08/07/28 第2回障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会議事録 第2回障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会議事録 (平成20年7月28日(月)18:00〜20:00 於:専用第21会議室) ○小川委員(座長代理)  定刻になりましたので、ただ今から「第2回障害者の一般就労を支える人材の育成の あり方に関する研究会」を開催いたします。松為座長が少し遅れて来られるようですの で、しばらく私が司会を代行させていただきます。議事に入ります前に、本日新しくい らした方のご紹介を事務局からお願いいたします。 ○事務局  それでは、まず委員の方で前回ご欠席だった山岡委員ですが、本日来られていますの でご紹介申し上げます。 ○山岡委員  日本発達障害ネットワークの副代表で、山岡と申します。前回は所用がございまして 欠席させていただき、失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局  それから、続きまして、今回、厚生労働省の定期異動がございました。事務局には異 動はございませんでしたが、オブザーバーで1人人事異動がございましたのでご紹介い たします。職業能力開発局の福味主任職業能力開発指導官でございます。  それから、本日は資料を1から4としてお付けしてございます。また、参考資料として 1と2を用意しておりますので、ご確認をお願いできればと思います。 ○小川委員(座長代理)  申し送れましたが、志賀委員につきましても15分ほど遅れるという連絡がございまし た。事務局からのご紹介、ありがとうございました。さて、それでは、第1回の本研究 会の際に、前回の研究会の際に私が提起いたしました検討の対象に企業の就労支援を担 う人材を入れるか否かということについて、事務局への宿題になっておりましたので、 今後の進め方を含めて、事務局の方からご説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  ご説明を申し上げます。今回の研究会では、皆様ご案内のとおり、昨年の福祉、教育 等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会報告の中で、就労支援の担い 手の育成と専門性の確保の取組が必要であるというご指摘をいただいております。就労 支援を担う人材に必要なスキル、能力をレベル毎に明確化していくこと。それから、そ の育成方法について体系化すること。それから、その支援機関と雇用の現場をつなぐジ ョブコーチの養成研修、その内容と実施方法等についての検討をお願いしているところ でございます。就労支援の知識を要する人材としては、小川委員がご指摘のように、企 業における障害者の人事労務担当者の育成・確保についても障害者の雇用を進めていく ためには必要であるという認識はもちろんでございます。しかし、当面、この研究会で は、主に障害者就業・生活支援センターの就業支援ワーカー、それから就労移行支援事 業者の就労支援員の方、それからジョブコーチの人材の育成のあり方について、幅広い 見地から検討をお願いすることとしております。これは、各方面からご指摘いただいて おりますように、福祉から雇用に向けて就労支援の強化が求められる中で、特に送り出 し側の就労支援を担う人材の育成、専門性の確保が、まだ必ずしも図られていないとい う状況の下、まずは送り出し支援に関する就労支援の専従の人材をターゲットにしてい るものでございます。  本研究会の最終目的として、これらの人材に関して、可能であればそれぞれのモデル カリキュラム的なものまで提示したいと思っておりますので、恐縮ですが、ターゲット は絞らざるを得ないと考えています。なお、送り出し側で、必ずしも就労支援の専従で はないものの、知識があった方がベターな人材、例えば、特別支援学校の先生方、それ から就業・生活支援センターの生活支援ワーカー等を対象にした就労支援の研修のあり 方についてもご検討いただきたいと考えております。  少しご紹介ですけれども、企業における人材育成という観点で、これまでのハローワ ークの雇用指導官の個別事業主指導であるとか、あるいは地域センターの事業主に対す る雇用管理の助言等であるとか、そういう形でこれまでにも行っているところでありま す。今年度は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に、事業所向けの就労支援のた めのチェックリストの開発を私どもからお願いをしています。もうすぐ完成を見るとこ ろですが、その完成と同時に手引きの作成をし、全国の労働局、ハローワークを通じて 企業に配付する予定としているところであります。  繰り返しになりますが、本研究会の主なターゲットは、先ほど申し上げたとおり就労 支援員等でございますが、企業における人材育成に関するご意見等を頂戴してご議論い ただくことについては、今後の私どもの政策展開に非常に有益であると考えているとこ ろでございます。前回研究会の小川委員のご指摘に対する事務局としての考え方は以上 でございます。 ○松為委員(座長)  どうもありがとうございました。ちょっと予定がありまして、時間に遅れまして申し 訳有りません。座長を交替させていただきます。ただ今、前回の小川委員の質問に対し て、事務局からご説明がございました。委員の先生方、これに対して何かご質問等ござ いましたらどうぞ。よろしいでしょうか。  それでは、本日の議題に入ります。皆さんのお手元の資料に沿って説明していきたい と思います。最初に、第1号、2号のジョブコーチの現状と課題につきまして、小川委員 の方からよろしくお願いいたします。 <第1号、第2号職場適応援助者の現状と課題(報告者:小川委員)> ○小川委員  ただ今からジョブコーチに関して発表させていただきます。それでは、お手元の資料 2をご覧いただきたいと思います。最初に、私が代表をしておりますNPO法人ジョブ コーチネットワークで、厚生労働大臣指定研修ということで、職場適応援助者養成研修 を実施させていただいておりますので、簡単にNPO法人ジョブコーチネットワークに ついてご説明をさせていただきます。  資料2の上のところですが、設立の理念ということで、3つのポイントを挙げておりま す。また、その下の方には役員体制を示してありますので、ご参照ください。正会員は 約300人としておりますが、年度毎に有料会員といって会費を払ってくださる会員が年 度で切り替えになりますので、会員数は若干増減がございます。この3月の時点で約300 人ということで、大体毎年50人ずつぐらい会員が増えているという状況でございます。 その下に、NPOジョブコーチネットワーク、社会福祉法人横浜やまびこの里仲町台セ ンターにおけるジョブコーチの人材養成というスライドがございます。元々NPO法人 ジョブコーチネットワークは、私が大学に勤務する前に勤めていた社会福祉法人横浜や まびこの里でのジョブコーチの人材養成があって、それが原点になっております。1998 年から2005年にかけて、この社会福祉法人でジョブコーチの人材養成を始めたわけです けれども、そこで約1,900人が基礎講座というものを受講し、450人が実践セミナーを受 講しております。その修了生が実践をするようになりまして、各地方で同じようなジョ ブコーチのセミナーを開催したいということで、地方セミナーを立ち上げ、そうしたネ ットワークがNPO法人ジョブコーチネットワークの土台になっているということをご 理解いただきたいと思います。  めくっていただきまして、3枚目のスライドです。これが98年から2005年までの社会 福祉法人をベースとした人材養成の状況ですので、後ほどご参照ください。  スライドの4番目で、ジョブコーチネットワークの事業の4つの柱を挙げております。 1つがホームページでの情報発信、ウェブ事業でございます。それから、普及・啓発で ございます。これはジョブコーチネットワークフォーラムという大規模な会議と、ジョ ブコーチネットワーク会議という大規模な会議を2つ開催しております。それから、3つ 目が、地方セミナーです。これは職場適応援助者養成研修ではありませんが、2日間を 単位とした、非常に入門的なセミナーを各地方で開催しております。どのような地域で 開催しているかは、後ほど次のスライドでご紹介します。そして、ジョブコーチ養成研 修です。これが今日の発表のテーマである職場適応援助者養成研修でございます。  めくっていただきまして、上のスライドがホームページの状況です。それから、その 下がJCネットジョブコーチセミナーです。これは、各地方で開催しているいわゆる入 門的なセミナーということですが、ここに書いてあるのは今年度の状況です。5月の愛媛 を皮切りに、3月の鹿児島まで、全国でこのように地方のセミナーを開催しております。 この地方のセミナーというのは、今までNPO法人ジョブコーチネットワークもしくは 社会福祉法人横浜やまびこの里が開催していたセミナーを終了した人たちが、各地域で 社会福祉法人の職員であったり、あるいはいろいろな任意の組織に所属していたり、そ ういう方たちが地元の受け皿となって、NPO法人ジョブコーチネットワークと連携を して、このようなセミナーを開催してくださっています。  めくっていただきまして、JCネットジョブコーチ養成セミナーの今年度のスケジュ ールが出ております。職場適応援助者養成研修の詳細につきましては、この後、本題で 述べさせていただきます。JCジョブコーチネットワーク養成研修のコンセプトとして、 抱負な演習による実践的なセミナーであること。そして、顔の見えるネットワークをつ くるということ。それから、やはり就労支援のスピリットを伝えていくという、この3 つをコンセプトにしております。その下は、3月に行われた会議の様子でございます。  それでは、次のスライドをお願いします。ここから本題となります。職場適応援助者 養成研修の状況です。  まず、職場適応援助者養成研修の申込者と受講者の状況です。平成18年度から平成20 年度までの第1号と第2号の合計の数字を紹介しております。平成18年度の第1回は初回 ですので定員を40名といたしましたが、その後は、東京で開催するセミナーについては 定員60名、そして、昨年度は地方での開催ということで、福岡で開催をいたしました。 これについては、定員30名で開催をしております。このデータでは実際に受講した人が 29名になっているのは、当日のキャンセルがあったためでございます。第1号、第2号合 わせて大体定員の2倍近い、あるいは2倍以上の申込みがございますので、申込み用紙に 受講の動機であるとか、就労支援の経験年数であるとか、第1号職場適応援助者助成金、 第2号職場適応援助者助成金を使う予定があるかとか、いくつかの情報を書いていただ きまして、それを基に選考をさせていただいているという状況です。  その下の10番目のスライドがありますが、これは第1号の方にデータを絞ったグラフ でございます。  申し訳ありませんが、右から2番目と1番右のグラフに間違いがありますので、訂正を お願いします。右から2番目の、「H19東<2>」というこの数字ですけれども、白い方の 申し込み者が1.6で、実際の受講者が44、そして、その右側の「H20東京<1>」というグ ラフは、申込者が84と訂正をお願いいたします。後ほど、事務局の方に訂正をしたスラ イドのデータをお届けしたいと思っています。  第1号の方は倍率が非常に高い状況で、2倍強の申込み状況が続いております。この中 には、教員の方であるとか、企業を退職して、現在所属機関がない方、あるいは、これ から退職するという予定の方、その他様々で、助成金活用の元々の要件が見込まれない 方も含まれております。  このような状況がありますので、先ほど申し上げたような、申込みの用紙の中から助 成金活用の予定があるかどうか。就労移行支援事業の活用の予定があるかどうか。地域 のバランスなども重視しています。北は北海道、南は沖縄まで、全体にバランスがとれ て、しかも職場適用援助者が少ない地域については、やや優先的に受講していただくな どの配慮をして受講者の選考をしております。  