08/07/11 第3回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会議事録 第3回精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会 平成20年7月11日(金)15:00〜16:51 金融庁共用第1特別会議室 ○京極座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「精神保健福祉士の 養成の在り方等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様にはお忙しいところ御 参集いただきましてありがとうございます。  まず事務局から報告事項をお願いいたします。 ○川田障害保健係長 それでは報告させていただきます。このたび、事務局に異動がござ いましたので紹介をさせていただきます。  本日7月11日付で、障害保健福祉部長に木倉が就任しております。本来であれば、ご挨 拶を申し上げるところではございますが、本日は他の業務と重なったため、誠に恐縮では ございますが、欠席させていただいております。次回、改めて御挨拶させていただきます。  続きまして、7月1日付で障害保健対策指導官に就任しました塚本でございます。 ○塚本障害保健対策指導官 塚本です。よろしくお願いします。 ○川田障害保健係長 同じく、精神・障害保健課課長補佐の林でございます。 ○林課長補佐 林でございます。よろしくお願いいたします。 ○川田障害保健係長 同じく、障害保健専門官の吉川でございます。 ○吉川障害保健専門官 吉川でございます。よろしくお願いいたします。 ○川田障害保健係長 続きまして、本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。 谷野構成員が所用により少し遅れての出席と御連絡いただいております。  報告事項は以上でございます。 ○京極座長 それでは、続いて資料の確認を行いたいと思います。事務局よりよろしくお 願いいたします。 ○川田障害保健係長 本日の資料の確認をさせていただきます。  まず議事次第、座席表、構成員名簿。  資料1、「今後の検討会スケジュールについて(案)」。  資料2−1、「求められる精神保健福祉士の役割について(案)」。  資料2−2、「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する勉強会における主な意見」。  参考資料 「官報(平成20年5月12日)」。  資料の不足、乱丁等ございましたら事務局までお申し出ください。  資料の確認は以上でございます。 ○京極座長 これから議事に入りますけれども、本日は2つのテーマがございます。1つ は「今後の検討会スケジュールについて」、もう一つは「求められる精神保健福祉士の役割 について」というテーマでございます。  まず事務局より資料に沿って御説明いただきまして議論していきたいと思います。よろ しくお願いします。 ○川田障害保健係長 資料1、「今後の検討会スケジュールについて(案)」から御説明申 し上げます。  まず3ページをごらんください。平成19年12月に開催しました第1回検討会におきま して、検討の進め方の(案)としてお示しした資料でございます。当初の考え方では、20 年1月の第2回検討会までに先行して見直しを行う必要のある社会福祉士との共通科目を 整理しまして、関係する省令、告示、通知の改正を行い、その後、共通科目の範囲の拡大、 専門科目の検討、実習の在り方やその他の事項につきまして議論をし、また、具体的なカ リキュラムの作成に当たってはワーキングチームを設置し、検討会と並行しまして作業を 進めていき、20年7月を目途としまして検討会報告書を取りまとめると考えておりました。  御承知のとおり、当初の検討の進め方からは大分状況が変わってきておりますので、今 回改めて検討の進め方を整理しお示しする資料でございます。1ページをごらんください。  こちらにつきましては、検討会設置以降のこれまでの経過をまとめてお示ししておりま す。3月13日に開催しました第2回の検討会におきまして、社会福祉士との共通科目の整 理を行っております。  その後、この共通科目に関する省令等の改正に関する手続を行い、5月12日に公布をし ております。  また、第2回検討会での座長からの御提案により、第3回、本日の検討会を前に、現に 精神保健福祉士を雇用する立場の方々等に御参画をいただき、どのような見直しを今後行 っていくべきなのか、考え方を整理するために、4月18日に第1回の勉強会を、6月2日 に第2回の勉強会を開催したところでございまして、これまでの経過でございます。  1枚おめくりいただきまして、2ページをごらんください。  今後の検討会のスケジュール案でございますが、検討テーマを教育カリキュラム以外の ものと、教育カリキュラムに関するものと大きく2つに分けてお示しをしております。教 育カリキュラムに関しましては、法律の改正を伴わない内容となりますので、まず法律の 改正が必要となる内容について議論をさせていただきたいと考えております。  そこで、本日第3回の検討会においては、養成の在り方を検討する上で、まず何を目標 として養成をしていくのかを明確にする必要があることから、求められる精神保健福祉士 の役割について議論をさせていただきたいと考えております。その後、求められる精神保 健福祉士を養成するためには、現在の養成課程において何が不足しているのか、また、何 を今後強化して養成していけばいいのかという点を整理するために、第4回の検討会では 強化すべきポイントについて議論をさせていただきたいと考えております。  続く第5回の検討会では、検討テーマをその他としまして、第3回、第4回の検討会に おいて議論されなかった内容に関して、特に議論すべき点があれば、この第5回の検討会 において議論していただきたいと考えております。  第6回の検討会では、5回までの議論を踏まえまして、これらの中間的なまとめに関す る議論を行い、第7回の検討会においては、この中間まとめを固めたいと考えております。  その後、社会保障審議会の障害者部会に報告を行いまして、法律の改正案を作成し、平 成21年の通常国会に提出したいと考えております。  また、共通科目の拡大、専門科目などのカリキュラムの具体的な内容に関しましては、 年明け以降を目途としまして検討を開始する予定でございます。必要に応じまして、ワー キングチームを設置し並行して検討を進めていきたいと考えております。  第2回までの検討会でも、構成員の皆様方よりかなり御意見が出ていましたことから、 少しこの点につきましては時間をかけて議論をする必要があると考えてございます。  検討会の回数ですとか、期間につきましては、今後の進捗状況を見ながら、改めて整理 させていただき、お示ししたいと考えております。  今後のスケジュールにつきましては、このような考え方に基づき検討を進めさせていた だきたいと考えております。  以上が、資料1に関する説明でございます。 ○京極座長 どうもありがとうございました。ただいまの説明について御意見や御質問の ある構成員の方は挙手をしてお願いいたします。若干当初の予定よりは延びたということ で、ただ、法案作成と関係してくるということで、状況はちょっと変化したと思うのです けれども、御質問ございますか。 ○大塚構成員 大塚です。質問ではなくて感謝というか、初めて「法改正」という言葉を いただいたスケジュールをきょうお聞かせいただきまして本当に心強く思っております。 これから私たちのほうもそこの準備を進めていかなければいけないということだと思いま すので、改めてしっかり検討の場に着かせていただきたいと思っています。ありがとうご ざいます。 ○京極座長 いかがでしょう。これから月1回の議論になりますので。どうぞ。 ○新保構成員 新保ですが、勉強不足で申し訳ないのですが、突然法改正、ありがとうご ざいますと言われたのですが、何の法改正をするのかを聞いておりませんので、若干の御 説明をしていただきたいと思います。 ○福島精神・障害保健課長 法改正については、これから2つ目のテーマであります「求 められる精神保健福祉士の役割について」御議論いただき、それについて法律上の手当て をしなければいけない点。それから、その役割のところで不足している部分、強化すべき ところをどういうふうにするかという手段ということを明らかにする中で、法改正が必要 になるものがあれば、そこを法改正にのせていくということでございますので、法改正あ りきということではありませんが、逆にいえば法改正をしないということを前提としてい ないということでございまして、そういう面では、きょうのこれからの次のテーマにおけ る議論、次回、次々回の御議論でそこは固めていただくということで考えております。 ○新保構成員 今お話いただいたのですが、どの法律を改正するというお話はなかったの ですが、簡単に今の説明の中から理解できることは、求められる役割について検討してい くということは、必然的に対象規定をどうするのかとかといった課題が出てくるのだろう と思います。  例えば役割の拡がりというようなこともございますが、そういった中でPSWが担うべ き対象者が、これまでの法律でいきますと精神科病院や社会復帰施設等における主治医の いる精神障害者、こういうことになっておりましたですね。ですからこういった文言を変 えていくということを念頭に置いているのでしょうか。 ○福島精神・障害保健課長 まさにそれが活動の場の拡がりというものをどう考えるのか ということにほかならないわけで、それは次のテーマで御議論いただきたい。