08/08/01 平成20年度第2回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録            平成20年度第2回 薬事・食品衛生審議会             医薬品等安全対策部会 安全対策調査会          日時 平成20年8月1日(金)          14:00〜16:40          場所 全社協・灘尾ホール               ○事務局 それでは定刻となりましたので、「平成20年度第2回安全対策調査会」を開 催させていただきます。本調査会は従前の取扱いと同様、公開で行うこととしており ますが、カメラ撮りは議事に入る前までとしておりますので、マスコミ関係者の方々 におかれましてはご理解、ご協力をお願いします。  また、傍聴者の方々は傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわ たる行為をしないこと」「座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」 等の厳守をお願いいたします。本日ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中ご 参集をありがとうございます。  本日ご出席の先生方を、ご紹介させていただきます。安全対策調査会の委員といた しまして、東京医科歯科大学歯学部付属病院薬剤部長の土屋委員、国立医薬品食品衛 生研究所薬理部長の中澤委員、国際医療福祉大学臨床医学センター教授の松本委員で す。なお池田委員が欠席です。  参考人として、納得して医療を選ぶ会事務局長の倉田先生、中部大学生命健康科学 部教授の下方先生、北里大学薬学部臨床医学(臨床統計学・医薬開発学)教授の竹内 先生、国立がんセンター中央病院院長の土屋先生、日本病院薬剤師会会長の堀内先生、 青森県立中央病院院長の吉田先生です。なお国頭先生、栗山先生、貫和先生は欠席で す。また堀江参考人の退任に伴いまして、今回より信州大学医学部教授の久保惠嗣先 生に参考人をお願いしておりますが、本日は欠席です。  引き続き事務局をご紹介いたします。大臣官房審議官医薬担当の黒川、審査管理課 長の中垣、安全対策課長の森、安全使用推進室長の倉持、医薬品医療機器総合機構安 全管理監の川原、同じく安全部長の三澤です。また、本日の試験の解析結果等の報告、 質疑応答のためアストラゼネカ社に出席いただいております。それでは議事に入りま すので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。  まず平成20年3月24日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会で申し合わされました 「審議参加に関する遵守事項」についてです。本日出席をされた委員の方々の過去3 年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受取状況を報告いたします。本日の 審議事項はゲフィチニブに係るものですので、製造販売会社のアストラゼネカ社及び その競合3社の計4社からの過去3年度における寄附金等の受取について申告いただ きました。なお、競合品目・競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送り して確認いただいております。各委員からの申し出の状況から今回の審議又は議決へ の不参加の委員はおりませんでした。なお参考人におきましては、竹内参考人がサノ フィ・アベンティスから、堀内参考人が中外製薬とブリストル・マイヤーズからそれ ぞれ50万円超500万円以下の受取、土屋参考人が中外製薬から50万円以下の受取と の申告がありましたのでお知らせいたします。このあとの議事進行は松本座長にお願 いしたいと思います。 ○松本座長 ただいま事務局から説明がありました、審議の際の申し合わせ事項につい てはよろしいでしょうか。                  (了承) ○松本座長 特にないようですので、競合品目・競合企業の妥当性を含めて了解いただ いたものとします。ありがとうございました。   では、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 お手元の資料をご覧ください。座席表、本日配付しましたアストラゼネカ社 の英文が載っている抜粋という1枚紙、議事次第、出席者一覧、配布資料一覧、それ に基づいて確認いただければと思います。まず資料1は「ゲフィチニブの承認から現 在までの経緯」、資料2は「ゲフィチニブに係る第III相試験の結果及びゲフィチニブ 使用に関する当面の対応に関する意見」(平成19年2月1日付)。資料3は、カラー のもので今回の追加解析及びINTEREST試験の概要です。資料4はグラフで「ゲフ ィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報告例数及び死亡例 数」です。参考資料といたしまして、参考資料1は、平成19年2月1日付でアスト ラゼネカ社から報告された結果概要です。参考資料2は、竹内参考人が同じく前回の 平成19年2月1日に発表した資料です。参考資料3は「ゲフィチニブ使用に関する ガイドライン」です。参考資料4は「イレッサ錠250の添付文書」です。参考資料5 は「タキソテール注の添付文書」です。参考資料6は「抗がん剤イレッサの承認取消 を求める要望書」等です。資料は以上です。 ○松本座長 資料の方はよろしいでしょうか、よろしければ議事を進めて行きます。  議題1の「ゲフィチニブに関する試験結果の追加解析等について」に入ります。こ れまでの経緯について事務局から説明をお願いします。 ○事務局 お手元に資料1と2、4をご用意ください。これについて説明いたします。 資料1、成分名「ゲフィチニブ」製品名「イレッサ錠250」ですが、こちらは平成14 年7月に承認をしまして、その後間質性肺炎等が26例、うち死亡が13例みられたこ とから同年10月に緊急安全性情報の発出を指示いたしました。また、同年12月にゲ フィチニブ安全性問題検討会を開催いたしまして、癌化学療法に精通した医師により 使用をすること、投与開始後4週間の入院等を基本とすることといった検討結果に基 づきまして、対応通知を発出しています。翌平成15年5月には米国FDAにおいて認 可されています。翌平成16年12月には英国のアストラゼネカ本社によって延命効果 試験(ISEL試験)の結果が公表されまして、全体解析では延命効果が認められませ んが、東洋人では延命効果を示唆されるという結果でした。わが国ではこの結果を受 けまして、翌平成17年1月から3月にかけましてゲフィチニブ検討会で検討がなさ れ、裏の頁になりますが、3月25日に日本肺癌学会で作成しました「ゲフィチニブ使 用に関するガイドライン」を配布・周知することなどを企業に指示いたしました。  次にアメリカは、同年6月にイレッサに関する措置を発表しまして、「イレッサ治 療により、現在ベネフィットを受けている、又は過去にベネフィットを受けていたと 主治医が認めた患者」に限定すること、イレッサの市場からの回収は行わないという 内容でした。  平成18年10月に安全対策調査会におきまして、コホート内ケースコントロールス タディの結果を審議しまして、従前どおり安全対策を継続すること、試験結果につい て医療関係者等に対して、適切に情報提供することの指示をいただきました。  また、昨年2月の安全対策調査会では国内での第III相市販後臨床試験の結果につい て議論いただきまして、有効性につきましては、全生存期間におけるゲフィチニブ群 のドセタキセル群に対する非劣性を示すことはできなかったことから、(1)一般的にタ キソテールに優先してイレッサの投与を積極的に選択する根拠はない旨を、医薬関係 者に情報提供すること、(2)第III相試験について更に詳細な解析を行い、結果を報告す ることとの指示をいただきました。本日は昨年2月の指示に基づく追加解析の結果が まとまったので、それについてご検討いただくものです。  次に資料2です。資料2は、昨年2月の安全対策調査会で取りまとめられた意見で す。有効性につきましては先ほど説明したとおりです。安全性につきましては、次の 2頁目「3 安全性について」というところです。第III相試験につきまして急性肺障害・ 間質性肺炎の発現頻度及び死亡率を含むゲフィチニブの副作用の発現状況について は、最新の添付文書に記載されているものと同程度であると考えられ、次の「第2 当 面の対応」にありますが、引き続き、少なくとも投与開始後4週間は入院又はそれに 準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど、 添付文書に記載されている安全対策を継続しつつ、肺癌化学療法に十分な経験をもつ 医師による使用を徹底するなど、現在の安全対策を継続することが適当であるとされ ました。  次に資料4です。これはアストラゼネカ社より提出された資料です。1枚目が本年 3月末までのゲフィチニブ服用後の急性肺障害・間質性肺炎等に係る副作用報告の報 告例数及び死亡例数の推移を月毎に示したものです。1年半前の前回調査会時点と、 ほぼ同じような傾向になっています。また、次に、ゲフィチニブに係る新規処方患者 数及び継続投与患者数等について四半期毎に整理された表を付けています。最近の投 与患者数の推移といたしましては、大体継続投与患者数で6,000人から7,000人、ま た新規投与では大体2,000人という内容になっています。  もう1点、追加でご説明いたします。資料2の3頁の4のところで、第III相試験に 係る資料の信頼性が確保されていることが重要であることから「医薬品の市販後調査 の基準」に関する省令に従って収集され作成されたことを、速やかに確認することが 適当であるという指摘がありましたので、この部分につきまして昨年、厚生労働省と 総合機構が企業及び第III相試験実施施設につきまして適合性書面調査及び実地調査 を行いましたが、特に問題はみられなかったことを報告させていただきます。 ○松本座長 ありがとうございました。ただいま事務局からこれまでの経緯について説 明をしていただきましたが、何かご質問、ご意見等はございますか。よろしければ次 に進みます。アストラゼネカ社から試験の解析結果について説明をお願いします。説 明については、40分ぐらいでお願いします。説明終了後に質疑の時間を取りたいと思 います。それではアストラゼネカ社お願いします。 ○アストラゼネカ社 アストラゼネカの神田と申します。私のほうから追加解析の結果 について、お示しいたします。 (スライド1)イレッサ第III相試験V-15-32は承認条件として実施されました臨床試 験でして、EGFR-TKIと化学療法を比較した、初めての試験であります。多施設共同 非盲検無作為化並行群間比較の臨床試験となっております。 (スライド2)試験デザインですが、進行再発の非小細胞肺癌患者で、1又は2レジ メンの化学療法歴を有する患者を対象といたしまして、ゲフィチニブ250mg、または ドセタキセル60mgのいずれかに1対1で割付けされております。この時点では喫煙 歴については、割付け因子に入っておりませんでした。  割付け治療、PD病勢進行後の治療は自由ですが、患者からの希望があった場合のみ、 いずれかの割付群の別のほうを選択することが可能になっておりました。治療目的を 全生存期間といたしまして、信頼区間の上限が1.25未満であれば、非劣性という条件 を設定しておりました。設定としましては、ドセタキセルに対してイレッサが生存期 間を20%延長すると仮定いたしまして、90%の検出力をもって、非劣性を検証するた めに必要なイベント数が296例という設定で行っておりました。 (スライド3)こちらに全生存期間の生存曲線を示しております。ハザード比1.12、 信頼区間が0.89〜1.40、信頼区間の上限が非劣性上限でありました1.25を上回りま したので、統計的には主目的である非劣性を達成することができませんでした。生存 期間中央値は11.5カ月と14カ月、共変量を含めたCox回帰分析で解析いたしますと、 ハザード比は1.10注)、若干ハザード比の変化が見られまして、こちらは背景因子での 喫煙歴等の不均衡の影響が示唆されているものと考えております。  注)後の質疑で「1.01」と発言を訂正 (スライド4)事務局の方からご紹介いただきましたように前回調査会におきまして、 第III相試験におきまして、患者背景、後治療の影響、未整理のデータについて、さら に詳細な解析を行い、報告をすることという指示をいただいておりました。前回の調 査会以降、患者背景、後治療等につきまして様々な解析を行い、当局のほうに報告し、 また結果につきまして、協議を行ってまいりました。また調査会以降、報告されまし た本試験と類似のデザインで実施されました海外大規模臨床試験、INTERESTの結果 が得られましたので、こちらについても報告をした上で、内容につき追加解析協議等 を行ってまいりましたので、本日内容につきまして、ご報告いたします。また、現在 実施中のアジア臨床試験でありますIPASSにつきましても本日ご紹介いたします。 (スライド5)当局との協議に基づきまして、様々な追加解析を行ってまいりました が、追加解析につきましては、あくまで探索的、事後的およびdata driven的なもの、 すなわち得られた結果に基づいた考察で追加解析を行っております。したがいまして、 事前に計画された解析計画書に基づいた解析とは背景、条件が異なりますので、この 点をご理解いただいた上でご検討いただきたいと思います。 (スライド6)はじめに患者背景に基づくサブグループ解析について、お示しいたし ます。こちらは解析計画書で事前に計画された解析となっております。 (スライド7)全生存期間に関しますサブグループ解析をフォレストプロットで示し ております。ハザード比の点推定値を菱形、横線が信頼区間を表しております。解析 対象はITT集団、ゲフィニチブ245例、ドセタキセル244例です。各サブグループ に含まれるN数も各項目ごとに付記しております。ハザード比1.0より左側でゲフィ チニブ群で良好だったことを示しております。全体につきましてはドセタキセルに対 しまして、ゲフィチニブで特に効果が高いというサブグループについては、見出すこ とができませんでした。一点、全治療、全化学療法におけるベストレスポンスで、SD だったサブグループにおいては、ドセタキセルの方において、有意に良好な結果が得 られておりましたが、これらの傾向は後治療の影響を受けない、無増悪生存期間、あ るいは奏効率のところではこの傾向が消失しております。一般にゲフィチニブの効果 が高いと言われるサブグループにつきましても、追加解析を行っております。 (スライド8)こちらは癌の組織型につきまして、腺癌と腺癌以外で生存曲線を示し ております。これまでの知見と一致して腺癌以外の右側のグループに比べまして、左 側の腺癌で生存期間の延長が認められております。ただ、今回の解析でわかりました のは、ゲフィチニブだけのみならず、ドセタキセルの方におきましても、腺癌以外に おきまして、中央値が10.5カ月に対しまして、腺癌では16.7カ月と非常に長くなっ ておりました。したがいまして、群間差は見られておりません。また、この傾向は性 別、喫煙歴、PS、罹病期間につきましても解析を行いましたが同様の結果が得られて おりまして、片方のサブグループよりイレッサに効果が高いと言われるほうでは、こ れまでと一致して高くなっておりましたが、ドセタキセルも同様で差は見られており ません。 (スライド9)次に無増悪生存期間のサブグループ解析につきまして、同様にフォレ ストプロットで示しております。対象集団は抗腫瘍効果評価対象例でゲフィチニブ 200例、ドセタキセル187例。結果につきましては、いくつかのサブグループはドセ タキセルに対しましては、ゲフィチニブ群でやや有意傾向が見られているものがあり ましたが、統計的な検証は行っておりませんが、各グループに含まれる症例数、N数 等が小さいものもありまして、こちらから断定的な結論を導くことはできませんでし た。 (スライド10)こちらは奏効率のサブグループ解析につきまして、棒グラフで示し ております。いずれのサブグループにおきましても、ゲフィチニブがドセタキセルよ りも高い奏効率を示しておりました。 (スライド11)患者背景に関するサブグループ解析につきましてまとめます。主要 評価項目である全生存期間について、サブグループにおいて治療群間を比較した場合、 ドセタキセルと比較してゲフィチニブの効果がより高いサブグループは明らかにな りませんでした。ゲフィチニブ群で長かったサブグループでは、ドセタキセルでもよ いという傾向です。また、副次的評価項目を含めて検討いたしましたが、いくつかの サブグループではドセタキセルと比較して、ゲフィチニブが有効である傾向は示唆さ れておりましたが、ただ今回の結果から、これらのサブグループに関して最終的に結 論づけることは難しいと考えております。 (スライド12)次に後治療、割付け治療中止後に行われる治療の影響につきまして 示しております。 (スライド13)初めに後治療の要約につきまして、簡単な記述統計でお示しいたし ました。 (スライド14)左側のボックスが割付け治療、右側が後治療を示しております。ゲ フィチニブ割付群は割付け治療を中止しました後、ドセタキセルの治療を約36%の症 例で受けておりました。約40%の症例で無治療、またはゲフィチニブの継続投与、こ れに対しましてドセタキセル割付群では約53%の症例がゲフィチニブを後治療とし て受けておりました。無治療は26%となっております。このように割付群間で後治療 の選択について不均衡が生じております。これらの不均衡は信頼区間、全生存期間に ついて、何らかの影響を及ぼしうるものと考えられます。 (スライド15)後治療の分布につきまして、組織型腺癌以外につきまして、円グラ フで示しております。上の2つが腺癌、下の2つが腺癌以外を示しております。右側 がドセタキセル割付群、左側がゲフィチニブ割付群です。ご覧いただけましたらわか りますように、組織型、患者背景、および割付け治療によりまして、患者または先生 方の治療の選択が異なっていることがわかります。 (スライド16)このように後治療の選択につきましては割付け治療、割付け後に選 択されるものでありまして、アンバランスが必然的に生じます。こちらの選択につい ては割付け治療中止時に得られた情報に基づいて判断が行われると思われますが、そ の判断根拠になるものとしては、割付け治療開始前に測定される変数、すなわち割付 け治療そのもの、あるいは患者特性、腫瘍の特性などが考えられます。また、割付け 治療開始後に測定された割付け治療の影響を受ける変数、すなわち抗腫瘍効果、安全 性、PS、その他未収集の結果等に基づいて、治療が選択されることがあります。しか しながら、これらの情報につきましては、本試験で収集する目的になっておりません でしたので、どのような理由に基づいて後治療が選択されたかにつきましては情報が 収集されておりません。 (スライド17)ただいま申し上げましたことを図式化しております。割付け治療を 境に、それ以前の割付け治療、患者特性、またその後に観測される変数の様々な交絡 を経て後治療の選択がなされ、最終的な全生存期間として観測されております。した がいまして、この後、後治療の選択に基づいたサブグループ解析をお示しいたします が、基本的にいろいろな交絡の下で得られた結果、それらのサブグループの患者背景 につきましては、均質とは言えず、それに基づいた解析につきましてはその点を十分 考慮した上で検討いただく必要があるかと思います。 (スライド18)初めに記述統計の手法について、ご紹介いたします。 (スライド19)後治療のサブグループ解析につきましては、割付け治療2剤のいず れか、または後治療をゲフィチニブ、ドセタキセルその他の化学療法、または後治療 なしという4つの分類で、計8つのサブグループについて定義しております。