08/08/06 第117回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第117回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成20年8月6日(水)14:00〜 2 場所  厚生労働省共用第9会議室(18階) 3 出席者    委員  公益委員 :鎌田委員、北村委員、清家委員        労働者代表:市川(佳)委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:市川(隆)委員、平田委員、橋本代理(山崎委員代理)   事務局  太田職業安定局長、大槻職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木主任中央需給調整事業指導官、田中派遣・請負労働企画官、        松原需給調整事業課長補佐、待鳥需給調整事業課長補佐、        鶴谷需給調整事業課長補佐、竹野需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)労働力需給制度について ○清家部会長 ただいまから、第117回「労働力需給制度部会」を開催いたします。本 日は、使用者側の山崎委員がご欠席で、代理として東京商工会議所の橋本産業政策部長 がご出席です。本日は、労働力需給制度についてご審議をいただきます。前回、この部 会で鎌田委員に座長をお務めいただいた「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究 会」の報告書について事務局から説明をしていただきました。前回も申し上げましたけ れども、私といたしましてはこの研究会の報告は、当部会において公労使一致して昨年 末に取りまとめた中間報告に基づいて検討を行っていただき、取りまとめていただいた ものであるということです。私どもからお願いをして、取りまとめをいただいたという ことを重く受け止めて、基本的にはこの研究会報告書を尊重し、その上で皆様方にご審 議をいただくことを、各委員に改めてご確認いただきたいと思います。  前回この部会でお願いしておりましたとおり、本日はこの報告書について、委員の皆 様方からさまざまなご意見をいただきたいと思います。どなたからでもご自由にお願い いたします。 ○古市委員 いま部会長からお話がありましたが、研究会の報告を尊重した上で4点意 見を申し上げます。  報告に日雇派遣の禁止を打ち出したことについて、前回の部会で使用者側の皆さんは 異論があるということのようであります。現在の労働者派遣の現状からすれば、私ども は当然の結論だと考えております。この部会でさまざまな議論があったわけですが、労 働者派遣の制度設計や改正に関わってきた関係者の誰もが、今日問題になっているよう な、例えば携帯メールを活用して日雇派遣が行われるなどということは想定していなか ったのではないかと思われます。釈迦に説法ですが、労働者派遣は、自己の雇用する労 働者を、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させることになっています。 現在行われているような日雇派遣は、労働者派遣と言い得るのかどうなのか。きちんと 雇用しているという自覚があるのかどうか非常に疑問であります。日雇派遣の派遣元が 実態として果たしている現在の役割というのは、職業紹介事業とどのように違うのかと いう疑問を持つところであります。  2つ目は、登録型派遣、常用型派遣などについてです。報告書では6頁と7頁に記述が あります。登録型派遣の問題点は報告で指摘していることを含め、様々なものがあるわ けですが、報告書に書かれている対応策だけでいいのかと思うところであります。以前 にも申し上げましたが、これまでの制度改正というのは、規制の緩和が次から次に行わ れてきたわけです。1999年改正まで戻って、登録型派遣は専門26業務に限って認めるべ きではないかと考えております。少なくとも直近の2003年の改正で、製造業への派遣が 解禁され、医療関係の業務への一部派遣も認めたということが、派遣労働者が関係する 労災事故が非常に増え、社会的に非常に多大な影響をもたらしている。こういう現状を 踏まえると、本当は1999年改正まで戻るほうがいいのではないかというのが私の意見で すが、譲っても2003年改正で解禁した業務というのは、再び禁止をするという方向に行 くべきではないかと考えます。  3つ目は、派遣元、派遣先の責任として労災保障の責任等について11頁に記述がありま す。これの法的対応について、現行制度以上の法的対応が必要なのではないかという意 見です。現在の労働安全衛生に関する責任分担では、少なくとも現行で派遣元だけにか かっている雇入れ時の安全衛生教育について、派遣先にも派遣労働者受入れ時の安全教 育として責任を負わせるべきではないかと考えます。そうでありませんと、研究会報告 が提案しております、被災者の保険給付にかかる費用を派遣先から徴収できない点につ いての見直しの実効性が上がらないのではないかと危惧するところであります。危険・ 有害業務に関する教育に限らず、雇入れ時の安全衛生教育について、派遣先にも責任を 負わせるべきだと考えるところであります。  4つ目は、特定を目的とする行為、事前面接等についてでありますが、13頁から15頁 に記述がされています。報告書は、常用型を期間の定めのないものとすることを前提に、 特定を目的とする行為を認めても差し支えないと言っているわけです。特定を目的とす る行為というのはどういう行為を指すのか、いくつかは指摘をしているわけですが、そ こがちょっとよくわからないので教えていただきたい。それから、常用型についてどの ような行為を認めてよいと言っているのかということがあまりよくわからない。仮に認 めるとなった場合に、特定を目的とする行為と称して何でも行っていいのかということ になるのが心配だということです。あの人は駄目なので、違う人にしてくださいといっ たことが、派遣先で何回か続けて言われたりしますと、派遣労働者の派遣元での雇用の 安定そのものを脅かすことになりはしないか。こういうことについて、非常に強く危惧 をいたします。したがって、期間の定めのないものを前提にして、特定を目的とする行 為を認めていいのではないかというのはいかがなものかという意見です。以上4点意見 を申し上げました。 ○平田委員 この研究会報告ですが、前回ご説明いただいて改めて読み返させていただ きました。私どもといたしましても、雇用の安定とか労働者の保護といった共有できる 部分もかなりあるということをまず申し上げておきます。また、取りまとめに敬意を表 します。その上で4点申し上げます。  日雇派遣の禁止が打ち出されている件について申し上げます。報告書の中に危険業務 というのがありますけれども、そういうものを禁止対象とした場合には、安全衛生教育 に必要な期間を確保するということであれば、この報告の中では30日以内ということが 参考に書かれておりますが、必要な教育の期間を確保するためには、1〜3日とか、1日 教育をして1日働くという場合も十分考えられると思います。  30日についてもいろいろな指針があって、遡れば雇用保険法の日雇保険の30日という のがベースになっているということだろうと思います。これは質問でもあるのですけれ ども、短期の労働者の保護を図る制度としては、雇用保険以外に何かあるのかどうか。 もしお答えをいただけるのであれば後でいただければと思います。  雇用保険で保護されている労働者については、制度上短期雇用の弊害というのは基本 的なところでは担保されているのではないかと思っているところですが、その点はどう かということもお伺いします。  そういうことを前提に、雇用保険が最低限のセーフティネットということで、それが あった上で被扶養者とか年金受給者、もしくはほかに収入がある者は生活の保障が図ら れているということを考えれば、規制によって不利益を強いる必要があるのかどうかと 考えております。  日雇派遣禁止ということで、一定の配慮で、いろいろな措置が必要になってくると思 っておりますけれども、30日未満の雇用を禁止した場合、対応しなければならない対象 というのは、本当にどれぐらいの規模かということを改めて確認させていただければと 思っております。前回だったと思いますけれども、5万3,000人という説明がありました けれども、あれは東京、大阪を中心とした限定的な調査と理解しておりますがその点は どうなのかを確認させていただきます。  