08/07/25 第17回予防接種に関する検討会議事録 第17回予防接種に関する検討会 日時:平成20年7月25日(金)     10:00〜12:00 場所:厚生労働省共用第9会議室 ○山田課長補佐 それでは、定刻になりましたので、これより第17回予防接種に関する検 討会を開催いたします。  本日は、御多用のところ予防接種に関する検討会に御出席いただき、誠にありがとうご ざいます。  最初に、本日の御出席者を紹介させていただきます。まず、委員の方々より御紹介いた します。  飯沼雅朗様、日本医師会常任理事でございます。  岩本愛吉様、東京大学医科学研究所附属先端医療研究センター感染性分野教授でござい ます。  岡部信彦様、国立感染症研究所感染症情報センター長でございます。  加藤達夫様、本日の座長をお願いしております、国立成育医療センター総長でございま す。  蒲生真実様、「ひよこクラブ」編集長でございます。  竹本桂一様、(社)日本小児科医会常任理事でございます。  永井恵様、豊島区池袋保健所長でございます。なお、永井様におかれましては、今回よ り新たに本検討会の委員に就任していただきました。  廣田良夫様、大阪市立大学大学院医科学研究科教授でございます。  宮崎千明様、福岡市立西部療育センター長でございます。  ここで、一つ御報告させていただきます。昨年8月に開催されました第16回の検討会ま で委員を務めていただきました澤先生におかれましては、御都合により本検討会の委員を 辞退されたいとの申し出があり、退任の運びとなりましたことをここに御報告させていた だきます。なお、御本人は御不在ではございますけれども、平成16年10月の第1回から 長きにわたり、委員として貴重な御意見を賜りましたことに対して、事務局より深く感謝 申し上げたいと思います。  続きまして、本日参考人として御参加いただいております先生方を御紹介させていただ きます。  多屋馨子様、国立感染症研究所感染症情報センター第3室長でございます。  倉根先生は御報告いただきますけれども、少し遅れられているようでございます。後ほ ど御紹介させていただきます。  高崎智彦様、国立感染症研究所ウイルス第一部第2室長でございます。  上田重晴様、阪大微生物病研究会理事でございます。  なお、本日オブザーバーといたしまして、血液対策課より御参加いただいております。  それでは、開会に当たり、上田健康局長よりあいさつ申し上げます。なお、上田健康局 長は7月11日付をもって就任いたしましたことを申し添えさせていただきます。 ○上田健康局長 今、紹介のございました上田でございます。  以前から御存じの先生もいらっしゃるんですが、一人一人ごあいさつと思ったんですが 部屋が狭くなっているものですから、この席から失礼させていただきます。また、地球温 暖化防止のために、9時半からしか冷房が入りませんし、冷房温度も高めに設定しており ます。我々もこういう格好でございますので、先生方も是非涼しい格好で御議論いただけ ればと。しかし、議論は熱い議論をお願いしたいと思っているわけでございます。  この予防接種に関する検討会は、予防接種にかかわる重要な課題につきまして検討して いただくために、平成16年10月に第1回の検討会を開催したわけでございます。その後、 数々の御提言をいただきまして、予防接種対策の推進に大きく貢献していただいたと考え ております。特に、はしかにつきましては、諸外国から我が国の流行状況について関心が 持たれているところでございます。昨年は10代、20代を中心とした年齢層ではしかが大流 行しまして、その対策として本年4月より中学1年生及び高校3年生の年齢を対象とした 接種を実施するなど、平成24年度までの麻しん排除に向けた対策を取りまとめていただい たところでございます。私どもとしましては、現在はしかの予防接種が進むよう、普及啓 発に全力を尽くしているところでございます。  さて、本日の検討会は、日本脳炎を中心とした議論をしていただくことになっておりま す。平成17年5月から積極的勧奨を差し控えている日本脳炎ワクチンの予防接種について、 専門家や委員の方々の御意見をいただきまして、今後、日本脳炎ワクチンの予防接種がど のように進んでいけばよいのか、非常に重要な問題であると考えております。今後の課題、 進め方等について御提言、議論をいただければと考えております。  日本脳炎ワクチンの予防接種など、予防接種を取り巻く喫緊の課題につきまして、本会 では各委員の皆様方から活発な御議論をいただくことを改めて期待いたしまして、私は所 用で中座いたしますけれども、事務局の方から後ほどこの会議の内容を十分聞かせていた だきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願いしたいということで、簡単ではご ざいますが、ごあいさつに代えさせていただきます。どうもありがとうございました。 ○山田課長補佐 では、局長はここで失礼させていただきます。 (上田健康局長 退室) ○山田課長補佐 それでは、カメラ等の使用につきましては、ここまでとさせていただき ます。よろしくお願い申し上げます。  先ほど御紹介ができませんでした、倉根一郎様、国立感染症研究所ウイルス第1部長が 到着されましたので、改めて御紹介いたします。  続きまして、事務局を紹介させていただきます。  上田局長と同じく7月11日に着任いたしました、結核感染症課の梅田でございます。  課長補佐の三宅でございます。  本年2月1日に着任いたしました、課長補佐の石塚でございます。  本年4月1日に着任いたしました、予防接種担当主査の小林でございます。  私、山田ございます。よろしくお願いいたします。  この後の議事の進行につきましては、加藤座長にお願いしたいと存じます。加藤先生、 よろしくお願いいたします。 ○加藤座長 おはようございます。  それでは、本日の議事を進めさせていただきます。その前に、事務局から資料の確認を お願いいたします。 (配付資料確認) ○加藤座長 それでは、本日の議題でございますけれども、御承知のとおり先ほどからお 話がございました平成17年5月から、日本脳炎接種の積極的勧奨の差し控えという勧告が 課長からなされておりまして、その後、接種率が大きく低下しておるところであります。 その現状を踏まえまして、今後のあるべき日本脳炎の対策について、感染症並びに予防接 種の専門の方々より御報告をいただきまして、その上、御提言をいただき、委員の先生方 には活発な御議論をお願いいたしまして、今後の方策について御意見を伺えれば幸いと考 えております。  それでは、議事次第どおりに進めさせていただきますが、最初の議題となっております 日本脳炎の予防接種の現状に関して、事務局から御説明をお願いいたします。 ○三宅課長補佐 御説明させていただきます。資料2でございます。  本文そのものは2枚でございますが、今までの経緯等を発出したもの等を別添資料とし てつけさせていただいておりますので、ちょっと厚くなっております。  これまでの経緯でございますが、日本脳炎につきましては予防接種法において定期接種 の一つとされているところでございますが、先ほど来お話がありましたように、平成17年 5月25日に重症のADEM(急性散在性脳脊髄炎)と日本脳炎ワクチンとの因果関係を予 防接種健康被害の認定部会・分科会で認定されたということが1件ありました。そのよう なことを受けまして、5月30日、日本脳炎予防接種の一律的な積極的勧奨を差し控える旨 の通知を発出したところでございます。詳細については別添1に譲りますが、そのような 通知を出させていただきました。  それに伴いまして、その後どのようなことが起こったかといいますと、実質的にはほと んどの市町村で日本脳炎の接種自体が事実上中止になったということ。そして、これによ りワクチンメーカーも日本脳炎ワクチンの新規原液の製造を中止し、マウス脳を使ったワ クチンをつくっていたわけですが、そのマウスの供給業者も廃業してしまったと。そして、 組織培養法による日本脳炎ワクチンについて、新しいマウス脳を使わない組織培養法によ る日本脳炎ワクチンが2社から薬事法上の承認申請が行われていたわけですが、局所副反 応の発生率が既承認の製品に比べて高いなどということもありまして、接種に適した用量 を再検討した上で、改めて治験を行うこととなっております。  平成18年8月におきましては、このような中で日本脳炎ワクチンの一律的な接種の勧奨 は差し控えているものの、感染のリスクの高いものであって、予防接種を希望する者に対 しては適切に接種の機会を確保するように都道府県に要請しております。つまり、接種自 体はワクチン予防接種法の定期接種としての日本脳炎ワクチンというのは、いまだにある わけでございまして、そのリスクとベネフィットを考えていただいて打ちたい、打つべき だと考える親御さんにおかれましては、ちゃんと打てるように都道府県・市町村において もその体制をつくるようにということを通知しております。  平成19年5月16日におきましては、更に、親御さんが日本脳炎ワクチンを打つべきか、 打つべきではないかの判断に資するための情報を、より詳細に載せようということもござ いまして、日本脳炎ワクチンの接種の判断に資するような感染リスクの高い地域を示した 厚生労働省ホームページにQ&A等を掲載させていただくとともに、それを都道府県ある いは日本医師会を通じまして周知をしたところでございます。  平成19年7月におきましては、更に、日本脳炎に関して今後どうすべきかということを 感染研ともいろいろ話し合いを内部的にさせていただきまして、ワクチンを打たない方も いる中で、少しでも日本脳炎の発生を少なくするために防蚊対策をしっかりすべきだろう ということも議論させていただきまして、日本脳炎の予防に関する蚊に刺されないための 啓発ポスターをつくらせていただきまして、厚生労働省のホームページに掲載するととも に、都道府県にポスターの活用について要請したところでございます。  同じく、平成19年8月におきましては、日本脳炎ウイルスの一つの増殖する場であるブ タにつきまして、ブタの防蚊対策も有効だろうということで、農林水産省にブタの飼育施 設における防蚊対策について関係者の周知を要請しております。  本年につきましては、7月7日に、同様の防蚊対策について農水省に申入れをするとと もに、7月22日に同様のポスターをより新しいものにしてホームページに掲載したところ でございます。  これが今までのざっとした日本脳炎に関する流れでございます。  次に、現状についてですが、まず、予防接種の現状でございますが、先ほどお話ししま したように、予防接種法の積極的勧奨のワクチンであるということは変わらないものの、 積極的勧奨の差し控えについて通知をさせていただいているという状態です。そのため、 具体的な希望者には現行のワクチンで定期接種として接種することは可能になっておりま すし、健康被害が生じた場合にも、予防接種法の健康被害救済制度が適用されるというこ とになります。  このような状況下で、どれくらいワクチンが使われているかということでございますが、 日本脳炎の積極的勧奨の差し控えの前におきましては、毎年数百万本のワクチンが使用さ れていたわけでございますが、平成18年、平成19年におきましては22万本、50万本ほ どの供給数量、供給数量というのは販売した数から差し戻された返却ワクチンを除いたも のでございますが、供給数量としては以下のようになっております。  