08/07/23 平成20年度第3回目安に関する小委員会議事録          平成20年度 第3回目安に関する小委員会議事録 1 日 時  平成20年7月23日(水)14:00〜 2 場 所  厚生労働省第二共済組合宿泊所茜荘 3 出席者   【委員】 公益委員  今野委員長、勝委員、野寺委員、藤村委員   労働者委員 石黒委員、加藤委員、田村委員、團野委員        使用者委員 池田委員、川本委員、原川委員、横山委員   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、              植松主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、              吉田課長補佐 4 議事内容 (第1回全体会議) ○今野委員長  それでは、ただ今から第3回の目安小委員会を開催いたします。前回の小委員会までに 労使各側から本年度の目安についての基本的な考え方が表明されました。労働者側からは、 端的な数字で申し上げますと50円の主張をされております。使用者側は明確な数字は言わ れておりませんが、「全体として厳しい状況にあり、特に中小零細企業がより厳しい状況に あること、地域間のばらつきもあることも十分に認識すべき」だというふうに主張されま した。併せて、「現下の最低賃金を取り巻く状況や、本年7月1日に施行されることとなる 最低賃金法の一部を改正する法律の趣旨を踏まえ、加えて、成長力底上げ戦略推進円卓会 議における賃金の底上げに関する議論にも配意して調査審議を行うよう求められたことを 踏まえて議論する」というご主張がありました。  また、生活保護との整合性については、どの地域の生活保護を考慮するのか、生活保護 のどの給付まで考慮するのか、最低賃金を月額換算する際の労働時間の取り方についてど うするのかという点について、主張が対立していたというふうに思います。  まずは、労使各側から、追加して主張されたいことやご意見がありましたら、お聞きを したいというふうに思いますが、その前に、前回の小委員会で加藤委員からご質問があり ましたので、その件について、事務局から説明をいただいて、それからご主張をお伺いし たいというふうに思います。 ○吉本勤労者生活課長  その点につきましてご説明申し上げます。特に資料はご用意させていただいておりませ んが、加藤委員からのご指摘といいますのは、生活保護と最低賃金を比較するに当たりま して、税と社会保険料を考慮した可処分所得を算出するための比率、これが例えば東京都 でどういう値になるのかとお尋ねでございました。これを受けまして、この間もちょっと 申し上げたのですが、自治体によりましては、住民税の超過課税でありますとか軽減とい った措置ができることとなっておりまして、それを東京都につきまして全ての自治体につ いて調べましたところ、東京都の自治体ではそういった超過課税ですとか軽減は実施して いないということが分かりまして、結果といたしまして、東京都の場合は、所得税、住民 税の所得割と均等割、それから社会保険料、雇用保険料、これらを考慮して可処分所得を 計算しましたところ、0.844という数字になります。今回は東京都をサンプルということで 調べましたが、それを他のところにやるということになりますと、この前申し上げました ように、相当の時間を要するというふうに思っております。私どもが今把握している限り で申し上げますと、住民税の超過課税をやっている都道府県の数は、全国で25箇所あると いうことが分かっています。以上です。 ○今野委員長  加藤さんよろしいですか。 ○加藤委員  全県を調べるにはですね、超過課税なり、あるいは軽減なりがあり難しいということも 含めたご説明ではなかったかと思いますが、今出された数字で申し上げますと、東京につ いて申し上げると0.844ということでございましたので、グラフでお示しをされた0.864 ですね、これは昨年の1番低い最低賃金額の県の610円をベースにした可処分所得の計算 ということですが、都道府県によって違うということが明らかになったのではないか。