もしそうい った位置づけをしていくべき、活動の範囲の拡がりを踏まえた、特に法律的にいえば、第 2条に精神保健福祉士の定義がありますけれども、そこのところの具体的には書きぶりを 変える必要があるのかどうかということにつながっていくわけだと思います。そこは逆に いえば、それこそきょうの後半の御議論の中で、もうちょっとその議論は深めていただけ ればと考えております。 ○新保構成員 どうもありがとうございました。 ○京極座長 社会福祉士法及び介護福祉法はあまり大きな法改正をしないつもりだったの ですけれども、議論していく中で、現代的なものに合わせようということで変えまして、 その結果、はね返りがあってシラバス等随分変わって、共通科目については少なくとも精 神保健福祉士にも影響を及ぼしたわけですが、専門科目も含めて今後の精神保健福祉士に 期待されるものはなんぞやということを、10年たちましたので検討して、今、課長がおっ しゃったようなことで、必要があれば法改正を行うと。法改正に関係するテーマと法改正 に関係しないテーマ、2つに一応分かれてくると思いますけれども、今のところとりあえ ず議論をしていくことがまず先にありきということなので、よろしくお願いしたいと思い ますが、ほかにどうでしょうか。もしよろしければ、第2の議題に入りたいと思います。  続きまして、資料2−1、「求められる精神保健福祉士の役割について」、資料2−2「精 神保健福祉士の養成の在り方等に関する勉強会における主な意見」について御説明をいた だきたいと思います。 ○川田障害保健係長 それでは、続きまして資料2−1「求められる精神保健福祉士の役 割について(案)」及び資料2−2「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する勉強会にお ける主な意見」につきまして御説明申し上げます。  まず資料2−2「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する勉強会における主な意見」 をごらんください。先ほどの資料1でも説明をしておりますとおり、本日第3回検討会を 開催する前に2回の勉強会を開催しております。この勉強会での御意見をまとめた資料で ございます。  勉強会に御参画いただいた方々からの御意見を項目で整理しておりまして、まず制度創 設当時との比較に関する御意見と、次に養成の在り方を検討するに当たっての御意見、こ の項目につきましては、さらに3つに細分化して整理をしておりまして、1つ目に考え方 に関する御意見、2つ目に求められる精神保健福祉士の役割に関する御意見、3つ目に強 化すべきポイントに関する御意見としまして整理をさせていただいております。なお、最 後のページには勉強会の概要を添付させていただいております。  この勉強会での御意見をもとに、本日御議論いただきたいテーマでございます。「求めら れる精神保健福祉士の役割について」、資料2−1のとおり、事務局において案を作成して おります。適宜資料2−2を参照していただければと思います。  それでは、資料2−1「求められる精神保健福祉士の役割について(案)」の1ページ、 こちらをごらんください。この10年間での精神保健福祉士の役割の変化でございますが、 大きく3つの変化があったと考えられます。  まず1つ目に、ノーマライゼーションの理念に基づき、相談援助にかかる技術の拡がり があったということ。  2つ目に、精神保健の課題の拡がりに伴う活動範囲の拡大があったということ。  3つ目に、精神保健の課題の拡大や活動範囲の拡大に伴う求められる支援の多様化があ ったという点でございます。  これを絵にし、細かく説明したものが下にございますが、10年前と現在を比較しますと、 まず背景としまして、入院医療中心から地域生活中心へと精神障害者の方々に対する支援 の在り方が転換をしていると。また、国民の精神保健の課題が拡大している状況にござい ます。このような中、10年前は相談援助に関しまして直接的援助技術を中心としていたも のが、現在ではこれに加え、間接的な援助技術を含む包括的な相談援助といった相談援助 にかかる技術の拡がりがございました。また、主に医療機関や社会復帰施設において、統 合失調症の方を対象に活動しておりましたが、従来の活動領域に加えまして、行政、司法、 教育、労働分野等活動の範囲が拡がっております。  また、この活動範囲の拡大や、精神保健の課題の拡大により、うつ病などの気分障害な どの対応といった求められる支援の多様化というものがございました。  このような変化を踏まえまして、求められる精神保健福祉士の役割を3つに整理してお ります。1枚おめくりいただきまして2ページをごらんください。  まず、求められる精神保健福祉士の役割の1つ目に精神障害者の方々の退院促進・地域 移行及び地域定着のための支援を行う役割としまして、具体的には矢印の下にございます とおり、精神障害者の疾患の特性を踏まえ、対象者の権利擁護や主体性を尊重した個別相 談援助・集団相談援助のほか、コーディネート機能も含む、包括的な相談援助を適切に行 うことが求められている。  現在、精神障害者の支援のあり方は、入院医療中心から地域生活中心へと転換している ことを踏まえ、医療機関において長期入院患者をはじめとした入院をしている精神障害者 の退院促進・地域移行を行うとともに、在宅医療・福祉サービスの調整、住居の確保、就 労支援など精神障害者が安定して地域生活を送るための総合的なケアマネジメントを担う 役割。  そして、もう一つが、精神障害者が安心して地域生活を送るため、地域住民に精神障害 者の理解を求めるとともに、他職種・関係機関と連携し、必要な社会資源を整備、開発す るためにコミュニティワークの技術を駆使し、地域づくりを行う役割。  ということでまとめてございます。  1枚おめくりいただきまして、3ページをごらんください。  次に求められる精神保健福祉士の役割の2つ目に、職域の拡大に伴う新たな役割としま して、具体的には矢印の下にございますとおり、行政に関する分野においては、精神保健 福祉センター、保健所に加え、市町村等において、精神保健福祉法や障害者自立支援法に 基づき、地域の精神保健医療福祉施策を推進する専門職種。  司法に関する分野におきましては、心神喪失者等医療観察法の対象者の地域ケアに携わ る医療機関等の業務が円滑的かつ効果的に行われるようコーディネーター役となる社会復 帰調整官。  福祉の立場から専門的知識に基づき、社会復帰に関する意見を述べる精神保健参与員。  また、指定入院医療機関及び指定通院医療機関や矯正施設において、他職種と連携を図 りながら、社会復帰の早期実現のための支援を行う専門職種。  また、教育に関する分野におきましては、学校等において、いじめや不登校、教員の精 神疾患罹患者の増加などを背景に環境調整等のマネジメントやコーディネート機能を求め られるスクールソーシャルワーカー。  また、地域において学齢期の発達障害者等に対する学校等教育機関との調整を図る専門 職種。  労働に関する分野におきましては、ハローワーク等において、精神障害者の求職者に対 して、精神症状に配慮したカウンセリングを行いながら就労支援を行う精神障害者就職サ ポーター等。  また、産業保健領域におきましては、人事担当労務者・職場上司との調整や労働者本人 の権利を擁護し、意思を代弁し、職場復帰支援などを行う専門職種。  このようにまとめてございます。  1枚おめくりいただきまして4ページをごらんください。  最後に精神保健福祉士の役割の3つ目としまして、支援の多様化に伴う新たな役割とし まして、具体的には矢印の下にございますとおり、近年、精神疾患を有する者が300万人 を超えるなど、精神保健に関する課題が増大し、精神保健福祉士の活動する範囲が拡大す る中、これまでの統合失調症のみならず、うつ病等の気分障害・ストレス性障害、認知症 や発達障害など各々の疾患に対して、固有の特性を踏まえた適切な対応も求められている。  そして、その下に、※印としまして、これは勉強会におきまして、非常に御意見があっ たのでこちらのほうに書かせていただいております。現在は、精神障害者への支援に加え、 精神疾患の早期対応を図るための心の健康づくりに関する役割というものも求められるの ではないかという御意見があったのですが、この役割については、行政機関、精神保健福 祉士を含む専門職種等、精神保健分野で活動する全ての者の責務と整理をさせていただい てございます。  以上が、資料2に関します説明でございます。 ○京極座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明について、御意 見や御質問のある構成員は手を挙げてお願いいたします。最初に本構成員のうち、お三方 が参加されていますけれども、補足することがありましたら、寺谷先生、大塚先生、石川 先生お願いします。 ○寺谷構成員 今の事務局のほうから御説明いただきました中で、私自身の関心のところ も踏まえながら、資料2−1の1ページの図式化された3つのポイントのうち、1番目の ところでしょうか、「相談援助にかかる技術の拡がり」のところですが、ちょっと細かい指 摘で恐縮ですけれども、「直接的援助技術に加え、間接的」という言葉が入っておりますけ れども、この件に関しましては、既に直接的、間接的な援助技術というのは、ソーシャル ワークの基本的な援助技術としてずっと歴史を積んでまいりました。近年においては、直 接的、間接的な援助技術の蓄積の発展の中でコーディネートやコンサルタントですとか、 サポートネットワーク、マネジメント、という関連技術がかなり中心的な技術として求め られているように、地域の中で実践しておりますと感じております。  それともう一つは、「求められる支援の多様化」の中で、疾病の多様性に関連して、かか わりの多様化があり、これに加えて予防的な観点に立って地域で支援活動を展開する役割 が求められていると考えます。