08/07/18 平成20年7月18日医道審議会医師分科会医師臨床研修部会議事録           医道審議会 医師分科会 医師臨床研修部会             日時 平成20年7月18日(金)                10:30〜             場所 厚労省省議室9階 ○臨床研修専門官(石川)  定刻になりましたので、医道審議会医師分科会医師臨床研修部会を開催いたします。 本日、先生方にはご多忙のところをご出席いただきまして、誠にありがとうござい ます。まず、医政局長よりご挨拶を申し上げます。 ○医政局長(外口)  本日は大変ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。昨 年12月、前回のこの部会におきまして、臨床研修の質の向上を図る観点から、研修 医制度の改善点に関するご提言をいただいたところでございます。このご提言を踏 まえまして、臨床研修病院の指定基準の改正などを行い、この4月から適用をして おります。臨床研修制度につきましては、今後とも医療現場のご意見を踏まえなが ら、必要な改善を重ねていきたいと考えております。本日は、今後の制度の見直し の進め方等について、ご議論をいただきたいと考えております。委員の先生方にお かれましては、忌憚ないご意見をいただきたいと存じますので、何とぞよろしくお 願いいたします。 ○医師研修専門官  また、前回の部会以後、人事異動に伴い事務局に変更がありましたので、紹介させ ていただきます。医療人材担当の中尾審議官です。医事課の杉野課長です。医師臨 床研修室の田原室長です。文部科学省医学教育課の新木課長です。この先の議事進 行につきましては部会長にお願いしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いい たします。 ○部会長(齋藤)  それでは、初めに資料の確認を事務局からお願いします。 ○臨床研修専門官 いちばん前が「議事次第」となっています。次に座席表、次に 委員名簿となっています。次が資料1、次が資料2「安心と希望の医療確保ビジョン」 です。資料3は「医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令」の一部改 正について(概要)です。資料4は、各厚生局長宛に医事課長から出された通知です。 資料5は「臨床研修の到達目標のあり方に関する検討会(仮称)の設置について」で す。資料6は「臨床研修の評価のための指針策定検討会(仮称)の設置について」で す。資料7は「臨床研修医在籍状況の推移」となっています。過不足等がありました ら、事務局にお申し付けください。 ○部会長 前回の部会から半年以上が経っていますので、これまでの厚生労働省の対応などに ついて事務局から報告をお願いします。 ○臨床研修専門官  資料2をご覧ください。「安心と希望の医療確保ビジョン」となっています。これ は、医師不足や救急医療に対する不安など、医療に関するさまざまな問題が指摘さ れていましたことを踏まえ、将来を見据えた改革が必要であるため、あるべき医療 の姿を示すことを目的として定められたものです。その中に、臨床研修の見直しに ついても触れられています。4頁目をご覧ください。エに「臨床研修制度の見直し」 とあります。この中で「医師不足問題がより深刻な診療科や地域医療への貢献を行 う臨床研修病院等を積極的に評価するとともに、研修医の受入れ数の適正化を図る」 というような記載がされています。  資料3をご覧ください。医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令や 通知についての資料となっています。これら臨床研修に関しまして、必要な改正を 行っています。  2頁目をご覧ください。主な内容は以下のとおりとなっています。臨床研修病院 の指定基準に関して、臨床研修を行うのに必要な診療科の確保、救急医療の提供、 臨床病理検討会の開催については、研修協力施設を含めないこととする。指定取消 の要件に、「2年以上研修医の受入がないとき」等を追加する。受け入れる研修医の 数については、病床数8床に対し研修医1人という経過措置などについて、平成21年3 月をもって廃止とする。ということで、病床10床当たり1人ということになります。 (2)に諸手続きの簡素化に関してが書いてあります。  次の頁をご覧ください。プログラムの柔軟化に関してが記載されています。ここで は、当初の12月のうち、3月以内に限り必修科目を、つまり内科、外科、救急以外です が、研修することを可とする、(4)プログラム責任者及び指導医の要件として、要件 の1つとして、プライマリ・ケアの指導方法等に関する講習会を受講していることを必 須とする、ということを記載しています。(5)ですが、臨床研修病院の新規指定及び プログラムの変更の取扱いについては、原則として、当分の間、臨床研修病院の新規 指定及び研修医の募集定員の増員は行わないことを追加などとなっています。これら については、平成20年4月1日より適用しました。  資料4をご覧ください。平成20年3月31日に、地方厚生局長に対して、厚生労働省医 政局医事課長からの通知となっています。この通知により、各厚生局を通じて臨床研 修病院の研修医の募集定員数の適正化を図っているところです。具体的には、経過措 置を廃止し、研修医の数の上限については、8床に1人ということが経過措置になって いましたが、10床に1人ということにしました。また、原則として当面の期間、臨床研 修病院の新規指定や研修医の募集定員の増員は認めないこととする。特に研修医の採 用数が多く、医療施設に従事する医師数が多い都道府県にある臨床研修病院等につい ては、その削減に努めること。このような通知を出しています。また、特に研修医と 医師数の多い地域に所在する研修病院のうち、マッチ率が高くない病院に対しては、 特に重点的に募集定員の削減を図っているところです。以上が最近の取組みです。  次に、資料5をご覧ください。この資料は、昨年12月の部会報告書を踏まえたもの です。臨床研修の目標の内容というのは、医療技術の向上などに伴って変更が必要で あることから、臨床研修目標についても適宜改正ができるようなスキームを構築する ことが重要である。また、文科省と連携して、臨床実習や国家試験、臨床研修が円滑 に行われるように検討するべきであるというような部会の報告書を踏まえまして、臨 床研修の到達目標のあり方に関する検討会というものを開催していきたいと考えてい ます。これらの動きに関しては、文部科学省とも連携を図っていきたいと考えていま す。  資料6をご覧ください。これも部会報告を受けてのものです。臨床研修の質の向上 を図るために、研修体制について評価して公表することが非常に有効であるので、評 価のあり方について検討すべきであるという報告書に基づきまして、厚生労働省の中 で臨床研修の評価のための指針策定検討会というものを開催していきたいと考えてい ます。  資料7をご覧ください。「臨床研修医在籍状況の推移」となっています。平成20年度 のところですが、臨床研修病院が53.6%、大学病院に46.4%の研修医が在籍している という状況になっています。次の頁は「都道府県別研修医在籍状況の推移」となって います。