平成20年につきましては、このような需要にかんがみながら、約100万本の供給が行わ れる予定と聞いております。  次に、日本脳炎の患者が実際にどのように発生してしまっているかということでござい ますが、ここに書いてございますように、平成12〜18年におきまして高齢者を中心に発症 しておりまして、その数においては余り大きく増減はないところでございます。平成19年 におきましては、全部で10人の方が発症しております。高齢者が中心ではございますが、 一番上の方が19歳と少し年齢が若いことと、関東の方で発生しているという事実がござい ますが、この方に関してはいろいろ調査をした結果、感染したところについて本当に関東 だったかということについては、いろいろ議論があるようでございます。  次に、新しい組織培養ワクチンの開発見込みというところでございますが、後ほど阪大 微研からアップデートされた情報を話していただけると聞いておりますが、まず、組織培 養法によるワクチンについては、化学及血清療法研究所及び阪大微生物病研究会から薬事 法上の承認申請が既に行われているところでございます。ただ、先ほど申しましたように、 局所副反応の発生率が既承認の製品に比べて高いことなどから、接種に適した用量等を今、 再検討し、改めて臨床試験を行っているということで、現在は再度承認する状態だと聞い ております。詳細は後ほどということです。  以上、ざっと今までの経緯、日本脳炎ワクチンの現状、発生状況について御報告をさせ ていただきました。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ただいま三宅補佐の方から、日本脳炎の予防接種について現状の認識を踏まえて説明し ていただいたわけですけれども、この件に関しましての御意見・御質問は後ほどまとめて 時間をとってございますので、そこでやらせていただきます。  続いて、2番目の議題でございます。接種の積極的な勧奨が差し控えられて3年経過し ております。したがいまして、予防接種を受けていない子どもたちが累積しているという わけでございますけれども、そこで疫学的な観点から、国内の日本脳炎関連疫学情報につ きまして本日、参考人として出席していただいております多屋先生からお話を伺います。 よろしくお願いいたします。 ○多屋参考人 よろしくお願いいたします。  配付資料がございますので、見えづらい点につきましては、そちらをごらんいただけれ ばと存じます。 (PP)  私は厚生労働省が実施主体となって行われている感染症流行予測調査事業、既に30年ぐ らい実施されている事業ですけれども、そちらの事業の事務局を担当しておりまして、一 緒に担当している佐藤、新井両研究官と、患者情報を担当している多田室長、岡部センター 長と一緒に、この情報のスライドをつくらせていただきました。 (PP)  まず、日本脳炎の患者さんの報告数ですけれども、1965〜2005年までの患者数をグラフ 化いたしますと、1960年代は数千人に上る患者数が報告されておりました。ワクチンに関 しては下に小さく書いてありますが、50年代、60年代勧奨接種、特別対策、平常時臨時接 種という形で日本脳炎ワクチンが接種されてきたと聞いておりますが、1989年に北京株が 導入され、1994年の予防接種法改正で定期の予防接種法に導入されたという経緯がありま す。  このグラフでは余りにもレンジが小さくてわからなくなりますので、1972〜2005年だけ をグラフ化いたしますと、すべて100人未満の報告数です。更に、1990年以降はもっと患 者数が少なくなっておりますので、レンジを14までにしまして、1991〜2005年までの患 者数がこういう状況になっておりまして、近年はいずれも10人未満の患者報告数という状 況になっております。 (PP)  これを地域別にグラフ化したものがこのスライドです。2000〜2007年まで年別に、また 男女別に、地域別にグラフ化しております。2007年は10名の報告ということが先ほど三 宅補佐の方からありましたけれども、2006年に茨城県で感染しただろうと言われている患 者さんは、2007年に広島県で診断され、こちらの方に1と上がっております。ですので、 2007年に発症した患者さんは計9名ということになります。  患者さんの年齢分布は2006年発症の10代の1名と、2007年は40代が3名、60代が3 名、70代が2名、80代が1名で、地域的には北海道と東北地方からの報告はなく、西日本 を中心に患者さんが発生しているということがわかるかと思います。  なお、感染症発生動向調査の調査状況から2006年までは患者報告地域で、2006年4月 からは推定感染地域という項目が増えましたので、それに基づいてグラフ化をしておりま す。 (PP)  次に、1980年代から今まで年齢別の患者報告数をグラフ化したものです。3つに分けま すと、1980年代は小児と60代をピークとする二峰性の患者報告数の山になっておりまし たが、1990年代になりますと小児の患者さんが減りまして、60代を中心とする山のみに なっています。2002年以降は、その傾向に変わりはありませんが、更に患者数が少なくなっ ているという現状があります。 (PP)  次に、感染症流行予測調査事業というのは、元伝染病流行予測調査として実施されてき たものですけれども、毎年と場に運ばれてくるブタを10日に1回10頭ずつ、地域によっ て若干回数が異なりますが、沖縄県では10回、北海道・東北は7回、それ以外は8回につ いて毎月3回調査が行われています。  ブタはほとんどが生後6〜8か月で、と場に運ばれてくるということですので、その県 に住んでいるブタが採血される前6〜8か月の間に日本脳炎ウイルスの感染を受けたとい うことがわかるために、ブタでの調査が継続されています。  これは日本地図で、調査した80%以上のブタが日本脳炎ウイルスに対するHI抗体を 持っていた場合に、濃い黒となっています。薄くなればなるほどその割合が低くなって、 真っ白なところは調査が行われていない県です。これは細かく見るのは難しいので、色の 感じで見ていただければと思いますが、下に括弧づけで書いてあるのは、その年に報告さ れた日本脳炎の患者さんの数を示しています。西日本を中心に真っ黒になっている年と、 あるいはかなり東日本の方まで黒い色が伸びている年と少し差があるということがわかる かと思います。  大体の傾向としては、暑い夏、猛暑の夏は黒くなってくる県が多い。この1994年も忘れ られない関西国際空港が開港した年で、非常に暑い夏の年だったんですけれども、黒くなっ ている県が多いという状況になっています。この調査の半年以内にブタが日本脳炎ウイル スを持っていたということになります。 (PP)  最近7年間を今度はカラーで見やすくしたんですけれども、白は調査が行われていない 県、水色は調査はしたんだけれども、すべてのブタが日本脳炎ウイルスに対する抗体を持っ ていなかったという県。そして、茶色が8割以上のブタが抗体を持っていたという県、そ して、赤、黄色というふうに抗体の保有率の割合で色分けしていますが、ここに示します とおり、西日本を中心に若干年による差があります。関東などを見ると年による差があり ますけれども、西日本を中心に毎年ブタは日本脳炎ウイルスの感染を受けているというこ とがわかります。 (PP)  これは昨年のグラフですけれども、実はこの調査は毎月3回やっておりますので、毎週 毎週速報としてホームページに公開しています。ですから、この間にはあと3回ぐらい日 本地図があるわけですけれども、それを時期を追って見ていきます。この事業は6月、7 月から始まります。だんだん調査が行われていくわけですけれども、昨年は比較的陽性に なる時期が遅いと話していた年でした。8月の初めになって四国・中国地方、近畿地方、 九州地方で陽性のブタが出始め、9月になって10月、11月、12月、最終的にはこれぐら いの割合で8割以上のブタが日本脳炎ウイルスの感染を受けているというのが去年の結果 でした。  ですので、毎年6月、7月ぐらいから感染を受け始め、その後西日本を中心に増えてい くという状況です。  では、今年はどうかといいますと、今年は抗体保有率が8割を超える県の出現が非常に 早く、既に7月11日現在で長崎県は8割以上のブタが抗体を保有しているという状況でし た。この30年間の結果からも見ますと、今年は何となく早いという印象を持っております。 これが直近のデータでこのような状況となっております。 (PP)  そこで、日本脳炎ワクチンの接種スケジュールは先ほどからお話がありましたように、 積極的勧奨の差し控えが行われまして、もともとは3歳で2回、4歳で1回、おおむね9 〜12歳で1回、そして、14〜15歳で1回という5回が定期の予防接種のスケジュールだっ たわけですけれども、2005年5月30日の積極的勧奨の差し控えの2か月後、第3期、中 学校の2年生、3年生年代の定期の予防接種が中止となりまして、現在は4回が定期の予 防接種ということになっています。生後6か月から7歳半までは定期の予防接種の対象で すけれども、標準的な接種年齢は3歳で2回、4歳で1回。第2期としては、9〜12歳が 定期の予防接種対象年齢ですが、標準的には9歳で接種が行われる、そういうスケジュー ルになっています。 (PP)  そこで、大きく変わった部分があるんですが、その前に日本脳炎ワクチンとADEMにつ いて、宮崎先生が中心になって岡部班の研究班で実施された研究について少し御紹介した いと思います。  2005年の積極的勧奨を受けまして、平成15〜16年全国調査、小児の入院施設を有する 小児医療機関に調査をしたものです。回収率が60.2%、ADEMと報告された15歳以下の 患者さんは101名報告がありました。101名の患者さんのうち、発症1か月以前にワクチ ン接種歴があった方が約15名でした。ワクチン接種歴があったという人のうち、日本脳炎 ワクチンを接種したという方は4名、25%という結果でした。  因果関係は明らかにはされていないもう一つの報告がありまして、予防接種後副反応報 告書というのがあります。予防接種法に基づいて報告基準が決められていて、それを満た された場合は報告が主治医あるいは保護者から上がってくるわけですけれども、平成6〜 18年度までの十数年間にADEMとして厚生労働省に報告されたのは21件、年齢分布は第 1期の接種年齢である3〜7歳が14件、2期の10歳が1件、3期の14〜15歳が6件とい う報告状況です。しかし、この報告はワクチンと副反応について因果関係の証明あるいは そういった検討は一切行われておりませんので、報告の数だけということになります。  次に、健康被害認定患者、先ほどお話があった重症のADEMの患者さんが報告されたと いうことから、積極的勧奨の差し控えが行われているわけですけれども、平成元年から平 成19年3月までに16件の認定があり、年齢分布は3〜7歳の1期で10件、14〜15歳の 3期で6件という報告でした。  なお、定期の予防接種を受けた人数は1期、2期、3期で大きく異なっておりまして、 初回接種の3〜4歳のところは年間約280万人、2期は年間約80万人、3期は年間約60 万人で、3期については接種率がほぼ半分ぐらいしかないのではないかと言われておりま す。 (PP)  ADEM(急性散在性脳脊髄炎)は、調査が宮崎先生の研究班で行われたわけですけれど も、15歳以下のADEM及びその周辺疾患、多発性硬化症の患者さんを除いていますが、 発生頻度は年間約60例程度で、15歳以下の小児人口10万人当たり年間0.32であると推 計されています。