東 京の場合は0.844ということですから、2%も違うわけで、従いまして、可処分所得ベー スでの現行最低賃金額をどう評価するかということについては、都道府県間で異なるとい う共通認識に立てるのではないかと思いますので、生活保護水準と最低賃金額との乖離を 埋めていく、是正するという議論を行うに当たってはそうした都道府県によって違いがあ るという実態を十分配慮した議論が必要ではないかと思っておりますので、そのことだけ 申し上げます。 ○今野委員長  他にご質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、労使の追加的なご 主張なりご意見なりご説明をお伺いしたいと思います。それでは、労働者側からお願いし ましょうか。 ○團野委員  前回説明いたしました基本的な考え方は全く変えておりません。ただ、今加藤委員から 申し上げましたように、可処分所得の計算に当たって都道府県ごとに実態が違うというの が明らかになりまして、やはりその違いをどのように反映するかきちんと配慮いただきた いというふうに考えております。 ○今野委員長  それでは、使用者側はいかがですが。 ○川本委員  それでは、本日お手元に資料等をお配りしてございます。基本的には前回の私どもの考 え方、経済環境を報告いたしましたけれど、それを補足する意味で、今日は日本商工会議 所並びに中央会さんからそれぞれお手元に別の資料をお配りしておりますので、それにつ いてご説明したいと思っております。また併せまして、横山委員から今の経済状況につい て補足の意見を述べたいと思います。 ○原川委員  では、私の方からご説明をさせていただきたいと思います。お手元に6月の中小企業月 次景況調査、これは6月となっておりますけれども、6月末の時点で調査したというもの で、7月22日、昨日公表したものであります。この調査ですね、私ども全国中央会が毎月 地方の約2700名の情報連絡員に照会をしておりますけれども、情報連絡員から各地の業界 の状況、景況、売上高、収益状況等、8つの主要指標に分けて、毎月定型の様式によって 報告をしてもらっている。それを全国集計したものでございます。1頁にその要旨、概要 が載っております。コメントにありますように、6月末現在では、8指標、8指標という のは2頁の下のところに表がございます。景況、売上高、収益状況、販売価格、取引条件、 資金繰り、設備操業度、雇用人員、この8つの条件について、それぞれ情報連絡員からご 報告をいただいております。ちなみに、情報連絡員とはどういうものかといいますと、こ れは地方の各業界の団体の役職員、精通している役職員の方々に照会をしているというも のでございまして、現在は約2700名弱という人数でございます。それで1頁目のコメント にありますように、8指標すべての指標で悪化しているということでございます。それか ら、マイナスのDI値ですけれども、景況DIは4ヶ月連続の悪化でマイナス60ポイントを 下回っている。これは平成14年3月以来の低水準であるということでございます。下の四 角のグラフを見ていただきたいのですが、赤が景況DI、これは前年同月比でございますけ れども、それから紺が売上高、それからグリーンが収益状況を表しているグラフでござい ます。これは平成11年から平成20年の間の推移を表しておりますけれども、これで見ま すと、昨年19年6月末に改定作業をやったときの状況というのは平成19年6月のところ であるかと思います。それまでは、平成18年の6月から平成19年の6月というところは、 中小企業は、状況は大企業よりはるかに悪いですけれども、それでも中小企業においては 比較的上向きの状況、一進一退を繰り返しながらも良好な状態であったということがここ で分かるわけですけれども、これが今年の6月にかけて、急速に落ち込みを示していると いうことでございます。ここ1年、非常に状況が悪くなってきたということでございます。 その原因としては、燃料あるいは原材料価格の高騰が止まらないということでございまし て、そこに輸出の停滞とかあるいは個人消費の減退が加わって一段と中小企業の収益構造 自体が非常にダメージを受けているということでございます。2頁にまいりまして、その 具体的な数字を示したのが、この表1です。