いちばん右側に、平成15年度の採用実績と比べて平成20年度がどうであった かということが書いてあります。北海道、東北においては比較的研修医が増えている という傾向があるように思われます。 ○部会長  ありがとうございました。ただいまの説明に対して何かご意見はありますでしょうか。 資料7の2頁目の都道府県別の研修医の数なのですが、これは、いちばん右の欄で△が 付いているところは減って、そうでないところは増えたということなのですが、ただ、 いちばん下を見ますと、平成20年度の採用実績が全国で7,735名で、平成15年度の採 実績が8,166名と数が合っていない。15年度のほうが少し多いので、この解釈はそん に簡単ではないですよね。増えているところは、もっと増えていると解釈できないこ ともないわけですね。田原さん、何かご意見はありませんか。 ○臨床研修推進室長(田原) 平成15年度の採用実績については、各大学や臨床研修病院から調査をして8,166という 数字をまとめたものです。16年度以降は新しい制度の下で網羅的に調べることができ ていますので、こちらのほうの数字ははっきりとしています。平成15年度の採用実績 については、任意の調査ということもありまして、若干はっきりしない面があります が、いま部会長からお話があった、増えているという部分については、15年度よりも かなり増えているという傾向があるのではないかと考えています。 ○部会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。もしあれば、あとからおっしゃっ ていただくことにして、議題の1に進みたいと思います。「臨床研修制度の見直しの進 め方について」に入ります。まず、事務局から資料の説明をお願いします。 ○臨床研修専門官 資料1をご覧ください。臨床研修制度については、先ほどの報告事 項のように臨床研修病院の指定基準等の改正等を行ってきましたが、今後の制度の見 直しの進め方等についてご議論いただくためのたたき台を作成しました。議論のため のたたき台です。  1つ目は、研修プログラム作成を弾力化するためのモデル事業の実施です。現行の研 修プログラムをさらに弾力化し、研修分野やその期間にかかる規定を見直すことが可能 かどうかの基礎資料を得るため、大学病院を中心に2年間研修するプログラムについて、 モデル事業を実施してはどうかと考えています。例えばモデル事業として内科、外科、 救急、小児科、産婦人科など、著しい医師不足を生じ、地域医療に影響している科を中 心に各コースを設定する。それぞれのコースにおいては、当該診療分野の研修を重点的 に行う。なお、各コースについては2年間に内科、外科、救急、小児科、産婦人科、精 神科、地域保健・医療の研修を任意の期間行うとなっています。  2つ目は、マッチング制度の対象外の取扱いについてです。研修医の地域定着を促進 する観点から、就職先を限定した地域枠あるいは奨学金を受けている医学生について は、マッチング制度の対象外としてはどうかと考えています。  3つ目は、臨床研修病院の指定基準の改正についてです。臨床研修の質の向上を図る 観点から、臨床研修病院の研修医の定員に関する基準を改正してはどうかと考えていま す。なお、運用に当たっては、医師不足地域等の研修病院等に対して、当面、経過措置 を設ける。また、医師不足地域等に医師派遣を行っている臨床研修病院等に対しては、 その状況等を考慮すべきではないかと考えています。(1)と(2)については平成21年 度からの研修に間に合うように早急に取り組むこととして、(3)については今後継続 して議論することとしたいと考えています。 ○部会長  ありがとうございました。見直しの進め方の方策として3つ案が出てきていますが、こ れについて今日は十分に時間をかけて議論したいと思います。また、これ以外にもこ ういうものがあるのではないかというご意見があれば、是非言っていただきたいと思い ます。いかがでしょうか。 ○山下委員 非常に早急に取り組んでいただいたことに敬意を表したいと思いますし、方向性とし ては必ずしも私は反対ではないのですが、2つほど質問させていただきたいと思います 。前回、齋藤部会長の下でまとめられた改定の基本的なコンセプトは、とにかく質の 向上をするのだということでした。そのためのものであって、地域医療、地域医療と いう言葉があまりにも出すぎると思います。地域医療を支える人材を育成することは 確かですが、地域医療を支えるために研修制度があるわけではありません。その辺の プライオリティをはっきりさせていただきたい。質を向上させるためのモデル事業と してこのようなことをおやりになるということであれば、はっきりわかるのですが、 そこに地域医療という言葉があまりにも出すぎるような気がします。医師不足になっ ているのは、この科だけではありません。すべての科で医師不足です。  2番目の意見ですが、3番目の指定基準ということに関して、これは今後どういう方 向でやっていくのかということです。これも、プライオリティとしては、研修の質を 向上させるために一体どのような研修病院が必要であるかということでやっていただ きたい。確かに、あまりハードルを高くすると地方に病院の数が少なくなるかもしれ ませんが、大学病院を中心としてキャパシティは十分にあると思います。そこで、ト レードオフとして質を落とすという発想ではなくて、キャパシティを増やすことによ って人を担保するというようなプライオリティをはっきりとさせていただきたいと思 います。よろしくお願いします。 ○部会長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。 ○冨永委員 私は、地域医療に携わっている者として、そういう立場からの意見を出 したいと思います。確かに、いまおっしゃったように、研修の質を高めるということ は大事ですし、以前のヒアリング等においても、この臨床研修制度ができる前と、で きた後の比較をしても、到達度その他において、新臨床研修制度の評価は高かったよ うに思いますので、地域保健医療を含め、非常にいい制度だとは思っています。ただ、 現実として、北海道、四国、山陰、九州の一部等において地域に医師不足があるとい うのは事実です。特に、モデル事業に書いてあるような科においては著しいというこ とも事実です。今回のモデル事業は、大学に限ってということになっているのですが、 いま、滋賀県で、小児科コースとか産婦人科コースということで県の修学金制度をつ くってやっていますが、産婦人科のコースには希望者がいない状況です。日本の医療 全体の立場から、もちろん臨床研修の質を上げるということは大事なのですが、医師 不足によって住民が十分な医療を受けられないということが現実に起こっていること も事実なので、その辺を考えながら、どうしたらいい研修ができ、かつ地域の医師が 充足できるかということを考えていくべきだろうと思います。  ここに「任意の期間」と書いてありますが、1ヶ月をめどに任意の期間としていた だきたい。そうでなければ、例えば1週間やってもいいのかというような話になります 。その辺を詰めていかないと臨床研修制度そのものがなし崩し的に壊れていくのでは ないかという心配もしています。