08/07/07 第45回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第45回厚生科学審議会科学技術部会 議 事 録 ○ 日  時 平成20年7月7日(月)15:00〜17:00 ○ 場  所 金融庁 共用第2特別会議室(中央合同庁舎第7号館12階) ○ 出 席 者 【委  員】  垣添部会長     石井委員   今井委員   岩谷委員  金澤委員  川越委員     木下委員   竹中委員   西島委員  福井委員  松本委員     南(砂)委員 望月委員 【議  題】 1.平成19年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について 2.遺伝子治療臨床研究について 3.その他 【配布資料】  資料1−1.厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成19年度報告書)       (案)  資料1−1別紙.厚生労働科学研究費補助金の成果表(平成19年度)  資料1−2.厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要  資料1−2別紙.平成19年度採択課題一覧  資料2−1.国立がんセンターの遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び        遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について  資料2−2.三重大学医学部附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び        遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請について  資料2−3.遺伝子治療臨床研究実施計画の変更及び重大事態等報告について  資料3−1.平成19年度国立国際医療センター研究所外部評価委員会報告書および        対処方針  資料3−2.平成21年度の科学技術に関する予算等の全体の姿と資源配分の方針  資料3−3.研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究        開発等の効率的推進等に関する法律(平成20年法律第63号)について  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る        生物多様性影響評価に関する参考資料  参考資料3.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月1日厚        生労働省大臣官房厚生科学課長決定) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意 事項をお守りくださいますようお願いいたします。なお、本日はクールビズということ で事務局は軽装で失礼しております。上着をお召しになっている方も適宜脱いでいただ くなど、よろしくお願いいたします。定刻を過ぎましたので、ただいまから第45回厚生 科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折、お集まりい ただき御礼を申し上げます。本日は菊川剛委員、北村惣一郎委員、笹月健彦委員、佐藤 洋委員、末松誠委員、永井良三委員、南裕子委員、宮村達男委員からご欠席のご連絡を いただいております。まだお見えになられていない先生もいらっしゃいますが、ご連絡 いただいているところでは出席委員は過半数を超えるということで、会議は成立する予 定となっております。  続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。資料の欠落等がありました らご指摘ください。議事次第に配付資料の一覧を記載しております。資料1-1が「厚生 労働科学研究費補助金の成果に関する評価(案)」です。資料1-1の別紙がありまして、 横長の資料です。資料1-2が「厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要」という少し 厚めの資料です。資料1-2の別紙も横長の資料です。資料2-1が「遺伝子治療臨床研究 実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請につい て」、国立がんセンターの資料です。資料2-2が遺伝子治療臨床研究関係の三重大学医学 部附属病院の資料です。資料2-3が「遺伝子治療臨床研究実施計画の変更及び重大事態 等報告について」です。資料3-1が「平成19年度国立国際医療センター研究所外部評 価委員会報告書および対処方針」です。資料3-2が「平成21年度の科学技術に関する 予算等の全体の姿と資源配分の方針」です。資料3-3が「研究開発システムの改革の推 進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律について」 です。参考資料として3点お配りしております。資料についてはよろしいでしょうか。  それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  皆さん、こんにちは。雨の中を第45回厚生科学審議会科学技術部会にお集まりいただ きまして誠にありがとうございます。まず、議事の1「平成19年度の厚生労働科学研究 費補助金の成果の評価について」ということで、事務局から資料の説明をお願いいたし ます。 ○坂本研究企画官  それでは、「平成19年度の厚生労働科学研究費補助金の成果の評価について」ご説明 いたします。資料は1-1と1-2となっております。なお、資料とは別に、委員の先生方 にはご意見の記入用紙の1枚紙をお手元に置いております。  資料1-1が本日ご審議いただく中心的な資料ですが、その他の資料の概略を先にご説 明いたします。資料1-1の別紙は、各研究課題ごとに報告された成果について行政効果 報告より抜粋して一覧にしたもので、各研究課題ごとに原著論文数等のデータがあるも のです。  資料1-2は「厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要」ということで、1頁から制 度の概要の説明があります。これの6頁に、平成19年度の研究課題の研究費のデータ 等がありまして、研究1課題の研究費の平均はおよそ2,600万円となっております。6 頁のグラフにありますように、研究事業によって平均研究費の額は相当異なっていると いう状況があります。評価の観点につきましては9頁から記載しております。その後、 12頁から申請と採択の状況を示しております。新規課題の採択率は32.0%、継続課題 の採択率は98.5%ということになっております。それから、13頁にありますように、 研究成果のデータベースを作成いたしまして、これはインターネットで公開されており ます。  14頁以降、各研究課題ごとの評価です。本年度から、各分野ごとに基本的に1頁、多 くとも2頁以内に、研究事業の目的、予算、課題採択の状況、研究の成果等を記載して おります。研究の成果は、できるだけ具体的な事例を示しまして、論文等の数量化した 指標もここに示しております。各分野の状況はそれぞれ異なりますので、相互比較の意 味はあまりありませんが、成果をできるだけわかりやすく示せないかということで、今 回、要点をできるだけ簡潔に示す方向で整理を行っております。資料1-2の別紙は、平 成19年度の採択課題の一覧となっております。  資料1-1をご覧ください。各研究事業における成果の評価をまとめた資料です。1頁 の「1.はじめに」で、この成果の評価を行う背景などについて記載しております。2頁 の「2.評価目的」の最後のほうに記載していますが、行政への貢献に重点を置いて評価 を行うこととしております。5頁から評価方法についての説明を記載しております。評 価の対象は、厚生労働科学研究の各研究事業及び平成19年度の終了課題の成果という ことで、平成19年度終了課題の基礎となる資料は、成果データベース報告システムの 「行政効果報告」に登録された6月23日(一部6月30日になっておりますが)時点の データです。この5頁の「注1」にありますが、行政効果報告につきましては継続的な 評価を行うという観点で、研究終了年度から3年間は随時WEB上でデータの更新がで きるようになっております。論文数等のデータについては、研究者に入力を依頼してそ れを集計したものです。評価は各研究事業の記述的評価と終了課題の発表論文数等によ り行っており、それぞれのベースになるものは先ほどご説明した資料1-2になっており ます。  8頁から「評価結果」ということで、各事業ごとの評価を記載しておりますので、そ れぞれについて簡単にご説明いたします。  9頁、<I. 行政政策研究分野>です。(1)行政政策研究事業の(1-1)政策科学推進 総合研究事業につきましては、今後の急激な人口減少と高齢化は大きな社会環境の変化 をもたらすと考えられ、本研究事業で実施した多くの研究は喫緊の行政ニーズを反映し ており、成果は厚生労働行政に活用されているという評価です。さらに、中長期的観点 に立った社会保障施策の検討を行う上で必要な基礎的な理論、統計データを蓄積する研 究も行っていると評価されております。  10頁、(1-2)の(a)社会保障国際協力推進研究では、我が国が進めている社会保障 分野における国際協力事業と密接な分野において成果をあげていると評価されておりま す。国際機関、学会と協力して、国際シンポやワークショップを開催したほか、東アジ ア諸国の研究者との交流が深まっており、社会保障分野における今後の国際協力の推進 に貢献しているという評価です。(b)国際医学協力研究は、「日米医学協力計画」の下 で、アジアにおける感染症、栄養・代謝関連疾患、環境と遺伝子要因による疾病といっ た幅広い分野の諸課題の改善・克服に向けて取り組んでおり、我が国のみならず、アジ ア地域の人々の健康維持・増進に寄与することが期待される成果もあり、国際協力・貢 献の観点からも意義があるものと評価されております。