平成17年度の報告によりますと、ADEMの発症の平均年齢は6歳11か 月でした。  また、宮崎先生らが行われている小児急性神経系疾患(AND)調査では、国内約10地 域59例のADEMの患者さんの報告があり、やはり発症のピークは6歳前後である、全治 が19%、軽快66%、死亡例はなかったという報告があります。 (PP)  2005年5月30日の積極的勧奨の差し控えにより、予防接種率がどう変化したかという ことをグラフ化したものです。このグラフは、濃い赤がワクチンを1期3回以上受けた方、 橙色が1期2回、黄色が回数がわからない方、青が1期3回は受けていないんだけれども 2期を受けた方、水色が1期3回2期以上受けた方、緑が接種回数が不明だけれども受け たという方、グレーが受けたことがないという方です。しかし、勧奨の差し控え前にこの グラフを同じように書くと、3歳で大体6割程度、4歳で7割ぐらいの方が受けていたん ですが、3歳、4歳の接種率が減っているのがわかります。 (PP)  しかし、接種歴不明者というのがおります。2007年度の調査はちょうど今ぐらいに行わ れています。2008年度が7〜9月くらいに行われています。このグラフで見ていただきま すと、白が接種歴が書いていないか接種歴不明という方です。グレーが接種を受けたこと がないという方。緑は接種は受けたんだけれども、回数がわからないという方。赤が接種 を受けて1期3回は受けていないという方。橙色が1期3回はしっかり受けたという方。 黄色は1期は受けたんだけれども、回数が記載されていなかった方。青は1期3回は受け ていないけれども2期、9歳ぐらいで受けた方。そして、水色が1期3回と2期としっか り受けた方というふうにグラフ化してみますと、やはり3歳と4歳のところ、もともと6 〜7割受けていたところが積極的勧奨の差し控えで1割程度の接種率になっているのでは ないかということが推計されます。 (PP)  そこで、同時に感染症流行予測調査事業では、この対象者を対象に採血をさせていただ きまして、日本脳炎に対する中和抗体を持っているか持っていないかが調査されています。 中和抗体1:10以上を赤、それぞれだんだん高くなっていくにつれて色を変えています。 先ほど予防接種率は3歳、4歳で1割台の接種率だったと申し上げましたけれども、中和 抗体の保有率で見ましても1割台、20%弱の保有率で、5歳でやっと4割、6歳になって、 これはもともと定期の予防接種を受けていらっしゃった年代だと思いますが、7、8割。 2期のワクチンを受けたところ、3期のワクチンを受けたところという形で上がっていま す。毎年そうなんですけれども、40代を底にして、年齢があがると抗体保有率が上がると いうグラフを描いています。 (PP)  過去1990〜2007年のうち、調査が行われた年の8回分をグラフ化したものです。1: 10以上の中和抗体を持っていた方のグラフを、それぞれ色別で見ていますが、このグラフ はちょっとわかりにくいのですけれども見ていただきたいのはこの部分です。積極的勧奨 差し控えは2005年ですので、黄色と赤はその後、それ以外は定期の予防接種が行われてい た時期とごらんいただければと思います。定期の予防接種は今も行われているわけですけ れども、勧奨が差し控えられていない場合は、3歳ぐらいから皆さん接種を始めますので、 このぐらいだったのが、ここがぐっと減りまして2006年については3歳と4歳、2007年 については5歳ももともと8割ぐらいの抗体保有率だったのが4割ぐらいになっている。 6歳以上になると例年とそんなに変わらない。この辺が落ち込んでいるのは最近の特徴で、 特に変わりはありません。一番変わっているのでこの部分ということになります。 (PP)  まとめですが、日本脳炎ワクチン接種の現況について現在の状況としては、昨年Q&A に書きました内容のまま現在も継続しています。ブタの抗体保有率が常に高い九州、中国、 四国地方に住んでいらっしゃる方、あるいは近年、日本脳炎患者さんの発生が多く認めら れた地域に住んでいらっしゃる方であって、日本脳炎ワクチンを1回も受けていない現在 3〜5歳のお子さんは、ワクチンの流通量も考慮した上で、夏になる前に少なくとも2回 の基礎免疫は接種した方がよいというQ&Aを出しております。  この年齢に対して接種を行う場合は、定期の予防接種の扱いで費用の補助ですとか、万 一の健康被害の際の救済等は定期接種として実施されているところです。 (PP)  これは徳島県の新聞に載っていたのを山田補佐からいただきましたが、四国地方であっ ても日本脳炎の予防接種を受ける人が激減しているということ、保護者の戸惑いの声が上 がっているということが新聞に掲載されています。今年5月27日の新聞です。 (PP)  まとめですけれども、日本脳炎ウイルスに感染した後、皆さんが発病するわけではなく、 研究によって差があるようなので100〜1,000人に1人と非常に大ざっぱな数字になってい ます。しかし、一旦脳炎を起こしますと致死率は20〜40%前後と非常に高くて、回復して も半数程度の方は重度の後遺症が残ります。  我が国の日本脳炎の患者さんの発生状況は、ワクチンの接種状況、そして、ワクチンの 接種の推進、媒介蚊に刺される機会の減少、生活環境の変化などによってその数は著しく 減少して、近年では年間数名程度の発生にとどまっています。年齢分布も年少児と中高年 を中心とした発生から、中高年を中心とした分布に変化してきています。 (PP)  ブタは生後6〜8か月でと場に運ばれてくるということから、その地域に日本脳炎ウイ ルスがいるかどうかということのサーベイランスにこの事業として行われているわけです けれども、ブタの感染状況は西日本を中心に毎年広い地域で抗体陽性のブタが確認されて おり、つまり、まだ国内には西日本を中心に日本脳炎ウイルスに感染しているブタが多数 存在しているということになります。しかし、近年、ブタとヒトの住んでいるところが離 れているとか、いろいろな環境の変化が起こっているということはあります。  ブタが日本脳炎ウイルスの感染を受け始める時期は6〜7月ごろに九州、中国、四国地 方から始まり、8〜9月かけてその地域が広がっていっています。 (PP)  次に、ヒトの抗体保有状況のまとめですけれども、重症のADEMの患者さんが発生した ことに伴い、2005年5月30日に積極的勧奨の差し控えが行われていますが、3〜4歳の 接種率が激減しています。というのも、3〜4歳から通常接種を始める年齢だということ です。その結果、2006年度の調査からヒトの日本脳炎に対する中和抗体の保有状況は、3 〜4歳群でこれまでになく低い割合になり、2007年度の調査では3〜5歳群でこれまでに ない低い割合となっています。  以上です。ありがとうございました。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。多屋先生に対する御質問・御討論は後ほど させていただきます。  続きまして、3番目の議題でございます日本脳炎ウイルスの活動と患者発生につきまし て、同じく感染研の高崎先生、お願いいたします。 ○高崎参考人 おはようございます。感染研のウイルス第一部の高崎です。  疫学的なことはかなり多屋先生から発表いただいたので、その間を埋めるような内容を 御報告したいと思います。 (PP)  日本脳炎ウイルスというのは、確実に日本の国内で毎年夏季に活動しているということ なんですけれども、患者の発生時期とその年の気象条件というのを少し見てみたいと思い ます。その指標になるのは、実はブタの抗体価の陽性率というところなんですけれども、 ブタの抗体価が大体5割以上が陽性になるという検査日と気候との関係、平均気温とか最 高気温、降水量とかを見てみますと、大体採血をして検査をする日からさかのぼりますと、 相関係数が徐々に上がってきます。20日ぐらいになると0.44と有意に近づいてきまして、 30日前になりますと0.6ということで、平均気温が高くなって30日後のブタの抗体陽性率 というのが有意に上がってくるということが熊本県のデータでわかってきます。 (PP)  熊本だけではいけないということで、一応ほかの県を選んでみますと、熊本、高知、福 岡、千葉と同じような傾向を平均気温との間で示してきます。島根はちょっと相関が弱い というような状況です。 (PP)  最高気温と比較しても、同じように島根だけちょっと弱いんですけれども、大体20日ぐ らいから相関が強くなり出して、30日前になると非常に相関が出てくるということがわ かってきます。  これを降水量でやりますと、ほとんどギザギザになってしまって相関は出てこないとい う状況で、雨というのはどんと降るような雨もあります、それから、小雨で2〜3日続く ような雨もあるということで、なかなか相関は出てこないという状況です。 (PP)  つまり、こういうブタの日本脳炎抗体の上昇率というのは、恐らくその年の気象、特に 気温と関係があるということで、どうしても梅雨の間はそれほど気温は上がらない。今年 の梅雨明けの時期をずっと見ますと、関東地方が19日に明けましたけれども、一昨年の梅 雨明けは7月31日、去年は8月1日と非常に遅い梅雨明けだったんですね。見てもらうと わかりますように、昨年と比べますと九州は大体17日早くて、四国は19日早い梅雨明け だったと。中国地方は軒並み全部今年の方が早い梅雨明けであると。去年なども非常に暑 い夏というイメージを皆さんお持ちだと思うんですけれども、どこかで40.1度というよう な最高気温も記録した年ですが、梅雨明けは非常に遅かった。つまり、夏の始まりが遅かっ たという状況が見てとれるというのが、気候からの関係なんですね。 (PP)  2002年からずっと見ましても、2002年は結構患者が出た年なんですけれども、平年並み ぐらいですが、2006年、2007年というのは梅雨明けが非常に遅かった。7月下旬に全国的 にずれ込んでいるということで、そこから急激に暑くはなったんですが、夏の始まりが遅 かった。 (PP)  日本脳炎ウイルスの活動と気象条件を見ますと、コガタアカイエカの活動というのは沖 縄県を除く西日本では、大体5〜11月ごろまでなんですけれども、感染価が成立してブタ の抗体が上昇してくるというのは、5月よりも後ろにずれ込んでくると。非常にばっと感 染した日本脳炎ウイルスの活動が盛んになるのは、暑くなって3週間ぐらい以降というこ となんですね。ウイルスの活動は夏の気候と特に正の相関を示すのは最高気温とか平均気 温、それ以外に真夏日の日数なども正の相関を示します。しかし、降水量というのは相関 しません。 (PP)  去年も一昨年も、夏の終わりというか秋には後ろの方にずれ込むというパターンなんで すけれども、今年の夏がどうなるか長期予報を見ると、今年の夏も相変わらず残暑が厳し いということになっていますので、今年の夏は長い夏であると。つまり、暑い夏プラス夏 の期間、それは非常に日本脳炎のリスクと関係してくるということが想像されます。  今後、夏が短くなるというような中期的なスパンで見て、そういうことは余り考えにく いということを考えますと、その年、その年によっていろいろな気象条件の違いは出てく るんですけれども、少し長いスパンで見ると、日本脳炎ウイルスの活動、アクティビティ は下がるとは考えない方がいいだろうということですね。  去年と一昨年を見てみますと、一昨年も遅かったんですけれども、しかし、高知は比較 的早くて8月14日に発病された方がいらっしゃった。