例えば1年前の景況が、DIが−35.2でござい ますけれども、今年の6月の末では、−64.4ということで、DI値が約2倍になっていると いうようなことでございます。それから収益状況も同じような状況になっております。そ れから、資金繰りも悪くなっているということがあります。一番下の雇用人員も、増えた、 減ったという割合の差ですけれども、これは減ったというところが多かったということで ございます。3頁以降はですね、景況、4頁の売上、それから5頁が収益、というので各 業種別のDI値を示しておりますけれども、各ページ真ん中のグラフは、1年の推移を表し ております。これを見ますと、やはりこの1年どういうふうに下がってきたかということ が一目瞭然で分かると思いますけれども、特にこの2ヶ月が、非常に落ち込みが激しいと いうことが言えるのではないかというふうに思います。売上は一進一退というようなこと ですけれども、これも1年で見ますとだいぶマイナス幅が拡大している。収益状況につき ましては、景況と同じようにかなり激しく急激に落ち込んでいるのがお分かりいただける かと思います。資金繰りも然りでございます。それから、8頁はですね、DI値を業種別に 並べた表をつけたものであります。業種別では、これを見ますと、例えば、印刷業とか窯 業・土石業ですね、こういったところのDI値が非常に悪いというところでございます。あ と、非製造業では、運輸、建設、商店街というところも悪い数字になっているということ であります。あと、DIの数字の内訳といいますか、9ページにDIの元の数字を掲げてござ いますけれども、例えば景況のところをみますと、好転が全体で1.8、悪化が66.2と悪化 が圧倒的に多い。これは、例えばその前の5月は、書いてございませんけれども、5月は 好転が2.4で悪化が60.7、4月は3.3で55.8ですから、悪化が55.8、60.7、66.2だんだ ん前年同期と比べて、悪化しているという数字が大きくなっているということでございま す。それから、その次の10頁は、ブロック別でございますけれども、これを見ますと、関 東・甲信越、東海・北陸地方といったところが、景況あるいは収益状況が、全国平均より も悪くなっているということが特徴であるかと思います。その次の11頁でございますけれ ども、11頁にそれをグラフにしたものを出しておりますけれども、これを見ていただけれ ば、今の関東それから東海・北陸の状況が分かろうかと思います。それから12頁でござい ますけれども、これは各地域の1年間の推移でございます。1番上の●は中国、その次の ■は近畿、▲は関東・甲信越というようなことでございますけれども、3月、4月、5月、 6月というところを見ていただきますと、大体どの地域もDI値が6月末では−60を超えて いるというような状況になっております。データは以上でございますけれども、まずこの 辺にしておきまして。 ○池田委員  今報告がありましたけれども、何故そんなに厳しいのかということを繰り返し繰り返し ご説明するしかない。私どもの方も、主張のポイントの1つは、日本の経済の状況が1年 前と大きく異なりまして、中小企業を取り巻く経営環境が一段と厳しい。最低賃金を大幅 に引き上げる環境にはないということを今まで主張してきた通りでありまして、特に今月 発表されました東商の現況調査の結果を見ても、東京ですら、現状、見通し共に厳しさを 増しているということが第1点であります。第2点は、全国の商工会議所の会議から昨年 度の最低賃金の大幅な引上げにより実際に経営に影響が及んだ事例が引き続き数多く寄せ られている点が2点目であります。3点目は、繰り返し主張しておりますが、最低賃金の引 上げについて議論する際には、最低賃金で働いている労働者の業種、年齢、生活状況、属 性、世帯主か否か、学生か主婦等か、また、最低賃金を採用している企業の状況等を分析 すべきではないかということが、まだこの辺の資料が出ておりませんので、これが3点目 でございます。  まず第1点目でありますけれども、中小企業は仕入価格の増加、受注の減少で極めて厳 しい環境で経営を行っております。経営者の1人としましても、最低賃金を大幅に引き上 げる環境にないことを痛感しております。