(2)厚生労働科学特別研究は、 国民の健康生活を脅かす突発的な問題や社会的要請の強い諸課題について、緊急に行政 による効果的な施策が必要な場合に行う研究で、短期間でその成果が集約され、行政施 策に活用されることが求められております。緊急性の高い研究が実施され、行政施策の 立案に当たり活用されていると、例を挙げて評価されています。  12頁からは<II. 厚生科学基盤研究分野>です。(3)先端的基盤開発の(3-1)再生 医療等研究事業では、間葉系幹細胞を中心とする体性幹細胞により、末梢血管、角膜、 心臓、肝臓等に関する基礎研究が進められ、その有効性を示す研究成果が報告されてお り、評価できるとされております。  13頁の(3-2)創薬基盤推進研究事業の(a)ヒトゲノムテーラーメード研究事業では、 疼痛について医薬品の効果にかかわる個人差を生じる遺伝子を発見・解析するなど個別 化医療に関して重要な成果が得られており、評価ができるとされております。(b)トキシ コゲノミクス研究事業では、ヒトES細胞由来神経系細胞を用いて薬剤応答性評価試験 を実施するための技術体系を確立し、ヒト神経幹細胞/前駆細胞を含む複数のヒト細胞 種における複数の薬剤応答性に関するデータベース並びにトランスクリプトームデータ ベースを構築するなどの成果が得られており、評価できるとされております。(c)疾患 関連たんぱく質解析研究事業では、これまでの研究において、日本人健常者及び糖尿病 等23疾患の患者の血清を分析し、その解析結果と臨床情報から構成されるデータベー スを構築するなど一定の成果が得られており、評価できるとされております。また、糖 尿病患者と健常人の血清を解析して今後の展開が期待される成果もあったということで す。  14頁、(d)政策創薬総合研究事業は、政策的に重要でありますが、産業界の自主努力 に頼るだけでは研究開発の促進が図られないような領域での技術開発を行うもので、新 規のHCVエントリー阻害剤の同定や新しい機序のHIVワクチンの開発、国内における ヒト用H5N1弱毒化ワクチン株の作製など多くの成果があり、評価できるということで す。 (e)生物資源研究事業では、南米産、東南アジア産、基盤研の保有植物等についての分 析を行い、ある種の植物に血糖値上昇抑制薬の指標となる活性を確認する等の成果があ り、またES細胞の心筋への効率的分化誘導や網羅的発現遺伝子の探索により、心筋及 び心筋前駆細胞で発現する候補マーカーを同定するなど、初年度ではありますが、成果 が得られていると評価されております。  15頁(3-3)医療機器開発推進研究事業の(a)ナノメディシン研究事業では、事業の 一部においてはNEDOとのマッチングファンドを実施しているということであります。 主にナノテクノロジーを用いて、従来の画像診断ツールでは検出できないような超早期 の癌などを検出する診断技術、より効率的に標的となる臓器、病巣へ医薬品を作用させ るためのドラッグデリバリーシステムの開発等において実用化を見据えた成果が得られ ており、評価できるとのことです。(b)身体機能解析・補助・代替機器開発研究事業で は、内視鏡手術などの支援装置や埋込型の補助心臓装置、あるいは従来の診断法では測 定し得なかったものを対象とする診断装置を開発するなどの成果を得ており、評価でき るということです。  16頁、(4)臨床応用基盤研究事業の(4-1)医療技術実用化総合研究事業の(a)治験 推進研究事業では、治験環境の整備や、医療上必須であるが企業による治験が実施され 難い医薬品等の医師主導治験を行っております。平成19年度までに16課題の医師主導 治験課題を採択し、11課題について治験届を提出しており、事業として十分な成果が得 られているという評価です。(b)臨床研究基盤整備推進研究事業については、治験推進 のための医療機関の体制整備、臨床研究機関において臨床研究に携わる人材の雇用、研 修や研究実施支援の実施、臨床研究部門の整備、審査体制の充実、データマネージメン トシステム及び進捗管理システムの構築などを行っていることは評価できるということ です。  17頁、(c)基礎研究成果の臨床応用推進研究事業では、国産新規ウイルスベクターを 用いた重症虚血肢に対する新GCP準拠遺伝子治療臨床研究等の研究において、今後の 臨床研究につながる重要な研究成果が得られているとの評価です。(d)臨床試験推進研 究事業では、三つの胎児治療法の臨床的な確立や、小児がん領域における検討試験にお いて検討したレジメンの有効性が世界標準に比肩することが確認されるなどの成果が得 られており、評価できるとのことです。  18頁、<III. 疾病・障害対策研究分野>です。こちらの(5)長寿科学総合研究事業 について、「老化・老年病等長寿科学技術分野」では、失禁など加齢によって引き起こさ れる障害の研究等が行われております。また、「介護予防・高齢者保健福祉分野」におけ る成果は、平成21年度の介護保険制度の改正、介護予防施策の運用等に反映されてお り、「認知症・運動器疾患等総合研究分野」における成果は、要介護状態になる原因疾患 としての重要な認知症、運動器疾患の実態把握、早期診断法の開発等といったところで 知見を提示してきたと評価されております。  19頁の(6)子ども家庭総合研究事業では、周産期医療体制の充実、生殖補助医療の 医療技術の評価・高度化、子どもの先天性疾患・難治性疾患の克服、子どもの心の診療 体制の充実、児童虐待への対応、多様な子育て支援の推進など、多様な社会的課題や新 しいニーズに対応する実証的かつ政策提言型の基盤研究が行われており、母子保健行政 の推進に貢献しており、本事業で得られた研究成果は行政施策の充実のため不可欠とい った評価が記載されております。(7)第3次対がん総合戦略研究事業では、がんの本態 解明のための研究では多くの知見が得られ、革新的な診断技術・治療技術の開発、がん 医療水準の向上に資する研究が進むなど、全体的に研究がよく進んでいるものと考えら れるという評価が記載されております。  20頁、(8)循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業では、生活習慣病について、疫 学研究や介入研究等を行うことにより、体系的なデータを得ており、糖尿病戦略研究に よる糖尿病の診療体制の質にかかわるデータや、特定健診・保健指導にかかわるエビデ ンスと効果的な保健指導を行うためのガイドラインなどの成果があり、行政施策に反映 される成果があるという評価です。  21頁、(9-1)障害保健福祉総合研究事業では、障害の正しい理解と社会参加の促進方 策、地域において居宅・施設サービス等をきめ細かく提供できる体制づくり等、障害者 の総合的な保健福祉施策の向上のための研究開発、障害者の自立を促進する技術開発の 研究により、施策への提言や、有効な障害者支援のための技術的基盤づくりに成果をあ げているとの評価です。(9-2)感覚器障害研究事業では、再生医療技術と医療材料技術 を融合した難聴の治療、人工視覚システムの開発、人工内耳の客観的評価法の開発など、 着実な成果をあげているという評価です。  22頁、(10-1)新興・再興感染症研究事業では、昨今話題となっております新型イン フルエンザに関する研究、麻疹や結核等に関する研究など、幅広い分野で研究が推進さ れており、特に新型インフルエンザについては、インフルエンザウイルス(H5N1)の 遺伝子解析によるヒト型への変異の確認や、アルミアジュバント添加全粒子不活化ワク チンの作製とその安全性確認など、基礎・臨床研究について成果があがっているという 評価です。エイズや肝炎は、最近社会的な関心の高い分野です。(10-2)エイズ対策研究 事業では、エイズ予防指針に示される青少年、男性同性愛者等の個別施策層に対する効 果的な予防対策、疾患概念の変化に沿った治療法の開発、和解を踏まえたエイズ医療体 制の確立等について着実な成果を示しており、行政施策の推進に大きく貢献していると いう評価が記載されております。  23頁、(10-3)肝炎等克服緊急対策研究事業では、ウイルス性肝炎及び肝硬変患者に 対する治療ガイドラインを策定することによりC型肝炎ウイルスの根治率が着実に向上 する等の成果があったという評価です。(11)免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業 では、喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー、間節リウマチ等の重症化予 防のための自己管理方法や生活環境整備に関する研究を拡充して推進しており、例えば アレルギーの各疾患の診療ガイドラインの作成と普及等に取り組んできたが、最近10 年間で喘息の死亡者数が半減するなど、医療の質の向上と国民の健康指標の向上にもつ ながっているという評価が記載されております。  24頁、(12)こころの健康科学研究事業ですが、精神分野では克服すべき疾患と課題 が山積しており、近年拡大しつつある行政的な課題に直接的に対応した研究も多く、行 政施策に反映された研究成果もあり、本研究事業は、施策推進の根拠を示すための重要 な役割を担っているという評価が記載されております。神経・筋疾患分野では、脳の役 割という観点から、神経・筋疾患に関して病態解明あるいは予防法や治療法の開発の研 究が行われており、新しい治療法の開発や病態の解明において進捗が認められ、また、 論文等についても多くの成果があがっているという評価です。  25頁、(13)難治性疾患克服研究事業では、123の希少難治性疾患について研究を実 施しており、最近では、多発性硬化症の治療反応性をよりよく予測する手法を明らかに したほか、肺リンパ脈管筋腫症やもやもや病の治療指針の作成等々の成果があったとい う評価がなされております。  26頁からは<IV. 健康安全確保総合研究分野>です。(14)医療安全・医療技術評価 総合研究事業では、全国の救命救急センターへのアクセス分析の結果が都道府県におけ る医療計画等の策定に活用されるなど、研究成果はいろいろな経路で着実に医療政策に 反映されているということが記載されております。  