次をめくっていただけますでしょうか。上のスライドは、今度は第2号の方の状況で す。一番左の平成18年度の第1回の時には、11名の申し込みで、8名受講ということで、 定員に満たない状況でした。この、実は第2号の方については、ほとんど選考なしで、 受けられる方には全員受けていただきました。要するに、定員に満ちていないので、選 考しないという状況で受講していただいています。このグラフで申込者と受講者に差異 があるのは、その企業に所属している、例えばですけれども、障害のある方の親御さん などが2号の受講希望ということで申し込んでおられる場合は、その方たちを1号の方に 振り分けて整理をしておりますので、申込み者の方が多いというグラフになっておりま す。  平成19年度までは定員に満たないという状況でしたけれども、平成19年度から非常に 申し込みが多くなりまして、平成19年度の今年2月に行われた研修、それから、今回8月 に行う研修では、定員と同じ、もしくは定員を上回る申し込みをいただいていて、第2 号の方のニーズが非常に高くなっております。  第2号職場適応援助者について補足しますと、第2号職場適応援助者助成金の活用予定 について、あまり明確ではありません。これは正確なデータではありませんけれども、 受講後のインフォーマルな聞き取りですと、第2号の職場適応援助者助成金を活用して いないという方が非常に多いということです。第2号については、助成金の要件という よりも、むしろ障害者雇用担当者の一般的な研修というか、スキルアップ研修というこ とで、助成金とは別の目的でこの研修を受講されている方が多いように思っております。  下のグラフは、第1号、第2号を含めた全体の受講者の内訳です。福祉・医療関係者が 非常に多くなっています。ただ、それ以外に教育、行政、ハローワークの職員の方たち も受講者の中に含まれております。ここでいう「就労支援機関」は、地方自治体の就労 支援事業もしくは障害者就業・生活支援センターが含まれております。  次をめくっていただきまして、上のグラフは先ほどのグラフで示した福祉・医療機関 に所属している受講者の内訳です。知的障害分野に携わっている方が多いわけですが、 精神障害分野に関わっている方も多くなっております。特に、昨年度から今回の申込み 状況を見ますと、精神障害分野に携わっている方の申込みが大変増えています。この辺 は、やはり精神障害者保健福祉手帳所持者が雇用率のカウントに含まれたという辺りが 影響しているように思われます。  下のグラフは申込み者の内訳ということでご参照ください。ここまでで、申込みの状 況や受講者の状況を見ますと、今後も数年間、数年の目途の見通しは特にないですけれ ども、しばらくの間は、ジョブコーチネットワークの職場適応援助者養成研修には継続 して一定の研修ニーズがあるだろうと見込んでおります。ただ、今までお話したように、 必ずしも第1号職場適応援助者助成金、第2号職場適応援助者助成金という、この助成金 の要件ということで受講している人が全てではありません。むしろ、一般的な研修、就 労支援の実践的な研修ということを目的に研修を受講されている方が多いようですので、 そのニーズに対して、果たしてどこまでこの研修で受け入れていくべきかというところ は、実際にこの事業を運営している私たちとしても悩んでいるところでございます。  それでは、次のページから、若干内容についてご紹介をしていきたいと思います。基 本的に厚生労働省から示されているカリキュラムの基本的な枠組み、規定に基づいてプ ログラムを構成しておりますけれども、できるだけ実践的な内容に組み立てたいという ことで、演習を盛り込んでプログラムを構成しております。従いまして、前半2日間を 基礎課程、後半3日間を実践課程、そして最終日を職場実習という3つのステージに分け てプログラムを組んでおります。特に、基礎課程のところについては、例えば障害特性 の話であるとか、職業リハビリテーション概論の話であるとか、どうしても講義でない と難しい部分を前半の基礎課程に集中をして、実際のジョブコーチの実務に関する部分 を実践課程のところに集中してもってきているわけです。特に、この実践課程では、短 い講義と演習です。演習はロールプレイを中心にしており、実践的学習を行っています。 演習については、第1号の方も、第2号の方も、6人という少人数のグループの中で同じ グループに入っていただいて、同じテーマについて、企業の立場から、そして就労支援 の立場から、お互いに相談をしながら問題解決をしていくという方法を採っております。 また、内容の進み方も、ここに<1>から<7>までテーマが組んでありますが、基本的にこ のような支援のプロセスに沿って講義を聞き、演習で実際に模擬的な体験をしていくと いうような流れにしております。いくつかサンプルの映像を下に組み込んでおりますが、 スライドの16は、障害のある人のアセスメントの演習をしているところで、障害のある 人から実際にインテーク面接をしながら、基本的な情報を聞き取っていくという練習を しているところです。  次をめくっていただきますと、分かりやすく教える技術の演習ということです。これ は、厚労省の規定のカリキュラムでいいますと、「課題分析の理論と実際」に該当する と思いますが、実際に仕事を教える技術についての演習をしているところです。また、 それをさらに作業指示書や治具をつくるというような演習にも発展させております。  次をめくっていただいて、これはナチュラルサポートの演習ということで、事業所内 の調整などに関わる内容になりますが、従業員の方に、例えば精神障害であるとか、自 閉症というような障害について、一般的な何も知識のない従業員の方にどういうふうに 分かりやすく説明をするかというような練習をしているところです。最後は、ネットワ ークということで、卒業写真やその後の懇親会の様子のスナップを入れてあります。  以上、プログラムについて簡単にご説明をしてまいりました。ここから、いくつかの 課題やこの研修を実施してきて考えていること等について、お話をさせていただきたい と思います。  カリキュラム上の課題ですけれども、やはり1号と2号の研修をどのように運営してい くかというところで、実際にこの研修を実施すると、苦労する問題がいくつか出ており ます。幸い、ここにきて第2号の受講者が増えてきておりますので、おそらくこの先、 第1号と第2号の専門性の違いというのはより明確になっていくとは思っておりますが、 2号の方がこれまでの経過ですと、受講者が少ないという状況がございます。おそらく これは、他の厚生労働大臣指定研修だと、より2号の方の人数は少ないのではないかと 想像しています。そうしますと、1号と2号で、別々に講義などを組み立てなければな らないのですが、2号の受講者が例えば4人しかいないとか、5人しかいないという状況 で、そのために講師をお願いして、講師料をお支払いしてということでやっていきま すと、なかなか運営上難しいというところがございます。1つ、そういう実務的な問題 があるということと、ジョブコーチネットワークの方では、できるだけカリキュラム上 可能なところについては、第1号と第2号を合同で研修を行うことによって、そのメリッ トが見えてきた部分がございます。よくジョブコーチについて、企業の方から、福祉の 職員の人は企業文化に対する理解が乏しいであるとか、ビジネスの世界を理解していな いとか、そういったご意見をいただきますけれども、やはり1号と2号が同じ場所で研修 を受けることで、本当に相互理解が進みます。これは1号にとってだけではなく、企業 の方も福祉のスタッフがどれぐらいの大変な状況の中で、どのように日々支援をしてい るかということについて理解をしていただくという点でも役に立っているように思いま す。また、1号と2号で、これは敢えて「ほとんど」と言っていますけれども、基本では かなり重複する部分があるのだろうと思っております。また、違う部分については、も う少し2号の実践が進む中で、2号としての特色というのが明確になってくるのではない かと考えております。  2つ目のポイントで、厚生労働省の指定のカリキュラムのところで、講義や演習など 研修の実施方法についての指定がございます。第1号の方たちも、かなり実務経験は豊 富な方たちですので、長年知的障害福祉、精神障害福祉の現場で働いてきた方たちに、 知的障害者の障害特性について講義でお話をするという辺りが、なかなか厳しい部分が ございます。果たして、それをどういうふうに実践的な話にアレンジをしてお伝えをし たらいいのか、毎回悩んでいるところです。やはり一定の実務経験がある受講者の方に とって、講義だけでの研修をずっと続けるというのはかなり厳しいものがございますの で、内容によって、研修やグループディスカッションを柔軟に活用できるような工夫も 必要かなと考えております。  今後に向けての課題についてお話をさせていただきます。1号ジョブコーチの問題で すけれども、私はよく「狭義のジョブコーチ」と「広義のジョブコーチ」という言葉の 使い分けをしますけれども、狭義のジョブコーチというのは仕事の支援をする。企業の 方はなかなか障害特性について十分な知識をお持ちでないので、普段障害のある人に接 している福祉の分野の職員が仕事を教えられれば、より分かりやすく教えられるだろう。 ここに役割を絞ったジョブコーチの考え方です。ただ、この狭義のジョブコーチについ ては、元々のアメリカの実践でもそうですし、日本でのジョブコーチの実践でも、実際 には就労継続には大きな成果が上がらないということが明らかになっていると思います。 最終的にジョブコーチは職場から引いていきますが、職場環境は常に変わり、常に新し い職務について習得してもらわなければならない環境にありますので、従業員の方がと にかく障害のある人にきちんと接しられる、そういう関わりの土壌をつくるというのが ジョブコーチの役割であるというふうに最近では考えられております。そこで、そうい うナチュラルサポート、従業員の方の関わりを最大限に伸ばすナチュラルサポートの形 成であるとか、人と仕事のマッチングを丁寧につくるための企業に対するアドバイスで あるとか、あるいは生活面の問題に対応するためのケースマネジメントであるとか、そ ういったことを含めての広義のジョブコーチとしての役割が必要だと考えています。  このジョブコーチの研修も時代によって随分内容が変わってきていると思いますけれ ども、第1号ジョブコーチの前身はいわゆる「協力機関型ジョブコーチ」でした。協力 機関型ジョブコーチは障害者職業センターのカウンセラーさんの指示の下で働くという ことでしたので、比較的企業との連絡調整、あるいはインフォームドコンセント、企業 に対してジョブコーチについて説明をするなど、その辺の役割についてはカウンセラー さんがするという前提で組み立てられていたのではないかと思います。第1号になりま すと、実際に自分たちが普段就労移行支援事業等で担当している利用者の仕事を見つけ、 その職場に対してジョブコーチについて説明し、支援の計画を作っていくというような 仕事も含まれていくと思いますので、やや協力機関型ジョブコーチとは違った広義のジ ョブコーチを前提にした研修の組み方が必要ではないかと考えるわけです。  2号のジョブコーチについては、特例子会社や重度障害者多数雇用事業所等の管理職 の方たちを念頭に置いたものなのか、あるいは実際に現場で直接障害のある人の仕事の 指導に当たる方を対象にしたものなのか、今後整理が必要になってくるのではないかと 考えております。というのは、特例子会社の指導体制の作り方もいろいろなパターンが ありまして、最近、やはり障害のある方に直接接して指導する部分については非常勤の 立場の方を採用し、そこだけに限定した仕事をしていただくというようなスタイルも増 えてきているように思います。第2号というのは、果たしてどの層を対象にしたものな のか、少し整理をして、それに対応するカリキュラムを考えていく必要があるかなと思 っています。私たちも第2号について、まだターゲットをどのようにしたらいいのかと いうことについては思案中です。  次をめくっていただきたいと思います。今後についてですけれども、課題を挙げさせ ていただいております。助成金要件の研修というより、幅広い研修というように、割り 切っている受講者の方も少なくありません。