前回、前々回の目安小委員会においても、各種 調査結果を紹介しておりますが、1年前と大きく異なりまして、中小企業を取り巻く経営 環境は一層厳しくなっていることを主張させていただいたわけであります。先日、東京商 工会議所の中小企業の景況感に関する調査結果が発表されたのでご紹介いたしますが、こ の調査は商工会議所が23区内の中小企業2443社に対し景況感を聞いたものでありまして、 四半期ごとに実施をいたしております。今回の結果を一言で申し上げますと、23区内の中 小企業の景況感は前年同月比、今期水準、来期見通し、いずれも5期連続でマイナス幅が 拡大したということであります。まず、前年同期と比べました今期の現況は、4月〜6月 でありますけれども、サービス業を除いた全業種でマイナス幅が大幅に拡大しておりまし て、特に小売業と卸業が極めて低い水準に落ち込んでおります。今期の業況水準につきま しては、全業種において、マイナス幅が拡大しておりまして、特に建設業のマイナス幅が 17.1ポイント拡大しております。また、来期の業況の見通しにつきましても、1年前と比 べて全ての業種において、マイナス幅が拡大、特に製造業、建設業、卸業、小売業が厳し い見通しを示しております。なお、売上の採算につきましても、前年同月比、今期水準、 来期見通し、いずれもマイナス幅が拡大をいたしております。今回の調査結果は、東京で 事業を営んでいる自分自身の実感といたしましても一致していまして、東京ですらこうし た厳しい状況でありまして、他の地域はなおさら、言わずもがなであります。日商のアン ケート調査でも、都内の小売業者からは売上減少と相まって経営環境がかなり厳しい、オ イルショック以来の厳しさという声があがっております。先週の日商の記者会見におきま しても、主要都市の商工会議所の会頭、日商の副会頭から現在日本全体がオイルショック に覆われているような状況というコメントがございました。また、私は東京都信用保証補 助審査会という会議に出ておりますが、最近の7月16日に出ておりますが、東京信用保証 協会の調査においても、信用保証を受けた企業が倒産等で返済ができなくなる、代位弁済 をした企業、つまり返済できなくなった金額は365億円と前年同期比で5割以上増加して おります。また、代位弁済の件数は3,939件となっておりまして、前年同期比で約23%増 加しております。昨年から四半期ごとの代位弁済の額を見ますと、平成19年が241億円、 平成20年の1〜3月が316億円でありまして、4〜6月が365億円と最近になく厳しく増 加いたしております。こうしたことから東京都内の景況の減速感は急速につまっておりま して、東京でさえこのような状況になっておりまして、地方の厳しさは推して知るべしだ と思っております。一時は代位弁済がだいぶ減ってまいりまして、昨年あたり、5、6年 やっているのですが、少し好転したかと思ったのですが、自殺とか家出とかが減ってきた ので、だいぶ楽になってきたかなと思ったのですが、今年はまた元に戻るような状況で、 これはいかんということで、厳しいという状況が日経新聞同様に数字に表れております。 また、先の円卓会議におきましても、最低賃金の引上げに当たっては、社会経済情勢を考 慮する、及び経済、企業、雇用動向、中小企業の生産性向上の進展状況、経済状況、経営 環境の変化等を踏まえることが明記されておりまして、現在は最低賃金を大幅に引き上げ る時期とはとても言えないということでございます。次に日商のアンケート調査で、山梨 県の製造業者の意見でありますが、原油、鉄の高騰等、日本の経済状況は非常に厳しい、 最低賃金は生活の安定に大切なことでありますが、それ以上に各企業、日本の経済を立て 直さなくては、最低賃金引上げ以上に、働く場所が無くなっていくような気がするという、 まさに現場の声でございます。  次に主張の2番目であります各地域の影響でありますが、お手元に全国の商工会議所の 会員企業から寄せられております、賃金改定状況に関するアンケートの調査結果を配布い たしましたので、簡単にご紹介したいと思います。詳細は後ほどご覧いただきたいと思い ますが、以前より賃金の無理な引上げは雇用の縮小につながるということを繰り返し伝え てまいりましたが、その表になります。