40代ですね。熊本が3例続いて、い ずれも9月に入ってから、ここに3歳の男児がいますけれども、この子どもさんは主治医 が頭部を冷やしたりとか、いろいろな工夫をしたんでしょうけれども、幸い後遺症なく、 1年後の時点では全く回復しているという状況です。この年、熊本が3名、福岡2名、島 根、全部9月発病ということで非常に後ろにずれ込んできつつあると。茨城で8月5日と いうのがありますが、本当に茨城で感染したかどうかというのは少し疑問もあるんですけ れども。  2007年を見ますと、やはり熊本で出たのが8月30日。つまり、梅雨が明けたのが7月 下旬とすると、それから1か月以上経っている。福岡も8月下旬だと。つまり、どんどん 後ろにずれ込んでいる。石川県は10月、山口県も10月、大分県も9月上旬ですけれども、 島根県、愛知県、鳥取県が10月発病と。夏の始まりが遅くて、秋が来るのが遅いというこ とになると、患者の発生も後ろにずれ込んできているということになります。  高齢者というのですけれども、先ほどの多屋先生のグラフを見ていただくとわかると思 うんですが、45〜50歳を底にして抗体保有率が低い年代があります。ここでも患者の発生 は40歳代で、この方は亡くなられていると。鳥取県でも40歳代。ほか、50歳代といって も前半の方だと思いますけれども、ここでも40歳代であると。つまり、高齢者とひとくく りにすると、40歳が高齢者かどうかというのはなかなか難しいところがあると思うんです けれども、必ずしも高齢者とひとくくりにするのは余りしない方がいいような状況ではあ ります。やはり抗体保有率が低い年齢層というのは、それなりに外で出る機会があると日 本脳炎に感染しているんだということが、この年代を見てもらうとわかっていただけるの ではないかと思います。  昨年発病の9名の日本脳炎患者のうち、やはり2名死亡されていると。80歳代と40歳代 の方ですね。 (PP)  2005年はそれほど梅雨明けが遅くなかったので、比較的早く8月1日とか18日に三重 県、佐賀県で患者さんが出ているというような状況です。 (PP)  一つ日本脳炎のウイルスというのは、遺伝子型があるんですけれども、もともとあった 遺伝子型3型から1型に1990年の初めにシフトしたということがあります。これがいろい ろな遺伝子解析などからの情報を集めてみますと、日本の中で変わったのではない。どう やら、やはり東南アジア辺りから日本脳炎ウイルスが、恐らく鳥によるとか、ジェットス トリームに乗るんだというような説を言われる方もいらっしゃいますけれども、何らかの 理由で東南アジアから日本にやってきたと。こういう現象が毎年毎年起こっているかどう かはわからない。もし、来ていても定着するかどうかはわからないというのですけれども、 ある年にそういう現象が起きるだろうと考えられます。  実は、我々はウイルスをブタから分離したり、蚊から分離したり感染研でやっておりま すけれども、2002年ぐらいから始めて一昨年までの分離株というのは、系統樹を書くのに アミノ酸配列では書けないような一致率、極めて近いウイルスがとれてきていました。と ころが去年、蚊からとれたウイルスというのはアミノ酸に変異があって、これが遺伝子型 1なんですけれども、アミノ酸で系統樹が書けたということで、それを探っていきますと、 一昨年ぐらいにとれたベトナム株とシークエンスが一致するということで、今回変わった 分もベトナムからやってきたという可能性もあります。日本脳炎というのは、そういうふ うに国内だけで流行しているのではなく、ウイルスが東南アジア方面から運ばれてくると いうこともありますよということです。 (PP)  これは去年亡くなられた41歳女性の患者さんの症例をお借りしてきました。主訴が頭痛 と嘔吐で、9月下旬に髄膜炎症状が出てきたということで、髄液検査で多核球優位の上昇 が見られて、細菌性あるいはウイルス性の髄膜炎の疑いで入院したということなんですね。  これは資料に入れていないんですけれども見ていただきますと、発病後1日目の髄液検 査で多核球64、単核球19、たんぱく79、糖が84。血液検査でも1万を超す白血球である ということで、これを見ますと、お医者さんはどちらかというと細菌性の方を優位に考え います。でも、ウイルスの可能性もあるからヘルペスだけ検査しておきましょうかという ことで、ヘルペスは提出されるでしょうけれども、恐らく日本脳炎はなかなか頭に上がっ てこないであろうということで、実はこれと同じような症例が2005年の岡山でもあります。 過去の文献を探しますと、ヒライシ先生とかキタオカ先生がそういうことが結構あります よということを既に日本脳炎の論文で書いておられるということで、こういう所見を見る と、日本脳炎が埋もれてしまうということが考えられます。 (PP)  入院後、この方は第4病日に人工呼吸管理になって、ステロイドパルス療法もしたんで すけれども、13日目に心停止で死亡されたということで、剖検されたということです。 (PP)  この方の剖検材料は既に固定されていたんですけれども、髄液をいただいて剖検材料か らも遺伝子検出をやってみますと、実は遺伝子型1型で、愛知の株なんですけれども、三 重県のブタからとったMie41とか、静岡県のブタから分離したShizuoka39というジェノ タイプ1型のウイルスと非常に近縁であると。つまり、愛知県はブタの調査をやっていな いのでとれていないんですが、近くの県のウイルスと類似のウイルスによってどうも日本 脳炎が起こったんだということがわかっていただけると思います。 (PP)  我が国の日本脳炎ウイルス遺伝子は1型に変わっているんですけれども、やはり脳炎で 死亡されるということです。ベトナムや中国でも日本脳炎1型の流行が起きますけれども、 ちゃんと脳炎患者が発生して死亡例が結構あるということで、日本脳炎ウイルスというの は、遺伝子型で病原性の強弱を論じない方がいいだろうということです。  もう一つは、蚊の方の専門家からの情報なんですけれども、コガタアカイエカも田んぼ で発生するというのが一般的に常識になっているんですが、2年ぐらい前から東京都内、 都心部、山手線の内側でもコガタアカイエカが突然とれると。それもどうも、どこかから 飛んでくるのではなしに、産卵しているんだということが言われていて、どこなのがブリー リングサイトはまだ突きとめていないんですけれども、コガタアカイエカそのものも田ん ぼ以外のブリーティングサイトを見つけて環境に適応していこうとするという可能性もあ るということです。  日本脳炎というのは、依然として日本の国内でそれなりに活発に活動していますよとい うことがわかっていただけるかと思います。夏の気象条件によるんですけれども、やはり 暑くて、長い夏になってきますと、日本脳炎の患者が発生するリスクは高まってくるだろ うということが考えられます。  以上です。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。  多屋先生と高崎先生に感染研からのデータと、高崎先生には生のデータを出していただ きましたが、御専門でございます参考人であられる倉根先生から、補足事項その他がござ いましたら御発言いただきたいと思います。 ○倉根参考人 わかりました。  スライド等はないのですけれども、座長の御指名でございますので。大きく分けまして 3つお話ししたいと思います。1つは、ウイルスの活動の件。実際にはウイルスの活動と 言うのは変で、ウイルス感染価の活動。それから、病気そのものの変化があるのではない か。それから、今、高崎室長もおっしゃっていましたが、感染価の変化。  まず、ウイルスの活動あるいはウイルス感染価の活動として、一体我々がどの程度刺さ れて、感染しているのかということです。実際にウイルスが体に入ることは感染とは言っ ておりませんで、入ってそれが増えて初めて感染と考えております。そうしますと、これ は幾つかのスタディがあるんですが、おおむね毎年数パーセントの人、これはどこの場所 によるかでもかなり違うと思いますけれども、恐らく数パーセントの人は自然に感染して いる。これは抗体の上昇で示していますので、もっと厳密に言えば、感染してウイルスが ヒトの免疫応答を十分に惹起する程度まで増えたというのが数パーセント。だから、ひょっ としたら増えていても免疫応答が十分に出ない、あるいはディテクトできない程度の免疫 応答しか誘導していないということもあり得るので、それは除いていますし、先ほども言 いましたが、体にウイルスが入っただけで増えなかったという人は、実際には数はわかり ませんがかなりいるはずですので、それは除いています。  それから、馬は病気になりますが、馬で何パーセントかというと、これもやはり数パー セントは毎年感染して抗体が上がる。つまり、馬にも感染して抗体が上がる程度までウイ ルスが増えているということですので、依然としてヒトは毎年数パーセント、だから、我々 も毎年自然のブーストを受けているということになります。  馬は、かなり我々から離れたところで放牧していますので、もっと近いところの動物は どうかというと、イヌは抗体を見ますと、ちょっと細かい数字は忘れたんですが、恐らく 20%前後は陽性であると。病気にはなりませんけれども。  外で飼っている犬と、家の中で飼っている犬もかなりいるでしょうが、そうすると、外 で飼っている犬の方が抗体の陽性率は高いんです。でも、家の中で飼っている犬も抗体陽 性はある。当然ですが、ワクチンは打っていませんので、家の中で飼ったとしても、家の 中に蚊が入ってきて刺されているのか、時々散歩に出したときに刺されているのか知りま せんが、非常に近い動物にも感染がいっているということからすると、我々の近くには感 染蚊がいるということになります。  もっと直接的に何パーセントのコガタアカイエカは日本脳炎ウイルスを持っているか。 これもどこでつかまえるか、いつつかまえるかによって違うんですけれども、うちの昆虫 医科学部のコバヤシ部長のデータだと、1,000匹つかまえるとマックスで30匹くらい持っ ていると考えた方がいい。つまり、1匹ずつチェックするのはなかなか難しいので、グルー プとしてやって算数で処理するわけですけれども、ある農場で1,000匹中30匹ぐらいつか まえることもあると。勿論もっと低い値のときもあります。それはどの時期に、どこでつ かまえるかですが、彼らのデータですとマックスで見るとそういうことがある。  昔はどうだったかというと、これも同じところで測っているわけではないですから難し いんですが、恐らく30年前ぐらいのデータをリタイアした先生に思い出していただくと、 恐らく70〜80匹だったと。つまり、この2倍の差はどういう意味があるか私はわかりませ んが、余り意味がないと実は思っています。つまり1,000匹のうち30匹なり40匹は持っ ているという状況はあり得るということです。  では、幾らパーセントが多くなっても、蚊自体がすごく少なくなったら余り関係はない だろうという話になるんですが、これもなかなか難しいのですが、コバヤシ部長にいつも 聞くと、日本全国で平均してみればコガタアカイエカは減っていると考えざるを得ない。 しかし、局所、ある居場所では昔と同じぐらいとれるところは幾らでもありますというこ とです。だから、統計として考えればコガタアカイエカは減っていると考えてもいいけれ ども、局所的には全く減っていないというところは幾らでもありますということです。  