これについて、どう考えていったらいいの かということが課題です。また、助成金の資格というより、これを国のジョブコーチの 資格だというふうに勘違いをしている方であるとか、あるいは、それは知っていても、 やはり名刺に第1号職場適応援助者とか、第2号職場適応援助者とか刷り入れて、キャリ アとして活用したいということがあります。国の資格ではないということは分かってい ても、やはり、そうすることによって、企業の対応が違っていたり、いろいろな場面で 役立つということで、この研修を受講される方もいないわけではありません。その辺の 問題をどういうふうに取り扱ったらいいのかということが課題です。  それから、より長期で中身の濃い研修を期待するという声もございます。かなり詰め 込み型の非常にハードな研修なのですが、それでもジョブコーチということの専門性を 求めるには、もっと中身の濃い研修が必要だろうという声もございます。ただ、6日以 上の長期にわたる研修は、現職研修としては現在の福祉施設の職員の働いている状況を みると、困難ではないかと考えるわけです。そういう現実を踏まえつつも、より専門的 な就労支援、専門職員の研修としては現状では少なくて、200時間程度の時間数が必要 かなと思います。これはかなり大雑把な掴みで言っておりますが、それぐらいの時間数 が必要だろうと考えるわけです。  今後、やはり科目やシラバスの検討を進めていくことになると思いますけれども、ジ ョブコーチネットワークの研修が一定の評価をいただいている理由の1つとして、やは り実践経験のある実務者が講師をしているというところにあるのではないかと思います。 科目やシラバスを組み立てることももちろん重要ですけれども、それを実際に解釈して、 伝える講師陣をどういうふうにするかということが重要なのではないかと考えます。  ジョブコーチネットワークの今後ですけれども、やはりこの職場適応援助者を多く養 成しなければならないという要望が上がっているということは承知しておりますけれど も、なかなかNPO法人では限界もございます。今まで協力していろいろ開催してきた 地方組織が厚生労働大臣指定を受けて、そちらの組織でJCネットのソフトを使った研 修ができるように努力していきたいと思っております。それから、ジョブコーチ以外の 目的をもった研修ニーズがあるということについては、就労移行支援事業者のための研 修を今年度試行的に開催する予定です。また、地方セミナーを開催しておりますけれど も、そのような基礎的・入門的なセミナーも欠かせないと思っています。そこで、ジョ ブコーチについて興味をもち、知った方、基礎を学んだ方が職場適応援助者養成研修に ステップアップをしていただくという仕組みがうまく機能しているかと思いますので、 欠かせないと思います。すると、NPO法人として首が回らなくなっていくという悩み もございます。  次のページをお願いします。就労支援の人材養成は研修で解決するのかということで すけれども、ある程度は期待しなければいけないとは思いますが、やはり研修で基本的 には解決できる問題ではないようにも思うわけです。というのは、社会福祉法人横浜や まびこの里での研修実績をご紹介したのは、あれだけの研修をずっとしてきていても、 その成果として、実務として今活躍している方たちの数は多くはありません。ちょっと 極端な言い方をすれば、ザルで水を救っているような状況です。一定期間研修を受けた 方たちが活躍している様子を見ても、次の年にいなくなっているということがあります。 何故なら、異動をしてしまったり、やはり労働条件の問題等で、その仕事にずっと継続 して就いていないということがあります。現在、講師等を務めてずっと頑張ってくださ っている方たちは、就労支援の仕事から離れなければならない時に、わざわざ転職をし て、自分で就労支援の仕事を続けたりしているという、かなりそういうスピリットを持 たれた人たちであるように思います。やはり、研修を受けた人たちが就労支援の専門職 として仕事を続けられる環境を整えるということをなくして、研修での問題解決という のは難しいように思います。研修以外に何が必要かというのは今申し上げたことです。  就労支援の人材養成には、私は3年から5年ぐらいが必要だと思っています。研修を受 けた方たちが3年ぐらいすると、現場のショブコーチとして非常に仕事ができるように なり、そして、5年ぐらい経つと、例えば就業生活・支援センターの就労支援ワーカー のような全体的なコーディネートもできるようになるというようなイメージをもってお ります。これまで福祉分野で就労支援の人材が育たなかったのは何故かというと、やは り異動があるということがあり、できるようになった職員が動いてしまうということで す。それから、就労支援という専門性が確立していないということです。就労支援をや りつつグループホームの仕事をしなければいけないとか、多彩な業務をしなければなら ない中で、就労支援の専門性というのは福祉の分野では確立していなかったということ があるように思います。  人材養成で、まず何をなすべきなのかということです。今回はジョブコーチの養成に ついてお話をさせていただいておりますけれども、やはり就業・生活支援センター、就 労移行支援事業所、こういうところの就労支援の人材養成をきちんとして、その下で働 くショブコーチの人材養成ということがその次の課題になっていくように思います。時 間をオーバーして申し訳ありませんでした。以上で、私の発表を終わらせていただきま す。 ○座長  小川委員、どうもありがとうございました。本来、ここで小川委員に対して質問等を いただけばいいのですが、時間の関係もありまして、次のキユーピーあいの湯田委員の お話を先にしていただいた後、まとめて皆さんのご意見等を伺いたいと思いますので、 よろしくお願いいたします。それでは、湯田委員よろしくお願いいたします。 <第2号職場適応援助者の現状と課題(報告者:湯田委員)> ○湯田委員  今、小川委員の方からありましたように、2号ジョブコーチということからしますと、 当社の場合は現在、助成金を取る予定がありませんので、そういう意味では、本来であ れば、そういうふうに言わないのかも知れませんけれども、今の状況の内容についてお 話させていただきます。  資料3にありますが、まず当社の状況でございます。従業員数は全部で53人です。そ のうち障害者の数が32、カウント数が48ということでございます。種別からいきますと、 肢体から始まりまして聴覚、視覚、知的、内部、精神ということで、比較的全てに近い 方がいらっしゃるというのが当社の状況でございます。  当社の組織と従業員配置と書いてありますが、これがうちの今の配置になります。そ して、黒丸のところが2号ジョブコーチの研修を受講して修了した者でございます。そ れから、三角形の企業内ジョブコーチと書いてありますけれども、これは養成研修は受 けておりませんが、それに代わるカリキュラムを受けたという形で、就労支援に携わる 者という意味合いでございます。それから、四角は今後養成研修を受ける予定の方です。 そして、人形マークが健常者で、それ以外に、ここに書いてあるような方が従事してい ます。  まず、事業名グループには、グループリーダーとしては健常者がいますが、サブリー ダーは障害者の方で、企業内のそういうカリキュラムを受けた者でございます。これは、 高齢・障害者雇用支援機構の方に行っております。その他に、この中にある受託チーム は、知的の方、精神の方、身体の方、内部障害の方がいらっしゃいますが、ここに、2 号ジョブコーチを受けた者が実務責任者としております。また、もう1人の健常者の方 はそれを補佐をするという形でおりますが、この者もいろいろ研修を受けております。 まだまだ受け足らないので、今回は企業内のジョブコーチには含めておりません。その 他に、ウィルポートチームという造語のチームがございますが、ここには高度の高次脳 機能障害と知的障害の方がおり、企業内のカリキュラム等を受けた者がついています。 その他、食堂・売店チームとか、リラクゼーションチームがありますが、チームの中で 2号ジョブコーチ的な者がいるのはここのチームだけでございます。  それから、営業グループの企画チームに1人2号ジョブコーチを受けた者がおりますの で、この者はいろいろな企画の中で新しい仕事を創出したりするケースもありますので、 その時のジョブマッチング等をするためにここに配置をしております。その他では、人 事・労務グループの教育チームがございます。教育チームということで、私どもの社員 の教育、それから外部の障害者の方の受け入れをしておりますので、その教育が必要で ございますので、今年研修を受ける予定をしております者を1人配置しております。企 画チームに今いる者が前にこの教育チームにおりましたので、そういう関係でございま す。このような形で、まだいろいろな面で少ないのですが、ポイントの所に、少しでも そういう習得した者を配置しようと考えております。  2枚目でございますが、何故2号ジョブコーチの資格等を取ったかについてでございま す。小川委員の方からもありましたように、実は、初めはやはり助成金を取ろうと考え て受けました。ところが実際には、いろいろ申請の煩雑さということもありますし、助 成金を取らなくてもやることはやろうということがありました。やはり就労をさせてい くためには最低限必要だということで、現状では助成金は取っておりません。  第1に、まず「商売の世界は企業業種により、業界用語、約束事などがある」と書い てございます。業界には業界用語があり、それに慣れていくことが必要です。障害者雇 用ということをしますので、障害者雇用について勉強しないとやっていけません。この 世界で仕事を進めるに当たり、そういうことを勉強していこうと考えたのが1点目でご ざいます。  2点目に、第1号職場適用援助者とか、あるいは配置型の方などに来ていただけるケー スもあるんですが、研修を受ける前はよく分からないということがありました。先ほど の業界用語もありますけれども、何を言っているのかなということがあります。初めは 「ナチュラルサポート」とか言うと、それは何のことかと聞くわけです。そんなことか ら、結局よく分からなかったり、理解をするにも非常に時間がかかったり、考え方その ものの整理がよく分からなかったりということがありました。会話をするにしても、専 門家に近い者同士がやった方がいいだろうという考え方があって取らせていただきまし た。  それから、もう1つは、職場の中にジョブコーチが少ないと、1人で非常に悩んでしま います。他の者が理解できないということが発生しますので、複数化することによって、 同じ悩みを共有化し、あるいは課題解決に一緒に取りくめるということがよく分かって きましたので、複数入れていこうと考えています。障害者の方よりも支援する方が、か なりメンタル的にはきついということが十分分かってきておりますので、何とかこのよ うなことを解消するためにそうしております。  また、一番初めに私が受けたということもありまして、どんなものかということが自 分自身で分かっていますので、そういうことを推進できるという意味では、先ほど小川 委員からありましたように、管理職がいいのか、実務責任者がいいのかということがあ りますけれども、やはり管理職にも少し分かる者がいた方が、この辺を理解して、次の ステップに進むということでは、受講しやすくなるのではないかと思っております。  そして、企業内のジョブコーチは会社内の専門部署として勤務する財政的な余裕があ りませんと書いてあります。ジョブコーチだけで1つのチームに置いてやっていくとい うのは、企業としては財政的余裕はありません。やはり他のいろんな仕事をやりながら ということに当然なるわけです。先ほどの表を見ていただきますと、受託チームであれ ば、受託チームの実務責任者をやりながらやっていくというふうに、実際にはなるわけ です。そうしますと、専門性として、障害者そのもののことと、会社の仕事のスキルと いう、この両方がないと、ここではうまくマッチングができにくいというのがございま す。会社としては、ここの絵にありますように、「障害特性」というようなものと、「 業務担当の専門性、リーダーの素質」というようなものを、両方兼ね備えた者がやはり 職場適応援助者というふうに、企業においてはなるのではないかと考えております。  