プライマリ・ケアの研修ということは大前提でやって 、その上にどうアレンジしていくかということを議論していただいたらいいと思います。 ○部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。モデル事業なのですが、大学病院 で例えば小児科を主に研修するコースをつくった場合に、どのぐらい志望者があるかと いうのはわかりませんよね。ですから、現在、小児科、産科、外科の志望者が非常に少 ないという原因が、この新臨床研修制度のためなのか、スーパーローテイトするために そういう科に行く志望者が少ないのか、ほかにあるのか。どのぐらい志望者があるか、 やってみればわかると思うのですが、いかがですか。 ○山下委員  齋藤部会長のおっしゃることは、まさに私が考えていたことです。新臨床研修制度のた めに減っているわけではありませんし、対策としては、この制度で対策はできません。 若いお医者さんたちが、なぜきつい科に行かないかということを考えなければいけない と思います。産婦人科だけではなくて脳外科などでも、ものすごく難しいがんの手術を する人は減っています。全部の科で難しいことをやっている人が減っているわけで、た またまそうなっているわけではありません。  これは、この部会とは違うところで議論しなければいけないと思いますが、入って、 そういう人たちをどう教育して、どうサポートしていくかという生涯教育的なサポート の体制をきちんと取ることによってやるべきだと思うのです。小児科コースを設け、産 婦人科コースを設けたからといって、志望者が増えるとは私には思えない。不安の材料 というのはそこにはないわけです。その期間に勉強できないのではなくて、そのあとに どうサポートして、どう自分を育てて守ってもらえるのかと。守るというのは言い方が 悪いですが、少なくとも、どうやって大事に育ててもらって、難しいことができるよう になれるかと。みんながそういうことをやれる医者になる必要はないわけで、地域医療 をやる人、高度医療をやる人と、いろいろなバリエーションを選べるようにしていただ きたい。その中のモデル事業ということであればいいと思うのですが、なぜ若い人たち が地域に行くのを怖がるか、難しい病気を治す医者になるのを怖がるかというと、それ をきちんとシステムとして長期的にサポートするシステムを我々は提示しているつもり なのですが、彼らに伝わっていないからだと思うのです。  初期臨床研修というものが1つポンと切り離されているものですから、その中に突っ 込んでコースをつくっても、その後ろにつながっていないと、安心して帰ってこないの は当たり前なのです。若い人たちというのは2年間で終わりではない。最初の2年間とい うのはものすごく大事で、自分は何のためにここでこういうきつい研修をしているのか というモチベーションがはっきりしていない状況でいろいろな教育を受けても、結局は あとに残らない。むしろ、グルグル回された、いろいろなことが目の前を通っていって 非常につらかったと言う研修医もたくさんいます。もちろん、みんなではありませんが、 そういう人がかなりたくさんいて、リプレッションになる人が2、3割というのは、ここ の部会のヒアリングでもありました。  余計なことをたくさん言いましたが、初期臨床研修で目指すものというのがほかにつ ながった大きなシステムの中で考えていただきたい。例えばこのモデル事業をつくった からよくなるわけではありませんが、少なくとも、それをつくったことがほかに影響す る大きなシステムの中で考えていただきたいと思います。 ○部会長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。このモデル事業の目的は、医師不足地 域の医療を回復するためということなのですが、例えば大都市の大学病院でこういうモ デル事業をやって、そこで育った若い医師が医師不足地域に行くかどうかということは、 また別ですよね。そこで行ってもらわないと、モデル事業の目的は達しませんよね。そ の辺はいかがですか。 ○山口委員  私も、モデル事業として小児科なり産婦人科に特化したようなコースを長く設けたとし ても、大きな解決にはならないのではないかと思います。先ほど資料7で、都道府県の昔 に比べての研修医の数が示されました。確かに地方で医師不足なのですが、地方の大学 の研修医の集まる率、あるいは帰学率を見ても、非常に少ないと言われているのですが、 その地方で昔に比べて研修医のトータルの数が減ったかというと、そうでもないのです。 むしろ、そちらのほうが増えている。ということは、その地域においての研修医の総数 は増えているけれども、初期研修として大学を選んだ人が少ないということを言っている わけです。  初期の研修が目的としているところがプライマリ・ケア、非常に広い範囲の研修を受 けることが目的だとすれば、その条件に最もふさわしいすべてのスタッフをそろえてい るのは大学だと思うのです。なぜその大学にこれだけ多くの人が残らなかったか。そこ に問題があるのであって、その中の特殊な、不足している領域だから、そこのコースを 設ければそこに人が集まるだろうという話にはならない。そこに研修をもっと求めてい る人たちがたくさんいるから、そのコースを設けるのであれば、そのことで解決すると 思うのですが、初期研修としてプライマリにかなり広い範囲をいかにきちんと研修でき るかというところで、地域の大学には集まらないで、しかし、その地域の大きな研修病 院にはいるわけですから、そこの問題を解決しないと、この新しいモデル事業を始めて も、大学がそういうことに取り組んだというイメージアップにしかならないと思います。 ただ単にコースを設けただけで大学に集まるということは、なかなか期待できないので はないかと思うのです。  もう1つ。こういうコースを設けること自身は私もそう大きな反対はないのですが、 そのときにコアとして残さなければならないコアカリキュラムのようなものは、やはり きちんと決めておくべきではないか。ただ、ずるずると、それで集まるのだったらとど んどんと伸ばすという話では、初期臨床研修の根幹にかかわる話だと思うのです。いろ いろなバリエーションがこれから先検討されるのでしょうけれど、コアとなる、例えば 内科、外科、救急のようなものはこれだけ必要だということは、きちんと押さえておく べきではないかと思います。 ○部会長  ありがとうございます。大学の話ですが、吉田委員、何かご意見はございますか。 ○吉田委員 特に大学の立場からという意見ではありませんが、私はやはりいまは、医 師不足、あるいは専門家の偏在、地域の医師の偏在ということは、これは1つや2つのこ とだけで解決する問題ではなくて、非常に総合的に、包括的にやらなければ解決できな い問題だと思っています。したがって、こういうモデル事業等を試みるのは大変結構な ことだと思います。それからもう一つ言えることは、大学に医師が不足しているから云 々ということを非常に強調しているように誤解されている向きもあるかと思います。そ うではなくて、やはり地方に医師がだいぶ少なくなってくるということは事実であるの で、その辺りの問題だと思っています。大学からの意見が大学のエゴのように誤解され ているような動きがありますが、私はそういうことではなくて、もっと本質的なことを 議論しているように思っています。