こういうことから見ると、昔よりはひょっとしたらエクスポーズは少ないのかもしれま せん、依然としてかなりの率でエクスポーズされていると考えた方がよろしいというのが 一つあります。  それから、病気の変化と申しますのは、恐らく無菌性髄膜炎だと感染症の専門家の先生 は日本脳炎を考えるかもしれませんが、恐らく多くの先生は日本脳炎は考えないと。だか ら、検査は出しませんという先生が多いと思いますが、無菌性髄膜炎の原因である糖を全 部はじいて、何か原因がわからなかったという髄液の中に日本脳炎ウイルスの遺伝子が見 つかった。ただ、それは広島県のクワヤマ先生が論文にもされていますし、その後いろい ろな先生から、そのためにとってやったものではないんですけれども、いただいてやりま すと、やはり日本脳炎ウイルスの遺伝子が見つかる。なかなかウイルス分離まではいかな いので、遺伝子の切れっ端が見つかったものは、これは日本脳炎かと言われるとちょっと つらいことはあるんですが、そういう現状があるから、かなり姿を変えた形で、あるいは 見逃された形で、脳炎なら調べるでしょうが、ないので調べる可能性があるということ。  それから、3番目の感染価の変化というのは2つあります。1つは、高崎室長が論文に していますけれども、ある県ではブタ小屋が近くにないのに患者が出るということがあり ます。そうすると、教科書に載っているコガタアカイエカ−ブタ−コガタアカイエカのサ イクル以外にあるのではないかと。勿論、蚊が飛ばされてくるということはあるでしょう が、豚舎は物すごく離れている、豚舎なんてないというところ。高崎室長がイノシシを、 なぜかというと、西日本ではかなりイノシシが人家の近くまで下りてきているということ がありますので、大体6割のイノシシは抗体を持っているということです。それからIgM 陽性が1例、つまり非常に近く感染したと思われるイノシシが1頭いたということがあり ます。ただ、これもウイルスをイノシシからとっておりませんし、イノシシを使ってウイ ルス血症がどこまでいくのか、ブタと同じに増えるかということはなかなか難しいので、 今このデータを持って、蚊−イノシシ−蚊というサイクルが成立していると言う気はあり ませんが、一つの可能性としてブタの役割をイノシシが果たしている可能性もないではな いかなというのが1つ。  もう一つは、日本ではこれまでブタ−コガタアカイエカ−ブタというサイクルが教科書 にも載っておりますし、それは間違いないと思います。しかし、2000年に入りまして南西 諸島でキューレックス・ビシュヌーイという、これは日本名がないのだそうですが、東南 アジアでやはり日本脳炎の媒介蚊であるビシュヌーイというのが侵入しているというのが ありまして、これも土着するかどうかわかりませんが、いわゆるコガタアカイエカ以外に 新たなベクターが日本の領土に侵入しているということです。ですから、これがまたすぐ 九州、四国でベクターになるとは言いませんが、これが徐々に上がってくると、もう一個 ベクターが増えてしまうというようなことになり得るのではないかという予想もなされる ということです。  この3つの活動が、今、多屋先生、それから、高崎室長が触れなかった点でございます。 ○加藤座長 倉根先生、どうもありがとうございました。また後ほど御質問・御討論ござ いましたら、よろしくお願いいたします。  続きまして、4番目の議題でございます日本脳炎ワクチンにつきまして、同じく参考人 でお願いいたしてございます阪大微生物病研究会の上田理事にお話を伺います。よろしく お願いいたします。 ○上田参考人 阪大微生物病研究会の上田でございます。よろしくお願いします。日本脳 炎ワクチンについて御説明させていただきます。  今までの御説明の中で、いろいろありましたので重複しますところは補足的にお話をさ せていただきます。 (PP)  現行のマウス脳でつくりましたワクチンの販売数量でございますけれども、2005年を境 にいたしまして、どんと減っております。先ほど三宅さんの御説明の中にもデータがござ いましたが、平成19年は54万本が使われたらしいというところでございます。 (PP)  現行ワクチンの供給計画でございますが、先ほどのデータとこのデータは細菌製剤協会 の方でまとめていただいた数字でございますが、今年は0.5mL換算で100万本を供給する 計画でございます。  そうしますと、原液の在庫が日本のすべてのメーカーを合算いたしまして70万本分しか ございませんので、本年100万本を出荷いたしますと、来年は70万本、これでしまいにな るという状況でございます。 (PP)  ここからは私どもの現状でございますが、細胞培養日本脳炎ワクチン、2005年の通知が 出ました。翌月に最初の臨床試験の成績を申請いたしました。先ほどからも御説明がござ いましたが、現行のマウス由来のワクチンに比べまして、局所の副反応、発赤、腫脹、発 熱の発現頻度が高かったということでございます。しかし、抗体価の反応は非常によかっ たわけで、そういうことから、抗原量が多くて副反応が強かったのではないかと。副反応 が強いということは、重篤な副反応の発現が懸念されるということから、抗原量を3段階 で変量いたしまして、追加の臨床試験を行うことになりました。 (PP)  その抗原量でございますが、最初の治験に使いました抗原量、ミリリットル当たり10μg の抗原量でございますが、3歳以上の方は0.5mL打ちますので、抗原量としては1回の接 種量が5μgになります。これをスタンダードにいたしまして、そこから2分の1、4分の 1という抗原量の治験薬を製造いたしまして、1群120例、合計360例を目標に追加の臨 床試験を始めました。  現在、成績の解析中でございますが、大ざっぱなところでは抗体上昇率あるいは抗体価 と副反応の発現頻度の間には、ドーズレスポンス、用量依存性が見られるようでございま すので、どこかでうまく引っかかってくれればありがたいなと期待しているところでござ います。 (PP)  この治験は本年3月上旬に終了いたしまして、この成績は来月末をめどに提出するべく 現在努力をしているところでございます。もし、承認がいただけるようでございましたら、 供給開始はその後速やかにいたしたいということで、できれば来年の4月ごろを計画して 準備を進めております。 (PP)  ただ、非常に時間的にはタイトな仕事になりますので、検定の問題とかあるいは生物学 的製剤基準の整備とかいろいろございますが、そのほかにもADEMが問題になっておりま したので、定期の予防接種の対象のワクチンにこれが採用されるかどうか、あるいはもし 採用されるとなりましたら、その時期はいつごろか。あるいは、接種勧奨の再開というこ とになりますと、一挙にどっと使われる可能性がございますので、そのためにはどういう データが今後必要になるかとか、いろいろ問題を抱えております。  以上でございます。 ○加藤座長 上田先生、どうもありがとうございました。  以上で、参考人の委員からの御発表を終了させていただきまして、ディスカッションに 入らせていただきますが、その前に座長から1点だけ確認させていただきたいと存じます ので、その後で議論に入らせていただきたいと思います。  別添資料1の1ページにございますが、先ほど来話題になっております平成17年5月30 日の課長勧告が、接種勧奨の差し控えということの理由になったところは、いわゆる日本 脳炎ワクチンを接種したことにより重症ADEMが起きたということは、因果関係を肯定す る根拠があるということが理由で、現在に至っているということでございます。そして今、 上田理事から御発表がありました開発中である組織培養法によるワクチンが供給が可能に なる体制ができたときに応じて、勧奨化を再開する予定であるという勧告がなされている ところでございますので、この辺のところを少し判明はしにくいと思いますけれども、御 意見を伺っておいてから議論させていただきます。  新しくできます組織培養によってつくられるワクチンは、果たして重症ADEMを起こす 可能性はないのかどうかということについて、わかっている範囲で結構でございますので、 阪大微研会の方から一言何かコメントがございましたら、お願いいたします。 ○上田参考人 マウスの脳を使っておりませんので、細胞培養ワクチンはアフリカミドリ ザルの腎臓由来の細胞でございますので、少なくとも理論的には脳物質の混入というのは 避けられるわけでございます。  もう一つ、日本脳炎ウイルスは膜を持ったウイルスでございます。こういった膜を持っ たウイルスは、ウイルスが増殖するときにホストの膜をかぶって出てまいりますから、そ こに混在してくるんですね。ガングリオシッドといったような特異的な物質の持ち込みも なくなるということでございますから、その点では脳に関係します副反応というのは減る だろうとは考えられます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  それでは、臨床側の方から、今、上田理事から御説明になっております、新しくできる であろうと思われるワクチンでADEMが出るか出ないかということは、非常に難しいかと 思いますが、ずっと研究されている宮崎委員、何かコメントがございましたらお願いでき ますか。 ○宮崎委員 とても難しい質問ですけれども、ADEMの調査をやらせていただいて、ADEM というのは急性脳炎・脳症と違って、少し高いところに好発年齢層があって、多くのADEM はやはり先行感染があり、その原因も極めて多岐にわたるんですね。また非常にたくさん のウイルスや細菌がADEMの原因になる。  それから、1か月以内にワクチンを打っていたケースも時々ありますけれども、これも ポリオであったり風しんであったり、インフルエンザであったり、日脳であったりという ことで、必ずしも日脳脳炎ワクチンに限らないところがありますので、そういうバックグ ラウンドを持っているADEMであるということと。それから、現行ワクチンもかなり改良 を重ねられて、完成品に近かったというようなところも含めて考えますと、今後新しく出 てくる組織培養ワクチンでも、脳の混入はないけれども、理論的にゼロと言うわけにはい かないだろうと思っています。やはり、ADEMの原因である先行感染ないしは何らかのワ クチンという中で考えれば、たくさん接種を受ければ、まぎれ込みも含めて一定頻度は出 る可能性もあるのではないかと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。それを確認させていただいた上で、今日お話しい ただきました参考人の先生方の御発表を聞いた上で、検討会の委員の方々の相互間での御 意見または質問、ディスカッションをお願いいたします。御意見のある委員、どうぞ。 ○岡部委員 この委員会でもあるいはほかの関連の委員会あるいは議論のときによく出て いることなんですけれども、新しく出てくるワクチンは前の類似製品の安全性を上回るも のであるということが要求されているわけですが、もし、新しく出た日本脳炎ワクチンで 万が一ADEMが発生した場合に、非常に危険度が高くて、前の製品の安全性を下回るので はないかという議論になってしまうと、我が国では日本脳炎ワクチンというのはその後使 われなくなってしまう可能性があると思います。  宮崎先生のお話のように、ADEMは原因不明の疾患であるというところで、理論的リス クとして従来の日本脳炎ワクチンはその可能性を有していたわけですけれども、完全にそ こが証明されているところではない。しかし、疑わしいものはなるべく避けた方がいいと いうことで、世界的にも新しいものに変わっていると思うんです。