神奈川県の製造業、長崎県の小売業、宮崎県の製 造業の中小企業等から従業員数を削減した、非正規雇用に転化した等の声が上がっており ます。また、最低賃金の引上げが事業の縮小につながるという声も聞かれ、具体的には愛 媛、長崎の小売業から店舗を削減した、今後削減せざるを得ない等の声が上がっています。 中小企業の労働分配率は85%に達しておりまして、支払能力の限界もございまして、今年 の最低賃金につきましては、昨年のように中小企業の実態を無視した最低賃金の大幅な引 上げが続けば、経営が悪化し雇用に悪い影響を与える。最低賃金をこれ以上引き上げられ たら企業は競争力を失う。富山県の製造業でありますが。また、ホテル・旅館業において は、原油、食料等の高騰が販売価格に転嫁できず苦しんでいる。そのうえ、最低賃金の上 昇が続くようであれば、労働集約型産業の旅館は廃業せざるを得ない。富山県のサービス 業であります。原材料費の高騰をこれ以上内部で吸収するのは限界。栃木県の建設業。値 下げに苦しむ小規模製造業の置かれている立場を理解していただきたい、逆に足を引っ張 らないでいただきたい。神奈川県の製造業。全ての仕入単価が高騰していることが採算面 での一番の悩みでありまして、人件費が上昇すれば、さらに厳しい状況になる。沖縄の小 売業です。原油・原材料価格の高騰によりまして、仕入値の上昇、採算が悪化している中 で、最低賃金引上げによる人件費の増加は厳しい、といった声が寄せられております。こ のような地方の経営者の生の声に耳を傾けていただければ、少なくとも現在は最低賃金を 大幅に引き上げる環境でないことがお分かりいただけると思います。  最後に3番目であります。生活保護との整合性ですが、最低賃金の引上げを議論する際 には、最低賃金で働いている労働者の業種、年齢、生活環境、属性、世帯主か否か、学生 か主婦か、また最低賃金を採用している企業の現状等を分析すべきと繰り返し申し上げて おります。また前回の目安小委員会で、厚生労働省は、生活扶助基準を12〜19歳の単身世 帯とする理由として、賃金カーブから最低賃金で働く人は若い人が比較的多いと仮定した としておりますが本当にそうなのか、実態に基づいて議論すべきと思います。前回も申し 上げましたが、少なくとも12〜19歳の単身者は、生活保護世帯の0.075%、単身者に限っ ても、0.1%しか占めておりません。一方で生活保護世帯の約4割が高齢者の単身世帯であ ることを考えれば、単身世帯の加重平均等、別の方法で比較することがふさわしいのでは ないかと思います。また、生活扶助に期末一時扶助を含めるべきという議論がございます が、期末一時手当を創設した当時、昭和32年ですが、その趣旨として、期末一時扶助の創 設とは、一般国民の生活習慣に基づき、年末の生計費が増えるので、いわゆる餅代を12月 の最低生活費、生活保護の内容として含めたものと説明されています。しかし、最低限度 の生活に必要なものであれば、その後の生活保護水準の見直しの際に生活扶助、1類ある いは2類として検討されるべきものではないかと思います。賃金は物入りの12月だからと いって必ず増えるものではございません。生活保護との整合性を配慮する際に期末一時扶 助を考えるのは疑問であります。生活保護自体も今社会的に問題となっていますが、払う べきときには払うべきだと思いますが、その辺は慎重に検討していただきたいと思います。 以上3点でございます。 ○横山委員  それでは、実際に雇用状況、企業の状況をわずかな例ですけども、ご紹介しようと思い ます。昨年に出ましたときは、私今名古屋に勤務しておりますが、まだ東海地区はなかな か元気で、この調子でいけばいいな、サブプライムローンというのは何だろう、とこうい う感じだったのですが、それがいよいよ効いてきまして、結果的に東海地区が元気が良か ったのはご承知のとおりトヨタさんで、製造業でトヨタさんがいて、その中で大きなピラ ミッドができていて、やはり大きなマーケットは北米ですが、これが大変なことになって きまして、車が売れなくなってきた。そうなってくると当然のことながら、各トヨタさん を頂点にした色々な部品メーカー、それについている二次、三次の下請けがそれぞれ苦し くなってきた。