やはり、いろいろなことをやってみないと駄目なの で、先ほどご発言のありました専門家の偏在等についても、これは若い医師たちのライ フスタイルが世界的に見て変わってきているわけです。  先日アメリカに行きまして、ある有名な大学で、専門家の偏在の傾向はどうかと聞き ましたら、やはり同じような傾向が、アメリカを代表するような大学ですが、その大学 においてすら、そのようなことが見られているという事実があります。若い世代の医師 たちは、自分のライフスタイルを非常に重視しているという傾向もありますから、大き な流れを事実として忘れてはいけないと思います。 ○部会長  ありがとうございました。他の委員の方、ご意見いかがでしょうか。矢崎委員、いかが でしょうか。 ○矢崎委員  なかなか難しい問題で、やはり地方の大学に初期臨床研修の人がなぜ集まらないかとい うことを、もう少し分析しないといけないかもしれませんね。それから、やはり地域の 大学病院というのは、今後も地域医療を支える中心的な役割を担う存在、位置付けだと 思いますので、そこに若い医師が少なくなるというのは、日本全体にとって、極めてこ れから医療のサステイナビリティといいますか、全国的なレベルでそういうものを保つ には、やはり地方の大学の先生に頑張っていただかないといけないのではないかと思い ます。先ほど申しましたように、なぜ集まらないのか、ライフスタイルに合わなければ ライフスタイルにどう対応していくかということも大学側で検討していただきたいと思 います。  それと同時に、大学病院においては少しプログラムの柔軟性をもたせて、それぞれの 地域に合った研修プログラムを、山下先生がおっしゃっていただいたような臨床研修の 質の向上の大前提を担保しながら、柔軟性をもったプログラムを大学に帰って作ってい ただくということもあり得るのではないかと思います。ですから、このモデル事業とし て、ただ単にこのように書いてありますが、各大学で積極的にカリキュラムを作ってい ただくことが、まず大事ではないかなと思います。私としては、地域における医療のコ ンソーシアルをつくるときには、やはり大学が中心になっていただかないと。これから は我が国の医療の発展のために欠かせない要因と思いますので、是非頑張っていただき たいというところです。 ○部会長  ありがとうございました。このモデル事業について、他にご意見はよろしいでしょうか。 またあれば戻るとしまして、次に2番目の「マッチング制度の対象外の取扱い」の件です。 これは、地域枠あるいは奨学金を受けている医学生については、マッチング制度の対象外 としてはどうかということです。参考のために、どのぐらいの数の学生がこれに該当する か、まず教えてください。 ○臨床研修専門官  来年度卒業する地域枠といわれている人は、4大学、38人と把握していますが、そのうち 大体20名程度は地元枠という形の地域枠ですので、実際にマッチングする場合には、か なり精査をする必要があるかと思います。現状としては、来年度の卒業生の地域枠が38 名、再来年度になりますと46名となっています。 ○部会長  補足はありますか。 ○臨床研修推進室長  大体そのような30人とか40人の規模で、いわゆる地域枠というものが設けられておりまして、 そのうち地元枠というのはその県から優先的に採用するというそれだけの地域枠と、それか ら契約などによりまして、奨学金を出すから卒業後は医師不足の医療機関で勤務してほしい という契約に基づいて、奨学金を払っているような地域枠もありますので、特に後者のほう について大体数十名、たかだかそのぐらいですが、そういう方についてはマッチングの対象 外とする、いまの自治医大と同じような対応、取扱いにしてはどうかというのが、この2番 の項目です。 ○部会長  いかがでしょうか。 ○吉田委員  これは、来年、再来年よりは、むしろ5、6年ぐらい先に非常に重要だと思いま す。これは、当然せざるを得ないのではないでしょうか。これをやることを前提に、それぞ れの地方自治体は入学のときに契約しているわけですから。 ○冨永委員  吉田委員とちょっと意見が違うのですが、現在、防衛医大と自治医大はマッチングから外れ ているということです。防衛医大は、いろいろな特殊な大学でしょうからしょうがないです が、自治医大に関しては自治医科大学の先生方と懇談会をしていましても、都道府県の方針 でマッチングになっていないというお話だったように思います。自治医科大学出身の先生方 にとっても、自分たちがマッチングしていないというのは、いささか不本意に思っておられ る方もおります。ですから、希望をその都道府県に限定し、マッチングをするという動きが 出てきています。私は滋賀県ですが、滋賀県でもやったらどうですかということで、県内に 限ってマッチングをする。宮城県でもそのような動きがあると聞いていますので、特に自治 医大は都道府県の中に限定してマッチングを行うのであれば全く問題ないと思っています。 地域枠もどこの地域枠かということにもよると思いますが、研修をしても2年間はその都道府 県内でマッチング制度に基づくマッチングをしてもいいのではないでしょうか。県外へ出て しまって帰ってこないというのがいちばん問題だと解釈して、マッチングしないと言ってお られると思いますので、県内でマッチング制度に基づいて、マッチングすれば希望の病院で 研修できると思います。 ○吉田委員  ちょっとすみません、私が舌足らずで十分な説明ができなかったので誤解を生じたかもしれ ませんが、私は大学全体が云々ということを言っているのではありません。例えば今年度か らは、5名なら5名の人たちが、県なら県の地方自治体からの奨学金を、地域枠、地方枠とし てもらって入学をしています。そのような人たちは契約ですから、当然そこでマッチングが できないです。5名なら5名だけでして、1つの大学云々ということを言っているのではあり ません。では、その5名の人はどうするのか。例えば、その地域なら地域、県なら県の然る べき所に、卒業して研修医になる前に着任するということは契約としてあるわけですので、 それでマッチングをしていたらどうなるのかなということを申し上げただけで、大学全体の ことではありません。 ○臨床研修推進室長  自治医科大学の場合にマッチングの対象外にしているときの考え方を申し上げますと、これ は自治医大の場合は卒業しますと県職員になります。県職員として、人事異動でそれぞれの 病院で研修をさせるというような考え方から、県の職員としての県庁としての裁量がしっか り働かないといけないということで、マッチングから対象外にして県が研修先を選定をして、 研修をさせるというような考え方だったと思います。ですから、それを今回契約で奨学金を もらって、県が指定する、あるいはどこかが指定する医療機関で勤務するということであれば、 それと同じ取扱いをしてはどうかという提言です。 ○吉田委員  私もそのように申し上げたつもりですが。 ○飯沼委員  日本医師会の考えというより私個人の考えですが、マッチング協議会からこの 話を聞いたときにいちばん初めに考えた感想は、ひょっとして何年か経ったときに、私立の 大きな民間病院が自分のところの奨学金を出して、そこで全部できるような大きな病院、要 するに研修もできる、そういうところの病院もこうだという話になりますと、いいお医者さ んを国がみんなで作るのだという考えからすると、これはだいぶ枠が外れてくるような気が してなりません。