労働者の雇用の安定という観点に立てば、他の手段で就労促進ということも考えてい かなければならないと同時に、先ほど申し上げたとおり、日雇労働者の雇用保険がある ということであれば、その活用というのも十分考えていく必要があるのではないかと思 っております。以上が1点目です。  2点目は、常用型派遣への誘導という提案が研究会報告の中にあります。これは我々 としても雇用の安定という観点に立てば基本的に同意できますし、それは是非導入して いくべきと考えております。ただし雇用期間を、期間の定めのないものということで限 定しておりまして、そうしてしまった結果、間口が狭いものになってしまって、労働者 にとっても必ずしもプラスにならない部分も出てくるのではないか。結果的に、登録型 派遣については賛否両論のような形で整理されているように思いますが、登録型派遣へ の転換を促してしまうことになるのではないかと思っております。  事業とか業務の特殊性といったことをもって、雇用の期間を期間の定めのないものと いうことで、法令上整理しているものがあるのかないのかということについて、後で教 えていただければと思います。  私どもの考え方として、労働者派遣法の基本理念は、派遣先の常用代替の防止にあっ て、実は本日ここに来る前に1999年改正ですとか前回改正の建議も読み返してきたので すが、そういう考え方に基づいてできている現行制度ということでした。そこから少し 踏み出すと申しますか、考え方を変えて、労働市場全体での常用代替防止、即ち冒頭に 申し上げたことの繰り返しになるのですが、常用型派遣へ誘導していく。常用は常用労 働者ということだと思いますので、そういう見直しも必要なのではないかと思っており ます。  3点目は、グループ企業派遣についてです。これは前回の質問とダブるのかもしれま せんが、報告書の中にはグループ内で統一的な人事管理の下で行う労働者派遣事業とい う記述がありますけれども、どういったことを念頭に置いて問題を指摘されたのかとい うことについて、もし議論があったのであればその点を教えていただければと思います。  例えば、定年退職後の高齢者に係る再雇用の措置、もしくは出産・育児・介護、ある いは個人的なやむを得ない理由で退職する人もいると考えておりますので、そういった 人たちに向けた再雇用の措置として、労働者派遣制度の活用、これは適当と考えるべき か否かということですけれども、そういった活用の仕方があってもいいのではないかと 思っております。  読み方の問題なのかもしれませんが、報告書の中に解雇権濫用とか、もしくは一方的 な労働条件の切下げというものが、派遣を使ってなされているという記述があったと思 いますが、それは、そもそも労働者派遣法の問題ではないのではないかと考えておりま す。グループ企業派遣については、どういうものが専ら派遣に該当するのかどうかも含 めて、具体的な、もしくは実践的なガイドラインを作って、もちろん悪質なケースにつ いては指導や監督が必要なのでしょうけれども、先ほど申し上げましたように、いろい ろな形で雇用の継続に役に立っているケースもある、ということがあるのではないかと 思っております。  3点目は、違法派遣に関与した派遣先の直接雇用申込措置についてです。前回も質問 させていただきましたが、単純な過失も含めて、そういうケースも確かにあるという答 弁があったと思うのですが、そういう場合も含めてすべて派遣先での直接雇用が適当と 考えるべきではないのではないかと思っております。本当に派遣先で直接雇用すること が適当というケースについては、その事由が故意であるとか重過失であるといったもの も含めて、主観的要件の特定が必要であると考えておりますので、個別ケースごとに検 討が必要なのではないかと思っております。  それから、研究会報告の中にも民事効というものが書かれておりますけれども、正直 申し上げて将来的に発生することが期待される法律上の利益を予測することはかなり難 しいのではないかと考えております。それをめぐって裁判が混乱するということであれ ば、それは必ずしも労働者の保護に資するものではないのではないかと思っております。  それから、勧告・公表に係る指導前置を原則的に廃止するということが書かれており ますけれども、このことについては指導・助言等による是正の機会の付与は必要なので はないかと思っております。私からは以上です。 ○清家部会長 少しテクニカルな問題でご質問がございましたけれども、事務局からお 答えいただけますか。 ○鈴木課長 ご意見の部分は承ることといたします。質問の部分で、古市委員のご発言 の中に、特定を目的とする行為の件がありました。もともと特定を目的とする行為とい うのは、例えば労働者派遣に先立って面接をするとか、派遣先に対して履歴書を送付さ せるとか若年者に限定するといった行為をいうという解釈になっています。  今回、この特定を目的とする行為についての議論については、派遣元が本来どの労働 者を送るかを選定すべきものを、特に登録型派遣については派遣する労働者を決めてか らその人を雇用するという段取りになるわけですが、そこで特定という行為が派遣先か ら行われることになりますと、派遣先が関与して派遣元の労働者の採用が決まってくる ことになる。これは、即ち労働者供給に該当するのであり、そういうものを防止するた めに特定を目的とする行為を禁止しようというのがもともとの法の趣旨だと理解してお ります。研究会の中でもそういう議論がなされました。  なぜ常用だと良いのかいうと、ここでいう常用とは期間の定めのない雇用契約をいい ますが、常用であればもともと派遣元で雇用されていますので、派遣元での採用に派遣 先が関与するということはその限りにおいてなくなるということで、労働者供給に当た るおそれがないということから、この特定を目的とする行為についても認めてもいいの ではないかということです。労使の調査で双方にニーズがあること等から、認めてもい いのではないかという意見があったことを考慮し、常用の場合については期間の定めの ない雇用に限るわけですが、特定を目的とする行為については除外してもいいのではな いか。ただ、その際に派遣先による差別行為、例えば年齢差別とか性差別といったもの があってはいけないので、逆にそういう部分を解禁する場合には、その部分は差別禁止 などの担保措置を作るべきだという研究会報告の内容になっているかと思います。  平田委員からの質問が4つありましたが、まず日雇派遣の関係で、日雇の定義をする に当たって、危険業務だったら1〜3日ぐらいでいいのではないかということであります が、研究会報告書全体として、日雇についての危険業務は確かに日雇派遣としては適切 でないという言い方をしておりますが、それだけが日雇の禁止の理由ではありません。 基本として日雇派遣というのは、短期間の雇用であって、雇用管理の派遣元の責任を果 たしていないという実態もあるし、構造的に果たせない形の雇用であります。  そうしますと、もともと派遣というのは派遣元がしっかり雇用することを前提に、労 働者供給事業から取り出す形で派遣事業を認めた経緯がある以上、そこが十分果たされ ていないものについては禁止すべきだということで、危険だからというだけが理由では ありませんので、その辺りをご考慮いただきたいと思います。  その場合に日雇指針を前例として引いておりまして、もともと日雇指針のときにも若 干ご議論があったかと思いますけれども、日雇の定義をするときに1日というのが通常 の日雇ですが、1日だけ規制すると脱法行為が起こる。例えば2日契約にして1日休業す るといったことになると規制の意味がなくなるというので、若干幅を持たせてやろうと いうことです。その際に前例を見ますと、日雇の雇用保険が日々又は30日以内の雇用を 対象にしています。  その雇用保険の趣旨としては、雇用の不安定等々もありますけれども、通常の雇用管 理というのは1カ月サイクルで、月給制などが典型として行われることが多い。そうい うときに1カ月よりも下回るような契約を結んでいると、それはしっかりした雇用管理 がなされていないのではないかということです。雇用保険についても、日雇保険は事業 所適用ではなく、手帳を発給して労働者の方から主体的に適用していくという形になっ ているというのは、やはり雇用管理が事業所でしっかりなされていないということもあ るかと思います。そういうものも含めて日雇指針のときには、雇用保険の前例に倣って 30日以下と作った経緯があります。これについては今後の議論によりますけれども、日 雇指針についての経緯はそういうことです。  その他に何か短期の雇用についての例はあるかということですが、強いて挙げれば健 康保険の日雇保険が2カ月というのがあります。  年金受給者等については今後ご議論いただければよろしいかと思います。