現実に今、そういうメーカーさんで、国内でもラインが止まり始めている、 そういう状況になり始めました。一番今心配しているのは、スタグフレーション。これが、 非常に正直怖くなってきた。原材料価格が激しく上がってきた。これが製品価格に転嫁で きていない。立場を超えていえば、原材料価格が上がった、製品の価格も上がった、その 代わり賃金も上げましょう、こういうことで、うまく回っていけばいいのですが、残念な がら賃金を上げるという部分が非常に厳しくなってきている。原材料価格の転嫁ができな い。本当に厳しくてできない。原材料価格の上がり方が、例えば鉄鋼も上がっていますが、 運輸業で言えば、かなり大きな部分を占めるのが軽油ですが、軽油は原油価格でいうと、 昨年の今頃は60〜70ドル/バレル、今は120〜130ですね。具体的に我々が買うときにど ういう値段になるかというと、軽油1リットル、昨年の今頃は60円から上がったなといっ て70円、今は120〜130円です。その分をお客さんに払ってもらおうとすると、メーカー さんメインですが、分かるけどどこからそれが出てくるんだ、実際にそういう形になる。 それから雇用の面でみますと、労働市場は需給バランスで、労働力の対価、こういうこと が原理的にあるのでしょうが、実態として見てみますと、昨年の短時間労働者は時給で800 〜850円、第2回の資料3の27頁に愛知の図がありますが、これが景気が良くなったら上 がるかというと必ずしもそうでもない、悪くなってもそう下がるものではない。昨年は850 円出して、どこにいくかというと、運送よりは楽なメーカーさんとか、あるいは別のサー ビス業。そうすると、例えば850円で50人採用したい場合、昨年はどう頑張っても40名 しか集まらない。残り10名はどうするのかというと超勤でやるとか他の形で応用する、な んとか凌ぐ。今年は同じ850円であっという間に集まる。つまりそれだけ他のところが仕 事がどんどん無くなってきている。そうすると、運送屋みたいな暑苦しいところでも稼ご うと思ったらそこにいくしかないと。ということで、かなり激しく労働市場が動いてきて いる。結果、各企業共に払えない、きついというよりは、これからどうやって食っていく のか、とそういう状況です。全国で完全にそうかということを言われると確信をもって言 えないのですが、少なくとも昨年まであれだけ頑張っていた、好調であったといってもい いと思うんですが、その地域が大変な状況になっている。雇用がままならないというより も、各企業がどうやって生きていこうかという状況に変わってきた。かなり厳しい経済情 勢、経営状態が厳しい。こういうところは、今回の論議に当たっても是非頭においていた だいた方が良いのではないかと思っております。以上です。 ○今野委員長  ありがとうございました。他にございませんでしょうか。 ○團野委員  今まで言われたことは、我々も全く無視するつもりはありませんし、状況が厳しくなっ ていることは理解しております。ただ一方で、日本経済の成り立ちが非常に脆弱、弱いと ころを個々説明していただいたような気がするんですね。海外要因で引っ張られて、国内 需要をどうするかというところが、ある意味なおざりになってきた。景気の指標である実 質経済成長率のアップはそれほど大きくないけれども長期続いてきたことの陰に隠れてい て、内需を含めた国内経済自体をどうするか、という対応が遅くなったという気がする。 最低賃金の水準を、一般労働者の賃金を指標にするのであればまだしも、最低賃金も含め て上げてはいけない、そこまでおっしゃるのかという感じがする。反論ではありませんが、 申し上げておきたいと思います。ですから反対にいうと、自立型経済をきっちり作らない といつまで経っても日本の弱さを克服できないということを申し上げたい。国内の需要を どう盛り上げていくかということを追求していく必要があるのではないかというふうに 我々としては思っている。 ○田村委員  同じ趣旨なのですけれども、昨日厚生労働省が労働経済白書を発表されています。