27頁、(15)労働安全衛生総合研究事業では、労働安全衛生法における定期健康診断 の胸部エックス線検査について若年層の実施基準に関する新たな知見を得たほか、石綿 について、現場で短時間に測定可能なサンプリング装置等を開発するなど、行政施策に 必要とされる成果をあげているという評価が記載されております。(16)「食品医薬品等 リスク分析事業」の(16-1)食品の安心・安全確保推進研究事業では、BSE対策、モダ ンバイオテクノロジー、アレルギーなど、国民の関心が高い研究に加え、薬剤耐性食中 毒菌や既存添加物など、国民生活に影響の大きい研究を推進しており、また、リスクコ ミュニケーションに関する研究を行い、行政を展開する素地を広げたという評価が記載 されております。  28頁、(16-2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業では、「マ イクロドーズ試験実施のための指針」の発出につながる成果が得られるなど、医薬品開 発のための早期探索的臨床試験の指針作りや、治験の実施に関する薬事法上の基準の運 用等にかかる成果があったとのことです。  29頁、(16-3)化学物質リスク研究事業では、化学物質の安全性確保に向けた評価手 法の開発、新規素材であるナノマテリアルの有害性に関する新たな知見の報告、内分泌 かく乱作用化学物質に関する新たな知見の報告などがあり、着実な成果があるという評 価が記載されております。(17)健康危機管理対策総合研究事業では、健康危機発生時 における健康被害抑制ガイドラインの作成などが行われ、水安全対策に関しては、研究 により得られた知見が水道水質基準の逐時見直し等に反映されており、水質事故発生時 の対応等に関する知見も得られております。生活環境衛生に関しては、公衆浴場のレジ オネラ属菌の消毒方法や検査方法等の衛生管理手法の開発などが行われ、さらに、テロ 対策として「医療機関におけるNBCテロ・災害への標準的対応マニュアル」の策定等 がなされております。この事業では、健康危機発生時の対応及び平時の体制整備に関す る研究を実施しており、国民の健康を確保するために有用という評価があります。  以上が記述的評価でありまして、31頁から「終了課題の成果の評価」があります。定 量的な指標として原著論文等の発表状況の集計結果を示しております。今回数値が得ら れている515課題につきましては、原著論文数は18,956件、その他の論文が1,043件、 口頭発表等は総計29,661件ということです。また、通知やガイドライン等、施策の形 成等に反映、予定反映件数を集計すると、32頁の表にありますが、224件、普及啓発活 動は1,380件ということです。  33頁で、各分野ごとのデータを表でお示ししております。  34頁の「おわりに」ですが、こちらで厚生労働科学研究は厚労省の施策の根拠を形成 する基盤となるものであり、行政的意義が極めて大きいということを指摘して、学術的 な成果や行政課題の解決に資する成果をあげている研究事業があった旨記載しておりま す。  34頁の下から6行目ですが、「なお」書きとして、「優れた成果をあげた研究が適切に 評価され、その後の関連する研究がさらに効率的に展開されるよう、評価の方法等の検 討は継続して行う必要がある」ということを記載しております。総合科学技術会議でも、 良い研究ができるだけシームレスに展開されるようにというご議論がありまして、こう いう評価の際にはそういう視点、観点から評価方法の工夫等を検討していく必要がある ということで、課題としてここに提示しております。  35頁では、「今後とも行政的な貢献及び学術的成果の二つの観点からの評価が必要で ある点に十分留意する必要がある」ということを書いております。今後の課題といたし ましては、研究終了後も3年間随時成果の報告をすることが可能となっているWEB登 録システムにつきまして、3年経過後の評価等、それを一層活用する方策を検討する必 要があるということを指摘しております。  駆け足になりましたが、平成19年度研究課題の成果の資料の説明は以上でございま す。ご審議のほどよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  膨大な内容を一気に説明いただきましたので、ついていくのがやや大変だったかもし れませんが、一応、平成19年度の研究の評価全般をご報告いただきました。何かご発 言はありましょうか。 ○今井委員  この評価については妥当というか、評価をされた方々はご苦労さまでしたという話で す。今回は二つなのですが、最初の行政政策研究分野の研究に関しては、研究助成金の 成果表を拝見しても、一般の人たちが知りたがっているようなことがかなりある。行政 に活かすというふうにはなっているのですが、例えば後期高齢者の処遇ですか、いちば ん最初の問題だとか、2番目の日本の医薬品産業が行政政策の失敗によって云々みたい な話とか、こういうのは、結構マスコミなどでも気になるところではないかと思うので す。一般的には、まず評価のほうを読んでしまうと思うのですが、この内容そのものが、 すごく重要なものがたくさんあるので、行政政策研究分野に関しては、今後もう少し詳 しく書いていただけるといいかなと。  二つ目は、行政分野ではない次からの分野なのですが、評価の所に当該研究が有用で あるとか、非常に評価できるというような分野と、当該研究事業にさらなる推進が必要 であると書かれている分野に関しては、この研究助成の範囲の中で処せる話だと思うの ですが、この研究そのものの評価の内容の中に、例えば19頁の子どもの分野は、今後 も事業の強化・充実を図っていく必要があると。21頁では、研究ニーズの明確化を図り、 自立支援・介護のための人的サービス云々、総合的に取り組む必要がある。次の頁は、 シミュレーションモデルの開発などの研究を迅速に進める必要がある。23頁では、例え ば肝炎ウイルスの感染機構の解明並びに、ここから進展する肝炎などにおける病態の予 防及び新規治療法の開発などに関する研究などに取り組む必要がある。この辺はずっと そうなのですが、こういった評価の中に先のことで「こうすべきである」というのを書 いている分野が、19頁から26頁までに出ているのです。こういうことに関しては、今 後どのようにしていくかという政策的な予見はあるのでしょうか。 ○垣添部会長  まず、行政的な課題の中で、一般の方あるいはマスコミなどが関心を持つことに関し てもっと詳しい情報が欲しいというご希望に対して、事務局から何かありますか。 ○坂本研究企画官  一般論といたしまして、どちらかというと、本年度は昨年度よりも資料は簡潔に書く 方向で整理いたしました。いまのご指摘はなかなか難しいところがありまして、1,000 を超える課題についてそれぞれ書きますと、まとめるのがちょっと厳しいなというとこ ろがあります。ご指摘に即答しにくいところはあるのですが、重要な課題については、 既にこの中でも具体例として例示しておりますように、そういう形で対応を検討したい と思います。  もう一つですが、平成19年度の評価の記載につきましては、平成19年度の成果の具 体的な評価を中心に書くようにしました。ただし、評価をしている際、先生方から、今 後こういうことをというようなコメントがあったもので、具体的なものについてはあえ て記載しているところはありますので、そういったものはそれぞれの研究事業の中で今 後当然考えられていくべきものでして、いろいろ制約はありますが、方向性が評価の中 から出てきたようなものについてはここに記載しているということです。 ○今井委員  それで、ここに書かれていることが、今後実現できるのか。何かの方法はつくられる のですか。 ○坂本研究企画官  平成20年度につきましてはすでに走っているところがありますので、直ちにという のは難しいと思いますが、平成21年度については、おそらく次回の科技部会で方向性 について議論していただきますので、その際に各課題にどのように取り組むのか、お示 しします。どこまで細かく書けるのかというのはこの場ではなかなか言えないところが ありますが、そういう観点で今後の検討はなされるということです。 ○金澤委員  先ほど、総合科学技術会議の評価がということが少し出ていましたので。実は、最近 の総合科学技術会議でも厚生労働科学研究費のことが話題になってしまっておりまして、 ここは答えをきちんと用意しておいていただいたほうがいいのではないかと思うのであ えて申し上げます。まだこの厚生労働科研費の性格といいましょうか、これだけ細かく やらざるを得ない理由、それをよく理解してくださらない方が、おわかりだと思います が、委員の中におられるのです。それに対してきちんとした答えを用意しなければいけ ないのではないかと思うのです。  これは単なる例ですが、20頁に「糖尿病」という言葉が出てきますね。循環器疾患等 の「等」の中に、生活習慣病ということもあって、糖尿病が出てくるのはしょうがない のだろうと思うのですが、また14頁にも糖尿病の話が出てくるわけですね。こういう、 いろいろな所で似たようなことをやっていないか、ということを言われてしまう書き方 に部分的になっている。それはある意味では細かいことなのですが、基本的にこれはす べてが競争的資金なのかという、そういうかなり大きい問題も含んでいると思うのです。  厚生労働科学研究費というのは、ある部分ではどうしても政策的にやらなければいけ ない部分というのがあるわけですから、細かく言えば競争的資金なのですが、あえてそ ういうことを言って、「勝手なことをやっているんじゃないか」と言われるような、変な ことにはならないような方策があるのではないかという気がして仕方がないのです。そ れはここには出てきませんが、例えば研究委託費というのもあるわけです。ああいうも のと突き合わせられると、「何だ、ダブっているじゃないか」と、こういう非常に単純な ことを言われかねない部分があるので、省全体としてそれに対する答えをきちんと用意 していただかないといけないのではないかという気がしているのです。 ○垣添部会長  ありがとうございます。大変貴重な情報だと思いますが、事務局から何かありますか。 ○矢島厚生科学課長  私どもが説明に苦慮しているところでありまして、いまのご指摘は大事な点だと認識 しております。