サービスにつながらない人たちの存在が地域の中で発見さ れていることも事実で、医療を必要とする住民の方々が、福祉のサービスにつながり、身 近にして心の健康や生活の回復を求めて、地域の人たちと一緒に手を取り合うネットワー キングが拡がってきていることを実感いたします。  こんなところで、疾病の拡がりというよりも、むしろ早期発見の第1次予防というとこ ろが地域活動の進展の中で求められているのではないかと思います。 ○京極座長 ありがとうございました。石川構成員のほうで何かございましたら。 ○石川構成員 この資料2−2の最後にそれぞれ精神科の先生方が御発言をいただいたの ですが、精神保健福祉士がいることがとても重要であるという大変熱いメッセージを皆様 から送っていただけたと、こんな印象を強くしております。つまり精神保健福祉士の仕事 のしやすい環境をどうつくるかというところが第1回目の議論では随分大きく取り上げら れたように思っております。  そうした中で、今の寺谷先生のお話のように、「入院医療中心から地域生活中心」という、 ここの「から」というところは経過ではそうなのですが、もう既に地域で活動しなければ いかんと。地域で活動できるような条件をどう整えることができるのかというところが実 は役割を発揮する上で重要ではないかと。ですから方法技術という方法論でいえば、マネ ジメントであるとか、コーディネートである役割機能をより強く求められているというお 話に焦点化されていたかなと、こんなふうに思っております。  もうほぼここにまとめられた内容でよろしいのですが、私はあえて印象でプラスをさせ ていただいておりますが、ただ、ちょっと足りなかったのかなといいますのは、先ほど疾 病の拡がりということよりも、日本の少子高齢化している状況の中で政策的に対応しなけ ればならない大きな課題というあたりはきちんと押さえていくべきだというお話の中で、 予防ということもあったのではないかなと。その中では、この役割の中にも書かれており ますけれども、私、団塊の世代なのですが、この団塊の世代が認知症になっていく、社会 保障・人口問題研究所の推計の新聞報道によりますと、相当量、これは政策的な大きな課 題と、こういうことになってきたときに、誰がそれを対応できるのかというあたりの問題 や、いわゆる自殺予防対策等につきましてもPSWがかかわってきているという実績も 徐々に積み上げられてきておりますし、そうした専門性を発揮できる場面と、こういう組 みかえ方を何とかできないものかという印象を持った次第です。 ○京極座長 それでは大塚構成員。 ○大塚構成員 2回の勉強会に出させていただきまして、今、石川先生が言われたのと全 く同じような印象だったのですが、精神科医の皆さんを中心に、役に立ってないじゃない かと叱責を受けるのではないかと思いながら参加したのですが、幸運にももっともっと必 要だというお話をいただいて、本当に活躍できるような環境づくりと、また、環境づくり も必要だし、同時に質を高めていくことが必要だということを随分応援をいただいた勉強 会だったなとありがたく思っています。  私も石川先生や寺谷先生と同じなのですが、書きぶりが、最初の1ページの(1)から(3)の ところの上に文章として書かれているところはこれでいいかなと思うのですが、下の図に なりますと、ちょっと狭い書かれ方になってしまっているかなと考えています。本当に石 川先生がおっしゃるように、政策として、今、介護でも児童虐待でも労災でも全て予防が 重視されていくような政策の打たれ方がしている中では、予防に関して、特に普及啓発で あるとか、予防とか、そして実際の介入、その後の医療や福祉を活用した地域生活を支援 していくというところがずっとトータルで重要であるというような政策に変わってきてい ると認識していますので、まさにそこを保健や医療や福祉のところにまたがっている専門 職種として、政策的な認識が拡がってきていて、そこにきちんと応え得る役割を持ってい るものとして、改めてこの拡がりを認識した見直しを図っていくというようなことがあら われるような書きぶりにしていただけたら大変ありがたいなと思っているところです。 ○京極座長 具体的にこうしたらいいというのはありましたら。 ○大塚構成員 寺谷先生と同じで「間接的援助技術」というところはぜひ拡げていただき たいと思います。あと、最後のページが、どうしてもそこでひっかかってしまったのです が、「※」で書いていただいたところが、まさに勉強会でも随分出ていたわけですが、予防 という観点とかを大事にすると、「心の健康づくり」という、狭い意味での精神疾患罹患者 とか精神障害者ということではなくて、国民全てを対象にして心の健康づくりというとこ ろにきちんと役に立つ形で考えていくことによって、逆にいえば、その後の対応も十分可 能になるのだというところを考えたときに、ぜひ精神保健福祉士が心の健康づくりに関す る役割を持っているという書き方をして何かいただけたらよかったなと思っています。  ほかの精神保健分野で活動する人たちももちろんそうであるという、ここの表現がもう 少し逆説的じゃないというか、ストレートな書きぶりにならないかしらと思うところでし た。どう書いたらいいというのは具体的にちょっとわからないのですが。 ○京極座長 全ての者の責務であるが、精神保健福祉士の役割はその中でも重要な役割を 果たしているという、逆に書くとよかったのかもしれないですけど、それは座長の余計な 発言かもしれません。  いずれにしても、大変よくまとまった議論だと思いますが、構成員でない方は、きょう ここでしか発言できませんので、御自由に御発言いただきたいと思います。この勉強会で 出たけど、後でいろいろ考えたら、こういうところはもっと強調すべきだったということ がありましたら、それはそれでまた御意見いただきたいと思いますので、よろしくお願い します。古川先生のほうから、印象でも所感でも構いませんので。 ○古川構成員 先ほどからの御発言を伺いながら大変興味深く受けとめていたところでご ざいます。確かに要約の仕方がもうちょっと拡がりを持ったほうがよかったのかなという 点は私も同感でございまして、全体の流れはこういうことでいいかなと思いますが、間接 的援助技術というのは、これはこれで、またある種の特定された中身がありますので、取 り上げていることからするともうちょっと広い、寺谷先生おっしゃっていたように、コー ディネート機能とか、ケアマネジメントも間接的というと、伝統的な「間接的」という言 葉の使い方からするとケアマネジメントは入らないということになってしまいますのでそ のあたりが少しお考えをいただいたほうがいいかなという感じを持っております。  最後の「※」のところについては、さて、これはどのように受けとめたらいいのだろう かという若干関心持って伺っていたのですけれども、国民全体の心の健康という言い方に 近くなると、精神保健福祉士の役割というにはちょっと、そこの中の一部分を受け持つと いうことになろうかなという感じがしますけれども、「予防的な」というところに力点を置 くと、これは精神保健福祉士の役割としてもうちょっと前面に出していいのではないかと、 そういう印象がございます。  また、後で気がついたところがありましたら発言をさせていただきたいと思いますが、 とりあえずはこれくらいにいたします。 ○京極座長 この予防の中には再発予防も入っているのですね。初めて発症するという方 もいるし、精神障害の方というのはかなりよくなったり悪くなったり、そういうことあり ますので。 ○福島精神・障害保健課長 「心の健康づくり」という言い方をした場合にとらえ方が人 によってかなり違いがあり、1次予防的な、ないしは環境、すなわちヘルスプロモーショ ン的なとらえ方をする人たちもいらっしゃるし、今、座長が御指摘のように、再発防止と いいますか、3次予防的なもの、あるいは2次予防も含めて議論はあるわけで、そういう 面で、完全な1次予防ないしはヘルスプロモーションという話になると、これはもっとい ろんな拡がりを持って議論をしなければいけないだろうと思います。例えば問題を持って いる人たちが医療に結びついていない、そういうものを早く結びつける、あるいは少し変 調があったときに医療に結びつけて、というような業務は、これは2次予防的な多分とら え方をすべきだろうと思います。  そういう観点での業務ということであれば、確かに今やっている仕事の領域の拡がりを 踏まえますと、そういうことは業務として位置づけて議論はできると思いますけれども、 さて広くという話になると、それは逆に言うと、いろんな形でのほかの職種との関係もあ りますし、それを精神保健福祉士法でどう位置づけるのかという問題、ほかの法律の中で 書き込むべきなのかどうか、そういう議論になりますので、我々はどうしても精神保健福 祉士法の改正が必要なものがどういうものがあるかというとらえ方で議論をしています。 もちろん精神保健福祉法の議論は、また今やっております「今後の精神保健医療福祉のあ り方等に関する検討会」のほうでも議論をしなければいけないと思いますけれども、そう いう中でとらえられるものは、そのほうの法改正、自立支援法の法改正と同時に、ないし は別かどうかわかりませんが、そういうところで議論をすべきと思っておりまして、そう いう面で、我々が思うところは、心の健康づくりをかなり広い、1次予防的なもののとら え方をしておるものですから、そういう書き方をしています。  今おっしゃったような議論であれば、また少し書きぶりは違ってくるかなと思います。 ただ、それをどのように書き込むか、実際にそういう議論になったときに書き込むかどう か。もともと精神保健福祉士法の目的自体が「精神保健福祉士の資格を定めて、その業務 の適正を図り、もって精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進に寄与することを目的 とする」と、最初に実は定義がされていて、であれば、さてどうするのかと。