割付け 治療をデータカットオフの時点で継続しておられた患者につきましては、後治療を受 けておりませんので、解析からは除いておりますが、データカットオフ時点でも続け ておられたということで、基本的には予後がよい、生存が長い患者は除かれていると いうことになっております。最初の後治療はランダム化されておらず、また割付け治 療の終了後に医師、または患者によって選択されたものです。サブグループは割付け 治療の開始後に得られたデータに基づいて定義されますので、未観測の患者背景、特 性がサブグループ間で異なると考えられます。そのため、生存期間の差は割付け治療 の効果による可能性もありますが、患者背景、その他の影響を受けているという可能 性も考えられます。 (スライド20)こちらは8つのサブグループにつきまして、1枚のスライドで示し ております。点線がゲフィチニブ、実線がドセタキセルです。赤色のグラフはクロス オーバーしたサブグループ、青色のグループにつきましては後治療がなかったグルー プ、緑色につきましては、そのまま割付け治療を継続したグループ、黒色はその他の 化学療法を受けたグループを示しております。先ほども申し上げましたとおり、割付 け治療継続中であった症例はイレッサ群12例、ドセタキセル群3例が除かれており ます。 (スライド21)初めに治療法のクロスオーバーがあった患者の全生存期間につきま して示しております。曲線につきましては2群間で大きな差は見られておりませんが、 それぞれのサブグループの患者背景を見ますと、PS、女性、腺癌、非喫煙の患者の割 合につきましては、それぞれのグループで大きな違いが出ております。また、含まれ る症例数についても、違いが出ております。先ほど申し上げましたとおり、このよう に割付け後に観測される情報を基に分類をしておりますので、各グループの患者背景 に大きな違いが生じており、これらのグループを直接統計的手法によって評価、比較 することは非常に困難であると判断いたしましたので、記述統計、すなわち集計デー タとしてのみ、今回お示ししております。ただ、いろいろな情報を幅広く探索的に検 討を行うため、生存期間中央値、また1年生存率についても、またハザード比につい ても、付記しております。ハザード比0.96、また信頼区間についても出しております が、0.64〜1.44、P値は0.837という数字は出ておりますが、くり返しになりますが、 統計的な比較検討に耐える内容であるかどうかは、議論の余地があります。 (スライド22)こちらは後治療がなかった患者の全生存期間を示しております。サ ブグループの間で比較しますと、このグループが最も生存期間は短くなっており、ゲ フィチニブ群で、さらに短くなる傾向です。ハザード比は1.83、信頼区間は1.22〜2.74、 P値は0.004、同様に患者背景、N数につきましては、ばらつきがありまして、比較 評価には注意が必要です。 (スライド23)割付け治療を継続した患者の全生存期間につきまして示しておりま す。PD、あるいは病勢進行の後も同じ治療を継続した症例のグループです。同様に患 者背景および含まれる患者数につきましては、大きな乖離が出ております。ハザード 比は1.16、信頼区間は0.51〜2.66、P値は0.724でした。 (スライド24)最後にほかの化学療法を用いた患者のグループにつきまして示して おります。患者背景のばらつき等はこれまでと同様です。2つのグループ間に大きな 乖離は見られませんでした。ハザード比は1.47、信頼区間は0.93〜2.31、P値は0.098 でした。 (スライド25)割付け治療および後治療別の全生存期間についてまとめております。 ご覧いただきましたようにサブグループ間の背景因子は大きく異なっておりました。 「クロスオーバー」のあるサブグループの生存期間は割付け治療群間で類似しており ました。全サブグループの中で、後治療なしのサブグループが特に、ゲフィチニブ群 割付群において生存期間が最も短かった。ただし、この解析は割付け治療中止を、同 一治療を受けた、すなわちデータ獲得の時点で継続できていた症例は除かれておりま す。後治療として、割付け治療を継続した患者での生存期間は長かったという結果で す。サブグループはランダム化されておらず、割付け治療開始後の情報に基づいて、 選択されるため、これらに基づく解析結果の評価は非常に困難でした。サブグループ ごとに予後が異なり、また生存期間の差が治療法によるものか、患者背景によるもの か、あるいは得られていない情報、その他の未測定の要因によるものかを識別、ある いは特定することはできませんでした。 (スライド26)後治療につきましてはただいま説明いたしましたとおり、様々な交 絡があり、評価が困難になっており、これらを適切に調整する手法が評価には必要と なってまいります。 (スライド27)後治療の選択は割付治療の影響を直接・間接的に受けたものなので、 これを調整する手法は必要ですが一般的に標準的な、そういった手法はありません。 山口先生、大橋先生は後治療の影響を調整するためにSNFTmodelを用い、これらを 調整する試みをされております。今回我々もこのモデルを適用することを検討いたし ました。 (スライド28)このモデルを適用するに当たり、大きな課題がいくつかありました。 例えば、いくつかの仮定をおかなければならず、これらの検証が非常に困難、 unmeasured confoundersといいますが、ある一定の治療効果に関しましては、その 死亡まで引き続き効果が続くと、臨床的には非常に想定が難しいような仮定が必要で した。また、後治療は一般に1種類のみならず、患者におきましては何種類かの後治 療を受けられますが、モデルにおきましては一度にたった1つの効果しか含めること ができない。また、最初の後治療しかモデルに含めることができない。したがいまし て、反対側の治療法はクロスオーバーした症例数がもし2群間でバランスしていた場 合、あるいはすべての治療が2群間でバランスしていた場合、といったことに関しま しては、このモデルからは導くことはできません。しかしながら、様々な条件設定を いたしまして、何らかの結論を導く努力をいたしました。結果といたしましては、い ずれの群に関しましても、最初の後治療でゲフィチニブが選択されなかったという調 整をしたモデルでは、ゲフィチニブ群の生存期間はドセタキセル群より短いという結 果になりました。逆に最初の治療がドセタキセルでなかった場合という調整をしたモ デルで解析しますと、ゲフィチニブの生存期間はやはりドセタキセルより短い、同様 の結果が得られました。この結果は前回調査会でお示ししました主要解析結果と類似、 あるいは同様の結果であり、新たな知見は得られないということになります。 (スライド29)後治療についてまとめます。後治療につきましては、全生存期間に 影響を与えた可能性は考えられます。後治療が全生存期間に与える影響の大きさを正 確に評価することは非常に困難であります。後治療の選択は無作為化、ランダム化さ れておらず、無作為治療割付け開始後に観測された変数に基づく点で不均衡があり、 割付け治療の効果と後治療の選択は交絡していることから、割付け治療の効果と後治 療の効果を切り分けて評価することができません。理論上は後治療が全生存期間に影 響を及ぼすと考えられますが、本試験はこのような仮説を検証できるデザインになっ ておりませんでした。さらに最後にお示したSNFTmodelを用いた解析を行いました が、多くの課題があり、また結果につきましては新たな知見は得られなかったという ことになりました。しかしながら、副次的評価項目であります無増悪生存期間や奏効 率はこれらの後治療の影響をほぼ受けないというふうに考えられ、ドセタキセルと同 等、もしくはゲフィチニブ群では良好であったという点は、評価の参考になると考え ております。 (スライド30)続きまして、EGFR関連バイオマーカーに関するサブグループ解析 について、お示しいたします。 (スライド31)EGFR遺伝子変異およびゲフィチニブの効果に関する知見が発見さ れましたのは、本試験の開始後のことでした。2回の試験実施計画書の改定を経まし て、試験の途中より患者より腫瘍検体の入手を行いました。様々な取り組みを行いま した結果、最終的に74例の腫瘍検体を入手し、結果54例で評価を行うことができま した。 (スライド32)得られた検体を提供された患者の全体の患者背景と、この患者背景 を比較しております。右側に全体の患者群、左側に検体が得られた患者背景について 示しております。全体と比較して、女性、喫煙、PS、罹病期間など、全体に比べて高 い傾向が見られております。これは試験の後半で腫瘍検体を回収したため、比較的予 後がよく、また生存が長い患者のみ検体の提供が可能であったことが影響していると 考えられます。ハザード比で見ますと、全生存期間、無増悪生存期間で全体と差はあ りませんが、奏効率で見ますと、全体より高いというふうになっております。しかし ながら、得られた検体は全体のわずか11%であり、また患者背景につきましては全体 と異なっており、この結果をそのまま評価、解釈することは難しいと考えております。 (スライド33)遺伝子変異陽性と陰性につきまして、イベント数の比較をしており ます。遺伝子変異陰性に比べて、遺伝子変異陽性で、イベント数が少なくなっている のがわかりますが、群間差はありません。 (スライド34)解析につきましてはイベント数が非常に少ないため、全生存期間に 関しては意味のある評価をすることは困難と判断いたしました。陽性患者で5例、陰 性患者で11例しかありませんでした。無増悪生存期間及び奏効率につきましては、 解析が可能でありましたが、やはり例数が非常に少なく、結果の解釈には注意が必要 であります。 (スライド35)こちらに遺伝子変異に基づく無増悪生存期間につきまして、生存期 間を示しております。赤の実線、白の点線は遺伝子変異陽性のゲフィチニブ群とドセ タキセル群、緑と青の線はゲフィチニブの遺伝子変異陰性、ドセタキセルの遺伝子陰 性患者であります。ご覧いただきますように遺伝子変異陰性のグループに比べまして、 陽性の方で無増悪生存期間が延長しているのがわかります。これはゲフィチニブのみ ならず、ドセタキセルでも同様の傾向が見られております。 (スライド36)こちらは奏効率について示しております。奏効例が見られたのは遺 伝子変異陽性の患者のみでした。 (スライド37)遺伝子変異についてまとめます。本試験において、遺伝子変異の有 無に関して可能な限り多くの情報を収集するために、様々な取組みを行いました。し かしながら、データが非常に少ないため、最終的な結論は得られておりません。また、 バイオマーカーの評価が可能だった検体が得られた症例は、本試験症例全体を代表す る患者層ではありませんでした。しかしながら、探索的に行った解析の結果、ゲフィ チニブ群、ドセタキセル群いずれにおきましても、変異陽性の患者は陰性の患者に比 べて、効果が高いことが示されました。ゲフィチニブに関しましては、これまでの知 見と同様ですが、一方、ドセタキセルに対しても同様の傾向が見られることが示唆さ れております。しかしながら、情報が限られておりますので、結論づけることは困難 です。 (スライド38)第III相試験について総括いたします。本試験では全生存期間におけ るゲフィチニブ群のドセタキセル群に対する非劣性を示すという主要目的は達成さ れませんでした。しかしながら、本試験でのゲフィチニブに関する結果は、これまで に日本やアジアにおいて報告された知見と一致したものであると考えられます。 (スライド39)全生存期間の結果を解釈するために様々な解析を行いました。しか しながら、当初予想した以上に、多くの後治療があり、全生存期間の解釈が非常に複 雑になっています。したがいまして、確固とした結論を導くことは困難でありました。 サブグループ解析の結果、ドセタキセルに比べゲフィチニブの効果が明らかに高いこ とが予測されるグループは特定されておりませんが、患者数が少ないサブグループも あり、また主要目的を達成しておりませんので、このような追加解析につきましては、 最終的に結論づけることは困難であります。 (スライド40)続きまして、第III相試験後に報告されました海外で行われておりま すV-15-32と類似のデザインの大規模臨床試験の結果につきまして、ご紹介いたしま す。 (スライド41)試験デザインはほぼ同様ですが、治療歴を有する進行再発の非小細 胞肺癌患者を対象としまして、ゲフィチニブ250mg、またはドセタキセル75mg/m2、 こちらは海外で用量が少し違っております。1対1に無作為割付けをいたします。主 要評価項目は全生存期間、副次的、また探索的目的はこちらに示しているとおりです。 (スライド42)2004年から2006年にかけまして、24カ国、149施設が参加し、1,466 例が登録されました。V-15-32が490例でして、実に3倍の症例数がINTEREST試 験では登録されております。 Per-Protocol集団の1,433例の中、イベントは1,169 例、81.6%でした。平均投与期間はゲフィチニブ、ドセタキセルで4.4カ月、3.0カ 月でした。ドセタキセルのサイクル数中央値は4サイクル、82%が減量なく投与され ておりました。 (スライド43)登録地域の分布です。ヨーロッパから50%、アジアから20%が登 録されました。アジアは主に中国から登録されております。 (スライド44)患者背景について示します。両群間で非常によくバランスが取れて おりました。 (スライド45)後治療の内訳を示しております。割付け治療が左側、後治療が右側 であります。V-15-32と比べまして、後治療の選択はゲフィチニブ群でその後、後治 療としてドセタキセルを31%、ドセタキセルはEGFRチロシンキナーゼ阻害剤のゲ フィチニブ又はエルロチニブを37%の症例が選択しておりました。両群で非常によく バランスが取られておりました。 (スライド46)生存期間の生存曲線を示しております。下に示しておりますが、こ の試験におきましては非劣性限界の信頼区間の上限を1.154においており、V-15-32 より、さらに厳しい非劣性上限を設定しております。結果といたしましては、ハザー ド比1.02、信頼区間が0.905〜1.150、したがいまして信頼区間上限を下回りましたの で、ドセタキセルに対するゲフィチニブの非劣性が証明されました。 中央値は7.6 カ月、8カ月であり、これまでの知見と同様でありました。 (スライド47)こちらはEGFR遺伝子コピー数、以後FISHと言いますが、FISH 陽性の患者における全生存期間を示しております。コプライマリーとして、このグル ープにおけるドセタキセルでの優越性を示すことが目的でしたが、結論としまして、 ハザード比は1.09、P値は0.6ということで、優越性を示す根拠は得られませんでし た。 (スライド48)生存期間につきましてサブグループ解析を行っております。前治療 のレジメン数で、ドセタキセルで有意に良好な結果が得られたこと以外につきまして は、両群間でほぼ同様でした。 (スライド49)こちらは人種ごとの全生存期間を示しております。アジア人以外と 比較しまして、アジア人で結果は良好でした。しかしながら、ゲフィチニブ群だけで なく、ドセタキセル群においてもアジア人の方で良好な結果が得られており、中央値 で見ますと、アジア人以外が7カ月であるのに対して、アジア人では12カ月で、中 央値の延長はドセタキセル群でも見られておりました。 (スライド50)こちらは無増悪生存期間を示しております。両群間で大きな差はあ りませんでした。ほぼ同様の結果です。中央値は2.2カ月と2.7カ月でした。 (スライド51)こちらは抗腫瘍効果を示しております。ゲフィチニブ群で9.1%、 ドセタキセル群で7.6%。無増悪生存期間、また抗腫瘍効果、こちらの影響を受けな い評価項目に関しましても一貫しており、主要評価項目の結果を裏付けております。 (スライド52)こちらはQOLを示しております。FACT−L、およびTOIにおきま しは、イレッサが有意に改善しておりました。LCSにおきましては、数字的にはイレ ッサのほうで良好でありましたが、有意差はなく、基本的には同じような結果でした。 (スライド53)有害事象についてまとめております。両群間で大きな差はありませ んが、有害事象による中止、あるいはCTCグレード3または4の重篤な有害事象等 に関しましては、イレッサ群で低い頻度になっておりました。副作用についても同様 の傾向です。 (スライド54)主な有害事象について棒グラフで示しております。これまでの知見 と一致してゲフィチニブ群で共通に見られて発疹、下痢といったものはゲフィチニブ 群で多く、ドセタキセル群につきましては、血液毒性、無力症、あるいは脱毛といっ た有害事象が多く認められておりました。急性肺障害・間質性肺炎(ILD)につきま しては、ゲフィチニブ群で1.4%、ドセタキセル群で1.1%報告されました。死亡例が アジア人以外で1例ありましたが、主治医の判定は「関連あり」でゲフィチニブ群で した。 (スライド55)INTERESTの試験の結論です。主要評価項目での主目的が達成され、 ドセタキセルに対する非劣性を全生存期間について示しました。サブグループ解析で すが、アジア人とアジア人以外ではハザード比は類似しておりました。無増悪生存期 間、奏効率、随伴症状改善については両群間に差はありませんでした。ゲフィチニブ 群の忍容性プロファイルはドセタキセル群に比べ、良好でありました。ゲフィチニブ の治療を受けた患者では、ドセタキセルに比べてQOLの改善が見られた患者の割合 が高くなっておりました。 (スライド56)以上ご紹介しました2試験について、比較しております。 (スライド57)INTEREST、V-15-32全体的に見まして、概して一致した患者背景 になっておりますが、V-15-32およびINTERESTのアジアグループにつきましては、 腺癌、あるいは喫煙といったところで、ややそれ以外のINTEREST全体と比べて高 い傾向にあり、地域性を反映しているものと思われます。 (スライド58)後治療の選択につきまして、INTERESTとV-15-32につきまして並 べて表示しております。申し上げましたとおりINTERESTでは両群間でバランスが 取れておりますが、V-15-32、またINTERESTのアジア人のグループでは、若干群間 でのばらつきが見られています。 (スライド59)有効性の比較をこちらに示しております。全生存期間につきまして は2試験間で類似しておりました。無増悪生存期間で見ますと、INTERESTアジア グループ、V-15-32で若干良好な傾向が見られております。 (スライド60)こちらは先ほど示しました内容につきまして、表で示しております。 QOLにつきましても、一貫して同様の結論が得られており、INTEREST、V-15-32と もにゲフィチニブ群の方がドセタキセル群に対してQOLの改善が見られております。 また、忍容性のプロファイルにつきましても、グレード3、4の有害事象発現頻度に つきましては一貫してゲフィチニブ群の方で低いという結果です。 (スライド61)まとめといたしまして、2試験合計約2,000例を対象に臨床試験を 行いましたが、一貫して以下のことが示されております。生存期間では両群同じよう な傾向でした。国内試験では、非劣性は証明されませんでしたが、最も規模の大きな 試験において、非劣性が証明されております。無増悪生存期間について、両群に差は ありませんでした。奏効率については両群で同様、もしくはゲフィチニブ群の方が高 い傾向でした。QOLの改善の割合、また忍容性プロファイルはゲフィチニブ群でより 良好な結果でした。 (スライド62)結論といたしましては、V-15-32国内試験では全生存期間の非劣性 は示されませんでした。V-15-32結果をより詳細に解釈するために様々な試みを行い ましたが、確固たる結論は得られておりません。さらに大規模な試験、INTEREST ではアジア人を含む患者を対象に実施され、厳しい非劣性限界が設定されておりまし たが、主目的を達成し、非劣性が示されました。V-15-32およびINTERESTの両試験 において、無増悪生存期間や随伴症状に差はないこと、奏効率は同様、もしくはゲフ ィチニブ群で高いこと、QOLや忍容性プロファイルはゲフィチニブ群のほうが優れて いるということが一貫して示唆されております。 (スライド63)以上の結論を踏まえまして、アストラゼネカの見解としましては、 V-15-32試験及びINTEREST試験の結果、さらにこれまでの多くの臨床経験から、ゲ フィチニブは化学療法歴のある非小細胞肺癌の治療の有効な選択肢の1つとなり得る と考えています。ただし、治療を選択するにあたっては、個々の患者において期待さ れる利益と、副作用とを十分に考慮することが必要であろうと考えております。 (スライド64)最後に、現在実施中のアジア臨床試験IPASSについて紹介いたしま す。 (スライド65)IPASS試験はアジアで行われた進行再発非小細胞肺癌患者を対象に、 一次療法としてゲフィチニブとカルボプラチン及びパクリタキセルの併用化学療法 の有効性、安全性を比較する多施設共同無作為化オープン並行群間の第III相試験です。 A群はゲフィチニブ群又は続きましてカルボプラチン+パクリタキセル併用療法を受 ける群。B群はカルボプラチン+パクリタキセルの併用療法で、1対1で割り付ける ことになっておりました。無増悪生存期間を主要目的といたしまして、生存期間の調 査、評価を副次的評価項目として実施されております。 (スライド66)本試験においては日本をはじめ、アジア9カ国から1,217例のアジ ア人患者を組み入れています。主要評価項目は無増悪生存期間、ハザード比の信頼区 間上限が1.20未満で非劣性という条件でした。一次療法における臨床試験では多くの 後治療の使用が予想されることから、主要評価項目は全生存期間とはいたしませんで した。副次的評価項目としては奏効率、QOL、安全性等を見ております。本試験にお いては、対象患者は臨床的な患者背景に基づき、腺癌及び非喫煙者、又は過去に軽度 の喫煙歴のある患者という条件で限定された患者集団で実施されています。EGFR遺 伝子変異等についても探索的に検討しています。後治療について、患者は病勢進行後、 カルボプラチン+パクリタキセル併用療法をA群で受けることになっています。カル ボプラチン+パクリタキセル併用療法の群は、その後、自由選択となりますがEGFR チロシンキナーゼ阻害剤による治療を受けることが予想されています。 (スライド67)試験の進捗ですが、今日皆さんのお手元に業績発表を昨日弊社英国 で行いました結果の写しがお手元にいっているかと思います。本試験の主要評価項目 であった無増悪生存期間の解析結果について、トップラインとした結果が示されてい ます。結論としては、ゲフィチニブはカルボプラチン+パクリタキセル併用化学療法 に対して、無増悪生存期間の評価において、主要目的である非劣性の証明をさらに上 回り優越性が示されています。詳細なデータについては引き続き整理検討を行ってい ますが、データについては今後、主要な医学会において報告される予定です。一方、 副次的評価項目である全生存期間については、引き続き追跡を行っており、2009年第 三四半期で解析の見込みとしています。アストラゼネカからは以上となります。 ○安全対策課長 いまのプレゼンについて、1点だけ事実関係を確認したいことがある ので、お答えいただきたいのですが、スライドのご説明の3枚目の読み上げられた数 字について確認させてください。もともとのハザード比の数字は1.12。これに対して 共変量を考慮して行ったハザード比の数字について、スライドでは1.01となっていま すが、読み上げられたのは1.10とおっしゃっていました。これはどちらが正しいので しょうか。 ○アストラゼネカ社 スライドが正しくて1.01です。 ○安全対策課長 わかりました。1.01ですね。 ○松本座長 アストラゼネカ社の方、どうもご苦労様でした。ありがとうございます。 引き続きまして提出されている追加解析等に関する資料について、竹内先生、ご説明 いただけますでしょうか。 ○竹内参考人 1つだけ質問があります。いま森課長から国内試験で調整していないハ ザード比と調整してあるハザード比が確認されたのですが、INTERESTの方では調整 されていないことが報告されていて、調整されているハザード比はいくつになってい るのでしょうか。これが46頁にあります。 ○アストラゼネカ社 スライドについては共変量調整しない分だけ示していますが、共 変量を調整した解析についても行っていますので、伊藤から説明させていただきます。 ○アストラゼネカ社 調整したものがハザード比1.0435になっています。 ○竹内参考人 1.043ですか。 ○アストラゼネカ社 すみません、調整したものが1.0149です。調整したハザード比 は1.0435です。 ○竹内参考人 1.0435で、信頼区間は。 ○アストラゼネカ社 0.9247から1.1777です。 ○竹内参考人 ということは調整しなければ非劣性が言えて、調整したら非劣性が言え なかったということですね。 ○アストラゼネカ社 そのとおりです。 ○竹内参考人 わかりました。 ○アストラゼネカ社 付け加えさせていただければ、小数点2桁目のハザード比の変化 ですので、基本的には同じような結果であろうという考えを持っております。 ○松本座長 それでは竹内先生、お願いします。 ○竹内参考人 簡単ではありますが、今ご説明していただいた中で、自分なりに簡単に 要約だけをさせていただきたいと思います。安全対策調査会の平成19年2月1日に おいて、これはあくまでも国内第III相試験について患者背景、後治療の影響、未整理 のデータ等について、さらに詳細な解析を行い、その結果を報告するというご指示が ございましたので、その件について、今日スポンサーの方から発表していただいたの です。まず、国内試験については患者背景、後治療、EGFRの関連のバイオマーカー、 新しいINTEREST試験についての報告がございました。  7頁です。まず、このスライドでは、サブグループについて報告があったのですが、 やはり傾向としては全症例を使った生存期間が各サブグループでも同じような傾向 が出ているということが示された報告があったと思います。  次は8頁です。どういう発表があったかといいますと、腺癌と腺癌以外で比べると、 やはり腺癌では中央値が14.0、16.72に対して、腺癌以外では8.2、10.5ということ で、各サブグループ間では、やはり薬の効き方が違っていた。ただし、サブグループ 間では違っているのですが、例えば腺癌なら腺癌、腺癌以外なら腺癌以外の中のドセ タキセルに対するゲフィチニブの効果は全く同じであったということが今日は報告 されたと思っています。  11頁です。一応このサブグループに対する結論としては、ご説明がありましたよう に、各サブグループにおいて治療群間を比較した場合に、ドセタキセル群と比較して ゲフィチニブ群の効果がより高い、または逆の影響もあるようなサブグループは明ら かにはならなかったということで、結論としましては今回の結果から、サブグループ に関して最終的に結論付けることができなかったということには私も同感です。  次は後治療に関して16頁です。後治療の解析に対して問題があるのは、スポンサ ーの方から言われましたように、後治療に対しては無作為化がなっておりませんので、 どういう後治療を受けるかということに関しては、いちばん初めに受けた割付け治療 に関して後治療がどのようになるか、又は患者特性、すなわち女性、PS、又はノンス モーカー、又は癌種である特性いわゆる腺癌か、非腺癌かという患者の特性によって、 非常に変わってくるので、それらを非常に注意しながら結果を見ていかないといけな いと思っております。  21頁です。この図は何を示しているかというと、この図はドセタキセルからゲフィ チニブに移った群と、ゲフィチニブ群からドセタキセルに移った群の比較です。先ほ どご報告がありましたように、患者背景を見ますと、ドセタキセルからゲフィチニブ 群に移った場合には、非喫煙者の割合が多くて、腺癌の割合が多くて女性の割合が非 常に高かったということがありますので、この2つの部分を解析することは非常に難 しいことだと思っております。  22頁です。同じようなことがこの群では、ドセタキセルから後治療なし、又はゲフ ィチニブから後治療なしという比較をしていますが、やはり患者背景が腺癌の違い、 女性の違いが影響されるかと思っています。  21頁に戻っていただきまして、ドセタキセルからゲフィチニブ群に対しての患者背 景は、非常に女性が多くて腺癌が多くて、非喫煙者が多いのに対し、22頁にいき、ド セタキセルから後治療の人では、ノンスモーカーの方が非常に少なくて、割合腺癌が 低く、女性が少ないということで、この2つのカーブを比較しても違いがあるという ことですので、後治療の影響を考察する場合には、非常に今回の場合には難しかった という結論が出てくるかと思っています。  25頁です。結論の要約としては、サブグループ間の背景因子は非常に大きく異なっ ていたということですので、後治療に関してサブグループは、ランダム化されていな いために、もし差があるとしてもそれが実際に治療法によるものなのか、患者特性に よるものなのか、あるいはほかの未測定の要因によるものかを判別することは非常に 難しいという結論が得られたかと思っています。  33頁です。EGFRについて少し話します。この図はEGFRの陽性の患者と陰性の 患者とを比べて、死亡、または病勢進行に対して比べたものです。一応、傾向として は陽性の患者の方が、死亡率等が少なかったと。ただし、ゲフィチニブとドセタキセ ル群の間で比較することにより、非常に例数が少ないので、ここからゲフィチニブ群 とドセタキセル群を比較することは非常に難しいと思っています。  34頁です。スポンサーの方の書いてあるとおり、死亡例が非常に少ないために、全 生存期間に関しては、意味のある評価をすることは困難であると私も思っています。  35頁です。無増悪生存期間を視覚的に書いていますが、上の2つの線が陽性の群で、 下2つが陰性の患者です。見るからに陽性の患者の方が陰性の患者に比べて、無増悪 生存期間も非常に良好であると。ただし、陽性の患者の中でゲフィチニブ群とドセタ キセル群の間で差があるかということになると、非常に症例数が少ないので、ここか ら結論を導き出すというのは非常に難しいことだと思っています。  