それから、 対応すべき日雇の数ですが、昨年こちらで調査いたしました日雇派遣の方は5万3,000人 というのを申し上げておりますが、これは1日当たりの日雇派遣労働者の数を、東京と 大阪に本社のある10社に聞いた数字です。これを報告したときにも申し上げたのですけ れども、この数は1日当たりで、平均就労日数は1人当たり1カ月14日勤務となると、2日 に1回稼働していることになります。そうすると、労働者が入れ替わっていますから、1 日5万3,000人といいましてもたぶん倍ぐらいの実数がいるだろう、大体10万人ぐらいと いうのが、調査時点で実際に稼働していた日雇派遣労働者の実数だろうと思います。  これと同じような数字が、今年の7月に発表された就業構造基本調査でも取れます。こ れで見ますと、平成19年10月1日現在で日雇派遣、これは派遣労働者であって日雇形態の 者という意味ですが、全国で9万1,900人おりますので、昨年は実数で9〜10万人ぐらいい たということが両調査で一致しています。  それがいま現在どのぐらいいるかというと、この両調査以降、例えば日雇派遣の大手 3社のうちの2社について私どもは事業停止処分を行いました。さらに最大手の会社につ いては7月31日で廃業したこともあり、かなり日雇派遣労働者の実数は減ってきておりま す。これは私どもの電話での聞き取りなのですが、直近で言うと、昨年は1日当たり5万 3,000人ぐらいいたのが、いまは1万そこそこまで減っていると考えられます。それに2を 掛けても大体2万人ぐらいではないかと思います。  最大手の会社が事業を廃止してからの調査ではありませんので、日雇派遣労働者がほ かの会社にどの程度流れたかという実態はわかりませんけれども、5分の1から4分の1ぐ らいには減ってきたというのが実態ではないかと思っております。  2番目の常用の定義について研究会の考え方は、常用型派遣というものを推奨できる ものとして育てていこうということです。そのために事前面接と一定の申込義務を緩和 しようということです。そこは、国として推奨できるものとして常用派遣を考える。そ うすると、期間の定めのない契約による安定した派遣は推奨できるけれども、いかに常 用化しているといっても、有期契約の反復更新は推奨できないのではないかという考え 方から、この場合の常用については期間の定めのないものに限るという意図だったかと 考えております。そういうものをご提唱いただいていることを前提に、これが良いか悪 いかというご議論をいただきたいと思っております。  グループ企業派遣についての問題点は2つ指摘されております。1つは、もともと派遣 というのは需給調整機能の一翼を担うという意味で、事業として認められています。グ ループとして閉じて派遣しているときには、これを担っているといえるかどうかという ことで、これの帰結の1つが、一定割合グループ外に対しても需給調整をやってもらお うということで、割合規制みたいなものを導入したらどうかというご提言になっている かと思います。  もう1点は、実態としてグループ企業内での派遣については、リストラされた労働者 を、元の職場に派遣労働者として戻すというような形が若干なりとも出ている。本来そ ういう形での利用を前提として労働者派遣制度をつくったわけではありませんし、逆に そういうことで派遣を使われると、派遣を認めた趣旨に反するということから、そうい うものも併せて規制していこうということから、解雇等した後の派遣という形について は禁止をすべきだという2点のご提言だったと思います。  その際に、解雇とか労働条件の切下げというのは派遣法の問題ではないのではないか ということですが、それは一面そのとおりですけれども、解雇やリストラでの切下げに、 派遣制度が使われることについては、やはり派遣制度の問題としてこういう使われ方は 本来のものではないということからこの報告書の話になったのかと考えております。  みなし雇用の際の、派遣先の過失の話、主観的要件の話ですが、これについては今後 ご議論いただければと思います。研究会では、禁止業務への派遣と派遣期間の超過の2 つについては、派遣先で実際その業務に就かせていたり、期間を超えて働かせている。 これは明白であるのだから、それを知らずに、もしくは考え違いをしてやらせているの は派遣先の責任ではないか。そういうものについては、レアケースとして例外はあるか もわかりませんけれども、基本的には派遣先の責任として、派遣先での雇用ということ にしていいのではないか。  それから、無許可派遣、無届派遣については、容易に調べられるものであるので、さ すがにその努力まで怠ったものを見逃すのはどうかという議論から、この3つについて は主観要件なしでやってもいいのではないか。その反面、偽装請負というのは、適法な 請負と認識してやっていたが、結果として偽装請負になっているケースもあるので、そ こは主観要件をかけようというご議論だったかと思います。  こういうことを踏まえて、またこの部会でご議論いただけたらと思います。以上です。 ○長谷川委員 1つは日雇派遣です。古市委員も言いましたけれども、私も日雇派遣の 経緯はそうだろうと思うのです。後の議論の際にもう少し整理したほうがいいと思うの ですが、派遣というのは、そもそも自分の所で雇用している労働者を、他の所に出して、 他の事業主が指揮命令するという間接雇用なのです。派遣というのはそうだ、というこ とを1つちゃんと念頭に置いておく。だから、職安法第44条の特出しになっていると いうところは、派遣法を考えるときにいつでも、何回も何回も戻らなければいけない議 論ではないかと思っています。  そういう中で、日雇派遣というのは、日々の仕事があるということを否定するのでは なくて、実際にあるわけですが、そういうのは直接雇用がいいでしょうと。間接雇用で は、使用者性が曖昧になって、結果的に労働災害だとかいろいろな問題が起こる。日々 の仕事があるとすれば、それは直接雇用がいいのではないですか。ここは、そのほうが すっきりしますよということで、もともとそれでやっていたと思います。  もう1つは期間の問題です。私は、2カ月というのがある意味で1つ考えられる。雇用 の安定ということであれば期間を長くするということで、2カ月というのを考えてみま した。その時に、なぜ2カ月以下は駄目かという理由として、1つは労働基準法第20条の 解雇予告だとか、解雇予告手当の支払いが適用されない。それから、健康保険だとか厚 生年金保険の適用がないというのでここはアウトだということです。  もう1つは港湾労働法です。港湾労働法第9条では、日雇の定義がちゃんと書いてあり ます。第9条で、「事業主がその雇用する労働者(日々又は2カ月以内の期間を定めて登 用する労働者、以下日雇労働者という)」というふうに規定しています。そうすると、 2カ月というのは全くない話ではなくて現存しているということになると。これは非常 に大きな参考になるのではないかと思います。2カ月というのは考えられるのではない かと思っています。  もう1つはわからないので教えていただきたいのですが、ある派遣会社の時にデータ 装備費が問題になりました。データ装備費の名目で、賃金の天引きが行われたのですけ れども、これは法律のどこに違反しているかをお聞きします。基準法第24条違反なのか それとも何なのか。第24条違反であれば、第24条の何に違反したのかというのを教えて いただきたいと思います。  なぜかというと、第24条というのは過半数組合があるときに、過半数組合、もしくは 過半数労働者との24協定があれば賃金控除できるとなっています。そのときに、日々の 労働者のところはどこでカウントするのか。その母数とか分母、分子にどのように日々 の労働者をカウントするのか。ここは非常に難しいわけで、本当に24控除していいかど うかというその内容もどうやって労働者代表は聞き取るのか。そうすると、派遣労働者 の賃金控除の在り方というのは、もう少し検討が必要なのではないかと思っています。  研究会報告で、今回常用派遣に対して、期間の定めのないものに整理するということ は非常によかったのではないかと思います。有期の一般論の話ではなくて、派遣という 間接的な三角関係の雇用の中の常用というのをこのように規定すべきということは非常 に良いし、混乱を防ぐことができるのではないかと思います。  そこでよくわからないのは、登録型の整理をどのようにするかということなのです。 常用を期間の定めのない雇用とした場合に、登録型というのは有期ということなのです が、この登録型をどのように考えたらいいのか。反復更新との関係についてももう少し 検討が必要なのかと思いました。常用型派遣というのを、期間の定めのないものにきっ ちり限定するといったときに、反復更新したとか、事実上期間の定めのない状態という ふうに見ていいのかどうなのかを聞いておきます。  