次に定義の ところに実際の具体的業務が書いてあるのですけど、そこのところからすると、もともと の目的の中には既に入っているし、わざわざここに書き込むこともないかなとも思えるの ですが、そこら辺、また少し御議論をさせていただければと思います。具体的にどういう 業務をするのかという話とからめて御議論をいただければと思っています。それは次回以 降にと思っています。 ○京極座長 わかりました。鹿島構成員。 ○鹿島構成員 関連したことですけど、今、お話の出ましたとおり、精神保健福祉士の方 がいろいろと多方面にやっていただくのは全く賛成です。ただ、ほかの職種との関連、役 割分担で重なることがあるのではないかという点がどうかということがあります。  また、先程、予防の話が出ましたけれども、啓蒙教育活動はぜひやっていただきたいの ですけど、特に統合失調症では、ごく初期の介入というのがいろいろと難しい面もあるの で、その辺も踏まえて、どこまで入るかということがあります。  他の職種との関係についてはこの検討会で、次回以後に整理されるのだろうと思ってお ります。 ○京極座長 新保構成員どうぞ。 ○新保構成員 私は勉強会には参加していませんので、きょう聞くことがたくさんあるも のですから、聞き間違いもあると困るので確認させて頂きますが、この資料2−1の1ペ ージの文言からいくと、制度施行から10年、その役割が変化してきたのだといってます。 こういう文脈からすると、ここで技術の拡がりはどういう形で技術が拡がってきたのか、 あるいはこの10年でどのような理由から技術の広がりが生じてきたのか、それは対象者の 変化なのか、制度施策上の変化なのか、こういったことをちゃんと見ていかなければいけ ないのだろうと思うのですね。  例えば先ほど来、お話を聞いていてもよく理解ができないのは、簡単にいえば、メンタ ルヘルスに関する国民ニーズが変化してきて、そこに精神保健福祉士の役割が必要とされ るようになってきたのか、あるいは精神疾患にかかわる疾病構造の多様化によってその結 果、役割が変化してきたのか。制度上の課題からいけば、児童虐待、自殺問題、それに絡 んでさまざまな人権問題が発生してきていまして、こうした事柄を政策的に新たな問題と して対応していくために精神保健福祉士の役割が多様化し、変化してきたのか、こういっ たことの整理が話を聞いていてよくわからないですね。ですからその辺をもう少し教えて いただかないと、精神保健福祉士の役割をどのようにここで語っているのかが見えません ので、教えていただければありがたいということです。  併せて予防などの課題等、その他について見ていきますと、例えばこういった事柄とい うのは、精神保健福祉士がいわば社会福祉の学問基盤を前提にしながら、精神障害者と言 われる方々の生活を支援していくという視点で、生活のしづらさを改善していくというこ とが当初の目的であったと思うのですが、それが先ほどのような事柄の中でこう変化して きているのだというところが見えるともっといいのだろうと思うのですね。そうしません と、役割にかかわる対象規定がなかなかできない。先ほど来の話の中で、予防に関して危 機介入の話も出てまいりましたけど、こういったことを考えていくと、大きな意味での診 断、要するに相手を対象規定するという診断、疾病診断ではなくて、それは当然役割と連 動するものだと思うのですね。そうすると精神疾患にかかわる事柄の中に発達障害が含め られるのかどうかというようなことも当然見ていかなければいけないと思いますので、そ ういったことについての御議論はどのようになされたのか、ちょっとお聞きしたいと思い ます。 ○京極座長 これは事務局に対する質問でよろしいですか。 ○福島精神・障害保健課長 勉強会というか、ここに出している資料で申し上げますと、 今、おっしゃったことは、どれもが同時に起こってきたといったほうがいいのだろうと思 います。もちろん対象が変化してきたというよりも、もともと持っていた、特に統合失調 症を中心として長期入院をしている人たちをいかに地域移行をさせ、地域生活に定着させ るか。ここのところのもともとのコアの部分は何ら変わっていない。逆にいえば、ビジョ ンをつくって以降、その役割をもっとちゃんとしないといけないというのがまず1番目に はあると。  その上で、実際に対象とする、例えば先ほど制度的なものとして自殺とか虐待の問題が ありましたけど、制度は多分実際の地域のニーズが、そういう問題が実際にあるから制度 ができてくるわけであって、そういう面でニーズの変化というよりも拡がり、もともとあ ったものを、確かに行政が対象としてきちんと認識をし、対応すべきだと我々は認識して きたこと。問題はもともとあったと思いますけれども、そういうことを反映していろんな 活動領域が拡がっていく、あるいは使うべきスキルも、もともとのコアのスキルと別に加 えて、さらに別のそれぞれの問題に対応するスキルがあるのではないか。例えば認知症の 問題と発達障害の問題は多分少し議論があると思います。疾患として見れば、認知症も発 達障害も疾病分類的には精神障害のFコードの中に入るわけですけれども、そこも一応対 象として、疾病分類的にいえば入りますが、そこまでどうするのかという確かに議論はあ ります。ただ、実際の活動の場では、そういうものに出会うことはかなりあって、そうい うものの拡がりも現実にあるという認識を我々は持っている。  そういう面で、どれがどうなっているのだということについて言うと、つまりそういう ような状況という、全てが同時に起こっていると。ただ、先ほど言いましたけれども、コ アといいますか、もともとのこと、それ自体もまだ我々は十分に解決できていないことも あり、そのことを置いておいてというつもりは全くありません。それが一番大事であると いう認識は持っております。 ○新保構成員 確認の意味でちょっと聞いただけですので。私自身も今課長がおっしゃっ たように、改革ビジョンの話が出ましたけど、改革ビジョンがしっかりと根づいて、それ が確実に国民のものになっていくというのが大事なのだと思うのですね。そういう意味で は改革ビジョンの中で出てきた3つの大きな枠組みがあるわけですから、そのうちの普及 啓発、これはしっかりやっていかなければいけない当たり前の話ですし、それから病床に 関する事柄については、7万余の退院促進という課題があるわけですから、それをどうし ていくかというときには、当然のようにもう一つの枠組みである生活支援をしっかりとし ていかなければいけない。こういった課題に応えていくために、先ほどお尋ねしたような 事柄についても、ある程度整理をしたほうがいいのでしょうという話でございます。  併せて、さらにその先にいけば、寺谷先生がおっしゃっていたように、いわば直接援助 技術並びに間接援助技術の発展形態として、現実的には「直近では」とか「近年では」と いう言い方をされたと思いますが、ケアマネジメントだとかコーディネーションだとか、 こういった事柄が実体化されるというか、PSWの直近の活動の中にかなり大きく取り入 れられてきていますし、それはまさに自立支援法などでは政策上の1つの手法にもなって きているわけでございますので、そういうような形で見てきたときに、その対象は自立支 援法やこれまでの精神保健福祉法にかかわる事柄との整合性を保つという意味においても、 必然的にそこには役割の大きさが法体系でもできているわけですから、そこをどういうふ うにしながら、うまく精神保健福祉士の役割というのは、この範疇でこうやっていくのだ というのを示していくことが必要だと思います。自立支援法における精神障害者の支援の 範疇を固定するというつもりはございませんけれども、精神障害の特性に応じた自立支援 法の運用をしていくためにもこういうことが必要だということも考えられるのだろうと逆 の意味で思うのです。逆の意味というのは、役割の拡がり、それをこの制度等に活用して いくときに、どのようにして位置づけることができるのかというようなことを可能にして いくための検証だと思っています。  いずれにしましても、2ページの総合的なケアマネジメントを担う役割の中にいろんな ものが含まれるのだと思います。ですからそのいろんなものをもう少しわかりやすく、こ の中における要素というのはこんなようなものですと出していくと、ここの場だけではな くて、第三者が見ても御理解いただけるようになるのかなという気がしました。 ○京極座長 きょういただいた意見で、私も同感なのですけれども、精神保健福祉士の役 割の変化とか期待というもののバックグランドとしていくつかのことがあって、課長がま とめられたように、複合的に絡まっているわけなので、そこは最終報告ではきちんと書く ということでよろしいかと思いますが、谷野先生いらしたので、しばらくしてから。 ○谷野構成員 はい。 ○京極座長 勉強会に参加された方で追加発言がありましたらどうぞ。  私の個人の意見もあるのですけれども、私自身は総合的というよりは直感的な人間なも のだから、御案内のように、平成14年12月24日に新しい障害者基本計画ができまして、 あの中でかなり激論があったのですけれども、この10カ年の戦略課題の中の重点課題に精 神障害者に対する対策というのを置いたわけですね。他の障害の方もいろんな方もいっぱ い入っておられましたので、自分のところの障害の問題が一番大事だと皆さんおっしゃる んだけれども、総じてなかなか重点課題にならなくなってしまうというおそれがあったの ですけれども、幸いにして委員の皆さん全員が、この10年間は精神障害者の計画に力点を 置きましょうということで合意が形成されたと。  ただ、それが具体的にいろんな形で行政施策上どうなのかと。