まだ、全体の枠組みをどうするかというところもあるのですが、競争的 な研究がふさわしい分野とそうではない分野をどのように説明すればご理解いただける かというふうに我々も苦慮しているのです。総合科学技術会議の先生方が得意とする分 野は、論文のところの評価の仕方のお考えや独自な評価の指標をお持ちなものですから、 どのようにご説明すればいいのかということも私どもも苦慮していますので、いろいろ な意味でまたお知恵を拝借いただければありがたいと思っています。少なくとも、我々 は国民の目線に立ってやらなければいけないものはやるということなのです。すべてが 競争的な研究ではないと思っているのですが、そうではない研究は研究ではないという お考えを持っている方もいらっしゃるものですから、そこのところをうまく説明できれ ばいいのかなと苦慮しているところです。またいい知恵があれば教えていただけるとあ りがたいと思っております。 ○垣添部会長 金澤委員が例として挙げられた、例えば糖尿病があちこちに出てくる、 これはオーバーラップではないかと。でも、厚生労働科学研究の性格からいったら、避 けがたいオーバーラップだと思いますから、それは指摘されても敢然と反論するという 必要があるのではないかという感じがいたします。ほかにご意見ありましょうか。  ここの国際医学協力研究は、先々週、日米医学の会議が米国のミネアポリスでありま して、私も出席してまいりました。今、日米ともに、アジアを中心とした感染症、ある いは生活習慣病に対するさまざまな取組みがかなり活性化してきて、米国の評価も非常 に高かったのです。日本側の参加も非常に活発でしたから、この評価どおりで、これも 研究の一つの内容ですが、大きな成果をあげているというふうに受け取りました。 ○西島委員  課題の評価と直接は関係しないのですが、いまの金澤委員のお話にもありましたよう に、この研究費が競争的研究資金であるということで、一部、FAということの取組み が始まりましたが、このFAについての評価というものは何かなされているのでしょう か。 ○坂本企画官  今回はあくまで課題の評価ということです。FAの議論はこの部会でも別にやってい ただいたことがありますが、この今回の評価の中ではそういう観点は特に入れておりま せん。 ○西島委員  金澤先生、FAについては総合科学技術会議では何か。 ○金澤委員  話は出ていますが、ある方々は非常に単純なことを考えているのです。つまり、文科 省と同じに考えているのです。学術振興会のようなものをつくって、そこですべてやれ ばいいではないかという感覚なのです。ですから、一つひとつの施策をそれぞれの部署 といいますか、局などでやっておられるこの厚生労働省の構造の違いの問題があるので す。向こうで研究というと、これは一つの簡単な構造で考えられるのですが、厚生労働 省の研究というのは指定のものから、指定というよりも、むしろお願いしてやっていた だかなければいけない問題、また、誰にやってもらえばいいだろうという程度のもの、 全くのボトムアップのほうがいいものから、いろいろな形があるわけですね。ですから、 それを一つのエージェンシーでやっていいかという問題がどうしても理解してもらえな いのです。これは本当に困ったことでありまして、そういう問題があるということです。 ○垣添部会長  長い間問題になっている非常に難しいところですが。 ○竹中委員  資料1-1の別紙の各課題の個別表があります。この中でずっと見ていくと、論文発表 が一切ないテーマもかなり散見されるのですが、これらについてはなぜかとか、その理 由を調べてあるのでしょうか。 ○坂本研究企画官  これにつきましては、先ほどご説明しましたように、もともと論文になる時期の問題 もあるかとは思っております。入力につきましても、データは何月何日時点ということ で、先ほど申しましたように、正直、日々少しずつ追加で入っているところもあります。 先ほど申しましたように、3年間はフォローできますので、今後はそういうところを3 年後の段階できっちり見るとか、そういうことが課題としてあると認識しております。 おっしゃったようなフォローは、事務局としても検討課題というふうに考えております。 ○竹中委員  3年後にはこうしたまとめがもう一度出る、最終結果というものが。 ○坂本研究企画官  これと同じ作業をもう一度やるかどうかはまだ我々も腹が決まっておりませんので、 どういうやり方がいいかについても考えたいということですが、何らかのフォローをし なければいけないということを思っております。 ○垣添部会長  まだ皆さんご意見がおありかと思いますが、時間の関係もありますので、本日の議論 はここまでにしたいと思います。それで、お気づきの点や追加のご意見等がありました ら、お手元に配られている1枚紙の「厚生労働科学研究補助金の成果の評価に関するご 意見」にご記入いただいて、1週間後の7月14日の月曜日までに事務局にご連絡いただ き、本日いただいたご意見と併せて取りまとめをする。再度会議は開かないで、科学技 術部会としての最終的なバージョンを作りたいと思います。その作成に関しては部会長 に一任いただけるでしょうか。 (異議なし) ○垣添部会長  ありがとうございます。ご異議がないようでしたら、そのように進めさせていただき ますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。  では、議題の2「遺伝子治療臨床研究について」。まず、2-1「遺伝子治療臨床研究実 施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に関する申請につい て」ということで、国立がんセンターの分をお願いいたします。これは6月16日に厚 生労働大臣から諮問されて、同日付で当部会に付議されています。なお、国立がんセン ターからの申請であるので、本件については、私は意見は述べないことにいたします。 それから、作業委員会にも加わらない予定でおります。まず、事務局から資料の内容を ご説明いただけますか。 ○坂本研究企画官  それでは、資料2-1に基づきまして、国立がんセンターから申請がありました、遺伝 子治療臨床研究実施計画、及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価につきま してご説明いたします。実施施設から遺伝子治療臨床研究の実施について意見を求めら れた場合、遺伝子治療臨床研究に関する指針に基づいて、複数の有識者のご意見を踏ま えて新規性等の有無の判断をさせていただいております。今回の件についても3名の先 生のご意見を伺いましたが、各先生とも新規性ありというご判断で、厚生科学審議会に 諮問させていただいております。  資料2-1の1頁が諮問書、2頁が当部会への付議ということになっております。3頁 が遺伝子治療臨床研究実施計画申請書です。申請は6月9日で、遺伝子治療臨床研究の 課題名は「ハプロタイプ一致ドナー由来T細胞除去造血幹細胞移植後のHSV-TK遺伝 子導入Tリンパ球“Add-back”療法」ということです。  4頁以降が臨床研究実施計画の概要書です。研究実施期間は承認されてから3年間と なっております。5頁の研究の目的ですが、この研究は、高リスク造血器悪性腫瘍患者 に対して、ヒト白血球抗原(HLA)ハプロタイプ一致ドナー由来T細胞除去造血幹細胞 の移植を施行いたします。その後、レトロウイルスベクターSFCMM-3を用いて単純ヘ ルペスウイルス1型-チミジンキナーゼ遺伝子を導入した同一ドナー由来のTリンパ球 を追加輸注(Add-back)する治療法で、その治療法の全体としての安全性及び有効性に ついて検討するということです。  主要エンドポイントは、こちらにあるように、この療法の安全性、HSV-TK遺伝子導 入Tリンパ球Add-back後の免疫系再構築並びにGVHD発症頻度及び制御能というこ とです。副次的エンドポイントとして、この療法における感染症頻度、無病生存率、及 び全般生存率が評価される予定です。  6頁ですが、対象疾患は、HLA適合又は1抗原不一致(血清型)の適切なドナーのい ない、早期に移植治療を必要とする高リスク造血器悪性腫瘍患者です。HLA適合血縁者 間での造血幹細胞移植は確立された治療手段とのことですが、約60%の患者はHLA適 合ドナーが存在しないということです。  ミスマッチ移植は、100%に近い確率でドナーを見つけることが可能ですが、そのま までは生着しにくく、拒絶のリスクや急性のGVHD発症のリスクが問題になります。 G-CSFにより動員した末梢血幹細胞からT細胞を除去し、患者さんに移植することで、 造血幹細胞を高率に生着させ、かつ重篤なGVHDを回避する手法も確立されていると いうことが6頁の下のほうに書いてありますが、非血液疾患死亡率や白血病再発率は依 然として高いということです。T細胞除去ミスマッチ移植では、移植後早期に免疫系を 再構築する手立てが必須ということが7頁に記載されています。  今回の遺伝子治療臨床研究は造血器幹細胞移植の補助的な治療法で、ガンシクロビル という抗ウイルス薬で自滅するように遺伝子導入がなされたドナーT細胞を用いて、 GVHDが発症しても、導入したドナーT細胞を自滅させることで症状の沈静化ができる と考えられており、T細胞除去ミスマッチ移植を安全かつ有効に行える可能性があると いうことです。  欧州ではこの臨床研究と同様の治験が現在行われており、国内でもこの臨床研究と同 一のレトロウイルスベクターを用いた治験が予定されているということです。なお、こ のレトロウイルスベクターは国内で別の臨床研究に使用された実績があります。  19頁の5.として、実施期間及び目標症例数がありますが、最長3年間、各症例ごとの 実施期間は、最終のAdd-back後6カ月までで、その後、生存期間にわたり長期追跡調 査を実施するとなっております。目標症例数は10例となっております。今後、がん遺 伝子治療臨床研究作業委員会、83頁にその委員会の名簿を載せておりますが、そちらの ほうでご検討いただく予定ですので、本日のご審議でご意見をいただいた場合には作業 委員会にお伝えいたしますので、よろしくお願いいたします。  続きまして、いわゆるカルタヘナ法と呼ばれる法律の関係です。84頁から、生物多様 性影響評価に関する資料で、ウイルスベクター等の遺伝子組換え生物等を使用する臨床 研究に関しましては、カルタヘナ法に基づきまして、第一種使用規程の承認を受ける必 要があります。