違法派遣是正のための派遣先での直接雇用の話が、17頁と18頁に書いてあります。 研究会報告で、違法派遣の是正のための派遣先での直接雇用について、1〜4となって います。ここで教えてほしいのは、1はどういう問題でどこが問題なのか。2はどうい うことが問題なのか。3と4をもう少し詳しく聞かせてください。  私は、雇用関係の成立そのものをみなす方法は1がいいと思っています。そもそも派 遣先は事務局が説明したように違反について大体わかっているわけですから、そういう 重大な違反があったときには、派遣先の雇用とみなすという規定を置いて、それで派遣 先の雇用にしたほうがいいのではないか、そのほうがいいと思っています。なぜ1だと 駄目なのか。それから、1と2の雇用契約の申込みがあったとみなす方法はどこが違う のか。あとは、どこで契約が成立したと考えるのか、何をもってするのかというのをお 聞きします。  なぜ1がいいかというと、研究会報告で1から4まで研究したというのは本当に苦労 したのだと思うのです。この雇用申込義務というのは、派遣受入期間の制限を超えたら 雇入契約の申込みをするというのは今でもあるのですけれども、実際にあまり機能しな かったと言われています。雇入契約の申込みをしたとかしないとか、いつしたとかしな かったとか、そういうのを言いに行ってもなかなか是正してもらえなかったというのが あります。それでも4で勧告という方法を採るということが本当にいいのか。それだっ たら、そういう指導だとか監督だということよりは、1のみなし方法がいいのではない か。  またヨーロッパの話をするのかと言われるとなんとも言えないのですが、ドイツには みなし規定があるので、そういったものを使ったらどうか。韓国は批判がありますけれ ども、勧告もみなし規定とか、もしくは雇入申込みをするべきだとあるわけです。そう いう方法のほうがいいのではないかと思うのです。そこは、鎌田委員に1〜4のところ を聞かせていただきたいと思います。  証明責任の話ですけれども、基準法第18条第2項の解雇の法律を作ったときもそうで すし、労働契約法を作ったときも必ず立証責任の分配問題が議論になります。立証責任 の分配問題というのは法律の作り方なわけで、そういう意味では労働者に荷重な負担を かけないような立証責任の分配というのは法律の作り方でできるはずなので、そこは工 夫できるのではないかと思います。ここは非常に重要なところなので、研究会でどうい う研究をして、こうなったのかを説明してください。私からは以上です。 ○鈴木課長 データ装備費の条文違反ですけれども、これについて個別の事案について はそれぞれごとですので申し上げられませんが、一般論としては派遣料金の中から、一 部保険料等の名目で納めさせていたような場合、これについては労働基準法第24条違反 になると考えられます。協定がなく、もしくは協定があったとしても事理明白でないも のを引いていたような場合、第24条の賃金全額払いの違反になります。  その場合の第24条の協定の結び方ですけれども、これも一般論ですが、もともと基準 法の協定については、その協定を結んだときの労働者の総意で、過半数組合なり過半数 代表が代弁して結ぶというロジックになっています。その場合の過半数も、日々移り変 わっていても、その時点での過半数の同意を得ていればいいとなっております。それぞ れ過半数を選んだ人が替わってしまったのに、それが有効かということもありますけれ ども、基準法のロジックとしてはそういう形でやっております。このロジックからいた しますと、日々雇われている方についても、その時点での日雇の数も含めて半数の同意 を得ていれば、協定として有効に成立するということかと思います。  みなし雇用については、後で鎌田委員に補足していただきたいと思いますが、1は雇 用関係の成立まで法律的にみなしてしまうという整理です。これについての問題点は、 雇用契約が成立していることをみなすことになると、どのような契約が成立しているの か、これがみなしの規定だけではわからない。そういう法制がいまの日本でうまくいく かというと、そうではないのではないかということ。みなされるという格好であれば、 これは一方当事者であります労働者の意思に関係なくみなすという構成を採りますので、 それだけであったら、労働者の意思に関係なく雇用契約が成立してしまいます。その場 合には双務契約ですから、使用者側の賃金支払義務等が成立するのはもちろんですけれ ども、労働者側の就労義務も成立する可能性もありますので、そういうのも労働者の意 思に関係なくみなしてしまうのはどうかという話です。長谷川委員からもご指摘があり ましたが、事実関係の認定の話で、これについては法律上みなされますので、それで争 いがなければいいわけですが、争いがあった場合には裁判で労働者側が主張しなければ なりません。この場合にはこの違反を労働者側が主張するのは難しいのではないか。  2の申込みのみなしについては、契約の成立をみなしたというよりも、雇用契約を使 用者側が申し込んだという法律行為の事実行為をみなすというものです。これは成立自 体をみなすものと、事実行為をみなすということで1とは異なっています。この場合は 申込みのみなしですから、これに対して労働者側が同意をしなければ、その申込みに応 じなければ、雇用契約は成立しないということですので、これについては1で申し上げ たような、労働者の意思を無視して契約が成立することはありませんけれども、実際ど のような形の内容の契約が申し込まれたかがわからないということ。それから、争いに なった場合に、やはり労働者側が裁判で立証しなければいけないというのは同じだとい う問題があるというご指摘になっております。  これと違って3については、使用者側に対して違法があった場合には、雇用契約を申 し込めという措置義務を課すという内容です。これは民事的なみなしではありませんで、 いわゆる通常の労働法でいうところの、行政上の義務を課すという形です。したがって 3以降は先ほどのみなしの場合と違って、成立する雇用契約の内容については、その義 務主体たる使用者が、ある意味で任意の形で考えて申し込む。ですから、申込みをすれ ば、それだけであればその義務は果たされるということで、内容については使用者がそ れで付与した形で申し込んだ上で、それに応じたらそこで契約成立ということになりま す。みなしのように契約の内容が不確定だということは生じないということです。  その際に、従前の条件を下回らない云々というのが報告書にありますけれども、みな しの場合は労働契約の内容が全部固まらないと、みなされた中身がなかなかわからない ということに対して、3と4はこれ以上の条件で申し込みなさいというような義務を付 加的に課しておけば、それ以上のものとして申し込めばよくて、どのぐらい上まで上げ るかというのは使用者に任されるということです。少なくともその段階において、労働 契約の内容が確定しないことはないというものです。  4はそれとは若干異なりまして、そういった雇用契約の申込みを行政が勧告するとい う形です。これについて3は義務の履行違反がありますので、不履行の際に、それを行 政が担保する形での3プラス4というケースもあるということです。  ですから、1と2はみなしということで民事上の効果が発生する。その場合1でした ら雇用契約の成立時点はみなしの効果が発生した時点、即ちこれは違法の時点で、その 段階から当然みなされます。2から4は申込みの義務、ないしは申込みのみなしであり ますから、申し込んだ契約に対して、労働者がそれを受諾した段階で雇用契約が成立す るという形になろうかと思います。  第40条の4が機能しなかったのに、これがちゃんと機能するのかというご質問ですが、 第40条の4についてはいろいろ要件が複雑になっています。例えば、派遣元、派遣先か ら有効な通知がない限り成立しない等々があります。そもそもそれが発動する場面自体 が限られていたことから件数も少ないということです。  なぜそうなっていたかと申しますと、これはもともと違法に対するペナルティではあ りません。確かに期間制限の担保措置でありましたけれども、期間制限が切れる前に、 それ以降同じ業務で労働者を使いたい場合には、直接雇用に切り換える形で、その派遣 労働者に対して申し込め、という事前の申込義務というのが本来の姿であります。  その反省もあって、今回は違法に対するペナルティという意味で、新たな要件におけ る申込みの勧告という形を提示しているというふうにこの研究会報告は考えております。 これは機能する場面が違いますので、これ自体が第40条の4の件数がなかったからとい って、機能しないということにはならないのではないかと思います。  