そうは言いましても、やはり企業の方はなかなかここに書いてあるようにはいきませ ん。仕事を通じての声かけなどはやっておりますが、やはり期日や品質確保というのは 相当厳しくなってきております。ですから、どうしてもそちらの方を優先するために、 なかなか障害者に対するフォローというのは、そういう資格をもっていても実際はなか なかできにくいというのが現状でございます。やはり、よく進めるためには、何もない よりはしていた方が、それでも非常にいいというのが現状でございます。  それから、キャリア形成の育成方法でございますけれども、うちの方はそれを取りま した者には、更に実践セミナーとか、NPO法人が主催するような地域でのセミナーと いうようなものへの参加を非常に促しております。できるだけ時間を作って行くという ことで、せっかく習得したものを風化させないような形にしております。しかし、実際 は、先ほど申しましたように、仕事の方もかなり忙しいということもありまして、参加 がしにくいというのが現状でございます。また、例えば、1年目にジョブコーチの資格 を取った、2年目に取ったという者が、どんどん増えてきていますので、その者が戻っ てきたら、社内研修をして、こういうことをやってきました、こういうところが昨年度 と変わったようですとか、その辺りのことをできるだけ共有化を図るような形にしてお ります。また、私どものメンタルの専門家の方もジョブコーチの資格をお持ちの方が来 ておりますので、タイアップをしながら、そういうカリキュラムを開くというようなこ とを行っております。  そして、もう1つ、ここに書いてありますように、外部の障害者の実習の受け入れを している部署がございます。これは親会社のCSRの一環ということもありますし、地 域貢献ということもございまして、教育チームが実践の受け入れをしています。07年に は23名、今年は6月末で28名を受け入れております。知的の方が主でございますけれども、 最近はやはり、先ほどございましたように、精神の方もかなり増えてきております。実 習の取りまとめ、それからうまくジョブマッチングさせるためにはどうしたらいいかと か、それからビジネスマナーなど、こういったことを教えるのが教育チームでございま すので、ここの担当者に今年研修を受けていただいて、技術の向上をしていただきたい と考えております。  3ページ目でございます。今後のあり方でございますけれども、企業としてチームリ ーダーや実務責任者というのがうちにはおりますけれども、仕事の効率化を進めるため には、障害者に対しても一般社員同様の関わりに留めることが必要です。これは、生活 面のことを言っております。一般社員でも、会社として生活面に関わるある程度のとこ ろまでありますけれども、それ以外について関わるということは、やはり企業のコスト というものをたくさん使わなければいけないということになりますので、ここについて は、やはり企業内でできる範囲以外のもので、いろいろ応援をいただかなければいけな いということがあると思います。  現状でも、生活面の原因と思われるような注意力散漫や就労の効率ダウンが起きてお ります。これを実務責任者が同時にやっていますので、非常に残業が増えてきていると いうことがあります。日中は親御さんや就労センターさんと連絡をとりながら、自分の 仕事はそれが片づいた夕方にやるという状況で、非常に大変になってきています。です から、先ほど述べたことと矛盾しますが、これではやはりいけないと思いまして、組織 の見直しをする予定にしています。  ここに書いてありますが、支援専門チームというようなものが必要だろうということ になりましたので、ここにジョブコーチの資格をもっている、あるいは実践セミナーで 少しでもそのような知識をもった者を集めまして、全体的な企業の支援をしようと思案 をしています。検討しているチームは、ジョブコーチの資格をもつ社員を中心に編成を し、1番から6番までありますように、各チームリーダー、実務責任者と連動した社員の 生活面に関わる課題の共有、それから、課題解決の窓口としては、チーム支援の推進者 として外部、この場合は支援センター、通勤寮と親御さんの窓口を担当する。それから、 社員のスキルアップ、カリキュラムの構築と実施をする。それから、重度な障害をもつ 社員のフォローアップ、うちの場合は、先ほど言いましたように、高次脳機能障害の方 がいらっしゃいますので、こういう方。それから、採用時の支援ということで、人事担 当者はまだ素人ですので、サポートをして、採用の時に口添えができるようなことをや ろうというものです。それから、先ほど言いましたように、外部からの障害者の実習の 受け入れをすることを、1つの仕事として、チームとして構築ができれば、これは先ほ ど言った部分の中で、十分できるのではないかと思っておりますので、現在検討してい る段階でございます。  あと、他の就業支援担当者の現状と課題ということで、ここは3つに集約しておりま す。先ほど言いましたように、実習の申し込み等でそういった担当者が来る機会が多い ものですから、その中で感じたことが3つございます。まず、「訪問する企業の勉強が 不足している」ということです。ただ来て、「お願いします。」では、何をお願いする のか分かりません。「うちの会社は何をやっているか知っているのですか。」「マヨネ ーズを作っているのでしょ。」「うちは作っていませんね。うちの会社は事務系ですか ら。」そういうところまで、全く勉強せずに来る方が、全員とはいいませんが、やはり 多いと思います。また、紹介する予定の障害者の特性についてもよく理解をしていただ きたいと思います。こちらから質問をすると、「さあ。私は担当ではありません。」「 では、担当者をよこしてください。」というようなことは、よくありますので、そうい うことは是非お願いしたいと思います。  それと、やはり最低限のビジネスマナーですね。電話によるアポイントから、会話が 学生風であったり、社会人としては非常にカジュアルな服装で来たり、そういうような ところがやはり課題だと思います。  そして、最後に、地域によって障害者就労支援センターさんとか、就労支援を行って いる事業者のスキルに非常に温度差があります。非常に良い所は、こちらもよい勉強に なりますし、大変役に立ちますが、「え、なに?」というような所まで、非常に温度差 がありますので、その温度差をなくするというのが今後の大きな課題ではないかと思っ ています。そうしませんと、企業の方の信頼が得られないのではないかと思います。そ のことは、個人的な素質というよりは、組織的な教育の方針というようなものに係って くるのではないかと思っております。  最後に、就労支援を担う人材育成のあり方ということで書いておりますのは、障害特 性に係る知識の習得はもちろんのことですが、一般就労を目指すコーディネータ役とし て、次の3つの提案をしたいと考えております。  まず1つは、養成カリキュラムに企業研修を組み込むこと。これは企業に一定期間実 習として仕事を行うということです。例えば、先ほどなかなか忙しいということはあり ましたけれども、やはり企業のことをするためには、1週間とか、10日間とか、企業に 入り込んで、企業とか、企業の中におけるジョブマッチングはどうしているかとか、ナ チュラルサポートはどうしているかということを体験していただくことが、非常に私は 大事ではないかと思います。逆に、そのメリットとして、逆に、その実習生が帰る時に、 その企業に対していろいろ提案をしていただく。帰る時のお土産として置いていただく。 新しいこういう組織を作った方が、障害者雇用がうまくいくのではないでしょうかとか、 そういうものの提案書を入れていただいて、現場の改善や、障害者を受け容れやすい環 境整備を提案していくということによって、双方にメリットが出てくるのではないかと 思っております。  それから、「企業が行っている新入社員向けの教育、ビジネスマナーの習得、ロジカ ル報相連などを集中して行うことが必要」と書いておりますが、やはり企業は毎年、新 入社員向けにこういう教育をやっているわけです。ですから、企業は毎年、ある程度同 じ層のものが蓄積されていくわけです。全体は分かりませんが、それはやっていないの ではないかと思うのです。新入社員が来たら、新入社員とは言わないでしょうが、入っ て来ただけで終わっているというふうに思いますので、やはり企業並に事業所としてス キルアップをするような一定レベルの内容を考えていただくことが大事だと思っており ます。  それから、「人材育成とは離れるが」と書いてありますが、各地の就労支援センター の質を確保するために、広域就労支援センターにコーディネータ役として地域の就労支 援センターを指導・支援できるような人材育成が必要であると思っています。今、広域 も増えており、1地域にたくさんできていますが、同じレベルでは私は仕方がないなと思 いますので、ある程度広域な支援センターができたのであれば、地域の就労支援センタ ーをきちんと指導できるような人材育成があったらいいなとな希望しています。大分端 折りましたけれども、以上でございます。 ○座長  ありがとうございました。お二人の委員の方から、1号及び2号、それに絡んでいろい ろなお話を伺いました。しばらく委員の先生方のご意見を伺いたいので、ご自由にご発 言をお願いいたします。どうぞ、岡野委員。 ○岡野委員  今、湯田委員の方から広域性を有する就労支援センター的な所で就労支援を統括する 人材が必要ではないかとのご指摘をいただきました。そこで、「職業センターがよく機 能しています。」というふうにおっしゃっていただけると良かったのですけれども、「 実態はそうか・・」ということで、大いに反省しております。それはそうといたしまして、 1つ、湯田委員に一点ご質問したいのですが、実は私ども東京障害者職業センターは、上 野と立川に多摩支所がありますけれども、ジョブコーチ支援の実績を見ると、本所と多 摩支所のカラーが違うのです。本所はどちらかというと、雇用と同時の支援割合が40% ぐらいなのですが、多摩地域は雇用後支援が40%程度で、就職に際しては全く我々と 関係のなかった方々に対して、職場再適応についての支援が求められています。私は、 多摩地域は非常に先進的な地域だと思っていまして、おそらく数年後には本所の方もそ ういうふうになっていくかなと思っているのですが、何故なのか伺ってみますと、就職 後1、2年ぐらいしてから、不適応が発生したことによって、再度支援に入ってくれとい う要請があるということなのです。今、お話を伺っていて、障害者の方の受け入れとい うところだけではなくて、職場への再適応というか、そういったところにも2号ジョブ コーチとしての役割が大きいのではないかというふうに感じて聞いておりました。湯田 委員としては、この点についてはどうなのか。また、企業ニーズとしてはどうなのかと いうことについてお伺いしたいと思います。 ○湯田委員  職業センターさんに触れなかったのは大変申し訳ありません。多摩支所にはよくして いただいております。うちの場合、そういう不適応があった場合には、チーム支援とい うのをやっておりまして、職業センターさんや学校に戻す前に、まず企業内でいろいろ 課題の検討をしています。直接親御さんの方に家庭訪問もしているものですから、そう いう意味では、何かあった時に連絡が取りやすいということがありまして、親御さんと やりとりをしている中で、企業がこれ以上踏み込めないというようになった時に、養護 学校であれば学校の先生を経由してとか、あるいは就業・生活支援センターさんにお願 いをするということで、最終的にはまたチーム支援のような形で、課題の解決をすると いうことを行っております。精神の方については、前回お話したように、直接ドクター に相談したりというようなことなどをしておりまして、まずとりあえず企業内でやろう としています。これは障害者ということではなくて、やはり一般社員でも、まず企業と してやるべきことはあります。そういう考え方でやっています。 ○座長  ありがとうございます。岡野委員いかがですか。 ○岡野委員  確かにおっしゃる通りだと思います。