしたいと考えて おりますが、現時点で大井参考人からのご指摘もありましたように、い ろいろなご意見をいただいております。ですから、その意見を踏まえて、 今後検討していかなければいけないわけです。西澤委員からもありまし たが、外科系の学会等、いろいろ反対の意見を表明されているようなと ころもありますので、そういうところといろいろ意見交換をする、また は公開の討論会を行うなど、いろいろな場面でご理解をいただくととも に、意見交換をし、議論を深めていきたいと思っております。そういう 中で、十分に議論を尽くした上で、必要な場合には大綱案という形その ままではなくて、必要な改善を行った上で、速やかに、できる限り早く 提出をしたいと考えているところです。 ○上田委員(宮山参考人) 代理で出席させていただいておりますが、 委員会の構成について、1点意見を述べさせていただきます。医療安全 調査委員会は、情報の一元化、あるいは調査の均一化を基本として、必 要な提言を行う役割を担うと、そのように認識しております。ですが、 医療制度は大変複雑である、あるいは医療安全に関係する機関が非常に 数多くあることを踏まえると、このたび中央委員会、地方委員会、ある いは地方委員会に属する調査チームという3層構造で設計がなされる ことは、いかがなものかという思いを持っております。全国的な調査の 統一を図る上からも、調査チームも含めて、国に一元的に設置されるべ きではないかという考えを持っております。想定される件数の問題もあ ろうかと思いますが、そういった視点でご検討いただければと思います。 ○佐伯委員 ちょっと疑問があるのですが、例えば「委員会の構成」に 保険者は入らないのだろうかとか。すべて皆保険制度の下での医療の中 で起こったことですよね。それについて真相を究明して、今後の改善を 図るということであれば、どうしてそういう立場の人が入っていないの か、ちょっと疑問であったりします。  そして、最初のイメージ図なのですが、私が1つこの試みに危惧もし ますし、大いに期待もしている。その危惧の1つは、「届出範囲」とい うことで、左の(2)です。行った医療に起因した死亡で、死亡を予期しな かったものは届出をするというように書かれてあると、すごく悪く解釈 すると、医療の不確実性ということで言えば、どの行為であっても死亡 を予期することはできるとも言えるわけですよね。そうすると、「予期 することもある」とマルを付けたら、すべてのことが届出をしなくても よくなるということもあるかなと。  それはとても穿った見方ではあるのですが、やはり今回のこの試みで いちばん大事にしたいのは、国民が医療に対してもっと信頼を持って理 解を深めていくことだろうと思いますので、いろいろなこういう取り決 めのところでも、話合いのところに、一般の方をもっともっと入れてい ただきたいと思います。  私の意見として出しましたが、例えばパブリックコメントというやり 方です。昨年、後期高齢者医療制度についてのパブリックコメントをや りましたということであったのですが、結果は誰も知らなかった、わか らなかった、混乱が多かった、むしろ反発が出てしまった。まともな議 論には至らずに、本当は財源としてもっと社会保障の青写真を描いて財 源を確保しないといけなかったのに、それも削ってまでも、いま不満を 抱えている人に納得していただく。そんな後手に回ってしまったわけで すね。先ほど公聴会も開くつもりもあるというようなことをおっしゃい ましたが、もっと明確にその手順を踏んでいただかないと、難しいので はないかなという気がいたします。地方の自治体、保険者、住民全部絡 めて、同じステークホルダーとして考えていただきたいと思います。 ○部会長 まだご意見があるかもしれませんが、あと2つ、救急医療、 遠隔医療についてはいかがでしょうか。 ○熊坂委員 4番目の議題にも絡むのですが、各委員からいま出た意見 は、医療部会のあり方についての問題提起だと思っています。佐伯委員 の参考資料に端的に書かれているのですが、今回のこの医療安全調査委 員会の設置については、福島県立大野病院の裁判のあとを受けて、いま 大変注目されていると思うのです。そういう中で、この医療部会は、医 療を提供する体制の確保に関する重要事項の審査と審議ということで すので、私も今回の資料をかなり読んできてここに臨んだのですが、そ のことについての審議というのが少し時間が足りないように感じてい ます。  それから、先ほど質問がありましたように、法案をどういう手順で出 していくのかというのがよく見えないし、いまの話を聞いてもちょっと わからなかったのですが、この医療部会においても、このことに対して は相当責任を持っていると思いますので、佐伯委員がお話されたように、 この医療部会も含めて、手順を踏んでいく必要があるのかなということ を感じました。  それから、救急医療の今後のあり方についてですが、宮古市は中核病 院の循環器科が不在になったために、いま心筋梗塞の患者さんを2時間 かけて盛岡に搬送しており、大変深刻な状況になっております。