立証責任の分配の話は確かにおっしゃるとおりでありますが、技術的にもなかなか難 しい問題でありますので、有効に民事効を達した上で分配ができるかということもこの 部会でご議論いただけたらと思います。  先ほどの平田委員のご質問の中で、期間の定めのないものに限って事業規制をやって いるような例があるかということでした。若干違うのですが、建設労働法の中に、建設 業務紹介という、建設業の事業主団体だけが認められる紹介制度があります。この紹介 の対象が、期間の定めのない契約だけになっております。例としてはこれが挙げられま す。 ○鎌田委員 いまの課長の説明で十分かと思います。基本的な考え方という点で少し補 足させていただきます。どの点についてかといいますと、直接雇用のところについてい ろいろご質問がありましたので、この部分について基本的な考え方をご説明いたします。 報告書では1から4までいろいろな場合を分けて考えてあります。  基本的な考え方というのは、現行の第40条の4いわゆる雇用契約の申込み義務、それ から第40条の5は期間の定めのないものについての優先的な雇用契約の申込みで分けます。 第40条の4は当初から少し誤解があったようです。これは、期間を超えたも のについての民事制裁的な規定だというふうな誤解があって、この辺が運用上において、 労働局などに対して、労働者が要望したときにちょっと趣旨が違う要望が労働者にあっ たように私は見ておりました。第40条の4は必ずしもそういった趣旨のものではなかった と思っています。つまり、違法な派遣に対する制裁という趣旨ではなかった。  今回はこういう点から、違法な派遣についての雇用の安定を図るための規定を設けて その辺の整理をしたらどうかというのが考え方の背景にあります。それでは、違法な派 遣を解消するための措置として、かつそれが現に違法な派遣の下で働いている派遣労働 者の雇用の安定をできるだけ図るためにどのような措置があるかという観点から、いく つかの方策を考えたのが1から4ということでした。  長谷川委員は1がいいのではないかとお考えのようですが、これは先ほど説明があり ましたように、違法な派遣があった場合に、両当事者の意思にかかわらず、あるいは意 思に反しても、直接に法律で一定の法的関係を強制するという性格のものです。これは 違法な場合ですので、全くあり得ないわけではないと思うのですが、通常違法な状態が あったら、それを解消して法律関係をなくすというのは、法律学ではある程度できます。 ところが、本来その気がない両当事者を、強制的に結び合わせるというのはかなり例外 的な場合になります。  それでもないわけではない。まさに法律によって一定の関係を強制することがないわ けではないと思うのですが、日本の場合にはほとんど見受けられないです。そうした場 合も1つの考え方としてあり得るではないかという場合に、何が具体的に問題になるか というと、法的関係を成立させるのはいいのですが、内容をどうしますか、という話な のです。どんな内容で成立させるかという問題です。これは強制することになりますか ら、両当事者の意思に、場合によっては反しても何らかの内容を持ったものとして成立 させなければいけないということになりますから、その中身もすべて法律で決めていか なければいけないといった性格のものです。  私としては、それでも比較的短期のもの、そして商事契約的な取引であればまだ、結 局最後は金銭の問題で解決できる。ところが雇用関係というものは、そのような意味で の法律の強制によって成立させる関係というものとしては非常に馴染まないのではない かと考えたのです。いちばん馴染まないのは夫婦関係のような家族関係です。この場合、 違法な状態があるからといって、法律で夫婦関係をみなすということは、ちょっと考え られないわけです。  それとは違うわけですけれども、しかし雇用においても両当事者の気持といいますか、 意思というものを、通常の商取引のようなものよりは考慮しなければいけない。とりわ けその内容については、両当事者で何らかの考え方を前提にしないと難しいのではない か。このようなことで1のみなしというのは無理があるのではないかと考えたわけです。  2も基本的に同じようなものです。これも、基本的に労働者のほうで拒否できるとい うことでは少し差があるのですが、いずれにしてもいかなる内容の申込みをするかとい うことを強制しなければいけないことになりますから、その内容として、違法な状態で 働かせて、受け入れるのが当然だという議論もあるかもしれませんが、しかし受け入れ るに当たって、どのように処遇をするかということを、当事者の受入側の意思も考慮せ ざるを得ないと考えますので、2もこういった意味で少し無理があるのではないかと考 えたわけです。  3は2とどう違うのかということです。基本的に3は雇用申込みの義務を課すという ことです。2はみなすということです。偽装請負の場合、結局義務を課せられた発注者 が、現実に事実的に申込みをするかどうかということは受入先の判断になります。それ で申し込んでくれればいいのですが、申し込んでくれない場合には義務違反ということ になり、義務違反ということになると通常の民事上のルールでいうと、基本的には損害 賠償を第一に考えて処理を図ることになろうかと思います。  3は、義務を果たさない場合に確かに履行の強制という手段がないわけではないので すが、基本的には通常の民事ルールの損害賠償が想定できることになるのではないかと 思っています。  4については先ほど説明があったとおりです。行政勧告という制度のメリットといい ますか利点というのは、先ほど申しましたように内容、つまりどのような内容で成立す るかということについて、労働者の保護という観点を踏まえて従前の契約内容を下回ら ない、そのような趣旨で雇い入れなさいという勧告をするという、ある意味ではフワッ とした内容の勧告になるわけです。この辺は行政勧告という性格で、いくらかそういっ た意味での契約内容の特定をしないで済むという意味でメリットがあるのではないかと 考えております。また、そうは言っても、労働者の立場から言って不十分な労働条件と いうことでは困るわけですから「従前の契約内容を下回らない」という条件を付けて勧 告をするということになれば、一定の保護になるだろうと考えております。基本的な考 え方はそういうことです。 ○清家部会長 ありがとうございました。ほかにご意見はございますか。 ○市川(隆)委員 中小企業者に対する配慮という観点から意見を申し述べたいと思う のです。日雇派遣労働者を受け入れている企業の中に、引っ越し業界を初めとして、中 小企業がいます。彼らとしては、自分たちの責めに帰する事由とは全く別の理由で、今 回の改正法が仮に成立したとすれば、ある日突然日雇派遣労働者の供給が途絶えるとい うことになるわけですので、彼らに対する経済的な影響がいかほどなものかということ については、十分踏まえる必要があるのではないか。  特に、中小企業を取り巻く経営環境は、折しも原油高、それから原材料高という、従 来にない厳しい状況でありますので、こういった状況の中で経営に悪影響を与えるよう なことがあってはならないと考えているわけです。  他の方法で日雇派遣と同じような効果を生むことができるかどうか。例えば職業紹介と いうようなことになるかと思いますが、日雇派遣の場合には、いま電話一本で、何日に 10何人よこしてくれと、こういう形で成立しているようですので、それと同等程度の使 い勝手のいい職業紹介というようなことが成立するのかどうか、その辺りも含めて今私 どもの団体の中で、鋭意各業種についてヒアリングを始めているところですが、先週の 報告書発表があって本日ということで、まだまだこれからヒアリングをしていかなけれ ばいけない。ほかの手段でソフトランディングできるかどうかということも含め、よく ヒアリングをしていきたいと思っております。場合によっては、そうした事業者に対す る配慮もお願いすることになるかもしれません。よろしくお願いいたします。 ○清家部会長 時間の制約で、当部会で直接ヒアリングは難しいかと思いますが、市川 委員のほうで意見を聴取していただいて、この場でご発言いただくというような形で、 よろしくお願いいたします。 ○市川(隆)委員 はい。 ○橋本氏(山崎委員代理) いま市川委員がおっしゃられた点は、現実問題として中小 企業にどのぐらいの影響があるのかということですが、その辺をこちらが精査したいと 考えております。実際、急にこういう形になった場合は、ほかの手段にすぐ切り換えて 対応していくことが現実問題として可能なのかどうか。日雇派遣については、その辺は きっちり、個別の内容を含めて考える必要があるだろうと思います。  「安全」それから「危険度が高く」という部分については、ある意味で当然かなとい う気がしております。