第一種使用規程の承認にあたっては、主務大臣は学識経験者の意見を聞 かなければならないとされておりまして、当部会及び当部会の下の作業委員会、112頁 に作業委員会の名簿を載せておりますが、そちらでのご審議をお願いしております。  86頁以降が第一種使用規程の承認申請書となっております。この内容については今後、 作業委員会で生物多様性影響の観点からご審議いただき、論点を整理していただいた上 で再度この部会でご議論をお願いすることになります。説明は以上でございます。どう ぞよろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  ただいまの説明に関して、倫理面を含めて総合的に審議いたしたいと思いますが、何 かご意見、ご質問等がおありでしたらお受けしたいと思います。  よろしいでしょうか。 ○垣添部会長  ありがとうございます。それでは、これは遺伝子治療作業委員会のほうで、今日はそ ちらの委員長の笹月委員がご欠席ですが、検討いただきまして論点を整理していただき、 その検討結果は当部会にまた報告がありますので、再度総合的にご審議いただければと 思います。  それでは、三重大学附属病院からの遺伝子治療臨床研究実施計画・食道癌に関して、 それとカルタヘナ法について、事務局からご説明ください。 ○坂本研究企画官  資料2-2に基づいて、三重大学医学部附属病院から申請がありました遺伝子治療臨床 研究実施計画及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価についてご説明いたし ます。先ほどのご説明と重複するところは少し省略してご説明いたします。本件につき ましても、ご意見を伺った有識者の先生方から新規性ありというご判断をいただいてお り、厚生科学審議会に諮問させていただいております。  1頁が諮問書で、2頁が当部会への付議ということです。3頁から遺伝子治療臨床研究 実施計画申請書で、申請は6月9日です。課題名は「MAGE-A4抗原特異的TCR遺伝 子導入リンパ球輸注による治療抵抗性食道癌に対する遺伝子治療臨床研究」です。4頁 以降が臨床研究実施計画の概要書です。研究実施期間は承認されてから3年間となって おります。  6頁に研究の目的等があります。この研究は、標準的な治療法(化学療法、放射線療 法等)による効果が期待できない治療抵抗性の食道癌患者を対象として、腫瘍抗原 MAGE-A4を特異的に認識するT細胞受容体α鎖及びβ鎖の遺伝子をレトロウイルスベ クターにより遺伝子導入した自己リンパ球を輸注することについて、その安全性、体内 動態及び臨床効果を以下のエンドポイントによって評価することを目的とするというこ とです。主要エンドポイントは、この遺伝子治療の安全性となっております。副次エン ドポイントとしては、T細胞受容体遺伝子導入リンパ球の血中動態及び腫瘍組織への浸 潤、腫瘍特異的免疫反応、腫瘍縮小効果を挙げております。  対象疾患は食道癌で、比較的男性に多く、予後不良癌とされているということです。 食道癌では、初回治療が適正に行われたにもかかわらず再発を認めることが多いという ことで、再発食道癌の50%生存期間は約6カ月という記載があります。治療抵抗性食道 癌に対する根治療法は、現時点では存在しないということです。  今回の遺伝子治療臨床研究は、PCR法で腫瘍組織にMAGE-A4という腫瘍抗原が発 現しており、白血球の型がHLA-A2402であるというような、いくつかの条件を満たす 患者さんを対象に、MAGE-A4を認識するよう遺伝子導入した自己リンパ球を患者さん に投与し、その後MAGE-A4ペプチドを投与して、患者体内での遺伝子導入リンパ球の 増殖を図るという計画になっております。  16頁に、米国で別の癌を対象とした類似の研究が行われたことがあるという記載があ ります。そちらのほうでは部分奏効例もあったということです。  19頁の5.は実施期間及び目標症例数です。先ほど申し上げたように、3年間の計画で、 症例ごとの実施期間は遺伝子導入リンパ球輸注後63日ということですが、この臨床研 究終了後も当該被験者の生存期間にわたり、追跡調査を実施するということになってお ります。目標症例数は各コホート3例、合計9例ということですが、各コホートで最大 6例まで増加することがあり得る計画となっております。今後、がん遺伝子治療臨床研 究作業委員会でご検討いただく予定で、本日のご審議でご意見をいただいた場合には作 業委員会にお伝えいたしますので、よろしくお願いいたします。  カルタヘナ法の関係は47頁からになっております。47頁から生物多様性影響評価に 関する諮問書、それから付議書があって、49頁から、第一種使用規定の承認申請書です。 こちらの内容についても、作業委員会で生物多様性影響の観点からご審議いただき、論 点を整理していただいた上で、再度この部会での議論をお願いすることになります。資 料の説明は以上です。 ○垣添部会長  ありがとうございました。三重大学から治療抵抗性の食道癌に対して、MAGE-A4を 特異的に認識するTCR受容体α鎖、β鎖を遺伝子導入したリンパ球を入れて、その安 全性と効果を見るという研究申請です。  遺伝子治療作業委員会は、笹月委員長、カルタヘナの生物多様性に関しては吉倉委員 長の下で検討されることになりますが、科学技術部会として、何かご意見、ご質問等が ありましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。  よろしゅうございますか。それでは、作業が進んでまいりましたら、科学技術部会の ほうに上がってくると思いますので、そのときまたご意見等がありましたらご発言くだ さい。  次は遺伝子治療臨床研究についての2-3の「変更及び重大事態等報告について」です。 まず事務局から説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  それでは、資料は2-3です。内容は2点あります。1点目が、1頁からの自治医科大 学からの臨床研究実施計画の変更の報告です。自治医科大学では「AADC発現AAVベ クター線条体内投与による進行期パーキンソン病遺伝子治療の臨床研究」という遺伝子 治療の臨床研究が行われています。  資料の3頁で、審査委員会の開催状況及び実施計画の変更を適当と認める理由がわか りやすくまとめて書いてあります。この研究と同様の臨床研究が米国で実施されており、 米国ではphaseIが終了したということですが、低用量で十分な効果が認められたため、 安全面を考慮して、高用量の注入試験は実施しないこととなったということです。この ため、我が国においても、高用量群への投与を行わないで、日本における安全性のデー タを収集する観点から、低用量の症例数を増やす研究計画の変更を行おうということで す。  8頁の新旧対照表ですが、もともとは総用量が3×1011、9×1011となっていたところ を3×1011のみにするということで、低用量の症例数をその分増やしたいという研究計 画の変更を行おうということです。このほか、今回、論文が公表されたことによる変更 なども併せて行われております。なお、こちらの内容については、パーキンソン病遺伝 子治療臨床研究作業委員会の委員の先生方にもご確認をいただいているところです。  続きまして、この資料の15頁からは「遺伝子治療臨床研究重大事態等報告書」にな っています。遺伝子治療臨床研究において死亡等の重大事態が生じたときに報告をいた だくことになっており、今回は北里大学病院から報告をいただきました。遺伝子治療臨 床研究の課題名は、「前立腺癌に対するHerpes Simplex Virus-thymidine kinase遺伝 子発現アデノウイルスベクター及びガンシクロビルを用いた遺伝子治療臨床研究」とい うことです。この遺伝子治療臨床研究では、ガンシクロビルという抗ウイルス薬を用い ることになっていますが、この資料の20頁に患者の経過などがありますが、抗ウイル ス剤が原因ではないかと疑われる肝機能障害があったということで、臨床研究は中止さ れ、その後、肝機能も軽快されて、全身状態の改善も確認されており、退院しています。 その後、前立腺の手術で再度入院され、手術がなされたところ、術後しばらくして急性 肺血栓塞栓症により永眠されたということで、この報告をいただきました。  少し戻って、17頁に審査委員会の意見のところに、北里大学の審査委員会の意見が記 載されています。遺伝子治療臨床研究中止後に一度退院して、全身症状の改善も確認さ れていますことから、術後合併症の可能性が高いという判断が記載されております。本 件の内容については、作業委員会の委員の先生方にも確認をしていただいております。 資料に関する説明は以上です。 ○垣添部会長  自治医科大学は用量の変更ということで、米国の先行研究で低用量で十分成果は上が っているということなので、高用量をやめて低用量の症例数を増やすという変更です。 北里大学のほうは、前立腺癌に対する遺伝子治療を受けていた患者が、肺塞栓症で亡く なったのですが、これはおそらく遺伝子治療とは関係がないのではないかということで す。  二つの案件、研究の変更及び重大事態等の報告に関して、ご質問、ご発言がありまし たらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。特に問題はありませんね。それで は、変更と重大事態等の報告ですが、この件はここまでにさせていただきます。  それでは、議事の3「その他」の研究開発機関の評価結果等についてです。本日は国 立国際医療センター研究所を取り上げることにいたします。事務局から報告をお願いし ます。 ○坂本研究企画官  それでは、ご説明いたします。研究開発機関の評価については、「厚生労働省の科学研 究開発評価に関する指針」、参考資料3の15頁にその関係の記載がありますが、研究開 発機関は、各研究開発機関の評価を定期的に実施することになっております。その評価 報告書については、厚生科学審議会科学技術部会に報告されているところです。  今回は、国立国際医療センター研究所の評価結果及び対処方針についてのご報告をい ただきます。