そうい った状況の中で、ドクターヘリ等をこういう形でまとめていただいたの は有り難いのですが、16機を24機にと、1機当たり2億円ですから、 仮に47都道府県全部に配置しても、わずか100億円で命の地域格差は なくなるわけですので、そういったことも、もう少しスピード感を持っ て予算措置をしていただければありがたいと思います。 ○部会長 救急、遠隔に関しては、ほかには特によろしいですか。ある いは、前に遡ってこの場で特に産科医療の問題も少し時間が足りなかっ たかもしれません。一言ぐらい、誰かおっしゃる方はどうぞ。 ○豊田委員 先ほどの質問に関連して、いままでの二次、三次、そして 大綱と、説明がいろいろありますね。私は大綱に現れていないので質問 したのですが、一緒に出された第三次試案に書かれた、あるいはその説 明文については、全部この中に包括されていくと考えてよろしいでしょ うか。 ○参事官 大綱案の表紙を見ていただくとわかりますが、第三次試案に ついて、先ほど少し説明しましたように、法律で対応しなければいけな い部分について、大綱案という形でまとめているものですので、第三次 試案と大綱案は一体のものという形でご理解いただければと思います。 ○豊田委員 わかりました。 ○村上委員(大井参考人) 救急医療について、ちょっとお尋ねします。 この中間とりまとめの概要を見たり、いろいろな意見を聞きますと、救 急医療に関しては初期、一次、二次、三次医療という柱は変えない、堅 持するという理解でよろしいのでしょうか。それとも、いちばん下に、 ERについては正確な実態把握を行うと。ER型についてはどうお考えに なって、どのようにされようとしているのか、その辺はこれからの救急 体制を変える非常に大きな流れを決めていくことになると思うのです が、どのようにお考えになっているか、ちょっと教えていただきたいと 思います。 ○指導課長 救急医療の体制については、昭和50年代以来、初期、二 次、三次という、先生がご指摘された構造で整備を図ってきたわけで、 現時点においてその内容を大きく変えるというところまでには議論は 至っていないのではないかと考えております。一方で、ご指摘がありま したように、ERという新しい救急医療の体制が提言されており、全国 でもいくつかそのような試みが行われているという現状です。私どもと しては、そのような現状を十分に理解し、また評価を行った上で、新し い救急体制として位置づけていく必要があるのかを見極めていく必要 があるのではないかと考えており、いまそういう段階にあると考えてお ります。 ○小島委員(飯倉参考人) お時間がないところで恐縮でございます。 医療安全の関係に戻りたいのですが、今回のこの大綱、あるいは第三次 試案についても、もともとは不幸にして起こった医療事故によって、医 師と患者の対立、あるいはひいては医療訴訟まで発展する大きな要因の 1つとしては、患者の立場から言えば、やはり医療者側からの十分な情 報公開なり、開示なりといったものがされなかったことがあるのではな いかと思っております。  そういう意味では、医療の不確実性があることは十分理解していると ころですが、その上で医療者が患者・家族に対して誠意を持って事実を 説明する。もちろん多くの医療機関ではそういうことが実行されている のでしょうけれども、その中で医者と患者の間に情報の非対称性がある 以上、一度そこの関係での信頼関係が壊れてしまうと、そのあといくら 当該の医師から説明を受けてもというのが、やはり患者の心情だろうと。  したがって、そういう意味でも中立な第三者機関による正確な情報提 供、分析が非常に必要になるということですので、そういう意味からも、 もちろん不明な点や議論が不十分な点については十分議論を尽くす必 要があると思いますが、今回の制度についてはなるべく早急に実施して いただけるようにご努力を願いたいと思っております。  その上で、今回はあくまでも、もともと医師法21条に基づく見直し というところから議論がされておりますので、死亡に限定したものにな っておりますが、本来で言えば重篤な障害が残った場合、そういった場 合もどうするのかということも課題としてはあると思っておりますの で、今後はそういうところも含めて検討を広げていただければと考えて おります。以上です。 ○部会長 まだご発言があるかもしれませんが、予定の時刻になりまし たので、本日はこれまでとさせていただきます。先ほど熊坂委員が言わ れました医療部会のあり方といいましょうか、ここで今日出されたいろ いろなご意見、反対の意見も結構あったように思いますが、それらは是 非、事務局のほうでそれぞれの懇談会なり委員会のほうへ伝えていただ いて、フィードバックしないと医療部会の存在意義はないと思いますの で、よろしくお願いしたいと思います。それから、これはこれまで毎回 申し上げてきたと思いますが、今日言い足りなかったことは、是非、事 務局総務課のほうへファックスでもメールでも結構ですが、出していた だければありがたいと思います。それでは、今日は大変お忙しいところ お集まりいただきまして、長時間にわたっての議論をありがとうござい ました。閉会にいたします。 照会先 医政局総務課 高島、和田 連絡先:03−5253−1111(内線2519)