企業として生産性を求めていこうとする時に、 やはり企業だけでは対応できないというところが発生するのだろうと思います。その時 に、1号ジョブコーチの役割というのが出てくるのかなというふうに思って、お話を伺 っておりました。ジョブコーチによる支援は、就職という所にウエイトはあるのだけれ ども、就職後もあるのだということだろうと思います。先ほども多摩支所のジョブコー チの実績が雇用後支援というのがかなり高いというところを、どう解釈すればいいかな と思っていたものですから、確認をさせていただきました。ありがとうございました。 ○座長  他の委員の先生方いかがですか。では、私から、小川委員にお伺いしたいのですが、 まず1号、2号ジョブコーチの研修を一緒にやるのは難しいとは思うのですけれども、と いうのは、2号ジョブコーチの場合、現実問題として1週間や4日間、来られる可能性が あるかどうかですね。従業員を会社が出せるかどうかという、そこの問題をどう捉える かということと、もう1つは、これは湯田委員の方からも話があったカリキュラムの中 で、例えば企業研修とか、提案書を出すという話がありましたね。そういったことが今、 現実の1号、2号ジョブコーチのプログラムの中で組み込みが可能なのかどうか。 この2点について、小川委員どうですか。 ○小川委員  1週間出せるかどうかについては、湯田委員の方のご判断がよいと思うのですが、た だ、私も1週間は難しいのではないかと思っていたのですが、最近2号の方の受講者が増 えておりますので、この研修の必要性について認識が深まってくると、出すことも可能 なのかなと思っています。ただ、補足をしますと、そうはいっても、1週間出すのは難し いという声も聞いておりますので、ジョブコーチネットワークでは1日の短いセミナーと いうものを準備しました。これは職場適応援助者養成研修とは全然違うものですが、ち ょうど今週の水曜日に開かれます。20名の定員にしましたら、25名の申し込みをいただ きましたが、特例子会社で実際に現場で障害のある方の指導に当たっている方がほとん どです。ですから、やはり出るのが難しいけれども、研修のニーズはたくさんあるのだ ろうなと思っております。  それから、提案書については、カリキュラムのシラバスにきちんとマッチするかどう か分からないのですけれども、私たちの研修では職務再構成について企業に提案書を作 るというプログラムを実際の演習という形で準備しております。ただ、本当に決められ た時間の中でやらなければなりませんので、視点のもち方と、こういうことをするのが 大切ですよということを経験していただくことで止まっているのが、私どもの研修の限 界というか、十分ではないところだなと思っております。湯田委員に補足していただけ ればと思います。 ○座長  湯田委員、補足をお願いできますか。 ○湯田委員  1週間がどうかということなのですけれども、先に1週間ということが分かっていれば、 企業としてはきちんとやりくりすることは当然できると思います。何故かといいますと、 1週間で得られるものが大きいからだと思います。先ほどご説明したような形でやって おりますから、たくさんいた方が専門性の共有化ができるという点で、うちではいいと 判断をして、毎年研修をお願いしたいと思っております。 ○座長  他にどなたか御意見等ございませんか。根岸委員どうぞ。 ○根岸委員  小川委員に質問ですが、企業の方の場合ですけれども、湯田委員の所のような特例子 会社であったり、あるいは大企業などある程度企業規模が大きい所は1週間程度の研修 はもしかしたら出しやすいかも知れません。理解もあるし、マンパワー的にも、業務的 にも余裕があるかも知れませんけれども、やはり小さい企業の中でそういう受講者がい らっしゃるのかどうかです。あと、受講者の中で、ある程度経験がある方とか、入門者 の方とか、バラツキがあると思いますので、1度の研修で全部詰め込むというのは無理 だと思うのです。ですから、就労支援経験毎に、後追い研修というか、中級レベル、上 級レベルとか、そのようにしていくと、その中級、上級の中には先ほどの企業の中に入 り込むような研修がもしかしたらできるかなということを感じました。あと、もう1つ、 東京労働局で、企業の人事担当者向けセミナーをやる時にすごく好評だったものは、単 なる情報の提供というよりも、就労支援機関と企業の方とペアになって出ていただいて、 支援機関が絡まないで障害者雇用をした時と、支援機関が入って障害者雇用を進める時 などとの違いについて、それをした時に企業のアンケートを取るのですけれども、「具 体的に分かったことがある。」だとか、あるいは逆に「大変さがわかった。」などの声 がありました。 ○座長  小川委員どうですか。 ○小川委員  中小規模の事業所の方は出てくるのが難しいのではないかということは、実際、確か にそうだと思います。元々2号の場合に、重度障害者多数雇用事業所の方は今まではい なかったように思います。特例子会社の方が圧倒的に多い状況でした。中小企業の方の 研修ニーズがあるかどうかについては、地方で2日間の入門セミナーを開くと、たまに そこに中小企業の方がいらっしゃるという辺りしか把握できていません。  それから、確かに受講される方にスキルの差がございます。実は、なかなか説明が難 しいのですが、演習を中心にして行っているセミナーですので、それが円滑に進むよう に、ベテランの方とそうでない方を同じグループにして、またそこに企業の方が入って いただくようにします。企業の方と就労支援のベテランの方と、これからやっていこう という人を、うまくグループの中に組み込んで、そのダイナミックで研修効果を上げて いくということにかなり工夫をしております。フォローアップについては、なかなか今 は具体的にはできていません。本当におっしゃるようなことができたら、すごく成果が 上がるなと思っています。本当に企業の中で、企業の方に教えていただくというのが、 1号としては一番育つので、1号と2号をミックスして、学んでいくという機会が本当に 就労支援の研修には不可欠だなと思っております。 ○座長  他の方いかがでしょうか。八木原委員どうぞ。 ○八木原委員  福祉機関の立場から小川委員に質問させていただきます。福祉施設の職員の場合には 2層おります。つまり、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持っている者の層と、そ れから、作業所そのものが草の根的に広がってきたので、家族の方とか、あるいは一般 市民の方とか、そういう方たちを中心にした支援を展開している所と両方あります。そ の2極がある中で、第1号ジョブコーチ研修の2倍、3倍にある申込者をどういった形で選 択をされているかというのは先ほど説明がありましだけれども、その2層の中の、専門 的な資格をもっている者たちは、このセミナーを受けて、それは果たしてスキルアップ 等につながって、きちんと就労支援ができているものなのかどうか。それから、ジョブ コーチ研修の中で、就労支援の技術研修の難しさというのはどの辺にあるのかというの を、お聞きしたいと思います。  それから、湯田委員は支援専門チームの必要性を感じているということですけれども、 この最初の資料の中の、湯田委員が所属されている組織の中のどの辺りにそれを位置づ けようとされているのか教えていただきたいと思います。 ○座長  では、小川委員の方からお願いいたします。 ○小川委員  1点目の、社会福祉士や精神保健福祉士という資格所持者のいわゆる専門家志向の方 たちと、草の根の方たちですが、ここについては、そういった資格を持っているかどう かというのはチェックをしていませんので、正直よく分かりません。ただ、精神障害領 域に関しては、精神保健福祉士をもっている方が非常に多くて、その方たちの研修の成 果というのは、いいような印象をもっております。やはり、精神保健福祉士や作業療法 士の方が精神障害領域には多いわけで、そういう方たちは比較的こういう研修を受けて、 それを習得して、スキルアップしていくということに元々慣れているのかなという印象 をもっております。  それから、実務的な研修をすることの難しさということのご質問について、うまくマ ッチするかどうか分かりませんけれども、この就労支援というものは、非常に要素が多 くて、実践では本当にぐちゃぐちゃの、もうありとあらゆることに対応していかなけれ ばいけない世界です。その中で、方法と技術として整理できるものについて、きちんと 方法論、技術論として明確に提示をする。それについて、この研修では身につけていた だく。ただ、実際の就労支援は応用問題ばかりですので、それについては全部この研修 の中で取り扱おうとはしないという整理をしているので、それが行っている工夫であり、 ジョブコーチネットワークの研修の特徴ではないかと思っています。 ○湯田委員  お答えします。今のこの構想は、実は社内でもまだ発表しておりませんので、言いに くいところがあるのですが、位置づけには、この組織図の1ページにございますけれど も、CSR推進室と同じ位置づけです。ですから、各ブループの上に来て、今の予定で は、責任者は私がやる予定をしております。 ○座長  ありがとうございました。山岡委員、どうぞ。 ○山岡委員  小川委員が先ほどジョブコーチの勤続年数に関するお話をされていました。それは多 分最後に問題提起されているところとつながるのかも知れませんが、例えばジョブコー チネットワークの会員の方で、勤続年数の調査をされたことはございますでしょうか。 それから、さっき面白いなと思ったのは、ビジネスマナーが身についてないというお話 がありました。ジョブコーチの方というのは企業を相手にされるわけです。訪問する企 業のことを勉強をしていない、マナーも知らないとなると困ると思うのですが、そうい うことを、この研修では入れていらっしゃるのか。2点お伺いします。 ○小川委員  勤続の調査については、本当にこれからやらなければいけないかなと思っていること です。要するに、第1号に関するデータがないのです。これはどうやったら収集できる のか。ジョブコーチネットワークの受講修了者であれば、アンケート等をこれから実施 すれば、ある程度は把握できると思いますが、やはり全国の第1号職場適応援助者の研 修を受けた人が、その後どうなっているのかということについて、やはり実証的なデー タをとっていくことが必要だろうと思っています。  それから、ビジネスマナーについて非常に重要であると認識しております。実は私た ちのセミナーでは、厚生労働省の指定科目以外に自由参加科目を夜間に設けております。 ですから、1週間、夜の8時ぐらいまでセミナーが続く非常にハードな状況になっていま す。その中で、ビジネスマナーについての講義は、実は湯田社長にお願いをしておりま す。それから、障害者雇用制度についての講義があるのですけれども、より身近に、ハ ローワークの活用の仕方について話していただきたいという声もありまして、これは根 岸委員にお願いをしたいと考えております。このように、いくつかオプションの科目を 作っております。そのように対応しておりますが、もしこの場でご発言を許していただ ければ、私はビジネスマナーについてはやはり正規の科目の中に入れた方がいいのかな と思っています。ただ、あまり福祉施設の職員のジョブコーチの専門性の中で、ビジネ スマナーというものがクローズアップされ過ぎるのもちょっと本質と違うのかなとも思 っております。やはり引き出しの1つとして容れて置いたのがいいだろうなとは思って おります。 ○座長  ありがとうございました。まだご質問があるかとは思いますが、もう1人ご発表をお 願いしておりますので、そちらの方に移りたいと思います。では、次に、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構のリハビリテーション部の中村正子次長から、議題3にござ います、「研修機関における人材育成の現状と課題」ということでご報告をよろしくお 願いいたします。 <研修機関における人材育成の現状と課題(報告者:独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構)> ○中村  高齢・障害者雇用支援機構職業リハビリテーション部の中村と申します。