安全を担保できないような仕事ということは、教育するのにも、 まずかろうと。ただ、その後の「雇用管理責任が担い得ない」という部分、その辺はど うなのか。それが30日なのか、2週間なのか、3週間なのか。具体的に、本当に担い得な いのかどうか、その辺も精査する必要があるのかなと思っています。ただ、いずれにせ よ、それなりの影響が出てくる中小企業について、一体本当にどのぐらいの影響がある のか、その移行がどういう形で可能なのか。その辺については、市川委員と同じような 形で、私のほうも至急に調べて、改めて発言していきたいと思っております。恐縮なの ですが、そのときに付け加える形にしたいと考えております。 ○市川(佳)委員 研究会報告の8頁に均等・均衡待遇について書かれているわけです。 この研究会の報告では、簡単に導入すべきではないという結論になっているのですが、 今日のさまざまな状況の中で、本当にそれでいいのだろうかという疑問を持っていると ころです。  確かに、これは私ども労働組合がいちばんよく分かっているわけですが、日本では職 種別賃金がヨーロッパのようには出来ていないとか、賃金決定のメカニズムもEU諸国に おいては違うとか。それはあるとしても、少なくとも同じ仕事をしている同士ですから、 その中で最低ラインの賃金は保障されるべきなのです。  内部労働市場、外部労働市場の違いがあって困難であるということですが、例えば、 つい先頃施行されたパート労働法、これなどは、内部労働市場同士ですけれども、当初 は、それでも大変難しいのだと。私ども労働組合も、最初あの法律が出来たときには、 あれは大変不十分だと思って、ちょっと失礼な言い方なのですが、甘く見ていたのです。 しかし、これでやっと我が国にも「同一労働・同一賃金」が現場の実務で適用される時 代になったと、厚生労働省の担当課長がパート労働法のコンメンタール冒頭に書かれて いたわけです。私はそれを読んで「本当、いいの?こんな大上段なことを言っちゃって」 と思ったんですが、実際に我々の組合の中でパート労働法にどう対応しようかといって 具体的な手順を職場で探っていったら、まさにその担当課長がおっしゃるとおり、これ はそんな甘い法律ではない。先々大化けする大変な法律になった、という実感を持って いるわけです。  それはなぜかと言いますと、職場で働いている人にとっても、企業にとっても、外部 労働市場なのか、内部労働市場なのか。また、この人はパート労働法の適用になるパー トさんであって、この人はパート労働法の適用にならないパートさんであるとか。実際 問題として、そんなことを区別して1つの職場で雇用管理できないのです。そして、こ の人は法の対象となるパートさんだから待遇決定についての説明をします。あなたは労 働時間が同一だけれど、パート労働法は関係ないから説明しません、などということで 職場は成り立たないのです。結局あの法律は、名称を問わず、契約労働者であれ何であ れ、非正規の方たちにも、全部に何らかの対応をしなければいけない。そういう状況で、 いま職場を一生懸命整備しているのです。  その中で、今度は派遣だと。派遣は雇用主が違う、外部労働市場だ。だからあなたた ちの労働条件について、派遣先の労働組合あるいは企業が、それはもう派遣元でやって くださいと言うのは言葉だけで、実際問題として、職場は同じ対応をしないと進まない のです。  外部労働市場に対して均等待遇をきちんとしろ、というところは今は難しいかもしれ ません。しかし、均衡というのはもうちょっと広い概念です。ただ単に導入すべきでは ないという結論ではなくて、もう少し工夫をする。この研究会報告の8頁の下のほうで は待遇改善の努力義務などがありますし、その中に、派遣先の同種の労働者の待遇等々 を比較して改善を促すというようなことが述べられていますが、もう少し踏み込んだ均 衡処遇のあり方というものを検討することも必要ではないか。  8頁の下のところで、改善の努力をしていくと、派遣労働者の方々がより良い派遣元 を選択することに通じるというような記載もあるわけです。これは次の「マージン」規 制のところとも関係するのですが、ただ努力義務を課すだけで良質な派遣会社の選択ま でつながるのかというのが疑問なので、もう少し入り込んだ「均衡待遇」の考え方とい うものを議論したほうがいいのではないかと思うわけです。  次の「マージン」規制ですが、何で私どもが「マージン」規制をすべきだとずっと言 ってきているのか。私は、ちゃんとした派遣会社が多いと信じたいのですが、往々にし て、社会保険や労働保険に全然加入させていなくて、その分を「させた」ようにしてい るというのが特に日雇派遣などで指摘されているから、そういうことを申し上げている わけです。この報告書では、情報公開を義務づけるのだということですが、平均値での 公開では不十分なのではないか。労働者個別の「マージン」に関するさまざまな情報公 開をする。ここではいろいろな訓練費などを個別に割るのは難しいと述べられています が、少なくとも、派遣料金や賃金、社会・労働保険の額を個別に公開することは難しく ないはずですし、次のところに出てくる、待遇説明や就業条件明示といったところで、 きちんと項目に入れ込んで公開すべきではないかと考えています。  この部会に当たって、私どもの組合のある職場でいろいろ実態を聞いたのですが、こ ういうことがあったそうです。ある会社で、26業務の期間の制限のない派遣さんに何年 かずっと来ていただいていた。そして派遣会社から、だいぶ御社の仕事に習熟してきた から、派遣料金を上げてくれと言われて、派遣料金を毎年上げていた。ところが、その 派遣労働者に「あんたたち、今度賃金が上がったでしょう」と聞いたら、「いいえ、一 切上がっていません」と。これは一体どうなっているのだ。派遣先の会社には派遣料金 を毎年上げさせておいて、その派遣労働者の賃金は上がっていない。実は、こういうこ とが起きているわけですから、個別の「マージン」規制をするというのは当然ですが、 情報公開ということであれば、個別にしていく必要があるだろうと思います。  次は雇用申込義務との関わりで、12頁の下から2番目のところ、「いわゆるクーリン グ期間」と言われている問題です。これは3カ月という今までの運用があるわけですが、 この研究会の中ではそれを想定されていたのかということ。また「厳正な運用がされる べき」というところについて、もう少し具体的にイメージを知りたいのです。  なぜこういうことを申し上げるかというと、13頁に「クーリング期間を脱法的に利用 して派遣労働者の受入れを継続しようとする動きもあるが、違法行為に対しては厳正に 対処すべきである」とありますが、この辺は意味がわからない。「脱法」とか「違法」 という言葉の使い分けをどのように考えられたのかというところです。  私どもの組合を組織している職場で実際に起きているのは、労働組合としては、ある 業務については直接雇用で対応する、正社員化すべきという要求はしているのですが、 派遣可能期間が終わりますと、そこに派遣で来ていた方たちを3カ月間だけその派遣先 が期間工として直接雇用をする。そして3カ月が終わると、またその方たちが自ら元の 派遣会社に登録をして、同じ派遣先で引き続き同じ業務をしている、それを繰り返しや っている。たぶんこれが「脱法的」ということになるのでしょうけれども、違法行為に は厳正に対処するけれども脱法にはどうするのかというところを聞きたいと思います。  私の質問は絡んで絡んで分かりにくいのかもしれないのですが、次の「専ら派遣」の ところに出てくる「解雇・退職・転籍した労働者を一定期間禁止する」という話です。 これは16〜17頁に出ています。「解雇・退職・転籍」というのは明確に分かるのです。 ここは、例えばいま言ったクーリング期間に有期で3カ月働いて、その雇用期間が切れ たというのはここには入らないということですね。入るとすれば、要するに3カ月でこ れを辞めたとすると、一定期間その人たちをグループ会社あるいはグループ外において もそうなのですが、そこでまた派遣として働く。いわゆる3カ月期間工で突き抜ける脱 法的な行為は、「一定期間派遣禁止」にすればその脱法行為はできなくなるので、それ は非常によろしいのではないかと私は思うのですが、ここでそういうことは想定された のかどうか、そのことをお聞きしたいのです。 ○鈴木課長 3点あったかと思います。まず、均等待遇のところについて実効性がある かどうかは、当部会でご議論いただきたいと思いますが、研究会の報告の趣旨といたし ましては、均等待遇を図ることについては、技術的な問題も含め、なかなか難しいので、 現時点においては、内部労働市場の中でまず努力義務を課した上で、それを情報公開等 をすることによって外部市場の需給の中で労働力需要を高めるほうが現実的である、そ ういうご指摘かと思われますので、それも含めてご議論いただきたいと思います。  