本日は、国立国際医療センター研究所の春日研究所長にご出席いただいて おりますので、評価結果等につきましては、春日先生からご報告いただきます。 ○国立国際医療センター春日研究所長  ただいまご紹介いただきました春日でございます。それでは、お手元の資料3-1に基 づいて説明いたします。2頁です。ただいまご紹介がありましたように、平成16年から 19年度の3年間に関して、そこに名前を挙げている9名の外部評価委員による書類によ る評価、及び評価委員会における評価に基づいて、この報告書が作成されております。 評価委員長は、東京大学名誉教授の吉田光昭先生にお願いしております。  3の「評価の日程」ですが、平成19年11月中旬に評価資料を発送。資料による評価 の依頼をして、12月14日に評価シートの締め切り、平成20年1月8日に評価委員会 を開催しました。3頁にその評価委員会のプログラムがあります。各部長によるプレゼ ンテーションがありました。  4頁の「評価の方法」です。厚生労働省の定めた「厚生労働省の科学研究開発評価に 関する指針」に記載された「研究開発機関の評価の実施方法」に準拠して、A〜Iの9 項目に関して、1〜5点の評価点で、一番いい点が5ですが、それで評価をしていただき ました。この評価は12月14日に提出していただき、さらに評価委員会での評価を加え て、最終的な評価といたしました。  次に「評価の結果」ですが、その前に、10頁に当時の研究所長の桐野先生がまとめら れた「対処方針」があります。その「はじめに」の部分に、少し、国立国際医療センタ ーの背景というか、現状について記載がありますので、説明したいと思います。  そこにありますように、創立15周年目を迎えて、国立国際医療センターは転機を迎 えようとしております。まず平成20年度より、国立精神・神経センター国府台病院が 国立国際医療センターと統合され、そこに肝炎・免疫研究センター、医療クラスターが 設置されようとしております。さらに平成22年には、ナショナルセンターが非公務員 型の独立行政法人に移行するという法案が現在審議されております。  このような背景を受けて研究所の研究課題のスコープも大きく変化してまいりました。 すなわち、研究所では、SARSコロナウイルスなど、感染症に対する診断・治療の開発 が最も以前より取り組まれていた大きな課題でした。一方、開発途上国では、近年の発 展とともに、肥満・糖尿病の問題が増大しておりまして、そういうこともある関係で、 平成12年からミレミアムプロジェクト等で、研究所は糖尿病を担当することになり、 感染症に加えて糖尿病の研究が研究所の担うべき課題と位置づけられるようになってま いりました。そして、平成18年10月に、研究所内に国際臨床研究センターを設置して、 臨床研究体制の強化に取り組み始めました。  そのようなことから現在では、国際協力と感染症の研究に加え、糖尿病をはじめとす る生活習慣病の研究へと研究課題が広がり、さらに基礎的研究の成果から実際の臨床応 用を目指す臨床研究へと拡大しているのが現状です。  そのような点を踏まえて、5頁に戻りますが、評価で個別評価のAから簡単に説明を したいと思います。Aは、平均値としては4.1という点をいただいております。基本的 には成果も出ているという評価をいただいておりまして、さらなる発展を遂げるために はということで、5頁のいちばん下に、まず最初に病院と、さらに他のナショナルセン ター、研究所との連携が重要であろう。次の頁の2)で、医療における国家的ミッショ ンを背負う医療センターの研究所としては、長期的な視点に立った研究テーマを設定す ることが重要だろうというご指摘を受けています。  Bの「研究分野の課題の設定について」は、3.8という評価をいただいておりますが、 適切であるという評価をいただいております。ただ、以下の点に配慮しつつということ で、一つは研究所のミッションとの関連性において検討を要する課題、あるいは人員構 成から考えて担当範囲がやや拡大・分散する傾向のある課題があった。2として、大き なプロジェクトの数が、研究所の規模を考えると、適正な範囲を超えているという指摘 をいただきました。  Cの「研究資金等の研究開発資源の取得について」は、4.3という評価をいただいて います。小規模な研究所としては十分な研究・開発資源を獲得しているという評価です。 指摘事項の1)としては、民間との連携をさらに重視してほしい。2)として、基盤的な 運営費の強化が今後さらに必要になるのではないかというご指摘をいただいています。  Dの「組織・施設整備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の支援体制など研究をバ ックアップする体制について」は、3.3という評価をいただいております。一定程度の 体制になったという判断をいただきましたが、今後の活性化のために、以下の点につい て改善が必要であるということで、7頁を見ますと、まず最初に、定員39名はあまりに も少ないということで、研究定員の増加が急務である。2番目は、研究所のスペースの 確保が今後の問題である。3番目に、知的財産権の取得の支援は、専任の担当者がいな い状態であり、十分とは思えない。技術的支援を分担する専門官の任命が望まれるとい うご指摘をいただいております。  Eの「疫学・生物統計学の専門家が関与する組織の支援体制について」は、4.3の評 価をいただいております。  Fの「共同研究の導入状況、産官学の連携、国際協力等の外部との交流について」は、 3.8という評点をいただいておりまして、国際医療協力局や病院との連携をさらに強化 するように、あるいは本研究所の主導で行われた研究については、外部にわかりやすく 知らせるよう、工夫の余地があるというご指摘をいただきました。  Gの「研究者の養成・確保・流動性の促進について」は、3.3という評価ですが、二 つの検討課題ということで、8頁の1)で、定員の増強と育成のための体制強化という ことで、特任研究員を増加することが重要であろうというご指摘、それから2)で、流 動研究員、大学生の受入れを研究所として体制化するように、というご指摘をいただい ております。  Hの「専門性を生かした社会貢献に対する取り組みについて」は、3.9、Iの「倫理規 定、倫理審査会等の整備状況について」は、4.6という評価をいただきました。  (2)「総括的評価」については、簡単にご説明したいと思います。国立国際医療セン ター研究所における研究の内容については、多岐にわたって、良い研究がなされたとい うのが外部評価委員全員の共通の評価であるとのことでした。最後の3行にありますが、 特に定員の総数が非常に制限されているという観点から、多岐にわたった研究であれだ けの成果を上げるには、なかなかのご苦労があったのではないかと推察する。ただ、研 究課題が多岐にわたっていて、多すぎるのではないかという印象を持った。現在の研究 部の名称と、研究の内容とが、国立国際医療センターのミッションという観点からは、 検討を要する面も見受けられた。今後、独立行政法人化に向けて国立国際医療センター 全体の体制を見直し、それに従って、研究所のあり方も見直していく時期が迫っている。 国府台地区に新しい研究サイトが設けられ、肝炎・免疫研究センターが計画されている。 国立国際医療センター全体をどのように運営していくかということも念頭に入れ、研究 所のあり方を検討しなければならない。特定のミッションを持つ研究所としては、ミッ ションを効果的に遂行することに加え、活動のミッションへの結びつきをわかりやすく 説明できるようにしていくことが必要である。何よりも、研究所全体をどのようにまと めていくかということをお考えいただきたい、というご指摘をいただきました。  続きまして、私どもの「対処方針」ということで、当時の研究所長の桐野先生がまと められたものです。「はじめに」は、先ほどご説明いたしました。11頁の2「総論」と して、研究所の将来の発展について力強いご意見をいただいた。14研究部で総勢39名 の常勤ボジションによって運営されている研究所であり、特に若手研究者のポジション が十分用意されていないことに大きな問題のあることが指摘された。大型のプロジェク ト研究を多数担当してきているが、人的資源が現状のままであると、研究が中途半端と なり、高い質の研究を生み出していく可能性が制限されるのではないかという指摘が複 数の委員から出されたということで、これに対する対処方針としては、引き続き増員の 要求を行っていただきたいということと、競争的資金による特任研究員を増加させるこ とを考えております。  3の「研究課題」に関してです。研究課題に関しては、大型のプロジェクトに関して、 研究所メンバーの努力により対処してきたのが実情で、今後もプロジェクト研究に対す るマンパワー、スペースの面でサポート体制を整備したい。例えば、遺伝子変異動物の 作製などの面で、研究全体をサポートする研究者のポジションを間接経費で用意し、プ ロジェクト専用のスペースを増加させるなどの方策を実行したい。  4の「人材の獲得と育成」ですが、これは最後の2、3行に書いてありますように、連 携大学院の拡大、大学院生の獲得やポスドクの獲得、特任研究員のポジションの創出を 最大限に行いたいと考えています。  5の「組織、スペース」です。これは13頁にありますように、国府台地区に肝炎・免 疫研究センター、医療クラスターが設置され、その関係で現在の研究所のスペースが少 し余裕が生じる可能性があると考えています。  6の「研究資金の獲得」に関しては、知財の問題や利益相反の問題を解決しつつ、民 間との共同研究をさらに推進したいと考えています。  7の「他の研究機関などとの協力」ですが、病院との協力ということで、初期臨床研 修の期間に、臨床研究に関する基礎知識をつけるためのセミナー、あるいは後期臨床研 修のうちの一定の期間、研究所において臨床研究や疾患研究に携わることが可能となる プログラムを考えております。そして近隣の国立感染症研究所、あるいは国立健康・栄 養研究所とは共同研究を推進したいと考えております。  