前期5カ年計画も終わり まして、今度は後期5カ年計画になりますけれども、社会復帰の面でどの程度進んだか、 やや財政的なことを言うと、もうちょっと精神保健福祉士にお金をつけて、診療報酬も退 院したら相当支援するなど、そこまでやる努力というのは大変なものなので、そういうこ とにも手厚くするとか、その他いろいろあると思うのですけど、私はこれからの後期5年 計画において、もう少し国家としてというか、力点を置いていいのではないかと。  その中の一環にこういう精神保健福祉士の在り方の変化も入れていくというようなとら え方を私はしておりまして、その点で考えるのは、病院から退院させて終わりでなくて、 退院した後、どのようにアフターフォローするかというのがすごく重要な問題で、寺谷先 生のJHC板橋なんかも拝見させていただいたのだけど、そういうことと、それから、あ と私は3年前までは、大学の学長をずっとやっていましたので、通信課程を実はやってい て、寺谷先生がいたのでできたようなものなのですけど、社会福祉士を取った人が短期課 程で取りたいという人が増えているのですね。それは恐らく現場の方が自分も社会福祉士 を持っていても何か物足りないと。例えば老健施設に入っても特養に入っても、社会福祉 士だけの知識でやれないと。さっき認知症の問題が出ましたけれども、精神保健福祉士の 資格も持って頑張らないと現場に応えられないという意識から受けてきている方も多いの ですね。そうすると精神保健福祉士ができてよかったなと。それがなかったら、社会福祉 士の範囲で、自分の中で検証するのでしょうけど、おざなりのところで終わっちゃったの で、その2点を私は強く感じていまして、だから一方で、精神保健福祉士は、非常にシビ アだけど、退院促進してその地域でやっていくという厳しい課題は重荷でしょうけど、他 方で今度幅広く面的に活動しなくてはいけないというか、そういう要望も出ていると。深 くやって拡げてという、両方の面が精神保健福祉士には出ているような気がしていますの で、そのあたりが最終報告に入ったらいいかなと思っています。 ○寺谷構成員 今の座長のお話と少しつながると思いますが、社会福祉士という社会福祉 の専門職がスタートして10年後に精神保健福祉士が誕生したということの経緯から考えて も、社会福祉士という社会福祉の専門家の活動や国民に対する理解の普及が基盤になって 精神保健福祉士が少しスペシフィックなところを加えながら登場してきたというところも、 大きいと思います。また、社会福祉士が経験を積んで精神保健福祉士を取るということも そのあらわれではないかと思います。もう一つは、地域にいて日常的に気づくことですが、 精神保健医療が人間の生活に身近になっているという感じがします。  日常会話の中で、普通に地域の人とテーマとして話せるというようなことが、自分が昭 和40年代の最初に精神科病院で社会復帰活動における印象とは大分違うことを感じます。 自分の経験も蓄積されたせいからだとも思いますが、個人の力量を超えて、地域の中で精 神保健と医療が随分人間の生活に身近になってきたと言えるのではないか。もう一つは、 今、ソーシャルインクルージングという言葉を社会福祉の領域以外の人からお話を聞くこ とあります。ソーシャルインクルージョンそのものとして社会福祉の領域を超えて何がテ ーマとして共有できるものなのかどうなのかを考えます。そういった中で、当事者自身が 持つ、排除されたり孤立されたりする人たちのマイノリティーと言われている人たちの持 つ視点や経験ということを重視したかかわりというのでしょうか、そのような活動がPS Wの本来求められている役割にすごくフィットすることを思います。高齢者のひとり暮ら しをお訪ねしたり、自殺を考えていらっしゃる人とご一緒したりする中で思います。  そういったような、当事者の経験を活かした支援手法というのでしょうか、当事者が一 緒に参加して協働する支援体制を築いていく(日本障害者リハビリテーション富山大会宣 言)必要があります。  予防的な機能、また理解・促進というような役割の発揮に当事者が参加することでかな り強められていくことが期待できます。そのためのソーシャルワーカーのコーディネーシ ョンから、コンサルティングの役割が企業などからも少しずつ今求められているのではな いかと思います。企業に来て話してくださいと言われる中身がコーディネーションではな くて、どうやって社員のリワークですか、そういったようなところのコツは何でしょうか というようなことで、コンサルテーションの役割も住民のニーズとしては高いのではない かと思います。  以上のことから、関連技術というところに焦点化するということに意見を申し上げまし た。 ○谷野構成員 遅れてきまして済みません。まだ全体の流れがつかみきれないで、ちょっ とピント外れなことを言うかもわかりませんけれども、精神保健福祉士もそうですし、我々 精神科医ももちろんそうですけれども、昔は統合失調症モデルを考えて、それを中心に考 えていればよかったわけです。それを中心に考えていればよかった。ところが現在はとて もじゃないけどそれだけの知識ではやっていけない。今、やはり統合失調症の地域移行は さることながら、これも非常に高い技術が必要です。アクトにしても何にしても、これは 生半可な力ではできません。そのほかに思春期の問題、先ほどちょっと出た認知症の問題、 精神科医療に求められるものが非常に広範囲になってきている。広範囲になった問題を一 人のワーカーだけで支えきれるかどうかというと、私はどうもそれは無理なのではないか と思うのですね。  我々自体も一人の精神科医が何でもやるという時代はもうそろそろ現代にはついていけ ないので、ワーカーの世界も、これから対応するには、さらに認知症専門の精神保健福祉 士とか、基本的な精神の知識はきちんとしておく。それと基本的な臨床の訓練はちゃんと されていかなければならないけれども、認知症もやり、統合失調症もやり、思春期もやり、 学校の現場でソーシャルワーカーとしてのPSWは今かなり評判がいいわけです。極めて ソーシャルワーク的なアプローチが功を奏しているのでしょうね。スクールカウンセラー でPSWを採用しているところはかなり増えているように聞いています。しかし、その人 が生半可な知識でそこへ入って行ったのではこれは失敗する可能性があるので、ある程度 専門性が必要だなと思う。カリキュラムというのは基本的なものは十分に理解されること も必要だけれども、後の専門的な教育をどこでやるのかということも含めて、PSW協会 なのか、それともここでそういうメッセージを発しておくのかどうか、その専門性という ものを結びつけていかなければ、何でも屋のPSWというのは、私はなかなかこれからイ ンパクトがないと思います。精神科医療も何でもありということではなくなってきている ので、専門性が発揮されるような精神科医療に多分なるでしょう。  そうすると、それに対応するようなコメディカルもきちんと教育されるべきだし、ちょ っと今の議論とピント外れているかわかりませんけれども、これからの専門性というのは どうあるべきかですね。PSWの人たちと話していると何でもやりたいと言うわけですよ。 でも何でもやりたいと要求される前に、皆さん方の教育というものが何でも対応できるよ うな教育になっているのか。PSW一人でそれだけのことを抱えられるのかどうか、そう いうことを十分、足元をきちんとしてから専門性をちゃんとしていくにはこの基礎教育が どうあるべきかということも大事でしょうね。  話がどんどん飛躍しますけれども、卒後研修なんていうのは私は失敗作だと思います。 よき臨床医を育てるということ、それも含めて、よき精神保健福祉士を育てるというのは どうあるべきかということを見据えたようなカリキュラムの編成であってほしいなと。  昔、平成9年に国家資格化をやったときと、私は精神科医療を取り巻く状況はかなり変 わってきているように思うのですよ。ここでカリキュラムを見直されるのはいいタイミン グかなと思います。ただ、見直すからには、今の時代に沿ったような見直し方をされない と、それをつけ足すような、絆創膏を張りつけるような見直し方でもいかんのかなと。大 体そういうことですね。 ○京極座長 ありがとうございました。大変重要な御指摘です。社会福祉士のほうは見直 しのときに、私も議論に参加していたのですけど、研修で1つはもちろん専門的なことを やろうというので、社会福祉士会を中心とした対応と、もう一つは、民間レベルですけど、 専門社会福祉士というものを、つまり1年プラスアルファぐらいのやつもやりましょうと いうことになりました。  今、谷野先生のお話を伺っていると、精神保健福祉士も社会福祉士から見るとかなりス ペシャリストなんだけど、まだ先があると。今日的課題が、そういう話も伺ったので、そ ういうようなことも含めた提言になっていけばいいかなと思って伺っていましたけど、ど うぞ。 ○古川構成員 なかなか難しい話になってきた。特にこの中では、多分社会福祉士に一番 近いところにいるのは私だと思うのですが、経緯からすれば社会福祉士がまずあって、そ れをベースにしてPSWという形なのだろうと思うのですね。ところが今の話をいろいろ 聞いていると、PSWの課題として設定されていた問題を、それを解決しようとすると、 PSW的なアプローチだけでは足りなくなって、どんどん生活全般を考えなければという ふうに拡がってきていると思うのですね。  社会福祉士のほうも、例えばネットカフェ難民もおれたちの領域だなんていうようなこ とを言ってみたりすると、そうするとこれは貧困の問題ではあるけれども、やっぱりああ いうところへ沈み込んで行っている人たちにどのように意欲を持って次の仕事を見つける なり、住宅を見つけるなりというところへ這い上がって行ってもらうかということになる と、かなり従来の社会福祉士の知識だけではどうにもならないというところが出てきてい るのですね。