したがって、改良は進 んだけれども、残念ながら偶発的かあるいはワクチンの持つ運命か、極めて稀なADEMが 発生する可能性はあると思いながらやっていかないと、1例出たことによって重大な判断 をするということは、そのときに当然議論になると思いますけれども、直ちにアクション が起きないようにしていただきたいとは思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。  今の御意見、そのほかのことでも結構でございますけれども、何か御意見・御質問がご ざいましたら委員の先生方、いかがでしょうか。 ○宮崎委員 まず、事務局にお聞きしたいんですけれども、平成17年、平成18年の都道 府県別の接種率は出ていますでしょうか。全国的にはかなりばらつきがあって、例えば、 昨年ですと50万ぐらい接種されているわけですけれども、多分地域的な偏りはかなりある と思うんです。  実は、福岡市では平成18年度が最低で、日本脳炎の1期接種が15%を切ってきたんです けれども、去年は38%ぐらいまで回復しているんですね。つまり、待ちに待っているとい う感じで、待ち切れなくなって、現行ワクチンを打ちたいという意見が強くなっているの で、ほかの地域はどうでしょうかと。毎年、都道府県別にきちんと接種率は上がっている はずなので。 ○山田課長補佐 我々のところにあるのは、トータルのものしか現在持っておりません。 ○宮崎委員 毎年、都道府県は全部数字を上げているので、ただ集計が遅れているだけだ と思いますので、それはきちんと出していただきたいと思います。今出ているのは平成17 年までかな、どうでしょうか。平成16年までは公表されていると思うんですが。 ○三宅課長補佐 統計情報部の方で正式な統計でとっているのは、どうしてもまだ今のと ころは2年ぐらい遅れてしまっているので、今手持ちでは済みません、御報告できるもの はございません。 ○宮崎委員 いつも言いますけれども、もう少し早くデータを出していただかないと、こ ういうアドホックな議論に追いつかないと思いますので、よろしくお願いします。 ○三宅課長補佐 ありがとうございます。 ○永井委員 今、宮崎委員がおっしゃられたことに関係することなんですけれども、実は この会議に出席するに当たって、23区の平成16〜19年までの対象者数と接種者数を提供 してもらいました。やはり平成18年はかなり落ち込んだんですが、平成19年になりまし てかなりまたそれが戻ってきているという、先生がおっしゃられたぐらいの、まだ細かく パーセントは計算していないんですが、平成19年になってかなり接種率がまた戻りつつあ る。それはやはり区民も接種の差し控えが3年に及んで、このままやらないでいいのか、 やはりワクチンがまだあるうちにやってしまった方がいいのかと、かなり迷い始めている ような状況もあると思います。 ○竹本委員 川崎市は、平成16年には初回2回が1万1,000人、1期追加で9,829人で88%、 1期が95%、1期の追加が88.5%。2期が7,700人で68.7%だったんですが、平成17年 になりまして1期の2回が2,144人、追加が2,930人、2期が1,570人で、大体5分の1 ぐらいに減ってしまいました。平成18年になりますと1期2回が417人、1期の追加が 525人、2期が120人というほとんどやっていないような状態になりましたが、平成19年 になりまして1期2回目が2,391人、1期追加が2,254人、2期が1,295人と、やはり待 ち切れなくなったのか、これではいけないんだという医師の自覚もあります。平成18年に なってからは、4倍か5倍くらいの人数がやるようになってきております。今年になって からも、私のところでも一日5〜6人は来るようになっていますし、非常にやりたいとい う人が多くなってきているのではないかと思います。 ○加藤座長 よろしいでしょうか。先ほどの平成17年5月30日に勧告が出て以来、各市 区町村ではこのワクチンは接種できないものという認識がありましたので、恐らく一時的 にゼロになったところがかなり出てきたと私も、昔講演に行ったときなど感じておりまし た。  別添資料2にありますのは、平成18年8月31日に、同じく課長からの通知が出ており ますが、あれは決して中止をしたものではなくて、先ほどもお話がありましたが、希望者 には予防接種法上でおやりになって結構ですよと、むしろ希望者に対してはやらなければ いけないんですよという通知が出ているということも事実で、これを元にして、地方によっ ては接種希望者が出てきたという状況であろうかと思います。私個人の感覚でものを申し 上げると宮崎先生に怒られますけれども、確かに今ワクチンはどうしても必要であるとい う、竹本先生が今お話になったとおり、いわゆる診療所の先生方からそういう御質問を非 常に受けるというのが現状ですし、そして、永井委員からもお話がありましたが、23区の 中でも非常に高いところと低いところとばらついておりますので、そういう状況で確かに 今になって接種を希望している方が増えていることは事実であろうかと思います。  ほかに何か御意見ございますか。 ○廣田委員 多屋先生に教えていただきたいんですけれども、先ほど接種勧奨差し控え前 後の抗体保有率が出ましたが、3〜5歳までの間でワクチン接種歴がない人だけの抗体保 有率というのは差は出ていますか。 ○多屋参考人 今日は資料の中に持ってきていないんですけれども、接種を受けていない 人の抗体保有率は地域によって随分違いまして、接種を受けていない人は、そんなに多い 人数ではないんですけれども、東北地方で調べられた方は誰も抗体を持っていませんでし た。一方、九州地方の調査県では未接種者の中に、高い抗体を保有している方がいらっしゃ るという現状で、地域差がございました。 ○廣田委員 地域差とは別に、接種勧奨差し控え前後ではどうでしょうか。例えば、同じ 九州でも前後で接種歴がない人の抗体保有率の変化。 ○多屋参考人 それについては今すぐに出せる数字がありません。 ○廣田委員 年代の差はもっと開いていいんですけれども、前後でとにかく接種歴がない 人ですね。 ○多屋参考人 それは調べてみます。20年前と現在と、その辺は検討してみます。 ○宮崎委員 今の点で追加します。日本脳炎ワクチンの組織培養ワクチンの治験が行われ、 そこでは極めて厳密に予防接種歴と抗体が測られていて、接種勧奨中止前のあるメーカー のデータで、400人に1人ぐらいしか3歳では抗体陽性ではないのです。微研が今回やられ ておりますので、接種前抗体を見ればその前後で変化があったかどうかはすぐわかると思 います。 ○加藤座長 私も、大学にいるときに実は最初の治験に参加してやらせていただきました が、最初の予想に反して接種前の方々が陰性だったということは、ちょっと意外だなとい う感覚がしましたが、その件に関してどなたか御意見をいただきたいのですが、3歳、4 歳レベルでは不顕性感染は起きないと考えるんですか。どういうふうに考えていらっしゃ いますか。 ○宮崎委員 私の考えでは、要するにコガタアカイエカは夕方から活動してくる蚊ですの で、かなり蚊がいる状況で、かつ夜間に活動しないと感染はなかなか受けないのだろうと 思います。ですから、3歳ぐらいの子どもたちは九州に住んでいても抗体陽性率は非常に 低い。逆に、先ほど倉根先生が飼い犬の話をされましたけれども、夜間外で飼いっ放しに すると、そこそこ受けていくということかなと。逆に言いますと、接種勧奨差し控えが長 引きますと、抗体を全く持っていない子どもたちが大きくなってきますので、少しリスク が上がっていくのではないかと思っています。 ○加藤座長 ありがとうございます。  ほかに御意見何かございますか。 ○高崎参考人 あと、コガタアカイエカというのは、ブタ小屋のような比較的屋根はある んだけれども、風が通るようなところを好みますので、空調がきいたしっかりした最近の 家だと、3歳ぐらいの子どもはずっと家の中で生活すればリスクは低いと思います。 ○岩本委員 多屋先生に質問なんですけれども、先ほどの40代で抗体の落ち込みがあって 40歳以降上がるというデータは再感染を示唆する可能性がありちょっとびっくりしたんで すが、これは地域差があるのかというのが一つ。  もう一点は、10倍以上の中和抗体価を持つ人たちの40歳代の落ち込みというのが、なぜ か2004年ぐらいからここ3年が非常に落ち込みが目立っていて、1990年代は余り落ち込 んでいないのは、必ずしも数年前に勧奨が差し止めになったということと余り関係がない ような気がするんですけれども、何かほかに原因があるのでしょうか。 ○多屋参考人 この現象は、情報センター内あるいは高崎先生、倉根先生たちとも御相談 しながら、明らかな理由というのは明確に出ていないんですけれども、毎年40代を底にそ の後上がるという傾向は続いています。  地域差についてはそんなに大きなものはなく、ほぼどの県でも同じような抗体保有率の 年齢分布を示しているのが多いと思います。先ほどお話ししたように、地域によって若干 抗体保有率の割合についてはちがっており西日本は多いですけれども、傾向はそんなに変 わらないというのが最近の特徴かと思います。 ○岩本委員 コガタアカイエカでは、日本脳炎ウイルスを持ったまま冬を越す個体がいる んですか。ウエストナイルウイルスなどだとそういうようなことを聞きますけれども。 ○倉根参考人 私の理解では越さないと思います。  それから、先生が今おっしゃった点ですが、40歳代といっても年代を見ていくと少しず つ右にずれていますので、ですから、これはその年代が持っていなくて、その年代は1歳 ずつ年をとりますから右にずれていると考えています。恐らく日本が生活がよくなって、 余り刺されなくなったところと、ワクチン接種の開始との狭間にある人たちで40歳代、50 歳代で、余り外に出ないで働き盛りの人がいるので余り抗体も増えないのかなと、これは 類推ですが、そのように私は考えていますけれども。 ○加藤座長 ほかにいかがでしょうか。何か御意見ございますか。 ○廣田委員 例えば、麻しんとか百日咳のときに接種率が下がると患者が幾何級数的に増 えるということは考えられますけれども、日本脳炎の場合は定説としてはヒト−ヒト感染 は否定されておりますので、幾何級数的に増えることはないだろうと思うんです。だから、 接種率が落ちた分だけ何倍か増えるということだろうと思うんです。だから、その辺を考 えると、時々疑問に思っているんですけれども、個人を守るための接種と考えれば、2類 疾病として考えることもあっていいんじゃないかと思っているわけですけれども、発言さ せていただきます。 ○加藤座長 ありがとうございます。  類型化につきましても恐らく厚労省もお考えになっていると思いますので、このシリー ズの中でまた検討させていただく項目に入ってくる可能性もございますので、そのときに また議論させていただくということでよろしゅうございますか。  ほかに御意見ございますか。 ○飯沼委員 日本医師会は現場の先生方が非常に多くて、常に私はしかられているわけで すけれども、一体いつから打てるんだという一番お聞きしたいことをお聞きしますが、今 年と来年で70万本と100万本を使うと……、反対ですか。 ○上田参考人 今年100万本で、来年70万本で日本中から原液がなくなります。 ○飯沼委員 それで終わりになるんですね、どこをたたいても出てこなくなるわけですね。 