したがって、どこかで歯止めをしっかりつけておいていただかないと、こ ういう議論はしにくいのではないかというのが私の個人的な意見です。 ○部会長  囲い込んでしまうということですね。 ○西澤委員  議論する前提でまだまだわからないところがあるのですが、いまの説明で地域 枠はわかりますが、奨学金といった場合の奨学金を出すところがまだあやふやだと思います。 それから、マッチング制度の対象外ということですから、この臨床研修制度のルールの中で 臨床研修を受けるという前提でマッチング制度からだけ外すということだと思うのですが、 その辺りをきちんと整理していただきたいと思います。それから、やはり契約が各種契約あ るいは奨学金を出すところで、どういう契約になっているかによっても変わってくると思い ますので、少しその辺りの情報の整理も必要ではないかと思います。 ○臨床研修推進室長  ここのところに書いてありますように、奨学金制度等の内容を考慮したうえでというところ が、奨学金がどういうところを出しているのか、そしてどういう義務付けをしているのかと いうような内容を確認して、これから少し詰めて進めていきたいと思います。それから、当 然臨床研修の義務というのは、臨床を行う医師に対しては義務づけられますので、それは対 象になります。マッチングの対象外とするだけということの取扱いです。以上です。 ○冨永委員  しつこくなりますけれども、臨床研修制度はマッチングを原則やるということになっている と思います。この地域枠で奨学金を受けている方に対し、誰がどこで研修をしろと指示され るのかです。ですから、都道府県の中での奨学金であれば、そこの2、3の病院を選んで、こ ことここを受けてみたらどうですかというようなことで、これは主として県の奨学金制度を 言っておられると思いますから、県内でいくつかの病院を指定していただいて受けるという のが、マッチング制度の原則からすると、妥当でないかと思います。というのは、マッチン グ制度を受けてなくてそこに行った人は、やはりその人自身も違和感をもたれるし、マッチ ングを受けてきた研修医との間でも少し違和感があるようなことを聞いています。ですから、 自分はマッチングを受けてきちんとここに来たのだという誇りをもたせるべきではないかと 思います。県外ということになると問題があると思うのですが、当該都道府県内の病院を希 望してマッチングを行うのであれば、特に制度として差し支えはないのではないかという気 がしたものですから、このような意見を出しました。 ○部会長  ただ、現在でもマッチしなくて、例えば病院の定員が空いたときに年度末に追加して募集す る場合は、それと同じことではないでしょうか。現在でも空いていれば、マッチングの外で 採用することはできますよね。 ○冨永委員 それは、マッチングにかからなかった人が対象になります。その人はマッチングをいくつか 自分の希望されるところを受験されて、運悪くかからなかったということで空いている所と いうことになるのですが、それはマッチング制度に則っていないということとは違うと思っ ています。 ○吉田委員  県が独自に、たしか3つの病院でマッチングする、しないというのは、これはいわゆるマッ チングと違うので、2、3の県どうですかというぐらいのことで、こういうことを決めるの はそれぞれの自治体の自主で、いま冨永委員が言われるようなことがいいと、そうあるべき だということであれば、滋賀県なら滋賀県が決めるべきことだと思います。いま議論してい るマッチングというのは全国的な話ですから、全然違うと思いますが。 ○部会長  そうですね。運用面で対応できるということですね。ほかにいかがでしょうか。それでは、 3番目の「指定基準の改正」はいかがでしょうか。質の向上という観点から、ただ医師不足 地域など配慮はしつつ、経過措置を設けつつ指定基準の改正、例えば先ほど出ていました が、来年の4月1日から10床に1人という定数が決まるわけですが、これをさらに厳しくする というような考えですか。 ○臨床研修推進室長  現在は、10床に1人ということで研修医の募集定員の上限を設けています。これについて、 質の向上を図る観点から、もう少し見直しをしてはどうかということですので、特段こち らで大きな方向を考えているわけではありませんが、この場のご議論を踏まえて検討を進 めていきたいと思っています。 ○山下委員  やはり、本来これは非常に、あって然るべきであると思います。要するに、方向性という お話がありましたので、このいちばん上の文章が非常にしっくりくるのですが、2番目は 外してほしいというのが1つあります。先ほどの、研修制度をどのようにもっていくかと いう、例えば1番目のモデル事業などにも、矢崎委員からお話がありましたように、その ようなネットワークをどのように作っていくかという医療があるわけで、この会は「安心 と希望の医療確保ビジョン」を基に議論しましょうという話なのですが、9頁に地域完結型 の医療をやりましょうとあります。実質問題として、私は山形県ですが、山形県の医療は山 形大学を中心に基幹病院があって、一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏という動きをして いるわけですから、それに臨床研修が乗った形になるのが、いちばん素直にいろいろな高度 な研修ができるわけです。そこで、例えば初期臨床研修というものの病院の役割があります から、それを指定基準を下げてたくさんにしていろいろな所に行くというのは1つのオプシ ョンであるかもしれませんが、それによってここの医療が完結できるかといったら、はっき りいってできないと思います。それは要するに、難しい医療をやる人が1人もいなくなったら どうするんですかという話になります。ただ、将来に渡ってやるかどうかは別として、初期 臨床研修の間にいろいろな病気を見てくださいというのが、やはり1つの保障だと思います。 そうすると、管理型の病院というのは、かなりきつい基準を決めるのが私は筋だと思います。 400床とか、例えば前のこれのペーパーにありました救急5,000件とか、CPCは何件などです。  そこで、実際に管理型というのはきちんと全部のことをすべて網羅して勉強させられる、 要するに体系化ができる、かつ例えばこういう病気はこの病院に行けば非常によくわかるか ら、オプションによっていろいろな協力型の病院をたくさん作ると。それは、やはり日常の 臨床のシステムをそのままもってきて、実質の診療を見せて、それが例えば専門医の研修を やろうというときに全部生きてくるわけですから、ずっとつながっていくと思います。です から、この発想の中で、地域医療でどこに何人の研修医が行かなければいけないから、何床 にいくつという議論ではなくて、この医療体制の中でどういうシステムが動いていて、それ をどのようにして担保するかという議論をしていただきたいと思います。  具体的に言いますと、やはり管理型の病院というのは、東京には大きな病院がたくさんあ りますからいいのですが、地方においてはかなり数が限られてきますが、それでないと教育 の質は保障できないと思います。ですから、かなり厳しくしていただきたいと思います。ベ ッド数が400と500で、私はいいと思います。