本日はこの ような説明の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、各委員の方々にお かれましては、日頃から私どもの事業にいろいろとご協力をいただいたり、お世話にな っております。改めて感謝申し上げる次第です。  ご説明に先立ちまして、当機構につきまして、皆様ご承知かとは思いますが、簡単に どういうところか触れさせていただきます。私ども独立行政法人高齢・障害者雇用支援 機構は、独立行政法人として国が定めた中期目標に則って、障害者の雇用に関する研究、 障害者、事業主の方に対する支援、それから、本日のテーマでもありますが、職業リハ ビリテーションに係る人材の育成などの業務を行っておりまして、こういったことをも って、国の障害者施策の目標の達成に資するというのがミッションでございます。本日 は、当機構の人材育成の取り組みについて、時間も限られておりますので、ポイントを 絞ってご説明させていただきます。  まず、お手元の資料4の1ページから順にご説明いたします。まずは、当機構が実施し ております障害者の就労支援を担う人材のコンセプトについて、5点ご説明いたします。  1つ目が、現在、福祉から雇用へといった流れがある中で、特に福祉機関等における 人材育成に重点的に取り組んでおります。  2つ目が、当機構におきましては、千葉の幕張に本部としてあります障害者職業総合 センター、また、各都道府県に設置しております地域障害者職業センターそれぞれにお いて人材育成の取り組みを行っているところですが、総合センター研究部門における研 究、技法開発の成果と、地域センターで実際の支援を通じて蓄積した実践的なノウハウ、 この双方を研修に活用しております。  3つ目の実施方法についてですが、これは、職場適応援助者養成研修についてという ことになりますが、総合センターにおける集合研修により理論・技法の習得のための研 修と併せまして、地域センターにおける実践的なノウハウの習得を目指した研修を一体 的に実施しているという特徴がございます。  4点目として、実施内容についてですが、最近特に地域センターにおきましては、企 業の方からの雇入れに関するご相談、ニーズですとか、あるいは実際雇っていらっしゃ る方の職場再適応に関するご相談、ニーズが非常に増えておりまして、こうした支援に も力を入れております。こういったことも踏まえて、障害者に対する支援ノウハウだけ ではなく、事業主に対する支援にも力を入れて実施しております。それから、各種制度 の情報も総合的に提供する形で実施しております。  5点目ですが、研修の内容の見直しということで、受講生の方には受講直後、それか ら、受講後6カ月後に追跡アンケートを実施しております。それから、受講された方の 所属長に、実際の現場で役立っているかどうかをアンケートでお尋ねいたしまして、研 修の効果ですとか、研修のニーズを把握して、研修内容の見直しなどを行っているとこ ろでございます。ニーズについては、後ほどまたご説明いたします。  次に、昨年度私どもが実施した研修の実施状況についてご説明いたします。次のスラ イドに移りますが、総合センターで実施している研修、地域センターで実施している研 修、この2つに大別されますので、それぞれについてご説明します。それぞれの研修に ついての対象者ですとか、日数、回数といった概要については、後ろの方に参考資料と して添付しております参考資料の1-1に記載しておりますので、スライドの方ではポイ ントだけご説明させていただきます。  まず、総合センターで実施している研修の1つ目として、職リハ実践セミナーですが、 これは福祉、医療の分野の職員の方々を幅広く対象にして年2回実施しております。職 リハの基礎知識と実践的ノウハウを付与することを目的に実施しております。障害別に 3コースを設定して、選択の講座も含めて4日間の講座として開催しております。  それから、次が障害者就業・生活支援センター等職員研修として、職務レベルに応じ た研修を、昨年度は、新任担当者研修、スタッフリーダー研修、新任施設長研修という 3種類の研修を実施しておりました。本年度は2つ目のスタッフリーダー研修に代わりま して就業支援スキルアップ研修という形で実施しております。ちょうど本日が前期3日 間コースの初日だったのですが、前期3日、後期3日という形で本年度は実施することと しております。また、主任就業支援担当者研修という4日間の研修を本年度は新たに実 施することとしております。  3つ目が発達障害者支援センター就労支援担当者等研修です。これは、平成19年度、 昨年度に初めて実施いたしまして、本年度は名称を発達障害者就業支援セミナーと名称 を変えて、同様の内容で実施することとしております。  4点目がジョブコーチ養成研修ですが、福祉施設等の新任、企業の新任ジョブコーチ の方に対して、本部では集合研修で実施しております。それから、地域センターでは、 演習等の実践的な研修を、小グループあるいは個別による演習、ケーススタデイ、ある いは企業の見学等といった形で実施しているところであります。  地域センターにおきましては、今申し上げましたジョブコーチ養成研修の他に、人材 育成の取り組みといたしまして、一番下の段になりますが、連携を通じた職リハに関す る基礎知識、共通理解の形成ということのために、2つの事業を実施しております。1つ が、地域職リハ推進フォーラムで、関係機関のスタッフの方々に加えまして、企業の方 々にもお越しいただき、職リハに関する共通認識を形成するフォーラムを各地域で開催 しております。テーマは地域毎に実情に応じて設定しておりますが、例えば障害者の雇 入れについてという大きなテーマもありますし、最近ですと、精神障害者の雇用につい てといったテーマを設定しているケースが多くございます。それから、もう1つが、地 域就業支援基礎講座です。これは関係機関の職員の方々に対して、職リハの基礎知識を 付与するもので、期間は概ね半日程度が多いのですが、東京センターなど2日間実施し ているところもあります。地域の実情やニーズに応じて様々なテーマ、期間で実施して いるところでございます。  それから、ジョブコーチ養成研修を受けられた方のフォローアップとして、地域セン ターの配置型ジョブコーチと第1号ジョブコーチのペア支援を通じて、1号ジョブコーチ の方に地域センターからの更なる支援技術を移転するというようなフォローアップを継 続的に実施しております。併せて、ジョブコーチ推進協議会を地域センター毎に開催し ておりまして、これは1号、2号の何れの方も含めて、ケーススタデイですとか、新しい 知識や制度、技能の付与するための勉強会などを協議会として開催しているところでご ざいます。  次に、昨年度の実績についてご説明します。次のスライドになりますが、研修の受講 者数と各研修で実施したアンケートの結果について取りまとめております。ここには受 講者は総数だけ出ておりますが、所属機関別の状況など、詳しい状況につきましては、 参考資料の1-2に取りまとめておりますので、後ほどそちらをご覧いただければと思い ます。  まず左上にあります職リハ実践セミナーですが、これは毎回受講希望者数が非常に増 えてきておりまして、昨年度は2回実施して、合計で544名の参加がございました。それ から、障害者就業・生活支援センター職員等研修につきましては、昨年度は5回開催し て、合計で164名の参加でございました。発達障害者支援センター就労支援担当者研修 は昨年度初めて実施いたしましたが、年2回開催して、受講者合計が137名ございました。 最後に、ジョブコーチ養成研修については、昨年度7回実施して、137名の参加というこ とになっております。  地域センターの取組の状況ですが、職リハ実践フォーラムは、全国で56回開催して、 合計5,096名の参加がありました。それから、地域就業支援基礎講座については、全国 で89回、合計2,335名の参加という状況となっております。  以上が昨年度の研修等の実施状況でございます。本年度の研修の内容、日数、実施回 数については、参考資料の1-2に概要を取りまとめておりますので、そちらをご覧くだ さい。また、カリキュラムにつきましても、説明は割愛させていただきますが、参考資 料の2-2に添付しておりますので、各講座の中身ですとか、実施時間等についてはそち らをご参照いただければと思います。  では、次に、最近の研修に関する特徴的な傾向について、ご説明させていただきます。 次のスライドになりますが、3点ございまして、1点目は研修希望者の増加です。先ほど も少しご説明しましたが、年々、特に職リハ実践セミナーなどについては受講希望者が 増加している状況がございます。これが1つ目の特徴です。  2点目が、研修ニーズが多様化しているということです。これは、受講者が増えてい るということに伴う必然でもあるかと思いますが、その中身を見ると、2つ大きな要因 があるのではないかと考えられます。1つが、受講者の所属機関が多様化してきている ということです。職リハ実践セミナーについてみますと、福祉機関所属の方が最も多く て、全体の6割から7割となっております。また、福祉機関のうち約半数が就労移行支援 事業者になっております。次いで、医療・保健機関の所属の方が多くて、全体の約2割 となっております。これに加えて、最近の傾向といたしまして、教育機関とか企業から の受講が増加しているという傾向がございます。それから、ニート支援機関といったよ うな、これまでどちらかというと我々とあまり接点がなかったところからの受講者も増 えつつあります。多様化の要因のもう1つとして、受講者の就業支援経験が多様化してい るということがあります。受講後のアンケートなども見ましても、就業支援のイメージ をもてたとか、就業支援の基本姿勢を学べたというような、ベーシックなところでの満 足度を述べられている方もいらっしゃる一方で、中級者用のセミナーをお願いしたいと いうような、もう少しレベルの高い内容を求める方もいらっしゃるなど、様々なご意見 をいただいているという状況にあります。  3点目ですが、総合センターの研修につきましては、より実践的なスキル付与に関す る要望が見られます。これにつきましては、私どもは演習とか、ケーススダデイを入れ たりとか、あるいは実際に支援していらっしゃる方から事例を紹介いただくとか、工夫 をしているところですが、実践に関する要望がかなりみられるということがあります。 それから、先ほども取り組み状況の差異ということをお話しましたが、就業支援の取り 組み状況とか、労働市場も地域差があるため、全国ベースの内容ではなく、各地域の現 場に即した研修をして欲しいというような要望もみられるところであります。  要望について、次のスライドに、主だったものを取りまとめておりますので、ご覧下 さい。今申し上げましたことと若干重複いたしますが、いくつかご紹介しますと、最初 の四角にある昨年度の職リハ実践セミナーのアンケートからですが、例えば、実務経験 の有無により講義内容を更に分けたことがよいのではとか、中級者のセミナーをお願い するといったようなもの、それから2つ目の四角のところで、就業・生活支援センター の職員研修に関するアンケートから、定期的なスキルアップの研修があったらいいとか、 あるいは、一番下のジョブコーチ養成研修に関するアンケートからですが、半年後、1 年後など、一定期間実践した後に参加できる全国規模の研修があるといいとか、こうい った要望をいただいているところでございます。  では、最後に、今後の人材育成のあり方について、少し考えを述べさせていただきま す。まず、最初の基本的な考え方についてですが、各就労支援機関における人材育成の 取り組み状況を踏まえて、外部の研修機関による多様な研修機会の提供や、助言、援助 が必要ではないかと考えております。すなわち就労支援機関においては、それぞれの特 性、支援担当者のスキル、就職度といった内部的な特性と地域の状況といったような外 部的な特性があると思いますが、そういった特性や必要性に応じた人材の育成が必要で はないかということです。そうした人材の育成をするに当たっては、就労支援機関の規 模、内容、経験などに応じて、大きく次の2つの方法が考えられるのではないかと考え ております。  