ということは、そこまでに何とかしていただかないと、また、おしかりを全国のお医者さ んから受けるということになりますが、子どもたちも大人も守るために絶対大丈夫だとい うアナウンスメントはしてもいいかどうかということを一番知りたいです。 ○加藤座長 どうもありがとうございました。皆さんは非常にお答えにくいと思います。 座長はもっと答えにくいわけでございますが、先生のおっしゃるとおりだと思います。そ こで、一番最初に私がまず問題提起をしたのは、ADEMに対することについていかがでしょ うかということをまずクリアーした上でお話をしていただきたいということで、冒頭御意 見をいただいたところでございますが、宮崎先生のお答えで勘弁していただくと。メーカー 側はそれはわからないということでよろしいかと思います。  逆に、阪大微研の方から出てきました試験の中で、局所の発赤、腫脹、発熱がちょっと 多いのでということは書かれてございますが、実地の先生方、小児科医会または医師会、 先生方または一般の方々、そのワクチンを接種した後でやはり発熱が出たり、発赤を起こ したりというのは大分気になることとお考えになりますか。御意見いかがでしょうか。 ○蒲生委員 読者からいろいろな御質問を受ける中に、どのワクチンでも同じですけれど も、ワクチンを打った後どのような反応が出るのかというのは、非常に多いです。後遺症 とか副作用という言い方を一般の方はされますが、ワクチンと因果関係がわからない場合 が多いんですけれども、ちょっと具合が悪くなっただけで、心配になるということは非常 に多いです。  ちょっと申し添えますと、各ワクチンについてどれを知りたいかという質問をしたとこ ろ、正確な数字は今覚えていないんですけれども、6割近い方が日本脳炎と答えていらっ しゃいます。その後、最近始まったMRと続いていくんですが、受けなくていいのか、自 分の子どもは大丈夫なのかという御質問をとても多く受けます。 ○岡部委員 日本脳炎のワクチンというと国内問題であって、我が国においては大変関心 のあるところにはなっているんですけれども、国際感染症学会であるとかあるいはWHO のEPIの会議に出ていると、日本が今後、日本脳炎ワクチンをどうするかということに ついては非常に関心を持たれて見ていることがわかります。中止に至った経緯と、新しい ワクチンをどうやって導入するかということ、もう一つは、日本が今までのマウスブレイ ンワクチンを事実上中止にした後、東南アジアの国々であるとか、あるいは米国で使って いるワクチンも涸渇したということがあります。したがって、ほかの国は開発を急いで早 く導入しようというような勢いがある中で、このままずっと停滞しているということは日 本にとっても非常に問題が多くなると思います。  それから、先々週のWHOの予防接種に関する会議の中で、今までEPIというのはジ フテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、BCG、結核、はしかプラスB型肝炎というのがあっ たんですけれども、特に東南アジア地域の国々が属しているWHOの西太平洋地域事務局 では、日本脳炎については第8番目のEPIとしての位置付けを非常に強く打ち出してき て、予算その他の問題はあるけれども、地域において、問題点のある疾患であるととらえ ています。そしてこれに対する対策に取り組むというような姿勢が新たに打ち出されてい るので、日本脳炎に対する対策は日本がもし停滞するとなると逆行になると思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。 ○岩本委員 個人的なことですけれども、今は関東に住んでいるんですが、今週外孫がで きて、昨日の夜、日本脳炎ワクチンを打つのかということを聞かれました。返事は家内に 伝えただけですけれども「慌てんとええんちゃう」と答えて参りました。今日さっそく日 本脳炎ワクチンの話だったので驚いています。例えば17万本しか在庫がないんだとか、日 本脳炎ワクチンの必要性だけが発表されると刺激だけして国の中でパニックを引き起こし かねないと思います。最近の疾患頻度などについても十分伝える必要があると思います。  もう一つは、ウイルスの名前を変えるのは大変なことだと思いますが、Japanese  encephalitisという名前がついていますが、国の半分ぐらいまでしかウイルスはいないわけ ですよね。例えば、オーストラリア抗原というのは、もうオーストラリア抗原と誰も呼び ませんし、その辺の問題を含めて、アジア地区で確かにフラビウイルスの中で日本脳炎ウ イルスが非常に大事なウイルスであることは否定しないんですけれども、さっきの廣田先 生の御意見を含めて、やはり冷静に考える必要があるんじゃないかと私も思います。 ○岡部委員 私は日本脳炎対策について、日本は十分に考えるべきだと申し上げておりま すし、誤解のないように申し添えさせていただきたいんですが、これを徹底的に、例えば、 はしかのように100%、95%以上ワクチン接種率を目指すといったようなものではない。 ただし、日本の公衆衛生対策上として日本脳炎のコントロールということは真剣に考えて 継続していくべきだということで、直ちに全員にやらないと危ないですよというような意 味ではなくて、長期的な意味合いです。ですから、廣田先生の提案もありますし、これは 今までの検討会でも予防接種の在り方で、果たして個人対策でいくのか、今までのような マスイムナイゼーションと言うとちょっと語弊がありますけれども、そういうものを目的 にするのとはちょっと違うだろうというニュアンスは私も同じように提案しておきたいと 思います。 ○倉根参考人 少なくともWHOから出ている日本脳炎に関する文書には、日本脳炎のリ スクがある地域に住んでいるすべての人は日本脳炎ワクチンを打つべきであるという文書 が載っています。勿論、それぞれの国で解釈は決めればいいのですが、今言ったように、 リスクがある国は日本とは逆行して日本脳炎のイミニュゼーションというのは非常に広く 行われているということです。  もう一つ、確かに感染して脳炎を発症する率というのは余り高くない、何と比べてと言 われると困りますが、100〜1,000人に1人としても、しかし、発症した場合の問題、つま り20〜30%の人が亡くなる。助かったとしても、更にその半分の人は神経あるいは精神の 後遺症を残すと。どこまでが完全かよくわかりませんが、完全に治る人が恐らく3分の1 とかそういうリスク。そういうことを考えると、これは個人のレベルでは0か1というこ とを考えなければならないのだろうと思います。勿論、廣田先生がおっしゃることも理解 はできますが、個人ということを考えれば、やはり非常につらい人生を歩む可能性も高い ということかと思います。 ○三宅課長補佐 先ほど全国一律にという話や、Q&Aでは感染研から西日本を中心に発 症者が出ているので、打つとしたらそういうことを考えてくださいみたいなことを言って いただいていると思うのですが、実際問題私どもの予防接種法におきましても第3条にお いて、都道府県知事や前項に規定する疾病のうち政令で定めるものについて、当該疾病の 発生状況などを勘案して、都道府県の区域のうち当該疾病にかかる予防接種を行う必要が ないと認められる区域を指定することができるという条項もございまして、現在日本脳炎 は全国一律ではやっておりませんが、北海道は今、日本脳炎をやらない地域になっており ますので、その辺は先生方にお話をお伺いしたいんですけれども、今は手挙げでやる必要 はないといった場合にはやらないでいいことになっていますが、昔はそうではなくて、手 を挙げてやる地域を決めていたので、そのときと今では日本脳炎をやる地域が違っていた みたいな話も聞いたことがあるんですが、そんなことはあったんでしょうか。 ○加藤座長 それは平成6年の改正になったときに、北海道を対象としてなんですけれど も、北海道でやらないということの理由付けとして、都道府県知事がやる必要がないと認 めた場合においては、その都道府県でやる必要はないという一行が入っているということ だけでございまして、よその地域で手挙げをする知事が出てくれば、その都道府県はやら ないということと考えております。  逆に言うと、私がいろいろなところで言われていたことは、北海道に住んでいる方が九 州に引っ越す場合もあるし、夏に旅行する場合もありますよと。でも、北海道知事はやら なくていいと言っているんだけれども、どうしましょうということを昔よく聞かれました。 それは私に聞かないで、北海道知事に聞いてくださいとお答えをしていたわけで、政省令 上はそういうことになっています。 ○岡部委員 今は、北海道だけだと思うんですけれども、その前は東北地区で随分やって いない地域がありました。しかし、今、加藤先生がおっしゃったように、だんだん人の動 きであるとか、あるいは動物においては陽性動物がいるというようなことから、次第に日 本脳炎の接種地域が北上していって、最後に残っていたのが北海道であると。北海道もそ ろそろ導入かというそのときに中止勧告が起こったと私は理解していますけれども。 ○竹本委員 実際に予防接種をする立場から言いますと、先ほどの副反応としてやはり発 熱、腫脹は非常に大きい問題なんですね。今、小児救急に関しても非常に追い込まれてい る先生や病院が多くなっているので、これで発熱が出ますと、またそれだけにそういう病 院が逼迫してくるのではないかと思いますので、できるだけないものをつくっていただき たいというのが私たちの希望です。  今、発熱、腫脹が出ますと、どのワクチンの予防接種にしても、打つ方の立場からする と、問診票は非常に大変なんですね。副作用及び救済事業について説明しろとかそういう ことがあると、1人接種するのに相当に時間がかかっていく。特に日本脳炎に関しまして は、積極的勧奨をしないということになってからの説明が、日本脳炎はもともと中国原産 なんだから、ブタの生活と一緒のどうのこうのから始めていって、発生率はこのぐらいと いうことと、もう一つは、かかったときの被害が大きいんだよということで、私の年代は 言えるんですけれども、50歳代の先生たちは日本脳炎そのものを見たことがないんじゃな いかと思うんです。ですから、この辺の先生でも見たことがない先生がほとんどだと思い ますが、私は目の前で死なれていますから、やはり日本脳炎というのは打っておかなきゃ いけないよということを盛んに言って、もし、ここで打たないと日本ではなくても、この 前の狂犬病の例もありますように、大きくなって東南アジアに旅行してかかったときに悲 劇なんだから打っておきなさいという意味でやっているんですが、できるだけ副作用のな いものが欲しいのと、それから、先ほどから何回も出ておりますけれども、できるだけ早 く新しいワクチンで十分な供給をしていただきたい。日本小児科医会の公衆衛生委員会で お話を聞きますと、百万本あるいは、50万本も出ていると言いながら、実際には配達され なくて困っているんだという地域が相当な数で出ているんですね。川崎市は行政が買い 取って、それを一律に全部配られますので、ほとんど欠品というのはないんですが、個人 的にやってあげようと思うと、やはり問屋さんからは入らないということなので、早く安 全なワクチンを供給していただきたいということを臨床家としてはお願いするところです。  もう一つよろしいですか。たまたま四川省の地震があったときにテレビを見ましたら、 テロップで中国政府は日本脳炎の追加ワクチンを決めたというようなことを書いてあった んです。誰に聞いてもそれを見ていなくてわからないというんですけれども、中国の奥地 の方では日本脳炎が発生したか何かして、中国というのは大体接種の順番が決まっていま すよね。