8の「研究所の将来像」ですが、14頁の真ん中ぐらいにありますように、国立国際医 療センターは、その時期における国の政策医療上、極めて重要な課題や疾病領域を担当 し、その中核となっていくこととなるということで、新興・再興感染症やAIDS、肝炎 などの感染症、糖尿病を始めとする生活習慣病や、近い将来において、免疫難病を含め た疾病の開発研究から、さらに橋渡し研究・臨床研究へと強化させていく予定であると いうことです。以上です。 ○垣添部会長  春日先生、どうもありがとうございました。ただいまのご説明に関して、何かご発言、 ご質問等ありましたら、お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。  私から質問いたします。平成20年から国立精神・神経センターの国府台病院が、肝 炎・免疫研究センター、医療クラスターとして国立国際医療センターに統合されるとい うことですが、スペースの拡大などに関しては、国際医療センターにとっては大変大き なイベントだと思います。新宿と国府台の距離のハンディはどのように克服される予定 ですか。 ○国立国際医療センター春日研究所長  国府台の肝炎・免疫センターに、現在の研究所のうちの免疫関係あるいは肝炎関係の 三つの部門が移ることになっていますので、14部門のうちの3部門が移り、スペース的 には、現在の戸山地区に少し余裕ができるのですが、いまご指摘のあった、場所は離れ ていても、それをうまくまとめていかなければいけないということで、その点が非常に 難しい問題です。  例えば、事務部門は既に統合されておりますので、テレビ会議等を使って、2週間に 1回の幹部会議を行うという工夫をしております。あまり近くない距離ですので、なか なか難しいだろうと考えています。 ○垣添部会長  いろいろ工夫をしていただければと思います。もう1点は、国府台病院が、国立国際 医療センターに取り込まれることに関連して、研究所としての平成21年度の定員の要 求などはプランしておられますか。 ○国立国際医療センター春日研究所長  いまご指摘の点に加えて、さらに研究所のミッションである糖尿病部門を強化すると いう観点からで、人員要求をさせていただいております。 ○医政局国立病院課  部会長もご存じのとおりかと思いますが、現在ちょうど各センターからご意見を頂戴 して、省内で調整中です。今回のことも含めてご意見を頂戴しておりますので、総務省 に出すなり、外に出せる段階でご報告をしたいと思います。 ○川越委員  事情がよくわからないまま質問するので恐縮ですが、平成20年度に国府台と統合さ れるということで、研究プロジェクトが、桐野先生のまとめでは、感染症と生活習慣病 である肥満、糖尿病というところにテーマを絞っていくということが書かれていると思 います。杞憂かもしれませんが、今まであった精神・神経の疾患に関しての研究は、ど ういう形で引き継がれるか、あるいは移管されるのか、教えていただきたいと思います。 ○医政局国立病院課  まず運営側からお答えさせていただいて恐縮ですが、もともと国府台病院は病院機能 が中心で、国立精神・神経センターの研究所は武蔵のほうにあったという事情がござい ます。  今回、国立精神・神経センターから国立国際医療センターに移行して、病院機能をど うするかという議論があって、もちろん肝炎・免疫とか、国立国際医療センターの従来 からのミッションである国際医療協力をどうするかということで、そちらの総合診療的 な強化はもちろん充実させていきます。従前よりやっている精神・神経領域については、 国際医療協力の中でも重要なポイントですので、そういった面は引き続き重視してやっ ていきたいと考えております。 ○木下委員  国立の研究所は、我が国の研究の中心的な方向性を担っていかなければならないので はないかと考えております。それにもかかわらず、いまのお話を伺っても、国立国際医 療センターの研究とあろうものがわずか39人しか研究員がいないとはどういうことで しょうか。国立の研究所はたくさんあると思いますが、このセンター研究所は全体とし てどういう位置づけにしていくかという基本的なスタンスがあるのでしょうか。研究の ために、39名では、誰が考えても医療センターの研究所としては極めて小さなものです。 大きな投資をして、そこに力を入れていくのだということは、全体像の中で考えるべき だと思いますが、そのようなことはどこでできていくのか知りたいと思います。  それぞれの国立の研究センターのレポートは、ここで拝見しますし、伺いますが、そ れぞれの研究所で、問題点は指摘されるが、解決の道が全く見えてこないというのはど ういうことなのでしょうか。それは役所だけの問題ではないと思います。  研究というのは、目先の問題ではなく、5年、10年先を考えたときに、一貫性のある、 しかも非常に大きなプロジェクトの下でやっていくべきだと思います。いまiPS細胞の ことは非常に問題になって、大きな予算が付いていますが、実はもっと地道な研究で重 要なやらなければならないことがあります。今回、示されたような研究内容のこともそ うだと思います。  そういう研究の成果を出すためには、人の問題と研究費の問題は潤沢に出さなければ ならないだろうと思います。国家予算の枠の中とはいえ、どこに重点的に予算を付けて いくかは基本的に重要なことだと思います。  その意味で国立国際医療センターの研究所というのは、位置づけからしますと、今後 大きなものになっていくべきではないかと思いますので、真剣に取り組んで、省庁の一 つの考えではなく、予算枠の中で分配するなどということではなく予算を集中させるこ とも考えてほしいと思います。  基本的な考え方として、この研究所の、いま申し上げたような視点での検討を是非し ていただいた上で、国立医療センター研究所を国として育ててほしいと思います。1年 後にこのレポートを受けた上で、どのように改善されたかということを是非伺いたいと 思いますし、引き続きどんどん発展させ、もちろん研究の内容や人材によるとは思いま すが、育てていくのだという姿勢がない限り、報告書は姑息的になってしまうだけに、 そのような視点で是非国としても対応していただきたいと思います。 ○垣添部会長  大変重要な、しかも大きなご指摘をいただきましたが、何か関連してございますか。 ○竹中委員  木下委員と全く同じ意見です。特にこちらの研究所は、医療センターという性格で、 評価委員も非常に研究課題が多岐にわたって多すぎるのではないかというご意見もあり ました。これは研究所の性格にもよるのではないかと思うわけです。  そこで、先ほど国立病院課の方が言われた中に含まれているかどうかですが、ナショ ナルセンター内で、各センターの特色を生かした選択・集中・配分というのは、今後ど のような形でされていくかという点を教えていただけたらと思います。 ○垣添部会長  大変重要な話ですが、国立病院課からどうぞ。 ○医政局国立病院課  現在、国立高度専門医療センターの独立行政法人化を目指して、法案を国会でご審議 いただいております。その中で六つのナショナルセンターをどうやって性格づけをして いくかが大きな宿題になっております。やはり既存のがん、循環器、精神・神経、国際 医療協力、成育医療、長寿医療の六つのナショナルセンターがそれぞれありますので、 それらの特に臨床研究あるいは全国の疫学調査などの研究を中心として、研究開発型独 法を目指していこうということが大きな宿題になっております。  今回の場合は、例えば研究所の定員としては非常に少ないのですが、国立国際医療セ ンター全体で申しますと、1,500人ほどの定員がありますので、そういった病院の機能 ももちろん研究というものが前提にあるのだということで、センター一丸としてやって いきたいと。その方向づけで、今後独立行政法人としての評価も受けていきたいと考え ております。 ○垣添部会長  木下委員がご指摘の、国立国際医療センターの研究所として、39名の規模はいかにも 小さすぎるのではないか、ということに関してはいかがですか。お答えしていただく必 要はないのかもしれませんが。 ○医政局国立病院課  全体のミッションを考えた末、必要な人員というものが出てくるわけですので、もち ろんいただいたものについて、しっかり要求していくこともありますし、ちょうど独立 行政法人化になるということで、定員の枠から外れるということもあります。あとは企 業からの資金流入であるとか、大学との協力も可能になりますので、そういった外部の ものを引き込んで、その結果、そういうのも使って立派な研究成果を出していきたいと。 そういう枠組みを整えていきたいと考えております。 ○木下委員  病院部門がありますから、原則としてそこの収益の枠の中で研究所をやっていくとい う考えかもしれません。独立行政法人である限りは、おそらくそのような視点もあるか と思いますが、そもそも研究所を独立行政法人としてやっていくなどということが、本 当に国民にとっていいことだとは思えません。  基本的に研究などというのは、成果としてパテントのいいのを取れれば、ある程度自 分でやっていけるかもしれませんが、そんなものではないはずです。研究そのもののあ り方からすれば、独立行政法人だけでやっていけるかといったら、今までのいろいろな レポートを伺っても、皆様困っておられ、今後は萎縮していく一方だろうと思います。  これはここでの議論ではないかと思いますが、考え方として、真剣に研究をしていく のだという方々に大きな力を与えてあげるために、国には資金の援助、人の援助は絶対 に不可欠だと思います。そのような視点で考えれば、いま文字どおり、100人と30人 だから人数に応じて適当に予算の配分をするなどという、そんな話ではないのです。国 立医療センターの研究所というのは、大病院は結構だと思いますが、研究所は研究所と してのあり方があるので、どこかの民間との共同研究ということだけではなくて、その 研究所として基本的に安心して立派な成果が上がるような研究のバックをしてあげるの が国だろうと思います。いくつかのレポートを伺って、根本的な大きな問題を感ずるも のですから、その辺は抜本的に見直すきっかけにしていただきたいと思います。国立医 療センターは、いまの春日先生のお話もそうですが、とにかく育ててあげるという視点 が全く見えてこないので、是非お考え願いたいと思います。 ○垣添部会長  大変心強いご発言をいただきまして、ありがとうございました。春日先生は新しく研 究所長として赴任され、今日ご報告いただきましたのは、桐野前所長がとりまとめられ たものを説明いただきました。