37頁です。このEGFR群遺伝子変異に関しては、3番目に記載されているとおり、 ゲフィチニブ割付群、ドセタキセル割付群のいずれにおいても、EGFR遺伝子変異陽 性の患者では、陰性に比べて効果が高いことがあくまでも示唆されているという結果 が、今回は出ていると思っています。  最後に国内第III相試験及びINTEREST試験の比較について少し見解を述べさせて いただきます。57頁です。この表ではINTERESTの患者背景とこのV-15-32の国内 試験で、そのV-15-32の国内試験とINTERESTのアジア人の患者背景を見ますと、 やはり腺癌患者がINTERESTのアジア人、又は国内試験ではINTERESTのアジア人 以外の患者に比べると多かった。喫煙歴なしのところを見ても、やはりINTEREST のアジア人では51%で、国内試験では32%ということで、INTERESTのアジア人以 外に比べますと、非常によく似ていたということがあります。  また、女性を見てみますと、やはりINTERESTのアジア人では44%で、国内試験 では38%ということで、非常に似通った患者背景があったのではないかと私は思って います。  59頁です。ここではINTERESTの試験の結果と国内試験の有効性を比較していま すが、まず、INTERESTのアジア人と国内試験の全生存期間の中央値を見てみますと、 INTERESTのアジア人のゲフィチニブ群では10.4カ月で、国内試験のゲフィチニブ 群では、11.5カ月。INTERESTのアジア人のドセタキセルでは12.2カ月に対して、 国内試験では14カ月になっていますので、やはりINTERESTのアジア人以外と比べ ますと、INTERESTのアジア人と国内試験の全生存期間においては中央値において非 常に似ていると思っています。  また、同じような傾向が奏効率にも言え、INTERESTの中のアジア人と国内試験の 日本人に対しても、奏効率が非常によく似ている結果が出てきています。無増悪生存 期間についても、図をご覧いただきますと、やはりINTERESTのアジア人と、国内 試験の日本人の比を見ていただきますと、INTERESTのアジア人以外と比べますと、 非常に類似した結果が出ているのではないかと思っています。  49頁です。これは人種ごとの全生存期間ということで、アジア人とアジア人以外に ついて、このような生存曲線が書かれています。先ほど共変量で調整した結果はどう なっていますかとお聞きしたところ、上限1.1777で非劣性が言えなかったのですが、 ここを見ていただきますと、アジア人以外ではもうすでに非劣性は言えています。と ころが、アジア人を見ていますと非劣性は言えていないので、症例数の違いもあるの で、この図から見ても、アジア人とアジア人以外では少し効果に違いがあるのかなと いう気はします。  3頁の図、国内の全生存期間とアジア人の生存期間の図を見ていただきますと非常 に似ているという結果が出ていますので、先ほどのスポンサーの方から発言がありま したように、IDEAL試験又はISELのアジア人の結果、国内試験、INTERESTのア ジア人の結果を見ていきますと、非常に一定した結果が出ていると私は感じておりま す。  38頁、国内試験のまとめです。この国内試験についてスポンサーの方が、この国内 試験についてはゲフィチニブ割付群のドセタキセル割付群に対する非劣性は達成さ れなかった。ただし、先ほど示しましたように、ゲフィチニブに関しての結果は、こ れまで日本やアジアにおいて報告された結果と、非常によく似た結果が報告されてい ると私は思っています。  39頁です。これも国内試験の結果です。全生存期間の結果を解釈するために、後治 療又は患者の特性や癌種の違いにより、非常に解釈が難しくなっています。ただし、 先ほどサブグループ解析のところで、いろいろなサブグループで同じような結果が得 られるということが出てきていましたので、全生存期間の国内試験におけるCoxでの 共変量調整でハザード比が1.01ということを、森課長が確かめましたが、やはり1.01 というのは非常に国内試験においてハザード比は、妥当な有効性を示しているのでは ないかと私は感じています。 ○松本座長 竹内先生、どうもありがとうございました。それでは先ほどのアストラゼ ネカ社とただいまの竹内先生のご説明に対し、ご意見、ご質問等はございませんでし ょうか。 ○堀内参考人 1つ確認しておきたいのですが、先ほどのV-15-32とINTERESTで、 生存率の比較をする場合に、V-15-32では症例数が大変少なくて、きちんとしたデー タが出せないというお話だったと思います。INTERESTの方は2004年から2006年 2月までに登録した者で、そのうちの1,116人、81.6%が亡くなっているということ ですね。V-15-32は死亡率が大変悪いのです。死亡率が悪いということは別に悪いこ とではないのですが、490人のうち解析した時点で160人ぐらいが亡くなっています が、これはいつまでのデータですか。いつからいつまで登録したもので、生存率を計 算したのはいつまでですか。 ○松本座長 アストラゼネカさん、答えられますか。よろしくお願いします。 ○アストラゼネカ社 登録期間については2003年9月から2006年1月、全生存期間 のデータカットオフは2006年10月末です。 ○堀内参考人 どちらかというと、INTERESTの方が後から登録を始めたデータです。 死亡率がこれだけ違うというのは何に由来すると考えられるのですか。 ○松本座長 調べてもらって、後で答えていただければと思います。他にご意見、ご質 問等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。今回、追加の説明をいただき ましたが、指名して申し訳ありませんが、下方先生、何かご意見はございませんでし ょうか。 ○下方参考人 国内試験の後解析の話をいろいろとしていただきました。臨床の現場で 後治療をどうするかということは、非常に難しいという現実もあるのですから、後か らこういう解析をするということになると、確かにクリアな成績を提示することは難 しい。  関心があったのは後のほうで発表していただいたデータで、非劣性を証明できた。 このデータは症例数が非常に多いということがよかったのではないかと思います。 ○松本座長 ありがとうございました。それでは国立がんセンターの土屋先生、何かご 意見はございますでしょうか。 ○土屋参考人 いま下方教授がおっしゃったように、このスタディ自体が後治療の解析 を目的としていないので、やはりいろいろとご苦労なさったと思うのですが、やはり これを解釈するのは最初から無理があるというのが結論ではないでしょうか。クロス オーバーするならするで、デザインが最初からそういうものであれば、もう少し解釈 のしようがあったなと思います。少し余計なことなのですが、スライドのプリントア ウトが見にくいので、自分で直接プリントアウトしたほうがコピーしたものより見や すいのと、お金がかかるのでできればグレースケールでプリントアウトした方が手持 ちでは読みやすいので、余計なことですが、こういう機会にはそうしていただけたら と思います。 ○松本座長 ありがとうございました。吉田先生いかがでしょうか。 ○吉田参考人 もういろいろとおっしゃられているので特段ということではないのです が、これはクロスオーバーしたことが問題なわけではないと思うのです。クロスオー バーした症例が多ければ、非劣性は証明しやすくなるのが一般的なので、そのことが 問題なのではなくて、ドセ群の中から女性、腺癌、非喫煙者という症例を選んで、ゲ フィチニブに投与したために、ドセ群の遠隔成績がよくなってしまった。そこに問題 があって、医者側が患者のためによかれと思って、恣意的な行動を起こしてしまった ために、結果を読みにくくしていると思います。従って、いわゆる非劣性がとれなか ったからドセがいいとか、ゲフィチニブが悪いという結論は、出ないのではないかと 思います。 ○松本座長 ありがとうございました。先ほどのもう1つのお答えはどうですか。 ○アストラゼネカ社 国内試験とINTERESTを比べますと、最終的な全生存期間の中 央値に、大きな違いがあり、国内試験は11カ月又は14カ月、INTERESTの方は7 カ月、8カ月ということがありますので、期間にしてミディアンが短い分、INTEREST の方でどうしても死亡率は上がっているという観測になるかと思います。 ○松本座長 堀内先生よろしいですか。 ○堀内参考人 最終的には生存率で比較することが必要だと思われます。そうしますと、 一定のところで切ってしまうと、今のような話になってしまうと思います。だから、 V-15-32の生存率が長いからといって切ってしまうと、症例数が少なくなる。したが って、明確なことが言えなくなり比較もできなくなる。さらに言えば、サブタイプの 分母が変わってくるという可能性だって、いくらでもあると思います。ですから、き ちんと最後まで追跡することが必要だと思います。 ○アストラゼネカ社 両試験とも特定の検出力を確保するために、ある死亡数が起こっ た時点で試験をストップするプロトコルになっています。だから、ずっと追い駆ける わけではなくて、結論が出るまで追い駆けるということになっています。ですから、 ある死亡数が出るまで追跡するということは、INTERESTのほうがミディアンの生存 期間が短いですから、早く終わりやすいということになっています。ですから、決し てずっと追い駆けた死亡率で比較しているわけではなくて、特定の検出が行われるま での死亡の情報を使って解析しているということです。 ○竹内参考人 いま堀内先生がおっしゃったのは、INTERESTのアジア人以外とアジア 人を比べるとミディアンが違っているので、先ほど私が申しましたようにアジア人以 外で非劣性が証明されているので、アジア人のほうでは非劣性が証明されていない。 ただ、ハザード比は非常に小さいので、堀内先生がおっしゃるのは、そこまで情報が あるのであれば、もう少し後ろまで引っ張って、きちんと勝負をしてほしいという意 味かなと私は思ったのですが。 ○アストラゼネカ社 結果からいえばそういうことです。ですから、全体で検出力を高 めたものですから、アジア人とか、そういったもの、その時点でアジア人が長いとい うのはあまりわかっていませんでしたので、このようにやらざるを得ませんでした。 先生、コメントをありがとうございました。 ○松本座長 ありがとうございました。ほかにご意見、ご質問等はございませんでしょ うか。よろしいでしょうか。それでは意見はこの辺かと思いますので、これまでのご 意見を踏まえまして、今後の対応についてご検討いただきたいと思っています。まず 安全性についてですが、昨年2月の調査会の審議で「第III相試験における急性肺障害・ 間質性肺炎の発現頻度及び死亡率を含むゲフィチニブの副作用の発現状況について は、最新の添付文書等に記載されているものと同程度である」とされています。「引 き続き、少なくとも投与開始後4週間は入院またはそれに準ずる管理の下で間質性肺 炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど、添付文書に記載されている 安全対策を継続しつつ、肺癌化学療法に十分な経験を持つ医師による使用を徹底す る」とされています。この点について、今日の追加の説明を聞いた上で、いかがでし ょうか。何かご意見はございますか。新たな対応が必要であるとか、そのようなご意 見はございませんでしょうか。安全性についてはこれまでどおりの継続ということで よろしいでしょうか。参考人の先生方よろしいですか。                 (異議なし) ○松本座長 それでは新たな対応は必要でない、これまでどおりの対応、安全対策を継 続するということにさせていただきます。  次に有効性に関してはいかがでしょうか。1つは、昨年2月の調査会での暫定的結 論では情報提供ということで終わったわけなのですが、この度の追加説明を聞きまし て最終結論としてはいかがでしょうか。添付文書の改訂など、これ以上の措置が必要 かどうか、ご意見をいただきたいと思います。この前の情報提供に関しては、一般的 にドセタキセルに優先して、ゲフィチニブの投与を積極的に選択する根拠はないとい う情報提供をしたわけなのですが、この度はこれをさらに添付文書に記載するよう改 訂を指示する必要があるかどうかについてご意見をいただきたいと思いますがいか がでしょうか。ご指名して申し訳ないのですが、下方先生いかがでしょうか。 ○下方参考人 多くの臨床家は、おそらくゲフィチニブはどのような患者に効果がよく 発現するかは、ある程度感覚は持っていると思うのです。肺障害という非常に重篤な 副作用がありますが、いわゆる細胞障害性の薬剤とは違った系統の薬ですので、こう いう薬も症例によっては非常に有効であるという感触は、多くの臨床家の方が持って いるのではないでしょうか。  ですから、肺癌の化学療法を担当している専門家は、この薬の特性を十分に周知さ れています。新しい情報があったら、その都度、早急にご報告いただくということで、 よろしいのではないかと思います。 ○松本座長 専門家のレベルからいけば、現在の情報提供程度で十分であるということ でよろしいわけですか。ただ、これが一般の人が場合によっては使うことを考えた場 合はいかがなのでしょうか。必ずしもそれが厳格に守られるとは限らないので、その 辺。がんセンターの土屋先生いかがでしょうか。 ○土屋参考人 私も基本的には下方先生と同様で、今日のご報告では添付文書の記載を ということはないだろうと思います。情報提供はもちろん密にやっていただきたいと 思うのですが、イレッサ、ゲフィチニブをどう使うかという、いま下方先生がご指摘 された問題ですが、49番のスライド、50番のスライドで見て、先ほどの堀内先生の ご指摘がありますが、これはこのまま延長していくと、どう見ても生存率が0になる という症例を対象としていますので、そうしますと、cureを目指した治療ではないと いうことです。ということは、残された期間をどう快適に過ごせる期間を長くするか、 あるいは状況を良くするかということからいきますと、次のスライドの52番、QOL 及び随伴症状の改善率というところで、おそらく臨床の現場ではここのところを目的 に使われるということで、これはいま下方先生が言われたように臨床の現場で専門家 がその判断に基づいて、いかに残された人生を有意義にするかということでお使いに なるというところに、焦点が定まっているのだろうと解釈します。 ○松本座長 では、先生もどちらかというと、情報提供することでよろしいということ ですね。 ○土屋参考人 はい、それで結構だと思います。 ○松本座長 吉田先生いかがですか。 ○吉田参考人 おっしゃるとおりで、生存率という視点から見る限り、ドセタキセルに 優先してゲフィチニブの投与を積極的に選択する根拠はないというような文章にし た方がたぶん正確かなと思います。少なくともINTERESTとか国内III相試験ではそ ういうことであると。ただ、もう1つは、EGFRのミュータントの問題はどうするか という情報は、大きな試験には入っていないので、もしそういうところでゲフィチニ ブが優位だということが出るまでは、現状のままでいいのではないかと思います。可 能性はもちろんあるのでしょうけれども、それはまだ証明されていないということで いいのではないかと思います。 ○松本座長 ありがとうございました。倉田委員、何かご意見はありますか。 ○倉田参考人 先ほどから先生方がおっしゃっていらっしゃるように、残された期間を どのように過ごせるかというのは患者にとっても大きな問題だと思いますので、何回 も回数を重ねて、患者とよく相談した上で、どうぞ薬を使っていただきたいと思いま す。 ○松本座長 この点に関してどなたかご意見等はございませんでしょうか。ゲフィチニ ブの投与対象患者の絞り込みについて、今日も追加の説明がありましたが、この前、 女性、腺癌、非喫煙者、EGFR遺伝子変異との関係では、統計的には明らかではない ので、これまではこれらの絞り込みはなかったわけなのですが、今日の追加の報告を 聞いた上で、この点についてはいかがでしょうか。ご意見をいただけますでしょうか。   これもやはり臨床的なご意見をいただきたいのですが、下方先生から対象患者の絞 り込みが必要かどうかということに関してご意見をいただけますでしょうか。これま でも結構話題になったことなのですが、現在のところまだ因果関係がはっきりしない わけですから、今までどおりでよろしいかどうか。 ○下方参考人 現在の状況からいきますと、いわゆる化学療法のセカンドラインの選択 肢の1つではあります。現在のところでは肺の非小細胞肺癌に対してはドセタキセル がまず取り上げられるべきと考えられていますので、すぐにゲフィチニブをセカンド ラインの第1選択にするというところにもっていくのは厳しい。絞り込みをもってセ カンドラインの最初にチョイスすべき治療法であるかどうかということに関しては、 もう少し経過を見ていく必要があるのではないかと思います。 ○松本座長 ありがとうございました。 ○吉田参考人 いまの絞り込みのお話ですが、「らしい」というだけで絞り込むべきだと いう結論が出るような結果ではないですね。私はむしろアストラゼネカ社にお聞きし たいのですが、そういう絞り込みを誘導するような例えば女性、腺癌、非喫煙者とそ れ以外という対象について、同じレジメンで走るという、そういう比較試験をされる 予定はないのですか。 ○アストラゼネカ社 先ほど触れさせていただいたファーストレーンの試験ですが、 IPASSが実際動いております。その方法でかなりEGFR等の検討も詳細にできるよう に考えていますので、その経過を見た上で今後の方向性をまた相談させていただきた いと思っております。 ○松本座長 吉田先生がおっしゃるとおりだと思ったのですが、ちょっと舌足らずだっ たのでもう一度、ゲフィチニブの投与対象患者の絞り込みについては、現状では女性、 腺癌、非喫煙者、EGFR遺伝子変異との関係が統計的に明らかではないのですが、今 回、少し説明していただきましたIPASS試験の解析結果を見て、今後どうしていけば いいかということに関しまして、ご意見はございませんでしょうか。いまのも含めて のお話でよろしいでしょうか。 ○堀内参考人 このイレッサの添付文書の性格からいいますと、これまでいろいろな議 論がありましたが、EGFRの遺伝子変異があるものについては、腺癌についてはかな り有効性が高いというのはあると思うのです。この添付文書を見ますと、EGFRに関 する記載は全くありません。ですから、今のそれは次のIPASSの結果を見て、明確な データが出れば、その時点で厳密に書けばいいと思いますが、全くないのも正確な情 報の伝達にはなっていないだろうと思います。資料を見ますとイレッサは肺癌の患者 のかなりに使われているように見えますので、いろいろな医療機関、1,000位のかな りの医療機関で使われていると思いますので、そういうことは添付文書には記載をし ておくことが必要だと思います。使ってはいけないということではなく、情報を提供 しておくことは必要だと思います。 ○松本座長 情報提供をまずしてもらうということですね。他にご意見はございません でしょうか。 ○土屋参考人 今の添付文書は2006年10月改訂版というのが形としては最新になって います。そうすると、当時重要な基本的事項のところ、本剤を投与する場合は肺癌学 会等のガイドライン等の最新の情報を参考に行うことといっても、このガイドライン が2005年7月という話になってきているので、やはりここら辺のところは、きちん と最新の情報がどうなったということが、添付文書からは読み取れなくなっているの で、何らかの形でそういうことをきちんと言っておいたほうがいいのかなと思います。 ○松本座長 ありがとうございました。もう1点確認をさせていただきます。大体結果 はある程度、いままでの話から計れるような気がしますが、この薬、ゲフィチニブが 臨床的に有用であると評価してよろしいでしょうか。下方先生はいまのお話からいく と、有用性というのはあるということでよろしいですか。