そうすると、山形県内でそれに当たる病院はい くつかという話になりますが、それだけで終わるわけではありません。要するに、ネットワ ークの中でみんなで教育して、県全体で育てていくということとマッチしたような基準を作 っていただきたいと思います。以上です。 ○部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○臨床研修推進室長  先ほど冒頭で、2番目は外してほしいというお話がありましたが、2番目というのは、ここの 文章の「運用に当たっては、医師不足地域等の臨床研修病院に対して、当面、経過措置を設 ける」ここの部分のことを言われているのですか。 ○山下委員  そうです。 ○臨床研修推進室長  わかりました。 ○部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○吉田委員  これは外さなくてはいけませんかね。 ○臨床研修推進室長  いま申し上げたのは、途中で外すとか外さないとかいうことではなくて、山下委員のご発言 の内容を確認したということです。山下委員としては外したほうがいいのではないかという お話でしたので、それも含めてまた継続的にこの場でご議論いただければと思っています。 いますぐ外すとかそういうことではありません。 ○吉田委員  わかりました。 ○部会長  例えば、現在の10床に1名を20床に1名とすれば、大都市の一部の大学病院で卒業生の倍ぐら い抱え込んでいる所を、数をぐっと縮小することができますよね。もちろん、文部科学省、 大学病院の協力をいただいての話ですが。先ほど山下委員が言われた、地域で大学病院を中 心にしてきちんとした一次から三次医療までできると思うんですよね。ただ、実際それでう まくいかない理由は、その地域の中で大学以外の病院に学生が行ってしまうということが1点 と、その地域自体の絶対数が足らないという2つの問題があると思うんですよね。したがって、 それを実現するには、いまのこのような3つの方策以外に、思い切って地域枠を設けると。つま り、東京や大阪の枠をぐっと絞ってしまうというのも、1つのやり方だと思うのですが、いかが でしょうか。 ○山下委員  我々にとっては、非常にアトラクティブなご意見ですが、ある程度は絞り込みをやっていた だきたいというのは本音ではあります。ただ、あまり私の立場でそれを言うと誘導になってし まいますので、それは声高には言いません。やはり1番目にやらなければいけないのは、矢崎 委員が最初におっしゃっていただいた、どういうカードを切ってどういうアトラクティブなプ ログラムを提示するのかと。そこの大学に行ってこういう勉強をするというのがいかにアトラ クティブかというプログラムを作って、それのコンペティションの中で勝ち残るというのが本 質だと思います。例えば、東京大学の卒業生が山形大学へ来るというのはなかなか難しいと思 いますが、少なくとも山形大学で教育を一生懸命やった人たちが地域に、山形大学に残って、 そのシステムの中でとにかく勉強すると。そのコンペティション、いまはもうマッチングがど こでも同じように受けられますから、要するに東京や仙台に行かないで、山形に残ってこの医 療の中でやるとすごくいい勉強ができるのだ、ということをアピールして残ってもらうという のが1つ大きいと思いますので、私としたら少し都会地を絞っていただくのは非常にいいこと ではあるのですが、それだけではライフスタイルという吉田委員の話にもありましたように、 大きな流れをどうやって変えていくかということの1つのファクターにはなると思いますが、 1つ言いたいのは最初に戻ってきて、例えば大学のエゴという意味ではなくて、いろいろなフ レキシビリティのある制度的に我々がいろいろなプログラムを組めるような自由度を与えてい ただきたい。その中で工夫をする。その中でいいプログラムをやるところは残っていくことが 本質ではないか。だから、1番目に帰ってくるわけですが、例えば2年間というものをどう切り 分けて、コアプログラムの到達というものを担保しながら将来に向けてのプログラムという非 常にフレキシビリティを与えていただくと、我々としたら、いわばいろいろなプログラムの内 容で勝負できるのではないかと思います。 ○西澤委員  指定基準を例えばベッド数の規模とか手術数とかいろいろ縛るのは分かりますが、ただ、それ は外から見た形だけはいいのだけれども、その条件だけでしっかりとした研修はできるのかと いうのは、議論する余地はあると思うのです。あまりそこだけガチガチにするのはどうかと。 これは少し長い時間で検討するということですので、していただきたい。いま、これから、 例えばそういう指定基準、こうしたらどうかという基準を定めたとして、現在その基準に合っ ているところで実際は研修の内容のアウトカムはどうだったか、実際受けている方々のアンケ ート調査等々での評価はどうだったか、逆に基準に合わない所ではどうだったかと比較を見な がら、問題は質のいい研修をすることですので、いままでの議論からやってきた中での実績を 見ながら考えていくことも、片方では必要ではないかと思うのです。  例えば地方などへ行くと、確かにベッド数とかの基準は満たしているけれど、逆に医師の数 がギリギリで、実際は研修医がたくさんいても、なかなか研修まで手が回らないという、そう いう状況も考えられる。私も北海道ですから、東京辺りにどんどん集まるのは、できるだけ地 方にという思いもありますが、大都会の場合は病院の形は同じであって、しかもスタッフがか なり多いということで、ある意味で研修内容から見ると、やはりそちらのほうがいいなという、 片方では思いもあります。ですから、そういうあたりのバランスを検討しながら、この指定基 準を今後きっちり考えていきたい。あくまでもいちばん大事なのは、質の高い研修をするのだ ということを常に頭に置いていただきたいと思います。 ○部会長  現在、初期研修の2年間で目指しているプライマリ・ケアを中心にした研修は、大都市でなくて も日本中どこでもできると思うのですがね、ある程度の所でしたら。 ○山口委員  基本は、いい初期研修ができるかということの基準で切っていくのが本筋であって、その意味 で言うと、今度、ようやくいろいろな改正が、来年から運用が始まるというときに、さらにそ れに加える条件をいまからまた追加を考えるというのは、少し早過ぎるのではないか。だから、 来年いろいろ、例えば臨床病理検討会はちゃんと行われているかとか、そういうことも含めて レベルをきちっと担保しようというのは来年から始まる。例えば10床当たり1人というのも、来 年からの基準なわけですから、そういうことでもう少し絞り込まれた臨床研修のレベルを見て、 そのアウトカムはどうだという話をしてから次のステップに行こうという話はわかると思うの ですが、まだ新しいのが始まる前の話なので、本当にそれでさらにそれ以上に絞り込む作業が いまの段階で本当に必要かというと、もう少し経過を見てからでもいいのではないかと思うの ですが。 ○冨永委員  いま山口委員がおっしゃいましたように、来年3月で新制度の第1期生と言われる人たちの専門 研修が修了して、4月から地域に出ていくわけですね。そういうことも見ながら弾力的に決めて いくべきではないかと。