接種票のがあって順番に判こを押していく、だから、そこにまた追加ワクチンを するとなると相当大きな事態が生じたのかなという感じがしたんですけれども、どなたか 御存じだったら教えていただきたいと思うんですが。 ○岡部委員 日中のプロジェクトでもEPIシリーズをやっていて、四川省は一応その対 象圏にはなっているんです。しかし、現在の段階で日本脳炎の緊急ワクチン接種を大々的 に行うという情報は入っていないです。ただ、ルーチンとして四川省地域での日本脳炎と いうのはやはり重要なワクチンととらえられていて、定期接種の対象になっています。加 えて言えば、定期接種が今の状況で少し落ち込んでくるということは中国側も非常に危惧 しているところだと思います。 ○竹本委員 たまたまテレビを見たときに、何とかと日本脳炎の予防接種を追加するとい うことがテロップで流れたんですね。その後、全然そういうニュースが流れないので、 ちょっと気になったものですから。ありがとうございました。 ○飯沼委員 日本以外の国の日脳のワクチンは、どこの国がつくっているんですか。 ○上田参考人 中国は自前でつくっております。これは生ワクチンがメーンだと思います。 不活化もございますか。ただ、生ワクチンはちょっと危険なところがございます。それか ら、インドがつくっております。その地の東南アジアは私どものところが輸出しておりま す。 ○倉根参考人 今、上田先生がおっしゃったとおりなんですけれども、インドは不活化ワ クチンはつくっているんですが生産量が物すごく少ないので、中国の生ワクを大量に買い 入れてやっていると。それから、タイも不活化をつくっておりまして、これは恐らく微研 から技術援助が行っていたものだと思います。それから、ベトナム、韓国、台湾もつくっ ているということだと思います。ただ、すべての国で間に合うほどつくれていない場合も あるんですが、恐らく輸入をしていたのだろうと思います。 ○岡部委員 かつては日本で開発したようなマウスブレインの日本脳炎ワクチンが席巻を しているぐらいだったわけですけれども、現在は複数のメーカーが非常な勢いで開発を進 めています。株も違うし、細胞培養法であったりいろいろな方法で、先ほどのEPIの中 に取り込むかということも含めて、現在非常に競争の状態にあります。 ○廣田委員 私も、先ほどの発言に誤解があるといけないので言わせていただきますけれ ども、私は日本脳炎という疾患の公衆衛生上のインパクトと、予防接種推進のための位置 付けの話をしたのであって、日本脳炎という疾病の重要性を軽んじているわけでも何でも ありませんから。 ○加藤座長 多分、皆さんそうは思っていないと思いますので、御安心ください。  ほかによろしいでしょうか。 ○宮崎委員 今の患者発生は中高年中心です。もともと日本脳炎は子どもの病気だったん ですけれども、ワクチンとかでなくなって中高年だけ残ってきたのだと思いますが、本当 に日本脳炎の患者さんを今以上に減らそうと思うと、中高年対策が必要になるんですが、 今はワクチンが足りないのでどうにもなりませんけれども、もう一回ワクチンが潤沢に出 てくるという近い将来を考えると、厚労省は中高年対策をどう考えられますか。 ○三宅課長補佐 まさに今後いろいろ先生方と議論していく話だと思うんですけれども、 先ほど廣田先生もおっしゃった、定期接種としてどこまでやるべきか。MRワクチンの場 合には積極的勧奨でやるべきものと、積極的勧奨ではないけれども推奨という一般的に少 し弱いけれどもやった方がいいですよと。それに対して、国で努力義務まではかけません がということで、2つのカテゴリーで皆さんにお勧めしたんですけれども、そういうよう に専門家の中で、これは国が責任を持ってやれというものではないけれども、やっておい た方がいいよというものと、全く放っておいていいよというものを2つ区別して議論して いただけると、確かに高齢者とかそういうところももう少し議論が進みやすくなるのかな と考えています。 ○宮崎委員 少なくとも中高年の抗体の落ち込みはどうも本当みたいですから、海外渡航 のときのいろいろな厚労省のリコメンデーションの中にも、マラリアのことなどいろいろ 書いてあるんですが、日本脳炎のワクチンを打っておけというのはないですよね。きちん とアナウンスを出された方がいいのかなと思います。 ○加藤座長 日本脳炎を含めまして、アダルトに対して、または10歳以上の方に対する不 活化ワクチンの在り方ということも、このシリーズの中で話題になってくることもあると 思いますので、またそのときに先ほどの廣田先生の分類分けということも関連して、議論 の中に計画していけることを厚労省としては考えていただきたいと思います。 ○宮崎委員 接種勧奨の一時差し控え中に、受けないままに大きくなってきている子たち がいるわけですよね。中には定期接種の年齢を超えてきた人たちも、受けたいと思っても 実質中止ということで受けていない人がいると思うんですが、その点について来年度以降 どうしていくかという問題があると思うんですが、いかがでしょうか。 ○加藤座長 それは座長が少しとらせていただきます。最終的な本日の整理の中に入って くる課題でございますので、大変厳しい御質問ですが、まず、本日のディスカッションを 全体的に整理させていただくことから入りますと、今日の参考人または各委員の御意見を まとめてみますと、第1に日本脳炎ワクチンの接種をいずれにしても継続する必要性につ いては、すなわち疾病の予防という観点から見れば、このワクチン接種は欠かせないこと であるということに関しては、意見が一致していると判断させていただきました。  2番目に、そもそもなぜ日本脳炎のワクチンを接種し続けなければいけないのかという ことに関しましても、今日参考人の先生方からいただきましたモニタリングの成績、その 他の成績から見ましても、疫学的な研究を今後も続けていく必要があるということは大方 の委員も賛成であろうと結論付けさせていただきます。  それから、まさに宮崎先生のお話に移りますが、いわゆる組織培養によってできてまい ります新型の日本脳炎ワクチンが実際に供給された後の実施体制についての御質問であろ うかと思います。これも非常に難しい問題でございます。実施体制につきましては、状況 に応じた接種が行えるような検討が必要であろうということでございまして、ただいます ぐに厚生労働省がこういたしますという結論を出すわけにはまいらないかと思いますが、 座長といたしましては、今、先生がお話しのとおり、現在、積極的勧奨差し控えの中で、 接種を受けずに対象期間を超えてしまった者の取扱いをどうかするか。特に、13歳を超え た者に対してもどうするかということは一つの問題点であると。  第2番目、仮に今後、組織培養ワクチンが供給された後、ワクチン量の供給が十分でな い可能性もあります。そういう場合には、一定の期間の間に接種を受けられなかった者に ついては、どう取り扱ったらよろしいか。これもまた宮崎先生御指摘のとおりです。  第3番目は、ワクチンが実際に供給されたときに、その供給量の中で何を優先的に接種 するグループに入れていくかということも検討していかなければならない。これは極めて 重要な問題でございますけれども、今すぐに結論が出る問題でもございません。座長とい たしましては、事務局に今後必要であろうという実施スケジュールの在り方について、是 非たたき台をまとめていただきたい。今、宮崎先生が御質問になったことと全く同じでご ざいますが、今すぐに結論は出ないと思いますけれども、是非事務局といたしましては今 日の討論を基にいたしまして、たたき台をまとめていただいて、それを基に引き続き討論 をしていきたいと考えております。  どうもありがとうございました。以上をもちまして、日本脳炎におけます本日のテーマ を終了いたしますが、前回の検討会から大体1年が過ぎてしまいまして、予防接種に関す る課題もいろいろな場面が出てまいりまして議論がなされているところでございます。特 に、このごろあちこちで、いわゆる米保健省によって任命された委員によって行われてい るACIPすなわちAdvisory committee on Immunization practiceということがかな りいろいろなところで話題になってきてございます。15名の委員が選ばれて行われている 会議でございまして、メンバーからいきますと似たようなメンバーの構成、そのほかに8 つの機関から、例えばNIHですとかFDAというところからの委員、ボート権がない委 員が8機関、あと二十数機関の例えば小児科学会であるとか、医師会であるとか、そうい うグループが入っているACIPという会議がございまして、その目的は簡単でございます。 ワクチンで予防できる感染症は、その感染率を減少させることを目的とするということが 大きな目的となっている会でございます。そこでワクチンのことに対してリコメンデー ションをするという会議がございますが、そのようなシステムもそろそろ考えていく時期 が来ているかもしれせん。しかしながら、日本の予防接種法と米国の方法とベースライン が全く違いますので、すぐACIPの方法を日本に導入するということはなかなか1年、2 年では難しいことであろうとは思いますけれども、その辺の検討も今後していかなければ ならないと座長としては考えますが、厚生労働省としてはいかがでございましょうか。 ○三宅課長補佐 ありがとうございます。確かにおっしゃるとおり、日本版のACIPを導 入すべしというお話はよくお聞きしますが、こことどう違うのが、そういうことをまずは 検討して、何が必要なのか、加藤座長のおっしゃるとおりだと思いますので、事務局もも う少し勉強をさせていただいて検討させていただきたいと思います。  次回は、ACIPについて御見識のある方を参考人にするなどして、米国のACIPはどのよ うなものか、我が国はどのようなことを目指すべきかみたいなことを話していただけるよ うにセットしてまいりたいと思います。ありがとうございます。 ○加藤座長 それでは、そのようによろしくお願いいたします。  以上で、私どもの計画いたしました議案は終わりですが、最後に事務局から……。 ○岡部委員 手短に。お願いなんですけれども、今後この検討会は多分続いていくと思う んですね。その一連の中で、今ACIPの話も出ましたけれども、日本ではもう一つ大きい ワクチンに関する検討グループで、産業ビジョンというのがついていると思うんですが、 お互いの連携をとりながら、委員はオーバーラップしていますけれども、委員会として情 報は入ってこないと思うので、向こうの産業ビジョンでどういう検討が行われているか、 あるいは逆にこちら側の検討事項を向こうに伝えるというようなことは組織としてやって いく必要があるだろうと思うので、是非その話もここで聞かせていただければと思います。 ○加藤座長 そういう御意見が出ましたので、課長もよろしく御検討いただきたいと思い ます。  では、最後に事務局から御発言がありましたら、どうぞ。 ○山田課長補佐 次回の開催でございますが、日程につきましては改めて事務局から調整 させていただきたいと思います。  本日は、長時間にわたり御議論いただき、誠にありがとうございます。本日はこれをもっ て終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。                           照会先 厚生労働省健康局結核感染症課 予防接種係  (2383・2377)