コアの部分は違うのかもしれないけれども、対象のほうもかなり重なり合っ てきているところがあるし、そこで導入されようとしているいろんな、直接であれ、間接 であれ、表現はともかくいろんな技術というか、スキルというか、これもほとんど重なり 合ってきているのですね。  そうすると、これからどうするかということになると、そこで若干の整理をしておかな いと、両方重なってしまうならそれでいいというような発想で整理をするのか、やはり違 うのだというふうに整理をするのか、これはかなり大きな転機にかかっているのではない かという、そういう印象を持っておりまして、これは社会福祉士の推進をしている方々は どのようにこういう動きを聞いたら考えていくのだろうなということを頭の隅っこに置き ながら伺っていたのですね。もうちょっと整理をして、それで深めていくという、もう少 しそのあたりをきちんとしておいたほうが両方ともちゃんと生き残っていけて協働してや れるのではないかなという気がいたします。  認知症云々という問題も、社会福祉士の議論の中にも認知症専門のソーシャーワーカー が必要であり、学校の問題を取り扱うスクールソーシャルワーカーが必要である。スクー ルソーシャルワーカーは、業界認定資格みたいなものをつくろうという動きが既に出てき たりしているのですね。ですからPSWのほうでも教育の領域が重要だという、こういう ことになっていくと、若干の行き違いが出てきたり、重なりが出てきたりしてという感じ がいたしますので、この際、少し整理をするということも頭に入れておいたほうがいいの ではないかという気がいたします。 ○京極座長 特に精神保健福祉士を養成するレベルと、その後のプラスアルファのレベル、 接合ということになるのですけれども、さっき谷野先生がおっしゃったようなことではな くて。 ○古川構成員 共通する部分とスペシフィックにやる部分を分けて考えていくか。そのと きにソーシャルワークのアドバンスのソーシャルワーカーとPSWと並べるのか、あるい はもっと違うものを並べていくのかという、そのあたりの議論ということになるのではな いかと思うのですね。 ○大塚構成員 関連で、きょうは整理するというよりも拡げてもまだ許されるかなと思う のですけど、さっき課長もおっしゃったように、精神保健福祉士法の目的にはそもそも精 神保健の向上に寄与というような記載があって、そもそもがかなり広いところのものが包 含されているのですが、新保さんが冒頭でおっしゃったように、業務のところの規定が今 までですと、非常に狭い主治医を持った精神疾患、障害者、患者さんみたいなところで規 定をされていて、一方で、今出ているお話は、そうは言っても業務の中身が多分相当拡が り始めてきているのだろうということだと思います。  私自身も病院で勤務していたときに、何でもやりたいと思っていたわけではないのです が、何でもやらざるを得ない状況があって、虐待事例もやっていましたし、例えば外国の 方で、在日の方での支援もやっていたり、DV被害の支援もやっていたりとかなり守備範 囲を広くしてやらなければいけないようなマンパワーだったり、体制だったりしていたと いうのも事実ですね。当時、いわゆる統合失調症の方を中心にした地域移行とか退院促進 とか病院の中での支援ということが王道だともし言うのであれば、周辺のいろんなことに 取り組んでいる仲間たちを探したかったり、そういう事例を見つけたくていろんな学会に 参加しても、なかなかそういうところの発表が少なかったりとか、仲間が見つけられなか ったりしたという思いがありました。  私どもの協会で主催しているような毎年の大会や学会でも実際なかなかそういう発表演 題というのは数少ないのですね。従来ですと「その他」と括られるような分科会の中に大 体そういうのが1つ2つ入ってたのです。  実は1カ月前に全国大会がありましたが、非常に時代が変わったなという印象を深く持 ったのは、通年ですと「その他」で括られた分科会が、今回は「多様な拡がり」というよ うな分科会名で、児童虐待のことを扱っている児童思春期を専門にしているクリニックの ワーカーや、犯罪被害者支援のことを発表された方ですとか、リワークのことを発表され た方など、非常に多岐にわたっているのです。多岐にわたっている内容が10年前と比べる と、それぞれが明らかに1つずつの確立した分野や領域として先行研究も上がってきて、 方法論も随分発表されていましたし、かなり確立してきたものになってきているなという 感じをすごく受けました。  そういう意味で言うと、現場としてそういうところに携わっている人たちが増えてきて いるというのが実態としてすごく感じられたというのが1つです。併せて協会におります と、この頃、自殺関連問題ですとか、災害や地震が起こるたびにいろいろお声かけをいた だいたりとかするわけで、そういう災害被害の支援ですとか、いろいろ話題が拡がってい るなということを感じますね。  そのことをどうして精神保健福祉士の私どもにお話をいただけるのだろうかと考えたと きに、そこが多分社会福祉士さんと取り合いをするのではなくて、うまい棲み分けができ たらいいなと思うところなのです。例えば自殺の問題でも、直接お話をいただくのが司法 書士会から多重債務の問題等を一緒に勉強しましょうと言われるのですが、多重債務とい う1つの問題から、最後、自殺に至ってしまうという、その経緯の中にどこかに精神保健 のリスクと隣接している瞬間があって、そこのところは司法書士だけでは弱いので、一緒 に手を組んでくださいみたいなお話をいただくのですね。  同じ自殺の問題でも、生活課題からいくときに、社会福祉士さんがアプローチする領域 と、多分精神保健のリスキーな部分で、私どもが関与していく部分ときっと違うのだろう なと思っていまして、そういう意味で言うと、疾病もその時代状況で変わってきますし、 そこの後ろには社会とか経済、生活課題がいっぱいありますので、そこのところをうまく 重なりながら、お互いに得意を発揮していけるような棲み分けの書きぶりが、当報告の中 でまとまっていくのかなと思って、ぜひ2次予防のところにそこの、統合失調症の方を中 心に、今までのことをやってきた中で持っている知見とか培ってきた実力というか、そう いうところが発揮できるものがあるのだろうなと思っているので、そういう観点で膨らむ とありがたいなと思っています。 ○谷野構成員 大塚さんの発言で気になるのは、それはいろんなことにワーカーがかかわ れるのは悪いことではないと思うけれども、私が一番気にするのは、そういった援助を提 供するワーカーはどういう教育を受けてきて、どういう専門的な知識を持って、場合によ っては自殺するような人と相対峙するわけですから、そこら辺は慎重に十分な教育機関が ないと、これは精神科医も含めてですけど、今の教育では本当に専門性を十分発揮できる ような教育というのは、日本医療全部そういえばそうですけど、臨床をきちんと教育する ということについては、世界から見ると私は遅れておると思うんですよ。  だから、そういう点では、少なくとも精神科に関しては十分に専門的な知識を教育する 場は、我々医療を提供する側にはワーカーとしてもちゃんとそれをきちんと教育する場が あってしかるべきだと思う。今のままでは、私はソーシャルワーカーがいろんなところに 顔突っ込んで、いろんなところにかかわるということに私は不安だと思う。だから、そう いう点では、今の教育をもう一回見直して、専門性を十分に、知識を蓄えられるような機 会を与えるような場をもう少し設けないといかんのかなと。  我々精神科医もそうですけれども、ワーカーに私はぜひそうあってほしいと思う。そう いう専門的な、全国津々浦々でなくてもいいのですよ。あそこへ行けば、このことについ て知識が得られると。思春期のソーシャルワーカーについて、多重債務について専門的な 教育はあるかどうかわかりませんけど、そういうものが担保されてないと、私は今のワー カーの知識ではかえって危ないなという気はするんですけれども。 ○新保構成員 きょうは当初から対象規定の話をさせていただいておりますが、それはP SWがどんな方を支援するのか、はっきりさせておかなければいけないのだと思っている からです。ですから対象規定の話と専門性の話をしてきたわけですね。それは対というか、 相互に絡み合う問題ですので、今おっしゃられたとおりだと思います。さりとて活動の拡 がりがないわけではなくて、必然的に押し寄せてくるという現実もあるわけですから、そ のことも含めてどう考えるかということが大事だと思います。  先ほど古川先生がSWとPSWとの対象と技術の重なり合いもあるのだというような話 もされましたし、それはなるほどそのとおりだし、大塚さんも言われているように、例え ば私どものところだと療育に関しては療育の専門、PSWだけど、あたなは今度療育をや るのだから、そのためにしっかり勉強してやってくださいということで、あえて学びの場 を与えてから、私どもは療育支援をスタートさせました。それから多重債務の問題につい ては、私どもではできないから、私どものところは場所を貸しまして、そして法テラスを 施設の中で開いているのです。そこは法律の専門家にお任せしています。それはPSWと しての社会資源の活用技法だと思います。そういうふうにやっていかないとうまくいかな いのだろうと思ってやっています。  ですからいろんな考え方あるのでしょうけれども、いずれにしても、対象規定とその対 象者を支援する専門性というのはしっかりとしておかなければいけない。