1つが、自ら人材育成のための体制を整備して、自ら実施できない部分について、必 要な能力の開発、向上については外部の研修機関を補完的に活用するといったような方 法です。2つ目が、外部の研修機関での研修をまずベースに組み込んだ上で、それにオ ンする形で、自らOJTを実施したりして、必要なところを付加する方法です。こうし た2つが考えられるのではないかと考えております。このため、外部の研修機関、地方 自治体、民間機関、様々あると思いますが、こういったところが就労支援機関に対して、 様々なニーズに応える研修機会を提供すること、また、一時的な研修ではなく、連携等 を通じて、随時必要な時に人材育成に資する助言・援助が得られる機会を提供すること が必要ではないかというのが基本的な考え方です。  このため、どうしたらいいかというグランドデザインを描くことは大変難しいことで すが、少なくとも、当機構での経験知から、外部機関が実施する研修については、当面 その研修のあり方として、2点あるのではないかと考えております。  大きな1点目は、多様なニーズに対応した研修機会の提供ということです。そのうち の1つは基礎的な知識、支援スキルを付与する研修機会の拡大です。就労支援に新たに 取り組む機関も多くなっておりますし、今後とも増えてくるのではないかと思われるこ と、また、先ほどの話にも出ましたが、担当者の異動等も多いということから、やはり 基礎的な研修に対するニーズは当面増大するのではないかと考えております。2つ目が、 就業経験等に応じたスキルアップの機会の拡大です。これは先ほどの要望にもありまし たが、一定の経験がある方からはスキルアップの機会が求められておりますし、こうし たニーズというのも今後増えていくのではないかと考えております。  大きな2点目は、実践的な研修機会の充実ということです。就労支援に新たに取組む 方につきましては、基礎的な知識はもちろん一定程度必要になるとは思いますし、必須 だとも思いますが、併せて実践的なスキルを習得する機会をもう少し拡大していくこと が必要ではないかと考えております。  以上、少し早口になってしまいましたが、当機構の全体的な取組についてご説明させ ていただきました。 ○座長  中村次長、ありがとうございました。それでは、今からディスカッションに入ります が、前回、八木原委員と志賀委員の発表もございました。それらを含めて議論させても らいます。ただし、その前に、まず、今の中村次長のことに関してご質問があればお伺 いして、その後で総括的なご意見等をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いい たします。まず、中村委員のお話についていかがでしょうか。小川委員、どうぞ。 ○小川委員  ジョブコーチ養成研修についてお伺いします。厚生労働大臣指定の外部研修と幕張の 機構研修の違いで、機構研修は研修終了後にジョブコーチとして稼働する準備が整って いる人たちが対象と理解していましたが、この研修後の稼働状況ということについて、 もしデータがあれば教えていただきたいと思います。それから、19年度で137名とあり ますが、1号と2号の割合について教えていただければと思います。 ○中村  昨年度の1号と2号の数ですが、1号が137名中の131名、2号が6名という状況です。稼働 率については、今、手元にデータがないのですが、基本的には稼働していると認識して います。 <総括的なディスカッション> ○座長  よろしいですか。他にござませんか。では、ないようでしたら、前回の八木原委員及 び志賀委員の発表も含めまして、今回の発表も含めて、総括的なディスカッション、あ るいはご意見等をお伺いしたいと思います。原委員、どうぞ。 ○原委員  人材育成の部分で、先ほど小川委員の方からジョブコーチネットワークでの研修後に、 大体現場に戻って3年から5年OJTが必要ではないかというお話でした。教育分野でも やはり同じようなことを感じます。学んだことを実際にその地域の中で生かしていく上 では、3年ないし5年かかるというのは、本当に私自身もそう思います。それを支えるい わゆるフォローアップの話が先ほど話題になりました。そうしたOJTを支えるような ネットワークというか、情報交換であったり、お互いに地域を越えて最新の情報を取り 込むような仕組みとか工夫があるのかどうかということですね。多分そうした仕組みが ないと、フォローアップ研修だけではOJTが続かないのではないかと思います。教育 関係者も最近増えているというお話が、職業センターからもジョブコーチネットワーク の方からもありました。出やすい状況づくりというか、それは教育だけに限らず、先ほ どの小規模の事業所もそうだと思います。研修に出やすい状況づくり、そして、その研 修が終わった後に、3年ないし5年のOJTができるような、専門性を形成できるような 状況づくりのようなものがとても大事だと思います。湯田社長のところはしっかり配置 されておられますね。ところが、先ほどの小川委員のお話の中にも、異動があってとい う話がありました。せっかく研修を受けた者が異動ということでは、非常にもったいな いと思います。それは我々教育分野も同じです。先ほどのフォローアップの追跡アンケ ートにもありましたが、JCネットでは、受講後の専門性を形成する仕組みというか、 何か工夫があるような気がするのですが、スピリットというお話もされていました。少 し具体例を出していただければと思います。 ○小川委員  実際にはすごく難しいのです。ただ、3年から5年というところで原委員にも共感して いただけたのは、やはりそうかなと思いました。これは福祉施設で兼務している職員だ と、3年、5年ではなかなか難しく、それほど力が上がらないなと思います。逆に、市区 町村の就労支援事業とか、就労支援の実務に特化した仕事に就いている人だと本当に3年、 5年で、ここまで専門的な支援ができるようになるのかということもあると思いますが、 やはり、3年、5年と一口で言っても、本当に就労支援を専門的にやることが必要だと思 っています。  そして、OJTの問題ですが、研修を受けて福祉施設の現場に戻ると、かなりの割合 の人たちはそのまま埋もれていくわけなのですが、中には、あそこの支援機関は関係性 がとれているからうまくいくということもあるのだろうと思います。湯田社長のところ も次々に送ってくださいます。1つの機関で連続して送ってくださると、やはりこれも 湯田委員のご発言の中に、業界には用語があって、基本的にはそこを整理しなければい けないというお話がありましたが、基本的な用語とか、就労支援の考え方、プロセス、 技術などについて1つの組織の中で共有できると、OJTがうまくいくのではないかと 思います。必ずしも優れた先輩がいなくても、共通のものをもっていれば、お互いにチ ームの中で高め合っていけるのかなと思います。そうでないと、1人だけ研修を受けて 戻っても、結構現場の中で埋もれて、うまくいかなくて消えていってしまうということ が多いように思います。  そこで、JCネットの工夫としては、方法論と技術を非常に明確に伝えているという ことがあります。あとは、フォローアップで私たちが行っていることは、ウェブでの情 報発信です。ウェブ上でつながりをもつということです。それから、地方セミナーを開 催していますが、地方で実践をされた方が今度は地方セミナーのトレーナーになり、教 える立場になる。比較的早めに教える立場になっていただくということが大切かなと思 っています。地方セミナーと中央での職場適応援助者養成研修のリンクというのがJC ネットの特徴かなと思います。、地方での人材養成というか、福祉施設の職員の人材養 成で大切なのは、やはり福祉施設ならではの難しさとか、福祉施設職員が就労支援をや る時の困難ということを理解して、そこをどういうふうに乗り越えていくか、工夫をし ていくかということを伝えることが大切だと思っています。ですから、就労移行支援事 業とか就業・生活支援センターとか、やはり福祉施設を母体にした機関が早く地域の就 労支援の研修機関になっていただくこと、早めになっていただくことが大切なのかなと 考えています。 ○座長  ありがとうございました。他にご意見、ご質問等ございましたらどうでしょうか。岡 野委員、どうぞ。 ○岡野委員  今の小川委員の発言と関連させてお話をしますと、私どもは高齢・障害者雇用支援機 構が行う1号ジョブコーチの養成研修の一翼を担っています。私たちは今、研修後、大 体2カ月に1回ぐらいのペースで勉強会を開催しています。1号ジョブコーチ、2号ジョブ コーチの方に声をかけ、私どもの配置型の職員を交えて、ケース検討を行うなどしてい ます。できるだけカウンセラーは外から見守るという形で、会の運営自体の組立はいた しますが、当日のディスカッションはできるだけジョブコーチ(職場適応援助者)の方 々の自主性に委ね、見守り、最後に総括的なところで助言をさせていただくというよう な手法を採っています。これについては、かなり人気があって、毎月1回やってくれとい う要望もあるのですが、実際にやるとなると、かなり準備も必要ですので、今は2カ月に 1回のペースでやっています。出席率もかなり良好かなという感じで、実際、皆さんは支 援を行っているわけですから、全員が揃うということはありませんが、それぞれの組織 の方々が交替で出て来てくださっています。そこでは1人ではないということと、顔を合 わせて、実際に自分が日頃考えている疑問をぶつけ合って、問題を解決して帰っていき ます。そういうことを繰り返し行っているということを、参考までにご報告させていた だきます。 ○座長  ありがとうございました。他にご意見等ございませんか。原委員、どうぞ。 ○原委員  JCネットの方も、また機構の方も、フォローアップがある程度できて、現場で専門 性を培えるような機会の提供の話があったと思います。今日の研修プログラムを見ても、 いろいろ制度が変わっていく中で、就労支援を担当する人に何が基礎的な事項で、どう いう応用が必要なのかという方向性がはっきり出てきているように思います。そういう 中で、特別支援学校等の教育分野は、最初に関係機関につないでいく役割をもつと思い ます。今日の資料の中の参考資料1でも、各関係機関の人材が非常に充実してきている 中で、教育分野はややというか、随分弱いというように思うのです。教育分野で今日の お話のような専門的なものを全部つける必要はないと思っているのですが、もう少し最 新の就労支援について、しっかりと関係機関の役割であるとか、その特性を当事者、家 族に伝える役割を教育は持つべきです。やはり教育の分野がもう少し専門機関が行う就 労支援の研修に出やすい状況を作っていかないと、底が広がりません。進路指導を行う 者は非常に人数的にも少ないですが、専門機関の研修に出ることで、自分自身のキャリ アアップにもなるかも知れません。大事な点は、より多くの当事者や家族に専門機関の 的確な情報を提供するという意味で、研修に出やすい状況づくりが必要であるというこ とを改めて思いました。 ○座長  ありがとうございました。他にご意見等ございますか。もしないようでしたら、私が 是非とも聞いておきたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。小川委員と中村次 長に確認しておきたいのです。2人のご意見では、就労移行支援事業等でジョブコーチ に対応しない需要が非常に多い。つまり、就労支援に関する基礎的な知識を知りたい人 が多い。それに対するカリキュラムとしてどのレベルのものを想定するかを確認してお きたいのです。  まず中村次長の方には、こうしたいろんな種類の研修がありますけれども、プログラ ムの中身の違いがどこにあるのかということ。また、例えば今言ったようなジョブコー チはやらない、でも就労支援に関する移行支援事業などの担当者をやる時には、どうい ったところに焦点を絞った形のレベルの研修がいいのかどうか。小川委員からもご指摘 があったように、例えば、いわゆる広義のジョブコーチという格好でやっていくのか。 どのレベルのものがジョブコーチとして中級、上級なのか。逆に、ジョブコーチになら ない幅の広い、入門というか、その辺りはどのレベルを想定して、どんなカリキュラム のレベルのものを想定すればいいのか、そこの辺りが非常に疑問です。