「マージン」につきましては個別でというご指摘だったと思いますが、公表を個別に するかどうかについても、研究会報告の中にもあるように、1人単位で割れるかどうか という問題もあります。これは一般に対する公開という意味で、公開については平均値 的なもので構わないけれども、この報告書の中ではそれに加えまして、個々の労働者に 対する説明義務でそういったものの補完をしていこうと考えております。  クーリング期間につきまして、研究会の中では3カ月という現行の制度を前提に議論 をしたわけです。「脱法的に利用した違法行為」ですが、もともとのクーリング期間は 臨時的、一時的な業務として認めた派遣で臨時的、一時的な業務が繰り返されているの か、それとも、ずっとその状態としての派遣かというのを見るときに、3カ月あいていれ ばということです。少なくとも3カ月あいていない場合には続けたものとして見るという 書き方かと思いますが、それを逆手に取って、本来は常時派遣業務で受け入れていると いうものを、単に3カ月あいていれば、それは違うものでしょうということで、同じ業 務について派遣を繰り返す。こういうものを脱法的と申しております。  違法行為というのは、委員がご指摘のような、派遣されていて3年経って、そこから 労働者を直用する。ただ、その直用労働者は、3カ月と1日経った後に派遣元に戻って、 もう一度同じ所に派遣される。これは形としては転籍、もしくは在籍の出向を業として 派遣元から派遣先に行っているという感じのものになるので、それは本来労働者供給に なるわけです。そういう形であれば、それは違法行為ですから、そういったものは処分 しようという意味です。そういった意味で文言を使い分けたというものです。  専ら派遣のところの、雇用期間が切れた労働者を派遣する場合を対象とするかという ことですが、研究会ではそれを意識して議論をしておりませんでした。ただ、解雇や退 職の中に、契約が切れた場合が入るかと言えば、入らないことはないのではないかと考 えています。明確にそれを除外して議論をしていたわけではありませんので、それにつ いて入れるかどうか。先ほど申したように、そういう形は労働者供給に当たり安定法第 44条違反になりますが、それに加えて、そういうのは本来おかしいのだという意味でこ こに入れることも可能でありますし、そういった議論をこの部会の中で行っていただけ ればと思います。 ○北村委員 ちょっと細部にわたるのですが。研究会で、派遣労働者が大変気にしてい る「マージン」について言及してくださったことを大変ありがたく思うのです。ただ、 先ほど市川委員がおっしゃったように、一般公開制と、人対人の情報のやり取りについ て。例えば10頁の上のほうに「個別の派遣料金の額と経費を開示することを義務づける 等の意見もあるが、そもそも、できるのかという問題がある」と。この場合、派遣料金 というのは既にマーケットには明らかになっているわけで、その後の「待遇の説明につ いて」では、どこまで踏み込んで項目的に個人の情報として説明できるものなのか、そ れが知りたいのです。通常の商取引と違って、これは派遣労働者にしてみれば、自分が マーケットで、いかほどの値打ちでやり取りされているかということは、その後の身の 振り方に際しても重要です。また「マージン」の中身というのが一般的なアベレージで 公開されるというお話でしたが、言ってみれば非常に競争が激しくなってきている派遣 会社の淘汰の段階で、非常に有効なことだと思います。おそらく、派遣で働いている人 たちの間での口コミ情報というものも機能していくはずですので、個人にはなるべく具 体的なものを出していただきたいという思いがあります。  先ほどクーリングの話が出ました。「3カ月」の根拠なのですが、いろいろな使い方が あって、ある一定の数字が出ると、派遣元も派遣先も、それをクリアする工夫というの はあらゆるところで起きているとは思うのですけれども、例えば3年働いた人を3カ月ク ーリングしておいて、また使うということになったら、「早い話が、雇えばいいじゃな いか」という論考は十分あるわけです。そうすると、この3カ月が6カ月ではいけないの かという程度の問題も生じてくると思うのです。不勉強なのですが、3カ月というのは どのような経緯で決まって、どういう効力を持っているのか教えていただきたいのです。  「事前面接」等についてなのですが、今回のご指摘は、ある意味で、いろいろな方面 に考慮なさった柔軟なものだと思うのですが、派遣先の企業の労働環境というものは行 ってみなければ分からないのですが、働く者にとっては事前に知りたいというのが当然 の欲求だと思うのです。企業の環境というのは公なものですから、誰が行っても見せな くてはいけないものであり、見せられるべきだと思うのですが、一方で、ある種商品で あるところの派遣労働者にしてみれば、自分の能力を売るというか、市場に出している わけです。この書きぶりを見ての私の理解では、「事前面接」というのはお互いの情報 交換と取れるのですが、もっと変応的なものでもいいのではないか。つまり、労働環境 としては全部オープンにするべきであるが、労働者の側の年齢や性別などはことごとく 知らせる必要はないだろうというのが私の考えです。そうすると、あくまで労働者が必 要なときに必要なものだけを取ることができるのだという、労働者の側に優利なもの、 労働者の側が全部さらすことなしに「事前面接」に該当するような情報を得られるよう な工夫はないものだろうかと感じました。書き方としてどのように表現されるべきか私 はよく分からないのですが、企業側の情報は十全に、しかし労働者側の情報は制限され てということを希望します。 ○清家部会長 事務局から何かお答えをいただけますか。 ○鈴木課長 3点ご発言がございました。まず「マージン」等についての説明義務のと ころですが、どこまで踏み込んで説明するかは、まさにこの部会でお決めいただく内容 であります。研究会でも、そこまで細かく議論したわけではございませんが、公開につ きまして、これは一般に対する公開ですから、どうしても概括的、包括的なものになら ざるを得ない。そんなこともあって、概括的なものを公開するというイメージでしたが、 待遇の説明については、登録型でありましても、実際に派遣就労する際には、どこの企 業にどういう形で派遣されるのかということを前提に雇用されるわけですから、それに ついては実際に、あなたの今回のこの処遇についてはどの程度のものである。どういう 形で派遣料金があって、どういう形で賃金が決まっているのだというようなことをある 程度具体的に説明することをイメージしてこの報告書は出来ているかと思います。しか し、どの段階でどこまでというのは、この部会で具体的にご議論いただければと思いま す。  クーリング期間の3カ月は、派先の指針で書いてあるものです。指針ですから、当然 この部会の審議を経た形で労使が了解の上出したものであります。これについてはいろ いろな見方があるのですが、基本的には、客観的に3カ月という期間が経つと別の業務 である、派遣の業務としてはつながっていない、そういうことの指標として設けたとい うことが当時の答弁等に表れており、そういったものとして、この審議会の中で議論さ れて作られたものです。したがいまして、基本的には3カ月経てば派遣の期間が切れる ということになります。  「事前面接」につきまして、研究会の中でも若干出ましたが、労働者側のイニシアチ ブで行うものについては、現在でも「事前面接」は可能となっており、これについて、 何か変えようというご意見ではなかったと記憶しております。そもそも、それが本来労 働者の意思によるものかどうかということには若干疑念はあるとしましても、いま北村 委員がおっしゃられたような形であれば、いま現在でもある程度できている。今回問題 にしているのは、派遣先の側が人を見たいというようなものについて、どこまで解禁し ていいものかと、こういう議論だったかと思います。 ○清家部会長 ひと通りご意見をいただきましたが、まだ何か追加的にございましたら、 どうぞ。 ○平田委員 追加的に3点申し上げたいと思います。1つは、派遣元・先の責任分担の中 で労災のことが研究会報告の中に提起されているのですが、これについては、この場で はなく、労災担当の審議会で議論をされると理解していいのかどうか。  もう1つは、いまお話にもありました「事前面接」についてです。派遣元事業主に対 して、派遣労働者の拒否を促すような行為は許されるものではないと我々も思っていま して、そういった観点については、研究会の報告には同意できるのです。