いま確かに地域において医師不足はあるわけですが、 臨床研修あるいは専門研修の期間であるよということで都会の病院に医師が多い状況となって います。専門研修修了後、その人たちがいきなり開業されることは考えられません。平成21年 以後次第に地域に普及していく傾向になると考えられます。その辺を見ながら弾力的に考えて いったらどうかと思っています。 ○部会長  いま大体3つのモデル事業と、マッチング制度の対象外の取扱いと、指定基準の方策について お話いただきましたが、その他何か、こういうやり方があるのではないかとかいうご 意見がありましたら、どうぞ。いかがですか。 ○山下委員  先ほどの答申の中にもありましたが、制度設計をするときに当事者の意見を聞くのを、どこか で事業として立ち上げておいていただきたい。それは研修を受けている人だけではなくて、終 わった人、それから、かなり終わった人が平成16年から始まっていますから、3年、4年経って いますから、そういうのを早急に調査していただいて、そういう意味での検証、受けている人 が「満足していますか」といっても、あとの振り返ってからの評価は、私はだいぶ違ってきて いると思うのです。そういう検証をすでにできる歴史を刻んでいますので、それを是非早急に 事業として取り上げていただきたいと思います。 ○部会長  田原さん、それは厚生科学研究として、たしか続いていますよね。 ○臨床研修推進室長  はい、臨床研修制度をどのように、実績を整理して、研修医等にアンケートするのはやってい ます。いまいただいたご意見のとおり全部が反映されているかどうか、そこはよく見た上で、 必要に応じてこの部会にもその結果をお知らせして、ご議論いただければと思っています。 ○部会長  その他いかがですか。まだこれは少し時間があるので、話題提供ですが、これはずっと以前議 論していたときに、いっそ地域枠を設けてはどうかという議論がありましたよね。もちろんそ の前提として質の担保ができて、これはできると思うのです、どこでも大学病院はあります、 中心としてやれば。そのときに地域枠まで行かなかった理由は何だったでしょうか。要するに 研修医の選択の自由を阻害するという理由でしたか。それはそれほど大した問題ではないです よね。2年間だけのことですし、医師という公共性のある職業ということからも言えます。大 体、国立大学の入学定員でも東京の大学入学定員が決まっていて、みんな東京の大学へ入りた いと言っても入れないわけですし、みんな虎の門病院に勤めたいと言っても勤められないわけ だから、それは構わないと思うのですが、あのとき、なぜそこまで行かなかったのでしょうか ね。  先ほどの山下委員のご意見によると、どこの県でも大学病院を中心としてきちっとネットワ ークをつくれば十分できるわけですから、各県ごとにそういう地域枠をつくってしまえば、2年 間の研修の質の担保はできて、いまの医師不足の問題も少し緩和されるのではないでしょうか。 ○山下委員  そういうふうになれたら、もし違っていたらすみませんが、議論として、例えば地域枠という のではなくて、要するに卒業生に対して病院の数が多過ぎると。まずそれを整理してくれと。 その上で実際に悲惨にも、どこかにしか入れないというのが少し辛いけれども、少しキャパシ ティを多くしてもいいけれども、そういう状態までまず減らしておいて、それから質の担保の ために病院の整理をすることで、たまたま先生がおっしゃったように定員が都会地で減ってき たというほうががいいのではないかみたいな議論になった気はします。  要するに、ここからは私の意見ですが、どの地域に何人が適正かというと、多ければ多いほど いいと、全体としてとにかく医者の数は少ないわけですから、みんな「足りませんか」と言うと 、東京ですら「足りません」ということがありますので、ある程度、ただ東京、大阪とか、そ ういう所に集中することはありますから、その辺を絞っていただくというのはいいのですが、そ れをどのように説明責任を果たすかということになりますと、必要数となるとみんな「足りな い」と言い出すような気はするのです。ですから、ある程度どれぐらいで絞っていただくかとい う議論と同時に、病院の定員や質ということと2つ併せてご議論いただくと。  何度も言いますが、我々は本当に、是非絞っていただきたいのです。都会地を絞っていただけ れば本当にありがたいのです。ただ、それで縛ることが本当に将来の医療にわたってどういう意 味があるかを考えた場合には、正論として、質の担保をするために、というほうが説明しやすい のではないか。特に医学生に対して説明しやすいのではないかとは思います。 ○部会長  特に実際は、先ほどの資料4の今年3月31日の医政局医事課長通知の「募集定員数の適正化につい て」は、2頁目の5の所では言っているのです。「研修医の募集定員数が多い都道府県にある臨床 研修病院等については、募集定員数の適正化を図ること。特に研修医の採用数が多くかつ医療施 設に従事する医師数が多い都道府県にある臨床研修病院等については、その削減に努めること」 という通知は出ていますので、これがどの程度の効果を発揮するかはある程度わかると思いますが。 ○西澤委員  関連します資料7ですが、たしか前回検討のときに、募集定員数について都会から少し減らすべき といった所、おそらく東京、大阪等ですが、これは平成15年から見たら、東京は明らかに300何十、 大幅に減っていって、決して都会に集まっていないのだと。北海道が非常に悲惨だと言われながら も、研修医数だけ見たら実は平成15年よりも増えているのだと。しかしながら、北海道の医師不足 は、当時より非常に厳しくなっている。そうすると、研修医の数だけの問題では決してないという ことで、どうしてもほかの要因も考えながら議論していかないと、いまの医師不足の問題はどうし ようもないのだろうと思います。その中でいまの研修医の地域枠を指定、もっと地方に地域枠を置 けといっても、北海道、東北などは多くなっているわけですから、実際どうするのかと、これはか なり難しい議論ではないかと思います。 ○山口委員  これは地域の医師不足の話がいちばんの根幹になると思うのですが、地域枠を設けることは、地域 枠で研修医をその地域にとどめたら、その人たちが後期研修もその地域に残る率が高いという前提 のお話ですよね。本当にそうでしょうか。だから、是非、データとして初期研修を終わった人たち がそのままその地域に残るのかどうか。無理やりその2年間をある程度制限したとしても、医師不足 にいちばん関係あるのは後期研修以後の医師がどうするかという話で、研修医ではないのですよね。 だから、そこのところは研修医をある地域にとどめたら、そのあとはそれで事が解決するというふ うには、そういうきっかけの1つには当然なるとは思うのだけれども、その辺のところがもうひとつ 違うのかと。  むしろ地域枠を設けるのであれば、本当の地域枠は、例えばそうやって2年間をそこにやったとし ても、東京出身の人が地方の大学に行ってまた東京に帰るのを止めることは、なかなか難しかろう と思うのです。そうすると、むしろ地域枠のいちばん最初の、先ほどあった地域での大学の入学の ときから地域枠みたいな話は、それは地域にとどまる可能性は高いと思いますが、卒業した時だけ の2年間の枠の規制をはめたとしても、それが地域に医師がずっと残ることにつながるかどうかとい うと、実際、数字としてどうでしょうか、データがあれば是非知りたいと思うのですが。 ○部会長  ですから、おそらく初期の2年間もいないようではどうしようもないと。ですから、2年間をきっかけ にして、その間に人間関係もできて、ここもいい所だなということになれば残るのではないかと、そ ういうチャンスが欲しいと、そういうことですよね。 ○冨永委員  山口委員がおっしゃったように、滋賀県では初期研修では80人ぐらいいるのですが、専門研修になり ますと6割、7割ぐらいになります。それは大学とのタスキ掛けもあると思うのですが。滋賀県では後 期研修にいかに残ってもらうかということで、県・大学・病院が連携していろいろ考えているところ です。おっしゃるように、専門研修にどれだけ残っていただくかによって、その都道府県の医療の質 も量も担保できるかどうかが決まってきます。それと大学によっては都道府県を越えていろいろ派遣 していただいている大学もありますので、都道府県の人口等によって研修医の数を制限してしまうの は少し問題があるかもしれません。 ○吉田委員  多少この議論から外れたことをお尋ねするかもしれませんが、「安心と希望の医療確保ビジョン」の 中にありますように、「医療従事者と患者・家族の協働の推進」で「医療の公共性に関する認識」と いう所があります、いわゆるコンビニ受診ということで。先ほどの医師不足の話で大都会と地域と地 方と呼ばれている所と、一般の方々の、患者・家族と国民の認識、大都会における認識と地方におけ る認識との差はありませんか、私は全く知らないのだけれども。医師不足を議論するときに、こうい う認識に差がないのかということを私は前から疑問に思っているのです。これは全く印象を申し上げ るのですが、地域における、地方におけるこういった認識は、私は希薄であるのではないかという気 がするのです、都会と比べると。どちらだと言えば、地域のほうがコンビニ受診は多いのではないか と、という気がしているのですが、そういうデータはありませんか、田原さん。 ○臨床研修推進室長  私のほうでは持ち合わせてはいません。 ○部会長  飯沼委員、日本医師会はそういうデータはないですか。 ○飯沼委員 難しいね、それは。私は先生と意見が逆で。田舎へ行くほど基幹病院の先生方と地域の人たちとはコ ミュニケーションがいいのではないかと思います。病診連携とかそういうのは、田舎へ行くほどしっ かりやらないと、地域完結型の医療は当然できないわけですし、医療圏をまたいででも仲良しにやろ うと、医療提供者はそうなってきますから、患者も「ああ、これは医療圏が違うけれども送ってくれ るんだな」と、そういう雰囲気になる、そういう心構えといったら田舎のほうがあるのではないですか。 ○吉田委員  ごめんなさい、これは少し話が横道に外れてしまいましたが、どうも気になっていたものだからついでに。 ○矢崎委員 先ほどのたたき台に戻って(3)ですが、これは臨床研修の質の向上を図る視点から、前から議論があ ったように、例えばベッドではなくて、患者数、救急の数、産科の数など、そういうのをもう少し見 直したほうがいいと思うのです。ただ、これは見直したばかりですので、この間はずいぶんCPCをやる とかそういうことで供しましたが。だから、これはもう少しじっくり、先ほどお話があったように、 この結果どうかを検証しながらこの基準の改正は考えていきたいと私は思うのですが、そういう方向 性はこの会で示すのは大事かと思います。  いまのマッチングのあり方ですが、私も齋藤部会長がおっしゃるように、最初の段階でもう少し全 国ではなくて少し地域でマッチングしたらどうかという話を申し上げた記憶があるのですが、そのと きに多くの先生方から当初は反対のご意見がありました。いま状況がずいぶん違ってきたので、県単 位では無理だったら、いま道州制の議論がありますので、少し広い範囲でマッチングしたらどうかと いうことです。  また1に戻りますが、地域で1つのネットワークをつくって医療を行っていく場合には、最初の初期 臨床研修生がそこにいないと、齋藤部会長が言われたまず始まらないということで、大学を中心に体 力のある所に少しご努力いただいて、ともかく初期臨床研修の方を集めていただくのがポイントだと 思います。ただ、マッチングを根本的に変えるとなると、新しい、入学した人から宣言していないと、 途中でやるとなかなか難しいのではないかと。ですから、これも将来を見越して方向性としてこの委 員会でこういう意見で検討していただいて、大学のほうである程度議論していただいて、そういう新 たに入学する人から、いま医師数増加という議論がずいぶんありますので、そのときにこの機を捉え て新しく入学する方に、では自分がどういう方向で医療を担っていくかを認識していただくとしない で、ただいまのままで医師数を増やしていくと、また混乱が起こってくると思いますので、定員を増 やすときに、この臨床研修制度も含めてしっかり方向性を考えていただかないといけないというので、 医師数を増加するときにはいまの話をきっちり付けていただかないと、私は少し不安なので、是非、 それをお願いしたい。  (2)にまた戻ってしまいますが、いま気がついたのですが、文章が「就職先を限定した地域枠」とか、 少し誤解を招くのではないでしょうか。先ほど囲い込みとかそういう話になるので、もう少し考えた。 「マッチング制度の対象外」といったときに、マッチング制度が全然なくて、研修医と病院との契約で できてしまう感じがあるので、そういう場合にはいまのマッチング制度と違う仕組みを考えるということ で、先ほど新しく増やす方とか、あるいはそれを機会に大学でもよくご検討いただいて、マッチング制度 のあり方、それをペアにしていただかないと。ただ、単に対象外というと、いろいろな副作用も起こると 思いますので、ですから(2)の文章を少しこの会で練り直していただければと思います。 ○部会長  大変貴重なご意見をありがとうございました。特に医師数増加との絡みで臨床研修制度、あるいはマッチ ングのあり方は、非常に重要なポイントになるかと思います。ほかにいかがですか。そうしますと、皆さ ま方のご意見では、(1)、(2)については基本的にたたき台の内容で細かい字句の修正を行った上で早 急に取り組むということで、来年の4月からということですね。(3)につきましては、つまり指定基準の 改正につきましては、今後継続的に議論していくということでよろしいですか。                   (了承) ○部会長  ありがとうございました。議事の2の「その他」、事務局から何かありますか。 ○臨床研修推進室長  こちらからは「その他」では特段ありませんが、もしほかにありましたらご意見をいただいて、その後、 全体としましては、本日ご議論いただきました点につきまして、委員の先生方のご意見を踏まえまして、 引き続き制度の見直しを進めてまいりたいと考えています。事務局としてはそういう考えです。 ○部会長  ほかに何か最後の一言を言いたいという方がおられましたら、どうぞ。よろしいですか。 どうもありがとうございました。 (照会先)                   厚生労働省医政局医事課                      医師臨床研修推進室                    (代表)03−5253−1111                   (内線4123)