そのときに、大 胆な言い方すれば、まさに学部教育は社会福祉士と一緒でいいのかとか、いや、専門性を 考えたら、あるいは対象規定から見て社会福祉士とは別個のこういう固有の枠組みの中で しっかりと教育をしていったほうがいいのではないかとか、ベースは一緒なのだから、基 礎のところは社会福祉士と精神保健福祉士と一緒にしておいて、スペシフィックというか、 専門的なところはきちんと専門性を担保できるような教育システムをつくるという意味で は、現状での教育体系を見直すほうがいいのかというようなことを議論していくためにも、 改めて申し上げますけど、どんな対象、確かに拡がってきているその対象者がたくさんお られるわけですから、その人たちをどのような形で精神保健福祉士が支援できるのか、で きないのかという精査も含めて検討する必要があるのだろうと思います。 ○京極座長 私も最近関心持って、独居老人なので、ちょっと自己分析しているのですけ ど、いろいろ本を読みますと、結構気分障害の分野も精神医学のほうでも随分進んでいて、 薬もいろんな種類が出て、投薬管理なんかもきちんとしなくちゃいけないので、果たして そういうことを精神保健福祉士の方が勉強しているのかどうかわかりませんけど、少なく とも今までの教科書的なやつだと少し弱いかなと。だから谷野先生もおっしゃったし、新 保先生もおっしゃったけど、少なくとも時間的には大幅に精神保健福祉士の養成課程で、 2倍も3倍もとできないから、その範囲の中でもきちんと現代的な到達点は教え込むとい うことは絶対不可欠ですね。  その点では、この10年随分変化している気もいたしますので、ただ、1ページの図で見 ますと、(1)、(2)、(3)がダイレクトに横に現在にかかわるところとそれぞれ絡み合っている ところがあるので、この辺は、さっき課長もおっしゃったのだけど、少し工夫する必要が あるかなと思う。図のイメージが、活動する範囲と支援の多様化が絡んでいたり、技術が 絡んでいたりいろいろするので、この辺は概念整理をさらに深めていったらどうかと思い ます。  そのほかどうぞ。 ○石川構成員 どのレベルからどう言ったらいいか、頭の中がぐるぐる回っておるのです が、今、京極先生が、ここからお話をということでありますと、法改正とにらみ合わせて 考えていきますと、障害者自立支援法というところが1つのきっかけになるといたします と、精神障害者も障害者だという括り方、これ自体はICFの考え方からすれば、障害を いくつかに分けていくという生活機能で整理するべきだろうと、こういう議論も一方では なされてきている中で、地域のサービスをどう展開するのかという話になってまいります と、それらをどう調整するソーシャルワーカーをどう配置したらいいのかとか、考え出す と整理がつかなくなるような状況もあるのですが、この3つのポイントというところで、 10年前の法律をこの資格をつくったときの議論をもう一度思い起こしますと、ソーシャル ワーカーの養成というのはどういう体系であったらいいのかというあたりが十分に議論で きないまま来ているのかなという印象も、古川先生のお話を聞いていて、一度はそこを交 通整理しておいたほうがいいのかなというのがまず1点ございます。  その中で、業務の内容、当然のように機関や施設にソーシャルワーカーは雇用されるわ けでしょうから、そうした雇用先のワーカーはどういう仕事をすべきなのかというところ で考えたときの役割機能はどうなのかということになりますと、これからは当然身近な地 域に暮らす人たちへのサービスを提供していくというイメージになっていくのだろうと思 うものですから、そうしたときに、今までの縦割りのこういう体制でいけるのかどうかみ たいな、少しそうした議論もしておいたほうがいいのかなと。高齢の領域では、中学校区、 小学校区とか、エリア設定をしながら、どうサービスをつなぐか、こんな話を実はしてお るわけですね。現場の例えば地域包括支援センターでアウトリーチを始めたり、相談に乗 ってくるときに、実は精神と深いかかわりになって、それはもう大変で、私たちができな いので、今のところお手上げですみたいなお話も聞いたりするのですね。  そうした図柄の中で、この精神保健福祉士はどういう役割機能を果たしたらいいのかと、 こんなことを考えていきませんと、どうも社会福祉士と精神保健福祉士の名前を地域包括 に入れる、入れないみたいな議論で終わってしまうのはどうも何かすっきりしないのです ね。今後の絵柄をどう考えていったときのこの10年後を描いて、今は障害については5年 後かもしれませんけれども、そこら辺の交通整理もどこかでは一度議論をした上で、次の 段階に進むという、ちょっと大風呂敷の意見のような、誠にもって申し訳ないのですが、 どこをエリアにしながら、どう組み立てて、どう考えていくのかを1つは違う角度から検 討してもよろしいのかなと、こんなふうに思った次第です。 ○京極座長 鹿島先生、何か。 ○鹿島構成員 先程の繰り返しですが、仕事の範囲が横の拡がりも疾患の初期も含め縦の 拡がりも増え、役割が増えるわけですから、アイデンティティーの問題があるのではと思 います。具体的にお話がありましたように、かかわる範囲や対象を決めておくべきと考え ます。実際の活動では拡がる部分もあるでしょうけれども、棲み分けみたいなことは大切 と思います。範囲や対象を形としてきちんと決めておいた上で、実際は拡がる。そのよう な議論を次回からするのだろうと思って伺っていました。新保先生、石川先生のおっしゃ るとおりで、具体的なことは次回以降、検討したらよいかと思います。 ○京極座長 ほかにどうでしょうか。きょうの議論を整理するだけで大変だけど。 ○古川委員 横に拡がり、縦に拡がって大いに結構なので、そのとおりですが、それを4 年間といいますか、実質的には2年間の養成課程で、横と縦に拡がったやつを何とかしよ うという発想をすると、やっぱり相当無理が出てくるという感じがしますよね。大学卒と いう前提で4年間に、あるいは専門課程の2年間でやれる範囲で資格制度の中身を考える か。それとも資格としてはこういうものであるべきだから、それに対応すると、場合によ っては教育課程のほうは、大学の課程を6年にするなんていうわけにもいかないのでしょ うけれども、4年にしても、その後の何年かの積み重ねで研修なり何なりがあって、初め て精神保健福祉士の資格が取れるという形にするのか、そういったようなことをどこかで 一度考えてみる必要があるのではないかという気はしますね。全部を4年間でという発想 でやると、そこで何を詰め込むかというのがなかなか難しいような気がしますね。 ○京極座長 先ほどちょっと申し上げたのですけど、その中で素養だけきちんとしていれ ば、後に相当研修その他で深められる、そこだけはきっちりと。 ○古川構成員 4年間でここまではしっかりしておく。その後のプラスアルファは上へ行 ってからやる。その仕掛けはこうだというふうにできていれば、それはそれでいいのだろ うという気がしますね。 ○京極座長 精神保健福祉士も成長していく精神保健福祉士で、進化していくわけですの で。きょうはいろんな議論出たのですけれども。 ○古川構成員 もう一点、拡げついでにということで、先ほどから寺谷先生、「関連技術」 という言い方をされていますけれども、ということは、逆に言うと、絵柄の1ページのや つで見ると、直接的援助技術というのが中心で、それが拡がってきている。関連技術も出 てきて、それも重要だという、そういう発想だけれども、いわゆる直接的援助と呼ばれて いるものを中心に全体を組み立てるかどうかということの議論をひょっとしたらあっても いいかもしれない。私なんか関連技術と言われているようなマネジメントなんていうのは、 ケアマネジメントとかケースマネジメントとかというと、これは介護保険と一緒になっち ゃってあれですので、私自身の言葉としては、マネジメントワークというのを考える。そ れを中心に全体を援助技術の体系を考えたほうが今の流れの中ではあるのではないかと思 ったりします。ただ、もちろん直接対面的な関係の中できちんとやれるということは、技 術はちゃんと身につけた上での話ですけれども、それを中心に全体を考えると、一度法律 ができているから、そこのところを全部全面的に書きかえるというのは難しいのかもしれ ないけれども、つけ加えていくのではなくて、全体の構造が変わっているよということを 全体でぱっと出したほうがいいかなと、そんな感じがいたしますね。 ○京極座長 援助技術論はなかなか深い議論なので、これは専門家がいっぱいいらっしゃ いますので。 ○新保構成員 古川先生の考え方は当然なので、そういう意味では、社会福祉援助技術と いうのがきちんと押さえられて教育ができていれば、それでいいという話にはなるのです よね。ケアマネジメントも援助技術(ソーシャルワーク)の一手法にすぎないといえば、 それまでの話ですから、ところが現実的に大学教育を終わって職場に出ますと、例えば自 立支援法を見ても、まさにこういう言い方をしたら怒られるかもしれませんが、リンケー ジやブローカリングを求めるような支援の流れが自立支援のサービス提供責任者のテキス トに書いてありますよね。そうすると、そういったことをやらなければいけないのではな くて、そっちばっかり目が行っちゃう学生や援助者も出てくるわけですから、そういう意 味ではまず基礎教育の4年間はちゃんと、社会福祉援助技術というのはこうなのだという ことを担保できるような教育が必要なのかなと思いました。 ○京極座長 ほかにどうでしょうか。もう一つは、こういう社会状況が変わってきて、精 神保健福祉士の役割が重要だというときに、座学で大学の中で教えられる限界というのは ありますよね。ちょっとこれは気になっているのですけど、私、資格ができるときに谷野 先生も一緒に議論したのですけど、法案成立の前に検討会をやったわけですね。どういう 科目が必要だと。いろいろな議論をした結果、共通科目と専門科目を挙げたと。そのとき の印象で実習に関しては、精神科病院と社会復帰施設はぜひとも一緒にやるべきだという 議論になったのだけど、現実的な問題で両方やるのは大学側が困難で、養成施設だともっ と困難で、面倒だから、例えば精神科病院の実習はやめちゃって、社会復帰施設だけでも よしと、あるいは片一方だけでもいいとなってしまったのですね。  