ただし、いろ いろご指摘がございましたが、単なる職場訪問とか、条件の確認というものもあろうか と思いますので、そういったものまで同一に扱うのはどうなのだろうか、適切ではない のではないかと思っております。  それから、冒頭の日雇派遣のところで、危険という観点だけではないという課長のご 指摘がございました。この研究会報告が労働者の属性に着目して整理をしているという ことであれば、過度に強い規制となってしまいますと、アルバイト的に働く人も含めて、 安全というのは確保しなければいけないと思いますが、雇用の機会が減少してしまうと いうことになろうかと思いますので、雇用の安定という観点に立てば、それは必ずしも 適切ではない面もあるのではないかと思っております。 ○長谷川委員 私はまだ「みなし」にこだわっていて、そのことはもう何回もお話した と思います。40条の4にも「勧告、企業名公表」とあるのです。さっきも厚労省の説明 のときに、勧告であれば、労働条件を示すのでそれよりは下回らないと言うのですが、 その作りが私の頭では理解できないのです。例えば、労働基準法で労働時間などを設定 しているわけで、それを下回るような就業規則があれば、それは全部無効にして労働基 準法の労働条件になる、そういう法律の規制があるわけですね。ところが、この派遣法 の40条の4を見たときに、そういう規定はどこにもないので、何で勧告したものが労働条 件になるのか、そこはやっぱり理解できないのです。40条の4で雇入申込義務のところの 勧告についても、今回出されている、違法な派遣を受け入れた場合の1〜4、4で勧告 するのだから、その勧告のときに労働契約の内容が勧告なのだと。誰がその勧告の内容 を決めるのかと。それは基準法のような、完全なものがあればいいのですが、ないとき に何でそんなふうになるかというのは説明がつかないのです。それと同じように、違法 派遣のときの契約内容が不明だというところでは1〜4はみんな同じではないかと思う のです。  それと、直接雇用を望まない労働者の意思。もともと契約というのは意思の合致です から、その意思の合致をどの時点で見るのか、どこで見るのかというのは重要です。そ れで、みなし規定を使うわけですけれども、例えば、望まない労働者が派遣先の労働者 になるということ、また労働審判で自分の地位を確認する、要するに派遣先の労働者で あるということを確認するというやり方だってあるのではないか。何でかというと、最 近は労働審判を利用する人がすごく増えています。特に解雇で使っているようですが、 労働審判とつなげながら、そういうことができるような仕組みができないのかと。私は まだ、そこに非常にこだわっているのです。  これ以降の法律の仕方について、行政の指導と私的・民事的効果を付けながら両方で 労働者を保護していくというのは、これからの立法政策の中で必要なので、1〜4につ いて、もう少し何か仕組みが出来ないのかと。ここはこれから何回か、短い時間ではあ りますが、私も今日以降もう少し勉強して考えてみたいと思うのです。折角1〜4が来 たので、そこについてもう少し努力できないかと。是非、鎌田委員にはここのところを もう少し教えてほしいと思うのです。  もう1つは、40条の4がこのままでいいのかということについても疑問があるのです。 40条の4の申込義務は今のままでいいのか。40条の4で、期間を超えた場合の雇入申込義 務なのですが、そのときの効果というものを、勧告も聞かなかったようなものに対して 「企業名公表」だけなのですが、企業名が公表されるだけで労働者が本当に幸せなのか どうなのかというのは少しあるので、そこの仕組みも工夫が必要なのではないかと思っ ています。今回ここが非常に難しいというのは私も理解していますが、ここに対する関 心が非常に高い。ここは「違法な派遣」にしていますが、違法な派遣の場合の労働者の 保護というのはもう少し研究が必要なのではないか。「松下プラズマ事件」などでも判 決が出ていますので、そういうものを参考にしながら、ぎりぎりのところまで議論をし、 検討していただければと思います。 ○清家部会長 平田委員から2点質問が出ているかと思いますので、それについてお答 えいただきます。 ○鈴木課長 まず、労災の先に対する費用徴収制度の方式について、最終的には労災補 償保険法の改正になると思われます。例えば法律案4項の諮問については労災部会にい くと思われますが、その前段階で、例えば、これで十分なのかとか、これ以外に、これ は入れる入れないとか、そういう話については、当部会でも「派遣」の観点からご議論 いただくのは可能かと思っております。 ○清家部会長 長谷川委員のご質問についてもお願いします。 ○鈴木課長 長谷川委員のご質問の中にはご意見の部分もありましたが、1点だけ。研 究報告の中で1〜4があり、特にこれ以上の条件で申し込みなさいというようなことな のですが、例えば勧告を行うときには、従前の派遣のときの労働条件を下回らない条件 で申込みをするように勧告するというものです。それを条文上は、例えば、厚生労働大 臣は派遣先に対して、これこれの場合には従前の条件を下回らないように勧告すること ができる、というような条文の書き方ができるのではないか。そして、それ以上であれ ば、どの程度上までやるかは使用者に任されるわけですが、その範囲内で使用者が適切 な労働条件を定めて、それで申込みをすれば、その義務は履行される、そういう形がと れるだろう。それに対して、1,2については従前の労働条件以上の労働条件で雇用が 成立したものとみなす、ということでみなしたときに、それより上というのは分かるけ れども、上のどの辺でみなされて雇用関係が成立するのかというのは分からないので、 そこは取り入れません、という趣旨でこういう書き方をしているものと認識しておりま す。 ○清家部会長 よろしいでしょうか。 ○市川(佳)委員 前回の会議で私も質問をさせていただいて、私どもも非常に問題意 識を持っている今の「一般業務」と「26業務」のことについては、法律事項ではなく、 研究会では当面、法律事項のところを中心に検討したので、この問題は研究会では検討 されなかったと、そのように鈴木課長からお話があったと思うのです。しかし、いまの 派遣制度ではいろいろな問題が出ているのです。派遣制度をちゃんと見直そうと言って いるときに、いまの26業務をそのままにして一切検討しなくていいのかというと、実は 検討すべきではないかと考えています。現在の26業務は、専門的知識が必要なものと、 特別な雇用管理が必要というものと2通りあるのですが、派遣法が最初に出来たときに、 言葉は悪いのですが、後追い的に、専門的とはいえないけれども、派遣に入れざるを得 ないという業務が「特別な雇用管理」だと私は理解しているのですが、いまこの26業務 でいいのだろうか。私どもは、「特別な雇用管理が必要なもの」というのは26業務から は除外すべきではないかと考えています。さらに、その26業務のうちでも、その時代に 多少は専門的だと言われていた事務用機器操作やファイリングのようなものは、今日の 状況から言って、「専門的な知識等を必要とする業務」とは言えません。したがって、 こういうことを使って、実は、実際にやっている仕事は一般事務だけれども、事務用機 器云々ということで何年にもわたって派遣だというようなことが行われているわけです。 ですから、今日的な意味から、これは検討の余地はないのか。本来は検討すべきではな いかと思いますので、意見として申し上げておきます。 ○清家部会長 本日は一通り「報告書」の内容についてご意見をいただきました。いろ いろと建設的なご意見をいただき、ありがとうございました。そこで次回の部会の進め 方ですが、本日委員の皆様方からいただいたご意見を踏まえて、この制度のあり方に関 する考え方のたたき台を事務局に用意していただき、それに基づいて更にご議論を進め ていただきたいと思いますが、そのような進め方にさせていただいてよろしゅうござい ますか。 (異議なし) ○清家部会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきますので、 事務局にはご苦労ですけれども、次回までにそのたたき台のご準備をお願いいたします。 事務局から、ほかに何かございますか。 ○松原補佐 次回の部会については、現在、日程を調整中でございます。各委員に対し ましては、決まり次第個別にご連絡を差し上げたいと思いますので、よろしくお願いい たします。 ○清家部会長 以上をもちまして第117回労働力需給制度部会を終了いたします。なお、 本日の署名委員は、使用者代表・市川(隆)委員、労働者代表・古市委員にお願いいた します。委員の皆様、本日はどうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)