お二方のご意見 をお伺いしたいので、よろしくお願いいたします。 ○中村  どういったレベルというのは、むしろ我々も大変頭を悩ましているところでありまし て、こういった場でいろいろご意見をお伺いできればと思っています。私どもは職リハ 実践セミナーが最も幅広く就労移行支援をやろうという方々にご参加いただいているも のですが、ここでは昨年度の傾向かも知れませんが、障害者雇用の制度的なものについ て知りたいというニーズが多かったように思います。昨年度は少し時間を延ばして、障 害者施策ですとか、助成金制度とかを説明したのですが、その点に関しては非常に満足 度が高く、そういったニーズは本当にベーシックなところですがあるのかなと感じてい ます。なかなかどういったレベルというのは、私どもも非常に難しいと思っています。 ○井口  少し補足させていただきます。研修課長をしております井口でございます。今、中村 次長からお話がありましたように、実践セミナーが基本的なレベルで、いろんな障害別 に、精神も、高次脳も、知的も、広くやっているというものです。それ以外は、就業・ 生活支援センターの方々あるいはジョブコーチの方々には、職務がある程度はっきりし ておりますので、それに合わせた研修をしています。発達のセミナーは発達障害者に特 化した基本的なレベルの研修です。こういう形で全体を構成しております。以上です。 ○小川委員  非常に難しいご質問なのですが、私は基本は、障害のニーズのきちんとした把握だと 考えています。それから、障害のある人のアセスメント、職場のアセスメント、両方を つなぎ合わせるマッチング、それから、入職時の一定の職場適応支援、これは仕事の支 援と職場の社会的な側面に関する支援です。それから、継続的なフォローアップ、これ は企業に対する、企業の中で起きる問題に対するフォローアップと生活面のフォローア ップに対するマネジメントです。これが、ジョブコーチにしても、就業・生活支援セン ターにしても、全ての就労支援の基本だと思っていますので、地方セミナーの2日間の 入門バージョンでもこの全体については伝えるようにしています。結局、業務というの は、ジョブコーチであったり就業・生活支援センターであったり、あるいは地方自治体 の就労支援の職員であったり、いろいろな業務のくくりと言いますか守備範囲が決まっ てきます。その部分だけを研修で伝えても機能しないと思っていますので、まず全体を 理解していただいて、その中で、ご自身がどこを担当されるのか。そして、そのための 専門性をどれだけ深めていったらいいのかというのは、次のステップになると思ってい ます。福祉施設の職員のキャリアからいうと、この全体像が見えにくい。作業支援であ るとか、生活支援であるとか、その部分で見ていますから、全体像を伝えることが必要 です。それを伝えていただく役割として、障害者職業センターのもっているノウハウと いうのは非常に重要だと思っています。私は先ほど就業・生活支援センターや就労移行 支援事業等が教えられるようにと申しましたが、やはり最終的には、主役がそちらにな った方が、全体の底上げは良いと思います。そこができるだけ早い時期に主役になれる ように、職業センターさんにサポートしていただかないと、なかなか難しい。先ほど岡 野委員がおっしゃられたような、カウンセラーの見守りで第1号、第2号ジョブコーチが ディスカッションをして、スキルアップをしていくというのは、非常に素晴らしい方法 を採られていると思いましたので、そういうバックアップをお願いしたいと思います。 ○座長  ありがとうございました。少し難しい質問で申しわけありませんでした。八木原委員、 どうぞ。 ○八木原委員  最後に感想なのですが、福祉施設の職員は自立支援法になってより明確にケアマネジ メントの技法を使わなければできなくなっています。移行支援事業も、それから継続支 援A型、B型もですね。計画を立てて、どうやって支援していくかという方向づけです。 それはジョブコーチ事業も同じケアマネジメントなのです。だけれども、就労というこ とについては、どうやってやっていくか混乱極まりない状態です。まずは基本としてケ アマネジメントを自分たちの生活支援の中でどのぐらいやっていくかということ。その プラスアルファー、応用がジョブコーチだと思っているので、そこのところがきちんと 理解されれば早いのではないかと思っています。 ○座長  私もそう思います。自分のやっていることをジョブコーチのステージに合わせて、先 ほど小川委員のおっしゃったような形で研修していく方が福祉の人たちは受け入れやす いですからね。予定時間をオーバーしましたが、もしご意見等ございませんでしたらこ の辺で終わりたいと思いますが。小川委員、どうぞ。 ○小川委員  すみません。1点だけジョブコーチのことで要望といいますか、挙げ忘れたポイント があります。今は第1号の職場適応援助者で、一定の経験年数があると、2号の資格が取 れます。ただ、2号から1号への逆の流れがない制度になっていると思います。今の状況 を見ていると、企業の立場でのキャリアをお持ちの方が就労支援をすると非常に効果的 ということが見えてきていますので、2号から1号になるという流れについてもご検討い ただければと思っています。 ○座長  ありがとうございました。要望ということで、事務局の方で記録に留めておいてくだ さるとよろしいかと思います。それでは、佐藤委員、どうですか。 ○佐藤委員  今日の議論は主としてジョブコーチの研修を巡っての議論が大部分を占めていたかと 思います。ただ、就労支援に携わる人材養成ということであれば、他にもいろんなタイ プの人材が当然必要になってくるわけです。先ほどの小川委員の提起の中にも、管理職 レベルを狙うのか、それとも、もっと現場サイドを狙うのか、という辺りも悩んでいら っしゃるというお話がありました。これはもちろん企業の組織の大小にも関わってくる と思うのですが、一方では、例えば、職業生活相談員のような別の制度との関係をどう とるかといった問題と密接に絡んでくるかと思います。そういうことも頭に入れながら 今後議論を展開する必要があるのではないかと思います。  それから、もう1つは、人材養成といった時に、私は能力開発総合大学校にいたこと もありまして、「人材育成をする人材」をどうやって確保するのかということがいつも 頭にあります。小川委員からも、中央研修を受けた方が、地方でまた指導員としての役 割を果たしてもらうということをおっしゃいました。この辺は、職業センターの研修も 含めてですが、いわゆる人材養成をするための人材をどうやって確保するかという部分 についても議論していかないと、肝心の人材養成の中身がうまくいかないのではないか との懸念もあります。今日はもう時間もありませんので、次回以降にこういったことも 議論できたらいいなと思っております。 ○座長  山岡委員、どうぞ。 ○山岡委員  私は企業にもう30年近く勤めておりますが、企業において人材養成ということを考え る時、研修とかいうことが真っ先に出てくることはまずありません。今はだいぶ人材が 出たり入ったりという交流が多くなってきましたが、10年、20年かけてこの人たちをど うしていくのだということは、例えばポジションという考え方もあるし、昇給という考 え方もあります。いろんなところで、その人が定着をし、夢をもって仕事ができるよう にということがまずあって、そこを考えたりするわけですね。企業人としての生き甲斐 であったり、モチベーションを高めるとかということがあって、そのような議論は多分、 最初に小川委員が言われた問題提起の中にも含まれていたと思います。これは非常に大 きな話題で、予算や人材育成等いろいろなことが絡むので、難しいかも知れませんが、 この点についても少し検討しなくてはいけないのかなと思います。実は、発達障害者支 援センターの研修で、当初1年目に50何名受けられて、支援センター以外の方も参加され るのですが、来年度どうするのですかとお聞きしたことがあるのです。中級をやるので すよねといったら、初級でいいと言われました。何故初級でいいのですかと聞いたら、 人が入れ替わっていて、まだ初級を必要な人がいるのですということでした。発達障害 者支援センターというのは、その時50ぐらいしかなかったのですが、毎回40名やっても、 新しい人が出てくるというのは、入れ替えが多いということであり、やはりそれが実状 のようです。いかに定着を図るかとか、そういった議論を含めないと、人材育成だけで 検討しても少し難しいかなと感じました。 ○座長  そこまでいくと、公的な資格とか、そういう話までひょっとしたらなるかも知れませ んね。最後に志賀委員何かございませんか。 ○志賀委員  カリキュラムのことについてはジョブコーチネットワークの運営にも携わっているの で、あまりしゃべることはないと思っていましたが、今回の中で1点だけ思ったのは、 処遇の問題等は前回も少し話しましたので、研修ということで考えた場合、やはり有料 の研修もあり、ある程度公的な財源がある無料の研修もあり、先ほど少し言われていま した、ネットワークを持つためのいわゆる自主的な時間外の勉強会もあります。いろん な方法があると思うのです。今、地域の方では自立支援協議会だけではなくて、就労支 援のためのそういった会議をもとうとしている自治体もたくさんあります。教育、ハロ ーワーク、あるいは都道府県の労働部門の方でいろんなネットワーク会議という名目の ものがたくさんあります。就労以降支援事業をスタートして、そういった情報が取れる ようになると、一体どこに行っていいのか分からないというぐらいたくさん出てきてい るのが今の実態だと思います。そういう面では、少しずつの試みなのですが、私たちの 関わっているところでは、それぞれ10万とか20万の予算しかないのだったら、3カ所一 緒に合同で何かやりましょうとか、そういう動きも少しずつしております。人材育成に は直接ではありませんが、そういった面で、地方自治体の中で、あるいは地域の中での 顔の見える関係で、どういったメンバーで、どういうプログラムを考えていくかという のは、やはりその地域で自主的に考えていかないと難しく、それができないと成功はし ていかないと思っております。そういうことを議論を聞きながら考えました。 ○座長  どうもありがとうございました。それでは本日はこの辺りで終了したいと思います。 なお、会議の公開等につきましても、特に差し支えないようでしたら、公開の取り扱い にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。また、本日の議事録についても、 公開は差し支えないと思いますが、いかがでしょうか。異議なしということで進めたい と思います。それでは、次回以降の日程について事務局よりお願いします。 ○事務局  お疲れさまです。前回、9月16日を仮受けということで調整させていただいていたの ですが、恐縮ですが、再調整ということで事前に日程を伺いましたら、10月3日が皆さ んのご都合がよろしいということで承りました。次回は、10月3日、18時ということで ご提案させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○座長  10月3日、金曜日ですね。先生方、よろしいですか。では、そのように決定させてい ただきます。次回は10月3日、午後6時から、場所は追って連絡ということでよろしいで すか。 ○事務局  第3回目の内容といたしましては、今、各就労移行支援事業、就業・生活支援センタ ー、あるいはジョブコーチのいる法人に実態調査ということで、アンケート調査をやっ ておりまして、その調査結果報告とともに今日及び前回ご議論をいただいたことを反映 して、事務局の方で就労支援を行うために必要な能力要件等について、一応のたたき台 を準備させていただこうと思っております。それをご提案してご議論いただければと思 っております。   ○座長  ありがとうございました。これをもちまして本日の会議は終了といたします。長い時 間、お忙しい中、ありがとうございました。 【照会先】   厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課地域就労支援室   電話:03−5253−1111(内線5854)