厚生労働省

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資料1

第4回 労働・雇用分野における障害者権利条約の在り方に関する研究会ヒアリング資料

特定非営利活動法人 全国精神保健福祉会連合会
理事長 川崎洋子

精神障害者の雇用について

はじめに

平成15年度の障害者雇用実態調査によりますと、5人以上の規模の企業において雇用されている障害者数は約49.6万人で、そのうち精神障害者は1万3千人と報告されています。在宅の精神障害者は約268万人といわれておりますので、だいたい0.5%の人しか雇用されていないことになります。精神障害者のほとんどが就労を希望していますが、ごく僅かな人しか雇用されていないのが、現状です。ひとりでも多くの精神障害者が仕事を持ち、人生に希望を持って生きていけるようにするために、みなさまのご理解をいただきたいと思います。そのために、障害者雇用率制度と精神障害の特性について発言させていただきます。

◇障害者雇用率制度−法定雇用率における差別―

精神障害者は長い間、病者(医学モデル)として対応されてきましたが、2004年の「障害者基本法」の改正により、障害者と位置付けられた経緯があります。そのために福祉的サービス、とくに雇用に関しての法制度の遅れは他障害と比べますと、甚だしく遅れております。しかし、多くの精神障害者は「働きたい」と切望しており、ハローワークで就職先を探し、なんとか就労するものの、多くは継続ができず、断念しております。

平成18年度に障害者雇用率制度において、精神障害者も雇用率に算定されることになりましたが、雇用義務化ではないため、企業への雇用は進んでいません。このことは精神障害者の「働きたい」意欲が受け入れられず、他障害との差別が生じています。今回検討されています「障害者権利条約」においては、第5条2項で「障害を理由とするあらゆる差別を禁止する」とされており、この雇用率の差別は条約に則していないと考えます。

◇ 精神障害の特性の理解(合理的配慮をいかに考えるか)

多くの精神の人は、就労の際の履歴書を気にかけます。入院等で数年間は空白になってしまうことです。ここで、精神障害者であることをオープンにするか、クローズにするかで、悩みます。オープンにすると時給が最低賃金になってしまうので、クローズでいきたいところですが、この履歴書空白で先に進めない人が多くいます。要するに精神障害者であることで、差別されていると考えられます。

 精神障害者を雇用する体制ができていないと、よく企業から言われることがあります。雇用体制とは、精神障害者の雇用の配慮、つまり合理的配慮であるかと思います。それは精神障害者、その人の個人に特有な配慮が必要であり、個別化されるべきであります。精神障害者は、とてもまじめで几帳面で、礼儀正しい面をもっています。また、与えられた仕事は、時間はかかりますが黙々とやり通します。一方、人とのコミュニケションがとりにくい、疲れやすい、物事への集中力が持続できないなどの障害特性があり、グループ就労、短時間労働など、特性を配慮した仕事の確保や障害者を理解する職場環境を整備することは、精神障害者の能力を引き出すことになり、就労できないでいる多くの精神障害者の仕事に従事する可能性を高めることができます。企業における社員研修として、障害者理解などの啓発勉強会や人権擁護理解の研修会の実施、また、質の高い人的支援として、精神保健福祉士など専門職を雇用し、相談支援体制を構築するなど、合理的な配慮として考えられます。障害者の就労支援は就労の場だけでなく、帰宅後の生活の場においても必要です。仕事の疲れから次の日の仕事ができなくなる場合もあります。精神科医師の意見も必要になります。当事者、家族、医師、企業の情報を共有し、課題を解決するためのコーディネーターとして、精神保健福祉士などの専門職の役割は大きく、精神障害者が仕事を継続できる条件になると考えます。

障害者雇用に関しては、就労にむけての準備、訓練支援、就職活動、雇用前・定着支援など、さまざまな事業が用意されています。しかし、精神障害者が効率よく活用して、就労するには至っておりません。精神障害者が生きがいをもって生活できるように、効果的な就労支援策の構築をおねがいいたします。

 

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