そこ を正に今團野委員が言われたことと同じことが書いてありまして、2002年からの部分の記 載で、「経済成長の成果は、今回の景気回復過程において勤労者生活に十分いきわたってい ない。このことが、景気の足腰の弱さの一因となっている。」という分析と消費支出の伸び が極めて弱いということ、それに対する対応として、「勤労者生活の充実と社会の安定を基 盤に着実な内需の拡大を生み出していくこと」、これが達成されていないというところがあ り全体としてみていかなくてはならないと。労働経済白書のこんな分析、我々は賛同して いるということを申し上げておきたい。 ○原川委員  1つだけ言わせていただきたいのですが、円卓の議論においても出たことですけれども、 景気がこのような非常に厳しい状況だと。昨年と様変わりをしているという状況。その中 で、今出ましたが、白書に中小企業の経営状況が非常に厳しいという指摘がありましたけ れど、中小企業の場合には、長い間の不況の延長線でずっときましたので、なかなか体力 が弱くなっているということもあって、生産性を上げなければどうにもならないというこ とを使用者側は申し上げてきたわけですけれども、生産性の向上と最低賃金の引上げはセ ットになっていたと思うのですけれども、今生産性の向上、これから制度を始めましょう ということで、色々なメニューを始めていただいたわけですけれども、それは始まったば かりだということで、生産性の向上には非常に時間がかかるということもあります。ただ、 そこで、最低賃金の引上げだけは先行して、しかも昨年の要望、加えて今年の合意という ことで、立て続けに経済情勢と関わりなくというのか、そういうものが出されている。我々 はこの前も申し上げましたが、円卓の合意は尊重するというふうに考えているわけですが、 地方はそういうこととは関係なしに、今横山委員がおっしゃったように、自分の生きるこ とで精一杯で企業がおかしくなっているという状況ですから、そういうことを東京で審議 する場合にもやはりそこはしっかり考えて審議しないと大変なことになると私は改めて申 し上げておきたいというふうに思います。決して最低賃金を引き上げることには反対しま せんけれども、そういうことをやるには、やはり環境とか準備があって然るべきだと。突 然天から振ってきたような声でこういうことをやらなくてはならない、従って下駄を履か せるような議論をするというようなことは本当にいかがなものかと考えます。そこのとこ ろをよく配慮をしていただいて、やはり経済実態あるいは、企業がなければ最低賃金もな いわけですから、企業と労働者が共存できるというバランスの上で考えていただきたいと いうふうに、切にお願いする次第です。 ○今野委員長  色々ご意見をいただきましたが、労使間の意見の違いは大変大きいということですので、 このまま全体会議で詰めるのは難しいと判断いたしますので、これから公労、公使個別に 意見を伺って議論していきたいというふうに思いますがいかがでしょうか。よろしいでし ょうか。                  (異議なし) ○今野委員長  それでは、まず公使会議からやりたいと思います。労側の委員の方は控室でお待ちいた だいて、その後公労でやりたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 (第2回全体会議) ○今野委員長  それでは、ただ今から第2回の全体会議を開催いたします。本日は目安を取りまとめる べく、長い時間をかけて複雑な調整も含めて議論させていただきましたが、依然として労 使の見解に隔たりが大きいことから、本日中の取りまとめは断念して次回に持ち越すこと にしたいというふうに思います。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。                  (異議なし) ○今野委員長  それでは、次回の日程と会場について追って事務局から連絡をさせていただきます。以 上をもちまして、本日の小委員会を終了いたします。議事録の署名ですが、團野委員と横 山委員にお願いをいたします。よろしいですか。それでは、今日は終わります。ありがと うございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)