これは考えようによって、単なる時間の問題というよりも、社会復帰させるための資格 ということである以上、仮にその方が、地域の受け皿の施設にいるか、病院にいるかは別 として、精神科の病院での実習、現実に精神障害の重い方も含めて接触するということが すごく重要で、それがないまま社会復帰施設へ行くと、それこそ社会福祉士と精神保健福 祉士はどこが違うのだという話になってしまうのですが、そこのところはもっときっちり、 どういう実習をしたらいいのかというのはおのずから出てくるような気がしていて、もう 少ししばりをしっかりかけないといけないのではないかということと、それから、これは 社会福祉士の議論でも当然文科省と厚労省両方で、援助技術と実習についてはしばりをか けたのですけれども、それまでは大学は自由だから何をやってもいいと。単位取ったから いいというので、自動的に認めたのですけど、精神保健福祉士のほうは実習とか援助技術 については一定程度のしばりをかけて、教育者も、私も演習なんかしていましたけど、経 済学の演習が社会福祉士の演習になるわけがないですけど、その辺はそろそろきちんとや っていいのではないかなと。このあたりは大学のレベルの教育などでも十分できることな ので、という気がいたしますが。 ○大塚構成員 先ほど谷野先生が言われたように、拡げるのは拡げても、とにかく質が追 いつかないというのは同感のところで、教育体系とか研修の在り方がこれからの議論で大 事になってくるところだろうなと思っています。どうしても4年制という大学の年限の範 囲の中ででき得ることは限りがあると思っていますので、1つは、今、座長が言われたよ うに、実習・演習という座学以外のところの質の担保をどのように組み込んでいくかとい うことと、あとは卒後のOJTでやらざるを得ない部分もあると思っています。それが私 どものような職能団体ですべての領域を網羅できるかというと、そこもまた難しいかもし れませんが、そういうことは積極的にいろいろ関係団体や学会とも一緒に考えていくべき だろうなと思っている次第です。  私どもの職能団体でもようやくここに来て、資格を取っただけでは現場で通用しないだ ろうということがありますので、職能団体としての生涯研修制度というのは立ち上げて、 この7月に1カ所目が始まりましたけど、3年ぐらいの間に協会が行う研修の認定精神保 健福祉士を多くの会員が持てるようにという体制をつくって始めたところなのです。そう やって少しずつ現場に出た後も、正直言って、今の現場でなかなか3年を継続して続ける というのが困難な状況というのは、福祉だけではなくていろんな現場で共通の問題になっ ていると感じます。バーンアウトしたり、自立支援法や診療報酬の体系からも難しくなっ ているところもなきにしもあらずで、継続するための研修であるとか、そこから質を向上 していくための研修や、年限を切って目標設定をして研修を打つということを始めました ので、大学の教育と合わせて卒後の教育のことも、今後検討させていただければと思って います。 ○京極座長 精神保健福祉士を大学でやる場合と養成施設でやる場合、両方ありますけれ ども、現場からこういうことをもうちょっと勉強したらもっといいのではないかというの はあると思うので、それが学部レベルというか、精神保健福祉士を取るレベルまでの養成 の問題と、取った後の問題ときれいに整理できればいいかと思うのですけれども、ほかに ございますか。 ○石川構成員 だんだん役割から教育内容に入っていっているのですが、それは連動しま すので、追加してというか、大塚さんのお話の後ですが、限られた時間数の中で、どれだ けの役割に期待される体制を整えて教育ができるかというあたりを考えますと、臨床経験 といいますか、実習がとても重要な役割を持つのかなと。そうしたときに、現場のワーカ ーさんがどれほど御指導いただけるのかという体制づくりを一方でしていきませんと、社 会福祉士のほうでも今混乱をしている状況でありますが、それほど精神の場合は混乱がな いかなと、こんなふうには思うのですが、先ほどの意見のちょっと上乗せみたいになるの ですけれども、そもそもソーシャルワーカーとして社会福祉士がベースであれば、精神保 健福祉士はそれに乗せていくということにどうしてもなるのかなというのが前回の共通科 目を設定するときに悩んだ状況だったのですけれども、そうしたときに役割を担うであろ うということで考えますと、実習先が拡大していくということになっていった場合、どう いうようにそれを組み立てていったらいいのか。  先ほど京極先生が、社会復帰施設と病院と、この組み立てだけでよいのかどうかとか、 また、生涯研修で行ったときには、例えば、開業している精神保健福祉士もおるわけです が、そういうところでも受けられるとか、こういうふうになっていったときの役割や拡大 に伴う中での整理というあたりは、現場の今の状況をもう少し克明に、エビデンスという か、資料を集めていただくという作業も必要なのかなと。そうしないとなかなか先が見通 せない。  精神保健福祉士養成校協会というのはまだ法人格持っていませんけれども、それぞれの 教育が今どのレベルまで行っているのかということの評価もどこかではきちんとしなけれ ばいけないと。こういうようなことも含めて役割の変化に合わせて教育の変化が、追いつ いているのか、追いついてないのかも含めた評価を議論できる時間もぜひ、これはきっと その他の中でしたほうがいいのかどうなのかわかりませんが、もしそういうことであると すれば、少し丁寧な情報、データを集めて議論ができたらよろしいかなと思っておりまし て。 ○京極座長 第4回は8月、強化すべきポイントについて、第5回、9月にその他につい てございますので、その辺で少し考えていったらどうかと思っていますが、古川構成員ど うぞ。 ○古川構成員 社会福祉士のカリキュラムもこの9月までに届出をしなければならんとい うので、どこでも汗をかいてやっているようですが、私は直接担当しているわけではない けど、見ていると、ちょっと拡散しすぎちゃっているのではないかという印象があるので すね、科目がたくさん増えてきていて。キーワードは実践力というのか、これを中心に考 えたというふうに言われておりますけれども、実践力というのが、いろんな領域の知識な り何なりをまんべんなくというか、できるだけ広く身につけていると実践力といっている ような気配が若干感じられたり、あるいは実習のしばりをかければ実践力が身につくとい っているような感じもある。実習も重要だともちろん思っておりますけれども、実践力と いうか、そのあたりというのは、これはPSWにとっても当然同じことが言えるだろうと 思うのですけれども、どういうものをもって実践力と言っているのか、言えばいいのか、 その実践力のある者を養成するためにどういう教員が必要かというようなあたりのことを もう一度きちんとやっておかないと、ただ、拡げていろんな領域が見えてきて、活動領域 も増えてきたような、活動の仕方もいろんなものがあるよというだけではかえって核がな くなってしまっているのではないかと、そういうような、実際に科目を編成をしたり、ど ういう人に担当してもらって、何を教えてもらうかなんていうようなレベルになるとなか なか科目どおりには、科目の並べたときの構想と実際にそれを教育課程に組み立て直すと きにかなりずれがあるのではないかなという印象がちょっとあるのですね。  社会福祉士のほうがちょっとだけ先行していますから、逆にそういうところが見えてく ると、むしろこっちのほうはそういうことにならないように、きちんと議論をしておいた ほうがいいかなと、そういう印象を持っておりますので、そのあたりのことを、極めて基 本的な問題ですけれども、ぜひひとつ頭に入れていきたいものだなというふうに思ってい ます。 ○京極座長 ありがとうございました。社会福祉士のシラバスのことだと思うのですけれ ども、シラバスのとらえ方が、これからこの精神保健福祉士のときも考えていかなければ いけないのですけれども、いずれ第8回以降になりますけれども、ポイントとしてこうい うのを押さえなくてはいけないというのと、それをどういう体系で教えるのかというのは また別な次元ですけど、それが一緒になっちゃっているから、おそらく大学が大混乱して いるのは社会福祉士の世界なのです。  今の御指摘ですが、他山の石としようということでございますので、きょうのとこはこ れぐらいにして終わりたいと思いますので、時間がちょっと余っておりますけど、最後の 事務局から次回の検討会のテーマや日程などについて御説明をお願いしたいと思います。 ○川田障害保健係長 次回の検討会につきましては、本日の御意見を踏まえまして、いろ いろと御意見をいただきましたので、場合によっては事前に御相談をさせていただきなが ら、事務局で整理をしました資料を改めてお示しするとともに、スケジュールにもお示し しておりますが、次回の検討テーマである「強化すべきポイント」につきまして、御議論 いただくことを予定しております。  なお、次回の開催につきましては、8月を予定しておりますが、日程につきましては後 日調整をさせていただきまして、調整後、速やかに御案内のほうをさせていただきたいと 思います。  事務局からは以上です。 ○京極座長 きょうはお忙しいところ、また暑い中、お集まりいただきまして活発な議論 をいただきましてありがとうございました。これで終わりたいと思います。                                    −了−  照会先:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課障害保健係 03-5253-1111(内線3065)