まだ短時日ですが、実際に赴任されて、何か感じられる ところはおありですか。 ○国立国際医療センター春日研究所長  研究所としては、いかに若くてやる気のある優秀な研究員を、我々の研究所に来てい ただくかです。ご存じのように、研究というのも、実践部隊は非常に若い人たちですの で、残念ながら現在の我々の研究所のシステムはビラミッド型になっていなくて、どち らかというと、頭でっかちになってしまっています。従って、まずこのような研究体制 を直して頂きたい。  そして更に例えば流動研究員など若い研究員の待遇が悪いのが実情です。いまの若い 方はそういう点に非常に敏感ですので、現在の待遇では非常に優秀な方に来ていただけ ないということを、私はいちばん感じております。 ○垣添部会長  ただいま大変重要なご指摘もいただきましたが、ご意見を踏まえて国立国際医療セン ター研究所におかれましては、今後の運営の改善すべきところは改善していただければ と思います。本日ご出席いただきました春日先生、石坂先生には大変お忙しい中、あり がとうございました。ご苦労さまでございました。これでご退席ください。  続きまして、平成21年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針について、事 務局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  それでは、資料3-2についてご説明いたします。総合科学技術会議では、科学技術に 関する予算等の資源配分の方針を毎年とりまとめられており、標題にありますように、 「平成21年度の科学技術に関する予算等の全体の姿と資源配分の方針」が、6月19日 にとりまとめられましたので、ご報告させていただきます。  1頁のIの「基本的考え方」に1.「骨太で機動的な資源配分方針の徹底」という項目 があります。その最初の○について、来年度の予算要求に向けてということですが、個 別の施策ごとに評価し、積み上げ方式で資源配分を行う方式から、2.の最重要政策課題 に対して各省及び研究開発法人等組織としての重点化を図ることとし、それを確認する 方式に転換する。さらに、個別施策についても、適切な資源投入がなされているかを確 認するということが打ち出されており、これまでとは異なるやり方で評価を行おうとい うことです。  2.では、「科学技術が大きな役割を果たす喫緊の最重要政策課題への重点化」というこ とで、革新的技術、環境エネルギー技術、科学技術外交、それから科学技術による地域 活性化、社会還元加速プロジェクトの積極的推進が最重要政策課題として示されている わけです。  2頁のIIの「基本的考え方を徹底するための取組」では、1.「『革新的技術推進費』の 創設とその機動的運用」ということで、科学技術振興費の1%規模の「革新的技術推進 費」を科学技術振興調整費に創設するということが謳われています。その下の方には、 先端医療開発で開始する「スーパー特区」にも必要に応じて、この推進費を活用すると いう記載もあります。  2.の「資源配分方針に基づく骨太のマネジメント」では、基本的考え方に示した最重 要政策課題及び戦略重点科学技術、これは第3期科学技術基本計画に基づくものですが、 そちらへの重点化が謳われています。  3頁では、「府省の枠を超えた一体的な施策の推進」や「革新的技術を持続的に生み出 す環境整備」などに関する記載があります。  3頁の下のほうには、上記II及びIIIの具体的な進め方については、今後決定されると いうことが記載されています。今後、総合科学技術会議から、このペーパーに記載され たものがより具体化された進め方が示される予定です。当省の研究事業についても、こ れまでも戦略重点科学技術を重視しておりますが、そういったもののほか、社会還元加 速プロジェクト、あるいは革新的技術、科学技術外交関係などについても重点化する方 向で検討を進める必要があるということです。総合科学技術会議から方針が示されまし たので、ご報告をさせていただきました。説明は以上です。 ○垣添部会長  何かご質問、ご発言がありましたらお願いします。総合科学技術会議は、こういう方 針で予算、資源配分に臨むということですが、さらに詳細が明らかになりましたら、こ の科学技術会議でも報告いただくということですが、よろしいでしょうか。  次は「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の 効率的推進等に関する法律」です。事務局から説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料3-3について、ご説明いたします。「研究開発システムの改革の推進等による研究 開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」についてですが、この法 律が国会において可決、成立いたしました。略称は、「研究開発力強化法」と聞いており ますが、資料3-3の1頁、3.「審議経過」にありますように国会での審議がございまし て、議員立法により6月にこの法律が可決、成立、公布されたものです。  2頁以降に法律の条文を付けてあります。1枚紙の最初の頁で概要の報告をさせてい ただきますが、この「法律の目的」は、研究開発推進のための基盤整備、予算、人材等 の資源配分から研究開発成果の普及、実用化に至るまでの研究開発システムの改革を推 進することにより、公的研究機関、大学、民間も含めた我が国全体の研究開発能力の強 化及びイノベーションの創出を行うことを目的としているということです。条文ですと、 2頁の左側、第1章に(目的)というところがあります。この(目的)に記載がありま すように、この法律は、基本理念を定め、関係者の責務等を明らかにし、研究開発シス テムの改革の推進等による研究開発能力の強化、研究開発等の効率的推進のために必要 な事項等を定め、3頁にありますが、我が国の国際競争力の強化及び国民生活の向上に 寄与することを目的とするという法律です。  1頁に戻って、「法律の主な内容」として、ポイントを5点書いてありますが、科学技 術に関する教育水準の向上、若年研究者等の能力の活用、研究者の人事交流及び国際交 流の促進、研究開発法人による人材活用等に関する方針の作成等を行うことにより、研 究開発等の推進を支える基盤を強化すること。  競争的資金の活用により、研究開発等に係る競争の促進を図ること。  科学技術の振興に必要な資源の柔軟かつ弾力的な配分、研究開発法人及び大学等の研 究開発能力の強化、研究開発等の適切な評価等を行うことにより、国の資金により行わ れる研究開発等を効率的に推進すること。  研究開発施設等の共用の促進、研究開発の成果の実用化を不当に阻害する要因の解消 等を行い、研究開発成果の普及、実用化を促進すること。  研究開発システム及び国の資金により行われる研究開発等の推進の在り方に反映させ るため、研究開発システムの改革に関する内外の動向等の調査研究を行うこと、といっ たことが主な内容です。  今後の予定としては、公布の日から起算して6か月を超えない範囲内で、政令で定め る日から施行となっております。なお、この法律は、既にあった研究交流促進法の内容 が取り込まれており、研究交流促進法は廃止されることが予定されています。以上です。 ○垣添部会長  研究交流促進法は、この法律が動き出すと廃止されると言われましたね。 ○坂本研究企画官  研究交流促進法の内容がこちらのほうに入っておりますので、そういう形になってお ります。資料は横にして19頁の右のほうで、「研究交流促進法の廃止」ということが書 いてあります。これはなくなるというのではなくて、この法律の中に内容が取り込まれ ているということです。 ○金澤委員  先ほどから国立国際医療センターの話がありましたが、今まで厚生労働省が管轄して いるセンターというものは、この法律、つまり、研究開発力強化法によってサポートさ れると考えてよろしいのですね。そこだけ確認しておきます。 ○坂本研究企画官  資料3-3の20頁を見ますと、独立行政法人化した後には、この法律の中に入るとい うことで条文の手当てがなされていますが、法律の関係がまだ固まっておりませんので、 独法化した場合には入るということになっています。 ○金澤委員  ここが大事なのです。 ○垣添部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○上田技術総括審議官  これは自民党の中で随分熱心に議論されて、こういう形になっていったのです。実は そのプロセスの中で、特に研究独法に対しての交付金が、一時削減がされないようにと いう意識が随分あったようです。  もう一つは、研究費の翌年度への繰越しももっとできるようにしようということがあ ったのです。研究費の繰越しのほうは「努めるもの」という規定が入っています。研究 独法への交付金の一時削減については、条文を見ただけでは曖昧なので、精神としては そういうことも、この法律の成立過程にはあったのだろうということを付け加えておき ます。 ○垣添部会長  これは非常に重要な部分だと思います。それでは、これで予定されたすべての議事は 終了いたしましたので、そのほかに何か事務局でありましたら、ご発言ください。 ○坂本研究企画官  次回の会議については、別途日程調整をさせていただきまして、ご連絡を差し上げて いると思いますが、7月23日(水)の10時から12時の開催を予定しております。誠 に申し訳ございませんが、出席可能な先生方がちょっと少なめですので、できる限りご 出席の方向でご検討くださいますよう改めてお願い申し上げます。正式なご案内につい ては、詳細が決まり次第、送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○垣添部会長  それでは、本日の会議はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございま した。                                    −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171