なかなか答えにくいものだ ろうとは思うのですが、土屋先生いかがでしょうか。 ○土屋参考人 今日の論点とちょっとずれるかもしれませんが、症状を取るという意味 では大変有用であるというのが臨床家の評価だろうと思うのです。これはかなり劇的 であるということが、最初のサインにつながったと思いますので、この点については 未だに変えない。EGFRの問題ですが、これは今日対象となった内科症例では、組織 を取るというのが意外と難しいのです。腺癌は細胞診で診断をつける。あるいは今 CTO診断が非常に的確ですので、それで腺癌であろうということで始める場合には、 これは的確にEGFRを確かめてから、選択することが難しい症例は、臨床の現場では 多いということです。多くのレポートは、外科症例にて切除標本で確かめたものにつ いて、再発時どうだとか、そういうデータが多いと思いますので、これを情報提供は 確かに大変重要でありますが、添付文書に書くのはどうかなというのが私の個人的な 見解です。 ○松本座長 この点について、ほかにご意見はございませんでしょうか。吉田先生いか がでしょうか。 ○吉田参考人 特にございません。臨床的な有用性がないと言えるデータもありません し、むしろ有用であろうということは、MSTの長さから見ても当然考えられると思い ます。 ○松本座長 ありがとうございました。それでは、いったん休憩を取り、調査会の意見 の取りまとめ案を作成し、後ほどお示ししたいと思います。                   (休憩) ○松本座長 再開いたします。ここから意見の取りまとめに入ります。休憩時間の間に、 ゲフィチニブに係る第III相試験等の結果及びゲフィチニブの使用等に関する意見 (案)を作成しました。お手元に配付されたと思います。ではこれを事務局で読み上 げてください。 ○事務局 それでは読み上げさせていただきます。  ゲフィチニブに係る国内第III相試験等の結果及びゲフィチニブの使用等に関する 意見。平成19年2月1日、本調査会において、企業から提出された「1又は2レジ メンの化学療法治療歴を有する、進行/転移性(IIIB期/IV期)又は術後再発の非小 細胞肺癌患者を対象にゲフィチニブとドセタキセルの生存期間を比較する多施設共 同非盲検無作為化並行群間比較第III相市販後臨床試験」(以下「国内第III相試験」と いう)の結果について検討を行った。  検討の結果、ゲフィチニブの副作用の発現状況については、最新の添付文書等に記 載されているものと同程度であることを考慮すると、安全性に関しては、引き続き、 少なくとも投与開始後4週間は入院又はそれに準ずる管理の下で、間質性肺炎等の重 篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど、添付文書に記載されている安全対策 を継続しつつ、肺癌化学療法に十分な経験をもつ医師による使用を徹底するなど、現 在の安全対策を継続することが適当であるとされた。  有効性に関しては、ゲフィチニブの臨床的有用性を評価するためには、投与初期に おける生存率については、ドセタキセル群がゲフィチニブ群よりも優れていることが 示唆されたこと等の結果を確認するとともに、患者背景、後治療の影響、未整理のデ ータなどについて更に詳細な解析を行い、その結果について検討する必要があるとさ れた。  本日、本調査会において、企業から提出された国内第III相試験に係る上記の詳細な 解析の結果等について検討を行った。また、企業から提出された「プラチナ製剤を含 むレジメンによる治療歴を有する局所進行又は転移性非小細胞肺癌患者におけるゲ フィチニブとドセタキセルの多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第III相試験」 (以下「INTEREST試験」という)の結果についても、併せて検討を行った。  国内第III相試験及びINTEREST試験の結果及びゲフィチニブの使用等に対する意 見は、次のとおりである。  第1 国内第III相試験及びINTEREST試験の結果について。1 国内第III相試験につ いて。全生存期間におけるゲフィチニブ群のドセタキセル群に対する非劣性を示すこ とはできなかった。(ハザード比=1.12(95.24%信頼区間0.89〜1.40))。後治療が全 生存期間に何らかの影響を与えた可能性が考えられるが、その影響を正確に評価する ことは困難と考えられた。  主要評価項目である全生存期間について、各サブグループにおいて治療群間を比較 した場合、ドセタキセルと比較してゲフィチニブの効果がより高いサブグループは明 らかにならなかった。また、EGFR遺伝子変異については死亡例が非常に少ないため、 全生存期間に関して評価を行うことは困難であった。  以上の結果等を踏まえると、平成19年2月1日の安全対策調査会における検討結 果(1又は2レジメンの化学療法歴(少なくとも1レジメンは白金製剤を含む。)を有 する手術不能又は再発非小細胞肺癌の患者の治療に際し、一般的に、ドセタキセルに 優先してゲフィチニブの投与を積極的に選択する根拠はない)を変更する必要はない と考えられた。  2 INTEREST試験について。INTEREST試験は、アジア地域を含む24カ国(注1) が参加して行われた試験(注2)である。注1)日本は不参加。アジア地域(中国、 香港、インドネシア、マレーシア、フィリピン及びタイ)の登録症例数の割合は21%。 注2)INTEREST試験の無作為割付症例数:1,466例、第III相試験の無作為割付症例 数:490例。  全生存期間におけるゲフィチニブ群のドセタキセル群に対する非劣性が示された (ハザード比=1.020(96%信頼区間0.905〜1.150))。なお、ハザード比は、アジア 人(1.04)とアジア人以外(1.01)で類似していた。  第2 ゲフィチニブの使用等について。国内第III相試験及びINTEREST試験の結果 などを踏まえると、少なくとも投与開始後4週間は入院又はそれに準ずる管理の下で、 間質性肺炎等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うなど、現在の安全対策が 継続されることにより、本剤は手術不能又は再発非小細胞肺癌の治療において臨床的 に有用なものである。  上記第1の1の国内第III相試験の結果などを踏まえると、平成19年2月1日の安 全対策調査会の検討結果のとおり、引き続き、1又は2レジメンの化学療法歴(少な くとも1レジメンは白金製剤を含む。)を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌の患 者の治療に際し、一般的に、ドセタキセルに優先して本剤の投与を積極的に選択する 根拠はない旨について、国内第III相試験の結果とともに、患者に十分な説明が行われ るよう企業に対し、医薬関係者に情報提供するよう指導することが適当である。なお、 上記の情報提供のため、国内第III相試験の結果(概要)については、添付文書の「そ の他の注意」欄に記載することが適当である。  厚生労働省は、引き続き、国内外における本剤の有効性及び安全性に関する情報を 収集し、必要な対応を行うことが適当である。以上です。 ○松本座長 ありがとうございました。この意見(案)についてご意見等はございます か。よろしいですか。 ○吉田参考人 INTEREST試験の注2ですが、1,466例の次、第III相試験の無作為割付 の前に、とありますが、これは国内第III相試験のことですよね。第III相試験だけだと、 どこの試験かわからないと思ったものですから。 ○安全使用推進室長 はい、国内第III相試験です。 ○松本座長 そのように訂正させていただきます。他にございませんでしょうか。よろ しいですか。それでは先ほどの吉田先生のご意見を修正しまして、これを本調査会の 意見とさせていただきます。どうもありがとうございました。それでは事務局、今後 について何かありますか。 ○安全対策課長 ありがとうございました。ただいま取りまとめられました本調査会の 意見については、公表させていただきますとともに、この意見を踏まえまして、企業 側に必要な対応を指示いたします。内容的には添付文書も最新の情報を反映させるこ とが是非必要というご指摘もいただいていますので、その点も合わせて指示をしたい と思います。 ○松本座長 よろしくお願いいたします。他に事務局からその他について何かあります か。 ○事務局 特にございません。 ○松本座長 全体を通じてご発言はございませんでしょうか。 ○堀内参考人 これは直接イレッサと関係ないのですが、同じようなことがタルセバに もありますが、タルセバも同じような薬なので、かなり間質性肺炎等の副作用が出て いるのではないかと思われますので、イレッサと比べてどういう状況にあるか、もし わかりましたら教えていただいて、今後注意していく必要があるのではないかと思い ます。 ○安全使用推進室長 それではいまのお尋ねのタルセバについてご説明申し上げます。 タルセバについては昨年の12月から販売が開始されていまして、現在特定使用成績 調査と言いまして、全症例を対象にした使用成績調査が行われているところです。こ れまでの約7カ月間で約4,000人に使用されており、間質性肺炎などの急性肺障害が 約3.7%発現しており、添付文書に国内臨床試験の結果を踏まえた間質性肺炎の発現 頻度が4.9%と記載されておりますので、現在の発現状況はそれと同程度と考えてい ます。なお、これらの情報については中外製薬のホームページ上、公表されており、 ほぼ1週間に1回の頻度でそういった情報が更新されていると聞いています。 ○堀内参考人 最近、資料4にありますように、イレッサの間質性肺炎の発現率はかな り下がっていますが、それと比べるとどうなるのですか。 ○安全使用推進室長 すみません、直ちにはわかりません。申し訳ございません。 ○松本座長 ほかにございませんでしょうか。ないようでしたら、本日の調査会を閉会 といたします。本日は長い時間、どうもありがとうございました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111